「ハニー!起きてー!遅刻しちゃうよ!」
「・・ん」
カーテンから差し込む春の眩しい日差しと共に、ソプラノの綺麗な音のような声に反応した俺は、重たい瞼をそっと開けた。
さっきまで隣にあったはずのぬくもりが消えていたことに気付いた俺は、だるい身体を一人で使うには少し大きめのベッドからのっそりと起こした。
(美希・・・台所かな?)
少しずつ動き始めた頭の中でぼんやりとそんなことを考えた。
ベッドの横に置いてあるハート柄のいかにも女子高生が使っていそうな可愛らしい時計をふと見れば7時15分・・・少し寝坊したみたいだ。
美希・・旧姓星井美希とはかつてトップアイドルに君臨していた超有名人だ。
テレビ、雑誌、新聞といったあらゆるメディアに毎日のように登場していた頃が懐かしい。
そう・・・彼女は現在アイドルではない。
メディアからも姿を消した。
「・・・美希~・・ねむい・・・」
しかし彼女は存在している。
こうして呼べばほら・・・
「もう・・・ハニーはホントに甘えん坊さんなの」
少し困ったような顔で微笑んでくれるのだ。
「・・・ダメか?」
「・・・そんな顔反則なの・・・おはよ、ハニー」
「おはよう美希」
星井美希は今では俺=Pの嫁