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[42147] ちゅ ウ ド クしゃ 【H×H 男主】
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:5e2f35b4
Date: 2017/06/18 03:17


Hello Hello

初めまして。玄坏慎日(クロツキシンカ)と、申します。はい。

“何故か”アニメしか知らないのにH×Hの二次創作を始めて仕舞いました。原作?知りません。分かりません。漫画欲しくても金が有りません。この世の終わりです。はい。

…………………冗談です。すみません。

これからこの御話の御注意を説明致します。


【御注意】

*不定期更新です。

*俺のこの作品は駄文駄作になる可能性が極めて高いです。

*主人公がかなり性格が悪いです。はい。

*主人公はある“物”の中毒者です。題名の通りですね。はい。

そして最後に。












*この二次創作を読んだからと言ってある“物”に手を染めるな、いいな?俺じゃあ責任は持てん。この作品に出てくるある“物”はこの世にはない物だ。


最後のだけは“必ず”守って下さい。はい。それでは、上の御注意が守れると言う御方は次へどうぞ。守れない御方はブラウザバックを。




[42147] 仕事編 ~旅団【その1】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:5e2f35b4
Date: 2016/09/23 16:20


此処は流星街と呼ばれている、“行き場”の無い者達が居る場所。

そんな場所である男はある“物”を売って暮らしていた。

そのある“物”とは『麻薬』『覚醒剤』と言った人体に害を与える薬であった。







「なぁ、頼むよ!それを売ってくれないか?!」

ボロボロの布切れを着た薄汚れた男は、真っ黒い服を着た男

『フェリシダッド』にすがりついてわめいていた。そんな男をゴミを見る様な目をして睨みつけると彼は、にっこりと笑顔を浮かべ男にこう言った。

「金が無いのに、どうやって売るのさ」

そう言われた男はボロボロのズボンから傷が大量についた元々は綺麗であっただろう革の財布を取り出し、中から一万にも満たない金を出すと

「頼む!!これしか無いんだ!!今度きちんと返すから!!」

そう言いながら彼にすがりつくと、彼は呆れたような面倒くさそうな表情を浮かべると、自分の持っていた肩から下げるタイプの鞄の中を漁り、中から白い粉の入った袋を取りだし男に見せ付けるかの様にヒラヒラと男の目の前に、差し出した。それを見た男は目を見開き、ゆっくりとした動作だが彼に金を渡すとかなり素早い動きで、袋を奪い取ると

「ふ、ふへ、へへへ。あ、有難うな。ク、薬屋」

ふらふらと覚束ない足取りで瓦礫の山を歩き出して行った。男がの気配が完全に消え去るのを待つと彼は薄笑いを浮かべ、クルリと向きを変え歩き出した。

歩いている途中、何人か顔色の悪い痩せこけた男と女に話し掛けられたが、それを無視して歩き続けていると、この瓦礫しかない場所にしては似合わない白い石壁の家が見えてきた。

その白い家の中へ入ると一人先客が居た。その先客を見るや否や、一つ大きめの溜め息をつくと彼は先客『クロロ』を睨むと

「何しに来た?薬か?薬ならこの間渡しただろ?もう無くなったのか?」

我が物顔で白い革のソファーに座っているクロロの隣に座ると、クロロは読んでいた本、題名は、

『人に害をもたらす植物 100選』

と言う、クロロにとっては意味の無い本をソファーの前に置いてある焦げ茶色の木製の机に置くと

「お前にピッタリの依頼が入った。受ける気は無いか?」

彼の顔を見ながら淡々といい放った言葉に彼は考え込む仕草をした後

「それ、運び屋の依頼?それとも、薬屋としての依頼?」

首をかしげながらクロロに問い掛けると、クロロは目を細め「どちらもだ」と言った。“どちらも”その質問の返しに彼は「へぇ~、あ」と面白そうに笑うと

「良いよ。その依頼、受けるよ」

ニマニマとした笑顔を浮かべると、彼は黒い服の懐に手を入れ、中から煙草の箱を取り出した。それを見てクロロが眉を潜め

「俺が居る所でそれは吸うな。止めろ『フェリ』」

彼のニックネームである、フェリと名前を呼ぶとフェリは心底嫌そうに煙草を一本取り出すと

「その名前、止めてくれる?クロロ」

にっこりと笑いながら煙草を口でくわえ、煙草に火をつけると煙草の先から薄い紫色の煙が上がる。それを見てクロロは目を丸くした。

「フェリ………それは、新しい煙草(薬)か?」

クロロが珍しく驚いているのを見て、煙草を吸っているのに加えて気分が良くなるとフェリは「ククク」と喉の奥で笑い声を上げると

「そう!!!深ぁい森の中でしか生えない花『アヴェルガスタ』を使った煙草だ!!アヴェルガスタは、幻覚作用が弱いかわりにアッパー系と同じ効果が表れるらしい。煙草にして色々、別な物も入れたから効果がどうなっているのかは分からないがな!!あ、因みにこれはまだ数が少ないから、売るとしたらかなり高いぞぉ~」

フェリが子供の様に笑うと、クロロはこめかみを押さえフェリを見ながらこう言った

「それはちゃんと、効果を確かめてから吸ってるんだよな?フェリ。オレはもう薬の幻覚のせいで凶暴になったお前を取り抑えるのは、御免だぞ?」

クロロがそう言うがフェリはどこ吹く風でクロロに、にっこりと笑いかけると

「効果何て、試してないよ。こんな高い薬を、金をまともに払えない彼奴等に売ると思うか?お前等にだったら良いけど、金ちゃんと払いそうだし」

そう言いながら煙草を吸い、吐き出した煙は煙草から出ている薄い紫色の煙とは違い、濃い紫色だった。その煙を見てフェリは「おぉ、色が違う」と目を輝かせている。そんなフェリを横目で見ながらクロロは口と鼻を押さえていると、クロロが口と鼻を押さえているのに気付いたフェリは首をかしげクロロに問い掛けた。

「何で、口と鼻押さえてるんだ?結構良い匂いだろう?」

そう言いながらスンと煙草から立ち上る薄い紫色の煙の匂いを嗅いだフェリシダッドは「ククク」とクロロを見ながら笑い声を上げた。

「あぁ~、ククク。良い気分。クロロも吸わないか?」

そう言って口で煙草を加えながら空いた両手でクロロに、アヴェルガスタと言う花で作った煙草とライターを差し出すがクロロは嫌そうに眉を寄せ

「…………………いらん」

と短く、小さく返しただけだった。



…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


【用語講座】

【アヴェルガスタ】

【紫色の背の高い大きな花。一見、ただ綺麗な花だと思って匂いを嗅ぐと、幻覚が見えてくる。ただし効果は低く数分で治るが、幻覚と一緒にアッパー系の効果も表れる。何でも出来る気になり、気分が軽くなる。使い続けると癖になって、止められなくなって、最悪死ぬ。】

…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…

のんびり書いていたら、感想来た。
もっと、早めに書きます。




[42147] 仕事編 ~旅団【その2】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:5e2f35b4
Date: 2016/09/23 16:22


“運び屋”兼“薬屋”フェリ(本名フェリシダッド)とクロロは今、クロロの仲間が居る基地(アジト)へと向かっていた。クロロはもの凄いスピードで、ビルからビルへと飛び移っていた。その後ろを追い掛けるのは、血相を変えたフェリだった。

「ハァッ……ハァッ………。クロロ!!おい、クロロ!!待てっ!もう少し、ゆっくり……!!!」

血相を変えていたフェリはあるビルの上で、足を止め座り込むと荒くなった息を整え始めた。クロロはフェリの声に気付き戻ってくると、フェリの隣に座った。

「体力、相変わらず少ないな。それに、煙草や“薬”のせいで余計に少なくなってる。少しは、吸う数を減らせフェリ」

クロロがフェリに忠告をするが、フェリは「おぉ~。」と気のない返事を返しただけだった。それだけならまだ良いが、フェリは鞄の中から家で吸ってきた煙草を取り出すと、クロロが無言で見詰める中慣れた手付きで煙草に火をつけた。

「フェリ、その煙草で何本目だ?家でも三本吸って、此処に来る途中にも何本か吸ってただろ?」

そうフェリは家で、もうすでに三本は吸っていたのだ。そして此処に来る途中にも何本か吸ってたのだ。クロロはフェリの前に居たため、正確な本数までは分からないが少なくとももう五本以上は吸っている事は確かだ。そして、フェリシダッドはと言うとクロロの問い掛けに首をかしげると

「あぁ~。さっき1カートン(一箱 十本入り)が無くなって。で、これが確か三本目だから……………。多分、十三本かなぁ?」

クロロは驚きを隠せずにいた。フェリシダッドが予想外に大量に吸っていたのだ。だが、フェリは平然とした顔で口から濃い紫色の煙を吐き出していた。その煙の匂いは、甘ったるくフェリが「良い匂い」と言ったが果たしてこれは良い匂いなのだろうか?クロロが一人で自問自答していると、フェリが煙草を吸い終えたらしく立ち上がると、それにつられるようにしてクロロも立ち上がった。

「フェリ、きちんとついて来れるな?効果が出始める前についてないとな……」

基地(アジト)がある方向を見詰めると、クロロはさっきよりも遅く走り出した。そのクロロの後を追う様にしてフェリも走り出した。












フェリが、ビルの上で煙草を吸ってから約三十分たった頃、クロロはとある廃墟となっているビルの前で足を止めた。

「ふぅん、此処かぁ。随分とでけぇなぁ」

フラッとした足取りでクロロの隣まで歩いて来た、フェリは「クククク。」と何故か喉の奥で笑い声をあげた。クロロはそんなフェリを横目で見ると、フェリを置いてビルの中へと歩き出した。

ビルの中はまだ日の光があると言うのに薄暗く、足元には割れた硝子の破片や天井が崩れてきて出来た瓦礫があった。

クロロはそんな地面を歩き、今にも崩れそうな階段を上りだした。フェリは煙草の効果である幻覚の作用と、アッパー系の効果によって何時もより少しテンションが高くなっていた。階段を上りきるとそこには、クロロの“仲間”が居た。



「団長、そいつ誰?」

金髪の好青年がクロロに問い掛けるとクロロはフェリの目の前から退いて、フェリ自信に自分の事を名乗る様に言った。

「あぁ~。俺はフェリシダッド“運び屋”兼“薬屋”だ。今日は…………あれ?何で此処に来たんだっけ?」

最後の言葉によってクロロがガクリと肩を落としたが分かった。クロロはフェリに今日、何故此処に来たのかを一から教え始めた。















「あぁ~、仕事ねぇ。なるほど。てか、あの煙草って記憶を曖昧にする成分って入ってたんだっけ?まぁ、良いや」

フェリは、何処か気の抜けた喋り方をしている。そんなフェリを不審な目で見る者はかなり居た。

最初に声をあげた金髪の好青年。名前を『シャルナーク』と言う。シャルナークは、フェリから漂う甘ったるい匂いに鼻を潜めていた。

「団長、こいつから何か凄い嫌な匂いがするんだけど……。本当に大丈夫?」

シャルナークの問い掛けに殆どの者がクロロに視線を寄越した。視線を寄越した者が思っているはきっと

『フェリシダッドと言う、男が使えるかどうか』

『この甘ったるい嫌な匂いは何なのか』

の、どちらかだろう。クロロは一つ溜め息をつくと、

「こいつは流星街の連中に“薬”を売っている“運び屋”兼“薬屋”だ。本職は運び屋らしいがな。今回の依頼についてはこいつが一番適役なんだ、薬の元である植物に詳しいからな。後、こいつから漂ってくる甘ったるい嫌な匂いは、こいつが新しく作った煙草の匂いだあまり嗅ぎすぎると幻覚が見えてくるかもしれんから、気を付けろ」

クロロの最後の一言により、クロロを除いた全員が口と鼻を塞いだ。そしてクロロを睨み付けたのだった。


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…

ごめんなさい

せめて、この子だけは幸せに

前の名前は捨てましょうか

この子の新しい名は

【幸福】と【希望】

私の分まで、し…あ……わ…せに…………




[42147] 仕事編 ~旅団【その3】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:5e2f35b4
Date: 2016/09/23 16:24


フェリが吸ったアヴェルガスタの煙草の効果が切れるまで、クロロの仲間はフェリの、観察を始めていた。

誰がいい始めたかは分からないが、少し離れた所から

シャルナーク、ノブナガ、ウボォーギン、フランクリン

達が、フェリの観察をしていた。一番の目的は『今回の依頼にきちんと使えるかどうか』と言う点である。幻影旅団の団長であるクロロが連れてきた点では、信用していなくもないがやはりクロロが先程放った発言のせいで、フェリに対する旅団の信用はガタ落ちになってしまった。

『あいつは、重度の「薬物中毒者」だから、気を付けろ』

これが、クロロが旅団の皆にフェリについて語った時に最後に言い放った言葉だ。これを聞いてシャルナークは

「何で、そんな男を連れてきたの団長」

シャルナークの言葉にクロロは、何時もはあまり浮かべない笑みを浮かべると、薬の効果が回ってヘラヘラとした笑みを浮かべているフェリを見詰めると

「今回の依頼では、あいつが必要になるからな。後は、オレがあいつの力を知りたかったって言うのもある」

そう言いながら、懐からフェリの家でも読んでいた本を取り出すと瓦礫の上に座り読書を開始した。


シャルナークは先程のクロロの発言について考えていると、今まで硝子の無くなった窓の外を眺めていたフェリが低く唸った。

「う…………ぐぅ……………。やっぱり、副作用がキツいな……。もう少し考えて作んないとなぁ…。あぁ、口寂しい」

そう言いながら鞄の中からアヴェルガスタを使った煙草を取り出しライターを探していると、クロロがフェリが煙草を吸おうとしている事に気付いた。そして三秒にも満たない速さでフェリが口に加えていた煙草を引ったくった。

「お前、また吸うつもりか。これを吸ったら、今日で十四本目になるぞ?少しは限度って物を考えろ、フェリ」

”十四本目”と言うクロロの言葉に『ノブナガ』と呼ばれている男が後ろで「十四本目?!」と叫んでいたが、フェリは煙草を奪い返そうと手を伸ばすがクロロが後ろへ下がるとフェリの後ろにある、硝子が無くなった窓の外へと煙草を放り投げた。それを見てフェリは思いっきりクロロを睨み付けると、ドォンッ!!という強烈な音を経てて足元を蹴ってクロロの懐に潜り込むと、鳩尾に右ストレートを綺麗にお見舞いした。

「ぐぅっ?!!!」

息が詰まる感覚と共に後ろへ吹っ飛ぶと、コンクリートの壁にぶち当たるとクロロを中心に蜘蛛の巣の様なひび割れが綺麗に出来ていた。

そして何よりフェリの行動に驚いた旅団のメンバーは、フェリを中心に輪になるとそれぞれの武器を手に取って、フェリを睨み付けた。

「ゴホッ、ゴホッ。フェリ、お前もう少し手加減出来ないのか?」

平然とした顔でフェリにそう言ったクロロにシャルナークはある意味凄いなと思ったが、思っただけで言いはしなかった。

「フェリ、薬の効果が切れただろう?俺たちはお前の薬の効果が切れるまで待ってたんだ。それなのにまた新しく、吸おうとするな」

クロロが真剣にそう言うとフェリは口をへの字に曲げぶっきらぼうに「はいはい」と言って左手に持っていた煙草の箱を鞄の中へと閉まった。
























【シャルナーク side】


シャルナークの目の前に座っている黒髪黒目の中性的な見た目の男は、クロロの説明に耳を貸しながらも机の下で貧乏ゆすりを繰り返していた。

「……………………で、フェリお前は此処に居る奴等を眠らせろ。方法は問わない、その代わり一人として殺すな。そして、奴等が眠ったら此処にある金目のもの全てを“盗れ”」

クロロがそう言うと皆、納得の表情を浮かべた。先程クロロを吹っ飛ばしたのもそうだが、今回の依頼ではフェリの様な薬にも植物にも詳しく、尚且つ運び屋という職業をしているフェリにとってこれほどピッタリな依頼はなかなかない。

「……………………依頼は、今週の土曜だ」

クロロの説明が終わると、皆好き勝手に動き回る。そんな中シャルナークは、一人だけフェリの目の前まで来ると

「俺の名前はシャルナーク。シャルって読んでよ。フェリ」

人当たり良い好青年の様な笑顔をフェリに向けるが、フェリは完全にシャルナークを無視すると

「煙草、吸っていい?」

もう既に煙草を口に加えているんですけれどね。だが、フェリはある一人の小柄な人物を見付けると、煙草を加えたままなのに器用に

「餓鬼…………?」

“餓鬼”そうポツリと溢したフェリの首筋にフェイタンが刃を向けた。

「お前今、餓鬼て言たか?」

明らかに隠す気のないさっきをフェリに飛ばすフェイタン。だが、フェリは横目でちらりとフェイタンを見るだけでそれ以上フェイタンを気にする素振りは見せなかった。その反応に更に気を悪くしたフェイタンはグッとフェリの首筋に刃が当たり、皮が切れるがそれでもフェリは横目でフェイタンを見るどころか鞄の中を漁りライターを探していた。

流石にこのままではいけないと思ったのか、シャルナークがフェイタンに刀を下ろす様に言うと、フェイタンは眉間に皺を寄せながらも刀を下ろした。

「いやぁ~。ごめんね、フェリ。あ、首筋切れちゃったよね?今、絆創膏持ってくるから」

そう言ったシャルナークだったが、

「要らない」

そう言ったフェリの言葉に振り返ると、フェリの首筋にあった紅い線の様な傷は跡形もなく消えていた。




[42147] 仕事編 ~旅団【その4】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:06db9de8
Date: 2016/09/23 16:27


幻影旅団にとって
『フェリシダッド・エスペランサ』
と言う男は未知数であった。

団長であるクロロは、彼について「重度の薬物中毒者」としか言っておらず、彼がどんな職業をしているかは分かっても彼の能力は知らないのだ。

それ故、幻影旅団のメンバーがこの未知数の男を怪しむのは当たり前。そこで下したのは

『フェリシダッドに、監視をつけること』

これを聞いてフェリが嫌がるかと思えば、彼自身が「どうでもいい」と答えたため監視に向いている者を二人選んだのだ。

一人は言わずとも、団長であるクロロ。

そしてもう一人は、シャルナークに決まった。

フェリの監視を決めた事で、彼の『念能力』がどの様な物なのかが分かり、尚且つ彼自身が今回の依頼で何処まで強いのかが分かると、クロロは踏んでいたようで監視に決まると本を片手にニヤリと笑った。








































辺り一面が暗闇に覆われる夜。
しかもその日の夜は、月と星すら顔を見せない日でまさしく暗闇に近かったのだ。そんな暗闇の中、足音一つ経てずにある金持ちの大きな豪邸に近付く者達の姿があった。

そう幻影旅団である。
今回受けた依頼では、この豪邸内にあるという高額な値がついている宝石『インセントダイヤモンド』を、奪うというもの。依頼人はこのダイヤにしか興味がないらしく、奪った金目の物は好きにしていいという。

ただし、生きて帰る事が出来ればの話だが。この豪邸内には、腕利きの護衛が宝石がしまわれている保管庫や廊下等に配備されている。これを聞けば大抵の者達は諦めたり、自分の力量も知らないで突っ込み返り討ちにされるかのどちらかではあるが、今日この豪邸にある宝石やその他もろもろ奪うのは『幻影旅団』である。



彼らに常識と言う物は通用しない。



豪邸内に侵入して僅か数分で、廊下に居た腕利きの護衛は地に伏した。幻影旅団にとってこれくらいは簡単なものなのだ。だが殺すと言ってもただ殺すのではなく“無音”で殺す、殺そうとした時に叫ばれては困るので、後ろから気配を絶ちきり一気に殺す。そうする事で応援を呼ばれる心配はないのだ。

「クロロの仲間は随分、優秀なんだな」

護衛が殺された時に出た血は廊下を紅く染めて、元々紅かった絨毯を更に紅く染めていた。地に伏している護衛達は皆、呻き声の一つもあげておらずそれが余計に“死”と言う物を感じさせている。

「………此処かね?『インセントダイヤモンド』がある保管庫。それじゃあ、開けるぞ」

大きな重い扉が「ギィィ………」と言う音を経てて開くと


ジャキッ

銃口が一斉にしてフェリたちに向いた、これを見たシャルナークは彼の耳元に口を寄せると

「それじゃあ、お手並み拝見」

にっこりと笑顔を浮かべるとフェリの後ろへと一歩下がる。クロロも同じ様に一歩後ろへ下がるとフェリは待っていたかの様に、クロロとシャルナークだけに聞こえる様に

「口と鼻を塞いどけ」

二人が口と鼻を塞ぐと、







「色彩なる幻覚(コル スオーネ)」









フェリが叫ぶと銃口を向けていた者達は次々と銃を落とし、その場に倒れてしまった。クロロは一瞬彼が念能力を使って相手を殺したのかと思ったが、彼を基地(アジト)に連れてきた時に『人は殺すな。』と言っていたのを思いだし、倒れている者をよく見ると皆外傷は見当たらず。では、どうやって気絶させたのかとクロロが疑問に思っていると

「クロロ、シャルナーク。口と鼻からもう手、離して良いぞ」

フェリに言われて手を離すと空気に混じってほんの僅かだが甘い匂いが漂ってきた。常人には分からないその匂いはクロロでさえも何の匂いなのかが分からなかった。

「さて、此処にある物全てだよな……………よし…。クロロ、シャルナーク少し離れてろ巻き込まれるから」

フェリはそう言うと鞄の中から古びた事典ほどの分厚さの本を一冊取り出した。右手で本を持つと、











「現実絵画事典(ソリット エンシクローペッデイア)」















フェリがそう言うと本は光を放ち、風が吹いているかの様にページが勝手に捲れて行く。そして真ん中辺りを開く。

すると、ショーケースに入れられている宝石、壁に掛けられている巨大な絵画までもが本に吸い寄せられられていく。だが吸い寄せられている途中で、銅像がクロロに当たりそうになったりシャルナークに絵画が突っ込んでくるなど災難がありクロロが

「巻き込まれるってこういう事か……って、うおっ!!」

クロロ達が銅像等を避けているが、フェリには突っ込んでくる事が無い。クロロはそれを理不尽だと思いながら、保管庫にある物全てが本に吸い込まれるまで絵画などを避け続けた。





















保管庫にある物全てが本に吸収されると、辺りにはフェリが気絶させた者とクロロとシャルナークしか残っていなかった。彼は沢山の絵画や銅像、宝石があった部屋をぐるりと見回し吸収し損ねた物が無いかを探したが、全て本に吸収されたと分かると分厚い本を右手でパタンと閉じた。

閉じられた本には一つの題名が描かれていた。


『私利私欲の為に集められた宝達』


その題名を見てフェリは鼻で笑うと後ろに居るクロロとシャルナークに向かって





「俺の仕事、終わったよ」


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…

近くて遠く
遠くて近い距離に貴方が居る

貴方も俺も気付かない
小さな小さな頃の大きな記憶


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…

【用語講座】

【色彩なる幻覚(コル スオーネ)】

【一瞬にして現実と変わらない多種多彩な夢が見れる。鼻もしくは口で息をして僅かな甘い匂いを嗅いだ事が発動条件。自分が許した者のみ能力を効かなくさせる事が出来る。これを使っている間、使っている人間に掠り傷一つでもつけると瞬時にして能力は解かれ、自分は絶の状態となる】

【現実絵画事典(ソリット エンシクローペッデイア)】

【好きなモノを好きなだけ本に入れる事が出来る。本を開けば本に入っているモノの情報がアイウエオ順で絵と説明付きで描かれている。ただし、好きなモノを的確に取り出す事は出来ない。能力を解除してから取り出すと言う面倒な能力だが、自分が死んでしまっも能力が解除されない。攻撃には使えないでも、攻撃(物理)で相手を殴って戦う事も出来なくはない】




[42147] 仕事編 ~旅団【その5】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:06db9de8
Date: 2016/09/23 16:29


フェリシダッドが保管庫にある宝石や絵画などを本に吸収し終えると、フェリとクロロ、シャルナークは保管庫から出ると、フェリが二人に振り返ると

「ダイヤは、多分本の中にある。基地(アジト)についたら出すから」

それを聞いたシャルナークが首をかしげ、顔ににっこりと(黒い)笑みを浮かべ、フェリを見ながら

「どうして、今出してくれないのさ。此処で出す事くらい出来るだろう?」

それを聞きながらもフェリは血に染まった廊下を歩き続け、後ろをついて歩いているクロロとシャルナークに向かって自分の“能力”について話出した。

「俺の能力の一つ“現実絵画事典”は、好きな物をすきなだけ本に入れる、吸収させる事が出来るけれど、本の中にある物は能力を解かない限り絶対、本の外へ出る事はない。けれど物を出す時に一つの物を的確に外に出すことは出来ない。まぁ、クロロの“盗賊の極意”の“物版”て、ところだ」

この説明を聞いて、クロロは足を止めてポツリと「なるほど…」と、呟いた。この呟きを聞いて、シャルナークはクロロの方に顔を向けた。

「フェリ、お前には“一度”オレの能力を見せたがまさか、一度見ただけでオレの能力と似て異なる能力を造る何てな……………それに、お前の念の系統は………具現化系……いや、オレと同じ特質系か……」

クロロがフェリの系統について語っている間に、フェリはさっさと歩いて行ってしまっていた。クロロの話が終わるとシャルナークはフェリが歩いて行っていると分かり、慌てて後をつけた。クロロは慌てる素振りを全く見せず、早足でフェリの後をつけた。



























「随分早ぇじゃねぇか」

豪邸の玄関を開け外へと出ると、そこには幻影旅団のメンバーがいた。メンバーと言っても全員ではなく

フィンクス、フェイタン、マチ、ウボォーギン

この四人がいた。
玄関から出てきた三人に上記の言葉を放ったのはフィンクスである。

フィンクスはフェリを見ると、ニタリと笑みを浮かべ近寄ってくると

「流石、運び屋だな。それとも、団長から言われてた“人を殺すな”って言う約束は破ったのかぁ?」

フィンクスは挑発する様な態度をとるが、フェリはそれを無視し煙草を取り出した。

「クロロの約束は破ってねぇよ。多分夢の中じゃあ、何度も殺されてると思うけどな。まぁ、“人を生かすのは殺すより難しい”が相手が寝むって終えば、後は簡単だ」

フェリはそう言い終えると、煙草に火をつけ吸い始める。フィンクスは煙草の煙を嗅ぐと眉を潜めフェリから少し、距離をとった。その行動に首をかしげたフェリは煙草を口から離すと、

「この煙草の煙、結構良い匂いだろ?俺気に入ってるんだよ」

フェリは心外だという表情を浮かべながらも煙草に口をつけ、口から紫色の煙を吐き出した。口から吐き出されたその煙は彼らにとっては眉を潜める程の嫌な匂いにもかかわらず、フェリはその煙を、煙草を何とも無いように吸っているのだった。

最後に誰が言ったかは分からないが、ポツリと声が聞こえた。

「確かに、重症だな」



















【???? side】

豪華な飾りが所々に飾られている部屋で、茶髪の男は一枚の紙を持ちながら口元に笑みを浮かべていた。

「まさか、あの女から生まれた餓鬼がこんなにも強く、有名になっているとはなぁ。さて、此方側に来てもらうか」

男は紙を放り出すと、ネクタイを少し緩ませ大理石で出来ているであろう床を綺麗に磨かれた黒色の革靴で歩き出す。

口元の笑みだけは消さずに。

扉の前まで来ると、扉は廊下の方で待機していた黒いスーツを着た男が扉を開けた。

「????様。午後から会社での会議が御座います。それ故、今日は帰りが遅くなるかと………」

それだけ言って黒いスーツを着た男は、茶髪の男の後ろをついて歩き扉に当たったら自分で扉を開けてやるという行為を数回繰り返した。

玄関につくと玄関の扉はもう既に空いており、直ぐ前に日の光に照らされて白い光を反射している黒い高級車が停まっていた。茶髪の男が黒い高級車に乗り込むと後ろについていた黒いスーツを着た男は深く深くお辞儀をすると、一言、

「後子息は、私達の方で探して参ります」

それを聞くと茶髪の男は口元のに浮かべていた笑みをより深く、より不気味にすると車の扉を閉めた。


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


彼に対しての恐怖が動き出した。

人に対しての喜びが動き出した。

友に対しての怒りが動き出した。




[42147] 仕事編 ~旅団【その6】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:06db9de8
Date: 2016/09/23 16:32


フェリ達が基地(アジト)につくとフェリは瓦礫の上に胡座をかいて座ると、現実絵画事典を発動させ、右手に本を持ちながら、

「さてと、本の中にある宝石とかが大量に入ってるから、出す時に気を付けろ」

そう言うと、本は光を放ち勝手にページが捲られていく。真ん中辺りでページが開くとフェリは、目を閉じ

「能力……………………解除」

言い終えると同時に、本から大量の宝石や絵画といった物が本から外へと出ていく。目を閉じたままだったフェリはカッと目を見開くと

「………………取った。これが、“インセントダイヤモンド”か。ただ単にデケェだけのダイヤかよ」

そう言うフェリの左手には指輪等に使われるダイヤとは、大きさが全く異なる大きなダイヤが手の中にあった。

「おい、これはどうするんだよ」

フィンクスは眉を潜めながら自分の足元にある絵画や宝石等をチラリと見ると、フェリに視線を寄越した。フェリはフィンクスの視線に気付いたが、無視すると本に向かってポツリと何かを言うと周りに散乱していた宝石等が、本へと吸収されていった。

「これでいいかよ?」

フィンクスはフェリの念能力を見るのはさっきので二回目ではあるが、本の中へと物が吸収されていく様はまだ慣れないでいた。だが、フェリの能力を見て口元を吊り上げると

「やっぱお前、具現化系の能力者か?本を具現化して、その本に好きなものを入れれるのか?」

フィンクスの言葉をフェリは鼻で笑うと、本をパタンと片手で挟む様にして閉じると瓦礫の上から降り、フィンクスの近くに寄ると

「ハズレ。具現化系寄りの、特質系だ」

フィクスにニヤニヤとした笑みを浮かべ近付くフェリにイラッとしたフィクスは、目だけでフェリを射殺さんとするがフェリ自身は笑いながらフィクスから離れクロロに本を手渡すと

「この本のはお前の“念と声”によって能力が解かれるから、本の中に入ってる宝石とかはお前等の好きにしろよ。あ、ただしクロロ後で俺に金寄越せよ」

そう言い残すとフェリは煙草を取り出すと火を付けさっさと出て行こうとしがクロロが後ろでフェリを呼び止めた。

「何だよ…………。面倒くさいな」

そう言うとクロロはフェリに向かって一枚の紙切れを渡した。その紙切れをには、電話番号が書かれており

「お前、オレの電話番号知らないだろう?だか「要らん!!!」…………そうか、残念だな」

残念そうに見えない表情を浮かべているクロロに紙切れをグシャリと丸めて、念を込めて投げ付けるがクロロは薄く笑みを浮かべて、丸められた紙切れを受け取った。

「残念何て、思ってないくせに」

フェリ自身も薄く笑みを浮かべて、基地(アジト)を出て行こうとすると




「お前が、フェリシダッド・エスペランサだな」




基地(アジト)の前に立っていたのは黒いスーツを着た男だった。この男を見た瞬間フェリは目付きを変え、男の鳩尾に肘を付き入れた。

「ぐぅっ?!!!!!!」

男は悶絶しゴホゴホと咳き込むも、フェリを睨み付け

「……………ゴホッ……っ貴様の父親が呼んでいる……。今すぐ、私達と一緒に来い!!」

言い終わると同時にフェリは顔を強ばらせながらも男を殴り付けた。男を殴り付けた時に起こった音によって、旅団のメンバーが上から来ていたのだ

「どうした、フェリ」

クロロが顔を覗かせたその時、フェリは目を見開き顔を強ばらせるも


「色彩なる幻覚」


能力が発動すると同時にフェリ以外のその場にいた全員が倒れる様にして、気絶した。

フェリは全員が倒れると急いでその場を走りさろうとしたが、一人だけまだ目を薄く開け

「フェリ……………。一体どうした………?何があった……」

クロロがそういい終えるとフェリは、ギロリとクロロを睨み付け顔を背け走り出した。












【幸福・希望 side】

黒髪黒目の男がゴミ山の上に立っていた。何処か哀しそうな雰囲気を漂わせながら立っている。

男の目線の先には白壁の小綺麗な家が一軒あった。ゴミ山が大量にあるこの場所には不釣り合いなこの家はある人にとって、とても大事な家なのだ…。だが男はゴミ山を降りると、家に近付き

「…………………………」

ただ、黙りながら鞄の中からライターを一本取り出すと、家の中へと入りベッドの置いてある寝室へと入ると

「……………………………さよなら」

ライターを落とし、火をつけた。



男は火のついた家を後にし、ゴミ山の影へと消えていった。


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…

すべてをけして、
すべてをかえて、

すべてをなしにして。




[42147] ハンター試験編 ~友人【その1】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:06db9de8
Date: 2016/09/23 16:35
今回から原作(?)に突入します。
ですが、私は漫画を持っていないので基本アニメを見ながら、チマチマ書きます。

原作突入と言っていますが、原作崩壊も有り得ますので、原作崩壊嫌だなと思う人は、今すぐブラウザバックして下さい。はい。

…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


薄く汚れた壁に背中を預け、黒いフードを深く被った多分男が天井を見上げていた。男の周りには目をギラギラと光らせ闘志を燃やす男や、逆に落ち着き座っている者まで様々な人たちがいた。

天井を見上げている男に歩み寄ってくる一つの影があった。小太りの背の低い丸い鼻が特徴の男は

「よぉ、お前新人だろ?オレはトンパ。ハンター試験のベテランだ。お近づきの印にこれやるよ」

そう言いながら『トンパ』という男は鞄の中から缶のジュースを取り出した。天井を見上げていた男はゆっくりとした動作でトンパを見下ろすと辛うじて見えている口を微かに開け

「……………………要らん」

たった一言そう言い放った。だがトンパは笑いながら缶のジュースを仕舞うどころか男に手渡したのだ。男の雰囲気が一瞬にして禍々しいものに変わると、トンパの顔は青白くなりジュースを持っている手が震え出す。

「あ、ぃ、いや、嫌なら、いいんだ。わ、悪いな」

急いでジュースを鞄の中に仕舞い、クルリと向きを変えると脱兎の如く走り出した。遠くから聞こえてきたトンパの声

「バ、バケモンだ………!!」

その声は震えておりトンパの声を聞いた男は「クク」と笑ったのだった。



















男がトンパと言う男に出会ってから約数時間経った頃、エレベーターの扉が開きその中から男が三人出てきた。一人はツンツンとした髪型の少年で、もう一人は金髪で端から見たら少女と見間違える程の少年だった。そして最後の一人は……………青年……ではあるが最初の二人よりもかなり歳が離れている様に見えた。最低でも二十歳は越えているだろう。そう思った男は三人から目線をずらそうとしたが、先程自分に絡んできたトンパが三人に近付いて来ていたので男は何をするのかと、見ていると自分の時と同じように気さくに話し掛け、ジュースを渡そうとしていた。男は一つの溜め息をつくと、ゆっくりとした足取りだがトンパに向かって一直線で歩き出した。

「………それでな、381番の黒いフードを被った「俺がどうかしたか」……」

トンパの言葉に被せる様にして話を遮ると、トンパは額から冷や汗をダラダラと流し、錆び付いて動きの鈍った人形の様に首を回し、丁度視界に黒いフードを被った男が入り込むとその瞬間

「ギャァァァァァァァァァ!!!!!!!」

後に残った三人の男は、フードを被った男を見詰める。男は三人の視線に気付いたのか、トンパが走り去った方向に顔を向けるのを止め、三人の方に顔を向けた。

「お兄さん、トンパに何かしたの?」

ツンツンとした髪型の少年に質問された男は「いや。」と短く答えた。ツンツンとした髪型の少年は「そっか。」と深くは聞いてこなかったが少年の近くにいる金髪と青年が少年の耳元で話出す。それを見た男は「クク。」と笑う。幾ら聞こえない様に話した所で男には聞こえているのだ。話の内容は男が危険人物だと言うこと。

「俺が、危険人物ねぇ。一応俺は、お前らを助けたんだがな」

その発言に眉を潜めた金髪の少年は、男を警戒しているのか睨み付けた。

「どういう意味だ。私たちはトンパと言う男に、お前が危険人物だと聞いたんだぞ。危険人物であるお前に私達が助けられただと?」

“危険人物”その単語を聞いて男は僅かに見える口の端を上に吊り上げた。その口元を見ただけで、金髪の少年は睨み付けるのを止め一歩後ろへと後退りした。

「トンパっていう男が渡そうとしてたジュースあるだろう?そのジュースには俺から見たらお遊びとしか思えない薬が入っててね。君たちがあのままあのジュースを飲んでたら間違いなく、君たちは腹下してたかもね。あ、でも君は大丈夫かもね」

そう言ってツンツンとした髪型の少年の頭を撫でる男に、三人の中で一番背の高い二十歳は過ぎているであろう青年がポツリと溢した。

「まさか、下剤が入ってたのか……?」

その言葉を聞いたん男は、三人に分かるように口元に笑みをつくると

「正解」

と、面白そうに言った。男はツンツンとした髪型の少年の頭を撫でるのを止めると、

「今度は騙されない様にしろよ」

そう言い残して背を向けようとすると、先程まで男に頭を撫でられていた少年が大声で

「オレ、ゴン!!ゴン・フリークス!!お兄さんの名前は?」

ゴンに続くように、残りの二人も名を名乗り始めた。

「私は、クラピカだよろしく頼む」

金髪の少年は『クラピカ』と名乗った。そして最後の一人である青年は

「オレはレオリオって言うんだ、よろしくな!!」

ニッと笑顔を浮かべた『レオリオ』と名乗る青年。レオリオが名乗るとゴンが目をキラキラとさせながら

「お兄さんの名前は?」

男は「フッ」と笑うと














「俺の名前は……………フェリ。“運び屋”兼“薬屋”だ」

そう言いながら口元をにっこりとさせ「よろしく」と三人に向かって呟いた。


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…

彼の父は欲深な人間

彼の父は自分勝手な人間

彼に、慈悲と言う物は存在しない。
そうでなければ、彼という“存在”はこの世には無い




[42147] ハンター試験編 ~友人【その2】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:06db9de8
Date: 2016/09/23 16:38
皆の台詞が原作である漫画と多少違うかもしれません。
アニメ第二作を見ながら書いているので、原作とは違った展開が起こります。
原作と違うのが嫌だと言う御方は今すぐブラウザバックして下さい。はい。


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


【トンパ side】


ハンター試験のベテランである小太り、丸い鼻が特徴の男トンパは恐怖によって震えていた。トンパは35回もハンター試験を受けているがこれ程恐怖によって怯えた事はない。トンパは自分の脳裏に焼き付いて離れないフードを被った男の事を思い出していた。

「(あんな不気味な奴見た事ない!!あいつはきっと裏の世界の人間だ!!見た目だけじゃ分からなかった…。しかも、あいつの声をきいても分からなかった…………。くそ!!あいつは一体何者なんだ?!!)」

いまだに手の震えが止まらず、震えを止めるために強く握る。それだけでは震えは止まらない。トンパは今自分がこんな状況に陥ってる原因である381番の男を探そうと辺りを見回したが、何故か姿が見えない。

「(なっ?!あいつ、何処居やがるんだ!!)」

男を探そうと首を四方八方に向けていると丁度自分の後ろからあの男の声が聞こえた。

「俺に何か用か?新人潰しのトンパ」

その声はゴンやクラピカ、レオリオと話していた時とは全く違う声の温度だった。ゴン達と話していた時、声は冷たくもあったが穏やかではあった。だがトンパに話し掛けた時のその声は、恐ろしい程冷ややかで尚且つ穏やかさ、さえも感じられない。トンパは男の声が聞こえると、顔色を青白くし男の方を振り向いた。

「何だ、俺に用があったんだろ?違うのか?じゃあお前は誰を探していたんだ。トンパ」

トンパは顔を青白くしたまま向きを変え走って行ってしまった。後に残った男は口しか見えないが酷く可笑しそうな顔をしていた。
















【フェリ side】


男、フェリはトンパが走り去って行った方向を暫く見詰めていると、一つの隠されていない視線を見付けた。視線が何処から来ているのかと、右に身体を向けると白髪のゴンと同い年位の少年が視界に入った。フェリは「クク」っと笑うと白髪の少年の元まで歩き出した。

「視線。まる分かりだぞ」

そう言うと白髪の少年は「ふーん」と言いながらフェリの足の先から頭の上まで眺めると

「アンタ、結構強いだろ?同業者の匂いがする」

口元に笑みを浮かべた少年を嘲笑うかの様に鼻で笑うと、自分よりもかなり身長の低い少年の頭に手を置きグシャグシャと撫で回した。

「わっ!ちょっ、何だよ!お前!!」

「ハズレ。俺は“暗殺”とかそう言った類いの仕事はしてない。俺は“運び屋”兼“薬屋”」

“暗殺”と言った瞬間少年の雰囲気が一瞬にして変わった。そして大きな猫目をグッと細めフェリを睨み付けた。

「アンタ、何でオレが暗殺の仕事をしてるって思ったの」

きっとこの少年に睨み付けられた者は戦意を喪失して、戦う事が出来なくなるんだろうな。と考えていたフェリはいまだに自分を睨み付けている少年の、頭の上にある手を引っ込めると

「俺も一応、運び屋でね。色々と情報とか持ってるんだよ。君が“キルア・ゾルディック”だって言う事も知ってるしね」

口元をキュッと吊り上げると、白髪の少年もとい『キルア』はもの凄い速さでフェリの鳩尾に拳を叩き込もうとするが、

「あぶねぇよ」

たった一言そう言うと今まさに、鳩尾に当たりそうだったキルア拳を掴んだのだ。これに驚いたのはキルアの方だった。まさか自分の全力の一撃がこんなにも容易く塞がれた事に苛立ちを覚えたのだ。

「アンタ、マジで何モンだ」

ギリギリと歯ぎしりをするとフェリはしゃがみこみ、ギリギリと歯ぎしりを続けるキルアの頬を引っ張った。

「にゃ、にゃにすんだよぉ!!!」

ジタバタと暴れだしたがフェリは頬から手を離すことなく「クク」と笑うと

「餓鬼は餓鬼らしく、笑っていればいいんだよ」

そう言うと立ち上がりキルアの頭を優しく撫で、

「俺は“運び屋”兼“薬屋”をやってる、フェリだ。よろしくな」

キルアは引っ張られた頬を撫でてムスッとしながらも小さく「よろしく」と呟いた。キルアの声が聞こえたフェリは「クク」っと笑うと

「………………そろそろ、試験始まるぞ」

「え…………なにっ、」

キルアがポツリと言い終わるその前に普通の鐘の音とは違う、音が辺りにな鳴り響いた。

音は何故か壁の向こうから聞こえてくる。すると大きな音を経てて壁がどんどん上へと上がって行く。壁の向こうに居たのは奇妙な鐘を持った、紳士風の男だった。

「大変お待たせ致しました。ただ今をもってハンター受験者の受付時間を終了致します。………………では、これよりハンター試験を開始致します」

そう言った男はまだ音が鳴り続ける鐘を止めて受験者たちに向かって、注意事項の様な物を話し出した。

「最終確認です。この試験は運が悪かったり、実力が乏しかったりすると大ケガをし最悪死に至る事もあります。それでも構わないという方のみ、私についてきて下さい。そうでない方は後ろのエレベーターから速やかにお帰り下さい」

男がそう言っても誰一人として帰ろうとする者はいない。その光景を見てフェリは口元をググッと吊り上げると一人面白そうに「クククッ。」と笑った。フェリの隣に居たキルアはそんなフェリをジト目で見るがフェリは口元を吊り上げたまま、紳士風の男を見ていた。


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


空白の数年間

自分の痕跡を全て消し去り、亡き者となった彼は

一体、何を望むのか




[42147] ハンター試験編 ~友人【その3】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:06db9de8
Date: 2016/09/23 16:42


試験官である男が歩き出した。それに続くようにフェリ達、受験者は紳士風の男の後を負う。最初は歩く様に…。だが、だんだんと歩くスピードは速くなっていく。そして遂には

「ん?前の方が走り出したのか。それじゃあフェリ、オレ先行ってるから」

キルアはそう言い残すと脇に抱えていたスケボーを降ろすと、スケボーに乗って先頭の方まで行ってしまった。

キルアがスケボーに乗って行ってしまうと、先頭を走…………歩いている紳士風の男が話し出した。男の声を聞き逃さない様に先頭の方に意識を向ける。

「申し遅れましたが、私(ワタクシ)第一次試験官の『サトツ』と申します。これより皆様を二次試験会場へ案内致します」

そこでふとフェリは疑問に思った。なぜ一次試験がないのだろうと、だがその疑問は先頭を走っている一人、髪の毛が一本も生えていない禿………確か名前を『ハンゾー』が驚き声を上げてサトツに質問した事によって解決した。

「二次……?!ってことは一次は?!」

ハンゾーの質問を聞きながらも全くペースを落とさないサトツは

「もう始まっているので御座います」

サトツがそう言うと周りが一気にざわついた。それもそうだろうまだ始まっていないと思われていた試験がもう既に始まっていたのだから。

「二次試験会場まで私についてくる事、これが一次試験で御座います」

サトツが言い終わるのと同時にフェリは先頭に意識を向けるのを止め、先頭から離れた所を走り続ける事にしようとしたが

「あ!フェリーー!!一緒に走ろう!」

年相応の無邪気な声が聞こえた。この声を聞いたフェリは、自分の後ろを走ってくる緑色の服を着た少年ゴンの元へと逆走した。

「フェリ、一緒に走ってくれるの?わぁい!!」

フェリがゴンの隣にくるとゴンは満面の笑みを浮かべながら、話し出した。

「ねぇ、フェリ変なテストだよね」

ゴンがそう言うとフェリの左斜めにレオリオが走っていた。レオリオは顔に笑みを浮かべながら

「持久力試験って事か!!望むところだぜ。何処までもついていってやらぁ!!!!」

レオリオの大声に若干イラッとしたフェリはフードによって隠れている目で、レオリオを睨み付けた。するとどうだろうなぜかレオリオは身震いしキョロキョロと周りを見渡しだした。

「どうしたんだ、レオリオ」

気になって声を掛ければレオリオは首をかしげ「いや……」と呟くと

「何か誰かに思いっきり睨まれたと思ってさ、でもやっぱオレの間違いだったわ!!」

ニッと笑ったレオリオにフェリは「単純……」と言いかけて止めた。先程会ったばかりだがレオリオがどの様な性格をしているか分かった為である。短気なレオリオに「単純」と言ってしまえばキレられる。
















試験開始から二時間、スタートから30キロ超えた頃、もうここで数名の脱落者が出ていた。

だが、フェリはゴンと談笑しながら走る。時折ゴンは声を上げながら笑顔をつくっている。二人が談笑していると

「コラ!!!待て!!!餓鬼!!!」

レオリオが一人の子供を怒鳴り付けたのだ。その子供はフェリが一次試験が始まった頃にいたキルアだった。

「てめぇ………。ハンター試験なめんじゃねぇぞ!!!」

レオリオが怒鳴るがキルアは首をかしげ

「なんのこと?」

キルアが返すとレオリオは顔を赤くし更に大声で

「なんのって、そのスケボー反則だろぉ!!!!」

「なんで?」

間髪入れずにキルアがレオリオに言葉を返すとレオリオは、怒鳴りながらもキルアに向かって

「これは、持久力のテストなんだぞ!!!」

フェリはレオリオの言葉を聞いてフードによって隠れている眉を潜め、レオリオに「違う」と言おうと口を開く

「ちげぇよ」「違うよ」

ゴンと被ってしまったのだ。一瞬ゴンと顔を見合わせると、ゴンは笑顔を浮かべながら

「被っちゃったね、フェリ」

「えへへ」と笑い出すゴンにフェリは口元を緩め、「はぁ?」という顔のまま走っているレオリオに

「試験官はただついてこいって言っただけだからな。別に持久力を試す試験じゃねぇよ。単純にあのサトツとかいう試験官についていくのに持久力がいるだけだ」

レオリオにそう言うとレオリオはぐぎぎぎと歯をくいしばって反論しようとしていたが、サトツの言った事を思いだし「はぁぁぁ……………」と長めの溜め息をついたのだった。

レオリオが折れると同時にキルアはスケボーの速度を落とし、フェリとゴンに近付いて来た。

「よぉ、フェリ。さっきぶり」

口元に笑みを浮かべながら話し掛けてきたキルアにフェリは「お~」とやる気無さげな声をあげて、キルアに返事を返した。

「ちゃんと返事しろよ!ったく!お前、コイツと会話するの疲れねぇ?」

スケボーに乗りながら器用にフェリの隣にいるゴンに話し掛けるキルア。話し掛けられたゴンはチラリとフェリを見上げると

「ううん、むしろとっても話しやすいよ。それにねフェリって凄いだよ。オレの知らない国とか植物とかたくさん知ってるんだよ!!」

キルアはまさかこんな返しをされるとは思わなかったらしく「へぇ~」と言いながらジト目でフェリを見上げた。対するフェリはフードから覗く口をニッと吊り上げて笑った。その顔を見てキルアは

「なっ!!!やっぱ、オレも走る!!!」

そう言うとスケボーを蹴りあげキャッチすると、ゴンの隣に移動すると

「オレ、キルア。そう言えばお前って年いくつ?」

「オレはゴン。12歳だよ」

二人で自己紹介を終えると、二人がなぜかフェリを見詰めだした。フェリはあえて二人を見ずに、ただ前だけを見ていたがゴンがフェリの服を引っ張ったため、二人の方に目線を向けた。

「フェリってさ、いくつなの?オレとキルアは12なんだけど………。18とかそのくらい?」

ゴンがフェリに歳を聞くが、フェリは「う~~ん」と一つ唸ると

「わからん」

その瞬間二人が

「「えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」

声を荒らげた。間近にいるフェリは二人分の声に耳を抑えた。

「分かんないって、それマジで?!」

キルアが声を上げて聞いてくるが、フェリは

「俺、自分の歳知らないんだよね。数えた事も無いし、いつ生まれたのかも知らない」

フェリがそう言うと何故か二人は黙ってしまい、フェリは居心地が悪そうに口をへの字にすると、

「まぁ別に、自分の歳なんて大体でいいんだよ。それにいざとなったら、20って言ったり自分の歳を誤魔化せばなんとかなるしな」

フェリがそう言うとキルアが「プッ」と吹き出し、ゴンがつられる様に笑いだした。

「歳、誤魔化すのかよ!!」

「フェリって面白いね!!」

二人はフェリの「いざとなったら歳を誤魔化す」という発言がツボになったらしく暫く笑っていた。


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


彼と言う存在はいない

でもその証拠はない

もしかしたらまた、目の前に現れてくれるのかもしれない




[42147] ハンター試験編 ~友人【その4】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:06db9de8
Date: 2016/09/23 16:45


スタート開始から約四時間、もう既に60キロは走っている。フェリとゴン、キルア、クラピカはまだ走れたがレオリオに疲れが見えており、ぜぇぜぇと荒く息をしていた。

「ぜぇ………ぜぇ………ぜぇ………」

走るスピードがどんどんと落ちていき、持っていた鞄すらも落としてしまった。

鞄を落とした音が聞こえたのかゴンが足を止め、後ろを振り返る。それにつられる様にしてキルアが立ち止まる。

「………先行ってるから。…………多分だけどレオリオはきっと大丈夫だぜ」

フェリはそう言い残すと足を早め先に言ってしまった。後ろでキルアが「おい!!待てよ!」と言っていたが、チラリと後ろを振り替えりヒラヒラと手を振ると前を向いて走り出した。

「ったく。……………………おい、ほっとけよ。フェリ先行っちまったぜ」

キルアがそう言うがゴンは後ろを見詰めたまま微動だにしなかった。するとどうだろう、後ろでレオリオの大声が聞こえたのだ!!!

「……ざっけんなよ………。絶対、ハンターになったるんじゃぁ!!くそったらーーーーーー!!!!!」

レオリオの大声が聞こえるとすぐにレオリオがもの凄いスピードで走り、ゴンとキルア二人を追い越して行ってしまった。

「ね?フェリが言った通り大丈夫だったでしょ?」

得意気に笑ったゴンは自分の持っている釣竿を後ろへと飛ばす。飛ばした釣糸をグンッ!!と引っ張ると釣糸の先にはレオリオが持っていた鞄があった。

「かっこいい!!」

キルアが興奮して言えば、ゴンは「へへっ」と笑い二人で走り出した。

「後でオレにもやらせろよ」

キルアがそう言うとゴンは嬉しそうに笑い

「スケボー貸してくれたらね」

さっき会ったばかりとは思えない程、仲良くなった二人は立ち止まっていた分を補う様にして走るスピードを早めた。



















【ヒソカ side】


ピエロの様な格好をした男『ヒソカ』は、今自分の後ろを走っているフードを被った男、フェリに意識を向けていた。

フェリは最後尾を走っていたのにもう既に真ん中辺りまで走って来ており、ヒソカはフェリと同じスピードになる様にワザと自分の走るスピードを落とした。

「やぁフェリ。久し振りだね◆」

ねっとりする様なヒソカの声にあからさまに嫌そうなオーラを放つフェリに、何が面白いのかは分からないが「クククク」と笑い出すヒソカに、フェリは

「……………………気色悪い……………………」

そう言い残し先頭まで行こうとするが、ヒソカにガッチリと右手首を掴まれ先へ行くことを拒まれたフェリは先程とは比べ物にならないオーラを放ち、近くにいた受験者を一人気絶させた。…………可哀想に、まだ走れたのにねぇ。




おっと。




話が逸れました。フェリのオーラを間近で感じたヒソカは一人嬉しそうに

「やっぱり、君は良いオーラをしているね。本当、去年落ちて正解だったかも◆」

ヒソカがそう言うとフェリはフードによって隠れている目で忌々しそうにヒソカを睨み付けこう言った。

「なんで去年落ちてんだよ………。俺は去年、お前がハンター試験を受けたったって聞いたから、今年受けようと思ったのに…………。何で落ちてんのかなぁ…………」

盛大に大きな溜め息を吐いたフェリにヒソカは自分が去年落ちた理由を、フェリに話し出した。

「そうだねぇ。ボクが落ちた理由は試験官を半殺しにしたからかな◆」

理由を聞いたフェリはヒソカを睨み付けるのを止め「お前らしい」と呟いた。

「そう言えば何でフェリはハンター試験を受けるんだい?君の仕事で必要になったのかい◆」

ヒソカがフェリにハンター試験を受ける理由を聞くとフェリは「あぁ……」と呟き

「仕事で必要ってのもあるけど一番は身分証だな。“今の”俺には無い物だからな」

フェリがそう言うとヒソカは「ふ~ん」と呟くとフェリの右手首を掴んでいた左手を離した。フェリは離された右手首を左手で擦りだす。

「君という存在はこの世にあって無いような物だからね。あぁでも、前の君だったらボクと会うことは無かったのか。だったらボクは今の君の方が………………ってフェリ?何処行くんだい◆」

ヒソカによる聞いていて嫌になる話しを聞きたくないのでヒソカから離れて走り出すが、そこはヒソカ。普通についてくるのだ。

「もうすぐ出口なんだよ。ピエロと一緒に居たらアイツらが嫌がる」

フェリはそう言うと「しまった!!」という顔をしたが時既に遅し。ヒソカは顔に笑顔を浮かべ気味の悪い声で笑っていた。

「クククク。そうか、君が気にかける子がいるのか………。あぁ、会ってみたいねぇ◆」

ヒソカがそう言うとフェリは一瞬にしてオーラを増幅させ、増幅させたオーラを全てヒソカへと向けた。

「?!…………っクククク。そんなに、その子たちが大事なのかい◆」

フェリはヒソカの質問には答えず、フードに隠れた目をギラリと光らせると、






「アイツらに手を出したら…………お前を、殺す」



フェリはそう言い残すと、先頭へと走って行ってしまった。残されたヒソカは面白そうに笑い出した。


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…

道化師と人形使いは

彼の過去を知っている

彼の存在を隠したのもまた

道化師と人形使いである




[42147] ハンター試験編 ~友人【その5】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:06db9de8
Date: 2016/09/23 16:47


フェリはヒソカの元から離れると、自分よりも少し前を走っていたレオリオとクラピカの元へと走った。

フェリが二人の元へ近付いている時に聞こえてきた二人の会話にフェリは、眉を潜めた。

二人の会話は酷く残酷なものだった。

レオリオは、死んでしまった友人と同じ病気にかかった子供を助け、子供の親に「金なんていらない。」と言うのが夢だったそうだ。だがそんな医者になるためには更に見たこともない金が必要になってくる。

そしてクラピカは自分以外の一族を皆殺しにされ、そして更に一族特有の特殊体質である「緋の目」を遺体から全て抉り取られたそうだ。

二人の会話を聞いたフェリはいまだに続いている二人の会話を一時的に中断させるために、二人の元へと一気に走った。




「おい」

「ギャアアア!!!!」

後ろからレオリオとクラピカに話し掛けるとクラピかは驚いていた様だが、レオリオの様に叫び声をあげなかった。

「な、なんだよフェリ?!一体いつオレらの後ろに………」

レオリオは器用に後ろにいるフェリを見ながら走っている。クラピかはそんな事はせずにフェリの隣を走っている。

「お前らが暗い話を大声でしてたからな。すぐに分かるよ」

フェリがそう言うと二人は「しまった!」という表情になると、フェリに

「オレらの話、どのくらいまで聞いてた」

レオリオの問い掛けにフェリは「ほとんど」と呟いた。この呟きを聞いたレオリオは

「ほとんど?!!!!そ、それってオレの方か、それともクラピカの方か?!どっちだ!!」

レオリオが焦って問いただして来るがフェリはそれを軽く無視し

「二人共、ほとんど聞いた」

これにはクラピカもコメカミを抑え、レオリオの方は口を開けたまま走っている。コメカミを抑えていたクラピカは何かを思い出した様にコメカミから手を離すと、

「フェリ………お前は確か“運び屋”兼“薬屋”と言っていたな……。運び屋の仕事で「緋の目」を運んだ事はあるか……?」

クラピカがそう問い掛けるがフェリは、頭を左右に振り

「俺の場合は運ぶ物が何なのかは、依頼主には聞かないんだ。もしかしたら盗まれた宝石や、人体の一部だったりするからな」

フェリがそう答えるとクラピカとレオリオは驚愕の表情をし、フェリの仕事が普通の運び屋ではない事を知った。

「フェリ、お前の仕事は普通の運び屋ではなかったんだな………」

クラピカが声のトーンを落とすと、フェリは何でもないかの様にフードから覗く口に笑みをつくると

「俺にとってはこの仕事が普通なんだよ。それにかなり前からやってる仕事だから、今更なんとも思わねぇよ」

フェリがそう答えるとクラピカは少し遠慮がちに「なぁ、フェリ……」と顔を少し伏せながらフェリに呟いた。

「お前に…………家族は、居るか?」

フェリはクラピカのその言葉に一瞬動揺し走る速さが少し遅くなったが、すぐに走る速さを元に戻すと

「俺にも一応、両親は居る。母親は顔も名前も知らない。多分覚えて無いんだと思う。でも、声と後ろ姿だけは覚えてる」

フェリがそう言うと二人の雰囲気が一気に暗くなった。フェリは二人の雰囲気が一気に変わったのを感じると「ククッ」と乾いた笑い声を溢した。

「それで、父親だけど俺はアイツの顔も名前も覚えてる。そして何時かアイツを……















殺してやる。必ずだ」

フェリの恐ろしく冷たい言葉はクラピカ、レオリオの二人の脳裏に刻まれた。


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…

あの人は殺さないであげて

あの人は貴方のたった一人の父親

肉親を、父親を殺さないで
せめて貴方が強く、一人でも生きていける様になったのなら…………




[42147] ハンター試験編 ~友人【その6】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:06db9de8
Date: 2016/09/23 16:49


フェリが放った「殺してやる」という言葉にクラピカとレオリオの二人は、目を見開いた。実の父親を「殺してやる」と宣言したフェリをクラピカは歯を噛み締めながら

「フェリ…………何故、父親を殺そうというのだ……」

クラピカはフェリに視線を寄越さずただじっと前を向いて走っていた。そんなクラピカを上から見詰めたフェリは

「…………いつか、必ず教えるよ。クラピカ」

そう言うとフェリはフードから覗く口元を緩ませ笑顔をつくると、人よりかなり肌の色が白い手をクラピカの頭に乗せると、グシャグシャと頭を撫で回した。

「!?な、何をするんだ!フェリ!!」

クラピカは驚いてフェリを見上げると、フェリは口元を緩ませたままクラピカに

「餓鬼は餓鬼らしく。笑ってればいいんだよ」

そう言うとフェリはクラピカの頭の上から手を退かすと、息を荒くしながらも一生懸命走っているレオリオに視線を向けると

「ほらレオリオを見ろクラピカ。アイツは目的と夢に向かってる。しかもアイツの目的と夢は一生続く。俺たちみたいに果たしたら終わりじゃない。俺の夢は父親を殺したら終わりだ、それはクラピカお前も同じだ。幻影旅団の団員を殺し、同胞の目を奪い返したらお前の目的は目的は夢は終わりだ。その後の事を考えなくちゃな。今まで頑張ってきた分、楽しいことをな」

そう言い終わるとクラピカは「そうだな」と呟くと、一瞬目を閉じて開くとその目から感じとれるのは憎しみや恨みといった、負の感情は感じられなかった。

「いつか、ゴンやレオリオの故郷に行ってみたいな」

ほんのりと頬を染めて、少しだけ声を明るくして言うクラピカにフェリは、口元に笑みを浮かべた。













「お先にクラピカ!」

キルアと並走しながら明るい声でクラピカに声を掛けたゴン。そして隣で走っているキルアは、上半身裸のレオリオに

「おっさん、先行くぜ」

キルアがそう言った瞬間レオリオの額に、顔に青筋が出来た。レオリオは大声で

「オレはまだお前らと同じ、十代だ!!!」

レオリオがそう言った瞬間キルアの顔がひきつり小さく「えっ……」と溢した隣を走っていたゴンでさえ「ウソ!!」と溢していた。そんな二人を見ながらフェリは

「絶対ウソだろ。せめて二十代後半か三十代前半だろ?」

フェリの言葉が引き金になったらしくレオリオはフェリとゴン、キルア、クラピカを怒鳴り付けた。


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…

せめて楽しい未来を想像しよう

せめて未来が絶望意外のモノでありますように




[42147] ハンター試験編 ~友人【その7】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:06db9de8
Date: 2016/09/23 16:50


レオリオが十代発言をしてから暫く急な階段をクラピカとレオリオの二人で走っている(ゴンとキルアは先に行っいる)と、僅かな光が階段の先から見えてきた。

「レオリオもうすぐだ頑張。」

クラピカがレオリオに励ましの言葉をかけるとレオリオは、額から汗を流しながらも口元ををニッとつり上げて笑うと

「当たり前だ!」

と、大声で言ったのだった。















階段を登り終えるとそこには先に着いていたゴンが居り、ゴンはフェリ達を見付けると笑顔を浮かべながら近付いて来て

「フェリ!此方だよ」

手招きをしてきたゴンに近寄ると、クラピカが「あっ」と声を溢した。

「霧が晴れてきたぞ」

先程まで霧がかかっていたが、霧がだんだんと晴れてきて霧の奥にあった森が見えてきた。森からは大きな鳥が飛びたち、森の奥からは獣の叫び声が聞こえてきた。

「すごいや!!」

ゴンが興奮しながら言うとフェリは「そうだな」と呟いた。そのあとに試験官であるサトツが受験者に身体を向けると

「ヌメーレ湿原、通称、詐欺師の塒。二次試験会場へはここを通って行かねばなりません。この湿原にしか居ない奇怪な動物たち。その多くが人間をも欺いて食料にしようとする。狡猾で貪欲な生き物です。充分注意してついてきて下さい」

そこでサトツは一度言葉を区切ると、雰囲気が一変し冷ややかな空気が流れるとサトツは口を開いた。

「騙されると、“死にますよ”」

サトツの一言で受験者たちがザワザワしだしたが、受験者たちのザワザワとした声は、自分たちが今通ってきた、階段から降りてくるシャッターの音によって消されていった。

「ま、待ってくれ!!!」

今、階段を走っていた赤い服を着た男はこちら側に手を伸ばすも、届くはずもなく虚しく男の声がシャッターの奥から聞こえてくるだけだった。

サトツはその光景を見るが先程の話を続けようと口を開いた。

「この湿原の生き物はありとあらゆる方法で獲物を欺き捕食しようとします」

サトツがそこまでいい終えると、閉じられていたシャッターを見詰めていた受験者たちはサトツの方に向き直った。だがフェリだけは階段の横をジッと見詰めたまま黙って立っていた。

「標的を騙して食い物にする生き物たちの生態系。詐欺師の塒と呼ばれる由縁です。騙される事の無いようしっかり私の後を着いてきて下さい」


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


生きる、生きる、生きる

何をしても、何をされても
生きる、生きる、生きる

彼の強さは“純粋”な強さでは無い




[42147] ハンター試験編 ~友人【その8】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:06db9de8
Date: 2016/09/23 16:53
ちょっとした原作の改造が御座います。
それでも良いよって言う御方はどうぞ。

…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


試験官であるサトツが受験者に注意を促すと、レオリオは馬鹿にした様に鼻で笑い「騙される訳がない。」と言い切ったのだった。それを聞いたフェリは誰にも気付かれない様に小さく溜め息を溢した。

フェリが溜め息をついた次の瞬間、シャッターが降りた階段の影から男の激しい怒声が聞こえてきたのだ。

「騙されるな!!!!」

男の声を聞いてレオリオはうんざりした様に

「だから騙されねぇって」

レオリオがそう言うと、一人の男が影から顔を覗かせた。男の顔には無数の小さな擦り傷がついており、息は荒く肩は上下に動いていた。

「だ、騙されるな!そいつは嘘をついている!」

男が傷のついた指をサトツに向けるがサトツは無言を貫いていた。フェリはそんなサトツを見て鼻で笑うと、シャッターに寄り掛かる様にして見物する事にした。

「そいつは偽者だ!!試験官じゃない!オレが本物の試験官だ!」

フェリは男の言葉を聞いて笑い声をあげそうになった。だがそこは服の袖を口元に持っていき、隠れている口だけで笑った。

フェリが隠れて笑っているとも知らず受験者たちは新しく現れた試験官に戸惑っていた。とくにレオリオは単純で新しく現れた試験官の言葉を聞いて

「偽者?!どういうことだ!」

と、話を鵜呑みにする一歩手前まできている。レオリオの反応を見たフェリは「ククッ」と誰にも聞こえない様に笑うと頭の中で

「(流石、単純なだけはある。騙されないといいがな)」

試験官(仮)は受験者の反応を見てから、階段の影に向かい「これを見ろ!!」と言いながらズリズリと何かを引きずって出てきた。

引きずられている“モノ”を見てゴンは

「うわぁ!!サトツさんソックリ!」

試験官(仮)は引きずってきた“モノ”を受験者に見える様にすると

「ヌメーレ湿原に生息する、人面猿だ!!」

“人面猿”これを聞いたレオリオはかなり驚愕した様で試験官(仮)が言った言葉を確認するかの様に

「人面猿だぁ?!!」

と、かなりの大声で言った。試験官(仮)は人面猿について話し出した。フェリはと言うと試験官(仮)の話し聞くのが嫌な様で首を傾け骨を鳴らした。

「人面猿は新鮮な人肉を好む。しかし、手足が細長く非常に力が弱い。そこで自ら人に化けて言葉巧みに人間を湿原に連れ込み、他の生物と手を組んで食い殺す!しかも、人肉猿は人間が逃げれない様に“アヴェルガスタ”という花の匂いを嗅がせ、錯乱状態にしようとする!!そいつからはそのアヴェルガスタの匂いがする!そいつはハンター試験に集まった受験生を一網打尽にする気だぞ!!」

“アヴェルガスタ”この言葉を聞いたフェリはフードに隠れている目をフッと細め、試験官(仮)にだけ僅かながら殺気を送った。それに気付かない試験官(仮)とサトツ、そしてフェリに三枚ずつトランプが飛んだ。

何が起こったのか分からなかった受験者が「え"っ?!」と声を漏らした。トランプが刺さった試験官(仮)の身体は傾き、ドサリと音を経てて後ろに倒れた。そしてトランプを投げた張本人は

「フフフ。なるほど、なるほど。コレで決定そっちが本物だね」

笑いながらトランプを混ぜていた。そんなヒソカを見ながらサトツはトランプを捨て、フェリはというと死んだ試験官……………いや、偽物のに殺気を送るのを止め、無意識に左手を使って掴んでいた三枚のトランプをヒソカへと投げ返した。

トランプを難なく掴んだヒソカは相変わらずねっとりとまとわりつく様な声で笑うと

「君があんまり偽の試験官に殺気を送っているものだからつい、ね◆」

ヒソカの言葉を聞いたフェリは「うわぁ」と、引きつった顔をするとヒソカから視線を外した。


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


過去は暗く、黒ばかりで
現在は灰色で、色がなく
未来は明るく、虹色で

いつまで経っても、未来は来ない
有るのは過去と現在だけ

幸せを求めるのはいけない事なのですか?




[42147] ハンター試験編 ~友人【その9】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:06db9de8
Date: 2016/09/23 16:56


フェリが顔を引きつらせていると、サトツの顔をした人面猿は目を開き「ゲゲッ」と変な声で鳴き出しまだ霧の残る湿原へと消えていった。

ヒソカは人面猿を横目で見ながらも手を出そうとはしなかった。代わりとしてフェリは人面猿へと身体を向けポツリと一言呟いた。




「黒き刃(ニーグロー・レーミーアー)」




一言呟いたフェリはコートの裏側に閉まっておいたかの様に一本の小型のナイフを取り出した。取り出したナイフをヒソカでさえ目に捉える事の出来ない速さで投げ飛ばした。

投げ飛ばされたナイフはグサリと耳に残る嫌な音を経てて、人面猿に突き刺さる。あまりにも綺麗に入り過ぎたのだろう。致命傷を避けて出来た傷口からは血が一滴も垂れなかったのだ。

人面猿はとてつもなく痛いが、生きているという状況に「ゲゲゲッ!!ゲゲゲッ!!」と、鳴き声をあげていた。そんな人面猿を生きたまま放置したフェリは、人面猿へと向けていた身体をヒソカの方へと向けた。

「ククク。気はすんだかい?」

「あぁ、少し」

ヒソカの声に嫌な顔をするがフェリはせれよりもどことなくイライラしていた。



フェリのイライラが収まるとヒソカは口元に笑みを浮かべたまま、

「試験官というのは、審査委員会から依頼されたハンターが、無償で任務につくもの◆我々が目指すハンターの端くれともあろう者が、あの程度の攻撃を防げないわけがないからね◆」

ヒソカは一旦そこで話を区切ると、フェリに視線を向けた。視線を向けられたフェリはフードに隠れて見えない目を細めると

「何だよ……」

声を聞いただけで機嫌が悪いと分かったがヒソカはそれを無視して、話し出した。

「まぁ、でもハンターでなくとも、フェリみたいに強い人は居るんだけどね◆」

フェリは一瞬にして殺気を放ちヒソカに殺気を全てあてた。殺気をあてられても尚笑顔を浮かべるヒソカにだんだんと機嫌が悪くなっていくフェリは、ついに、

「こ、の……やろぉ……………」

低く唸る様にして頭を少し前へ斜めに倒すとフードから僅かに目が見えた。僅かに見える目は黒く光輝いていた。

「こほん」

試験官であるサトツが一つ咳払いをした。その咳払いによって現実へと引き戻されたフェリはヒソカに向かって一つ舌打ちをした。

「受験番号44番。次からはいかなる理由でも私への攻撃は試験官への反逆行為とみなして即、失格とします。いいですね?」

ヒソカは笑顔を浮かべたまま「はい、はい◆」と適当に返事を返した。サトツはヒソカが返事をしたのを聞くと、横目ではあるがしっかりとフェリを視界に捉えた。



サトツがフェリを横目で見ていると何処からか「ギャー、ギャー」と鳥の鳴き声の様なものが聞こえてきた。鳴き声の主は死んだ男とサトツに顔を真似ていた人面猿の血肉を貪り始めた。その光景を見たレオリオは顔をしかめながら

「自然の掟とは言え、エグいもんだぜ」

レオリオの言葉に続く様にクラピカがポツリと「やはり、あの男も人面猿」と呟いた。クラピカが呟いた後に試験官であるサトツが話し出した。

「私を偽者扱いして受験者を混乱させ、何人か連れ去ろうとしたのでしょうね」

サトツがそう言うとレオリオは顔をしかめたまま

「油断も隙もないな」

レオリオがそう呟くとゴンがレオリオに「うん」と返した。ゴンがレオリオに言葉を返した後、サトツは受験者たちが開けた中央の道を歩き出した。

「こうした命がけの騙しあいが日夜行われているのです。現に何人か騙されかけて私を疑ったじゃあ、ありませんか」

サトツがそう言うとレオリオと一人の禿が露骨に「ア、ハハ」と笑った。サトツにはその声が聞こえているのであろうが、何も言わずに話しを続けた。

「よろしいですかこの先ヌメーレ湿原の中は霧が深く、一度この私を見失うとまず、二次試験会場へ辿り着く事は不可能でしょう。ご注意を」

サトツはそこで話しを区切った。

「では、参りますよ」

そう言って走り出した。

走り出した試験官を追って受験者たちゴンや、キルア、クラピカ、レオリオたちも走り出したが、フェリだけは一人その場に残り荒く息を吐いていた。

ガリガリと黒いコートの袖の下にある、傷一つ無い様に見える腕を掻きむしっていた。だが傷一つ無い様に見えていた肌はとてもよく出来た偽の皮膚だった。ベリッと剥がれた皮膚(?)の下からは恐ろしい程、痛々しい傷が着いた元は綺麗であっただろう肌が見えたのだ。




フェリに、酷い禁断症状が訪れたのだ。




禁断症状が始まったフェリは頭を左右に振り、一度、冷静になると走って行ってしまった受験者の後を追った。


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


道化師は彼の内面を隠した。

人形使いは彼の過去を隠した。

彼が道化師に送ったのは、戦闘の悦び。

彼が人形使いに送ったのは、多額の金。

過去は暗闇に、現在は無にそして未来は、



















“友人”が看取る、虹色の最期。




[42147] ハンター試験編 ~301番【その1】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:06db9de8
Date: 2016/09/23 16:57


霧が掛かっており視界が悪い湿原の中をフェリは、額に汗を流しながら走っていた。何時もの状態であれば何事もなく走っていられたのだろうが、今のフェリには真っ直ぐ走る事でさえ困難であった。では何故フェリが迷う事なく走り続けられているのかと言うと、フェリ自身が薬屋として働いているからである。薬(ヤク)には不純物の混じった“純粋”ではない薬が“純粋”な薬として売られている事がある。それを見分ける為にフェリは“嗅覚”を駆使する。嗅覚が鋭いフェリにとって、団体で走っている受験者たちの匂いは至極分かりやすいのだ。









「うぐぅぅ…………」

額からは嫌な汗が吹き出し、強烈な“痒み”がフェリを襲っていた。痒みといってもただの痒みではない。例えるのなら、

“皮膚の下に虫が這いずりまわっている”

様な感覚と一緒。
これは禁断症状の典型的なものである。

「はぁっ、はぁっ…………」

荒い息を整える為に一旦足を止め、偽の皮膚の下にある傷が大量ついた肌を見る。傷には新しいものから茶色くなった傷痕まで様々だった。

自分の肌の有り様を見てフェリは眉間に皺を作り、顔をしかめた。

「(ピエロに“また”頼まないとな………)」

フェリは一度辺りを見回し自分の近くに人が居ないか確認した後、鞄の中から白い錠剤の入った瓶と水の入ったペットボトルを取り出した。取り出した白い薬を二、三錠口に含み、口に含んだ薬を水を飲み込み胃へと流し込んだ。

「これで後、何十分は持つか………」

口元についた水気を袖を使って拭い取ると、フェリは先程とは比べ物にならない位の足取りと速さで先頭へと向かって走り出した。




























【301番 side】


カタカタ  カタカタ   カタカタ

顔中に針を指している男、受験番号は301。

常人とは思えない雰囲気をかもし出している男は、自分の後ろをもの凄い速さで走っているフェリに意識を向けようとしていた。先程まで後ろにいた男がいきなり前へと出てきているのだから、驚くものなのかも知れないが301番の男は別の理由で、フェリへと意識を向けた。

「まぁ、直ぐ追い付くだろうけど」

案の定フェリはあっという間に301番の男の元へと着いた。後ろから走ってきたフェリは男の右隣に来ると男だけに聞こえる様に

「久しぶりだな、“イルミ”」

男の名前を口にすると男はカタカタと奇妙な音を経てながら、フェリへと顔を向けた。

「今は“ギタラクル”ね。こっちで呼んで」

無表情で話すイルミ………ギタラクルにフェリは「分かった」とだけ言うとギタラクルにある事を聞いた。

「ピエロはお前と一緒じゃなかったのか?」

フェリがギタラクルにそう聞くとカタカタと奇妙な音を経ててギタラクルがこたえた。

「さぁ?試験官ごっこでもしてるんじゃない。でも、フェリは鼻が効くからヒソカの居場所なんて直ぐに分かるんじゃない?」

ギタラクルの問いにフェリは何処かめんどくさそうに「あ~……」と声をあげた。声をあげたフェリは

「俺が分かるのはあくまでも薬の成分の匂い。人間の一人、一人の匂いはよく分からないんだよ。人間の匂いは皆違うからな……」

フェリがそう言うとギタラクルは納得した様に一つ頷いた。


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


彼は火が炎が灼熱が嫌い

彼の最期は熱く苦しく、赤色だった

二度目の生を受けた彼は復讐へと走る




[42147] ハンター試験編 ~301番【その2】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:06db9de8
Date: 2016/09/23 17:00


フェリがギタラクル(イルミ)と話していると、僅かだが血の匂いが漂ってきた。フェリ自身は薬の匂いが分かるだけで、その他にかんしては常人と同じと言ってもいい。

そんなフェリでも血の匂いが分かってしまうほど、後ろから漂ってきた血の匂いは濃いものだった。

「あのピエロ一体、何人殺したんだよ」

呆れた様にフェリがポツリと溢すと、ギタラクルはカタカタと音を経てながら

「流石にフェリでも、この血の匂いは分かるんだね」

ギタラクルの言葉にフェリがグリンとギタラクルに首を向けた。

「お前………それ、馬鹿にしてる?」
「まさか」

フェリはギタラクルとは付き合いは長い方だが、いまだにギタラクルの言動についてよく分かっていない。

声は単調で、いつも真顔。
それでいて誰とどんな付き合いがあるのかも分からない。だが、一つ言える事がある。

「お前って、かなり変わってるよな」

フェリの言葉にカタカタと音を経てたギタラクルは「そう?」と溢した。フェリはそんなギタラクルを見ると、口元を引きつらせ

「お前、自覚なしか」

ギタラクルは自分が変わっている事を知らない、無自覚だったのだ。

















フェリとギタラクルが話している間に、周りにいる者たちは一人、また一人と姿を消して行った。そして姿を消した者たちの、叫び声等が聞こえてくるのだ。

「あれ?さっきまで結構、人いなかったけ?」

ギタラクルがそう言うと、フェリはどこか呆れた様に溜め息をつくと口を開いた。

「お前…………。やっぱお前、変わってる」

フェリはそう言うと、ギタラクルに人が少なくなった訳を話し始めた。ギタラクルに説明をし終えると、ギタラクルは

「へぇ~。気付かなかったよ」

この言葉を聞いたフェリは何故か一気に疲れが押し寄せた気分になった。ギタラクルは凄腕の暗殺者であるだ。そのギタラクルが気付かなかったとは思えず、フェリは

「お前、絶対気付いてただろ……」

フェリがそう聞くとギタラクルは、

「オレ、他人に興味無いし」

フェリはそう言われて「あぁ、そうだったな」と答えたが内心は

「(その他人とお前は今、喋ってるんだぞ?!!)」

と、思っていた。

………此処で一つフェリとギタラクルについて話しておこうと思う。

二人は“友達”ではない。
そして、同業者でもない。

フェリがギタラクルにあることを頼んだのが切っ掛けで、顔見知りになったのだ。

その切っ掛けは今はまだ話はしないが、友達でもはく同業者でもない。

この二人は過去に、依頼主と暗殺者として知り合っただけの関係である。言い換えると依頼が終わればただの赤の他人である。















フェリが内心、驚いているとギタラクルは遠くを見詰めだし、携帯を取り出した。

「?ピエロに掛けるのか」
「そうだよ。よく分かったね」

ギタラクルがそう答えるとフェリは口から乾いた笑い声をもらした。

「(お前の知り合いってピエロ位しか思い浮かばない、なんて言えない……)」

フェリがそう思っている間にギタラクルは携帯に番号を打ち始めた。

「あ、フェリの腕の事も一応言っておくから」
「(一応なのか………)」

ギタラクルはそう言うと

「ヒソカ、そろそろ戻って来いよ。どうやらもうすぐ、二次会場に着くみたいだからね。あ、あとフェリの腕直してあげて」

ギタラクルは最後にフェリの事をオマケの様に短く伝えると、早々に電話を切った。


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


彼は何故生きているのだろう?

命を蝕むモノは、何年と取り続けた

命を延ばし続けた彼の身体は、もうボロボロだ




[42147] ハンター試験編 ~301番【その3】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:06db9de8
Date: 2016/09/23 17:02


ギタラクルがヒソカへと電話を掛けている間に二次試験会場へと着くと、ギタラクルは「それじゃ」と手を挙げるとさっさと歩いて行ってしまった。

後に残されたフェリは、ヒソカが来るまでの間ゴンたちが居ないかを探す事にした。

だが、先頭を走っていただけあって早く着きすぎていたのかゴンたちは来ていなかった。だが辺りをキョロキョロと見回しているキルアが居た。フェリはそんなキルアを見ると、口をニッとさせ後ろからキルアへと近付いていった。

「アレ?ゴンの奴やっぱり居ないなぁ」

キョロキョロと辺りを見回しているキルアに近付くと


ポン


「?!!!!!」

警戒心丸出しでグルンとフェリへと振り返ったキルアの目は、完全に裏側の人間の目になっていた。

「…………フェリかよ………」

警戒心丸出しだったのが嘘だったかの様にすまして言うキルアにフェリは、苦笑いをすると

「ゴンたちはまだ来ていないのか?」
「そうなんだよ。ヒソカの方に走って行っちゃってよ」

呆れた様に言うキルアにフェリは一瞬反応することが出来なかったが、キルアは今確かに“ヒソカ”と言った。

「……ピエロ、だと………?」

フェリの纏う空気が一瞬にして鋭い刃物の様に尖った空気に変わった。フェリの纏う空気が変わったのを感じとったキルアは目をパチクリと瞬きをすると、

「お前って、ヒソカ嫌いなんだな」
「あぁ、嫌いでもあり苦手でもある」

キルアはフェリの言葉に「アハハ」と笑った。


















「…………来たな」
「え?何が?」

キルアが首を傾けていると、フェリはキルアの頭を撫でて

「ちょっとね」

ニッコリと口元をつり上げると、クルリのキルアに背を向けて歩き出した。向かうのは、嫌いでもあり苦手でもあるヒソカの元。


















「やぁ、フェリ◆」

ねっとりとまとわりつく様な声をあげたヒソカにフェリは条件反射で、手を振り上げた。

「危ないじゃないか、フェリ◆」

「クククッ」と笑うヒソカはフェリが振り上げた手を軽くかわした。かわされたフェリは「チッ」と軽く舌打ちをすると

「おい、ピエロさっさと済ませろ」

ヒソカと居る事が嫌なのかフェリは腕を捲り、傷だらけの腕をヒソカの前ちに突き出すと

「さっさと直せ」
「………ハイハイ」

ヒソカは何処からか真っ白いハンカチを取り出すとそこに、フェリの肌に残っている僅かな肌と同じ色にさせると、ペタッと腕に巻き付ける様にして、フェリの腕にくっ付けた。

そうやってフェリの両腕にヒソカの念能力である薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)を施すと、フェリは確かめる様にして腕を隅から隅まで眺めた。

「…………それじゃ」
「………………待ちなよ◆お礼も無し◆?」

ガッシリとフェリの腕を掴んだヒソカは嫌そうな雰囲気を放つフェリをジィッと見詰め出す。口元を引きつらせたフェリは一度ヒソカに腕を離す様に言うと

「助かった…。だが、ゴンたちに手を出したのだけは、許せん。後で殺す」

フェリが有言実行とばかりに右手の中に、刃から手で持つ所まで黒い小型のナイフを具現化させると、一瞬腰を落とし右腕を僅かに後ろへと引くと


ゴウッッ!!!


空気を切り裂く音を発して小型のナイフをヒソカへと突き刺そうとしたが、そこはヒソカ。

突き刺さる前に横へとずれるが、服に傷が一つ付いたのだ。それを見たヒソカは舌舐めずりをすると

「いいねぇ、すごくいいよ◆今すぐにでも殺りたいなぁ◆」

フェリの動きが一瞬にして止まると、危険を察知した獣の様にバッ!!と後ろへと飛んだ。

「おまっ…………気持ち悪っ」

心底嫌そうに吐き捨てるとフェリは、受験者の間を縫うようにしてヒソカの前から姿を消した。

後に残ったヒソカは「ククク」と笑い声をあげながら、ジィッとフェリが居なくなった方向を見詰めていた。


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


道化師はヒソカ

人形使いはギタラクル

彼の過去を隠したのは、この二人




[42147] ハンター試験編 ~二次試験前【その1】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:06db9de8
Date: 2016/09/23 17:04


【ゴン side】


フェリがヒソカから難を逃れている頃。ゴンは、レオリオの着けていた香水の匂いを辿って二次試験会場へと辿りついていた。

二次試験会場について直ぐゴンは、ヒソカによって運ばれたレオリオを探して辺りを見回していると、

「?!」

まとわりつく様な嫌な視線を感じた。視線を感じた方向に顔を勢いよく向けるとそこには、ヒソカが木に背を預け立っていた。

ヒソカは指を自分の横へと向ける。ヒソカの指先には、上半身裸で木に寄り掛かったまま気絶しているレオリオがいた。ゴンは急いでクラピカを連れてレオリオの元へと走った。

「レオリオ!!」

レオリオの元へと近付くと大きな声で、レオリオの名前を呼んだ。その声のおかげかは分からないが、レオリオがぼんやりと目を開いた。

「うぁ~、いって。何でオレこんな怪我何かしてんだ?どうも記憶がはっきりしなくてよ」
「ヒソかに殴られたんだろうが」
「あ、フェリ!!」

嬉しそうにしてフェリに近付けば、フェリはよしよしと頭を撫でる。ゴンはそれが嬉しいのか、満面の笑みを浮かべた。

「ゴン、フェリ」
「あ、キルア!!」

フェリが頭を撫で終わるのと同時に、キアルが現れた。フェリはゴンの頭の上から手を退かすと、ゴンはキアルの元へと走って行った。

楽しそうに笑いながら話している二人にフェリの口元が少しだけ、緩んだ。














【フェリ side】


楽しそうに笑いながら話す二人を見詰めているフェリに、クラピカが話し掛けてきた。内容は一次試験の時に話した、家族の事。

「不謹慎だと、分かってはいるのだが……。不愉快に思ったのなら、答えなくていい。フェリにとって家族は、どのような存在なのだ?フェリは少なくとも、人が嫌いという訳ではないのだろう?あの二人を見ている時、フェリの纏う雰囲気が少し和らいでいる気がするんだ」

目を伏せながら問い掛けてきたクラピカにフェリは、一つ溜め息をつくと

「母親は顔も知らない他人。父親は俺の殺すべき相手。ただそれだけだ」

フードから覗いた、黒い二つの目がギラリと太陽の光を反射して、フェリの黒い目に鈍い光を放たせる。

「さて、この話しは終わりにしようか、行くぞ」
「あ、あぁ」

フェリの暗い目に睨まれた事によって一瞬にして身体が硬直してしまったクラピカは、フェリの手が頭に乗って撫でられた事によって身体の硬直が直った。












ゴンとキルア、レオリオのいる所に戻るとゴンが一番に近付いて来て

「二人でなに話してたの?」

子供特有の無邪気な笑顔をフェリとクラピカに向けた。フェリは笑顔を向けるゴンの頭に手を置くと

「ちょっと、な?」
「そっか!」
「(ゴンはやっぱ、単純…?)」

フェリがそんな事を思っていると一次試験官のサトツの声が聞こえて来た。

「皆さん、お疲れ様でした。ここビスカ森林公園が二次試験会場となります。では、私はこれで。皆さんの検討をお祈りします」

サトツはそう言い残すと、長い手足を前後に揺らして歩き出すと森の中へと消えていった。

「(さてと、次で二次試験か……長かった様な、短かった様な。まぁ、あの三人がいると暇じゃなくていいな)」

フェリは口元に笑みをつくると、フードをグッと引っ張り鼻が隠れる程、深くフードを被った。


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


他人は善意を持って、弔い

肉親は殺意を持って、殺しに掛かる

彼にとって、母親は父親に捨てられた、被害者も同然なのだ

だからこそ、父親との間に出来た自分を他人とし、母親も他人とし

繋がりを消した




[42147] ハンター試験編 ~料理【その1】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:06db9de8
Date: 2016/09/23 17:07

この小説は新アニメを参考にしているので、原作にあった二次試験の「寿司」が御座いません。すみません。

それでも「いいよ」「大丈夫」というお方はどうぞ……。


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


試験官であるサトツが森へ消えると、大きな扉の向こうからまるで地響きの様な、獣の唸り声の様な音が扉の向こうから聞こえてきた。

「うわぁ!!すごい音!!」

好奇心丸出しでどこかワクワクした様子のゴンにフェリは口元を緩ませると、ポンとゴンのツンツンとした頭に手を置き撫でた。

ゴンの頭を撫で終えると、手を退かしいまだに地響きの様な音が聞こえる扉に目線を移した。

ゴオォォォォォォォォォ!!!!

大きな音をたてながら、扉が開いた。

扉が開くと中には試験官と思わしき露出度の高い服を着た一人の女と、女よりも倍近く大きな一人の男がいた。

フェリは女を見ると一瞬にして目を逸らし、フードを深く被り直した。フェリの行動を見たキルアは不思議そうにフェリを見上げると、扉の向こうにいる試験官らしき女と男へ目線を向けた。だが何故フェリが視線を逸らしたのか分からず、首を傾けた。

「一次試験を通過した受験者の諸君。中へ!!」

女の一言によって扉の前にいたフェリたち受験者は扉の中へと踏み出した。扉の向こうには調理器具が置かれており、フェリは一瞬にして二次試験の課題が「料理」であると確信した。

「(まぁ、試験官があのメンチだからな…………)」

フェリはどこか疲れた時に人が見せる笑みを口に浮かべると、ゴンたちの後に続くように歩きゴンたち四人が立ち止まると同時に、レオリオの後ろに立つようにして立ち止まった。

「ようこそ。アタシが二次試験、試験官のメンチよ」
「同じくブハラ」

ブハラと名乗ったメンチよりも倍以上ある男の腹から、

グウゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!

と、すごい音がブハラの腹の音がした。フェリはその音を聞くと口元に僅かに苦笑いを浮かべると

「(近くで聞くと余計にでかく聞こえるな)」

フェリが呑気にそんな事を考えているとは知らずに他の受験者が「なんだこの音は?!」と、驚いていた。

「どうやら腹ペコのようね」
「もうペコペコだよ」

そんな会話を交わしている二人を見ながらフェリが思う事は「どんな無理難題を押し付けられるか」と言う事だった。フェリはメンチの性格をよく理解していたのだった(何故かは分からないが。後々、分かるかも知れないが)。

「そんなワケで二次試験は“料理”よ!!」

「どんなワケだ」と受験者が言ったのも無理はないだろう。フェリ自身も苦笑いを更に濃くしたのだから。

「何故なら、アタシたちは“美食ハンター”だから!!」

メンチがそう言った瞬間、受験者たちの間で笑いが起こった。

「美食ハンターだとよ!」

腹を押さえて笑う受験者にフェリは少しだけ殺気を送った。と、言っても気付くか気付かないか位のほんの僅かな量なのだが、殺気を送られた受験者は気付くかなかったようだ。

フェリは自分に殺気を当てられているとも知らずに笑っている受験者に対して、頭の中で、

「(お前のせいで、メンチがキレたらどうすんだよ?!)」

と、若干焦ってもいた。メンチの性格を理解していたフェリだからこそ、今ここでメンチにキレられたら不味いのだ。もしメンチがキレたら、今年の受験者は全員不合格にさせられるかも知れないからだ。

だがフェリが思っていた程メンチの怒りの沸点は高い方だった。

「で、美食ハンターさん。一体どんな料理を作ればいいんだい?」

男の試験官であるブハラは、右足を前にズシンと出すと

「指定する食材は豚だよ。このビスカの森にいる豚なら種類は自由。その豚をここにある調理器具を使って作った料理で、俺たち二人が揃って美味しいと言えば合格だよ」

フェリはブハラの言葉を聞いて即座に「無理だ」と結論付けた。ブハラの方に美味しいと言わせる事が出来たとしてもあのメンチの事だ、きっと美味しいなんて言わせる事は出来ないはずだ。

だがそれでもこれは試験。合格するためには何が何でも試さない事には始まらない。

「(まぁ、流石に全員不合格にはならないと思うが………。まず第一に俺のこの匂いのせいで、不合格になったらどうするか……)」

フェリが一人悶々と悩んでいると

「美味しいと言っても味だけじゃダメ。料理を舐めないでね、分かったぁ?アタシたち二人が、満腹になった時点で試験は終了だからね」

「分かった、分かった。とっとと始めようぜ」

試験を軽く見ているのかそれとも、二次試験の試験官であるメンチとブハラを舐めているのか、受験者の一人である男が早く済ませたい様で早く始める様に言う。

「それじゃあ、二次試験スタートぅ」

ブハラはそう言うと、自分の腹を思いっきり叩いた。試験会場に響きわたるものすごい音が、二次試験開始の合図となり受験者たちは森へと走って行く。それに続くように走るフェリへと、突き刺さる様に視線を向けるメンチにフェリは少しだけ苦笑いを引っ込めると、少しだけペコリと頭をメンチに向かって下げた。

「あいつ…………。気付いてたのね」

メンチの小さく呟いた言葉を聞いてフェリは「ククッ」と笑い声を漏らすと、急いで森へと消えた。


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…

「嫌な匂い」

何度も聞いたその言葉に彼はうんざりとした彼

彼女は実に鼻が効く

どれだけ風呂に入ろうとも隠しきれないこの匂い

彼女は彼の匂いが常人には有り得ないものと知っている

彼女もまた彼と同じ、常人ではないのだから




[42147] ハンター試験編 ~料理【その2】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:06db9de8
Date: 2016/09/23 17:08


ゴンたち四人の後ろに続く様にしてフェリが歩いていると、レオリオが笑いながら、

「豚を捕まえて、料理。一次試験よりずっと楽だな」
「だといいがな」

フェリはレオリオの発した言葉に眉を潜めたが、クラピカの言葉に同意したのか一瞬だけ口元に笑みを作った。

笑みを作ったフェリは、ゴンが坂を滑って下(クダ)って行くのに少しだけ反応が遅れた。遅れたと言っても、常人にとっては一秒にも満たない僅かな時間だったが。

ゴンが坂を下(クダ)りその後に続くようにキルアが下り、その後にレオリオ、クラピカが下って行った。

フェリは一番最後に坂を立ちながら、他の四人と同じように滑って坂を下って行くと、何故かゴンを除いた三人が玉を着いたように衝突していた。

「大丈夫か、お前ら?」

フェリが大丈夫かと三人に聞けば、キルアは赤くなった鼻を押さえながらも「大丈夫」と返し、レオリオは顔が引きつってはいるが大丈夫そうだった。クラピカは鼻先を少し赤くしてはいたが、キルアとレオリオよりは大丈夫そうだった。

フェリは三人が頑丈で丈夫な事に感心していると、ゴンが

「いたよ」

ゴンがポツリと呟いたその言葉にキルアが反応した。

「?」

キルアは、ゴンの視線の先へと目線を寄越すとそこには

「豚だ!」

だが、ただの豚ではない。

「おい…。骨食ってんぞ」

バリッと口に入っていた骨を噛み砕く程、強靭な顎の力を持った巨大な豚はフェリたち五人を視界に捉えると

「ブヒィーーーーーー!!!!」

大きく鳴き声をあげると、フェリたち五人の後を追い始めた。巨大な豚が何匹も後を追い掛けて来たのだ。

「お?何だ?」

何も知らない受験者は豚たちが走る時に起きる振動に不思議に思い、振動が起こっている方向に目線を向ければ、フェリたち五人の後ろに巨大な豚が鼻息荒く走っているのだ。

そんな光景を見て仕舞えばいくら、一次試験を通過した受験者とはいえ、一瞬だけフリーズしてしまった。

だが、その一瞬が命取りになってしまった。

豚は一瞬フリーズした受験者を巨大な鼻で吹き飛ばしたのだ。フェリは空中へと弾き飛ばされた受験者を下から見上げながら

「すごい飛んだな」

と、のんびりとした口調で言うと前を走っていたレオリオが

「何、のんびり言ってんだよ!!ってか、なんて豚だ!!」

レオリオの言葉にフェリは走りながら「あぁ、あの豚か?」と落ち着いた声で言うと

「あの豚は、グレイトスタンプ。世界で最も狂暴な豚だ。大きくて頑丈な鼻で敵を弾き飛ばす。逃げ遅れると、自分が豚の餌になる。だから気を付けてないといけないんだけど、まぁ、もう弾き飛ばされてるしな」

フェリはそこまで言うと、今まで動かしていた足を止めグレイトスタンプに向き合うようにして立ち止まった。

「フェリ!!」

ゴンがフェリの名前を呼んだが、フェリはゴンへ振り向く事はせず迫ってくるグレイトスタンプの頭上へと飛んだ。

飛ぶと言ってもただ両足に力を入れて、脚力だけでジャンプしただけなのだ。

グレイトスタンプの頭上に飛んだフェリは、落ちる時の勢いを借りてグレイトスタンプの額に蹴りを入れようと、空中でクルリと一回転した後に強烈な踵落としをグレイトスタンプにお見舞いさせた。

蹴りを入れた瞬間グレイトスタンプの額から「バキ、ボキ」と骨が何ヵ所か折れる音がしたがフェリはそれを気にせず

「グレイトスタンプの、巨大で固い鼻は脆い額を守るためのもの。グレイトスタンプを倒すには、額を狙え」

と、フードから覗く口元をニッとつり上げた。フェリ自身はゴンたち四人だけに教えたのだが、他の受験者も聞いており次々にグレイトスタンプの額に攻撃を当てに行った。


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


全てを消し、無くした彼は無知であった

そんな無知な彼を見付けたのが彼女だった

彼女は彼に字を教え、この世界で生きていくのに必要な事を教えた

彼は賞金首となり彼女はハンターとなった

だが彼女は、彼を協会には報告をしなかった

それが優しさなのか、報告しない方が面白いからなのか、分からないが




[42147] ハンター試験編 ~料理【その3】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:06db9de8
Date: 2016/09/23 17:11


フェリたち五人はグレイトスタンプを倒し、運んでいる最中サッと後ろを振り返えるとゴンたちに

「………悪い、先に行っててくれ」
「?分かった、また後でね!」

ニッコリと笑みを浮かべたゴンにフェリは、薄く笑みを作るとグレイトスタンプをグッと持ち上げると、クルリと向きを変え森の奥へと向かって行った。

森へと向かったフェリはグレイトスタンプを地面へと降ろすと、辺りをグルリと見回しある一点をジッと見詰めると大きく溜め息をついた。

「そこに居るんだろ?イルミ」

淡々とした声で木の向こうを見詰めていたフェリの視線の先から、顔中に針を刺した不気味な男ギタラクルと名乗ったイルミがいた。

ギタラクル………いや、イルミは「カタカタカタ」と音を出すと

「フェリに言ってなかった事があってさ。フェリ今キルと一緒に居るでしょ。キルにさオレがここに居る事、言わないでくれる?」

イルミは「カタカタカタ」音を出しながらフェリに言うと、フェリ自身は何故言ってはいけないのかとイルミに聞くとイルミはさも当然のように

「キルが、オレがここに居るって知ったらキル、連れ戻されると思って逃げちゃうかも知れないでしょ?まぁ、他にも理由が有るんだけどね」

イルミはそう言うと、フェリに近付き丁度隣に来た所でポツリと

「もしキルにオレが居るって言ったら、フェリの“父親”にフェリの事、教えるから」

フェリはその言葉を聞いた瞬間

ゴッ!!!!!!!!!

凄まじく大きくなオーラがフェリから発せられた。

大きなオーラを直ぐ近くで触れたイルミに襲い掛かったのは、憎しみや怨みといった負の感情だった。

暗殺者として生きているイルミでさえも恐怖を覚える程のオーラと、負の感情によってザッと地面に擦りつけるようにして一歩後ろへと下がった。

「アイツに俺の事を言いたいなら好きにしろ………。だが、もし言ったらその時は……お前を コ ロ ス 」

フェリはそう言い残すと、イルミから離れ、二次試験の課題に必要なグレイトスタンプを片手で持ち上げると、さっさと歩いて行ってしまった。















「あ、フェリ遅かったな!」

大きな猫目でフェリを見上げたキルアは、フェリから目線を外して森をチラリと見ると

「フェリ、お前大丈夫だったか?」
「?」

フェリは何も知らないという顔をするとキルアは「そう」と言い残し豚の丸焼きを作るために、ゴンたち三人の所へと戻って行った。

フェリはと言うと四人から近く尚且つ人が居ない所を選ぶと、豚を適当に地抜きし食べられない内臓を取りだし、火に掛けた。

フェリが豚を火に掛けた所でトードーと言う受験者がメンチ達に豚の丸焼きを持って行った所だった。

ブハラは豚の丸焼きを美味しそうに食べると、赤丸が描かれている札をあげた。だが、メンチは青色のバツが描かれている札をあげた。

「焼きすぎね。固くなって肉本来の旨味が台無しよ!!」
「何ぃ!?食いもしねぇで!!」

メンチに負けじと反論するトードーだったが、ハンター試験では試験官が絶対。

「一目瞭然でしよ!!」
「クソッ!」

トードーはそう言い残して、戻って行った。次に来たのは禿の受験者ハンゾー。

「さぁ、食ってくれ!」

顔に笑みを浮かべながら言い放ったが、ブハラは丸をあげるがメンチはバツの札をあげた。

ハンゾーは自信があったのか、メンチがバツの札をあげると「えっ?!なんで!」と声を荒あげた。そんなハンゾーに対してメンチは

「表面パサパサ、中は生。火が強過ぎるのよ」

それから豚の丸焼きを持ってきた受験者たちはブハラには赤丸の札をあげられるが、メンチにはバツを貰うという事を繰り返していた。

そして次第に苛ついてきたのかメンチの額に青筋が浮かびあがっていった。

フェリはそんなメンチを横目では見ていたが、自分の豚の焼け具合を気にしてまともにメンチの声を聞いてはいなかった。

豚がそろそろ出来てきた為、手を止めたフェリは、ゴンたちの元へ向かう事にした。

「お、フェリそっちはどうだ?」

レオリオがフェリに気付くと話し掛けて来た為、フェリは「もう少しで、出来る」とだけ話した。

「それにしても、いまだに一人も合格してねぇな」

レオリオがそう言うと、クラピカがそれに返すようにしてポツリと溢した。

「しかもメンチはまだ一口も食べていない」

フェリとレオリオ、クラピカが話していると、メンチの大きな声が聞こえてきた。その言葉を聞いた後、クラピカは指を鳴らした。

「この試験課題は料理だが、審査の対象は独創性と観察力とみた」

クラピカがそう言うとゴンとレオリオはなるほどという顔になり、自分たちの出来上がった豚の丸焼きを持って行った。

クラピカはまだやることがある様なのでフェリはクラピカの元を離れて、自分の豚の丸焼きを見に向かった。


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


彼にとって、『白い彼』は無くてはならない存在

彼の命を助けてくれているから

彼は気付かない、『白い彼』がある人物の命によって自分を助けてくれている事を

何も知らない彼は、出会っているのだ

“自分が死んだ時に出会った”黒い彼と




[42147] ハンター試験編 ~料理【その4】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:609f2de3
Date: 2016/09/23 17:13


クラピカの『独創性と観察力』という言葉を聞いたゴンとレオリオは「フフン」「成る程」と溢した。

「フェリ…ゴンとレオリオは受かるだろうか?」

クラピカが心配そうにフェリへと問い掛けると、フェリは豚をクルクルと焼きながら、

「………多分、無理だろうな」
「え?!な、何故だ?」

クラピカは驚きグルンとフェリへ視線を向けた。フェリはクラピカの視線に気付いているのか、チラリと横目でクラピカを見ると、

「試験官はあのメンチだ。あいつは、かなり性格悪いからな」
「……試験官と知り合いなのか?」

クラピカは頭の上に「?」を浮かべると、フェリの隣へと移動し座り込んだ。移動したクラピカはフェリの顔を覗き混む。

「あぁ、昔かなり世話になった……………と、レオリオ不合格みたいだな」
「ほ、本当だ」

フェリの言葉に後ろを振り返るとそこには、メンチによって豚を皿ごと投げ飛ばされていたレオリオだった。因みに投げ飛ばされた豚は、ブハラによってキャッチされて食われていた。

「次は、ゴンか」
「ゴンか…………合格してくれるといいんだが…。合格すると思うか?」

心配そうに聞いてきたクラピカにフェリは、焼きあがった豚を皿に置くと

「多分、「たいして変わらん!」とか言いながら豚を投げ飛ばすだろうな。…………クラピカお前もそろそろ行った方がいいんじゃないか?俺も出来たし」
「…………そうだな」



















案の定ゴンも不合格になってしまった。ゴンに続くようにクラピカが焼き上がった豚を試験官であるメンチとブハラに持って行った。

「フ~ン、やっと料理っぽいのが出てきたわね」

メンチは手に持ったフォークを豚に突き刺し口へと運ぶ。クラピカは試験官に豚を持っていく前にフェリに

『与えられた器具や食材を駆使し、いかにメインの豚を引き立てるかがポイント。つまり味は二の次!!』

クラピカからこれを聞くとフェリは、口を閉じると頑張れの意味を込めて、ポンポンと頭を撫でた。

「不味いわぁ~!!!」
「えっ!」

メンチは豚を投げ飛ばすとクラピカに

「見た目も重要だけど、味が伴ってこそよ!アンタも403番と同レベルね!!」

クラピカはその言葉がかなりグサリときたのか、フラフラとしながら戻って行った。

















「さぁて、アンタで最後………………。アンタ……」

メンチはギロリと目を鋭く尖らせると、ジロジロとフェリの足元から頭の上まで見ると

ゴッ!!!!!!

フェリに剛速球の拳を叩き込もうと、飛び出した。

「なっ!!」

誰かは分からないが他の受験者が驚愕の声をあげたのが分かる。

フェリはその声を気にする訳はせず、ただ冷静にメンチの拳を右手の掌でガシッと掴むと

「ジャッチを頼む…メンチ」
「久しぶりじゃない……中毒者……」


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


彼にとって“黒い彼”は知らない存在

彼にとって“白い彼”はとても重要な存在

“白い彼”がいなければ彼はもうすでにこの世にはいない

強くなるために薬に溺れた彼にとって、命を蝕む薬は恐ろしい存在でもあり

強くなるために必要なものでもある




[42147] ハンター試験編 ~料理【その5】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:609f2de3
Date: 2016/09/23 17:16
皆様、更新の期間がかなり空いてしまい。申し訳御座いませんでした。

【暇人ノ世界閲覧】の方も更新が止まってしまいまして、本当に申し訳なく思っています。

これからは空きすぎないように致しますので、これからも宜しくお願い致します。


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


【メンチ side】

「さぁて、次は誰かしら」

メンチは自分の座っているソファに寄っ掛かりながら、次料理を運んでくる受験者を待っていた。

待っていると受験者たちがざわざわと騒ぎ出した。五月蝿いと思いながら視線を走らせるとそこには

「?!!…ちゅ、中毒者ァ?!」

前に身を乗り出す様にして立ち上がると後ろにいたブハラは、驚いた様でメンチを見詰めた。数秒メンチを見詰めた後メンチの目線を頼りに、ある人物を視界の中に収めた。

「ア、アンタ、今まで何処で何やってたのよ?!」

メンチが声を荒上げて『中毒者』と呼んだ受験者に、常人では捉えきれない程のスピードの拳を叩き込もうと拳を振るうが、メンチの拳は容易く『中毒者』によって捕まれてしまった。

「おい、俺は受験者だぞ……。」
「そんなこと知らないわよ!一発ぐらい、殴らせなさいよ!!」

右拳を掴んでいる左手を振りほどこうと空いている左手で『中毒者』の顔めがけ拳を振るう。が、その時『中毒者』がパッと右拳を離してしまったため左拳の軌道が僅かにブレた。

メンチは小さく「チッ」と舌打ちをすると地面を蹴り『中毒者』から距離を取った。

「………何よアンタ…少しはマシになってきたんじゃないの……」

メンチはどこか嬉しそうにポツリと呟くと

「だけどね、アンタね……その“臭い”だけは許せないわ!!」

メンチは地面を蹴り『中毒者』と距離を一気に近付けると、胸ぐらを掴み上げた。

「アンタね…まだ“薬”と“煙草”まぁだ辞めてなかったのね?!アンタから嫌な臭いがプンプンするのよ!!アンタの料理は食うまでもないわ!失格よ失格!!」
「ちょっとメンチ……」

ブハラがメンチを落ち着かせようとメンチに声を掛けるがメンチは頭に血が上っているのか、ブハラを完全に無視して『中毒者』と呼んだ受験者の胸ぐらを掴んだまま、まるで般若のような顔をしながら怒号を浴びせていた。

「大体ねアンタは昔っからそうだったわよね?!薬も煙草も1日これでもかってくらい飲むし吸うし、私の鼻まで可笑しくなったらどうするつもりだったの?!」

「………………………………………」

メンチに怒号を浴びせられている受験者は、顔は見えないがかなり冷静でメンチの言葉を右から左へと受け流していた。

「アンタね……私の話し聞いてるの?!」

メンチの怒りがピークに達した所で受験者は胸ぐらを掴んでいたメンチの手をガシリと掴むと、

「メンチ、さっきからアンタとか『中毒者』とか言ってるけど俺の名前フェリね」
「ッ~~~~~、アンタが私に自分の名前を教えてくれなかったんでしょうがぁぁぁぁ!!!!」
「……………アレ?」

メンチの怒りが更に高まりそうになった所で、ブハラが後ろからフェリの胸ぐらを掴んでいたメンチを切り離すと申し訳なさそうにフェリに少しだけ頭を下げた。

「ブハラ!こんな奴に頭を下げる必要なんて無いわ!!」

メンチは未だに獣の様にフェリを睨み付けていた。

「でもメンチ、彼受験者だし一応ジャッチしないと………」

ブハラがそう言うとメンチは怒りの矛先をフェリからブハラふと変え、

「ブハラ!アンタ、コイツから漂う嫌な臭いが分からないの?!こんな臭いを放ってたら料理を食べる気にもならないわ!だから失格よ失格!!」
「メンチ……それは流石に……。」
「失格は失格よ!!」

メンチは声高らかに失格と言い切った。フェリはそんなメンチを見ると、薄く口元に笑みを浮かべ、受験者たちの元へと帰って行った。

「あぁ、行っちゃった。メンチ本当に良いの?彼、不合格で」
「いいのよ、あんな奴不合格がお似合いよ!」
「(お似合いって……………)」

ブハラは苦笑いするしかなく、ドスンと強烈な音を経ててメンチの座っていたソファーの後ろに座った。

「いいのよ、あんな奴…私に何も言わないで…姿眩ましちゃうんだもの…………」

「え?」
「何でも無いわ!」

ブハラはメンチが小さく呟いた言葉は聞き取れなかった。


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


彼の寿命は決まっている

復讐者であると同時に彼はこの世の人間ではないのだから

“あの世界”の記憶を持ちこの世に生まれるだなんて有り得ない

姿形が“あの世界”の時と同じだなんて、有り得ない

彼がこの世に生を受けた代償は

彼の復讐心と寿命

復讐を成し遂げた時、彼はこの世の人間でもなければ“あの世界”の人間でもなくなる




[42147] ハンター試験編 ~料理【その6】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:609f2de3
Date: 2016/09/23 17:17


フェリはメンチによって不合格となった。それだけならまだいいとフェリは思っていたのだが、なんとメンチはフェリを含めた受験者全員を不合格にしたのだ。その理由と言うのが

「中毒者、アンタがいきなり私の目の前に悪いんだからね。しかも嫌な臭いまでつけて」

フェリが目の前に現れた事と、フェリの身体から漂う嫌な臭いのせいだった。

「(俺が居なくてもどうせ、ここにいる奴等全員、不合格にしてただろうに………)」

フェリはどこか諦めた様に肩を落とす。そんなフェリを心配そうに見るゴンたちとは裏腹に、不合格となった受験者たちの憎いと言う感情がハッキリと伝わってくる程の、目線を受けながらフェリは頭の中であることを考えていた。

「(でもな、いくらなんでも全員不合格なんて…。合格者0は流石に無いだろう…。出来ればハンター協会の奴等が何か言ってくれればいいんだけど…望み薄かな?)」

フェリがそんな事を思っていると、フェリたちの頭上から声が聞こえてきた。上を見上げると空には、ハンター協会のマークが入った飛行船が浮かんでいた。その飛行船から一人の人間が飛び降りて来たのだ!

「ぁ………………」

少し隙間が開いた口から漏れ出た声はあまりにも小さすぎ誰の耳にも入る事は無かった。しかも声が漏れた次の瞬間には、飛行船から飛び降りた人間が地面へと着地し轟音を経てたのだから尚更、フェリの声は聞こえる筈がない。

ドォォォォン!!と轟音を経てて地面へと着地した人間………老人はかなり高い所から飛び降りたというのに平気な顔をしてフェリの目の前を通り過ぎて行った。丁度、老人がフェリの目の前に来たとき、

「二次試験が終わったら、儂の元へおいで」
「は、?」

フェリが老人の言葉に反応して声を出した時にはもう老人は通り過ぎて行った後だった。

「(何なんだ………あの爺………)」

フェリは少しだけ警戒しているのか、キュッと口を結び右手をフードをへと伸ばし目深く被るとフェリは老人の後ろ姿にゆっくりと目線を向けた。

突然現れた老人に戸惑った様にしている者も多い。メンチはそんな受験者のためなのか、

「審査委員会の会長であり、ハンター試験の最高責任者、ネテロ会長よ」

メンチの言葉にピクリと反応したフェリはすぐさま、向きを変えて受験者たちの間に混ざろうとしたが、

「どこ行くのよ、中毒者」

「(メンチの奴、俺がハンター協会の連中があんまり好きじゃないこと知ってんだろうがよ……。しかも、会長って……俺の“昔”がバレたらあっという間に、俺は殺されるんだろうなぁ)」

フェリは苦虫を潰したさまを口だけで表すと、渋々といった感じでメンチとネテロ会長に背を向けるのを辞めた。

2人が話をし始め、暫くメンチとネテロ会長の2人で話をしていると、受験者の不合格は一旦取り消され新しく課題を行う事になった。メンチは新しい課題の実演を行う事になった。新しい課題として決まったのは、

「ゆで卵で!」

新しく課題が決まったため、試験会場を変えるため飛行船に乗り込む事に。

「フェリ!」

飛行船に乗り込む時に後ろから声をかけてきたのは、ツンツン頭が特徴のゴンだった。ゴンの後ろには不機嫌丸出しのメンチが立っており、ゴンはフェリに「あとでね!」と言い残し先に飛行船の中に入って行ってしまった。

「あ、おい!ゴン!」

ゴンの元へと手を伸ばすがその手は、メンチによってガシリと捕まれグリンと、思いっきり、

「イ、イデデデデデ!!!!」

捻られたのだ。

「何がイデデデデよ!私に何も言わずに姿を眩まして!しかも眩ます前よりも嫌な臭いが強くなってるじゃない!」

メンチは一気にそこまで言うとフェリの赤くなった手をパッと離し「でも、まぁ…」と、

「昔よりも強くなったんじゃないの?…………それが“純粋な強さ”じゃないんだとしても…」

メンチはそこまで言うとフェリの横を通り過ぎ飛行船の中に入る前、足を止めフェリに振り返ると、

「………あんまり、身体酷使しちゃ、駄目よ……。いくら“慣れてる”っていったて、キツいものはキツいでしょ……………。っ、それじゃあね!」

メンチは足早に飛行船の中に入って行った。後に残ったフェリは、昔と大仏変わったメンチの様子に目を丸くして驚いていた。


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


彼女は彼の過去を知らない

彼女は彼の本名を知らない

彼女は彼の素顔を知らない

彼女は、彼がどうして薬に手を出したのか知らない

彼女は彼の何を知っている?

彼が字を書けず読めなかった事か?

彼女は何も知らない


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


(多分)次で二次試験終了




[42147] ハンター試験編 ~ネテロ【その1】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:609f2de3
Date: 2016/09/24 15:28
皆様お久しぶりです。
約二ヶ月ぶりの更新です。

本当に申し訳御座いません!!
現実が忙し過ぎて、更新出来ませんでした……。

ここで、ちょっとすみませんが愚痴を……………。





あの、くそ上司……ハゲてしまえ……。


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


「うあぁっ!!!!!」

悲鳴を上げて眼を覚ましたフェリは、眠っている間にずれたフードを深く被り直し、休むための部屋から出て行った。

フラフラとした足取りで部屋から出たフェリは、壁に手をつきながら部屋から離れて行った。

中から外が見える位置に置いてある椅子に座ったフェリは、ずっと被っていたフードを脱いだ。フードの下にあったフェリの顔は蒼白く、まるで死人の様だった。額には汗が滲んでおり髪は黒いが髪の根本が白くなっており、黒く染めている事が分かる。

「……まさか、また彼女の夢を見るなんてなぁ……」
「なにがじゃ?」
「?!!」

バッと横を見ると、ネテロが髭を撫でつけながらフェリのすぐ横に立っていた。

「なんで、爺さんがこんな所に……」
「さっきまで、遊んでおったのだがの、相手が眠って仕舞っての」
「……………そうか」

何処か苦虫を噛み潰した顔をしたフェリは、フードを被り直すとネテロに顔を向けた。

「で、なんで爺さんが俺の所に居るんだ?」
「儂は、お主に二次試験が終わったら会いにきて暮れと言ったはずなんだがのぉ」
「(……………忘れてた)」

フェリは、ネテロから眼を逸らすと窓の外に広がる、星空を眺め出した。フードによって見えないが、きっとフェリの額からはきっと冷や汗が出ているのだろう。

「忘れておったろ……まぁ、よい。お主に聞いておきたい事があっての」

そう言って、ネテロは髭を撫でつけながら笑った。

「お主、数年前に“戸籍を無くして”おるじゃろう。それも“ワザと”」
「……………さぁな……………」

フェリの反応に口元に笑みを浮かべ眼を細めたネテロは、「よっこいせ」と掛け声を上げてフェリと一つ席が離れた椅子に座った。

「……お主一人では、無理であったろう。誰か人を雇ったろう、とても優秀な……闇に紛れるのが得意な暗殺者などなぁ」

ネテロの言葉にフェリのギリリと歯を噛み締める音が聞こえた。フェリは、窓の外を見詰めながら、

「……何で俺がそんな事をしなくちゃならないんだ……」
「お主の、父親は随分と荒っぽいんじゃの」

ネテロの言葉にフェリは「あ"?」と零し、ネテロの方を向いた。ネテロは相変わらず、髭を撫でつけていた。

「父親の事が気になるのかの?」

ネテロの言葉に、フェリは「……違う」と零すと、ネテロの元から離れるために椅子から立ち上がり、





「俺の前で、あのクソ野郎の話はしないで欲しいだけだ」

「俺の父親は、あのクソ野郎は……




















死ぬべきなんだよ」




[42147] ハンター試験編 ~殺気【その1】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:609f2de3
Date: 2016/09/26 19:08


高い、高い塔の上。
此処が、第3試験の会場。

出口も無ければ、入口もない。

合格するためには此処から“生きて”脱出しなければ、ならない。








【レオリオ side】


くあっと一つ欠伸を零したオレは、あの真っ黒い人が居ない事に気付いた。

「なぁ、ゴン。フェリの奴、何処行ったんだ?」

オレよりも身長の低いゴンを見下ろす様に聞けば、「あっち」と言って塔の端の方を指差した。

丁度ギリギリの所に立って、煙草を吸っていたフェリがいた。マジか、アイツ煙草吸うのか。ゴンに礼を言って、フェリの元に行こうとすると、「待って、レオリオ」

「何だよ、ゴン」
「今、フェリの所に行かない方がいいよ」
「?何でだよ」

オレが訊き返すと、ゴンは頬を掻きながらポツリと零した。

「なんか……フェリ怒ってるっていうか……殺気だってるっていうか……上手く言えないけど、今は近付いちゃ駄目」

ゴンに言われて、チラリとフェリを見るとフェリはフゥと口からかなり派手めな色の着いた煙を吐き出していた。……あれ、絶対身体に害あるよな……?(いや、煙草自体がそうなんだけどさ?!)

「それに、あの煙草の煙も嫌な臭いがするしさ……」

そう言って、最後に「だから、今フェリに近付いちゃ駄目だよ」と念を押された。

まぁ、喫煙者何だろうし……煙草吸ってなくてイライラしてたんだと思うし、今は近付かないでおこうか。

「レオリオ!此方に扉があったんだ!」

そう言って手招きしてきたゴンに、「おう、今いく」と言ってゴンたちの元に走る。

「ん?フェリはどうしたんだよ」

キルアがキョロキョロと辺りを見回し、フェリを探した。

「あ~、何か向こうで煙草吸ってたぞ」
「はぁ?!何で連れて来なかったんだよ!!」

キルアの態度に額に青筋が浮かんだが、オレは大人だ。我慢しろ。

「雰囲気が違ったんだよ」

お、ゴンナイス!!だ

「雰囲気ぃ?」
「うん。何か『近寄らないで下さい』って言ってるみたいでさ」

はぁ~、すげぇなゴンは。そんな事が分かるのか。オレが一人で感心していると、クラピカの声が聞こえた。

「……五つ扉があるな」

四つか……フェリは……まぁ、アイツなら大丈夫か。

オレたちは、それぞれ扉の上に立って一言かわして塔の中に入った。中に入ってすぐゴンたちと合流出来たのはいいが、まさか……

フェリじゃなくてトンパが落ちて来やがった時はかなり、落ち込んだな。








【フェリ side】


口から吐き出された煙は、風に乗って上へと上がって行く。それをフードに隠れたぼんやりした眼で見上げたフェリは、吸い終わった煙草を足元に落とし爪先でグリグリと踏みつけ、火を消した。

「(あの爺さんのせいで……あれから一睡も出来なくなった……)」

フゥと煙はもう出ない口から零れたのは、ただの溜め息だった。塔の端にいるフェリはボーッとしながら遥か下の、地面を見詰め「何、してるんだい◆」

「?!!」

バッと後ろを振り向くと、すぐ後ろにヒソカが立っていた。何時もなら口角を吊り上げられ笑っている顔が何故か、無表情になっていた。

「まさか、ボクの気配に気付かなかったの◆」

フェリは「……五月蝿い」と零し、ヒソカの肩を押し距離をとろうとするが、ヒソカはその場から退かず、

「此処からフェリを突き落としたら、フェリは死ぬのかな◆」

ドンッと、肩を押され浮遊感がフェリの全身を包む。恐怖よりも先に現れた感情は、

「……後で、ぶっ殺す……」
「バイバ~イ◆」

怒り。

フェリのフードが擦れ、フェリの顔を見た見たヒソカは一瞬面白そうな顔をすると、すぐにフェリの視界から消えた。




















「(これは……即死は免れても……かなりキツいぞ……。アイツに頼むしか、なさそうだなぁ)」

今現在も塔から落下しているフェリは、即死を免れるため身体にオーラを纏わせ簡易的なクッションの役目を持つ、鎧を身体に纏った。

フェリは具現化系寄りの特質系。

フェリの能力に、薬屋らしく傷を治す能力はあるがその能力は自分には使えない。

「(せめて、即死だけは勘弁してくれよ……)」





グシャ……………。

「ぐっあ、?!」

フェリのこの力は純粋なものではない。身体を鍛え、修行して手に入れたものではない。

フェリは、念能力者ではあるが身体は一般人と変わらない。むしろ、一般人よりも下なのかも知れない。それでもフェリが何故、強さを持っているのかはもう分かっている者もいるはずだ。

フェリがいくらオーラを身体に纏っていても、身体が一般人なら数百メートルから落ちた時の衝撃はどうだろう?

「グ、……」

フェリの身体が、衝撃波に耐えられるはずがない。フェリの表情はあまり変わっていないが、これはきっと薬のせい。

「あぁ~、くそ……痛覚がイカれた……。痛み感じない……」

左脚は有り得ない方向に曲がっており、右腕は動かせるが肘から骨が突き出ていた。

「あ~」と唸りながら倒れているフェリに一つの影が被さった。

フェリは、影を見上げて「フッ」と鼻で笑うと、口角を吊り上げ口を開いた。




















「……相変わらず、来るの早いな……





“ティッド”」




[42147] ハンター試験編 ~交差【その1】~
Name: 玄坏慎日(クロツキシンカ)◆6523bd2f ID:609f2de3
Date: 2016/09/27 23:54


フェリにティットと呼ばれた、人影は「ハァ」と溜め息を零した。逆光のせいでキラキラと光る銀髪を眩しそうに見たフェリは、

「悪い、骨折れて死にそう……助けてくれ」

フェリがティットにそう頼むと、人影が動き逆光のせいで見えなかった顔が見える様になった。

女顔で、髪は銀髪。瞳の色は色素が薄く、まるで透き通っているようだった。そんなティットは、フェリの直ぐ横に立つと倒れているフェリの身体の上にスッと手を伸ばした。

「……延命治療……」

ぼんやりとティットの手が淡く光だし、その光は倒れているフェリの身体を包み始めた。光が収まると、あれだけボロボロになっていたフェリはムクリと起き上がり、腕や脚がきちんと動くか確かめ始めた。

「ん、問題ないな。有難うなティット」

フェリがティットにお礼を言うと、ティットはコメカミを押さえながら「ハァ」と大きめの溜め息をついた。

「貴方と言う人は……もっときちんと修行されたらどうです?ことあるごとに、僕が“彼”に呼び出されるんですよ?」

ティットは大きめの眼を細め、フェリを睨み付けた。美人は怒ると怖いと言うが、それは男であっても同じ様だ。

ティットが自分を睨み付けているにも関わらず、フェリは「悪い」と一言零しただけでまた腕や脚が正常に動くかどうかを確かめ始めた。

「貴方が死んでしまうと、“彼”の暇潰しの相手が居なくなるんですよ」
「……………だから俺に、死なないだけの身体の強さを手に入れる為に修行しろって言うのか?」
「おや、貴方にしては随分と頭がよく回りましたね。偉いですよ」

ニッコリと口角を上げて笑ったティットにフェリはかなりの殺意を覚えたが、ティットが居なければ自分は死んでいた事は事実な為、殺意を押しとどめた。

「お前がよく言ってる“彼”の胃を治してやった方がいいかもな」
「?“彼”は実態のある幽霊ですよ。胃に穴が開こうが、身体をバラバラにされようが死にませんよ」

アハハと笑い声を上げたティットに、顔も知らない“彼”に「ご愁傷さま」と零したフェリは、ティットに背を向け塔に向かって歩き出した。

するとフェリの後ろから、ティットの「待って」と言う声が聞こえた。後ろに振り返ると、何故か真剣な顔をしたティットが立っており、

「僕は、貴方のやることに口を挟みはしません。ですが、これだけは言っておきます。




















貴方のその復讐が、貴方のために……貴方の未来に繋がるのでしょうか?」

ティットの言葉に「は、?」と零したフェリは、眼を丸くしながらティットを見た。

「…………この世界に来る時に、俺はあの黒い人間に“復讐の為に生き返らせてくれ”と、頼んだんだ。今更、その事を変えるつもりはない」

フェリの言葉に、少しだけ悲しそうに眉を寄せたティットは、少し考える様な仕草をした後フェリにポツリとこう零した。

「……貴方の気持ちは充分、分かってます。貴方の父親が、どんな人間かも分かっています……」

フェリはその言葉に、「お前等は」と強めにティットに言葉を返した。

「お前等は、俺のこの世界での人生を……暇潰しとして見ているんだろ」

「お前等は、俺が何で薬に手を出したかも知ってるだろ。修行するより、手っ取り早く強くなれる。」

「俺は、アイツを……父親を殺す為だけに、この世界にアイツと共に生まれ変わった。」




















「もう二度と、後悔なんてするもんか」








塔の中へと消えて行った、フェリの後ろ姿を眺めていたティットの後ろからフェリと似た格好をした、黒い身体全身を覆うマントに身を包んだ人間が現れた。

「全く、俺だったら生まれ変わったんだから復讐とかそんなもの気にせず、遊びまくるのになぁ~」

何処か能天気でズレた発言をした人間に、ティットは「馬鹿ですか?」と辛辣に返した。

「うぐ……ティットやっぱりお前、俺にだけ厳しい……。でもま、俺としては“アイツの父親に殺された”から、アイツが父親を殺してくれると俺も結構、嬉しいんだけどねぇ~」

そんな事を言った人間の横っ腹にもの凄い勢いで、蹴りが飛んだ。「グホォ?!」と倒れ込んだ人間に「フゥ」と、殺りきった感満載なティットは上から腹を 押さえ転げ回る人間を見下ろした。

「……貴方だって最初彼に会った時、『父親に似ても似つかない、優しい青年』なんて、言ってたじゃないですか」
「ひ、人は変わるもんなんだよ……。それに、アイツが父親を殺す事を望んでんだから……俺らが口を挟む事じゃねぇだろ?」

その言葉にティットも納得いかないと言う顔をしながらも渋々「まぁ、そうですか」と零した。

「アイツが、復讐を成し遂げるまで俺たちはアイツを全力で見守るってだけだ。暇潰しもかねて」
「最後ので台無し……………。でもまぁ、僕は“貴方を信じています”から。彼の延命は僕に任せて下さい。




















レズド」


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


物語は、交差する




[42147] ハンター試験編 ~四次試験【その1】~
Name: kuro-S◆f2917b35 ID:26806936
Date: 2016/10/29 17:49


この人は誰だ?

この茶髪の女は誰だ?

この人は誰だ?

この茶髪の男は誰だ?










両親だ。そう両親。

会いたくもない。視界に入れたくもない。

関わりたくもない。









…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


「!!!!!!!!!!」

ガバリと身を起こしたフェリは煙草を取りだしライターを手に持つと身を隠していた草むらから、飛び出した。何故草むらに隠れていたのかと言うと、四次試験が始まっているからだ。

四次試験は、受験者全員が敵になっている。その為、一人になっているフェリは他の受験者にとって格好の餌食になってしまう。今の時間帯の様に夜であれば尚更。

フェリは、煙草とライターを手にしたまま草むらの近くを流れる川の水を顔に掛け、目を覚まそうと川の水に手を伸ばした。

「貰った!!!!!」

ガサリと音を経てて、フェリの背後に生えている木の上から飛び降りて来たのは、フェリのナンバープレートを狙う受験者だった。だが受験者は武器を振り上げたまま顔面蒼白になり、ガタガタと震え出した。

「お、おまっ、く、薬屋!!」

ガタガタと震える受験者にフェリはジッと受験者の顔を見詰めると「あぁ」と何処か納得した様に、ポツリと呟いた。

「お前、俺がまだ流星街に居たときに薬の金払わないで逃げた奴か……。あの時は俺もまだ、弱かったからな……逃がしちまったけど、まさか……自分から来てくれるだなんて……………なぁ?」

「ひぃっ」と短く悲鳴をあげた受験者は、ズボンのポケットの中からナンバープレートを取り出すと、フェリに向かって投げ付けた。

「そ、それをやる!!だ、だから「命だけは助けろ?無理なお願いだなぁ……」な、なん…」

受験者の言葉はそこでプツリと途切れてしまった。










「俺今、凄い機嫌悪いから」





憐れな受験者は、首から上が無くなっており受験者の身体の近くに転がる頭は目を見開いたまま、絶望の表情を浮かべていた。

フェリは川岸に置いたままだった煙草とライターを手に取ると、煙草を一本取りだしライターで火を付けるとスゥと煙草を加えたまま息を吸い込んだ。

「俺が眠ってる間に、俺の事を殺してプレートを奪えば良かったのに……。余程の自信家か……ただの馬鹿か。多分後者か」

フェリはクッと口角を吊り上げると、自分の足元に落ちているナンバープレートを拾い上げ自分の狙っているプレートかどうかを確かめると、口角を更に吊り上げ低く笑い声をあげた。






「当たりだ」

吸い終わった煙草を地面に落とし、足で踏みつけ火を消す。

「お前が、昔きちんと金さえ払ってれば死ぬことだけはなかったのになぁ?俺の機嫌が悪くなかったらか……」

受験者の死体の前でそれだけを言い残すと、フェリは草むらに置いてある自分の少ない荷物を手に取り、場所を移動することにした。

「死体が近くにあったら、あの蝶が飛んでくる」

もうすでに血の臭いに惹かれて、ヒラヒラと蝶が舞いながら飛んできていた。

「それに死体の近くに寝る趣味は無いしな」




















…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


赤、赤、赤。

目の前に広がる、赤。

泣き叫ぶ彼女。

切り裂かれた腹から見えるのは、まだ小さな小さな足。

次の瞬間に彼も切り裂かれた。

誰に?










父親に。










…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


「ハァイ◆」
「……………失せろ」

目覚めた瞬間に不機嫌さMaxになったフェリは、視界いっぱいに広がる顔に向かって拳を振り上げ降り下ろした。だが、その拳は意図も容易くヒソカに掴まれてしまった。

寝起きのフェリとヒソカとでは力の差は歴然だった。

「眉間の皺、凄いよ◆」
「……………誰のせいだと思ってるんだ」

かなりドスの効いた声だがヒソカはそんなもの気にしないとばかりに、フェリの眉間に刻まれている皺をグリグリと指先で押す。それに加え「ククク」と笑い声をあげるせいで、フェリの眉間の皺は増えるばかりだ。

「少なくともボクのせいじゃないよね◆」
「……………何でだよ」

フェリのその言葉に、ヒソカは掴んでいたフェリの手を離し、










「君の父親のせいでしょ◆」

ニタリと笑ったこの男は、ピエロと言うより悪魔に近い。


…*…*…*…*…*…*…*…*…*…


彼は、大事な人を失う。

この世界の母親。










愛していた婚約者までも。

彼に、幸せなど訪れる訳がない。

だって彼の父親は、









殺人者なんだから。



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