これを装備するのは、何時振りだろうか。
随分とみずぼらしくなったものだ。両手で抱えて、そう思った。たび重なる連戦のせいで殆どの機能を失い、ベルト部分と砲撃一発分だけを残して、残りは捨て去らざるを得なかった事を思い出す。
最後に装備していた時の事は……しっかり覚えている。けどそれから今に至るまでに、どれだけの時間が経過したかは分からない。
酷く長い時間が経過したように感じるし、或いは自分の体感以上に短いかもしれない。
そんなくだらない事を考え、思わず彼女は自嘲を零した。
――――よくもまぁ、こんな役立たずがモノを言えるネー……
犠牲を前に心を閉ざした。
絶望を前に歩みを止めた。
仲間の声から離れ。
外界を拒絶して引き籠り。
何一つとして働きはしなかった。
――――それが今更、何を思って立ち上がろうと言うのか?
「……Yes, ……yes I know it」
久しぶりに装備した艤装は、腰が砕けそうなほどに重かった。
久しぶりに着けた戦闘服は、肌を切りつけるように痛かった。
久しぶりに指した髪飾りは、頭を締め付けるように苦しかった。
膝が震える。
視界が揺れる。
心が砕けそうになる。
あの日の光景が、脳裏にフラッシュバックする。
「っ!」
せり上がってきた吐き気。排出した逆流物。拒絶する本能。
この数日はロクに食事も摂っていないというのに、身体というのは何時だって正直だ。何も無いのに吐き出そうとする。負担を軽減しようと、勝手に負担を掛ける。
壁に手をつき、荒々しく口元を拭く。ままならない身体への苛立ち、軟くなった根性への苛立ち。
そして。
それらを肯定する様な、甘い誘い。
「……っ! Go F●●K yourself!」
大声を上げて。自らに喝を入れるように。
全力で床を踏み抜く。
「Don't disturb my way!」
声が聞こえていた。
ずっと。此処に来た時から。此処に引き籠った時から。
それはとても優しく、甘く、耐え難い誘いであって。
ある時は司令官の声で。
ある時は仲間の声で。
ある時は妹の声で。
ある時は別の誰かの声で。
「動け、動け、動け、動けええぇぇえええっ!!!」
振り払う。振り払う。振り払う。振り払う。振り払う。振り払う。振り払う。
声を。声を。声を。声を。声を。声を。声を。
歩みを止めようとする声を。
膝を砕こうとする声を。
意思を折ろうとする声を。
どこかで聞いた事のある誰かの声を。
纏わりつく幻聴も、ありもしない幻想も。
全てを振り払って、全てを置き去りにして。
屈しない。屈しない。屈しない。屈しない。屈しない。屈しない。屈しない。
もう、私は屈しない――――っ!
「……Yes, ……こんなところで留まっているわけにはいかないネー」
動いてしまえば問題無い。
動けてしまえば問題無い。
先ほどまでが嘘のように。
足取りは重い。艤装は重い。不快感が酷い。
それでも。
迷うことなく、足は動いてくれる。
そうして。
厳重に閉ざしていた扉に、手をかける。
さぁ、行こう。
もう、後戻りはしない。
■ 艦これ×Fate ■
『女』という漢字を三つ集めると『姦しい』という言葉になる。
意味は、『やかましい』。
『女はおしゃべりであり、三人集まるとやかましくなる』ことから作られたらしい。
家の虎は一人でも三人分はやかましいけどな。ひと時たりとも静かになりゃしない。妹分が物静かな子だから、より一層際立つのだ。良い意味でも、悪い意味でも。
そんなくだらないことを考えながら、士郎は現実へと意識を戻した。
「ねぇねぇ、衛宮さん? 他に私に出来る事は無い?」
「あらあら、そんな風に急かしたら衛宮さんも困っちゃうわ。それよりも、私とお話しましょ? 衛宮さん」
「あの、ね? 二人とも静かにした方がいいと思うよ。その、衛宮さんも困っているみたいだし……」
上から順に、雷、荒潮、そして三日月。木曾から名前だけは聞いていた駆逐艦の三人。
茶色がかかったショートヘアーで、終始明るい子が雷。
やや薄めの黒色セミロングで、どこかミステリアスな子が荒潮。
黒色のロングヘアーで、二人に比べると常識的な子が三日月。
何れも士郎とは初対面である。
「だって衛宮さんは大怪我をしているのよ? 誰かが付いていてあげなきゃ」
「気を使わすのは寧ろ逆効果だと思うわよ。だから、ね? お話しましょ、衛宮さん」
「……いや、怪我しているんだからこそ安静にするべきじゃ……」
終始笑顔を絶やさない雷。
何故か誘うような口調の荒潮。
そして申し訳なさ気な三日月。
三人とも言っている事は正しいし嬉しい。一人で寝るのは確かに心細いし、けど気を使われるのは本意ではない。
けれど。それより、何より。
寝たい。
安静にして寝たい。
「二人とも何を言っているのよ。それじゃあ衛宮さんに何かがあった時に助けられないわっ」
「その理屈でいけば、一人が付いていれば大丈夫そうね。二人は疲れているでしょうし、私が残るわ」
「……もうすぐ叢雲ちゃんたちも戻ってくるし、私たちは出て行った方が良い……と、思うなぁ……」
若干ヒートアップしてきた雷。
さりげなく手を握ってくる荒潮。
どんどん小声になっていく三日月。
嬉しい。気持ちは嬉しいんだ、確かに。でも現状で一番欲しているのは、何においてもまずは休息である。睡眠である。身体は何時だって欲望に正直なのだ。
が、だからと言って純度100%の善意を無下に扱うなど、士郎には出来る筈が無い。
「私が残るわよ。一番最初に来たしっ!」
「じゃあ交代ね。今度は私の番。衛宮さんのことは任せて頂戴」
「……」
「ははは……」
自分の正当性を声高らかに宣言する雷。
何故か煽るように言葉を選ぶ荒潮。
とうとう声を発すること諦めた三日月。
良いんだよ、三日月ちゃん。ちらちらと視線を向ける彼女に、士郎は言葉の代わりに精一杯の笑顔で返す。本当にごめんなさい。三日月は申し訳なさ気に小さく頭を傾けた。
アイコンタクト。
出会って間もないというのに、二人は目だけで意思疎通が出来た。互いが何を考えているのか、二人は分かりあう事が出来た。だがそれは、この場限りにおいては、全く以って役に立たないものでもあった。
「わ・た・し、がいるから大丈夫よ」
「誰がいても同じよ。だったら私が残るわ」
「む」
「ぐ」
額と額をごっつんこ。自らの意見を押し通そうとするべく睨みあう雷と荒潮。
あははー、と。乾いた笑いが士郎の口から零れた。同じくして三日月からも零れた。この状況をどうにかする手立てなど、二人は持ち合わせてはいなかった。目の前の争いを遠巻きに見る事しかできなかった。
誰か助けてくれないかなー。
第三者の介入を望む様に、全くの同時に二人は天井を見上げた。
「……うるさいのよ。廊下まで聞こえるわ」
そんな二人に救世主が。
「何の騒ぎよ。頭に響くから、もう少し静かにして頂戴」
流れるような薄水色のロングヘアー。
不機嫌そうな、そして意思の強そうな紅玉色の瞳。
ボロボロの、包帯が見え隠れする服装。
「……此処までで良いわ」
「ううん。寝るまではダメです」
そしてもう一人。
揺れる二本の三つ編み。
優しげな黒色の瞳
同じくボロボロのセーラー服。
「……少しお節介すぎじゃないかしら、磯波?」
「だったら貴女は無茶しすぎです、叢雲ちゃん」
駆逐艦、叢雲。
駆逐艦、磯波。
「あ」
思わず声が零れる。
「え」
叢雲が此方を向いた。
「え」
磯波も此方を向いた。
「……」
混じり合う三人の視線。
黙ってしまった六人。
停滞した場。
完全なる静寂。
空気を読んで、口を開こうとした三日月を遮るように、
「……悪いけど、そこの阿呆に言いたい事があるから、三人は出てって貰えるかしら」
底冷えする様な声が、空間を支配した。
■
人が変われば、空気も変わる。
先ほどまでの喧騒は何処へ。
静まり返った室内に響くのは、やや不機嫌に自らの腕を叩く叢雲の指の音。
彼女は腕と足を組み、目を瞑ったまま士郎のすぐ横に座った。巻かれた痛々しげな包帯を、一切気にする様子も無かった。それどころか酷く威圧的であった。
一瞬。傍らに座っている磯波に視線を送る。
だが彼女は、困ったように笑みを浮かべて頬を掻くだけだった。
「……色々と言いたい事はあるけど、まずは無事に目を覚ましたようで安心したわ」
そんな静寂を破ったのは、感情を押し殺したような、抑揚の無い声だった。
酷く疲れたように叢雲は息を吐き出していた。言葉とは裏腹に、態度は感情を隠し切れていない。溢れ出そうな感情を抑えつけている事が士郎には分かった。そしてその感情の正体が何であるかも、彼には見当が付いていた。付いてしまっていた。
「身体の具合はどう?」
「あ、ああ。問題はな……いや、ある。うん、大丈夫じゃない」
ギロリと。睨まれる。指向性を持った感情が、士郎に浴びせられる。
即座に言葉を飲み込み、場の――と言うか叢雲の――空気を読んだのは、正解だっただろう。
それは叢雲の一睨みは元より、傍らに座る磯波を見れば瞭然であった。何せ彼女は先ほどの士郎の返答に、胸を撫で下ろしていたのだ。無論叢雲にばれないように、こっそりとだが。
「暫くは動けそうにないかな。自由に動かせるのは、右手だけだ」
「当然でしょ。よくもまぁ……生身の人間が深海棲艦に立ち向かおうなんて考えたものね」
命があっただけ儲けものだって言うのに。小声で文句が追加される。察するに、どうやらその後の顛末も耳にはしているらしい。
ちらりと。視線を磯波に向けると、彼女はにこやかな笑みを浮かべていた。そしてそれは士郎に向けられている。だがその笑みをそのままに受け取れそうにない事を、士郎は直感で悟っていた。
例えるなら……そう、それは――――
「……聞いているのかしら?」
「え、あ、勿論」
地の底から響くような声、と例えるのは幾らなんでも失礼だろう。
不機嫌そうな声に対し、迅速にかつ明朗に士郎は答えた。女の子を無下に扱うな、とは今は亡き養父の教えの一つである。尤も傍から見て見れば、今の態度は疑って下さいと言わんばかりの変貌だったが、本人にそれを知る余裕は無い。
疑わしげに睨みつけていた叢雲だが、追求する事はしないらしい。代わりに、
「で?」
「え?」
「怪我の具合。どの程度なのよ」
木曾は言っていた。左腕と右足は折れていると。左足は腫れてはいるものの、折れてはいないとも。
尤も、感覚が無い状態では大差はないだろうが。
正直に、そのままに伝える。
「そう……」
考え込むように、彼女は目を伏せた。
そして、
「……じゃあ、本当に動けないのね?」
満面の笑みと共に、彼女は顔を上げた。
「……あー、叢雲さ……っ!?」
背筋を伝う冷や汗をはっきりと知覚する。身体が震えそうなほどに寒気がする。
分からない。分からない。分からないけど、よろしくは無さそうな事が起きそう。
そしてその直感を肯定するかのように、口を開いた士郎の顔を、叢雲の両手がしっかりと掴んだ。
「……あのね、私ね。感謝はしているの」
満面の笑みだった。年頃の少女らしい、可愛いらしい笑みだった。それは彼女の魅力が詰まったような笑顔だった。
きっと。きっとこんな状況じゃなければ見惚れていたに違いない。
ちらりと。視線を磯波に向ける。
彼女は士郎に手を振っていた。叢雲と同じような、だけど少し困った様子の笑顔で。
額を汗が流れる。
「磯波もアンタには感謝をしている」
「……」
「でもね、それとは別にね。アンタには言わなきゃいけない事があると思うの」
「……は、はい」
「……耳を」
「……耳を?」
「耳の穴をよーくかっぽじって聞きなさい」
にっこり。
ぎゃひー。
■
「まぁ……とりあえずはこんなもんかしらね」
満足げに手を離す叢雲。
解放された士郎の頭は、重力に引かれるようにして枕に埋まった。
耳を通して揺さぶられた脳は、既にオーバーヒート状態。
大凡三十分近くの説教は、疲れ果てた心身には充分過ぎる代物だった。
「私の言葉をしっかりと反芻しなさい。忘れる事は許さないわ」
乱暴気に椅子に座り直し、鼻息荒く叢雲は言葉を投げつけた。
代わって、今度は磯波が士郎の枕元へやってくる。彼女は枕元に屈みこむと、小声で士郎に囁いた。
「あの、衛宮さん。叢雲ちゃんの事、誤解しないでくださいね。その……」
「……うん、分かっているよ」
叢雲が俺の事を心配して説教してくれたくれたことくらい。僅かに頭を起こして、磯波に応える。そうとも、分かっている。自らの力量を勘違いする程、阿呆なつもりでも無い。
生きているから良い、という結論で済ませられる話ではないのだ。
士郎の言葉を聞いて、安堵したように顔を綻ばせる磯波。当然だと言わんばかりに胸を張っている叢雲。
説教の内容以上に、二人がこうして心配してくれている事の方が、士郎にとっては心に来るものがある。
「なるべく今後はしないように気をつけるよ。俺だって死にたくは無い」
「どーだか。……けどまぁ、落とし所としてはそんなところかしらね」
「あはは……」
説教で疲れたのだろうか。大きな欠伸を零して、叢雲は椅子を立った。そしてそのまま、もう一つのベッドに身を投げた。もう、寝る。そう言い残して。
「……アンタも寝なさい。まだ疲れているんでしょ」
ごろりと。背を向けられる。これ以上は何かを言うつもりは無いらしい。
その様子に。くすりと笑みを零すと、磯波は士郎に向き直った。
「衛宮さんもお休み下さい。交代制で誰かしらは此処に居るので、安心して寝て頂いて大丈夫ですよ」
そう言って額を拭いてくれる。強い子だ、と士郎は思った。本人も疲れているだろうに、まったくその素振りを見せはしない。それどころか他人を気にかける余裕すら彼女は見せている。
その姿は、はっきり言ってしまえば意外。失礼ながら、初対面の時と同じ人物だとは思えなかった。
「人が違う、と思っていますか?」
そんな士郎の考えを見透かしたかのように、思考を言い当てられる。
顔に出ていたか、と。一も二も無く士郎は謝ろうと口を開いた。ここでの弁明は、全く意味を成さないからだ。
が、それよりも磯波の言葉の方が早かった。
「……本当に、感謝をしているんです」
ボソリと。彼女は呟いた。
「あの時、私は怖くて動けなかった。叢雲ちゃんが叩きつけられた後も、私は動く事が出来なかった」
なのに、衛宮さんは違った。貴方には立ち向かう勇気があった。
あの時とは、間違いなくヌ級の襲撃の事だろう。思い返すだけで左腕が痛んだ。
「叢雲ちゃんを助けてくれてありがとうございます。そのおかげで、私は動く事が出来ました」
その後の事も、全部。
優しく右手を握られる。
「ありがとうございます。本当に、ありがとうございます」
両手で優しく包み込まれた右手が、そのままがっちりと磯波の胸元でホールドされる。
潤んだ瞳で彼女は士郎の事を見ていた。屈みこまれているせいで、士郎の顔には彼女の息が当たっている。そして握りしめられている右手からは、少し早まっている鼓動を感じる事が出来た。
魅力的であり、また魅惑的。
瞬間的に熱くなる顔。赤面した事を自覚し、思わず視線を磯波から外し、
――――シロウ
一瞬で、冷えた。
――――コロス
ニッコリと。笑っている。視線の先で笑っている。
誰が? 叢雲が。
誰に? こっちを見て。
笑っている。
笑っている。
笑っている。
――――コ・ロ・ス
声は出ていない。動いたのは口元だけ。
だけど士郎には、叢雲の声が聞こえた。含まれている感情の温度までも感じ取っていた。まるで鋭利な刃を喉元に突き付けられたようだった。心の底から冷えてしまいそうな、絶対零度の感情が士郎に向けられていた。
それは宣言だった。
弁解の余地などは無かった。
彼女の目に映るものが全てだった。
紛う事無き死神の姿を、士郎ははっきりと目にしていた。
『ええい、お姉ちゃんは悲しいっ! まさか弟が痴情の縺れで死ぬなんてっ!』
いや誰だよ、お前。お前みたいなのが死神とかふざけんな。あと痴情の縺れって何だ。
パチクリ、瞬き三回。
死神(?)の姿を掻き消す。
『士郎おおおおおおおおおおおおおおっ!!!』
うるせぇ、黙れ。
何となく聞き覚えのある声を残して、幻覚は振り払う。そんな紛いモノよりも、明確な死神が目の前では笑っているのだ。それの方が重要なのだ。
アハハー、ヤバいかなー。
思えど、声には出さない。それは幸せそうにほほ笑む磯波の邪魔をしたくなかったし、死神の姿を彼女には見せたくなかったからだ。
「た、た、大変よ、皆っ!」
盛大に開け放たれた扉。勢いよく士郎から離れる磯波。飛び込んでくる小柄な体躯。
ナイスタイミング、雷。
目に映った人物に、心の中で感謝を。思わず安堵の息が零れる。情けない話ではあるが、心身ともに色んな意味で危ないところだった。本当に。
「どどど、どうしたの雷ちゃん!?」
「た、大変なの! 凄い事なの!」
大変、というわりには深刻そうには見えない。一瞬敵の襲撃を想像したが、雷の様子を見るに、そんな危うい事態ではなさそうである。
じゃあ、一体何だ?
彼女に遅れる形で、荒潮が入ってくる。が、彼女も雷と同じで要領を得ない。必死に説明しようとして空回りをしていた。重要な事は何一つ説明される気がしなかった。
「ったく……」
落ち着きなさい、アンタら。疲労の色濃く叢雲は言葉を吐き出した。身を起こし、注目を自身に集める。
叢雲に目が行ったためか、二人の勢いが若干弱まった。が、事態はそれに留まらない。
「Oh! ここが医務室ですネ?」
驚いたように叢雲が眼を開く。
驚いたように磯波の口が開く。
「Humm……ここに居ると聞いたのですが……」
人影が入ってくる。
頭の頂点が跳ねているのが特徴的な、ブラウン色のロングヘアー。同色の、活発そうな瞳。やや汚れが付着しているものの、彼女の整った顔立ちに損ないは見られない。つまりは早い話が、トンデモナイ美人がそこにはいた。
身に着けているのは、白を基調とした巫女服のような服装。そしてその腰には、武器のようなものがぶら下がっている。
と言う事は、彼女も艦娘の一人?
「Oh!」
疑問に思った矢先に、彼女は声を上げる。浮かべたのは、磯波に勝るとも劣らぬ満面の笑み。
彼女は早足で士郎の目の前へ来た。思わず退いた磯波。そしてその空いたスペースに入り込むと、右手を両手で握りしめられた。
「Hello、Mr.衛宮!」
「My name is 金剛。よろしくネー!」