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[7197] 異世界の混沌 [三月十二日完結]
Name: 榊 燕◆972593f7 ID:e298aa1b
Date: 2009/03/12 00:10
 初めましての人は初めまして。
 お久しぶりの方はお久しぶりです……といっても、それほど長い間開いていませんが……。
 作者の榊 燕と申します。
 このチラシ裏でこそこそと「異世界混沌平凡譚」なる物語を紡いでいたものです。
 またもやこそこそとへたれな作者は投稿開始しようと思います。
 この物語は……前作「異世界混沌平凡譚」と深くかかわりのある物語です……というよりも、名前と登場キャラが変わっただけで世界全く変わってないんですけどね。
 この題名だって、作者的には異世界の混沌っていう題名のつもりで付けています。
 作者頭が非常に悪いため、もしかしたら大いに間違ってるかもしれませんがそのときはご容赦ください……。
 ってかやっぱり題名「異世界の混沌」って名前にしておきます。
 ……ちなみに最初に付けていた題名は「ディファレンスカオスワールド」です。
 それでは……稚拙な物語ですが、もし気が向く方がいらっしゃるのであれば、ぜひ読んでやってください。




 ちなみに……前作同様、この物語も作者の脳内で勝手に作り上げたご都合主義万歳名設定がかなり満載されています。
 ご容赦ください……。



[7197] 異世界の混沌 プロローグ
Name: 榊 燕◆972593f7 ID:e298aa1b
Date: 2009/03/08 01:07
    プロローグ~僕は今かの都市伝説にもなった地に立っている!~





 突然ですがピンチです。
 えっ?
 突然何の事だか解らないって?
 あっはっは。
 そりゃそうだよね~、実際ピンチな僕でも何がどうなってこうなってんのか解らないんだしさ。
 さて……そろそろ今の状況を説明しようか?
 目の前に壁があるんだ……。
 うん、でっかい……だけどとてもふさふさした感じのでっかい壁がね……。
 ……だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
 何でINした瞬間に目の前にばかでかいモンスター何かいんだよ!?
 つぅ訳です。
 はい、今の無駄にハイテンションがまごう事なき今の僕の心情です。
 ……誰か助けてくれないかなぁ?





 僕はとうとう手に入れた!
 かの伝説のある幻のゲームを……都市伝説として語り継がれている幻のゲームを!
 このゲーム……PCを媒介にしてオンライン上で遊ぶゲームなのだが……普通のネットの中にある訳ではない。
 ある会社が独自に作り上げたサーバーの中のみに存在し、それらは通常のネットでは接続不可能な状態になっている。
 どういった技術かなんて知らないが、そのゲーム本体を手に入れ、それに書かれている特別な条件を満たしたうえで、手続きをすればつなげるようになるのだ。
 ただ……PCを媒介にしているといったが……実際本当にこれはPCなのか?
 今僕の目の前に広がるのはよく昔の映画とかに良く出てきたコールドスリーピングとかしてる時に使うような大きな機械だ。
 ……うん、正直使うの怖いよね?
 他のゲームは大概PCとバイザーがあれば遊べるのに……このゲームはこれを使わないと遊べない……本当に規格外なゲームだ……。
 でも……僕は今までお伽噺や伝説、唯の都市伝説としてしか信じられていないあの話があるこのゲームにものすごく憧れをもっていた。
 そのお伽噺みたいな伝説というのが、ゲームの中にNPCじゃない現実世界の人間が暮らしている……そんな話だ。
 最初はそんなの誰か暇なプレイヤーがやっている事か、運営がやっている事だと思っていた。
 だけど……このゲームをまずはプレイヤー達が手放した。
 流石に……初期のこのゲームは身体にかかる負荷が強く、下手したら意識障害などを起こしてしまうほどだったらしい。
 それによって一度ゲームは回収され、その後懲りずにまた発売された。
 その次に放置したのが運営側だ。
 何と……半年もの間、責任を放棄しそのゲームから身を引いた。
 その後また何故か知らないけど普通に戻ってきて、未だに続いているんだけどね。
 そして……その間そのゲームの中で暮らしているという現実世界の人間はその場に存在し続けたらしい。
 最初にもたらされたのは運営側からの情報だった。
 違法に接続しているプレイヤーがいます……最初そんな話だったのだが、そのプレイヤーと思われる人物をいくら調べても何処からもログインをしていない事が解った。
 どうしようもないと思い、全てのネットから一度そのゲームを切り離したにもかかわらずその人間はその場に存在し続けたらしい。
 次に運営はそれが新しく生まれたNPCじゃないかと思った。
 このゲーム面白い事にNPCが自動的に増える。
 運営すら知らないうちに増えていくのだ。
 その上NPCは最初に作ったとき以外中身をいじる事が出来ないため、細かな事をさせる事が出来ない。
 つまり……何か問題が起こった際の世界のバグの修正と、モンスターたちの力バランスぐらいしか運営側にできることはないのだ。
 後は時々イベントを起こしたり位いかな。
 本当に何を考えて作ったんだか解らないゲームだよねぇ……。
 おっと、話がそれたな。
 それでその人間なんだけど、今度は運営側が放棄した後、ネット自体が残っていたので遊び続けているプレイヤー達がいた。
 その彼らが言うには、そのときにも常にその人間はその場に存在したという。
 つまりだ……そこでこのお伽噺みたいな伝説が生まれたってわけだ。
 そして僕はそれを信じ、憧れた。
 僕の夢は……正直他の人に言うのも憚れるが……剣や魔法があり、モンスターがいる異世界に行く事だ。
 ……解っているさ、房二願望だって……あり得ないオタク脳だってさ。
 実際そんな事がある訳ない。
 だからこそ憧れるくらいしたっていいじゃないか。
 ……また話がそれたなぁ……悪い癖だ直さないと。
 さてさて、それでもって今目の前にあるこのばかでかい機械がそのゲームをするためにPCというわけなんだなこれが。
 そんでもって今インストール中。
 って……ああいつの間にか終わってるじゃないか!?
 ……ビビってどうするよ僕。
 さぁ……覚悟を決めていくんだ!
 僕はそう自分に言い聞かせてその機会に横になり、開始と書かれているボタンを押した……。
 次の瞬間体のあちらこちらに変な機械が張り付けられ……意識を失ったんだ……。





 そして今目の前にモンスターがいるってわけさ☆
 あっはっはっは!
 余りにも素敵過ぎて泣けてくる……orz。
 入った瞬間情けないけどこれはもう駄目だと思ったね。
 こりゃ死んだ、僕なむ~ってね?
 眼を閉じて天に召されるのを待っていると、ドサッって音と共に目の前の壁がなくなった気配がした。
 恐る恐る眼を開けてみると、目の前にいたモンスターは後ろ向きに倒れている。
 うん、死んだのかな?
 解らないけどひとまず逃げよう!
 僕がそう思って立ち上がろうとしたんだけど……ははは、情けないけど腰が抜けてたてないや。
 そんな僕に声をかけてくれる人がいた。

  「大丈夫だったか?危なかったなぁ……偶々見まわっていたときだったから良かったものの……そんな装備ともいえない道具だけでこの変うろつくのは自殺行為だぞ?」

 そう声をかけてきた人は黒髪に黒い瞳の日本人と思われる人。
 身長も僕と同じくらいで恐らく175センチくらいだろう。
 僕は彼の手を借りながら何とか起き上がると事情を説明した。

  「ああ……プレイヤーなのかぁ。俺は一応この世界の人間だからなぁ……最初に来たやつらがどうするのかよく知らん……すまねぇな。」

 ……変わったNPCだな?
 ひとまず、助けてくれた事にお礼を言ってこれからどうしようかと迷っている僕に、彼はもしよかったらひとまず家に来るかと言ってくれた。
 だから僕は素直にうなづいたんだ。

  「はい、すいませんがお願いします。」

 そして僕は彼が住んでいるという、この世界の最果てに位置する小さな村へ向かったのだった。



[7197] 異世界の混沌 第一話
Name: 榊 燕◆972593f7 ID:e298aa1b
Date: 2009/03/08 01:55
     第一話~この村に名前はないらしいから、始まりの村と名付けよう!~





 はふぅ~。
 僕は助けてくれた男性の奥さんから温かなお茶をいただき一息ついた。
 そこで……漸く落ち着いたせいか、僕達はお互い自己紹介一つしていない事に気が付いたんだけどね。
 正直……NPC相手に自己紹介と化しても意味あるのか解らないけど……一応助けてくれた人だし、そのあたりは例え誰であってもしっかりとしておきたいしね?
 だからひとまず僕から自己紹介を始めてみましたよ。

  「あっ!助けていただいて本当にありがとうございました。いまさらですが自己紹介もせず申し訳ありませんでした。僕はさ……エンっていいます。よろしくお願いします。」

 何をよろしくお願いするんだろう?
 そんな事を考えながらも、当たり前のあいさつ文だししょうがないだろうと自分にいい訳をしながら彼等を見つめる。
 少し驚いたように男性が僕を見た後、柔らかく笑いながら自己紹介をしてくれた。

  「ああ悪い、俺はマサキ……イワサキマサキだ、よろしくな。」

  「私はレイスです。この村で村長をしていますので、何か問題がありましたら遠慮なく来てくださいね?」

 そう言って、女性もやさしい微笑みを浮かべながら自己紹介をしてくれた。
 マサキさんにレイスさん。
 ……話してみると本当にNPCに見えないし感じないなぁ。
 誰かプレイヤーがロールプレイしてんじゃないのかなぁって思うくらいだ。
 だからなのか思わず聞いてしまった。

  「あのぉ……失礼ですがプレイヤーの方ですか?」

 とね?
 正直馬鹿な質問したもんだ。
 んなもん、相手が本当にプレイヤーであれば正直失礼にも程がある。
 プレイヤーじゃなければ不思議そうに可笑しな人を見るような眼で見られるんだろう。
 だけど……僕のその思いとは違う反応が返ってきた。

  「あぁ~違う違う。俺は……俺たちは唯の村人さ。この村の人間だよ。」

 どこか……何か含んだようにマサキさんはそういった。
 何だろう……何か違和感があるなぁ?
 詳しく彼等をしらない僕がそんな事解る訳ないか。
 ならいいや。
 考えても仕方ないしね~。

  「んぅ~もうこんな時間か……エン君は何処にも泊まるところがないんだろう?ならこの家に泊まっていくといい。困った時はお互いさまという事だしね。もし……この村を拠点にするなら俺の家の一室を貸してもいいしな。今日一日良く休んで考えてみてくれ。」

 マサキさんはそういうと僕を部屋まで案内し、「お休み。」という言葉と共に離れていった。
 その後ろから温かな感じのする、どこかほっとするようなにおいのする葉っぱを入れた入れ物をレイスさんから渡された。

  「精神が落ち着いてよく眠れると思いますのでこれをどうぞ。今日は疲れたのでしょう?ゆっくり休んでくださいね、お休みなさい。」

 そう言って二人は僕の部屋のドアを閉めて離れていった。
 ……良い人たちだなぁ。
 今の現実世界じゃ絶滅危惧種並みに珍しいほど良い人たちだ。
 僕は……彼らの言葉に甘えることにして布団に横になると、予想以上に肉体的にも精神的にも疲れていたんだろう。
 直ぐに意識がなくなってしまった。
 気付くとマサキさんが朝食が出来たといっておこしに来てくれていた……少し恥ずかしい……。





 僕がこの村に来てから一週間がたった。
 どうやらこの村に名前はないらしい。
 だから僕は名義上、名前がないと呼びづらいので『始まりの村。』と勝手に命名していた。
 そして……この村の人達は、マサキさんとレイスさんに始まり皆が皆良い人だった。
 正直……居心地がよすぎる!
 やばいやばい。
 せっかくこういったゲームをするんだからレベルを上げて強くなって、色々と冒険したいじゃないか。
 それなのにこの村にいたらそんなことしないで入り浸ってしまいそうだ……。
 悪い事じゃないんだけど……せっかくだし頑張ろうよ……俺。
 という事でとりあえずギルドに行く事にしました。
 まずは登録作業が終わってるかどうかを確認したほうがいいと……どこか哀愁を漂わせたマサキさんから言われた。
 どうしたんだろう?
 そんな事を思いながらギルドの扉を開ける。

  「おういらっしゃい!ぉっ!最近この村に来た新入りじゃないか、どうしたんだ?」

 そう言って話しかけてくるのは、どこか威厳のある親父だった。
 何か本当に一人一人のNPCに人間味ってのがありすぎる気がするぞ……。

  「あの……マサキさんから一応登録されてるのかどうか確認してもらった方がいいといわれて……。」

 僕がそういうとギルドの親父は少し不思議そうにしながらも親切にどうすればいいのかを教えてくれた。
 といってもただ単に自分のステータスを見たいと思い浮かべれば良いだけらしい。
 試しにステータスを開くように念じてみた。
 するとどうだろう、目の前にステータスウインドウが現われて色々と表示されている。
 ギルドの親父はそれを見ると、少しほっとしたように一息つき、簡単に説明してくれた。
 ステータスの一つ一つの意味や、職業に関してとかを。
 ちなみに僕の今のステータスはこんな感じになっている。


     ――――――――――
     名 前:エン
     職 業:冒険者
     レベル:1
     STR:10
     VIT:10
     AGI:10
     DEX:10
     INT:10
     ――――――――――


 本当の初期ステータスらしい。
 体力は50見たいだ……精神力なんかもあるんだ……たぶん魔法使うのに必要な者だろうなぁ……これは今30ある。
 なるほどなるほど……これらのステータスが戦ったり、村の手伝いとかをすれば上がっていくわけだな。
 職業もある程度条件を満たせば色々と選べるらしいし頑張ってみようかな。
 僕はとりあえずレベル上げをしようと思って村の外へ向かって歩き出す。
 その途中であった少し背の高い男性に驚いたように止められた。
 このあたりは村から少しでも離れると凶暴なモンスターが現われて危険ですってね。
 僕はレベル上げがしたいんです。
 そう伝えると少し困ったようにレベルを聞かれた。
 だから素直に1だと答えると絶句してしまった。
 それからしばらくの間説教タイムに突入したわけだ。
 三十分くらい……なげぇよ。
 その説教の間に説明された内容によると……どうやらこのあたりのモンスターはレベル1でソロ狩りは難しいという事だ。
 ……何という事だ!
 というかそんな場所の落とすなよ!?
 そう文句を言いたくなったがこの青年にいっても意味がない。
 僕はほとほと困り果ててしまった……。
 そんな僕を見かねたのかその青年はリーダーに聞いてみますか……といって僕を連れて歩き始めた。
 リーダー?
 村長のことだろうか?
 歩いていく方向も村長の家だし……恐らく間違いないだろう。
 村長に何をききにいくんだろうかね?
 僕は何も解らなかったんでとりあえず黙ってついていくことにした。
 そして付いたのはやはり村長の家。

  「すいません、セルビアです。入りますね。」

 そう言ってノックをした後扉を開ける。
 そこにはテーブルに座ったレイスさんとマサキさんが「突然どうしたんだ?」と言いながらセルビアと名乗った青年に声をかける。
 その後僕に気づいたらしく、どうだった?
 と声をかけてくれた。
 僕はギルドであった事と、外に出ようとしてセルビアさんに止められた事を話したら……笑われた。

  「あっはっは!悪い悪い、笑っちまって。そりゃ怒られるっての……って言っても仕方ねぇか……何もしらねぇんだろう?つぅことはセルビアが来たよう件もそれか。」

 マサキさんがそう言ってセルビアさんを見ると、「そうです。」と言いながらうなづいた。
 レイスサンはその間に僕とセルビアさんにお茶を出してくれた。
 ああ……このお茶本当においしいなぁ……。
 僕は「ありがとうございまs。」と言いながらお茶をすすった。
 そうしてる間にマサキさんとセルビアさんで話が決まったらしい。
 どういう話になったかというと……。

  「しゃあねぇから、暇だし俺がついていこう。低レベルモンスター位なら俺でも問題ないからな。」

 そう言ってマサキさんが付いてきてくれることになったのだ。
 僕は流石にそれは申し訳なかったので断ろうとしたが、笑いながらこう言われた。

  「昨日もいっただろう?困った時はお互いさまだってな。何より……この村の住人は揃いも揃って底抜けのいい奴らばかりでな、困ってる奴はほっとけねぇんだよ。まぁ俺は別だけどな、今回も偶々暇だったから暇つぶしのついでだ。」

 そう言って僕の頭をなでてくる。
 何だろう……なんだかお兄さんって感じがするなぁ……っていうよりもどっちかというとお父さん?
 見た感じの年齢は少し上くらいな感じなのに不思議な感覚だなぁ。
 僕はそう感じながら、今度は素直に「ありがとうございます、お願いします!」と頭を下げた。
 軽く頷きながらマサキさんは愛用の剣を手に取ると、回復するための道具が入っているらしい袋を腰に下げて、村の外へ歩き出した。
 レイスさんとセルビアさんが後ろから頑張ってと声援を送ってくれたのがとても心強い。
 それから数十分後……最初僕がいた所より村に近いが、しっかりと村の外でモンスターがいる場所に僕はたっていた。
 そして目の前にはネズミを大きくしたようなモンスターがいた。
 名前はそのまんまで『大ネズミ。』っていうらしい。
 ……本当にそのまんま過ぎるだろうおい……。
 とりあえずそいつと戦ってみる事イン……って、強っ!
 強すぎ、ってかいた、痛いって!?
 僕が反場混乱してる間にマサキさんが素早く大ネズミを倒してくれた。
 たった一発……、立った一発食らっただけで既に瀕死だった。
 うぁ……やばかったなぁ。
 僕はマサキさんから回復薬を受け取り飲みながら、マサキさんに言われるがままステータスを確認してみた。
 ……驚いた。
 最初の一撃しか与えていないのにステータスが上がっている……。
 結構ステータスって上がりやすいんですね。
 マサキさんにそういうと、少しひきつったような表情をしながら「良かったな。」と言ってくれた。
 ……???
 とりあえずそんなこんなで、マサキさんに手伝ってもらいながらモンスターをひたすら倒しまくった。
 といっても……実際画面越しにやってたゲームと違って一匹一匹倒すのに結構時間がかかるうえに、疲労感が半端ない。
 だから実際十匹倒す前に力尽きて、マサキさんに肩を貸してもらいながら家に帰った。
 ……今日もまた、マサキさんの家にご厄介になる事に決まりました……すいません……。





 今日のステータス最終値!


     ――――――――――
     名 前:エン
     職 業:冒険者
     レベル:2
     STR:30
     VIT:32
     AGI:40
     DEX:36
     INT:23
     ――――――――――


 その結果を聞いたマサキさんが「解っていた事さ……。」そう言いながら少し哀しそうに笑っていた……。



[7197] 異世界の混沌 第二話
Name: 榊 燕◆972593f7 ID:e298aa1b
Date: 2009/03/09 20:32
     第二話~とりあえず……盗賊がいいかなぁ?~





 いやぁ……慣れればこの辺のモンスターも何とかなるものだねぇ。
 最初の三日間くらいはなんだかんだで結構危ない場面があったんだけど、一週間もすればそれなりに危なげなく戦えるようになってきた。
 それも……ほとんどはマサキさんのおかげなんだけどね。
 マサキさんの戦い方は何というか……上手い。
 敵の隙を見て、そこを突く。
 敵の動きを観察し、無駄な部分をなくし少ない動作で攻撃を躱す。
 どれもこれも勉強になる。
 改めて思ったけど、マサキさんってかなりつよいなぁって。
 ……僕がそういうと、マサキさんは大爆笑しながら「俺ほど弱い奴はめったにいないぜ?」って言い出した。
 ……そんな事ないと思うんだけどなぁ?
 他の人達の戦いも見たけど……確かに力や素早さは全然マサキさんより凄い人ばかりだった……けど、マサキさん程、敵の攻撃を受けずに、的確に敵の弱い部分を攻撃していくような何て表現していいか解らないから、とりあえず上手いって言っとくけど、そんな戦い方してる人……出来てる人なんていないかったんだからね。
 とりあえず、僕はマサキさんの動きを真似しながら敵を倒していった。
 四日目あたりから一人で戦えるようになり、敵を倒した数も結構増えてきた。
 マサキさんの戦い方を見ていたせいか、何故かAGIの上がり方が非常に高い。
 というか……AGIの上りが5とすると、他のステータスの上がり方が2~3程度しか上がってないのは……いかがなもんなんだろうか……。
 ……まぁいっか。
 そのうち、足りないと思ったステータスが出てくればそのとき上げればいいや。
 そう考えて、今日もまた僕はモンスターを倒していく。
 最近じゃこの辺のモンスター(低レベル限定)の動きも大体把握できて来て、攻撃を受けるってこともなくなってきた。
 そろそろ慣れてきたかなぁ?
 もう一つ階段登りたくなってきたよ。
 ……そう言ったらマサキさんに「若いなぁ。」と言って苦笑された。
 自分じゃよくわからないけど、馬鹿にされたわけじゃないのは解った。
 でも少しだけふくれてしまってもいいだろう?
 そして一週間ほどたった今日、僕のレベルが5になった。
 ステータスも比較的順調に上がり、転職ってどうすればいいのかなぁと思って、マサキさんに聞いてみた。
 いつも通り乱雑だけどしっかりと転職について教えてくれたんだけど……。
 何でだろう……僕がレベル上がったりしたときと同じような酷く哀愁漂う雰囲気を醸し出しているのは……?
 思わずマサキさんの職業は何ですか?
 って聞きたくても、聞けない状態だった。
 とりあえず……転職の仕方を聞いた僕は、隣街といわれる『時果』という街に向かう事にしたんだが……。
 森直前でダッシュで引き返してきた。
 そんな僕をニヤニヤと笑いながらマサキさんが村の入り口で待っていたときは、やられたと思った。
 知っていてワザと教えなかったんだなぁ。
 森の直前で気付いたのは、森の中にいるモンスターの強さだった。
 ……ありえねぇー。
 あれは強すぎる……。
 森の入り口で、僕が一対一で何とか今だったら無傷で倒せる低レベルモンスター数十匹を、何でもないかのように倒しながら平然としているようなモンスターがいたんだ。
 ……森の入り口でだぜ?
 中に入れば入るほどモンスターの強さが上がるのはこの世界の常識らしい。
 これはギルドの親父に聞いた事だけど。
 そして……森の入り口のモンスターであれってことは……考えただけでも恐ろしい。
 もし気がつかず間違えて入ってしまっていたらどうしたことだろう。
 少し怒りながらそういうと、マサキさんはあのモンスターが門番がわりになっていて、あいつを普通に倒せるくらいにならないと一人じゃあの森を抜けられないようになっていると教えてくれた。
 ……あーなるほどですね、そうですか。
 確かにあんなの見せつけられりゃ誰だって尻込みしますよねー。
 はぁ……って事はしばらく転職できないのかぁ。
 僕がそうため息をつくと、マサキさんがさっきと違った笑みを浮かべながらこんな事を言ってくれた。

  「んでもって……だ。明日セルビア達が隣街に買い出し行くんだが……。」

 と。
 きっと僕の反応を見て楽しんでいたんだろうな。
 僕がはっと顔をあげると面白そうに僕を見ているんだから。
 思い通りになるのも何だか癪な気分だったけど……向こう見ずにしっかりと話を聞かずに飛び出した僕が悪いんだししょうがないか。
 そう諦めて、付いていっても良いですかって聞いたら、「おう、言っておく。」そう言って僕の頭をなでながら村に戻って行った。
 ……本当にかなわないなぁ。
 僕も苦笑を洩らしながらそんなマサキさん後に続いて村に戻ったのだった。





 隣街ば別世界でした。
 すげぇ……。
 こんな感想しか思い浮かばない。
 だってさ、僕が今までいた村は家なんて一階建ての木の建物だけで、家の数だって二十に届かないくらいのいえしかなかった。
 広さだって村の端から端まででもせいぜい100Mあるかどうか位の大きさだ。
 それと比べてこの街はどうだろう。
 建物の大半は石でできた建物で、高さも三階建てくらいまである。
 その上だ、街の端から端が全く見えない……。
 ……ってそんなの普通だよな……?
 村に慣れすぎていた僕にはそれだけで本当に凄い別世界に見えたんだけどなぁ。
 そして……何より凄いと思ったのが人の数。
 いやぁ……プレイヤーの人もいるんだろうけど、恐らくNPCであろう人達が酷く賑やかだ。
 商品を大声で「安いよ!」等と言いながら売ろうとしたり、色々といい点を並べながらの路上販売に精をだしたり、ナイフでジャグリングをして子供たちやその親から拍手を受けたり……そんな賑やかな事になっていた。
 ……はぁ……。
 思わず……本当に思わず口を開けてその光景を見ていると、後ろからセルビアさんが「初めてでしたら驚かれたでしょう?」そう言って笑った。
 少し恥ずかしかったけど素直にうなずくと、「私も最初はそうでしたよ。」そう言って僕の隣に立ち色々と説明してくれた。
 この街には各種職業の転職する支店以外にも各種道具の店、武器や防具の店、魔術道具の店等ほとんどの店がそろっているらしい。
 その上この街の住人は明るい元気な人が多いらしく、何時もこんな状態だと言っていた。
 なんだか面白いなぁ……けど、毎日がこんなんじゃ疲れちまう、僕にはあの村のほうがいいなぁ。
 僕がそうつぶやくと、セルビアさんは「ありがとうございます。」と言って嬉しそうに笑っていた。
 ああ……思わず声に出してたのか……。
 僕は恥ずかしくて俯きながら、「転職する支店を見てきます!」と言ってその場を後にした。
 後ろから、「今日はこの街の『安らぎ亭。』というところで宿と取っていますので終わったら来てくださいね。」と声をかけられた。
 僕は大きく「はい、解りました!」とそれだけ言うと走ってその場から逃げ去った。
 ……何て事をしながら街をうろつくと、少し離れた位置に向かい合うように四つの建物があった。
 全部同じ建物……ただ建物の上部に付いている文様からこれが各種転職するための場所何だと解った。
 剣と盾のマークが恐らく剣士。
 杖と火のマークが恐らく魔法使い。
 弓と矢のマークが恐らく弓使い。
 財布とコインのマークが恐らく商人。
 っと?
 少し奥に同じ建物がもう一個あった。
 少し隠れるような位置にあるその建物にあったマークは二つの短剣のマーク。
 ん?
 ……残っている職業から考えると恐らく盗賊かな?
 改めて僕は自分の今のステータスを確認してみる事にした。


     ――――――――――
     名 前:エン
     職 業:冒険者
     レベル:5
     STR:52
     VIT:55
     AGI:80
     DEX:67
     INT:45
     ――――――――――


 うん、何度見ても変わらない。
 素早さと器用さがやっぱり極めて高い。
 ……この事から相談するたびにお勧めされたのは弓使い。
 だけど……僕は弓というものが余り得意じゃないというか、好きじゃない。
 嫌いなわけじゃないんだけどね。
 ただ、剣類等で戦う近接戦闘のほうが僕はすきなんだ。
 だから僕は剣士になろうとしていたんだけど……この建物のマークから見ると盗賊も一応剣……短剣で戦うスタイルの職業なのか?
 少し気になったんでのぞいてみることにした。
 入り口から入るとそこは結構なにぎわいを見せていた。

  「おっ?新入りさんかい?始めてみる顔だな。……ん?もしかして……転職しにきたのか?」

 カウンターの中に座っていたまだ親父と呼ぶには少し若いくらいの、かろうじての青年がそう言って僕に話しかけてきた。
 その瞬間、近くのいた数名のプレイヤーと思わしき人たちが僕のそばに寄ってきたので……思わず逃げそうになったんだけど……次にその人たちか出た言葉でそんな気が一気になくなった。

  「おおー!とうとう、とうとう私たちに後輩が!?君盗賊になるんだよね!盗賊いいよ、素早さ上がりやすくて攻撃受けないし、敵からアイテムかすめ取ったりすること出来るから普通の職業よりお金稼ぎやすいし、何より装備が整ってなくてもある程度戦いやすいんだからさ!だからぱぱっと迷わないできめちゃおう!さぁ、さぁさぁ!早く私の後輩になって……ぐへらぁ!?」

 凄いテンションで話しかけてきた赤い髪の女性におびえて後ずさっているところ、後ろから思いっきり横殴りに殴られ、その女性は吹っ飛ばされた。

  「全く……初心者の子相手に何をやっているのかしら?怯えさせているじゃないの。これだから盗賊っていう職業、偏見を持たれて人気がなくなるのよ?もう少し気を使いなさいな!……それで、なんですが、あなたは盗賊に転職する気でこの場所へきたのかしら?確かに……世間じゃ色々と悪い噂ばかりだけど……実際その中にも本当の事が混じっているわ。でもそれだけが事実じゃないのよ?私たちは基本的にモンスターとしか戦わないし、モンスターと戦った時にモンスターからしかものを取ったりしないの。だから盗賊といっても村や街を襲ったりするような人達とは違うってことだけは……解ってほしいのよ。……ってごめんなさいね、突然こんな話してしまって……さっきのあの馬鹿が言った通り、盗賊という職業悪いものじゃないのよ。良ければ……色々私も教えてあげること出来るし、どうかしら?」

 う~んさっきの凄いテンションの人とは違うけどこの黒い長い髪の綺麗な人もなんだかなぁ?
 でも悪い噂ってなんだろう?
 僕は全然知らないけど……話しぶりからすると恐らく『盗賊。』って名前そのまんまを悪い意味で囚われてるってことだろうね。
 盗みや人攫いとかそういった事をする人と……。
 まぁこの女性二人は悪い人じゃないと思う。
 だって、どこかマサキさん達と同じような雰囲気をかんじるから。
 だからとっさに逃げようとしたんだけど、逃げられなくなってしまった。
 もともと興味をひかれていたこともあったんで、僕はもう少し色々教えてもらえませんかと言って、その黒い髪の綺麗な女性に話しかける。
 次の瞬間、その女性は劇的に表情を変化させた……驚いた!
 すっごい驚いた。
 だって、さっきまでの彼女は僕から見て結構大人な女性って感じに見えたからだ。
 それなのに……。

  「ほ、本当!?やった、やったよ!とうとう私たちに後輩できるのよ!良かった……私たちが最後に転職してから本当に今の今まで誰もここ訪れないし……同じ盗賊の人達もこの街まで来る人なんてほとんどいなかったから……本当に良かった!ララ!何時まで気を抜かしているのよ!この子話を聞きたいって言ってるんだからさっさと起きてお茶とお菓子持ってきなさい!」

 はぁ……。
 こんな感じですっごい良い笑顔で笑いながら僕を近くのテーブルに連れて行った。
 後ろの方で苦笑を洩らしているカウンターの青年がいたけど、なんとなく微笑ましい光景を見ているような表情だ。
 うん、助けなしだね。
 僕は諦めてその案内された席に座ると、さっきまで気絶していたはずの赤い髪の女性が、お茶とお菓子を持って僕の隣の席に座った。
 差し出されたそれらを「ありがとうございます。」と言って受け取ると、嬉しそうに笑った。

  「……ああ、ごめんなさい。少し……恥ずかしい所を見せてしまったわね。本当に此処にきて、話まで聞いてくれる子なんて久しぶりだったから……ごめんなさい。」

 僕の向かいに座った黒い髪の女性はお茶を一口すすると、ほほを少し赤くしながらそう言ってきた。
 うん、きっとさっきの地なんだろうなぁ。
 でもふだんはなるべくこういう話し方をするようにしていると……。
 なんとなくわかるかなぁ。
 こんな綺麗な人があのテンションで話したり、話し方をしたりすると違和感があるから。
 でも……それも決して悪くないと思うんだけどなぁ。
 彼女にしたらきっと余り良いと思える事じゃないってことか。
 僕がそんな事を考えていると、今度は赤い髪の女性が話し始めた。

  「それで……盗賊についてだよね。一応盗賊って職業は基本AGIとDEXが上がりやすい職業なんだ。戦闘の仕方もモンスターの攻撃を躱しながら削っていくっていう感じの戦い方。確かに一撃で倒したりするのは難しいけど……盗賊は盗賊らしい戦い方ってのがあるから、決して不可能でもないからがっかりしないでね?それで、武器なんだけど人それぞれ何だ。何でも使えるの。それこそ才能を必要とする魔法以外なら何でも使える。だけど……盗賊として特徴を本当に生かしきれるのは短剣とカタール系統の武器かな。後ブーメランとか爪もいいかもしれないね。後はスキルだけど……戦闘関係のスキルは余り多くないけど、補助系統のスキルが結構おおいのよ。例えば戦闘時のAGIやDEXに補正をかけるスキルとか、攻撃した際自動でモンスターのアイテムを入手するスキルとかね?詳しいスキルとかは追々その時になったら教えてあげるよ。……って今更なんだけど……聞き忘れてた。君の名前とステータス教えてもらえるかな?ちなみに私はララっていうんだ、盗賊でレベルは23、ランクはこれでも7なんだよ。」

 そう言って色々と説明した後に、少し苦笑をしながらも胸を張ってそういった彼女……ララさんに続き、今度は黒い髪の女性も続いて話しかけてきた。

  「あら、そう言えば本当にまだ自己紹介もしていなかったのね。私はレイラよ。盗賊でレベルは27、ランクは8よ。よろしくお願いね。」

 レイラさんというらしい。
 僕は相手にしっかりと自己紹介をされて何も返せないほど礼儀知らずじゃないですよ?
 だから最初に聞かれた質問を含んで自己紹介をしたさ。

  「初めまして、ララさん、レイラさん。僕はエンっていいます。今は冒険者でレベルもまだ5です。ステータスは……こんな感じです。よろしくお願いします。」

 そう言って頭を下げる。
 僕のレベルを聞いた二人は少し驚いたように僕をみていた。
 なんでだろう?

  「ねぇ、レベル5って本当?……はぁ本当なんだ。凄いねぇエン君。このあたりのモンスター最低レベル10はないと下手したら一撃で死んじゃうんだよ?それなのによく無事にたどりついたねー?一番近い街の『永楽。』からきたの?」

 なんと!
 この辺そんなにぶっそうなのか。
 遠目からセルビアさんたちが比較的楽そうに敵を倒していたから、村の周りより少し強いくらいの敵だと思っていたけど……戦おうとしなくて良かった!

  「そ、そうだったんですか。僕そんなこと全然知らなかったです。永楽っていう所は知らないんですが僕が来たのは森を抜けた所にある小さな村からです。村の人達が買い出しに行くというので連れてきてもらったんですよ。」

 僕がそういうと今度はレイラさんがすっごい驚いたように僕をみる。

  「あの村からきたの!?凄いわね……森を抜ける事だけでも奇跡的だっていうのに、村の人達とそれだけの親交があるなんて、あの村の人良い人ばかりなんだけど警戒心結構強くて外部の人にそうそう心をひらかないっていうのに……。どうやったの?教えて!私あそこにいる……。」

 そこまで言ってッハとまたレイラさんは暴走していた自分に気づいたらしい。
 今度は真っ赤になって今にも頭から湯気を出すんじゃないかってくらいになって俯いてしまった。
 ……警戒心が強い?
 そんな感じしなかったけどなぁ?
 僕が本当に初心者だったからかな?

  「あっははは、ごめんねエン君。レイラったらあそこの村にいるマサキさんって人にぞっこんラブなのよ。この世界の時間じゃ最後にあったのなんてもう100年以上前だっていうのに未だにその熱がさがらないのよねぇ。モンスターにやられそうになったところをかっこよく助けてくれて惚れた何て……何処の漫画の世界の話だって突っ込みたくなってもしょうがないよねぇ!」

 そう言ってケラケラと笑うララさん。
 でも気付いた方がいいですよ?
 後ろからもう……漆黒と言っていいほどの何か放ちながら近寄ってきてる何か(レイラさん)に。
 まぁ……言わないでも解ると思うけど、次の瞬間気絶することなくぎりぎりのところでいたぶり続けられるララさんがいましたとさ。
 にしても……マサキさんプレイヤーにまで恋心を抱かせるとは……そこにしびれる憧れるぅ!
 何て冗談はさておき、凄い人だなぁ……ってか、規格外にも程があるだろうに。
 でも……レイラさんがあの事実を聞いたらどうするんだろう……。
 ってかしってるのかな?

  「あのすいません、レイラさんたちが最後にあの村に行ったのって、大体何年前なんですか?」

 僕は思わずそう聞いてしまっていた。
 その後何故か平気そうに復活していたララさんが「う~ん。」と少し考えながら計算を始めた。
 この世界現実世界と時間の流れが違うのだ。
 二年ほど前に色々と問題が起きてから一度サービス停止になった事がある。
 その後また復活したんだけど、その後今度はサービスを停止しないまま運営がこのゲームを放棄した事があった……その後もまた戻ってきて落ち着いたんだけど……そのときにこの世界と現実世界での時間の流れに関して色々と変更が加えられた。
 ……それ以外にも色々と変更あったんだけどね。
 んでもってだからこそ計算がめんどくさくなっているんだろう。
 確か、情報掲示板を見ると前は一週間で一年という計算だった。
 今は一日で一年という前までの七倍もの時間を楽しめるようになっている。
 ……大丈夫なのかなん僕の脳……?
 ……い、今はそんな事かんけいないよね?
 きにすることないよね!?
 ……ああ、また話がそれた……一日が一年になってからまだ半年しか経っていないので、それだけ難しく考えるという事は少なくとも半年以上(現実世界の日数でね?)は行っていないということだろう。
 しばらくうんうん唸っていたんだけど、漸く計算を終えたらしく、「よくよく計算してみると、半年前の変更があったせいか二百年近くいってない事になるんだね。」ということだった。
 ……なるほど、マサキさんがたが結婚したのは百五十年くらい前だって言っていた。
 この世界の人達の時間のとらえ方の可笑しさに最初は困惑したもんだけど……もう慣れた……訳がないじゃないか。
 未だに困惑しっぱなしだっての。
 とりあえず……という事は結婚したという事実は知らないのか……。
 どうしよう、いったほうがいいのかな?

  「あ、あのね、エン君。それで……その……ま、マサキさんは元気なのかしら?」

 顔を真っ赤にしながらもちらちらとこちらを窺うように見てくる様子は酷くかわいらしい。
 だからこそ……少し……いいずらいなぁ。
 でも、秘密にしてても……酷い事だよね。
 だから僕は……言ってしまったわけだ。

  「はい、今マサキさんの所でお世話になっているんですが、凄い元気ですよ……奥さんともども……。」

 次の瞬間ほっと安堵のため息をつきながらも空気が凍った。
 ピキッ……そんな擬音が聞こえてきそうな音だった。

  「エン君……?聞き間違えかしら……『奥さん』ともどもとか聞こえたのだけど?」

 底冷えするような声で尋ねられても僕は声を出せなかった。
 ただひたすらコクコクと頷いて、聞き間違えじゃないという事だけ伝える。
 ……次の瞬間そのその空気は音を立てて壊れ果てた。
 パキンっ!
 とかの音じゃないよ?
 レイラさんの鳴き声によって壊された。
 いきなり瞳に涙をためたかと思うと、次の瞬間子供のように泣き出した。
 ……何だろう……見た目と中身が一致していない感じが凄いなぁ。
 僕はどうしていいか解らないのでそんな感じに現実逃避をしていたのだけど、ララさんに手を引っ張られ現実逃避終了。
 一緒に慰めてほしいという事だ。
 僕が引き金を引いてしまったのだから……それくらいはしないといけないと思って、素直にうなずいた。
 それからしばらくあれこれと、言いながら元気づけようとしたけど泣き続けるレイラさんは止まらない。
 恐らく……少し疲れてきてたから油断していたんだ。
 いや、別段嫌な訳じゃないから良いんだけどさ……こういう不意打ち的にってのはどうなんだろう?

  「エン君が盗賊になってレイラに色々教えてもらいたいって言ってるんだから、元気出して一緒に頑張ろうよ!」

  「はい。だから元気になって僕に色々教えてください……?」

 と言ってしまってから気付いてしまった。
 隣でニヤッと笑うララさんが少し憎たらしい。
 慌てて否定しようとしたら、突然レイラさんが泣きやんで、「本当に?」と聞いてきた。
 グッ!
 卑怯な!
 この状況で泣きやんでその表情は卑怯すぎるんじゃありませんか!?
 無理ですよ……人として……男としてその表情でそんな声で……聞かれたら「はい……。」としか答えられません!
 だって、涙を瞳に貯めながら、下からちらっと見上げ、よわよわしい子供のようなかよわい声でいわれたんだよ!?
 むりじゃん。
 無理無理。
 人としてこれで断れたひとじゃねぇ!
 畜生!
 ……こうして……何時の間にやら赤い小悪魔の策略によって僕は盗賊になる事を決めてしまったわけだった……。





 ああもう、畜生!
 やってやるよ!



[7197] 異世界の混沌 第三話
Name: 榊 燕◆972593f7 ID:e298aa1b
Date: 2009/03/08 15:22
     第三話~予想以上に盗賊楽しい!~





 よっしゃ!
 お宝ゲット!
 今僕は、モンスターと戦いながらアイテムを手に入れている。
 これぞ盗賊の素敵なスキル。
 略奪!
 むろんモンスターからのみですよ?
 人さまからそんな事……出来ない訳じゃないけどやらないです。
 いやぁ……予想以上に盗賊楽しいな。
 最初はなんだかんだだまされたような感じで仕方なくなっちゃったけど……意外と僕にむいてる職業かもしれない。
 今僕が使っているのは短剣だ……両手に一つずつ。
 僕の旅立ちの日にマサキさんたちがくれた短剣……申し訳ないほどに良い代物で受け取れないというと、その気持ちがあるならそれで死なないように長生きしてくれって言われた。
 そんな事を言われながら、言いくるめられ、ありがたくこの短剣セットをいただいたのだ。
 ……後々聞くと、両手に装備するためじゃなくて、一つは予備としてのために渡したようだったけど……勘違いした僕は二刀流のように両手に短剣を装備して戦えるように頑張った。
 頑張った結果……何とか様になるようになってきたというわけだ。
 ちなみに僕は今、マサキさんたちの住んでいた村とは全然違う場所にいる。
 僕が盗賊に転職してから十年がたった。
 といっても現実世界ではたった十日だけどね。
 まぁ……こっちの世界で生活していた僕には本当にまんま十年たったような感覚があるけどさ。
 んでもって、なんだかと結構強くなったと思う。
 最初のころはひどかったなぁ……基本逃げる……そんな事ばっかしだった。
 そのおかげでやったらとAGIだけはうなぎ上りにあがったっけ。
 色々と教えてくれたララさんとレイラさんにも感謝だよね。
 今こうしてモンスターと真面に戦えたり、スキルを使えるようになったのもあの二人のおかげだし。
 ちなみに……彼女たちは今……僕の後ろにいます。
 はい、何やら師匠として何かが目覚めたようです。
 ……そんな変なもの目覚めないでほしかった……。
 とりあえず、今僕が使っていたスキル略奪。
 それのほかにもAGIとDEXを戦闘中限定で自動で発動するスキル、俊敏と集中も取ってある。
 後は隠蔽……つまり隠れるスキルだ。
 後は遁走。
 これ最初にとったスキルね。
 モンスターから逃げるスキル。
 このスキルだけ異常に伸びるの早かったよ……。
 情けないとか言わないで!?
 んでもってそれらが全部補助系スキル。
 ララさんが言った通り戦闘系のスキルがほっとんどない。
 ってか……全くないよ!
 僕がしばらくたってからそういうと、ララさんがとぼけながら「言わなかったっけ?」とか言われた。
 ……もういいけどね。
 はぁ……きっとこれからも僕はララさんに振り回されて、時々レイラさんに振り回されながら生きていくんだろうなぁ……。
 ってこれゲームだよね?
 そういやログアウトすればいいじゃん。
 ……そんな事を思ったけど……この二人がいる前じゃそんな事怖くて言えません。
 やってしまえばこっちのもんだけど……次に戻ってきた時が怖すぎる。
 もう完璧にはまりきってる僕にはやめるという選択肢だけは存在しませんよ。
 一応……これでも五日に一回はログアウトしてるんだけど……数分で戻ってくるせいか全く実感がない……ってか、既にこの世界が僕にとっての現実になりつつあるよ。
 …………というかララさんとレイラさんなんかは本気でそうなってるし、僕も……近いうちにそうなるんだろうなぁ。
 そんなあきらめにも似たような事を考えながら僕はまた新しいモンスターを探して倒しに行くことにした。





     視点、とある村の村長R





 彼を初めて見た時何故かマサキを初めて見た時と同じような感覚があった。
 少し不思議な、どこかほっとするような感覚。
 マサキが笑いながら連れてきたせいかもしれない。
 話を聞くと冒険者になってから全くと言っていいほど時間がたっていないらしい。
 どうやら、誰かのいたずらか何かでこの周辺まで飛ばされてしまったという事だ。
 彼が冒険者として初心者だというのは直ぐに解った。
 ステータスのみかた一つ解っていないからだ。
 マサキが何か懐かしいものを見るような感じで色々と教えていた……きっと、昔の自分とかぶっているからだろう。
 ……ふふふ。
 何かそんな二人を見ていると見た目は兄弟程度なのに、父親と息子といった感じがする。
 ……ってかそのまんまよね。
 もう家も出て行っちゃったけど、私たちの子供達もマサキとはあんな感じだったし。
 ……驚くくらい何故か子供に懐かれるのよねぇ。
 はぁ……あの子を見てると、私の子供たちも元気でやっているのか心配になってきた……。
 いや、元気でやってるという連絡はよく来るんだけど……やっぱり実際見てみないと実感できないでしょう?
 マサキも時々お酒を飲んだ時そんな事を言っていたし、たまには帰ってこないかなぁ?
 でも……この子を見ていると……本当に私たちの子供みたいな感じがして来て不思議だな。
 何かかまいたくなっちゃう。
 心配で色々してあげたくなっちゃうんだ。
 マサキの時とは少し違う感覚だけど、どこか安心するというかほっとするというかそんな雰囲気を感じるところだけはよく似てる……。
 マサキもかなり嬉しそうだし、しばらくいてくれるといいんだけどなぁ。
 ……等と考えていたのに、たった二年ほどで村から出て行ってしまった。
 正直結構さびしい。
 でも、今まで散々娘や息子たちとそういう経験しているのだから、慣れはしないまでも、笑顔で送り出すことくらいはできるようになっている。
 どうやら、前に隣街で盗賊に転職した時にお世話になった方々と旅に出るという事だ。
 その子たちは一応この子をある程度フォローできるようになるまで自分自身を鍛えてから迎えに来たようだ。
 だって、たった二人であの森を超えてこれるくらい強い二人なのだから。
 ……この子、意外とモテルのねぇ。
 解らない訳じゃないけど……将来女を泣かせるような男にだけはならないでほしいな。
 ……無理かもしれないわね。
 無意識にどこか女の子をひきつける雰囲気を感じるもの。
 旅立つというその日に、私たちは皆で協力して作った短剣をその子に渡した。
 二振りの短剣。
 一つは予備だ。
 何かあったときに予備がないと困るだろうという事で二つ用意した。
 それで……本当に無事に旅を続けてくれたらいいと思う。
 マサキも遠ざかるその子の背中を見つめながらぽつりとそうこぼしていた。
 ……あの子は意外と几帳面というかなんというか……厄介な性格をしていると私でも思う。
 だからこそ、あの子は今後もちょくちょく大変な思いをしてこの村に来るだろう。
 私たちに会いに……元気な姿を見せに。
 そんな子だと、どこかあった瞬間から感じていたからこそ、この村の皆も自然とマサキと同じように彼をうけいれていたんだろうな。
 ……私が言うのもなんだけどこの村の皆は酷く人がいい。
 だけど……めったに外から来た人たちに簡単に心を開いてさらけ出すような人はほとんどいない。
 警戒心が強いといっても良いかもしれない。
 それなのにあの子はこの村に来た次の日からもう村の皆と仲良くなり、信頼されていた。
 本当にこの村に突然来る人は不思議な人ばかりだなぁ。
 マサキにしてもあの子にしても。
 よし、それじゃあ私は今度あの子が帰ってきたときのためにとっておきの料理を用意してあげれるよう用意しておこう。
 お酒が好きだと言っていたからか、マサキはそれを用意しておくかっていってたしね。
 村の皆もさびしそうにあの子の背中を見送っている。
 皆今度帰ってきたらあーするこーすると、次にあの子が帰ってきたときの事を話しだしているあたり、本当に気に入られているんだろう。
 だから……きちんと無事な姿をまた見せに戻ってきなさいよ、エン君。



[7197] 異世界の混沌 第四話
Name: 榊 燕◆972593f7 ID:e298aa1b
Date: 2009/03/09 20:34
     第四話~これぞ冒険の醍醐味だよね!~





 今日も今日とていつもどおりに旅をつづける日々です……。
 というわけではなく、今日は何とこれまで結構長い間過ごしてきたにもかかわらず、危険だからと絶対に許可が下りなかったダンジョンに行く事になりました。
 凄く嬉しいです!
 正直今まで行きたくて行きたくてしょうがなかった。
 でも……こっそりのぞきにった瞬間見つかり、悪鬼の如く怒るララさんとレイラさんが怖くてそれ以来いけなくなってたんだよなぁ。
 ……あの時の二人は怖かった……それ以上にそれほどまでに心配してくれる人がいるって事が嬉しかった……けど、それは秘密だ。
 そして先日、漸くレベルが30になったのをきっかけに、初級のダンジョンに行ってみようかという事になったのだ。
 だけど……僕とララさん、レイラさんの三人では厳しいかもしれないという。
 ……初級ダンジョンなのにそれほど?
 僕はそう思ってしまった。
 だって、僕はまだレベル30だけど、ララさんはレベル今55だし、レイラさんにいたっては69だ。
 もう少しで70になる位でかなり強い……と僕は思っていた。
 それだというのに初級のダンジョンですら未だ厳しいという。
 まず、二人だけなら挑まない、三人いても未だ僕の実力じゃ多少ましになる程度でしかない。
 だから一緒に行ける人がいないか近くの街のギルドに訪れたんだ……。
 酷く驚いたね。
 久しくもどっていなかったせいか、凄く懐かしい顔に出会った。
 だから思わず声をかけちゃったよ。

  「セルビアさん!?どうしたんですかこんなところで……。」

 そう、僕が見かけたのはセルビアさんだ。
 最果ての村の警備団副リーダーのセルビアさん……何でそんな人がここにいるんだろう?
 そんな僕の声を聞いて振り返ったセルビアさんは、あちらも驚いたように、どこか嬉しそうに返事をしてくれた。

  「ああ、エン君!しばらく帰ってなかったから心配してたんだよ?でも元気そうでよかったよ。私は今恋人探しをしているところなんだ。時々こうやって長期の休暇をいただいては遠出して探しているのだよ。」

 それがなかなか見つからなくてねぇ……等と言いながら笑っているが……本気(マジ)ですか?
 思わず不思議そうなというか、不可解そうな表情をしていたんだろう、苦笑を洩らしながらセルビアさんがどうしてそんな事をしているかを言ってきた。
 ……なるほど……とうなずけるものではないが、なんとなく理解はできる。
 …………うん、僕ももしかしたらセルビアさんと同じ事をしていたかもしれないから共感もできるね。
 でも、実際やってないぼくからしてみると、おかしなことをしてると感じちゃうんだけどさ。
 そんな風に僕とセルビアさんが話していると、後ろからララさんとレイラさんが紹介してくれないのかしら?
 と言って肩を叩いてきた。
 いけねぇ。
 忘れてた……、そう言いながらセルビアさんにララさんとレイラさんを紹介する。
 お互いほのぼのと自己紹介をしていたのに、レイラさんと握手をしている瞬間お互いに何かが通じ合ったかのようにうなずいた。
 ……何が起こった?
 僕は不思議そうに彼らを見つめると、突然「解るよ、マサキさんよ本当に凄いよね。」とセルビアさんが呟いた。
 突然の事に驚いていると、「本当にそうですね、出来る事なら私も共に居たいものですが……。」とレイラさんが返してお互いいい笑顔でほほ笑み合うと改めてがっしりと握手を交わした。
 …………うん、そういやセルビアさんてマサキさん信者だったよなぁ……そして振られたというか、気付いたら振られたのと同じ状態になっていたレイラさんだが、未だ執念深く諦めずに虎視淡々と隙を狙うほどのマサキさん信者だ。
 お互い……そのあたりがきっと通じ合ったんだろう。
 少し引きながら僕とララさんは知らない人のふりをしてその場所から少し離れた。
 しばらく二人はマサキさん話を繰り広げた後正気に戻ったらしく、二人揃って恥ずかしそうに僕達のところに戻ってきた。
 ……本当にそんなところまで似た者同士なんですね?
 正直お似合いですよ?
 ってか、セルビアさんの恋人レイラさんでいいんじゃないですか?
 マサキさん狙うよりずっと確率高いし、気があってるようだしいいと思うだけどなぁ。
 ……まぁ僕がいう事でおないし、なるようになるか。
 そんな事を考えているうちにふと、ある事を思い出した。
 確かセルビアさんて強いんだよなぁということをだ。
 マサキさんから聞いた話じゃ村の中で一番強いのがセルビアさんだという。
 だから少し迷惑ならいいんですけどと前置きを言いながらセルビアさんにレベルを訪ねてみた。

  「私ですか?今はえっと……ああ此処に来る前に上がったので98ですね。」

 絶句した。
 三人ともだ。
 三人とは僕とララさん、レイラさんの三人だ。
 セルビアさんはNPC……そしてNPCの最高レベルが100。
 そしてレベル90を超えたNPCはこの世界の中で、NPCだけの中じゃ最強の部類に入る。
 中央に街というか城というか王国というかそんなものがあるんだけど、そこに所属する騎士団の平均レベルですら70前後。
 そして彼等はこの世界で最強の騎士団だといわれている。
 そしてその騎士団を率いてるのが最強の二つ名を手に入れた騎士団長……レベルがそれでも91だ。
 ……このレベルNPCの場合90を超えてからの上がり方は異常の一言だ。
 だって、普通にレベル89まではステータスの上限100を超える事がない。
 オールステータス100を超えた時点でレベルが90となるのだ。
 そして……そこからが鬼なのだ……。
 僕達プレイヤーはまだ全然そのあたりじゃレベル比較的上げやすいっていうのも変だけど、そこまで異常じゃない、ただセルビアさん達みたいなNPCの人が90から91にあげるのに必要なステータスというのが……オールステータス130以上。
 そしてステータスは100を超えてからの上がり方はおかしな位遅い。
 むしろ遅すぎる……だからこそそこまでいける人等めったにいないのだが……。
 この人一体何者なんだ?
 レベル98とかって一体どれだけステータス高いんだよ。
 今レイラさんだって、プレイヤーという強みがあってもレベル69でオールステータスようやっと110を超えたあたりだ。
 プレイヤーだってステータスは上がれば上がるほど上がりにくくなるんだから最初みたいにガンガンあがらないんだよ。
 ……正直……あの村にセルビアさんみたいな化け物がいるとは予想もしていなかった……。
 思わず絶句している僕達を見て苦笑を洩らしながら、とんでもない事を言ってきた。

  「確かに私は村の中でも一番レベル高いですけど、警備団の皆平均レベル85以上ですよ。半数は90前後ですね。だからたいして村の中でも可笑しいというわけじゃないんです。だからそんなおかしな顔しないでくださいよ。」

 どうやら少し勘違いをしているらしい。
 村の中で一番強いといわれていたから、それゆえに絶句していると……気付けよ。
 レベル聞いた瞬間絶句したんだから、そのレベルの高さが可笑しいんだって気付いた方がいいですよ?
 だけどセルビアさんはどうしてもそのあたり無頓着というか全く気付かない。
 ……だからズバッと言ってみた。

  「いやいや、セルビアさんのレベルがおかしなレベルだから驚いたんですよ。っていうよりも村の警備団の皆がそんなにレベル高いとか初めて知りましたよ……。」

 僕がそういうと、セルビアさんは少し眼を丸くして「レベルが高い……ですか?」と言って不思議そうにしている。
 あれ?
 何か……可笑しいな?
 僕はそう思ってセルビアさんに「高いですよね?」と改めて不思議そうに聞いてみた所……この人どうもプレイヤーとNPC一緒だと思っているみたいだ……レベルの上限が。
 プレイヤーに関して言えばレベルの上限果たしてあるのかどうか不明だ。
 今現在最高のレベルが401だと、前に掲示板に乗っていた。
 最高レベルの強いプレイヤーたちは大抵レベル150~200前後だという事も。
 それらの話をセルビアさんも聞いたらしい。
 それを聞いてレベルもこれくらいなら高くなってきたものの、まだまだ凄いと思われるほどじゃないと思っていたらしい。
 セルビアさんてきにどれくらいのレベルならそう思うのか興味本位で聞いてみたら……。

  「そうですね……250を超えれば凄いんじゃないかと思います。」

 とさらっと答えた……。
 なんだかなぁ……少しいいずらくなってしまった。
 セルビアさんの場合上限のレベルが100ですよ……と。
 だけど……黙ったままでは流石にいられないだろう……から正直に打ち明けた。
 結構ショックを受けていたようだが、比較的直ぐに立ち直った。
 そんな様子が不思議で僕は思わず大丈夫なんですかと聞いてしまったんだけど、セルビアさんの答えはこんなものだった。

  「確かにショックでした……ですが、私はこんなもの眼じゃないくらい悪い条件なのに、あがき続け、努力を続け、今だ前に進もうとしている人を知っています。確かに私のレベルの上限は100かもしれません、ですが諦めず続けていけばもしかしたら先に進めるかもしれません。ならば最後の最後のその時までは頑張ろうと改めて思ったんですよ。」

 そう言っていい笑顔で僕に笑いかけてくる……思わず……見惚れてしまった。
 尊敬……した。
 僕はそんな考えを持ったことなんて今の今まで一度もない。
 でも……そう思えるように慣れれば凄いなぁ……凄くいいなぁと思った。
 だから……そんな考えのセルビアさんに憧れをもったとしても、誰も文句などいえないだろう。
 だからか、僕は思わずそう言ってしまったのだ。

  「セルビアさんさえもしよければ、これからダンジョンに潜るの手伝ってもらえませんか?」

 とね。
 セルビアさんは少し驚いたように僕見ると、三人のレベルを聞いてきた。
 素直に答えていくと少し困ったように笑い、本当に時々、無茶をしようとするところは似ていますね……と言いながらいいですよと言ってくれた。
 セルビアさん……何とこのダンジョン最深階まで一人で潜って帰ってこれるらしい。
 ……もうララさんとレイラさんはきれを通り越して……あれ?
 ん~あれ?
 呆れを通り越して……尊敬のまなざしでみておりますね?
 いきなり……変わりすぎでしょう……。
 まぁ解らないでもないけどさ。
 そんなこんなで僕は念願のダンジョンに挑む事が出来たのでした。
 と……ダンジョンにいざ潜ろうと思った時、改めて各自の自己紹介をしておいた。
 名前は解るけど、職業やレベル、ステータスは言ってなかったからだ。
 ステータスによって戦い方が変わるのでまず僕から始まる、ララさんレイラさんが続いた。
 三人のステータスは今現在こんなところだ。


     ――――――――――――
     名 前:エン
     職 業:盗賊 R8
     レベル:30
     STR:66
     VIT:63
     AGI:90
     DEX:73
     INT:60
     ――――――――――――

     ――――――――――――
     名 前:ララ
     職 業:戦賊  R3   
     レベル:55
     STR:105
     VIT:110
     AGI:115
     DEX:90
     INT:85
     ――――――――――――

     ――――――――――――
     名 前:レイラ
     職 業:魔賊 R4
     レベル:69
     STR:112
     VIT:109
     AGI:125
     DEX:118
     INT:119
     ――――――――――――


 うん、やっぱり僕のステータスまだ低いなぁ。
 そして……とうとう気になっていたセルビアさんのステータスだ。


     ――――――――――――
     名 前:セルビア
     職 業:精霊弓使い R9
     レベル:98
     STR:220
     VIT:225
     AGI:240
     DEX:250
     INT:245
     ――――――――――――


 うっはぁ……圧倒的に強いぞこれは……。
 いやさ、レベルが上がればこれより強くなれるけど……それにしてもNPCの割には強すぎるんでないかな?
 流石……最強レベルの90代……その上後半だけある。
 これだけのステータスがあればこのダンジョンも余裕な訳だな……ってそりゃそうだろう!
 とりあえず……僕はそのステータスの余りの高さに驚いていたんだけど、ララさんとレイラさんは職業で驚いていた。
 精霊弓使い……レイラさんが言うには、特殊職ではないものの、上位職の中の隠れ職らしい。
 未だに数名しか存在しているのを確認していない職業だという……。
 何処まで凄い人なんだこの人……。
 流石……長い間生きている訳じゃないってことかぁ。
 等と三人で感心していると、セルビアさんが後ろからさぁ行きましょうと言って促してきた。
 セルビアさんは僕達のフォロー役だ。
 セルビアさんなら一人でも問題ないという事で、何か危なくなったときにフォローしてくれる……そういう話になった。
 そうして……僕はダンジョンに初めて潜れることになった。





 このダンジョン階層は余り深くない。
 五階層だ。
 今現在二階層め……モンスターは……やっぱり強かったけど何とかなるレベルだ。
 ダンジョンの中を松明の光を頼りに進んでいく。
 行き止まりだ……だけど、行き止まりだからと言ってそこに何もないと決め付けるのはよくない。
 だから僕達は三人手分けしてそこに何もないかを調べてみる……っと……あった。

  「ララさん、レイラさんこれ解除できますか?」

 僕にはまだ罠解除のスキルはない。
 もう少しレベルが上がらないと取得できないスキルだからだ。

  「大丈夫だよ、任せて~。」

 ララさんがそう言って僕が見つけた地面の罠を解除していく。
 パキン……とういおと共に罠が解除された。
 解除されたのを確認し、他に罠がない事を確認すると地面を掘っていく。
 ダンジョン内のモンスターはどうやら地面の下に宝物を隠す習性があるらしい。
 その事を知っているのは盗賊関係の職業の人以外だと一握り程度だろう。
 セルビアさんも何をしているのか不思議そうに見ている様子を見ると、恐らく知らなかったのだろう。
 僕達は宝箱を掘り出し、わくわくしながら箱を開けると……出てきたのは小さな護符。
 僕には何か解らないのでレイラさんに尋ねると少し驚いたように呟いた。

  「守護の護符じゃない……何でこんな高レベルの護符が初級者ダンジョンに?」

 ララさんが僕に解るように説明してくれた。
 この護符、名前を守護の護符といい、神の守護を受けられるようになる護符らしい。
 ただし使用回数があるらしく、一定回数使うと効果を発揮しなくなり砂に帰る……という事だ。
 ちなみに……この護符は持ってるだけで自動発動するたぐいのものじゃなく、任意で作動させるアイテムだ。
 防げる攻撃はどんな攻撃でも完全に防ぐ事が出来るらしい……が、その回数は三回だけ、それでこの護符はまだ一度も使われていないのでまだ三回使えると言っていた。
 ララさんとレイラさんは顔を見合わせると苦笑を洩らし、僕にその護符を手渡してきた。
 一番……死ぬ可能性の高い僕に生存確率を上げる為にと手渡してくれた。
 ……流石に受け取るのには遠慮が入り戸惑ったものの、僕が一人倒れたらそれだけ二人が迷惑するっていう事もあって、二人とセルビアさんにお礼を言って受け取った。
 セルビアさんはそのアイテム持ってるのでいらないといって、最初の所有権を放棄した。
 その後……特にめぼしいアイテムが見つかることなく四階層まで進むことになった。
 そこで結構いいものが目の前に置いてある。
 僕としてはかなりほしいアイテムだ……というよりも、盗賊系統の職業の人であればほしいと思う人は後を絶たないだろう。
 目の前にあるもの……それは盗賊の腕輪と呼ばれる腕輪だ。
 それを付けるとモンスターからの略奪確率が20%も上がるというすぐれものアイテム。
 それもそのモンスターが持っている可能性のある上位アイテムも同じく20%アップで手に入る確率がある。
 そんな素敵アイテムがぽつんと置いてある。
 うん、間違いなく罠だね。
 誰もそれを疑う事はなかった。
 ってかうたがいようないじゃん。
 ありえないもん。
 余りにも危険な感じがしたのでそのまま放置して先に進むことにした。
 何があっても命あってのものだねだしね。
 かなり後ろ髪をひかれたものの、おとなしく最終階層である五階層めに到着だ。
 少し階段のところで休憩をとり、探索を開始する。
 ……モンスターの強さが僕には手の負えないレベルになってしまった……。
 一応ちまちまと攻撃をかろうじて躱しながら攻撃を放つ者のダメージが殆ど通らない。
 ララさんとレイスさんの二人で殆どかたずけるような形だ。
 情けない……なるほど……これだから僕がダンジョンに潜るのに反対していたのか。
 確かに今の僕の力じゃこのダンジョンすら厳しい。
 正直今までの階層の敵だって二人がいても僕は何度も危険になっていた。
 明らかに経験も足りていないと実感できるのにそうそう時間はかからなかったよ……。
 そんな僕だけじゃなく、ララさんやレイラさんをフォローしながら危なげなく動くのがセルビアさん。
 もう流石という言葉しか出てこない。
 だって、このダンジョンのモンスターなんてセルビアさん殆ど一撃で葬っていってるんだからね。
 ……強すぎでしょう……。
 とりあえず、そんな事を実感しながら五階層めのマップを埋めていく。
 もともと埋まっているものの、隠し通路がある場合もあれば、隠し財宝がある場合もある。
 その時にマップに追加で情報を付け加えるのだ。
 隠し財宝がある場所は、時間がたてばモンスターがまた新しく財宝を隠す可能性があるので、かなり重要な情報として買ってもらえるからね。
 こうして……五階層めも今この突きあたりを最後に全部制覇したわけで、なにもなかったなぁと思いながら最後の底を調べていると、レイラさんが「隠し通路です。」といって新しい道を見つけてきた……。
 おお!
 まだ未開通の道!
 こういうの……結構危険だってのは解っているけどわくわくしちゃうよね?
 とりあえずどんな危険があるか解らないので、ララさんを戦闘に一歩一歩注意してすすむ。
 少しいった先に少し広めの広場があり……そこにモンスターが一匹鎮座していた。
 静かに目をつむり、僕達がその広場に入るとゆっくりと眼を開けた……。
 明らかに強そうですねぇ~。
 さっきから冷や汗がとまりませにょ?
 ってかにげましょうや!
 と僕が叫ぶ前にモンスターが先に声をかけてきた。

  「ほぅ、この場を発見するものがおったのか。めずらしいのぅ。だが悪い事はいわん、何も見なかったことにして帰るがよい。今のお主たちでは我と戦うには力不足だ……ぬ?」

 と言ってくれたので素直に帰ろうとした僕達三人だったが、その後ろからセルビアさんが姿を見せた瞬間モンスターの表情が変わった。

  「ほぅほぅ!これはいい!まさかこれほどまでの力をもつものがいたとはな!そうとあっては見逃せぬ、我の力を高めるがために相手となってもらおうぞ!」

 そう言って立ち上がるモンスター。
 ……大きさはセルビアさんと同じくらいの大きさで180センチくらいかな。
 ただ、その肉体は人と同じように見えるが明らかに堅そうな灰色をし、その顔はヤギに曲がりくねった悪魔の角のようなものが生えた代物だ。
 明らかに化け物です。
 強そうですってか間違いなく強いだろう!
 僕達三人はそのプレッシャーだけで身動きが殆どできない。
 セルビアさんだけが少し厳しい表情を浮かべながらも僕達を護るように前に出る。

  「……一人であなたのようなモンスターを相手にするのは少々骨が折れるので勘弁していただきたいのですが……やる気なのであればしょうがありませんね。いいでしょう……全力でお相手します!シルフィード!」

 等と……二人だけの世界に突入。
 ……ええっと……僕達は無視ですかそうですか。
 少し切ないけどこう叫びたい。
 本当にありがとうございます!
 モンスターの化け物っぷりは眼を見張るものがあったものの、それ以上にセルビアさんの化け物度をみるはめになった。
 ……多少傷を負ったもののそれほど深い傷を負うことなく倒してしまったのだから。
 ……最後に「見事だ……この奥にあるものを持っていくがいい、我を打倒した者に与えられる褒賞だ。」といって砂に帰って行った。
 …………えっと、とりあえず……僕達はその言葉に従って広場の奥に行ってみると、二つの宝箱が置いてあった。
 一応調べてみると……その地面の下にもう二つあって、全部で四つあった。
 ……うん、結構最後の最後まで意地汚い隠し方するねぇ。
 そんな事を思いながら宝箱を開けていく……入っていたのは小さな指輪が一つと首飾りが一つ。
 短剣かと思ったほど短い、ナイフのような形をした杖と何の生地で作られてるのか解らないけど、とにかく普通の防具じゃない事が確かな服の四つだ。
 とりあえず、セルビアさんに全部渡そうとしたところ、指輪だけを手にとって後は分けてくださいと言って僕達に手渡してきた。
 流石にこればっかりは全員で断ったね。
 だってあのモンスターを倒したのはセルビアさん一人でだ。
 分け前をもらえるような立場じゃないどころか、助けてもらったのだから逆に御礼を言わなければならない立場なんだ。
 だからこそ断固として拒否したんだけど……。

  「エン君、君はもう村の一員なんだ。そんな村の若い子に少しくらい甘くたって誰も文句なんていわないだろう?」

 そう言って笑いながら手渡された。
 ……ずるいなぁ。
 そんな事笑顔で言われたら断れない。
 断りたくない……っていったほうがいいか。
 僕は小さな声で「ありがとうございます……。」と呟いてその宝物を受け取った。
 受け取って……僕は服を貰った。
 何でかというと……その服何故か僕にちょうどぴったりだったからだ。
 ナイフのような杖はレイラさん、ネックレスをララさんが受け取った。
 身につけてみると……明らかに凄い代物だと解った。
 だって、明らかに今まで付けていた皮の鎧よりも軽くて丈夫だ。
 装備したらアイテムの詳細を見る事ができ、そこに書かれた内容がまたすごい。
 防御力は今までの鎧の三倍近い程で、自己回復のスキルが常時発動するという代物だった。
 その上これは何の生地かわからないけれど、ものすごく柔らかく動きやすい。
 今まで以上に上手く動く事が出来そうでいい感じだな。
 レイラさんの杖も凄いと言っていた。
 魔法攻撃の際の攻撃力が15%程あがるらしい。
 その上攻撃力自体今まで装備していた短剣よりも高いので普通に切りつけても効果があるという。
 詠唱の胆略化までできるといっていたので、レイラさんも凄く嬉しそうだった。
 ララさんのネックレスは自分が装備している武器にモンスターが苦手とする属性を付けるといった効果があるらしい。
 ただし無属性の武器のみだという事だが、レイラさんの装備している短剣は無属性。
 効果を存分に発揮できる。
 相手の苦手な属性での攻撃であれば最低でも1.2倍、最高で2倍までのダメージを与えられることになるので、凄くいいものだと僕でも解る。
 最後にセルビアさんの付けた指輪なんだけど、驚くことにセルビアさんの遺志によって指輪から弓へ、弓から指輪へ変わるらしい。
 それも攻撃力が今現在確認されている弓の最高のレベルと同じくらいだという。
 いいものを貰ったよ……そう言って笑うセルビアさんも本当に嬉しそうだった。
 初めてのダンジョンでこれほどまでに成果をあげられるなんて……凄くラッキーだ。
 今までこの部屋が発見されていなかったことに感謝しないとな。
 そして、何よりセルビアさんには感謝してもしきれない。
 改めて三人でお礼を言いながらそのダンジョンを後にする。
 ダンジョンから戻ると既に日が暮れており、セルビアさんは今から帰るといってその場所で別れてしまった。
 特殊な帰還アイテムを持っているらしくて、一瞬で自分だけなら村まで戻る事が出来るらしい。
 便利でいいなぁ。
 だから僕達はその場で感謝の言葉を再びセルビアさんに送り、別れの言葉を互いに囁きながら別れたのだ。
 ……ん~疲れた……でも、すっごくいい経験になった!
 確かに僕にダンジョンはまだ早いという事も解った。
 無茶をすればどんな目にあうかという事もなんとなく予想が付いた。
 きっと、多少無茶をしてでもララさんもレイラさんも僕にその事を教えたかったんだろうな。
 恥ずかしいからそんな事僕から云わないけどね。
 代わりに、僕は二人の手を取って早く帰ろうと駆け出した。
 突然の僕の行動に驚きながらもほほ笑みを洩らして、逆に僕を引っ張るようにかけていく。
 こうして……僕の初めてのダンジョン探索は色々な経験を積むこともでき、宝物も手に入れることもできて大成功で終わった。





 で、終わればよかったんだけどさぁ。
 今僕は酒場で二人の女性に絡まれている。
 右にはララさん、左にはレイラさん。
 何やらララさんは「どうして私には彼氏の一人もできないんだーーーー!」と叫びながら僕に無理やりお酒を飲ませながら暴れる。
 レイラさんは位笑みをもらしながら僕にプレッシャーをかけてくる……さっきからぶつぶつ粒や言葉を聞いていると……「何でマサキさん私の思いに………。」とかそんな感じの事を呟いてる。
 怖いのでいくらプレッシャーがかかろうと聞かなかった事にします。
 そんなこんなで騒いで迎えた翌日……僕だけ何故か二日酔いで、ララさんとレイラさんに酷く怒られた。
 理不尽だぁぁぁぁ!



[7197] 異世界の混沌 第五話
Name: 榊 燕◆972593f7 ID:e298aa1b
Date: 2009/03/12 00:06
     第五話~驚愕の事実が今明らかに……ってか嘘!?~





 今日……久しぶりに村に帰ってきた。
 何処の村かは言わなくても解るよね?
 勿論マサキさん達の村の事だよ。
 んでもって……今大いにどんちゃんさわぎの真っ最中です。
 何故か……それは前に帰ったセルビアさんが初めてダンジョンに潜り、見事に制覇したと触れまわっていたからだ。
 詰る所、僕のためのどんちゃん騒ぎ……嬉しいけど恥ずかしいねぇ。

  「いやぁしばらく見ない間にエンも成長したんだなぁ……少しさびしい気がするぜ。」

 マサキさんもお酒を飲みながらそんな事を言ってくる。
 ついでにと僕のコップにも酒を継ぎ足してくれたのでありがたく頂くことに……。
 ぐぐいっとな♪
 うん、美味しい!
 本当においしいなぁ……かなりいいお酒だよこれ。
 きっと、僕のためにわざわざ持ってきてくれたんだろうなぁ……。
 でも、やっぱりマサキさんに褒められるのは嬉しい気がする。
 ……ごめん、素直に嬉しいです。
 だからだろう、きっとお酒を飲んでいたのも悪かったんだと思う……。
 だから普段は色々とためらって聞けなかったこんな事を聞いてしまったんだ。

  「そう言えばマサキさんてレベルいくつなんですか?」

 とね。
 凄いよ……まるで魔法だったよ。
 僕がその言葉を呟いた瞬間その場の空気が音がしそうなほどの勢いで凍ったんだからさ。
 いや……本気で……びびった。
 ってかどうしようこれ!?
 僕何か悪い事いっちゃった?
 マサキさんのレベル関係の話ってそれほどまでの話なのか!?
 僕は……そんな空気の中恐る恐るマサキをんを見つめる。
 何か哀愁漂うふ雰囲気を漂わせながら非常に切なげな表情だ。

  「……はぁ、やっぱり気になるよな。まぁ……何時までもかくしておけるもんじゃねぇし、隠すもんでもないからな……流石に……切なくなるが……これもこれで仕方ないか。気にしてない……とはいえないが、もう慣れてきたっての。だから皆もそんな禁忌に触れたような空気醸し出すんじゃねぇよ。エンだってすげぇ居心地悪そうだろう?すまねぇな。……んでもってレベルだったな……俺のレベルは1だ。聞き間違いじゃないぜ、本当に間違いなく1だ。」

 ほれといいながらステータスを見ると本当にレベルが1だった。
 ……。
 …………。
 ………………。
 う、嘘だぁ!?
 そんな……そんなわけないよ!
 だってこの辺のモンスター低レベルなら一人で倒せるんだよ?
 中レベルだってきっと倒す事出来ると思う。
 そんな人がレベル1だって?
 そんなの……でも、ステータスは偽証出来ない……。
 ああ、レイラさんとララさんも信じられないといった表情で固まっている。
 周りの村の人もかなり居心地悪そうだ……本当なのか?
 ……え、ええぇぇぇぇぇ!?
 本当なの!?
 ……信じられない……動かぬ証拠を見せられても信じられない……。
 だって、今僕レベル35になったけど、マサキさんに勝てる気全然しないよ?
 混乱しながら慌ててる僕にマサキさんが苦笑を洩らしながら話しかけてくる。

  「まぁ、エンは俺の事強いと思ってたみたいだからな。事実を知っちまってがっくりしちまったか?悪いな。でもな、レベル1だけど、それでも戦い方によっちゃ色々戦えるんだぜ。……でもまぁレベルが1な事にはかわりはしねぇ。期待させちまってたんなら本当に悪かったな。」

 そう言って笑いながら僕の頭をなでる。
 何でそんな風に笑えるんですか?
 僕には不思議でしょうがない。
 だって……僕ならきっと我慢できない。
 レベル1でモンスターと戦う事も、その事実を受け入れることを。
 マサキさんは少なくとも二百年以上は生きている……その間かなりの数のモンスターと戦ったはずだ。
 なのにレベル1……色々と……バグなのかなんなのか解らないけど、酷く理不尽な状態だったろう。
 それなのに何でマサキさんはそうやって笑えるんだろう。
 謝らなければいけないの場僕なのに、僕の事を考えて、逆に謝れるほど大きいんだろう……。
 ……僕には詳しい事は解らないけど……凄いな……本当に凄い。
 マサキさんはがっかりしただろうとか言ってたけど、そんな事ある訳ない!
 逆に……そんなマサキさんの『強さ。』が凄く……まぶしい。
 何時か僕も……そんな強さを持てるようになりたい……そう思った。
 ……ああ……だからセルビアさん、あの時あんなこと言ったんだ。
 セルビアさんはマサキさんの背中を見て、追いかけていたんだ。
 道理で凄いはずだよね。
 僕も……何時かそうなれるかな?
 ううん、何時かきっとそうなろう!
 弱気じゃだめだ!
 マサキさんにとっちゃ僕は物凄く恵まれているだろう。
 周りから見れば普通でも、マサキさんからしてみれば嫉妬の対象になっていても可笑しくない。
 ……それなのにマサキさん……。
 うん、僕にもやっと……目指すべき目標が出来た。
 今更……といわれるかもしれないけど、今までなんとなく楽しいなぁ程度で遊んでいただけだった。
 でも今、本気でマサキさんみたいになりたいって思えたんだ。
 きっとなって見せるって。
 この目標……達成できるまでどれだけ長い時間が経つか解らない……けど、絶対に……諦めない!
 頑張って見せる。
 だから僕は……マサキさんのコップにお酒を継ぎ足し、「そんな事ないです!何時か……何時かそんなマサキさんに追いついて見せます……いや!追い抜いて見せます!」そう言って、笑った。
 今……僕はきっと笑うことしかできなかった。
 だって……それ以外にどうしろというんだ?
 悲しい顔は似合わない、同情なんてもってのほか、する意味すらない。
 諦めるなんてものは最初から選択肢外。
 苦笑や眼をそらすような中途半端はしたくない。
 だから僕は今笑おう。
 そんな僕にマサキさんは少し驚いたような表情で、「とっくに追い抜いてんだろうが!」と笑いながら乱暴に僕の頭をなでる。
 うん、確かにレベルは抜いてるけど……その『強さ。』は、正直今じゃ全然先が見えないくらい離されてると思うんだ。
 きっとマサキさんにいっても否定されるけど……僕はそう感じた。
 だから……僕は決めたんだ、誰に何と言われても……マサキさんみたいな強さを手に入れるって……今この場で、この時に!
 僕達がそうやってお互いに笑い合ってお酒を飲みだしてから漸く、場の空気が動き出した。
 さっきまでと同じような温かくて騒がしい空気。
 村の皆が応援してくれる。
 大変だろうけど頑張れ!
 そうセルビアさんも言ってくれた。
 レイラさんとララさんも正気に戻ったらしく何時の間にやらやさしい笑顔で僕を見てくる。
 その表情はやめてほしいな……。
 そんな感じで……驚愕の事実を知ったけど……より一層マサキさんの凄さと強さが解った。
 少し……マサキさんには悪い事をしたと思うけど、でも僕的には知れてよかった……。
 本当に……。
 よし!
 明日から……目標に向かって頑張るぞぉ!



[7197] 異世界の混沌 第六話
Name: 榊 燕◆972593f7 ID:e298aa1b
Date: 2009/03/12 00:04
     第六話~……えっ……嘘……だろう?~





 薄々は気付いていたんだ……長い間一緒にいて、いろんな話をしていれば時々違和感を感じる時があったからね。
 時々フッと普通のNPCじゃ絶対に言わないような事だって平気で言ってたし、出会ってから数年でもしかして?
 くらいには予想していたよ。
 本人の口から聞く今までやっぱり、本心から信じ切れてはいなかったんだけどね。

  「何だ……俺の話外でも伝説って扱いで広まってたのか……なんだかなぁ……。まぁ今はこの世界にこれた事に満足してるし、この世界にこれた事に感謝してるから全然いいんだけどな。」

 等とあっさりといってくれた。
 ……っていうか、かなりの緊張と共に聞いた僕が馬鹿みたいだよ……。
 とりあえず……そんな出来事があった一年後……突然冗談だと思えるような……いや、悪い冗談だと信じたい告知が発表された。
 それは現実世界の掲示板に書かれていた一文だ。

     『異世界の混沌をプレイしていただき誠にありがとうございます。
      このたび、真勝手ながらオンラインゲーム混沌の世界のサービス
      停止とさせていただきます。
      長年のご愛顧誠にありがとうございます。
      つきましては、今月から、停止日の来月十五日までは無料でプレ
      イをしていただけるようになっております。
      是非、最後のひと時を皆さんお楽しみください。』

 というものだ。
 ……信じたく何てない。
 唯の冗談……そう思いたい。
 でも……それは事実だった。
 一週間たった今でもその告知は消えていない。
 つまり……決定された事なのだろう。
 確かに……月々にかかるお金もかからなくなっている。
 ……本当に終わりなのか?
 ちょっとまって……この、この世界が終るという事はマサキさんはどうなるんだ?
 …………ああ、それは大丈夫なのかな。
 前に一度停止したときだってマサキさんたちは何事もなかったかのように暮らしていけていたっていってたし。
 ……ただ、僕達は二度とマサキさん達に会えなくなってしまうってことなんだ……。
 嫌だな……そんなの嫌だ。
 でも、僕みたいな唯の一般人にはそう感じてもどうしようもない。
 何もできない……署名を集めて停止を促そうとしても無理そうだ。
 どこか……違う会社が買い取って運営してくれればいいのだが、そんな望みも薄いだろう。
 ……ああ、本当に……終わってしまうんだ。
 こっちの世界で残り時間四十年。
 長いようで短い時間。
 僕は……最後のこの時を一緒にいたいと思える村の皆と過ごそうと決めた。
 しばらくの間ぎこちなく村で過ごす僕を黙って村の皆は見守っていてくれた。
 我慢できず……十五年たった日マサキさんに告白した。

  「後……この世界の二十五年でこのゲームサービスが停止するんです……。そうなるともう……マサキさん達と会えなくなってしまうし……マサキさん達だってどうなってしまうか解らなくて……どうしていいのか……何もできなくてっ!」

 といってるうちにどうしてか凄く悲しくなってきて泣いてしまった。
 マサキさんはそんな僕の頭をなでながら何でもない事のように笑ってこういったんだ。

  「何だそんな事で悩んでたのか!俺たちは大丈夫だって、ゲームがサービス停止しようがなにしようが、この世界は続いていく……それは間違いない。何でか解らないけど解るんだよ。それに……だ。もう会えないなんて誰が決めたんだ?俺たちはこの世界で永遠に生き続ける……、いや永遠とは限らないが、永遠に近い間生き続ける。なら、これから先会える事もあるだろう。諦めない限りいわな?俺たちにとっちゃ何でもないことだし、エンにとっても少しあえない時間はできるが、本気で会いたいっておもってくれんなら頑張り次第でどうにかなることだろう?ならそんな悲しむことじゃない。しばしのお別れってだけだ。いつもの冒険に出るのと大して違いはないさ。村の皆にもそう言っとく……だからよ、何時か戻ってこい。何時までもまっててやっから。」

 言われた瞬間、声を押さえて泣いていたってのに、いつの間にか大声を出して泣いていたよ。
 流石に……恥ずかしいね……今思い返してみるとさ。
 でも……それですっきりしたんだ。
 それから残りの十五年間、マサキさん達の村で、ララさんとレイラさんも一緒に精一杯楽しんで過ごした。
 やりたい事があれば直ぐにいやった。
 出来ない事があっても皆でやろうとした。
 失敗ばっかりだったけどね。
 そんな事をして……あっというまにサービスが停止してしまった。
 マサキさん達との最後の言葉はいつもと何も変わらない言葉。

  「いってらっしゃいエン君。何時でも帰ってきなさいよ~。」

 と笑顔で送り出してくれるレイスさん。

  「頑張ってくださいね。今度戻ってきたときにどれだけ成長したか楽しみにしていますよ。」

 これはセルビアさん。
 そして。

  「おう、いってきな。何時までも待っててやるからよ。成長して戻ってこいや。」

 笑顔で送り出してくれるマサキさん。
 うん、僕は何時か戻ってきます。
 何年かかるか解りませんが、絶対に。
 だから、次に会うその日まで……。

  「行ってきます!」



[7197] 異世界の混沌 エピローグ
Name: 榊 燕◆972593f7 ID:e298aa1b
Date: 2009/03/12 00:05
     エピローグ~ただいま!~





 あれから現実世界で五年がたった。
 やはり異世界の混沌を買い取って再開する会社はなかった。
 もともと……混沌の世界を運営していたところがつぶれた所でサービスが停止となった。
 理由はそのサーバーの容量による施設と機械の維持費によってだ。
 他のゲームなんて目じゃないくらいの容量が必要なうえ、独自サーバーに独自技術を使っていたため、余りにも異質すぎたんだ。
 他のメーカーが買い取るにしてもそれだけの維持費を考えると、手を出せるところがなかったという事だ。
 その情報を聞いた時……僕はがっかりした。
 けど、その瞬間に僕は自分の進むべき道を見つけたといっても良い。
 誰も出来ないのであれば僕がやろう。
 流石に……今までみたいな何万人というプレイヤーを抱えるのは不可能でも、僕一人分が行くくらいには何とかできるかもしれない……いや、して見せる。
 そう思ったんだ。
 幸いなことに、データーだけはその会社に直接交渉して手に入れる事が出来た。
 ……といっても、それを手に入れられたのもサービスが停止してから七年もたってからの事だけどね。
 高いんだ……物凄く高い。
 ただ、やはり七年も昔のデーターになるとそれなりに価値も下がり、当時数億したデーターのねだんさえ、その勝った時には五千万にまで下がっていた。
 それでも……それだけの大金を貯めるのに七年かかった訳なんだが……比較的早かったと見ても問題ないよな?
 データーを手に入れてからがまた問題だった。
 それを真面に起動させるだけの容量を確保するのがまた困難だった。
 だって、僕の予想じゃかなり多いことから大体少なく見積もっても10Tは堅いなとは思っていたけど……増え続けていたそれの容量はそれを軽く凌駕していた。
 1300T……これが僕が譲り受けた時のゲームの容量だ。
 何処に何を使えばこれほどまでに膨れ上がるのか謎だった……ブラックボックス部分が多すぎる。
 だけど……起動させる方法は比較的簡単だ。
 そりゃそうだろう……もともと起動していたゲームなんだ、データーさえあればあとはそれを起動させるだけの容量と機械があればなんとでもなる。
 まずは……その容量を問題なく動かせるだけのものを用意するのに更に五年かかった。
 そして最後にそれに入り込むための機械だ。
 これはもともと使っていた機械を色々と手伝ってもらい改造することによって何とか使えると解ったので一年くらいで直ぐに何とかなった……。
 そしてとうとう今日……全ての準備は整った。
 出来る事ならララさんやレイラさんにも連絡を取って一緒に行きたかったのだが……ゲームの世界の中でしかかかわりのなかった僕達だ。
 現実世界での連絡の取りようなどなく、不可能だった。
 ……それでも諦めきれず、予備も含め五台分のログインするための機械を用意していた。
 用意は整った……安全確認を含め、明日……とうとう明日この長い間目指してきた事が実現できる。
 僕はそんな事を考えながらいつもの日課でネットのチェックをしていく。
 こんな僕だけど、今一部じゃかなり有名になっている。
 この混沌の世界を復活させようとしているからだ。
 僕のほかにもいたんだけど、今こうやって実現段階まで来たのは僕が一番最初だ。
 自分で畝いしているホームページをチェックしているとメールが届いていた。
 その宛名を見て……驚いた……。
 メール自体は数十ものメールが届いており、お祝いの言葉であったり、板砂関係や嫌み関係のメールも結構ある。
 僕が驚いたのは二つのメールだ。
 宛名がララとレイラ。
 中身を見てなお驚いた。
 二つ揃って中身はこんな内容だった。

  『村の生活は懐かしい、盗賊はその夢をまた見たい。』

 多少文章は違ったが、揃いも揃って二人ともそんなメールを送ってきていた。
 思わず笑った。
 僕だけじゃなくやっぱりこの二人もちゃんとまだ覚えていてくれたんだと。
 僕はこの二人に改めてメールを送ってみた。
 名前を『エン。』内容は。

  『僕は村長夫婦に挨拶に行く、夫の名前はなんだったかな?教えてくれるなら一緒にいくかい?』

 とね?
 驚くほど返答は早かった。
 送ってから十分ほどで直ぐ帰ってきたんだからね。

  『エン君生意気言うようになったよねぇ~。師匠を試すような事するなんて。『マサキ。』さんには私も会いたいし、連れて行ってほしいから、何処に行けばいいか教えて頂戴。』

  『エン君は相変わらずですね。答えは『マサキ。』さんですよね。私が解らなくなる訳がないでしょう?間違えて本当にエン君が忘れていたのであれば……ふふふ、解るわよね?それで……何処に行けばいいのかしら?』

 うん、やっぱりあの二人だね。
 街がいないと思う。
 だから僕は自分の近くの喫茶店の住所をメールで送り待ち合わせをすることにした。
 やっぱりいくらなんでも自分の家の住所を直接メールで送る勇気はなかったわけだ。
 そして揃いも揃ってこの二人……家が近所っぽい。
 その喫茶店を教えると、ララさんは家から五分くらいの距離だ!
 と驚いてメールを食ってきたし、レイラさんも歩いていける距離ね……といったメールが帰ってきた。
 何だ……こんなに近かったのか……。
 次の日……僕は待ち合わせ場所の喫茶店で待っていると……二十半ば位にしか見えない二人の女性が入ってきた。
 僕に向かってエン君?
 と聞いてくる事から間違いなく二人だろう。
 最初……ぎこちなく緊張しながら話していた僕達だったが、三十分もしたころ過去のゲームの世界で話していたのと同じような感覚で話を出来るようになっていた。
 その後少しコーヒーを飲みながら思い出話に花を咲かせ、僕の家に向かう事にした。
 僕の部屋にある機械を目にして二人は懐かしそうに笑った。
 二人とも最初この機会を見た時は驚いたといって笑い合っていた。
 僕は最終チェックを済ませ、二人をその機会の中に入れ、僕も機械に入る。
 そして……スタートボタン。
 過去に何度も経験したことだったが久しぶりのこの感覚は酷く……違和感が強かった。
 機械が僕の肌に張り付いた瞬間……意識はなくなった。





 そして……次に目覚めた時僕はピンチだった。
 目の前には壁がある。
 そうばかでかい茶色いふさふさした壁だ……。
 はい、すいませんモンスターです。
 って何事ですか!?
 入った瞬間に何事ですか?
 ……なんだか酷いデジャブを感じるけど気のせいか?
 っていまはそんな場合じゃねぇ!
 と混乱しているうちにそのモンスターは僕に向かって腕を振り下ろした……。
 ああだめだ……。
 と思ったけど、運がよくそれ、地面を陥没させただけだった……。
 陥没……させただけ……だった……。
 うん、くらってたら即死だよね~しってたよ?
 外したのを確認したモンスターはもう一方の腕を改めて振り下ろした。
 今度こそだめだ……そう思って強く眼を閉じる。
 だが……何時まで経ってもその最後の時はこなかった。
 ドスン……その音と共に目の前で壁になっていたモンスターがいなくなった感じがした。
 恐る恐る眼を開けてみる……。
 倒されているモンスターが目の前にいた。
 た、助かったぁ!
 ……やはり酷いデジャブを感じる僕に声がかけられた。
 その声はとても懐かしく……この声が聞きたくて僕は長い間頑張ってきた。

  「大丈夫だったか?危なかったなぁ……偶々見まわっていたときだったから良かったものの……そんな装備ともいえない道具だけでこの変うろつくのは自殺行為だぞ?」

 僕は……ゆっくりと振り返る。

  「なぁ解ってることだろう……エンよ。久しぶりだな。おかえり。」

 そこには……僕が追い求めていたその人が……別れた時と変わらぬその笑顔で僕を見つめていた。
 その両サイドにはちゃっかりとララさんとレイラさんが苦笑を洩らしながら立っている。
 どうやら同じように助けられたらしい。
 でも……本当に……久しぶりに会えた。
 茫然としている僕を起き上がらせて求めていた人と向き合うと、そこはちょうど村の入り口だった。
 そして……その入り口には……村の皆が集まっていた。
 村長レイスさん……副リーダーのセルビアさん……ギルドの親父や村の皆……。
 そして……マサキさん。
 思わず涙がこぼれた。
 でも……何よりも最初にこの一言を皆に言いたかったんだ。
 だから……多少声が涙声になっていたと思うけど大声で叫んだ。

  「ただいま皆!」



[7197] 異世界の混沌 感謝の言葉。
Name: 榊 燕◆972593f7 ID:e298aa1b
Date: 2009/03/12 00:09
皆さんこんな作者の物語今まで読んでくださりありがとうございました。
諸事情により色々と時間の問題とかもあり、物語を紡ぐのが難しくなりそうでしたので、突然ですが最期を飾らせていただきました。
今まで応援してくださった皆様本当にありがとうございます。
そして、申し訳ありません。
何時か……この物語か、違う物語になるかは解りませんが、また物語を紡いでいきたいと思っています。
最後に……本当に皆様ありがとうございました!


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