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[6137] 【習作】俺と竹千代と時々泰朝
Name: 岡山兵庫◆322ca49c ID:f1264bdb
Date: 2009/01/25 20:57
ごらんの皆様こんにちは。
さて、私は由緒正しい今川氏の第10代目当主予定だそうです。
どうやら噂に聞く転生ってやつみたいです、はい。
それにしても今川ですよ、今川。将軍になんかあったときは吉良の次に今川の今川ですよ、奥さん。由緒正しい家柄なわけですよ、輿にだってのれるわけですよヒャッホーーーーイ!

でもね、10代目なんです、そう、父親の名は・・・義元なんすよ。
無為に過ごせば桶狭間→領国大崩壊→蹴鞠→高家の流れですね。
まぁ、なってしまったものは仕方ないのでせめて大名として逝けるように立ち回りたいなって思います。
領国大崩壊なんて一歩間違えば首とんじゃうし、文字通り。



[6137] おじゃるとハゲと朝比奈泰能
Name: 岡山兵庫◆322ca49c ID:f1264bdb
Date: 2009/01/25 23:31
どうも、駿河遠江守護の父を持ち、甲斐守護の娘を母に持つ氏真です、こんばんは。
蹴鞠に短歌、剣術に学問と忙しい日々を送っています。
蹴鞠なんてサッカーの親戚だろ?楽勝だぜ、なんて考えてたら大間違いでした。
まずルールがよくわからん。ドライブシュートを放ったら雅綱に折檻されました。
武田のじいちゃんと泰朝に助けてもらわなかったら殺されてたね。
今度二人にはあらためてお礼しておこう。

とりあえず今日は親父に呼ばれてるので勉強が終わったら雪斎と館に戻る予定です。
なんか今日は織田に奪われてた人質がようやく駿河にくるそうでそのために呼ばれてるっぽい。
まぁ、100%家康なんだろうけどね、今は竹千代だっけか?
でっぷりした肖像画しか知らないから想像つかんなぁ。

なんてこと考えてたら着きました。
お、朝比奈備中守もいるし、首脳部勢ぞろいって感じです。
ところで竹千代はというと…数えで8つだっけ?子供はやっぱり可愛いなぁ、これが後世狸爺となるとは思えない。
「じゃあ五郎、竹千代と仲良くするんだぞ。そうそう、雪斎、竹千代の教育を頼む。二人ともよく励むんだぞ」
どうやら竹千代とは学友になるみたいです。

長旅で竹千代も疲れているだろうということで今日はおしまい。
うちの近くに祖母と供の者と住むそうな。
しかし織田に連れ去られ今川に人質にと本当に大変だよなぁ。おにいさんちょっと同情しちゃいます。
うん、優しくしてあげよう。将来攻められないためにも。



[6137] 俺と竹千代と孕石主水
Name: 岡山兵庫◆322ca49c ID:f1264bdb
Date: 2009/01/27 02:41
さて今日は武田のじいちゃんとこにきてます。

手土産に持ってきた干柿を食いつつ談笑中。
「晴信はだめじゃ、親の恩を忘れおってからに、捨て金だけ渡しておればいいと思っておる。わしは絶対長生きしてあやつに賽の河原で石積みさせたる^^」
御歳57なのにえらい剣幕で怒ってらっしゃる。血管切れないかとこっちが心配しちゃうぜ。
しかし幼児に交じって信玄が石積みか…間違いなく地獄の名所決定だな、是非見てみたい。

そういえば、じいちゃんがすごい武将だってのは知識にあるんだけど具体的なことは何も知らんなぁ。
「なんだ、わしの武勇伝が聞きたいのか?かわいい孫の頼みだ、話してやろう^^」
1万5千を2千で破ったとか侮れねぇなぁ・・・なんて静聴していたら日が暮れてました。
短歌よりもじいちゃんの話聞いてるほうがおもしろいので時々さぼってこようと思います。



その後ですよ、日も暮れたので急いで帰ろうとしてたんです。
そしたら聞こえてくる怒声。
「このくそ三河の小倅めが、誰のおかげで生きていられると思ってんだ、ああん?」
なんか誰かが切れてるっぽい。
野次馬根性を発揮して覗いてみると孕石さんが怒ってるようです。
相手は…竹千代じゃないか、なるほど三河の小倅ね。
というかあそこお隣同士だったのか。
しかし、何をされたかわからんけどもあんな少年相手に大人げない。
竹千代も拳を握りしめ、目に涙をいっぱいに浮かべて上目使い…おにいさんちょっとときめいちゃったじゃないか。
せっかく戦国時代だし衆道っちゃう?なんて想念がかすめたり。
ま、まぁ、それは置いといてここは助けるべきだと思うので割って入ってみる。

「ご、五郎様、こんなところに何用ですか?」
なんという身の変わり様、こいつは間違いなく小悪党。
「いやね、竹千代にちょっと用があったんだけど・・・いじめてたでしょ?」
「い、いえですね、竹千代様の礼儀作法がなってなかったのでご注進申し上げてただけなんですよ」
「ふーん、じゃあ明日雪斎に伝えておくよ。礼儀作法がなってないって主水が言ってたって」
「五郎様、い、いや、それは、そのぅ…」
言い訳を聞くつもりもないので竹千代の手を取ってダッシュで逃げだす。

「竹千代、晩飯食いにうちいこうぜ。ほれ、涙ぬぐえ」
「な、泣いてないもん。…ありがとう五郎にいちゃん」
抱きつかれました。
なんか、こうズキューーーーンとかバキューーーーンみたいな効果音がですね、いやいや、私はノンケですけどね?
だからそのあと竹千代が孕石ぶっ殺す、河原で打ち首、獄門晒す、とか呟いてたのは幻覚ですよね。
きっとじいちゃんの合戦話に脳が疲れてたんだと思います。
とりあえず親父に竹千代の住居を移してもらうように頼んでおこう。なるべく近くに。



[6137] 俺と信虎と駒井高白斎
Name: 岡山兵庫◆322ca49c ID:f1264bdb
Date: 2009/01/27 02:08
武田信玄と北条氏康の甥っ子、氏真です、こんにちは。


今日は駒井高白斎が来ているということで武田のじいちゃんに呼ばれました。
最近異様に懐いてくる竹千代と幼馴染の泰朝の三人できています。
竹千代の相手ばっかりしてると泰朝拗ねるんだよね。
もてる男はつらいぜ。
駒井さんはうちの母が最近調子悪いので、叔父さんからの見舞いの使者としてきたそうです。


「おお、五郎様に竹千代様、朝比奈殿のご嫡男とは、次期今川の屋台骨に歓待されるとは嬉しいですな」
次期今川の前途は絶望的なんだけどね。
「ところで日記を書きませぬか?日記はいいものですよ、ささ、紙と筆をあげましょうぞ」
なんか日記セットを手渡されました。
「日記を書けば書くだけ浄土への道も近付きますぞ」
そんな宗派あったっけ。念仏とかなら知ってるけども。
でも日記書くだけで浄土へ行けるんなら書こうかな。
「政武、嘘を教えるんじゃない。日記の布教もほどほどにしておけよ」
やっぱ嘘だったのか、危うく改宗するところだった。
「ところで次郎や孫六は元気か?晴信はくたばったか?」
二人で甲州談義に花が咲いていてちょっとおいてきぼりぎみ。
一段落するまで竹千代と泰朝誘って駿河式蹴鞠(サッカー)でもするかな。


天文19年6月、母の葬儀が行われました。
先月、妹も亡くなったし、まさに諸行無常。
今なら仏門に帰依しちゃうのもわかる。
さすがにちょっと応えるなぁ…。


葬儀が終わってしばらく後。
武田のじいちゃんをなんとか慰められないかと思って雪斎がいない間の先生になってもらいました。
人から必要とされることって大事だと思うんだ、うん。
雪斎も三河に京都に三国同盟と忙しいらしくてこの提案を支持してくれました。


というわけで今日が初回の講義。竹千代と泰朝もいます。


「では、まずは大名が嗜むべきものとはなんだと思うかね?」
やっぱ蹴鞠と短歌にお茶あたりかな。
「鷹狩りと囲碁だと思います」
いや、それ竹千代の好きなものじゃん。
「茄子と富士山も好きだよ、あ、あと五郎にーちゃんも///」
きいてねーし、頬まで染めやがって…お前は私をどうしたいんだ。
「わ、私も五郎様を慕っています!」
泰朝、その顔でそのセリフは正直きついぜ。

…おーい、拗ねるなよ、悪かったって。

「あー、忠義心にあふれておるのはいいんだが話を戻してもいいかね」
ごめんね、じいちゃん、うつけばっかで。
「まぁ、慕われることはいいことじゃて。わしなんか追放されたしの…くそっ晴信め…ブツブツ」
ああ、じいちゃんがダークサイドにいってしまう。

そ、そうだ、それで大名が嗜むべきものってなんなの?

「あ?あ、ああ、そうじゃの、確かに和歌やお茶は教養を問われるし、囲碁などの盤上の遊も交流を深めるのに重要じゃな」
その口ぶりからするともっと重要なものがありそうだね。
「そう、それこそが庖丁!すなわち料理!ということで今日は鯉をさばきます」
料理ってマジ?
「わしは真剣じゃ、とりあえず鯉捕りに行くぞ!」
なんか違うような気もするけど、面白そうだしいいかな。
じいちゃんも少しは元気になったみたいだし。



[6137] 俺と親父と太原雪斎
Name: 岡山兵庫◆322ca49c ID:f1264bdb
Date: 2009/01/30 23:23
天下の次期副将軍今川氏真です、ちーっす。


今日は何もないのでうちでごろごろしとります。
こんなに暇なら竹千代と北条さんとこの助五郎と鷹狩り行っとけばよかったかも。
でも、あいつの鷹私のことつつきよるからな。
親愛の表現だって竹千代はいうけどそれはないね、鷹(やつ)の目は嫉妬の色だ。
高貴な家名も猛禽類には通用しませんしね。
いつか実力で上下関係を教えてやる。


そういえば今って天文二十年か…気付けばそろそろ桶狭間ですかね?
西暦1560ってことは覚えていますが、換算できないのでよくわかりません。
とりあえず生き残るためには親父に生きていてもらうのが一番楽かな…ちょっと現代知識で注進してこよう。


親父!中央集権と楽一楽座、武具の統一に鉄砲だよ、そんで永楽銭への統一と撰銭令、あとは…ノルウェー式捕鯨?
「なんだ五郎、すごい剣幕だな…」
俺の未来がかかってるからね。親父、改革しようぜ、改革!
「改革っていっても一朝一夕にできるものではないしな。それに中央集権はうちではちょっと難しいし、楽市楽座は無理だな」
ちょ、なんでだよ、富国の基本だろ。全くこれだから暗愚は。
雪斎もナイスアイディアだとは思わない?
「確かにそれらの献策には良き面もございますが、今川領で行うには悪しき面が目立ちまするな」
悪しき面?日本史では信長の政策べた褒めだった気もするんだけど。
「では拙僧が説明して御覧になりましょう」
納得いくように説明頼むよ。


「まずは中央集権についてですが、我が今川家臣には二種類の者がいるのはご存知でしょうか」
親族か親族じゃないか、とかならわかるけど。
「それも確かに分け方の一つですが、ここで申し上げているのはそうではございません。大まかに言うと直属の勢力を持っている者、つまり小領主と、我が今川の直属家臣のふたつです。代表的なものに前者は葛山殿、後者は朝比奈殿ですな」
そういえば確かに葛山さんとこなんか北条さんから養子もらってるしな。
完全に臣従してないってことかな。
「そういうことですな。独自の部下と領地を管理して今川家臣団の一翼を担っているという認識でよろしいかと思います」
ふむ、大名ならぬ小名ってことか。
じゃあ朝比奈さんとことかはどうなの?
「そちらは独自の部下を持たず、与えられた今川家臣を率いる、という形ですな」
与力とか同心とかいうやつかな。
「おお、五郎、よく学んでるみたいだな」
雪斎と武田のじいちゃんが先生だしね。
マジ豪華メンバー。
「さて、二種類の家臣がいる、と説明させていただきましたが、これが中央集権体制の構築に障害となっていることはわかりますな?」
うん、下手に集中させようとすると反乱しかねないってことでしょ。
結構前者に分類される人が多いのかな?
「いかにも。今川の力が揺らぎますれば、その忠誠は容易に移り変わりまする。河東一乱のときの動揺は大きなものでした」
「あのときに堀越とか一門衆も弱めといたから結構俺の影響力も大きくはなっているんだけど、まだまだいるからね。まぁ、そこは俺の後を継いで五郎が頑張ってくれ」
なんか前途多難なんですが。
寄り合い所帯をまとめて戦乱の世を生き残るとかマジ厳しい。
「五郎もその苦労を味わうことになるからな。まとめあげいてる父を尊敬しておけ」
まとめあげてるのは雪斎と泰能さんな気もするけど黙っておこう。
「撰銭令と武具統一については一考の価値があるかもしれん。雪斎、あとで又太郎たちをよんでくれ」
そこは考慮してくれるんだ。
これで経済と軍事力がすこしでも発展すれば多少有利になる…かな?


あ、ところで楽市楽座がダメな理由を教えてもらってないんだけど。
「あー、ま、それは今度の機会に雪斎か信虎様にでも聞いてみろ」
…この親父めんどくさがりやがった。



[6137] 親父と雪斎と両家老
Name: 岡山兵庫◆322ca49c ID:f1264bdb
Date: 2009/01/31 01:19
今川館
駿河、遠江守護今川義元の居館である。


今宵は義元、雪斎、朝比奈、三浦ら首脳部が集まっていた。
「という五郎の提案があったのだがどう思う?」
先の五郎の提言を検討しているところである。
「五郎様はなかなかのご見識をお持ちでございますな。尾張侵攻、北条、武田に備えるためにも行うべきことは多いかと」
朝比奈備中守泰能、今川家筆頭の朝比奈家現当主である。


「尾張といえば織田弾正が死んだとか。この機に領国を広げるべきかと思いまする」
三浦左馬助義就、朝比奈家とともに「両家老」とよばれた今川家重臣、三浦一族の一人である。
「そうだな、では左馬助には尾張侵攻のために国境の砦か城に入ってもらおうかと思う。しかし信秀が死したとはいえまだ機は熟しておらぬ。北条、武田の動きも気になるしの」
「はっ。しかし、次期当主はうつけともっぱらの噂。今のうちに叩き潰してしまってもよいのでは」
信秀の後を継いだ信長このとき18歳。うつけともっぱらの噂であった。
「いや、当主が阿呆でも佐久間や柴田などの家臣は侮れぬからな。いたずらに攻めて家中の結束をあおることもあるまいて。しばらくは様子を見るにとどめておこう。内紛がおきてからでも遅くはあるまい」
「御屋形様のご賢察、さすがにございますな。そうであれば後の侵攻の拠点として見事、整えて御覧に入れましょう」
「うむ、左馬助よ、期待しておるぞ」


「少し話がそれてしまったが、ひとまず武具の統一について考えようかと思う」
「それについては拙僧に提案がございます」
太原崇孚雪斎、今川重臣庵原家の出身であり妙心寺住持でもある。
「いきなり具足の統一というのは難しいと思われますゆえ、まずは足軽の皮笠、指物、槍の統一から始めるのがよろしいかと」
「そうだな、武具職人の数も統制も不十分なうちはそれが限界であろう。槍の長さについてはどうするか」
「朝比奈家中では三間程の槍がもっとも多かったと思いまする。あまり長くても行軍の邪魔になりますゆえ、三間から四間が妥当ではないかと考えまする」
「そうだな…では皮笠、指物、三間の槍で統一しようと思う。なにぶん実戦で使わんとわからんからな。次回の評定で皆に伝えよう」


「そうだ、雪斎、藤太郎に鯎浦の服部との連絡はどうなったか聞いておるか」
藤太郎とは義元の妹婿、鵜殿長門守長持のことである。
「先日連絡がつき交渉中とのことです。なかなかに好感触だと長門守殿はおっしゃられておりました」
「そうか、蟹江から熱田を扼させれば尾張侵攻もたやすくなるからな。藤太郎には頑張ってもらわねば」


「では武具、以後の尾張戦略を確認したところで撰銭令の波及効果と職人の掌握について話し合いたいが・・・」


駿河の夜はこうして更けていく。



[6137] 俺と信虎と山口親子
Name: 岡山兵庫◆322ca49c ID:f1264bdb
Date: 2009/02/02 02:25
どうも、氏真@尾張です。
なぜ尾張まで来ているかというと…話せば長いんですが聞いてください。


そう、それは数カ月前のことでした。
親父に用があるからと呼ばれたんです。
ちょうどいいので長槍と投げ槍と鉄砲について提言してみようかと思って行ったんですよ。
そしたら重臣一堂揃っちゃってね、今川のばあちゃんまでいるじゃないですか。
もうびっくり、いったい何事!?あ、もしかして結婚かな、なんて思ったんです。
そしたら親父が一言言いましてね。
「五郎、ちょっと初陣してこい。戦を知ってから物申せ」
いやぁ、よっぽど上っ面だけの提言が気に食わなかったんですかね。
武具の統一とか進めてくれたから調子に乗って適当なこと言いまくっちゃだめですね。


そして織田に叛意した山口さんと一緒に尾張に攻め込む、というわけです。
どうやら調略してたようでして…なかなか親父も侮れない。
叛意するタイミングを計っていたらちょうど信秀が死んでラッキーだったって山口さん(父)が言ってました。
長いものには巻かれるべきですよねー。


そんなわけで私は今、鳴海城主の山口さんところに来ています。
「久々の戦じゃ、腕が鳴るのう」
武田のじいちゃんも一緒に来ています。
「我々の勝利は間違いなし、我が家も安泰ですな!」
やっぱりじいちゃんの勇名はすごいらしくて山口さん(父)も喜んでました。


そうそう、なんでここに武田のじいちゃんがいるかというと遡ること幾日月。
初陣させられることが決まった後にじいちゃんとこに行ったんです。
「五郎、初陣すると聞いたがほんとかの?」
うん、重臣一堂勢ぞろいだったから後には引けないよ。
「もう五郎も15じゃからの、初陣するにはちょうどいいころじゃて」
それもそうかな…まぁいつかは通る道だよね。
よしっ、せっかくだし実績を伴って親父をぎゃふんといわせてやるか。
「うむうむ、その意気じゃ。では、わしと五郎で風林火山といってみるかの!」
いやいや、じいちゃん意味分かんないから。
「わしも五郎について出陣してやるといっとるんじゃよ」
本当?それは心強いな!
…でもそれはそれとして、風林火山の意味が分かんないよ。
「なんじゃ、雪斎殿から習っとらんのか。疾如風、徐如林、侵掠如…」
いや、そういうことじゃなくて、わしと五郎で風林火山の意味だよ。
「特に深い意味はないがの。…そうじゃ、旗指物は風林火山と書くかの」
え、まさかの模倣?
叔父さんに怒られない?
「何をいっとる、風林火山の元祖は北畠顕家じゃぞ。それに孫子の言葉だしの」
北畠顕家が元祖だなんて知らなかったよ、じいちゃん。
でも絶対パクリだって思われるよ。
「思いたいやつには思わせておけばよかろう。それにわしらのほうが活躍すれば問題あるまいて」
そういうもんかなぁ…じゃあどうせなら赤備も真似してみる?
さすがにこっちの色まで一緒は嫌だから橙備で(清水エスパルス的に)
「さすがわが孫じゃ、橙色はわしもすきじゃからの!さっそく知り合いの武具職人に頼んでおくわい」
じいちゃん何気に顔広いのね。
じゃあお願いしちゃってもいいかな?
「おう、任せておきなさい。とりあえず笠と陣羽織を300くらいでいいかの」
うん、そんなに大きな戦じゃないみたいだから十分だと思うよ。



というわけで我が配下500人のうち半分くらいが橙備になっております。
なんか思ったより多かったんだよね。
武具統一の第一陣らしくて元々は朝比奈さんとこの寄子が中心なんだそうです。
500人ももらえるとは思わなかったので橙の笠と陣羽織は騎馬武者と槍持ち足軽の方々を中心に配りました。
でも問題になったのが余った武具。
武具統一を言い出した手前、捨てるわけにもいかず…。
そこで思い出したんですが、確か信長って馬廻り衆っての持ってたじゃないですか、前田利家とか佐々成政でしたっけ。
じゃあ私も作っちゃう?馬廻り衆作っちゃう?
そんなノリで道中募集したら300人程見事に集まりました。
…帰ったら親父に所領もらおう。
そんなこんなで合わせて我が配下800人、300人に関しては出来合いでちょっと…いや、かなり不安ですが。
加えて山口さん(息子)が1000の兵を率いているので合わせて1800、結構な大所帯です。


不安はあるけどこれなら結構いけるかもわからんね?



[6137] 俺と橋介と藤吉郎
Name: 岡山兵庫◆322ca49c ID:f1264bdb
Date: 2009/02/10 01:00
氏真です、初陣です、ドキドキです。
緊張するとトイレが近くなる性質なんですよ。
ちょっと雉撃ってくるって何度も言ったことやら…。
そしたら五郎様はさすが豪胆ですな、ですが合戦前ですので自重してくだされ、なんて怒られちゃいました。
この隠語はこの時代の人たちには伝わらないみたいっすね。


そんなこんなで無事雪隠に行けました。
気を取り直してこれからの方針をご説明。
1800の兵で末森城を扼すというのが善いのではないかと決まりました。
武威を示し、岩崎城の丹羽氏清を今川方に取り込みやすいようにするのが目的です。
末森城は那古屋城の鼻先であり、熱田神宮にも近いので織田も出てくるはず、というのが山口(息子)さんの見解です。
出てきた軍勢をたたき、間接的な笠寺砦の支援も狙っています。


そんなわけで出陣の支度中。
緊張の度合いが半端じゃないです…こ、これは武者震いなんだからね!
「何をしとるんじゃ、はよう支度せい」
じいちゃんに見られてました。死にたい。
そこに駆け込んでくる山口(息子)さん。
「五郎様、信虎様、織田が小鳴海を通ってこちらへ向かっていると
報告が参りました」
「早いの。織田の跡取りがうつけというのは嘘かもしれんの」
ちょっと待ってほしい。
うつけってあの織田のうつけ?
「そのようでございます。おそらく那古屋からの兵でございましょう」
織田上総介さんですか。初陣から死亡フラグ立ってないよね?
「意味はよくわかりませぬが、敵は800ばかりとのこと。我らの兵力であれば勝ちはゆるぎないものかと」
兵力差二倍だし、よっぽど何かないと負けないね。
「この信虎もついておるしの。風林火山を知らしめようではないか」
あ、そうか…ここで信長を討ち取れば桶狭間はなくなるのか。
よーし、俄然やる気がわいてきた。これは大将首狙うしかないね。


「ところで五郎よ、織田はこれからどう動くと見る?」
まっすぐ城攻めを行うとも思えないなぁ…。
少なくとも城の兵力の多寡が分かるまで攻め寄せることはないはず。
そうすると…山口さん、ここら辺で一番見晴らしのいいところってどこかな。
鳴海城の兵の出入りが見やすいところでいうとどこになる?
「やはり三の山か小松山かと。山というほど高くはないですがここら辺を望むに最適な場所でございます」
そっか、ありがとう。
高地を得るのは大事だよね。
うーん…じいちゃん、信長はまず三の山に布陣するんじゃないかな。
こちらの動きを見てからどうするか決めると思うよ。
さっき見た地図でも三の山の西は海沿いで平野は東しかないみたいだし、もしこっちが排除しようとしても数の力で包囲できないしね。
「ほぅ、さすがじゃの。ま、わしの孫じゃし当然かの」
「やはり今川様についたのは正解でした」
そんなに褒められると図に乗っちゃうからやめてほしいなぁ。
「そのお年で自戒する心もお持ちとは。これは将来安泰ですな」
だからそんなに褒められると…。
「いやいやご謙遜を…」
いやいや…。
なんという無限ループ。
なにはともあれ、ここで信長を殺れれば親父死亡→領国崩壊は防げるかな。
そうときまれば全力を尽くすのみ!


無限ループをくり返しつつ、いよいよ出陣。
駿河勢700が私の配下、じいちゃんに補佐してもらっています。
それに加えて山口勢800、総勢1500で出陣です。
馬廻り100と山口勢200は城の守備に残してあります。
まずは当初の予定通り末森城を目指すことに。
城に向かえば挟撃されるのは目に見えているので野戦を挑んでくるはず、というのがじいちゃんの見解です。
先陣は山口さん。
この前まで織田方じゃったし後ろから狙われたらたまらんからのう、というこれまたじいちゃんの意見に従いました。
あ、本人には当然そんなこと言ってないですよ。


鳴海城をでて暫し、北へ向かってます。
左前方に三の山、敵の姿は見えません。
じいちゃん、このまま逆に三の山に布陣しちゃえばよくない?
「だめじゃ、おそらく織田はもう山頂にいるはず、登坂しながらの攻撃は下策ぞ」
それもそうか、自分があっち側なら兵は伏せさせて目立たないようにするしね。


「「うぉー!!」」


遠くから響き渡る音声、三の山に翻る織田木瓜。
山肌を駆け下りる織田軍。
「敵襲にございます!」
「そんなことは見ればわかる。五郎、迎撃じゃ。」
予想していたとはいえ…本当に伏せていたとは。
敵との距離は2kmないくらい、1.5kmくらい?
「弓もちは前列へ。足軽はその後ろ、騎馬は我が周囲に待機」
事前の打ち合わせ通り陣形を整える号令をかけます。
いまさらですが騎馬の数って少ないのね、迂回機動で殲滅とか息巻いてたから拍子抜け。
馬鎧をつけてる馬はほんの一握りだし騎馬突撃は夢のまた夢という…。
戦車=武将、戦車運搬車=馬という認識かなぁ。
帰ったら馬の増産と馬鎧の改良考えなきゃ。
こんなことならもっと軍事史勉強しとくんだったと思う今日この頃。
「五郎、何ボケっとしとる。」
「あ、ごめん。じいちゃんは橙備えの指揮を執ってくれるかな」
戦巧者に戦場を任すのは基本だよね。
「うむ、久々に血沸き肉躍るの」
笑みが凄惨過ぎて怖いです。


そんなこんなで我が方の先陣と織田の先陣が接触、弓の射掛けあいがはじまりました。
遠いからこっちまではこないけど生きた心地がしません。
戦国やばい。
お、相手の騎馬武者が矢に当たって落馬してる。
「左翼が押されとるの。兵は少ないがなかなか強い、槍も少し長いようじゃの」
「じいちゃん、敵右翼の側方へ行こう。圧力を減らさなきゃ突破されるよ」
「慌てるでない。今抜ければ正面を抜かれるぞ」
「じゃあ馬廻りの半数と騎馬くらいならもっていける?」
「それくらいならな、橙と残りで支えることは大丈夫じゃが…直接率いるつもりかの?」
「じいちゃんが抜けたら支えられないでしょ。だったら私が行くしかない」
ここで信長を討ち取れなくても手勢を減らせば桶狭間で有利になる可能性も高いのです。
「さすが我が孫じゃの。待っておれ、剛の者と機転の利きそうなのを選んでやるわい」


馬廻り100、騎馬40で左翼方向に移動中です。
乱戦状態から一旦退いている左翼後方に待機、突撃のタイミングを計ります。
その時、山口勢の騎馬武者が落馬、主を失った馬は混乱し敵陣へと突入。
突然の乱入に織田方は混乱。
これは好機、敵右翼側方に向けて駆けます。
機を逃さず山口勢も織田方に攻めかかっています。
「皆の者、我に続け!我が初陣で武功ありし者は我が直属とし譜代としようぞ!」
「「おおぉー!!」
兵のやる気を上げるのも指揮官の勤めです。
でもちょっと大言吐きすぎたかも?
「矢を射かけろ!槍持ちは前へ、穂先を並べ敵陣を崩せ!崩れたどてっぱらを食い破るぞ!」
混戦した敵右翼の斜め前方より我々が突撃、疲弊した織田先鋒を突き崩します。
じいちゃんが剛のものを選んでくれただけあってかなりの衝力です。
比較的乱戦からは離れているので私は弓を射掛け続けます。
戦場に入ってしまえばなんのその、正に殺るか殺られるかの世界、肝も据わるってもんですよ。
周りには足軽20、騎馬10が控えて守っていてくれますし。
よく顔を覚えておいて取り立ててあげよう。


その刹那。


「敵将、今川氏真とみたり!」
騎乗して掛けしてくる織田騎馬武者が三人に足軽が10人ほど。
足軽と騎馬武者二人までは周りの者が防ぎましたが一人が尚も駆けてきます。


「我が名は長谷川橋介、大将首貰ったり!」
咄嗟に弓を棄て、太刀を抜く。


ギインッ!


槍と太刀が交差し、間一髪、敵の一撃を防ぐ。
伊達に剣術習ってるわけじゃないんですよ。
「今川義元が嫡男、今川上総介氏真。塚原卜伝より習いし剣技見せてやる!」
名乗りをあげ敵の槍を太刀で薙ぐ。
敵も逆らわずそのまま槍を棄て太刀を抜く。


二合、三合…付かず離れず馬上で切りあう。
相手も手練、馬を見事に操りつつ太刀を繰り出してくる。


五合、六合…経験の多寡か少しずつ押され始める。


「今川の跡取りこの程度か!その素首いただくぞ!」
このままじゃやばい、桶狭間うんぬん以前にここで終わるのかな…。


「五郎様!」


飛んできた竹槍が橋介の馬へと刺さり、体勢が崩れる。
太刀は何もない空を切り裂いてゆく。
「あとで褒美を取らす!」
言いながら馬の足を切りつけると、馬はさらに暴れ橋介は落馬した。
なんとかなったみたいです。


他の敵勢を凌いだようで周りの者達も戻ってくる。
「五郎様、ご無事にございますか」
「ああ、大丈夫だ」
「窮地にかけつけられず申し訳ございません」
生きてるし他の敵も相当の手練で大変だったみたいだしね。
「何、気にするな。それよりそこの長谷川某が落馬で気を失っているようだ。捕縛しておいてくれ」
「はっ」
日も中天を超え、双方自然と陣を退いていく。
「よし、退くぞ。兵をまとめろ」
まさか切り合いをするとは思いませんでした。
帰ったら剣術にもっと精進しよう…。


「そうだ。先ほどの足軽、窮地を救ってくれて助かった。名を教えてくれ」
さっき窮地を救ってくれた足軽が駆けてきます。
「ははっ、藤吉郎と申しますだ。尾張中村の農家の倅にごぜぇます」
あれ、馬廻り募集したのは遠江と三河あたりだったんだけど。
「尾張中村の者か。して、何故我が馬廻りにおる?」
「あっしは松下之綱様にお仕えしておったんですが、馬廻り募集を聞いて馳せ参じたんでごぜぇます」
頭陀寺城で仕官してたなら納得。
咄嗟に槍を投げるとか機転が利きそうだからとりあえず雇ってみます。
「なるほどな、遠江におったのか。よし、藤吉郎、お主を小者に取り立てる」
「あ、ありがたき幸せにごぜぇます」
「それと今日から名字を中村としろ、よいな?」
「ははっ。名字までいただき、中村藤吉郎、一生五郎様にお仕えいたしやす!」
命助けてもらったしね、名字上げるくらいなら安い安い。
というかそこまで平伏されてかしこまられると困るなぁ。


さて、双方陣を引いたのでとりあえず鳴海城に帰ることに。
合戦の全容がよくわかってないので勝ったかどうかもよくわかってません。
とりあえず負けてないことは確かかな?



[6137] 俺と信虎と山口(息子)
Name: 岡山兵庫◆322ca49c ID:f1264bdb
Date: 2009/03/07 23:29
実戦で一皮むけた、氏真です。


ごめん、嘘です。
まさか自分がチャンバラやるとは思いもよらず。
竹千代に頼んだら本多忠勝くれないかな…くれませんよね。
強い護衛がほしいです。


まぁ、そんな愚痴はさておき、陣を退いて帰還中です。
マジ疲れた、風呂入りたい。
ドラム缶っぽい物作ろうかな、野営で五右衛門風呂とか風流ですよね。
「五郎様、五郎様」
「ん…あ、ああ、どうした?」
くだらないこと考えてたせいで呼ばれてたことに気付きませんでした。
「織田方から使者が参っております」
今さっきやり合ったばかりなのに何の用なんでしょうね。
「何と申しておる?」
「先方が言うには迷い込んだ馬及び捕虜を交換したいそうです」
戦国時代ってそんな牧歌的な風習があるんですか。
知らなかったです。
「ふむ…教吉殿と信虎様と協議するゆえ使者をもてなしておいてくれ」
「はっ、承知いたしました」
自分一人で判断を下すのも自信がないので、山口さん(息子)とじいちゃんに相談することに。
とりあえず本陣に駆けます。


ものの数分で本陣到着。
じいちゃんもこっちに来ているようで、手間が省けてラッキー。


かくかくしかじかというわけで、捕虜交換したいそうなんだけど…。
「捕虜交換のう…織田も内紛で信用できる兵が少ないのかの」
なるほど、だから返してほしいのか。
でも捕虜は別にしても馬は返してほしいよね。
「そうじゃな。まぁ、ついでだし捕虜交換も了承したらどうじゃ」
そうだね、返してもらえるなら返してもらいたいね。
「では我が方でとらえた者と馬も連れてこさせましょう」
じゃあ私は織田の使者にあちらに何人捕まったか尋ねてくるよ。
「そうじゃの。ではわしも付いていくぞ」


そんなこんなで面会中です。
「当方では荒川又蔵以下10名を捕えておりまする」
「こちらで捕えているのは長谷川橋介、赤川平七以下8名だがそちらの10名と交換でよいのか?」
「橋介様は御屋形様の馬廻りであり、こちら10名全員との交換でもよいと託っております」
あれが真の馬廻りか…それに比べてうちの馬廻りと来たら…。
馬廻りの前に(自称)をつけなきゃならんね。
帰ったらちゃんと戦える人集めよう。
「では交渉成立だな。捕虜と馬を連れてくる故しばしお待ちいただきたい」
10人と交換するような逸材だったら首落としておけばよかったなぁ、なんて後悔したり。
でもあれを捕らえたおかげでこっちの捕虜が全員返ってくることになったし、まぁ、いいかな。


引き渡し前にちょっと橋介に会うことにしました。
意識も戻ったみたいで呑気に飯なんぞ食っとります。
こいつが捕虜10名分ねぇ。
「これはこれは今川の大将殿、首はつながっておりますかな?」
ぴんぴんしてるよ、五体満足。
「それは何よりで。して何用ですかな?」
いやね、橋介うちこない?強いみたいだし。
「…うちの御屋形様もうつけと呼ばれておりますが、あなたは本物ですな」
何この無礼者、首落とすよ。
「考えてもみなされ、先ほど戦い、首を取られそうになった敵を雇う者がどこにおりますか」
まぁ、確かにそうだよね。
「そうでございましょう。しかし器が大きいのか阿呆なのかよくわからぬお人ですな」
…褒め言葉と受け取って首は刎ねないであげるよ。
それでくるの、こないの、どっち?
「過分な評価ありがたくございますが、取り立てていただいた信長さまへの忠義もありますゆえ、お断りさせていただきます」
やっぱ、普通そうだよね。
10人と交換してもいいって相当かわいがってもらってるみたいだし。
ま、路頭に迷ったら私んとこきなよ、召抱えてあげるからさ。
「わかりました。ですが戦場でまみえた場合は?」
そんときは叩き切って後悔させてやるよ!
「ふふっ、では私も手加減なしで仕掛けますゆえご覚悟を」
引き抜き失敗しました。
地道に剛の者を探すしかないかなぁ。


その後お互いの引き渡しは何事もなく終わり、今度こそ鳴海城へと帰還の途につきます。
「五郎よ、それにしても惚れ惚れする戦いっぷりじゃったな」
正直必死でよくわかんなかったんだよね。
「まぁ初陣とはそういうものじゃよ。じゃがなかなかの大将っぷりじゃったことは間違いないぞ」
でも大将が刀ふるってちゃだめな気もするよ。
「時には必要なことじゃよ。単騎駆けして敵陣に突っ込んだわけではあるまい?」
それはそうだけど、大将ってもっと後ろで構えてるもんじゃないの?
「それはそれで一つの形だがの。前線に近いところに身を置いた方が戦の把握はし易かろう。時には大将自ら先頭に立つことも必要じゃよ」
確かにそうかも。
でもさっきは好機を見て思わず跳び出しちゃっただけなんだけど。
「おお、言うのう。それこそまさに将の器、さすが我が孫じゃ。戦の好機を見極める目こそが大切なんじゃよ」
勢いに乗って攻め入ってるだけじゃ猪武者じゃないの。
「はっはっはっ、言われてみれば確かにそうじゃの。ま、そこは経験で補うんじゃな。なぁに、わしも付いていてやる故安心せい」
うん、頼りにしてるよじいちゃん。
「かわいい孫の頼みだ、老骨に鞭うってやるわい」
どこが老骨かって言いたかったけど黙っておきました。


さてさて、そんなこんなで初陣も終わり、五体満足で帰還できました。
一休みしたら近くのお寺に移動です。
なんでかって?
そう、今から兵隊の皆様おまちかね、首実検なんです。
床机にふんぞり返って実検してやりますよ、テンション上げていこー!
「失念しておった!」
突然大声あげないでよ、びっくりするじゃない。
「おお、すまんすまん」
それでじいちゃんどうしたの。
「いやな、捕虜返してしまったじゃろ?誰が首を確認するんじゃ」


Oh!Shit!


「五郎は時々よくわからんお国言葉を使うのう」
ああ、ごめんよじいちゃん。
それにしてもどうしようね。
「それならば、それがしにお任せください」
そこに現れるは山口(息子)さん。
それで何か妙案でもあるの?
「はい、言いにくいことですが我々は元は織田方。旧知の間柄の者も多いのです。彼らに実検に立ち会ってもらえば大丈夫かと思いまして」
なるほどなるほど、教吉さんさすがです。
「お褒めにあずかり光栄です」
「よし、では首実検を始めるかの」
そうだね、じゃあ藤吉郎!
「五郎様、お呼びでごぜぇますか」
うん、兵たちに首実検するって触れまわってきてくれるかな。
「はっ、全力で触れまわってきますだ」
いや、全力って…ってもういないし。


さて、始まりました首実検。
一番はじめの首は荒川与十郎のものだそうです。
うわぁ…ほんとに生首だよ、化粧されてるし。
そして山口さん配下の方がご確認。


暫し確認中。


本人に間違いないそうです。
首実検の作法はよくわからないのでじいちゃんと山口さんに丸投げ。
藤吉郎がさっそくじいちゃんにこき使われていました。
私はというと、うむ、わかった。そちの働きに応じた褒賞を取らそう、これだけの繰り返し。
だって、ねぇ、褒美の基準とか分かんないし。
あ、そうそう、我が配下も頑張ったようで内藤勝介と青山藤六という名のある者を討ち取ったそうです。
特に内藤さんは結構大物だとか。
いやぁ、鼻高々っすよ。
今川勢で打ち取った首30、山口勢が32、捕虜8人となかなかの戦果でした。
これで親父に所領もらえるかな。
もらえないと(自称)馬廻り分借金生活ですわ。


首実検も終わり、事後処理も一段落。
そんなこんなで駿河に帰還です。
首のほうは名のある者のだけ塩漬けにして持ち帰ります。
残りは首桶に入れて織田方に返却。
呪われたらたまんないですからね。
そうそう、山口(息子)さんが駿河まで付いてくるそうです。
折角なので親父にお目通りしたいそうでして。
後のこまごました事後処理や鳴海城の守備は山口(父)さんに任せておいたので大丈夫です。


さて、三河で味噌もらって帰るかな。



[6137] 竹千代の駿河日記
Name: 岡山兵庫◆322ca49c ID:f1264bdb
Date: 2009/03/07 23:15
天文二十一年四月三十日
晴れ

明日は五郎兄さんが帰ってくる日だ。
織田の軍勢を破ってみんなも兄さんのことを認めたようである。
しかも自ら信長の馬廻りを捕縛したらしいし、やっぱりすごいな。
聞くところによると兄さんは知行をもらえるそうだ。
噂に聞く活躍なら当然だよね。
どうせなら尾張のあたりにもらえば僕の岡崎に近いな、なんて思ってみたり。
でも最前線だしそれはないかな?


天文二十一年五月一日
晴れ

今日、五郎兄さんが帰ってきた。
心なしか精悍な顔つきになってる気がする。
やっぱり戦場で刃を交えると何か変わるのだろうか。
明日はいよいよ論功行賞らしい。
兄さんはどれくらいの知行をもらうのかな。


天文二十一年五月二日
晴れ

今回の戦の論功行賞があった。
五郎兄さんは5000貫の知行をもらったそうだ、すごい。
相良牧も所望して受領してたけど馬好きだったなんて初耳。
尾張じゃなかったけど、今あっちに行くとなかなか会えなくなるからこれでよかったかな?

そうそう、信虎様は正式に五郎様付きだそうだ。
五郎と五郎で尾張を席巻ってはしゃいでた。
前から思っていたけどあの普段の軽薄さが追放の原因じゃないかと僕は思う。
信虎様のことは好きだけど父親があれなら追放したくなる気もわからなくも…。
戦場では冷静で威厳ある武将だったって兄さんは言ってたけど信じられないなぁ。
そうそう、今日はお祝いということで宴が催されるそうだ。


天文二十一年五月三日
曇り

昨日はのめや歌えやで死屍累々だった。
義元さまは全裸で能を舞っていたところ、すぐに十郎大夫さんに見つかって折檻されてました。
そういえば以前五郎兄さんも雅綱さんに折檻されてたし…。
さすが親子だと思う。
でも二人ともよくしてくれるので見捨てないであげたい。



[6137] 親父と雪斎と両家老 其の二
Name: 岡山兵庫◆322ca49c ID:f1264bdb
Date: 2009/03/11 22:37
氏真の帰国から日も経った今川館。


居並ぶのは今川を動かす首脳部である。
「この度の五郎様の初陣、見事なものであったと信虎様もおっしゃっておりました」
口火を切るのは朝比奈備中守、氏親、氏輝、義元の三代に渡って仕えている重臣中の重臣である。
ちなみに息子の泰朝は氏真の幼馴染。
「手勢を率いて敵側面を突くとは五郎様もなかなかに豪胆でありますな。これは将来が楽しみにございます」
太原雪斎、言わずと知れた義元の師であり、軍師であり、また自らも前線に立つ臨済宗の僧である。
尾張戦略を一手に引き受けていたりと、まさにオールマイティなじじい。
「これで今川も安泰ですな。目出度きことにございます」
二度目の登場、三浦左馬助。
尾張の笠寺砦の守将ですが氏真の凱旋に付いてきました。


「それにしても五郎様に5000貫ですか。差し出がましいかもしれませぬが、今川家は家督継承に関して流血を見ることのなき家で…」
義就の心配ももっともである。
事実、義元自身も兄である玄広恵探を討って家督を継承している。
義元の父である氏親の家督継承の際にも内紛は起こり、その際には若き北条早雲が活躍していたりする。
「それ以上は言うな、わかっておる。しかしな、わしだって何も好き好んで兄達を手にかけたわけではない。戦国の世といえども、親子兄弟相食むのは人の道理から外れておると最近頓に思うのよ。信虎様と五郎の様子を見ると、今更ながら少し羨ましくてな」
物心ついたころには寺に預けられ、呼び戻されたと思えば兄との家督争い。
義元が近親で頼れたのは寿桂尼くらいであった。
「御屋形様…」
「それに五郎は嫡子だし大丈夫であろう」
「しかし、信虎様の例もありますし…」
「確かにな。そこで考えたのだが、わしは五郎に家督を譲ろうと思っておる。」
「そ、それは真でございますか!家督争いの芽を摘むためとはいえ、五郎様は未だ15才、早くはありませぬか」
「いや、すまんすまん、いずれ、という話。まだ嫁ももらっておらんしな。5年程後、そうだな、あやつが20になったら譲ろうと思う」
「左様にございましたか。あ、もしや、5000貫の知行をお与えになったのはそのために…」
「そういうことよ。口ばっかのやつかと思うておったが武の才もないわけではなさそうだしの。治の経験を積ませれば、今川の家を守ってくれよう」
雑多に提言してくる五郎であるが、それは実践不足からくる不見識ゆえだと義元は思っている。
多少親馬鹿だと本人も自覚しているようではあるが。
それに、いかに雪斎と信虎という当代一といって過言ではない教師役がいようとも、実践に勝る訓練はないとも考えていた。
「それならば5000貫はよいかもしれませぬな、かなり独自なことができましょう。しかし補佐役はどうするおつもりにございますか」
「信虎様は当然として、西郷正勝、新野親矩、都築秀綱を付けようと思っておる」
「なるほど、その者達であれば安心して任せられますな」
「泰朝殿、竹千代殿もお付けになってはいかがでしょうか。五郎様とも仲がよく、ご両人ともなかなかに優秀ですぞ」
「うむ、そう言おうと思うていたところよ。弥太郎よ、構わぬか」
義元の願いは両人を次代の今川を担う人材とし、氏真の補佐とすることである。
そう、ここに会している雪斎や両家老のように。
「異議などあるわけがございませぬ。ありがたきことにございまする」


「しかし朝比奈殿はよき跡取りをもたれて羨ましいですな。どうですか、うちの娘を嫁になど」
「おお、御両家が姻戚になるとは好きことにございますな」
「こらこら、弥太郎を差し置いて二人で話を進めるでない。しかし、確かに好き縁組かもしれぬな、どうじゃ弥太郎?」
「実に好きお話でございますな。こちらからも是非にお願いいたしまする」
「それでは決定だな。目出度い目出度い。よし、誰ぞおらぬか、酒と肴を持ってまいれ!」
こうして酒宴は今日も続く。



[6137] 俺と…家臣が増えて書ききれません
Name: 岡山兵庫◆322ca49c ID:f1264bdb
Date: 2009/03/11 22:37
どうもお久しぶりです、いきなり5000貫の知行と牧場を得た氏真です。
実感がわきませんがなんか大変そうです。


なにはともあれ実地を見ようと思いたってやってきました、相良牧。
駿遠最南端の御前埼のちょっと北です。
ここら辺は白羽牧、笠原牧もあって遠江の馬の一大生産拠点なんですよ。
本当は三つとも管理権ほしかったんだけどまだ早いって親父に怒られちゃいました。
成果次第で考えてやる、とは言っていたので我慢したけど。


それでですね、何故牧場の管理権をもらったかというと、何を隠そう今川騎馬軍団を作るためです。
どうもこの時代って騎兵単独での運用って普通はしないそうなんですよ。
というか、騎乗できるものが少ないというか馬が少ないというか…。
そこで、騎兵の養成と戦場での集中運用で日本の戦史に名前を残そうかと目論んでおります。
ゆくゆくは竜騎兵とかも作っちゃおうかな、なんて夢想してたり。
具体的な一歩としては、馬の増産、国人層の三男以下を供出させ騎兵部隊の中核にする。
そののち、足軽や自称馬廻りから素質のある者を取り立て騎兵にする、というのが私の計画です。
基本は給金で雇うことにして兵農分離もやっちゃおうかと。


この計画のために西郷さんには牧の管理、都築さんには騎兵の養成をお願いしようと思っています。
新野さんには自称馬廻りを扱いてもらって立派な武者に仕立ててもらうと。


まさに完璧な布陣。


「さて、孫三郎にはここの管理をお任せします」
あ、孫三郎っていうのは西郷正勝のことです。
ちなみに都築秀綱は惣左衛門、新野親矩は左馬助です。
「どんな手を使ってもいいから増やすように努力して下さい。甲斐や奥州から馬を取り寄せますので何としてもお願いします」
甲斐の黒駒は武田に嫁入りする妹の綾の伝手を伝って手に入れる予定です。
ゆくゆくは蹄鉄とか去勢も導入したいけどいかんせんできる人がいないんですよ。
ならばせめて数だけでも増やそうと。
荷馬もほしいですしね。
「あと糞尿に関しては勝手に肥料にしないで一か所にためておくようお願いします」
「糞尿を何かに使うのでございますか」
「火薬をつくるんですよ。これからの戦には必須となるものです」
この先必ず鉄砲の時代になるのはわかっています。
だったら火薬の確保は最重要なわけですよ。
ということで原料であるアンモニア分をゲットというわけです。
それと、更に窒素分の多いものを混ぜれば効率良く生産できるはずなんですけど…。
いかんせん、そっちはよくわからないっす。
ハーバーボッシュ法とか大学受験でやったけど何の役にも立たないね。
「わかりました。ご下命とあらばこの孫三郎、精一杯務めさせていただきます」
「それではよろしく頼みます」
これで硝石の確保はたぶん大丈夫かな。
でも念には念をいれて諸国の焔硝生産の調査を雪斎辺りに頼んでおこう。


「惣左衛門には騎馬武者を取りまとめてもらいます。ゆくゆくは騎馬大将ということで」
「はっ、かしこまりました。ご期待に添えるよう励みます」
「期待しています。人員はこちらで確保して惣左衛門に送るので訓練も頼みます」
これで騎兵に関しては漸増していく…といいなぁ。


「左馬助には馬廻り180を率いてもらいます。寄せ集めで申し訳ないのですが使えるようにして下さい」
募集かけた時は300くらいいたんですが恩賞払った後に結構帰っちゃったんですよね。
それで残った数が上記の数字ってことです。
「殿のお頼みならば異存はございませぬ。必ずや一流の武士(もののふ)に育て上げてみせましょうぞ」
「私の命もかかってますからね、よろしくお願いします」
とにもかくにも直属の兵力は形になりそうです。
ただ、騎兵の養成具合にもよりますが今の所領だとかつかつになるんじゃないかと。
馬廻りは地侍や農民出身が多いので給金がそこまで多くないのが救いではありますが。


「我が今川の家運がかかっているといっても過言ではないです。それでは三人とも苦労をかけますがよろしく頼みます」
「「「ははっ」」」
当面の目的は信長の兵と同数でぶつかっても負けない部隊を作ることです。
この前は二倍の兵力で完勝とはいかなかったですし。
そこで兵力を蓄えつつ織田方の混乱も誘おうと手を打とうかと。
雪斎の手の者と竹千代に頼んで松平家のルートを使って離間工作を始めるつもりです。
まぁ、今川には太原チート雪斎がいますからすでに何かしらやっているとは思うんですがね。


領地経営については親父に人材いないよ、って泣きついたら長谷川長綱と彦坂光景を付けてもらえました。
両者とも優秀だと雪斎のお墨付きです。
これで一安心なのですが、5人も付けてもらったせいで所領がやばいという…。
直属兵力も増やしたいし、街道とかも整備したいしで金子が足りないっ。
何か殖産とか本格的に考えていかないとまずいです、はぁ。


そうそう、話は変わりますが、相良牧って牛も有名らしいんですよ。
思いもしなかったサプライズ。
遠江牛って結構名が通っているとか。
久々に飲んだ牛乳の旨さに涙しました。
牛肉の味にも飢えているのでどうにかして食用にしようと思っています。
ビーフジャーキーとか兵糧にもうってつけですしね、建前ですけど。
すき焼きがたべたいっていうのが本音です。
たまりはあるから問題は砂糖…南洋との交易を真剣に考えてもいいかもしれない。
あ、養蜂って手もありかな。
日本の食文化に革命を起こす、グルメ大名氏真って肩書きもありかもしんない。


――――――――――――――――――――
こっそりブログ作りました。
覚書はそちらに移し、こちらには本編のみ投稿にいたします。



[6137] 俺と親父と下克上被害者
Name: 岡山兵庫◆322ca49c ID:f1264bdb
Date: 2009/05/10 18:25
さて、今川館に戻ってきました。
所領はもらったのですが居館はまだ建設中なので実家にパラサイトです。
居館ができてもこっちにいることが多いんでしょうけどね。


「五郎様、五郎様ぁー」


叫びながら駆けてくるのは我が忠実なしもべ藤吉郎君です。
熱心な働き者で非常に助かっとります。
一生懸命過ぎて偶についていけないこともありますが。
「五郎様のご依頼にめどがついたのでごぜぇます」
おお、ついに我が野望の成就するときが!
藤吉郎には、戦場で五右衛門風呂計画のために湯沸かしできるものを探しておくように頼んでおいたのです。
「鉄製の樽というのは鍛冶屋でも難しいそうで、釜ならば作れるということですだ」
やっぱりドラム缶は無理だったようで、本物の五右衛門風呂になりそうです。
大釜的な意味で。
まぁ、贅沢は言えないのでこれで良しとしておきます。
しかしこれで常在浴場が可能に!
行軍とか土埃で汚れてたまんないんですよね。
あ、ついでに公衆浴場も整備しようかな。
日本は水が豊富ですしね。
混浴か…やっぱ混浴だよなぁ…。


「五郎、何を呆けておる」
思いを馳せていたらいつの間にか親父が目の前に立っていました。
藤吉郎消えてるし。
「お前も5000貫の領主なんだからしっかりしてもらわんと…そろそろ娶嫁させるかな…」
なんか自分一人で考え込んでしまってるようで。
…ん?今娶嫁っていったような。
「やはり武田、北条あたりか…」
なんか一人で話進めてるし。
まぁ、どうせ正室にたいする選択権なんて無いんだろうからいいんですけどね。
というかそろそろ本題に入ってほしい。
なにか用があってきたんだろうし。
「ん…。お、そうだそうだそれは置いといてだな。今年の霜月に綾が武田に嫁ぐのは知っているか」
綾っていうのは我が妹です。
今度武田の嫡子、義信君のところへ嫁ぐそうでして。
あれ、そうすると義信君は従弟で義弟になるのか…複雑な。
「それでな五郎、ちょっと甲斐まで行ってこい」
話が飛躍しすぎで付いていけません。
「駒井殿にはもうお伝えしたから断るとか無理だぞ」
よっぽど嫌そうな顔してたんですかね、先手を打たれました。
まぁ、初陣の時といい外堀は既に埋められてる気はしていましたけどね。
まだ知行地でやってみたいこととかあるんですけどねぇ、混浴とか。
というか私が行く必要あるんでしょうか。
「甲斐の国情、しっかり見てくるといい。あらゆる可能性を考えるのも惣領の役目、ここまで言えばわかるな?」
あー…いつか武田が攻めてくる可能性もあるってことか…。
改めて思うけど世知辛い世の中ですね。
というか信玄とガチとか死亡フラグじゃね?
うお、持病の武者震いが。
「ご、五郎、落ち着け?何も喧嘩を売って来いとはいっておらんのだぞ。綾の嫁入りに付いていってこい、と言っているだけだ。物見遊山とでも考えるといい」
いや、これは武者震いでしてね?ビビってるわけじゃないんですよ?
でも、まぁせっかく行くなら青崩峠を通って地勢を見るべきですよね。
親父もそういうこと言いたいんだろうし。
そうすると、甲府の帰りに曳馬の飯尾豊前守や吉田の小原肥前守に会いに行くってのがいいのかな。
城下整備のコツを聞くとかの理由で。
ついでに犬居の天野安芸守にも会ったほうがいいですよね。
視察、ということであれば迂回する名分も問題ないでしょうし。
少なくとも表面上は、ね。
「うむ、ならば信濃から遠江に抜け三河にでるのがいいだろう。豊前と肥前、安芸にはわしから文を出しておく」
どうやら正解だったようで親父が満面の笑みを浮かべています。
息子の私でもこれはちょっと…。
「何か言いたいことがありそうだな」
どうやら顔に出てたっぽい。
「まぁ、よい。まだしばらく日はあるが、準備だけはきちんとしておくように。綾の晴れの舞台、まして武田との同盟だ。失礼のないようにな」
私を偵察目的で送るのは失礼ではないのかなぁ、なんて疑問に思ったり。


親父が行ってしまったらとたんに暇です。
持て余すのも何なので、留守の間に任すことをさらさらと書きとめておきました。
なんかやってないと憂鬱で死にそうなんですよ。
信玄だけでもチートなのに山本勘助とか真田幸隆までいるんだもんなぁ。
安西先生、軍師がほしいです、雪斎級の。
いや、私の配下も十二分に優秀なんですけどね。
寄騎は新野さんと都筑さんが存分に鍛えてくれていますし、内政は長谷川さんと彦坂さんに任せておけば大丈夫です。
大名経験者のじいちゃんも補佐してくれますしね。
書状を書いてはいますが基本は丸投げですし。
ほんと、私が五右衛門風呂とか適当なことやっていられるのもみんなのおかげです、感謝感謝。
気分は秘密結社のマッドな博士ってところでしょうか。
雑務は任せて指示は出すわ、好き勝手やっていられるわ、責任取るのは親父ですし。


あ、あれ、最低な気がしてきたぞ…下克上されないかこれ。


「五郎、戻ってきおったらわしのとこへ来いと言ってお…なんじゃ、どうした」
冷や汗だらだら流してたらじいちゃんが心配して覗きこんできました。
そういえばこの人も大名だったなぁ、と思いだし相談してみることに。
「それをわしに聞くかのぉ」
あ、この人息子に国を追われた準下克上被害者だった。
で、でも経験者ならばより重要な示唆をもらえるはず…!
「助言とな…まぁよかろう、少し長くなるが話してやろかのう」
統治の大綱というか大まかなことは今までも話してくれたことがあるんですが、今日は本腰入れて話してくれる雰囲気です。
これは期待できそうな?
「わしのいた甲斐という国は田畑に適した土地が少なくての、逼塞しているだけでは飢えてしまうような場所なのじゃ」
なんか昔話から始めるみたいです。
じいちゃんは話の腰を折ると怒るので黙って聞いておきますが・・・長くなるのかなぁ。
「ならばどうするか、他国へ拡大するしかあるまいて。じゃが、戦というのは民や家臣に困窮を強いるものというのはわかるであろう?」
まぁ、それくらいはわかります。
一応戦も経験して荒れ果てた戦場跡とかも見ましたしね。
「わかっておってものう、攻めねば飢える、ならば膨張するしかあるまい。そして勝つためには効率を高める必要がある。ならばわしが直接家臣の手綱を握り、国をまとめあげるのが最善じゃろ?どんなうつけでも考え付くことじゃて。」
たしか、世界史でも群雄割拠→封建社会→中央集権だったような・・・ような?
記憶力が微妙で前世っていうアドバンテージが生かせないよ神様。
でも普通に考えても、中央集権化してトップが末端を把握しやすくする&指示しやすくするって言うのは道理にのっとっていますよね。
強権化すれば国人の日和見具合も低くなりそうですし、戦もしやすくなりそうです。
まぁ、トップの力量に左右されやすいって弊害もありそうですけど。
「わしの能力は完璧じゃからそこは心配する必要はないがの」
あ、なんか追放された理由がわかった気がする。
「五郎、お前はなかなかに優秀な奴じゃと思う。しかしの、ちぃとばかし表情が出やすいようじゃの」
か、刀に手をかけるのはやめていただきたいです。
私の顔のことは置いといて続きをお願いします。
「ふっふ、冗談じゃよ。じゃが武家たるものむやみに取り乱したり、家臣に不安を悟られるようなことはあってはならんぞ。大将たるもの常にどんと構えておるものじゃ。わしが福島の大軍を迎え撃った時なぞは…」
あ、思わず話の流れを変えてしまった…これはしばらく武勇伝が続く予感。
これはこれで戦の勉強になるからありがたいんですが、今日は下剋上対策とか信玄の人柄とか聞きたかったんだけどなぁ。


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