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[39472] 【習作】プルと遊園地デート(ガンダムZZ)
Name: みず◆e4a4d4a0 ID:d5637d76
Date: 2014/02/16 01:53
「ジュドーぉ、遊園地に行きたいよう」

またプルのわがままが始まった。
でもアーガマに載っていたころ「戦争が終わったら遊園地に行こう」って約束したことを俺は思い出した。

「わかったよ。シャングリラで一番人気の遊園地があるんだ。次の日曜に行こうな」
「うん。2人きりでね。邪魔は無し」
「リィナのことか?リィナ怒るぞ、「私は除け者?」って」
「いいの。2人きりなの。」
「わかったよ、ナイショにしておくさ」



********

その日は晴天だった。
シャングリラ一の遊園地は賑わっていたが、俺たちの行くアトラクションは
不思議と人が少なく、そんなに待ち時間もかからなかった。

「次、あのジェットコースターね。はやく行こうよ。ねぇジュドーったら」
「わかったよ、そんなに腕を引っぱるなって。コースターは逃げないから」
「はやくぅ、はやくぅ」「プルプルプルプルッー」

この遊園地でひときわ目立つ巨大なジェットコースターだ。最初の大きな坂を登り
切ると、真っ逆さまに地面に落ちるかのような勢いでコースターが下っていく。
そのあと、何重ものループをぐるぐると走り抜け、丘の向こうに消えていく。

「ひゃー。これは怖そうだ。モビルスーツの操縦とは違う怖さがあるな」
「そうだね、あたし泣いちゃうかも。ジュドー、抱っこしててくれる?」
「だーめ。コースターはひとりで座るものだから、抱っこなんてできないよ。
ダブルゼータのコクピットじゃないんだし」
「わかったよう。あたしがんばる」

確かにスピード感は凄かった。実際、コアファイターのほうが何倍も速いだろうけど、
生身の体に風を受ける感覚はまた違った。

「怖かったけどおもしろかったー。えーっと次は、、、、あのコーヒーカップがいい」
「うへぇ、ちょっと休もうぜプル。朝からずっと乗りっぱなしで疲れたよ。
あそこのパーラーでひと休み」
「ジュドーのいじわる。わかったよぅ。その代わりデザートおごってね」
「はいはい、手間のかかるお姫さま。おっしゃるとおりにしますよ」

俺たちはパーラーの店員に促され、空いているテーブルに向かい合わせに座る。

「プルは何が食…」「チョコレートパフェ特大サイズひとつ」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」

注文を受け、店員がキッチンに向かう。

「プルはほんとにチョコパフェが好きなんだな。
アクシズにいた頃、よく通ってたのか?」
「ううん。グレミーはあまり自由に外出させてくれなかったから。
1回、お城を抜け出してカフェにいったら、すごく怒られたの」
「そうか。プルも可哀想だよな。遊びたい年頃なのに、戦争に引っ張り
まわされていたものな」

しばらくすると、店員が遠目に見ても巨大なパフェを運んできたのが見えた。
店員の腕がパフェの重さに耐えかねて震えているのが見える。あんなサイズの
パフェ、頼む人はいるのか?

「お待たせいたしました」
「わあ!大きい!それにとってもおいしそう。ねえ、ジュドーがスプーンを持って、
私が食べるってのはどう?」
「どう?ってね、プル。自分の手があるでしょう。自分で食べなさい」
「ジュドーのけち。わかったよぅ。ひとりでぜんぶ食べちゃうからね。欲しく
たってあげないから」
「はいはい、ひとりで食べられるものならどうぞ。でも溶けちゃってから
「要らない」って言われても困るからな」
「ジュドーのばか、いじわる、いけずぅ」

数分後。プルの小さな体のどこにそんなスペースがあるかわからないが、
確かにひとりで平らげた。
お腹いっぱい、と言いながらお腹をさすっている。
すると突然、プルは身を乗り出して、目を輝かせながら俺に言った。

「ねえ、キスしよう?」

そのセリフに、俺はイスから滑り落ちそうになった。

「はあ?キス?あのねえ、どれだけ唐突なの。しかもそのチョコレートまみれの
口で?そんなお子様あいてにキスなんてできません。お兄さんをからかうんじゃ
ないの」
「プルだってキスの意味知ってるもん。それにジュドーのこと愛してるって前にも
言ったでしょ。ねえキスしようよ、はやくう」
「プルがもうちょっと大人の女性になったらだな。そもそも、そんな軽々しくキス
なんてしちゃだめだぞ。プルが心に決めた人が現れるまで、大事に取っておくこと」

するとプルの表情がとたんに険しくなり、

「ジュドーのばかああ。ジュドーなんて、だいっっ嫌いだあ」

そう言うや否や、すくっと立ち上がり、パーラーの外へ駆けていった。

俺は、またいつものわがままが始まったか、と口に出そうとしたが、しかしその口
をつぐんだ。走り去るプルの涙に、普段と違う寂しさを感じたからだ。
と、同時に俺も駆けだしていた。



*******

「プルッ、待てって!」
「待ってくれよ!」

どのくらい走っただろうか。プルの足ならすぐだろうと最初は思ったが、
しかしいつまでも追いつかない。
このままいつまでも追いつかないのではと、そんな感覚にさえ襲われた。
そうこうするうちに、やっとのことでプルを視界の先に見つけた。

「プル、話を聞いてくれ!」

プルに駆け寄ると同時に、周りの景色も目に入る。
鬱蒼と木々が生い茂っている。
いつの間にか遊園地の敷地の外れまで来ていたようだ。
コロニーの1区画を占めるような広さの遊園地だ。
その端に到達するとは、よほどの距離を来たことになる。

「…プ…ル」「…あ…あのな」

俺は息を切らしながら話しかける。

プルのほうはというと、俺に背中を向けたまま立ち止っている。
肩が細かく震えているのは、荒い呼吸のためだけでなく、
先ほど見せた涙のせいもあるだろう。
両手で顔を覆っているのがその証拠だ。

「プル、、、」

俺はプルの肩に手をかける。

「ジュドーなんか、だいっ嫌い。あっち行ってよ」

プルは俺の手を振り払いながら言った。

「あたしのことなんて。あたしのことなんて、ほんとはもう忘れちゃって
るんでしょ」

何だ?違和感を感じながらも言葉を返す。

「忘れる?そんなわけないじゃないか」

「ジュドーはさ。あたしのことをもう一人の妹だって言ってたよね。
あたしもジュドーを、あたしのお兄ちゃんだと思うようにしてきた」

「でもね。やっぱりあたしはジュドーの妹じゃないの。妹なんかじゃなくて、
ジュドーのことを本当に愛している1人の女性なの」

「プル…」

「それにね…」

「あたしの短い人生のなかで、出会った人はジュドーだけなの。
もう他の人に出会うことはないの」

「!!!」

そのときになって俺は気付いた。プルはもうこの世にはいないんだと。
目の前に見えるのはまぎれもないプルだけど、この世界自体が虚構なんだと。

「プル!」
「あっ」

すかさず俺はプルを抱き寄せた。プルをどこにも行かせまい。
プルを失いたくない。

「プル」
「うん…っ」

プルと口づけを交わす。力強く抱擁しながら。
このまま時が止まってしまえばと思いながら。

プルの柔らかい唇の感触と、口の中に広がるチョコレートの甘い香りが
プルの存在を確かに感じさせる。この瞬間が現実であってほしい。

するとプルの瞳から涙がこぼれ落ちる。喜びと慈愛と悲しみと、すべてが
混ざり合ったかのような瞳だ。プルはすべてを理解しているのだ。

永遠のような時間、しかしそれは一瞬だったのかも知れない。
口づけを終え、二人は抱き合ったまま気持ちを伝えあう。

「プル、ごめんな。俺は君の気持ちに…」
「ううん、ジュドーの気持ちはわかっていたの」

プルが続ける。

「ジュドー聞いて。あたしはね、自分が世界で一番幸せな人だと思っているの。
もちろん戦争に引っ張り出されたことはとても悲しいけど、
でもね、そんななかで、たった一人出会えた人がジュドーだったの。
一番大好きな人に出会えたのだから、これ以上の幸せはないって思うの」

「プル…」

「ジュドーは本当に優しい人だよね。あたしだって、ジュドーを独り占めしちゃ
いけないんだってことはわかってる。ジュドーの優しさはみんなのものだから」

「リィナはもちろんエゥーゴのみんな、それだけじゃない、あたしの妹や
ハマーン・カーンにだって、ジュドーは真剣に向かい合っていた」

「だから、これからもジュドーはすべての人に優しくあってほしいの」

すでに世界は存在を失い、ここには2人の姿しか残っていない。
そのプルの姿も薄れつつある。

「そろそろお別れの時間がきたみたい」

「!」「プル!」

「安心して。あたしはジュドーのことをここから応援してる。いつまでもね」

「ジュド……愛し……   」

「プルーーーーーーー!!!!」






********

「……ォー、ジュドーッたら」
「ここは?」

そこは薄暗い室内だ。俺はベッドに寝ていた。
窓からは星空が見える。

「ジュドー、かなりうなされていたけど大丈夫?」
「ああ、ルー。起こしてしまったかな」

ここはジュピトリスの船室。
就寝時間のため、船内は明かりが落とされていた。

「悪い夢でも見た?」
「いや。プルに逢ったんだ」
「プル?エルピー・プルに?」

俺はルーに夢の内容を伝えた。


********

「プルはさ、お別れを言いに来たんだと思う」
「お別れ?」

「戦争中は慌ただしくって、プルが死んだ時も十分なお別れが
言えなかった。ハマーンと対決したときにプルの気配は感じて
いたのだけど、やがてそれもわからなくなっていた」

「もう逢えないかなと思っていたんだ。たぶん、
その気持ちが届いたんだと思う」

「ジュドー…」

「だいじょうぶさ。プルは俺のことをこれからも応援してくれるって
言ったんだ。プルのためにも頑張っていこうと思う」

「わかったわ。ジュドーらしいよね、そういうところ」
「ああ」

俺はそう言って、もう一度目を閉じた。
不意に、チョコレートの甘い香りが口の中に残っているのを感じた。


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