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[38440] 【習作】あるダメな憑依系ドラクエ5主人公【ネタ】
Name: ぬいまる◆5b3e0e34 ID:8d294f26
Date: 2013/09/07 23:38
これは、もし、ドラクエ5の憑依系主人公が、保身の事しか考えていない人間だったらという話。

文章崩壊、設定矛盾注意。

=========
あーあ、いくらゲームとはいえ、自分の父親殺されるのはつらいな。
ま、父親って言っても、二週間程度の付き合いしかないんだけどね。

俺、中山慶介こと、ドラクエ5の主人公リュカは、そう思いながら、ゲマの腕に
抱えられていた。
ゲームでは気絶していたはずなのに、今の俺はなぜか目が覚めている。
ヘンリーは気絶したまま。プックルっちも気絶。なぜ俺だけ当たり所が良かったか
分からない、バグ?

まあいい。

それよりも大切なことがある。
ここから先、奴隷生活がこのままでは待っている。
それは、御免だ。

俺は、目を開けると、そのまま、俺を抱えている青紫の魔人の目を見た。
『おやおや、気絶させたつもりなのに、まさかあなたが起きてしまうとは。』
そういうと、ゲマは笑いながら先ほどまで、俺の『父親』である、パパスが
立っていたところを指差した。
『見てごらんなさい、あなたのお父さん、なるほど人間にしてはなかなかの強者
だったのでしょうが、私のメラゾーマで灰も残さずこの世から消し去られたのですよ。』
そうゲマに言われながら、俺はただ冷たく『そりゃそうだ、だって唯の
タンパク質の塊が、メラゾーマに耐えられるわけないだろ。』
と思った。
ジャミやゴンズが、『バカな人間だぜ』とか、『人間なんて鍛えても俺様の
筋肉に勝てるはずがない』とか言っているが、それだって『当たり前だろ?』
としか言いようがない。
人間は、魔族の前では弱者だ。
ゲマはそんな俺の無感情な目に気付いたのか気づいてないのか、
更に自慢を続ける。
『ヘンリー王子と、あなたのベビーパンサーも、そしてあなたも、もうすでに我々の
手の中。まあ安心しなさい、われら魔族とて子供の命までは・・・』
『あの、いいですか?』
ゲマの自慢を急に俺が遮ったことに、ゲマは顔をしかめた、だが、すぐにあの
自慢げなニタニタした笑みを浮かべなおす。
『なんですか、坊や?』


『僕たち、これからどうなるんですか?』
その質問に、ゲマも、ジャミも、ゴンズも少しだけ驚いたようだった。
5歳の人間の子供が、自分の父親の死にも涙ひとつせず、冷静に自分たちのこれからを
聞いたからなのか、俺には分からない。
『ふふふ、そうですね、坊や、あなたもあなたのお父さんも、あなたのベビーパンサーちゃんも、そしてヘンリー王子も、私たちに逆らった犯罪者なんですよ、僕、犯罪者って言葉は難しいかな、つまり、悪いことをしたってことですよ。だからね、罰を受けてもらわないと・・・』
『僕達、ただお父さんに命令されただけです。悪いのはお父さんだけです。』
そう俺が言った瞬間、ジャミが恐ろしい顔で俺に詰め寄り、俺の胸ぐらをつかんだ。
『ふざけてんじゃねえぞこのクソガキ!お前、自分からゲマ様にベビーパンサーともどもつっかってきやがって、何が命令されただけだ、ガキが生意気に言い訳してんじゃねえぞ!』
うーん、5歳児視点から見るとジャミ怖すぎるけど、一応こちとら三十路過ぎてるんで、何とか耐えられる。それでも怖いが。
『それは、お父さんが、ここの遺跡にいるのは全員ヘンリーを連れてった悪い人か、魔物さんたちだから、戦ってぶちのめせって。』
そういいながら、俺は心持ち涙を目に浮かばせた。声も少し泣き声にする。
『だって、お父さん、ちょっとでも僕がいやだって言ったら怒鳴ったり、殴るんです。ヘンリーも、さっき、帰りたくないっていったら、殴られたんです。僕たち、お父さんには逆らえなかったんです、だから・・・』
その訴えを聞いて、ゲマが何を思ったかはわからない。
だが、ゲマは、ジャミに目くばせすると、俺の胸ぐらをつかんでいたその手を離させた。
『確かに、ヘンリー王子のほっぺたには、平手打ちの跡が見られますね。それもかなり強く打たれたようだ。・・・なるほどね、あくまで、あなたのお父さんが悪い。あなた方は命令されただけというわけですね。』
ゲマは、そういうとニタニタ笑いをやめた。そして、俺を地面に下ろすと、少し考え込むような表情をした。
『それで、あなたの望みはなんです、坊や。仮にあなたが言っている通り、あなたやあなたのペットやヘンリー王子が、あなたのお父さんに言われて無理やり私たちと戦ったのだとして、悪いですがあなた方を返すわけにはいきませんよ。こちらも色々と
事情がありますのでね。』

俺は、少し迷った末、俺の望みをゲマに告げた。それは、ほんのささやかな願いだった。
『・・・僕たちにひどいことしないでください。お父さんみたいに僕たちを殴らないでください。僕たちにおいしいご飯と綺麗なお家をください。僕たち、ゲマ様やジャミさんやゴンズさんに逆らいません。いう事聞きます。』
『信じられるかよ、人間のクソガキのいう事なんざ。』
『人間は俺たちを殺すだけだからな。』
ジャミとゴンズの鼻で笑ったような言い方にもめげずに、俺はゲマに、俺を生かしてくれと頼む。
『ゲマ様やジャミさんやゴンズさんは、魔物さんなんですよね。魔物さんが人間の王様になる時、僕やヘンリーみたいに、人間が味方にいると、いいんじゃないんですか?』
この言葉を聞いて、ゲマは、先ほど驚いたように見えたのとは違う、本当の驚きを見せた。ジャミとゴンズもだ。
『・・・ほう、面白いですね。私たちが人間の、王様、ですか。で、ヘンリー王子やあなたが私たちにどう役立ってくれるんですか?』
そう聞くゲマの表情に、興味の色が含まれていることを俺は察知した。
これは賭けだ。
ゲマが俺を生かしてくれるのであれば、奴隷でなく、それなりの待遇を保証してくれるのであれば、俺に利用価値がないといけない。
その利用価値なら、俺には十分あるはずだった。
『ヘンリーは王子様だから、ヘンリーを子分にすれば、ヘンリーが王様になって、ゲマ様が王様の王様になれば、きっと人間のみんなも素直にゲマ様の子分になると思うんです。』
そういうと、ゲマは困ったような表情をした。
『なるほどね・・・賢い坊やだ。でもね坊や、それはあなたがいなくてもできるでしょう。あなたとヘンリー王子の二人、いや、二人と一匹か、みんなを助ける理由には』
『僕のお父さんはヘンリーを助ける為に死にました、僕が命令すれば、ヘンリーは逆らえません。』
これも賭けだ。ゲームでは、ヘンリーはこの後も相変わらず主人公に親分風を吹かせていた。
それでも、今この瞬間なら、ヘンリーに一発お見舞いすれば、どっちが親分なのか分からせてやることができる。
『・・・それに、僕は魔物のことばがわかるので、人間に言葉の通じない魔物さんのいう事を伝えることができます。』
これで今の俺の手札はない。グランバニア王子の特権は、いずれアピールできるかもしれないが、今は信用してもらえない。
パパスから聞いたといったところで、証拠はなんだといわれるだけだろう。信用されない話はしないのが一番だ。
『お願いします。僕を助けてください。お願いします。』
そういって、俺は、泣きながらゲマに土下座をした。
地面に頭を擦り付け、ゲマを伏し拝んだ。



ゲマは、数秒の間黙っていた。
その数秒が、俺の永遠に相当した。
そして俺は、ゲマの口が開かれるのを見た。
『いいでしょう。』
その言葉を聞いて、俺は心の中でガッツポーズをした。
勝った。
俺は勝ったんだ。
『・・・あなたの、その利口さには感心しますよ。実の父親の仇に、
慈悲を・・・おっと、難しかったですかね・・・助けてくださいと頭を
地面にこすり付けられる、その度胸も、私に絶対に逆らわないという言葉も。』
そういうと、ゲマはにっこりと笑みを浮かべた。
『ぼうや、あなたのお名前は。』
『リュカ、です。ゲマ様。』
そう俺は、泣きながら答えた。
『ではリュカ、あなたは今日から私の下僕です。あなたのベビーパンサーも、ヘンリー王子もです。魔族の王、ミルドラース様の名の下、その臣下の筆頭である、私、ゲマの下僕として、忠誠をつくしなさい。』
『はい、ゲマ様。』
『けっ、クソガキが、調子よく助かりやがって。』
そうジャミやゴンズが愚痴をこぼしていたが、今の俺には関係ない。
俺が、見知らぬこの異世界で殺されず、奴隷にもされず助かったというその厳然たる事実こそが、今の俺に
とってのすべてだった。




[38440] 【習作】あるダメな憑依系ドラクエ5主人公、続き【ネタ】
Name: ぬいまる◆5b3e0e34 ID:8d294f26
Date: 2013/09/08 00:41
続きかくつもりなかったけど、気になったので書いた。
========
俺が、ゲマに土下座して、命を助けてもらってから、10分程度した時、
まずは、プックルが目を覚ました。
『おお、僕の可愛いプックルちゃん、いい子だぞ。』
そう優しくなでてやると、プックルは少し安心したようだが、どうやら俺の後ろのゲマ、ジャミ、ゴンズには少し警戒していた。
やはり『敵』として戦っていた相手が、起きて次の瞬間味方ですというのは感覚として理解できないようだ。

そして、それからさらに10分ほどして、
それまで地面で気絶していた、ヘンリーがううとうめき声をあげた。

これは、目を覚ますな。
さてと、さっさとすませちゃいますか。
俺は、俺の後ろで俺を監視している、ゲマ、ジャミ、ゴンズをちらっと見返した。
『ゲマ様、こいつ、起きます。ゲマ様に逆らわないように、僕がちゃんと言い聞かせますから。』
そう、これは俺が、ゲマの下僕として生きていくための第一歩なのだ。
『うう、痛え・・・ここ、確か俺殴られて』
『ようやく起きたか、このバカ』
そう俺は冷たくヘンリーに言い放った。
ヘンリーは、起きると、ゲマやジャミやゴンズの姿を見て、驚いたが、
それよりも、俺にバカ呼ばわりされてカチンときたようだ。
無理もない、子分扱いしていた俺にいきなりバカって言われれば怒るだろう。
『お前、バカって俺の事いったな、王子の俺に』
パシン
そう乾いた音がした。
さすがに、パパスの平手打ちほどの音は出なかった
つか、あれ鼓膜敗れるんじゃないの。体罰反対。
『いいから、お前、あれ見ろ。』
突然の俺からの暴言と、ビンタに、ヘンリーは思考停止状態だった。
それでも、のろのろと俺の指差す方向に目を向けると、そこには、
人間の焼けた後の、黒焦げた石の床が見えた。そしてそこには、成人男性の
サイズに合わせた剣が転がっていた。
『あ・・・あれ・・・』
ヘンリーが数瞬口を半開きにしていたが、やがてその意味するところが理解
出来たようだ。
『僕のお父さんだよ、バカなお前の為に、黒焦げになったんだ。』
それを聞いた瞬間。ヘンリーの目から一気に涙が盛り上がり、そのまま外にあふれだした。
ヘンリは両手を目に当てながら、大声を挙げ始めた。
『ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいパパスさん、俺の為に、俺のせいで。』
わんわん泣くヘンリーを俺はうっとうしく感じながら、所詮データだしな、という思いを感じつつ、俺は話を続けた。
『どうしてくれるの、僕のお父さん、お前のせいで死んだんだよ。もう、僕、家に帰れないんだよ。わかってるの?』
そう俺が言うと、ヘンリーはより一層大声で泣き始め、ごめんなさい、ごめんなさいと俺の前で土下座しはじめた。
しめしめ、いい感じだ。
『・・・もういいよ、お前なんかに泣かれて謝られても、僕のお父さんが帰ってくるわけじゃない。お前なんかどっか行け。』
そういって、俺が立ち去ろうとすると、ヘンリーが泣きながら俺の足首をつかんだ。
『おねがい、おれ、なんでもするがら、だがら、おれのこどおいでがないでえ』
同でもいいけど、鼻水が足首についている。
俺はヘンリーの方に向き直った。
『本当に何でもするな?』
『はい。』
『じゃあ僕の言うことをこれからなんでも聞け。』
『はい』
『僕に逆らうな。』
『はい。』
『僕にさん付けしろ、あとタメ語使うな。』
『はい、リュカさん、ぢょーじ乗っててすいませんれした。』
ま、こんなところでいいかな。
俺はヘンリーを下僕にすると、そのままゲマやジャミ、ゴンズの元にヘンリーを連れて行った。
『ゲマ様、つれてきました。』
『よしよし、よくできましたねリュカ。さて、ラインハット王子ヘンリー。』
ゲマはヘンリーに声をかけた。
『パパスさんのことは誤解からきた不幸な事故でした。悪いのは、あなたがパパスさんを巻き込んだこと、責任者であるあなたが、パパスさんの死の責任を負わなくてはなりません。』
『あい。』
泣きながら、ゲマの嘘八百に丸め込まれるヘンリー。
ゲマは、一枚の書類を取り出すと、それをヘンリーに見せた。
『さ、これにサインを。』
そこには、こう書かれていた。
『私、ラインハット王子ヘンリーは、パパスさんの死に関するすべての責任が私にあること、そして正当防衛を行ったゲマ様が何らこのことについて責任を持っていないことをここに宣言します。』
『私、ラインハット王子ヘンリーは、パパスさんの死についての不幸な事故にゲマ様を巻き込んで、ゲマ様の心に心的外傷を与えた罰として、現在持つ私の王子としての地位に由来するすべての特権およびこの王子としての地位が原因で将来私にもたらされるすべての特権をゲマ様の支配にゆだね、ゲマ様の命令に従って行使することを誓います。』
『また私、ラインハット王子ヘンリーは、パパスさんの息子リュカの父親を奪った事態を引き起こした責任に対する罰として、上記の命令権については、パパスさんの息子リュカに、ゲマ様の許しのある限り、同様の命令権があることを認めます。』
ゲマは、ヘンリーにもこれが理解できるように、優しく説明した。
『つまり、あなたがパパスさんを巻き込まなければ、パパスさんと私たちとの不幸な行き違いは起こらず、私が誤解したパパスさんに切り付けられて戦った結果、パパスが不幸にしてなくなることもなかったのです。すべてあなたが悪いのです。』
『そして、パパスさんの死を目の当たりにした私は、私の身を守るためとはいえ、深く悲しい気持ちになりました。それもすべてあなたが悪いのですヘンリー王子、そして、リュカ君もお父上をなくされて、孤児になったのです。私たちがリュカ君を養育することになりましたが、リュカ君に対する責任として、あなたはリュカ君の命令に従わないといけないのですよ。』
こくこくとうなずくヘンリーは、ゲマから渡されたペンを手に取ると、5歳にしては上手な字で、ラインハットの王子ヘンリーと署名した。
『さ、これで契約成立です。では、あなたの身柄は私たちが保護いたします。どの道、あなたのお父様から、あなたを保護するように仰せつかってましたので。』
どうしてこうも嘘八百を並べたてることが出来るのかというゲマのでまかせも、今のヘンリーにはただただうんうんとうなづくだけのものだった。
ヘンリーは力なく立ち上がると、再び土下座をした。
『これからよろしくお願いいたします、ゲマ様、ジャミさん、ゴンズさん。』
そして立ち上がると、俺にもお辞儀をした。
『リュカさんも、よろしくお願いします。』
こうして、俺はこの世界で、最初の下僕を手にした。



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