これはひどいオルタネイティヴ43(後編)②
――――やって来た真耶さんは赤の斯衛服に以前と同様髪を下ろした姿で、今回は眼鏡を掛けている。
「こんちわ~、月詠中尉」
「あ、はい。こんにちは」
「……(一体 彼女は……? 月詠 真那中尉の姉妹なのかしら?)」
「それよりも先日は御世話様でした」
「月詠中尉も無事だったみたいで良かったです」
「其方は怪我をされた様ですが」
「それは大丈夫です。見た目に反して至って軽傷ですよ?」
「ふむ」
「月詠中尉は どう言った経緯で帝都まで?」
「…………」
「……月詠中尉?」
――――クーデター終結後、煌武院 悠陽 到着後の横浜基地にて。
≪月詠。そなたも無事で何よりでした≫
≪勿体無い御言葉です≫
≪戦いも決起軍による全面降伏で終わったと、米軍の者達から聞きました≫
≪左様で≫
≪されど白銀が負傷した様ですね≫
≪彼が?≫
≪では≫
≪!? お待ち下さい……どちらにッ?≫
≪白銀が負傷した様なのですよ?≫(注:大事なコトなので2度仰いました)
≪ですが殿下。御疲れでしょうし、今は御容赦ください≫
≪……ッ……そうでした。己の立場は理解せねばなりませんね≫
≪申し訳有りません≫
≪よい。では月詠?≫
≪はっ≫
≪せめて、そなたに"代わり"を願えますか?≫
≪代わりと言う事は……いえ、畏まりました≫
≪嗚呼、白銀。大事で無ければ良いのですが≫
≪……(!? い、何時の間にそれ程まで……)≫
……
…………
「……(コレで殿下も御安心なされると言うもの)」
「どうしたんです~?」
「!? 失礼。私は密かに横浜基地へと逃れた後、殿下と共に一度 帝都へと戻って今に至ります」
「……(ま、まさか……彼女は殿下の側近!?)」
「成る程~」
「殿下は白銀少佐達に対し誠に感謝されておりました。全ては"そなた達の大義"だと」
「勿体無い言葉ですねェ」
「では白銀少佐。どうかコレを」
「花束 凄いですね、有難う御座います。じゃあ篁」
「は、はい」
何故か若干 途中で考える仕草が見られたけど、真耶さんは眉一つ動かさず冷静に受け応えている。
そんな彼女から唯依は花束を受け取ると再び洗面台で花瓶に納める作業を始め、尻を眺めながら思う。
……な~んか唯依ってBETAとか居なかったら華道部に入って普通に生け花とかしてそうなキャラだね。
こんな御時世だと言うのに、当たり前の如く花の手入れをする様がそう思わせた。……まさに大和撫子。
「さて置き。帝都の方は どんな感じです?」
「流石に未だ事後処理すら済んでいない状況ですが、早い段階で元の落ち着きを取り戻すでしょう」
「まぁ、斯衛は優秀な人達ばっかですからね~」
「それ程でも有りません」
「えっ?(謙虚だ……やっぱ従姉妹だな~)」
「いくら斯衛が優秀と言われ様と、今回 殿下の身に"この上 無い危険"が及んだのは事実ですから」
「へぇあ」
「それに白銀少佐達の存在が無ければ最悪 殿下の身が決起軍に抑えられていた事でしょう」
「…………」
「となればソレは我々 斯衛にとって死に等しき屈辱。故に私 個人に置いても非常に感謝しております」
「うわっ! 大丈夫ですって、頭を下げて貰わなくても」
「……はっ」
「えっと……ともかく、殿下は実権を取り戻せるんですね?」
「それは間違い有りません」
「……ってなると沙霧大尉達の処罰も殿下の判断って事になりますか?」
「!?」
「彼らの腕ダケは間違い有りませんから、今度はチカラの使い所を間違わせないで欲しいです」
「……(正直 私は奴等は許せん。しかし白銀少佐は実際 見(まみ)え負傷までしたと言うのに……)」
「説得は影武者によるモノでしたけど、アレで沙霧大尉らも目が覚めたと思いますから」
「……(既に殿下に活かして頂く事を考えているとは恐れ入る……流石は殿下が一目置く方だな)」
「月詠中尉?」
「!? そ、そうですね……私も同意です。人類共通の敵は、あくまでBETAなのですから」
「そう言う事~。ホント無駄な被害が出ちゃいましたけど、引っ張らず気持ちを切り替えるに限ります」
「はい(……耳が痛い言葉だな。まるで心を読まれていたかの様だ)」
「……(武さんは既に其処まで……いえ私の切り替えが遅いダケ。今は同じ人間を憎んでる場合じゃない)」
――――真耶さんと会話を続けて居ると、何時の間にか作業を終えた唯依が戻って来ていた。
「篁中尉」
「はい?」
「殿下の護衛に置いて、同じ斯衛である貴官にも感謝 致します」
「!? な、何故 私に?」
「白銀少佐の代わりに貴官が部隊を指揮していたと伺っておりましたので」
「そ……そうでしたか。恐縮です」
「そんな著しい戦果を上げた横浜基地・突撃機動部隊……叶う事なら私も肖りたいモノですね」
「あァ~、それなら暇な時とか有ったら横浜基地まで来て下さい」
「は?」
「事前に知らせてくれたら、幾らでも教えさせて貰いますから」
「――――ッ!?」
……
…………
≪ところで殿下≫
≪何でしょう?≫
≪その……白銀と言う男は、どの様な者だったのでしょうか?≫
≪えっ? えぇと……年が同じダケ有り中々話し易く聞き上手なうえ……≫
≪いや、その様な意味では無く!≫
≪……ッ!? コホン。そ、そうですね……まだ未熟な わたくしが"評価"するのも何なのですが、
同乗した限り非常に戦術機に負担の掛からない操縦をしていました。殆ど酔わない程に≫
≪ふむ≫
≪ライフルによる射撃に置いても、全て敵衛士を生かしつつ戦術機を無力化する手腕を持っており……
更に驚いたのが篁を始め真那達も今迄の戦術機では考えられない機動で決起軍を翻弄していましたね≫
≪な、何と……≫
≪恐らくアレらも白銀による指導から成ったモノなのでしょう。鎧衣から聞いた話によると、
彼は"新OS・S型・新兵器・新システムの発案者、及び開発責任者"……らしいですから≫
≪どれも理解し難いですが……非常に興味深いですね≫
≪はい。近いうちに情報の提供を促して見るのも良いかもしれません≫
≪されど、そう簡単に彼が首を縦に振るのでしょうか?≫
≪ソレは……分かりかねますね。あの香月副司令の右腕でも有る様ですし≫
……
…………
「だから遠慮なく……って、月詠中尉?」
「そ、それは誠なのですか!?」
「うわっ、びっくりした」
「!? し……失礼しました」
勿論XM3云々の恩恵は斯衛の人達にも受けて欲しい。しかし大人の事情で直ぐには無理だろう。
しかし殿下の側近で有る彼女くらいには教えても良いと思うので、当たり前の事を言ったつもりだった。
すると、その直後! 冷静なハズだった真耶さんは、唐突に一歩 足を踏み込むと驚きを露にしたのだ。
これは思わぬサプライズ。よって普通~に驚いていると、彼女は眼鏡の位置を直しつつ姿勢を正す。
「いえ別に良いんスけど」
「……(私とした事が取り乱すとは……しかし、何故"ああなって"しまったのだ……?)」
「まぁ、今のは嘘じゃあ無いんで気が向いたら連絡ください」
「はい(……いくら簡単に許可されたとは言え……"私自身"も嬉しく感じてしまったと言うのか?)」
「そんな所ですかね~?」
「ふむ。では白銀少佐」
「何スか?」
「いずれ殿下との面会を希望されるのであれば、遠慮なく帝都まで来られて良いとの事です。
生憎ながら殿下自身が訪れる事は難しいかもしれませんが……出来る限りの協力はされると」
「ホントですか!? じゃあ、困った時は頼らせて貰いますよ~?」
「ふふふっ……ッ……失礼。では私は之にて失礼させて頂きます」
「遥々と有難う御座いました」
「お気をつけて御帰り下さい」
「はい。御気遣い感謝致します」
≪カチャッ――――バタンッ≫
無難に面会を済ますと真耶さんは浅く頭を下げ、最初と同じ様に凛々しい雰囲気のまま退室して行った。
出来れば名前で呼べるようにしたかったけど、また会える可能性を残せたみたいだし良しとするか~。
真耶さんが来るのは勿論、殿下の方に赴いて良いってのは間違いなくフラグにへと繋がるだろうしね!!
「ふぅ~」
「お疲れ様でした、武さん」
「サンキュー」
「……(涼しい顔をされている。殿下の側近との面会なダケで私は神経を磨り減らしたというのに……)」
「ところで唯依」
「えっ?」
「花の手入れ凄いですね」
「そ……それ程でも無いです」
……
…………
……謙虚な唯依の受け応えから左程 掛からずに伊隅が入室して来る。何だか久しぶりに近くで見たな~。
先月の25日の模擬戦 以来だろう。(28話 参照)ヤケに詳しいなって? 経過は毎日メモって有るのだ。
それはともかく。先ずは軽く挨拶を交わし合うと、早くも彼女は手に持っていたモノを差し出してく来る。
「早速ですが白銀少佐。コレを受け取って頂けませんか?」
「これは色紙?」
「はい。皆の"寄せ書き"が記して有るダケの粗末なモノですが」
「いや~ッ、そんな事 無いですって。でも……どうして?」
「機体の恩恵で最初こそ順調だったモノの、終盤は甚大な被害は免れない撤退戦で有ったにも関わらず、
我々は誰一人も欠ける事無く生還できました。故に何と言うか……その記念とでも申しましょうか……」
「ほほ~」
「されど白銀少佐に渡しても筋違いと思われるかもしれませんね」
「確かに折角のヴァルキリーズの記念品を受け取るのは、ちょっと僅かに気が引けるんですけど?」
「しかしですね。皆が白銀少佐に受け取って欲しいと言う意見で一致したのです」
「!? じゃあ伊隅大尉も同じ考えだったと?」
「……ッ……は、はい。S型の発案に加え、我々を救ってくださったのも白銀少佐なのですから」
「……(伊隅大尉も"こう言う顔"が出来るのね……)」
「だったら受け取らない訳には いきませんね~。有難う御座います!」←ウザ・スマイル発動
「と、とんでも有りませんッ」
――――何と予想外にもヴァルキリーズ12人全員のサイン入り色紙ゲットだぜ!!(違うって)
「他の皆は今日は何を?」
「特に何も予定は有りませんが、整備やシミュレーター等 行っている者も居る様です」
「速瀬がシミュレーターを遣ってるってのは簡単に予想がつきますけどねェ」
「ふふふっ。速瀬中尉は またもや白銀少佐に助けられた事が癪だった様です」
「全く素直に喜んでくれりゃ良いのに」
「……(しまった、つい……速瀬にバレたら怒鳴られてしまうわ)」
「まぁ、熱心なのは良い事ですけどね」
「はい(……けど白銀少佐は妙に話し易い人だから、つい余計な事まで喋ってしまう……)」
「ともかく、コレは部屋に飾らせて貰いますよ~?」
「!? そうして頂けるので有れば……皆も喜ぶと思います」
「伊隅大尉も喜んでくれますよね?」(キリッ)
「……ぅッ……も、勿論です」
「あははっ、そりゃ~良かった」
――――ヤベぇッ! 俺キメェ!! 念願のサイン入り色紙の所為で舞い上がっちまってる様だ。
「……(ど、どう言う事? 何故か白銀少佐の顔を"まとも"に見れなくなっている……)」
「じゃあ他のヴァルキリーズの皆にも"有難う"って言って置いて下さい」
「……っ……」
「伊隅大尉?」
「えっ!? は、はいッ! 了解しました!!」
「うわっ、びっくりした」
「では白銀少佐、私は そろそろ失礼させて頂きますッ!」
「えっ? ちょっと、まだ早いんじゃ――――」
「では!!」
≪ガチャッ――――バタン!!≫
「へぇあ」
「……(余程 伊隅大尉には"あの時"の武さんが頼もしく映っていたのね……自覚も無しに)」
「……やだ、なにこれ……どう言う事なの……?」
「次はウォーケン少佐になりますね」
「……(スルーかよ!!)」
「一応その色紙も立て掛けて置きましょうか?」←非常に冷たい表情
「よ、宜しく御願いしま~す」
……
…………
……10分後。
「まさかウォーケン少佐が来てくれるとは思いませんでしたよ」
「生憎 上からの命令でな」
「命令ですか~」
「おっと、気を悪くしないでくれ。此処に要るのは本意だ……貴官には謝罪したかったからな」
「何とォ」
「先日は……本当に すまなかった。テスレフの意図に気付けなかった私に全ての落ち度がある。
もし貴官が庇わず説得が"ぶち壊し"になってしまったら、取り返しのつかない自体になった筈だ」
「そんな責任を感じなくて良いですって。俺が気付けたのは偶然ですから」
「ふむ。しかし、それダケでは無い」
「どういう事です?」
「私がテスレフを疑わなかった事から、御剣 訓練兵に殿下の代わりを担わせる事を喋ってしまったのだ。
"あれ"さえ無ければ奴が横槍を入れてくる事は無かった。無論、貴官に怪我をさせる事も……な」
「まぁ……アソコでイルマ少尉が動かなかったら、違う場面で"同じ事"をしてたのかもしれません。
最悪 代償として本人やら他人やらの命が無くなったり……だから犠牲者が無かった分、マシですって」
「だ、だがな」
「俺の怪我も全然 大した事 無いんで気にしなくて良いです。何せ3日程で治りますから」
「そうか。ならば これ以上は止めておくが……」
「はい?」
――――5人目のウォーケン少佐は会話の合間に視線を棚の方に移す。有るのは盆栽と2つの花瓶+色紙。
「何か気の利いたモノぐらいは持ってくるべきだったんだがな」
「別に構いませんって」
「……(思ったより甘いな……いや、既に気持を切り替えていると言う事か)」
「ところで」
「何かな?」
「どうしてスーツ姿なんスか?(AFを思わせるんだけど)」
「むっ? コレはだな……いかんせん米軍の者と勘付かれては居心地が悪くなりそうだからだ」
「成る程~。しっかし何でワザワザ少佐を見舞いに来させたんでしょうかね~?」
「……余り大きな声では言え無いんだが、我々に全ての責任を押し付けたかった為だろうな。
あの"一件"はテスレフの独断であり……止められなかった3人の随伴した衛士達にも非が有ると」
「そして"横槍"をした者達を纏めていたウォーケン少佐にも、気付けないのは仕方ないにしても、
多少は責任が有るので、せめて謝罪しに行け……ってワケですか? 違ったらスイマセン」
「いや……察しの通りだ」
「だけどイルマ少尉達の出撃を許可したのはウォーケン少佐じゃ無いんですよね?」
「うむ、だが軍人として命令は聞かねばならん。降格しなかったダケ良しとしなければな」
「ポジティブに考えましたね」
「そうでも思わんと遣ってられんよ」
「ですよねー☆」
「……(うぅ、話しに入る事すら出来ない……)」
そう言って苦笑するウォーケン少佐は意外と話し易い人だった。男同士ってのが大きいのかもしれない。
しっかし背広姿って事で便利アイテムの翻訳機を使ってる様子が無く、日本語ペラペラなんですね~。
考えてみればイリーナちゃんは勿論、セレナ中尉・テレサ中尉も普通に話してたし天才ばっかだな此処。
「では……話は変わるが」
「何ですか?」
「テスレフら4人は横浜基地に居ると聞く。処遇は決まったのか?」
「それは~ッ」
「口止めされているのなら無理に答える必要は無いぞ」
「えっと……イルマ少尉らは近いうちに俺の"突撃機動部隊"への加入を考えています」
「!?」
「まだ決まったワケじゃ無いんですけどね。いかんせん人数不足なモンで」
「だが流石に……いや、それも有りかもしれんな」
「遊ばせて置くには惜しい人材って聞きますからねェ」
「うむ。非常に優秀な連中だと思うぞ(……確かに処分されるよりは、断然マシと言えるだろう)」
「はははっ、ウォーケン少佐の御墨付きなら期待できそうです」
「それならば……彼女達を頼む。決して私の言えた義理では無いんだが、仲間でも有ったしな」
「勿論、善処しますよ」
「すまない」
「いえいえ」
そう言ってウォーケン少佐は俺に軽く頭を下げた後に近付いて来ると、無言で右手を差し出して来た。
対して意図を理解した俺は立ち上がると、右手を差し出して握手をする。流石に座ってする気は無いZE。
見た目に反してホント良い人だわ彼。イルマ少尉たちの心配もしてるし……こりゃ~頼まれるしかないわ。
ともかくコレで無難に済んだのかな~? よって、そろそろ会話を切り上げ様かと考えて居ると……
「では白銀少佐」
「はい?(……お開きかな?)」
「唐突で済まない。私と一緒に写真に写って貰いたいんだが……構わないだろうか?」
「シャシン~?」
「此処にキャメラは用意してある」
「キャメラって言うな!」(小声)
「むっ? 何か言ったか?」
「な、何でも無いッス」
「では篁中尉。撮影を頼めるだろうか?」
「えぇっ? あっ……了解しました」
「スイッチは此処だ。シャッターも自動だから安心してくれ」
「は、はい(……写真撮影……そ、その手が……)」
「しっかし何で俺と写真なんて?」
「そ、それはだな……っ……只単に私の趣味だ」
「成る程」
「では白銀少佐・ウォーケン少佐。と……撮りますよ?」
「オッケー」
「宜しく頼む」
≪――――カシャッ!!≫
/ ̄ ̄\
/ ヽ_ .\
( ●)( ●) | ____
(__人__) | / \
l` ⌒´ | / ─ ─ \
. { |/ (●) ( ●) \
{ / | (__人__) |
,-、 ヽ ノ、\ ` ⌒´ ,/_
/ ノ/ ̄/ ` ー ─ ‘/>< ` ー─ ‘ ┌、 ヽ ヽ,
/ L_  ̄ / _l__( { r-、 .ト
_,,二) / 〔― ‐} Ll | l) )
>_,フ / }二 コ\ Li‐’
__,,,i‐ノ l └―イ ヽ |
l i ヽl
2001年12月07日 戦友(とも)と一緒に
そんな訳でイキナリだったけど、俺はウォーケン少佐と共に彼のカメラで撮影された。唯依の手によって。
ポーズとしては互いに肩を組んでベッド上に腰掛けた状態となっており、特に相談せず自然にこうなった。
何だか予想外の趣味を持ってたんだなァ……でも全然OKだ。出来れば俺も一枚 欲しいくらいだったし。
でも欲張るのは良く無いから我慢する事にして、ウォーケン少佐は唯依とも握手すると退室して行った。
う~ん……彼ともまた共闘できれ良いんだけどなァ。米軍だから無理だとは思うけど、願うダケなら只さ!
さて置き。後は巌谷さんダケだから気が楽……じゃ無いか。唯依との一件がバレない様に注意しないとね。
「(……いくら妹達の頼みとは言え、我ながら柄にも無い事を頼んでしまったモノだ)」
≪し、白銀少佐と写真に写れだと!?≫
≪ねッ? 良いでしょ~? 兄さん!≫(テレサ)
≪カメラは此処に有りますからっ!≫(セレナ)
≪何故 いちいち私が……自分達で頼めば良いだろう≫
≪そ、そんな恐れ多い事 出来るワケ無いじゃない!≫
≪どうか御願いします兄さん……後生ですからァッ!≫
「(当然 私の姿は"切り抜かれる"んだろうが……折角なので私にも一枚 焼き回しを頼むとするか)」
――――余談だが撮影を終えた後、唯依は再びブツブツと呟いていた。巌谷さんが入室するまで。
「……(是非 武さんと一緒に写真を……それよりコッソリ撮影して……いえ、先ずは取り寄せを……)」
「……(き、今日の唯依は大丈夫なのか? もしかして、この随伴の所為で疲労が限界を超えてたり?)」
……
…………
……数分後。
「巌谷さんも来てくれたんですね~」
「ははは。偶然 ピアティフ中尉が君への面会を受け付けていたのを見てな。便乗させて貰ったよ」
「SⅡ型の件に関してはスイマセンでした(……何千万か無駄にした事になるし……無いわ~)」
「クーデターでの任務内容に関しては全て唯依ちゃんに聞いて居るからな。あの程度なら全然構わんさ」
「有難う御座います」
「謝罪など要らんよ。むしろ此方が礼を言いたいくらいだ」
「ありゃ」
「我が娘に"晴れ舞台"を用意してくれて……ね」
「そっちですか!?」
「お、叔父様ッ!!」
「いや冗談だよ。ともかく御陰様で"01式 支援狙撃砲"の正式採用が早まるだろう」
「ほほぉ~」
「ショットガン……"01式 拡散突撃砲"もトライアル迄には間に合わす事が出来そうだよ」
「トライアル?」
――――原作を知る俺は当然知っている事なんだけど、此方では知らされていないので首を傾げた俺。
「おっと、白銀少佐は知らなかったかな? 香月副司令が近いうちに開こうとしているんだ」
「次世代OSが公になる時が来るってヤツですか?」
「その通りだ。早くて10日には行われるだろう」
「ふむ(……"だろう"って事は完全には固まっては無いんだな。色々と開発させちまってたし)」
「それを機にSⅡ型も披露される様ですね」
「うむ。例の"カラーリング"で拡散突撃砲と共に出す予定だ」
「成る程~」
「香月副司令 側も"殴る兵器"を装備した不知火を御披露目する様だし、今から楽しみで成らんよ」
「その頃には俺の怪我も完治してると思います」
「で、ですが白銀少佐は……」
「勿論 無理をさせる気は無いさ。その場合は唯依ちゃんに頑張って貰うよ」
「はいッ!」
考えてみればトライアルの事まで全然 頭が回って無かったな~。でも未来を知ってた分、必然だよね?
間も無くクーデターが発生って時にトライアルの事なんて気にしてられっか。忘れてたダケとも言うけど。
反面 正史の白銀は知らなかったからこそ、"この時点"でトライアルの存在を理解していた……と思う。
そう考えてみれば多少XM3の御披露目は遅れるかもしれないけど、日数には余裕が有るし許容範囲。
まりもちゃんが食われず無難にトライアルを終える事が出来れば、白銀が逃避する事も無いのだから。
いや……もし食われ様が既に実戦を経験している俺は今更 逃げる事は無いだろうけど……って自重しろ。
そんな事を考えるの自体 問題外じゃないか!! トライアルは成功にて〆られるんだ、何の躓きも無くね。
……と久しぶりに真面目な考え事をしながら、巌谷さんの言葉に威勢良く応える唯依を眺めて居ると……
「さて置き今朝の唯依ちゃんなんだがね」
「!?」
「はあ」
「最初は俺と新武装についての打ち合わせをしてたんだが、見るからに君の事を心配していた様でね」
「ほ~」
「お、叔父様ッ!」
「元から10分程度で終わらせる予定だったんだが、俺が行く様 許可を出すまでソワソワしっ放し。
そりゃァ~ホント可笑しい有様で、白銀少佐にも見せてやりたかったモンだな。わははははっ!」
「な……ななな何を言うんですか!? 今は面会の場だと言うのに……!!」
「良い部下だと感心はしますが、何処も可笑しくは無いですね」
「あっ……(笑われない? わ、私の気を察してくれたの……?)」
「ほお」
「だから、もっと違う事を聞きたいんスけど」
「!?!?」
「むうッ……良いだろう、ならば取って置きの話を"幾つか"してやるとするか!!」
「……(ひ……酷いです武さん、叔父様……でも)」
「もう10年以上 前の話なんだがな~」
「……(ワクワク)」
「……(武さんに私の事を もっと知って貰うのも……悪く無いかもしれない)」
「実は唯依ちゃんはな。それなりの年まで おねしょを――――」
「!!!!(でもソレは絶対ダメですよ叔父様ああぁァーーーーっ!!!!)」
――――無論 巌谷さんによる秘蔵の情報は、唯依の人権を考慮して省略する事にします。
……
…………
……シャワー云々の件に関しては、巌谷さんが はっちゃけていた所為で話題にすら成らず助かりました。
つまり(自分にとっては)滞りなく巌谷さんとの面会も終えたので、大人しくベッドの上で横になっていた。
何故なら例の用紙に面会後は此処で休めと書いて有ったからであり、飯は看護士が持って来るとの事。
ちなみに唯依と巌谷さんが退室した直後に"うわらば!!"と断末魔が聞こえたが気にしないで置こう。
言える事は巌谷さん御愁傷様……それダケだ。完全に自業自得だが、リスクを考える限りマゾなのか?
「ないわ!」
ともかくコレからも忙しくなりそうだZE。数式の回収にトライアル……やや間を置いて佐渡島かな?
いやその前に千鶴達……特に冥夜を安心させてやらないとダメな上に、イルマ少尉らとの交渉も待ってる。
されど不謹慎とは言え楽しみでも有るかもしれない。サ●ヤ人でも無いのにワクワクしてるって事は……
ようやく"この世界"に慣れて来た今、白銀大佐の恩恵も有って今後も頑張れる気がして成らない為だろう。
けど油断はマジで死に直結するし……特にトライアル以降は気合を入れなおさないとダメっぽいね~。
「こっちの穴も綺麗に洗ってあげるよ? 唯依たん……アッーーーー!!!!」
――――けど夕飯を終えた後 病室の施錠をした白銀は、予告通りのネタでつい抜いちゃったんだ☆
≪何時でも……覚悟は出来ていますからッ≫
≪そうなのかい? だったら その時は……≫
≪……ぁ……≫
≪9回で良い≫(謙虚)
「……あぅッ……くぅ……これで4回……けどもうダメ……ハァハァ、9回なんて……む、無理……」
――――んでもって白銀の言葉を別の意味で捉えた篁中尉も、今夜は5回も自慰ちゃったんだ☆
●戯言●
全てはあのAAを貼りたかった為の面会だと言っても過言では有りません。これで当分AAは自重します。
しかし肝心のAAがズれていますが本家の方はちゃんとしたのを貼りますので、勘弁していってね……orz
●追記●
感想で気付きましたが、伊隅大尉の面会の部分を切り取って投稿していた様です。(恐らくコピペのミス)
御陰で思い出しながら書き直す羽目になってしまいましたorz 元から短めだったのに助けられましたね。