軽い浮遊感。
海を漂う様なその感覚は決して悪くは無かったけれども、好きじゃなかった。
毎日毎日重力に従って地面と仲良くしていた俺にとって、この感覚は薄気味悪くも不気味である。
いや、正直に言おう。大分怖い。
けれど、こんな不思議空間でも息はできるらしく息苦しい思いはしていない。寒くもないし暑くもない。
どちらかと言えば暖かかった。
干したばかりの布団と同じくらい、というかそれよりも心地よかったので、怖かった事も忘れてついついその感覚に身を委ねてしまった。
その時。
体が引き裂かれるんじゃないかと思うくらいの激痛と何かに引っ張られる感覚が同時に俺を襲った。
自動車と接触事故したあの時より痛い。
血は流れていないようだけど、その内ぶちぶちと腕から順番に千切れていきそうで怖かった。
もう怖かった、全てが怖かった。早く出してほしかった。
出口みたいなのが見えて、暗かった此処とは段違いに明るいそこを見て、俺はただひたすら泣き声をあげた。
いい大人が、みっともなく。
「おぎゃああああああああああああああ!!!」
……いい大人のみっともない泣き声にしては、やけに声が高かった。
高いというよりまんまただの赤子…?
次いで女性と男性。
それと少年?の話し声の様なものが聞こえたが怖くて不安で意味が分からなくて疲れたので、倦怠感に身を任せて眠った。
ああ眠い。