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[43994] ノイズ NOIZ
Name: 武田栗㌰◆c4d84bfc ID:cb3c25cb
Date: 2023/07/09 02:36
ノイズ NOIZ


「お前にこいつの気持ちがわかるのかよ」

「……ああ!?」

「……」

 どうして、こうなってしまったのだろうか。




 私の名は十文字ヒカル。

 女子高校生だ。

 ただし、普通の女子高校生とは違う物体。

 あるいは、物質。



「はい、十文字。ここの問題をーーー」

「2ですね」

「えっ。違うけど……」

「え……」

「はい、じゃ次、万丈目」

「30」

「ウッヒョーーー正解」

「ypaaaaaaaaaaaaaa」

「……」

 茶番だ。

 私には、ある特殊な能力がある。

 それは……。

 「目に映った人間の脳内を覗ける力」。

 さしずめ、”脳内メーカー”とでも呼ぼうか。

 テレパシーだ。


「万丈目、どこ見てる」

「えっ、俺!?」

「マッタク、授業に集中しろ」

「……は、はい!」

「……」

 ”脳内を覗ける”……。

 それは、その人の過去や、今考えていること……今日何のお茶漬けを食べてきたとか、今から何を喋ろうかとか、なぜ今日まで生きてきたのかとかが一度に全てわかるということ。

 そして、今もーーーこのクラスの人間すべての脳内をリアルタイムで覗いている。

「十文字、おまっ……」

 グツグツグツ

「やっぱいいや、万丈目」

「えっ、俺!?」

 ほらね。

 こうやって授業中に水炊きを食べることで先生の注意を反らすことができた。

 これが私の能力。

 全く、ヘドが出る。

「しらたき、くれよ」

「……」

「おい、十文字」

「……はい」

 チャポン

 こいつは、万丈目SAHARA。

 こうやって、授業中にも関わらず私にちょっかいをかけてくる。

 顔の良い、眉毛が汚い女。

 いや、男かもしれない。

 私の能力をもってしてもわからない。

 私は万能ではない。 

 人生はクソだ。

「仲良くしようぜ、なんせ、この教室には俺とお前しかいないんだからよ」

「……」

「じゃ、次、十文字」

「2ですね」

 この学校は、巨大な少子化のあおりを受け、生徒が二人しかいない。

 先生は、ロボだ。

 いや、きょうび、”ロボ”、というのも失礼にあたる。

 ”AI”だ。

 とまあ、ここまで話したが。

 なにせ、私にはテレパシーがある。

 それだけ覚えておいて。
 


「なあ十文字、”繁殖”しようぜ」

「……」

「だめかー? もう島には人間が5000人しかいないって話だぜ」

「……」

「人w口w密w度wwwヤwwバwwすwwぎwwwワロタ」

「……」

「なあどうする?」

「殺すぞ!!!!!!!!」

 バシャッッッ

「あっつ!!!!!」

「てめぇふざけてんじゃねえよ。人口が減ろうが貞操の価値は変わんねんだよ、ボケ!!!!!!」

「そうか。仕方ないな」

「……」

 この星の人間は“余裕”を失っている。

 先刻(さっき)みたいなやりとりは、半年前、「人口、5000人!!」と市長から発表される前ではあり得なかったことだ。

 半年前までは、万丈目は単なる気のいいやつだったのに。

 どうして、こんなどうでもいいことまで、考えなくちゃいけなくなってしまったんだろ……。

「十文字、今日は何して遊ぶ?」

「さあ、自分で考えなよ」

「……たく、毎日ネタ考えてる俺の身にもなってくれよ」

「……野球は?」

「冗談。まだ死にたくねー」

「……」

「やめろって、”板”見るの」

「……見てないとしんどいもん」

「たくー……」

 バロロロロロロ……
 
「ちょちょ、そこのきみ」

「……ああん?」

「……」

「ちょっと、いいかな?」

「……”仕事”ですか?」

「そう、仕事仕事ー」

「……おい、十文字! 今遊んでるとこじゃん」

「ごめんごめん。こういう世の中だから。ほら、行くよ」

「……」

「「いや、そうやって子供を連れ回すのはどうかと思いますけどね」」

「はは!”冗談”がうまい。さ、行こう」

「……行ってきます」

 ガチャッ、ブロロロロロロ……

「待って、”冗談”じゃねえって……おーい!」



「うっさいね、ずっとああなの?あの人って」
   
「……で、”仕事”は?」

「当ててごらん」

「……」

「聞くと、君には”変な”力があるそうだね?」

「……」

「私の考えてることがわかる?」

「……霊媒師?」

「違うよ」

「……」

「……うん、そう、霊媒師をしてほしいんだけど。できる?」

「……まあ、やれそうではありますけど」

「しらたき、いいかな?」

「……」

「おん。ゴフッ!!……でさ、私がやってほしいことは」

「元カレを殺したいんですね?」

「……」

「元カレを、霊のしわざに見せかけて殺したい、とそうあなたの顔に書いてます」

「……え、すごい。それ、”板”で調べたの? SNS? 探偵?」

「霊のしわざです」

「……あー。うわぁ、そっかー……マジ?怖くなってきたな」

「……」

「……よし、君しかいない。私のカレ、殺してくれるね?」

「……まあ、”事情”はわかりましたし、いいですよ。みなまで言いませんけど」

「……」

「あの、一個だけいいですか」

「どうぞ」

「いちいち「気持ち悪い」とか言わないで下さいね。こっちはあなたの個人情報握ってるんで」

「えっ。……まだなんも言ってないじゃない」

「……」

「……ま、そうなるかぁ。……ん〜人を呪わば穴二つって感じかぁ〜」

「……いちいち癪に障るカスだな」






「あなたがカレですね」

「……いかにも。某がこの女の元カレだが」

「……」

「……で、何しに来たん?いまさら」

「……」

「なんだ、人の顔をじっと見て。かわいいね」

「は?私のほうがかわいいって」

「黙れ。そんなわかりきったことを言うな」

「……うん、あなたもクソですね」

「……え」

「……いやね、何がとは言いませんけども」

「……何、この子に言ったの?某が五股してたこと」

「……それじゃない」

「ごフンッ。……あなた、過去に彼女さんの弟を自転車で轢いていますね?」

「……は?」

「……申し遅れましたが、私は霊媒師です」

 グツグツ

「……え……?……名刺とかある?」

「弟さんの霊が、あなたに轢かれたって言ってます」

 グツグツグツ

「いや、……そんな、勘違いだろ」

「正確には、あなたは自転車のハンドルをこの人の弟の右目にぶつけたまま、逃走したとのことですけど」

「……」

「……そんな、人聞きの悪いこと、言うか?……普通。ひ、…人権侵害だろまじで。訴えるぞ……初対面だぞ……」

「……」

「……な、なあ、なんなのこの子。なんでこんな子呼んだんだ。なんの子どもだよ!!」

「私の弟は右目の視力がない」

 グツッ!

「……」

「私の弟と会ったとき、あなたは急に「別れよう」って言ったよね」

「……わ、わかったぞ……それがムカついてこんな嫌がらせっ」

「弟は、自分の顔にぶつかってきた奴の顔を覚えていない」

「……」

「でも、あなたは覚えているはず」

「……いや、覚えてない」

「……」

「……いいや、知らない、そんなの。言いがかりだ」  

 グツグツ

「……」

「……こ、こんな子どもまで用意して、……何を言わせてるんだ。子供にお金払って何を言わせてるんだよ。恥ずかしくないのか」

 グツグツグツグツ

「……」

「……なんか言えよ、なあ」

 グツグツグツグツグツグツグツグツグツグツグツグツグツグツ

「……えっ、もういいんですか?」

「……うん、いい。こいつの反応見たかっただけ」

「……」

「……えっと、「殺す」って話は?」

「……気が変わった。やっぱり復讐は自分でしないとね」

「……ちょ、待って。待ってよ」

「殺す!!!!!!!!」

「ぎゃあああああああああああ」
 
 ぶしゃーーーーーー

「……」






「ありがとう、これが今日のお金ね」

「……」

「……ごめんね、目の前でこんなの見せて。まあ、法律変わったし許して」

「……」

「どう、送ってくよ?」

「……いや、いいです」

「そう」

「……あの」

「ん?」

「……やっぱりいいです」

「? そっか」

「……」


  
  


「はあ、2回も「気持ち悪い」って言いやがったな、あの、ババァ……姉ちゃん……」

 手が生臭い。

 今日の仕事が終わった。

 時に、みなさん。

 目をギューッと閉じて、開くと、変なものが眼の前に流れてこないだろうか。

 細胞の固まりのようなものが、上から下に流れ落ちてくる。

 「飛蚊症」というらしい。

 私は、ちょうどその「飛蚊症」のように、目が合った人間の”個人情報“が視界に流れてくる。

 それを、私はテレパシーと呼んでいる。

 それが、私の能力。

 私には、その人間が嘘をついているのか、ついていないかが、全てわかる。

 なぜなら、その人が過去何をしていたか、何を考えていたか、何を言いたいか……

 とにかく、私にはその人間の”全て”が見える。見えてしまう。

 それは、間違いなく本当だ。

 神が何を思って、私にこんな能力を与えたのかは知らないがーーー。

 ……いや、嘘だとか、本当だとか、そんなことはどうでもいい。

 ただ、”情報”は、そこにあるだけで、私の脳を侵食する。

 このせいで、私はろくに眠れないし、今日だって、私は

「おい、十文字」

「……」

「また”あっち”の世界に行ってただろ」

「……」

「さ、帰るぞ」

「なんでいんの」

「……えっ、出待ち」

「きんも〜〜。きしょくわる〜〜」

「は?意味不明」

「あのさ、「ストーカー」ってわかるかな」

「いや、俺はもうお前と籍入れてるからその論法は通じないぞ」

「……は~だめだこいつ」

「ああ、ダメだ。帰るぞ」

「……」

 先刻、「私の能力は万能ではない」と言ったが。

 私には、こいつの考えていることがわからない。

 ヘドが出る。



つづく


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