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[3714] ドラゴンクエストⅤ 再びあの時を  
Name: Fuji◆90982468 ID:d2158f1e
Date: 2008/08/21 13:59
これは、ドラクエⅤの主人公(リュカ)の逆行物です。
オリジナル設定なども使っていく予定です。
SS初心者ですが楽しんで頂けたら幸いです。


      設定(ミルドラース戦時)
 リュカ(リュケイロム)
  Lv83
  ちから ;231
  すばやさ ;176
  みのまもり ;108
  かしこさ ;139
  うんのよさ ;190
  さいだいHP;467
  さいだいMP;398
呪文
  ホイミ、ベホイミ、ベホマ
  キアリー、スカラ
  インパス、リレミト
  ザオラル、メガザル
  バギ、バギマ、バギクロス
  ルーラ、パルプンテ

妻はフローラ、王子はティミー(ティムアル)、王女はポピー(ポピレア)
設定などはこれからも増やしていく予定です。



[3714] ドラゴンクエストⅤ 再びあの時を  1話
Name: Fuji◆90982468 ID:d2158f1e
Date: 2008/08/21 05:21
「これで最後だ! 一気に終わらせるぞ!!」

エビルマウンテンにリュカの叫びが響き渡る。

「はいっ!!」フローラ、ティミー、ポピーもそれに答える。

「バギクロス!!」
「ベギラゴン!!」
「イオナズン!!」

リュカ、フローラ、ポピーは自身の持つ最強の呪文を放つ。

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「こ、この程度で!このミルドラースが倒せるとおもうなぁぁぁ!!」

ミルドラースは3人を振り払おうと灼熱の炎を吐こうとする。

そこでリュカが叫ぶ。

「ティミーーーー!!」

後ろで魔法力を溜めていたティミーが飛び出す。

「うぉぉぉぉ!!ギガデイィィン!!」

ティミー放った稲妻が天空の剣に落ち刀身が光輝く。

「これで!おわりだぁぁぁ!!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ティミーの一撃がミルドラースを切り裂き、そのまま崩れ落ちる。

「はぁ、はぁ、終わったのか?」 リュカが呟く。

「か、勝った!勝ったよお父さぁぁん!」

ティミーが満面笑みで父に飛びつく。

「うぅ!私たち勝てたんだ、うぁぁん!」

ポピーなどは感激で泣き出してしまう。

フローラは、ポピーをあやしながらリュカに歩み寄り…

「やりましたね、あなた」と微笑む。

「ああ!これで父さんと母さんも安らかに眠れる」

リュカは今までの旅を思い起こし心の中で両親に告げる「終わりました、父さん母さん」と

「きっとおじいちゃん達も見ていてくれたよ!ねぇポピー!」

「うん!お兄ちゃん!!」

二人がリュカ、フローラに笑いかけると…

「ああ!そうだな」「ええ!そうね」

二人も息子達にむかい微笑む。

「さあ!帰ろうか、グランバニアへ」

「うん!!」

その時リュカの後ろから声が聞こえた。

「無事に帰れると思うのか!」『!!!』

「私が滅ぶのは避けられないが!せめて天空の勇者だけでも道連れに!!」

ミルドラースの腕から黒く輝く珠が飛んでくる。

「うわぁぁぁ!!」「ティミーーー!!」

リュカがティミーを突き飛ばし代わりにその珠を受ける。

「うあぁぁぁぁぁ!!」「ぐふぅ」

リュカが倒れると同時にミルドラースの体も灰となり消えてゆく。

「あ!あなたぁぁ!!」『お父さぁぁん!!』

フローラ、ティミー、ポピーはリュカに駆け寄る。

「うぅ!ティ、ティミー無事か?」

「う、うん!それよりお父さんが!!」

「い、今回復呪文を」フローラ、ティミーが二人で回復呪文をかける。

「そ、そんな回復呪文が効かないなんて!」三人の顔に絶望の色がうかぶ。

「ご、ごめんな三人とも僕は一緒に帰れなそうだ」

「な、なにを言って!!」『いやだよ!お父さん』

三人は涙を流しながらリュカに縋り付く。

「フローラ、ティミー、ポピー、僕は一緒に居られなくなってしまったけど ごふぅ!」言い切れずに血を吐く。

「あなた!!」『お父さん!!』

「さ、三人とも し、幸せに暮らし…」

(幸せに暮らしてくれ)最後まで言い切れずにリュカの漆黒の瞳が閉じてゆく。

「あなたーーーー!!」「お父さーーん!!」「いやぁぁぁぁ!!」

フローラ、ティミー、ポピーの叫びが響き渡る。

そのとき、リュカの体が突然光りだしあたり一面を照らしだした。









リュカは眠気に負けじと体を起こす、そこへ

「坊ちゃんおはようございます。朝食の準備が出来ておりますぞ」

「サンチョ?」(何でサンチョが、僕はミルドラースと戦っていて…)

「はは!相変わらずリュカは寝ぼすけだな!」

「!!と、父さん」(と、父さんは死んだはず!)

「まだ寝ぼけているのか?早く顔を洗って来い、朝食がさめてしまうぞ。」

「はい、わかりました」(どうゆうことだ?)

とりあえず顔を洗いに行こうと起き上がり、窓に写った自分を見て驚愕した。

「な!!この姿は!」(子供に戻っている!!)

「バカな!」驚き外を見る「ここは…」






        「サンタローズ…」



[3714] ドラゴンクエストⅤ 再びあの時を  2話
Name: Fuji◆90982468 ID:d2158f1e
Date: 2008/08/21 05:23
僕は、状況を把握するために記憶を呼び起こす、

(あのとき僕は魔界でミルドラースと戦い、勝ったと思っている所で不意打ちに遭
い、ティミーを庇って……死!!)

「うげぇぇぇ!!」

突然、猛烈な吐き気をを覚えその場にうずくまる。

「!!リュ、リュカ!大丈夫!」

家に遊びに来ていたビアンカが異変に気づき駆け寄ってくる。

そして、「パパス叔父様!サンチョさん!リュカが大変なの!!」と、泣きそうな声で叫ぶ。

「リュカッ!!」「ぼ、坊ちゃん!大丈夫ですか!!」

パパスたちも異変に気づき、「サンチョ!医者だ!医者を呼べ!!」パパスがサン
チョに言うと「は、はい!」と答え駆け出す。





「診断の結果、身体には何も異常はありません」医者が言うと、

「そ、そんな!こんなに苦しんでいるのに何もないと言うのか!!」パパスが食っ
て掛る。

「お、落ち着いてください!確かに身体には異常はありませんが…これは精神的な
物だと思います」

「精神的な?」サンチョが問う、

「ええ、これは精神的つまりトラウマの様なものを感じてしまったと言うことで
す」医者は、淡々と現状を説明する。

「とりあえず今日は家で安静にするとよいでしょう」

「そ、そうですか。先生、先ほどはすいませんでした」パパスが自分の醜態を恥じ
謝罪する。

「いいんですよ、親とはそういうものです。リュカ君は幸せですね、こんなに大事
にしてくれる親が居て。」そう微笑むと、「では、お大事に」と言い帰って行く。






次の日、僕は吐き気も治まり再び現状を確認する。

(ここは、父さんとの旅から帰ってきた直後か、ビアンカの母さんも薬師が帰って
こないと言っていたし間違いないな。)

この時間軸を確認し、この先の自分の行動を考える。

(そうだな、僕の時代では僕自身は死んでしまったが、フローラや子供たちは助け
ることが出来た。さびしい思いはさせてしまうが、ティミーが居る以上あの時代は
平和になる!)確信をもって前を見据える。

(ならば!この時代をよりよい時代にしていこう!いずれ生まれてくる僕の子供達
の為にも)決意を新たにする。

「まずは、薬師を助けに行こう」

史実道理に進み必要在らば、その流れを変えより良い時代を作るために…



[3714] ドラゴンクエストⅤ 再びあの時を  3話
Name: Fuji◆90982468 ID:d2158f1e
Date: 2008/08/06 14:58
「さて、洞窟に行くか」

リュカは装備品を確認し家を出る。すると、

「リュカ!もう大丈夫なの?」

お見舞いに来たのだろうビアンカに会う。

「うん、大丈夫だよ。お医者様の話だと身体には異常は無いって、たぶん旅の疲れが出たんだと思う」心配させないよう笑顔で答える。

「で、でも!あんなに苦しんでいたのに!」

「心配してくれてありがとう。でも、もう大丈夫だから。」

「そう、良かったぁ」と、心底ほっとしたという顔をして言う。

よほど不安だったのだろう、彼女の目には涙も見えた。

「そ、それじゃあ私宿屋に戻るわ。お母さんも待ってるし」

涙を見られたのが恥ずかしかったのだろう、少し慌てて「またねー」と言い帰っていった。

ビアンカの姿が見えなくなると、リュカは洞窟に向かった。

「まずは薬師を助けないと…」

ここに来た目的は2つ…1つは薬師の救出、もう1つは自身の能力の確認だ。

かつての旅で得た戦いの知識、それらをどこまで使えるか見極めるのはこれからの行動を決める上の必須条件だ。

モンスターと戦いつつ薬師のいる所までたどり着くと…

「前も思ったけど、よくこんな状況で寝れるな」

分かっていたはずが、おもわず苦笑してしまう。

「おじさん、起きてください」薬師を起こすと、

「僕が岩を動かしますから、足を抜いてください」

「おう、わかった」

岩から抜け出した彼の足を見て、「動かないで下さい」と言い回復呪文をかける。

「ベホイミ!」

「すごいな、その年でそんな高度な呪文を使えるなんて」

治療をしながら顔を見ると、驚き半分感心半分といった感じだ。

「もう大丈夫ですよ」

「ありがとよ坊や、これでダンカンさんの薬を作ってやれる」

薬師は、もう一度「ありがとなー」と言い出口に向かう。

そして、もう1つの目的を果たす為広い場所を探す。

「さて、回復呪文は一通り使えるようだけど、他はどうかな?」

リュカは次々に呪文を唱えていく。

「バギマ!!」リュカの前方に竜巻が起こる。

「ハァ、ハァ、後はバギクロスだけか」再び詠唱に入る。

「バギクロス!!」凄まじい風が巻き起こる。

(よし!)そう思った次の瞬間、リュカの両腕から血が吹き出す。

「うわぁぁぁぁぁ!!」思わず悲鳴を上げる。

「うぅぅ!ベ、ベホマ!!」痛みを堪え自分の腕を治療する。

ようやく一息つき、現在の能力を確認する。

「使えない呪文は、ルーラとパルプンテか、メガザルは確認出来ないし、バギクロスは使えはするが身体が耐え切れないか…」

「身体能力は年相応。だめだ!この程度ではアイツには、ゲマには敵わない!」

リュカの立てた計画、その最大の難関はパパスの救出だ。

かつてミルドラースと戦ったときの力があれば、パパスと協力してゲマを倒すことも出来ただろうが、今の自分では足手まといにしかならない。

「何か方法はないか…」リュカは必死に考えを巡らせる。

しばらく無言のまま座り込む…

「……そろそろ帰らないと、父さんやサンチョが心配するな。」

そう思い立ち上がるとリレミトを唱え洞窟を後にする。




「ただいまサンチョ」

「坊ちゃん、お帰りなさいませ」サンチョが夕食の準備をしながらリュカを出迎える。

パパスもそれに気づき2階から降りてきた。

「ただいま父さん」

「お帰りリュカ」(元気がないな、どうしたのだ?朝は元気だったのに)

リュカの様子に気づいたパパスが、怪訝そうな顔をする。

「さぁ、坊ちゃんも帰って来ましたし夕食に致しましょう」

「うん!僕もうお腹ペコペコだよ!」

リュカもパパスたちに心配をかけないよう子供らしい笑顔をする。

夕食の席でパパスが、「リュカ、明日ビアンカちゃん達をアルカパまで送っていくが、お前も行くか?」と聞いてくる。

「行く!」リュカが答えると、

「そうか、なら明日は早いからあまり夜更かしするんじゃないぞ」

「うん!」



夜、ベットに入ったリュカは再び考えを巡らせる。

(どうすれば父さんを救える……ヘンリーの性格を考えると誘拐されないようにするのは無理だろうし……何か別の方法を……)

そこまで考えると急に眠気に襲われ、リュカは眠りに落ちてゆく……



[3714] ドラゴンクエストⅤ 再びあの時を  設定2
Name: Fuji◆90982468 ID:d2158f1e
Date: 2008/08/21 05:15
 リュカ(幼年時代)
  Lv10
  ちから ;38
  すばやさ ;21
  みのまもり ;11
  かしこさ ;139
  うんのよさ ;190
  さいだいHP;76
  さいだいMP;398
呪文
  ホイミ、ベホイミ、ベホマ
  キアリー、スカラ
  インパス、リレミト
  ザオラル、
  バギ、バギマ
  バギクロス(使えるが体が耐えられない)
  メガザル(確認出来ないため不明)


ミルドラースに殺され、自分の子供時代に逆行してしまったリュカ。
精神は大人である為、かしこさやMPなどはミルドラース戦のときのままであり、自ら覚えた呪文はほぼ使える。(ベネットの実験で覚えたルーラ、パルプンテは体が違う為使えない。)



[3714] ドラゴンクエストⅤ 再びあの時を  4話
Name: Fuji◆90982468 ID:d2158f1e
Date: 2008/08/07 05:17
「それじゃあ、パパスさんよろしくお願いします」

朝早く、家に来たビアンカの母さんが頭を下げる。

「いや、気にしないで下さい。女性だけの旅は危険ですから、それに久しぶりにダンカンにも会っておきたい。何せ2年振りですから」

「父さん、そろそろ出発しないと…」

「そうだな、そろそろ行こう。サンチョ留守を頼むぞ」

パパスがサンチョに言うと、

「いってらしゃいませ旦那様、坊ちゃん」

家を出て少しするとリュカは思い出したように、

「父さん、ちょっと武器屋に寄ってもいい?」そう聞く。

「どしたんだ?」

「剣を買っておきたいんだ。村の外に行くのにひのきの棒じゃあ心許ないから」

今のリュカならば、この辺りのモンスターに負けることは無いだろう。だが、自分というイレギュラーが存在する以上何が起こるか分からない。それに無暗に自分の魔力のことを晒すのは好ましくない。

「そうか、あまり時間は無いから急げよ」

パパスの許しを貰い剣を買いに行く。そして村の入り口で待っていた三人と合流し、サンタローズを後にする。





道中何度かモンスターと戦闘になったが、やはりパパスの剣の技量は凄まじい。

「うおぉぉぉぉ!!」

叫び声と共に剣を一閃すると、数体のモンスターが同時に葬り去られる。

(やはり父さんはすごい。)

偉大な父の戦い様を見たリュカは、自分の胸が熱くなっていくのを感じる。

リュカも負けじと剣を振るう。

「リュカ、ずいぶんと腕を上げたようだな」

「うん、剣の訓練は欠かさずやっていたから」

「そうか、アルカパまでもう少しだ。急ぐぞ」

一行が再び歩き出したその時、

「!!!」後方から物凄い殺気が襲い掛かる。

そこには、巨大なドラゴンがいた。

「リュカ!二人を連れて下がっていろ!!」

「はい!」(な、なぜ!この辺りにこんなモンスターは居ないはず!)

パパスが剣を抜ききりかかる。

「リュ、リュカ!」ビアンカが身体を震わせながらしがみ付いて来る。

「大丈夫だよ、ビアンカ」彼女の背を撫でやさしく語りかける。

どうやらあのドラゴンは、ドラゴンキッズの突然変異の様だ。確かに強力なモンスターではあるが、パパスなら負けることは無いだろう。リュカも剣を抜き不測の事体に備えるが、

「父さん!後ろ!!」突然リュカが叫ぶ。

パパスの後ろの茂みから別のモンスターが飛び出し体当たりをする。

「うおぉ!」パパスは避けきれずバランスを崩す。

ドラゴンキッズは、チャンスとばかりに炎を吐き出しパパスを焼き尽くそうとする。

「ぬおぉぉぉぉぉ!!」炎がパパスを包み込む。

この程度の炎でパパスを倒すことは出来ない。そう分かっているはずのリュカの頭にある光景がフラッシュバックする。そう、ゲマに焼き尽くされたパパスの姿が…


突然身体が震えだし、リュカの意識が怒りで埋め尽くされる。

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!キサマァァァァァァ!!!」

リュカは、一気に距離をつめ力任せに何度も切りつける、そして一度後方にさがり今度は手に魔力を収縮させる、

「バギマァァ!!!」リュカの生み出した竜巻が敵を吹き飛ばす。

再び剣を構えバランスを崩したドラゴンキッズに飛び掛り、首めがけて全力で剣を振り下ろす。

「うぁぁぁぁぁぁぁ!!」「ザシュ」ドラゴンキッズの首が落ち、血が噴出す。

「ハァ、ハァ…!と、父さんは!!」

リュカは返り血を拭う事もせずに、父に駆け寄りそして、

「父さん!今回復呪文を!」そう言いパパスの胸に手を当て、

「ベホマ!!!」パパスの火傷が数秒内に癒されていく。

「う、リュカ」

「父さん!大丈夫!」

「ああ、大丈夫だ。それよりリュカ、お前あの力は…」

ほっとしたのもつかの間、パパスに指摘され一気に冷静になり、

(し、しまった!なんとか誤魔化さないと!)

「じ、実は父さんを驚かせようとこっそり呪文の練習をしてたんだ」

内心、かなり焦りながら何とか言い繕う。

「そうか、まあ今回はそのおかげで命拾いしたがな…じゃあそろそろ出発するか」

「はい」

それからは、特に何もなく無事アルカパに到着し、ビアンカの家でもある宿屋に向かった。




「父さん、僕少し散歩して来てもいいかな?」

「ああ、今日は予定より遅くなってしまったし、おかみさんの好意で泊めてもらう事になったからゆっくりして来ると良い」

「分かりました。それじゃあ、ちょっと行ってきます。」

「リュカ、散歩に行くの?なら私がこの町を案内してあげるわ!」

ビアンカに連れられ町の中を歩き回り、最後に目的の教会の前に来る。

(プックル……)

町の子供たちにいじめられているプックルを見てビアンカが、

「やめなさい!その猫ちゃんがかわいそうでしょ!!その子をこっちに渡しなさい!」そう叫ぶ。

一瞬戸惑うが、すぐに言い返してきた。

「な、なんだよ!」「お前には関係ないだろ!」

リュカは冷静に言う。

「じゃあ、どうすればその子を渡してもらえますか?」

「そうだな……!そうだ!レヌール城のおばけを退治して来たら渡してやるよ」そう言い帰っていく。



宿屋に帰るとビアンカが話しかけてくる。

「今日の夜にレヌール城に行くわ!その為にも早めに寝ておきましょう。夜になったら起こしに行くから」

「わかったよ、それじゃあおやすみ」


     ……そして夜が更けていく



[3714] ドラゴンクエストⅤ 再びあの時を  5話
Name: Fuji◆90982468 ID:d2158f1e
Date: 2008/08/17 00:32
深夜…あまり眠れなかったリュカは、ベットで横になりながら昼間の戦闘を振り返り溜息をつく。

(…ハァ…まいったな…)

まさか自分があんな風に暴走するとは思わなかった。
気持ちの整理は付けていたつもりではあったが、パパスが炎に包まれた瞬間、そんなものは吹き飛んでしまった。
何も考えられなくなり、ただ怒りのまま敵を殺し、回復呪文を使っていた。

(父さんも不振に思っただろうな…ハァ…)

リュカの慌てた姿に、深くは追究して来なかったが、そう思ったのは間違いないだろう。
魔法を使ったことは、母マーサから受け継いだ才能という事で納得してもらえるかもしれないが、あの時使った呪文の威力は並みの物ではない。
あまり自覚は無いが、かつての戦いの時のリュカは、人類の中で五本の指に入るほどの使い手である。
当然、呪文の威力もケタ違い…使った呪文こそバギマであったが、すでにバギクロスと呼んでも差し支えない威力だ。
とても子供の扱えるシロモノでは無い。

(いっそのこと全てを話して協力を頼むか……いや、まだ早い。今話しても信じてもらえるか分からないし、ゲマに勝つことは出来ないだろう。それに、光の教団に行くには奴を利用しなくてはならない)

光の教団にいるマリアさん、それに前は救えなかった彼女の兄であるヨシュアさん二人を助けるためにも、あそこに行かなくてはならない。
いくら未来を知っているとはいえ、全ての人を救えるとは思っていない。
なら、せめて自分の大切な人たちだけでも守りたい。
リュカがこの時代で決意したことだ。

(もうあまり時間が無い……ゲマに勝てない以上、何とか父さんの命だけでも救う方法を考えないと…)



「そろそろビアンカが来る頃だな…」

頭を切り替えると、身支度を整え、部屋の前で待つ…

「あら?リュカ、起きてたの?まぁいいわ、早速出発しましょう」

皆を起こさないようにそっと家を出る。
そのまま町を出て、レヌール城のある北へ向かう。
途中何度か戦闘になったが…正直ビアンカの戦い方は危なっかしかった。
敵が現れると、その勝気な性格からか真っ先に飛び込むし、呪文を使った時はリュカが巻き込まれそうになった。
リュカはフォローをしつつ、的確なアドバイスをする。
すると、もともとセンスは在るのだろう、教えたことをすぐに自分のものとし、レヌール城に着く頃には逆にフォローされる事もある位になっていた。

「ねぇ、リュカ。何でそんなに戦い方に詳しいの?」

「あぁ、父さんに教えて貰ったんだよ」

ビアンカの何気ない疑問に苦笑しながら答える。
彼女の疑問も当然だろう、自分より年下の者が、一流の冒険者の様に戦い、あまつさえ助言をしてくれるのだ。
疑問に思わない方がおかしい。

「そうなの?まぁ、そのお陰で助かったけど。さて、着いたわ早いところおばけを退治して帰りましょう。」

正面は入れないので、裏口に回り梯子を上る。
最上階の棺桶の並ぶ部屋に入ると、ここで襲ってくるであろう骸骨達に備え剣を抜く。
階段に近づくと、後ろから物音が聞こえてきた。振り返ると、

「なっ!!」前回より多い骸骨達が襲ってくる。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」急に辺りが闇に染まり、ビアンカの悲鳴が響く。



「くそ!油断した!」

辺りが見える様になると、リュカは舌打ちをし階段を駆け下りる。
油断をしているつもりは無かった。
だが、予想以上の敵の襲撃にしてやられた。
自分の存在がこんな所にも歪みを与えているのか…そう思い、ビアンカの所に急ぐ。

「ビアンカ!!!」墓石をどかすと、やはりビアンカは居た。ほっとしていると、

「ああ!苦しかった。ちょっとリュカ!遅いじゃない」

「ごめん」と謝ると「まぁいいわ」と言い許してくれた。

ビアンカを助け出し、さらに下に降りてゆく。
先ほどの一件がよほど堪えたのだろう、ビアンカは震えながらリュカの手をにぎる。
彼女がおばけ等を苦手としている事を知っているリュカは、やさしく微笑みながら「大丈夫だよ」と言い、手を握り返す。
しばらくそうしていると安心したのだろう震えは小さくなっていく。

「さぁ、急ぎましょう!」

調子を取り戻したビアンカは、リュカの手を引き進んで行く。
立派な扉を見つけると、その中からすすり泣く声が聞こえて来た。

(確かこの部屋には、ソフィア王妃が居たはず…)

部屋に入り、奥のソファーに座る王妃を見つけると、そっと近づき声をかける。
王妃は、泣きながら「私達はただ静かに眠りたいだけなのに…」そう言って姿を消していく。

「リュ、リュカ!今の人は、この城のおばけじゃないの?」

「いや、違うよ。あの人はソフィア王妃だと思う。きっとこの城を魔物に荒らされて成仏できないんだよ」

「ソフィア王妃?」

「この城の王妃様だよ。たぶんエリック王も何処かに居ると思う…探して事情を聞いてみよう」

部屋を後にし、さらに進む……エリック王を見つけたリュカは、事情を聞き「この城を荒らす魔物を退治してほしい」と頼まれ、快く引き受けた。
たいまつの場所を聞き、錆付いた扉を開けてもらうと一階の厨房を目指す。

「あったわ!これで魔物の親分の所にいけるわ」

「そうだね、早く退治してエリック王とソフィア王妃を解放してあげよう」

急ぎ足で玉座の間に向かう。そこには、親分ゴーストが踏ん反り返っていた。
その姿を見たビアンカが駆け寄り叫ぶ、

「そこのゴースト!早くエリック王達を解放しなさい!!」

親分ゴーストは、動揺することなく「たいしたガキ共だ」などと言い、ニヤリと笑う。

(マズイ!落とし穴だ!)

「褒美にお前を料理してやろう!!」「ビアンカー!!」

リュカは、落とし穴が開くと同時にビアンカに飛びついた。
すばやく呪文の詠唱をすると、下に向かいバギを発動させた。
風の反動がリュカ達の体を持ち上げ、間一髪の所で落とし穴を回避する。

「そんな罠に掛かるとおもったか」親分ゴーストを睨み付ける。

「ほぅ、唯のガキではないと思っていたが、やはり只者では無かったな」

「な!どういうことだ!」(なぜこいつが僕のことを知っている!?)

「なに、わしの部下を倒した者だからな、話には聞いていた。アルカパの近くで巨大なドラゴンキッズを倒したのは貴様であろう」

親分ゴーストの話ではあの時のドラゴンキッズは、こいつが強化したモンスターらしい。

「貴様は、わし自ら殺してやろう!」

そう叫ぶと襲い掛かってきた。一度ビアンカを下がらせ、リュカも剣を抜き切り掛かる

―ガキッ!― 「!!」

親分ゴーストは、持っていた杖で剣を受け止める。

まさか、受け止められると思っていなかったリュカは一瞬戸惑うが、すぐに気持ちを切り替え、その小さくなり小回りの利くようになった身体を逆に利用し、四方から振り回す連続攻撃に出た。

「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」リュカの声が城に響き渡る。

リュカのすばやい攻撃に、親分ゴーストは防戦一方だ。

苦悶の表情を浮かべていた親分ゴーストだが、手に魔力を集めると、それを叫びと共に解き放つ。

「なめるな!イオッ!!」

爆風が乱れ、壁を、床を、天井を破壊し、破片と共にリュカに襲い掛かる。

リュカは、チッ、と舌打ちすると破片を剣で払いつつ一度距離を取る。

そこへ、親分ゴーストが追い討ちをかける。

「メラミ!!」

「なっ!!」

巨大な火球がリュカを飲み込まんと襲い掛かる。

避け切れない!そう思った時、ビアンカが、リュカの前に割り込み詠唱をする…

「ギラ!!」

ビアンカの放った閃光が一瞬押さえるが、ギラ程度では相殺できるはずも無く霧散する。

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

「ビアンカー!!」(ビアンカは、傷つけさせない!!)

リュカが再び前に出て……

「バギクロス!!うぐっ!!」

無数の風の刃が火球を切り裂き、後ろにいた親分ゴーストもろとも吹き飛ばす。

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」

テラスまで吹き飛ばされた親分ゴーストは、起き上がれない。

ビアンカは、呪文の反動でズタズタに引き裂かれたリュカの腕を見て青ざめている。

「リュカ!大丈夫!!」

ビアンカはリュカに駆け寄り、袋から薬草を取り出すと、治療を始めた。

自分で治すことも出来たけど、あえてそのままにした。彼女の気づかいを無駄にしたくなかったから……

テラスを見ると、意識を取り戻した親分ゴーストが、ヨロヨロしながら起き上がり……

「まさか、わしまで倒されるとは思わなかった」

「親分ゴースト!答えろ!なぜキサマがあんな技術を持っている!!」

リュカは、激昂しながら問い詰める。

「素直に答えると思うのか?まあいい、一つだけ教えといてやる、あの方が完全復活すれば、お前など虫ケラにも等しいということを…」

「あの方だと!そいつは何者だ!!」

「ふぅ…一つだけと言っただろう。その答えは自分で辿り着くのだな…」

そこまで言うと親分ゴーストは、テラスから身を投げた。

「リュカ、今の話は?」ビアンカが問う、

「ごめん…今は言えない……ビアンカ、今の話しばらく誰にも話さないでもらえるかな?」

最初は怪訝そうな顔をしていたが、やがて納得し「分かったわ」と約束してくれた。
そうしている内に、目の前にエリック王とソフィア王妃が現れ二人に引かれ、お墓の前に来る。

「ありがとう。君たちのお陰でやっと静かに眠れる。」エリック王が頭を下げながら礼を言う。

「私からもお礼を言わせてください。それと、最後にあなた達の名前を教えて頂けますか?」ソフィア王妃が言うと、

「あたしはビアンカよ」ビアンカは笑顔で答える。

リュカは躊躇いがちに「リュカ…いえ、リュケイロムと申します」

リュカは敢て本名を名乗った。パパスから秘密にされているとはいえ、自分は紛れも無くグランバニアの王族なのである。
同じ王族であるエリック王に失礼な対応をする訳にはいかない。

「はて?何処かで聞いた名だな」

エリック王が悩んでいると、ソフィア王妃がそっと耳打ちする。

「まさか!君は、グランバニアの……」途中で口ごもる。

エリック王は、自分を見るリュカの瞳から、その意思を汲み取った。その瞳は、言わないでほしいと語っていた。

「グランバニア?」ビアンカが首を傾げている。

「何でもないのじゃよ。ビアンカ、そしてリュケイロム、本当にありがとう……さぁ、行こうかソフィア」

ソフィア王妃も「はい、あなた」と答え、二人は手を硬く結び天に昇っていく。

「あの二人、きっと天国で幸せになれるよね……あら、何かしら綺麗な珠、きっとお礼ね!貰っていきましょう」

ゴールドオーブを袋に入れると、城を後にしてアルカパに帰った…





翌朝、アルカパの町は御祭り騒ぎだった。
大人でも不気味に思い近付かないレヌール城のおばけ…実際は魔物だったが、子供がたった二人で退治してきたのだ。
二人は、英雄扱いだった。だが、リュカにとってそんな事はどうでもよかった。
自分は、プックルを助けるためにレヌール城に行ったのである。
ビアンカに声をかけ、子供達の所へ向かう。

「まさか、本当に退治して来るなんて…まぁ、約束だしなこいつはやるよ、じゃあな」

助けられたのが分かるのだろう、リュカたちに駆け寄り頬を摺り寄せる。

「よかったね!猫ちゃん、もう苛められないからね」

そう言いながら頭を撫でる。

「そうだ!この子に名前を付けてあげなくっちゃ!うーん…じゃあボロ「プックルが良い」えっ」

ビアンカの言葉を遮り名前を挙げる。納得はしていなかった様だが、最終的には本人(?)が、気に入ってくれた様なので『プックル』で決定した。



宿に戻ると、入り口でパパスが待っていた。

「リュカ、そろそろサンタローズに帰るぞ、準備はいいか?」

はいと答えると、パパスはダンカンさん達に礼を言い出発した。
リュカも続いて出発するが、ビアンカに呼び止められた。

「リュカ!しばらく会えないからこれあげる。」リボンを片方外すと「そうだ!プックルちゃんに付けてあげる」

「ビアンカ……ありがとう」

ビアンカは、悲しそうなリュカの顔を見て、もう会えないんじゃないか、そう思い言い様のない不安に襲われる。そして、気付くと泣きながらリュカに抱きついていた。

「うぅ!リュ、リュカまた会えるよね!」

「もちろんだよ、またねビアンカ」

別れを告げ町の入り口に差し掛かると、

「リュカ、今回のこと私も感心した…だが、まだお前は子供だ。あまり心配かけないでくれ」パパスが苦しそうに言うと、

「ごめんなさい、父さん」

リュカは、心配してくれる気持ちをうれしく思い、同時に申し訳なさで一杯になる。これからの自分の行動は、パパスを今まで以上に苦しめる事になるだろう……だが立ち止まる訳には行かない。

「それにしても、お前もすみにおけないな、いつの間にビアンカちゃんとあんな関係になったんだ」今度はからかう様に言う。

「と、父さんっ!!」リュカは、自分の顔が赤くなっていくのをハッキリと感じた。

「ククッ、さぁ出発するぞ!」

パパスの言葉に頷きアルカパを後にする……これから十年は来る事の無い町を……



[3714] ドラゴンクエストⅤ 再びあの時を  6話
Name: Fuji◆90982468 ID:d2158f1e
Date: 2008/08/11 05:31
サンタローズに帰ると、パパスは留守中に届いたらしい手紙を受け取る。
前には気付かなかったが、おそらくこれがラインハット王からの手紙だったのだろう…パパスは難しい顔をして読んでいた。

翌朝…パパスは、サンチョと話があるらしく部屋に篭っていた。
リュカは、二人に声をかけ家を出ると教会に向かう。

この日は、大人になった自分がゴールドオーブを手に入れる為、未来からやってくる。
教会の前に着くと……

「やぁ坊や、こんにちは」大人になったリュカが声をかけて来る。

リュカは、彼に近付き答える…

「こんにちは…リュケイロム・エル・ケル・グランバニア陛下」

「なっ!!」

リュケイロムは驚愕した表情でこちらを見ている。

「お話があります。僕に付いて来てください」

そう促し洞窟に向かう。リュケイロムは何も言わずに付いて来てくれた。
歩いていると、後ろから強い視線を感じる…おそらく警戒しているのだろう。
洞窟の奥に着くと、向かい合い語りかける。

「僕があなたの事を知っているのが不思議ですか?」リュカが問う。

「あぁ、なぜ君が私の事を知っているんだ?」

リュケイロムは、疑いの視線を向ける。

「お話します。僕が経験した事の全てを……」




リュカは全てを話した…かつての旅の事を、フローラを大神殿で助けた事、魔界に行きマーサと再会したこと、目の前で殺されたこと、ミルドラースと戦い勝利したものの不意打ちに合い死んでしまった事、そして気付いたら子供時代に戻ってしまった事。

リュケイロムは、ただ呆然と聞いていた。

「あなたの目的は、これですね」

リュカは、袋からゴールドオーブを取り出し差し出す。

「差し上げます……その代わり、お願いしたいことがあります…」

ゴールドオーブと光るオーブを交換すると、今まで黙っていたリュケイロムが話しだす。

「君は、父さんを助けるつもりかい?」躊躇いがちに聞いてくる。

「はい、父さんだけではなく助けられる人は皆助けるつもりです」

「しかし!それでは、歴史を変えることになるぞ!!」

確かに未来を知っている、そして自分の思いのままに変えていく……そんな事は人の範疇を超えている。
まさに、神の領域……これ程罪深い事は無いだろう。
だが、知っているのに見て見ぬ振りをするような事は出来ない。

「全てが終わった時、未来を知っていた事を明かすつもりです。そして、皆が許さないと言うなら……僕は、この世界を去ります……」

リュケイロムは、リュカの決意を聞き何も言えなくなってしまう。

「僕の話を聞いて、同じように未来を変えるか……それは、あなた次第です。ただ、ぼくは知っているのに見て見ぬ振りをするのは、自分で殺しているのと同じだと思っただけです。」

リュカの話を、ただ聞いていたリュケイロムは、リュカを真っ直ぐに見据えて…

「そうか…そこまで決意しているのなら何も言わない。私も君の立場になったら同じ事を考えるだろうし。それなら私も協力させてもらう」

リュケイロムは、腰に挿した奇跡の剣を鞘ごと抜き、リュカに差し出す。
この剣なら少しは助けになるだろうと……

「君が、良い時代を築けることを願っているよ……」

そう言い、リュケイロムは元の時代に帰って行った。






その頃……パパスとサンチョは、リュカについて話していた。

「サンチョ、最近のリュカをどう思う?」パパスが問う、

「どうとは?」

「旅から帰った後から急に大人びてきた様に思うのだが…それに、先日アルカパに行く途中、リュカの戦いを見たのだが…明らかに戦い慣れしている様だった。」

サンチョは、信じられなかった。パパスの話では、敵は通常の3倍はあるドラゴンキッズだったらしいが、とても六歳の子供の倒せるモンスターではないだろう。

「それに、呪文もバギマやベホマ等の高等呪文を使っていた。こっそり練習していたと言っていたが……あの威力は、グランバニアの宮廷魔術師でも使えないだろう。」

「………」サンチョは言葉も出ない…。

パパスは、リュカが何かを隠しているのは気付いていたが、息子を疑うのは良くないと思い何も聞かなかったのだ。
そして、しばらく話し込んでいると……

「ただいまー」

「リュカ……帰って来たか。サンチョ、今の話はリュカには言わないでくれ」

「はい……分かりました」

パパスは、サンチョに口止めをし、リュカを出迎える。





「ただいまー」

「リュカ、お帰り」

パパスに出迎えられると、サンチョが食事の準備をしてきますと言い台所に向かう。

リュカは、食事の途中パパスに問う。

「父さん、明日から1週間、友達の所に泊まりたいんだけど良いかな?」

友達とは、ベラのことだ。
妖精の国の事件を解決するには2~3日で十分だろうが…リュカは、妖精族の人達に呪文の修行をつけてもらおうと思っていた。
高い魔力と技術を持つ、妖精族に教えてもらえば、自分に使えない呪文や人類の中では失われた太古の呪文等も覚えられるかもしれない。
これからの旅の役に立つ物もあるだろう……そう思い少し長めに頼んだのだ。

「かまわないが、あまり迷惑を掛けるんじゃないぞ」

パパスの許可を貰うと、ちょうど食事も終わり、先に休むと言って部屋に戻る。
そのままベットに入ると、直ぐに睡魔が襲ってきた。
妖精の国のことを考えながら、リュカの意識は眠りに落ちてゆく。




 あとがき
今回の、リュカがリュケイロム(大人の方)に言ったお願いは、今は秘密です。
ただ、今後でこの事が重要なフラグとなるということだけ言っておきます。
次回は、妖精界編です。
毎回短く、文章も未熟な所が多いと思いますが、これからもおつきあい頂けたら幸いです。



[3714] ドラゴンクエストⅤ 再びあの時を  7話 前編
Name: Fuji◆90982468 ID:d2158f1e
Date: 2008/08/21 05:29
「それじゃあ、父さん、行って来ます」

「ああ、気を付けてな」

「行くよ、プックル」

「ガゥ!」

パパスに断りを入れると、プックルと共に家を出る。

サンチョの話では、町中で悪戯が起こっているらしい…間違いなくベラの仕業だろう。

事情を知るリュカは、それとなく解決してきたが、お陰でリュカやプックルが疑われたりもした。

幸い疑いはすぐに晴れたが……


酒場に入ると、マスターに声をかけられた。

ミルクでも飲むかい?と進められたので、丁重に断り店内を見回す。

ベラの姿はすぐに見つかり、リュカは彼女に近付き声をかける。

「どうしたんですか?何か探し物でも?」

「!!あなた、私の姿が見えるの?」

リュカが、はい、と答えると……

「ここじゃあ話にくいわね、確かこの村に地下室のある家が在ったわね、そこでまっているわ」

そう言い、姿を消す。


酒場を出たリュカは、思わず身震いする。

時期的には春の筈が、その寒さは冬のそれだ。

(早く、春風のフルートを取り戻さないと)急ぎ足で家に向かう。


「おや?坊ちゃん、忘れ物ですか?」

「ちょっとね、またすぐに出かけるよ」

地下には、すでにベラが居た。

「あっ!来たのね、待っていたわ。わたしはベラ、妖精よ。実はあなたにお願いがあるの、詳しい話は私達の長であるポワン様から聞いてもらうけど、まずは私と一緒に妖精の村まで来て」

リュカが了承すると、

「まずは、妖精の村までの道を開くわ……!!誰か来る!」

リュカの声を聞いたパパスが降りてくる。

「リュカ、どうした忘れ物か?」

リュカがそうですと答えると、

「一週間もお邪魔するのだろう。迷惑をかけるんじゃないぞ」

そう言い、パパスは戻っていく。

「ああ、びっくりした。それじゃあ今度こそ」

ベラがなにやら唱え始める、すると天から光の階段が降りてきた。

しばらく階段を登っていると、突然空間が歪み、辺りが光に包まれる。

気が付くと、リュカは妖精の村に立っていた。


そのままベラにつれられ、ポワンの部屋まで行く。

「ポワン様、人間族の戦士を連れてまいりました」

「まぁ!かわいらしい戦士様ですこと」

ポワンは、慈愛にみちた表情でリュカを見つめ、名前を尋ねる。

「初めましてポワン様、私はリュケイロムと申します。リュカとお呼びください」

「わかりました。リュカ、貴方を呼んだのはある物を取り戻してもらいたいからなのです。それは春風のフルートと呼ばれる春の訪れを告げる物なのです。それが先日ザイルというドワーフに盗まれてしまい春の訪れが告げられないのです。貴方の世界で春が訪れないのもその為です。どうか私達に力を貸してください」

リュカは二つ返事で了承する。

「引き受けてくださるのですか!ありがとうございます。それでは此方からもベラを共に行かせましょう。よろしいですか、ベラ?」

「はい、ポワン様!リュカ、よろしくね!」

「こちらこそ、よろしくベラ……ほら、プックルも挨拶して」

「がぅ!!」プックルがよろしくと言わんばかりに吠える。

「「!!」」

ポワンやベラをはじめ、周りの妖精達は顔を青ざめさせている。

「それは!まさか、地獄の殺し屋キラーパンサー!!」

いち早く正気に戻ったポワンが叫ぶ。

それと同時に周りのエルフ達も警戒と疑いのまなざしを向けてくる。

「大丈夫ですよ、この子は人を襲ったりはしません。それに、僕には魔物使いの力があります。それにふれたこの子に魔の心は残っていません」

リュカはプックルの頭をやさしく撫でる。

するとプックルは、気持ちよさそうに目を細めて、ふにゃ~、と鳴いている。

「……確かにその子からは、邪悪な力は感じませんね。リュカ、疑ってしまい申し訳ありません」

「気にしないで下さい」

リュカが言うと、周りのエルフ達も安心したのか、緊迫した空気は消えていった。


「それではポワン様、そろそろ出発します」

「そうですか……ザイルは北西にある氷の館に向かったそうです。ですが、あそこの入り口は堅く閉ざされています。まずは、西にある洞窟に向かうと良いでしょう。そこにいるドワーフが鍵の技法を持っているそうです」

「わかりました。行ってみます……行こうかベラ、プックル」

「ええ」「がぅ!」

二人と一匹は装備をととのえ村を後にする。





村の外に出ると、そこは辺り一面銀世界だった。

冷気が突き刺すような痛みを与え、雪に足を取られ思うように進めない。

プックルなどは、体の半分は雪に埋まっており、ガタガタと震えている。

リュカは袋から防寒用に買ったマントを取り出し、プックルにかけてやる。

暖かくなり元気が出たのか、プックルはどんどん先に行ってしまう。

「プックルー!あまり先に行くなよ」

リュカが、プックルを咎めようとした時……

「ぐるるぅぅぅ!!」プックルが唸り声をあげる。

そこには、マッドプラントとホイミスライムが……リュカは敵を確認すると、

「ベラ、援護をお願い!プックル、行くよ!」

マヌーサを使われると厄介だと思い、マッドプラントを先に狙うが、足を雪に取られ巧くいかない。

「リュカ!伏せて!……ギラ!!」

閃光がマッドプラントを貫き、リュカが剣で切り裂く。

横を見るとプックルもホイミスライムをしとめたようだ。

終わったと思うと、今度は後ろからつちわらしが現れ、ベラに襲い掛かて来た。

「きゃぁぁぁぁ!!」

間に合わないと思った瞬間、プックルが飛び出す。

「がぁぁぁぁ!!」唸り声と共につちわらしの首に、その牙を突き刺した。

  ーグシャー  

気味の悪い音と共に、喉を喰い千切る。つちわらしは、そのまま首からドロッとした血を流し絶命する。


プックルは、座り込んでいるベラに近付き心配そうな目で見ている。

ベラは、今までプックルに近付こうとしなかった。魔物であるという思いを捨て切れなかったからだ。だが自分を庇ってくれた事でその思いは消えていった。

「プックル、ありがとう。今までごめんね」

ベラは、プックルの頭を撫でながら礼を言う。

「さて、そろそろ行こうか、またこんな所で襲われちゃたまらないし」

「そうね、急ぎましょう」

リュカ達は、急いで洞窟に向かう。





洞窟に入って半刻ほど経つ……リュカ達はザイルの祖父であるドワーフに会っていた。

「そうか……あのバカ者め!わしを追い出したのはポワン様ではないというのに」

リュカから事情を聞いたドワーフは、怒りと悲しみの入り混じった様な顔をしていた。

「僕達は、春風のフルートを取り戻すために、鍵の技法が必要なんです。どうか譲って頂けませんか」

「……分かった。出来る限りの協力はしよう……どうか、ザイルの目を覚ましてやってくれ。」

リュカが頷くと、今日は泊まっていくといいと進められ、その言葉に甘えることにした……






あとがき
今回は前後編にわけます。後半はそう時間を空けずに更新出来ると思います。
あと、指摘がありました5話の戦闘シーンを中心に修正しました。
よろしければご覧下さい。



[3714] ドラゴンクエストⅤ 再びあの時を  7話 後編
Name: Fuji◆90982468 ID:d2158f1e
Date: 2008/08/21 05:11
翌朝・・・・・

「それでは、行きます。お世話になりました。」

「あぁ、ザイルの事よろしく頼む」

深々と頭を下げ、リュカに一通の手紙を託す。

手紙を受け取ると洞窟を出て、再び雪の中を歩き出す。



一行は、氷の館を目指し進んで行く。

雪の女王の仕業なのか、近付くにつれ吹雪が強くなっていった。

「もう!なんなのよ!!この吹雪は!」

ベラが悪態をつく。

道もひどく険しい山に入り、吹雪と相俟ってより一層、体力を奪っていく。

遠くから、雪崩や落石の音も聞こえてくる。

リュカ達は、細心の注意を払って山道を進む。

山道を抜けると、氷の館が見えてきた。

今まで激しかった吹雪もウソの様に収まり、足取りも軽くなる。

一気に駆け抜け、館の前に到着すると、そのまま内部に侵入する。



「きゃぁ!」「がう!」

先に入ったベラとプックルの驚いた声が聞こえる。

リュカは駆け寄ると、大丈夫?と声をかけ手を差し出し、起き上がらせる。

「ベラ、僕の手につかまって、引いて行くから。プックルは、服につかまって」

リュカは二人を引いたまま、壁や柱を蹴り、時には床に剣を刺し、思い通りに進んで行く。

初めてであるベラ達には辛いかもしれないが、数多の罠や障害を乗り切ってきたリュカにとって、こんな物は正に遊びの様な物だ。



二階に上がると、ザイルの姿を見つける。

「ザイル!春風のフルートを返して!!」ベラが叫ぶ、

「何だ、お前ら……そうか!ポワンの使いだな!なら、返すわけにはいかねぇな」

ザイルは、祖父を追い出したポワンが許せない、これは復讐だと言う。

「お祖父さんを追い出したのは、ポワン様じゃないよ」

リュカは、ザイルに近付くと手紙を手渡す。

「何だこれは!こんな物「いいから読め!」うっ…」

手紙を破り捨てようとするザイルだが、リュカの気迫に負け、しぶしぶと読み始める。

するとザイルの顔色が変わっていく、

「これは、じいちゃんの字だ……じいちゃんを追い出したのは、ポワンじゃない!?そんな、だって、雪の女王様が……」

「クックック……やはり子供ではこの辺りが限界か」

後ろから現れた雪の女王にザイルが詰め寄る。

「女王様!どうゆう事ですか!じいちゃんは、ポワンに……」

「そんな物、お前を操る為の嘘に決まっているだろう」

「っ!!騙したのか!!」

「ほほほほ…お前はなかなか使い勝手の良い駒だったぞ……さて、お前はもう用済みだ…消えてもらおうか!」

雪の女王はその美しい顔に残虐な笑みを浮かべ、腕をザイルに向ける。そしてその手の中に魔力が集まっていく。

ベラは凄惨な光景を想像し目を背け、プックルが唸り声を上げる。

ザイルは悲鳴を上げ、逃げ出そうとするが間に合わない。

皆が、やられると思った時……

「ぎゃぁ!!」雪の女王が悲鳴を上げる。

ベラは、何事、と思いよく見ると、リュカが後ろから、雪の女王を切りつけていた。

「くっ!後ろからとは、卑怯な!」

雪の女王は、苦しげに言い放つが……

「お前の様な奴に、言われる筋合いはない」

リュカも冷静に言い返す。

「キサマ!もう許さぬ!わらわが氷漬けにしてやろう!!」

「ザイル!君は下がって!!」

雪の女王は正体を現す。美しかった顔は溶けるように崩れ、数秒でおぞましい魔物へとその姿を変える。

殺気が大きくなり、リュカ達を睨み付けると、凍りつく息を吐き出す。

強力な吹雪がリュカ達を凍り付かさんとふきつける。

「みんな!散れ!!」

リュカの声と共に散開し、それぞれ攻撃を仕掛ける。

ベラの放ったギラの閃光が腕を焼き、プックルの爪が皮膚を切り裂き鮮血が噴出す。

リュカも、銅の剣で切り掛かるが、雪の女王の剣と交差した瞬間……

―ガキーンッ―

限界が来た銅の剣が砕け散り、予想外の出来事に驚き隙が生じる。

胸に蹴りを喰らい、肺の中の空気が吐き出される。

一旦距離を取り、体勢を立て直そうとするが、そこに吹雪に混じった氷の礫が襲い掛かる。

雪の女王のヒャドだ。

「うぁぁぁぁぁぁ!!」

無防備に喰らったリュカは吹き飛ばされる。

吹雪で腕や髪が凍り付き、氷の礫が身体に突き刺さる。

壁にぶつかりようやく止まると、そのままズルズルと崩れ落ちた。

「リュカ!!」ベラが悲痛な叫び声をあげる。

追い討ちを掛けようとする雪の女王だが、プックルが邪魔はさせないとばかりに牽制する。

「リュカ、大丈夫!!」駆け寄り回復呪文をかけるベラ。

「いてて、ちょっと油断した。ありがとうベラ」

礼を言い立ち上がると、砕けた剣の柄を投げ捨て、腰に差したもう一本の剣を抜き構える。

プックルの戦いを見据え、タイミングをはかり叫ぶ。

「プックル!さがれ!!」

プックルがさがると同時に一気に距離を詰め、剣を一閃する。

「っ!!」

雪の女王の顔が驚愕に染まる。そして断末魔の声も上げられず、リュカの剣に頭から真っ二つに切り裂かれる。

「はぁ、はぁ…皆、大丈夫?」

そう聞きながら、仲間を見回すリュカ。

幸い皆、命に関わるような大きな怪我は無いが、体中の至る所に小さな傷や凍傷が見られる。

リュカが、回復呪文で皆を治療すると、ようやく一息つく。



「リュカ、お疲れ様……それにしても凄い剣ね、何か魔力も感じるし」

労いの言葉をかけ、リュカの手にある剣についてたずねるベラ。

「これは、奇跡の剣て言うんだ。強力過ぎるから今まで使わなかったんだけど」

そう答え、懐から布を取り出し、剣を拭くと鞘に収める。

「そうなんだ、何にせよこれで一件落着ね」

そう言うと、ザイルから春風のフルートの場所を聞き出す。

ようやく春風のフルートを取り戻した一行は、妖精の村に帰ろうと歩き出すが、ザイルに呼び止められる。

ザイルは、自分も連れて行ってほしいと言う。ポワン様に直接謝罪したいと。

了承すると、一行はザイルと共に、氷の館を後にする。




妖精の村に帰還し、ポワンの部屋まで来ると、真っ先に声を上げたのはザイルだった。

「ポワン様! すいません……オイラ、勘違いでとんでもない事を……ううぅ!」

涙を流しながら謝罪するザイル。

ポワンは、やさしく微笑み許す。あなたは、騙されていただけなのだから……と。

今度は、リュカを見て言う。

「リュカ、ありがとう。これで世界に春を告げることが出来ます」

「お役に立ててよかったです」

謙虚な態度で答えるリュカ。

「ベラも、ご苦労様でした」

「はい!」笑顔で答えるベラ。

するとその横で、プックルが、がう、となく。

「ふふっ、そうでしたね。 プックル、あなたもありがとう」

「がう♪」プックルは、当然だといわんばかりに吼える。




話が一段落すると、当初の目的を切り出す。

「ポワン様、一つお願いしたいことがあります。僕に、魔法の修行をつけて頂けませんか?」

ポワンは、なぜですか、と聞く

「実は、ある高名な占い師から、近い内に父が危険な目に遭う、と聞いたのです。それを助ける為、もっと力を付けたいのです」

高名な占い師に聞いた……もちろん嘘だ。

正直、心が痛んだ。ポワンやベラを騙しているからだ。だが、未来を変えることを妖精達は良しとはしない。

「分かりました。此方から、腕の立つ者を寄こしましょう。とりあえず今は、宿で休むと良いでしょう」

「ありがとうございます! 宜しくお願いします。」

礼を言うと、宿に向かう。




リュカの修行は、翌朝から始まった。

修行中のリュカの様子は、鬼気迫るものがあった。

元々才能のあったリュカは、綿が水を吸うように技術を吸収していった。

ザイルも、助けられたお礼だと言いサポートしてくれた。

五日間という短い修行期間であったが、師事してくれた妖精には、もう教えられる事は何もない、とまで言われた。


そして、修行も終わり、別れの日・・・・

「ポワン様、お世話になりました」

リュカが言うと、ポワンは一着の服を差し出す。

「この服は、魔法の法衣です。貴方の体が上級呪文の反動に耐えられない事は聞いていました。この法衣ならそれを抑えることも出来るでしょう」

ポワンに進められ服の上に法衣を羽織る。

まるで羽毛を纏っているかの様だ。着ている感覚すらない。

だが、法衣に込められた魔力が体をやさしく包み込むのを感じる。

「リュカ、よく似合っていますよ」

ポワンの言葉に、ベラを始め回りの妖精たちが同意し、揃って褒め称ちぎる。

居た堪れなくなり、視線を逸らし頬を掻くリュカ。

ザイルが、困惑しているリュカをからかいつつ、その肩に手を置く。そして、一つのペンダントを手渡す。

「リュカ、お前に頼まれていた物だ。親父さんへ渡すお守りなんだろ」

修行を手伝ってくれたザイルとは何度も話す機会があった。

気付いた時には、二人とも親友同士のように話していた。

そして、その時頼んでいた物がこのペンダント型のお守りだ。

リュカは皆に向き直り、改めて礼をする。



「リュカ、本当にありがとうございました。貴方のことは忘れません。何か困ったことがあったなら、再びこの村を訪ねて下さい。必ず力になりましょう。」

「ありがとうございます。ポワン様」

「さぁ、お別れです。貴方が、お父上を救えることを願っていますよ」

そう言うとポワンは、魔法を発動させる。

妖精の村に、足を踏み入れた時と同じ様に、空間が歪み、光に包まれ目を閉じる。

次に目を開けた時には、サンタローズの家の地下室に居た・・・



[3714] ドラゴンクエストⅤ 再びあの時を  設定3
Name: Fuji◆90982468 ID:d2158f1e
Date: 2008/08/21 05:15
 リュカ(幼年時代)
  Lv18
  ちから ;58
  すばやさ ;47
  みのまもり ;19
  かしこさ ;152
  うんのよさ ;190
  さいだいHP;140
  さいだいMP;425
  攻撃力;158
  守備力;69

呪文
  ホイミ、ベホイミ、ベホマ
  キアリー、スカラ、スクルト
  バイキルト、ピオリム
  インパス、リレミト、アバカム
  ザオラル、
  バギ、バギマ
  メラ、メラミ
  ヒャド、ヒャダルコ
  バギクロス、メラゾーマ、マヒャド(魔法の法衣着用時)
  メガザル(確認出来ないため不明)
  ルーラ(未完)
  ドラゴラム

装備 E・奇跡の剣
   E・魔法の法衣
   

妖精族に呪文の修行をつけて貰ったリュカ。
元々、賢者並みの魔力と技術を持っていたので、五日間では在り得ない速度で呪文を習得した。
ルーラは、習得できたが、自分一人しか移動できない。(プックル位なら抱えて一緒に飛べる)



あとがき
正直、自分でも無茶な設定だと思っています。すいません。
でもその辺は、納得して見て頂けるとありがたいです。
あと、魔法の法衣と言うのは、ダイの大冒険でダイやポップが着ていた物(レオナから貰った服)から使わせてもらった設定です。



[3714] ドラゴンクエストⅤ 再びあの時を 8話
Name: Fuji◆90982468 ID:d2158f1e
Date: 2008/11/03 16:16
(注)
 ここからは、若干最強物の様になっていきます。また、ダイの大冒険やロトの紋章などを始め他のドラクエ関連の設定等も使っていく予定です。
以上の事を踏まえた上でご覧下さい。







妖精の村での修行で得たものは予想以上だった・・・
多数の呪文を習得し、ポワン様に頂いた魔法の法衣のおかげで上級呪文もリスクなく使用できる。
そして、最大の成果である合体魔法。特にバギクロスとドラゴラムの合体魔法バギグラム・・・ドラゴラムに、バギクロスの風の力を加えることにより、風の竜に変化することが出来る。
風の竜とは、翼を持つ竜であり、空を自由に飛行する事が出来る。マスタードラゴン程の力も速さもないが、光の教団の本部である大神殿に乗り込むのには十分な能力だ。
 
本来ならば、ゲマの空間移動しか移動手段が無かった。その為史実どうり奴に接触する必要があったのだが、それは同時にパパスも接触することになり、死の危険が伴う。
だが、移動手段を手に入れた以上、ゲマを利用する必要も無くなった。ならば、この時代に倒しておくのが最善だろう。

パパスの死に始まり、フローラと共に石にされた時、そして、マーサの死・・・この全てにゲマや、その直属の部下達が関わっている。この先、未来を変えていく上で、最大の障害であるのは間違いない。
手ごわい相手だが、パパスの剣技とリュカの呪文があれば倒せない相手ではない。戦力が整い、進むべき道も見えてきた。
リュカは、すでにラインハットに向けて出発しているだろう父に追いつくのが先決と思い、地下室を後にする。




「おや?坊ちゃん、お帰りなさいませ。いつお戻りになられたのですか?」

地下室から出てきたリュカを見たサンチョが不思議そうに聞く。

「今、帰ってきたばかりだよ。それよりも父さんは?」

サンチョに聞くと、予想以上に早くラインハットに向けて出発してしまったらしく、おそらくラインハット領に入った頃だろうとの事だった。そして、今回は危険な旅になりそうなのでリュカは家で待っていてくれという伝言を預かったと言う。 
リュカは、自分の部屋に戻るとすぐさま旅支度を整え、台所に居るサンチョの元に向かい告げる。

「サンチョ! 僕、父さんを追いかけるから。プックル!行くよ!」

リュカは、返事も待たず、プックルを連れて家を飛び出す。

「ぼ、坊ちゃん!! お待ちください! 旦那様が待ってるようにと!」

驚いたサンチョが、エプロンを着けお玉を持った格好のままで追いかけ叫ぶ。
 
リュカは、村の裏に向かい走る。後ろから、サンチョの引き止める声が聞こえるが、気にしてはいられない・・・急がなくては手遅れになる。
リュカの顔には、焦りが見える。パパスが、予想より早く出発していて歩いて追い着くのは難しいと思い、仕方なくルーラを使うことにした。だが、確かに修行により習得してはいるが、この呪文は魔力以外にも、肉体的な要素も必要らしく、膨大な魔力を持つリュカでも体が子供である以上、使いこなすのは難しいだろうとのことだった。
人気の無い場所に着くと、プックルを抱き上げると精神を集中させ、ラインハットを思い浮かべ魔力を開放する。

「ルーラ!」

呪文を唱えると、リュカ達の体に光が集まり、フワリと浮かび上がりそのまま天高く舞い上がる。

村の外れからリュカが飛び立つのを目撃した村人達が、「何だあれは!」と、騒ぎ立てる。
皆が騒ぐ中、サンチョだけが一人不安そうに飛び立ったリュカを見つめる。その顔には、何か良くない事が起こりそうだ、という考えがありありと浮かんでいた。



ーズドォォォン!!ー

ラインハット領内に轟音が響き渡る。

「いてて・・・」

リュカは、額に手を当てて頭を振りながら立ち上がり、その横でプックルが目を回しながら地に伏せている。
どうやら、ルーラの着地に失敗したらしく、場所もラインハット城からだいぶ離れているようだ。
 
「やっぱりまだ上手く扱えないな。 はぁぁ・・・ポピーは子供の時でも普通に使っていたんだけどなぁ」

そう言い一息つくと、やはり天空人の血の成せる技なのかな、と呟く。その顔には、娘との才能の差を痛感したという自虐的な笑みが浮かんでいる。
リュカも才能という点では凄まじい物であるが、十歳にしてルーラやイオナズン等の高等呪文を使いこなしていた娘には敵わない。今のリュカの能力は、かつての経験が土台になっているだけなのだ。
しばしの間考え込むリュカだが、急いがないとと思い、プックルを起こす。幸いなことに、城から離れているとはいえ、まだ追い着く事は出来そうだ。気を取り直して、そのままラインハットに向かう。

 


リュカが立ち去るとその場所に、一体の魔物が姿を現す。

「・・・・奴が、リュカか・・・なるほど、尋常じゃない魔力を感じる。皆が騒ぎ立てるはずだ」
 
リュカが立ち去った場所に、一匹の魔物が姿を現し、そう呟く。

「容姿も聞いていた話と一致する。だが、あいつ何処かで見たことが・・・」

そう言い、リュカ達の後を付ける。



魔物を撃退しつつ進むリュカ達。
森に差し掛かり暫く歩くと突然、リュカが立ち止まり、振り返る。
プックルは、不思議そうに首を傾げ、リュカを見る。

「何時まで付けて来るつもりだ!? いい加減に出て来たらどうだ!!」

突然叫びだすリュカ。
すると、木の陰から1匹のスライムナイトが姿を現す。

「さすがだな・・・まさか気付かれるとは思わなかったぞ」

笑いを押し殺しながら近付くスライムナイト。

「少年・・・お前がリュカか?」

リュカは、自分の名を知っているスライムナイトに戸惑いを覚えながらも「そうだ」と答える。

「やはりそうか。噂どうりだな・・・奴らが危険視するわけだ」

「・・・どういう事だ?」

「今、我々の間にお前の抹殺命令が出されている。レヌール城の親分ゴーストを倒したことが広まってな・・・まだ子供の内に消しておこうという事だ」  

「・・・・お前も僕を殺しに来たのか?」

スライムナイトの言葉に、警戒を強めながら聞くリュカ。

「いや、その様なつもりは無い。私は、お前の噂を聞いて興味を持ってな・・・偶然見かけたので此処まで後を付けてきたのだ」

「・・・・・それで、僕を如何するつもりだ・・・」

怪訝そうな顔をするリュカに対して、スライムナイトはふっと笑う。

「別にお前自身を如何にかするつもりは無いさ。ただ此処まで魔物と戦ているのを見てきて、お前と戦っててみたいと思っただけだ」

その言葉に嘘偽りは無いと思い警戒を解くリュカ。自分と相対するスライムナイトからは悪意は感じられ無かったからだ。
スライムナイトも、リュカが警戒を解いた事を感じ、今度は真摯な姿勢で口を開く。

「私の名はピエール、一人の剣士としてそなたに手合わせを申し込む」

「!!・・・・・・」

リュカの表情が驚愕に染まる。当然だろう、本来ならピエールと会うのは十年後のはずなのだ。この時代で会うことになるなど予想もしていなかった。

「どうした? 受けてはくれないのか?」

驚き何も答えないリュカに対して、ピエールが問う。

「・・・・分かった。その手合わせ受けて立とう」

時間が無い、そう思いつつも申し出を受ける。
ピエールにとっては初対面であろうが、リュカにしてみればピエールは仲間として、そして家族として苦楽を共にしてきた大切な存在なのだ。
そして、母マーサの親友でもある。
本人は、「私はマーサ様に忠誠を誓った騎士だ」と言っていたが。
そんな者がまだ子供である自分を強者と認め、手合わせを申し込んできたのだ。それを無視することなど出来なかった。

「・・・・感謝する」



「そろそろ始めようか、ピエール。 プックル君は下がってて」

リュカは、プックルをさがらせると腰にある奇跡の剣を抜き正眼にかまえる。
同時にピエールも剣を抜き対峙する。


リュカとピエール・・・・二人の間に緊迫した空気が流れる。
互いの神経が極限まで高まり刃の様に研ぎ澄まされ、わずかな隙も見逃さないとばかりににらみ合う。
もはや、リュカにはピエールしか、ピエールにはリュカの姿しか見えてはいない。
対峙したまま時間が流れる。互いに隙など無く探り合うだけで動くことが出来ないのだ。
リュカの頬を一筋の汗が流れ落ちる。

プックルは、少し離れた場所で見ていたが、二人の放つ威圧感に当てられ全身の毛が逆立ちジリジリと後ずさる。そして、数歩下がった時その後ろ足が小枝を踏みつけ、緊迫した中にパキッという音が鳴る。
その刹那・・・・

ーガキーーン!!-

森の中に金属同士がぶつかり合う甲高い音が響き渡る。
小枝を折った音を合図に二人が飛び出し剣を交えたのだ。
そのままギリギリと鍔競合いを演じる。
リュカは、ピエールの力に徐々に押され始め、まずいと思い一度距離を取る。だが、ピエールがそんな時間を与えてくれるはずも無く、直ぐに追撃される。
紙一重で避けたリュカが今度は上段から切りかかれば、ピエールは盾でそれを受け流し突きを放ってくる。
リュカは、体を捻る事で回避し、その勢いも加えて横なぎに切り払う。
ピエールは、避けきれず剣で受け止めると、それを利用し後ろに飛ぶ・・・・着地と同時に左手に持った盾を投げ捨て、その手をリュカに向ける。

「イオ!!」

ピエールのイオがリュカの周りに爆発を巻き起こす。
だが、魔法の法衣にその身を包んだリュカにとって、この程度ではダメージにはなりえない。
お返しとばかりに、今度はリュカが呪文で応戦する。

「メラミ!!」

リュカの腕から直径2mはありそうな巨大な火球が打ち出される。
ピエールは迫り来る火球に対し、避ける素振りさえ見せず剣を両手で構える。そして・・・・

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

気合と共に火球を真っ二つに切り裂く。
そのまま爆散し、辺りの木々を巻き込み燃え広がっていく。
バキバキと、鈍い音を立てて木が倒れ、黒煙が立ちこめる。

ピエールは、黒煙により姿が見えなくなったリュカを気配で探る。
直ぐに見つけたピエールは剣を構えなおし、飛び掛かろうとするが、自分を乗せるスライムが動かない。
不信に思い下を見ると、自身の足ともいえるスライムの下半分が凍りついていた。

「なっ!!!」

驚きの声を上げるピエール。

風が吹き、立ち込めていた黒煙が薄れていく。煙が消えた時、辺りは一面氷の世界だった。
地面や、燃えていたはずの木々までもがそのまま凍りつき、その中央でリュカが下に向け冷気を放っている。
ピエールは、何も言えずただ驚愕の表情を浮かべている。仮面の上からでも分かるほどに。

リュカの唱えたメラミは囮でしかなかった。本来の目的はピエールのすばやい動きを封じる事。
黒煙が立ち込めた時、それを利用して攻撃して来るのは予想出来た。だから先手として、地に向かいヒャダルコを放ったのだ。
冷気は地面を伝い、それに接する物を凍らせる。当然そこに立つピエールのスライムとて例外ではない。

ピエールは、足を封じられ勝機は無いと悟る。それに、リュカの能力ならこの隙に攻撃することも出来たはず。
だが、そうはしなかった・・・・明らかに手加減されていると感じる。
リュカのほうが実力は上・・・・そう思い、フッと笑うと、剣を捨て・・・・

「参った・・・・降参だ」

そう言い、両手を挙げ負けを認める。
ピエールの降参という言葉を受け、リュカが剣を収めることにより戦いは終わりを告げる。
緊迫した空気は消え、森に静寂が戻る。

ピエールは実力で負けたと思っているが、実は違う。身体能力だけを見れば、人間の子供であるリュカと、魔物の成体であるピエール、どちらが上かは明白だ。
持てる呪文のすべてを使えば、リュカの方が上だろうが今回は、補助的な意味で使っただけである。
ならなぜ勝てたのか、それはリュカにとって、ピエールは何度も手合わせした相手であり、その性格、剣筋、癖に至るまで全て知っている。
戦いにおいて、相手の戦術を知っているのは大きなアドバンテージになる。その違いが、本来格上でであるピエールとの戦いを互角以上に押し上げたのだ。

リュカは、ピエールに向かい静かに歩み寄ると、回復呪文をかける。
ピエールの体が温かい光に包まれ、凍りついたスライムが溶け出し、傷がふさがっていく。
すっかり回復したピエールが再びリュカと向かい合う。

リュカは、頭に巻いたターバンがずれている事に気づきそれを剥ぎ取る。纏めていた髪が流れ落ち、その容姿は少年というよりも少女の様に見える。
その姿を見たピエールの表情が再び驚愕に染まる。

「なっ!?マーサ!!」

驚きの声を上げるピエール。
髪を下ろしたリュカの姿は、子供時代のマーサと瓜二つだったのだ。
ピエールは、エルヘブンの民以外では唯一子供時代のマーサを知る存在・・・・驚くのも無理は無いだろう。

「リュカ・・・・一つ聞きたい。お前の母はマーサ様なのか?」

ピエールが問う。それに対しリュカは・・・・

「そうだけど、君は母さんを知ってるの?」

リュカは不思議そうに聞く。
自分でも白々しいと思う。だが、本来なら知らないはずの事、不用意に話してはいらない疑惑を持たせるかもそれない。
ふと、ピエールを見ると突然、リュカの前に跪き頭を下げる。そして・・・・

「リュカ様!!ご無礼をお許しください。知らぬ事とはいえ、マーサ様の子である貴方に剣を向けてしまうなど!!」

ピエールは、唇をかみ締め、わなわなと震えている。
多分、自分自身が許せないのだろう。
主として忠誠を誓った者の子に剣を向けてしまったのだから。騎士道を重んじるピエールにとってそれは耐え難い事なのだろう。
リュカは、ピエールの肩に手を置き優しく言う。

「ピエール、気にしないでくれ。君は戦士として僕を認めたからこそ手合わせを申し込んだのだろ? なら僕はむしろ嬉しいよ。君ほどの剣士に認めてもらえたのだから」

ピエールは、リュカの言葉に顔を上げ思う、やはりこの方はマーサ様の子だと、そして一つの決意をする。

「リュカ様、お願いがあります。私を貴方の部下として連れて行っては頂けませんか? 貴方の力になりたいのです」

必死に頼み込むピエールにリュカは、少し困ったような表情をみせ、首を横に振る。
リュカの仕草にガックリと肩を落とすピエール。だが、継ぐに言葉に直ぐに立ち直る。

「君を部下として扱いたくは無い・・・・友としてなら喜んで、むしろ此方からお願いしたいくらいだ」

「ほ、本当ですか!!ありがとうございます。リュカ様、これからよろしくお願いします」

嬉しそうに答えるピエール。

「いや・・・様はやめて貰いたいんだけど・・・」

リュカは苦笑しながら言う。

「やはり親子ですな、マーサ様も同じ事をおっしゃていました」

「母さんが?」

「はい、私が幼い頃同族達の手にかかり命を落としかけた事がありました。その時助けて頂いたのがマーサ様です。私はあの方の騎士となる事を心に誓い申し出たのですが、あの方は悲しそうな顔をして、そんな事言わずに友達になってほしいとおっしゃったのです」

ピエールの言葉を聞いたリュカは、やはり母さんも僕と同じだったんだと思う。

「パパスがマーサ様を助けるために旅をしているのは噂で聞いています。共に助け出しましょう」

リュカはピエールの言葉に頷くと、手を差し出し握手をする。

「あぁ、よろしくピエール」

固い握手をする二人の横で、プックルがヴゥゥとうなり声を上げる。リュカをピエールに取られると思ったのだろう、敵対心むき出しだ。
リュカは、ぽんっとプックルの頭に手を置くと優しく撫でる。
すると、安心したのか嬉しそうにリュカに擦り寄る。
同時にピエールも、プックルと目線を合わせるようにしゃがみこみ「プックル、君もよろしくお願いします」と言い頭を撫でる。
プックルも、「がぅ♪」と鳴き答える。

「さぁ、そろそろ出発しよう」

リュカの言葉に一行は、ラインハットに向け歩き出す。








あとがき?
ずいぶん時間が空いてしまい申し訳ありませんでした。
長期休みの内に書き始めたこのSSですが、休みが終わるとなかなか時間が取れずここまで掛かってしまいました。
この先も余り時間がとれず期間が開く時もあるかもしれませんが、長い目で見ていただけたらなと思っています。






[3714] ドラゴンクエストⅤ 再びあの時を 9話
Name: Fuji◆e8e295f9 ID:6a11492a
Date: 2008/11/19 04:21
リュカ達が歩き出し一刻程経つと、ラインハットの城下町が見えてきた。

「ピエール、プックルあと少しだ。急ごう」

「はい、リュカ」
「がぅ♪」

町が見えてきたことで、リュカの足も自然と急ぎ足になる。
時間的にはまだ間に合うはずなのだが、遅れた場合行き着く先は父の死。
前回は、自分が人質になってしまったことが原因と思い、激しい自責の念に囚われたが、ゲマの本来の力を考えればいくらパパスでも勝つことは難しい。
それに、ジャミやゴンズもいる。あの三体と戦えば間違いなく殺されてしまうだろう。
ゲマ達と何度も戦った事のあるリュカが焦ってしまうのも仕方ない事だ。

「っ!! リュカ、待ってください」

ラインハットに向かい急ぐリュカをピエールが止める。

「ピエール? どうしたの?」

「あちらで戦闘がある様です。 いや・・・・戦闘と言うより、この声は・・・・、狩りか!」

戦闘を感知したらしいピエールが、驚きの声を上げる。
人間のリュカには何も聞こえなかったが、魔物であるピエールの鋭い五感は僅かな音と声を聞き取ったようだ。 同様にプックルにも聞えたらしく、ピエールと同じ方向を見ながら唸り声を上げている。

「狩り? それは何なの・・・・」

「はい、この声は・・・・魔物が群れで人間を狩る時に出す声です」

「なっ!! 本当なのか、それは!!」

思いもよらない言葉に、今度はリュカが驚きの声を上げる。
それが事実なら、直ぐに助けに行かなければその人間は助からないだろう。
普段のリュカなら、迷うことなく助けに行くだろう場面だ。
だが、パパスがサンタローズを出発した時間を考えれば、すでにラインハットに着いているはずだ。これ以上遅れる訳にはいかない。
魔物に襲われている人を助けたいという思いと、パパスの元に急がなくてはという思い。相反する2つの思いが心の中にうずまき、リュカはその場に立ち尽くす。

「・・・・・ピエール、君ならその狩りを止める事は出来ないか?」

リュカは、一度二手分かれてピエールに狩りを止めてもらおうと考え、問いかけるが・・・

「おそらく無理でしょう。はっきりとは分かりませんが、声を聞く限り魔物は十体以上は居ると思います。誰かを守りながら戦うとなると・・・・私だけでは・・・・」

「・・・・・・クッ!!」

この場に残された両方を助ける唯一の選択肢が絶たれ、自分の不甲斐無さにきつく唇を噛む。


最初は、未来を知っている事でより多くの命を救えると思っていた。未来を変えることが罪深い事だと考えつつも、どこか喜んでいた部分もある。
だけど、未来を知っていれば命の選択を迫られることは少なくないだろう。それが、戦いの中なら尚更だ。
そして、今がまさにその時。
王として生きていた以上、苦渋の選択を強いられた事は何度もある。
だけど、今掛かっているのは人の命・・・・しかも、王としての責務ではなく、自分勝手な理由でだ。

(これが、歴史を変えようとしている僕の罪なのか・・・・未来を知っている事がこんなにも辛いとは思わなかった)

リュカは、迷いから目が虚ろになり、まるで心が壊れてしまったかの様だ。

「リュカ・・・・・」

呆然と立ち尽くすリュカを見て、悲しそうに名を呼ぶピエール。


リュカは、迷いを無理矢理断ち切るように首を振り、悔しそうな顔で「ラインハットに急ごう」と言う。
罪悪感から震える足を強引に動かし、狩りが行われているという場所に背を向けて歩き出そうとする。
顔も、名も知らない人に心の中で何度も、すいませんと誤りながら。

「リュカ・・・・どうしたのですか? 私と貴方、それにプックルが居れば問題ない相手です。急いでいるのは分かっていますが、助けられる命を見捨てるなど貴方らしくありません・・・・なぜ、助けに行かないのですか?」

リュカの予想外の行動に驚き、真意を問うピエール。
ピエールにとっては出会って間もないリュカだが、その仁愛の心はマーサと同じものだと思っていた。
絶対人に心を開く事は無いといわれる、キラーパンサーであるプックルが懐いているのが何よりの証拠だ。
そのリュカがこの様な行動に出るのが信じられなかった。

「!!・・・・・ピエール・・・・、それは・・・」

ピエールの悲しそうな声に、リュカの足は動かなくなる。
何度も足を動かそうとするが、その度頭の中でピエールの言葉が繰り返され、まるで石になってしまったかのように止まってしまう。
無理矢理押さえ込んだ迷いが再び蘇り、どうすれば良いのかと頭をかかえたその時、唸り声を上げていたプックルが、リュカの横を駆け抜け狩りが行われているという場所に向かっていった。

「プックル!? 待って!!」

リュカが、プックルを止めようと叫ぶが、プックルは聞かずにそのまま走っていく。
それを見てリュカとピエールも慌てて追いかける。



狩りの行われている場所が見えてくると、そこには二十を超える魔物の群れがあり、その中心でただ一人奮戦している人影がある。
プックルは、魔物達の隙間を縫うように駆け抜け、その人影に向かう。
リュカは、近付くにつれはっきりしてきたその人物を確認し、驚き叫ぶ。

「と、父さん!!」

狩りの対象となった人とはパパスだった。
リュカは、すぐさま剣を抜き、魔物の内の一体に後ろから切りかかる。

「グゲェェーー!!」

断末魔の声を上げ、魔物が絶命する。
そのままバギマを唱え、パパスに襲い掛かろうとした二体の魔物を纏めて葬り去る。
突然の襲撃に、ほかの魔物たちが驚き、一斉にリュカの方を見た。
その隙に、プックルがパパスに並び、そのパパスも一瞬驚いた顔を見せるが、直ぐ我を取り戻し、リュカ同様一体を切り捨てる。
すると、今まで優勢だった魔物たちが動揺し浮き足立ってくる。
そこにピエールの援護も加わり、獲物と狩人の立場は逆転する。
リュカの呪文が、パパスとピエールの剣が、プックルの牙が、次々に魔物たちを地に沈めていく。
反撃の隙も与えず、全てを倒すのにたいした時間はかからなかった。

魔物を撃退し、一息つく一同。
だが、先ほどの自分の行動を思い出したリュカは、浅はかな考えに恐怖を覚え、体が震えだす。
剣が手から滑り落ち、そのまま自分の体を抱き、がくりと膝をついた。

(僕は・・・・何をした・・・・此処に父さんが居ることを知らず、見捨てようとしたのか?)

いくらパパスでも、あれ程の数の魔物と一人で戦って無事に済むはずが無い。 
プックルは気付いたのだろう、そうでなければリュカの声を無視したりしない。 
もしプックルが気付かず、そのままラインハットに向かっていたら、
大怪我をしていたのではないか・・・・・・・そうすれば血の匂いに引かれて他の魔物達が集まって来るだろう。最悪、殺されていたかもしれない。

最悪の事態を想像し、リュカの震えは一層大きくなる。
知らなかったとはいえ、助けたいと思った当人であるパパスを見殺しにしようとしたのだから。
プックルが心配したのか、リュカに近付き、ぺろっと顔をなめた。

「プックル・・・・・・・・くっ!!・・・・うっ、うぅ」

リュカは耐え切れなくなり、プックルに抱きつき、声を殺して泣く。同時に、プックルに言葉には出来ないほどの感謝の念があふれ出してくる。
プックルが気付いてくれなければ、取り返しのつかない事になっていたかもしれないのだから。

パパスは泣いている息子の姿を見て、何が悲しいのか分からず声をかけることができない。




リュカが落ち着くと心配したパパスが声をかける。

「リュカ・・・・大丈夫か?」

「うん、ごめんなさい心配かけて」

「いや、大丈夫ならいいんだが・・・・それにしてもどうしてこんな所に、それにそのスライムナイトは・・・・」

心配そうな表情は消えないが、疑問に思っていた事を聞くパパス。

「家に帰ったとき、サンチョからラインハットに向かったって聞いて、直ぐに追いかけて来たんだ・・・・それと彼はその途中で友達になったんだ」

そう言い、リュカはピエールを見る。
すると、ピエールは肩を震わせ、何かに耐えているようだった。

「ピエール? どうしたん「うあぁぁぁぁ!!」えっ!?」

ードカッ!!-

ピエールは、リュカの言葉をさえぎり突然叫びだすと、そのままパパスを殴り倒す。
いきなりの事に反応できず、まともに喰らい殴り飛ばされるパパス。

「ピエール!! なにを!?」

リュカが驚き止めようとするが、ピエールは構わず、パパスの胸倉をつかみ立ち上がらせる。

「パパス!! 貴様、どういうつもりだ・・・・マーサは必ず守ると言ったあの約束はどうした!!」

ピエールの怒声に、パパスは驚愕の色を浮かべる。

「っ!! まさか、おまえは、あのピエールなのか!?」






しばらくして、平静を取り戻したピエールが、自分の醜態を恥じ詫びる。

「パパス・・・・すまない、お前が悪いわけでは無いのは分かっていたんだが。 声を聞いた途端、自分を押さえられなくなった・・・・」

「いや、構わない。私がマーサを守ることが出来なかったのは事実なのだから・・・・。約束を・・・守れなかった、本当に申し訳ない」

ピエールの詫びに対し、パパスは構わないと言いつつさらに詫びで返す。
そこに、リュカが口を挟む。

「父さん、ピエールも僕達と同じで母さんを助けるために旅をしていたそうだよ」

リュカの言葉に、パパスの目が大きく見開かれる。

「リュカ! お前、知っていたのか、母さんが・・・・マーサが生きている事を?」

「うん、知ってたよ。サンチョと話しているのを聞いたことがあるし、ピエールも知っていたから」

時折、嘘を交えて話すリュカ。

「そうか・・・・すまない、リュカ。何度か話そうとも考えたのだが、お前が寂しい思いをするかも知れないと思ってなかなか言い出せなかったんだ」

「気にしないで、父さん。それより、父さんとピエールは前から知り合いなの?」

「あぁ、ピエールは、私の命の恩人なんだ」

自分の知らない事実に、リュカは驚く。
元の時代のピエールは、パパスの事を話そうとはしなかったので、二人に面識があるとは思わなかったのだ。
先ほどの話を聞く限り、マーサを守れなかった事がどうしても許せなかったのだろう・・・・憎んでいるとも感じられる反応だった。
普段は紳士的なピエールだが、許せない事には非常に厳しい。
そんなピエールが、パパスの話をすれば厳しい言葉が出て来る事は想像に難しくない。
当然そんな事を聞けば、リュカは悲しむ。パパスと会ったことも無いティミーやポピーであればなおさらだ。
それを避ける為に意図的に話さないようにしたのだろう。
だが、今のピエールは、パパスと再会して本音をぶつけた事で怒りも治まったらしく、二人の顔は、久々に再会した友人のようだ。

「パパス、あの時にも言ったはずだぞ。私は、お前を助けた訳じゃない。恩人と言うならマーサの方だろ?」

パパスの、命の恩人という言葉を否定するピエール。だが、その顔は、心なしか嬉しそうだ。

「そうは言ってもな・・・・お前が居なかったら私は殺されていただろうし・・・・やはり、私にとっては二人とも恩人だよ」

そこに、マーサの名前まで出てきた事に興味を持ったリュカが会話に割り込む。

「父さん・・・・父さんと、母さん、それにピエールの三人はどういう関係なの? それに、さっき言っていた約束って?」

「そうだな・・・・あの頃の私達は、友人・・・・いや、親友と言ってもいい関係だった・・・・」

パパスはそう言い、ピエールと一緒に昔の思い出を振り返る。




あとがき
感想で指摘されましたが、ティムアルの名前は、ビアンカの父の名前から貰ったもので、フローラではありえないとのことでした。
私は小説版を持っておらず、読んだ事はあるのですが、10年以上前の事なので設定を思い出しながら使っているのが現状です。
思い出せない部分は、自分なりに設定を考え、それの為にわざと変えている部分もあります。
それに関しては、本文の中で説明しつつ進めていければと思います。(ちなみに、ティムアルやポピレアの名前は単純に気に入っていたから使いました)
次回は、パパスとピエールの過去編になり、後2~3話で少年時代を終了する予定です。






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