旧劇の旧劇による旧劇のための補完【短編】【シンエヴァネタバレ】
当作品は私の過去作「シンジのシンジによるシンジのための補完」シリーズの後日譚にあたる短編です。ネタバレ等もありますので是非、お先にそちらをお読み下さい。
また、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のネタバレも微妙に含みますので未観賞の方はお気をつけ下さい。
****
…
……
波の音にまぶたを開くと、海が、…赤い。
「……シンジ、すまなかったな」
背後からかけられた声は、父さんの…
「お前にはなんと詫びればいいか見当もつかないが…」
「いいんだ、もう」
近付いて来ようとした気配が、止まる。
「僕は父さんの寂しさを感じて、父さんの心を知った。だから、これでいいんだ」
…
「……そうか、大人になったな。シンジ」
大人になるっていうことがどういうことかは解らない。
でも、父さんが認めてくれたってことは、そういうことなんだろう。
「…碇くん」
気付くと、正面に綾波が居た。
けれど、その隣に見知らぬ女の人が立っている。
「はじめまして、リリンのワンコ君♪」
「誰? …ですか?」
「…シュレディンガーの猫。イスカリオテのマリア」
綾波の紹介に、
「やだにゃ~、リリスってば。
今は真希波・マリ・イラストリアスって名乗ってんだから、そっちで呼んでにゃ~」
不満げ。
「…見て、碇くん」
そんなマキナミさんをヨソに、綾波が足元を指差す。
「これって…」
植物の双葉が生えていた。
「もしかして、紫陽花?」
「…そう、新たな世界の一株となるべく芽を出した」
たしか綾波は紫陽花全体を指して世界と呼んでたから…
「これは、まったく新しい可能性の世界?」
「そのとーり! さっすがワンコ君。理解が早いにゃ~♪」
マキナミさんが抱きついてくる。
その…大きな胸が当たって…膨張しそうに…
「どきなさいよ、コネメガネ!」
引き剥がしてくれたのは、アスカ。いつものサンライトイエローのワンピース姿。
「にゃ~? 惣流のお姫サマはヤキモチかにゃ~♪」
「違うわよ! アンタが話の腰を折るからでしょ!」
ふん。っと鼻息も荒くアスカがそっぽを向いた。
変わらないな、アスカは。頼もしいや。
「それで…?」
「…他の宇宙が花開けば、そのエナジーは世界を潤す。そうすればこの苗も大きく豊かになる」
確かに、そう聞いた覚えがある。
「問題は、そのエネルギーが想定以上に多そうなコトなの」
リツコさん。やっぱりいつもの白衣姿。
「この新しい世界。我々はSINと呼称している」
冬月副司令。
「シン? …いや、イントネーションが…」
英語の【 SIN 】か。意味は確か、…【 罪 】
この新しい世界に一体なにがあるんだろう?
「MAGIの予測に拠れば、連続殺エヴァが行われる可能性がある。と…」
伊吹マヤさん。リツコさんの傍に。
「非道なクローン開発・実験の激化も予見されています」
日向マコトさん。メガネを押し直して。
連続殺エヴァに、非道なクローン開発の激化か…
差し込んで来た影に仰ぎ見れば、初号機。デュアルアイが明滅した。
「今度はこの世界に赴けばいいの?」
…いいえ。と綾波。
「ワンコ君だけじゃ手に余るから、全員で来て貰うにゃ~♪」
「カチコミ上等!」
威勢がいいなあ、ミサトさん。相変わらずだ。
「全員で? でも、どうやって?」
「問題は無いわ」
母さんが指差す先に、巨大な水柱!
「船…? …巨大戦艦?」
「通称、Ν-ノーチラス号。
正式名称、第四世代型超光速恒星間航行用超弩級万能宇宙戦艦ヱクセリヲンです」
青葉シゲルさん。分厚いファイルをめくってる。
「目的。新たな指針があるという事実は、幸せにつながる。良いことだよ」
カヲル君、そこに居たんだね。うずくまった初号機の肩の上。
「頼むぞ~!」
「気張ってこいや~! センセ~!」
「気をつけてね、碇く~ん」
ケンスケにトウジ、洞木さんまで。3人はさすがに見送りだけかな?
事情はよく判らないが、それだけオオゴトなんだろう。
紫陽花の双葉を見つめ、手を握り締める。
この世界の後継たる、新たな可能性の世界。
いったい何が待ち構えているのか、却ってワクワクしてきた。
「bon voyage シンジ君」
加持さん。「アンタも行くんでしょうが」とミサトさんに肘鉄くらってる。
初号機が掌を差し出してくれた。あの船に連れていってくれるんだろう。
「それじゃあ、みんな。行きましょう!」
「碇船長に、敬礼!」
(^-^ゞ (^^ゞ (^_^ゞ (^o^ゞ (^_^ゞ (^^ゞ (^-^ゞ
ええ! 僕が船長なの!?
びっくりしてみんなを見渡してたら、ミサトさんがウインクしてた。 (*ゝω・)ゞ
おわり
ライナーノート
シン・エヴァンゲリオン。面白かったですね。この短編の脱稿時点(3/12)までで3回も観ました。
一方でTV版や旧劇からは切り離された感があって、微妙にモニョりました。
それなりに煩悶した結果、わたくしの旧作である【紫陽花ユニバース】シリーズを発掘して橋渡しするこの短編が産まれました。
実質的な最終回と言ってもいいでしょう。蛇足だったかも知れませんが、楽しんでくださった方が居られれば幸いです。
なお、今後シンエヴァ関連の解釈や考察、FFが隆盛してくれれば、それらを吸収して当作のシリーズ化もあり得るかも知れません。
(ヴンダー VS Ν-ノーチラスとか、書いてみたいものです)
ともあれ、エヴァンゲリオン完結に感謝を。(でも、俺たちはようやく登り始めたばかりだからな。この果てしなく遠いエヴァファン坂をよ。って心持ちです)
それでは皆様、ご覧いただきありがとうございました。
ネタバレ・引用等
「……シンジ、すまなかったな」 シンより
「いいんだ、もう」 破 より
「大人になったな。シンジ」 シンより
シュレディンガーの猫 シンエヴァでマリの観測に拠って世界が色付くシーンから類推
イスカリオテのマリア シンより
大きな胸 シンより
膨張 マグマダイバーより
【 SIN(罪) 】 シンの意味は【真】や【新】、【心】だけだろうか? と捏造
連続殺エヴァ WILLEの槍に拠る消去のこと
非道なクローン開発 綾波・式波シリーズのこと
「カチコミ上等!」 シンより 「カチコミ成功」+「タイマン上等」
「船…? …巨大戦艦?」 使徒襲来より 「顔…? …巨大ロボット?」
Ν-ノーチラス号 不思議の海のナディアより ゲーム「エヴァンゲリオン2」にはノーチラス号が登場するので
「bon voyage」 シンより 劇中で使用された「さよならジュピター」の主題歌「VOYAGER 日付のない墓標」より
(Twitter始めました(@dragonfly_lynce)新作の掌編やファンアート、ユイ篇の子守唄などを投下してるので宜しければ是非!)
(なお、わたくしとコミュニケーションとってみたいという奇特な方は日常垢(@cropmarks)をフォローしていただけると喜びます)