<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[41247] 【コトブキヤFA掌編】フレームアームズ・ガール激闘録
Name: str(すてあ)◆87c5f11c ID:98ad8ed0
Date: 2015/05/31 05:14


 本作は、筆者がコトブキヤのプラキット、フレームアームズ・ガールを買い損ねた悲しみを解消するために書き連ねた掌編の連作です。



《免責》
・大体一時間一本勝負で書き連ねたものです、短いです
・誤字脱字もあるかと思いますが、修正は余りしません。
・出てくるキャラクターは、キットのインストにかかれたあらすじの登場人物ですが、大きく性格を逸脱したものもいます。
・そもそもフレームアームズ・ガールはスピンオフ企画のはず、フレームアームズ本編には(きっと)絡みません。

・筆者がフレームアームズ・ガールを手に入れるまで不定期で連載される企画です。
…………どうか…………早く……再販を。



《筆者のほかの作品(長期休止中の作品も含みます)》

 arcadia内
短編:《細かすぎて伝わらないガンダムビルドファイターズトライ》
長編:《究極(リリカル)!!変態仮面【A’s編】》
   《究極(短編集)!!変態仮面》
XXX板:《【ミニ四駆】ぼくのマシン【一人ジャパンカップ会場】》

 小説家になろう(620(むに丸)名義)
長編:異世界の恋愛メソッドで君もモッテモテ



[41247] 第一話:フレームアームズガールが手に入りました
Name: str(すてあ)◆87c5f11c ID:98ad8ed0
Date: 2015/05/31 05:16
  リロイ・ハロルド准尉は格納庫のタラップに膝と掌を付いた。
 発注とちがうじゃん――――――その瞳から熱い涙がこぼれる。

 彼は苦労人である、補給部隊から何の因果か最前線へおとり任務に駆り出され、いけ好かない上司に気に入られ、
果ては先日の月面制圧作戦でまたしてもババを引かされた(くわしく話すと長いので端折る)
 そんな風に戦場を右往左往しているうちに、そろそろトップエースの面々にも『面倒狩りのリロイ』などと覚えられ始めた。

 ――――――大変に不本意である。







 フレームアームズという兵器が有る。
 旧時代の二足歩行ロボット兵器に似たコンセプトだ。
 骨格たるフレームアーキテクトはもともとは汎用重機として開発されていたものの、月面に有る生産プラントが暴走。
 やがて地球にまで勢力を伸ばさんと、暴走アーキテクト『アント』が送り込まれてきた時点で、泥沼の攻防は始まった。

 人類の劣勢をかろうじて兵器化したフレームアーキテクト『フレームアームズ』で押し戻す日々。
 疲弊してゆく戦況に歯止めをかけるべく行われる反抗作戦。
 防衛機構の無理解と敵月面陣営の新型『NSG-Z0系』――――――謎の第三勢力機『バルチャー』の出現。

 そんなすったもんだの末、前線兵士を待っていたのは兵器の残存数不足である。
 部隊として活動できるだけの定数を大きく割り込み、明日の自身の命を守るため、
各人は陳情やツテまで頼って予備機の確保を急いでいるところであった。







 そして先の大作戦で部隊の中核を担ったリロイの部隊もまた、どうにかして『フレームアームズ』を確保しなければならなかった。
 新型機を与えられたゆえ、激戦区を担ったゆえ、すでに彼らの部隊の乗機はスクラップである。
 部品取りに使えるかもわからん。

 もちろん上層部へ話をつける大任はリロイ・ハロルドに一任された。
 まかり間違っても上司が直接陳情することはない、何を言うかも何を言われるかわからん。
 ゆえに彼は、部隊の活躍も自分の功績もなげうって『フレームアームズをください』と言った。

「出来れば新型を――――――駄目ならウェアウルフ系の派生機体でもいいんです」

 お得意の土下座外交は防衛機構のお偉方にも伝わった――――――そう信じた、そのときは…………。







「…………いい機体じゃないか」

 金属製のマグに満たされた熱いコーヒーを頬に押し当てられ、狭いキャットウォークを転がるリロイ。
 してやったり、見たいな笑顔を浮かべたのは件のいけ好かない上司――――――ジャン・B・ウィルバー少尉。
 手荒い使い方で何機ものフレームアームズを乗りつぶしてきた男だ。
 防衛機構もこの男の扱いに舌を巻いていたものだが、彼の戦いは一般市民からの受けは良く、最近ちょうどいいお目付け役も見つかって万々歳。

 加えてちょっとケツに火をつけただけで見事なガッツを見せた(旧式で月の新型を撃破、イーギル事件)相棒をなんだかんだでウィルバー自身も気に入っているらしく、
特殊部隊SCARUに目をつけられた手前、当人もちょっとおとなしくしている(つもり)だ。



 そんな彼の期待に、相棒たるリロイは今回も答えてくれた。
 予備部材を流用したため、武器懸架用のスラッブハンガーは片方しかないものの、新品同然のセカンドジャイブを一機。
 そしてリロイ自身にあてがわれたのはウェアウルフ系の最新型である。
 どこの部隊も物資不足で頭を抱えているご時勢だ、コーヒー一杯淹れるくらいで報いるほどはかなわぬほどの大戦果。



 それなのにどうして、こいつは意気消沈しているのだろうか、傍若無人を絵に描いたようなウィルバーも、悩みがあるなら聞いてやる位の気持ちを見せた。
 ――――――明日はベリルが降るかもしれない。



「新型にして運用方法は実戦実証済みのコンセプト、おまけに従来機より小回りも利く…………新型(カトラス)よりよっぽど戦場での受けは良いと思うがな」
 ずず、と自分のマグからコーヒーをすすり、ウィルバーはいう。
 しかし、暑さでほっぺたを真っ赤にしたリロイはウィルバーにキッ!と鋭い視線を飛ばして吼えた――――――座敷犬のように。
「だって少尉――――――こいつ『フレームアームズ』じゃないじゃないですか!!」



 フレームアームズ:ガール――――――轟雷。
 重装甲と運動性を兼ね備え、重量からお蔵入りされていた装備『フリースタイル・バズーカ』を装備するほどの出力とパワーがある最新型のウェアウルフ系だ。






「…………今までの装備は、こいつでも丸ごと使えるらしいが?」
「どっか故障したらどうするんです!整備できるんですか!?」
「一応フレームアーキテクト準拠らしいが?まあ装甲引っぺがされたら替えを手に入れるのは少々手間だと思うが」
 轟雷はちょっと頬を赤らめて、脚部装甲に手を伸ばした。
 ほっそりした足元を、ニーソックスが包んでいる。
 その足元では整備班がタブレット片手に首をかしげている――――――何をどうやって換装したら資料のフレームアーキテクトが轟雷になるのだろう、別人じゃん?
「外観も、どうして女の子の形をしているのか!」
「……受けが良いからじゃないか?」

 それが困ったことに前例があるのである。
 YSX-24『バーゼラルド』の設計の際、最も技術班を困らせたのは『外観の再現徹底』であった。
 新型の必要性は現場、一般市民共に疑問視されていた手前、執拗に喧伝を重要視した上層部。
 それは生産型の『カトラス』にまで飛び火し、わざわざ試作機のパーツまで組み込んで見た目にこだわる有様なのである。

 高出力・ヒロイック――――――そして紙装甲。
 どうしてこうなった、と現場が意見をすれば帰ってくるのは『――――――かっこいいからだ』との返答だ。
 グライフェン開発チームの動向が気になる。

「まあ、ラピエール以来の衝撃だがコッチはまだましだぞ?
航空部隊にまわされた新型のスティレット、気が強くて調整にすげえ手こずっているらしい」
 ずず、と再びコーヒーをすするウィルバー。
 なんすかそれ、と再び食って掛かろうとしたリロイであったが、横からかけられた声に制止される。



『あの、マスター…………私に至らぬ点があれば修正しますので、どうか使ってもらえませんでしょうか?』


「!――――――しゃべったァ?しゃべりましたよ少尉!?」
「ああ…………こいつどんなOS使ってるんだろうな」

 これ以上ガキのお守りはごめんだ、ときびすを返すウィルバー。
 あー准尉なかしたー!と足元から責められるリロイ、どうにかしてなだめすかそうとするリロイ。


 がんばれ!リロイ・ハロルド准尉、面倒事にくじけるな!
 やがて『無傷のリロイ』の渾名が世界に轟く日まで、愛機『フレームアームズ:ガール・轟雷』のご機嫌を取る戦いは始まったばかりなのだ!


====================================================



《あとがき》
筆者は、フレームアームズ・ガール――――――手に入りませんでした。





[41247] 第二話:新型M.S.Gが手に入りました
Name: str(すてあ)◆87c5f11c ID:98ad8ed0
Date: 2015/05/29 15:18
 北欧地区旧フィンランド領に有るラッピ県。
 その中央にほど近い場所へ落着した月からの降下ユニットには、それはまあ大量のアントが詰まっておりました、ぎっしり。

「防衛線を構築しろ!いそげ!!」
 檄を飛ばす現場仕官に無茶を言うとこぼす下士官。
 やたら広いが住民は少ない、というこの地区には最低限の装備しか配備されておらず、おっとり刀で駆けつけた頃にはすでに侵攻は始まっている始末。

 それでも踏ん張らねばなるまい、背後にはやたら高い通信機材の生産工場がある。
 破壊されれば各個部隊が指揮を受けられない、という軍隊としては最悪の状況が待っている。

 しかし、そんな切迫した戦況にいち早く届けられた吉報――――――新型を与えられたというジャン・B・ウィルバー少尉の遊撃部隊が援護に向っているというのだ!







「少尉…………覚悟していましたが相当にやばい景観ですね、こいつは」
「言うな、だからこそ俺達は失敗できんのさ」

 周囲に続々と集まってくる急造の防衛部隊は、使っている機体も急造である。
 先の大作戦で損耗したフレームアームズの外装は再生産が急ピッチで進められているものの、前線にはまだ届けられていない。
 ゆえに最前線で使われているのは廃材の再利用や余剰部材を流用して作られた現地改修型だ。

 端的に言えば、人の形をしていればましなほう――――――ニコイチサンコイチは当たり前、足を腕にしたやつもいる。


 例を挙げればグライフェンの胴体にアーマーグライフェンの足クローを両肩から生やした『おフェンフェン』
 輝鎚の下半身からラピエールの上半身を生やした『ポチャ子』
 もう外観からは特定できないほどキメラ化が進んだ『ゴブシュレヴァナントスーパークファン槌・ブルーバー(ポニテ)』

 そこまでバランスが悪いなら外装脱いでしまえといいたいが、中には相手とそう外観が変わらないほど組み替えたフレームアーキテクトもある。
 幸い武器の在庫は多少あるようで、腕代わりにミサイルランチャーを直付けした機体など珍しくもない状況であった。

『少尉、マスター――――――2時の方向に比較的コンディションが良好な機体があります、おそらく指揮官機ではないかと』
「了解した、ウィルバー少尉、ちょっと声をかけてきます」
 頷くウィルバーの黒いセカンドジャイブ。







 はたして、リロイが駆るフレームアームズ・ガール轟雷がいう『状態のよい機体』は、確かに状態はよい。
 しかしてその装備は、フレームに旧式化した偵察機レヴァナント・アイのアップデートパーツ『だけ』を装備していた。
 なんと呼べばいいのかわからない。

「ええと…………そこのリベンジャー(?)自分は第13遊撃隊、ジャン・B・ウィルバー少尉旗下のリロイ・ハロルド准尉であります」
『話は聞いている、漆黒のセカンドジャイブと新型の轟雷、見間違えるはずもない』
 こちらは見間違えた、足もとにでかいと評判の通信指揮者が停まった、目の前のリベンジャー(?)は唯の随伴機だったようだ。

「やはり展開が遅いようですが、戦力の逐次投入は各個撃破の恐れがあります。
私の上官と自分の2機編成ででアントの群れの中央に切り込んで、撹乱する戦術を具申いたします」
『許可できない、いかに十全な機体とはいえ貴官らの危険が大きすぎる』
「お言葉ですが、月ではこの程度の敵機に囲まれることなどざらでした、目の前のこれは空いているくらいです。
時間を稼ぐくらいなら問題ありません、ご再考を」

 でなければ自分が少尉に絡まれます、と思わず口からこぼれそうになった愚痴を押し戻すリロイ。
 果たして数瞬ののちに指揮官から導き出された答えは、彼の案を肯定するものであった。

「戦果を期待する『面倒狩り』リロイ准尉――――――しかし始めてみたが、貴官の愛機はKAWAIIな」
『ありがとうございます、しかし私も兵器、持ち与えられたポテンシャルを遺憾なく発揮してまいります』
「――――――おお、おまけに性格も良い、うちのはねっかえり共に与えられなくて正解だよ、無事の帰還を」
「お任せを――――――愛機には傷一つつけません」
 リロイの言葉に、ちょっと赤くなる轟雷。







 話はついたか、と人だかりならぬマシンだかりの中から姿を現す黒いフレームアームズ。
 ウィルバーはどうやら新兵達に訓示めいたことを言って聞かせていたらしい、最近はなんとも彼らしくない行動を取る。

「ええ、丸のまま少尉のプランが採用されました、お好きなタイミングでどうぞ、との事です」
『…………そうか、じゃあさっそくいこうか』
 逃げるように二輪駆動形態に変形するセカンドジャイブ、どうやらこの周囲は居心地が悪いらしい。
『わかってるな准尉――――――W・Rアタック、初のお披露目だ、失敗は許されんぞ』
「了解しました」
『では、失礼します』

 二輪駆動形態の上にフレームアームズ・ガールがライドオン、周囲からどよめきの声が上がる。
 通常のフレームアームズより軽量につくられたガール系フレームならば、セカンドジャイブの機動力を殺さずに切り込めると知ったウィルバー。
 ここ最近は自動車教習所に通っているような気分にさせられた、教官の口が悪いのはどこも変わらん。



 はたして、敬礼と共に花道が作られ、いきなりのフルスロットルで爆進する2機。
「いくぞユーキ!俺達の初舞台だッ!!」
『了解!マスター!!』
 リロイ・ハロルド准尉――――――愛機に名前をつけちゃいました。







 敵陣の中央に突き進みながら、右肩のキャノンと左側に構えたアサルトライフルで的確にアント群をなぎ倒してゆくユーキ。
 まるで西部劇のガンマンさながらに、からっ風が吹く荒野を突き進む。

 マガジンが空になったライフルを捨て、ジャイブの武装懸架装甲『スラッブ・ハンガー』からサブ・マシンガンを装備。
 ハングオンの体勢でぐるりと一周、周囲のアントが黒煙を噴くと同時に、ユーキは擦っていた膝を基点にごろりと横転。
 瞬時に人型に変形したセカンドジャイブと背中合わせになり、後から後から近づいてくるアント共を睨んだ。

『15分後に軌道爆撃が入るとの仰せだ、泣くほど簡単な任務になったな』
「ええ、こいつらまとめて拿捕すれば、定数不足も多少は改善されるんでしょうけどねぇ」
『言うようになったな――――――やはりアレか、女の子の前ではいい格好をしたいか?』
「――――――お先にいただきますよ!少尉ッ」








 はたして、その後二時間ほどの死闘の後。
 ハンガーベースに機体を落ち着けたリロイは、手にしたアルミパックを絞るように水分補給すると、愛機に向けて親指を立てた。
「初戦で快勝、機体は小破以下――――――少しは乗り手を見直したかい?ユーキ」
『はいっ!マスター、戦果をありがとうございます、引き続きよろしくお願いいたします』

 その声を聞いて、深い息をつくリロイ。
 初対面のあと、泣かれること2回、すねられること5回、メシ・フロ・ク○以外は付きっ切りで相手をした甲斐があった。
 今となっては、彼女は今までに乗ったどの機体よりも十全な働きを期待できる。

「…………おい准尉、現地軍の上層部から、今回の礼だって言ってみたことがないM.S.Gが来てるんだが」
 そんな高揚も吹き飛ばす上司の声、また厄介ごとか?とトラックの荷台から下ろされる透明プラスチックの梱包袋を垣間見る。


――――――M.S.G、正式名称は誰も覚えてないが、たしかミリタリー・セッティング・ギアかなんかだったかと思う。
 今となってはイニシャルでしか呼ばないが、要するに武器や損耗の激しい手首なんかの交換用部品だ。
 だがしかし、今回のブツは補給部隊出身の彼の知識にもない、それはそれは度肝を抜く代物であったのだ。



 その名も――――――M.S.G『腰部交換装甲&パンツデカールセット』である。

=================================

 フレームアームズ・ガールが手に入るまで、不定期で続けようと思います。
 今回の新型M.S.Gは友人との駄話で出た一品



[41247] 第三話:部隊のマークが決まりました
Name: str(すてあ)◆87c5f11c ID:98ad8ed0
Date: 2015/05/31 05:29

 リロイからすれば、身の丈ほども有る大きな尻を前に、重苦しい沈黙がかれこれ一時間以上続いている。
 そして視線を少し上に向ければ、彼の愛器であるフレームアームズ・ガール轟雷『ユーキ』が熱い視線を向けていた。

 彼と彼女、合間に交換用の尻装甲。
 整備班からは今晩中に結論を出せといわれている、今宵の課題は彼らの『パーソナル・パンツ』をどの様な柄にするか。
 酒の一杯でもあおりたくなってきた、リロイの渾名は『面倒狩り』である。







『――――――私専攻配備型なんですよ』
 あっはい、と頷くリロイ。
『だから、コーションマークなんかも大分簡略されていてですね、パンツも下地塗装のオフホワイト。
私自身疑問に思ったことはなかったんですけど、調べてみたら私の同期たちもそれはそれはシャレオツな柄のパンツを装備していてですね』
 傍らに置かれたデカールをつまみ上げ、ひらひらさせながら熱弁を振るうユーキ。
『月面侵攻部隊の中核として名を馳せたウィルバー少尉の部隊に配属されたからには、それはもう私も重く、強く責任を感じています。
続々生産されるであろう同型機の先達として恥じない戦働きをしなければいけないのです。
今後の喧伝も踏まえて、ここは何が何でもかっこ可愛いパンツを選定していただきます!』
 ばしん、と地面に台紙を叩きつけ、折りたたみ椅子から腰を浮かしたリロイに告げる。

 リロイは困った、まさか兵器が戦意高揚のためにMISEPAN(彼女の生産工廠、ジャパンエリアで不特定多数に鑑賞させる下着の意)を装備するとは。
 ほとほと防衛機構の上層部は見た目にこだわる御仁の集まりだ、それ以上に頭は大丈夫かと思う。
「このブラウンのシマ・パンでは駄目なのか?…………一番無難だと思うんだが」
『既製品(プリセット)では駄目なのです!』
 ユーキは右端の白いデカールを指差した。
 好きな柄をプリントして貼れ、という自由形なのだろう。
 うーんと唸って腕を組んでみるも、リロイの人生において女性の下着など片手の指で数えるほどにしか見たことがない。
 白状するとブラの構造もよくわからない、彼は初心で奥手な男であった。
 仮に、恋人ができたとして女性下着のコーナーに連れ込まれたとしても、なんだかんだいって逃げ出すビジョンしか浮かばない。

 しかしまあ、男女のそれを問わず軍人たるやケツの話が大好きなものだが、今の彼以上にケツに困らされている軍人は古今例を見ないだろう。







 程なく、いけ好かない上司がいまどき珍しい紙媒体の冊子を伴って現れた。
「…………ぉら、資料を持ってきてやったぞ、適当に良さそうなの選んで整備班に印刷してもらえ」
「あ、ありがとうございます!ウィルバー少尉!」

 指針ができるのはありがたい、さっそく一冊手にとってページをめくるリロイ。
 ――――――即効リロイ汁を噴いた、年代物のPLAYBOYであった。

「しょ、少尉!――――――いくらなんでも露骨過ぎるでしょうこれアンタ」
「ああん?良く見ろ――――――こっちのバチェラーのほうが露骨だろうが」
 彼のベストショットと思われる、いい加減折り目がついたページを開いてリロイに突きつけるウィルバー。
 おお、それはなんと参考にならない物か!そもそもパンツはいてねぇじゃねぇか!!

 うつむき加減で前髪に目をかくしたユーキが、そっとウィルバーの手から冊子を取り上げ、指先で揉んだ。
 早速握りこぶし大まで縮む雑誌、がっちりと固められてもう開けない。
 まるで子供のように嘆くウィルバーは置いておいて、リロイは愛機に問うた。
「コレじゃあ参考にならないか!?」
『なりません!コンセプトがちがいます!!――――――求められるのは性的(セクシー)ではなく『かっこかわいい』なのです!』
「ううむ…………KAWAII、難しいな」

 頭の中にキティキャットやスポンジのやつといった、定番のカートゥーンが現れては消えてゆく。
「女性隊員の意見も聞いてみるか…………」
「……おう、ちょうど良いところに通りがかったヤツがいるな」
 ラップトップPC片手にやってきた、インド系の女性隊員の元へ歩み寄るウィルバー。
 どもりながら聞いたらキショい奴と思われるだろう、ここは少尉に任せることにした。



「――――――おう、オマエ今どんなパンツ履いてんだ?」
「ちがう、微妙にかつ圧倒的に趣旨がちがうよバカ!!」

 すっころんだ、リロイを一瞥もせず、その女性職員は『四角いです』と答えた。
 官給品じゃねえか、と毒づくウィルバーに見せたい相手もいませんので、とごく冷静に答え去ってゆく女性隊員。
 舌打ち一つして戻ってくる様を見て、ああここは軍隊だものなぁ、と脱力するリロイ。







「…………タイガーパターンとかどうだ、強そうじゃねぇか?」
『イヤです、下品じゃないですか!』
「クソ、このままじゃ夜が明けちまう――――――こうなったらリロイ、お前なんか描け。
オマエが描いたものならユーキも納得すんだろ」
 言うが早いが、事務室からペンの類を持ってくると腰を上げるウィルバー。
 描けって言ったってなぁ、と頭を描くリロイに、ユーキもさすがに後ろめたさを感じたのか、気遣うように言った。
『マスター、別にどうしてもパンツの柄ってわけじゃなくてもいいんです。
何か撃墜マークのようなものとか、部隊章やパーソナルマークのようなものでも、ワンポイントにして仕上げればいいんですよ』
「そうか、部隊章か…………」

 彼らは独立愚連隊のような者である、ゆえに許されるならばワッペンの一つでも作ってやろうか、という草案はあった。
 思い返すのは最も激戦であった、いまだ記憶に新しい月面への強襲――――――生きて帰ってこれた事こそ奇跡、そして誉れ。

 胸元に刺した消せるボールペンで早速デカールに下書きを始める、隙間時間を見ては、画像データを集めてなぞる練習をしていたのだ。









「へぇ、こいつの考えにしては歌舞いているじゃねぇか」
 整備場の地べたに転がって爆睡する相棒に上着を投げてやると、省電力モードで待機するユーキのケツを見上げ賞賛するウィルバー。

 題をつけるならば『月食』であろうか。
 満月にかじりつく一匹狼がでかでかと描かれた、その柄は確かに勝負パンツにふさわしい。
「…………こいつなら、まあケツを乗っけてやらんでもないな」
 どれ、相棒の分も朝飯をいただいてやるとするか――――――あくびをかみ殺しながらその場を後にするジャン・B・ウィルバー少尉。

 跡に残されたのは彼の相棒と彼らの愛機――――――『月食パンツ』が誇らしげに尻と、スラッブハンガーにあしらわれた2機の人型兵器であった。


=============================

 あとがき

 最近はフレームアームズ・ガールのレビューなど見ながら心を慰めておりますが、
先日ドールユーザーに近い方のレビューを拝見しました。

 布製の服を着せるので、武装は作らないというのですね。
 で胴体もあまり手は加えず、武装○姫のパーツを流用して形にしたいと。
 自分はどちらかというとプラモデル作るの大好きなので、フィギュアとか完成品とか好きな人の考え方を知ってすごく興味深かったんですけれども。

 ですが、その人最終的に首だけ武装○姫の素体に挿げて完成!
 首から下は作らないで放置!見たいな…………。

 ええ、もちろん批判なんかしません。
 その人がお金を出して買ったものです、楽しみ方はその人の自由。



 なんですけども、実はですね。
 自分の手元に、すごい量のフレームアーキテクト頭部があまっていてですね。
 これをフレームアームズ・ガールの本体に挿げたら――――――――――――



 すごいかっこいいんじゃないかな!!って。



 フィギュアファン・ドールファンの方、もし胴体にご興味がございませんでしたら、筆者は有効活用できますのでどうぞご一報くださればと思います。



[41247] フレームアームズ・ガール・ユニバースが開催されました(天)
Name: str(すてあ)◆87c5f11c ID:71ed5536
Date: 2016/02/07 05:48

 ロシア地区は旧モスクワ軍管轄、周囲にニコリスコエやドゥルジュバといった街に挟まれたクビンカ基地。
 旧体制時代にはロシア唯一のアクロバット飛行チームを有していた由緒ある軍事基地のひとつ。
 果たしてそんなクソ寒い軍事基地に今日、地球防衛機構に名だたる多くのエースパイロットやベテランが集まってきていた。
 最低ラインは敵機五機撃破以上、ないしは前線基地に勤続5年以上、攻勢作戦参加経験あり。

 そのお付も知る人ぞ知る、名うての整備兵だったり戦場カメラマンやルポライターだったり。

 果たしてこの基地で一体何が行われようとしているのか?
 もったいぶるのはやめよう、このたび開催されることになったその名も『新型FA総合戦闘演習』
 徐々に兵装数の補填が行き届きつつある現状、機動兵器が新旧入り乱れることになった前線で、果たして兵士達はどのような運用すればいいべか?

 ローハイミックスか、新型の集中運用か、それ以前に新型などと贅沢言ってられるのか?
 そんな様々、悲喜こもごもを現場たたき上げの連中が意見を言い合う場として企画された今回の演習なのだが…………



 なんと言うことか!此度はダフ屋が横行し、憲兵がピリピリする事態と相成った。
 こんな輝鎚の装甲並みに分厚いレポート提出を約束された演習の癖に、参加者希望者が続出する辞退と成った。



 その理由を挙げるのは簡単である。
 新型が一同終結、すなわち今FA乗りたちが喉から手が出るほどほしいあの!フレームアームズ・ガール(通称FA;G、もしくはG型)が全種そろう見本市!!

 誰が始めに呼び始めたかわからんが、此度の演習を指して誰もがこう呼ぶ。



 ――――――フレームアームズ・ガール・ユニバースと!







「おお!みろ!!」
「漆黒のジャイブとG型のウェアウルフだ!」
「ではアレが『ウィルバー隊』――――――月食パンツを掲げるあのコンビか!」

 二輪形態のジャイブに乗ったG型の轟雷がわらわらと集まってくるベテラン達に手を振ると、強面の兵たちがこぞって鼻の下を伸ばす。
 その後ろにはマスコミや雑誌の記者達が砲弾みたいな長さのレンズをくくりつけたカメラを“月食パンツ”のマーキングに向けシャッターを切る。
「信じられん、なぜあのジャイブはその――――――女性下着をパーソナル・マークにしているのだ……」
「そりゃあごく初期にFA:Gを運用して戦果を挙げている部隊ですから」
 バリ目立ちですよ、戦意高揚になりますと首をかしげる記者に説明する通りすがりの警備兵。

 だがしかし、そんなジャイブから降りてきたパイロット、ジャン・B・ウィルバー少尉は半ギレの顔をしてつかつかと二人に歩み寄り。
 地獄の底を思わせる声をして言った。
「――――――――――――ならねえよ」







『少尉!どこに行くんですか!?』
 外部音声マイクを通して“面倒狩り”リロイが問いかけるも後ろを振り向くことなどせず、ウィルバーは言う。
「あちこちで屋台が出てるからぶらぶらしてくる、オコノミヤキなんぞ出てたら食いそびれたくない」
 実にフリーダムかつダイナミックな職務放棄宣言である。
 だがしかし、この扱いづらい上司としばしでも離れられるなら望むところだ。
 愛機であるFA:G轟雷、ペットネームユーキの掌から地面に降り立つと、リロイ・ハロルド准将は大きく伸びをした。

「いくぞユーキ、俺達は第二仮設ハンガーでヒトヒトマルマルまで待機だ」
『了解しましたマスター』
 ごろごろと自転車を押すようにジャイブを扱う轟雷と、その足元をてくてく歩くリロイ。
 時折すれ違うパイロット達に敬礼をしながら、サーカスを思わせる巨大なテントへ向う。

 そんな徒歩(カチ)の途中、リロイの遥か頭上でユーキを呼ぶ声がした。



『『『ユーキせんぱーい!!』』』
『あ、モノトーンちゃん達だ!やっほー!!』



 いったいなんだと声がした方向を見上げれば、オフホワイトの装甲に赤青黄色の頭が目立つ、3体ものG型の轟雷が歩み寄ってきていた。
『先輩今回の広報動画見ました!アントの群れに目掛けて肩の主砲をばんばーんって』
『実戦すごい迫力でしたぁ、怖くなかったんですかぁ?』
『高機動加速体へのライドオン・モーションって実戦配備機にインストールされるんですか!』

『もーいっぺんにこえ掛けられても返答できないよ?実戦はまあ、緊張はしたけど不安はなかったかな?
――――――私のマスターすごい人だし』

 めったに見られないユーキのドヤ顔、取り巻きの同型がきゃーと基地中に響くんじゃないかって声量で悲鳴を上げる。
 そしたらもうすごいよ?なにがって足元にいるその搭乗者のいたたまれなさがだよ。

「あぁーユーキ?自分もそのへんぶらぶらしてくるから」
『えーセンパイのマスター行っちゃうんですか?』
『先輩との馴れ初めとか色々聞きたかったんだけどなぁ……』
「いや、お偉方へのあいさつ回りとかあるしね?――――――ユーキ任せた!!」
『あ!マスター!!――――――11:00には帰ってきてくださいね!』

 後ろ手を挙げるのもそこそこに、ダッシュで来た道を引き返す。
 ――――――――――――何だこのハイスクールへの登校見たいな雰囲気。





 そしてリロイが相応にお偉方に頭を下げた後、演習を行う予定地を下見するかと足を運んでいる途中である。
 再び頭上から女の子の声で呼び止められる――――――いい加減首がだるくなってきた。

『もしかしてそこにいるのはウィルバー隊のリロイさんですか?』
『『はじめましてー今日はよろしくおねがいしまぁす』』

 再び、今度はショートボブのフレームアームズ・ガール三人組。
 一応ラフな敬礼で自己紹介したリロイ、見たところ資料に乗ってない機種だ、新型であろうか?

「えーと、君達は?」
『はい、私達はFA:Gの素体で、マテリアです。
こっちは外装のカラーバリエーションでホワイトちゃんと、表皮を特殊加工したブラウンちゃん』
「ああ、なるほど、君達がG型のフレーム・アーキテクトという扱いになるわけだ……」
『いえ?アーキテクトさんならそこで、MSGの試射をやっていますけど…………』

 指差されたほうを見ると、セントリーガンにしがみついたジト目のG型がよう、見たいな感じで手を挙げてきた。

(マテリア………とは………一体…………)

 疑問が増えた、と眉根をしわよせるリロイ。
 しかしマテリアは朗らかな笑顔のまま言葉を続ける。
『せっかくFA:Gでの実戦をなされた准尉を前にして残念なんですけど――――――』
『私達これから参加する皆さんに本演習の“しおり”を配って回らないといけないんですよ』
 小冊子、リロイからすればTATAMIぐらいの大きさを持つ紙媒体の薄い本をひらひらさせて、残念そうにホワイト。

『しっかし、残念だよなぁ――――――あたしらも演習参加したかったなぁ』
『ダメよ?私達まだ戦闘用にチューンされていないんだし………』
『でもねぇ、出来れば実戦仕様の皆みたいに…………』

『『『パンツ履きたいよねぇ~!!』』』



(いや!履けよ!!――――――其処は履けよ!!)

 衝撃の新事実、G型にとってパンツはステイタスであった。
 リロイの記憶中枢にまた一つ、戦場に似つかわしくない余計な常識が刻み付けられる!!







 さて、もう少し時間が余っていると腕時計が告げるので、リロイは第一格納庫に足を運んだ。
 なんでも希望者には先着で、FA:Gの試乗ができるとの触れ込みである。

 もちろん例外的に先行配備型を受領できたリロイのような例は少なく、多くの参加者がその大イベントに期待を寄せているはずだ。
 日本の工廠も上層部のごり押しに答え、何でも30機ものG型を用意してお待ちしておりますとも聞いている。

 果たして、用意されたのはどのような機体か――――――ウェアウルフ系は難しいとしても、先ほど見たアーキテクト型であろうか?

 その疑問は、一歩天幕に足を踏み入れた時点で驚愕にかわる。
 みろ、むくつけきフレームアームズ乗り達が地面に手をついてうなだれる様。
 そして三度頭上を向いたリロイ、その驚愕の様を!!



 試乗用に用意されたその機体――――――体はG型、頭はアーキテクト。
 そう、通常のフレームアームズに使われるフレームアーキテクトの頭をおにゃのこの体に乗っけただけの戦時簡易量産型。
 その名も“アーキテクト頭”である。
 立っているだけでコレジャナイ感をかもし出す、まさに迷機!!
 


 リロイは声もなくうなだれる戦士達の前で、同じく両手を大地に着け、アテンションの声が響くと男達は一斉に膝を伸ばす。
「発注とちがうじゃん!」
「「「ハッチュウト・チガウジャン」」」
「――――――発注とちがうじゃん」
「「「――――――ハッチュウト・チガウジャン」」」

「「「「「――――――はっちゅうとちがうじゃんッ!!」」」」」

 新兵のように繰り返されるアームプッシュ、大地をぬらすのは汗だ、涙じゃねぇ。








 そんな男達のレクリエーションが200、300と繰り返された後――――――永遠に等しいその時間を途切れさせたのは表に響くジェットエンジンの音。
 そして駄々っ子のような少女の声である。

 何事かとリロイを先頭に飛び出すベテラン達の列、頭上などおくびにもかけぬ遥か蒼穹から舞い降りる三機の影。
 左右を固めるのはある意味見慣れたフレームアームズ“スーパースティレット2”

 そしてその中央にいるのは――――――水色のロングヘアーを二つに束ねたフレームアームズ・ガール!!

『やだー!やだー!見世物やだー!!
戦場いくのー!!私もアントの群れつっこむー!!』
『ええい!!この期に及んでまだわけのわからん駄々をこねるなカスミ!
あ!こら!オーバーテイクしてる――――――主機を振り回すなオーバーテイクしてるって!!』

 ふらふらと、いやガクガクと複雑な機動を取りながら舞い降りる蒼いその機体。
 噂に聞いた、自身の愛機と同じく、先行配備されたというペットネームつきのFA:G。
「あれが傭兵トルース・ロックヘッドの愛機、G型の“スティレット”かッッ」



『――――――特攻するのぉぉぉぉぉぉっ!!』




=================================



 轟雷、まだ買えていません(挨拶)



 フレームアームズ・ガール、楽しんでいますか?
 みなさんおはこんばんちわ、もうすぐコトブキヤの公式サイトでフレームアームズ・ガール。ユニバースの作品公開ということで応援うp。
 とても大きな大会のようで、世界中から寄せられた皆さんの作品が見られると思うと、とても楽しみです。

 かく言う自分も(今回ばかりは、と予約して手に入れた)FA:Gスティレットを改造してエントリーいたしました。
 素人工作の、まあにぎやかしみたいなもんですが。

 ともあれ、大型化した胸部の先端をベリルで隠した紫色のスティレットがいれば、其れは自分の作品です。
 ぜひ、御品評ください。
 感想お待ちしております


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.058046102523804