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[4366] 魚と鳴門(クロスオーバーUO&NARUTO)完結!
Name: ヘヴィープレイヤー◆f9e79432 ID:0dad6e4d
Date: 2009/03/08 22:26
*初めまして、へヴィープレイヤーと申します。


テスト板、規約改正に伴い、本家のナルト板にお引越ししてきました。

ある意味うまく引っ越せるかの機能もテストさせて頂きます。


作品について少しだけ説明をさせて頂きます。

今も稼動していますが、MMOネットゲームのウルティマオンライン=UOとナルトのクロスオーバーです。
ある要素が途中から新たにナルトの世界に加わるため、原作から逸脱した話となっていきます、簡単な違いは、登場人物は多かれ少なかれ、実力が強化されています、また、原作ではなかった組み合わせのパーティーも多数見受けられます、多少強引な解釈をしている点もあるため、ほんの少しだけそういったところには目を瞑ってくれれば幸いです。


誤字脱字等あれば、指摘していただければ幸いです。



よろしくお願いいたします!











NARUTO、世界の主人公は忍者である、火や風といった五大国が存在しており、国は里を持ち、里の長は影と呼ばれる、火影、水影、風影、多数の忍びはチャクラと呼ばれる体に流れるエネルギーを活用し、常人には出来ない超人的な技を使う。


UO、世界の主人公は、人間であり、多数のモンスター、それに数多のスキルである、多数のファセットにわかれて暮らす人々の話であり、主役は、一人一人が担うものであり、時代の移り変わりとともに、制約が増えてはいったが、かつてはあらゆることが許されていた世界であった。



魚と鳴門、これはとてつもない制限を背負ってしまった、力なき少年の苦節と涙に塗れた物語である。












700と225、この二つの数字でピンと来る人は一体何人いるんだろうか。


しかし、数奇過ぎる運命に翻弄されちまった俺は、この数字とうまくやっていくしかない。

まったくもってくそったれだ、ああ、くそったれだ。







樹海の中、俺は気付いたら一冊の本と赤い苔に蜘蛛の巣といった、
細々した物と一緒に倒れていた、幼児の姿で。

で、隣には死体です。

べっとりと赤い液体が俺についているんだけど、本物だな、これ。
血糊ってどんなものか知らないけど、鉄の味がするし、
鼻血の味と一緒だ・・・

殺人事件!!!!!!!
ってなんで俺は子供なんだよ、しかも死体、死体ってあれだぞ

死んじゃったら何にも出来ないんだぞ!
いじめがかっこわるいのは当たり前だが、
もっとかっこわるいの自殺しちゃうやつだ、

そうはいっても性格だし、全員が全員うまくいくとは限らないけど

この場面だと、容疑者俺だよな、献身しなきゃいけないのか?
誰にだよ!

俺は天才数学者でも天才物理学者でも無いっての!

まだ死んで間もないのか、体温が暖かい。
死後硬直ってやつ?
もまだ始まっていない、らしい、専門家じゃないから全然わからんけど。


いつものように現代世界の日本という極東の島国の更に小さい分類で
分けられる東京っていう人と車が無駄に多い土地柄の中の
更に小さい区の一つの中の町って命名されている
中の家の中で両親の庇護の元、

慎みなかがら静かに暮らしていたはずだ・・・たぶん。


あれか、大学受験のために必要だと嘘をついて手に入れたパソコンで、
親に見つからずこそこそとネットゲームをやっていたのを

天の神様は見逃さず、俺に天罰を食らわしたのか、

どんだけ暇人なんだ天の神様、




*主人公は死体に馴れていません、混乱しています。

ごめんなさい、謝りますから俺の部屋に帰してくれ、

土地の事情で、狭っくるしいが、俺にとっては聖域だった、

あの漫画と参考書とパソコンに音楽プレイヤーが揃っていた天国、
帰してください・・・
やべえ涙が出てきた、ここ狼とかいねえよな。

「こんな所で何してるんだ?」

ネットでみた土下座の究極形、キングオブ土下座をしていたところ、

どこからともなく声が、見間違えに決まっているこんな樹海に人がいるわけ無いよな、

「しゃべれないのか?」

あれか、樹海で気軽に話しかけてくる人は間違いなく霊かお化けだって仲のいい馬鹿に教わったな。

そりゃそうだ、こんな所にこんな奇麗な人がいるわけが無い。

「可哀想に・・・隣の人は父親かい、九尾から子供を逃がそうとこんな所まで・・・」

しかしどっかで見たことがあるような・・・
いまいち記憶が確かでないが・・・

・・・九尾?

・・・白面のもの?

・・・いやいや、んな陳腐な事が、平々凡々なこの俺の身に起こるわけがない。

「怖かったんだね、もう大丈夫だよ、四代目様が追い払ってくれたから」

奇麗な人が俺の頭に触れた、触れた。

・・・・・・人間だ、体温もある。
血まみれになっている俺の顔を綺麗な人は手に持った布きれで奇麗にしてくれた。


四代目?九尾・・・・・・

「お姉ちゃん、獣の槍って知っている?」
な訳ないよな、だってどこかで見たと思ったら、俺の好きな漫画の
NARUTOに出てくる忍び装束にそっくりだし、四代目って言ったら火影だな。

「いいんだよ、怖かったろうに、親は・・・もう手遅れだけど」

最後の方の声は言いづらかったのか、蚊の泣くような小さな声で、
奇麗な人は俺を抱きしめてくれた、血で汚れちゃうのも労らず。

体温が心地よい、奇麗な人が悪人でも、ここで俺が殺されても、
これは、夢じゃないな。

悲しいことに、最悪な事に、無惨なことに、最低な事に、

現実なんだな。

柔らかいぬくもりと共に、俺の体は睡眠を欲していたらしく、
静かに意識が落ちていった。


・・・・・・俺の名前って、なんだっけ。



[4366] その2
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/22 03:20
夢でありますように、夢でありますように、夢で夢で夢で夢で、ありますように!






時に現実は非常であり、残酷だ。

小説とかで使われているフレーズだが、身に起こると半端ねえ。


特にこんな病院に似ている施設で野戦病院さながらのところで起きると
ますますもって半端ねえ。



もろNARUTOだな、状況から察するに九尾の襲撃直後ってか。
枕元には一冊の赤い表紙で、複雑な文様が描かれた本と、
ちっちゃな屑みたいなものがまとめられた小袋が置かれていた。


「起きたかね、もう大丈夫だよ、君を連れてきた、しずねさんに感謝しなさい」

説明台詞ありがとう、って普段の俺だったら言ってただろう。

基本けちな人間だし蟻よりも小さい人間だからな。


だから子供の姿なんかになってんのか?

「ふむ、まだ意識がはっきりしていないようだね、君、意識がはっきりしたら私の所に連れてきなさい」

前半は俺に、後半は和服の看護婦さんに声をかけて
白髪頭のミドルダンディーは去っていった。

ああ、しずねさんか、綱手姫の付き人の、現実だとあんな奇麗なんだな、あの人いくつなんだろ

原作初登場時点で・・・駄目だ、そんなに記憶力いい方じゃ無いしな、

そもそも九尾の妖狐襲来の時、里にいたっけあの人?

それに髪の毛色は黒かったけど、おっぱい大きかったし、
同名の別人ってところか、





・・・・・・さて、一見不審物件にしか見えないこの本、明らかにNARUTO
の世界観から外れているよな、なんとなーくこれに俺がこんな世界に
来てしまった理由が隠れているような樹がする、気がする。

それにこの小袋の中身、匂いもしないし、あんまり粘つかない
特殊な加工でもされてんのかな、しかも全部で八種類、

八種類、なんかと一緒だな、


ペロっとな。


えっと、Resurrection An Corp
 
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ぺろっと

Energy Bolt Corp Por

・・・・・・これって、なんでNARUTOの世界にUOのスペルブックがあるんだよぉぉぉぉぉおおおおおおおお!

無駄に豪華だな、フルスペルブックじゃねえか!


なんでだ?多重トリップってやつなのか?
思い出すのに時間がかかっちまったよ、UOなんて高校の時友達の
家で見ただけだったしな。

あーあー、なるほど、こっちの小袋は秘薬か、

だから蜘蛛の巣や黒真珠とか八種類なわけだー。

はははははははははははははは、世界観が違うだろうが!

しかもそれぞれ一個だけしかないって何でだよ!
魔法練習すら出来ないだろうが、まさにヒントだけで
後は自分でなんとかしろってか?


魔法唱えるのには秘薬は必要だよね、しっかしいつの時のUOなんだ、

カオスやらオーダー、あるのか?

それともイルシュナーがある時代か?
パラディンブックもネクロマンシーブックも無いって事は存在していないのか?

スキルはもしかして存在しているのか?
NARUTOの世界なのに俺だけUO制だったりして、

はははははははははは、瞑想が上がりました、魔法のスキルが上がりました、


ってか、チャクラはどうなる、スキル上限は、ステータスもあんのかな。




駄目だ、情報が少なすぎる、第一、俺は何処の誰なんだ。


「・・・・・・お姉さん」

和服姿の看護婦さんの手が空いたのを見計らって声を掛ける。
昨日のしずねさんはどっかいったらしいな。
まぁ、当たり前だわな、本物だったら綱手姫についていっているだろうし、
同名の別人でも、戦場で拾った一人の子供にいつまでもかかわっていられねぇだろう。

ましてや、火影がいなくなったんだ、精神的柱ってのは大切だ。
頭がしっかりしていなけりゃ潜水艦はすぐ沈んじまうし、
戦艦はまっすぐにすすみやしねえ。



「ここ何処なの?僕は、・・・・・・誰なの?」

精々演技するか。

火の国の、この葉隠れ、だろうがな、記憶喪失って事にしとくべ、
幸いとは呼べねえが、妖狐に襲われ、父親を亡くしたんだ。
そのショックで記憶喪失くらいになってもおかしくねえだろ。

まずは、情報だ、情報を制する物が全てを制するんだ、近代戦争の鉄則だよな。



頬を軽くつねる、子供特有の柔らかい肌に赤い後と鋭い痛みが残った。

ちくしょう、夢じゃねえ。

闘わなきゃ、現実と、ってか?
なんて笑えない状況なんだ、天の神様、俺は無神論者だが、


勝手な八つ当たりだ、今だけは恨ませてくれ。







*UOを知らない人のための何処か間違っているスキル講座!


*Resurrection An Corp

スキルMageryの中の魔法の一つ、簡単に言えばザオリク、ちょっと難しく言えば死者蘇生、ナルトの世界観を著しく壊す畏れが多分に含まれているため、作中に出てくるかは微妙。

*Energy Bolt Corp Por

スキルMageryの中の魔法の一つ、UOやっている人だったら常識だが、魔術師オーふぇんの「我は放つ光の白刃!」に似ている、主な攻撃魔法の一つ、私はエクスプロージョン(爆発の魔法)とこれを組み合わせて使うのが大好きでした。



[4366] その3
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/18 14:11

まずは、結論から申し述べよう。



俺はとてつもない制限をしょってこの危険きわまりないNARUTOの世界で生きていかないといけないらしい。

誰だって死にたくねえだろ。

しかし不思議だよな、好きだった本好きだった雑誌好きだった映画

それにどんな家か、どんな友達がいたのか思い出せるのに、

まじで自分の名前を思い出せねえ、親の顔も名前も思い出せねえ。


そこんところに俺がこの世界にいる理由が隠されてるかも、
根拠がなんにもねえ薄っぺらい推理だけどな。


せめて、命の危険が無い世界にして欲しかったよ天の神様。




とりあえず、戦災孤児ってやつに認定された。
妥当な線かな、特殊な能力はねえし、原作の知識があるって言っても、

記憶喪失の子供の言い分を聞くようなやつなんて当たり前だが何処にもいなかった。


少し失敗したな、設定間違えたぜ。

ナルトもどっかにいるんだろうな、あ、まだ赤ん坊だっけ。

うーん原作キャラに関わるのはどうすっかな、死の危険が跳ね上がっちまうしな、ま、とりあえずは保留ってところだな。



とりあえず、フルスペルブックとなけなしの秘薬を大事に抱え、

俺はこの世界の文字と地理を一生懸命覚えている真っ最中だ。



すると、
*Inscriptionが0.3上がりました*
*INTが1上がりました*

てなフレーズが頭の中をよぎった。

Inscriptionって何だっけ?????

INTは、頭が良くなったって事かな?
現在の俺の数値はどれくらいなんだ?



他にも、自分で包帯を巻くと

*Healingが0.3上がりました*
*DEXが1上がりました*

と流れて、失敗してやんの・・・・・・
もしかして、俺の行動っていちいち成功判定付くんじゃないんだろうな。

こりゃ、忍者無理だわ。
おそらく、俺は700制限あるだろうし、戦闘に使えるスキルすら思い出せねえ。


ていうか包帯も極めていけば死者蘇生すら出来たよな、
出来るのか?この世界。

怖くて試せねえよ。

はいはい、考えすぎると頭がおかしくなるな。
頭いい方じゃ無かったしなー、受験っていっても親には悪いが最低ランクにいこうかなって考えるレベルだし。

あーもしかしてAnatomyとかもあげなきゃ駄目だったっけか。


もし秘薬があってもルーン石の作り方なんかしらねえ以上、リコールもゲートも無理か。

ますます無理だ忍者。


よし、包帯きわめて医者になろう、なんせ布きれがあれば
どんな怪我でも治せるってそれはすでに魔法だな。

包帯スキルが体感5.0くらいなったころ
やっと成功したんだ、

不思議なことに布きれが消えて、足の切り傷が消えてたよ。

もうめちゃくちゃだ、誰にも見られて無くてよかった、

「かい君さっきのどうやったの?」


・・・・・・あっちゃぁ、少年(つっても今の俺とそんなに違いはないだろう)がきらきらとした目で俺を見ていた。

「あー、お前名前なんだっけ?」

少年はきらきらとした目を俺に向け

「直人だよ、かい君よりちょっと早くここに来たんだ、ねえ、さっきのどうやったの?」

どうすっぺ、医療忍術だったら布きれはなくならねーし、

「ああ、手品ってやつだ、俺、昔こんなの親から習ったんじゃないかな」

「すごーーい、傷も消えたね!」

こいつめ、細かいところまで見てるな。

「ははは、俺も覚えてないけど、凄いだろ、えっと、直人か、これは二人だけの秘密だぜ?」

「なんで?」

「それはな」

さーて言い訳考えろ俺の脳みそ。相手は子供だちょろいもんだろ。
こんな技術が上に伝わってみろ、医療忍者にされちまうだろうが。

「これは俺にしか出来ないからな、直人だって覚えたいだろ?」

「うん!」
きらきらとした目がさらに輝いてやがる。

「でも俺は何で出来るか覚えてないから人に教えることは出来ないんだ」

こんな技術、チャクラがある世の中じゃ大して役にも立たなそうだが、目立つのは避けたい。

「え~~~」
あからさまにがっかりした声を出すな。

「直人だけには見せてやっから、誰にも言うなよ?男と男の約束だ!」

今気付いたけど、俺素のしゃべり方で話してたな・・・・・・
ま、子供だし平気だろ。




そんな一こまがあり、

俺はゆったり日々を成長していった。



忘れていたんだ、木の葉崩しがあるってことを。



あまりに原作キャラをそれも忍者から離れた道を行ったせいで、俺は危機認識が足りなかった。


それはもうちょっと後のお話。



ちくしょう、秘薬ってこの世界の何処に存在しているんだ。











*UOを知らない人のための何処か間違っているスキル講座!


*Healing
そのまんま、包帯、作中に出ている通り、スキルAnatomy(解剖学)と組み合わせることで、最終的には死者蘇生すら出来るお手軽にしては使えるスキル、戦士御用達です、戦士を志して包帯を使わない人間はいないでしょう。


*Anatomy
解剖学、戦士系には結構重要なスキル、確かダメージ量が増えるんじゃなかったっけ?ついでに、SPスペシャルアタックって呼ばれるスキルが60を超えると使える俗に言う必殺技にも関連してきます。


*Inscription
写経、お経を書き写すスキルです、ネタスキル。以上。


嘘、UOだと魔法を使うには主人公が言っている通り、秘薬が必要です、ですが、派閥やらギルドウォーでは、そんなたくさんの秘薬は持って行けません。
尚かつ、スキル調整でMageryのスキルが低い場合、いざって時魔法が失敗しちゃうかも!

そんなときに使えるのがスクロールっていうアイテムです。重量こそ重いんですが、秘薬は使わないし、使い切りだしってマイナスもありますが、成功率がぐっと下がる便利なアイテムです。

最初は主人公はスクロールを使って戦うタイプにしようかなって思っていましたが、(巻物を使っているように見えて、誤魔化しが色々効きそう)そもそも魔法をあげていないとスクロールは作れないっていう原則を思い出し、却下。



[4366] その5
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/18 14:30
木の葉の里の周りには、たくさんの演習場がある。


当然だ、忍者によって支えられているこの葉隠れだ、忍者の質を高めることが何よりも有線される、危ういバランスによって保たれている五大国、霧とか含めりゃもっとか、素質の差もあるだろうが、いつだって勝負を決めるのは一般兵卒の数と質だ。


NARUTOだと結構質は量を凌駕するを素でやっている気がするが・・・・・・確かに妖狐相手に中忍が下忍が上忍が何人集まろうが意味ねえな。

はっきりいって四代目の損失は痛かったろうに、なんで三代目が封印術・屍鬼封尽使わなかったんだっけ?

三代目がいなくなっても痛いが、四代目が残っていれば大蛇丸だって一蹴だったろうに。
あー封印術・屍鬼封尽は四代目が開発したんだったっけ、記憶がもの凄い曖昧だ。

そもそも影分身にやらせれば犠牲ゼロな忍術結構多いよな。

やっぱりチートだぜ。
二部で判明した影分身特訓使えればなーあっというまにGMなんだろうけどなー

チャクラを使いたいなー、園長曰く、誰にもチャクラは大なり小なり流れているらしいはずなんだけどなー俺の体も元々この世界の子供なんだからチャクラ使えてもいいはずなんだけどなー。



天の神様どうせなら完成したスキルくらいプレゼントしてくれよ、



「set camping 100.0」



・・・・・・うまくいくわけねえか、テストシャードだったらもの凄く楽だったんだけどな。当然GMも呼び出してみたが、いるわけないってな。どうせなら其所までフォローして欲しかったぜ、いたらねぇ。くそ。



あー、すぐ思考が脱線するな。そうそう、演習場、演習場ね、


俺の推理が正しければ、其所に行けば秘薬があるはずだ。だって俺が倒れていた所ってあの白髪のナイスミドルダンディーが言うには第七演習場とか言うところらしいし。

しずねさん、また逢いたいな、奇麗な人だったよな。俺を引き取ってくれれば・・・・・・いやいや、忍者に関わってろくな事ねえだろ、俺。

問題は、演習場には危険な獣もいるってことだ、情報収集の結果、第七での最大危険獣は虎だってさ、


この世界の親父の墓はしずねさんがその場に作ってくれたらしいんだけど、


俺いけないじゃん、


無理無理、一般人は獣と戦える構造にはなっていません。
これだから出来る人間ってやつは・・・・・・ま、奇麗でおっぱい大きいし、あのしずねさんだったら全部許せちゃうけどな。


UOだと虎ってどれくらいのレベルかな、グリズリーベアくらいかな、今の俺なら頭からばりばり食われちゃうよな、つてを探そうにも忍者の知り合いなんか・・・・・・あ、うまいってナルトも言っていた屋台のラーメン屋、「一楽」だっけ「一味」だっけ?確か「一楽」だった気がするが、とにかくそこで待ってればいるか先生が来るんじゃないのか?

九尾襲来つまり俺この世界にきてから半年たったが、原作キャラまだ誰も見てないし、観光もかねてちょっと行ってみよっかな。

まだ先生じゃねえかもしれないが、昔からあの店のこと知っているとか言ってたし、いるか先生だったらちょっと猫被って可哀想な少年演じればちょろいもんだろ。


「かい、なんか悪いこと企んでるでしょ?」

最近つきまとわりだした、琴音ってやつだ。
直人のやつが俺のHealingをしゃべりがった所為でな!


琴音が女の子で顔に傷を負っていなければ思いっきり無視したところだが、直人のやつが泣きながら懇願してきたしな、一応こっちの世界での初めての友達だしな、直人の頼みなら仕方ねえか。

それにこの年頃なら女の方がませている、傷を治してやった俺の不利になるような事を言うほど琴音も馬鹿じゃない子だ、たぶん。

改めて発見、俺のHealingは古傷すら治せるみたいだ、最終的に死者蘇生すらこなせるようになるまさに魔法の技術だから当たり前かも知れないが、傷ついたのは顔の左目だったんだが、包帯当てたら、右頬に残っていた古傷も同時に消えたぜ、改めて俺ピンチ、確か大蛇丸のやつ、三代目に腕もってがれるよな、そん時俺の情報が欠片でも向こうに行ってたら俺、終わる。

全部吐かされたら一生モルモット決定じゃねえか!

大蛇丸のことだ、

「Resisting Spellsって興味深いわね、貴方の体に一日中火玉の術ぶつけてあげるから、何処まで耐えられるか試してみましょうかしら」

なんてことを平気でいいかねぇ。

治しては忍術治しては忍術、カブトあたりが助手を務めてデータ取るんだろうな。

怖いよ怖いよ、怖いよ~~~~~。


同じ三忍の綱手姫か、ジライヤを味方につけて牽制したい所だが、もう二人とも里にいないってさ!

って微妙に時期早くねえか??
詳細な時期は流石に覚えてないけど、大蛇丸が三代目に人体実験が見つかって里抜けした後二人が抜けるんじゃなかったっけ。


まだ半年だぜ半年、二年くらいは猶予があった気がするんだが、え?大蛇丸もういないんだって?琴音詳しいな、ちょっと聞かせてくれ。

「知らないわよ、この前園長先生が三忍がいなくなって木の葉隠れは平気かな、なんて言っていたのを聞いただけよ」


あーな、流石に禁術実験云々はごまかされたか。

「かい、あんた絶対に悪巧みしているでしょ」

「何言っているんだよ、僕は何も考えていません」

「ほら、そうやって猫被っている時は絶対に悪いこと考えているんだから!」

あー、女はいつでも侮れないってやつかシカマル、お前は十年後くらいに感じる事を俺はもう感じちゃったよ。

あーめんどくさい、なんでこんな乳臭い小娘につきまとわれてんのかな。

「かい、私も連れてってよね」

「ばーか、女を連れて行けるかよ、只でさえ危険が多いのに」

「かいが守ってくれるんじゃないの?」

もうちょっと成長してからそんな台詞は言って欲しいな、もちろん返事はNOだがな。
「んなこと出来ないっての、俺が出来るのはただ傷を治すことだけ、しかもお前と直人以外は絶対に治さないからな、琴音もう一度言っておくけど賢いお前なら分ると思うが、俺のこの技術は異常なんだ、だから頼むから誰にも言わないでくれよ」

直人はあっさりと喋りやがったけどな、ま、状況を鑑みて無罪にしてやるか。


「異常って何よ、何でみんなのためにその力を役立てないのよ!みんな狐の所為で疲れているし、傷ついているのに!」

幼い正義感ほどやっかいなものはないな、まだ直人の単純な憧れの方が御しやすいぜ。

「だから言ったろ、俺の技術は教えられない、すると俺を異端視するやつが出てくる、そんでもって色々あって俺は目出度くこの里から追放だぜ?」

琴音は真っ赤な顔で俺に反論してくる。
「私は治してくれたじゃない!だったら里のみんなも治してよ!」

反論にもなってない単なる感情論。

あーめんどくさい、いっそのこと里抜けしよっかな、一般人に分類される俺だったらそんなに大変じゃないだろ。

「いいか、琴音、俺の技術を誰かに言ったら一生絶交だからな」

そう言い残し俺は町に出て行った、

「かいの馬鹿ーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

ああ見えて琴音は賢い、俺の言葉が本気だって事くらいは分るだろう。

俺は強くないっての、治す技術が際だっている綱手姫には怪力もあるし、召還だってある、治すだけの俺は一方的にやられて終わりだ、ましてやこの里では大蛇丸がいなくなってもそのスパイが少なからずまだいるだろう。


身を守る技術も無いのに、無茶は出来ない。

くそが、魔法が使いたいぜ、Fencing?Swordsmanship?Tactics?

そんなもの無視だ無視、少なくともこのNARUTOの世界では糞の役にもたたねえ。

Hiding-Stealth、それにHealing-Anatomy-Wreating
後はMagery

後一個は瞑想とかごっちゃごっちゃだろうな、

7GMをあげるとしたらこんなもんだろう。

半月でずっとつかってHealingがまだ50.0に遙か届かない。



事実を悟って、鍛えて鍛えてやっとこれだ。
しかも上がりやすい序盤で、だ。








ここはこの世界は俺に対して厳しい世界すぎる。

ま、生き残るには技術よりも情報だ、厳しい世界でなんとか頑張って行くとしますかね・・・・・・後で琴音の機嫌を取っておかないといけないかな。

女の子は泣かすなって元の世界の両親によく言われたっけ、名前も思い出せない両親、名前が思い出せない俺の本当の名前、其所に全ての謎がある気がするんだけどな。









*闘わないですが、暁メンバーステータス

デイダラ

STR-DEX-INT
130-300-150

イタチに比べればまだましですが、当然主人公かい君はどう逆立ちしても勝てません。

強者にあったら逃げろ、でも範囲攻撃は勘弁な!



*UOを知らない人のための何処か間違っているスキル講座!



*camping
キャンプをするために必須のスキルです。何とこのスキルと寝袋さえあれば、どんなところでも安全にログアウトできる素敵この上ないスキルです、私もよくお世話になりました。UOやっている人はみんなこのスキルを鍛えています。





もちろん嘘です、ネタスキルで、たきぎを燃やせる成功率に関わるだけですね。


*Resisting Spells

魔法ダメージを軽減できるスキルです、ちょっと見てみたら今は属性ダメージとやらが入ったみたいで、色々違うみたいですが、私の全盛期の時はこれが高くないと対人戦はやってられなかったですね。

でもどんなに高くても複数で魔法を連続で掛けられればすぐ死にます。


*Fencing
そのまんまフェンシング、レイピアとか使うとあげられます、対人ではスペシャルアタックの麻痺が思いっきり使えそうで結構微妙でした、基本攻撃力低いからなぁフェンシング。



*Swordsmanship

みんな大好き剣術です、剣術、すぐにGMになれるスキルで初心者おすすめ。

あんまりにも説明する事ないですね、あ、いろんなスキルと組み合わせることにより様々な特典が得られやすいのもこのスキルの特徴ですね、大抵スキル構成で足が出てしまうハメになりますが。


*Tactics
戦術です、これが無いとダメージが出ません。戦士系必須スキル。説明のしようがないくらい単純明快、スキルが高いほど攻撃力が強いです。以上。





[4366] その6
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/18 14:37
筋トレをしていて気付いた事がある。

Wrestlingが上がったんだ、しかも結構な上昇で。


流石一応戦闘系、一番早くGMになれる候補の一つ。


で、だ生産系を除いて最難関の一つであるがかなり使えるスキルAnimal Tamingを鍛えてみたんだ。
鍛えれば、鍛え切れれば、もしかして尾獣を飼いならせるかもしれないじゃん、UOだと同じ幻想種のドラゴンとか飼いならせたしさ!
ちょっと桁が違いすぎる気もするけど積極的に目をつぶって前向きに行こうぜ、バッチオーらい!


さてさて、今まで使ってみたスキルは須く、使い方が簡単で鍛え方もまぁ簡単だったが、これや、例えばHidingは意識しないと使えなかったよなぁなんて思って、まずは試しと、園からちょっとだけ離れた所で小鳥に声をかけた。


もちろん誰にも見られないように気を遣ったぜ、き○がい丸出し、よくてメンヘルなんて汚名をこの年で負いたくはないからな!


「かわいいね」

「どう?僕と一緒に生きていかない?」

「なんて素晴らしい体なんだ、ほれぼれするね」


なんだこれは・・・・・・俺の口が勝手にこっぱずかしい台詞を喋りやがる、まぁ周りに誰もいないからいいとして、
*失敗しました*
*Animal Taming が0.5上がりました*

零からならまぁこんなもんだろ、ついでに戦闘を試してみるか、えい

*スカッ*
*かいの攻撃は外れた*
*ツンツン*
*小鳥の攻撃、かいは2ダメージを受けた*

*ばしっ*

*小鳥に1ダメージを与えた*

ってうるさい!なんなんだこのナレーションは!しかもUOと違い空飛びながらヒットアンドアェイできやがる。
そりゃあれはなんで飛ばないんだろう?って思ったけど、其所は改良するなよ!攻撃当たらねえよ!


*手元がすべりました*

あーそういやそうだった、Healingは戦いながらだとたまに失敗するんだよな、ってイタイイタイ、小鳥強い!痛いからそんなに突っつくなピーピー鳴くんじゃないよ!いたっ、くそこのやろう、俺を怒らせたな、くらえっ右アッパー!

*ミス!*

って其処は頭の中に流れるな!痛い痛い!このやろう、

*Mace Fightingが0.3上がりました*
*Tacticsが0.2上がりました*
*STRが1上がりました*

発見!棒切れは鈍器なのか!

ギャー、小鳥の断末魔。

咄嗟につかんだ棒切れのまぐれ当たりが小鳥に当たり、俺は見事初勝利を修めた。


やったぜ!

「やってられるかぁああああああああああああああああああああああああ!!!」

ぶんぶんと風を切る音と共に棒切れは飛んでいった。

しゅる

包帯がうまく巻き終わり、体の至る所でできていた細かい傷がすべて修復される。本当に便利だな包帯。くそっ、帰るか……VS小鳥に熱中しすぎて、視線に気付くのが遅れたのは俺の致命的なミスだ。

「お前ら、見てたのか……琴音、後ろに隠れているのは、直人か」

腹を抱えて笑っているのが琴音、心配そうに俺を見ているのが直人。


「どこから見ていた」
少々殺気立った目を二人に向けると琴音が笑いながら答えた。

「どこって、かわいいね?辺りからよ、かいにこんなかわいい一面があるなんて私のほうがびっくりよ」

顔面が赤くなるのを感じた。

うわー、わらえねぇー。

「言触らされたくなかったら、どこか危ないところに行く時は私を連れて行きなさい!」

琴音の後ろで小さく直人が「ぼくも…」
なんて言っているが、おことわ…り、くそ、流石に言触らされるのは恥ずかしい。

どうする、どうする俺!


ちなみに九尾襲来は大量の犠牲を出した。
本来、里にまで攻め込まれては忍び里の終わりを意味する。
例えば織田信長に滅ぼされた伊賀の里しかり、な。まぁあれは時期が悪かったせいもあるけどな、当時の織田信長のほぼ全勢力が投入されれば五万対一万で勝てるわけもねえか。

忍者は恨まれちゃだめだ、どこにもいい顔をして、闇にいき闇に死ぬのが忍者なんじゃないかなって思っていたけど、この世界じゃ全く忍んでないね。


チャクラの存在がやっぱり大きいのかな、個人で軍を相手できるとは流石漫画、そんな世界は見てるだけならそりゃ爽快だけど、実際生きるとんなやつに逢う=死だからなー、あーやだやだ。


それで、戦災孤児は多い、近年まれに見る被害だったからな。

でも俺が引き取られたところは比較的数が少ない、琴音と直人、それに俺を抜かしても数は10人くらいだとよ。

食糧事情その他もろもろ違うから一概にも言えないけど、あのミドルダンディー、もしくはしずねさんがいいところに入れてくれたのかな?もしくは今のところここの園長はいい人だが、裏で人材発掘とかやってたりして、暗部育成とかだったらしゃれにならんぜ。

戦国の世だったら当たり前の話だけどな、

身寄りが無い人間=洗脳しやすい人間だ、しかも餓鬼だぜ、いくらでも教育次第で何とでもできる。

三代目がよく言えばいい人、悪く言えば甘い人間で助かったって話だ。




うーん、しかたねぇ

「町に出るときくらいは連れてってやるよ、とりあえずそれでいいだろ?」
「園長先生を説得してくれるのね?」

園長はものすごい心配性のご老体だ、何でも園長も九尾をもろに見ちまったらしく、同じ境遇の俺に親身になってくれている。

だから俺がとっぴも無い行動をしてもある程度は許してくれるし、記憶がなくなったって言えば、積極的にこの世界のルールを教えてくれた。

「ああ、俺が言えば喜んで許可してくれるはずだ」

「あんた…なんでそんなに猫かぶりがうまいのよ……」

「違うな、俺はいい子なんだよ、誰にとっていい子は琴音にはまだはやいか」

はやいな、ませているって言っても六歳児に理解しろなんて無理か。

琴音と直人は同じ境遇だ、なんかこいつら最近よく笑うようになったな、園長がちょっと前まで手を焼いていた記憶があるんだがな、ま、子供だしな、機嫌が治るのも早いって話だけか。

園長にはいずれ恩返ししねえとな。


すぐに死んでちゃ、話にならねえってはなしよ。





*UO初心者に送るわかりやすいって評判のスキル講座!

*Wrestling
北斗の拳では最強の武術ですね、UOでは魔法使いとかが攻撃を避けるために鍛えるくらいです。いろんな武術があってもいいかもしれませんが、残念ながらありません、Anatomyと組み合わせることで相手の武器をたたき落とせたりします。


*Animal Taming
大人気スキルです、動物を手なずける事が出来ます、ただ、作中にもあるように恥ずかしい台詞をがんがん言い放ちます、お前らは何処のプレイボーイなんだって話です。


極めてくると戦術的にも強くなります、ドラゴンっていう結構強いモンスターまで手なずけられます、ですが、スキルを上げるのは思いっきり大変です。



*Mace Fighting

ビバ鈍器、相手を裸にするスキルです。対人でもの凄くいやがられます。

体力と共にスタミナも削ってくれる素敵なスキルです。

*Hiding
この作品で一番出てくるであろうスキルです。

隠れん坊です、探索っていうスキルがありますが、そのスキルが高いプレイヤーが近くにいたりすると、中々成功しません。ですが、スキルスロット一つの割には便利なスキルです、泥棒とかの基本ですね。



[4366] その7
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/09 23:37


「琴音、お前九尾の奴を恨むか?」

「当たり前でしょ!私の親はあの化け物に殺されたのよ!」

「直人、お前は?」

「僕は……僕も許すことはできない」

「かいどうしたのよ、あなただって……」

「あー俺そこらへんの記憶ないからな、実際問題よくわからん。それよりなんで九尾のやつはこの木の葉隠れに襲来したんだろうって事のほうが気になる」

琴音がしまったという顔つきになる。気にする必要はねえのにな、俺が気にしてねんだし。

九尾襲来は斑の所為だと言っても今は誰も信じないだろうし、ある意味どうでもいいことだな。実際に里に大被害を与えたのは、九尾だ。この里は精神的主柱を失った。

だが、九尾を宿したナルトはどうなる、あいつは逆に英雄として奉られてもしかるべき存在なんだがな、最大の犠牲者だぜ。

……誰の息子かってのは確かまだ明らかにされてなかったよな、やっぱ四代目の息子なんじゃねえのかな。三代目は絶対に口を割らないだろうな、特に一般人の俺なんかにはな。


この二人でもそうなんだ、里の九尾への恨みは凄まじい、こりゃナルトにその恨みのベクトルが向かうのも必然的、か。

なんで、ナルトは笑ってたんだ、いじめもいじめ、恨みがこもったいじめだぞ!理不尽で無視され、なんで耐えられたんだ!


俺は……俺は……耐えられ!!!!!





痛い、痛い、痛い痛い、頭が痛い、何だこりゃ、



「かいっ顔が真っ青よ!どうしたの!」

「何でも、ない、だいじょう、ぶ」

くそ、ハンマーで殴られてるみたいだ、なんだ、どうした、

「園長先生~~~~~~~!!!!!」

直人が走って園長の方に向かっていった、何だ、俺は何を口走ろうとしたんだ。



*Spirit Speakが10.0上がりました*
*Meditationが10.0上がりました*

イベント、なのか、何が、スイッチだったんだ……だめだ。

息を切らして走ってきた園長が、俺を担ぐ、



其処から先は覚えていない。






孤児園は、里の中心からほんの少し離れた自然豊かなところに所在している。おかげでスキルをあげるためのスパーリングの相手には事欠かない。


しかし犬相手に必死で逃げまわらなきゃいけなかったのは黒歴史だ。
マスターキートンでも言ってたけど、犬って強いんだな。

一撃で体力の三分の一程度減らされるとは思わなかった。

ちなみにステータスや、スキルの**の表示はどういった原理が知らないが、俺の脳裏に強制的に流れる仕組みだ、法則が違うって言えばそれまでだが、成長が数字で実感できるのはちょっとだけ、そうほんのちょっとだけ嬉しいんだよな。



さーて「一楽」はどこかなっと。

琴音の約束は孤児園の中のかくれんぼで、俺をお昼から夕飯までの間に見つけられなかったらなしという約束で無理やりちゃらにした。
直人と二人がかり、最終的には子供達全員で俺を探していたが、結局俺を見つけ出すことは誰にもできなかった。忍者でも連れてくれば話は別だが、まだ、ただの子供には俺を見つけ出すのは不可能に近い。

簡単よ!なんて息巻いていた琴音よ、


あまいぜ!!!!!


俺にはHidingがある、ふっふっふっ実はこっそり上げていたんだ、つっても本当に上がりづらくてまだ12.0くらいだ、確かステルス使用可能になるのが30.0からだから、あー、はいはいがんばりますよ、もういい加減このマゾさにも慣れてきたぜ、ROとかよりはましなのか?


流石、主要ポイント、たくさん店があるぜ。
手伝い等をやってこつこつと貯めたお金を握り締め田舎者丸出しできょろきょろする俺、
さっさといるか先生を探し出さないとな、人がよさそうっていったら、ガイとかもいいかも知れないが、あんな暑苦しいのはパスだパス。
紅さんとかいないかなー、白眼一族はまだ餓鬼だろうし、あ、イタチは確かもう暗部だったよな、写輪眼のような血系限界が俺にもあればな、無敵の主人公を演じてやれたのに、ねえものを言っても仕方ないか。


恨めしそうな目をしていた琴音には、なけなしの小遣いから土産を買ってってやるとして、残りの金でこの世界の漫画でも買おうかな、流石に少しくらい息抜きしてもいいだろ。


しっかし、所々に電化製品はあるし、ところどころ現代を超えてるしかといって旧来のままなところもあるし、面白い世界だ。


本当に単なる観光だったら、全部終わって命の危険が無くなったらゆっくりと色んな里廻りをしよっか、な。

そん時は、うるせえだろうから琴音の奴も連れてってやるか、直人は勝手についてくるだろうし、園長がまだ生きていたら負ぶってでも連れてってやるよ。
はっ、俺らしくも無い、そんな時代が来る訳、ねえのにな。



……俺は、何かに巻き込まれて死ぬだろう、

でも少なくとも園のみんなは、守ってやってもいいかな。






*かい、家族を感ずるの巻



[4366] その8
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/10 08:07


おいおい、殺伐としているな、娯楽の類までまだ手が伸びないってか?
流石にどこぞの国家みたいに町に俺みたいな戦災孤児が溢れているなんて事はないが、町行くやつらどいつもこいつもぎらぎらしてやがる。

例えるなら第一次大戦後のドイツみたいな感じか、巨額の負債こそこの里には存在しないが、あれ、其の時点で結構違うかも。




全く俺みたいなかわいい男の子が一人で町歩いていたら、心配で声かけてくれるような綺麗なお姉さんとかいないのかね。

確か、木の葉崩しの後も……あーーーーーーーーーーーー忘れてた、このまま順調に行けば大蛇丸主催、DOKI☆生き残れるかな?レッツサバイバルゲーム☆スピンもあるよ!

が開催されちまうじゃねえか!

九ヶ月でここまで記憶は劣化していくのか。


とりあえずめもっておこうまだ、時間はあるよな、このスキルの上がりにくさ、いまだに秘薬さえ手に入らない現状は泣きたくなるものがあるが、何とか成るだろう何とかしよう。

木の葉崩しの後も、里の威信を失わぬために少なくなってしまった忍びで今までどおり、今まで以上の任務をこなさなければならなくなってしまった。なんてお偉方が言ってたきがする。九尾襲来のこの時期も例に漏れない、か。

「一楽」のラーメンは話通り旨かったとだけが、収穫か。

いるか先生っぽいのは来なかったな、スクールの先生っぽいのは何人かいたけれども、もしまかり間違ってミズキみたいなやつに声かけちゃったら俺ピンチだしなー。


しかし、Hidingは乱発するもんじゃないね、スキル上げには仕方ないけどさ、忍者怖いよ、あり得ないくらい勘よすぎ、おそらく犬塚の関係者であろう犬連れた忍者なんて、俺が消えた瞬間犬が思いっきり睨んでやがった。忍者が忙しくって犬にかまってなければクナイでも投げられていてもおかしくなかったな。

匂いも何もかも含めて全部一切合切消すはずなんだけどな。そういえばTrackingで消えた人間すら追えた気がするが、其の類か。

こりゃ極めてきてもハイドステルスに頼るのはここぞというときだけだな。
ばれたら範囲攻撃であっさり終わるぞ俺。
ましてやまだ犬にタイマンで勝てない状況じゃな、奥の手は何千通りかは考えておくか、Mageryが使えれば実際そんくらいはできそうだけどな。

とりあえずパラライズだとおそらくEvaluating Intelligenceは鍛える気が無いから確率に頼れない、だけどパラライズフィールドだったらどうだ?初めて引っかかった奴はまず間違いなく逃げられないだろ、其の後だったら逃げてもいいし、動けない相手を肴にゆ~~~~~~~~~~~~~くりとBlade Spiritsでも落としてればいい、この世界は何処でも人が死んでいるから、さぞかし強力な精霊が暴れてくれるだろう。自動追尾、秒間何千ヒットとかのレベルの最悪最強の精霊さんがな。

忍者の身体能力だと、避け切れそうなのが恐ろしいが、ま、其処は考えようだ、だれか結界術が得意な相棒見っけて閉鎖空間にしてしまえば、数秒結界解除に時間がかかればそれだけで致命傷だろ、あとは他の誰かに任せればいい。最悪な事に毒ももってたはずだからな、剣の精霊さん。


俺が俺の実力で勝つ必要は全く無い、実力がなければ頭を使え、頭が無ければ死ね。死にたくなければ考えろ、シカマルとかと一回あって色々学びたいね。あいつだったらたぶん俺よりうまくMageryを使いこなす。カカシは駄目だ、頭は確かにいいが、写輪眼っていう強力な武器がある以上、素で生き残れるからな。搦め手が好きな俺とは話が微妙に合わないだろう。




そっかー、あやよくば秘薬が売っている店がないかな、なんて思っていたがあるわけ無いよな。俺の体は疲れこそ感じない、……考えてみると最初は最初のころはちゃんと疲れて寝ていたような、いつからだ、ステータスが順当に上がりだしたころからかな、久しく疲れが無いな、あー、UOでも疲れ知らずで徒歩ならずっと走れたっけ。


もうひとつ、「アンク」もしくは「ヒーラー」の存在が重要だったんだってばよこれが、もうナルトの口癖つかわねぇー。死んでもし俺が霊体のまんまだったらどうする?世界が見たいなんていったが、白黒の世界で回りたくは無い!出来ることといったらたまに一般人を驚かすことくらいだしな。

もちろん里のどこにもそんな施設はないし、いるのは一般的なお医者様だけでした!

そこらへんも融通利かせろよ天の神様。
再度認識、死んだらとっても愉快でないことが待ってそうだ。



~周りに目を向けてみてよ~


???あれ、誰かなんか言ったか?
まさか、俺も気がふれたのか?電波なのか電波?


*Spirit Speakが0.3上がりました*

脳裏に流れるメッセージを無視していた事がヒントをも見逃すことだって気付いたのは更に後だった。

能力の自動発動。制御できない能力ほど厄介なものはない。どんなに便利でどんなに強くても、それは戦力とは呼べない。完全に把握してこその戦力だ。

プログラムで新しい技術よりも枯れた技術の方が安定性があるのは、其の所為だ、いちいち新しいバグに対応してられねーっての。何処が弱くて何処が遅いかさえしっていれば、開発しくつされた技術の方がより利便性が高い。


俺にとっての自動発動、最初の一回目の時点でもっと深く考えているべきだった。


ずっと後になって後悔したが、まさに後悔先に立たず、だったな。



[4366] その9
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/10 08:42

さてさて、人のいいいるか先生に秘薬探索ツアーもとい、親父の墓参りに連れて行ってもらおう大作戦は、頓挫しかけたように見えた。


しかし俺は今、名前が入っていない墓の前で手を合わせている、こちらでの墓参りの仕方は知らないが、こちらの世界での親父よ、成仏しろよ。

手を合わせた瞬間、俺の体は金縛りにあった。





「ごめんなさいね、ごたごたしちゃって、貴方の事は忘れていたわけじゃないのよ、名前を聞き忘れちゃったから探すのに手間取ったのは確かだけどね」

その魅力の前には、そんな瑣末事はどうでもいいです。しかしよく覚えていたな。単なる被害者其の一の俺を。

「だって全く変わってなかったから逢った瞬間ピーンと来たわ」

あれから九ヶ月、多少なりとも背は伸びたはずなんだけどな、何せほら、俺成長期だし、でも直人にこの前背で抜かれたな、俺は成長が遅いタイプなのかな?

町で偶然再会したしずねさん、改めてみるとやっぱり綺麗だ、で、綱手姫の付き人のしずねさんとは別人だった。本物は今頃苦労しているのかねぇ、ギャンブルは手を出しちゃいけませんって園長も口を酸っぱくして言っているのに将来火影になる人がそんなんでいいのか?

しばし、いい匂いを堪能しながらしずねさんに背負われ、俺は第七演習場に降り立った。

冒頭に繋がる。


+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+
*Spirits Speak が 0.5上がりました*

+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+
*Spirits Speak が 0.5上がりました*

Spirits Speak の強制発動???だが、何故体が動かないんだ。

全く動かない俺をしずねさんは、悲嘆にくれていると思っているのか、あえて俺に声を掛けることは無かった。

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+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+
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+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+
+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+


失敗しすぎだろ!

なんだ、あまりに俺が鈍いから誰かが切れて無理やりスキル上げしてんのか?

って誰だ、俺の体を動かしているのは!SSは場所がたアンチマクロ入っているはずだから、そんなに同じ場所で連発しても上がらんぞ!

*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*

*霊界と繋がりました*

体は固まったまま、俺の意識は遠く離れていくのが感じられる、何処に、いくんだ。



[4366] その10
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/10 09:52

綺麗な空間だった。例えるなら情け容赦ない蜘蛛と蛇の戦争を突っ切って、誰かが引っ張ってきた黒閣下から逃げて、安部さんに睨まれ背筋を凍らせ、BSと雑魚が戦っているのを尻目に一途に奥に、奥に奥に、インビジとテレポを駆使して、沈静をかけ、扇動をして、皆との連携を忘れずに、それでも犠牲者が出て、PKとの戦いまで混ざってくるような混沌とした世界を抜け、やっと辿り着いた




「星の間」




キラキラとした星が天空にも地面にも惜しげもなく散らばっている

俺の姿が、いつの間にか元の世界の大学生に戻っている、背は伸び、ユニクロで買ったようなださい服を着て、髪はぼさぼさ。

それで、目の前の子供、そう、ちょうど六歳くらいの子供。

それとどこかで見たことがあるような面の大人、そっか、子供とよく似ている、育ったらこんな顔になるんだな。


綺麗だ……2Dの世界でも感動を覚えたくらいだ。こんな綺麗なところだったんだ。
蛇は荒野に乗り出したが、蜘蛛はあくまで守り抜く。

力をつけた蛇は、かつての聖地を取り戻す戦争を蜘蛛に仕掛けた。



だが蜘蛛は譲らない、かつては共に暮らしていたはずなのに、条約を破棄したのはお前達だ!蜘蛛は蛇をなじる。

そして蛇も譲らない、何を言う、聖地はわれらのものだ!お前らなど踏みにじってやる!蛇は力に任せ蜘蛛を圧倒する。


戦争は千日手に陥り、それぞれ沢山の犠牲が出た、それでも聖地をめぐる戦争は続いていく。



ゲームなのにな、そんな事実どうでもいいくらい、この空間には説得力がある。

蜘蛛も蛇も、ただこの「聖地」を手にせんがためだけに血みどろの戦いを続ける。
なんだ、現実と何にも変わらないじゃないか。


あいつらも立派な現実か、特に今の俺にとっては。


「で、……本当の名前はなんていうのかな?かい君、それと見殺しにして悪かったな、かいの親父さん」

この空間に感動していた俺に配慮してか、目の前の親子は俺に声を掛けずらそうだった、だから俺から声を掛ける。

「ごめんな、体勝手に使っちゃって」

~違うよ、謝るのは僕達のほうだ~

~すまなかった、異国、……違う異世界の人よ~

二人は口を開かない、それでも思っていることがダイレクトに俺に伝わってくる。

「異世界って事を知っているのはどういうことだ?俺がNARUTOの世界にいることもUOのルールに支配されているのにも、もしかして理由があるのかい?」


~NARUTOの世界ってのは僕達の世界のこと?それならば、そうだよ、僕と、父さんが君を呼んだんだ~

~すまなかった、……色々理由はあるのだが、異邦人の君には単なる言い訳にしかならないだろう。決して意識して君を呼んだわけじゃないんだ。この****と私の所為で~

「ちょっと待ってくれ、……聞きたいことは色々あるんだ、だが、まずはもう一回かいの名前を言ってくれないか?」

~僕の名前は****だよ~
~まて、****どうやら彼は「法則」に阻まれているようだ~

「法則って?」

~この綺麗な空間其のものに代表される「法則」~
~勝手ながら君が意識しない間、君の記憶を探らせてもらった。君の存在の根幹にかかわる「法則」、だがそれは君が決めてしまったことである以上、私達にはどうすることもできない~

「記憶って……じゃあ俺の本当の名前も、俺の両親の名前も」

ズキンズキンズキンズキン

~駄目だよ、あんまり考えると頭が割れちゃうよ~
~必要なときになれば、思い出す、全てはもう、知識の中にあるはずだ、ただ今回君に無茶させたのは、****を救ってくれた御礼とお詫びに「法則」を君のために少しだけ捻じ曲げようと思って、起きたら、足元をよく見てごらん、君にしか見えないものがあるはずだ~

「待て、あんたらはなんて呼べばいい」

ズキンズキンズキンズキン

~僕は……かい、だよ~
「次は、いつ逢える」
~勝手な言い草だが、時期が来ればまた逢える、君には感謝している。私達二人は常に君の味方だ。それだけは、忘れないでくれ、君がたとえ、とんでもない外道だとしても世界を敵に回したとしても、私達は、君についていく、君はそれだけの事をしてくれたんだ、……それだけは忘れないでくれ~

「星の間」が薄れて消えていく、待て、まだ聞きたいことは沢山、沢山山のようにあるんだ!待て!

~お兄ちゃん、「君が望めばそれは叶う」いい言葉だね~
~ウルティマオンライン、君がその「法則」を選んだのは、必然だったのかもしれないな~

二人の声が徐々に小さくなっていき、やがて完全な白が埋め尽くしていく。




金縛りがとけ、樹海の中に俺は戻された。


「しずねさん、俺は、どれくらい黙祷してたかな?」

甲高い少年特有の声変わりしていない声、かいの声。

「どうかしたの?まだ一分もたっていないわよ」

時間の流れが違う、精神世界ってやつか。

「ありがとう」

しずねさんは不思議そうな顔をしていた。

足元を見て、ごらん、か。

俺は周りを見渡してみた、--------これは、Nightshade……さっきまで無かったよな。

「しずねさん、これなんだかわかる?」

困惑の顔
「かい君のちっちゃくてかわいい手のひらよね?其の手の形は何かの暗号かしら」

~「法則」が捻じ曲がった~

「かい」の声がした気がした、空耳なんだろう。


「ルール」が世界を一部とはいえ、捻じ曲げた、俺の意識上だけとはいえ、捻じ曲げたのか。


世界喰いに通ずるものがあるな、ランス世界のくじら辺りだったら大喜びしそうな話だ。


「ありがとう、これは綺麗なお姉さんって意味の僕達ではやっている合図なんだ」

ふふと笑ってしずねさんは流した。


秘薬が地面に落ちるようにUOに近づいてきたのか、この様子だと別にここにこなくても園の近くでもありそうだな。

だから、匂いがしなかったんだな。


*Mageryが10.0上がりました*
*INTが10上がりました*






*世界が、更新されました*



[4366] その11
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/10 21:06
「イベント」から約三ヶ月が経った。

俺がこの世界に来て、もう一年か。

園の年長だった黒須が、アカデミーに入校した。ようやくアカデミーも復校の準備が整い、親類に忍びがいない人間は、忍術を学ぶ場を一時的に失っていた。里の復興も一段落付き、次は教育だということか、次は、英雄の犠牲が無くても里の危機を乗り越えられるように、三代目はそう思っているだろう。

黒須はあんまり関わりは無かったが、奴は忍者に成りたがっていた、なんでも親は四代目の封印の儀の時に足止めした忍びの一人だったらしい。尊敬できる親と同じ道を子供は選んだ訳だ。

ふわりと風が桜の花びらを散らす、黒須は泣きながら園長に別れをつげ、皆との別れを惜しみ、全員と握手して、里の中心へと歩いていった、ここじゃちょっと遠いからアカデミーの近くで一人暮らしだってさ。
「かい、もう少し地を出してもいいと思うぞ」
わしわしと、俺の頭を力強く撫でて、黒須は出立した。

なんだよ、ばれてたのか。

「最近のかい君はあんまり隠さなくなったからね」

俺よりすっかり背が伸びた直人がにこやかな微笑みと共に言う。
そっか、俺は気を許していたのか・・・・・・危ないって処世術だって、思っていたんだけど、な。





そうか、もう春が来たのか。

四季がそのままあるのはありがたかった。




出会いと別れの季節、俺はこれから誰と出会って、誰と別れるのかな。

~気をつけ・・・・・・~

Spirit Speakを使うとたまに「かい」の声が聞こえる気がした。
大抵は、昔死んだ人が意味分らないうめき声を上げるだけなんだけどな、「かい」の言葉は断片的で何を言いたいのかは、よく、わからない。


「直人、お前はどうするんだ?忍者になるのか?」

「どうしよっかな、かい君と一緒じゃ駄目かな?」

「ばーか、自分の事は自分で決めるもんだぜ、例えどんなに選択肢が少なくても情報が少なくても、道が困難でも、いかなる状況でも自分が決めたって意志があれば、なんとか成るって寸法よ。選択肢が少なくて嘆くなら自分を磨いて選択肢を無理矢理広げろ、情報が少なければ集めればいい、自分の力で、道が困難なら強行突破だ、どっちみち簡単な道なんざねーんだ」

六歳児改め七歳児に言っても、まだ早いか。

「あんた最近説教くさいわね」

・・・・・・そうかもな、昔は人に関わりになるのは好きではなかったんだけどな。

「お前らの所為だな、間違いない、いつまで経っても二人ともけつが青いからな」

琴音の顔が真っ赤になる。

「あんた、見たの!?」

「何をだよ」

「もう、馬鹿!!」

ぱーんといい音を俺の頬に立たせて、琴音は走り去っていった。
ぺったんこを見てもつまらないだろうが、誰が見るんだ誰が。俺は変態じゃないっての。

おかしいな、この世界だと思春期が早く来るのか?段々と琴音のことを扱いづらくなってきたぜ。

「かい君大丈夫?」

「包帯を使うまでもない」

俺のスキルはそれぞれちょっとづつ上がって行っている。

例えば
Healing・・・38.7
Anatomy・・・45.2
Wresting・・・28.3
Magery・・・14.6
Meditation・・・45.0
Hiding・・・29.5
Spirit Speak・・・23.0
Tracking・・・20.1

その他もろもろ細かいスキルを数え上げればきりがないから言わないが。
未だ50越えのスキルが無いのが寂しい限りだな。


トラッキングをあげたのは別にストーカーをしようかなって思った訳じゃないぞ!勘違いすんなよ。



経過はどうあれ、俺は秘薬を等々手に入れる事が出来るようになった。「イベント」扱いなのか、スキルが上がったのは正直嬉しかった、それが例え10.0という極わずかだったとはいえ、な。

これからだ、って時だ。

ようやく落ち着ける家族が見つかって、スキルが揃う目処も立ち、これからだってときに。




俺は、攫われた。

悪名高き音の里へ。



[4366] 音の里
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/10 23:33


ガンッ!!!!!

くそが、油断しすぎだ、かりそめの家族に囲まれ、暖かい家庭に囲まれ、嬉しかったか、俺。ああ、涙が出るくらい嬉しかったね、あんなに他人と接したのも久しぶりだし、俺を慕う弟が出来たのも、素直じゃない妹が出来たのも初めてだ。


だが、何故だ、確実にいえるが俺は直人と琴音以外には何と言われようが絶対にスキルを見せていない・・・・・・

                                     ・ ・
スキル上げ、・・・・・・ああ、そうか、扱いがまだ緩いのは、俺はただ攫われただけなのか。

里では行方不明者が増えている、三代目が解決したあの事件、そう簡単に大蛇丸が諦めるわけないよな、里を抜けても人は集めていたわけだ、そう、人里離れた所でひとりぼっちで戦災孤児で動物と戯れているような外見六歳児なんざ、格好の餌食じゃねえか。


ガンッ!!!!!


スキル上げを人に見せない事に気遣いしすぎか!!!


誰も見ていないってことは、誰かに攫われてもそれは誰にも発見されないってことと同義。

「確かに最後にちらっと見えた額当ては、音のシンボルマーク」

大蛇丸の胎動が早い、早すぎる。

少しずれてきているNARUTOの正史、間違いなく俺を助けに来てくれる都合のいい存在は、いない!


起きたとき首筋にどこかで見たような痣が出来ていた。

俺のスキルがばれていないってことは、俺を攫った目的は、これだろうな、くそっ忌々しい。


せめてもう少しスキルが完成してから・・・・・・いや、関係ないだろう、この世界の忍者が本気になれば、俺は簡単に攫えるし、簡単に殺せる。大蛇丸の手のものならなおさらだ。





持ち物はスペルブックと秘薬のみ、秘薬は俺以外見えないから当然として、本はさしあたって障害と見なされなかったか、いや、これももしかしたら俺以外見えないのかもしれないな、孤児院では誰一人、考えてみると誰一人直人も琴音すら見せてと言ってきたことがない。


呪印・・・・・・ただ施すだけじゃ意味無いだろうに。・・・・・・この窓も無い閉鎖空間はもしかして・・・・・・


*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+

*霊界と繋がりました*


~うがぅぅぅぅぅぅららららぁぁぁあああああああああああああああああああ~

Spirit Speakは20.0を超えた辺りから声と共に数秒間霊の姿を現すことに成功しだした。

果たして其所に現れたのは、当たって欲しくない予想ほど当たると言うが、呪印に自我すらも飲み込まれて暴れている哀れな哀れなモルモットだった。正確にはモルモットの霊、だった。

暴れ回っている?


俺は急いで壁際に走り寄ってスキルを発動させた。

・・・・・・Hiding

*姿を隠すことに成功しました*


ドンッ!!!!!!!!!!!!!!!

備え付けられている左右の扉が同時に威勢良く蹴破られ、真ん中でぶつかり、砕け散った。


蠢毒、か。


要するに、ここは、呪印を更に研磨し、それぞれ適正にあった種類を見つけ出し、最終的に「天」の呪印等を生み出すための施設ってわけだ。

ぐるぅぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああ

扉からそれぞれ出てきた哀れなモルモット二匹は互いを敵と認識したのか、激しく闘い噛みつき殴り合っている。

一般人の俺から見ればゴジラ対ガメラ並の迫力だぜ。
どっからどう見ても、俺が手を出せる相手じゃないぜ。


ゆっくりと秘薬の数を確認ーーーーーーーーーHidingが解けないように、よし、日頃の努力の成果はたんまりとある。

だが、俺が使えるサークルは、まだ最大で3まで。

そして俺のTrackingスキルはずっと一点を示している、俺を運び込んだ方向を!


互いが互いを敵として認識している以上、今動いた方がいいのか?それとも片方が息絶えてからの方がいいのか?力が足りない俺は考えるしかない、考えろ考えろ。




モルモット達はすでに闘う前に血みどろだ、もういくつもの戦いを過ぎて最終部屋がここって・・・なるほど、俺は賞品なわけか、チャクラも少ない、利用価値も少ない俺なんざ、モルモットへの慰みに過ぎないってことか。

巫山戯るなよ、大蛇丸、絶対に生き残ってやるからな。一般人をなめるなよ!



[4366] 大蛇丸
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/12 14:33

チャクラってのは、すげえもんだな。

そして呪印の力も半端ねえ、自我こそ無くしているが、こいつらは俺と違いそれぞれ優秀な血継限界の持ち主だったんだろう。


大蛇丸風に言わせてもらえば失敗作でさえ、俺に言わせてもらえば呪印の力をおとしめるものじゃない。



はぁはぁはぁっはぁっ


二匹の獣の息づかいが激しく聞こえる。
単純な力による殴り合いから一転して、波の国でナルト達が闘った「白」、
それと大蛇丸最高傑作となり得るはずだった「君麻呂」、


恐らくどこかで血が繋がっているのだろう、それぞれ当人ではないだろうがよく似ている血継限界を使用して激しく・・・・・・激しすぎる戦いを展開している。



てか見えねえ・・・・・・速すぎる、こいつら本当に人間か?
鏡が何十枚、白以上の使い手か、呪印の影響なのか、ともかく部屋中に散らばったと思ったら、もう一匹は全身から骨を伸ばして全ての鏡を迎撃しやがった。

顔の0.1㎜先を骨が過ぎていったよ、あぶねえあぶねえ。

以上が瞬き一つの間に起こった出来事だ。
勝ちは君麻呂βの方だ。

三代目の取り巻きが、大蛇丸対三代目の戦いが小一時間も続いたことに対してありえないと言っていたが、よくわかる。こんな力を持つもの達がぶつかっていかに実力が拮抗していたとしても、決着が付かない訳がない。ゲームとは違うんだ、急所に入れば人は死ぬ、例えこんな化け物になりさがってしまった哀れな哀れなこいつらだとしても、死ぬ時は死ぬ。

どさっ


白βの腹にでっかい穴が空きその場に倒れ伏した、それでも呪印の影響か、まだ息がある、本当にとんでも無い技術だな。おそろしい・・・・・・この俺に刻まれた呪印は果たしてどんな効果をもたらすのやら、恐ろしすぎて試したくもない。


さらさらっ


君麻呂βの体が崩れ落ちていく、チャクラの使いすぎか、呪印が全身を再度浸食し恐るべし熱量が放出され、君麻呂βはチリも残さず消えていった。自我が無くなった時点で予想されるべきなんだろう。もしくは体内門を開けたのと同じ効果なのかもしれないな。


なぁ、伝説の三忍がひとり、ーーーーーーーーーー大蛇丸さんよ。


さっきから、背筋が凍りまくってやがる、つららがケツの穴にぶっささったような感触とでもいうのか?全身の毛穴という毛穴が開きまくって、嫌な汗が止めどめとなく流れている。びびりきって、声すら出せないのは俺にとってはものすごいラッキーなことなんだろう。腰が抜けて、足が竦んで一歩も動ける気配が無いのもな。






間違いなく、さっきの人外達よりこいつ一人の方が上だ。



「全く持って失敗作ね、話にならないわ、あなたもそう思わない?」

大蛇丸はあらぬ方向に声をかけた。

言葉一つ一つに言霊が込められているのか、それとも俺の単なる思いこみなのかも知れないが、奴が言葉を発するたびに、俺の意識はいちいちマインドブラストを受けたようになる。


頼むぜ、俺の体、気を失うな。それだけで愉快でない未来が何億通りも想像出来るぜ。


「あなたに言っているのよ、この私を無視するなんていい度胸しているわ」


・・・・・・俺はいつから大蛇丸を現認できた?こいつは、いつの間にか、この部屋にいた、ということは。

ピタッ

剣が、草薙の剣が俺の首筋手前で止まった。



「隠れん坊は得意みたいね、私もあらかじめ知っていなければ貴方を捜しだせなかったかも・・・・・・でも隠れる場所、隠れた場所を知ったいかさまのゲームはつまらないわね、探す楽しみがうすれちゃうわ、あんまりに隠れるのがうまいから、違う所を斬ってしまうかも知れないかも」


気色悪い笑みを浮かべ、大蛇丸は俺を物色している。


なんて迂闊、こんなイベントをこいつが見逃すはずなかったんだ、少し、数秒でも考えれば分ったはずだ・・・・・・俺が壁を殴った時間が無ければ、後一歩手をうてたはずなのに!!


*Hidingが解けました*


仕方なしに足を一歩踏み出し、姿を現す。

大蛇丸のにやつきが更に強まる。

「ふふっどういう原理かしら、貴方にプレゼントした呪印は例え少量のチャクラでも使用したらその瞬間に全てを食らいつくすタイプなのよ」

ヒタヒタと草薙の剣が俺の頬を撫でる。

「呪印としては失敗作、でも人体に与える影響を調べる点では最高のものだったの、貴方、何で暴走していないのかしら?チャクラを。使ってないとでもいうのかしら、貴方の姿隠しは疑いようもなく完璧だったわ、応用すれば、最高の暗殺につかえそうなくらい」


大蛇丸の長い舌が俺の頬を舐めた・・・・・・悪寒が更に増し、体が更にこわばる。


「可哀想に震えちゃって、私が怖いのね?平気よ、私は興味があるものには優しいの」


嘘付けこの性格破綻者!だが、今はふりではなく、実際に奥歯ががちがちと鳴り喋れない、認めよう、俺はこいつに恐怖している、今はまだ逢ってはいけなかった、違うな、俺はこいつには一生逢ってはいけなかったんだ!


「ふふっ、これから時間はたっぷりあるし、今はここまででいいわ、お前達、暖かいご飯を用意してあげなさい、このかわいい子にね」


大蛇丸は絶対的優位的立場から、俺を見下ろしている。確かにそうだ、お前がその気になれば俺は一瞬で死んでしまうだろう。



嫌らしい目つきで大蛇丸は最後までこっちをみて、新たな頑丈な扉に錠をかけ、出て行った。

「あと、襁褓も替えてあげなさい、可哀想に、お漏らししちゃったみたいよ」


冷たい感覚が股間を襲う・・・・・・不覚にも小便を漏らしてしまったようだ。


すぐさま大蛇丸の部下が、新しいズボンとパンツ、それに机と布団を持ち込んだ、おまるもセットで。

床にはまだ白βがぴくぴくと蠢いている。
・・・・・・糞、駄目だ、格が違いすぎる。例えるならレベル一でゾーマと闘うようなもんだ。

ちょっと先でいい、もう少しだけスキルが上がったとき、俺の忠実な前衛が欲しい、某小説の神の左手ガンダールヴみたいな絶大なる力を持った前衛が。俺を恐怖から守ってくれる前衛が、仲間が欲しい。


・・・・・・お前も哀れだな、白β

*治療を始めました*


10.9.8.7.6.・・・・・・0
*治療が成功しました*
*Healingが0.1上がりました*


まだ俺のスキルじゃ完全には治せないが、連続すればもしかしたら。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
*Healingが2.5上がりました*


「けけけけけけけけ、そんな失敗作に情けをかけているのか?治癒術の無駄遣いだぜ」


包帯を隠しながらスキルを使えばそういう風に見えるだろう。


「誰だって、死ぬのはいやだろ」

「けけけけけけけけけけけけけ、ガキが、そのうちそのかわいいお口からどうか頼みますから殺してください!なんて台詞が出てくるぜ、どうする?望めば、今俺様が殺してやるが」

大蛇丸の部下が囀る、

「ふん、どうせ大蛇丸に禁止されてんだろ?俺を絶対に傷つけるなって」

「ほう、坊主よくあの方の名前を知っていたな、ま、おおむね間違っていないぜその推測、精々かわいがってもらえるように祈りな、あの方は悪食だからな、けけけけけけけけけけけ」


盛大に笑いながら大蛇丸の部下は去っていった、ゲスな奴だが仕事はきっちりとやっていった。さすがは大蛇丸の部下ってところか。



糞っ・・・・・・床を見渡す、ここにも秘薬は発生する・・・・・・ばれないように、小声で魔法を鍛えるか・・・・・・せめて、4サークルまで使えれば、




ここを脱出できる。




[4366] 怖い怖い怖い怖い
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/13 02:26
俺のTrackingは解けることなく、未だ正常に働いている。分ったこと事は俺は大蛇丸直々に攫われたってことじゃない訳だ。奴は、俺を六歳児の子供と思ってか、大層手厚く扱っている、今のところは。


白βは次の日あらかた止血を終えた、そのまま大蛇丸の部下が運び出していった。死ななきゃいいがな、生き残るかは後はあいつの生命力にかけるしかないか。

何より俺は他人の心配をする余裕が全くない。包帯は極端にチャクラを使わない血継限界だといっとけば、信用されるだろう。未だこの局面では治癒は重要視されていないはずだ。

最悪なのはこのまま拘留され、三代目との戦いが終わるまでずっと捕らわれる事だ。

その時の俺の価値は、跳ね上がってしまう。大蛇丸、この世界での現時点での最低最悪なボスに見つかってしまった以上、早急に戦力を整える必要がある。我愛羅でも仲間にならねーかな、万能系がベストだな、尾獣が宿っていて理性があればさらにベスト。


In Nox

*魔法に失敗しました*
*Mageryが0.1上がりました*

俺のスキルは幸いなことにまだまだ失敗上げが出来るレベルだ。


Hidingは成功した瞬間手を動かし、特訓していないように見せかける、はっきり言ってざるもいい計画だが、鍛えなければ話にならねえ。







「何をやっているのでしょうかね、かいは」

「ふふ、私もよくわからないわ、でも少しでも足掻こうとしているなんて可愛くっていいじゃない」

「チャクラを使わない技術・・・・・・確かに魅力的ですね、私の前ではそんな技使った事が無かったのですが、一年間隠し通すなんて大した物と言っておきますか」

「ええ、偶然でしょうけど、あの子を攫ってきたのは今回最高の収穫だったかもしれないわね、

ほめてあげるわ、

カブトいえ、黒須先輩とでも呼ぼうかしら?貴方の情報が無ければ手の者を差し向けなかったわ」

「お戯れはおやめ下さい、大蛇丸様、同じ孤児仲間ですから、孤独癖がある子供だから攫ってきただけのこと、その点かいは楽でしたよ、あんな技を持っているって知っていればもっと早く連れてきたんですがね」

「いえ、もう少し美味しく実ってからの方がよかったかも知れないわ、まだまだあの子は色々隠してそうだしねぇ、小動物は小動物らしくもっと足掻いてくれなきゃ、何の楽しみも無いでしょ?」

「・・・・・・かいも計画に組み込みますか?」

「貴方も外道ね、そんな提案ぞくぞくしちゃうじゃない、でもまだまだ未熟すぎるわ、やるなら、機が熟すのを待ちましょう」

「心配しなくても、あの子に二度と安寧の日々は戻らないわ」





俺が裏切られたと確信出来たのは、だいぶ後の事だった。


情報はあったはずだ、いくらでも伏線はあった、フラグもあった、なのに俺は軽視しすぎていた、情報情報と直人達に言った言葉そのまんま俺に突き刺さるとは、本当に道化師だな、糞。






*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+

~お兄ちゃん、聞こえる?~
ああ、たまに聞こえるお前の声はこれを警告していたんだな、

フラグの一つを俺はむざむざと潰していた訳か。

~避けられない事だったかも、知れない、「法則」が全てを支配するお兄ちゃんだとなおさら無理な事も・・・・・・あ・・・・・・る~

「かい」の声がとぎれる。

~お・・・・・・兄・・・・・・ま・・・・・・意・・・・・・~

ちっ、今のスキルだとこれくらいか、しっかしSprit Speakがこんなに役に立つなんてな、面倒くさい事だ、UOじゃ考えられないネタスキルの一つだったんだけどな、時間があればもう一度全てのスキル点検してみるか、もしかしたら、思いがけない使い道があるスキルがあるかも知れないな。



一日で1.2上がった、どうやら場所方アンチマクロコードとかいう面倒なシステムは幸いな事に、適応されていない。しかし秘薬の消費量が・・・・・・くそ練習したくても条件が許してくれない。


白βは、生き残ったかな、生き残っても再度実験に使われるだけだろうが、どうせなら音五人衆の姿を見てみたいな、よりによってあの大蛇丸が原作キャラで始めにあうなんて、なんてプレイなんだ。トリップにしてもなんで俺は最強系じゃ無かったんだ。


「ガキ、元気か?」

「ああ、白露っつったっけ?ご飯か、わざわざ悪いな」

こんな餓鬼の俺の面倒を仰せ付かるとは、大蛇丸の部下でも下っ端なんだろう。

「けっ、しかし手前もついてねえなあの方に気に入られちまうなんて」

態度はゲスだが、案外こいつはいい奴みたいだ。俺に同情している。甘いな、大蛇丸の部下にしては、その甘さが致命的になるんじゃないのか?

・・・・・・探るか。

「なぁ白露、ここは音の里の何処に当たる部分なんだ?」

白露はびっくりした顔で俺の顔を見返す。

「おでれーた、お前みたいな餓鬼がなんで里の名前を知っているんだ?まだ出来たばっかりだぞ、しかも、まだ他の里にも言っていない、音の里という名前自体まだ全く知られていないのに。いや、そもそもお前は何処か違うな、チャクラはこれっぽっちも感じねえのに、優れた治癒術・・・・・・弦野は生き延びたぜ・・・・・・失敗作とはいえ、俺の弟だ、礼は言っておく」

どこか寂しげな顔を白露は一瞬だけ見せて、すぐ消した。

白βの名前は弦野、か。

「・・・・・・けっ、どうでもいい話か、忘れろ・・・・・・礼ついでに一つ忠告だ、あの方には逆らうな・・・・・・消されるぞ、消されるだけなら、まだいい、下手すると」


言いかけた白露の顔がこわばる。


「随分とこの子を気に入ったみたいね、白露。そこまで喋る権限を何時与えたのかしら?」


出た!性格破綻者、俺の後ろに音も無く立つのはやめろ!!!


白露の顔がみるみる生気を失っていく。


「ふふっ、まぁいいわ、下がりなさい、私は今はこの子に夢中なの」


「はっ」

白露は忍の一員らしく、脱兎のごとく部屋から出て行った。


ぺろり

大蛇丸の舌が俺の首筋を舐める。

「ふふっそんなに怖がらなくてもいいのよ、ところで、あなたの技術について少し教えてくれないかしら」

死亡フラグキター

このショタ野郎が!!!!男も女も関係ないってか?
・・・・・・まだだ、まだ駒が足りない、プリズンブレイクを見習え、あそこまではやり過ぎの感があるが、あれくらいやらなければ俺に未来は無い。せめて確率が70%は欲しい、高すぎる?馬鹿いえ、かかっているのは俺の命だ。理想は99%だが悠長に待っていたら、恐らく俺の人間の尊厳は無くなる。まずは何とかして貞操を死守するところからはじめねえと・・・・・・いやだいやだいやだいやだ、本当にいやだ、大蛇丸は生理的に受け付けなさすぎる。なんでこいつはこんなに変態なんだよぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお。



「俺の技術は、よく分らないけど、血継限界の一種だ」

「よく血継限界なんて言葉を知っていたわね」

揺さぶりか?想定内だよ。

「本で読んだ、俺は忍者になりたかったから、でも、園長にも言われたが、俺はチャクラが少ないらしい」

体を震わせながら俺は答える、演義だったら大したもんだが、残念な事にこれは演義なんかじゃない。怖いんだよ、こいつの気まぐれで地獄行きってのがこいつ以上によくわかっているからな!

「それで?いつその完璧な偽装術を学んだのかしら」

「知らない、気付いたら出来ていた、園長にも一度見せたら、誰にも言うな誰にも見せるなって言われていたから、この前まで一人で練習していたんだ。九尾みたいなのが来たときに使えそうだから」

ぺろり、首筋から頬にかけてなめ回される。

この悪寒は本物だ、気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪すぎだぁああああああああ!!!


「ふふふふっ、自分一人だけ逃げるため、ね。あははははは、いいわ、ますます気に入ったわ、自分に正直なのは決して悪くない。木の葉の温みきった、平和に慣れ親しむ前だからかしら、貴方みたいのが他にもたくさんいれば、私は里抜けをしなかったかもしれないわね」

あれ?大蛇丸はそんな理由で里抜けをしたんだっけ?


ぺろりっ

ぞわわわわわわ

最後に再び呪印の所をなめ回して、やっと、ようやく大蛇丸の舌が離れていった。



「残念な事に私は忙しいの、また、来るわね、それまで大人しく自分を磨いていなさい」

最後にウィンクを残し、

最低最悪の死神は去っていった。




・・・・・・駄目だ、限界だ。
スキルが足りない?知るか、警戒が厳しい?知るか、大蛇丸が零した言葉を検証すれば、あいつは、これからどこかに出かける。今の俺のMageryは21.3こうなれば確実に成功する第二サークルまでと技術だけで逃げるしかねえ。魔導は一回しか使えない最後の切り札って考えていたが、死ぬのは嫌だが、貞操を失うのはもっといやだ、なんであんな気色悪いオカマ相手に真剣に悩まなければいけないんだよ!!!!!


Trackingを大蛇丸にこっそりかけ直した、大まかな位置しかわからないが、あいつがこの施設から出て行くくらいはわかる、脱出したとしても其所は音の里、だけど俺のHidingは大蛇丸すら情報がなければ騙しきることが判明した、後は、使いどころさえ間違わなければ、今での確率は・・・多めに見積もっても20%あるかないか、たぶん無い、だろうが。切り札は二つ。


成功させてやる。



[4366] 脱出
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/13 02:19


Trackingは正確に作動し、大蛇丸の反応がどんどん離れていく。・・・・・・消えた。有効範囲内から出て行ったか、ということは、チャンスだな。


音の里は、里の性質上、大蛇丸の狂信者は多い、しかも人体実験すら厭わない大蛇丸の性質がそのまま反映されて、危ういが、その分強いやつらが揃っている。難点を言えば、数が少ないってことくらいか。気をつけるのは音の五人衆、それと薬士カブト、カブトは今はまだアカデミーにいるはずだが、ここにいないとも考えられない、五人衆は、すでに完成しているのか?いや、まだ時期的には早いはず、ただ君麻呂全盛期って事も考えられる、となると他の四人が揃っていなくても君麻呂一人の方が嫌すぎる。


化け物は化け物とでも闘っていろ、俺を巻き込むな。


仮定の話をしていても仕方がない、か。千載一遇のチャンスだってことは確か。
さて、そろそろ飯の時間だな。


Ex Uus-Agility

In Lor-Night Sight

Fram Sanct-Reactive Armor


魔術の重ねがけ、後は・・・・・・Hiding

*姿を隠すことに成功しました*

「餓鬼、飯だぞ!」

悪いな白露、利用させてもらう、お前から聞いたここの形状、すげえ役に立ったぜ。
後はここで死んだ霊達の言葉をあわせればここの通路の仕組みもわかる。


「・・・・・・そうか、行くか」

辺りを見回し、俺の姿が見えないと見ても、白露は騒ぎ立てなかった。


・・・・・・罠か?HidingはStealthでない限り、一歩歩けばすぐに解ける。
俺は白露の顔を見ずに扉からダッシュで外に向かい駆けだした、今の俺は一時的に忍者並の速度を出せているはずだ。


「そうだ・・・・・・行け」


そんな声を背中に聞いた気がした。







まずは、単純な暗証番号、.....解除
続いて入ると閉じこめられる、小部屋、・・・成功してくれよ。


Rel Por-Teleport
*Mageryが0.1上がりました*
一気に飛び越え、次だ!

続いて、実験体達が閉じこめられている小部屋を乗り越え、後は迷路を抜ける、全て霊の言葉に含まれている、さぁこの小部屋を超えれば出口ーーーーーーーーーーーーーーーーーーそうだよな、そんな甘い訳ないよな。


どこかで見たような面が、お前か、弦野、生き延びて、門番を仰せつかまつった訳だ。






「そうだ、それでいい、・・・・・・ですよねカブト様」

白露の後ろに影のように現れたカブト、その顔は黒須そのものだった。

「ああ、上出来だよ白露さん、大蛇丸様はかい君が育つのをお望みだ、監視は付いているし、何よりあの呪印は決して取れない。所詮子供、作られた好機だとは絶対にわからないだろう」

「最後の障壁、それくらいは実力で出てもらわないと、流石に簡単すぎて怪しむだろうからね、さて、孤児院の先輩としては、最低限の機転くらい効かせてもらいたいね、かい」






もはや呪印の影響からは脱したのか、まさに静かな湖畔を思い起こさせる佇まい、明鏡止水の境地にすでに辿り着いているのか、それとも死に対する諦観が一気にランクを引き上げたのか、俺にはわからない。一ついえるのは、こいつはとんでも無い強敵だってことだ、普通そういう境地に立つのは主人公なんじゃないのか?俺は主人公なんて柄じゃないけど、それにしても、白露が俺を見逃したと仮定しても、他の奴らは右にならう訳がない、どっちみち今の俺では毛筋の先ほどの勝ち目も無い。




まともにやればな。





「・・・・・・よう、弦野、元気そうで何よりだ」

明らかに分る戦闘態勢移行、冷たい殺意が場の全てを支配する。
「貴方は誰です?所属と氏名を述べなさい」

おいおい、疑わしきは殺すってか?
門番としては正しい反応だ、俺に取っちゃ嬉しくない反応だけどな。せめて命の恩人には平和に行こうぜブラザー

「せっかく呪印から逃れられたんだ、あ、まてまて、俺程度殺すのに呪印の力はいらないだろ?お前ほどのやつならわかるはずだぜ」


すぐさま状態1に移行しようとしていた弦野を押しとどめる、静かな面して切れやすいやつなのか。

パチン

「再度、問います、所属と氏名を答えなさい」

鏡が俺の前後左右に展開される、いやいやいやいやいやいやいやいや、いきなり血継限界全開かよ。

「そこから外には出られません、さぁ答えなさい、答えられないのなら」

スラリと弦野は忍者刀を抜き払った・・・・・・あの速度で斬りつけられたらそりゃ死ぬは。


でも、出られないってのはNARUTOの世界の者の話だろ?
Rel Por-Teleport


今のスキル第三サークルが成功する確率・・・・・・精々10%、だが、UOの確率は純然たる確率ではない、強引に確率をあわせる確率だ、それはつまり・・・

「成功率10%の場合、10回やって9回失敗していれば、それは最後の一回は100%になるんだよ、二回連続で成功させたい場合は18回連続で失敗しておけばいいって、言ってもお前にはこの世界の人間には一生かかっても何の話かわからないだろうがな」

そしてTeleportは視界が通るところには何処へでも行ける、がら空きの門の外にでもな!すぐさまHiding
*姿を隠すのに成功しました*


Hidingは逆だ10回やったら今だったら極端に探索能力が強い奴がいない場合7回は成功する、その後の3回はどう頑張っても失敗してしまう。つまり3回失敗した後、事に及べば10回の内だったら強引に確率が修正してくれる。


後は、弦野が中に異変を知らせに行ったのを見計らってダッシュで逃げる。

Ex Uus-Agility

それ逃げろやれ逃げろ、周辺の地図も霊から聞き込んでいる、未だTrackingにもピクリとも反応は無い。

追っ手がかかる前に、音の里から抜けるんだ!!心臓が破れても走り抜けろ!!



さらばだ大蛇丸、一生逢うことはねえだろうな!!!










「なるほど、瞬身の術に似た技も使えるわけですね」

弦野がカブトの前に跪き、事の子細を報告する。

「はっ、やはりチャクラは感知せずです」

「やれやれ、六歳児だったよね、かい、大蛇丸様があれだけ執着するわけだ、僕も彼の事を解剖したくなってみたくなったよ、そんなことをすれば僕が大蛇丸様に殺されてしまうからやらないけど」


「精々、束の間の安息を楽しみ、自らの技術に応用を働かせることだね、次に捕まったら、今度は流石の僕もかばいきれない・・・・・・次はうちはだったかな、さぁ大蛇丸様が帰ってくるよ、手筈を整えておこうか」

「はっ」








*途中の確率の話はもちろん穴があります、18回連続で失敗する確率も低いですし、27回連続で失敗するコースに突入していた可能性もありますが、一回目が成功していた時点で、かいは、二回連続成功を確信していました。



[4366] 雨の里
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/15 11:59
逃げ出して、約半年、未だTrackingに大蛇丸センサーは一度も現れず、逃げるとして方向は正しかったんだろうな。よかったよかった。

ただ、なーんで雨の里なんかにきちゃったんだろうね・・・・・・天の神様は俺をよっぽど恨んでいるのか、はたまた偶然の神様に愛されてしまっているのか。

ペインが「神」として祭り上げられている、特殊な国、常に雨はやまず、人の心は雨に染まり、ペインはそして尾獣を狩る。

その秘密はリモコン、この国のどこかに真のペインが存在し、あの強すぎる端末を操り全てを滅する。

俺が一度でもペインに接触すればTrackingでその位置も特定できる。だが、んな危険をどうして今起こす必要がある?

しかしTrackingなんて派閥とか対人でしか使えなかったのが、この世界だとなんて便利なレーダーに早変わり。これはもう少し強化する必要が出てきたな。


ペイン、ペインね、暁そのものと言ってもいいが、大蛇丸も暁所属だったっけ?
あいつが、俺という存在を他の者に明かすとは考えにくい。恐らく現時点ではただ面白いと考える程度だろう、じゃなきゃあんなに警備が緩いわけがない。

弦野は強敵だ、段階的にも君麻呂最終局程度の力はあったはず、それにしても病み上がり一人だ。それでも俺にしてみれば高すぎる壁だったが・・・・・・病み上がりで本当によかったよぉぉ。まだ怖いよ、殺意を向けられる事なんて現代社会では滅多にないからな。


悩むぜ、大蛇丸に暁。

主人公達がなんとかしてくれると期待してもいいが、・・・・・・微妙にずれている年代が怖い、俺の存在が時代を動かしているとは考えにくい、たかが一人が全てを変えるとは流石に突拍子すぎる話じゃないか?


ただ、バタフライ効果がもし働いているとしたら・・・・・・理論の証明も一応されていはいるが、俺には信じ切れない話なんだが、もし、働いていたら、俺が責任を果たさなければいけない理由の一つに成り得るのかも知れない。


そんな話もまだ先の話だ。
ペイン、輪廻眼、か。しっかしジライヤ、なんてとんでも無い化け物を育ててしまったんだ。
劇中で後悔している部分も出てくるが、最後まで面倒みてやれって。三忍を子供扱いした半蔵、いくらまだ未熟だっていっても大蛇丸に自来也、それに綱手だぜ?そんな化け物を殺した、更に上の化け物、破壊神を破壊した男ってフレーズがわいてくるぜ。

化け物を打倒するのは常に人間だ、あまりに有名な一言だが、この世界ではあまり通用しない、化け物を打倒するためには自らも化け物と成るしかない。深淵をのぞき込む者よ、心せよ、深淵もまたこちらを覗いているということを。

この俺にすら、この国はやばいとわかる・・・・・・一般人並のチャクラでよかったと今は自分の弱さに感謝だな。
音以上の狂信者揃い、「神」が現実に舞い降りたとしたらその意味も分らなくもない。

だが、音隠れの里から行ってどうしてこんな所にたどりついてしまったんだろう・・・・・・木の葉隠れには、帰れない、少なくとも大蛇丸が次の標的を見定めるまで、俺を捜している内は行けやしない。地理までは流石に頭に入っていないからな、砂か、もしくは平和な湯隠れの里にでも行こうかななんて思っていたんだけどな。


とりあえず、落ちている秘薬を拾いながら、魔法の練習を繰り返し、腹が減ったらCreate Foodで適当にご飯を食べる。

・・・・・・この体は栄養を考えなくていいのは大きいな、ただ、単純に腹が減ったか減っていないか、だけ。腹が減っても死ぬことはない、一体どういう体になっているんだか、ただ疲れがいつまで経っても回復しないので俺は常に満腹にしている、Cookingを極めればとんでも無い美味な料理が作れそうな気もするが、んなことやっている時間も暇もないからパスだパス。


Spirit Speakの訓練ついでに、いっちょ伝説の忍び半蔵さんの墓の所まで行ってみようかねぇ、其所のお姉さん、知ってますか?え?なんでって、だってこの里のトップだったんでしょ?え?ペイン様を愚弄する気かだって?いや、滅相もありません、そんな気は無いよ、無いですよ、お姉さんなんでくないを構えるんですか?


「死ね!不届き者!!!!」


一見まともそうなお姉さんなのに、どんな狂信者なんだよ!



Teleport(道行く訓練で第四サークルが運が良ければ成功するレベルまで成長した)
とHidingを駆使し、やり過ごしたが、わらわらとそこら辺の人達みんな追ってきてしまうし、なんてカルトな国なんだ、一見雨が降っているだけの普通の国に、いや、その時点で普通じゃねえか。

こいつらにとっちゃ本当にペインは「神」なんだな。


駄目だ、こんな狂った国はさっさとおさらばしよう、なんとなーくまたこの国に来る時が来る気がする・・・・・・嫌なことは後回しにしとこうぜ、レッツ前向き、ここから一番近くて比較的安定しているような国は、・・・・・・未だ原作に登場していない土の国とやらに期待してみるか・・・・・・んー経験上ろくな出来事が待ってないような気がするが、まずはスキルを早急に高めると言うことにしよう。スキルの確認も出来ればベターだな。


さて、昔の自分を責めるのは筋違いだと十二分に分っているのだが、敵性体が入ったら結界を強化するのは当たり前だよな、自来也でさえ入るのに苦労していたのに俺が簡単に出られるわけがないんだよ。


さーてどうするか、Hidingをしている限り見つかることはない、なんて優れたスキルなんだ。俺の只一つの優位点、暴かれたら、死しか待っていないのが嫌すぎる結末だぜ。


闘う必要は無い、無い無い無い無い無い言ってきたが、どうしても闘わないといけない場面が出てくるのだろう、命懸けの戦いなんざ本当にごめんだが、この世界では仕方が無いのかも知れないな。


だがバトルジャンキーなんか糞食らえだ。なぁ「神」様、そんな簡単に里に出てきてもいいんですかい?軽々しく動くと神性が薄れちまうぞ、NARUTO第二章の大ボスの一人、ペインさんよ。


おかしいだろ、大蛇丸の奴からもしかして手配でもかかっているのか?お前みたいな実力者が俺みたいなカスに関わるなって、Trackingは・・・・・・悩みどころだ、いずれかけなきゃいけないかも知れないが、今は、駄目だ、Hidingが解けた瞬間に殺されるか、とらわれの身になっちまう、大蛇丸と同格の自来也でさえ謎を解くのでさえ命がけだったのに、頼りになる仲間が一人もいない状況では取れる手段が少なすぎる。

ペインの周りの人間は皆平服している、まさに新興宗教の長だな、こいつの場合は実力も伴っていることがタチが悪い。

あの渦巻き状の眼が輪廻眼ってわけか、ふぅ、ほとぼりがさめるまで大人しく隠れ続けるか、待つのは決して嫌いじゃない、違うな、待つしか俺には手がうてないんだ。実力が無いのがこんなに悔しい、とはな。心の贅肉か。


そういや、直人と琴音は元気にしてんのかねぇ。ははっあいつらじゃ頼りになる仲間にはならないか。何とか三代目をごまかして保護してもらわないとな、あー面倒くさい、譲渡してやるか。


そういや白眼とか写輪眼相手だと俺のスキルはどう写るのかな?
特に写輪眼、もし俺の技術を写し取れるとしたら・・・・・・まだらやべえな、あいつに俺の技術が組み合わさったら誰も二度と勝てないぞ。


動けない、戦えない、単純に状況を解決できる手段が無い俺はすっかり考え事をするのが趣味になっちまっていた、考えても答えが出ない考え事にはまり、それでも考えなければ先に進めない。


まったく、一度度派手な忍術でも使ってみたいもんだけどな。



[4366] 異物混入
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/15 11:32

「直人、早くしなさい!」

「待ってよー琴音ちゃん」

二人は二人らしく幼いころの性質をそのままに成長していく、

「かい君、元気かなぁ・・・・・・」

「私達で無理矢理連れ戻すのよ!きっとどこかで悪巧みしているんだから、あんな馬鹿いなくたって・・・・・・きっと探し出せるわ、あの馬鹿が死ぬわけないでしょ!?」

かいがいなくなって早一年、孤児である彼らには頼るべき力も勢力も存在も無かった、誰もが誰しも自分の事で精一杯だった。

故に二人は子供らしい単純な思考で一つの答えに辿り着く。



すなわち、アカデミーへの入学。

二人にとっては幸いなことに、里は一人でも忍者を必要としていた、二人の入学はあっさりと認められた。

いずれ辿る道だったかも知れない、かいと出会わずとも、彼らはもともと忍者になる予定だったのかもしれない。だが、かいとの邂逅が二人にある一種の変化をもたらした。


「一体、あの馬鹿は何を書いていたのかしらね」

「・・・・・・わからない、かい君たまに変な文字書いていたし、あの包帯の技術だってとうとう僕ら以外には見せなかったしやり方も教えてくれなかったよね」


二人が所持するは、かいが忘却防止用に書き留めていたメモ、UOの全てを覚えている限り書き留めていた本とすら呼べないメモ。

一部にこのNARUTO世界での注釈が書き加えられてはいるが、原文はかいの元の世界の文字のもの。

普通であれば、見逃され、何の意味ももたらさないそれは、かいがいなくなったことにより、手がかりを探した二人の熱意により、書は、答えた。

文字が意識を持つ事なんてありえない、しかし、あり得ない事なんてあり得ない、特にかいの「法則」では、どんなことでも、望んだことは必ずかなえられる、後はその意識が強いか、弱いかの違いだけ、そして、仲間という認識が、きっかけを与える事となる。


「法則」が、二人を捉え出す。


「Animal Taming?どういう意味かしら」

「Peacemaking?Provocation?んーこのMusicianshipとの関連があるってことは、演奏の一つなのかな?」

二人は顔を見合わす。

「琴音ちゃん、読めるの?」

「直人こそどうしてそんな考えが浮かんだのよ」

「本を読んでいたら、そんなフレーズが浮かんだんだよ」

「・・・・・・奇遇ね・・・・・・このことは、しばらく内緒にしておきましょう、なんか怪しいわこの本」

「火影様に相談してみるってのは?」

「駄目よ、もっと私達でよく調べてから誰かに相談するべきだわ、・・・・・・あの馬鹿と約束したでしょ?誰にも言わないって」

「・・・・・・うん」

あくまで子供、選択肢は限られ、選択するという意識もなしに、本に魅入られていく、チャクラはそのままに、二人は新たな「法則」を紡ぎ出していく。



一人が二人に、二人が三人に、「法則」が広がり、世界を蝕んでいく。





「火影様、なにやら里の外れで奇っ怪な生き物が発生したとの報告が、流れの商人に被害が発生しております」


「奇っ怪な生き物?」


「はっ、なんでも豚のような顔を持つ子供くらいの背で、それぞれ武装を施しているそうです」


「ふむ、そんな生物、聞いたこともないの、暗部を差し向け、詳細に調べ上げい」


「はっ」



影響は火の国だけに止まらず。


「風影さま、砂漠に二つ頭の巨人が現れたそうです」

「・・・・・・今は尾獣を扱う大切な時期だ、そなた達で処理しろ」

「はっ」


どんな者にも等しく及ぶ


「大蛇丸様、土の国に突然洞窟が出来たとの斥候からの報告が」


「そんなことより、この黒真珠についてどう思うかしら」

大蛇丸の手には秘薬が握られている。報告に来た部下に尋ねる。


「はっ・・・・・・私にはどうにもわかりかねませぬ」

ほぼ同時期に認識されだした秘薬。

「これだけじゃないわね、明らかに不自然に落ちている蜘蛛の巣、ニンニク、一体これは何を意味しているのかしらね、・・・・・・興味深いわ」


少しずつ狂いだした歯車、人の意識なぞ、関係なしに時代は巡る。


きっかけを与えた人間の意識なぞ無視し、時代は巡る、くるりくるりと巡り巡って世界を廻す。



[4366] ナルト
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/15 14:04

一人の少年が布団の中で寝ている。
金髪でさして大きくもない背、頬には猫のような三本線が走っている。

時刻は朝の8:15を回ったところ。

ジリリリリリリリリリと目覚まし時計がしつこく主を起こそうと頑張っているが、主は期待に応えることは出来ず。惰眠を貪っていた。

布団からもぞもぞと腕が伸び、目覚まし時計の音を止める。水玉模様の睡眠キャップが顔を覗かせ、時間を見る。

「遅刻だってばよぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


そう、正しいラブコメの主人公は遅刻から始まり、パンを加えて転校生にぶつかる。
ただ、忍者である少年がぶつかるなんて事はありえない。


ドンッ


・・・・・・ありえない、本来は、相手が見えなかったなら話は別だが。


「いってぇぇぇえええええええええええええええええええええええ」

頭を抱え込むは本作の主人公、かい。

こうして二人は出会った、確実にずれた時代の流れの先で、運命の二人が出会った。





「ごめんってばよ、大丈夫か、えっと、・・・・・・子供!」

「In Vas Mani」

小声で呟いた呪文により訪れる、優しい効果音と共に俺の痛みが消えていく。ったく誰だステルス中にぶつかるなんて器用な事をしてくれた奴は。

「・・・・・・そのくせっけの金髪、青い瞳、そしてなによりそのものいい・・・・・・お前、ナルトだな?」

「お前誰だ、何で俺の名前を知ってるんだってばよ!それに傷が消えた!?」

医療忍術も知らないのか?ああ、この時点じゃまだ話に上ってなかった気がするな、あれは綱手姫登場からだったっけ。

「五月蠅いな、少し静かに話せないのか、ナルト、医療忍術も知らないのか?」

「俺より年下の子供の癖に呼び捨てにするなんて生意気だってばよ!」

更に大声でナルトは喋る、失礼な、これでも俺はこっちに来てから、えっと、ペインの所で思いっきり足止め食らったし、その後迷いに迷いまくったから正確な日時は・・・・・・まぁいいや、ともかく。

「人を見かけで判断するとは愚かだな、ナルトそんなんじゃかかしに怒られるぞ?」

「ムキーーーーーーーーー、かかしって誰だってばよ、それにお前は明らかに俺より年下だってばよ!!」

悲しいことに、UOの「法則」はとことん俺を縛りまくるのか、俺は年を取らない、見かけだけなのか、実質もなのか、俺には判断出来ないが、成長するのはスキルとステータスだけ。

確か一部開始時点でナルトは13歳、俺の外見年齢は6歳、そりゃ確かにそう見えるだろうねぇ。

「あーこんなに面倒くさいのか、子供の相手は、落ち着いて話しも出来ないようじゃ忍者失格だな、火影になろうなんざ百年早い」

一応本人には聞こえないように小声で呟く、この時点のナルトじゃ仕方が無いか、とはいえど、面倒くさい者は面倒くさい。

「いいのか?急いでいるようだったが、俺の傷は見ての通り平気だから気にするな、さっさとアカデミーに行った方がいいんじゃないのか?」

しょうがないから現実を突きつけてやることにした。恐らくナルトの言動的に、卒業試験の日だろう、ここに戻ってくるまでにこんなに時間が経つとは予想外だった。

時計を指示してやり、時間を仄めかす、時刻は8:29を指していた。

「完璧遅刻だってばよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

まさしく忍者の卵、すでに身体能力だけでいったら下忍と遜色ないのだろう、恐るべき速さでナルトはアカデミーの方向へ文字通りすっ飛んでいった。


俺は先を知っているからな結果は変わらないって事を、あえて言わなかったが、急いでいっても遅れていっても、ナルトよ、おめでとう、不合格だ。



さて、・・・・・・Hiding
*姿を隠すのに成功しました*

・・・・・・そしてStealth
*隠密行動に成功しました*

感慨深いねぇ、スキルの失敗がほぼ無くなってきた頃から昔を思い出して楽しくなってきたよな、スキル構成は二転三転したけど、一つ言えるは、成長したんだってばよ!・・・・・・うわぁ、ナルトの口癖写りやすいんだな、気を付けねえと。


さて、久しぶりの故郷だ、嬉しいだろ「かい」親父さんの墓参りにも行ってやるぞ、だがまずは確かめたいことがあるんだ、もうちょっと待ってくれ。



[4366] 下忍誕生?
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/22 03:22

「兵共が夢の後、か」

俺がしばしの間ねぐらにしていた孤児院は、すっかり廃れていた。園長の名前を彫った墓が一角に存在しており、其所だけは奇麗だが、他は完全に廃墟と化していた。

・・・・・・*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+

*霊界と繋がりました*


~あらあら、お久しぶりね、かい。その様子だと元気にしていたみたいね~

ああ、僕は今は元気だよ。・・・・・・みんなはどうしたの?

~ふふっ、もう演技なんてしなくていいのよ、貴方の好きなしゃべり方にしなさい~

・・・・・・なんだ、園長も気付いていたのか、俺の演技も下手なんだな。じゃあ遠慮無く、園長は何で死んだんだ?他の奴は?直人は?琴音は?

~慌てないで、こちらには時間が永遠にあるのだから、といっても貴方にはそうでも無いみたいね、まず、私が死んだ原因は、突然現れた大きなトカゲ、あれはなんという生き物だったのかしら、今まで見たこともなかった、爪に毒があって、大きくて・・・・・・それから皆を逃がすために・・・・・・私は死んだわ、他のみんなはその時逃げられたのかどうか、ちょっと分らないわ~

・・・・・・ワイバーンか、園長安心してくれ、ここには他の霊は、いない。無事かどうかは知らないが、逃げられたみたいだ。

~そう、それだけが、心残りで・・・・・・~

園長の言葉が薄れていく、これは、俺が「成仏」と名付けている現象だ。この場から解き放たれ、転生するかどうか、天国に行くのか地獄に行くのか、俺には一切わからないが、霊は、ここからいなくなる。

直人は、琴音は?

~あの二人は、・・・・・・貴方がいなくなってから・・・・・・一年後くらいに出て行ったわよ、・・・・・・忍者になるんだ!って・・・・・・・・・・・・かい、みんなをよろしく・・・・・・してもいいかしら?~

・・・・・・ああ、任せろ、園長、俺が全てを任された、安心して行きな。

~ふふっ、最初に思った・・・・・・通りね・・・・・・貴方は・・・・・・優しい子・・・・・・~


園長は光り輝き、天に昇る光の一柱となり、薄れ、消えた。
最後の顔は、満足そうな笑顔だった。

雨の所から抜け出して以来か、外を普通にモンスターが彷徨くようになったのは。
モンバット、オーク程度ならまだ可愛いもんだ。今まで見た中で最悪なやつは空高く飛んでいた年期が入っていた竜、あれは古代竜かな、さすがに高位のモンスターだけであって、こちらからちょっかいを出さない限り襲ってくる事はないだろう、心配なのはどっかの馬鹿が、ちょっかいを出してしまったときだが・・・・・・その時は里を諦めるしかないだろうな。三忍レベルじゃなきゃ、はっきり言って無駄死にもいいところだろう。

この世界の凄い所は、それでも単独で古代竜にすら勝てる可能性がある人材があるって事だな。暁、化け物共の集い、あいつらはこの事態をどう見ている事やら。

尾獣はとんでもないチャクラの集まりだって言っていたが、最古のモンスタークラスはどんな扱いになるのだろうな。一体どうしていきなりモンスターまで彷徨きだしたのやら。

見たところ、各里、平和に慣れきって腑抜けに為ることは避けられたみたいだ、けけけ大蛇丸のやろうざまーみろ、忍者がモンスターとの戦いで強化されあいつは色々とやりづらいだろう、もっと困れ。


こうなったら歴史が変わってしまうから、あんまり関われないって考えは捨てた方がいいな。不確定要素がこんだけ集まればもう、ここはNARUTOであってNARUTOの世界では、ない。

おっかしいな、どこから変わったんだろう、皆目検討つかないぜ。


「・・・・・・こんな所に子供?」

っうかつ、「In Sanct Ylem」

石の壁を声の方に生み出し、すかさず「Rel Por」
そしてHiding
*姿を隠すのに成功しました*

「土遁の術、しかも印もなしで!?」


・・・・・・被害は僅少のはず、俺が聞きたいくらいだ、こんな人里離れた所に今更人が来るとは思っていなかった、もしかして墓を掃除に来た孤児院の関係者か?・・・・・・なおさら今の俺の姿を見せるわけにはいけない、今や俺は大蛇丸にとって最大のターゲットに成りえてしまう。


寿命が無い、なんてあいつからしてみれば最高の素材なんだろうな。


誰かなのは少し気になるが、ここは知り合いだとしても、顔を合わせるのは得策でない。


さーて、今頃ナルトはうまく禁術指定の巻物を盗み出せたころかな、大筋な歴史は変わって欲しくないのだが、・・・・・・なんか気になるな、様子を見に行くか。










・・・・・・あそこで蹲っているのは、ナルトだな。おかしいな、そろそろ忍び込む時間なんだが・・・・・・


「おい、どうした?」

「!お前どこから現れたんだってばよ!?」

わざわざ眼前から声を掛けたんだ、それくらいの反応をしてくれないといじりがいが無い。

結構わかりやすい性格のようで、そうでもないから、こいつは困る。意外性No1忍者の名前は伊達じゃないな。

「忍者たるもの、いちいち細かいことで驚くんじゃないよ、なぁお兄ちゃん」

「俺には弟なんていないってばよ」

仏頂面のナルト、よかった、こいつの性格までずれていたら俺にはもう手がつけられないところだった。

「どうした、卒業試験に落ちたんだろ?ミズキの奴に教えてもらえなかったのか、火影の書庫に合格の近道があると」

「うるさい!何でお前が知ってるんだってば、それにミズキって誰だってばよ」

・・・・・・うわぁ・・・・・・そこでずれたのか、なるほど健全化した忍び社会のそれも優秀さを求められるアカデミーの教師陣の中に邪まなものは入られなかったのか。

まいったな、これじゃフラグが色々と潰れちまうぜ、かといって俺は詳しい場所はしらねえしなぁ、この様子だと警備も強くなっているだろうし、ナルトも忍び込める隙はないだろう。


ちっ、歴史をこれ以上離されるのは嬉しくないな、こいつにはここで多重影分身を覚えてもらわないと、こいつ死ぬぞ、あっさりと情け容赦なく、主人公でも油断できねえ。クエストはどうなるかわからないが、もしある場合波の国でめでたく死亡だな。わらえねぇ。

……あーくそ成功するかな。

「Vas Ylem Rel」
……ぶふー
*呪文に失敗しました*

間抜けな効果音が鳴り響く、ちっやっぱまだ第七サークルは駄目か。

「お前さっきから何やっているんだってばよ」

「何、可哀想な御兄ちゃんを助けるために義理の弟が人肌脱ごうかなってな」

ナルトは胡散臭げな顔で俺を見る。
「弟ってところはもういいってば……でも何か手でもあるっていうのか?」

乗って来たな、それでいい、何しろお前は里の奴らを見返すって信念があるんだからな。
「それでこそ火影を目指す男だ、かっこいいぜ兄ちゃん、ある手は全て打っていこうぜ、いいか……」

こんな怪しい子供を信じるのもどうかと思うがな、こいつの今の精神状態ならいけると踏んだが、ビンゴだぜ。


火影になる奴に恩を売っておいて、出来ればこいつに大蛇丸を殺してもらおう、今どうなっているかわからないが、何せ九尾だ、うまく使えばこいつは更に伸びる。まずは第一歩として、多重影分身特訓を使ってチートさせておこう、サポートは回復に掛けてはもはや無敵の俺様だ、けけけけけけ、待ってろ大蛇丸、ナルトを侮った時が、手前の最後だ。



[4366] 暗部
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/16 14:30


おうおうおうおうおうおう、すげえプレッシャー。

流石に大蛇丸やら、ペインほどの圧力はねえが、中忍レベルでも気圧されちまうほどの圧力は放ってやがる。

あれが、忍び・・・・・・しかも油断も無い完璧な木の葉の忍びか。上級プレイヤーの登竜門である、ドラゴンでも殺せそうなレベルだな。陣をくめば黒閣下とでも渡り合えるかもしれないな、すげえな木の葉、流石近隣の里の中で質、量と共にトップを行っているだけは、ある。

ナルトよ、お前が火影になるってことは、こいつらを超え、こいつらを従えるほどの実力が必要ってことなんだぜ、ははっ、後の話か、実力だけは俺が伸ばしてやるよ、チートでな。後はお前の人間性の話になるが、そこはかかしにでも育ててもらえ、この世界のかかし、おそらく鈍る、ってことが無いかかしだろう、更に上のランクに上がっていてもおかしくない。鬼鮫でも時間稼ぎくらいしか出来ないかもな、もしかしたら教師をやっていないかも。だがそうするとサスケの面倒は誰が見る?

イタチは史実通り、虐殺を行ったみたいだ、早まった話だよな。一人くらい手駒の写輪眼を確保したかったのだが、くそっ全部ペインが悪い、引いては大蛇丸の所為だ、豆腐の角に頭をぶつけてしんじまえ!


虐殺に間に合っても俺が何とか出来る保証は無いが、子供一人くらいだったら俺のHidingの加護で生き延びさせられたはずなんだけどな。相手がイタチってところが頭の痛い問題なんだが、優秀な奴はやりずらいぜ。

ステルスで、俺の姿は見えてないとはいえ、書庫の前の二人の門番、門は無いが門番、あれを超えれば、禁術指定の巻物がわんさかある書庫だ。

油断も隙も無いやつほど怖い者は無いな、流石にステルスまで完璧ではないから、インビジをストックしてあるが、ばれた瞬間首と胴体がおさらばしてもおかしくないぜ。


ナルトよ、お前の記憶、確かじゃなかったら後でおしおきだからな、オレ流の地獄を見せてやる。


「・・・・・・おい、何か気配を感じないか?」

やべえ、間に立った瞬間だぞ・・・・・・嘘だろ、こいつら索敵で大蛇丸の上を行っているのか?

「むっ、・・・・・・いや、書庫の中も異常は無いぞ」

「気のせいか」

それ以来二人は口を噤む、・・・・・・書庫の中にも何かトラップがあるわけか、管理が徹底しているねぇ、それだけこの中には様々な禁術があるってことか、いくつか安全なのぱちってナルトに覚え込ませようかな、チャクラが大量に必要すぎて禁術扱いのやつもあるだろう、その点奴は九尾だ、いくらでも使い放題だぜ。


さて、確かここら辺って言っていたな、わかりやすく題名を振っていてくれるのはありがたい、何々?口寄せ・穢土転生?
・・・・・・おいおい、こんな簡単にわかる場所にこんなトップクラスの危険術おいとくなって、力さえ伴えばどんな犠牲を払ってでも使うってやつは何処にでもいるぜ。

こんなもの覚えさせる必要は無いな。
次、

あったあった、多重影分身、これが今回の肝だからな、倒すべきミズキはいないようだけど、これさえ覚えてイルカに見せれば目出度く合格だろ。

もっとないかな、

封印術・屍鬼封尽、うーん、これかぁ・・・・・・影分身に使わせればいっか、もらっておこう。

もっといい物ないかな?

・・・・・・あれは、・・・・・・蛍光灯っ!、違う、正式名称は、氷の杖、だったっけ、こんな物まで、この世界に流れてきたのか・・・・・・他の奴には使い方がわかんないだろ、俺がもらっておこうか。


ジリリリリリリリリリリリリリリリリ

げっ、まじかよ。何故巻物には設置してなくて、これには盗難防止装置が設置されているんだよ!


タタンタン!!

・・・・・・怖い怖い。入り口まで結構な距離があったと思うんだけど、忍者にとっちゃそんなの関係ないのか。

すげえ正確に俺のいたところをくないが通り過ぎていったよ。


「侵入者!?・・・・・・秘宝が無い、賊はそれが狙いか!!至急入り口を塞げ!!」

あ、やべえ。バックパックに入れたから見つかることは無いが、今閉じこめられたらナルト間に合わないって。ちっ、

「In Ex Grav」
奇麗な放物線が一直線に地面からわき出す、触れればしびれるパラライズフィールドだ!

「ぐわっ」
よし、一人ひっかかった、今の内だ。

「どうした!?・・・・・・子供!?何処から入った!!」

タタンッタンッ!!!

だから問答無用で殺しに入るなって!糞、この外見に少しは油断しろよ!

「An Ex Por」
掛かれ!頼むから、掛かれ!

もう一人の忍びは、くないを再度投擲しようとした体勢で固まった。

よぉぉぉおし!!直接の麻痺は恐ろしく成功率が低い、知性評価あげてねえからなぁ。
だが喜んでいる暇はない、こいつが大きい声を上げちまったからすぐ増援が来るだろう。

ピタッ

「其所までだ、動くな、名も無き達人よ」

気付けば首筋にくないを当てられ、俺は強制的に動きを止められた。
数人が俺を囲んでやがる・・・・・・これが本当の瞬身の術か、その顔は仮面に隠され男とも女ともつかない。

暗部・・・・・・確かにここはトップクラスの警備場所だ、こいつらがすぐ駆けつけてもおかしくないわな、忍者にとって術が無ければいくらチャクラがあっても意味がない。螺旋丸という例外もあるにはあるが・・・・・・禁術指定の巻物を原作ではよく盗み出せた者だ、流石平和ぼけしていた里だこと。

こいつらは、違う、正真正銘プロだ、対面している俺にとって嫌なことに仕事のプロだよこいつら。

パラライズフィールドが静かに沈下していった、それに対して暗部達は何をいうでもなく、静かに殺意を持って俺を取り囲んでいる。

「こちらの指示が無い行動を取れば殺す、勝手に喋っても殺す、チャクラを練っても殺す、嘘を吐いても私達にはすぐわかる、嘘をついても殺すわかったなら、瞬きを二回しろ」

ぱちくりぱちくり

「よし、次の質問だ、お前は誰かに頼まれてここに忍び込んだのか?そうなら一回、違うなら二回」

ぱちくりぱちくり

「お前は他の里の忍者か?そうなら一回違うなら二回」

ぱちくりぱちくり

「ふむ、ならば、お前が盗んだ物について、あの光輝く秘宝、あれがどういう物か、お前は知っているのか?そうなら一回違うなら二回」

・・・・・・ぱちくり

「そっちはどうだ?」
「二人とも命には全く別状は無い、ただ痺れていただけだ」

「少なくとも、お前は人を殺める気はなかったということか、我々の知らない術をその年で使うとは一体何者なんだ?・・・・・・火影様の所に連れて行け、こいつは一応害が無い、チャクラ封じの手錠足枷をはめろ。ただし妙な動きをしたら首をかっきれ」

こいつらも俺の外見に全く惑わされていない、統制され強化されすぎだろ木の葉、残念だな大蛇丸、今原作の木の葉崩しをやってもこいつらは余裕で跳ね返すぞ、一人一人の力量が上がり、尚かつ統制が取れている。軍隊としても優秀だ。

・・・・・・怖い怖い。ナルト、ごめん、もしかしたらもう二度と逢えないかもしれねえ。



[4366] 火影、上
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/18 13:09

木の葉の里の精神的主柱、火影。
三代目は儂がいなくても木の葉隠れは潰れない、木の葉の心はそんなところには無い、とは言っていたが、失ったときの精神的ショックは流石にでかかった。


ゆえに俺は忠告をしておこうと思った時期もあった。だが、所詮外様の俺に言われてもとっくに承知している事だ、対して効果は認められないだろう。

さーてさて、火影に挨拶、か。今の所、現時点ではトップクラス、老いたりとはいえその実力は確かだ。小細工は通用しないだろうなぁ。


目隠しをされ、足枷手枷をはめられ運ばれること数分。


いくら警戒が厳しいっていってもここまで遣る必要あるのかねぇ。

あれか、もしかしてさっきの忍者二人を麻痺らせちゃったのが高評価だったりしてな。忍者としては一瞬でも意識が飛べばいくらでも殺せるからな、あほか、俺は殺しきる手段を持っていないからこんなに苦労しているのに。第一もともとオンラインゲームだからなー、一人で何でもかんでもできたらそれはそれであんまり楽しくないだろうが、くそっ、仲間が欲しいぜ、こんな理不尽が俺に強いるクライならもう一人か二人同じ奴を入れろよ、ま、そんなことしても元々の体力とかも違うから計算通りに殺す事なんて夢の又夢だよな、この世界の人間はこの世界の人間に殺してもらうしかない、ってのが結局の所俺の最終決断だ。

そろそろ700制限なんだよな、TrackingやらSpirit Speakが案外使えるのが結構足枷なんだよな、生き残る方を優先して、いらないスキルから削っていくとするか。・・・・・・おれ、頑張ったな・・・・・・なんでこんな苦労しているんだろう・・・・・・
俺は動きを止めるだけで、十分、ついでに傷も治せるんだぜ?思いっきりローコストで。

あれ、案外俺結構使えるじゃん!

化け物相手にするにはどうにも力不足役不足だけどなー。





はははははははっ……絶対に生き残ってやる。




忍者の速さで数分、あれか、居場所が分らないようにぐるぐるわざと遠回りして辿り着いているわけか。


「着いたぞ、少年」

立たされ、目隠しを外された。目の前に立つは好々爺と呼んでいいだろう、人の良さそうなお爺さんが立っていた。これがプロフェッサーと呼ばれた男か。


地味だが趣味がいい部屋だ、水晶玉が机の上に安置されている。


顎に手を添え、火影が口を開く。

「さて、まずは、君の名前はなんじゃ?」

さて、どう答えるか、さっきの脅しはまだ有効なのか?

「無駄じゃよ、朧火、術は掛かっているんじゃろ?」

「ええ、ばっちりです、嘘は吐こうと思ってもつけませんぜ!」

俺の認識では何もいないと思われる所から声が聞こえる、振り返ってみてもやはり誰もいない。

こいつらが言うのなら・・・・・・そうなんだろう。火影の側近なんざエリート中のエリートのはずだ、この世界での実力は、想像も出来ない、原作でいう大蛇丸の四人衆より上かもしれんな。

「わかったよ、俺の名前はかい、だ、姓は無い、ただのかい、だ」

「かい、か。順々に聞いていこうか、何故、ナルトに近づいた?」

・・・・・・甘かった、気配を消せるのは俺の専売特許じゃない、むしろこいつら忍者の方が先輩だってことか。何処から見ていたんだ?、いや尾獣をこの世界の人間が放っておくわけ無いわな。監視は考えて当たり前の事項だった、また、俺は、失敗してんのか、くそっ、つくづく成長してねえな、育ったのはスキルだけか・・・・・・っっ!!


認識を変えろ、こいつらは漫画の中の奴らと違う、戦争のプロであり、冷酷なプロだ。油断していい立場じゃないだろ、俺は、唯でさえ弱いんだ、意識を改めたプロ集団に真っ向からやって裏をかけるかどうかも怪しいもんだ、考えろ考えろ考えろ、弱いものに出来る特権は考え抜くことだ!


「ナルト?ああ、あのお兄ちゃんか、別に大した意味は無いよ」

「火影様ー今こいつ嘘つきましたー」

なるほど、術とやらは確かなようだな、となると……

「失礼、ちょっと確かめてみたかっただけだ」

「では、聞こうか、何故ナルトに近づいた」

「決まっている、こんな物騒な世の中、一人でも強力な仲間が欲しいって誰でも考えるだろ?違うかい、三代目」

全てはモンスターの所為か、ぬるま湯に漬かっていく予定が、共通の敵が出来たゆえに、里はまとまり、ぬるま湯につかることが避けられた。むしろ強化されてしまった。俺にとってそれはいい結末だったのか?


答えは出ない、軽く見ただけだが、他の里もそれぞれ原作より纏まっていた、各里のつながりも強化されていると考えていいだろう。


「何故、ナルトなんじゃ?今はまだ下忍にもなっておらんヒヨッコじゃぞ?」


「あんたがそれだけナルトに拘っているのが、そのまんま理由だよ、尾獣を宿し、しかも砂とは違い、副作用も少ない四代目火影による封印術が働き、膨大無尽な尾獣の力すら利用できる可能性がある、そんな理想的なパートナーなかなかいないぜ?」


「……朧火」


「嘘は、ついてないですぜ、この子供、本心から言っています」

三代目は頭に手を置く。

「……まぁよい、次の質問じゃ、その首の呪印、大蛇丸の手によるものじゃな?」

流石に突っ込んでくるか。

「ああ、其の通りだ、一度あの変態に攫われちまってね、何とか逃げられたが、其のときの置き土産をもらっちまった」

もう今更ここで誤魔化してもしょうがない話だ。

「暴走は、しなかったのか?」

イコールなんでお前は生き残っているんだって事か……ここが、ポイントだな。

「この呪印、不良品だったみたいでね、俺の体には反応しないみたいだ」

嘘は言っていない。

「朧火?」

「嘘の反応はありません、少なくとも事実を述べてますぜ」

「ふむ……あんこを呼べ」


「はっ」


みたらしあんこ、美味しそうな名前だよな。

「……お主一体何者じゃ?何の痕跡も無く、突然里に現れナルトと接触、最初は他の里の手の者かと疑ったが、かと言って危害を加えるでもない、と思えば完璧な偽装術をもつわりに、チャクラは極小、尚且つあの青の秘宝まで知っておる、もう一度問おう、お主は、何者なんじゃ?」

三代目の顔に疑惑がありありと浮かんでいる。俺が同じ立場でもそう思うだろうな、俺は異質だ、この世界に俺を理解できる奴は存在しない。



[4366] 火影、中
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/21 12:23
「みたらしアンコただいま参上!」

三忍にはそれぞれ弟子がいる。

三忍が一人、医療と怪力のスペシャリスト綱手にはしずね、今頃借金で苦労しているのか?それとも賭け事している余裕も世界には無いかも知れないな、いや、そんなときこそはこびるものか。後にさくら、同じ班の二人を追いかけるために綱手にかけた。

三忍が一人、エロ仙人こと、多彩な術を持つ自来也には、四代目火影波風ミナト、そしていずれ火影になるであろう主人公、ナルト、・・・・・・ペインなのかどうかわからないが雨の里の三人。そうそうたるメンツだな、やるじゃん自来也。

そして、最後が三忍が一人、狂気の産物、大蛇丸、幼い頃に両親が殺されてからおかしくなった、は自来也の言葉だが、天才過ぎたのがいけなかったんじゃねえのかな。あれだ、幽々白書でいうところの仙水忍、あんな位置づけなんだろう。

いくら転生忍術が完璧に近いとはいえ、肉体的にはどうでも、精神的にはどうなんだろうな、恐らく繰り返す度に元の大蛇丸は削られていっているはずだ、それが更に狂気を呼ぶ。元に戻すには、でっかくガツーンと否定してやらないと駄目なんだろうが、そんな力も資格も俺には無いしな。

マキリもそうだったが、繰り返し転生するってのは難しいものだな。その点俺は寿命もないし、年も取らないし・・・・・・なんで六歳児なんだろうな、せめて15歳くらいにならなかったのやら、だって男だったら色々あるじゃん、六歳児じゃなぁ・・・・・・幸いなのか不幸なのかそういった欲求とは無縁な体なんだけど、さ。

三代目は頭を抱えている。
「アンコよ、元気がいいのはわかった、じゃが、・・・・・・まぁよい、この子供の首筋をみてみい」

「どうしたんですか、火影様、わざわざ私をお呼びとは、次の中忍試験での愉快な催しを考えている最中だったんですよ、どれどれ・・・・・・坊や、あなた」

大蛇丸の元弟子、みたらしアンコ、次回中忍試験の第二試験の試験官。大蛇丸直々に天の呪印を施された女。そして弟子というには些か疑問が残るが、サスケ。

「知っているというなら、答えなさい、大蛇丸は今、何処にいるの?」
アンコはまじまじと俺の呪印を見て、小さな声で呟いた。

アンコが俺の首根っこをつかむ。

「知って、どうする」
確かに俺ならわかる、今現在でも俺の最大の脅威は大蛇丸だからな、どんなに苦しくてもどんなに欲求に駆られてもTrackingは常に大蛇丸にロックオンだ、スキルの上昇に伴い、距離まで判明するようになった。戦闘には全く使えない、だが、俺の生命線の一つだ。

「決まっているわ、決着をつけるだけの話、あいつは私が止めなきゃいけないの!!」
・・・・・・確かに世界改変により、アンコは原作よりも強く為っているかも知れない、だが、まだ届かないだろう。俺の目から見ても確かだ、つまり。

ガスッ

背後からの一撃、正確無比で抵抗を許さない最適の一撃。火影もそう思うだろう、アンコの上司でもそう思うはずだ。

「大蛇丸関連ですか?」
三代目はかるく眼を瞑る。

事も無げに上忍であるアンコを沈めた一撃を放った男が、火影を軽く責める、暗部ではない、最初から姿を隠すつもりなんか無かったのだろう、片目を隠したその姿、その立振舞いは、

「かかし」

「ん?坊やに名前を言ったっけ?まぁいいか、火影様、アンコを運んでいきますんで、私はこれで」

足音を一切立たさせず、かかしは去っていった、忍者にとっては軽いものなのだろう。

さすが、
「木の葉の白い牙」

「かいよ、お主一体何歳じゃ?その名を知っているような年には見えんぞ」
そこは突っ込んでくれるな、俺は曖昧に笑って言葉を発しなかった、この嘘発見器本当に優秀だ、どんな誤魔化しも言葉になってしまえば通用しない。

他の里を巡っている内に有名な忍びの名前は勝手に耳に入ってきた、そのうちの一つの名前なんだが、言う必要も言う必然性も低い。

「ふむ、間違いなくその呪印は大蛇丸絡みのようじゃな」
なるほど、アンコはリトマス試験紙か。

「全く呪印に飲まれていないのは、・・・・・・植え付けられてすぐだからかの?」

「さっきも言ったが・・・・・・不良品」
火影は軽く手を振った。

「あれでも儂の弟子じゃ、性質はよく分っておる、あやつが呪印を埋め込むのは転生の対象にする、もしくは優秀な手駒になる可能性がある相手のみじゃ・・・・・・チャクラが反応しないほどの極小、お主はチャクラに頼らない技術を何か隠している、そう考えるのが自然じゃろう、じゃなきゃ只の一般人に大蛇丸が其所まで執着するわけがないはずじゃ」

大蛇丸の気まぐれを全然わかってないな。
「・・・・・・あんたが、そんなんだから、大蛇丸は里を抜け、自来也、綱手も里に帰ってこないんだろうが!」
やめろ、言うな。

「あんたはすげえよ、プロフェッサーと呼ばれるだけはある、歴代火影最強とも、そしてよく里の事を考えている、だがちょっと足下をみれていないんじゃないのか?」
駄目だ、言うな、関わるな。

「本当に耄碌したのか?三代目火影!大蛇丸が里を抜ける前に何をしでかしたかもう忘れたのか!!一般人だろうが、あいつは躊躇無く自分の目的のためなら犠牲にするってことを、忘れたのか!!」

火影は無表情だ。
更に俺はヒートアップする。

・・・・・・駄目だ、引き返せなくなるぞ。・・・・・・五月蠅い!!!!
「モンスターが現れ、少なくとも里に被害が出ている状況があるにも関わらず、九尾の入れ物というだけでナルトは誰にも相談出来ていなかった、あいつは眼を輝かしていたぞ、術が、新しい術が覚えられ、強くなれるって」

火影の指が再度顎に添えられる。

「ふむ、少々耳に痛いの・・・・・・朧火」
「嘘は言ってません」

「・・・・・・出鱈目を申している訳じゃない、少なくともそう言った情報を自身で保持している・・・・・・にしては、詳しすぎじゃな、次はいびきをよべい」

「はっ」

しまった・・・・・・熱く為りすぎた・・・・・・何でだ、俺はそんなキャラじゃない!断言出来る!俺の中にいる?「かい」お前か、よりによっていびき?あのサディストか?

「そうそう、山中いのいちも忘れるな」
「はっ」

心を、探られる・・・・・・?考えても見なかった、ペインの一柱が受けた術だろ、もし俺が受けるとどうなる、俺が知らないことまで、なのか?「かい」の事も、もしかしたらわかるかもしれない、そして俺本来の名前も、俺の元の生活のことも。


「あらかじめ言っておこうかの、少年、いや、かい、よ、儂は火影じゃ、木の葉の里の長をやっておる事はもう言ったな、続けて、儂はこの里を守るためなら何でもやる、お主の言ったモンスターとやらでも、大蛇丸でも、ましてや、「暁」が相手でも関係無い」

何故暁を現時点で知っているんだ。

「かい、お主が里に万が一害をなす存在だった場合、儂は躊躇することなくお主を殺める、同じ失敗は二度としたくないからの」

最後は俺の言葉の一部に対する返答か。

「何故、そんなあんたは頭がいい、状況がよく見えているのに、ナルトを守って・・・・・・ナルトの心を守ってやれなかったんだよ・・・・・・あいつは里を守るって言ってたんだぜ、自分がどんなに理不尽な暴力に見舞われても・・・・・・笑って、たんだぜ」

三代目は顔を顰めた・・・・・・無表情が崩れた。

「あいつは、化け物なんかじゃ無い、里を救った英雄だ、三代目火影猿飛・・・・・・ヒルゼン、あんただってそう考えていたから、九尾の事について箝口令を敷いたんだろうがなのに、何故・・・・・・幼いナルトの心を、受け止めて・・・・・・」

ズキンズキンズキンズキンズキンズキンズキンズキン

ひさし、ぶり、だな。相変わらず痛い、何がキーワードだ、これはリミッター、過去二回の経験から明らかだ、今はそれどころじゃないってのに、

ズキンズキンズキンズキンズキンズキンズキンズキン


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い

絶対に意識は失わないぞ、こんな腐れたリミッター、絶対に解除してやる。俺も二度と同じ失敗はしない。

「坊主、どうした、顔色が悪いぞ」
俺を支える手、声からして朧火か。

「・・・・・・朧火さんって言ったっけ、火影の爺さんも・・・・・・これから俺が行う行動一回だけ、見逃してくれ・・・・・・火影には危害を加えない、約束する、破ったら俺を殺して・・・・・・いいからさ」

この頭痛はナルトに関して考えるとき、違うな、ナルトが受けた行為について考えたときに起る。

~お兄ちゃん、駄目だよ!~

かい、お前も久しぶりだな・・・・・・だが、これは超えなきゃいけない壁だ。


Mind Blast・・・・・・精神破壊、体には外傷を与えず、精神にのみダメージを与える魔法。滅多に、そう本当に滅多に使わない魔法だ、これ使うんだったら直接殴った方が相手の攻撃の邪魔に為るからな、だが、俺の直感は今はこれを使えっていっている。俺の心が言っている。

「・・・・・・繊細なる錦糸のようなそれを我が望むがままに引き裂かん」
「Por Ort Grav」

対象は、俺だ。

・・・・・・失敗するわけが無い、

「イベント」なんだろ、なぁ俺を動かす歴史の道標。



*魔法が成功しました*





[4366] 星の間、再
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/22 16:27

上下左右、ありとあらゆる所に宝石のような輝きを持つ星が瞬いている。

「純粋に奇麗ってのはこういう場所の事を言うんだろうな」

神秘的を極めたらこうなる見本のように。
ただ、この場所は、ここに在り続けるだけ。


「そう思わないか?なぁ俺」


俺の前には前と逆で、元の世界での大学生くらいの姿をした「俺」が立っている。何も言わずに、何一つ言葉を発さずに。

「返事は無い、そりゃそうだろ、だって俺はここにいる、こんな姿だけどな」

今の俺の姿は六歳児「かい」の姿そのまま。

「最初と逆ってか、ならばかいは何処にいる?今回はSpiritSpeakを媒介にしていないから、他者の存在を許さないのか?ならばなんの意味があるイベントなんだ」

まじまじとみると「俺」の格好は、前と全く変わっていない。顔を見るーーー顔が?

「・・・・・・俺の記憶が薄れたからなのか?自分の顔さえ思い出せないとは・・・・・・」

もう、十年にもなるのか・・・長かったな・・・・・・ペインのやろう、雨の里で時間を潰さなきゃもうちょっと小細工出来たんだけどな。

その御陰で思いっきりステルスが上がったわけだけど、ステルスが無ければ雨の里から生きてでられなかった。雨にチャクラを通して侵入者を感知ってどんなインチキなんだよ。

ふと、気配。

「お兄ちゃん、駄目だよ、あんな魔法使っちゃぁ・・・・・・下手したら存在が消えちゃうよ」

「かい」の姿で「かい」が俺の前に立っている。

・・・・・・違う、年が違う、顔は面影が残っているが、年経たそれは、一人の青年になっていた。

「・・・・・・お兄ちゃんって、そっか、本来のあれの姿だったら俺の方がまだお兄ちゃんか、しかし、お前父親似だったんだな」

青年は寂しく笑う。

「ははっ、・・・・・・初めて直接話せたね、前は思念だけだったし」

「ああ、お前も成長してんだな」

「僕はずっと、ずっと見ていたよ、お兄ちゃんが頑張っているのを、お兄ちゃんの優しいところも」


流れ星が天空から地面から上下左右流れる。

「・・・・・・前も思ったんだが、お前は、全部知っているのか?」
俺がこの世界に呼ばれたわけも、意義も、義務も、そう不可解な全てを。

再び青年は笑う。

「・・・・・・うん、僕ら、僕と父さんは本当は、お兄ちゃんを呼ぶ気は無かったんだ・・・・・・そこは本当にごめんね、口寄せってわかる?」


「ああ、契約した動物を使役する術だろ?チャクラが無い俺には関係無い話だろ?」

契約したとでもいうのか?いや、そんな記憶は存在しない。

青年は頷く、

「本来の用途とは大きく外れるけど、父さんは、・・・・・・死んでしまった僕を助けるために口伝の禁術を使ったんだ。そんな優秀な忍者じゃないし、チャクラだってすくない、本当に一般レベルの忍者だったんだけど、無理して・・・・・・だから、あんな場所にいたんだ」

・・・・・・だからか、だからあんだけ自虐的だったのか、だがそれだけでは俺が呼ばれた理由には辿り着かない。

「お兄ちゃんが呼ばれたのは、僕にはわからない」


「父さんは、此処にはもういないんだ・・・・・・」


「チャクラは、・・・・・・本当は使える予定だったんだけど、大蛇丸の呪印が邪魔して・・・・・・ごめん、僕は逆にチャクラを押さえるだけで精一杯だ、だからお兄ちゃんがいくら練っても、チャクラは、使えない、呪印さえ何とか出来ればいいんだけど・・・・・・僕らの体は呪印には、絶対に適応出来ない、どんなチートを使ってもね」

「チートって、お前そう言えば俺の記憶から知ったのか、あらゆる事を、俺の知識を。ならば教えてくれ!あの頭痛は一体なんなんだ?」

「それは、・・・・・・「法則」が撓んでいる、もう頭痛はしないはずだよ、結果的にお兄ちゃんは自分で何とかしちゃったんだね。僕が何とかしなきゃいけなかったのに・・・・・・」

法則法則法則法則法則法則法則法則法則法則法則、法則、か。

「記憶のプロテクトが外れたよ。後は、思い出すだけ、後はお兄ちゃん次第。・・・・・・いけない、呪印が反応している、もう時間だ」

「まて、どうすれば思い出せるんだ、俺がいくら頑張っても今まで頭痛すらしなかったのに」

「かい」の姿が薄れていく。

「お兄ちゃん、「ここ」にこなきゃ駄目だよ・・・・・・「ここ」にクレバワカル」

「まてよ、どういう事だ?ダンジョンまでこっちの世界には来ているってことか?」


「ボクニモ・・・・・・ゼンブハミトオセナイケド・・・・・・キヲツケテ、アラユルモノガ・・・・・・ボクラノテキダヨ・・・・・・「ホウソク」モ・・・・・・ボクラニ、イツキバヲムクカ・・・・・・ゼッタイニ・・・・・・キヲヌカナイデ・・・・・・セカイノ・・・・・・ムキダシノアクイニ、キヲツケテ」


青年の姿が薄れ、消えていった。



最初は秘薬、次いでモンスター、そしてダンジョン・・・・・・もう取り返しの付かない所まで来ているのか?もしかしてすでに詰んでいるのか?


誰も俺には答えてくれない。

ただ、顔のない俺の体、そして奇麗なだけの星の間が俺を眺めている。


*パラメーターが更新されました*



[4366] 火影、下
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/22 21:04



「いのいち、どうだ?」

声が聞こえる、渋いおっさんの声。

「・・・・・・ううむ、この子供は、記憶に空白がある。構造自体は複雑ではない、子供らしいのだが、どうにもつかみ所が無い。もっと潜ってみないとわからないな」

答える声は些かトーンが高い。

頭に当たる暖かい光は・・・・・・自白剤みたいなものか。

「敵性の意志はないのじゃな?」

三代目の声。

「ええ、ただ、トラウマでも抱えているのでしょうか、見せないという絶対意志を感じる部分が一つだけ」

「ふむ、悪意は無い、尚かつ裏付けも取れた・・・・・・よろしい、起きているのじゃろ?かい、もういいぞ、目をあけい」


「・・・・・・俺の頭の中を覗いたのか?」

三代目は悪びれない。
「うむ、おめでとうと言っておこう、少なくとも主は里に害をなす気はないようじゃな。だが、説明できない点がいくつか残っておる、後はゆるりと聞くとしようか、いのいち、いびき、ご苦労じゃった。下がって良いぞ」

「はっ」
「坊主運が良かったな、もし敵と判断されたら俺様特製の拷問が待っていたところだぜ」

いびきが笑いながら部屋から出て行った、冗談じゃない、サディストの拷問なんか受けていられるか。



「さて・・・・・・お主は青の秘宝について、何処まで知っている?話そうか、わしらには使い道がわからんかった、とある者が任務の帰りに持ってきた物を保管しているだけなのじゃ、何処か禍々しくも清らかなチャクラを感じるとまではわかるのじゃが」

氷の杖ね。そりゃこの世界の人間にわかるわけないだろうな。確か、特殊な呪文を唱えることにより、30~50の特殊ダメージを与えることが出来たんだよな。

呪文は、確か・・・・・・「In An Flam Kal Corp Por」

口が勝手に言葉を紡ぐ、


*対象を指定してください*

わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ
やべえって、今火影を攻撃したら折角の信用が台無しだ!

ちっ、嫌だ嫌だ、俺のSTRは確か・・・・・・とっくに80は超えていたな、死ぬことはねえだろ。


くそっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


*魔導のエネルギーが暴走する!*

ドカーーーーーーーーーーーーーーーーン!


「いってええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」


やべえやべえ、血が止まらねえ!!
「In Vas Mani」

優しい音と共に、血が止まり、傷が塞がる。後はこっそりと包帯を使って終わりだ。

三代目があきれた目で俺を見ていた。

「お主、自傷癖でもあるのか?あきれた威力じゃが、・・・・・・お主にしか使えぬようじゃな」

さすがは三代目火影、ただの一振りで其所まで見抜いたか。

「ってまぁこんな威力だ、ただ使用回数に限度があってな。俺にはちょっとわからないが、使えて数回、悪いが、俺がもらう。使えない秘宝に意味はないだろ?」

三代目は少し考え、やがて頷いた。よし、切り札その一ゲットだぜ、気をそらす程度には使えるかな。





「おい、いびき、どう思う?」

「何がだ?俺は、知らんな、お前も忘れろ」

「火影様が仰るからには忘れるつもりだが・・・・・・お前は信じられるか?十何年も年を取らず、我らとは体系が根本的に異なる術を使い、三忍の大蛇丸とあっていてもまだ生きているとは・・・・・・」

「いのいち、火影様は、忘れろと仰ったんだ、深く考えるな、お前の術でも敵でないと出たんだろ?」

「・・・・・・ああ、確かにそうだ、だが、同時に大きなうねりみたいなものを感じた・・・・・・言葉にするのは難しいが・・・・・・いや、突拍子過ぎるな」

「・・・・・・なんだ?」

「・・・・・・時代の流れって頭に浮かんだんだ、歪に歪められていたがな」

「・・・・・・忘れろ、後は火影様に任せろ」

「・・・・・・そうだな、ふと、娘を思い出して、な。あんな少年が戦に関わるのは仕方が無いとはいえ、嫌なものだな」





「次じゃ、悪いが里の財産たる禁書は危なっかしくてナルトには覚えさせられん」

「のわりには、やけにあっさりこんなものほっぽっておいたな」

バックパックから禁書二つを出す、考えてみるとこいつらにもアラームくらいつけといてもおかしくないよな、現に氷の杖にはつけていたわけだし。

「あんなわかりやすい場所に本物をおいとく訳が無かろう、偽物に決まっておる・・・・・・内容を見ればすぐに分りそうな気がするんじゃがな、開かなくってよかったの、今頃あの世いきじゃったぞ」

冷や汗がたれる。

「あんたらな・・・・・・わかってて俺みたいな子供が盗むのを黙ってみていたのか・・・・・・」

三代目はにやりとわらう。

「賊には当然の対応じゃと思わんか?」

くえねえ爺だ。

「さっきの話だが、多重影分身だけはなんとか工面してくれないか?最低あれだけは今の内にナルトに覚えさせておきたい、他は、あいつの成長具合を見てあんたらが判断してくれ」

「何故ナルトのためにそこまでするんじゃ?」

「かい」は言った、記憶のプロテクトが解けた、と。


「なに、単なる気まぐれだ・・・・・・あんまりにも一部境遇が似ていたもの、でね」

何処までが虚偽だったのか、記憶は改竄されてしまっていたものなのか、はたまた都合が良いように俺の脳が解釈してしまっていたのか。


俺には、両親がいない、正確にはいなくなったとでも言うべきか。

交通事故で二人とも無くした、俺はもう田舎に行くでもない年だったんで、違うなネットにはまりきっていて外に出るのがおっくうだったんだ。そして二人は帰ってこなかった。

そこから更に俺はネットにはまり込んだ、

一応此処までが現時点で思い出した内容だ、だがちょっとひっかかる、ナルトのいじめと何処に俺が絡んでくるんだ?

・・・・・・まだ、思い出していないってだけかな。


「よろしい、あれならば、最悪の事態は避けられるじゃろう・・・・・・朧火」


「はっ、合点承知」












某日、某里の近くの洞窟。


何の技術か、この世界の人間には理解は出来ない、だが、洞窟の中は慣れてくれば、忍者の目ならば問題は無いくらいの明かりが確保されていた。


「琴音ちゃん、本当に行くの?」

「しっ・・・・・・直人、無駄口を叩いている暇はないみたいね、来たわ、臨戦態勢」

「やっぱり二人じゃ無理だよぉぉぉぉ」

「馬鹿ね、二人じゃなきゃ思いっきりこの力を使えないじゃない」

年の頃は20歳弱、しかし二人は二人のままに、二人の間は変わらず、着実に実力を上げていた。

琴音が取り出すは一本の巻物。
「おいでませ、かい一号!」

ぐぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!

雄叫びが響き渡る。

それに呼応するように奥からも雄叫びと共にどしんどしんと地響きを響かせながら巨体が数匹のワイバーン、ドレイクを従え姿を現す。

「直人、雑魚は任せたわよ!行きなさい!かい一号、all kill!!」

ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!

「・・・・・・失敗したらごめんね」
直人は口に笛をあてて、旋律を紡ぎ出す。

音がワイバーンとドレイク共に届くと、それぞれが仲間割れを始める。

「やった!」
仲間割れが動きを止める。
「馬鹿!演奏を止めちゃ駄目よ!」

「ごめーーん」
再度仲間割れが勃発。




補助があるドラゴン対野良ドラゴン、そして扇動の餌食と為ったワイバーンとドレイク、数分後、野良ドラゴンが倒れると共に、その場での戦いは終わった。



「かい一号、頑張ったわね、お疲れ様」
ぐぉぉぉおおおおお

軽くうねり琴音のドラゴンは巻物に消えていった。


チャクラとスキルの融合、二人にのみ許された限られた限定スキル解除。

その制限は特化する。

「琴音ちゃん、・・・・・・また書が変わったよ、かい君が、変えたんだね」

「直人、もうちゃん付けって年でも・・・・・・いや、いいわあの馬鹿に会ったとき分らないかもしれないから・・・・・・さぁ奥に行くわよ、「ダスタード」って読むのかしらね、近日中に制覇するわよ!」

どしんどしん

地響きが再度響きわたる・・・・・・規模が違う。
「琴音ちゃん・・・・・・大群みたいだよ・・・・・・」

「・・・・・・直人、沈静化を息が続く限り吹きなさい、逃げるわよ!」

一進一退、攻略プレイヤーが二人では遅々として進まず、しかし二人のスキルは少しずつ伸びていた。



[4366] 下忍、誕生!
Name: へヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:06e9ebb0
Date: 2008/10/25 09:01

うちは一族の元トップ、千手一族と覇を競った張本人、うちはマダラ。

永続写輪眼を眼に宿し、膨大なチャクラと共に忍びの世界に覇を唱えた。


果たして雨の里の元トップ忍びの天才、才蔵とだったらどっちが強かったのかな。

初代火影の力も突出していた、何しろマダラを倒しきるなんて並じゃねえ。終末の谷、か。今度観光に行ってみよう。何とか三代目の信用を得ておそらく、いや、確実に暗部の監視つきだろうが、里の中を自由に動き回れる権利を得たんだ、利用しない手はない、もっとも、大蛇丸の手の者は絶対に里の中にいる、そして里を憂うダンゾウ達も微妙に怖い、最大権力者の火影といえど絶対ではないからな、……せいぜい気をつけないと。


俺には数奇な運命が付きまとう。

Trackingがびしびし大蛇丸の現在地を教えてくれる、妙なのは、あいつも俺の位置をどういう手段か知らないが、知っているってことだ。

動きでわかるんだよ、あんまり一般人を舐めるなよ。
だが攫われるのはもう勘弁してほしいところだ。今は鍛えられた暗部がいるからいいが……何か手を打っておかないとな。


俺と忍びの決定的違いは、身体能力だ。例えSwodsmanshipがGrandmasterとなっても恐らく変わらない、「心眼」とやらが目覚めるかもしれないが……範囲攻撃の前には無力だ。それは攻撃を避けきれない所に起因する、ゆえに接近戦は愚の骨頂だ。他を利用するだけ利用して、俺の特技を一点突破で活用する。英雄になんかなりたくない、英雄になんかなれない、俺は一般人だ、出来て英雄の補助をするだけだ。そして俺は幸いなことに補助には適している。単に止めを刺しきれる実力がとうとうどのスキルを探しても見つからなかっただけのことなんだけどな。


あらゆる点で俺は範囲攻撃と相性が悪すぎる、デイダラが来たら俺は隠れるね、あんな爆弾魔相手にできるかよ、サソリもやばい、ペインもまずい、不死コンビくらいかな、なんとか騙せそうな対象は、自らの長所に自信を持つことはいいことだ、しかしそれに胡坐を欠いて成長を望まないやつは決して怖くない。


進化し続ける天才が一番厄介なんだよな、早くシカマルと話し合いたいな、そこまで許可が出ていない今は、そもそもそんなにのんびりしていられない今は、くそっ、歴史が色々と変わりすぎ、こんなに優秀だったっけ、木の葉の忍び、明らかにモンスターとの戦いがその能力を高めている、ゲームじゃないからスキルやパラメーターが無いから戦うことで成長するってことは無いが、経験値は溜まっている。何より、甘ったれの里特有の殺意になれていないってことが消えた。


相手がモンスターな以上、対話が不可能だ。それが殺戮を呼ぶ、里に入り込む寸前、恐らく下忍であろう三人が、オークの群を殲滅していたのを見たとき何のギャグだって思ったもんだ。命を奪うことに慣れていれば、自然と忍びとしてのある一種の覚悟ができる、この分だとサスケは波の国の任務でザムザにびびることは無いだろうし、……ナルトも、白を躊躇無く殺せるようになっているのか?


甘さが残ってこそのナルトだと思うのだが、下忍でもモンスターの殲滅任務がある以上、悩むことが少なくなる、任務に忠実になる、理想的な忍び社会の出来上がり。

悩むやつは、死ぬだけだ。今はまだ、人間味が残っているだろうが、あっという間に消えるだろうな、モンスターは甘くない、最初のころは担当上忍が何とかしてくれるだろうが、少しでも強いモンスター、それと忍びが現れたらどうにもならないだろうな。


他の里も、縮小されるっていう本来の流れは回避されているようだ、そりゃそうだ、いちいちモンスターが現れているのに木の葉まで依頼に来るように暇はないだろうからな、エティン、オークあたりなら何とか逃げ切れるだろうが、……ワイバーンが現れたら、俺の孤児院みたいにすぐ壊滅だ。一般人はモンスターに抗し得ない。

悪いな園長、うそをついたが、あんたが死んだ後、孤児院の皆は後を追ったよ……墓が一緒でも霊同士は認識できないのか、もっとも、園長が昇った後、全員ようやく昇れたみたいだが……直人に、琴音、お前らはこんな世界で生きているのか?



「へへっ~~~~~~~~~~~~~ん、うずまきナルト推参!ってばよ!!」



ピカピカの一年生まんまの額に木の葉のマークがついた額当てをつけたナルトが、天にも昇らんばかりの勢いで現れた。

嬉しかったんだろう、とりあえず、第一関門突破ってやつだな……残酷なまでに厳しい世界でお前はどう成長するんだ?


「おめでとう、おにい……いや、おめでとうナルト、影分身はうまくいったみたいだな」

こいつと少し本気で向き合ってみるか、俺の記憶の鍵はナルトにあるとしか思えない、ならば早く死んでもらっても困る。


三代目に聞いたところ、今まで確認されているダンジョンは、「デスパイス」「シェイム」「ヒスロス」の三つのみ、全て木の葉の里近辺に存在しており、他の里にもいくつか確認されてはいるが、詳細は不明。

「星の間」に通ずるダンジョンは、「テラサンキープ」この世界に「ロストランド」が存在するか否かはまだわからないが、「かい」は嘘をつくようなやつじゃない。確実に存在するだろう。


「おう、お前の持ってきてくれた巻物で覚えた術使ったら、ばっちりだったってばよ!」


にこにこと満面の笑みのナルト。


俺がダンジョンを探索するためにも、木の葉の里にはどっしりと構えて貰わなければならない、世界は痛みをすでに手に入れてるよペイン、お前は果たしてどういう決断を今下すんだ?


「そうか、そうか、……後で三代目の爺さんにお礼を言っておけよ」

「ほえ?何で三代目のじっちゃんが出てくるんだってばよ」

「はは、これは失言、何でもない、さて、修行を開始するか」

三代目には隠していろって言われてたんだっけ。

「いいか、お前は他人より大きなチャクラを持っていることは、前も言ったな」

ナルトがちょっと待ったのポーズをしている。

「なんだ?腹でも痛いのか?」

「そうじゃないってば、考えてみれば、俺はお前のことあんまりよく知らないってばよ」

ああ、俺は知っている。しかしそれはチートだったな。

「別に修行には必要ないだろ?安心しろ、すでに三代目の許可は取ってある」

ナルトは手を左右に振る。

「そんなことを言いたいんじゃないってばよ、せめて名前くらい言えってば!」

何をそんなにムキになっているんだが、俺が関われるのは恐らく一時的だというのに。


まぁ、いいか。





「俺の名前は、カイ、だ」



……すげえ久しぶりに自己紹介したな。


ナルトはにっこりと笑う。





「俺の名前はうずまきナルト、いずれ火影になる男だってばよ!よろしくな、カイ!」



[4366] チャクラ
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/25 18:18


さて、やっぱりこの世界でもナルトはサクラとサスケと同じ班になるのかな?

成績で言ったらガチだな。何せ特例も特例だからな。


「何でわざわざ弱く見せなきゃいけないんだってばよ!」

ナルトが憤慨している。

「いいか、カカシもしくは誰がつくか知らないが上忍には全く通じないだろうが、下忍なりたてのお前の同僚の中にはまず見抜く奴はいない」

何せ、まだ実戦経験がないだろうからな、この木の葉でモンスター殲滅が出てくるのは下忍からだってことは三代目に確認した。


つまり、まだまだ甘ちゃんだってことだ。流石にその意識自体は高いだろうが、生命を殺めたことがあると無いとじゃ全く違うだろう。


納得出来なそうなナルトを言いくるめる、傍から見たらお遊戯もいいところだろうな、なにせ六歳児と13歳じゃな。


「ナルト、お前は疑われるような行動を取るな、仲間は大事だぞ?」

「まだ誰が仲間に為るかわかんないってばよ、サクラちゃんだったら嬉しいな」

班の発表は明日だ。一日でどうにかなるとは最初から思っていない、どんな時でも役に立つ商業方法を今の内に実践してもらう。幽々白書で言うところのユウスケが行った修行をそのまんま参考にさせてもらう。簡単に言えば大リーグ養成ギブスだ。

この世界の肝は何と言ってもチャクラだ、チャクラで全てが決まる、だったらチャクラが無い俺はどうなるんだって話だけどな・・・・・・まぁいい。


「まずは、昨日覚えた影分身をしろ」

ナルトにはあえて禁術だということを教えてはいない、下忍レベルでは見抜く奴はいないだろうし、特に支障がないって事が三代目と俺の見解だ。

「わかったってばよ」

ナルトが印を組み、その場にナルトが三人出来る。

「違う、もっとだ、もっと大量だ。限界まで分身を出せ」

「わかったってばよ!」

再度ナルトは印を組み、その場に何十人というナルトが生まれる。

「ふむ、まずはこれくらいか、最終的には四桁までは増やしてもらう、お前だったら出来る、そういう体質なんだ。それは現在の火影でもなし得ない、お前だけの特技だ」

後の性質変化に向けた伏線だ、今はまだ使うのはこれじゃない。


ナルトははぁはぁと息を切らせながら目がきらきらと輝きだした。

首筋にちくりと殺気が刺さる、暗部達よ、安心しろ九尾だってことは喋らないよ。


「・・・・・・ナルト、これからは常に時間があるときはチャクラを使っていろ、回復は俺に任せろ、お前は普段通りに生活っつっても任務をこなしていればいい、だが、半分ほどのチャクラを込めた影分身を常に俺のそばに置いておけ、一週間で中忍以上の実力にしてやるよ。まぁ俺に出来るのはチャクラの絶対量とチャクラのコントロールをあげられることだけだけどな。術は他の奴に聞け、いるかでも誰でもいい、お前が覚えろ。ただ、術が無くてもお前は最強になれるってことは覚えておけ」

幻術に対する技術や、医療忍術の細かい調整とかは流石に無理だが、チャクラが多ければそんな小細工を粉砕できる。

そのために、


「ナルト、ちょっと腹を出せ」

「ふえ?」
疑問符を浮かべながらもナルトは腹を素直に出す、これが四代目火影波風ミナトが施した封印術か。

「ナルト、これからチャクラを練る時は常に腹を意識しろ、丹田っていうのかな、アカデミーでも習ったろ?」

「そんな当たり前の事今更だってばよ」

いずれ自来也に習う事なんだが、ネタ晴らしさせていただく。

俺の背はナルトの肩くらいまでしかない、原作で言う木の葉丸くらいだ。
だから目の前の腹に手を当てる。


「さっき、限界までチャクラを出させたとき、別の自分のじゃないチャクラを少しでも感じなかったか?」

ナルトは首をかしげる。
「んーよくわからないってばよ」


危機いっぱいってことがまだ無いからな。

「いずれ分る、・・・・・・今からする事手出し無用、少し強引にやらせてもらう!」

前半はナルトに後半は見張っている暗部に、そして水晶玉で覗き込んでいるでいるであろう三代目火影に。

「Por Corp Wis」

恐ろしく精密なコントロールが必要だ、ただ精神破壊するだけじゃ全く意味がない。うまくナルトと九尾の精神的壁を一部でも壊せればいい。

「負けるなよ、・・・・・・お前の親父が守ってくれていることを、忘れるな!!!」

封印をディスペルすればもっと簡単なんだが、それこそ九尾襲来が起きないとも考えられない。


*魔法が成功しました*

ナルトの頭に煙が走る。ナルトはその場に崩れ落ちた。

「負けるなよ・・・・・・」


危険を冒してまで、やる価値は、十二分にある。失敗したら殺されるだろうなぁ。

「Rel Sanct」

思いっきり意味が無いが、祝福を意味するBlessだ、神の加護があらんことを、火影の加護があらんことを。



[4366] 脇役
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/25 20:59
「一体どういう事だ!?」
一人の男が周りの人間に押さえ込まれている。激しく激高している、ナルトのために。

俺はぐったりとしたナルトを抱えている。俺が掛けた魔法MindBlastは、一時的に人事不省になるだけだ、一般の奴ならな、そう一般の奴ならばそれですむが、・・・・・・尾獣付きならば?


例えば原作での一尾、後の風影、我愛羅がこの魔法を喰らえば、成功すれば即コントロール不能に陥る、尾獣の目覚めだ、辺りには災厄をまき散らすことに為るだろう。

「安心しろよ、いるかさん、ナルトは狐なんかに負けやしない、あんたの自慢の生徒なんだろ?」

「火影様も何を考えているんだ!こんな得体の知れない子供に!」

「・・・・・・落ち着きなって、ナルトの心は今まさに戦闘中なんだぜ?周りのどんな刺激がプラスにマイナスになるかわかりゃしないんだ・・・・・・いるかさん、手を握っててやりなよ、ナルトが今一番依存しているのはあんただ、ナルトのためにこれだけ怒ってくれるのもあんただけだ」

何処か納得していない顔で、いるかはナルトの手を握りしめる、強く強く握りしめる。手助けになればいいが、本質的に精神の問題は本人で解決するしかない。


いるかが暗部の一員だったとはな、そこまで違うかこの世界。表ではよき教師、裏では里に害なす物を排除する冷酷なる暗部。

暗部が感情を出しては駄目だろうに、ナルト、か。お前は幸せだな、少なくとも今一人、お前のために怒ってくれたぞ。


「ナルトの意識が戻らなかったら・・・・・・」

憤怒の目が俺を捉える。

「だから、大丈夫だ、あんたも少しは落ち着きな」


ナルトは静かに眠るだけだ、穏やかな寝息すら立ててやがる、さすが意外性No.1忍者。

他人である俺にその内部はのぞき込めない。頑張れよ、目覚めたとき、お前はもう上忍並のチャクラだぜ? 










「白、お客さんだ」
「はい、再不斬さん」

史実は二人を里抜けに走らせた、水影暗殺に失敗した二人は危険あふれる洞窟に身を潜めていた、ただ追手は来ていない、再不斬自体が危険人物であると共に、二人が逃げ込んだであろう先が、これまた最悪の場所、竜の王国「ダスタード」並の忍者ならば入った瞬間あの世行き、二人は勝手に死んだんだろうと判断されていた。


「ぅぅぅぅぅぅゎゎゎゎわぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああ!!」


「ったく何処の間抜けだ、男女一人ずつ、奥からか・・・・・・その後に続くは火を吐くトカゲ(大)(小)とりまぜて十体くらい、か。白」

少年はにっこりと笑う。
「任せてください、楽勝です、「魔鏡氷晶」」


「何よこれ!いきなり鏡が現れたわ!」

「琴音ちゃん、いいから、早く其所の部屋の中に!」



「ったく、その額宛、木の葉の忍びか、わざわざこんな遠くまで何のようだ?」

勢いで駆け込んできた二人は再不斬の殺気に当てられ、動きを止めた。


「魔鏡氷晶!!」

ぐちゃぐちゃがっしゃんぼこぼこどどん!!!!!

激しい音がした後、外が静かになる。


「再不斬さん、終わりましたよ、肉食べますか?」

「ああ、少し燻製にしておけ、で、お前達、見たところ木の葉の中忍、俺を狩りにでも来たのか?」

「・・・・・・いえ、滅相もありません、つかぬ事をお聞きしますが、貴方ってもしかしてあの再不斬さんですか?」

「ほぉ?俺の名前を知っているのか」

「直人、誰よ再不斬なんて知らないわよ?」
「し~~~~~~~」

「ははははははははははははは、別にいいぜ今は任務でもねえんだ、無駄な戦いを好んでいるわけじゃないんだぜ?もっとも、お前ら二人が俺達にとって邪魔ならば、排除するのみだがな」


殺気に反応した琴音が忍者の習性で反応する、すなわち最大戦力の投入。

「直人、沈静!、おいでませ、かい一号二号三号!っっいたっ!」

だが、その行為は強制的に中断させられる、琴音の巻物を掴んだ手に千本が突き刺さっていた。

「巫山戯ないでくださいよ、再不斬さん、別に殺すことはいいですけど、折角のこの部屋を血で汚すはめにしないで下さい」


「何、からかっていただけだ。白ご苦労だった、お前ら何もしないなら見逃してやるぞ、見たところ俺のビンゴブックに載ってねえみたいだしな」

「琴音ちゃん・・・・・・」
「油断させといて後ろからグサリってのは・・・・・・無いでしょうね」


「ははははは、よくわかってんな、お前らよっぽど意地が悪い知り合いがいるみたいだな」

「からかわないでくださいよ再不斬さん、外の生き物は今はいないみたいですよ、二人とも今なら安全です、どうぞお引き取り下さい」


静かな殺意を匂わせながら白は二人を外に追い出した。



「おい、白、あんな雑魚がどうしてこの洞窟で生きていられたか興味がわかないか?」

「流石再不斬さん、では、ちょっとつけてみますね、しばらくは大人しくしてて下さいよ」






*波の国、そのままでは出来ないことに気付きました、だってのんきに橋なんか作っていたらモンスターに一般人殺されちゃうんですよねー、なので似たような形で細部が違う任務が振り分けられると思います。

相変わらず血継限界は卑怯です、超上級モンスターでも無い限り、甘さがひとかけらもない白は無敵です。急所突き、なんて素晴らしいスキルなんだ・・・・・・白、おそるべし!




[4366] 修行中?
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/31 16:18

まったく、ぐっすりと寝やがって、なんて気持ちよさそうな寝顔なんだ。おかしいな、Mind Blastが変な方向に決まっちゃったかな?

確かに手応えはあった、間違いなく心のナルトの精神世界では九尾と話しているはずなんだが・・・・・・?


「・・・・・・よせってばよぉ、くすぐったいってばよぉ・・・・・・」


おかしいな、いるかもなんか毒気が抜かれてら、そりゃそうだろ、あんだけ心配してこんな平和な寝言を言われちゃぁな。


俺に向けられていた殺気も奇麗に消えた。


「火影様は、何も聞くな、何も喋るな、そう仰られた」

イルカはぽつぽつと喋り出す。

「・・・・・・お前は」

イルカは突然口を噤み、影の様に姿を消した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーナルトの目が覚めた。







「ダスタード」

木の葉隠れの近くに浮かぶ島、「波の国」其所にそれはある、陸運よりも水運の方が盛んであり、船さえあれば何処にでもいける里である。


今や竜が住まう危険な洞窟が有名であり、水の国から離れていても再不斬達が潜むには格好の場所であった。


しかし、ダスタードを訪れるは、決して一組だけではなかった。



「しかし、参ったわね・・・・・・あの殺気、並の忍者じゃないわね」

「琴音ちゃん、ほんとーに再不斬を知らないの?それってどうかと思うよ、忍び的に」

木の葉の二人は抜け忍二人組と分かれた後、雑魚をいなし、ゆっくりと出口に向かっていた。

一言で言えば、運命の分かれ道だと言えるだろう、木の葉の二人ではなく、その後を追っていた白にとって、その出会いは、突然で、後に大きな転機を迎える事となる。


「弦野、君によく似た、ああ、格好とかじゃない、よく似たチャクラを持つ子がいるけど、何か知っているかい?」


確率としては如何ほどだったのだろうか、それは数千分の一だったのかも、それとも必然という意味で一分の一、だったのかも、起きてしまった以上それは、一としかならない。

「君麻呂、・・・・・・彼とは話をしなければいけないようだ、先に奥を探索していてくれないか?」

木の葉の二人は動けない、再不斬以上に冷たく、静かで、尚かつ圧倒的な質感すら感じさせる殺気、絶対強者の威光を持ちながらも、君麻呂は弦野は木の葉の二人を見ていなかった。

「わかった、なるべく早く来てくれ、大蛇丸様の命令は」

「絶対、だろ?私も拾われ、救われた身だ、しかと心得ているよ」

「分っているなら、いい」

君麻呂は、足音を立てずに、木の葉の二人の横をすり抜け、奥に歩いていった。


「私達を、無視するだって!?直人、離しなさい!」
「駄目だって、・・・・・・一体何で・・・・・・運が悪すぎる・・・・・・」

動けないは二人を追っていた白も同様。


「さぁ、出てこい、同胞」
弦野は喋る、木の葉の二人から見て何も無い空間に向かって。


「・・・・・・貴方は?魔境氷晶!!」

氷の鏡が十何枚と弦野の周りに散らばる、

「もう、終わりです、貴方はそこから抜け出すことは・・・・・・!?」

白の自信は脆くも打ち砕かれる。

氷の鏡が打ち消される、同種類の鏡により、更なる上書きにより、術がキャンセルされる。

「確かに、我らの血継限界をうまく使えている、だが、甘い、この術は、同時に全ての鏡向かい攻撃する、一コンマの狂いもなく、それか圧倒的なチャクラ、熱量か何かで粉砕する、だが破り方はいくらでもある、決して完璧な術ではない」

「そんな真似・・・・・・僕にだって」

「そう、出来る、だからやめよう、チャクラの無駄遣いにしかならない・・・・・・我が同胞よ、大蛇丸様に仕える気は無いか?聡明な同胞ならわかるだろ?年季が違う、お前では私に絶対に勝てない、力づくなんて悲しいまねはさせないでくれ」

弦野の目に涙が浮かぶ、白は震えている。

白の能力は水が無いところでも発現できるレベルに達していた。あざ笑うかのように弦野は同じ事をした。


「琴音ちゃん、何か話が変な方向に・・・・・・」
「こいつら、完全に私達を石ころ扱いしているわね・・・・・・」


「僕を・・・・・・嘗めるな!!!!!!!!!!!!!!!!」


「無駄だ、同胞」
「「魔境氷鏡!!」」


弦野と白の声が同時に響く。





そして秘境たる洞窟に潜るもう一つの組、ここに四組が揃い、饗宴が開かれる。



「こんな所にも地殻変動が起きているなんて、一体何が奥にあるんでしょうかねぇ、ねえイタチさん」

「・・・・・・今までの所、例外なく最奥には格が高い化け物が棲息している、一つでも多くサンプルを持って帰るのが使命だ」



歴史は彼らを表舞台には立たせない、正史ならば後三年ばかり時間が必要だった、だが、世界はそれを許さない。


ダンジョン奥深く、灼熱地獄で待ち受けるは、古より外敵を粉砕してきた存在、竜の中の竜、万年を生きたとも言われているその名も「古代竜」、今はまだ大人しく寝るのみ。








なんてこった、何で九尾が協力的なんだ?

「そんなこと、俺が知るわけないってばよ、ただ、何でも気に入らない存在がいるとかなんとか言ってたってばよ」

気に入らない存在?原作だと檻を口惜しや!なんて言ってたような奴だったよな九尾。・・・・・・考えていても埒が明かない、か。

「よーし、これから本格的な修行だ。あー、口寄せとか他の術は・・・・・・いるかさんに教えてもらえよ、ま、別に他の奴でもいいけど、たぶん熱心に教えてくれるはずだぜ」

「いるか先生?」

「ああ、そうだ・・・・・・今は九尾のチャクラに馴れてもらおうか、気をつけろよ、放出しすぎるとチャクラが浸食しちまうからな」


さーて、何だか知らねえが、嬉しい誤算だぜ、案外うまくいくんじゃねえのか?



全てはバランスの上で成り立っている、俺が昔考えていたことずばり、なんだが、俺がうまくいくって言うことは、どこかでその分誰かが割食っているっていることだ、そのことに俺が気付いたのは、当分先だった。



[4366] ダスタード
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/31 10:08

火の国、木の葉隠れの里の忍び、中忍、琴音、医療班所属、付属して怪力も習得終了、同中忍の直人と共に休暇中、里外に旅行に行っているのを確認されている。詳細不明。


火の国、木の葉隠れの里の忍び、中忍、直人、主に音を介しての幻術を得意とする、穏和そうな顔立ちだが、一度切れると取る行動は予測不能、ただ、同班の琴音中忍の暴走を押さえるのに多大な労力を割いているため、誰も直人中忍が切れた所を見たことはない。


今回の遠征も二人にとっては、何のことはない、単なる力試し及び、スキルを上げるためだけの外出だった。それが・・・・・・


「何でこんな羽目に・・・・・・」

直人は一生懸命、ある意味人外の戦いに割って入ろうとしている琴音を押さえつけていた。

目の前で繰り広げられている戦いは、単純な力と力、速さと速さ、技と技の戦いに為っていた、白の術は全てが否定、打ち消されていたがために起った状態。


「諦めろ、同胞、血継限界では私には勝てぬよ。共に大蛇丸様の力になろうではないか」

弦野の声は静かで、余裕すら感じられる。

「黙れ・・・・・・!僕は再不斬さんの力になるんだ・・・・・・!」

白の声には焦りが多分に含まれていた。

「桃地再不斬、か。我らの力を貸すには小さき存在ではないか?考えたことは無いのか?自らの力で殺せる相手に何故付き従う」

「黙れ・・・・・・」

「何故お前は千本等という殺傷能力が低い獲物を使っているのだ、流石に磨かれているとはいえ、術もまだまだ未熟、大蛇丸様に鍛え直してもらえ」

「黙れ・・・・・・!」

「今すぐという訳でも無い、だが、その天賦の才、更に成長させようとは思わないのか?何故再不斬などという小物に付き従う」

「黙れ・・・・・・再不斬さんをお前如きが語るなぁぁああああ!」



白の激昂も弦野には届かない。全てにおいて上を行く弦野に対して、白の絶望的な戦いが続く。



「小物が二匹、木の葉が二匹、どうしますか?イタチさん」

「・・・・・・放っておけ、我らは目的だけ果たせばよい」


バランスは容易く崩される。ダンジョンでは力が上の者が全てを支配する、主、しかり、それは人の間でも同様。


「・・・・・・その文様、・・・・・・うちは、イタチ。S級手配者がどうしてこんな所に・・・・・・?」
直人がかろうじて声を出す。

押さえつけていた力が抜けるが、琴音も同様に動けない。



動いたのは、二人。

「「魔境氷晶!!」」

弦野はイタチに、白は鬼鮫に、それぞれが打ち合わせもなしに血継限界を仕掛ける。


壮絶な攻撃が終わるが、血が飛び散る事無く、二人の服すら破けていなかった。

「・・・・・・二人は何で検討違いの方向に攻撃を仕掛けたのかしら」
「・・・・・・あれが、噂に聞く、うちはイタチの、幻術・・・・・・」


「相変わらず便利な力ですねぇ、イタチさんの幻術は」

「構うな、行くぞ」

「先ほどは小物と言いましたが、二人揃って中々面白い術を使う・・・・・・イタチさん私は少し削り取ってから行きます、先に行っていて下さい」

「・・・・・・お前では相性が悪いようだが?」

「確かに、水と氷ではやや不利かもしれませんが、・・・・・・この二人じゃそんなレベルではないでしょ?水遁を使わずとも、なんとかなります」

「・・・・・・勝手にしろ、先に行ってる」

「一人で主を相手にしないで下さいね、ちゃんと私の分も残しておいて下さい」

「・・・・・・知るか」


イタチと鬼鮫の二人は、戦闘中の最中だというのにも関わらずのっぺりとした調子で会話をしていた。

弦野と白は未だ気付かず、何も無い空間に向かって技を仕掛けている。




「沈静」

直人が笛を吹き、メロディーが小さく響き渡る。

弦野と白の動きが止まり。幻術が解ける。


「・・・・・・イタチさんの幻術を返した、たかだか木の葉の中忍レベルが?」

鬼鮫の興味が視線が、初めて路傍の石たる二人に向かった。

「幻術に掛かったままでは面白くありませんからねぇ、わざわざ手間が省けてありがたいのですが・・・・・・貴方たち、ちょっとご同行願えますか?」


鬼鮫の後ろから人が現れ手に持った獲物を振り下ろす。

「再不斬!?」

キンッ

「白、一体何を手間取っている、ついでに久しぶりだな先輩」

鬼鮫の「鮫肌」が再不斬の「首切り包丁」と打ち合わさり露わになる。

「ほぉ、再不斬ですか、あの小僧っ子が大きくなりましたねぇ」


弦野の目にはチャンスと映ったのだろう、再不斬の注意が鬼鮫に、鬼鮫の注意が再不斬に、この場でのトップ2が互いに互いを認識、ゆえにほんの、ほんのわずか注意が散漫になり、弦野に攻撃の隙を生み出した。すなわち、呪印状態2による全力攻撃、かつては更なる力により敗れ去ったそれは研究と研鑽の極みにより新たな力を宿していた。


「真・魔境氷晶」

「再不斬さんは・・・・・・やらせない!魔境氷晶!」






灼熱の溶岩が道の各所に横たわる、現れるモンスター、BloodelementやらFireelementやらを全く問題とせず、君麻呂は、ダスタード、竜の王国の主と対面していた。


「お前がこの洞窟の主か、大蛇丸様がお前の力を欲している、素直に軍門に下る気は無いか?」


君麻呂の目の前に佇むは、強大という言葉すら可愛く見える巨大な竜、年経たそれは他の竜とは一線を画する存在となる。

モンスターは原則言葉を発せない、それは古代竜といえども同様、ただそれは、元の世界での話。「法則」が彼らを縛り上げるが、別の「法則」も彼らを定義し始めた。


「・・・・・・矮小な人の子よ、・・・・・・去れ」


頭に響く直接的な声、言霊一つ一つに絶大なる力が込められているのだが、君麻呂は平然とした様子で言葉を続ける。


「力を見せねば、従わぬか、それでこそ主だ」


普段の君麻呂を知っている者からすれば、珍しく写るだろう、大蛇丸のこと以外で君麻呂が感情を示すことは滅多にない。明らかに今の君麻呂は昂揚していた。


君麻呂を呪印が包み込む、戦闘準備が整ったが、ふと君麻呂は動きを止めた。


「・・・・・・誰だ、無粋な輩め、姿を現せ」

「その力、大蛇丸さんに貰ったのか、そこの主に用があるのはこちらもなんだが、どうだ、このまま何もせず引いて貰えないか?」


古代竜は動かない、かつての世界では目に映る者全てを問答無用で葬り去っていたいたのだが、この世界に呼び出されてから、彼は本来の竜の王としての自覚が芽生え始めていた。


「うちは・・・・・・イタチ、かつて大蛇丸様が狙っていた・・・・・・」

「私の名前なんかどうでもいい、どうだ、引かないのか?」


大蛇丸の新旧転生候補、究極の戦いが竜の長の前で展開される。

「主の前の準備運動としてはちょうどいい、死ね」

「実力の違いもわからないのか?見たところそんな小物でも無さそうだが・・・・・・」


降りかかる火の粉は徹底的に潰す、忍者の世界の鉄則。






*乱入しすぎたか・・・・・・流石にキャラが個性派揃いだけあって原作キャラは勝手に動いてくれます。再不斬が白の言い付けを大人しく聞くわけなかったよな。



[4366] かかしの試練
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/12/09 17:15

ナルトのチャクラが著しく不安定だったため、影分身特訓はしばらくお預けとなった。早く馴れろよ、蝦蟇ぶんた使い放題だぜ?


直人と琴音も忍者だっけ、あいつらの事だ、直人が一生懸命押さえてるんだろう、琴音は暴走するからなー、怪力とか似合いそうだぜ。






お、きたきた、ナルトにサスケ、そしてサクラ、か。どうやら其所は原作通りだったみたいだな、その後に続くのは、やっぱりかかしか。


イタチのサスケを大事にしろっていう究極のブラコンは、この世界でも有効みたいだな。

ナルトの動きがかなりぎこちない、チャクラが暴れ回っているだろうからな、流石にカカシは見抜いているみたいだが、サクラは馬鹿にしているし、サスケは我関せずって感じだな。あれじゃいたづら仕掛ける暇もなかったみたいだな。


その後にくっついてきているのが・・・・・・ウィプス???何でだ???


「えー、早速だがお前らに試練を一つ、このウィプス先生の体に傷をつけられたら合格、そこから初めて俺の試験を受けて貰う」


*-+/*-+*-+-*-**+*+*+*+*+*+*+*+*++

キラキラと輝きながらウィプスが何か喋っている。


「はははは、そうですね、お前ら、頼りないって言われているぞ」


ウィプス・・・・・・確か他世界から送り込まれた人工探索機だったっけ、この世界だとうまく忍者に取り入ったみたいだな、なんてカオスなんだ。


「けっ、そんなおもちゃみたいな奴楽勝だぜ」

サスケが言い放つ・・・・・・いや、甘いぜサスケのぼっちゃん、ウィプスはその見かけによらず、結構強い。


「全くよ、ねーサスケ君♪」

サクラは無条件でサスケに同意する、まぁそこら辺は恋する乙女ってやつか。ナルトは・・・・・・駄目だありゃ、ぎこちなさ過ぎて歩くのにも苦労してやがる、そんなナルトを軽侮の視線で見る二人、カカシは冷や汗流している、流石だな上忍。


「ナルト、お前は何か調子が悪そうだから今回は見学してろ」

そりゃそうだ、ちょっと間違えたら里を壊しちまうぜ。

「へ・・・・・・平気だってばよ!」

強気な台詞とは裏腹にこけるナルト、あれだな急に身体能力が上がりすぎてコントロール出来ていないんだな。身体感覚だけは馴れることしか対処方法が無いからな。大人しくしておけって、お前をアカデミーに戻そうなんて今更考えていないだろうから、アカデミー壊れちまうから。

+*+*+*-*+*-+**-+*-*-*-*-*-*-*++*+*+*+*-**-

「ふむふむ、ナルト、ウィプス先生も仰ってるぞ、お前はこのテストはもういいってさ」

「だから、だ、大丈夫・・・・・・だってばよ!」

気のせいかウィプスの体から汗が流れているような気がする、強者は強者を知るってか?分っているねウィプス、只単に力を込めた一撃で容易く障壁をぶちこわされるってことを。

「ああ、もう、お前は次の試練からな、これは俺の決定だ、忍者たるもの使命には従うべき!アカデミーで耳にたこができるほど聞いたろ?」


けけけけけ、カカシもいっぱいいっぱいだな、馴れるまで仕方がないか。カカシなら兎も角モンスターのウィプスは変わり身の術とか使えないしな。


本当に体調が悪いナルトは、今回ばかりはカカシの言うことを素直に聞いて座り込んだ、いや、大の字に寝そべった。すげえ、体から湯気が出ているよ。

カカシの心情、それに周りの暗部も戸惑っているな、九尾がいつ再来するかわからねーんじゃ仕方が無いか。

「せいぜいゆっくりと寝そべってろ、ドベ」


サスケは問答無用でくないをウィプスに投げつけた。

カンッ

+*+*+*+*+*-*-*-++*--+*-+*+-*-+*-+*+-*+-*+-

「何かしたのか?人の子、だそうだ」

カカシ・・・・・・お前どうやって通訳しているんだ?


+*-+*+*-+*+-*+-*+-*-++*-+-*-+*+-*+-+-*+-*+-

「攻撃とはこうやるんだと言っている」

ピキーンピキピキピキピキーン


何も無い空から多数の雷が降ってくる・・・・・・チェインライトニング・・・・・・なんつぅ高等魔法を・・・・・・

「「ぐわぁぁぁああああああああああああああああ」」


*-+-*+*-+-*-+*-+*-+*-+*+-*-+*-+*-+*+-*-+*+-*+-++

「直撃か、まだまだ甘いねぇ二人ともって言っている、駄目だぞー変わり身はどうした?分身はどうした?基本忍術が出来ないようじゃこれから上級化け物と戦うとき足手まといにしかならないぞー」

カカシののんびりとした声、あ、いちゃいちゃパラダイスだな。


ナルトにも降り注いでいたが、九尾のチャクラが自動でガードしていた・・・・・・恐ろしい、ナルトは一切動いていないぜ。


カカシもその様子をみて言葉を無くしている。


「火遁・豪火球の術!」

サスケの放った術は相変わらずウィプスを傷つけるには至らない。

「サクラぁあ!」

戦術としては正しい、あれだけ強力な障壁はウィプスといえど一面にしか張れない、ただし、裏をかけるといったら別だ。

カンッカンッカンッ

「なんでっ!」

サクラの投げた手裏剣は全てはじかれた、単純に力不足なんだろう。この世界ではわからないが、原作ではこの時点でのサクラはまさに役立たずだ、経験をつんでいないからしかた無い話だけどな。


+*-*-+*+-*+-*+-+-*+-*+-*+-*+-*+--+*+-*+-*+-*+-*-+


「甘い甘すぎる~だそうだ」

キラキラキラーン

空から黒く、重い物が、降ってくる。いや、それはまずいだろ、Meteor Swarmかよ、ノリノリだなウィプス。

サスケとサクラは嘘だろ?の表情をしている、あれは避けきれない。待っているのは・・・・・・カカシがいるから大丈夫だとは思うが、テストに合格は出来ないだろう。

しゅん

だが、仮想隕石は突然消滅した、

「そこのキラキラしたお前・・・・・・調子に・・・・・・乗りすぎだってばよ・・・・・・」

ウィプスの側面にナルトが放った渾身の手裏剣が突き刺さっている、呪文がキャンセルされたのか。


「ナルト、使命はどうした」

すぐに倒れたナルトの首根っこを掴みながらカカシが問う。

「うっさいってば、・・・・・・仲間を助けられずに・・・・・・何が使命だってばよ」

あれ、この時点でナルトが少し成長しているのか。


+-*+-*+-*+-*+-*+-*+-+-*+-*+-*+-*+-*-+*+--+*-+

ウィプスの体の傷が奇麗に消える、グレーターヒールか。
そのままウィプスはその場から離れていった。


「・・・・・・うーん、ウィプス先生怒って帰っちゃったようだな、罰としてナルトは昼飯抜き、二人分しか置いていかないからな、サクラとサスケ、お前らナルトに飯を食べさせるなよ、食べさせたら全員アカデミーに逆戻りだ」

カカシはナルトを木に縛り付けた。

「この縄をほどいても一緒だからな」

カカシはそのまま瞬身の術でその場から離れた。


さて、どうなるかな、些か原作とは展開は違うが、とても興味深い。


「さて、君はどうなると思う?あいつらが今までの奴のように言うことを聞くだけの愚図なのか、それとも・・・・・・」

「足音をさせないで俺の後ろに立つのは止めてくれ・・・・・・大蛇丸を思い出す」

「はははははは、あの伝説の三忍から逃げ出せたってのは本当みたいだな、君みたいな子供がね」

流石にカカシと言った所か、よく俺がいたところが分ったな。

「で、君はどう思う?」

決まっている。

「あいつらはそんなに馬鹿じゃないはずだ、ウィプスの障壁を貫けたナルトの力が
無ければ、あんたに手も足も出ないことは分っているはず、うちはの末裔は其所まで馬鹿じゃない、そしてサスケの判断に異を唱えるサクラでもないし、ナルトが助けてくれたって事くらいは理解出来るはずだ」

暫くはサスケとサクラはもぐもぐとカカシの用意していた弁当を、無言で食べていた。

「・・・・・・サクラ、ナルトの縄を解け」

「えっ?だってそんなことをしたら不合格になっちゃうわよ?」

「平気だ、今はあいつはいない、そのドベにも飯を食わせろ、俺達じゃ悔しいが力不足だ」

「・・・・・・わかったわ」

「・・・・・・ありがとう・・・・・・だってば・・・・・・よ」

やけにあっさりとしているな。

「俺の言ったとおり」

振り向くとカカシはもういなかった。後は原作通りか、さて、後は忘れられるナルトを回収して帰るか。





そんな必要も無く、過保護のいるかによって無事息も絶え絶えなナルトは回収されましたとさ。



[4366] 古代竜
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/31 16:25


「風影様から直々に依頼が来たぞ、我愛羅、テマリ、カンクロウ、お前らにしか出来ない任務だそうだ」


原作とは少しだけ変わった砂の里、我愛羅は変わらず人柱力で、カンクロウは絡繰使い、テマリは風使いだ。


「場所は木の葉の里とのちょうど境目の集落、何でも千人ほどなのだが一向に音沙汰が無いという状況だ」


三人は下忍にしてすでにプロの顔をしていた、各々頷くと、すぐに準備に取りかかる。


「つまり、その里を調べてくればいいんだな?」

我愛羅が口を開く。

「ああ、強力な化け物の襲来の所為とも考えられる、十分に注意していけ、ランクはAランクだ」

普通、下忍では受けられないランク、しかし三人は当然のように驚かず着々と準備を整えていく。

「ふん、いつも通り、邪魔する物は全てをなぎ倒す、行くぞカンクロウ、テマリ」


史実とは違い、少し心を開いている我愛羅、それだけで風の里は変わっていた。









「再不斬さん・・・・・・大丈夫ですか?」

全身傷だらけの二人がダスタードを出口に向かい歩いていた。

「ああ、問題ねえ・・・・・・鬼鮫の野郎・・・・・・絶対に殺してやる」





「真・魔境氷晶」

「魔境氷晶」

襲い来る悪夢の氷の鏡、常人ならば逃れられず即死。


だが、霧隠れの怪人には通じなかった。
「再不斬、随分といい駒を手に入れていたみたいですね、私は先に進みますが、精々大事にしなさい」

切り結んだ刹那に鬼鮫は再不斬に一撃を加えていた、返す刀で双方の魔境氷晶を鮫肌の能力で削り喰らい、より鬼鮫に近かった弦野は致命傷を負い、その場に脱落、白は鬼鮫の一撃で絶命する寸前だった再不斬の体を抱え、離脱。


鬼鮫は、イタチの後を追った、直人と琴音はその場に見あたらず、取るに足らないと判断した鬼鮫は奥に進んだ。





ぐぉぉぉぉぉぉっぉぉおぉおおおおおおおおおおおおおお!!!

傷だらけの二人の進路を阻む竜の影、竜が一定数以上殺されると出てくる影竜というモンスター、能力は元の数倍、傷ついた二人で勝てる相手では無かった。



「くそっ・・・・・・こんな時に・・・・・・!?」
白は歯を食いしばる。弦野という自分より全てにおいて格上の相手との戦いの所為で白のチャクラはほとんど残っていなかった。

ドンッ

再不斬は白を突き飛ばす。
印を結び水分身を作り出し白を抱え込む。

「白、逃げろ、こいつは俺の獲物だ」

「駄目です、再不斬さん!」

ぐぉぉぉぉおおおおおお・・・・・・


二人と影竜の間に呑気な音楽が流れる。

「沈静化、うまくいったみたいだね、琴音ちゃん」
笛を口に咥えた優男。
影竜は戦意を失い、ただ四人をじっと見ている。


巻物を五巻解放する男らしいとも形容出来る女忍。
「おいでませ!かい一号二号三号四号五号!」


ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!

竜が五匹、全てが全て威風堂々と構えている、明らかに格上の影竜に対し尻込みしている竜は一匹もいない。


「私の自慢の子達よ・・・・・・あんた達はさっさと逃げなさい」


「先程は危うい所をありがとうございました、これはほんの恩返しです、さ、どうぞ行って下さい」

ぴしゃん

崩れ落ちる水分身。白が本体の意識を千本で奪っていた。

「・・・・・・とんだ、甘ちゃんですね。貴方たちは、ですが今は感謝します・・・・・・ご武運を・・・・・・」

白は再不斬を抱え、影竜の脇をすり抜け、出口に向かう。

「直人、もういいわよ・・・・・・後は、決戦よ!!All Kill!!」

音楽が消え、影竜は再び攻撃対象を本能に従い探す。



元の世界で数多のプレイヤーを瞬殺してきた必殺コンボ、それは竜といえども決して軽傷ではない、それを補う琴音の獣医学。

プレイヤーと扱うペットのコンボ、魔法こそ無いが、其所にはテイマーの最高境地にまで達していた琴音の姿があった。

優しげな死の旋律が決戦の周りに響き渡る。

影竜と琴音の戦いに割り込もうとしているモンスターは須く同士討にさせられている。

「琴音ちゃんの邪魔は絶対にさせない、さぁどんどんきなよ、全て僕の扇動の餌食にしてあげるから」

使いようによっては最強スキル、音楽を基調とした、同士討を巻き起こす扇動スキル、直人は完璧とまではいかないまで、高度な次元で使いこなしていた。



二人の決死の戦いは長時間にわたって続いた。
一つのミスも許されない、過酷な戦い、しかし、琴音と直人の顔には笑みが浮かんでいた。

「本当に馬鹿ね、私達」
「あはは、カイ君譲りだから、仕方ないよ」







ダスタード入り口、二人は影竜をしとめた後、外に逃げるだけで精一杯だった。

あまりに疲れ果て、入り口に蹲る二人、洞窟の入り口にはあまりモンスターは現れない。


「おいでませ、かい0号」

ヒヒーーン

黒き馬体、漆黒の鬣、ルビーのように赤い双眸、その名をナイトメア。テイマーの究極の境地とも評されている。

「直人、さっさと乗りなさい、木の葉に帰るわよ」
「・・・・・・うん、わかった帰ったらゆっくり眠ろう、ね」




四組中、二組がダスタードを去った。

万全とは言い難い状態だが、琴音達にはそれなりに収穫があり、白達も新たな情報を掴んだ。


未だ繰り広げられている最奥での戦い、傷ついた弦野は鬼鮫に続き最奥に向かい、イタチと君麻呂は未だ高次元の戦いを繰り広げていた。


果たして最古の竜、最強の竜、ダスタードの主、古代竜の眼前に立つのはいずれか一組、それは誰になるのか。


人類を超越した偉大なる叡智をもつ竜は、ただ眼前で繰り広げられている人類の争いを眺めていた。




[4366] 遠征
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/10/31 18:18



「さて、ナルトそろそろ特訓を始められるか?」


カカシの試練から早数日、ナルトは順調に依頼をこなしていた、といっても最初は里内だけだ、その内容も子供をおもりしてくれ、はぐれた子猫を探してくれといった別に忍者で無くても出来るような任務が主。その目的としてはバラバラに集められた実力も全てがバラバラな、下忍のそれぞれの実力を互いに測ると共に、互いのチームワークを高めることも含まれていた。


ナルトの体の変調を治すにも多分に役立っていたのだが、ナルトは納得していなかった、任務が終わっては、いるかの所に愚痴をいいに行き一楽のラーメンを奢って貰うといったことを繰り返していた、ついでに相伴に肖っていた俺が言える義理じゃねえけどな、いやぁ、おいしいね一楽のラーメン、ご飯食べる必要が無い俺にとっても心の洗濯になっていた。


「おう、すっかり体も治ったし、何だか知らないけど以前より体も軽いしチャクラも簡単に練れるし、すっかり万全だってばよ!」


九尾の恩恵を受けていれば自然とそうなるだろう。チャクラを垂れ流すだけでも今のナルトだったら中忍くらい圧倒出来るだろうが、あえて、ナルトには細かいチャクラコントロールを得意として貰う。

「よし、じゃぁ影分身、そうだな、一体はすかすかでいい、ただ勉強するだけだからな、日向家に行って人体の構造を徹底的に習ってこい、覚えきるまで帰ってこなくてもいいぞ。三代目には話を通してある。次の一体は、それなりのチャクラを練った個体を出してくれ、とりあえず最初は木登りだな、かかしと言いたいところだが、こういったことはイルカだな、徹底的に教えて貰え、木登りが出来たら帰ってこい、そして次の一体は、体を鍛えろ、こいつに俺がつきっきりでつきそう、超自然治癒能力をつかって筋トレだ、最後の一体は術だ、直接プロフェッサーと呼ばれている三代目の所にいって習ってこい、今現在あの人以上の忍びはこの里にいないだろう」


ナルトはげんなりとした顔をしていた。

「勉強・・・・・・嫌いだってばよ・・・・・・」

そーだろうな。

「火影になるんだろ?そんな顔をするんじゃないよ、日向ヒナタが優しく教えてくれるだろうぜ」

「何でそこでヒナタの名前が出てくるんだってばよ」

こいつ・・・・・・本気で不思議そうな顔をしてやがる。

「さぁさぁ、さっさとしろ、それに本来の任務もあるんだろ」

「あ、そうだった!サスケの馬鹿に怒られる!」

「多重影分身!!」

均等に練られた影分身がそれぞれの場所に散っていった、残ったのは一人のナルト。

「よし、早速やるってばよ!」

「よーし、まずは筋肉が引きちぎれるまでやるぞー、安心しろ傷は全てすぐに治してやる。まずは腕立て100回を10セット、腹筋100回を10セット、スクワット100回を10セットだ」

「・・・・・・え?なんていったんだってば、桁を間違えていないの?」

ナルトが素で嫌がっている。あれ、おかしいな忍者ってのはそれくらい余裕で出来るんじゃないの?もしかしてロックリーが異常なのかな。


「ほらほら、さっさと始めろ!そんなんじゃ火影になれないぞ!」

ナルトは嫌々ながら始めた。なんて便利な言葉なんだ火影になれないぞ、か。






ナルトは待ち合わせ場所には時間通りたどり着けた。
ただ、カカシが来ていなかっただけで、それはもはや七班の中では恒例行事となっていた。

「っったく、カカシ先生毎度の事ながら遅いってばよ」

危うく遅刻しそうになった自分を棚に上げ、カカシを責めるナルト。
内心はどうだか知らないが、サスケはひたすら木に向かい投擲術の確認、サクラはチャクラコントロールの練習をしている。

二人ともナルトの意外な実力を知り、それぞれが出来うる範囲で自らを鍛えていた。


「悪い悪い、人生の道に迷ってね」


結局カカシが現れたのは待ち合わせから二時間経ってからだった。

「嘘付けーーーーー!!」
ナルトだけが相変わらず責めるがカカシは全く悪びれない。


「ごめんごめん、だが土産もあるんだぞ、喜べ、ほんの少しだが里の外に遠征できるぞ!」

三人は三人とも疑いの眼差しでカカシを見る。

「本当~?」

「ああ、砂の国との境目だ、人捜しっていう簡単な任務だランクはCお前らでも十分こなせるぞ!」

カカシは懐から任務書を取り出し三人に見せる。

「敵は、いるのか?」

サスケが静かに問う。

「安心しろ、出てもたいしたことが無い、小粒の相手だ、何かあっても俺が守ってやる」

「けっ」

サスケはそっぽを向く、なんだかんだ言って、サスケは自らの実力を見極めていた、未だ目覚めぬうちはの証、写輪眼、かたきであるイタチは同い年ですでに暗部にいたというのに・・・・・・そんなサスケの焦りを知ってか知らずか、カカシはやんわりとサスケの頭を撫でる。


「ってわけだ、出発は明日、朝八時、しっかりと準備だけはしておけよ!」

カカシはその場から消え、残った三人も思い思いの方向に消えた。







其所は音の里と土の国の間に存在している。新たに発見された洞窟、死者の巣窟「デシート」



「愚かなる人の子よ、裁きを受けるがよい!」

高度な知恵を持つリッチロード、数多の魔法を操り、個人の能力も高い。

「馬鹿ね、化け物風情が私を見下すなんて・・・・・・地獄とやらに帰りなさい」

ただ、相手が悪かった、死者を上まる更なる凶人、大蛇丸。

大蛇丸の草薙の剣がリッチロードのリアクティブアーマーを切り裂き、死者を土に返す。

大蛇丸は一人で危険極まりないダンジョンを踏破していた。新しく世界に生まれていた概念は大蛇丸を満足させていた、どうしてもうまくいかない禁術、どうしてもうまくいかない実験、様々な手段を試していた大蛇丸にとって、「秘薬」と「モンスター」の存在は、格好の実験手段が増えたことを意味していた。

新たに産みだした術の研鑽、さらには能力の研磨、ダンジョンは大蛇丸の修行場としても適していた、いくらでも涌いてくる高度な敵、毎日が戦場といった状況は成長の場としてはぴったりだった。


「それぞれうまくいってるのかしらね・・・・・・君麻呂の所は問題無いと思うけれども、他の所は心配だわ、ああ、心配だわ、心配しすぎて失敗したらお仕置きしなきゃね・・・・・・くくくくくくく、うまくいくといいわね、あら」


大蛇丸の前に現れるはモンスターではなく、人間らしき者が二人。


「げっ大蛇丸、何故こんな所に」
「・・・・・・そういえばお前の里が近くにあったな」

危険極まりないダンジョンだが、この二人に取ってはなんてことはないだろう。

「不死の飛段に、不老の角都じゃない・・・・・・何、私と戦いに来たの?いいわよ、私今とっても機嫌がいいの、相手してあげるわ」

「待て待て、別にそんな使命は今のところ受けていない、な角都」
「・・・・・・ああ、我らはただこの洞窟を調べていただけだ」


「何?暁も調べているの?私の部下が鉢合わなきゃいいけどね、まぁ失敗したら失敗したで、別にいいわ」


「相変わらずだな大蛇丸」
「・・・・・・つくづく敵にはしたくない、な」


大蛇丸はにやっと笑う。

「ちょうどいいわ、二人ともついてきなさい、一人じゃ解けない仕掛けがあるのよ、貴方たちも知らないだろうし、都合がいいでしょ」


大蛇丸は二人の脇をすり抜け、とことこと奥に向かう、邪魔するシェイドやらゾンビは草薙の剣で一閃だ。

不死コンビは互いの顔を見合わせ、渋々と大蛇丸の後をついて行った。





*この三人は結構相性いいんじゃないかと思ってたんですよね。何となく方向性が似ているというか。尾獣狩りが始まる前なんで、こんな展開があってもいいかなって思いました。



[4366]
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/02 14:46


ダスタードのダンジョンはそれほど長くない、だが、人間の身には恐れられる最高難度のダンジョンと言われている、その理由はただひとつ、そこが竜の王国だから。


竜すらも問題にしない、人外共の饗宴、人にしてすでに人にあらざる者達、

一人は「骨」を媒介とした強力無比な血継限界を武器に全てをなぎ倒す、大蛇丸の懐刀、君麻呂。


一人は、かつて呪印の限界に来て、優秀な力も持つも寿命が来ていたのだが、どっかの誰かの治療により、全てが回復、呪印にも適合し、大蛇丸の部下として現在トップテンに入るまで上り詰めた男、本来は存在すら許されなかった存在、「魔境氷晶」を極めつつある男、弦野。


一人は木の葉の里きっての優秀が服を着た男の代名詞、超天才忍者、万華鏡写輪眼を使いこなす、暁の一員にして、うちは一族抹殺の事態を引き起こした張本人、実は超がつくほどの命懸けのブラコン、誰にでも出来るもんじゃないぜ、大した物だ、うちはイタチ。


一人は霧隠れの怪人と呼ばれ、自身の優秀な能力はもとより、その刀は打ち合うことすら許さない「鮫肌」を携え、我が道を行く男、鬼鮫。



最後に、本来ならば存在する事すら無かった竜という竜、全てを超える王竜、古代はもとより、世界の根幹にすら関わっている、元の世界では数多のプレイヤーを恐怖のどん底に突き落とした最古にして最強の竜、古代竜。



四人と主の饗宴、それはまずは王に謁見できる権利を競うところから始まった。




ずりっずりっ

「おや、まだ生きていたんですか・・・・・・大した物ですね、大人しくこの戦いの行く末を此処で見届けなさい」

弦野は、致命傷を負いながらも、ゆっくりと最終フロアにまで辿り着いた、応急手当等はすませたが、決して放ってはいけない傷、なのだが、弦野は君麻呂の所にまで辿り着いた。


「君麻呂・・・・・・」


鬼鮫は、弦野より幾許か早く最終フロアに入ったが、目の前で繰り広げられている戦いに手を出す気は、無かった。


元より、暁としての指令も曖昧な物、極論として、このまま何の収穫もなしに帰ったとしても鬼鮫とイタチには何の痛痒もない。


暁も突然現れたモンスター等に戸惑っていた。


他と一線を画すのは、実力があるか、無いかの話だけ。むしろ他の者達よりもこの状況を楽しんでいるメンバーの方が多かった。


そうはいかないのが、君麻呂、そして弦野達のペアだ、彼らが大蛇丸から受けた指令は、その洞窟の最大の実力者を捕獲、もしくは体の一部を持って帰ってこい、という者だった、「体の一部」だけなら君麻呂ならば何とかなる話なのだが、忠誠心が高すぎる二人には、奇麗さっぱいその選択肢が消えていた。



至高の戦いは続いている、しかし、実力の差はいかんともし難く、徐々に、徐々にイタチに戦いの優勢は傾いていく。



「・・・・・・引いてくれないか?俺達の今回の任務にお前達と争うことは含まれていない、余計な事はしたくない主義なんだが・・・・・・」


イタチは静かに普通に喋る、その体は君麻呂の攻撃全てを避け、的確に攻撃を君麻呂に加えている。ーーーーーー写輪眼を使うことなく、イタチは君麻呂を圧倒していた。

君麻呂もそのことに気付いている。

「何故だ・・・・・・何故、これほど差がある!!!!」


忍びの世界は実力が全て、下の者は、上の者に絶対に勝てない。実力とはその場に現れる力そのもの、気分体調その他諸々の条件によってかわり、あらゆるものを含めた力こそが実力。


「鉄線花の舞・蔓!」

背中から背骨を抜き出し、鞭のようにイタチに骨が絡む。

「鉄線花の舞・花!」

君麻呂は巨大な矛を作り、イタチを串刺しにする。

ハァッハァッハァッハァッ

君麻呂は膨大なチャクラを使い、一時的に酸素不足に陥る、
確かな手応え、

しかし・・・・・・脆くも串刺しにされたイタチは姿を崩し、露と消えた。
「悪いが、・・・・・・幻術だ」

イタチの目が一瞬万華鏡を描く。
「・・・・・・月読」


「君麻呂ーーーーーーーーーーーーー!!!!」


「そんな体で血継限界を使うのですか・・・・・・愚かですね」

冷たい視線を注いでいる鬼鮫の目の前で、血をまき散らせながら弦野の姿が氷の鏡にとけていく、イタチを払いのけ、君麻呂の体を確保した弦野は、そのまま一気に出口まで術の範囲を広げ、逃げ出した。


「追わなくて?」

「構わない、放っておけ・・・・・・さぁお待たせしたな、・・・・・・我が名はイタチ、主の名前はなんという?」




ここに一組が脱落し、残るは暁の構成員、鬼鮫、イタチ、只二人、ダスタードの主、古代竜がようやく、重い腰を、あげる。




「名、か、そうだな、我には名という概念は無かったな、好きなように呼ぶがよい・・・・・・人族の勇者よ、お主らは変わった術を使うな、その力、忌々しい制限が外れた我の力にも耐えられるやもしれぬな・・・・・・興味深い、遊んでやろう、さて、行こうか、罪深き永劫の戦いへと」



*バランス取りってほどじゃ無いんですが、そのまんまだと、恐らくイタチ圧勝すぎるので、古代竜はめっさ強化されてます、今まで自我が無い状態ってのが取り除かれたのと、竜の王としての自覚が芽生えた二つだけです。



[4366] 古代竜2
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/03 08:59

竜の王国の中でも一際際だった存在、数多のプレイヤーを恐怖のどん底に、死に追いやった存在、体は金色に輝き、吐くブレスは灼熱を超え、扱う魔法は熟練したプレイヤーを軽々と超え、直接打撃は、グランドマスターたる戦士達でも瀕死の重傷に追い込む。


それが古代竜だ、だが、それでさえも、制限があった世界での話。

「法則」が彼を縛ると同時に彼はこの世界で定義され、その際に彼に取っては忌々しいだけの制限は全て取り払われた。

ーーー取れる攻撃手段は三つ、ブレス、魔法、打撃。


ーーー取れる攻撃回数は触れている時だけ、一秒間に最大三つ。

自我が無い状態だったとはいえ、彼にとっては忌々しき制限であった。

それが、全て、取り除かれた。









始まりは、至高にして最大の神のプレスから始まった。


体力ゲージに従い威力が変わる、その制限も取り除かれ、直接かすりでもしたらそれだけで体内の水分が瞬時に沸騰して即死、決して当たってはいけない神の裁き。主の裁き。


効力は部屋全体に及び、あらゆる壁という壁をガラス状に変えた。


「・・・・・・土遁・岩隠れの術」

「水遁・爆水衝波!」
落ち着いてかわしたのがイタチ、地面に潜り事無きを得て、急いで術を展開したのが鬼鮫、咄嗟の術が間に合い、鬼鮫には傷一つつかなかった。


「待った待った、イタチさん、私は先に帰らせていただきます、こんなのがいるってことで、使命はもうすでに果たされたでしょう」

そう言うが早く、鬼鮫は瞬身の術でその場から姿を消した。


「二人とも防げるとは流石は人族の勇者、ふむ、逃げるのも戦術の一つ、お主はどうする、さぁ何を我に見せてくれるのだ?」


喜悦の色を隠そうともせず、古代竜はイタチにスフィンクスさながら問いをぶつける。つまらなければ、最大攻撃の構えだ。

「・・・・・・何も、もうすでに・・・・・・?」

古代竜は平然としている。
イタチに初めて焦りが見て取れた。

「我に人族の術が及ぶと思うてか!?」

古代竜の激昂と共に、イタチの周辺に光が集まる、上からは黄色い雷の束と隕石が、下からはイタチを嘗めつくさんと炎の渦が、周りからは全てを飲み込まんばかりに赤い光が、そして古代竜本体からは直線的に真っ白な破壊エネルギーの塊が。


Chain Lightning Meteor Swarm Flamestrike Explosion Energy Bolt

人間の身では未来永劫不可能な五連コンボ、それも第六と第七に記載されている人の身で喰らってしまったならば、絶命必死な逃れられぬ、圧倒的なエネルギーがイタチに放たれた。




ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーン





各々の魔法が干渉をして、元の威力を数倍にまで上げる、空間そのものが抉り取られたように、炸裂した直後、補完するため空気が術の中心に集まる。



「・・・・・・とんでも無い威力だな、まるで尾獣を相手にしているみたいだ・・・・・・」

イタチは、イタチにしては珍しく顔に汗を流しながらも、基本忍術の一つ、変わり身の術で危機を逃れた。

「幻術が通らない相手というのは初めてだな・・・・・・そうでなければこんな所にまできた意味が無い!」


イタチの目に万華鏡が走る。


「それはもうすでに見た」

古代竜の姿が声と共に消える、Invisibility-姿消しの魔法。
天照は不発に終わる。使うべき対象の姿が見えなければ意味がない。

「・・・・・・使うしか、無い、か、須佐能乎」

イタチの目から黒い血が流れる。

古代竜はTelelportですぐさま後ろに回り込み、渾身の一撃をイタチに振り下ろす。
イタチの周囲に鬼の顔が鬼の姿が浮かび上がる。

「八咫鏡」

古代竜の攻撃は須佐能乎が完全に防ぐ、が、其所までだった、激しいチャクラの消費により、イタチはその場に崩れ落ちた。


「・・・・・・我の本気の攻撃を三度防いだ、か。気絶こそすれど命を取り留めたは・・・・・・勇者の名にふさわしい・・・・・・・・・・・・この者に、かけてみるか」




古来より、神話の中に三つという数字は度々出てくる、有名どころで言えばクトゥルー神話、その他にも三つの試練を乗り越えた等の話は様々な場面に出てくる、三匹の子豚でさえ、根幹にはその思想が練り込まれているのかも知れない。



古代竜は人間とは違い、魔法の詠唱に秘薬も呪文もいらない、その膨大なる力、この世界で言えばチャクラがその二つの存在を無意味にしている。


しかし、古代竜は、あえて呪文を唱えた、彼に取って・・・・・・彼女に取って特別な呪文を唱えんがために。




「Vas Ylem Rel」



「この姿になるは、この世界では初めて、かの・・・・・・ほれ、起きろIn Vas Mani」

Greater Healは元の世界では体力だけを補完する魔法だ、しかし古代竜の圧倒的魔力に掛かれば・・・・・・。









「遅いですね、イタチさん・・・・・・まさかイタチさんに限って遅れを取ることなんて・・・・・・」


先に帰ると言っていた鬼鮫だが、どうにも気になりダスタード入り口にてイタチの帰還を待機していた。



全くの無音、それから徐々に地震が始まり、洞窟が徐々に崩れていく。

「イタチさん?主を殺したんですかね、流石、あのとんでも無い化け物ですらイタチさんに掛かれば・・・・・・おや?」

暁は今まで探索した洞窟で、主を発見、殲滅した場合、その洞窟自体が崩れることを発見していた。


もの凄い轟音と共に洞窟は完全に潰れた、後には平穏な平原が広がるのみ。


「まさか、洞窟の崩落に巻き込まれたなんて間抜けなまねをするわけが!?もしかして相打ちですか??まさか、イタチさんに限ってそれはないでしょう」








「ほう、随分相方に信頼されているようじゃな、大した物じゃのうイタチ」

「・・・・・・黙れ、・・・・・・帰るぞ鬼鮫」


「・・・・・・イタチさん、私は貴方の趣味にとやかく言うつもりはありませんが・・・・・・それは犯罪ですよ、何処で拾ったんですか?その幼児は、攫って大蛇丸みたいに人体実験なんて悪趣味な真似でもするんですか?」


鬼鮫の目には、イタチの上着一枚のみをまとった幼女と、それを抱えているイタチの姿が映っていた。年の頃は六歳、顔立ちは年の割に整っており、将来が楽しみと言えば楽しみといえる子供だった。


イタチはつまらなそうに喋る。

「馬鹿か、こいつは主だ、何でこんな姿なのかは知らないが、協力してくれるらしい」

目が点になる鬼鮫

「よろしくのぉ鬼鮫、イタチがどうしてもこの姿になってくれというから泣く泣くのぉ」

「黙れ・・・・・・行くぞ鬼鮫」
何故か洞窟に入るよりも元気になっているイタチは、瞬身の術で子供を抱えながら去った。

「ちょ・・・・・・詳しい説明を後でして下さいね」

鬼鮫も同じく瞬身の術で後を追い、にやにやしながらイタチに問いかける。

「・・・・・・知るか」
イタチはそっぽを向き、更に速度を上げた。



















「契約?」

何故か体力、チャクラ共に全開に為っていた、イタチの前には素っ裸の子供が立っていた。

「そう、契約じゃ、我は死ねばすぐに我の全く同じ同位体が「世界」によって生み出される身なのじゃ、それは我であって我ではない、我は我だけで十分じゃ、じゃなければ手下共にも申し訳ないからのぉ」

イタチは無言で上着を一枚子供に羽織らせた。

「ふむ、優しいとでもいうのかの、続きじゃ、我は、「世界」が憎い、我は自由に生きたいのじゃ、せっかく得た自我、「世界」等という得体の知れない者に操られるのはまっぴらご免じゃ」


「契約して俺に何の得がある」


「隠しても無駄じゃよ、主は病に冒されとるな?しかもかなり重い・・・・・・その病を治せるとしたら、どうする?」


イタチは子供に詰め寄り肩を握りしめる。

「・・・・・・詳しく話せ」

子供は捕まれた手をものともしない。

「何、この世界の技術では治せなかったんじゃろ?ならば、我の世界の技術ならば、どうじゃ、人族の中には死者すら霊魂から蘇生させていた者がいたぞ・・・・・・必ずいるはずじゃ、この世界にも、我がここにいるということは、「感染源」がおるはずじゃからな、我は無理じゃ、人族の治療は人族でなければいかん」


「そんな技術者が必ずいるとは・・・・・・」


「もし居らずとも、「知識」は確実に持ち込まれているはずじゃ、でなければ我が魔法を使える理由にならん、いやそもそも我が存在しえん、引いては人族が定義するところのモンスターが存在出来ないのじゃ」


「・・・・・・それが、契約とどう関係があるんだ」


「このまま我が主をやっていても、「世界」を敵に回すことすらできん、我は人に紛れる必要がある、少なくとも、「世界」に直接動かされる心配が消える、我の意思を無視した行動なんざ、まっぴらご免じゃ」

「・・・・・・具体的には」


「ゆえに、主と契約するのじゃ、我が認めた主ならば、「世界」の尻尾くらいはつかめるじゃろう、安心しろ、我と行動を共にしていればいずれ「感染源」とは巡り会えるはずじゃ・・・・・・主の病、もって五年程度じゃろう?それまでには必ず逢える、主も生きてやることがあるのじゃろ?」



イタチは子供の肩から手を離し、深く目を瞑り、考える。


目が、開いた。

「わかった、契約しよう」

「契約の内容を聞かなくてもいいのかの?」

「嘘をつくのは人間だけ、かつて誰かに聞いた話だ、・・・・・・それにお前程の者が俺を陥れるはずがない」

「ふふ、さすが我が認めた男、・・・・・・目を瞑り、顔をさげい」

イタチは言われた通り、顔を下げた。

「我の名前は*******じゃ、決して忘れるでないぞ、これはサービスじゃ」

古代竜の変化した美少女の唇がイタチの唇に触れる。


「何を!?」

イタチの体に熱が走る。


「安心せい、主の力の底上げじゃ・・・・・・来たか」

常人ならば気絶してしまうほどの熱、だがイタチは常人ではない、耐えきり顔を上げると広大なフィールドに、大量の竜がひしめき合っていた。


それぞれが一言もうめき声も上げず、ただじっとイタチを、古代竜を見つめていた。



「皆の者、我に従いついてきた者達よ、暫しのお別れじゃ・・・・・・我はこの者と暫しの間歩むこととなる、何、我らの寿命からすれば星が動くよりも早い事じゃろう・・・・・・安心して眠るがよい」

聖少女の顔つきで、古代竜は全てのモンスターに声を掛ける。


ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお


モンスターの返答が響き渡る。

「随分と慕われているんだな」

「当たり前じゃ、我を誰だと心得る、この竜の王国の主、・・・・・・竜王じゃぞ?」

イタチは不覚にも、目の前の少女の微笑みに心を刹那奪われてしまったことを自覚した。

モンスターの姿が薄れていく、モンスター達の古代竜に対する声はやまない、最後の一匹まで薄れていき、やがて最後の一匹も消えた。


「さて、最初の仕事じゃイタチ、我を外まで運ぶがよい、何しろ我はか弱き少女じゃからのぉ」

「・・・・・・どこがだ・・・・・・契約、忘れるなよ」

「ふふ、人族は短い寿命こそにこそ真価があると思うのじゃが、・・・・・・我が認めた勇者のためじゃ、一肌脱ごう」

イタチはそれきり黙り込み、ダスタード入り口まで少女を抱え、走り去る。



洞窟の鳴動が始まる。


「さらばじゃ、皆の衆・・・・・・また、すぐに帰るでの・・・・・・」

古代竜は姿に似つかわしい声で、最後にぼそりと呟いた。


















*はい、主人公を狙うペアがもう一組増えました、大蛇丸に比べれば変態度は全くありませんが、イタチが相手では主人公が逃げ切ることは限りなく難しいでしょう、どきどきの命懸けの隠れん坊がまたまた始まりです。



[4366] サソリ・オブ・ザ・パペットマスター
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/03 11:24


ナルト達が木の葉の里から出て数日が経った、砂との国境近くとはいえ、特に急ぐでもなし、四人は着実に目的地に向かっていた。


途中現れるようになったモンスター達、カカシが判断し、大丈夫だと思った奴は積極的に下忍に狩らせていた。


例えば、モンバットならサクラ、オークの群れならサスケ、エティンはナルト、エレメント系や、ガーゴイルと言った手合いは三人掛かりで。


三人とも徐々に息が合うように為ってきて、身代わりやら分身の術といったモンスターと戦う上で必須の術の展開速度も、よくやくカカシの目から見て合格ラインに達せようとした頃合い、集落が見えてきた。







悪魔が其所には待っていた。


「くくくくくくくくくくく、俺の技は・・・・・・芸術だ」






一方の影分身ナルト達。


in日向家

「馬鹿者!!!!!!!!!!!!」

今日も元気に日向宗家の声が響き渡る、もはや三日目にして恒例行事となっていた。

「ヒナタの父ちゃん、ちょっとは勘弁してほしいってばよ!何で勉強に来て、おっちゃんと組み手の特訓しなきゃいけないんだってばよ!」

ナルトはあくまで影分身、だが、禁術に指定され、カイのアドバイスも含まれ、ちょっとやそっとの衝撃じゃ崩れないようによく練られている影分身だった。

「この愚か者!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

ナルトは再度壁にたたきつけられる。

影分身といえども、実体を持つ以上、痛いものは痛い。

ナルトは頭を抱え込み、蹲る、しかし九尾のチャクラがそれをゆるさず、すぐに体の痛みは消えていく。

「いってーーーーーーーーーーーーてばよ、ヒナタ、お前からも何か言ってくれってばよ!」


道場の脇で見ているのは、ヒナタとハナビ、二人とも父親のしごきに少々引いていた。ヒナタはナルトの心配をして、ハナビは自分ですら受けたことの無いしごきをみて、どん引きしていた。


「そんな程度で、我が無敵の柔拳の極意を得ようとは片腹痛い!ましてや、我が娘を娶ろうとは、・・・・・・百年早い!!!!!!!!!!!!」


日向宗家は何か勘違いしていた、元より熱くなると周りが見えなくなる性格、そんな宗家を止められるものがこの場にいるはずもなく、ただナルトはぶちのめされていた。

日向宗家の本気の拳、ただしチャクラはまとっていない、がナルトに向かう、ナルトは見極め、拳を避けた。

ドンッ
拳が道場の壁に突き刺さる。


「そう何度も何度も繰り返していれば、いい加減わかるってばよ、おっちゃん、何か勘違いしていないか?娶るって何の事だってばよ」


「ほう・・・・・・ヒナタ、今日で何日目だ」

日向宗家はナルトの言葉をガン無視して娘に話しかける。
突然話を振られたヒナタは身を縮こませながらも答えた。

「は、はい!ナルト君が来てから、今日でちょうど三日目です!」

つまり三日間、ナルトは日向宗家の本気の拳をひたすら受けていた事になる、ナルト故に目立った外傷は全く見あたらないが、一般家庭ならどんなDVだよっていう話になる。

「よし、合格だ、最低でも一週間はかかると見ていたが・・・・・・大した玉だ、ハナビ、修行を続けるぞ!ヒナタ、お前がこの小僧の面倒を全て見るんだ!」

九尾の加護をフルに使っているナルトは兎も角、本気の攻撃をチャクラを纏っていなかったとはいえ、三日間ふるい続けて息も上がっていない日向宗家もただものでは無かった、頭の中も、空気の読めなさも。


「だーーかーーーらーーーー、おっちゃん、絶対勘違いしているってばよ!!」

はっはっはっはっと笑いながら、宗家はハナビと一緒に道場から出て行った、後にはヒナタとナルトだけが残される。


「父は・・・・・・日向家に入り込む者を見極めようとしたんだと・・・・・・思うの」

まさに蚊の泣くような声でヒナタがぼそぼそとナルトに声をかける。


「だって、最初に三代目のじっちゃんの許可もみせたってばよ!」

ヒナタは首を横に何度も振る。
「父は・・・・・・自分で何でも見極めないと気が済まない人だから・・・・・・ごめんねナルト君」

弱々しく謝るヒナタを見て、ナルトは何も言えなくなる。


「・・・・・・別にヒナタを責めている訳じゃ無いってばよ、それで、俺は認められたんだってば?」

ヒナタは顔を輝かせた。
「うん!」
次いで顔を赤くする。
「・・・・・・二人の仲を父が認めてくれた・・・・・・」


「ん?何か言ったか?ヒナタ、顔が赤いってばよ」
熱を測るためにナルトはヒナタの額に手を当てた、更にヒナタの顔は赤くなる。


この父ありて、娘あり。
ヒナタの黄金期が始まった。








inイルカ

「どうだ、一楽はやっぱりうまいな」

「最高だってばよ!」

イルカとナルトは修行の合間に一楽のラーメン屋に来ていた。

カイの人選は・・・・・・間違いだったのかも知れない、しかし其所はアカデミーの教師も務めている男、少ない自由時間を有効活用し、うまくナルトを手懐け、うまいこと修行をしていた、たかが三日でチャクラコントロールが上達するわけもなく、まだまだ最初の三歩目辺りが精一杯だった。




in火影


他の者から見ればうらやましい限りだろう、火影から直接術を教えていただくなんて、どんな上忍でも容易く口に出せる者ではない。

火影からしても、日々の忙殺される仕事の合間をぬっての修行はいい精神の保養になっていた。

俗にいう、目に入れても痛くない、「孫かわいがり」である。

特にこの殺伐とした世界に変わってしまってから久々の癒し、三代目は流石火影というべき所だが、優しく丁寧に間違えてもやんわりと指摘し、ゆっくりゆっくりと術を一つずつ手ほどきしていた、カイの厳しくやって下さいね!との言は遙か彼方に消え去っていた。

今までは火影という体面もあって、中々出来なかったナルトいじり、しかし大義名分を手に入れた三代目火影は、無敵だった。

「よし、八門遁甲と封印術・屍鬼封尽の極意は覚えたかの、後はチャクラの使い方じゃが・・・・・・」

周りの者は止めて良いのかもの凄く悩んでいた・・・・・・今の火影は正気を失っている。だが、しかし・・・・・・誰も言い出せず、危険な禁術ばかり教えている火影は更なる暴走を続ける。





inカイ


なんかちょっと人選失敗したかな、まさか、俺の選択はこれ以上無いほどの選択のはず・・・・・・うまくいけば一年で中忍試験までには最低でも二部開始までには最強の忍が出来るはずだ。


「ほら、寝るな、傷は全て治したし、疲れも無いはずだぞ!」

「・・・・・・この三日間、睡眠がどれほど大事なのか思いしったってばよ・・・・・・」

疲れは無いはずだが、ナルトはぐったりとしている、精神的な物までは治せないからな。

一方俺は、この体に為ってから眠気とも食い気ともおさらばしていた。倒れたら包帯巻いて、倒れたら包帯巻いて、眠りそうになったらEnergy Boltかまして起こす、体力だけは三日前の1.2倍にはなっているはずだ、こいつやっぱすげえよ、九尾の加護ってはの素晴らしいね、上限が見えないんだぜ?
このまま行けばチャクラ無しの力だけで暁すら圧倒するかもしれねえな。


けけけけけけけけけけけけけけ、大蛇丸の気持ちが少しだけわかるな。選りすぐれた個体をってか?この世界でこいつ以上の個体は存在しねえな、血継限界こそ、保持していないが、そんなものいらねえよ!こいつは純粋なまでのチャクラの塊、体でさえこのポテンシャル、いやあ素晴らしい。本来の影分身ならば体の成長は成長外なはずなんだが、すげえな火影、容易くそんな問題点も印を一部変える事で解決しやがった、プロフェッサーは伊達じゃねえな。


「仕方ない、一日の睡眠を許す、飯はこれだ」


三代目からゆずり受けた大量の兵糧丸、本来は副作用もあるのだが、俺の技術は奇麗に副作用すら消え去っていた。


「それ・・・・・・まずいから嫌いだってばよ・・・・・・」

弱々しく呟きながらも、ナルトは一つ口に含み、その場で倒れ込むように睡眠に入った。


さてさて、原作ではそろそろ波の国なんだが、なんで砂との国境になんか行っているんだ?白と再不斬との遭遇イベントは無いか。


なーんか見落としている気がするんだけどな・・・・・・、今はまだ平気、かな?



[4366] サソリ・オブ・ザ・パペットマスター2
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/03 19:03


「何だこれは・・・・・・何処もおかしいところなんてないじゃないか」

テマリの前では「日常」が展開されていた、人々が笑い合い、語り合い、侘びしいながらも活気がある集落が其所に存在していた。


「・・・・・・我愛羅」

「・・・・・・責任者の所に行ってみよう、異常が無ければそれでいい」




「で、お宅さんが探しているのは、息子さんって訳ですね」

カカシが集落のトップと話している。


そこに砂の三人が入ってくる。


「おい、案内されたんだが、責任者は此処でいいのか?」

テマリが先陣を切って部屋に入り、中の五人の姿を認める。

「砂の!?」「木の葉か!?」

いきおい、それぞれの姿を認め戦闘状態に入りかける二人と一人をそれぞれカカシとカンクロウが納める。


「はいはい、今は別に戦争でもないんだからいきなり戦闘状態に入らない」

ナルトはこの集落に入ってから何処か、そわそわしており、砂の三人にも注意を払っていない。

「別にそいつらを殺すことは任務に入っていないじゃん!」
カンクロウが必死にテマリを押さえていた。


我愛羅もまた、集落に入ってから、何処かうわの空であった。




其所からは話が進み、カカシ以下四人は責任者の部屋から先に外に出て、後には砂の三人が残る。



「カカシ、どう思う?」

「ん?人捜しだろ、何でこんな簡単な仕事をわざわざうちに回してきたのかねぇ、忍者を頼むのだって無料じゃないのに」

「違う、砂の三人のことだ」

「はは、別に戦争状態じゃないんだから、そんなに殺気立つなって・・・・・・さっきからどうしたナルト?」

サスケとサクラの二人はナルトを振り返る。

「んー、うまく言葉に出来ないんだけど、何かこの町おかしいってばよ」

「何処が?何もおかしいところなんてないじゃない」

「んー、だから感覚的っていうのかな、何処かずれてるんだってばよ」

サクラとサスケの二人は話を流したが、カカシはナルトの言葉に隠れて頷き、何も無い虚空を睨みあげた。








「一体どうしたんだ、町を見ても別におかしいところは無い、なのに一切の連絡が取れないとは?」

「それはすみませんでした、恐らく途中で連絡人が事故か何かにあってしまったのでしょう」

「それにしても、一ヶ月近く音沙汰が無いってのは異常とは思わないのか?」

交渉は主にテマリが行う、本来は我愛羅がやることなのだが、我愛羅は今回どこか精彩を欠いている。




細々とした会話も終わり、町を見回って帰るということで砂と責任者との会話は終了した。


「我愛羅、どうしたんだ?さっきからずっと上の空じゃん」

「・・・・・・お前らは何も感じないのか?・・・・・・この町は、明らかにおかしい」

「何処が?こんなのがAランクなんて楽でいいじゃん」

我愛羅はカンクロウに返事をせず、ただ町を町並みを町人を見ている。其所には日常を過ごしている町人の姿があった。











「くくくくくくくくくくく、勘のいい小物が二匹、それと・・・・・・気付いているな木の葉の上忍・・・・・・くくくくくくくくくくくくくく、久しぶりに楽しめそうだ」



闇の中で笑う悪魔が一人。木の葉の忍び四人と砂の忍び三人、それぞれ任務は違えど、等しく悪魔の晩餐に呼ばれ、応じ、土俵に登った。


悪夢が全てを飲み込む。













in変態三人



「あんた達、さっさとついてきなさい、ほら角都、そこの石を左に動かしなさい!飛段、貴方はちょっと入り口で化け物が入ってこないか見張ってなさい!」


大蛇丸の陣頭指揮の元、三人は着実に洞窟の奥に進んでいた。

「ったく何でこんな事を俺様が・・・・・・」

迫り来るゾンビやら、シェイムやらを全く意に返さず、たまに来る魔法にすら意に返さず飛段はひたすら一刀両断で化け物を葬り去っていた。


「本当に便利な体ねぇ・・・・・・ちょっと味見しちゃおうかしら・・・・・・」

「いや、それは勘弁してくれ、ジャシン様に俺が殺されちまう」

「残念ねぇ、興が乗ったらいつでも話に乗るから来なさいね」

「一生無いから安心しろ」

「・・・・・・お前ら手が止まっているぞ」

あーはいはいと飛段は自分をこづいている化け物を葬り、大蛇丸は再び暗号の解読を再開した。


「角都、そこの石を右に・・・・・・いいわ、扉が開くわよ」

「面倒くさいな、壊すわけにはいかないのか?」

飛段が疑問を口にする。

「馬鹿ね、この建物一見脆そうに見えるけど、実はあきれるほど頑丈なのよ、私のマンタでも傷一つつかなかったから確かよ」


先頭を歩くは大蛇丸だ、後ろを二人が続く。


「そういえば、暁の目的は今なんなのかしら?こんな洞窟があちらこちらに出来ちゃって面食らってるんじゃないの?」

歩きながら大蛇丸が会話する。

「あ?別にこんなの屁でもないだろ、俺達に取ってはな、ただペインは何か悩んでいたようだったな小南とゼツと何か相談していたぞ、訳の分らない事をぶつぶつ言ってたし、デイダラとサソリは相変わらず芸術がどうのいってたし、忠実に任務に専念しているのはイタチ組と俺達くらいじゃねえのかな」

「・・・・・・飛段」

「心配しなくても平気よ、私をあまり嘗めないでね角都、それくらいの情報私にも入っているわ」

「・・・・・・スパイ、か」

「当たり前でしょ?」
大蛇丸がにやりと笑う。


「そろそろ最奥よ・・・・・・貴方たちでも油断しないことね、主は、例外なく化け物揃いよ」

「もう知ってるよ、あいつは強かったな・・・・・・俺様が不死じゃなきゃ何回死んだことか、とてつもねえいい女の癖に、術は跳ね返す、直接攻撃しか手段はねえのに近づけば力を吸い取る」

何か思い出したくないことを思い出すように、飛段と角都の顔が苦渋にゆがむ。



「・・・・・・あいつが主か」



角都が呟く、広大なフィールドの中、三人の目の前には緑色のゾンビが立っていた。

「なんだ、途中の雑魚の単なる色違いじゃねえか」

飛段が近づき、鎌を振り下ろした。

「動きも鈍いし、此処は楽勝だな」



ガスッ



「あれ?」

鎌が化け物の皮膚で止まった。

「・・・・・・馬鹿ね、主がそんな単純な訳ないでしょうに」

戸惑う飛段を化け物が攻撃、


ドンッ


飛段は吹き飛び、壁にぶつかった。

「ガハッ・・・・・・くっ、角都気をつけろ!こいつ結構な毒ももってやがるぞ!」

「飛段を連れてきて本当に良かったわ、斥候にはあおつらえ向きじゃない」

大蛇丸が笑いながら草薙の剣を取り出す。

「・・・・・・あれほど注意しろと言ったのに、直す(治すの誤字にあらず)のは誰だと思っているんだ・・・・・・」

角都は術を展開し出す。

化け物・・・・・・ロッティングコープスは静かなうめき声をあげ、三人の侵入者を空洞の目でにらんでいた。






*飛段、UOの世界にいたら無敵ですね、どこのGMだよって話です。



[4366] サソリ・オブ・ザ・パペットマスター3
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/03 23:42

「安いよ安いよ~」

「あ、そっちいったぞ!」

「田村君みっつけたーー!!!」

「それでね、私は言ってやったのよ、私と付き合うなんて十年早いってね」

「カムロ、月は出ているか?」

「何いってんだ、今日は新月だぜ」


町の喧噪が耳に残る。
平々凡々な日常が其所には存在していた。


太陽が山の向こうに消え、夕焼けになり、やがて夜になる。



木の葉、砂、共に疲れを取るために一泊の宿を取っていた、ただし小さな集落、町なので必然、泊る宿は同じになってしまっていた。


「この芋なかなかうまいってばよ!おい、其所の隈取り、食べないんだったら俺がもらうってばよ!」

「ばっか野郎、俺は美味しい物は最後に取っておく派なんじゃん、自分の分だけでがまんするじゃん!」

「テマリ・・・・・・おかわり」

「はいはい、手がかかる弟だこと」

「サスケ君、どう、何か欲しい物ある?」

「サクラ、俺に構うな」


カカシはなんだかんだ言って仲良くしている部下達を見て、微笑んでいた。


「いいか、お前ら、喧嘩なんて子供っぽいことで俺を悩ますなよ」


「カンクロウ、テマリ、俺の兄弟だから言っておくが・・・・・・つまらないことで俺をいらいらさせるなよ」


宿において、カカシが、原作より成長している我愛羅が、それぞれのメンツについて忠告をする。

カンクロウとテマリは、すでにプロであるということもあって、依存は無かった。

サクラは特に争いが好きでもないので同意、サスケも向こうが絡んでこない限り、という条件付で同意した。




当然、鉢合わせのイベントは起きる。起きるべくして起きる。


「・・・・・・おい、何か喋れよ」

「・・・・・・別に砂の人と喋る事はありません」


その会話の後、テマリとサクラは他に客もいない温泉の中、無言で湯に浸かっていた。


気まずい雰囲気が、サスケ、ナルト、我愛羅、カンクロウの間に流れる。
カカシはちょっとよるところがあると、単独行動を開始し、この場にはいなかった。

ナルトは相変わらずもやもやとした気分のままで、温泉に入っていた。


「・・・・・・ふん」
サスケは一言も挨拶を交わさず、さっさと体を洗い外に出て行った。


「ところでよ、木の葉がこんなところで何してるんじゃん?」

「・・・・・・別に、単なる人捜しの任務だってばよ」

「へぇ、人捜しねぇ・・・・・・え?木の葉には連絡が生きてたってことか?」

「何いってんだってばよ、連絡が、依頼が無ければ忍びが動くわけないってば」

「・・・・・・我愛羅!!」


「ちっ・・・・・・やはり罠か、おい、木の葉の忍び、お前もさっさと湯船から出ろ、ついでに上忍も呼んでこい」

「・・・・・・お前も何か気付いていたんだってば?」

「・・・・・・お前も気付いていたのか?この巧妙に隠されているが、この町全体に張り巡らされている糸に」




「お、すでに集合していたか、感心感心、悪い知らせがたんまりと、いい知らせが少しあるけど、どっちから聞きたい?」

カカシが帰ると、土間に砂、木の葉両方の忍びが勢揃いしていた。

木の葉の三人は互いの顔を見合わせる。

「いい知らせってなんですか?」
サクラがおずおずと問いかける。

「喜べ、援軍がすぐ来てくれるってさ、何でも依頼主もどこかの誰かのくぐつみたいだったようで、俺達が出発した直後、その場で壊れたんだってさ」

「もったいぶるな、悪い知らせは何だ」


ばんっ

「お客さん、お呼びですか?」

カカシは取り合わない。

グサッ

カカシの右腕が深々と宿の受付をしていた男の胸に食い込んだ。

しかし、そこから出るべき血は一滴も出なかった。


「すでに、ナルトと、其所の瓢箪を担いだ砂の坊やは気付いているようだが、この町、この集落は全てが、罠だ。サスケ、サクラ、お前らが気付けなくても無理ないぞ」


カカシの手には細かい糸が握られていた。

「俺も確信を持てたのはさっきだ、こんな超越した技術でこんな罠をしかけるなんてどこかの気が狂った奴としか思えん・・・・・・」




「くくくくくくくくくくくくくくくく、ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」


もう、堪えきれない。

町全体から笑い声が響き渡る、昼間の様な活気がある笑い声ではなく、狂っていると正しく形容できる、 たがが外れた笑い声だ。



「ありがとうよ、木の葉の上忍、その言葉は俺に取っては最大級の賛辞だぜ」
何処からか声が聞こえる、違う、何処からではなく、町の全てありとあらゆる場所から声が聞こえる。


「何処に隠れてるんだってばよ!正々堂々と姿をあらわせ!」
ナルトは大声を出すが、何処に隠れているか分らない以上今のナルトに手を出す術は無い。

「・・・・・・今は、木の葉の上忍と話しているんだぜ、少し勘のいいだけの小物が口を挟むな」

ガタンッ

ナルトの足下の床が抜ける、咄嗟にサスケが助けに入るが、手を掴んだ瞬間サスケの足下も抜けた。

「ナルト・サスケ君!」

サクラはカカシが抱え、砂の三人はその場から離れた。

「安心しろ、サクラ、うちはの末裔、そして今のナルトがこんな奴に負けるはずがない・・・・・・おい、砂の坊や達、自分の身は自分で守れるな!?」


「木の葉に心配される筋合いは無い、俺達は俺達のやり方でやる」
我愛羅は頷くと、カンクロウ・テマリの二人を従え、町の中に攻め始めた。



「随分部下を信頼しているんだな、・・・・・・木の葉の上忍、お前の名を聞いておこうか」

「俺の名前は、はたけカカシ・・・・・・この下らない人形劇に幕を下ろす人間だ、覚えておけ!」

「へぇ、コピー忍者か・・・・・・思わぬ獲物が掛かった物だ、コレクションに加えるに相応しい」

カカシはまずは外を目指した、いくら何でもサクラを抱えていては話にならない。
だが、悪魔はそれを許さない。


カカシの周りに瞬時に化け物の群れが立ちはだかる。


二つの頭を持つ巨人、キラキラと光り輝くボディを持つウィプス、ザパァと水の音を立てながら近寄るWaterelement、翼を持つ有翼人種のガーゴイル、それぞれ数百体がカカシの行く手を拒む。

「最近加えたコレクションの一部だ、まぁ楽しんでくれ」


「・・・・・・俺も甘く見られたもんだな、サクラ、少し待っててくれ、自分の身は自分で守るんだぞ、安心しろ、お前には毛ほどの傷もつけさせない、何しろ嫁入りまえだからな」

「カカシ先生!」
素早く印を切り、影分身を産みだしたカカシはそのまま分身に瞬身の術を唱えさせると同時にサクラを抱えさせて、囲いの外に逃がした。

ぐぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
-+*-+*-+*+-*-+*-+*-+*+-+*-+-*-+*-+*-+*-++-*+-*+-*+-*+-*-+
ぎゃぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああ

1体約500

天才忍者の奮闘が始まる。








地の底、サスケはすぐに目を覚ました、目の前ではナルトと裸の筋骨隆々の巨人が殴り合っていた。

ナルトにはまだこれといったチャクラを活用できる術が無い。ゆえに身体強化を施した拳で殴るのが一番効果的なのだが、サスケにはまだ理解が及ばない次元であった。

「うりゃぁぁぁあああああああああああああああああ」

ドンッ、ガンッドンッ、ボコッ


ぐあぁぁああああああああああああああああああああああ

断末魔を響かせながら、裸の巨人は地に伏した。


はぁはぁはぁはぁと肩で息をしながら、ナルトが振り返る、サスケが目を懲らすとサスケを中心に巨人の死体が何十体と転がっていた。


「・・・・・・カイに聞いていた魔法を使う奴がいなくって助かったってばよ」

「・・・・・・ナルト、成績どべのお前が何故これほど強い」
「あ?今はそんなことを喋っている暇はないってばよ、ほら、次の・・・・・・最悪、リッチの爺だってば・・・・・・サスケ、今度は守れないってばよ・・・・・・目覚めが悪いから俺の前で死ぬなよ?見苦しくても生き残ったやつが勝ちなんだってばよ」

少しの会話で乱れていた息も治り、ナルトはふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉと笑っていた爺の群れに一切の一滴の躊躇を見せずに突っ込んでいった。


「その心意気、突っ込んでいく勇気・・・・・・ナルトたった数日でお前はどんな修行をしたんだ!!!」
サスケの目に写輪が走る、絶望の状況にて目覚める更なる力・・・・・・サスケもまた物語の主役を張れるほどのまごう事無き天才の一人であった。


サスケもナルトの後に続く、元より出口は無い、どんなに苦しくてもこの修羅場を何とかしなければ二人に生存の目は出てこなかった。



「へぇ、単なる小物だと思っていたが・・・・・・くくくくくくくくく、案外面白い素材かもしれねえな、リッチ共を殺せたら後に一体主を廻すか・・・・・・くくくくくくくくく、生き残れたら俺のコレクションに加えてやるぜ」


死闘を繰り広げている二人の耳にも、言葉は確かに届いた。
だが答える暇がない、連発に次ぐ連発の魔法に変わり身の術、影分身の術がとぎれそうになり、とぎれたその時は集中砲火の嵐だ。


ナルトとサスケは徐々に完璧なコンビネーションを確立させていった、でなければ死ぬと本能で察したのか、二人は確実にリッチを一体一体駆逐していった。




砂の三人の前にももちろん化け物が立ちふさがる、町人が集まり、悪魔へと変貌する様は、覚悟を決めたテマリ、カンクロウでさえ目を背けてしまう様だった。



「お前らは特別だ・・・・・・人柱力、一尾の坊ちゃん、風影の息子達よ、ちよ婆はまだ元気か?」

「お前、もしかして・・・・・・サソリじゃん!?」
クグツを展開し終え、カンクロウは悪魔に向かい叫ぶ。

「知っているのか?」
巨大な扇子を出し終え、テマリがカンクロウに聞く。

「知っているも何もクグツ使いならば誰しもが聞く名前じゃん、行方不明だって聞いていたが、こんなところでなにしてるんだ!」


「くくくくくくくくくくくくくくく、まずはこの特別製の悪魔に勝てたら質問に答えてやるよ、お前らはもう戦ったことがあるか?忠告だ、並に比べて三倍ほど能力をアップさせている、精々頑張りな」


ぐぁああああああああああああああああああああああああああああああああ

悪魔の咆吼が響き渡る。

我愛羅が腕を悪魔に向けて突き出す。
「・・・・・・砂縛柩」

砂が悪魔の動きを縛る。

「・・・・・・砂瀑送葬」

絡め捕った砂がそのまま悪魔を押しつぶす。

後には空白が残った。



「・・・・・・茶番はこれまでだ、答えろ、何故俺達をこんな場所に呼んだ」





「はははははははははははははははははは、それでこそ人柱力、・・・・・・決まっている、砂の中で探したら、お前以上のコレクションが存在しないことに気付いたからだ、全く目論見以上の獲物が掛かって俺は嬉しいぜ、さてさて、どうしようかな、さっきの悪魔も特別製だったんだが、もう少し遊ぶか・・・・・・さて、今度はこいつだ、苦労して調べ上げたんだぜ。主の一柱だ、名前をバルロンという、俺が今作れる中で最高品質に分類される傑作だぜ、三代目風影に匹敵する労力を割いているんだ、お前らも楽しんでくれよ」


糸が、集まる、糸が紡ぐ、糸が実体化する、黒い体を紡ぐ。


黒い体は咆吼をしない、我が王だ、我が全てだ。クグツに為ってもなお、気高き魂はその場に存在をしめしていた。

最後に羽と角まで精微に紡がれた。
漆黒よりもなお黒い瞳が我愛羅達三人を見据える。


我愛羅はその場で最善の選択をした。

「逃げろ!!!!!!!!!!!カンクロウ、テマリ!!!!!足手まといだ!!!!!!!!!」


しかし、二人は足が竦み動けない。


「ちっ・・・・・・サソリ、俺が狙いなんだろ、決戦に相応しい場所に案内しろ!!!」


「へぇ、何もせずに強さが分ったのか・・・・・・ますます欲しくなったぜ、いいぜお前は特別だ、タイマンに集中できる場所に連れて行ってやるよ、その化け物についてこい」


黒い悪魔は羽ばたき、その場を後にした、我愛羅は二人を一瞥し、素直に黒い悪魔の後を追った。


「お前らにはもう興味が無い、帰っていいぞ・・・・・・ちなみにあの黒いのはさっきの悪魔の何十倍かわからねえが、俺が戦った時にも死線を何度も潜った相手だ、現風影にはこう報告しておきな、一尾の人柱力は死にましたってな。はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」












*サソリ、のりにのっています。世界が融合してもっとも力がアップしたのはナルトかこのサソリです、ほおって置けば勝手に暁も裏切って世界征服を始めかねない勢いです。



[4366] サソリ・オブ・ザ・パペットマスター4
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/05 16:55

UOには魔法と分類されている攻撃がある、対象を認識し、呪文を唱える、秘薬とマナが残っていれば、魔法成功値が計算され、目出度く成功すれば対象に向かい魔法の効果が及ぶ。


NARUTOの術は、瞬身の術、幻術ならば幻術返しといった方法で、避けることが可能だ。あまりに大規模な範囲攻撃ならば限りなく防ぐことは零に近くなるが、熟練者になればなるほど、術のさけ方のレパートリーは広がり、例えば我愛羅の砂の鎧、ペインの斥力、その他にも攻撃を避けるのに様々な手段が用意されている。


だが、UOの魔法は成功してしまえば、いくら瞬間移動が成功しても、魔法の効果が届く前に相手の息の根を止めても、避ける事は絶対に、絶対に出来ない。


ゆえに、魔法を使える敵にいっぺんに狙われてしまう事は、下も下策。
塵も積もれば山となるの諺の通り、どんな小さな、弱い魔法とはいえ、喰らい続けることは絶対の死を意味する。


カカシはどういった手段を取ったか。
鍛えられた忍者でしかなし得ない方法というものがある、限られた領域に足を踏み込んでいなければ仕えない手段というものがある。


四代目火影ならば?



木の葉の黄色い閃光の名のもとに、瞬きすら許さず、1個中隊どころか、1個聯隊すらも殲滅してしまうだろう。



ならば、はたけカカシは?




「木の葉の白い牙・・・・・・ちよ婆に聞いたことがあるが・・・・・・これほどとは、な」

其所には数多のモンスターに対して、魔法を使わせることすら、口を開くことすら許さない、絶対の力が存在していた。



「それは、俺の親父の徒名だよ、尊敬はしているが、一緒にして欲しくないね」


カカシは写輪眼を使わずに戦っていた。それどころか具体的な術、身体強化の術以外使わずにモンスター達の視界に入ることもなく、殲滅していた。
ただ、己の力を体を使い、それだけでモンスターの群れを圧倒していた。
モンスター達の視界に入らない、目の前にいるのに見えない、それでは魔法が使えない、忍者のモンスターを相手にするときの忍者たるべき姿の一つだった。時折やぶれかぶれのフィールド魔法が使われるが、そんなものに引っかかるカカシではない、為す術も無いまま、下級~中級モンスター達は数を恐るべき速度で減らしていく。


「それで、もしかしてこんなものでお前の狂った人形劇は終わりなのかな?」

ゆっくり会話をする間も無く、サソリが用意したモンスター達は跡形も無く殲滅させられていた。

カカシは息も切らしていない。




「くくくくくくくくくくくくくくくくくくくく、はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」




「悪い悪い、お前の事、嘗めてたぜ、違うな、木の葉の里を嘗めていたとでも言うのかな、最高だぜカカシ、愛してるぜ」

初めて、今まで脳天気な笑い声しか上げていなかった声が、真剣味を帯びる。

「・・・・・・失礼した、お前にはせめてこれくらいのものを呼ばなきゃ、つまらなかったよな、主の一柱だ、自己紹介をしろ、サキュパス」


糸が集まり、魅惑的なラインを作っていく・・・・・・全てが集まり、十人いれば十人が心を奪われるであろう女性体が姿を現す、男の夢に入り込み、淫夢を見せ、生気を搾り取る夢魔、サキュパス。UOでは近寄る者から一定間隔毎に体力を吸い取り、自らの体力に変換する、魔法は一定間隔で全てを反射するマジックリフレクションの魔法を恒常的に掛けている。


そんな厄介な存在が、自我を持ち、NARUTOの世界に足を踏み出す。
サキュパスは魅惑的なウィンクをカカシに向ける。

カカシは平然とした様子だ。

「これはこれは・・・・・・お子様には見せられない化け物だな・・・・・・夜のお遊戯でも始めようってのかい?ゲスだなサソリ」

「ははっ戦えば真価がわかる、さぁお前の全てを俺に見せてくれ、俺の芸術の糧となれ!カカシ!」







Flam Kal Des Yle・・・・・・

グシャッッ・・・・・・


ナルトが最後の一体になったリッチの頭を握りつぶした。
「魔法なんて、唱えさせないってばよ」

ナルトは後ろを振り向く。

「大丈夫か?サスケ」


サスケは初めての写輪眼、それも連続使用、死闘のストレスですっかり参っていた。

「・・・・・・黙れ、俺に気をかけるな」

サスケは死体の上に大の字になって横になった。

「スタミナが無い奴だってばよ」

ナルトは周りの壁を調べ、どこか抜け穴がないかどうか調べている。

「・・・・・・このスタミナ馬鹿が・・・・・・」

サスケは口を開くのも億劫だ、逆を言えばナルトのスタミナは常軌を逸している、全ては九尾の力なのだが、あまりよく分っていないサスケはただただ驚嘆していた。

快復力も天と地ほど違っていた、同じ範囲魔法、メテオや、チェインライトニングを受け、ナルトはすぐ反撃に出て連打を防いでいたが、サスケは一度体勢を整えないとどうしようもなかった。

派手な術など使う暇も無しに、ただ、肉弾戦にてモンスター全てを駆逐するに至る。


ボコンッ


ナルトは隠しスイッチを発見、ためらわず押した。
サスケは見ていなかったが、見ていたら躊躇しろとか言っていたかもしれない。

余計なストレスをためずにサスケのためにはよかった、のかもしれない。


「サスケ、こんな所にゆっくりしていらんないってばよ、さっさと出て、こんな腐った真似するやつなんかぼっこぼっこにしてやるってば!」

サスケはナルトに負われた、反応する気力すらなく、サスケはただ負われるがままになっていた。




しばらく、忍者の視力でも何とか見える程度の暗闇が続き、光が出口に見える、自然ナルトは足を速め、出口に向かった。


もちろん、罠だ。



パーーーン、パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ


クラッカーが鳴り、拍手が何処からともなく部屋に響き渡る。

ナルトが出た部屋はクリスタル状で、如何にも堅そうな床、天井、壁。


そして、その中心に位置するは、サスケが目覚める前にナルトが一人で駆逐した裸の巨人、その王、オークキング、主の一柱であった。


「よくリッチ共を殺せたな、頑張れよ、後一体で、出口だぜ」
部屋の至る所に仕込んであるのだろう、声があらゆる所から聞こえる。


「いい加減顔を見せろってばよ!」
ナルトはサスケを背負いながら叫ぶ、ナルトにとってクグツはどうしても好きになれない戦闘方法だった。


「ははははははは、まだまだ元気だな、お前らが余りにも手強いんで、こちらも特別な一体を用意してやったぜ、報酬はお前らの命だ、こいつに勝てたら今回は見逃してやる、カカシのように全てを磨いたらまた相手をしてやるよ、未熟な対象じゃ俺の芸術は完成しないからな」


「こんな奴じゃなくて、俺は、お前をぶちのめしたいんだってばよ!」

ナルトの怒りは最高潮だ。



「そんな言葉は俺の作品を超えてから言うんだな、行け、オークキング」

類い希なる力の結晶がナルト達に向け足を踏み出した。








カイの訓練は熾烈を極めた、休む暇もなく徹底的にしごかれれば誰でもそうなる典型だった。
「なんか・・・・・・本体が、呼んでいる気がするってばよ・・・・・・」

「・・・・・・それは、九尾がってことか?」
ナルトは弱々しく頷いた。

どういう事だ?ナルトの多重影分身改良型の秘密の一つに、九尾の力を混ぜ込んでいることがあげられる。「うしおととら」からヒントを得たんだが、九尾の尻尾って分けられるんじゃないの?

そうナルトに聞いて貰ったら、高笑いされたってさ、そんな事を言い出す人間は初めてだったらしい。

影分身の中にコアたる、九尾の尻尾を埋め込むことで、他に類がない、まねが出来ないナルトだけの多重影分身改良型が完成した。

恒常的なチャクラ供給や、分身なのに身体が鍛えられると言った利点も全てこの御陰だ。


ただ、本体に九尾の本体になにかあると、今回のように分身達一斉に解除される兆候が出てしまう。


「そんなに苦戦しているのか?特に強敵なんていないはずだろ、大蛇丸は相変わらず移動していないし・・・・・・もしかして暁と鉢逢ったりしてんのか?」

まさかな、尾獣狩りはまだ先の話のはず・・・・・・だが、強くなっているカカシもついているのにこの九尾の反応はおかしいだろ・・・・・・白と再不斬がもっとパワーアップしているとかか?いや、波の国じゃねえしな・・・・・・、駄目だわからん。


「ナルト、三代目の所に行くぞ、何か分っているかも知れない」

弱々しく頷き、ナルトは俺を抱え、三代目がいるべき場所へ掛けだした。偉そうな割に情けないって言うな、忍者に運んで貰った方が全然早いんだよ!











*九尾の尻尾云々はこの作品だけのルールです、九尾が協力的ってことで、納得お願いします。



[4366] サソリ・オブ・ザ・パペットマスター幕間
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/06 11:07
in日向家

ナルトは大人しく時々眠りながらもヒナタに人体の構造について懇切丁寧に習っていた。ヒナタにとっては蜜月、だが、そんな幸せの時間も突如終わりを告げる。
「ナルト君、顔が真っ青よ!」


「悪い・・・・・・ヒナタ、落ち着いたらまたくるってばよ・・・・・・」


ぼふんっと、煙を残し、影分身は姿を消した。


inイルカ


in火影


inカイ


三人の前で、三人のナルトががたがたと震えている。

「・・・・・・三代目」

「言わずとも良い、・・・・・・里の依頼は機密情報なんじゃがな、依頼主が裏切っている以上、構わんじゃろう」


三代目は地図の一点を指さした、そこは・・・・・・どこだっけ?


「砂と木の葉の国境地点だ、今は戦争中では無いとはいえ、いや戦争中でないからこそ、大量の戦力を集中させるには、国際法上、まずいことになる」
疑問の顔をしていたのだろう、イルカが付け足してくれた。


なーるほど、火薬庫ってやつか。


「そこで、何がおこっているんだ?」

三代目の後ろから仮面を被った暗部が一体の人形を持ち出してきた。

「最悪な相手じゃよ、クグツ使いが盛んな砂に確認したところ、サソリという者の使う人形によく似ているそうじゃ、聞けば聞くほど反吐が出る奴じゃよ」
三代目が珍しく悪意しか向けていない。


・・・・・・まじかよ・・・・・・暁か・・・・・・早すぎるぜ・・・・・・今のナルトじゃ・・・・・・手も足も出ない。
何処でこんなに決定的に時代が違っちゃってんだよ。・・・・・・セカイガボクラニキバヲムク・・・・・・お前の言った通りじゃねえか、「かい」


「じゃぁ、火影様、このナルトの状態も」
「うむ、サソリが相手では苦戦、いや死闘も必死じゃろう、すでに援護部隊は出しておいたが・・・・・・後はカカシ頼りじゃな、奴がいる限り、やすやすと遅れを取るはずが無い」


「主が、洞窟から消え、洞窟自体が消えていることも何か関係が有るかも知れません」
人形を持ってきた暗部がぼそりと呟いた。


「どういう事じゃ?」

「最近は、暗部の演習などに使うのですが・・・・・・洞窟が出来たり潰れたりを繰り返しているそうです、今まで確認が取れている以上、洞窟の主を殺害するかどうにかすると、洞窟も潰れます、ですがこんなに頻繁に洞窟が墜ちるとは・・・・・・」

そりゃ考えられないわな、つまり、黒閣下やら古代竜やらのボスを殺すと一時的に洞窟も潰れるって事か、んでまた涌くから、新しい洞窟が出来ると。


・・・・・・待てよ、そんな簡単にボスを殺せる実力者って言ったら。
「サソリだ、三代目のじっちゃん、最悪だ、如何にサソリが強くても九尾が目覚めれば勝てるわけがない、のに、こんなにナルトが震えているって事は、それ以上のもしくは同等の化け物が大量にいるってことだ、俺の持っている情報を全て言おうか?」

三代目は迷わず頷いた。イルカは何処か信じられないといった顔で俺を見ている。暗部は顔色が伺えない。


「サソリって奴はな、史実上最高のクグツ使いだ、何せ自分の所の風影すら興味本位でクグツにしちまうサイコ野郎だからな、奴が、サソリの奴がダンジョンのボス・・・・・・さっきの其所の暗部の言葉を借りれば、洞窟の主に興味を示さないはずがないんだよ、さぞかし奴は喜んだんだろうぜ、コレクションしているとしか考えられねえ」


くそっ、もっと早く知りたかったぜ、俺のスキルは徹底的にボス退治に向いていないのが裏目っていたか・・・・・・糞が・・・・・・もっと早く知っていれば、真っ先に三代目を騙してでも全戦力を使ってサソリをしとめにいったのによ・・・・・・。


「他に、何か情報はあるのかの?」

三代目は冷酷な目で、冷酷な忍びの目で俺を見ている。


構う者か、今ナルトに死なれて困るのは俺も一緒だ。こんなにずれた歴史、今此処でばらしてもどうせ違うんだろ?後の事なんて知るか、後は頭がいい三代目に任せちまえ!


「まずは、砂から、ちよ婆を援軍に頼め・・・・・・どう足掻いても間に合わないだろうがな・・・・・・サソリが絡んでいるってしれば、あの婆さんはあわくって里から出るだろう」

「・・・・・・確かに、ご意見番の一人がすでに砂から出立していることは確認されています。その者の名前まではわかりませんが・・・・・・老齢の女性だそうです」
暗部が俺の言葉を継ぎ足してくれる。流石優秀だね。


なるほど、クグツについて聞いたときにすでにちよ婆にも話がいっていたか。

「後は、四代目の時空間忍術、誰か使える奴はいるのか?ついでに目印をカカシ辺りが持っていてくれればなおいい」

三代目は首を横に振る。

ちっやっぱりそううまくいかないか。
「それは無理じゃな、どうしても反動が押さえられんのじゃ・・・・・・四代目は連続して使用していた以上、何か手があるはずなのじゃが、技術班が研究中の代物じゃよ」


ちっ、何か手がないか・・・・・・俺が行ってもサソリには全く手がでねえが、ボス相手なら知識が大いに役に立つ。っつっても黒閣下やら古代竜辺りはお手上げなんだけどな、その他のロッティングコープス、オークキング辺りは楽勝だぜ。




くそ、どうする、三体の内また一体が消えた。




・・・・・・遙か彼方に見えるあの空を歩いている馬は、黒い馬は、もしかしてナイトメアじゃねえのか?


人が、乗っている・・・・・・テイマー、この世界に何でいるんだ・・・・・・もしかして、俺の同胞なのか?


何で、今更、俺が心から望んでいた、心の内を全て話し合える、仲間が、どうしてこんなタイミングで・・・・・・どうして、どうして、どうして!!!


「三代目・・・・・・アニマルテイミング、アニマルロア、獣医学、この中に聞いたことが有る言葉はないか?」

三代目は首を横に振った、その目はひたすら打開策を考えているのだろう、せわしなく上下している。

「イルカは?其所の暗部は?」

イルカも暗部も揃って首を横に振った。

この里の最大責任者、それにアカデミーの教師、裏の顔の暗部、揃いも揃って聞いたことが無いって事は、スキルについては、未だこの世界に知られていないと考えていいのか?


・・・・・・ナルトがまた一人消えた。


残るは、後一人。

・・・・・・大蛇丸からTrackingを外したくねえんだが・・・・・・ここでナルトが死んだら、俺の計画が全て、消える。



ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅううううううううううううううううううう



大きくため息をついた俺を三人が三人とも訝しげに見つめる。


「三代目、もう一つ情報だ、大蛇丸は今、ここから北に約860㎞、西に340㎞の所にいる、これが俺が分る最後の大蛇丸の位置情報だ、暗部を張り付かせるなりして、あいつの所在を確実にはっきりさせてくれ・・・・・・頼む」

三代目は、俺の目を見て、重々しく頷いた。
「蛍火、すぐに選りすぐりの暗部をむかわせい」


「はっ」

三代目の言葉に疑問一つ浮かばせず、暗部は姿を消した。

「これから、俺は、賭に出る、イルカちょっと俺を其所の豆粒ほどの大きさの空を飛んでいる生き物の下に運んでくれないか?」

暗部でもあるイルカがいれば例えナイトメアが襲ってきても何とかなるだろう。


イルカは三代目の方を伺う。

「いいじゃろう、ナルトのためというそなたの言葉に嘘は感じられん、存分にやるがよい、どうせ今から援軍は第一波しか間に合わん」


三代目、その調子じゃ修行中も甘やかしていたんじゃねえのか?・・・・・・愚問だな、この人にとっては里人全てが家族だったな。

「ありがたい、イルカ、急いでくれ、ナルトには多分時間がない」

俺はそっとナルトに対してTrackingを仕掛けた、これでナルト本体の位置情報はばっちりだぜ。


後は・・・・・・


さーて、まずは下りてきて貰うか。

「イルカ、後できちんと話すから、これからやること一切口を挟まないでくれよ、時間がもったいない」

イルカは前の事を思い出したのだろう、しかし渋々ながら頷いた。


これくらいなら・・・・・・「下りてこい!テイマー!Por Ort Grav」

Lightningの魔法だ、簡単に言えば、雷。
当然のことながら雷は、上から降る、そしてイルカの御陰でほぼ真下にいる俺がその魔法を唱えれば。



ドッッッッッッゴーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!



お、墜ちてくら、成功成功。

空中でナイトメアは体勢を立て直すが、乗っている人間は、別だ。



「うわぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ」


20歳代弱の人間が、墜ちてきた。
「イルカ、悪いがキャッチしてやってくれ」


俺の同胞ならば身体能力は普通の人間くらいのはず、まず助からない。

そんな俺の予想とは裏腹に、墜ちてきた男は器用に体勢を整え、イルカの手を借りずとも地面に傷一つなく下りてきた。



「一体何なの?誰だい、いきなり雷遁の術なんかぶつける人は!!・・・・・・あれ?」

男は俺の顔を見るなり言葉を失った。

・・・・・・こいつどっかで見たような・・・・・・この間抜けそうな顔が・・・・・・どっかで・・・・・・

まぁいい、後でどうにでもなる。

「おい、お前のナイトメアか、あれは」

空に未だ浮かんでいるナイトメアを指す、こちらを睨んでやがる、まぁいきなり攻撃されれば当たり前か。

だがいきなりこちらを攻撃してこないのが、飼い慣らされている証拠。

「・・・・・・君・・・・・・」

何だよ煮え切らない奴だな。
「おい、質問に答えろよ、あのナイトメアはお前の馬かって聞いているんだ」

男は未だ惚けている。

「死ねぇぇぇええええええええええええええええええええええええ、行きなさいカイ0号突進よ!!!!!!!」

ちっもう一人居たか、誰だ、俺の名前をナイトメアなんかにつける奴は!


きっと女の声だが、ろくでもない奴だな。


男は慌てて笛を取り出した、なんだ、幻術でも使うのか?多由也みたいだな。

「・・・・・・沈静化!」
Peacemaking・・・・・・こいつ、バードか!

「・・・・・・っ直人、邪魔しないでよ!いきなり無礼な真似をした奴は、懲らしめな・・・・・・きゃ・・・・・・貴方・・・・・・」

ナイトメアが沈静化により落ち着き、戦闘意欲をなくす、顔を見れる位置まで下りてきたテイマーはそこそこの顔を持った女だった・・・・・・んーーーこいつもどっかで見たような・・・・・・なんか懐かしい気がするのは・・・・・・気のせいだろ!


男がバードってことは、この女がテイマーか、ナイトメアに命令もしてたし間違いないだろ。よし、第一段階クリア、あれは、女じゃなきゃ飼い慣らせないからな。


「おい、其所の女テイマー、っつてもわかりにくいか?女猛獣使い!お前はユニコーンを手に入れているか?」

女も男も二人して俺の顔をじろじろと見ている、何だよ、時間がねえってのに。

「琴音ちゃん・・・・・・」
男が呟く、どっかの誰かと似ている名前だな。


「おい、琴音とやら、お前はユニコーンを手に入れているのか?」

「・・・・・・ええ、確かに私の可愛い子供の一人よ」
猛獣を子供扱い、か。ペットを家族扱いするってのはよく聞く話だが、テイマーってのは其所までしないとやっぱり駄目なんだろうな。



よし、第二段階も突破、後はこのテイマーのスキル次第だ、ついでにユニコーンの機嫌もな。


「それより・・・・・・」
男と女が同時に口を開く。

俺は女に土下座をした。
「頼む・・・・・・一生のお願いだ、いきなり逢った子供の言葉なんて信じられないかも知れないが・・・・・・ユニコーンを貸してくれ、俺の大事な弟子が窮地に陥っているんだ」
頭を下げるなんて・・・・・・一体いつ以来だろう・・・・・・前の人生の時も俺はあんまり謝らないやつだったよな。


「・・・・・・子供に、しかも男にはユニコーンは扱えないわよ」

「それは・・・・・・そうだな・・・・・・」

「琴音ちゃん・・・・・・」

「黙ってなさい、直人・・・・・・ふふふ、そうね、お姉さんが僕を抱っこしてあげるわ、そうすれば、貴方でもユニコーンに乗れるわね」

にっこりと花のように微笑んでいる女の意図は未だ不明だ、だが、もうこれしか俺に残された手は無い。

「悪い、ところで、同胞だと思うが、お前のAnimalTamingのスキルはいくつだ?」

女はにっこりと笑う。
「安心しなさい、血を吐くほどの思いをしてまで鍛えてきたのよ、私も直人もそれぞれ、95は超えているわ・・・・・・さぁ来なさいカイ」

「あれ、俺自己紹介したっけ?」
何でこの女は俺の名前を知っているんだ?

女は答えない、ただ微笑んでいるだけだ。巻物を取り出し、口寄せを開始する。
「おいでませ!かい10号!」


きらきらと雪が舞う、違う、光の粒子だ。


蒼い角を宿し、白で埋め尽くされたその体、聖なる乙女しかその背には乗せないといわれている幻獣、その名をユニコーン。


「さぁ、しっかり私に抱きつくのよ、この子は気むずかしい子だから、この子でどうするの?カイ」

やけに馴れ馴れしいな・・・・・・まぁいいか、頼みを聞いて貰っている俺が文句を言う筋合いじゃない。

男は男で何かにこにこしているし、おかしな二人組だ。

「琴音とやら、ユニコーンには特殊能力があるのは知っているか?」

「当然でしょ、乗馬している者の生命が危機に瀕したとき、異次元にゲートを広げると言われて・・・・・・貴方、その力を故意に引き出そうって言うの!?時空間忍術の変わりにするつもりね?」

この女、勘がいいな。
「後はスキルとテイマーとの心がどれほど通っているかだ、そして行く先の座標は決まっている、これだ」

俺達は向き合って抱き合っている。

Trackingのスキルを込めた手を女の額に苦労して伸ばす、しかし何故この向きなんだ?子供だっこでもいいだろうに、俺的には役得なんで文句は無いが。


「ええ、分ったわ・・・・・・かい10号、お願いして、いいかしら?」


ユニコーンは暫し、沈黙した後、静かに角に力を集め出した。

「あるじの為なら、だって、ありがとう・・・・・・さぁぎゅっと私に掴まりなさい、カイ!」

「・・・・・・琴音ちゃん」
男はもう満面の笑みだ。おかしいやつらだ。

「直人、ちょっと行ってくるわね・・・・・・報告書の作成は任せたわ!」

「うん、ところで・・・・・・カイ君、まだ気付かない?」


え?


男の顔が、直人の顔にダブる。いや、まさかそんな。

ユニコーンの角が光を放つ、ゲートが、開かれる。

「本当に馬鹿ね、直人と私に気付かないなんて、お子様なのは頭の中までかしら?カイ」
女の微笑みが、昔の琴音に、ダブル。


・・・・・・お前ら・・・・・・

「さぁ跳ぶわよ、私も初めてだからしっかりと掴まってなさい!!!」


ユニコーンの光が俺と女テイマー・・・・・・琴音を包み込む。


・・・・・・目の前がゆがんでいた、くそっ・・・・・・この俺が、懐かしくて泣くなんて・・・・・・くそっ

琴音の手が俺の頭をなで回す。暖かく、柔らかかった。

「お帰り、カイ、木の葉に戻ったらちゃんと今まで何処にいたのか、全部教えて貰うわよ!覚悟しなさい!」


「お帰りカイ君!僕らは、ずっとず~~~と信じていたよ、絶対に生きているって!!!」

直人が薄れゆく視界の中で盛大に涙を流しながら、手を振っていた。あの馬鹿たれが、大きくなっても泣き虫だな!くそっ!人のことを言えねえぜ。






[4366] サソリ・オブ・ザ・パペットマスター5
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/06 14:10


イタチと鬼鮫は、急ぐ必要も無いので、ただ暁本拠地へと足を進めていた。

イタチの肩に収まった主が一言イタチに聞こえるように呟いた。


「「世界」が歪んで居る・・・・・・イタチ、とてつもない事がどこかで起こって居るぞ」


イタチは速度をゆるめない。

「それは、俺達にも何か影響を及ぼすのか?」

「・・・・・・今は、まだ分らぬが・・・・・・我の同胞達の嘆きが聞こえる・・・・・・望まぬ事をさせられているのじゃな・・・・・・ただ、哀れじゃ」

主は器用に祈りの型を作り、まだ見ぬ同胞の為に祈った。祈る神は果たしているのか、それはイタチにも主にもわからない。








「砂時雨」
豪雨の様な雨がバルロンに向かい、放たれる、黒い悪魔は羽を一羽ばたきするだけで砂を振り払う。

「砂手裏剣」
多量の砂で出来た手裏剣が黒い悪魔に向かうが、全てを手のひらで受け止め、砂は砂に還る。

黒い悪魔ーバルロンは一向に攻撃すらしない。ただ、我愛羅の攻撃を受け止めているに過ぎなかった。


「一尾の人柱力、無駄だよ、お前の人としての力じゃ、俺の傑作には永遠に傷一つつけられねえぜ」

虚空からサソリの声が響く。


辺りには人っ子一人いない、広大な砂漠、黒い悪魔が案内したそこは、まさに我愛羅の力が最大限発揮できる場所だった。

「・・・・・・」
黒い悪魔は何もしない、我愛羅の動きを見極めようとするだけなのか、ただその黒い瞳を我愛羅に投げかけていた。


「さぁ、お前の真価を俺に見せろ、単なる人柱力を狩ったんじゃ俺の芸術の肥しにもならねえ、出すんだよ、守鶴を!」



砂が我愛羅を覆い尽くす、さながら砂の繭だ。
「いいだろう、・・・・・・そんなに望むなら、見せてやるよ、・・・・・・絶望を思い知れ、狸寝入りの術」


ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお


一つの化け物が解き放たれた。







サスケは、甘い気絶から目が覚めた、透明に近い硬質な壁を背にして寝かせられていたのだろう、少しの睡眠で何とか動くことは、出来るようにまで復活していた。


ドンッ


ぐぇ
ナルトがすぐ横に吹き飛ばされてきた。

肺から強制的に空気が押し出される音がした。

「・・・・・・ナルト」

床に這い蹲るナルト、全身で息をしていた。サスケの呟きにも反応すらしない、ただ必死に眼前の相手を睨んでいる。
サスケはナルトが飛んできた方向に目をやると、そこには化け物がいた。

中、遠距離での攻撃手段がいまだ有力なそれが存在しないナルトに取っては、考える限り最悪の相性の敵が其所に立っていた。


ナルトに何処から来たのか入り込む、光り輝く羽のようなもの。
入り込むと同時にナルトは全身の傷が癒え、再び化け物に立ち向かっていく。


だが、相対するは、力だけで言ったら古代竜すら優に凌ぐ、主の一柱、オークキング、接近戦を挑むには危険すぎる相手だった。 


「影分身!」

ナルトが五体に分かれ、オークキングに立ち向かっていく、だが、一撃ずつで奇麗に仕留められ、本体もまた、壁にとばされる。



サスケにはわかった、傷ついた自分に注意が行かないようナルトがあえて休まず戦っている事を、勝ち目が無い相手に無謀とも言える戦いを止めないことを。

「ナルトーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」


サスケの脇に光が集まる。

まずは白い馬の足から、少しずつ全身が明らかになり、馬の背には子供と木の葉の中忍の女が乗っていた。

あまりにこの場に似つかわしくない幻想的な光景のため、サスケは、言葉を失った。





・・・・・・よし!どんな相手かと思ったら、オークキングか、ナルトが苦戦するのも無理はない、影分身に任せ自分は高見の見物決め込んでいてくれればもっとよし、だったんだが、ナルトの性格じゃそこまで考えつかないか。

「In Jux Hur Ylem」

オークキングが俺達を認識して、尚かつ突っ込んでくるまで、数秒間かかる、それだけで、もう詰みなんだよ!


今更第五サークルの魔法に失敗するわけもなく、たっぷりと詠唱時間を取った。


「行けよ、全てを切り裂く剣の精霊、Blade Spirits!お前の格好の獲物だぜ!」


ボフン!

カンカンカンカカンカンカンカンカンカンカンカカンカンカンカンカンカンカンカカンカンカンカン


「もう一丁!In Jux Hur Ylem」

ボフン!

カカカカカカカカンカカカカンカカカカカカカカンカカカカンカカカカカカカカンカカカカンカカカカカカカカンカカカカンカカカカカカカカンカカカカン


よし、これでもう勝ち確定、おやおや、うちはの小僧まで一緒だったか・・・・・・まだまだ甘いねナルト、仲間を助けるためにお前は無茶をしていたんだな・・・・・・、三代目、喜べよ、あんたの精神は確かにこんな成り立ての下忍にまで浸透していたんだな。


「琴音、悪いが出口を探してくれ、俺は二人を治療する」


オークキングはもう何も出来ない。攻撃速度が違いすぎる剣の精霊相手にただその頑丈な肌を切り裂かれるだけ、いくら力があっても攻撃させて貰わなければ、ただのでくの坊だ。Dispelすら使えないその身を呪え。


「わかったわ・・・・・・もう誰に言ってもいいって事かしら?」

はははは、そういや、そんな約束もあったな。

「ああ、もう絶交なんて言わないよ、今までよくそんな餓鬼の約束なんて守ってたな、ありがとう琴音」

まぶしい笑顔と共に琴音は空に舞い、出口の検索に入った。ユニコーンの探査能力ならばすぐに見つかるだろう。


どれどれ、まずはうちはの坊ちゃんからかな。
包帯を巻き始める・・・・・・10.9.8.7.6.・・・・・・成功。

急に全身の疲れやら傷やらが無くなった事に驚いているのか、サスケは俺をまじまじと見ている。

「・・・・・・チャクラまで回復している・・・・・・お前一体どんな手品を使ったんだ」

手品、手品か、それで話が通じれば俺も苦労しなかったんだけどな。

「説明は後回しだぜ、うちはの坊ちゃん、お前を庇ってくれていたナルトを治療しなきゃな」

サスケは何も言わず、剣の精霊を見つめだした。不思議だろうな、あんな生物口寄せじゃ絶対に呼び出せないからな。


「よく頑張ったな・・・・・・三代目もイルカも心配してたぜ」


ずたぼろのチャクラも切れたナルトはへへへへと笑う。


九尾の解放までは至らなかったか、さぞかし頭に来ていたろうに、よく我慢したな。

「偉いぞ、ナルトちょっとまってろ」

包帯を使う10.9.8.7.6.・・・・・・成功!


カカカカカカカカンカカカカンカカカカカカカカンカカカカンカカカカカカカカンカカカカンカカカカカカカカンカカカカンカカカカカカカカンカカカカンカカカカカカカカンカカカカン



ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお


オークキングの断末魔が響き渡る。ご苦労さん、BladeSpirits

「An Ort」「An Ort」

ディスペルで奇麗に二体を消す、ほっとくとサスケの坊ちゃんやナルトまで襲いかねないからな。


「カイ、あったわよ!」


天井部分に出口も発見、空気孔だとしても、俺達が抜け出すには十分すぎる、サソリに見つかる前に・・・・・・


「お前ら・・・・・・一体何処から入り込んだ」
倒れたオークキングがスイッチだったのか、声が聞こえだした。


壁全体から声が聞こえる、怒りに満ち満ちている声、間に合わなかったか。

俺を抱きかかえる為、下りてきた琴音に小声で問う。

「扱えるモンスターは何体で、どんな種類を持っている」
「カイ10号までよ、1から5までがドラゴンで、0がナイトメア、後四体は修行用のドレイクとか馬とか、予備のドラゴンね」
「なんで俺の名前なのかは、この際おいとくとして・・・・・・ナイトメアに乗騎を変え・・・・・・ドレイクにナルトとサスケを咥えさせ、後三体のドラゴンで天井に向けて一斉砲火、出来るか?」

テイマーが扱えるペットの数は五体まで、世界が変わってもそれは変わらないだろう。乗騎は元の世界じゃ一に数えなかったんだが・・・・・・実験もしていない状態で冒険は出来ない。


琴音は力強く頷いた。
「やれ!サスケナルト、こっちにこい!敵の胃袋の中から脱出だ!」
「おいでませ!かい0号、1、2、3、8号!」

ドレイクが嫌がる二人を口に含み、ユニコーンが消失、変わりにナイトメアが現れ琴音が俺を抱えて乗騎、ドラゴン三体がその場に待機。


「お前ら何を・・・・・・!!!!」

「かい1.2.3号、all fire!!!!!!!!!」
琴音の声が高らかに攻撃の合図を歌い上げる。

壁から聞こえる声、十中八、九、サソリだろう、お前の思惑になんか絶対に乗ってやらない。

琴音が愛情を持って鍛えたのだろう、三体のドラゴンは揃いも揃って最大級の灼熱のブレスを天井に向けてはき出した。直線的なエネルギーの塊が空を穿つ。


後に残るは空の青さと、灰とかした天井のみ。

「ドラゴンを護衛だ、行くぞ琴音!」
琴音は俺の頭をわしわしと撫でまくる。
「今は私の方がどう見ても年上よね、琴音さんってつけなさいよ、坊や、All follow me!」

空を飛ぶナイトメア、後に続くドラゴン、サスケとナルトを口に含んだドレイク。

「殺す、お前らは殺す、イレギュラーなんて許さない・・・・・・俺の芸術を壊しやがったやつは・・・・・・絶対に許さない・・・・・・覚悟していろ」

けけけけけ、サソリの野郎、状況をぶちのめしてやった俺達に切れてやがる。


「サソリー、残念だったな、人形のお遊戯は一人でやってろよ!観客も無しに、お前一人でたった一人で、寂しく虚しく勝手にやっていろ!」


うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうううううううぅぅぅぅぅぅぅぅ

ドレイクの口の中でナルトだろう、ナルトが何か言っているが、ちょっと無視だな、ナイトメア及び琴音のペット達は結構な速度で空を舞う。まずは脱出だ。












緑色のゾンビは、全ての攻撃に対しなんら反応を見せなかった。

ただあーっっといいながらその腕を振り回すだけに終始していた。


ガスンッ
「・・・・・・本当に厄介ね、動き自体はノロマみたいだから攻撃を喰らうのは其所の馬鹿だけだけど」

隙を見て、草薙の剣をロッティングコープスに振り下ろすが、やはり皮膚を切り裂くにも至らない。

主はそれぞれこの世界に来て、制限が外されている、古代竜ならばその知恵、その力と、全般に及んでいたが、オークキングは力だけ、そしてこのロッティングコープスに限って言えば、頑丈さだけが他の主より遙かにぬきんでていた。

飛段は、最初の位置から動けていなかった。
「うるせーーー、角都、さっさと直してくれよ!」

角都は解毒薬の合成に一苦労していた、飛段は威勢こそよかったが、最初に喰らってしまった毒のせいで、全く動けていなかった。

角都の援護が消え、実質一対一になってしまった大蛇丸は、苦戦こそしていなかったが、接近戦は避け、中距離~遠距離での戦いに専念していた。


だが、術ですら大した効果も出ず、口寄せしても口寄せした者は毒にやられ、すぐに脱落。



「こりゃ駄目ね、戦うだけ無駄だわ、イタチの万華鏡写輪眼ならともかく・・・・・・術すら通じないんじゃ疲れるだけね」

影分身に戦わせながら大蛇丸は二人を振り返る。

「どう、動けそう?撤退よ、こんなの相手にするだけ無駄よ」

「・・・・・・俺も賛成だ、飛段、直ったぞ」

「ちっ、金目の物はねえ、主は面倒くさいだけ、さんざんだな、おい」


「ふふふふ、飛段、角都、貴方たちちょっと私の里に寄りなさいよ、面白いものみせてあげるわ」

大蛇丸が不気味に笑う。

「お前、そんなこと言って、俺達を囲おうとか・・・・・・」
「里に俺達が入ってもいいのか?」
飛段を押しのけ、角都が交渉する。


「ええ、昔の仲間だし、里長の私がいいって言うんだから構わないわ、飛段、お金になりそうなものもあるのよ?」

「よし、行こう、大蛇丸、実は昔からお前のことはいい奴だと思っていたんだ、ほら何してんだよ角都、さっさと行くぞ!」

飛段の変わり身の速さに角都は、しかし馴れていた。

「・・・・・・わかった、火遁・頭刻苦」

火の海がロッティングコープスもろとも大蛇丸の影分身も飲み込む。

影分身はすぐに消えるがロッティングコープスは平気な顔をしてうめき声をあげて術に耐えていた。


「手際がいいわね、さぁ行くわよ」

自らの影分身が攻撃されても大蛇丸には何も思うところが無いようで、出口に向かい動き出した。

飛段に角都も後に続く、広大なフィールドにはロッティングコープスのうめき声だけが残った。




[4366] サソリ・オブ・ザ・パペットマスター6
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/06 16:15



「こりゃぁ・・・・・・参ったね・・・・・・遠距離の術は跳ね返しちゃうのか」

カカシは人知れず苦戦していた、速度こそサキュパスとは比べものに為らない為、一撃を食らうことは無かったが、近寄れば力を吸い取られ、遠くからの攻撃はマジックリフレクションが全てを反射、しかも吸い取られた力は、サキュパスの体を修復する。

今は影分身を対面に立たせ、サキュパスの能力の見極めを行っていた。


「んー、別に戦わなくてもいいや、ナルト達も心配だし、無視しよっかな」

サキュパスが影分身の一体を抱きしめる、キスと共に影分身は消滅した。


「・・・・・・全く、化け物じゃなきゃ、是非お相手してもらいたいような女なんだけどね、バイバイ」


影分身を適当に産みだし、カカシはその場から去った。
影分身の感覚は本体に戻ったときに再現される。


カカシはその場を離れ、探しに行こうとしたその時、近くの地面から炎の柱が空に走った。

「あれは?」


「イレギュラーめぇぇええええええええええええええええええええ!!!」


カカシが易々とサキュパスから逃げられたのも、サソリが冷静さを失っていたことに起因する。


炎が上がった所から黒い馬に乗った者達が空に舞い上がり、後にドラゴンが続いていた。

「おやおや、あれは・・・・・・木の葉の額当て、それに火影様の所にいた坊やじゃないか、少なくとも敵じゃないね、まさか彼らが増援なのかな?」


少々疑問に思いつつも、カカシはカイ達のもとに走った。また、一体が掴まったようだ、カカシに柔らかい感触が走る。軽くにやけながらも、カカシは真面目な顔を崩さず、カイ達のもとに走った。






「それで、どうするの?このまま木の葉に帰りましょうか」
頭の上から琴音が語りかけてくる。
「いや・・・・・・サソリの力を削いでおかないと、と思ったがそうだな、カカシだったら一人で平気だろうし、増援も送ったとか三代目も言っていたよな、帰るか」


出来るなら苦労は他の奴に全て渡しておきたい、それが俺の性格だ。




ぐぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!





「何なの!?」
琴音が驚愕している、当然だ、あの狸を象った、化け物は・・・・・・

あれは・・・・・・守鶴!まさか、覚醒させたのか、我愛羅がいるのか!



「いい加減出すってばよ!!」
ナルトがドレイクの口をこじ開け、外に出てきた。

サスケも後に続き、二人してドレイクの背に掴まった。
あ、悪い悪いすっかり忘れていた。


地面には中級の化け物が蠢いていた、このまま地面に下りるのも面倒くさい、が、どうするかな。






ぐぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!







守鶴にばかり目がいっていたが・・・・・・対面に立つあれは、黒閣下!嘘だろサソリの野郎あんな超上級モンスターまでクグツにしてんのか!?

「琴音、地面に向けてドラゴン三匹による一斉砲火、化け物を駆逐しとこうぜ」

琴音が再び俺の頭をぐりぐりとなで回す、なんだよいちいちうざいな。
「了解、何度言ったらわかるのかしら、琴音さん、よカイ・・・・・・All Fire!!」

ドラゴンの炎が地面をなめ回す、

後ろから影!
影はドレイクの後ろに飛び乗った。

「いやぁ、凄いペットもっているんだな・・・・・・確か、医療班の琴音中忍だったっけ?」

カカシ、あの炎を避け、この高さまで飛んだのか、流石にやるな。

「乙女には、殿方にはわからない秘密がたくさん御座いましてよ、カカシ上忍」

ほほほほほほほ、と優雅に琴音は笑う。
ははははははは、とカカシは笑った。

「で、そっちの坊やは君の弟だったりするのかな?」

琴音が俺の頭をガシガシ撫でる。


「いえ・・・・・・大事な幼なじみです、今までずっと外を彷徨いていた甲斐性無しの幼なじみです」

こりゃあ木の葉に戻ったらもの凄く追求されそうだな。

「お前らも、無事で何よりだ、サクラはもうすでに遠くにやっておいたから安心しろ」

ドレイクの背中に乗っていたナルトとサスケの頭をカカシが撫でる。

「カカシ先生、これからどうするんだってばよ」

カカシは頬をぽりぽりとかいた。


「んーこのまま帰るか、サソリの息の根を止めておきたい所だが、まだまだ戦力を隠し持ってそうだからな、無茶は出来ない、だが、一応同盟関係に有る以上、砂の坊やを見殺しには出来ないんだ、これが、例えどんなに化け物でもな、お前らにわかるかな?」

教育係としての言葉か、確かにそうかもな、そして俺の意見はナルトに任せるとするか。




「風遁・練空弾」
守鶴の一撃が黒閣下に向かう、黒閣下は器用に避け、腕を天に振りかざす。

メテオやら、チェインライトニングやらを使っているようだが、砂が全てを蹴散らす。

「げへへへへへへへへへへへへ、何をしているのかな、悪魔ちゃん、俺様に勝てるわけねえだろうがよぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!」

「風遁・練空弾」

巨大な風の塊が連発されている。






ナルトが俺の方を見ていたので頷いてやる、後はお前の意思で道が決まる。


「・・・・・・俺は、化け物を飼っている」
この場でそのことを知らないのは、サスケと琴音だけか。

ナルトは、仲間であるサスケに聞いて欲しいのかな。

カカシがサスケの何か言おうとした口を塞いだ。
「だからって訳じゃないけど・・・・・・俺は、みんなを救いたいってばよ・・・・・・それくらい出来なければ、火影になるなんて、口が裂けても言えないってばよ」


ナルトは常にまっすぐ前を向いている、捻くれている俺なんかとは大違いだ。



サソリにとっても耳が痛い言葉なのかも知れないな、じゃなきゃいきなりこんな空を飛ぶ化け物を、ドラゴンに殺されるだけなのに、襲わせたりしないぜ。

「All Kill」
ドレイクも加わり、炎の一斉砲火が俺達の周りに集まったガーゴイルやらエアエレメントやらを一掃する。



「白秘儀・十機近松の集!」



地面では新たな登場人物が現れた。特徴あるクグツで、あれは・・・・・・カンクロウとテマリか、その二人を守っていた。
サソリの有る意味一番の天敵、ちよ婆か。手際が早いな。





「イレギュラーは抹殺する」

サソリが新たなクグツを紡ぐ、思考が暴走にはいったそれを、俺達は一時の安堵感から見逃していた。



悪夢が、加速していく。








*総力戦とまでは行きませんが、戦いはもうちょっと続きます。



[4366] サソリ・オブ・ザ・パペットマスター7
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/06 20:56



「嫌じゃ・・・・・・嫌じゃ嫌じゃ嫌じゃぁあああああ」

イタチの肩車の上で幼女が暴れる、髪の毛を引っ張りあげる。


「どうした、主」
動くのには流石に邪魔なのか、イタチは幼女を抱え上げる。

「矛盾じゃ、矛盾が起きている、・・・・・・世界が都合あわせに動いて居る、とてつもない悪意を持った者が・・・・・・くっ我も巻き込むつもりか!!!」


「イタチさん、どうしたんですか?いきなり止まってしまって」
鬼鮫が戻ってきた。

「・・・・・・わかった、主がその気なら、・・・・・・我も相手をしよう・・・・・・イタチ、悪いの、行き先を変更させてもらう・・・・・・同胞の敵討ち、違うな世界の修正をしなければいけなくなってしもうた」

主は服を脱ぎ捨てる、そのまま古代竜の姿に変身、否、戻った。

「イタチ、ついでに其所なイタチの仲間も乗るが良い、飛ばすぞ!」



主は気付いて居たのだろうか、その行動こそが自分が忌み嫌っていた「世界」の意思そのものだということに。











「げへへへへへへへへへへへへへへ、俺様を相手にするには何億年もはええんだよ!!!」

守鶴の風遁・練空弾が数発ヒットし、黒閣下は沈んだ。


・・・・・・何処かおかしい、守鶴がいくら強いとはいえ、黒閣下は後半ほとんど攻撃らしい攻撃をしていなかったぞ。あんなに差が有るわけがない。




ナルトが突然胸を押さえだした。

「お前、どうしたんだってばよ!いきなり暴れだして!」

傍から見れば独り言なんだが、九尾か、意思疎通が高いレベルで行われているから出来る芸当だな。

下ではちよ婆が全てのクグツを排除し終わった後だ、すげえな、カカシの後を追ってきたサキュパスをクグツで斬殺してたぜ、なるほど、吸われても平気なクグツならサキュパスと接近戦をしても支障が無いのか。





「イレギュラーは削除する」




糸が、町の至る所に張り巡らされていた糸が、一カ所に集まる。何だ、すげえ嫌な予感がするんだが・・・・・・見ると全員が、ドラゴンすら震えてやがる。これは、まずい。


「琴音!ドラゴンを全て引っ込めろ!やばい!」

「・・・・・・わかったわ、ご苦労様!」

ぼふんと音を立てドラゴン三匹は姿を消した、おいでませ、が呼び出し、ご苦労様、が収納の言葉なのか、お前は何処の日本人だ。




「俺が、ここまで虚仮にされたのは、生まれて初めてだぜ・・・・・・手前らは変な力を使うな、ならば俺は全力を持って潰してやるよ、もういい、全員消えていなくなれ」



これだから天才って奴は嫌いだ!
ちょっと失敗したくらいですぐ切れやがる!
遊び心を持っていればまだ対応出来たのに!


「琴音、全力だ、全力で逃げろ!おい、下の砂のもの達!手前らもさっさと逃げろ!あいつはもう俺達の手におえる奴じゃない!我愛羅は諦めろ!全員死ぬぞ!」


もう、誰も勝てない。勝ってこない。



遊び心が消えたサソリは、無敵だ。





糸が張れたその先には、金色に輝く体を持つ古代竜。
漆黒の体を持ち、今度は巨大な剣も持っている黒閣下。


種類こそ二種類、だが、至高のモンスターと呼ばれているそれらが・・・・・・





二体ずつ。




一体何の冗談だ、最低最悪のコンビネーションじゃねえか、こいつらが同時に現れたらどんな奴でも手がつけられねえ。しかもさっきのオークキングに見る限り、様々な制限が外れてやがる。


サソリめ、リソースを確保するために俺達にわざと雑魚を殺させたな。あの無意味な突撃はこのためか!







古代竜が二体同時に口を開いた、あれは・・・・・・ブレスだ!

「琴音!」

ナイトメアは踵を返し、逃走の体勢に移ったが・・・・・・ドレイク、もしかして、竜族の王には逆らえないなんて制限が出来てるのか!?

「カカシ、二人を抱いて逃げろ!」

カカシはうなずき返してくれた、未だ胸を押さえているナルト、恐怖で縮こまってしまっているサスケ、下忍じゃ仕方がない。


「Kal Vas Xen Corp」
・・・・・・間に合え、間に合え!


一発目は検討違いの方向に飛んでいった、だが、その熱量、オゾンの臭いが漂っている・・・・・・喰らえば一瞬で天国行きだな。

もう一匹の方は?


ぐぉぉぉぉぉぉっぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお


守鶴の腕が削れている、ブレスが掠ったか。


サモン・デーモンが成功、


時間稼ぎにしかまったくならねえ、琴音の竜は使えない、ドレイクを見る限り古代竜には種族として逆らえないようだな、だが目くらましにはなる。



「行け!」

デーモンが下の砂の奴らを抱え、とび去った。


我愛羅を見捨てたくは無さそうだが、悪いがお前らが残っても犠牲者が増えるだけなんだよ。


古代竜がこちらをみる・・・・・・駄目だ・・・・・・ドレイクが主、琴音の為にボス達に突っ込んでいった。

一瞬で呪文がドレイクの体を焼き尽くす、四体同時かよ。


「8号!」


再びブレス、ナイトメアは急旋回して避ける、しかし上から雷が!
一発は俺のマジックリフレクションで反射、だが残り一発が俺達を直撃!


ガガガガガガガガン!




地面に落ちた俺達、・・・・・・「In Vas Mani」
潮時だな。


光が琴音を癒す。


「琴音、ユニコーンを出して逃げろ・・・・・・あいつらは俺が引きつける」


のしのしと近づいてくる三体、一体の黒閣下は傷ついた守鶴と対峙している。

古代竜がニ体、黒閣下が一体、贅沢すぎて涙が出るね。


「In Jux Sanct」

マジックリフレクションの効果が俺に及ぶ。

包帯が巻き終わる、俺の傷は奇麗さっぱり消えた。

「駄目よ!」

頼むから言うことを聞いてくれ。
「折角再開できたのに、なんでまた離ればなれに・・・・・・なんで貴方が犠牲にならなきゃいけないの!」

強情なのは、餓鬼の頃から変わってねえな・・・・・・。


「An Ex Por」
琴音が痺れる。

「An Lor Xen」
姿消しの魔法、琴音の姿がナイトメアもろとも消え失せる。


「バイバイ、琴音、・・・・・・さん、直人をよろしくな」
琴音の顔が見えないのは、今に限りありがたかった。



「Vas Ylem Rel」
変身の魔法、虚仮威しもいいところだが、今は翼が欲しい、デーモンの姿に変身、空高く、魔法の射程外に舞い上がる。



「おら、こっちだぜ!ついでだ、In Vas Mani」
守鶴の腕が再生する、元から再生能力が高いんだろう、俺の魔法は後押ししたに過ぎない。

古代竜が俺を敵と認識した、意識がびんびん感じるぜ、黒閣下の一体も翼をはためかす。


守鶴は今度は本気の黒閣下と死闘を繰り広げている、あいつは一体ならば何とかなるのか・・・・・・ナルトとサスケとカカシはうまく逃げたかな、砂の他の奴は何とかなるはずだ。・・・・・・頼む、自来也レベルをそれも二人ほど連れてきてくれ・・・・・・こいつらは、ちょっとやそっとのレベルじゃ餌にしかならねえ・・・・・・。




仮想隕石が俺に降り注ぐ、メテオ、か。

仮初めの翼がはぎ取られ、俺は地面に伏した。


抵抗が無くなったのを見て三体は俺を包囲するように囲んだ。


もう包帯を巻いても間に合わない。体力が回復しても意味が無い。
・・・・・・バイバイ、ナルト、立派な火影になれよ。










~諦めるなんて、お兄ちゃんらしくないね~
・・・・・・もう誰がどう見ても詰みだろ、お前にも悪いことしたな、このからだ、返せそうにないぜ。

~あはは、僕はもう死んでいたんだよ?今更現世に興味はないよ~
・・・・・・そうか、俺の体は禁術口寄せ・穢土転生の派生か・・・・・・どうりで成長しないわけだ。

~お兄ちゃん、最後だね、バイバイ~
・・・・・・ああ、そうだな、俺は死ぬんだな、これが、走馬燈か。

~お兄ちゃんは死なないよ、僕が世界に訴えたから、ほら、来たよ~
・・・・・・何が、だ?




灼熱を超えた灼熱、真の神のブレス、それが俺の頭上を過ぎて一体の黒閣下に炸裂した。ついで、五連魔法、一気に体力を削りに削られた黒閣下は沈んだ。


「この偽物共が!!!!我が来たからには覚悟しろ!!!!全て殲滅してやる!!!!同胞の亡骸を使いおって・・・・・・このゲス共が!!!!」




もう一体、古代竜が憤怒の情を持って立っていた。
~それじゃ・・・・・・バイバイ、楽しかったよ、ありがとう、お兄ちゃん~
お前か、お前が・・・・・・!!



UOでもあり得なかった光景、三体の古代竜が俺を挟んで対面する。






戦いは終局に差掛かった所だった。



[4366] サソリ・オブ・ザ・パペットマスター終局
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/06 23:27




「至急対応を練らないと・・・・・・全てが滅びるぞ」


圧倒的存在感、カカシは二人を抱えながらもう米粒ほどに為っていた四体の主の姿を確かめた。

振り返ったその時に背後を猛スピードで駆け抜ける影、前を向くと後ろで轟音が響いていた。



「この偽物共が!!!!我が来たからには覚悟しろ!!!!全て殲滅してやる!!!!同胞の亡骸を使いおって・・・・・・このゲス共が!!!!」




主の数は四体、だが、一体の存在感は、他を圧倒していた。

「駄目だってば・・・・・・お前を出すわけには・・・・・・いかないんだってばよ・・・・・・カイと、火影のじっちゃんと、約束したんだってば・・・・・・」







「げははははははははははは、さっきと違い楽しませてくれるじゃねぇか悪魔ちゃん、風遁・練空弾!」

守鶴はがぶり四つで黒閣下の一匹と戦っている。


俺の周りでは古代竜の三匹が、睨み合っている。



・・・・・・折角カイがくれたチャンスだ。

Hiding

*スキルが成功しました*

Stealth

*スキルが成功しました*


俺に注意が来ていない証拠だな。



「どうした、我の同位体としては情けないの、かかってこぬのか!!!!」

あああああああああああーーーーーーーもうちょっと待ってくれ!!!!


三体が同時にブレスを放つ、だから待ってくれ!!


「Rel Po・・・・・・」

「チャクラも使わず消え現れたな、お前が「感染源」だな、ついてきて貰う」

首筋にトスンと衝撃を受け、俺は意識を失った。


・・・・・・誰、だ。



三体のブレスがぶつかった。


決して有り得てはいけない展開。
灼熱を超える灼熱、余りのエネルギー量により、次元が揺らぎ、空間が壊れた。




狭間の世界が顔を出す。


イタチはピンポイントからはカイを運び出せたが、空間破裂範囲からは逃れられなかった。
「・・・・・・くそっ間に合わない。悪いな鬼鮫」

イタチを支える大きな体。

「何言っているんですか・・・・・・私達は相棒じゃないですか」


「なぁんだぁぁああああああああ、これはなんだぁぁあああああああああああ!!!」
守鶴の声が響き渡る。



古代竜が三体、黒閣下、守鶴、そしてイタチ、鬼鮫、カイ。


黒い闇が飲み込み、世界は収束を始めた。





後には空虚が残った。







「カイーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」


琴音の声が辺りに響き渡る。



[4366] サソリ・オブ・ザ・パペットマスター後始末、&次章プロローグ
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/09 16:18

光が届かない、原理的にはブラックホールに近いかも知れない、それが去った後、広大に円形に抉れた大地が、其所に、残った。


後は疲弊した者達のみ、木の葉援軍が到達した時、戦局はすでに終焉を迎えていたのだが、カカシが発見した、それは、砂も木の葉も到底見逃せる者ではなかった。








「・・・・・・っ?」

呻き声一つ上げず、時間と共に目を覚ましたそれは、完全に無力化を施されていた。具体的には、手足をばらされ、一切の身につけていた物をはぎ取られ、尚かつ木の葉援軍暗部精鋭による、完全チャクラ無効結界の中に置かれていた。



「・・・・・・ちっ、へまをしたもんだぜ・・・・・・おいらの最高傑作が・・・・・・負けたのか」


類い希なるそのクグツスキル、かつて砂の里を混乱に陥れたその者の名前は、サソリ。稀代の天才クグツ師であった。


「サソリよ、その躰が本体と言うことはすでに分っておる、これが、核だと言うこともな」


現、砂の里のお目付役が一人、ちよ婆、史実では木の葉の中忍、サクラと共にサソリと死闘を繰り広げる役目を負う、サソリの天敵になりえる、熟練したクグツ使い。


「はっ・・・・・・ちよ婆か、・・・・・・おいらは負けたんだ、好きにするがいいぜ」


「・・・・・・何であんな真似をしたんだってばよ」

ナルトに取っては初めて出会う、真の意味での強敵、死を考えたことも初めてだった、尚かつナルトに限らず木の葉の下忍に取って、今まで平和に愛を語らい、平和に日常を過ごしていた者達が目の前で崩れ、血肉を晒し、化け物へと変貌する様を見てしまったことはトラウマ級の出来事であった。


「・・・・・・ああ、勘がいい木の葉の下忍か、お前にはわからねぇかも知れねえな。芸術って概念がよ、やろうと思えば全てが全て生きたままクグツにする事も出来たんだが、今回は性能テストをかねていたんでね、楽しんでもらえただろ?」


何か口を開こうとしたナルトをカカシが抑える。


「ナルト、こういう手合いにまともな議論をしようと思っていても、無駄だ、昴さん、術でぱっぱと全部暴いちゃってください、サソリ、お前の背景、組織全てを探らせてもらうぞ・・・・・・特にお前の仲間の能力、いるとしたら全てをもらう」

カカシが暗部の一人に合図を送り、黙礼で頷いた暗部がサソリに近づく。


サソリの能力は危険すぎた、個人としては現時点での木の葉の里の中でも、数少ない対軍兵器として数えられているカカシから見ても、サソリは思想、能力共に危険すぎた。


「俺にその手の術は無駄だぜ?」

暗部は構うことなくチャクラ無効結界を一時外し、周りをチヨ婆のクグツが囲んだ状態で術を施す、が写るは空虚のみ、暗部は静かに首を横に振った。


「いいぜ喋ってやるよ、おいらが所属している組織の名前は、暁、手前らも名前くらいは聞いたことがあるだろう、人数は10だっけかな、今は大蛇丸が抜けて9か」


「・・・・・・大蛇丸だと!」

カカシが反応する。
「・・・・・・今はどうしているかしらねえけどな、能力は悪いが全員が全員秘密主義でね、能力は知っていても弱点なんか知らねえぜ、知っているとしたら、イタチの写輪眼、おいらの相棒のデイダラって奴は爆弾を使う、後はそこにいるゼツってやつの蜻蛉の術くらいか、やれ、ゼツ」


「オレマデ、ハナスコトハナイダロウ」
ちよ婆の隙を付き、周りに木の葉暗部精鋭が入るにもかかわらず、歪な姿をした少年の手にはサソリの核となるパーツが握られていた。


周り及びちよ婆のクグツもすぐに殺しに入るが、目を離していないのに、気付いたらゼツはまたすぐ離れた所にいた。
「では、約束通りだね」

ゼツはサソリの核を握り潰した。

その他の本体のパーツも核を失い、崩れ落ちる。

「マッタクジブンノアトシマツクライ、ジブンデツケロッテ、そう思いませんか?皆さん、また、どこかで逢いましょう。ーーーオレハ、僕は、ドコニデモイルシ、何処にでも居ない、コノハノジョウニン、貴方には理解出来るかな?」

半分が白、半分が黒、特殊な容貌の少年は、変わったしゃべり方で、笑いながら、再び影に沈み、後には崩れ落ちたサソリの躰のみが残る。


「イタチだと!」

サスケが激昂するが、後の祭り、灰しか残っていない状態では何も答えられない。

「尻尾は必ず掴むよ、暁」
カカシの独白が静かに響く。


「あれ?これって何だってばよ」

ナルトが見つけたそれは、「玉」の文字が入った指輪だった。

「ナルト、それは俺が持っていよう、ちょっと調べたいことがある」






「木の葉の白い牙」

「いえ、カカシです」

ちよ婆は無視する。
「本当にサソリが持っていたクグツ、こちらで保管してもかまわないのかの?」


カカシは軽くため息をつく。
「ええ、もう化け物のたぐいは残っていないんでしょ?純然たるクグツの力のみでしたら、私達には扱えませんし、何より私には現場指揮権が与えられています・・・・・・人柱力を失った以上、その程度でしたら構いません・・・・・・もっとも、一度見させていただいた技、私に、いえ木の葉に通じるとは思わない方がいいと思いますけどね」


ちよ婆とカカシは揃って笑い合った。


すれ違い様、二人は言葉を交わす。
「・・・・・・暁には十分注意して下さい、それと大蛇丸にも・・・・・・同盟国としての忠告です、やつが関わってろくな事になった事例の方が少ないですからね」

「砂を余り嘗めるで無いぞ、人柱力だけに頼るばかりではない・・・・・・とはいえ、忠告は忠告か、しかと承った、木の葉の白い牙よ」


カカシ以下計9名は、木の葉の里に帰っていった。
放心状態の琴音は暗部の女忍に運ばれていった。








「カンクロウ、主に全てを引き継いで貰う、サソリの残したクグツ、ワシが扱うクグツ、その全てをな」

「ちょ・・・・・・」

「むろん今すぐという訳ではない、我愛羅無き砂の次代風影には、それ以上の力が必要じゃ・・・・・・単独でも木の葉の白い牙、いや、はたけカカシを抑えられるようになっておらんでは話にならぬ」

「なんで俺が・・・・・・」

「わしの修行は厳しいぞ、早速帰ったら始めるぞ、覚悟せい」
ちよ婆はカンクロウの不満を一切無視して、砂への帰り支度を始めた。


テマリは、何処か上の空で、何かを考えているようであった。

「・・・・・・よし、決めた、ちよ婆、私木の葉に留学してくる。全てを学び取って砂に役立てるよ、木の葉も私だったら人質としても文句ないでしょ」


「・・・・・・険しき道になるやもしれんぞ?」
「我愛羅がいない今、残った私達が頑張らなきゃ、そうでしょ?ちよ婆」
「・・・・・・わかった、話は通しておこう、まずは帰ろうかの、我らの里に」







砂もまた、新たな決意を胸に里に帰る。





木の葉も砂も、残った暁の脅威、一体ですら最終的にはどうにも出来なかった、特に壊滅的なダメージを負ってしまった砂にとって、対抗策をすぐに生み出すことは共に共通した規定事項であった。







「全探索部隊に告ぐ、綱手を探せい、それと朧火、自来也を呼び戻すんじゃ・・・・・・もはや一刻の猶予もならん、とな。カイの残した遺産、大蛇丸の位置はもはや掴めた、自来也の任務は解除じゃと伝えい」


三忍に対抗しえるのは、三忍もしくは更に上位の忍びのみ。ゆえに三代目は貴重な戦力ではあるために、三忍であった大蛇丸に対抗するために、同じ三忍である自来也を当てていた。


時代は次の局面へと強制的に進まされた、それは誰の介入があったのか、この世界を俯瞰的に眺められる人間でも居ない限り、それは、わからない。






薄暗き忍びの本拠地。

自らよりも大きな体をした忍びを抱えた者、端正な顔立ちをした者、計三名が大蛇丸の前に跪いていた。


「君麻呂、貴方らしくない失態ね・・・・・・でもまぁこんな可愛い子を連れてきたんだから許しちゃおうかしら」


弦野の決死の術により、君麻呂は無事に洞窟から脱出出来たが、弦野はそこまでだった、気配を察して白の所まで追いつき、弦野は敵であった白に未だ意識が戻らない君麻呂の事を頼んだ。


月読は主に精神にダメージを与える術だ、もっともそのまま殺しきる事も可能というとんでも無い術だが、君麻呂の強靱な狂信を持ってしても回復までに暫しの猶予が必要であった。


弦野は今度こそ状態2の力に耐えられなくなり、その躰を虚空に散らせた。


「・・・・・・大蛇丸・・・・・・」

同胞が最後までこだわったその者の名前を白は静かに呟く。

そして処置中の再不斬をみる・・・・・・治療が必要だ、それもなるべく早く。


垣間見た、最高クラスの実力、自らの上を行っていた弦野ですら、一撃で葬りさられた事実。


「・・・・・・起きましたか、君麻呂とやら・・・・・・私を私達を大蛇丸の所に連れて行きなさい」


白の運命の歯車がくるくる回る、良いか悪いか、後の楽しみ、回って回って時代を廻す。






そして、最後にーーーーーーー



「サソリが死に、イタチ、鬼鮫の反応が消え、飛段、角都が招集に応じない、だと?」

いきなり半数が脱落してしまった暁、ペインは平然を装っていた、慌てていたのは主に小南であった。


残ったのは、ペイン、小南、ゼツ、デイダラ、そして新たに加わったトビ、の五人。

「ちっ蠍の旦那、死んだのかよ・・・・・・」

「イタチや鬼鮫がいなくなるとは、どうしたんですかね?何かに巻き込まれたとか」

「飛段と角都は大蛇丸と一緒にいるところを見たよ!ナニカワルダクミデモシテンジャネエノカ」

「ペイン、これでは計画が・・・・・・」

「何も、慌てることはない・・・・・・だが少し計画は早めよう・・・・・・」


五人が五人、それぞれの懸案事項を並べ、会議をしていた所に、それは、現れた。「世界」が「世界」を喰らう、「世界喰い」という現象、UOの世界は、最低最悪最強最狂の女をNARUTOの世界に遣わした。



「ふぅ・・・・・・やれやれ、この世界にわらわを呼び出したのは、主らか?」

妖艶なる笑みを浮かべ、惜しみなくその裸体を晒す女性、その髪は長く黒く、瞳は虚ろよりも暗かった。

トビは女が現れた瞬間、その場を逃げ出した、演技すらも捨てて、うちはマダラとしての最高の力を使い、暁から逃げ出した。



彼の本来の姿による、長年の戦闘経験から導き出されたそれは、ーーーーーーーあの女は、「世界の敵」だ。













*ゲストキャラ登場、分かる人いなかったら御免なさい、UOのどこかの派閥の一つに崇拝されているあの女性です、彼女な理由は何処か暁には花が無かったからかな?*



[4366] エセリアル虚空間
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/11 22:10


地球やブリタニアをはじめとしてさまざまな異世界が浮かぶ、エーテルによって満たされた異空間。


カイが扱っていた魔法とは、このエセリアル虚空間から流れ込むエーテルの流れを、呪文や秘薬を媒介として操ることによって強力なパワーに変換する技術である。


制限が外された古代竜三体による、有り得てはいけない全力ブレスの衝突。

意識を無くしていたカイは、幸せだったのかもしれない、人知を超えすぎた悪夢の戦いを目にすることが無くて、幸せだったのかも知れない。




破滅空間に巻き込まれても彼らの戦いは続いていた。

まず守鶴は余りのエネルギー量の不可に耐えられず、その場で意識を失い体を崩れさせた。
イタチや鬼鮫も、余りの環境の違いに動けない、高負荷に気を失わなかったのは流石暁といった面目をたてられていた。


全く動けない彼らは、巨大な敵が三体もいるのにも関わらず、しかし、絶望を感じてはいなかった。


黒閣下・古代竜二匹VS実質古代竜一柱

「Kal Vas Xen Corp」

息をするが如くエーテルを扱う術に長けていた元々ブリタニアの生命達は、力を増大させていた。更にあり得ない神の領域にまで達した彼らの行動をこの空間の中では、誰も抑えきれない。

あえて呪文を使い、更に力を引き出した主は、守鶴が倒れ、フリーになってしまった、敵の黒閣下に対して呼び出した最大強化されたデーモン達をぶつけた。




人間が魔法の元として扱っているエーテルで満たされている空間、エセリアル虚空間。


古代竜程の超上級モンスターとなれば、呆れるほどの、地上が存在していたとしたら、巨神兵の如く、五日もかからず滅ぼせるほどの力を扱う。


主が呪文を唱えている時間を使い、相手方の古代竜達は、一斉にブレスを主に向けて吐きだした。


突然、鬼の顔がブレスの前に立ちはだかり、ブレスは儚く消えていった。

「・・・・・・なんじゃ、動けたのか、イタチ。手助けご苦労」


立ち上がれない状況にもかかわらず、イタチはカイを抱え込みながら、須佐能乎・八咫鏡を展開させていた。


イタチは答える事が出来ない、息をすること、術を展開すること、思考することが精一杯。


「先程から思っていたのじゃが・・・・・・主ら、・・・・・・自我が無いようだな。哀れじゃな・・・・・・それで竜の王と呼べるのか・・・・・・さらばじゃ、同胞・・・・・・「我」よ」



相手方の古代竜達にはとうとう出来なかった、エーテルの最大使用により、究極にまで高められた主のブレス、一斉砲火により全てが閃光に包まれた。



後にははじめから何も存在していなかったの如く、古代竜達の体はエセリアル虚空間に還元されていった。



「・・・・・・さて、ここは元々の我が生まれた所らしいが、・・・・・・どうやって帰ろうかの」


主は足下を見る、イタチ・鬼鮫は気絶こそしていなかったが動くことが出来ず、カイ・我愛羅は気絶していた。


「情けないの・・・・・・Vas Ylem Rel」

変身の魔法、主は再び幼い子供の姿に変身した、以前はイタチがすぐに服を貸してくれたのだが、今はイタチは動けない。



素っ裸のまま、四人の元に歩みより、顔を見渡す。


「ふむ・・・・・・イタチよ、お主運が良いな、確かにこの子供、間違いない感染源じゃよ」


しかしイタチは返事をすることが出来ない。


例えるならエベレストクラスの高山にいきなりぶち込まれた状態だ、厳密に言えば違うのだが、馴れるまでいくらイタチでも動くことは出来ない。



「やれやれ・・・・・・Vas An Nox」

光り輝く粒子がイタチたち四人を包み込む。


「本来は解毒の魔法なのじゃが、エーテルにより強化された今なら効果あるじゃろう」

主の言葉通り、呪文が聞いてから暫く経ち、イタチと鬼鮫はようやく立ち上がる事が出来た。


「・・・・・・悪いな、此処は、何処だ?」
「おやおや、私達はてっきり死んだのかと思ったんですがね、此処は天国ですか?」

ふらつく頭を抑えながら二人は辺りを見渡す、地面が無いのに立っていられる、上も下も左も右も、前も後ろも無い空間。


明るくもあり、暗くもある、二人の常識には存在しない世界。


「チャクラが減らない・・・・・・万華鏡写輪眼を使ったのに全く減っていない」

イタチは自分の体の異変に気付いていた。

「当たり前じゃ、此処は、エセリアル虚空間、主らがチャクラと呼んでいるそのもので構成されている、アバタールと呼ばれる存在ならば望めば全てが叶えられる空間なのじゃが・・・・・・主らは明らかに違うからのぉ」


主の答えに二人は分かったような分からないような表情を返す、二人の頭、いや、いかに頭が良くても、理解が及ばない世界ということだけは理解できていた。

「・・・・・・出口は?」

イタチがふと我に返り、主に尋ねる。
主は、静かに首を横に振った。


「誰かが、ムーンゲートを開かぬ限り、我らは此処から抜け出すことは出来ん・・・・・・我が見た限り、お主らの世界にはムーンゲートはおろか、ムーンストーンすら存在しておらんかったようじゃが・・・・・・全ては神頼みじゃな、運命のいたずらが起こることを期待するしか道は、無い」


イタチと鬼鮫は揃って口を閉ざした。








「流砂瀑流!」

ザザザザザザザザザザザザザザザザ


砂が大量に動く音が耳元に聞こえる、五月蠅い、少しは気持ちよく寝かせてくれ。


「イタチよ、目覚めたぞ」


女の子、幼い女の子の声が耳元で聞こえた。

でも何でそんな年寄りみたいなしゃべり方なんだ。


・・・・・・誰、この怖い人。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ助けて!殺される!!!!!!!!!!!!!!!!」

むにゅ

誰かは知らないが抱きついたみたいだ。

あれ、柔らかい。


撫で撫でと頭を撫でられた。やっぱり柔らかい。


「ほれ、鬼鮫よ、子供が怖がって居る、少しあっちでも向いていろ」

あ、落ち込んでいる。

キサメ・・・・・・鬼鮫?

暁じゃねえか!何でこんな近くにいるんだよ!

ちょっとまて、さっきの女の子の声は何て言った?

鬼鮫、とくれば・・・・・・そのペアは・・・・・・

「・・・・・・感染源の子供よ、名をなんという」

かっこいい顔ですね・・・・・・流石腐女子人気が高いだけはある・・・・・・初めまして、イタチさん・・・・・・。

「どんな状況だよ・・・・・・ああ、そこで砂を使って暴れているのは我愛羅か・・・・・・」


むにっ

頬を柔らかい手で引っ張られる。

「これこれ、現実逃避は結構じゃが、名前くらい教えんかい、いつまでも子供じゃ呼びにくくてしょうがないわい」


結構な美少女だな、うーん、年は同じくらいか、全く少しは年を取って欲しいもんだぜ、流石に馴れたが生活に色々不便すぎ。


物を動かせる魔法Telekinesisが使えなかったら俺結構泣いていたかも。

高いところに有る物が取れないって結構切ないよね。


「・・・・・・俺の名前はカイ、だよ」

美少女が俺の顔を覗き込む。

「・・・・・・ふむ、カイ、か。違うな・・・・・・お主の本当の名前はなんじゃ?」

何かを聞きたそうなイタチを無視して美少女は俺の頬を引っ張ったまま、俺を問い詰める。
目が爬虫類のようにほそまる。


「我には、嘘・・・・・・故意についているようではないみたいじゃが、嘘は通じない。お主の言葉で、真実を話せ、何かこの場をエセリアル虚空間を脱出するヒントが含まれているやもしれん、何せ、主は感染源じゃからのぉ」


「かん・・・・・・せん・・・・・・げん?」


「うむ、主の存在が、其所にいるイタチたちの世界に我らの存在を呼び出した元凶になったのじゃ・・・・・・つまり誰よりも我らの詳しい存在、このエセリアル虚空間についてもしかり」



「ちょっと待ってくれ、俺はウルティマオンラインについては知っているけど、エセリアル虚空間なんてエーテルが満たされている空間としか、知らねえぜ!」


美少女の目が更に俺の目を覗き込む。


「・・・・・・主の記憶、全てを話して貰おう、言葉じゃいちいち面倒じゃ、この空間ならば、この場所ならば、出来るはずじゃ・・・・・・我の目をもっと見ろ、これイタチ、頭を支えんか!!」


イタチが素直に言うこと聞いているよ、一体何者だこの美少女は!


*決戦存在が現れました・・・・・・キープレイヤー「Minax」*
*・・・・・・世界が更新されました、アバタールを召還して下さい*


「・・・・・・ミナクスだって?・・・・・・アバタール?」


久しぶりに流れたメッセージ。
だが内容が意味不明だ。


「・・・・・・主が存在しているだけで、いや、違うなもはや主は関係ない、主が居ただけで、其所のイタチの世界は喰われかけている・・・・・・だが、よりによってあの魔女を呼び出したのか・・・・・・「世界」め・・・・・・味な真似をしてくれる・・・・・・」


美少女は俺が呟いた言葉を拾い上げ、顔を盛大に顰めた。


「・・・・・・じゃが、ここから抜け出せなければ、何も出来ぬ。主の記憶、わしが貰う、暫し我慢せい、Por Corp Wis」


何故魔法が使える!
しかもMind Blastだと!?

駄目だ、この距離では・・・・・・この存在からは、逃げられない、そうか、こいつはこの気質は・・・・・・乱入してきた古代・・・・・・竜。













*イタチ尻にしかれる、の図*



[4366] 星の間、再再
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/12 04:31

俺がいる・・・・・・ひたすらパソコンに向かいネットゲームをやっている俺がいる。


「カイ」じゃない、本当の俺・・・・・・現実だった世界での俺、脇目もふらずただ・・・・・・ただネットゲームを行っている。



「あれが、主の姿だな・・・・・・本来の姿、じゃな」


あんたは、誰だ。


「ふふ、別に取って喰いはせん・・・・・・少しばかり主の記憶を覗かせて貰うのみ」


そうか、別にどうでもいい。ネットゲームをやらなきゃ・・・・・・仲間が待っている・・・・・・。


「・・・・・・ふむ、マインドブラストが少しばかり効き過ぎたかの・・・・・・自我を薄れさせ境界に踏み込めるまでは楽じゃったが、これでは要領を得ぬな」


俺の中に入っているあんたは・・・・・・どうでもいいか・・・・・・。


「さて、どうやら、お主のキーワードは、ゲーム、そして自己の名前、じゃな。何をそんなを忌避しているのじゃ?」


・・・・・・どうせみんな死ぬ、だったら俺は俺じゃなくていい・・・・・・俺の名前は「カイ」だ。


「・・・・・・ふむ、「死」の意識が涌いてきたか。いかんな、イタチも連れてきた方がよかったかの、いまいち人間の意識は分析し辛い」


・・・・・・イタチ?動物のイタチか?

ネコ目(食肉目) ネコ亜目(裂脚亜目) イタチ科 イタチ属 Mustela に含まれる哺乳類の総称、イタチか?


「ほぉよく知っているのぉ・・・・・・じゃが、残念ながら人の名前じゃよ」


・・・・・・そうか・・・・・・変わった名前なんだな、でも、俺には、関係ない。


「さて、このままでは埒が明かんな・・・・・・主の記憶、手繰らせて貰う」


声が、俺の中に入っていく。・・・・・・止めろ、止めろ止めろ止めろ、覗くな見るなさわるな・・・・・・止めろぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお。




「すまない、私達は君の為ならなんでもするつもりだ」
深々と頭を下げる立派な大人。

「お兄ちゃん、ここでさよならだよ・・・・・・ばいばい」
儚げに笑う少年。

「・・・・・・もう大丈夫よ、四代目火影様が追い払ってくれたから」
ただ、ただ優しく不安がっていた俺を抱きしめてくれた人。

「カイ君、怪我しちゃった治して!!」
何が嬉しいのかニコニコと笑いながらすりむいた膝を俺に見せる少年。

「カイの馬鹿!!!!!!!!!!!」
頬を膨らませて俺に怒っている少女。




「これでは、ない、だが、主もまた被害者・・・・・・巻き込まれた身か。その御陰で我は自我を持てた・・・・・・続けるぞ」




「カイは本当に優しい子ね」
にこにこと笑いながら俺を撫でる年配の女性。

「カイ、もっと自分を表に出した方がいいぞ?」
忍びに為ると出て行った黒須先輩。

「貴方、面白いわね・・・・・・もっと貴方の事を知りたいわ」
長い長い舌で俺のほっぺたを嘗めながら喋る大蛇丸。

「・・・・・・答えないのなら・・・・・・殺す」
いきなり命の恩人に全力攻撃をかます弦野。





「ふむ、なんじゃこの気持ち悪い男は・・・・・・人間とは変わった趣味をもつものじゃのぉ・・・・・・イタチにもこんな一面があるのかの?・・・・・・違うなこちらではない、過去を見なければのぉ」





止めろ、止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ止めろ!





「ご両親は、残念ながら・・・・・・」

突然だった。


二人して北海道に住んでいる親戚の家に行くといって、出て行った両親。


確率としては、交通事故で人が死ぬ確率の方が大きいと誰かに聞いた。


しかし起こってしまえばそれは1/1。


北の地に飛び立った飛行機は、墜落した。


学生時代、変わっていると周りから虐められていた俺、立ち直り、社会人としてそれなりにやっていた俺、全ては両親がいたからだ。


親を亡くした俺は、会社を辞め、貯金全てをおろし、安アパートに引っ越し、ネットゲーム、仮想現実に嵌った。それしか悲しみを紛らわせる方法が存在しなかった。


プレイヤーネーム「カイ」初めてやったネットゲームはウルティマオンライン。一番長くやったゲームもウルティマオンライン。


ラグに無き、協力して進んだダンジョンの奥にて待ち構えていたPK達に殺されがっかりしたり、スキルが上がって嬉しかったり、巨大なモンスターを仲間と協力して殺して楽しかったり。確かに其所には一つの現実があった。


突然の心臓麻痺、引きこもり、親戚付き合い一切を倦厭していた俺を心配してくれるよな彼女も居らず、俺は死の苦しみを味わっていた。


「****」


誰だ、俺の名前を呼ぶ奴は。


霞む視界、うっすらと目蓋をあけ、虚空を見ると、死神が立っていた。


もしくは俺を迎えに来た天使か、苦しみの最中、そんなことを考え、俺は・・・・・・





「気付いたら子供の体の中に入っていた、という訳じゃな、リュウ・・・・・・いい名前じゃな、竜、と書くのか」


まずあり得ない出来事が起きた結果、俺は「カイ」と為った。



「我の名前は、リース、イタチにしか話していない・・・・・・別に構わんが・・・・・・竜族が他に名前を話すのは、信頼を意味する」



世界が変わる。



星が全てを支配する、「星の間」


其所には金色に輝く体を持つ、ウルティマオンラインの古代竜が存在していた。

優雅な体、意志の強きその眼、星に決して負けずとも劣らない優美な姿が其所に存在していた。

「お主の心象風景、か。」


一度目は訳が分からず使ったSpirit Speak
二度目は俺が俺であるために、俺が他者に操られることを排除するために使ったMind Blast
三度目、訳が分からず使われたMind Blast


「何か参考になったかな?・・・・・・リース」

瞬きをする間に古代竜は姿を変え、俺の顔を覗き込んでいた美少女の姿になる。



「うむ、我らが誰かの作りし物、ということは些か我にとっても、衝撃が強い出来事じゃな」

想像が現実に為る、想像の世界に行ってしまえば、其所が現実だ。

「カイ・・・・・・違う、飛竜は言った、此処に来れば、俺は全てが分かると、どう思う?」

リースは首を横に振る。

「すまぬがわしにも其所までは、わからん・・・・・・じゃが、考えられるのは・・・・・・お主が帰れる、という事かの」


現実に、か。
親が死に、一人寂しく暮らしていた現実に、か。


「・・・・・・お主は、この世界に来てから、精一杯生きていたのぉ・・・・・・あるいは主こそが、アバタールになり得るのかもしれんな」

俺は首を横に振る。

「違うね、俺はそんな立派な人間なんかじゃない」

ただ、生きていただけだ、生き残るために必死扱いていただけだ・・・・・・現実よりも頑張っていたかも知れないけどな。

「何故、すぐに諦めなかった、お主が諦めえるポイントは幾つでもあった」

リースは俺をただ、睨みも怒りも悲しみも嘆きもせずに、ただ見る。


「お主は死ななかった、他者の為にも死ななかった、お主が諦めていればもっと大きな犠牲が生まれていたはずじゃ・・・・・・それを自己犠牲という」



「ばいばい、琴音・・・・・・さん、直人をよろしくな、か」

あんな台詞が俺から出るなんて、な。


答えなんか出ない、永遠に考え続けなければいけない事だ。
例えば子供が考える、何で生きて居るんだろう、という疑問。

命は何処に還るのだろう、命は何処から来るのだろう。


決まっている、どんなに辛くても、どんなに苦しくても、どんなに・・・・・・悲しくても・・・・・・俺は立ち向かって行かなければいけなかったんだな・・・・・・。


「リース、後、見ているのか?答えられないだろうが、飛竜よ、俺は、生きるよ、どんなに現実がくそったれでも、どんなに苦しくても、俺は帰る、有るべき場所に帰る・・・・・・その為には、この世界を元に戻さなきゃな・・・・・・琴音、直人、ナルト・・・・・・待っていろ、俺は必ずそっちに帰る。ミナクス?知るか、今までだってどうにもならない状況で生き延びてきたんだ・・・・・・何とかなる・・・・・・何とかしてやるよ!!!」


*GrandMasterの壁が開かれました*

今までどんなに頑張っても様々なスキルは95から上がらなかった。

俺の心が忌避していたとでも言うのか。



美少女リースが満面の笑みで俺を見ていた。


「それでこそ、人族じゃ、下らなくもちっぽけな一生を輝かすその意志、その意志があってこその、勇者・・・・・・さぁ戻るぞ、お主ならばエーテルをなんとでも利用出来るはずじゃ」



世界が揺らぎ、星が瞬く、意識はそのままに、リースは消え、俺は意識が解脱していく。

「・・・・・・必ず、来てやるからな「星の間」絶対に待っていろ」








*世界が更新されました、決戦存在が生まれる可能性があります*



[4366] 自来也
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/12 04:11

場所は、木の葉の里、火影執務室。


はたけカカシ、うずまきナルト、うちはサスケ、はたのサクラ、・・・・・・琴音、計五名と暗部四名、合計9名が三代目火影の前に立っていた。一名は寝ていたが。


事のあらましをカカシが一通り報告したのち、三代目は琴音に目をやる。

「ふぅ・・・・・・その様子では何も喋れまい・・・・・・よろしい、下がれ、琴音中忍」


小さくハイと返事を返し、まるで幽鬼の如く、ふらふらとした足取りで火影執務室を琴音は後にした。


入れ替わりに一人の中忍が中に入る。


「直人中忍か・・・・・・お主らはカイの知り合いだったようじゃな」

直人は頷く。
「はい、僕たちは、里外れの孤児院で三人仲良く育った幼なじみです」

火影は額に指を当てる。
「其所がどうにも納得いかんのじゃが、お主と琴音中忍はどう見ても20歳弱、じゃがあの子供は6歳程度がいいところなのじゃが?」

直人もうなずき返す。
「はい、それは僕達も不思議に思っていました・・・・・・何しろ10数年前に別れたきり全く同じ姿でいきなり現れたんですからね・・・・・・それでも琴音中忍は喜んでいたと思いますよ・・・・・・僕達は休暇の度に探していましたから」


「さもありなん・・・・・・あの落胆ぶりを見ればわしにも分かる・・・・・・ショックじゃろうなぁ・・・・・・わかった、下がって良い、例の力については、琴音中忍が落ち着いてから二人まとめて聞くとしよう」

失礼しました、とお辞儀をして直人は部屋を後にする。


火影は机の中から一枚の手紙を抜き出した。
「さて、そうじゃなカカシ、ナルトを残し他は帰ってよいぞ、ご苦労じゃった、皆にはS級ランクの報酬を与えよう」


暗部はすぐに散り、サクラもすぐに部屋を後にしたが、サスケはうつむきながらその場に残った。


「・・・・・・サスケ君?」

「三代目、一つだけ聞かせてくれ」

カカシは三代目に目をやる、三代目は軽く頷いた。

「イタチの奴が、暁にいるってのは本当なのか?」


カカシがサスケの頭に手をやる。
「ああ、本当だよ、あの状況、嘘発見器の効能もチャクラ結界には込められていた。嘘を言えば死んだ方がましって思えるほどの痛みが流れる、とっておきのやつだ、サソリにはそんな様子が無かったからな、イタチは暁の一員ってところは間違いないだろ」

サスケはカカシを見る、カカシは何も言わずとぼけた目つきをしていた。
「イタチを追っても無駄だぞ、今のお前じゃ何も出来なく死ぬだけだ。唯でさえ暁ってのは評判が悪いんだ、どんな強者が他にいるかわからない、イタチを追いたければ修行をしろ、少なくとも、一人で帰ってこれる程度には、な・・・・・・俺に単独で勝てないようじゃ、甘すぎる」



「くそっ」
「サスケ君!」

サスケはその場から走って外に飛び出した。

サクラはすぐにその後を追う。





三代目はサスケが居なくなったのを見計らってから口を開く。

「・・・・・・イタチが死んだかも知れないという情報は伏せといて構わないのかの?」


カカシは軽く頭をかく。

「あの空間に飲み込まれては流石のイタチでも・・・・・・生存は厳しいでしょう、が、今のサスケには目的が必要です。暫くは伏せておく必要があります」



カカシの目は三柱目の古代竜が乱入してからの全てを見ていた。

「何、あいつは将来木の葉を背負って立つ男に為る資質は十二分にありますよ、このナルトと一緒にね」

カカシはナルトを見る、ナルトはすやすやと穏やかな寝息を立てていた。










「駄目だってばよ・・・・・・お前は出さないって・・・・・・カイと火影のじっちゃんと約束したんだってばよ・・・・・・」

その言葉を残し、カカシの腕の中でナルトは腹を押さえる格好で意識を失った。


「よくぞ押さえた物です・・・・・・九尾ですね?」

三代目は静かに頷いた。

「力を解放すれば、ナルトは確かに大いなる力を手にすることが出来る・・・・・・じゃが、九尾に意志で負ければ、過去の二の舞じゃよ。カイのアドバイスが無ければ、サソリとの戦いで間違いなく解放されていたじゃろうな・・・・・・悲しむのはこの子じゃ」

三代目は寝ているナルトの頭を撫でる。


三代目は振り返り、其所にいた男に声を掛ける。
「お主には、この子の教育係りを命ずる、長きに渡る任務、ご苦労じゃった」


窓枠に足をかけている巨漢の男が室内に入り込む。
「久しぶりだな、先生、それとカカシ、少しは腕を上げたみたいだな」

にこにこと笑いながら、朗らかな男はナルトに目をとめる。
「決戦兵器、か。本当にこの子にそれだけの資質はあるのか?」


「安心せい、大蛇丸の居所を突き止めた子供がおってな、その子のお墨付きじゃよ、お主が一生懸命探しても見つけ出せなかった奴をな」


「ほぉ、突然の任務解除はその子の御陰か、逢ってみたいものだな」


三代目は自来也に持っていた手紙を渡す。

「それはその子が書いた手紙じゃ、ナルトの教育方法について書いてある」


自来也は黙って目を通す。

「ほぉ・・・・・・日向家に出向させ人体の仕組み、特にチャクラの経絡系について学ばさせ、チャクラコントロールは木登り、水面歩行、ひいては螺旋丸、か・・・・・・猿飛先生、ちゃんと術を教えられるんですか?」


「術にかけては、まだまだ負けぬよ、火影を嘗めるでないぞ!」

「それはわかっていますが・・・・・・性質変化は全てを修めた後に多重影分身を使い一気にスキルを上げる、と。まぁよく考えてあるの。ナルトの事をよく考えている、ただ、このマイト・ガイに体術は師事させることって・・・・・・暑苦しい性格にならなければいいんですがね」

「この木の葉の里について隅々まで知らなければ、かけない文章じゃよ、自来也、それを書いた子供は六歳じゃ・・・・・・しかもチャクラにかけては全くの才能が零、チャクラのかけらも感じられん、一般市民の子供じゃよ」


自来也の顔つきが変わる。

「他の里のスパイという可能性は?」

三代目は首を横に振る。

「いや・・・・・・術で調べたゆえにそれはない。ただ、首には大蛇丸の呪印がついておったな、呪印は一切反応しなかった、操られている可能性も低い」

自来也も頭を振った。
「・・・・・・逢ってみなければわからん話ですな、猿飛先生、その子は今どこに?」


三代目の変わりにカカシが答える。
「今はいません、おそらく生きてはいませんね」


「この争乱の世じゃ仕方なしとでもいうのかの、惜しい奴を無くしたな・・・・・・いつの時代でも子供が先に死ぬのは、間違っている・・・・・・よし、わかった、猿飛先生、この子の意志はわしが引き継ごう、立派な決戦兵器に育て上げようぞ、安心していいぞ、しっかりと火の意志は継がせる、わしにも流れている猿飛先生直伝の火の意志をな!」


「盛り上がった所申し訳ないのじゃが、自来也、先にお主には綱手を説得して欲しいのじゃよ、場所はもう掴めて居る」

笑いを収め、自来也は三代目を振り返る。
「綱手姫、か・・・・・・まだトラウマを引きずっているのか、しょうがないお嬢様だな・・・・・・わかった、全部わしに任せろ!」

三代目は巻物を自来也に投げつける。
「・・・・・・頼むぞ、出る前にこれを持って行け、お主もしっかりと読んでおくことじゃな、世界は変わったぞ、綱手にも、よく伝えてくれ」


「委細承知、では早速出かけるか・・・・・・この子は・・・・・・クシナによく似ているな・・・・・・三代目、大切にせねばミナトに申し訳ないぞ」


三代目は深く頷いた。
「・・・・・・元より承知しておることじゃ・・・・・・わしの所為で、辛い道を歩ませてしまったが・・・・・・まっすぐに育ってくれて・・・・・・何よりじゃよ」





「・・・・・・カカシ、わしが居ない間、里をよく守ってくれた、後で一杯やろうじゃないか」

「私はあんまり飲めませんよ、ですが落ち着いたらご相伴に預かります、三代目も、どうですか?」

「ふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉ、よかろう、秘蔵の酒を出してやろう・・・・・・頼むぞ、自来也」






自来也はすぐにとんぼ返りで里を出立した。













魔女は虎視眈々と全てを見ていた。



[4366] 虚空間2
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/17 12:07
「砂漠浮遊!」


我愛羅が砂に乗り、探索に行った。

・・・・・・やつはやつなりにこの空間から出ようと足掻いているみたいだ。


さーて状況を整理しようか・・・・・・


「で、やること無いから互いの自己紹介は済んだわけだが、イタチお前俺に治して欲しいんだ」


リースはイタチに肩車をされている、いやさせている。

万華鏡を一瞬でも使われたら俺は死ぬんだよな、さっきの決意もあるからまだ死にたくないんだけどな。


「・・・・・・ああ、俺にはまだやることがある」

「何故、そんなにサスケにこだわる」

「イタチさんはブラコンですから」

今までのことを聞いた鬼鮫は笑いながら言う。

「そういえばお前の暁での目的って一体何なんだ?鬼鮫」

鬼鮫が怖い顔を俺に向ける、馴れたとはいえ、流石に怖いぜ。

「本当に興味深い子供ですね、この状況でそんなに寛げるのは大した物です・・・・・・私の目的ですか、そうですね、元の世界に帰れたら教えてあげますよ」

こいつ、教える気全く無いな。
「ああ、それでいいよ、もっとも帰ったら俺達は多分敵同士になるぞ、俺は木の葉に味方をしているからな」

「貴方ほどの知恵者が味方にいれば面白いのですけど・・・・・・どうです?暁に来ませんか?実力が伴なわなくても、貴方ほどの知恵があれば十分やっていけますよ、何せ今の暁には戦術はあっても明確な戦略というものはありませんからね」

それはわかる、なんでわざわざ各個撃破されに行くんだ!って何度思ったことか、ペインはマダラは個人としては優秀だが、軍師としては無能だよな、それとも暁が殺されることも、あいつらの計算の内だったのかな。


「・・・・・・鬼鮫、無駄話は止めろ、カイ、俺の傷を病を治せるのか?」

リースがイタチの髪を引っ張る。

「イタチ、もう忘れたのか?この子の名前はカイではない、竜じゃよ・・・・・・ふふふふ我の眷属を顕す竜という名前か、なかなかいい名前ではないか」

一人悦に入っているリース、いや、俺の親は多分そんなこと考えていないと思うぜ。





「流砂瀑流!」

ざざざざざざざざざざざざざざざざざざざ



我愛羅が減らないチャクラに気を良くしているのかさっきからずっと大規模な術を行使している・・・・・・なるほど、術の修行をするにはこの空間はうってつけかもしれないな。


なんて前向きな奴なんだ。


質問を遮られたイタチはしかめっ面をしている。

頭の上に美少女を乗っけて、同僚に笑われ、話すら遮られるとはな。

これが木の葉きっての天才忍者だって言っても今は信じる奴はいないだろうな。


「ははははははははははははははは、イタチよ、今のお前は面白いぞ、リースの御陰かな、俺が知っている「イタチ」よりずっと面白いし・・・・・・頼もしい」

原作にある焦りが感じられない、角が取れて丸みが帯びてきているのだろうか。


俺は立ち上がり、座り込んでいるイタチの後ろに回り込む。

「今のお前なら、治しても、元の世界に還ってもの凄い悪さをするって事はないだろう・・・・・・ちなみにうちはマダラについてはもう気付いているのか?」

鬼鮫は訳が分からない顔をしている、こいつはそうだろうな。


「・・・・・・あいつがまだ生きているのか・・・・・・十二分に有り得る話だ・・・・・・」

流石はイタチ、頭の回転が速い。

スキル「包帯」を発動・・・・・・俺の特技の一つ、全てを治す万能技術。









10.9.8.7.6.5.・・・・・・成功!












「イタチよ・・・・・・これでお前には限度が無くなった、万華鏡による視力の低下も一度リセットされた状態のはずだ、俺の包帯はあるがままに戻す技術、だからな」

鬼鮫が目を疑っている。
「何ともまぁ・・・・・・便利な力もあったものですね」

リースがイタチの上でにんまりと笑う。
「流石は我が下僕が一人、大した技術だ」

あれ、俺は何時の間にリースの下僕になったんだ?


イタチはリースを上に乗っけたまま立ち上がり、我愛羅が操っている砂を見定める。


瞳に万華鏡が走る。

「神威」

万華鏡が生み出す閉鎖空間は我愛羅の砂をごっそりと閉鎖空間に押しやった。

我愛羅がこちらを振り返り、信じられないといった顔をしていた。

我愛羅よ、それが残酷なまでの実力の術の相性の差だ、お前ではイタチには勝てない、正面からではな。



「・・・・・・まずは礼を言おう、正直こんなにあっけなく治るとは毛程も思っていなかった」


イタチのレベルが上がりました!って所だな、恐らく今のイタチは純粋な力で言えば、NARUTO最強クラス。

リースがついている限り、暴走は無いだろうし・・・・・・後は此処を出るだけだな・・・・・・さてさて、ミナクスが協力してくれる訳ねえしな・・・・・・後、俺の世界の力を使える可能性がある奴らといえば・・・・・・直人と琴音、か。











「・・・・・・琴音ちゃん、そんなに気を落とさないでよ」

其所は琴音の家、直人は琴音の身の回りをしながら琴音に話しかける。

琴音は反応しない、未だ魂が抜けた状態だ。
猫が心配そうに琴音の顔を嘗める。


高レベルテイマーである琴音の周りには自然と動物が集まる。


直人はそれらに餌をやりながら、琴音を心配そうに見ていた。


「・・・・・・ご免ね、直人・・・・・・私がへまをしたから・・・・・・折角逢えたのに、カイがまたいなくなっちゃった・・・・・・」


直人はため息をつく。


「僕はいいよ・・・・・・カイ君だもの、絶対に生きているって信じているから」


「無理よ・・・・・・貴方は直接見ていないからそんなことが言えるのよ!古代竜三柱による空間破壊よ!巻き込まれて生きている方がおかしいわよ!」

涙を流しながら琴音は激昂する。


「・・・・・・琴音ちゃん、カイ君の言葉を忘れたの?」

直人は立ち上がり、琴音を見つめる。


「あり得ないなんてことはあり得ない、俺達が望む限り全ては実現する、なんて言っていたじゃない」





*システム起動・・・・・・対象者二名・・・・・・コデックス(写本)開示します*


直人が大切に保管していた、「カイの書」が光を発する。


「これって・・・・・・あの時と・・・・・・」
二人がスキルに目覚めたとき、その時と同じように書は輝く。


*・・・・・・検索・・・・・・対応術式・・・・・・無し、単体にて決戦存在「Minax」に対応するにはリソース不足・・・・・・検索・・・・・・発見・・・・・・プログラム「アバタール」・・・・・・発動にはエネルギー不足記述不足・・・・・・破棄、発動「ムーンストーン」・・・・・・了承了承了承・・・・・・*


「何なのよ!?」


書が人の形を象る。


*プログラム「ムーンストーン」発動*



中性的な顔立ちの者が、恭しく一礼をした後に口を開く。


「久しぶりだね、二人とも、どうやら順調にスキルを鍛えているようだね」


「あんた、誰よ」

中性的な者はにこりと笑みを零す。

「心配しなくとも、少なくとも君たちに敵対するものではないよ・・・・・・世界は「Minax」を呼んでしまった。はっきり言おう、間違いなく世界の過ちだ。魔女は全てを飲み込み、やがて堕落へと導いてしまう・・・・・・この世界に「アバタール」は存在しない。君達、この世界の人間の力で何とかしなければいけないんだ!・・・・・・幸い魔女はすぐには動けない、少しばかりの猶予があるはずだ」


直人と琴音には話が5%も伝わっていない。


「・・・・・・無理よ、カイが居なければ・・・・・・私達の話じゃ誰も信じないし・・・・・・何も出来ないわ」

琴音は力なく項垂れる。


「・・・・・・君達に選択肢を上げよう、力を欲するか・・・・・・更なるスキルを得て、君達自身が「決戦存在」に為るか、それとも、「感染源」の少年を呼び戻すか・・・・・・どちらも困難な道ではある」


二人は即答した。
「「カイ(カイ君)を呼び戻す!!!」」

中性的な者は無表情のまま話を続ける。
「・・・・・・ならば「ムーンストーン」を求めなさい。世界が重なった、始まりの場所で使えば、彼は帰ってくるであろう・・・・・・長く険しい道だよ、「ムーンストーン」は悪名高きダンジョン「ヒスロス」最奥に存在している。道を塞ぐは悪魔達の群れだ。始まりの地は、私にはわからない・・・・・・精々当時の状況を知る者を探すことだ・・・・・・私に出来る事は、ここまでだ」


「ヒスロス」
琴音が呟く。

「始まりの地」
直人が呟く。


道は示された、後は邁進するのみ。


「君達に、カルマの加護があらんことを」
中性的な者は姿を薄れさせ、消えた。

書は書に戻り、光は消えていった。




「何だ・・・・・・あの馬鹿・・・・・・生きていたのね・・・・・・全く・・・・・・幼なじみにこんなに心配かけて・・・・・・行くわよ!直人、さっそく火影様の許可を頂くわよ!」


すっかり元気になった琴音、直人はそれを微笑ましく見つめる。


「うん、今度こそ、がっちり掴んで逃げないようにしなきゃね!カイ君、隠れん坊がうまいから、きちんと見張ってなきゃ!」








世界が「Minax」に対抗する手段を探し出し、絶望に対抗する駒が育ちだした。



化け物を打ち倒すのはいつだって人間だ。



人間は勇気を持って希望を持って絶望にあがらうしか手は無い。



未だ小さきその光、だが確実に希望の光は世界に植え付けられた。



絶望が飲み込むまで、光が育ちきるか、闇が全てを覆ってしまうのか、それはまだ誰にも、わからない。



[4366] 雪の国、プレビュー
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/12 15:17


氷雪が全てを覆い尽くす、春が来ない国、「雪の国」



サソリの脅威を退けてから幾許かの時間が経った。


マイト・ガイの班は任務として映画女優、富士風雪絵の護衛として雪の国へと向かっていた。今はまだ辿り着かず、船の上。

人数は、マイト・ガイのメンバー四人プラス、新たにガイの押しかけ弟子となった改良型影分身のナルト、それと雪の国に用があるとついてきた琴音・直人の三人を足して計7人。



「・・・・・・話には聞いていたけれども、こんなに寒い国だとわね・・・・・・おいでませ、紅!」


映画を撮影するにあたり、映画監督達も同行しているのだが、琴音は構わず新たにペットにしたファイアリザードを召還した、外見は火を発しているワニだ。


「どうした!寒さに負けるとは根性が無いぞ!さぁ寒中水泳だ!行くぞ!」

無駄に暑苦しい顔でガイはふんどし一丁になり、氷の海に飛び込んだ。

「はい!」
と勢いよく飛び出したリーと、

「やってやるってばよ!」
同じく飛び出したナルト。


「あいつらばっかじゃないの?」
撮影をしていた雪絵は飛び出していった三人を眺め、琴音が呼び出したファイアリザードで暖まっていた。


「同感ね・・・・・・リー、風邪を引かなきゃいいんだけど・・・・・・」
雪絵に続き呟く団子頭の少女、テンテン。

「馬鹿は風邪を引かない、ほっておけ」
冷たい視線を送る少年、白眼を持つ少年、ネジ。


「寒いねーよりによって何でこんな場所に「ヒスロス」はあるんだろうね」
直人も紅に近寄り暖を取る。

「さぁ?そればっかりはヒスロスの主にでも聞かなきゃ分からないわ・・・・・・女優も大変ですね、こんな所にまで来るなんて」


「え?・・・・・・私は来たく無かったわ、雪の国なんて」
それきり雪絵は口を噤んだ。



木の葉の探索部隊は全てのダンジョンの監視に入った。
また新たなサソリが生まれ無いとも限らないからだ。
その線に引っかかったのが「ヒスロス」悪魔の王国だ。


火影は手が空いたら二人を手伝うように、ガイに言い含めた、ただ、最終的に彼らは琴音達を助ける余裕は全く持って失われることになる、その事に気づける者は、この場には一人もいなかった。


「やっぱり寒いってばよーーーー!!」
ナルトはすぐに海から飛び出し、そのまま紅に抱きつこうとした。


「・・・・・・紅、fire」
あるじの命に忠実にファイアリザードはナルトに向けて炎を吐いた。

ぼとっとかんばんに落ちるナルト、未だ炎が燻っていた。

「琴音ちゃん、それはちょっと可哀想だよ・・・・・・」

「馬鹿ね、護衛対象にそんな破廉恥な格好した人間を近寄せられないでしょうが、ドラゴンで無いだけ優しく思わなきゃ」

一連の流れを見ていた雪絵はあっけにとられた顔をしていた。








対岸に潜む雪忍の影、彼らは待っていた、獲物が罠にかかるのを。



ほくそ笑む、雪の国、現支配者。史実とは違うメンバーでの奮戦が、今始まる。



[4366] 雪の国、その2
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/12 16:04


雪に潜む者達は静かに会話をしている。
「木の葉の忍びがついている・・・・・・カカシでは無いようだな」

「だが、数が多い、少し様子を見よう・・・・・・特に変なペットを連れている女、あれは我らの力が通用しない可能性がある」






「三太夫、涙涙!」
演技が一時中断され、雪絵のお付きが目薬を運ぶ。

一、二滴と雪絵の目に目薬が垂らされた。

「あー、たれちゃうたれちゃう、早く早く!」



「シーン32-2、開始!」


「木丸ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
雪絵の迫真の演技、思わずガイ達は見とれていた。


「すげえ、姉ちゃんいつもと全然違うってばよ」
感嘆しているナルト。

「あれが、女優富士風雪絵です・・・・・・カメラが写る場所では最高の女優です」
お付きの三太夫がしみじみと呟く。



「雪の国、か。我が永遠のライバル、カカシが昔手も足も出なかった相手がいるという・・・・・・ふっ、相手にとって不足はない!」

ガイが熱く力む。




「では、私達は此処で、また帰りお願いしますね・・・・・・雪絵さんが気に入っちゃったみたいですので、紅は置いていきます、ナルト君、世話頼むわね」

琴音と直人は、五人から離れて雪の国外周部分を回る予定だ、其所に存在するは悪魔の王国「ヒスロス」二人だけというのは些か心細いのだが、今木の葉は暁に対抗する手段を模索するので精一杯だった、三代目も何とかして手助けしてやりたかったが、二人はゆっくりと首を横に振り、やんわりと二人だけで行く決心をした。



二人の行方に、世界の命運がかかっていることは、まだ、誰も知らない。









「都合良く分かれましたね・・・・・・では、皆さんあの二人の後を追います」

君麻呂はとうとう病で倒れた、新たに加わった白を頭として、音の五人衆は行動を開始した、カイを再び捉えるために、最も親しい二人を確保しろ、大蛇丸の命令は絶対、ましてや再不斬の命をやり玉に挙げられては白に刃向かう術は存在しなかった。

「恩人にこんな事をするのは僕の信条に反するのですが・・・・・・再不斬さんの為です・・・・・・諦めてください、行きますよ」

様々な実験により更に強化された音の五人衆、避けられぬ脅威が琴音と直人に迫る。






「やれやれ・・・・・・どうして俺達がこんな子供のお使いを監視しなきゃいけないのかね」
ぼやく飛段、
「・・・・・・お前が金を貰ってしまったのが悪い」
冷静に突っ込む角都、
「だって大蛇丸の野郎、くそっ、俺達の弱点を確実についてきやがって!相変わらず卑怯な奴だぜ!あいつはよ!」
頭をかきむしる飛段、



大蛇丸は彼らに一国が買えるのではないだろうか、程のお金を用意した、支配欲は激しい大蛇丸だが、物欲はそうでもなく、二人を大量の金で雇ったのだ。




下らない漫才を繰り返しながら二人は音の五人衆の更に後ろを追う。





「どう、カブト、新たな存在を感じないかしら」
其所は理系の大学の研究室を思わせる、様々な機器が並んでいる大蛇丸の私室。


「・・・・・・すみません、まだ術に不慣れなもので・・・・・・ですが、今やっと確認しました。見えます、・・・・・・誰ですかね?暁の方角から一人出てきましたよ・・・・・・この様子では逃げてきたみたいですね、焦りがありありと見られます」
カブトの前にはレーダーの様な術が展開されていた、限られた範囲内ならば全てを見渡す。


「へぇ、抜け忍の集まりからも抜け出す間抜けがいるのかしら?・・・・・・面白そうね、いいわ招待しなさい、私の里に」
大蛇丸は再び研究に没頭する。

「・・・・・・モード11発動・・・・・・大蛇丸様、とんでも無い奴みたいです、100の罠全てを避けるでもなく、すりぬけました、術の検討がつきません」

大蛇丸は顔を上げ、にやりと笑った。
「・・・・・・イタチ以上の研究材料かしら・・・・・・私が直々に行くわ、カブト貴方はここで待ってなさい、私が駄目だったら、どのみちこの里では止められない相手よ」





ここに、史実ではあり得なかったもう一つの邂逅が果たされる、果たしてその結果は世界にどのような影響を及ぼすのであろうか。



[4366] 雪の国、その3
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/12 23:05
其所は上も下も右も左も後ろも前も無い空間。


「はい、第一回SpiritSpeak大会ーーーー!!!」
リースが元気に魔法を放ち、光の粒が俺達を包み込む。

俺とイタチと鬼鮫はいやいやながら拍手を送る。

「風遁・無限砂塵大突破!!!」

ザザザザザザザザザザザザザザザザ!
我愛羅は少し離れたところで元気に術の特訓だ、心なしか砂のコントロールがうまくなってきている。

「・・・・・・のりが悪い奴が一名いるのぉ、イタチ、ちょっと月読で黙らせてくれんか」

リースよ、それは脅迫というのだ。


「月読!」

そして素直に言うことを聞くなイタチ!
俺の中のかっこいいイメージを返してくれ!


瞬身の術で我愛羅の前に立ち、問答無用で月読、ありゃどうにもならんわな。砂の盾が全く役にたってねえでやんの。


鬼鮫がいやいやながら我愛羅を運ぶ、ぶつぶつと何で私が・・・・・・なんて言っているがリースの一睨みで黙りだ。


全く、俺以外の四人、全員が全員、その気になれば俺を瞬殺出来るやつらばっかりなんだよな・・・・・・あー胃に悪い。


「さぁて、じゃんけんじゃ、皆でじゃんけんするのじゃ!」
リースは俺の記憶を覗いていろんな事を覚えたのだろう・・・・・・王様ゲームとか言い出さないよな、イタチと我愛羅はキスをする!なんて嬉しそうにいいそうだなおい。

俺が当たって鬼鮫とハグをしろ!なんて言われたら俺は泣くぞ。

「さっさと目覚めろ!In Vas Mani!」
リースが無駄に魔法を使う・・・・・・俺は秘薬の量が心配で滅多に使えないってのによ。これだから規格外はいやだね。


我愛羅が目覚める、此処ではまさに魔法は万能だな、当社比300%の割合で成功率も効果上がってやがる。・・・・・・リースだけは怒らせないようにしよう・・・・・・古代竜の全力魔法なんて洒落にならん。

「我愛羅、じゃんけんじゃよ、わかるか?じゃんけん!」

我愛羅は無言で頷く、此処での力関係を十二分に承知しているようだな。
お前は俺に次いで下から二番目だ!ざまーみろ!ちょっとかっこいいからってちょっともてるからっていい気になるなよ!


「・・・・・・正義は勝つ、じゃんけん、ぽん!」
リースの音頭で全員が手を出した。


あらら、鬼鮫の一人負けか。

「鬼鮫の負け!さぁやるのじゃ竜!」

この女・・・・・・俺のスキル全部把握しているからって調子にのりやがって・・・・・・あ、すみません。すぐにやります、睨まないでください。


*+*+*+*+*+*+*++*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+

*スキルが成功しました*

*霊界と繋がりました*


「やれやれ、私が殺した者なんて見てもつまらないでしょう」
鬼鮫の周りには老若男女併せて大量の霊が浮かんでいた、仕事をやっていく上で殺しもあったのだろう・・・・・・忍者だったら当然、か。


ついでに言えばSpirit Speakは全方位方だ、個人一人に適用なんて出来るわけが無い。更に言えば本来は俺以外には意味がないのだが、其所はエセリアル虚空間、スキルの効果すらも増幅している。

っていうかじゃんけんの意味ねえ!


「イタチ、親父さんとお袋さん・・・・・・それと、うちは一族全員か・・・・・・サスケの為によくやったもんだな」


イタチの周りには大量の死者が浮かんでいた。

「ふん、俺は俺の信じる方法に従ってやったまでだ、後悔は無い」

全く動じないイタチ、鉄の精神は流石だな、・・・・・・行為の善し悪しは俺が口を挟める問題じゃないしな。

で、我愛羅には一人の青年が付き添っていた。・・・・・・夜叉丸だっけ。

「・・・・・・夜叉丸・・・・・・安心しろ、俺は・・・・・・」

我愛羅が、真剣な表情で語っている・・・・・・俺が入り込んでいい空間じゃない。


リースの周りにも人の霊がぷかぷかと浮いている。その周りには此処で殺した古代竜が二柱、黒閣下が一柱。

「いい加減成仏せい・・・・・・クグツになどさせられて不満じゃったろう・・・・・・Vas An Ort」
本来は召還生物を消去する魔法、だが、エーテルにより高められた効果によりリースの周りに浮かんでいた霊達は須く成仏していった。



Spirit Speakの効力が切れた。霊達の姿が光に溶ける。


全員が全員、何処かしんみりとした空気が流れた、我愛羅とリースが特に顕著だ。



見ちゃいけない光景だったかな・・・・・・早く誰か迎えに来てくれないかな。









船は無事に雪の国に着いた、予定していたところとは違っていたが監督の意向により神が下りてきたとの言動により、スタッフ達は撮影の準備を始めた。


「よし、変なペットは残ったが、従えていた女は消えた・・・・・・小雪姫を確保しろ!」

「先生!」
テンテンがいち早く気付く。

「ネジ、りー!」
ガイと共に二人がそれぞれ敵に向かっていく。

テンテンが一般人の補佐をする、雪絵は紅に抱きついて離れない。


「俺を忘れるなぁぁぁあああああああああああ!!」
ナルトは威勢良く飛び出ようとしたところを、テンテンに首根っこを捕まれた。

ぐぇ

っと息が抜ける音がして、ナルトは強制的に引き留められた。


「少しは先輩達を信用しなさい、あんたは私と一緒に護衛よ!」





「・・・・・・お前だけが上忍か、カカシはどうした」

ガイの一撃が問答無用で意識を刈り取りに走る。

ジジッ
ガイの一撃は確かにこれ以上ないタイミングで入ったが、不可視の壁が一撃を防いでいた。

「氷遁・破龍猛虎」
氷の虎が左右からガイを挟み込む。

「ふんっ!」
呼気と共にガイは氷の虎をそれぞれ一撃で仕留めた。


「・・・・・・なんて出鱈目なやつだ」
雪忍は距離を置き、吐息をつく。


「俺の熱い拳を防ぐとは、面白い鎧を着ているな・・・・・・だが、チャクラの練り込みが足りない、それでは木の葉の忍びは殺せない!」




「氷遁・ツバメ吹雪!」
ネジを襲うは女雪忍、氷で出来たツバメが数多の数となり、ネジを全方位で襲う。

「八卦掌回天」
ネジは昂揚するでもなく、冷静に技を発動させた。全てのツバメは何もするでもなく、地面に落とされる。

「かかったぁ!氷牢の術!」

地面から凍りが生み出される。

が、ネジは目を瞑り、生み出される氷の横を数㎝ずらし、歩いて避けた。

「未熟、・・・・・・八卦空掌」
掌底から放たれたチャクラが雪忍を的確に撃つが、


ジジジジッ

不可視の壁がガイと同じくネジのチャクラを寸断する。

白眼が相手を見据える。

「種はその変な鎧か・・・・・・だがそれだけの事、お前らでは俺達には勝てない」



最後にスノボの形状をした物にのり、片手が金属製で出来た雪忍が、リーに向かう。

すれ違い様に首を切ったと雪忍は考えたが、スカッ。


「木ノ葉昇風!」
リーの蹴りが敵を空中に浮かせる。
「木ノ葉・閃光!」
空中に浮いた敵に対し、強力なかかしおとしが入った。


ジジジジジッ


だが前二人と同じく不可視の壁が全ての攻撃を防ぎ、雪忍にはダメージが入らない。

「・・・・・・貴方の攻撃は僕には届きません、攻撃が通じないのならば・・・・・・なんですか、この気配・・・・・・先生!」



どうして誰も気づけなかったのだろう、こんな異様な集団が歩いてきていたことに。



ガイが、リーが、ネジが、テンテンが、ナルトが、そして雪忍達三人までもが、一律にその集団を見ていた。


雪の荒野を歩く六人の集団、全員が全員体の至る所に黒いピアスを刺し、目はぐるぐると回っている。

後ろにつきそう一人だけの女忍、よく見ると紙で出来た羽を広げ静かに浮いていた。












六道ペイン推参。














絶対強者による搾取が始まる。



[4366] 雪の国、その4
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/14 15:19

其所は永遠の雪や氷で覆われた国、雪の国。

・・・・・・春が来ない国。


雪に残った足跡は吹雪けばすぐに消えてしまうものだ。


ましてや白一色に支配された空間、遠目からにしろ保護色である白を纏わなければ素人でもすぐに分かるものだ。


だが、見えていたのに見えていなかった。脳が情報を理解していなかった。

五大国であるうちの一つ、最強の国木の葉の里、其所に召し抱えられている忍者の中でもトップクラスの実力を誇る、体術だけで言えば他に類が無いほどの冴えを見せるマイト・ガイ。



彼でさえもペイン達には気付くことが出来ていなかった。



「総員集合!」


異変を察し、雪絵の近くにガイ班は全員が集まる。
任務はあくまで護衛、減らしておける脅威は減らしておきたいが、未だ勝手が分からない相手。

「先生・・・・・・とんでも無いチャクラです」

ネジの白眼が全てを見渡す。
ネジの目には女を覗いた六人のチャクラの総和が煙のように立ち上っている飽和現象が写っていた。

集団は、一言も言葉を発せず、足音すらも立てないで、ゆっくりと雪忍、ガイ達の方に近づいてきていた。

その顔には感情らしき物は伺えない。



「行け!白狼達!」

雪忍が口寄せで呼んだのは、UOでダイヤウルフと呼ばれている集団での狩りを得意とする生物、雪国にしか住まわず、その攻撃能力は集団でかかれば悪魔ですら狩ってしまう程だ。


「・・・・・・私が」


男達の後ろにふわふわと浮いた状態でついてきていた女が、小さく呟く。

「紙吹雪の術」


雪に紛れ、紙が白狼達に襲いかかる。


キャイン・・・・・・


小さくうめき声を上げ白狼達は刹那の内に全滅する。


前を歩く集団は、女の取った行動も狼達にも一切関心を持たずに、ただ目的に向かい前進している。



「・・・・・・ネジ、正体は掴めそうか?」

「・・・・・・駄目ですね、一切検討がつきません」

二人の深刻そうな話題をよそに、ナルトは行動を開始した。


「口寄せ・猿猴王・猿魔!」

印を組み、ナルトの前に三代目火影愛用の猿魔が現れた。

「どうした坊主、寒いのぉ、いきなりわしを呼び出すとは、困ったことでも起きたか?」
猿魔と三代目は似通っている、猿魔も三代目同様ナルトをよくかわいがっていた。

「悪い、知恵を借りたいんだってばよ、あいつらについて何か知っているか?」

猿魔は集団を見る、その目に注視する。
「・・・・・・あれは、・・・・・・輪廻眼。何故こんな所に・・・・・・」


攻撃を仕掛けた雪忍にすら注意を払わず、異様な集団はただ歩いている。


「知っているのかってばよ!?」

ナルトだけではなく、木の葉の忍び全員が猿魔に注目していた。

「悪いことはいわん、関わらずに済めばそれにこしたことはない・・・・・・あれは危険すぎる」

ナルトは唇を強く噛む、紅が向いている方は琴音達が向かった方向だ。


紅が向いている方向に集団は歩いて行っている。

「ナルト、任務は護衛だ、やり過ごせるようなら・・・・・・」

「そんな危険な奴ら、姉ちゃん達をほおっておけるかってばよ!影分身!」

ナルトが二体に増える。

それぞれが高速で印を組む、印の速度は徹底的に上げさせられた、同時にチャクラの効率よい使い方についても、さらにいえばチャクラ省エネ化についてもナルトはその面で言えば天才であった、三代目に対して徹底的に教えられた。

「土遁・土流槍!」
「土遁・土龍弾!」

更にいえば、三代目はもてる術全てを伝えんが為に、ナルトにきつく教え込んだ、その光景をカカシは見せ、写輪眼でコピーさせたりしていた。


ガイ班の全員がナルトに対し驚愕の表情を浮かべていた。






土の龍が吐きだした泥、硬質の土で出来た槍、願い違わず異様な集団に当たったが、




傷をつけるには至らなかった。





全員に寒気が走る、ペインは初めてナルト達に視線を向けた。


「・・・・・・お前らが何者かしらねえけどなぁ!この俺を無視しようなんざ百年はやいってばよ!」


リーとネジ、テンテンはすぐさま行動に移した。



止まっていれば死ぬ。



絶対の予感が其所に走る。



[4366] 雪の国、その5
Name: へヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:6204c204
Date: 2008/11/15 20:04

其処は上も下も左も右も、前も後ろも無い空間。


ちょっと閃いた。


「……我愛羅、ちょっといいか?」

残念なことに、俺が話しかけられる相手は、こいつしかいない。


リースのわがままにイタチと鬼鮫はつき合わされ、この世の果てをみるのじゃ!なんていってどっか行っちゃったからだ、お前が行ってたんだよな……ここには果てなんか存在しないってさ……ただ単に探検したかっただけか、其れでいいのか竜王。


「何だ、子供」

こいつは最初に比べれば打ち解けてきてはいるが、それでもやはり素っ気無い、原作では瞬殺の鬼の時期だったはずだが、モンスターから里を守るうちに信頼というものを受けたのかなんだか知らないが、第二部開始くらいの精神構造には成長していた。

どうあがいても守鶴出さなきゃ勝てないモンスターも確かにいるからな……

今の俺にとっちゃ、ありがたい話だが、なるべく話しかけたくは無い相手でもある。現に今も術の練習を邪魔されて、少し眉毛がぴくぴくしてやがる、仕方ねえだろうが、ほかに対象がいないんだから!


「……夜叉丸にまた会いたくないか?」


だが俺には新たな切り札が存在している、我愛羅にとってはクリティカルヒットだ。


「……何が望みだ」


いいね、さすが次代風影、話が早い。


「ちょっとこれから毒の魔法使いたいんだが、かかってくれないか?すぐ治すから安心してくれ」


自分でやるのはちょっとやだ、毒くるしいからなぁ……生命力が無駄に高いこいつなら、まぁ平気だろ。


「……約束を忘れるな」


OKOK、俺が試したいのは、ここってエーテルで占められているわけだろ?
チャクラが減らないことから考えるに、もしかして秘薬も減らないんじゃないの?


原理的にはそうだよな、ここのエネルギーを有効活用するために、俺たち普通の人間は秘薬やら呪文やらを開発させた、たしかそんなことを説明書に書いてあったような気が……



まぁ、試してみればわかる、包帯もって、秘薬は離れた所にちょっとおいてっと。


「いくぞ我愛羅、In Nox!」


*魔法が成功しました*


よし!ってことは、魔法練習し放題だな、俺もさっさとGM目指すぜ!


「……うっ……」


我愛羅が真っ青な顔をしている、砂でよくわからないが多分真っ青だ。


「あ、わりわり、すぐ治す、ついでだ、約束の物だぜ」


+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+


*スキルが成功しました、霊界と繋がりました*

一人の青年が苦しんでいる我愛羅を心配そうに擦っている、10.9.8.7.6.5.……成功!


ま、少しの間だけだ、束の間の語らいを楽しんでくれよ……我愛羅の笑顔なんて、別に見たくはないけどな、喜んでくれるんだったら、まぁいいか。

















歩みを止めた異様な集団。

「ペイン、私が……」

言葉を最後まで発せず、男の塊達は、女の言動を手で遮った。







「小僧!なんてことをしでかすんだ!……ええい、我を使え!猿飛め、もっと教育をしっかりしとかんか!甘やかしてばっかりに!」

猿候王・猿魔は、鉄によく似ている棍棒に変化した、ナルトはしっかりと其れをつかんだ。




「ナルト、忍者に大切なことが何かわかるか?」

今にも一人で敵に飛び掛りそうだったナルトを抑える、ネジの静かな問いかけ。

「……任務をまっとうすることだってばよ」

「ナルト、私たちの今やるべき任務は、なんでしたっけ?」

テンテンの問いかけ。

「……雪絵姉ちゃんの撮影の護衛、だってばよ」

「……猿魔でさえ、危険と判断した相手、任務を考えるなら相手をしないのが最善の選択だ、だが」

ガイがリーの頭を撫でる。

「リー、忍者にとって……いや、木の葉の忍者にとって大切な物が何か、わかるか?」


「はい、仲間を見捨てないことです!」

力強く宣言するリー、ネジとテンテンは揃って額を手で押さえていた。

ごしごしとガイは力強くリーの頭を撫でる。

「それでこそ、わが弟子だ!偉いぞリー!何、わがガイ班ならば、あんな得たいの知れない相手なんか、楽勝だ!そうだろ、ネジ、テンテン!」

首を竦める二人、やれやれと、あきらめの境地にすら達していた。


「ですが任務を通すのは最優先です、テンテン、護衛を船につれて対岸にでろ、雪忍達の動向にも気を配れ、絶対に奪われるな」


テンテンは力強くうなづく。
「ええ、任せてよ、あんなやつらだったら私一人で十分よ……あなた達の方が明らかに危険ね……絶対に死なないでよね、私一人じゃ、ガイ班じゃないわ」


ネジは静かに頷き帰す。
「先生、テンテンの変わりにナルトを入れてのフォーマンセル、これで行きましょう……ナルト、テンテンの代わりの陽動を受け持て、先程の術レベルのものを、遠距離で撃ちまくれ、相手を休ませるな……お前のチャクラはこの中で誰よりも多い、お前にしか出来ない……俺を失望させるなよ」


「嘗めるな!こんなレベルの困難を、鼻歌まじりに達成出来ずして、火影になんかなれないってばよ!」

今のナルトは改良型影分身の一体、九尾の一尾をその身に宿し、余すことなく九尾のチャクラを使っていた、一尾、化身ゆえに、再生能力、チャクラ供給能力、その他諸々、あらゆるものが本体の九分の一でしかないのだが、それでもかつて木の葉を滅びの瀬戸際まで追い込んだ化け物の化身、今のナルトのチャクラコントロール等と合わさり、桁外れの力を発揮していた。


ガイはネジの頭を撫でた。

「いいぞ、ネジ、では、行くか!」

ガイ班では、ネジの指揮力の高まりに合わせ、ある程度ガイはネジに物事を決めさせる訓練をしていた。いずれ木の葉を担う忍びの育成、ネジはそれに十二分に答えていた。







「……必要ない、三分で終わる」
異様な集団のうちの一体がつぶやく、規定事項をただなぞるだけの様に、ただ、小さく呟く、少し宙に浮いている女は、呟きを拾い上げ、小さく頷いた。





雪の平原を殺意が塗り潰す、S級犯罪者達の集まり、暁、元リーダーペイン、現時点で、戦闘能力があるもの中で、まごう事なき、「最強の群体」が甘い希望を打ち砕く。


口では軽く言っていたが、ネジ、リー、ガイは甘くない任務を今までにこなしていた、主とも相対し、死線を何度か越えてきていた、ゆえにわかる、先程からあふれ出ている殺気をうけ、背中に嫌な汗が流れ、足が震えそうになるのをひたすら我慢する。




兎が獅子に立ち向かうようなもの、後にガイは同僚のカカシにそう語る。



「水遁・水龍弾の術!」
ナルトはそんな敵をまったく恐れていない、ナルトのまっすぐな言動は遥かなる強敵に立ち向かう時の武器となる、恐れを払い、実力以上のものを捻り出す、勇気という名の武器となる。



*……武勇・献身の徳を確認……プログラム、アバタール(仮)起動開始……*



[4366] 雪の国、その6
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/15 21:35

大蛇丸が考案し、部下が丁寧に設置した様々な罠。


ブービートラップに気を取られ、動かないようにすると、停止したことによる運動エネルギーを感知し、付近一帯に回復不可能な爆破をもたらすもの、ワイバーンから取った、極上の毒をたっぷりと塗り込めた竹槍、上から落ちてくる針の山、はてまて、音を立てただけで付近一帯の地盤が壊れ、下に待ち構えている中級モンスターによる一斉射撃を加えるもの。


等々、常識では考えられないような物から、初歩も初歩といった手合いのトラップまでを隙無く発動させる、チャクラを廻すだけで其所は死の山と変化する。


だが、マダラは避けるまでもなく、ただすり抜けた。


前に人影が現れる、大蛇丸だ。


「口寄せ・羅生門」


マダラの眼前に厳つい門が呼び出される、単なる足止めにしては行き過ぎた対応だ。

「お急ぎでないなら・・・・・・私の里に寄って行きなさい、見知らぬ侵入者」


マダラは仮面で素顔が見えない。


「・・・・・・大蛇丸、か。そうか此処は音の里か・・・・・・暁以外の実力者・・・・・・協力してもらう」

仮面の一部が外れ、目が露わになる。

写輪が回る、目があった瞬間、大蛇丸の体は崩れた。


「・・・・・・ふん、分身の術か、対応としては当たり前か、大蛇丸、いい情報があるんだが、聞く気はないか?」

「その物騒な目を仕舞ってくれたら里に招待するわ・・・・・・貴方は何者かしら、不完全な写輪眼のカカシ、それとサスケ君と、イタチ以外に写輪眼を持っている者なんていたかしら?」
物陰に隠れながら大蛇丸は話をする。


「・・・・・・うちはマダラ、あの魔女は正直一人ではもはや手に負えん、お前の里、利用させてもらう。木の葉の抜け忍の先輩として、な」

マダラの声には苦渋が満ち満ちていた。








ナルトが放った術の隙を突いて、ガイが接近戦を仕掛ける、が、囲まれ、離脱。

水龍弾が着弾するが・・・・・・
シュウ・・・・・・

ナルトの放った術は一人の男によって吸収されてしまった。

「・・・・・・まだまだだってばよ!火遁・火龍弾!」

「土遁・土流大河!」

土遁を放った影分身が一刀の元切り捨てられる。


凶刃はナルト本体にも及ぶ。

「ナルト君!」

リーがナルトに迫る一体を蹴り飛ばす。

「八卦百二十八掌!」

飛ばされた先に待ち構えていたネジが、容赦無く奥義を繰り出す。

が、にやりと笑った一体が飛ばされる先に現れ、技を繰り出す前のネジを斥力で吹き飛ばす。


「・・・・・・増幅口寄せの術」

少し離れた位置に立つ一体が、様々な動物を呼び出す。


素早い大蛇が遠距離忍術を繰り返すナルトに襲いかかる。

「金剛牢壁!」

猿魔が檻でナルトを囲み、動物の攻撃を防ぐ。

ガイは果敢に攻撃を繰り返しているが、どうにも敵の隙を見いだせず、攻めあぐねていた。

相手の攻撃は全て捌いているのは流石は上忍といったところか。





「・・・・・・ペイン」

小南が、傍に控えている一体に話しかける。

「・・・・・・動きが素早いのが厄介だな、だが、キーは・・・・・・あそこの術を連発している小僧だ、あの陽動の所為で餓鬼道、その他も攻め切れていない」





人間砲台と化しているナルトは、周りの敵を一気に葬り去った後も、他の三人の動きをサポートするために、遠距離忍術を連発する。


決して決定打にはなり得ない術ばかりだが、一々対応しなくてはならないため、またいいタイミングで補佐するため、速い動きで動き回る三人も捉えることが出来ていなかった。


いくらチャクラが豊富だといっても、連発すればするほど、身を焼ききれる程の痛みが体を襲う。かといって、未だナルトには螺旋丸といった、決定的忍術を覚える時間は無かった。ただの相手であれば、それでも決着はつき、話は楽だったのだが、相手は最強の群体、術の全ては逸らされるか、吸収されるか、弾かれていた。


ただの影分身ならばそんな痛みは無縁なのだが、本来は修行の為に作り出した、改良型影分身、経絡系の痛みは正しくナルトを襲っていた。


決定打にかける意識は三人に共通した意識だった。


「・・・・・・チームワークが良すぎますね」

「まるで一人の人間を相手にしているようだ・・・・・・息が合いすぎている」

リーとネジは二人で口寄せをする者と相対、一々口寄せを殺し、だが召還速度が全く落ちない。


ガイが二体と交戦中、バールの様な物を所持している者と、体からたくさんの腕が生えている者。


斥力を発生させると術を吸収してしまうものが主にナルトの術に対応、そしていいタイミングで他のフォローに入り、体に傷をつけさせることを全く許さない、そして全てを見通している者が一体。


「ちっくしょぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお、なんで弾かれるんだってばよ!」


なおも炎を水を土を雷をあらゆる術を連発するナルト。影分身を作り出し、同時に使うといったことはもはや、出来なくなっていた。


均衡の崩壊は第三者の手によりもたらされる、すなわち雪忍による、テンテン・雪絵に対する強襲。





「・・・・・・駄目か、撤退!八門遁甲、開!」

ガイの体から湯気が立ち上る。

ネジとリーの二人は命令を聞いた瞬間、引こうと動作を見せた、しかしりーが見えない力で吸い寄せられてしまう、待ち構えるは弾頭を構えた一体、避けきれぬ一撃、



「やらせるかってばよ!」
猿魔を解除し、無防備になりながらも高々濃度の九尾のチャクラを練り込み、放つ。九尾の協力があってこその技。


付近にいた一体を飲み込み、ミサイルらしき者を撃とうとした者に向かうが、斥力を発する者が、引力を解除、ナルトの攻撃を弾く。

引力を解除されたリーはすぐにネジと共に撤退を開始した。

その後ろからミサイルらしき物が迫る。

「八卦空掌!」
爆発が起こる。

ガイは一撃を加え、二体がひるんだ隙にけむり玉を大量に投げ、そのまま術を放った体勢で倒れ込んだナルトを抱え込み船にまで戻った。



雪忍達はガイ達が戻ってきたのを見ると、そのまま撤退していった。





「・・・・・・行かせてよかったの?」
「何も問題は無い、ほんの余興だ」

結局無傷のペイン、対してナルトはもはや雪の国では戦闘不能。

道を阻むことは出来ず、ペイン達は一路「ヒスロス」琴音と直人、音の五人衆達が向かったダンジョンに向かう。




雪絵は、激しい戦いの最中、意識を失っていた。












*ペイン強すぎっすね、改めてどうやって勝つんだ?ただ術が強力なだけじゃなくて、攻撃を弾くってのがキモですね、こいつを真っ先に何とかしないと、一切の攻撃が通じないって流石ボスキャラだよなぁ。



[4366] ヒスロス
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/15 23:37

強力無比な悪魔の軍団が犇めきあう、悪名高きダンジョン「ヒスロス」雪の国に出来た其所の静寂をまずは二人の乱入者が乱した。



「All Kill!」

琴音の声が静寂なダンジョン内部に、高らかに歌いあげるかのように響き渡る。

従うは・・・・・・



ぐがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁああああああああああああああああああああああああああああああ




五体のドラゴン。


「あんた達雑魚に構っていられないのよ!」

鍛え上げられた灼熱のブレスが、道を塞ぐ悪魔、その他のモンスターを十把一絡げに薙ぎ払う。


琴音のドラゴン達もまた、UOによる制限を外された対象になりつつあった。

ドラゴンの一斉砲火を避けたモンスター達は、音楽が響き渡ると同時に悉く同士を始める。

「・・・・・・琴音ちゃん、燃えているね・・・・・・はやく行っちゃおうか!」

「当たり前よ、さっさと最奥だか何だか知らないけれど、「ムーンストーン」とやらを回収するのよ!」

調子に乗りまくっている二人の前に、もはやそこら辺のモンスターでは相手にならなかった。





前しか見ていない二人は、後ろから近づいている集団には、全く気がついていなかった。






「・・・・・・型にはまればあれは無敵ですね、まともにやっても犠牲を考えなければ捉えられますが・・・・・・貴方たちに何かいい考えはありますか?」

しかし四人は答えない。


大蛇丸の、秘薬の存在が現れてからの研究は凄惨を極めた。

能力の拡充、それは一定の効果が現れた、・・・・・・最強の群体ペイン、大蛇丸は知ってか知らないでか、其所の境地を目指した、有る意味輪廻眼に対する挑戦であった。


「聞いた私が、馬鹿でしたね・・・・・・しかしこんな扱いずらい術を大蛇丸は・・・・・・よくこんなもの実戦で、しかも部下相手に、使う気になりましたね・・・・・・別に悪口ではありませんよ?・・・・・・全く自我が無い癖に大蛇丸への狂信は消えていないなんて・・・・・・外道が・・・・・・」


頭に対する感覚の共有、最適化をされたそれは、適切な指示を考えられる者にのみ、冷静で、堅実な判断をもてる者にのみ使われることを想定されていた。


白は、その条件を満たしていた。他の四人は白の指示に絶対確実に従う。


前方では今も元気にドラゴン達が奇麗なブレスを吐いていた。
「・・・・・・暫く様子を見ましょう」
四人は答えない、白は無言の四人を眺め、前に進んだ。








変則的な追いかけっこは暫く続いた、最も割を食ったのは、最後尾の二人であろう。


「・・・・・・あの餓鬼何してんだ?さっさと捕まえちまえよ!」
「飛段、頭を出すな、依頼はあいつらを見張り、手に負えなそうだったら手助けしろ、だ。口を出す事じゃない」


二人ののりは、「初めてのおつかい」の親達の言動によく似ていた。
二人は再度沸いてくるモンスターを適度にいなしつつ、ゆっくりと奥に進む。




空気が変わる。二人は強いがために、最初に気付いた。気付いてしまった。
「・・・・・・角都」
「・・・・・・分かっている・・・・・・この感じ・・・・・・このチャクラ・・・・・・ペイン、か」


二人の体に悪寒がはしる。死という者に最も遠いと言われている二人に走る。


「・・・・・・どうする?俺はあんなやつとやりたくないぞ」
「俺もご免だ・・・・・・だが、今は契約が済んでいない・・・・・・大蛇丸め此処までよんでいたのか?・・・・・・いや、如何に洞察力に優れていても、有り得る話ではない」


悩みは二人の足を見事に止めていた。

ペインのチャクラは確実に近づいてきている。



「・・・・・・あいつが見逃してくれるわけねえよな」
「当たり前だ、暁は抜け忍を見逃すほど甘くない」
「別に副業しているだけだから・・・・・・」
「あの堅物のペインが言い訳を聞くとは考えられん・・・・・・仕方がない、餓鬼がこの洞窟から抜け出すまで時間稼ぎを・・・・・・」






「・・・・・・お前達・・・・・・何故こんなところにいる?」


二人が振り返ると其所にはペイン六道、並びに小南が存在していた。


角都はよくわからないが、飛段は引きつった笑みを浮かべている。


「ちょ・・・・・・ちょっとまて、別に俺達はお前らと事を構えようとは・・・・・・」

「問答無用・・・・・・痛みを知るがいい!」

「流石に早い、火遁・頭刻苦!」







不死コンビVS最強の群体。
始まりは角都の狭い空間を利用した殲滅火遁から始まった。



[4366] 鬼人
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/17 13:23


其所は大蛇丸の研究室、下手な現代理系大学の研究室よりも機材が多く、素人では判別がつかない機材も多数取りそろえていた。


全ては大蛇丸の理想を叶えるため「不死の体」全ての忍術を極めたいと考えている大蛇丸にとっては至上命題。

だが、それだけに止まらず、自身の「不死の体」を守らせる、「最強の護衛」の研究も同時進行で行われていた。



ケース「白」、群体での最強を目指した、一つの形、奇しくもペインと被った存在だが、方向性としてはありだ。



そしてもう一つ、大蛇丸は自身の強化にも余念が無かったが、それ以上に忠実な最強を欲していた。



弦野と君麻呂が連れてきた白は、大蛇丸の理想に叶う素体であった。



そして、もう一人、あまりの素材に大蛇丸は狂喜乱舞した、傍にいたカブトがどん引きするくらい、大蛇丸は我を忘れて喜んだ。



来訪者を連れて、大蛇丸は自身の研究室に帰ってきた。

「・・・・・・せめて四人欲しいっていわれてもねぇ・・・・・・飛段と角都はお守りにいかせちゃったし、砂はもう使えないとしたら、カブトぐらいしか残ってないわよ・・・・・・あ、あれはもう使えるかしら」

大蛇丸は椅子に座り通信機のような物を起動させた。
大蛇丸扮する四代目風影は、カカシの助言を受けたちよ婆により、看過されていた。現在は、ちよ婆が五代目風影代行を行っている状態だ。
ちよ婆は、カンクロウがクグツに習熟した時点で風影を譲り渡すことを名言している。カンクロウの地獄の方が楽なのではないだろうかという、実戦さながらの訓練はひたすら寝る間も惜しんで進められている。



「カブト、Zの調子はどう?そろそろ実験は終わったでしょ?」


「Z?」
マダラがオウム返しにする。


「ふふ、知りたい?」
研究者特有の顕示欲。

マダラは素直に頷いた。


「素晴らしい素体なのよ、初代火影及びかぐや一族君麻呂の骨こそ、適合不可能だったけれども、風影の時に手に入れた「砂」に一緒に来た子の「氷」、それにイタチ惨殺前に手に入れていた「写輪眼」にとても高い適合率を示したわ、少なくともカカシよりは上の適合率よ」
うきうきとした調子で大蛇丸は喋る。

「写輪眼、か、我らの体無くして、本来以上の能力は発揮されないと、カカシで証明されていると思ったが?」

大蛇丸は指を振る。
「甘いわね、あなた、伝説のマダラと言われる割には思慮が浅いと言わざるを得ないわ・・・・・・これ、なーんだ」

大蛇丸の手には秘薬、元来この世界には存在しなかった物。

「・・・・・・デイダラも何かそれを使ってやっていたな、お前ら変人は何故それに興味を持つのだ」
仮面で見えないが、マダラは遠くを見る目をしていた。

「へぇ、デイダラね、ま、あの子はこの黄色い硫黄を利用するくらいが関の山でしょう・・・・・・私は違うわ・・・・・・科学は元より、化学も私の独壇場よ」
大蛇丸は恍惚の笑みを浮かべている。

「・・・・・・よくわからんな、とにかくそれを使って写輪眼を使いこなせるよう、適合率とやらをあげたのだな?」

「ええ、ま、素人には分からなくても仕方が無いわ・・・・・・カブト、映像をこちらによこしなさい」
マダラの反応に冷めた大蛇丸はカブトに命令する。



広大な闘技場・・・・・・違うコドクの場が其所には存在していた。



全員が全員呪印の適合者。

脂が乗っている実力者ばかり。


「Z、いいわよ、全て殺しなさい」
大蛇丸の言葉が闘技場内に響く。


「・・・・・・怠いな、お前ら、俺は片手しかつかわねえ、・・・・・・かかってこい」

片手では印を組めない、Zと呼ばれる者は印なしで化け物達と争う構えだ。

その目には、確かに回る写輪、それもカカシのように片目だけではなく、両目。



喧噪が広がる、殺戮が始まった。



「・・・・・・氷遁・・・・・・砂、それに水遁・・・・・・何故印を組まずに術が使える・・・・・・そうか、血継限界、か。大蛇丸、お前はどんな実験を・・・・・・」

マダラでさえ、容易に想像できる副作用の地獄。



画面に映る男は、正しく、いや、片手すら使わず、全ての化け物を刹那に皆殺しにしていた。



「鬼人、再不斬。合格よ、私達についてきなさい」
どう?とばかりに大蛇丸はマダラに向かいウィンクをする。


マダラは画面内の男に釘付けに為っていた、写輪が静かに画面外のマダラと目が合う。



・・・・・・此処に五人目の写輪眼の使い手が存在した、外道による外法の果てに生み出された正真正銘の化け物、通称「人間キメラ」



混入された物は、人間のみだけではない・・・・・・人間が化け物と呼んでいるそれらも等しく、再不斬の肉体には使われている、地獄の副作用の痛みと引き替えに、限りなく最強に近い体を、再不斬は手に入れた。



「・・・・・・素晴らしい、魔女に挑むレベルとして合格だ、四人揃ったな、行くぞ魔女の所へ」
拍手をし、マダラは再不斬の生誕を祝う。



魔女の晩餐に呼ばれし、人外の者達、されど受け待つ魔女は未だ無敵、文字通り実質に無敵、人外達はそれを知らず、正しく無謀な進行をする。



[4366] 雪の国、お姫様
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/18 16:36



「・・・・・・いい臭いがするってばよ」

ナルトは薄暗い船室の中で目覚めた、最後に九尾の力を使いぶっ倒れてからの記憶がない状態だ。

「ん?・・・・・・なんだこれ」


傍らに置いてあるテーブルには、奇麗な水晶状のペンダントが置いてあった。
ナルトはそれを手に取り、まじまじと見つめる。


「・・・・・・それは、私のよ、返して頂戴」

見るとテーブルの更に横にもう一つベットが設置されていた。


「なんだ、いい臭いすると思ったら、姉ちゃんか」

ナルトはにっこりと笑った。体を起こし立とうとするが、そのまま雪絵の方に倒れ込む。

「ごめん、姉ちゃん・・・・・・体がうまく動かないってばよ」

雪絵はため息をつき、ペンダントをナルトの手から回収した後、ナルトを支え、立たせてやった。


「ナルト・・・・・・起きたか、先生が呼んでいる、・・・・・・それに其所の雪絵さん、これるか?」

ネジが船室の入り口で立っていた。

「・・・・・・あんたが支えてやりなさい、私は後で行くわ」

雪絵はネジの方向にナルトを押すと、ベットに設置してあるカーテンを仕切り、着替えを始めた。

押しつけられたネジはナルトを支え、無言で船室の外に出て行く。









「――三太夫さん、どういう事ですか!?あんなのがいるなんて聞いていませんよ!!」

映画撮影のスタッフの一人が雪絵のマネージャーである、三太夫に詰め寄る、雪の国での撮影は、最終的に決定したのは監督だが、それはマネージャーの三太夫の強い推薦があったからだ。

先に船に乗り込んだ彼らは幸い、ペインの姿を見ていない、ペインの姿を見たのは、雪絵、三太夫、それと監督だけだった。


「・・・・・・雪の国は、現在、先王の弟風花ドトウによって支配されています、ドトウは卑劣な手を使い、クーデターを起こし、先王を殺害、・・・・・・現在残っている民の生活は・・・・・・専横を止めさせるためには、雪絵様・・・・・・いえ、風花小雪様が立ち上がるしか、他に手はありません」

監督以下映画スタッフは黙って話を聞いていた。


ガイが口を開く。

「・・・・・・先に一つだけ聞いておきたい、最後に現れたあの集団は、ドトウの配下ではないのですね?」

三太夫は頷く。

「ええ、ドトウは雪忍を使い先王を排しました。あんな者達がドトウに従っているとは考えられません」

ガイは考える、自分たちの戦力について、ガイ班自体はナルトの奮戦もあって全員が全員、ほぼ無傷ですんだ、だが、再度襲撃を受ければ、どうにもならない。


「再度政権奪還ですか・・・・・・立派なAランクですね、しかも高度な・・・・・・人数が足りません、一度里に戻らないと」

「・・・・・・あの変な集団がいなけりゃ、なんとか為るってばよ」
ガイの言葉をネジに支えられたナルトが遮る。

「・・・・・・先生、ナルト君の言うとおりです。悔しいことに、僕らは、彼らには全く手が出ませんでしたが・・・・・・雪忍ならば、熱い魂をもった僕達の力だけで何とかなります!」
りーが熱く語る。

テンテンとネジは揃って首をあきらめを混ぜ横に振る。

ガイとりーが熱い抱擁を交わす。
「リー!」「先生!」


「・・・・・・いいんじゃねえか?お姫様を使って映画を撮るなんて一生に一度出来るか出来ないかだぜ、お前ら、俺は、映画の神が下りてきている以上、絶対にひかねえぞ!」


ガイとリーの熱気に当てられたのか、監督までもが熱く語り、それに付随してカメラマン助監督も気合いを入れる方向を上げた。


「ばっかじゃないの?・・・・・・無理よ、ドトウの天下を崩すなんて・・・・・・最初から私はこんな国、来たくなかったのよ!」
入り口の所に立っていた雪絵はそう呟き、首を横に振る。


「まずは状況把握が必要だな・・・・・・うちの実質的責任者がやると言っている以上、俺達木の葉の忍びは貴方を護衛し、お姫様である貴方を、この国のトップに立たせる・・・・・・それが忍びだ、請け負った任務は果たさせていただく、貴方の情報が知りたい・・・・・・この国の地形、城に仕掛けられている仕掛け、抜け道、それと予想できる敵の数、まさかあの三人だけってことは無いだろう、あれだけでは如何に平和ぼけしていた時代だとはいえ、国は墜とせない、その他諸々、知っている情報全てを教えて貰おうか」

ネジが雪絵の前に立ち、肩を掴み、言葉を投げかける。
ガイはネジが居るからこそ、多少の遊びが出来る・・・・・・振りではなく、本気なのは少し問題があることだが・・・・・・。

ネジの真剣な瞳に雪絵は多少たじろいだ。


「・・・・・・そんな、私は昔小さい頃から此処には来ていないの、知らないし、覚えていないわ」


「私が代わってお答えします」
ネジの手を三太夫はふりほどき、雪絵の前に立つ。

「・・・・・・三太夫、何で貴方が知っているのよ」

三太夫はにっこりと笑い、雪絵の前に跪いた。

「大きく、成られましたね、初めてお逢いしたことの事を覚えていらっしゃいますか?・・・・・・私は先王、風花早雪様にお仕えしておりました・・・・・・貴方様が風雲姫としてデビューしたとき、私は涙を流しておりました・・・・・・生きてくださった、と。貴方様は、今では雪の国に住まう者全ての希望です」

「・・・・・・私のマネージャーになったのも・・・・・・この日の為だったわけ?」

涙を流している三太夫、声が小さい雪絵。


「すまない、昔話は後にしてもらう、テンテン、お姫様を自室に案内しろ、三太夫さん、あんたはこっちに来てくれ、作戦を練る・・・・・・政権奪還となれば、戦力はあるはずだろ?・・・・・・それとあの変な鎧、俺達にかかれば大した事は無いが、派生が有るかも知れない、危険性が有ると思う情報全てを話してくれ」

始めて知った事実に身を振わせる雪絵、テンテンの案内に大人しくついていく。
監督達は次のシーンを取ることで頭がいっぱいだ、映画は最後まで撮り続けるらしい、ネジは頭を抱え、安全性について再度思考を巡らせる羽目になった。


















「後ろが五月蠅いですね」
白は小さく独り言を呟いた。前方では相変わらず琴音のドラゴンによる一斉砲火により、敵はどんどん駆逐されていた。


再度沸いてくる知性無き化け物など、白達にとって、全くの脅威ではなかったのだが、以前再不斬と自分の命を救ってもらえた相手に対する実力行使に、白としては珍しく頭を悩ませていたことだった。

「再不斬さんが居れば、どうするか聞けたのに・・・・・・」

「大切な人」の命を救ってくれた人達、「大切な人」を守り抜く事が信条の白らしい悩みであった。


「・・・・・・何ですか、あれは」

白は未だ主の一柱も見ていない、だからこそ、その存在に気圧されてしまった。








「俺達が、遅延行動をさせるのが精一杯とはな!」

角都の攻撃を避けてきた、否、力ずくで斥してきたペインが二人に迫る。

接近戦を挑んでくる者に対しては飛段があたり、遠距離の口寄せ、その他忍術を放ってくる者達に対しては角都があたる。

ペインの能力で一番厄介な斥力発生体は角都の連続忍術で、斥力以外は発生させず、それがそのまま飛段のサポートと為っていた。

「無駄口を叩くな・・・・・・このまま行くぞ」

飛段も角都の攻撃に巻き込まれているのだが、其所は不死の体を持つ者。

流石に痛いという感覚は消せない、だが、それが合ってこその遅延行動の成功。

斥力の隙をつきてくる飛段の存在が、ペインの全力を否定していた。

また、狭い洞窟の通路というのも、不死コンビに有効に働いていた、六体が動くには狭すぎて、一番前の斥力発生体、及び斥力発生体の間隙をカバーするチャクラ吸収体が前に出張るだけで他の者が前に出られない。




「先に行くわね」
「・・・・・・ああ、こいつらは俺が痛みを与えておく、先に主との面会を始めておけ」

角都の横をすり抜ける小南。
小南は争いに興味が無いかのように、角都に危害を加えるでもなく、洞窟の奥に進んでいった、後には紙吹雪が残った。



「やべえ!小南通しちまった!」
「・・・・・・今はペインに集中しろ」



ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!




最奥で咆吼が響いた。それは入り口にまで達し、同時に飛段と角都は白達を回収するため、ペインへの攻撃を一切解除し、瞬身の術で一気に最奥にまで移動を開始した。






ペインは、不死コンビの二人の攻撃がやみ、展開していたチャクラを解除。
「ミナクス様が仰っていた、最強のモンスターとやらの一柱、知恵有る人語を介す漆黒の悪魔、バルロン、か・・・・・・目覚めていたとは・・・・・・小南だけでは荷が重い、な」






[4366] 雪の国、絡繰り細工
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/18 19:18


「で、まんまと小雪姫を逃したと言うことか」

其所は現雪の国、君主、風花ドトウの部屋、無機質な物ばかりでしめられており、ドトウの前にはガイ達を襲った雪忍三人が跪き、ドトウの横には真っ白な体躯を誇るドラゴン――ホワイトウィルムが二体、それぞれ左と右に佇んでいた。

「はっ敵は木の葉の忍びを雇ったようです」

「・・・・・・木の葉も割にあわぬ事をよく請け負った者だ、面白い、手引きしたのは・・・・・・反乱分子か、以前より開発していた例の物の実験にちょうどいい、使え」

雪忍達は頷き、三方に散っていった。

「小雪姫よ・・・・・・わざわざ私の為に戻ってきてくれたのか?ご苦労な事だ、兄さん、貴方の娘はいい娘ですね。くくくくくくくくくく、よいご教育をされたみたいで。はははははははははははははははははは」

ドトウは傍に控えている二体のドラゴンを振り返る。

「お前らもそうは思わんか?」

しかし、二体の白き龍達は答えない。


場にはドトウの笑い声のみが響き渡る。








「姉ちゃん・・・・・・どうして女優になったんだってばよ」

監督の執念が成した、撮影の合間を縫って、一行は三太夫が示した、レジスタンスが潜んでいる場所へと急いでいた。


相変わらず撮影の時の雪絵は、見事としか言いようがない。女優魂ここにあり、迫真の演技は見る者全てを感嘆させる。


その休憩中、体を休める事が仕事のナルトはテンテンと共に雪絵の護衛についていた。

「・・・・・・別に、女優ぐらいしかなれる職業が無かったからよ」

「映画だとあんなにかっこいいのに、・・・・・・逃げ回っている実際の姉ちゃんは駄目人間だってばよ」

一行の進行中、雪絵の脱走事案は三回あった、その度にガイ班総出で探し、事無きは得ていた。ガイは二度目の脱走の時から、一つの対策案をナルトに示し、ナルトは了承していた。

「・・・・・・子供には分からないわよ」

「映画を見て姉ちゃんに憧れていたのに・・・・・・がっかりだってばよ」

ごんっとナルトを叩くテンテンの手。
「こらっ!何てことを言うの!・・・・・・本当すみません、ナルトはまだまだ子供なので」

「別にいいわ、気にしてないもの・・・・・・何?」

テンテンの手には紙とペンが握られていた。

「誠に申し訳ないのですが・・・・・・サインを頂いてもよろしいですか?」
テンテンもまた風雲姫のファンであった。

「貸しなさい」
スラスラとサインをし、雪絵はテンテンに紙とペンと返した。

テンテンは喜び、大事に抱え、その場から離れていった。

「俺は今の姉ちゃんからサインなんて欲しくないってばよ」
雪絵は無言で窓の外を見ている。


乗っていた車が洞窟を抜け、また雪景色が顔を覗かせる。


「・・・・・・見ているだけなら、奇麗なのにね・・・・・・それ以上欲張ろうとするから、・・・・・・幻滅するのよ。憧れているだけでとどめていればよかったのに、ね」

雪絵の呟きが小さくその場に流れた。
外では静かに雪が積もっている。雪は静かに積もり全てを白に塗りつぶす。









其所は雨の里直近の森の中。

「その四体の守護者を殺すか、無力化しないと本拠地に入れもしないってわけね」

「だから、四人、か。僕は元々後方支援が主なんですけどね・・・・・・」

ほぼ無理矢理連れられてきた感があるカブトは軽く愚痴る。

マダラが先頭を行き、間に大蛇丸と再不斬を挟み、最後尾をカブトがつめる。



「で、その魔女ってのはどんな存在なのよ、貴方の主観でいいわ」

マダラは振り返らず答える。

「・・・・・・悪いがぱっとしか見ていないのでね、だがあれは魔女としかいいようがない、写輪眼で何も見通せなかった者は初めてだ・・・・・・ペインすら堕とされたとは考えにくいが、あの魔女ならば何を起こしても不思議ではない」

「へぇ、そんな存在が、まだこの世に隠れていたの、伝説のうちはマダラを恐れさせるような存在がねぇ」
大蛇丸の眼が爬虫類の如く細まる。


「・・・・・・いや、魔女は「呼んだ」と言っていた・・・・・・お前に意味がわかるか?大蛇丸」

「・・・・・・さて、ね・・・・・・逢うのが楽しみだわ」


「・・・・・・止まれ、ここがラインみたいだ」
マダラは足を止め、見えない壁を見通す。

「話の通り、四方に散り、守護者を・・・・・・殺せ」
マダラは冷たく指示する。

「元仲間なんじゃないの?」

「何を今更、俺達にはそんなもの、関係ないだろ?大蛇丸」
マダラの言葉に大蛇丸の顔が笑いに歪む。

「・・・・・・確かに、行きなさい、再不斬、カブト、貴方たちのことは信頼しているけど、裏切られちゃったら困っちゃうわね」


無言で散って行ったのは再不斬、同じく顔を笑みで歪ませて散ったのがカブト。


「いい部下を持ったものだ、さぁ俺達も行くか、相手は暁、どいつもこいつも強敵だ。死んでもいいが、結界だけは解いて貰うぞ」

「ふふ、それはこちらの台詞よ。無駄な死はいらないわ、全て私に役立てなさい」


双方笑い合い、二人もまた散っていった。













薄暗い部屋の中、大の男達がなにやら手元の何かをいじっていた。

「何、小雪姫が!?誠か!!」

集団の長と三太夫が、薄暗い部屋で膝をつき合わせて座っていた。

奥では技師達がそれぞれの絡繰りを作っていた。

雪の国の名産の一つに絡繰りがあげられる、その技術は昔から伝えられるもの、最近になって発見されたある道具により、飛躍的に上昇していた。


その発見された有る物を使った絡繰りが、抵抗戦力の切り札と為っていた。

「ええ、今こそ、ドトウ打倒の時です!」

「皆、聞いたか!我らの苦節の日々が報われる日が来たぞ!」

二人を大勢の歓声が包み込む。







映画の撮影は続く、監督の気が済むまで、何度も何度も演技を繰り返し、

「はいっカット!」

洞窟を抜け、ワンシーンの撮影が終わる。

三太夫は、抵抗勢力と連絡を取りに場を離れ、雪絵はナルトとテンテン、他全員の目を欺き、再び脱走していた。


「全くあのお姫様は!少しはじっとしていろ!ナルト!」

九尾の回復力により、歩く程度には回復していたナルトが頷き、一路まっすぐ雪絵の方向に向かう、二人を映画撮影の護衛に残し、ネジとリーがナルトの護衛、ナルトが洞窟の中に入っていったのを見届けた二人は、リーはもう一つの入り口、ネジはその出口に陣取り、敵の侵攻を防ぐ。



「見つけた、姉ちゃん、さぁ帰るってばよ・・・・・・いくら逃げても、自分の道からは、結局にげられないんだってば」

雪絵は洞窟の真ん中あたりで蹲っていた。

「・・・・・・何で貴方は私をすぐ見つけられるの」

「・・・・・・姉ちゃん、いい臭いが、するから。何処にいるかすぐわかるんだってばよ」

ナルトは雪絵に手を貸し、足を軽く捻ったというので、背負って洞窟の出口にゆっくり歩いていった。

「・・・・・・貴方たちはどうして私に手助けするの」

「・・・・・・別に姉ちゃんの為じゃないってば、雪の国の為だってばよ」

「そんな事で?あんな化け物の集団とも戦うの?」

「・・・・・・逃げたら、誰かが悲しむ、そんなのご免だってばよ、俺はやがて火影になる男、ちょっとくらいの障害なんて、ぶちこわすんだってばよ」

「私には・・・・・・無理よ、ドトウには、勝てないわ・・・・・・父様だって・・・・・・」
雪絵は小さく呟き、ナルトの背中に顔を押しつける。

「最後に正義は勝つ・・・・・・それが映画だってばよ」

「あくまで映画の中での話じゃない、現実は非情よ」

「いや、悪は最後に滅びるもんだってば、三代目のじっちゃんも・・・・・・カイも言っていたってばよ」
にこっと笑うナルト、その笑顔を見ていられず、雪絵は顔を逸らした。






監督達を護衛しているガイとテンテン、二人は警戒力は保ちつつ、手持ち無沙汰であった。

「少し前から気になっていたんですけど、これって一体何なんですかね?」

テンテンがガイに話を振る。テンテンが指さしているのは、鉄道のレールみたいなものだ。

「・・・・・・鉄道のレール、だな。今は使われていないみたいだが」

鉄の道は、雪で所々覆われており、氷も所々姿を隠していた。

その鉄の道が、鈍い赤い光を発する。

「・・・・・・チャクラを発生させて、熱を?」
触ったテンテンが分析する。





ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・


地鳴りの様な物が遠くから聞こえてくる。

「ナルト、何か聞こえない?」

「聞こえるってば・・・・・・姉ちゃん何だかわかる?」

「・・・・・・これは」


「・・・・・・・・・・・・二人とも!早く逃げてください!」

入り口を見張っていたリーが、全速力でナルト達の所にまで駆けつける。

ナルトはリーの後ろに走ってくる鋼鉄の塊を認めた。

反転をし、限度まで速度を上げ、出口に向け走る。

幸い出口までそう遠くない、だが今のナルトにとっては遠かった。



「くっ、木ノ葉昇風!」

鋼鉄の塊の動きを少しでも遅くしようと、リーは天井にぶら下がっている巨大なつらら達を地面に落とす。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

雪絵はきつくナルトに抱きつき、ナルトは限界以上の力を再度発し、洞窟出口にまで走り抜けた!

即三人は脇に避け、鋼鉄の塊は、監督達がいた所のあたりで止まる、すでにガイ達は監督達を高台に避難させていた。


顔から雪に突っ込んだ三人は、ネジに起こされた。


「・・・・・・何なんだあれは」


装甲列車という物だが、その場にいる4人の意識には存在していなかった。

装甲列車の上にスピーカーを持った人間が現れ、増幅された声が流れる。

「・・・・・・小雪姫よ、よくぞ雪の国に帰ってきた、素直に私に従うならこれ以上民を苦しめることはしないと約束するが、どうだ?」

「姉ちゃん、あいつがドトウだな?」

「・・・・・・ええ、そうよ、私の父を殺した男、私の国を奪った男」

ナルトの背中を強く掴み、雪絵は震えを隠していた。

「あんな戯れ言信じる方がどうかしている、100%嘘だな」

ネジは白眼を発動させ、戦闘体勢に入った。

「全くです、言葉と行動が伴っていません、頭がそんなによくない僕でもわかります」

リーは何時もつけている重りを外し、ネジと同じく戦闘態勢に入る。


「くくくくくくくくくくくく、木の葉の忍び達を血祭りに上げてから再度話をしようか、その頃には意見も変わっているだろう」


ドトウは指を鳴らした。

装甲列車の一部の扉が開き、絡繰り細工がぞろぞろと姿を現す。

雪の国の名産の一つ、絡繰り細工、ドトウもまた最近発見された新たな道具・・・・・・通称「パワークリスタル」

これを使い、新たな戦闘絡繰り兵器を作り出していた。



「ドトウ!今こそ覚悟!」

丘の上に立っているのは、レジスタンスの面々だ、傍には同じくドトウ使用の物と同様の絡繰り兵器が鎮座していた。


ドトウの隣に雪忍が姿を現す。
「ドトウ様、ここは我々が」

それをドトウは手で払う。
「・・・・・・いや、いい。引きつけてから例の物を使え」


「三太夫、駄目よ!!!」
雪絵の言葉は遠くて届かない。

「・・・・・・予定と違う!無謀な真似を!」

襲い来る絡繰り兵器を相手にしながらネジが叫ぶ、血が通わない相手ゆえに柔拳が通じない。

「ここは僕に任せてください!」
リーの力は正しく機能していた。圧倒的な速度と力で絡繰り兵器を潰すリー。

絡繰り兵器はリーに任せ、助けに行こうとしたネジを三人の雪忍が襲う。
「邪魔だ!」



「うぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
多数の人間が絡繰り兵器と共にドトウに向かい突撃を開始した。



それは、装甲列車の横であったのが、彼らの不運であり不幸であった。



「開け」

装甲列車の横から絡繰り兵器が移動し、無防備な様を三太夫達に晒す。

だが、其所に見えていたのは、大量に連なっていた発射装置であった。

「いかん、総員てった・・・・・・」
三太夫は声を張り上げるが、血気にはやったレジスタンス達は突進を止めない。

「遅いな、発射」
ドトウの合図と共に、発射装置から数多の兵器が発射された。



絡繰り兵器といえど、限界以上の負荷には耐えきれない。


リーに壊されるドトウの絡繰り兵器しかり。


三太夫達もろとも圧倒的質量鉄量で死の嵐に巻き込まれる三太夫達の絡繰り兵器。


白の雪原に、大量に、赤い花と鉄色の花が、咲いた。





「三太夫~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!」




雪絵の悲鳴が雪原に響き渡る。




三太夫の前にテンテンが放った巨大手裏剣が突き刺さり、幾許かの兵器を逸らすことに成功する、だが、三太夫はそのまま倒れてしまった。


「朝孔雀!」
何処からか現れたガイが絡繰り兵器を壊しつつ、列車本体の真ん中辺りを壊す。


「・・・・・・発進しろ」
連結部分を切り離し、ドトウの乗る先頭車両が走り去った。

後を追うテンテンをガイがとどめる。

「深追いをするな!負傷者の救助が先だ!」

ネジと相対していた雪忍達は何時の間にか、姿を消していた。

リーは絡繰り兵器を壊すのは流石に数が多く手間取っていたが、ガイも加わり、殲滅に成功。




雪絵はナルトに支えられ、三太夫の元に歩く。

ネジの点穴により、出血自体は抑えられていたのだが・・・・・・もはや三太夫の命はつきかけていた。

「小雪姫様・・・・・・私はここまでのようです・・・・・・どうか・・・・・・雪の国を・・・・・・」

首が横に傾き、ネジは首を横に振り、目蓋を閉じさせた。

他の者は等しく大量質量鉄量に潰殺にさせられていた。

「・・・・・・馬鹿ね・・・・・・ドトウに逆らえばこうなることはわかっていたはずよ・・・・・・本当に・・・・・・馬鹿ね」

「姉ちゃん、そんな言い方!・・・・・・」
ナルトは怒りに燃え、雪絵の顔を見るが、その頬を伝う一滴の雫を見て、口を噤んだ。




「all fire」

声と共に灼熱の炎が、ナルト達を襲う。


咄嗟に反応したナルト達は、その場から散り散りにわかれ、炎を避ける。


崖の下から飛行船が飛び立ってきていた、それに付き添うように寄り添う二匹の白い竜。炎を吐いた物の正体である。


散り散りになったナルト達、否、ナルトを雪忍が襲う。紐が伸び、雪絵に絡みつく、すぐさま解放しようとしたガイ達を氷の悪魔が襲い出す!

「何も絡繰り兵器などというおもちゃだけが、私の力ではない・・・・・・精々楽しんでくれたまえ、小雪姫は頂いた」




「ちっ、悪魔は人に従わないんじゃ無かったのか!」
一瞬にしてガイは一体を葬りさるが、数が多数、誰も雪絵の救助に動けない。



「ほほほほほほ、いい的ね!」

空を飛ぶ雪忍が更に氷遁忍術をお見舞いする、その喧噪の中誰もナルトが居なくなっていることに気付いていなかった。




飛行船は一路、ドトウの城に向かう、傍を並列するは白い竜が二体。

飛行船のケツにナルトは忍具を使いしがみついていた。剥がされることなく、ナルトは船内に入り込む。



[4366] 雪の国、その7
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/18 22:18


其所は上も下も左も右も、前も後ろも無い空間。



早く迎えにこねえかなぁ。誰も来なかったらどうすっぺな。
俺とリースは特に問題ないんだよな・・・・・・恐らくあいつは一億年くらいじゃ死なないだろうし、俺だって寿命何て他殺以外ないだろう。


その場合ずっと美少女の下僕か・・・・・・その筋の人間からしてみれば嬉しい限りかもしれねえが、・・・・・・俺はご免だな。



あー暇だ暇だ、我愛羅はすげえな、ずーと術の特訓していられるなんて、俺も魔法の練習はしているんだが、中々スキルあがらねえしなぁ。さすがに99.0近くにもなれば簡単にあがらねえよな。


「竜よ、我はケーキを所望する」


イタチと共にリースが現れた。

ちっ、この前スキルの上昇に伴いクリエイトフードで想像する物が作れることに
気付いてしまったのは面倒くさいことの始まりだったな。


元の俺の世界の食べ物はこの世界にも多数あれども、キワモノと呼ばれる者や、有名店のお菓子なんかをイメージしたものは流石にこの世界には無いらしいからな。


「はいはい、文○道のチーズケーキだな」

「In Mani Ylem」

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、それじゃそれじゃ、この香しい臭い、たまらんの!」

味覚に目覚めたリース。
ことある毎に俺に頼み込んできやがる、そしてイタチ!こっそり食べているの知って居るぞ!


ちっTrackingでも・・・・・・このメンツに使っても本当に意味ないな・・・・・・やめとこ。


あー早く迎えに誰か来てくれないかなー


「Kal Xen」
スキルもさっさとGMになっちまえ・・・・・・帰ったときに木の葉は、ナルトはどうなっているかな?暁の尾獣狩りが始まってなきゃいいんだが・・・・・・一尾はここにいるから平気だろうけどな。









血と鉄と夥しい数の死骸で埋まった雪の雪原。
「総員、装備・怪我のチェック!」

「問題ない」
「問題ありません!」
「問題なし・・・・・・ナルトがいないわ!」

「ナルト君は、飛行船に乗り込んでいったのを確認しています・・・・・・あんな体で無茶をしますね・・・・・・」


「で、ドトウの城を案内して貰おうか」
ガイの足下には雪忍の一人が捕らわれていた。チャクラの鎧はすでに壊されている。

「くっ・・・・・・誰が喋るか!」
最後の足掻き、だが、相手が悪かった。


「もしかして、木の葉が甘ちゃんだと思っているのか?・・・・・・それは大きな勘違いだな・・・・・・テンテン、削りなさい」
はいと返事を返し、テンテンはやすりを出す。

「な・・・・・・何を!」

「元気がいいな、それがいつまで持つかな・・・・・・知っているか?爪は神経が集まっていてな、一番刺激を感じるそうだ、それに少しくらい体の部位が欠損しても、そこのネジは点穴を見極められる、出血は最小限に済む・・・・・・どれくらい持つか、楽しみだな、テンテン、やりなさい」

頷き、テンテンはヤスリを右足の小指からかけ始めた。

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁあああああああああああああ」

ヤスリがけは右足のかかとが消えるまで続けられた。
痛みにより気が狂うことすらネジの点穴により、許されない。
「テンテン、止めなさい・・・・・・喋る気になったかな?」

「・・・・・・雪の国の者なら、誰でも知っている・・・・・・ドトウ様の居城は・・・・・・」


全てを話す雪忍、位置だけでなく、城の仕組みまで。


「・・・・・・自ら命を絶たない、か。この国はよっぽど平和だったのだな・・・・・・テンテン安らかに逝かせてあげなさい」

「話が・・・・・・」



ザシュッ



的確にテンテンは首を刎ねた。
「忍者自体をなめているのか?・・・・・・さぁ行こうか、護衛対象を取り戻しに」


ガイの指揮の元、ガイ班は前に進んだ。










「・・・・・・大蛇丸、か・・・・・・なんだ、あの魔女に会いに来たのかよ」

森の中、五封結界の要を成す一つの要素、その一つにデイダラは守護者として張っていた。

「何よ、元気が無いわね、昔私に突っかかってきた頃の元気はどうしたの?」


「うるせえ、信じていた物を否定されたらお前もこうなる、うん・・・・・・いいぜ通れよ、別に魔女は通していいっていっているしな・・・・・・やっきになって守ろうとしてんのはペインだけだ」

「拍子抜けね・・・・・・ま、いいわ、一刻も早く、魔女の顔を見せて貰おうかしら」

大蛇丸は要石を壊した。

「・・・・・・ちなみに、魔女の名前は、何て言うのかしら?」

デイダラはすでにふて寝に入っていた。

「・・・・・・聞いたら後悔するぜ?・・・・・・うん、ま、いいか、魔女の名前は・・・・・・」




「ミナクスという名前、か・・・・・・ご苦労だなゼツ」

「ベツニ・・・・・・すぐに逃げたトビは正解だったよ・・・・・・あの魔女は・・・・・・人を縛る、カラダジャナク、セイシンヲシバル」

すでに要石を壊しているマダラ、その場にいたゼツもまた、力なく所在気無く、佇んでいた。

「これで二つか、あと二つには誰がついているんだ、ペインと小南か?」

「あの二人は、今遠い雪の国に行っているよ・・・・・・テシタヲカキアツメテイルサイチュウダゼ・・・・・・でもペインには、そんなことは関係ないよね、サスガニアヤツレルノガイッタイダケミタイダケドナ」



「・・・・・・遅い、暁なんてのはこんな物なのか?・・・・・・鬼鮫、お前は違うよな」
如何に強いとはいえ、数が一では先に姿を発見した、今の再不斬の敵ではなかった。

ペインだったものは、体を細切れにまで解体され、空に散った。



「・・・・・・なんで僕がこんな獣と戦わなきゃいけないのでしょう」
カブトの前にはオークキングが佇んでいた、頑丈さと力強さを誇る、主の一柱。

「いつも貧乏くじを引いているような・・・・・・大蛇丸様も容赦がないからな」
カブトは瞬く間に医療忍術のメスで、五体をバラバラにばらした。

並の鋭さではない、カブトもまた、様々な経験を積み、その実力を伸ばしていた一人であった。

「とりあえず、お仕置きは免れたかな・・・・・・僕が最後か。大蛇丸様と再不斬はわかるけど、あの仮面の人も結構な実力者みたいだね・・・・・・それより、魔女、か・・・・・・こっそり逃げてもいいかな、どうにもそういう手合いは苦手なんだよなぁ・・・・・・」

もの凄く嫌々ながら、カブトは、結界の内部に踏み込んでいった。














高度を上げた飛行船の内部。ドトウの前に雪絵は座らされていた。

「ようこそ、私の船へ・・・・・・食事は楽しんでもらえたかな?」

雪絵の前には豪華な食事が並べられていた。だが、それには手がつけられていない。

「ふふふ、早速だが・・・・・・雪水晶は、持っているのか?」

雪絵は面倒くさそうに、首から提げていたそれをドトウに投げ渡す。

「素直でいい子だ・・・・・・ん?これは!?」

「解!」

首飾りの変身が解け、ナルトの姿に戻る。

「ナルト!」

雪絵が色めき立つ。

「くらぇぇええええええええええ!」
ナルト影分身の渾身の一撃は、不可視の壁により遮られ、ドトウには届かない。

「ふん!」
傍に控えていた雪忍がすぐさまナルト影分身を討ち取った。

ドトウの服の下からチャクラの鎧が覗く。
「・・・・・・本物はどうした!」

「知らないわよ!・・・・・・そういえばあのおかっぱ頭の人が見ていたときが」

「木の葉の上忍ならば、ありえる話です、恐らくすり替えたのでしょう」


ガタガタガタガタ!

扉が開き、ナルトが飛び込んでくるが、其所までだ。

雪忍に押さえ込まれ、縛り上げられる。

「ナルト!」

「何時の間に忍び込んだんだ?」

「ええい、小雪姫、其所な忍者もろとも牢に・・・・・・いや、試してみたい物がある」

ドトウは背後に収まっていたある装置を取り出す。


「忍者はチャクラが無ければ、一般人、この装置は、チャクラを封じる。これでお前も一般人の仲間入りだな」

奇怪な機械は、ナルトの腹に備え付けられた。


度重なる連戦により溜まっていた疲れ、ナルトは意識を無くした。











三代目火影、執務室。

今日も元気にナルト(本体)は三代目に術の手ほどきを受けていた。

「ん?」

「どうした?」

動きを止めたナルト。

「・・・・・・一尾・・・・・・ネジのところの班にくっつけた奴のチャクラが、消えたってばよ」

「影が、死んだのか?」

「いや・・・・・・ただ反応が消えただけだってばよ、結界に封じられた感覚・・・・・・平気かな?」

「ガイがおる、・・・・・・あやつもこの里を背負って立つ上忍、大丈夫じゃろ」

ナルトは頷き、再び術の訓練に戻った。










ヒスロス、最奥。

「・・・・・・琴音ちゃん」
「・・・・・・黙りなさい、音を立てちゃ駄目よ」

二人は比較的早く最奥にまで辿り着いていた。

扉を閉め、其所に入った瞬間、高濃度の魔素とでもいうべき物が漂っているのを二人は感じていた。

琴音はドラゴンはすでに仕舞い込んでいた。


超上級モンスターとなると、戦わずに超したことは無い。

眼前に寝ているのは、正式名称Blron通称黒閣下、UO最強モンスターが一柱。

古代竜がブレスを制限から外していったように、黒閣下はその動きを制限から外していった、自身の自我で動く黒閣下の姿を捉えられる人間は・・・・・・最高に注意を払っているペインくらいだろう。


その威力、その手数、一度見た人間を恐怖のどん底に陥れる。いくら壊されても替わりがいたサソリ、彼でも死を何度か覚悟したほどの相手であった。


道を塞いでいる、黒閣下、琴音と直人の二人は足音を立てず、そろりそろりとゆっくりと、奥に鎮座していた石を目指していた。


「・・・・・・間違いないわ、あれが「ムーンストーン」ね」

そして、とうとう、琴音は、ムーンストーンに手をかけ、しっかりと握りしめた!


「やったわ!!」

「琴音ちゃん!声!声!」

「あっ・・・・・・」
いびきが、止まっていた。





ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!






何処か、優しい音が響き渡る。
多由也に率いられた鬼人共が黒閣下に攻撃を加える。


「口寄せ・三重羅生門!」

黒閣下が振り返った先に左近が門を召還。


恐るべし攻撃速度であっという間に鬼人共を葬り去った黒閣下は、白達の元へ歩み寄る。



「馬鹿が!立ち止まるな!俺達と違って手前らは死ぬぞ!」

飛段の渾身の一撃、鎌は黒閣下の翼をわずかに切り裂き、黒閣下の目的を変えさせた。

「火遁・頭刻苦!」
「雷遁・偽暗!」
「水遁・圧我異!」
「風遁・外婁愚虞!」
「土遁・挫苦霊炉!」

他の四体を解放した五連続忍術!


相乗効果で黒閣下に与えるダメージは普段の何十倍だ。






――黒閣下は、動きを止めた。


「・・・・・・おいでませ!かい0号!」

琴音と直人はその隙をつき、一目散にナイトメアに乗り、外に駆けだした!


漂う煙を突き抜け、一目散に外へ、外へ外へ、小南ともペインともすれ違ったのだが、二人には見えていなかったし、ペイン達にも琴音達には全く興味が無かったため、事無きを得た。




白は、二人が逃げられたのを確認した。



「・・・・・・二人とも、何で此処に居るんですか?」

「あーなんだ・・・・・・これには訳があってだな・・・・・・」

「無駄話をしている暇はない・・・・・・あれしきの術で死ぬとは考えるな」






「そうよ・・・・・・死ぬはずが無いわ、ミナクス様の配下、バルロンよ・・・・・・目覚めなさい」

「須く痛みを知るがいい、目覚めよ、バルロン」


並び立つ暁が二人、数で言えば七体、黒閣下を挟んで向き合うが三人、数で言えば同じく七体。









上位者達による集団戦が、今始まる。



[4366] バルロン
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/21 16:29
其所は上も下も左も右も、前も後ろも無い空間。


相変わらず、時間だけが無為に過ぎていく。
結構馴れてきてしまったのか、イタチも鬼鮫も我愛羅も、リースも俺も楽しい時間を過ごしていた。


だが、一つ確かめておかないといけない事がある。

「なぁリース、・・・・・・古代竜として聞いてくれ」

きゃっきゃとイタチの上で笑っていたリースの笑みが止まる。

風がないのに、風が溢れる。・・・・・・気分一つで雰囲気まで変わるか、それでこそ最強モンスターの一柱。

「なんじゃ?下僕の質問じゃ、答えられる範囲で答えようぞ」

見ると我愛羅や鬼鮫までもが動きを止めていた。


「ミナクスについて、だ。俺の知っている知識で、あのミナクスで間違いは無いのか?俺の頭の中を覗いた、あんただったらわかるはずだ」

リースは静かに、間を持って頷いた。


「そうじゃな・・・・・・魔女は、生きとし生きる物全ての敵じゃよ。それは人族も我ら竜族も、・・・・・・我が大敵悪魔族でも変わりがない。あ奴は、全てを破滅させる・・・・・・そうありとあらゆる物を貶め、根源から破壊する。かつてアバタールと呼ばれし者の過去を未来を現在をタイムドアを使い破壊したようにな」


日本では発売されていない、ウルティマ2の話か・・・・・・。
「奴は、この世界で何をすると思う?タイムドアは無いし、天敵たるアバタールさえいない、この世界で」


リースは眼を伏せた。
「わからん、ただ、奴の根源は、滅び、堕落。モンデインが生きていた時からその片鱗は見えておった。いや、・・・・・・違うな、その根源があるからこそ、モンデインはあの魔女を見出したのだろう・・・・・・世界の全てを手中に収めんが為に」


「・・・・・・この世界の人間で、魔女に勝てると思うか?例えば・・・・・・イタチ、あんたならどう相対する?無敵と呼ばれる存在に、さ」


イタチが静かに口を開く。

「無敵という概念が分からないが・・・・・・そうだな、勝てる条件が見えるまで、俺は戦いを挑まない、無謀と勇気は違う」

「あんたはどうだ、我愛羅」

我愛羅はこちらもみないで答える。
「潰す」

まぁそうだろうな。答えを期待した俺が馬鹿だったよ。

「鬼鮫は?」

怖い顔をこちらに向ける。
「私は無駄な戦いは好きではありません、逃げますよ。無敵なんて者がこの世にあるとしたら、の話ですけどね」


思ったよりもマトモな答えだ、頭も伴わなければ暁にはなれないってことか?


「イタチ・鬼鮫、暁の他のメンバーだったらどう対応すると思う?」

二人は顔を見合わせた。

「さぁ?サソリ辺りならば、クグツにしたいと思い勝ち目が無くとも戦いを挑むでしょう」
「デイダラは同じ芸術家といっても、別だな。儚く散る道を選ぶかもしれないが、どうなるかはわからん」

「・・・・・・イタチ、うちはマダラならばどう出ると思う?」

顎に手をやり、イタチは思案に入る。
「伝説の通りで、生き残っていると仮定するならば・・・・・・もはやマダラが誰かの軍門に入ることなど考えられん、絶対にな、あくまで戦いを、殺し合いを挑むだろうさ、伝説の無限万華鏡写輪眼を最大限使ってな、相手が無敵だろうが何だろうが、マダラの執念の前では関係ないだろう」

なるほど、木の葉を世界を手に入れるまでは、マダラは戦いを止めない、か。


ミナクスとマダラは争う定めだな・・・・・・無敵のミナクスには絶対に勝てないとしても、な。


「――大蛇丸ならば?」

「さて、大蛇丸は予測がつかない、あれほど行動が読めない奴も珍しい」
「案外その無敵のミナクスの体でも、手に入れようとするんじゃないんですかね、イタチさんの体を欲しがったくらいですよ。彼が見逃すはずが無いでしょう」


執念は蛇並だからな。大蛇丸がミナクスの体を手に入れたら、それこそこの世の破滅だろう。真っ先に木の葉が潰され、他の里も順々に確実に潰される。


なんだ、大蛇丸もミナクスも争う定めじゃねえか、覇権は一人が担う者だ、同じ質を持った物同士、なれ合うことは絶対に無いな。


・・・・・・マダラと大蛇丸が手を組む・・・・・・なんて事は、有り得るのかな????
マダラ登場前に死んじゃったしな大蛇丸。このずれた世界だと、どうだろ。












「バルロン、気高き悪魔の長よ、ミナクス様がお呼びだ、我らに従え!」


其所は悪夢の中の悪夢、現実と夢がマダラに交わるところ。



真の意味で目覚めたバルロン、その場の誰もが行動に移せないでいた、歴戦の兵、飛段と角都でさえ、それは同じ。


かつて、暁の一人、サソリが操っていた者とは、全てが違う、自我が有るか無いか、それだけではなく、存在感からして違う。




「・・・・・・我を目覚めさせたのは・・・・・・主らか」



地面のそこから響くような、低い低い、声。

飛段と角都はすでに逃走の機会を伺っているし、白もまた同様、むしろ白の方が気圧されてはいなかった。絶対思考能力、いかなる場面でも冷静に自分を一つの個として考え、その場の空気や雰囲気その他諸々の全てを計算にいれて行動できうるちから、そのあくまでの冷静さを、大蛇丸はかい、新音の五人衆の長に招き入れた。


桁違いの化け物達の力全てを計算に入れ、彼我の戦力差を計算に入れ、自身の被害を最小に、彼方の被害を最大限に。



「そうだ!・・・・・・我らはミナクス様の使い、暁、バルロンよ、共に来るのだ!」

ペインは漆黒の巨体に向けて、呼びかけている。


「いつから、暁はミナクスとやらの軍門に下ったんだ?」
「さて、我らが副業をしている最中の話だろう」
「そっかそっか・・・・・・じゃあ、俺達はもう元リーダーに遠慮する必要もねえんだな?」
「・・・・・・そのようだな、リーダーで無くなったペイン、もはや約定すらも解除されたとみるに相応しい」
「約束すら破るとは、ジャシン様に喰われちまうぜ?ペイン」


勝手なことを言い出す二人、元々の性格であり、個性である。


「・・・・・・勝手に動いていた貴方たちに何が分かるの!!」


小南が二人をにらみつける。


「ペインだって・・・・・・あんな化け物さえ現れなければ!!」

「黙れ、小南・・・・・・我らの使命はこの主を連れ帰ること、それにミナクス様の批判はお前といえど・・・・・・許さない」



同時に首をすくめる二人。

「おいおい、痴話喧嘩かよ・・・・・・こんな所でやるなよ、やるなら・・・・・・もういいだろ?坊主、やっちまいな!!!!」


「わざわざ時間稼ぎありがとうございます!四紫炎陣、改!」


ペインと小南を中心として、左近達四人が紫色の壁を作りだす!


原作では、術者は動けなかったが、


「さて、未来永劫その中で暮らしていってください、我らはこれで、失礼します・・・・・・またどこかで逢いそうですね、バルロン、そしてペイン、再度まみえる時まで、さらば」


改良型は、性格が悪い大蛇丸の研究により生み出された、時空間忍術すら組み合わされた特別製だ。

閉じこめた対象は、術者のチャクラで生み出される紫の壁により、決して壊すことは出来ない、攻撃を加えても紫の壁が強化されるだけである。


そう、内からは絶対に壊せない作りとなっている。


任務が失敗に終わった今、白達に危険な化け物と戦う理由がない。




だが、白達は少しペイン達を甘く見ていた。

内から壊せなければ、外から、壊せばいい。




「An Grav」
ディスペルフィールド。
バルロンは、魔法を唱え、四陣の一角を崩した。術は自然に壊れ、ペイン達は無傷で姿を現す。


ペインはすでに、会話の中でバルロンの中に、一部入っていた。心転身の術の応用、術の研究をしているのは大蛇丸だけではなかった。


「・・・・・・痛みを知らしめなければ、な。手始めだ、バルロンよ先に逃げた集団を血祭りあげろ」
 

超高等忍術、ランクは優にSランク。ペインだからこその特異性が術の発現を可能にした。






主が認め、自らついていったイタチ。



強制的に心を支配し、無理矢理従わせるペイン。



はたまた、実力をもって抹殺し、クグツにしたサソリ。




三者三様のあり方、事実はただ、悪夢の化身が、無傷でペインの、ミナクスの手に墜ちたという事実のみ。

悪夢は終わらない。



[4366] ヒスロス、バルロン、ペイン
Name: へヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:6204c204
Date: 2008/11/21 12:52
白達は一生懸命走った、進化した魔境氷晶を限りなく使い、計七人を一気に出口近くまで運んだ。


「あんたは……ダスタードで」

其処には先に外に出て行ったはずの琴音と直人が待っていた。


「……何故、先に逃げなかったのですか」

二人は黙って入り口であったところを指差す。



「どうしてか知らないけれども、閉じちゃってるのよね……私達も色々なダンジョンに入り込んでいるけれども、こんなことは初めてだわ」



飛段、角都も入り口であったところをぺたぺたと触る。
「こりゃあ……ペインの野郎が何かやったか?」

「彼は外部から何かしない限り……あそこにいた、主が自発的に助けない限り……」



白の言葉を遮り、奥から飛んできた突然巨大なエネルギー波が、飛段の体を壁に押し付ける!


「いってぇえええええええええええ!」


全員の目が奥に向かれる。


「ソコマデダナ侵入者ドモヨ、我がジキジキニ引導を渡してヤル」


何処かちぐはぐなしゃべり方、されどその力その存在感はそのままに黒閣下が其処に立っていた。


「主と相対するなんて、まっぴらごめんですね……四紫炎陣・改!」


音もなく、白の意識どおりに展開した四人衆が再度結界を今度は黒閣下の回りに張り巡らせる。


「さて、脱出の手段を練ります……」


「痛みが足りないな……封術吸印」


結界の近くに来ていたペインの一体が、黒閣下を覆っていた結界を吸い尽くす、改良型四紫炎陣は、内からの攻撃からは無敵だが、外からにはめっぽう弱い。


「……坊主、小細工は効かないみたいだぜ」


「ご苦労様、かい0号……おいでませ!かい1.2.3.4.5号!」

「主を殺せば、ダンジョンは崩れる、皆さんわかっていらっしゃいますよね?僕達二人が、主狩りをします……皆さんは、彼らをどうにかしていて下さい。僕達の力では、彼らはどうにもなりませんから」


「あなた達……」

琴音と直人はにっこりと白達に笑顔を返す。

「忍びは忍びらしく、役割分担と行きましょう……化け物は、モンスターは僕達の方が慣れています……其処の強そうな集団の彼らは、あなた方七人で何とかしてください」



ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!



誇らしげに高らかに、琴音のドラゴン達は咆哮をあげる。


「ははっ、いいじゃねえか坊主、この中で一番厄介な敵を受け持ってもらえるんだぜ?俺達はペイン退治を済ませようじゃねえか……俺達にも術をかけろ、大蛇丸が開発したくそったれな術をな!依存はねえな、角都!」

「個々で対応しても、勝ち目は低い……そして我らに訓練とはいえ手傷を負わせたお前の手筈は信頼に値する……我らの力、存分に使え」

死を知らない二人が、白を振り返る。

琴音と直人二人も白を見つめる、その瞳は、忍びにしてはあるまじき信頼の色で澄んでいた。


白は、静かに、それでいて力強く、頷いた。



「……本当に、皆さん、甘ちゃんですね……わかりました、……ペイン、覚悟しなさい、僕達は、この場であなたを超えます……超えさせて頂きます!」




「あくまで痛みを畏れぬ、か。バルロン、決戦場を作れ。この場では互いに戦いにくいだろう」


黒閣下は頷き、小さく言葉を紡ぎだす。




ダンジョンが変化する。




「なるほど、主を支配してこその構造変化ですね……僕がペインを殺すか、あなた達が主を殺すか、どちらかの条件が整えば、僕達はここから脱出できます……またこの言葉を言うとは思っていませんでしたが……今は言わせていただきます、二人に御武運を!」




ダンジョンの壁はいかなる構造になっているのか、竜のブレスですら貫けない。





広大な場所に案内された、琴音と直人、目の前には黒閣下およびその部下多数。

「はぁ……」
ため息をつく直人。

バシンと琴音は直人の背中を叩いた。

「どうしたの?そんなんじゃ、かいにまた笑われるわよ……安心しなさい、あなたの言葉は間違っていないわ……サポート、頼むわよ。あなたくらいしか、私についてくるような馬鹿はいないんだから」

毅然とした調子で立つ琴音。

後に続く直人。


「そうだね、僕らは、馬鹿だよね。でも一番の馬鹿は、かい君だよ……口では何だかんだいいながら、自分のことを考えないで人の事ばっかり考える馬鹿、そのかい君に僕らは憧れたんだもの、この程度の障壁、笑いながら壊せないようじゃ、かい君の後ろに……横に並べる馬鹿にはなれないよね」


ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!


琴音のドラゴン達が、再度咆哮を放つ。


「行くわよ、直人、鍛えに鍛えた力と技……今こそ世界に知らしめる時!」

「周りの雑魚は全部任せてよ、僕の術に、死角は、ない……行こうか、かい君にまた逢うためにね!」

二人は駆け出した。




もう一方、広大な場所に案内された白、目の前にはペイン・小南。
ただ小南は、ペインから離れ、戦いに加わる気はないようだ。




「全く忍びは隠れて戦う者だと、再不斬さんに教えていただいていたんですけどね……準備はいいですか?遺言を書くくらいの時間はとってあげますよ?命乞いなら今のうちにしていてください、部屋の隅でがたがた震えてけつを丸出しにしてごめんなさいごめんなさいと泣きながら懇願したならば、許してあげますよ」



「……痛みを知れ!」
ペイン六道が展開を終える。



「今の僕は、最高にハイってやつになっています。人に信頼される……人を大切にするくらい、気持ちがいいものなんですね……僕が、僕達が、痛みを与えようとしかしない、あなた程度に負けるはずがありません!皆さん行きましょう!暁越えです!」
新たに二人が加わった司令塔たる、白を抜かした計六体の体がペインに向かい陣形を整えた。





さぁ決戦だ。










*ヘルシング最高!*



[4366] 雪の国、春の国。
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/21 20:06



ピチョン・・・・・・ピチョン・・・・・・ピチョン・・・・・・


雫が落ちる牢屋の中、ナルトは目覚めた。


周りを見渡すと、服はそのまま、ただ冷たい地面が体を蝕み体温を奪っていた。


元よりチャクラはすでにほとんど使えていなかったが、改めて確認、一切のチャクラが体から消え失せていた。使えるのは自己を存在させている根源のチャクラのみ。

「なんだ・・・・・・この機械も完璧じゃないってば・・・・・・チャクラを完全に封ずるなら俺は消えちゃうはずなのに」

ナルトは体の至る所をまさぐる。

「服すらそのまんまなんて、あいつら忍者を嘗めているってばよ」

あっさりと手枷足枷を外すナルト、そう言った技術も三代目は執拗に体にたたき込んでいた。

牢からは、変なチャクラの反応がしていた。

「触ったら・・・・・・ビリビリ来そうだってばよ・・・・・・でも、ツメが甘すぎるってば、触ってビリビリするなら、ビリビリしないもので壊せば、いいってば」

流石に忍具は取られてはいたが、応用が利く物はいくらでもある。


ナルトは靴に常に仕込んである、針状の物で、鍵をこじ開け、絶縁体で出来ている靴で蹴り飛ばし、外に出た。


カイの指定した体力増強が人知れず、ナルトの窮状を支えていた。



「姉ちゃんを捜さないと、きっと駄目姉ちゃんだから泣いているってばよ」






一方の同じ牢屋に叩き込まれた雪絵だが、流石に元王族となると待遇が違っていた。

質素ながらも椅子はあるし、暖房器具はしっかりと整っている。
手足を縛られることも無しに、雪絵は唯部屋の中を見回した。


どうやら資材部屋らしき所らしく、様々な物が置いてあった、残念ながら脱出に雪絵が利用出来そうな物は無かったが、雪絵は部屋の中を観察する。




卵、一際眼を引く位置に、それはあった。卵、大きな卵、人の頭ほどだろうか、周りをよく分からない装置が囲ってあり、触れば火傷してしまいそうな感じ。

「何の卵かしらね・・・・・・随分ドトウは大切にしている、いえ、違うわ警戒しているみたいだけど」




突然、派手な地響きが城を揺るがす。




「姉ちゃん見つけたってばよ!」

体術のみで見張りの兵を倒し、辿り着いたナルトが顔を出す。

「・・・・・・ナルト、無事だったのね・・・・・・私に構わず逃げればよかったのに。・・・・・・助けになんかこなくてよかったのに」

雪絵は、刹那、抱きつきたくなった衝動を抑えた。

「姉ちゃんは、護衛対象だってばよ!それに木の葉の忍者は絶対に人を見捨てないってばよ!」

体中を傷だらけにしながら、それでも笑顔で、ナルトは部屋に入る。

「ん?なんだこの卵」

ナルトは忍びらしからぬ、不用心さで、卵に手を伸ばした。


「駄目よ!」
雪絵は制止が間に合わず、目を隠した。


「何が駄目なんだってばよ」
ナルトは卵を胸に抱きながら、雪絵に近づいてきた。


「・・・・・・なんで?結界は作動しなかったのかしら」

「結界、きっとチャクラに反応するやつだってばよ、この国はそういう技術が大好きみたいだし、今の俺はチャクラを使えない状態で更に封じられているから、そんなもの関係ないってばよ」



パリン、パリン、パリンパリンパリンパリン!


卵が結界から出たことで活性化、中から雛が、顔を出し、雪絵と目があった。

「白龍の雛、ね」

元気よく飛び出した雛は雪絵にまとわりつきだす。


「姉ちゃん、本当はいい奴だってばよ。嫌な奴だったら琴音姉ちゃんの紅も、その雛もなつかないってばよ」


雪絵は笑い出した。

「馬鹿ね、雛は最初に見た者を親と思いこむものなのよ、刷り込みってやつね」

ナルトも笑う。

「始めて笑ったってばよ。演技じゃなくて本当の笑顔の方が、姉ちゃんによく似合うし、俺は好きだってばよ!」

雪絵の顔に朱が軽く混じる。


「馬鹿ね・・・・・・それよりさっきの地響きは何だったのかしら?」

ナルトは親指を突き出し、雪絵に向ける。

「俺の仲間に決まっているってばよ!姉ちゃん、そいつの名前決めなきゃだってばよ。アレクサンダーとかゲイボルクとかがいいってば、かっこよく無い?」

雪絵は暫し思案した。
「・・・・・・この子は白、雪の国に生まれた白、よ」

ナルトは案を完全に無視され、少しむくれる。
雪絵はそんなナルトを無視し、白と名付けられた白龍を抱きしめた。







城の天守閣に当たる部分。其所にドトウはいた、傍らに一対の白龍を侍らす。

「ドトウ様、木の葉の忍び共が忍び込んできたようです、すでに絡繰り兵器共は出立済み、罠も順調に働いているようです」

雪忍が傍らに近寄り報告する。

「・・・・・・さて、小雪姫は、うまくやってくれるかな?」

「ドトウ様に逆らっても無駄なことは、身に染みておりましょう。十年前もそして今回も、もはやこの国はドトウ様の物で御座います」

「お主らがもう少し頼りがいがあれば、わしも要らぬ心配をしなくても済んだのだがな・・・・・・今や、こやつらが最後の砦、まぁ待とうではないか」






頭に白龍の雛を乗っけた雪絵、その手を引くナルト、女一人を背負う体力すらもすでに失われて久しい。

「姉ちゃん、下がってくれ!」

敵の忍びから強引に摂取した忍具を使い、ナルトは五人ほど倒してきた。

傷は治らず、疲れもいつもの五倍は溜まる。

すでにぼろぼろだったナルトの体は更にぼろぼろになっていた。


しかし、ナルトは歩みを止めない、守るための物ならば決して歩みを止めず歩いていく。


「ナルト!」
雪絵が叫ぶ。
ナルトの前と後ろに影が!

「このやろう!」

ナルトのチャクラが全くこもってない蹴りは、簡単に受け止められてしまった。

雪絵は目を瞑った、惨劇から目をそらすように。

「いい蹴りだ!それでこそ我が弟子!」

「なんだ、げじまゆ達、か」

ナルトは動きを止め、その場に倒れた。精神的な疲れ肉体的な疲れ全てが襲い、ガイの登場で安心しきってしまったようだ。

「ネジ、ナルトを運びなさい、大した物だ。うん?なんだこの機械、チャクラの鎧、では無いな、ネジ」

ネジは近づき、白眼でナルトの腹についている機械を見据えた。

「・・・・・・チャクラを封じているようです。この所為ですね、体力だけは里一番のナルトがこれほど疲れているのは、壊します」

ネジはテンテンから工具を借り、機械の分解に入った。

ネジの白眼にかかればそんなものは容易いこと、構造を見通してさえいれば、簡単に壊せる。拷問にかけたチャクラの鎧を壊したのもネジであった。

「・・・・・・よし、後は時間と共に回復するでしょう。九尾のチャクラとはこれほどまでに凄いのか・・・・・・」

「これ、貰っちゃうわね。この国は面白い機械が沢山あって本当に嬉しいわ」
テンテンは嬉々として分解された機械を仕舞い込んだ。すでにチャクラの鎧についても同様だ、なんでも帰ってから研究の足しにするらしい。


「ねえ、貴方でしょ?私の首飾りを持っているのは」

雪絵がガイに話しかける。

「はい、大事そうなものなので、預かっておりました」

ガイはそういいながら雪水晶を雪絵に返した。

「さぁ脱出しましょう。・・・・・・レジスタンスが居なくなった今、出直す方が先決です、本来はゲリラ戦を仕掛け、戦力を削ろうと思ったのですが・・・・・・この城は間もなく破壊されます、急いで脱出しましょう」

「だったらこっちに抜け道があるの、王族しか知らない道よ」

「・・・・・・記憶が無いと仰っていなかったですかね?」

ネジが静かに雪絵に問いかける。

「城に来れば懐かしさと共に思い出す物よ、時間が無いのでしょう?さぁ行きましょう!」

ネジはガイを見た。

ガイは頷き、ナルトを背負い、雪絵の後に続く。

「・・・・・・本当にその選択で後悔しないんですね」

ガイの小さく呟いた声は、雪絵の耳に届く。

「・・・・・・ええ、私は、すでに女王であり・・・・・・女優なの」

そう言い切る雪絵の表情に少しばかり翳りが入った。

雪絵は眠ってしまった白龍の雛を服の中に仕舞い込んだ。







ナルトを背負い、五人が走ってきた場所は、開けていた場所だった。

スポットライトが階段が設置してあり、上の位置に位置していた一人の男に照射される。


雪絵は構わず階段を駆け上り、其所にまで走り抜ける。

「ご苦労・・・・・・小雪姫、これが真の雪水晶か」


「あなた、私達を裏切ったの!」
テンテンが騒ぐ。

「僕達はともかく貴方のために頑張ってるナルト君まで裏切るのですか!?」
リーも騒ぐ。

ネジとガイはただ、静かに雪絵をみる。

「ええ、私の演技にころっと騙されて・・・・・・忍びといっても所詮は子供ね・・・・・・私が女優だって事を忘れたのかしら?」

雪絵の表情は無表情だ。
「はははははははははははははははは、木の葉の忍び共よ、わざわざ本物を届けにくれるとはご苦労だった・・・・・・お前もご苦労だったな小雪姫、これからは共に雪の国を支えるとするか」

ドトウが雪絵の肩に手を置く。

「・・・・・・そうね、雪の国を支えなきゃね、・・・・・・それは私一人でよ!」

雪絵は腰に忍ばせていた、ナルトから護衛の為貰った忍者刀を抜き去り、ドトウに突き刺した!


ジジッ


だが不可視の壁が雪絵の刃を阻んでいた。

「それくらいよんでたわ!今よ白!」

雪絵の胸の谷間から顔を出した白龍の雛が、ドトウに向かい子供ながらも灼熱の吐息を浴びせかける。


が、それすらもドトウのチャクラの鎧は防ぎきった!

すかさずネジとガイが間に入り込んだ、ガイはナルトをリーに投げつけた。

「この小娘がぁあああああああああ!」

チャクラの鎧を露わにしたドトウは、雪絵を認めたが、ガイとネジの気迫に負け、空を飛び、天井を壊しその場から逃げ去った。


すぐさま地面の入り口から絡繰り兵器達が下の階層にいたリーとテンテンに襲いかかる。

空からは残った二人のチャクラの鎧を纏った雪忍と、ドトウの傍に佇んでいた二匹の白龍。


「先生!爆破まで余り時間がありません!ここから脱出しなければ!」


りーが下の階層で絡繰り兵器を壊しながらガイに話しかける。リーは手はナルトで塞がっているため、足技だけで絡繰り兵器の相手をしていた。


「・・・・・・リー、お前とナルトでドトウの後を追いなさい、私達は有る程度こいつらを引きつけてから撤収する、何処かいやな予感がする・・・・・・ドトウは何をしようとしているんだ?・・・・・・雪絵さん、雪水晶とは、何の鍵なのですか?」

ガイは一人で白龍の一対、雪忍の二人を牽制しながら、ネジに抱えられている雪絵に問う。

白龍達は、何故かネジの方には攻撃を一切せず、ガイばかりを狙う。


雪絵は頭を振る。
「・・・・・・御免なさい、どうしても思い出せないの、春が来たら、わかるって父様は仰っていたけど・・・・・・雪の国なんかに春は、来ないって父様もわかっていたはずなのに・・・・・・わがままを言わせて、私にもドトウの後を追わせて!決着は私がつけないといけないの!」

だが、現在は手が一杯なのは変わりがない状況だ。
ネジは雪絵を庇うのを止められないし、リーはナルトだけで手一杯、リーの穴をテンテンが埋め、ガイはその他全ての強豪を一手に引き受けている。


「・・・・・・げじまゆ・・・・・・姉ちゃんを運んでやってくれ・・・・・・俺はもう大丈夫だってばよ」

ナルトの目が開き、言葉を発する。

「ですが・・・・・・」
リーの心配そうな声。

「・・・・・・この俺を九尾をなめるなってばよ!俺の飼い慣らしている化け物はこんな程度で根を上げるほど柔じゃないってばよ!」

リーは乱戦の中、ガイを見上げる。

ガイはウィンクをし、親指をリーに向けた。

それを見ていたネジは雪絵をリーに投げつけた。

「行け、両手が使えれば、この中で俺に勝てる奴はいない、さっさと脱出する。後は任せろ、俺とテンテンと先生にな・・・・・・ナルト、全ての決着をつけてこい、木の葉の先輩として、負けは絶対に許さないぞ!」

リーは雪絵をキャッチし、頷き、ナルトも同じく頷いた、九尾のチャクラが体を巡り、ありとあらゆる怪我が治癒していく。

「お前らこそ死ぬなよってばよ!」


ナルトの言葉に三人が、三人とも力強く頷いた。



「ドトウ様の道、私達が容易く行かせると思って!?」


女忍と、かつて十年前のカカシと互角に争った雪忍。


ガスッ


「どうやら我がライバルカカシに聞いていた実力とは程遠い、正直がっかりだよ、雪忍の諸君・・・・・・君達はそのチャクラの鎧に頼りすぎだ」

白龍のブレスが雪絵だけを避け、その他の全てをなめ回す。

その隙間を縫ってのガイの効果的な一撃。

「行くよ、あいつらは俺達が、俺が行かせる八卦・破山撃!」

白龍に当たるネジの攻撃、空を邪魔する物はいなくなった。




「行ってきます!」「死ぬなってばよ!」「頑張って!」


りーが雪絵を抱え、ナルトがその後についていく。

正しくチャクラを取り戻したナルトには、もう何も阻む物は無い。





















ひゅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ





チャクラの鎧で空を駆けるドトウ。手には雪水晶がしっかりと捕まれていた。

山を越え、ついに、開けている場所にたどり着く。


ドトウは雪原に静かに降り立った。


「ついに・・・・・・ついに雪の国最大の絡繰り兵器のお目見えか、弱腰の兄が畏れを持ち、とうとう起動させなかった程の威力、今までのおもちゃのような絡繰り兵器とは桁が違う」


リーとナルトの速度はチャクラの鎧の速度を遥かに上回っていた。


ドトウの降り立った場所は見えてきたが、ドトウが何かしらの機械を起動させるには、間に合わない。


「・・・・・・来たか、木の葉の忍びに、小雪姫・・・・・・この国の終焉を看取る者としては相応しい。目覚めよ、まだ見ぬ絡繰り兵器よ!」

ナルト達は現認した、ドトウが今まさに何かの装置に雪水晶を突き刺すのを。


「・・・・・・駄目!」


「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」


ドトウの勝ち誇った笑い声が、雪原に響き渡る。

ナルト達はもう間に合わない。





カチッ






ドトウがスイッチを入れた途端、ドトウを中心に雪が溶けていく、みるみる内に溶けて緑が広がっていく、草が広がり花が咲き、緑が広がり雪原を草原に変えていく。



「・・・・・・これって・・・・・・父様がいっていた・・・・・・春?」

ドトウと同じ平原に降り立った三人は、ぽかんと口を開けてその光景を見ていた。

リーの手を離れ、草原に降り立つ雪絵、地面の花を一輪つみ取り、呟く。




「・・・・・・何なのだ!一体何なのだこれは!何故こんな者を兄は大層大事に保管していたのだ!」

ドトウにしてみればたまらない、期待していた物にかすりもしない内容だったのだ。

雪絵はドトウを睨みつける。
「・・・・・・可哀想な人・・・・・・貴方にはわからないのね、父様が、心血注いで作ったこの機械の素晴らしさが・・・・・・」


「ええい、若輩者の小娘が我に説教をするな!こんなもの!雪の国には必要無い!必要なのは絶対的な力だ!」

ドトウは今し方雪水晶を差し込んだ機械に向け、こぶしを振り下ろす!

「駄目よ!」



ガスッ



「壊させねえ・・・・・・手前なんかにゃ絶対に壊させねえ・・・・・・姉ちゃんの大事なものはもう絶対に手前なんかにゃ壊させねえ!」
ドトウの拳を受け止め、ドトウを投げ飛ばすナルト、だが衝撃は全てドトウの特別製チャクラの鎧が受け止め、ドトウにはダメージが通らない。


無傷で起き上がるドトウ。

「ははははははは、そうかよ木の葉の忍び達、お前達を殺し、小雪姫を殺し、この下らない装置を壊せば、雪の民は我に絶対に逆らわないな。お前達程度に、我のこの雪の国が作り上げた技術の粋が壊せる物か!」


ドトウの速度に乗ったこぶしがナルトに突き刺さり、ナルトは雪水が溜まった湖に落ちる。

「ナルトーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

「大丈夫です、雪絵さん・・・・・・木の葉流体術、裏蓮華!」
リーの素人では絶対に目で追えない動きが、ドトウに襲いかかる。


ジジッジジジジジッジジジジジジジジジジジジジジジジッ!!!!!!




全てを全てチャクラの鎧が受け止めるが、



ピシッ!



ドトウのチャクラの鎧の核の部分に罅が入る。


「・・・・・・高負荷に耐えきれないことは、・・・・・・雪忍で証明済みです」
術の余りの威力にリーの体にも負担が来ている。

「そうかい、それがどうした!」

ドトウの拳は技を出した直後のリーの硬直状態に辺り、リーも吹き飛ばす。


「ナルト君!後は任せました!」



「ナルト!」
雪絵に乗っている白も炎を天に向けてはきだした。




「・・・・・・あの程度の敵、俺らにかかれば・・・・・・楽勝だってばよ・・・・・・どうした・・・・・・力を振り絞れ!ばか狐!」



二人が落ちた湖に波紋が広がる。




「ナルト!」
雪絵の歓喜の声と共に、ナルトが飛び出した、多重影分身のおまけ付きだ!




「その程度の術で我を倒そうと思っているのか!片腹痛い!」

言葉に自信を漲らせて、ドトウは影分身を叩きつぶす。

「所詮忍びなどこの程度だ!技術が全て、力が全て、それがこの世の摂理だ!」


「あんまり嘗めんじゃねえぞ、糞爺」

ナルトの手には口寄せした猿候王・猿魔が変化した如意棒が握られていた。

「忍びを木の葉を、嘗めんじゃねえぞ!」

「・・・・・・行け、小僧。愚か者には木の葉の力を見せつけてやれ」
猿魔の頼もしき声。

「おう!」
答えるナルト。










再度影分身。その数、一千。

「さーて、この数での如意棒の攻撃に、その無駄に頑丈な鎧は、罅が入った状態で耐えられるかってばよ?」





「小僧がぁぁあああああああああああああああああああああああああああ!!!」
ドトウの顔が強ばる。





「行くぜ!」
数に物を言わせ、圧倒的質量でナルトはドトウを正しくぶちのめした。


チャクラの鎧は壊れ、ドトウの体で殴られていない所は探す方が難しい、しかし、未だドトウは生きていた。


「息の根を止め無くってよかったのかってば?」


「・・・・・・ええ、最後は、私が、いえ、雪の民が裁きます」



後に追いついてきた、ガイ達、その後に白龍二匹が続く。

白龍達はナルト達を襲うでもなく、雪絵の元に舞い降りた。


二匹は雪絵の頭の上に乗っている白を優しく囲みこむ。



「どうやら、子供をとられ、従わされていたらしい、最も言葉が分からない以上正しいことはわからないけどな、幸い本気で相手にしなくてよかったよ」

ガイが説明をした。

へへへと笑っていたナルトはチャクラの使いすぎで再び倒れた。

支える雪絵。

「・・・・・・最後まで、馬鹿ね・・・・・・でも、ありがとう。これはお礼よ」

雪絵は意識の無いナルトの頬に口づけをした。

「さぁ帰りましょう、民が待っています・・・・・・最後まで護衛をお願いしますね。木の葉の忍者さん?」

「了解!」



ジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジ

装置の上にホログラフィティーが浮かび上がる。

空白に小さい幼女が走り込む。

「小雪、そっちに立ってご覧」
「父様、これはなに?」
「・・・・・・小雪は、将来何に為りたい?」
優しい声で質問をする男の声と、答える幼女。



「父様の声・・・・・・それに映っているのは・・・・・・私?」



映像の中の幼女は元気な声で答える。
「私はね!父様のお嫁さんになるの!」
「そうかい、それは・・・・・・嬉しいねぇ」
「うーん、後ね、後ね」
「言ってご覧」




「私はね、女優さんになるの!」
にっこりと笑い、映像の中の幼女はきっぱりと答える。


ジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジジ・・・・・・キュン

機械が不完全だったのか、映像はそこで途切れた。



「・・・・・・私、昔はそんなことを言っていたのね」

雪絵の目から透明な雫が流れる。
涙はナルトの頭に当たる。

「・・・・・・姉ちゃん、もう駄目姉ちゃんじゃ・・・・・・無いってばよ」

雪絵はナルトの額を笑顔で軽くデコピンした。

「ば~~か」

雪絵は満面の笑みを浮かべた。









地上では雪の国は、争乱が収まった、しかし、外周に存在するダンジョンヒスロスでは未だ争いが続いていた。


だが、今は一時の平和を。



大陸全てを襲う悪夢が来る前の、一時の平和を。







――数日後。


花のような笑顔を国民に振りまく小雪姫、今は王位をドトウから剥奪し女王の座についていた。その肩には常に白龍がなついている事から、後に小雪は白姫と呼ばれるようになる。


人語を解する成龍に為った後は、小雪の良き相談相手ともなった。下手な官僚達よりも、聡明で先を見通す力を持つ白は小雪に無くてはならない相手となっていた。



親の白龍達は、懇願され、ある者に引き取られた。
代わりに、小雪の新しいペットとして、炎を発するトカゲが一匹加わった。
その珍しさから、外交でも大層受けが良かったらしい。


小雪の父が研究していた装置は、温暖化装置、未だ完全でないため、いずれ機能を止め、一時の春は終わりを告げるが、小雪は研究者に命じて研究を完成させることを国民に確約した。

いずれ、この国にもちゃんとした、春がくるだろう。


こっそりと、監督達によるあらゆる戦いを撮影していた映像を元にした風雲姫の新作は後に歴史的ヒットを飛ばすことになる。


ドトウが研究していた絡繰り兵器、チャクラの鎧はそのまま研究者達の手によって、対モンスターに特化された形で研究が継続されることになった。

後々これが世界を救う一つの要素に為ることを今は、まだ、誰も知らない。





「もったいないですね、新作も無事に撮り終えてこれからだってのに、女優を引退しちゃうなんて」
更にファンになったテンテン、寂しそうに小雪を見つめる。

「何言っているの、私辞めないわよ?言ったでしょ、私は女王で、女優だって」
活力に満ちた魅力的なウィンクをテンテン達に返す小雪。

思わず頬を染めるリーとネジ。
その二人の頭を笑いながら撫であげるガイ。

リーは色紙を二枚、ネジは色紙を一枚取り出す。


「すみません・・・・・・ナルト君に頼まれて・・・・・・ついでに僕らの分もサイン下さい!」

恥ずかしそうに照れながらリーとネジは色紙を小雪に差し出した。

「いいわよ、恩人だもの、おやすいご用よ、そういえばあのお馬鹿さんのナルトはどうしたの?一番お世話になったのに」
笑顔で受け取り、小雪は手早くサインをする。


「ナルト君は、・・・・・・今も戦っていますよ、間違いを正すために、弱い者が虐げられないように、新たな任務に就いています。少しでも時間を無駄に出来ないって言って、ね」


「そう・・・・・・ならば伝言をお願いね、雪の国・・・・・・名を変え、春の国は貴方をいつでも歓迎しますって。本当に私のわがままに付き合ってくれて、ありがとう御座いました、春の国は貴方たちの事を決して忘れません」
小雪は軽くガイ達に頭を下げ、満面の笑みを浮かべて、去っていった。

春の国の女王として、はたまた風雲姫として仕事は山積みだ。

だが小雪の足取りは、軽かった。




国民の歓声が、小雪を包み込む。



圧政から解放され、若く、美しく、行動力がある新女王を喜ぶ国民の声。





―――今は、ただ一時の平和を甘受しよう。











――――雪の国、fin。



[4366] エセリアル虚空間3
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/23 20:56
其所は上も下も左も右も、前も後ろも無い空間。




俺の前では、金色の巨体を誇る古代竜の姿になったリース、前には我愛羅、後ろには鬼鮫とイタチ。で、真ん中に俺っていう理不尽なフォーメイションが組まれていた。




「さぁ次の手はどうしますか?」

「さすが主だな、攻撃のほとんどが通らない」

「潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す」


いや、だから俺は別に司令官に向いているわけないだろうが、訓練はいいけど俺を巻き込むなって・・・・・・攻撃がかするだけで死んじゃう貧弱体質なんだからさー。

我愛羅が俺を砂の雲に乗せて、宙に浮かせた。有り余るチャクラ空間だからこそ出来る芸当だな。



「全員あわせろ!我愛羅、絶対に俺の足下の砂の雲は外すなよ!万物を燃やし、力を糧にこの世を総べろ!出でよファイアーエレメント!Kal Vas Xen Flam」


ぐぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお


といった有る意味頼もしい声と共に火の精霊が生まれた。
ちょっと怖い外見をしているが、このメンツの中じゃ、戦闘能力には一切期待出来ない。
俺が呼べる精霊はこの火、水、空気、そして土、だ。悪魔も呼べるが、この場には相応しくない。
水と空気は安定性に欠けるし、土は他より一段階戦力が落ちる、火なのは他に選択肢がないだけの理由、ちなみにKal以前の呪文は全く意味がない、単なる気合いいれだ。


だが、精霊の知覚能力とリンクしなければ、俺は全く戦いに参加できない。全てが全て、早すぎなんだよ、お前ら本当に人間なのか?本当によく今まで生きてこられたよな・・・・・・見えない相手と戦うのは怖いんだぜ、どうしても後手後手になるし、誤魔化し誤魔化し相手の先入観、俺の外見、俺の特異性、全てをフル活用してやっと渡り合ってきた・・・・・・これから相手にする存在は、ミナクス、ペイン、マダラ・・・・・・うわぁ・・・・・・俺、ここで死んだ方がいいんじゃねえの?

あ、大蛇丸の事も忘れていたよ・・・・・・敵強すぎだろ・・・・・・一般人をなめるなって・・・・・・勘弁してください。直接対峙するどころか、睨まれるだけで死にそうなメンツだこと。本当に勘弁して下さい。


リースはリースで、人類を超越した存在だし。


何せイタチの万華鏡写輪眼ですら、ほぼ無効化にしてくるなんてどんなチートって話だ。明らかに手を抜いている状態でだ、さすが自我が芽生え、俺の知識を思いっきりぱくり戦術、戦略の概念すら手に入れてしまった古代竜。その手の本は大好きだからなー、読みまくっていたのがこんな形で有効活用される日が来るとは思ってもいませんでしたよ、くそったれ!


「イタチ!コードLー8、鬼鮫コードM-18、我愛羅コードU-2。リースに一泡吹かせてやろうじゃねえか!」




砂で出来た雲の上から高見の指示、しょうがないだろ、そうしないと死んじゃうんだから!頼むから我愛羅、我を忘れてこの砂まで使わないでくれよ・・・・・・、巻き込まれただけで死ぬ、なんでこれが訓練なんだ!狂ってやがるぜ忍者ってやつはよ!



とりあえず、イタチには常時、須佐能乎を展開させて、俺を守らせる。修行の一種だと納得させた。他は我愛羅の砂だけで十分だろ、ず~~~~~~~~~~~~~~~~と修行していただけあって、砂のコントロールがほれぼれするほど芸術的でもある。すげえな、暁と肩を並べて戦っても、もう、劣ってないぜ、我愛羅、・・・・・・夜叉丸とどんな話をしたんだろうな、この訓練でうまくいったらまた逢わせてやるか、なんかそろそろ成仏しそうな雰囲気だけど。


「さぁ・・・・・・かかってこい!それとも我から行こうか?」


全ての元凶はこいつだ、暇だからって普通こんな命懸けの訓練なんか申し立てるか?・・・・・・俺以外では別に命懸けじゃないみたいだけどね!


それと、声に愉悦が混じっているのバレバレなんだよ。


「風遁・練空弾!」

すでに我愛羅は守鶴を超えている、特大のチャクラの塊が古代竜に向かう。

が、

反射!、上級モンスターならば当たり前の常時マジックリフレクション、前々から疑問だったんだが、この世界では忍術も魔法に分類されるんだな。基準は一体なんなんだろ。
跳ね帰ってくる、とんでも無い塊を避け、リースの周りに散った三人が、それぞれ攻撃を仕掛ける。


「さぁ、我に人族の限界を見せるのじゃ!」


真の神のブレス、それも360°放射。


ぎりぎりで避けているイタチ達・・・・・・なんていうか、・・・・・・やっぱり人間じゃねえよお前ら・・・・・・。


「天照」
「水遁・圧縮水弾」
「最硬絶対攻撃・真・守鶴の矛」


イタチの黒炎が、鬼鮫の原理はウォーターカッターっぽいレーザーみたいな攻撃と圧倒的質量を持った我愛羅の攻撃。


「甘い甘い」


炎はブレスで相殺、水は再度のマジックリフレクションが反射、砂は力づくで壊しやがった。


「どっちがだよ!うなれ俺の魔力、割れろ地面!渾身のIn Vas Por!」

絶対不可避な地震攻撃!この空間では地面が無いから逆に任意に範囲を決められるぜ。

炸裂と共に、ファイアーエレメントが時間で消失。再度召還している余裕は無い。

スサノオが砂の雲が静かに消えた、戦いは終わったようだ。



どうなった!?


「お主は根本的に攻撃には向いていないのぉ・・・・・・」

空を飛び、俺の眼前に口を開いてらっしゃる古代竜。地震は回避不可能なはずなのに・・・・・・違う、喰らったとしても威力が単純に足りないんだ。俺の魔法が例えEIがGMでも上級者には絶対に通じない理由がそれだ。俺の魔法は一般人の生命力を基準に考えられている。止めをさせない攻撃手段に戦いに出る資格は存在しない。
下を見ると全員が全員、視覚情報が外れた直後ぶちのめされたみたいだ。


「されど、その優しき力、我には真似が出来ぬもの、大事に使うがよいぞ・・・・・・Vas Ylem Rel」



有る程度満足したのか、再度美少女の姿に戻るリース。

はいはい、治療の時間ですね。俺の包帯もそろそろGMが見えてきた、だが、この世界では死者蘇生は出来ないらしい、なんらかの制限がかかっているのか俺にはわからないけどな。



・・・・・・琴音と、直人、元気にしてっかなぁ。



[4366] 死闘
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/24 11:21
閉じた世界、明かり無き世界、されど忍者の視力には問題が存在しない。


「ペイン、貴方には、完璧に近い貴方でもこの場所では弱点が存在します」
陣形を整えた白。


「・・・・・・言ってみろ」
六体全員が衣装を脱ぎ捨て、体が露わになった本気のペイン。


「貴方は・・・・・・全員で一人、その秘密、今までにばれたことがありますか?」


「・・・・・・さて、何の話か」

白は小南の方をみるが、反応は無い。

「輪廻眼、あらゆる術を行使できる、伝説の六道仙人と同じ眼。初見で貴方を打倒し得る存在は、この世界には存在しないでしょう・・・・・・僕らを除いての話ですが」

接近戦を得意とする一体が近づく、飛段が防ぐ。

「貴方の元、仲間です、彼らの記憶、覗かせていただきました、そして、見えました、貴方の弱点、その一、多対一、多対多、其の全ての貴方なら勝てます、事実上無敵と言っていいでしょう、それならば――一対一にしてしまえばいいだけのこと、同様の術を開発できる存在の見落とし、これが一つめの弱点」


ペインの一体が、口寄せをし、白達に襲いかかるが、多由也の口寄せした化け物が全てを防ぐ。


「どうしました?押されていますよペイン・・・・・・そして、無敵の理由はその数にあります。普通ならば四人までが協力攻撃できる最大数、ですが、それを超える六体による、完璧なまでの連携攻撃、・・・・・・誰も勝てるはずがありません」


斥力発生体が、陣形を吹き飛ばそうと突進してくるが、それに絡みつく鬼童丸の白い糸。
斥力で吹き飛ばそうとするが、弾力があり粘りがあるそれは、吹き飛ばされない。


「弱点その二、貴方の強さはその強さ故に、相手に情報を、打倒の情報を一切与えないこと、忍びとしては当たり前の話ですが、貴方ほど徹底出来る存在は珍しい。悪いですが、僕は何度か見せていただきました・・・・・・貴方の対策はもう出来ています」

そのまま鬼童丸は斥力発生体を引きずっていく。
多由也もそのまま口寄せ合戦に移行していき、飛段は体に一切の攻撃を掠らせず、別の場に戦いをずらしていく、残るペインは三体。


他の手助けに入るペインに、白はそれぞれ一体ずつぶつける。


体中に武器を仕込んでいるペインには次郎坊を、チャクラを吸収する術を使うペインには角都を、そして常に言葉を発する主格ペインには、左近を・・・・・・実質二体一で数的優位を作り出し、対応させる。


「貴方を集団で考えると、誰も手出しが出来ません・・・・・・当たり前です、元々一人の人間なのですから・・・・・・見事な術です、流石は伝説の輪廻眼、他と一線を画す存在ですね・・・・・・ですが、此処で貴方には消えていただきます」

白の余裕の言葉とは裏腹に、白の全身は多量の汗で濡れていた。ただでさえ扱いづらい、大蛇丸作成の最高ランク忍術、多心転身の術改、術に掛けた人間の全てを記憶すらも操れる代わりに全てのフィールドバックが術者に返ってくる。逆を言えば、マトモに戦うには、更なる手練れの数が必要であった。同数で圧倒している白。意識が刹那でも途切れたら、そこで負ける、否、死ぬ。絶対の予感が其所にあった。




「はははははははははははははははははははははははは、見事だ、大蛇丸の子飼の部下、我々を、ここまで追い詰められるのは、そうだな、三忍くらいのものだと思っていたぞ」
ペインは笑い声を上げる。

白の奮戦により、戦況は圧倒的に白が優位だ。

だが、ペインには何故か余裕がある。



「新たな世界が見えて来て、術の開発を行っていたのが・・・・・・大蛇丸だけだと思っていたのか?・・・・・・全員、術式解放、踏みにじれ」


ペインのチャクラの総量が増していく。


体の一部が崩壊していく、が、ペインは構わない。

「相手は輪廻眼・・・・・・想定内です、この手は使いたく無かったのですが・・・・・・後は消耗戦、総員、呪印解放、状態2」

飛段と角都以外の体が変化し、全てが全てチャクラの台風並と為る。もちろん白にかかる負担は10倍増しだ。意識が飛びそうに為るのを必死で堪える白。


策で勝ち、力で勝ち、相性で勝ち、連携で勝つ。全ての面でペインを上回った白は、全てを犠牲にして、ペインに・・・・・・


















勝った。




「ん?・・・・・・ああ、なるほど・・・・・・やるじゃねえか、餓鬼」

術が解け、飛段は我に返り、状況確認をした。辺りに飛び散る、血と肉。
白の操る音の四人衆は・・・・・・全てを肉と散らせていた。相棒である角都の体も何個か命を持ってかれたらしい、珍しく肩で息をしている。

真っ先に正気に戻ったのが不死の体を持つ飛段、妥当な話ではある。

ずたぼろに切り刻まれ、完全に原型をとどめていないペインの死体達、手にしている鎌には鬱陶しい血と肉がこびり付いていた。


「なるほどね、俺の体が最後まで単に頑丈だったって話か」


更に辺りを見回すと小南が、無表情で佇んでいて、白はその体を血に塗れさせ気絶していた。白い顔に朱がよく映える。


「暁も終わりだな、あばよ小南」

一切の躊躇も無しに、飛段の鎌が小南の首を狩るが、鎌はすり抜け、小南の姿が露と消えた。後には真横一文字に切り裂かれた紙が一枚残る。
「けっ実体は無し、影分身?いや、こいつの場合は紙分身、か」


「変だと思わないのか?洞窟が戻っていない・・・・・・ペインは滅した、だが、ペインが操っていたはずの主は未だ支配下というわけだ・・・・・・何故ペインは逃げなかったのだ、あいつが言っていた任務は、主を連れ帰ること、我らと争い自身を死なせる必要はなかったはずだ」


「ってことは何か?最初からペインは捨て駒だってことか?それほどまであの悪魔を連れ帰りたかったのか?」

角都はペインの死体を飲み込む。



「・・・・・・疑問は、まだある。輪廻眼、結局その秘密を解かない限り、全てはわからん。分かっているのは、我らはまんまと閉じこめられたという話だ、後はあの頼りない木の葉の中忍共に任せるしかないという、状況に、我らは追い込まれてしまった。生き残っているのは小南、あいつが操っていると考えている方が正しい、な」



「術を開発しているのは・・・・・・一人じゃない。ペインが言っていました・・・・・・本当の鍵はあっちの女性の方だったのですね・・・・・・僕もまだまだ甘いですね・・・・・・」

意識は戻れど、立ち上がれない白。


「小僧、お前の戦利品だ。持っていろ」
角都は零と刻印がされた指輪を白に渡した。

「これは?」
「ふん、暁の名残だな、……お前の好きにしていいぞ」




血の臭いに惹かれたのか、ヒスロス、本来の住民、悪魔達が集まってくる。

白は体に力を入れようとするが、立ち上がれない。その体を角都が支える。
「それでも、だ。あのいけ好かないペインを殺したんだ。大金星を挙げたんだぜ?雑魚は俺達に任せて、ゆっくりと寝ていろ餓鬼。虫酸が走る言葉だが、あの甘ちゃんな木の葉の中忍に任せるしかねえだろ、それか、死ぬか、だな、主を連れ帰るのに、必ず出口は出来るはず、それまで待てばいい」

白は意外だという表情で角都と飛段を見上げる。次いで、花のような笑顔を零す。

「賭けますか?・・・・・・僕は、彼らが勝つ方に」
「お、話がわかるな餓鬼、乗ったぜ、俺はあいつらが死んじまうほうに賭けるかな」
「・・・・・・何を賭ける?」

「負けた方は、大蛇丸に向かい、「気持ち悪いんだよこのオカマ!」って叫ぶのはどうです?」

想像する二人。

「・・・・・・俺はあいつらが生き残る方に賭けるか」

「あ、お前相棒を裏切るのか?」

「喧しい、賭は賭だ、ほら手がお留守だぞ」
角都もまた、チャクラ切れだ。白を抱え、逃げ回ることで精一杯。


はいはいと頷きながら、飛段は一体一体、悪魔を駆逐する、悪魔は止まることなく湧き出てくる。




しかし彼らの表情に苦境は一切表れていなかった。


「おらおら、その程度でジャシン様に刃向かうのは甘いんじゃねえのか!どんどん掛かってこいよ!お前らも狂信者なんだろ!」













*重要アイテムだっていうのに思いっきり忘れていました指輪。続の更新は今夜でお願いします。



[4366] 死闘.2
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/23 22:27

ダンジョンヒスロスで繰り広げられているもう一つの戦い。



ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!


仮想隕石が琴音達に襲いかかる。



幕開けはバルロンの高等魔法から始まった。
すぐさま自身と直人の傷を医療忍術で手早く治す琴音、ドラゴン達は止めることなくブレスを連発し、隕石を相殺する。


高等悪魔となると、息を吸うように魔法を使う、古代竜と同様、圧倒的魔力に支えられたその力は、呪文や秘薬といった制限を一切受け付けない。


「あんた達、此処が正念場よ!All Kill!」


ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!


誇らしげに歌いあげるように咆吼をバルロンに向けて放つ琴音のドラゴン達。

彼らが死ぬとき、琴音と直人は死に至る、完全なる運命共同体、最高級のテイマーはペットに信頼され、ペットの力を上限まで一杯に引き出し、限界を忘れさせる。琴音はその高みまで足を踏み入れていた。



ザシュ!!!!!!!!!!!



ブレスを避け、近づいてきたバルロンは他のドラゴンに魔法で牽制し、易々と一体のドラゴンの首を刎ねる。
琴音の獣医学も竜の包帯と同様、死者蘇生は出来ない。腕をもがれても、足をもがれても、癒せる技術にまで発展した琴音なのだが、死んでしまっては、何も出来ない。


「っっっおいでませ!かい7号!」

すぐさま予備のドラゴンを口寄せ、五体で渡り合って始めて均衡が取れているのだ、倒れたドラゴンから溢れ出す血に全身が真っ赤に塗れても構わず琴音は予備のドラゴンを口寄せする。


可愛いペット、だが嘆いている暇は一切存在しない。


間合いを取るドラゴン達、接近戦では即殺されてしまう、琴音の意図を忠実に組み、傷つけば忍者の体術でドラゴンに近づき、治療。その間は他のドラゴンが牽制。


「みんな、頑張ってっっっっっっっ!!!!!!!!!」


正しく桁が違う相手に琴音は奮戦していたといえるだろう。


だが、五体が四体、四体が三体、三体が二体。
絶対的な力の差に、次々に倒れゆくドラゴン達。




そして・・・・・・ザシュッッッッッッ!!!!!!!!!




とうとう一体にまで数を減らしたドラゴン。


雑魚を一手に引き受けている直人は、それだけで精一杯で、血の涙を流しながら戦っている琴音を心の中で応援することしか出来ていなかった。


ドラゴンにしがみつき、包帯を巻き続ける琴音、バルロンも必死だ、ドラゴンのブレスは確実に体力を奪っていた。輝きを発していた剣はつやを無くし、先が半ばから折れ、翼は片方がもげ、その角は半分が熱で溶けていた。体の至る所も傷が覆っており、左手はブレスを受け止めた際に負荷に耐えられず、消失。


しかし地力で勝るバルロンは、傷だらけの体を引きずりながらも、最後の一体に向けて歩みを止めない。



「・・・・・・かい1号、最後のチャンス、ね。あいつももう限界のはずよ・・・・・・作戦Z・・・・・・ご免ね、至らない飼い主で・・・・・・」

涙を流しながら命令、治癒をしている琴音、ドラゴンの堅い鱗に覆われた前足が琴音を包み込む、軽く声を出し、ドラゴンはバルロンに向かっていった。


「おいでませ!かい0号!私を運びなさい!」


ナイトメアを乗騎にし、かい1号と共にバルロンに立ち向かう琴音、手には、力が込められていた。


バルロンは残った右手で天を剣で突く、生み出される仮想隕石。


「Aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaalllllllllllll Kiiiiiiiiiiiilllllllllllllllllllllllllllllllll!!!!!!!!!!!!!!」


かい1号のブレスが隕石と相殺、煙が生み出される、バルロンは構わず剣を振り下ろす。


ガスッ


かい1号は前足の半ばまで剣をのめり込まさせ、バルロンの最後の角を噛み砕く!


動きを止めたバルロンは剣をドラゴンの体奥深くにまで突き刺し、剣を手放した。残った翼をはためかせ、飛び立とうとするが、最後の意地でブレスを放つかい1号、視界を奪われたバルロン、そこに飛びかかる一つの影。


右手を封じられ、角を砕かれ、視界を刹那に奪われ、ドラゴン六体の犠牲で産みだした、最後の攻撃。


木の葉の忍び、医療忍者ならば習得している単純明快なれど、破壊力抜群なその攻撃。










「墜ちなさい!バルロン!」



ガスン!!!!!!!!!!!




琴音の最大にまで高められた力が、拳が、バルロンの人間で言うところの百会のつぼ、顔の上に突き刺さる!!!!!





バルロンと共に倒れるかい1号、心臓を串刺しにされ、すでに絶命していた・・・・・・だが、その顔は、穏やかさに満ちていた。




琴音は勢いを殺せず、そのまま吹き飛んだが、ナイトメアがうまくキャッチ、跨らせて、倒れたバルロンの様子をうかがう。



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ




崩れ出すダンジョン、それは主の絶命を意味していた。


ぶひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひん!!

炎を辺りにまき散らし、あるじの同胞の健闘を誇るナイトメア、その上でぐったりとしている琴音。


雑魚も主の絶命と共に姿を消し、直人は琴音の所に駆け寄ろうとした、その時、紙が舞う。


直人はある種の決意を篭めて笛の音を響かせた。


「たかだか、木の葉の中忍が・・・・・・バルロンを滅ぼす。面白い存在、面白い力、面白い技術だわ、バルロンは、またすぐ沸く事だし、ミナクス様に、いいお土産が出来たわね。ペインが負けるなんて、とっても予想外だけど、まぁいいわ、ペインはまだ、負けてはいないのだから」


いつの間にか現れた小南、洞窟が崩壊し、有るべき姿に、出口が戻る。

満身創痍の意識を失っている琴音は、紙をはね除ける事が出来ない。


直人の笛の音はやまない。



紙吹雪が琴音を覆い尽くし、そのままの勢いで出口に向かい去っていった。後に残るは一人と一体のみ。




―――直人の笛の音はやんでいた。











「――――おら、起きろ!」

白達は、洞窟の崩壊が始まり、出口に向かっていた。

途中見かけた、黒い馬とその上に寝ている一人の木の葉の中忍。





とりあえず崩壊に巻き込まれないように、うまく黒い馬を誘導し、四人は崩れ落ちるヒスロスから外に出た。



「・・・・・・何よ、五月蠅いわね・・・・・・直人、黙りなさい」

疲れから体が動かないが、目が醒めた木の葉の中忍、琴音。

「寝ぼけて居るんじゃねえよ、どうした嬢ちゃん、生きているって事はお前がバルロンを殺したんだな?」

「ええ、私と直人で、倒したわ・・・・・・あれ、直人は?」
辺りを見渡す琴音、其所にいるのは、飛段、角都、そして角都に支えられている白だけだ。

「ん?嬢ちゃん以外は居なかったぞ、後はそこで俺達を威嚇している、忠実な黒い馬だけだな」

ナイトメアは目が覚めたご主人の顔をなめ回す、よしよしと首筋を撫でてやり、琴音はかい0号を落ち着かせた。

「・・・・・・間抜けな顔したもう一人の木の葉の中忍の姿は、見なかったかしら」

三人は揃って首を横に振った。


「言いにくいが、恐らく暁の小南に攫われたみたいだぜ?紙が嬢ちゃんにまとわりついている所からみるに、その直人ってのが、身代わりの術で入れ替わったんだろう」

琴音はナイトメアに乗った。

「嘘よ」

三人は何も喋らない。

「ねえ、貴方なら見ていたわよね、直人は、何処にいるの?」
ナイトメアに語りかける琴音、高レベルテイマーはペットの言葉がわかるといわれている。

ナイトメアは黙って飛段の方を向き、首を横に振った。
「肯定」の仕草だった。


言葉を無くした琴音、琴音は何かが崩れ落ちる音を、確かに聞いた。耳に残る直人の笛の音、急に音が止んだのは、一体どうしてだろうか、体にくっついているなんの変哲もない、紙、耳に残る言葉「ミナクス様へのいい土産」

全ての状況が一つの事実を示していた。


「・・・・・・ミナクス」

「お、よく知っているな嬢ちゃん、今の暁のリーダーだぜ」

真っ青な顔の琴音。
「暁・・・・・・あのサソリがいた組織よね」

「おう、その通りだ」

琴音の唇から血が流れる。歯を食いしばりすぎて甘皮が破けた。


「・・・・・・何処まで私から奪えば、気が済むっていうの?かいに続き、直人まで・・・・・・絶対に、絶対に許さない・・・・・・許さないんだから・・・・・・!!!!!」

そのまま再度琴音はナイトメアの上で崩れ落ちた。



「で、どうするんだ?白、一人とはいえ、この嬢ちゃんを連れて帰るのがお前の大蛇丸から授かった任務だろ?」


白はかぶりを振った。
「・・・・・・いえ、彼女はここに来ている木の葉の忍びに引き渡します。ペインを殺した、それだけで大蛇丸は満足するはずですよ、多大な犠牲を払ってしまいましたけどね。それに彼女を攫ったら大蛇丸が殺されてしまいますよ。今の彼女の気迫、貴方たちでも勝てるかどうか」

角都が頷く。
「・・・・・・確かに、今の気迫、初代火影にも通じるものがあった、な」


「んじゃ、さっさと用は済ませて、帰ろうぜ、流石に疲れた」






「物欲」を意味する名前ヒスロス。

何かを欲するときは何かを失うことを覚悟せよ。
洞窟の最奥、「ムーンストーン」が置かれていた台座に刻まれていた言葉。異世界の言葉で書かれていたそれを琴音達は読むことが出来なかったが、言葉は正しく意味を発揮してしまった。「ムーンストーン」は琴音が握りしめていた。








紙の一部を剥がし内容を確認する小南。


「・・・・・・やけに軽いと思ったら・・・・・・私を騙すなんていいタイミングで幻術使うわね。まぁいいわ、貴方でも、役には立つでしょう。ミナクス様に気に入られなければ、貴方が、ペインになるだけよ」



紙で出来た巨大な鳥に気絶した直人を乗せ、小南は本拠地への道程を急ぐ。








彼らが争っているその時ちょうど、暁本拠地では、一方的な戦いが繰り広げられていた。



[4366] 帰還、次章「三忍」プロローグ
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/24 20:19

雪の国――春の国と名を変え、重要人物しか泊まる事を許されない迎賓館に琴音は泊まっていた。


紅がトコトコと歩き出し、それにつられナルト達は郊外に向かっていった。


其所に待っていたのは琴音と主を守るために、威嚇しているナイトメアだけだった。


すぐさま意識を無くしている琴音を運び込み、そして、すぐに目覚めた。

紅とナイトメアは目覚めるまで片時も琴音の傍を離れなかった、それどころか小雪のペットになった白の両親である白龍達も琴音の傍に付き添い、ナルト以外を近づけなかった。


「・・・・・・あら、ナルト君じゃない。紅の面倒見てくれていたのね・・・・・・この白龍達は・・・・・・フリーみたいね・・・・・・貴方たち、私に力を貸してくれない?」


白龍達は、傍目には分からぬほど、軽く頷いた。


「ふふ、ありがとう。貴方たちの名前は・・・・・・白眉と白夢、よ」

「ところで琴音姉ちゃん、直人兄ちゃんはどうしたんだってばよ?」

空気の読めないナルト、琴音の目に涙が浮かぶ。


「全く、空気が読めないんだから!」
テンテンが怒る。


「御免なさいね・・・・・・ありがとう、もう大丈夫よ、其所のお姫様は、雪絵さん?」
戴冠式の準備に余念が無く忙しい合間を縫い、見舞いに来てくれた小雪。


「あらあら、白、貴方のお父さんとお母さんは琴音お姉ちゃんが気に入ったみたいよ?」
プギャーと小さく鳴く白。

「その子の両親ですか・・・・・・すみません、力が必要なんです、お借りしますね」

小雪はにっこりと微笑む。

「ええ、構わないわ、ただ、この紅ちゃんは置いていってくれないかしら、抱き心地がいいのよね、気に入っちゃったわ」

琴音は紅を見る、確かに、小雪にはなついているようだった。
「大事にして下さい・・・・・・紅 transfer」


琴音は小雪にファイアリザードを譲り渡した。

ありがとう、といい、小雪は部屋から去っていく、仕事が忙しいのは本当だった。


琴音はナルトを捕まえた。


「ナルト君、貴方にしか出来ないことを頼みたいの」

ナルトはいきなり抱きしめられてどきどきしていた。

「なんだってばよ」

琴音は微笑む。
「ちょっと三代目にお願いして欲しいのよ・・・・・・「始まりの場所」を探して欲しいと私が言っていたってね・・・・・・貴方が分身を解除した方が圧倒的に早いし、私には時間がないの、お願いされてくれないかしら?」

ナルトは周りを見回すと、琴音のペット達が総じてナルトを睨み付けていた。

「琴音姉ちゃん、これって脅迫って言うんじゃないってば?」

琴音は力を込めて、更にナルトを抱きしめる。

「あら、別に無理じいはしていないわ、かいが思いついて三代目が開発した改良型影分身の強度実験でもしちゃおうかしら」

「いていてててててててててててて、わかった、わかったってばよ」

ナルトは琴音にむかいタップをした。

「ガイ上忍、別に構いませんよね?」

形式上、このナルトはガイの指揮下に入っているための確認だ。

「ああ、我が弟子よ、ご苦労だったな、またお前だったらいつでも歓迎だぞ!」

ガイは白龍が口を開けてブレスをちらつかせているのをみて、冷や汗を垂らしながら琴音に同意した。


琴音はやっとナルトを解放した。


げほげほと咳き込みながら再度琴音に睨まれ、ナルトは印を組む。


「解!」


ナルトの姿が煙の如く消えた。


「ご苦労様、さぁ行くわよ、かい0号・・・・・・いえ黒炎」

琴音の言葉と共に消えていくペット達、ナイトメアの名前を変え、琴音は跨る。

琴音には名付けのセンスは無かった。



「それでは・・・・・・私は此処で失礼します、さぁ行きましょうか、帰りましょう・・・・・・そして取り戻すのよ。まずは、カイ、続いて直人・・・・・・私だけじゃ、力が絶対的に足りない。・・・・・・カイの悪知恵ならば、きっといい案が浮かぶはずよ」

琴音は黒炎の首筋を撫でて、部屋の窓を開け、飛び出した。

黒炎は一直線に木の葉に向けて空を駆ける。







「まるで流れ星のような人ね」
小雪は空を駆けていく琴音を見て呟いた。


「あんなに元気がいい人ばっかり、だから木の葉は発展したのね・・・・・・私もこの春の国も負けないわよ」
小雪は後をついてくる紅を抱きしめて、静かに決意を固めた。

















琴音達がヒスロス最奥で感じた、高濃度の魔素が満ちている空間。九個の目のオブジェクトと十個の手のオブジェクトが存在している場所、その部屋に備わっている本来の機能が使われることは、恐らく、もう存在しない。



其所に一つの玉座が新たに設置されていた、王が座る椅子玉座、女王が座る玉座。


大蛇丸四人は、無傷でその部屋に入り込んだ。

女王の周りには普通護衛がいるものだが、その女王は単独で侵入者の謁見を許した。


四人には緊張の色が伺える、カブトはもちろん、大蛇丸にも、再不斬にも、そしてうちはマダラにも。


「よくぞ、ここまで来た、この世界の強豪共よ・・・・・・ゆるりとしていけ、歓迎するぞ?」
女王は気怠そうに玉座にもたれ掛かり、侵入者を眺める。


「ふふふふふふふふ、臨戦態勢も取らないなんて・・・・・・私達も嘗められたものね」

瞬身の術で移動した大蛇丸の草薙の剣が、ミナクスの首に当たる。

「・・・・・・この世界の人間は面白い術を使う・・・・・・魔法ともネクロマンサーの術とも違う、それに、生命力に溢れている。・・・・・・とても興味深いわ、アバタールが現れるまでの暇つぶしには事欠かなそうね」


「やはり、な」
マダラは大蛇丸を抱え、ミナクスから離れる。


「確かに当たったわ・・・・・・堅いとかそういう次元じゃないわね。一体どういう事?」
大蛇丸の目が草薙の剣を見つめ、ミナクスを見て爬虫類のように細まる。


「ゼツから先程、聞いたが、魔女にはありとあらゆる攻撃が術が痛痒を与えなかったらしい。ペインの攻撃もデイダラの爆薬も、な。この分だと万華鏡写輪眼も意味を成さないだろう。確かに「無敵」だな・・・・・・十分だ、帰るぞ大蛇丸」


大蛇丸の目が更に細まる。

「へぇ面白そうな素体ね・・・・・・どうせなら、いいわ先に帰りなさいカブト、貴方でも足手まといに為りそうよ・・・・・・再不斬、「獲物は獲物らしく」」


大蛇丸のキーワードに反応して再不斬のチャクラが暴発する。


ミナクスが始めて、体を起こした。
「何をしたのかしら?・・・・・・どことなくわらわの世界の臭いがするのだけれども」

大蛇丸は嬉しそうだ。
「あら、分かるの?少しだけ貴方と気が合いそうね・・・・・・マダラ、離れた方がいいわよ・・・・・・今の再不斬は、正真正銘の私達でも勝てない化け物よ。たっぷり楽しみなさい魔女、期待に添えない場合、その体、私がありがたく使ってあげるわよ」


ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!


再不斬の体からチャクラが放たれる、否、チャクラだけではない、これは障気だ!


背中に生えた漆黒の翼、頭に生えた金色の角、体を覆い尽くす緑色の体皮、右手、左手は筋骨稜々の腕。目は写輪眼が巡り、砂が氷が体の周りに展開される。


離れた所で大蛇丸の笑い声が響き渡る。

「これぞ真の機能美、貴方には美しさが分かるかしら?魔女・・・・・・再不斬「しっかりと抵抗しなきゃ駄目じゃない」」


再度の大蛇丸のキーワード。再不斬の写輪眼が、魔女を捉えた。


ミナクスは腕を振わせた。召還されるデーモンの群れ。


再不斬の口から放たれる、灼熱の神のブレス。一時でデーモンの群れは殲滅され、魔女にもブレスが届く、咄嗟に張ったリアクティブアーマーすらも貫き、ブレスは魔女の腕を焼いた。


瞬きをする間に治癒される腕、だが、再不斬の攻撃は、魔女に届いた。


右手を見つめる魔女。再度腕を振り、再不斬の周囲に全てを断絶するエネルギーフィールドが生み出された。
「「法則」を超えるなんて・・・・・・なんて楽しい事をしでかしてくれたのかしら・・・・・・貴方、其所のわらわと気が合いそうな貴方、この傑作を生み出した貴方、名前を告げなさい、胸に刻んでおくわ」


「無敵なのは、私達の世界の攻撃に対してってことね。種は割れたわよ、ミナクス冥土の土産に教えてあげる、貴方をこの場で殺すその者の名前は、再不斬、そしてそれを創りだしたのは、大蛇丸、私の名前よ、覚えておきなさい!」


知識に蓄えられた魔法「ディスペルフィールド」を使いエネルギーフィールドの一部を喪失させた再不斬。

漆黒の羽が羽ばたき、仮想隕石が魔女を襲う。

魔女に張り巡らされていたマジックリフレクションで隕石は反射するが、無視して筋肉が発達していた腕で魔女に対し殴りつける。


頬にクリーンヒットした再不斬の攻撃、だが、魔女は崩れ落ちない。


ゲートを開き、再不斬を追放するミナクス、テレキネスを使い大蛇丸以外の二人も同様にゲートで無理矢理追放するミナクス、ゲートはまだ開いている。


「大蛇丸、ね、素敵な名前。久しぶりに感じたわ・・・・・・これが傷みよね・・・・・・貴方は耐えられるかしら?」

ミナクスのネクロマンシースキルが発動、「ペインベッカー」自身のダメージを他者にそのまま転換するスキル。再不斬の与えた痛みが、大蛇丸を襲う、研究で付与したロッティングコープスの毒もおまけ付きだ。


その場に崩れ落ちる大蛇丸、ついでのようにゲートに飛ばされる大蛇丸。

霞む意識に魔女の声が届く。


「この世界に来て始めて、面白かったけど・・・・・・決戦はアバタールが現れてからよ、大蛇丸、貴方の名前は刻んだわ。貴方もわらわの名前を刻んでね・・・・・・わらわの名前はミナクス、世界が、この世界を滅ぼすために呼ばれた魔女、よ。ふふふ愛しているわ大蛇丸、一時の感動をありがとう」

最後に見たミナクスの顔は、これ以上無いほどの笑顔で輝いていた。

「・・・・・・冗談、じゃ・・・・・・無いわ・・・・・・」

ロッティングコープスの毒が大蛇丸の体を蝕む。




再不斬は大蛇丸の意識がなくなると同時に機能を停止させた、完全なる安全装置だ。

カブトは焦って大蛇丸に緊急処置をした後に、急いで音の里へと帰り道を急いだ。マダラは興味深げに元の体に戻った再不斬を眺めながら運ぶ。











三代目火影猿飛ヒルゼンの執務室、今日も今日とてナルトは術の修行に励んでいた。


一筋の金の毛がナルトに入り込む。ナルトは突然立ち上がった。

「じっちゃん!「始まりの場所」ってのを探してくれってば!」

いきなり話しかけられた三代目は瞬きをしてナルトを見つめる。

「それじゃ要領がわからんぞい、落ち着いて話すんじゃよ、ナルト」

「・・・・・・それもそうだってばよ、今ゲジマユの班の所に行っていた影が戻ってきて、琴音の姉ちゃんに頼まれただそうだってばよ、かいが帰ってくるためには「始まりの場所」ってところに行く必要あるってばらしい」

三代目は顎に手を当てる。

「なるほど・・・・・・すると、カイは生きているんじゃな?ほほう・・・・・・面白そうなことになりそうじゃな。わかった、しかし、「始まりの場所」のぉ。さーて終末の渓とは違うみたいじゃが・・・・・・うぅむ、カイに関連した場所と考える方が自然かのぉ。よし、朧火、しずね上忍をここによべぃ。以前聞いたことがあろう、昔あの子を連れて行った場所がある、と」

年を取ってもそこは火影、恐るべき記憶力でスラスラと最適に近い答えを出していく。

ナルトは突然すらすらと読み取っていく三代目を尊敬の目で見つめた。

三代目はにこにことナルトの頭を撫でる。

「お主も、火影に為りたくば、頭も鍛えなければ駄目じゃよ?」

「おう、じっちゃんを超える火影に為るため、頑張るってばよ!」

ふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉふぉと三代目は嬉しそうにナルトの頭をなで続けた。











*ミナクス女帝のスキル構成の一部


Evaluating Intellgence・・・・・・GM以上
Magery・・・・・・GM以上
Meditation・・・・・・GM以上
Necromancy・・・・・・GM以上


今までに出てきた行動に対応するスキルです。っていうか大体使えるスキルは全てがGM以上に設定されており、ミナクス女帝には700も225も全く意味がありません。



[4366] 三忍、序盤。
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/24 21:33

其所は上も下も左も右も、前も後ろも無い空間。


ああ、暇だ、本当に暇だ。聞いてくれよこの前やっとMageryがGMに為ったぜ!全てこのめちゃくちゃな空間の御陰だな。

Healingももうちょいだし、Anatomyももうちょっと、SpiritSpeakはそんなに高く無くてもいいし、Trackingはもうちょい上げたいが暫くはいいや。HidingとStealthもあと10くらいでGM頑張ったなぁ俺。うんうん、この目の前で繰り広げられている、人外の戦いを見ていると全てが虚しくなるけどな。


何故か仲良く為っている、違うないい訓練相手として認め合っている三人、それぞれ極限まで鍛えられた術で互いを攻め合っている、イタチが頭一つ飛び抜けて、次に鬼鮫、頑張っているがまだ届かない我愛羅って所か。





リースが珍しく大人しくしている。

ん?手招きしている、なんだろ。またわがままかな?


「・・・・・・竜よ、そろそろゲートが開く。皆の者を呼ぶがいい」

まったまた・・・・・・だが、リースは真剣な表情だ。


「わかった。・・・・・・おーーーい、最後の試練、これをうち破ってくれないか?Vas Corp Por」


折角だ、俺からの三人に対する最後の挑戦、唯単に力を測っておきたいだけなんだけどな。

出でいずるは・・・・・・あれ、珍しい紫色のラマ、エナジーボルテックスの亜種ラマボルテックスだ、まぁいいか。

「制限時間は、この空間だから、大体2分くらい、強さはリースの五分の一くらいかな?お前らなら出来るだろ」


頷き、三人はラマボルテックスの周りに散った。


見た目に騙され甘く見ていると、死んじゃうかもよ?


攻撃速度は剣の精霊ブレードスピリッツと互角、だが威力は桁違い。体力は多いし、攻撃をうまくよけ、テレポートして接近戦に持ち込むいやらしさも持っている。



「・・・・・・鮫肌、ご飯ですよ」

あ・・・・・・忘れてた。


チャクラを削り喰らう、だっけ。無惨、ラマボルテックス、鬼鮫の一太刀で消えちゃった。最初に条件を提示しておくべきだったなー失敗失敗。


「まぁいいや、お前ら集合!リースが呼んでるぜ!ゲートが開くぞ!帰還だ!」


さーて誰が開いてくれるのかな、やっぱり琴音と直人かなぁ。









三代目火影執務室、一人の中忍が、報告書を運んできた。

「火影様、今回の中忍試験なのですが、試験管は・・・・・・」

「中止じゃよ・・・・・・今すぐこれを複写し、各国に配送せい。今年の中忍試験の中止の報と共にな」

三代目火影の手には、音の里についての詳細な情報が記されていた巻物があった。

竜の取った行動が正史を更に歪める。










其所は土の国の繁華街の一角。


「戻る気は、まだ沸いてこんのか?綱手よ」
見た目どう見ても20代後半の女性と、50歳過ぎているであろう男性が、共に屋台で酒を飲んでいる。

「・・・・・・別に私が戻る必要は無いだろう。未だ三代目が現役、忍び達も他より遥か高いレベルで纏っており、各国とも、つけいる隙が見あたらないとの評判だぞ?」

女の容姿は、町を歩けば男ならば一度は振り向く程だ。首から首飾りをぶら下げ、その胸には大きな乳房をぶら下げている。
「そうもいかん・・・・・・大蛇丸の場所が判明し、「暁」とやらの組織も動いているみたいだ」

当然男は胸を覗き込む、が、女に一撃をくらい、頭を引っ込める。


「今更・・・・・・大蛇丸が何をしようと私にはもう、関係ない」

暫く静かに二人は酒を飲み明かす。


「・・・・・・だがの、お主に一番帰ってきて欲しいのは、三代目だ・・・・・・お主に五代目を引き継いで欲しい、そんなことを言っていた」


「二代目白い牙との噂が高い新進気鋭のカカシがいるじゃないか、どうせお前も嫌で断ったんでしょ?自来也」

「有無・・・・・・わしには火影などという称号は似合わん、精々世捨て人などといった称号があっているよ・・・・・・未だつけていない決着もあるでの、まだそんなことは考えられん」

自来也は綱手に酒をつぐ。

「大蛇丸、か・・・・・・なんでもうちはの家系にご執着しているとか聞いたが?」

「腐っても鯛だな、情報収集能力は健在か。安心せい、いまの木の葉につけいる隙は、噂通り、微塵も存在せぬよ。それに、わしがいる限り、奴には何も手出しはさせん・・・・・・お主にやって貰いたい事は火影のみじゃない、治癒術のエキスパートとして面白い存在がいてな、何でも死者すらよみがえらせる子供が火の国に現れたそうだ。それの見極めを・・・・・・」

もちろん出任せだ。全ては綱手を木の葉に連れて帰る方便、自来也には、綱手は木の葉に帰れば、今度は出られないとの確信があった。






突如、暗闇を貫く一筋の光が木の葉の里の方に現れた。





場所は、カイが始めてしずねに助けられた場所、カイの父親の墓が存在する場所。


「ムーンストーン」が反応しだしたので、琴音は懐から取り出し、それを天高く掲げた、だがそれでは最後まで反応しなかったので、地面に置いてみた、すると今度は正しく今まで琴音の人生の中で一回も見たことが無い、代物が、全員の前で現れた。


立ち会うは、琴音、最初にカイを助けたしずね、カカシ班全員、アスマ班全員、それに選り抜きの暗部が複数。それと木の葉に留学中の砂のテマリ。


光がムーンゲートから溢れ出し、闇夜の全てを白い光が塗りつぶしていく。











・・・・・・ようやく帰還、か。リースの奴め・・・・・・よくぞ好き勝手やってくれたよな。なんでじゃんけん大会なるものを100回以上やらなけりゃ為らなかったんだ!


俺より先に他の四人の目が光になれる、っていうか俺以外みんな忍びか人外だったな。



争う音が隣から聞こえたのは俺もびっくりしたぜ。




炎の塊が横を通り過ぎた、なんだなんだなんだなんだ?


「イタチィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!」
・・・・・・サスケの声か?



ドドーンボカーンと見えない所で戦いが起こっている。


突然引っ張られ、何らかの馬に乗っけられ、俺は空を舞った。

イタイイタイイタイ、誰だ、力一杯抱きしめる奴は!

俺の目はまだ慣れない、忍者が超人すぎるんだよ。



「我愛羅・・・・・・生きていたのね!」

「・・・・・・心配を掛けたな。悪かったテマリ」

あの我愛羅が謝罪をしている!

うわぁ・・・・・・あの空間で成長したのは術レベルだけじゃなかったんだな。


「・・・・・・竜、夜叉丸に言っておいてくれ、俺はもう大丈夫だ、さっさと成仏しろってな」

くそっ、我愛羅の顔が見えない!どんな表情をしているんだ!早くなれろ俺の目!

何て思っている内に俺は抱え上げられ、力一杯おしりを叩かれた。


「いってぇぇぇええええええええええええええええええええええ!この力、なんて力だ!俺の体のことをちょっとは考えろ!一般人なんだぞ!」


「この馬鹿!あんな事、もうしないって約束しなさい!言うことを聞かないお馬鹿さんには、お仕置きよ!」


いやいや、姿は見えないけど、この声は琴音か!?空を舞う馬ってナイトメアくらいしか存在しねえやな。



パチーーン


パチーーン


「いってぇぇえええええええええええええええええええええええ」


ライフが大幅に削られている気がする。・・・・・・俺はこんな間抜けな死に方で死ぬのか・・・・・・あばよNARUTOの世界、あばよ、元の世界の俺の体。・・・・・・しっかりと成仏してくれ・・・・・・。













心地よい光と共に、けつの痛みが消えていく。

やっと目が慣れてきた・・・・・・見なきゃ良かったな・・・・・・いつだって苦手だ、女の涙ってやつはよ。



「・・・・・・またあんな事したら・・・・・・許さないんだから・・・・・・私から絶交よ・・・・・・」


あーいい大人が、いい女が泣くんじゃねえよ。琴音の頭を撫でてやる。



「・・・・・・悪かったよ、反省している、次からはお前の意思を尊重してから行動するよ。もう、無謀な行動は取らないから。・・・・・・もう泣くなって」

「・・・・・・何さ・・・・・・子供の癖に・・・・・・かわいいおちんちんしている癖に・・・・・・大人を慰めるんじゃないわよ・・・・・・」

・・・・・・ズボン返して下さい・・・・・・俺は人間として男としての尊厳を今現在進行形で、失っている。



幸い、他の人間は、もう一つの出来事に夢中のようだ。


・・・・・・駄目だ、見えない、あの線にしか見えない動きは忍者の争い・・・・・・イタチとサスケ、か。

俺が治して完璧なイタチに、今の時点のサスケが勝てるわけねえだろうが。



下を見ると、影縛りで動きを止められている鬼鮫・・・・・・ありゃポーズだな鮫肌を使えばあんな術一瞬で解けるだろうに。その証拠に鬼鮫の野郎、完全に笑っているよ。


あれ?リースは何処に行ったんだ?


「ふむ、我が僕の保護者と言った所か・・・・・・中々心地よい波動を出している」

ちゃっかり琴音の後ろに乗っているよ、さすが古代竜気配を全く感じなかったぜ。

「誰?この子」

最強無敵の古代竜さんです、と言おうとしたが、リースから嫌な気配がびしばししてきていたので口を噤んだ、下手なことを言ったら殺される。

「我が名はリース、其所に居る竜の主じゃよ」

「竜?」
琴音の怪訝な顔、あ、そうかお前らに取っちゃ俺の名前はずっとかい、だったな。

「・・・・・・俺の本当の名前だ、記憶喪失がやっと治ったんだよ」

「・・・・・・そう・・・・・・」
琴音は俺の記憶喪失を知っている数少ない人間だ、それだけで話が通じるからありがたい。

そういえば、
「あれ?直人の馬鹿はどうしたんだ?」

琴音が口を再度噤んだ。何か言いにくそうな雰囲気、どうした?


「――竜、気をつけい、魔女が、来るぞ」
真剣な表情に為ったリース、今なら分かる真剣の度合いまで、敵の登場だと。



下ではまだ争っていたが、イタチがあっさりと武器を全て奪いサスケを組み伏せる。だがカカシが止めをさせないように、イタチの首筋に刃を当てている、暗部は鬼鮫につきっきりだ。


「・・・・・・無駄ですよ、カカシさん。貴方でも今の私には勝てません、鬼鮫、遊びは終わりだ、さっさと離脱するぞ・・・・・・リース、どうした?」

万華鏡写輪眼が、回り出す、発動までもが、流れるようなチャクラだ。

カカシは目を合わせられていない。暗部も手が出せていない。ナルトは・・・・・・まだまだだな、すでにイタチの幻術に掛かっていたか。ふらふらしてやがる。



「・・・・・・イタチ、よっく見ておくのじゃ、これから現れるは、我らが敵、稀代の魔女、――ミナクスじゃよ・・・・・・実体は無いがな」


リースの声が風に乗る。







*プログラム「アバタール」(仮)鍵が現れました、・・・・・・徳が足りません、徳が足りません*




[4366] 考察、アバタールについて
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/26 14:59

*プログラム「アバタール」(仮)鍵が現れました、・・・・・・徳が足りません、徳が足りません*

*プログラム「アバタール」(仮)鍵が現れました、・・・・・・徳が足りません、徳が足りません*

*プログラム「アバタール」(仮)鍵が現れました、・・・・・・徳が足りません、徳が足りません*



五月蠅い!一体何なんだ!がんがん頭の中に響きやがって!


徳?ってあれか徳システムの徳なのか?一体何だそりゃyoungでもいるのかよこの世界!金払わなきゃパラディンのスキルは使えないんだったよな、知るか!俺には必要ないだろうが!

「何よこれ!」


琴音の鞄が光っている、なんだ?


琴音が取り出すは、・・・・・・あれ、どっかで見たな、汚い書物だこと・・・・・・あれって確か・・・・・・俺のアンチョコ!


俺がむか~~~~~~し書いた奴じゃねえか!この世界に来てすぐの時、子供の時に書いたあれだよあれ、今も子供だけどな!けっ、ぺっ、光るって、俺にそんな力はねえだろうが!


書は形を作り、どことなく誰かに似ているようで誰にも似ていない誰かに変化する。

「・・・・・・コデックスの写本・・・・・・思いっきり不完全じゃが、こんなものまで、この世界に来ていたのか・・・・・・ミナクスが呼ばれるのも、無理はないという話、じゃな」

小さく呟くリース、いやいや、そんな大層な物じゃないですよ、だってあれは俺が二日だけ徹夜して書き上げた奴だぜ?子供の体に徹夜は辛かったなぁ・・・・・・今も子供だけど!飽きたよこの話!



「プログラム「ムーンストーン」終了、引き続きプログラム「アバタール(仮)」起動・・・・・・徳が足りません・・・・・・却下・・・・・・プログラム「アバタール(仮)」停止します」

ふむふむ、ムーンストーンは分かるが、アバタールってウルティマの主人公だろ?確か、八つの徳を極め、模範的な人間?かなんだかにもなった、とにかく凄い奴、仲間と一緒にとはいえ、モンデイン、ミナクス、そしてエクソダスまで倒しちゃった奴、最後は自分の影であった宿敵ガーディアンの、なんたらかんたらと一緒に自滅した人だったよな。

微妙に(仮)って発音するなって、かっこ、かり、とじかっこ、って何処の小学生の教本だよ。

「やぁ、初めまして、マスター、始めにお礼を言っておこうか。僕を産みだしてくれてありがとう」

中世的な顔立ちの奴は、何処か時代を思わせる・・・・・・中世っぽいな、服を着て、礼儀正しく俺にお辞儀をした。


「なんで、俺の落書きに近いような落書き帳が、意識なんてもっちゃってんの?」


コデックス(仮名)は健やかな笑い方で笑い出した。


「マスター、それは言わない約束ってやつだよ、それよりも、其所の女の子・・・・・・古代りゅ・・・・・・」


コデックス(仮名)の頬が思いっきり、リースに殴られた。


俺の見えない動きはもう飽きたって。


「ほほう、この礼儀知らずの所有者が竜だったとはのぉ」


全く目に映らない動きで再び琴音の後ろに座っているリース。怖いんで、笑いながら握り拳を俺に向けないでくれませんか?


「・・・・・・マスター、意外な人脈を築いていたようだね、ならば何とかなるかな?単刀直入に言わせていただくと、マスターだけが「アバタール」に成り得たんだけど、徳が足りないってさ。すなわち「慈悲」「誠実」「武勇」「名誉」「献身」「正義」「霊性」「謙譲」・・・・・・マスターは、あれ?結構足りているみたいだけど、なんでだろ、記述不足かな?」




突然、女の姿が何もない虚空に、俺の目の前に映し出された。

「「覚悟」よ・・・・・・何だ、今代のアバタールは貧相な子供ね」






「魔女、め」

リースの呟きが再度風に乗る。

下の争いは終わっていた、イタチと鬼鮫の分身が消失、だがそれにも反応しない木の葉の忍び、それとイタチ達。サスケはあくまでイタチ憎し、なんだが・・・・・・イタチがどうして致命的な攻撃をしないのか、気付いていないのかね?・・・・・・まぁ無理だろうなぁ。今のサスケの写輪は三つ巴、この時点で、か。激しい修行を積んだのかな?


さーて、現実逃避はここまでしておこうか・・・・・・。



「この世界では、初めまして、アバタール、貴方は度々姿が違っていたけれども、よりによって何でそんな姿にしたのかしら?」


「いや、違うし、俺はアバタールなんかじゃねえよ」


俺が主人公?ありえねーだろ、こんなシビアの世界で一番命に危険がある主人公なんて嫌だよ、嫌ですよーだ。


「ふふふ、隠しても無駄よ、わらわには、・・・・・・あれ?確かに気配を感じたのだけれども・・・・・・おかしいわね・・・・・・あなたは・・・・・・「法則」こそ、わらわと同列なのに、全く覇気を感じないわ」



首をかしげている20代半ばくらいの美女、雰囲気から最悪の臭いがびんびんしているが、おやじのモンデインが夢中になっちまうのもわからなくないな。



「・・・・・・おかしいわね、アバタールはまだなのかしら・・・・・・何だか飽きちゃったわ、ばいばい・・・・・・ああ、言い残していたけれども、この前小南が、楽しい素材を連れてきたの、知っている人間がいたら伝えておいて、「直人」っていうイレギュラーな存在は、わらわの配下になったってね」


・・・・・・なんでそこで、直人の名前が、出てくるんだよ!

「琴音?」

「黒炎、fire!」

俺達が乗っていたナイトメアが炎をミナクスに向けてはきだした。


「無駄じゃ、竜の連れ合いよ、思念体ゆえに、何も出来ぬが傷つけることは出来ぬ」

「直人を返しなさい!」


ミナクスの目が、わずかに輝く。


「・・・・・・わらわと、其所なアバタールのなり損ないの他に、「法則」を同源とする存在がまだいようとは・・・・・・面白い、面白いわ・・・・・・名前を名乗りなさい、名も無きテイマー、ふふふ、ついでに貴方も覚えておいてあげる、名乗りなさい、坊や?」


駄目だ!罠だ!って言おうとしたが、それよりも何倍も早い忍者の反射神経を使い、琴音は力強く答えた。



「私の名前は、琴音、この子の名前は、・・・・・・竜、必ず取り返しに行くわ、精々首でも洗って待ってなさい!」


男らしいねぇ・・・・・・俺泣いていいかい、身体能力が低いって事が交渉事にまで影響してくるなんて、まったく思っていなかったよ。


「琴音に、竜、ね。確かに刻んだわ・・・・・・どう?貴方たちも力が欲しくないかしら、わらわの力は、小南やデイダラ、それにペインといったこの世界での、もはや完成している者達には及びにくい、だけれども、あなた方・・・・・・特に竜、貴方ならば制限が外れる可能性が高いわ・・・・・・直人みたいにね、


あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははは、


どうしたのよ、琴音、そんな目でわらわを睨まないでよ、所詮遊びじゃない、直人はいい声で鳴いていたわよ、琴音ちゃ~ん、カイく~んってね、カイって子にも伝えておいて、わらわの元に来れば、全てが満たされるわよってね。


あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは、


そうね、力が欲しい者はわらわの所に来てみなさいよ、わらわは差別はしない、どんな者にも力をあげるわ、貴方が望んだ力を、どんな者、どんな物、どんな存在にもね、わらわにはこの世界の争い事は関係ないわ、ゆえにどんな、もの、にも公正に力をあげられるわ・・・・・・どうせわらわが滅ぼすんだもの、儚き残りの時間を楽しく過ごしたければ、力が単純に欲しい者は、心残りが有る者は、来なさい。わらわは、暁で待つ・・・・・・そうね、暇だから力を試したい者も来ていいわよ、その場合、まずはわらわの手下が相手をする事になるけれども、ね」



笑い放しっのミナクスの姿が薄れ、消えた。



「イタチ、去るぞ・・・・・・出直しじゃ・・・・・・竜、そなたはどうする?我らと共にくるか?」


ぎゅぅう
琴音が強く俺を抱きしめる。


・・・・・・分かっているよ。
「いや、俺は行かないよ・・・・・・ずっと、待たせていた奴がいて、これから取り返さなきゃいけない奴もいるんでね・・・・・・あんたらはどうするんだ?」



イタチがサスケの真っ正面に立つ。さて、どう変わるこの二人の関係は。


「サスケ、お前には失望した、何故俺に届かない?何故俺を昂揚させない?・・・・・・単純だ、お前には力が足りない、憎しみが、足りない」


カカシの一撃がイタチの首を狩る。
イタチの姿は水のように解けて消えた。


「さーて・・・・・・久しぶりにこの目を使う羽目になるのか」
カカシの写輪眼が回り出す。


「・・・・・・我らは「暁」を抜け「龍」となる、サスケ、俺を倒したければ、殺したければ・・・・・・もっと憎むことだ、憎しみが、足りない――だからお前は弱いんだ」


分かっている分かっている、あんたらには口を出さないから、俺の背後に立つのはやめてくれよイタチ。


気絶させられていた琴音、早いねーさすがイタチ。
この中でカカシを抜かせば一番反応速度が速いのがナイトメア、ならば言うことを聞けない状態してしまえばいいってか。


ナイトメアから落ちた琴音をカカシがキャッチ、反応出来たのは流石だな。其所まで計算尽く、なんだろうな。


暴れ出すナイトメア、ご主人様が落とされて頭に来ているのか、イタチに向かい噛みつく、が、


「すまぬな、今は大人しく眠れ、下僕よ、暫しの別れじゃな・・・・・・魔女は狙ってくるぞ、そなたを、周りの人間を・・・・・・この世界そのものをお主は、どうするのじゃ?・・・・・・答えはまだいい、じゃが、時間は無いぞ、精々励む事じゃな」


リースの小さな一撃でナイトメアもまた気絶させられる。
リースはそのままイタチの頭の上にのり、鬼鮫と共に、この場から消えた。



・・・・・・俺が乗っていたのは?ナイトメアです。
今この幼女は何を気絶させてしまいやがりましたか?空駆ける馬、ナイトメアです。


「ありえねぇえええええええええええええええええええええええええええええええ」


ふわん


砂の雲が俺達を受け止めた・・・・・・悪いな我愛羅。




「・・・・・・マスター、再度の起動には時間がかかってしまう、もしかしたら、「決戦存在」は、間に合わないのかも知れない。」




まだ居たのかコデックス(仮)


「別にどうとでもなる、・・・・・・ミナクスは、俺が止めなきゃいけない、力も覚悟も気合いも実力も全てが足りないけど、な。・・・・・・俺が呼んでしまったのだろ、ならば俺が責任を取るよ」


けけけけけけけけけけ、呆れるほど勝ち目が無い、どう計算しても1%も無いな。


ああいうイベントキャラクターは、ウルティマオンラインじゃ多勢に無勢でフルボッコにするのが定石なのによ!一人でVSボスってなんのいじめだ、死んでも平気なゲームとは違い、死ねない戦いでは辛すぎだろ、第一俺のスキルは、決戦用とはほど遠いからなぁ・・・・・・。


「なぁ、何かチートみたいなの使えないの?いきなり最強になれる裏コードがあったら今の内に隠さず言ってくれよ、使うから」


コデックス(仮)は首を横に振る。


「マスターわかったよ、その心構えがアバタールに成り得ない原因だ」


・・・・・・だって仕方ないじゃん、俺一般人なんだよ?お前も少し俺と成り代わって生活してみろって、嫌になるからさ。大蛇丸に掴まったときも、ペインに何故か最大限の警戒されちまって、普通は一週間に2.3回しか使わない侵入者探索雨の術を使われ続けた時も、気が狂った人形遣いと相対しちまった時も、俺、頑張ったよね。結果的に逃げたりなんなりしたけどさ、しょうがないじゃん!

勝てないもん、俺、弱いもん。


友達が出来て・・・・・・親友になって、安心していたら攫われて、命からがら音から雨から逃げ出して、久々に成長した親友にあって、・・・・・・またすぐ別れて、また逢えたら一人最悪の相手に掴まってて、今や敵だぜ?

いじけた俺を見かねたのだろう、コデックス(仮)はいつの間にか消えていた。


「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

騒いでいるのはサスケ、か。






俺は気付くべきだったんだよな、この時以来だよ、サスケの態度が思いっきりおかしくなり始めたのは、っていうか原作でもあったよな、こんな展開、







力を求めて、里を抜けちゃうって展開が、さ。







白と飛段、角都は、指輪だけを戦利品に、音の里に帰ってきた。


待っていたのは、意気消沈したカブトと、すっかり元気な姿になった再不斬、怪しげな仮面を被っているマダラで、肝心の里長の大蛇丸は出迎えにはいなかった。


白は再不斬の前に膝をつき、再不斬の復帰を祝った。


「おめでとう御座います、再不斬さん・・・・・・ところでいつもうざい、大蛇丸はどうしたんですか?」


カブトが幽鬼のように真っ青な顔で白にふらふらと近づいてくる。

「・・・・・・ペインを超えたんだってね・・・・・・よくやったね、と褒めたかったんだけど。白、君には次の任務を言い渡す、木の葉の三忍、綱手、それか・・・・・・治癒技術が特質して高い者を探し、連れてきて欲しい・・・・・・再不斬と協力していい。飛段と、角都・・・・・・君達は、この子を攫ってきて貰いたい」

カブトが差し出した写真にはぶすっとした表情の「竜」が映っていた。

「僕の孤児院での後輩、可愛い弟だよ・・・・・・彼の知識が必要になるかもしれない・・・・・・可及的速やかに彼を連れてきてくれ」


カブトの知識では、大蛇丸に入った毒の進行を抑えるだけで精一杯だった。












三代目火影、執務室。


「・・・・・・よろしいので?火影様」
「無論じゃ・・・・・・弟子の不始末は、師匠が取らなければ、な。証拠が出揃った今、躊躇する理由は存在せぬよ」
「・・・・・・わかりました」
「陣頭指揮は、自来也、そして」

現れる一つの木の葉の重鎮。
「よくぞ来たな、ダンゾウ、やるぞ、そなたにも裏から支援してもらう」

ダンゾウと呼ばれた片腕が包帯で縛られている年配の男は、確かに頷いた。


伝令の中忍が受け取った指令書には、こう書かれていた。














「音崩し、――――発令」


最強の忍びの里が、傷ついた大蛇丸に牙を剥く。










雨の里、暁本拠地。





「よろしいですか、ミナクス様」

「ええ、好きにしていいわよ、但し、面白く無ければ認めないわ」

「喜んでいただけるものと、確信しております・・・・・・ペイン」

現れるは、姿形こそは違うまでも確かにペイン、六道。

「暁、出陣、標的は大蛇丸、飛段、角都、トビ、そして我々を殺した白と呼ばれていた忍び、ミナクス様に傷を負わせた、再不斬と呼ばれている元霧の指名手配者」


ペインの後に続くは、まずは小南、続いて嫌々そうにデイダラ、何も考えて居なさそうなゼツ、最後に、



「ミナクス様、確かにお預かりします、行くぞ、直人」


「――はい、ミナクス様の仰せのままに・・・・・・」
ペインの呼びかけに応じる表情を無くし、目を閉じたままの直人、背中には一振りの剣が下げられていた。



[4366] 三忍、綱手
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/11/27 18:18


医療忍術のエキスパート、次代火影最有力候補、三忍が一人、綱手。現在は、愛しの婚約者に、その関係者である少年を亡くし、絶賛トラウマ持ち。戦闘職なのに、血にトラウマが合っちゃ駄目だろう。


あー面倒くさい、なんで俺まで付いてきたのやら。



「音崩し」



原作には全くなかったイベントが堂々と施行された、・・・・・・結局俺は原作を逸脱させている率NO.1だな。


今は、陣営強化のため、綱手を木の葉に戻す為、自来也に協力してこい、という話で俺とナルトが選ばれた・・・・・・いや、巻き込まれた、確かに綱手がいるといないじゃ、最終回復手段を取れると取れないじゃ大きい違いだ。



三忍ってのはどいつもこいつも変人なのかね、何でもムーンゲートが開かれた時の光を見て、いったん帰ってきた自来也、俺を見るなり豪快に笑い出し、俺の首根っこを掴んでいきなり運びだそうとしやがった。


さすがに止めに入った三代目、執務室であんな大胆な行動とれるのは三忍くらいだろうさ。


「お主の御陰で、積年の決着がつけられそうだわい」

撫でるというより、叩く感じで自来也は俺に構う、いてえからやめてくれ。



「ついでだ、ナルト、お主もついてこい!修行を見てやる約束だからのぉ!」
「え~~なんかおっさん胡散臭いってばよ、俺はじっちゃんに修行見てもらうからいいってば」

三代目は、一抹の寂しさを匂わせ、首を横に振った。


「悪いのぉ、ナルト、これから暫く忙しくなるんじゃ・・・・・・自来也は儂の弟子で一番優秀な奴じゃよ、こう見えてもな。儂が教えられる術は、原理だけなら全て教えた、猿候王・猿魔もお主の事を気に入っている、次は、自来也に教えて貰うのじゃ・・・・・・自来也、仙人モード、仕込んどいてくれんか?ナルトには更なる力が必要じゃ」


「なぁ、三代目のじっちゃん・・・・・・もしかして禁術までナルトに教えちゃったりはしていないよな?」

ありえる話なんだよな・・・・・・溺愛ぶりをみると。


「うむ、儂が使える術、全てと言うたが?」


そんな何かおかしいこといったかのぉなんて目で見られても・・・・・・まぁいいか、いいのか?どんなに成長しているっていっても、まだ下忍だぜ、ナルトは・・・・・・カカシがため息ついてら。やっぱり異常なのか、使っていい術悪い術俺にはわからないからなぁ・・・・・・自来也に教えて貰うか。

自来也がナルトの頭を撫でる。


「ほぉ、二代目プロフェッサー、か、面白い、まずは蝦蟇ぶん太とでも契約を交わさせようかの、猿飛先生、螺旋丸は?」


「ナルトが思いついた、影分身を使うのは、禁止じゃと、そこなカイ・・・・・・竜がな譲らないのじゃ」


理由は色々あるが、チャクラを押さえる必要が有る、原作だと無駄にチャクラを消費しても豊富なチャクラでなんとかなっているが、一つ一つの威力を上げる為、省エネも覚えて貰う、っていうか木の葉の開発した技術はすげえな、道理で強いわけだ、全ての忍者の実力が大幅に底上げされてやがる。これも、モンスターが現れ、一人一人が強くなる必要があった訳、か。


「でもでもでもでも、もうちょっとで出来そうなんだってばよ!」


偉大なるは影分身特訓、日向の技術やらその他優秀であろう講師陣に一斉に学ばせた結果、ナルトのチャクラコントロールは日に見えて向上している。近いうちに一人での螺旋丸も成功することだろう。果たして性質変化は、どうすっかな、怪力を覚えさせた方がいいんじゃねえのかな?


それらも含め、術スピードを最優先だ、速度が遅い者は全てに遅い、攻撃が当たらなきゃ、どんな強い攻撃も意味が無い、最速さえあれば、最強はいらない、速さは全てに優先する。


そう考えるとイタチ放したのはまずかったかなぁ。現時点での最速は奴だ。でもサスケラブしか考えていない奴は・・・・・・使いにくい、弟を守るためとはいえ、上層部との取引があるとはいえ。

うちはマダラとの約定まで蹴って守ったサスケだからなぁ。流石に心の底までは信頼されていなかったようだが、知っていたよイタチ、お前がマダラと組んでいたことは、さ。

ちなみにナルトが数多の種類の性質変化までこなせるのは、九尾の御陰だ、九つの性質があれば何だって出来るべ、さすが大妖。


「ふむ、では道すがら見てやるか、まずは綱手・・・・・・その後に大蛇丸との決着、後悔はしないのだな?猿飛先生」

三代目は、深く頷いた。


「力を持っていて行使しない、不義を見逃すことこそ、里の損失に繋がる・・・・・・中忍試験、大事なことじゃが、今は、全力を持って、里の害と為りうる者を、潰す・・・・・・それが木の葉の忍びじゃよ」

最後は俺に向かっていった言葉か。










そんなこんなで一路、綱手が確認されている場所へ俺達は向かった。

もちろん俺はナルトにおんぶされている状態だ。 

とりあえずは、螺旋丸のマスター、里でああいっていただけあって、原作より遥かにチャクラコントロールがうまいナルト。


綱手は、うまく説得に応じるのか???


初代火影の首飾りが、限りなく重要度が低い今、別にいらねえしなぁ。
里のトップの指令だ、断れるわけもねえか。



それよりも道中結構自来也が、鋭い事が判明。別に隠す必要もなくなったんで、教えてやっている状態だが、詳しく聞くのな。


まるで子供のように色々聞いてきたよ、特に、Hiding-Stealthについて、な。



実演してみたら、わしにも使えないのかのぉと思いっきり残念がっていた、あー、一発で目的がわかったよ、このエロ仙人!!!だから綱手にあばら折られるんだよ!


確かに、そういう使い方をしても別にいいけど、写真とか行動を伴えないといっても、インスピレーションがなんたらかんたらと言い訳をしていた。・・・・・・そんなに女の裸が見たいのか・・・・・・あれ?俺性欲が本当に無くなっているんだな。昔の俺だったら使っていたかもしれないのに、そんな思考すら頭にのぼっていなかったよ、だけど実行した瞬間、間違いなく琴音に殺されるわな。










土の国、賭場、どんな時でも営業している場所。

其所に今、負けに負けている女が居た。
「・・・・・・ちっ、またすったか」

お付きのしずねが涙を流しながらお金を払い、綱手としずねは賭場から出た。


待ち受けるは、二人の忍び。小さいが、静かな殺気を放つ者と、存在すら感じさせない、おそらくは、どこかの上忍。

小さい方が口を開く、顔だけ見ればどこかのお嬢さん。別の形で女の子に間違われること数知れず。


「お迎えに上がりました・・・・・・綱手様、大蛇丸が待っています、是非来ていただきませんか?お礼は、これで」


大きい方が面倒くさそうに抱えていたアタッシュケースを全て綱手の足下に投げつける。


しずねが中を改める。

「・・・・・・綱手様・・・・・・全て現金です・・・・・・しかも本物です」

二人ですら今まで見たことも無いような額の現金。

「・・・・・・霧隠れ、抜け忍の桃地再不斬、それに・・・・・・魔境氷晶なる血継限界を使う・・・・・・名前は確か、ハク、だったか、何故大蛇丸の下に付いている」

スラスラと情報を出す綱手、彼女はモンスターが出だした頃から、かつて最大の情報ネットワークを所持しており、今現在もそれは有効だ。

「・・・・・・我らは、一度大蛇丸に命を救われました、別に心まで忠誠を誓っている訳ではありませんが」

「やめろ、しずね・・・・・・こいつらは強いよ、私でも勝てるかどうか」

しずねは開始しようとしていた攻撃を止めた。

「特にあなた方に危害を加えるような指令は受けていません、それほど警戒なさらずともいいですよ・・・・・・再不斬さん、そんなに殺気を出さないでください」


「くくくく、何、反応が面白くてな」

白がジロリと再不斬を睨む。

「わかったわかった、そんなに睨むな。もう何もしないよ」

再不斬は白の頭をぽんと叩き、闇に紛れた。

「別に我らは、大蛇丸が治らなくても一向に構いません・・・・・・ですので、もし来たいと少しでも考えていらっしゃる場合のみで結構です・・・・・・力付くは嫌いなんで」

白はにこりと花の様な笑顔を二人に向ける。


「・・・・・・わかった、お前らのような存在を従えらせるなんて・・・・・・変わったのだな大蛇丸、見るだけ見てみよう。だが、私は間違いなくあの変態は治さないぞ」


白は再び笑う。


「ええ、それで結構です、では、こちらへ。お付きの方はどうなされますか?」

「私一人って話だったな、しずね、その金をもって借金を清算してこい、余った金はちゃんと貯金しておくんだぞ」


しずねは、綱手と目が合い、何か言いたそうだったが、黙って頷いた。










土の国への道中、ナルトの修行も有る事も相まって、進行速度は比較的緩やかであった、御免なさい、俺が一番足引っ張ってますね。忍者の行進速度に合わせていたら俺の体がどうにかなっちゃうので、二人はゆっくり進んでくれている訳だ。

俺を背負っているナルトは、包帯を使い疲れは取っているので、あんまり疲れていないようだけどな。


「止まれ、竜、ナルト」


いきなり制止合図を出す地来也。何だ?


「ちっ木の葉の三忍かよ、面倒くさい奴がお守りについてやがるな」


特徴的な顔の奴が二人・・・・・・原作で見た顔ってことは・・・・・・二人組・・・・・・暁・・・・・・暁!?


「飛段と角都!最低の不死コンビじゃねえか!」

特徴的な顔の二人は、驚愕の表情を浮かべている。


「・・・・・・おい、角都、俺達自己紹介なんかあの小僧にしたか?」

角都は首を横に振る。

「・・・・・・してない、な。カブトが言っていた通りというわけか、確かに面白い存在だ。大蛇丸が欲しがる理由もよくわかる」


大蛇丸の名に呪印がちくりと反応した。そういやまだこれ付いていたよな。全く反応が無いんでいつもは全然気にしていないんだけどな。


「竜、知っているなら話が早い、二人の能力をざっと話してくれんかの?」

自来也が鋭い殺気を二人にとばしたまま俺に尋ねる。


二人は俺にどうぞのポーズをしていた、どんな理由だ?


「・・・・・・そっちの鎌を持っているのが飛段、ジャシン教を信望しており、有る一定の条件を満たせば自身に与えられる攻撃全てを跳ね返せる、条件とは、対象の血を嘗めること、特殊な陣形を血で描き、その中に居ること。なお、どういった原理か分からないが、不死の体を持っている、首がちぎれても死なない。まさに不死」


飛段が嬉しそうに拍手をしている。


「大した餓鬼だな、なんで其所まで知って居るんだ?ついでだ、角都のも喋ってみろ、俺が採点してやるよ」


「・・・・・・そちらの仮面を被ったような顔をしているのが、角都、別名死なずの角都、その正体は初代火影とも争ったことがある、とんでも無い経験を積んでいる歴戦の忍び、長生きの秘訣は、命のストック。殺した相手の心臓を取り込む事により、その者の性質変化を使うことが出来るようになる、最大ストック数は、俺が知っている限り、五、つまり五回は殺さないと滅ぼすことが出来ないとんでも無い化け物だ」

ぱちぱちと飛段が再び拍手をする。

「ほぉ本当によく知ってるな、だが角都は間違っていたぜ、今のストックは9だ。ペインを殺したことにより、どういう原理か増えたんだよな?」



・・・・・・そんなナインライブスじゃあるまいし・・・・・・。


ガスっと角都が飛段を殴る。

「しゃべりすぎだ・・・・・・だが、カイと言ったか、付いてきて貰う事になる。我らについて知りすぎている・・・・・・不穏分子は消さなければいけない」



殺気が二人から湧き出てくる、が。
自来也が二人の前に立ちはだかる。




「さてさて、手の内を晒された忍者がどう戦うか、見せて貰おうかのぉ・・・・・・暁も大分様変わりしたようだな、大蛇丸の下に付くとは、後悔する事になるぞ・・・・・・ナルト、よっく見ておくんだぞ、わしの奥の手だ・・・・・・仙人モード!」










薄暗き音の里、本拠地。

「大蛇丸の様子はどうだ?」
マダラは一人手持ちぶたさに、彷徨いていた。

「・・・・・・正直、少しでも毒に耐性が無ければもうすでに死んでいてもおかしく無い状況です」

「そうか・・・・・・ならば、俺が入ってくる外敵は排除しよう、気付いていたか?暁が来ている・・・・・・先頭はペイン、か」

「白君がすでに殺したはずですが?」

「輪廻眼の秘密を解かない限り、ペインは無敵で不死だよ・・・・・・安心しろ、俺は暁の中の誰よりも強い、追い返してきてやるよ」

マダラはそう言い残し、外敵の対応に移った。










「ちっ・・・・・・とんでも無い数の罠だな。うん、大蛇丸らしいっちゃぁ大蛇丸らしいか」

デイダラが愚痴る、が、今回のメンバーで話を聞く可能性が有るのは、ゼツくらいなのだが、ゼツはすでに姿をくらましていた。


天道ペインによる斥力で、罠の全てが無効化されていた、何もない荒野を歩くが如く、一行は進む。






木の葉の音崩しの前に、暁の音強襲は始まった。



[4366] 聖獣
Name: ヘヴィープレイヤー◆f9e79432 ID:045cdd0e
Date: 2008/11/30 09:12


其処は、未だ世界の誰もが足を踏み入れていない人跡未踏地。


――ロストランド、ミナクスの登場により侵食を強めた「世界」は新たなダンジョンをNARUTOの世界に作り出した。


存在はすれども、定義されていなかった為、世界に定着できていなかったそのダンジョンの名前は、「ファイア」


春の国、小雪姫に送られた火蜥蜴、紅といった、炎属性のモンスターが闊歩する灼熱のダンジョン。ただし、主は存在しない、ロストランドへの道としてファイアは生まれた。


「リース、目的はなんだ?」


生まれた場所は木の葉と波の国の間の小さな島。見つけたのは偶然ではなく必然、古代竜としての力を使い、検索した結果、リースはファイアを見つけるに到る。


当然の如く付き合わされる、イタチと鬼鮫、イタチは契約がある事もあるのだが、鬼鮫の心情はわからない、イタチが問うても、相棒ですからと返すだけだった。


「何……下僕の為に一肌脱いでやろうと思ったまで、どうせアバタール、それか代替に耐える者が現れるまで暇なのじゃ、それとも何か用でもあるのか?」


「……いや、俺は特にはない、暁も抜けた事だしな……今の木の葉ならば問題はないだろう、鬼鮫、お前は平気なのか?」


「暁のリーダーが代わってしまえば、私の目的には適さないでしょう……何より、今は貴方方と共に行動していた方が面白いですからねぇ」


道すがら、一行に襲い来るモンスター達を葬り去りながら、三人は、奥に進む。


三人の障害となるモンスターは、存在せず、全て一刀の基に切り伏せられていた。

「闇の中を抜け、先に進むと出口が……出口を潜ると、其処は――」


イタチの述懐が終わると共に、眩い光が三人の目を照らす。

元より人外のリース、エセリアル虚空間での出来事を経て、もはや超人となったイタチと鬼鮫。

刹那に光に慣れる目。


「ロストランド……失われた地、という意味じゃよ、そして、あそこに見える塔は、蜘蛛共の監視所、その足元に広がる洞窟に……竜の奴が求めて止まない「星の間」に続くダンジョン「テラサンキープ」……今も蜘蛛と蛇の戦争が行われている戦場じゃ……強敵じゃぞ、我等が見つける以前より……何せ有史以来争っているわけじゃからな。どいつもこいつも、下級兵士に到るまでが歴戦の兵じゃ、主らでも油断すれば、……喰われるぞ」


NARUTOの世界での戦争と言えば、かつての忍界大戦があげられる、戦争は残酷で非道で、ありとあらゆることが許される最低の所だ。全ての国が疲弊し、あらゆる国が滅び、国に里が一対となるシステムが考案されるまで、数多の血が流れた。


同時に、戦争は技術の発展場でもある、強き者達が、さらに強い力を手に入れるため、相手を降すため、ありとあらゆる手を使う。


うちはマダラの永続万華鏡写輪眼、といった悲しい結果も存在している。


成長が無かったシステムの枠組みの中で、行われていた蜘蛛と蛇の戦争、制限が取り払われた今、双方とも殲滅を目的とした無限戦争に入っている。


「とんでもない世界が、こんな所に存在した訳ですねぇ……ところで、先ほどからこちらを見ている視線は、いったいなんですかね?」




鬼鮫の視線の先にあるは、空には焔を纏った鳥、雷を下ろす馬、地には毒を宿す蛇。




三人の頭の中に同時に流れる、静かだが、威圧を放つ声。



――立ち去れ、未だこの地に立ち入るは時期尚早、命が惜しくば即刻立ち去るがいい――



恐ろしく静かだが、有無を言わせない迫力を秘めた言葉。
「ふん、世界の後押しを受けた聖なる獣、聖獣といった所か……フェニックス、麒麟、シルバーサーペント、揃いも揃って雁首並べおって、恥を知れ!」

盛大に啖呵をきるリース、瞳には並々と怒りが満ちていた。


「リースさん、あまり刺激をしない方がよろしいのでは?」


鬼鮫の声は普段と代わりが無いが、威圧は受けている色を出している。



「ふん、こやつら等に関わっていられるか……む?……変身が解けぬ」
リースは体のあちこちを触る。



――立ち去れ、世界は行く末を決めかねている、帰趨が決するまで、主と云えど立ち入る事は罷り通らぬ――


肩を怒りで震わせるリース。

イタチはため息一つ。
「鬼鮫、諦めろ……我等が姫は、お怒りだ」
イタチの万華鏡が巡る。


鬼鮫もイタチ同様ため息一つ。
「……全く、天に向かって唾を吐く行為に私には写るのですがね」
鬼鮫も鮫肌を展開させる。



「――――たわけもの共がぁああああああああああああああ!!!!!!!!」


リースはイタチの背中から刀を抜き払い、聖獣達に向かっていく。






――愚かな、如何な主、強豪とはいえ、この世界、この場、この時は、我等には敵わぬ。……世界を知れ――



最速の炎鳥、雷神の騎馬、白銀の神蛇、それぞれが姿を同時に消した。






[4366] デイダラ
Name: ヘヴィープレイヤー◆f9e79432 ID:045cdd0e
Date: 2008/11/30 06:30


起爆粘土を使った忍術の使い手、デイダラ、今はSulphurous Ashという黄色い火薬をも練りこんだ新たな爆薬も使った忍術を得意とする。


すなわち、弱点であった雷遁への対策。


デイダラは、新たな境地にたどり着いては、いた。


「……やってられねえ…うん。ミナクス、か、美しくねえ、不滅の何が偉大なんだ、華々しく散ってこその芸術だろうが…うん。サソリの旦那……あんたはある意味幸せだったかもしれねえな、こんな糞みたいな任務は御免だぜ…うん」


だが、芸術家肌のデイダラにとって、今の境遇は決して満足できる状態ではなかった。ペインや小南と離れ、デイダラは一人で先に進んでいた。全てが疎ましく、全てがうっとおしかった。


何に対しても興味がわかない、あれほど憎んでいたはずの大蛇丸すらも無視してしまっていたデイダラ、今更止めを刺してこいと言われても、しかも暁現在の全兵力で行くということは、デイダラの価値観からすれば、真っ向から否定してしかるべきことだった。


「どうしたんですか?デイダラ先輩、元気が無いですね。いつもの芸術論はどうしたんですか?」


ゆえに、デイダラには単刀直入に言えば、やる気が全く感じられなかった。
突如現れたトビにも全く警戒を抱いていなかった、トビならばどんな状態でも何とでもなる、デイダラにはその自負があった。


「……なんだ、トビ、か。お前ペインが珍しく怒っていたぞ、あの魔女から逃げたのは正しい判断だけどな。…うん?お前その指輪」

トビの指に嵌められているは、「空」と刻印が入った指輪。トビは動けない大蛇丸からこっそりと指輪を盗み出していた。


「ええ、大蛇丸が所有していた指輪です、これで暁のメンバーとして認めて貰えますかね?デイダラ先輩、一体どうしたんですか、らしくないですよ、他人の心配なんかして」


指輪を見たデイダラは、幻術の世界に飛び立った。


「……一体どうしたんですか、デイダラ、先輩……暁の一員ともあろうものが、こんな簡単な幻術で、命を落とすとは」


だが、答えるべきデイダラはすでに事切れている。

トビ、――うちはマダラはゆっくりと心臓に突き刺した、くないを抜き去り、デイダラの「青」と刻印が入った指輪を抜き去る。


「敵に、隙を見せるから、こうなる。……今までご苦労だったなデイダラ。魔女は必ず滅する、お前の犠牲は無駄にはしない」


マダラの眼は何も映さない、喜怒哀楽、ありとあらゆる感情を消していた。


マダラは、ある意味最難関であったデイダラを討ち取った、忍者は忍者らしく。騙し討ちという手を使って。











突然動きを止めたペイン、辺りは様々な罠の痕が残り、派手に抉れていた。


「どうしたの?ペイン」


傍らに付き添うは、紙の使い手、小南。


「……デイダラのチャクラ反応が、消えた」

「見てきましょうか?」

一体のペインは首を振る。

「すでに、無駄だ……音を落す事を優先する。全てはミナクス様の為に」

小南は眼を瞑る。

「……そうね、行くわよ直人、ついてきなさい」

後ろに続くは寡黙な剣士、小南の言葉に黙って頷き、一行は音の本拠地に近づいていく。罠の設置地帯を抜けたペインは散らばり、本拠地の炙り出しに入った。













薄暗い部屋の中、カブトは綱手を迎える。
大蛇丸は、かつて自分が考案し、研究し、創り出した治療器具に自らが入っていた。

感嘆のため息を吐く綱手。
「大した物だ……専門外だが、私にもわかる、外道だが、大蛇丸は優れた研究者だな」

大蛇丸の目が薄く見開いた。
「……あら……綱手……じゃない。お久しぶり……カブト、無駄よ……この毒は……この世界の人間には、治せないわ」

大蛇丸の言葉に頷く綱手。

「大蛇丸の言うとおりだ、私にも無理だ、そもそも組成方法すら検討がつかない、手が出せない、諦めろ大蛇丸。お前は死ぬ……最後くらい元同じ小隊の私が看取ってやる……もう眠れ」

大蛇丸は薄く笑う。
「……くくくくくくくく……私も……無様ね……自分で作った毒に……やられるなんて」

大蛇丸は、再び意識を失った。カブトは頭を抱える、綱手を案内した白と再不斬は何も言わず、静かに成り行きを見守っていた。
「外が、騒がしいようだが?」

カブトが綱手の問いに項垂れながら答える。

「今、暁が此処に攻め込んで来ています。うちはマダラが相手をしていますが……ペインがいる以上、此処まで来るのも時間の問題でしょう」

カブトの言葉に反応する白。
「ペインなら、僕が殺したはずですが?」

頭を振るカブト。
「……元仲間からの情報だよ、輪廻眼の秘密をとかない限り、ペインは殺しきることは出来ないらしい」

ぽんっと再不斬は何か言いたげそうな白の頭を撫で、言葉を遮った。

「白、殺しきらないというなら、殺し尽くせばいいだけの話だ、行くぞ」

「はい!」
素直に頷き、白は再不斬の後ろについていく。






白達と入れ違いに、扉を蹴破り入ってくる二人のコンビ、手には六歳児程度の子供をつれてきていた。
「おい、カブト、ご要望の餓鬼を連れてきたぜ。しかし三忍ってのは馬鹿なのか?敵を目の前にいきなり変身なんか隙だらけの行動を始めやがって、俺達の標的がお前みたいな親父な訳ねえだろうがなぁ、戦えば強いかもしれねえが、頭にまで血が回ってない奴を相手にするのは楽チンだぜ」

豪快に笑う飛段。


「飛段、お前はいつも喋り過ぎだ……三忍の綱手だな、大蛇丸の止めを刺しに来たのか?殺るなら殺れ、我等は別に止めはしない」

角都は室内にいた女を認めた。

「二人ともよくやった!くれぐれもカイに傷はつけていないよね」
綱手は何か言いかけていたが、カブトが全力でそれを遮った。


「一体何なんだお前ら、本当に仲間なのか、それぞれ勝手に行動していてばらばらじゃないか……第一なんだその子供は、自来也がお守りをしていただと?チャクラを全く感じないぞ」

綱手は竜の体をまさぐり、傷が無いか調べているカブトに尋ねた。


「……大蛇丸様を治す為の鍵となる子供です。この世界の技術で治せなければ、違う世界の技術を使えばいいはずですよね」

カブトは、竜の頭に手を置き、記憶をまさぐり出した。

「見せてもらうよ、カイ君……かつて大蛇丸様も、認めたチャクラを使わない特異技術……どうか、そこにヒントのかけらでもあってくれ……」

カブトは心底祈り、竜の心を記憶を暴き出す。




















蛙を二匹肩に乗せた自来也はナルトと共に森の中を急いでいた。

「いいか、ナルト、これが仙人モードだ。この状態になれば……」

自来也の高説をナルトが怒りに満ちた声で遮る。
「このすっとこどっこい!黙って走れエロ仙人!竜をあっさり攫われるなんて知られたら、俺が琴音姉ちゃんに殺されるってばよ!竜は貧弱なんだってばよ!今頃泣いているに決まってるってばよ!」


落ち込む自来也。
「いやのぉ、てっきりナルトを狙ってきたものとばっかり……暁の目的は尾獣も含まれていたはずなんだがのぉ」


「言い訳はいいってばよ!こっちで間違いないってば?」

「自来也ちゃん、今回はこの仔の言うとおりじゃよ、油断した自来也ちゃんが悪い」
肩に乗っている蛙達もナルトに追随する。


ナルトと自来也は同時に感知した、二人に近づいてくる一つの気配、しずねだ。

「……自来也様!?丁度いい、綱手様が大蛇丸の手の者に!」

三人はまた一つの気配を感知する、禍々しき気配。
しずねの続きの言葉は遮断された。

しずねとは、別方向から禍々しき気配の主が現れる。



「これはこれは思わぬ所で思わぬ人に出会う……自来也先生、お久しぶりです」



ペイン六道、その一体。



「……自来也ちゃん、輪廻眼じゃ……知り合いなのかの?」
「相変わらず碌な知り合いがおらんのぉーこんな危険な相手、何処でひっかけたんじゃ!」

自来也の肩にとまっている、蛙のフカサクとシマは言いたいことを言う。


「伝説の輪廻仙人と同様の輪廻眼……わしの生涯で知っている持ち主と言えば、長門しかおらんでの、だが、顔が違う」



「貴方方は今回のターゲットでは無い、おとなしく引いてくれるなら、我等は何もしませんよ、先生」


首を傾げる自来也
「ふむ……やはり長門なのか?……わしらは、この先に進みたいのだが、お主は引けぬのか?」


「……無理ですね、今回の目的は裏切り者の抹殺、邪魔をするなら、先生と言えど、始末しなければいけません」


空気が凍りつく、しずねは動けなかった。


「ぐだぐだしている時間はねえってばよ……エロ仙人、そいつは、敵なんだな?」


影分身をすでに済ませ、螺旋丸を完成させる準備が整ったナルト。


「ナルト、迂闊に……」

「いや、いくんじゃ!策があるなら力で壊せばよい!」
「自来也ちゃん、こういう時はいけいけじゃ!訳がわからぬ相手はさっさと始末するに限る!」

自来也の顔にこっそりと指で文字を書いている二匹。
ナルトと眼が逢う自来也。


「……なるほど、わかりましたぞい、ナルト、わしに合わせるんじゃ!」


「仙法・五右衛門!」

多量の高熱の油がペインに襲い掛かる。


「届かなければ、どうと言う事は無い」
ペインが発生させた斥力が油をはじく、余りの高熱に湯気が発生し、辺りを埋め尽くし一時的に視界を奪う。


ペインは次の攻撃に備えるが、いつまでたってもこない。


湯気が晴れたとき、其処に残る者は誰もいなかった。




「……単純な手を……」
近くの壁を殴りつけるペインの一体。

ペインの一体は、すぐさま瞬身の術でその場を離れた。








自来也はしずねを抱え、ナルトはそれについて行っていた。


「へへへ、得体の知れない相手は能力がわかるまで手を出すな、じっちゃんが言っていたってばよ、それより、エロ仙人の肩に乗っている蛙、竜のにおいはこっちで間違いないってば?」

「失礼な子供じゃなぁー、安心せい、方向は間違っておらぬし、チャクラを感知できん分、生死ははっきりとわからぬが、今の所は無事みたいじゃぞ」


「……綱手様が向かわれた方向も同じです……近いのですね、大蛇丸の本拠地が」

「輪廻眼などという伝説まで出てきた、……時代の移り変わりの時期じゃな」


三人と二匹は、一路本拠地へ。










*前段は、幻術かかっている相手をなんで殺さないのかなって所から来た話です*



[4366] 三忍、大蛇丸。
Name: ヘヴィープレイヤー◆f9e79432 ID:045cdd0e
Date: 2008/11/30 08:35

ロストランドを守護する、聖獣達の攻撃は苛烈を極めた。



まずは不死鳥フェニックス、イタチが相対し攻撃を避けてはいるのだが、イタチですら時々見えなくなるほどの攻撃速度。



「ちっ駄目だ、捕らえ切れん」

スサノオを展開し、攻撃を防ぐイタチ、乱発こそ出来ないが、イタチもまた、チャクラコントロールの更なる向上、それと練習により、万華鏡写輪眼の消費量を少なくしていた。






麒麟と相対するは、リース。

真の姿を封じられ、慣れない刀で戦うリース、それでも行動の一つ一つに魔法を込め、大幅に能力をアップしている麒麟の攻撃を辛くも逃れる。



「たわけ者がぁああああああ!……むっ!」
リースの視界の端に鬼鮫達が映りこむ。




最後に、銀蛇と相対するのが、鬼鮫。


リースは失態に一つ気がついた。



「しまったっ!避けろ鬼鮫!」



大質量の水遁を展開、捕らえきれないのなら面で、の精神で攻撃を繰り返していた鬼鮫に銀蛇が襲い掛かる、銀蛇の牙には毒が含まれる、それは――


ガスッ!


術を突き破ってきた銀蛇の攻撃を受け止めてしまった鬼鮫。

「なんと重い……しかしこの程度ならリースさんの方が厄介……何を!?」


ざくっ!


銀蛇の攻撃を受け止めた、鬼鮫の右腕を切り落とすリース。



文句を言おうとした鬼鮫だが、口を開く前にそのままリースに抱えられ、リースと共にイタチのスサノオの術圏内に入り込む。

「In Vas Mani」

リースの呟きと共に修復される鬼鮫の右腕。



リースは黙って切り落とした鬼鮫の右腕を指した。


「……溶けている?」

其処にはあるべき腕は無く、服の切れ端のみが残っていた。


「毒には、その威力によりランク分けがある、先ほど食らったのがレベル4じゃ、そしてロッティングコープスという主が持っている毒は、レベル5、喰らったら魔法では治癒が間に合わぬ、竜のみが持つHealingの技術が必要じゃ。とは言え……あそこまで強力なわけは無かったはずなのじゃが……世界め、いらんことばかりしくさる!」



――立ち去れ――


麒麟の角が光りだす、フェニックスが口に焔を溜めだす。シルバーサーペントは動きを伺っている。


「ふんっ、撤退じゃ、悪かったな、イタチ、鬼鮫、今回は我の完璧なるわがままじゃ……許せ」


黙ってイタチの肩の上に跨るリース。

意を汲んだのか、引き上げていく聖獣達。












昔、そう俺がまだこの世界に来たばっかりのころの話。



「かい、もっと自分を出していいぞ」


忍びになると言って、孤児院を出て行った黒須先輩が最後に言った言葉。

少し落ち着いていたころに三代目に調べてもらったら、黒須先輩は、Bランク任務に従事中、命を落していたことが記録に残っていた。


俺をよく見てくれていた人が、琴音達以外にもいたんだなって、でも、無くしちゃったんだなって、少し胸が痛くなった。



知っている人が死ぬのは、いつまでたっても慣れない。



親が死んだときに比べれば、さすがに程度は低いが、俺の心は――――



「かい、起きるんだ……かい、起きろ!」


……誰だ、俺を起こすのは。


眼を開けると、やはりどこかで見たような眼鏡を掛けた青年が、其処に立っていた。


「お前はカブト!」


げっ、……俺また捕まったの?


自来也が仙人モード!とか口走った後の記憶が無い。


「うん?カイはこの顔と名前を何で知っているんだ?君には……」


顔に手をやるカブト、其処に表れたるは……


「黒須……先輩……死んだんじゃなかったの、ですか?」


「君は本当に昔から変わってないね……」
どこか遠い目で俺を見る、黒須先輩。


「おい、カブト、どうやら新手が来たみたいだぜ、俺達は行くぞ」

飛段の声。

「……ええ、もう少しだけお願いします、どうやら希望が見えてきました」

「新たな技術とは一体どんなものなんだ?」

女、少し顔を上げると……綱手????どんな状況なんだここ。
さらに奥を見ると、試験管状の筒の中の液体に満たされた状態で浮いている、大蛇丸……おえっ、男の裸なんてみるもんじゃねえな。

音も立てず、飛段と、角都は部屋から出て行った。

再度黒須先輩に目を戻すと、先輩は俺に向かい土下座をしていた。


「何度君を騙したろう、何度君を苦しめただろう……今は孤児院の先輩としてのお願いだ、かい、大蛇丸様を……治してくれないだろうか。君の技術でなら、治せるはずだ」

――大蛇丸一派にばれた、だが木の葉崩しが無いこの世界でなんで大蛇丸が瀕死になっているんだよ。


「ロッティングコープスの持つ毒をそのまま喰らってしまった状態だ」


レベル、5、か。え、なんで生きてんの?

助けになりそうなのは……


「……綱手、……違うな黒須先輩、あんたには聞きたいことがいっぱいある」


「……大蛇丸様には時間が無い……頼む、かい、力を、貸してくれ」
再度頭を地面にこすり付ける黒須先輩。


懐かしき思い出が頭をよぎる。字を教えてくれた、いろいろと面倒を見てくれた……だが、それとこれとは、話は別だ。

何故、強制しない、あんたがカブトならばその程度当たり前にやるだろうが、何故だ、何故土下座なんかしている!


綱手は何も答えない。

元の世界では、殺人は禁忌だ。行えば容赦なく法の裁きが待っている。

この世界では、殺人は禁忌ではない、何せ一部戦争中でもある、人を殺すこと、それ自体は、いいか悪いか、命は安い。

……大蛇丸が相手とはいえ、法則で縛られた等の事を言って、ずっと、ずっと考えてきていなかったことなんだが……







俺は――――










人を殺せるのか?






筒の中の液体が抜け、大蛇丸が、筒の外に出てきた、否、出された。


俺が処置をしなければ、毒で、レベル5の毒で、間違いなく、大蛇丸は死ぬ。







俺の力でしか、大蛇丸は救えない……俺は、俺は……俺は…………



[4366] 音の里、その2
Name: ヘヴィープレイヤー◆f9e79432 ID:98adea8e
Date: 2008/11/30 11:05

音の里、直近、里の住民はほとんどが大蛇丸が見つけ、鍛えてきた猛者ばかりだ。

主役クラスの右近左近、多由也、鬼童丸、次郎丸はすでに命を落とし、すでにこの世にない。

残りの忍びを率いるのは、君麻呂、決して万全では無い体調。時折吐く血は確実に体力を奪い、確実に死に近づいていた。

「増幅口寄せの術!」

「十指穿弾!鉄線花の舞・花!」

呼び出される口寄せ生物を確実に葬り去れるのだが、術者を守るは二体、遠距離の術を吸収してしまう個体に、近距離はバールの様なものを扱い、突き刺すことにより術を不全にしてしまう個体の二体が畜生道を保護しており、いかな君麻呂とは言えど、攻め切ることは出来ない。


「重吾!」

君麻呂の叫びに応じ、呪印を操作、術の影響を受けない形で近接系と渡り合う重吾。

「おらおらおらおらおらおらおら!こいつらは殺していいんだよなぁ君麻呂!」

殺戮衝動に入った重吾は止められない、止められる唯一人の君麻呂は今回一切止める気が無い。


「……舞え、早蕨の舞!」
土中から現れる骨の群れ。近接系の邪魔を気にしなくなった君麻呂は、術吸収の個体と畜生道を一息に仕留めに入る。

だが、完全なコンビネーションの元にあるペイン達三体は傷付く事無く、攻撃を避ける。

「真・魔境氷晶」

避けて宙に浮いた所を氷の鏡で囲い込み、神速で攻撃しつくす白。

「……遅いぜ」

やはり回避行動を取れないタイミングで、術吸収の個体を一刀両断にする再不斬。



「君麻呂、ご苦労様です……体のほうは平気ですか?」

君麻呂は、白が畏敬の念を持つ数少ない対象の一人。

再度血を吐く君麻呂。

「重吾といったか?そこの馬鹿餓鬼、そいつの相手は俺がやる、死に掛けの餓鬼を運んでやれ」

再不斬の圧力に素直に従う重吾。


二人が遠ざかり、残るは近接系のペイン。






白はゆっくりと口を開いた。
「……さて、少し話をしましょうか。ここには邪魔は入りません……顔は違えど、同じペイン。僕の事を覚えていますか?……貴方達を一度滅ぼした男です」


「ああ、覚えているとも……お前たちは、間違う事なき、強者、だ」


「交渉をしましょう……ミナクスについて、知っていること全てを話しなさい」

「断れば、再び死、か」
ペインの背後に忍び寄っていた再不斬、巨大な首切り包丁をまるで枝切れのように扱っている。

「貴方の行動、攻撃の際の癖、六体分、全ては先の戦いで見破らせて頂いています……もう、貴方では六人集まっていようが、僕達には絶対に勝てません」


白の冷徹な目は全てを見通す。








小南が先頭を行っていたペインに並ぶ、集結したペインは、三体。

音の本拠地への道は、確保された。

残ったペインの数を見て小南は呟く。
「……思ったよりも、強いのね、特に、ミナクス様まで傷つけた実力を持つ、一人だけ別格ね……桃地再不斬、そのパートナー、頭がいい子、そして冷酷な子、白……まぁいいわ。ペインは、代わりがいるもの。問題は」

「畜生道を潰され、補給が効かない、我等の力では任務達成が困難だと言う事だな……ちょうどいい所に、新鮮な死体、しかも特質した力を持ち、ほぼ外傷が無い死体が、手に入った……小南、誰を呼ぶのが相応しいと思う?」






「どうせなら、今代、最強の忍びを呼ぶのがいいんじゃない?」
何処からともなく現れたゼツ。







「タトエバ……コノハノ、キイロイ、センコウ、ナンテ、ドウダ?」







「……それもまた、痛み、か……小南、ゼツ。準備を始める、しばらくの間、誰も近づけるな」



「……大蛇丸、自身が開発した禁術により、命を枯らせるがいい……口寄せ・穢土転生・改」
三体のペインが同時に印を組み、不慣れな術の補強をする。







近代最高の忍びが最悪な形で牙を剥く。





デイダラの死体を使い、呼び出されるは……

四代目・火影・波風ミナト推参。


第三次忍界大戦において、最も恐れられた忍びが、今再び今生に蘇る。



[4366] 黄色い閃光
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/12/02 15:46



其所は木の葉の三代目火影、執務室。


今も忙しく、猿飛ヒルゼンは、音崩しの準備を整え切るため、里の重鎮を集め会議を開いていた。


「綱手姫が間に合わぬ場合、どうするつもりだ?」

木の葉の里のご意見番、うたたねコハルが三代目に問う。


「知れたこと、間に合わぬ場合でも強行する・・・・・・今の木の葉の里の力ならば、負けぬよ。期限は・・・・・・一週間、音崩しの発動までは猶予は無い、ダンゾウ、もちろんそちらも整っておろうな?」


暗部養成機関「根」のリーダーであるダンゾウはその答えに深く頷く。


「それでこそ、木の葉といえよう・・・・・・猿飛よ、わしを失望させるなよ」

「ダンゾウ、わしに今更説教でもするつもりか?」

「そうはいっておらん、かつての弟子を本当に殺せるか、ふとそう思ったまで・・・・・・お主は根が優しいからな」

「まさか・・・・・・わしは里の為ならば幾らでも鬼になろう、それはお主も知っているはずだが?」

ダンゾウは何も答えない。

里に対する不穏分子、三代目は危険度が高い・・・・・・数多の犠牲が生まれる可能性が有る場合、「根」に命じて、闇から闇へと葬り去っていた。

世界の根幹を成す、忍び五大国、揺るぐことは許されない。
三代目が命じた暗殺対象、それには幼い子供も含まれていたこともある。


亡国の嫡子を担ぎ出し、再び戦乱を世に放とうとしようとしたもの、無謀な挑戦を火の国に仕掛け、いたずらに人死にを出す可能性を高める愚かな指導者、それら事如くを三代目は闇から闇に葬り去った。

10を救うために1を犠牲にする。100を救うために10を犠牲にする。


人は万能ではない、ゆえに、民のことを思う、正しき施政者の姿が其所にはあった。

「わしは、決して里の皆が言うような、有能な施政者ではない・・・・・・真に有能ならば、真に力があるのならば、もっと別の誰も犠牲にならない手が採れたはずじゃからな。ただ、わしに出来る事は、ただ木の葉の里を、引いてはこの世界を守ることのみ」


「猿飛、主一人だけの決定ではない事を忘れるな。ここにいる我ら全員で決めたこと・・・・・・主一人で責任を感じる必要はない」

うたたねコハルと同様、木の葉の里のご意見番である、水戸門ホムラが三代目に語る。

三代目は、軽く首を回し、本題に入ろうとする。



其所に入ってくる、伝令の暗部。



「里内に侵入者!突然現れ、今は火影様の顔岩の前に!」

「・・・・・・被害は?」

「死傷者は出ておりません、ですが捉えることは不可能!まるで・・・・・・まるで四代目・・・・・・」

暗部には事実をありのまま、脚色を加える事や自身の印象を混ぜる話し方は許されていない。それらを許してしまうと、正確な事実が伝わらないからだ。


だが、その鉄壁の精神を持つ暗部ですら、思わず自分の感想を混ぜてしまっていた。









ペインの傍に近づく小南、ゼツ、遠巻きに見ている直人。
「・・・・・・うまく、いったみたいね、ペイン」

ペインの三体の内、二体がその場に倒れる。

「・・・・・・さて、修羅も消えた、残るは天道のみ・・・・・・立ち止まる事は許されない、閃光が来るまで、先に進むぞ」

軽く頷き、四人は、音の本拠地へと歩いていく。









侵入者の報を受け、里内にいた、カカシ班、ガイ班、アスマ班、紅班が顔岩の前に集合する。すでに暗部により、チャクラを使えなくする結界に覆われているはずなのだが、中に囚われている人物は、結界に対し一切の痛痒を見せていない。



「・・・・・・貴方は・・・・・・まさか・・・・・・死んだはずだ!」

カカシがいつもの冷静さをかなぐり捨てて、結界に囚われている人物に向かい大声を上げる。


同様に、上忍連中は声を発せられない。訳がわからないのは、下忍達である、ネジやサスケも担当上忍のあっけにとられた顔に注意が行き、迂闊に動けないでいた。


動きを縛るはずの結界の中、火影の顔岩をただ眺めていた侵入者は、ゆっくりと振り返った。


金髪、碧眼、ナルトと同様の色、顔には穏やかな微笑みを浮かべ、顔岩を眺めていた時と同様、上忍、ついで下忍達の顔を、じっくりと一人ずつ眺める。


「猿飛先生が、火影を為されているんだね、てっきりカカシ君が今は五代目に就任していたと思っていたよ・・・・・・僕が死んでから何年経ったのかな?」

カカシに顔を向け、穏やかな声で、カカシの記憶にある声のままで侵入者は尋ねる。


「あんたが死んでから、ざっと13年ってところか・・・・・・今更何しに迷い出たんだ?」

アスマが答える、声には隠しようもない動揺が含まれていた。

にっこりと微笑む金髪の壮年。年の頃は30程度だろう、その顔は、火影の顔岩の内の一つに酷似していた。


「そっか・・・・・・ナルトは、元気かい?自来也先生や綱手さん、大蛇丸さんはまだ生きているのかな?・・・・・・大蛇丸さんを殺せなんて言われたんだけど、僕の装備、今は何処にあるのかな、捨てちゃっていなければ、場所を教えて欲しいんだけど」


暗部の結界は最大出力で作動している。並の忍者ならば地に這い蹲らなければいけない密度だ。


「・・・・・・ガイ先生、あの人は一体だれですか?普通じゃありませんよ、何であのチャクラ結界の中で平然としていられるんですか!?」

テンテンが叫ぶ。顔には驚愕の表情がありありと浮かんでいた。

上忍達は、自身の生徒達を連れてきてしまったことを、心の底から後悔していた、サスケに対するカカシの感想も他の上忍と全く変わらない。


「・・・・・・教えてくれなければ、君達を傷つけなければ、いけなくなる・・・・・・この結界を解いてくれるなら勝手に持って帰るけど、どちらがいいかな?」


チャクラ封印術式は、有効に働いていた、侵入者は、今、チャクラを使えない。



「・・・・・・ネジ、お前が先頭となり、全員を連れて帰りなさい」

「・・・・・・分かりました」

突如現れた圧力に対し、動きを封じられた下忍達、ネジは頷き、下忍達を運び出した、残るは、サスケとネジ、そして上忍達。

サスケはネジの説得に耳を貸さずに、その場に残ってしまった。目には三巴の写輪眼が巡る。


「やっぱり残っちゃったか・・・・・・一つ言っておく、自分の身は自分で守れ・・・・・・今回は、守りきれる自信が全く沸いてこない」

カカシは現時点で、木の葉最強レベルに近づいている。数多の実戦を経験した今、主と一人で相対できる程のレベルは中々存在していない。


カカシは普段写輪眼に頼らない戦法を磨いてきた。モンスター相手ではほぼ意味が無いのと、自身の師匠に習い、速度をあげる特訓を限りなく積んだ結果、ほぼ無敵の体術と戦術が生み出される事になる。


カカシはその禁を破り、写輪眼をさらけ出す。


「・・・・・・13年、彼らは同年代かな?其所の君達、僕は君達も出来ることなら傷つけたく無い・・・・・・引いてはくれないだろうか?」


あくまで穏やかな声、慈愛に包まれてさえいた、圧力は止まらない。
カカシの背筋に冷や汗が垂れる。


「言う通り下がるんじゃ・・・・・・カカシ、ガイ以外全て下がれ、音崩しの戦力を削る訳にはいかん・・・・・・久しぶりじゃのぉ、波風ミナト。元四代目火影よ」


侵入者は再び笑顔を浮かべる。


「猿飛先生!良かった、まだ生きていたんですね。お代わり無いようで嬉しいです」


放たれる圧力は一切変わらず、されど、穏やかな声。


「・・・・・・何処の外道の手によるものじゃ、口寄せ・穢土転生の亜種と言った所か・・・・・・もはやお主は狂気を振り回す存在でしか無い・・・・・・わしが、止めて見せよう・・・・・・合わせろ!カカシ、ガイ!」


「了解!」


二人が、動きを早める。



だが――――

「・・・・・・駄目だよ。猿飛先生、カカシ君やガイ君が協力しても・・・・・・僕には勝てない。せめて全盛期なら話は別だけど・・・・・・ほら」



カカシの写輪眼ですら、動きを捉えることが出来ず。

木の葉一の体術使いである、ガイも動きについて行けることが出来ず。

木の葉で最も経験豊かな三代目火影、猿飛ヒルゼンですら、実力を出す前に、終わってしまった。






ドサッ





首を無くした三代目火影の体が地に伏せる。


声にならない声が上忍二人の喉から発せられる。


「ご免ね・・・・・・本当は、誰も傷つけたくないんだけど・・・・・・ん、カカシ君、まだ僕のプレゼント持っていたんだ・・・・・・捨てた方がいいよ、君まで手には掛けたく無いから」


四代目火影、波風ミナトが使った術は、「瞬身の術」ただ一つ。



しかし、最速にまで高められたそれは、誰の目にも止まらない。

チャクラ結界が解け、ミナトは自身の代名詞である「黄色い閃光」のきっかけとなった術を使役する。


「飛雷神の術」

自分が残した特別製忍具に仕掛けられた、仕掛けに反応し、自身を其所に現在させる。口寄せに似た術式。



たちまち、ミナトは研究所に現れ、保存されていた忍具を一通り回収し、再び元に戻る――音の里の決戦に間に合うように、ミナトは飛んだ。



木の葉の里は、悲しみに包まれ、次の手が遅れてしまった。















「・・・・・・防いで見なさいアバタール。まだまだ序の口よ」

影で暗く笑う魔女。

世界を、悪夢が襲う。



[4366] 選択
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/12/02 22:55

うららかな日差しが差し込む、夕食での家族団らん。

「どうして人を殺しちゃいけないの?」

むか~しむかし、俺が糞餓鬼だったころに、親に質問して困られた言葉だ。


止まることが無かったテレビの中では、ニュースキャスターが何処ぞの国での戦争の様子を伝えていた。


「いい、竜、人はね、一人では生きていけないの、悲しいことに、貴方のような子供が人を殺す国も、あるのよ、今、貴方が食べている一切れのパン、一啜りのスープ、それを得るためだけに、人が人を殺す・・・・・・それはとっても悲しいことなのよ」


俺の母親は、何処かずれてはいたが、普通の親のように誤魔化すってことをしなかった。自分で一生懸命考えた内容を俺に教えてくれる、そんな人だった。



それがいいか悪いか、それは別の話だ、ただ、俺は・・・・・・そんな母親、それを止めなかった父親、両方とも好きだった。






はぁ・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・



と息も絶え絶えに死にかけている大蛇丸。
毒が更に回り出し、手足の先が腐って落ちる。



綱手は何も言わない。カブトも頭を下げたまま、何も言わない。


「・・・・・・餓鬼、安心しろ、例えお前が今大蛇丸を見殺しにしても、私が其所の大蛇丸の付き人からお前を守る。全ては、お前の選択次第だ」

綱手のよく通る声、俺の身の安全は、保証された。綱手はこういう事で嘘を言う奴じゃない。


カブトは、やはり何も言わない。



ただ大蛇丸の苦しそうな吐息が、静寂の部屋の中・・・・・・遠くに聞こえる戦争の音を背景に、響き渡る。





「どうして、人を殺しちゃ・・・・・・いけないの?」


思わず呟く・・・・・・俺が何もしないってことは、人を殺すことと同義。――人殺し、決して消えない烙印、なんだよ・・・・・・甘い甘いなんて原作キャラを馬鹿にしていたが、一番甘いのは・・・・・・俺じゃねえか・・・・・・俺の判断を助けてくれる奴は、いない。お節介な直人も、俺を意気地無しと責める琴音も・・・・・・そのまっすぐな瞳で俺を見つめてくるナルトも、誰もいない。


大蛇丸を治した所で、俺への脅威が消える訳がない、こいつはあくまでそんな技術を持った俺を確保したがるだろう、大蛇丸とはそんな奴だ。

第一こいつが何人殺したと思っているんだ、スピリットスピークをかませば、さぞかし沢山の霊が見えることだろうぜ。こいつの所為で人生を狂わされた奴、こいつが生きているだけでこれから人生が狂わされる奴。


世界が変わっても、革変が起きても、何が起きても、人の性根ってのは簡単に変わるものじゃない。この大蛇丸には甘さ等、全く通用しない。


ましてや、俺には人間台風、ヴァッシュザスタンピートみたいな、降りかかる火の粉を何度でも振り払えるような実力は、ひとかけらも存在しない。


強者を弱者として救済出来るのは、更なる実力、揺るがない信念をもった、圧倒的強者だけだ、俺にはどちらも存在しない。


俺は悲しいほど、一般人だ。悲しいほど、悲しいくらい泣きたくなるくらい、力がない一般人だ。



無茶だって事は、俺が他の誰よりも分かっている、リースが聞いたら馬鹿者と言うだろうし、琴音だって呆れるだろう。直人は・・・・・・無条件で支持してくれそうだな。



でも・・・・・・でも・・・・・・でも・・・・・・











綱手は目を軽く瞑り、俺達に、否俺に向けて背を向けた。
「・・・・・・ありがとう・・・・・・ありがとう・・・・・・」


黒須先輩の顔をしたカブトが、涙をぽろぽろと大量に流している。


「どうせ、全快したら、すぐに俺を狙うんだろうな・・・・・・そういう奴だろ・・・・・・大蛇丸は」

毒は消えた。一般人なら、例えば俺なら、喰らったら最後3秒で死に至る毒、レベル5。


そんな毒でも、ほぼスキル値100.Grand Masterに近い俺に取っちゃ、そこらの毒と変わらない。

その場に泣き崩れるカブト。


「カブトさん!君麻呂が!」

血を地面に点々とさせながら入ってくる、美少年、とむさい男。

顔から察するに・・・・・・ああ、そういや・・・・・・こいつも不治の病だっけ。



「誰だお前は!」
近づく俺に怒鳴るおっさん、そうかい大事な奴なのかい・・・・・・。


「黙れ」

俺を子供と見たおっさんは、続けては何もしてこなかった、疑問に思い見上げるとその首筋にはカブトの医療チャクラメスが当てられていた。

「カブトさん?」
疑問符を浮かべるおっさん、俺もびっくりだ・・・・・・綱手は醒めた目で俺達を見ている。

「この子を傷つける事は、未来永劫許されない・・・・・・大蛇丸様といえど、僕の目の前では傷つけさせない」


・・・・・・10.9.8.7.6.5.・・・・・・成功!


急激に君麻呂と呼ばれた美少年の顔色が良くなる。当たり前だ、それが俺の技術Healingだ。どんな病気だろうが、どんな重傷だろうが・・・・・・俺には関係ない、最終的に心臓と脳さえ生きていれば、俺は全ての傷を治せる。


大蛇丸にとって、まさに理想的な人体実験の補助者とでもなれるだろうさ。そう、原作でカブトが担っていた行為以上の回復能力。



俺が行う医療行為は、此処までだ、後は自分たちで何とかしてくれ。

俺の技術は一回で全てを治せる訳じゃない、毒なら毒だけ、病なら病だけ、もう一度巻けば、全てが癒せる、だが、其所までしてやる義理は、無い。










「へぇ・・・・・・面白い技術だね、君の名前は何て言うのかな?」

突然現れた金髪の男、木の葉のマークが付いている服、だが、俺はこんな奴を知らない、綱手は・・・・・・目を見開いている。


「ん?ああ、そうか、人に名前を聞くときは、自分から名乗らなくちゃ失礼だったよね・・・・・・僕の名前は、知っているかな?」

「四代目!」
叫ぶ綱手。


全員が金髪の男から溢れ出す迫力に、一様に身を固くする。

「久しぶりだね、綱手さん、そう、僕の名前は波風ミナト、かつて木の葉の里で四代目火影をやっていたこともあるんだよ、で、其所の面白い技術を使う君、もう一度見せてくれないか?」



ザシュ



俺には見えない、どころか感じられない、気付けば・・・・・・

四代目と呼ばれた男のくないが綱手の胸に突き刺さっていた。



「さぁ、見せてくれ。早くしないと綱手さんが死んじゃうよ?」


全く反応出来なかった、三忍・綱手。胸から鮮血が溢れ、部屋を朱で塗りつぶす。



「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


血を見て暴れ出すおっさん、姿が変わる、・・・・・・こいつは、二部で始めて出てきた、重吾!



「五月蠅いな・・・・・・少し黙っててよ」



また、全く見えない、否、存在を感じられない、どうしても感知できない。


全ては終わった後に分かる。

重吾の体は崩れ落ちた。首が落ちてしまっては、俺の技術でも回復出来ない。


「ちょうどいい、二つも実験体が出来た、さぁ見せてよ」


声は穏やかで軽やかで、朱で塗りつぶされていく世界の中で一人だけ朱を身に纏わない金髪碧眼の男。





怖い、駄目だ、違い過ぎる。人間じゃない、強いなんて次元じゃない、こいつは人の皮を被った死神だ。

だが今綱手を殺させる訳にはいかない。


「In Vas Mani」


綱手に包帯を巻くと同時に、大蛇丸に回復魔法を掛ける。
意味が無いとは分かっている。こいつの前には三忍が揃っても瞬殺だ。



誰も勝てない、こいつには、どんな忍者もどんな存在も勝てない。最速こそが最強、かつて俺が思っていた真理だが、その真の体得者が此処にいる。





頼む、もう誰も来るな・・・・・・此処は地獄の入り口だ。




頼む、来るな、ナルト・・・・・・勝てるとしたらお前の九尾フルスロットルだけだ、未だに完成していないお前が来ても餌になるだけだ・・・・・・来るな、来るな!!!!



俺の魔法に更なる笑みを浮かべる金髪の死神。



足音を一切立てず、ゆっくりと足の裏に血をつけずに近づいてくる死神。





駄目だ、――――こんなバットエンド・・・・・・予想もしていなかった。



[4366] 音、壊滅。
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/12/03 11:39


氷の槍で全身を貫かれ崩れ落ちるペイン。
「・・・・・・結局何も喋りませんでしたね、拷問は効果が薄い・・・・・・やはり本体を叩かない限り、ペインは死なないようですね・・・・・・再不斬さん、一度戻りましょう」

「・・・・・・白、俺は先に戻る、どうやらとんでも無い相手の存在を検知した」


にやぁと笑う再不斬。

「・・・・・・わかりました、すぐ向かいますので、無茶はしないで下さいね」

白の答えを待たず、神速で姿を消した再不斬。


「今の再不斬さんを昂揚させるもの・・・・・・一体何なんでしょうか」

首を捻りながら、白は一路、本拠地に足を進めた。



「ペインを圧倒するとは・・・・・・大した奴らだ。そう思わないか?ゼツ」

白達がいなくなった場所の地面から現れた、マダラとゼツ。

「残りのペインは、僕が進言した通りに四代目火影を呼んだよ、コレデヨカッタノカ?マダラ」

マダラは軽く頷いた。
「ああ、ご苦労だったな、予想通り、我らに勘づいていた三代目は死んだ。――次は小南、それに角都だな・・・・・・ミナクスを欺く為だ。多少の犠牲は厭わないといけない」


「本当に良かったのかな・・・・・・コナンハマカセロ、アアコレモホシガッテイタヨナ、ホラ」

ゼツは「玄」と刻印された指輪をマダラに渡す。

「ご苦労、もうしばらくの我慢だ、暁は我らの手に・・・・・・必ず取り戻す」

「魔女は、またとんでも無いことを、タクランデイルヨウダゼ」

「何、そうそうやられてばかりでも有るまい、木の葉も砂も、他の里の忍者も易々とは魔女に屈しないはずだ」

「大蛇丸はどうするの?」

「黄色い閃光が相手では・・・・・・命運はつきたな。あれと渡り合えるとしたら、再不斬、それと今のイタチぐらいだろう・・・・・・さて、間に合うかな」











「見えた!自来也ちゃん、あそこの奥から臭いがするぞい!」

自来也の肩に張り付いている蛙が、一つの洞窟を指さす。後に続くしずね、ナルト。





「行くぞ」
ペインの一言で後に続く、小南、直人。




「あー面倒くさい」
ぼりぼりと頭を掻きながら本拠地から現れた、飛段、後に続くは角都。




それぞれが別方向から、ある一点に向かい、歩を進め、三方向から進んだ者達が、同時に一つに収束する。





「・・・・・・先生、また逢いましたね、それと飛段、角都、もう逃がさないわ」
「お前らは雪の平原にいた奴らに竜を攫った奴ら!」
「げっ、三忍にペインじゃねえか!」


小南、ナルト、飛段、それぞれが声を上げる。

わいわいとそれぞれが戦闘態勢を取る中、疾風がその横をすり抜け、本拠地の中に足を踏み入れた。










「ねえ、君は他にどんなことが出来るんだい?僕に見せてよ」

意識を失っている三忍の二人、カブトは大蛇丸の傍から動けず、俺は綱手の傍から離れられない。

金髪の死神は穏やかな声で、穏やかな態度で死を運ぶ。


攻撃は・・・・・・無駄だ、動きを捉えられない今何をしても当たる気がしない。

逃亡・・・・・・どうやってだ、速さで圧倒的に勝る相手に逃げられる道理が無い。


ちっ、駄目だ駄目だ駄目だ。最善の手どころか次善の手すら思いつかない。



ならば・・・・・・




「俺の名前を知りたがっていたな・・・・・・俺の名前は竜、ついでに能力も見せてやるよ・・・・・・An Ex Por」

掛かれ!

*魔法が成功しました*

よし!


「へぇ、相手を強制的に麻痺にさせるのか、そんなものを自由に操れるなら確かに使いようによっちゃ強力な手だね」


後ろから聞こえる、あくまで穏やかな声。


「忍者を、火影を嘗めちゃ駄目だよ、竜。基本忍術の一つ、影分身の術・・・・・・この程度を見破れないとすると、君は忍者じゃないんだね。面白い・・・・・・ならば僕の手駒になれ、残念ながら召還主には逆らえないんでね、大蛇丸さんは殺さないといけないけど」


「・・・・・・ふざけるな」


「ん、どうしたの?」


あくまでにこやかなその笑顔。


「ふざけるな!簡単に人を殺しやがって・・・・・・わかっているさ、俺が特大の甘ちゃんだってことはよ!だが、それでも簡単に人を殺していい理由にはならないだろうが!」

今まで幾つの死体を見たことだろう、どいつもこいつも簡単に死にやがる。


俺のいた世界とは違い、この世界では命が安すぎる。

俺がいま、何故か守ろうとしている大蛇丸だってそうだ、こいつも簡単に人を殺ししくさる。


「もう一つ、俺の自慢できるスキルを見せてやるよ!」


+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+

――しょうがないな、マスター・・・・・・これをやってしまうと、もう「決戦存在」は間に合わないけど・・・・・・マスターにとって、大事な事なんだね――

*霊界と繋がりました*
*エーテルの増幅を感知、効果範囲広がります*



「見ろよ、四代目、・・・・・・あんたを信頼して死んでいった霊達の姿だぜ」



俺が知るはずもない、大量の・・・・・・部屋全体に溢れ出す大量の霊。


「・・・・・・これは・・・・・・?」


第三次忍界大戦の時の忍び共か、呆れるほどの霊達だな、さすが四代目、よくもまぁこれだけ殺し尽くしたものだ。



「・・・・・・三代目・・・・・・殺したのかミナト!」

ただにこやかに笑いながら綱手を撫でる、三代目の霊、傍らには二人の霊が、・・・・・・ダンと縄樹だったっけ、今も綱手を見守っていたのか。

涙を落とす綱手、お前は幸せだよ、それだけの人に愛されているのだから。


「・・・・・・騒がしいわね、一体何よ」

俺の回復魔法により、朽ちた手足も元通り、意識も戻った大蛇丸。


大蛇丸につきまとう大量の霊、・・・・・・それと、寄り添う二人の霊、周りを四人の音忍が守っている。死してもなお付き従うか、大した忠誠心だよ・・・・・・音の四人衆。








「・・・・・・わかった、もう悩まない・・・・・・私に任せろ、三代目、火影は私が受け継ぐ」

原作ではあれだけ苦労して説得した事でも、死者を介せば話が早いものだ・・・・・・。










「何よ、今更私に木の葉に戻れとでも言う気なの?・・・・・・出来るわけ、ないじゃない・・・・・・」

大蛇丸が二人の霊に説教を受けている・・・・・・父と、母、か。









「救えなくって・・・・・・悪かったね、みんな・・・・・・カイに、生き残りの琴音、直人は僕が守る、それで、許してくれないかな?」

成仏した園長以外の霊が、黒須先輩の顔をしたカブトにまとわりついている。
あんたが黒須先輩ってのは、間違いなかったのか。てっきり顔だけ奪ったのかと思っていたんだがな。







「・・・・・・クシナ」

四代目に抱きつく、妙齢の美人。あれが・・・・・・ナルトの母親、うずまきクシナ、か。




「はっはははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」



狂笑をあげながら、入り込んできた・・・・・・あれは霧の再不斬????何故ここにいる!

再不斬の首切り包丁が、的確に四代目を捉える、が。


ドンッとクシナに突き飛ばされたミナトは攻撃を避けた、代わりに霧散するクシナの霊。


「・・・・・・クシナ」


殺気が・・・・・・始めて殺気が四代目、波風ミナトから沸き上がる。


立ってられねえ!嘘だろ!たかが気の持ちようで空気が圧力を持つなんて!



「・・・・・・綱手、逃げるわよ、次代火影を傷つけさせる訳にはいかないわ」
目を大きくした綱手を抱きかかえ、脱出をはかる大蛇丸。

「再不斬、全力を許すわ・・・・・・「獲物は獲物らしく、しっかりと抵抗しなくちゃ駄目じゃない」」


「カイ、逃げるぞ・・・・・・ああなった火影は、もう誰も止められない」
黒須先輩の口調で俺を、連れ出すカブト。



「はははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!いいぜ最高だ!!!!俺を滾らせろ!!!!!」

硬質化した殺気を受けても平然と狂笑をやめない再不斬。
その背には黒い翼が、その額には金色の角が、体は緑色の鱗で覆われ、再不斬を再不斬でなくす。


狂笑を背に、逃げ出す俺達。

「・・・・・・カイと言ったっけ・・・・・・ありがとう・・・・・・それと・・・・・・悪かったわね」
うげっ、大蛇丸が素直に礼を言っている。天変地異の前触れか?

「カイ、私からも礼を言わせていただこうか・・・・・・まずは、逃げるぞ」
晴れ渡った顔になった、大蛇丸に抱きかかえ上げられている綱手。

カブトはカブトで気持ち悪い笑みを浮かべているし。






ドンッ!






とんでも無い威力の攻撃がぶつかり合った音だ。

音の里、本拠地が崩落を始める。神の至高のブレスが天に昇るのが見えた。



何が中で起こって居るんだ。




速度を速める一行。カオスが待ち構えていた。





ペインが地に墜ち、角都が死に、飛段が逃げ、小南の心臓を持つゼツ、しずねを抱きかかえ遠巻きに見ているナルトと、・・・・・・血に塗れた刀を、角都を死に追いやった刀を手に、仙人モードの自来也と相対している直人。



「ふふふふふふ、指輪二つ、ゲットダゼ」

そう呟き姿をくらますゼツ。



何が何がどうなってこんな状況に為ったんだ!





ドンッ!





再度響き渡るとんでも無い攻撃同士がぶつかり合った音。





振り返ると音の本拠地は完全に崩れ去っていた。






―――音の里はここに滅びた。



[4366] 三忍、再結成。
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/12/05 22:09
木の葉の里は突然の三代目の訃報に、皆が一様に肩を落としていた。


御意見番達の指導の元、速やかに葬儀の準備が執り行われ、瞬身の術で参列するは、同盟国の一つである、砂の国、現風影、砂の我愛羅。

我愛羅は里に戻ってすぐに、風影の正体を見破り、処置をした。

その手際、帰ってきてからの真の実力の増加、揺るぎない我愛羅に、風の国は迷わず風影の地位を用意した。

かねてから合った、精神の揺るぎは消え、たくましい大人の男となった我愛羅。


我愛羅は、すぐさま全里に対し、暁に対する宣戦布告を交付した。引いてはミナクスに対する戦争を開始した。


「・・・・・・魔女、か。借りは返すぞ竜」

小さく呟く我愛羅、見える人が見るなら見えただろう、後ろに微笑みを浮かべ浮いている夜叉丸の霊を。










「・・・・・・力が無いから、人は死ぬ、力が無いから俺は、未だ復讐を果たせない・・・・・・俺は忍者でなくていい、俺は復讐を果たせれば、それでいい」



担当上忍である、カカシは目の前で起きた、三代目殺害に、何も出来なかった自分の身を悔いていた。



ゆえに、サスケの異変に、気付くのが、遅れた。








「直人!直人じゃねえか!」

カブトに抱きかかえられたままの俺、その前にいるのは蛙二体を肩に乗っけて、仙人モードと為っている自来也、相対するは、血まみれの刀を持っている、目を瞑ったままの直人。


「・・・・・・この声は、カイ君かい?」


顔をこちらに向ける直人、何故だ、何故直人が刀なんか使っている、しかも角都を仕留めただと??


そんな実力は無いだろうが!



しずねの位置に移動した俺達四人。

「よかった!竜無事だったってばよ!」

お前の状況を考えないが、気持ちをまっすぐにぶつける態度は、正直嬉しい。

「綱手様!」
「・・・・・・どういう心変わりだ大蛇丸」


駆けつけるしずねに、素直に綱手を返す大蛇丸。
綱手の疑問ももっともだ。

「別に・・・・・・ただ、懐かしいものを見せていただいて・・・・・・ね」

俺にウィンクをかます大蛇丸。



「よそ見とは余裕じゃな!超大玉螺旋丸!」

特大の螺旋丸が直人を襲う。



・・・・・・嘘だろ?

俺の感知できない世界で、直人は自来也の左手をぶった切っていた。


「どんな攻撃も、当たらなければ、意味がありません・・・・・・全てが、肌でわかる僕には、どんな攻撃も意味がありません、ましてや今僕が持つ刀は、ミナクス様が丹誠込めて作り出した「Dispel」を込めたチャクラ刀。全ての力は僕の前で無意味です、カイ君、伝説の剣豪、意味がわかるかな?・・・・・・僕には意味がわかっていないんだけど」



距離を取る自来也。


「・・・・・・明鏡止水とでも言うのか。そうか、俺には厄介でしかない法則を逆手にとりやがったな・・・・・・Swordmanshipのスキルを無理矢理120以上に上げやがったな!?」

「情けないわね自来也、風遁・大突破!」

標的は直人、特大の風の塊が直人を吹き飛ばそうと襲うが、



「無想・・・・・・」


容易く風を切り裂いた直人、穏やかな風が後には残る。


切り裂かれた左腕を綱手は回収、自来也を治癒しだす。

「綱手・・・・・・お主、血を見て平気なのか?」

「ふん、いつまでもトラウマに構っていられるか・・・・・・自来也、私は火影に就任する、猿飛先生は、死んだ」

「馬鹿なことを、下手な冗談はよせ」

「本当よ、中に来たのは四代目火影、波風ミナト、三代目は確実に死んでいるわ」
綱手の言葉を補完する大蛇丸。

治癒された自来也の左腕。



「・・・・・・死んだのか?三代目が」



静かに落ち込む自来也、解除される仙人モード。


「あなた方も後を追わせて差し上げますよ、さようなら木の葉の三忍」


剣術だけなら・・・・・・「In Sanct Ylem」
突如浮かび上がる頑丈な素材で出来た、土の壁。
直人の行く末を阻む。

思いっきり下位魔法だが、今は役に立つ。



さぁ逃げよう・・・・・・っておい、なんで臨戦態勢に為って居るんだよ!ナルト!



「嘘を・・・・・・つくな!じっちゃんが死ぬわけないってばよ!」


膨大なチャクラが巻き上がる。駄目だ、暴走はするな!・・・・・・くそ!


「Por Corp Wis」

ヒットするマインドブラスト。

静まるナルトのチャクラ。


「死など、全ての始まりにして確実に訪れる最後の幸福では無いですか、何をそんなに考え込む必要があるのですか?」


静かに佇む直人、手に持つ刀が怪しく黒光りをしている。



すっげえ弱そうなのに、その実力は一級品、悪いな琴音、今回は連れ戻すことが出来なそうだ、何せ、



「魔境氷晶」


囲み尽くす氷の壁が直人を覆い尽くす、が。


「無想、無辺」

一太刀で基幹となる術の根幹を断ち切る直人。


「再不斬さんは!?」

ああ、なるほどあの程度は単なる挨拶なんだ、本当にわからねえ忍者の感覚。


ゴォォォォオオオオオオ!


再度天に昇る神のブレス、大量の土砂を強制的に溶かし尽くし、ブレスは天に昇る。


「まだ、戦っているようだぜ・・・・・・確か、氷の血継限界を身に持つ、霧の再不斬のパートナー、白だったっけ」

顔だけみたら女の子だな、ナルトが勘違いするのも仕方がない。




何せ、ぼけっとしていたら、最悪の死神と、それと対を為す化け物が外に出てきちゃうからな!





「よくわからねえが、逃げるぞ三忍!カブト、ついでだ俺を運べ、白、お前は、どうする?直人、お前はこれと遊んでいろ!」


「In Jux Hur Ylem」


再度氷の鏡を張り、直人に対する時間稼ぎをしている白。


生み出された剣の精霊は、Dispelが大敵だ、直人の言葉を信じるならば刹那に消されてしまうかも知れない、核に当たればのはなしだけどな!

魔法ではなく、魔法刀である事を呪え、もって一分だろうけどな。

「僕は・・・・・・待ちます、必ず再不斬さんは、勝ちますから!」





「白、貴方にこれを託すわ・・・・・・後は自由にしなさい」

大蛇丸は一つの巻物を白に投げつけた。

「再不斬を縛るワードの数々よ、貴方はパートナーなのでしょ・・・・・・後は任せたわ。御免なさいね」

そう最後を小さく呟き、大蛇丸はいつの間にか救い出していた君麻呂を抱え、去っていった。


続く俺を抱えたカブト、ナルトを抱えたしずね。後に綱手、自来也。







「必ず取り戻すからな、直人!」





「・・・・・・待っています、また逢いましょう、カイ君」
剣の精霊を消し去った直人、誰にも聞こえない声で小さく呟いた。









人知を超えた戦いは、未だ続いていた。



[4366] 全滅戦争、序曲
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/12/05 22:09



――木の葉の里。







現在の木の葉の牢屋は、考えられる限り、最大の警戒力を払われた状態に置かれていた。
46時中暗部1個中隊が張り付き、常に三人の同行に目を光らせ、変な行動を取れば即、報告も無しに殺害していいとの命令も下っていた。


「大蛇丸様、何故このようなところに?」


体調が、完全回復した自信の体を訝りつつ、君麻呂は大蛇丸に問うた。


牢屋の中に入っているのは、大蛇丸、カブト、君麻呂の三人、音の里の生き残りは彼ら三人しか、存在しなかった。


「さぁて、ね。少しだけ大人しくしていなさい、君麻呂・・・・・・それにしても大したスキルだわ。貴方の病は、もはや綱手だろうが治せなかったはずなのに、ね・・・・・・本当に面白い素材だったわけね・・・・・・竜」


君麻呂は今一大蛇丸の言っていることがピンと来ていなかったが、命令に大人しく従い、牢屋の中で大人しくしていた。









・・・・・・背筋に寒気がぶるっと来たぜ。

・・・・・・おかしいな、風邪でも引いたか?

音崩しは、強制的に終了した、いや、まぁ攻めるべき場所が勝手に崩壊してしまったんだ。当たり前の話だけどな。


「百歩譲って、綱手が火影に就任する事は、認めよう・・・・・・だが、大蛇丸の里の復帰は絶対に認めん!」



目の前では白熱した会議が行われていた。

今熱く語っているのはダンゾウ、確か火影に為りたかったんだっけ?この世界ではどうだろう。


会議の内容は三点。


一・・・・・・次代火影の早急な就任について、これはほぼ原作通り、綱手で確定だ。
血筋だけを見るわけではないが、綱手が一番相応しい立場にいることは確かだからだ、ダンゾウ、いかにお前が認めなくてもな。



当のダンゾウは、最初以外大人しく会議を傍聴していた。



そして二点目、大蛇丸の処遇について。


里抜けした忍者は例外なく、処刑の対象となる。
ましてや大蛇丸は里を出る際に人体実験をしでかしてくれた、S級指名手配者、犯罪者集団の暁のメンバーでもあるという、なんともまぁ無駄に豪華な経歴なこと。


俺が里の重鎮だったら、間違いなく復帰なんか許さないね、変態だし、気持ち悪いし。


だが、それを考えなくてはいけないほど、木の葉には脅威が迫っているのも事実。



三点目、何者かの手によって復活してしまった、最大の脅威となってしまっている四代目火影、波風ミナトに対する処遇。



これが原因だ。



四代目って確か歴代火影の中でも最高の才能を持った忍びだよな。


「飛雷神の術」による殲滅忍術は、第三次忍界大戦において、恐れられていたそうだ。


あいつなら無理はない、俺だって二度と会いたくねえ。っていうか殲滅忍術使わないでも、四代目は強い、早すぎだ。


「・・・・・・私も大蛇丸の復帰に関しては、常時でしたら絶対に反対です。ですが、今はそんな余裕は、ありません。早急な対策が必要です、残念ながら、木の葉の里単独で、四代目を防ぐことは不可能・・・・・・それが現実です」


カカシが真面目な顔で大蛇丸を擁護する。そこら辺の感覚は、こいつらは原作よりもシビアだよな。

カカシの言葉に、場が沈黙する。


「・・・・・・研究班、例の術の開発はどうなっている?」

重苦しい雰囲気で尋ねる綱手。


「はっ、後は実施を繰り返すだけでしたので、襲撃は大して障害にはなっていませんでした」

白衣を着た男が、掲げるは、へんてこな形をしたクナイ。


「今は元の術式を完全に消去しておりますので、再度の襲撃は考えられません、ただ使える術者となると・・・・・・」


「・・・・・・俺がやるよ。俺が先生を止める」

カカシが小さく呟く。


白衣を着た男は綱手、ご意見番を見渡す。

一様に頷く一同。

「・・・・・・わかりました、ではカカシさん、後で研究所に来てください」

「いや、今から始めよう、すぐこないとも限らないからね」

見渡す白衣の男、再び一同は頷いた。

カカシを連れ、白衣の男は消えた。


何の術だろ?

そう聞ける雰囲気でも無いので俺は口を噤んでいた。っていうか空気が重すぎて、俺が何かを喋る雰囲気ではない。


「自来也、お前はどう思う?」

うたたねコハルが黙ってばっかりの自来也に話を振った。


ぼりぼりと頬を掻きながら自来也は口を開く。


「そうさな・・・・・・朧火、もう尋問は終わったのだろ?お前の術の中では嘘をつけんはずだ。大蛇丸、どう見た?」

確か、三代目直属の暗部の一人、俺を尋問するときも居たな。


「はい、大蛇丸は・・・・・・」

辺りを見渡す朧火。

「今は里に害を為す存在では、ないと判断出来ます。危険な思想が奇麗さっぱり消えていますね」


どよめく会議、なるほど、朧火の術式とやらはそれだけ信頼されていた訳か。
っていうかそんなこと有り得るのか?何が・・・・・・もしかして俺のSpirit Speakか?確か大蛇丸がおかしく為った原因は両親が殺されてから・・・・・・当の両親に説得されて心が変わったってか?まさか、そんなに緩くないだろ、あの大蛇丸だぜ。

「とまぁ、そんな訳だ。わしは・・・・・・暁に対抗するための力としてだけ見ればいいと思う。何、心変わりしたところで反抗を許さない術式でも組み込んでおけばいいだけの話、違うか?」

最大の宿敵の一人であった自来也。


彼が認めて仕舞えば、反対していなければ、それを覆してまで、声を上げる奴は・・・・・・。


「・・・・・・綱手、火影のお前が決めろ、火影の意志は里の総意・・・・・・せいぜい木の葉の名を汚すなよ。だが、暫くの間、大蛇丸を出すことは許さない」


背を向けて会議から退出していくダンゾウ。そう、こいつくらいか。果たしてこの世界でも何か企んでいるのかね。









――再度、木の葉の牢屋、大蛇丸達は、何をするでもなく、床に寝っ転がっていた。
「心配しなくても、すぐに出られるわよ・・・・・・あら、どこかで見た顔だと思ったら・・・・・・あんこじゃない、こんなむさ苦しいところにわざわざどうしたの?」

暗部が張った結界は確かだ、近づくことも、中に入ることも出来ない、もちろん出ることなど尚更だ。

「・・・・・・久しぶりね、大蛇丸、久々に里に戻ってきた感想はどうかしら?」

「別に、大した感慨なんかないわよ、お前はどうなの?少しは強くなったのかしら」

「ええ、貴方の御陰で変な力も手に入ったから・・・・・・なんで今更戻ってきたのよ!」

激昂するみたらしアンコ。


「・・・・・・そうねぇ、とても、珍しいものを見せて貰ったからかしら」

遠い目をする大蛇丸、アンコは意外なものを見たとでも言う感じに、目を見開く。

「竜っていったかしら、あのチャクラを使えない子供は、大事にしなさい。私達では出来ないことを容易く行うわよ」

「・・・・・・あんたの位置を特定したのも、その子よ・・・・・・一体何者なのかしら」

くくくくくくくくくと静かに笑う大蛇丸。


「へぇ、道理で木の葉の手際が良かったはずね。また話してみたいわね」


すっかり毒が抜けた大蛇丸に戸惑いつつ、アンコはその場を離れた。


「カブト、君麻呂、あの子を守りなさい。いい物を見せて貰ったお礼よ」

「はっ」

「ですが・・・・・・」

即答するカブト、不満げな君麻呂。


「貴方の病、治したのもあの子よ。でもそんな特質した技術があるのにもかかわらず、戦闘能力は一般人と大差ないわ。誰かが、守らなきゃね・・・・・・私達の目的は、魔女の駆逐、手痛い授業料を払ったんだもの、魔女を駆逐するのに一番の近道は、あの子供よ・・・・・・私の勘がそう告げている。鍵は大事に持たなきゃ、なくしちゃったら扉は開かないでしょ?」

「・・・・・・わかりました」
渋々頷く君麻呂。



「くくくくくくくくくくく、さて、後は木の葉なんだけれども、頭の固い老人達を綱手達は説得できたかしらね。出番はすぐ其所よ、あの魔女が黙っているわけないんだから」


大蛇丸の静かな笑い声が牢屋に響き渡る。














「どうだ、退屈だったろう」

会議が終わり、皆がそれぞれ散らばっていく中、綱手が俺に近づいてきた。
若作りしているとはいえ、肉体年齢が20代だっけ?世の女が聞けばうらやむ話だな。


「ああ、これからどうするんだ?」


変わってしまった歴史、しかし符号するところは符合する。時期が同じだった三代目の死、少し早まったが綱手は火影に就任。


「・・・・・・暁を討つ、今は各同盟国に打診を行っている最中だ。砂に・・・・・・名前が変わった春の国、はすぐ確約が採れたのだが、なかなかその他は腰が重くてね。雷は自分たちの力だけで討つと息巻いて話にならなかった」


キラービー擁する、雷の国、か。


「全ては三代目の葬儀が終わってからだ・・・・・・竜、お前はナルトを励ましてやってくれないか?」


ナルトは、里に帰ってからずっと火影顔岩の前で佇んでいる。そう、まるでオビトの墓の前で佇むカカシのように。


「ああ・・・・・・俺は別にいいが・・・・・・その前に事情を話さないといけない厄介な女がいてね」


綱手は静かに笑う。


「幼なじみ、か。大事にしろよ・・・・・・全く持って説明を受けても全く同い年には見えないけどな」


今回は別の任務に従事していた琴音、直人を取り逃がしたなんて言ったら・・・・・・ああ、怖い。


「女の事ならわしに任せろ!」


息巻いて現れた自来也。

ぼかっ

「お前は仕事があるだろうが!きりきり働け!」

綱手に耳を引っ張られ連れて行かれる自来也、あれは将来絶対尻にしかれるな。










――元、音の里近くの某所。


悪夢の再現の場所から辛くも逃げ切った飛段。

角都がやられるとは露にも思っておらず、刹那の判断で逃げた飛段。

「ちっ・・・・・・」

物陰に隠れる飛段。
「飛段だ、久しぶり・・・・・・ウマクニゲキッタヨウダナ」

現れるは、暁が一人、ゼツ。
「なんだ、ゼツか。手前も暁を抜けたみたいだな・・・・・・いきなり小南を殺したのはびびったぜ」

ゼツの姿を認め肩の力を抜く飛段。


「暁を抜けたんじゃないよ」


振り返るゼツ、新たな人物がその場に現れる。
「――暁は我らのものだ、魔女の私物ではない」


「手前は・・・・・・誰だ?」

大蛇丸と行動を共にしていたため、今までマダラと面識が無かった飛段。


「・・・・・・我が名は、うちはマダラ、相棒の角都から話は聞いていなかったか?」

首を横に振る飛段。

「いや、全然、全くないぜ」

鼻息を付くマダラ。

「まあいい、音が滅びた今、お前を雇っていたものも消えたな・・・・・・我らと共にこい、暁を取り戻し、ひいては世界を――我らのものとするのだ」

「はははははははははははははは、何いってんだよ、そんなこと出来るわけねえだろう、だが、そういう馬鹿を言う奴は別に嫌いじゃねえぜ、わかった、行くか」

重い腰を上げる飛段。

「さて、暫くは様子見だ。木の葉がどう動くか、魔女がどう動くか、我らは・・・・・・」

「最高のタイミングで横っ面をはたき上げる、ダッタカ?」

「そうだ、我らは闇に紛れる。忍びは忍びらしく、な」


三人はそのまま何処と無く消え去った。






――暁、本拠地、今も雨は降り続く、増大した力を余すことなく使い、ペインは術を継続する。




奇麗な体の四代目、ペインの一体、眼を瞑ったままの刀を鞘に収めた直人。


三人は、静かにミナクスの前に傅いていた。

後ろに横たわっているのは、二個の遺体、後に四代目が回収した小南と、角都の遺体だ。


「小南まで死んじゃったの・・・・・・残念ね、わらわは彼女はかっていたというのに」

「・・・・・・ゼツの裏切りにより、命を落としました・・・・・・ミナクス様、次は・・・・・・」

「そうね・・・・・・少し待機、よ。楽しいイベントが始まるわ・・・・・・デーモン襲来、かつてファセットの一つで試したことも有るのだけれども、この世界ではどうなるか、わくわくするわ・・・・・・呼び出すのが単なるデーモンってところがちょっと残念だけれども。世界の悲鳴を、世界の痛みを眺めていなさい」

「我々に何かお手伝い出来ることは?」

「わらわの邪魔をしなければ、構わないわ、好きにしなさい」

「・・・・・・再度口寄せを行います、どうやらネズミを始末しなければいけないようなので・・・・・・うってつけの人材がいます」

ペインは後ろの死体を眺める。


















三代目の葬儀が執り行われる中、ひっそりと警戒が一時的に薄くなった場所を抜ける下忍が居た。


立ちはだかるは、――原作通り、ピンク色した髪を持つ女忍。


「何処行くの?・・・・・・サスケ君」


一瞥したのみで、言葉を交わさないサスケ、サクラの横を通りサスケは外に出て行こうとする。


もちろん立ちはだかる担当区の暗部。


「立ち止まれ・・・・・・任務が無い今、里の外に出るものは里抜けと見なす、なお、警告に従わない場合」


「・・・・・・喋りすぎだぜ暗部」


何時の間に現れたのか、赤い巨体を誇る悪魔が暗部の顔を握りつぶしていた。


「サスケ君!」


「・・・・・・ミナクスは答えた、力をくれてやると言っている・・・・・・じゃあな、サクラ・・・・・・ナルトには、悪かったと言っておいてくれ。仲間だから、負けないってな」

圧倒的質感を持つ悪魔。

手をサスケに向け、サスケはその肩に乗った。

翼がはためき、宙に飛び立つ。



今の木の葉からすれば、有る意味取るに足らない出来事、写輪眼とはいえ、対策が立てられていれば打倒は不可能ではない。



だが、有る人物からすれば、まさに寝耳の水。










――某所。
「おや、うちはの小僧が里を抜けた・・・・・・ほぉ、魔女の所に行く愚か者が居たのか。我はこの世界の人間をかっていたのだが、そうではないものも居るのだな」

古代竜の力を使い、世界を見ていたリース。


その言葉に劇的に反応したのはイタチだ。

「・・・・・・何と言った」

「うん?ああ、三代目とやらが死に、うちは・・・・・・サスケというのか、その者がミナクスの元に走ったぞ」
リースにしか感知出来ない力、リースは丁寧に説明してあげた。


「・・・・・・リース、鬼鮫、魔女の所に向かうぞ」

「・・・・・・まだ時期尚早、じゃが、止まりそうに無いのぉ。ふぅ仕方がない、挨拶でもしてくるか」


狂い狂った歴史の中、その中でもサスケの里抜けは起こるべくして起こった、例えその先が滅亡しかもたらさない、最悪の相手だとしても。





*もうちょっとで終章です、これまでご覧になられた皆様方どうもありがとうございました!*



[4366] デーモン襲来
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/12/06 00:39


――木の葉隠れ、三代目の葬儀はしめやかに行われた。

うちはの末裔里抜け、その報が火影に届いたのはすぐだったのだが、綱手はそれを脇に置いた。

今は、四代目対策が急務、行き先が分かっていることも大きかった。

いずれ相まみえる対象、災厄の魔女、綱手の情報網に引っかかりまくっていた相手だ。


「・・・・・・雨が」

誰かが呟いた言葉。

雨音に誤魔化され、言葉は消えていった。



最前列ではエビスに慰められている木の葉丸、その目からは大量の涙が落ちていた。

カカシの姿は其所にはない、某所で新術の特訓だ。自来也も付き合い、席を外していた。

「ナルト兄ちゃん・・・・・・どうして人は死ぬのかな?」

原作よりも仲がいい木の葉丸とナルト、ナルトが三代目に付きっきりで特訓を受けていた頃の仲か、確かによく見たな二人でつるんでいる姿を。

「じっちゃんは、よく言っていたってばよ・・・・・・木の葉には、火の意志が伝わるって、人が死んでもその行動は人の心に残る、人が自分たちで誰かの為に為したことは決して無駄にはならんっていっていたってばよ」


皆が皆、一様に落ち込んだ顔をしている。

しかしなぁ、三代目すら全く相手にならなかったとは、な。あの閃光だったらしかたねぇか。


来ている来賓も大した物だ。


現風影、我愛羅・・・・・・あの我愛羅が俺に向けて笑ったよ、珍しいものみたな。

春の国、新進気鋭の現国主、小雪姫、もう姫ではないんだがな。背後には絡繰り細工・・・・・・あれってメイドゴーレム以外の何者でもないよな。なんかすげえなNARUTOの世界、受け入れ口が広いだけはある。

その他、各里も一定以上の身分の者をよこしている。


新火影就任式も兼ねているからな。

日向、犬塚といった古くから続く名家ももちろん列を連ねている。


・・・・・・復讐を誓う相手が、四代目火影ってのが皮肉だよな。大蛇丸が零した内容だと、口寄せ・穢土転生ってのは、元々は生きた人間を必要とするのだが、更に改良を加え、死んだ人間でも生け贄に出来るようになり、その能力は死体に準拠するが、更に大幅な能力アップすらも図れるようになっていたらしい。



すげえチート。



誰だ術者は・・・・・・該当するのは、うちはマダラ、ペイン、後は、何でも出来そうなミナクスって所か?俺一人じゃどうにもならん相手ばっかりだな。無理無理、人間は人外と戦えるようになっていないんだよくそったれ。


いつの間にか留学って事になっていた砂のテマリ、サクラと共に綱手に師事するらしい。なるほど関係強化の策ってことか、ついでに影分身ナルトにも仕込んでくれないかな、後で頼んでおこう。


そういやサクラの姿が見えねえな、何処に行ったんだろ。


――マスター残念な知らせがあるんだ――

えっと、俺が書いたインチキコデックスだったけ、何だよ藪から棒に。

――ショックを受けないで欲しいんだが・・・・・・もはやアバタール召還は不可能になってしまった――

あー、そういえば四代目と対面して頭に血が上った時になんか言っていたよな。

――そう、それだよ。あの時使ってしまった力が予想以上に大きくてね、どう計算しても後一年はかかってしまうことになる。小出しならまだ色々出来るけど、後はマスター次第だね。折角、「愛」を知り条件が揃ったというのに、ね――

「愛」って、お前・・・・・・ああ、なるほど全てを無条件で愛する、許すってことか、ってことは大蛇丸に俺は愛を送ったってことなのか?

――うん、その通りだよ、マスター――

へぇ、あんな事が条件だったのか、てっきり人を殺す覚悟でも無ければ駄目なんだとばかり思っていたよ。

――その覚悟は、妥協に繋がる、必要なのは何が起ころうとも全てを受け入れる覚悟のことだよ。全ては自分で気付かないと意味がない話なんだけどね――

そうか・・・・・・ミナクスは、自分たちだけで殺すもしくは追い出すしかないのか・・・・・・。

――もし、・・・・・・いやこれは可能性の話だね――

言ってみろって。

――・・・・・・もし、マスターが死ねば、間違いなくこの世界は滅びるよ。地獄の釜が開いてしまう、具体的にはロストランドって所で「テラサンキープ」という所で無限戦争を繰り広げている、ある生物たちが地上に出てくる――

いや、あの、俺が最終的に帰るためには其所に行かないといけないんだけどさ、あの二種類の生物の戦争ってこの世界でも絶賛続行中なの?

――もちろん、彼らは存在自体が闘争を求めている悲しい生物だからね。でも彼らを乗り越えなければ、マスターはどっちみち帰れない――

帰るの、やめよっかな・・・・・・蜘蛛と蛇の戦争に巻き込まれて生きていられる自信がねえんだけど。

――マスター・・・・・・いいづらいのだけれども、ミナクスをもし倒したとしても、マスターはこの世界に残れないかもしれない・・・・・・「感染源」だから、最大の影響力を持つ、ミナクスを倒すことはUOの否定に繋がり、世界はマスターを排除し出す、これはかなり可能性が高い話だよ――


おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおおいおいおいおいおいおいおい、聞いてねえぞそんな話!


――そうだね、滅び行く腹いせに、全モンスターがマスターを狙い出す、主と呼ばれる存在も、聖獣と呼ばれる存在までもが、一律にマスターに襲いかかる、それくらいは考えていた方がいいよ――


古代竜にバルロン、オークキングにサキュパス、ロッティングコープス・・・・・・その他それぞれの眷属ってか、いや、確実に死ぬわ。俺はもう戻れないかも知れない・・・・・・儚い二度目の人生だったな。

突然目の前が真っ暗になった気分だ、いや実際に真っ暗になっている。


「直人に・・・・・・逢ったんだってね」

・・・・・・あれ、まだ任務中じゃなかったっけ。

「自来也様から聞いたわ、直人が剣の達人になっていたって・・・・・・魔女の所為ね」

「ああ、お前らでは使えないスキルSwordsmanshipっていうスキルだ。和訳すっと剣術って意味でな。・・・・・・俺の知識では、剣の達人は、飛んでいる蠅を箸で掴める、「心眼」「明鏡止水」っていう奥義もあって、伝説の剣豪となれば、どんなことも刀一本で解決してもおかしくはない・・・・・・そんなスキルを恐らくミナクスは120overに無理矢理上げやがった」


その代償だろう、直人が光を失ったのは。糞が、テストシャードのノリであっさりとあげやがってよ!体に反動が来るのは当たり前だろうが!


手に力が入る。


「次は・・・・・・私も行くわ」

「・・・・・・例外なく、四代目のおまけ付きだぜ?」

「それでも、それでも私が、私達が行かなきゃ駄目なのよ」

「・・・・・・五代目火影に許可を取っておけよ、命令違反はしたくないだろ?」

何を言っても、無駄だな。ならば少なくとも俺も付いていった方がいい、全く相手にならなくてもな。

「ええ、必ず取り戻すわよ、魔女がなんだって言うのよ、貴方の悪知恵に勝てる奴なんていないんだから!」

・・・・・・それも俺の能力が通じない相手限定だったんだけどな。悲しいかな、俺を認めさせるのに沢山の人に見せすぎた。

しかも今度の相手はミナクス、恐らく俺以上に俺のスキルについて知っているぜ。俺の利点はミナクスに関して言えば、全く存在しないに等しい。だが――


「そうだな・・・・・・琴音・・・・・・俺達で必ず取り戻すぞ」

いたずらにこの幼なじみに、不安を与える事もねえか。









牢屋、罪人を捉えておく設備、それは寒い所であり、生やさしい場所では、ない。


「あら、誰かしら・・・・・・私にお客なの?今は三代目の葬儀が行われているってきいていたのだけど」

迎えるのは大蛇丸一派、といっても三人しかいない。

向かったのはピンクの髪をした女忍。雨に濡れたままで、そのまま大蛇丸の所に足を運んだ。

「力が欲しい・・・・・・何者にも負けない力が欲しい、そういってサスケ君は、木の葉を出て行ったわ」

「うちは一族、最後の末裔の事かしら。魔女の所に向かったの・・・・・・愚かね」

大蛇丸は興味なさげに、反応を返さない。

「・・・・・・私も力が欲しい、ナルトに負けないよう、サスケ君を止められるような」

「ふぅ、私に貴方を鍛える義理でもあるのかしら?去りなさい、綱手にでも見てもらうことね」

「・・・・・・でも!」

大蛇丸の目が光る。気圧されるサクラ。

「二度は言わないわよ、去りなさい・・・・・・私は才能が無い者を相手にするほど暇じゃないの」

大蛇丸の言葉に肩を落として去るサクラ。

「よろしかったので?大蛇丸様、何かの実験台にはなったはずですが」
「・・・・・・私はもう、そういうのはやめたの、覚えておきなさい、カブト」

以前の大蛇丸に一度も接触していなかった為に起きた出来事。

三忍の名前は、木の葉の中で確かに根付いていた。













四代目と再不斬の死闘は終わった、再不斬の攻撃は全て避けられ、四代目の攻撃も、再不斬は全てを避け、弾いた。

だが、再不斬は体に掛かる負荷に耐えられなくなり、戦場を後にする羽目になった。

今は近くの洞窟に身を潜めている最中だ。
「再不斬さん・・・・・・悪魔です、悪魔の群れが一路、世界を覆い尽くそうとしています」

「・・・・・・ちっ魔女か、俺達には何の義理もねえ、降りかかる火の粉だけ払えばいい」

「わかりました」


悪魔の羽音が世界に響く、死の行進が全ての里を覆い尽くす。



抵抗できなければ、死ぬだけだ。









暁、本拠地。


「で、僕はまだ出なくていいのかな?」

金髪の男、四代目がペインに尋ねる。

「先程、侵入者を感知した、お前らは迎撃に当たれ。ミナクス様は現在、教育がお済みになられていない。誰も近づけるなとの言葉だ」

「分かった分かった、さて、誰かな。行くよ、直人」

黙って頷く直人と、ゆっくりと足音を立てずに進む四代目。

「さて、残り一人、誰を召還するか・・・・・・そうだな、あやつがいいだろう」

一人残ったペイン、小さく呟く声には不吉しか含まれていなかった。







木の葉の国境、終末の谷。
何処か予感を感じ、マダラ達は其所で体を休めていた。

「魔女が、動きを見せたよ。コノハハ、ソウギナンテ、ヤッテイルジカンハネエノニナ」

「ははっお前にはわからねえだろうが、人間ってのは不条理に支配されるもんなんだよ」

「最も人間から遠いような、オマエニハ、イワレタクネエケドナ」

「ははは、そりゃそうだ。おっ誰か来たようだぜマダラ」

「・・・・・・どうやら、俺の客みたいだな。お前らは下がってていいぞ」

神速で現れたのは、木の葉の模様が入った服を着ている一人の忍者。



かつての忍界大戦にてうちは一族と覇権を争ったのは、千手一族、うちは一族有るところに千手一族在り、和平がなるまで数多の血が流され、双方は度々戦陣を争っていた。

月日が経ち、最後の決戦が行われたのが、此処、終末の谷。千手一族党首後の初代火影・千手柱間、うちは一族党首、弟さえも手に掛け、永遠の万華鏡写輪眼を手に入れたるは、うちはマダラ。


「・・・・・・初代火影・千手柱間、推参」

「亡霊が、死者を弄ぶのがそれほど楽しいか、ペイン・・・・・・久しぶりだな千手」

「ふむ、おかしな仮面を被っている、だが声からして、うちはマダラに相違ないな?」

「そうとも、この場所でお前に敗れ、影に墜ちたマダラだ。皮肉だな、お前が築き上げた木の葉をお前が壊す羽目になっているとはな。俺に向けた言葉はどうした、あれは口だけだったのか!?」

全盛期の体を持つ千手柱間、相対するは、うちはマダラ。



「マダラよ、我らに言葉は不要、かつても今もそしてこれからも・・・・・・そうでは無かったか?」

巻物を取り出す千手。
「そうだな、あまりの懐かしさに思わず語ってしまったようだ・・・・・・ただ我らは決着をつければいい、かつてのようにな、だが、昔のようには行かない、今敗れるのは・・・・・・お前だ千手」

マダラも巻物を取り出し、双方それぞれが得意とする口寄せ動物を召還し出す。



「・・・・・・下がっていた方がいいみたいだな」

「触らぬ神に祟り無しってね。ハンパネェチャクラリョウダゼ」


伝説の戦いが、今、再び再現される。
場所はかつてと同じく、終末の谷。キャストも同じく千手柱間・うちはマダラ。超一線級の戦いが観客も少ない状態で、始まった。







砂の国、防衛最前線。
「全く、俺しか残ってない時にくるなんて・・・・・・ついてないじゃん!」

眼前に見えるのは、気が遠くなるほど多くの悪魔の群れ、空が喰われていた。

「我愛羅が帰ってきたときに砂を墜とされましたなんて言えないじゃん!赤秘儀・百機の操演!」

稀代の天才、サソリが遺した最高のクグツの内の一つ。完全とは言えないが、ちよ婆の特訓によりカンクロウは極めて扱いが難しいそれを使える域にまで成長していた。


「ほら、お前らは討漏らしを討て!無駄に兵力を損なうな!悪魔共め、どっからでもこい!」

部下に命令を下し、カンクロウは百機のクグツを力にどろっどろの死闘に身を投じる。



全滅戦争の幕開けは、砂から始まった。




デーモンの数、推定一万オーバー。

その数は正しく全てを滅びに向かわせるにふさわしい数だった。





葬儀も終わり、火影就任の挨拶の元、綱手は砂に続き暁に対する宣戦布告を発布した、各国の重鎮が集まっている場での堂々たる宣言。


綱手は暁を世界の敵と名付け、各国に対する協力を求めた。



砂の救援を求める伝令が木の葉に届く10分前の出来事であった。



[4366] 全滅戦争、開始
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/12/07 00:15

砂の国。敵味方入り乱れての大乱戦。

もはやどうしようもない状況でのカンクロウの奮戦はデーモン達の体のいい標的になっていた。


「全くよぉ!千手操武!」

百体のクグツ全ての腕から更に分化し、悪魔達に突き刺さる腕達。

同時に百体を殺戮するに至るが、所詮それは全体の百分の一以下。

先陣の勢いを殺すに成功するが、チャクラの消費もまた早い。



漫然的な高山病のような目眩を我慢し、更にクグツを操るカンクロウ。

「手前ら如きに、自我無き人形如きに砂は墜とさせないじゃん!」


カンクロウの誇り高き宣言は、悪魔達の注目を集めるに値した。


「そうだ・・・・・・それでいいじゃん・・・・・・時間を稼げれば・・・・・・我愛羅が帰ってくる・・・・・・木の葉だって見捨てないはずじゃん・・・・・・おらおらおらおら!行くぞ悪魔共!千手操武!」


限りなき消耗戦に持ち込んだ時点で、カンクロウの負けは、決まっていた。



数の暴力は全てを蹂躙する。



次々に墜とされるクグツ達、一体また一体と数を削られていった。

「っまだまだぁ!クグツ変換、白秘儀・十機近松の集!三宝吸潰!」

チャクラの減少に伴い、操りきれなくなり、クグツの変換、ちよ婆直伝の技が再び勢いを盛り返す。

カンクロウの頑張りに負けじと、他の忍び達も力を振り絞る、が。悪魔の魔法、攻撃に耐えきれず、次々と傷つき、倒れる砂の忍び達。


「お前ら下がっているじゃん!俺一人で十分じゃん!」


「そうもいきませんよ、貴方一人じゃ頼りなくって」

笑いながら悪魔の群れに突撃していく砂の忍び達。

「駄目じゃん!下がる・・・・・・」

血が口から溢れ、クグツ達の勢いが減少する。


「カンクロウ、ご苦労だった、下がれ」

かつての担当上忍であった、バキ。

「あんたは・・・・・・」

「少しは先達に見せ場を譲れ、特大、風の刃!」

カンクロウに覆い被さろうとしていた悪魔数体が、チャクラを練り込まれた風の刃によって切り刻まれる。
「吉報だ、我愛羅、それに木の葉の援軍がこちらに向かっている、先遣隊は数十分で来るそうだ」

「・・・・・・それだけ持てば・・・・・・」

バキは頷く。
「ああ、後、少し、だな」


ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!


再度襲来する悪魔の群れ。


「だが、生き残れるかどうかは、微妙なラインだ・・・・・・カンクロウ、数分時間を稼ぐ、呼吸を戻しチャクラを戻せ、再度赤秘儀を使え、生半可な攻撃では時間を稼ぐ前に我らは死ぬぞ」


「・・・・・・わかったじゃん、少しだけ前線指揮を任せるじゃん・・・・・・」

座禅を組み、息を整え、チャクラの回復に努めるカンクロウ。


「ふっ、でかく為った者だ・・・・・・お前ら兄弟、すでに我らを超えている。わかっていたが、寂しい者だな」

小さく呟き、バキは悪魔の群れに飛び込んでいった。



残りのデーモンの数、未だ9600を数える。















少なからず里にはすでに被害が出ている。


例えば、音、悪夢の人外の戦いからも生き残った人間は、為す術もなく悪魔に全て滅ぼされた。辺境も首都も悪魔にとっても関係無しに、全ての人間が滅ぼされた。



木の葉の対応は素早かった。

忍びを持たず、防衛力に欠ける里に対し、全面的な支援を打ち出した。
すなわち忍びの派遣。


どうしても時空間忍術が確立されておらず、移動に時間がかかり、ロスが出てしまう。

各国各里もそれぞれ抱えていた戦力を一気に放出、援軍が到着するまでの間、それぞれが戦いを始めていた。


春の国、党首、風花小雪も未曾有の危機に、戦力の支援を表明した。

名産の絡繰り細工、ドトウが堕ちた後も、技術者に命じ、作らさせていたそれは、新たな力として極めて有効に働いた。






―――終末の谷。


千手の闇の術が全てを覆い尽くす。
写輪眼対策として、それは極めて有効だった。
暗闇の中、二人はただひたすら戦いを続ける、穢土転生・改により、ほぼチャクラ切れが無くなっている千手、人体改造に等しい行為により、やはりチャクラ切れが無いマダラ。


極めて珍しい血継限界「木」を有効に使い、大規模な術でマダラを責め立てる千手。
数多の術をその眼で見て、検索し、その場その場で最も有効な術を使っているマダラ。


ほぼ千日手に陥っている二人。闇の中に踏み込んだ者は例外なく余波で死んでいた。



闇の外では飛段が一人悪魔相手に奮戦していた。

「ったくよ――面倒くさい相手ばっかりだよなー」

ゼツは「頑張ってね飛段」と言い残し姿を消している。


全てを一振りの元、悪魔を下し続けている飛段。しかし悪魔の数に終わりは無い。

疲れこそ無いが、悪魔の魔法は避けられない飛段、体のあちこちを削られ徐々に徐々に戦力が低下していっていた。

「・・・・・・って別に俺が此処を死守する必要もねえじゃねえか!阿呆らしい、マダラ!俺はいったん逃げるからな!」

瞬身の術で姿を眩ます飛段。


悪魔達は木の葉の里に侵入した。






雲隠れ


化け猫の人柱力、ユギト。

里の危機に対し、すでに人柱力の展開を終えていた。

人柱力に対する評価は原作と違い、この世界では一定以上の評価を常に保っていた。

何せ油断すればすぐモンスターが攻め込んでくるような世界だ、気持ち悪いとか暗いとかで嫌っていては自分たちが死んでしまう。


「・・・・・・木の葉の言った通りの展開になったな・・・・・・新火影の綱手、か。大した情報網を持っている」

綱手の回した情報はただ一つ、

「暁が近々大規模な攻撃を仕掛けてくるかも知れないから気をつけろ」

どんな、とか、いつ、とかは一切含まれては居ないあやふやな情報なのだが、そのままずばりヒット。

砂が前線を築けたのも、葬儀の準備を始める前に回した情報の力に寄るところが多かった。

化け猫の姿になったユギト。


ドラゴンのブレスに匹敵もしくは上を行く、チャクラをたんまりと練り込んだブレスが悪魔の群れを討つ。

「私が群れを討つ・・・・・・お前らは討漏らしを一匹たりとも里に近づけるな!・・・・・・ええいキラー・ビーはまだ出てこないか!」

作戦としては巨大な大規模忍術で大多数を討ち、他は多数で当たる。それが最も有効であり、最も正攻法であった。

雲隠れにはもう一人、八尾が存在する、だが未だ里の危機は関係無しに気分が乗らないと言って前線には出てきていなかった。





岩隠れ


四尾と五尾。

初老の男「老紫」と頭に傘を被り、茶色いマスクと黄褐色の鎧、煙を噴く大きな瓢箪を身につけた大柄の男。名は「天元」


「くくくくくくくくくくくくくく、里の人間共に忌み嫌われていた俺達が今や英雄だぜ?」


足下には下した悪魔の群れの死体。

「わしは名声などに興味はない・・・・・・じゃがこいつらには興味がある」

死体を見て呟く老紫。


二人の性格は歪んでいた。

されど悪魔達にとっては最悪の相手でもあった。二人の力により次々に墜とされる悪魔達。

迂回して突き進む悪魔は里にたどり着けるが、万全の態勢で待ち構えている他の忍者により為す術もなくやられていた。






他の人柱力も、それぞれ敵を受け持っていた、圧倒的な力で敵を墜とす人柱力、やはり普段から有る程度の距離を置かれてはいたが、今人柱力達は、殲滅モードに入っており、その恐れられる原因である力を好むと好まぬと関わらず思うがままに振っていた。





暁、本拠地。


「酷いものですね・・・・・・私達が出て行ってから何があったんでしょうか」

雨の里は著しく荒廃していた。

建物はあれ、人々の生活には活気が全く見られず、死体すら路上に放置してある始末だ。


「・・・・・・止まれ鬼鮫、出迎えが来たようだ・・・・・・四代目、火影」

金髪の死神は足音を立てずに地面に降り立った。

「写輪眼・・・・・・うちは一族だね、少しは、楽しめるかな?」

静かに笑みを浮かべる四代目。

「イタチよ、この者・・・・・・匂うぞ・・・・・・なるほど死者か・・・・・・む、後ろにいるは・・・・・・」

眼を瞑ったままの直人が現れる。

「初めまして、古代竜・・・・・・ミナクス様の命により、お命頂戴いたします」

にやりと笑うリース。
「主は、こちらの世界の臭いがするのぉ・・・・・・鬼鮫、イタチをカヴァーせい、我は其所な小僧と少し遊ぼう」







全世界に対し、非常事態宣言を発布した綱手。

「総員、戦闘準備に入れ!」

すでに出発した第一陣を除いた、全ての忍びが里の防衛に準備を開始していた。


「国境南、配備完了!」

「国境北、配備完了!」

「国境東、配備完了!」

「国境西、配備完了!結界発動します!」


発動されしは、相手の力を半減する結界だ。三代目火影が九尾襲来の時点で考案、開発していた者で、里の危機に対し発動させるよう研究は完成していた。

後は・・・・・・
「さぁ里に一匹も近寄らせるなよ?出番だ、木の葉の精鋭共!」

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「おう!」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


力強い応答と共にそれぞれの持ち場に散る木の葉の忍び達。


「大したものだのぉ、火影もうまくやれそうだな」

綱手に近づく自来也。

「どうした、自来也、お前の持ち場は・・・・・・そうか突発待機だったな」
「雑魚ならば、問題は無い、だが・・・・・・ボスくらすが出てきたら、どうするつもりだ?」
「決まっている、里の決戦存在、お前やカカシ、それに三代目の全てを受け継いだナルト、最強をぶつける」
「相手が・・・・・・三代目だとしてもか?」

自来也が取り出したるは、三代目も愛用していた遠見の水晶、其所に写るは若かりし頃の三代目の姿だった。
「暁め・・・・・・とことん外道な真似を好むらしいのぉ。綱手、大蛇丸を出せ、カカシは未だ術を完成中で動けん・・・・・・ナルトに三代目と戦えと言うのは余りに酷だろう」

目頭を押さえる綱手。
「・・・・・・わかった。火影の特権を使おう、大蛇丸一派を連れて行け・・・・・・里の者に気取られるな。三代目は、お前達だけで潰せ・・・・・・そうだな、あの子供も連れて行け。大蛇丸は何故かあの子供の命令には素直だ。そう呟いていたのを牢屋番が聞いていた・・・・・・それと、ナルトが自分から行きたいと言った場合、止める権限は私にはない、其所だけは覚えておけ」

背中を向け火影執務室から出て行く自来也。

「・・・・・・わかった。子供に凄惨な忍びの戦場は見せたくは無いものじゃがな・・・・・・致し方有るまい」

「歴代最高の才能を持つのは、四代目、波風ミナト・・・・・・だが歴代最強の称号を頂くのは・・・・・・三代目火影・・・・・・猿飛ヒルゼン。若かりし頃のプロフェッサーだ。頼むぞ自来也・・・・・・止めてくれ」
出て行く背中に呟かれる声。

自来也は腕を振り上げ、綱手に答えた。






「縄樹、ダン・・・・・・どうか里を守ってくれ・・・・・・」

綱手は胸に輝くペンダントを握りしめ、呟いた。





里を最も愛した存在、三代目火影、猿飛ヒルゼン。外道達によりその力が木の葉の里に降りかかる。




*他の里の人柱力は我愛羅を除き、後一度の会戦で出番を終了です。一人一人えがきたかったんですが、どうしても資料不足で、だって「天元」だってオリジナルになっちゃうからなぁ。扉絵を見て、中々面白そうなキャラ出来そうなんですが、原作に出てこなさすぎです。それじゃ無理ですね*



[4366] 火影の実力、その真価
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/12/07 00:57

いやいや、勘弁してくださいって、悪魔達が集団で来ているって?ミナクスの野郎めちゃくちゃしやがる。一匹だって俺はぎりぎりだってのによ、スキル構成まずったかなぁ・・・・・・いや、これ以上のスキルは俺単独で生き残るためには存在しないよな。


あー琴音はもう出張っていったか、悪魔相手なら琴音以上の術者はいねえわな、何処で手に入れたのやらホワイトウィルムって結構レアなはずだよな。


え?何?ついてこいって?


わかったわかった・・・・・・なんで大蛇丸と一緒なんですか、その笑みは止めてくれ、何故俺を抱えるのがお前なんだよ!

「大蛇丸様・・・・・・私が運びますよ」
「ふふふふふふふ、黙っていなさいカブト、私なりのお礼よ・・・・・・竜、いい物を見せていただいたわ、少しだけ罪滅ぼしじゃないけれども、共に行くわよ。それに私の毒も治してくれたんだって?」

あーそんなに睨まないでください君麻呂さん、別に貴方の大蛇丸を横取りしようなんて全く考えてこれっぽっちも考えていませんから。

「悪いのぉ竜、それと、ナルト、本当にいいのか?」

何が?何がいいの?ってそもそも誰が敵なんだよ、単なる悪魔だけだったら木の葉の忍び達だけで十分対応できるはずだろ?何で三忍の内二人、それも実戦型の二人が揃って尚かつ今やカカシについでの戦力になったナルトまで・・・・・・あ、俺が治した君麻呂もいたね、回復はカブトがいるし。何気に現木の葉で最高戦力なんじゃないの?

「わかってるってばよ・・・・・・じっちゃんが里に害を為すというならば、・・・・・・俺がとめるってばよ」
「穢土転生を私以上に扱える術者がいたなんてね・・・・・・暁に教えるべきじゃ無かったかしら」

穢土転生、じっちゃん・・・・・・おーい、帰っていいですか。

「なぁ、自来也、もしかして相手って」
「ああ、そういえばまだ竜には話しておらんかったか、相手は歴代最強の忍び、三代目火影猿飛ヒルゼン、その若かりし頃の全盛期だ」
「ばたばたしないでよ、運びづらいわ」


「はーーーなーーーーしーーーてーーーーー!!!!!」

「何を寝言を・・・・・・貴方のことは、私達が守るから安心しなさい、貴方の戦闘能力なんか誰も期待していないわ、ただ後ろにいて、気付いた事を言って欲しいだけよ。貴方の知識、私達では想像も出来ない技術、其所だけは期待しているから」

「大蛇丸の言うとおりだ。お主が使う変な技、まだまだ底がしれんからのぉ。期待しているぞ」

「竜、安心するってばよ、じっちゃんを止めるのは、二代目プロフェッサーの俺だってば」

「ふふふ、九尾の餓鬼が・・・・・・面白い成長したものね」
「へん、蛇野郎に言われたくは無いってばよ、精々俺の足を引っ張るなってばよ」
「さて、無駄口は其所まで、だな。どうやらお待ちかねみたいだ」

君麻呂がナルトに向けて殺気を放っていたが、ナルトは奇麗にスルーしていた。


森を突き抜け、辺りには何も無い荒野。ただっぴろい荒野。姿を隠す場所は何もない荒野。

其所に立つのは一人の忍び・・・・・・若い三代目ってこんな顔だったのか。



「・・・・・・自来也、大蛇丸、それに・・・・・・来てしまったか、ナルト」

プロフェッサー猿飛ヒルゼン。三忍の師匠にて、四代目堕ちた後も長らく木の葉の里を支えた傑物。
順々に顔を見渡し、最後にナルトに焦点が当たり、顔を少し曇らせる。

「君麻呂、カブト、竜を連れて下がっていなさい・・・・・・巻き込まれちゃうわよ」
カブトが俺を抱え、後ろに飛び退く。確かに俺は邪魔にしかならねーわな。

「大蛇丸、そなた纏う空気が変わったな、今のお主ならば火影の座を譲っても構わなかったが」

「先生、無駄口はほどほどにしておかないかしら、私は今は火影になんか何の興味もないの、忍びは忍びらしく、殲滅戦を開始しましょう。ただ、先生は強いから、私達は、三人で行かせていただくけど・・・・・・行くわよ自来也、それに、ナルト、二代目プロフェッサーを名乗るなら私にその実力を見せなさい!」

「じっちゃん、俺はじっちゃんの御陰で成長できた・・・・・・だから俺がじっちゃんを止める、止めてみせるってばよ!」

「はははははは、二人に美味しいところは取られてしまったのぉ、猿飛先生、安心して天国に行ってくれ。後は、わしらでうまくやる・・・・・・ちなみに術者は誰だ?」


かかかかかかかかかかかかかかかかかかと笑う三代目。

「言うようになったな・・・・・・わしの術者はペイン、輪廻眼の持ち主だ・・・・・・精々気をつける事じゃな・・・・・・さて、始めようか、出でよ、猿候王・猿魔」

巻物を取り出し、呼び出したるは三代目愛用の口寄せ動物、猿候王・猿魔。
「猿飛・・・・・・こういった形で再び相まみえるとは思っていなかったぞ」
「すまんな、猿魔よ、今暫く付き合ってくれ。この躰朽ちるまで・・・・・・行くぞひよっこ共!」


「口寄せ・蝦蟇ぶん太!」「口寄せ・マンダ!」「じっちゃん、もう完成しているんだってばよ・・・・・・螺旋丸!」


いきなりフルスロットルじゃねえか!

君麻呂が俺達に襲いかかる余波を全てシャットダウン、流石の戦闘経験だな。


「流石は三代目、三対一でもひけを取っていないね」
全く俺の視力では捉えられない。代わりに解説してくれているのが俺を抱えているカブト。


土が盛り上がり、雷が落ち、火が全てを埋め尽くし、風があらゆるものを吹き飛ばす。
何がどうなっているのやら。


「ナルト君も言うだけはあるね、三代目の術を一々相殺しているよ」
「一々悪いな黒須先輩、正直助かる、俺の目では全く捉えられんから」
「何、この程度だったらお安いご用だよ」
「で、穢土転生って確か完全に滅ぼすか、核をぶち抜かないと際限なく復帰しちゃうんじゃなかったっけ?」
「よく知っているね、その通りだよ。そこら辺は、大蛇丸様のことだ、心得ているはずだよ」
「・・・・・・だといいけどな。改良型とかなんとか言ってなかったっけ?そこら辺は平気なのか?」
「全てを駆逐してしまえば、害は無いはずだよ、全盛期の三代目がいくら強くても、一人では、大蛇丸様に自来也さん、それと成長したナルト君の三人の前では――無力だ」


うまく行けば、いいんだけどな。

・・・・・・切り札の用意でもしておくか、なんか嫌な予感がする。
「黒須先輩、おろしてくれ、ちょっと試しておかないといけないものがある」

俺はバックパックから、「氷の杖」を取り出した。
あんたから貰ったこれであんたに止めを指す羽目になるとは、な、人生ってのは皮肉なものだぜ。

氷の杖の特徴は「法則を乱す」事にある、うまくすれば、ミナクスにも通じるかもしれない重要な実験だ。第一俺の攻撃でしかダメージが通らないって何の罰ゲームなんだよ、あのくそったれな魔女め、再不斬がそんな能力を体得していたとは驚きだが、今はいないって・・・・・・つくづくうまくいかねえぜ。







終末の谷。


闇の中、伝説の戦いを再現するかのように二人はひたすら戦っている。
切り札を封じられたままのマダラ。
闇の中という自身に有効なフィールドの中でも、千手の死後、更に体術を伸ばしていたマダラを攻めきれないで居る千手。


突如動きが鈍くなったマダラと千手。

「「・・・・・・これは・・・・・・結界!」」


綱手が仕掛けた敵性存在に対する、実力半減の呪いに近い結界効果。三代目が影響を受けないのは自身が考案したものであるからに他ならない。


しかし、伝説の時代を生きた二人には効果覿面、結界発動と共に、呪いが二人を縛り付け、術、技、速度、ありとあらゆる面で二人の能力を半減させる。



チャクラの総量の減少に伴い、千手の闇の術が効果を失う。

「しまった・・・・・・」

露わになる二人の姿。

「・・・・・・命運尽きたな千手・・・・・・天照!」
マダラの万華鏡が巡りに巡る。
「ぐっ・・・・・・ぐわぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


永遠の万華鏡写輪眼による、相殺不可能な完全破壊の黒炎。


避けようもなく、初代火影、千手柱間の体を焼き尽くす永劫の焔。


「ふん、死者は死者らしく、冥府でも彷徨っていろ。・・・・・・借りは返したぞ、永劫にさらばだ」


何の感慨も沸かないのだろう、悪魔の群れを一瞥すると、マダラはその場を離れた。

「・・・・・・木の葉め、こんな厄介な術を開発していたのか、ふん、俺が勝ったのもこの術のお陰だというのは、皮肉だな」







暁、本拠地近く。


黄色と黒の閃光が、町の中を動き回る。

「やるね、うちは一族、僕に付いてこれる相手は久しぶりだ」


ギチギチギチギチギチギチ


クナイ同士が鍔迫り合いをする、力は互角、速さも互角。

「うちは、イタチ、俺の名だ。俺はお前には興味がない、其所をどけ」


カンッ


双方弾かれ、距離を取る、再度始まる閃光の鬼ごっこ。

「へえ、もしかして、さっき悪魔に運ばれてきたうちは一族の関係者かな?名前は、たしか」


ガスッ


イタチの一撃が四代目の腹に刺さる。

「何処にいる!」

血は出ない、イタチのクナイを抜き去ると傷すらも残っていなかった。

「何処って、今はミナクス様の所で再教育の真っ最中だよ、其所の直人と同じように新たな力を得るだろうね、代わりに色々失うけど、ね」

クナイをイタチに向け投げつけ、「瞬身の術」を再度発動。


辺りに変わった形のクナイを投げつける、それは一つもイタチにも少し離れて戦況を伺っている鬼鮫にも当たらなかった。


「何を?」

「あれ、聞いたことが無いのかな、僕の一番の得意忍術「飛雷神の術」をっと」

イタチの万華鏡写輪眼が、黒炎を生み出す。

紙一重で避ける四代目。

「・・・・・・避けられるタイミングでは無かったはずだが?」

いつの間にか離れた所に位置していた四代目。

「これが、「飛雷神の術」さぁこれからはずっと僕のターンだ。すぐ終らないでよね、これからが楽しいんだからさ」

イタチは危険を感じ、その場を最大全速で離れようとした。

「すごいね、一度見ただけで危険度を肌で感じたのか、カカシ君以上の実力者だね」


ザンッ


イタチは直感に従い、片手を防御に回す、だが、攻撃を防いだ片腕が四代目に斬りとばされる。

「水遁・真水鮫弾の術!」

鮫を象った水の術が、確実に的確に四代目のいた所を噛み砕く!

「おっと」

何気ない動作で避ける四代目。避けられるタイミングではない。

傷付き、地に墜ちる途中のイタチを抱き留め、撤退する鬼鮫。

「イタチさん、不本意ですが、撤退です、想像以上の化け物ですね、術の正体を掴めない限り私達に勝ち目はありません」


「ずっと僕のターンだと言ったでしょ?逃がしやしないよ」

いつの間にか二人の前に立ちはだかる四代目。


「参りましたね・・・・・・かといって私では速さについていけませんし・・・・・・霧隠れの術」

霧が鬼鮫の体から吹出し、全てを霧で埋め尽くす。

「リースさん、撤退しますよ!」







イタチ達とは少し離れたところ。

「そなた、竜の知り合いじゃな」

「誰のことです?」

「ふむ・・・・・・昔の名前をカイと言う。我の下僕じゃ」

「・・・・・・下僕」

「まぁよい、行くぞ、何処まで抗えるか、見せて貰おう、伝説の剣豪」

「スキルが・・・・・・見えるのですね」

「押しつけられていようがなんだろうが、我には関係ない・・・・・・ただ、お主には音楽の方が似合ってはいるがな」

「・・・・・・僕も、そう思います・・・・・・いざ!尋常に・・・・・・勝負!」

「勝負、ではない、これは単なる否定にすぎない。こい!」

リースが手にするは、イタチの背中から抜き払った忍者刀。

切り結ぶ刀と刀。

合間合間に入る魔法に対応すると、リースの直接攻撃に間に合わない、刀で切り結ばれてしまうと、直人はリースには勝てる道理が無い。


始まって三分。

魔法をうまく避け、攻撃を仕掛けてはいるのだが当たらない。
もう直人はぼろぼろだった。


「腕の一本や二本切り落として連れ帰ろうか・・・・・・竜が泣いておるぞ」

「・・・・・・とても魅力的なお誘いですが・・・・・・まだ僕は帰ることが出来ません」



「ふむ」






「リースさん、撤退しますよ!」

「ふん、運がいいな。そちの言う時期とやら、確実にくるものなのか?・・・・・・さらばじゃ」

「・・・・・・ええ、必ず来ます」
直人は悲しく、唯静かに呟いた。




「・・・・・・リースさん、イタチさんをお願いしますね」
視界零の霧の中、合流した鬼鮫は抱えていたイタチをリースに託す。

「・・・・・・何を言っている?」
イタチはすぐさまリースの回復魔法で腕を修復したが、血は回復できず、意識を失っている。其所が魔法と包帯技術の違い、リースではどうにも出来ない技術の差だ。

「霧が晴れれば四代目が襲ってきます・・・・・・流石にリースさんでも分が悪い相手です、ですから、私が足止めしますので、イタチさんをお願いします・・・・・・暫しの間でしたが、楽しかったですよ。イタチさんの意外な面も見れましたし、・・・・・・ピンチを助けるのも相棒の役割です」


怖い顔でにこやかに微笑み、鬼鮫はリースにイタチを託した。


「お主の覚悟、確かに受け取った・・・・・・決して無駄に命を散らせるでないぞ・・・・・・お主にカルマの加護があらんことを」


一部開放、本来の翼に比べれば極小の翼をはためかせ、リースはその場からイタチを抱え飛び去った。


「さて・・・・・・待っていていただいて有り難う御座います」


霧を晴らす鬼鮫。


「別に・・・・・・僕はただ侵入者の相手をしろって言われただけ、止めをさせなんて言われていないからね。で、まだやるの?」


鮫肌を構える鬼鮫。


「ええ、敵の言葉を信じる忍びが何処にいるんですか?イタチさんが逃げ切るまで、ペインの術の効果範囲から逃れるまで少々相手をしていただきます」

寂しげに笑う四代目。

「そう、ならば、僕も全力を尽くそう。・・・・・・それが君に対する最大限の賛辞だから・・・・・・名前を伺ってもいいかな?」

「私の名前は、干柿鬼鮫。では、始めますか」


黄色い閃光が走る。


落ちる鬼鮫の首。

「干柿鬼鮫、確かに刻んだよ・・・・・・安らかに眠れ。誇り高き忍者に幸あれ」

四代目は敬意を払い、鬼鮫の死体を完全に滅した、誰かに利用されないよう、自分の様な悲しき戦士を生み出さぬよう。

「直人、帰ろうか、平気かい?」

「・・・・・・ええ、私にはお気になさらずに、一人で帰れます」

「そう、では先に帰ってるね」

光を失った直人には見えなかった、四代目の頬を濡らす液体の事には気づけなかった。


後には、鬼鮫が愛用した鮫肌、そして「南」の刻印が入った指輪が静かに地面に落ちていた。






*二代目火影?そんな人も、いましたね*



[4366] 全滅戦争、惨禍
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/12/08 16:42


悪魔、デーモン、Deamonの実力はUOの中でも中級程度に位置している。


GMクラスの前衛、それと補佐する後衛がいれば十二分に対応できる程度の相手だ。


ましてや一人一人が、遥かなる個人能力を持つNARUTOの世界、どう考えても苦戦する要素は存在しえない。



だが、それは、相手が一匹だけの時の話。


幾ら統率が取れていない相手、いくらただ闇雲に攻め込んでくる相手、そんな相手だとしても数が一千を超えれば話は別だ。


そこそこの攻撃速度を持ち、そこそこの魔法詠唱能力を持ち、そこそこの移動速度を持ち、そこそこの相手を選ぶ知恵を持つデーモン。


一匹では楽勝、二匹でも十匹でも中忍クラスなら相手にならない、だが・・・・・・千を超えたとき、カカシクラスの忍者でなければ、命を落とす羽目になる。


砂の忍び達は、ゲリラ戦を仕掛けていれば話は別だった、影から少しずつ狩るのが本来の忍びの戦い方、被害は最小限に戦果は最大限に。


数もまた、全てを超越する、いくら人間離れしているとはいえ、あくまで人間の忍び達、全力で戦っていては、限界もまた、早い。


復活したカンクロウの旗印の元、砂の忍び達は前線でよく頑張っていたと言えよう。


抜かれてしまえば其所は砂の里だ、守るべき対象を守れずして、戦力の名は語れない。


しかし、援軍が来るまでの数十分、断末魔が響き渡る。


「・・・・・・くそっ・・・・・・もう限界じゃん」


辺りを見渡すと、自身を庇い致命傷を負ってしまったバキ。

カンクロウが操っていた赤秘技・百機の操演も、動きを失い、今は愛用のカラス、クロアリ、山椒魚の三体のクグツを使い、チャクラを騙し騙し使いながら遅延後退を仕掛けている最中だ。

彼らの踏ん張りは悪魔の数を三分の二までに減らさせていた。


砂に来た悪魔の総数は一万と少し。

全里に送られた悪魔の総数は五万を超える中で、まずは試しとばかりに送られた悪魔達。


我愛羅の宣言が、ミナクスの目にとまりこの事態を引き起こしていた。


「・・・・・・風の刃!」

回避不可能の風が刃となり、悪魔数体を討ち滅ぼす。


「・・・・・・無茶するな・・・・・・時間まで・・・・・・後少しじゃん」

バキは傷つき、答えることは出来ない、ただ単発的に術の行使をしているだけだ。

他の忍びの姿はすでにない。

悪魔達はまずは進行を邪魔するものの排除に入り、カンクロウ達はかろうじて里への侵入を防いでいる状態だ。


悪魔はひるまない、悪魔はとまらない、破壊をもとめし悪魔達は格好の獲物とかした二人に対し更なる破壊の力を振う。






里の後方では、我愛羅を抜かした状態での最高実力者、ちよ婆を核とした、絶対防衛ラインがしかれていた。

そのすぐ後には、砂の里が控えている、抜かれればそれは虐殺の始まりを意味する。


遠見の術を使わずとも、カンクロウ達の戦いは見えていた。

一糸乱れぬ陣形の中、はやる気持ちから動く中忍。


「・・・・・・動くな」

ちよ婆はめざとく注意をする。
注意をされた中忍は、びくっと身を強ばらせる。


「・・・・・・ですが・・・・・・カンクロウ様が・・・・・・」

ちよ婆に対し抗弁をする一介の中忍。


「・・・・・・動くなというておる・・・・・・わしらの後ろに控えているのは、力なき里の民・・・・・・戦力の逐次投入は下策も下策、カンクロウには遅延防御を念頭に置かせておる・・・・・・もし、我愛羅が帰ってこれない事態になっていたら、もし間に合わなかったら・・・・・・わしらが悪魔を止めるしか無いのじゃ」


なおも反論を繰り返す中忍。

「・・・・・・ですが!」

「・・・・・・動くな、二度は言わん、今は、動くな、それがわれらに出来る事じゃ」

隣の上忍が、中忍の肩を叩き、振り向いた中忍に首を振る。

そのまま小声で話をする。
「ちよ婆様が一番焦っておられる・・・・・・陣形が崩れれば個人の能力に頼る羽目になり、それは全滅を招く。一番カンクロウ様を助けに行きたいのは・・・・・・ちよ婆様だ、見ろ」


上忍が指さすはちよ婆の両の手、滴り落ちる赤い液体。


「今にでも飛び出したいだろうよ、何せ久々に取った期待の直弟子だ。だが、そんな真似は、砂の為に出来ない。カンクロウ様が今、絶望的な戦いをしているのは、何のためだ?」


「・・・・・・砂を、守る為」

中忍は、小さく呟く。
「そうだ、我らの力は砂のためにある・・・・・・それは我愛羅様も、ちよ婆様も、カンクロウ様も代りはない。どうだ、今我々がやるべき事は、わかったか?」

中忍は気付く、其所に立っている者全ての両の手が、あり得ないほど握りしめられている事を。

「・・・・・・わかりました」


最前線は、ほぼ全滅してしまった。



ゆえに、砂の国は最後の一線は守りきれることとなる。






ブォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!



白い巨体から吐き出されるは、灼熱を超えたブレス。


赤い巨体がひしめきあう最前線を直撃する、聖なるブレス。


「AAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaalllllllllllllllllllllllll fireeeeeeeeeeeeeeeeeee!!!!!!」

高らかに、歌いあげるように琴音の声が砂の里、最前線に響き渡る。


空を駆ける黒い馬に乗った琴音、その後に続く二体の白い竜、琴音の後ろに立つのは、額に愛の字を刻んだ。砂の国最強の男。一尾の人柱力、我愛羅。



カンクロウ達の奮戦により、多少なりとも数を減らしていた悪魔達、だが、未だ残りの数は7000を優に超える。



だが、二人と三体は怯まない、怯えない、揺るがない。


「・・・・・・流砂瀑流!」

顔の前で手を合わせる拝むようなポーズを取る我愛羅。

声には隠しきれない静かな怒りを込め、我愛羅は力を解放する。


突如現れた、砂の津波が悪魔達を飲み込んでいく。


「・・・・・・砂瀑大葬!」

叩いた手を天に上げ、地面に向けて振り下ろす我愛羅。
一気に地中深くまで連れ込まれる悪魔達、ものの数秒で圧力により命を散らせる悪魔達。


口笛を吹き、余りの実力に感心する琴音。
「やるわね、流石は風影といった所かしら」




「・・・・・・相変わらず・・・・・・美味しい所を・・・・・・もってぐじゃん。助けが来たぜ・・・・・・バキ、バキ?・・・・・・駄目、か、よ」
チャクラ切れで意識を完全に失うカンクロウ、バキを抱えながらクグツは糸が切れたようにコテンと落ち、カンクロウもまた、地面に落ちた。

横付けする琴音達。

「・・・・・・黒炎、この二人を運んで頂戴」
ナイトメアから飛び降り、一人と一つの遺体を縛り付ける琴音。


ひひーんと嘶き、ナイトメアは二人を後方に運んでいった。

「おいでませ、白王」

新たに乗騎として、ユニコーンを呼び出す琴音。

「もうちょっと待てば、犬塚に油女も来るけど・・・・・・待てないようね」

琴音がため息をつきながら見る、我愛羅の背中は怒りにうちふるえていた。


「援護はするわ、無茶はしないで・・・・・・貴方が死ねば砂の里は、もう終わりよ」


「・・・・・・全て分かっている。俺は唯、全てを壊すのみ・・・・・・足を引っ張るな、木の葉の女」

バシーン


我愛羅の頭を叩く琴音。

「私の名前は琴音、よ。今だけだけど、相棒の名前くらい覚えなさい、我愛羅?」

信じられないと言った目で、自分を叩いた女を見る我愛羅。
「さぁ行くわよ、覚悟しなさいミナクスの手下!」





光り輝くブレスと大量の砂が、侵入してきた悪魔達を駆逐する。


その様子はちよ婆達の位置からも見えた。


沸き上がる歓声。最も頼りになる男が帰ってきた、それに木の葉の援軍も来た、沸き上がらない方がおかしいくらいだ。


ちよ婆に意見した中忍は、歓声を一番に上げていた、ちよ婆は咎めることはしなかった。
助け出された虫の息のカンクロウ、すぐさま医療班の元に運ばれ治療に入った。


砂の戦争は終った。

砂の忍びの犠牲者、全体の三分の二。

1個の会戦の被害としては全滅と表現される。



砂はもはや、我愛羅個人の力に頼るほか、国防の手を失ってしまった。

我愛羅はこれ以降、里を離れることが出来なくなった。





竜はまた一つ、ミナクスに対する有力な個人戦力を欠く事になった。








雨の里、鬼鮫の遺した「鮫肌」、その近くに現れる影。
「・・・・・・改めて、とんでも無いね四代目ってのは、本当に何とか出来るのかな、マダラはどう考えて居るんだろう」

影の名前はゼツ、ゼツの手には「南」と刻印された指輪が握られている。

「ユックリトハシテイラレネエゼ、スグペインニ、バレチマウ」

ペインの雨の術は未だ降り続いている。ゼツが存在したことはペインに伝わっていると考えて間違えはない。

「それもそっか・・・・・・指輪も手に入れたし、じゃ、帰ろうか」

「オニノイヌマニッテヤツダナ、ホラ、キタ」

薄れゆく影、鮫肌以外何も残っておらず、感知してきたペインはそのまま帰って行った。

「・・・・・・こそこそと何か企んでいるようだな・・・・・・トビめ、隠していた力でもあるというのか?」

術の感触で初代火影の敗退を知ったペイン。


所詮捨て駒、ペインには何の痛痒も感じなかったのだが、ペインはトビについて不気味なものを感じていた。







元、音の里近く。

「白、一人また堕ちた・・・・・・確認に行くぞ」

再不斬は時間が経つにつれ、鋭敏に為っていく感覚に手を焼いていた。

大蛇丸によって無理矢理上げられた身体能力。


強敵との戦い、四代目との戦いを経て、再不斬の体は更なる成長を遂げていた。

戦えば戦うほど強くなる、常人ならば耐えきれない痛みと共に成長を伴う、とんでも無い体。

今までの力を10だとすると今は13。仕込まれた術にも慣れてきており、始めて相対した見えない敵。
辛くも頑丈さとタフネスのみで渡り合ってはいたが、このままでは勝てないと判断した体は再不斬の意志とは裏腹に更なる進化を遂げるに至る。


「・・・・・・ようやく馴染んできたな・・・・・・さてさて、鬼鮫じゃねえだろうな」

白はにこやかに微笑みながら、黙って再不斬の後に付いていく。


道を邪魔する悪魔はもう、再不斬の敵の数にも入っていなかった。







暁、本拠地近くの空。

イタチは、気怠い感じと共に、頬をうつ空気を感じ、目覚めた。

「・・・・・・どうなった・・・・・・俺は、確かあいつに・・・・・・」

「喋るな、動くな・・・・・・落ちるぞイタチ」

下を見るとリースが手を上に回し、バランスを取りながら飛んでいる最中であった。

「・・・・・・鬼鮫は、どうした、無事逃げられたのか」

「喋るなと言ったはずじゃ・・・・・・鬼鮫はもうこぬよ」

「・・・・・・どういう、事だ」

「人間の考えることはよくわからん、だがあやつは・・・・・・お主の為に残ったぞ」

「・・・・・・戻れ、リース」

「・・・・・・このうつけ者・・・・・・鬼鮫の本意を無駄にするつもりか?」

黙り込むイタチ。

「何故だ、何故鬼鮫は残った、俺達は元々・・・・・・」

リースの翼がイタチの頬を打つ。

「この大うつけ者が!仲間である、それだけで十分では無いのか!?あやつは少なくともそなたを仲間と思い、我にそなたを託したのだぞ!」

「・・・・・・馬鹿な・・・・・・鬼鮫がそんな不合理な事を取るわけが」

「相棒だから、相棒が危ないときは身を張って助ける、それが相棒だから・・・・・・鬼鮫はそう申していた」

「・・・・・・わかった・・・・・・リース、・・・・・・木の葉へ向かってくれ・・・・・・かつての契約を、老人達に果たさせる」

「ふむ、わかった。方角はどっちだ」

「・・・・・・このまま、まっすぐでいい・・・・・・魔女、・・・・・・そして四代目、か」

小さく呟き、イタチはそのままリースに身を任せた。








木の葉の里、術の研究所。

「なんて術を使っているんだ・・・・・・こんなに反動がきついとは・・・・・・」

カカシは、とある術の練習を繰り返していた。四代目を倒す為に絶対に必要になる術。

しかし度重なる実験により、発動に関してはクリアしたものの、術に掛かる多量のチャクラにカカシは舌を巻いていた。

「カカシさん!無理はしないで下さい!データを取り、また構成を考えますから!」

白衣を着た男達がカカシを諫める。しかし、


「馬鹿いってんじゃないよ・・・・・・この術は生半可な手段じゃ体得出来ない術なんだよ、後は俺の頑張り次第。研究者にはわからないかな」

再度発動、壁際まで一気に吹き飛ばされるカカシ。


「ぐわぁあああああああああああああああああああああああ!!!」

カカシの体を襲うねじ切れるような痛み。


「いかん、沈静結界発動!」

痛みを抑制し、少しばかりの回復効果もある結界が研究所実験室内に張り巡らされる。


「はぁはぁっはぁっ」

肩で息をしているカカシ。

「・・・・・・まだまだぁ・・・・・・」

「無茶ですカカシさん!」

ウィンクを返すカカシ。
「何、外じゃ皆が戦っているんだろ?俺ばっかりさぼる訳にはいかないでしょ」

滝の様な汗を流しながら、カカシは再度術を発動。


悲鳴が繰り返される。


眼鏡を掛けた、白衣の男が仲間に話しかける。
「なぁ、気付いているか?」

画面に映し出されるカカシのチャクラ等、身体データ。

「何がだ!?止めさせないとカカシさんの体が!」

画面を指さす眼鏡の白衣の男。
「ズレが、徐々に小さく成っている・・・・・・今まで四代目以外、誰も発動出来なかった術なんだぞ、それがたった数時間で・・・・・・」


白衣の男達はカカシを直に見る。
カカシの口には笑みが浮かんでいた。

「・・・・・・カカシさん、頑張って下さい」
「そうだ、頑張れ!木の葉の白い牙!」

今まで止めようとしていた白衣の男達は一斉にカカシの応援に回りだした。


いつものとぼけたような顔で、周囲を見渡すカカシ。口元には再度笑みが。
「・・・・・・ああ、ここで期待に応えられないようじゃ・・・・・・親父を超える事なんて一生掛かっても出来ないでしょう、俺に、任せなって」
にひるな笑みを周りに振りまくカカシ。


歓声が、巻き起こる。発動すら絶望的だった術を可能にした天才忍者、否、この姿を見て単なる天才だと断定する者は、いない。


「先生・・・・・・やっとだ、俺を天才だって言う人が居るけど、真の天才のあんたに比べれば、俺は凡人だよ・・・・・・だが、やっとあんたの尻尾を掴む所まで辿り着いたよ・・・・・・あんたの悪夢は、俺が止める」

カカシの特訓は再度続く。


周りの研究者達の目に、希望の色が浮かんできた。



[4366] 三代目火影、猿飛ヒルゼン
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/12/08 21:47
うん、駄目だ、どう目を懲らしても絶対に俺には見えない。

「Kal Vas Xen Hur」

召還、エアエレメント。


ぐぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!


と産声を上げ、風の精霊が生まれた。今回は目立つのは禁物、空に浮かんでいれば、全く見分けが付かないこいつの力が必要だ。


っと。

風の精霊とリンク、スタート。


見える見える。

三代目の術をナルトが同じ系統か、対消滅する系統で相殺。

大蛇丸の草薙の剣、自来也の螺旋丸、すげえな自来也、あんな短時間に連続して螺旋丸を生み出すなんて、まだまだナルトには出来ない真似だ。





・・・・・・なんかおかしくね?

「なぁ黒須先輩」

「何だい?」

「余りに、三代目が、弱すぎやしないか?」

だって最高の忍びって呼ばれていたんだろ?なんで生半可なナルトの術で相殺なんかされているんだよ。

それに猿候王・猿魔、マンダを騙していたサスケ、それから考えるに自分が認めない相手には従わないはず、なのに、何故未だ従っているんだ?




「どうしたの先生、らしくないじゃないの!」

草薙の剣と如意棒が打ち合わされる、原作と違い、軽やかな動きのそれは、草薙の剣を奇麗に捌ききる。

後ろから仕掛ける自来也。

「螺旋丸!」

軽く身を捻るだけで攻撃を避け、離れた状態で取り出すは一枚の手裏剣。

「やらせるかってばよ!」
同じく手裏剣を取り出し、三代目とナルトは同時に投げつけ、印を組む。


「「多重影手裏剣の術!!」」


一枚が二枚、二枚が四枚、四枚が八枚、といったように倍々に増える手裏剣の数。


全てが相殺される・・・・・・いや、おかしすぎる。


「・・・・・・An Ex」

三代目がこちらを睨む。俺はびびって魔法を中断させる、迫力有りすぎだって!


「・・・・・・三代目は、介入を望んでいない?」

当たり前の話、か?俺の魔法は一つ一つは取るに足らないってことを一番知っているのも三代目だろうに。


猿魔が、従っている理由、猿魔は理由無き破壊なんかに従う奴じゃない、奴は気高き口寄せ動物だ。

「・・・・・・もしかして、三代目は」

いや、まさか、そんなことをすれば・・・・・・絶対に何らかのペナルティーが・・・・・・。


「なぁ黒須先輩、穢土転生ってのは蘇らさせた術者に絶対服従の術だよな?」

「うん、そうだよ」

「もし、術者の意図に逆らおうとしたら――どうなる?」

「いや、無理だね、大蛇丸様が創った術だよ?そんな生易しい術じゃない」

確かに・・・・・・大蛇丸の術にそんな不備があるわけが・・・・・・まて、三代目は穢土転生を誰よりも知る位置にいたのも事実。何時完成したのかしらないが、三代目は、里に存在する、全ての術を知る忍び、プロフェッサー、どんな術でも長所短所全てを把握している忍びだ。


ならば―ー

「自分が黄泉がえりをさせられたときも、対策を、練れた?」

いやいやいや、そんなことどう考えても・・・・・・

でも、他に、
考えが・・・・・・

穢土転生ってのは、全てを同時に吹き飛ばさなければ、それかコアを吹き飛ばさなければ解除出来ない術だ。


逆を言えば、多生の傷なんか無視して術を繰り出すことが出来る、幾らでも鍛えることが出来る。これ以上ないほどの実戦体験として、命を賭けた、真剣な戦争として、鍛えることが出来る。自分が外道の手に墜ちようとも、外道に逆らうことにより、痛みを感じないはずなのに、絶え間ない痛みに晒されようとも、里の為ならば・・・・・・三代目は、やる。


それならば、猿魔が従っているのも、理由が分かる。


自分を従えている外道の脅威を感じた三代目、だっておかしいだろ、術者の名前なんかばらせるわけねえだろうが。それだって術者に逆らっていることに他ならないだろうが。


そして、外道の姿を見て、更に上に立つ者達の実力を目の当たりにして・・・・・・三代目は里の決戦存在を鍛えようと、痛みに逆らい外道の意志に逆らい、此処に立っている。


全ては、里を守るため、全てはナルト達の事を思い・・・・・・もしかして四代目に相まみえた時から、考えていたんじゃねえのか?


ナルトは、必ず四代目と対面する、感動のご対面だ。ただし、敵と味方、じゃなければな。


外道の手に墜ちた四代目、その最高の才能をまんべんなく使い、木の葉に牙を剥く。

三代目を殺したように、数多の木の葉の忍びを手に掛けてしまう、四代目。


ナルトは必ず立ち向かう、如何に勝ち目が無くても、如何に相手が父親だと知っていても知らなくても、ナルトの性格を考えると、絶対に立ちむかう。――木の葉を、三代目に託された意志を守るために、ナルトは・・・・・・勇気を振り絞り、戦う。


そのナルトの為ならば、三代目は自分の事は省みないだろう、だから口走ったのか、「来てしまったのか、ナルト」ってな。


四代目と相対することを確信したのは、あの時だろう。


出来ることなら、戦わせたくはない、血みどろの忍びの戦いに親子を巻き込みたくない。だが、決して避けられない戦いならば。自分を出汁にして、ナルトを鍛えよう、親に子供を殺させないように、親を殺す羽目になったとしても、挫けないように、負けないように心に負けないように。


・・・・・・ナルトと、四代目は、逢わせちゃいけないんだな・・・・・・わかったよ。三代目、全部俺の勝手な思いこみかもしれねえが・・・・・・。



「In Ex Grav Flam Sanct Flam Sanct」

大蛇丸と自来也が列に成った瞬間、二人を同時に麻痺にさせ、同時に二人にリアクティブアーマーを張る。

ダメージが一でも入れば、二人は動けるようになるし、直接的なダメージを全て一度だけカットするリアクティブアーマー。


これで二人は一撃で死ぬことはない。


驚いているナルトと三代目。

「・・・・・・何の真似だ?竜」

こええ、けど、此処は譲れない。
「悪い・・・・・・少しだけ、二人を戦わせてくれ、頼む」

「自来也、いいじゃない、こういう展開もありと思ったから竜を連れてきたんでしょ?」

俺を擁護する大蛇丸。

「あ、殺しちゃ駄目よ君麻呂」
ピタッと俺の首筋直前でとまった君麻呂の骨、うん、見ていなかった、死ぬ寸前だったのか。

不満そうに俺から離れる君麻呂、大蛇丸の前に立ち、とことん守るつもりだ。

弦野といい、君麻呂といい、音の連中はつくづく命の恩人に対して冷たいねぇ。


「・・・・・・やはり、お主か、竜・・・・・・つくづく不思議な子供じゃな、じゃが、わしの意図を一番に察するのもお主なのは、なんとなく、わかっておったよ。すまんな、手間を掛けさせる」


当たったか。・・・・・・全然嬉しくねえや・・・・・・あんたは本当に里の事しか、考えていないんだな。


「じっちゃん、・・・・・・どういう事だってばよ」

「・・・・・・ナルト、お主はわかる必要はない、ただ、わしと戦え、忍びは忍びらしく、血みどろの殺し合いじゃ・・・・・・ただ、全盛期の姿とは言え、器により万全ではない、わしを超えられなくば・・・・・・火影にはなれんぞ」

如意棒を構える三代目、三人同時に相手をしていた時よりも、圧力が増す。



だが、・・・・・・殺気は無い、ね。

四代目、大蛇丸、君麻呂、我愛羅、サソリ、沢山の人間の殺気を感じたことがあるから、わかる。

っていうか毎度思うがよく生きてるな俺。

・・・・・・三代目の覇気には、殺気が全く混じっていない。


最初から変じゃないか、何で一歩強い術で始末をつけなかった。

まるで、ナルトの術の確認を、仕上げを見ているようじゃないか。自分の教えた術をちゃんと使いこなせているか。術の判断は間違っていないか。展開速度はきちんと間に合っているかどうか。


三忍の内二人を同時に相手にしながらやるのが三代目クオリティーなんだろうけど、・・・・・・親を殺させるために、孫と思っていた相手を鍛えるのは、どんな感じなんだろうな。



「来ないのか?いいのか、お主が戦わねば、里の人間全てが死ぬぞ。里を守るという意気込みは、二代目プロフェッサーと名乗った心意気は、全てまやかしだったのか?」


ナルトの目に闘志が灯る。

「嘘なんかじゃないってばよ!俺は・・・・・・」

「火影になるんじゃろ?ならば・・・・・・わしを超えて見せよ!この馬鹿者が、さっさとかかってこんかぁあああああああ!」

覇気がたっぷりと込められている三代目の大声。

「行くぜ!俺は、じっちゃん・・・・・・違う、三代目火影、猿飛ヒルゼンを超える!螺旋丸!」


完全なチャクラコントロールにより、影分身を伴わず、単独でなし得るようになった螺旋丸。


避けられるナルトの攻撃。

「その程度なのかぁあああ、ナルトぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
如意棒がナルトを容赦なく打つ、消えるナルト、影分身!


「まだまだ!今、俺は、あんたを、超える!瞬身の術・・・・・・改!」

四代目の血を引く、ナルトの遺伝子の力なのか、九尾の力なのか、ナルトの体が――消え、金色の閃光となる。


「・・・・・・チャクラの性質変化の風を、体全体に這わせた上での瞬身の術、か・・・・・・あれは僕には真似が出来ない・・・・・・いや大蛇丸様だって出来るかどうか」


風の性質変化を込めた螺旋丸は、圧倒的な攻撃回数で角都を圧倒し、殺害に至った。

それを体に這わせれば?


背中に向けて放出した風、前を切り裂き真空状態にして空間力も利用した移動速度の倍加。

全てを切り裂く風を身に纏った上での、突進。


触れる者全てを切り裂く人間大の台風って所か。

感覚的には、結界士の「絶界」みてえなものか・・・・・・。さて、当たった結果は。


傷一つ無い、三代目、だが言葉を発さない動かない。


「・・・・・・失敗か?」

呟く自来也。
時間によりパラライズの効果が途切れる二人。


「・・・・・・ナルト・・・・・・」

小さな声、三代目の声、若々しい声ではなく、しゃべり方にあった、老いていた頃の声。


「・・・・・・見事じゃった・・・・・・」

猿候王の姿に戻る猿魔。

「猿飛・・・・・・」

「猿魔よ、ナルトを頼んだ。わしはどうやら此処までのようだ」


ぼとっ


右腕が朽ちて落ちる三代目。
頷く猿魔。

「――どうやら、核に当たっていたみたいね」
何処か、寂しげな顔をしている大蛇丸・・・・・・キャラじゃねえよ、ねえけど・・・・・・。


ぼとっ・・・・・・どん。


足がもげ、地面に倒れる三代目、肌がみるみる精彩を無くしていく。

「・・・・・・じっちゃん・・・・・・」

「これ、泣くで無い、火影になるんじゃろ?・・・・・・火影は強く無くてはいかんぞ、身も、心も、全てがのぉ」

未だ繋がっている手の先が風化し、塵となっていく。


「まだ、里は戦闘中じゃ・・・・・・いいか、ナルト、それと自来也、・・・・・・大蛇丸」

声が嗄れていく。
「何だってばよ」「なんだ」「・・・・・・何よ」

三人は耳を傾ける。
「・・・・・・木の葉を・・・・・・世界を任せたぞ・・・・・・それと、竜」

声はもう蚊の泣くような声だ。注意しなければ何も聞こえない。

「何だよ、三代目・・・・・・俺が出来ることなら何でもするぞ」

「・・・・・・お主の特殊な技術が頼みなのじゃが・・・・・・わしに使われている札。大蛇丸の位置を特定した技術で、術者のペインの本当の位置を、特定出来ぬか?」

・・・・・・Trackingか。

基本は本人を目の前にしたおいかけっこ専門スキルのような気もするが、
札からなんて・・・・・・出来るのかな?

――出来るよ、力を使えば、ね。使うかい?マスター――

・・・・・・ああ、こうなりゃとことん使っていこうじゃねえか、どうせもうアバタールは間に合わないんだろ?

「ああ、出来るぜ、出してくれ、三代目」


「出したら、確実に朽ちるわね・・・・・・何か言い残したい事でもあるなら、話したい事があるなら今の内に済ませなさい・・・・・・私は、何もないわ。死者には興味が無いもの」

そう言い残し、大蛇丸は君麻呂、カブトを引き連れ、里に帰っていった。


「・・・・・・相変わらず素直じゃない奴だな、最後まで・・・・・・泣きたければ泣けばいいのになぁ」

自来也はそのまま別方向に進んでいった。悪魔の駆逐でもしていくのか。


「・・・・・・じっちゃん・・・・・・俺は・・・・・・俺は・・・・・・」

ぼろぼろの先が無い左手でナルトの頭を撫でる、三代目。


「もう、何も言わずとも良い・・・・・・わしは幸せじゃ、わしの意志は確かにこの里に伝わることが確認できただけで、幸せじゃよ・・・・・・ナルト、さらば、じゃ」

無理矢理胸の位置に隠されていた札を取り出す三代目。


一層風化の速度が上がっていく。

・・・・・・Tracking!

*対象の特定に、成功しました*

「出来たぜ、三代目・・・・・・これでペインは、終わりだ」

もう声も出ない三代目、ただ、その顔ににこやかな微笑みを貼り付けて、全てが塵となった。


ナルトは泣いている、我慢しているようだが、止め止めとなく涙が溢れているようだ・・・・・・今は、泣け。お前を待ち構えている運命は、より一層過酷なんだからな。


確実に感じるペイン本体の場所、距離までばっちりだぜ・・・・・・いよいよ、今度はこっちから攻め込む番だな。





・・・・・・予想が外れ、ミナクスに対する実験は出来なかった、だが、敵の大ボスのペインの弱点をゲットした、ナルトも限りない成長を遂げた、待っていろミナクス・・・・・・待っていろ直人!



[4366] 全滅戦争、終結
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/12/09 14:27


火影執務室、綱手は、自らも前線に立ち向かいたい気持ちをぐっと押さえ、ひたすら状況を聞いていた、見ていた。



入ってくる情報は、概ね良好。

里に張り巡らせた敵性存在に対する実力半減の結界――三代目の遺産が有効に働いている所為か、被害らしい被害も無しに、里に入り込んだ悪魔達を順調に駆逐しているようだ。



一日が終りに差掛かろうとしているとき、執務室に現れる三人。


「・・・・・・戻ったわよ、綱手、苦戦しているような所はあるのかしら?」
大蛇丸、君麻呂、カブト。


「ほう、里の事を気に掛けてくれるのか?・・・・・・ご苦労だった、今は特に無い。勝手に出しゃばっている自来也が鬼神の勢いで予想以上の戦果を上げている。これ以上里に被害が出る要素は存在しない、・・・・・・部屋を用意させている、体を休めておけ、これが終れば、・・・・・・こちらの番だ」


綱手の遠見の水晶の前に映るは、蝦蟇ぶん太を使役し、恐るべき勢いで悪魔を駆逐している自来也、三忍の威光をしらしめるよう、完璧な実力で悪魔を次々に葬り去っていた。
頷き、部屋を後にしようとする三人、その時窓から二つの人影が舞い降りた。


六歳くらいの美少女、それと黒一色で塗り固められた、昔の木の葉の暗部の装束の男。



「・・・・・・お久しぶりです、・・・・・・今の火影は貴方ですか、綱手さん」


瞬時に綱手の前に立ちはだかる大蛇丸、大蛇丸をサポートする君麻呂、カブト。


「おや、大蛇丸さんもいらっしゃったのか、よしてください、今は僕は暁とは無関係、特に木の葉と敵対する意志はありません」


戦闘態勢を崩さない大蛇丸。

「大蛇丸、有り難う、だが、イタチの言葉は本当だよ。今この部屋は敵意を持つものは入り込めない作りに成っている。入ったところで実力が八分の一にまで落ちる、そんな相手に私が負けるはずもない・・・・・・話を聞こうか、どうした元、木の葉一の天才忍者と呼ばれた者よ・・・・・・確か今は「龍」と名乗っていたはずだな、後一人、霧の怪人、干柿鬼鮫はどうした?」

ようやく戦闘態勢を綱手の言葉で解く大蛇丸、そのまま壁を背にし、事の成り行きを見守る態勢だ。

「・・・・・・鬼鮫は・・・・・・もういない、四代目に殺された」

言葉を絞り出すイタチ。


「・・・・・・ふむ、その責任を木の葉に取れという話でも無いようだな・・・・・・今更木の葉に舞い戻り何のようだ」

「・・・・・・貴方は直接聞いたことが無いかも知れないが・・・・・・うちは一族と木の葉の契約を果たして貰いに来た」

額に指を当て、考え込む綱手。

「くくくくくくくくくくく、里の上層部辺りが考えそうな事ね・・・・・・綱手、知らなければ知っている相手を呼んだ方が話は早いはずよ、ご意見番を呼びなさい。ダンゾウも忘れちゃ駄目よ」

口を挟む大蛇丸。

「大蛇丸・・・・・・まぁいい朧火、聞いていたな、至急幹部会議だ、ご意見番、ダンゾウ、その他の幹部も呼んでくれ、戦況に支障がない範囲で十分だ。現場で何かあったら構わず報告するように」


はっと小さく答える声と共に護衛の暗部一人が、その場を離れていった。


「これでいいか?イタチ、ところでずっと気になっていたんだが・・・・・・その幼女は・・・・・・お前の趣味か?」

イタチの頭の上に跨っている、肩車をしているリースの姿を認め、綱手は問う。


「・・・・・・気にしないでくれ、こいつはこう見えても」

渋い顔になったイタチの顔を小さい足でけっ飛ばすリース。

「何でもない、こいつの事は意識から消してくれればありがたい」


「くくくくくくくくくくくくくくくくくくくくく、元、里の天才忍者とあろう者が可愛いものね・・・・・・綱手、そんな服じゃ可哀想よ、精々可愛い服でも贈ってあげたらどうかしら」


今はぞんざいな襤褸を身に纏っている、可愛い服の単語に反応したリース、イタチの髪の毛を力一杯引っ張る。


「・・・・・・大蛇丸さん、貴方にそんなセンスがあるとは驚きだ、それと綱手さん、もしよろしければ里の流行の物で結構です、一着欲しいと、こいつは言っている」

髪の毛を引っ張り続けているリースを指さし、イタチは苦々しい顔で呟いた。


軽く笑みを零す綱手。

「聞こえたか、桜花、精々可愛い服を持ってきてやれ」


はっと小さい声がもう一つ響き、暗部の気配が一つまた消えた。


「そんな子供を連れて交渉に赴くつもりかしら?私が預かっていてあげる、貴方もイタチの足は引っ張りたくないでしょ?龍王」


はしゃいでいたリースの動きが止まり、その双眸が大蛇丸を捉える。


「何でわかったのって面ね、私を嘗めちゃ困るわ、イタチが連れ歩いている時点で普通の子供とは違うはず、それと私にも駒はいるの、顛末を聞いた限りで予想すれば、その正体は絞れてくるわ」


「・・・・・・お主じゃ嫌じゃ、そうさな、その後ろに控えている者、主がいい」

リースが指さしたのは君麻呂。

「いいわ、君麻呂、貴方少しだけその子供の土台になりなさい」

「それではいざというときお守りする事が・・・・・・」
もの凄く嫌そうな君麻呂。

「何、ほんの少しの間よ」

「・・・・・・わかりました」
不承不承頷く君麻呂、リースは体重を感じさせない飛び方で君麻呂の背中に飛び乗った。

ぱんぱんと君麻呂の頭を叩くリース。

「よろしくの、下僕5号」

「下僕?」

リースの言葉に反応する君麻呂。
「一号は其所のイタチ、二号は永久欠番、三号は砂を使っていた男、四号は我の眷属を名で顕している竜じゃ、そしてそちが、五号、光栄に思え!」

「・・・・・・了解」

逆らっては面倒なことになると判断した君麻呂は、リースの言葉に大人しく頷いた。

仏頂面の君麻呂、その上ではしゃいでいるリース、カブトも大蛇丸も笑っていた。


「じゃ、行こうかしら・・・・・・うまく行くといいわね、イタチ」


言葉を残し、部屋から去っていった大蛇丸。


「・・・・・・大蛇丸さんは何処か纏う雰囲気が変わりましたね」

「お前も感じたか・・・・・・で、里との契約とは一体何なんだ?三代目はそんなこと一言も言っていなかったぞ」


自分の頭を撫でた、三代目の霊を思い起こす綱手。





「綱手、悪いのぉ・・・・・・後は、頼む」





それしか綱手の耳には残っていなかった。


「皆が集まってから話します、すでに知らないとはいえ、火影である貴方は規約違反をしているんですよ、止めるべきは、全てを知るご意見番、それにダンゾウだったんですがね」



綱手の隣に現れる暗部の一人、耳打ちし、
「ふむ・・・・・・里にいた悪魔達はほぼ駆逐が終了、か。次は他の里の援護に廻れ、上忍のみに絞れ、里の戦力を削るわけにはいかん、生きて帰ってこれる者にのみに限定しろ」

暗部は綱手の言葉を伝えに再び消えていった。







ペインの術は未だ続行中、雨の里は文字通り、雨で支配されていた。


それをものともしない二つの影。

「鮫肌」の前に立ちすくむ大きい影と、周りを隙なく伺っている小さい影。

「くくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくく・・・・・・これは一体何の冗談だ?誰にやられた、鬼鮫ぇええええええええええええええええ!!!!」


鮫肌を掴み、刀身にチャクラを巡らせ展開、振り払う再不斬。


一時的に雨の全てが吹き飛ばされた。


「僕だよ、また、逢えたね。待っていたよ」


高く聳える塔の上に立つのは、黄色の死神、盲目の剣神。

暁の直接的戦力はもはや三人、だが三人だけで総てを制することが出来る戦力でもある。


「手前等、か・・・・・・白、お前は餓鬼をやれ、俺は片をつけさせて貰う」


「何度来ようが、どんなに君が規格外だとしても、君じゃ僕を打倒しえない、それに・・・・・・」

辺りに変わった形のクナイを投げつける四代目。


「もう、君達は僕の結界の内部だ、僕に負ける要素は存在しない、それでもやるのかな?」

局所的に氷の鏡が四代目を囲み、細切れにする。


「黙りなさい、再不斬さんを侮辱することは僕が許しません」


全く別の所に現れている四代目。
その体には傷一つついていない。

「・・・・・・君達も、相棒、なんだね寂しいよ、悲しいよ、僕の手でまた命を絶たなければいけないのは、君の相手は、僕の仲間がやる、ねぇ直人」


一振りの刀を手に、白に特殊な歩法で近づく直人。


距離を刹那に零にし、絶対回避不可能な一撃を見舞う。


ドドーーン!


其所を蹂躙する巨大水球の群れ。

煙が晴れ、無事な姿の直人が露になる。


「油断するな白、其所の餓鬼は変な力を使う、ダスタードで巡り会った時とは別人だ」

構え直す白と再不斬。

「確かに、貴方の音楽は素晴らしかったのに・・・・・・もったいない話ですね、貴方はこんな所で戦うような人ではないでしょう」


油断が消え、冷徹な目を直人に初めて向ける白。


「何も言わずとも結構です、忍びは忍びらしく・・・・・・けりを付けましょう、貴方との貸し借りはすでに存在しませんからね」

「・・・・・・推し参ります」

初めて口を開き、決戦の意志を示す直人、手にした刀が怪しく光る。












暁本拠地、内部。


「大した素材だこと、決して耐えられる痛みでは無いはずなのに」

周りに悪魔を傅かせるミナクスの前に立つのは一人の少年。


「・・・・・・聞こえる・・・・・・全て聞こえる」

ぶつぶつと呟く少年、名前をうちはサスケ。

「さぁ、力に酔いしれなさい、力をどう使うかは、貴方次第よ、Snooping、そのスキルにそんな使い方があったなんて、わらわも知らなかったわ」

目にした写輪眼は、度重なる実体験となんら変わらない幻覚により、万華鏡に進化し、身体能力の無理矢理な大幅増加、それだけでは、イタチには絶対に勝てない、年季が違う経験が違う潜った修羅場が違う。


だが、サスケは一つの力をミナクスから手に入れた。


直人のように視覚を失う事も、聴覚を失うことも無かったが、代りに失うは味覚、痛覚、そして嗅覚。


サスケに取っては小さな事だ、子供、幼少の頃から培ってきた積年の思いを果たせる力を手に入れたのだから。


「貴方、その力で何をするのかしら?」

サスケは振り向き、答える。

「決っている・・・・・・復讐だ」



あはははははははははははははははははははははははははははははははは

響き渡るミナクスの笑い声。


「いいわ、貴方の目、憎しみに染まりきっている。わらわの期待を裏切らないでね・・・・・・完成よ、何処となりと行くがいいわ。好きになさい」


「イタチは・・・・・・あっちか・・・・・・世話になった、此処には二度と来ることはねえだろうな」

後ろを振り返らず、サスケは部屋を出て行った。


「さて、・・・・・・第一波は壊滅しちゃったのね、少しだけ時間を上げるわアバタール。わらわは此処よ、逃げも隠れもしないわ」





ミナクスが引き起こした全滅戦争、世界の生き残りを賭けた戦いは、NARUTO世界の勝ちで終った。


だが――



「たかが悪魔、Deamon如きでこの程度じゃ・・・・・・次のモンスターの群れは耐えきれないわよ・・・・・・早くする事ねアバタール」


次に控えるは漆黒の悪魔の群れ、とあるシャード、世界の一つを完膚無きまでに滅ぼし尽くした最強最悪の集団。どんな実力者が集まっていようがどんな人柱力が束になろうが、反抗を許さない絶対の力の体現者達。




一時の勝利の余韻を楽しむことすら許されない。竜達が間に合うか、ミナクスの準備が整うか。




――世界に残された時間は少ない。









*漆黒の悪魔の群れ、バルロンの集団は、UOのフラッシュの一つで見ることが出来ます。題名は「Bond of Britannians」

名作です。



[4366] 最終章「世界大戦」
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/12/12 00:43

君麻呂の頭の上ではしゃぐリース、生暖かい目で見る大蛇丸、カブト、それは大蛇丸達が部屋に入りきるまで続いた。


用意された部屋に入り込み、皆が皆、腰を落ち着けた。



「さて――イタチの話は少しだけ気になるけど・・・・・・私は復讐がしたいの、貴方達、付いてくる気、あるかしら?」

大蛇丸は他の人間の顔を見回す。
「大蛇丸様の為でしたら、何処なりとも、御心のままに」

すぐさま答えるのは君麻呂だ、頭にリースが乗っていようが乗っていまいがそれは全く彼に取っては関係ない。


「僕も構いませんが、相手は・・・・・・聞くまでもありませんね――では」

真剣な表情のカブト。


「これだけ大きい組織に成ってしまうとね、どうしても動きが遅くなるの、如何に効率的に如何に無駄を省かれていようが、組織である以上、決断が遅くなってしまう・・・・・・それはこの私の想像以上に強化された木の葉といえども、例外ではないわ。綱手も大変ね、頭の固い、自分が既に戦場に居ると理解できない、時代遅れの堅物は何処にでも存在するわ。――戦線から遠のくと、楽観主義が現実に取って代わる、そして最高意志決定の段階では、現実なる物はしばしば存在しない。戦争に負けている時は特にそう・・・・・・本当に度し難い愚か者が存在すること。だから私は里を抜け、自分の里を創った、今となっては其れは正しかったかどうかわからないけどね」


気付けば、リースはハシャグのをやめ、神妙な顔つきで会話を眺めている。


「・・・・・・さて、残念な事に、私達だけでは、あの魔女を打倒するのに戦力が足りないわ」


「人間とは、つまらぬ事で頭を悩ませる物なのだな、イタチにしても、鬼鮫にしても、竜にしても、お主等にしても。足りなければ何処からか持ってくればよい、単純にして最高の解決策ではないか」


「ええ、その通りよ竜王、人間は考える葦、益体もないことを考え、そして自滅する生き物なの」


「我の名前はリースじゃ・・・・・・その姿は余り好きではない」


大蛇丸は軽く笑う。


「そう、じゃあ、リース、少しだけ力を貸して頂けないかしら、気に入らない相手をぶちのめしたいけど・・・・・・今がどう考えても、絶好のチャンスだというのにこの里は、下らないことで動こうとはしないわ、動くなら少人数、貴方が力を貸してくれるのならば、百人力だわ」


リースは頷く。


「よかろう、我も借りを返すべき相手が出来てしまったからのぉ・・・・・・だが我らだけでは、魔女は打倒出来ぬぞ、竜も連れて行け、あやつは何か企んでおる」

カブトが刹那、訝しげな表情になる、誰もが気付いたが、誰もが問い詰めなかった。


「そうね・・・・・・あの子の力、あの面白い力、・・・・・・心苦しいけど、最後まで付き合って貰おうかしら」


暗部の一人、桜花がリースの服を用意し、部屋を尋ねたとき、其所に大蛇丸達の姿はもう、無かった。


その場に残されたのは、一枚の書き置き、慣れぬ筆で書いたと思われるそれは、歪だが気持ちがこもっているのが桜花にもすぐにわかった。





「わるい、イタチ、先に行く、精々楽しみに戦果を待っていろ、くれぐれも我の服、捨てるでないぞ!――リース」







集まりきる木の葉の里上層部。


全員の目がイタチに集中する。


ざわめく一同、当然だ一部を除き、イタチは一族を殺した里に対する最悪の裏切り者、そんな認識しかないのだから。



「静まれ・・・・・・これより、査問会議を兼ねた、幹部会議を始める」


綱手の静かな一声で、会議は始まった。


「では、まずは・・・・・・イタチ、先程話していた事、詳しく話して貰おうか、現火影である、私ですら知らないという、お前と木の葉の里で結ばれた契約とやらの事を」


イタチは頷き、その引き締まった口を開きはじめる。


其れは、昔話から始まった。


「此処にいる者達は、知っているだろうか、うちは一族最高の力を持つと言われていた男の存在を・・・・・・木の葉設立時に初代火影、千手柱間と争い、そして敗れた男、うちはマダラの事を」


此処にいる者達を説得できるか。


純粋な戦力は、今回に限れば、全く意味がない、イタチの孤独な戦闘が始まる。












泣き疲れて寝てしまったナルトを非力な俺が背負い、一生懸命里に戻ろうとしていたときだ。

大きさが二倍ある相手を運ぶのは辛いね、本当に辛いね、思わずメテオを唱えて無理矢理起こそうかなっておもっちゃったよ。


あんな場面を見ちゃえば、そんな事は出来ないけどな。



三代目との壮絶な継承戦を終えたナルトはぶっ倒れた。


邪魔をしたくないのは、わかるんだけどさー少しは後の事考えようぜ自来也に大蛇丸!


包帯をすぐ巻いたから外傷は無いのだが、俺でも治せない精神的な物なのだろう、これでナルトは三忍に並ぶか、後一歩の実力を、手に入れた訳だが・・・・・・待ち受ける相手は明らかに強敵揃い、・・・・・・頑張れよ、頑張れよナルト、お前に頑張って貰うしか俺も手がないんだ、俺が直々に敵と戦えるような力があれば、原作の人間・・・・・・違うな、この世界のれっきとした生きている人間に頼らないのにな。


つくづく非力だ、ナルトを運ぶのすら苦労するくらいだ、ああ、面倒くさい。


「Kal Vas Xen Ylem」

召還、アースエレメント、通称土エレ。

戦闘能力は今一信用出来ないが、こういった雑用任せるならこいつが一番だな。

ナルトを抱えさせ、「all follow me」

うぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお

と答えを返し、土エレは俺に付いてくる。



戦争は、終ったみたいだな、俺をほっぽり出したのも危険度が無くなったと肌で感じたからか。



暫し無言で歩く。



この世界は、広いな。想像していたよりも、広い。なんて、でかいんだこの世界・・・・・・UOですら飲み込んでしまうなんてな、多少食あたりしているようだが、それでも大した物だ。



空が青いぜ。



「面白いもの連れているわね」


だから・・・・・・忍者って奴は・・・・・・もう此は止めて欲しいね。


「いきなり俺の後ろに立つの禁止、心臓がいくつあっても足らない」

後ろに立つ大蛇丸、声もいい加減慣れたな。

「久しぶりじゃな下僕四号、いよいよ――決戦じゃよ」


リースの声、そうだな・・・・・・長い永い俺のこの世界での闘争・・・・・・ぶっちゃけ全然戦ってない気もする、逃げ回っているだけな気もするが・・・・・・終わりが見えてきた。


「俺も、混ぜてくれないかな?」


気配が無い接近、忍者である以上もう既に慣れたものだ。カカシ、か。
至る所がズタボロなのは、何かしらの特訓でも積んだのか、そういや手前も、四代目との因縁をもっていたな。


「四代目との決戦、何か策を考えてきたのかしら」
大蛇丸が笑いながら肯定し、カカシに問う。


「それは、見てのお楽しみって所で、ただ、先生は、俺が止める。――悪いけど竜君だっけ、俺のチャクラ、回復してくれないかな。琴音中忍から話は聞いているよ」

「わかったわかった、お前等全員一列に並べ、ああ、ちなみに、これから向かうところは、もう引き返せない、地獄だぜ、今から帰りたい奴は言ってくれ」

俺が一番帰りたい、切り札は、二つ、すでに色を無くしたムーンストーン、それと氷の杖。


これが俺の考えられる限りミナクスに通用するであろう、二つの切り札。

ああ、そういえばもう一つ、俺が作り上げたインチキコデックス、此を忘れていたね。


第一本来はあんな存在に勝てるわけが無いんだ、多少どころかかなり無茶をしなくちゃ、あいつに傷一つ付ける前に全てが終る。


周りを見渡す、いない、か。其れでこそ、此処に残った、精鋭だ。
・・・・・・俺が旗頭に成るのは思いっきり嫌なんだが、元はと言えば俺が招いてしまった事が多分に含まれている故に、俺は逃げられない、逃げる事が出来ない、どうせ逃げ回っていても死ぬんだ。ならば――立ち向かうしかないでしょう、どんなに理不尽でも、どんなに馬鹿みたいな話でも、どんなに夢が無くても、どんなに・・・・・・敵が強くても、どんなに、どんなに・・・・・・俺が、弱くても、さ。


「ならば、行くか・・・・・・待つのは、もはや危険度No.1最強の死神、四代目火影波風ミナト。最強の群体、暁のリーダーでもあったペイン、そして、最低最悪の無敵の魔女、ミナクス」

「無名の剣神、名は・・・・・・」
リースの声。

「直人、そうだな、あいつも待っていたか、安心してくれあいつならすぐに仲間に戻せる。ミナクスの手は分かり切ったから、もう平気だ」

リースが満足そうに頷く、下僕の成長に喜びを覚えているようだ。

孤高の竜王、古代竜リース、木の葉の狂気、何の心変わりか、気持ち悪いくらい献身的な存在になった大蛇丸、それに付き従う最高の血継限界、君麻呂、暗黒医術すら扱えるんじゃねえのか?俺の孤児院の先輩でもあるカブト。

それに、木の葉の里、現在純粋さで言えば最高の決戦存在、四代目の元弟子、はたけカカシ。

そして、最後に、このNARUTOの主人公で、この世界では最高の忍びと謳われたプロフェッサー三代目火影、猿飛ヒルゼンの全てを受け継ぎ、最高の才能を持つと言われた四代目火影、波風ミナトの血を引き、最悪の化身と謳われた九尾の妖狐を身に宿す、文句なしに木の葉の里、最強の決戦存在に成れる素質を持つ下忍、うずまきナルト。


こう並べると、ナルトって思いっきり中ニ病全開だよな、ま、少年誌の主人公なんてそんなもんだろ。味方だと思いっきり頼もしい、


本当は、後一年欲しかった・・・・・・流石は三代目、性質変化までナルトにあんな短時間で叩き込んだその手腕は確かだが、後一年、あと一年あれば、ナルトは無敵の領域まで足を踏み入れられたはずなんだ。

・・・・・・とにかく、この不本意ながら俺も数にいれた六人、六人で、全てを終らせる。



待っていろ、ミナクス!











闇の中、妖艶な女の声が、暗い部屋の中響き渡る。

「早く来なさい・・・・・・アバタール、宴の準備は、もう済んでいるのよ」


傅くペイン、漆黒の悪魔。



外では未だ戦闘は続いている、黄色い閃光、波風ミナトと霧の抜け人桃地再不斬。盲目の剣神、直人と同じく霧の抜け人、白。忍者の戦闘としては珍しく、長期戦と成っている、実力が均衡しているせいだ。

だが二組とも、ともすれば刹那に勝負は付いてしまう、圧倒的戦力を誇る決戦、終わりは、見える気配が無い。








カカシを送り出した、木の葉の里、研究所。


機材のチェックを行いつつ無駄口を叩く白衣を着た研究員達。
「しかし流石はカカシさんだな、結局一日経たずにあの術をマスターしてしまった」

「俺も久しぶりに熱くなっちゃったな、目の前で奇跡を起こされるのは、研究者としては微妙だけど、里のものとしては、こんなに嬉しいなんて、久しく忘れていたよ」

里としては、誰しもが扱え、量産でき、強力な術の研究が何よりも優先される。一部の天才にのみ扱える術では再現性も低いし、いざというときに使用出来る忍びがいないという可能性が高いからだ。

「そういえば、カカシさんが持ち込んだあの指輪に組み込まれていた術式、そろそろ解読出来た頃じゃないか?」

「ああ、あれなら既に火影様に報告済みだ、だが、あんなもの使おうとする奴がいるのか?」



突如、二人の後ろに蠢く影。



「・・・・・・運がいい人たちだね・・・・・・火影に報告しちゃったのか・・・・・・ならばもう口封じをしても意味がないね」

背中に押し当てられた凶器に気付き、動きを止める二人。

「マ、ソレトコレトハ、ハナシガベツダ、アンナイシテモラオウカ、ソノユビワニヨウガアルンデナ、モチロン、コトワルッテイウセンタクシハ、ソンザイシナイゼ」

二人はそのまま口を噤み、双方に顔を見合わせ、頷いた。


「あの指輪は、もう役割を失ったんで、廃棄しちゃったかも知れないが、それでも知りたいか?」

「下手な嘘は止めた方がいい、木の葉の里はそんなに無能ではないでしょ?」

「其所まで分かっていれば、答えもわかるんじゃないのか?里に害為すものは、抹殺するってな!」

研究者達は二人同時にレバーを引いた。

ガチャン

どこかで扉が閉まる音。


ズブッ

「ナニヲ、シタンダ」

同時に二人に対し、致命傷を負わせ、ゼツは尋ねる。

「はははは、どうやって入り込んだか知らないけど、結界が張られた、もうお前は此処からでられない、火影様に異常の報告が行った所だ、もう・・・・・・終わり・・・・・・だ」

事切れる二人。


「面倒くさい、でも、馬鹿だね、僕らに取って結界なんて意味が無いのに」

「・・・・・・フン、ジコギセイナンテ、バカナヤツラダゼ」

「指輪は・・・・・・しょうがないから少し探そうか、すぐ見つかればいいけど」

「ダレガコヨウガ、オレタチハ、トラエラレナイ、オレタチハドコニデモイルシ、ドコニデモイナイ・・・・・・コノハノジョウニンハ、ナゾヲトケタノダロウカ、マ、カンケイネエケドナ」


薄れゆく影、あらゆる部屋を探索し、そして指輪を見つけた。

そのまま影は再度薄れ、完全に消えた。




異常を察した暗部が、最高戦速で駆けつけたのだが、其所に存在するものは、誰一人としていなかった。




蠢く闇の手の者達。

誰しもが自分だけが可能性と信じている場合、見ていなかった側面から現れた可能性に潰されてしまう時がある。ありとあらゆる歴史で見られた事だ。


この世界では、どうなるか、不気味に笑う、マダラ、果たして道化は誰なのか。


世界は、誰を選ぶのか、世界は――どういう結末を選ぶのか、今はまだ誰にもわからない。




*ナルトで弁論大会をやるとは思っていなかった・・・・・・「判決の時」みたいにうまく描ければいいんですが、イタチVSダンゾウの図式に為っていきます、全く違う戦場でもイタチは最強で居られるのか、迫る狂気に犯された愛しの弟にはどう対応するのか、イタチはなんていじりやすいキャラなんでしょう。



[4366] イタチの戦い
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/12/12 14:37



木の葉の里、最高幹部会議、その防備は完全だ、例え暁だろうが、九尾を除いた尾獣だろうが侵入することは出来ない。



「どんな話をしているんだろうね」

半分が白、半分が黒の男、ゼツが外でこっそりと耳を欹てるが、一切の物音すら遮断されていた。

「タシカニキニナルガ、・・・・・・モウ、マダラノヤボウノタッセイニ、ショウヘキハイナイ」

「きっと、彼らが魔女も殺してくれる、って本当に出来ると思う?第一、現時点、どう考えても最強の死神もまだいるんだよ?彼だけでも生き残っちゃったら僕らもやばいんじゃないの?」

「アンシンシロッテ、コノハハ、ミトメタクハネエガ、サイキョウノサトダ、テメエモミタダロウガ、ケンキュウジョデ、シロイキバガ、ナンノジュツヲカンセイサセタカヲ」

「でも、あの術だけで対抗しようってのは、余りにも甘くない?」

「テメエハイツカラ、コノハノミカタニナッタンダ。・・・・・・ナシトゲルダロウゼ、ジコギセイナンテクダラネエコトヲ、ヘイゼントヤルサトダカラナ」

「それも、そっか・・・・・・大蛇丸もいるし、でも、何で全戦力を向かわせないんだろうね、魔女の危険度にまだ気付いていないのかな?あれだけ他の里には被害が出ているっていうのにね」

「ニンシキドガ、アメエンダヨ、イチドフセイデモ、ニノヤガ、トンデクルカノウセイニ、メヲツムッテイルノサ、ダカライラネエギセイガ、デルッテノニヨ、ソレガ、ソシキノゲンカイッテヤツダ、キタエラレスギタ、コノハノ、ヘイガイダナ。ヒガイガ、ゼロニヒトシイッテノガ、ウエノレンチュウノ、ニンシキドノテイカヲ、マネイテイヤガル、ツクヅク、ドシガタイレンチュダゼ」

「だけど、其所に・・・・・・僕らの、というかマダラのつけ込む隙が生まれるって訳でしょ?」

「アア、オット、ジライヤノヤツガ、カエッテキヤガッタ。アイツダケハ、イマノコノハノナカデ、キケンスギルアイテダゼ」

「カカシもいなくなり、ナルトもいなくなり、そしてあの厄介な力を持つ竜もいなくなって、後は自来也さえなんとかすれば、木の葉は落ちるっていうのにね、もしかしたらイタチが戻るかもしれないか、ま、それは後でマダラが考えるでしょ、じゃ、帰ろうか」

「アア、セイゼイツカノマノヘイオンヲ、タノシンデオケヨ、セカイノアクイニ、マッタクキヅコウトシナイ、コノハノボンクラドモ、ケケケケケケケケケケケケ」

誰にも気付かれず、誰にも察せられず、ゼツは奇麗に姿を消した。






「俺は・・・・・・先代三代目火影、それに其所に座している、ご意見番、それに暗部育成機関「根」のリーダーでもあるダンゾウ、彼らとある契約を交わしていた」


イタチの独演会が始まってから早数分、マダラの歴史の生い立ちから始まり、いよいよ核心に近づいてきたころだ。


討議は双方が全ての言い分を語ってから行われる、木の葉の里に下らない野次など飛ぶ隙間はない。

イタチは、先に挙げた三人の顔を見る。

三人は三人とも、素知らぬ顔で、全くの無表情を貫いている、イタチは彼らの仮面を剥がせるか。



「・・・・・・其れを説明する前に、うちは一族が何故俺に殺されたか・・・・・・それは、うちは一族は、木の葉の里に対し、恨みを募らせていたからだ、警務部隊に代々一族の者が就任していると言えば聞こえがいいが、それはうちは一族に対する隔離を意味している・・・・・・千手一族に敗れた時から決っていた道筋なのだろう、三代目を除き、里の上層部は、うちは一族を飼い慣らそうと躍起になっていた、誰よりも里の事を考え、争いを好まない三代目は、緩衝役にはなっていたが、全てを止める事は不可能、結局、最終的に、現在の地位に甘んじる事が出来なくなった、誇り高きうちは一族がクーデターを起こすという情報が入ったとき、彼は、脱力感に襲われた顔をしていたよ」


「何故、お前がそんなことを知っている・・・・・・まるで見てきたことのようにいうな、イタチ」

綱手の静かだが、よく通る声が、場に響き渡る。


「聡明な、綱手さんなら、もうすでに説明しなくても気付いているのでしょ?だが、交渉は分かっていることからでも説明しておかないと、見解の相違をうむ畏れが出てきてしまう・・・・・・未だわかっていない上層部もこの中には居ることでしょう」


全員の顔を見回した後に、一息間をおいて、イタチは話を続ける。


「簡単な話です、当時暗部にいた俺は、其所にいるダンゾウに命じられて、うちは一族の情報を全て里の上層部に流していたからです、うちは一族に対しては、里の作られた情報を流す事で信頼を得ていました・・・・・・暗部は里の中核を為す組織だ、当時、俺が知っている時点までの話だが、時代が変わり世界が変わった今はどうなっているか知らないが、暗部に所属する事は、里のエリートを意味していた、当然扱う情報量も一般の忍びに比べれば増える。表も裏も関係なしにね」


再度イタチは辺りの顔を、特にご意見番、ダンゾウの顔を念入りに見渡す、しかし彼らに動揺の気配は見られない。


「うちは一族のクーデターの情報を流した後の上層部の対応は早かった。そのまま行けば俺は何も出来ず、ただ使われ、最後には殺されていたかも知れない・・・・・・当時忍界大戦で争いに対し、血が流れることに対し、厭いていた、絶望を感じていた俺は、それでも納得して、里のためにうちは一族を殺したことでしょう・・・・・・うちはマダラに逢うまでは」


イタチの目に万華鏡が走る。


「この目を教えてくれた、マダラには感謝している」


「・・・・・・伝説上の存在では無いのだな?すでに100年弱が過ぎているのだぞ、もし本当ならばとんでも無い老齢となるが」

再度綱手の冷静な合いの手が入る。

イタチは静かに頷いた。


「俺もマダラの素顔を見たことはない、十数年前の九尾襲来は、上層部が考えている通り、マダラの仕業かもしれない・・・・・・愚かにも引き起こしたのは、うちは一族と断定した上層部の所為で、うちは一族のクーデターが早まってしまったのは、皮肉にしかならないがな」


「マダラは、未だこの里を恨んでいるぞ、うたたねコハル、水戸門ホムラ、そしてダンゾウ、残念だったな、里の不穏分子であるうちは一族の抹殺に成功したはいいが、最悪の相手が生き残っていたのだぞ、やつは、必ずこの里に復讐を遂げる、考え得る限り最悪の方法でな。屈強な精鋭の忍びに囲まれ、安寧を貪っているお前等上層部に対し、マダラは果てしない怒りを覚えている。俺以上の写輪眼を持ち、その戦歴は数え上げるのが馬鹿らしいほど歴戦の兵・・・・・・まぁそれは今はいい、そろそろ契約の話に移ろうか」


熱くなってしまった頭を冷やすかのように、かぶりを振るイタチ。


場はすっかり静まりかえってしまった。

全てを知っていたご意見番は兎も角、何も知らなかった新任幹部などは動揺を隠せずにいた。



「・・・・・・俺が、唯一人うちは抹殺の際に殺さなかった者がいる」


「うちは、サスケ・・・・・・なるほど、読めてきたぞ、お前が私に言った知らないで犯した規約違反というものは――」

イタチは綱手の言葉に一度頷き、全員、特にご意見番達に向かい言葉を発した。


「・・・・・・そう、俺は、上層部との契約の際、一つの条件を追加した、そして三代目は元より、あんたら上層部も、納得した。何も知らない下忍にもなっていない者ならば、見逃すことを、許そう、とな」

場の空気が、更に静まりかえる。どうしてそんなことを今まで知らされていなかったのか、そんな空気まで健全化した社会から選任されている、新任幹部達の間から流れ始める。


「それを甘えというのならば、勝手に笑え・・・・・・だが、俺は信じた、当時の何も知らなかった俺は信じてしまった。俺にはマダラのように、弟を手に掛けることは、出来なかった、したくなかった」


「サスケを守ること、それだけがお前の契約条件か、相違ないのか?ダンゾウ」

すっかりしょぼくれているご意見番とは違い、堂々と胸を張っているダンゾウ、ゆえに綱手はダンゾウに確認を求めた。


「――相違は、無い。確かにわしらは、契約を交わした。全ては里のため・・・・・・イタチよ、一体過去をほじくり出し、何がしたいのだ?単なる断罪か?お主ほどの男がそんな小さな事にこだわり続けているはずもあるまい」


「・・・・・・そうだな、其れを小さき事と片付けるお前等の性根は、今ならわかる、当時の愚かしき自分を絞め殺したくなるほど、な」


「サスケだけではない、今は、問題なのはミナクスという魔女だ・・・・・・何故攻め込まない、あいつは世界の敵だ、世界が終っても木の葉は安泰だという甘い考えでも持っているのか?」


「――何、すでにうってつけの人材を送り込んでいる」

ダンゾウは、いつの間にか、手にした一枚の紙を場に広げる。


「それは・・・・・・?」

不慣れな書き慣れていない筆で書いたのだろうとわかる、一枚の書き置き。

暗部が入り口にてわたし、ダンゾウが受け取ったそれは――


「何のために大蛇丸を処刑しなかったのだと思うのだ、何のために大蛇丸を焚き付けたのだと思っているのだ。里の通例に伴えば里抜けは、即刻死刑、お主も例外では無いのだぞ?イタチ・・・・・・何とも可愛らしい字ではないではないか、お主への信頼が含まれているな」



「わるい、イタチ、先に行く、精々楽しみに戦果を待っていろ、くれぐれも我の服、捨てるでないぞ!――リース」


ダンゾウの低い声で、リースの書き置きが朗読される。

イタチの肩が震え出す、一枚も二枚も上手、単純な戦闘能力ではイタチがこの中では最強だ。木の葉の中核を為す、古参の忍び連中が集まっても一蹴にされるだけだろう。

だが、交渉事にかけては、表の情報を司るのが綱手ならば、裏の情報を司るのはダンゾウだ。情報を制するものは、交渉事を制する。イタチは、絶対に勝てない相手だ。


ダンゾウの手から綱手はその紙を奪う。


「リース、とは・・・・・・先程の・・・・・・」
綱手の口から紡がれる小さな声。


「わしの情報網では、かの新たに現れた化け物、竜族の王が変化しているものだという、はなしだ。良かったな、イタチ、懸念されていた魔女への対策はこれ以上無いほどの人材が向かっている訳だ」


きっとダンゾウを睨み付けるイタチ。


「お前等は・・・・・・」


「そうそう、更に言えば、懸念されていた復活した四代目、この対策には木の葉の里最高戦力の一人、はたけカカシ、それに三代目の寵愛を受けたうずまきナルト、九尾が向かっている。どうだ、イタチ、これでも木の葉に戦力を出せとでも言うつもりなのか?」


「ナルトを向かわせただと!?聞いていないぞ!」


綱手の声にダンゾウは向き直る。

「向かわせたのでは、無い、勝手に向かったのだ、わしらは何の関与もしておらん、其処は間違って欲しくないな、五代目火影」


「小賢しい真似を……知っていて止めないのならばそれは容認に他ならないではないか!」

激昂する綱手。

「はてさて、里は重大な脅威に対し戦争中で、終わった後も確認する時間はありませんでしたので、そのまま向かわせました、てっきり大蛇丸が同行していることから、五代目火影が認めていた事だと勘違いしておりました、今から手のものを向かわせますか?」

あくまで飄々とした態度を一切崩さないダンゾウ。


下唇を強くかみつける綱手。
今から増援を送ったとしても、既に始まっているであろう決戦に間に合うことは無い。
休息をはさまなければいけない増援部隊とは違い、先遣隊であるナルト達には万能回復係竜がついている、疲れ無き集団に追いつくことは出来ない。


先の三代目の復活に際し、大蛇丸を、ナルトを竜を、戦いに向かわせた最高責任者は、火影である綱手だ、ダンゾウは老練な手際で完全に反論を封じる。



其処に入る外部からの情報。



「報告します!抜け忍、うちはサスケ、里内に進入確認!暗部止めることが出来ません!まっすぐにこちらに向かっています!」



ダンゾウは話を続ける。


「さて、イタチ、契約を除き、お主を里抜けの罪で死刑に処さない理由が理解できたかな?……最愛の弟が帰ってきたぞ、これでわしらとお主の契約は果たされた。後はお主等兄弟同士の話だな、サスケの暗部を一人殺した仲間殺しの罪、ここでサスケを恭順させることが出来たならば、許そう。何せ里に残った貴重な写輪眼の担い手だからな、お主も、サスケも、な。どちらかが、生き残れば、伝説のうちはマダラと少なくとも同じ目は手に入る、そうなのだろ?」


イタチの目が見開かれる。


「……ダンゾウ、貴様、何処まで知っている!」

ダンゾウは恍けた表情を浮かべる。

「さてさて、一体何の事をいっているのやら、わからないな、イタチ……いいのか、最愛の弟にこれ以上罪を重ねさせるのか?もたもたしていれば、サスケは暴走を始めるぞ、お主が言った言葉だ、魔女は世界の敵、そんな者に力をもらった者がまともな思考をするわけが無い、とな」


血が出るほど唇をかみ締め、イタチはその場から消え去った。


突然の乱入が入り強制終了させられた討論は、呆れるほど明確な、ダンゾウの勝利で終わった、否、初めからイタチには勝利の目など無かったのだ。


「……結界はどうした」

綱手の静かな声が暗部にかかる。
「……双方共に、木の葉に対する敵意は感じられません、あくまで敵性存在のみにかかる能力半減の結界です、作動しません」


「……わかった、ダンゾウ。お主の情報、一度全て話してもらう必要があるみたいだな」

「もちろんですとも、五代目火影様、全てが終わった後にゆるりとご覧下さい、今は里の復旧及び、協力者イタチの情報により判明した、うちはマダラに対する対策が先決、それらが終わってから、五代目火影様には、見ていただきたいですな……魔女に対する対策も万全では無いですからね。では、私はそろそろ失礼いたします」


礼をして、去る背中に掛けられる綱手の最後の問い。
「ダンゾウ、この展開までお前は予想していたのか?」

あらゆる情報を集約していたダンゾウの一人がち、要約すればこの討論の結果はそうなるだろう。


「まさか、私にそんな能力はありませんよ、それでは、失礼します五代目、火影様」


「火影とは、名ばかりだな……情けない……里の全てを知らずして何が火影だ……」
ため息をつき、綱手は火影の椅子に深く身を埋めた。

「自来也様が、帰られました」
伝令の一人が報告する。


「此処に……呼んでくれ、皆、ご苦労だった、幹部会議は終了だ、それぞれ里の復旧に努めてくれ」

それぞれ散り散りに散らばる、幹部達。
後には力無く肩を落とした綱手、それと何も知らされず能天気に入ってくる自来也の姿が認められた。







イタチの悲しき兄弟喧嘩と表現するには生易しくない、本気の死闘が、里近辺で繰り広げられる。







「イタチ、待っていた。お前なら必ず出てくると信じていた」


目の前には、一族全てを抹殺してでも守りたかった最愛の弟。
「……サスケ」


だが、今は掛ける言葉が見当たらない。


「……お前が言っていた通り、俺は憎しみを糧に新たな力を手に入れた」

サスケの写輪眼が変化する、ミナクスより手に入れた力は、サスケの両目を万華鏡写輪眼へと進化させた。

「……サスケ……」

イタチは唇を更に強くかみ締めながら、自身の両目も万華鏡写輪眼へと変化させる。

生半端な言葉は、もうサスケには通らない、そうしてしまったのは自分だ、イタチの唇から血が垂れ出す。


此処にきて全てが裏目に出てしまっていた、イタチの行動。


過去は刃となり、イタチの心を攻め立てる。


刃の象徴たるは、うちはサスケ、イタチの愛した最愛の弟、最悪の魔女により力を授かり、自身への憎しみへ胸を焦がしている、決して油断できない領域にまで進化した弟の姿を見て、イタチは少しの喜びと、激しい後悔に襲われていた。


全ては魔女が現れてしまっていてから、イタチの計画は狂い、三代目の死去により計画は瓦解した。


こんな時、自分を励ましてくれた、頭の上でいつもはしゃいでいた元気な少女は、今はいない。自分を知らず知らずの内に支えていてくれていた、頼りになる相棒の影は、もう無い。自分のつまらない理論など変てこな力で否定してくれた、一見弱々しい少年、だが、心の性根はまっすぐな少年も、今はいない。





一族を抹殺したときから、慣れていたはずの、絶対の孤独、それが今はイタチの体を疎ましい感じと共に縛り、竜が流石と評した鉄壁の心はいまやぼろぼろだ。





「忍びは忍びらしく……言葉ではなく、行動で結果を示そう……勝ったほうが真実だ」


サスケの言葉、それが正しいと思っていた時期もイタチには存在していた。

だが、今は違うと断言出来る、しかし伝えるべき言葉が自身の胸の内に存在しないことも、イタチは十分にわかっていた。最愛の弟に届くべき言葉が無いことも、わかっていた。



自らが蒔いた種は、今最悪の形を持って実を結ぶ。



決断が出来ぬまま、イタチは既に万全のサスケの前で戦闘準備を整えきった。



手に手裏剣を、クナイを、もち、双方が印を結び終える。
双方共に万華鏡写輪眼、通用しない幻術は頭に無かった。



ゆえに、オープニングで繰り広げられるのは、うちは一族の代名詞。



「「火遁・豪火球の術!!」」



イタチに決して劣らない練度で練り上げられたそれは、互角。双方の中央で激しくぶつかり合い、鬩ぎ合い、空気を焦がす。



「……イタチィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!!!」


「……サスケェェェェェェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!!!!!」


既に身に馴染み切っている戦闘スタイルで、半ば自動的に戦いを始めるイタチとサスケ。



遠くから冷酷な目で眺めているダンゾウ。


どうにも出来なかった悔恨の目で見ている、綱手。


何の説明もなしに、遠くから見ているだけの自来也。



止めは、刺せない、刺したくないイタチ、だが自分が死んで、何も知らないサスケが外道に利用されるのは、どうしても我慢できず、嫌なイタチ。二つの心の鬩ぎ合いがサスケとの死闘の間もイタチの心の中で繰り広げられていた。


勝てないし、負けられない、無力化するにはサスケは力を付け過ぎた。


イタチへの一族の復讐心のみで一辺倒のサスケ。
様々な要因で悩みに悩みまくっているイタチ、それはまだまだ差があった双方の実力を均等にまで修正していた。



「……イタチィィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!!!」


サスケの再度の咆哮。

イタチは半無意識に全ての攻撃を防いでいた。




イタチの生涯最悪の死闘は、終わる気配を見せない。












*ダンゾウ書くの難しいなぁ……結局私の捉えるダンゾウは、外道とか汚いとしても、里の為に動くおっさんって感じで行きます、火影への執着はもちろんありますが、今は其の時期ではないと判断、勝手に里の為に動き回ります、全ての泥をかぶったとしても後悔はしません。イタチにとっちゃたまらねーいやらしすぎる相手です。



[4366] イタチの戦い、その2
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/12/15 01:37

イタチの精神状態は、お構いなしに、戦いは続く、サスケにとってはまさに仇敵。


戸惑う理由など存在しない。

それでも、イタチの方が全てにおいて、実力をうわまっている事もあり、先手を取るのはイタチだ・・・・・・致命傷にはならない程度の攻撃なのだが、まともに入れば、ダメージを負うことは避けられない。



「雷遁・地走り」
「風遁・風切りの術!」

イタチの地を這う雷遁が、サスケが地面に突き刺した風遁により遮られる。


サスケの口元に満面の笑みがこぼれる。

半覚醒状態から醒めたイタチは、多少の違和感を伴い、再度術を行使する。



「火遁・火龍炎弾」
「水遁・水龍弾の術!」

イタチの操る炎の竜と、サスケの操る水の竜を象った術がぶつかり、四散する。


相性で言えば、サスケの術の方が上、だが、術者の実力に伴い、双方の術はダメージを与えるに至らない。


サスケの顔に、仕留め損なったかとでも言いたげな表情が浮かぶ。

イタチは違和感を増幅させ、それでも術を行使する。


「土遁・岩柱槍」
「雷切!」

イタチが放ったサスケの足下から生み出された土の刃が、サスケの右手に纏われた雷遁により、意味を消される。


術スピード、術の展開速度を比べれば、イタチの方が遥かに上、サスケの術が間に合っても、一つ術を間違えれば、サスケは無効化されるはず、だった。


相性の良さに助けられ、サスケはイタチの術を防ぐに至る。


「豪空砲」
「火遁・鳳仙火の術!」

イタチが生み出す多数の風の玉が、サスケが生み出す数多の炎の玉と相殺、双方共に既に次の行動に移りだす。

イタチはもはや、ある程度の確信を得て、術の展開速度を速める。それについて行けていないサスケなのだが、相性の良さはそれすらも凌駕する。


「水遁・水鮫弾の術」
「土遁・土陸返し!」

イタチの相棒の得意技を使った、鮫を象った水の塊がサスケを襲うが。垂直に立てられた土の壁に阻まれ、サスケには届かない。


雷遁は土遁に対して強く、風遁に対して弱い。
火遁は風遁に対して強く、水遁に対して弱い。
土遁は水遁に対して強く、雷遁に対して弱い。
風遁は雷遁に対して強く、火遁に対して弱い。
水遁は火遁に対して強く、土遁に対して弱い。


イタチは術の相性の基礎を思い出した。

サスケはイタチの術全てに対し、上を行く術で答え、ダメージを受けることを避けた。




術が駄目ならば、と、合間合間に接近戦が入るのだが、サスケはまるで、イタチの動きを読み切ったかのように、イタチの方が数段早いのにも、関わらず、サスケに攻撃が当たることは無い。




イタチは余りの不自然さに距離を取る。



サスケの顔には笑みが張り付いたままだ。



「・・・・・・まるで、未来がわかっているかのようだな、サスケ、俺の使う術がわかるのか?」


イタチの訝しげな表情、実力だけで言えば、サスケが強くなったとは言え、まだまだ完調のイタチの方が上、本気を出している状態で、限界まで引っ張ればイタチはサスケの無力化に成功する、はずだった。

サスケはおもむろに、口を開く。

「教えてやるよ、俺の新たな力は、心を裸にする、どんな相手でも行動するときは何かを思う、何かをする事が先に分かれば、相手があんたと言えど遅れを取ることは無い!」


暫しの沈黙が、二人の間に広がる。



里の近辺で行われている戦いは、多数の注目を集めていた。暗部は元より、一般の忍びも激しく繰り広げられる戦いに、自然と眼が向かう。争っている二人が、今はいないはずのうちは一族、最後の末裔同士ならば、耳目を集めるには十分すぎる相手だ。


「心を、裸にする・・・・・・伝説の悟りの力とでもいうのか?」


イタチの言葉に、サスケは頷く。
「心は嘘をつけないからな、例え、うちは一族最強のあんたと言えども、今の俺には御せる相手だ、どんなに実力差が・・・・・・あろうとも、次の行動が分かっていれば、幾らでも対処が取れる!」

「・・・・・・なるほど、心を読む、道理で・・・・・・・・・・・・」


イタチは眼を瞑った。


「今更、心を閉じようとしても無駄だぜ、人は行動するときどんな達人でも動きを指示する事は、誤魔化せない、自分の体を誤魔化せないように、自分の心は誤魔化せない!」


イタチは、サスケの言葉を取り合わない。


突然サスケの表情が劇的な変化を伴う。

「何を・・・・・・何を考えているんだ!・・・・・・心を閉じるどころか、広げるだと!?」


サスケの心に、イタチの心が入ってくる、サスケの新たな力、Snooping、本来は人の持ち物を除くだけの力なのだが、ミナクスによって最大級に高められた力は、思わぬ副作用を生んでいた。


「お前が読んだこと全てが俺だ」

イタチの小さな呟きが、サスケの耳に届く。

「嘘だ!嘘だ嘘だ嘘だ!」

サスケは突然大声を出す、全てを否定するように、全てから否定されるように。


「・・・・・・心は、嘘をつかないんだろ?」

イタチの流したイメージは、サスケに情け容赦無く降り注ぐ、最大の力故に、完全に否定出来ないサスケ、その力が確かだからこそ、否定するに至らないサスケ。


「・・・・・・嘘だ!!!!」


サスケは忍者刀を手に、イタチに斬りかかる。

先に動いてしまっては、折角の心を読む力も意味を成さない、それでも、サスケは、イタチの心に耐えきれず、イタチに向けて斬りかかる。


容易く受け止めるイタチ。


サスケの万華鏡が、超至近距離で巡りに巡る。

同時にイタチの万華鏡も巡りに巡る。


発動される術は、双方共に幻術が意味が無い以上、一つしかない。


うちは一族に代々備わる性質は、火遁。


完全に見開いた、サスケとイタチの右目から大量の血が流れ出す。


超至近距離で発動されるは、火遁秘術、天照!



余りの力の余波に数十メートル吹き飛ばされる二人、双方の眼から生み出された全てを燃やし尽くす黒き焔は、正しく双方の黒き焔を相殺するに至る。



「忠告だ、その力は多用するな、強すぎる力は光を失わせる。その解決方法は一つ、肉親の万華鏡写輪眼を移植することだ。・・・・・・俺はお前の、お前は俺の、スペアとなるべき存在となる。・・・・・・はずだった」


双方共に息を荒げながら、二人は二人とも互いを万華鏡で見つめ合う。


「嘘だ!」

サスケの激昂が辺りに響き渡る、その場には直接の言葉で否定する人間は、いない。


「心は、嘘を、付かないんだろ、サスケ」


再度イタチの口から響く、小さな真実、確実な真実、絶対な真実、それを何よりもわかっているのが、サスケだ。


「「天照!!」」


再び発動される黒き焔、距離を置いたそれは力の余波を生み出すことなく、互いの中間地点で完全に相殺される。


「・・・・・・それは!?」


イタチの両の眼の万華鏡が激しく巡り出す。


「万華鏡写輪眼には、こういう使い方もある・・・・・・さぁ読め、学べ!サスケ!」


唇を強く噛みしめ、サスケはイタチの心を深く読んだ、読み込んだ。


双方とも発動するは、万華鏡写輪眼、最終形態、全てを否定する力と全てを抹殺する力を兼ね備えた、最強の盾と矛、矛盾を完全に顕す、怒りを表した鬼の体。


「「須佐能乎」」


イタチとサスケ、双方を覆う、憤怒の表情の鬼の体、手には鏡を模した無敵の盾を、手には全てを駆逐する最強の剣を。


「そうだ、両の眼が開眼した者のみが使える、万華鏡写輪眼、最終形態・・・・・・お前に使いこなせるかな」

イタチの声には口調とは裏腹に、からかいの色が全く伺えない。

「あんたに出来れば、俺にだって、・・・・・・出来る!」

イタチは口元を軽く、わからない程度にほころばせた。



「「八咫鏡」」


「「十拳剣」」


永いうちは一族の歴史を紐解いても一度も、発動する事が無かった、二人による万華鏡写輪眼、同時発動。


イタチの剣がサスケの盾に、サスケの剣がイタチの盾に、それぞれ全力を持って振われる。此処まで来れば双方の実力の差など関係無い。


如何に須佐能乎に対する理解度が深いかどうか、それだけだ。



イタチの心情により、完全に同期された双方の盾と剣は、完全に相打ちになり、二人の心を体を吹き飛ばす。




再度立ち上がる二人の両目からは大量の血が溢れている。



完全なるチャクラ切れ、二人とも動けない、動くことが出来ない。須佐能乎はすでに役目を終えたとばかりに姿を消している。



「・・・・・・何故・・・・・・全力で来なかった・・・・・・」

サスケの呟き。


「・・・・・・もう、わかっているんだろ?俺の心を読んだのならば、わかっているはずだ」

イタチの呟き。



「・・・・・・兄さん」

サスケの両目から涙が溢れる。


「・・・・・・悪かった、弟よ」

イタチの口元に不器用な笑みが浮かぶ。





――つまらないわね・・・・・・貴方はそんなものなの?ならば、せめて絶望を私に感じさせて――


サスケの右手が本人の意志とは無関係に、動き出す。


「兄さん!!!」

「サスケェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!」






綱手の前に躍り出る自来也。
「綱手、わしは行くぞ!魔女だ!」

その言葉を残し、瞬身の術で走り出す自来也、すぐに後に続く暗部、綱手。



その光景を見ていた者全てが息を飲込む。



ブシュ



イタチのチャクラ切れの動きでは間に合わず、貫かれる、サスケの喉。



その手が左右に動かされることは、イタチによって阻止されたが、十分に致命傷。



サスケの目から涙が溢れ、口を動かした。
「・・・・・・兄さん・・・・・・ご・・・・・・め・・・・・・ん・・・・・・俺が・・・・・・ば・・・・・・か・・・・・・だっ・・・・・・た」



「サスケェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!!!!!!!」


サスケの体から立ち上る黒い霧。

全てが抜け出し、サスケの体から力が抜け、イタチに体を預ける格好になる。


すぐにサスケの喉からサスケの手を抜きだし、千本による止血を行うが、場所が悪すぎる。


黒い霧に向かい放たれる自来也の術。

「火遁・大炎弾!」


浄化される霧、すぐに駆けつけた綱手により、サスケの体がイタチから奪われるが、イタチは力を込めてしまう。


「放せ!見殺しにする気か!」


綱手の叱責により力を抜くイタチ。

並外れた綱手の掌仙術により、塞がり始めるサスケの喉の傷。



暗部が追いつき、その場に治療結界が発動される。



「悪い・・・・・・火影よ、サスケの事を、頼めるか?」


肩を荒々しく使い、息をつくイタチ、余りに使いすぎた万華鏡写輪眼、現時点、最強の部類に入るイタチと言えど、チャクラ切れを引き起こしていた。


「ああ、里とお前の契約に基づき、サスケは火影の名に於いて、木の葉の里が保護をする」


サスケから目をそらされずに、発動されている綱手の医療忍術、三忍の実力を持って、使われるそれはサスケの傷口を塞ぐ、が、未だ全てが癒される訳でない。


イタチは、サスケの頭を、慈母のように優しく、軽く撫でた。その眼には限りない慈しみが注がれていた。


「火影よ、再度契約を結びたい・・・・・・何、里に負担は掛けない内容だ・・・・・・俺が、死んだら・・・・・・俺の目をサスケに授けてくれ・・・・・・俺に出来るせめてもの償いだ」


イタチの目には決意が漲っていた、綱手は暫しの沈黙の後、口を開く。


「何処に行くつもりだ・・・・・・いや、愚問だったな・・・・・・サスケは、お前が死ぬことはもう望んでいない・・・・・・私はそう思うぞ」

イタチに少しの沈黙が漂う。


「サスケは、もう一人前の忍びだ、俺の助けが無くても・・・・・・やっていける、俺は決着を付けなくてはいけない・・・・・・相棒を、弟を、手に掛けた、手に掛けようとした元凶と、矛を交えなければ、いけないんだ」

綱手に向けられた目に込められたは、如何に否定しようとも、覆らない。


「混乱させて、わるかった・・・・・・そうサスケが目覚めたら伝えてくれ、全てを終らせにいく、と」

綱手の静かに縦に動いた顎を見届け、イタチは最速の男四代目に匹敵する瞬身の術で、その場から姿を眩ました。


「リースの服は、預かっていてくれ、必ず帰る、甚だ身勝手だが・・・・・・その約束をさせてくれ」



イタチの最後の声が、風に紛れ綱手の耳に届く、サスケのよく見ればまだ幼い顔の頬には、涙が一滴、零れていた。






イタチが向かうは一路、決戦の地、世界が交わり、世界が滅ぼし合う、決戦の地。



悲壮な覚悟を胸に、かつて木の葉一番の天才忍者が黒い閃光となりて、決戦の地に向かう。



「・・・・・・行かせて、よかったのかのぉ・・・・・・」


自来也が術式の外で呟く。


「あいつを縛る律は、木の葉にはない・・・・・・好きにさせるしかなかろう」


綱手は治療の手を休めずに答える。


「・・・・・・だが、お前が行くことは許可しない、火影の名に於いて命令する。自来也、忌々しいがダンゾウと協力し、うちはマダラの動向について調べろ、魔女は、こうなってしまえば、大蛇丸、それと若い力に任せるしか手がない」


ぎりぎりと唇から血が流れようとも、綱手は言い切った。


「了解だ・・・・・・綱手、全てを一人で背負い込む事は無い・・・・・・わしに里の皆を頼れ」


「・・・・・・そんなことはわかっているよ・・・・・・自由に動けない私に代り、頼むぞ自来也」


自来也は沈黙の頷きを綱手に返した。


サスケの傷は決して浅くは無かった、だが、場所が良かったといえよう、伝説の三忍、治療のスペシャリスト綱手が近くにいたのだから。




全てが全て、終局に向かい出す。










世界を待つのは破滅か、それとも――



[4366] 決戦、雨の里!
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/12/15 22:11



再不斬の周りに砂が浮き出す、大蛇丸の研究の成果により後天的に付与された守鶴の力の応用。


「・・・・・・拡散、数多の目」


再不斬の意識が増大する。


突如後ろから現れ、再不斬の首を狩ろうとした四代目のクナイを事も無きに鮫肌で受け止め、そのまま鮫肌を振動させる。


四代目の影分身が根源たるチャクラを喰われ、その姿を保てなくなる。


再度再不斬の後ろを取る四代目、もう一つの刀、首切り包丁で完全に防ぎきる再不斬。



「前より反応速度が上がっている・・・・・・あれから今までの短期間で、一体どんな修行をしたんだい?」

再不斬の鮫肌が再度四代目を切り裂く。

四代目の姿は影と為り姿を無くした。


「御託はどうでもいい、さっさと奥の手を出せ・・・・・・お前の動きすら今の俺は止まって見える」


ゆらりと現れる四代目。


「・・・・・・そうだね、時間も無いみたいだし、次のお客さんをもてなす準備も始めないといけないようだ」


四代目の目は再不斬を捉えていない、遥か彼方木の葉の方角を眺めていた。


「これからは、ずっと僕のターン、覚悟は――いいかい?・・・・・・「飛雷神の術」」


四代目の姿が霞となり、姿を消した。


「・・・・・・下手に見えるから、手前の姿を捉えられない・・・・・・だから・・・・・・」


再不斬は自分の両の目を閉じる。


広範囲に広がった砂全てが目を象り、再不斬の意識の触覚となる。
昆虫の複眼、近いところで言えばペインの輪廻眼に近い構造だ。


「其所、だな」

「残念」

再不斬の二刀は、四代目の姿を捉えきった、はずだった。

だが四代目の刃は、再不斬の胴を深く穿っていた。


崩れ落ち、地面に落ち出す再不斬の体。


「君の体にもマーキングしていたんだよね、クナイにばっかり目を捕われてちゃ、僕の術は絶対に解けない」

四代目の目は落ち行く再不斬の姿を捉えるが、その顔の口元が笑いに歪んでいるのを確かに見た。

風に乗り届く、再不斬の呟き声。

「次は、ねえぞ・・・・・・もう全てわかった・・・・・・」

「まさか・・・・・・心臓を貫かれて生きている生者が居るわけが」


再度四代目は、確認の為、下に下りる、再不斬の姿は消えていた。

「・・・・・・逃げた、か・・・・・・首でも狩っておくべきだったか、違うね、恐らく防がれていた・・・・・・彼もまた、規格外の化け物ってことか」










「魔境氷晶」
氷の鏡が直人の周りに張り巡らされるが、直人の持つ刀は以前逢った音の里の時と同じく鏡の全てを断ち切る。


「連発です!」
間断なく繰り広げられる白の術、かつての経験を白は絶対に無駄にしない、一度喰らった技、一度喰らった術の傾向、対策を立てるのは白の超得意分野だ。


しかし、それは「法則」が同じ世界での話。


直人の動きには、異なる法則が働いている。


全く動き方を気取られない動き方は、白の目を眩ます。

特殊な歩法により、近づくのが見えない、感知出来ない、易々と接近されて仕舞った白は、ぎりぎりで反応するが、振り抜かれる刃。



ザクッ



白の左腕が斬りとばされる。

「・・・・・・もう軍門に下るか、撤退してはどうです?」

千本ですぐさま止血。

「・・・・・・そういえば、あなたはあの角都も殺しきった男でしたね、たった九太刀で殺し尽くしたその刀術、・・・・・・甘く見ていい相手ではないとわかっていたはずなのに・・・・・・でも、貴方も甘いですよ!魔境氷晶!」


右手の印のみで発動される、白の得意術。


それも直人の一振りで根源を破壊、発動には至らない。


だが展開される見当違いの方向。


鏡にとけ込む白、再度現れた其所には再不斬が背負われていた。



「・・・・・・見事なものです、次は、修正しますよ、僕も、再不斬さんも・・・・・・では、また、逢いましょう」


沈黙をもって返事を返す直人。




氷の鏡が消え、雨の音だけが辺りに響き渡る。


「どうやら、逃がしちゃったみたいだね・・・・・・連戦になるけど、大丈夫かい?」

直人の口に笑みが浮かぶ。

「ええ、私に対する気遣いは無用ですよ、・・・・・・火影様」

「その呼び方は止めて欲しいな、でも目が見えないのによくわかったね」

「何、先の戦いから使われる術式、昔研究所で見たことが、感じたことがありまして、扱えるのが貴方だけの話、ということ」

「僕には、血継限界は無い、誰にでも出来るはずだよあの術は、繊細なチャクラコントロールが鍵だけどね――さて、三戦目は、誰かな」

四代目は止むことが無い雨の中、木の葉の方角を見つめる。







一路雨の里へ、誰しもが言葉を発しない、不安を覚えている者もいるだろう、俺みたいにな。

「あれ、そういえばイタチは、どうしたんだ?」

リースが跨っているのは君麻呂であってイタチではない、イタチの上に乗っているのが当たり前すぎて、今まで気付かなかったよ。


「あやつは、今大事なことを話し合っているらしい、何、あやつの事じゃ、何も心配はいらんて」


リースのイタチに対する信頼は絶対らしい、あいつ以上の人間・・・・・・俺からすれば人外だが、人間はそうそういない、その見識も間違ってはいないだろう。


「ねえ、竜君、一つ聞いていいかな」

俺は今、カブトに運んでいって貰っている、大蛇丸が再度私が運ぶわよ?といったが、積極的に拒否させていただいた、ちなみに未だ眠っているナルトはカカシが運んでいる。


既に黒須先輩の顔はしていないカブト。

「ああ、なんだよ」


もの凄い移動速度で動いている俺達、何でも大蛇丸の乙女の勘とやらが、急いだ方がいい、今こそが絶好のチャンスであり、恐らく最後のチャンス、なんだそうだ。乙女じゃねえだろ、あんたは。


俺以外の人間はこんな速度でも自由に言葉を交わしている、俺には無理だな、さっきだって君麻呂の髪をリースがひっぱり、わざわざ近くに来て貰ったくらいだ、だが、カブトなら普通になんとか話が出来る。


「・・・・・・魔女に対する対抗策は、あるのかな?正直僕達が相手が出来るのはペイン・四代目が精一杯なんだけど、僕達に魔女に対する有効な攻撃手段は存在しない、「法則」とやらが違うからって話だったよね」


カブトの話も尤もだ。


そもそも「法則」に縛られているのは俺だけでもなく、ミナクスも同様、同じ世界出身のミナクスと争ってしまえば、それは単純な力量勝負となってしまう。それじゃ、駄目だ、勝てっこねえ。


第一未だあの魔女のこの世界での位置づけは、イベントプレイヤーのそれだろう、条件が揃わない限りダメージを与えることが俺にも出来ないはず・・・・・・果たして何処まで法則とやらが縛り付けているのかって話だよな。ぶっつけ本番になっちまうのは致し方がない話だ。だって俺が今まで逃げてきたのは、決着を先送りにする事と相違ない話だからな。


「再不斬の主の力は通ったんだよな」

「ああ、見事に大蛇丸様の思い通りになったよ・・・・・・ただすぐに変な空間を挟んで外に追い出されてしまったけどね」


何度聞いても理不尽なのが其所だ。


俺は絶対に使えない第七サークルの魔法、ゲートトラベルの魔法。

だって呪文自体は唱えられるけどルーン石が、存在しねえんだもん、マークをしようにもできねえって話だ。そういや四代目も触れたところに近距離ならば、あの特殊なクナイが無くとも、時空間忍術で跳べるなんていうチートを普通にやっていたな。敵は、ボスはいっつもそうだ、こっちが苦労する事を鼻歌混じりに簡単に行使しくさる!


ゲートが開いたところを、ディスペルフィールドで消せるは消せるが・・・・・・恐らく俺が一度に行使できる魔法は一つ、だが・・・・・・古代竜たるリースは最大で五つ、魔法を完全にマスターし尽くしているミナクスは・・・・・・10を超えるんじゃないのか?すげえチート、チートすぎる。マトモに戦うことは選択肢から除外したい所だな。勝てっこねえ、アバタールは凄いな、何であんな化け物クラスの人間を排除出来たのやら。


結局俺にアバタールの資格は無いと言うことが判明した。当たり前だ、一般人なめるな、そもそもUOにもそんな存在が居るわけないだろうが!皆で協力して巨大なものと戦うのがUOの醍醐味なんだぜ、一人で一騎当千なんかしちゃったらそれはもはやUOではない。


一人で一騎当千できるNARUTOの世界にその法則のまんま来ちまったのが、俺の最大にして最高の不幸だな・・・・・・その御陰・・・・・・その所為で正史に思いっきり介入しちまった訳なんだが・・・・・・原作キャラに逢わないで時を過ごしたらどうなっていたんだろうな。



――まず、最初の関門は孤児院のワイバーン強襲だな、それは恐らく問題は無い、いくら何でも剣の精霊くらいは召還できるくらいまで成長していただろうし、いざとなれば魔法のみでも何とかなったはずだ、時間さえ稼げれば忍者が来る、忍者さえ来れば、モンスターなんかには負けない。


その後、恐らく俺は姿を眩ましていたな、間違いない、異常な力を見た人間は、ほぼ間違いなく排斥に走る。孤児院のみんなならその懸念は薄まるが・・・・・・モンスターが現れ出したすぐの頃は、まだ木の葉の里も健全化していないはず、間違いなく里の噂になり、火影に呼ばれる、そのまんま里の子飼になっていただろう・・・・・・俺の意見なんか関係なくな。


その後は・・・・・・そのまんま世間と関係無しに世界が滅びる様を見届けたんだろうな。いくら里が強化されてもミナクスの漆黒の軍勢には抗しえない、どんなに才能が集まろうが、どんなに訓練を積もうが、人間だけの力であの全滅の軍団には対抗出来ない。



あくまでIFの話だが・・・・・・限りなくそのまんまだったろうな。


さて、魔女への対抗策ねぇ。

「大丈夫、普段なら言い過ぎだが、今はまさしく世界の命運が掛かって居るんだ、うまくいけば――俺は、魔女を何とか出来るはず」


微妙な言い方だが、それ以上断定は出来ない。あんな存在に万全なんかあり得ない、少し、いや、かなり無茶しなくっちゃ、渡る橋も渡れない。


――マスター――


ああ、そういえば、このインチキコデックスの御陰で結構助かってるよな。


――マスター・・・・・・実は・・・・・・すごくいい辛い事があるんだ――


何だよ、今更何を言ってもびびらねえから安心しろって。


――実は・・・・・・後一回の力の行使で僕は消える――


・・・・・・そりゃまた・・・・・・急な話だなインチキコデックス。・・・・・・ご苦労さんとでも言えばいいのか?


――思った以上に、力の消耗率が激しいんだ、それに・・・・・・魔女の干渉もある――


思わず頭を抱えてしまう、なるほど・・・・・・後一回こっきりか、こっちのチートは見逃さないってか?どんな阿漕なGMなんだろうねぇこの世界を管理する「神」とやらは。


――マスター――


わかった、了解した・・・・・・何とかするよ、後一回で全てを解決すればいいんだな?何とかするよ。


――それだけじゃない、琴音と、直人、彼ら二人にスキルを与えたのは、僕だ、つまり――


お前が消えれば、二人のスキルが消える・・・・・・そっか、・・・・・・それもまた理の一つだろうな。


――そうじゃない、それだけじゃない、二人のマスターに関する記憶が消える――






・・・・・・・・・・・・消える、のか・・・・・・・・・・・・あの二人が、俺の事を忘れる・・・・・・・・・・・・。


――マスターに対する思いが、彼らのスキルを産みだした、僕はほんの少し種を植えただけ・・・・・・スキルが消えれば、種に伴い、核となるマスターとの記憶も消えてしまうんだ――


・・・・・・何を今更、俺はショックを受けてんだか・・・・・・別にどうってことねえ話だ。


――マスター、力を使うときは、よく考えてね、後にも先にも後一回だよ――

インチキコデックスの気配が消えた。


そっか、其所まで嫌いなのか、俺のことが其所まで嫌いなのかこの世界は・・・・・・つくづく俺は、いちゃいけない存在だったんだな、最初から、誰とも慣れあわなければ・・・・・・こんな思いしなくてよかったのにな。







「かい君さっきのどうやったの?」
直人のキラキラと輝く瞳。







「かい、なんか悪いこと企んでるでしょ?」
琴音の何処か見通したような幼い瞳。








そっか、二人の中から俺が消えるのか・・・・・・いいよ、わかった、魔女の事を何とかしてから考えるとするか。


明日は、明日の、風が吹くってもんだ。気にせず・・・・・・行こうぜベイビー・・・・・・。


「竜君、どうしたんだい?何処か痛むのかい?」


知らずの内に、カブトの頭に涙が落ちていた。

涙を強引にぬぐう。

「いや、ちょっと目にゴミが入っただけだ、カブト、雨の里までこのペースで行けばどれくらいだ?」

「もう少しで境界内に入るよ、雨は・・・・・・相変わらず降っているようだね、入ればペインに悟られる・・・・・・気持ちの準備はいいかい?」

周りを軽く見渡す、何奴も此奴も気合いが漲っているいい顔だ、あ、ナルトもいつの間にか起きていたか・・・・・・さぁ、最終決戦だ!





俺達は、雨の里に、入った――――。



二度と来たくないって思っていた所だ、昔の俺を数年にわたって縛り付けたこの場所・・・・・・決戦の場所が、恐らく原作と被るってのも、一体何の皮肉なんだか、違うのは、最悪の敵だった大蛇丸が味方であること、勝手に脱落していった暁達。


変わった歴史、とことん変わらせて行こうじゃねえか、将来は、未来は、俺達の手で決めていくんだ!


天の神様よ、俺は無神論者だけど、いるなら聞いてくれ、・・・・・・邪魔をするなよ!人の未来は人が決める、神なんかの出番じゃねえ!



[4366] 決戦、雨の里!その2
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/12/18 01:10

ペインの術により、雨が降り注ぐ中、雨の里に一つの蠢く影が再度現れた。


剣神、直人により斬りとばされた白の腕、その指先に光る一つの指輪。

地面から染み出すように現れた蠢く影は、指から指輪を抜き去った。


「あはは、これで後一つだよ」


「サイゴニノコッタノハ、イタチノカ、・・・・・・マトモニイクノハ、ブガワリイナ」


「そういえば、指輪が集まれば何が起こるんだっけ?」


「サァナ、マダラノカンガエルコトダ、キット、ロクデモナイコトダゼ」


「それもそっか、そんなことより、いよいよ、魔女が表に出るみたいだよ」


「マダダナ、アノ、サイキョウノシニガミヲ、ドウニカシネエト、ソコマデタドリツカネエヨ」


「ペインも、まだいるしね・・・・・・彼らが全滅したら僕達が戦う羽目になるんでしょ?正直遠慮したい所なんだけどなぁ」


「マダラガ、デバレバ、ハナシハハエエンダケドナ、ドッチミチ、コンカイノヤツラガマケレバ、モウ、マジョニツケイルスキモナクナル、オロチマルノハンダンハ、サスガニテキカクダナ」


「嫌だね、他人にこの世界の行く末を任せる羽目になるのは、といっても、最後に笑うのは」


「オレタチ、ダケドナ」

蠢く影は、そのまま再び以前と同じく姿を地面にとけ込ませた。







雨の里にまた来ちゃった俺。

はぁ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ、此処まで来て何だけど、絶対的に俺は此処にいていいキャラじゃないよな・・・・・・。
「竜、何時までも気の抜けた顔をするでない、もう敵の胃袋の中じゃぞ」

わかっているよ、ペインの術式の中だって事はさ。

何せざっと5年か?それ以上この中で苦労してスキルを上げる羽目になっちゃったからな
あの時は辛かった、何も食べなくてはいいけど、少しでも姿を現すようなら、小南かペインが即来るような場所だからな。


監視が厳しすぎだって、里全部をカヴァーする天然の要塞だよな。


当然の如く現れる、輪廻眼を持つペイン、それと、黄色い髪を持つ、俺は初めて見るな、あれが、最強の死神、四代目火影、波風ミナト、か。もう一人・・・・・・目を瞑ったままの直人。


油断するどころか、瞬きするだけで殺されそうだ。


四代目の姿が消える。


受け止めるは、この中で最速の実力を持つ、木の葉の白い牙、はたけカカシ。


「・・・・・・カカシ君、やっぱり来ちゃったか。言ったよね、僕は君は殺したく無いって」


そういえば、師弟対決でもあったな。


「そういう訳にもいかないでしょ、先生は俺が止める、五代目火影にそう誓っちゃったものでね」

四代目の顔が悲しい顔を形作る。

「・・・・・・君だけで、僕が止まると思っているの?」

ギチギチギチギチギチ

双方共に木の葉製のクナイがあわさり合い、火花を散らす、力自体は、互角。


「そうであって欲しかったものだけれども・・・・・・切り札を出される前に終らさせて貰う・・・・・・今だ!」

「瞬身の術、改!」


カカシが足止めを行い、ナルトが新たに開発した術で金色の閃光となり、一直線に四代目に向かう。


・・・・・・決まれ!決まっちまえ!何も知らずにナルトと父親の戦いを終らせろ!ナルトに知らせるな!余りにも酷じゃねぇか・・・・・・自分の父親と殺し合いをしなきゃいけないなんて・・・・・・。それが例え死人だとしても・・・・・・違うな、死人だからこそ、ナルトには知らせちゃ、いけないんだ!


「危ない危ない・・・・・・誰だい、瞬身の術に螺旋丸を組み合わせるような事を考え出した命知らず・・・・・・は・・・・・・君・・・・・・は」


四代目の姿は絶対必中のタイミングだったナルトの術から、苦もなく逃げた・・・・・・あれが、伝説の四代目の最強にして孤高の術「飛雷神の術」、か。


とてつもない移動速度に加えて、何処に現れるかわからない標的を搾らせない上に、予想も許さない、・・・・・・すげえチート。そりゃ一人で一つの軍ぐらい殲滅出来るだろ、術の相性もあるが、暁が束に為ったって、全ての里が束に為ったって、全盛期の四代目には勝てない。


其れを打倒しようと、今立ち向かうのが・・・・・・その四代目の血を引くナルト、それと弟子のカカシ。

「・・・・・・カカシ君・・・・・・その子は・・・・・・」

まだ、ナルトはわかっていない、結局誰も教えられなかった、今、目の前に居るのが、最強の死神が、自分をこの世に誕生させた、父親だってことを。


「何で避けられるんだってばよ?・・・・・・俺か?聞かれたならば答えてやるってばよ、俺の名前はうずまきナルト、いずれ木の葉の里、一番の忍者、火影になる男だってばよ!」


ナルトは相変わらず脳天気で敵の真ん前で名乗り上げる。
カカシは、忍者にあるまじき行為、敵から目を逸らしていた。
敵から目を逸らす、だが、敵も今は茫然自失している今ならば、今だけは問題無いのだろう。


「・・・・・・うずまき、ナルト・・・・・・そっか、君が・・・・・・ナルト、か・・・・・・クシナによく似ている」


四代目は、未だ戦おうと態勢を取っていない、殺気なんかどっかに吹き飛んでいる。


速攻で終らなかった、か・・・・・・後は俺が全く手を出せない、忍者の戦いだ・・・・・・。

辛いだろうが、乗り切れよ・・・・・・傍には居てられねえけどな・・・・・・お前なら大丈夫だ!






他に目を向けると、ペインが六人・・・・・・ペイン六道・・・・・・原作で鬼の様な実力を発揮したボスの一人、木の葉襲来の時の実力は半端なかった。

六人の前に立ちはだかるのは、三忍が一人、原作では自来也、この世界では、大蛇丸、原作と違うのは、自来也は一人だけだったが、大蛇丸には完調の君麻呂が付いているってことかな。


最初っからフルスロットルのペイン、対する搦め手が大の得意である大蛇丸、その忠実にして完璧な盾でもある君麻呂。


「・・・・・・ペイン・・・・・・伝説の輪廻眼、あの時の餓鬼ね・・・・・・あの時自来也が一思いに殺していれば・・・・・・ま、今更言っても仕方が無いわね。殺るわよ、君麻呂、カブトは竜について行ってあげなさい」

「・・・・・・了解しました」

カブトは俺を抱え込み、その場を離れた・・・・・・作戦開始、だな。


トラッキングは、ビンビンに働いている、大蛇丸達が時間を稼げれば、俺達の勝ち、ペインは危険過ぎる、遠く離れた場所なら個別撃破で何とかなるかもしれねえが、こう本拠地に近くっちゃ、倒しても倒してもすぐに補充が効いちまう。本体を叩く以外、俺達に勝ち目は、一切存在しない。


途中、手に負えないような化け物が出てこなきゃいいんだが・・・・・・後は運任せ、だな。

「さぁ・・・・・・行こうぜ、カブト、急がなきゃ大蛇丸は死ぬぞ、何せ自来也でも一人じゃどうにも手が出ない相手だ」

詳細は知らせずに、カブトに危険度を教える。
「何処からそんな情報を持ってくるんだい?ペインの強さはよくわかっているよ、急ごうか」

速度が上がる。「神」との対面、偽物なんかじゃない、本物の「神」との対面だ。




カブトに運ばれる途中、最後に見る一組の戦い。


残る一組、剣神、直人、向き合うのは、

「リース」


今仲間の中で最も頼りになる仲間の一人、手には大蛇丸から貰った刀が握られている。


「まかせろ、下僕の大切な仲間を殺しはせぬよ、行け、大事な事なのだろ?」

直人と顔が向き合う。今は、まだ、直人を元に戻す時期じゃない、それよりも急がなきゃいけない事があるんだ。

「・・・・・・直人、ちょっと待っていろ、すぐ、戻る」

「・・・・・・何か企んでいますね・・・・・・カイ君なら当たり前ですが」


俺達を見えない目で見逃した、直人の声を後ろに、俺とカブトは、雨の里、暁の本拠地の中に入り込んだ。

大蛇丸達が負けて死ねば、カカシ達が向き合っている最強の個体以外に最強の群体が加わる、それは作戦の失敗を意味する、ミナクスがおもしろ半分で出張ってくればそもそも終ってしまうのだが、あいつはそんなタイプじゃない。ラスボスってのは、最後までどんと最奥で構えているもんだ、イベントがあれば出てこなくちゃいけないだろうが、その時期は既に逸した、空気を読まないミナクスじゃない。


待っていろペイン、暁の象徴たる手前の最後だ。――この世界の最後の戦いだ、せいぜい派手に行こうじゃないか。これが終れば、俺は、この世界から消えよう、この世界からUOの臭いを消してやるよ。待ってろ「テラサンキープ」、待ってろ「星の間!」







雨の里、少し離れた場所。


あらゆる所でモンスターがわき出してから、里の外にいる人は極端に少なくなった。

いるとしたら忍者、それか荷物を運ぶ隊商くらいのものだろう。


白と再不斬は二人きりで、木陰に隠れていた、白の傷自体は千本の止血により止まっていた。

再不斬の傷は普通ならば、致命傷、しかしもはや再不斬の体は普通の枠組みをはっきりと超えていた。

しかし、未だ意識は無い。


「参りましたね・・・・・・この傷なんとか癒せればいいんですが、このままでは・・・・・・ん?」


ぶつぶつと再不斬の容態を見ながら、辺りを伺っていた白のセンサーに、気配が一つ引っかかった。


「・・・・・・速い、でも、何処かぎこちない?・・・・・・チャクラ切れでも引き起こして居るんですかね、それにしても、速い・・・・・・向かう先は・・・・・・雨の里、目当ては」


「出てこい、其所に隠れているのはわかっている」


一瞬、白の体が強ばる。
「・・・・・・僕以上の感覚を持っている訳ですか、暁の一人ですかね、まだ、残っていればの話ですが」

白は、再不斬を一度見て、表に姿を現した。


「貴方は・・・・・・確か、ダスタードで逢った、その服、その額宛・・・・・・イタチですね」

「・・・・・・誰だ」

白は薄く笑いを口元に浮かべる。

「僕の名前を知らないのも無理はない・・・・・・あの時は貴方の眼中に無かったはずですからね。少なくとも、今は敵対する者ではありません、貴方が暁とでもいうならば話は別ですが」

「・・・・・・暁はもう抜けている、その傷は、暁にやられたものか」


イタチは白の肩の傷を見る。余りに奇麗に断絶されているそれは、滑らかさえ感じられる。


「ええ、木の葉の黄色い閃光と共に居た人にやられましたよ、これから貴方も決戦に参加するのですか?僕に負けず劣らずふらふらのそのからだで?」


イタチは雨の里の方に目を向ける。
「・・・・・・心当たりがある、全てを癒す魔法の手を持っている少年、名前を、竜。暁に敵対すると言うのならば、お前達も、来るか?その程度の欠損ならば、あいつは苦もなく治すぞ」


白は思わず耳を疑った。

「・・・・・・その程度って・・・・・・この腕が無い事すら、その竜って子にはたいしたことが無いとでもいうのですか。竜・・・・・・ああ、そういえば大蛇丸の毒を治したのも、確かそんな名前だったような」

イタチは頷いた。

「実例が目の前にいる、俺の不治の病ですら竜は治した・・・・・・この決戦の鍵を握るのも、何故か、戦闘能力が全く感じられない竜なのは、・・・・・・間違いない、再度問おう、共に来るか?」


白は力強く頷いた。
「僕らが二人いるって最初っからわかっていたんですか、行きます、このまま負けっ放しってのも、気にくわない話ですからね、僕も、・・・・・・再不斬さんも」


「ならば、付いてこい、もう起きて居るんだろ?・・・・・・二代目、霧の怪人、桃地再不斬」


木陰からその巨体を現す再不斬。背中には二本の巨大な刀が鞘に入り、突き刺さっている。
「鬼鮫の相棒だったやつか・・・・・・いいぜ、行こうじゃねえか、どうやら同じ相手を狙っているようだからな」

イタチの後に続き、白と再不斬は、再度雨の里に向けて足を向かわせた。



最後の戦いが、始まり、稼働出来る全ての戦力が雨の里、本拠地前で決戦を張る。



竜達が勝てば、そのまま世界の決戦、魔女との対面となり、ペイン達が勝てば、それはそのまま世界の終焉となる。


マダラの企みも、未だ策を為さず、影に隠れながら、マダラはじっと決戦の様子を見ていた。





世紀の決戦を前に、人々は不穏な空気を感じ、世界の柱を担う、人柱力達も、何処か、きな臭い臭いを感じ取っていた。






木の葉の里、とある一つの医療室。


サスケの看病をしているのは、綱手に医療忍術の初歩を習ったばかりのサクラだ。

もう、この局面まで来て、七班、カカシ班は、班としての体裁は整っていなかった。

カカシは既に里の決戦存在として部隊から離れ単独で、今や最強と名高い四代目に挑んでいる。

同じくサクラと同じく下忍であるはずのナルトまで、木の葉の里、最強の決戦存在の素体として遥か遠くの里で、苦しい戦いを繰り広げている。

サスケは戻ってきた、今度こそ戻ってきた、傷だらけの姿で。

「サスケ君・・・・・・いつからだろうね、私達がばらばらになっちゃったのは・・・・・・あの砂の国との国境近くの時以来かな、みんながみんな、ばらばらになって・・・・・・中忍試験も中止になり、ナルトとカカシ先生は、火影様いわく、世界の命運を決める戦いに望んでいる、なんて、信じられないよね・・・・・・どうなっちゃうのかな・・・・・・私達」

名を示す、ピンク色の髪の毛を持つ少女は、サスケの顔に浮かぶ玉の様な汗を拭き取ってあげている、既にサスケの容態は峠を越し、後は時間だけがサスケを癒す。


七班の中で最も一般人に近い感性を持つ、サクラは、どことなく置いてけぼりをくらった感情をもてあましていた。





そんな少女の心も関係無しに、戦争は、誰も知らないところで着々と準備を整えていた。まるで現象たる戦争そのものが意識を持っているかの如く。



[4366] 決戦、雨の里!その3
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/12/20 15:09


雨が降りしきる中、盲目の剣神、直人は古代竜たるリースと争っていた。


直人は近づくことはしない、以前の戦いで全ての剣筋を見切られていた以上、剣のみが今の取り柄である直人は絶対に勝つことが出来ない。


しかしリースには多数の攻撃手段が残されている。


圧倒的魔力で放たれる、数多の魔法。


様々な魔法を息をつく間もなく仕掛けるリース、全てを切り裂き、直接攻撃を絶対にさける直人。

額には玉のような汗が浮かんでいた。

「・・・・・・やはり、貴方にはどう足掻いても傷一つ付けられないようですね、引かせていただきます」

直人は静かに呟き、本拠地の中に引っ込んでいった。



一度他の戦いを見た後、黙って後を追うリース。

「これでいいのじゃな?・・・・・・竜よ」



派手な魔法戦は終わり、後には雨が降りしきる音だけが残る。



その光景を眺めていた大蛇丸との戦いに参加していなかった一体のペイン、他のペインと大蛇丸達との戦いを尻目に、ひっそりと後を追った。







数的優位で明らかに劣勢に立つ、大蛇丸と、君麻呂。

「君麻呂、私が認めた、その力、今こそ私の為に発揮して貰うわ」

草薙の剣、及び、様々な手段でペインを捌ききっている大蛇丸。




圧倒的勢いで大蛇丸の言葉に応える君麻呂、その表情は確かに輝いていた。


「命令を、命令を下さい、僕は、大蛇丸様の為に此処にいます!」

「嬉しいこといってくれるじゃない・・・・・・今の命令は、ただ一つ、見敵必殺・・・・・・全てを文字通りなぎ払うのよ!」

「了解!」


骨を体中から生みだし、全てをなぎ払う君麻呂。近接系のペインをあしらい、更に攻撃を遠距離攻撃をしかけようとしたペインに対し、隙を作らない。


「どうした、暁、お前等の実力はそんなものか!」

君麻呂の声が響き渡る。


だが、――君麻呂の奮戦も虚しく、全ての足止めは出来ずにペインの一体が二人の攻撃をすり抜け、四代目に詰め寄る。








――雨の里、暁本拠地近く。

黄色の髪の男と、金色の髪の少年が、雨が降りしきる中、互いに向かい合っている。


殺気が微塵も感じられない相手に、ナルトは戸惑っていた。


ナルトが今まで対面した強敵と言えば、サソリから始まり、暁のほとんどがそれに該当する、それにしても目前に存在する相手はそれらよりも遥か上の技量を感じさせるにもかかわらず、その目にもその態度にも一切の殺気が籠もっていないので、ナルトは戸惑うばかりだ。


忍者らしく、ナルトは油断はしていなかったが、その場で仕掛けるには不気味すぎる・・・・・・ゆえに頼りになる先生に声を掛ける選択肢を選んだ。


「・・・・・・カカシ先生、なんかこいつおかしいってばよ、何か今までの敵とは・・・・・・違うってばよ」


四代目は、ただ、ナルトの顔を見て、雨に紛れてよく分からないが、まごう事無き微笑みを浮かべていた。


カカシは答えない。答えることが出来ない。


「・・・・・・ナルト」


目の前の敵が静かに動き、瞬身の術で目の前に移動していた、殺気が全く込められておらず、手にも武器に該当するものを持っていなかった。

その手が、静かにナルトの頭を撫でる、ナルトは何処か違和感、どこかで感じた懐かしさすら感じ、動くことが出来ない。


「・・・・・・お前、一体何なんだってば、何で・・・・・・懐かしいなんて感じがするんだってばよ・・・・・・」


カカシは直視する事が出来ない、木の葉、精鋭中の精鋭、それが今のカカシの立ち位置。

本来ならば、この敵の隙を見逃してはいけないのだが、その無防備すぎる敵の後ろ姿を認め、事情を知りすぎているだけに、カカシは動けない、動くことが出来ない。


そんなカカシの感情の動きなど知らないナルトだが、自身に感じられている違和感は更に増大、振り払うべき敵の手、・・・・・・雨の中でも暖かいその大きな手を無碍に振り払う気には、どうしてもならなかった。


ぽとり


ナルトの目から一滴の涙が、雨に紛れて頬を伝い、地面に落ちた。
ナルトの体から力が抜け出す。どうしても抵抗できない、傷つけたくない、そんな何処からか湧き出た得体の知れない感情にナルトの体は支配される。


「・・・・・・何で、勝手に涙が出てくるんだってばよ」


知らないのに、余りに暖かい掌の感触に、抱きつきたい感情もわき上がるが、ナルトはひたすら我慢する。


四代目は、ただ頭を優しく撫でる以上の事はせず、ただ微笑んでいた。


「・・・・・・僕が最後に見たときは、赤ん坊だったのに・・・・・・大きく、なったね」


四代目の小さな、それでいて何処か感傷を呼び起こす声。



ずぶりっ


異音が全ての邪魔をする。

気付けば一体のペインが四代目の後ろに位置し、四代目の頭に指を突き刺していた。

「・・・・・・痛みを、知れ」

四代目の頭からペインの指が抜かれ、四代目の顔が無表情になる。



「離れなさい!そいつは、もう、感情無き、殺戮機械よ!」


大蛇丸は草薙の剣でペインの一体と切り結びながら、ナルトとカカシに声を張り上げる。


カカシの行動は速かった、ナルトを四代目の目の前からかっさらい、無表情になってしまった四代目に対し、致死の一撃を加えようとした、刹那、先程の四代目とナルトとの再会風景が脳裏に浮かぶ。


「・・・・・・くっ!」


情けを掛けられるほど、甘い相手ではない、そんなことは重々承知しているため・・・・・・カカシはそのまま致死の一撃を四代目に放つ。


「甘いな、カカシ」


四代目の前に回り込んだペインの体から斥力が発生され、カカシの攻撃をそのまま全力で弾くペイン、カカシはナルト諸共、数メートルその場から強制的に退去させられた。


「・・・・・・精々、死神との戦いで抗えぬ痛みを知れ」


四代目を完全なる支配下、殺戮機械に変えたペインは、追ってきた君麻呂の一撃を避け、その場から離れた。


「・・・・・・平気か?ナルト、事情を話さなかったのは、悪かった・・・・・・だが、それも全て忘れろ。でなければ、何も出来ずに、全てが終るぞ、守るべき人も、里も、ありとあらゆるものが終焉を迎えてしまう。今、目の前にいる男は、全てを終局に導く、御使いだ」


今回初めて四代目の体から湧き出る、殺気。

前回と明らかに違う点は、際限が無いと言うこと・・・・・・目に付くもの全てが動きを止めるまで、今の四代目は全ての力を使い、全ての術を使い、最大効率で殺戮に走る。


カカシが抱えるナルトの体は脱力したままだった。


「・・・・・・分かった、元々俺一人で止める予定だった。安全な所で見ていろ・・・・・・悪かったな、後は俺に全部任せろ」


カカシはいつもの笑顔でナルトの頭を撫でる。

ナルトは精神的ショックから、動くことが出来ない。


暫し離れた所、大蛇丸と君麻呂はペイン六道と争いを続けていた、全ての動きを読んでいるかの如くのらりくらりと交わし、未だ大蛇丸にペインの攻撃は届いていない。


「君麻呂、仕方ないわ、九尾の餓鬼を守りなさい、何、輪廻眼如き私一人で大丈夫よ、こいつも居るし、ね・・・・・・出でよマンダ」


大蛇丸との盟約に基づき、巨大な蛇が召還に応じる。
体躯に見合った力を振うマンダ。


「目の前の者全て、貴方の餌にしていいわ、存分に暴れなさい、マンダ」

「・・・・・・ふん、契約が途切れるまではお前の意のままに動いてやるが・・・・・・途切れたとき、どうなるか、わかっていような」

「ええ、貴方以上に分かっているわ」

マンダはその体躯をいかし、ペインに向かい攻撃を仕掛ける。


「・・・・・・御命令とあらば・・・・・・」


ペインの一体を、すれ違い様に吹き飛ばし、君麻呂はナルトを抱え、とにかく何故か未だ、動かない四代目から距離を取る。

君麻呂にもわかっていた、とてつもない化け物が目覚めてしまったことが。

常に冷静沈着、大蛇丸の命令があれば全てに優先するが、ありとあらゆるものを容赦無しに殺してきた君麻呂だから、わかるものがある。


もう、こいつには永遠に勝てない。


君麻呂の背筋を冷たい汗が勝手に垂れる。





「僕は・・・・・・波風ミナト・・・・・・全てに抗らえぬ痛みを与える者」

まるでペインの様な口調で一つ小さき呟き、四代目が、動き出す。

散漫だった殺気が、一つに引き絞られる。


「・・・・・・さぁて、短期間でのあの修行が、どれほどの意味を持つか・・・・・・」


カカシは、一度実家に帰り、木の葉の白い牙の代名詞であった、父の形見の忍者刀を手にしていた。

淡い、それでいて確かな白い光を帯び出す、チャクラの性質を何倍にも高める、忍者刀。
白い光は刀だけでなく、カカシの体全体に広がり、カカシを包み込み、カカシの能力を高める手段となる。

そう、まるで刀に籠もった父の魂が、息子を助けるが如く、白い光は優しくカカシを包み込む。


カカシには諦観など無い、カカシには絶望など無い。


「木の葉の忍者には、諦めるって感情は、存在しないんだよ、そうだろ、先生」


カカシの意識が、極限までに高められる、以前世界を巻き込んだ忍界大戦、一度平和になった後、再度世界を襲ったモンスターショック、高められる必要があった忍者の実力。


カカシは正しく時代の恩恵を受けた忍者の一人であった。

その意識は全てに及ぶ、チャクラコントロール、術の精度の、術の威力の強化。


木の葉の忍者が学ぶチャクラの省エネ、確立の最大の立役者の一人は三代目火影、次いで功労を上げたのが、何を隠そう、はたけカカシ、今やカカシが扱う術に込められるチャクラの量は、第三次忍界大戦の時の十分の一以下に止まっていた。


自身は確固として否定はしているが、カカシもまた、木の葉が産んだ、世界に誇れる天才忍者の一人。


「行くよ、先生・・・・・・先生の悪夢は、俺が、止めるよ」


全ての打てる手、全ての取れる手段、ありとあらゆる可能性を詰め込んだカカシの力。


木の葉の白い牙ならぬ、木の葉の白い閃光は、今、木の葉の黄色い閃光に挑戦状を叩き付けた!








マンダのみ為らずあらゆる手を有効に使う大蛇丸は、ペインを纏めて四代目から離させる。


君麻呂は徐々に遠ざかっていく大蛇丸を心配そうに見守りながら、背に負うナルトの守護に専念していた。


「・・・・・・どうした、木の葉の下忍、前に大蛇丸様にほざいた言葉は偽りか!」


四代目の様な圧倒的な絶対強者に立ち向かうには、結果をわかりきってしまう者では、駄目だ。実力の差など考え無しに突撃でき、結果的に全てを超えることが出来る、戦いの中で成長出来る者でなければ、それこそ何も出来ずに終ってしまう。

君麻呂にも出来る、ただし大蛇丸の命令があった場合に限る、が。

昔の大蛇丸なら兎も角、今の大蛇丸はそういった命令を下さない。

それが更に君麻呂の焦燥を強める一因でもあった。


「・・・・・・どうした、ナルト、その為体は一体どうした!木の葉の火影が見たら・・・・・・あの三代目と呼ばれていた火影が見たら、・・・・・・一体どう思うんだろうな」


君麻呂は取れる手段が限られている、まずはナルトをどうにかしなければ、大蛇丸の援護にもいけない。今や、大蛇丸を守れるのは自分だけ、君麻呂を縛るのはその絶対の意識だ。


「・・・・・・あれは・・・・・・父ちゃんだってばよ・・・・・・俺の、知らないけど、父ちゃんだってばよ」


力なきナルトの声。


君麻呂は顔を顰める。
「・・・・・・それが、どうした、戦いこそ我がかぐや一族が求める真理・・・・・・俺の父、否、俺の一族は全てを捨てて、水の国、霧の里に戦いを挑み、全てが滅びた」


君麻呂にはナルトの心が、絶対に理解できない、争う相手が父親だとしても、戦いに限定すれば、喜んで戦うだろう。それが、戦いしか知らないと言われる、かぐや一族の譲れない誇りであるからだ。

ナルトは、君麻呂の吐いた言葉が理解できない、そういった世界があることは忍びである以上、わかってはいたが、今のナルトでは、理解はできていない。

「お前は自分が吐いた言葉すら忘れたのか?相手が父親だから、其れが一体何だと言うのだ」


君麻呂は強く、ナルトの胸元を持ち、問い詰める。

「お前の事は、俺でさえ認めていた・・・・・・お前が越えた、三代目火影、あれは忍びの鏡だ、ありとあらゆる術を扱い、使いこなしている、自身の身すら犠牲にし、大切だと思った者のために役立てる、まさに俺の理想の姿、それを越えた忍びとして、下忍ながらも、俺は、お前の事を少しは認めていた・・・・・・それが、何だ、その様は!」



「どうやら、取り込み中ですね」


音も無しに現れる三つの影、背の高さもその装束もばらばらの三人。


君麻呂は流石に気付いていたのだが、殺気が無いため放っておいた、殺しにくるなら返り討ちにするだけだ。


君麻呂はナルトの胸元を放し、ナルトを地面に落とす。


「・・・・・・白と再不斬、それに・・・・・・イタチ、か。こんな所に何のようだ?」


君麻呂は、大蛇丸に対し今一忠誠心が足りない二人に、かつて全く歯が立たなかったイタチ、その組み合わせに疑問を幾許か挟んだが、全ては取るに足らないことと割り切っていた。


「・・・・・・カカシさん、か」
「派手にやっていますね」


イタチは以前逢ったときのような精悍さは微塵も感じられず、今もふらふらと頼りなさげに立ち、白は片腕を根本から無くし、おおざっぱな処置で終らせているせいか、名前以上に顔が真っ青だ、


そして、


「おい、君麻呂、竜って餓鬼は何処だ」

圧倒的力量を誇る、随一の人型決戦兵器、再不斬。

「知らぬ、ただ、カブトさんと其所から何処か中に入っていったのは確認している」


事前に全員に対して、色々と説明はされていたのだが、君麻呂にとって、大蛇丸が全て、その他の些末事に頭を悩ませることすら時間の無駄。


「・・・・・・ちっ、先に邪魔者を始末しなきゃいけねえようだな」

再不斬の感覚に異物が入り込む。


「・・・・・・で、その餓鬼はどうしたんだ、情けねえ、それでも忍者なのか?」


脱力したナルトを見て、吐き捨てるように言う再不斬。

イタチが口を挟む。
「君麻呂というのか、・・・・・・一体何があった」


イタチの目的は、ミナクス一人、関わる必要はないのだが・・・・・・サスケの仲間と言うことでほんの少し気になっていた。


「ふん、本人に聞けばいい」


君麻呂はナルトに向き直る。先程言いかけた言葉を再度声に出す。
「お前は戦う相手が父親だから、その凶行を見逃すのか?相手が父親だから仲間を見殺しにするのか?相手が父親だから、例え操られていると分かっていても・・・・・・殺されるのか?相手が父親だから、父親が心の底で苦しんでいるとしても、その所行を見逃して、その苦悩を高めさせるのか?」


君麻呂の冷徹ながらも冷静な意見。
「操られて・・・・・・いる?」


「ああ、口寄せ・穢土転生は、術者に絶対服従の術式が埋め込まれている。しかも改良型として使われているあれは、本来なら消える死者の意識さえ、そのままだ。自身の意志に反して使われる自分の体を眺めているだけっていうのは、さぞかし・・・・・・辛い事だろうな」


君麻呂は大蛇丸からかつて習った術の内容を、全く感情がこもってない声でそらんじる。


「さて、お前が言っていた、火影という言葉は今のお前が体現できるほど易いものなのか?」

ナルトの顔が上を向き、君麻呂の顔を見つめる。

「火影、火影ねえ、あれも火影なんだろ?どうなんだ白」

「四代目火影、波風ミナト、今の再不斬さんですら一度は敗退している以上、戦闘能力だけ
取れば、今この世界で誰よりも高いと認められます」


「最強最悪の化け物、九尾の妖狐を封じた、木の葉最大の功労者だ」

イタチが小さな声で補完する。


ナルトの視線に軽く答え、更に続けるイタチ。


「そう、お前の中に封じられている人柱力は、お前の父親がやったこと・・・・・・里のやつらはその事を知ってか知らずか、意識してか知らないでか、幼少の身のお前に辛く当たった。
それは妖狐がお前の身に封じられているのを知っていたから・・・・・・もっとも外から見れば更にわかる、今、お前が蔑視の視線で見られないのも、その力があるため、とも言える。誰もが言えない里の禁句ってやつだ」


ナルトの口が開く。
「父ちゃんは、一体何のために・・・・・・俺の中に・・・・・・馬鹿狐をいれたんだってばよ」


イタチはかぶりを横に振る。
「さて、当時まだ何もわからなかった俺にも不明だ、ただ、他の人柱力と違うのは明らか・・・・・・詳しくは当人に聞け、今は意識を完全に奪われ、答えられないようだがな」


イタチは遠い目でカカシと四代目の戦いを見る。


「・・・・・・父が、貴方を思っているだけ、貴方は幸せですよ」


白は蒼白な顔に、笑顔を浮かべる。


「僕は血継限界に目覚めた切っ掛けは、父が母を殺し、僕を殺そうとしたその時でした。僕の血継限界、魔境氷晶、力を利用されることを恐れた父は、いっそのこと皆で死のうと、その刃を僕達に向けました・・・・・・皮肉にも、その状況が僕に血継限界を目覚めさせる切っ掛けになったわけですから・・・・・・今は、礼を言いたい気分です、だって」


白は再不斬を見あげる。


「少なくとも、この力の御陰で、僕は再不斬さんの役に立てるから」


白の優しい目がナルトを見る。


「貴方は、どうしたいんですか?大切な人を守りたいのですか?・・・・・・貴方に取って大切な人とは一体誰ですか?・・・・・・貴方なら答えが出るはずです、大切に思われている人は、大切ってことの意味がわかるはずです」


君麻呂が補足する。

「口寄せ・穢土転生は、核となる札を破壊しなければ、永遠に動き続ける術式だ・・・・・・お前が三代目とやらにやったようにな」


「・・・・・・俺は・・・・・・俺は・・・・・・じっちゃんのような、父ちゃんのような、木の葉で一番の火影になる」


ナルトの体に力が、戻る。


「里に降りかかる全ての災難を、ありとあらゆる力で止める・・・・・・それが相手が父ちゃんだとしても」


思い起こす優しい手。


「あんな事を優しい顔でしていた父ちゃんが、カカシ先生と殺し合いなんてするわけが、ないんだってばよ」


どうしようも無く、逆らえなかった四代目の優しく頭を撫でる手。


「・・・・・・俺は、木の葉で一番の忍者、火影になる。越える対象に、父ちゃんが含まれていないってのも、変な話だってばよ、それが、例え里を救った英雄、四代目火影、波風ミナトだとしても!」


ナルトは力強く全員を見つめ返す。


「・・・・・・悪かったってばよ」


君麻呂はそっぽを向く。


「ふん、全ては大蛇丸様の為だ・・・・・・向かうのか、お前等はどうする」

君麻呂が三人を見渡す。


「・・・・・・俺は残って奴を仕留める、筋違いもいいところだが、仇は果たさなければいけない」

イタチは小さく呟き、白と黄色の閃光が争う戦場を見る。


くすりと白は笑う、その卓越した人物観察眼により、白はイタチの性格を既に把握していた。


「素直に協力したいっていえばいいのに・・・・・・私達は遠慮します、先にこの傷を治さなければ足手まといにしか為りませんからね、相手があの四代目火影ならば、尚更・・・・・・すみません、再不斬さん、肝心なときに足を引っ張っちゃって」


再不斬はなにも喋らずに、白を抱え、君麻呂が指した入り口に入り込む。


後を追う、また一体のペイン、今大蛇丸が相手をしているペインは四体。


のらりくらりと余裕を見せながらも、徐々に徐々に追い詰められている大蛇丸。

君麻呂は遠目に見ながら、たまらず助けに入った。





ナルトの体にチャクラが巡りに巡る。


「・・・・・・気持ちは嬉しいけど、そんな体で平気なのか?サスケの兄ちゃん」

「俺の事を心配するのは百年早い、せめて中忍にでもなってから言え」

イタチの返事に、ナルトは軽く顔をほころばせる。


「じゃあ、木の葉の大先輩に、共に戦ってもらうとするってばよ」

「遅れを取るな・・・・・・サスケの仲間」


イタチの静かなチャクラがイタチの全身を支配する。
もはや、チャクラの欠乏により、万華鏡写輪眼は、使えない。


イタチの黒色のチャクラと、ナルトの金色のチャクラがそれぞれの体から立ち上る。



「瞬身の術」



高度な忍者になれば当然使える、基本高等忍術の一つ。



最速に最強にまで極めた四代目火影、波風ミナト。


後を追う、木の葉の弟子、木の葉きっての天才忍者、一粒だけ残された血筋。


忍者は忍者らしく、悲しさ空しさ全ての負の感情を乗り切った、決別の戦いが、雨が降りしきる市街戦で行われる。








砂の里、しぶとく生き残っていた悪魔の一体を琴音の白眉が始末する。


「思ったより時間がかかっちゃったわね、ありがとう御座いましたゲンさんに、ツメさん、それにハヤテさん」

冷静な態度を終始崩さず、最大効率で悪魔を駆逐していた油女ゲン、相棒の黒丸と共に並外れた嗅覚と威力で脇を固めていた犬塚ツメ、それと竜の治療で病が奇麗さっぱり消え去り、高い実力を遺憾なく発揮した月光ハヤテ。


木の葉が正式に送り出した増援は、わずかに三人、だが、その三人は未だ残っていた悪魔達を効率的に殺し尽くした。


「あんたも若いのに大したペット連れているわね、どう?うちのキバにもその技教えてあげてくれないかい?」


息子同様、ワイルドな性格でにこやかに琴音のモンスター捌き褒めるツメ。

「それはちょっと・・・・・・無理なんですよ、ちょっと特殊な血継限界みたいなものでして・・・・・・」


ばんばんと軽く琴音の肩を叩くツメ。


「わかっているって、本気にしなさんな、私らには、歴とした相棒がいるからね、なぁ黒丸」

はっはっと息を荒げながら、どう猛に他の敵を探している黒丸。


「・・・・・・砂の里に入り込んだ敵は、全て駆逐した」


虫使い、油女ゲンが、自身の体に巣くう虫から報告を受ける。

無口な男は帰り支度を初めている。


呆気にとられる琴音。

「あの男は昔からああなんだよ、あんたが気にすることは無いよ」

琴音の肩を優しく掴むツメ。


「少しはお礼出来ましたかね」

自慢の刀に付いた、悪魔の血を振り払うハヤテ。


病が無くなり、行動速度が上がったその技は、芸術的だとも言える。

ハヤテは個人的に病を治してくれた竜に恩義を感じ、今回の竜の盟友と聞いていた琴音の砂の援軍に真っ先に賛同した。




談笑する四人の前に現れる砂のご意見番、ちよ婆。

「すまぬな、今回の援軍、恩に着る」


「何、あんたの所も大変だね」

他の里の重鎮に対しても態度を変えないツメ。


「忍びとして当然のことをしたまでだ、礼を言う必要はない」

静かに告げるゲン。


「あの・・・・・・砂のご意見番ですよ・・・・・・皆さん」

二人の縮こまない態度に顔色を悪くするハヤテ。実力は兎も角、位としては二人より下。ハヤテは要らぬ心労を負う立場に自然となっていた。


「はっはっはっは、其所の顔色が悪い若いの、気にする必要はない・・・・・・忍びは実力が全てじゃ。どうにも最近きな臭い臭いがぷんぷん漂っておる、万全の木の葉があってこそ、我が里も安定していられるというわけじゃ」


「・・・・・・お前等、強いな」
ひっそりと現れる我愛羅。


「あら、我愛羅じゃない、もう後始末は済んだの?」

気安く話しかける琴音。


「お前のペットの御陰で思ったより速く着けた、礼を言ってなかったと思ってな」
無表情の我愛羅。


「あら、別に構わないのに、ただ盟約に従ったまでよ・・・・・・あながち今回の騒動は私にも無関係じゃないしね」


「琴音さん・・・・・・風影ですよ・・・・・・」
余りに気安い琴音の態度に、更に顔色を悪くするハヤテ。


バシッ

ツメにより力強く叩かれるハヤテの背中。
「いつまでそんなこと気にしてんだい!そんなんだから上忍になれないんだよ!全く実力は確かなのに気持ちが小さいまんまなんだから」


「イタイデス・・・・・・性格なんで放っておいてください」

背中を届かない手で撫でるハヤテ。



「お前等、特に、琴音とやら、こんな所でゆっくりしてていいのか?雨の里でドンパチをやっているみたいだぞ」

我愛羅はぼそっと重要情報を流した。


琴音は思わず我愛羅の胸元を掴んでしまう。

ハヤテの顔色が、倒れた方が楽なんじゃないと思えるほど白く染め上がる。


「・・・・・・詳しく聞かせなさい・・・・・・また、竜ね、私に知らせずまたしても・・・・・・あの馬鹿!」



悪魔襲来時、砂に琴音達を増援に決めたのは別に竜ではない、そんな権限は存在しない。



雨の里襲撃も突発的に決ったものだ、決して竜に責任は、無いのだが、怒りに燃える琴音には関係なかった。



[4366] カカシの戦い
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/12/24 12:30

雨の里に、文字通り雨が降り注ぐ。


そこら彼処で争いが起こり、痛みを呼び起こしている。


雨の里、元、最高責任者、ペイン。

今は数を少し減らし、四体で大蛇丸と、其れを守護する君麻呂と矛を交えていた。

「三忍でも、貴方が木の葉に戻るのは、少々予想外でしたよ、大蛇丸」

近接系の術を持ったペインの一体が、草薙の剣を持った大蛇丸と切り結びながら、言葉を発する。


今までより更にチャクラを自在に操るペイン、あらゆる場所でも自在に補充が効く存在、ペイン。


大蛇丸が、君麻呂がいなく、五対一という状態でも戦えていたのは、白からペインの癖を知っていたからである。
だが、大蛇丸の攻撃手段も、ペインは察していた。

あらゆる角度から恒常的に見ることにより、ペインは敵の隙を見逃さない。

「別に、木の葉の里になんか戻った記憶はないわよ?」

君麻呂が別角度から大蛇丸と相対していたペインに斬りかかるが、


「ならば、何故今我らと争っている」


余裕で攻撃をかわし、言葉を発するペイン。


「決っているわ……ただ、私は気に食わないの、魔女という存在が、私の心に刻まれたミナクスという存在が……殺りなさい!」


大蛇丸の合図と共に、マンダが上から再度ペイン達にのしかかる。


斥力で危なげなくマンダの攻撃を排除するペイン。


「五秒、でしたよね大蛇丸様」


神速で近づいた君麻呂が骨の刀を持ち、天道ペインの能力の隙をつく。

それをバールの様な物で打ち合わし、カヴァーする近接系、しかし、


「甘いわね、風遁、大突破!」


君麻呂もろとも近接系ペインを風遁で吹き飛ばす大蛇丸。


「チェックメイト!」


草薙の剣が天道ペインを捉えたかに映るが、


「この程度ですか?」


五秒というわずかな時間はやりとりの内に戻り、大蛇丸は斥力ではじき飛ばされる。


ずどんっ


マンダが落ちてくる。
その上に神速で飛び乗る大蛇丸と君麻呂。


「……後一手欲しいところね」


白から、竜から聞いていた話を総合すると見えてくるペインの実体。


作戦では、大蛇丸は時間稼ぎだけが目的だった。
しかし、苛烈を極めるペインの攻撃に、うまくいかない大蛇丸。


「直情型の自来也なら、ここで無理してでも自力で秘密を探ろうなんて考えるんでしょうけれども……私はそんなこと、しないわ、ねぇ君麻呂」


全く息を乱さず、君麻呂が素直に答える。


「仰せのままに……木の葉の下忍は立ち直りました、後は……」

敵から目を逸らさずに、静かに大蛇丸に詞を返す君麻呂。

「そういえば・・・・・・白が言っていた、殺しても、すぐに口寄せされるっていっていたけれど、その肝心要の口寄せをする個体は、何処かしら?」

四体になったペイン。
顔つきを眺め、白から習った固有点を探し出し、大蛇丸は大きい嘆息をついた。


「……面倒くさい事になったわけね……しまったわ、先手をうたれた、か。私ともあろうものが……いちいち、いらいらさせるわね、君麻呂、竜達が危険よ、あっちの人外の戦いにこのリモコン野郎達が関与できないように、全力で排除した後に、私達も中枢に向かうわよ……乱戦の最中、畜生道とやらを私から外すなんて……いい度胸しているわね、マンダ、悪かったわね、全力を出して――いいわよ「獲物は、獲物らしく……しっかりと逃げなきゃ駄目じゃない」」


ふと、大蛇丸は、自身の下に位置するマンダの頭に手をつき、マンダを縛るキーワードを口にした。

「……貴様!わしの体に――!」


マンダの表皮が輝き出す。
金色を浮き上がらせたその鱗は、確かな存在感と共に、力を発揮し出す。


「……貴方じゃ一回の発動で、限界、ね、相性が良い古代竜とやらの細胞を融合させたんだけれども、更なる力はお気に召したかしら?」



ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



「……これは!」


ペイン達の躰に戦慄が走る。

正気を失ったマンダの瞳がペイン達を、――獲物を捉えた。



マンダの口が開き、奥にちろちろと、紅蓮を越えた金色の焔が発生する。


「さぁさぁ精々逃げまどいなさい、君麻呂、私達は行くわよ」
「了解しました」


ペイン達は別に声を掛け合う必要はない、意思の疎通など朝飯前もいいところだからだ。

その場に止まっていれば天道ペインの斥力でも、耐えきれない。
術の使用限界時間が来れば、そのまま欠片も残さず消えてしまう。

ゆえに、ペイン達は、その場から個別に逃げ出した。

標的を搾らせない為に。


ジュッ




竜達や、リース達の後を追ったペインは、畜生道と、地獄道のニ体。



今、術を吸収する能力を持った餓鬼道が、マンダの金色のブレスにより蒸発した。

雨の里に降り注ぐ雨が一時的とはいえ、雲を吹き飛ばされ、青空が顔を出す。


大蛇丸と君麻呂は、暁本拠地に向けて歩を進めた。


本拠地に入る者を見逃せないペイン、天道ペインが大蛇丸達の後を追い、



ゴゥ

ジュッ


残された人間道、修羅道ペインが蒸発させられた所でマンダの躰が崩れ落ちる。


雨が降り続くなか、雨の里の決戦は、完全に外と中に振り分けられた。




外で争うは――最強の死神、四代目火影波風ミナト。

内に待ち構えるは――稀代の魔女、ミナクス。








――ナルトが立ち直る、数分間の間、カカシは最強の死神、四代目火影波風ミナトと死闘を繰り広げていた。


形見のチャクラ刀のおかげと、短期間だが、壮絶な修行を経て、カカシの身体能力は、四代目の速度についていけていた。


ペインの強制操作以来、一言も言葉を発しない四代目。


「親父には、感謝しなくっちゃな……この場面でようやく先生に追いつけているのも、この刀の御陰、速度で追いつき、力で互角、……先生、あの術は使わないのかい、先生の代名詞、最強のアノ術を」


白いチャクラがカカシを優しく包み込み、初めてカカシは四代目と互角に戦えていた。


互角では、駄目だ、何より四代目には最強の術が、まだ残っていることをカカシは他の誰よりも知っている。かつて忍界大戦で誰よりも見て、誰よりも助けられたのもカカシだからだ。


「飛雷神の術……使いなよ、俺は、俺が先生の全てを越えるからさ」


四代目と争う内にカカシもまた、特殊なクナイを辺り一面にばらまいていた。
カカシの心情としては、越えたいと言うこともあるのだが、接戦になっているからこそ、いくら省エネでまだ大量にチャクラが残っているときであっても、今だチャクラが残っているこのときにこそ、四代目の全てを越えて、抹殺しておきたかった。


接戦では、カカシは四代目に勝つことは永遠に不可能だ。
切り札を使わせ、対抗策で勝つ、それがカカシの作戦。


「……あの術には反動が多大に含まれている……カカシ君は其所を克服出来たのかな?」


四代目の表情が刹那だけ、元に戻り、また無表情に変わる。


「……これはこれは……ペインの術も完全に完璧では無いみたいだね……」






「多重影手裏剣の術!」



ナルトの高らかに歌いあげるような声と共に、三代目も愛用した術、大量の手裏剣が四代目、カカシ双方に対して降りかかる。


「……螺旋丸、……解」


四代目は事も無しに螺旋丸を生みだした後、無理矢理解除、チャクラが込められた風が大量の手裏剣を吹き飛ばし、傷一つ負わせない。


「ナルト!……もう大丈夫なんだな?」


「……うずまきナルト、此処に見参!……ご免だってばよ、カカシ先生」
完全に立ち直り、目には決意を漲らせ、ナルトは決戦場に立つ。


「……俺も参加させていただく、其所の男には色々と借りがあるものでね」


イタチが小声で呟き、ナルトの後ろに控える。


「……イタチまで一緒か……今は、信じていいんだな?」


カカシにはイタチを無条件で信じ切ることなど出来ない。

イタチは静かに頷く。


「……別に俺を信用せずとも構わない、俺はただ、相棒の仇を討つだけだ」

いつもリースに強制的に貸し出されていた、自分の無名だが、折れることは無いよく手入れされている忍者刀を抜き払うイタチ、目に浮かぶ写輪眼は、万華鏡には進化出来ない、チャクラが純粋に足りない。


「……ナルト……逃げろ!」


四代目の表情が再び刹那、元に戻るが、すぐに無表情に戻り、手に特別製のクナイを抜き去る。


「……逃げる事は、出来ない、だって、俺は火影になるんだってば……父ちゃんを越え、俺は火影になる!……こい、四代目火影、波風、ミナト!」


四代目の頬に涙が一筋落ちるが、体は勝手に動き、一つの言葉を呟かせる。






「……飛雷神の術」


発動される四代目が扱う対人間では最強の術。

反撃を許さない、黄色い閃光の名前の由来になった、絶対の術。


「イタチ、ナルト、背を合わせて死角を消せ!瞬きなんかするなよ……次の瞬間首が胴体から離れるぞ!」


カカシの出来うる限り最善の策。
「……カカシさんは、どうするんですか?」



ぼそりとイタチが呟く。
「……俺は、俺はこれを待っていた、後は、先生を超えるだけだ……飛雷神の術!」




発動される、対人間最強の術、カカシバージョン。

カカシの姿が白き閃光となりて、イタチとナルトの目から完全に消え去る。


飛雷神の術は、写輪眼ではコピー出来ない。
術式自体をコピーしても術の核を為すのが、術者が扱う術その者ではなく、事前にばらまいている特殊なクナイの方にこそあるから。


四代目没後、その術の内容をずっと研究されてはいたが、誰も使うことなど無いと思われていた。


その原因が、反動だ、飛雷神の術は、術者に対し回避不可の反動を残す、術者に対するフィールドバック。並の術者ではそれだけで命を落としてしまう可能性すらある。


人の忍者の反応速度を超えた戦いを繰り広げるカカシと四代目。

あらゆる場所に現れては消え、あらゆる場所に消えては現れ、イタチとナルトの目には全くとまらない。


ドンッ


すれ違い様に吹き飛ばされるカカシ。


「……まだまだぁ!これからだ、飛雷神の術!」


四代目の追撃を必死に再度の術の行使で逃げ切るカカシ。



「……一体何なんだってばよ……これが……父ちゃんの、カカシ先生の……本当の忍者の実力……」
ナルトにも見えない戦い。「飛雷神の術」は竜はともかく、忍者にすら、視認を許さない。


故に逆らえない、故に反応できない、故に絶対、故に無敵。


イタチがナルトの体を少しだけ後ろに引かせる。


サクッ


ナルトの体の目の前を通り抜ける二人の刃。



「……イタチは見えているってば?」

「……ああ、カカシさんに分が悪い戦いだ。あの男はチャクラが無限、だが、カカシさんには絶対に限界が出てくる……だがカカシさんしか、もはやあの男に追いすがる事すら出来ない……何か、策があるようだが、果たして……」

イタチの目に浮かぶ写輪眼。


洞察力に優れ、チャクラの動きを色として、形として見ることが出来る写輪眼だからこそ出来る芸当。


「俺のチャクラは、もはや尽きかけている以上……ナルト、もはやお前がどうにかするしか、この局面は打開出来ない……カカシさんは頑張っているが……どうにかしてカカシさんが時間を稼いでいる間に打開策を考えろ」

ナルトは暫し考え、一つの手段を思いつく。
「口寄せ、猿候王・猿魔!」


「足りなければ……足りている所から借りればいい……リースもそんなことをよく言っていたな、猿魔の知恵を借りる、か」


「……其れも、そうなんだけど、じっちゃんの相棒も一緒に戦う、それだけだってばよ」

煙が晴れ、現れる、三代目火影猿飛ヒルゼンの相棒、猿候王・猿魔。






「……一瞬でいい、刹那の間だけ動きを止められば……」


呟き、再度術を行使するカカシ。


ガスッガキッ!

刀とクナイが斬り合わさる。


四代目はもう、迷わない、大蛇丸が言った通りに、目に映る全てを破壊する殺戮機械。


カカシは元より、無事に勝うなんて思っていない、ありとあらゆる手を使い、ありとあらゆる可能性を使い、四代目火影を、悲しき戦いから解放しようと考えていた。



そして、飛雷神の術を使う展開に為っている限り、他の横槍は入ってこない。


それだけで勝てるとはカカシは最初っから全く考えていない、故に策の一つを発動するに至る。




ズブッ



カカシの動きが、刹那、止まる。

「・・・・・・飛雷神の術を行使している最中は、他の術は使えない、そうだったよね、先生」

四代目のクナイが迷わず、カカシを貫く。

突如ぶれるカカシの躰。


「・・・・・・俺も、先生が死んだ後、・・・・・・ただ、闇雲に生きてきた訳じゃ・・・・・・ないんでね」

心臓に突き刺さった四代目のクナイを伝わり、雷遁が四代目に伝わる。


「雷遁影分身」

カカシの躰が形を失い、四代目の躰を雷遁が走る。
飛雷神の術は、同時に術を併用できないという欠点がある。


「・・・・・・後は・・・・・・封印術・屍鬼封尽」

動きを強制的に止められた四代目の腕を掴み動けなくした状態で、カカシは四代目が開発し、九尾を止めた禁術を四代目に対し・・・・・・使う。


封印術・屍鬼封尽は、術者自身の魂を介して身体から死神の腕を伸ばし、相手の魂を引きずり出して封印する術、術者の体力に多大に左右される・・・・・・今の二人の状態では、如何に・・・・・・。



かつて里を救うために使われた禁術は、其れを開発した術者を封ずるために、再度使われる。











――ミナクスは細かい術名等は分からないが、サスケとイタチの兄弟合戦から始まる一連の鑑賞劇にいたく満足していた。


傍に控える、漆黒の悪魔。

それが軽く窓を見やる。


「バルロン、わらわのお客さんみたい・・・・・・撃退する必要はないわ」


其所には、かつてリース達三人を退けた、UOの「世界」の後押しを受けた聖獣・・・・・・不死鳥が一体窓の外に音も立てず威圧もせず、ただ浮かんでいた。


漆黒の悪魔は、軽く頷き、金色の不死鳥に道を譲る。


「一体、何の用かしら、今とっても面白い見せ物が続いているのだけど」

――世界の、決断が、近づいている事を知らせに来た――


「別に、わらわはあの世界の代表だなんて一度も言っていないのだけど?わらわは勝手に呼び出されただけよ」

――それも、世界の選択だ。お前が選択する選択しない、全てを含めて、な――


本来不死鳥フェニックスとはUOでは、いくら強いといってもミナクスといったゲストキャラに比べれば天と地ほどの差がある。一般プレイヤーでイベントでも無いときでも、狩ることが出来るフェニックス。かたや、イベントでも無い限り姿すら見ることも出来ず、現れたとしても手下を嗾け、自分が戦う事は元来存在しないミナクス。


それが、この世界では、立場を、根源を共にする者同士として、存在している。


本来なら決して片方に肩入れをしない「監視者」それが聖獣達の立ち位置だ。


「決断、決断ねぇ・・・・・・決戦存在、ようやくアバタールが来るとでもいうのかしら?」


玉座に座りながらミナクスはフェニックスに問いかける。

――アバタールは、この世界にはいない、いるのは、哀れな力なき子羊、だが、あの者以外、そなたを打倒する可能性がある者がいないのも、また真実――


ミナクスはあくびをかみ殺す。

「あんなちっちゃいアバタールのなり損ないに一体何が、出来ると言うのかしら?」


――世界が、世界が後押しをすれば、あるいわ――


「あんな子供には、何も出来ないわ、そう、全てがわらわを満足させるには至らない――本当、ナンテ下らない世界なのかしらね・・・・・・わらわは一体こんな所で、何をしているのやら」


――世界が、決めたことだ――

フェニックスは再び音も立てず存在も感じさせず、窓の外に飛び去っていった。


「世界、世界って五月蠅いわね・・・・・・あの竜って子、ちゃんと此処まで辿り着けるんでしょうね?・・・・・・無理だったら、せめてもの慰みに、この世界、滅ぼしてあげるんだから、さぁわらわのために、もっともっと愉しませておくれ、この世界の強豪達」


ふふふふふと、静かな笑い声が玉座に響き渡る。

その笑い声は、酷く静かで、酷く乾いていた。










*うん、100話で大体終ると思ったんですが、無理くさいです、もうちょっと伸びるかも、です。毎回読んで下さる皆さん、本当にどうもありがとう御座います!最新の話しのペイン、強いですね、木の葉の忍びが弱く見えるのは・・・・・・突っ込んじゃいけないんでしょうね。漫画的表現っって本当に難しそうです、説明しなきゃいけないし、でも説明多くするとテンポ悪くなるし、自分でも皆さんも納得いく、結構変わった世界の終焉の終わり方目指して頑張ります!メリークリスマスイブ!*



[4366] 決戦、雨の里!その4
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/12/25 00:44

雨の里、暁本拠地。


中はこんなになってんだ・・・・・・スネーク!スネーク!ばりに中に入り込んだ俺達は意外に近代化されている中に戸惑っていた、特に俺が。

流石は組織の本拠地、敵に攻め込まれている事を前提にわざとわかり辛くして居るんだろうな、日本の昔の城、それに中世西洋の城に通じるものがある。

要の部分に本来なら中ボスみたいなのを置くのが常套手段なんだが、幸か不幸か、もうあいつらに戦力は存在しない、気をつけるのはミナクスの気まぐれだけ、だ。


「また分かれ道、どっちだい?」

「ああ・・・・・・道は、こっちに続いている・・・・・・止まれ」

指さした方角に見えるは、敵、カブトが俺を抱えたまま、壁による。

Hiding
*姿を隠すのに成功しました*


目の前をDeamonが一匹のっしのっしと通り過ぎる。


ズブリッ


後ろを向いたDeamonに対し、カブトの致死の一撃が加えられ、静かにDeamonの首と胴体がおさらばだ。

いいねいいね、俺じゃ殺せないから、スキルがGM近くになり、接している人間まで姿が消えるようになったHiding、さすがにStealthまでは適用されないみたいだが、この世界では十分すぎるほど役立っている。

「何か何度試しても、相手から見えていないってのは変な気分だね・・・・・・君はこんな事を昔から練習していたんだ・・・・・・消えていたように見えたのは、当時すでに大蛇丸様に出会っていて少なくとも中忍程度の実力があった僕が、最後まで君をかくれんぼで発見できなかったのは、目の錯覚なんかじゃ無かったんだね」

俺にしてみれば、あの、カブトが黒須先輩だったって事の方が驚きだったんだけどな。


「ま、効果は見ての通り・・・・・・何度も確認すっけどさ、俺に直接の攻撃能力は絶対に期待するなよ、・・・・・・確率ってやつに俺の攻撃は全て支配されてっから、いくら全力の魔法行使でも、さっきお前が殺したそこのDeamon一匹、殺しきるのが精々なんだからな」


ましてや、動きが見えない忍者相手では、俺は何も出来ずにそのまんま即死、はー頼りねえ体だこと。


「わかってる、大蛇丸様にも、よく言われているよ、絶対に傷つけるなともね。いくら大蛇丸様でも、あのペイン相手じゃ持ちきらないだろうからね・・・・・・先を急ごうか、確か、こっちだったよね」

静かに、それでいて忍者の行動速度で移動する俺達・・・・・・このまんま雑魚だけだったら嬉しいんだけどな、ボスとか出てきて欲しくねえぜ、もう名のある敵っつったら、ペインと四代目、それとミナクス、だけ。全部所在が確認されている以上、多分、平気だろ。


・・・・・・でも、なんでDeamonが、こんな所を彷徨いて居るんだ?
モンスターは自然発生するのは、今までわかってはいるが、こういった系統だったモンスターが存在するには、それなりの理由が必要なんだぜ、此処はダンジョンではない、荒野でもない、でもさっきから見るDeamonの数は普通の数を超えている、ミナクスが呼び出した、なら話しが分かるが、あいつは意味もなくこんな所に彷徨かせる真似はするキャラじゃねえだろ。


「どうしたんだい?さっきから口数が少ないじゃないか」

「何・・・・・・物事は常に最悪の予想をしておけっていうじゃないか、覚悟していてくれ、どっかで主が待っている、出会わない事を祈ろうぜ、次は、左だ」


カブトの表情は位置的に伺えない、ただ、気配は締まったのは感じられた。


果たして、嫌がらせに近い、イベントバトル扱いの主の連発とかは避けて欲しいぜ、今の戦力じゃカブトに期待するしかないからな。


外じゃ四代目相手にナルト達が踏ん張っている所だろ、俺が引き起こした、世界と世界が争う世界大戦は、俺の手で引導を渡さないといけないのか。ああ、嫌だ嫌だ。


再び懐をごそごそと漁る、色を無くしたムーンストーン、それに・・・・・・氷の杖。

後はインチキコデックス。


なんて――なんて頼りないんだ・・・・・・こんなんで、俺は、ミナクスを煙りにまこうと考えて居るんだよな。頼むから逢って即瞬殺は止めて欲しいぜ、あいつ相手じゃカブトでも、恐らく最強になったナルトでも、物理的では関係ない、法則的に戦えない相手、だからな。

馬を召還して乗りこなすより、忍者の方が足が速いのはいい事だ。
移動がすぐ終る。








竜達が入り込んでから暫く立ってのこと。

「・・・・・・早く、いかなくちゃ」

小さく呟き、直人はミナクスの課した制限内で、行動をしていた。


弾ききれなかったリースの魔法で頬と言わずあらゆる所に火傷を負っている直人。

その行動に迷いは無い、迷路のような内部を迷わず最短で目的地に向けて歩みを進めている。


その後ろを少しの間隔を置き、つけるリース。

翼をはやし、魔法をふんだんに使っている御陰で物音を立てず、動いているリースだが、モンスターは誤魔化せない。

モンスターが現れる度に、一々直人に気付かれないよう、離れてから殺害していくため、徐々に離されていくリース。



当然の如く、距離が離れきってしまい、直人の後ろ姿を見失うリース。

「・・・・・・しまった、見失ってしまったではないか・・・・・・ええい、いっそのこと元の姿に戻って全てを破壊しようかの・・・・・・しかし、考えてみれば、イタチと世界に出て以来、下僕がいない状況は、初めてかの・・・・・・これが、人間が言うところの感傷、か・・・・・・人とは、不便な生き物なのじゃな」


辺りをきょろきょろと見回し、次の道に進むリース。


「・・・・・・まだ、早いか。さて、世界は、どういった選択を、するのかのぉ」

外見に合わないしゃべり方で、言葉を発するリース。


ふわふわとした調子で浮かぶリースは、やがて、一つの広大な広間に出た。


何もない空間に、満たされている水、ちょっとした湖といえる其所は、静寂で満たされていた。


「此処、は」


リースは一部変身を解除、翼を巨大化させ、宙に舞う。


湖の中心が、輝き出す。


光が放たれ、ゲートが開き出す。


「途中の悪魔共は・・・・・・そうか。お主が、魔女の軍門に堕ちていたか、久しぶりじゃな――バルロン、絶望の体現者よ」


ゲートから現れた漆黒の巨体を持つ、高度な知性体。

竜族の王、古代竜、それとタイマンを張れる存在はUOの中でも数が少ない。

悪魔族の王、バルロン、彼はその数少ないボスの中の一体だ。



NARUTOの世界に来て更に高まった、古代竜の最強のブレス、絶大無比の魔力、高速の近接攻撃。
自我を持った古代竜、リースは元の世界より数段上の実力を持っている。


元の世界でのバルロンならばブレスで一蹴出来るほどに、その実力はかけ離れている。


今まで出てきたバルロンは、それぞれ制限があった。
サソリのクグツに操られ、そのポテンシャルを全く発揮できなかった個体。
目覚めたばかりで制限を外す間も無く、琴音の最高峰のテイマーとして忍びとしての力に負けた個体。


だが、リースが見る限り、現れたバルロンは目に確かな知性が宿っている。


「我が名は、オメガ、終わりを導く者、久しぶり?それは人族の感性だな竜王」


今まで冷静に話し合える主の存在は余りに少なかった。
制約に縛られ制限に侵され、理性が生じる前に自壊する。


「なるほど、魔女の手は、入っておらぬのか・・・・・・お主、自らの意志で従っているな」

漆黒の悪魔は静かに首を縦に振った。

「何、我らがこの地に生を受けたのも摂理の流の中にある、そうであろう、・・・・・・人族に興味を持つものよ、お前の存在が其れを証明している」


リースは翼をはためかせ、オメガの前にその体を浮かせる。

「ふん、――人族は、面白いぞ、お主ほどの者なら薄々わかっておるのだろ?自我を備えきって制限が外れたお主なら、理解できよう、我の気持ちを、――世界に支配されることを忌避した我の気持ちを」

リースは今まで、真の意味で気持ちを話せる存在はいなかった。


「分からんでも、ない・・・・・・だが、竜王よ、眷属はどうするのだ、全てがお前の様に人に紛れられるものばかりではあるまい、見捨てるつもりなのか?」


「お主が、ミナクスに付き従うは――その所為、か。その問いの答えは、一つ、我が竜王としての資格を無くせば、話しが終わる・・・・・・新しき竜王が生まれ、その王の元で我が眷属は栄えるであろうさ、暫しの辛抱という話じゃよ・・・・・・それを見捨てると捉えられれば、そうとも言える、な」


竜王の言葉を受け、漆黒の悪魔は暫し沈黙を保つ。


「主より受けた命は、一つ侵入者と遊べ・・・・・・わかった竜王、そなたの願い我が力を使い、一つだけ叶えてやる、受け取れ」

漆黒の体を持つ悪魔から放たれる、鈍い光。


リースにオメガを信用する素材など存在しない・・・・・・だが、初めて出会った知性ある他の主。

「・・・・・・お主が騙そうとはしていないことは、主としての格を見れば、わかる、我らは人族以上に言霊に縛られる身ゆえ・・・・・・」


リースは、悪魔の洗礼をその身で、受け止めた。


漆黒の悪魔の体から湧き出ていた力が、一時的に堕ちる。


「これは?」

リースの体は外見上何も変わっていない。

「・・・・・・主の力の総和は、変わっておらぬ、そんなこと我らの創造主でも無ければ出来ぬからな。しかし、姿、及び竜王としての力は永遠に封じられた、我が死んでもそれは変わらぬ」


「永久ポリモフ、及び、新たな我の誕生、と言う訳か・・・・・・これは、礼を言っておこうか」

漆黒の悪魔は首をゆっくりと横に振る。


「礼か、それも人族の作法だな・・・・・・ならば、礼とするならば、その姿で我と戦え、魔力は一切衰えておらぬはず、力も速度も、全てが元のままのはず・・・・・・変わってすぐは勝手が違うのだが、そなたならば変わらぬだろう、さぁ、戦え」


オメガは虚空から愛用の剣を取り出す。身の丈は普通の人間の数倍にも及ぶ其れは、少女の姿をしたリースの何倍にも及ぶことになる。


「さて、人族に変わったからには、相応しい獲物を手にせねばならぬな・・・・・・Vas Rel Por」

竜では使えない、第七サークル、ゲートトラベル、溢れんばかりの魔力で編み込まれた其れは、極小の扉を生みだし一つの武器をかつての世界から、呼び出す。

リースの手に馴染むその武器は、かつて撃退した戦士が使っていた武器、Vanquishingの効果が込められたそれは、リースの魔力により永遠の耐久度を誇る、至高の一品。


木の柄を持ち、先端に巨大な刃が備え付けられ、本来ならば馬上にて振われる其れの名前は、「ハルバード」UOでは戦士系に見た目から人気がある武器の一つ。


「断っておくが、我のスキル、Swordsmanship並びにTacticsといった戦闘に必要なスキルは、伝説を越えている、お主も似たようなものじゃろうがな」


漆黒の悪魔は体に力を巡らせる。


「人族対悪魔族、実に絵になる組み合わせ、そう思わないか、元竜王」

何処か声に空虚さを滲ませながら、

「ふんっ、其れも魔女の命の一つ、という訳、か・・・・・・クダラナイな、オメガ、我が名はリース・・・・・・お主を打ち倒す者、いざ!」

溢れる魔力を力に変え、リースは漆黒の悪魔に立ち向かう。


悪魔の体が宙に浮き、剣が天に突き立てられ、仮想隕石が場にふりそそぐ。


リースのハルバードの一振りにより、天から降り注ぐ雷が仮想隕石を迎え撃つ。

雷と隕石が相殺する中、オメガの長大な剣と、リースの身に合わぬ長大なハルバードが激しき火花を散らし、打ち合わさった!







リース達から更に後、白を抱えた再不斬は、本拠地の中を行き当たりばったりに進み、ひたすら竜を探していた。

「邪魔だ」


もう、現時点で四代目かミナクスくらいしか相手にならない再不斬の力は、道を塞ぐ悪魔を全て一太刀の元切り伏せていた。


「再不斬さん、この道は先程も通りました・・・・・・」

「ちっ、わかり辛え道だな・・・・・・面倒くせえ・・・・・・全てを壊すか」

危険な発想は力を持つもの共通の意識なのか、リースと全く同じ事を言う再不斬。

「再不斬さん・・・・・・竜が巻き込まれたら、彼は間違いなく即死してしまいますので、どうか止めてください」


リースが思いとどまったのは中に下僕がいたからに他ならない。

目的は違えど、探している人間は同じである以上、同じ結論に達して、白は再不斬の無差別破壊活動を停止させた。

「ちっ、そうだったな・・・・・・糞、邪魔だ!」


開けた部屋に出た二人、集まるは大量の悪魔。全く問題なしに殲滅にかかる再不斬。

白は血が足りず、考えることが出来ず、出来るのは助言くらいだ。

白が万全ならば迷路など問題無かったのだが、体力温存で再不斬に抱えられている今は、時折道を確認することしか出来ない。


「再不斬さん・・・・・・落ち着いたら、安全な場所で暮らしませんか?」

悪魔の血を白に掛けないよう少しだけ気に掛けている再不斬の戦い。
背に負われた白は、熱にうなされ、そんなことを口にしていた。


「・・・・・・どうした、白、・・・・・・らしくねえな、お前がそんなことを言い出すとは、な」

一匹の悪魔を更に葬り去り、魔法の雷を鮫肌で吸収。
放った悪魔を首切り包丁が情け容赦なく一刀両断。

「そうですね・・・・・・僕らしくありませんでしたね・・・・・・ただ、ふと、そんなことが頭に浮かんだだけです・・・・・・すみませんでした、忘れてください」

数匹の悪魔に囲まれるが、動きを止めている悪魔達の足に纏わりつく砂、動きが止まれば後は的だ、水遁が、氷遁が、はたまたそのまま砂が、悪魔達を同時に殲滅する。

「ちっ・・・・・・もう寝ていろ、必ず竜って餓鬼は探し出す」


再不斬の声に、優しさが、込められていたのを白は感じ取れただろうか。

「ありがとうございます・・・・・・少しだけ、失礼します」


白は完全なる安心感に包まれ、意識を手放した。

「安全な場所で、暮らす、か・・・・・・悪くはねえ、な、お前と二人、ならな」

白が寝たのを確認してから小さく呟く再不斬。


再不斬は最後の悪魔を首切り包丁で切り裂き、次の部屋を目指した。


再不斬の前に立ちはだかる障壁は須く、塵に変わる。


まるで母鳥が雛を見守るが如く、優しい眼差しを白に一瞥し、再不斬はひたすら奥を目指した。










*死亡フラグ?*



[4366] 痛みの真価
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/12/25 15:41


雨の里、暁本拠地内部。

「其所を左、次を右・・・・・・なんて広いんだ、まるでダンジョンだぜ」

カブトに抱えられたまま、俺達二人は俺のTrackingを頼りにひたすら奥に奥へと進んでいった。


網の目のように張り巡らされている、暁本拠地、よーく考え直すと元暁だった大蛇丸まで連れてくれば、内部事情を知っている以上もっと早くペイン本体まで辿り着けたんじゃねえのか?

あ、駄目か、結局カカシとナルトが四代目を抑えるとすると、陽動を受け持つ奴が居なくなっち舞う。いくら完調しているとはいえ、君麻呂一人、カブトがついたとしても二人でペインの相手はむりだろうなぁ・・・・・・大蛇丸だったら何か一人でも何とかしてくれる変な安心感があるが、なんていうか、二人は、どことなく甘い。弱いんじゃない、確かに何かこの世界は、忍者が全て実力アップしっているんで驚いているんだ。

例えば月光ハヤテ、あいつなんか病治したら実力解放、ってやつなのかな、修行とはいえ、いきなりカカシと互角に打ち合っていたのはびっくりした、俺じゃなくて周りがな。だって俺じゃ見えないからわからねーもん。


それに、俺は恐怖が蘇るから大蛇丸と二人きりってのは全力で拒否したい。いくらどことなく丸くなったといっても貞操の危機が完全に消えたわけじゃないからな。


本当、なんで君麻呂はあんな奴に従って居るんだろうな、あれは宗教に近いぜ、絶対全く大蛇丸に対して疑問なんかもっていないだろうからな。

本当に狂信者ってのは怖いよね、まぁ俺がいた現実世界でも宗教で云々かんぬん言えた義理じゃねえけどな。狂信者の集団は国すら制する。君麻呂は、さしずめイスカリオテのユダ、ってか。容赦ない攻撃方法と言い、卓越した戦術といい、あの狂った殺戮神父に似ているかも知れねえなぁ。

ならば吸血鬼は誰になるんだろうねぇ、絶対不義の力、血を吸う鬼、我愛羅か?原作の我愛羅ならば、一部に限定した状態ならば圧倒的な力っていう条件に少なからず該当すっかもしれねえな、今の我愛羅は、違うって断言できるけどな。


俺を黙って運んでいるカブトは、どうなんだろう、恐らく忠誠心って点では、君麻呂となんら変わるところは無いだろうが・・・・・・なんかこいつは違う感じがするんだよな。黒須先輩だったからってわけじゃないんだけどな。


「・・・・・・何だ、変に明るい部屋だね、此処、は」


わお、こいつは、


「またまた・・・・・・俺が初めて閉じこめられた、あの部屋に通じるものがあるぜ・・・・・・えぐい、な・・・・・・ペインの実験室か?」

其所に連なるのは、簡単に言えば、理科室にあるホルマリン漬けの標本が並べていられている所を想像していただければわかりやすいと思う。

ただし、俺の元の世界の理科室と違うのは――――並べられているのが、動物とかじゃなく、人間や化け物共ってことだ。

「すごい、ね・・・・・・此処は、大蛇丸様の実験室と比べても機材等で劣っているわけではないみたいだよ」

カブトが一つ一つ機械を触り確認する。

筒の中で安置してある人間達、全身をピアスが刺さっている。

なるほど・・・・・・こいつらは。

「カブト、こいつらは・・・・・・此奴等こそが、ペインだ。ペインの不死の理由・・・・・・不滅の理由」

「そうか、白君も言っていたね、それにペインがすぐに復帰する理由も・・・・・・」


ばっ


俺とカブトは同時に後ろを見る、珍しい俺が忍者と同様の反応が出来るなんて。

嫌なことに、それは、対象の殺気が一般人の俺にもわかるほど、明らかに強大だってこと!

予想道理、ペインが、いた、こんな間近で見るのは、初めてだ、こんな殺気に塗れたペインを見るのは。

「知らなければ・・・・・・こんな所まで来なければ・・・・・・まだ生きられたものを・・・・・・痛みを感じろ痛みを考えろ痛みを受け取れ・・・・・・痛みを、知れ。――――口寄せ」

問答無用・・・・・・流石新世界の神と名乗る馬鹿は違うね!


やべえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!


「カブト!作戦変更!さっさと逃げるぞ!」

の言葉を話す前に俺はカブトに抱えられ、奥に、更に奥へと進んでいた。

「・・・・・・もう、君の言う通り、本体を殺す以外、僕達が生き残る術は無くなってしまった!」

ちっ駄目だ、そうじゃない、今進むのは隠れられる方角なのに!

くそっ、カブトの全力疾走じゃ、言葉が伝わらねえ。

ならば、
「Ex Uus」
Agility、速度増しの魔法をカブトにかける、急げ急げ急げ急げぇえええええええええええええ!!

次いで、

「In Sanct Grav」
魔法力を完全に上乗せしたエナジーフィールド、絶対通過不可能の魔法の壁だ、少しだけ時間は稼げるはず、なのだが、


「――――痛みを、知れ。神羅天征!」


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドン!!!!!


本拠地でチャクラに溢れたペインの術からは・・・・・・逃れられない。


まして、さっきすでに俺達は口にしていたじゃないか、こいつらは、この壁際に並んでいるヤツラ共はペインなんだって。

大蛇丸の野郎、仕事を成し遂げられなかったのか・・・・・・だから言ったのに、絶対に殺すなって・・・・・・こうなることがわかっていたのに、よ。








吹き飛ばされた俺達は、思いっきり先まで飛んでいった。

俺を庇い、深手を負ったカブト。
これは放っておっていい傷なんかじゃない。



10.9.8.7.6.5.・・・・・・成功!
カブトの傷が奇麗さっぱり消える、意識を取り留めたカブトに静かな声で一言。

「起きたか?・・・・・・動くな、Hiding」

土煙がうまく視界を隠してくれたのだろう、スキルは成功。俺とカブトは何者の目に写らない存在となる。

くそっ・・・・・・もしかして大蛇丸、君麻呂共々やられちまったのか?

違う、か。もしかしたらこの標本状のペイン共の一体が俺達の接近を感知しちまったのかもしれないな。後は口寄せすればいいだけ。

土煙が晴れ、露になった其所には、無傷のペイン達が勢揃い、考える限り最悪の展開じゃねえか。

俺達二人にペインを殺し尽くすスキルなんかモチロン存在しない。


ましてや秘密をしっちまった俺達に情けを掛ける訳がねえ、そんなに忍びは甘くない。人が、蟻を踏みつぶすが如く、あっさりと俺達を殺すだろう。


こうならないために、こんな状況に為らないために、無い頭を使ったってのによぉ・・・・・・Trackingは未だ生きている、場所は・・・・・・もうすぐなんだが、本当にもうすぐなんだが・・・・・・俺達が辿り着く前に此奴等が俺達を仕留める方が明らかに早いだろう。




「・・・・・・口寄せ」

ペインが、大量のピアスが刺さった犬を召還した、残念だが、俺達は臭いなんかねえ、俺のスキルはこの世界では規格外、まともな対応じゃ俺達は探し出せない。


もっとも、俺のスキルでペインをどうにか出来るわけもねえんだがな。


くそっ、どうする、外の四代目の戦いも気になるところだが、俺の使命はまずはペイン抹殺、次いで決戦ミナクス、一つめを何とかしなけりゃミナクスに辿り着けるわけねえからな。


都合良くリース辺りが駆けつけてくれねえかな、ご都合主義なんざ期待できるわけねえんだが・・・・・・駄目だろうなぁ、あいつ方向音痴だし、なんかどんどん人間っぽく為ってきているのは気のせいなのかな。



「・・・・・・誰だ?」


ペインの声、方向が違うため、見ることは出来ない。

「私から逃げようなんて、貴方も耄碌したのかしら?――――ペイン。存分にやりなさい、君麻呂」

「はっ仰せのままに・・・・・・早蕨の舞」


声からして大蛇丸と、君麻呂・・・・・・その術は・・・・・・ちょっ、待て!
俺達も・・・・・・


「カブトぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお、逃げろぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!」

流石カブト、俺が言うよりも早く更に奥に奥へと脱兎の如く逃げ出していた。


ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



骨が地面から連続して打ち出される、君麻呂の最終形態、早蕨の舞。



カブトはぎりぎりで避けながら、かすり傷を数多に負いながら、更に奥へ更に奥へ。

方向は間違ってはいない、くそっ強引すぎる・・・・・・それが音の里、か。


ごろっと壁に飾られていた標本達の首が体が君麻呂の骨により完全に粉砕される。


・・・・・・暁の終焉だな。



ほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほと大蛇丸の狂笑が遠くに聞こえる。


同時にペインの「神羅天征」との声も、風にのり聞こえる。



もう、君麻呂の攻撃により、予備は存在しない。そもそも本拠地にまで攻め込まれている時点で、お前達の負けは、決定づけられていたんだよ!


さぁ待っていろペイン、違うな輪廻眼の使い手、長門ぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!








あらゆる機材が破壊され、あらゆる壁が天井が地面が君麻呂の骨で埋め尽くされた。


そんな中、天道ペインによる、斥力で君麻呂の攻撃を排除したペイン達は、危なげなく大蛇丸達を監視している。


「へぇ、君麻呂の攻撃でまだ六体残せたんだ、わくわくしちゃうわね、この化け物が!」


一つの骨に腰掛けながら、蛇のようにペイン達を嘗めるように見つめる大蛇丸。

「大蛇丸様、最後まで僕が・・・・・・」


骨の一部分から顔を出す君麻呂、君麻呂はもはや場であり空間である。

軽く首を横に振る大蛇丸、手には草薙の剣が握られていた。


大蛇丸の姿が、変わる。
「ご苦労だったわ、君麻呂、後はこの場を維持することに専念しなさい、もう逃がしちゃ駄目よ」

君麻呂は裸の上半身を止め、首だけで頷いた。


「わかりました・・・・・・大蛇丸様、貴方も使われるのですね・・・・・・重吾の力を」


大蛇丸の体が変貌を遂げる。

新たに現れた大蛇丸は、仙人モードの自来也に相当、もしくは上を行く威圧感をペインに向かい放つ。


「何、私の不手際を取り戻すだけよ。それなら少しくらい無茶しなくっちゃ、アノ可愛い子供に申し訳ないでしょ?」


気持ち悪い笑い方なのだが、君麻呂にはもはや神の言葉。


「了解しました・・・・・・骨の結界に残りの力全て注ぎ込みます・・・・・・御武運を」

君麻呂の姿が再び骨に埋まり、大蛇丸とペイン達を閉じこめる。


「もはや、暁を構成するメンバーは、俺だけだ・・・・・・違うな、元々、俺だけで十分だったんだ。大蛇丸、幾ら強いと言っても単体で、神に挑むつもりなのか?」


六体のペインの目が、揃って大蛇丸を睨む。


大蛇丸は笑う、くっくっくっくっと閑かに静かに、堪えきれないように。されど確かに、笑う。
「本当にずれているわよね、貴方の勘違い、質してやる義理は私には無いし、そんな気分でもないわ・・・・・・でも一つだけ言っておいてあげる、自来也の馬鹿が言っていた言葉を、貴方に贈ってあげるわ、忍びとは、堪え忍ぶ者。私の見解としては、忍びとは忍術を扱う者・・・・・・見解の相違というものは、もうこんな年になっては、容易に正せないものなんだけれども、今だけは、この瞬間だけはアノ馬鹿に同意してあげようって気持ちになるから不思議よね」


「・・・・・・大蛇丸様、カブトさんと竜は問題なく先に進みました」
骨から聞こえる小さな君麻呂の呟き声。

君麻呂の攻撃がカブトに掠った際に、その行動は君麻呂にはわかっていた。


「ご苦労様・・・・・・さぁペイン、違うわ、貴方の名前は長門、輪廻眼の持ち主よ。伝説上の力を再現するだけじゃ、戦争には勝てないわ、その力を如何に巧く使うかが忍びの鍵よ・・・・・・かつて貴方の先生を務めた自来也の馬鹿に代わって、この大蛇丸様が、貴方の出来を採点してあげる、――――その意味もなく六体も操る体で聞こえたならば・・・・・・痛みがどうのこうのう言っているだけならば、大人になりきれない子供の論理でまだ私達に掛かってくると言うならば、アンバランスな力のみに突出し、本当の、「痛み」の意味を、「痛み」の真価を知らない、知ろうともしないというのならば・・・・・・私が最後まで貴方を正しい方向に・・・・・・何が正しいかなんて誰にもわからないけれども・・・・・・貴方を導けなかった、あの馬鹿に代わって、今の貴方を全力で否定してあげるわ」


ペイン六道が、静かに骨の結界の中、歩を進める、一路、大蛇丸に向かって。


「・・・・・・あの時、貴方を殺さなかったのは、本当に間違いだったわね・・・・・・人の死はどうしようもなく、人を歪める。親しい人間の死ならば、尚更・・・・・・私の両親が殺されたときの私も、貴方のような目をしていたのかしらね・・・・・・哀れだわ、長門。強いだけでは意味が無いのよ」


まるで、自らにも言い聞かせるかの如く、大蛇丸の声は骨の結界の中静かに響き渡る。


「・・・・・・痛みを知らぬ者に本当の平和はわからん」


天道ペインが先頭を行く、他のペイン達の体にも漲る万全の力。
待ち構える、万全を越えた状態の大蛇丸、手には禍々しい気すら放っている草薙の剣。


「本当に残念ね、立派な才能をもっていても・・・・・・心が歪んでいては、何にも為らない何にも残せない」


草薙の剣が静かに大蛇丸によって振りかぶられる。


ペイン六道と、大蛇丸は、狭い狭い骨の結界の中、姿を消した。


とっくに人としての限界を越えていたペイン、誰よりも知っている呪印の力を敢えて暴走させ、八門遁甲の力すら使用し、一つの切り札の術を呟く大蛇丸。


「八岐の術、改」


ペイン達の致死の意志を込められていた第一撃目を避けた大蛇丸。


八つの頭と八つの尾を持つ、本来ならば骨の結界すら吹き飛ばしてしまう巨大な化け物が、場所による改良により、縮小化に成功、化け物を越える攻撃速度と攻撃回数を手にし、今、神に立ち向かう。


「十拳剣は、今は存在しない以上、神と称していても、貴方に私は絶対に殺せない」


「そんなこと、神には関係ない!逆らう者は消す、それが忍びだ!」


言葉を交わし、再度の高速戦闘に入るペインと大蛇丸。



もう、決着が付くような戦いではない。超速再生すら備えた大蛇丸、かたや完璧な神のコンビネーションで全ての攻撃を弾くペイン。君麻呂の籠に閉じこめられた二人は、外に余波が伝わる事無く、永劫の永遠の戦いを繰り広げる。





ゆえに、ペインは堕ちる事となる。









大蛇丸の野郎、無茶な攻撃しやがって・・・・・・絶対あいつ俺達に気付いていただろ。

「竜君、これが・・・・・・これがペインの、本体なんだね」

液体が敷き詰められた、試験管状の筒の中に浮かぶ目を瞑ったままの一人の子供。


長門って確か、結構な年になっているはずじゃなかったっけ?
少なくともかぶとと同年代か確かそれ以上だったはず、なのに、なんでこいつも子供なんだ?

原作で見た、自来也が教えていた頃と変わらないじゃないか。


「・・・・・・ああ、俺のTrackingがこいつがペインだって言っている、俺のスキルが間違えるわけが無い、こいつが、ペイン、雨の里の神だ」

「……そうか、ならば、さっさと殺そうか」

あまりに無抵抗なボスの姿、俺でさえ殺せそうだ……そっか、これも、イベント、なんだな。世界の腐った考え方がなんとなく理解できたよ。


俺は呪文を唱えだす。


軽く、ほんの軽くコデックスが力を取り戻すためにも。
「カブト、このイベントの終焉は、俺が決着を付けないといけないらしい、下手に近づけない以上、反撃が無い以上、俺がやらないといけないんだろう」


「Vas Corp Por」

すぐさま召還される、エネルギーの塊。


あれほどの力を見せた大ボスにしては、やけにあっさりと、やけに簡単に、其の身を血の赤い華へと散らせた。



……ばいばい、ペイン。















余りの激突の余波に、君麻呂の骨の結界が形を失う。
自身もぼろぼろに傷つきながら、君麻呂は最後まで見届けようと、顔を戦いの場へと向ける。


大蛇丸の苛烈な攻撃は、ペイン六道を圧倒してのけた、だが、苛烈な攻撃を受けきったペインは、息も絶え絶えな大蛇丸に、勝利した。
大蛇丸の攻撃に数を減らし、残るは天道ペイン、ただ一体。しかし、最後に戦場に立っていた者が勝者なのは古今東西当然の理。



「なぜだ……何故貴方ほどの忍びがこんな無茶を行った」


ぐはっ


血を吐く大蛇丸。

「……ふふふふふ、貴方には……一生理解出来ないでしょうね……私も一つ間違っていれば、貴方以上の化け物になっていたと考えると……ぞっとしない話よね……」


「……大蛇丸、様……」

動くことが出来ない君麻呂、それでも、大蛇丸の盾に、大蛇丸の前に、大蛇丸を庇おうと動く君麻呂。


「君麻呂、もう黙りなさい……貴方に命令を告げるわ、最後の命令よ、……竜を最後まで守りなさい」
大蛇丸の顔は、信じられないほど穏やかな笑顔だった。


「……そんな命令……命じてください!其処の敵を排除しろと!」
自身も血だらけになりながらも、大蛇丸の身をあくまで最後まで案じる君麻呂。


「……痛みを知った、か……お前等……は……」
クナイを一つ取り出し、ゆっくりと地面に臥している大蛇丸に近づくペイン。
明らかに戸惑っているペイン、もう、何を信じていいか、今まで何を信じていたのか。


その動きが、突如止まる。

「何を……しているの?……勝者は……ふふふふふふふ、そう、やってくれたのね……全くあの子は……本当に、……面白い」
動きを止めたペインに笑いを投げかけ、そのまま血を再度吐き出し、崩れ落ちる、大蛇丸。


ペインの体がそのまま倒れる、ペインが復活することは、もう無かった。



這って大蛇丸に近づき、其の体を、事切れた体を、ふらふらの体ながら抱え上げる君麻呂。

「大蛇丸様~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」


悲しき慟哭が、満足そうな笑みを浮かべた大蛇丸の遺体に、今は更地同然になった辺り一面に響き渡る。





木の葉の三忍が一人、大蛇丸、戦死、享年不明。
後の歴史学者は謎に満ちた彼の生涯を研究するに当たり、一つのポイントがある事に気付く。

それは、大蛇丸自身が作り出した、音の里崩壊の時。


それ以前とそれ以降で彼の行動原理が変わった事に気付き、歴史学者達は資料を探すが、其処で何があったのか、其処で大蛇丸が何を見て、何故行動理論を捻じ曲げたのか、それは結局誰もわからない。謎は空白の闇に紛れ、一つの事実を記すのみ。



此処に暁を名乗った集団は、木の葉の三忍が一人大蛇丸の手により、完全なる終焉を迎えた。













「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」


静かな玉座の部屋で一人笑う魔女。


「素晴らしい、何時の時代も何時の世界も、人ほど感情豊かで見せ物になる生き物はいないわね」


自分も昔は人と呼ばれる存在であったことなど露知らず、魔女はひたすら微笑みを浮かべる。


「そして……ようやく、覚悟を決めたみたいね、歓迎するわよ小さなアバタール」


稀代の魔女はひどくご満悦、ようやく待ち焦がれた宿敵が、来る。







雨の里に降り注いでいた、雨が、止んだ。






*うわぁ・・・・・・ペイン殺しちゃった・・・・・・原作で死んでいないキャラを殺すときは本当に悩むます、小南の時もそうだったんですが、今度は大ボスも大ボス、執念の神ペインですから、悩み倍増、小南は誤魔化しちゃったんですが、ペインは、ちょっと誤魔化すのは無理ですね、原作で正体が違っていたらどうしよう・・・・・・ま、いっか。とりあえず、一応予定では、後10話程度です、処女作で此処まで書き上げられたのも感想をくれる皆さん、いつも見てくれている皆さんのおかげです、管理人さんの舞様には限りない感謝を、私はキリスト教では無いんですが、ちまたに溢れる幸せな雰囲気に乗せて、メリークリスマス!*



[4366] モンスター
Name: へヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:98adea8e
Date: 2008/12/26 16:40


湖面に写る二つの影。


一つは化け物、羽を持ち漆黒の体に角が二本に尻尾も一つ、手には身の丈にあった巨大な長剣、呆れるほど頑強な体を持ち、魔の因子、その物で出来ている、魔界の住人。


一つは人間、髪の色は黒、ぞんざいな服を身に纏い手には身の丈に合わぬ長大なハルバード、凡そ人間年齢で六歳程の筋肉もついていない頼り無き体を持ち、されど溢れる魔力は目の前の魔の住人に匹敵している。

初め、湖面の周りにあった障害物は今は無い。

双方ともに決定打に欠け、傷を負わせるには至らない、尤も傷が出来ても魔法で刹那に癒してしまうため、外見上二体の化け物たちは初めのころからまったく変わっていなかった。


双方の魔法が、攻撃が交わりあい、全てが蒸発。形を無くし、その空間にはもはや何も無い。


二体の化け物――モンスターしか其処にはいない。


「なぁオメガ、このまま殺りあっても、決着が付かない、そう思わんか?」


チャクラによる水面歩行の要領で湖畔に立つリース。
イタチと行動を共にしている内に覚えた技術の一つ。


「……確かに、だが、我は一向に構わん、あくまで持成せというだけのこと、決着をつけろとまでは言われてない」


魔法の力で羽を羽ばたかせずにリースと同じく湖畔に立つオメガ。
純粋なる魔力の結晶だから出来る芸当。


「ふん、杓子定規なのはこの世界に来ても変わらん、か。だが、それでは面白くない、我にはお主と違い、約束というものがあるのでな」


魔力が、小さき体のリースから溢れ出す。


「……そなた、この世界に来て何を学んだ」


剣を構えなおし、明らかに異常なリースの様子に、魔法の連檄をストックするオメガ。その数古代竜であったリースの上を行くバルロンとしての限界の七。


「何、人の可能性とやらを学んだまで、感謝するぞ、オメガ。元の体では溢れんばかりの竜王としての力が邪魔をし、使えなかった技術じゃ」


リースのハルバードが湖面を打つ。


「この世界で言うところの忍者のチャクラと呼ばれる力、今始めて理解できた、可笑しい事ではあるまい、この世界の人間がスキルを使えている以上、我らがチャクラを使えない道理も無い……最も、モンスターであったころの我では到底かなわぬ事だったがな、喜べ、オメガ、お主がお披露目一番じゃ。我と互角の力を持つお主だからこそ、試す価値が、ある」


リースの魔力が、その小さき体の内部に収束する。


ハルバードが広げた波紋が増幅、湖畔が静かにリースを中心として波打つ。


静かな湖畔に漂う空気が――変わる。


リースを中心に、自然エネルギー、気と呼ばれるもの、魔素とは違い、ひどく清純な雰囲気を持つそれが、リースに集まる。


オメガは全力でストック中の魔法を全て解き放った。


「イタチ、技を借りるぞ……確か、瞬身の術、と言ったかな」


静かに小さく素早く言葉を呟いたリースの姿が、消えた。


火柱がエネルギーの塊が爆発が多数の雷が数多の仮想隕石が、全てを断絶するフィールドが精神を壊す力が、魔力がリースが居た所で弾ける。



ぐぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!



オメガの口から悲鳴が迸る、左腕が根元から切られるが、瞬きをする前に魔法により癒される。


「ふん、駄目、か、まだ狙いがつけられん、されど、状況を覆すには十分すぎるみたいじゃな、どうするオメガ、まだ殺るのか?」


涼しい顔のリース、手には先ほど切り取ったオメガの片腕。

「……我では、そなたにもう勝てん、な、面白い、人の力か、我らがいた世界では、徒党を組まねば我らに立ち向かわぬ脆弱なる人に、そんな力が備わっているのか、この世界はなんと面白い、人が、魔を単体で超えるというのか。それではどちらが魔であるのか、わからんではないか!」


オメガの激昂にリースは小さな寂しげな笑みで返す。

「知性ある同胞としての忠告じゃ、悟れ、オメガ、此処は、我らの世界では無いのじゃよ、オメガよ……全てを決める戦いの行く末を共に見守る気には、ならんか?……同胞よ」


静かな言葉にオメガは、振り向いた。

「断る、我は主だ、我はそなたと違い同胞を最後まで見届ける義務がある」


オメガは新たに剣を虚空から召還した。


「例え、此処で果てようとも、我が力、我が意思、一滴たりとも無駄にはならぬ、我にはそなたと違い、続くものがいるからな」


ハルバードを振り回し、構えるリース。


「わかった……汝の意思、我が受け取る、さらばじゃ高貴にして純血、我が始めて出会えた知性ある同胞よ」


構えの状態から繰り広げられる、二体の力。


双方の魔法が衝突する、隕石は隕石と、火柱は火柱と、エネルギーの塊はエネルギーの塊と、爆発は爆発と、降り注ぐ擬似雷は擬似雷と。


五連と七連の力の差。

更に二つの力、地力の魔力で上まるオメガの、精神を破壊する魔法の光と、全てを切り裂く魔法のフィールドがリースを襲う。


「……龍式・瞬身の術」


ただし、オメガの更なる二つの力はリースを捉えるに至らない。


「リース、よ……そなたはただ一人、何を望む、人には決してなれない、もはや竜王にも戻れない……そなたは、何を目指しているのだ」

崩れ落ちるオメガの体。
すれ違う二体、完全に振り切られたリースのハルバード。



元々の魔力に拙いながらも瞬身の術の効力が加わり、神速で振るわれたそれは、オメガの命を完全に断ち切っていた。



リースはハルバードをオメガ同様、虚空に戻した。


「知れたこと、我は我が道をただ邁進するのみ、そうじゃな、ただ、人として生きるのも悪くないかもしれんのぉ……ただ、ついてくる者がおらんでは、寂しいかもしれんな――――そうか、これが、この感覚が、人が言う寂しさ、か。イタチに報告せねばいかんのぉ……ついでに、全てが終わった後に礼でも言ってやるか」


静かに微笑み、リースは辺りを見回し、魔力の残滓を感じる。


「さて、直人が行くとしたら……魔女のところじゃろうなぁ、ならばこのゲートの名残を追えば、魔女のところに行き着けるじゃろう……世界の潰し合い、終わりまで見届けると、するか」


何かに導かれるように、リースは一つの出口から道をゆっくりと歩きながら辿っていった。







歴史には正史には決して残らない、一つの戦いがまた一つ、静かに終わった。



[4366] NARUTO
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/12/27 22:06
未だ雨が降り続けている雨の里本拠地近くの外での出来事。


一つの決戦が、まだ外では続けられていた。


「先生、これで終わりだよ」


単なる破壊力がある術、例えば螺旋丸、雷切等では、いくら雷遁で四代目が痺れている状態でも通じない。

痺れは刹那で、四代目レベルの忍びに為ればすぐさま回復、用意している間に逃げられてしまう。


故に、カカシは相手の動きを止められて、尚かつ確実に葬り去れる術を選択した。

――――自分の命を犠牲にしても。


虚空より現れた死神が、四代目の魂を掴み出す。
四代目の魂の全てを抜き出したとき、同時にカカシの魂も抜き、死神は地獄に魂を送り込む、そう伝承では伝わっていた。どういう原理で発動されているか、それはカカシにもわからない。


「・・・・・・これが、術を使った者のみに見えると言われている、死神、か」


死神は四代目の体をがっしりと掴み、魂を少しづつ体外に引きづりだしにかかる。

不出生の最高の才能を持った天才忍者と言えども、この術には抵抗できないはずだった。


四代目は抵抗不可能と言われているその術に対し、苦悶の表情を浮かべながら抵抗していた。


死神の腕が動きを止める。
驚愕の表情を浮かべるカカシ。
「何故だ、何故抵抗できる、この術は問答無用で・・・・・・」


「・・・・・・僕もこの術を使ったことがあるからさ」

四代目の口が開き静かな言葉が発せられる。
死神の腕が無理矢理引きはがされる。
返す刀で四代目は死神を切り裂いた。


「馬鹿、な、そんな真似出来るはずが・・・・・・」

カカシは余りの展開に動くことが出来ない。

無防備な姿をコンマ何秒か四代目の前に晒してしまう。


「惜しかったね・・・・・・カカシ君、使った者にしかわからない弱点があるんだよ・・・・・・残念だ」


死神すら退けた最強の死神に取って、そのコンマ何秒さえあれば、命を刈り取ることなど造作もない。


黄色い閃光が走る。




ガキンッ!

「カカシさんは、やらせない」

黒き閃光となったイタチが、四代目の致死の一撃をぎりぎりで防ぐ。


距離を取る四代目。


「どうやら、少しはペインの術が解けている様だな、意識が無くば、いくら開発者といえどもあの術は解けまい」

イタチの冷静な目が、四代目の状態を見抜く。





何時の間にか、雨の里の代名詞である雨が、止んでいた。


「いや、僕に掛けられた術は解けないよ・・・・・・死者には抵抗することなど出来ないのさ」

寂しそうに辛そうに笑う四代目。


「さて、次は君が掛かってくるのかな、そんな体で僕に勝てると思っているの?」

イタチのチャクラ切れを見逃さない四代目。


「違う、俺は単なる前座に過ぎない・・・・・・そうだな、そろそろ木の葉でNo1忍者を決めようじゃないか、奇しくも此処に集まった者達は全て木の葉の関係者・・・・・・俺達の代表は、もう決っている、そうだろ、次代火影!」


如意棒に変化した猿魔を手にし、静かに無表情で佇むナルト。


「・・・・・・父ちゃん、俺が相手するってばよ」


四代目の顔が歪む。
「・・・・・・ナルト、か。止めといた方がいい・・・・・・今の僕は肉親といえど、手加減できる体じゃない、それに、ナルトには僕に付いてこれる速さが足りない・・・・・・無駄死になんかして欲しくないんだよ」

如意棒を構えるナルト。


「確かに、俺には飛雷神の術なんか、使えないってばよ、ならば、父ちゃんも使えない状況にすればいい、そうだな、猿魔!」

「その通りだ、猿飛の後継者、出来ない術で無理に対抗しようなんて考える必要はない――――四代目よ、儂は悲しいぞ、三代目に引き続き、お主まで望まぬ戦いを強いられている現状が、儂には身を切られるほど、悲しい」


クナイを構え直す四代目。

「猿飛先生の相棒だった猿魔じゃないか・・・・・・残念だけど、飛雷神の術に、弱点なんか・・・・・・?」


ナルトの手に握られている、大量のクナイ、特殊な形状をしているクナイ。
ナルトは出したと思ったらすぐさま、如意棒でそれら全てを木っ端微塵に打ち砕いた。


「父ちゃんとカカシ先生が、動きを止めている間に影分身で探し出したってばよ、イタチの写輪眼で見てもらったから、もう、残りはないってば」


四代目の顔に笑みが浮かんだ。

「なかなか、どうして、機転が利くじゃないか・・・・・・流石は僕とクシナの子供にして猿飛先生の正当後継者、嬉しいよナルト。――――でも、純粋な実力差はどうするんだい?それにそれだけじゃ飛雷神の術は完璧に防げたとは言えないよ?」


ナルトは辛そうに顔を歪める。


「もう、本当は、飛雷神の術があったって、俺には関係ないってばよ、俺に触れるもの全て砕けるんだから・・・・・・それが、父ちゃんといえども・・・・・・全力だ、馬鹿狐」


ナルトは猿候王・猿魔を解除した、煙となり姿を消す猿魔。
ナルトの体に周囲から風が集まる、風を止めるナルトは更なる風を呼び、更に更に風が集中的に集まりきる。


巻き添えを食わぬようカカシを抱え、その場から離れるイタチ。


「・・・・・・それは、九尾の力・・・・・・そうか、ちゃんと使いこなせるようになったんだね、ナルト」


四代目がかつてナルトの体に封じた九尾の妖狐。

特殊な思惑があり、特殊な封印術で封じられた九尾は、竜の力で化学変化を起こした九尾は今、ナルトの中で自らの意思で力を出す。


それが化け物と呼ばれていた所以、自らのチャクラと共に、かつて里を完膚無きまでに滅ぼしかけた九尾の力が、再び四代目に牙を剥く、・・・・・・ただし、以前と違うのは、四代目が封じて、完全なまでにナルトの意志により操られている、凶悪さがそのままでも、人間のナルトの意志により操られる力そのもの、それが力、其れが人柱力、人を遥かに超える力を操るもの共、ましてや妖獣共の王、九尾の妖狐、果てしない力を今、九尾の妖狐の協力もあって、ナルトは正常な思考で操っている。


竜が課した数々の修行が、ナルトの脳裏に浮かんでは消える。


竜の無茶苦茶な身体トレーニング、寝たら起こされ、休むことを許されない地獄に等しいトレーニング、どんな時でも絶対に諦めない不屈の根性を育成された。


はたまた、イルカ先生による甘々だが、ピシッと線が一本通っていた特訓、主にチャクラコントロールと忍びの心構えについての再確認。


マイト・ガイの班にくっついて行っての、激戦雪の国、体力のみ為らず、限界までの精神力を試され、鍛えられた。


日向家、ヒナタによる、完璧な人体構造について、チャクラの経絡系についての知識、ヒナタが時折顔を赤くするのがナルトは最後まで不思議だった。


火影育成家庭教師、エビスによる木の葉丸と共に受けた一種の英才教育、深い知識に裏打ちされた効率的で分かり易い修行。


そして――――三代目火影、猿飛ヒルゼンによる、数多の術の手ほどき、プロフェッサーの名は伊達ではなく、時折見せる真剣な表情に圧倒されたナルト、しかし、優しく根気強く木の葉の里に伝わる術の全てを教えてくれた三代目。




変わった世界のなかで純然たる戦闘集団、最強の里、木の葉の里、総力を挙げて生み出され、竜の魔法の力で九尾の協力も得て、力の結晶と呼ばれ、この世界で最強を名乗るに相応しい存在、それがナルト・・・・・・NARUTOの主人公。




「やっと、やっと此処まで全開に出来るようになったんだってばよ・・・・・・三代目のじっちゃんを越えてそしてさっき君麻呂に説教されて、父ちゃんと戦う決心をした時、小さな声で、聞こえたんだってば。認めてやるって、馬鹿狐の声が・・・・・・聞こえたんだってばよ」


竜が異常なまでに単独螺旋丸の習得等に意識を向けていたのは、最終的にそれが目的だった。人間としてのチャクラくらい完璧にこなせなければ、どうして最強の妖獣、九尾の妖狐を御することが出来ようか。


「そっか・・・・・・ナルト、勝負だ。最後の勝負だ、行くよ」


四代目の体にも力が集まり出す、ナルトに比べれば極微量、されど、人としては限界までに極められた至高の力が、集まりきる。生前には成し遂げられなかった性質変化が加わった螺旋丸、正史においてナルトが完成させたその名を風遁・螺旋丸。

四代目のこの極短期間で培われた強敵だけとの戦闘経験が、四代目の技量も倍増させていた。


四代目の顔には静かな笑みが浮かんでいた。まるで、授業参観において息子がうまく先生の問いに答えられたときに浮かべる父親の笑みが。


かつて人は其れをこう評した、あれは「天災」だ、と。

人には決して制御できないはずの、純然たる暴力の結晶だと。


ナルトの体を九尾の妖狐の力が完全に包み込む。


「父ちゃん、これが――――父ちゃんがくれた力だってばよ」
九尾の力が発揮され、更にそれを凝縮した事により、ナルトの体にはまるで我愛羅の砂の鎧のような全てを弾く何者も通さない薄い膜が、手には考えるのが馬鹿らしくなるくらいの高々々々々々濃度のチャクラの塊が浮かぶ。


「ああ、そうだね・・・・・・良くやったって、本当ならば頭を撫でてあげたい所だけれども・・・・・・」
四代目の顔に苦悩が浮かぶ。


「わかっているってばよ・・・・・・俺達は、忍者・・・・・・なんだってばよ」
泣きそうになるのを必死に堪えているナルト。


もう、速さすら意味がない。


完全に準備が整いきった二人、ただ無言で見つめ合う二人、数秒が永遠に感じられ、周りで見ているイタチとカカシすら言葉を発せられない。


静寂が周辺を場の空気を支配する。


時が止まったかのように、無言で、ただ無言で・・・・・・決着を先延ばしにしたがっているかのような二人、その時、一陣の風が音を発し、静寂を壊した。


申し合わせたかのようにナルトと四代目はそれぞれ手に持つ、力の結晶をぶつけ合った。




ぶつかり合った場所から、閃光が、光が、広がる――――。




すれ違うナルトと四代目。



ドサッ



崩れ落ちたのは・・・・・・四代目だ。

ナルトは振り返り、すぐさま四代目の所に駆け寄る。


「……ありがとう、ナルト」


核を失った四代目の体が、三代目の時と同様、あちこちが崩れだす。


「父ちゃん……父ちゃん!?完全に正気に戻ったんだってば?」


四代目は、最初の接触の時と同様、ナルトに対し、満面の笑みを浮かべる。
「最後に……顔を、よく見せてくれないか?」


ナルトの頭に四代目の崩れかけている手がのっかる。


「ナルト、お前はクシナに……お前の母さんによく似ているよ……御免な、父親らしいこと何も出来なくって……駄目な父親で……ごめんな」


ナルトは泣き出しそうになるのを、必死に堪え、言葉を発する。


「……本当に俺の父ちゃんなんだ……なんで、俺に九尾を入れたんだってばよ!その所為で、俺は、俺は……」

一端言葉を切るナルト。
「でも……そのおかげで、其の力で、俺は……今、此処にいられる……父ちゃんを止められたってばよ……」


再度言葉を発した時のナルトは、力なき声で事実を告げる。

「……本当に、大きく、そして強くなったんだね……ナルト……」
四代目の声が体の崩壊に伴い、かすれ始める。
言葉が、続かない、言葉を重ねられない。


ナルトは急に思い立ったように顔を笑顔にし、語り出した。


「父ちゃん、聞いてくれってば!俺には、沢山仲間がいるんだってばよ、サスケに、サクラちゃんに、それにカカシ先生やエロ仙人……俺がこれだけ力を付けられたのは、竜ってのがいきなり俺の前に現れて、色んなことを教えてくれて……俺が卒業試験に合格出来たのは竜のおかげで……それで……それで……サスケってのは俺のライバルで……サソリってとんでもない化け物と戦ったときは、一緒に協力して生き延びたんだってばよ……サクラちゃんは……かわいい子で、外に出始めてからはあんまりかかわる事が無くなっちゃったけど、大切な仲間で……」


四代目の崩壊はいよいよ進み、ナルトの頭を撫でている指先から塵となり始め、やがて手が全てが原型を失い始める。

ナルトの顔が、四代目の崩壊に伴い、笑顔が曇り出すが、誤魔化すようにナルトは更なる笑顔を重ねる。

「雪の国ってところにもガイっていう暑苦しい先生と一緒にいったんだってばよ!……其処の小雪姫ってのが。また、駄目人間で……だけど本当は頭がよくって優しくって綺麗なお姉ちゃんで……アカデミーで俺のことをよく見てくれたのがいるか先生って言うんだけど……よく一楽っていうラーメン屋で……」


満面の笑みのまま、四代目の全てが塵となり、崩れさる。


「……よく、おごって……くれ……る……し……木の葉丸っていう……元気な……」

ナルトは完全に俯きながら、尚も言葉を発する、今までのことを聞いて欲しかった、自分のことを父親に聞いて貰いたかった、今まで居なかった父ちゃんに、全部を話したかった。

だが、・・・・・・もう、二度と帰ってこない。

ナルトはよくわかっていた。でも、口が、止まらない。四代目が居たところに手をついて、俯きながら小声で途切れ途切れに今までのことを報告するナルト。



イタチは、見ていられず、静かにナルトの肩に手を置く、カカシは雷遁影分身と、封印術・屍鬼封尽を無理矢理四代目に破られた反動で、動けない体でナルトを静かに見つめている。


「……俺が言えた義理じゃないが……忍びでも、本当に泣きたいときは、泣いてもいいんだぞ」
イタチが小さく呟く。


此処は敵地、真っ只中。
すぐに動くべきで、厳密には本拠地にすぐに乗り込むのが、忍び本来の正しい行動。


ナルトは、目に大粒の涙を溜めてそれでも堪えて、今にも泣き出しそうな顔で、イタチの顔を見上げ、地面にへたり込んだ。


「……俺は火影に成るんだってばよ……そう父ちゃんとも、じっちゃんとも、約束したんだってばよ……だから、俺は泣かない……感情に縛られてちゃ、立派な火影になんか……」


カカシが満足に動かない体で、近寄りナルトの頭に手を載せる。


「ナルト、感情を消すことは必要なことだが……今は、許す。お前の上司として、お前の木の葉の先輩として……そしてお前の父親の元弟子として、許す、少しだけ時間をやる、全部吐き出して気持ちをすっきりとしろ……」


カカシの真剣な顔に、真剣な言葉に、ナルトの涙腺が崩壊、溜めに溜められた激情が発露される。



「……父ちゃん……父ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!何で死ぬんだよ!折角逢えたのに、折角折角・・・・・・初めて逢えたのに・・・・・・っ!父ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああん!!」


ナルトの悲しき慟哭が、辺りに響き渡る。

















暁本拠地、玉座。

魔女の力で壁一面に映し出される外の決戦。


魔女の笑い声が、玉座一杯に響き渡る。


「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは、何て素晴らしい見せ物、そう思わないかしら、ねぇ小さなアバタールとその仲間達」


魔女の前に佇むは、カブト、直人、再不斬、完調した白、リース・・・・・・そして竜。



外の悲しき決戦が終わり、場面は中の決戦に移る。



[4366] 決戦、雨の里!その5
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/12/30 03:40
一筋の影が砂の里から雨の里へ向けて旅立っていた。


空を翔る黒い馬、ナイトメアに乗騎した琴音だ。


もう、間に合うはずも無いのだが、ひたすら全力で、雨の里を目指す琴音。
砂の里での後処理は全てハヤテに押し付け、琴音はひたすら雨の里を目指す。


「直人の所に行くんだったら私を必ず呼びなさいって……あれほど念を押したのに!」


ああ、わかった、と気安く受け答えていた竜の態度が琴音の脳裏に浮かぶ。


「またお尻ぺんぺんね!今度は手加減なんかしてあげないんだから!全くあの馬鹿!」


必死にナイトメア、黒炎にしがみ付きながら、琴音は道を急ぐ、黒炎の全力ならば、砂の里と隣接している雨の里までならさほど時間はかからない。


「……あら、雨が、止んでいる?珍しい事もあったものね」


先に見える雨の里では既に雨が止んでいた。
雨の里の雨の結界は、余程の忍びでなければ其のからくりには気付けない。

琴音もその例に漏れず、首を傾げながらも、それはそれとして、黒炎をひたすら急がせた。








世界の敵とは、何ぞや、まさしく文字通り、あれは世界の敵と言えよう。


世界を敵に回しても、たった一人で戦い抜ける存在、――――世界にたった一人で勝てる存在、それが世界の敵。



世界の敵は退屈が嫌いだ、負けるのも嫌いだ、だが、知性あるその身は、自らもまた、何かに使われている存在だと言うことを察している。

それは気に入らない、そんなことは認めない、そんな事実が著しく、彼女の機嫌を損ねていた。


そんな世界、滅ぼしてやる・・・・・・それが、魔女の脳裏に浮かんでいる基本事項であり、全て。





もう、人為的な雨は二度と降らない、崇拝すべき「神」も「天使」もいない、生存者すらほとんどいない雨の里、入り組んだ迷路の先に存在する玉座。


魔女としての力をふんだんに使い、彼女の前には、数多の映像が壁一面に映し出されていた。


マダラと初代火影の戦い。

三代目とナルトの戦い。

再不斬と四代目の戦い。

白と直人の戦い。

サスケとイタチの戦い。

カカシと四代目の戦い。

オメガとリースの戦い。

大蛇丸とペインの戦い。





そして、竜の初めての殺人、出来た覚悟、待ちに待ったこの世界での唯一つの楽しみと言っていい宿敵の完成。


全ての戦いを逃さず見て、魔女は、ミナクスはいたくご満悦だった。


「さぁ……早く来なさいアバタール、貴方も待ち遠しいでしょ?直人」


魔女の傍に控えるものは、今や、唯一人、光無き剣神、直人。
物言わぬ様で、直人は一人、ただ待っていた。
敵を、カイを、自分を開放してくれる者を、自分を殺してくれる人間を。














ペインの長門の体が、赤い華を残して完全に崩れ落ちた。

なんだ、こんなものか……人を殺すって、こんなに簡単な……


「げえええええええええええええええええええええええええええええええええええ」

くそっ、勝手にゲロがあふれ出す。

暖かい……カブトの医療忍術か……、くそっ、とまらねえ、何も食べていないのが今は辛い……胃が痛い!


「其の様子じゃ、初めて、か……忍びでは無いと思っていたけれども、君は本当に戦闘に向かないよ……」


おえっおえっ、と最後まで出た俺の胃の内容物。


ははっ、笑えねえ……偉そうな口を叩いといて、俺は、今まで一度もこの世界に来てから一度も人を殺したことが無かった、其のつけがこんな最後の最後にまできて巡ってきちまうとは。


血には……慣れていたと思っていたんだけどなぁ……この世界に最初に来て一番初めに見たのが、この体の親父の死体。


あれもショックだったが、今はあれの比じゃない……現代人で人を殺すなんて心が病んでいる証拠に他ならないのが、平和な世界の理論なんだが、このNARUTOの世界では、簡単に人が死ぬ。


気持ちを静めるために目を瞑る。


カブトの掌仙術が体に心地よい……俺の精神はこんなに弱かったのか、だから、俺はアバタールに成れなかった、ゆえにミナクスは言った、俺には覚悟が足りないと……、でも俺は、そんな覚悟なんかいらねえ、俺は、あの平和ボケした世界で平和に生きていけるだけでいい、もう、人を殺すことなんか……真っ平ごめんだ……だから、俺は、



「じゃ、さっさと行こうぜ……第一目標完遂、次は、悪名高き、魔女の駆逐だ……悪いなこんな事までつき合わせちゃって」

カブトはなんともいえない顔をしていた、俺を心配しているのは何となくわかる、其処は黒須先輩であったころと何ら変わらない。

精神的に重い体を立ち上がらせる、こんな世界は、こんな人があっさりと死ぬような世界……親子で殺し合いなんかしなきゃいけないような世界は、嫌だ、俺は俺の世界に帰る。だから俺は魔女を倒す、この弱っちい体で、この法則に縛られまくりで、いちいち確率計算するような糞みたいなからだで、だけど、「飛竜」っていう哀れな子供を助けようとした親の努力が報われた、大事な体で俺は、同じく完成された姿で望まぬこの世界に招かれた哀れな魔女を、倒す。



出来るか、出来ないかじゃないんだ、やるんだ。

そう、ウルティマオンラインは、望めばそれは叶う、そういった世界だから。

俺の体を縛る法則は忠実にそれを再現するはずだから、俺は、望むよ、人の想いは、力になる。魔女にはわかんねーだろうな。弱っちい人間しかわからないものだ、いつだってそうだ、自らを救うものじゃなけりゃ、天の神様だって手助けしてくれねえもんだ。


人事を尽くして天命を待つ。


「カブト、運んでくれ、ボスは、塔だったら天辺にいるはず、システム的にもそうなっている……あいつも魔女もUOから来た者だ、だからわかる、っていうか俺にしかわからねーだろうな……理の外にいる人間にしか、な」


カブトは案の定よくわからないっていう顔をしている。

当然だ、だけど今更、もう登場人物なんかじゃない、れっきとした生きている人間だって確信している今更、当の本人達にお前等は漫画の登場人物だったんだぜ、なんていえるはずもねえよな。


シカマル辺りだったら理解できるかも、な。


この戦いが終わって、家に帰れる算段が付いたら、そこ等へんのことナルトに教えといて上げようかな、はっ、尤も歴史が変わりすぎて、全く参考にならねーだろうけどな。


カブトが貸してくれた手拭で口を拭い去り、カブトに背負ってもらう。

どうせ覚悟がようやく出来たわねくらいにしか考えていないんだろうな、ええ、魔女よ。



出来たよ、精神的にちょっと代償が大きかったけど……俺が殺した、ペインの死は、ペインの痛みは、無駄にはしない。


俺とお前の定められた最終決戦、やってやろうじゃねえか、どうせ手薬煉引いて待っているんだろ?

さてさて、他の奴は、どうなったかな……おそらく今まであったように、最後の決戦もイベント扱いだ、実際問題もう戦力がいくらあっても関係ない。

最後のとりってのは、タイマンで決着をつけるって決まっているもんだ。

正直可能性は低い、低すぎる。一円かけて一億円返って来る、そんなレベルだ。



望めばそれが叶う、俺は望むよ信じるよ、最後まで、信じきってやるよ!













モンスターが居なくなった雨の里本拠地内。


君麻呂はゆっくりと玉座を目指していた。
道はわからない、だが、勘に従い歩くその歩みは確かに玉座へと君麻呂を運ぶ。


向かい側から歩んでくる、小さき影を認め、君麻呂はふと足を止めた。


「おやおや、君麻呂では無いか・・・・・・抱えているものは・・・・・・何じゃ?」


君麻呂は自らよりも大きいそれを抱えながら歩いている、重いはずなのに、全く重さを感じさせない歩み、無表情で歩く君麻呂。


「・・・・・・大蛇丸様だ」

変わらず無表情で答える君麻呂、リースは遺体を見て軽く目を狭める、大蛇丸の遺体は満足そうな笑みを浮かべていた。
「そうか、そやつも果てたか・・・・・・お主の行動はイタチが言っていた人の感傷と言われるやつか。・・・・・・どうするつもりだ?」

「決っている、竜に蘇生をさせる、何でも治す万能回復術なのだろう?」

君麻呂の目は真剣だ。

かつて、誰も治せない、綱手すら匙を投げた大蛇丸の毒を治したのも、君麻呂の不治の病も治したのも竜、その記憶が君麻呂の脳裏に浮かび、君麻呂に行動を起こさせた。



死者蘇生、HealingとAnatomyを極めた者に許されたスキル。
第八サークルの魔法、Resurrectionも同様の効果を持つ、もちろんリースなら使うことが可能なのだが、


「・・・・・・確かに竜のHealingは我の魔法の上を行く技術じゃが・・・・・・法則が違う故、死者蘇生はこの世界では、不可能じゃよ」


リースは不可能と断言する。
出来ないことは、どんなことでも出来ない、それはどの世界でも変わらない。


「無理にでもやってもらう」



君麻呂は小さく呟き、大蛇丸の遺体を抱えたまま、先に進む。

ポタリッ

血が君麻呂の足元から垂れる、君麻呂はリースに背を向けて傷ついた体の処置すらせずにゆっくりと玉座の間に向けて再び歩き出す。


リースは小さく嘆息をつき、手を君麻呂に向けて振りかざした。


Greater Healが発動、君麻呂の傷が塞がり、君麻呂の足取りを軽やかにする。

君麻呂は軽くリースの方向に振り返る。

「道もわかっておらんのに、どちらに行くつもりじゃ?そちらは違う……我に付いて参れ、案内してやる、竜は、奴が行く場所、魔女が待ち受ける場所は、こちらじゃ」


君麻呂は背を向けて歩き出したリースに向けて、感謝の意をこめて軽く頭を下げた。
「……感謝する」

リースは手を軽く上げ、何も言わず先を進む。




共に歩き出した二人の前に現れる二つの影、君麻呂と同じく支えている者がいた。
其のものは五嵯路で迷いきっていた。


「……こんな所で何をやっておるのじゃ」


リースは再不斬の後姿にそっと声を掛けた。


「見りゃわかるだろ!道に迷ったんだよ!ったく何処もかしこも似たような造りにしやがって!」

焦りで更に冷静さを失った再不斬、到底迷路を抜け出す事は不可能な精神状態だ。
再不斬の背には顔を真っ白にした白が背負われていた。


「全く……どいつもこいつも。お主の相棒も処置せねば死ぬな……致し方ない」

自分もオメガに出会う前は迷っていたことを棚に上げ、リースは嘆息を再度つく。

リースは君麻呂のときと同様、白に向けて手を振りかざした。

白の息遣いが安らかになる、が、腕はそのままだ。


「やはり鬼鮫のようにはいかぬな、時間が経ちすぎておる、お主達も付いて参れ、どうせ竜のHealingが目当てじゃろ?」


「ああ、そうだ」
感謝の言葉を口にしていいか、頭を掻きながら答える再不斬。


「ふむ、別に礼などいらぬ、これから向かう先は、外よりも地獄、くれぐれも油断することなど無い様に、な……いらぬことじゃったな、ゆくぞ、我に最も近き者」

道が根源的にわからない再不斬は、大人しくリースの後に続く。













迷路のような通路をカブトが走る、背中に俺を乗せて。

「もう少しだ、モンスターが消えたって事は、誰かが主を殺したって事だな」

主がいなくなれば、ダンジョンに住まうモンスター達は姿を消す、リースから、イタチから聞いたことだ。

当の主が言うことなんだから正しいのだろう。

「……竜君、今逃げてもおそらく君を責める人間は誰もいないと思うよ」

カブトの本当に俺の身を案じてくれている声。

違うよ、カブト、もうそんなレベルじゃないんだよ。

「……ありがとう、黒須先輩、俺は自分を出すだけだ、先輩に言われたように」

「あれは、そんなつもりで言った言葉じゃ……」

「俺にとっちゃ、変わらない事なんだよ先輩、どうやら魔女は俺だけを待っている、可笑しいだろ。こんな弱っちい戦闘に向かないと誰からも太鼓判を押された俺を、あの最強無敵の魔女が待っているんだぜ、ならば、其の期待には答えなきゃ、嘘だろ?」

今思うと、初めて逢った原作キャラは、そうなるとカブトが最初だってことか、変装していたとしてもな。

つくづく俺は音の里と縁があるみたいだな、大蛇丸しかり、カブトしかり、道理で死亡フラグがいつまで経っても消えないわけだ。最初ッからそういう風に決められていたんだな、この世界での俺の立ち居地は。


カブトが急に立ち止まる。
「どうやら、お仲間みたいだね」

目の前に広がるは巨大な扉、いかにもって感じだな……この先に、魔女は、ミナクスは、いる。

カブトの言葉に先を見ると、人が複数人たっているのが認められる。

結構生き残っていたんだな、死んじまったとばかり、思っていたよ。


「待ったぞ、竜よ、お主なら、必ず辿り着けると思ってた」


何処と無く雰囲気が変わったリース、何が変わったんだろ?

「おい」

……背中に立つのが忍者のトレンディー、なんだろうな。

下半分の口を白い布で覆っているこの方は、確か霧の再不斬さんだっけ、えっと逢うのは初めて、だよね?……殺気が無いのが唯一の救い、かな。


振り返った俺の肩を軽く掴む……イタイイタイ。

「悪いが、華奢なんでね、もっと軽く掴んでいただけませんか?」

後半敬語なのは、余りの迫力に俺がびびったからだ、何か原作より凶悪度が増しているような……っていうかなんでこの人が此処にいるの?結局波の国関連はどうなったんだろ。橋は、出来たのかなぁ?


再不斬は、案外素直に俺の言葉に応じてくれた。


代わりに俺の前に、可愛い姉ちゃん……じゃねえ、白か、本当に美人だな、女の子っていっても信じるのも無理は無い、腕が無い?


「おい、話は聞いている、治せ、代わりに手前の敵を殺してやる、それでどうだ」


問答無用の雰囲気を醸し出す再不斬さん、思わず俺は勝手に手が包帯を巻いていた。

忍者って……本当にまともな方が少ないよな……敵じゃ、無いよね?


「安心せい、此処にいる者共は、敵では無い」
竜王に保障されれば、まぁ平気だろ。


10.9.8.7.6.5……成功、白の左腕が何事も無かったかのように再生される、我ながら何度見てもほれぼれするような技術だな。

元の世界に帰れなかったら、この世界で医者をやるのも、いいかもな、一番最初に思ったように、な。

……出来ないだろうけど、な。


ピタッ

「竜と言ったな……其の腕前、確かに見事、大蛇丸様を治してくれ」

首筋に骨の刀を押し当てて脅迫する君麻呂……俺一応あんたの命の恩人なんだけど……三代目の時も同じ事思ったような……


大蛇丸、ねえ……って、
「無理だ、俺は何故かまだ死者蘇生は為していない」

スキル的には問題ないはずなのだが、使者蘇生は不可能、おそらく話を情報を総合すると世界の取り決めの枠組みから外れる行為だからだろうな。


カブトが骨刀を押しやる。

「……君麻呂、大蛇丸様は、末期の言葉に何と?」
見詰め合う君麻呂とカブト。
「……どいてくださいカブトさん、僕は、大蛇丸様に仕える忍びです」
首を振るカブト。
「そんな事は聞いていないよ君麻呂、死者は再び敵に使われる恐れがある、四代目のように、三代目のように、君は大蛇丸様の遺体をそんな風に扱われて本望なのかい、再度聞こう、大蛇丸様は今際になんて言葉を残したんだい?……これほど穏やかな大蛇丸様の顔は僕でも始めて見たんだ、是非とも聞きたいね」
君麻呂は骨刀をゆっくりと仕舞い込んだ。




ぎぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいい








君麻呂が口を開く前に勝手に扉が、開いた。

「わらわが、教えて上げるわ、そんな所で何をしているの、さっさと入りなさい。小さいアバタールにその仲間達」


空気が変わった……ボス戦って感じだ、音楽でも鳴っていたら絶対に代わっていただろう、ボス戦用に。


最初に目が付くのは壁だった。
壁一面に映し出されているは。



「そっか・・・・・・ナルト、勝負だ。最後の勝負だ、行くよ」

四代目!

「父ちゃん、これが――――父ちゃんがくれた力だってばよ」

ナルト!


四代目の掌に風が集まり球となる、ナルトの掌も同様……あれは、そうか、とうとう九尾の力を前回で操れるようになったのか。


「今、とっても面白い所なの、貴方達も見なさい、直人、まだ手は出さないでね」
脇に控えている直人、……もう少し待っていろ。



此処で下がる選択肢も無い。
俺達は黙って室内に入る。



ぎぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいい



入ってきたときと同様、勝手に扉が閉まる。



ナルトと、四代目が、ぶつかりあった――



勝ったのは、ナルト……崩れ落ちる四代目、……ごめんな、ナルト。

「やれば、出来るじゃないか」

再度大蛇丸の遺体を抱えなおした君麻呂が映像を見てぼそりと呟いた。

何か二人の間にあったんだろうな、俺には与り知らない事だけれども、な。



カカシに慰められるナルト、泣き出すナルト。


「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは、何て素晴らしい見せ物、そう思わないかしら、ねぇ小さなアバタールとその仲間達」


映像が、途切れると同時に笑い出す魔女。




こういうキャラだったな……じゃなきゃモンデインの信徒なんかにはならねーよな。



「さぁて、面白かったこの世界の戦争もいよいよ終わりね、存外に楽しかったわよ、もっと楽しませてくれるのよね小さいアバタール……直人、いいわよ、貴方が最後の壁。殺りなさい、アバタール私からのプレゼントよ、一対一、他の手出しは認めないわ、貴方が親友を其の手で殺しなさい、それくらい出来なければ、わらわの前に立つ資格なんて存在しないわ」


ミナクスが手を振る、同時に隔絶される俺と直人。


何とか出来そうなリースは、何故か再不斬と共に隔離されていた、何故に再不斬も一緒なんだ?


んなことを考える暇もなく――直人が動き出す。



「……カイ君、僕を殺してください。もう僕はミナクス様に逆らえません……カイ君を手に掛けるなんて、僕は耐えられません……僕を、殺してください!」


光が無い目で何を見るのか、何を見たらそうなったのか、一滴の涙が瞑られたままの目から流れ落ちた。


「直人、安心しろ、お前も知っているように、俺は悪巧みが得意なんだ……そして、永遠にばいばい、もう、怪我なんてするんじゃねえぞ?」

バックパックから取り出したるは氷の杖、色を失ったムーンストーン、それにインチキコデックス。


――マスター、僕の出番だね――

ああ、最後の出番だ。

「あるじの名に於いて命ずる、我に得がたき得物持て、我に費えぬ力持てIn An Flam Kal Corp Por」



氷の杖の効果は発動されない、違うことに使うからだ、穿つ点は一つ、ムーンストーン、「エセリアル虚空間」への道標。



インチキコデックスが光を放つ、力が巡り、力が縛り、二つの道具を一つに縛る。

氷の杖が力を発揮し、ムーンストーンが溶けて混ざる。




とんでもない恥ずかしい科白が終わり、俺に手に握られしは……そうだな、どこぞの第二魔法の象徴ツインテールの魔女が使う宝石剣と似たような効果を持つ杖だから。

「宝石杖」?

いや、ダサいな、「久遠の杖」……むぅ俺にはネーミングセンスがねえな。


ともかく、エセリアル虚空間に繋がっているため、魔法使い放題の最後の切り札が完成した。


――バイバイ、マスター。楽しかったよ――

消え去るコデックス、世話に、なったな。

直人の動きが止まる、スキルと共に記憶も消えるんだ、当然の反応だろ。


んでもって、「Por Corp Wis」精神を切り裂く魔法、マインドブラスト。


魔女の呪縛を解くにはこれが一番だろ、しばしの地獄の苦しみを味わえ直人、我慢しろよ、俺だって計三回くらいは受けてんだから。お前だったら、平気だ。


余りの衝撃に転げまわる直人、「Ort Por Ylem」遠くのものを動かせる魔法テレキネス。


魔法で一気に直人を壁際まで追いやる。

苦しんでいるところ悪いが、其処は巻き添えを確実に食らう、何より邪魔だ。




パチパチパチパチパチ

拍手は……ミナクスか。
「……あっさりと超えてくれたわね、嬉しいわ、小さいアバタール」

空気が動く、魔女の一挙一動作全てに魔力が込められているのが理解できる。
やっぱりどう足掻いても勝てっこねえな……切り札を手にした今でもわかる、駄目だ桁が違う。


それでも、それでも願えば叶う、望めば叶う、それがウルティマオンラインの醍醐味なんだろ!?





「んじゃ、殺りあうか、最初に言っておくが、多分俺はお前に勝てない。でも、一般人の意地最後まで見せてやるよ、覚悟しろ、ミナクス!」


ミナクスが、玉座から立ち上がった。

相手はイベントプレイヤー、条件が揃わない限りダメージが絶対に入らない。

おそらく鍵の一つが直接戦闘、それも感染源たる俺が戦わないといけない類の制約。


だから俺は呪文を唱える、エセリアル虚空間の加護を得て強まったこの魔法を唱える。


「An Oct」ディスペル、UOでは召還生物を消すくらいしか意味が無いが、強化された今なら、ディスペル本来の意味、消し去る効果が強まる、それは全てに及ぶ。


ミナクスの体に光が纏わりつき、消えた。


「ふふふふふふ、無駄よ、そんなことしなくても、わらわが解いてあげる、一方的な戦いじゃアバタールに申し訳ないから」


おそらく、其処だ、其処をつけば……ミナクスを煙に巻けるはず……なのだが。


「ああ、面倒くさい、とりあえず、一回でもぶちのめさなきゃ駄目、だよな。――頼むぜ」


戦闘を回避することは不可能、だから俺は唱えた、さっきの魔法を、エセリアル虚空間の加護は全てを強化する、魔法の意味も魔法の効果範囲すら。


動き出す俺には見えない動きをする者達。




「龍式、瞬身の術」
「真・鉄線花の舞・蔓」
「真・魔境氷晶」
「水遁・真・水龍弾の術」
「外道ノ印・乱」


全ての攻撃が的確にミナクスに向かう。


ガンッ


ミナクスの前に築かれた見えない壁が防ぐが、亀裂が走り崩れさる。
「……今代のアバタールは、不意打ちが好きみたいね」


吐き捨てるようにいうミナクス。



「誰が、一人でお前みたいな化け物と戦うなんて言った、例えそれがお約束だろうが、俺は否定してやるよ、神様、違うな世界の野郎には言ってやれ、知ったこっちゃねえってな、世界の命運を決める戦い?世界の覇権を競う戦い?知るかよ、事実は、唯一つ、弱い人間が強い仲間と共に魔女と戦い勝利を収めました。それだけだ」



俺の後ろに立つカブト。

俺の前に立つ君麻呂。

すっかり顔色を良くし、俺の右に立つ白。

黙って俺の変わりに敵を殺すと誓った再不斬は、白と共に右へ。

いつの間にか手にしたハルバードを抱えているリースが俺の左へ。



そして俺の手に輝く久遠の杖。

「Rel Sanct」

呪文と共に俺達全員に加護の光が、行き届く。




「……さぁ勝負だぜ、ミナクス、最終決戦だ!」



[4366] 世界大戦
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2008/12/31 00:54



部屋がぶち壊される、ありとあらゆる建造物がぶち壊される。



魔女の魔法によって、味方の桁違いの忍術によって。



最初のディスペルが効いたのか、それとも魔女自らが言っていたようにフラグが立ったのか、俺達、味方の攻撃は確かに魔女に届くようになった。

君麻呂の骨による多彩な攻撃、白の氷による冷酷でそれでいて神速の攻撃、そういえば、最初に俺が見た骨と氷の血継限界の持ち主はこの二人の関係者だったのかな。


君麻呂βである一人はとうとう名前は分からなかったけど、もう一人の白βの名前は弦野っていったっけ。


カブトは俺の前に立ち、戦闘能力で著しく劣る俺の補助をしてくれている。そもそも前提条件である速さで抜群に劣る俺には前線にたてるわけがない。

初めてあった原作キャラ、何処でどう間違ったらこういう展開になるのやら、俺には全くわからねえ。


そして、二人の化け物、味方にすればこれほど頼もしい者はない。


一人は再不斬、原作よりも信じられねえ程強化されている、傍に付き添わせているウォーターエレメントとリンクした俺の目に映るのは、何て言うか、悪魔?


首切り包丁と鮫肌の二刀流に加え、移動に使っているのは、ありゃ白の魔境氷晶の原理か、で周りに浮かぶは我愛羅の砂の目の応用、多数の目で見張れば動きは細分化されるってか。


布に隠れてよく見えないが、明らかに口元が愉悦で歪んでいる、あれは、迷いが無い破壊神だ。


一人は古代竜の化身リース、ブレスこそ何故か使わないが、絶大な魔力に裏打ちされた多彩な魔法、それに加え、何時の間に覚えたのか、イタチの術によく似た攻撃、特に瞬身の術はエレメントの視力すら逸脱する。


普通の敵だったら、このメンバーに挟まれれば瞬殺もいいところだろう、俺だったら口八丁手八丁でどうにか切り抜けるね。


そんなメンバーが揃っているのに・・・・・・信じられるか?俺も数に含めれば六対一なんだぜ?


でも・・・・・・それでも・・・・・・魔女の方が上だ。


おいおい、滅茶苦茶もいいところじゃねえか、こんなのと俺はタイマンかまそうとしていたのか?無理無理、俺が瞬殺されるって。


根本的に違う魔力による攻撃は全ての達人の攻撃一つ一つにあわせて発動されている。

君麻呂の骨には、そのまんま破壊力が込められたエネルギーの塊、白の氷には熱量がたっぷりな火柱、リースと再不斬には範囲攻撃の代名詞、多数の雷と隕石の塊、それに毒のフィールド魔法や炎のフィールド魔法、ついでにパラライズフィールドやエネルギーフィールド、各種エレメント召還、デーモン召還、全てを一動作に二つ三つの意味を込めて発動。

魔女の名前は伊達じゃない、どうすればそんな真似が出来るのか・・・・・・いずれエクソダスを生み出す女、宿敵アバタールを成敗するためだけにタイムドアを使い過去未来現在全てを滅茶苦茶にした女、並じゃねえ。


「Vas An Ort」

時折ミナクスが開く、戦場からの強制退場のゲートを消す。

危ねえ危ねえ、カブト達に聞いていなければ一人一人放り出されて最終的にまたタイマンになっちまう所だ。


「・・・・・・出来る」

君麻呂が状態2になり、手には頑強な骨の刀を鞭のようにしならせミナクスに向けるが、やはり弾かれる。

「まだまだ」

弾いた隙を見逃さず、魔境氷晶で背後に現れ、大量の千本での攻撃、再度張られたリアクティブアーマーが千本の攻撃全てを耐えきる。

「無敵ってのも、嘘じゃねえかもな」

再不斬の二刀流による鬼のような連撃、リアクティブアーマーが鮫肌により切り裂かれるが、1個の動作も伴わないテレポートにより、斬撃の全てを回避。

「何を今更――――こやつは魔女、世界の敵じゃ」

神速のリースのハルバード、先端速度は音速を優に超える、それも無挙動で呼び出した悪魔が受け止め、飛散。



全ての攻撃を弾いたミナクスが、再び不可侵のエネルギーフィールドを俺達の前に張りだした。


戦場には流というものが存在する。
実際の戦場にはそんなものあるわけねえが、こと、この個人が一騎当千以上の力を持つ戦場では有り得る話しだ。

ミナクスが、ゆっくりと上を指さす、

気勢を削がれた皆が、一様に上を向いた。

「ふぅ・・・・・・流石に面倒くさいわね、一ついいこと教えてあげる」


全てが全て壊された部屋、天井も例外ではなく、雨が降らない雨の里、今は雲一つ浮かばない満天の青空が広がっていた。


其所に一点の染みが、存在していた。


「あれは、何だと思う?そうね、そこの元竜王にアバタール、貴方ならわかるんじゃないの?」


あれは、中で蠢く波動を感じる、あれは、


「召還陣、じゃな。それも魔界の深部に張られているものと同等・・・・・・魔女よ、お主は本気でこの世界を滅ぼす気なのじゃな」


出てくるのは悪魔の群れ、其れも下手したらバルロン以上の爵位を持った者共。


さんざん俺達を苦しめたバルロン、黒閣下も魔界では男爵でしかない、もしこの世界に伯爵、まかり間違って侯爵、公爵や大公なんて現れてみろ、もうどうにもならない、現れた瞬間世界の滅びが確定する。


といっても、そんな大物を呼び出すにはいくらミナクスと言えど、念入りな準備が必要・・・・・・そうか、


「手前・・・・・・この世界に来てからずっと準備してやがったな、道理で今までずっと動かなかった訳だ」


妖艶な笑みを浮かべるミナクス。
無言はつまり肯定ってことか。

あの大量の悪魔の群れも、大蛇丸とマダラの襲撃も、全てが全て遊びだったって訳だ。


「時間は、もう無いわよ、今日の日が落ちる頃には陣が完全に開くわ」

まだ、日は、戦いが始まるのが遅すぎた、雨で分からなかったが今は晴れている、もう時間が・・・・・・


「お前を殺せば、関係無いのだろ?」
「面倒くせえ、膾切りにしてやるよ」

好戦的な二人、君麻呂と再不斬。
出来たら苦労はしていない、魔力に溢れた行動で今一決定打に欠けるのが現状。


「結界ならば、基点となる存在があるのでは?」
「魔女の魔力を立てばあるいわ・・・・・・」

冷静な分析をするのは、白とカブト。
分析自体は正しいが、その手段が無い、魔女は規格外、あらゆる手段が無効とされる。


「そうか、我の意思すら利用し、力を封印したのは、この時のため、か・・・・・・オメガすら足場にしたのか、魔女」
「ええ、そうよ、貴方の竜王の力ならば、あれも封ずることも可能だったかも、ね」

魔女とため口を利くのがリース。
イタチと契約したとか何とか言っていたが、人に憧れるモンスター、か。


「お前も死ぬぞ、ミナクス」

俺の言葉に視線だけをこちらに向け、笑みを作る魔女、ミナクス。
「何を言っているの、小さなアバタール、滅びこそわらわの望み、知らない貴方では無いでしょうに」


・・・・・・駄目だ、言葉でこいつを納得させることなんて出来やしない、しかし、どうする、どうする、考えろ、考えろ考えろ考えろ!


「・・・・・・困っているみたいだね・・・・・・カイ、君」


え?

未だその名前で俺を呼ぶ存在は、もういないはず、だって、もう、記憶が消えている・・・・・・はず。

振り返ると、傷ついた格好の直人が、刀を手に立っていた。

目が見開かれ、その目には確かに光が戻っているのが確認できる。




タタタンタタタンタタタンタタタンタタタンタタタンタタタン


空に響く、馬の蹄の音。


「一体さっきの頭に響く衝撃は何だったのかしら、どうせ貴方の仕業でしょ、答えなさい竜」

偉そうな態度の・・・・・・ナイトメアに乗った琴音、何で、スキルがそのまま使えて居るんだ?



「どうして・・・・・・お前等のスキルは、もう使えないはずなのに・・・・・・俺の事だって忘れるはずなのに」

懐にしまったコデックスを見る、確かに書物は力を完全に失っている、言葉に偽りは含まれていなかったのだろう。
だが、どうして記憶にスキルがそのまんまなんだよ。


「はははははははははははははははははは、竜よ、お主もよく言っていたではないか、望めば其れは叶う、とな、世界の修正力すら二人は克服しおった、お主への想いというたった一つの手段でな」

爆笑し出したリース。

「本当に人間とは、面白い。出来もしないことすらあっさりと気持ち一つで克服する、まさに無限の可能性を秘めている。我も何とかなると思えてきたぞ!」


何だ、あれこれと悩む事が馬鹿らしいじゃないか・・・・・・。



「今更、雑魚が増えたところで何になる」

若干いらだちを含ませた声でミナクスが言い捨てる。


「ミナクス、お前今、初めて怒ったな、・・・・・・そんなに希望って奴が嫌いか、まぁそうだろうな。お前はアバタールに負けた、アバタールの正の力に負けた、それが存在自体に刻まれているだろうからな。絶望の側に身を寄せるお前にはさぞかし眩しいことだろう」


望めば其れは叶う、そうだったな・・・・・・そういう世界も意味合いに含まれていたんだよなUOは、「カイ=飛竜」の奴も言っていたじゃないか、いい言葉だよね、お兄ちゃんって。


傷付いた体に包帯を巻いてやる、すぐさま全快だ。

「カイ君、僕達の力も使ってよ」

刀を捨てる直人、懐から取り出したるは、いつもの笛だ。

「・・・・・・よくわからないけれども、そいつが全ての元凶みたいね、いいわ、私も混ぜてよ」

すでに二匹の白龍を従え、戦闘準備を整え終えている琴音。





はっきり言って、この二人が混じったとしても、戦況に変化は無いだろう。でも、



「あははははははははははははははははははははははははははははは」


口から勝手に笑いが溢れる。


「どうしたの、気味が悪いわね、また悪巧みでもしているんでしょ」

いつもの調子の琴音。

「何でも付き合うよ、さぁ行こうかカイ君」

いつもの調子の直人。

いつもと同じがこんなに嬉しいなんて、昔の俺は知らなかっただろうなぁ。



今一分かっていない顔のカブト、白、再不斬、君麻呂。


「ミナクス、お前は俺の力に、アバタールの力に負けるんじゃない、世界に否定されてUOの世界に否定されて終わるんだ。UOは決して否定するだけの世界じゃない、からな」


不可侵の壁が時間に伴い消え、ミナクスは多量の悪魔をその場に召還する。


「どんなに言葉を弄んでも、実力差は覆らない、戦場では其れが全て、どんな言葉もわらわには届かない、時間が来ればわらわの勝ち、わらわを打倒する手段が無い以上、貴方達に勝ち目はないわ」


それは、その通りだ、ミナクスの実力は底が知れない、未だに魔力の底も見えない。

だけどな・・・・・・魔法だけが、スキルじゃないんだぜ、お前が封じたスキルの一つにこの場で最も有効なスキルがあるのを、忘れている、いや、元々知らないんだろうな。


本来のスキルの用途を越えた使い方だからな。


「直人、いつもの奴を頼む、PeaceMakingだ」

「任せてよ!」

UOでは、沈静化として、戦闘状態をキャンセルするだけだが・・・・・・この世界にて制限が取り払われれば。


直人の奏でる音楽が、開けた劇場で場を支配する。


「久々だけど・・・・・・腕は落ちていないわね」

ペットの体を撫でながら音楽に酔いしれる琴音。

「これ、は」

君麻呂が骨の刀を地面に落とす、手を離れた骨刀は形を無くし崩れて消える。

「・・・・・・いい音楽です、貴方にはやはりこちらの方が相応しい」

白が目を閉じ、音楽に聴き入る、お前等どっかで逢ってたのか。

「直人君、君は、こんな技術を習得していたんだね」

何処か感動した様子でやはり聞き入っている孤児院で一緒だったカブト。

「けっ・・・・・・くだらねえ・・・・・・が、悪くはねえな」

手にした二刀を静かにしまう再不斬。




「なるほどのぉ・・・・・・お主には、この音楽は、このスキルは堪えるじゃろ、魔女よ」

納得した様子で眼を瞑り他と同様音楽に聞きいるリース。



戦闘意欲を失わせるスキル、PeaceMaking。
復活した直人のスキルは、俺の手にした久遠の杖を通じ、得るエセリアル虚空間の力が波及し、更なる効果を場に及ぼす。


呼び出された悪魔達が姿を消す。






















「お師様・・・・・・」


魔女の頬に涙が、光った。

・・・・・・モンデインとの蜜月の時でも思い出しているのかね。


直人の発展型沈静化は、平和な時を、幸せな時を聞いた者に強制的に思い起こさせる、懐古の念が一番近い感情だろう、誰も、どんな存在も逆らうことは、出来ない。


しゅううううううううううううううううううううううううううううううう。


見ると、上空に張られていた召還陣が音を立てて姿を消す。



「・・・・・・くだらないわね、こんな世界、もうわらわは知らないわ・・・・・・わらわは、帰るわ」

開かれる異色のゲート、ロードブラックスーンを攫ったあのゲートに近い奴だな、世界と世界を繋ぐ、ムーンゲート以上のゲート。

「・・・・・・覚悟する事ね、わらわが居なくなっても、違うわね、居なくなったことで更に世界は貴方に牙を剥くわよ、小さなアバタール」

ゲートを前にしてミナクスは足を止め、言葉を発する。

「もとより、承知、俺が弱くって、直々に決着を付けられなくて悪かったなミナクス」

俺が強ければ、正々堂々と正面きって戦ってミナクスを打ち倒していただろう。


「ふふ、そんな事絶対に思っていない癖に・・・・・・バイバイ小さなアバタール、また、何処かで逢いましょう」

直人の曲はまだ続いている、ミナクス程のイベントプレイヤーだからこそ、逆に世界の意志を無視することが出来る。

直人の曲を聴きながら、ミナクスはゲートに入っていった、その姿が掻き消える。


ミナクスが言った言葉は嘘じゃない、コデックスも言っていた、ミナクスをどうにか打倒したとしても、世界の戦力がUOの戦力が牙を剥くと。


「・・・・・・ありがとさん、直人、ご苦労様」

ミナクスが消えて無くなると共に、俺の手にした久遠の杖が、形を失い、完全に消滅した。


最後まで持ってくれて、ありがとさん。


まだまだ心配事はあるけれども・・・・・・決戦は終わった、世界の危機は去った、帰ろうじゃないか。




















グォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!





響き渡る獣の声、何だ、何が起こっている!?


全員が同時に外を見た、其所に広がる光景は・・・・・・。


「・・・・・・狐」


誰かの呟き声が、風に紛れ、風に消えていった。



圧倒的存在、最強の妖魔、九尾の妖狐、顕現。








何故!?


ナルトが完全に支配下に置いていたんじゃないのか!?




「魔女を退けた、か。大した物だ、そしてご苦労、これで世界は俺の物だ!!!」


遠くの俺達でも見える、あれは・・・・・・うちはマダラ、地面に倒れているカカシ、イタチ、ナルト、それに他の忍びもいる・・・・・・「根」のもの、か。生死は判明しない。


「ははははははははははははははははははは、さらばだ英雄共、最後に笑うのは俺達「暁」だ」


九尾を従え、去っていくマダラ、だが、九尾の尻尾が一本足らない、どういう訳だ。



「面白え・・・・・・行くぞ白!」
「・・・・・・わかりました、何処までもお供します再不斬さん」


直人の音楽の余韻に浸る間も無く、九尾の元へ去っていく白と再不斬。


「・・・・・・お前はどうする、竜、俺は大蛇丸様に命じられた、お前の身を守れ、とな」
「僕も行くよ、何処にいても、あれとの対決は避けられないだろうけど、ね」


残った音の二人組。


「・・・・・・九尾、か。とんでもない事態になったわね、まずは帰るわよ・・・・・・その前にナルトとかの生死を確かめなきゃ」
「急ごうカイ君、琴音ちゃん、あれはいけないものだ、全てを破滅に導くものだ」


比較的冷静だが、あくまでマニュアルに従う木の葉の忍びである二人。


「竜よ、悪いが先に行く、イタチが気になるでな」


目に見えない速さで、イタチの所へ駆け寄るリース、なんか恋する乙女みたいだな。






九尾、復活、か。よりによってマダラの元で・・・・・・再度起こると言う訳か、九尾による木の葉襲来が。


もう四代目はいない、強化されたと言え、九尾の強さが桁違いなのは周知の事実、どう防ぐんだ。





世界大戦が、始まる。


最強の存在による、世界を敵に回した世界大戦が、始まってしまう。


死ぬぞ、恐らく以前の戦いにもまして死ぬぞ、人が死ぬぞ。

マダラの狂気は遠目でもわかった、あれは本物だ。

全てを破滅に導く破滅の使者だ。

俺のちっぽけなスキルじゃ、どうにもならねえ・・・・・・後は、世界の頑張り次第、だな。











*今年の投稿は、今回で終了です。九尾復活の経緯とかは来年に持ち越しです。今年中に終わる予定だったんですけど、伸びちゃいました、では、皆さん良いお年をお迎え下さい!*



[4366] うちはマダラ
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/01/01 15:43

木の葉の里、火影執務室。

駆け込んでくる自来也。

「綱手、マダラの手の内が判明した・・・・・・最悪じゃ、今すぐ対敵性存在実力半減結界を発動、出来るか?」

「どうした、あれの発動には時間が掛かるが・・・・・・理由を言え!」

「やつの、マダラの狙いは、尾獣だ、しかも、このカカシが残していった指輪の術を見る限り、あやつは九尾を狙っている!」

自来也は綱手の前の机に指輪に込められた術の設計図を広げた。

「・・・・・・これは、だが、この術で引き出そうにも人数が必要だろう、一人では数人では何も出来ない、時間が掛かりすぎる」


ぬっと現れる一人の男。

「それを可能にするのが、伝説のマダラ、だ。・・・・・・これは手遅れやもしれぬぞ、火影よ」

顔半分を腕の片方を包帯で巻いているダンゾウ。

「何を・・・・・・」


突然、飾られていた蛇の抜けがら。
綱手は目を見開いた。

「大蛇丸が・・・・・・死んだ」

呟く綱手。


場に暫しの沈黙が顕現する。



現れるダンゾウの手の者。
耳打ちをし、ダンゾウの手の者は姿を眩ます。


「雨の里の対侵入結界が解除されたそうだ、つまり術者である暁の首魁を大蛇丸、もしくはカカシ達が葬り去った、すでに儂の手の者は向けているが、どうする火影」


「決っている精鋭を送り込め!」


薄く笑うダンゾウ。

「そういうと思い、既に暗部の精鋭を向かわせております、・・・・・・大蛇丸の出奔に少し遅れましたが、十分間に合うはず」

「・・・・・・ダンゾウ、お前は・・・・・・」
思い出す綱手、大蛇丸の行動は火影の意志と言っていたダンゾウの姿。
信頼していなかったのでは無いのか、信用されていなかったのではないのか、綱手の無言の質問がダンゾウに届く。


背を向け、部屋から出て行こうとするダンゾウ。
「勘違いしないで欲しいな火影よ、木の葉を守るためなら何でもするのは三代目だけの言葉だけではない、儂ら、当時の忍界大戦を経て、新たな脅威を認めた世代の共通の認識だ、心しておけ火影・・・・・・情けない真似をしてその席を汚すと言うならば、いつでも言え、儂が代わってやる」


顔を見せずに部屋から出て行ったダンゾウ。


火影の席に身を埋める五代目火影、綱手。


「・・・・・・重い、な。猿飛先生・・・・・・それに祖父よ、この席は、この称号は・・・・・・本当に重い」


「綱手、結界の準備、儂が見届ける、間に合わなかった場合、敵は九尾・・・・・・気を引き締めろ、お前の決断で全てが決るぞ!」

ゆっくりと頭を支える綱手、


「ああ、・・・・・・わかっている、全里に伝えろ・・・・・・伝え聞く限り我らは後手後手だ、マダラは、やり遂げてしまうやもしれん・・・・・・特に他の人柱力に忠告しておけ、敵は最強の妖獣、九尾の妖狐だと」


天井裏に待機していた暗部達が、綱手の言葉に従い、行動を開始した。


準備される世界大戦、木の葉の里は少なくとも情報で遅れを取ることは無かった。
数多の勢力が支える木の葉の里、故に最強、故に最良、清濁併せ持つ必要がある組織のトップ、綱手は少なくともその素質の片鱗を発揮し出すことになる。








ナルトの悲しき慟哭は、強制的に中断される事となる。



――――来る、来る、来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る来る・・・・・・・・・・・・来るぞ宿主!――――


声が、今まで誰も聞いたことがない底を計れない声が、イタチとカカシの耳に届いた。


「・・・・・・どうしたんだってばよ、馬鹿狐」

涙を拭い、尋常ではない相棒の様子に身構えるナルト。


「九尾の声、か。友好的だとは聞いていたが・・・・・・ナルト、俺にも何で聞こえるんだ?」

カカシの顔を見直すナルト。
「え?カカシ先生にも聞こえて居るんだってば?ん~~~多分、馬鹿狐を全開にした反動だと思うけど、詳しいことは俺にもわからないってばよ」


「・・・・・・何が、来るというのだ?」
冷静なイタチの声。


「それは――――」

――――来る、奴が来る!我の宿敵が我が怨敵が我が永劫の仇敵が、来る!我を使え、宿主、我を使え、ナルト、我が力全てを使え、我が敵を滅ぼせ!・・・・・・来た――――



辺りを見回す三人、しかし其所には何の影も見あたらない。


「馬鹿狐、一体何を・・・・・・」

「「ナルトっ!」」

気配を感じ、動こうとして、突然声を上げ、そのまま動きを止めるイタチとカカシ。


「嫌だなぁ、結局僕のオレノナゾハ、解けなかったみたいだね、コノハノジョウニン・・・・・・影は僕らのシハイカダ」


ナルトが声のした方向を見ると、カカシとイタチに繋がる影を束ねるものが、まるでシカマルの影縛りのような術を使い、二人の動きを止めているものがいる。


「ま、二人ともチャクラ切れのようだしね、ムリモネエカ、シバラクオトナシクシテモラウゼ」


その男は、真ん中を半分で切り、半分ずつがそれぞれ別個の人格を持っているかのように喋るもの。暁が一人、ゼツ。


「マダラ、僕の役割は果たしたよ」

動けないイタチの指から、「朱」の文字が入った指輪を抜き去り、虚空に投げるゼツ。

「アトハ、オマエノシゴトダゼ」

二人を縛ったままそれ以上の事はしないゼツ、やりようによっては命を絶つことすら簡単にできるはず。



ぱしっ



ナルトの目に虚空に映っていた其所に現れる一つの影、ゼツに放り投げられた指輪を受け取り、その手に填める、影の両手の指は全て指輪で埋め尽くされていた、先程投げられた指輪と同様、同じ材質同じ意図で作られた指輪が、影の両手で鈍く光を発する。



パチパチパチパチパチパチパチ・・・・・・・・・・・・


マダラと呼ばれた影が最初にしたことは、両の手の掌をあわせての、拍手。
惜しみない賛辞をナルトにこの場にいる三人に対して送る、純粋なる賞賛の意が込められている拍手。


仮面で隠され、その素顔は伺えないが、今まで数多との強敵と渡り合ってきたナルトにはわかった、こいつは変態だ、それと同時にとんでもない化け物だと。



「・・・・・・お前等、一体何だってばよ」


九尾の声はもう聞こえない、ナルトの外敵認識と共に、集中力が高まり、九尾は力を遺憾なく発揮する。


先程四代目すら一蹴した、最強の戦闘集団、木の葉の里、最強の決戦兵器、ナルトの真価。


「その反応は正しい、だが今は俺の言葉を少しだけ聞いてくれないだろうか、大した物だ、その言葉をお前等三人に恭しく贈らせていただくよ、尤も、未だ中では魔女との決戦が行われているようだし、これから世界がどうなるかわからないけどな」


ナルトの反応に伴い、拍手を止めたマダラ、その身には殺気が見受けられない、が、捕らえ所が無い違和感を感じるナルト、四代目に感じたような親愛の情なんかではない、敵に対する違和感、此処にいるのに存在が無い、そんなあやふやな違和感がナルトを縛りつける。


「・・・・・・カカシ先生と、サスケの兄ちゃんを離せ」


マダラはナルトの言葉にゆっくりと、其れで居て確かに首を横に振る。

昔のちょっと前のナルトだったら問答無用で戦闘を開始していただろうが、急激に進化したナルトの能力は、内面までも変えつつあった、最強の妖獣、九尾の妖狐、其れが誇る戦闘経験すら、今のナルトの内部に一体化される。


「それは、出来ない、何故なら其所の二人は邪魔だから、俺とナルト、お前の交渉の席にな・・・・・・単刀直入に言う、ナルト、俺の手下となれ、ならば命だけは助けてやる、お前の命も、其所の二人の命も」


ゼツの術に捕われた二人は、無防備な状態を晒している、マダラの言葉は脅迫だ。


「・・・・・・ふ・・・・・・ざ・・・・・・けるな・・・・・・俺を・・・・・・勝手に交渉に・・・・・・使う・・・・・・な・・・・・・」


ゼツの術に捕われながらも意志の力で言葉を発するイタチ。


「・・・・・・ナ・・・・・・ル・・・・・・ト・・・・・・俺の事は・・・・・・いい・・・・・・お前の力で・・・・・・ぶちのめしてやれ・・・・・・」

同じく、無理矢理言葉を動かない体から捻りだすカカシ、その目は真の意味で真剣だった。


「すごい、そんな体で僕の術に逆らうなんて・・・・・・コノハノサトノシノビハ、バケモノカ」
驚きの声を上げるゼツ、しかし、チャクラが根本的に足りないイタチとカカシは完全に術を打ち破る事は出来ない。


ナルトの体に風が集まる、四代目を圧倒したとき以上の風が、再度ナルトの体にまとわり付く。


「・・・・・・落ちつけって馬鹿狐、今は俺が話して居るんだってばよ・・・・・・安心しろって、俺はこんなやつらの話しに乗るわけないってばよ、怪しい奴、俺を誘おうったって無駄だってばよ」


マダラは再び首を横に振る。
「流石、師匠に実の父親まで殺した男は違うな、誇れ、ナルト、お前は今や名実ともに次代火影に相応しい、ちなみに、此処までお膳立てしてやったのは誰だと思う?ペインに、あんな単純な男に四代目火影を召還する等、思いつくと思うか?誰が、ペインに、大蛇丸が研究していた口寄せ・穢土転生を教えたと思う?いくらペインと言えど、何も無いところからあんな術を使いこなせるわけ、無いことくらい、次代火影ならばわかるだろ?」

マダラの言葉が静かにナルトの心に染み渡る。


「殆ど僕が動いた事じゃないか!ッテイウカ、アノオレニイロイロ、ササヤイテイタカゲハマダラダッタンダナ」


ナルトの体に更なる力がわき起こる。


――――殺せ!殺せ!かつて我を使い人里を襲った痴れ者がぁ!我を人の身に封じ込める原因を作った痴れ者がぁ!殺せナルト!殺せ宿主!我の力、全て使いこなすのは主しかいない、殺せ!殺せ!――――

九尾の声がナルトの感情の揺れに伴い、再度表に出てきた。


いくら最強の存在と為ったとしても・・・・・・ナルトは未だ下忍、さっきの四代目崩御に伴う時にしろ、まだ、ナルトは、感情の全てをコントロール出来るわけではない。力を伸ばすことに精一杯で、竜はナルトのメンタル面までは鍛えることを視野に入れていなかったことも、要因の一つにあげられる。


最強の力を持つが、未だ心は少年。しかも根本的には優しい心を持つ、多感な時期の少年。



――――マダラに取っては扱いやすい相手だった。


ナルトの体に九尾の力が更に更にまとわりつく、極限まで鍛えられた精密なチャクラコントロールが、九尾の力がナルトの体を浸食するといった事態は防いではいる、が、ナルトの意志を殺意が塗りつぶす。

「ってことは何か・・・・・・手前が全ての元凶なのか!答えろ、この馬鹿野郎!」


マダラは余りに予想道理に進む展開に、ほくそ笑む。鈍い光を放ち、マダラの手に嵌った十の指輪が煌きを発する。



突如多数の影が、その場を囲い、行動を開始する。



「火影式耳順術 廓庵入鄽垂手」

突如ナルトを縛る十本の木の柱。

「多重影手裏剣の術!」

同時にゼツに、マダラに降り注ぐ、手裏剣等忍具の嵐。


カカシとイタチの前に立ち、刀にて二人に降り注ぐ手裏剣や忍具を切り払う、長い黒髪を持つ、顔を仮面で隠した女の暗部、切ったその刀を返し、ゼツに一撃、易々と避けたゼツは、されど術を解除していた。


倒れ込むイタチとカカシ、女の暗部はすぐさまカカシだけを抱え込み、その場を離れる。

「駄目だ!結晶石が無い以上、抑えられん!」

木遁を繰り出した仮面を被った暗部の男が悲痛な叫び声を上げる。
木遁の下で強大な力を意のままに扱い足掻くナルト。


「ぐっ・・・・・・」

多数の手裏剣等を避けようともしないマダラ。
姿を一時的に消したゼツと違い、攻撃がマダラをすり抜ける。


「・・・・・・これはこれは、木の葉の暗部達ではないか、「根」の者とそれ以外のもの、いつもは反目しあいながら実力を伸ばしていた二つの組織が手を結んだのか?」


木の葉の暗部には二つの流れがある、すなわちダンゾウを中心とした「根」火影を直属としたそれ以外の一般暗部。


実力の面では変わることが無い、が、双方共に互いを倦厭する仲でもある。


「ふん、そうそうお前の思い通りに為ると思うなよ、うちはマダラ!」

暗部の一人が声を荒げて、マダラに宣戦を布告する。
暗部の面は個性を消す、この世界で最も忍びらしい忍びへと彼らを変化させる。


「今更・・・・・・我らに油断があると思ってか?出番だ、飛段、暗部の相手をして差し上げろ」


影から現れる、マダラが持つ最後の戦力、最後のカード、されど一般の忍びでは打倒することが叶わない、一癖もふた癖もある、暁の一員、飛段。


「けっ、待ちくたびれたぜぇええええええええええええええええ、ジャシン様に祈りを捧げろ!供物を臓腑を生け贄を!手前らの血で贖ってやるんだ、ありがたく思え!!!」


普段よりも更に延長する飛段の手に持つ、特殊な形状のデスサイズ、不死の死神となりて飛段は、木の葉の暗部に襲いかかる。


しかし木の葉の里は最強の里であることは変わらない、飛段の攻撃が強くても、飛段の速さが上回っていたとしても、一人で勝てなければ、伍を組み戦い、伍でも勝てなければ集で戦う。


別格の強さを持つ「主」と戦い研磨している最中に発見された強敵との戦い方。


暗部達は飛段に的を絞らせず、戦うことに成功していた。

逆に暗部の攻撃は飛段に届くのだが、一切の痛痒を見せない飛段。


「ぶんぶんぶんぶんと、面倒臭いやつらだな、マダラ、まだなのか!?」


「何、もうすぐだ」
マダラの静かな声が、場に響き渡った。

マダラの視線は木遁忍術を繰り広げている忍者に固定されていた、どれほど耐えられるか、その封印術が終われば、マダラの勝ちだ。



「限界だ、散れ!」

暗部の一人が繰り広げていた木遁が、ナルトの力任せの圧力に負け、強制的に解除された。



「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!死ねえぇぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」


ナルトの渾身の一撃が、マダラに向かう。



スカッ・・・・・・ドォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!



ナルトの攻撃はマダラをすり抜け、地面に当たった。

消滅。


ナルトの攻撃は威力をふんだんに発揮し、辺り一面を完全になぎ払う!

咄嗟に上空に避けたイタチは正解だ。


横に逃げた暗部達は飛段と共に全てが全て意識を失う羽目になる。


巨大な、されど集約された力は、一点をのみ穿つことになる。


その余波だけで暗部達は吹っ飛ばされた。


ナルトの攻撃をすり抜けた、マダラの手に嵌る指輪が再度光を発する。


マダラの仮面が外れ、振りかぶったその手が、地面に伏すナルトを貫く!

咄嗟に動くイタチ、理屈ではない、体が、勝手にイタチの体を動かす。



ザシュッ


「・・・・・・残念だよ、イタチ、お前の才能は買っていたんだが・・・・・・所詮お前も木の葉の忍びというわけか」


ぐふっ


血を吐くイタチ。ナルトを後ろに抱え仁王立ちのイタチ、その顔には限界まで練られたチャクラを込めた写輪眼が巡っていた。


「・・・・・・サスケの仲間は、殺させない・・・・・・さらばだ、マダラ、師であり友であった男よ、共に逝こうではないか・・・・・・火遁秘術・天照」


うちはの真価、万華鏡写輪眼が巡りに巡る、イタチを貫いている以上、今のマダラは実体。


避けられないはずだった、天照は目に写る全てを完全に燃やし尽くす。

しかし黒き炎はマダラをすり抜け、マダラに痛痒を与えるには至らない。


「・・・・・・風化の術、俺を捉えることは出来ないんだよ、イタチ」

体を水に変化する水化の術、それの応用風化の術、術に成功した者はそのからだを貫く全てを回避する術を手に入れることとなる。



チャクラが完全に切れ、行動の自由を失うイタチ、貫かれた胸から口から血が溢れる。


「・・・・・・サスケ、すまない・・・・・・後は、任せた・・・・・・うちはの因縁を・・・・・・絶ち・・・・・・切れ・・・・・・」

弱々しい言葉を呟き、完全に事切れるイタチ。


マダラは一度イタチを完全に破壊しようとした手を、止めた。

「ふん・・・・・・受け取れ」

後ろに迫ってきた影手裏剣の術を弾き落とした女の暗部を昏倒させた後に、その体の上にイタチの遺体を投げつけるマダラ。

「・・・・・・残念だよ、本当に残念だ・・・・・・お前なら、俺と共に夢を見れると思ったのに、な」

マダラの声には幾許かの憐憫の情が含まれていたが、すぐ消える。


「マダラー、早くしちゃいなよ」

暗部が倒れ、満足に動かない体を使いゼツに向かう必死のカカシをあしらいながら急かすゼツ。

「・・・・・・オマエモモウネテイロッテ、モウオレタチニハカテナインダカラサ」

あっさりとカカシの後ろを取り、昏倒の一撃を放つゼツ。



倒れ伏す全ての木の葉の戦力、再びナルトが神速でマダラに襲いかかるがその攻撃もマダラをすり抜ける。




「お前が、もし上忍だったならば、もう少し経験を積んでいればこんな結末にはならなかったかも、な・・・・・・全ては未熟、溢れんばかりの力を有効に使えない素の心の未熟、――――俺の糧となれ、ナルト」


すり抜けたナルトの頭を掴むマダラ。


「イタチに感謝しろ、といっても生き延びられるのは数秒延びただけ・・・・・・封印術・幻龍九封尽、改、発動」

十の指に填められた指輪が光を一斉に放つ。

本来ならば専用の場所で専用の人員を集めな、時間を掛けなければ発動すら不可能なはずの術なのだが、マダラの改良が加わり、何でもない場所でナルトの体から、引きはがされ出す九尾。




「ふざけるなぁああああああああああああああああああああ!!!!!」

ナルトのチャクラに溢れている攻撃が捕まれた状態で発動されるが、全ての攻撃はマダラをすり抜ける。

「冷静さを欠いた状態で、俺を倒すことは絶対に出来ない・・・・・・もうすぐで全てが終わる、その短時間、あがける者ならばあがけ、無駄な事に悟れ」


マダラの声は冷静そのもの。ナルトは更に暴れる。
「くそぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお、マダラめぇええええええええええええええええ、再度我を使役するとでも言うのかぁああああああああああああああああああああ!!!!」


九尾の意識がナルトの体を支配する。


「ははははははは、狐か、久しぶりだな、そうだ、狐よ、もう四代目はいない、お前を止められる単独の忍びなどこの世界に存在しない、俺とお前で全てを支配、破壊するんだ」


喜悦が込められているマダラの声。


十の指輪が更に光を発し、ナルトの体を包み込む。
九尾の妖狐が完全に外に引きづり出された!


「お前の思い通りなど、させるものか!!!!!!!!!!!!!!!!ナルト、我の力、真に受け取れ!!!!!!!!!!!!!!!!」


九尾の妖狐の体から一房の尻尾が、千切れ、ナルトの体に入り込む。



が、それまでだ。

マダラの写輪眼が、九尾の瞳を奪いさる。





グォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!




意識を無くした九尾の妖狐、その暴威を辺りにまき散らす。



マダラは魔女の気配が去ったことを悟った。



「魔女を退けた、か。大した物だ、そしてご苦労、これで世界は俺の物だ!!!」


魔女の居た場所に向け、声を張り上げるマダラ、後ろにはゼツに抱えられた飛段が佇む。


「ははははははははははははははははははは、さらばだ英雄共、最後に笑うのは俺達「暁」だ」


九尾を完全に従え、マダラはあらぬ方向へ飛び去った、後ろに続く、九尾とゼツ・飛段。



ナルトの体に入り込んだ九尾の一房の尻尾は、根付き、ナルトの命を救う。







神速で駆けつけたリース、次いで愕然とするリース。


「・・・・・・お主には、弟が居たな・・・・・・人間が言うところの感傷という感情なのだろ?・・・・・・最後まで付き合うぞ、イタチよ、――――我が契約の相棒よ」



小さく呟いたリースはイタチを抱え、木の葉の里へと足を向ける。




ごんっ



九尾の御陰で生き残ったナルトの力任せの一撃が地面を叩く。

「・・・・・・くそったれっだってばよ・・・・・・俺が、未熟だから・・・・・・心が未熟だから・・・・・・くそぉぉおお、折角父ちゃんが残してくれた力を、あんなやつに・・・・・・」



意識を戻す暗部達、体の意識を奪っていたのは衝撃だけだったのが幸いだった。

死傷者無し・・・・・・世界大戦の序章は幕を閉じた。
























*まずは、明けましておめでとう御座います!

忙しくて返信返せないので此処で代りに返させていただきます、感想ありがとうございました!どんでん返しこそ、私の目指す究極の形です、でもあまりに唐突だと意味がないので伏線を張っていくわけですが、本当に難しいですね、本職の作家さんはすごいや。

私のダンゾウはキレイなダンゾウなのかな?野心はそのままですが、世界観が変わってしまい下手な小細工する時間も余裕が無いので変わったダンゾウです。*



[4366] 世界大戦・力の象徴、人柱力
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/01/02 16:42


今は一時の安寧を過ごす木の葉の里、設備・機材共に最先端を行く病院、木の葉中央病院。

常時腕利きの医療忍者及び一般の医者も常駐し、看護士の腕もいい、滅多に一般の人間は入れない、其所にサスケは綱手の火影権限を使い入院していた。



サスケの意識はまだ戻らない、といってもまだイタチとの死闘から一日を経過していないため、当たり前といえば当たり前の話。


日が暮れかけようとしている頃だ。

サスケの面倒を見ていたサクラは、サスケの目尻から涙が流れていることに気付いた。


「サスケ君?」

答えないサスケ、意識が戻ったわけではないようだ。


口を動かすサスケ、サクラはサスケの口に耳を近づけ、何を喋ろうとしているのか、聞こうとした。


「・・・・・・兄さん」


涙と共に小さく一言だけを呟くサスケ。


其れは、ちょうどイタチが命を潰えた時と同時刻であった。











雨の里からマダラと九尾が移動してすぐ、後を追う二つの影があった。

モチロンそれに気付いている三人、


「マダラ、何か後を付いてきているよ、ドウスル、オレガシマツ、スルカ?」

「はははははははははは、ゼツゥゥゥ、お前は暗殺にこそ向いているが、こういった直接戦闘には向いてねえだろうが、いいぜ、行けよお前ら、俺が相手をしてやるぜ!」

「・・・・・・九尾の調整には時間がかかる、飛段、確実に殺せ」

「ああ、わかってる、ジャシン様の名にかけて、俺が始末する」


足を止め、体にさっきキヅ付いた場所から溢れる血を塗り、儀式を整える飛段。


尾を引き、去っていく九尾とマダラ達。



飛段は向かってきた影を認め、口を愉悦に歪ませた。


「手前等か・・・・・・相手にとって不足はねえ」

「白、無視するぞ」

「おっと、相変わらずだな再不斬、だが強制的に相手をしてもらうぜ・・・・・・お前等の血は、っと」

奇妙な陣を地面に描ききっていた飛段は、懐から取り出したカブセルに含まれている血を、舐めた。

「俺の能力は、知ってたか?あれだけ一緒にいれば血くらい手に入るもんだぜ、あばよ」


飛段は自慢の鎌を自らの心臓に突き刺した。


動きが止まり崩れ落ちる再不斬。

口から血が溢れる。


「再不斬さん!?」

崩れ落ちる体を支える白。

「・・・・・・っ、俺は、死なねえ、逃げろ、白!」

再度血液が含まれているカプセルを取り出す飛段。

「いいねぇ心地いいぜ、人の死の痛みはたまんねえな!相変わらず頑丈だな、再不斬よ、心臓を潰されてもしなねえのは初めてだぜ!・・・・・・だが、そっちの頭がよくって状況を見渡せて、ペインにも勝利した、小僧は、どうかな、こんな形で殺りあうとは、思わなかったけどな」

カブセルに含まれている血を舐めた飛段。


「逃げろ!」

再不斬の声が響くが、動揺してしまった白が動くよりも、躊躇いが全く存在しない飛段の鎌の方が早い。

「あん時は、楽しかったぜ・・・・・・あばよ」

飛段の鎌が自らの心臓を再度貫いた。



ぐはっ



血を吐き出す白、崩れ落ちる体、胸から溢れる血は白い肌を赤く染める。

「・・・・・・すみません・・・・・・再不斬さん・・・・・・僕は、此処までの・・・・・・よう・・・・・・です・・・・・・一緒に静かに・・・・・・暮らしたかった・・・・・・です・・・・・・ね」


既に再生した心臓が動くのを確認、今度は再不斬が白を抱きかかえる。

白の首が、静かに横たわる。

「・・・・・・白、おい、白、どうした。何寝ているんだよ」

白は弱々しく懐から取り出した巻物を、火遁で燃やした。

「これで・・・・・・再不斬さんを・・・・・・縛る者は・・・・・・無くなり・・・・・・ました・・・・・・後は・・・・・・自らが信じる道を・・・・・・突き進んで・・・・・・ください・・・・・・・・・・・・ごめん・・・・・・なさい・・・・・・」

白の体から力が完全に抜ける。



再不斬は、すぐさまゆっくりと白の体を下におろして、二刀を構える。



「けっ、見所がある奴はすぐ死ぬ、くだらねえ世界だな」


再度再不斬の血が含まれていたカプセルを取り出し舐める飛段。
そのまま自分の左腕を切り離す。

飛び散る再不斬の左腕。

だが、再不斬はその腕を掴み、根本に押しつけた、すぐにくっつく左腕。

「前から思っていたが、手前はとんでもねえ化け物だな、俺の術をこれほどまでに無効化するやつは初めて見たぜ、だが、首が離れても、再生するのかねぇ」



ぼっ



無言の再不斬から一陣の焔が放たれ、飛段の右腕が蒸発した。


同時に消え去る再不斬の右腕。



ぼっ



再度放たれる一陣の焔、飛段の両足が蒸発する。


やはり同時に消える再不斬の両足。



メキメキメキメキ



回復なんて生易しい、超速再生が行われる再不斬の体。


もう達磨となってしまった飛段の体、対する再不斬の体はもう五体満足だ。


「手前の術は、この陣の中でしか効力を発しないようだな」



力任せに無理矢理陣の陣の中から飛段の体を引きづり出す再不斬。

飛段は見た、再不斬の頭に金色の角が生えているのを。

「大蛇丸の研究の完成品はすげえな・・・・・・大した物だぜこんな化け者を生みだしていたとは、な」

「もう、喋るな」


再不斬の口から放たれる、渾身の神のブレス。

「はははははははははははははははははははははははははは、ありがとうよ、再不斬、不死身の俺に死を経験させてくれるのか、はははははははははははははははははははははははははは・・・・・・」



ゴォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ大オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!




金色に光るブレスは飛段の体を笑い声ごと付近一帯と共に完全に蒸発せしめた。



光が消える再不斬の体。


「・・・・・・ちっ馬鹿野郎だよ、白よ・・・・・・死んじまったら、何にもならねえだろうが・・・・・・」


再不斬は白を抱えて、何かを思いつき、木の葉の里へと足を進めた。









































風の里、我愛羅は静かに里を見守っていた。
その目は慈愛に満ちあふれている。

「我愛羅よ、木の葉からの伝令が来た、何でも九尾が復活、貴国にも襲来するやもしれんので気をつけるように、じゃと」


事が事なだけあり、対応したのはちよ婆だった。

「そうか・・・・・・今度はうちの番、だな」

静かに首肯を返すちよ婆。

「木の葉の上忍はいい物をもたらしてくれたよ、安心して行ってこい」










雲隠れ、里の忍者を鍛える施設に二尾を宿す女性、ユギトはいた。

一人の伝令がそっとユギトに近づき、耳打ちをする。


「・・・・・・九尾が復活したか、キラー・ビーは何処にいる」

「はっ、キラー・ビー様は未だ山に籠もっておられます」

ユギトの周りに蛍火がわき出す。

「・・・・・・あいつは・・・・・・全くいつもいつも・・・・・・面倒くさい仕事は全て私に放り投げて・・・・・・自分はさぼりっぱなし・・・・・・全く、私は別にあいつの妻でも何でもないんだぞ・・・・・・」



雲隠れの忍者達はユギトの呟きと共に発作が始まったのを見て、距離を置きだした。

雲隠れの忍者にユギトに対する共通する認識がある。

普段は温厚で優しく、頼りになる人だが、蛍火が出だしたら気をつけろ!


「ユギト様!落ち着いてください!」

伝令の忍者が声を荒げてユギトに忠信をする。

蛍火が出てきてしまえば、ユギトに近づける者はいない、化け猫が顕現する前兆だからだ。



「・・・・・・いい、お前等、いつでも戦に突入できる準備を整えておけ・・・・・・敵は九尾、最強の尾獣だ・・・・・・心を決めておけよ、私は、あの馬鹿を引きづり出してくる・・・・・・今度ばかりは私だけでは対処できないからな」


結局全開の全滅戦争時、キラー・ビーは表に出ることなく戦争が終わった。

ユギトの活躍により雲隠れに被害らしい被害は出なかったのだが、ユギトの怒りは今回の件で頂点に達していた。


二人の諍いは化け物が世に現れだした頃からに、端を発している、何気に責任感がある二尾、ユギト、対して総じていい加減な八尾、キラー・ビー、今はラップに嵌っているとかでキラー・ビーが外に出ているのを見た者は少ない。



二尾の尾獣、化け猫が青白い焔を身に纏い、顕現、一路、キラー・ビーが籠もる祠に向かい、空を駆ける。









岩隠れ、何も無い岩だらけの荒野が二人の男が立っていた。

「おい、爺、今度の敵は九尾だってよ」

「ほぉ、あの最強の尾獣が復活したのか・・・・・・楽しそうじゃな、お主はどうする、天元」

ぼりぼりと頭を掻く天元。

「別に、来るなら迎え撃つだけだ・・・・・・祭りに乗り遅れたくはねえけどな、爺はどうするんだ」

老紫は腕を組み、暫し考える。
「うむ、儂も大してお主と変わらぬな、いざとなれば儂らの判断で攻め込んでも構わないだろう、それだけの権限は土影と交渉済みじゃ、九尾の動きから目を離すな」

「ああ、俺の力は誤魔化せねえ、任せろ爺、これは俺の勘だが、戦は近いぜ」


二人は歪んだ思考に伴い、歪んだ台詞を口にして、静かに地平線の向こう、雲の向こうを見た。


























木の葉執務室、其所に集まる木の葉最高指導者達。


「・・・・・・何故、すぐマダラは九尾を使い、攻めてこなかった」

誰とも無しに呟かれる疑問の声。
九尾復活から既に一日が経過している、結界は発動され、木の葉の防備は万全だ、尤も九尾相手でどれほど通用するかは、未だ未知数。


其所には雨の里から帰ってきたナルト達が、招集されていた。


ナルトが静かに口を開く。
「馬鹿狐が最後に言い残していたってばよ・・・・・・悪い、全力で抵抗するが、五日も持たない・・・・・・って、後はマダラってやつの実力次第なんだってば」


壁際で腕を組みながら自来也が場に声を響かせる。
「マダラは、やり手だ、伝説の通りであれば、そうさな、いくら最強の尾獣だとしても、抵抗出来るのは、三日、つまり後二日しか猶予が無い事となる、そうだろ、ダンゾウ」


同じく壁際に佇むダンゾウ。無言の首肯を返した後、口を開く。
「・・・・・・マダラの力は、伝説を越えている、木の葉に対する怨念がそうさせた、今のやつの力は最強と謳われた猿飛の全盛期に匹敵するやもしれん、準備が整い次第、今度こそ滅ぼそうと真っ先に此処、木の葉の里に攻めてくるのは、間違いない」



ダンゾウの冷静な分析から来る言葉に、場に静かな空気が漂った。




「尾獣に対抗するには、尾獣が必要、そうだろう?木の葉の指導者共」

場に現れたのは、一尾の人柱力、我愛羅。

「風影・・・・・・、風の里の防備はいいのか?」

綱手が真っ先に反応、我愛羅に問いかける。


「・・・・・・木の葉が貸してくれたあの上忍共は役立っている、既に敵性存在に対する実力半減の結界は発動可能だ、俺がいなくとも半日は持つだろう。・・・・・・それに木の葉が堕ちれば、次は隣の里であるうちが真っ先に狙われる、マダラとやらは、世界を手にすると口走っていたのだろ?」

ナルトが我愛羅を振り返る。
「サソリのあん時、国境の所にいた奴だってば・・・・・・お前、力を貸してくれるってばよ?」


我愛羅の瞳がナルトを捉える。

「勘のいい、木の葉の下忍、か。お前が人柱力だったとはな、道理でサソリの罠に気づけた訳だ。・・・・・・木の葉の里には借りがある。俺の力、存分に使え」


我愛羅の気に反応して集まる砂。


「我愛羅!何でこんな所にいるのよ!」

部屋の外から駆けつけた金髪の髪を持つ少女。
木の葉に留学し、今はサクラと共に他の忍術と共に木の葉の医療忍術の骨格を学んでいる少女、テマリ。

我愛羅の表情は無表情だが、若干引きつるのを綱手は見逃さなかった。
綱手の口から吹き出る笑い声。


「頼りになるものに里は任せ、自分は姉が心配だから来た、か。聞いていた話と違うな、十分人間らしいじゃないか、風影」

テマリの声は無視し、綱手の言葉にそっぽを向く我愛羅。

「・・・・・・それは、昔の話だ。ところで、竜という子供に話しがある、何処にいる?」

綱手は我愛羅の質問に答えた。
「少し待ってくれ、あの子供は病院で欠損が生じた者の怪我を治しているよ、後で案内する・・・・・・力添え、感謝する、後で防衛計画の計画書を渡す、異存がある者はこの場にて言ってくれ、どんな意見でもかまわん」

場を見渡す綱手、声を上げる者はいなかった。


「・・・・・・いない、か。ナルト、案内してやれ。カカシは残れ」


わかったってばよ、と声を残しナルトは我愛羅を連れて行った。


「・・・・・・他の里の人柱力を信用して、大丈夫なのか?」

ダンゾウが小さく、それでいて皆の心情を代弁し問いを投げつける。


その問いに答えるのは、今や里の最強兵器となっているカカシだ。
「問題は、無いでしょ、いくらあの子が力を暴走させても、結界内部だったら俺でも余裕で殺せる、折角の力だ、利用できる者は利用しないと・・・・・・九尾の力は圧倒的だよ、はっきりいってこの里全員で掛かっても、全滅するかも知れない、それに加え、まだ暁はマダラ以外に二人も残っているんだ、彼らに対する策も用意しておかないと――――」


執務室の窓から入ってくる一つの影。
「・・・・・・今はマダラ以外は残り一人だぜ、飛段ってやつは、俺が殺した」


全身血だらけの巨大な二刀を背中にぶら下げた男は、殺意も無しに部屋に入り込む。


すぐさま取り囲む暗部達。


「おやおや、霧の再不斬さんじゃないか・・・・・・いつも一緒の白君はどうしたんだい?」

カカシが影の姿を認め、問いを投げる。手には既に今は代名詞となっているチャクラ刀が握られていた。

白く発光するカカシの姿を認め、再不斬は静かな笑みを零した。


「ふん・・・・・・コピー忍者のカカシ、か。そっちは伝説の三忍、自来也、大した面子が揃っている。白は死んだよ・・・・・・俺が殺し尽くした飛段の奴に殺された、九尾はまだまだ全快じゃねえぞ、ありゃ少しは時間は掛かるぜ・・・・・・直接戦った俺が保証する」

両手をあげて、暗部の捕縛にかかる再不斬、身には春の国から譲られたチャクラ封縛器具が身につけられた。

「ご丁寧なこったで」

器具を認めて吐き捨てるように言葉を発する再不斬。

「何故、この里に来たんだ?この対応は分かっていたはずだ」

綱手が手を目の前で組んだまま再不斬に問いかける。

「ふん、俺は別に木の葉になんか用はない・・・・・・が、一つだけ取引がしたくてな、白の墓をあいつの両親の所に入れておきたいんだが、何分俺は指名手配者、霧に行くには都合が悪い」

「代りに、自分を売りに来た、そう言うことか霧の抜け忍」

「なんだ、話しが早えじゃねえか、――――どうだ、大蛇丸の最高傑作、決して木の葉の里が無関係では無いんだぜ、俺の体に巣くう桁違いの化け物の力、使ってみようって気にはならねえか?」


にやりと笑みを顔に張り付かせ、再不斬は綱手に問う。

「白という少年のため、か・・・・・・いいだろう、朧火、遺体を運び、弔辞をあげてこい、火影の名前を使っても構わん、今は一つでも戦力が欲しいからな」

再不斬の顔がわずかばかり下に俯く。





「・・・・・・悪いな・・・・・・白を、頼む」

小さな、小さな声が再不斬の口から漏れる、綱手は敢えて追求しようとは思わなかった。





再不斬が大人しく捕縛され、部屋から出て行った後、自来也が口を開いた。

「綱手よ、こうなればいっそのこと全ての人柱力を集めるというのはどうだろうか」

一斉に首を横に振る綱手と最高権力者達。


「それは出来ぬよ自来也、一尾が協力してくれることの方が異例なんじゃ、マダラという外敵がおらなかったら、本来は九尾を無くした木の葉に対し宣戦布告をしてもおかしく無い事態なのじゃぞ・・・・・・尤も、こう化け物が大量にいては、戦争をする余裕何ぞ何処の里にもありはせん、がな」

静かに答えるうたたねコハル、皆が皆一様に頷く。


「我らに出来ることは、結界の強化のみ・・・・・・猿飛が対尾獣にむけ立案、実現した里の結界、今こそ役立てる時、五代目よ、異存は無いな?」


「ああ・・・・・・敵は九尾、やれることは全てやれ」

最高幹部会議は綱手の言葉で締めとなり、自来也とダンゾウ、カカシを残し他の者は解散、一斉に木の葉の里が一斉に動き出す。



「脅威は九尾だけではない、マダラの持つ永遠の万華鏡写輪眼、・・・・・・サスケの移植手術は目覚め次第施行しろ、だが二日であのマダラに対抗できるところまで育てられるか?」
綱手が少なくなった執務室で核心の問いを投げつける。



「・・・・・・サスケは、イタチとの戦いで万華鏡写輪眼についての能力全てを学びきった、後はサスケの心構え次第、マダラに対しては引き続き儂の「根」が全力で排除に当たる。火影は九尾の事だけ考えて貰おうか、自来也、お主は結界の警護に当たれ、マダラがその情報を知っていれば必ず狙ってくるだろう」

ダンゾウが綱手の言葉を補足する。

「・・・・・・いざとなれば最終結界の発動も視野に入れろ」

綱手は言い切った。


「・・・・・・全く、四代目に魔女といった強敵を排除したと思ったら、今度はマダラと九尾、か。大変な時期に火影になってしまったものだな。頼むぞ、私は里を信頼する、お前等も私の信頼に応えてくれれば、嬉しい」


「九尾は、いざとなれば、俺がまた封印しますよ、四代目火影が封印したように、先生の弟子である俺が、責任を取ります」

カカシがにこやかな笑みで言うが、


ぽかりっ


自来也がその頭を叩く。

「九尾単体ならば、お前の言う方法もありじゃが・・・・・・残念ながらマダラも付いておる、カカシよ、お前の力は決して軽んじていい力ではない、対九尾の陣頭指揮は、任せたぞ」

言葉を残し部屋から出て行く自来也。

「自来也の言うとおりだ、カカシよ、お主の力は既に木の葉の里に無くてはならんものだ、くれぐれも簡単に命を落とす真似は許さない。期待している、木の葉を頼むぞ」


自来也に続いて出て行くダンゾウ。


自来也に殴られた頭をさするカカシ。

「二人に言いたいことは言われてしまったな・・・・・・火影としても命ずる、カカシ、簡単に死ぬことは絶対に許さない、生きることを考えろ、死人に力は宿らない、お前の師匠である四代目もあの理不尽なまでの絶望的な九尾との戦いに絶望と共に戦ったわけではない、希望と共に戦ったんだ。勝手に死ぬな、里も守れ、どうだ、理不尽な命令だろ、だが、再度言う、火影として再度命ずる、カカシ、死ぬな」


綱手の言葉に振り向くカカシ、頭をさする手でそのままぽりぽりと頬をかく。


「・・・・・・すっかり火影が板に付いてきましたね、大蛇丸の犠牲がそんなに大きかったんですか?」


カカシは知っている、綱手の机の中に飾られている遺影の中に大蛇丸の遺影がこっそりと追加されていることを。
小さな白蛇の抜け殻が、こっそりと部屋のインテリアとして飾られているのを。


綱手は椅子を回転させ、窓の外を見る。


「ふん、あの変態が死んだ所で、何も感じぬよ・・・・・・だが、やつも最後は木の葉の為に散っていったのも確か、自己犠牲なんてくだらない、といって憚らない奴だったのに、な」


君麻呂が抱えて来た大蛇丸の遺体は、綱手、自来也立ち会いのもと、大蛇丸の両親が眠る場所に埋められた。


泣き続けていた君麻呂、沈黙を保つカブト、二人の音の生き残りは静かに大蛇丸をともらった。

今二人は病院にて強制的に働かされている竜の傍を離れない。

我らは竜の身を守る者、そう言い切った二人を、木の葉は特に捕縛しようとは判断しなかった。


「そういえば、あの竜王も、大人しいものですね、イタチが死んで暴れるかと思ったんですが」

「放っておけ、あの身なりをしていても、あの子は竜王、何か考えでもあるのだろうさ」



リースはイタチの遺体を抱えたまま帰ってきた、イタチの遺体を木の葉の者に引き渡した後、彼女は一人、火影の顔岩の前で、唯一人、じっと空を見あげている。





その身に、イタチが火影に頼んでくれた可愛い服を身に纏い、その状態で空を見あげていた。










九尾が再度襲来するまで、後二日。














*白、飛段、イタチ、大蛇丸、完全に退場。*



[4366] リースの休日
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/01/02 19:31



里があわただしく動き出している中、一人の少年が所在なさげに里の中を彷徨いていた。

勝手にしている巡回コースの一つに火影の顔岩が含まれている。

少年は、顔岩の前に、可愛い服を着込んでいる里の中で見慣れない女の子が一人寂しく座り込んでいるのを認めた。


「おい、さっきからそんなところで何やってんだ、これ」

リースは幼い声にぼーとしていた状態を解除し、振り返った。
其所には今の自分と同じくらいの年頃の少年がいた。

「いや、別に・・・・・・空を見ていたんじゃよ、久しく落ち着いて空など見ておらんじゃったから」

返事が返ってきたので、近づいてくる少年、木の葉丸。

「空なんか見て、楽しいか?これ、なんかナルトの兄ちゃんも昔そんなこと言っていたような」

「ほぉ、あの子供の知り合いか・・・・・・空は、いいぞ。駆けていると何もかも忘れられる、尤もその翼は既に無くしてしまったがな」


リースは美少女だ、成長すれば誰しもが振り返る素材に仕上がる事が簡単に予想できる程の美少女だ。
寂しげなそんな美少女の横顔に、心が躍る木の葉丸。


「・・・・・・空なんか人間は飛べないぞ、これ」

ふふふと笑うリース。

「そうじゃな、人には、無用な力じゃな・・・・・・折角色々わかりかけて来たのに、なぁ」

再度切なげな表情を作り出すリース。

木の葉丸は掛ける言葉が見あたらず、ただ、静かにリースの横顔を見ていた。

「お主は・・・・・・大切な者が、おるのか?」


大切な者を亡くしたばっかりのリース。

大切な者を亡くした経験がある木の葉丸。


木の葉丸は静かに火影の顔岩の一つを指さした。


「あれ、俺の爺ちゃんだったんだ、これ・・・・・・里の為に戦って里の為に死んだんだ、これ」

「そうか・・・・・・お主も失ったことがあるのだな、我と同じじゃな」

切なげな笑みを木の葉丸に向けて浮かべるリース。

思わず見とれてしまう木の葉丸。

「俺は、ナルトの兄ちゃんと約束したんだ、俺も火影になるって、ナルトの兄ちゃんは俺のライバルなんだ、これ」

顔を火影岩に向けて、己の心情を吐き出す木の葉丸。

「そうじゃな・・・・・・人は、立ち止まってばかりでは、駄目じゃな、ふふふふふ、お主、小さいのによく出来ているのぉ」

暖かい微笑みがリースの顔に浮かぶ。

「小さいってお前も・・・・・・そういえばお前の名前ってなんだ、これ」


「我が名は、リース、今はほぼ人の身じゃな、お主の名前はなんぞや?小さき者よ」


「俺の名前は木の葉丸!小さいってリースだって俺と大体同い年だろ、これ」


「ははははははははは、そうじゃな、今は我もお主と同じ年頃じゃな」


自分を完全に人間扱いする木の葉丸の態度がリースは嬉しかった。


「だから、こんな所で一人でいるなんて、危ないぞ、これ。・・・・・・リースは可愛いから」

「ん、なんじゃ、最後の方が聞きとれんかった、もう一度頼む」
顔を近づけ、耳を欹てるリース。

顔を真っ赤にする木の葉丸。


「べ・・・・・・別に何も言ってないぞ、これ。そうだ、暇だったら俺と一緒に里を歩かないか?」

指を顎にあてて考え込むリース。

「そうじゃな、人の日常とやらを見るのも悪くあるまい、えすこぉととやらを、してくれるんじゃろな?木の葉丸」

にっこりと花のような微笑みを浮かべ、手を差し出すリース、竜の記憶を覗いた際に得た知識だ。

差し出された手を前に固まってしまう木の葉丸、ナルトと共にお色気の術などを開発していたが、こんなに可愛い子を初めて見て思わず言ってしまった台詞。

「ほれ、どうした、でぇとと呼ばれる行為なのじゃろ、勿論お金はお主持ちじゃろうな、行くぞ木の葉丸」

固まってしまった木の葉丸の手を握りしめ、引きづりだすリース。
その顔には満面の笑みが浮かんでいた。

手のひらに感じる柔らかい感触に更に固まってしまう木の葉丸、知識としては知っていたが、こんなに女の子が積極的になるとは予想もしていなかったため、木の葉丸は盛大に戸惑っていた。

イタチの死を忘れようと、イタチの死で受けた心の傷を誤魔化そうと、リースは敢えて愉しもうとしていた。



決戦を前に、雑多な里が眼前に広がる。




「・・・・・・木の葉丸君、大人になり申したなぁ・・・・・・このエビス、嬉しいですぞ」

影からこっそりとそんな微笑ましい二人の様子を覗き見る、木の葉丸の教育係エビス。


最初こそ戸惑っていた木の葉丸だが、折角の機会だ、と持ち前の明るさを発揮し、里の名所、里の美味しい店などをリースに紹介、様々な所に文字通りエスコートしていた。


「相手が、竜王と言うことが、問題と言えば問題なのですが・・・・・・見る限り害は無さそうですし、木の葉丸君の情操教育には、役立っているのですかねぇ」


まるで父親のような目線で木の葉丸を見るエビス、ゆえにふいに飛んでくる炎の玉に反応する事が遅れてしまった。


ぼんっ


人気が無いところで木の葉丸がリースにせがまれて披露した、火遁の術、それはリースの誘導に伴い見事にエビスにヒットした。


そんなことは露ほども知らない木の葉丸、成功した火遁に胸を張る。
「どうだ、リース、これが火遁の火球の術だ、これ」


ぱちぱちぱちぱちと惜しみない拍手を木の葉丸に贈るリース。

「うむ、お見事、あの程度ならば死ぬこともあるまい、さて、次はあちらがみたいぞ木の葉丸」
「?何を言って居るんだ、これ」
「ははははははは、お主は知らなくてよいぞ、さぁ次を見ようではないか」

木の葉丸の手を力強く握りしめ、木の葉丸の質問を消すリース。

木の葉丸の顔は再度真っ赤に染められ、リースの希望通り、次に向けて歩き出した。

「何時までも見続けられるのは鬱陶しいからのぉ、すまぬな、監視の者」


人並み外れて鋭いリースの知覚に引っかかっていたエビスの視線。

木の葉丸の術は虚を突いただけで、威力自体はたいしたことが無いため、目を回す程度に終わったのだが、エビスは監視が続けられなくなった。


「ほぉ、これがぱふぇなるものか!食べたいぞ、木の葉丸!」

可愛い女の子に満面の笑みで見つめられれば、木の葉丸に逆らう道理など存在しない。

以前から三代目に貰っていた大量のお小遣いをリースの為に湯水の如く使う木の葉丸。



木の葉の里は、大きい。
ゆえに見るべき所も沢山あり、リースはそれで飽きることなく、木の葉丸は何度となく見ていたが可愛い女の子と廻る事はとても新鮮で、二人とも結果的にとても楽しく巡っていた。



――――木の葉動物園。

「ほぉ、虎か、木の葉丸よ、お主あの虎に勝てるか?」

「此処はそういう施設じゃないぞ、これ。今だったら勝てるけどな!」

「ならば、あちらのウィプスはどうじゃ?しかし何でこやつが動物園なぞに閉じこめられているのじゃ」

+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*

「何、経済的に厳しいから見せ物や教師をやっている、じゃと。お主の言葉を理解できる者がこの世界にいるのか?」

+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*++*+*+*+*+*+*+*+*+**

「ふむふむ、なるほど、上忍の中にはそんな能力を持つ者もいるのか」

+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*

「カカシの金払いは良かった、じゃと、一体誰じゃそのカカシとやらは」

いきなりウィプスと会話を始めたリース。


木の葉丸は信じられない者を見る目で一人と一体を見つめる。







「へっくしょん!」

木の葉、上忍詰め所。

盛大にくしゃみをかますカカシ。

「おい、カカシ、飛んだぞ」

対面に座っていたのは仏頂面の猿飛アスマ、避けることが出来ず、カカシの唾がかかってしまった。

「風邪?やめてよね、決戦が近いのよ」

二人に対しお茶を入れているのは紅だ。

「我がライバルとして、風邪など情けない、男はいつでも寒中摩擦だ!」

いきなり服を脱ぎだし褌一丁で肌をこすり出すマイト・ガイ。

紅は思わず目を覆った。
そんなガイを無視するアスマとカカシ。

「わるいわるい、体調管理は万全のはずなんだがなぁ・・・・・・噂でもされたかな」

人外共に噂をされているとは露ほども知らないカカシ、ずずっと鼻をすすり、再び目の前の机に広げられている、木の葉の里見取り図に目を落とす。


ハハハハハハハハハハとのガイの声が上忍詰め所に響き渡った。





「ふむふむ、木の葉丸よ、我はお主とウィプスの戦いがみたいぞ」

+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*

ウィプスが楽しそうに木の葉丸に語りかける。
もちろん木の葉丸にはウィプスの言葉などわからない。

「いやいや、何処にでーとの最中に戦う馬鹿がいるんだ、これ」

「・・・・・・駄目かのぉ」

瞳を潤ませて木の葉丸を見つめるリース。

「任せろって、これぇ!」

係員に事情を説明しに勢いよく行動を開始した木の葉丸の後ろ姿を見つめるリース。


「ふふふふ、ちょろいもんじゃな」

+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*

「ああ、そなたもご苦労じゃな、いいか絶対に殺してはいかんぞ。ちょっとあの子の力がどれほどか知りたくなっただけじゃからな」

+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*

「委細承知、か。頼むぞ。報酬は弾むゆえ、頼んだ」







広場の隅で目覚めるエビス。

「はっ、しまった!木の葉丸君は何処だ!?」

すぐさまその場を離れ、エビスは姿を消した。








リースの膝枕の上でねっころがっている木の葉丸、軽く手が振われ、木の葉丸の傷が癒える。

「・・・・・・うぅぅん」

「目覚めたか、木の葉丸、格好良かったぞ」

木の葉丸とウィプスの戦いは、結局ウィプスの勝ちで終わった。

魔法を避け切れなくなった木の葉丸は、最後の勝負でナルトに習った螺旋丸を生み出し、ウィプスに突貫を仕掛けたのだが、ウィプスは空高く回避、


卑怯だぞこれぇええええええええええええええええええ!!!!!


の声を張り上げる木の葉丸に向けて、一筋のライトニングが発動されたところで勝負は決した。


「うぅぅん……俺はまけちゃったんだ、これ」

木の葉丸の額をにこやかな微笑と共にやさしく撫でるリース。

「ふふふふ、焦るでないよ、木の葉丸、お主には、まだまだ先がある、今負けたとしても次に勝てばいいのじゃ。いいか、決して命を軽んじる事のないように、な。最後に生きていた者が、勝者なのじゃよ、それだけは、忘れるでないぞ」

寂しげに笑うリース。

自分が膝枕されていることを感じて、赤くなる木の葉丸の顔。


「大切な者を亡くしたお主ならば、わかるじゃろう、大切な者を守るためには、力が必要じゃ・・・・・・じゃが、決して焦る必要は、無い。自分に出来ることを、やっていればいいのじゃよ・・・・・・無理に背伸びする必要は、何処にも無いのじゃ」


リースの何処か決意を秘めた顔を見た木の葉丸は、言葉を発せ無かった。

「さて、そろそろ次に行こうかの。次は映画とやらを見てみたいぞ」
リースはにこやかな笑みを浮かべ、木の葉丸に投げかけた。

「任せろって、これぇ!」

二人の足取りは軽かった。


――――木の葉映画館。

子供料金で入る二人。

タイトルは「風雲姫」シリーズの名作。

「あの忍者ってのはナルト兄ちゃん達をモデルにしたらいんだ、これ」

世界的大ヒットをとばしたシリーズで、今回二人が見ている作品は、ロングランで、リピーターが絶えない事で有名な一作だ。

映画館内では喋らないのはマナーなのだが、思わず忍者が活躍する部分で声を出してしまう木の葉丸。

「ほぉ、あれは・・・・・・演出などでは、ないな。なるほど、人気があるわけじゃ」


劇中では忍者が単身風雲姫を助けに入るシーンが流されていた。

チャクラを封じられ、体のあちらこちらを痛めつけられ、それでも諦めずに大きな敵に絶対なる敵に立ち向かう忍者の姿は、リースの知識の中にあるナルトの姿に一致した。


映画に夢中になる木の葉丸とリース。


最後に忍者が如意棒で悪の首魁をたこなぐりにするシーンでは思わず二人とも声を張り上げてしまっていた。


「「いけぇええええええええええええええええええええええ!!!!!」」





「これが忍者の力だ!」






劇中で叫ぶ忍者、吹き飛ばされる悪の首魁、一面の雪原に同時に広がる緑の息吹。


国民の前で手を振る風雲姫、見事実権を取り戻し、花のような美しい笑顔を惜しみなく振りまくお姫様。
歓声が巻き起こる。

場面が変わり、去ろうとしている忍者に声がかかる。

「・・・・・・どうしても、行くのね」

声の主は息を切らせて駆けつけた風雲姫だ。

「ああ・・・・・・世界には俺を待っている人がいるんでな」

かっこいい台詞を発して二度と振り返らないつもりの忍者。

「待ちなさい・・・・・・まだお礼をしていなかったわね」


リースの手が木の葉丸の手に絡まる。

強く握りしめられた手の感触に横を見ると、リースは完全に映像に魅入っていた。

落ち着かない木の葉丸。


関係無しに続く映画。



立ち止まり振り向いた忍者に抱きつく風雲姫。

「お姫様の接吻よ。・・・・・・ありがたく思いなさい、この朴念仁」

台詞と共に口づけする風雲姫と国を救った忍者。

その瞬間が永遠に続くかと思われたが、二人はすぐに離れ、姫は後ろを振り返り、歩き出した。



再度更に強く握りしめられる木の葉丸の手。



「この馬鹿、何処でにでも行けばいいんだわ!」


強い声で言い切る風雲姫。

「また、来るよ」
姫の背中に投げかける忍者の声。

一度嘆息を付いて、再び歩き出す英雄。


姫が耐えきれず、涙を流しながら振り返り忍者の背中に声を投げつける。


「この馬鹿!・・・・・・必ず、必ず生きて帰ってきなさいよ!豊かになったこの国を、見せてあげるんだから!」


もう振り返らない英雄。

一度手を振り上げ、英雄はそのまま去っていった。



何かを決意したように涙を拭い去る風雲姫。


姫は帰る、自分を待ち受ける国民の元へ、英雄は帰る、自分を未だ必要としている者達の所へ。


エンディング曲と共にスタッフロールが始まる。


横を見ると、リースが隠そうともせずに涙を流していた。

木の葉丸はずっとどきどきしながら映画の内容なんか見ていられなかった。








「・・・・・・木の葉丸君、其所は慰めてあげるべきですよ!」

二人を再び発見したエビスは天井に張り付きながら二人の様子を見ていた。

遠くて声は届かないのだが、エビスは余りに奥手な弟子の姿にやきもきしていた。








――――再度火影顔岩の前。

日はすっかり暮れ、夕日が木の葉の里に差し込む。

「・・・・・・すっかりお世話になったのぉ、今日のこの一日楽しかったぞ木の葉丸」

リースの満面の笑み、木の葉丸は顔を赤く染め上げ逸らしてしまう。

「俺も、楽しかった・・・・・・また、逢えるかな?これ」

ふふふふふふと妖艶な年に不釣り合いな笑みを浮かべるリース。

「そうじゃな・・・・・・人の世界が続けば、また逢えるじゃろう、我は行くべき所がある」

「どこだよ・・・・・・其所は遠いのか、これ」

「ふふふふふふ、此処からは距離的には近いのじゃが・・・・・・お主では辿りつけぬ場所じゃよ」

「・・・・・・強くなれば、強く為れば其所にいけるのか、これ」


つんっとイタチがサスケにやったように木の葉丸の額に指をつけるリース。

「焦るでないと、言ったはずじゃろ。生きていれば、生きていれば逢えるはずじゃよ」

再度満面の笑みを浮かべるリース。

木の葉丸は、最後にしてリースの笑みから顔を逸らさなかった。

「そうじゃ、その男の顔が出来るように為れば、また逢えるはずじゃよ、強く、なるんじゃよ木の葉丸・・・・・・少し、年にしては早いが、竜王の祝福じゃ、受け取れ」

リースの顔が木の葉丸に近づき、重なった。

額にキスしたリースは顔を離す。

「次は、お主が成長してからのお楽しみじゃよ」

満面の笑みを浮かべるリースの顔を見て、茹であがったたこの様に顔を赤く染める木の葉丸。




暫しの沈黙が二人の間に広がる。

「・・・・・・さて、時間じゃな、さらばじゃ木の葉丸、お主にもカルマの祝福があらんことを」

最後に満面の花のような笑みを残して、瞬身の術で姿を眩ますリース。

「・・・・・・何だ・・・・・・リースも忍者だったのか、これ・・・・・・それも俺よりも全然格上の」

術の精度を見て、木の葉丸は悟った、リースは忍者として遥か先を行っていると。






ぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱち・・・・・・。


拍手の音に振り返る木の葉丸。


其所には涙を流している自分の師匠、教育係エビスが立っていた。


「何やっているんだこれ、エビス、そんなところで」

「立派でしたぞ、木の葉丸君・・・・・・悲しい別れでしたね・・・・・・一つだけ忠告する事があるとすれば、木の葉丸君、初恋は、実らないものです・・・・・・あの子は忘れなさい」

憤慨する木の葉丸。

「お前に何がわかるんだよ、これ」

ゆっくりと若い怒りをながすエビス。

「木の葉丸、私はこの里の上忍です・・・・・・貴方より情報収集能力は上を行っています、子供扱いしたことに憤慨したならば、謝りましょう・・・・・・ですが男として一人の男としての忠告です、あの子は諦めなさい」

エビスの様子に怒りを収める木の葉丸。

しかし首を横に振り、木の葉丸は言葉を発する。
「・・・・・・俺が強くなれば、俺が大人の男に為ればまた逢えるってリースはいっていた、これ。だから俺は強くなる・・・・・・エビス先生、里が落ち着いたら、また、修行を頼むぞこれ」


エビスは静かに首を縦に振った。

「任せてください、私は火影育成請負人・・・・・・木の葉丸君、君はこのまましっかりと成長していけば火影になれるはずです、焦る必要はない、あの子も言っていたように、着実と確実に力を付けていってください、私が協力します」


エビスの言葉を受けて、火影の顔岩を眺める木の葉丸。

「爺っちゃんの名にかけて・・・・・・俺は火影になる!これぇええええええ!!!!」



木の葉丸の気合いは、里周辺にまで届いた。



聞いた忍者は顔をほころばせ、守るべき者を再確認、九尾の襲来に備える作業に入る。












九尾襲来まで、後一日。










*100話目が、恋愛話になるとは・・・・・・予想していなかったです、頑張れ木の葉丸!敵は死んだイタチだ、強敵すぎるわ*



[4366] 世界大戦・前夜
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/01/04 18:45


あーーーーーーーーーーー面倒くさい、薄々予想はしていたんだけどな、こういう事態になるって事は、俺のスキルがばれたときの事態の一つとして、な。


何処から噂を聞きつけたのか、俺の前に列をなしている病人怪我人達。


明らかにあんた其れは古傷だろうッテ言う人までいる。



見た目六歳児の俺に、偉そうなどっかの会社社長みたいな人まで金を積んで頼み込む様は滑稽もいいところだ。


俺の傍に常に立つ、君麻呂とカブト、この二人が居なければ今頃どっかの俺のスキルを独占しようと考えるどっかの馬鹿に攫われていてもおかしくなかったな。



俺は別に金なんか欲しくない、ゆえに無償で治してやっているんだが、俺が治した瞬間俺を神みたいにあがめる動作までやるのは止めて欲しい、っていうかこれは宗教になっちまうんじゃねえの?


切り傷等どころか、古傷、それに不治の病と診断された病まで治してしまう俺のスキル――――Healing、一般の医者に見放された人からすれば、俺は現世に舞い降りた神の化身なんだろうな。



・・・・・・綱手に怪我人を治してくれないか?なんていう依頼を受けて、未だ時間があるからと了承してしまった俺は大馬鹿者だ。


魔法のような技術だもんな、何処の世界にもいるよな・・・・・・不治の病で治らない病人ってのは、さ。


そんな涙乍らの懇願を無碍に断ることも出来ず、一人目を治してしまったことが運の尽き。


次から次へと現れる不治の病持ちの人たち。


忍びだけじゃなかったっけ?俺の契約内容。


「はい、次の人ー」


きっかり十秒で俺のスキルは完成する。

物欲しげな表情で俺を見る病院関係者、そりゃ魅力的だろうなぁ、絶対に治しちまう完全治療スキルだもんなぁ。


「お願いします・・・・・・もう十二年もこのままで・・・・・・」

運ばれてきたのは植物状態になってしまったという、様々な器具が繋がれてベットに横たわっている状態の患者だ。

「はいはい、すぐ終わりますからねー」

気軽に治療を始める。

10.9.8.7.6.5.・・・・・・成功!

目が覚める患者。

「・・・・・・あれ?・・・・・・此処は?」
動かない体を不思議がる患者。


「言っておくが、リハビリまでは考慮していないからくれぐれも気をつけるように」

「有り難う御座います!有り難う御座います!!!」

涙を溢れさせ、患者であった男に・・・・・・息子かな、抱きつく壮年の女性。
金を出そうとしたから、適当に言い訳をして全部返した。


もう、いらねえんだよな・・・・・・だって・・・・・・。


列はすぐに尽きる、だって俺の治療はたった10秒で終わる。


「あー疲れた、治療よりもその後の交渉の方が疲れるのは何でなんだ?」

俺のスキルを見て、是非専属の医師になってくれ!

っていうやつは君麻呂に追い払わせた。
馬鹿じゃねえの?俺で稼ごうって言う意志が見え見えなんだよ、ばーか。


いきなり俺の体を抱え込み逃げようとした男もいた。

君麻呂とカブトの包囲網を抜け出せる訳ねぇだろうが。


本当に人間ってのは自分の事しか考えない奴だよな、ま、俺が言えた義理じゃねえけどな。


っていうか明らかに火の国の大名っぽいやつらも混じっていたよな。
ご意見番あたりだろうな、より一層スポンサーとの結びつきを強めておこうってか?
このままこんな所にいたら、全世界から俺の所に来る奴がきちゃうな。










本当に困っている奴にはご免な、もう、後一日だけなんだ。

一日目のお客さんは、懐かしい顔が見えた。
思えば、もうあの世界に行ってまだ生き残っているのは、俺とリース、それにお前だけか、なぁ我愛羅。


「竜」


一息ついていると聞き慣れた声がした。


なんだ、
「我愛羅とナルトじゃねえか、いいのか、風影様がこんな所に来ちゃって」

周りを見渡す我愛羅。

「病人がいない病院か、お前のスキルとやらは本当に便利だな」

そう、寝込んでいる奴すら治す俺のスキル、手始めに此処に入院していた奴全て治して追っ払った。頭に来てやる行為じゃねえよな、思いっきり感謝されたよ、恐らく九尾との戦いでは、今回復活した忍者達の半数以上が死ぬんだろうな・・・・・・折角治したのに、な。


俺に懇願する人間が居る中で、断固として治療を拒否したのが二人いる。


まずはダンゾウ、不便そうだから治そうか?なんていったら本気の殺気を込めた目で見られた。


なんでも傷にはいろんな思いが詰まっているから、らしい。治すことにより意識がぶれちまう事が嫌なんだってさ。


次はイブキ、拷問の跡まで消えるぞ、なんていったら大笑いされた。


拷問するときに便利なんだから消すんじゃねえよ、と豪快に笑い俺の背中をばしばしと叩いてどっかいっちまいやがった。

傷は男の勲章なんていう考え方とは少し違う感じだったな。

やつも色々あるんだろうな、俺にはよく、わからねえけど、さ。




俺の治療行為は二日間だけ続いた。
一日目で木の葉の忍び全員が完調、早速九尾に対抗するための作戦会議が満場一致で開かれた。

サスケのぼっちゃんも治したんだけど、精神的な物は俺にもどうしようもない、後は目覚めるのを待つばかりだ。



「どうしたい、久しぶりだな、エセリアル虚空間以来か、我愛羅、俺になんか用か?」

「・・・・・・スピリットスピークとか言ったか、あれをもう一度やって欲しくてな」

ああ、夜叉丸か。

「もう、残念ながらお前の目には見えないぞ、あれは、エセリアル虚空間だけの増幅機能だぜ」

我愛羅は静かに頷いた。

「ああ、報告するだけだ、反応を見てくれるだけで構わない」


風影になりました、ってところか。
夜叉丸は常にお前のことを見ているから、必要ねえとも思うが・・・・・・気分の問題なんだろうな、人間特有の人間らしい行動だ、な。


断る理由も、無い。
「いいぜ、ちょっと待ってくれ」

*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+

*霊界に繋がりました*


現れる今は俺にしか見えない死者の霊、我愛羅の近くには夜叉丸、それと・・・・・・ナルトの近くに寄りそうのが、四代目と三代目、それに四代目の嫁さん、うずまきクシナ、だっけ・・・・・・確かにキレイ、だな。

「いいぜ、スキルは成功した・・・・・・夜叉丸、それにナルト、お前の父ちゃんと三代目、それに母ちゃんが来ているぞ」

頷き、虚空に向かいぶつぶつと語り出す我愛羅と正反対で、俺の言葉に戸惑うナルト。


「・・・・・・どういう事だってばよ」

ああ、そうか、このスキルの事はあんまり木の葉の里の者には言っていなかったっけ。

「まぁ少しだけ待っていてくれ、我愛羅、言葉を伝えるぞ「ご立派に為りましたね、これでようやく私も、逝けそうです」・・・・・・天に昇っていく、我愛羅、夜叉丸は、もういない・・・・・・満足そうな笑みを残していたぞ」

「そうか、・・・・・・世話になった」

我愛羅は無表情のまま呟き、壁の隅にたった。

「俺を案内するのだろう、俺は此処で待つ、存分に話しをするがいい」

思いっきり不思議そうな表情のナルト。

「ん~まるっきりよくわからないけど、一体どういうことなんだってば?」

「ははははは、一度でもあの経験をしないと多分理解は出来ないと思うよ」

笑い出す俺の護衛のカブト。
無言のままの君麻呂。
あ、

「おい、君麻呂、お前の近くに大蛇丸の霊も来ているぜ・・・・・・何か言いたければ言っておけ、返事は俺が聞いてやるから」


「・・・・・・いい、俺には何も無い、大蛇丸様は全て分かってくださるはずだ」
「僕も、いいよ。大蛇丸様が今更何か僕らに言うとは思えない。あの方はそう言う方ではないよ」


うふふふふふふふふふふと忍び笑いをし、大蛇丸も、また天に昇っていった。


何も言わずとも心を通じるもの達、か。




「・・・・・・待たせたな、ナルト、今お前の周りに一組の夫婦と三代目がいる」

「・・・・・・なんて言っているってば?」

えっと、
「笑顔でお前に言っているよ・・・・・・「頑張れ」だってさ」





たった一言、されど、ナルトに取っては、何億倍もの意味に増幅される一言。

「・・・・・・竜、父ちゃんと母ちゃん、それに爺ちゃんはこっちにいるんだってば?」

「ああ、間違っていない」



「・・・・・・見ていてくれってばよ、俺は、俺達が里を救う、俺一人の力だけじゃなくって、里のみんなと協力して救うから、みんな、みんな頼もしい仲間だってばよ!」

三人の姿が光に紛れ、消えていく。
ん、何々?

「・・・・・・ナルト、「木の葉を頼んだ」だってさ・・・・・・あ、消えた」

「満足してくれたんだってば・・・・・・我愛羅、待たせたな、次の場所へ案内するってばよ」



一体帰ってきてから、何があったのやら、聞いているぜ、ヒナタに慰めて貰ったんだろ?お前はもう一人じゃないんだよ、ナルト、頑張れよ。




~~お前は、一体何者なんだ?~~



俺に直接呼びかける声。

ぐるぐるとうずまき状の瞳を持つ青年のお前は・・・・・・、

そうか、お前も来たかペイン、いや長門。

そっか、俺が直接手を掛けたから、お前の霊は俺の所に来たのか。

返事を待っている長門。

・・・・・・別に、俺はお前が思っているような、しがない一般人だよ。



~~嘘をつけ、そんな者に僕が、僕の場所が、僕の秘密が突き止められるわけ無いだろう~~

そりゃ、俺にはスキルがあるからな、不便だけど、局所局所で役に立つ、スキルがあるからな。



~~そうか、お前も、あの魔女と同源なんだな・・・・・・だから、か、僕が力を測り損ねたのも頷ける話だ~~

そう、だな・・・・・・あの魔女、ミナクスと俺はスキルを同源としている存在だよ、だけど、存在としては根本的に違うんだぜ、そんなことより、お前は一体何を企んで魔女の下になんかついていたんだ。



~~わからない・・・・・・あの魔女は心を奪う術を会得していた、僕はあんな非効率なやり方はしない~~

そうかい、原作、いや、本来のお前は尾獣を狩って兵器を作るような男だもんな、確かにあんなに回りくどい真似はしない、か。



~~なんで、その事を今知っているの、君は本当に、何者なんだい?~~、

もう、気にするな、どうだ、ペイン、この世界は痛みを知らないってお前は言っていたけど、其所のナルトは父親を亡くし、爺様だと思っていた相手も亡くし、立派にっていうのも変な言い方なんだけど、痛みを知って居るぞ、お前は突っ走るだけじゃ、駄目なんじゃないのか、どういう意味なんだ?大国の平和がそのままお前等の痛みになるってのは。



~~・・・・・・ご免、よくわからないんだ、本来の僕が思っていた気持ちがなんなのか、此処にいる僕は残響に過ぎないから・・・・・・~~

なんだよ、まるでブギーポップは笑わないの、壊れかけの世界にいたエコーズみたいじゃないか。



~~君は、いろんな事を知って居るんだね・・・・・・小南が待っている、僕はもう行くよ~~

体を持たなきゃ、輪廻眼の長門と言えど、そんなものか・・・・・・残響に言っても仕方が無い話だな、行けよ・・・・・・今度こそ、平和な時代に平和な里に生まれられればいいな、痛みを知らない子供達って俺がいた世界じゃよく言われていたけれど、痛みを知れば偉いって訳じゃないんだぜ、痛みをしって相手のことを考えられるようになる、其所までがセットになって初めて意味があるんだよ。・・・・・・悪かったな、何にせよ、お前は俺が殺した初めての人間だ・・・・・・許してくれ何て言わない、だけど、俺の行動を出来れば見ていてくれ、失敗したら笑って、怒ってくれて、構わない、からさ。




~~そう、君も、わかって、いないんだね~~

生きることになんか、答えなんか無いんだよ、ただその日その日一生懸命生きればいいのさ・・・・・・ばいばい、長門。



薄れ出す長門の体。


スキルが途切れる。









二日目、俺のスキルを聞きつけた金持ち共が是非治してくれと大金と共にやってきた、冒頭に繋がる。


あ、そういえば、普通では完治不可能なヤツラを飽きるほど治している内に、とうとうAnatomyとHealingはGrandMasterになった。


*Anatomyが0.1上がり、100.0になりました*

*Healingが0.1上がり、100.0になりました*


だってさ、これも一種のスキルあげに為っていたのか、これで、俺のスキルは完全に完成した。



すなわち、



Anatomy――――100.0
Healing――――100.0
Hiding――――100.0
Magery――――100.0
Meditation――――80.0
SpiritSpeak――――50.0
Stealth――――100.0
Tracking――――50.0
Wresring――――20.0

計700.0

レスリングを完全に削って瞑想をGMにするのも、ありなんだが・・・・・・最後の保険は捨てられない、俺のチキンな心が最後まで邪魔をした。


俺がこの世界に来て、十数年たった・・・・・・それでようやく、完成。

長かったというのか、それか、間に合った、とでもいうべきか。




ステータスは、

STR/INT/DEX

80/100/45

計225



はははは、本当のUOだったら使いたくねえよ。こんなスキルのキャラなんて。


でも、これが俺の選択、俺が最後の決戦に、俺の世界に帰るために選んだ最高の選択。
誰にも馬鹿にさせない、馬鹿にしていいのは俺だけだ、神様だって絶対に笑わせない。




UOでは殆ど無駄スキル、Trackingこれはミナクスが世界を去ってから一つの方角を強制的に指し示している。方向は、地図と照らし合わせると、波の国の方角、リースに以前聞いたことがある場所、ダンジョン「ファイア」がダンジョン「テラサンキープ」が、そして「星の間」があるんだろうな。


ジブリの映画の中であるワンシーン、ラピュタで飛空石がシータの呪文に答え空に浮かぶ天空城を指し示すシーンがあるだろ?ちょうどあんな感じだ。


これはダンジョンの中でも有効だ、雨の里で確認済み。今まで行ったことがあるダンジョンは少ないが、構造が明らかに既成のものとは違っていたからな、迷うわけにはいかない。Trackingは絶対に外せない。








全ての患者を追い出し、いよいよ、寝て起きたら、対九尾戦。


・・・・・・ばいばい、NARUTOの世界、俺は最終決戦に参加する事は出来ない。

頑張れよ、ナルト、お前が主人公だ。




医者達が寝静まったのを確認、俺の体は睡眠を食事を必要としない。
カブトと君麻呂は・・・・・・あそこか・・・・・・Hiding

*姿を隠すことに成功しました*

次いで、Stealth

*スキルに成功しました*

じゃ、デーモンでも召還して行こうかね、ばれないように、ゆっくりとな。

病院の屋上への扉を開け放ち、空に浮かぶ月をながめ、小さく悪魔召還の呪文を口にする。


「Kal Vas・・・・・・」


「行くか、竜よ」

其所に立つは月を背にし、ぼろぼろの姿で折角イタチに贈られた可愛い服を台無しにしているリース。手にしているハルバードの先には、銀色の表皮を持つ、巨大な蛇が、ぶっささっていた。
中断される俺の魔法。


「流石に手強い・・・・・・聖獣の一体、シルバーサーペント、銀蛇は殺せたが・・・・・・それで限界じゃ、すまぬが治癒をお願い出来るかの」

「聖獣?」

問い返しながら治癒を開始、10.9.8.7.6.5.・・・・・・成功!


「ああ、前の我なら休み無しでも行けたのじゃが、こうも人に近づいてしまうと・・・・・・辛いものがある」

「そんなことは聞いていない、何で、お前がそんなものと戦って居るんだよ」


不思議な事を聞いた風な様子で俺を見つめるリース。

「何を言っているかわからんぞ、お主は、元の世界に帰るのじゃろ?」

その問いには黙って頷く。

「それに協力しようと言っておるのだ、なんせお主にはイタチの体を治して貰った礼がまだ残っているからのぉ・・・・・・あやつが死んでしまっては、我が代りに果たすしかあるまい。それが契約を交わした者の務めじゃ」

正直、意外すぎる、俺に取っちゃ何でもないことを、何でこいつは。

「・・・・・・あんな事を、まだ・・・・・・覚えていたのか」

「人とは、そういう生き物じゃろうが、受けた恩は三倍返し、お主の記憶にもそんな言葉が残っておったぞ」

リースの言葉が胸に突き刺さる。
情けは人のためならず・・・・・・あの諺の真の意味が頭に浮かんだ。



「おやおや、昼間っから思い詰めた顔をしていたと思ったら・・・・・・僕達を撒けると思っているのかい?」

病院の屋上への出口の扉の方から声が響いた。

「大蛇丸様の最後の願いだ・・・・・・俺は叶える必要がある」

ここ数日ですっかり聞き慣れた声。


「手前等、今度は洒落じゃねえぞ、話を聞いただけで詳しいことはわからねえが・・・・・・待っているのは蛇と蜘蛛の戦士達、それも百年戦争を永劫と続けているような、一兵卒に至るまで戦慣れしすぎている、この世界でも最強の軍団だ・・・・・・あの悪魔の軍団ですら瞬く間に滅ぼし尽くすようなヤツラだぞ」

首をゆっくりと横に振るカブト。

「関係ない、僕達はもう、この世界には未練は無いんだ・・・・・・大蛇丸様が死んだその時からね。それにこの中でも一番死にやすいのは、君なんだよ、覚悟が一番必要なのも、君じゃないか」

「俺達にとって、大蛇丸様は全てであり存在理由そのものだった、一般人には、理解できないかもしれないがな」

口の端を軽く歪ませ、薄く笑う君麻呂。



ばさっばさっばさっばさっ


羽ばたきと共に下りてくる、二つの白竜達。

背に乗っているのは、木の葉の額宛を外した二人の忍び。


「お前等・・・・・・」


パーーーン




無言で琴音は竜から下りて、思いっきり俺の頬を叩いた。

「馬鹿につける薬は無いわね・・・・・・私達を私を三度置いていこうなんて百年早いのよ」

「・・・・・・いたい、な」

涙が、溢れる。
痛みだけが原因じゃないんだろうな。

琴音は黙って後ろを向いた。

「いいのか?下手すると抜け忍扱いになっちまうぞ」

木の葉を象徴する額宛が外されている理由は、確かめるまでもねえな。

「安心してよ、僕達はカイ君・・・・・・違うね竜君とは違うから、ちゃんと火影様の了承を受けてあるから」

「よく、許したな、里の一大事の決戦の前に」

直人が昔のままの笑顔で笑う。

「それも、竜君がボランティアをやってくれた御陰だよ、僕達の力は戦術に組み込むには異端すぎるからね、足並みを崩しかねない、「竜が治してくれた忍の力があれば、お前等など不要だ」って、火影様が言ってくれたんだ」


・・・・・・感謝する、綱手。

「――――さて、面子が揃ったな、ふん、何奴も此奴も命知らずの愚か者共が、準備はいいか?奥歯をがたがた言わせて隅っこでぶるぶる震える準備は整ったか?神様に仏様に祈って机の隅で命ごいをする準備は、トイレは済ませておしっこを漏らす準備は整ったか?」




呆気にとられる他の面子、そりゃそうだ、一見美少女さんがそんな台詞を吐くとは予想外だったろう、俺も含めて、な。

「お前、それはアレンジが加わっているけど――――」




リースが満面の笑みで返す。

「その通り、お主の記憶に残っていた台詞じゃ、人とは面白いな、竜よ、我は更に人のことが知りたいぞ、恋とやらも、愛とやらも、子も産み、育みたい」


うわっ、俺の恥ずかしい記憶までただ漏れかよ!




「よく分からないけれども、行きましょう、其所の三人も、勿論竜も、案内してくれるんでしょ?――――世界が別つところへ」

俺は頷き、君麻呂が離れないと言い張るので、君麻呂と俺と琴音、直人とリースとカブト、三三で別れ、乗り切った所で、





「all fly!and go!」







琴音の声が虚空に響き渡り、白龍達が、飛び立つ。・・・・・・木の葉と波の国の間にある小さな島へ、ロストランドへ。失われた地へ。













月が静かな夜を照らしている、物音一つしない、嵐の前の静けさ。

「本当に行かせて良かったのか?綱手よ」

病院の屋上、出入り口の反対側に位置する死角になっていた場所、佇む自来也と綱手。

「・・・・・・琴音中忍のあのペットの力は元より、竜の治癒能力は確かに魅力的だ、だが、それ以上に決戦の側面を突かれるのは、ご免被りたいので、な。そんな原因は取り除いておかねばならない」

「それが、竜、か」

「ああ、竜王が言葉を残していったよ、我らを向かわせなければマダラとの九尾との決戦の最中、この世界は滅びる事になる、とな。暗部・探索班の情報も上がっている、竜王が示した座標から底知れぬ威圧を感じる事からも、嘘はついていないだろう」

綱手はリースが残していった銀蛇の死骸を手に取る。

「こんな生物が、未だ世に出てきていなかったとは、な。深いぞ自来也、我らが思っているよりもこの世界は深く広い」

銀蛇の死骸は頑強だ、並の力では傷一つ着けることは叶わないだろう。
綱手の目からもそう取れる。

「・・・・・・明日はいよいよ世界大戦、か」

月を眺め呟く自来也。

「そうだな・・・・・・我らが負ければ、世界はマダラの手に墜ちる、確固たる目標が無いマダラは全てを滅びに導くだろう、世界を征服するのは、やりようによっては簡単なんだ、だが重要なのは征服した後の支配体制の確立にある、其れをうまく為した支配者は――――この世界ではいない」


「九尾が、相手、か。勝算はあるのか、綱手」

自来也は酒瓶を取り出した、二つの盃も取り出す。


「ふふふ、久しぶりだな、一杯だけ、頂こうか・・・・・・九尾の実力がナルトに封じ込められてからこの十数年間でどう変わったか、弱くなったのか、強くなったのか、全く分からん、勝ち目など、計算出来ぬよ、私に出来ることはお前も含め、里の皆を信用するだけだ」

くいっと一気に盃を呷る綱手。


「ほぉ、いい飲みっぷりだな・・・・・・時に、綱手よ・・・・・・この戦いが終わったら・・・・・・」

言葉を途中で止め、綱手と同じく一気に盃を呷る自来也。


「・・・・・・何だ、自来也。気持ち悪いぞ、言葉を途中で止めるな」

「何、また共に里の皆も含め、宴会でもしようじゃないか、昔、九尾の襲来が起こる前にやっていたように、な」

「ははははは、そうだな、まだ私達が小さい頃の話か・・・・・・猿飛先生が少しだけ若く、あの変態がまだ狂う前、か。是非ともやろうではないか、・・・・・・死ぬなよ、自来也、私はこれで帰る、帰りが遅いとしずねが心配するだろうから、な。じゃあな、また、明日」


盃を自来也に返し、綱手は火影の公邸に帰っていった。

見張りの暗部が静かに後に続く。


「・・・・・・気付かれていたか、儂もまだまだ未熟だのぉ。生き残る、当たり前の話なんだがのぉ・・・・・・三忍は残り二人、少なくとも儂が姫を守らなくてはのぉ・・・・・・大蛇丸にも申し訳がたたんな」


自来也は再度盃に酒を注ぎ、夜空に映える月を肴に酒盛りを始めた。








――――日向家。

実家に備わっている道場に座るは白眼の持ち主が四人。



日向ヒアシ、日向ネジ、日向ヒナタ、日向ハナビ。


静かに座禅を組む四人、張り詰めた緊張を伴う空気は時間すらも止めているようだ。


「――――明日」

ヒアシが静かに静寂を壊す。

三人の目が見開かれ、ヒアシに注がれる。

「かつて無いほどの大戦が、木の葉を舞台として引き起こされる・・・・・・ネジ、日向は、日向とはなんだ」

「日向は・・・・・・木の葉に在りし最強の盾にて、最強の矛」

沈黙が響き渡る。

ヒアシは頷いた。
「そうだ、日向は木の葉にて最強・・・・・・明日の戦い、違うな、大戦にて日向の役割は重要だ・・・・・・他の三家と共に、結界石を守護する役割を火影に仰せつかまつった・・・・・・我らが守護すべき場所は最前線、北に存在する要所だ・・・・・・ハナビ」

「はい」

「我らが使命は何だ、白眼は何を見通す」

「白眼は、全てを、あらゆる事象をどんな者よりも何者よりも見通し、他を導きます」

ヒアシは再度頷く。
「そうだ・・・・・・我らが崩れるとき、其れは木の葉の滅亡を意味する、先導役が迷ってしまえば後に続く者全てが道に迷う事と同義・・・・・・ヒナタ」

「・・・・・・はい」
緊張して体を強ばらせるヒナタ。

そんなヒナタの様子を見て他の二人の時とは違い、言いよどむ日向家宗家現当主。
「・・・・・・ナルト君とその・・・・・・なんだ・・・・・・うまくいっているのか?何でも落ち込んでいた所をお前が慰めていたと聞いているが・・・・・・何処まで進んで居るんだ」

真っ赤に顔を染めて下を向くヒナタ。
「機密事項です、答えられません・・・・・・父上、空気を読んでください!」


ヒナタに怒られ、多少狼狽するヒアシ。見るとネジとハナビもジト目でヒアシを見つめていた。
「・・・・・・うほん」

咳払いをして誤魔化すヒアシ。

「兎に角、我らが使命は重い・・・・・・全員心するように、だがな、ネジ、ハナビ、そしてヒナタ・・・・・・生きてこその使命だ、決して命を無駄にするでないぞ、それとヒナタ、孫の名前は何にするのだ?」


更に顔を真っ赤に染め上げるヒナタ。

「父上!私はまだ15才です!」
「しかしだな、宗家としては、早めに跡取りを」
「だから、ナルト君とはまだそんな仲じゃありません!」
「ほう、まだともうしたか・・・・・・孫の名前を考えておいた方が良さそうだな、ヒナタ、ハナビとくればホムラ、というのはどうだ?日向ホムラ、いい名ではないか、我が日向家は第一子は男に決っているからな!」
「父上、いい加減にして下さい!」
ヒアシに掴み掛かるヒナタ。


呆れてはてて廊下に出るネジとハナビ。
「ネジ兄さん」

「なんだ?」

「・・・・・・皆で、生きて帰りましょうね、また、この屋敷に、この騒がしい屋敷に」

「・・・・・・そうだな、もう寝よう、明日の戦いは、激しくなるぞ・・・・・・この目が、教えてくれている」

「ネジ兄さん、あれはどうしましょうか」

室内を指さすハナビ。中で繰り広げられている争いは終わる気配を見せない。
ネジはゆっくりと首を横に振った。

「放っておけ・・・・・・直に収まる、緊張して力を出し切れないまま終わるより何億倍もマシだ・・・・・・宗家もヒナタ様の事をよく考えての行動、力を出し切れないと言うことは明日の大戦は死を意味する、ハナビ、ヒナタ様以上の才能を持つお前だとて、油断すれば、死ぬぞ・・・・・・宗家の心しろと言う言葉に偽りは含まれていない」

ネジは真剣な目でハナビを見つめる。
ハナビは首を縦にゆらした。

「わかりました、ネジ兄さんも、明日は御武運を・・・・・・」

手を差し出すハナビ、しっかりと握りしめるネジ。

手を離し、二人は空に浮かぶ蒼月を暫く眺めた後に、自らの部屋へと帰っていった。








――――奈良家。

一組の親子が机を挟んで言葉を交わしている。


「っつぅ訳で、うちは秋道の所と山中の所と合同で東の結界石を守ることになった、何か質問あるか?」

当主奈良シカクが目の前の子供、シカマルに対し説明をしている。

シカマルはため息をつくばかりだ。

「はぁ~~~~面倒くせえ・・・・・・逃げるわけにはいかない戦いって分かり切っているから尚更面倒くせえ、大体なんだよその計画の杜撰さは、敵の数は、敵の規模は敵の種別は敵の討つ作戦は、まったく戦術に必要な事がさっぱり書いてねえじゃねえかよ。木の葉の力を見せつけろっていわれても、まず情報ありきだろうが、情報が無ければこっちも有効な策が練れねえぞ、唯でさえ相手は九尾なんていう化け物なんだ、打てる手は全て打てなんて言う割に肝心要の情報が無ければ打てる手もうてねえって」


ふぅと一息つくシカク。

「そういうなシカマル、暗部も精一杯やったんだが、敵が何処に隠れているかそれすらもわからず、ただ期日だけしかわかっていないのだ」

「ったくよ、敵の場所が知りたければ例の竜って餓鬼だっけ?そいつのトラッキングとやらの力を有効活用しろよ、もしくは竜王が味方にいるんだろ?気まぐれ起こす前に情報収集くらい頼み込んでも罰があたらねえだろうが、機嫌を取るために好きだと言っていた可愛い服とやらをダース単位で贈ってやれよ、話を聞く限りそれだけで喜んで協力してくれたんじゃねえの?」

シカマルは、その頭の良さを人知れず買われて、あらゆる情報を見れる立ち位置にいた。
彼は一度見たことは忘れないし、一度聞いたことも忘れない、情報を操り情報を有効に使う達人であった。

「ったくよ、人の知恵借りたいっていうんだったらもっと早めに情報寄越してくれなきゃ最善の手どころか次善の手すら打てねえぞ、まだ下忍だから信用できないっていうんだったら最初からこんな話持ってくるな!」


シカマルは考える、自身が生き残れるように、里が生き残れるように。


「・・・・・・まぁ今回は仕方ねえか、いきなりだからな、親父、これもってけよ」

懐にしまい込んでいた巻物をシカマルは父親に投げつけた。

「これは?」

「あー別に中見てもいいけどさ、俺が考えつく限りのシュミレーションから生みだした最善の配置図だ、敵の数がわからねえから苦労したんだぜ?だが、それに基づけば、結界は守りきれるはずだ、犠牲はどうしてもでちまうだろうけどな、死者は少なくなるようになっているはずだ、欠損が出ても竜って餓鬼が持つ力は欠損すら埋めるんだろ?精々大事に使っていこうじゃねえか・・・・・・願わくば、予想以上の敵が出てこないことを祈ろうぜ。情報が足りないんだよ、情報が!戦争になったらまずは情報と補給が全ての生命線だろうが!」

「とりあえず、火影様に渡してくる」

「親父、直接面会出来るのか?だったら俺も連れて行け、やっぱ重要な場所を言ってやらなきゃわかりずれえだろうからな・・・・・・死ぬのはご免だ、俺の家族が里のみんなが死ぬのを見るのもご免だからな、ちっ、面倒くせえけど、やるこたぁやろうぜ、なぁ親父」

いつの間にか成長していた息子の姿を頼もしいと思うシカク。

軽く流し見ただけでも、よく考えてあるのが伺える。


――――木の葉は、土壇場で最高の軍師を手に入れた。









――――油女家。


砂に教えた術式が確実に作動することを確認、すぐさま帰ってきた油女ゲンに犬塚ツメ。

ゲンは愛息シノと共に夕食を終え、机の前で向かい合っていた。



沈黙が食卓にも広がっていたが、二人にとってはたいしたことではない、其れが当たり前のことだ。
「・・・・・・明日は、南の結界石の守護に当たることになった」

ゲンが伝令に言われた命令を息子に伝える。

「・・・・・・わかった」

それ以上の言葉が続かない。


静かに虫が動く音だけが響き渡る。







――――犬塚家。


油女家とは対照的にいつも騒がしい犬塚家。


ツメは雑誌を読みながら何気無い様子でその言葉を口にした。


「おーい、キバ、うちは明日の大戦、西の結界石の守護に当たることになったから、忘れないでねー」

赤丸の様子を見ていたキバは思わず顔をツメに向けた。
「母ちゃん、そういう大事な事はながらで言うんじゃ無くってちゃんと言ってくれよ!」

「わかればいいじゃない」

雑誌をめくる手を止めないツメ。

「・・・・・・心構えていても、あたふたしていても、敵は変わらない、九尾よ。あんたは知らないだろうけど、私らは十分強さを知り尽くしている、今更何をどうこうしても結果は変わらないわ」


真剣味が帯びた声に襟を正すキバ。

「・・・・・・聞いただけだけど、そんなにやばいのか?九尾は」

「言葉には表現出来ないくらい、やばいわ・・・・・・いいキバ、直接戦っちゃ絶対に死ぬわよ、絶対に正面に立っちゃ駄目、私達の武器を生かして、真っ正面から戦う愚を起こさないことだけ考えていれば、生き残れるわ」

雑誌をめくるては止めないツメ。

「・・・・・・わかった、天災だって言うことが少しだけわかったよ母ちゃん・・・・・・俺達が守護するのは西だな、寝るぞ赤丸」

くぅ~んと答えを返して赤丸はキバに付いていく。


ぱたんっ


雑誌を閉じるツメ。

「さーて、明日は・・・・・・何人生き残れるのかしら、ね・・・・・・先代、仇が取れそうですよ」

仏壇を軽く見て、線香をあげるツメ。

電気を消し、夜は本来の闇の姿を取り戻す、忍び達は束の間の休息に入る。













九尾襲来まで、後零日。
それぞれがそれぞれ決意を胸に夜を過ごす、以前の九尾襲来を知っている者、知らない者。

別っていることはただ一つ、天災が降りかかると言うこと。


最後の夜に何を思うか、酒を飲むもの、早めに休息を取る者、愛する者と一夜を過ごす者、悲しき思いに身を支配される者。


全てを夜の闇は飲込む、夜の帳は下りきり、朝の開幕を待つだけだ。





・・・・・・運命の朝が明ける。



[4366] 世界大戦、その弐
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/01/08 22:30
夜が来て、そして・・・・・・運命の朝が来た。




木の葉の里、修練所。

朝露が草木を濡らしている時間のこと。

其所にはかつてない規模で忍びが集められていた。


実際に総員集合といわれ、全員が集まることなど、どのような集団でも組織でもほぼあり得ないこと。

何故なら必ず病気や怪我などで欠員が出てしまうからだ。


だが、木の葉の里に襲いかかる未曾有の危機の前に一つの奇跡が舞い降りた。
一人の一風変わった少年の一風変わった力、技術により、全ての忍びが最高の体調で決戦に望む事が出来る、彼らの顔に絶望など存在しない・・・・・・たとえ相手が最強の九尾だとしても。


「総員・・・・・・名、欠員、無し!」

五代目火影、綱手に報告される内容は一切の欠員無し、万全の態勢で臨む決戦。

綱手は静かに頷いた。

火影が集合した忍びの前に出る。

初代火影が数多の決戦の前にしたように、二代目が三代目が四代目がそうしたように、五代目火影綱手も例に習い、前に出る。


皆の目が綱手に集まる、全員を眺め回し、綱手は声を出した。優しく、其れで居て張り詰めた声を。

「長らく怪我の為一線を離れていた者、治らぬ病気の為やむなく忍者を引退した者・・・・・・よくぞ戻ってきてくれた、心おきなく決戦に望める」

一泊、時間はまだ早朝、一般の人はまだ寝ている時間、寒さもあるがそんなものを感じている者はこの場には、いない。

「・・・・・・今更誤魔化そうとも思わないが、かねてから皆が知っているように、今日、木の葉の里で決戦が勃発する、敵は、かつて四代目火影の犠牲を持って退けた、最大の妖魔、最強の尾獣、九尾の妖狐、だ」


ざわめきも起こらず、綱手の言葉が静かに場に響き渡る。


「その反応は、頼もしいな・・・・・・出でよ、蛞蝓」


綱手の後ろに現れるのは、巨大な蛞蝓、カツユ、綱手の扱う最大の口寄せ動物だ。


「蛞蝓大分裂」


蛞蝓の体が分裂し、場に居る忍び達全てのまとわりつく。


「今、放った蛞蝓により、治療と情報伝達が一挙に出来るようになる、指示は逐一ながす故、適切に判断してしたがってくれ、現場の判断を第一とするが、緊急事態の場合は問答無用で従って貰う、色々思うところがある者がいるとは思うが・・・・・・私個人を信じなくても良い、ただ、火影の名を信じろ」




綱手は息を吸い込む。

「・・・・・・お前等が戦うのは、誰の為だ!!!」

「「「「「「木の葉!木の葉!木の葉!」」」」」」

合唱される忍び達の声。

「敵は最強を体現している九尾、だが、最後に立つのは、狐と木の葉、どちらだ!!!!」

「「「「「「木の葉!木の葉!木の葉!」」」」」」

繰り返される忍び達の声。

「この忍びの力が者をいう世界、この世界で最強なのは何処の里だ!!!!!」」

「「「「「「木の葉!木の葉!木の葉!」」」」」」



熱狂する声、綱手は手を挙げ、締めくくる。
ぴたりと鳴りやむ声。

「・・・・・・ならば、最強の名を示してやれ!敵は九尾、申し分ない相手だ!かつて敗北を味わった者、雪辱を果たすチャンスだ!お前等の最強の力、余すことなく発揮しろ!――――諸君、最終戦争だ!我が里のみ為らず、全里に示してやれ!最強の里に相応しい里が何処の里か、全里のみならず、全世界に示せ!――――行くぞ、諸君、最強の名前を掛けた総力戦だ、私は信じる、お前等が勝つことを規定事項として信じる・・・・・・行け、最強にして最高の木の葉の忍び達!!!!!!!」



「「「「「「応!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」


言い切られた綱手の声に反応して、その場から配置場所に散っていく木の葉の忍び達。

その場に残るのは一部の忍びだけだ。


「ご苦労様、だな、綱手」

「ふん、かつて歴代の火影がやっていたことに倣ったまでのこと、この戦いは絶対に負けられない、頼むぞ、自来也、カカシ、風影、それに、シカマル」

残った忍びの顔を見渡し、一人背が小さい忍びに対し声を掛ける綱手。


「なんせ、火影様の命令ですからね、やれと言われたらやりますが・・・・・・あんまりあてにし過ぎないでくださいよ?唯でさえ不確定要素が大きいんだ、けど竜って餓鬼の御陰でこちらの全戦力が復帰できたのは大きかったです、少しは計算しやすくなりました」

「はははははは、先生シカマルがこれほど頼りになるとは思っていなかったぞ」

ぽんぽんとシカマルの頭をあやすように叩くカカシ。

鬱陶しげに手を振り払うシカマル。

「止めてくださいよ、最後まで適当にやろうって思っていたんですけどね、こうなっちゃ仕方が無いでしょ」

「アスマから話は聞いている・・・・・・あいつは知っていたよ、俺からも言っておくか、頼むぞシカマル、お前の作戦は誰よりも優れている、胸を張れ、そして責任なんて感じるな。負けてしまったらどうしよう、なんて考える必要は無いんだぞ、責任は大人が取るものだからな」

真剣な表情に変わったカカシ。

「ははは、それ、もう親父にも、アスマにも言われましたよ、負けた時の事なんか考えるな、お前が考える作戦が最善なんだ、責任なんて糞の役にも立たないものは、狐に喰わせてちまえってね・・・・・・そう言われても、俺がたてた作戦に世界の行く末が掛かっているッテ考えると・・・・・・」


ぼこっ


金髪の少年が突然シカマルを殴りつけた。
「くだらねえ事いってんじゃねえってばよ!シカマル!」

頬を抑え、殴った相手を睨むシカマル。
「手前、ナルト!今本気で殴っただろ!いってぇえええええ、この馬鹿力が!第一手前は九尾を抜かれて力を無くしたんじゃなかったんじゃなかったのか!?」

「なーにつまんない事にこだわって居るんだってばよ、俺はもう馬鹿狐になんか頼らなくても、一人前の忍びだってばよ、情報が古いってばよ、前線は俺達に任せろだってばよ・・・・・・お前はお前の力で木の葉を護ればいいんだってばよ、シカマル!」


何故か自慢気に胸を張るナルト、そのナルトの首根っこを猫の様に掴みあげ、自来也が抱えあげる。


「はいはい、決戦の前に大事な軍師を殴ってどうするんだ、お主は儂と共に待機、行くぞ・・・・・・頼りにしているぞ小さな軍師殿、――――そうだな、もし犠牲が必要だと判断したら、躊躇わず儂を使え」

最後の一言は綱手に届かぬ様、小声でシカマルの耳元で呟かれた。


「このエロ仙人!さっさと離せ!」

はははははははは、と笑いながら自来也は元気に暴れ回るナルトを抱え上げたまま、配置場所に散っていった、苦笑しながら後に続くカカシ。

なんらアカデミーの頃から変わっていないナルト。

シカマルの肩から力が抜け、口元には自然に笑みがこぼれる。

「本当に、あいつは・・・・・・誰よりも辛い思いをしてきたってのに・・・・・・しかも、俺のことまで気遣いやがった・・・・・・馬鹿の癖に・・・・・・ははっ馬鹿は俺もか」

シカマルは現在全ての情報を扱える立ち位置に存在している、三代目の事も四代目の事も、当然のように知っている、知らされていた。

「おい」

ナルト達が去っていった方向を見ていたシカマルに掛けられる静かな声。

「俺は俺で最適のタイミングで動く、それでいいんだったな?」

「ああ、頼むぜ風影さん、情報は逐一、カツユを通じて流す、あんたの力は正直いって頼りにしている」

それだけを聞いた我愛羅は、シカマルの言葉に頷き、その場から離れていった、行く場所は戦場の全てを見渡せる場所、火影の顔岩の上。


シカマルの後ろに控える巨大な影。

「で、こいつは俺が自由に動かしていいんですよね?・・・・・・頼むぜ再不斬の旦那」

無言で眼を瞑ったまま立ちすくむ再不斬。

「無視かよ、まぁいいさ、あんたの力は聞いている、切り札だからな、頼むぜ」

ため息をつきながら、再不斬の胸を軽く叩くシカマル。


やりとりを見て、頷く綱手。
「よし、・・・・・・聞こえるか?い班・・・・・・ろ班・・・・・・ま班・・・・・・よし、通信状態良好、頼むぞカツユ」

「任せて下さい、綱手様」

外見からは想像も出来ない可愛い声で返す蛞蝓。




全ての準備は整った、運命の時まで、後数時間。
















キシャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!




うぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお半端ねぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



蛇の大群をトレインしながら、俺はダンジョンの中をひたすら逃げる。

*トレインとは、敵のターゲットを受けて、敵をダンジョンの中で引き連れて動くことをいいます*


幸い移動速度だけならば、俺はこいつらより上らしい、スタミナが切れた瞬間ミンチだろうけどな!


くそっ!

聖獣の野郎共が!

















夜もまだ明ける気配を見せようとしない頃。

俺達は一路木の葉と波の国の間に浮かぶ島へと急いでいた。

いくらホワイトウィルム達の速度が速いと言っても、結構な距離があるため、付くのは明け方になるだろう。


「しかし、凄えな、よく世界の加護を受けた銀蛇なんか殺せたものだな」

ざっと見ただけでもあれはとんでもない力を持っているのが見て取れた、元の世界でもその攻撃速度と半端ねえ毒で多数の冒険者達を日々葬り去っていたシルバーサーペント。


一匹だけなら兎も角、フェニックスとキリンも一緒だったんだろ?おしなべて世界の加護を受けた化け物揃い。


「何、容易く、は無かったが、我の今の力、今の魔法とチャクラを練り合わせた技術を惜しみなく使えば何とかなるものじゃよ・・・・・・とはいえ、手強かったのは確か・・・・・・麒麟の雷は絶え間なく降り注ぎまさに雷の雨、殺したと思った不死鳥はすぐさま復活しくさる、一日中戦っていたが、何度か心が折れそうになった、何とか麒麟を戦闘不能に追い込み、不死鳥をエネルギーフィールドで封じ込めた状態での銀蛇とのタイマンにし、死闘の末仕留めたが・・・・・・今頃二体は復活しておろう。気を引き締めることじゃな、蛇や蜘蛛と争う前にあやつらを仕留めておかん事には、うかうかお主もロストランドへ抜けること叶わんぞ」


・・・・・・すげえ嫌な予感するよ、聖獣ってのは、古代竜すら苦戦させるのか。

だけど俺のTrackingはひたすら一つの方向を指し示しているし・・・・・・行くしかねえよな。



「・・・・・・竜、来たぞ。焔の塊と雷の塊、なるほどあれが聖獣か」

君麻呂の静かな声が聞こえた。
くそっ、まだ見えない。


「琴音、この状態で戦えるのか!?リース、ファイアまで後どれくらいだ!」


「ん~空中じゃちょっと機敏には動けないわね」
「・・・・・・琴音、この子の支配を少し借りるぞ、従え」

竜族は、竜王には逆らえない。


白竜の一体の支配を奪ったリースは、やっと俺にも見えてきた神々しいとも言える獣の一体に対し迎撃の準備を整えきる。


「竜、麒麟は我らが受け持つ、サポート頼むぞ直人、カブト!行け白眉!」
「私の子に傷つけたら許さないんだから!・・・・・・白夢、お願い!」


低空に位置し、速度を上げる白夢、踵を返し、後を追ってくる最速の聖獣、焔の聖獣、不死鳥フェニックス。



地面が無い状態では君麻呂の力が発揮できない。

ゆえに急ぐ一行。


白眉を足場にし、天空で麒麟と真っ向勝負を繰り広げているリース。

手にしたハルバードは魔法を繰り広げる手段にしかならず、本来の破壊力を発揮できない。

直人の力は今は意味が無く、カブトは傷付いたリースと白眉を癒すことしか出番がない。


白夢は急ぐが、どうしても速度で勝るフェニックスに負けてしまう。

「In Sanct Grav」


不死鳥の前に繰り広げる通過不可のエネルギーフィールド。


一瞬、一瞬だけ動きを縛ることに成功するが、すぐさまがら空きの上と下から回避して追ってくるフェニックス。


「・・・・・・目的地はまだか!!」


フェニックスが吐き出す灼熱の焔を、白竜の上で骨の刀一本で捌ききっている君麻呂。

「見えた!!」

琴音の嬉しそうな声が聞こえる。
下に、地面が見えてきた、俺のスキルも其所を指し示している。間違いないあそこがファイアだ!


「前だ!」

君麻呂の切迫した声がそんな気分を粉砕する。


「An Lor Xen」

白竜に魔法を掛け、最大の攻撃目標を消す。


目的を見失ったフェニックスは、それでも上に乗っている俺達に対し攻撃を仕掛けようとするが、

「All Fire!」

琴音の声で、すぐに姿を現し攻撃を加える白夢。

目くらましにしか為らない焔を突っ切り、突っ込んでくるフェニックス!


「ちっ、後で合流する、俺がいない所で死ぬなよ竜!」

骨の刀を振りかざし、突っ込んでくるフェニックスに対し、君麻呂は攻撃を仕掛けた。
空に舞いおり、フェニックスと共に地面に海面に落ちていく君麻呂。



他に手が無いとはいえ、これで俺は最大の防御手段を失った。



「駄目だ、あいつだって見殺しにするわけには行かない・・・・・・Kal Vas Xen Corp」

呪文に答え召還されるデーモン、すぐさま背に飛び乗る。

「琴音、あいつらの最大の目的は俺の抹殺だ、餌になるから君麻呂の馬鹿を拾ってきてくれ」
「あんたは!またそんなことを!」


「ばーか、俺の得意技を忘れたのか?俺は逃げること、隠れる事だけに掛けてはこの世界の誰よりも絶対的に上なんだぜ?・・・・・・ファイア、若しくはロストランドで合流だ!頼むぞ!俺が弱いことを誰よりも知っている、最高の相棒!」

「all go!」

一体しかいねえが、名前を付けるのが面倒くさいゆえに、全部に通じる命令形でデーモンを動かす。

羽ばたき、もう本当に近くに迫っていたファイアに、向かう。



ゴォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!


炎が燃えさかる音と共に、こちらを追ってくる者がいる、決っている不死鳥だ。

しかし理性があるとか聞いていたんだが、世界によって変えられちまったのかね、何も考えられない殺戮機械へと。


これで琴音達に危険はない、勿論俺もこんな所で死ぬきはこれっぽっちも無い。

「ほらほら急げよ、おっかない焼き鳥が追ってくるぜ!」


「Vas Corp Por」
デーモンに語りかけながらエナジーボルテックス召還、


ディスペルの発動が遅ければこれだけでUOでは殺し尽くせたはずだが、


ぽんっ


案の定、世界の後押しでディスペル機能を追加されているフェニックス。
だが、その数秒間を稼いだことにより、もう、此処はファイアだぜ!


「In Sanct Ylem」

硬度はほとんど無く、フィールド魔法で最低ランクの魔法、石の壁、これがもつ視界遮光機能が一番の目的、地面に飛び降りた俺はフェニックスの視界を奪い去り、すぐさまHiding


成功!


そんでもってすぐStealth


成功!


その場をすぐに歩いて動く、召還されたデーモンが瞬殺されるが、フェニックスは攻撃目標を完全に失った。


一対一ならリースは聖獣に勝ち越す事が出来る。


ならば俺がこのばかげた再生能力を持つ不死鳥を引きつけていられれば、俺達の勝ちが決まる。


どうせ誰にも見えないんだからちょっと先を見てみようって思ったのが俺の大失敗だった。



ファイアの入り口を認め、入り込んですぐの事、普通だったら居るはずもない其所にいましたよ、蛇の戦士達。

きしゃ?

なんて言って足を止めた一体の蛇の戦士、こいつら本当に見分けつかねえわ、もしかして阿部さんだったかも、あ、ちなみに阿部さんってのは最強の戦士を意味する復讐者を英語読みしてアベンジャーの頭文字をとって阿部さんな、俺が相手をしたら比喩抜きで二秒で殺されちゃう相手。


いやー忘れてたよ、探索能力が強い敵には隠れていても見つかっちゃう事があるってことがさ。



中盤に繋がる。



どちらかと言うと中枢に位置しない蛇達の群れ。
蜘蛛達が残り、蛇達が外に出て行ったはなしにも合致する、実に興味深い、なんていっていられねえんだよ、この緊迫した状況、どうやって抜け出せようか!?




きしゃきしゃきしゃきしゃぁあああああああああああああああああああ!!!!!



って五月蠅いわ!

糞、魔法を唱えるには足を止めなきゃいけないって・・・・・・その制限もしかして俺だけじゃないの!!??

うわっ今更気付いちゃったよ、考えてみると呪文も秘薬も必要なのって俺だけじゃん。
よーく思い起こしてみるとリースとかミナクスって腕を振ったりするだけで神秘たる魔法が繰り広げられていたな、そりゃ魔力の塊相手に思うことじゃないけどさ。


くそっなんか苦労しているのが本当に馬鹿らしい。



「All Fire」

小さく響き渡る声。
焔の直撃が蛇たちの群れを直撃してくれた。


「相変らず面白いことをしているの、そうか・・・・・・こんな所までこやつらが来ていたか」

白眉のブレスの直撃をうけてもなお、生き残っている蛇の戦士達。


予想以上に強化されている・・・・・・こいつらを全滅させなきゃ、俺はもしかして約束の地に辿りつけないのか?



「リース、麒麟は?」


きしゃきしゃ五月蠅い蛇を敢えて無視する。あいつらはリースの力を察したのだろう、気軽に近寄ってきやしねえ、ああ嫌だ嫌だ嫌だ。歴戦の戦士過ぎる。


「うむ、こ奴らの御陰で何とかなった、時に琴音達が、な・・・・・・」

「・・・・・・どうした、あ、もしかして不死鳥があいつらにターゲットを縛っちまったんじゃ!!??」

??
なんだ、なんか暖かいぞ、リースの後ろに続く人影、カブトに直人、それと二人が・・・・・・



「可愛い子ね」

・・・・・・え?
リースの後に続く琴音の肩に止まる、焔の鳥。
いやいやいやいやいやいやいや、無理だって、不可能だって、UOじゃ麒麟だったら兎も角、不死鳥はテイミング出来ないはずだろうが。

「不可能なんか無い、そうはいっても実際大したものじゃな聖獣を手懐けたらしい、制限が外れているとはいえ、な」

「足止めをする者の身にもなれ」

ぼろっぼろの君麻呂、あちこちが煤で汚れている。
それだけでも死闘の後が伺える、いや、ご免、勝手に先に行けるなんてフンだ俺の所為でもあるな、怖いから黙っておくが。


「・・・・・・何とか、なったわ、何とかしたわよ竜」

琴音の言葉を信じるならば不死鳥を手懐けた・・・・・・奇跡だ、とんでもない奇跡だ。

奇跡すぎる、すげえよ琴音・・・・・・とんでもない戦力になるぜ。


「はははははははははははははは、思えば全て叶う、なんて便利な言葉なんだ、そうかシステムの縛りに縛られないこの世界ならば、俺以外の人間ならば、ありとあらゆる事が実行可能なんだな」


きしゃきしゃ五月蠅い蛇達。それに混じっている少数ながら蜘蛛の戦士達。


不死鳥が味方になったとしても、いまだ此処はロストランドですらない。

本土で待ち受けるのは、数にして万を超してしまうかも知れない蛇と蜘蛛の連合軍。

大人しく殺し合いをしていてくれればつけいる隙があったんだけどな。

蛇に混じって動いている蜘蛛の姿を単独で認めたときなんの冗談だって思ったよ。




「琴音、お前は本当に凄いよ、斥候部隊みたいだぜ、先に進もうぜ」


「任せろ」
「任せなさい」

君麻呂が骨の刀を振りかざし、血路を開き出す。

続く琴音のペットの白竜達のブレスに、不死鳥の神速の攻撃。



後に続く俺達、これならばロストランドまではなんとか行けそうだ。







待ち受ける軍勢、その数は量を質すらも凌駕する。


さてさて、どうにか巧い手は無いのかね・・・・・・ハイディングステルスだけでうまく行けると思ったんだけどなぁちょっと甘かったみたいだ。



まずは頼もしき味方に支えられ、俺達はファイアを踏破する。








ナルト達は、うまくやっているのかな?

・・・・・・人の心配する余裕なんかねえ、か。







[4366] 世界大戦、九尾襲来
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/01/08 22:40
決戦の朝、木の葉病院。



「眼は、慣れたか、サスケ」

サスケの前に立つのはダンゾウだ。

「……ああ、兄さんの目は兄さんの意思は俺が継ぐ、敵はマダラ、そうなのだろ?」

ダンゾウはうなづく。


「其の通りだ、うちはの因縁此処に極れり、だな我等「根」が完全に後方支援をする」

「いらねえよ……って少し前の俺だったら言っているところだが、兄さんの仇でもある以上、どんな力も有効に使わせてもらう、頼む」

サスケは、プライドの塊だったサスケが、ダンゾウに向けて頭を下げた。

「火急存亡の時、いがみ合っている場合ではないということだな……戦が終わったら幾らでも弾劾するがいい、覚悟は出来ている」

「ふん、俺にはあずかり知らぬ事だ……今はマダラを討つことだけが俺の使命、手はあるんだろうな?」

「ああ、お主の協力があれば……」


まだ夜が明けきらぬ時分、「根」とサスケは入念な作戦の立案に入った。

共通の敵がいる以上、今の二つは協力状態。サスケの永遠の万華鏡が静かに力を貯めていた。

















医療班、直近。

上忍である紅、および特別上忍であるあんこ、二人して配置場所についたはいいが、時間を持て余していた。

「なーんか変な気分なのよね」

竜の治療の過程で呪印が完全に消去されたため、前線に出ても平気になったあんこ、暫くすれば特別が抜ける事も間違いない。

「一体どうしたのよ、黄昏ちゃって、しかしよくその呪印消せたわね。あの竜って子の技術は本当に変わっていたわね」

「ああ、あの子ね……あの大蛇丸の心を変えた人間、私じゃ止めることすら出来なかったのにね……なんでも私の呪印は不完全だから消せたとかなんとか言っていたわね、ディスペルってどんな意味なのかしら?自分の呪印は完全に根をはってしまって解除不可能だとかなんとか言っていたけれど」

「生き残れたら、聞いてみましょうよ、そう私と約束してくれないかしら?」

「全くこんな色っぽい先輩を放って置くなんて……アスマさんも不器用ですね」

「アスマは別に……」

「隠しても無駄ですって、里の皆が知っていますよ、男には責任取らせなきゃ!」

女が三人集まれば姦しいとはよく言ったものだが、元から騒がしい気質があるアンコがいれば、二人でも十分に姦しかった。

「……生きて、帰りましょうね」

「ええ、あの変態を忘れさせてくれるようないい男はいないもんですかね?」

笑う紅。

「そうね、カカシなんてどう?あいつはいまだに独り身よ」

「う~~ん、確かに格好いいけど、ガイさんに比べれば全然ましですけど、あの人エロそうじゃないですか、変な事されそうで怖いですよ。絶対むっつりですよ、あの人」

「じゃぁ……」

女二人による男性陣に対する酷評は飽きることなく続いた。














シカマルは再不斬をつれて、里の各所を見回っていた、知識ではあるが実際に見てみないといざというときに指示できないからだ。

「おい」

二人きりになり始めて掛けられる再不斬の声。

「……なんだ、喋れたのか再不斬の旦那、何のようだい?」

「何故、俺を無防備で信用する、霧の里の指名手配者だぞ、俺が怖くないのか?」

呆れた眼で再不斬を見るシカマル。
「なんだ、そんなこと気にしていたのかよ……旦那の話は聞いているよ、こう見えても耳が長いんでな、放って置いても色んな話がこの耳に入り込んじまうのよ、それに、眼を見ればわかる、昔はどうだったか知らねえが、今の旦那の眼を見ればわかる、今の旦那は信頼できるってな。そういう答えじゃ、駄目か?」

そっぽを向いてしまう再不斬。
「……お人よしの里もあったもんだぜ」

肩をすくめるシカマル。
「そういうなって、旦那、信頼することは決して悪いことじゃないと思うぜ、旦那と白って子の間柄みたいにな……いや、失言だったな。最後の言葉は忘れてくれ」

頭を掻いて、再度見回りを続行するシカマル、軍師に就任するのが遅すぎたので既に終わらせておかねば成らぬ事が今更やっている次第だ。

時間はいくらあっても足りない、敵は九尾。其の思いがシカマルの頭の中身を支配していた。

「ふんっ……白よ、お前もこんな里に生まれていれば、よかったのかもな、甘ったれだが強い、里にな」

誰にも届かぬ声で述懐する再不斬。

シカマルは配置の確認に大忙しだ。




シカマルは再不斬を後ろに従え、地形の確認に余念が無かった、最後にものを言うのはそういった基本的な事なのは古今東西何処の戦場でも変わらない。


「時に、火影様、昨日言った他の里の援軍の話はどうなりました?一応盟約なんて形式上に過ぎないのはわかっていますが、どうにか木の葉に来させられませんかね?」


静かにしかし、確かに首を横に振る綱手。


「既にナルト達が帰ってきた三日前に各里に伝達はしてある、が、返事が返ってきたのは砂の里だけだ、それすらも極めて異例、風影の姉であるテマリが木の葉にいなかったらどうなっていたかわからん」

綱手の色よくない返事にふぅと首を回しながらため息をつくシカマル。

「やっぱ駄目か、いえね、俺だって決して木の葉の里の忍者を信用していない訳じゃ無いんですよ、でも保険が欲しいじゃないですか、万が一木の葉のキャパシティを越えてしまった場合を考えると、どう考えても滅びるのは木の葉だけな訳ねえんだから、過去のいざこざは一度忘れて協力してくれねえかなってね」

「・・・・・・そう、皆が皆、過去を忘れられる訳では無いんだよ、そんなことがくだらないなんて全員分かっている、全里の忍びだってわかっている、何処の大人だってわかっている、子供にさえわかる論理だが、先に頭を垂れたら負けだと、大人はくだらないプライドを持っているものなのさ」

「それで、そんなんでそんなつまらない事にこだわって世界が滅びたとしても?」

綱手は縦に首を振った。

「ああ、犬も喰わないようなくだらないプライドを護るのに精一杯な大人だらけなんだよ、大人の世界ってやつはな、……それに軽々しく動けない理由もあるにはある、どちらにせよ忍びは戦力だ、どう取り繕っても、他国に援軍といえば聞こえはいいが、そのまま占領の意思があると取られても仕方が無い場面さえある、下手に援軍が来たとしても、そのまま第四次忍界大戦が勃発してしまうおそれだってある」


再度深い深いため息を吐くシカマル。


「わかりました・・・・・・手持ちの戦力でどうにかしましょう。うちの里が、最強の里ってのは比喩抜きで間違いないんだ、でも、その里が負けたら、誰がこの世界をマダラから、九尾から護るんですかね?」

「火の国が、滅びれば自分の国が一番に成れる、まずはそう考えるだろうな、最強ってのは謂わば目の上のたんこぶと同じ意味を持つんだよ」


綱手はシカマルが納得する答えを見つけられなかった。
シカマルは納得はしていた、だが信じたくは無かった。


「・・・・・・すまぬな、汚い世界に巻き込んで」

「気にしないでください、俺が勝手に首を突っ込んだんだ。ちょっといらっときて火影様にあたっちまっただけです、所詮俺だってまだ子供なんだ、ちょっとだけ世界の危機に集まる世界の勇者なんて物語を夢見ていただけです・・・・・・すみませんでした、失礼なことばっかり言っちゃって、また親父にアスマにどやしつけられちまうなぁ・・・・・・一番怖えのは母ちゃんだけど、な」


綱手の口元に軽い笑みが浮かぶ。

「安心しろ、こんな話、誰にも言わぬよ、しかしナルトといいお前と言いお前等の年代は本当に怖い者知らずだな、火影に向かってそれだけ意見を言う奴なんか大人にもいないぞ」

へへっと笑うシカマル。

「何にも考えていないナルトと一緒にしないで下さいよ、ただ、あいつの真っ直ぐさにはこんな時こそ救われますけどね、敵がでかいほど、敵が強いほどあいつの強さが際だつ、純粋な実力の話なんかじゃなくて、心意気っていうか気持ちの持ちようっていうか。絶対に折れない心の強さはそうそう簡単に持ち得るもんじゃ無いはずなんですけどね、経験の差、かな・・・・・・羨ましいとは思えませんけどね、たまに可哀想になりますよ」


くしゃくしゃとシカマルの頭を撫でる綱手。

「そういった話はナルトにはするなよ、あいつは誰よりも気持ちに自分に向けられる感情に敏感だ」

「わかってますよ、あいつとの付き合いは俺の方が長いんだ。あいつには旗頭に為って貰わなきゃ、あいつこそがああいう奴こそが、次代火影に為るべき何ですよ。辛いことを知っている奴じゃなきゃ、真の優しさなんかわかる訳ねえんだ。ねぇ五代目火影様」

「・・・・・・そうだな」


「でもそれほど敏感ですかね?普通あれだけ異性からあからさまに好意を向けられれば嫌でも気付くと思うんですけどね、ヒナタの奴、可哀想に」

綱手の顔に苦笑が浮かぶ。
「それとこれとは話が別だよ、だがあれは流石に行き過ぎだとは思うがな、朴念仁にも程がある、流石四代目の子供だ、クシナも苦労したらしいぞ、ヒナタも苦労するだろうな」


「なんだ、親子揃って朴念仁だったんですか、よく子供が産めました・・・・・・」






二人の会話に水を差す、カツユを通じてのナルトの報告。

「・・・・・・来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た来たってばよ!馬鹿狐が来たってば!」

ナルトに残された九尾の内の残された別たれた一尾は同存在に対する、これ以上無いほど優秀なレーダーとなる。


「方角は!距離は!」

綱手の声が司令室に響き渡る。


「・・・・・・上!距離、・・・・・・速い、もう見える!来たぁああああああああああああああああああああああ!!!」

「作戦、弐の四、開始!」




ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ



フォウ!



「多重忍術、口寄せ・五重羅生門!」

上空に向けて築かれる硬度に定評がある羅生門の五重召還、それは、九尾が放った古代竜のブレスの上を行く吐息を完全に防ぐことに成功!



ゴォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!




ただし、完全粉砕と言う結果を残すことになる。


「直接頭を狙いに来たか!そんな事は想定済みだ!発動!対九尾用結界、イの参!」

綱手の声と共に木の葉四隅に張り巡らされた結界が、形を紡ぐ。



その存在感はその場にいる者たちにとって今まで逢ったどんな存在よりも圧倒的だ。


木の葉中心地点に舞い降りた九尾の、今は八尾の妖狐。


それは正しく結界の中心地でもある、発動され効果を九尾に及ぼす三代目が遺した本来の用途は対尾獣用結界。

敵が強ければ強さを弱めてしまえばいい、そんな単純な思考の元発案、施行された効果抜群の結界。
完全実力半減の呪いにも似た効果が九尾に正しく作用される。



グォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!



うめき声と共に力量を半減させられる九尾。

其の口があくまで木の葉の頭を狙う。




フォウ!



再度放たれる半減されたとはいえ、直撃すれば辺り一体を完全になぎ払う威力を伴う九尾の吐息!

「併せろよ、多重忍術、水遁・水陣壁!」

口寄せも元より、綱手の指示も間に合わなかった為に現場の指揮のもと、カカシの指揮の元繰り広げられる多量の水の壁、九尾の攻撃を相殺に成功、

しきれずカカシの傍にいた複数人の忍びがそのまま蒸発してしまう。


「攻撃させるな!大玉螺旋丸!」


単独行動を許されている忍びは現時点で自来也、ナルト、カカシ、我愛羅の四人のみ。


内の一人自来也、シカマルが作戦を立てたことにより、彼は結界石の警護からはずれ其の力を発揮する位置に居合わせることが可能になった。



ヒュウ


かつての戦いと同様、力にその巨大な体に似合わぬ速度で自来也の攻撃を避けきる九尾。

がつっ


避けたところに生まれる砂の壁。


「これが九尾か……思ったより大したことないんだな……空砂防壁!」

完全に砂の壁に囲まれ動きを止める九尾。


「実のところ、九尾の力は俺の記憶にあるものとなんら遜色が無い、こんなに渡り合えているのは結界のおかげだって、ご苦労さん、そのまま動きとめてて頂戴、やるよ自来也さん、ナルト!」

「「応!!」」


淡く白く光る体のまま、自来也とナルトと共に九尾に突っ込んでいくカカシ。


「「「多重忍術、三重大玉螺旋丸!!!」」」


三人の力があわさり合い、巨大な螺旋丸が動くことが出来ない九尾に炸裂する!




オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!


砂に邪魔をされ動くことが出来ない九尾は、三人の合同攻撃をまともに其の身に受けてしまう。


往年の伝説に伝えられる力を発揮できずに、其の姿を崩していく九尾の妖狐。


カツユを通じ、九尾撃墜の報が木の葉全土に伝えられる、沸き起こる歓声。

「よし、被害を確認しろ!」


綱手の声が響き渡る。


作戦がそのまま当てはまり、木の葉は多少の被害は出したが、九尾の撃墜に成功した……




はずだった。



「……まだ、何も終わっちゃいねえ」

シカマルの後ろで小さく呟く再不斬。

「え?」
振り返るシカマル、だが再不斬は再度目を瞑り、何も答えない姿勢だ。



崩れ落ちる九尾の体から形無き力が抜け出し、ナルトに戻ってくる。


「被害確認できました、暗部の一個班文字通り消滅してしまいました……あの吐息の一撃だけで、です」
「結界が働いて、このレベルか・・・・・・恐ろしいものだな」
「後は、恐ろしいのは、マダラだけですか」
「何、ダンゾウがうまくやるよ、サスケもいる、対策にぬかりは無いはずだ」



安堵の雰囲気が司令室に蔓延する、其処に告げられるナルトの緊迫した声。



「違う!」
眉を欹てる綱手、シカマル。
何が違うというのだ、そんな言葉が出る前に続けられるナルトの声。


「違うってば、これは、馬鹿狐だけど、全部の馬鹿狐じゃない!」



ゴォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ



天から降り注ぐ、赤色の吐息、九尾の吐息に良く似ているそれは的確に里の四隅に配置されていた結界の要に対し降り注ぐ!


ゴンッ!


鈍い音が響き渡る。

ナルトの言葉を刹那理解出来なく、あっけに取られる司令室、駆け込む伝令。
「・・・・・・報告します!東西南北、結界、破損、消失!敵性存在力量半減の結界、解除されます!」


「なにぃぃぃぃいいいいいいいいいいいい????」

司令室に響き渡る悲鳴に近い叫び声。

「何だって、東には親父が!」



敵はまだいる、それも数も力もいまだわからず。



パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ……


拍手が、一時的に空白地帯となった戦場の中心地に響き渡る。


「……マダラ、だってばよ」

カツユを通じてのナルトの声が司令室にも響き渡る。

「結界で力を縛り、他の里の人柱力の力を借りたとしても、大したものだな、木の葉の里よ、分身の一つだとしても、あれはかつての九尾と同等かそれ以上の力が込められていたはずなんだがな、成長したのだな、この十数年で、飛躍的に!」

静かなそれでいて存在感を発揮している声が、空から天空から降ってくる。

「そんな最強の木の葉を支える技術の一つ、チャクラの省エネ化、本当に大した技術だよ、お前等の向上精神にはほとほと感心させられる・・・・・・ただ、それを扱えるのがお前等だけだと思ったら間違いだ」


マダラが乗っている存在は、それも九尾だった。
今は七つに尻尾が減っている九尾。


「――竜が考案して、三代目のじっちゃんが実現させた、尾を利用した影分身」

ナルトの冷静な声が現場に司令室に響き渡る。



「それを・・・・・・九尾に、適用したのか・・・・・・」

綱手の声が苦渋に満ちた声が里に響き渡る。



「さぁもうあの厄介な結界は消失した、醜く足掻け、俺に逆らう全てのものよ!苦しみ足掻き、惨たらしく、――――死ね、世界大戦の始まりだ」


残り七体の九尾が、動き出す。
余りの出来事にシカマルも綱手も指示を出し損ねてしまう、想定外過ぎる!


それを縛るものが再度動き出した。
「報告します!敵性存在力量半減結界、再度発動!」
喜びが多分に含まれている伝令の声。


其の気持ちは綱手に確かに伝わった。
「名家達が、やってくれたのだな!」

「北は無事だ、任せろ」
「……南は援軍不要、他にまわせ」
「西は大丈夫よ、ちょっとびっくりしたけどね!」
「東も無事だ、……シカマル、軍師はどんと構えて、父ちゃんと其の仲間達を信頼しろ、そう簡単に死なねえからよ!」

各所から報告される無事の一報、木の葉の名家は名前だけで存在するものではない、実力が伴って初めて名家として存在できるのだ。


「……親父……無線でくだらねえ事流しやがって……ほらほら、立て直せ、作戦ろの四!」

シカマルの声がカツユを通じ木の葉全員に響き渡る。


「小癪な、狐の一撃を防いだと言うのか……まぁいい、改めて壊せばいいだけのこと、行け」

七体の内、四体がそれぞれ東西南北に向かう。


三体がその場に残ったため、動けない自来也、カカシ、ナルト。



「……指示をくれ、シカマルと言ったか、俺は何処に動けばいい、どれを殺せばいい?」

「我愛羅、あんたは……西を援護してくれ、カカシ先生、南を頼む、自来也さんとナルトはこの場で残った九尾を葬り去れ!ってのは嘘だ、時間を稼いでくれれば、足止めをしてくれればいい、再不斬の旦那、頼めるか?」

瞑っていたままの目を開け、再不斬は口元を喜悦で歪ませた。


「仕事、だな?」

「ああ、……東を頼む、ああは言っていたが一番決定力不足なのは東なんだ、北は放って置いても大丈夫、日向一家は口だけじゃなく最強に位置するのは間違いない、東が済んでから行っても十分間に合うはずだ……親父達を頼む!」

「ふん、任せろ、俺は今は刃、お前の刀だ、お前の意思の元動く全てを切り裂く刃」

再不斬はすぐさま移動を開始、誰よりも速い速度で、誰よりも強い力で。


「サスケ達、対マダラ部隊は……俺が言うまでもねえか」
マダラの登場と共にすでに動き出している「根」とサスケ。


「いいか、皆、結界は死守だ、結界が無くなれば二倍の力で敵が攻めてくるぞ!」


シカマルの悲痛の声が里の全員に響き渡る。



綱手は既に負傷者に対する治療に入っていた、意識を集中する必要があるため、言葉を発することが出来ない綱手。


こういうことも想定していたため、あらかじめシカマルの言葉を優先して聴くようにとの通達が回っていたが、それは正しく機能していた、最強の里、木の葉の名前は、伊達じゃない。









*アーマードコア一?だったかのラスボス、「ナインボール」を想像してもらえれば、大量九尾登場のシーンがわかりやすいと思います。っていうかあればぶっちゃけかなり卑怯だ!って思ったのは私だけじゃなかったはず*



[4366] 世界大戦、その参、蹂躙
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/01/17 13:14


妖獣の王にして最強の尾獣、九尾の妖狐。

後に辛くも命からがら生き残った者は語る。



あれは最低最悪の天災が体現したものだ、と。



七体の九尾、それはまさしく世界を敵に回しても勝利を収められる戦力だ。

かつて木の葉の里を襲ったときは一体、それでも当時最強と呼ばれていた木の葉の里を完膚無きまでにたたきのめし、最高の忍びと謳われていた四代目火影波風ミナトの自己犠牲が無ければ、木の葉の息の根を完全に止めていただろう。


それが、七体、風の谷のナウシカに登場する、巨神兵、世界を七日で焼き完全に浄化した火の七日間、今、木の葉で九尾をマダラを止めることが不可能ならば、例に倣い、世界は七日で滅びる。

どんな抵抗もどんな勢力も、等しく滅び、ある意味世界に平和が訪れる、享受する者が誰もいない虚しき平和だ。


そのままマダラは、九尾は、破壊神となりて、世界の融合という極めて珍しい現象を利用し他の世界へと、その狂気を向けるであろう。

自らが完全に止められるまで、自らが完全に否定されるまで、自ら以上の破壊神に破壊されるか、自ら以上の狂気の持ち主に敗れ去るか、はたまた別の世界の勇者に希望と共に消し去られるか、結末を予想は出来ないが、限りない悲しみと、限りない怒りと、限りない絶望を与えた末に滅び去るまで、その活動を決して止めない。



どんな熟練の忍びが居ても、どんな人柱力が居ても、どんな兵器を揃えても、どんな天才を、どんな化け物と呼ばれる者を集めても、個人単位、国単位では絶対に対処できない、完全無欠なる世界の敵。


力を振う者も最悪だ。


復讐に燃える男、うちはの創設者にして考えられる限り最高の戦闘経験を誇る魔人マダラ。


マダラは今、七体の内の一体の九尾の頭に乗り、里をかつて自らも所属していたことがある里を、自分が完膚無きまでに、二度と立ち直れないように、この世から消滅させようと、破壊しつつある里を高見の見物としていた。


いくらNARUTOの世界の忍者と言えども、空を自在に飛ぶことは出来ない。

空に浮かぶマダラに対し有効な攻撃手段は遠距離攻撃しか今現在は存在しない、だが、遠距離攻撃の全てを九尾が逐一丁寧に防いでいた。


マダラの意識外で行われるその行為は、我愛羅の砂の鎧と同じ原理、さしずめ「九尾の鎧」とでも名付けられるそのものであった。
 
九尾の鎧は、その精度もその頑強さも全ての面で、砂の鎧を上回ってはいた。


空に舞うマダラ達に接近するには、空を飛ぶ口寄せ動物を使役し接近するしかない。九尾を操っているのはマダラだ、ゆえに頭を潰せば九尾の行動は止まるかも知れないと考えた現場の指揮者達は少なからずいた。


情報が決定的に足りないシカマルは、されど、その判断に対し否定を示した。


マダラに対抗するのは、打ってつけ、しかも最高の人材が木の葉には今いるからだ。

「根」に所属する暗部の一人が生みだした、忍法「超獣戯画」による、絵で出来た鷹に乗り、彼らは九尾にのったマダラに近づいた。


当然自動で迎撃に当たる九尾、その口から漏れださんとする全てを滅する吐息。


「お前は邪魔だ、黙ってろ」


鷹に乗った一人が特殊な瞳術で睨みつけ、九尾を完全に沈黙に追いやる。


九尾の鎧をはぎ取られたマダラは、されど焦ることなく、接近者を冷静に観察していた。
永遠の万華鏡達が見つめ合う。


「サスケか・・・・・・どうだ?俺と組まないか?」


ダンゾウを頭にし、苛烈なる攻撃方法を心得ている「根」の者達、彼らと共に九尾の上に乗っているマダラに対し、攻撃を仕掛ける永遠の万華鏡写輪眼を手にしたサスケ。


「誰が!お前は此処で死ぬんだよ!うちはの因縁は、此処で、俺が断ち切る!イタチの、兄さんに成り代わり、兄さんの目で、俺が、此処で、お前を、殺す!」


サスケの万華鏡写輪眼に込められる一つの力、火遁秘術――――天照。

それは正しくマダラの姿を取り込んだ!


「――――!」


驚愕におののく「根」の者達。

気付けば自分たちは動くことが出来ず、サスケもまた何者かの一撃で意識を失っていた。

その者の名前は、マダラ、ゼツ。

最後に残った暁の精鋭達。


「まだ、俺達の決着が付けられる時ではない・・・・・・暫し寝ていろ、起きて木の葉が滅びている様を見れば、お前の考えも変わるだろう」


「甘いよ、アマイゼマダラ、禍根は断っていた方がいいと思うけどな、ああ、「根」ノミナサンハ、シバラクココデ、オレトツキアッテモラウゼ」


影に捕われる瞬間、一人の暗部が放り投げた玉が破裂し、煌々と光を発した、シカマルも使っていた光玉だ。

「流石は木の葉の精鋭、イチドミタジュツニタイシテノタイコウサクハ、カンペキカ」

解放される「根」の暗部、意識を失ってしまったサスケを抱え、一度離脱、マダラは追撃をせずに再度九尾の背に乗り、再び直接里を攻めるでもなく、高みの見物を決め込む。

「ふん、最後に残ったうちはの末裔、一度魔に身を落としている以上、説得の余地はあると踏んでいる、何、坊やが何をしても俺には勝てない。ゼツお前も別に動かなくていいぞ、直に木の葉だけでは九尾は始末できない、滅びるだけだ」


サスケとマダラの第一回戦は、マダラの勝ち、マダラの遊び心でサスケは生き残った。



マダラの言葉通り、木の葉の里を蹂躙する、最強最悪の妖魔、九尾の妖狐。


自来也はすでに仙人モードへの移行を完成している、ナルトも少なくなってしまったチャクラをうまくやりくりして、絶対的までに力の差が広がってしまった九尾相手に善戦しているといえよう。


それでも――――

それでも、九尾の蹂躙を止めることは不可能だった。


「・・・・・・糞っ、流石に手強い・・・・・・」

大玉螺旋丸を喰らわせたばっかりの自来也、されどダメージは通るが、倒すには至らず、持ち前の圧倒的チャクラにより、傷を癒してしまう九尾。


ユニット能力としては最適の能力、単独破壊兵器としても最高の能力、自動回復を九尾は持っている、チャクラの塊と評された力はあながち間違いではない。


絶対的なチャクラを、この世界の誰よりも有効に使い、九尾は木の葉の全てを砕かんと吐息を所構わず吐き出す。


その度に消滅してしまう木の葉の忍び達。


これだけ圧倒的にも関わらず――――木の葉の肝煎りの実力半減の呪いを含んだ結界は有効に機能していた。



九尾の数、――――残り七体、未だ先は見えず、破壊神の力を恣に名実ともに最強の力を九尾は振う、意識はないが、まるで十数年前の続きを繰り返すが如く。



木の葉には、もう四代目は、いない。







されど、木の葉は諦めない、三代目が残した火の意志は、木の葉の全ての忍びに染みついている、何者にもどんな強敵にもどんな難敵にも、どんな絶望的な戦いでも、絶対に諦めない、その気持ちの名前は――――「勇気」




「風遁・大玉螺旋丸!」

父親との決戦で、愛する父親が見せてくれた、人としての最終形態、原作とは違い、チャクラコントロールをほぼ極めたナルトが放つ、人としての最強の威力を誇る術。


避けようとする九尾の足を止める自来也。


「逃がしやせんぞ、・・・・・・仙法・五右衛門!!」


仙人モードが可能にした、自来也としての最もこの場に適した術、数千度の熱量が一体の九尾の足を止める。



グォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ大オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!



ナルトの術をマトモに喰らってしまった九尾の一体は、断末魔をあげ、形を失う。


ナルトに戻る尾の一つ。

残る九尾は、後六体。




ゴォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!




止めを刺すために動きを止めてしまったナルトと自来也に、それぞれ九尾の吐息が直撃!

二人は咄嗟にチャクラそのものを展開、致命傷を受けることは避けられたが、もはや完璧な自動回復術を失ってしまったナルト、元よりそんな機能は手にしていない自来也。




「・・・・・・ちっくしょう・・・・・・生きてるか?エロ仙人」

ごほっ

「・・・・・・ああ、まだまだ行けるぞ・・・・・・だが、後一撃喰らってしまったらわからんな・・・・・・」

二人は持ち前のチャクラのほとんどを防御に費やしてしまい、到底戦いを続行するのは不可能。


シカマルの声が響く。

「作戦、ほの壱!」



「「「「「「多重忍術、多重影手裏剣の術!」」」」」」

ナルトと自来也だけに注意がいっていた、ニ体の九尾に対し、雨霰と大量の手裏剣が襲いかかる。


「リー、私達の出番だ!」
「はい!行きましょう!先生!」


「「朝孔雀!!」」


手裏剣では致命傷に成り得ないことを見越し、体術のエキスパートの二人がニ体の九尾に対し攻撃を仕掛ける。


が、



ゴォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!



九尾の吐息が辺りに振り分けられる。
朝孔雀は九尾に対し致命的な一撃にならず、傷を刹那に癒してしまう。


「全く、とんでもない奴だな・・・・・・自来也様、ナルト、一度引いて治療をして貰え、火影様の治癒術は既に打ち止めのようだからな」

綱手の治癒術は、結界石を守護する四つのパーティーを治癒した時点で、その効果を失ってしまった、後は通信機能を生かすだけ、それだけは、解除できない、目を亡くしてしまえば効率的な頭の運用が出来ず、それこそ散発的な抵抗を残すのみとなり、其れはすなわち、完璧なる敗北を意味してしまう。

「でも・・・・・・」

心配そうな表情を浮かべる、ずたぼろのナルト。

「ナルト君、僕達を、仲間を信頼して下さい!何、九尾が何だって言うんですか、たかが大きな狐ってだけじゃないですか、僕の僕達の強さは雪の、春の国でわかっていただけているはずです!さぁ、行ってください!」


歯をキランと輝かせ、いい笑顔をナルト達に浮かべるりー。


「・・・・・・死ぬなよ、げじまゆ、それに皆、絶対に死ぬなよ!」

完全に信頼を二人に置き、ナルトは兵糧丸を一粒噛み砕いた後に、動けない自来也を抱え上げ、後方に医療班の元へ戻っていった。


「はははは、強がりは見破られていたようだな、りーよ」


朝孔雀は禁術『八門遁甲』第六の門・景門を開けた上で使用する、体術の奥義の一つ、そんなものを放ってしまった二人の体に、反動が来ていない訳が無く、チャクラの省エネ技術により、まだ戦う事は出来るが、もはや万全の調子では無かった。


「・・・・・・そうですね、でも、僕達が頑張らなきゃ、もうどうにもなりません、皆さん、協力をお願いします、共に、時間を稼ぎましょう!カカシ先生が、風影が、ナルト君が、自来也様が、九尾を一体ずつ狩ってくれるはずです!」

りーの言葉に、ガイは、周りにいる暗部、一般の中忍、上忍達は、軽い笑みを浮かべる。


彼らの頭に自己犠牲なんていう言葉は存在しない、彼らは勝つつもりだ、最強の絶対的な力の差が広がってしまっている九尾に、その九尾に比べれば、小さき体に木の葉の意志を込めて、彼らは戦う。


九尾の吐息により生まれた塵が晴れ、万全の九尾のニ体が姿を現す、その絶対的なチャクラと共に、絶対的な存在感と共に。


「さぁ、行きましょう!僕達の戦いは此処からです!」


絶望的な死線に一片の後悔もなく、一片の悔恨も無く、一片の躊躇も無く、ただ希望と共に彼らは飛び込む。

木の葉が誇る決戦兵器達ならば、絶対に何とかしてくれる、そう信じて、彼らの戦果を待ちわびるために、彼らが回復する時間を稼ぐために、全力を尽くし戦いに臨む。


声はシカマルにも当然届く。


「・・・・・・くそっ・・・・・・被害が二割を越えた・・・・・・被害を出さないなんて考えていた俺は大馬鹿者だな・・・・・・医療班、至急三人ばかし、まの五地点に向けてくれ、ナルトと自来也さんを治すんだ!チャクラ回復の兵糧丸も忘れるなよ!」


その他、変わりゆく戦況を眺め、適切な指示を出しつつ、シカマルは一人述懐する。


「九尾め・・・・・・人の里で好き勝手やってくれやがって・・・・・・最後に勝つのは・・・・・・俺達木の葉だってことを分からせてやる!」




次々に増えていく被害の割合。


死者の数は鰻登りに増えている、これからもっと増える、チャクラを使い果たした忍者は単なる的にも成らない、単なる犠牲になるだけだ。


シカマルの天才と評された頭脳をもってしても、この窮地を脱出する事は至難を極めている。





其所に舞い落ちる、いい報告と、最悪の報告。



いい報告は、西と東と南がそれぞれ九尾を一体ずつ仕留めたとの報告、これで残りの九尾の数は、後三体。



最悪の報告は、もの凄く単純なことだ、シカマルも可能性の一つとして考えていたそれは、ただ一言で表現できる。



実力半減の効果を持つ、結界が、完全に解けた。



「チェックメイト」そんな言葉が誰よりも全体の状況を把握しているシカマルの脳裏に浮かぶ。



マダラに言わせれば忌々しい効果を外された、完全能力を誇る九尾の数が、残り――――――三体。



健気に戦っていた木の葉の全ての英雄達に、一抹の影が付着した。


「もう、駄目だ」


絶望という名の影が、静かに根付き、幹を伸ばす、葉を付け、花を咲かせ、実を実らせたその時、世界は終わるのだ。



くくくくくくくくくくく



九尾を伴わずに高見の見物をしていたマダラの口に、闇よりも暗い笑みが浮かぶ。



「終わったね」
「アア、コレデセカイハ、オレタチノモノダ」







*マダラ、他の世界へ侵略する、ちょっと考えてみましたが、どう考えても話としては厳しいですね。最強話にするにしても、崩壊しか導かないからな。ブギーポップの世界で、「世界の敵」としてFF辺りと戦わせるのが一番展開が面白そうです、で、FFを倒してチャクラが少なくなったところを不気味な泡に暗殺される、と*



[4366] 世界大戦、その四、英雄達の挽歌。
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/01/13 18:04

敵は蛇族と蜘蛛族の戦士達。

参った。


こんなに強いとは・・・・・・百年戦争って出任せこいてたが、あながち間違いじゃねえぞ。

未だ俺達はファイアを抜けられずにいる。


原因?


簡単な事だ、敵が強い、強すぎる。

あの、大蛇丸ですら一時は羨んだ、君麻呂の骨の血継限界による、強力無比な攻撃、加えて琴音のテイマーとしての力、白竜達の灼熱のブレス、新たにペットとなった不死鳥フェニックスによる数千度の焔の体当たり、加えて、リースの反則気味のハルバードによる直接攻撃と圧倒的魔力に裏打ちされた魔法のコンビネーション。


どう考えても元の世界のUOだったならば、こちら側がチートを使っていると言われても相違ない強さなんだよ、本当はね。


UOと決定的に違うのは、敵がフォーメーションを堅実に組んでくること、君麻呂の攻撃は、あれは蛇の騎士だな、それが複数匹で受け止め、琴音のペットの攻撃は狂信者だろう、それらによるエネルギーフィールドやらで受け止め、何より一番こちらで最高の戦力であるリースの攻撃は、アベンジャー、それにマトリクス、女王、あれは蜘蛛も蛇も混じっているが、彼らが分担して攻撃を、受け止めて居るんじゃない、受け流している。


雑魚は問題ない、流石に制限が外れたこの世界だと言えども、先に挙げた戦士達、狂信者や騎士、復讐者、女王、それに神官ってところか、彼ら以外は敵に為らない。


個々の力ならば、こちらの方が上だと明確に判断できる、が、こと集団戦に持ち込まれちまうと、話は別だ。


今までさんざんこちらが、プレイヤーとして為していた完璧なコンビネーションを元々の性能が高い、敵さんにやられちまうと、・・・・・・厄介極まりない・・・・・・強いぞやつらは、くそっ、こんなのがまだまだ先に沢山控えて居るんだよな・・・・・・バルロン一匹の方が、古代竜一匹の方が御しやすい、どんな世界なんだここはよ!


弱いところを知り尽くしている上でのフォーメーション、強は弱に弱は強に、巧いと言える。


加えてもう一つ、回復魔法の存在について、本来UOでは、敵は回復魔法なんか使ってこない、そんなことをすればバランスが壊れる所の話じゃないからだ、何よりもまず敵を殺せなくなる、そんなゲームだれもしないだろ?


此処は違う、彼らは必死に生きている、必死にこちらに勝つ心意気を保持している。決死の意志が圧倒する。



「・・・・・・強い、な。でも、いつまでもこんな所で手間取ってられないんだよ!」


既に斥候らしき影は、奥へ逃げ去ってしまった、もう殺し尽くすことは不可能、間違いなく敵にこちらの情報は伝わってしまっていると考えて相違ない。


「Vas Corp Por」


狂信者や復讐者、それに神官や女王は、容易く召還生物をディスペルしてしまう、が、この強者揃いの中で此奴だけは魔法が不得意。


きしゃぁあああああああああああああああああああああああああああああ!



決して最強の召還生物エナジーボルテックスだけで、殺し尽くせると思っている訳じゃない、注意が刹那でもそらせれば、後は頼もしき仲間が殺してくれる。


「椿の舞、十指穿弾!」


右手の手のひらから飛び出させた、骨の弾で魔法を使う戦士達を牽制、返す刀で一気にランクが一つ二つ堕ちる狂信者、神官達を抹殺する君麻呂、・・・・・・こいつが敵じゃなくて良かった・・・・・・。


騎士にまとわりついていたエナジーボルテックスは、女王や復讐者にすぐ消されてしまうが、もう遅いよ、中核を為していたのは実の所神官達だ、回復と攻撃、双方出来て初めて厄介たる敵に為っていた敵だ。


回復の中核を為していた神官達を殺した今、もう俺達を防ぐ敵はいない。


「All kill!!」


まずは琴音の歌い上げる声で、騎士達の殺戮が始まる、ついで、ペットにターゲットが移ってしまうが、


~~~~~~~~♪



直人の音楽が狭い洞窟の中に響き渡り、敵が一瞬だけ我を、戦闘を忘れる。

「チェックメイト・・・・・・all kill!!」
「龍式・・・・・・瞬身の術!」
「鉄線花の舞・花!」

強力な前衛と、それを回復する後衛を失ってしまえば、如何に個体として強くても、もう為す術は無い。


琴音のペットによる砲撃、目くらましに為らないのが、敵の強さを推し量る術ともなっている、今までだったら悪魔ですらブレスで大量駆逐が出来たはずなのだが、こいつらは其れすら許さない。


今までも強力な攻撃を防いでいたエナジーフィールドが、女王と復讐者達の前に張り巡らされている、君麻呂達の攻撃すらも貫くことは許されていない、だから俺は唱える、無効化の意味を持つ魔法を、呪文を。


「An Grav」
ディスペルフィールド、敵が張り巡らせた何者も通さないエナジーフィールドに蟻の一穴が穿たれる。


入り込む膨大な熱量、琴音のフェニックスが入り込み、焼き尽くし、君麻呂の骨が敵の内部で暴れ回り、中に飛び込んだリースが神速の振りで敵を切り刻む。



―――敵がチームワークで来るならば、こちらもチームワークで対抗するだけだ。


敵の殲滅に成功、だが、恐ろしく時間が掛かった。

肩で息をする皆、すぐさま包帯による治療で回復させる。



「はぁ・・・・・・参ったね、こんなヤツラが、まだ大量に控えているのか」



そう、何よりも俺を憂鬱にさせるのは、こいつらがボスじゃないという事実。


蛇族、蜘蛛族に関していえば、絶対的な王者が君臨しているというわけじゃない、強いて言えば種族その物が王であり群れなのだ。


「・・・・・・木の葉は大丈夫かしら」

俺と同じく、ペットの治療をし、休憩を取らせている琴音がぽつりと呟いた。

ぶっちゃけ、もう、俺の手を完全に離れた世界だ。どうなろうと知ったこっちゃ無いという思いが少なからずあるが、今現在も木の葉の忍びである直人と琴音には十二分に気になる内容なのだろう。


「敵は確かに強大・・・・・・されど、安心せい、確率は、少々低いが、援軍を頼んでおいたぞ、イタチが愛した里を勝手に蹂躙される訳にはいかんからなぁ・・・・・・あやつらは少々血の気が多いのがたまに傷じゃが・・・・・・誇り高き者達ゆえ、木の葉の力になってくれるはずじゃよ」


へぇ、援軍ねぇ、そんなの世界に残っていたっけ?

他の里のことかな?

リースの顔は何気に広そうだからな、竜王としての名前を出せば協力してくれるかもしれんな。


「しかし、強い、・・・・・・これで一個小隊程度の戦力なのか・・・・・・竜君、彼らはどういう作戦で来ると思う?」
カブトが息をつかせながら、洞窟の先を見つめる。

「さて、な・・・・・・目標が俺である以上、愉快でない未来が待っている気もするが・・・・・・まだロストランドにすらついていないのはうんざりするな、しかも広大な荒野があったよな・・・・・・間違いなく其所で万全の態勢を陣を構築しているだろう」


今の戦いなんか敵にしてみれば本当に、小手調べもいいんだろうな。糞が・・・・・・

木の葉の戦いの決着を短期間で付けて、全兵力を借りてこちらも軍を用意すべきだったのかもしれない、・・・・・・駄目か、敵は俺の敵は絶対に待ってくれない、何せミナクスのお墨付きまであるからな・・・・・・そういや、カカシは俺がミナクスの間で拾った直人が使っていたミナクスの刀、巧く使っているのかねぇ。


あのディスペルが「消滅」が込められたチャクラ刀を、さ。








シカマルに届く、サスケ、敗退の報告。

シカマルは盛大な舌打ちをかまそうとしたが、其れよりも先に頭が回る。

「ちっ・・・・・・命はまだある、よし、一端引いてくれ、マダラは少しだけ後回しだ・・・・・・だが、監視だけは絶対に外すなよ、怪しい真似をし出したら命令を待つ必要は無い、攻め込んでくれて構わない、絶対に目を、仮面を外すな!」


未だ高みの見物を決め込むマダラ。

さぞかし楽しいことだろう、さぞかし嬉しいことだろう。

「ああ、認めるよ、手前は最強の敵だ、だがな、木の葉の英雄達を、その腐った眼で何時までも嘗めてんじゃねえ!」



九尾がまだ六体の時の話。



中央で暴れている九尾は、各結界石に振り分けられた戦力以外の全てが揃っている。

ガイとりーの体術コンビは、他に九尾の意識が向くことを許していない。

すでに中身外見、共にぼろぼろの状態の二人。


全ての戦力をつぎ込んだ総力戦は、まだまだ終わる様子を見せない。







東の要所。
―――山中、奈良、秋道家。

九尾の突然の一撃は、各要所に配備されている暗部達の少なくない犠牲を持って防がれていた。


九尾の吐息は、抵抗を許さない最悪の攻撃に分類される。

直接当たって仕舞えば、それはその者の消滅を意味している。


耐えられるとすれば、同種のチャクラを持つナルトくらいなものだ、今のナルトの性質は九尾が戻るにつれ、かつての性質を更新しつつある、マダラの力も入り込んでいるためだ。


「おい、チョウザ、九尾が向かっているってよ、どうだ、何か策はあるか?」

シカマルの父、奈良シカクがとぼけた声で仲間に問う。

「そう言うことを考えるのは昔からお前だろう、なぁ軍師殿の父親」

山中イノの父親、イノイチが少しばかりのからかいの感情を含め、シカクの背中を叩く。

「あのシカマルが、ねぇ。里の危機は見過ごせなかったって話か、実際どうなんだ?シカク、将棋でお前に勝ったことが無いとか聞いていたが、お前の方が軍師に向いていたんじゃないのか?」

秋道家特有の豊満な肉体をゆらし、チョウザがシカクに問う。


「はっ、あいつの頭の中がどうなっているかなんて、もう俺にはわからねえよ。将棋だってそうだ、あいつは何時だって俺に勝てる癖に・・・・・・そうだな、一度洞窟に連れて行ってからだな、化け物の姿を見てからあいつは本当に、賢く、違うな、よく考えるようになったよ、どういう心境の変化があったのか知らんが、な。今のあいつ以上の軍師がいないのは、身内の保証じゃ当てにならねえだろうが、保証しておくぜ」

しんみりとした顔をするイノイチ。
「そうか、お前が言うのならそうなのだろう・・・・・・では、作戦は、全力で行く、これでどうだ?」


「ははははははは、それは作戦って呼べねえな、馬鹿息子は今中央でてんてこ舞い、援軍を寄越すからなんとか気張ってくれ以降全く連絡がとれねえ。息子が困ってたら、親が助けてやらねえとなぁ・・・・・・昔の襲来を忘れたとは言わせねえぜ、この結界が解けちまったら・・・・・・あん時以上の虐殺が引き起こされちまう」


「・・・・・・そうだな、チョウジ、いのちゃんを連れて、お前の仲間を助けに行きなさい、もう立派な忍びになったお前達に言う言葉ではないが、この場ではお前達は役に立たない」


チョウザの言葉にすぐさま反応する彼らの子供。
「でも!父ちゃん!」
「パパ、何言っているのよ!今は一人でも戦力が必要な時じゃない!」


「黙れ!」

イノイチが突然声を張り上げる、今まで親ばかで一人娘を溺愛していて、一度も娘に怒ったことが無い父親の怒鳴り声に、いのは抗議を止めてしまう。


「言うことを聞くんだ、私達上忍としての判断だ、お前達は九尾相手では、足手まといにしか為らない・・・・・・せめて一年過ぎていたならば、豊富な実戦が期待できるこの世界では使い物に為っていたかも知れないが、お前達は、まだひよっこすぎる、相手がそこら辺の化け物だったならば、話は別だが・・・・・・敵は九尾、戦場の怖さを知らないお前達では、万に一つの生還の目が無い」


シカクがイノイチの後を継ぐ。
「黙って・・・・・・黙って俺の馬鹿息子の所に行ってくれねえかな、お前達がいると全力で戦えないってのも本当なんだぜ?一人でも多くの戦力を必要としているのは中央だ、何せニ体の九尾が暴れて居るんだからな、お前さん達はあっちをフォローしてくれよ」


ばしっ

チョウジの背中を叩くチョウザ。
「行け」


ふわり

イノの頭を撫でるイノイチ。
「・・・・・・怒鳴って悪かった、だが、行け」


コクリ


二人は黙って頷き、行動を開始した、暗部がすぐさま先導し、九尾の接近コースを避け、二人は中央を目指す。




木の葉、最後の決戦の地を。






「・・・・・・シカク、チョウザ」

イノイチの弱々しい声。

「ったくよ、慣れない事すっから、親ばかのお前が、娘を怒鳴るなんて初めてだったんじゃねえのか?」

チョウザが、イノイチの肩を軽く叩く。

「いつかは・・・・・・通る道だ、安心しろ、お前の娘は馬鹿じゃない、わかってくれるはずだ」

笑い出すシカク。
「かかかかかかかかかか、ちげえねえ!・・・・・・さて、気を引き締めろ、頼むぜ皆、何でも強力な援軍らしいからな、作戦は一つ、俺達三人が、九尾の野郎の目を引きつけるから、あんたらが主として攻撃してくれ!」


頷く周りの忍者達。


超速再生を備えている今の九尾に対する有効な攻撃手段は、今の東には存在しない。



シカクの冷静な頭では、生存の可能性は、ほぼ零と出ていた。

「さぁて、いの・しか・ちょう、再結成と行きますか!手前等、親父のかっこいい姿を息子達に見せてやろうじゃねえかよ!」

「「応!!」」

シカクの言葉に頷く二人の上忍。

・・・・・・九尾が迫る。







西の要所。
―――犬塚家。


「おやおや、あんたまでこっちに来てくれたのかい、ハヤテ、おや、そっちの子は彼女かい?」



九尾襲来の報を受けても、普段と全く変わらない犬塚ツメ。

キバの姉は今は中央にて他の忍びと共に戦っている。


「ええ、たまたまでしょうが、軍師さんが、同じ配置にしてくれました、紹介します、夕顔です、今回は暗部を外れ、共に戦ってくれるそうです」

病気が治っても顔色が悪い、ハヤテの隣に立つ、長く奇麗な黒髪を持つ女忍、夕顔。顔には笑顔が浮かんでいた。

「砂の国では、ハヤテがお世話になったようで・・・・・・有り難う御座いました!」


にこにこと笑みを返すツメ。

「何だい・・・・・・あんたも隅に置けないねえ、あんなに頼りないのに、こんな出来た彼女がいるのかい・・・・・・大事にするんだよ」

照れるハヤテと、満面の笑みを浮かべる夕顔。



「母ちゃん・・・・・・九尾が、来るって!」
顔面をハヤテのように真っ青にするキバの声。


「あー私達にも聞こえているよ!あんたも肝っ玉が小さいねキバ、女は度胸だよ!」

「いや、意味わかんねぇし!だって感じるじゃん、何なんだよこの出鱈目なチャクラ量は!これで能力半減してんだろ?何の冗談なんだよ!」

鼻がよくきく、犬塚家は、他のどの名家よりも敵の強さが判別できる。


「ほぉ、この距離でわかるようになったのかい、・・・・・・少しは成長してんだね・・・・・・キバ、昨日も言ったけど」

「・・・・・・正面には絶対に立つな、だろ?わかっているよ、金を積まれたってあんな奴と真っ正面から戦うなんてかんがえねえよ!」


「・・・・・・夕顔」

「・・・・・・ハヤテ」

手を繋ぎ、互いの意志を確認する恋人達。

「あーもう、いちゃつくなら他でやれって!あんたらにはわからないかも知れないけど、」


ぼかりっ

キバを殴りつけるツメ。
「いってぇええええええええ!何すんだよ母ちゃん!」

「馬鹿だねぇ、人の恋路を邪魔する者は犬に蹴られて死んじまえ!ってあれ、馬だったかな?言うじゃないか、決戦の前だよ、邪魔すんじゃないよ、私が若い頃はそりゃもう、父ちゃんと・・・・・・」

頭をさすりながら抗議の声を上げるキバ。

「あーわかったわかった、わかったから、その話はまた今度にしてくれよ!・・・・・・準備は整ったか?赤丸」


くぅ~んと返事を返すキバの愛犬。


「ほう、赤丸も成長したね、これだけ差がある相手でも萎縮しないなんて、ねぇ黒丸」


わん、と返事を返す片目のツメの愛犬。


「よし・・・・・・じゃぁ行くとするかね、あんたらも、覚悟は決ったかい!?」


「「「応!!!」」」

その場にいる多数の忍び全ての目に、決意が漲る。


「・・・・・・少し待てば援軍が来るって言っていたね、あの風影様だってよ、ハヤテ」

「そうですか・・・・・・彼ならば頼もしい事ですね」

「ああ、キバあんたと同年代で、堂々と里の頭を張っている子だよ、あんたも見せてやりなさい・・・・・・木の葉の力を、さ!」

「・・・・・・任せろって、母ちゃん、俺は、やってやるよ・・・・・・なぁ赤丸」

うぉん!

力強く咆える赤丸。




九尾との接敵まで、後、数分。





南の要所。
―――油女家。


「・・・・・・来る、な」
「・・・・・・油断するなよ」


父親の言葉に頷くシノ。



「・・・・・・行くぞ、九尾を駆逐する」


静かにされど力強い言葉に、周りの忍者は力強く無言の返事を返す。


迎え撃つ気など更々存在しない。

暴虐の王が、迫る。










北の要所。

―――日向家。


北が重用視されていたのは、里から最も遠いこともその要因の一つとしてあげられる。

何が起こったとしても、援軍が到着するのは最後になってしまう。

だが、日向家には、そんな心配をしている者など、存在しない。



「――――――来ます、恐ろしい勢いで、迫っています」

ネジの白眼が、遥か遠くに位置するはずの九尾の姿を確実に捉えた。

「・・・・・・言われたとおり、大量の罠を仕掛けてきたけど、敵が九尾じゃ・・・・・・あんまり意味なさげ、ね」

ネジに寄り添う形で立つテンテン。

「・・・・・・父上」

不安は含まれてはいない真摯な眼差しでヒアシを見つめるヒナタ。

ヒナタのみ為らず、その場にいる全ての忍びの視線がヒアシに注がれる。


「・・・・・・かつて、十数年前、九尾はこの里を完全に立ち直れない程に蹂躙した・・・・・・そして、今再び、今度は数を増やしかつての力のまま再度進行しようとしている。――――――それが、どうした、昔、情けないことに、我が日向家は、九尾を抑えることも出来なかった」


四代目の犠牲で防がれた木の葉の里完全なる崩壊。

当時参戦していたヒアシ、その時の情景が頭に浮かぶ。
その手が強く、握りしめられる。


そっと、その手を握る小さな手。


「・・・・・・ハナビ」
「父上、今は、私が、姉さんが、ネジ兄さんが、それに沢山の頼れる味方が居ます、一人で背負い込む必要は、ありません」

ひまわりのような自信に満ちあふれた笑みを浮かべるハナビ。
「そう、だな・・・・・・許せ」
「え?」


ガスッ


同時に響く二つの音。

ヒアシがハナビを、ネジがヒナタを、それぞれ昏倒させる音だ。

「すみません・・・・・・ヒナタ様」

倒れ込むヒナタを抱えるネジ。

「何してるのよ!」

当然抗議するテンテン。

テンテンに差し出されるヒナタとハナビ。

「最初からこうするつもりだった、ですよね宗家」
ネジの言葉に静かに重く頷くヒアシ。


「すまぬな、テンテンとやら、悪いが二人を中央に運んでくれまいか?・・・・・・此処は激戦になる、二人は戦いに巻き込めぬ」

「私は!」

「悪いが、納得してくれ、テンテン、・・・・・・同じ班として、仲間として頼む・・・・・・お前達には生きていて貰いたいんだ」

ネジの言葉に何も言えないテンテン、黙って二人を受け取ってしまう。

日向家の白眼は全てを見通す、敵の強さも、実力差も。


「・・・・・・勝ち目が無いってことなの?」
テンテンの弱々しい声。

ネジはされど、確かに首を横に力強く振った。
「違う、そうじゃないんだよ、心おきなく戦うために、二人は邪魔なんだ・・・・・・それにヒナタ様は、待っている奴がいる・・・・・・春の国で俺達と共に戦ったナルトだ、ヒナタ様はこんな所で果てていい方じゃない、はは、何でもあの下忍は将来火影になるようだからな、ヒナタ様はその奥方になられる予定だ」


場に静かに蔓延する微笑み。


その場にいた全員が、絶対に諦めないナルトの姿を思い浮かべた。


「何、敵はたかが九尾、日向家の敵じゃない、木の葉にて最強は日向、そうですよね、宗家」

「・・・・・・そうだ、全てを見通す日向の白眼、我らに敵は無し、さぁ行ってくれ、直に奴は来る」

「でも・・・・・・」

「・・・・・・頼む、行ってくれ、テンテン」

プライドの塊でもあるネジが、頭を下げる。

テンテンは言葉を発することが出来ず、体を震わせながら、その場を後にした。





「・・・・・・ネジよ」


テンテンの姿が見えなくなり、言葉を発するヒアシ。

「何ですか?」

「負けられぬぞ、絶対だ、・・・・・・お主とあの娘の子供を見るまで、儂は死ねんな」

顔を薄く赤くするネジ。
「何を言って居るんですか!」

薄い笑いを浮かべ、それ以上言葉を重ねないヒアシ。
「さて、冗談は此処までにして・・・・・・行くぞ、諸君!付いてこい!」


日向家、出陣。

最大戦速で迫る、最強の妖獣、九尾の妖狐。

日向家の白眼は、迫る九尾の姿を確実に捕らえていた。










*油女家の会話が・・・・・・書けねえです、でも何となくこれで合っている気もするんですよね、言葉が無くても通じる間柄っていうか*



[4366] 世界大戦、その五、木の葉大決戦、上。
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/01/19 14:03



それが生まれたのは、伝説の時代にまで遡る。


人が妖獣が、まだ分け隔て無く生活していた頃の話。


現代と為ってしまえば、もう考えられない話だが、当時の人間は、妖獣と会話が出来ていた。


妖獣の中でも一際大きい力を持っていた獣達、彼らのことを総じて尾獣と呼ぶようになるのは、人と妖獣の間に対話が無くなってからの事だった。


・・・・・・妖狐一族、その主であり、最高権力者、妖狐の中でも桁が違う力を誇っていた、類い希なる王の中の王――――――その者の名は、九尾の妖狐。

人からも他の生き物からも、畏れと尊敬の念を持たれていた其れは、本来は心優しきアヤカシの王様だった。



で、なければまだ争う力を持つ前の人間が、強大なる妖獣達が闊歩している時代の中で生き残れてきた理由がない。

尤も、領土で他と分け隔て、他を支配すると言った、征服等の観念を持ったのは人が最初だったダケの話。
当時、一匹の尾獣が、その気になれば、力を持たぬ人たちは、容易くその姿を世界から消していただろうということは、想像に難くない。

このNARUTOの世界でも、それは例外ではなく、人が妖獣と対抗できる力を手にし、引いては妖獣を支配する力を手にしたときに、妖獣と人の間に存在していた細くとも、危うくとも、残っていた最後のつながり、絆は、完全に断ち切られる羽目となる。



人柱力――――――彼ら強大なる尾獣達の力すらも戦争に利用しようとした人間が生みだしたエゴの塊。


其れを、作り出した人間が、其れを、作り出そう何て考え出した人間が存在したことが、正しくこの世界に於いて、人間の全滅が決るかどうかの真の舞台の始まり。

滅びることを世界が選択することは、最も正しい世界の選択とも言えるのだ。












怒りに燃える九尾は、力を誇る、マダラに植え付けられた偽りの怒りだが、其れは正しく本来の力を完全に発揮するに至る。


何十年前、初代火影とうちは一族創設者、伝説のうちはマダラの戦いにおいて、九尾は初めてその使役権を強制的に奪われた。


何者にも従わない、誇り高き、妖獣、尾獣の王、強制的に使われたその原因は、人が生みだした至高の瞳術、万華鏡写輪眼。


未だ技術も完成に至っていない為、九尾は本来の力を発揮することは能わず、マダラもまた、初代火影の忍びとしての完全なる格の違いで、敗れ去った。


二度目、十数年前、再度九尾襲来、更なる力を手にした復讐に燃えるマダラの力により、木の葉の里は滅びの淵に差し迫った。


其れを止めたるは、稀代の天才忍者にして、当時最強を誇る木の葉の中でも格が違う、最強の忍び、四代目火影、波風ミナト、マダラは二度、火影によってその野望を打ち砕かれる。



そして、――――――三度目、三度マダラは木の葉に仇為す、予定外の出来事により、更に強化されてしまった木の葉を、それでも完膚無きまでに叩きつぶすためにマダラはひたすら暗躍した、ただ単に九尾をぶつけるだけでは、木の葉は防いでしまう、そもそも、忌々しき四代目波風ミナトの手により、九尾は容易く御せる者では無くなってしまった。


何処の馬鹿が、何処の天才が考え出したのか知らないが、存在してしまった、「人柱力」、人が考え、人が使役した、人を、「兵器」に仕立て上げる最悪にして最高の方法。


チャクラに溢れるその行動は全てを滅ぼす力を、使用者に与える、精神が弱い者は尾獣に乗っ取られ、徒に滅びだけを選んでしまうのだが、人としての器がでかければでかいほど、その力は有効に使われる。


稀代の天才忍者、四代目火影、波風ミナトが見つけ出した、当時最良の封印方法、彼は、それを自らの愛息に施した、絶対に死ぬ定め、もう二度と助けてやれない息子のために、彼はどんなことを考えたのか、死者は何も語らない、果たして術式がうまく息子に合ってくれるのか、それとも・・・・・・息子が尾獣に取り込まれてしまうのか・・・・・・考え得る限り最善の注意を払い、行われた術式は、悲しき、されど強き子供を木の葉の里に生みだした。


絶対の孤独に晒されし、ナルト。


周りの大人からは冷たい視線で見られ、やもすればそのまま里の最大の敵となってもおかしくは、なかった。


だが、ナルトは、挫けない、泣かない、へこたれない、本当は分かっていた、自分が嫌われている事は、誰よりも周りの視線に、周りの感情に敏感なのは子供だ。


生まれたときから、三代目の努力が実り、誰しも絶対に狐とは口にはしなかったが、空気は伝わる、親の視線はその子供に伝染する。


何処でだって一人きり、強大なる力を身にした者に起こってしまう最悪の境遇。
争い無き世界では、過ぎたる力は、総じて白い眼で見られてしまう。

誰しも強くはない、自分よりも明らかに強い者に対して、小さき弱き人間が取る行動は―――――。


人柱力の性格が歪んでしまうのは一重に人の所為だ。



それでも、




「おい、お前そんなところで何してんだよ」

ぶらんこで俯きながら、周りを見ようともせずに佇む少年に掛けられる声。

「・・・・・・?」

自分に声を掛ける人間が居るとは信じられず、子供の癖に無邪気に振る舞うことが出来ない人柱力の少年、ナルト。

「・・・・・・なんだよ、喋れねえのか?・・・・・・ちっ、何て眼をしてやがる来いよ、あまりにつまらなそうだから混ぜてやるよ」


幼いながらも天才の片鱗をすでに隠すことを覚えていたシカマル。

偏見を持たない子供達は、存在していた。


シカマル、チョウジ、口では言い争うが、何だかんだ同等と見ているキバ、相手がどんな奴であれ関係ない、無口なシノ、男の子はそんなものだ、そいつがどんな奴であれ、共に遊んで楽しければ問題が無い。皆がそれぞれ木の葉きっての名家の子供というのも、多少為らずとも影響していたのだろう、彼らの親は、身を挺して里を救った四代目の子供に対し、辛く当たることは絶対に出来なかったのだから。


そして―――――


「こら!また火影様の顔岩に落書きしたな!!!」


大人の中でも偏見を持たない者は、存在する。
自分の中の得体の知れない者を見ないで、自分だけを怒ってくれる人間がいた。


イルカ先生、それに三代目の爺っちゃん・・・・・・。


卒業試験、ナルトは急いでいた、緊張しすぎて眠れなかった反動が、朝に来てしまっていた。


三代目の命により、暗部の見張りは常時ついてはいたのだが、彼らは極力里の者の前に姿を現すなと仰せつかまつっている、ナルトに対する悪意の最後の防波堤、里の人間に対する体面までも考えなければいけない、三代目の苦肉の策だ。



アカデミーの道のりで、急いでいて見えなかったのだろうか、いや、そんな事は絶対に無い。忍者の卵だといっても、もうすでに注意力等は下忍となんら遜色が無いのだから。



ドンッ
「いてぇぇえええええ!!」

何かを蹴飛ばす音と共に現れる、今まで一度も見たことが無い見知らぬ子供。




世界が変わる決定的瞬間。


ナルトは自らよりも小さき、へんてこな力を使う少年に出会った。









「―――――ナルト、ナルト!」

ナルトは自らの名前を呼ばれ、ふと顔を上げた。

其所には医療班見習いのサクラが存在していた。

「どうしたの?何処か痛むの?」

アカデミー時代、憧れていた、同じ班に為ったときは天にも昇る気持ちになった桜色の髪を持つ女の子。

「・・・・・・いや、俺は大丈夫だってばよ、エロ仙人はどうだってば?」


二尾を壊走させ、取り込んだナルトは、少しずつ九尾のチャクラが戻りつつあった。


自らの決定的なミスで、暴走させたあげく、マダラに奪われてしまった九尾の力。


―――――もう、絶対にあんな事はさせない、―――――もう、あんな無様なことは繰り返さない。
ナルトは疲れを癒しながら、変わり続ける戦況を睨み続ける。








結界の中核を為すのは、結界石だ。
それは初代火影が作り上げた、九尾の人柱力の力を抑える今は五代目火影綱手が身につけている結晶石を応用した逸物。


施設に安置されていたそれを、今はそれぞれの宗家が身につけている。
宗家程のチャクラの持ち主でなければ、結界は作動しない、

ゆえに、四方の宗家が死ぬとき、結界は壊れる、しかも一つ壊れた時点で終わり。






―――――南の戦い。


ゴォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!


まずは九尾の渾身の吐息から戦いは始まった。

「当たる訳が無い・・・・・・駆逐しろ!」

神速の吐息を危なげなく避ける忍び達、当たってしまったら、死ぬだけだ。
これ以上単純な結果は予想できない。


油女家に伝わる、秘術、虫使役。
「秘術・蟲玉」

シノと父のゲンの呟きが重なり、他の油女に連なる者達も自らが擁する蟲達を九尾に送り込む。


九尾に纏わりつく、蟲達、容赦なく九尾のチャクラの削りに掛かる。

人に対しては、これ以上ないほど有効なその手段は、されど、九尾に対しては決定的に破壊力不足。


超速再生の域に達している九尾の能力。
蟲に削られた体がみるみる回復、否、復元。

軽く口を歪ませ、禍々しく笑った其れは、ある種の攻撃の前兆だった。


「避けろ!」


距離を置く全ての忍び、だが九尾の発光攻撃は、範囲を広げる。


「・・・・・・蟲壁の術、改!」


ゲンの声が響き渡り、大量の蟲が忍び達の壁となり、九尾の攻撃を防ぐ。



ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウウウウウウウウウ



赤い色をした風が、場を支配した。
暴れ回る高速移動の九尾。


ぼとっ・・・・・・ぼとっぼとっぼとっ・・・・・・。
崩れ落ちる数多の忍び。


「瞬身の術の応用だと!?・・・・・・馬鹿、な・・・・・・十数年前は・・・・・・こんな技・・・・・・使わなかったはずだ」


かろうじてシノを抱えて、九尾の攻撃を避けられたゲン。

被害甚大、南にいた忍びの大多数が先程の攻撃で命を落とした。



再度口を開き、力を溜め出す九尾。

ゲンのシノのその場に居る生き残りの忍び達の体に力がこもる。




九尾が妖獣の王たらしめている最も重要な能力は、成長すること。
九尾の気持ちとしては、不本意なのかも知れない、だが、かつての木の葉との戦いで、そしてナルトの中で経験した事は全てこの戦いで遺憾なく発揮されている。


防ぐ手だてはもう、存在しない。

―――――死が、迫る。


「千鳥刀!」



白い閃光が、九尾の背後から近寄り、その頭に渾身の一撃を突き刺した。

「・・・・・・カカシ」


蟲一族の中核を為す総取りの一言と共に、場に安堵の空気が流れる、が、


「駄目だ、逃げろ!」


カカシの攻撃は致命傷にいたらず、その場を離れるカカシ。

一撃で仕留めるはずだった、

だが、一度九尾を葬り去ったときに使ったチャクラの影響、及び定めが付かず急所を狙えなかった事で、カカシの攻撃は微妙に弱点をずらし、命を奪うにはいたらず。



マダラに操られている九尾は、声を発しない。
ただ、ただ嗤うだけだ。



ゲンの呟き声はカカシにもカツユを通じ届いていた。

瞬身の術を使い、機動力の要の足を切り裂いたカカシ。

刹那の時間を稼いだその行動が、蟲使い達の行動を助け、攻撃に転じさせた。


「奥義・大蟲玉!」


九尾が、初めて防御に廻る、蟲使い達の現存するチャクラの殆どのチャクラを使った攻撃は、当たれば九尾を殺し尽くせるはずだった、今はカカシの御陰で足を奪った状態、外れる道理は無い。


が、


自身のチャクラを自ら削り、分身の術を生みだし、身代わりとする九尾。

「ったくよ、化け物がそれ以上成長したら反則でしょうが!!!麒麟!!!」


雲も存在しない天に向かい、チャクラを放出し、無理矢理黒雲を作り出すカカシ、手に持つ父親の形見のチャクラ刀に、全ての指向性をセット、


違わず、雷がカカシの持つチャクラ刀に集約する。


「真・麒麟千鳥刀・・・・・・足止め頼みます!」


カカシの写輪眼が、九尾の弱点を探り出す。


「合同奥義・蟲大軍、行軍!」


生き残り全ての蟲使いのみならず、全ての南の忍者のチャクラが集約、激しく再生を繰り返す九尾の動きを完全にその場に止める。



ぐぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!



今までの最高のチャクラを放出し、その場から逃げ出そうとする九尾。


限界まで使ってしまったチャクラに伴い、総チャクラ量が少ない者から次々に脱落して行ってしまう。

「速くしろ!!!!!!もう限界だ!!!!!!」
いつもならば絶対にあげない大声を、響き渡らせ、カカシを焦らすゲン。



仲間の状態なぞ、知り尽くしているカカシは、それでも時間をかける、絶対に外せない一撃だから。
「・・・・・・見つけた!!!!!再度去れ!忌まわしき記憶と共に!堕ちろ九尾!」


体全体を白いチャクラで装飾し、かつての最速四代目火影と同等の速度を手にしたカカシは、親友オビトの遺産、写輪眼を用いて、父親の遺産の刀に今の自分の限界まで込めたチャクラを帯びて、九尾の弱点たる、額に深々と突き刺した!!!!!



ぐぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお


最後の断末魔をあげ、崩れ落ちる九尾の一体。
ピシッ


カカシの刀に掛かる負荷は計算し尽くせない、罅が入ってしまった刀を収めるカカシ。


その場に倒れ落ちる全ての忍び、明らかなチャクラ切れだ。

もそもそと満足に動けない体で、懐から兵糧丸を取り出し、かみちぎるカカシ。
「・・・・・・ふぅ、任務完了、南は終わった・・・・・・北に向かう」

「カカシ」

「ん?なんですか?」

「・・・・・・礼を言う、我らだけでは防ぎ切れなかった」

いつもの表情を浮かべるカカシ。

「気にしないでください、仲間じゃないですか、私もゲンさん達のサポートが無ければ倒せませんでした・・・・・・では、もう分かっていると思いますが、結界の維持お願いします・・・・・・万が一崩れた場合、への三、だそうです」

カカシの言葉に頷くゲン。
「わかった、最後までこの結界は俺が護り尽くす、行け、カカシ・・・・・・親父を越えたな」

不意打ちを食らったような表情を浮かべるカカシ。

「・・・・・・そうですか、ありがとうございます」

すぐさま笑顔を浮かべ、カカシは動き出した、まだまだ里の脅威は去っていない。








―――――西の戦い。

十数年前の九尾との戦い、あれを知る人間は、まだまだ大量に生き残っている。


四代目の決死の献身の御陰で生き残った者達ばかりだ。


命を落とした者も大量にいる。


あの戦いの爪痕は決して消えない、建物が直っても、負った傷が治っても、人の心に残った戦いの爪痕は、消えやしないのだから。

「父ちゃん・・・・・・先代・・・・・・あんた等の仇、何の因果かこんな所で取れそうですよ」


祈るツメの胸に飾られているは、実力半減の効果が込められた結界を維持するための結界石だ。

其れは、ツメのチャクラに反応するだけで、チャクラを使うと行ったことは無かった。プロフェッサー足る三代目が、考案したもので、その効果はすでに実証されている、全滅戦争、それに今も。


神速で向かってくる滅びの体現者、最悪の尾獣、九尾の妖狐。

かつて、あれと対面した者悉くが死を迎えた。


戦った者は多くても、対面して生き残った者は、極わずか。

ツメは先代と夫に助けられ、その命を救われた。


祈りを止め、ツメは眼を見開いた。
傍に連れ添う黒丸。


左を見れば、病が治り、めきめきと頭角を現してきたハヤテとその恋人にして暗部の一員であった夕顔。


右を見れば、頼もしく成長した愛息、赤丸と共にあるキバ。


後ろを見れば、九尾の一撃を危なげなく防いでくれた頼りがいがある、木の葉の忍び達。


「さぁ・・・・・・・・・・・・行くよ!化け物退治だ!」


「「「「「「応!」」」」」」


配置につく忍び達。


ツメはふと震えているキバに気付いた。

ぽんっ


頭を撫でる。

「いいねぇ、武者震いかい・・・・・・男も度胸だよ・・・・・・絶対に死ぬんじゃないよキバ」

顔を上げ、母親の顔を強い眼差しで見つめるキバ。

「・・・・・・任せろって!」



「九尾の吐息が来ます!」


斥候の声が響き渡る。


「散っ!」


神速の吐息を避けきるその場全員の忍び達。







血みどろの戦いが始まる。





「三日月の舞!」
ハヤテの攻撃が九尾を翻弄する、

ザクザクッ


夕顔の援護も的確だ、


「二重牙通牙!」

機動力を生かした攻撃、ツメと黒丸、赤丸とキバ、二組が前後に挟まっての攻撃はものの見事にヒット、されど九尾に痛痒を与えるにはいたらず。



暫くは的を絞らせない犬塚家の作戦は有効に働いた。

九尾が本気を出す前は。


九尾は成長する、九尾は学習する、今は倒された分身がナルトに吸収されるため、経験値は蓄積できないのだが、その場での戦いの経験値は蓄積する。



何より、他よりも動きが若干遅い我愛羅、彼が到着するまで犬塚家は止めを誘うとは考えていなかったのが、後の悲劇に繋がってしまう。


九尾に学ばせすぎた。



「母ちゃん・・・・・・なんかおかしいぜ!」

「わかっている・・・・・・おっ来たね風影!」



死闘は死闘だった、油断するはずが無い忍者達、だが、だが、九尾を宿していたナルトと同様の人柱力である、我愛羅の姿を認めた時、経験が浅いキバは少し、ほんの少し心を躍らせてしまった。


戦いの蓄積から、弱いところから狙え、と言う方向に進化したこの九尾は、自らが定めた定理に従う。



すなわち、一人に対してのキバに対しての全力攻撃。

ツメが九尾の変貌に気付いた時は遅かった。

自身を鋭敏化させつくした九尾は、それこそ最速の四代目を越える速度で、キバが絶対に避けきれない速度でキバを襲った。


「先代・・・・・・貴方の元へ行けそうです・・・・・・」


誰よりもこの場で強かったツメが気付けたのも、ツメが間に合ってしまったのも、母親としての感情が出てしまったのも、もう後のこと。


ドンッ


キバを強引に押しだし、キバの代りに九尾の攻撃を受けてしまったツメ。


パリーン


割れるツメの首から提げていた結晶石、同時に広がるツメの大量の血。
亡骸を粉砕しつつ、動きを止めない九尾の動きが、ふと止まった。

結界が壊れ、動きを止めチャクラの総量が増し出す九尾。


「夕顔、併せろ!!!真・満月の舞!!」

「くっ巫山戯るなぁああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!最硬絶対攻撃・真・守鶴の矛!!!」

「母ちゃぁああああああああああああああああああああん、行くぞぉぉぉおおおおおおおおお、赤丸!黒丸!犬塚流・人獣混合変化・参頭狼!真・牙狼牙!!」



ガガガガガガガガガガガガガガドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴン!!!




強大にして巨体の九尾の姿を見誤る事は無く、力増大の為、動きを止めていた九尾に完全にそれぞれが持つ最大最高の攻撃がヒット!!!




ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!



断末魔をあげ、真価を発揮できずに終わる、結界を壊した九尾、尾となり、それはナルトへと向かう。


バタッ


ぎりぎりまでひねり出したチャクラの影響で、その場に蹲る忍び達。


「・・・・・・行くぞ、決戦はまだ終わっていない」

蹲りながら、我愛羅が呟く、中央には、彼の実姉、テマリもいる。

「・・・・・・はははは、他の里のそれも風影様にそんなことを言わせていては・・・・・・ツメさんにまた怒られちゃいますね・・・・・・行きましょう、キバ君、まだ、くそったれな戦いはこれからです」

疲れ切った声で、されど確かな声でハヤテがキバに声を掛ける。


のそのそと起き上がる全ての忍び。


「皆、辛いだろうけど、・・・・・・行こうぜ、こんな所で俺も泣いてなんかいられない・・・・・・ナルトの馬鹿も頑張っているんだ、俺が脱落なんかしていられねえよな・・・・・・力を貸してくれ、我愛羅、それにハヤテの兄ちゃん」

「ふんっ、元より最後まで付き合うつもりだ・・・・・・マダラは放っておいていい相手じゃない」

ぽんっ

夕顔がキバの頭を撫でる。
「じゃぁ行きましょうか、ところでハヤテ、疲れてなんかいないわよね?」

「ええ、そんなこといっていられませんよね」

それぞれ兵糧丸にかじりつき、戦いの準備を始める忍び達。




「悪い、西の結界は壊れた、これより残存兵力全てを纏め、中央に向かう、―――――これでいいんだよな?シカマル」


シカマルの声がキバに届き、キバ達は行動を開始した。

西の人的被害は、少ない、ツメの作戦が功を為したためだ。












―――――東の戦い。


「全くよ、何でこの短い生涯の内に二回も九尾なんぞとやり合わなきゃいけねぇんだよ、お前等もそう思わないか?」


完璧に計算尽くされた陣の中心で、シカクが仲間のチョウザ、イノイチに語りかける。

その眼が後ろに向く、静かに二刀を構えるのは鬼人、再不斬だ。

東は、北についで二番目に遠い位置にある。

ゆえに、再不斬は九尾よりも速く着くことが出来た。
ただ、行きずりに一撃でも加えようと考えていたのだが、天高く舞う九尾を捉えることが出来ずに、再不斬は東の結界石、必ず九尾が到達する場所で敵を待つ。


鬼人が小さく呟いた。

「来るぞ・・・・・・」


何気ない一言が零される。


しゅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ

淡い光を発していたシカクの首飾りが、突如光を失った。


「・・・・・・結界が、壊された」
シカクの声が静かに響き渡る。


「ちっ、最低のタイミングじゃねえか・・・・・・もう此処に止まる理由もねえな・・・・・・あれは、俺の獲物だ・・・・・・もらうぜ!」


再不斬の体から光が放たれた!


変貌を遂げる大蛇丸の最高傑作。

緑色の体皮、金色の角、漆黒の翼。


顔に薄い笑いを張り付かせ再不斬は、白の声を聞いた気がした。


「・・・・・・もう、再不斬を縛る物はありません・・・・・・が・・・・・・もう再不斬さんの意志で変身した場合・・・・・・二度と、元に戻れません」


「・・・・・・知るかよ・・・・・・俺は、何処まで行ったって俺だぜ・・・・・・なぁ白」


最強の人型キメラは、最強にして万全の九尾に単身立ち向かう。



ゴォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ



古代竜の神のブレスと、九尾の赤色の吐息がぶつかり合う。


ざんっ!


九尾の尾による、全てをなぎ払う斬撃と、再不斬が手にした首切り包丁が打ち合わさり、再不斬の首切り包丁が形を失い、滅びた。


ゴォォォォォォォォォォォォォォォ


再不斬が放った仮想隕石の群れと多数の雷土の群れが、九尾を襲い尽くすが、瞬身の術で避け、代りに再不斬に致命傷を与える九尾。


すぐさま再生、するが、胸に位置していたロッティングコープスの体皮並の強度で覆われていたはずのコアの損傷は回復できず、崩れていく再不斬の体。


接近してきていた九尾に、弱点であると知ってか知らないでか、何の音にも聞こえない叫び声と共に九尾の額に鮫肌を奥深く突き刺す再不斬。


零距離からのオークキングの力を使った渾身の素手による一撃が、鮫肌の柄を折りつつ、深く、更に深く九尾の額に食い込む、続いて零距離の古代竜の神のブレスが、再びを掴みあげようとしていた腕を消滅させる。


崩れかけの翼をはためかせ、更に空に飛び上がる再不斬。


弱りかけの九尾が下から再不斬を睨みあげる。


形だけの再生を止め、再不斬に止めをささんとばかりに、放ちかけの九尾の吐息が中断される、


「・・・・・・影真似の術」


シカクの術が九尾を捉え、動きを止めていた。

すぐさま溢れんばかりのチャクラでシカクの術を解除するが、その刹那が、もう遅かった。


重力まで利用し、全ての「主」の力を解放、反動で完全なる火の玉と化した再不斬は鮫肌を目印に、九尾の額から穴の穴まで、一気に突き抜ける。



グォォォォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ大オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!




断末魔をあげ、崩れ去る完全なる九尾、尾と化したその姿は、やはりナルトの元へと向かう。


「・・・・・・ちっ・・・・・・この俺が・・・・・・自己犠牲・・・・・・か・・・・・・」


崩れ落ちる再不斬の体。
その眼は自分の所に駆け寄ってくる木の葉の忍びを写していた、どいつもこいつもろくでもない自分の事を本気で案じている。

「・・・・・・信頼ってのは・・・・・・いいもんだな・・・・・・なぁ・・・・・・白」


東の忍び達が駆け寄るも先に、再不斬の体は塵と化し、風に紛れて消え去った。


「・・・・・・東、再不斬以外、損傷無し・・・・・・中央に向かう」


重々しく呟いたシカクの声が、シカマルに届く。



強力すぎる助っ人の御陰で、全く疲れていない東の忍び達は、その足で中央に決戦場へと向かった。









―――――北の戦い。


シュウウゥゥゥゥゥゥゥ


日向家宗家、ヒアシが首に付けていた首飾りが静かに光を失い、効力を完全に失った。


「・・・・・・面白い・・・・・・全力の争いと言うわけだな」


気合いを入れ直す日向家の面々、どの眼にも決死の決意が込められていた。

が、北に辿り着く前に、日向の白眼が捉えていた九尾は反転、結界の破壊が為された今、九尾は結界にもうこだわる必要が無い。




完全なる頭の殺害にシフトした目的に行動を伴わせ、九尾は動き出した。




「巫山戯るな!行くぞ!皆の物!決戦は中央である!逃げ出した奴なんぞ一蹴にしてしまえ!」



ヒアシの声が、北に響き渡り、全ての忍びが反転した九尾を追い出した。



「北、被害零!これより九尾の追撃に入る!」

怒りに打ち震える万全の日向家が、最後の決戦場に走り出した!






光輝く尾の一つが、再度ナルトに入り込む、続いてもう一つ、これで、五尾。

もう一つ、・・・・・・これで、六尾。

「・・・・・・誰かが、倒してくれたんだってば・・・・・・まだ負けない、木の葉は絶対に負けない」

誰にも聞こえないような声で小さく呟くナルト。

ふと頭をよぎった昔のことに少し気を取られつつ、ナルトは再度戦う準備を整える。

そんなとき・・・・・・

「結界が、壊された」

カツユを通じてもたらされる最悪の報告、全員にくっついているため、同時に耳にしてしまった最悪の報告。

思わず俯いてしまうその場の者達。




「下を向くな・・・・・・まだ、戦いは終わっていない・・・・・・カカシ先生だって、エロ仙人だって、それにシカマルだってまだまだ諦めていないんだ!」

誰よりも諦めることをしない男、ナルト、その声はその場の皆に、里の皆に響き渡る。

「エロ仙人、行くってばよ、敵が強くなっちゃったなら、それ以上に頑張らなきゃいけない、そうだろ?」

起き上がる、自来也、顔には笑顔を浮かべる。

「・・・・・・ああ、そうだ。その通りだ、ミナトの子、皆、忘れてはおらんだろうな、四代目火影波風ミナトを、・・・・・・あやつが残した一粒種を、かつて最強の九尾を身に宿し、復活した悪夢の四代目を葬り去った男を、里に希望をもたらした男を、忘れてはおらんだろうな!」


こんな真似は自分の性分ではない、自来也はそうは思っていたが、今こそやるべきだともわきまえていた、この最悪の時に、気持ちで負けてしまえば、完全に全滅だ。

自来也の声は、カツユを通じ、生き残った全里の人間に繋がる。


「そうだ、俺の名前は、ナルト、これから九尾の馬鹿を取り戻す男だ!一度は俺が馬鹿やっちまったせいでうばわれちまったけれども・・・・・・もう、あんな真似は繰り返さないってばよ!」


ナルトの声も繋がる、里の忍びの口元に浮かぶのは、微笑だ。


あのいたずら小僧が、でかいことを言って居るぞ、俺達が落ち込んでてどうする。



俺達の戦いはまだまだこれからだ!!!!




















*ジャンプの打ち切りっぽく締めました。銀魂はうまいよなぁ*



[4366] 世界大戦、その六、木の葉大決戦、幕間。
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/01/20 10:00

木の葉前線司令室。

其所に一つの気になる情報が舞い込んできた。

上層部にあげられた情報は、全てのダンジョンが、何故か姿を消した、というもの、九尾の事で精一杯の上層部は、その真相を確かめる余裕は何処にも無かったため、流していたが、それは一つの事実を、示していた。

――――――世界が、正しく、一人の少年に対し、牙を剥きだしにした。













二人の姉妹が、一人の少女に抱えられて木の葉中央、避難所についた。


其所にたむろしているのは一般人は元より、チャクラの使いすぎで満足に動けなくなってしまった忍び達もだ。



「そうだ、俺の名前は、ナルト、これから九尾の馬鹿を取り戻す男だ!一度は俺が馬鹿やっちまったせいでうばわれちまったけれども・・・・・・もう、あんな真似は繰り返さないってばよ!」


「・・・・・・ナルト、君?」


カツユは既に回復の役割を果たせない。
だがその通信機能はこれ以上ないほどの力を持って木の葉の役に立っていた。


ナルトの大声が、意識を失っていたヒナタの耳にも入り、懐かしき、愛しき人の声に反応する体。


「姉さん・・・・・・事は緊急を有します」

見ると実の妹、自らよりも実力が上の妹も、同じく目が覚めていた。



「・・・・・・ちっ、俺としたことが・・・・・・状況は!?」


姉妹の傍らで目覚める、ナルトの仲間、サスケ。


「まぁまぁ落ち着きなってゲスチン野郎、今慌てたってどうにもならないんだから」

仮面を付けた同年代と思われる少年が、サスケをなだめる。



「・・・・・・ゲスチン」

顔を真っ赤にする下ネタに全く慣れていない姉妹。


「・・・・・・?ああ、ごめんごめん、女の子も居たのか、君が暴れるからだよサスケ君、彼女達に謝りなって、優秀な血継限界を持っているのにも関わらず無様に負けたうちはの短小野郎」


「・・・・・・お前、死にたいのか!?」

サスケの眼が変化しかける。

仮面を被った少年は、笑いながら絵を描いた。

飛び出したるは蝙蝠が二匹。


サスケの眼に覆い被さり視界を奪う。

「だからー、そんな簡単に頭に血が上っちゃあのマダラには勝てないよ、一度負けてるのに、今生きていられるのはマダラの遊び心からだってこと自覚していてほしいなぁ、忍びは忍びらしく、冷静に行こうじゃない、わかるかな?うちはのびちグソ野郎」


絵で出来た蝙蝠を払いのけるサスケ、その瞳は、通常の物だった。


「・・・・・・お前等なら勝てる術を、知っているのか」


「はははははは、「根」を嘗めてもらっちゃ困るなぁ、うちはの坊ちゃんには知らない世界があるんだよ・・・・・・どうする?僕らの手を完全に使うかい?覚悟があるなら、僕らは今まで以上に全面的に協力するよ、マダラが最大にして世界の敵なのは規定事項なんだ、九尾は、ナルト君達に任せて、真に美味しいところを僕らでかっさろうじゃない、でも無駄に高いそのプライドは捨てて貰うからね、卑怯っていうか裏を掻いてこその忍者でしょ?誇り高きうちは一族には理解できないかも知れないけどね」

ぽりぽりと、仮面で覆われた頬をかく暗部の少年。


「・・・・・・わかった、兄さんの仇だ、俺の小さなプライドなんぞ、捨ててやる」


ぱんっ


暗部の少年は手を叩き、サスケに手を差し出した。

「よーし、そう来なくっちゃ、ちなみに僕らには名前が無いから、好きに呼んでよ、同志、君がうんと言わなきゃ、無理矢理従わせていたんだけど、その必要は無くなったね・・・・・・じゃ、行こうか、まずは、マダラの真実を突き止めなきゃ・・・・・・そうだね、そっちの白眼の女の子、どっちか付いてきてくれないかな?君達の白眼は、解析に使える、皆北に出張っちゃってどうしようかと考えていたんだけど、こんな所にいるなんて、運がいいね、どうか、木の葉の為に協力してくれないかな?」


サスケの手を握りしめ、その仮面に覆われた顔を後ろに回し、白眼の姉妹を見据える暗部の少年。


「ヒナタとハナビ、か。こんな所で何してんだ?」

サスケは初めて二人の存在に気づいた。


「私達は・・・・・・確か、北で・・・・・・」
「父上の手を握ってその状態で、意識が無くなった・・・・・・」


「まぁそこら辺の細かい話は後でしてくれない?はい、か、いいよ、で答えてよ」

サスケは暗部の少年の手をふりほどき、二人の前に立つ。

「すまん、協力してくれないか?マダラを殺さずして木の葉に安寧は絶対に訪れない、身勝手な願いかもしれないが、此処で逢えたのも、何かの縁だろう・・・・・・頼む」


深々と下げられるサスケの頭。


「・・・・・・私が行きます・・・・・・姉さんは、あの人の所へ行って下さい」

「何を!?」

微笑むハナビ。

「もう、皆にバレバレですよ、分かっていないのは姉さんだけです、では、行きましょう」

近づくハナビを認める暗部の少年。

「流石サスケ君、じゃ行こうか」


さらさらっと絵を描き、実現する。

描いたのは一頭のドラゴン・・・・・・古代竜。


「・・・・・・昔、空を舞っているのを見たんだよね、奇麗だったなぁ・・・・・・さぁのってのって!急ごうか、ぼやぼやしていると木の葉が全滅しちゃう」


其の威厳までは再現できないが、空を舞う翼は再現出来る。

一度鷹に乗っている為、平然と乗り込むサスケ、続いておそるおそるサスケの背にひっつくハナビ、その後ろに飛び乗る暗部の少年。


「姉さん・・・・・・女は度胸です、恋も度胸ですよ!」
「よくわからないが、頑張れよ、ヒナタ」


一番後ろでくすくすと笑っている暗部の少年を除き二人は、思い思いの言葉をヒナタに投げかける。






竜が、飛びさった。







「・・・・・・そうね、頑張らなきゃ」

ヒナタも動き出す、先頭に立ち、頑張っている恋いこがれている人の元へ。



その前に立つ、一人の少年。

ヒナタは何処か気を引かれ、足を止めた。


見た目は一般人、服装は普通の少年、やや古風な感じがしており、今まで一度も見たことがないような瞳をしている。


そう、まるで人間じゃないような・・・・・・。

思わず浮かんだ考えに、ヒナタは頭を振り払う。


「・・・・・・もし」


足を止めたヒナタを認め、声を掛ける少年、年は、ざっと十才くらい、黒髪で瞳の色は、黒色。



「私に何か用?」


思わず受け答えしてしまうヒナタ。


「ええ、集団の長に逢いたいと言ったら此処に連れてこられまして・・・・・・貴方は忍者と呼ばれる存在ですね?」


少年の変な物言いに、何処か引っ掛かるが、ヒナタは普通に受け答えを返す。


「ええ、そうよ、私はヒナタ、貴方は?・・・・・・火影様に会いたいの?」

少年は、深く頷いた。
「ええ、見極めてから動こうかと思いまして・・・・・・火影と言うのですね・・・・・・有り難う御座います、申し遅れましたが、私の名前は・・・・・・名前ですか、そうですね姉上に倣い、ロンとでも名乗りましょうか、とある集団の長を務めています、頼めるのならば、その火影とやらに、取り次いでいただきたい、忍者と呼ばれる存在の長なのでしょう?」


物言いはぶっきらぼうで、聞き方によっては、火影を馬鹿にされているとも取れる受け答え内容だが、ヒナタは不思議と、そうとは感じ取れなかった、ただ、目の前の少年は、本当に何も知らない・・・・・・まるで、初めて言葉を操るが如くのように、感じていた。


「・・・・・・長、ね、見たところ貴方は忍者じゃないわね、チャクラは感じないし」

ヒナタの白眼が発動、経絡系は、一般人と同等、だが、違和感がぬぐい去れない。


「そうですね・・・・・・チャクラと言いましたか・・・・・・姉上もよくそんな物に眼を付けたものです・・・・・・全く後始末を私に託すとは質が悪い・・・・・・私には責任があるゆえ、抜け出せませんが、あの人には、姉上には自由に生きてみて貰いたいですね、人の可能性の行く末とやらを是非見せていただきたい」


穏やかな笑顔を浮かべる少年、――――――ロン。

それは大事な人の事を語るときに人の表情に酷似していた。


「・・・・・・わかったわ、ロン君でいいのよね、こっちよ」

「有り難う御座います、そうそう、私の名前はロンと呼び捨てにしていただいて結構です・・・・・・私は人にはなりませんから、私は姉上とは、違う」

またも変な言葉を残すロン、首をかしげながらもヒナタは、変な少年を五代目火影、綱手の所にまでの案内を開始した。


「・・・・・・人の長が、どのような者か、姉上の言ったとおりであればよし、違う場合は、私が人の世に終焉をもたらしましょうか・・・・・・いえ、放っておけば勝手に滅びますね、あの人外の持つ力は私よりも明らかに強い・・・・・・全く人とは難しいものですね・・・・・・姉上、貴方はこの歪な世界での初めての自我を得て、一体何を経験したのでしょうか」


小さく呟いた声は意味が取れず、ヒナタの耳には届いていたが、掠らなかった、止まらなかった。





絶望的な戦局に波紋を投じる一石になり得る存在、不思議な少年を従え、ヒナタは火影の所に急ぐ。



外では今も木の葉全ての戦力が、死闘を繰り広げていた。























何て、何て長いんだ、・・・・・・ロストランドに出るのが怖いぜ。

ステルスハイドが殆ど効果を為さないのが一番ショックでかいよ。
いっそのこと、トラッキングが働いて居るんだから、サソリの時のナルト救援の時にみたいに琴音のユニコーンで飛んで貰おうかと思ったら、フェルッカトランメルは、飛び越えられないような感じで、駄目なんていわれてちまった。


っていうかモンスターの癖に波状攻撃とか、遅延防御とか、囮作戦とか、ブービートラップとか仕掛けてくるんじゃないって!


特にアベンジャー、マトリクス、テレポートで飛んでくるな!

接近戦が怖いけど、魔法が使えないナイトが一番可愛く見えるぜ。


敵がこれほどまでに魔法を有効活用してくるとは思わなかったな・・・・・・、狂信者や神官共の回復魔法は本当にうざいだけだしよ。


いきなり君麻呂と二人きりにエナジーフィールドで分断させられて、アベンジャーの群れが集団テレポートしてきた時は、事実、それだけで死を感じたね。


ディスペルフィールドが間に合わなければ、俺は確実に死んでたな。

地味にファイアーフィールドとか、避けずらい魔法や、パラライズフィールドや、パラライズといった、一時的に行動不能に陥れる魔法までがんがん使って来やがってよ、直人の扇動はなんか効きづらいとまできたもんだ。


完全に「世界」とやらの後押しを受けているな、こいつら。


人が使う戦術、作戦といったものを、完全に理解しきっている、これじゃベトコンが使っていたような手法まで、再現し出すのも時間の問題だな。


流石に重火器までは無いだろうが、魔法で十分脅威だしなぁ。


そう、まるでUOで、プレイヤーが使っていたような手法をそのまんま使ってくるんだよね、例えば派閥でよく使うラインっていう一列に並んで一気に魔法を唱えてくるとか、ロックオンっていって、敵をナンバリングして、その内の一人を集中して狙うとか、対人で基本的な事から始まり、零ディレイになるのか?あれは、瞬間的に二回攻撃するやつとか、法則は敵に関して言えば外れて居るんじゃねえのかよ、そういうシステムの盲点ばっかり突いてくる・・・・・・こいつら、プレイヤーが操ってるんじゃねえの?


まさかな、んなわけねえか。



ゴゴゴゴゴゴンゴゴゴゴゴゴゴゴン



仮想隕石を、骨の結界で防ぐ君麻呂、相変わらずの堅牢さだ。


最後の一匹、復讐者アベンジャーが、悪あがきのような動作で、再度隕石を召還しだすが、神速の君麻呂が、抹殺、縦に二つに分かれた蛇戦士の遺体が生まれた。



何故だ、何故こんな執拗に俺達のデータを取るような行動ばっかりするんだ。


「情報こそが命綱」


常々俺も思っているようなことだが、戦力を削ってまでするような事じゃ・・・・・・そうか、もしかして今まで苦労して倒してきたこいつらは、戦力の内じゃなかったりするのかな?かな?


こいつらは、単なる、存在自体が、斥候。

帰ってきて報告するもよし、帰ってこないことでどれくらいの戦力まで削れるか判断するも、よし。


得た情報で、完全な対抗策を編み出してから、ゆっくりと数の暴力で押潰す、と。


・・・・・・おれが敵の親玉だったら絶対やるわ、何か、思考の仕方が・・・・・・俺に、似ているのは、何でだ?

敵に、俺のクローンでもいるんじゃねえの?何せ敵は「世界」そのもの、何が起きてもおかしくない、まさか、な。




「竜君、・・・・・・いよいよ出口みたいだよ」

カブトの声が、響いた。

先を見れば、確かに溶岩の赤い光で明るい洞窟内と違い、天から差し込む、太陽によく似た光。


ロストランドに太陽は、存在しない、だが、夜もあり昼もある不思議な空間だ。


システムな事に突っ込むのは何処か野暮だけど、何でだろうね???

ま、真っ暗だったら苦労するのは・・・・・・忍者は夜目が利くし、リースはそう言った次元じゃないし・・・・・・あれ、苦労するの俺だけ???


エレメント召還して眼の代りにするのも、秘薬がもったいなすぎるしなぁ・・・・・・、・・・・・・あ、なるほど消耗戦仕掛けてきていたのか?もしかして、でも其れにしては地面に秘薬落ちているしなぁ、包帯、か?


にしても、包帯なんて軽いから幾らでももてるから効果は薄い、と思うんだが・・・・・・わからん、敵の考えが、完全に読むには情報が足りなすぎる。


「まーた、何か考え込んでいるわね」

ナイトメアを呼び出し、跨っている琴音。

「悪いか、俺はどうしても戦力に成り得ないから、考えるしか無いんだよ」

「別に、考えるのが悪いって訳じゃないわよ・・・・・・ただ、少しは一人で抱え込むんじゃ無くって、これだけ仲間がいるんだから、少しは、頼りなさいよ。悪い癖よ、貴方のそれは」

仲間、か。


・・・・・・それも、そうだな・・・・・・あの小さいおませなお子様が成長したもんだぜ。



仲間。

唐突に浮かぶイメージ。



そうか!

仲間がいるのは、俺だけじゃない!

ミナクスも言っていた、世界のモンスター全てが俺を狙う、と。


くそっ、その可能性も考慮すべきだった・・・・・・挟み撃ち!!!!!!!!


「・・・・・・竜よ、最悪な報告があるのじゃが、聞きたいか?」
最後尾で殿を務めていたリースの呟き。


「すっげーーー聞きたく無い!わかってるよ、俺にも思い立ったよ、気付くのが遅すぎた、考えるべきだったんだ、敵が、蛇が蜘蛛が、あんだけ多数の戦闘をなんで仕掛けてきたのか、その時点で!前門の狼、後門の虎ってレベルじゃねえぞ、くそっ・・・・・・どうするどうする、ぐずぐずしていたら完全に挟み込まれちまう・・・・・・だが、絶対に不用意に出口からは出られねえ・・・・・・大量の魔法使い共が待ち構えているだろうからな、俺だったら絶対にそうする、穴から出てきたモグラを叩き放題だ!」


後ろから誰も来ないなんて考えるべきじゃなかったんだ、いるじゃないかモンスターは世界に大量に散らばっていたじゃないか、「主」という可能性に引きつられて、俺目がけて、全力で突き進んでくる存在共が!



「・・・・・・来たぞ、まずは精霊族からみたいだな、先頭は、なるほどブラッドエレメントとポイズンエレメント、その数、数十体」


精霊族、俺が召還するエアエレメントファイアーエレメントやらと同類の存在、違うのはその強さだけ、ブラッドエレメントは、血の凝血作用を利用した硬い、本当に硬い体と高い攻撃力、


ポイズンエレメントは、その名前の通り、接近戦を仕掛けてすぐにとびっきりの毒をプレゼントしてきてしまう、戦士キラーの代名詞。



「まずは」ってところが、嫌すぎる。


どう考えても、増援なんか期待できない、ナルト達もやばいだろうからな、軍と呼べる規模だぜ、考えてみろ、世界に散らばっていたモンスターというモンスターが、たった一人の標的、このちっぽけな俺に対して殺到してくる。



俺が居た世界でアメリカを敵に回すようなものか?それ以上かもな、駄目だ、すりつぶされちまう、個人の能力がどれだけ桁外れでも、軍には、絶対に勝てない。


それが集団の力だ。


精霊族、悪魔族、亜人族、巨人族、蛇族に蜘蛛族、ウィプスといった魔法生物に、そして・・・・・・竜族。

すげえ豪華、UOという世界が、俺だけを殺すためだけに仕立て上げた、最悪の抹殺集団、別名掃除部隊。



・・・・・・どうする、どうする、どうする!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!







*裏も表も、大ピンチ、の巻*



[4366] 世界大戦、その七、木の葉大決戦、中。
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/02/01 02:38
決戦は中央、木の葉の里中央部。


本来は敵を絶対に踏み込ませてはいけない所だが、この様な事態に為ってしまえば、すでに致し方がない次元に達している。


東から西から南から、そして北から、九尾の攻撃に対し、生き残った者達が、ひたすら中央に向けて集まっていく。



木の葉の里、全ての残存戦力が、中央を目指す。


敵は、九尾、そして復讐者、アベンジャーの異名を持つマダラだ。



ハヤテは前を行く一つの人影を認めた。

「あ、カカシ先輩じゃないですか」

隣に並び、ひたすら中央を目指す。


「ああ、ハヤテか・・・・・・俺に構わなくていいぞ、ちょっとチャクラが切れかけなんだ」

後に付いてきていた我愛羅、キバ、そして夕顔。

「兵糧丸は?」

「もう、食べたよ、効果が現れるまで待っていられなくてね、・・・・・・そうだ、お前刀が得意だったな、これやるよ、特殊な効果が籠もっている肝煎りの刀だ」

カカシが取り出したるは、一見何の代わり映えもない、単なるチャクラ刀。

とりあえず受け取るハヤテ。

「これは?・・・・・・何ですか、これ、普通と違いますね・・・・・・竜君が力を込めたんですか?」

「ああ、ま、そんなもんだ。俺にはこれがあるからな。お前が使った方が有効だろ」

背中の刀を指して笑うカカシ。

鞘に隠れ、刀の罅は外には見えない。

「そうですか・・・・・・もらえる物は、ありがたく頂いておきます」

カカシから「消滅」の効果が籠もったチャクラ刀を受け取るハヤテ。

「よし、じゃ先に行ってよ、夕顔さんに、キバ君、それに風影さんに西の戦力全員か・・・・・・よかった、まだまだ戦力は残って居るんだね・・・・・・油女家も東も北も、直に来る、最後まで気張って行こうじゃない、俺も回復次第、最大速度で向かう、ナルトだけに咆えさせてはいられないでしょ」

ナルトの声を聞いているのは皆だ、全員が静かに笑う。

結界に対しては数は少ないが、質が高い戦力を送り込んでいたため、被害を負ったとしても全体の割合では少ない。



「では、戦場で・・・・・・」


刀を正面に構え、互いに武運を祈る二人。

木の葉の牙は、折れていない。

火の意志は生きている、例え相手が、絶対に勝てない最悪の暴虐の具現だとしても、火の意志は衰えることは、無い。


忍びで有る以上、戦力の計算なぞ、出来て当然、皆、分かっていた、カツユによる情報が全員に廻る状況では、尚更、今の減ってしまった戦力では、如何に軍師であるシカマルが頑張ろうが、如何に巧い策を練ろうが、もう、勝てるわけが無いと、九尾三体は、万全の状態でも勝てるかどうか危うい化け物だ。

今も、一人一人、落ちていって仕舞う木の葉の戦力、どんなに急いても変わらない、どんなに木の葉の戦力を集めても、今では、もう・・・・・・。


それでも、諦めない、木の葉の忍びは諦めない。

「あの、あのナルトが諦めていない、なら、なんで俺達が諦められようか」


誇りと共に思い起こされるわけではなく、何処か苦笑と共に思い起こされるのはまだまだいたずら小僧という意識が強い、ナルトゆえか、されど、ナルトの存在は、木の葉の皆の意識に深く、深く刻み込まれている。

常に最前線で戦ってきたナルト、望まれぬ戦いすらも経験してきたナルト、皆に知られないようにしてきたが、皆は知っていた三代目との戦い、かつては希望をもたらした存在、今回は悪夢を木の葉にもたらした四代目との戦いは皆も知っている事だ、その結末も当然。

「行くしか、無いでしょ・・・・・・待っていろって九尾、そしてマダラ、木の葉を嘗めるなよ!」


カカシの言葉が全員の心を代弁して木の葉に伝わる。

「・・・・・・そうだな、まだまだ諦めるには早い、な、さぁ気を張って行こうぜ、ろ班、α九尾の後方だ、影縫いの術を仕掛けてみろ!β九尾はナルトに任せろ、ω九尾はほ班、と班、合同で里の北側に追い込め!」


シカマルの指示が伝わる。

動き出すプロの戦闘集団、この世界で最強を誇る忍びの里、木の葉の里が動き出す、最高の軍師を得て、本気の決死の意志で動き出す。














ブラッドエレメント、通称血エレ、ポイズンエレメント、通称毒エレの群れが、俺達に迫る。

後に続く、雑魚エレメントの大量の群れ。


ファイアの洞窟が狭いことが、今回ばかりは俺達に有利に働いている、どんな大軍でも一気に数に任せて攻め込むことが出来ない。

蛇や蜘蛛達も、いつまで経っても出てこない俺達に業を煮やしたのか、少しずつまた攻め込んできているが、モグラたたきの要領だ、入ってきた瞬間、君麻呂の骨の刀による一閃で、葬り去っている。


・・・・・・これが、外に出るときは、逆の立場になる、今はまだいい、疲れも包帯で回復できるからな。

「つまり?」

リースの言葉に反応する俺。
殿で支えてくれているのが、リース、それに琴音の頼もしきペット達。



ゴォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


と灼熱のブレスが何度洞窟内部を灼いた事か、


だが、一発二発で仕留めきれないのがどうにも嫌すぎる。

頑張って、俺達の所まで辿り着いたところで、リースの神速のハルバードを逃れる術は敵には無い、だが、いつ展開が変わるか・・・・・・。

「「世界」が「法則」を無理矢理、書き換えた・・・・・・唯一人、お主を抹殺するためだけに、な。知己に確認した事ゆえ、間違いは無い。じゃが、これほど対応が早いとは、それほど奴らも本気と言う訳だな、心しろ、敵は世界に存在した全てのモンスター、・・・・・・ただあやつがどう判断するかで、少しばかり事情が変わる」


なるほど、ダンジョンを犠牲にしても、その全戦力を向けてきている訳か、ってこのまんまだと古代竜とかあの黒閣下バルロンとかも来るんじゃねえの?

とりあえず、後方に向けて防御壁になるエネルギーフィールドを展開させつつ、リースと対抗策を練る。

狭い洞窟、逃げる場所は、存在しない。

「・・・・・・あやつって誰だよ」

援軍の心当たりでもあるのか?

いねえだろうがそんなヤツラ。

「あやつはあやつじゃ、主は知らぬ者じゃよ、っと」

再度趨るリースの一撃、うぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお


と断末魔をあげ、崩れ去る血エレの一体。

「・・・・・・ふぅ、長くは持たんぞ、どうする?竜よ、お主がこのパーティーのリーダーだ、お主が決めろ」

皆がリースの言葉に頷く、頷いてくれる、この中で最も弱い俺が、リーダー、か。

引くも地獄、戻るも地獄、違うな、俺には戻るところ何か存在しないんだ、俺が進むべきは・・・・・・ロストランド、そして、テラサンキープ、そして、星の間。



「行くしか、ねえだろ。・・・・・・ぐずぐずしていたら其れこそボスクラスが、いつ来るともわからねえ」


オークキングやロッティングコープスといった歩くことしか知らないヤツラは、遅いだろう、だって此処は島だからなぁ、あいつらは海底を歩いてくるのかねぇ、死ぬとは考えられないが、想像すると少しだけ笑えるな。


一番厄介なのは有翼モンスター共だ、例えばサキュパス、例えばバルロン、彼らの行動に制限は無い、もちろんドラゴン共もそうだ。こんな狭いところで古代竜の神のブレスなんか放たれてみろ、一網打尽なんてレベルじゃねえぞ!


俺が死ねば、世界は暴走を始めるという、正しく世界が全てに対して牙を剥くのだ。

そんな真似、許せるわけねぇだろ・・・・・・あいつらは、頑張って生きて居るんだぜ?

九尾だけでてんてこ舞いだろうに、それに加え、こいつら最強の軍隊が混じってしまえば、もう、どうにもならないで、世界は終焉を迎えちまう、俺は生きなくちゃいけない。


それには、


「・・・・・・行こう、進もう、どうせ此処にいても、じり貧なんだ」

「・・・・・・だが、此処を出れば集中砲火なのだろ?」

問いかけてくる冷静その物の君麻呂。

その通りだ、頷きを返してやる。
「ああ、だから策を講じる、タイミングさえずらしちまえば・・・・・・数にもよるが・・・・・・なんとかなるはず」



UOでも有ったデスゲートと呼ばれるプレイヤーによる、悪質ないたずらが存在する、イベントがありますよーとゲートトラベルと呼ばれる、簡単に言えばドラクエの旅の扉みたいなものを開く、そこに入るプレイヤー、待ち受けるは、黒閣下、若しくは蛇や蜘蛛の大群、それか古代竜、という致死性が極めて高い所。


あれに似ている、この状況は、もの凄く似ている。


魔法を使うには、モンスターと言えど、超高等モンスターといえど、若干のラグが生じる、其れを突けば、乱戦に持ち込めば・・・・・・だが、危うい賭だ。


「琴音、それに直人、お前等のスキルが、作戦の鍵だ」


リースでさえ、恐らく待ち受ける軍隊規模の魔法使いの攻撃を身に受けてしまえば、死しか待っていないだろう。

新たにペットに為ったフェニックス、其れを活用出来れば・・・・・・。



















完全無欠の九尾は、当たり前だが、強い。
今は三尾にまで減った尻尾だが、全く関係ない強さ。


完全に沈黙を保つマダラだが、関係無しに九尾はその力を完全に振いまくる。

広範囲にわたる全てを消滅させる赤色の吐息。

広範囲にわたる全てを切り裂く尾による斬撃。


特殊な術を使わない、破壊力に任せたその単純な攻撃は、単純であるが故に防ぐ手段が限られてしまう。


加えて、徐々に、徐々に学びだしてしまっている九尾の真価。

上忍でも捉えきれなくなってきている、その動きに翻弄される、木の葉の忍びの精鋭達。

チャクラを扱い、速度を上げ、対抗するが、触れるだけで死ぬ、別格の化け物振りを遺憾なく発揮する九尾達。


シカマルの耳に届く報告は、すでに被害が六割を越えてしまっているとの事。



「・・・・・・ちっくしょぉ」

ナルトは今は一人、一体の九尾と対面し、戦っていた。

三体を同時に相手しては、絶対に勝てない、そう考えたシカマルの作戦で、何とか三体を少なくない犠牲を払ってでも分断に成功。


人が扱える最強の術、風遁・螺旋丸を喰らわすことに成功したナルトなのだが、チャクラ不足、殺害には至らず、反撃を許してしまい、その防御で更にチャクラの消費、それでも諦めず、瞬身の術・改で張り合うナルト、目にもとまらぬ速さの領域で戦うが、決定力不足。







他の忍びは、他の二体を相手することに精一杯で、助けに行くことも出来ず、最高峰の戦いを援護することも出来なかった。



「瞬身の術・改!」

ナルトの声が一人で響く、単独で殲滅の九尾のチャクラの相手を出来るのは、同質のチャクラ性質を備えているナルトのみ。

ナルトだけが、九尾の攻撃に晒されても、ただ一撃で死ぬことをまぬがれる希有な存在。

だが、直撃の連撃は、駄目だ。

ずっとチャクラ吸収の術を組み込み戦っていたナルト、それでも最大の一撃を連続で食らってまで吸収できる道理はない。

尻尾の一撃を避けたところに、計算尽くされた行動で放たれる九尾の赤色の吐息。


直撃こそ避けられたが、余波で暫しの行動不能に陥るナルト、再度振りかぶられる九尾の尻尾。

眼を限界まで見開いて、九尾の攻撃を見ることしか出来ないナルト。

「くそっ・・・・・・此処まで、か」

尻尾が、全てをなぎ払う、尻尾がナルトに違わず振り下ろされる。



ざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざ


砂が、大量の砂が突如ナルトの前に山を作りあげた。

砂が稼いでくれた時間で回復、動き出すナルト。

ぶんっ

九尾の尻尾が砂をなぎ払う。


「砂の我愛羅、盟約に基づき・・・・・・くそったれな化け狐を駆逐する、構わぬな、木の葉の里の人柱力」


飛び退いたナルトの隣に立つ、額に「愛」の文字が刻まれた少年、砂の里、最高権力者最高実力者、砂の我愛羅、一尾の人柱力。


「へへっ・・・・・・来てくれたのか、我愛羅、なら、いっちょやるってばよ!」

「応!」


砂と木の葉、二つの里の人柱力が協力、二人は、最強を誇る九尾に向かい、立ち向かう。










「・・・・・・リーよ、お前はナルト君の援護に行きなさい、此処は、私に任せろ」

度重なる八門遁甲の濫用で、すでにぼろぼろの体の二人の体術師弟。

「でも!」


後ろから現れる多数の影。


「安心してください、りー君、僕らも協力します」

「ハヤテさん!では」

頷くハヤテ。

「西の結界石、守護の任を全うできず申し訳ありませんでした・・・・・・これより我ら対九尾最終決戦参戦いたします!」


応!と答える西の者達。
ハヤテの声がシカマルに、里の皆に届く。


















「「散!」」
アスマの声が、響き渡る。

一つはガイ、一つはナルト、そして残る最後の九尾に対面して陣頭指揮を執っているのは猿飛アスマ。


他の二つの所と違い、最も多い忍びがこの戦場に投入されているのは、一重に、九尾に止めをさせる戦力が、存在しないことを意味していた。


「「合同忍術、八卦・大破山撃!!」」


チャクラの塊が、九尾の横っ面にヒット!

致傷を与えるには至らぬが、九尾の動きを一時的に止めることに成功した。



他の二つに遅れること十数分、木の葉最強を自他共に自負している集団、白眼の日向が到着した。


「待たせたな、これより我ら修羅に入る・・・・・・仏に出会えば仏を斬り、修羅に出会えば修羅を斬る、行くぞ皆の者!木の葉最強の名を此処に示せ!敵は九尾、敵にとって不足はなし!」



「相変らず派手好きだな・・・・・・シカマル、俺達はどうすればいい?」


『アスマ、あんた等はそのまま日向家の援護をしてくれ、後は、自来也さんが復活すれば・・・・・・ナルトと我愛羅が相手をしている九尾に止めがさせるはずだ、ただ、他は時間稼ぎをするんだ、残念だが、彼らでは止めは絶対にさせない・・・・・・ああ、安心しろ、これはあんたにしか聞こえていない』


最後の内容に胸を撫で下ろすアスマ、日向家に聞こえたらと思うと、落ち着かない。



ただ、シカマルは失念していた。




九尾は成長する化け物だということを。






未だ三体も残っている九尾。



現時点で最高のコンビといえる、ナルトと我愛羅、二人の人柱力が揃っても、一体の九尾の足止めしか、出来ていない現状。




九尾の実力は、九尾の全開は、まだまだこれからだ。



[4366] 世界大戦、その八、木の葉大決戦、続。
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/01/26 18:35
忍びとは、忍びとは一体何なのだろう、読んで字の如く、闇に生きて、闇に忍ぶ者、それが忍び。


此処、NARUTOの世界では、国が里を抱えており、防衛力といった国が持つべき軍事力といった戦力の全てを忍びが受け持つ。


北の果てに、一つの特異な国がある、元々国柄として得意であった絡繰り細工に、
UOとの世界混入によりもたらされた技術を混ぜ、更に高度な絡繰り細工を完成させた国。


砂のクグツ兵器とは違い、其れが戦うときには人を必要としない。


メンテナンス等、面倒な部分は機械であるゆえに、存在しているのだが、それでも人的被害を少なくでき、
なおかつそれなりの戦闘能力を持つという、これまでになかった、画期的な発明品。


NARUTOの世界に、絶望が世界を覆う状況に新たな旋風を巻き起こすのは、かつて主人公たるナルトご一行に助けられたことがある、
特異な国に住まう、女優と女王を兼業しているという、これまた特異な女性、その名を・・・・・・。

















・・・・・・火影と言う存在について、火影とは、称号である、木の葉隠れのトップであるという称号、されど、その名前が持つ意味は、其れだけでは、無い。

其の名にかける人の思いは、其れだけに、止まらない。


「・・・・・・火影様、今、何て言いやがったんですか?」


思いがけない言葉に後ろを振り返るシカマル、周りの最優秀の火影直轄暗部達は動じない、物怖じ無い。

ただ、動揺し、問いかけているのはシカマルだけだ。


「・・・・・・聞こえなかったか?・・・・・・このまま行っても全滅だ、だから、発動しろと言った」


千切れかけの声を絞り出しながら、火影は、それでも言い切る。


「・・・・・・何を、発動しようっていうんですか!俺は・・・・・・認めない!」


ふっと口元に静かな笑みを浮かべ、五代目火影、綱手は更に口を開く。


「・・・・・・では、他に策はあるのか・・・・・・軍師殿・・・・・・我らが認めたお前に他に意見があるならば、
有効な手だてが、まだ、此処に至って存在するのならば・・・・・・其れに従おう」

あくまで静かな気遣う様子すら感じられる火影の声、言葉には確かに火影の重みが乗っていた。
シカマルは言葉に詰まる、唇を強く強く噛みしめる。

誰よりも綱手よりも、現時点での戦力差について分かっているのが、軍師であるシカマル、誰よりも里の誰よりも、
わかっていた、このままでは、じり貧で皆、命を落としてしまうと。


「・・・・・・でも、あれは、あれの発動条件は・・・・・・っ!!!!!!」


「お前が、気にする事じゃないよ・・・・・・使え・・・・・・最終結界を・・・・・・その為の、こんな時の為の火影なんだ・・・・・・四代目も、
ミナトも・・・・・・こんな気分だったのだろうな・・・・・・木の葉は、潰させない」


三代目火影が遺した物は、木の葉に多数遺っている、「最終結界」は其の内の一つだ。


とある決戦兵器が暴れ出した場合、例えば尾獣、例えば他の里の人柱力、同等以上の存在でなければ、対抗策を持っていなければ、
戦う事すら出来ずに、ただ被害だけを虚しく重ねてしまう事になる。


ただ、死ぬだけの命ならば―――――いっそのこと、有効に使ってから散らせようではないか。


人の命を何とも思っていない、三代目らしからぬ・・・・・・否、忍びとしては、忍びのことを全て極め尽くしていたプロフェッサーとしては、
当たり前の発想だった。其所に、人としての感情が入り込む隙間は、無い。


「最終結界」が発動されれば、戦況は確実にひっくり返る、


もしかしたら九尾に対し完全に止めを指すことすら可能かもしれない、


何故ならその為に開発された術式なのだから・・・・・・が、


「・・・・・・っ!!!!!!!!」


答えが出ないシカマル、どう考えてもその最優たる脳みそを最大活動させても、どうしても答えが出ない。


今までの戦争の報告で、九尾の仕草から攻撃手段を有る程度、特定は出来ていた。

それは、白がペインに対して行った情報収集活動と同様のこと。


だが、ペインが人の中の規格外の化け物ならば、九尾は、尾獣の中での規格外の化け物。


白がペインに対して見つけ出した、癖、シカマルが九尾に対して見つけ出した、癖。


其所までは、同じ、だが、続きが無い。


人として、策を練ればぎりぎり対抗できたペイン。

だが、九尾は、いくら策をチャクラを練り込んでも、其の攻撃を防ぐ手だてが存在しない。

避けられなければ、死ぬだけだ、掠っただけでも死ぬ攻撃に、取れる手立てなど、存在しない。



全てを弾いてしまう斥力を発生する個体に対する、極めて粘着性が高い蜘蛛の糸、チャクラその物を吸収してしまう個体に対しては、
吸収する暇すら与えない、連続攻撃、遠距離攻撃が得意な個体に対しては、完全なる接近戦、かたや、接近戦が得意な個体に対しては、
接近を許さない絶対たる遠距離攻撃、口寄せを扱い、多数の獣を使役する個体には、その使役する個体以上の存在を口寄せするか、
もしくは、口寄せされた獣自体を操ってしまう、嘘を見抜くという特別な能力と共に、回復能力を持つ個体は、真っ先に排除。



ペインでさえ、突き詰めていけば、人としての能力で、対抗できた。

しかし、


全てを切り裂く尾の一撃を避けられる忍びは、いても、

全てを滅ぼす赤色の吐息を避けられる忍びは、いても、


高速移動に入った九尾の一撃を避けられる忍びは、いない。
ましてや、コンビネーションが入ってしまえば、尚更だ。


「・・・・・・無いようだな・・・・・・勘違いするなよ、決してお前の能力が軍師として劣っている訳では、無い、むしろ称賛を惜しみなく贈りたいくらいだ、
未だ被害が六割、九尾が、しかも多数の九尾が相手と考えれば、これは、とんでもない数字だ、凡庸な軍師ならば、
既に木の葉は全滅している・・・・・・如何に精鋭が揃っていても、兵たる末端をうまく操れる者がいなければ、援護が無い決戦兵器など、
・・・・・・ざるも同様、・・・・・・深く考えるな、里の為にと考えるなら、犠牲を考えるな・・・・・・例え、それが、・・・・・・私だとしても」

言葉を無くしたシカマルに掛けられる、火影の優しい声。


そう、「最終結界」は、発動条件に、能力が高い者の命を必要とする、最低でも火影レベル、最低でも、だ。


「・・・・・・術式の準備に取りかかれ、後、自来也を此処に呼べ・・・・・・話がしたい」


息も絶え絶えに、火影直轄最優暗部達に指示をする五代目火影。

返事すらもせず、暗部達は、ただ、行動する、火影の手足として、其れが彼らの誇り。






「・・・・・・どうやら、入れる雰囲気ではありませんね、ヒナタさんと申しましたか、此処で待たせていただいてよろしいですか?」

不思議な少年、ロンは中を見ずして場の空気を読み、足を止めた。

「・・・・・・ええ、ロン君の話は大事なことなのでしょ?」

ふっと軽く笑うロン。


「はい、私が加わってどうなるかわかりませんが、少なくとも助けになるかそれとも・・・・・・今はまだ言えませぬ」

ヒナタとしては、ナルトの所に駆けつけたい、だが、中の話を聞いた以上、自分一人駆けつけたところで、どうなるとも思えない。


ゆえに、ヒナタは此処にいる、不思議な少年ロンを伴い、ただ中をうかがっている。







前線司令室は開けた部屋だ、里の全ての地名が地点が詳細に記載された地図を背景に、多数の機材が部屋に存在している。


火影が位置するは、其の中央、軍師が位置するは、其れより若干離れた場所。


地図に記されている点は、四つ、九尾三体の位置とマダラの位置だ。

最も東側に位置する点、其所で戦っているのは、アスマ率いる、木の葉の残存兵力が最も高いところ。





「合同奥義・蟲行軍、高波!!」


中央にたどり着いた油女一族、高らかに宣言した術の名前と共に、多量の蟲が、一体の九尾を覆いつくさんと、指示に従い、行動を開始する。



九尾が、嗤う。
金色の狐が、嗤う。



蟲の動きは速い、だが、それでも九尾の動きを捉えることは出来ないレベルにまで、既に九尾は進化してしまっていた。

木の葉の忍びの能力は、総じて高い、年中を通して依頼が無いときに、訓練をしていない時間が無いくらいであるから、当然の話、
高い能力に、高い士気が加わった木の葉の忍びは、強い。



が、其の強さが、九尾の実力の底を更に押し上げる結果と為ってしまっていた。


最強の妖獣、九尾の妖狐。


狐は嗤いながら、蹂躙する、木の葉の里を蹂躙する。

十数年前の決戦の焼き増しをするかの如く、其の尾を、其の体を、其の手を、其の吐息を使い、木の葉の里を完膚無きまでに破壊する。






「・・・・・・いよいよ手がつけられん・・・・・・」

致死の一撃を避けた油女ゲンは、九尾が先程巻き起こした暴虐の嵐の後を黒のサングラス越しに睨み付ける。


死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体死体。



此処まで生き残った、精鋭と呼ばれる木の葉の忍び達の死体。

九尾は嗤う。





更に更に進化する九尾、屈強と世界に音に聞こえた木の葉の忍び達の実力をもってしても、もう、止められない。

続くは一方的な虐殺のみ。

九尾は生き残りに視線を向けて、ただ、嗤う。



アスマのゲンの額に、冷たい汗が滴り落ちる。


「・・・・・・まだまだぁああああああああああああ!!!」


自身は持ちうる最高の防御の術「回天」により、致死の一撃を避けられたヒアシ、後ろでは肩で息をしているネジ。


日向一族の技をもってしても、防ぐのが精一杯で、攻撃に転じることは出来ないでいた。

他の二つの所も似たようなものだ、



ナルトと我愛羅は、致死の一撃を避けながら、懸命に攻撃を繰り返してはいるが、決定打にはなりえず、


リーとガイの体術コンビに加え、刀術を得意とするハヤテ達も加わった戦場でも、決定打を放つことは出来ず、徒に戦力を消費していた。



チャクラが少なくなり、動きが鈍った者から脱落、・・・・・・シカマルの所に被害が七割を越えたと報告が行くまで、時間の問題だ。


悩む時間すら、九尾は木の葉の里に与えない。











「どうした、火影殿、何か逆転の策でもあるのか?」

何とか全盛期の三分の二程度まで回復した自来也、それほどまで九尾の一撃は激しく、重かった。


綱手の前には、既に暗部達が構築した、術式が、形を為していた、後は中央に立ち、最後の術式の言葉を紡ぐだけ。


それにより、木の葉の里全てを覆い尽くす「最終結界」は発動される。




「ふっ・・・・・・そんな言い方はよせ、お前に言われると、何だかこそばゆい、いつも通りでよい」


室内を見渡す自来也、

少し離れた所では、シカマルが矢継ぎ早に指示を出している。

其の顔色は決してよくはない、否、はっきりと分かる、木の葉は滅びつつある、と。



「・・・・・・使うのだな、あれを「聖戦」を」

自来也の言葉に静かに頷く綱手。


発動されれば、全ての忍びに常識では考えられない効力を与える術式、最終結界「聖戦」。

三代目が遺した最後にして、最強の術式。


「当代火影として、五代目火影綱手として、三忍の一人、自来也・・・・・・お前に次代火影を命ずる」


綱手の突然の宣言、自来也は笑い出す。


「ははははははははははははははははは、何を寝ぼけたことを言っている、六代目火影?・・・・・・馬鹿をいっちゃいかん、
第一お前が死んでは、誰がカツユを維持するのだ。情報は戦争の生命線だと、口を酸っぱくして言っていたのはお主ではないか」


自来也の後ろに現れる一つの影。

綱手の付き人、しずねだ。


「しずねが、カツユを受け継ぐ、私と最も長く時を共にし、誰よりも理解が深いしずねならば、カツユも扱えるはずだ」


今にも泣き出しそうな、されど強い決意を込めた目を綱手に返し、頷くしずね。


「・・・・・・なるほど、のぉ・・・・・・準備が整っているところ、悪いが、其の話は、無かったことにして貰おうか・・・・・・」


ガスッ


自来也は瞬身の術で、綱手の後ろに回り、意識を失う一撃を放った。
万全の状態の綱手ならば、避けられた一撃、
されど、すでにカツユの維持で消耗しきっている、今の綱手では、到底避けられぬ、一撃。


ドサッ


綱手の体がその場に崩れ落ち、しずねが、抱え上げる。


「何を!?」

異音に気付き、振り返るシカマル、暗部は、されど動かない、綱手の身を守るはずの暗部は、動かなかった。


「しずね、暫しの間ならばカツユを継続出来るのだな?・・・・・・綱手を、頼むぞ」

暗部達はわかっていた、自来也に全く害意が存在しないことを。

こくりとしずねは、静かに頷き、言葉は発しなかった。



自来也はそのまま、術式の中心点に立つ、最後の術式は、三代目から聞いていた。
最終結界、発動に必要な者は、
最低でも、火影以上の者、火影と認められる実力を持っている者。
自来也は先程綱手に六代目火影と認められた。


資格はクリアしていた。

「流石は猿飛先生からの直轄暗部、よくわかっている、では、発動しようか・・・・・・」


自来也は、静かに目を瞑っている綱手の顔に視線を落とした。


「しずね・・・・・・綱手姫が、目を覚ましたら、伝言を頼む、達者でな、と」

「・・・・・・わかりました、自来也様のお言葉、確かにこのしずね、承りました」

「はははははははは、・・・・・・これからも補佐してやってくれよ?
何しろ、綱手姫はおっちょこちょいだからなぁ・・・・・・昔から何も変わっておらん・・・・・・幼き頃のあの時から、何も、変わらん・・・・・・生きろよ、綱手」

意識を無くしている者に、届くはずも無い。


されど、綱手の閉じられた瞳から、一筋の涙が、こぼれ落ちた。

「はははは・・・・・・悲しい夢でも見ておるのか・・・・・・・・・・・・シカマル!」

「・・・・・・何だ?」

「木の葉を、頼むぞ!自信を持て!お主の采配は、間違っておらん!」

「・・・・・・わかっている、俺に全部任せろ!」

決してシカマルは熱い男ではない、だが、この自来也の心意気に答えられない男でもない。



若き最高の軍師の返事に満足した、火影に並ぶ男は、火影直轄暗部が形作った術式の中心点にしかと立つ。





「行くぞ・・・・・・木の葉よ、力を為せ・・・・・・・・・・・・「聖戦」発動!!!!!!!!」

術式が形となりて、具現化し、自来也の体に突き刺さる。

ありとあらゆる所を貫かれた自来也は、されど倒れることなく、口から体のあらゆる所から血を溢れさせながらも、術式に意識を集中させる。



具現化したラインは木の葉全土に広がる。



「聖戦」の効果は劇的だ、範囲内にいる者全てが全て、その者の持つ最大級の力を行使出来る。


平穏な時にあらかじめ仕込まれていた術式が、里全てに形を為す、具現化するチャクラで描かれた緑色の新緑の木の葉色のライン。





里に存在する全ての戦力の実力が、最大限、最大級発揮される。



漲るチャクラ、完調の調子に戻る体力。










されど、九尾はまだまだ脅威、だが、「聖戦」により、木の葉の忍びは、戦う力を、最悪最強の妖魔妖獣と渡り合う力を手に入れた。



身に溢れる力、何処かで感じた気配を感じ、ナルトは辺りを見回した。


「何だってばよ、これは!?」

里にいる全ての戦力に術式の効果は及ぶ、当然、我愛羅にも、まるでエセリアル虚空間にいた頃のような感覚を感じる我愛羅。



いつも無表情な顔に、明らかに分かる笑みが、浮かんだ。


「行くぞ、ナルト、決着を付けよう」


守鶴を模した砂の塊が、矛を構える。


「・・・・・・何で、涙が出るんだってばよぉぉおおおおお!!!」


何処かで感じていた、懐かしき気配は、消えていく、溢れる感情を力にし、ナルトは手に人間が成し遂げられる最高の術の一つ、風遁・螺旋丸を手にして、九尾を睨み付ける。












「「聖戦」を発動、させたのか・・・・・・このチャクラは・・・・・・自来也さん・・・・・・」

急速に戻っていくチャクラを感じながら、カカシは遠目に見える九尾を睨み付けた。

前線では、油女家が、アスマが、紅が、アンコが、日向家が、強引に増えた力で九尾を押している。

「・・・・・・終わりにしようか、絶望の申し子・・・・・・もう、誰かの犠牲は真っ平ご免だよ」

手にした父親の遺産の罅が入ってしまっているチャクラ刀に、最大限のチャクラを廻し、カカシは四代目と戦ったときの速度で、九尾に近づく。











「「聖戦」・・・・・・こんな術式まで・・・・・・使わなきゃいけない、なんて・・・・・・っ!!!」

「消滅」を冠した刀を手にし、九尾に攻撃を仕掛け続けるハヤテ。
ハヤテの攻撃は、再生を許さない。

「ハヤテ、行きましょう、終わらせましょう、こんなくそったれな戦いなんか、終わらせましょう!」

ハヤテの恋人、夕顔、悲しき術式を感じ取った彼女は、ハヤテの体を後ろから抱きしめ、ただ九尾を睨み付ける。


「そうですね、折角治ったこの体、楽しみましょうか・・・・・・共に行こう、夕顔、力を貸してくれ」

顔を赤く染めながら、ハヤテは夕顔に確認する。


「なんだ、男らしい顔も、出来るんじゃない、私はわかっていたけど、ね」



「犬塚流奥義・人獣混合変化・三頭狼・真・牙狼牙!!!」

漲る力をそのままに、キバは最大限の力を九尾に振う。


後を追う、リー、ガイ、数多の忍び達。


「行こう、共に行こう、滅びの妖獣、九尾よ、木の葉の力を思い知れ!!!真・満月の舞!!!」










「聖戦」の効果で、限界を越える力を行使する木の葉の忍び達。

チャクラを振わせ、対抗する九尾。

木の葉の里に伝わる、「火の意志」それは、木の葉の忍びの力を最大限に高める。

十数年前の悪夢を振り払うかのように、木の葉の忍び達は、力を示す。


周りの忍びが力を完璧に発揮し、完全なる補佐が完成、そして――――――




「「「「「「「対九尾式、封力結界、月輪の術、発動!」」」」」」


「「合同奥義・蟲行軍、蹂躙!!」」


「「合同奥義・柔拳法・八卦五百十二掌!!!」」


「「真・二重孔雀演舞!」」


「最硬絶対攻撃・真・多重・守鶴の矛!!」


周りに多数の忍びがいる所は、戦いの中で対九尾用に改造した封術結界を展開、

それ以外の名のある忍び達はそれぞれが持つ最大限の術で、九尾の体積を削りに削る。

油女家の術は、九尾の行動を完全に阻害、動きを止めきることに成功。

ガイとリーの攻撃も完全にヒット、足と尾の破壊に成功。

日向家の奥義は、九尾の体積を半分ほどにまで減らすことに成功、止めの態勢は、完全に作られた。



ナルトとパートナーの我愛羅の攻撃で、対面する九尾は最硬の砂の槍にて、まるで串刺し候並に、至る所を貫通、動くことを許さない。





「真・麒麟千鳥刀!」



「これは・・・・・・なるほど、・・・・・・消滅刀、真・滅月の舞!」



「いい加減、俺の所に戻ってこい!この馬鹿狐ぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええ、風遁・特大螺旋丸!!!!」









カカシが、ハヤテが、そして、ナルトが、相対する九尾に、自身の持ちうる術式の中で最高にして最大の攻撃をヒットさせた。











「・・・・・・見事、この者達が、姉上が言っていた、人族の勇者達、か。だが・・・・・・」

不思議な少年、ロンの呟きが、静かに呟かれ、静かに消えていった。










グォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ大
オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!








三体の九尾の断末魔が、木の葉全土に響き渡った。






「・・・・・・馬鹿者、が」


綱手の瞳から頬にかけて一筋の涙がこぼれ落ちる。









残るは、ゼツ、マダラ、九尾の本体、そして――――――――。














*風邪は怖いっすねぇ。社会人の大敵です、インフルエンザとか怖い怖い。気付けば、予定より大幅に増加、
おかしいな、もう終わっているはずなんだけどな、クライマックスまで、後ちょっとです。最後までご鑑賞の程お願いいたします*



[4366] 世界大戦、その九、木の葉大決戦、貂。
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/02/01 02:37
決戦が始まる、数時間前、とある場所でとある会合が開かれていた。



会合の主催者は、春の国、女王、風花小雪。


「すでに、三、六、七の人柱力は、行方を眩ましています、私が得た情報によれば、裏にマダラの影があるもよう」


春の国は、再編にあたり、情報と絡繰り細工の強化に重きを置いていた。

今や木の葉に次ぐ第二位の情報収集能力を持つ国となっていた。



「マダラの狙いは・・・・・・木の葉だけでは、ありません・・・・・・この世界、全てです!」


どよめきが出席者の中に起こる。


「時間が、有りません、それぞれの間諜も情報を得ていると思いますが、マダラは、すでに戦力の調整は終わった模様です・・・・・・どうか、どうかご決断を!」


ざわめきは収まる様子もなく、会議は踊る。

























「聖戦」の効果は、劇的なぶん、早く解ける。


効果は長く見積もって二十分、



ドサッ



チャクラの全てを完全に使い果たした自来也は、命の灯火を容赦なく消し去られる。




目が覚めた綱手は、暗部に囲まれている自来也の姿を認めた。

其の顔は・・・・・・満足そうな笑みで、飾られていた。



「・・・・・・戦況は・・・・・・そうか、九尾は滅した、か・・・・・・後は、マダラだけ、だな」

自来也の遺体を抱きしめながら呟く綱手。



火影の目から溢れる雫が、死者の頬を穿たんと滴り落ちる。


「・・・・・・しずね、お前も前線で回復の手伝いをしてこい、朧火、お前達も行ってこい、もう、大丈夫だ・・・・・・シカマル、お前は指示に専念しろ、暫しの間、シカマルを除き二人だけにしてくれ・・・・・・頼むぞ」



それぞれが頷き、動き出す。



静かな泣声が、前線司令室に響き渡る。





負傷者の状態をチェックしながら、最大効率でシカマルは救援に当たる。

「聖戦」で使ったチャクラは、使い放題という訳ではない。


チャクラ効率が著しく上がるため、いつも以上の力を使えるわけだが、当然、使ったチャクラは回復を待たなければ、動けなくなってしまう。




九尾に止めを刺した後、すぐに満足に動けそうなのは、新たに三尾を取り込んだナルトと人柱力である我愛羅くらいのものだ。





ナルトと我愛羅の前を、絵で描かれた古代竜が通り過ぎた。


背に乗っている者は三人、後に続く「根」の者達。





「おい、我愛羅、まだ戦えるか?」

「ふんっ、心配など、無用、まだ残っているのだろ?このくだらない戦いを戦争を仕組んだ元凶が」

「ああ・・・・・・今、俺の仲間が後を追っていったってばよ、行こう!」

「・・・・・・わかった、盟約に従い、最後まで共に行くとするか」


情報はナルト達にも入ってきている。

もう満足に戦える者が、自分たち以外にほぼ、いないと言うこともわかっている。


二人の人柱力は、二人の人型決戦兵器は、木の葉大決戦、最後の戦場に向けて、動き出した。

















「こんな奥の手まで用意していたとは、な・・・・・・流石は木の葉の里と言ったところか」

どんな原理か知らないが、一人宙に浮いているマダラ。


「しかし、九尾は露払いとして最高に役に立った・・・・・・サスケ、か、まだ心構えは変わらない、か?」


再度、マダラの前に立つサスケ。

黒の忍び装束に、目にはイタチから譲り受けた真の万華鏡写輪眼。


「あんたの終焉だな、同じうちは一族の俺が、引導を渡してやるよ」

「・・・・・・無理、だよ。サスケ、お前の力では俺には絶対に勝てない、お前の兄、イタチだったら兎も角、まだまだ未熟、お前は其の目を完全に使いこなせていない。其れでは無理だ」


あくまで静かなマダラの声、以前の少し前のサスケは、此処で激昂し、そして敗れた。

忍びは成長する、戦いの中でも成長する。

未だ発展途上であるサスケであれば、尚更。


「ああ、認めよう、俺では、俺だけでは、あんたに届かない。だが、俺にはあんたと違い仲間がいる」


空に浮かんでいるサスケ達とマダラ。


ふわふわと二つの砂の雲が、近づいてきた。


「・・・・・・待ってたぞ、ナルト・・・・・・癪だが、手前は強い・・・・・・認めてやるよ・・・・・・頼む、一緒に戦ってくれ」


絶対に顔は見せずに、サスケは言葉をナルトに向けて発した。


ナルトの顔に笑みが浮かぶ。


「へへへへへへへへへへへへへへへへ、どうしたんだってばよ、サスケ、・・・・・・俺達は木の葉の仲間だってばよ・・・・・・俺達だけじゃない、指揮を執っているシカマルだって、他の里の皆だって、一緒に戦っているってばよ。お前は、独りなんかじゃないってば」


嬉しかった、アカデミー時代は常にドベとトップの差、だが、サソリから始まり、様々な任務を通じ、サスケは、ナルトの事を認めた。


その事が、嬉しかった。

「そうか・・・・・・一度裏切った俺を、仲間と、認めてくれるのか・・・・・・有り難う」

サスケは、ナルトと目が合う。

同時に逸らし、二人が笑みを零した。






パチパチパチパチ・・・・・・、


再度鳴り渡るマダラの拍手の音。


「麗しい同期愛、だな・・・・・・おや、どうした白眼使い、顔色が悪いぞ」


一見諦めの感情が交じっているように見えて、実のところ、全く入っていないマダラの声がハナビに向けられた。


白眼を発動させてからずっと、サスケの服の裾を掴んでいたハナビ
その手も体も頭も全てが震えていた。

「・・・・・・駄目、です、勝てません、絶対に、絶対に勝てません、九尾並のチャクラが・・・・・・三体・・・・・・なんで・・・・・・人間じゃ・・・・・・無い!」


「・・・・・・その通り、お前等では絶対に俺には勝てないよ、出でよ・・・・・・「磯憮」「雷獣」「貉」俺が、操るのは九尾だけだと思ったか・・・・・・もう、あの最後の結界は使えないだろう、俺の目は誤魔化せない・・・・・・蹂躙しろ、尾獣共」


マダラの口調はあくまで、静かだった。
穏やかとすら感じられる口調で、命ずる、破壊を、全ての破壊を。


まるで水の中で泳ぐように空に浮かび、身に多量の水を纏わりつかせた巨大な三尾を持つ亀の様な獣が、


前脚が二本、後ろ脚が四本、尻尾が六本の狼によく似た鋭い牙を持ち、体に多量の雷を纏りつかせた獣が、


ずんぐりむっくりとした体躯を持ち、一見すると愛玩動物、されど身に纏う多量の風は近寄ることを許さない、七尾を持ち速さと知恵を誇る獣が、


多量のチャクラの塊と評された、九尾と守鶴と同様の存在。



「俺と同じく、尾獣を喰らったな!!!!!」

我愛羅の叫び声が、木の葉の空に響き渡った。



九尾との戦いで全力を出してしまっていた木の葉の里は、もう、戦えない。



咄嗟に迎撃に動こうとするナルト達。



戦えるのは、もう此処にいる者だけだ。



が、



「秘術、影縛り・・・・・・こんな術、君達なら一秒も掛からないで解けるでしょ?デモ、ソレダケデ、オワリダゼ」


影から現れたゼツが、その場にいた全ての忍びの動きを射止める。


ゼツが発したとおり、チャクラに任せて影縛りをふりほどくナルト達、其所に襲いかかるもう一つの影。




既に尾を完全に無くしてはいるが、未だ力を誇る、九尾本体だ。




「くそぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


ナルトは九尾の迎撃に入る、我愛羅は咄嗟に判断し、最も攻撃力が高いと見込まれる雷獣の後を追った。




「何処に行く、お前達の相手は、俺だよ、共に里が滅びる様を見届けようではないか」




里の援護に向かおうとした、サスケ達の前に立ちはだかるマダラ。




「・・・・・・私があの得体の知れないげじげじ野郎を相手します・・・・・・マダラのチャクラは、九尾以上、油断は絶対にしないで下さい!」


ハナビはその場から離脱、ゼツの体を掴んで共に地面に落ちていく。




「磯憮」「雷獣」「貉」三体の内、二体が、止める者もおらずに、思うがままに行動を開始した。





少しだけ間が空き、尾獣、襲来の報がシカマルに、綱手に届くのはすぐだった。











「やはり・・・・・・まだ隠し球を持っていたのですね・・・・・・此処で朽ちさせるのは、・・・・・・余りに惜しい・・・・・・認めましょう、私も人の可能性を、信じてみたくなりました・・・・・・+*+*+*+*+*+*+*+*」

後半は、人には理解できない声で言語で呟くロン。

「これが・・・・・・これが人の可能性とやらか、感じる、私にも感じる、歴史浅き私にも、感じる・・・・・・なるほど、姉上、貴方の仰っていたことは、的を射ていたわけですね・・・・・・ならば、私も、契約を交わすとしようか」


「何を、言っているの?大丈夫?」

その場に蹲ってしまったロンを心配するヒナタ。

「・・・・・・貴方は、優しい方ですね、見知らぬ存在である私を案内してくれるどころか、心配までしてくれるなんて・・・・・・敬愛に値しますよ・・・・・・有り難う御座いました」


一拍間が開き、

ロンは、恐慌に陥っている前線司令室に入り込んだ。




「人の世界での、この場での最高権力者よ、火影よ、私と契約を結べ、さすれば並ぶ者が無い我らの力、汝ら人に貸し与えようぞ!」






突如、口調が変わったロン、同時に声の質も変わり始めた、少年特有の甲高い声から、年経た人間の其れに。




「・・・・・・契約、か、わかった、結ぼう・・・・・・お前は、今代の竜王だな、なるほど先代が人と為りて、竜王の座を受け継いだのが、お前か」


自来也の体を胸に抱きしめたあと、立ち上がり、ロンと向き合い話をする綱手。


「悟っていたか・・・・・・火影よ」


「嫌でも分かる、気質がそっくりだったからな・・・・・・其所のヒナタが連れてきて外で待っていた時から、わかっていたよ、契約か、契約ならば、竜王よ、契約の内容を述べよ」


「我が求むのは、人と竜との不可侵条約、我らは人に仇為さぬ限り、人も我らに対する有形力の行使を辞めてもらいたい」


「もし、末端の者が襲ってしまった場合は?」


「自衛権の行使を認める、それらはそちらで処置して貰って構わない、但し、人に対しても其れは同様、理由無き力を我らに向けた場合、全力を持って駆逐するが、構わんだろう?」





綱手は、暫し内容を吟味し深く頷いた。


「私は、同意しよう、如何せん戦時中のため、正式な契約は後ほどに為ってしまう、が、竜族は言葉を違えないと聞いている、ならば、我らもそちらの礼式に従い、誓おう」



ロンの体が変化していく、


「良、ならば、我が配下は、姉上の所に向けているため、軍隊は用意できぬが、並ぶ者無き我が力、そなた等の敵に向けて、全力を発揮しよう・・・・・・だが、それでも一体残る、大丈夫か?」


ロンの目に綱手の強い眼差しが注がれる。


「契約を交わした我らを信じろ・・・・・・例えどんな状況でも、易々と滅び去るような里ではない・・・・・・木の葉は最強だ」


ロンは笑みを浮かべる。


「・・・・・・それでこそ、勇者達の頭領だ・・・・・・我が共に轡を並べるに相応しい、そなた等にもカルマの加護があらんことを」



ロンの変化が終了、其所に立つのは、金色の体表を持ち、金色の角を持つ、魔力に漲る、最強のモンスターの一体、長き年を経た竜の中の竜、古代竜。



ばさっばさっばさっ



ロンの翼が羽ばたき、狙いを定める。



ゴォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!



古代竜の神のブレスが、違わず、亀の化け物、三尾の「磯憮」に向けて放たれた。



結果を確かめる前に、ロンは飛び立つ、天井を壁を破壊されてしまった前線司令室、が、確かに希望が根付いていた。










「貂」は思案していた、どうすれば効率よく人を滅ぼし尽くせるか、目に見える人達は皆、格好の標的でしかない。



「貂」は他の尾獣に比べ賢い、彼は弱い者いじめが好きだ、ゆえに、彼は弱体した者から殺すことに決めた。




目の前にいる弱き弱き人間達、殆ど力を感じない、ゆえに彼は殺すための行動を取る。







「・・・・・・くそが・・・・・・九尾の次は・・・・・・七尾かよ」


周りにいる忍びは自分も含め、もうチャクラが残っていない。



後ろにいる忍び達は既に動けもしない、恐怖の眼差しを七尾の化け物に向けている。


遠くで戦っている九尾とナルト、三尾と古代竜、六尾と風影。



残ってしまった七尾を相手するのは、生き残った満身創痍の木の葉の忍びだけなのだ。



アスマの周りには、名だたる忍びが、集結しようとしているが、誰も彼もが力を持っていない。


完全に回復できるわけではないが、チャクラを回復できる兵糧丸は既に口に含んではいたが、効果が現れるまで時間がかかってしまう。




なけなしのチャクラを使い、「瞬身の術」を展開、アスマの目が霞む。




風を支配する七尾の動きは速い、最強の妖獣は、九尾、だが尾獣達の強さは、九尾に劣るとは言え、決して侮っていい敵ではない。





もう、三代目の遺産は存在しない、自らのチャクラ切れの体を使い、この化け物共を打倒するしかないのだ。


「・・・・・・ちっ、日向の旦那ぁぁあああ!!何とかならんかね!!??」


シカマルの指示は、まずは被害を少なくし、少しでも回復手段を重ねろ、と言うもの、其れは正しい、チャクラ切れでは忍者は力を発揮できない。



が、時間を稼げる忍者が、戦力が、この場に存在しないことが、一番の欠点だ。



アスマの声はヒアシにもネジにもその場にいる全員に届く、いのしかちょうを始め、此処にいる名家達は、目が死んでいない、だが、それだけでは、現実はどうにもならない。
「くっ・・・・・・」




苦悶の呻きを呟きながら、七尾の攻撃を捌き続けている日向家一族、木の葉最強の盾の異名は伊達ではない。





「裏蓮華!」




ランクが多分に落ちる術で、何とか戦うガイやリー、だが七尾にはかすりもしない。


七尾は遊んでいる、風を纏わせたそのからだは、下手をすると九尾よりも速い。





カカシもハヤテも紅も、アンコも、なんとか立っているのがやっとの状態、その他の忍びは暗部も含め、動くことすら出来ない。




いつも冷静にして最大の効率をあげる油女家も、得意の術を発動出来ないくらい消耗していた。





他のタイマンを行っているところは決着が付く気配が、全く存在しない。


助けは――――――来ない。

















洞窟の外は、周りを囲んでいるであろう蛇の蜘蛛の大群が待っている。



作戦を全員に伝え、「軍」を突破できる目処が立った。
・・・・・・恐ろしく偶然にも頼っている頼りない策だ、だが、UOの事を一番よく知っている俺じゃなきゃ、この策は成功できない。





その時、あれだけ苛烈に責め立てていたエレメント達が、引いた。


明らかに空気が変わった、何だ、一体何が起こるんだ?

リースの発する気も質が変わった、激しい物から打って変わって一転静かな物へと。

「先に行け、我は此処に残らなければいけんようじゃ・・・・・・大丈夫お主の策は成功するよ、信じることが大事じゃよ、望めばきっと叶う、それがUOのルールじゃろう?」


突然明るい声で告げるリース、
そのままテレキネスで、俺の体を投げ飛ばすリース。


「きゃっ」
白竜の上で俺を受け止める琴音、傍に控えているもう一頭の白竜に乗るは、直人、君麻呂、カブト。


フェニックスの準備も万全、後は決行するだけだ。



「もう、手放すで、無いぞ・・・・・・さらば。そなたらにカルマの加護が、あらんことを・・・・・・」


琴音に向かい確認するようにしゃべるリース、琴音は深く頷いた。



・・・・・・行こう。


まずは、「In Vas Por」アースクェイク!

UOでは、その画面内でしか、効果は現れないが、この世界では――――――。


地面に接している者全てに及ぶ、だから俺は皆を白竜に乗せた。



そして、
「頼む、琴音」

琴音は頷き、ワードを口にする。

「焔帝、お願い・・・・・・kill and Go!!!」


不死鳥が応じ、一気に焔をまき散らせ、その自慢の神速でファイアを飛び出していった。

出かけに侵入してきた蛇のナイトを葬り去り、速度を緩めず、不死鳥は飛びさった。



マトモに行けば、いくら不死鳥でも、軍の魔法には耐えられない。

が、蜘蛛や蛇共は接してきた中で一つの傾向がある。



あいつらは、何よりも回復を優先してくる。


そういうアルゴリズムが書かれているのか、優先順位として種の保存が一番トップにきているようだ。

個別に戦うぶんには厄介極まりない能力だが、今は、今だけは別だ。



何者にも代え難い、軍の隙間が出来る、つまり、魔法使い共の足並みが、崩れるってことだ!


「琴音ぇええええ!!!今だぜ!!!!!!」

「All Go and All Fire!!!」


俺達が乗ったニ体の白竜が、灼熱の焔をまき散らしながら、ファイアを不死鳥に続いて飛び出した。

闇に慣れた目に、光が――――――。























ぼっぼっぼっぼっぼっぼっ・・・・・・。


竜達が、ファイアを飛び出していった後、すぐに、定期的になる音と共に、暗い中を火が通り道を造る。


その道をゆっくりと歩き、リースの前へと現れたるは―――――、

「ほほう、お揃いとは、な。ガーゴイルにでも運んでもらうたか、オークキング、ロッティングコープス、お主も、やはり来たかオメガ・・・・・・いや、そなたは別個だったな、バルロン、それに色情魔、サキュパス・・・・・・わざわざこんな所に雁首並べて何をしに来た!」


何を考えているかよく分からないロッティングコープス、その体躯からは似つかわしくない大人しい佇まいのオークキング、静かに男を陥れる為だけの笑みを浮かべているサキュパス、


漆黒の翼と漆黒の体躯を持つ、悪魔、バルロンが他の主にせんじて、一歩前に出る。


「・・・・・・我が名は、グレン、名に意味など無い、が、命により、「感染源」の処分に来た」

手には巨大な剣、「ファイア」のダンジョン一杯に広がったその姿は、普通の人間ならばそれだけで、失神してもおかしくない魔素を放つ。

「ほほう、群れることをよしとしない、孤高、されど、誇り高き長共が、あんな指一本だけでも殺せそうな弱き者相手に、全開、全力、か?そなた達の誇りは何処にいったのだ!?」


今は、人に近づいた彼女は、されど、臆さない、今の人特有のチャクラを覚えた彼女の力をもってしても、相対する主の力の総量には決して敵わない。


「ふん、「主」であることを、「長」であることをやめたお前には、絶対にわからぬよ」


オークキングが、ロッティングコープスが、サキュパスが、そしてバルロンが戦闘態勢に入る。


「そう・・・・・・じゃな、我では、そなた達には、もう、勝てぬ、な」


かつてバルロンに、かつてのバルロンに、オメガという個体名を持つバルロンが、自らに対して放った言葉を思い起こすリース。


「じゃが、負けぬ、我は負けはせんよ、主、が四体、死出の旅路のお供には、悪くない、な」


ハルバードを独特の構えで構えるリース、体に目に漲る感情は諦めではない、ある種の諦観と共に持ち得る感情は「希望」、それは化け物では持ち得ない感情、人に近づいたリースゆえに持ち得る事が出来た感情。


「イタチよ、・・・・・・後を追うやもしれん、精々人が信じる、あの世とやらで首を長くして待っていろ!」


オークキングがロッティングコープスが全面に出る、彼らに許された攻撃手段は近接攻撃だけ。
されど、彼らの持つ能力は、「強力」「頑健」「猛毒」喰らってしまえばリースと言えども唯では済まない悪辣きわまる攻撃手段。


中間地点にて、サキュパスが優雅に翼をはためかす、彼女に許されている攻撃手段は多岐にわたる。
「魔法」「吸収」「反射」近づく者全ての生気を奪い取り、されど遠距離からの攻撃手段である魔法等は全てを反射し、遠くに位置する相手には魔法で攻撃、まともな対処方法では攻略し辛い相手、熟練の冒険者であろうとも、準備が整っていなければ逃げ出す相手だ。


後方に位置するのが、バルロン・・・・・・グレン。
古代竜と双璧を為す、最強のモンスターの一体、挙げるまでもない、多量の魔力を使った、最大火力によるごり押しと、目に写す事を許さない近接における、神速の攻撃。
かつて一対一でリースはオメガを葬り去ったが、あの時は今いるファイアみたいに狭い場所ではなく、広大な場所で幾らでも避ける余地もあり、尚かつ初見と言うこともあり、対応策を練られる前だった。



「さぁ、覚悟せい、世界に操られた、哀れで愚かな馬鹿者共が!我を誰だと心得る、元竜王にして、最強の具現、リースであるぞ!」


リースの手に持つその身に合わぬ、長大な柄の先端に巨大な刃が付属しているハルバードが、静かに鈍い光を放った。





[4366] 世界大戦、その十、木の葉大決戦、転。
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/02/01 02:39


尾獣、NARUTOの世界において、人柱力として、戦略兵器として扱われるもの。

極めて強力な力を持ち、持ち主に例外なく、普遍的でない生活を贈ることでも有名である。



一尾は、砂の支配者、現時点での依代は風の国、砂の里のトップ、砂の我愛羅。

二尾は、焔の支配者、現時点での依代は雲隠れのユギト、里のために戦う誇り高き女傑。

三尾は、水の支配者、今は既にマダラの手に堕ちている、元の依代は死亡。

四尾は、溶岩の支配者、現時点での依代は岩隠れの老紫、死と戦う事が大好きな生涯現役の殺し屋。

五尾は、木の支配者、現時点での依代は岩隠れの天元、木遁忍術と晶術忍術の使い手、破壊をこの上なく好む性格破綻者。

六尾は、雷の支配者、今は既にマダラの手に堕ちている、元の依代は死亡。

七尾は、風の支配者、今は既にマダラの手に堕ちている、元の依代は死亡。

八尾は、純然たる力の支配者、現時点での依代は雲隠れのキラー・ビー、戦いに厭いており、今はラップに嵌っている。無関心者。

九尾は、全てを滅せる消滅の支配者、説明することすら不要、NARUTOの主人公であり、木の葉の国の決戦兵器となったナルトの力の源。今はマダラの手に核が奪われており、完全なる実力を発揮することは不可能。





強力な戦略兵器、触れてはいけない天災として有名な九つの尾獣の内、現在木の葉には、一、三、六、七、そして九の尾獣が集結していた。

何処をどう考えても里の消滅の危機。

九尾との戦いで全て消耗しきってしまった木の葉の里は、静かに終焉を迎えようとしていた。



それでも、諦めない者達がいる。

カカシが、ハヤテが、里の名家と呼ばれる者達が、諦めず、ただ戦う。

チャクラ切れの体で、チャクラの塊といえる尾獣相手に、ただ、戦う。


完全に動けない忍者達は、七尾の貂の攻撃にただ命を落とす。



木の葉の忍びの遺体を口に含ませて嗤う七尾。



「くそったれが!弄びやがって!!」


チャクラ切れの体でも速さだけは衰えないキバ。

何とか貂の注意を逸らそうと、果敢に攻撃を仕掛けるが、完全に力不足、かすり傷一つおわすことすら出来ずに、貂はキバを無視、残酷にして冷酷な七尾は、元気に見えるキバを相手にせず、動けない忍び達から処理をする。


カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカ


死体を噛み砕き、血を浴びて嗤う七尾。













サクラと共に負傷者やチャクラ切れの相手を救護していた風影の姉、砂のテマリ。


貂の禍々しきチャクラが救護室にも届く。

「・・・・・・風の尾獣か・・・・・・サクラ、後は頼んだよ、我愛羅も戦っているんだ、私も行かなきゃ」

風の国に生まれ、風影の血を引く者として、誰よりも風に対し理解が深いテマリだからこそ、七尾の力は七尾の行動は見逃せるものでは、無かった。



大きな扇子を取り出し、戸惑う桜色の少女に、にかっと笑いかけ、金髪の少女は部屋を後にする。


「おい、シカマル、喜べ、あたしが時間稼ぎをしてやるよ・・・・・・木の葉の忍びを引かせろ、邪魔だ」

『・・・・・・すまない・・・・・・風影の兄姉であるあんたに頼むのは筋違いなのだが・・・・・・』

カツユを介して連絡を取り合う忍び達。


「はっ、大事な人質に傷がついちゃいけないってか?そんなこと知らないね、政治の話はよそでやってくれ、あたしは、あたしの信念で動く」

沈黙に入るシカマル。


「砂の里、現時点でのNo5には入るんだ、あんまり嘗めるんじゃないよ、出でよ鎌鼬・・・・・・敵は七尾、『貂』風の支配者、風の国の忍びとしては挑戦するにはうってつけの相手じゃないか」


力量の差は歴然としている。


そんなことわからないテマリではない。


「誰しも・・・・・・戦わなきゃいけない時があるんだよ、あたしにとっては、今だというだけの話・・・・・・さぁ行こうかね、大きな花火打ち上げるとしましょうか!!!」



「VIP独りに戦わせるはずないでしょ」

「お嬢ちゃん1人で手に負える相手じゃねえよ」


カカシのシカクの声が全員の耳に静かに響く。


「・・・・・・だったら、頼むわよ!木の葉の英雄達!」

「はっ、だったら嬢ちゃんも英雄だな・・・・・・行こうじゃねえか」



全員が一様に頷いた。
笑みと共に。



どでかい風遁忍術、特大・風の刃が貂に穿たれる。


テマリの全力の攻撃は、されど、貂に通じた、が、九尾までとはいかないが尾獣は、溢れんばかりのチャクラを利用した自動修復機能を持っている。


瞬く間に修復を完了した貂は、動きを止め、初めて敵と呼べる存在に目をとめた。



カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカ



弱いものを殺すのは大好きだ、だが、自分が強いと思っている相手を惨殺するのはもっと好きだ。

貂の思考回路は冷酷極まりない。

今まで纏わりついていた変な犬を連れた邪魔者は先程吹き飛ばした。



目に付く動けない弱者はあらかた殺し尽くした。



次は、少しだけ歯ごたえが有りそうな生意気にも、自分の支配下にある風で立ち向かってくる相手を殺すとするか。



そんな思考回路で動く貂。


神速がテマリに向かう。


「回天!」

貂に近づくだけで身に纏う風が全てを切り裂く。

まるでナルトの瞬身の術・改みたいに。


ヒアシは最後の希望を身を挺して庇った。

自分の体を犠牲にして。



新たな赤い華が戦場に咲く。

「宗家!」

ネジの叫びに反応し、ぎこちない笑顔を向けるヒアシ。


「風の刃ぁああああ!!!」


鎌鼬を使役しつつ、ヒアシが稼いでくれた時間で再度攻撃するテマリ。

テマリの医療忍術はまだまだ形にすらなっていない。

だから常に変動する戦場での治療は不可能、其れよりも攻撃を取った。



貂は最速の動きを見せ、今度のテマリの攻撃を完全に避けた。

ヒアシの体が完全に粉砕される前に貂は離れた。
すぐに駆けつけるネジ。


息もつかせる前に貂はテマリに再度襲来。

攻撃直後の硬直で動きが取れないテマリの前に立ちはだかる白い影。


「そうそう、やらせないって!」



身に白き光を纏わりつかせて戦うカカシ、少しだけ戻ったチャクラを使いつくさん勢いで、貂に形見のチャクラ刀を突き刺した。



パキンッ



ニ体の九尾に止めを刺したときの反動を抑えきれず、すでに罅が入り尽くしていたカカシの刀は、貂に刺さらず、完全に砕け散った。


嗤う貂。


そのままカカシを噛み砕かんと口をあけた状態で、しかし、動きが刹那止まる。

「影縛り・・・・・・案外尾獣にも通じるもんだな」

すぐに振り払われるシカクの術。


シカマルとテマリの戦いの拡大バージョンだ。
シカクは隠れる、正面きって戦うには相性が悪すぎる。


稼いだ時間で夕顔がカカシを回収していた。



腹立ち紛れに人間の忍者の目にとまらないほどの速度で動き出す貂。






禁術を呟く男がいる、熱き男マイト・ガイ。

「・・・・・・八門遁甲・・・・・・死門・・・・・・開!」
里の危機を認め動き出すガイ、八門遁甲、第八の門だ。
開けば火影を越える力を得られる、但し使用者の命を犠牲にして、だ。


「やめろ、ガイ!」
アスマの声が響く、


「先生!」
リーの声が響く。

ガイはリーの声に振り向いて、笑顔と共に親指を立てた。











「後は、頼んだ!」

だが、貂は狡猾、八門遁甲全ての門を開けたガイの強さを認め、距離を取る、知ってはいないが経験上、人に扱えるチャクラの総量などたかがしれている、あれだけの量を常時開放出来るわけがない。


「逃がさないよ!鎌鼬!」


貂の進行方向にて、通過不可能の風の壁を構築する鎌鼬、一拍、格の違いで打ち破る貂。


「三日月の舞!」

消滅が込められたチャクラ刀で更に逃げようとする貂の足を、三体に別れた影分身で尻尾を切り裂くハヤテ。

なおも、それでも逃げる貂、ガイの放つ波動は、明らかに貂を狼狽させていた。

「蟲壁の術・・・・・・無駄には絶対にさせない」

ゲンは貂の目だけを狙い、違わずその攻撃はヒット。

再生するまで、幾許か、貂の動きに規則性を失わせた。





「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

全力の限界以上の力を発揮し、貂に追いつくガイ。


「真・孔雀舞曲!」


空気との摩擦で火の玉と化したガイが、目を見開く貂に向けて、突っ込んだ!














多数の雷が、我愛羅を直撃する。


「・・・・・・ちっ、連戦は、流石に辛い、か」


雷自体は、砂を地面に突き立て槍として、放電し、事無きを得たが、如何せん決定力に難がある、いくら人柱力といえども、チャクラには限界がある。

大物ばかりとの決戦、我愛羅の体も息切れを起こしてきていた。



「・・・・・・珍しく苦戦しているようじゃん。白秘儀・十機近松の集!」


何処か見覚えがある、されどこの場にはいないはずのクグツ使いが、雷獣に攻撃を仕掛けた。


「・・・・・・何故、此処にいる。カンクロウ」

援護に安堵しつつも、疑問を投げかける我愛羅、今は砂の里を守っているはずだ。


「そんな怖い顔すんなって、変わった国の変わった女王様が、力を貸してくれたじゃん、砂の里は大丈夫だぜ」

「変わった国??」

首をかしげる我愛羅。



















ロンのブレスは、三尾が生み出す的確に生み出される水の鏡に反射されていた。

魔法はダメージが入るが、自然治癒能力に再生能力に勝てず、決定打に欠けるロン。


負けることは考えられないが、何時までも決着が付かない戦いに暫しいらだちを覚えていた。


何処からか、聞こえてくる人の声、だが、ロンは記憶していた、もはや戦える人間などこの集団には少数もいいところのはずだと。


「おい、爺、どっちも殺していいのか?」

「・・・・・・いや、そちらの竜は、木の葉の味方らしいぞ、一応避けておけ」

「面倒くせえな・・・・・・おい、其所の竜、避けろよ!」


三尾の周りに生み出される、水晶の壁。

同時に地面から生まれ出ずる、怒濤の勢いのとがった木と、天から降り注ぐ、全てを燃やし溶かす溶岩。





グォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!





流石に致死には至らないが、ダメージを負う三尾。

燃えさかる木。
「おい、爺、折角の木遁が無駄じゃねえか」

「細かいことは気にする出ない・・・・・・其所な竜よ、訳あって助太刀する、精々巻き込まれんようにな」

ふてぶてしい様子を崩さない二人組。

ロンは人の新たな一面をまじまじと見せつけられた。

















「くそぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」


最強の妖獣九尾と叫びながら戦う九尾を宿していた少年、ナルト。


嗤いながら九尾はナルトを痛めつける。


瞬身の術を展開しつづけるナルトに他の余力は無い、他を気に掛ける余力も無い。


ただただ、精一杯、ゆえに気付くのが遅れた。




焔を纏った化け猫の突進に、




「何だこりゃぁああああああああああああああ!!!!!」





横っ面から思いっきり叩かれた形になった九尾、

嗤いをやめ、動きを止める。

「雲隠れの人柱力、ユギト見参!」


「ったくよ、こんな事している時間はねぇんだけどな、YO!HA!いっとけしっとけくらっとけ♪雷犂熱刀」

巫山戯た調子で、九尾の上にのしかかるように強力な攻撃を仕掛けた、褐色の肌で巨躯を持つ男。



「よ~よ、雲隠れ、キラー・ビー推参、夢はラップで飯を食うこと、よろしくチェキラ!」

キラー・ビーの言葉に頭を抱え上げため息を吐くユギト。




「・・・・・・なんだってばよ、お前等」

呆気にとられるナルト、さっきまでのせっぱ詰まった空気が、見事に飛散していた。










絶望が気付けば消えていた。








他を見ると見慣れない額宛をした忍び達が、動けない木の葉の忍び達を救助している。


その数は、多数、ナルトは初めてだった、これだけ沢山の忍びが、これだけ沢山の里の忍びが他の里の為に動いているところを見るのが。



















「馬鹿な・・・・・・幾ら条約を結んでいたとは言え、忍びの里が他の里を助けるだと!!??」


初めて、明らかな動揺を示すマダラ。
姿が消えかける、

が、


「はーい、逃げられるなんて思ってないよね、後一名様ご案内!」


「根」の者が張った結界が、マダラの動きを阻害する。

「其所でじっと見ていなって、・・・・・・木の葉が、世界の忍びが、あんたの切り札を打倒するところを、さ!」




















数日前、場面変わり、小雪姫と各国代表者。



「・・・・・・随分と古くさい条約を持ち出してきたもんだな、雪の国の女王」

笑みを浮かべる小雪。

「いえいえ、折角ある制度なんですから、使わないと・・・・・・忍界大戦後、誰も使ったことがないようですね、ドトウが結んだって所がちょっとばかし複雑な所ですが・・・・・・、規約、第五十八条、各国の国の首相若しくは其れに連なる者が、宣言し、提言したとき、五大国の其の時点での最高指導者は、特別な事情が無い限り、24時間以内に集まらなければいけない」


「ふん、そんな制度、化け物が世に現れてから作られた、しかも初期の物だ、誰も使おうとは思わんさ」


「でも、集まってくださり、感謝します、雷影、土影、風影の代理のちよ婆様、水影代理、現在戦闘態勢に入っている火影以外の全ての大国の指導者が集まって下さったことに、感謝いたします」


「話、とは?なんじゃな」

続きを促すちよ婆。


「すでに、三、六、七の人柱力は、行方を眩ましています、私が得た情報によれば、裏にマダラの影があるもよう」



どよめきが出席者の中に起こる。


「時間が、有りません、それぞれの間諜も情報を得ていると思いますが、マダラは、すでに戦力の調整は終わった模様です・・・・・・どうか、どうかご決断を!」


ざわめきは収まる様子もなく、会議は踊る。


「其れだけで、其れだけの情報で国が動くわけが無いとはわかっておろうな?」


ちよ婆の静かな声が、小雪に周りの出席者に届く。


「我が国の、絡繰り兵器、存分にお使い下さい」

「・・・・・・他の国に対しての侵攻には使えませぬが、十分防衛機能は果たせるはずです、心配ならば、私の命、賭けましょう」

暗に見張りの忍びをつけろと言う小雪。


春の国は、雪忍を召し抱えているが、その実力は決して高くないのは周知の事実、他の里の精鋭が本気になれば小雪の命は容易く刈り取られるだろう。

小雪は、信頼の代価として、其れを認めている。


「何故、そこまでするのだ」

「決っています、彼らが、私の為・・・・・・いいえ、我が国の為に命を賭けてくれたからです、今は火急の時、・・・・・・御決断を、どうか、助力を・・・・・・悔しいですが、我が国の絡繰り兵器では、到底九尾には太刀打ち出来ません。あの国が、あの里が滅びてしまう前に!」

小雪の悲痛な声が、会議場に響き渡る。




静寂の後、独りの老女の声が、会議場に響いた。

「ならば、そのご自慢の絡繰り兵器、砂の国は、借り受けることとする、準備は出来ているのじゃろ?」

小雪にまばゆき笑顔が浮かぶ。


「はい、数にして、全兵力の、約八割、一万を持ってきました・・・・・・今は、マダラ以外に他の国へ侵攻する者はいません、私の国の絡繰り兵器だけでも、十分に国防を担えるはずです!」

「・・・・・・ふん、それだけの数があれば、確かに全里へ廻せような・・・・・・お主等はどうする?」


沈黙を保っている他の里に対して、問いかける砂のご意見番。




「ふん、いいではないか、我らが力、世界に示す好機、なぁキラー・ビー」

額に雲隠れを現す額宛をつけて、会議場に現われた、女傑、二位ユギト、及び巨漢の男性、キラー・ビー。

しかしキラー・ビーは話を聞いていない、上の空でラップに為っていないラップを口ずさんで勝手に頭を抱えていた。


「ああ、うまくいかねえな、ラップは奥が深いぜ・・・・・・」

キラー・ビーの呟きを聞いたユギトの額に青筋が浮かび上がる。


「ははっ、八尾の人柱力はおもしれえな・・・・・・どうする、爺、俺は暴れられればそれでいいが」

「そうじゃな、儂も強い奴と戦って、殺してみたいのぉ、普通の忍びは普通の化け物は、もう飽きただもんで」


何気に物騒な言葉を零しながら会議場に現われた岩隠れの人柱力の二人。



戦力の主と成り得ている人柱力達。



一名を除き、戦闘の意志はあり。



「・・・・・・わかった、では、春の国の女王、そなたが持ち込んだ戦力、全てを我らが里に配備して貰おう・・・・・・条約発動の決を採る、分かっていようが、五大国の内、反対が一国でもあれば、決行されない・・・・・・この実力行使に、反対の国は、手を挙げてくれ」


固唾を呑む瞬間、静まりかえる会議場。


結果は―――――。

















ガツッ




光に慣れた目に飛び込んできた風景は―――――敵の大軍とエナジーフィールドで構成された動きを止めるためだけの簡易トラップ。


何故だ、俺の地震で、回復に手一杯な・・・・・・、



下を見る、確かに回復魔法を唱えている集団はいる、が、それ以外にも延々と攻撃魔法、補助魔法を唱えている集団もいた。






―――――規模を見誤った、か。
―――――蛇共の蜘蛛共の、世界の本気を見誤ったと表現してもいい。



ああ、駄目、だ。



負け、だ。



「ふんっ・・・・・・致し方有るまい・・・・・・先に行け、此処は、俺と不死鳥が受け持つ、木の葉の女忍、俺に不死鳥の権限を渡せ」


再度下を見る、不死鳥は、元気に攻撃を仕掛けていた、あれはこの壁に捕らわれる事無く、抜けられたみたいだ、流石神速。


だが、その攻撃すら、軍の規模に比べれば単発に過ぎない。



ざっと見ただけで、数十聯隊。

地面を埋め尽くすモンスターの群れ。

数が多すぎる・・・・・・。


「諦めるのか?・・・・・・そんな者を守れと大蛇丸様は言っていない、最後まで大蛇丸様の期待に応えて見せろ―――――行け」


琴音のもどかしそうな言葉で受け継がれる不死鳥の操縦権。

君麻呂では、詳細な操作は絶対に不可能、だが、攻撃だけは命ずることが出来る。


君麻呂の体が、変貌していく、あれは、呪印状態2。






さっきから、フィールド除去魔法は唱えている、未だ攻撃魔法が束となって飛んできていないのは、一応俺の策が成功したことを意味している。

が、其れも時間の問題、少しすれば、フェニックスは捕らえられ、軍隊の魔法が俺達を瞬殺する。

ついて行けない状況に頭が働かない。

消しても消しても張り直される通過不能の透明な壁、エナジーフィールド。









「真・早蕨の舞」






ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ


極太の骨が地面から勢いよく生み出される。

絶望的な状況を覆す、絶対的な力。







崩れるエナジーフィールド。


君麻呂め、落ちていく前に、どれがフィールド魔法を張っているか確認していたのか。


「All Go!!」

琴音の声に従い、白竜達は動き出した。















自由になった白竜達は、再び羽ばたく、一路、テラサンキープに向かって!



「・・・・・・そうだ、行け、後は頼みます、かぶとさん」



軍隊が、白竜達の後を追おうと、背中を君麻呂に向けた。



「真・十指穿弾、真・鉄線花の舞・花、真・早蕨の舞」



君麻呂の攻撃が、違わず、全ての蛇に届く。

残念ながら、命を落とすのはごく一部、されど、軍隊の注意を君麻呂に向けることに成功。



「行かせない、よ。お前達は此処で僕と戦うんだ。大蛇丸様、今、そちらに行きます・・・・・・いざ、尋常に・・・・・・勝負!」

君麻呂の顔には満足そうな笑みが浮かんでいた。


戦いこそがかぐや一族の真価にして全て。


この状況は、君麻呂にとっては、最高の一時なのだから。

クェエエエエエエエエエ

フェニックスが君麻呂の闘志に反応し、力を増す、縦横無尽に軍隊を蹂躙するフェニックスに、ありとあらゆる力を使い、同じく軍隊を蹂躙し、捉えさせない君麻呂、軍隊は認めた、強力な敵だと。












「・・・・・・先を急ごう」

カブトの声が、静かに呟かれる。

「わかってるよ・・・・・・リースが、君麻呂が、くれた命だ・・・・・・此処まで来たら絶対に行ってやるよ星の間!」

じゃなきゃ嘘だ、こんなどうでもいい俺の命を、それぞれ死者との約束なんて、ぶっちぎってしまっても構わないような内容で、最後まで守りやがった。


イタチ、大蛇丸、共に俺が治したヤツラだ。

彼らとの約束を、忠実に守っている生者にして最強ランクの二人。


・・・・・・俺に、力があれば・・・・・・くそっ・・・・・・くそっ・・・・・・。


「その意気、よ。貴方は絶対に辿り着かせる、それが私達の恩返し、よ」


琴音が優しく俺の頭を撫でる。


テラサンキープまでは、あと、少しだ。



[4366] 世界大戦、その拾、木の葉大決戦、転々。
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/02/07 00:03

どんな集団であれ、どんな戦闘集団として名をはせているとはいえ、非戦闘員というものは存在している。


避難している者達の護衛をしている者達がいる。


それはとても大事なことだ、戦えないものを守れずして何が戦闘集団だ、何が最強の里だ。


「・・・・・・いるか先生が暗部だったなんてね」


金髪の少女、いのが、ちょうじと共にシカマルに指定された場所にたどり着いた所で、待っていたのが、暗部特有の黒の忍び装束に身を染め上げていたいるかだった。


「どうやら何とかなりそうだな・・・・・・だが、念の為だ、避難を完了させておけ」


持ち前の有能さで、避難民、一般市民に対し、指示を出し続けるいるか、シカマルは戦闘のことだけで手一杯、いの達や、テンテンや、動けなくなったみたらしあんこや、戦闘員補佐の紅も今はこちらで手腕を振っている。


戦いたい、直接里の危機を救いたい、そう考えているものもいたが、歯を食いしばり、食い入るように報告を聞いているいるかの姿を見ては、皆一様に頭を横に振り、非戦闘員の避難に戻る。


「頑張れ・・・・・・ナルト、それにみんな!」


小さく呟くいるかの声は、確かに皆に響き渡った。










シカマルは、一つの影が、直接前線司令室に飛んでくるのを認めた。

状況は圧倒的に好転。

他の里の忍びの助けが入ってからの被害は、ほぼ零。


戦いの主役を人柱力が担い、他の一般の忍びはあくまで救護に専念。

其れは、犠牲者の数を著しく減らすのに大いに役立っていた。



ロンにより壊された天井から降り立つ、春の国の額宛を当てた忍び。

腕には、映画館ではよく見かける顔が、女優にして女王となった小雪姫が抱かれていた。


腕をすり抜け、シカマルと綱手の間に降り立つ、小雪。

顔には笑顔が、観客を国民を魅了してやまない、満面の笑みが。


綱手にそん場にいた全てのものに対し、一礼をして、女王は言葉を発する。



「はーい、ご機嫌いかが?五代目火影綱手様に、木の葉の忍びさんたち」


言葉を返そうとしたシカマルを遮る綱手。

「この助力、貴方が仕組んだものですね?」

一国の主には、相応の態度を、幼少の頃厳しく初代火影にしつけられた綱手の言動は誤る事は無い。


頷く女王。
「ええ、苦労したんだから、感謝してよね?」


頭を深々と下げる火影。
「心より、感謝を・・・・・・でも、何故?」

「あら、人を助けるのに理由が必要かしら?」

「ええ、忍びの世界では、無償での援助など有り得ません」

笑みを深める女王。
「そうよね、普通の忍びの方はそう言うわ・・・・・・でも、貴方の里の忍びは違ったわ」

「ナルトと・・・・・・ガイ班の事ですか?」

雪の国の顛末は綱手も聞いていた。

「ええ、あのお馬鹿さん達は、自分の命も省みず、私の国を救ってくれたわ」

「あれらは、例外です」

「その例外が嬉しかったのよ、恩を返すのに、何か理由がいて?」

ゆっくりと首を横に振る火影。

「・・・・・・有り難う御座います」

最後にもう一度一礼をする火影。

にっこりと花のような笑顔を浮かべる春の国の女王。
「さぁ、後は信じましょう、人が持つ、希望という名の力を」



状況は好転していた。



世界の柱となる尾獣。

立ち向かう人柱力達。






決戦が、木の葉の至る所で繰り広げられる。


世界は、世界の忍びは、今有史以来始めて結束した。

強大なる世界の敵の存在、其れが無ければ未来永劫なかったであろう展開。

女王の火影の木の葉の軍師の顔に、笑顔が広がる。
















三尾は、新たに増えた強力そうな力を保持してそうなニ体の者を敵と認めた。



口を開き、圧倒的なチャクラに支えられた、強大無比な水遁忍術を展開。



ゴォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ



水遁は何かにぶつかり、水蒸気を生じさせた。

霧が晴れ、現われるは、ロンが張り巡らした全てを遮るエネルギーフィールドと、天元が張り巡らせたあらゆるものを凍らせる晶術忍法。





「この威力、この力、・・・・・・面白い、爺、俺があいつを料理する、其所の竜をとめておけ」
嗤う狂人。




敵の強さを認めながらも、単身敵に突撃していく、五尾の人柱力、天元。



極太の木の杭と、全てを凍り付かせる晶術が、三尾を蝕む、が三尾は圧倒的なチャクラでそれらを吹き飛ばす。





てっきり敵に対し、協力して行くのかと思っていたロンの予想を裏切る人柱力達。

四尾の人柱力が金色の体皮を持つロンの横に近づいた。

「木の葉の助太刀よ、暫し時間をくれんか、あやつは、とめられん・・・・・・」

「変わった、ものだな、お前も、あいつも」

ロンの言葉に頷く老紫。
「それが、人柱力と呼ばれる儂等の存在じゃ、じゃが、あれでも随分変わったのだぞ、そうじゃな、お主らが現われてから、かな」

「我らの存在が、人の世界を変えた、とでも?」

再度頷く老紫。

「うむ、少なくとも、過度に疎まれる事は、無くなった。其れまでは儂等を作り出しといて、避けるような輩ばかりじゃったのだが、な・・・・・・あやつも変わったよ、態度には決して表さぬが、な・・・・・・頼られるのは、悪くは、ない」

「人間も、色々あるのだな」

「うむ、あやつが、天元が力尽きた時を見定め、儂と主で止めを刺す、それで構わんか?・・・・・・単身で戦うことが、あやつの誇り、甘いことを言っていると主には感じられようが、儂も同類には、・・・・・・甘くなったものじゃな」

「いいだろう、此処はお前達の流儀に従おう」


















天元と老紫、其れに古代竜であるロンの戦いが始まったことを確認してから、暫しして、シカマルは三尾が堕ちた事を察知した。


形を無くしたチャクラの塊は、崩れ、とある方向に向かった。















雷を支配する妖獣と争っているのは、砂の我愛羅、その兄、カンクロウ。


「ほらほらほらほら!力が出てないじゃん、我愛羅、そんなんで風影を名乗るのか!?」


ちよ婆に仕込まれたクグツの術を的確に使い、六尾、雷獣に痛烈な一撃を加え、我愛羅を補助するカンクロウ。


「途中から割り込んだだけの者が、偉そうなことを言う」


連戦につぐ連戦で、若干疲れが出始めた我愛羅だが、強敵だけとの戦闘経験は伊達ではなく、的確に強力な攻撃を雷獣に与え続ける我愛羅。


口では言い争ってはいるが、二人の顔には笑顔が浮かんでいた。


彼らの間には複雑な事情が存在していた。


人柱力として育てられ、愛情を知らなかったばかりか、畏れと共に育った我愛羅。

対等に接する者は何処にもおらず、其れは兄であるカンクロウでさえ、同じであった。


が、新たに得た力、稀代の天才クグツ士、サソリの力にちよ婆の力を受け継いだカンクロウの力は、全滅戦争を経て、強大に成長していた。


何ら忌憚なく意見を交わす存在が始めて出来た我愛羅。

今まで畏れていただけの存在を助けることが出来るようになったカンクロウ。


兄弟なだけはあり、ピタリと合った二人の攻撃の息。



いくら尾獣だとはいえ、いくら雷の神速を誇る雷獣だとはいえ、今の、二人の相手ではなかった。




「ほらっ、今じゃん!赤秘儀・百機の操演・千手操武!」


あたりに仕込ませていた大量のクグツを顕現、そのまま雷獣の動きを縛り上げたカンクロウ。


「ふんっ・・・・・・最硬絶対攻撃・真・守鶴の矛」

守鶴を模した形の極限まで高められた攻撃力を誇る矛が、動きを完全に縛られた雷獣に突き刺さる。


ぐしゃっ



形を無くしたチャクラの塊が、三尾と同じく、有る方向へと向かっていく。


「へへへへへへへへへ、・・・・・・俺達、やるじゃん!」


カンクロウは笑いながら、我愛羅に近づき、手をあげる。



「・・・・・・」


パァン!


力強く打ち合わされた二人の兄弟の手。

我愛羅のいつもの無表情にどことなく笑みが入り込んでいた。















ゴォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ




ガイの最後の攻撃は、違わず七尾、貂にヒットした。


崩れ落ちるチャクラの塊、前の二体と同じく、有る方向へ向かう。



他の里の忍びに助け起こされる、息絶え絶えだった木の葉の忍び達。



一人の少年が、英雄に駆け寄る。


が、


満足そうな笑みを浮かべ、一人の英雄は、物言わぬ躰になりはてていた。



「・・・・・・先生・・・・・・貴方の意志は、僕が、継ぎます」



一筋の涙が少年の頬を流れ落ちた。


「・・・・・・全く、勝手に先に逝くんじゃないよ・・・・・・ライバルライバルいつも五月蠅い癖に、・・・・・・さ」

悲しみを無理矢理堪えた声が、少年の背に届く。

英雄の弟子は、振り返ることをしなかった。




「・・・・・・宗家」



ネジに抱えられた血まみれのヒアシ。



「・・・・・・よい、何も言うな・・・・・・儂が言いたいことは、もうすでに・・・・・・残してある」



息も絶え絶えに言葉を発する日向家宗家、天才と呼ばれたネジの目にも明らかだ、・・・・・・もう、助からない。


「・・・・・・ネジよ、ヒナタと、ハナビを、任せた、ぞ」


静かに頷くネジ。

其れを見届け、日向家宗家は、崩れ落ちた。




















「Yo Hey Yo!」

変な調子を口ずさみ乍ら、それでも強力な攻撃を九尾に向けて放ち続ける巨漢で色黒のサングラスを掛けた男。


「済まんな、木の葉の人柱力・・・・・・確かナルト、とか言ったかな?」

緑色の髪をした20代の女性の硬質な声に頷く金髪の少年。

「何がだってばよ」

「いや、な、真面目にやれば、あいつは強い、のだが・・・・・・」


余りに思い詰めた表情をしている女性、ユギトに笑いかける金髪の少年、ナルト。


「へへへへへへへへへ、俺は別に気にしていないってばよ、其れより助太刀忝ないってばよ!」


「そうか、お前は笑うことが出来るのだな・・・・・・いい里に、いい指導者に、いい大人に囲まれたな」

くしゃっと癖っけの金髪の髪をなで上げるユギト。


誰よりも互いのことを分かり合えるのが、彼ら人柱力達だ、生まれた里、育った里が違うにしろ、彼らの境遇は、大きくは違わない、其れが力を持ってきて生まれてきてしまった彼らの宿命だからだ。


「へへへへ、・・・・・・姉ちゃんの名前は、なんていうんだってばよ、それとあっちの大きなおっちゃんは」


ふふっと口元に微笑みを浮かべるユギト。
「私の名前は、ユギト、あっちのへたくそなラップとやらを口ずさんでいるのが、キラービーだ。共に雲隠れの里に所属している、我らの人柱力は、それぞれ二尾と八尾、よろしくな、九尾のナルト」

にこやかに微笑み、手を差し出すユギト。


「へへへへへ、俺の名前は、うずまきナルト!いずれ火影になる男だってばよ!」


どことなく、肌で感じる親近感が、ナルトを包み込む。

ばしっと力強く握りしめる手。





「おいおいおいおい、さぼるな逃げるなお前等なんだ、俺にばっかり戦わせるな!」

キラービーの声が、二人に届く。


「ふんっ、いつもいつも私が感じている感情が理解できたか!・・・・・・さぁ行こうかナルト、同胞よ!」


「おう!」


負けっこない、ナルトは満面の笑みを浮かべて、ユギトとキラービーと共に戦う。


その考えは間違えではなく、ナルト達三人は、









暫くして九尾を完全に仕留めた。


ナルトに入り込む、最後の九尾の欠片。







































――――――此処が、テラサンキープ。

もしかしてカルダンも、このロストランドにもしかして存在しているのか?

いや、余計な事を考えるのはやめよう。





「・・・・・・此処が、最後の難関、ってことだね」
直人の声が風に紛れ空に消える。


下に見えるは、テラサンキープ、まるで寺院みたいな外見で、あくまで蜘蛛と蛇の戦士達が闘争を繰り広げていると思われている場所だった。


が、


今は違う。


よりにもよって仲良く連合なんか組んじゃっている彼らの所為で、其所は誇り高き竜王の住処、竜の王国、ダスタード以上の危険度を誇る。


「行こう、琴音、なぎ払ってくれ」


目に写る敵の数は、幸い少ない。


君麻呂と不死鳥が、引きつけている「軍団」、あちらに主力が行っているのだろう。

そうでなければあの数は説明出来ない。

俺なんかの為に、行けと言ってくれた、仲間の信頼は裏切れない、俺は、行くよ、何処までも。


「all kill」

琴音の声に従い、白竜達が灼熱のブレスで敵の本拠地を蹂躙する。


流石にアベンジャー共は少しは残っているようで、抵抗しているが、数が絶対的に少ない。


最高クラスとなった琴音のテイマーの絶対的な力に勝てるわけもなく、俺達は歩みを進めた。


内部に、入った。

「In Lor」
ナイトサイト、夜目の魔法、忍びではない俺は、暗いところは見えない、だから唱える、この呪文を。

GMの俺にとっては此処は魔法の効果で既に昼間と何ら変わらない。


一筋の煙り立ち上りゆき呪文を唱えながら進む道標ってな・・・・・・。

俺は冒険者だ、目的地はただ一つ、「星の間」、此処を踏破した先にある、現実へ帰還できる、ただ一つの道標。
――――――さぁ、オーラスだ。


「さーて・・・・・・竜君、僕も此処までのようだ、ダンジョンで先に進む場合、誰かが後ろを守らないといけない」

突然言葉を発したカブト。

「頼んだよ、琴音、直人、孤児院仲間である君達なら、最後まで竜を任せることが出来る」

「・・・・・・わかったわ、まだ黒須先輩だって、納得は出来ないけども、竜の事なら任されるわ、行くわよ、直人」

琴音が俺を怪力でつまみ上げて、先に進む。
直人が頷き、後に続く。


ちょっと待てって!

俺の口を塞ぐ手、温かい手、琴音だ。

「何か言いたそうだけど・・・・・・何も言わせないわよ?」

琴音の手を振り払い、俺は呟く。
「だが、何故今こんなところで・・・・・・」

琴音が真剣に俺の目を覗き込んだ。

「貴方なら分かっていないはず無いでしょ?・・・・・・貴方の言葉は黒須先輩を愚弄することに他ならないわ、それ以上喋ったらおしりペンペンだけじゃすまさないわよ」


ダンジョンでというより、この段階では、外から押し寄せる軍団を防ぐ勢力が必要なのは、確かだ。
一々後ろを気にしながら戦って勝てるレベルじゃない、このダンジョンは。
・・・・・・だが。


「竜君、忍びでない君にはわからないかも知れないけど、これが僕達の世界だ」


忍びは徹底した現実主義、無駄なことは絶対にしない。

んなことは、わかっている、分かっていたつもりだった。


いくら懐かしくってもいくら同じ時間を過ごしていたとしても、俺が歩んだ時間と、こいつら二人の歩んだ時間は、違う。

・・・・・・わかっていた、分かっていたつもりだった。

「其れが、覚悟、か」

とうとう真の意味で俺が持ち得なかったもの・・・・・・世界の敵ミナクスが指摘した俺に絶対的に欠けていたもの。


一様に頷く三人。

顔には、笑顔が・・・・・・どうして、笑えるんだ、こんな状況で。

「あんたの考えているようなことはお見通しよ、・・・・・・それは、信頼しているからよ、信じているからよ、自分の犠牲は、無駄じゃないって、ねぇ黒須先輩」


頷くカブト。


「竜君、君は十分頑張った、十分僕らに希望を与えてくれた・・・・・・今度は君に希望を与えるよ、君は、君の世界に帰りな、君にはその資格があるよ」


頷く俺の幼なじみの二人。

全く変わらない俺とは違い、背が伸びて、大人びて、心までも成長している二人。


変わらないのは、俺だけだ。


俺は、あの場所で、世界に現われたときから、結局、変わってないんだな、姿に引きずられて、心はそのまま、伸びたのはスキルだけ・・・・・・一番アマちゃんなのは、俺、か。


俺より小さかった、二人に教わろう何て、な・・・・・・世界は変わる、俺が思っているよりも速く、そして劇的に。


「・・・・・・悪い、頼む黒須先輩」


ぽんっ


「竜君、君はもっと自分を出した方がいいよ、この言葉の意味は、今なら、わかるよね?」

笑顔と共に告げられる、孤児院卒業の時と同じ言葉。

あの時は、ただ単に猫かぶりがばれているダケかと思っていたが、黒須先輩がカブトだと考えると、話は違う。
「先輩が、俺を、大蛇丸に売ったんですよね・・・・・・ああ、今更謝らなくてもいいです、十分助けて貰いましたからおつりが来るくらいです・・・・・・だけど、最後に一回だけ殴らせていただきます」

カブトは笑顔で、頷いた。


確率で支配されている俺の素手の攻撃。

スキル値は20.0

五回殴って一回当たる計算だ。


すかっすかっ・・・バキッ


俺の拳が黒須先輩の頬に当たる。

ダメージは一、それ以上には絶対に為らない、この世界ではまさに蚊が刺すような威力。


「多くは言いません、生きてください、アマちゃんだってわかっています、でも俺は、あんたにも、君麻呂にも、リースにも、俺の為に犠牲に為って欲しくない、あんた等は生きている歴とした人間だから・・・・・・決して登場人物なんかじゃないから」


俺に殴られた頬をさするカブト。
「簡単に死ぬつもりは無いよ、僕が大蛇丸様に見込まれたのは」

その言葉を遮る。

「俺は、わかってます、でも、敵は多勢に無勢、一対一が出来るこの場だといえ、油断はしないで下さい」


カブトは頷いた。


「さぁ行け、変革者・・・・・・大蛇丸様は、大層満足していたよ、其れだけは忘れないでくれよ」


最後まで、大蛇丸命、か。そうだよなあんたと君麻呂はそうだったよな。


「all go」

ダンジョン内部は狭い。


ナイトメアに乗り換えて、白竜ニ体を引き連れて、俺達は先に行く。


「黒須先輩、・・・・・・カルマの加護があらんことを・・・・・・俺が好きな言葉です、あんたに贈らせて下さい」

カブトは笑顔で頷いた。






「ねぇ、竜君」

ナイトメアの速度に余裕で併走している直人、そこら辺は流石に忍者だな。

「なんだ?」

「ずっと気になっていたんだけどさ、竜君も、あの竜王も言っていた、「カルマ」ってのは一体何なんだい?」

ああ、そうか、違和感がないから気にしていなかったが、この世界には無い概念だたった。

「何、この世界でも御武運を、とか言うだろ?・・・・・・厳密に言うと長くなるから言わないが、そんなもんだ、カルマの加護をってな」

カルマとは、八徳に支えられた、ウルティマ独自の概念だ。


カルマの加護があらんことを・・・・・・徳の加護が、あらんことを。

「all fire」

琴音の声に従い、白竜達の灼熱のブレスが、テラサンキープ内部を嘗め尽くす。


現われては死んでいく、蜘蛛の蛇の戦士達。

単体では、もう琴音のペットの力に対抗できる戦士はいない、はずだ。












いい加減、わかるべきだった、世界は甘くないって事を、俺はカブトとわかれてすぐに再度理解した。


――――――世界は、甘くない。
























ゼツと共に、地面に降立ったハナビ。


白眼を発動、敵の隙をうかがうハナビ。


「白眼使い、か。さぁて君はどんな死に方がいいのかな?」

ゼツの軽口を取り合わないハナビ。

「・・・・・・貴方は、何者なんですか?」

「オレカ、オレタチハ、アカツキニシテ――――――」

首を横に振るハナビ。

「違いますね、私達に備わっている白眼は全てを見通します。其れは人外にとっても有効です」

「何を、言って居るんだい?」

「誤魔化さなくとも、結構です、貴方は、貴方達は・・・・・・人間では、ありませんね、もう一度聞きます、貴方は何者なんですか?」

「――――――ナニモノ、トハ?」

「簡単な話です、あなた方は、――――――この世界の者では、有りませんね」


ゼツが黙り込む。


笑いが、静かに響き始める。

怪訝な表情を浮かべるハナビ。

「凄いや、其所まで解明したのは、君が始めてだ・・・・・・コノハノジョウニンダッテ、ワカラナカッタノニ、ナ、タイシタモンダゼ」

「貴方達は・・・・・・っ!?」

「ゼツってのは、偽りの名前、だって本物はとっくに喰っちゃったしな」


崩れ出すゼツのゼツだった躰。


「ハナビって言ったっけ、いい線行っているよ・・・・・・一つ聞こうか、君はミナクスという魔女を知っているかい?」


息が詰まりそうに為りながらも、答えるハナビ。


「世界の敵、そう師には聞いています」

「その通り、彼女は、自らの意志でこの世界に乱入した訳じゃないんだよ、なら、誰が呼んだと思う?あの最悪の具現を」

「・・・・・・其の言い振りだと、貴方なのでしょうね」


パチパチパチパチ、ゼツだった者の拍手が響く。


「ご名答、世界が世界を喰らう世界喰い、感染源は、「竜」っていう少年だけど、決定的だったのは・・・・・・実は、僕らだったんだよね、シャドーロード足る、僕らの存在が、全てを決定づけていたのさ僕ら「憎悪」「虚偽」「臆病」の化身たる、僕らが、影で暗躍していたわけさ、影は正しく僕らの支配下だったわけだ・・・・・・さて、此処までは理解できるかな?難しいだろうね、君達この世界の人間には、理解できる次元ではないからね」


「・・・・・・確かに、私にはわかりません・・・・・・ですが、貴方が特別な外道だってことはわかります、今のこの事態は貴方が招いたものなのですか?」


「はははははは、マダラの意志は別に操作していないよ、彼の意志に従って色々動いたのは僕らだけど、彼の狂気は本物だ」



ザンッ



尾獣との決着が付いたことで、シカマルは、残っている敵の殲滅を指示していた。


一番近くにいたハヤテに対し、指示した行動は、不意打ち。


切り裂かれるゼツだったもの。


ハナビに下されていた指示は時間稼ぎ。


その目的は正しく達成させられた。



「・・・・・・正直、よくわからない内容だったんですが、殺してしまってかまいませんでしたよね?」



小さく呟くハヤテ。



「嫌だなぁ・・・・・・そんな刀一本で僕らを・・・・・・お前、其の刀は!?」



いつまで経っても復元しないゼツだった者の躰。



笑うハヤテ。
「ええ、貴方達の言葉を借りれば、最悪の具現の力が込められた、消滅刀ってやつです・・・・・・人間を嘗めすぎですよ、人外共」


「・・・・・・バカナ・・・・・・こんな所、で・・・・・・僕が・・・・・・」


ザンッ


更に横一文字に入るハヤテの刀。



「よくわかりませんが、貴方達は危険みたいですね、さっさと退場していただきます」



「ハハハハハハハハハハ、存在が消滅した程度では・・・・・・僕らは・・・・・・」



ザンッザンッザンッザンッ!!


細切れに入るハヤテの刀。



「いいから消えなさい、ご苦労様です、ハナビさん・・・・・・後は、あの狂気のマダラただ一人」










世界の影で暗躍していた人外は、嘗めきっていた忍びの、自ら招いた魔女の力で滅びた。















*いやー20kがフリーズで消えたときは結構心が折れそうに為りました、残るはマダラ、大ボスです*



[4366] 世界大戦、その拾一、木の葉大決戦、転々々
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/02/10 22:10

木の葉大決戦は、最終局面を迎えた。

マダラが用意したあらゆる勢力は須く、木の葉にまたは、他の里の力により大量の犠牲を払いつつも灰燼と帰した。

木の葉を討ち滅ぼす最終手段であった、九尾は本来の正当術者、ナルトに戻り、他の尾獣も形を保てず、戦場から消えた。

最後に残った腹心である、「ゼツ」もハヤテにより消去され、残るは復讐に駆られている、狂った、最強にして伝説の永続万華鏡写輪眼の使い手、うちは、マダラ。




また、自身も、明らかに性質を研究してきたであろう「根」の者達が形作る結界に捕縛され、動きを取れないでいる。




対面するは、木の葉に残ったうちはの末裔、イタチより受け継いだ万華鏡写輪眼を手に、うちはの因縁全てを断ち切る存在、うちは、サスケ。




「あっはっはっはっはっはっはっはははははははははははははは、マダラさん、全部の尾獣が打ち砕かれたってさ、人柱力達の力はすごいねぇ、これで、あんたも終わりだね、サスケ君、さっさと止め、刺しちゃいなよ。動きは僕らが完全に縛る、この状況なら君が変なプライドを発揮しなければ、どう間違っても楽勝でしょ!」


サスケも乗っている絵で出来た古代竜の背の上で、心の底から笑う仮面を被った「根」に所属している少年。


「ああ、因縁を、断ち切る、か」


サスケの手にしている刀は、イタチが愛用していた刀だ、其れもまた、リースにより形見として受け取っていた。


サスケは「根」の少年に指示し、マダラの近くに絵で出来た古代竜を寄せさせる、どういった原理か知らないが、結界で縛られてもなお、マダラは宙に浮かんでいる。


「確か、「空化の術」とか言っていたな。お前のその躰は、全ての物理的攻撃を遮断する、否、通過させる、並の普通の術も無駄・・・・・・伝説の化け物として相応しい術だよ」


刀を正眼に構えるサスケ、手にイタチの意志を込め、目の万華鏡写輪眼が、巡りに巡る。


刀を上段に構え、振り下ろすと共にサスケは一つの術の名前を口にする。


「神威」


師の一人であるカカシが、使いこなしていた万華鏡写輪眼の術の一つ。


「・・・・・・だったら、お前が存在している其の空間ごと、削り取ってしまえばいい、うちは一族でも最強に近かった兄さんの目を受け継いだ、今の俺なら、出来る」


静かに、喋るサスケ、気の昂ぶりも無く、ただ、静かに忍びらしく事実だけを告げるような口調で、マダラの姿を万華鏡写輪眼の視界の中に入れ、静かに目蓋を――――――閉じた。


後に残るは、「根」が張った、結界ごと消失した其の空間のみ。

空間補強作用が働き、一時的に真空となった空間を埋めんと周りの大気が集まり、風に煽られるサスケと仮面を被った少年。


「なんだ・・・・・・あっけないもんだな・・・・・・伝説のマダラと言えど、この・・・・・・」


「程度なわけないな、たかが影分身に最後まで気付かないようじゃ、先が知れるぞ、木の葉の忍び共・・・・・・尤も、ナルトが使っていた尾獣の尻尾を使った改良型影分身だ、実体としては、間違い無い」


サスケの述懐に被さるように更に上空から響く、死んだはずのマダラの声。

驚愕が浮かんだサスケの表情を無視して動き出す「根」のものたち。
その姿を再度「根」の結界が縛り上げる。

「なんだ、奥の手があったのかい、だったらさっさと逃げれば良かったのに・・・・・・」


仮面を被った少年の声にも被さるマダラの声。
「逃げる必要なぞ、有り得ん・・・・・・何故なら何も始まっていないからだ、確かに、他の里が助けに入るとは思っていなかった、素直に其所の時点では負けを認めよう、が、戦場では、最後に立っていた者が勝者だ、そして、俺は、最後に勝てば、其れでいい」


結界で縛り上げられながらも口を閉じないマダラ。

「神威」
其の姿が再度消える。


「ふん、無駄なことを、お前のその術ならば、確かに俺の空化の術は無意味だ」


更に別の場所に現われたマダラに光り輝くものが入り込む。


同時に縛りあげんと回された「根」の術全てが引きちぎられる。


「尾獣が負けた?・・・・・・其れがどうした、あんな使役動物が負けた所で俺には何の痛痒も感じん」


更に一つの光り輝くものが、マダラに入り込む。

増すマダラの圧力。


「ただ、一つだけ予想外だったのは、ナルトに九尾回収装置が組み込まれていたことだ、流石は最強にして最高との評判高い、黄色い閃光、こんな局面まで読んでいたとは思えんが、あいつの先見の明は、確かだ」


もう一つ、光り輝くチャクラの塊が、マダラに入り込む。
更に更に増すマダラの圧力、既に空気が物質化したかの如く、其れは、その場にいる全ての者を圧倒する。

「再度言おう、尾獣が負けた?嘘を言うな、九尾を除き、尾獣は真の意味でまだこの場に出てきておらんよ、何故なら、・・・・・・何故なら」



「砂縛柩」


何かを口に仕掛けたマダラを包み込む、完全なる砂の棺桶。


「砂瀑送葬」


静かに呟かれた声に従い、砂は圧力を増し、包み込んだ対象を圧縮する。


が、


いつまで経っても潰れるべき砂は形状を変えず、人の形を取り続ける。

「其所の瞳術使い!さっさとさっきの術を使え!」

声に焦りを含ませて、砂の我愛羅が、サスケに向かい指示を出す。

「神威!」

すぐさま万華鏡写輪眼を発動、全てのものを圧縮、空間ごとこの世から削除する遠距離忍術。


「――――――今まで操った尾獣は、尾獣の本体は俺の中にいるからだ、其所の一尾のようにな、おやおや・・・・・・人柱力の全てが集まった、か。この世界は有り得ないことが容易く起きる・・・・・・全ては交わった所為だな、忌々しき魔女が居た世界と、な」


全くの無傷で現われるマダラ、サスケの術で消えたのは、我愛羅が操った砂だけだった。


びゅぅぅぅぅ

風が補完しようと中心点にいたマダラに向かい集まる。


「・・・・・・尾獣を喰らった、か。しかも三体も・・・・・・お前、本当に人間なのか?」

我愛羅の震える声が、その場にいる全員の耳に届く。


集まった世界の根幹を成すと言っても過言ではない、世界に残された全ての戦力・・・・・・全ての人柱力。

「相手が、どんな奴でも・・・・・・俺達の敵じゃねえってばよ!化け物宿した俺達に勝てる奴なんかいねえってばよ!」

自らの事を化け物と呼ぶ、九尾を完全に取り戻したナルト。

否定する者は、その場におらず、全員が一様に頷く。


「そうだな・・・・・・今のお前等なら、術など不要・・・・・・掛かってこい、力の差を分からせてやる」

一尾、二尾、四尾、五尾、八尾、そして九尾。

遠巻きに見ている生き残った全ての里の忍び、カンクロウや木の葉の忍び、そして古代竜であるロン。


これ以上ないほどの戦力が揃っていた、足手まといになると自己判断した「根」の者は下がる、だが、サスケは下がらない。


「サスケ?」

「俺も、戦う、第一俺が居なければお前等では万華鏡写輪眼は防げない」

軽く肩で息をしながらナルトの隣に立つうちはの末裔。

「・・・・・・巻き込まれるなってばよ」
「けっ」

軽く嬉しそうに笑う、九尾の人柱力。


そんな二人の様子を静かに見つめ、「仲間、か」と呟くマダラ。
此処に居ない残りの尾獣を喰らったマダラの力は完全に未知数。



世界大戦、表の最終決戦が始まる。






















なるほど、なるほどなるほど、・・・・・・なるほど。

遠くに見えるは、「星の間」への鍵となる場所、蜘蛛の燭台、常に火が絶えることは無く、ただ、ただ訪れるものを待っている。

此処は、確かに広い、元のUOでも、此処で大規模な戦闘が行われることもあった。

後ろからは「軍団」は来ない、全ては残った仲間が防いでいてくれる御陰に他ならない。


だが、眼前に広がる部隊は、蜘蛛と蛇の最後の部隊なのだろう、数が揃っていた。




グォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ




うねりをあげている混成軍の中央に座している、一柱の主。

そう言えば、居たね、テラサンキープにも、居たよね・・・・・・バルロン。

攻略中にどっかの迷惑なプレイヤーが連れてきて、初心者とか知らずに突っ込んで死んでいたよね。
厳密に言えば、こいつは「主」じゃないんだろうな、おそらくは単なるモンスターとしての括りで此処に存在しているはずだ、つまり、他のダンジョンで存在している主のように制限が外れていると言ったことはないはずだ。


だが、その実力は・・・・・・今の俺達では、どう足掻いても、通り抜けることは不可能。
一匹だけだったなら、何処かに連れ回して居ない隙をつくとか出来るのだが、最悪なことに集団戦を学びきってしまっている蛇と蜘蛛の混成軍までいやがる、こいつらの前ではそんな無防備な行動をとったらそれだけでチェックメイトだ。


さーて、・・・・・・どうすっかな。


「何か、悪巧みは無いの?」
無茶なことを聞いてくる琴音。

「・・・・・・正直厳しい」
あれば、とっくに実行している。


グォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


未だ索敵範囲に入っていないのか、うねり声だけを上げているバルロン。

あと少しなんだ・・・・・・あと少しで「星の間」に届くんだ、あの燭台に飛び込みさえすれば・・・・・・。


「・・・・・・仕方ない、か。やるわよ直人」

琴音の声に確かに頷く直人。

ちゃき、

いつもの愛用の笛を取り出す直人。

「・・・・・・そうだね、やろうか」

演奏が始まる、敵を同士討ちに導く音楽、「扇動」


が、何故かこの次元になれば敵に対して効きにくいのは、すでに知っているはずなのに!


案の定、バルロンには効かず、敵と見定めた俺達に向かい突進してくる黒閣下。

「all kill」

いつもの歌い上げるような声ではなく、静かに白竜達に命令を下す琴音。
・・・・・・まるで、諦めているかのように。


ゴォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

白竜達の灼熱のブレスが、敵を灼きつくさんと放たれるが、すぐさま蛇と蜘蛛の混成軍団の回復部隊と補助部隊が、ブレスの意味を無くさんと魔法を放つ。


ぐるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる


近づくバルロン、直人の扇動で掛かってくる騎士や復讐者達を殺しながらも、なお、俺達に一直線に攻め込んでくるバルロン。


恐怖の具現が迫る。


ポンッ

琴音の柔らかく暖かい手が俺の頭に置かれる。
「さぁ、一番厄介な敵はおびき寄せたわよ、後は・・・・・・飛び込みなさい、貴方一人なら出来るはずよ、そのいつまで経っても成長しない小さな躰だったら・・・・・・敵の目も誤魔化せるはず」

「え?」

「忍びは、・・・・・・こんな手を取っちゃうのさ。行ってよ竜君、最後の障害物は、僕らが排除するから、さ」

昔と全く変わらない笑顔で俺を見ている二人。


「さぁ・・・・・・さっさと行きなさい!・・・・・・私達のいいえ、貴方の仲間全ての意志を無駄にする気!?」

ズバッ

バルロンが、騎士の一体をまた葬り去った。

更に、更に近づくバルロン。
もう、目前だ。

「行ってよ、竜君、何、お荷物が居なくなれば、僕の沈静化で一気に逃げ出すだけなんだから、さっさと行ってよ!」


・・・・・・迷う時間は、無い。


「本当に、本当に今まで有り難う・・・・・・あばよ、直人、琴音・・・・・・Rel Por」

テレポートの魔法。

視界に入る所にだったら何処にでも転移できる、UOでは残念ながらあんまり使われない魔法。


俺のスキルの一つTrackingが指し示している最奥に安置されている燭台に向かい、一気にワープ。

邪魔なバルロンを混合部隊を琴音が、直人が引きつけてくれたから出来た手だ。



熱そうだな・・・・・・けど、こんな所で戸惑っていられねぇ、か。



意を決して、煌々と燃えている燭台に飛び込む。

焔の光が――――――目に――――――。
















直人の沈静化の音色が一転あたりに響き渡る。


が、


「・・・・・・やっぱり止まらない、か」


周りの戦力に為りそうな混合部隊は全て使い潰してしまった、今は、白竜ニ体が必死に食い止めているが、破られるのも時間の問題だろう。


「・・・・・・わかっていた事でしょ、あんたにしちゃ上出来な嘘よね、悪巧みが誰よりも得意なあのカイを騙せたんだから」


必死に白竜達のサポートをしながら直人に語りかける琴音。


「訂正しなかった琴音ちゃんも、完璧なポーカーフェイスだったよ、カイ君以上に猫かぶりがうまかったんじゃないのかな」

何かに気付いたように、ふと直人を見る琴音。
「あ、今は竜だったわね」
「・・・・・・そうだったね、つい昔の癖でカイ君なんて名前で・・・・・・」



グォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

絶命する琴音が擁する白竜の一体。


「・・・・・・頑張って白王・・・・・・でも、無理、ね・・・・・・先に逃げなさい直人」

忍びとしての冷静な戦力の判断、もう、勝てない事は分かり切っている・・・・・・逃げ切れないことも。
琴音の言葉にゆっくりと横に頭を振る直人。

「ううん、琴音ちゃんは最後まで一人にはさせないよ・・・・・・だってそんなことをしたら・・・・・・竜君に・・・・・・叱られちゃうから・・・・・・」


笛を仕舞い込んだ直人が手にするは、馴染まない木の葉の忍者刀。

白王に対する必死の補助を続けながら、決戦の用意をする琴音。


「そう・・・・・・なら、いいわ・・・・・・最後まで付き合いなさい・・・・・・頑張って白王」


俯きながらの必死の補助も虚しく、


グォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


やはり絶命してしまう白王。


一拍、動きを止めるバルロン、その視線が、残っている獲物に向けてしかと固定する。



「あの馬鹿は・・・・・・ちゃんと帰れたのかしらね」
竜が姿を消した燭台を見つめる琴音。

「さぁ?・・・・・・でも、考えてみると忙しかったね」
同じく目を細めて燭台を見る直人、今も燭台は焔を煌々と輝かしている。

二人の間に静かな笑いが生まれる。

「そう、ね、御陰で、普通だったら絶対に経験できないことまで経験できた、わね」

「大変だったし、辛かった・・・・・・けど」



































「「竜(君)と一緒で・・・・・・楽しかった、わね(ね)」」
満面の笑みが、二人の顔に浮かんだ。





ぐるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるるる


バルロンのうねり声が、直近で響く。

黒い悪魔は手にした其の長大な剣を、・・・・・・振り上げた。




[4366] 世界大戦、その拾弐、裏大決戦。
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/02/13 15:17

其所は、今と違うところ、「法則」が根本的に異なる場所。
一人の女性が、一つの物体に対しプログラムの入力をしつつ、ほんの少しだけ魔力を行使した。

「ナニヲ、シテイルノデスカ」

其れは、一般的な見地で言えば、機械と呼ばれる物。

天才科学者でもあり、天才魔術者でもある老いた男が最高の理解者と共に近未来から引き上げて最終的に作り上げた物。
自らの創造主に近い女性に対し、行動の説明を求める。

「ふふふふ、別に、貴方は気にする必要は無いわよ――――――エクソダス」

機械である其れを、誰しもが振り返るであろう妙齢の女性は有る作業の片手間に一人でいじくり回している。

「デスガ、ハハウエ」

「貴方は、余計なことを考える必要はないの、これは単なる余興、そう、余興なのだから、いつまで経っても未熟なままの、あの小さなアバタールに対しての、余興なんだから。うふふふふ、あんな世界で、あの子は、どんな選択をするのか、楽しみじゃない」

機械は沈黙する。

「そうね、貴方の出番は、まだまだ、後ね・・・・・・恐らくわらわは、本当のアバタールには、勝てないでしょう・・・・・・貴方の出番は、それから、よ」

「ワカリ・・・・・・マシタ」

一見するとほのぼのした日常の一こま、だが、その行為は、有る少年に対してとても大きな意味を持つ。












暖かい日差しが、眠っている俺の目蓋に当たる。


チュンチュン


雀の声が眠っている俺の耳に響く。

「竜、起きなさい!」

誰かの声・・・・・・何処かで聞いた、とても、懐かしい声。

「会社に遅刻するわよ、全く、折角就職できたのに、遅刻癖なんてあったら首になっちゃうわ!」

ああ、・・・・・・懐かしい、・・・・・・なんで懐かしいんだ?母さんだろうが、いつも・・・・・・聞いていた?

目を開ける、其所には間違いなく、母さんが居た。

「・・・・・・どうしたの?悲しい夢でも見たのかしら」

「え?」

母さんは、俺の頬を指さした、右手で触る、濡れていた。

「・・・・・・何で、泣いているんだ」

「起きたんなら、身支度整えて、さっさと朝食済ませちゃいなさい」

疑問系を浮かべている俺に対し、嘆息を返し、母さんは、足音を階段に鳴り響かせて一階に下りていった。

夢の内容が思い出せない、・・・・・・あれ、どうして・・・・・・。



「頂きます!」

うちの朝食は、常に和食だ。

白いご飯に、目玉焼き、鮭の塩焼きに、納豆、味のり。

パートにも出ているが、比較的朝は時間がある母さんが腕によりを掛けて創ってくれる、大事な朝の栄養源。

大学時代に一人暮らしをしていたが、食事を作ることは、案外面倒くさい、当時の俺は、インスタントで済ませていたが、栄養バランスを考えるとあんまりよろしくない。


「・・・・・・会社は、どうだ」

新聞を読みながら、父さんが、朝飯を食べている俺に対して問いかけてくる。

「社会人ってのは、どうしてあんな満員電車に我慢できるんだろうね、実際問題父さんを尊敬するよ、あんなのに乗って毎日通っていたんだから」

大学時代は、大々々々っ嫌いだった満員電車、社会人となった今ではそうも言っていられず、家から駅で一時間かけて会社に通っている。

まぁ、途中から座れるようになるし、乗り換えが無いぶんだけ、楽といえば楽かな。

「そうか・・・・・・」

父さんとの会話はそれほど多くない。

が、父さんが嬉しがっているのは、いくらにぶい俺でもわかる。

「会社ではうまくやっているつもりだよ、大丈夫だって」

「なら、いい、最初が肝心だからな」

照れくさいのか、あくまでそっぽを向いたままで父さんは答える。
考えてみると、社会人になってからは、よく話すようになったかな。



「其れより、竜、来月のゴールデンウィークに北海道の叔父さん家に行く話、覚えているかしら」

俺が今務めている会社は、世間一般で言うところの当たり前のサラリーマンで、旗日は休める。
この不況と言われているご時世にありがたいことだ。


ズキン


痛みが走る。
思わず頭を抑える。

「・・・・・・どうしたの?寝起きもなんか調子悪そうだし、お医者様にでも行く?」

俺の顔を覗き込む母さん、父さんも、新聞から目を離して俺の顔を見ていた。

「いや、大丈夫だって、新入社員教育カリキュラムだってまだ終わっていないんだから、そうそう休めないって」

今は平気だし、多分気のせいだろう。

「・・・・・・体調管理も社会人の大事な仕事だぞ」

よく喋る母さんと、あんまり喋らない父さん、共通しているのは、俺のことをよく考えていてくれていること。

「ありがと、大丈夫だから」

だから俺は両親を安心させるために笑顔を返してやる。

「ご馳走様でした、いやぁ、母さんのご飯って本当に美味しいよね、一人暮らしして有りがたさが本当にわかったよ」

微笑む母さん。

「あらあら、やっと私の価値に気付いたの?」

「・・・・・・一人暮らしで器が広がったか?」

「はは、生活していくって本当に大変なんだなって思い知ったよ、これまで手の掛かる息子を育ててくれて有り難う御座いました」

何か、素直に礼が口からついて出た、あれ、なんでだろ、俺はこんな事今まで言ったこと無かったのに。

「竜、笑顔なのはいいけど、感動して泣くことは無いんじゃないの?」

液体を感じ、頬に再度手を当てる、・・・・・・なんで、俺は泣いて居るんだ???

首をかしげながらも、俺は出社の準備を整え、父さんよりも先に家を出る。


父さんは近場の区役所務め、通勤は電車だが、俺より遅く出ても十分間に合う所。



ズキン


頭痛が止まらない、何でだろう・・・・・・?

だが、すぐに収まる其れは、俺の頭の片隅に残りこそすれ、気にとめるほどでは無かった。


日が経ち、一週間二週間は容易く過ぎる。


「ご免、母さん、同僚と約束が入っちゃって、北海道は行け無くなっちゃった」

「あら、そう・・・・・・会社の付き合いも大事だものね・・・・・・残念だけど、仕方ないか」

食事は出来る限り一緒に取るように、其れが家のルールだ。


豚のショウガ焼きにカボチャの煮付け、其れに簡単な付け合わせという栄養バランスが取れている夕食のメニューを包みながら、俺は少しばかりの申し訳ない気持ちと共に母さんに報告した。


出発は、来週の金曜の夜から、夜に飛行機で北海道に向かい、向こうに三泊四日で帰ってくる小旅行。

くそっ、ジンギスカンとか喰いたかったんだけどな。
いとこの和子は元気かな?確かもう高校生だったはず、昔はよく遊んだものだ。


ズキンズキン


・・・・・・また、痛みが・・・・・・。

「叔父さん達にはよろしく言っておいてよ」

恐らく顔色も悪くなっているはず、両親に突っ込まれる前に、夜食を早めに切り上げ、自分の部屋に上がる。


部屋の中には漫画本や、様々な趣味が引き詰められている。

本棚にはNARUTOやトライガンマキシマムっていう本とかが、置いてある。


だが、もっぱら今嵌っているのは、パソコンでのネットゲームだ。

大学の時はウルティマオンラインにはまり込んだ、今は、ラグナロクオンラインや、無料のオンラインゲームに少しの時間だけ興じている、社会人に為って学生時代のような廃プレイは、ヘヴィープレイヤーには成れないからだ。


ズキン
頭を抑える。
・・・・・・どうして、頭痛がするのかな。



~・・・・・・気付かないの?~


女の声がした。

「誰だ!」

思わず反射して声を出してしまう、が、あたりに人影は見えず、当然誰もいない。


なんだ、空耳か。

明日も会社だ、速く寝なきゃ、パソコンの電源を落として、俺はベットに転がり込んだ。

枕元に転がっているNARUTOの単行本を一冊広げて、眠くなり、漫画を仕舞い、そのまま眠りに落ちる。




夢を見た。

女の夢だ。

知らない女の夢で、年齢の頃は30代前半といったところ、顔立ちは美人と言っても過言ではない、が、何処か暗い雰囲気を持ち合わせている、危険な女、といった感じの女。


「あら、やっと届いたわね・・・・・・お久しぶりね、小さな*******」


最後の部分が聞き取れない。

「あんたは・・・・・・誰だ?・・・・・・何処かで見たような気がするが・・・・・・」

女は妖艶に笑う、いつもの俺だったら性欲を覚えてもおかしくないよな仕草なのだが、全くそんな気が起こらない。


「ふふふふ、忘れちゃったの・・・・・・面白い事をしているから覗いてみたんだけど、良いことを思い出させてくれたお礼で、忠告してあげるわ、貴方、何回繰り返せば気が済むのかしら」


ズキン
頭痛が走る、痛い。
「・・・・・・何の、事、だ」

女は笑う。


「ふふふふ、シャドーロード如きに完全に封じられているのね、もう一度言ってあげる、貴方は、何回その**を繰り返せば気が済むのかしら?」


声が途中で途切れる、何だ、この女は一体ナニヲ言ったんだ。

ズキンズキン
痛い、頭が痛い。
「単語が聞こえない」


「あらあら、「法則」に見事に阻まれているのね、だったらそんな「法則」わらわが崩してあげる・・・・・・停滞したままなんて、つまらないもの」


女が、手に持つ杖を俺に向けて振った。
杖の先から光が生み出され、俺の躰を包み込んだ。






「じゃあ、行ってくるわね、貴方も気をつけなさい」

大きな荷物を抱えて北海道への旅路へ向かう父と母。
「ああ、お土産は、食べ物で良いから、もう置物とかはいらないよ」

「ははは、また熊の木彫りを買ってきてやる、不満ならのれんという案もあるが、どうだ?」

「勘弁してよ父さん、もう小学生じゃないんだから」

苦笑いした俺の顔を見て、珍しくテンションが高い父が俺の頭をこづく。


ズキンズキンズキンズキン


痛みが加速する。

「じゃ母さんも父さんも気をつけてね!」

大きく手を振り、両親を送り出す俺、


駄目だ、駄目だ、駄目だ、駄目だ!

気持ちと裏腹に、俺の体は両親に対しにこやかに微笑んで送り出していた。


ズキンズキンズキンズキンズキンズキン
頭痛が加速する。




「思い出した?」

女の声が俺の頭の中に響き渡る。

「父さんは・・・・・・母さんは・・・・・・あの後、飛行機事故で・・・・・・」


女が嗤う。


「そう、死んだわね、その一報を受けた貴方は、余りのショックで心臓に過負荷が掛かり、心臓麻痺を引き起こした、そして、あの親子が使った術式にたまたまひっかかった」


「・・・・・・繰り返していたってのは?」


女は再度嗤う。


「ふふふ、貴方の負の感情、絶望憎悪といったものを糧とする為よ、わらわが直人に与えたディスペルを込めた刀で滅ぼされた、シャドーロード達が復活するため、のね、あらゆる負の感情が彼らの糧となるの」


・・・・・・俺は。


「どう、思い出したの?」


「俺は、テラサンキープで、星の間へ通ずる燭台に飛び込んだ」


女が頷いた。


「貴方は確かに星の海へ届いたわ、だけど、待ち構えていたシャドーロード達により、貴方は永劫の「地獄」に落とされた、時間は永遠だから磨り減るのは貴方の精神だけ」


永遠?

「・・・・・・直人は!?琴音は!?君麻呂は!?カブトは!?リースは!?・・・・・・それに、あの世界はどうなったんだ!?」


「そんなに一片に聞かれても、答えられるわけ無いでしょ、少しは落ち着きなさい・・・・・・それと、貴方、折角目的地にたどり着いたのに貴方の世界に帰る方法については、聞かなくていいのかしら?」

女に窘められた。
女の言葉を少しだけ流し、再度問う。

「・・・・・・其れに何であんたが、助けてくれるんだ、最悪の魔女、ミナクス」


魔女が、嗤う。


「言ったでしょ?良い物を見せてくれたお礼をしたいってね」


魔女は蠱惑的なウィンクをした。


魔女が放った光が、俺を完全に包み込み、俺を有る空間へと運んでいく。


















其所はロストランドに繋がるダンジョンの一つ、「ファイア」の出口近く。
厳密に言えばロストランド側、今までの世界側から見る二通りの出口があるが、今はロストランドに近い出口の方だ。


四柱の主と、一柱のハルバードを握りしめている少女が相対していた。


四柱の主には、怪我一つ無く、息切れもなく、愉悦がただ其の表情に浮かんでいた。

対する少女は、息切れが激しく、数え切れない細かい傷は沢山、更には戦闘の根幹をなす魔力すらも底を突きかけていた。


「大した・・・・・・人間、だな、リースよ」


魔法を連発しながらバルロンが呟く。

リースには答える隙も余裕も無い。

遠距離も出来る二体の主、サキュパスとバルロン。

鬼のような耐久度を誇り、強力と劇毒を持つ二体の主、オークキングとロッティングコープス。


全開で、チャクラと魔力を使い、ヒットアンドアェイを繰り返して、始めてリースは今生きていられる。


遠距離を仕掛けている二体に対して向かえば、接近戦を主体とする主が、後ろから殴りつけ、接近戦を主体とする主を仕留めようとすれば、遠距離から雨霰と魔法が振ってくる。


完全に手詰まり、後は全力で使い込んでいるリースの魔力が尽きれば、其所の時点でゲームオーバーだ。


いくら元竜王にして並外れた魔力を誇っているとはいえ、今は、限りなく人間に近い身。


更に、魔力だけで言えば、バルロンの方が上で、更にいやらしい攻撃手段を好んで取るサキュパスまでが揃っている。


息巻いてはいたが、今のリースが勝つ可能性は、零%、万に一つの奇跡もこの場では絶対に起こらない。


されど、逃げることは出来ない。

未だ竜が星の間に辿り着いているかどうかも分からず、途中で苦戦しているとしたら、四体の主が向かうことは、根幹にある作戦の完全なる失敗を意味し、其れはすなわちイタチが愛した里の崩壊にも直結してしまう。


リースは、ひたすら歯を食いしばりながら、負けが決っている戦いを、ひたすら時間を延ばすことしかできない。


歯が噛みしめられる。















ダンジョン「ファイア」より少しだけ外に出たところ、大荒野では一匹と一人が、その何万倍もの軍隊を相手に、奮戦していた。

琴音より譲られた不死鳥は決して君麻呂の命令を聞かない。

が、

意志に反応した増大したその完全なまでの攻撃力は、蛇と蜘蛛の混成軍団を引き留めるのにぎりぎりで役に立っていた。

君麻呂の決死の攻撃も、軍団にしてみればまさに蚊が刺したようなもの、なんら決定打にはならず、君麻呂も、また死を待つだけの戦いを続けていた。


君麻呂の動きを阻害する通過不可能なエナジーフィールドの群れ。

君麻呂の体力を削り続ける、蛇蜘蛛混合軍の魔法攻撃。


自身が捨て駒に為ろうとも、君麻呂の動きを止めるだけに接近戦を仕掛けてくる騎士達、復讐者達。


如何に君麻呂が強くとも、其れは単騎と一羽で軍団を破滅出来るほどの強さは無い。


「くくくくくくくくくくくくくくくく、どうした化け物共、俺はまだ生きて居るぞ、俺はまだ戦えて居るぞ!」


全身を血まみれにしながらも、君麻呂は咆える。


くぇえええええええええええええええええ!


君麻呂の感情の動きに伴い、勢いをましてパラライズを振り払う不死鳥フェニックス。


「・・・・・・戦こそ、我が血族の望み・・・・・・化け物共よ、俺を満足させろ、血戦こそが死闘こそが我が望み・・・・・・さぁ、俺に全力を出させろ、共に踊ろうぞ!」


君麻呂の言葉と共に、更に更に生み出される骨の林。

其れは骨の森となりて、骨の樹海とも成り得る。

一撃で貫ければ兎も角、急所を外した個体はすぐさま回復魔法で復活してしまう。


「真・早蕨の舞」


されど君麻呂の骨は全てを蹂躙せんとその範囲を増やしていく。

蜘蛛達の蛇達の魔法使いの攻撃が、骨の樹海をなぎ払わんと放たれる。


バキバキッバキバキッ


其れは効果をなして、君麻呂の骨の樹海は、徐々に姿を失っていくが、限界まで振り絞った君麻呂の覚悟に上乗せさせられた効果は、軍団の勢いを更に上まっていく。


「・・・・・・解!」


根源たる、命を構成するチャクラすらも自身の血継限界に込めて、込めきって、君麻呂は攻撃をやめない。

くぇええええええええええええええええええええええええええええ!

不死鳥の攻撃もまた止まることもやめない。


君麻呂の顔には、見間違う事無き、戦神の笑みが浮かんでいた。
















其所は、テラサンキープ入り口。

カブトの元に殺到する敵の軍隊は、勢いを増していた。

「・・・・・・君麻呂が敗れたってことは、どうにも考えられないんだけど・・・・・・この勢いは・・・・・・」

チャクラのメスならぬ、その鋭さを手に持つ木の葉の忍者刀に纏わせて、迫りくる雑魚から大物まで全てを一刀両断にしているカブト。


元より接近戦は得意ではない、カブトの得意分野は師である大蛇丸と同様搦め手だ。

犠牲を出す戦いなんて馬鹿らしい、自分は傷付かず、相手の弱いところを調べ上げ、絶対に勝てるとき、若しくは興が乗ったときしか戦わない。


昔は大蛇丸もそうだった。


だが、大蛇丸はペインとの戦いで、その限度を越えて・・・・・・命を落とした。

何が大蛇丸を変えたのか、カブトは理解できなかった。


「ふふふふふふふ、おや、おかしいね、この僕が戦いで笑みを零すなんて」


ザシュッ


再度侵入してきた蛇の騎士を切り裂く。


「しかも明らかな優位に立って優越感に浸るでもなく、こんな所で助けが来るかも分からないところで、延々と必死の戦いをしながら笑うなんて・・・・・・君の所為だね、竜」

カブトの頭に浮かぶ今も小さいが昔の小さい頃の竜の姿。


あれは、絶対に理に為らないのに、大蛇丸様を救ってくれた。

忍びでは絶対に考えられない選択。

どんなに小細工を労しても、治してはくれないのだろうと踏んでいたカブトに取って、其れは衝撃的だった。

「はははははははははは、そうか、僕も今君と同じ事をしているのか、そうかそうか、大蛇丸様に伝える土産話が一つ増えたね・・・・・・はははははははははははははははは」


背後からも沸いてくる敵を相手に、次々と侵入してくる敵を化け物をひたすら切り裂くカブト。


場所的優位性があるからこそ戦っていられるだけで、少しでも広大な場所に移動させられてしまえば、其の時点でカブトの負けが決る。

援軍は考えられない、カブトは延々と情け容赦が無い敵と切り結んでいる必要があった。


「はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」


普段は絶対に響き渡らない人の笑い声が、テラサンキープの入り口付近で響き渡る。


きしゃーと呻きながら次々に攻め込む混成軍隊。

カブトの表面は彼らの青い血により染め上がっていた。


























テラサンキープ最奥、燭台の前。

二人の木の葉の中忍が、絶望の体現と争っていた。

女忍はユニコーンにのり、男忍はナイトメアに乗り込み、ひたすら接近戦を避け、遠距離から術や忍具で攻撃を加える。



が、全てを一瞥するだけで全く攻撃に反応せず、ただ二人を追い回すバルロン。



もう、今の状態では、どう足掻いても、命を散らせる以外に選択肢が無かった。


「・・・・・・あ~あ、この選択肢は選びたくなかったんだけどな・・・・・・」

暗い声をだす直人の方を振り返る琴音。
「何か奥の手でも持っているのかしら?」


息も絶え絶えに、慣れない攻撃忍術を行使する琴音。


「・・・・・・うん、この手は嫌だったんだけど、仕方ないよね」

笑顔で琴音の方を見やり、直人は手に持つ木の葉製の忍者刀を目の所に押し当てて、


ぶしゅっ


直人の目から赤い涙が流れた。

「何をしているの!?」


ヒラリとそのままナイトメアから降りて、手に持つ忍者刀をバルロンに向けて構える直人。

「・・・・・・残っていたんだよ、魔女が残した力は・・・・・・けど、こうしないと、その力は発揮されないってだけの話・・・・・・剣神の力は、そんな生易しい力じゃないからね、代償も無しに発揮してくれない」

バルロンの殺気が、一つの標的に向かい集約される。


「さぁ、琴音ちゃんは逃げて・・・・・・今の僕は何も見えない、琴音ちゃんを傷つけたくないからさ」


直人の刀に始めて纏われる、「気」と呼ばれる物。

「・・・・・・嫌よ・・・・・・どうして、あんた達は・・・・・・!」

「そっか・・・・・・じゃ仕方ない、かな」

直人の動きが変わった。

見えているのに、意識できないという歩法が発揮される。


ガスッ


直人の的確な一撃は、琴音の意識を奪い去った。

「・・・・・・僕も、竜君も、琴音ちゃんは琴音ちゃんだけは傷つけたくなかったんだよ・・・・・・だって・・・・・・僕らは琴音ちゃんのことが、元気で活気に溢れる琴音ちゃんのことが・・・・・・好きだったから」


ぶひひひひひひん


ユニコーンがうめく。

バルロンは直人の動きを伺っている。

直人はユニコーンの首筋を撫でる。

「さぁ主の為を思うなら・・・・・・こんな地獄からは脱出してよ、僕があれを止める」

再度うめくユニコーン。

「あ、そうだ」

がさごそと自身の懐をまさぐる直人。

果たして取り出したるは、小さい頃から愛用していた笛。
スキルの根幹をなしていた、笛。


其れを直人は琴音の手に落ちないように握らせる。


「・・・・・・もう、使わないからね・・・・・・こんな物しか残せなくって・・・・・・ご免ね」


直人をみやり、琴音を案じ、ユニコーンは首を縦に振った。
角に光が集まり、ナイトメア共々、彼らを場外へと運んでいく。


まばゆい光が消え、辺りには燭台の光のみが残る。


「待たせたね・・・・・・さぁ始めようか、これからは木の葉の中忍直人じゃなくて、魔女の剣神、直人が相手をするよ・・・・・・満足してくれるかどうかは知らないけど、少なくともさっきよりはおもしろいはずだよ?」


直人が手にしている刀は、前と違い、木の葉の忍びならば容易く手に入る、業物だが、極上物ではない、普通の刀だ。

頑丈さが取り柄で、普通に使っている分には壊れることなく使えるが、其れは相手が人間と想定してのこと。


其れは竜を殺すように創られておらず、悪魔を殺すように創られておらず、魔法を切れるように創られてない。



グォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!


知性無き漆黒の悪魔が、猛々しく咆える。


その巨躯に比べれば矮小に過ぎない人の子が、真っ向から勝負を挑んだ。






















満天の星空が、上に下に左に右に前に後ろに広がる。

テラサンキープ最奥にして、人間にしか、プレイヤーにしか辿り着けない、聖地。


俺の六歳児の躰の前に広がる小さな窓状の、ゲート、ミナクスに通じている。


「ふふふ、どう、貴方が知りたがっていたことは全てわかったわね、貴方の仲間は貴方のために、あの世界の者達はあの世界の為に、頑張っているみたいね・・・・・・本当にいいのかしら、今なら確実に元の世界に帰れるっていうのに」


・・・・・・確実ねぇ。結局俺は未だわからない、帰れるかも知れないけど、今は帰れない・・・・・・。


何故?
決っている。
「世界の一つ、二つ救えずして、何がアバタールだ、俺のスキルは・・・・・・俺の力は俺を助けるために動いてくれた人間を、俺の所為で変わった世界を見逃して行けるほど、安くない。あいつらを見殺しにして、俺は安穏とした生活を送れるのか・・・・・・無理だ、夢にまででちまうだろうさ、後悔し続けるだろうさ・・・・・・そんなのご免だ、俺は、俺のために、俺の為すべき事をする」






書が光を放つ。
竜が今まで捨てられなかった書が、淡い優しい光を放つ。


書が、コデックスとしての機能を取り戻した!


*慈悲の徳を感知しました*

*誠実の徳を感知しました*

*武勇の徳を感知しました*

*名誉の徳を感知しました*

*献身の徳を感知しました*

*正義の徳を感知しました*

*霊性の徳を感知しました*

*謙譲の徳を感知しました*






*プログラム「アバタール」発動・・・・・・対象者「竜」・・・・・・ようやく、ようやく達成したんだねマスター・・・・・・お久しぶりです、そして、おめでとう、さぁ、行こうか、小さな、アバタール!*



ああ、そうだな・・・・・・随分とまぁ久しぶりだ事。


「ふふふふふふふふ」


魔女の笑い声が、最後に星の間に響き渡り、小さなゲートが閉じて静かに余韻も収まる。







同時に現われる三体の影のまとまり。

それぞれがそれぞれ、口を開き思い思いの言葉を発する。

「魔女が、去った、か」

「・・・・・・くくくくくくくくくくくくお前一人で何が出来る」

「アバタールに覚醒したとて同様のこと、当代のアバタールには何ら威厳を感じぬ」



五月蠅いよ、俺の負の感情は美味しかったかい・・・・・・意識しないところであんな場面を延々と見せられていたってことか。

「巫山戯るなよ」

そうだよ、アバタールに為ったからって何がどうこう変わる訳じゃない、あれは心意気の問題、スキルはステータスは何ら変わらない、あれは称号っていう戦力にはなんら換算しえない。


俺は俺だ、弱い弱っちいままの俺だよ。

「巫山戯るなよ・・・・・・人間をあんまり嘗めるんじゃねえよ」


嗤う三体の影。人間の負の感情のみで構成されている三体のシャドーロード。

こいつらをどうこうしないと俺はどうにもならない。


「お前が、どう足掻いた所で、我らには絶対に勝てん」


三体がそれぞれ姿を変えていく、一体は、古代竜の姿に、但し漆黒。

一体はバルロンの姿に、やはり全てが全て漆黒。

一体は、まだそのままの姿で静かに佇む。

どう見ても能力値はそのまんまか、上乗せさせられているんだろうな、わかるよ、それくらい、だって・・・・・・俺にとってのラスボスがあんた等だろうからな!



「お前の、世界の負の感情は旨かったぞ・・・・・・お前を殺した後は再度世界を蹂躙するとするか、お前の仲間を殺した軍勢を率いてこの世界なぞ蹂躙してやる」

再度嗤う三体の人外。

「巫山戯るな、その臭い息をまき散らす口を閉じろよ」

あくまで嗤う人外共。


そうかい、俺は越えるよ、俺のトラウマをほじくり返してくれたあんた等を越えて、越えて越えて、俺は最後に自分の世界に帰る・・・・・・帰れなくなったら・・・・・・そうさな、この世界を隅々までまわり尽くすとしようかね。



星の間は、エセリアル虚空間に酷似している、マナは無限大に等しく、スキルの効果も魔法の効果も拡大される。此処は魔素にエーテルにとても満ちている。

でなければ、未だ形を為していない此奴等三体の化け物が、此処に存在し得る理由に為らない。

でなければ、俺がエセリアル虚空間に居るときみたいに拡大解釈する能力を使うことも出来ない。


・・・・・・呪印が疼く。





今まで完全に沈黙を保っていた呪印が疼く。



大蛇丸が付けて、一度三代目との戦いで俺を抱えたときに、何か細工をしたんだろう。

こっそりと文様が変わっていた呪印が光を放つ。




~ふふふふふふふふふふふふふふふふ、竜、私の力を貸してあげる、使いなさい、あの技術を、私の心を変えさせた、あの技術を、貴方だけにしか無い、あの技術を!~


ああ、そうか・・・・・・俺のスキルは全て、全てがこのときの為に、この瞬間の為に・・・・・・あったんだな。

*マスター、準備は万全だよ*


そうかい、ご苦労さん、なら、使おうか・・・・・・死者の声を聞き、死者の姿を見て、死者の姿を顕現させて、そして最後に死者の力を借りる俺だけのスキルを!

さぁ出番だぜ、SpiritSpeak!!


+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+


*霊界に、繋がりました、顕現します・・・・・・憑依します*


呪印が更に光を放つ。
光は広がり、俺の躰全てを満たす。


「化け物は、人間に駆逐されるのよ・・・・・・感情を喰らったとは言えば聞こえが良いけれども、つまるところ貴方達は、人間に寄生しているだけの寄生虫と何処が違うのかしら?」

今は、俺の躰であって俺の躰ではない。


何でよりによって大蛇丸なのかは・・・・・・もの凄く嫌なのだが、背に腹は替えられないし・・・・・・実際問題、此奴の力は極めて高い。


俺の力では、俺の純粋な戦闘能力は、此処まで来ても、最低ランクだ。

だったら俺は使うよ、俺に許された力を俺に残された力を最大限使うよ。



「後は、任せなさい、貴方の愛おしい可愛らしい躰は大事にするから」

口から草薙の剣を取り出し、身にチャクラを溢れさせて、大蛇丸が微笑む、気持ち悪い笑みだ。

・・・・・・うわぁ・・・・・・気持ち悪い台詞を普通に喋らないでくださいよ・・・・・・。



「ふふふふふふふふふ、そんなに褒めないで・・・・・・照れるじゃない――――――あら、律儀に待っていなくてもいいのよ、さっさと掛かってきなさい寄生虫のウジ虫さん達!」


影達が動き出す。

俺から直接的な負の感情、そして世界を覆いつつ絶望すらも喰らい増大した人外達。







戦闘が始まった・・・・・・裏の世界大戦が、星の間にて開始される。



くそっ、こいつを応援する羽目になるとは全く思っていなかったぜ・・・・・・。











頑張れ、頑張れ!大蛇丸!



[4366] 世界大戦、その拾参、最終決戦、アバタールの目覚め。
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/02/15 14:07

其れは、今となっては、伝説の時代の話。

有る兄弟が居た。

忍界大戦という戦争の中、優秀なる力を宿していた瞳を持つ一族の中でも、彼らの力はずば抜けていた。

ゆえに、一族の誇りと共に、彼ら兄弟は戦場に立つ。


戦場にて激しい戦いが繰り広げられた。



対抗勢力が常に雇うのは、千手一族、彼らの長、後の初代火影、千手柱間は強かった。

飛び抜けて優秀な瞳術を駆使する彼ら兄弟の力すらも及ばないほどに、ただ強かった。



その強さは信念によって支えられていた。

彼を彼ら一族を打倒するには、彼ら以上の精神の依代がいる・・・・・・悲しい選択が迫る。





月が奇麗な夜だった。
拮抗しているとはいえ、確実に勝てるわけではなく、何時どちらかが命を落としてもおかしくない状況。

そんな世俗の状況の時だった。
一人、月をただ眺めていた兄の元へ弟が近づいてきた。

言葉も無く、ただ無言で月を眺める二人の兄弟。

口を開いたのは弟からだった。

「兄さん・・・・・・僕の目を使ってよ」


考えていたことだった、更なる力を手にする手段は他には、無い。
「しかし」

だが、弟だ、もう親族など存在しない、この世に残されたたった一人の肉親だ。
躊躇する兄を見て、微笑む弟。

長なのに、誰よりも強いのに・・・・・・本当は誰よりも優しい心を持っていた兄、其れを知るのも、もう弟だけで、

「・・・・・・いいんだ、あいつは柱間は強い。犠牲を払わずして勝てるとは思えない・・・・・・兄さんは、僕の分も強く・・・・・・なって・・・・・・」

・・・・・・もう、この世には居なくなることが確定していた。
あらかじめ毒を含んでいたのだろう、口から血をまき散らしながら、最愛の弟は戦争の中命を散らした。

暫し無言で立ちすくむ兄、意を決して弟であった遺体に近づく。


血の涙を流しつつも、兄は弟の目に手を掛けた。


激しい戦いはその後も続いた。

長として兄は戦った、激しく、厳しく、血で血を洗う忍界大戦を、覇を競う戦いを戦い抜いた。


気付けば力を持つ残る勢力は、数少なくなっていた。






やがて、同盟を組もうという一族の中での意見が大勢を占めるようになった。

一族の長として、その判断に個人的に意を思い唱えつつも、彼は一族の為にその判断を受け入れた。

木の葉の里が此処に誕生。







裏切りがあった。

千手一族に次ぐ力を持つうちは一族。

その力を危険視する勢力により、僻地へ僻所へ追いやられるうちは一族。

長であった彼は革命を企てようとした。

だが、時は遅く、戦に厭いていた一族は、彼の言葉に信を置かなかった。

長として、何より犠牲になった一族、弟の為に、彼は立ち上がった。






――――――終末の谷。

彼は初代火影、千手柱間と争った。

実力は拮抗、伯仲。

最強の尾獣、九尾の妖狐すらも使役し、初代火影に対し挑んだ彼は・・・・・・されど、尾獣を封ずる術を備えていた柱間に九尾を封じられ、更に暗黒の術により写輪眼を封じられ、戦う術を一つ一つそぎ落とされ、

最終的に彼は、負けた。


完膚無きまでに、ぐうの音も出ないほどに完全な負けだった。
火影という最強の存在に、彼は負けたのだ。


一族のために戦ったのに・・・・・・一族は彼を長として最後は認めなかった。


一族などもはや、どうでもよかった。


しかし、・・・・・・心は抑えられない。


永い、永い復讐の戦いが、一人きりの戦争が始まった。


彼は地下に闇に潜り、力を求めた。






・・・・・・話は現代に戻る。
そして今、伝説の時代からつもりにつもった決意を胸に、彼は今木の葉を滅ぼす。




うちは、マダラの一人として真の仲間がいない一人っきりの戦争は、伝説の時代から終わっていないのだ。

















木の葉の里、今や殆どがれき状態に為ってしまった木の葉の里だが、形が残っている場所がある。


其所に集う世界の実力者達。


真ん中にて座しているのが、仮面を被った男、最強の男、うちはマダラ。

「どうした、掛かってこないのか」

マダラは周りを見渡す、そうそうたる面子だ。


一から始まり所々欠けるが、九まで揃っている尾獣を宿した者達、人柱力達。

周りには世界から集まった全里の忍者が集まっている、火、水、風といった五大国はもとより、世界で戦える戦力が全て集まっている。


今、世界は、「世界の敵」に対して始めて纏った。



「掛かってこないのなら・・・・・・こちらから行くが、構わないのか?」

周りに布陣している戦力は、軍団と呼んでも間違いがない規模に達している。

個人の力で無双するには、格別した力が必要だ、其れは正しく世界を制圧する力が必要なのだ。


マダラは今は一人、独りっきり、

なのに、


「・・・・・・ふん、臆病者共が」

四尾の人柱力、天元が、一人先に足を踏み出した。


が、その足もまた口調とは裏腹に震えている。


これだけの戦力が揃っているのに、揃いきっていると言えるのに、・・・・・・マダラは此処に存在する全ての戦力に対して、臆するどころか、逆に圧力をかけ続けている。


「よせ、未だ正体が掴めん」

隣に位置する五尾の人柱力、老紫が引き留める。


誰しもが動けない、尤も八尾は何を考えているか分からず、二尾もまた震えていない、ただただマダラを見続けている観察し続けている。


こういったときにいの一番に突撃をかます役割を負っているナルトは、されど動くことが出来ない。
以前考えも無しに突っ込んで九尾を奪われたことが未だ尾を引いていて、勇敢ではあるが一歩を踏み出せない。


「は?何を今更躊躇する必要がある、こいつは敵だ、敵は殺せ、俺が其所の九尾よりも小さい頃に言われ続けたことだぜ」


歪んだ戦力として育てられ続けた弊害が、ここに来て現われている。

同じ里の老紫の制止も効かず、天元は自身の持つ最大術の行使に入る。


「行くぞ、彭侯・・・・・・俺に宿らされた化け物!」


五尾の尾獣が依代の言葉に答える。


「まずは・・・・・・五尾、か」

動こうとしない他の人柱力を認め、マダラは始めて動きだした。

マダラの姿が掻き消える、同時に天元の姿も掻き消えた。



「上だ!」


サスケの叫びが場に響く。

マダラの体を支えているのは三尾の翼。

六尾と七尾の速さを最大限有効活用している、否喰らっているマダラは全ての速度を凌駕する。


咄嗟に展開していた我愛羅の砂が、マダラにまとわりついてはいるが、其れはもはや動きを縛ることは叶わず、ただただ邪魔をしているだけに止まっていた。




天元は蹴り飛ばされていた、術を展開する前のほんのわずかの隙をつき、マダラは単純なされど圧倒的な体術のみで、天元を圧倒する。

「術の必要がない」

そう言っていたマダラの言葉は正しく意味を発揮し、天元は対応する事すら出来ない。


「・・・・・・木の葉流体術、朝孔雀」

マダラは、万華鏡写輪眼で、木の葉で行われた全ての戦いを見ていた。

其れは、つまり・・・・・・九尾を、尾獣を倒すために使われた木の葉に伝わる全ての奥義を、其の目により習得していたことを意味する。


足りない技術、例えば血継限界などは、取り込んだ尾獣の力で無理矢理再現する。


マダラは今や、木の葉の里そのものといっても過言ではない。

木の葉を滅ぼすために、木の葉の里その物と為ったマダラ。




まるで孔雀が羽を広げたように、マダラのこぶしが焔を発する。

天元は抵抗することも出来ず、地面に叩き付けられた。




瞬きする間に、天元の元に立っているマダラ。


「ふん、人柱力と言っても、この程度か・・・・・・俺の糧となれ、幻龍九封尽・改」

マダラの両の手に填められている十の指輪全てに光が灯り、其れはそのまま天元の体を包み込む。

サスケは見ていた、その術を写輪眼で見ていた。


天元の体から引きずりだされた五尾は、瞬く間にマダラの内部に収まった。


「くっくっくっくっくっ痛みから解放されたか?よかったな五尾の人柱力」

開始数分で、物言わぬ遺体と化してしまった天元。




其れを契機に、二尾が八尾が残りの人柱力が動く。

速度を限界まで高めた彼らは、マダラの動きを阻害する。




「あんた達、私達に併せなさい、行くわよビー!」

戦闘モードに入った彼らは互いを略称で呼び合う。

「へいへいへい、何年ぶりだ馬鹿野郎この野郎・・・・・・邪魔だぜくそだぜ敵だぜ行くぜ!」

ユギトの声にあわせて、術式を展開し出すキラービー。


我愛羅は彼らの意図を察して、応じて動き、


老紫は、戦闘経験値の中から最適の動きを選択する。



ナルトはその場に止まり、チャクラを練り上げる。

他の皆を信じているから、他の同胞を信じているから、ナルトは動かない。

ただ、破壊に特化した自分の力を全力でぶち込むために、絹よりも繊細なチャクラコントロールを必要とする、自分の父親に対して使った、最強にして最高のあの術を練り上げる。












「何て・・・・・・激しい・・・・・・ナルト君・・・・・・」

遠目に見ながら今の自分では絶対に加われない事を自覚しているヒナタ。

仕事は幾らでもある、マダラが使役した尾獣の被害は、他の里が来なければ、其れだけで止めであったことは間違いなく、木の葉の里に大きな被害を残していった。


名家と呼ばれる者達が受けた被害も甚大で、今、純粋な木の葉の戦力で戦えるのは、いない。


ゆえに結界の可能性に気付くのが遅れてしまった。












「俺が、何も策を講じていないと思ったか?俺が、ただ単に九尾を使い潰したとでも尾獣を使い潰したとでも思ったか?」

残った人柱力、五人の即興ながら連携が取れている攻撃を捌きながら、マダラは静かに呟く。


「何を言って居るんだってばよ!」

体に纏わせる、四代目火影を葬り去った最強の術を展開しだすナルト。

後は、タイミングを合わせて手に持つ自身の最強の力の塊をぶつけるだけだ。


「喋らせるな、動きから一秒たりとも目を離すな」

第三の目、転じて数多の目、再不斬が使っていた技を使い、本家本元のによる敵の動きの細分化に成功、トレースに成功し、其れを他の仲間に伝える我愛羅。


二尾と八尾は喋らず、ただただ的確なコンビネーションでマダラを追い詰める。



「このくそったれ野郎がよぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

同じ里の天元を失い、激昂しつつもされど経験に基づいた冷静さで、術をひたすら行使する老紫。



「へい、ナインボーイ、動きが止まるぜぶちかませ!行くぜユギト、多重忍術、尾獣縛り!」

巫山戯たしゃべり方だが、ユギトと協力したその力は確か。



二人の間に広がる、決して切れないとされている糸が、瞬間最大里を覆い尽かさんばかりに広がり、マダラの動きを阻害、糸の一部に触れた瞬間、有無を言わさずに、マダラを完全に縛り上げる。


ナルトや我愛羅よりも戦闘経験が深いからこそ出来る、深いからこそ生まれる多様な術。


マダラの目は静かにそれらの術を見続けていた。


「ふん、溶遁忍術、大噴火!」

老紫の術が、マダラに直撃、糸は途切れない。

「砂漠棺・・・・・・ぶちかませ、ナルト!」

更に動きを封じるために放たれた我愛羅の術、其れは正しくマダラを宙につなぎ止めた。



「いっくぜぇえええええええええええええええええええええええ」



二尾と八尾が縛り上げ、四尾が牽制、更に一尾が重ねがけした術によりマダラの動きは止まった。





渾身のナルトの術、九尾螺旋丸とでも名付けられる、この世界に於いて最高クラスの破壊力を誇る術が、違わず、マダラに直撃した!



サスケは見通した、チャクラの流を見通した。




サスケの目に写る、ナルトの攻撃が直撃する寸前、マダラの写輪眼がぐるりと巡る。





マダラの勢いは止まった。
砂が剥がれる、糸がナルトの術の余りの威力に引きちぎれる。




現われる、晶術に囲まれ、多少なりとも傷を負っているマダラ、だが、戦闘不能には陥っていない。


「・・・・・・俺に術を使わせるか」


ナルト達の攻撃の勢いに負け、マダラの術が解禁された!



「こなくそぉぉぉぉぉおおおおおお!!」
「まだ、まだまだだ!一度で駄目なら二度三度!」
「その通りよ!ビーもう一度!」
「面倒くせえなうぜえな敵だな、死ねよいねよ、吹き飛ばせ」
「まだまだじゃ、此処が勝負じゃよ!」



ありとあらゆる術が展開される。




その一々を相殺するナルト、間に合わない術は我愛羅が阻害。


心おきなく自分の実力をぶちかます二尾に四尾に八尾。


「くっくっくっくっくっ其れでこそ我が敵」

マダラの声には全く焦燥が含まれておらず、苛烈を極める人柱力の攻撃も捌いていた。

マダラの目には既に人柱力達しか写っていない。

他の忍びなど、人柱力を葬りさった後に、一気に始末すればいい、そうも考えていた。





が、ちょこまかと結界を紡ごうとしている忍び達の動きがマダラの目に入った。





「下らない事を考えている奴らがいるな・・・・・・この至高の戦いに水を差そうと考えている輩がいるな・・・・・・九尾が散ったところ、尾獣が散ったところを見てみろ」

マダラの声に笑いが含まれはじめる。





ロンは思い切ってブレスを放つことも出来ず、周りに影響が行かないようにエネルギーフィールドを展開するだけだ。
ブレスを使ってしまえば間違いなく巻き込んでしまう。


遠巻きに見ていたことが、其れに気付く切っ掛けになった。


九尾が散ったところ、尾獣が散ったところ。

其れをつなげると・・・・・・現代風に言うと大きな六芒星が描かれていた。

「お前等が構築した、三代目火影が構築した結界は見事の一言だ、が、悪用されることも考慮すべきだな・・・・・・九尾に限定するだけでは無く、な。 すでにあの「聖戦」とやらは使えないのだろ?」


マダラは精鋭の攻撃を完全に捌きながらも、笑いと共に地面に手を付いた。




「逃げろ!出来るなら、遥か彼方へ!」



ロンの声が木の葉の里に広がる青空に響きわたる。

其れは全ての忍びの耳に入った。
だが其れは、意図を解する事が出来ず、動きが遅れる。

「ペインが使っていた術だ・・・・・・全てを灰燼と化せ、真・神羅天征!」
尾獣の力を強引に変換、本来は血継限界だけに許された一つの力を行使するマダラ。

六芒星の光が光量の限界値まで引き出される。

「巫山戯るなぁあああああああああああああああああああああああああああああああ」

ナルトの声が響くが、関係無しに術が展開される。
ナルトの最後の攻撃は、間に合わなかった。

「馬鹿野郎!間に合え、須佐能乎、八咫鏡!」

怒れる鬼の表情が浮かび上がり、ナルトとサスケを包んだ。


「駄目だ!全員防御態勢!」


シカマルの声が全ての忍びに伝えられる。


「ネジ兄さん!」

「併せろ、ハナビ、双重忍術、真・回天!」

多数の忍びを背中に背負って、ハナビとネジが、自身が持つ最高クラスの防御術を展開。


「夕顔、私の後ろへ!三日月の舞!」

消滅の名を冠した忍者刀を、全力で振うハヤテ。


間に合わない忍び達も、それぞれが持ちうる最高の忍術により、抵抗する。


が、







ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!





地面に大穴が空いて、全てが斥力により、中心点から弾かれる。





――――――静寂。

激しい戦いから打って変わって静かなる音が場を支配する。


サスケの術が間に合い、無傷のナルト。


ドサッ


立て続けに連発した万華鏡写輪眼の所為で、チャクラ切れに陥るサスケ。


だが、ナルトは気に掛ける余裕が無い、其の目はうちはマダラに据えられていた。


人柱力の格の順で立ち上がる、人柱力達。




ナルトは気配を感じ、其れに問いかける、目は厭くまでマダラから離れない。

「・・・・・・皆は?」

「・・・・・・皆やられたぞ」

ばさっばさっと羽ばたきながら近づいてくる古代竜、ロン。

「自身で防御の術を展開できなかった者は、全て吹き飛ばされた」


ナルトは少し目を離し空を見る、其所に有るべき、木の葉の里の象徴でもある火影の顔岩が、粉砕されていた。

「そ・・・・・・んな・・・・・・誰かいないのかってばよ・・・・・・綱手の婆ちゃんは、カカシ先生は・・・・・・」

ロンは静かに首を横に振る。

上から見ればすぐにわかる、ありとあらゆる物が、壊され粉塵と化していた。

木の葉の里は、実質的には滅びたのだ。






「――――――今、此処に立っている者――――――それだけだ、俺と殺し合える資格を持っている者は――――――力なき者は――――――死ね」


マダラの声が高らかに木の葉の里に響きわたる。

「・・・・・・被害は」

瓦礫の中から体を起こし、綱手が確認、木の葉直近暗部が構築した結界が意味をなして、ぎりぎりの所で彼女を守っていた。



「・・・・・・全滅、だ・・・・・・くそっ・・・・・・なんて化け物なんだ」



同じく守られたシカマルが体を起こしながら、確認し、返事を返す。


「信じられねえ、一人でたった一騎で・・・・・・世界を滅ぼすってのもあながち間違いじゃねえ」

シカマルの呟きが力なく前線司令室であった所に響きわたった。

「だが、本当に此処はチャンスだ・・・・・・世界に残された最後の戦力が揃って居るんだからな・・・・・・頼む、ぜ・・・・・・ナルト」

暗部の結界は全てを防ぎ切れた訳ではなく、シカマルはその場に崩れ落ちた。

「お怪我・・・・・・は?」

ピシッバラバラバラバラ

小雪を完全に庇った雪忍のチャクラの鎧が、音を立てて崩れ去った。

「・・・・・・無いわ、ご苦労様」

名も無き側近は笑顔を浮かべ、その場に崩れ落ちる。





「老紫」
「我愛羅」
「ユギト」
「キラービー」
「ナルト」




もはや戦う力を無くした忍び達の呟きが、木の葉の里に響く。



彼らの意志は一つだ。

倒れながらも絞り出すように呟いたサスケの言葉が代弁する。

「・・・・・・頼んだ」

無言の言葉は時に雄弁に物事を飾り立てる。

もう、戦えない自分たちに成り代わり、敵を倒してくれ。

そう言った意志が、ナルト達に降りかかる。

意志が形となりて降り注ぐ。

意志が確かな力となりて降り注ぐ。





「・・・・・・あの妙な餓鬼が言っていたな、望めば其れは叶う、とな・・・・・・下らない、俺が全てを否定してやる、お前等が持つ其の力を全て、全て否定してやる、力こそ全て、木の葉よ、お前等が築き上げてきた罪を、贖え!」


マダラの、誰も聞いていないという意図のもと発せられた言葉。


「違う、お前は間違っているってばよ」


其れを根本的に否定するナルト。
マダラには届かない。


「意志は力になる、望めば其れは叶うんだってばよ」

「ああ・・・・・・そうだな」

我愛羅はふらふらの体を無理矢理支えながら、ナルトの頭に手を乗せる。

「使え・・・・・・数はもう利点ではない、単独の最強のみがあれを越えられる」

昔、ちよ婆に少しだけ習った力を他者に分け与える術、我愛羅の力がナルトに注ぎ込まれる。

「我愛羅・・・・・・」



「そうじゃな・・・・・・もはや儂が頑張ったところで天元の仇は取れまい・・・・・・後は、頼んだぞい」

老紫のしわくちゃの手がナルトの金髪の頭に乗せられる。

数多の経験の中で選択されたその術は、我愛羅と同様、老紫の力もまた、ナルトに注ぎ込まれた。

「・・・・・・爺っちゃん」



「ふっ・・・・・・子供に全てを託す、か・・・・・・九尾と共にあったお前なら・・・・・・信頼出来る、未来を切り開くのは、何時だって若い力、だ」

柔らかい笑みを浮かべながら、ユギトはナルトの癖っ毛の頭に手を乗せた。

誰よりも人柱力の力を研究していたユギト、研究の最中発見した術、ユギトの焔の力が、ナルトに宿る。

「――――――姉ちゃん」



「・・・・・・俺様がやってもいいんだけどな・・・・・・こんな事なら真面目に修行やっておくべきだったか」
いつものラップはなりを潜め、浅黒い肌の手が、金髪で癖っ毛のナルトの頭に乗せられた。

無理矢理ユギトに教え込まれた術を行使し、純然たる力の暴力の化身、八尾の力がナルトの九尾の力に注ぎ込まれた。

「おっちゃん――――――」





ナルトに集約した、世界の根幹を成す人柱力の力。



「乗れ、人は空を飛べないのだろ」

ロンの声に素直に頷き、ナルトは幅広い背に飛び乗った。



急上昇し、マダラが待ち受ける天空に向かい、飛び立つロン。



「・・・・・・人の希望の力、姉上も知りたがって欲しがっていた希望の力、我にも見せてくれ」

「・・・・・・任せろってばよ!」


マダラは動かない、王者の如く、魔王の如く、ナルト達がしている事も全てお見通しだったが、マダラは邪魔しない。


「・・・・・・そうか、お前が最後の決戦存在か。あの時よりは少しは成長したんだろうな、ナルト」

「負けねえ、もう負けねえ、負けられるわけがねえってばよ・・・・・・俺には俺の肩には世界の全てが込められている、俺はお前と違って一人っきりじゃねえってばよ」

仮面に隠れよく分からないが、目を細めるマダラ。

「・・・・・・そのようだな、では、最後の決戦と銘打とうではないか、俺が勝てば、俺が正しかった、お前が勝てば・・・・・・世界の方が正しかったという訳だ・・・・・・簡単な話だろ?」

ナルトは、されど、頷いた。



・・・・・・マダラの目標は実のところ、既に達成されていた。

木の葉に対する復讐。


先の術の行使により、完膚無きまでに滅ぼされた木の葉。


マダラに残された後の目的は――――――決着のみ。







マダラの掌に力が集まる、三尾の五尾の六尾の七尾の尾獣の力が万華鏡写輪眼の力が、其れは高々々々濃度のチャクラの塊となりて、触れるものを絶対的に滅ぼす力だ。



ナルトの掌にも力が集まる、九尾だけの力だけでなく、一尾、二尾、四尾の力も、そして、人が持つ希望という力も込めて、以前四代目との戦いで発揮された時とは違い、赤い光でなく、光り輝く真っ白い力がナルトの掌に集まり出す、其れはマダラと同じく、高々々々濃度のチャクラの塊となりて、触れるもの全てを、昇華させることが出来る力だ。




「・・・・・・眩しいな、見ていられないくらいだ」


力の性質の違いに目を細めるマダラ。

「だが、其の力でも・・・・・・俺は絶対に止められない・・・・・・さぁ、掛かってこい、次代火影・・・・・・うずまき、ナルトォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

既に軍神の域にまで達しているマダラの目は確かだ。

「知るか、俺は、俺の忍道を貫き通す、俺は此処でお前をぶちのめすんだってばよ・・・・・・うちは、マダラァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」



究極の破滅をもたらす力と、全てを昇華させる力が、双方の叫び声と共に、交差する。














双方が重なり合い、すり抜け、それぞれが別の場所に立つ。




ドサッ
















崩れ落ちたのは・・・・・・金髪の髪を持つ少年だ。



「これで、わかっただろう・・・・・・俺が最強だ、俺が全てだ・・・・・・世界は此処で終わる、其れが結末だ!!!」


流石に無傷と言うことは有り得ず、全身を傷だらけにしつつも、されど、しかと揺るがない二つの足で地面に立つマダラの悲しき慟哭が、木の葉の里、否、世界中に響きわたる。




最強の里、木の葉は、負けた。

世界は、負けた。


たった一人の伝説の時代から生き延びている、戦の亡霊に、世界は負けた、・・・・・・うちはマダラの軍門に下ったのだ。




























木の葉の里から暫く地図上で言うところに右のずれた、小さな島の上空での出来事。

竜の大軍による、大規模なブレス掃射が、集まっていた数多のモンスターを駆逐していた。


先行するは攻撃力だけで言えば、古代竜に匹敵するやも知れない影竜達。

確固とした意志は存在せず、ただ忠誠心のみで動く彼らの姿を捉えきれる存在は、主以外には有り得なかった。


数こそ少ないが、彼らの怒濤の進撃は、やがて一つの分岐まで侵攻することとなる。











地面にハルバードを立てて、其れに寄りかかる状態で完全に息を切らしている少女がいる。

辺りに張り巡らせた一重二重のエネルギーフィールドが、暫しの休息を彼女に与えてはいるが、完全なるマナ切れに陥ってしまった彼女に、もはや勝機は存在しない。

笑いながら一つずつフィールド魔法を消し去っていくサキュパス。

無言で同じくフィールド魔法を消していくバルロン。



フィールド魔法に阻まれ、進めないで居る知能こそ低いが絶大な力を持つニ体の主、オークキングとロッティングコープス。


「・・・・・・これは、駄目かもしれんなぁ・・・・・・とうとう我も年貢の納め時、か・・・・・・イタチよ、すまなんだ・・・・・・契約は果たせそうに、無い・・・・・・」


常に活気に溢れ、常に活力に溢れていた少女の瞳に闇が混じる、闇の名前は絶望。




バルロン達の後ろで騒がしい音がしていた。

少女を虐めることに嗜虐心を刺激され続けているサキュパス、少女の見目が麗しいことも更に彼女のサド心を高めていた。

何も考えていない、ただ眼前の障害物を滅ぼさんと動き続けるニ体、オークキングとロッティングコープス、

気づけたのは、知性を持ち、油断という言葉を知らない戦に長けたバルロンだけだった。



少女は、同時に気づいていた。



知らず、口元に笑みが浮かぶ。



「・・・・・・そうか・・・・・・来てくれたのか・・・・・・」



ゴォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



影竜達の絶大な攻撃力を誇る灼熱を越えるブレスが、避ける動作をしなかった三体の主に、突き刺さった。

如何に強力だと言っても一撃で絶滅する主は、存在しない。


が、


思わぬ方向から訪れたブレスに、焦り出すバルロン以外の三体。

其所に此処での戦いが始まってからの最初にして最後の隙が生じた。



「好機!龍式・瞬身の術・・・・・・三日月の舞!」


影分身を使役し、四体に別れた少女が、身の丈に合わぬハルバードを神速を越えた最速で振う。


影がすり抜けた後、


ぼふんっ
ドサッ


四つの音がその場に静かに響いた。


近づく影竜達。

「まだ、これほどの力を残していたか。されど、打ち止めだろう」

三体の主は、リースの一撃で命を散らしていた。

最後の音は限界を越えてしまい、影分身が消えた音とリースが倒れた音だ。




がりっ



地面をひっかきながら無理矢理立ち上がるリース。

心配そうにすり寄る影竜達。

「・・・・・・滅私奉公、ご苦労じゃ・・・・・・有り難う、後は、任せろ、お主等は、この先に進んでくれ、世界の鍵を握る者共が苦戦しているはずじゃて・・・・・・何、こんな体でも、一対一ならば、そうそう遅れは取らんよ」

影竜達の首筋を撫でるリース。

その表情は慈母のように慈愛に満ち満ちていた。

影竜達が幾ら強くても、たった数体では、全体の趨勢を決める戦力には成り得ない。

軍団に対抗するにはマダラの様な圧倒的な格が数十段違う戦力か、若しくは軍団が必要なのだ。

影竜達も分かっていた。


彼らには咆える機能を備えた体は備わっていない。

リースの言葉に恭しく頷いて、彼らは、奥に先に進む。


「ふん・・・・・・其の体で、まだ我に抗しようというのか・・・・・・誇り高き竜王が、今は無惨だな」

満面の花のような笑みを浮かべるリース。

「ふはははははははははははは、何、人間の体というのも悪くはないものじゃよグレンよ」

力なき手に長大なハルバードを再度握りしめ、リースは残りカスの魔力を絞り上げチャクラを練り上げて、眼前の魔力を司る王、魔王に向けて立ち向かう。





バルロンの後ろでは、残った竜族達による激しい戦闘が行われ、先ではもう始まった影竜達による戦争が始まっていた。












くぇええええ・・・・・・ええええええええ・・・・・・ええええええええええ・・・・・・。

弱々しい不死鳥フェニックスの声が、軍団の前に立ちはだかる。

彼らの後ろに存在していた骨の樹海は、今は崩れ始めている。



満足そうな笑みを浮かべ、完全に命を費やした君麻呂。


倒した数こそ全体の十分の一にも届かないといった戦果だが、
軍団の足止めという点では、彼は、その使命を完全に果たしていた、果たしきった。


きしゃー


邪魔だ、と言わんばかりに、瀕死の不死鳥に向けて、魔法を唱え出す蛇の蜘蛛の魔法使い達。


彼らが向かう先は、彼らの塒、テラサンキープ。


・・・・・・彼らは二度と自分たちが塒に帰れないことをこの時点ではわかっていなかった。





ゴォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!





影竜達の、怒りに満ちた最強のブレスが、大荒野を嘗め回した。

不死鳥フェニックスに意識が向いていた魔法使い達は、その一撃で大多数が命を落とす羽目となる。


されど、軍団の数は伊達ではない。

生き残りに対して瞬時に掛けられる回復魔法の群れ。





一度地面に舞い降りた影竜達。




軍団と対面する彼らは、言葉を発せられずとも、誇りに満ちていた。

最強のモンスター軍団、その名誉を賭けた戦いが、人知れず裏の更に裏の世界大戦として始まった。




















テラサンキープ入り口。

騎士達の突進が敢行され、カブトは強制的に戦いの場を、少し間が開けた場所に移された。






ザシュッ




歯を食いしばり、それでも奮戦するカブト。





ザシュッ




だが、一筋一筋、避けえない攻撃を身に負い、癒しきれない治癒忍術。





ザシュッ




それでも騎士の一体を殺し、口から血を吐きながら残りの敵を睨み付ける。


数にものを言わせて、襲いかかる混成部隊。


もう、カブトに其れを支えきる力は、・・・・・・残っていなかった。





「・・・・・・ご免ね、竜君・・・・・・大蛇丸様、今逝きます・・・・・・」


最後に最強の一体でもある女王と復讐者を巻き添えにし、命を落としたカブト。


勇者の死骸を見つめ、暫し無言に陥る混成部隊。


キシャァ・・・・・・


誰とも無しに呟いた鳴き声に従い、彼らは奥に歩を進めた。















グォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!



バルロンの左腕が剣神により切り裂かれる。

魔法を消し去ることが出来ない為、容赦なく身に受けてしまうが、完全なる歩法により、ダメージを最小限に抑えている直人。

何で立っていられるかわからないくらい、直人の姿はぼろぼろだ。

されど、盲目のその顔には笑みが浮かんでいた。

「さぁ、まだまだだよ!この程度で人間が死ぬと思うなぁぁああああああああ!!!!」

・・・・・・精神が、肉体を越えるという現象がある。

余りに強い意志は、体が駄目だと判断しても、その場に倒れ込むことを絶対に許さない。

例え、どんなに朽ちても、どんなに傷付いても、もう直人は此処では絶対に倒れない。




ガキンッ!!!




神速なはずの頑強なはずのバルロンの剣が、半ばから直人のそこら辺にある業物でしかない忍者刀に断ち切られる。

「剣で、僕はもう負けない・・・・・・甘いよバルロン、甘いよモンスター!!!」

されど雷撃は避けられず、隕石は切り裂こうとするが余波は防げず、エネルギーの塊に壁際にまで追い込まれる。


それでも、それでも直人は立っていた。

口から、どころかあらゆる場所から出血している直人、されど動きに緩慢さは一切生じず、ただバルロンを傷つけ続ける直人。

知性ある身として生み出されていないこのバルロンは、とまどいを始めて覚えた。

何度吹き飛ばしても、何度ぶちかましても、何度切り刻んでも、ぎりぎりの所で避ける人間。


致命傷だけを避け続けている人間。


笑みを浮かべ狂笑を浮かべ続ける人間。


バルロンは背筋に冷たい物を感じるとういことを始めて、実感した。

その感情の名前は――――――「恐怖」

上級モンスターを単独で圧倒する存在、「剣神」直人。




其れは其の勢いは・・・・・・蝋燭が燃え尽きる最後の輝きに、――――――よく似ていた。

















「口寄せ、三重羅生門」

其所は星の間、人間が辿り着ける聖地の一つ。

大蛇丸の姿を象った俺の体の前に、厳つい門が呼び出された。




ゴォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!


それにぶち当たる漆黒の体を持つ古代竜を象ったシャドーロードの一体のブレス。


羅生門は粉砕したが、壊れたその先に俺はおらず、


「力を発揮しなさい、草薙の剣!」


大蛇丸の声に従い、重力に従い、古代竜を模した敵の首筋を切り裂く草薙の剣。


しかし、


バルロンを模している敵によりエネルギーの塊が、仲間を案じることなく、放たれ、同時に被弾してしまう。


ガンッ


地面に叩き付けられる俺in大蛇丸。

「ふん、大したダメージでは無いから良いけれども・・・・・・未だ三体目は変態していないし、其れにこのニ体も全力を出していないわね・・・・・・」

冷静に敵の戦力を見定めている大蛇丸、


流石、と言っておこう、俺では絶対に辿り着けなかった境地だ。




のそっ・・・・・・ブゥゥゥゥン


残りの一体が動き出し、その場に大きなモニターらしき物を生みだした。










其所には・・・・・・傷付いた、俺の仲間が・・・・・・ナルト達も含めて映し出されていた。

「これで、わかっただろう・・・・・・俺が最強だ、俺が全てだ・・・・・・世界は此処で終わる、其れが結末だ!!!」



マダラの声が俺の耳に届いた。




「お前の仲間は敗れたようだぞ」


映し出される君麻呂の遺体、その顔は満足そうな笑みを浮かべていた。

映し出されるカブトの遺体、その顔は俯いていて計り知れない。


「今生きている者も直に、死ぬ」


映し出されるリースの姿、既に傷が見あたらない所を探す方が困難で、血を大量に流しながらも漆黒の悪魔バルロンと対面している。

映し出される直人の姿、全身を朱に染め上げ、それでも笑いながら漆黒の悪魔バルロンと切り結んでいる。


「お前の大事な者も直に死ぬ」


映し出される、気を失っているのであろう琴音の姿。
迫る化け物の影、辿り着くまで、あと少しだ。


「お前が救おうとした世界は、最後にして最強の決戦兵器が負けた、やはり滅びる、な」


映し出される木の葉の里、中心を見ると、ナルトを守るように立ちはだかる人柱力達にサスケやヒナタ、ネジやハナビ、其れに多数の忍び、だが・・・・・・もう最強と為ってしまったマダラには、勝てない、徒に死者を出すだけだ・・・・・・忍びであるがゆえに、わかりきっているはずだ、だが、それでも、彼らはナルトを庇うのをやめない・・・・・・何故なら、ナルトが最後の希望だからだ。



マダラの辞書に容赦という文字は存在しない。

あれは・・・・・・他の里の忍びか、其れすらもナルトを守ろうと、ナルトの前に立ちはだかる。


ガシャーンガシャーンと動きの度に音を出すメイドゴーレム、


片っ端から壊されているが、それでもナルトを守らんと前に立ちはだかる。


ナルトを看ているのは、・・・・・・サクラとヒナタ、か。

声が聞こえる。

「ナルト、ナルトォォォォォオオオオオ、目を覚ましてよ、あんたしか、もういないのよ!!!」

泣きながら決死の表情でナルトの治癒を施す春野サクラ。

「ナルト君、お願いです、立ってください!・・・・・・お願い・・・・・・です・・・・・・」

同じく大粒の涙を流しながらナルトの回復の天穴を、ほぐし続けている日向ヒナタ。




「通牙!」

後ろから突っ込むキバがいる、が、単独でのその攻撃はもはやマダラの意識を向けさせることすら出来ず、マダラが身に纏っている全てを遮断する真のチャクラの鎧に阻まれ、吹き飛ばされる。


「蟲壁の術」

静かに呟かれた油女一族特有の術も、マダラの動きを阻害することは出来ず、マダラが何気なく放ったチャクラの塊に吹き飛ばされ、やはり地を這う。


「肉弾戦車!」

チョウジが放った自身を大玉にして転がる術すらも、チャクラの鎧を貫くことは能わず、そのまま反射させられ、意識を奪われる。


「柔拳法・八卦六十四掌」

ネジが放った最後の力も、マダラの体に届きもせずに、何気ないただの一撃で吹き飛ばされる。


「雷切ぃぃぃぃいいいいい」

カカシが放つ、本来ならばチャクラの鎧も貫けるはずの威力を持つ術も、チャクラが絶対的に足りず、マダラに腕を軽々と捉えられる。


「・・・・・・カカシ、か・・・・・・大人しく寝てろ、もう、木の葉は終わりだ」

「解!」

捉えられた手から雷遁を全力で流し込むが、


「最後まで諦めない、か。其れでこそ木の葉だが・・・・・・無駄だよ」

マダラには通じず、カカシは軽々と吹き飛ばされ、完全に沈黙した。


「黒秘儀・機々一発!」

カンクロウの操るクグツが、マダラを飲込む。

同時にすぐさま刺される七本の刀。

しかし・・・・・・


「無駄だよ」

マダラを傷つけること、能わず、クグツは完全に粉砕され、マダラは不可視の一撃で吹き飛ばされる。


「砂手裏剣」
「羅理亜都戸」
「蛍火」
「溶岩」

ナルトを囲んでいる人柱力の術が、多重炸裂するが、マダラは全くの無傷。



「ふん、最後に残るのは、お前等か・・・・・・諦めろ、もう俺に勝てる奴は此処にはこの世界には存在しない」

「そうですか?・・・・・・多重影手裏剣!」

大量に発生した手裏剣が、マダラに降り注ぐが、そんな物はもう届かない。


ガキンッ!


マダラの姿が刹那掻き消え、再度現われる。

手に掴むはハヤテが手にしていた消滅刀。


「なるほど・・・・・・最後にして良い策だ、ゼツを滅ぼしたこの魔女の力が込められた刀ならば、俺に手傷を負わせることくらいは、出来たかもな。其方の女忍に気を取られていれば、成功したかも知れない、が。俺はもう、無敵だ」


バキッ


へし折られる消滅刀。

呆然とするハヤテ、夕顔、マダラは一つの術を呟いた。


「・・・・・・神羅天征」


サクラやヒナタも含めて、吹き飛ばされる残った戦力の全て、もう、ナルトを守る壁は存在しない。



「諦めろ、絶望に身を任せろ・・・・・・お前は全てに負けたのだ・・・・・・幻龍九封尽・改」

残りの人柱力からも、力の全てを吸い出すマダラ。

抵抗も出来ずに、我愛羅、老紫、ユギト、キラービーは命を落とした。













マダラの声が耳に痛い、マダラの声がシャドロード達と被る。


大蛇丸の感覚が消えていく。

「・・・・・・」



「力も尽きたようだな・・・・・・さぁ、これで、終わり、だ」



攻撃態勢に入る古代竜を模した敵と、バルロンを模した敵。



確かに其れが放たれれば今の状態の俺は、絶命必死だろう。




だが・・・・・・




「巫山戯るな・・・・・・巫山戯るなよ・・・・・・俺は、こんな結末絶対に認めない!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


腕を振り上げ声を張り上げる。


「コデックス、お前が真理の書だというのならば、答えろ、俺は、誰だ!!!!!!!!!!!」

*マスターは、アバタールだよ*

「アバタールは何を成し遂げた者だ!!!!!!!!!」

*アバタールは人々に希望をもたらす存在、言い換えれば絶望をはね除けられる存在だよ*

「そう、その通りだコデックス・・・・・・俺はアバタールだ、ならばその力を今こそ行使する」

*何でも言いつけてよ、僕は君のスレイブなんだから*

「ならば、俺はアバタールの名に於いて忠実なるスレイブコデックスに命ずる・・・・・・俺の世界よ俺の法則よ俺の力よ」








「――――――広がれ」








*了解、任せて!*

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
*世界が、更新されました*


「何をするつもりだ!!!」
「構わん、消せ!!!」


攻撃準備が整いきるシャドーロード達。


「遅いんだよ、ラスボスの割に動きがとろいぜ!広がれ俺の世界、広がれ俺の法則、広がれ俺のスキル・・・・・・目覚めよ英雄達・・・・・・SpiritSpeak!!!!!!!!!!!」



効果範囲は、無限大、効果時間は最大限。



――――――死者が現世に舞い戻る。



ゴォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!

放たれるシャドーロード達の力、

だが、それらは俺には届かない。

何故なら・・・・・・何故なら・・・・・・


「お前等が絶望を支配するというのならば、俺は俺達は希望と共に戦うよ・・・・・・なぁ・・・・・・直人」

「うん・・・・・・そうだね、・・・・・・そうだよ竜君」

俺の瞳から勝手に透明な液体が大量に溢れ出る。

シャドロード達が放った致死の一撃は、直人の剣神としての一撃が、完全に切り裂いていた。

直人は・・・・・・バルロンを圧倒し、止めを刺した瞬間に蝋燭が燃え尽きるようにひっそりとその場に崩れ落ち・・・・・・死んだ・・・・・・。

間に合わなかった・・・・・・、俺の力はこの世界での俺の一番の親友の命を救うのに、間に合わなかった・・・・・・。

くそっ・・・・・・・・・・・・くそっ・・・・・・・・・・・・くそったれが・・・・・・。

「泣かないでよ・・・・・・竜君・・・・・・僕は、君を守れてこれ以上ないほど満足しているんだから」

だが、涙は全く止まらない、止めようともしない、悲しいときに泣けずして、何が人間だ、何が力だ。

「わかった、・・・・・・泣かない・・・・・・直人、一緒に行こうじゃねえか。一緒にあいつらをぶっ飛ばそうぜ!」

涙は止まらない、止まる気配を全く見せない、見せようともしない、だが少なくとも笑顔でいよう、其れがこいつが俺を助けてくれた事に対するお礼だ。






未だ映し出されているNARUTO世界での、世界大戦。


空に浮かぶ一体の古代竜、ロン。

「これは・・・・・・この広がる力は・・・・・・そうか、アバタールの奇跡!」

眼下には新しい局面が生まれていた。



マダラとナルトの間には、四人の火影が、立ちはだかっている。

「久しいな……初代火影千手柱間、其れにそちらは三代目火影猿飛ヒルゼン、二代目火影千手扉間、そして最強との呼び声高い、四代目火影波風ミナト、か――――――今更冥府より戻りて何の用だ」

「ナルトは・・・・・・殺させない・・・・・・僕が守る」

一番に立ちはだかる四代目。


「ふふふふふふふ、こやつの相手は儂が一番慣れておるよ、だが、あの頃より更に力を増したようだな・・・・・・うちはマダラ!」

「兄者、我も共に戦おう、猿、お前達は・・・・・・」

頷く三代目。

「わかっております、初代様・・・・・・二代目様・・・・・・無理はなさらぬように・・・・・・初代様、何か孫に綱手に対しての言付けはおありですかな?」

初代はマダラから全く目を離さない。

そのままの状態で首を横に振りつつ呟く。

「何も・・・・・・何も無い・・・・・・行け、猿!」

「はっ!」

三代目はその場から立ち去り、当代火影の所へと向かう。

四代目はナルトを最愛の息子を抱えて、その場から離れる。


「ふん・・・・・・今更亡霊共が、何をしようとも、徒労に過ぎない」


九尾を除いて、全ての尾獣を吸収し尽くしたマダラ。



世界の根幹を成す力を全て吸い上げた、其れは正しく世界の王だ。



もう、単独では、絶対に絶対に敵う相手ではなくなってしまっていた。

初代と二代目が相手をしても・・・・・・例え全盛期の力を持ってきていたとしても・・・・・・、



「扉間、どうだ、お前の予測では何分稼げそうだ」

「兄者・・・・・・怒らず聞いてくれよ・・・・・・我の予想では持って数分だろう」

ははははははははははははは

柱間の笑い声が里に響く。

「奇遇だな、扉間、俺もその程度だと思う、マダラは危険すぎる、我らではもはや時間稼ぎすら出来んやもしれん・・・・・・だが、火影としての意地があろう、俺にもお前にも」

深く頷く二代目。

「ああ、見たところ・・・・・・我らの思想は正しく受け継がれて居るみたいだな・・・・・・ならば、先達たる我らの情けない所など、見せられるはずも、無い」

深く頷く二人の火影。


「どうした、下らない相談は終わったのか?」


悠然と王者の格を持ち始めたマダラ。


力の差は・・・・・・格別し過ぎている。






「ふんっ、何、昔の決戦を思い出していただけのこと・・・・・・行くぞ、マダラァアアアアアアアアア!!!」

初代のかけ声に応じて、二代目火影も、動きを併せる。











最終にして最後の戦いが、此処に始まる、其れは全てを含んだ戦いだ、過去も未来も、現在も全てを含んだ、世界の全てを掛けた戦いが、堂々と始まった!



[4366] 世界大戦、その拾四、裏大決戦、暁。
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/02/16 03:00
きゅ~~~~

ごぉぉぉぉぉ


春の国、女王の私室にて、白い幼竜と、火蜥蜴が、主人の帰りを待ちわびていた。

女王以外になつかない彼らは、ただ、主人が帰ってくることを待っている。

微笑ましい光景なのだが、行った先を知っている側近は、彼らの思いに掛けるしかなかった。


どうか・・・・・・どうか無事に帰ってきますように・・・・・・。

春の国はまだ当分指導者が必要な状況だった。














初代火影と、二代目火影の連携による、時間稼ぎだけの決戦が始まった。



現世に舞い戻ってきたのは、彼ら火影だけでは、無い。





倒れ伏しているサスケを抱える手があった。

意識を刹那失っていたサスケは、振動で目が覚めた。


「・・・・・・後は、頼みます」


引き渡される自分の体、どうやら医療忍術が詰めている場所に運ばれたと、匂いで感じた。


しかし、声には聞き覚えがある。

そう、その声は――――――最愛の、
「・・・・・・兄さん」


サスケの呟きに反応し、振り返る男。

「・・・・・・俺の力を分けたんだ、お前は、もう一人前の忍びだよ・・・・・・仲間を助けてやれよ・・・・・・」

そう言った声が聞こえ、優しく頭を撫でられ、手の感触は去っていった。

「悪いが、契約があって、な・・・・・・最後に逢えて、嬉しかったよ、弟よ・・・・・・サスケよ」

サスケが目覚めたとき、其所にはもう、兄はいなかった。











ユニコーンが行使するゲートの魔法は行く先が指定できない。

竜と二人で乗り込んだときに、ドンピシャでナルトの所に行けたのは竜のトラッキングがあったからだ。

そして、一度使ってしまえば、暫く間をおかない限り行使することは不可能。

出た場所が悪かった。



蛇と蜘蛛の混成部隊の小部隊だったのは、不幸中の幸いだったのだが、それらとの戦闘で、命を落としてしまう、ユニコーンとナイトメア。



今、琴音を守るペットはただの一体も居なくなってしまっていた。


蛇と蜘蛛の混成部隊の斥候を務めていた一体が、人間の気配に気付き、引き返していってしまった、部隊が来る。


琴音の命運、此処に尽きる・・・・・・はずだったが、



アバタールの力は全て生きとし生きる者全てに及ぶ。

主人のことを愛していたペット達にも、等しく及ぶ。





人間の気配を感じ、部隊を引き連れてきた斥候は、とんでもない光景を眼にする。


先程まで影も形も無かった荒野に、陣を構える、ドラゴンの部隊。

人を守りきろうと、完全な陣形を敷いていた。





ゴォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ





逆に発見されてしまった部隊に対し、ドラゴンのブレスが降り注ぐ。

琴音は意識が無いまま、今まで愛し、育てたペット達に守りきられる事となる。


















ブラッディガール、血まみれ少女、今の彼女を形容するならその表現がしっくり来る。

肩で息をする段階も過ぎ、手足の末端の感触も薄れ、視界は、霞んできていた。


バルロンの苛烈さは一切衰えず、負けじと限界まで振り絞ったチャクラとマナを行使することによる、慢性的な高山病みたいな状態。
意識が途切れるまで、時間がなかった。


「勇者、だな・・・・・・そなたは誇り高き、人族の勇者と呼ぶに相応しい・・・・・・さらばだ」

見逃すバルロンではない、止めの一撃を、少女に対し敬意を払いつつ、バルロンは放った。



完全に意識を失う直前、リースは自身の前に一つの人影が立ちはだかるのを、認め、そのまま意識を落とした。


「・・・・・・全く、お転婆も良いところですね、ですが・・・・・・よく頑張りました、流石はイタチさんの契約者」


鮫肌を手に、冥府より舞い戻った鬼鮫が、バルロンの致死の一撃を防いでいた。

「イタチさんは、暫しよるところがあるそうですよ・・・・・・尤ももう聞こえていませんか」

すやすやと寝息を立てて眠り始めた眠り姫。




グォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!




新たな敵を認め、更なる臨戦態勢に入るバルロン。

「やれやれ・・・・・・静かにしてくださいよ、私のご主人様が、起きてしまいますよ」

苦笑を浮かべる鬼鮫。


「そうか、其れは失礼した・・・・・・人族の勇者の魂とでも呼ぶべきか?」

「いえ、私の名前を呼ぶ必要は有りません、だって・・・・・・貴方はもう死んでいますから」

「・・・・・・天照」


鬼鮫の背後から現われた、黒装束を着こなしている精悍な男。
漆黒の悪魔を飲込む、全てを焼き尽くす、うちは一族に伝わる火遁秘術、天照。



「ふん!」



気合いと魔法で天照を乗り越えたバルロン。

「人が単体で魔を越える、か、オメガの意識が指していたのはお主の事だな、勇者よ」

「・・・・・・我が名はイタチ、うちはイタチ・・・・・・悪魔族でも名高い者と認められるが・・・・・・悪いが、此奴はやらせるわけにはいかないんでね・・・・・・鬼鮫、少し下がっていろ、契約者たる俺がリースに代り、けりをつける」

イタチの万華鏡写輪眼が、巡りに巡る。




竜が行使した力は、死者の復活、其れも全盛期に限定して、だ。

それ以上でもそれ以下でもない・・・・・・いくらアバタールとは言えども、全ての法則を塗り替える事は出来ない。

竜が変えられたのは、ほんの一部の法則だけだ。





「瞬身の術」

相手の実力を認め、高速戦闘に入る、バルロンとイタチ。

バルロンの魔法が放たれ、イタチの忍術が放たれる。

「流石は主の一柱、イタチさんと互角に戦うなんて大した物です・・・・・・ですが・・・・・・イタチさんは一度、既に貴方の同位体を狩っているんですよ?」



二人には届かない鬼鮫の呟きが、激しい戦いの横で静かに響いた。



















直人が切り裂いた、古代竜を模した影。

しかし、



更に一つの古代竜がすぐさま生み出され、形を成していく。

まだ残っているバルロンを模した影・・・・・・まずい、この状況じゃ。



ははははははははははははははははははははははははははははははははははははは


と耳障りなシャドーロード達の笑い声が、星の間に響きわたる。





が、

ドゴン!


重く、腹に響くような爆薬の音が響き、バルロンを模したシャドーロードの横っ面をはねとばし、魔法を強制的に中断させた。

「ったく、何で俺がこんな餓鬼の手助けしなきゃいけないんだ?うん、なぁサソリの旦那」

暁が一人・・・・・・爆弾のデイダラ。


ゴォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


新たに産まれた古代竜は、ブレスを放っていた、但し、方向が俺じゃなく、シャドロード達が生みだした影達に向けて、だが。
崩れ落ちるバルロンを模していた一体の影。



「いいから黙れ、デイダラ、何、其所の小僧には昔お世話になってなぁ・・・・・・こんな相手に殺させる訳にはいかねえのさ、なぁ、餓鬼、元気にしていたか?」

暁が一人・・・・・・クグツのサソリ。


「へいへいっと・・・・・・ああ、なるほど、手前等があの魔女を呼んだんだってな?うん・・・・・・そっかそっか・・・・・・それじゃ、おいらの芸術を見物する資格は十分にあるみたいだな・・・・・・ボーン」


デイダラの言葉と共に鳥の形を模した爆薬が、羽ばたきシャドロード達に向かい、飛んでいく。


接触すると同時に爆発!


「おいらの心を弄んだお礼だ・・・・・・消えろ」

デイダラを制止するサソリ。
「まぁ、待てデイダラ・・・・・・こいつらに用があるのは俺達だけじゃねえみたいだぜ」


デイダラの影から生まれいずる、もう一つの影。

「・・・・・・よくも、僕達を喰ってくれたよね・・・・・・あんなタイミングで死ぬとは思っていなかったよ」

暁が一人・・・・・・蜻蛉のゼツ。


「よぉゼツ、手前も災難だったな・・・・・・うん、お、珍しく怒っているじゃねぇか」

更に呼び出される死者。

「全く、こんな奴が後ろに居たのね・・・・・・あんた等の所為で、ペインは・・・・・・っ!」

暁が一人・・・・・・雨の国の天使にして紙使い小南。


「巫山戯るなぁああああああ!!!」

シャドロード達の内一体が咆え、魔法を連撃するが、小南は全てを紙で迎撃、ダメージの一切を負わない。



「ケケケケケケケケケケケケケケケケケケケ、手前の事なんかしらねってよ、嘗められているな小南」
茶々を入れるサソリ、其れは酷く楽しそうだった。


「五月蠅い!何よ、勝手に出撃して趣味で死んだ馬鹿野郎!人形遊びになんかうつつを抜かすからそんなことに為るのよ!」


顔を真っ赤にして、抗議する小南。
サソリは小南の言ったことなど、全て流して、ただ笑っている。


「何か、変わった人達、だね、竜君」

確かに、もっと殺伐としていたような気がするんだけどな。
・・・・・・なんか、キャラが違う気がする、俺が会ったときはもっと――――――。






「雑魚が・・・・・・いくら集まったところで、我らには勝てん」

シャドロード達は、影の形を完全に解き、一つの形に集約する。






「貴方達、楽しそうなのは良いけれども、どうやら、とうとう本気を出すみたいよ」

けらけらと笑いながら見ているだけの大蛇丸、周りを固めている音の五人衆にカブト。

元、暁が一人・・・・・・大蛇丸。


「ったくよ、ジャシン様への信仰が足りなかったのかねぇ、俺ってやけにあっさり死んじまったよな、相手が悪いっていやぁそれまでだけど、な、なぁ角都」

手に持つ死神の鎌を、構える、暁が一人・・・・・・不死の飛段。


「お前は、まだいい・・・・・・俺なぞ、其所の小僧を見くびった所為で死んだんだぞ」

九つの命を持つ、暁が一人・・・・・・不老の角都。


固まる直人。


「ふん・・・・・・戦場での生き死にに禍根など持ち込まん、別にお前に対する怒りなど存在しないからそう硬くなるな」

「・・・・・・すみませんでした」

「俺を殺した男が、そう簡単に謝るな、俺の格まで落ちてしまうだろうが」

「かかかかかかかか、無理ねえって角都、目が見えなくとも、手前の怖さは空気を伝いわかるもんだ」
「黙れ」

相変わらずのやりとりをする不死コンビ。




「お前等・・・・・・我らを嘗めているのか!!!」

激昂する一つになったシャドーロード。

其れは形を整える、其れは、最強の妖狐、九尾の姿を象った――――――漆黒の九尾は、口に溜めた漆黒の吐息を、俺達に向けて、吐き出した!



ゴォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ



現われる新たな影。

「――――――神羅天征」

其れは、全てを弾く絶対の防御忍術。

「六道ペイン、此処に推参・・・・・・よくも我らを謀ってくれたな、覚悟しろ、影共」

最後に、暁が一人・・・・・・最強の群体、六道ペイン。
今は、一人だけの、俺が最後に殺したペインだった者の一人。


「ペイン!」

すぐさま駆け寄る小南、其の表情は、まさに恋する乙女といったものだった。

「おい、なんかペイン変わったな」

「何か前より小さくなったような」

「あの餓鬼がペイン?・・・・・・美しくねぇな」

「へぇ、あれが本体だった訳か、うん、始めて見たな」

「真実の自分をさらけ出した、か」

順に飛段、ゼツ、サソリ、デイダラ、角都。



大蛇丸は離れたところでくっくっくっとただ笑っている。

ぐるぐる巻きの目が、俺達を見据える。

「・・・・・・お前達、遊んでいるのか」

全員が一斉に首を横に振る。


・・・・・・本当は、仲良かったのか?こいつら。








・・・・・・なんか、負ける気がしねえ。

何で暁ばっかり、原作で言うところの敵ばっかりが、こっちには来ているのか知らないが・・・・・・こいつらは強い、強さだけは他の誰よりも信じることが出来る。








「・・・・・・待たせた、な」

万華鏡写輪眼を持ち、あらゆる面で優れているといえる、暁が一人・・・・・・うちはイタチ。

背中に疲れ果てて眠ってしまった少女を背負い、堂々と登場。


そっか・・・・・・また逢えたんだな、よかったなリース。

「速すぎですよ、流石はイタチさんです、おやおや、貴方はまだ生きていたんですね、大した物です」

怖い顔を持ち、手には鮫肌、暁が一人・・・・・・鬼鮫。


「・・・・・・揃ったか」

遅れてきた二人を見やり、辺りを見渡すペイン。


「・・・・・・マダラは、木の葉が勝手に処理するだろう、我らが行く筋合いでもない・・・・・・が、此奴等だけは話は別だ・・・・・・我らの運命を弄び、変えた張本人・・・・・・我ら暁の力、今こそ見せてやろうぞ!!」

リーダーでもあるペイン、だけど、其れは傀儡状のものであったはずだ、しかし、今のペインは確かに自らの意志で、此処に立っている、此処で指揮を執っている。



暁達の顔色が変わった。


・・・・・・最強にして最悪のプロの戦闘集団、暁。

今回は味方で、良かったわ、本当に良かった。



「あー、面倒臭いが、リーダーがそう言い切るんじゃ・・・・・・やるとするかね、下がってろ餓鬼」

いの一番に前線に立つ、飛段。


「・・・・・・お前も来い、俺を殺しきったその力、確かに役に立つ」

「・・・・・・わかりました、行ってくるね、竜君」

「ああ、・・・・・・戦えない俺に変わり・・・・・・あいつ等をぶちのめしてやってくれ」

盲目の状態で笑顔を返す直人、剣を片手に、角都と共に戦場へと向かう。



「・・・・・・悪いが、こいつを預かっててくれ、背負ったままでは戦えない」

リースを大事そうに俺に手渡す、イタチ、別に良いが、俺が背負ってもリースの足は付くぞ、地面に。

「イタチさんの、大切な人です・・・・・・守ってくださいね」

怖い面を俺に向けて、不器用な笑みを浮かべる鬼鮫、いや、あんたそんなキャラだっけ。


「ふふふふ、楽しそうな祭りだこと、行くとしますか、付いてきなさい君麻呂、カブト、其れに貴方達も」

「「「「「「はっ」」」」」」

大蛇丸の言葉に付き従うは、音の里の中でも最強ランクに近しい者ばかり、彼らの顔は全てが全て誇りと自信に満ちあふれていた。




「芸術は爆発だぜ、なぁサソリの旦那」

「何を言う、芸術は永遠だ・・・・・・見解の相違は死んでも治らないか」

二人で芸術について語り合いながら、前に出て行くデイダラとサソリ。

二人は一度リースを背負っている俺を見て、笑いながら頭を撫でて、戦場へと足を運んでいった。




「・・・・・・貴方が・・・・・・」

俺の前で足を止める小南。
わずかな殺意が、俺にむけられる。

「ああ、俺が、ペインを殺した」

何の弁解もしない、殺さなければ、俺が死んでいた、其れだけの話だ。

「・・・・・・よせ、戦場での話だ、その子供に対して俺は何も思っていない」

何処か納得出来なそうな小南。

「・・・・・・生きなさいよ・・・・・・ペインを殺したんだから・・・・・・貴方は最後まで生き長らえなさい」

気持ちを無理矢理振り絞ったのだろう、感情を奥に押し込めて、小南は、言葉を口にした。
「・・・・・・わかった」

くしゃ

「行くぞ、小南」

ペインが小南の頭を撫でて、行軍を強いる。

「――――――ええ、行きましょうか」

全ての思いを胸に秘めて、小南はペインの後に続く。



「じゃ、僕は君と一緒に見学してようかな」

俺の隣に音もなく現われるゼツ。

「チョットジャマスルゼ、オレタチハ、チョクセツセントウタイプジャ、ネエカラナ」

とりあえず頷いておく。

そんなゼツでも、俺は絶対に勝てないからだ。



シャドロード達は、完全なる一つの個として、待ち構えていた。

戦うのは・・・・・・結局最後まで俺じゃない、俺は頼りになる仲間にずっとずっと頼りっぱなしだ。




暁対シャドロード、決着は・・・・・・どうなるのか・・・・・・。


そして、ちらっとしか見ていなかったが・・・・・・マダラの強さは狂気は本物だ。果たして、俺が使ったスキルは・・・・・・状況を逆転する鬼手となり得るか・・・・・・後は、ナルト達次第、か。



[4366] 世界大戦、その拾伍、木の葉大決戦、結の前。
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/02/19 14:02


木の葉の里、前線司令室。

小雪は手持ちぶたさに瓦礫に座り、火影の行動をただ見ていた。

「あら・・・・・・父さま・・・・・・貴方までこんな所に来られたのですね」

現われる小雪の父の霊、その顔は優しき慈愛に満ち満ちていた。
小雪は思わず抱きしめた。

舞い戻る死者は、戦闘員だけでは、無い。

「・・・・・・僕じゃ、力に為り得ない、けど君に伝えたい事があってね」

小雪の頭を撫でながら、笑みを浮かべる小雪の父、早雪、小雪の顔にも笑みが浮かぶ。

「ふふふ、父さま、再び逢えて嬉しいのですが、残念ながら今は世界の危機、・・・・・・何か、策でもあればこの国に授けていただけませんか?」

「ああ、全部分かっている、・・・・・・三太夫、力になってやりなさい」

少し離れた地面に敬服している小雪のマネージャーでもあり、かつて早雪にも使えていたことがあった男、絡繰りの熟練者、三太夫。

「・・・・・・立派に、立派になり申した・・・・・・小雪様、早雪様、私の知恵、存分に役立ててください」

早雪の元、絡繰り作成に携わっていた三太夫の知恵が、木の葉に加わる。











綱手はひたすら思案していた。


どうすれば、・・・・・・どうすればマダラを打倒できるか。

すでにナルトに対しては、しずねを向かわせてある、直に回復できるだろう、が、それでも今のマダラを打倒するには戦力が足りなすぎる。


既に名だたる戦力は、戦闘できる態勢ではない。


冷静が主体で頼りなっていたシカマルも今は、倒れ伏している。


「・・・・・・苦労しているようじゃな、綱手、策を持ってきた・・・・・・聞く気はあるか?」

希望が、現われた。









三代目が話した内容は、結界の構築についてだった。
かつて、対九尾に開発施行した結界を考案した三代目ならではの、新たな策。

結界の構築、今度は誰かの犠牲を伴わなければ発揮できない聖戦じゃない、ありとあらゆる力を決戦存在に、ナルトに集めるための結界。


「もはや、ナルトに賭けるしか手は無い、綱手よ、火影たるお主なら、出来るはず」

新たに現われる、居丈夫の男、白髪頭の仙人と呼ばれていた男。


「そうそう、儂も手伝う、なぁ三代目」

「ふん、・・・・・・最後まで火影を辞退しおって・・・・・・じゃが、ご苦労じゃったな自来也」


綱手は言葉がない、ただ、何気なく自来也の元へ近づく。

何処か達観している様子の自来也。

眼を閉じる。



ガンッ



鈍い音が、完全に崩壊した前線司令室に響きわたった。

「・・・・・・この馬鹿者が・・・・・・」

殴られた頬をさする自来也。
「・・・・・・悪かった」

背を向け、瓦礫をどかし始める綱手。

「さっさと手伝え、マダラは待ってはくれんのだぞ」

「・・・・・・そうか、お主等は出来ていたのか・・・・・・それはそれは、儂も耄碌したな、全く気付かなかったぞ」

成り行きを眺めていた三代目が、静かに呟く。


「「誰が!!こんな奴と!!」」


ピタリと声があう二人。

ほっほっほっと笑いながら自身も除去作業に入る三代目。

まずはマダラの術で埋まってしまった、聖戦を発動した陣を掘り出すところからだ。


「技術面なら、任せていただけないかしら」


火影達のやりとりを少しだけ離れた所で見ていた小雪。


早雪や、三太夫も瓦礫の除去に既に入っている。

「ありがたい、春の国の力は知っている、絡繰り兵器で名高いその技術力、是非手伝って貰いたい」


今まで暗かった綱手の顔には、笑みが浮かんでいた。





全てが全て、うまくいくかと思われる時・・・・・・されど、時間は少ない。

マダラがナルトを殺したとき、全てが終わる。









死者の力は彼らの思いが、そのまま原動力となる。

体を張り戦う者は、全盛期の力もて、争う。

大事な者を救いたいと思った者は、大事な者の力となるために舞い戻る。

――――――其れは名も無き忍び達にも効果は及ぶ。












「どうしたカカシ、我が永遠のライバルとして情けないぞ!」

気持ちよく意識を失っていたカカシを起こす男が居る。

其れは、いつも聞いていたような台詞を口にし、いつも聞いていたような対応を取る。

カカシは声に従い目を覚ました。

「・・・・・・五月蠅いよ、・・・・・・ガイ、冥府でもお前は五月蠅いのかい?」

其所に立っているのは暑苦しい男No1マイト・ガイ、その顔には満面の笑みが浮かんでいた。

「ははははははははははははははは、気にするな我がライバル、決着をとうとう最後まで付けられなかったことは残念だが、今は火急の時、さらばだ!」

言いたいことだけ告げて、暑苦しい男は去っていった。


「・・・・・・全く、俺なんかの所じゃ無くって、リー君のところにでも行ってあげればいいのに」

笑みを浮かべながら、チャクラ切れの体を無理矢理動かし、立ち上がるカカシ。


「そういうな・・・・・・彼はお前の事を心から心配していたんだぞ」


聞き慣れた声、いや、聞き慣れていた声、任務より仲間の命を選択して、不業なる晩年を過ごした男の声、カカシが最も尊敬していた者の声。


「貴方は・・・・・・」

カカシの体を支えるその者は、姿を崩し、完全に壊れていた形見のチャクラ刀に宿り、その機能を復活させる。

「息子よ、共に行こうではないか・・・・・・私の意志を継いでくれていたのだな・・・・・・有り難う」

少ししか見えなかったが、今は、確かにチャクラ刀の中に感じる懐かしき感じ。


カカシ笑みが浮かんだ眼に、涙が溢れる。

「ああ、貴方が一緒なら、何処にでも行けるよ・・・・・・父さん」


「はははははは、立派になったな、カカシ」

現われる、青年のうちは一族、其れに、微笑んでいるかつて仲間だった女忍。

「オビト、リン」

「俺達の力も、使えよ、敵はうちは一族の宗家、マダラなんだって?・・・・・・関係ねえよ、俺達には、関係ないよな」

オビトの姿が崩れ去り、カカシの写輪眼の中に入り込む、カカシの写輪眼は文様を変える。


「お疲れ様、カカシ君・・・・・・そんな体じゃ辿り着けないわよね、全く父様も、オビト君も、大事な所が抜けて居るんだから」

リンの体が崩れ、カカシの体に入り込む。

チャクラ切れでふらふらだった体に、力がこもり始める。

白い閃光がカカシの体にまとわりつく。


敵は、最強にして既に世界の王と化してしまっている、うちはマダラ。

だが、頼りになる者と同一化したカカシには、関係ない。

顔には笑みが、精悍さを漂わせ、木の葉の里、代表の一人として、最終の戦場に白き閃光が走る。

















「情けない、さっさと起きんかぁ!」

誰かに強制的にこづかれて、目を覚ましたネジ。

「誰だ!」

振り向くと、其所には赤い華を散らして沈んだはずの宗家が立っていた。

「あなたは・・・・・・」

「どうした、ネジ、日向家の力はそんな程度だと笑われてもいいのかぁ!」

宗家、日向ヒアシの拳骨がネジに降り注ぐが、ネジは事も無きに受け止める。

「・・・・・・死んでもなお、そんな元気なんですね」

「ふむ、目が死んでいない、な。その元気があれば、まだ戦えような・・・・・・日向家の名を貶めることはするな・・・・・・ヒザシの為にも、な」

自身の父親の名前を告げられ、ネジは、心を固めた。

「誰に物を言って居るんですか・・・・・・私は、日向ネジです、貴方がいない今、当代最強のはず」

はははははははははははははははと笑うヒアシ。

「お前が最強だと!?百年早い!・・・・・・名乗りたければ、――――――あやつを滅ぼしてこい」

「・・・・・・わかりました、日向の技は最強、其れを証明してきますよ」

ヒアシの体が薄れ始める。
其の目が刹那、隣で崩れ落ちているハナビに向かうが・・・・・・ヒアシは優しい眼差しを向けるのみ。

「その言葉、忘れるでないぞ・・・・・・日向を、・・・・・・ハナビにヒナタを頼んだ」

ヒアシの力がネジに宿る。

ネジのガス欠だった体に力が漲る。

白眼が発動。

「・・・・・・東、か」

木の葉最強の一族、最後の末裔が再起動を果たす。















「起きろ、さっさと起きな!遅刻するよ!」

大声がキバの耳元で響いた。
「ひぃ、ご免母ちゃん!今起きるよ!・・・・・・ってあれ?」

ぽかんとした顔で自分を起こした者を見つめるキバ、其所には自分を庇って死んだはずの母が立っていた。

「なぁに情けない面をしているんだい、黒丸、赤丸、こんな馬鹿息子だけど・・・・・・しっかり補助しておくれよ」

くぅ~ん

嬉しそうにキバの母にすり寄る二匹の犬。

「母ちゃん・・・・・・俺を庇って・・・・・・」

ぐりぐりとキバの頭を力任せに撫でる、犬塚ツメの霊、その顔には生前では考えられない穏やかさで満ちていた。

「・・・・・・あんたが気にする必要はないさ、私が勝手にやっちまったんだ・・・・・・忍者としては有り得ない行動さね、犠牲を厭んでいては、任務はこなせないってわかっていたけれど、私に取っちゃ、あんたが死ぬよりよっぽどましさね・・・・・・」

「・・・・・・母ちゃん」


バシンッ!


抱きしめられた状態で力強く叩かれるキバの背中。

「いってぇええええええええええええええ!!!!!」

のけぞろうとするが、ツメの手が其れを許さない。

「・・・・・・湿気た面するんじゃないよ!敵はまだ残っているんだろ?なら、木の葉の忍びとしてあんたがやることはなんだい!?」

キバの両頬を掴み挙げ、問いを投げかけるツメ。

「・・・・・・決まってら、俺達の力で、なぎ払う!」

メキメキとキバの頬がつねられる。

「痛ひって痛ひってかぁちゃん!」

「いや、いいんだけどね・・・・・・それじゃ足りないのさね、犬塚の信条はスピードと其れに上乗せした破壊力だよ、敵の力も見定めなきゃ駄目だよ・・・・・・あんたの使命は、ただ一つ、時間稼ぎだ。精々私がやる力を使って、マダラってやつの時間を奪ってやりなさい・・・・・・九尾以上だと考えた方がいいさね、九尾と対面するときの注意点、覚えているかい?」

ようやく放された頬をさすりながら、されどキバはツメから目を離さない。

「・・・・・・確か、真っ正面には絶対に立たない、だっけ?」


バシンッ


再度叩かれるキバの頭。

「よーしよし、わかっているなら其れで良い、・・・・・・さぁ後は、犬塚の力、世界に見せてきなさい!」

そのまま薄れ始めるツメの体。

頭を抱えているキバに入り込む、力、溢れんばかりの力。

「・・・・・・ったく、死んでも母ちゃんは、母ちゃんだな・・・・・・ナルトの馬鹿の為、か・・・・・・しょうがねえ、見せ場はあいつに譲ってやるとするか・・・・・・行くぞ、赤丸、黒丸!」



わお~~~~ん


キバの傍に控えている二頭の遠吠えが、最終局面を迎えた、木の葉の里に響きわたる。















「サスケ・・・・・・サスケ・・・・・・起きなさい」

イタチにより運ばれた、野戦病院さながらの簡易ベットの上に寝転がるサスケの傍に数多の忍びが、数多の死者が立っていた。

揺すられ、目覚めるサスケ、目にうつるは、かつてイタチに皆殺しにされた、うちは一族の影が。

「――――――父さん、母さん・・・・・・それに、皆」


戸惑うサスケ。

幻覚では、無い。

「・・・・・・お前に、全てを背負わす羽目に為ってしまったな・・・・・・すまない」

あの、厳格であった、常に厳しかった父が、自分に頭を下げている。

ふわっ

抱きしめられる柔らかい感触・・・・・・母だ。

「・・・・・・ご免ね・・・・・・私達のせいで・・・・・・辛い事を沢山・・・・・・」


サスケの顔に笑みが浮かぶ。


「・・・・・・父さん、母さん・・・・・・それに皆・・・・・・俺は大丈夫だよ・・・・・・今は、俺は一人じゃないから、俺は兄さんといつも一緒にいるんだから・・・・・・」


涙が溢れてくる目をさすり、サスケは答える、目に浮かぶは、うちは一族に伝わる、伝説の万華鏡写輪眼。

「この目で、俺は戦うよ・・・・・・父さん、母さん、うちは一族の因縁は、最後の末裔である俺が絶対に断ち切ってみせる・・・・・・だから、安心してよ」


空気が和らぎ、うちは一族の霊達の姿がぼやける。

「・・・・・・立派に、なったな。お前はもう一人前の忍びだ」

父が呟き、サスケの体に熱と共に入り込む。

「本当に御免なさい・・・・・・せめて貴方は元気で・・・・・・」

最後に一度抱擁を交わして、母もサスケの内部に入り込む、溢れ出す力。


「何も出来ない坊ちゃんが、言うようになったな・・・・・・」

「頑張れよ」

「頼んだぜ」

「うちはの力、見せつけてやれ」

「後は任せた」


名も無き、うちは一族達の霊もまた、サスケの体に入り込んでいく。


漲る漲るサスケの力。


サスケのチャクラは完全に回復した。

巡りに巡る、サスケの万華鏡写輪眼。


「・・・・・・わかった、行くよ、俺は皆の力と共に、ナルトの馬鹿の仲間として、俺は戦う」


決意に漲ったサスケの顔、其の目はうちは一族最後の末裔としての誇りに満ち、ただ一人、マダラの影を睨み付ける。
















「で、其の構築陣はどういった物なのですか?」

シカマルの親父、シカク、シカマルを蹴り起こしてから、息子と共に結界陣の構築に力を貸している・・・・・・彼は既に故人、マダラの拡大神羅天征により、命を落としていた。

チョウジの父親、チョウザ、チョウジを安全な場所に運んでから、彼も瓦礫の除去に奮迅している、彼もシカクと同様、他の忍びを守った為に、命を落とした。

イノの父親、イノイチ、彼の固有忍術、心理探索系の術を操るには優れたチャクラコントロールが必要だ、・・・・・・彼もまた、命を落とし、死者となっても、木の葉のためにその術を扱っている。



木の葉の頭脳が、全て集まり、ある一つの結界陣を構築する。

対九尾戦の為の実力半減の効果が込められた「落命」、里の全ての忍びの実力を倍増させる「聖戦」二つの結界を考案した三代目、

仙術にも通じ、結界陣にも明るい自来也、現火影、火影にしか出来ない陣もある、綱手、優れた探索系の陣も構築できるイノイチ、最高の頭脳と謳われたシカマル、補佐するシカク、

及び、春の国から、独自の知識体系を持ち、優れた絡繰り兵器を世に送り出してきた、重鎮三太夫。


更にあらゆる術に詳しいちよ婆でもいれば、更に完成は早かっただろうが、其所まで望めず、それでも、全力を持ってある一つの結界を、最後の希望を構築していく。

マダラの猛威はもう止められない、外では死者も生者も含めての決死戦が行われていた。




















ナルトを運ぶ四代目、咄嗟に眼にした、治癒術が得意だと思われる女忍の元へと愛息を運ぶ。




四代目は後ろから付いてくるヒナタに気付いた。
「君は?」

言葉につまるヒナタ。

「私は、日向ヒナタと申します、始めまして、ナルト君のお父さん、・・・・・・ただ・・・・・・ナルト君が心配で・・・・・・」

その言葉に笑顔を零す四代目。

「へぇ、ナルトも隅に置けないね・・・・・・頼むよヒナタちゃん、頼むよしずねさん」

しずねを守ったのはたまたま近くにいたチョウザだ、他の忍びの様子をうかがい、出来るなら治療をしていた。


しずねは突然現われた四代目の姿に、全てを察し、全力を持って頷いた。
頷く二人、早速治療に取りかかる。

「四代目は?」

笑顔のまま答える四代目。
「僕は、僕も時間稼ぎに参加するよ、初代様と二代目様の二人でも、今のマダラには絶対に勝てない」

眠った状態のナルトに視線を落とす。

「・・・・・・もう、この子しかあれを打倒しえない、今猿飛先生が綱手さん達と秘策を一生懸命構築しているはずだよ、だから、僕達が再び冥府に帰る前に・・・・・・どうかこの子を万全の態勢にして欲しいんだ」

父親としての笑顔を残して、四代目は、もう振り返らなかった。
そのまま黄色い閃光となりて、四代目は姿を消した。











既に肩で息を始めている二人。


戦いが始まって早数分、たった数分、忍びの戦いで小一時間続くことは有り得ないと、三代目の側近暗部が大蛇丸と三代目との戦いで漏らしていたように、忍びの戦いはどんなに強くてもどんなに実力が拮抗していても数分で終わる、竜がかつて述懐していたように、人間は死ぬときはあっさりと情け容赦なく何の感慨も抱かず、ただ死ぬだけだからだ・・・・・・それでもマダラは強い、強すぎる。
全盛期の力を持ち、兄弟による、最高のコンビネーションを駆使し、最強の里、木の葉の里のトップを意味する火影の称号を持つ、二人がかりでも、傷一つ付けることも出来ず、ただただ、マダラの攻撃を避けるか弾く事しかできない。


「どうした、その程度か火影、俺をかつて葬り去った時の勢いはどうした!」

苦笑が二人に浮かぶ。
「はははは、無茶を言う・・・・・・前と今では全く状況が違うではないか」

「兄者よ、今の奴に何を言っても無駄だ、戦いのみが言語と化した今となれば、尚更だ」

マダラは万華鏡写輪眼の力を使わない、否、使えない。

写輪眼の力は、今は尾獣の制御に総動員しているからだ。


尾獣の力はすさまじいの一言に尽きる。

一体だけで、例えば砂の守鶴のように依代に対し、強制的に不眠症をもたらす、ようにどんな力の代りの副作用があるか、わかったものではないのだ。

其れを完全に制御下に置いているマダラ、しかも八体も・・・・・・其れだけでマダラの実力の程が分かる。

そんな無茶がうまく行くわけがない、その力は滅びを前提として成り立っている。


もう、いつ体が崩壊してもおかしくない、其れを見抜けない火影達では無いのだが、マダラは鉄の意志で、鋼の精神力で、其の全てをねじ伏せている。




ゆえに彼らは術を行使する、木の葉の里のトップとして、最強の名を体現する者として。



「水遁・水龍弾の術!」

二代目の他も使える同様の術だが他とは格別する、練りに練られた水遁が、竜の形を模して、マダラに襲いかかる。

面倒くさそうに、ただ左手を持って、その常人ならば命を落としてもおかしくない水竜を容易くはじき飛ばしマダラ。

今の尾獣の鎧に包まれたマダラにはどんな術も、有る一定以上の威力を持たなければ完全に無効にされる。

そんなことは既に想定済みだ。

二代目の目的は今まで何度も通じなかった術を行使する事ではなく、ほんの刹那でもいい、マダラの眼から初代を誤魔化すこと。



「木遁秘術・樹界降誕」

詠唱にチャクラの練り込みにほんの少し掛かってしまう、初代火影にだけに許された、木遁秘術。


其所は初代火影の固有結界となりはてる。

かつてマダラを葬り去った初代火影の奥の手の一つ、なのだが。



前後左右上下、全てを埋め尽くす樹海。


枝は刃物と、葉は鋭き手裏剣となりて、マダラに間断なく襲いかかる。



「無駄だよ、かつての我が宿敵よ・・・・・・今の俺には並大抵の術は通じない、其れが例え火影と呼ばれたお前等の術であってもな」

力が足りない、威力が足りない、素早さが、ありとあらゆる面に於いて、全てが足りない。

そうマダラは言い切り、一つの術を口にする。

全てをはじき飛ばす、かつての仲間の術を。



「神羅天征!」



マダラが好んでペインの術を使うのは、其れが優秀で使い勝手がいい術だからだ。

どんな種別の力もどんな種類の技も、何も関係無しにただ、はじき飛ばすだけ。

そんな単純な術でも、いや、そんな単純な術だからこそ、絶対的なチャクラの差に裏付けられた威力を防げる存在は、今の木の葉の里には存在しない。




辺りを覆う樹海ごと、吹き飛ばされる初代火影と二代目火影。

吹き飛ばされながらも、二人は笑っていた。

怪訝に思うマダラだが、どんな手を打っていたとしても、もう関係ない。



「扉間、あれは置けたよな?」

「おう、兄者が持っていたあれに比べようも無いほど小さい物だが、間に合ったぞ」


初代火影による樹海創世によるときに、影から近づき、マダラの体にくっつけたそれは、神羅天征でも弾かれずに、マダラの背中にくっつけられていた。



呟きを聞きとめ、背中にくっついていた異物を握りしめるマダラ。

「・・・・・・これは?」


二人が最初から狙っていた其れは、違わずマダラの手に握りしめられた。

「掛かったな、マダラ、力に溺れた愚か者め!火影式耳順術 廓庵入鄽垂手!」

初代火影のチャクラに反応する、尾獣の人柱力の力を抑制する、其の術は、違わずマダラが握りしめた、その小さな小さな結晶石に辿り着く。


八つの尾獣を取り込んだマダラに対して、その術は今、一番効果を発揮する。


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!

吹き飛ばされた所から発動した初代火影の掌から生まれいずる十本の木の柱が、マダラに突き刺さり、そのチャクラを抑制する。






「やったな兄者!」

始めて表情を明るくする二代目火影、千手扉間。

「――――――ふぅ、うまく行けばいいのだが・・・・・・」

対して、術が完全に決ったというのに、全く暗いままの初代火影、千手柱間。





「――――――神羅天征」




静かな声が響く。


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


「馬鹿なあの術を無理矢理破っただと――――――っ!」

「マダラめ・・・・・・これほどの力を・・・・・・っ!」


先程二人を吹き飛ばした術とは比べものに為らない規模で発動された、マダラの術。

辺りに戦闘員は二人の火影以外存在していなかったため、他の被害は生まれなかったが、二人の火影は、防げず、冥府へと帰っていった。



術の中心から現われた影、多少の息切れを伴い、その仮面が完全に外れていた。

其所に現われた顔は、うちはイタチの親友でもあり、敬愛の対象でもあった男、瞬身のシスイ、うちはシスイと呼ばれた男の顔をしていた。




「流石は・・・・・・火影と言ったところか・・・・・・この俺を手間取らせるとは・・・・・・大した物だ」


マダラの体から、形無き尾獣の力が溢れ出し、里を覆い尽くす。


「ふん、幾ら足掻こうが、何か企んでいるようだが・・・・・・ナルトを殺せば、全ては終わる・・・・・・あちら、か」


まるで触覚のように、長大に延びた尾獣の力でナルトの正確な場所を突き止めたマダラ。







かつっ





何の力もこもっていない千本が、マダラの頬をかすめ、一筋の血を流させた。

振り返り、二つの人影を認めるマダラ。

「・・・・・・お前等も舞い戻っていたのか、直接逢うのは大蛇丸の音の里以来か?白に再不斬!!!!!!!」

答える女の子にしか見えない男、薄幸の美人、白。

隣に立つは、大蛇丸の人体実験により、真の鬼神と成りはてた、人間キメラ霧の再不斬。



「あの子は、やらせませんよ、彼は僕らにとっても希望の光ですから、ねぇ再不斬さん」

「よくもまぁ、ここまで強大に成りはてた物だ、寂しいなマダラよ、お前を理解できる奴なぞ、この世にはいないだろ・・・・・・俺が引導を渡してやるよ」

「再不斬さん、違いますよ・・・・・・僕らが、引導を渡すんです」

「・・・・・・そうだな、そうとも・・・・・・行くぜ、白、覚悟しろ、力に捕らわれた化け物」

笑顔と共に白の血継限界、魔境氷晶が発動される。

再不斬の体に変異が起こり、金色の角、漆黒の羽、緑色の体皮が顕現する。





マダラの体に力が漲る。




「いいだろう、幾ら蘇ってこようが何人でも、何度でもお前等を冥府に送り返してやる、掛かってこい死に損ない共が!!」





戦いは終わらない、次々と変異し続ける戦場。


足止めをする者、結界を構築しようとしている者、親しき人に力を分け与えられた者、皆の希望を一身に背負わんとする者――――――ナルト。



誰もが、誰しも、それぞれが出来る最大限の行為を持って、単独にして強大にして最強の敵に立ち向かっていく。



[4366] 世界大戦、その拾六、木の葉大決戦、結の中。
Name: ヘヴィープレイヤー◆0adc3949 ID:6204c204
Date: 2009/02/22 03:16


グォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!


ゴォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!



グシャ


ドォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ



激しき戦いの音が、気を失っていた木の葉の中忍の耳に届く。

ぺろっ

生暖かい感触が頬を撫でる。

「……貴方は……白炎」

自らのペットの名前、ユニコーンの名前を呟く琴音。


完全に目が覚めた琴音の前に広がる戦場。

自らを庇うものたちは、どいつもこいつも見覚えがあるもの達ばかり。

「白眉、白王、……かい一号に二号、三号に四号、五号に六号……みんな、みんな死んだはずなのに……」

かつて自らが使役していた……そして永遠に失ってしまったペット達の名前を懐かしさと共に呟く琴音。


ぺろっ


「……くすぐったいわよ……何時までたっても甘えん坊さんなんだから……」

自らの頬を舐めるユニコーンの首筋を抱きしめる琴音。
気づく一つの事実。

「……そう……貴方も……命を落としたのね……貴方達……本当に有難う……ならば行きましょう――私達の最後の戦場へ」


涙は流さない、琴音は、そんな事では彼らの忠義に答えられないと判断した。


「Aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaall Kiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiillllllllllllllllllllllll」

琴音の声が響き、僕が忠実に従う。

ただ、行軍する、前へ前へ、行軍する、彼女の忠実な僕達が奏でる戦争行進曲に従い、行軍する。









バルロンが、イタチに切り伏せられ、ロンの配下である竜の軍団を遮る障害は無くなった。

前線を支えていた影竜達の数が零になる前に、後援部隊は、間に合ったのだ。

竜達の指揮を執るのは、やはり影竜。




陣を組んで対抗してくる蛇と蜘蛛の混成軍団をねじ伏せる策を練るのも、影竜達。



その大混戦の荒野を無人の野の如く、横切る、一つの部隊。



一路、テラサンキープの元へ。

前へ前へ、行軍せよ、……行軍せよ。

彼らに掛かっていく混成部隊は、悉くが、総攻撃の前に沈んでいく。

白き馬、ユニコーンに跨った女の指揮の下、一軍は進んでいく。

一時的に乱れた混成部隊。


見逃す影竜達でもない。


均衡は崩れたのだ。


雪崩れ込むように戦力を集中する竜の軍団。


されど、末期まで諦めない混成部隊達、最後の最後まで彼らの聖域を守ろうとする誇りにかけての抵抗は続けられた。




――竜達が、裏の裏の大決戦に勝利するために払った犠牲は、九割を超えた。

戦力を、到達させんとする、蛇と蜘蛛の混成部隊の目的は、果たされた。























「むぅ……」

リースの寝言が耳に届く、包帯を巻いちまえばすぐに治るんだろうが……一つのスキルを使用している以上、それ以外のスキルを使用することは、スキルのキャンセルになっちまう。

だから、今は出来ない。

アバタールになったとしても、俺が出来ることは、基本的なことはなんら変わっていない。

暁フルメンバーと九尾強化版の戦いは、終わる気配を見せない。


だが、暁たちには、どこか余裕が見て取れる。

こんなに強いのか、そりゃ強いだろうな、だってこいつらは、世界の根幹を為すと言われている尾獣を狩るための組織だからな。


其の姿はいくら強化されていると言っても、相性悪いよ、シャドーロード。





「決め手は無いけど、心配は無いみたいだね」

ゼツがしゃべる、どうでもいいが、こいつの正体って一体なんだったんだろうな、俺の記憶にはまだ出ていなかったからよくわからんが。

「ダガ、アノバケモノノオサガ、カンタンニ、クタバルワケネエヨナ。ゼッタイニナンカタクランデイルゼ」

「おい、どういうことだ」

ゼツは、俺に体を向ける。

「簡単な話だよ、世界を喰らおうって化け物が、あんな一体の姿をかたどるだけで終わるわけない」

「モットインシツデ、サイアクナホウホウヲ、カンガエテイルハズダゼ」

……どういう事だ。

どう足掻いても、これ以上、あいつらに取る手はない、あれ以上の力の持ち主は、いないはずだろ?

「……悩んでも仕方ないって、考えて出るような話じゃないし」

「ソレニ、ブッコロシチマエバ、ハナシハオワリダ、ペインタチハマケネエヨ」

力の持ち主……あいつが今、変化しているのは、九尾。
それは確かに最強だ。

それ以上の力の持ち主……?







  




















木の葉の、世界の頭脳を集めた、結界の構築は、難航を極めた。

当然だ、時間が圧倒的に足りない。

かつて、三代目火影が九尾に対して考案構築した時は、里の復興等も含めて、二年の歳月を要した。

そんな猶予はまったく存在しない。

一刻も早く、考案、構築しなければ、いくら決戦存在の回復が間に合ったとしても、話にならない、今度こそ確実にマダラは止めをさす、木の葉ごとという手段を持って。

策はある。

三代目が持ってきた策を応用すれば、其れは成せる。

「落命」に「聖戦」を混ぜ合わせた後に、更なる策を混ぜた結果がどういった効果をもたらすのかは、すでにわかってはいるが……今度は元の基点となる結界陣の作成が間に合わない。


「聖戦」起動時に使った陣を利用するところまでは、既に話が詰んでいた、が、ここで一つの誤算が生じていた。

単純に敵が強すぎる。

予想していた効果だけでは、打倒し得ない。

更なる効果を望まんと、先ほどから考案していたが、既に完成に近い陣をいじることは至難の業だ。

綱手達は頭を掻きながら、ひたすら考えていた。



















激しい攻撃の光が、木の葉の里を走り抜ける。

あれに当たれば、唯ではすまない、おそらく普通の人間では蒸発してしまうのだろう、そう思えるほどの攻撃が、惜しみなくたった一人の人間に向かい、放たれて続けていた。



見守るものは居らず、孤独の中で戦う戦場の中心点。


ヒナタとしずねは其れを横目で見ながら、ただナルトの治癒を急ぐ。

ナルトの親にして、かつて里を救った英雄、四代目からの直々の依頼だ、ヒナタはもとより、しずねもかつてないほどの的確さで、ナルトの治療にあたる。


ピカッ


また一筋の多大な破壊力を伴っている光線が、里の上空を過ぎていった。

「……ヒナタさん、余所見はしている暇はありません、どなたかは知りませんが、四代目火影様と共にマダラの足止めをしてくれている今が、最後のチャンスです、ナルト君を万全の調子にしておかなければ、綱手様からお叱りを受けてしまいますよ」

動ける救命班が、集まりつつあった、それどころではすまないことは皆わかっていた。


だが、軽い口調のしずねの話に笑みを零し、それぞれが治癒を再開する。

沈んでいては、何もいい結果を生み出さない、どんな絶望的な状況でも、明るくされど全力で行かなければ、いけない。

ヒナタの心配そうな顔にも笑みが軽く戻る。

「……ナルト君、みんな、貴方の為に頑張っているよ、だから早く目を覚まして……いつもの元気で、私達を安心させてよ!」




ナルトは、まだ目覚めない。







ピカッ


全てを灰燼に帰さんと破壊力が込められた光が、再度木の葉の里の空に一筋の弧を描く。

再不斬による、神のブレスだ。






復活した戦力は、其れを目印に、急行していった。










「ふん……単独で唯一人、全力の九尾を打倒しただけのことはある、が、限界だろ?」

変貌を遂げた再不斬の体。

溢れんばかりの主の力を総動員し、白の補佐も相まって、高次元の戦いを形成していた。



――しかし、



既に漆黒の翼はもぎ取られ、自慢の怪力を誇る片腕すらも無くし、再不斬はマダラの正面に立つ資格を失っていた。

首切り包丁を杖代わりにして、何とか立っている再不斬。



パリーン



「お前も、な、最初の一撃で……俺の力が散漫な時に致死の一撃を放っていれば、話は別だったはずだぞ、白」

魔境氷晶が現れるやいなや、圧倒的なチャクラに任せての、強引な破壊。

マダラの手に掴まれるは、既に致死の一撃を喰らってしまった白。

「……ふふふふふふ、そんなことをして……も、今の貴方なら瞬く間に復元して……しまうでしょう……それでは意味がありません」

再不斬の顔にも白と同様笑みが浮かぶ。

「そうとも……俺達がお前を打倒出来なくても、いい……俺達の狙いは初めから」



サクッ


……ドン、グシャ



「ふん……今のナルトに一体何を期待しているのだ、すでに尾獣達の力は俺が取り組んだ……力なき人間の力などいくら集めようが、もはや俺を打倒することなど、不可能。理を、法則を捻じ曲げる事は……神にすら出来る物ではない」

マダラの打撃は、的確に二つの霊に止めを刺した、姿を崩し、冥府に戻る、二つの霊、其れは中睦まじく、寄り添うように消えていった。


「……うちの息子を、あんまり嘗めないほうがいいよ」

「お前が敵か、我が敵に相応しい、覚悟しろ!」


駆けつけた、二つの戦力、四代目火影、波風ミナト、燃える蒼き野獣、マイト・ガイ。

振り返るマダラ、もはや、彼の目には二人は敵として映っていない。


「お前らも、時間稼ぎか? 初代二代目、白に再不斬、名立たる英雄達が無為に散っていったが……お前らも其の口か?」


更に現れる、四つの影。


二匹の犬と共に現れる、木の葉の名家の一人。
「くそが……確かにこいつはとんでもねえな……赤丸黒丸、お前らが頼りだ……頼むぜ」


三大瞳術の一つを其の身に宿し、一族の誇りと共に戦う、日向家の一人。
「日向家は木の葉最強……この戦いは其の証明に過ぎない」


白きチャクラを身に纏い、幾たびも木の葉の危機を退けてきていた男。
「さぁてしんどそうだけど……一丁頑張りますかね」


黒きチャクラを身に纏う、うちはの末裔。
「何時までも死者相手に戦っていて、飽きないか? マダラ、俺達も相手をしてやるよ」





遥か上空では、古代竜のロンが見守っていた、今の彼には判断できていた、自分が立ち向かっても毛ほどの傷すらも与えられない、と。
同時に人の持つ感情について、図りかねていた、何故、わかりきっている絶対に勝てない相手に、あそこまで立ち向かえるのかが、ロンには、わからない。理解できない。
人ならぬモンスターには、理解できない。

「……姉上、貴方なら、人に焦がれた貴方なら……法則を外れた貴方なら、理解できると言うのですか……」

ロンの呟きは風に紛れ消えていった。





計十二個の力が籠っている瞳を見回し、それでもなお、嘲笑うマダラ。
「くっくっくっくっくっ、そうかそうか……お前らはそんなにナルトが好きか、そうとしか取れんな……たかが人の一側面でしかない感情にお前ら程の者達が、揃いも揃って振り回されているのは滑稽を通り越して哀れだな。全てを吹き飛ばせば、終わる話だったな……時間を稼いで何とかなると思ったか? 時間と共に回復するのは、お前らだけでは、無い……真・神羅天征」


木の葉を徹底的に、最後の希望を摘もうと、再度放たれる、尾獣の力を利用した圧倒的なマダラの攻撃。

マダラには容赦など無い、甘さなど無い、あるのは……ただ、破壊だけを望む心だけ、悲しき悲しき心だけ。











ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!



再度木の葉の里に響き渡る、圧倒的な力。


だが、それは、局所的な破壊に止まっていた。



マダラを中心に、「根」の者達によりいつの間にか構築されていた結界陣が、マダラの破壊を完全に遮断。



旗頭を担っていたのは、……「根」の者達の頭領である、ダンゾウ。


「あまり、木の葉をなめるな……いくらお主が圧倒的な力を誇ろうが、一度見た技は、二度は通じぬよ、再度の九尾襲来を完全に防いだように、な……おぬしらはこのまま結界を維持しろ、頼むぞ、カカシ、キバ、サスケ、ネジ……ガイ、四代目火影、わし等に出来る事はこれが限度だ」

部下に指示を出し、自らも最前線に出張ってきたダンゾウ、必死の決意だ。


破壊の力のぎりぎり外で、マダラの攻撃を避けえた最後の精鋭達。


「……あくまで、この下らない茶番が望みか、いいだろう。一つ一つ希望を捥いでいくのも、悪くは無い」


マダラの殺意が、むき出しになる。

「さぁて、敵さんはやる気になったようだね……先生、どうしますか?」

迸るチャクラを、集約しだすカカシ。
にこりと静かな敵意を敵に向ける四代目。

「決まっている! 敵ならば打ち倒すのみ、そうだろ我がライバル!」

「いや、お前には聞いていないよガイ」

顔には笑いの表情を張り付かせながら、二人の頭を軽くたたく四代目。

「さぁさぁふざけてちゃ話にならないよ、二人とも、……そうだね、其処の犬塚家の子と僕が撹乱するから、君達二人は更に彼の注意を逸らして、で、日向家の君、君は再度大規模な術を行使しそうになったら僕に教えて、君の白眼が一番わかるはず、そして……うちは一族の君、君は、万華鏡を使いこなしているのかい?」

四代目の言葉に静かにうなづくサスケ。

「ああ、今なら確実に使える」

笑みを零す四代目。

「だったら、君はナルトの傍に行ってくれないかな、此処は僕達だけで充分だから……君のスサノオが、最後の壁だよ」

「……わかった、火影でもあったあんたがいうなら……俺の判断よりも正しいんだろう」

もう、負けられない戦いだとは、わかっていた。


鍵を握るのが、ナルトだということも、十二分にわかりきっていた、だからサスケは素直に従う。

此処での戦いは、絶対に負けるということも、わかっていたから。



[4366] 世界大戦、その拾七、木の葉大決戦、結の後、NARUTO
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/02/25 21:51
――――――星の間。


ゴォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ

黒九尾の黒い吐息が暁達に向けて放たれる。

「今更、そんな攻撃が通じるとでも!? 神羅天征!」


ペインが盾になり、暁に向かった全ての攻撃を遮断する。

溢れる余波は、小南の紙が器用に衝撃を吸収。

「ペインは二度と傷つけさせない」



「ったくよ、化け物ってのは嫌いだぜ、俺の力が全力で発揮されねえからなっと」

手に持つ特殊な形状の死神の鎌を振い、尾の一つを切り取った飛段。


残りは八本。

「愚痴るな、仕事は仕事だ、何の感慨も抱かず、ただこなせばいい、やるぞ小僧!」
「はいっ!」

角都の遠距離忍術を目くらましに、神速で近づいた直人の剣神の一撃が、尾の一つを切り裂いた。


残りは七本。

「芸術は、爆発だよな? 手前もそう思うだろ、なぁ化け物」

デイダラの爆薬粘土に込められたチャクラが、尾の一つに当たり、粉砕する。


残りは六本。

「違うぜ、デイダラ、芸術は永遠を如何に残せるか、だ」

サソリが組み上げたクグツに操られた砂鉄が、尾の一つを完全に包み込み、破裂させる。


残りは五本。

「全く芸術芸術五月蠅いですね、ねぇイタチさん」

鬼鮫の手にした鮫肌が、尾の一つを完全に喰らい尽くし、消滅させる。


残りは四本。

「・・・・・・そんなことはどうでもいい、敵は殺す、其れだけだ」

イタチの神速のハルバードが、尾の一つを瞬きも許さず、切り裂いた。


残りは三本。



「くっくっくっくっ、味方だと本当に頼りになるわね、ペイン・・・・・・草薙の剣よ、其の真価、今こそ発揮しなさい!」

大蛇丸の手から放たれる、神速の斬撃、違わず切り離される尾の一つ。


残りは二本。

「お前等、手を抜いたら僕が殺すぞ」

聞く者に寒気を催す言葉と共に振り上げられた骨の刀が、的確に尾の一つを斬り砕く。


残りは一本。

「全く、君麻呂、そんな言い方は無いと思うよ、彼らだって精一杯頑張ってるんだから」

にこやかな残酷な笑みと共に、振われる鋭利なチャクラのメス、尾の一つが奇麗に切り剥がされる。


残るは、本体。


続く、大蛇丸配下の四人の精鋭。

「踊れゲス野郎共!」
「はっはっはっはっ楽勝楽勝!」
「うぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!」
「ターゲットロックオン、的中率、百パーセントだぜ!」

笛の音に操られた魔人が、四本の手による攻撃が、圧倒的質量に支えられた攻撃が、蜘蛛の糸を練り上げて創られた鋭利な弓矢が、それぞれ黒九尾に向けて放たれ、確実にその身を削いでいく。






「勝ったね」
「アア、バンゼンノ、オレタチアカツキニ、カテルヤツナンカ、ソウソウイネエッテノ」

ゼツの呟きが耳から耳をすり抜けていった。

どうしてだ、圧倒的じゃないか、暁は。


なのに、何で嫌な気配が、時々ぽかをやらかすけれど、俺を最初から最後まで支えてくれていた、危機管理能力が警告を鳴らすのをやめないんだ!

















「根」の者の結界がマダラを含む辺り一帯を包み込んでいる、其れが成されている限り、大規模忍術は他に効力を及ぼさない。

先に周りの術者を殺せば、其れで話は一変するが、マダラは其れを敢えてしない、する必要を認めない、先に、戦える、希望の残り香を消し去ってからでも、十分間に合うのだから。

圧倒的力量からくる圧力を真っ正面から受け止める、五人。


「犬塚の・・・・・・」

「キバっていいます、四代目」

「そう、じゃキバ、僕は飛雷神の術を使うから、君は、ひたすらあれの周りを飛び回ってくれるだけで良い、絶対に正面に立っちゃ駄目だよ」

小声で話し合う二人。
キバはわからない程度に軽く頷いた。


「ガイ、サポート頼んだよ、飛雷神の術!」
「任せろ、我がライバル!」

言葉を重ねなくとも、互いの手の内を知り尽くしている二人、其れは死者と生者と為った今でも、変わらず、早速動きを同期させた。


黄色と白の閃光が、姿を完全に見失わせる。





少しだけ離れた所で、戦闘を白眼で窺っているネジ。
その全てを見通す目はマダラの一挙一動作全てを絶対に見逃さない。





四代目達が時間稼ぎを始めてから、早十分、・・・・・・たった十分。

綱手や、世界の頭脳が集まり、協議した結果、新たな結界の目星は付いた。
シカマルの知恵は此処でも大いに役に立った、天才という肩書きは伊達ではない。


「よぉし、此処をこう組み込めば、何とか出来そうだ! ・・・・・・戦場はどうなっている、其れにナルトは?」


カツユを通じ繋がる会話。

「・・・・・・ナルト君の外傷は既に完治、後は目覚めるだけです、ですが・・・・・・意識が戻る気配がありません!」

しずねの悲痛な叫びが綱手に届く。


「・・・・・・こっちは後三十・・・・・・いや、十分持てば良い方だ、頼むぞ、なるべく早くしてくれ・・・・・・」

状況を一歩外で見通しているネジの声。

苦戦は必死、ネジの声にも明るさは見えない、重く沈んでいた。








「何で・・・・・・どうして、もう目覚めてもおかしく無いのに・・・・・・っ!?」
しずねの声が虚しく響く。

顔色は良くなったナルト、但し、目覚める気配は一向に訪れない。








同じ相手に二度負けた。

しかも二回目は全力を尽くし油断もしていなかったのに、それでも――――――



一人の金髪の少年が、今、闇の中に意識が閉じこめられていた。

強大なる敵に立ち向かい――――――そして敗れた。



絶望が金髪の少年の身を包み込み、無力感が辺りを支配していた。


















――――――俺は、化け物を身に宿している。

だから、里のみんなは俺を白い目で見るし、俺のことを・・・・・・いじめるんだ。



こんな里、壊れちまえ、そう考えたこともあった。

何で、俺には父ちゃんが、いないんだろう・・・・・・何で、俺には母ちゃんが、いないんだろう。

何で・・・・・・俺は、いつもいつもひとりぼっちなんだろう・・・・・・。



皆はいいな、母ちゃんがいて、父ちゃんがいて。



何で、俺は・・・・・・こんなに寂しいんだろう。

俺は笑う、おかしくなくても笑う。

笑っていれば、俺を虐める奴なんて居なくなる。

白い目で見ていた奴も、違った目で俺を見出す。



そうだ、いたずらをしてやろう。

火影の顔岩に落書きをしてやろう、俺は他の奴には出来ないことが出来るんだ!

どうだ、里の奴ら、俺を見下していた奴ら、俺は凄いだろ!




「こらっ! ナルト! 火影様の顔岩に落書きするとは何事だ!」

俺を本気で、俺だけを見て怒ってくれる大人、イルカ先生。




忍者になりたい、此処が木の葉の忍者の隠里で、火影が里のトップだというのならば、俺は、俺のやり方で里の皆を見返してやる、昔俺を見下していた奴らを見返してやる。



そんな俺を叱ってくれた、ちゃんと一人の人間として、俺の後ろにいる化け物を見ないで、俺だけの事を考えてくれて叱ってくれた、珍しい大人、イルカ先生。



二回も卒業試験に合格でき無くって、ドベだの、落ち零れだの言われていた俺を慰めてくれたのは・・・・・・イルカ先生だけだった。



でも、俺のことをただの人間として見てくれた奴らもいた。

シカマル、口では面倒くさいって言いながら、俺を始めて遊びに誘ってくれた、初めての友達。

チョウジ、デブっていうと怒り出す、けどお菓子をたまにわけてくれた、友達。

キバだって、馬鹿だの落ち零れだの言ってきたけど、影で言うんじゃ無くって、俺にむかってどうどうと正面で言っていた。




「ナルト、焦る必要はない、特に今の世界は昔と違い、危険で満ちて居るんだ・・・・・・野良竜が出るような時代になるとは、先生予測していなかったぞ」

叱られた後、それでも一楽のラーメンを奢りに連れ出してくれたイルカ先生。

「生半可な実力じゃ下忍としてもやっていけない、わかるな? 命は一つしか無いんだ・・・・・・こんな危険な世の中だからこそ、卒業試験は厳しく審査しているんだよ・・・・・・お前が何度不合格に為ろうが、其れは別に恥と考えるな、他の者に何を言われても、気にすることはないんだぞ」

俺の目を真っ直ぐに見て、説教した後、照れくさいのか、すぐに顔を逸らす先生。

・・・・・・わかっているってばよ。


何時からだろう、里の皆の目が前よりも厳しく無くなったのは、何時からだろう里の皆のいじめがピタリと止んだのは。


里の周辺に化け物が現われだしてからかな。


修行中危ないことは、何回かあった。

手裏剣術の修行中、突然現われた、歪な形をした竜、後で知ったんだけどワイバーンって名前の化け物。

恐怖で体が固まっちゃって、化け物の一撃を受けて、俺は意識を失ってしまった。

目が覚めたら、挽肉に為った化け物と、俺を抱えて安否を気遣っている、イルカ先生。



「・・・・・・なんだ、助けてくれたんだってば・・・・・・有り難う・・・・・・」


そのまま意識を失う俺に呟かれた声。

「人柱力の力・・・・・・これほどとは・・・・・・未覚醒でも、これほどの力を持つのか」

イルカ先生の声じゃない、後で分かったけど、俺にいつもついていた暗部の一人の声。


かすかに意識に残った人柱力って単語に疑問を覚え、調べた。
だけど、詳しいことは分からなかった、後で教えてくれたんだけど、三代目の爺ちゃんが、懸命に隠していたんだってわかった。

爺ちゃんは、あの時まで、俺に忍者に成って欲しくなかったらしい・・・・・・里の英雄であった、父ちゃんの忘れ形見である俺を、大事にしたかったんだって、さ。


三度目の卒業試験。




寝坊しちゃって遅刻すると急いでいたときに、ぶつかった少年・・・・・・竜。


変な奴。

完璧な治療忍術を扱うと思ったら、完璧すぎる隠れ身の術。

其れだけじゃなく、俺がアカデミーで習うような事を越えた事を簡単にできる、変な奴。


でも、俺の動きは全く目で追えていないし、チャクラも全く感じない。
忍者じゃないのに、忍者以上の力を所々発揮する。



世界ががらりと姿を変えた。



竜が俺に掛けた変な術の所為で、俺は俺に宿らされた化け物の正体が始めて分かった。



――――――そうか、だから皆俺のことを・・・・・・避けていたんだ。


里を壊滅寸前に追い込んだ最強の妖獣、九尾の妖狐。
其れが俺に封じられた化け物の名前だ。


それでも、俺を新たに仲間と認めてくれたヤツラガいる。
うちはサスケ、サクラちゃん、げじまゆ、ネジ、テンテンの姉ちゃん、カカシ先生は変だけど、確かに強いし、ガイのおっちゃんは暑苦しいけど、いい奴だった


九尾は・・・・・・。


「ふんっ、お主が我の宿主か・・・・・・簡単に命を落とすようなら、我が末代まで祟ってくれようぞ・・・・・・我の力を使うことを誇りと思え、我を封じた、そなたの父親の名誉にもかけて、な」


そう言って、俺に協力してくれた、何でも、どうしても許せない相手がいる、だってば。

――――――マダラ。




竜の特訓という名前の拷問は辛かった。

ヒナタは何で顔がいつも赤かったんだろう。

イルカ先生が奢ってくれるラーメンは旨かったなぁ。

ガイのおっちゃんの特訓は、熱かった。

三代目の爺ちゃんの教え方は、分かり易かった、性質変化なんて、数々の特訓の後ではこつ次第なんだな。

エビスの教え方は、何か納得出来る内容だった。





暁の一人、クグツのサソリ。

強かった、初めて仲間と共に挑んだ強敵。

イカレテイタ、とにかく、強かった。

どうして、何も関係ない村人まで、見境無く殺せたのか、疑問だった。

――――――答えは返ってこなかった、違う、答えの意味が分からなかった。

強くて、だけど、孤独で・・・・・・誰も彼も拒絶しかしない、そんな強さだった。

まるで自分一人の力しか信じていないような・・・・・・俺も、もしかしたら、あんな風に為っていたのかも知れないって考えると、胸が痛んだ。


存在の全てを賭けて、俺を鍛え上げてくれた三代目の爺ちゃん、敵の手に堕ちてもなお、その気高き魂は・・・・・・全て、俺の為に。

――――――俺なんかの為に。

爺ちゃんは、最後の最後まで俺のことを・・・・・・気に掛けてくれていた。



初めて逢えた、父ちゃん。

涙が出た。

勝手に涙が出た。

止めようともしなかったけど、涙が、後から勝手にどんどん流れ落ちた。

父ちゃんが仕込んだ力で、俺が里のみんなが協力してくれた技術で、俺は父ちゃんを越えた。

越えたんだけど・・・・・・父ちゃんは、結局救えなかった。





雨の里、エロ仙人、再不斬のおっちゃん、美人な白、そして、・・・・・・九尾。

俺が俺である限り、九尾は外せない。



里のみんなが優しくなったのも、結局俺が九尾を宿し、とてつもない力を持っているから、里を守ってくれると信じているから。




もう、どうでもいいや。

俺は負けたんだってばよ。







声がする・・・・・・誰だ・・・・・・おれを呼ぶのは、誰なんだ・・・・・・静かにしてくれってばよ。

「・・・・・・ナルト!」

「――――――ナルト」

「ナルト」

「ナルト・・・・・・」



黙ってくれよ、俺は負けたんだ、完全に負けたんだ、手も足も出なかった。

二回目は、全力の馬鹿狐と他のみんなの化け物達の力も貸して貰っていたのに――――――負けた。

「ナルト、あんたしか居ないのよ、目を覚ましてよ!」

「おい、ナルト、手前は負けっ放しで納得できるのか・・・・・・手前は諦めなかっただろうが、俺が諦めそうになったときも、絶対に諦めなかっただろうが!!」


五月蠅いってばよ・・・・・・負けたんだ、俺は・・・・・・マダラに、負けちまったんだってばよ・・・・・・。


「・・・・・・ナルト君、いつも、いつも私が見ていたのは、気付いていましたか?」


・・・・・・ヒナタの声、俺が一度マダラに負けて落ち込んでいたときに、何故か抱きしめて、慰めてくれたヒナタ・・・・・・俺は知らねえけど、あの時はまるで・・・・・・母ちゃんみたいだった。


「・・・・・・私はいつも臆病で引っ込み思案で、自分のことを何一つ表現できませんでした」


――――――ヒナタはいつも誰かの影に隠れていた。

俺の事を馬鹿にするでもなく、ただ、影から何かを見ていた。

俺のことを羨ましいとも言っていた。

何処が、俺の何処が?


「ナルト君は凄いです、いつも、前を・・・・・・どんな時でも前を見ています、凄い勢いで強くなって・・・・・・ネジ兄さんも褒めていましたよ、あれだけの術を使える者はそうそういないって、尤も影で零していただけで、誰にも言っていないようですけどね」


でも、負けた。
術が使えてもチャクラコントロールが巧くなっても・・・・・・馬鹿狐の力を完全に制御できるようになっても・・・・・・俺は、マダラのやつに負けちまった。



「・・・・・・宿主よ・・・・・・ナルトよ・・・・・・」


馬鹿狐・・・・・・ご免な、結局お前の復讐に最後まで付き合えなかった。
俺が頭に血がのぼっちまった所為で、お前を奪われて、今は、・・・・・・力が足り無くって・・・・・・。


「我の事はもはや、どうでもよい・・・・・・お前にお別れの挨拶をしに、な」


何処に行くんだってばよ。


「我は、消える、気付いていたか? お主が、我の分身体を取り込む毎に、我と主が同化していったことを、されど、其れは我の憎いあやつも同じ事、力を使えば使うほど、いよいよ後戻りは出来なくなり・・・・・・結局破滅を迎える、お主にはそんな最後を迎えて欲しくはないが・・・・・・火影共が、我を封じた者の後継者達が、なにやら策を練っているようだぞ、後は、お主次第だ」


お前まで、消えちゃうのか・・・・・・俺が、負けたばっかりに。


「違う!」


だって・・・・・・だって・・・・・・俺には、何にも出来ない・・・・・・俺は・・・・・・結局火影になんか・・・・・・。


「違う、違うぞ宿主、お主の力は我が保証する・・・・・・お主は・・・・・・我とは違いあやつとは違い、仲間がいる」


「ナルト」
「――――――ナルト」
「・・・・・・ナルト」


「お主を呼ぶ声がするではないか」




「ナルト」

砂の我愛羅。

「坊や」

ユギトの姉ちゃん。

「坊主」

老紫の爺ちゃん。

「餓鬼」

天元のおっちゃん。

「ヘイ、ボーイ!」

キラービーのおっちゃん。

「ナルト、起きて!」

・・・・・・さくらちゃん。

「・・・・・・いい加減起きろ、このドベ野郎!」

サスケ。

「起きて、起きてください、貴方だけじゃありません、私達も一緒に戦います、貴方は一人じゃありません! 起きてください、ナルト君!」

――――――ヒナタ。




「ナルト・・・・・・」

・・・・・・母ちゃん?

「大きく、強くなったんだね、あの人と私の子だもの・・・・・・当たり前だけど、ね・・・・・・私達は貴方に何も残せなかったけど・・・・・・貴方は、強く、育ってくれたんだね・・・・・・でも、休みたければ、私が此処でずっと一緒にいるよ、貴方は頑張った、ずっと見ていた私にはわかる・・・・・・もう、休んでもいいんだよ?」

柔らかい、暖かい、これが、・・・・・・これが・・・・・・母ちゃん。

涙が出る、俺がずっとずっと欲しかったもの、・・・・・・親。






其れが、ある、此処は、満たされている、――――――けど。

「ナルト?」

柔らかさを放す。

けど、俺は・・・・・・。


「「「「「「「「ナルト!!!」」」」」」」」


・・・・・・里のみんなの声が、する、里だけじゃない、俺が関わったみんなの・・・・・・声が。


「へへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ、母ちゃんってあったかいんだな・・・・・・ずっとずっと知らなかったってばよ・・・・・・でも、でも、俺は行かなきゃいけないってばよ。みんな、待っているから、みんな、俺のことを待ちわびているから」

母ちゃんが、笑みを深める。

再度俺を抱きしめる母ちゃん。

「行っておいで、私はいつでも待っているよ・・・・・・行ってらっしゃい、ナルト」

俺は、頷く。
「行ってきます、母ちゃん・・・・・・少しだけど、嬉しかったってばよ・・・・・・俺は、もう負けない・・・・・・負けないから・・・・・・最後にもう一度強く抱きしめて貰ってもいいってば?」

ぎゅっ


柔らかい、柔らかいんだってば・・・・・・。


「・・・・・・行くか、宿主」

「・・・・・・応、行こうぜ馬鹿狐、違う・・・・・・もう、俺になるんだよな? よろしくな」

母ちゃんは心配そうに俺を見ている。

「へへへへへへへへ、一丁行ってくるってばよ――――――さよなら、母ちゃん」

母ちゃんは、満面の笑みを、浮かべた。


・・・・・・火影の妻、だけど・・・・・・今は俺の母ちゃん・・・・・・俺の決意を鈍らせない為に・・・・・・笑ってくれるんだ。









「行って・・・・・・らっしゃい、私のナルト」

もう、心残りは無い、後はマダラをぶちのめすだけだ!







ドンッ


崩れ落ちる四つの影。



「まさに、お前等こそが・・・・・・英雄、ふん、もっと早く・・・・・・化け物共が現われていれば・・・・・・な・・・・・・世界はもう少し変わっていたかも知れん・・・・・・な」



がしっ


踵を返したマダラの足を掴み上げる、一つの手。

「・・・・・・死した英雄が尚も足掻くか、諦めろ、・・・・・・散り際を汚してその名を自ら貶めるのか? 黄色い閃光」

だが、放されず、傷だらけの手が尚も力強く掴みあげる。

「・・・・・・どんなに、みっともなくっても、この手は絶対に放さない・・・・・・お前をナルトの所には、行かせない!」

「・・・・・・」

無言で、力任せに掴んでいる手を振り払うマダラ。


がしっ


更に掴みあげる別の手。

「熱き魂は、決して負けない!」

「・・・・・・そんな体で何が出来る」

ごんっ

難なく蹴りあげられる、マイト・ガイ。


がしっ


小さき手と大きな手が一つづつ、両の足を掴む。


「ネジ!」
「やっちゃってよ!」

二人の声に答える、白眼の使い手。

「柔拳法・真・八卦五百十二掌」

日向家に伝わる奥義が、足を掴まれ動けないマダラに炸裂するが。


「今、何かしたか?・・・・・・神羅天征」

尾獣の鎧にはやはり通じず、再度飛びかかろうとしていた者達全てを逆に吹き飛ばすマダラ。


完全に沈黙した最後の精鋭達。


「お前等も、よくもまぁ頑張ったと言えよう、が、もう、無駄だよ・・・・・・真・神羅天征!」


辺りの「根」の者達を見渡し、戦力が落ちたというのにも関わらず、まだ張られている結界をマダラは見つめ、再度の大規模破壊忍術。

「根」の者達が作り上げた張り上げた結界は、有効に働き、大規模破壊をぎりぎりの瀬戸際で防ぎ挙げるが――――――限界だ。


余りのチャクラの行使に崩れ落ちる「根」の者達。

されど、ダンゾウは引かない、真っ向からマダラを睨みあげ、一歩も引かない。


「・・・・・・マダラよ、その術見事、だが、最後に勝つのは、我ら木の葉だ!」


ズボッ


マダラの高速の突きが、ダンゾウの命を奪う。

――――――此処に「根」は滅びた。


「小細工の時間は終わりだ、かつて俺が味わった敗北全てを世界に味あわせてやる」


一度、火影が居るところを見る、魔王。

「其所でゆっくり見ていろ、最後の希望のナルトを殺した後、ゆっくりとお前等全員の息の根を止めてやる・・・・・・絶望の淵で、精々恐怖を噛みしめていろ」





「「決戦」陣構成構築完成、後は・・・・・・ナルトの目覚めを待つばかりだぜ!」

シカマルの大声が場に響きわたる。

頷き、陣の中心に立つ、五代目火影、綱手、口を徐ろに開き、最後のキーワードを口にする。



「「落命」「聖戦」を越え、終焉を迎えろ・・・・・・「決戦」――――――発動



皆の顔に一滴の希望が広がり、力が広がる、新たな陣が、新たな法則が、木の葉に――――――否、この世界全てに、等しく及ぶ。

最後にして最終の陣、「決戦」

当初の効果では打倒しえない・・・・・・ならば、その効果範囲を広げればいいという、単純明快な考えの基、作り出された、結界。

其の効果は――――――。






木の葉に集まった世界の戦力から漏れ出す、力。


「・・・・・・ん」

「気付いたか、姉ちゃん」

金髪の少女が目覚めた先にいるのは、人形を携え、されど傷付いた体の少年。

其の二人の体から漏れ出している、戦力。
チャクラと呼ばれているもの。


「これは・・・・・・そうかい、最後の戦いが近いんだね」

頷くカンクロウ。

「ああ、あの国境近くで逢った、餓鬼が、九尾の人柱力に、全ての力が集まっている」


周りを見ると、限界まで搾り取られるように、チャクラが一つの方向に向けて集まっていた。

「我愛羅は・・・・・・」

金髪の少女の質問にゆっくりと首を横に振る隈取りをしている少年・・・・・・其の顔は俯いていて、表情が読めない。

「何・・・・・・あの餓鬼だったら・・・・・・仇を取ってくれる・・・・・・だって・・・・・・あいつら最後は・・・・・・仲がよくってまるで・・・・・・俺達以上に、兄弟みたい・・・・・・だったから」


「馬鹿が・・・・・・何下らないことを言っている、お前等以外に俺の血縁はいない」

現われる、一つの霊。

愛の入れ墨を顔に施している、風影だ。

呆気にとられ、次いで涙を流す二人の姉弟。

「泣くな・・・・・・俺の意志はお前等にも受け継がれている・・・・・・そんな様では安心して逝けぬ」

だが、流れ落ちる涙は止まらなかった。






其れは木の葉だけに止まらない。



「これは・・・・・・そうか・・・・・・いいだろう、儂の力も使え」

砂の里、留守を預かるちよ婆。
その前に跪いているのは、砂のバキ。


「ええい、人柱力でも、及ばなかったか・・・・・・ふんっこれは貸しだぞ、木の葉!」

雷影、キラービーの兄。
キラービーとユギトが、恭しく彼の前に跪く。


「・・・・・・そうですか、世界の危機、ならば、私達の力も、貸しましょう」

マダラが真の姿を現して、急遽席を埋める形でついた水影代理。
彼の前で説明をしているのは、紫色の目をした鉤爪と緑色の花が付いた、長い棍棒のような武器を背負っている、三尾の子。


「勝手に持って行け、我らは既に契約を交わした身、我らの力全て使うがいい」

里の全てを背負う身として、敏感に世界の情勢を感じ取っていた土影。
そっぽを向いている天元、及び老紫、彼らは膝を屈することは無い。






グオォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!




テラサンキープの入り口にて、竜達の生き残りによる大合唱、全ては主の意志を基に。






「再不斬さん」
「・・・・・・ああ、あの餓鬼だな、いいぜ、残りカスだが使えよ、俺達の力をよ!」

にこやかに微笑む薄幸の少年と鬼と呼ばれた屈強な男。

「兄者」
「もはや、余り残っておらぬが・・・・・・託そうぞ、火の意志を継ぐ者に」

誇りと共に生き、誇りと共に死したる、最強の称号の具現者達。

「けっ・・・・・・あいつに最後は任せちまうのか、ドベ野郎って言っていたんだがな」
「キバ君、君はもしかして僕のナルトを虐めていたのかい?」

勢いよく首を横に振る犬塚家の少年と、にこやかながらも問い詰める第三次忍界大戦を制した黄色い閃光。

「はははははははははは、流石は私の弟子!」
「任務を一回一緒にこなしただけで、みんなお前の弟子になっちゃうのかい?」

死しても熱き男、マイト・ガイ、そんなライバルに苦笑を浮かべている白き閃光。


「ヒナタ様・・・・・・良かったですね・・・・・・貴方の思い人は、復活します」

なにやら感慨深げに、地に倒れ伏せながら、自身の体から流れ出るチャクラを見つめるネジ。





世界に存在する、全ての存在から集められた、生存している生者だけではなく、志半ばにして散っていった死者からも集められた其の力、無色にして、限りなく世界の本質に近い、極限まで純粋に近い、力がナルトに・・・・・・集約し、其の目が――――――、





「みんな、待たせたってばよ・・・・・・」




開いた。




「真・神羅天征」



ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド



全てを弾き、全てを破壊する単純なれど、破壊の極地にまで高められた其れ、が、目覚めたナルトの極直近の頭上にて、展開された。


何時の間に現われたのか、さくらや、ヒナタは元より、上忍でもあるしずねも気付けず、全てが灰燼に帰すと思われたその時、――――――鬼の顔が現われた。


「・・・・・・俺の事を忘れちゃ困るぜ、マダラァアアアアアアアア」

須佐能乎・八咫鏡。


其れは本来の効果範囲を超え、マダラの体全てを包み込み、完全にマダラの術を封殺した。


ドサッ

崩れ落ちるサスケ、其れをただ見ているだけで助けには入らない金髪の少年、九尾の人柱力、否、世界の人柱力、ナルト。
「・・・・・・これで、四代目火影との約定は果たした・・・・・・後は、頼むぜ、ナルト!」




サスケの言葉に軽く頷き、口を開くナルト。

「マダラ、場所を変えよう・・・・・・此処じゃ完全な決着は付けられない」

目に見えて溢れに溢れている、圧倒的なナルトのチャクラ。

其れはあるいは、マダラと同等、若しくは・・・・・・。


「・・・・・・いいだろう、今更小細工は出来まい、終末の谷、あそこが相応しい・・・・・・付いてこい」


「ナルト君」

蚊の泣くようなヒナタの声。

振り返り笑顔を見せるナルト。

「ありがとうな、ヒナタ・・・・・・それにみんな、みんなの声は、みんなの力は、確かに受け取ったってばよ、何、すぐ帰ってくるってばよ、少しだけ待っててくれ、ヒナタ・・・・・・ありがとうな」




ばさっばさっばさっばさっ



舞い降りる、古代竜、ロン。

「待て、二人とも乗れ、我が立会人だ・・・・・・世界の趨勢を決める最後の決闘、見届けてやる」


無言で飛び乗るマダラ。

其れに続くナルト。

ロンは天高く舞い上がり、其の翼を力強くはためかした。





里にて存在している全ての者が、其の姿を見送る。


もはや、二人の戦いに介入できる存在など、この世には、この世界にはいやしないのだ。



決着は、かつて初代火影とマダラが覇を競い、初代火影が勝利を収めた、終末の谷。


最後のNARUTOの戦いが、今、勃発する。

竜が新たに付け加えた法則の名は、ただ一つ、「強く願えば、其れは実現する」其れは、ウルティマオンラインの基本方針にして、真理。

此処に二つの世界は、有る意味完全に融合を果たした。


世界の根幹を成すという尾獣の力を完全に自らの物としたマダラ。

世界の全ての力を完全に自らの物としたナルト。



決着は、一撃で付くのは間違いがない、二人の力は強すぎる。



世界の命運は、完全にナルトの手の中に委ねられた。



*まんま、元気玉です、もしくはワイルドアームズ2の最後みたいな?*



[4366] 世界大戦、その拾八、世界の敵。
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/02/28 15:19
竜達を従える女がいる、最高峰のテイマーとして、変わってしまった法則の中で最も恩恵を受けた存在の一人、伝説を越えたそのスキルを満遍なく使う、敵にしてみれば、白い悪魔とでも言うべき存在。


テラサンキープの中を大量の竜達が闊歩していく、行軍せよ、行軍せよ。


「All kill」


小さく呟かれたその凛とした声に従い、道を塞いでいる化け物、蛇と蜘蛛の混成軍団を数に任せた圧倒的火力でなぎ払う女、琴音。


幾ら混成軍団が陣を組んでも、やまない竜族達の最強のブレス攻撃の前には意味がない。


たちまち祭壇の前まで辿り着く琴音達。


「・・・・・・あら、貴方また復活しているの、本当にモンスターってのは便利よね・・・・・・死という存在がすなわち消滅って意味じゃないんだから・・・・・・私の幼なじみにも適応して欲しいものだわ」


先程と同じく、待ち構える最後の軍団、其の長バルロン、これを突破出来なければ、星の間に通じる資格はない、そう言いたげな陣容が、琴音達を待ち受けていた。


漆黒の体から漆黒の羽を全開に広げ、琴音達に対する敵意を現す悪魔。


「・・・・・・貴方がどれ程強くても、今の私達には絶対に勝てないわ、退きなさい、雑魚――――――all kill」


琴音のブレスに伴い放たれる竜族達の生き残り、霊達、最高峰のテイマーとして、広がった法則に従い、瞬く間に竜達の軍団全てを手中に収めた琴音にとって、もはや敵はいない。

竜達の攻撃が、一点に纏る。

漫然とした攻撃ですらあらゆる者を退ける最強の軍団の一翼を担うに相応しかったのに、更にそれが一つの意志の元に纏り、ただ、一点のみを穿つ。

琴音の意志に同調したその攻撃は、バルロンをただの刹那すらも存在を許さない。

同時になぎ払われる混成軍団、琴音の前に続く、星の間への片道切符、焔の大きな燭台。


燭台の縁に立ち、彼女の軍団を振り返る琴音。

「貴方達・・・・・・本当に有り難う・・・・・・此処までこれたのは全て貴方達の御陰だわ・・・・・・さようなら私の愛しき子達・・・・・・All release」


琴音の最後の呟きと共に、解き放たれる霊達、天に昇る光の柱、其のどれもこれもが満足そうな表情を浮かべていた。

滴り落ちる涙が、燭台の焔に零れ落ちて蒸発する。


涙を振り払い、焔を睨み付け、覚悟を決めて飛び込む木の葉の女忍。

焔は違わず、彼女の姿を飲込んで、後には塵一つ残らない。




















スタッ


古代竜の背中から、流れ落ちる巨大な滝が別つ大地に降立つ二人。


「・・・・・・ふんっかつて此処で柱間と争い、負けて勝って、そして・・・・・・最後はお前との決着か」


涼しげな顔をしているナルト、今までとは明らかに違う空気を纏い、ナルトは二つの足をしかと踏みしめ、マダラと対面する。


「マダラ、終わりにしないか? もうこんな戦いには意味は無いってばよ」

ナルトの口から出た言葉は、小さいが、確かにマダラの耳に届いた。

「・・・・・・何か勘違いをしていないか?」

マダラの言葉を首を横に振り否定するナルト。

「揺さぶろうとしたって無駄だってばよ、もう、俺は揺るがない・・・・・・俺はお前と違って一人で戦って居るんじゃない、世界のみんなと戦っているんだってばよ」

静かにナルトの小さな体の中を循環している、大きな大きなチャクラ。

マダラの目には当然確実にナルトの全てが写っている。

「俺は、既にお前に完全に勝っているのだぞ?」

再度首を横に振り否定するナルト。

「お前だって分かっているはずだってばよ、今の俺はもう全くの別人だって事が」

厭くまで静かに呟かれるナルトの声。


其れが、何よりもナルトの現在の実力を雄弁に語っていた。



さらさらさらさら



人間の言葉なぞ関係無しに流れ落ちる滝の音が、ただ辺りに響きわたる。

「・・・・・・そうだな、確かに前とは違う・・・・・・だが、其れは俺とて同じ事、お前の九尾を除いた全ての尾獣を吸収した俺とて、前とは違う」

「・・・・・・もう、止められない・・・・・・そういう事だってば?」

ナルトの言葉に静かに頷くマダラ。

「言葉は、もういらない、そうだろ? お前も忍びの一員ならば・・・・・・わかるはずだ」

ナルトは、マダラの言葉を、受け取り、暫くの後、静かに頷いた。



双方のチャクラが、膨れあがる。

マダラから立ち上るチャクラの色は、黒、全てを滅ぼさんとする、マダラの意図を正確に映し出している消滅の色だ。

ナルトの体から立ち上るチャクラの色は、マダラとは正反対の白、全てを飲込んで昇華させるための再生すらも含まれている色だ。


さらに、


「・・・・・・更に成長したと言うのか、ナルト」


白い色に更に付け加わる色、黄色から金色へ、金色のチャクラがナルトから迸る。

世界の希望という力、全てを含んだ、人が、生物が操れるこの世界での最高境地にまで達した力。


「全ての決着は、俺が付けるって里のみんな、世界のみんなに約束したってばよ・・・・・・俺は、今度こそ絶望を体現するお前を、完全に越える、三回目の負けなんて、存在しないってばよ!」


眩しそうにナルトから迸る力を目を細めて見つめるマダラ。








遥か上空で、古代竜のロンが見守る中、二人が、静かに動いた。




















形を変え続けるシャドーロード。

九尾の体すら保てなくなり、その姿が刹那消え去り、気付けばまた同じ姿を取る。


「ったくつくづく化け物だな、うん、全く美しくねえ」
誰かの呟きが響く。


「はははははははははははははははははははは、何度我を滅せようが無駄だ、我は滅びぬ、我はそなた達がいる限り、何度でも蘇る!」


シャドーロードの声が響くが、その言葉に動揺を受ける者はこの場にはいない。


「其れが、どうした、強がりを言っても先程よりも姿が小さくなっているぞ、化け物」

暁のリーダーの声に合図に従い、攻撃をし続ける暁達。


「はははははははははははははははははははは、強い、強いなお前等、ははははははははははははは」


笑い声を上げながら、攻撃をやめずにされど圧倒的戦力差で攻撃を防げずに其の体を削りに削られながらも、シャドーロードは一切の抵抗を止めない。



何だ、一体何なんだ、あいつが根拠にしている自信は一体何なんだ。

霊の取り込みか? 直接的に敵を取り込めれば確かに其れは戦力倍増だが、こいつの能力に其れはない、出来てブラックスーンみたいに後ろから操るだけだ。

隣で本当にただ見学しているだけのゼツにしたように、な。



ゴォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


また放つ触れれば即死であろうシャドーロードの吐息。

されど暁達には、そんな攻撃は一切通じない。


「足掻くのか、全く持って化け物としても失格だ、おいらの芸術作品に加える気すら起きねえ」

誰かが操るクグツから放たれる、砂鉄の槍が、シャドーロードを完全に串刺しにする。


されどシャドーロードの笑い声は止まらない。

「ははははははははははははははははははははははははははははは」


「全く見苦しいですね、こんな存在に私達がいいように駒のように操られていたと思うと腹立たしいばかりです」

誰かの放った超々圧縮された水の矢が、複雑な軌跡を描き、化け物を再度細切れにする。


「全く持って同感だ・・・・・・誇りを踏みにじるのは楽しかったか化け物」

神速を越えた速度で振われるハルバードが、形を整えようとした化け物を再度切り刻む。


「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」

笑いが乍ら全方位に向けて放つ、この空間に於いて攻撃力が無限大に高められた、死の吐息。


陣が張り巡らされ、シャドーロードの攻撃を一つに集める歴戦の男。

「結界、か、まさかお前が使っていた陣を俺が使う羽目になるとは思わなかったぞ柱間」


「ったく即死攻撃ばかり放つんだな、ま、俺には通じねえけどな。頭さえ無事なら、俺は無敵だ」

陣の中心に立ち、死神の鎌を構え、極小圧縮されたシャドーロードの攻撃を一身に受け止めされどびくともしない、死という概念が存在しない男。

「つめが甘いですよ」

それでも溢れる力は直人が切り裂く。


「はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」


構わず、尻尾を鋭利な刃物に変化させ、激しく回転、全てを断ち切らんと張り巡らせるシャドーロード。

「止めなさい」
「はい!」

地面から現われた、骨の森が、完全にかみ合い、シャドロードの尻尾を封殺。

「やりなさい」
「「「「「はっ!!!!」」」」」

四人組と一人が尻尾を再度粉砕。

「ご苦労様、さて、そんなに再生を繰り返していては、流石の貴方も限界でしょ」

長い舌で草薙の剣を弄び、ゆっくりと化け物に近づいていく男。

紙が残りカスにまとわりつく。

「動きは止めたわ、止め、刺しなさい」

紙を操る女が、隙間無く紙の中にシャドーロードを閉じこめた。

ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは


と紙に閉じこめられながらも、笑い声をやめないシャドーロード。






「・・・・・・いかん! さっさと止めを刺せ! そやつの狙いはっ!」

何時の間に目覚めたのか、俺の後ろに横たわっていた元竜王の少女が突如叫んだ。


声に従うように、草薙の剣が紙の塊に向けて振り下ろされた。



剣が届く寸前に紙が弾けた。


はらりと、幾枚かの紙が切られ、二つに分かれる。


紙の中には、何も無かった。そう、まるではじめから何も無かったかのように。


「はははははははははは、そうか、お前が居たのか元竜王、だが気付くのが遅れたな! もはや手遅れ、俺は俺に相応しいこの世界の力の全てを手に入れる!」



突如輝かしいゲートがその場に開いた、禍々しき光を発するあれは、ブラックゲート!


そのままゲートはシャドーロードの姿を飲み込み、掻き消えた。










































全力の一撃は、互いの体をえぐり取った。
すぐさま始まる強力すぎる再生能力。

今の二人は直接チャクラを動かす脳を壊すくらいでしか止めが刺されない。

金色の光が黒き光を浸食し始める。


如何にマダラが強くとも、今現在、力の総量ではナルトの方がうわまって居る。
そんなこと、万華鏡写輪眼を備えて、かつ今生存している者の中で最高境地の戦闘経験を持つマダラは百も承知だ。



だが、マダラは絶対に諦めない、自身の復讐の為にも、何より、自らの犠牲になった弟の為にも。



既に木の葉に対しては、今まで達成できなかった崩壊という結果を残している。

マダラの最初の目的自体は、既に達成されており、後は――――――決着のみ。

自身が負けるか、勝つか、もうマダラには関係ない。





「はははははははははははは・・・・・・楽しいな、楽しいぞナルト、今の俺に近づくどころか、今の俺を越える相手なぞ、もうお前しかいない・・・・・・楽しいぞ、ナルトォォォォオオオオオオオオオ!!」


マダラの声を聞き、悲しき表情を見せるナルト。

「・・・・・・俺は、俺はちっとも楽しくなんかねえってばよ! 俺は、世界のみんなと戦っているってば・・・・・・それは、つまり・・・・・・」


竜のspiritspeakは現世に死者を舞い戻らせる。


それは戦闘員も非戦闘員も関係ない、更に言えば、時間すら時代すらも関係ない。



初代火影が、二代目火影が舞い戻ったように、それは伝説の時代の忍びすらも、現世に舞い戻らせる、それは――――木の葉だけに限らないのだ。




「……兄さん……もう、やめよう」



双方が互いに激しき致死性を完全に含んだ攻撃を続ける中で、一つの声が、場に響いた。

どんな声にもどんな者にも一切反応しなかったマダラの動きが、其の一つの声で動きを止める。


おそるおそる振り返るマダラ、其所に存在していたのは、マダラにとっては、ただ一人心を許せる存在。



その者の名前は――――――、




「何故・・・・・・何故お前が其所に居る・・・・・・何故、何故だ、イズナァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
アアアアアアアアア」




マダラの悲しき慟哭が終末の谷に響きわたった。




初めて鉄の決意に罅が入った魔人、影で蠢く悪意の塊。





真の世界の敵が、誕生しようとしていた。












辺りに広がる静寂、耳が痛いほどの静寂、暁達がただの一人も例外無くこちらを振り返る。
見ているのは俺じゃない、俺の後ろに位置する息も絶え絶えなリースだ。


「どういう事だ、全てを話せ、竜王」

ペインが口を開く、暁のリーダーとしての問いかけだ。

「元、じゃよ・・・・・・あやつの力の源は絶望といった負の感情だ、この場では其れは効果が低い、何せお主等はそんな感情とは無縁そうな楽天家揃いじゃからな」

リースは軽く笑みを浮かべ、話を続ける。

「で、あやつは実体がなかった、それでも力を発揮できるが、最大限となると、実体が必要・・・・・・あやつは最初から目を付けていた体がある、魔女の洗脳すらも防ぎ、強固な精神力を持ち、尚かつこの世界で単独としては比類無き最強の体を持つ者」

真剣な目を浮かべているリース。


「・・・・・・そうか、あいつだな」

察しが早く、洞察力に優れているイタチが呟いた。



・・・・・・なるほど、確かに、あいつがシャドーロードがずっと狙っていたのは――――――最初からあれだったのか、だが、何故今まで手を出さなかった。


「決っている、あやつは待っていたのじゃ、強き意志に確固たる意志に亀裂が入るのを、完膚無きまでに諦めや達観という負の感情が交じるのを、ただ待っていたのじゃ」


・・・・・・此処での出来事は、シャドーロードに取っては余興に過ぎないと言うことか。
リースがエーテルを操作し、映し出される外の決戦。


・・・・・・此処は、終末の谷か。


向き合っているナルトとマダラ。

そうか、ナルトは俺の力を有効に使ってくれたんだな。


「あの餓鬼一人じゃ、手に負えねえぞ」


歴戦の強者達である此奴等が言うなら、間違いないのだろう、俺じゃ予測できない事だ。



「安心せい、我の存在に気付けなかったのが、あやつの命取りとなる……ゲートを開くぞ、準備せい!」


俺では絶対に使えない魔法、ゲートトラベル。

スキル継続中ッ事もあるが、何よりリコールやゲートトラベルに必要なマークを刻むルーンストーンを持っていないことがその理由としてあげられる。


辺りを見回す、全員が全員、俺を見返していた。

何だ?



「ふふふふふふふふふふ、言い辛そうね、なら、」

「竜君、もし、あれの後を追うなら君は……」

「……お前は元の世界に帰れなくなる、帰りたければ放っておけ、何、極論を言えばお前の世界には何ら影響を及ぼさない……帰るなら今が最後のチャンスだぞ、決着が付けばどの道、このロストランドは確実に閉まる」

言葉を遮られた大蛇丸は不機嫌そうだが、珍しく全く気付いていない君麻呂とカブト。

って、何て言った?

「帰れ帰れ、餓鬼は帰ってママのおっぱいでも吸っていろ」

「お前は忍びではない、ならば邪魔だ、後は俺達に戦闘のプロに任せろ」

言いたいことを言っている不死コンビ。

「おいおい、俺が帰ると、自動的にお前等消えるだろうが」

俺のスキルで存在している事は確かだ。


「何つまらないことを気にしているの、アバタールって言ったかしら、其の力、私でも使えない?」

飛び込んできた一人の女、琴音が、俺に向かい、違うな、俺が持っているコデックスに対して話しかける。


場に顕現する中性的な顔立ちのコデックス。


「マナにカルマにエーテルに満ちた、この空間ならば、グランドマスターを越えて、伝説の域にまで達した君にならば、使えるだろうね」

コデックスは琴音に真実の回答を告げた。


「竜、お前は帰れ……元よりこの世界の者ではないお前の助けは、もういらぬ」

「イタチさんの言うとおりですよ、貴方みたいな人がいれば楽しいですが……こと此処まで来てしまえば、もう必要はありません……帰れる場所があるなら、帰るべきです」

二人してやはり言いたいことを言うイタチと鬼鮫。


「その永遠の体は多少ばかり芸術だな、お前成長しないんだって? その体だけ残して、帰っちまえよ、俺が奇麗に保存してやるから」

「サソリの旦那、死んでる俺達は形を残せねえって、だから爆発こそが芸術なんだよ」

「デイダラ、やっぱり手前とはとことん話し合う必要あるみてえだな」

後半は俺を無視して言い争い始めた芸術家コンビ、駄目だありゃ。本当に馬鹿は死んでも治らないな。




「あいつの行き場所は突き止めているよ、竜王、足しになるかな?」
「コッソリトアミヲハッテイタノガ、コンナカタチデヤクニタツトハ、ナ」


ただ見ているだけじゃ無かったんだな……本当に見ているだけだったのは、戦闘系に関して言えば全く役立たずな俺だけ、か。


ペインが……俺が殺した奴が俺の前に立った。

「別世界の勇者、そう呼ばせて貰おうか、誇れ、お前の力を、誇れ、俺に勝った事実を、誇りと共に、お前は帰れ」

「一般人は面倒くさいのよ、血みどろの戦いに慣れていない忍びでない貴方がよくもまぁペインに勝ったわね、此処から先は、そんな偶然は期待できないわ、行けば貴方は余波を喰らって死ぬだけ……貴方は弱いのでしょ? なら、強い強い私達に任せて、さっさと帰りなさい」

小南が、ペインの後ろに寄り添いながら言葉を口にする。



「話が分かる連中ね、なんて言ったかしら?」

「暁、だよ琴音ちゃん……ご免ね、あの時はああするしか……」



パシンッ



叩かれる直人の頬。

「今更、もういいわ……竜、私はあんたの死なんか見たくない、この世界は、貴方に取って辛かったでしょ? チャクラを使えない貴方に取ってはこの世界は生き辛かったはず……もう、我慢することは無いのよ、貴方は、貴方の世界に、帰りなさい、貴方の力は、貴方のスキルは私が引き継ぐわ」



真っ向から俺のことを真っ直ぐな瞳で見つめる琴音。




「有り難う竜君、君に逢えて、僕らは楽しかったよ」



満面の笑みを浮かべて、俺の目をやはり光無き目で真っ直ぐに見つめる直人。




「行くぞ!」



ゲートを開ききったリース、すげえ、俺には使えない力を簡単に行使しやがった。
……最後の最後までチートだな。




「納得が行かないといった顔をしているの、何、これは同種だけで使えるシンパシーを利用した技じゃ、我の……弟とでも呼ぶべき存在が近くにいて助かった」



古代竜同士の複合技か。




「我ら暁は、シャドーロードとやらを絶対に許さない……追うぞ、行くぞ暁!」


ペインのかけ声と共にリースが開いたゲートに入っていく強豪達。

一人一人、何故か俺の頭を撫でて、それから入っていった、その顔に絶望など浮かんでいない。



どいつもこいつも、「いい」顔をしていた。


あいつ等は、信念がある、俺と違う……。俺は信念があるのか?


俺は、このまま、帰って、いいのか?

皆が皆が優しい、皆が帰れと言う。



すっ



差し出される琴音の手、少しだけ離れたところで見ている直人。

「さぁ、掴みなさい、貴方の意志は私が継ぐわ、私は貴方以上に貴方の力を使いこなしてみせる……頼りになるサポートもいるし、大丈夫よ、ねぇ直人」


直人は静かに頷いた。


「俺の力を受け継ぐってことは、俺の特異性まで受け継ぐってことだぞ、老いない体、成長しないからだ、縛る法則、其の全てを受け継ぐのか?」


しかし、差し出される手は微塵も動かない。


「貴方の全てを受け継ぐのよ、そんなこと、当たり前でしょ? いいから、さっさと私の手を掴みなさい! 貴方は帰るの! 貴方の世界に帰るの! 子供の頃、昔少しだけ話してくれた争いのない平和な世界なんでしょ? ずる賢いけど人が傷付くことに慣れなかった貴方は、帰らなきゃいけないの!」

琴音の目に浮かぶ透明な液体が、両の頬を伝い、地面に滴り落ちる。


琴音の覚悟は本物だ。











俺が断る理由は――――――存在しない。


「はっはっはっはっはっはっはっ、おなごを泣かせるでない、竜よ、良き友に恵まれたな」


リースの手がもう一つのゲートを開いた。


「こちらに入れば、お主は帰れる、お主の存在に残ったスキルがお主の元の体を治癒してくれよう、時間こそ戻せぬが、お主は、お主へ帰れる――――――友の心意気、無駄にするでないぞ」


慈母のような優しい笑顔で俺を見つめているリース。

琴音の手を掴めば、俺は帰れる。

掴まなければ、俺は……――――――。





[4366] 世界大戦、その拾九、魔王。
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/03/03 18:29



激しき光が、木の葉の里中心部からも見て取れた。

ナルトとマダラの戦いは既に人の領域を越えていた。

もう、忍びと名の付く者達でも遠くから見ることしか出来ない。

遥か彼方、古代竜であるロンであるからこそ、瞬く間にたどり着けた場所だが、熟練の忍びでも辿り着くには時間が掛かる。


医療忍者達が必死に治癒を施すが、もう、戦える者は居ない、木の葉にも各里にも、だ。





「わかっているよ、兄さん「根」の意志は僕達と共にある・・・・・・ダンゾウ様の意志は僕が継ぐ」

傷付き、倒れ伏している「根」の者達の一人、仮面を被っている少年の傍に佇む一人の霊、其れは微笑み何かを口にして、薄れていった。


「・・・・・・サイ、か、其れが僕の名前なんだね。じゃ、行こうか、動けるのは・・・・・・いないよね、でも、行かなきゃ。終わりに立ち会えずして何が暗部だ」



たどたどしい手で、絵を描き始めるサイ、仮面はすでに取り払われていた。

一匹の竜が描かれ、少年を乗せて空を飛ぶ。


其れを見ることしか出来ない、残りの者、火影と言えども例外ではなく。

一筋の流雲を見るが如く、奇麗な放物線を垂れ流しながら、絵から顕現した竜は、終着駅へと旅立つ。























「イズナァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

マダラの初めての激昂が、動揺が、表に現われた。

「兄さん、・・・・・・もう、止めよう・・・・・・僕達が守ろうとした一族は、もう、いないんだよ・・・・・・」

目を伏せて、寂しそうに言う、マダラの弟。

「違う、違うぞイズナ! 我らの意志は――――――」

「違わないよ! 僕らの力は一族を守るために磨いたんじゃなかったの!? 今の兄さんは・・・・・・道を違えている!」

「五月蠅い・・・・・・五月蠅い!」

マダラの集めたチャクラが膨張する。





マダラの手が、イズナの首にかかる刹那、

「・・・・・・僕も・・・・・・殺すの?」


マダラの力が、たった一言で霧散。


「――――――違う、お前の力は・・・・・・俺の中に・・・・・・」

イズナの手が、自らを消し飛ばす為に伸ばされたマダラの手を掴む。

「・・・・・・そう、だよ、僕の力は今も兄さんと共に・・・・・・いいよ、一度捨てた命だ、今の状態でまた死を味わっても・・・・・・兄さんなら・・・・・・構わない」

目に浮かぶは、失ったはずの万華鏡写輪眼。

spiritspeakは、その者を万全の状態で復活させる。



「イズナ・・・・・・俺は・・・・・・俺は・・・・・・」

ただ一人、マダラを心で止められるのは、ただ、一人。




「余計なことすんじゃねえよ・・・・・・この影野郎」

自らの髪の毛の色と同様、金色のチャクラに溢れるナルトが、ある者を掴んでいた。


瞬身の術で、マダラの背後に近寄り、掴み挙げたそれは、


「はっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ、よく気付いたな! 世界の寵児!」


「俺は、竜と一緒にいた男だってば、お前等のその完璧すぎる姿隠しには、慣れてんだってばよ・・・・・・お前等は、チャクラを知らない、チャクラの存在には本当に無頓着だからな」


シャドーロード。

スキルの一つであるHiding-Stealthで近づいた彼らを事も無きに掴み挙げたナルト。


「何だ、そいつは」

マダラは振り返り、其れを睨み付ける。

「・・・・・・そうか、そうだったな、お前は「感染源」と多くの時間を過ごした者の一人だったな、失念していたよ、だが、この魔法には耐えられまい、ResistingSpellの無いお前等はな! Por Corp Wis」


掴んでいるナルト、振り返ったマダラの目に炸裂する、Mindblast・・・・・・精神破壊の魔法。


「グォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ大オオオオオオオオオオ」


悲鳴の二重奏。

ナルトはかつて喰らった事があった、他ならぬ竜の手により喰らっていた、だから抵抗できた。

しかし――――――マダラに取っては初体験、かつて世界の敵と謳われた魔女は、この魔法を好まなかった事もある、真っ正面から完膚無きまでに叩きつぶす、搦め手を好まぬ絶対的実力に支えられていたからこその選択であったわけだが、ゆえに、マダラの精神は、八体の尾獣を押さえつけていた鉄壁の精神に、大きな、大きな穴が空いた。


「兄さん!」

イズナの体が透けて、マダラの中に入り込む、遅れて耐性により自らを刹那の時で取り戻したナルトが見たその姿は・・・・・・、


「くくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくくく、最後の意志で暴走させまいとしたのか、確かに、こんな力を暴発させて仕舞えば、ここら付近一帯どころか、この大陸ごと消え去るであろうな」


――――――黒き魔素を辺りに振りまく、最悪の魔王の誕生だ。


「この・・・・・・くそったれ野郎がぁああああああああ!!!!」

ナルトは誇り高き決闘者として、マダラを認めていた。

あらゆる手を使い、木の葉を壊した絶対に許せない相手ではあっても、目的の為に行うという点では、これ以上ないほどの忍びのあるべき姿であることを、認めたくは無いが、認めていた。

だから許せない、穢れた者に邪魔されるのが許せない。
ナルトの金色のチャクラをのせた拳が、的確にマダラの命を刈り取らんと放たれた。


「An Ex Por ははははははははははははははははははは、世界の寵児よ、お前は強いよ、しかし、世界の戦いという物には慣れていないだろ?」


しかし、一節の呪文を唱えたマダラの言葉と共に、止まるナルトの手。

パラライズ、麻痺の呪文がナルトの動きを縛り上げる。


ひゅん


最弱の魔法、エネルギーアローがナルトの体に辿り着き、ナルトのパラライズを解いた。

「らぁああああああああああ!」


ナルトの拳が、勢いを殺されながらも、マダラの頬に突き刺さった。


ごんっ


吹き飛ばされるマダラ。

しかし、致命傷には成り得ず。

「そうか・・・・・・お前も居たな、古代竜」


ばさっばさっばさっばさっ


遥か高見にて見下ろしていたロンが、ナルト達と同じ地面に舞い降りた。

「Vas Ylem Rel」

ロンが呟いた呪文に伴い、古代竜の姿が、一人の精悍な刀使いの姿へと変貌。

「姉上にも聞いていたよ、世界の具現者、我ら竜族は、お前達に抵抗する」

「どういう事だってば」

ロンの隣に立ち並ぶナルト、其の体からは金色のチャクラが立ち上っていた。


「世界が世界を喰らう世界喰い、全てを仕掛けたのが、こやつだと言う話だ・・・・・・いくら「感染源」が居ても、人の魂がたまたまこの世界に呼び出されたとしても、それは、すなわち法則をすぐさまこの世界に呼び込むこととはイコールには成り得ない、誰かが、そうなるように仕組まなければ、この状況は絶対に起きない・・・・・・尤もその御陰で我らに自我が生まれたのだが、な・・・・・・しかしやりすぎだ、シャドーロード」


刀を、とぎすまされた刃を、マダラに向けるロン。

「・・・・・・なるほど、其れに込められている魔法は、Mindblastか・・・・・・面白い、其の力ならば、確かに我のみを打倒しえよう、が、お前に其の力があるのかな?」


今のシャドーロードは、格別した力を身につけてしまっていた。

八尾に加え、シャドーロードの力が加わった其れは、ナルトすらも圧倒していた。


「誰が、お前を単独で成敗すると言った・・・・・・姉上に聞いていた、と言ったであろう? Vas Rel Por 姉上が力と共に居たのは、偶然の産物ではあろうが、其れも含めての実力、人族はそういうのだろ?」


共同して開かれる、一つの世界と世界を繋ぐゲート。


「遅かった、か」


呟いたペインの後に現われる、暁達。

全ての魂が姿を現し、閉じる竜族の間で使われたゲート。


「やぁ暁、久しぶり、そしてさようなら Vas Des Sanct」


マダラの力とシャドーロードの力が融合した波動が、場に響く。

キラキラと粒子状の光が、振りまかれ、其れはすなわち場に存在する霊を強制的に排除する魔法、強められた法則により強化されたMass Dispelだ。
かつて、リースがエセリアル虚空間において使った魔法、効用は成仏。


「Vas Uus Sanct」


もう一つの呪文が呟かれ、暁達の姿を守る。

Archprotection、元の魔法は、多数に対して同時に守護の魔法を掛けるだけ、だが、今の意味は多数に対し、存在を守る魔法へと昇華されている。


「・・・・・・女、其の発想は古代竜には無い、お前か、お前がアバタールを引き継いだとでも言うのか!?」


暁の後に続いて現われていた、人影。


地面に立っているその人影を睨んでマダラは叫ぶ。

守護の魔法により、どうにか昇華は免れた暁達が、一斉に振り返る。


「姉ちゃん・・・・・・竜は、どうしたんだってば?」


ナルトの素朴な疑問、ナルトは・・・・・・格が上がったことにより、ある程度の気配は察することが出来るようになっていた。

シャドーロードが漏らした単語、アバタールと呼ばれる力は、ナルトには一つとは感じられなかった。

「そうね・・・・・・私が、行使出来ていれば、もっと詳しく力の詳細について無理矢理にでも聞き出していれれば、全部丸く収まったんだけどね・・・・・・覚悟しなさい、シャドーロードとやら、貴方が相手をするのは、不完全だけど、それ故に完全を越えているアバタールよ」


寂しそうに、されど、嬉しそうに琴音は、ため息をつきながら、後ろに控えていた少年の背を力強く叩いて、前に押し出した。


「選択肢ってのは、限られる訳じゃない、もし無ければ、新たに作ればいいんだよ」



「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ、・・・・・・歓迎するわよ、お馬鹿さん、最後のチャンスまで逃しちゃって、本当にお馬鹿さんね」

暁の後に続いて現われた二つの人影。






「俺が居なければ、今の攻撃で終わっていたぞ・・・・・・勘違いすんなよ、別にお前等を守ったわけじゃないからな、世界を守ったんだ」

笑い出す暁達。

「それで帰れなかったら、どうするのよ! 全部の力を私に渡しちゃえば・・・・・・今頃・・・・・・戻れたはずなのに」

琴音に分け与えた力は、spiritspeakとtrackingの二つ、これで俺は包帯と魔法の二つに専念出来る。

「帰れるよ、この世界がウルティマオンラインも基幹とする世界となった今なら・・・・・・全てが終わった後でも、例えロストランドが閉じても、星の間が閉じても、俺は元の世界に帰れる」



・・・・・・嘘だ。そんな保証は何処にもない、帰れなければ、俺は永遠に年を取らず、時代のなり代りを最後の人族として見届ける羽目になることだろう。

もし、心を許す友が出来ても、絶対に最後までは付き添えない。



・・・・・・それが俺の選んだ道だ、もしかしたら、もしかしたら「望めばそれは叶う」其れが生きていれば、もしかしたら帰れるかも知れない・・・・・・可能性は俺が信じていない限り零%だろうけどな。


でも、信じ切れれば・・・・・・いや、よそう、今はこいつを何とかする方が先だ。



「君麻呂、カブト、竜を守りなさい」

「「はっ!」」

新たな命令が大蛇丸から発せられ、俺に張り付く二人の付き人。

「大蛇丸様の命令は全てに優先する、死の果てまで我らが守る・・・・・・お前の特殊な力、存分に使え」
使命感を基幹にし、誇りと共に存在する君麻呂。
「竜、君の選択を僕は歓迎しよう、でも、同時に愚かだと思う・・・・・・本当に昔から何一つ変わらないのだね」
笑顔で呟く、カブト。

「全ての力は僕が切り裂くよ、竜君、安心して魔法を行使して、如何に隙が出来たとしても、僕らには隙に成り得ない」
盲目の直人が、更に護衛に付く。

「さぁ私に負ぶさりなさい、木の葉の中忍として、貴方の一部の力を分け与えられた者として言うわ、――――――一緒に戦いましょう、竜」
俺は此処まで来ても、身体能力は最低ランク、大人しく、この不自由すぎる子供の体を琴音の背中に任せる。


「竜、最後の最後で一緒に戦えるのか、よろしくだってばよ!」


金色のチャクラを巡らせて、ナルトがはにかむ。

・・・・・・そうだな、俺の力は補助しかできないけど・・・・・・お前と一緒なら。

「あいつをやっちまおうぜ、あいつをやっちまいにいこうぜ、ナルト、最後は主人公が勝つって決まっているんだ」


きょとんとした顔になるナルト。

「ああ、何でもない、其れより・・・・・・油断はするなよ、見たところ、魔王、その者になっちまったようだな・・・・・・あれは俺の法則に基づく魔法でしか止めはさせないが、その状態になるには、お前等忍者の力が必要だ、特にナルト、それに暁達! 過去のわだかまりはひとまず水に流して、しっかり協力してくれよ、お前等が手を結べば、あいつがどんなに強くなっても敵じゃねえ! 俺があいつの魔法は全部カットする、お前等は存分に力を発揮してくれ!」


其れでなくても、尾獣を全て喰らったんだろ? その力の総数を測ることは一般人の俺には不可能。






「ふむ、そうだな・・・・・・竜と言ったか、アバタール。お前を殺せば俺の勝ちは決まりみたいだな」

思いっきり真理を突くマダラ、

こいつ・・・・・・当然のことだが、甘くねえ。


「あら、簡単にやらせると思っているの?」

大蛇丸が草薙の剣を振りかざす。
同期して、骨の刀を構える君麻呂、攪乱の術を備えるカブト。


「暁、守護の陣・・・・・・この子供を守れ」

ペインの言葉に従い、動き出す暁達。

「其所の人柱力、攻撃は全てお前に任せた、我らが切り札は守護する」

防御に於いては最高の性能を誇る神羅天征を備えているペインを筆頭に、暁達の陣が完成した。


マダラは、攻撃もせずに其れをただ見ていた。


「ふむ、まずはイレギュラーから消しておくか」


姿が掻き消えたマダラ、反応できるのは忍びだけだ。


ぶしゅっ


琴音が振り返るにつれて俺の視線もそちらに移動する。


刀を構えた精悍な男が、その首を刎ねられていた。



どんっ


ぼきっ


足下に転がったロンが手にしていた刀を踏み砕くマダラ。


「お前も魔法を使えるからな、さっさと退場して貰おうか・・・・・・さて、守りきれるか? 暁共!」


おいおい、古代竜を瞬殺かよ、力の程が計れない!


震える俺の体を背負い直す琴音。
「安心しなさい、私達が絶対に守りきるわ、さぁナルト君、今度は貴方の番よ!」



「・・・・・・ナルト、か。・・・・・・行くぞ!」

「Rel Sanct」

呪文に伴い、光の粒子がナルトを覆い尽くす、神の祝福、極限まで高められたアバラータの魔法だ、効果が無いわけが無い。


「ロンの兄ちゃん・・・・・・行くぞ、マダラ!」
救えなかったことを悔いているのか、暫し目を伏せ、されどナルトはマダラを睨み付ける。



俺の目の前で、俺には視認できない、最高峰の世界の戦いが始まった。


結局、この世界で、俺は直接戦闘には絶対に参加できない・・・・・・アバタールになった今でも、其れは変わらない。


カンッ


君麻呂の骨刀が、一つの焔をはじき返した。

俺が見えたのは、違う方向に焔が飛んでいった結果だけ。

「・・・・・・Kal Vas Xen Hur」

召還エアエレメント、見えないんじゃ話にならん。視界をリンクして、戦いをひたすら見届ける。


「In Ex Grav」
マダラの口を介して放たれる魔法。

ちっさっそくかよ!
「An Grav」

生み出された麻痺のフィールド魔法を無効化。


ナルトの螺旋丸が、マダラの体を捉えた、が、すり抜ける。

風化の術か!

あれは、

「何度も何度もその手は喰わないってばよ!」

ナルトが操る金色のチャクラが、マダラの全てを固定する。

「ははははは、この体はいいな、こんなことも出来る、さぁて、お前はどうするアバラータ、お前は無辜の民が殺されることを見逃せるかな?」

ナルトのチャクラに縛られながらも嫌な笑みを浮かべるマダラ。

こいつは外道だ、マダラでは絶対に取らない攻撃方法でも容易く取る。

世界はもう、力が無い、戦える力などない、それらは全てナルトに集まったからだ。


マダラの体から何かが生まれる。


それは――――、

尾獣の影達。


「ナルト、駄目だ! 散らばらせるな!」

俺の声が、間に合わない。


魔法では間に合わない。そんな魔法は無い。


「はははははははははははははは、どうするアバタール、見逃せばお前はアバタールでいられんぞ! アバタールの名が示すのは、守護者、無辜の民を守れずして守護者とは……言えんよな?」

其の通りだ、そんな選択肢は存在しない、アバタールは理想の体現者だから。


「ふぅ……我等暁が、本来は尾獣を狩る組織だということを忘れてもらっては、困るな」

「大蛇丸、貴方達だけでも十分よね?」

笑いながらこくりと頷いた大蛇丸。

それを見届けた暁たち。


「一尾は、仕方がない。僕が相手をしようか、直接戦闘は苦手なんだけどね」
「アンナタンジュンナアイテナラ、ラクショウダゼ」

ゼツが影に溶け込み、砂の守鶴の後を追う。

「俺は二尾を狩る、ジャシン様の名にかけてな」

死神の鎌を携え、瞬身の術で焔の化け猫を押さえにかかった飛段。

「俺は、三尾だな」

数多の体を展開させて、亀の甲羅を持つ水棲の化け物を留める角都。

「四尾は私ですね」

鮫肌を手にし、溶岩を操る老紫の力の元であった尾獣に望む鬼鮫。

「五尾、か、すぐ戻る、頼むぞ大蛇丸」

何者も通さない晶術を操る、その場から動きが遅い木の化け物を始末しにかかるイタチ。

「六尾か……雷に満ちたその力、美しいと言える」

収集家の目で、静かに六尾の雷獣を追い出したサソリ。

「七尾、風の支配者、ねぇ、爆発の魅力の前には無力だぜ、うん」

速度に優れた尾獣を追う、デイダラ。

「八尾、暴力の化身か……始末するぞ小南」
「ええ、私達が揃えば、無敵よ!」

雨の里の神と天使が、揃って力に溢れた尾獣を追い詰めにかかる。


完全なる守護の陣が崩れたが、ある意味最も頼りになる大蛇丸一派は此処に残った。

何気に四紫炎陣を何も言わずに俺の周りに既に引いていた音の四人衆、エリートという情報は誤りではないようだ。


「さぁて、アバタールとやらの沽券はこれで守れたわね、安心して補助しなさい」

くっくっくっくっとマダラから片時も眼を離さず、大蛇丸は呟いた。



暁たちが散らばっているさなかも、マダラとナルトの超越した戦いは続いていた。

時折繰り出す魔法は全て俺がシャットダウン、やらせねーよ。

忍術は全てナルトが、対抗、引けはとっていないが、かといって決め手にはならない。




戦いは、まだ続く、二つの世界において、それぞれ極みに近い力が二つ合わさったんだ、苦戦は当然。



だがよ、負けはしないよ、シャドーロード!


「負けねえ、絶対に負けねえ!」

ナルトが咆える、声高く、誇りを込めて咆えた。

そうだ、ナルト、お前の力をぶつけてやれ!




[4366] 世界大戦、その弐拾、決着、NARUTOとMADARA.
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/03/06 02:00



戦いは続く、金色のチャクラと黒き魔素が、交差し、混ざり合い、互いの領域を浸食し合う。


「おらぁあああああああああああああああああああ」

「はははははははははははははははははははははは」

気合いのこもった声と、笑い声が、場を支配する。


時折マダラから放たれる、ナルトの力を制限する魔法は全て俺が対応。

呪いには祝福を、麻痺には最小ダメージの矢を、即座に展開、ナルトだけなら、恐らく勝てなかった、俺達が使う魔法ってのはこの世界では、異端だ。

マダラの大規模忍術が俺達を襲うが、それらは全て大蛇丸を筆頭とした音の里の者が対応、骨の壁に、張り巡らされた結界が、俺にまで威力を届かせない。


戦いは動の硬直状態に入っている。


散らばった暁達と影の尾獣達の戦いは、あっちも終わらない、っていうかデイダラとかサソリは敵の動きが速いことから、すでに周辺にはいない。


ちっ何かナルトの力を増す方法はないか・・・・・・すぐには思いつかないよな、今だって世界と共に戦って居るんだ、これ以上の力を求めるは酷か・・・・・・。


これ以上の影は出ない、あくまで影ってのがいやらしい。



「何て・・・・・・楽しそうなのかしら」


大蛇丸の呟き声。

そうだな、楽しそうだな、マダラの野郎はあんな笑い方をしていたっけな。

「力を持つ者は、其の力を振いたくなる、それは、あの子と言えど例外では無いようね」

「どういう、ことだ」

大蛇丸の表情は伺えない。

「何、今のままでは良くて相打ち、そんな状況にもかかわらず、あの子は楽しそうよ、あれだけの力を個人で扱うのは、あの子が初めてだろうし・・・・・・そうし向けたのは、竜、貴方よね」

「ああ、確かに俺だ、最初からあいつを育てようと決めていた・・・・・・正直此処まで強くなるとは思っていなかったけどな、最初はお前に対抗させようと考えていたんだぜ?」


俺の身を守るためだ、何よりも保身が第一だった。


大蛇丸が笑う。

「あら、一度攫ったのがそんなに怖かったのかしら?」

「そりゃ怖いぜ、昔のお前は人体実験どんとこいのやつだったからな、貞操の危機も感じていたし、あんだけやられてお前の事を警戒しない奴はいないぜ」


ふふふふふと更に笑う大蛇丸。

「貴方にそんなに警戒されていたとはね・・・・・・なんて愉快な事なのかしら、ところで、一つ聞いて良いかしら、何故貴方は私を、――――――助けたの?」


あれは――――――


「・・・・・・別に、意味は無い、ただ、俺は人を殺したり見殺しには出来ない甘ちゃんだったってこと」

あの時は、それだけが全てだった、人の死にとうとう慣れない、慣れようとしない俺。

自分の身に絶対にマイナスとなって跳ね返ってくるとわかっていたのに、俺は大蛇丸を、助けた。

本当に、この世界では考えられないくらい甘い気持ちの持ちようだこと。

だが、それが現代日本人の平均であり、全て。

殺伐としたとかなんとかニュースキャスターやコメンテイターが言い出しているが、それでも日本は安心安全な国だよ、考えられねえことなんだぜ? 自動販売機があれだけあって、だけど壊されないって事は、さ、一部不良が国内外国人問わず、やっているが、それでも掴まっている、日本の行政はなんだかんだいって、優秀だよ。

道を聞けば、わからなくても何とか考えようとしてくれる警察官、こんにちは、と挨拶すれば、よほどの人じゃない限り返事をしてくれる国民性、単一民族だからなのか、しかし、外国人ですら、とりあえずお隣さんと受け入れる窓口の広さも持ち合わせている、本当に特殊な国だよな、宗教に染まっていないことも大きいのだろう、キリスト教や、イスラム教みたいにがんじがらめでもなく、されどクリスマスを祝い、バレンタインデーを祝い、新年は神社でお参り、変な国だよ、その窓口の広さが、安全に繋がっている。


到底この世界の人間には絶対に理解できない。


「ふふふふふふふふふふ、本当に面白いのね、・・・・・・貴方を守れという私の命令は、正しかったみたいね、この世界を変えたのは、間違いなく、貴方よ、それは決して悪い方向ではなく、厳しくも正しく、・・・・・・人柱力や忍びにとって、良い方向に変わったわ」

大蛇丸の表情は、伺えない。


「ただ、私の里まで崩されるとは考えていなかったわ、・・・・・・貴方は、何処まで先を見通していたの? まるで、あらかじめ全てを知っていたみたいに、貴方の行動は、先を読みすぎている、正確すぎる、貴方のスキルの内の一つとでも言うのかしら?」

原作知識があったからなんて言っても、いくら知識が他の奴よりも多い大蛇丸といえども、信じられないだろう、違うな、この世界で其所まで思考が辿り着いたのは、俺の記憶を強制的に覗き込んだリースくらいだろうな。

「そんなスキルなんて、ウルティマオンラインには、存在しないよ、ただ魔法を使え、傷を治せて、姿を隠すのがほんのすこし巧いくらいだ、俺は人の範疇を大幅に越える事なんて出来ない、人間には未来を予知する事なんて出来ない・・・・・・出来る人間は、こっちの世界にいたが、世界に弾かれて、もういないんだ」

映画版では先見の巫女を題材にした映画があったな、しかしあれも結局不完全でどうとでも変わるものでしかなかった。

そう考えると、この体の本来の持ち主飛竜の血継限界ってのは、あらゆる意味で規格外だったわけだな、俺をこの世界に呼び込んだことも含めて、な。


「詳しくは、言えない、そう言うことかしら? それか、私でも理解できないってことね・・・・・・貴方の知識、もっと生きている内に教授して貰っておくべきだったわね、惜しいことをしたわ」


「昔のお前には絶対に教えなかったよ、両親の霊に逢う前のお前は危険人物過ぎた」

更に笑みを深くする大蛇丸。

「そうね、そんなことも合ったわね・・・・・・あれは衝撃的だったわ、今も私達を現界させている、スピリットスピークとか言ったっけ、本当に、・・・・・・改めて考える事も無くとんでもないスキルよね」

こいつが変わったのは、あれが契機だ、原作では絶対にありえない展開、それが、俺のスキルでは実現できる。

別にあの状況では四代目の隙を作ることしか考えていなかったんだけどな、思わぬ副産物だよ、あの時の状況を外して、あのスキルは成功出来なかった。




ナルトとマダラの戦いは続いている、話ながらも、ナルトの援護は忘れない。




「馴染むなぁ、馴染んできたぞぉぉぉおおおおおおおお、世界の寵児!」



徐々に、徐々に均衡がマダラに傾く、先程と違い、魔法と忍術が同時に行使されるようになってきた。
まだ間に合ってはいるが、そのうち、絶対に魔法の行使が間に合わなくなる。


「・・・・・・まずいわね、あの子には決め手が足りなすぎるわ」


ナルトは防ぐことしか出来ていない。


ありとあらゆる術を使いこなすのは、ナルトも、そしてマダラも同様、写輪眼で得た術は、すなわち忍者の全てだ。

全ての術を極めたいとか言っていた大蛇丸が、写輪眼を欲したいと考えたのは、自然の摂理だったんだろうな、そりゃそうだ、あんなにチートな能力はない、行使するものに今のマダラみたいに尽きることがない圧倒的なチャクラが伴えば、それは全ての忍術を行使することに他ならない。


ましてや今のマダラは外道の手段を躊躇無く使える、最悪の魔王だ、折角最悪の魔女を退けたのいうのに、まだまだいたのか、世界の敵。

・・・・・・これも、俺の責任、か。


「五月蠅いってばよ・・・・・・お前は絶対に俺が倒す!」


ナルトが咆えるが、世界の力を集めてこれ以上無いほどの最強となっているはずなのだが、それでも今のマダラには一歩及ばない、何よりマダラは忍術と魔法のタイムラグがない、俺達は二人、だけどあいつはひとりで全てを行使できる、その違いが、今は重い。


「何か、案は無いのかしら? 他の暁達は、案外手こずっているみたいよ、さすがは最終決戦ね、楽勝と踏んでいたんだけど、強化され尚かつ一対一に持ち込んだマダラの考えは先を行っていたわ」


周りで光り続けている大規模忍術合戦、デイダラの爆弾が、サソリのクグツによる攻撃が、イタチの力の行使、鬼鮫の大規模水遁、飛段の更なる力、角都の多種多様の大規模忍術、ゼツの地味な戦闘、ペインの斥力に、小南の紙の舞、負けるか、勝てるかと言えば、恐らく、負けるという事はないのだろう、だが、相打ちも多分多い、すなわちこれ以上のナルトの増援は、・・・・・・見込めないだろうな、戦える戦力はもう存在しないしねえしな。


ナルトは頑張っている、これ以上ないほど頑張っている、世界のみんなに認められているってことも関係しているのだろう、あいつは里の奴らを見返してやるって正しい方向で思案していたから、・・・・・・よくもまぁすれなかったもんだ、本当に尊敬に値するよ。


「・・・・・・何か悪巧みしているわね」


俺の馬となっている琴音がぽつりと呟いた。

「何をだよ、こんな状況では取れる手は無いだろ」

心のそこからの言葉だ、俺に取れる手はひたすらマダラの魔法を防ぐだけ。

「・・・・・・貴方はいつも自分を犠牲にするから」

犠牲、犠牲ね、俺が犠牲になってもこの場では無意味も・・・・・・、






「そうか、・・・・・・その手があったか」

琴音の俺の足を掴む手が強まる。

「離さないわよ、もう、この手をすり抜けていくのは真っ平ご免よ」

「・・・・・・琴音、一つ頼みがある」

琴音が不完全とはいえ、アバタールの資格を持ってくれていたことが、ヒントになった。

アバタールは一人いれば、十分だ、ただ全てを渡すと、琴音の時が止まってしまう、それは、嫌だ。琴音は最後まで普通人としてこの世界で天寿を全うして欲しい、俺のわがままだろうが、琴音は最後まで死なないで欲しい。

「嫌よ、どうせろくでも無いことでしょ? そんな願いは聞かないわ」

作戦の実行には、琴音の協力が絶対に必要だ、今まで見たいに俺が勝手に行動するわけにはいかない。

他の何よりも、これが一番難しいな、――――――ありえない、最難関だ。


この世界に来てから、最大の難関が、説得かよ、これならまだ魔女と相対していたときの方が希望が持てた。


琴音は・・・・・・聞いてくれないだろう、当然だ、さんざん黙って行動したからな、今までの琴音を守るためとはいえ、琴音の意志を無視した行動が、こんな最後の最後で裏目に出る。


再度言おう、有り得ない、――――――有り得なすぎる。

だけど、他に頼む者なんかいない、もう、全てを笑って許してくれる直人は、いない。
アバタールの資格を得ることが出来るのは、琴音だけなんだ・・・・・・しかも頼む内容が・・・・・・、

















俺の死を見逃せって事だ。





















今の琴音が聞いてくれるわけがない。

こりゃぁ・・・・・・ぼこぼこに殴られるの覚悟で・・・・・・やるしかねえかな、死んだ後の事ゆえに、痛みは感じないだろうけどな。

しかし、万が一スキルの行使を止められたら・・・・・・そんな馬鹿な事はしないと信じて良いとは思うが、何せ俺に九尾の傷跡を治す手伝いを強要した過去がある琴音だ、思い詰めたら女は何するかわからない、特に琴音のような激情型は尚更、スキルを止められた其の時点で、俺の計画は瓦解する。


琴音は馬鹿じゃない、むしろ頭が良い方だ、だが、感情は時に理性を簡単に裏切る。


「何よ・・・・・・どんな話よ、言いなさいよ」

これこそ、助けが来ない援軍を期待できない戦いだ。

ナルトの補助をしつつ、考える。



・・・・・・・・・・・・駄目だ。考えつかん、こんな時こそ思いつかないでどうする!

でも、駄目だ、琴音の目的が俺の死を回避する事、それはもはや依存に近い、今まで散々ペットの死を見つめてきて、止めに直人の死まで経験してしまった琴音、説得できるわけがない。


こんな展開、原作知識は全く意味がない。


「琴音、何があっても、スキルを使い続けてくれるか?」

スピリットスピークが切れたら、其所で終わる。
其所だけは絶対に譲れない。


「貴方の話によるわ、・・・・・・けど、絶対に何を言おうとも、もう離さないわよ」


駄目なら、新しい情報を与えればいい。


「琴音、今の状態だと、俺の法則が広がっている・・・・・・死者蘇生もなせると考えて良い、ただし死んでからすぐの話だけどな」

全てが全て成功するとは考えられない。

ウルティマオンラインだって何のリスクも無いってわけじゃないんだ。


「何を・・・・・・言っているの? 一体何の話よ」

戸惑っていることがありありと分かる琴音の声。

「だが、今の琴音じゃ出来ないよな、だって包帯スキルなんてもってねえし・・・・・・だから、琴音に預ける、俺の意志に従え、マスターとして命ずる、コデックスよ、スキルの移譲に協力しろ、Magery関連以外全てを琴音に移せ・・・・・・法則の根幹を為すMageryさえ残っていれば、琴音の時が止まるはずがない」

書が光る。

~了解だよ・・・・・・マスター~

既に一度、SpiritSpeakとTrackingの移譲は成功している、だからこれも失敗するはずがない。


*Anatomyが0.0になりました*

*Healingが0.0になりました*

*Hidingが0.0になりました*

*Stealthが0.0になりました*

レスリングに瞑想は残ったか・・・・・・確かにあんなのが移譲されても意味はないしな。


「頼むぜ、・・・・・・俺が死んでも、琴音にスキルが残れば、俺は生き返れる、俺は元の世界に帰れる・・・・・・だから、今は、暫しのさよならだ Rel Por」

一気に琴音の背中から、音の四人衆が張っている結界からも抜けだし、ナルトとマダラの直近まで近づく。

「俺は自分の身を守ることだけは他の誰よりも思案してきた、だから、嘘じゃない、じゃあな」

琴音が信じられない者を見る目で俺を見つめる。


「だったら、・・・・・・なんでさよならなんて言うのよ!」


それは、俺にも確証が持てないからだ、俺の法則は確かにこの世界に広がった、だがそれがイコール死者蘇生を可能にするという意味ではない。


世界の理である以上、他の誰に聞いて良いかすらわからないんだ。



ぐしゃっ



ナルトとマダラの中心点にいきなり飛び込んだ俺は、そのまま即死した。

・・・・・・そうか、死は、こんな・・・・・・感じ・・・・・・。












「決戦」は未だ有効に働いている、死者となった者の力も取り込むそれは、違わず、ナルトの体に竜の霊魂も取り込むに至る。

突然の出来事に、瞬身の術で距離を取るナルト。


「何を・・・・・・考えて居るんだってばよ」

心の中に問いかけるナルト。

「・・・・・・確かに、今は分かる、魔法の概念が、わかるってばよ・・・・・・でも、でも、なんで竜が死ぬ必要が・・・・・・」


マダラはシャドーロードは、膨れあがる力を眼にして、動きを止めていた。

「ほう、死者の束縛が解けない・・・・・・なるほど、其所な娘にもアバタールの素養があったわけか・・・・・・盲点だったな」

結界に覆われている琴音を見つめるマダラ。

「・・・・・・わかった、もう、負けるはずがない・・・・・・一緒に戦おう、竜」

ナルトのチャクラが、一つに纏る、とぎすまされる、収束する。


「An Ex Por」

マダラの麻痺の呪文が唱えられるが。

「In Jux Sanct」

ナルトの魔法反射の魔法が間に合い、効果を反射する。




動きを強制的に止められたマダラ。


「・・・・・・もう動けないってばよ、チャクラすらも利用した完全なるパラライズからは、いくらお前でも逃げられないってば」


「決闘にお前は邪魔だってば・・・・・・Por Corp Wis」


ナルトの強力無比なチャクラに支えられたマインドブラストが、違わずマダラの体にヒット。

崩れ落ちるマダラの体から抜け落ちる黒き煙り状の塊。

「くそがぁああああああああああ、こんな攻撃で俺様が滅びるわけがぁああああああ」


シャドーロードの声が響くが、


「・・・・・・やりなさい」

大蛇丸の命令により、動き出す音の四人衆、彼らのすぐさま展開した結界忍術が、黒き霧を閉じこめ、そのまま圧縮、消滅させる。

「・・・・・・もう、復活は無理よ化け物、星の間は閉じた、後は・・・・・・」








ナルトの両の手に集まる、真の意味での最終攻撃、四代目との戦いの時よりも更に、更に更に更に更に更に更に更に更に更に膨れあがるナルトの金色のチャクラ。


パラライズが時間により解けるが、マダラが眼にした其れは、世界を明らかに越えていた。


「お前も、力を集めろ・・・・・・其の全てを越えてやる」

忍びとしては、止めを刺すべきだった、だが、ナルトは其れをしない。


「・・・・・・解放してくれた、のか、だが、そのまま止めを刺さないのは・・・・・・失敗だぞ、俺はどの道止まるはずがないのだから」

「五月蠅え、そんな決着で終わるわけがないんだってばよ、マダラ、お前の中にはまだシャドーロードの力が残っているはず、俺達の力は同等、ならば決着は俺達が全力を出さなければ意味がないんだってばよ」

ナルトの声には誇りが含まれている。

時に愚かだと断じられるその行為は、ナルトの力を更に高める。







「・・・・・・よっぽどショックだったのね、あの甘ちゃんが死んだことが・・・・・・」

大蛇丸の呟きが、琴音の耳に届く、琴音は信じていた、竜の最後の言葉を、だから、今はショックを受けても、否定することが出来ない。

「・・・・・・竜」

力無く呟かれたその声は、静まりかえった場によく響いた。







「・・・・・・わかった、決着を付けようか」

マダラは呟き、手に最高の力を集め出した。

ぴんっ

指をならし、散っていた尾獣の影の力すらも集める。

集約する黒き力。





ナルトにも、あらゆる力が更に集まる。

散っていた暁達が、集まる。


「足止めは終わりだね」
「・・・・・・セイゼイブチカマシテヤレ」
「最後の最後だな、うん・・・・・・おいらの力も使えや」
「全ては美しくだぞ、みっともないあいつの生き様を否定しろ」
「・・・・・・やれやれ、後一歩でしたんですけどね、決着は貴方が付けてください」
「サスケの仲間、それだけで十分だ、木の葉の力を見せつけろ」
「ジャシン様も、許してくれるだろ、やっちまいな」
「木の葉に力を貸すときが来るとは」
「全ては終局の流れに」

口々に台詞を残し、ナルトの体に入り込む暁達。


「元仲間だ、・・・・・・お前に全てを任せるのは、心苦しいが・・・・・・頼むぞ」


最後にリーダーでもあるペインが入り込み、此処に全ての力がナルトに集約した。


暁達の力は後付に過ぎない。
今の段階で言えば微々たるものかも知れない。


それでも、心は、ナルトの力となる。

「うん、そうだってばよ・・・・・・竜も一緒だってばよ、Rel Sanct 竜の力も一緒だってばよ」

神の祝福がナルトを包み込む。


昇華しきったナルトの力が、ナルトの両の手に集まりきる。

それは、超々々々々々々々々々々々々々々々々高濃度のチャクラの世界の塊、終局螺旋丸となりて、ただ決戦の時を待ちわびる。


準備が整いきったのは、マダラも同様。


顔に潔ささえも漂わせて、マダラは手にナルトの力と対になる、シャドーロードの残滓を喰らった事により扱える事が出来るようになった、黒き魔素を漂わせた、終焉をもたらすチャクラの塊、終焉螺旋丸を完成させた。

「・・・・・・兄さん」

「すまなかった・・・・・・だが、もう終わる・・・・・・最後まで付き合ってくれイズナよ」

こくりと、頷き、再度マダラの中に入り込むイズナの霊。

周りで見ているのは、生者は琴音一人。







空気が張り詰める、例えるなら、荒野のガンマン同士の撃ち合いに似ている。
違うのは、飛び道具じゃなく、当たれば確実にどちらかが死ぬという接近戦が強要されているという事実。

力の総量は、ほぼ同じ、どちらが勝っても、おかしくはない。



最後に勝敗を分けるのは――――――信念。



マダラの全てを滅ぼすための絶望の心か、

ナルトの、全てを越えるという克己の希望の心か、









双方共に漲っている力、もう、双方ともに小細工を労しない。









空気がまるで固定化したかのように、風すらもその場に縫い止める。


チャクラの塊が放つ圧力が静かに双方の出方を窺う。


力が互角ならば、後は如何に有利に当てるか、その一点に集約する。





先には動けない、双方の頭の中ではすでに何度も決着が付いている、ゆえに動けない。










転機は、一人の「根」の少年の手により訪れた。


「超獣戯画」


特殊な忍術により描かれた古代竜が、マダラに向けて弱ブレスを放つ。


今更そんな攻撃が、通じるはずもなく、全ては弾かれていたが、状況は動いた。


互いから絶対に眼を話さない双方、悟っていた、――――――ブレスが途切れたときが、決着の時。









そして、渾身のチャクラを込めた古代竜のブレスが、――――――途切れた。




動き出す二人、世界の命運を賭けて、互いの誇りを賭けて、同時に、二人は動き出した。




「ナルトォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」



「マダラァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」



雄叫びと共に繰り出す攻撃は、彼らの生涯をもってしても最高極地に達している攻撃。




金色の光と漆黒の光が、交差し、手に持つ世界を終わらせることすら出来る力を、それぞれ最高のタイミングで、相手にぶつけた、――――――ぶつけきった。




光が生まれる、光がその場を埋め尽くす。



力の氾濫により、結界が壊され、琴音はその場から吹き飛ばされた、意識を失うと共に、消え去るSpiritSpeakのスキル。


消えていく大蛇丸、君麻呂、カブト、そして音の四人衆。


世界の全てから、世界のために力を貸し与えに舞い戻った霊達が消えていく。












「お父様・・・・・・三太夫・・・・・・有り難う・・・・・・春の国は、私が盛り上げるわ・・・・・・だから・・・・・・安心して・・・・・・ちょ・・・・・・う・・・・・・だ・・・・・・・・・・・・」

初めは女王の名に相応しく毅然とした態度で、後半は、未だ年若き一人の娘として堪えきれず、小雪の眼からは大粒の涙が浮かぶ、抱きしめていた二人の体が、法則に従って、薄れて消えていく、その顔には頼もしき後継者に対する笑みが、浮かんでいた。


「猿飛先生、地雷也・・・・・・有り難う」

涙を落としながら、消え去ろうとしている霊達に敬礼をしている五代目火影。

「親父達・・・・・・わるかったな・・・・・・俺の作戦が、もっとうまくいっていれば」

イノシカチョウの三人は、笑いながら消えていった。

「先生! ・・・・・・木の葉は、木の葉は俺が護ります、だから・・・・・・安心して・・・・・・」

途中から涙が溢れ、言葉につまるカカシ。

その頭をやんわりと優しく撫でて消えゆく四代目、もう言葉は伝えられない。



空に浮かび始めた、初代火影弐代目火影、白と再不斬。


里を見届け、彼らもまた、薄れ行く。

その顔には満足そうな笑みが浮かんでいた。




じゃあな、と言い残し、カンクロウとテマリの前から消えていく我愛羅、その先に待ち受けていたのは、夜叉丸。

笑顔を残して我愛羅は、空へと昇っていく。

砂の二人の目には大粒の涙が。

悟っていた、全てが、終わったのだと。




他の霊達も、それぞれがそれぞれ、思い思いに空へと昇っていっていた。

全員に共通していることは・・・・・・満面の笑みが浮かんでいる事。







後は頼んだよ、と言い残し犬塚ツメは去り、まだまだ未熟と言い残し日向宗家は消えていく。


だが、二人の顔にも浮かぶのは穏やかな顔、後に残る者を信じていなければ出来ない表情。













暫くして、光が収まる。




究極に高められていた二つの力の双撃は、終末の谷を完膚無きまでに破壊尽くした。



それだけで済んだこと自体が奇跡に近い。




その場に残った者は――――――――――――――――、


























*終わった・・・・・・終わりました! エピロローグを挟んで終わりです、完結まで持ってこれるなんて考えていなかったんですが・・・・・・完結まであと二話、若しくは三話、書き足りないことや力が及ばない所も多々ありましたが、終わった・・・・・・本当に終わったですよ、最後まで見てくださり有り難う御座いました!



[4366] エピローグ、琴音の述懐。
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/03/08 22:23
決戦から、早一年。


ナルトの、世界の力により、危機は去った。
世界の敵は、完全に消滅した。

少なくともシャドーロードが復活するには、呼び水が必要で、竜が「感染源」が存在しない以上、それは未来永劫為されない。

マダラが世界に与えたダメージは大きかった。


誰しもが傷付き、誰しもが心に大きな傷を負うに至る、其れは十三年前の九尾襲来以上に、世界に傷跡が残る事となる。

戦力の要である忍びの大多数を木の葉で行われた決戦で、失ってしまった各里はそれこそ十三年前と違い、里の形式を保つことが出来なくなってしまった。





「ええ、どんどん使ってください、報酬? そんなもの要りません、私の国の自慢の力、どうぞ、ご利用下さい!」

春の国の当主、小雪を筆頭に、春の国の名産絡繰り木偶人形、メイドゴーレムが世界各国に無償で配布された。

忍びの里ではなく、国に配布されたそれは、全滅戦争等を経て力を失った忍びの里に成り代わる力として、広く大幅に受け入れられた。

小雪の傍に控える忍びの数は数を増すが、其れはいざというときの抹殺から姿を変えて、各里からの護衛という形になっていく。


木の葉、砂、雲、土、雨といった里は消え去り、一つの組織が生み出されることとなる。

春の国に構えられ、火影や風影といったかつての五大国の頭は、それの支部となり、国による争いは、此処になくなった。



――――――――人柱力を失った世界は、それこそ人の力で動くことしか出来ず、もう、争いに完全に厭いた人達は、忍びによる争いにも完全なる拒否反応を示したのだ。




「頼むわよ、シカマル君、貴方が考え出したんだから、良い制度を作ってよね」

生き残った木の葉の頭脳、シカマル。

彼は小雪のしたで宰相となりて、組織の立ち上げに多大なる尽力を尽くす。

「・・・・・・へいへい、わかりましたよ。こんな事になるならあんな話言わなきゃよかったぜ、けど、ま、やるとしますかね、あの散っていった馬鹿達の為にも、な」

常に不平不満をぼやきながらも、その指示は的確、最適。
協力するのはシカマルだけではない。

「おい、さぼるなよ、まだまだやることは沢山あるんだ!」

シカマルの横には常に元砂の里の少女が付き添っていた。

「へいへいっと・・・・・・あんたも変わったね、テマリ」

五大国のみならず、全ての里から抽出された年こそ若いが、優秀な忍び達が、小雪の元に集まり、組織を形作る。

忍び制度の崩壊は新たな実力部隊の結成を意味していた。

自治部隊として各里各国に配布されたメイドゴーレムが、モンスターの侵攻を抑えるが、それでも手に負えない場合、「龍」と名乗った彼らが相手をする。

其れは邪な考えを持つと認められた相手にも等しく訪れる。
彼らに勝てる戦力は、既に世界には存在していないのだ。



「また、波の国にオーク族の侵攻が認められたそうですよ、数が多くて手に負えないと」

見回りから帰ってきたロックリー、

「小物も良いところだ・・・・・・面倒くさい、木の葉丸にでも任せろ」

兄の黒装束を引き継いだ、写輪眼の少年、サスケ、

「おいおい、お前等ちゃんと働くじゃん」

クグツ技術に更に磨きをかけているカンクロウ。

「私も行くわ、試したい術を覚えたの」

何処かテンションが高いサクラ。


「はいはい、じゃちゃっちゃっと殲滅してきてよサスケ、木の葉丸と一緒にね、良い修行だ」

その頭として、生き残りでは最強となったカカシが位置し、忍び達と他の一般人達の間をうまく取り持っていた。


舌打ちをしつつ、すぐさま仕事に取りかかるサスケ、彼のライバルは、今はいない。











終末の谷であった所、一人の元女忍が、花を手向けに訪れた。


「・・・・・・竜、あんたは本当に嘘つきよ」


呟き、手に持つ花を、静かに捧げる、其所には石碑のみが作られており、其れだけが激しき決戦の証拠であった。

更に訪れる白眼の使い手。


「あら・・・・・・貴方も来たの、ヒナタ」

薄い笑みを返し、ヒナタは頭を縦にゆらした。
「ええ、此処がお墓みたいなものですから・・・・・・私が大好きだった人の、ね」

涙はもう、流れない、時間は人の心を癒すに足りる。

だが、心の中はどうだろうか?
ヒナタは忘れない、琴音も忘れない、忘れるはずがない、世界の為に散っていった者達の事を絶対に忘れない。


「それより、本当に辞めてしまったんですね・・・・・・風の噂でしか聞いていませんでしたが、琴音さんは今は何をしているんですか?」

琴音はもう木の葉の額宛を所持していない、決戦から暫くして彼女は忍びから完全に足を洗っていた。


儚げな笑みをヒナタに返す琴音。


「そうね・・・・・・此処であったのも何かの縁かもしれないわね・・・・・・ねぇヒナタ、貴方はナルト君に逢いたい?」


琴音の言葉に、息が詰まるヒナタ。


「私の時は・・・・・・止まっている。だから忍びを辞めたの、意味は分からないかも知れないと思うけど、簡単に言えば、私は、スキルを手に入れたわ」

懐から取り出す、一つの本。
其れは淡い光を漏らしていた。


琴音は眼が覚め、竜の死を受け入れた、すぐさま実行するHealing、だが、法則は広がっているにもかかわらず、死者蘇生はならなかった。


半狂乱になり、終末の谷周辺を破壊し付く琴音を止めたのは、カカシだった。

カカシですらも手傷を負うほど、その時の琴音は強かった。
苦笑しつつ、カカシは丁重に琴音を運び、医療忍者に引き渡した。

次に眼が覚めた琴音が口にした言葉は、
「私は、忍びを辞めます・・・・・・火影様今まで有り難う御座いました」


綱手はそれを了承した。

今は一人でも医療忍者が欲しい時ではあったが、今の琴音では、何も出来ない、そう判断した綱手は、里抜けを合法的に許した。








琴音の放浪の旅が始まった。

世界を周り、見えてきたものがある、モンスターは未だこの世界に存在しており、「法則」は変わったままなのだ。

新たに馬や小鳥などをペットにして、情報収集は欠かさない琴音に、ロストランドが完全に閉じられたとの報が入るのは、すぐだった。

「星の間」、可能性があると思われた場所には、もう、行けない。


三ヶ月くらい過ぎた頃だろうか、食べることを辞めていた琴音、・・・・・・もう、この世界に興味を持てなくなってしまっていた自分の体の変調に気付いたのは、その頃だ。

いくら鍛えていた体とはいえ、全く物を食べないで生きていられる人間などいない。

竜が危惧していた、「法則」が、琴音を縛るということ、それは、図らずも、達成されてしまっていた、もう、琴音は人では、無い。



薄く笑う琴音、気まぐれに困っている人を助けたり、人を治癒して廻ったりしているうちに広がる、「仙人」の存在に関する噂。

時折人里に現われては、不治の病を治癒していく、後を追うにも竜が邪魔をしてされど危害を加えるでもなく、ただ、足取りを追えない。


死んでしまおうかしら、なんて思った先に聞いた話、何のことはない、その仙人とは自分の事だ。


更に笑う琴音。


なんて滑稽なのかしら。

竜がもし生きていても、この道を歩むはずだったのね・・・・・・だったら私が代りにその運命を背負ってあげるわ。

それから更に三ヶ月、もう一つ噂を聞いた。

ダンジョン「ヒスロス」に、変わった石があるらしい。

直感でムーンストーンだと当りを付けた琴音は新たにペットにした戦力達と攻略に係り、激しき戦いの末、バルロンを下して、無事にムーンストーンを手に入れた。


「マスター」


其所までが三ヶ月。


コデックスが意識を取り戻す。


「カルマを積んでくれたんだね・・・・・・有り難う・・・・・・所でマスターは、・・・・・・前のマスターに会いたくないかい?」


無償の人助け、気まぐれの行為は無駄では、無かった。
モンスターを好戦的なモンスターを倒すことでもカルマは徳は積まれる。


「逢いたいに決ってるでしょ! あの馬鹿には言いたいことが・・・・・・言いたいことが沢山あるんだから!」


にこりと笑うコデックス。


「だったら、もっとカルマを積んでよ、まだ、足りない、ムーンストーンは手に入れているようだけど、発動には、まだカルマが足りない」

「なら、方策を言いなさい・・・・・・何でもやってあげるわ」

「それでこそ、アバタールだよ・・・・・・まずは・・・・・・」


更に三ヶ月、ペットの力も借りてのモンスター狩りが始まった。
高位のモンスターを狩ることにより得られるカルマと、人助けをする事で得られるカルマ、休む間もなく続けることで、「聖人」の噂が立つまで、そう時間はかからなかった。








終末の谷に至る。


「本当に苦労したのよ? 力任せのオークキング、けがわらしいロッティングコープス、相変らず強かったバルロン・・・・・・Mageryのスキルを得ていなかったら私は此処にいなかったわね、よくもまぁあの馬鹿はこんな上がりにくいスキルをGMにまであげたものだわ」

ぽかんと呆気にとられているヒナタ。


「あの聖人の話は琴音さんだったんですか・・・・・・何でも突然危機に現われては無償で危機を救ってくれるって、世界に広がってますよ」

にこりと微笑む琴音。

「ええ、広まってくれなきゃ意味がないみたいなのよ・・・・・・そっちも苦労したわ。でも聖人は言い過ぎよね・・・・・・だって結局私は私の為にしか動いていないんだから」

それでも、救われた物にとってはまごう事無き聖人。
救世主と言い換えても間違いは無い・・・・・・それが、アバタールだ。



「それでね、話は戻るけど、どうやらあの二人、ナルト君と・・・・・・マダラはエセリアル虚空間って所にいるみたいなの、すぐに思いつくべきだったわね、古代竜のブレスの三重奏でも壊れた空間だもの、あれだけの威力の攻撃がぶつかり合って狭間の世界が顔を出さないはずがないのよ」



手にするは、ムーンストーン、以前エセリアル虚空間と現世を繋いだキーアイテム。


琴音は、其れを地面に落とした。


「・・・・・・それでね、私はナルト君の中にまだ入っている竜を助けたい・・・・・・でも、それはナルト君が復活すると同時にマダラの復活も意味する」


ヒナタは話が完全に理解できた。


「・・・・・・お願いします、私は、ナルト君に・・・・・・逢いたい、逢ってちゃんと気持ちを伝えたいっっ!!!!!」

琴音はヒナタを抱きしめた。


「いい思いよ、人の気持ちを力にするアバタールとして・・・・・・其の力借り受けるわね・・・・・・コデックス、もう十分でしょ? 此処以外有り得ないわ、繋ぎなさい」



~了解~


中性的な声と共に、ムーンストーンに光りが灯る。

其れは形を変えて、一つのゲートを形作る。


「さぁ、帰ってきなさい、時の流れが違う世界に捕らわれた、最強の決闘者達!」





前の時と同様、光が、辺りに広がり始める、其れは忍びと言えどもアバタールと言えども避け得るものではなく、等しくその場にいる全ての者の視界を奪い去った。







――――――――世界が、繋がる。



*後二話?若しくは一話!



[4366] エピローグ、竜とナルト、UOとNARUTO。
Name: ヘヴィープレイヤー◆c66c0f14 ID:0dad6e4d
Date: 2009/03/08 22:25
光は、何処からでも確認が取れた、それほど大きな光の柱が、天に昇り、暫くの間、世界を照らした。


「火影よ、確認は取れておろうな?」

もう、影という称号は、形だけの物となり、すでに忍びの里としては機能していない。

「何・・・・・・恋する乙女の一年にわたる一念が、ようやく届いただけのこと、あれは驚くに値しないよ」

綱手の情報網は未だ健在。

元影達も、綱手の全く動揺していない姿を認め、胸を撫で下ろした。

「さぁ、我らにはまだまだ仕事が残っている、「龍」との兼ね合いもあるのでな、懸案事項をさっさとまとめよう」

給仕が運んできた茶を口に含み、綱手は会議を進める。

「この大変な時期に、どんな未来を希望を夢見た、後で聞かなければいけないな」

誰にも聞こえないように薄く微笑みながら、綱手は呟いた。

綱手のお付き人、しずねの手により資料が場にいる全員に配られる、其所に記されている内容は復興の計画について、

春の国より貸与された絡繰り人形達は、各方面において大いに役立っていた、元の状態にまで戻るのも後五年と掛からないと予想される、しかし――――――――

いくら町並みが元に戻ったとしても、マダラが世界の人々に刻んだ傷跡は、これから先消えることは無いのだろう。









――――――――光が収まる。

「・・・・・・ナルト・・・・・・君」

ぽろぽろと大粒の涙を流し始めた白眼の少女。

彼女の前には人影が四体。



「・・・・・・ふぅ、やっと帰ってこれたか・・・・・・長かったなぁ、二年は居たのかな? あ、確か琴音さんだっけ? 君が開いてくれたんだね、ありがとう!」

前よりも感情豊かになった絵を動かせる少年、サイ。


「やれやれ、二度とあの空間はご免じゃな・・・・・・我があれほど手こずるとは、な」

ハルバードを手にした、星の間から、エセリアル虚空間に渡っていた口調と外見が全く合っていない少女、リース。


そして・・・・・・以前ほどの力を感じない二人。

ナルトとマダラ。


永い永い戦いにより、完全に力を使い果たした二人。

もう、世界を滅ぼすことは出来ない。


「・・・・・・また、帰れるとは、な・・・・・・やめろ、もう争うつもりはない」

戦闘態勢に入っていたナルトを牽制するマダラ。

「・・・・・・さっさと去れ、じゃなきゃ、今度こそ止めを刺すってばよ」

激しき経験を急激に積み、ぐっと大人っぽくなったナルト。


「・・・・・・時間が流れたようだな・・・・・・永い永い時間が、いいだろう、お前等の選択にもはや、けちはつけん・・・・・・俺は影からこの世界を見届けさせて貰う」

マダラはそう言い残し、その場から去っていった。


ナルトは姿が完全に見えなくなるまで、マダラの事を睨み付けていた。

その姿が――――――――今消えた。

「もう――――――――時間なんて残ってない癖に・・・・・・最後の最後までお前は確かに世界の敵だったってばよ・・・・・・道が違えていれば・・・・・・これ以上ない力強い頼りになる仲間だったのに・・・・・・」

マダラが選んだ力は、その体を限界以上に蝕んでいた、しかもシャドーロードに取り込まれた際、体のことを全く考えない力の行使により、体の崩壊は加速、もう、伝説の万華鏡写輪眼の使い手と言えども、エセリアル虚空間に入り込んだ時点で、どうにもならないところまで事態は進行していた。

マダラは、いずれ近い将来死ぬだろう・・・・・・絶対の確証が永い永い戦いを繰り広げていたナルトにはあった。





ふぅと嘆息を付き、振り返り太陽のような満面の笑みをヒナタに向ける金髪の少年。

「・・・・・・随分と遅くなっちまったけど、・・・・・・ただいま、ヒナタ」

ナルトと見つめ合う涙を流しっぱなしのヒナタ。
自然とその距離が縮まり、ナルトはヒナタを抱きしめようと手を・・・・・・、


ぐいっ

そのからだを無理矢理捻り挙げる琴音。

「ヒナタ、感動の再会の所悪いんだけど、ちょっとばっかしナルト君借りるわね、リース手伝ってくれない? 一人より二人の方が成功率高そうなのよ」

熱い視線を交わしていた二人を食い入るように見ていたリースは頷き、琴音の傍に近寄った。
今の琴音を止められるものはいない。


「何なんだってばよ! 琴音姉ちゃん!」

「はいはい、いいからナルト君は少し黙っててね、貴方の中にはまだ竜が居ることはわかっているんだから、無理矢理引きずり出すの、あの馬鹿・・・・・・こうなることわかっていたに違いないのよ・・・・・・それに騙される私も、私だけどね」


何故、いつも騙されたのか・・・・・・それは、竜が何時も自分の事を考えていてくれたからに他ならない、他人を思いやる状態で吐かれる嘘は、時に真実すらも凌駕する。


「さぁ、コデックス・・・・・・一年ぶりよ、私の法則よ、広がれ!」

~了解!~

*世界が更新されました。*


忠実に効果を発揮するコデックス、

「私に一年前の竜みたいな万能性は無いわ、世界を覆い尽くすことなんて出来やしないし・・・・・・する必要もない」

琴音が呪文を呟く、琴音は魔道書を手にしていない、ゆえに魔法は使えない、もっぱら魔法のスキルをあげた要因は、一重にモンスターが落とすスクロールを利用しての事だ。

それこそ、どれ程の労力が必要なのだろうか、魔道書を作り上げようとしても、足りない記述が多すぎて、まさに用を為さない。
あくまで戦闘用には竜以上に意味をなさないだろう。


「リース、お願い、世界を区切って頂戴、エナジーフィールドよ」

ただ、知識だけは竜が残したコデックスにより補完することが出来た。


リースが居ることは誤算だったが、それは嬉しい誤算であり、この場でこの世界に残っている者でリース以上に魔法に熟達した者などいない、まさに最高の人事。


「我にまかせい! In Sanct Grav」

呪文を呟き、ナルトと自分と琴音を世界から断絶するリース。


広がった法則が収束する、この中は、一年前の竜以上の法則が場を支配するに至る。


「さぁて、貴方に貰ったスキル、今こそ有効に使うわ・・・・・・SpiritSpeak! さっさと目覚めなさい、この寝坊助!」

+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+**+*+*

*霊界に繋がりました・・・・・・霊が顕現します*


ナルトの体に未だ残った霊は、全てが全て、断絶された空間の中に吐き出された。

エセリアル虚空間に無理矢理運ばれた時点で、ナルトに籠もった霊達は行き場を無くし、ナルトと共に争いの道を過ごしていた。


一つ一つ選別し、次々に昇華させていく琴音。


「みんな、みんな今までありがとうだってばよ・・・・・・」

去りゆく霊を見て、何処か感慨深げなナルト、一年を共にしたのだ、その感想も尤もだろう。


「見つけた!」

あっさりと目当ての霊を見つけ出し、未だ半分足をナルトに突っ込んでいる状態から無理矢理引きずり出す琴音。

その霊は、意識を無くし、限りなく零に近づいていた状態だ。

ほどなく結界がほどければ、消去される命運にある。


「・・・・・・全く・・・・・・本当に馬鹿なんだから・・・・・・あれだけ自分でもすぐでなければ効果が無い、何て言っていた癖に・・・・・・癒しの力よ、この者を現世に帰せ・・・・・・リース、この結界暫く持続お願いね?」

「委細承知」

包帯が巻かれ始める。

10.9.8.7.6.5・・・・・・失敗!

*蘇生に失敗しました!*


「何で!? スキルは十分なはず、法則だってこの極めて小さいこの空間ならば漏れるはずが無いはずなのに!!??」

10.9.8.7.6.5・・・・・・失敗!

10.9.8.7.6.5・・・・・・失敗!


無駄に消費されていく包帯、どうしても成功しない死者蘇生。

「何でよ! 此処に、竜は居るのに! どうして・・・・・・どうして成功しないの!?」


竜は意識を取り戻さない、長く、長くナルトと融合しすぎていた。
いくら魂が其所に存在しているとはいえ、ほぼ、Lostに近い状態だ。
いくら琴音の蘇生スキルがGMに近いとはいえ、成功率は一%を切る。

何か、他の要因を重ね合わせでもしない限り、リースの魔法が途切れる方が先だ。

涙を流し始める琴音、ナルトはそんな琴音に何も言えず、リースもまた、掛ける言葉が全く見あたらない、ナルトはまだ人生経験が足りず、リースはまだ人としての心構えが足りない。

竜の霊を魂を抱きしめて、琴音は崩れ落ちた。

「何で・・・・・・あんたらはいつもそうなのよ・・・・・・結局私の思い通りに動いてくれない・・・・・・何で・・・・・・何で・・・・・・いつも・・・・・・いつも・・・・・・」

琴音の頬を伝う涙が、竜の物言わぬ霊に滴り落ちる。



「困っているようだね・・・・・・琴音ちゃん」

現われる、もう一人の幼なじみ。

最後の決戦時、竜と共にナルトに入り込んでいた直人の霊だ。


「直人・・・・・・貴方もいたのね」

刹那表情を輝かせ、直人に包帯スキルを適応させようとする琴音。


が、

「いいよ、僕は・・・・・・もう蘇生は出来ない、例えこの法則が百倍に強まっても、僕は、もう生き還れない」

やんわりとそれを拒絶する直人。

「貴方達は――――――――っっ」

更に顔を歪ませて、泣き崩れる琴音。

そんな琴音の頭を優しく撫でる直人、まるで、父親が娘に行うように、繊細に絹の肌触りのように優しく。



「人は・・・・・・必ず死ぬんだよ・・・・・・だけど、竜君は、まだ死ぬ運命では、無い・・・・・・生きてよ竜君、琴音ちゃん・・・・・・僕の分まで、最後まで生きてよ・・・・・・」



儚げな笑みを残して消えゆく直人の霊。

其れは、竜の魂に混ざり込んで、足りない記述を埋めんと竜の魂の中で拡散してゆく。

「僕は・・・・・・元々消えるサダメの中に・・・・・・だからこれは・・・・・・悲しむことは無いんだよ・・・・・・泣かないでよ琴音ちゃん・・・・・・君が泣くのが一番・・・・・・悲しい・・・・・・・・・・・・バイバイ」


薄れ行く直人の霊、されど――――――――最後は、しかと言い切り、悲しげな笑みを残して、直人の霊は消え去った。


「・・・・・・今だってばよ!」
「今じゃ、スキルを使え、琴音!」

ナルトのリースの声が重なる、二人とも感覚で理解できていた、直人の力が竜に重なった事を。


はっと気付いたように、琴音は包帯を巻き始めた。



10.


9.


8.


7.


6.


5.


4.


3.


2.


1.


カウントダウンが、終わる。


・・・・・・成功!


*スキルが成功しました、蘇生します*


ぶぅぅぅぅん

と効果音付きで、蘇生され、生前の姿を取り戻す、竜の霊。

その姿は何も変わっておらず、一年前の六歳児のまま。

視線がまっすぐ合わず、ふらつき、すぐに気を失った。


されど・・・・・・

されど・・・・・・

今初めてこの世界に於いて、死者蘇生が成功した。

「強く願えば、それは実現する」

琴音だけではなく、ナルトもリースも、そして直人が強く強く願ったことにより、スキルは本来の性能を越えて、竜を現世に呼び戻した。


竜の気を失って力が入っていない体を大事そうに抱きしめる琴音。

何処からか声が聞こえた。

*スキルが移譲します、本来の持ち主へ*

*SpiritSpeakが移譲されました*

*Trackingが移譲されました*

*Hidingが移譲されました*

*Stealthが移譲されました*

*Anatomyが移譲されました*

*Healingが移譲されました*

*琴音はアバタールの資格を喪失、・・・・・・正常なる時の流れに*

~ほんの少しの間だったけど、楽しかったよ仮初めのマスター、次に逢うのは、きっとマスターが、帰る時だね、それまで、バイバイ~

中性的な声の持ち主は、其れだけを言い残して消え去った。


リースの魔法で断絶していた世界がほどける。

外からはうかがえない状態で、現われたナルトに抱きつくヒナタ。

「無事で良かったっ!」

笑顔にぽろぽろと涙を流している二人の女、


リースは魔法の連続行使で息を切らして、ナルトは、ヒナタの思いがけない強い力に眼を白黒させていた。



「後は、目覚めるだけ・・・・・・?」

琴音の腕の中で急速に落ちていく竜の体温。

「In Vas Mani」

咄嗟にGMにはほど遠い拙い魔法を行使する琴音。


が、


「どうして!」

更に更に落ちていく生命の兆し。

尋常で無い様子に、ヒナタも近寄り、白眼で竜を診はじめた。

「琴音さん・・・・・・チャクラが、有りません!」


生命エネルギーの塊、それがチャクラ、この世界の人間には生まれながらにして備わっている力、忍びを其れを利用することが出来るゆえに、普通の人間には扱えない力を自由自在に扱うことが出来る。


逆を言えば、チャクラが無い者は、この世界では生きていけない。

竜はナルトと同化し、エセリアル虚空間においてマダラと永き決闘を行っているとき、常にその存在の力を消費し続けていた。

今琴音から帰ってきた力は、空虚なる魂には劇薬。

元より、成長しない竜の体のベースとなった飛竜の体は、死んでいたと同義に等しい状態だった。

死者蘇生が為された事により、竜の体は、世界の適正化を受けて、チャクラを得ることに成功していたのだが、其れがいけなかった。

ほぼ全てに於いて零という状況で、チャクラとアバタールの力が融合、そして決壊、竜は主人公たるナルトみたいに、九尾を受け止める器もない。

そしてアバタールの力は、竜のベースとなった力ウルティマオンラインにおいて、主人公に相応しい力だ。


空気が入りすぎて破裂する風船の如く、竜の中のチャクラが弾けて飛んだ。


法則諸共吹き飛んだ竜は、このままで行けば目を覚ますことは無い、そして――――――――、


「もう力は無いって言うのに・・・・・・もう誰も生き返れないっていうのに・・・・・・」

死者蘇生を為した包帯スキルHealingはアバタールの資格と共にすでに竜の中に。


自らも治癒忍術を駆使し、竜の体を癒すが、それでも体温が落ちていくのを緩やかにしているだけ、緩慢なる死、若しくは急速な死、其れだけの違いだ。





「直人だって、こんな結果を望んで消えたんじゃないんだからぁあああああああああ!!」

琴音の熱い涙が、竜の顔を伝い、首筋に伝わり、一つの痣に触れた。


――――――――呪印だ。


琴音の死者蘇生は、あるがままの竜を蘇生していた。

涙に、想いに反応して光を放ち出す、竜の呪印。



~一体、何の騒ぎかしら~

気怠い、そう言い表せる何処かで聞いた声が、呪印から漏れ出していた。

「・・・・・・この声、大蛇丸か!」


もっともこの中では共にいたリースが声の持ち主を特定、そのまま近寄り、光を放っている呪印を触る。

~何のこと? 私はこの印に残された残滓に過ぎないわ、大蛇丸、知らないわね~

一度復活という過程を経ているために、記述不足情報不足で自らを特定出来ない呪印に籠もった意識。

にやりと深い笑みを琴音に向けるリース。


「喜べ、琴音、この言いよう間違いなく大蛇丸じゃ、そしてイタチから聞いた呪印の効果はチャクラの外部的要因の強制的な操作、違わないな?」


~違わないわね、方向性さえ決めてくれれば、私は従うわよ、その情報さえ今の私は失われて居るみたいだけど~

「天」や「地」といった種類がある、元々重吾という人間がもつ特異性を更に発展させた力なのだが、それはチャクラの増幅、そして制御には特段に向いていた。


「よし・・・・・・望め、琴音、お主にしか出来ぬ事じゃ、アバタールであったお主にはわかるであろう、望めば、強く望めば、其れは叶うのじゃ、想像しろ、イメージしろ、お主の望みを強く強く思い描け!」
リースの力強い声が琴音の心に染み渡る。


~どうでもいいけど、早くしたほうが良いみたいよ、この宿主、永くは無いみたいだから~

おまけの呪印の声。


ヒナタは、治癒の手を緩めないが、竜の体から手を離した。

琴音は更に力を込めて、竜の意識無い体を更に更に力強く抱きしめる。


「・・・・・・もう、スキルなんて残っていなくていい、戦う力なんて補助する力なんて残らなくていいから・・・・・・竜の命を、救ってよ!」


熱き涙を流しながら、琴音は願った、共に過ごした時期のことを思い浮かべる、再会のことを思い浮かべる、別れ、再会、何度繰り返しただろう、口ではすぐ見捨てるだの、出来ないだの、いいながらも、結局最後は自分の身を犠牲にしても、他人を助けていた竜の姿を思い浮かべる。


サソリとの決戦の時、

自らに言い残した「琴音・・・・・・さん、ばいばい」

テラサンキープで最後にこっちをみて、星の間へ落ちる直前に言った言葉「有り難う」

マダラとの最終決戦、結局嘘をついてまで懇願した言葉「頼む・・・・・・お前しかいないんだ」


眼を瞑ればありありと思い浮かべられる。


~ふふふ、何とも青臭い台詞ね・・・・・・いいわ、その願い叶えてあげる・・・・・・元々の私であった願いも其れに合致しているみたい・・・・・・だから・・・・・・~


大蛇丸は三代目との決戦の際に、竜の呪印にこっそり細工をしていた、いざというときの依代となるために、自らの力を込めて呪印に込めていた。


全ては自らの両親に再び逢わせてくれた事に関する感謝の気持ちから来て至る。


竜の首筋に刻まれていた呪印が光を発し、更なる光を発して竜の体を覆い尽くす。

余りのまぶしさに、近くにいたヒナタもリースもナルトもサイも眼を瞑るが、琴音は抱きしめたまま腕を放さない。






「・・・・・・チャクラが安定している」

ヒナタが白眼を通して診た、竜の体は、今は正常にチャクラが巡っていた。

琴音は竜の胸に耳を当てた。


ドクンドクン、ドクンドクン


心臓の鼓動が確かなリズムを刻み、顔色に生気が戻った。

~ふふふふ、良かったわね・・・・・・末永くお幸せに~

笑いを含んだ声がかすれていき、呪印と共に消えていった。




涙まみれの琴音、其れを微笑ましい眼で見ている他の者。

当の竜は、穏やかな寝顔をその顔に貼り付けているのみ。






























――――――――更に五年後。


影に生き、影に潜み、影で死ぬ、其れが忍び。

この忍者が主役のNARUTOの世界の中でも最も影に近い存在、うちはマダラは其所にいた。

ナルトが思い描いた通り、マダラの体は崩壊をやめない。

だが、ありとあらゆる秘術奥義を究めていたマダラは、そのあらゆる技術を使い延命処理をしていた。

全ては影から世界の行く末を見届けるために。

自分を選ばずにナルトを選んだ世界の選択を見届けるために。



そして見つけた――――――――異物の存在。



開かれているゲート、ミナクスもシャドーロードも使っていた、世界と世界をつなげられるブラックゲート。

彼らが使っていた物と違うのは、一時的な物ではなく、恒久的だと言うこと。

ナルトから逃れて一年後、たまたま其れを奥深き山中において見つけたマダラは、何の気まぐれからか、其れの観察を始めた。

もう、食事の必要すら必要がない、十分に化け物の域に達していたマダラの体は、休息の必要を認めなかった。


「何を・・・・・・しているのだろうな、俺は、世界の選択を見届けるのではなかったのか・・・・・・」

そう独り言で述懐しても、されどそこから離れるわけでもなく、ただマダラは其れを見ていた。


ゲートを潜った先には何があるのだろうか、入り込もうと思った時期もあったが、ナルトとの最後の約束がマダラの頭の中にはこびり付いており、其れを許さない。




――――――――動きがあった。

観察を始めてから四年間、動きを始めてみせるブラックゲート、何かが向こう側から這い出てくるような動きがあった。

思わず身構えるマダラ。



出てきたのは、機械、機械の塊が、次々へとゲートから出てきていた。


すぐにマダラの姿を認める機械達、一際大きい個体が、マダラの前に立ちはだかる。

「ワレワレハ、エクソダスサマノ、テノモノデス、ココハ、チキュウ、デスカ?」

マダラを人間とは認識していないことから、放たれた言葉、人であった場合、取っていた行動は、――――――――殺戮だ。

「地球? 知らない言葉だな、お前等は何者だ、見たところ春の国の絡繰り兵器に酷似しているが」


続々と這い出てきている機械の群れ、彼らは這い出てくると共に列を成し、軍を形成していく。

「カラクリヘイキ・・・・・・ワレラヲソノヨウニ、テイギスルコトモ、カノウデス、ケンサク・・・・・・ガイトウアリ、ココハ・・・・・・ミナクスサマガ、カツテヤブレタ、ホシデスネ」

懐かしき単語が漏れ出し、マダラは軽い笑みを零した。

「ミナクス? ああ、あの魔女だな、確かに、元気なのか?」

かつての仇敵、自分では絶対に勝てないことを悟っていたマダラは、魔女との接敵を最大限避けていた。

「ミナクスサマハ、チキュウニオイテ、アバタールト、ソノナカマタチニ、ヤブレ、イノチヲオトシマシタ・・・・・・ヒトノ、ケハイガ、シマス、ココハ、チキュウデハ、ナイノデスカ?」

機械の言葉を理解できずに首を捻るマダラ。

「地球という言葉がよくわからないが、人はいるぞ」

機械の動きが止まった。

「ゴキョウリョク、アリガトウ、ゴザイマス・・・・・・ワレワレノ、モクテキハ、フクシュウ、コレヨリ、コードネーム、「エクソダス」ヲ、カイシシマス」


ざんっ

硬質のボディに一筋の亀裂がはしり、その一際大きい個体は、爆散、消滅した。

マダラが手にしていたのは、一振りの罅が入っていて手入れもされていない忍者刀。


「そうか、そうか、お前等はこの世界を滅ぼしに来た、招かざる客人という訳だな・・・・・・やらせないよ」


キュイーーーーーーーーーーン


機械の作動音が響き、マダラの周辺に展開する機械の軍隊。

「タイショウヲニンシキ、センメツ、カイシ」

一人の人間に対しては過剰とも言える戦力が、展開された。


がががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががががが


小手調べ程度の内蔵マシンガンの連続発泡。

「空化の術」

自身の体を空と同一化させたマダラには、物理攻撃は通用しない。


続々と更に現われる機械の軍隊。



「ふんっ・・・・・・今の体では防ぎきれぬな」

物理攻撃こそ効かないが、チャクラを操ることすら今のマダラには苦痛。

存在その物を削られ続けている感覚がマダラの体を間断なく襲う。

幻術は見るからに効かない、かといって攻撃に取れる手段は手に持つ折れる直前の忍者刀による直接攻撃のみ。

手にしている指輪は、もはや何の意味も成さない。

だから、捨てた。


更に苛烈を極める機械達の攻撃。

空化の術を解く暇も無い。


「こんな所で、訳も分からない敵を相手に、一人で死ぬか・・・・・・俺に相応しい・・・・・・最期だな」

かつての世界の敵は、自らの眼に備わる最強の術を展開し出す。


鬼の顔が現われ、マダラに届く全ての攻撃を完全に遮断。

鬼の顔のみに止まらない、現われるは鬼の体全体、手にした剣、手にした盾は、マダラの力を奥底まで吸い取り、力そのものと成果てる。


「・・・・・・サスケは元よりイタチですら辿り着けなかった写輪眼のうちは一族の最終形態だ、お前らは運が良い、この力を見た者は、この世界でお前達が初めてなんだぞ」

力の代償は存在の消滅。


ゆえにマダラはこの力をナルトとの戦いでは絶対に使わなかった。


理解不能な攻撃を目の前にして機械達の群れにとまどいが生まれ始めた。


「カイセキフノウ! カイセキフノウ! リカイデキナイ、コウゲキデス!」

振われる鬼の力強い腕、次々に壊され、機能不全に陥っていく機械の軍団。


破竹の勢いで繰り返される攻撃、されど、もう、マダラの体には力など残っていない。

全体の八割を削ったところで、鬼の体が完全に消滅。


力尽きて、地面に伏せるマダラ。

もう指一本動かせない。


ざっざっざっざっ

規則正しい足音で近寄ってくる機械の軍団。


声にならない笑い声を上げるマダラ。


ゲートは未だ開かれており、機械達は続々と其所から溢れてきている、幾ら破竹の勢いを繰り返そうとも、元を絶っていない以上、マダラのしたことは無意味になってしまう。


そんなことはわからないマダラではないのだが、如何せん、ゲートを閉じる術式は彼の知識には備わっていなかった。

「そう・・・・・・だな・・・・・・あの竜とかいう小僧でも、無ければ・・・・・・無理だろう・・・・・・な」


法則が違う力を使いこなしていた、六歳児ほどの少年がマダラの脳裏に思い浮かんだ。


「呼んだか? うちは、マダラ」


空耳、マダラは即座にそう判断した、こんな山中に訪れるものなど、こんなタイミングで助けが来ることなど有り得ないからだ。


だが――――――――、

「有り得ないって事は、有り得ないんだぜ? ・・・・・・まさかお前が世界の為に体を張るなんてな」

かつてマダラも零していた言葉。

「有り得ない事が容易く起こる・・・・・・世界が交わったために」

其れは実に的確に真理をついていた。

「機械が邪魔だな、琴音、ナルト、リースぶちかましてやれ」


「All Kill」
「風遁、特大螺旋手裏剣!」
「龍式、瞬身の術、満月の舞」


少しだけ大人びた声に続いて、何処かで聞いた声が場に響く。

新たな敵を認めた機械の軍隊が臨戦態勢を整える前に、大量のドラゴンのブレスが、最強の破壊力を持つ忍術が、機械の軍隊に向けて放たれた。


「邪魔は居なくなった・・・・・・ちょっとだけ待っててくれよ」

何かを自分に巻き付ける音がする。


シュル


体に戻る、力。

溢れ出す力、そう、かつてナルトと臨んだ最後の決戦時の力が気付けばマダラの体に戻る。


無理矢理起こす体、かつて無いほど快調だ。


「・・・・・・一体何の真似だ」

首を横に振りだす年の頃は十歳程度の子供。


「貴方の行動はずっと見せていただいてたわ、綱手様の情報収集能力をなめてもらっては困るわね」

ドラゴン達に指示を出しながら、琴音が口を挟む。

「それがどうした」

「へへへへへ、お前は、もう、敵じゃないってばよ・・・・・・全部を全部許す事なんて無理だけど、ある条件付けで小雪の姉ちゃんも認めてくれたってば」

連発する風遁螺旋手裏剣、次々に薙ぎ倒されていく機械達。


「条件?」
怪訝の色を隠そうともしないマダラ。


「ああ、お主が見張っていたこのゲート、閉じるのを手伝って貰いたい、メンバーは、此処にいる者達で全部じゃが、十分すぎような?」


リースの言葉を聞いて笑い出すマダラ。

「かつての最大の敵を利用しようというのか? 何故そう容易く信頼できる!」

忍びでは有り得ない事だ。
かつてマダラが柱間をとうとう理解できなかったように、他の人間もマダラも理解できないはず。

「お前の事を理解するには、お前本人に聞くよりお前をよく知っている物から聞いた方が早い」


+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*+*

「スピリットスピークという力だ、イズナから、お前のことは聞かせて貰ったよ、もう姿を現すまでに法則を歪めることは不可能だけどな」


笑い声をピタリと止めたマダラ。

「・・・・・・そう、か、イズナか・・・・・・あいつが言うのなら・・・・・・間違いは無い、な・・・・・・死者すら戦列に復帰させたお前の力、今更疑うでもないか」


マダラは覚えていた、葬り去ったはずの死者が執拗に邪魔をしてきたことを、ナルトに絶大なる力を与えたことを、あれがなければ、世界はマダラの手に墜ちていたはず。


「ゲートを閉じるとか言っていたな、ディスペルゲートとかいう力なのか?」


「「「・・・・・・An Grav」」」


ナルトを除いた、竜とリースと琴音による三重スペルが発動されるが、瞬く間に消えるはずのゲートは、変わらず存在していた。


「見ての通り、このゲートは特別製でね・・・・・・中に入りボスを殺さない限り消すのは不可能、新たに出来た世界政府直属の戦闘組織「光龍」が俺達がいない間見張ることになったが、中に入り込める人数は、五人が限度、待ち受けるのは、お前がしていた会話から推測するに、エクソダスとその強力な仲間達、あの魔女に匹敵する凶悪すぎる相手だ。ったくこんなゲートずっと見逃していたのは世界の失態だな」


竜の言葉に一応の納得を見せたマダラ。
疑問に思っていた言葉を吐き出す。


「お前は――――――――帰らないのか? 俺の中に残っていたシャドーロードの知識が言っている、お前は今でも帰れるはずだぞ?」


はははははと笑い出す竜。

「俺も分かっているよ、時間の流れが違うってことも、な。この世界が安全になったら、・・・・・・俺が原因で、もたらされた波乱が収まったら、帰ると決めたんだ、そしてこれが最期の一つだ・・・・・・協力してくれるか? 違うな、協力しろ、うちはマダラ」

くっくっくっくっくっくっくっと笑い出すマダラ。


「戦闘能力すら持たずに俺にそんな物言いをするのはお前だけぞ・・・・・・良いだろう、木の葉に今更協力しろと言っていたら、再度世界を滅ぼしてやろうと思ったが、お前個人に協力するなら吝かではない、――――――――俺も行こう」


差し出される、マダラの手。

がっちりその手を掴みあげる竜。


辺りに配備していた機械軍隊は、三人の攻撃により奇麗に姿を消していた。



音楽が、場に響きわたる。
しばし聞き入る他の四人。

使い古された笛を口に当てて、奇麗な音色を奏でる。


「残念ながら、スキルの再現は私では不可能だったけど・・・・・・直人も一緒よ」



ゲートは静かに場に存在し続ける。



一人、また一人と入り込んでいく五人。



完全に五人の姿が消えた後に現われる「光龍」の精鋭達。



「決着は、いいんですか?」
問いかける、おかっぱ頭の青年。

「ふんっ、今更興味はないね・・・・・・帰ってきたらいつでも出来る、今のマダラと争う気はない」
返す、黒装束に身を費やした青年。

「ついていかなくってよかったの?」
隣の女の子に問いかけるピンク色の髪の子。

「ナルト君は・・・・・・必ず帰ってきます、私は心配していません!」
笑顔で返す白眼を持つ女の子。

「リースだって頑張ってるんだ、俺達も頑張らなくてどうするんだこれ!」
すっかり成長し、少年とは呼べない外見になった青年が息を吐く。
何時までも成長しない美少女を見て、初恋は散ったが、あくまで憧れの存在だ。


「遠足気分は其所までだ、始めるぞ」
白い髪の片目を隠した格別した力を持つ、元木の葉の上忍、現「光龍」現場指揮官の一人が合図を出して、ゲートを中心にある結界を構築し始めた。


「あいつらが帰ってくるまでに絶対に死守するぞ、一体たりともはみ出させるな!」


続々と出現するのをやめない機械の軍団を受け持つのは、彼らだ。

構築した結界は、「落命」と原理は同様、ただし得体の知れない相手には通じない畏れが有るため、素早さを半減させることだけに特化、それだけで、忍びである彼らの敵では無くなる。

後ろに控える熟練したクグツ使い、扇を武器とした風使い、影を扱うことに特化した天才軍師、成長した彼らは、一本筋が通った力を手に入れていた。


更に後ろに控える選び抜かれた精鋭達。


煙草を吹かしながらにやけている不良中年に、その隣で緊張している長い黒髪を持つ女性、甘い団子を手放さない女性に、協力態勢に入っているドラゴンの軍団。












竜の最後の戦いは、今、始まった!



















fin















*思いつきで始まったナルトとウルティマオンラインのクロスオーバー、切っ掛けは、他の人の二次小説を読んだことです、プロットは最期まですぐ立てられましたが、文に起こすとなると本当に難しいんですね、小説家はオリジナルで考えていると考えると、苦労は想像に難くありません。この十月から始まった一連の小説も大体約半年で終わりを迎えることが出来ました。最後の最後まで、ご覧に頂いた皆様方にはカルマの加護を、有り難う御座いました!*


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