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[37744] 【習作】地雷原でタップダンスを (進撃の巨人)
Name: shurabazuki◆df1e04be ID:0265b926
Date: 2013/06/02 01:51


僕こと『アルミン・アルレルト』に憑依した中の人は『空を飛ぶ武装した巨人』に襲われ、逃げ出した。



重要なことなので繰り返す、『空飛ぶ武装した巨人』という理不尽な暴力に襲われ、無様に逃げた。



空を飛ぶ手段が無く、空からの敵に対抗する手段も無いこの世界にて『空飛ぶ武装した巨人』がどれ程絶望的な存在かご理解いただけるだろうか。理科室の人体模型を連想させる赤黒い皮膚を所々灰色の岩盤のようなものが覆っており、一見、何か分からなかったが、巨人サイズの弓矢で空から人類を狙撃する能力を備えていた。


何ソレ怖い。無理ゲーだろおい。


僕がいつ、『アルミン』になったのかは覚えていない。生まれた瞬間なのかもしれないし、幼い時に憑依して本来の『アルミン』を抹消してしまったのかもしれない。いずれにせよ、こうして自我を持って存在している以上、思うことはただ一つ、


『生き延びたい。あと、結婚したい』


魔界都市『新宿』とこの『進撃の巨人』どちらの方が死亡フラグが多いかと問われれば、恐らく前者なのだろうが、この世界も十分に危険極まりない。


特にアルミンという頭脳や発想を武器にしているキャラクターに頭の中が非常に残念な人が憑依したのだから、これはもう人生オワタとしか言いようがない。



だが、簡単には死なん!



当たり前だが、死にたくないのだ。生きたいのだ、可能ならば幸せになりたいのだ。できれば、天使と言われているクリスタと結婚したい。というか、結婚する。


結婚して平穏な家庭を築くために生きる。これが憑依した中の人の目標である。


そのためには、もちろん、原作主人公二人の好感度を高める必要がある。守ってもらうためにも二人に健気に尽くす。ええ、幼くして家族というか、はたから見ればツンデレカップルを支えましたよ、ええ、頑張りましたよ、コンチクショウ。


お互いが素直に成りやすいように。壁を殴りながら、リア充死ね、あと結婚したいと心の中で叫びながら。なんですかこの拷問、むず痒いって。早く結婚しろ、ついでに僕の死亡フラグも何とかしてください。基本的に自分の頭は残念なんです。




閑話休題




頭の中が残念な人の割には頑張って色んな対策を考えたんですよ。ええ、真剣に、真摯に、直向きに生き延びる手段を。その結果がコレですよ。いくらなんでもコレはないでしょう神様。




作戦その1:エレンの母親であるカルラさんを助ける。



これによって、エレンとミカサが僕に恩義を感じると同時に守ってもらえる可能性が高まる。加えて、死に急ぎと言われているエレンにある程度冷静に物事を判断する能力が加わるかもしれない。主に母親からの躾によって。


そこで、僕の考えた瓦礫撤去大作戦。実際にエレンの家にある柱の長さと太さと図り、同様の大きさの瓦礫を撤去するにはどうすればいいか、考えてみた。


結論:馬を使う。


巨人が迫っているという時間的制約や用意できる道具の条件を考えて、馬で引いて瓦礫をある程度動かし、瓦礫の下からカルラさんを引き釣り出すしかないという結論に至った。というか、頭が残念過ぎる僕にはこれしか思いつかなかった。馬小屋に非常食、水、マッチ、ナイフ、工具を常備し、祖父に頼み乗馬の訓練を積む。幸い、馬術を学ぶことができたのは運が良かったのだと思う。これが自分の限界だった。



そして、運命の845年。いつも通りにエレンとミカサと共に行動し、煙が、正確には蒸気による湯気らしきモノが見えた瞬間、馬小屋に向かって走り出した。後ろで超大型巨人が開閉扉を破壊する音が聞こえたが、


母親の身を案じるエレンとミカサは僕のことなんて視界に入って無かった。きっとうまく行くと信じていた。


「エレン!ミカサ!手伝って!」
「アルミン!?」


計画通り、馬に乗って瓦礫からカルラさんを引き釣り出そうと足掻いている二人の下にかけつけた。計画通り、ロープと工具でカルラさんを押し潰していた瓦礫を撤去するには至らなかったものの、若干持ち上げることができた。


「早く馬に乗せて!巨人が来るよ!」
「ああ、アルミン。ありがとう!」
「…アルミン。あなた一体」
「あ、ハンネスさん!こっち!手伝って!」


ミカサが大して役に立たたない中年オヤジを呼んでくれたおかげで、カルラさんを楽に馬に乗せることができたのは、想定外の幸運としか言いようがない。


よっしゃあ、これで勝てる!そう思っていた時期がありました。


空飛ぶ武装した巨人という究極の無理ゲーが来たことにより全てがぶち壊しになりましたよ。



いや、あんな化物一体どうしろと?



20M級が空飛んでます。弓矢装備してます。



あのね、それ反則だから。どこで買ったのソレ?作ったの?手作りなの?なんか厨二病染みた名前を武器につけているの?作中のバランス考えて!お願いだから!エレンが巨人に変身したといしても、空から狙撃されたら勝ち目無いから!


矢が放たれるたびに地面に巨大なクレータができる有様。しかも、飛べるから障害物も、壁も関係ない。人類終わってます。どう考えても。



ハンネスさん?駐屯兵?先程振ってきた矢でミンチになりましたがナニカ?



「避難用の船が!?」
「…え?」


大勢の人が乗っていた船を容赦なく矢が襲っていく。直接当てるのではなく、掠める様にして、船が大きく揺れ、人々が投げ出される。時折、転覆した船から人々が逃げ出し、岸に泳げば群がってきた巨人に捕食される。


なんだコレ?少なくとも自分の知識にはこんな地獄絵図はなかった。


どうしてこうなった?ドウシテコウナッタ?


エレンは足を負傷したカルラさんが落ちない様に必死で抑え、ミカサは真っ青になりながらもエレンを支えている。僕はこの唯一人間性を感じさせてくれる光景を必死で目に焼き付けながら、機械的に馬を操った。


悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、悲鳴、泣き声、巨人の咆哮、途中で全部が混合して何の音か分からなくなった。気が付けば、自分の喉からも変な音が漏れていて心配そうなミカサの視線がやたらと印象深かった。


ソレを空飛ぶ武装した巨人が視て嗤っていた。ただ、嗤っていた。


弓矢で同族の巨人を巻き込んでもソレは嗤っていた。


僕を指差して、嗤った。


無力で頭が残念な僕を嗤った。





845年人類は再び巨人に敗北した。



被害はウォール・マリアの陥落に留まらず、空を飛ぶ巨人によって内地に迄及んだ。何故か、ウォール教の教会が集中的に狙われ、天罰だと言わんばかりの矢が降り注いだらしい。その結果、大半の信者は教団を離れたとか、そんなことを僕が知ったのは本当にずいぶん後のことだった。



これは僕がこの無理ゲーにも程がある世界で生き延びようと足掻いた話。



アルミン・アルレルトという原作キャラに憑依して、恐らく殺してしまった僕の話。



僕が死亡フラグだらけの地雷原で無様にタップダンスを踊った話だ。





[37744] side:ミカサ①  「私のカミサマ」
Name: shurabazuki◆df1e04be ID:c79fa614
Date: 2013/06/02 22:44


アルミン・アルレルト。私の一番大切な人の親友。



私とエレンが本当の家族に慣れる様に、私がまた、笑える様に頑張ってくれた、私の初めての友達。エレンが家族で、アルミンが友達。私にとって、大事な二人。



私の背中を押してくれた一番の友達。私がエレンとずっと一緒に居れるようにしてくれた人。頭が良くて、ズルくて、嘘吐きで、不器用で、優しい。不器用なところがエレンと少し似ている気がして、でも、エレンよりも頭が良いからなんでも相談できる。それが私にとってのアルミンだと言える。


「ミカサは将来何になりたい?」
「……エレンと同じ」
「一緒にいたいならもう少し別のことを考えたほうがいいと思う」
「…どうしてそういうことを言うの?」
「二人にずっと一緒に居て欲しいから」

意地悪な人だと思った。私がエレンと一緒にいられなくなることは私にとっては死ぬことと大差ないから。


「一緒に居たいなら同じ目標を目指すよりもいい方法があるよ」
「教えて」
「エレンのお嫁さんになれば、戸籍上も家族になるし、ずっと一緒にいられる。エレンが他の誰かと結婚して、ミカサが追い出される心配も無くなる」
「…エレンと私は今も家族」
「そうだね。ほんとうに仲の良い兄妹みたいだね」


意地悪で不器用な、優しいアルミン。


「兄妹じゃない」
「じゃあ、何?姉弟?」
「たぶん、そっち」


エレンは私が行くところに行く。エレンは優しいから私がいないときっと無理をして早死にしてしまうから。私の人生が続く限り、一度死んだ私を生き返らせてくれたエレンと共に歩こう。


「エレンがミカサ以外の女の人と結婚したら別居になると思う」
「……あぁァ」
「お願いします。殺さないでください。そんな目で見ないでください。ズボンが少し湿りました」


私は少しだけ、ほんの少しだけ怒っただけ。アルミンはもう少し強くなるべきだと思う。これだけで蟹股で震えるのはよくないとその時思って時々注意したけど、あんまり変わらなかった。


「どうすればいい?」
「い、今のうちにエレンと将来結婚する約束をしておけばよろしいかと」
「もう少し具体的に」
「エレンに結婚してと承諾するまで言い続ける。できれば、カルラさんにも手伝ってもらう」
「分かった。少し恥ずかしいけど、エレンと一緒にいられるなら、そうする」


その日から、私は頑張った、恋愛感情というモノはよく分からないが、もしエレンが私から離れてしまったらきっと、私は私を保てなくなってしまうから。それが怖くて、それが嫌で、そんな自分が大嫌いで、それでもエレンと一緒に居たくて、私は何度も、何度もエレンにお願いした。


「私をエレンのお嫁さんにして」


何回も、何回も、お願いした。エレンは嫌がらなかったけど、困った顔をしてウルセエとか、何でだよとか、いつも照れたような、困ったような顔で断られた。その度に少しだけ、本当に少しだけ胸が痛くなった。家族のためならなんでもできるはずなのに。自分を完璧に支配できるはずなのに。


「エレン。今から賭けをしない?」
「ん、なんだ?」
「僕とエレンが今から喧嘩をする」
「え、嫌だよ、お前喧嘩弱いじゃん」
「……うん。でも、エレンが絶対に負けるよ」
「言うじゃねェか」
「男に二言は無いよ。エレンももちろんそうだよね?」


なんで、この時エレンはアルミンが物凄く嫌らしい笑みを浮かべていたことに気が付かなかったんだろう。

「ああ、もちろんだ」

でも、エレンはやっぱり単純で。

「じゃあ、エレンが勝ったら前から欲しがってたあのナイフあげるよ」
「マジか!?そこまで言うなら本気で行くぞ」
「その代わり、もしも、僕が勝ったらエレンには僕の言うことを一つだけ聞いてもらうよ」
「いいぜ、さっさと来いよ」

信じられないことにエレンが負けた。ボコボコに一方的に。思わず、私が殺気を込めて睨んでしまい、アルミンが真っ白になってガクガク震えるくらいに。

「さ~て、エレン分かっているね」
「チクショウ、好きにしろ」
「よし、じゃあ、言うよ」


そして、アルミンは私が一番欲しかった言葉を言ってくれた。


「ミカサをエレンをお嫁さんにすること」
「…ナ…ン…ダ…ト?」
「男に二言は?」
「無い」
「はい。よくできました」


悶える様に地面をゴロゴロと永い間エレンは転がっていた、エレンはちゃんと私にプロポーズをしてくれた。悔しそうに、悔しそうに、でも少しだけ嬉しそうに。その時のエレンの言葉とアルミンの優しさが私の宝物。


「ミカサ。僕は弱いからちゃんと守ってね。絶対だよ」
「うん。私はアルミンを守る」
「よし、来たァ!約束だよ」
「うん。約束する」


あとリア充爆発しろとか、壁殴るかとか訳の分からないことを言っていた気がする。変で優しいアルミンだけど、私の大事な友達。私が守ると決めた一人。


皆で幸せになれると私は信じて疑っていなかった。



◇  ◇  ◇ 



でも、また世界は変わってしまった。


また、私の大事な物を奪いに『敵』がやってきた。


皆まだ生きている。エレンも、お母さんも、私も、アルミンのお蔭で生きている。


また、アルミンが守ってくれた。でもね、けどね、アルミン。


アルミンの家族はどうしたの?


アルミンのおじいちゃんはあの潰れた船にいたの?


ねえ、アルミン?


アルミンの家族はどうなったの?


巨人に■■■ちゃったの?


「あ いあ いあ くとるぅふ ふくだん いあ いあ くとるぅふ ふくだん いあ ふんぐるい むぐるうなふ くとぅぐあ ふぉまるはうと んがあ・ぐあ なふるたぐん いあ くとぅぐあ」


私を生んでくれたお母さんが教えてくれた古い神様とお話する呪文。神様なんて信じていないけど、もし、ほんの僅かでも希望があるなら、アルミンの家族も無事でありますように。


どうか、カオが無くなっていませんように


そう願いながら、泣きながら、涎を垂らしながら、それでも安全な方向に馬を進めてくれるアルミンの服の裾を私は掴んだ。


「いあ いあ くとるぅふ ふくだん いあ いあ くとるぅふ ふくだん」


静かに私は口遊んだ。遠い昔の懐かしい唄を。





[37744] side:アルミン① 「何それ怖い」
Name: shurabazuki◆df1e04be ID:f57c3f5e
Date: 2013/06/09 20:33
ウォール・マリア崩壊から四日。幸か不幸かアルミンの中の人こと僕はまだ生きている。


あの『空を飛ぶ武装した巨人』という理不尽な暴力から逃げ出すことには成功した僕とエレンたちは昼は身を隠しながら、夜に馬で内地を目指しながら、僅かな保存食を四人で分け合い、時折見つけた家屋から食糧を拝借して今日で四日目。未だに生きた人間に出遭っていない。


このアルミンというキャラクターはそもそも身体能力がそれ程高くない。生き延びるためにかなり鍛えたけど、それでも、限界はある。しかし、馬に乗れる人間が自分しかいおらず、カルラさんが怪我をしているため、移動速度はかなり遅くなっている。


僕の想像以上のこの国の国土は大きかったらしい。壁らしきものは遠くに見えるのだが、近づいている気が全くしない。でも、まあ、ミカサもいるしなんとかなるだろうと思っていた時期が私にもありました。


「アルミン。巨人だ。」
「…静かに」


馬を休ませていたところに巨人の襲来、5M級が二体、見つかったら命は無いだろう。
人間を感知できるセンサーがあるのではとか言われている相手に、隠れることなんて意味があるのだろうかと思いつつも、急いで近くの茂みに隠れる。


「何か背負ってる?」
「なんだろ?」


筒状の鉄の塊を複数背中に背負いながら歩いている。かなり無理をしているのか、足元がおぼつかなく、フラフラと左右に揺れている。アレってどう見ても。


「固定砲台?」


壁の上に設置してあるのを何度も見たことがある。一体、何に使うと言うのだろうか。たぶん、同じことを思ったであろうカルラさんも怪訝そうな顔をしていた。


「まだ来るぞ」


今度は20M級が1体何か抱えながら、走っている。砲弾が入った木箱だ。食べるのだろうか。スナック菓子みたいに。そんな妄想に浸っていると巨人が次から次へと僕たちの前に現れた。不思議なことに僕たちを襲うようなことはせず、淡々と武器と思われる物資を運び続けていた。


「もういいと思う」
「ああ」
「アルミン。大丈夫か疲れてたら変わるぞ」
「ありがとう。でも、大丈夫だから」


なるべく音を立てない様に、静かに馬で駆け出した。いつか嫁(クリスタ)と馬術談義をしたいものである。まあ、運が良かったと思い逃げ出したその晩に、



僕は巨人が固定砲台を銃器として使い始めたことを知った。



え、何それ怖い。



遥か遠くで固定砲台をまるで拳銃のように握りしめた巨人が放った砲弾が遥か遠くから確認できた。交戦しているのは調査兵団だろうか。火薬が炸裂した光で巨人が顔が煌々と照らされるのが、よく見えた。


立体機動を屈指してあらゆる方向から襲いかかる人間に対し、巨人たちは円形を組み、肩に担いだ固定砲台を放つ、使い物にならなくなった砲台はワイヤーに向けて投げて人類を叩き落す、もう完璧なワンサイドゲームだった。なんか砲弾の補給している奴とか、鉄の塊を剣みたいに振り回している巨人とかいるし。



人生オワタ。



「なあ、アルミン」
「なんだい、エレン」
「あれ巨人だよな」
「うん。そうだね」
「なんで固定砲台使ってるんだ?」
「僕が聞きたいよ」


本当になんでだろうね。昼間に目撃した巨人はどれも最低でも5M級だった。人間を遥かに上回るサイズで何本も固定砲台を打ち込んでくる巨人なんてものを相手にいったいどうしろと。オーバーキルにも程がある。


もう全ての巨人に中の人がいると考えてもいいんじゃないだろうか。



なんかもうね。ミカサですら目が死んでるもん。昼襲われなかった理由が今になってよく分かった。僕たちなんてそもそも視界にすら入って無かったんだ。



OK。理解した。この世界の巨人は『戦略という概念を持っている』。人間の武器を奪い、活用する程度の知識はあり、首のうなじ以外は即座に回復する化物。勝てる訳ないわコレ。


よし、内地に逃げよう!原作?巨人化能力?何それ美味しいの?武装した集団に1個体が勝てる訳がなにだろうが!エレンの巨人化とかもう意味ないじゃん。


もうミカサとエレンの腰巾着でいいや。内地に行きたいです。



「アルミン!避けて!」


ミカサの悲鳴で現実に意識が強制的に戻される。馬をあと一歩左に動かすのが遅かったらミンチになっていた。


投石。正確には投擲された砲身がすぐ近くに刺さっただけ。原始的な攻撃方法だが、巨人が使えば砲弾以上の威力になる。


「っ!ミカサ!指示出して!」
「分かった!」


左、右とミカサの声に従って馬を走らせる。ただ、怖くって、ただ生きたかった。



「ま、前!」


前に2M級と思われる巨人が立ちふさがっていた。慌てて方向転換しようにも間に合わない。鋭い眼でギラギラとこちらに手を伸ばしている。



衝撃


身体が浮く


景色の上下が入れ替わる


接近する地面


暗転


「アルミンに触るな!来い!殺してやる!」


エレンの叫び声、


死にたくない。まだ生きたい。


生きたいなァ





[37744] side:アルミン②「SAN値崩壊」   幼年期編終了
Name: shurabazuki◆df1e04be ID:dd27c5b4
Date: 2013/06/17 03:25
僕ことアルミンの中の人が意識を取り戻して最初に行ったことは、現状確認と逃亡だった。


酷い倦怠感と吐き気に悩まされながらも、巨人と対峙しているエレンを確認。


何か巨人の胸部から骨と思われる白い物体が数本飛び出ており、それが檻を構成し、ミカサとカルラさんを内部に捕えていた。ミカサが強引にブチ破ろうとしているが、まるで効果が無い。


身体変形能力?ネクロモーフ?バイオのゾンビ?キメラ?いや、何アレ?


エレンがナイフを手に戦いを挑もうとしているが、勝てる訳がない。幸い巨人もエレンの方に興味が無いらしく、ミカサとカルラさんを捕縛したままどこかに歩き去ろうとしている。


よし、逃げよう。


友人を見捨ててでも僕は生きたいのだ。ばれない様に、静かにそっと、這って逃げ出した。特殊能力持ちの巨人とかどう考えても勝てないので、頭が残念な人は先に逃げます。

そして、慎重に地面を這っているうちに気が付いた。先程聞こえていた調査兵団と巨人の戦闘音がもう聞こえないことに。


ここで問題です。調査兵団と武装した巨人どちらが勝ったでしょうか?


もちろん、武装した巨人です。


「ですよねー」


ふと上を見ると4体程の巨人に取り囲まれていた。もちろん皆さん固定砲台装備。凄いですね。勇者パーティの四人組と遭遇したスライムの心境ですよコレ。


「あ、アレですか。雑魚モンスターにたまには本気だしてやろうぜっていう」


固定砲台で撃ち殺す気ですよ、この方々。小僧一人を。もうね、笑うしかないでしょう。怖過ぎて処理能力超えて、もう笑うことしかできない。


問題その2 ぶどう弾(炸裂弾頭)を密集形態で放ったらどうなるか?


弾の種類までは十分に考慮していなかったのか、巨人は炸裂弾を使用していた。先程まで複数人と戦闘してことを考えれば、正しい選択しなのだろうが、人間の子供、それも足元に丸まっている子供に向かって、数メートルある巨人が炸裂弾を使用したらどうなるか。


結論、巨人の足に当たる。


足の甲や脛に炸裂弾が命中、僕にも掠める。幸い巨人用なので、炸裂した小弾は大きく、それほど数も多くなかったので直撃はしなかった。そして、バランスを崩した巨人がさらに砲撃。ミカサとカルラさんを捕縛していた巨人の頭部をうなじごと消し飛ばした。そのまま、倒れた巨人の下から必死で逃げる。ビチャビチャのズボンで。普通に洩らしましたよ。


「計算通り!」


嘘だけど。エレンのこと見捨てて逃げるつもりでした。まあ、巨人が死んだら体は蒸発して消えるということは原作通りだったらしく、骨の檻も消滅しているし、ミカサは大丈夫だろう。とりあえず、馬を見つけて即座に離脱せねば、エレンを囮に。


「エレン!早く二人を助けて!」
「おう!」


三人は放置して馬を探すが、見つからない。逃げてしまったのか、死んでしまったのかは不明。逃げられそうな場所は付近の雑木林だが、巨人に対しては意味が無い。武器になりそうなものはエレンが持っているナイフのみ。それでも、エレンは巨人と戦おうとするだろうから、あの固定砲台を持った4体に対する囮になるはず。


そんなことを考えつつ、僕は先ほど調査兵団と巨人が戦闘をしていた場所に向かって走った。馬がいれば僕だけでも助かる。徒歩ならどうせ全員捕まってしまうからここでは正確な判断だ。


「はい?」


ふと、嫌な予感がして後ろを振り返ると巨人がいた。それでも十分に恐怖だが、先程4体程いた巨人が消えており、代わりに1体が控えていた。信じられないことに、見慣れたウォールマリアではないのかと一瞬思ってしまった。



合体して更に巨大化しやがった



通りで大型の巨人が多いと思ったら、こんな理由が。全く知りたくなかったですよ。もう、完全に別の作品ですよね。不幸中の幸いと言いますか、遠くの方に何か見つけたのか、そのまま合体大型巨人は雑木林の奥に消えた。


「ミカサ、今のは?」
「巨人が合体した」
「エレン、今のは?」
「巨人がいきなりグチャグチャの肉の塊になって1体になった」
「そっか」


僕は考えることを放棄して、偶然生き延びていた調査兵団の馬に跨って、心配そうな三人の視線を感じつつも、薄笑いを浮かべながら内地を向かった。


あまりに理不尽なこの世界に、やり場のない怒りで気が狂いそうだった。


どうして、僕ばかりこんなことに。


どうして、僕ばかり不幸に晒される。


どうして、僕はこんな世界に生まれてしまった。


どうして、僕はこんなにも…


考えたら止まらなくなって、僕は徐々に壊れ始めた。


SAN値が削れる音ガリガリと後頭部から聞こえた。



休まず、馬を走らせ、僕の口から意味不明の独り言と生きるためにそろそろカルラさんを見殺しにするべきか迷い始めるほど追いつめられ、気が狂いそうな極限状況で、僕たちは人気のない村にたどり着いた。


後になって考えてみると、もう僕はこの時点で壊れていたのだろう。


この村で僕は人を殺してしまったのだから。





[37744] ハンジ・ゾエの記録   幕間
Name: shurabazuki◆df1e04be ID:5bf389c0
Date: 2013/06/23 13:50
私の名前は『ハンジ・ゾエ』調査兵団の一員であり、憲兵団と共にこの『ダニッチ村』を拠点に周辺に広がる遺跡の調査を行っていた。もしも、誰かがこの記録を手にしたならばなるべく迅速に調査兵団に届けて欲しい。私の伝書鳩が無事ならば使ってくれ。必ず将来役立つだろう。


ウォール・マリアが巨人に蹂躙されてからも、この山間部だけは決して巨人に襲われることがなかった。明確な知性があり、人類の武器を奪い、使用する等、人間と同等あるいはそれ以上の知識があり、肉体を変形させる、融合して更に大きくなる等特殊な能力を備えた個体すらこの地域に入ることができないらしい。


この山間部からは現在に至るまで巨人による犠牲者は誰も出ていない。私も確認することができたが、巨人はこの山間部に近づくと後退し、逃げ出すのだ。まるで恐れるかのように。


巨人の恐るべき戦闘能力が明らかになった以降、我々、調査兵団は無駄に団員を死なせるだけで具体的な成果と呼べるものは何もなかった。そんな中、数々の遺跡が発見されているこの山間部だけは無事であり、この山間部から発見された石像を巨人に視認させると逃走することが判明した。



この事実が人類の希望となると私は信じ、部下を失いながらもこのダニッチ村を訪れた。



村人も謙虚且つ親切な人が多く、調査兵団を快く受け入れてくれた。貴重な薬品まで我々の手当のために使用してくれた。感謝は尽きない。例え全てが無駄であったとしても。


この村の人々に罪は無い。それだけは分かって欲しい。彼らはまだ知らないのだ。自分たちが何を眺めているのか、何を神と称しているのか、何を見ているのか。何を知らないのか。ナンニモシラナイ。


この山間部には複数の集落があり、それぞれ異なる神々を村の守護神としている。特段目立った対立は無く、静穏な村だ。土壌も良く、近隣の森も動物が多い。ただ、石像や奇妙な建造物が目立つことくらいだ。


私がこの遺跡初めて発掘したのは『ダゴン』と呼ばれる神が掘られた石版だ。魚と太った成人男性を合体させて、触手を追加したような姿の神だが、豊穣の神様らしい。効果の真偽は別として実際にこの村の水源・土壌共に潤っている。他にもどのような技術で作られたのか分からない程、精巧な彫刻や壁画、歴史の記録が残っていた。この遺跡は宝の山だ。全てがここにある。


この村はこの遺跡の神々に守られているらしい。村人が『ハスター』という神の彫像を馬車に乗せ村の外に出ると、周辺を徘徊していた巨人たちが慌てて逃げ出した。



信じられない光景だった。巨人が逃げ出したのだ。目を手で覆い。頭を低くして走って逃げたのだ。




人類の希望はここにあった。同時に絶望も。




試しに私が発掘した『ダゴン』の石版を持って巨人に近づくと、武器を投げ捨てて逃げ出した。感情など無いと思われていた巨人だったが、明らかに石版を恐れていた。



断言する。巨人には知性と感情がある。そして、この山間部に住まう神々は巨人を屠ることができる。とても容易に。



この石版を、ダゴンを彼らは明らかに恐れた。当時は分からなかったが今なら、その理由がはっきりと分かる。巨人がこの山間部を、神を恐れる理由が分かる。ほんの一部だが私は見てしまった。この遺跡の底に眠る真実を。この世界の本当の姿を。



この恐ろしい真実を私はもう直視することはできない。人間が抱えるにはあまりにも。巨人などこの真実に比べればなんと幼稚な存在か。


巨人に恐怖があるという事実に興奮した私は村長の許可を得て、遺跡へと向かった。遺跡は第一層と呼ばれる地表に近い部分に入るのは問題ないが、それ以上奥に入って帰って来たものはいないらしい。有毒のガスか、侵入者を撃退する罠が仕掛けられている可能性が高いとのことだ。



実際に過去に調査に訪れた憲兵団は誰も帰って来なかった。



それでも、私は奥に向かった。鼻で危険を嗅ぎ分けることができる同僚のミケを伴って。



ミケは死んだ。自分の眼を自分で抉って死んだ。真実に耐えられず、発狂して死んだ。



すまないミケ。私が頼んだばかりに。



ここに入った者たちは皆同じ死に方をしたのだろう。




いるのだ。このクトゥルフと呼ばれる山間部には確かに神がいるのだ。それも複数の。そして、我々を見ているのだ。ああ、そうだとも見ているのだ。巨人ですら容易く殲滅できるような存在が我々人類を。



故に私たちは讃えなければならない。そして、速やかに終わりを迎えなればならない。奴らを多くの神々を


いあ! いあ! はすたあ! はすたあ あい! あい! はすたあ!そう、いあ!いあ!と讃えなければならない。



巨人を殲滅するのは容易い。誰もでもいい、この山間部に眠る神々を呼び出せばいい。それで全てはオワル。そう終わるのだ。


もしも、人類が絶望したならば、この記録と共に残す『ルルイエの断章』を読むといい。呼んだものは永遠の狂気に囚われるが、それ以外の全ては終わる。


それでいいのだ。


私にはもう時間がない。この本を盗み出したことがバレたのだろう。もうじき殺される。そして、村人は誰もこの事実に気が付くことは無い。彼らはまだ見えていないのだ。


ドアが音をたてている。何かつるつるした巨大なものが体をぶつけているかのような音を。私を殺しに来たのだろうが、もう遅い。ドアを押し破ったところでわたしを見つけられはしない。私は今から自分の命を絶つのだから、残るのはただの肉塊だ。私という個はここにいない。























窓の外に居る オマエハダレダ






[37744] ある商人の成功談    幕間②
Name: shurabazuki◆df1e04be ID:5bf389c0
Date: 2013/06/29 19:46
その男は商人だった。容姿や身体能力には恵まれなかったものの、類稀なる商才と金銭に対する欲望を備えていた。


男は人類に与えられた僅かな土地の中で重要なことは貴重な資源を自分の管轄下に置くことが非常に重要であることをなによりも理解していた。
故に男は探し求めた。貴金属を、鉄鉱石を、香辛料を、塩を、宝石を、資源を。



情報収集を続けていた男の下にある情報が見つかった。クトゥルー、もしくはクトゥルフと呼ばれる地域では過去の異物や貴重な貴金属が見つかりやすいと。



そこに直接赴いた男は驚愕した。遺跡に描かれた壁画や驚くほど精密に作られた神々の彫像や石版、そして何よりも一部の優れた探索者のみが立ち入れる遺跡の奥の地底湖からは塩が採れたのだ。しかも、村人が日常的に使用するほどの量が。それだけではない。ある罠だらけの洞窟には水晶があった。毒ガスが時折出てくる遺跡には金細工や宝石が、古い書庫らしき場所からは大量の書物が。


「クトゥルフの神々の恩恵によって我々の生活は成り立っているのです」


村長のそんな言葉を男はほとんど聞いていなかった。ここは男にとって間違いなく宝の山だった。こんな宝を前にして、何もしないほど男は馬鹿ではなかった。まず、男は調査隊を作り、周辺の散策を始めた。いくつもの試みの果てに男が学んだのは、この地域には危険が溢れており、村人の協力無しに商売を行うことは不可能に近いことだった。



貴重な塩が採れる地底湖に行くまでの道のりでは、落石等の事故が相次ぎ、慣れた村人の案内なしではたどり着けない。遺跡も盗掘防止用の罠が多い。



男は何度も交渉を重ね、地底湖から塩を採取する事業を始めた。同時に村長から村に伝わる神々の存在を内地に教えて欲しいとの依頼も受けたが、男はあまり真剣には捉えていなかった。しかし、遺跡から発掘された遺物等を売却する際に便利だったので、男はそれなりにクトゥルフの神々のことを周囲に知らせた。



特に美術品や彫刻の主要な販売先である貴族は特に興味を持ち、内地では徐々にクトゥルフの神々に関する認知度が高まった。



男は名誉も権力も手に入れ、クトゥルフ地方への投資を続けた。商談を有利にするために、クトゥルフの神々に関連した遺物等を徐々に自宅に置くようになった。


「いあ、いあ、あ、いあ、いあ♪」


男は機嫌が良くなると時折、クトゥルフの神々を称える言葉を口遊むようになった。それを不気味だという者もいたが、男は全く気にしなかった。クトゥルフの神々の石像に囲まれていると不思議と心が安らぐようだった。



男が商人として大成したから数年後、ウォールマリアが崩壊した。男は慌てて、クトゥルフ地方の安否確認を行った。


「おや、こちらまでいらっしゃるのは珍しいですね」
「……無事だったのか?」
「ええ、あなた様もお元気そうで」
「…私は見た。巨人を見たんだ。人類が想定していたよりも遥かに恐ろしい存在だった」
「ですが何も無かったのでしょう?我々の神々は敬虔な信徒を見捨てる様なことはしません」
「ああ、守られていた。間違いなく、私は守られていた」


合体して巨大化する巨人、身体の一部を武器にする巨人、人間の武器を使用する巨人そして、あの空を飛ぶ巨人。人類の滅亡は確定したかのように思われたが、男に危害を加えようとした巨人は皆、男が馬車の上に置いていた『クトゥグア』が描かれた旗を見た瞬間に逃げ出した。




まるで何か見えないモノを恐れる様に。




男は涙を流した。自分の宝の山は無事で、神が自分の身を守ってくれているのだ。怖いものなどあるはずがない。今まで半信半疑だった自分を心底恥じた。


「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅぐあ ふぉまるはうと んがあ・ぐあ なふるたぐん いあ! くとぅぐあ!」


ウォールマリア崩壊時に何故か空を飛ぶ巨人は集中的にウォール教の教会や幹部の豪邸を狙っていたため、ウォール教に関わると巨人に殺されるという認識が強まり、信者は次々と離れていた。一方で、巨人から直接的に守ってくれると噂の新しい宗教に人々は興味を持ち始めていた。


「見ろ!巨人など、神の力の前には無力だ!」


当時商会の長となった男がクトゥルフの神々関連の遺物を使ってウォールロゼ中心の巨人を引かせたことで、人々の関心は更に高まり、調査兵団は何故、クトゥルフの神々の遺物を持っていると巨人に襲われないのかを探るためにダニッチ村に分隊長2名とその部下を送り込んだ。


人間とは空想に縋るよりも実際に役立つものを求める。クトゥルフの神々は信仰であると同時に、巨人から身を守る術となりつつあった。


「いあ! いあ! はすたあ!はすたあ くふあやく ぶるぐとむ ぶぐとらぐるん ふるぐとむ あい! あい! はすたあ!」


「や な かでぃしゅとぅ にるぐうれ てるふすな くなぁ にょぐだ くやるなく ふれげとる」


「うざ・いぇい! うざ・いぇい! いかあ はあ ぶほう--いい らあん=てごす くとぅるう ふたぐん らあん=てごす らあん=てごす」


遺跡から発掘された遺物は高額で取引されているため、一般庶民には手が届かなかった。よって、クトゥルフの神々を賛美する呪文が必然的に一般庶民の間で広がることとなった。


むろん、誰も意味など理解していない。しかし、巨人の脅威に怯えるよりは遥かにマシだと、人々は意味不明の呪文を口遊んだ。


ウォール・マリア崩壊から3年後には『クトゥルフ教』と呼ばれる新しい宗教は内地で爆発的に信者を増やしつつあった。


そして、今日も神々を讃える声が響く、



あ いあ いあ あ いあ いあと












誰も本当の意味を理解しないまま






[37744] ぼーどげぇむ        幕間③   幕間終了
Name: shurabazuki◆df1e04be ID:5bf389c0
Date: 2013/07/01 01:20
繰返す。ただ、何の変哲の無い日常をただ、繰返す。何の変化も無い。何の意味も無い。何の生産性の無い日常を繰返す。繰り返す。ただ、理由も無く繰り返す。時計のように、歯車のように、ただ繰り返す。そこに意味なんて無い、あるのは惰性だけ。



惰性で理由も無く。ただ繰り返す。そして、時折、何のために生きているのだろうと思い。憂鬱な気分に陥る。その繰り返し。何も無く生きて、死ぬ。誰か助けて欲しいと叫んでも何も変わらない。ただ、繰返す。繰り返す。繰り返して、繰返す。




何の意味の無いことをただひたすら繰り返す。




これ以上の狂気はあるだろうか?




私は無いと信じたい。




いつからだろうか。電車に乗っている他の乗客の顔が黒く塗りつぶされているように思えてきたのは。



いつからだろうか。職場の同僚の顔にモザイクでもかかっているかのように思えてきたのは。



いつからだろうか。家族、友人、安定した生活、社会、政治、そう言ったものが無味乾燥に思えてきたのは。



いつからだろうか。テレビ越しに見る世界中の戦争、貧困、悲劇等々がまるで他人事のように思えてきたのは。



いつからだろうか。ただ、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、繰返して、気が付いた。意味が無いと。私に意味なんて無いと。



何でもいい。意味があることをしたかった。確固たる意味が欲しかった。自分の行動が他人にとって、重要であり、明確な影響力を持っている確信が欲しかった。


だから、私は何でもいい、どうでもいい。ただ、もしももう一度やり直す機会があるならば、今度こそは何をしてでも、意味を残し、価値を見出し、勝者になりたいと願ったのだ。そして、皮肉にも私の願いは叶った。


邪悪なる神々の『ぼーどげーむ』の参加者という形で私は二度目の生を得た。





『ぼーどげぇむ』





勝者もしくは『ぼーどげぇむ』の最中に生まれたモノが邪神の新しい眷属になる。



邪神の新しい眷属を創るための実験場。




意図的にクトゥルフ神話の神々の情報を断片的に、混合した状態で流布し、絶望した人類に信仰させ、新たな混沌を産出す。あるいは、それ以上を混沌を内包した人間を眷属化する。そのための遊戯であり、実験であり、暇つぶし。



私はその駒の一つだ。巨人側の駒。『空を飛ぶ巨人』としてここにいる。この『進撃の巨人』という漫画の舞台に立っている。



選ばれたのだ。自分にとって何一つメリットは無くとも超越者にとって意味のあることに。私はただ、その事実に歓喜した。少なくともこの二度目の生には意味があるのだろうと。私はある程度期待され、意味があってここにいるのだと。




『勝てば邪神の眷属、負ければ永遠の餌』




競争相手は『4名』。それぞれ異なる邪神によって送り込まれており、勝者になる条件、つまりその邪神の眷属になる条件も異なる。



『全人類の発狂及び殲滅』それが私の『くりあじょうけん』



この世界は所詮『ぼーどげぇむ』の盤上に過ぎない。全てが邪神の管理下に置かれている以上、そもそも人類に希望は無い。私が自分の使命を全うすることに躊躇する理由が無かった。


また、私を支援者である邪神は比較的勝利に貪欲な性格であったため、私にいくつかの特権を与えてくれた。私は与えられた特権を最大限に活かし、『げぇむ』を有利に進めてきた。



この世界の技術では手の届かない制空権を手にし、巨人も徹底的に強化した。これで第一条件である人類の殲滅はほぼ確定した。そして、発狂されるために元々この『ぼーどげーむ』内に設置されていた邪神のまがいものを利用し、布教に勤めた。



私の基盤は盤石であり、私の勝利はほぼ確定している。他の競争相手に関する情報もある程度集まっており、原作の登場人物が争い、互いに疲弊したところを一網打尽にする準備も整っている。私は今度こそ意味のあることをする。



「すまない。ライナー、もう一度言ってくれないか?」
「ああ、アニが逃げたみたいだ」



私の前にいる人物の名は『ライナー・ブラウン』この『ぼぉどげーむ』で私の味方の一人であり、巨人に変身する能力を持った人間の一人である。精神が脆弱であり、既に邪神の狂気に染まりつつあるこの人物に関して私は特段関心を抱いていなかったが、貴重な戦力であることに変わりは無い。


「何か持ち出した?」
「分からん。今、ベルトルトが追っている。俺もすぐに向かって連れ戻す」
「別にいいよ」


ライナーが何かを言っていた気がするが私の耳には届かなかった。空を飛ぶという感覚を私は気に入っている。前世では決して味わえなかった感触が心地良い。この力も、全てに意味があると思える。


昨日までともに食事をしていた少女、『アニ・レオンハート』に向けて矢を放った。逃れることもできずに、谷底に落ちていく彼女を見ても特段罪悪感はなかった。


「勝っても、負けても邪神様のモノなんだから」


せめて、意味が欲しい。他の競争相手を蹴散らせば、もっと意味のあることはできるのだろうか。





[37744] side:アルミン③ 「美人局始めました」
Name: shurabazuki◆df1e04be ID:5bf389c0
Date: 2013/07/07 15:59


正しい美人局のやり方 ~初級者編~


1.まず、粗暴そうな男性あるいは女性に飢えているブサ面に適当に声を掛けます。
大抵の場合無視されますが、時折引っ掛かる場合もあります。そして、そのまま路地裏か宿泊施設に誘導。



2.相手が背中を向けるのを待ちます。別に正面からでも構いません。



3.鉄板入りのブーツもしくはナイフで股間を攻撃します。

一回ではなく、連続の攻撃が望ましいです。もしも相手が手で急所を覆った場合は防御ごと攻撃しましょう。可能ならば、ナイフで相手の手ごと刺し抜いてください。先端が股間に刺されば相手は行動不能になります。



注意:一人だと返り討ちにされる危険があるので、傍にミカサを待機させておきましょう。一緒に馬鹿な客をボコボコにしてくれます。主に股間を重点的に。




最近、美人局を始めました腐女子に大人気の男の娘こと、アルミンの中の人です。




美人局を始めてから、空き家からドレスとかガータベルトとか盗むのが日課になりつつあり、SAN値が埋葬されています。なんか、時折口調も女の子になって来ている気が。




閑話休題




調査兵団を殺害した巨人から無事に逃げ出したのはいいものの、食べ物もお金も無くなんとか生きているだけという状況。巨人が大量発生している状況下では秩序なんてあるはずもなく、略奪行為が横行している世紀末な世界。本来ならば、開拓地行きになっていたはずなのに、どうしてこうなった。



カルラさんの負傷が想定していたより酷いので、医者を探すことと、馬車の確保が早急に必要だということに意見は一致したもの、先立つものが何もない。


「調査兵団の死体から武器を剥ぎ取ろう。武装して調査兵団の馬を探す。運がよければ馬車も見つかるはず」
「…アルミン。お前、それ本気で言っているのか?」
「私はアルミンに賛成。そのくらいしなければ生き残れない」
「だよな」


立体起動装置は使用方法がよく分からなかったため、ブレードの補備と柄の部分を奪い、内地に向かって移動を開始した。途中で調査兵団と駐屯兵団と思われる死体が複数見つかったので、金銭や携帯食糧などを奪い、交代で見張りをしながら巨人を避けつつ移動。



この繰り返し。



ウォールマリア崩壊から三週間後、泥と垢と腐臭に塗れた状況でようやく錆びれた村に辿り着いた。



秩序なんてなかった。当然、いつ巨人が来るのか分からないのだから。そんな中、女の子と間違われた僕は村に到着したその晩に暗がりで犯されかけた。ミカサがいなければそのまま慰みモノにされていただろう。二人で相手を刺しまくり、気が付けば、オブジェが出来ていた。



でも、周りの人は誰も気にしていないようだった。だから僕も気にしないようにした。ただ、アハハハッて嗤って誤魔化した。僕たちの新しい住居になったボロボロの空き家に着くまでずっと嗤ってた。そんな僕をエレンとミカサが心配そうに僕を見ていた。



ガリガリガリガリ、ふと気が付けば、頬をひっかいていた。エレンが止めてくれなかったら、傷になっていたと思う。



「ニャアハハハハ、ありがとう。エレン」
「ああ、お前疲れているんだよ。少し、休め」
「うん、そうするよ。ミカサ借りてもいい?」
「…ミカサ?」
「私は構わない」



その晩はミカサを抱き枕にして横になって歌を歌った。ラーッ、ラ~、ラララララララ~って。相変わらず下手だったけど。なんとなく歌っていたら涙が出てきた。


「ねえ、ミカサ?」
「なぁに、アルミン」
「僕の家族死んじゃった?」
「…私には分からない」
「そっか、そうだよね。ウフフフフ」
「…アルミン」


いつの間にか、ミカサとエレンに抱きしめられていた。カルラさんが僕の頭を撫でてくれていた。でも。僕は家族が死んだことより、自分が生きることを優先したので、今更になってその罪悪感が湧いてきた。



でも、悲しいと言うよりは自分って汚いなぁという感触で、自慰的な自己嫌悪で



それがまた嫌になって、でも死にたくなくて、怖いのも痛いのも嫌で、死んだ方がいいのかなって思うんだけど、やっぱり怖いので、なんとか生きないとなぁと思ったので



生き延びるためにミカサと美人局を始めた。



SAN値が崩壊するんじゃないかなって思い始めた頃、エレンと河でとても綺麗な女の子を拾った。意識もなく、背中から腰にかけて切り裂かれたような傷があり、流された際にぶつかったのか、あざが到る所にできている。鼻血も出ていて、髪もクシャクシャ。それでも、どうしようもなく綺麗に見えた。


売ったらいくらになるかな、なんてロクでもないことを考えつつも、速やかに水を吐かせて、気道を確保。


せき込む女の子を抱きこす際に手が胸に触れた。感触はとても表現できるような内容ではなかった。そのくらい素晴らしかった。エレンもミカサと偶に二人でキスをしに行っている時に揉んでるんだろうか。



「エレン。知っているかい?おっぱい揉むとSAN値が回復するんだ」



エレンの視線は完全に精神異常者を眺めるソレだった。






何はともあれ、発狂直前にして、僕ことアルミンの中の人は『アニ・レオンハート』に救われた。





[37744] side:ミカサ②  「聞けない」
Name: shurabazuki◆df1e04be ID:d45c1ed1
Date: 2013/07/22 02:38
最近、アルミンの様子が明らかに異常だった。


医者ではない素人でも精神的に混乱が生じていることが分かったと思う。私にだって、理由は分かる。アルミンの家族はもう恐らくこの世にいない。きっと、アルミンはそのことに気が付いてしまった。


今までは自分そして、私たちのことで精一杯だったのに、ふとした瞬間に気が付いてしまった。自分の家族のことを。私がかつて両親を奪われた時に感じたあの寒さをアルミンも知ってしまった。エレンが私に温もりをくれたように、私もアルミンを支えるべきなのだろう。でも、きっと私にはエレンと同じことはできない。私はエレン程温かくなれない。


「食べれる?口開けて」


アルミンは先日河で拾った金髪の女の子から離れようとしない。
金髪、青い眼、肌の色といいどこかアルミンに似ている。仮に血縁者だと言われてもそれ程違和感はないだろう。傷ついた彼女に餌を与えようとしている姿はまるで兄妹のようだ。


怪我の後遺症か、暴行されたのか、この子は声を出せない。
正直、今の食料事情を考えれば労働力の足しにならない存在は見捨てるべきだ。エレンを飢え死にさせるわけにはいかないし、お母さんの足だってまだ治っていない。


それにこの女、削ぎ落しておいた方が良い気がする。エレンのために。
別にエレンに色目を使っているわけでもないけど、何故か、今のうちに倒しておいた方が良い気がする。何故だろう。別に悪意を感じる訳ではないのに、将来的にエレンにとって害になりそうな気がする。


「巨人だ!巨人が来たぞ」


町中に響き渡る誰かの声。


ああ、またか、またこの村も潰れるのか。


「ミカサ!行くぞ!母さんを馬車に!」
「分かってる」


ウォール・マリアが崩壊してから、人類は閉ざされた壁の中で逃亡する惨めな家畜に成り下がった。


他の二つの壁がどうなったのか私は知らない。まだ無事なのかもしれないし、空からの襲撃でとっくに壊されたのかもしれない。いずれにせよ、巨人が徘徊しているなかを潜り抜けて次の壁までたどり着くのは至難の業だ。


「アルミン!行けるぞ!」
「エレンは後ろを見てて、ミカサは左右を」


アルミンの馬術は物凄い勢いで上達している。私たちが生きているのはアルミンの技能のおかげ。私もある程度馬に乗れるようになったが、未だアルミンには届かない。


「でかい」
「…ウォール・マリアを破壊した巨人に似ているけど」
「なんか違くないか?」
「あの光っているのは一体?」


あの日目撃した人体から皮を全て剥ぎ取ったような姿をした超大型の巨人と酷似しているが、微妙に違う。皆それに気が付いた。あの女の子も不安気に寝かされた体制から眺めている。二足歩行大型なのは変わりないが、あごの部分に装甲のようなモノがついている。同じ個体が変化したのか、あの大きさの個体が別にいるのかは分からないが嫌な予感がする。


「全員伏せろ!」


アルミンの警告と伴に私はお母さんを荷台に押し倒し、エレンはアルミンの横に伏せた。超大型巨人が口を開け、眩い光の柱が放たれたと思ったら、熱風と衝撃、そして、後方から激しい爆発音がした。




「ふざけるな!ビグザムかよ!何で巨人がメガ粒子砲打ってるんだよ!歩兵が勝てるかッ!」




アルミンが何か叫んでいたが意味が分からなかった。


「や、山が」


お母さんの声に振り返ると、遥か遠くに見えていた山が欠けていた。まるでスプーンで綺麗に掬ったかのように、くり抜かれていた。


「アイツ泣いてやがる」


エレンがボソッと呟いた。巨人に感情があるかは別として、確かに超大型巨人は泣いていた。ボロボロと涙をこぼしていた。その巨人は確かに叫んでいた『アニ』と。


「ヴァるとルッ」


あの子が荷台の奥で何か呟いた気がしたが、すぐに騒音に搔き消された。



結局、その日、私たちは巨人に襲われなかった。あの超巨人は最初の攻撃以外は何もせず、ただ一途に『アニ』と叫び続けていた。



まるで子が親を求める様な、


恋人が愛する人を求める様な


家族が互いに呼びかける様な


そんな悲しい声だった。



私はあの巨人には感情らしきものがあったのだと思う。





ただ、奇妙なことにあの巨人が口を開け、光の柱を放つを目撃したはずなのに。



私の記憶の中では、あの超大型巨人に顔が無かった。まるであの巨人の額から顎までが、黒いインクで塗りつぶされたかのように抜け落ちてしまったのだ。



そもそも顔なんてあっただろうか、まるで深い穴を覗き込んでいるような錯覚を覚える。



あれから数日が経過したが、誰にもあの超大型巨人に顔があったのか、私は聞けずにいる。






[37744] side:アルミン④ 「最後の希望」
Name: shurabazuki◆df1e04be ID:159ea3e0
Date: 2013/07/28 18:35


実はアニ・レオンハートの身柄を確保し、ベルトルトとライナーの正体さえ分かっていれば、相手側の主戦力は結構楽に倒せることができる。原作で出てきた『猿の巨人』の正体はよく分からないし、対処方法も考えたことが無いが、『超大型巨人』と『鎧の巨人』を倒すだけなら容易い。原作でもこれは同じことだと思う。


負傷したアニを救助し、SAN値が回復して三日後にアルミンの中の人こと僕は、必勝法を思いついた。気が付いたアニさえ敵側に回らなければ、大抵の巨人化能力者はこの方法で殺害できることに。


例え変形できようが、合体できようが、メガ粒子砲を撃てようが、空を飛べようが、奴らは通常時は、人間形態で過ごししている。故にアニ以外の奴らには致命的な弱点がある。


最初は巨人に対する恐怖の緩和、心の拠り所とエレンとミカサのバカップルを見せつけられ、日々磨り減っていくSAN値を回復するために他人を求めていた。正直、誰でもよかったのだと思う。それくらい磨り減っていた。実際にアニが綺麗に見えたと言うのもあるが。




閑話休題




まず、僕が狂っているという誤解を解くために全力を尽くした。具体的には、土下座した。


「ミカサ、エレン、カルラさん。ご迷惑をお掛けしました」
「あ、アルミン!?頭を上げろよ」
「アルミン。そんなことはしなくていい」
「どうしたの?」


敬意は伝わったらしくミカサからはあの養豚所の豚を見る様な視線が消えた。最近、ミカサの眼から徐々にハイライトが失われている。ヤンデレ化もかなり進行しているし、このまま行くとエレンとカルラさん以外は最終的に殺されそうな気がする。


「僕は、自分の家族が他界したことを受け入れられず、異常な行動と言動を繰り返していました」


今でも現実を直視すれば発狂しそうだけどね。


「あの子を見つけた時、髪の毛の色と目の色が同じだったんで家族が生きてたのかもしれないって」
「確かに少しアルミンに似ている」


実際その辺どうなんだろう。ミカサの感覚は少しズレているし。


「僕は自分が逃げることだけ考えていて、あの時家族のことなんて考えてませんでした」
「違う!アルミンは母さんを助けてくれた!」


原作通りに物事が進むと考えていれば誰だってそうすると思う。原作なら少なくともウォール・マリア奪還作戦までは生きていたと推測できる。そうしなければ、原作アルミンよりも人望・知恵共に欠けている自分は見捨てられる可能性があった。


「何もできませんけど、行けるところまで一緒に行かせてください。お願いします」


頭を下げた僕を三人は温かく受け入れてくれた。誰もアニについて触れなかったので、そのまま僕が世話を続け、ミカサが身辺の整理などをみてくれた。このままアニを確保し続けられれば少なくとも原作の巨人組二人には確実に勝てる。



美人局、強盗、殺人、略奪と堕ちるとこまで堕ちた。もう、何も怖くない。未だに結婚する夢は捨てきれないけど。女神クリスタは無事だろうか。


「ミカサ、エレン話があるんだ」


数日後、僕は二人に切り出した。このまま巨人に追われていたもいつかは追い詰められのは見えているので、せめて戦力だけでも削っておきたい。そのためにまず、二人を取り込む。


「最近、この辺りでは人攫いが多いらしいんだ、特に僕たちの年齢の」


ピクリと二人の肩が揺れた。この二人の経験上、思うところがあるのだろう。


「だからなるべく皆で行動しよう。周囲にも警戒してね」


そして、手札を切る。今の所分かっていることは人攫いは体格の良い僕たちと同年齢の子供を使っているらしいと。


「来たら駆逐してやる」
「同じく」
「大丈夫。僕に任せていい方法があるから」


ベルトルトとライナーの外見的な特徴を伝え、こういう人攫いがいるかもしれないとだけ告げた。ベルトルトとライナーはあくまでも人間として裁かなければならない。巨人になる前に、人型の時に、迅速で、一撃で仕留める必要がある。今エレンとミカサに巨人化能力のことを伝えてもキチガイ扱いされるだけだ。


さて、


ライナー・ブラウンの好みはクリスタのような小柄で金髪の女性である。


ベルトルト・フーバーの好みはアニのような小柄で金髪の女性である。


性格に差はあれど、二人とも女性の外見上の好みは一致している。


そして、美人局のために髪を伸ばし、現役の娼婦もびっくりの男を落とすテクを身に付けている金髪で小柄の男の娘、『アルミンの中の人』がここにいる。


奴らは所詮男であり、雄である。巨人化できようが、できまいが、性欲はある。あの『空飛ぶ武装した巨人』も恐らく中の人は男だろう。そして、唯一の女性と思われるアニの身柄はこちらで確保している。


アニの身柄を求め、必ずこちらに接近してくるはずだ。それも容態と安否を確認するために人型で。巨人化したベルトルトに応じ無かったことから、あっちはアニが死んだか、負傷していると考えているはずだ。


仮にアニの殺害が目的だとしたら、周辺を片っ端からあのメガ粒子砲で焼き払えばいいのにそれをしなかった。いきなり殺すことはないはずだ。


アニに関する情報と男の娘という武器を使い、二人を誘惑し、油断したところ殺害する。エレンとミカサには人攫いの部下だと事前に話しておけば殺意満々で協力してくれるだろう。




僕たちの最後の希望はハニートラップしかない。



そう信じ、僕は今日もミカサと美人局を始めた。




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