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[8143] 【ネタ】異邦人の憂鬱(現実→H×H)
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:1e5f2ff6
Date: 2009/05/31 03:02
皆さん、こんにちは。

今回初投稿させていただきます。ぺんたと申します。

また、感想欄ではさぶろーと名乗らせていただいております。
※感想欄でもぺんたで統一することにしました。

前々から様々な二次小説を読み、自分も書いてみたいと心にくすぶるものがありました。

今回、その思いが抑えきれなくなり、筆を取った次第です。

至らないところも多々ございますが、どうぞよろしくお願いします。

感想、批判等、誠心誠意受け止めさせていただきたく思いますのでどうかよろしくお願いします。


※5/10 キャラ紹介&念設定にてゴクウの界王拳の制約と誓約を一部変更。

※5/22 第八話、キャラ紹介&念設定の誤字修正

※5/24 第九話の誤字修正、展開矛盾の修正

※5/28 キャラ紹介&念設定の更新



[8143] [ネタ]異邦人の憂鬱 第一話
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:1e5f2ff6
Date: 2009/04/24 00:44
1985年×月×日 晴れ 

何がおきているのかわからない。
少なくともアレは死んだだろうと思ったんだが目が覚めたら病院に居た。
それはまあいい、実は助かってたという可能性もある。
体が動かしずらいのもわかる、あれだけ派手にされたら怪我だって相当だろう。
だが、1つ分からない事がある。
なんで俺の手、赤ん坊みたいなサイズなんだ?

                赤ん坊(テオ・ペッパー)の心の日記帳より










<side:テオ>

俺の名はテオ・ペッパー、実は俺はこの世界の人間じゃない。
この世界が『HUNTER×HUNTER』と言う漫画として描かれていた世界で死んで、この世界に転生してきたトリッパーだ。
転生した理由は分からないが、いくつか分かることはある。
そのうちの1つがこの世界が漫画の世界かどうかなど関係が無く、『この世界に生きている人達にとってはあくまでこ
の世界が現実である』と言う事である。

俺は前世の世界ではいわゆるオタクと呼ばれる類の人間だった。
当然のようにHUNTER×HUNTERも愛読しており、よく『こんな念が使えたら』見たいな事を妄想していたため、生まれか
わってこの世界に誕生した時は神様ありがとう!!とか驚喜してた。
ちなみに、なぜ生まれ変わった世界がハンター世界だと判ったかというと、テレビから『ヨークシン』、『ハンター協
会』、『パドキア共和国』、『伝説の暗殺一家ゾルディック特集』などのファンならスルー出来ない単語が聞こえてき
たからである。

この頃の俺はハンター世界に生まれ変わったと言う奇跡にばかり目が行っていてこの世界が自分が生きている現実であ
ると言う事を正しく認識できていなかったんだと思う。
俺は赤子の身でありながら原作知識をフル活用し、精孔を開くため点を続けた。
何度も言うが、生まれて数日の赤子の時から点とかやってた。
両親からすれば必要最低限の行動しかしない、ろくに泣き声さえ上げない非常に不気味な赤ん坊だったんだろう。
一歳の誕生日の日、俺は両親に悪魔憑きとして山に捨てられてしまった。

「まあ、気持ちは分かる。うん。」

自嘲してみるオレ。

まあ、この時点で精孔はすでに開き、纏の習得は完了していたので、ぶっちゃけ一歳児ではありえない身体能力で自力
で生活することは出来たが、こっちの両親には、親不孝ばかりしたなぁと反省するしかない俺だった。

それからの数年は念の修行と身体能力の向上を行っていた。
というか、さすがに幼児の体では念があろうとも森の動物相手に不覚をとる事もあるため日々の生活がそのまま修行に
なっていた。
客観的にかなり悲惨な目にあっているといえるこの状況になるに到って、ようやく俺は、自分が『この世界』のオリ主
等ではなく、『この世界』には『ご都合主義』も『主人公補正』も存在しないということを悟らざるをえなかった。
ただ、修行を怠る訳にはいかなかった。
この世界、例え自分がオリ主でなく、ご都合主義も主人公補正も存在しないとしても、凶悪犯罪者やマフィアは普通に
存在しているのである。
冨樫ワールドのシビアさだけは健在なのであった。

時は流れて5歳頃。
普段は大陸の森を渡り歩き、当地の動物達のナワバリを荒らしながら暮らしている俺であるが、時には人里が恋しくな
る時もある。
ぶっちゃければ、倒した動物の丸焼きや野草のサラダばかりでなくちゃんとした料理が食べたくなるのである。
と言っても、一銭も持たない身であるからしてまともな店に入れる訳もなく、身体能力を生かして屋台から料理をかす
め獲っているのであるが。
今回不幸だったのは、現場を念能力者に見られたことであった。
さらに極めつけは、その念能力者はマフィアのお抱えであることであった。
ほとんど野生児の念使いではあるが、所詮五歳児である。
多少の抵抗はしたものの、結局捕まり連行されてしまった。

適度にボコられ連行されたのは、町から少し離れたところにある屋敷だった。
ちなみにこのマフィア、名前をカツォーネ・ファミリーと言うらしい。
このあたりをシマとしている構成員十数名の小規模マフィアだが、ボス含め、全員念能力者という超武闘派の組織である。
俺を拉致ったのは、ときおり浮浪者や捨て子から才能(念の)がありそうな人材を発掘するために見回りをしており、
運悪く犯行現場を目撃されたと言うことらしい。
もっとも、ここ最近この辺の町で子供の念使いの目撃情報があったため、見回りを強化していたとのこと。
街中でも纏を維持したまま歩き回っていたため、念能力者には丸分かりなのであった。
結局捕まったことさえ、俺の自業自得っぽいようだ。
さすがの俺もちょっと凹んだ。

その後、結局のところ俺はマフィアで準構成員として飼われることになった。
まあ、俺に選択肢などなかったのだが。
マフィアで武闘派で念能力者といっても、同じ人間である。
原作では、陰獣のように人以外の血が入ってそうなのもいたが、ここはそういうのはいないようだった。
マフィアと言うから、肩がぶつかっただけで殺し合いが始まるような殺伐とした場所を思い浮かべてしまったが、別にそん
なこともなく、組織内の人たちは普通の人達ばかりであった。(ただし、敵対組織との対立時にはその限りではないが)
ここには俺よりも強い人間がたくさん居る。
死なないために強くなりたい俺にとってもここで訓練できることは願ったりであった。

このマフィアは上位組織の戦闘要員、暗殺要員のような立場にあるらしい。
組織に所属してからしばらくたった頃、自分にも暗殺任務がまわってきた。
思ったよりもあっけなく、俺は人間を殺すことが出来た。
考えれば当たり前なのかもしれない。
森の中で動物達と殺し合いをしていたときは、負ければ自分が食われるという極限状況の中で生き残ってきたのである。
すでに、俺の中では命の価値と言う意味で動物と人間に線引きなど無くなっていた。

俺がファミリーに所属してから二年が過ぎた頃、俺を拾った先輩マフィアのトリオさんがまた、子供の念能力者を見つけてきた。
そいつの名前はハット・オーウェンと言うらしい、ハオと呼んでくれと言われた。
歳は七歳、俺と同い年だ。
だが、そんなものよりも気になることがある。
あいつの持つ雰囲気、それが何となく俺に似ている気がした。
あいつも俺に対して何かしら感じるところがあるらしく、ちらちらとこちらを見ていた。

ハオにマフィアのルールを教えるのは俺の仕事になった。
どうやら、新入りの世話をするのはそれまで一番下っ端だったやつの仕事らしい。
俺はルールを教える傍ら、念能力の確認をするため『発』を見せてみろとハオに命令する。

「いいっすよ。こい、スピリット・オブ・ファイア!!」

掛け声と同時にハオの隣にオーラで出来た人形のようなモノが現れた。なかなか強力そうなオーラを出している。
だが、それよりも気になることがあった、疑問が確信に変わったような感覚で俺はハオに問いかけた。

「この姿形でその名前・・・ハオ、お前って、もしかして、トリッパーか?」

俺の問いに驚きでフリーズした様で、目を丸くしながらこちらを凝視していた。
俺は、自分もトリッパーであることを明かし、この世界で始めて出会った同胞と改めて友人となったのだった。

さらに数年の月日が流れた。
どうも、俺とハオは相当規格外の念能力者らしい。
俺達は二人とも前世で死んでこの世界に生まれ変わっている。
そのためか、『死者の念』の定義が当てはまるらしく、内包するオーラの総量がトッププロハンターレベルにあ
るらしい。
ばれたら今以上にこき使われる為ごまかしているが。

10歳を過ぎた頃、今頃になって思い出したモノがあった。
キメラアントである。
これまで生きるので精一杯であったとはいえ、痛恨である。

この頃の俺は俺の念能力との相性の良さから神字の習得を目指して勉強中だった。
うちのファミリーは武闘派で通っているだけあって自己研鑽のためであれば多少の無理は通してくれる。
それでも、神字に関する資料など値が張りすぎてとても一構成員のために用意するなど出来ないものであったが、
今日までの組への俺の貢献度や実際に神字を習得した際の俺の念能力のバリエーションの拡大が相当なものになる
ことは間違いなかったため、神字の基礎についての入門書(それでも数千万ゼニー単位)を用意してもらえること
になった。
それ以上先を学びたいのなら、自力で本を用意するようにとも言われたが。
ちなみにここ数年はハオと組んで仕事をしており、仕事の請負数と成功率は組でも有数で、稼ぎ頭となっている。
敵対組織強襲などの仕事はいい実戦経験になるため進んで受けていたら、いつの間にか組の稼ぎ頭になってた。

バトルしようぜ!!的なノリで戦いまくっていたこともあり、実戦経験も相当積んだとは思うがそれでもキメラア
ントの災害に対抗出来るかとなると旗色が悪い。
原作がまだ完結していないため、ハンターVSキメラアントがどうなるのかはわからない。
ただ、最新の連載ではネテロ会長は王メルエム相手にまともに攻撃が通じていないという描写があった。
漫画内の物語(ストーリー)であれば最終的にはキメラアントに勝つという流れも予想がつくが、悲しいかなここ
は現実である。
しかも、漫画補正が働く世界なのだとしても原作が世界観がシビアなことで定評のある冨樫ワールドなのである。
どうせ主人公陣営が勝つだろうと楽観視していたら、キメラアントの世界征服が始まっちゃいました(笑
などと言うシビアすぎて涙もでねぇよ的な展開も十分考えられるため、俺達は頭を抱えるしかなかった。

それからさらに、二年が過ぎた。
キメラアントの対策はまるで進んでいなかった。
そもそも女王が登場する時期を目安に探そうにも、女王の居場所の正確な位置がわかっていないため探すなら人海
戦術に頼らなければいけない。
どうにかしてファミリーの人間を借りれたとしてもとても人手が足りなかった。

ハンターに依頼するのも難しい。
まず、金がない。
ハンター協会に情報を流して対処してもらうにも、やはり金は必要だ。
結局のところ、ハンター協会がハンターに依頼して調査してもらうのだから金が必要なのは当然である。
不確定な情報だけでは結局動いてはもらえないだろう。
それどころか半端に情報を流して、実際にキメラアント事件が発生した場合、真っ先にとっ捕まりキメラアント対
策班に組み込まれてしまうだろうことも予測できる。
そうなっては、最悪、主人公組(というか、ヤンデレモードのゴン)と一緒に、未だ勝敗の不明な東ゴルドー逝き
である。
世界観的には一モブキャラに過ぎないだろう俺達など最悪、引き立て役扱いで死ぬ可能性すらある。

現状、取る手立てが無い、八方塞であった。

最近、組の抗争が激しくなってきた。
上位組織同士の抗争が発生しているらしい。
残念なことにこの抗争は負け戦となりそうだ。
俺達のファミリーも半分近くがすでに戦死してしまった。
念能力者集団である俺達のファミリーを半壊させたのは敵対組織のたった一人の念能力者であるらしい。
戦闘から生きて戻ったトリオさんが伝えてくれた、ボスは討たれてしまったらしい。
具現化した刀を使って戦うらしく、また、刀の名前らしきものを叫ぶことによって刀の形状が変化し、オーラが激
増するという。
戦場でこいつが現れた時は、俺とハオが相手をすることになった。

・・・こいつの念能力って斬魄刀開放では・・・また新しいトリッパーかなぁ

悪い予感はたいてい当たる、これも世界の修正ってやつだろうか。





「ほう。お前達、同胞だな。分かるぞ、同じにおいがする。」

「・・・ぐはっ、よりによって厨二トリッパーですか、そうですか、本当にありがとうございました。」

ハオが思わずツッコミを入れた様だがとりあえず俺も同意見だと言っておこう。

戦力が激減した俺たちのファミリーに残された手は、もはや、特攻して一人でも多く道連れにすることだけであった。
敗北が確定しているし、ボスもすでに亡い、がカツォーネ・ファミリーとして今まで生きてきた意地があった。
まあ、俺とハオは死んだことにしてエスケープしようと思っていたのだが、よりによって一番厄介そうなのと当たって
しまった様だ。
セリフはアレだが纏っているオーラは強者のそれである。

「ふん、漫画世界に生まれ変わるような奇跡に見舞われているのだ。オリ主を目指すことこそがトリッパーとしての使
命であろう、お前たちとてそのために鍛えたのではないのか?」

「いや、俺も最初はそうだったけど主役の器じゃ無いってすぐに気付いてな、今も鍛えてるのはただ単に死にたく
ないからだよ。この世界、死亡フラグが多すぎるし。」

「おれも赤ん坊のときに精孔開こうとして点ばっかしてたんで気味悪がられて捨てられたんだけど、その時に悟った
 んだ。この世界はご都合主義など無い現実なんだってな。」

過去の失敗も織り交ぜて話してみると、厨二君はともかくハオまで驚いた目でこっちを見ていた。

・・・え?なに?俺の厨二体験って特殊ですか?ハオもそんな感じでマフィアに流れてきたんじゃないの?

「いや、俺ん時は5歳の時に住んでた村が夜盗に襲撃されて生きるのに難儀したから身売りしたんだけど・・・」

ここがハンター世界って気付いたのも3歳ごろだし、って、俺のときとだいぶ違うね。
俺の場合は100%俺の過失だったけど、ハオの場合は本当にめぐり合わせが悪かったのか。
しかも、チート知能つかって神童扱いだったとか、似たような経緯でマフィアに拾われたんだと思ってました。

しかし、俺は一縷の望みを賭けて厨二君にも体験を話す様、目で訴えかける。

「・・・いや、俺も文字の読み書きを始めた3歳くらいから神童扱いはされてたぞ。念だってその頃からやってたし。」

まあ、オリ主として鍛えるために家を出奔してきたんだがな!!と胸をはって言い切る厨二君。そこは割りとどうでもいい。

そうか、俺の経歴はトリッパーとしてもおかしかったのか・・・
いつの間にかorzな体勢になっていた俺に哀れむような目線を投げかけるハオと厨二君。

俺はこの空気を払拭するために方針通り厨二君に戦いを挑むことにした。

「俺の過去なんぞどうでもいい。今、俺たちがすべきことは互いの組織の誇りをかけた決戦のはずだ!!」

「いや、あんな暴露話しといていきなりその軌道修正は」

ハオよ、頼むから混ぜっ返さないでくれ。

「いいだろう。俺は俺のオリ主の誇りにかけて貴様達を叩き潰す!!!」

あ、厨二君が乗ってきてくれた。
うむ、思ったよりいい人なのかもしれん。

「ゆくぞ、『噛み裂け。竜王丸!!!』」

「いつまでもgdgdしてられないか。行け、『スピリット・オブ・ファイア!!』みんな、燃えちゃえぇっ!!!」

「『ペーパーワールド』、俺の盾となり剣となれ!!」

俺たちは互いの念能力を発動し、ぶつかり合った。










<side:another >
戦闘開始から3時間後、すでに戦場となった荒野には動くものはいない。
敵も味方も等しく全滅したようだった、この二人を除いて。

「おぉぉ、あるくのもつらいぃ・・・」

「最後の一滴まで搾り取った感じだな」

戦場のど真ん中、一番生存率の低そうな巨大なクレーターの中からテオとハオが現れた。
歩くのもままならない様な有様のハオに肩を貸しながら歩くテオも、見事にぼろぼろであった。

「しかし、やっぱ使ってきたな『卍解』」

「ああ、自爆の判断がもう少し遅かったらこっちがやられてたな」




<side:テオ>
俺&ハオvs厨二君の戦いは膠着状態に陥っていた。

一撃の攻撃力では厨二君の方が上であったが、攻撃範囲とバリエーションではこちらのほうが圧倒
的であり、互いに決め手に欠けていた。

「ちっ、やはり強いな同胞。こうなれば、俺の真の力を見せてやる!!」

「うぉぉぉ!!『卍解』!!!」

ドン!!と響く土埃の舞い上がる音とともに凄まじいプレーシャーが放射されてくる。

「!?あの野郎。やっぱり持ってやがったか!!」

情報が回ってきた時点で、斬魄刀を模した念能力ではないかと当たりをつけていたため、戦闘中に
卍解を行う可能性も考えていた。
だが、ここまでオーラが跳ね上がるのは予想外だった。
どうする?このオーラ量だと秘策も通用しないかもしれない、一瞬思考の海に沈みかけた俺の横を
ハオが走り抜けていった。





<side:ハオ>
テオの予想道理、ヤツは切り札として卍解を隠していた。
だが、テオの予想以上のオーラ量の増幅でテオは一瞬硬直したようだ。

「テオ、作戦通りだ!!!」

俺はテオの横を走り抜けながらそう叫ぶと全オーラを込める勢いでスピリット・オブ・ファイアを
練り上げた。
そしてスピリット・オブ・ファイアがヤツに激突する瞬間、紅い羽のようなものが見えた気がした
が、直後に俺の視界を覆った紙とスピリット・オブ・ファイアの爆発の余波で俺は気を失った。





<side:テオ>
様は簡単なことだ。
原作通りの設定でくるならば、相当な出力アップとなるだろうと予想できる卍解を行ってきた場合、
即座にフルパワーのスピリット・オブ・ファイアを叩き付け自爆させ、能力を発揮させる前に潰そう
と予め打ち合わせていた。
しかし、そのままではオーラをほとんど使い切ったハオは無防備にスピリット・オブ・ファイアの自爆
の余波を浴びてしまうため、俺の念能力『ペーパーワールド』と神字によって鋼の強度を与えた『紙』
を瞬時に何重にも重ねて余波から防御したと言うわけだ。

しかし、このクレーターも馬鹿でかいな。
濃縮酸素とハオの残りのオーラ全部とはいえ、ウヴォーギンの超破壊拳(ビックバンインパクト)の
破壊跡よりでかそうだ。
っと、それよりも、早くハオを救出してやらんと。

ハオを防御していた紙を引っぺがし、気絶していたハオに気付けをしてたたき起こした時、厨二君がクレーター
の底の地面をぶち抜いて飛び出してきた。

「・・・今のは痛かった、痛かったぞーーー!!!」

フリーザ様ですね。わかります。

「まあ、冗談はこの辺にしといて俺はそろそろ引くわ。これ以上戦闘続行は無理だし」

そう言って刀身が半ばから折れた斬魄刀をこちらに見せる。

「さすがは同胞だな。こちらの切り札を使う瞬間を見逃さずに最高のカウンターを仕掛けてくるとは」

使ってて、結構卑怯くさいと自分でも思わなくもなかったが、なぜか、やられた方にほめられた。

「んじゃ、また会う機会があったら勝負しようぜ~」

そう言うと、こちらが一言も返せないでいるうちに瞬時にどこかへ去っていってしまった、瞬歩だろうか?

「・・・ぁあ、俺ら以外生き残りいなさそうだな」

「ああ・・・」

これだけでかいクレーターがあれば、死体の数が合わなくても消し飛んだと判断するかな?
このままバックレる算段をつけていると

「あ」

ハオが突然声を上げた。

「あいつの名前聞いてなくね?」

「あ」

厨二君の呼び名は次に会うまで厨二君のままのようだ。
別に会いたくも無いけどな!!!


※4/24 誤字修正



[8143] [ネタ]異邦人の憂鬱 第二話
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:1e5f2ff6
Date: 2009/09/29 18:04
『1998年×月×日 曇り

 ・・・あの運命の日、俺たちが闇から再び光の下へと帰ってきた日。
 あれから幾日が過ぎたろう。
 闇の手はもう、俺たちには伸びてこない。
 俺たちは勝利したのだ。
 だが、真の勝利への道は未だ険しくとお「おい、遊んでないでそろそろずらかるぞ!!」
 ちょw、まだ録音の途中なんですけど!!おい、聞いてんのかひっぱんガチャッ』

          ヨークシンにて猛威を振るっている窃盗団の幹部と思われる者の音声記録(ヨークシン署保管)










<side:テオ>
とりあえず、ファミリーが全滅した日からの足取りを話そうか。

俺たちは痕跡を残さないように細心の注意を払って戦場跡から姿を消した。
その後、各地を転々とし、最終的にここ、ヨークシンに落ち着いたわけだ。

「テオ、お前何書いてんの?」

「ん?自伝」

「ちょw引くわw」

「うっせ」

どこまでも、ノンフィクションなのが売りです。
将来、売れたらいいなと思う今日この頃である。

「いや、無理だろ」

地の文に突っ込むな!!





というわけで、ここヨークシンにきてからルパン三世(もしくは怪盗キッド?)の真似事をしながらの神字の研究を
続けています。

ちなみに、ルパンごっこの対象は金庫に厳重に保管されていて日の目を見ない神字の研究書などである。
ちゃんと中身を写すなり、覚えるなりして闇市に流しているので特に問題は無いはずだ。(本気)
時々、本気で生活に困った時は金目のものも失敬してます。
キャッチ&リリース、俺は富の循環が経済を活性化させることを知っている。
こうして今日もヨークシンは潤っていくのである。

最近では神字を研究する理由が変化してきた。
原因は数週間前にテレビで見たネテロ会長である。

正直、同じ人類と認めたくないほどの化け物であった。

このあいだの厨二君も本気のネテロ会長にビンタされたら潰れたトマトみたいになるだろう。

だが、問題なのはその化け物が不意打ちを仕掛けてもろくに傷もつけられなかった『本物の化け物』がキメラアント
の王だと言うことである。

これに思い至った瞬間、ほんのわずかに残っていた『キメラアントを討伐する』という、未来を知るものの義務感と
でもいうべきモノがきれいさっぱり吹き飛んでしまった。
やはり人間は不特定多数の他人の命より自分の命のほうが大事である。

そしてその代わりに、よく気付きましたと神様がねらっていたかの様なタイミングで天恵が降って来た。

『俺たちは一度死んで元の世界からこの世界にやってきたのだから、逆にこの世界から出て、元の世界に帰ることもで
 きるのではなかろうか?』

俺は横で同じようにテレビを見つめながらレイプ目になっているハオを殴って正気に戻し、今思いついたものを相談してみた。

こうして俺たちの目的は『元の世界に戻る念能力の開発』に決定したのである。

まあ、目的がはっきりと定まったとはいっても、やること自体はそう大きく変わったりはしない。
今まで通り、金を稼いで神字本を買ったり、金庫破って神字本を拝借したりである。
だが、はっきりと念の研究=神字の研究にベクトルが向いたため、金庫破りの比率が激増しただけである。

ただ、代わりに心配事も増えた。
このハンター世界において犯罪で食っていくなら絶対に遭遇してはならないモノ、運悪く遭遇してしまったなら、潔く
人生諦めようとまで言われている集団がある。

ご存知、幻影旅団である。

ファミリーがまだ存続してた頃からクルタ族を狩りつくした逸話などが伝わってきていたため、しっかりと現役で活動
していることが伺える。

俺たちが狙っているのは『神字の本』という極狭いカテゴリーではあるが、団長は確か、無類の読書狂(ビブリオマニア)
であったはずなので、決して仕事先がブッキングしてしまわない様、細心の注意を払って事前の情報収集を行わなけれ
ばならなかった。
実際、遭遇してしまったら1UPキノコが100個ぐらい無いと生きて帰れないと思う。





目的が『元世界への帰還』となってから数ヶ月、それまで音沙汰の無かった厨二君が見つかった。

ネットで。

それは偶然だった。
電脳ネットにて情報収集中、息抜きにとネットサーフィンをしていたところ偶然目にした『厨二病』の文字。
こっちにも厨二病なんて言葉があるとは・・・これこそまさに天恵だったのだろう。
サーチエンジンにて厨二病と打ち込み検索、先頭に出てきたのは自伝小説に対する荒らしで炎上中のスレだった。
導かれるように炎上元のURLをクリック。
現れたHP(ホームページ)にはどこかで見たことのある顔、そう、厨二君の顔がドンと張られていた。

「ちょ、これはきついww不意打ちやwww」

これはツボに入った。
苦しい、息が出来ん。

俺の横隔膜の痙攣と引き換えに、厨二君の本名が分かった。
タクヤ・イワサキが本名らしい。
炎上原因の自伝小説とは要するに仕事内容をファンタジーっぽくアレンジして空想小説のように仕立てたもののようだ。
俺たちと戦った時の話も載ってる。

なかなか面白い、読んでいて引き込まれるようだ。

ひょっとしたら前世で物書きか何かをやっていたのかもしれん。

ただ、ファンタジーな話なのに異様に戦闘描写が生々しくて実体験が元ネタなのかどうかで大炎上したらしい。
まあ、すでに始まりがどうだったか等、どうでもいいくらいに炎上して荒れまくっているが。
しかし、戦闘描写が生々しいから実体験じゃね?と言う発想がすげぇと思った。
さすが、リアルに殺人鬼がゴロゴロいる世界なだけはある。
前世の日本じゃまず出てこない発想だな。

とりあえず、俺はこのサイトのURLとHPに載っていたタクヤのメルアドを書き写すことにした。
時々チェックしてみよう。


ある日、基礎システムを設計していると、ハオがなんでもないかのように言った。

「3人トリッパーがいたのなら、4人目、5人目もどこかにいるじゃね?」

行き詰っていたこともあり、手を止めてトリッパーの向かいそうなところをリストアップしてみる。

1.クジラ島
  可能性としてはあるかも?としか言えん。
  もっと小さな頃のゴンが見たい!!とか、ミトさんとお近づきになりたいとかそういった連中は群がってるかも知れん。

2.ザバン市
  可能性はかなり無いな。
  あったとしても、287期の試験の下見に来るぐらいか?

3.NGL
  もっと無いな。
  正義感爆発のオリ主候補がキメラアントに備えて予め潜入というのはありかな?

4.グリードアイランド
  ここは結構ありそうだ。
  しかし、正規の手段で入島するのは今はまだ無理だよなあ・・・レイザーにエリミネイトしてもらうためにわざわざ
  不法入島ってのはありえるかもしれん。
  リピーターとかいそうだな。

5.ククルーマウンテン・ゾルディック家
  いやいや此処は、俺的にはNGだけど、オリ主的にはOKなのか?
  ちょっとがんばれば第一の門ぐらい開けられるだろうから掃除夫になろうとしてゾル家にぞろぞろと集まってきてた
  りしてな。

6.天空闘技場
  やっぱここだろ、今の時期なら。
  言わずもがな、力をつけるならここで何年か修行するのがテンプレだろうな、俺はやってないけど。

「二人だけじゃ何をやるにしてもマンパワーが足りねえよ、誰かスカウトしにいこーぜ」

そうだな、それも一興かも知れん。
どの道このままでは技術も発想もジリ貧だ。
とてもキメラアントまでに世界脱出がかなうとは思えない。
いっそのこと、何人かスカウトしに行くのも長い目で見ればアリだろう、ってか、それしかないな。
そうと決まれば早速行こう、すぐ行こう。
願わくば、新たなトリッパーが発見されますように。

「俺らも新技の開発をやらにゃならんしな」

そう言や、甲縛式オーバーソウル黒雛を再現するとか言ってたっけ。

「俺も『紙々の世界 模倣宝具(ペーパーワールド イミテーションファンタズム)』を完成させんとな」

もう1つ、動物模型(アニマクラフト)も完成させなきゃな。

まだまだ、やることは山済みだ。





<side:ハオ>
うむ、いい感じに乗り気になってくれたようだ。
実のところ、ルパンのしすぎでヨークシン警察がえらいことになってるんだよなぁ。
まあ、毎週のようにどこぞに忍び込んではお宝パクってたんだからしょうがないけど。
俺らの情報提供だけでコーヒー吹くような金額をポケットマネーで付けて賞金首にしやがったしな、あの署長さん。
よほど怒り狂ってるんだろうなぁ。
まあ、ある程度ほとぼりが冷めるまで、バカンス兼、修行兼、仲間探しといきますか。

さて、本職のハンターさんがやってくる前にトンズラしないとな。

って、なにやってんだ?テオのヤツ?

「・・・の勝利への道は険しくとお「おい、遊んでないでそろそろずらかるぞ!!」ちょw、まだ録音の途中なんで
 すけど!!おい、聞いてんのかひっぱん『ガチャッ』なよっ!?ってああ!?ラジカセがぁ」

「だいたい何やってたんだ?いまの?」

「いや、どうせいない間にこのアジトも踏み込まれるだろうからちょっといたずらでもしとこうかと」

「アホか、音声から居場所たどられたらどうすんだよ?」

「それはそれで丁度良い練習相手がやってきたってことでw」

まあ、わざわざ追っかけてくる連中が旅団クラスとは思わんが、それでも危険なヤツはいるかもしれないってのになぁ。

「まあいいや、修行しに行くんだし自分から難易度を上げるのは良いことだと思っておこう」

「お褒めに預かり恐悦至極」

ほめてねぇよ!!





<side:テオ>
何だかんだでやって来ました、天空闘技場。
すごい・・・混み混みです。
受付の人の列がウザクです。
今ここで全員のしたら、100階くらいまで特別に上げてくれたりしないかな。

「そんなことしたら特別にインペルダウンみたいなところに連れてかれるぞ~」

ツッコミに力が無いな、ハオも結構疲れてるのかな?でも、それでも地の文にツッコミを入れるのはやめないのね。





俺たちの受付の順番が来た。
記入用紙に必要事項を記入っと。
虚しい、こんな時間がかかっても5分あれば終わることのために3時間も並んだのか。
なんで受付機械式にしないんだ?
記入用紙だけよそで書かせて選手登録は用紙をスキャンでOKだと思うけどなぁ。
あ、字が汚すぎて機械だと弾かれる人が続出するからかな?
どの道人が出てこなきゃいけないなら最初からいるぜって事か。

呼ばれるまで特にすることも無いため適当なことを考えている俺。

「原作みたく、押し出しか手刀でやってみるかな」

「押し出しはともかく、手刀はやめたほうがよくね?」

なんでさ?

「加減を間違えてポンポン首が飛ぶのがとても良く想像出来るから」

仰るとおりで。





一階での戦いは問題なく勝ちました。
いや、やっぱ問題あるかな?
子供だと舐められたのか、無警戒に突っ込んできたため反射的に練をしながら押し出しっていうか、突っ張りを
してしまった。

結果はご覧の通り。

イメージとしては、ドラゴンボールで気合砲とか食らった相手が地面と平行に飛んでいくが、あんな感じで飛ん
でった後、壁に激突し、モザイクが必要な感じになってしまった。

とたんに沸き起こる大歓声。

ちょwたった今、目の前で猟奇殺人とも言える現場が誕生したのになぜ大歓声?
このくらい、見慣れてるぜwと言わんばかりの状況に、むしろこっちが引きそうである。

「150階に行きたまえ」

審判の方がおっしゃいました。

ちょ、いきなり高すぎね?と思ったが、どうやらこの審判ちゃんと念を使えるらしく俺の実力が190階下ではない
と見切った様である。
さっさと200階まで逝けよ的な視線を送ってきやがった。

・・・まあ、こんな派手なことして190階下でウロウロしてたらあからさま過ぎるよなぁ。

俺、資金稼ぎもかねてここに来たんだけどなぁ・・・

「アホ」

ハオのツッコミが俺のハートにゲイボルグ。orz





<side:ハオ>
なにやっとるんだ?あいつは。
またしてもやらかしたテオに一言言ってやったら崩れ落ちやがった。

まあ、俺たちの生い立ちを考えれば自分に突然突っ込んでこられたら反射的に殴り返すぐらいはやってしまうかも知れんか。

まあ、どうでもいいか。

テオとは違い、特に目立たず50階行きをゲットした俺は、金稼ぎはとりあえず俺が担当するからさっさと200階へいって
念の修行をしてくる様にテオに発破をかけた。

それにしてもテオはうっかりが多いな。
まるで、某『あかいあくま』のようだ。
この富樫ワールドであれほどのうっかりはそのうちとんでもない目にあう気がするな、旅団とうっかり遭遇とか。

まあ、それからは特に変わったことも無く、お互い順当に階を上げていった。
数日後にはテオはめでたく200階クラス入りし、本格的に新技開発に踏み切ったようだ。

俺は150階より上で上ったり下りたりを繰り返すつもりだ、とりあえず、目標は100億である。




闘技場参戦から3ヶ月が過ぎた。
俺は相変わらず勝ったり負けたりを繰り返している。

テオの方では一人~二人、お目当てっぽいのがいると報告があった。

だが、同時に問題も出た。

トリッパーどもの容姿が問題なのである。

最初に見つけたほうは初日に見つけたらしい。
銀の長髪に金銀妖眼、中性的な顔立ちの美形で中肉中背の体付きで男か女かよくわからんらしい。
これで念が特質系だったらカンペキだな。

とりあえず、こっちはスルーして、もう一人のほうの報告を聞いた。

とりあえず、選手登録名がゴクウらしい。

・・・なんか、この時点でこいつもタクヤ・イワサキの同類のオリ主候補の気がする。
現在3戦全勝中らしいが、なぜか勝つたびに自分も入院しているらしい。
今もまだ病院のベットの上とのこと。

試合のDVDが発売されてないかとか調べてみたらしいが、それほどの人気選手と言うわけでもないらしい。
試合のたびに長期入院しているので人気が上がらないのだろうか?

こいつが退院してきたら、とりあえず会ってみる方向で今日の報告会は終了した。





<side:テオ>
ハオに報告をしてから数週間が過ぎた。
俺もすでに何度か試合をして3戦全勝と期待のホープ(笑 とか言われているらしい。
もっとも、200階クラスで活躍している新人はみんなホープらしいが。

なにはともあれ、ゴクウである。

先日退院したとの情報をゲットしたので早速会いに行ってみた。

「オッス、オラ悟空。おめえ強そうだな。」

とりあえず、挨拶より先に手が出た俺は悪くないと思う、悪くないよな?

「な、何すんだ、ベジータ!!」

「誰がベジータだ」

とりあえず、もう一回殴った。





まあ、分かっていたことだが、確かめるまでも無くトリッパーであった。
格好は、まんま、サイヤ人地球強襲編の悟空そのままである、背中に『界』の字が入ってるやつね。
でも、顔は普通の日本人顔である。コスプレを見ているような感覚がする。

話してみると、時折ドラゴンボールネタを話す以外は割と普通のヤツであった。
どうやら他のトリッパーとまともに会話するのは始めてらしい。

例の銀髪オッドアイのことを聞いてみると

「いや、アレはさすがにちょっと・・・」

と言葉を濁していた。
何でも、何度か話しかけられてはいるらしいがどう対応すれば良いか分からず逃げ回っているとらしい。

どうやらコスプレーヤーと言うだけで、ほかはいたって普通人らしい、これは当たりかな?

ちょっと早い気もするが、俺は本題に入ることにした。

「なあ、お前はこの世界についてどう思う?」





<side:ゴクウ>
やっと退院できた、もはや常連となってしまった病院を後にし、俺は毎回入院する原因である俺の『発』について
考えをめぐらせていた。

原作の設定でもヤバ気だったけど、実際やってみるととんでもないなぁ。
俺はドラゴンボールは好きだけど、マゾじゃないから痛いのはカンベンなんだけどなぁ。

一度つけた制約は簡単には外せないだろうから純粋に体を鍛えるしか対抗策は無さそうだよなぁ。

などと、再入院しないための対策を考えながら歩いていると声をかけられた。

入院中にテレビで試合を見てたから知ってる。
最近、歴代トップクラスの速さで200階まで上がってきたテオ選手だ。

・・・そして、念能力を見るに、おそらく俺と同じ・・・
ちょっと、カマをかけてみることにした。

「オッス、オラ悟空。おめえ強そうだな。」

ぐはっ!?いきなり殴られた!?って、何、やっちゃった、見たいな顔してこっちみてんの!?

「な、何すんだ、ベジータ!!」

「誰がベジータだ」

思わず突っ込んだら突っ込み返されもう一発殴られた、イタイ。





「なあ、お前はこの世界についてどう思う?」

あの後、いきなり殴ったことを謝られて話をするために俺の部屋までついてきてもらった。
色々と雑談をした後、本題を切り出してきた。

「・・・世界、ですか?」

「そうだ、俺たちは今、とある目的のために、目的を共有できるトリッパーを探しているんだ。」

目的を共有?何が言いたいのだろう?





<side:テオ>
「俺は今、この世界から脱出して元の世界に帰るための念能力を開発している」

ゴクウが固まった。
ゴクウもやはり死んでこの世界に転生したトリッパーだったから、元世界に帰るという発想自体、浮かんだ事は
無かったのだろう。

「っ!?でも、元世界に帰れたところで俺たちはすでに死んでいる訳ですし、この体で戻れたってそれこそどう
 しようもないんじゃ?」

「だが、それでもこの世界にこのまま居続けるよりはマシだと思う。」

「なんでです?」

「この世界では近い将来にキメラアントの災害が発生するから」

「?でも、それはハンター協会か何かに事前に警告をしておけば対処してくれるのでは?」

「なら問うが、突然将来災害発生の危険があるから人員派遣して調査してくれないか?と頼まれてすぐに動いて
くれるような組織だと思うか?」

「・・・いえ、少なくとも調査費用は自己負担になると思います。」

「俺もそう思う。それに大体この辺り、と大まかな場所と時間しか指定できない状況で2ヶ月無いかもしれない
 そんな短時間で女王を探し出せるのか、探し出せたとしてもキメラアントの女王だ、個人としても相応に強い
 と考えておいたほうがいい。半端に人海戦術を使っても片っ端から食われるだろう。」

俺の考えを聞くたびにゴクウの顔色が悪くなる、ハンター協会に丸投げすればどうにかしてくれると漠然と思って
いたのだろう。

「もちろんキメラアント対策で事前にハンター協会に女王の捜索はしてもらう。そのための資金もいくらかかるか
 分からないが必ず用意する。」

対策はする。元世界に帰る念がキメラアント戦の前に完成する保障など、どこにも無いのだ。

「でも、多分本腰を入れた調査をしないと女王を発見するのは難しいと思う。そして確証の無いタレコミで、費用
 をこちらで出すといってもほんとの意味で本腰を入れた調査にはならないとも思う」

ゴクウが沈んでいる、どうやってもキメラアントを防げないと知り、お先真っ暗になっているのだろうか?

「キメラアントと戦うのは原作主人公組と、どっかに居るだろうオリ主候補達に任せようと思うんだ」

「?テオさんたちは参戦しないんですか?」

「ん?しないよ。知ってる?ネテロ会長の顕在オーラって1万以上あるんだぜ?それで攻撃されたのにピンピンし
 てるのがキメラアントの王のレベルなんだよ」

ゴクウは唖然とした顔をした後、何かを考える様に顔を俯かせた。
・・・しばしの沈黙の後、何かを決意した顔で、ゴクウは俺にこう言った。

「テオさん、俺に修行をつけてください。キメラアントと戦う時は俺も参戦したいんです!!」

・・・なんですと!!?





あとがき
テオのトリッパー達の行動予測にゾル家が抜けていたため追加しました。
あと、誤字、脱字など見つけたものは修正。

※5/31 名前の記述ミスを訂正。
※9/29 漢字ミスの修正。



[8143] [ネタ]異邦人の憂鬱 第三話
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:1e5f2ff6
Date: 2009/04/24 00:46
1998年 ×月×日 晴れ

ちょっと予想外の出来事があった。
テオに弟子が出来たことだ。
いや、確かにまだ正式に弟子にしたわけじゃないようだが・・・
次の対戦相手に互いを指定しての弟子入り試験を行うことにしたらしい。
・・・弟子が出来るのがそんなにうれしいなら試験なんてしてないでさっさと鍛えてやればいいのに
え?『わかってないな、それじゃあ、面白くないだろう?』だって?
あきれた。
勝手にやってくれ。

                      ハット・オーウェンの日記帳より抜粋










<side:テオ>
「≪前話のあらすじ≫
 様々な経緯からマフィアより足を洗う事に成功した俺たちはヨークシンで自営業を営んでいたんだ。
 だが、それも数ヶ月で限界が見えて来ていた。
 そこで俺たちは自らを鍛え直すため、新たな仲間を探すために天空闘技場へと旅立ったのさ。
 そこで出会った新たなトリッパー。
 彼が俺に言いたかったこと、それは、『俺を強くしてくれ』ってことだったんだ!!(AA略)」

「な、なんだってえぇぇぇ!!?(AA略)」

さすがハオ、ノリが良い。

「まあ、そう言うわけで一週間後にゴクウの弟子入り試験をやることになりました」

「で、お前から見てソイツはどうだった?」

「錬度自体は俺らより下だけど、ここの連中相手なら楽勝だと思うぜ。正直、毎回入院する理由がわからん。
 『発』については試合で見せるって言ってたな。
 あと、俺らの仲間にはなってくれそうだが、キメラアント戦がどう転ぶにしろ、ある程度首を突っ込む気では
 いるみたいだ。
 まあ、あまりいつまでも粘られると俺たちもゲームオーバーになるから念が完成してもキメラアントを優先す
 る様なら置き去りにすることになるな」

まあ、この辺はしかたない。
俺たちはが助けたいのはあくまで俺たち自身である。
あとは、協力してくれた仲間もか。
第一優先は自分であるから、いつまでも粘るようなら捨てていくってことで。
こんな感じでこの夜は更けていった。





そんなこんなで一週間はあっという間に過ぎて、ゴクウvsテオ改めゴクウの弟子入りテストの日がやってきた。

『さて、今日の一戦はビッグイベント、互いに3戦全勝同士、期待のルーキー同士の対決だぁぁ!!』

なんか、アナウンサーノリノリだな。
まあ、ノリのいい人じゃないと盛り上がらないしな。

『本日対戦するゴクウ選手、圧倒的なスピードとパワーで対戦相手を秒殺するも、なぜか必ず自分も入院するという
 なかなかユニークなキャラで定評があります。
 そして、今日の対戦相手であるテオ選手は歴代最高速度で200階クラスへ到達し、すでに3勝をあげている脅威
 の新人であります。互いに期待のルーキー同士のこの一戦。勝利の女神はどちらに微笑むのかぁ!?』

おお、俺ってやっぱ歴代最高速で200階クラスまで来ちゃったのか・・・
つーか、毎回このアナウンスされるのかな?正直恥ずかしいです・・・

「ゴクウvsテオ、はじめっ!!」

うぉ、いつの間にか試合始まってるし。
さて、まずは相手の出方を待ってみるかな?





<side:ゴクウ>
審判から開始の合図があった。
でも、動けない。
なんて強力な『堅』だろう。
普通に倍くらいありそうなオーラ量だ。
この間はちょっと勢いもあって弟子入り志願しちゃったけど、俺の直感は間違ってはいなかった。
今、弟子入りするならやはりこの人しかいない。
・・・いつまでもお見合いをしていたらせっかくの弟子入り試験が不合格になってしまうかもしれない。

よし、ここは一発覚悟を決めて最初から飛ばしていくか!!

「行きますよ師匠、『界王拳』!!」





<side:テオ>
とりあえず、『堅』の状態で様子を見ているが、どうもこちらのオーラに当てられているようだ。

・・・まあ、しかたないか、明らかにオーラ量が倍は離れているしなぁ。
たとえ、どのような状況でも油断しないこと、思い込みや慢心が死に直結するということは5歳までの生活で動物達
から嫌というほど教わっている。

そのおかげだろう。
この後のゴクウの一撃を耐え切ることが出来たのは。

「行きますよ師匠、『界王拳』!!」

セリフとともに、ゴクウの纏うオーラの量が跳ね上がる。
一瞬の硬直の後、迎え撃とうと構えをとろうとした俺の腕をすり抜けてゴクウの拳が腹部に突き刺さり、そのまま観
客席まで殴り飛ばされた。





<side:ハオ>
おぉ!?テオのヤツ見事に飛んでったなぁ、このネタでまたしばらくはイジれそうだな。
しかし審判冷静だなぁ、このくらい日常茶飯事なのか、まったっく動じないでポイント宣言してる。
しかし界王拳か、やっぱりドラゴンボール技を使ってきたな。

瞬発力も凄まじかった。
オーラ量が倍加したのを感知した瞬簡には殴りつけてたからな。
これだけでも弟子入りは十分合格だろうな。

お、テオのヤツやっと穴から出てきたか。
しかし、自分が突っ込んであけた穴をさらに破壊しながら飛び出してくるとか観客にやさしくないねぇ。
舞台に戻ったテオがゴクウに何か話しかけてるな。
さすがにここからじゃ聞こえないか。
お、テオが紙を出し始めたな、本気で反撃を始めるつもりかな?





<side:ゴクウ>
瞬発力には自信がある。
界王拳は増幅されたオーラ量に耐えられるように身体能力も強化されるから初見でかわされることは無いと自信を持っていた。
確かにかわされはしなかった。
だが解る。
今の一撃は師匠にほとんどダメージを与えていない。

殴りつけた右腕に鉄板を殴ったような鈍痛が走っている。
・・・ヒビくらいは入ったかも?

おそらく、何らかの『発』で咄嗟に防御されたのだろう。

観客席が吹き飛んで、師匠が飛び出してきた。

・・・一緒に観客も何人か空を飛んでるな。
アレって一般人は死んじゃうのでは?・・・いや、いまはそんなことより師匠に集中しなくては!!

慌てて師匠を探すとすでに舞台の上まで戻ってきていた。

「今のは良かったよ。今のだけでも十分弟子入りは合格だけど、まだやれるだろ?最後までやろうぜ!!」

どうやら俺の一発は、師匠の導火線に火を付けてしまったらしい。

師匠の服の裾から大量の紙が飛び出してきた。
これが師匠の念か!!
舞台中を舞っている多量の紙、1つ1つに師匠の念が込められているのがわかる。

っ!?紙に意識がいった数瞬のうちに師匠が視界から消えた。
まずい、と身構えた瞬間、左側から蹴り飛ばされ舞台からはじき出された。





<side:テオ>
紙を撒き散らし、眼くらましをかけた後死角から近づき一撃。
俺のやったことは単純にいえばそれだけだが、効果はそれなりに高かったようだ。

ゴクウのヤツは紙吹雪で俺を見失った後、何とか身構えることは出来たようだが俺がどこから攻撃してくるのかは
わからなかったらしい。
俺は右側から回りこんだ後、間髪いれずにわき腹めがけて飛び蹴りを叩き込んだ。

舞台からは吹き飛んでいってしまったが、この程度で戦闘不能になるようなヤツでもなかろう。
俺は警戒しながら周囲を舞っている紙へと神経を研ぎ澄ませていった。

ゴクウは頭上から突っ込んできた。

武空術か!?

空に飛び上がったと思ったら俺の頭上まで移動しそのまま突っ込んできた。
頭上に展開していた紙を弾き飛ばしながら突っ込んでくる。
全速で横に跳ねたがゴクウは地面に激突する瞬間にオーラを爆発させ、こちらに向かって軌道修正をして突っ込んできた。

「っ!?」

またもや驚かされたが、今度は硬直したりなどしない。
何度もそんな様をさらしていたら今まで生き残れてはいない。
高速で連撃を仕掛けてくるゴクウを捌きながら、周囲の紙を、ゴクウの周囲を旋回し体に巻き付く様に操作する。

「紙技(カミワザ)・紙爆雷(カミバクライ)の術!!」

俺は、ゴクウを蹴り飛ばし、同時に自分も後ろへと飛びながら念技を発動する。

百枚以上の連結された紙は包み込んだゴクウもろともオーラを開放し、爆発した。





『紙技(カミワザ)』とは、紙々の世界(ペーパーワールド)のバリエーションである。
本来、俺のペーパーワールドは紙、一枚一枚の操作にそれぞれ10オーラを使用している。
それは自分の手元にある紙も、操作できるぎりぎりの距離にある紙であっても同じである。

だか、これにはちょっとした『裏ルール』が存在する。

複数の紙を連結して操作する場合、連結した紙をまとめて『一枚』とカウント出来るのだ。
連結して使用することで、それまでそれぞれの紙の操作に使用していた10オーラ分のコストが瞬時に余剰オーラとなって
攻撃へと転換することが可能になる。

これを利用したものを称して『紙技』と名づけ、呼んでいるのだ。

ちなみに、現在のところ紙爆雷は未完成であり、完成版は爆発のエネルギーをすべて内側へと向けた仕様となる予定である。





爆煙がはれてきた。
思っていたよりダメージが通っていたようだ。
界王拳でのオーラ量増幅は、やはり体に無理をかけているのだろう。
流が間に合わず、ダメージが通ってしまっている。

・・・正式に弟子にしたら、まずは界王拳に耐えられる体作りからかな?

見た目、だいぶボロボロになったゴクウを見据えながら、次の攻防に備えてオーラを再び練り上げた。





<side:ゴクウ>
しくじった、界王拳の出力アップで体が反応する内に勝負を決めようと焦り過ぎた・・・

結果はこのザマである。
ここまでダメージを受けてしまっては近接格闘など無理である。
だが、師匠にしてやられたままで終わるのも、俺のプライドが許さない。

・・・俺だって男である、自分の失敗でそのまま試合終了では俺の気が治まらない。

俺は、自身の持つ最強の『必殺技』で最後の勝負に出ることを決めた。





<side:テオ>
ゴクウの顔つきが変わった。
最後の勝負に来る気だな。

俺は、ここでゴクウがリタイアするなど欠片も思ってはいない。
そもそも、この程度でリタイアするような輩がキメラアント戦に参戦したいなどと言い出すはずが無い。

「師匠、これでラストです、俺の最強の必殺技で挑みます。俺の全力を見てください!!」

空に浮かび上がって上方を確保するゴクウ。

・・・武空術か、便利そうだなぁ、俺も覚えてみようかなぁ?・・・っと、思考がまたずれたな。

「3倍界王拳!!!」

ゴクウのオーラが目に見えて膨れ上がる、・・・同時に全身の傷口からの出血も目に見えてひどくなる。
ここで試合を決めないとゴクウに後遺症が残る可能性も出てきたため俺も勝負に出ることにした。

「か・め・・・」

紙を束ねて左手に弓を成す、右手には矢、ただし本来の用途は剣。
剣を矢と成すためにその骨子はねじれ、螺旋の刃となる。

俺は、彼の赤き弓兵が十八番とする投影を再現する。
ここまでは紙々の世界(ペーパーワールド)で再現できる、重要なのはこの先、どれだけ破壊力を上乗せできるか。

通常時のゴクウのAOPは目算で約1000といったところだ。
現在は界王拳の効果でAOP約3000、それがすべてかめはめ波に集中している。

・・・ゴンのジャジャン拳の場合、必殺技発動で準備段階の倍の出力までいってたな・・・

ってことは、もしかしなくても、最悪6000オーラの大出力のかめはめ波が降ってくるという事に・・・

「は・め・・・」

ゴクウの構えた手の中に巨大なオーラが溜まっていく。

剣の骨子の再現は未だ未完成のままだ。
神字で原作効果の再現を狙っているが、現状で再現できているのは発射と同時に矢を高速回転させることのみで『硬い稲光』
と称された一切で山を三つ切断した原典の能力は再現しきれていない。
弓側の余剰オーラは弦の張力へと持っていく。

現状、俺が撃てる最強の一撃、紙々の世界 模倣宝具(ペーパーワールド イミテーションファンタズム)。

「『カラドボルグ』!!」

「波ぁぁぁぁぁぁぁ!!」

互いの『必殺技』が同時に放たれた。





<side:ハオ>
かめはめ波のオーラ量は目算で5000オーラ以上、もしかすると6000オーラに届いていたかも知れない。
対して、カラドボルグのほうは精々2000オーラといったところだ。

それでも、かめはめ波vsカラドボルグを制したのはカラドボルグであった。

「この辺は面と点との差かな?」

操作系の念能力者は基本的に戦闘には向いていないとされている。
戦わないで勝つのが操作系の戦い方とまでいわれているくらいである。

それでも戦わなければならない時はどうするか?

決まっている、工夫するのである。

今回、オーラ量だけで見れば6000vs2000であり、テオが勝つのは不可能に見える。
しかし、テオは矢を放つ際、先端部分に余剰オーラのほとんどを『凝』で集中して放っていた。
そして、カラドボルグに刻まれた神字の効果により、放たれた直後から大気を掻き回すような高速回転が始まる。

対して、ゴクウのほうは出力だけは圧倒的だが、かめはめ波には特に何か細工がしてあった訳ではない。

結果、テオのカラドボルグはドリルの如く抉り進み、ゴクウに到達する直前で『ブロークンファンタズム』、
衝撃でゴクウを気絶させた事で、今日の試合(弟子入り試験)は幕を下ろしたのだった。





<side:ゴクウ>
・・・ん?ここは・・・病院か。

試合の結果は覚えている。
かめはめ波を破られた後、目の前で矢が爆発して・・・そこからは覚えてないな。

まあ、とりあえずはいつもの如く例のセリフを言っておくか。

「・・・知らない、て「ちょっとマッタァァ!!」んぶろぁ!?」

某所で有名なあのセリフをやろうとしたのだが、突如割って入ってきた何者かに腹の上にかかと落しをされて中断
させられてしまった。

「ちょ、な、だれ、こ、・・・(ちょ、何事?、誰よ、殺す気かぁぁぁ!!!)」

界王拳の後遺症もあって、死ぬほど痛い。
どこのドイツだコンチクショウ。

「すまん、部屋に入ろうとしたら例のセリフが聞こえてな、これは割って入らねばと」

師匠でした。

「アホか貴様は、自分で病院送りにしたヤツを見舞いに来て追加攻撃とかするか?普通」

師匠の仲間のハオさんも来てました。
師匠にツッコむよりも、ナースコールをおねがいします。





<side:テオ>
「今日は、弟子入りの最終確認に来た」

俺は、ゴクウの痙攣が治まった頃を見計らって切り出した。

「俺に弟子入りすると言うことは、俺たちの仲間になるということでもある。それに異論は無いな?」

この期に及んで異論など無いだろうが、一応聞いてみる。

「はい、異論はありません。今後とも、ご指導よろしくお願いします」

ゴクウが手を差し出してきた。
俺も握り返して握手をする。

「ああ、こちらこそよろしくな、今後ともよろしく」

俺たちは互いに笑いあった。





「ところでゴクウ。お前、界王拳使うたびに入院してるのか?ひょっとして」

あ、ゴクウが固まった、どうやら図星のようだ。

「やはりまずは界王拳に耐えられる体作りからだな」

「どうすんだ?やっぱ、原作の修行法を試してみるのか?」

「?原作の修行法ですか?」

ゴクウは思い当たるものが無かったらしい、キョトンとしている。

「重力修行とか」

「ぶっ!?」

きたねぇ!?飲んでた水を吹きやがった。

「ちょ、そんなもの作れるんですか!?」

「うむ、俺達は神字に関してはちょっとしたものだからな。何とかなるはずだ」

「原作に肖ってちゃんと100倍までOKなヤツを作って見せるからがんばれよ~」

ゴクウの顔色が真っ青だ。
安心しろ、ちょっとづつ慣らしていけば、いずれ100倍だって耐えられるさ。

まあ、修行開始は退院してからにしてやろう、なんて優しい師匠なんだ俺は。

それまでに重力制御システムをしっかり作っておかないとな。





あとがき

今回、初後書きをさせていただきます。
第三話はゴクウの弟子入り試験がメインです。

あと、第一話でバッサリとカットした戦闘シーンは今回はカットせずに入れてみました。
あまりじしんはないのですが・・・

テオ、ゴクウの設定更新により、キャラ紹介&念設定も更新されます。
詳しい念の設定などはこちらをご覧ください。

感想、矛盾などありましたら、ご指摘をお待ちしております。



[8143] [ネタ]異邦人の憂鬱 外伝 その頃のトリッパーたち(改訂版)
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:1e5f2ff6
Date: 2009/05/04 06:11
1996年 ×月×日 曇り

 ある日、彼らはやって来た。
 子供だけの数人の集団だ。
 我々が狙われているので自分達が守ると言う。
 自分達が常に狙われていることなど百も承知である。
 正直なところ、胡散臭いことこの上ない。
 見ればわかる、子供達は全員念能力者だ。
 外見などで判断は出来ない。
 彼らこそがわれらを狙っている犯罪者で無いと言う保障などないのだ。

                         あるクルタ人の回想より





<side:クリス>
こんにちは。
僕の名前はクリス、クリス・エミリオン。
いわゆるトリッパーと言う存在だ。

事故って死んだんだけど、このハンター世界に生まれ変わったことに気付いたときは歓喜したね。
まあ、ここがハンター×ハンターの世界であるなら、やることはこれしかないだろう。

『念』を習得してオリ主として原作主人公達と友人になる!!

俺が、主人公だ!!!ってワケさ。
そういうわけで、手始めに心源流の道場に通ってメキメキと力をつけてたワケだ。
やる気が違うからな、その道場でもあっという間に同世代のトップになって心源流の大会に出ることになった。

そしたら驚きだ。

他地区の道場出身の中に、何人も同郷の人間が居たんだ。
ん?何で解ったって?直感だったよ、「あ、こいつ、俺と同じだ・・・」って理屈じゃなく感じたんだ。
そいつらとは、連絡を取り合って近くに居るヤツとは一緒に修行したりとかするようになった。
みんながそれぞれ持ち合わせてた原作知識を繋ぎ合わせて念の修行を効率化させたりとかしてな。

あ、そうそう。
心源流といっても、いきなり念を教えてくれる訳じゃなかった。

最初は普通の格闘技からだったから念の修行は勝手に自分達でやってた。
と言っても、まずは精孔を開くところからだから燃えるほうの『燃』からだけど。

心を鍛える修行と銘打って『燃』のほうは格闘技を習う際に最初に教わっているので、精孔が開いても特に怪しまれるこ
とはなかった。
格闘技の鍛錬の片手間にしては早すぎると思われてるかもしれないが。

まあ、元々が念能力者を育てる機関みたいな面もあるからな、心源流。

纏を覚えて道場へ行ったら、普通の試合には出してもらえなくなってしまった(考えてみたら当たり前だ)。
また、念に目覚めたことで道場長から念の指導をしてもらえることになった。





そろそろ僕も10歳になるかと言う頃だった。
師匠(道場長)から四大行やいくつかの応用技についてご指導いただき、一応の皆伝となった。
『発』の作成はまだだったが、固有の念能力の作成については師匠と言えど口出しなどはしないらしい。
アドバイス程度はしてくれるらしいが。

ちなみに僕は具現化系だった。

チーム・トリッパーズ(僕らは自分達のグループをそう呼んでいた)のメンバーは全員トリッパーである。
そして全員が10歳前後、一番年下と年上でも一年離れていない。
中身はどうだか知らないが。
何が言いたいかと言うと全員本来なら学生であるということである。
そう、『本来』なら、である。
皆、チート知識や元大人の意地で、義務教育どころか高等教育まですでに卒業してしまっていた。

飛び級制度ってすばらしい。

もちろん理由は本格的な修行のためである。
ある意味当然なのかもしれないが、この世界では格闘家などの職業が前世の世界に比べて身近なところにある。
天空闘技場みたいな施設が存在するのだから当たり前なのかもしれない。

とまあ、その辺の事情もあって、いきなり息子が「将来格闘家になります」とか言ってもそれほど突っ込まれることもなく両親は
説得できた。

それからは修行の日々である。
トリッパーズで集まり、組み手をしたり、念の修行に明け暮れたりした。

どうやら僕たちトリッパーは潜在オーラ量が規格外らしい。
『堅』に慣れた頃、継続時間を測ろうとしたらオーラが切れる前に堅を維持する集中力が切れてしまった。
まだまだ『点』の修行不足なこともあるが、3時間近く維持し続けてほとんど疲れを感じていないあたり、まだまだ底は深そうだ。
この辺はほかのトリッパーたちも同じようなので、一度死んで転生していることが関係してるのかもしれない。
潜在オーラ(POP)がいくらすごくても、顕在オーラ(AOP)がショボかったらあまり意味がない。
どの道原作に登場した修行をまねて地道に訓練を行うことに変わりはなかった。





そんな生活が数ヶ月続き、僕らは結構成長してきたと思う。
時折、賞金首ハンターの真似事などして実践訓練と路銀の調達を行っているが、最近ではそれなりに値の張った賞金首が相手でも
皆一対一で下せるようになっていた。

もうじき1996年になるという頃、トリッパーズの仲間の一人、リッドが切り出してきた。

「来年にはクルタ族が旅団に滅ぼされるけど、やっぱり介入するのか?」

僕らの方針としては、旅団のクルタ族襲撃に介入してクルタ族を救出するのを、オリ主としての最初の使命と考えていた。

「問題なのは、今のあたしらの力じゃまだ旅団の相手が務まるレベルに達していないってことだよね」

ミコトが続いて発言する。
僕らは確かに強くなってはいる。
戦える賞金首のレベルから見ても、少なくとも皆G・I編のゴン達よりは上にいると判断している。
だが、その程度の強さでは旅団を相手にするにはまだまだ力不足であろうことも否めない。

「とにかく、今の修行もそろそろ成長が頭打ちになるだろうしクルタ族と合流する前に対策は考えとかないとな」





1996年の歳が明けた。
対策は考えてみた。
今の僕たちのレベルではこのまま順当に成長したとしても旅団に届くのはまだまだ先の話だろう。
そのため、原作でのクラピカを参考に制約と誓約を利用して旅団にも通用するレベルの念能力を開発することにした。

旅団がいつクルタの里を襲撃するかはわかっていないため、年明け早々に僕らは全員長期の修行と称して家を出ることにした。

クルタ族に受け入れてもらうところからして予定通りには運ばなかったが、なんとか受け入れてもらえ数ヶ月は無事に過ごす
ことが出来た。

ここに来て驚いたことは、クルタの大人たちは皆、一人の例外もなく念が使えるということだった。
元々、緋の目を狙われているため、大人になったら皆念を覚えるようにしつけられるらしい。
クラピカも見つけたが警戒されているのかまったく話せていない。

僕らは、来るべき旅団戦に向けてクルタの大人達と一緒に念戦闘の訓練を続けていた。





<side:とあるクルタ人>
とうとうこの日が来た。
クルタの里に旅団が襲撃してきたのである。

・・・本当にあの子供達の言うとおり、幻影旅団がやって来た。

我々も、あの子供達も戦っているが戦況は芳しくないようだ。

・・・せめて、我が子だけでも逃がさねば。

私は一族への裏切りであることを感じながらもクラピカを逃がすために戦場に背を向けた。



<side:クリス>
・・・強い。
僕は目の前にいる旅団の男を相手に戦っていた。
おそらくは原作登場前に退場することになる旅団メンバーなのだろう。
旅団のメンバーだけあって強い、はっきりと格上であることがわかる。
だが、引くわけにはいかない。
この数年、今日この日のために鍛え続けてきたと言っても過言ではない。
僕は対旅団戦を想定した念能力を発動するために相手の攻撃を掻い潜り、大きく距離をとった。

「へっ、ちょこまかと逃げ回りやがって。ガキが粋がってんじゃねぇぞ」

余裕のつもりか奴が何か話しかけてくるが無視だ。

「『タイフーン』」

僕の呼びかけに応じて僕の腰に風車のついたベルトが出現する。

「変身」

両腕を握り締めて腰の両端に引きつける。
風車が僕の纏っていたオーラを吸い込み、次の瞬間僕の姿は仮面ライダーへと変身を完了していた。

「!?具現化系か?いや、何だそのオーラ量は!?」

変身ベルト『タイフーン』の能力は仮面ライダー一号の強化服とマスクを具現化することだ。
ただ、変身ベルトの具現化の条件は、戦っている敵が『自分より格上であること』だ。
強化服は纏っているオーラ量で強度が変化するほか、『流』の補助をしてくれる。
マスクの能力は『円』や『凝』等の索敵系の補助である。

そして、対旅団を考えるにあたって思い至った『制約と誓約』、それは「守るべき対象が存在する場合、顕在オーラの出力に
その人数に応じた補正が入る」というものである。
今、俺の守るべき人たちは非戦闘員だけでも数十人。

「さあ、第二ラウンドといこうか」

僕は目の前の敵を倒すために拳を握り締めた。






<side:クロロ>
「イシドがやられたか・・・」

イシドは今回の仕事に当たって補充した4番だったのだが、クルタ族の集落に何故かいた子供の念能力者にやられてしまったようだ。

「しかし、子供か・・・」

ここ数ヶ月で流星街でも俺達を探している子供の念能力者がちらほらいるという。
俺は、ここクルタの隠れ里に来てまで子供の念能力者に遭遇するという状況に偶然ではない何かを感じていた。

「シャル、クルタ族ではない子供のやつらは生け捕りにできそうか?」

「え?どうだろう、ちょっとむずかしいかも。何気に皆、結構強いですし」

シャルは言いながら、クルタの戦士に止めを刺す。
俺は一度、周りを見渡して違和感に気付く。

「?女子供がもういないだと?」

いくらなんでも早すぎる。
常に外敵に備えていつでも逃げられるように生活していた部族とはいえ、俺達が強襲をかけてからまだそれほど時間がたったわけで
もないのにすでにほとんど非難は完了しているようだ。
もう表には戦える者しか出てはいない。

まるで、大きな襲撃があることをあらかじめ知っていていつでも動けるように準備していたかのような・・・

・・・まさかな
それだけ用心深い部族であったと言うことなのだろうか・・・

考え事をしているのがわかったのか、チャンスとばかりに攻撃を仕掛けてくるクルタの戦士。
俺は胸に沸いた疑問を一時棚上げし、目の前のクルタの戦士への対処に意識を集中させた。





<side:クリス>
相当なオーラを消耗したが、僕が相手していた男はしとめることができた。
他の救援に向かったところ、目に付いたのはウボォーギン相手にトリッパー二人がかりで足止めしている現場だった。
即座に割って入り、死角から殴りかかる。

「ちっ、うぜぇ!!」

即座に反応し、殴りかかった腕を正面から受け止めるウボォーギン。
そのままほかの二人のほうへと投げ飛ばされる。

「くっ!!」

すでに一人倒して消耗していることを差し引いても規格外な戦闘力だ。

俺は二人、イナトとカルラのそばへと投げ飛ばされつつ移動し二人の無事を確認した。

「イナト、カルラ、二人ともとりあえず生きてたみたいだな」

カルラはまだしもイナトの念能力は対ウボォーギンを想定したと言っていい能力だ。
この場面でリタイアされるわけにはいかない。

「なんとかな。だが、奴に一撃入れるための隙を作るどころか死なないようにするのが精一杯だ」

カルラが答える。
カルラが陽動を行い、イナトが一撃を決めるための隙を作るのが作戦だったのだがとてもそこまでの余裕はなかったらしい。

「二人がかりでいくぞ」

「おう」

言葉短く。
ウボォーギンに決定的な隙を作るため、ともに逆側からタイミングを微妙にずらした攻撃を加える。

「『聖剣抜刃(エクスカリバァァァ)』!!!」

回り込んだカルラが渾身の手刀を放ち、

「ライダァァァキィィック!!!」

正面からは僕の渾身のライダーキックを叩き込む。

「おおお!?」

さすがのウボォーギンもこれを無造作に払うことはできなかったようで『凝』でガードを行った。
ウボォーギンの動きが一瞬止まる、チャンスだ。

「『幻朧魔皇拳(ブレインハッカー)』!!!」

イナトは一瞬のチャンスを見逃さず、ウボォーギンの頭に一撃入れるため、飛びかかった。





<side:リッド>
・・・くそ、こいつら、強い・・・

血の流しすぎにより、朦朧となった意識でかろうじてフェイタンを睨み返す。
俺の右腕はすでに切り飛ばされどこかに飛んでいってしまった。
ミコトもすでにノブナガに斬られ転がっている。

万事休す、か・・・

俺の念能力は右腕を要としたものだったため、その右腕を失った状態ではもはや時間稼ぎのあがきすらできない。

・・・俺にもっと力があれば・・・

心の中でそう思う。
俺に力があれば、ここで死ぬこともなく逆に叩きのめして皆の救援にいけたのに。

皆、一度死んでこの世界に一人放り込まれたとき、この世界の家族はいても世界に一人ぼっちだと言う孤独感は消えなかった。
オリ主になるためがんばろう、などと笑いあっていたのは偶然めぐり合った『仲間』との縁が切れないようにと互いに連絡を
取り合う口実がほしかったというのもある。

リッドにとって、ここで自分が死ぬことで仲間達に更なる負担がかかり、誰かがさらに傷つき死ぬことは自身の死などよりも
ずっと耐え難いものであった。
それゆえに、彼はその声に耳を傾けてしまった。

《・・・力がほしいか?・・・》

・・・なんだ?声が聞こえる?
まさか、これは・・・、ほしい、俺は今、目の前の敵を倒し皆を救える力がほしい!!

《・・・力がほしいのならくれてやる!!・・・》

力を求めた瞬間、押し寄せてきた何かに飲み込まれ、俺の意識は途絶えた。





<side:ノブナガ>
もう目の前の小娘は死に体だ。
まだ生きてはいるようだがこのまま生かしてやる道理もない。
さっさと殺して仕事に戻るとするかと首をはねようとした瞬間、凄まじい念圧をフェイタンの方に感じ思わず振り返った。

そこで目にしたものは右腕を切り落とされて死に掛けていた子供ではなく、数メートルの体躯を誇る化け物がその巨大な腕で
フェイタンを殴り飛ばす瞬間だった。

「■■■■■■■■■■■■!!!」

形容し難い咆哮をあげながら今度はこちらをにらみつけてくる化け物。
吹っ飛んでったフェイタンは瓦礫の山に突っ込んだまま出てこない。

どうやら俺がこの化け物を相手しなけりゃならんらしい。

俺はため息をつくと、刀を構えなおし化け物を迎え撃つためにオーラを練り上げた。





<side:クリス>
今の一撃は決まったと思った。
だが、敵の力は僕らの予想よりさらに上にあったらしい。

「あ、ぐぅ・・・」

今、僕の手の中には右腕を握りつぶされ、蹴り飛ばされたイナトがいる。
二人がかりで作った隙もウボォーギンにとっては十分に対処できる範囲でしかなかったらしい。

カルラのエクスカリバー、僕のライダーキックを同時に受け止めた状態でさらに直後の硬直を狙ったイナトのブレインハッカー
だったがウボォーギンはエクスカリバーを押さえ込んでいた腕で瞬時にエクスカリバーを弾き飛ばしイナトの攻撃が届く前に右腕
を捕まえ握りつぶした。
さらに、とどめといわんばかりに蹴り飛ばした。

握りつぶされた右腕も重症だが、蹴られた腹もまずい。
折れたアバラが内臓に刺さっているのかドス黒い血を吐いている。

イナトのブレインハッカーは相手の頭部に触れることで発動する能力だ。
複雑な条件設定はできないが、一度食らえば設定した目的を達成するまで念が解けないというなかなかに凶悪な能力だ。

今回、ウボォーギンに行おうとしたのは『認識している戦闘相手の入れ替え』だ。
これで一時的にウボォーギンを味方にし、全員の撤退までの時間稼ぎを狙う作戦であったのだが。

「あぶねぇ、あぶねぇ。さっきから何か狙ってるのはわかってたからな、あのタイミングなら来ると思ったぜ」

二人がかりで作った隙さえも相手の『釣り』であったらしい。
カルラを見ると全力のエクスカリバーごと弾き飛ばされたことで逆に右腕を折られてしまったようだ。

・・・これは詰んだかな?

さすがにこの状況に至って、僕も自分達の死を覚悟した。

その時、瓦礫と化したクルタの建物を破壊しながらノブナガと巨大な怪物が飛び出してきた。

「■■■■■■■■■■■■■■!!!」

「うぉ、なんだぁ!?」

「ウボォー、交代だ、こいつどうにかしろ!!」

かなりぼろぼろになったノブナガがウボォーギンに怪物の相手をさせようとしている。

・・・ってか、あれって『ジャバウォック』か!?
てことはあいつはリッドか!?

リッドの念能力は『悪魔の右腕(ジャバウォック)』だ。
爪で引き裂いたモノのオーラを拡散させる能力を設定していたはずだが、体ごと完全体に変身する能力もあったのか!?

いきなり現れたジャバウォックを無視できない相手だと判断したのかウボォーギンはすでにジャバウォックに向き直って臨戦態勢だ。
ノブナガはこちらにも注意を向けているが意識の半分以上はジャバウォックへと向いている。

!?ミコトはどうした?ミコトとリッドは一緒に行動していたはず・・・

僕は『円』を広げてミコトを探す。

・・・いた、まだ生きている!!

ライダースーツのおかげで精度、距離ともに格段に上昇している僕の『円』であれば離れたところにいる人間の生死も判断できる。

「・・・カルラ、イナトをつれて撤退できるか?僕はミコトを探してから撤退する」

カルラは悔しそうにしながらも頷く。
満身創痍のこの状況でこれ以上の戦闘は不可能だと彼もわかっているのだろう。

カルラとイナトが下がるのを確認した後、僕はミコトの元へと移動した。





<side:ノブナガ>
この化け物にいいようにあしらわれたがウボォーと合流できたことで何とか体勢を立て直すことができた。
ウボォーが相手していた連中が下がっていくが相手をしている余裕はねぇ。
あいつらよりも今はこの化け物のほうが脅威だ。

「ノブナガ、テメェをそこまでぼろぼろにした相手か、おもしれぇ」

ウボォーがやる気満々のようだが肝心の化け物はこっちを見てはいなかった。

「待つネ、ウボォー。それは私の獲物ヨ」

最初の一撃で吹っ飛んだまま行方知れずだったフェイタンが現れた。
・・・やばいな、かなり怒ってるみてぇだ。
すでにキレかけてやがる。

「ちっ、しかたねぇ」

俺とウボォーはその場から離脱することにする。
フェイタンの念に巻き込まれれば、俺達でも生き延びられるかは分からない。

全速で離脱する中、俺達は太陽のような輝きと熱波が発生するのを感じていた。





<side:クリス>
ミコトを回収して撤退している中、背後で太陽が出現した。

・・・フェイタンの『太陽に灼かれて(ライジング サン)』か、凄まじいな。

幸い、有効範囲からは外れていたようだが遠目から見てもクルタの集落が灼き尽くされていくのが見える。
俺は『凝』で視界を強化してジャバウォックの様子を伺ってみた。

ジャバウォックは熱にやられているのか地面に手をついてもだえている。

・・・この状況でリッドを救出するのは無理か?

だが、その心配は杞憂だったようだ。
ジャバウォックは咆哮を上げたかと思うと立ち上がり、動けないと油断していたフェイタンに爪での一撃を叩き込み吹き飛ばした。

太陽に灼かれて(ライジング サン)が解除される。
今の一撃でフェイタンを倒したのか。
だが、ジャバウォックのほうも限界だったのか、リッドの姿に戻るとそのまま倒れこんだ。
僕は急いでクルタの集落まで戻りリッドを回収し、旅団のメンバーが戻ってくる前に避難させたクルタの民のところへと合流する
ために避難場所へと急いだ。





<side:クロロ>
今回の仕事は失敗だ。

回収が間に合った数組の緋の目以外はすべてフェイタンの太陽に灼かれて(ライジング サン)によって燃え尽きてしまった。

「だが、今回のことでフェイタンを責める事はできないな」

俺は、焼け落ちたクルタの集落に佇みながら考えをめぐらせていた。
今回、クルタ族たちは明らかに俺達に備え待ち伏せをしていた。
そうでなければこれほどの迅速な対応は無理だろう。

俺達がここを狙っているという情報がどこからか漏れたのだろうか?
だが、漏れたとして一体どこから?

今回の仕事は反省点が多いな。
とりあえず、今は今後のための授業料を払ったということにしておくか・・・

行方知れずだったフェイタンを見つけたとシャルが声を上げ、皆そちらへ集まる。
どうやら何とか生きているようだ。

「アイツは、私の獲物ヨ。次は、必ず殺ス!!」

これだけしゃべれるのならフェイタンは平気だろう。
言うだけ言って気絶したフェイタンを回収し、俺達はアジトへ帰るためクルタの集落を後にした。





<side:クリス>
僕がクルタの人たちに合流したときにはイナトやほかの生き残りの人たちの怪我の手当てがすでに始まっていた。
気絶したリッドの手当てを任せて僕は会議をしているクルタの長老の下へと移動した。

「長老様、どれくらい生き残れたのでしょうか?」

「クリス君か。・・・避難途中で殺された者も結構おる、4割といったところかのう」

4割・・・クルタの民は100名ほどの少数民族だ。
今回の件で60人近くが殺されていることになる。

・・・だが、クラピカを除いて皆殺しにされた原作と比べれば良い結果だと言える・・・のだろうか?

?そういえばクラピカを見てないな?





<side:クラピカ>
私が見ているこの光景は現実のものなのだろうか?

予告された幻影旅団の襲撃が実際に起こり、急いで避難の準備を行っていたところに旅団の迎撃に出ていた父が戻ってきて私を
気絶させ、集落から少し離れた見つかりづらい洞窟に私を隠した。

目を覚ました私は現状を推測し、集落まで急いで戻ってきた。
そして今、目にしているのは地面に至るまで真っ黒に焦がされた辛うじて何か建物があった痕跡が分かるほどにまで破壊された
集落の姿だった。

おそらく父は旅団の進行を食い止められないと判断し、私だけでも生かそうとあんなことをしたのだろう。
この光景を前に、私は父も母も一族の仲間達もすべてを失ってしまったのだと理解させられた。

旅団が許せない。

緋の目などのために一族を皆殺しにした旅団への憎しみが湧き上がる。

「許さない、蜘蛛ども。私が必ず復讐してやる!!!」

殺されたクルタの民を前に、私は誓った。









あとがき
外伝その1後書きです。
加筆修正どころか、全編書き直しになりました。

トリッパーたちの何人かは対旅団にそなえての念能力を開発しており、ある程度旅団を打倒する作戦を用意してからクルタ族襲撃
に介入しました。
対旅団作戦はほとんど機能しないで終わることになりましたが。

クラピカ父はほとんど一方的な戦闘の様子から非戦闘員の避難は間に合わないと判断して我が子だけでも生かそうと判断した。
という設定にしました。

実際にはクラピカ父離脱後に戦線は持ち直されて非戦闘員の避難はある程度間に合いました。

クラピカ父はその後戦線復帰した際にクロロ、シャルナークと戦闘となり殉職された設定としました。

クラピカ母も戦士の側であったので戦って殉職しました。

生き残ったクルタ族は何とか秘密裏にハンター協会の保護を受けて匿われることになります。

クラピカはこれらのことは知ることができず、原作通りに修行することになります。

トリッパーたちは生き残りにクラピカがいないことに気付いて自分達の行動の結果、死なせてしまったと勘違いしています。
そのため、クラピカの代わりに旅団をどうにかしようとオリ主云々を抜きにして考えるようになっていきます。





念の説明(簡易版)
名前:クリス
念系統:具現化系
能力名:正義の味方(カメンライダー)
 特殊な条件下でカメンライダー一号に変身可能な変身ベルト『タイフーン』を具現化する。
 純粋な攻撃力強化よりも防御力や索敵能力などの補助的な強化がメイン。
 あくまで戦闘強化服なので、ビジュアルはTHE FIRST版の一号ライダー準拠。

名前:リッド
念系統:具現化系
能力名:悪魔の右腕(ジャバウォック)
 右腕に漫画『ARMS』のジャバウォックの右腕を模したものを被せて具現化させたもの。
 爪で引き裂いたもののオーラを分解する能力がある(ARMS殺しの再現)。
 フェイタンに右腕を切り飛ばされたこと、リッドが力を欲していたこと等、いくつかの偶然が重なって能力が進化、暴走。
 原作のように右手に擬態する形でジャバウォックが具現化し、また、自意識を持つようになった。
 この右腕は『絶』の状態でも消えることがない。
 戦闘で感情が高まるとジャバウォックの活動が活発化して、押さえ切れなくなると暴走して完全体ジャバウォック化して
 暴れまわる。

名前:ミコト
念系統:操作系
能力名:粘土人形の造形師(クレイドールマイスター)
 粘土に自分の血とオーラを練りこんで粘土人形を作成する。
 作成した粘土人形の造詣、血の量とオーラの量、製作時間などで性能が変化する。
 一度作成した粘土人形は完成時点で固定化されて簡単に壊れないようになる。
 粘土人形を操作することでサイズが10倍になる。
 粘土人形は一度使うと土くれに戻る。
 
※今回の話において、登場時点ですでに満身創痍だったが、描写のないところで粘土人形で戦っていた設定。

名前:イナト
念系統:操作系
能力名:幻朧魔皇拳(ブレインハッカー)
 対象の頭に直接触れることで相手を強制的に操作する。
 複雑な命令を与えることはできないが、その分強制力が強くなっている。
 傾向として、『○○を殺せ』などの命令だと相手の精神力しだいで操作を跳ね返す場合がある。
 この場合、『~をした人間を殺せ』などの直接対象を指定しない場合のほうが操作しやすい。
 

名前:カルラ
念系統:変化系
能力名:聖剣抜刃(エクスカリバー)
 オーラを鋭く研ぎ澄ませて手刀に乗せて放つ技。
 打ち込む側のオーラが相手のオーラを上回っていたとき、オーラを切断する効果がある。
 
 


感想・矛盾などありましたらご指摘お願いします。






[8143] 第四話
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:1e5f2ff6
Date: 2009/09/29 18:05
2000年 1月1日 晴れ

 とうとうこの年がやって来た。
 世界は俺達という異物を抱えこんでも問題なく回っている。
 いや、俺達が感知できないだけでやはり世界は少しずつ軋みをあげているのだろうか?
 世界はとうとう原作の時間軸へと突入していく。
 果たして、俺達の起こした行動はどういった影響を世界に与えるのだろうか。
 
                  テオ・ペッパーの日記帳より





<side:テオ>
ゴクウ(本名は別にあるのだが、もはや誰もそれを呼ばないためこっちで統一)の弟子入り試験から1年と数ヶ月。
年は明けて2000年、とうとう原作の始まる年が幕を開けた。

今日までにあったことを整理しておこう。
まず、ゴクウの弟子入りの後から。





弟子入り試験の翌日、俺に来客があった。

銀髪オッドアイのあの人である。

彼女(自己紹介されて始めて性別が判明した)の名前はテトラというらしい。

やはり彼女もトリッパーであった。
もっとも、彼女も死んでこの世界へ転生した訳であるが、自身の住んでいた村が都市部から離れた場所にあり、たまたま読んだ
幻影旅団によるクルタ族全滅の記事で初めてここがハンター世界であることを知ったらしい。

そこで彼女も一念発起し、ゴンやキルアに会ってみようとクジラ島やククルーマウンテンに行こうとしてみたが、たどり着くどころか
国から出ることもできず、同じ国内にあった天空闘技場でまず修行しようと思い至ったワケである。

何とか一年以上がんばって戦い方も身につけ、独学で念の修行をし200階に到達したのが俺達が天空闘技場に来た頃だったらしい。
そして、明らかにトリッパーだと分かるゴクウを見つけて何とか話しかけようとがんばっていたらしい。

そして昨日の試合でゴクウが俺のことを師匠と呼んでいるのを聞いて俺のほうに来てみようと思ったそうだ。

俺はテトラがこの子を自分らのグループに誘うかどうかを考えていた。
銀髪オッドアイなどというかかわってはいけないトリッパーの見本のような外見をしているが、中身は普通人のようだ。
それにテトラが厨二病かどうかなど基本的にどうでも良く、肝心なのは俺達の計画に役立つのかどうかと言う事である。

テトラの話は自分も弟子にしてほしいということであった。

実のところ、弟子にすること自体は特に問題なかったりする。
元々ゴクウの修行もあるし、ハオの資金調達もあるのだからこのまましばらくは天空闘技場に滞在することになる。
その時間を使えば問題ないし互いに競い合えばゴクウの成長を促すことにもなるだろう。
だが、ゴクウはわざわざ弟子入り試験までやって俺達の仲間になったのだからとりあえず、次の日にゴクウを見舞いに行って
ゴクウの意見を聞いてみようという運びとなった。



ゴクウからは案外と簡単にOKが出た。

ゴクウ曰く、「競争相手がいたほうが張り合いが出る」らしい。
俺達の目的を話すかに関してはとりあえず保留として、テトラの弟子入りが決まった。



ヒソカが天空闘技場に現れた。
正直なところ、完全に失念していた死亡フラグである。
通りで190階下でウロウロしていたトリッパーっぽい連中が一斉に居なくなるわけである。

俺達は目を付けられたらしく、「君らはおいしそうだ」だの、「たべちゃいたい」だのと繰り返しながら迫って来る。

たのむから、オーラをビンビンにしたままこっちに寄って来ないでほしい。

テトラはミーハーな観光客のようにはしゃいで、「ヒソカキター」、とか言ってた気がしたのだが、実物を前にしたらさすがに目が
覚めたのか引いているようだ。

紆余曲折の末、俺が戦うことでほかのみんなは我慢してもらうことになった。
ゴクウの進級試験にでもして生き残ったら合格とかにしようとしたのだが、先回りされて俺が戦うことになってしまった。

・・・人身御供じゃねぇか、覚えてろよ。





・・・とりあえず、生き残りました。
オーラ量がどうとか言うレベルではない戦闘経験値の差というものを味わいました。

何とか生き残りはしたが、それでも全治三ヶ月、ヒソカもそれなりにダメージは負ったが入院するほどではない、理不尽である。

テトラもゴクウも今回の一件で原作に対するフィルターが吹っ飛んだようである。

トリッパー、オリ主であろうとも、死ぬときは死ぬ世界であることを理解出来ただろうか。
・・・できれば自分の身で感じてほしかったが。

その後、俺達には手を出さずに遠くから見てくるだけとなった。
一応、約束は守ってくれるらしい。
俺が入院中にカストロを半殺しにしたりした後、ヒソカはふらりと天空闘技場から居なくなったようだ。





弟子達を鍛えながら、俺も当初の目的でもあった新技の開発を進めていた。
ちなみに、宣言どおりに重力制御システムっぽいものは作ってみた。
地面に書いた神字の魔方陣の中に入るとオーラをすり抜けて肉体に負荷がかかる様にした物で、魔方陣内部にいる人間のオーラで
自動で発動する優れものである。
現在は手動で体感重力を制御しているが、今後の課題はオート化して負荷に慣れてきたら徐々に重量を増加させる様に改良中である。

弟子達に抜かれるのも癪なため、俺達も普段はここで修行をしているが。





テトラについて進展があった。
正式に仲間として迎え入れることになった。
ヒソカを真近で見た後、改めてフィルターのかかっていない目で世界について考えてみたらしく、今後について相談に来たためだ。

テトラは原作フィルターが無ければとても聡明な子であった。
ある日、どうしても資金が足りず念の研究書が手に入らないため、久しぶりにルパンをしようかと話し合っていたときのことだ。

「神字で作ったアイテムを売る会社を作って資金繰りしたらいいんじゃないですか?」

金が足りなくなるととりあえず盗ってくる発想が根付いていた俺達(俺とハオ)にとっては天恵のようなものだった。

一週間後、ハンター協会発行の『ハンター通信』の広告欄にこれまでに作成したいくつかの念アイテムを受注で製作販売する会社、
『有限会社 ストレンジャーズ』として再出発することとなった。

とりあえずルパンの必要がなくなる程度には売り上げはでているようである。





ある日、修行中にゴクウが質問してきた。

「スカウターって作れませんか?」

三人寄れば文殊の知恵とはよく言ったもので、ハオと二人で頭をひねっていた頃とは比べ物にならないくらいにネタが上がってくる。
・・・肝心の世界移動システムは手付かずなのだが。

とりあえず、作ってみることにした。

オーラの数値化はナックルの計算式などもあり簡単に済んだ。
オーラの計測システムも作成できた。
問題はそれらの小型化である。

三ヶ月ほどかけたが、結局今の技術では原作のスカウターサイズまで小さくすることができなかったがノートパソコンサイズまでは
持っていくことができた。

・・・ゴクウはちょっと微妙な顔をしていた、文句あんのかコラ。

何はともあれ、試運転である。

ゴクウ
AOP = 120
MAX_AOP = 1500

テトラ
AOP = 95
MAX_AOP = 1200

ハオ
AOP = 140
MAX_AOP = 2700
俺(テオ)
AOP = 130
MAX_AOP = 3200
の結果が出た(AOPの値は通常の纏状態のもの、MAX_AOPは練状態で計測したもの)。
さらに、オーラの流れをサーモグラフィーのように表示することができる。

「POPは計測できないんですか?」

残念ながら即、計測することは出来ないのであった、だって表に出てこないんだもの。

一応計測は出来る、だがそれはナックル式と同じで、ある程度相手のデータ取りを行うことが前提だったりする。
そのため実際に使うとなると修行などでオーラを使い果たすまで計測し続けるなどしなければならないので使い勝手があまりよくないのだ。

このノートPC版スカウターも販売に出すことにした。

このスカウターを売りに出したことでストレンジャーズがトリッパーの運営する会社であると世の多くのトリッパー達に露呈し、
『耳にかけるサイズのスカウター求む』のメールが殺到することになった。

やっぱり名前は変えるべきだったか。

ハンター協会からもマークされるようになってしまうが、まあ、余談である。




俺とハオの新技もとうとう完成した。

まずは俺から。

紙々の世界 模倣宝具(ペーパーワールド イミテーションファンタズム)。
ゴクウとの戦いでは勝利できたが根本的な問題である一撃の威力不足は完全には解消できていなかった。
そのため結局のところ、模倣宝具使用時のみ、追加の制約と誓約で威力を増加することで対処することにした。

もう1つ、紙々の世界 動物模型(ペーパーワールド アニマクラフト)。
結局、神字のみで高度なAIを組むのは俺には難しかった。
・・・念能力でAI作るとメモリを使いまくるからなぁ。
まあ、グリードアイランドのGMたちなら楽勝なのだろうが・・・俺の専攻はAIじゃないしな。

動物模型には自動操縦と遠隔操縦の二種類を設定した。
自動操縦では簡単な命令を与えることでそれを実行するために行動を起こす。
遠隔操作する場合は俺が動けなくなるが動物模型を自分の体のように動かすことが出来る。
精度と燃費が反比例するけどその辺は使い方しだいということで。



次はハオの新技だ。

甲縛式オーバーソウル『黒雛』を模した、『S・O・F黒雛(スピリット・オブ・ファイア クロビナ)』。
一度作成したスピリット・オブ・ファイアを小型化、高密度化し鎧の様に体の回りにまとった姿。
オーラの噴出で自在に空を飛び回り、原作を再現した高密度酸素をオーラで閉じ込めた念弾『鬼火』を持つ。

もう一つ、アニメ版から発想を得た『S・O・Fソード(スピリット・オブ・ファイア ソード)』。
これは、さらにスピリット・オブ・ファイアを圧縮して片手剣のサイズまで小さく高密度化した姿。
スピリット・オブ・ファイアの着火能力で刀身の内側で常に酸素を燃やして刀身を加熱しているため地面さえもやすやすと
切り裂く切れ味を持つ。

ハオも資金繰りのために190階下に留まる必要がなくなり200階まで上がってきているため、これまでの鬱憤をはらす
かのように対戦者相手に新技の実験をしている。

スピリット・オブ・ファイアの実践式の形態切り替えの速度鍛錬のつもりでやっているので、一撃で終わらない小技でしか
攻撃せず、対戦相手もハオの気の済むまで付き合わされるため一見白熱した試合であるが、実のところはハオに振り回され
る対戦者が一方的に割を食う涙目な試合であった。

「ああ~、いい汗かいた」

なんか、輝く笑顔でのたまっているが、やったことは一方的な蹂躙とあんまり変わらないと思う。
ハオの憂さ晴らしは、一週間連続で試合を組みそのすべてに完勝して対戦者がいなくなるまで続いた。





ついでに、ゴクウの修行状況についても報告しておこう。
ゴクウの修行は、まずは界王拳を自在に使いこなせるように肉体そのものの鍛錬を行わせることにした。
体感重力10倍で。
試しの門の1くらい簡単に開けられる肉体は現状でも持っているようだがそれでも長時間負荷がかかり続ける状態での
筋トレは冷や汗が出てくるほどきついらしい。

一ヶ月ほどたった。
トイレと睡眠以外はずっと重力システムの中で生活させながら修行した成果が出たのかだいぶ力がついたように思える。
これなら試しの門も3ぐらいなら念なしで開けそうだ。
俺は改めてゴクウに界王拳をさせて修行の成果を見てみることにした。

結果、ゴクウは入院した。
原因は極度の疲労。

理由は簡単だった。
肉体そのものを鍛えた結果、AOPもそれに合わせて上昇していたため、3倍界王拳から来る急激な疲労で気を失ったのである。

例を挙げれば、体重60キロ、ベンチプレス20キロの人間が40キロの荷物を背負うのは可能かもしれない。
だが、同じ体重で、ベンチプレス40キロで80キロの荷物を背負うのはかなりきついだろう。
さらに、ベンチプレス60キロで120キロの荷物を背負えばもはやまともに動くこともできないだろうと思う。

要するに体を鍛えることで基本の顕在オーラ(AOP)が増加したことで界王拳で増加するオーラ量も比例して増加しており、
かえって肉体にかかる負担が増加すると言う結果になってしまったと言うことだ。
鍛えれば鍛えるほど界王拳が使えなくなる。
これにはさすがに頭を抱える羽目になった。
とりあえずゴクウの修行内容は変更になるのは間違いない。

・・・退院したら、24時間常に界王拳状態にさせて体を負荷がかかる状態に慣れさせるところからはじめるか

新たなプランを練りながら俺はゴクウが退院するのを待つことにした。







スカウターの開発から数ヶ月後、テトラの念能力がようやく形になった。
その名も『電子の海の人魚姫(リトルマーメイド)』。
電脳ネットの中を精神ごとダイブするような感覚で探索することができる。
正直、戦闘関連より支援系の能力がほしかったので情報収集用の念能力はありがたかったし、実際に資料探しの効率が段違い
に良くなった。
テトラには基礎修行の時間以外は電脳ネットの探索を手伝ってもらうのが日課となった。



現在、俺はスカウターの小型化のためにさまざまな資料を躍起になって読んでいる。
一度は匙を投げた耳装着型スカウターであったが、弟子に微妙な目で見られた挙句、ユーザーからの要望が殺到したため研究
せざるを得なくなってしまった。
こうなると、今度は意地でも完成させたくなるものである。

俺はテトラも巻き込んで、日夜小型化のブレイクスルーとなる技術、発想を求めてネットにリアルにと徘徊していた。

そんな日々が数ヶ月続いたある日の事である。

「あ、ああ、あぁぁぁぁぁぁぁ!!」

俺はいつもの通りネットを巡回していると突如頭に浮かんだモノに思わず奇声を上げてしまった。

「ちょ、何です、いきなり!?」

テトラが突然奇声を上げた俺に文句を言ってくるが俺的にはそれどころではなかった。

「し、しまった・・・何をやっているんだ俺はぁぁぁぁ!!!」

「とりあえずうるさいので黙ってください」

テトラの冷えたツッコミで強制的に冷却される俺。

「いや、いつの間にか商品開発に力入れすぎてて最初の目的をすっかり忘れてた」

そうなのである。
先ほど突如として思い出したのは世界移動システムのことであった。
正直この数ヶ月、商品開発が楽しくてすっかり忘れてた。
今日の日付は1999年の7月である。
少なくとも去年の暮れあたりからほとんど開発が進んでいない。
資金調達のために立ち上げた会社のほうに熱を入れすぎて目的を見失っていたのであった。
スカウターの改良などしている場合ではなかったのである。
俺は修行に専念しているハオとゴクウも呼び出し、システム開発を再開することになった。





<side:ハオ>
修行中に呼び出しがあったのでゴクウとともにテオの元へとやってきた。

「いや、それは忘れちゃだめだろ。常識的に」

この阿呆はとんでもないことをぶちまけおった。

「マジすいません、本気で忘れとりました」

テオは五体投地に近いDO☆GE☆ZAをしながらひたすら謝っている。

「まあ、次から次へとアイテム作ってるのにちゃんとシステム作成に時間とってるのか確認しなかった俺も間抜けだが」

半年以上も手をつけるのを忘れたままにするのは恐れ入った。

「忘れたものはしょうがない、俺も開発に回るから遅れた分取り戻すぞ」

テオは時々すごいポカをすることを失念していた俺にも責任はある・・・かもしれない。

・・・ある程度成果が上がるまでは修行は中止かな?

俺は「ふぅ~」とため息を吐くと、問題点の洗い出しのため資料の検討に入った。





<side:テオ>
今年も12月の半ばを過ぎた。

何ヶ月か前に発覚したシステム作成放置の件以来、ハオが念の修行を切り上げてシステム開発を手伝うようになったので、
ある程度は開発の段階も進んできた。
現在俺たちは、ストレンジャーズの仕事はすべてキャンセルして一つの山場に差し掛かったシステム開発に全力を注いでいる。

先月成功した異世界の情報の確認から、現在チャレンジしているのは『異世界の目視での確認』である。
要するに、チャンネルをつないだ先の世界がどのような世界なのか目で見て確認すると言うことである。
ここが成功するか否かは大きな山場である。
なぜなら、映像のみとはいえ確実に『向こう側』と接続することができたと言う確かな証拠になるからである。

・・・すでに幾度か試しているがなかなか思うように映像の確認がとれない、このままだとハンター試験には間に合わないか?

俺たちは話し合いの結果、ハンター試験の折、二つにチームを分けて居残りのシステム開発班。
トリッパーが参加する可能性が最も高い、今期のハンター試験に参加して新しい仲間を探す班。
とに分けて原作に突入する予定であった。

俺はすでにご都合主義を期待して幾度か失敗を犯している。
そのためこの世界が現実と変わらぬシビアな世界であることは理解しているが、そういった思いとは別のところで主人公組をひと目
見るぐらいはしてみたいのである。
なんだかんだと言っても俺も、いや、俺たちもトリッパーの端くれである。
この世界からエスケープしたいと思っていても、ゴンたちに会ってみたいという思いも少なからずあるのだった。

などとグダグダ言っているが、要するに俺のハンター試験組参加条件は平行世界の観測をハンター試験受付締め切り日までに成功
させることだったりする。
半年以上も開発をサボっていたことに対する罰でもあるが。

すでに決定している居残り組はテトラである。
そもそも戦闘系の念能力でない上にヒソカに顔を覚えられているため割に合わないとのこと。

だけど、俺たちすでにヒソカに『青い果実』認定されてるからいまさら避けても手遅れだと思うな。



・・・などと、雑念交じりに念回路を弄っていたのが悪かったらしい。
オーラ巡回路の制御系をミスっていたことに気づかないまま試運転に突入。
成功すれば観測先世界の風景が写るはずのモニターが、凄まじい勢いで溜め込まれていくオーラに耐え切れず吹き飛んだ。

ちなみにこの試作機、世界を跨いで発動する念など一個人のオーラ量でまかなえる訳もないため、動力源として地球のオーラとも
言える『地脈』からエネルギーを持ってくるように作ってある。

何がいいたいかというと、制御の限界を超えて注がれ続ける地脈エネルギーで試作機そのものが融解しだし、「ヤバイ」と感じた
その場にいた全員が咄嗟に全力の『練』で防御した瞬間、装置が爆発した。



それはそれは見事な爆発であった。

この試作機は、万が一に備えて天空闘技場があるウラノス市の郊外の無人地帯で実験していたのだが、縦に空へと向かって伸びた
火柱は市の反対側からでもバッチリ確認できたらしい。

アレの爆心地にいて何で生きてるのだろうかと思わなくもないが、咄嗟に行った『練』がよかったのか爆発の衝撃波で吹き飛んだ
らしくボロボロになってはいたが命に別状はない感じで生きていた。

4人とも、皆。

「お前、居残りな」

ボロボロになったハオが俺のそばまで寄ってきて告げる。
『帰ってくるまでに作り直しとけ』と言っいるのが聞こえるかのような視線ビームを背に受けながら俺は

「さーいえっさー」

と返事を返してぶっ倒れるのだった。





あとがき
爆発事故のあと、バレてないとは言えさすがに天空闘技場には居づらくなりヨークシンシティに拠点を戻すことになりました。
天空闘技場を出発した時点でハンター試験組はハンター試験へと旅立ちます。
ハンター試験組は、ハオとゴクウ。
居残り組は、テオとテトラです。

世界移動システムの開発は試行錯誤の連続でしたがここまででかい爆発を起こしたのは地脈からエネルギーを引っぱってきたとき
に続いて今回で二回目です。
とはいえ、一回目の爆発はある程度予想がついていたため周りが完全無人の環境で行ったので基本的に誰もそういった実験があった
ことを知りません。

天空闘技場のある都市の名前がよく分からなかったため、オリジナルで名前を付けました。
原作などで名前が出てるなどありましたら教えてもらえるとありがたいです。

感想、矛盾などありましたら、ご指摘をお待ちしております。

※9/29 漢字ミスの修正。



[8143] 第五話
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:1e5f2ff6
Date: 2009/05/17 20:53
2000年 1月7日 晴れ

 正直、早まったかな?と今ではちょっと後悔してたりする。
 正直なところ、俺だってトリッパーなのだから原作主人公の顔くらい拝んでみたいという思いはあった。
 なんだかんだあって、会場までたどり着いたところまではよかった。
 でも、その後がよろしくない。
 世界は常に想像の斜め上を逝く。
 と誰かがいってた気がするが、俺自身がその気分を味わうことになるとは思っても見なかった。

                         ハオの心の日記(ハンター試験編)より





<side:テオ>
今日は1月7日だ。
つまり、ハンター試験の開始日。
でも俺はお留守番。

「施設ごと爆破したんですからこのくらいの罰は当然ですよ」

いや、わかってる、わかってるから。
それ以上言わないで、テトラさん。

「ハンター試験が終わるまでにしっかり直しちゃいますよ~」

なんか、テトラの俺に対する扱いが微妙に変わってきてる気がするな。

ストレンジャーズの仕事は基本的に皆やってるから、テトラも神字やものづくりに関してそれなりに習熟してきてて何かを作ったり
することに楽しさを感じているみたいだ。

いい傾向だ。

俺も見てばかりいないでシステム構築を再開する。

・・・基礎部分は昔描いた設計図だからな、今見直すとあっちこちに改善の余地が見られるな。

再構築のついでに何箇所か設計図を修正しシステムを効率化する。

・・・こうして再設計を行うと自分の成長がちゃんと実感できていいな、最近ポカばっかりだしなぁ。

ついこの間、一歳で捨て子になった時に匹敵するポカをやらかした身としては、自身の成長を確認できるのはアイデンティティーの
確立的にもありがたい。
このままでは俺の人物評価が某「あかいあくま」の様なうっかりさんで固定されてしまいそうだ。

「ん?」

資材の確認をしている時、気づいた。
どうも、現在確保している在庫だけでは少々足りないようだ。

不足しているのは、念の伝導性が高いレアメタルと神字を刻むのに必要な特殊な塗料、システムのコア部分の平行世界観測に必要な
特殊なレンズ等である。
レアメタルと塗料は何とかなる。
それなりに値の張るものだが買うくらいの貯えは十分にある。
問題はレンズのほうだった。
以前使っていたレンズは極めて純度の高い水晶から削りだして作成したもので入手できたのは幸運による所が大きかった。
こればかりはそう簡単に代用品を見つけることは出来ないだろう。

俺は自分のやらかしたミスの思った以上に深刻な被害を改めて感じ、現実逃避するように空を見上げるのだった。





<side:ハオ>
「ステーキ定食。弱火でじっくり」

ハンター世界に来たからには誰もが一度は言ってみたいと思うだろうセリフを唱え、俺とゴクウは「飯処ごはん」に足を踏み入れた。
しかし、何人来るか分からないハンター試験受験者全員にステーキ奢るのもすごい話だよな、何人分用意してるんだろ?

どうでもいいことを考えながらステーキ定食を貪る俺とゴクウ。
やがて地下100階に到着し、受付の人からナンバープレートを受け取る。

「・・・452番?」

「こっちは453番ですね」

原作ではゴン達が400ちょっとの番号だったはず、これは・・・
俺は改めて周囲を見渡してみる。

・・・念能力者がゴロゴロいるじゃねぇか!?
これ、全部トリッパーなの?

少なくともぱっと見て100人は念使いがいる。
原作ではハンター試験に参加してた念能力者はヒソカとギタラクル(イルミ)だけだったはず。

「よう」

後ろから声をかけられて俺たちはそろって振り返る。

「よう、あんたら新人だろ?」

トンパさんがいらっしゃいました。
原作通りに新人潰しを行っているようで、例の下剤入りジュース片手に話しかけてきた。

「・・・俺たちのことか?」

「ああ、俺の名はトンパだ。俺はもう何年も連続で出場してるから常連と新人の見分けはつくのさ。ところで、お近づきのしるしだ。
 一本どうだい?」

そう言って、ジュースをこちらに差し出してくる。
正直、下剤ジュースなんぞもらってもしょうがないので断ろうとしたところに聞き覚えのある声がかけられた。

「やぁ、そこにいるのはひょっとしてハオとゴクウかい?君たちもハンター試験を受けに来てたんだね」





<side:ゴクウ>
「ああ、俺の名はトンパだ。俺はもう何年も連続で出場してるから常連と新人の見分けはつくのさ。ところで、お近づきのしるしだ。
 一本どうだい?」

おお、これがかの有名なトンパジュースか。
ちょっと記念に一本もって帰ろうかな?

そんなことを考えながら手を伸ばそうとすると後ろから声がかけられた。

「やぁ、そこにいるのはひょっとしてハオとゴクウかい?君たちもハンター試験を受けに来てたんだね」

・・・そう言えば、ヒソカの初登場って『ここ』でだったよな

俺はそんなことを思いながら振り返る。

「やあ」

なんか、すごい嬉しそうな笑顔でこちらに手を振っている。

「ヒソカか。・・・ちょっとオーラ抑えろよ、周り皆引いてるぞ」

ハオが顔を顰めながら言う。
よほど興奮してるのか、禍々しいとしか表現できないオーラをビンビンに広げており念使いでないものたちも本能的に距離をとる位だ。

「あぁ、今年の試験は大当たりだったよ、こんなにも沢山の青い果実が集まるなんて・・・去年落ちて本当に良かった」

ヒソカの顔がヤバイ、すごい嬉しそうだ。
あと、プルプル震えないでください。

「これだけ居れば少しぐらい摘み食いしても問題ないかな?」

・・・俺は何も聞いてないぞ、うん。
現実から目を逸らし、放置してたトンパの方に向き直るとすでにトンズラした後だった。

「ジュース、もらい損ねたなぁ」





<side:トンパ>
・・・あ、あぶねぇ。
ヒソカの知り合いに下剤ジュース飲ませるところだったぜ・・・

またこっちに意識が向く前に退散しないと何されるかわかったもんじゃねぇ。
ヒソカと普通に語り合ってる時点で要注意人物決定だしな。



ヒソカ達からなるべく離れて回りを伺っていると見覚えのない集団が入ってくるのが見えた。
50人くらい、次々と降りてくる。

アレ全部新人かよ、さすがにあの数はジュースも用意してないな・・・
さすがに多すぎる。
ジュースが足りないので今回の集団はスルーすることにした。





<side:ハオ>
ヒソカにテオの事を聞かれたので今回は不参加だと言っておいた。
「クックック」とか笑いながら奥に引っ込んでったが、激しく不安だ。

その後、またぞろぞろと団体さんが到着した(無論全員念使いだ)と思ったら、その最後尾に主人公組が現れた。

なんでさ。

後にゴン達にくっついてたトリッパーから聞いて知った話だが、その時の団体さんは全員クジラ島経由ハンター試験会場行きの船に乗っていた
メンバーで、嵐にあっても生き残った面子がなし崩し的に一緒になって行動していたらしい。

・・・またトリッパーの集団が・・・

ようやく見ることの出来た主人公組であるが(そう言えばヒソカとかトリッパー達の多さとかに気を取られてキルア探すの忘れてた)
わざわざ接触する理由もないし周りの念使いが気になるのもあって放置しておくことにした。





ようやく始まった一次試験。
現在絶賛マラソン中である。
現在俺達は走りながらおそらくトリッパーであると思われる念使いの一人と話をしていた。

「つまり、この世界にはトリッパーを保護している組織があると」

「その通り、今回は原作開始の重要な場面でしょ?だからまだ未発見のトリッパーとか接触するためにうちの組織『ヒーローズソサエティ』
 からも結構な数が参加してるよ」

ちなみに、今、彼の説明を受けているのも未発見トリッパーである俺達と接触するに当たって自分達の組織についてしっかり説明するのが
ルールとなっているかららしい。

「しかし、いつの間にかそんな組織が出来てたんだな。まったく気付かなかった」

「ヒーローズソサエティが出来たのって3年ぐらい前らしいからね、創ったのはクルタ族防衛に参加したトリッパー達らしいけど」

やってることは賞金首ハンターとかと同じだしな、と自分達の組織の説明をしている彼。
彼の名前はブレイドという。
無論、本名ではなくコードネームの様なものらしい。
彼自身も一年前に組織に見出され参加したらしい。

・・・今後のためにも、こことは連絡は取り合っていたほうがよさそうだな。

ほかにも、キメラアントに関しても色々と調査を行っているらしい。
生物兵器説と今まで表に出てきてなかった未発見生物説両方の面から捜査しており、見つけ次第抹殺の予定だそうだ。

「ってか、そこまで活動内容話しちゃっていいわけ?」

ゴクウが疑問を口にするが、俺もそこは疑問だ。

「別にかまわないんじゃない?同じトリッパーだし。むしろ事情を話して協力者になってくれそうなところにはしっかりコナかけとかないと」

その後もいくらか互いに情報交換し協力については他の仲間達と話し合って決めることを告げ、その場は別れることになった。
恐らく、彼らの組織『ヒーローズソサエティ』とは協力関係を築くことになるだろう。
それだけの価値はあると感じたし、何よりキメラアントの対策を自前でやってくれそうなのが良い。
なるべくならキメラアント戦が始まる前にトンズラしたいところだが、早々うまくことが運ぶとも限らないのだから。
出来る限りの支援はしたいと思った。





その後も何人かのトリッパーと話をしたり観察したりしながら走っていたらいつの間にかヌメーレ湿原に到着していた。

・・・そう言えば、話しながら階段上ってた気がするな。

ちゃんと鍛錬を怠っていない念能力者からすれば、この程度のマラソンの感想などこんなもんである。

一次試験官のサトツさんのヌメーレ湿原の解説とか、偽者騒動とか、ヒソカのトランプ投げとかもろもろあったのち、マラソン再開。

そういや、ここらでスーパーヒソカタイムが発動したはず、ちゃっちゃと前の方へ移動しようとスピードを上げたところ、何かに
引っぱられる様につんのめる。
不審に感じ背中を振り返るとバンジーガムがついてた。

「ちょ、ヒソカァァァァァァア!!?」

その瞬間一本釣りされる俺。

「えぇ、ハオ何やってんのおォォォォォオ!!?」

突如空に向かって打ち上げられた俺に驚き声を上げるゴクウだが、直後自分も引っぱり上げられ語尾が驚きの声に変わる。

しかし、俺もゴクウもいつバンジーガムを付けられたのだろう?
まったく気付かなかった。
ヒソカの技量の高さを垣間見ながら空を飛ぶ。

当たり前だが着地地点はヒソカの側だった。

「いきなり何すん・・・」

最後まで文句も言えなかった。
ヒソカが全方位に向かってオーラを込めたトランプをばら撒いたからだ。
とっさに伏せてそれらを避けた後、周りに立っていたのはある程度鍛えてある念使いだけだった。

周りからは不意打ちを受けて苦しむ呻き声が聞こえてくる、まだ何人かは生きているようだった。

非念能力者やそれほど強くない念使いばかりとはいえたった一度の攻撃で数十人まとめて倒すとかほんとに化け物だな、こいつ。

俺達のほかにも何人かバンジーガムに捕まってるのがいる。
俺達と同じように吊り上げられたのだろう、ヒソカを見る顔が引きつっている。

皆、俺達と同じくらいには強そうに見える。
あらかじめ選別しておいたのだろう。

「・・・改めて聞くぞ、何のつもりだ?」

「いやぁ、君たちとも一度戦ってみたくて、あっちだとテオとの約束があるし。だからここでと思ってね」

笑顔で言い切ったヒソカ、あのフラグ折れてなかったよ、チクショウ。

やっぱりテオとやっただけじゃ満足できてなかったらしい。
内心頭を抱えて絶叫したい気分だが、この状況でそんなことをすれば速攻で死ぬ。

「俺たちまで捕まえた理由は?」

ほかのつかまってた連中が尋ねてきた、でもあの顔を見るにたぶん答えわかってるんだろうな。

「うん?君達もおいしそうだったからね、じゃあ、始めようか」

宣言と同時にヒソカのオーラ量が激増する。

「くそっ、原作通りに試験官ごっこでもやってろよ!」

トリッパーの誰かが叫んだ言葉を頭の片隅で聞きながら俺とゴクウも戦闘態勢を取った。




「3倍界王拳!!!」

先手必勝!
どうせ引っぱられるのならその前に殴る、という感じでゴクウが飛び出す。

乱戦でスピリット・オブ・ファイアを出すのは動きの阻害になる。
俺はS・O・F黒雛を纏い、隙を見て鬼火を打ち込むために動く。

ほかの連中も動き出した。
一人は後方に下がって銃の様なものを具現化し、もう一人は「ヒーローズソサエティなめんなぁぁぁ!!」と叫びながらベルトを
取り出し、「変身」と叫びカイザへと変身する。

最後の一人は『噛み裂け!竜王丸!!』と叫んでいる・・・って、

「あれ?タクヤ?やっぱ来てたんだな」

「ん?ハオか、そりゃ今回参加しなけりゃオリ主やってる意味がないからな」

まったく、タクヤらしい理由である。
ちなみに何故名前で呼び合うようになっているかというと、以前テオが入手してきたメルアドで結構頻繁に連絡を取り合うように
なっていたからである。

「ある意味丁度良かったか、あれから開発した必殺技使ってみるか」

なんか策があるようなので乗ってみよう。

「んじゃ、足止めは俺がする」

ゴクウとカイザを相手に一歩も引かずに戦っているヒソカに瞬時に照準を合わせ、高速で背後に回りこむ。
二人と目があった気がしたがかまわずにぶっ放す。

《お前らは自分で避けろよ!!鬼火!!!》

一応、心の中で忠告。
三人めがけて問答無用に鬼火を乱射した。

「「ノォォォォォオ!?」」

しかし、やはりヒソカの方が上手か背後からの攻撃にもすぐに対応し、バンジーガムでつながれたままの二人を振り回して防御していた。
二人とも自分に当たりそうな鬼火はがんばって弾いている。
攻撃は当たらなかったが足止めとしては十分だろう。

「怒竜突破!!!」

俺の攻撃に対応していた隙をついてタクヤが刀を構えて突進する。
その予想外の速度に対応し切れなかったか、ヒソカがアクションを起こす前にタクヤの刀がヒソカの胸に突き刺さった。





<side:タクヤ>
俺の「怒竜突破」は俺の新しい念能力『熱き魂(ヒート・ザ・ソウル)』を使ってオーラを熱に変え、全身に纏った状態で相手に向かって
突進する技だ。
試し撃ちした際は推進に使ったオーラが切れるまで直進し続け破壊し続けた。
そのため、ヒソカ相手にもそれなりに効くと思ったのだが・・・

「くくく・・・いいねぇ、君達は・・・」

届いていない!?
気付けば俺の体には無数のバンジーガムが絡み付いており、突進力を削がれていたのだ。
ヒソカのオーラが一際強く脈動する。

「っ!しまっt」

ヒソカの強烈なボディブローが突き刺さり、俺は弾き飛ばされた。





<side:ハオ>
失敗しやがった、あの野郎。
だが、いい感じに皆ヒソカから離れたところに飛ばされてる。
スピリット・オブ・ファイアを発動し、叩き潰そうとしたところで別方向から巨大なオーラが吹き荒れた。

「!?」

正直、今の今まで何のアクションも起こさないので忘れかけてたがヒソカに捕まって生き延びたのはもう一人いたのだ。

「光れ!召喚獣シヴァ!!」

あれって魔銃だったのか。
魔銃から発射された召喚獣シヴァは攻撃後の虚を突いた形でヒソカに直撃し周囲の地形ごとヒソカを氷付けにした。

このまま叩き割ってめでたしめでたしとしたいところなのだが、叩き割ったところで普通に復活しそうなので放置することにした。
それにしても、先頭の方とだいぶ離されたみたいだな。

「ゴクウ、ちょっと空からどっちに行けばいいか見てくれ」

「あ、分かりました」

さて、さっさと合流しますか。





<side:ヒソカ>
ハオたちが立ち去った後、少しして氷の彫像に罅割れが広がり、体中に軽い凍傷があるものの、特にダメージを受けた様子もなく
ヒソカが現れた。

「くく、本当に彼らは僕を楽しませてくれる」

改めて後を追おうとしたとき、無線の連絡が入る。

・・・お楽しみの時間は終わりか、まあ、結構楽しめたししばらくは我慢するかな・・・

僕は無線の誘導にしたがって第二試験会場まで移動することにした。





<side:ハオ>
そう言えば、さっきヒソカに狩られてもまだ生きてた連中置いてきちゃったけど、まあ、気にしたら負けだし、どうでもいいことだ。

「さっきは助かったよ、ありがとう。俺はハオだ」

「ゴクウと名乗ってます。さっきのすごかったな」

「タクヤだ。以後、お見知りおきを」

「ウインドと名乗ってる。魔銃と掛けて」

「カイザだ。名前の由来はカイザギアからな」

なんとなくそうじゃないかと思ってたが、やっぱり『黒き風』と『カイザ』だった。
本隊のいる方向は分かったのでそっちに向かって走りながら自己紹介をし合う事にした。

「しかし、前は黒雛なんて使えなかったじゃないか、しっかり強くなってるんだな」←タクヤ

「ここで生活してる以上、常に上を目指さないと。ぶっちゃけいつ死ぬか分からないからな」←ハオ

「二人とも、ひょっとしてヒーローズソサエティの所属?」←ゴクウ

「ああ、俺達はヒーローズソサエティの所属だが、誰かに勧誘されたのか?」←カイザ

「うん、ブレイドだったかったな。ヒーローズソサエティの連絡番号ももらったけど」←ゴクウ

「・・・・・・」←ウインド


こんな感じで駄弁りながら二次試験会場に到着。
ちなみに、原作とは多少タイミングと場所が違っていたためか主人公組はヒソカの発作には巻き込まれなかったらしく、普通に全員ゴール
してたみたいだ。

さて、次は豚の丸焼きと寿司だったよな。
俺達よりも先に戻ってたらしいヒソカがチラッと見えたが華麗にスルーし次の試験のために頭を切り替えるのだった。





<side:テオ>
捨てる神あれば拾う神あり。
高純度結晶体なんてそう簡単に見つかりはしないと思いながらもテトラにも頼んで色々と調べてみたらヒットした。
『水晶の女神』という名前らしい。
今月の頭からヨークシン中央美術館にて公開中の高純度水晶から削りだされた女神像。
近場で都合よくこんなものが見つかったことに俺は生まれ変わった時以来でこの世界の神に感謝をささげたくなった。
ちょっと問題があるとすればこの女神像、時価数億とかするらしいことだが。
まあ、買うからくれといって貰える物でもなかろうしちゃっちゃと盗ってくるか。

「よーし、早速次の日にでも盗ってくるわ、美術館の見取り図とかある?」

「今出すわ」

この日は寝るまで計画を練り続けた。





翌日、美術館閉館間際に滑り込み、ブツの位置を目視で確認した後閉館して完全に人気がなくなるまで隠れてた。
すでに警報装置なんかは切ってある、抜かりはない。

「さてと、んじゃ帰りますかな」

すでに俺の手の中には水晶の女神が握られている。
さて帰るかという所で背後に殺気を感じた。

「!!」

とっさに飛びのいた俺の目に水晶の女神を乗せていた台が輪切りにされて転がるところが目に入った。

「へぇ、今のを避けるんだ」

「なかなかやるじゃねぇか」

・・・なんでシャルナークさんとノブナガさんがいらっしゃるのですか?

どうやら俺は、この世界の神にはとことん嫌われているようだ。
俺は昨日、神に感謝をささげた自分を蹴倒したくなった。





あとがき
第五話投稿しました。
今回は、ハンター試験組と居残り組で同時進行(時間軸が微妙に違いますが)。
ハンター試験では多数の念使い(トリッパー)に囲まれたヒソカが興奮してハッスル。
何もしていないうちに50名弱のトリッパーと一般のモブキャラたちが退場しますた。
さすがにハッスルしたヒソカに絡まれたらレオリオとか死んじゃうと思うのでタイミングがずれてかち合わなかったことにしました。
居残り組は希少アイテム確保のためルパン再開。
でも久しぶりすぎて旅団の警戒を怠ったためしっかりとブッキングいたしました。
たまたま忘れた日に限ってそういったイベントが発生するのは仕様ということで。

感想、矛盾などありましたら、ご指摘を宜しくお願いします。


※5/17 ちょこっと修正 話の筋には関係なし







[8143] 第六話
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:1e5f2ff6
Date: 2009/05/16 08:08
2000年 1月8日 晴れ

 あ・・・ありのまま、今、起こったことを話すぜ!
 『獲物を確保して、さあ帰ろうかと思ったらいきなり後ろから殺されかけた』
 な・・・何を言ってるのかわからねーと思うが、おれも何でこんな目に遭うのかわからなかった・・・
 頭がどうにかなりそうだった。
 ご都合主義とかメンドイから取り合えず殺っとくだとかそんなチャチなもんじゃ断じてねえ
 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・
 
                    当時の状況を振り返ってのテオの心境(J○J○風)





<side:テオ>
・・・幻影旅団だとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!?

危うく声に出して叫ぶところでした。

やらかしたぁぁぁ!!?
そう言えば、旅団が狙ってるかどうか調べるのすっかり忘れてた・・・
何ということだ、たった一度調べ忘れた時に限ってブッキングなんて・・・
心の中ではorzだが、現実にやったら即効で死ねそうなので我慢する。

「その女神像は僕らも狙ってるんだよね。置いてってくれない?」

冗談ではない。
たとえ旅団相手といえどこの女神像だけは渡すわけにはいかない。
コレがラストチャンスかもしれないのだ。

「悪いんだけどさ、こいつだけは見逃してもらえないかな?ほら、ほかの美術品こんなにいっぱいあるんだし」

「うん、僕もそうしてあげたいのは山々なんだけどさ、今回の僕らの獲物はここの美術品全部なんだよね」

「と、言う訳だ、すまんな。坊主」

心にもない謝罪でいきなり居合い抜きしてきたノブナガ。
瞬時に後ろへ飛んだが僅かに服が切られている。

「ちっ、さっき避けたのもまぐれじゃ無さそうだな」

「くそっ、もう絶対神様なんか信用しねぇからな!!」

バカヤロウ!!と心の中で罵りながら俺はシャルナーク&ノブナガを相手にする覚悟を決めた。





<side:ハオ>
やっぱりもめたよ二次試験。
試験内容をあらかじめ知ってる上に念まで使えるのが100人以上いる時点でもめるだろうとは思っていたが、ここまでもめるとは。

二次試験前半はやはり豚の丸焼きだった。
試験内容知ってるのだからそれに備えてくるのは当たり前で、やっぱりトリッパーたちはそれぞれの方法で試験に備えていたようだ。
そもそも念能力が『火』だったりする俺の様な奴もいたりして、焼く手間さえ省略してる奴もいる。

そもそも世界一凶暴な豚などといっても所詮は豚である。
非念能力者ですら楽勝でしとめられる相手なのだからそもそも負けるわけがない。
ほとんど同時に豚をしとめ、豚を焼く手間分の差で先についていた若干名(俺、ゴクウ、タクヤ含む)を除いた100名以上の念使い
達が試験官を前にして限りある椅子を取り合い、牽制し合うというカオスな状況が出来上がってしまった。

「試験官、どうすんですか?」

「どうすんのよ、ブハラ?」

「どうしようか?ハハハ・・・」

いや、こっちに聞き返さないでくださいよ。
よく見たらトリッパー達の後ろに他の参加者達が戻ってきてるのが見えるが撒き散らされてる念圧のせいで近寄れないらしい。

っと、状況が動いた。
睨み合いに付き合うのも飽きたのか、ヒソカとギタラクルがこちらにやってくる。

誰も行動を起こさない。

そりゃそうだ、ヒソカもギタラクル(イルミ)も手を出して生きていられる保証など無い相手である。
が、状況を動かすのには丁度良い起爆剤となったらしい。

ヒソカとギタラクルが豚を提出した直後、堰を切ったようにトリッパー達が雪崩れ込んできた。

「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」」」」」

ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドという擬音が聞こえてくるのがわかる、爆走振りである。

前を走っていた奴を蹴り飛ばし、踏みつけ、逆に踏みつけられ、さらには豚を狙った攻撃等、何でもありの極限バトルが始まった。





<side:トリッパー受験者その1>
ヒソカとイルミ(ギタラクル)が堂々と豚を提出した瞬間、張り詰めていたモノが崩れ、俺達は一斉に試験官に向かって走り出した。
「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」」」」」
皆、声を張り上げながら走っている。
俺も声を上げながら走っていた。

目の前にいるヤツを蹴倒し、踏み越える。
隣で併走していたヤツが邪魔だとばかりにこちらに攻撃を仕掛けてくる。
もちろん迎撃だ。
華麗にかわした後、豚を蹴り飛ばして遠くに吹っ飛ばしてやったら「あぁ~」等と叫びながら豚を追っかけようとして他の連中を巻き
込んでドミノ倒しを起こしていた。

もちろん、俺はそんなものには構わずに試験官を目指す。
俺が試験官に豚を提出することで犠牲になった彼等も報われるだろう。

一秒が長い。
まるで、クロックアップしたみたいに感覚が引き伸ばされていく。
足元に転がっているヤツを踏み越え、邪魔になるヤツらをかわして試験官の前へと飛び出す。

俺がトップだ!!!

「豚の丸焼き、ヘイお待ちィィィィイっげふぉあ!!!」

むしろブハラ試験官に豚を叩きつける勢いで突っ込もうとしたが次の瞬間、背中に激痛が走りバランスを崩して転がり落ちる。
念の攻撃を受けたと気付き、意識がブラックアウトしていく中、最後に見た光景は自分の豚の丸焼きが爆散する光景だった。





<side:トリッパー受験者その2>
集団から一歩抜けて試験官に豚を渡そうとしてたやつの背後に念弾をぶち込んでやり、ついでにそいつの豚も爆破しておいた。
すぐさま俺を含めた数人が飛び出し試験官の前へと飛び込もうとする。

えぇい、邪魔すんな!!

俺は同時に飛び出した横にいたヤツの顔に念弾を打ち込み気絶させ、そいつを蹴り飛ばして前を行く奴等に叩きつけた。
後ろから飛んできた人間に巻き込まれ転んでいる横を走り抜き、試験官へと豚を差し出す。

「ヘイお待tっておい!!」

提出途中で後ろから飛んできたロープが豚の首にかかり、釣り上げられてそのまま集団の向こう側へと投げ捨てられた。

「抜け駆けなどされてたまるかぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

誰が叫んだのかは判らないが確かに聞こえた。
ムカついたのでまだもめている集団に念弾をばら撒いた後、豚を取り返しに後方まで駆け戻ることになった。





<side:ハオ>
結局のところ騒ぎは収拾不可能なところにまで発展し、審査委員会のネテロ会長まで登場する騒ぎとなった。

「つまり、明らかに食べきれる限界を超えた量の豚の丸焼きが同時に届いたことで順番を巡って睨み合いになったと」

事情を聞いたネテロ会長が状況を簡潔にまとめる。

現場は死屍累々の様を呈していた。
死者までは出ていない様だがいまだに立ち上がれず、地面でピクピクしている者も何人もいる。
個人のレベルはどうあれ、100人以上の念能力者の乱戦だったのだから当然なのかもしれないが。

まあ、もともとハンター試験は死人が出ること前提なので、だからどうしたと言われればそれまで、であるが。

「では、こうすればどうじゃ?今の時点でまだ自分の豚を確保できている者が合格ということではダメかの?」

ネテロ会長の鶴の一声にて現時点で豚を確保していた132名が二次試験前半の合格者ということになった。
後方で見ていた70名弱の非念能力者達は漁夫の利を得たといったところである。

さて、次の二次試験後半はさらに難易度の上がるメンチの『スシ』である。
原作ですらあれだけの騒ぎになったスシの試験。
次はどんな騒ぎが起こるのだろうか?





<side:テオ>
覚悟を決めた。
等と言っても、この二人に同時に喧嘩を売って勝てると自惚れていられるほど俺は強くない。
タイマンでやったって勝てるかどうかは微妙なところである(と言うかたぶん負ける、と言うか死ぬ)。

よって、俺が選択したのは『逃げる』ことだった。

「『紙技・紙吹雪の術』!!」

多量のオーラを込めた紙を大量にばら撒き目くらまし、兼、結界として使用する。
二人がばら撒かれた紙を警戒して構えた隙に壁際まで移動して即座に破壊し外に飛び出した。





<side:シャルナーク>
「あぁ、逃げやがった!!」

彼の念能力を警戒して一瞬動きが止まった隙に外に逃げられた。
ノブナガと一緒に外へと飛び出し彼を探す。

・・・見つけた。

「ノブナガ、あっちだ!」

ほんの少し見失っていた間にずいぶんと差を付けられている。
彼は逃げ足自慢みたいだな。
だが、逃げ切れると思うなよ。
僕らのほうが明らかにオーラ量が多い。
そう間を置かずに捕らえることが出来るだろう。

俺はそう考えながら追跡を行っていた。




<side:ノブナガ>
・・・おかしい。
追跡を始めて3分たった。
とっくに追いついてもおかしくない。

「どうなってやがる、くそっ」

「原因はアイツの移動方法みたいだね」

シャルが何かを掴んだようだ。

「追いつきそうになると俺らの視界から消える速度で移動をしてるだろ?あの歩法のせいでいつまでたっても追いつかないんだ」

ち、厄介だな。

瞬間的にでもこちらの速度を上回る加速が出来るとなるといつまでたっても終わらねぇぞ。

「ノブナガ、罠を張ろう」

「どうすんだ?」

「アイツのあの歩法は一定の距離の直線移動しか出来ないみたいだ。うまく飛ぶ方向を誘導して挟み撃ちにしよう」

シャルが左側からプレッシャーを掛ける。
ヤツがたまらず右側へ移動。
出現地点で俺がバッサリ。

OK、把握した。

俺達はヤツに気付かれないように互いの位置を調整し、作戦通りにシャルがプレッシャーを掛ける。
同時に俺も予想着地地点へと移動する。
ヤツがあの消える歩法を使った、予想通りに右側へ移動したようだ。
ヤツが予想位置へ現れるのと俺が攻撃可能位置に着くのとはほぼ同時だった。

「!」

驚くような気配を感じたが、気にせず俺は刀をやつの心臓部へと突き刺した。





<side:シャルナーク>
「・・・やられたね」

「まったくだ」

俺達の前には無数の紙が散乱している。
女神像を持っていった相手だと思って追いかけていたのはあいつが用意したデコイだったというわけだ。
夜で視認し辛かったとはいえ最後まで気付かなかったのは痛い。
今頃はもう手の届かないところまで逃げてるだろう。

「仕方ないや、水晶の女神はあきらめよう。」

「いいのか?勝手に」

「仕方ないよ、もうどこまで逃げたか分からないしまだ美術館のお宝盗み終わってないし。団長には俺から報告しとくよ」

今回は水晶の女神はあきらめる。
だが、次は無い。
今度アイツと遭ったとき、その時には今回の借りは返させてもらう。





<side:テオ>
俺は今、ヨークシンに用意してあったセーフハウスの一つに隠れてほとぼりが冷めるのを待っていた。

俺は壁を破って外に出た直後、『紙技・紙分身の術』を発動しそれを囮代わりとして自分は暗がりに隠れ『絶』をしていた。
分身を操作し、タクヤから教わったタクヤ式瞬歩を使ってうまく距離を稼ぎながら追っ手を釣る。

うまく引っかかってくれたが分身の操作中はこちらも動くことが出来ない。
可能な限り遠くへ引っぱっていこうと四苦八苦していたが数分後には捉えられ、破壊されようとしていた。

このまま攻撃を受けてはフィードバックで心臓が止まるかもしれない。
あわてて操作を切ったが、少し間に合わず胸に鈍痛が残った。
だが、このくらいであれば問題は無い。
俺はそのまま他にも仲間がいないか警戒しつつその場を後にした。





セーフハウスでは三日ほどじっと隠れて息を潜めていた。
美術館は大騒ぎになっている。
何しろ、幻影旅団に襲撃されたのだから。
どさくさ紛れに『水晶の女神』も旅団に盗ってかれたことになっていた。

初めて旅団が役に立ったと思った。

この三日間、旅団が諦めずに俺のことを探していないか探るために動物模型(アニマクラフト)で小さな鳥を作成し町中をぐるぐる
回って空から確認した。
また油断して見つかったりしたら今度こそ逃げられないだろうから必死に探した。

どうやら本当に撤退したらしい。

三日ぶりにセーフハウスを出た足でアジトまで戻るとニュースを見て心配していたテトラに帰るのが遅いと怒られてしまった。
一応アニマクラフトで手紙を届けて無事であることは知らせていたが、それでも心配させたことに変わりは無い。
しっかりと謝っておいた。

さて、早速レンズの加工に移るとしますかね。





<side:ゴクウ>
「二次試験後半、あたしのメニューはスシよ!!!」

状況も落ち着いて改めて後半戦の開幕だ。
やっぱりメンチの課題はスシだった。

まじめに分析するなら、この課題を選んだ理由はその認知度の低さと形だけなら簡単に再現できるところにあると思う。
東洋の小さな島国ジャポンの民族料理であるスシは、前世の世界と違ってこの世界ではほとんど広まっていない。
ゆえに、その料理の形などを与えられた調理器具やヒントから推測させ、正解を導き出した者を合格とすることがこの試験の目的
だったと原作でも語っていたはずだ。
ただ、原作では試験官であるメンチのほうが味にまでこだわるような蛇足を見せたため、あそこまでもめたのだろう。

そう考えると原作のハンゾーは不幸だったんだなぁと思えてきた。
そもそも料理人見習いですらない受験生の作った料理の味にいちゃもんつけてるのがおかしいのである。

原作について考えをめぐらせていたらいつの間にかスタートしていたらしくトリッパー達が一斉に外へと走り去っていく。

・・・皆の、あまりにも迷いの無いダッシュを見て一般受験者や試験官たちがポカンとしてるな。
もう少し自重しようよ皆。

等と思いつつも、俺も魚を探しに外に走り出すのだった。





<side:ハオ>
あれ?ゴクウがいないな、置いてきてしまったか?まあいい、これくらい自分でどうにかするだろう。
豚を狩る際に魚が居そうな場所には当たりをつけていたためすぐに魚は手に入った。
名前も分からない魚だが、念のため二、三匹持ち帰ることにする。

料理ぐらい俺だってした事あるが、所詮は適当に切って適当に味付けしただけの男料理である。
それでもまあ、何とかなるさと思っているが、魚をさばくのって結構難しそうなんだよな。

会場に戻ってみるとすでに何人か戻っており早速スシの作成に取り掛かっていた。
早速俺も作るとするか。





<side:メンチ>
「二次試験後半、あたしのメニューはスシよ!!!」
ふふふ、皆、スシの正体がわからずに?な顔してるわね。
と、思ったら、半分くらいはそんな事は無く普通な顔をしていた。

試験前半で大乱闘かましてくれた念使いの連中だ。

不審に思いつつもあたしは課題についての説明を続けスタートを切る。
すると、待ってましたとばかりに一斉に外に向かって走り出す念使いの受験生たち。
さすがのあたしもポカンとしながら見送ってしまった。

まさか、あれだけの人数がスシについて事前に知っていた?

思いついたのは試験内容が漏れていた可能性。
調理器具や酢飯などの手配はハンター協会に依頼して用立ててもらったものだ。
ひょっとしたらそこを調べられて試験内容を推測されたのだろうか?

考え込んでも仕方が無い。
事前に情報を仕入れることが出来たのだとしてもそれは相手の方が優秀だったというだけのこと。
ハンター試験にカンニングなど無いのだし。

「・・・出し抜かれたみたいでちょっと悔しいけどね」

「?メンチなんか言った?」

なんでもないわと答え、頭を切り替えて早速一人目が持ってきた料理の試食を行うことにする。

実は試験前半の処理が終わった後、どうせだからこのまま試験後半も見学するとネテロ会長が言ってきて、現在もこちらを見学中
であるためあまり調子に乗るわけにもいかない。
出来れば味に妥協などしたくはなかったが、多少味が悪くても審査規定を満たしていればちゃんと合格させねばならない。

「うん、きちんとスシの形をしているわね。ネタもちゃんと食べられるのを取ってきたみたいだし味も悪くはないわ。合格よ」





<side:ハオ>
次々と合格者が出てる。
やっぱりネテロ会長が直に見ているところではっちゃける訳にはいかないらしく、よほどまずいネタか毒持ちの魚でも持ってこない
限りには合格となっているようだ。

俺はすでに合格を貰っており、ゴクウは現在並んでいる途中である。

「よう、そっちはもう終わったみたいだな」

タクヤが話しかけてきた。
タクヤもすでに合格したらしい。

やがてゴクウも合格を貰いそれからしばらくしてメンチ試験官が満腹を宣言。
二次試験は終了の運びとなった。

・・・って、あれ?合格者ってトリッパーだけ?いや、ハンゾーは合格してるみたいだ。
ゴンたちとか誰も合格してねぇ(笑

55人合格者が出たがよく見たらほぼ全員トリッパーだった。
一般受験者はハンゾー1人しか合格してねぇ。
原作主人公組すら合格してねぇよ。

ドコオォン!!

何かを殴り砕いたような音が響きそちらに皆の視線が集まる。
そこには調理台を殴り砕いたトードーがいた。

「納得いかねぇな。とてもハイそうですかと帰る気にはならねぇな」

合格者のいる俺達の方を指差し、

「そいつ等、まるで最初から答えを知ってたみたいに行動してたじゃねぇか。どうなってんだ!?」

まあ、実際に知ってて行動している訳だが。

「実際に試験で何か料理を作らされるってところまでは知ってたんじゃないかしら」

メンチ試験官が何やら悔しそうにしてしゃべる。

「どうやって調べたのか知らないけれど、あたしがハンター協会に依頼した調理器具一式と調味料、そして酢飯なんかの情報を入手
 して事前に調べてたのね、それらの材料で作られる料理について」

俺達はどうやら何らかの方法で事前に情報を入手していたと思われたようだ。

「事前の情報収集を理由に失格にすることは無いわ。何故ならそういったことが出来るということ自体がハンターとして優秀である
 ということの証になるのだから・・・あたしは出し抜かれたみたいで悔しいけどね」

ほんとに悔しそうに言うメンチ試験官。

なんとなく、居心地が悪そうなトリッパーたち。
別にがんばって情報収集した訳でもないのだから、そりゃあ居心地も悪くなる。
俺も居心地悪いしね。

「・・・っくそ!!」

トードーも心情的に納得がいかなくてもメンチ試験官の言ってる事は理解できるためそれ以上は何も言わなかった。

「会長、合格者55名。これにて二次試験を終了といたします」

「うむ。ご苦労であった」

え、ほんとにこれで終わっちゃうの?・・・えぇぇぇぇ!?
原作主人公組、全員落ちた・・・どうしよ。





あとがき
多量にトリッパーがいたら二次試験どうなるかなと思いながら書いてみました。
こうなりました^^;
二次試験前半は一次試験のマラソンをクリアできるレベルで念能力者ならば梃子摺る訳もないかと考え、豚を焼く手間を念能力で
補えるかどうかで立ち位置を変えてみました。
二次試験後半はトリッパー達は皆、原作知識と言うか、前世知識でスシについて知っていますので一斉に行動したらこんな感じに
なるのではないかと思いました。
ネテロ会長が見てるから味が気に入らないから落とすとか出来ないですし。

感想・指摘などお待ちしてます。











[8143] 第七話
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:1e5f2ff6
Date: 2009/05/31 02:57
2000年 1月7日 曇り

 試験落ちちゃったなぁ、事前に調べておくことも優秀なハンターの条件かぁ・・・
 キルアもクラピカもレオリオも悔しそうにしている。
 無理も無いや。
 皆、それぞれの夢があってハンター試験を受けたんだろうし。
 ミトさんになんて報告しようかと頭を捻っていると誰かがキルアに話しかけるのが聞こえたんだ。

                                      ゴンの回想より





<side:キルア>
ハンター試験に落ちた。
一次試験の緩さからして楽勝だと高をくくっていたらこんな形で落ちる事になるなんて・・・

暗殺者の仕事をしてた時も親父が言ってたな。
暗殺対象を事前に調べ上げ、いかに効率よく仕事をこなすかが重要だと。

事前の情報収集を怠って、それをしっかりやっていた連中に出し抜かれたって訳か・・・
心のそこから何かが湧き上がって来る。
これはオレが悔しいと感じているってことだろうか?

ハンター試験はもともと暇つぶしくらいのつもりで受けたに過ぎないがだからと言って実際に落ちると「お前なんかまだまだだ」
と言われているようで悔しさが湧き上がって来る。

頭を切り替えてこれからどうするか考えていると誰かがこっちに近づいてくるのが感じられた。

「久しぶりだね、キル」

「え?」

兄貴がいた。

「なんで、兄貴が」

「オレも次の仕事でライセンスが必要だったからさ、受けに来たんだけど落ちちゃったよ。仕方ないから別の方法を考えなきゃ」

オレを連れ戻しに来たんじゃないのか。

「あ、あとキルの様子を見てくるようにも母さんに頼まれてたね」

あ、結局そっちもあるんだ。

「だけど驚いたよ。キルがハンターになりたいと思ってたなんて」

「・・・別になりたかった訳じゃないよ、ただなんとなく受けてみただけさ。落ちちゃったけどね」

ちょっとおどけた感じで言ってみる。
・・・自分で言ってみて何だけど、動揺してるのが滲み出てるな。
まさか試験に落ちるなんて、考えても見なかったからな。

「・・・ふ~ん」

「なあ、兄貴」

「ん、何?」

「兄貴も落ちたんだよな」

「・・・まあ、ね。ちょっと予想外だったかな、これは」

兄貴がちょっと苦笑しているように感じる。
以外だ。
苦笑とはいえ、兄貴が笑うの始めて見た気がする。

「・・・兄貴、オレ一回家に戻るよ」

今回試験に参加したことで思い知ったことがある。
オレは自分で思っていたほど強くない。

「・・・へぇ」

「帰ったらさ、オレに訓練つけてくれないか、兄貴?勝手に家を出たことは謝るし、反省するから」

思い切って聞いてみる。
今回の試験で『自分より強い』と感じたヤツの大半が兄貴と同じ感じがした。
もしかしたら、あの感じは習得できる技術なのかも知れない。
あの感じを手に入れることが出来ればオレは今よりずっと強くなれる気がする。

「・・・わかった、仕事が入ってない時でいいならキルの相手をしてやるよ」

そう答えた兄貴のいつも通りの無表情な顔が少し笑っているように感じた。





<side:ハオ>
このままなし崩し的に進むのはまずい。

「トリッパーの皆、一旦ここに集まってくれ!!」

俺はあわてて周囲に呼びかける。
少し間をおいて集まって来るトリッパーたち。

「悪いが緊急事態発生に付き、緊急会議をさせてもらうぞ」

無言の肯定。
一拍置いて話を続ける。

「原作崩壊発生だ。まさかこんな展開になるとは思ってなかったので今後どういう方針を採るべきなのかきちんと話し合いたいと思う。 議題は
 今後の展開についてだ。何か意見はあるか?」

とりあえず、意見を求める。
何かいい案が出てくるかもしれない。

早速一人手を上げた。

「ハンター試験編、ゾル家訪問編をカットして天空闘技場行きの流れに乗る様に誘導したらどうだ?多少時期がずれるけど原作の流れに戻すことは
 出来るし、200階クラスの洗礼とかは自分等から教師役がついて行けばいいと思うし」

それに反論して発言が上がる。

「教師役とか誰がやるんだ?これだけゴン達について行こうとするヤツがいるんだぜ?何十人もゾロゾロとついていくことになっちまうぞ。それに
 原作のウイングさん見たく信用してもらえるかって問題もあるしな」

「教師役って所だけなら心源流の門下生ぐらいいるだろ?そいつ等が担当するのがいいと思うぜ。ウイングさん出てきたら引継ぎとか出来るかもし
 れないし」

「別の方法は無いのか?二次試験やり直してもらうとか」

「いや、それは無理だろ」

「無理だな。終了宣言しちゃったしな」

「常考」

「もう、このままガン無視して行っちゃうのも有りじゃね?ドラゴンボールとかと違ってこの世界なら主人公達が原作イベントに関わらなくても大筋
 は変わらないと思うし」

「マジか」

「マジだ、冷静に考えろ。ドラゴンボールだと悟空が途中リタイアしたら即世界滅亡フラグが立つが、ハンター×ハンターのイベントは関わってもスルー
 しても世界全体的には特に問題は無い。あえて言うならやばそうなのはキメラアントくらいなもんだ」

「いや、オリ主的に考えるとその展開は色々物申したいことが」

・・・色々と意見が出揃ってきたところで少しまとめてみよう。


1.ハンター試験、ゾル家訪問をカットして天空闘技場行きの流れに乗る様に誘導する。

2.試験官に訴えかけて再試験をしてもらい、元の流れに戻す。

3.このまますべてスルーしてハンター試験を続ける。


とりあえず大きく分けて3つのパターンがあるのかな。

1のメリットは原作の流れに近づく様に修正することで今後の展開が読みやすくなること、必要以上に原作を変えないで済むことだ。
デメリットは念に触れるのが一月ほど早まるため200階到達時に『洗礼』から庇ってくれるウイングさんと知り合えない可能性があること。
正確な知識を持ってるだろうウイングさんとコネクションが持てないのは少しまずいかもしれないが、その辺は心源流門下生のトリッパーに期待する
しかないか。

2のメリットは申請が通れば完全にもとの流れに戻せること。
デメリットは再試験をしてもらうことで俺たちの二次試験合格もキャンセル扱いになることと、そもそも一度会長が試験終了を認めた試験の再試験を
行ってくれない可能性のほうがずっと高いって事。

3のメリットは、あえて言うなら原作を気にする必要が無くなる事かな。
実のところ世界の重要イベントは主人公がいなくても発生するものばかりだし、主人公組が関わらないからどうなるという物でもないから特にフォロー
の必要も無い。
デメリットは本来主人公組の『敵』だった連中が軒並み生き残る可能性があることだな。
だがそれにしたって世界レベルで障害が出るようなものでもないからわざわざ取り組まなくても問題ない。

・・・旅団ですら脅威であるとは言っても世界がどうなるというものではない。
世界レベルで問題になるのはキメラアントだけだしな、これはもはや別件だし。

実は、皆で集まってこんな会話をしている間にキルアのゾル家帰還フラグが立ってたりするのだがそんなことに気付くはずも無くあーだこーだと
話し合いを続けていた。

様々な意見が出てきた。
このまま行くのが良いだの、ゴン達が絡まないと試験受けに来てる意味が無いだの、2の再試験は無理だの、1で行く時はゴン達の誘導は俺がやる
だの、いや俺が~だの。

ゴン達について行くことが重要派とハンターになることを優先する派に分かれて論争しており、最終的に前者は1準拠で、後者は3準拠で今後進めて
いくことに決定した。

ちなみに俺とゴクウは3である。

俺達の目的は自分等以外のトリッパーとの接触であったからある意味すでに目的は達成したことになる。
ゴクウもゴン達と修行することに興味が無いでもなかったが今のゴン達では足手まといに過ぎるだろう、ということで接触するにしてもずっと先の話
になるだろう。

ただ、タクヤはゴン達にくっついてって鍛えてやる気満々だったみたいだが、二次試験合格者は問答無用で試験続行を言い渡されて悔しそうにしてた。
普通逆だろう。

そんなこんなで話はまとまり、俺達の第一回トリッパー会議は終了の運びとなった。 





<side:ネテロ>
ふむ、やはり彼等は一つのグループだったようじゃな。

会場の端に集まってなにやら話し合いを始めた彼等を見て、ワシはそう判断した。
それぞれが個別に、ハンター試験の一部だけとはいえ試験内容を事前に把握してきたというよりも組織だって調べ上げたという方が現実的じゃしの。

彼等を視界の端に収めながら観察しているとすでに不合格を言い渡された受験生たちが帰り支度をしているのが目に入った。
その中の一人が目に留まり、少し興味をもって声をかけてみることにした。

「のう、おぬしら。ハンター試験を受験してみてどうじゃったかの?」

ちょっと驚いたようなアクションの後彼等は答えた。

「ええ、思っていたよりもずっと奥の深い試験でした。正直に言えば合格する自信は多少なりともあったのですが、それが慢心であったとつくづく
 思い知らされたと反省しているところです」

「俺もだ。睨み合いの殺気だけで一歩も動けなくなるなんて思わなかったぜ。あれがハンター試験受験者のレベルなんだと思い知らされたよ」

金髪の子と背の高い青年が答える。
・・・いや、そのあたりは今年が異常なだけで例年からすれば彼等も十分合格圏内にいる素質のある受験生なのじゃがな。

「今年一年、しっかりと鍛え直して来年こそハンターになろうって皆で話してたんだ」

トンガリ頭の少年が最後を締める。

・・・この子がジン=フリークスの息子か・・・

「そうかそうか、それでは来年を期待してまっとるぞ」

ふむ、今から来年の試験が楽しみになってきたわい。





<side:ハオ>
結局その後は特に問題も起こらずに三次試験会場のトリックタワーまで飛行船で移動となった。
ゴン達と接触するのは試験に落ちたトリッパーたちが何とかするのだろう。

三次試験については特に語ることは無い。
何故なら俺達はハンゾーを除いて全員念能力者であるからだ。
特に、俺とゴクウは念能力で空が飛べるのでさっさと下まで飛んでいってワン・ツー・フェニッシュを決めることとなった。

他の連中にしても似たようなものである。
同じように飛び降りたもの。
律儀に塔の中を潜って来た者。
嫌がらせとしか思えんが、わざわざ塔の天辺から『硬』で床を殴り砕いて降りてきたヤツもいた。
そいつ曰く、

「やりたいと思ったからやった。反省はしているが後悔はしていない」

とのことだ。

結局のところ、10時間足らずの時間で全員下まで降りてきた。
欠員なし。
55名全員が三次試験合格である。

・・・ハンゾーが遠い目をしてるな。





四次試験は少し原作と変わったようだ。
誰でもいいので二人分のプレートを手に入れて一週間生き残ることとなった。
次で最終試験の予定なのにちっとも人数減らないからあからさまに減らしにきやがった。

ハンゾー涙目である。






<side:ハンゾー>
・・・ぇぇぇぇぇええ!?
この連中から二人分もプレートを奪えだと!?
しかもたとえプレートを奪えたとしても一週間逃げ切らなきゃいけないのか・・・

いや、無理だろ。

とてもではないが、俺の力量は間違いなくこいつらの中で一番下だろう。
忍の領域の技術でならば後れを取る気は無いが、総合力で見れは明らかに何ランクも下だ。
何らかの方法で一度奪い取れたとしても、最終的に逃げ切れずに取り返されるだろう。
恐らく俺のハンター試験はここで終わりになるだろう。
だが、ただでは終わらせない。
こっちにも、雲隠流上忍としてのプライドがある。

俺のプレートは最後まで守りきってやる!!





1日目
俺達はそれぞれ四次試験を行う島を等間隔にぐるりと回って配置され、合図とともに島に乗り込むこととなった。
とりあえず、拠点を決めてそこに引きこもろうと考え洞窟などを探していたがすぐ近くで凄まじい轟音が響いた。

なんだ!?この轟音?受験生同士が争ってる音なのか?とても人間の出していい音とは思えねぇ。

ともあれ、近場であんな音が響いていたら気になってしょうがない。
好奇心を抑えきれず、現場まで足を運ぶこととなった。





・・・そこは、人外魔境だった。
まず、格好がおかしい。

片方はまあ、普通だ。
あれは我が故郷ジャポンの民族衣装の着物か?なんか、微妙に違う気もするが真っ黒の着物を着て馬鹿長い刀を持った男だ。

もう片方は金色に光り輝く黄金の鎧を着込んでいた。

・・・待て待て、あんな鎧を着ているやつは試験開始前にはいなかったはずだ。
さすがにあんなの着ていたら注目してなくたって記憶に留まるはずだ。

「ダイヤモンドダストォォォオ!!」

金ぴかの方が何かを叫びながら拳を振るい、そこから飛び出した何かを着物の男が避ける。
背後の木に当たったようだが次の瞬間にはその木は凍り付いていた。

・・・ェェエ!?意味分かんねぇ、何で凍ってんの!?

だが、さらに驚くべきことが起きた。

「卍解!!!」

ズドンっと大気が震えるような音がして、気がついたら着物の男が六枚の炎の羽を背負った姿に変わっていた。
うむ、いつまでもここにいたら気が狂いそうだ。

俺は現実逃避するようにその場を後にした。
背後では「逆鱗竜王丸!!!」と叫んでいる声が聞こえたがもうどうでもいい。

俺はその辺の洞窟を探し、奥に転がって不貞寝をすることにした。





2日目
目が覚めた後、昨日見た一戦を思い出しちょっと現場まで足を運んでみた。
すでに二人はいなかった。

いなかったが、代わりに巨大なクレーターが出来ていた。
あと、一直線に森が凍りついた謎の場所がある。

とりあえず、あの場に居続けなくて良かったと本気で思った。

とりあえず残り六日分の食料をかき集めて洞窟で篭城することにした。
下手に出歩いていたらほんとに死ぬかも知れん。

最大限の注意を払いながら食料集めを行い夕暮れ頃までかけて六日分の食料を集めることに成功した。
洞窟まで戻ると他の受験生が洞窟の中に入っていこうとしているところを見つけた。
あのままのこのこ入っていったらそのまま試験終了になるところだ。

洞窟は惜しいが俺の目的は最後まで生き延びることだ。
可及的速やかにその場を後にし、回りから見つけづらい手ごろな場所を見つけ、今日はそこで野宿することとした。






3日目
朝起きて朝食をとった後はひたすらに気配を殺してその場に留まっていた。
下手に動く方が危険だ、近場で戦闘が始まらない限り絶対ここから動かんと心に決めた。

半日ほどそこで石になっていると空に浮かんだまま移動する人間が現れた。
チラッと目が合った気がするが、そのまま何事も無かったように通り過ぎていくところを見ると気のせいだったのだろう。
・・・よく考えてみたら今のヤツは三次試験で真っ先にトリックタワーから飛び降りたヤツだ。

なるほど、空が飛べるのだから飛び降りることに躊躇などあるはずも無い。
もはや、俺の中で何が常識なのか分からなくなってきたがとりあえずそう納得して今日はもう寝ることにした。




4日目
ギュォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン

朝っぱらから突然の爆音で無理やり目を覚まさせられた。
何事かと周りを見渡してみる。

空に戦闘機が飛び回っていた。

なんだ、戦闘機か。
これまでの不思議現象に比べれば普通だな、まあ、何でハンター試験の試験会場に戦闘機が飛んでるんだって問題もあるが。

未だにギュオンギュオンいいながら空を飛び回っている戦闘機を何となしに見ているとその戦闘機もまた普通と違うことに気付く。

まず、色が赤だった。

これは無い。
いくらなんでも普通の国が配備している戦闘機の色が真っ赤ってのはありえないだろ。

さらにありえないことにその戦闘機は変形して足の様なものが飛び出してホバリングを始めた。

『テメェら起きやがれ!!四日目の朝だ。まずは俺の歌を聴けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!』

一方的に宣言した(恐らくは)戦闘機のパイロットが歌い始める。
何でか知らないがこの時俺は彼の歌に聞きほれていたらしい。

俺が我に帰ったのは歌を歌っていた戦闘機がアチコチから飛んできたビーム砲みたいなものに穴だらけにされて墜落するところだった。

あっちこっちから毎日うるせぇとか叫んでるのが聞こえる。
・・・毎日やってたのか気付かなかったな。

ん?体からへんな湯気みたいなのが出てるがこれって何だ?

害は無さそうなのでしばらく放って置いたらだんだん疲れてきた。

この湯気のせいか?

湯気が出るのを止めるために色々とがんばってみたところ、日が落ちる頃にようやく湯気の流出が止まり何とか留める事が出来るようになった。

すでに疲れきっていたので、湯気が止まり安心した瞬間にブレーカーが落ちるように眠りに付いた。





5日目
今日も朝から戦闘機の爆音で目が覚めた。

「俺の歌を聴けぇぇぇぇぇ!!!」

撃墜。
昨日撃墜された戦闘機と同じ戦闘機に見えたが何台も所有しているのだろうか?

昨日の疲れがまだ完全にとれてはいなかったが動き回れるくらいには回復したようだ。
この湯気は体力みたいなものだったのだろうか?

一昨日の空を飛んでいたヤツにまた出くわした。
出くわしたと言っても遠くから少し見ただけだが。

なんか、巨人の肩に乗って移動していた。

さすがに驚いた、あれはいったい何なのだろう。

あれが彼が空に浮いていた理由なのだろうが、何故これまで見えなかったのか、どうしていきなり見えるようになったのだろうか?

・・・この湯気が原因の様な気がする。

巨人に乗ってる彼も湯気を出しっぱなしにしてないで留めてるし。

・・・あ、目が合った。

何か、こっち見て驚いているな。
何か面白いものを見つけたような顔をしてこっちを見ているが何もせずに去っていった。
何だったのだろうか?

その後、朝食を作ったのだが異様に腹が減って残りの食料を食い尽くしてしまった。
仕方ないのでまた周りに気を付けながら食料探しに出る。





食料探しをしていてまた受験生(?)と出くわしてしまった。
何故?かと言うとまたもや記憶に無い格好をしたヤツだったからだ。
何か、鎧の様なものを着込んで顔にペイントしている。

何かブツブツと「鳥の分際で人の食い物を・・・毎日毎日・・・」とか言っているのが聞こえる。

「くそがぁぁぁぁ!!鳥類の分際で悪魔たる我輩の食料をネコババしようとは、貴様等なぞ《SATSUGAI》してくれるわぁぁぁぁぁぁ!!!」

ギャギャギャギャギャァァッァァァン!!!

と手に持ったギターを掻き鳴らす目の前の男。
あれ?さっきまでギターなんか持ってなかったよね?どっから出てきたの?

しかし、そんな些細な疑問は男が歌いだしたことですぐに記憶の彼方まで吹っ飛ばされていった。

うぉぉぉぉ!?何だこの魂を揺さぶるような熱く暗く力強いヴォイスは!!?なんて悪魔的なんだ!!!

すげぇ、すげぇよ!!!

さすが○ラウザーさんだ、あれ?何で俺、彼の名前を知って・・・いや、そんなことどうでもいいぜ!!!

「「「「「「「「「「GO TO D・M・C!! GO TO D・M・C!!」」」」」」」」」」

うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!クラ○ザーさん最高だぜぇ!!

ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャン!!!

「でたぁぁぁぁぁぁ!!ク○ウザーさんの歯ギターだぁぁぁ!!」

いつの間にか集まっていたほかの受験生たちと一緒になって朝までクラウ○ーさんの悪魔的なライブを堪能した。





6日目
眠い。
いや、他にも体中が痛いし何より叫び続けた喉が一番痛い。

何で一晩中叫び続けていたのか理由がまったく分からない。

何であんなに昨日のライブにはまってたのかまったく分からん、が、思い出すたびに「GO TO D・M・C!!」と叫びたくなるのは何なのだろう。
そもそもクラウザ○って誰だよ。

まあいいや、どうでもいい。

もう寝たい。

食料とかどうでもいいや、一日二日食べなくても人間は死にはしない。

俺は適当な寝床を見つけると泥のように眠り続けた。





7日目
試験終了のアナウンスが響く。
・・・やっとだ、やっと終わった。

お、恐ろしく長い一週間だったぜ・・・

俺は勝った。
試験的にはアウトだったが、最後までプレートを奪われること無く生き残ったんだ!!

船の来ている浜辺まで戻ったところで俺の意識はぷっつりと途絶えた。





<side:ハオ>
ハンゾーが浜辺まで戻ってきたと同時に気絶した。
どうやら、彼にとってこの一週間はよほどきつい物だったらしい。
生きてここまで戻ってこれたのがよほど嬉しかったのか気絶した顔も誇らしげだ。

途中で何度か見かけたが、いつの間にか『纏』を使えるようになってたのは驚いたよな。

やっぱりあれか?毎日朝っぱらから念音波を撒き散らしていたファイヤーヴァルキリーの念に当てられたのかな?

まあいいか。
今回の試験でそれなりに数が減っただろうから次で最終試験だろうな。

最終試験は内容はそのままになるのだろうか?それともやっぱり変わるのだろうか?
俺は最終試験に考えをめぐらせながら船へと乗り込みゴクウ等の到着を待っていた。





あとがき
キルアは自分より強い人間がゴロゴロいる(何しろそれなりの念使いがスタート時点で150人位はいた)ハンター試験を経験したことで
自分の未熟を認めました。
そのためすんなりと家に戻る決心をします。
ゴン達もキルアに何かあったわけでもないのでゾル家には行きません。
スルーします。

ゴンもクラピカもレオリオも自身の未熟を感じたことで原作のようにそれぞれの道を進むのではなく皆そろって修行することになります。
たぶん、トリッパー達の入れ知恵で天空闘技場行き。

トリックタワースルー。

四次試験は唯一の一般受験者となってしまったハンゾー視点でお送りしました。
・・・別に、ハンゾーに隔意がある訳ではないですよ?ホントデスヨ?

四次試験に登場した念能力者たちは皆ネタであります。

感想、矛盾などありましたら、ご指摘を宜しくお願いします。


※5/31 第一話との展開の矛盾点をこっそり修正。



[8143] 外伝その2 それでも世界は並んでいる!!
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:1e5f2ff6
Date: 2009/05/18 06:26
2000年 1月18日 曇り

 ハオが連絡から連絡があった。
 ハンター試験は思った以上の収穫があったようだ。
 ・・・なんと、100人近い数のトリッパーのホームコードの入手に成功してきた。
 なんでももともとトリッパーの保護などをしている組織が存在したらしく、そこに協力を頼んだらしい。
 さすがハオ、そこに痺れr(ry
 早速全員に連絡、思いつく限りの危険な世界のキーワードを記載して送り返してもらった。
 今回は待ちに待った他世界の目視観測。
 世界観測のついでにキーワード検索のテストもしてみようと思ったんだ。

                                    テオの回想より





<side:テオ>
先日、やっとのことで異世界観測システムの試作版が完成した。
今日はその起動テストの日である。

「さすがに緊張するな」

「また爆発するかもしれないですしね」

・・・最近テトラが俺にキビシイ。

まあいい。
気持ちを切り替えてシステムの起動スイッチを押す。

設定は、とりあえず無差別観測で最初にヒットした世界を写すように設定した。

砂嵐のみが写るディスプレイ。
ゴクリと自分の喉が鳴るのが聞こえた。

やがて、荒いながらも映像が写り始めた。

・・・内容は、このハンター世界の風景とは根本的に違うファンタジーな世界観を思わせる世界の光景だった。
だって、月が三つも四つもあるんだぜ。

「やった、成功だ。成功したぞ~~~~~!!!」
「やりましたね、テオ。おめでとうございます!!」

テトラも笑顔で激励してくれる。

感無量だ。
これで俺達の目的にまた一歩前進できたというわけだ。

いつまでも喜んでばかりはいられない。
近しい隣の世界を見ることが出来たんだ、もう少し離れた世界を見ることも出来るはずだ。
観測を続けよう。

それからの日々は新たな観測世界を探し、その世界を検索しどのような世界なのかを知るために費やされることとなった。





因みに、俺の定義した『異世界』と『平行世界』はまったく概念の違うものだ。
『異世界』とは文字通りに異なる世界、今いるこの世界とは違う場所にある世界のことだ。

『平行世界』はIFの世界。
『もし』~があったら、『もし』あの時~していたら、と言うこの世界から見て選択されなかった選択肢が選ばれた世界。

俺達が開発している世界移動システム『ワールドゲート』は『異世界』へと行くためのもの。
そのため、この世界から見て『IFの世界(平行世界)』に当たる原作のハンター世界へ行きたいといわれても無理だったりする。

・・・いや、いきなり説明しだしたのはトリッパーたちのメールの返信にそういったことを訊ねてくるものが結構あったからなんだが。
実はハンター試験に参加したトリッパーが多すぎて満足にゴン達と接触することができなかったヤツも多いらしく不満があったらしい。

ハンター試験前頃の時間軸の世界とかにもいけるのかとか聞いてくるやつが多すぎる。
お前等そっちの世界へ旅立ってオリ主になるつもりだな?

・・・実のところ、ハンターハンターに似た世界観、どことなく原作キャラたちに似た登場人物たちがいる『異世界』と言う条件なら探せば
見つかるかもしれないが、そんなパチモノみたいな世界はさすがに彼等もいやだろう。

ぶっちゃけ、「知るか!!!」と言ってやりたいところなのだが協力してもらっている手前、一応この装置で出来ることはしっかりと説明
しておいた。





どうせ戻るなら、生前の世界に近い方が良いに決まっている。
と言うわけで、システムを調整して地球型惑星であることを大前提に探してみた。

早速いくつかヒット。
覗いてみた世界は宇宙から見たようなヴィジョンで前世の地球の地形っぽい大陸が見える。

これは一発目から当たりを引いたかな~と思いつつ、日本と思われる場所を調べてみた。

そこはまさしく日本であった。
故郷の世界ではないとはいえ、十数年ぶりにみた日本の光景に不覚にも涙が出てしまった。

帰還候補世界としてこの世界を登録しておこう。

記念すべき帰還候補地第一号に登録しようと操作をしていたところ偶然に外付けした警告ランプが点滅しているのが見えた。

これはトリッパーたちから集めた危険度の高い世界のキーワードを記録させた探査機だ。

こいつが反応していると言うことはこの世界は何がしかの危険をはらんでいる世界である可能性があると言うことである。

何に反応しているのか詳しく調べてみる。
キーワードはいくつも引っかかっているようだがそれらの大半はこの世界でも同じような漫画なりゲームなりが発売されていてそれに引っかかった
ものだった。

警告の出たキーワードを一つ一つ潰していく。
最後に残ったキーワードは『アンブレラ』であった。

「バイオの世界だったのか・・・」

下手しなくてもハンター世界よりひどくね?

もはやこの世界に移住するのは不可能だ、て言うか、シタクナイ。
俺はこのバイオ世界の世界座標を記録した後、注訳に『危険世界指定』のラベルをつけて隔離するのだった。





何の嫌がらせだろうか。
あれから数週間かけていくつもの世界を調べたが、どの世界も何らかの障害を持つ世界だった。

『三咲町』や『冬木市』なんかが実在し、『埋葬機関』とか言う超NGワードまで引っかかった『型月の世界』(むろん危険世界指定)

一見普通の世界だったのだが、ちゃっかりと『ヘルシング機関』なんてものが実在しやがった『HELLSINGの世界』(当たり前だが危険世界指定)

宇宙から見た画像を見た時点ですでにダメだと分かっていたが『BETA』に侵略されユーラシアを平らに馴らされた人類VS宇宙生物を地でやっている
『マブラヴ(アンリミorオルタ)世界』(当然だが危険世界指定)

基本的にギャグワールド、ただし、常にどこかにアンリミ、オルタ世界へ移動するフラグが立ち続ける『マブラヴエクストラの世界』(この世界
自体は安全世界なのだが、常に危険な世界へ飛ばされるフラグが立ち続けているため実質は危険世界指定である)

迫り来る『宇宙怪獣』(時には惑星サイズの敵もいる)を相手に人型ロボット、『マシーン兵器』や『バスターマシン』等を駆使して戦い続ける
『トップ世界』(説明するまでも無いが危険世界指定)

外宇宙からやってきた知的生命体によって人類が作られたらしい、世界征服を狙う秘密組織が存在する『ガイバーの世界』(危険世界指定だ)

どうやら仮面ライダーが実在しているらしい(実際に確認がとれたわけではないが『バダン』が引っかかった、SPIRITS準拠らしい)『ZXの世界』
(危険世界指定!)

『ゴルゴム』の存在が判明し近いうちに仮面ライダーBLACKが誕生する可能性のある『仮面ライダーBLACKの世界』(RX含め、危険世界指定!!)

ライダー系はあと、平成ライダーも全部ヒットした。
『クウガとアギトの世界』、『竜騎の世界』、『ファイズの世界』、『ブレイドの世界』、『響鬼の世界』、『カブトの世界』、『電王の世界』、
『キバの世界』、そして『ディケイドの世界』(先に出たところに比べればマシだがそれでも危険であることに変わりは無いので危険世界指定)

クウガとアギトは同じ世界の話ともパラレルワールド設定とも言われていたがこの装置で観測する分には同じ世界として見られているようだ。

すでに宇宙世紀から数えて最低でも一万年間は宇宙戦争が続くことが確定している『ガンダムの世界』(文明埋葬までされた、当然危険世界指定)



それなりにマシ?かなと思えたのが、

魔法が存在し、隠匿されているが型月ほど厳しくない『ネギまの世界』(要注意世界指定)

世界の裏側には謎が蔓延りニューヨークの暗黒街の帝王が3メートルの巨人だったりする『召喚教師の世界』(部分的に危険世界だが全体的には
要注意世界指定・・・でホントに良いのか?)

年中、太陽系規模で戦争してるような気がするが一般人をやっている分には問題なさそうな『ナデシコの世界』(注意世界指定)



一つの世界を調べるだけでも数日はかかるため一気に調べることが出来ないのが歯がゆい。

今調べている世界についても答えが出た。

次元世界を抱え、その中の一つとして地球の存在する『第97管理外世界』が在る『リリカルな世界』
ここは上記の世界とは違う理由で危険な世界だ。
この世界の地球で暮らす分には特に問題は無いかもしれない(この世界の原作に関わろうとしなければ)。
ただ、この世界は一つの世界の中にさらに無数の世界を内包している非常にデリケートな世界のようだ。
その中の一つに地球があるからと言って、世界の外側からアクセスするのは非常に危険だと判断された。
よって(干渉禁止世界指定)

ダメだこりゃ。

探しても探しても危険な世界しか出てこない。

これは世界意思が干渉でもしてるのか?
こう、行くならこの世界に行けよって言ってるかのような。

いや、諦めてはいけない。
ようやくここまでこぎつけたんだ。

俺は決して諦めずに世界の観測を続け、キメラアント編直前にとうとう何のフラグも立っていない世界を見つけることがかなうのだが・・・
この続きは実際にそこまで話が進んだ時に。





あとがき
世界移動システム『ワールドゲート』の開発が次の段階へと移動したことで新たに発生した問題に頭を抱えるテオ。
どれだけ調べてもヤバイ世界しか出てこない事で、本気で自分達は世界に嫌われてるのではないかと考えています。


感想、矛盾などありましたら、ご指摘を宜しくお願いします。







[8143] 第八話
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:1e5f2ff6
Date: 2009/05/24 05:28
2000年 1月19日 晴れ

 四次試験も無事終わり、最終試験前面接が行われた。
 どうやら最終試験は原作の通りに行われるようだ。
 誰に注目しているかと聞かれたが答えに困った。
 四次試験で注目してたのならハンゾーと答えられたのだが。
 とりあえずゴクウとタクヤを上げてみたらネテロ会長にやっとまともな答えが返ってきたと喜ばれた。
 みんな他の受験生の番号も名前もろくに覚えていなかったらしい。
 原作キャラが全滅した影響がこんなところにも。

 ネテロ会長乙。

 安心してください。
 この後はゴクウとか、タクヤとか、ブレイドが控えているのでちゃんとまじめに答えてくれるはずです・・・

                                         ハオの最終試験前面接時の心境





<side:ハオ>
四次試験終了時点で生き残ったのは12人だった。
その中で俺を除いて知っている顔は5人。
ゴクウ、タクヤ、ブレイド、ウインド、カイザだ。
ここで知り合ったブレイド、ウインド、カイザが生き残っていたのは素直に嬉しかった。
特にウインドとカイザはヒソカ戦での同士であるのでなおさらだ。

後の6人は知らない顔だがその中の二人ほどブレイド達と同じヒーローズソサエティの仲間らしい。
『リュウキ』と『リュウガ』の双子のトリッパーだそうだ。
ついでだと紹介してもらった。

四次試験の後は原作の通りに3日間の休憩を挟んでの最終試験となった。
現在俺達は最終試験会場となる心源流所有の念使い専用の鍛錬場にいる。

・・・さすがに念能力者集めてホテルで戦わせる考えは浮かばなかったらしい。

最終試験の内容も原作通り負け上がりのトーナメント戦であった。
トーナメント表は原作と違って普通に公正な内容だった。

第一試合
ウインド 対 ゴクウ

第二試合
ブレイド 対 カイザ

第三試合
ハオ 対 リョウ

第四試合
ユウ 対 リュウキ

第五試合
レオ 対 タクヤ

第六試合
リュウガ 対 カズヤ

第七試合
第一試合敗者 対 第二試合敗者

第八試合
第三試合敗者 対 第四試合敗者

第九試合
第五試合敗者 対 第六試合敗者

第十試合
第七試合敗者 対 第八試合敗者

第十一試合
第九試合敗者 対 第十試合敗者

・・・ちょっと分かりずらいがこんな感じである。





まずは第一試合のウインド対ゴクウである。

「始め!!」

審判の合図とともに戦闘開始である。
すかさずゴクウが突っ込む。
界王拳は使わないようだ。
あれは後に響くので相手の力量が分からず、連戦するかもしれない時には使いづらい。

特攻したゴクウの攻撃をウインドはうまく捌いているが反撃する余裕は無いようだ。
ここまでは試合はゴクウ優勢で進んでいた。
だが、ゴクウも有効打をとる事ができず、界王拳を使って一気に勝負を付けようとした。

「界王拳!!」

「お前にふさわしいソイルは決まった!!」

その時、不思議な現象が起きた。

界王拳と同時にウインドが声を上げ指を突きつけたが、それを聞いたとたんにゴクウは相手の出方を待つように動きを止めたのだ。
ウインドの口上は続く。

「死を包む眠り・・・スチールグレイ!」

ウインドがベルトから灰色の弾丸を取り出し魔銃に装填する。

「湧き上がる血の滾り・・・ヒートクリムゾン!」

続いて赤い弾丸を取り出し装填する。
この間もゴクウはウインドの様子を伺ったまま動こうとしない。

「そして、闇を貫く閃光・・・ライトニングイエロー!」

そしてウインドは3つ目の黄色の弾丸を取り出し魔銃に装填する。
3つの弾丸が装填され、魔銃に装着されたドリルが激しく回転を増し、ソイルの力を爆発させる。

「唸れ!召喚獣・・・イクシオン!!!」
言葉とともに発射される三種のソイル。
それは螺旋を描きながら収束し、雷で作られたペガサスの様な姿をした召喚獣として顕現した。

ここまで来て、はっと我に返ったようにイクシオンを見上げ、その後にやって来る一撃を回避しようと行動を試みるがすべては遅かった。
ガガァァンと雷鳴が鳴り響き、イクシオンから放たれた雷はゴクウを直撃した。

・・・っぇぇぇぇぇええ!!?

「ちょ、ゴクウゥゥゥゥゥ!!?」

落雷が直撃したゴクウは黒焦げになってぷすぷすと煙を上げている。

「安心しろ。加減はした」

嘘つけぇぇぇぇぇ!!黒焦げじゃねぇか。
突っ込みを入れたくなったがそれどころでは無い。

「・・・ま、まいった・・・」

正直、生きてたことに驚いたがそこまで言って力尽きるゴクウ。

「勝者、ウインド!!」

勝ち名乗りを聞くのももどかしくゴクウの容態を調べると、見た目に反して命に関わるほどの重態ではないようだ。

後ろでウインドがブレイドにシバかれている。

「やりすぎだ馬鹿たれ」

「・・・すいません」

確かにウインドの言う通り、命に別状は無さそうなのでその辺に転がして寝かせておくことにした。
次の試合が近づいたら起こせばいいだろう。





<side:ネテロ>
早速派手にやったのう。
最終試験用に予定していたのは市内のホテルじゃったが、嫌な予感がしたので急遽心源流の鍛錬場を開けてもらって正解じゃったわい。
いきなり大技が飛び出したがこんなものホテル内でやられたら大惨事になるところじゃった。

鍛錬場の真ん中に出来た黒焦げのクレーターを見ながらワシはそう思った。





<side:ハオ>
次は第二試合、ブレイド対カイザだ。
ブレイドは今回ハンター試験に参加したヒーローズソサエティのメンバーのまとめ役らしく、カイザはブレイドの部下扱いとなるのだがまったく
遠慮する事無くやる気満々らしい。

「ブレイド対カイザ 始め!!」

審判の試合開始の合図が響く。
ブレイドはブレイバックルを、カイザはカイザギアをそれぞれ装着し叫ぶ。

「「変身!!」」

ブレイドのバックルは『ターンアップ』の電子音とともに裏返り、ブレイドの正面に長方形のスクリーンの様なものが発生する。
そこを通り抜けた時、彼は仮面ライダー剣(ブレイド)へと変身していた。

カイザフォンに変身コマンドを打ち込みカイザギアへ装着する。
『コンプリート』の電子音とともに黄色のフォトンストリームが発生し、カイザの姿は仮面ライダーカイザへと変身を遂げた。

「「・・・・・・」」

互いに無言のまま、ブレイドはブレイラウザーを引き抜き、カイザはカイザブレイガンブレイドモードを構える。

「ハァ!!」

先に仕掛けたのはカイザだ。
逆手に構えたカイザブレイガンで怒涛の猛攻を仕掛ける。

一撃、二撃、三撃・・・だが、それらの攻撃をブレイドは余裕を持ってかわし、ブレイラウザーで受け流して対処している。

やがて攻撃が途切れ、隙が出来た瞬間に反撃を受けブレイラウザーで弾き飛ばされた。

「ウェェェェェェイ!!」

原作独特のあの掛け声とともに反撃に出るブレイド。
先ほどとは攻防が逆転したが、カイザにはブレイドの猛攻を耐え切るのが精一杯でとても反撃など出来ない。

やがて耐えるのも限界になり決定的な隙を見せたカイザをブレイラウザーの突きで弾き飛ばす。

「だいぶ腕を上げたみたいだけど、俺を倒すにはまだまだ修練が足りないみたいだな」

「っ、くそぉ!!」

ブレイドの明らかな挑発にカイザは悔しそうにしながらも剣を構える。

「お、挑発に乗ってすぐ突っ込んでくるところは直せたみたいだね」

ブレイドはそう言いながらも左腕のラウズアブソーバーから二枚のラウズカードを取り出す。

「でも、これ以上やってると後の試合に響きそうだから、これで終わらせるよ」

そう言うとラウズアブソーバーに一枚のラウズカードをセットし、もう一枚をリーダー部にラウズする。

『アブソーブクイーン』

『フュージョンジャック』

電子音とともにブレイドの姿が変わる。
背中に羽を背負い、鎧が金色の装甲となったブレイドジャックフォームだ。

ブレイドの変化を見て、カイザも己の必殺技を使うことを決心したようだ。
カイザフォンからミッションメモリーを抜き出してカイザブレイガンに装着し、カイザフォンのENTERキーを押す。

『エクシードチャージ』

電子音とともにフォトンストリーム通ってカイザブレイガンにオーラがチャージされる。

ブレイドのほうも必殺技の体勢だ。

『スラッシュ』『サンダー』

二枚のラウズカードをラウズしコンボを発動する。

『ライトニングスラッシュ』

翼が開き、飛翔するとカイザめがけて突っ込んできた。
それを迎え撃つカイザ。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!」

「ウェェェェェェェェェェイ!!」

互いが交錯した後に立っていたのはやはりブレイドであった。

崩れ落ちたカイザに近づき、活を入れるブレイド。

「はっ、・・・まいりました」

意識を取り戻すと同時に現状を把握し、カイザは負けを認めた。

「勝者、ブレイド!!」

まあ、順当だな。
さて、次は俺の試合か。





<side:ネテロ>
ほう、変身とな!?

これはほしい、ほしいぞ!!
しかし、すばらしい技術力じゃな。
他にも何人も変身系の念能力を持っていた受験者がおったと報告にあったが、あのレベルの完成度で個人の念能力としてではなく外部システム
として作ってあるのかの?であればまさに革命的なアイテムと言えるじゃろう。

・・・ヒーローズソサエティじゃったかの。
接触してみる必要があるかもしれんのう。





<side:ハオ>
「ハオ対リョウ 始め!!」

俺の試合が始まった。
いつでも瞬時にS・O・Fを出せるように構えながら相手の出方を伺う。

「なあ、あんた四次試験でスピリット・オブ・ファイアだして歩き回ってたやつだよな?」

対戦者が話しかけてきた。

「?そうだけど、それがどうしたんだ?」

答えると、にやりと笑いこちらに提案してきた。

「俺も巨人型の念能力持ってるんだよ。どうせだからそっちでやらないか?」

・・・別に乗ってやる必要も無いのだが、断る必要も無いので相手の提案に乗ることにした。

「わかった・・・スピリット・オブ・ファイア」

ゴウッと大気の移動する音とともに俺を肩に乗せて10メートルはある赤い巨人が顕現する。

「サンキュー、これで俺も全力で戦える!!」

-------------《ポーン》-------------

彼が答えると同時にあたりに謎の音が響き、彼・・・リョウの体に赤い紋様が浮かび上がる。

「・・・俺は此処にいる、スケェェェィス!!!」

彼の叫びとともに光が爆発し、それが収束するとその姿は黒い巨人の姿となって存在していた。

「・・・スケィス、か」

『さぁ、戦いの始まりだ!!』

スケィスの叫びとともに二人の巨人はぶつかり合った。

スケィスの振り下ろした鎌をS・O・Fの左腕で受け止める。
動きが止まった瞬間に今度はS・O・Fの右拳が炎をまとって振りぬかれた。

「マグマアッパァァァァァア!!!」

スケィスの顎を見事に捉え、遥か上空へとその巨体を弾き飛ばす。
追撃を行なおうとしたが、スケィスが左手から発射した気弾の様なものに押され押しとどめられている内に体勢を立て直された。

再びスケィスが動く。
しかし、今度は先ほどの様な直線的な動きではなく、右に左に高速移動を行ないながら距離を詰めて来る。

S・O・F形態では遠距離では指先から放たれる炎を纏った念弾くらいしか攻撃方法が無い。
このままではジリ貧となるため、こちらからも討って出ることにした。
ある程度近づけば、手を伸ばして捕まえることが出来る。

牽制に連続して打ち込んだ念弾で逃げる方向を限定し、そちらに先回りするように動く。
予想通りに念弾を回避したスケィスはそのままS・O・Fの攻撃範囲内へと突っ込んでくる。
逃げたはずが一転して追い込まれたことに気付き、一瞬の硬直の後再び回避行動に移ろうとする。

だが、ハオにしてみれば、一瞬あれば相手を補足するのには十分であった。
瞬時に伸びたS・O・Fの腕がスケィスの右肩部を捕らえ、

「燃えちゃえ」

ドガァン!!轟音と共にスケィスの右腕を爆破し、吹き飛ばした。

『ガァァァァァァァァァァァア!!』

失った右腕部分を押さえてスケィスが絶叫する。
どうやら痛覚はあったらしい。

「まだ続けるか?」

『・・・いや、俺の負けだよ』

右腕を失った状態ではさすがにどうしようもないらしい。
スケィスはゆっくりと地上まで降りてゆき、リョウの姿に戻るとそのまま自分の負けを宣言した。

「勝者、ハオ!!」

こうして俺はハンター試験に合格となった。





<side:ネテロ>
ふむ、今回は大怪獣空中決戦じゃったな。
しかし、あれだけの巨大なオーラを維持するのに一体どれだけのオーラを使用しておるのじゃろうか?
まったく、今年の受験生は本当に規格外ばかりじゃのう。
しかし、もう少し回りにも気を使って戦ってくれないもんじゃろか?
あたり一面流れ弾でぼろぼろじゃ・・・

ハンター試験運営費用から修繕費は・・・出んな、うん。
そもそもワシの一存で試験会場変えたわけじゃしな・・・

・・・やっぱりここの修繕費はワシが払わなきゃならんのじゃろうか?

ちょっとブルーになっていると回りの試験管たちに励まされた。
が、修繕費の話をすると目を逸らされた。

・・・ぐすん。





<side:ハオ>
めでたくハンターに内定したがまだまだ試合は続く。

次の試合はユウ対リュウキ。
ユウについてはほとんど情報がないが、リュウキは先ほどブレイドに紹介された、ヒーローズソサエティのメンバーだ。

コードネームの通りの存在なら、彼の扱うアイテムは龍騎のデッキか。

予測の通りに彼のヒーローアイテムは龍騎のデッキであった。
Vバックルにヒーローライセンスを挿入し、腰に装着、試験管の

「ユウ対リュウキ 始め!!」

の声を合図に変身を行う。
デッキを左手に持ち、右腕を左斜め前に突きつけるポーズ。

「変身!!」

の掛け声と共にバックルにデッキを差し込み、リュウキは仮面ライダー龍騎へと変身した。

「おっしゃあ!!」

原作を肖った気合を声に出しながら対戦者のユウへ向けて突っ込んでいく。

リュウキのAOPは2500程と見た。
この値はカイザと同じだが、恐らく規格品として統一されているのだろう、ブレイドは強化変身でAOPが2500以上になってたな。

それに対してユウのAOPは1000はあるが1500には届いていない。
多めに見積もって1300といったところだろうか。

正直最終試験まで生き残った面子の中では一番弱い。
リュウキもそう判断しているのだろう、攻め方は堅実に無理なく押している。

ついに捌ききれずにリュウキの攻撃がユウの腹に直撃し、行動不能になったことでユウが負けを宣言し、勝負がついた。

「勝者、リュウキ!!」





<side:ユウ>
負けた。
いや、負けるだろうことは理解していた。
そんなもの見れば明らかだ。
この面子のなかで俺が群を抜いて弱いということは。

だが、それにしたってもう少しは持つと思っていたのにわずか一撃でリタイアさせられるとは思わなかった。

思えばここ、ハンター世界に生まれ変わったと気付いてから念を覚えようとしたりあれこれやってきた。
住んでいた町ではチート知識で神童と呼ばれ得意になっていた。
そのため、自分がこの世界のオリ主であると勘違いしたままハンター試験に臨み、自分以外にも多数のトリッパー達が存在していた
こともそこで初めて知った。

一次試験では興味本位でヒソカの周りをうろつき、危うく多くの受験生もろとも殺されるところだった。
運良く(と言うのはいささか不謹慎かもしれないが)飛んできたトランプは目の前にいた受験生に突き刺さり、吹き飛んだソイツの
下敷きになることでその後は『絶』をして隠れ続けることで助かった。

そこで目撃した戦いは自分の理解を超えたモノであった。
誰一人の動きとてまともに目ですら追えない。
ヒソカ自体も規格外であったが、その相手をしていた4人も十分にバケモノだと思った。

・・・そして、その時ヒソカを相手していたやつ等が4人とも最終試験まで生き残っている。
さらに、そいつらの仲間であろうヤツが3人、しかもその中の一人はヒソカの相手をしていたやつよりも強かった。

これが、本気で修行していたオリ主の力なんだろうか・・・

覚悟の違いとでも言うべきものを実感させられ、項垂れていた俺に対戦相手のリュウキ選手が近づいてきてこう言った。

「『諦めたらそこで試合終了ですよ』と安○先生もおっしゃっているでしょう?諦めなければ誰だってオリ主になれるんです。僕らと
一緒にがんばりませんか?」

・・・この後、俺はヒーローズソサエティに所属しながら改めてオリ主として再起することを誓うのであった。





<side:ネテロ>
ふぅ。
この試合ではこれ以上設備に被害は出ないですんだようじゃ。
これ以上の出費はさすがにワシでもきついわい。





<side:ハオ>
次の第五試合はレオ対タクヤだ。
レオ・・・明らかに偽名くさいが考えてみれば俺のような略称どころかコードネームで堂々と登録してるのが他に5人もいるのだから
特に問題など無いのだろう。

「レオ対タクヤ 始め!!」

タクヤが斬魄刀を抜き放ち、戦闘態勢をとる。
それに対してレオは小さな箱を取り出して中身を開放した。
中から金色に輝く獅子を象ったオブジェが飛び出し、瞬時に巨大化し分解されレオの身に装着された。

「獅子座(レオ)のイグルスだ。四次試験であんたがメリクを倒したんだってな。アイツを倒したんだ、あんた相当強いんだろ?」

レオは楽しそうに牙を剥くような笑いを浮かべる。

「がっかりさせんなよ!!」

そう叫ぶとレオ・・・イグルスの右腕に稲光が纏わりつくのが見えた。

「『雷光電撃(ライトニングボルト)!!!』」

叫びながら右腕を振りぬく。
すると右腕を振りぬいた軌跡から雷が飛び出した。

「ぅわぎゃ!?」

さすがに見切れず直撃するタクヤ。

「シ、シビれ!?」

ゴクウのときのイクシオンのように黒焦げとまではいかない様だがそれでも感電による痺れでまともに動けないようだ。
・・・そう言えばゴクウ戻ってこないな、まだ寝てるのだろうか?

「なんだぁ、これで終わりじゃないだろうな?」

イグルスはそう呟くとタクヤのほうへと歩いて近づいてきた。





<side:タクヤ>
ま、まずい。
さっきのライトニングボルト一発で体がしびれてまともに動かない。

「なんだぁ、これで終わりじゃないだろうな?」

イグルスがしゃべりながらこちらに近づいてくる。

瞬間的な麻痺はもう抜けたがまだ手足に痺れが残っている。

何とか手足は動くがしびれのせいでまともに斬魄刀も握れない。
とりあえず斬魄刀を杖代わりにして何とか立ち上がる。

「お、ライトニングボルト食らって立ち上がれるのか」

嬉しそうな顔をしてイグルスが言う。
食らってみれば解かる。
ライトニングボルトは『初見殺し』だ。
人の体に限らず、生物は基本的に脳からの微弱な電気信号によって体を動かしている。
そのため外部から電気的刺激を受けると筋肉が混乱して意図しない方向に勝手に動いたりするのだ。
オーラで耐久力が上がっているといっても電撃や雷食らって痛いだけとかすぐに動けるとかの方がおかしい(キルアとかユピーとか)。

こいつにとってこれまでの戦いはライトニングボルト一発で決着がつくものばかりだったのだろう。
ゆえに、こいつは追撃を行なう事より相手の回復を待ち、全力で戦うことを選んだ。

「卍解!!!」

ドン!!と砂埃が上がり、それが晴れた頃には炎の竜を右手に、左手に盾と槍の役割を併せ持つ武装を纏い、背に六枚三対の炎の羽を背負った
姿で俺が現れた。

「逆鱗竜王丸」

「それが全開の姿か!!」

嬉しそうに牙を剥くイグルスの姿はまさに獲物を前にした獅子そのものだ。
炎の竜と雷光の獅子との戦いが始まる。

「ライトニングボルト!!!」

再びの、イグルスのライトニングボルトが空を走る。
再び制御された雷がイグルスの右手から解き放たれるが、用心していた俺はそれをオーラを集中していた左腕の盾で受け止め、弾き飛ばし逆に
攻撃を仕掛ける。

「怒竜突破!!!」

卍解での怒竜突破は始解のそれとは桁が違う。
莫大な熱量を纏わせながら背後の六枚羽をブースターのように使い、反撃の隙も与えず突撃する。

「ガァッ!?」

胸部に直撃し一瞬で数十メートル先まで飛ばされるイグルス。
だが俺は見た目ほどのダメージは相手に与えていないことを剣先がひび割れた竜王丸を見て確信していた。

・・・どんな硬さだあのクロス・・・

反撃がくる前に追撃を!!
俺は刀身に熱エネルギーを集中、圧縮し刃状に固めて開放する。

「怒竜斬破ァ!!!」

刃のサイズまでに圧縮された熱エネルギーは大地を溶かし斬りながらイグルスへと向かう。

「なめんなぁぁぁ!!!」

イグルスは叫びながら雷を纏った右腕を地面に叩き込み、技を発動する。

「『雷光電牙(ライトニングファング)!!!』」

撃ち込まれた雷光が地中で無数に枝分かれし地面ごと弾き上げ空へと消えてゆく。
撒き上げられた土砂によって怒竜斬波が掻き乱され消し飛ばされる。
直後撒き上げた土砂を自ら突破しこちらへと特攻を仕掛けるイグルス。

だが、すでに俺はそこにはいない。

「くたばれぇぇぇぇ!!!」

ライトニングファングによって土砂が撒き上げられた後、とっさに空へと飛んだ俺の直感は正しかった。
対象を見失って、一瞬動きの止まったイグルスめがけ、全力の『熱波』を叩き込む。

「『熱虚閃(セロ・ヒータ)!!!』」

俺の指先に集中していた莫大な熱量が解き放たれ、イグルスに極大の熱波砲が叩き込まれる。
だが、イグルスも自身が熱波に飲み込まれる寸前にこちらに反撃を行なっていた。

「『雷光放電(ライトニングプラズマ)!!!』」

熱波を撃ち抜いて無数の電光が俺に直撃し、そこで俺の意識は途絶えた。





<side:ハオ>
イグルスとタクヤが相打ちになった。

最後、上空からの熱虚閃でタクヤの勝利を確信したのだが、タクヤの声に反応し熱虚閃に飲み込まれながらも左腕の雷光をライトニングプラズマ
として開放しタクヤを撃墜することに成功した。
ただ、自身も熱虚閃に飲み込まれたため戦闘不能のようだが。

両者とも互いの必殺技を食らいまともに動けない。
熱虚閃を受けたイグルスも全身に雷を浴びたタクヤも起き上がらない。

しかし、この試合はどちらかが負けを認めるまで終わることの無いデスマッチである。

やがてイグルスが立ち上がる。
クロスの加護か、熱虚閃を耐え切ったらしい。
それでもダメージは相当らしくヨロヨロとタクヤのほうへと向かう。

イグルスがタクヤを蹴り起こす。
仰向けになり目が覚めたタクヤが文句を言っているようだが立ち上がることが出来ない。
先ほどのライトニングプラズマの影響で全身がしびれ、まともに動かすことも出来ないようだった。

しばらくは体を動かそうと必死だったタクヤだが、やがて諦め、自らの負けを認めた。

「勝者、レオ!!!」

タクヤはイグルスが引きずって持っていったが次の試合までに全身の麻痺は回復するのだろうか?
考えていてもしょうがないのできっぱりとスルーして次の試合を待つことにした。





<side:ネテロ>
・・・地面が・・・修繕費・・・

とうとう重機で掘り起こしたかのように縦長の穴が開いたり、熱波砲の直撃でガラス化までしている。

ワシは空を見上げホロリと一筋の涙を流した。





あとがき
やっと此処まで書けました。
チョーシに乗ってオリルートにしちゃったからこんな事に。
まあ、楽しいのでいいですが。
残りの試合は次話で。

キャラ紹介&念設定も更新しました。

感想、矛盾などありましたら、ご指摘を宜しくお願いします。

※5/24 最終試験内容に一部認識不足があり「まいった」宣言で敗北となるように書かれていなかったため、まいったで勝負が決まるように
    書き直しました。



[8143] 第九話
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:1e5f2ff6
Date: 2009/05/24 16:45
2000年 1月19日 晴れ

 ハンター試験最終試験が始まった。
 最終試験だけあって過酷であった。
 具体的にはゴクウが炭になったり、ライダーvsライダーの戦いだったり、巨人vs巨人だったり、死神vs聖闘士だったり。
 とりあえず、どれくらいすごい戦いだったかと言うとネテロ会長が冷や汗出しながら「ちょっと場所変えよう」と言い出す程度である。
 ネテロ会長の物言いも付き、ボロボロになって戦いづらくなっていたこともあり場所を移動して続きを行なうことになった。

                                                ハオのハンター試験最終試験中間報告





<side:ハオ>
ネテロ会長の提案により、第六試合から場所を移して最終試験を行なっていた町の郊外の荒野で行なうことになった。
心源流の鍛錬場も業者の修理が必要なぐらいに破壊されたので場所替えは当然だろう。

次は第六試合、リュウガ対カズヤだ。
リュウガもヒーローズソサエティのメンバー。
ならばリュウガのデッキを使うのだろう。

対するカズヤは不明だ。
此処まで勝ち残ってきているが組織所属の人間ではなさそうで純粋に個人でやってきたらしい。

「リュウガ対カズヤ 始め!!」

リュウガが先のリュウキと同じようにVバックルを装着し、デッキをはめ込む。

「変身・・・」

静かに告げ、仮面ライダーリュウガへと変身する。

「相手にとって不足はねぇ!!」

カズヤが叫ぶ。

周囲の物質が炸裂音とともに分解され、彼の右腕へと集まってゆく。

「つまりはアルター能力の再現って訳か」

俺がカズヤの能力に当たりをつけた頃には彼の能力は完成していた。

「いくぜぇぇぇ、衝撃のぉぉぉぉ、ファァァストブリットォォォオ!!!」

背中の三本の羽飾りの内、一番上の羽が弾け飛び、内蔵していたオーラが噴出し爆発的かつ、変則的な加速を得る。

「オラァァァア!!!」

一撃をかわし切れなかったリュウガは両腕をクロスし迎え撃つがカズヤの拳が叩き込まれた瞬間に十メートル以上吹き飛ばされた。

「・・・力勝負は無理だな」

カズヤの一撃はそれにすべてを賭けていると言ってよい原作と違わぬ力を持っている。
正面からいくのは危険だと判断したリュウガは『相棒』を喚ぶことにした。

『アドベント』

ギャァァァァァァァァァ、と咆哮を上げながら虚空よりリュウガの相棒、ドラグブラッガーが現れる。
突然の奇襲に対処仕切れなかったカズヤはドラグブラッガーの体当たりを食らい、弾き飛ばされる。

『ストライクベント』

リュウガはさらにカードを使い、ドラグクローを召喚する。

「ハァァァァア!!!」

構えを取りドラグクローにオーラを注ぎ込むとドラグブラッガーの顎に黒い炎が球体となって発生した。

「ハァ!!!」

ドラグクローをはめた右腕を前に突き出し黒い炎・・・メテオバレットを撃ち出す。

「ちぃ!!撃滅のぉぉぉ、セカンドブリットォォォオ!!!」

弾き飛ばされてから体勢を立て直す間もなく撃ち込まれたメテオバレットに即座にかわす考えを切り捨てたカズヤは二つ目の羽を開放し
セカンドブリットを叩き込む事でメテオバレットを蹴散らした。

メテオバレットを拳で破壊されたことに一瞬動きが止まるリュウガだが、その一瞬の硬直で攻守は入れ替わった。

「立ち止まってんじゃねぇぞ!!!」

瞬時に空高く飛び上がったカズヤが叫ぶ。
三枚目の羽を開放しながらリュウガに向かって突っ込んでくる。

「抹殺のぉ、ラストブリットォォォオ!!!」

カードの使用は間に合わない、辛うじて横に飛び直撃を避ける。

「ぐわぁぁ!!」

が、直後に真横に着弾したカズヤの生み出した衝撃波によって弾き飛ばされ地面に叩きつけられる。

「くっ、だがこれでシェルブリットは使い切ったはず」

「それは甘えた考えだ!!!」

「な!?」

カズヤのオーラが高まっていく。
再び周囲の物質が破裂音とともにカズヤに集まっていく。
シェルブリットの進化形態だ。

背中のフィンの高速回転が始まり爆発的にオーラが高まっていく。

「シェルブリットバァァァストォォォォォオ!!!」

一瞬で最高速まで加速したカズヤはそのまま反応できないリュウガの胸板に拳を叩き込みそのまま遥か彼方まで殴り飛ばした。

「これが、俺の、自慢の、拳だぁぁぁぁぁあ!!!」

右腕を空高く掲げて宣言するカズヤ。
リュウガは起き上がらない。

しばらく待っても動き出さないリュウガに痺れを切らしたかカズヤはまっすぐに彼の元へと向かう。

「おい、起きやがれ」

右拳で頭を殴り、無理やりたたき起こす。

「まだ続きやるのか?」

そういいながら、右腕を目の前に誇示するように見せ付ける。

「いや、俺の負けだ・・・」

リュウガにはこれ以上のダメージを受ける前に負ける選択しか残されてはいなかった。

「勝者、カズヤ!!」

審判の勝ち名乗りを受け、カズヤの勝利が決まった。





<side:ネテロ>
試合会場を町の郊外に移して本当に良かったわい。
目の前にあいた大穴を見つめながらワシは心底そう思った。
しかし、郊外に移ったとはいえ、相変わらず自重しない連中である。
さて、次は第七回戦かの。





<side:ハオ>
次は第七回戦、ゴクウ対カイザだ。
だが、肝心の対戦相手のゴクウは未だに気絶中で目を覚ます気配は無い。
失格にされる前に起こしてやることにした。

とりあえずゆすってみる。
まったく起きない。
耳を澄ますとなにやら寝言まで聞こえる。

プチ

育ちのせいかとても脆い堪忍袋の緒を持つ俺だが今回もすんなりと切れた。

す~す~と規則的な寝息を立てるゴクウのわき腹に足を引っ掛け思いっきり振りぬく。

「ぐはぁ、何事!?」

ふつくしい軌道を描いて空を舞った後、顔から地面に激突しさすがに目が覚めたようだ。

「何事!?じゃねぇ、いつまで寝てる気だ」

「は?」

どうやら寝ぼけているらしい。
頭を掴んでシェイクしながら今がハンター試験の最終試験の真っ最中であることを説明して思い出させてやった。

ついでにゴクウが一回戦に負けていることも。

「ぁぁぁぁぁぁああ!?」

どうやらやっと脳が動き始めたらしい。

「ほれ、すぐにお前の試合だぞ、準備運動ぐらいしとけ」

「わ、わかった」

まだ微妙にテンパっているゴクウを炊きつけ、試合の準備をさせる俺だった。





今、試合会場では久方ぶりに目を覚ましたゴクウとカイザが向き合っている。

「ゴクウ対カイザ 始め!!」

第七試合が始まる。

カイザが『変身』し、カイザブレイガンブレイドモードを構えてゴクウを迎え撃つ構えだ。

対するゴクウはどう攻めるかを吟味しているのかカイザの周囲を円運動したまま手を出そうとしない。

じりじりと時が流れる。

今のゴクウはイクシオンの雷のダメージが抜けておらずとても界王拳が使える状態ではない。
無理に使えば自滅が待っているだけだろう。

そのため、今回は界王拳無しで相手に勝利しなければならない。
ゴクウが出した答えはこれだった。

「連続エネルギー弾!!」

両腕に集めたオーラを連続して撃ち出しカイザの間合いの外から攻撃を仕掛ける。
カイザをはじめ、ハンター試験で知り合った者たちはゴクウが界王拳で肉弾戦をするところしか見せてなかったため、突如襲ってきた念弾の嵐に
対応できずカイザはそれをモロに受けてしまった。

「ぐはぁぁぁ!!」

ドガガガガァ!!と連続して念弾・・・連続エネルギー弾がカイザにヒットする。
さすがに本職の放出系である。
ぶっつけ本番の必殺技とは思えない威力と精度である。

一つ一つの念弾は500オーラに満たない程度だが、連続で叩き込まれてはさすがに対処に困る代物だった。

「ちぃ!!」

カイザは念弾を掻い潜り、カイザブレイガンをガンモードへと変更する。

「食らえ!!」

ガガガガガッとカイザブレイガンからオーラ弾が発射される。
一発一発のオーラ量はゴクウのほうが上だが密度はカイザブレイガンのほうが遥かに高い。
この辺は機械で補正しているカイザには敵わない。
カイザが放った念弾はゴクウの念弾を貫通してゴクウへと飛来してきた。

「うぉあ!?」

あわてて回避行動に移るゴクウ。
武空術で空へと舞い上がるとそのまま移動しながらエネルギー弾を撃ち始めた。

ドンッドンッドンッドンッドンッ!!!

「うぉぉぉぉぉお!?」

空中から撃ち下ろしてくる念弾は思いのほか効果的だったらしくカイザはまともに抵抗することも出来なくなり逃げ回る羽目になった。

ん?あたり一面土埃で周りが見えなくなったな。
オーラの打ち込みすぎで残留オーラが多く『凝』で見てもノイズが掛かった様に見えて役に立たない。

・・・かめはめ波で当たり一帯全部薙ぎ払うのか。

ゴクウがかめはめ波の準備に入るのを見て俺はゴクウの考えを悟った。

「かぁぁぁめぇぇぇはぁぁぁめぇぇぇっ波ぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

ゴクウが通常時で出せる最大出力のかめはめ波を発射した瞬間、土埃を突き抜いて黄色の四角錐が飛び出し、カイザが飛び蹴りの体勢で突っ込んできた。





<side:カイザ>
相性が悪いぃぃぃ!!!

空から一方的に攻撃されるのがこんなに厄介だとは!!

ドカドカと撃ち込まれる念弾の音を聞きながら俺は逃げ回り続け、何とか反撃できないかと機会をうかがっていた。

空からの砲撃が止む。
改めて回りを見渡してみれば、土埃が舞い上がり相手は俺を見失ったのだと理解した。

これはチャンスだ。
俺はカイザポインターを取り出し右足に装着する。

この土埃で俺を見失ったのなら土埃ごと俺を一掃するために強力な必殺技を使ってくるはず。
それだけのオーラを発生させれば視界がふさがれていても十分探知できる。

・・・見つけた!

『エクシードチャージ』

瞬時にオーラをチャージ、オーラの高まりを感じた方向にマーカーを飛ばし俺自身も飛び蹴りの体勢で飛び出した。

巨大な念砲が迫る。
が、俺の必殺技、『ゴルドスマッシュ』はそれを抉り抜きながら前進していく。

ほどなくして、対戦者ゴクウの姿が目前に確認できるところまで迫ってきた。





<side:ゴクウ>
こ、こいつ止まらない!!

じりじりと前進してくるカイザのゴルドスマッシュに込められたオーラ量はかめはめ波の比ではない。
蛇口を全開にして放水するかのようにオーラを放出しているから何とかギリギリの均衡を保ってはいるが、一瞬でも途切れたらその瞬間に俺に
ゴルドスマッシュが突き刺さる。

・・・界王拳を使うしかないか?

一瞬だけ使い、倍増したオーラ量で高速で横に避ける。
避けられなかったら死ぬ。

このままでいてもいずれゴルドスマッシュは自分に突き刺さるのだから生き残る可能性が少しはある方に賭けるのが当たり前だ。
俺はためらうことなく界王拳を発動した。

「界王拳!!ぁぁぁぁぁあ!!!」

オーラ量が倍増し、対処し切れないカイザが押し戻されていく。
しかし俺も界王拳の負荷に傷ついた体が悲鳴を上げている。

・・・横に移動!!

かめはめ波を解除し根性で横方向に全力で移動。

間一髪で真横を通過していったカイザのゴルドスマッシュへのお返しにそのまま背後から界王拳でのかめはめ波を撃ち込んでやった。

界王拳の反動で体中が痛いがまだ試合は終わっていない。
俺はカイザが撃墜され倒れているところまで近づいていった。

かめはめ波の衝撃でか、ベルトが外れて飛んでいっており、元の姿に戻っていた。

「まだやるか?」

「・・・いや、俺の負けだ」

倒れたまま言うカイザ、立ち上がる力も残っていないらしい。

「勝者、ゴクウ!!」

勝ち名乗りが上がる。
やっと終わった。

ハンター試験でこんなに苦労するとは思わなかったがこれで俺もハンターか。





<side:ネテロ>
うむ、すばらしい戦いじゃった。
あのゴクウという少年もカイザという少年も等しくすばらしい素質を持った子達じゃな。

ゴクウ君はあのオーラ量を倍化する技の方が目立っていたがその本質は放出系の技にあるようじゃな。
カイザ君も手持ちの札で出来ることを確りと把握してピンチでもあわてず対処しておった。

彼等の様な若者が育ってくれればハンターの将来も安泰じゃな。





<side:ハオ>
ゴクウが勝った。
トリッパー達との連絡も取れたしこれでやることはすべて終わったか。
でもまだ試合は続くんだよな。

第八試合はリョウ対ユウだ。

この試合は特に見るものは無い。
リョウが俺との試合のダメージを少なからず抱えていてもユウを相手に負けるとは思えなかったからだ。
実際にリョウは具現化した双剣でユウを的確に追い詰め首に切りつける寸前で寸止めし、相手に降参を促した。

ユウはこれを受けるしかなかった。
こうして第八試合はリョウの勝利となった。


第九試合はタクヤ対リュウガである。
ぶっちゃけてしまえば、コンディションが最高の状態のタクヤであればリュウガの相手など楽勝とは言わないまでも余裕と断言できる部類である。
が、今のタクヤは満身創痍である。
勝負がどっちに転ぶのかはわからなかった。

「タクヤ対リュウガ 始め!!」

試合が始まった。

「卍解!!」

タクヤが最初から飛ばしていく。
いや、持久戦が出来ないほど消耗しているから短期決戦を挑んでいるのか。

『ファイナルベント』

リュウガも長期戦は考えていないようだ。
リュウガ自身も先の試合で大きく消耗しているし、戦闘に有利なカードは粗方使ってしまっている。

互いに初手、一撃勝負を望んでいるようだった。

「全身全霊を賭けて、突き穿つ!!!」

「ハァァァァァァア!!!」

巨大な熱波を纏いながら突進する怒流熱波とドラグブラッガーの黒炎をその身に包みながら飛び蹴りの要領で突っ込んでくるドラゴンライダーキック
がぶつかり合った。

熱波を纏った刃と黒炎を纏ったキックがぶつかり合う。
元々ヒビの入っていた竜王丸は衝撃に耐え切れず刀身半ばまで砕け散ったがその衝撃でキックの軌道を変えることが出来た。

僅かにずれた軌道によってドラゴンライダーキックははずれ、怒流突破がリュウガの胸板に叩き込まれた。





・・・今、リュウガの意識が戻り自分の負けを宣言した。
これでタクヤも晴れてハンターというわけだ。

それにしても斬魄刀また折れたな。

タクヤのことを考えていると本人が話しかけてきた。

「なあハオ、後でちょっと頼みたいことがあるんだが・・・」

「?今此処ではいえないことか?」

「いや、いえないことも無いんだけど・・・」

何か、話しずらそうにしているので特に追求せずに後で聞くことにした。

「わかった。全部終わったら話そう」

「ああ、すまんな」

そう言って少しはなれたところに去っていくタクヤ。

まあ、話のことは後で考えよう。





<side:ネテロ>
第九試合はタクヤ、リュウガ両選手とも消耗が激しかったため自然と一撃での決着となったようじゃ。

全力を出し合った末の決着じゃ。
結果には互いに納得しておるじゃろう。

それに満足するか、更なる精進に活かすかは別じゃが。





<side:ハオ>
次は第十試合、カイザ対ユウだ。
こう言っては何だが、ユウに勝ち目は無いだろう。
なんだかんだでカイザはまだ余力を残している。
だが、ユウも最終試験まで勝ち残っておきながら戦わずして降参するような真似は出来ない。

「カイザ対ユウ 始め!!」

カイザがカイザブレイガンブレイドモードで引き抜きユウへと迫る。
カイザとしてもこれ以上負けるわけにはいかない切羽詰った立場だ。
油断なくカイザブレイガンを構え、目の前にいるユウへと飛び掛った。

・・・多少の抵抗はあったもののやがてカイザはユウを捉えた。
今、カイザはユウに馬乗りになって首筋にカイザブレイガンを押し当てている。

「ま、まいった」

ユウが負けを宣言した。

ある意味、仕方が無い。
ユウの実力で勝てるほうがおかしいのだから。





次は第十一試合、最後の試合だ。

これに負けたほうがハンター試験失格となる。

対戦者はユウ対リュウガだ。

「ユウ対リュウガ 始め!!」

はっきり言ってリュウガは満身創痍だ。
ユウも何戦も戦って幾らか怪我もしているが、明らかにその度合いが違う。

己の必殺技も破られて敵の必殺技はもろに食らう。
精神的にもボロボロだろう。

だが、そんなものは試合には関係が無い。
これが最終戦であり、リュウガはろくに回復出来ないままで戦わなければいけないことに変わりは無かった。

此処までボロボロだとさすがにユウとの戦力差も埋まってくる。
完調であれば絶対にありえないことだがユウはリュウガ相手に善戦していた。

「はぁ!!」

「っク!!」

互いの拳が、蹴りが交差し合い、戦いの歌を奏でている。
それもいつしかクライマックスへと突入し、最後に立っていたのはやはりリュウガだった。

「負けました」

どこか、納得したような顔でユウが負けを宣言する。

「勝者、リュウガ!!」

審判の勝ち名乗りが行なわれ、ハンター試験最終試験は幕を閉じた。

勝ち名乗りと同時にリュウガが倒れたが。
疲労が限界だったらしい。
意地だけで戦っていたようだ。

その後、ユウはリュウキ、リュウガ両名の監督の下、ヒーローズソサエティの準メンバーとして修行を行なうようだ。
少なくとも、最後まで諦めなかった根性だけは認めてもらっているようだ。





ハンターライセンスの配布と説明会などは翌日に行なわれるとのことだった。

本日はハンター協会が用意したホテルで疲れを癒しているところである。

そこに昼に話を聞くと約束したタクヤが部屋までやってきた。

「で、話って何だ?」

勤めて普通に振舞う。
こいつは時々突拍子も無い話を振ってくるので油断がならない。

「実は俺は今回の試験で確信したことがある」

何か語りだしたがとりあえず聞いてみる。

「俺の目標はキメラアントの王メルエムを一対一で倒せるほどに強くなることだ」

そう言えばそんなこと言ってたよなだいぶ前に。

「だが現実にはハンター試験に出てきている奴等相手に苦戦している始末だ」

いや、そうは言うがお前が苦戦した連中は皆プロとして十分やっていけるレベルの奴等ばかりじゃなかったか?

「四次試験で戦ったレオの仲間のメリクってやつも強かったし。どっちが勝ってもおかしくないほどの接戦だったんだ」

それは始めて聞いたな。
それでそろそろ本題に入ってくれないか?寝る時間もなくなるし。

「・・・俺に修行する場を提供してくれないだろうか?」

これは驚いた。
タクヤのほうから協力依頼が来るとは。

「俺の今の力はほとんど斬魄刀の強化で得た力だ。さらに上を求めるとなると基礎力の強化に求めるしかない」

確かにタクヤの力は歪ともいえる。
総合戦闘力の高さに顕在オーラが比例していないのは顕在オーラを鍛えるよりも斬魄刀を鍛えたほうが面白いと判断したためでそのために
鍛錬も偏っていたのだろう。
はっきりと人外のレベルだと言い切れるトリッパー随一の潜在オーラの多さもそれを伸ばすことのみを考えて鍛え続けてきたことの賜物だろう。

だが、此処数ヶ月の修行でPOPが殆ど上がらなくなってきたらしい。

鍛え続ければ本当に少量だが上昇はする。
だが、それはこれまでの上昇率と比べれば誤差と呼べるほどに微々たる物らしい。

そのため彼は自身が成長限界に達したのだと考えるに至った。
そのため、自身の能力が、斬魄刀が完成した、してしまったと理解せざるを得なかったらしい。

ゆえにこれ以上を求めるのなら根本的なところから鍛えなおす必要があると感じ、俺を、正確には俺達ストレンジャーズを頼ったのだろう。

「一応言っとくぞ、俺達を頼るなら俺達のやることにも協力してもらうことになる」

「ああ」

「優先順位はこっちが上だぞ」

「わかってる」

「わかってるならいい。テオたちには事後報告でも問題ないだろ、皆顔見知りなんだし。ようこそストレンジャーズへ」

「こちらこそ、よろしく頼む」

さて、タクヤを受け入れたことで俺達にどんな変化がおとずれるのかな?





次の日、ハンターライセンスの説明やハンター協会についての話もやっと終わった。
要するにハンターライセンスはどういう技術かは知らないが持ち主以外には使用不可で、売れば数十億ゼニー以上が確実である事はわかった。
路頭に迷ったらとりあえず売ろうかなと密かに考える。

晴れて新人ハンターとなった第287期メンバーはそれぞれで解散となった。

ある者は自分の所属する組織への報告のために帰参し、ある者は自身の更なる研磨のために新たな修行へ旅立つ。
またある者は早速ハンターとして仕事を始める気のようだ。

俺とゴクウは新しい仲間、タクヤを連れてアジトへと帰るためにホテルを出るところだ。

「ま、待ってくれ!!」

後ろから呼びかけられた声に反応して反射的に振り向いた。
そこには、俺達(というか、視線からして俺だろう)に呼びかけている四次試験で脱落した『本来の歴史』ではハンターとなるはずだった
原作キャラの一人。



ハンゾーが立っていた。





あとがき
第九話をお届けします。
試合内容がご都合主義だったりだんだん短くなっていったりするのは目を瞑っていただけると・・・いや、やっぱり指摘するべきところはお願いします!

最終試験後編、タクヤのストレンジャーズ合流、最後にハンゾーでお送りしました。

何個も何個も戦闘シーンを書き続けるのってこんなにキツイんですね・・・^^;

キャラ紹介&念設定も更新しました。
レオのゴールドクロスの説明に関しても少し書き足しました。
これで金さえ積めば誰でも装備できるという致命的欠陥も少しはごまかせるかな?

感想、矛盾などありましたら、ご指摘を宜しくお願いします。


※5/24 誤字修正、記述ミスによる展開の矛盾を修正しました。



[8143] 第十話
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:1e5f2ff6
Date: 2009/09/29 18:06
<side:テオ>
そろそろハオたちが帰ってくると連絡があった。
中々に波乱のハンター試験だったようである。

間違いなく近年最もカオスなハンター試験となったに違いない。

今年の試験官は本当に乙でした。

まあ、終わったことは終わったことですっぱり割り切るとして、ウチの関係者であるハオとゴクウはハンター試験に無事合格したようだ。
ついでに会場で合流したタクヤもつれて帰ってくるらしい。

強い仲間が増えるのはありがたい。
この世界に生きる以上常に外敵に備えていなければならないからな。

ただ、ハンゾーまでつれて帰ってきたのには少々驚かされた。





<side:ハオ>
「俺を鍛えてくれ!!」

目の前で土下座をしながらハンゾーが叫んでいる。

・・・ぇぇえ!?何で俺?

「・・・いや、何で俺に?」

「四次試験で一番堂々としてたあんたが印象に残ってたんだ」

いや、一番堂々としてたのはファイアーバルキリーじゃね?いや、あれに弟子入りはしづらいよな。

そう言えば四次試験の時何度か見かけたけどとりあえずスルーしてたな。
原作キャラだし、倒すのも後味がわるそうだったんだよな。

「それに、あんた達は少なくとも俺より遥かに強い」

ハンゾーが確信を持って言う。

「俺は、自分が認めた相手に弟子入りしたいんだ!!」

再び土下座をするハンゾーを尻目に俺たちは目線で会話をしていた。

『おい、どうするんだよ』←タクヤ

『どうするといわれても、俺の一存では』←ハオ

『さすがに原作キャラをお持ち帰りはまずいのでは?』←ゴクウ

『ん?でも原作キャラとは言ってもコイツ、ハンター試験以降はまったく出番なしだし連れ帰っても問題ない気がしてきた』←タクヤ

『まてまて、原作で描写が無かったからといって何もやってなかった訳がなかろうが、確か探し物か何かがあったはずだ』←ハオ

『あ~、なんかの巻物でしたっけ?よく覚えてないけど。でも原作にまったく描写が出てこないのだから重大事というわけでもないのでは?世界観的には』←ゴクウ

『世界観的に重大かどうかはともかく、コイツにとっては重大な問題のはずだ』←ハオ

『でも、ハンゾーはそれを探すことよりも強くなることを優先してるっぽいですよ。土下座してるところを見ると』←ゴクウ

『とりあえず、結論が出ないならテオにでも電話してみたらどうだ?』←タクヤ

『『そうだな』』←ハオ&ゴクウ

なにやら、黙り込んで目線だけで会話している俺たちを見て、ハンゾーが不審そうにしているが気にしない。

「どうしても弟子になりたいってのなら俺たちの仲間にも相談しなきゃいけないからちょっと待ってろ」

「はい」

素直に正座して待つ気らしい。
少しはなれた場所に移動して電話をかける。

ピポパ・・・

『はい、こちら有限会社ストレンジャーズ受付です』

「俺だ、ハオだよ」

『何だハオか、電話してきたってことは試験はもう終わったってことか?』

「ああ、そうなんだがこっちでちょっとトラブルが起きててな」

『トラブル?』

「弟子入り志願者が来た」

『えぇ、誰よ!?』

「実はタクヤだ」

『なんだよ、脅かすなよ。一体誰がそんな無茶を言ってるのかと思ったじゃないか』

「あと、ハンゾー」

『ぶふぅ』

何か吹いたような音。

「汚いな、ちゃんと拭いとけよ」

『まてまて、ハンゾーって『原作の』ハンゾーか?』

「そのとおり」

『・・・何があったか説明を』

とりあえず一通り弟子入り志願されるまでの流れを説明する。

『あ~、とりあえず分かった。一緒に連れてきて』

「了解」

電話を終えて皆のところへ戻る。

「一応許可は取ったぞ、連れてこいだってさ。見てから決めるって」

ハンゾー、いきなり門前払いはされないと知り一安心である。





こうして予想外のメンバーも加えつつ俺たちはヨークシンにある俺たちのアジトに戻ってきたわけだ。

「・・・・・・」

「・・・まあ、とりあえずお茶でも飲んで?」

「・・・いただきます」

空気が重い。

早速テオがハンゾー相手に弟子入りについてのハンゾーの意思確認をしているが、ハンゾーの緊張が伝わってくるため空気が重い。
俺たち、こういう空気は苦手なんだよなぁ。
原作のハンゾー君のようにもっとはっちゃけてくれればいいのに。

「まあ、まずはなぜハオに弟子入りを申し込んだのかから聞かせてもらおうか」

テオのほうから話を切り出す。

モブに近い位置づけとはいえ、ハンゾーは立派な原作キャラだ。
彼を此処で引き抜いた場合に原作の歴史と比べてどのような影響があるのかは考えておかなければ後で首を絞めることになる。

まあ、彼の人生が変わった影響で世界に致命的なヒビが入るとは思わないが。

・・・まあ、不確定要素を気にして強力な念能力者に育ちそうな素材を放逐することも無いか。

結局のところ、テオとハオの意見としてはこんな感じにまとまっており、後はハンゾーがストレンジャーズとして出す条件を飲んでくれれば受け入れる方針だった。

この後、弟子入りに関してストレンジャーズのメンバーとして所属すること、こちらの仕事を優先することなどタクヤにも伝えた条件を伝え、ハンゾーもそれに同意し目出度くハンゾーをストレンジャーズに迎え入れることとなった。





<side:テオ>
それからの日々はあっという間に過ぎていった。

タクヤ、ハンゾーには重力制御陣を刻んである訓練ルームにて基礎修行をしてもらっている。

タクヤは自らの低いAOPを鍛えるため、ハンゾーは高負荷の環境でカンズメにしたほうが伸びやすそうだったからだ。

タクヤは勝手にやらせておけばいい。
元々既に完成された念能力者であるし、何よりトリッパーだ。
環境さえ提供しておけば後はある程度勝手にやるだろう。

ハンゾーはそうはいかない。
きちんと四大行から教えていった。

一応、自力で会得した『纏』はすぐに理解していた。

精孔を閉じることで気配を断つ『絶』なども忍者としての修行の過程で自然と身についていたらしい。

全身の精孔から発するオーラ量を増加させる『練』についても飲み込みが早かった。

やはり原作において念の恩恵なしにハンターになっただけの事はある。
念の習得速度もすばらしいものがあった。

練を安定して行なえるようになってきた時点で一度スカウターを使ってハンゾーのデータを取ってみた。

AOP = 75

MAX_AOP = 650

まあ、修行を始めてから3週間目であるからこんなものであろう。

因みに何度か計測していて測定された推測のPOP値は3500であった。

順調に伸びているようだ。
オーラが切れるか集中力が続かなくなった時は『燃』の方の修行をさせている。
このままタクヤとハンゾーは重力ルームでのカンズメ生活が数ヶ月続けられることとなった。





突然だが、俺たちストレンジャーズのアジトはヨークシンに存在している。
ただ、俺とハオはこの都市では札付きなのでなるべく目立たないようにしていなければならない。
そのためアジトはヨークシン郊外の荒野の地下にある鍾乳洞に建物建ててアジト兼、研究所として運営していくこととなっていた。
因みに出入り口は荒野の一角に目立たないように偽装されたエレベーターがあり、そこから出入りしている。

タクヤ、ハンゾーのストレンジャーズ入りから3ヶ月がたち、4月も終わろうとしている。

今日まで重力ルームにカンズメにして鍛えていただけあって大分オーラの出力も保持時間も延びたみたいなので久しぶりにスカウターではかってみた。

タクヤのAOPは
AOP = 100
MAX_AOP = 2500

ハンゾーのAOPは
AOP = 85
MAX_AOP = 1100

まで伸びていた。

「そろそろ、ハンゾーを天空闘技場につれてってもいいんじゃね?」

俺は一応ハンゾーの師匠ということになっているハオに進言する。

「そうだな、そろそろ色々な念能力者との戦いの訓練をする時期かもな」

ハオもハンゾーの仕上がり具合に同意し、タクヤ、ハンゾーの天空闘技場行きが決定したのだった。

因みに何故タクヤまで天空闘技場に連れて行かれたかと言うと、ずばり、ヒソカ対策である。
ぶっちゃければ、ヒソカに興奮されて生き残れそうなのはそうはいない。
ずばり、一行の護衛扱いなのである。
まあ、本人も闘技場でひと暴れしてストレス発散したかったらしいので今回の扱いも願ったりだったらしい。

・・・そう言えば、今あっちには原作主人公組がいるんだったっけ。

一抹の不安を感じながらもハオたちを見送り、俺は俺の仕事に戻るのだった。





五月に入った。
ハオの報告からするとタクヤもハンゾーも順当に勝ち上がって200階クラスで暴れているらしい。
あんまり勝ちすぎると慢心してほんとの強敵が見抜けなくなりそうなのでその辺は注意してもらうようにした。
ハオもその辺は気になっていたらしく、タクヤはともかくハンゾーがそうならないように注意しているようだ。

まあ、ほんとに天狗になっちゃったら、一度痛い目にあわせておけばいいだけだ。
天空闘技場での戦いなのだから早々死にはしないだろうし。





今はハオたちのことよりも自分のことのほうが重要だ。
ハンター試験の折に一つの山場を突破した『ワールドゲート』だったが、その後、再び壁にぶつかっていた。

原因は純粋な技術不足につきる。

発想の転換や単純な大出力だけでは世界の壁を超えられないため、段階的には殆どハンター試験時から先に進んでいなかった。
その分、システム自体を何度も組み直し、作り直しをしたため異世界の観測自体は非常にスムーズかつ鮮明に行なえるようにはなっていたが。

今は、壁を乗り越えられる技術的ブレイクスルーが必要であった。

「こうなってくると、グリードアイランドの製作者達に意見を求めたくなるなぁ」

おそらく、現在存在するトップクラスの神字技術者はグリードアイランドの製作スタッフである。
彼等に師事することが出来れば、『ワールドゲート』の技術的困難を解決する糸口が見つかるかもしれない。
運がよければ本人達が知恵を貸してくれることもあるかもしれない。

しかし、現実は非情である。

現時点でグリードアイランドを入手する手段はほぼ無いといって良い。
市場に情報が流れたグリードアイランドはほぼすべてバッテラ氏が回収しているだろうし、今は既に5月だ。
今から、所在不明分のグリードアイランドを探し出しても9月までに見つけ出すことが出来るかはかなり分が悪い。
9月にはヨークシンドリームオークションで7台のグリードアイランドが競売に賭けられるのだからそっちの購入を目指した方が早いだろう。

となると、9月に入るまでこのままシステムをいじり続けるよりは、俺も修行をしていた方が良いかも知れない。

なにしろ、『9月=ヨークシン=旅団襲来』の公式が当てはまるのは決定済みなのだから。

どうも最近俺って運が悪いんじゃね?と思うところがあり、自分のホームに厄介ごとがやってくるとなると高確率で自分の下にもやってくるような気がしてならないテオなのであった。

「うし、そうと決まったら修行に入るか」

俺はストレンジャーズの通常業務などはゴクウとテトラに丸投げし、数ヶ月ぶりに自分の修行を行なうこととした。





まずは、何は無くとも顕在オーラの出力アップである。
俺の念能力『紙々の世界』は顕在オーラがモロに念能力の自由度に直結しているため、顕在オーラはあればあるほど良い。

タクヤはハンゾーにやらせていた重力ルームでのカンズメを俺も行なうことにした。
だが、ただそのまま行なうのでは色々と時間もかかるためちょっと重力制御系を書き換えて負荷を水増しすることにした。

「ぬぅお!?」

現状出力の1.25倍で設定してもかなりきつく、体感的は2倍3倍にしたような錯覚があるほどきつくなるものである。

さらに高負荷状態での念能力の運用を行なうことでより高出力で精密な念操作が出来るように訓練を続けた。





5月も半ばを過ぎた頃、ヒーローズソサエティから連絡が来た。
ヒーローズソサエティの幹部の一人、カルラからである。

あって話したいことがあるとのことでこちらに出向きたいとのことであった。

元々は1月のハンター試験の折に知り合ったのだがその後もちょくちょくと連絡を取り合っていた。
自分のところの技術とは方向性の違ううちの技術にもいくらか興味があったらしい。

現在、ヒーローズソサエティはストレンジャーズの上得意であることもあり、カルラとの会談に応じることとなった。





カルラの用事は単純に仕事の依頼であった。
だが、ちょっと以上に難しい仕事である。
俺は一昔前にゴールドクロスの作成を依頼されたことがあり、獅子座と水瓶座のゴールドクロスの作成に着手したことがある。
その時に要求された仕様に答えるためにかなり希少なレアメタル等を多量に使用したためすばらしい性能を発揮した代償にまったく量産の効かない凄まじく金のかかるモノに出来上がってしまった。

まあ、金額や掛けた手間に見合うすばらしいものになったと自負しているし、実際に使用者からも苦情などは無い。

カルラの依頼とは、そのゴールドクロスのうち、山羊座のゴールドクロスの作成依頼であった。
どうやらどこかで俺の創ったクロスの保有者と遭った事があるらしく、俺のことを聞き出したらしい。

ゴールドクロスを装着できる条件についても聞き出していたらしく、自分ならば装着できるといってきた。

・・・念能力が『エクスカリバー』なんだ。
それならば、確かに山羊座のゴールドクロスの装着者としてふさわしいだろう。

だが、残念ながらいくら資格があっても既にゴールドクロスを作成するための材料が無い。
お引取り願うしかなかった。

「いや、素材については心当たりがあるんだ」

材料不足を理由に断ろうとしていた矢先にカルラが言い出した。
なんでも、原材料となる鉱石の類の出土する山のあたりをすでにつけているらしい。
さすがはヒーローズソサエティの情報網で調べただけはある。
自分のクロスがほしいだけあってその辺に抜かりは無いようだ。

「何処にあるんです?」

さすがに気になった。
あれだけ探しても出てこなかったレアメタルの眠る地である。

カルラは勿体つけるように一つ呼吸を置いてから、言った。

「実は、ククルーマウンテンなんだ」





・・・ククルーマウンテン。
パドキア共和国デントラ地区に位置する標高3722メートルの死火山である。
山の周りも禍々しさを感じさせる深い森に包まれており入り込んだ者の方向感覚を狂わせる樹海となっている。
だが、この山の本当に恐ろしいところはそんなところではない。

問題なのは、この山全体が伝説とまで呼ばれる暗殺一家ゾルディック家の私有地であるということだ。

「カルラさん、アンタ、頭大丈夫?」

「いや、ひどいなあんた!?」

「アホか貴様、レアメタル求めて暗殺一家の私有地に潜り込む気か!?馬鹿なの!?死ぬの!!?」

思わず言葉使いが悪くなるがククルーマウンテンに盗掘に逝こうなどと誘われたら誰だってそうなるだろう。

「いや、案外山を掘るくらいなら許してくれるんじゃないかなと」

「氏ねってリアルに思ったのは初めてだな」

「イグルスとメリクも盗掘を手伝ってくれるって言ってるんだよ、お前が協力してくれたら」

獅子座のイグルス、水瓶座のメリク、確かに昔クロスを創った時に材料が見つかったら残りも創ってやるって約束したけど材料取りに行くところから手伝うとまでは言ってないぞ!!!
なんて厄介なヤツラだ。

結局のところ、カルラの熱い説得に屈してしまった俺はククルーマウンテン逝きを確約させられてしまうのであった。

・・・これって新たな死亡フラグなのでは・・・

たとえ、ジッとしてても死亡フラグは向こうからやってくるらしい。





「ところで」

ククルーマウンテン逝きを約束させられてちょっとへこんでいる俺にカルラが問いかけてきた。

「双子座のゴールドクロスも作ることって出来るか?」

?質問の意図がよく分からなかったがとりあえず答える。

「材料さえあれば創る事は出来るぞ、ただ、クロスの装着者になる条件が『原作の技を念能力で再現すること』だから装備できるヤツが出てくるかどうか」

と言うか無理だと思うが。
ギャラクシアンエクスプロージョンはともかくとしてアナザーディメイションは無理だろう。
むしろ、個人の力でやられたら俺たちの立つ瀬が無いし。



クロス装着者の条件は『原作の技を念能力で再現すること』である。
正確には、原作の技を再現できる元となる念能力を開発することが必要なのだ。
原作と『同じ』であるというところがゴールドクロスをゴールドクロス足らしめるだけの強度を与える誓約となっているのだ。

それが、獅子座のクロスにとっては『雷』、水瓶座のクロスにとっては『凍気』なのである。
この基準でいくと、双子座のクロスは銀河を砕くと幻視するほどの『爆発』の力と空間を歪めて異世界への扉を開く『次元』の力だ。
『爆発』はともかくとして『次元』は個人であつかえる範囲を超えてるだろう。

「実は俺の仲間に幻朧魔皇拳を使えるヤツがいるんだが」

マジか。
よく覚えたな。

「出来ればソイツ用にも用意してほしい」

「さっきも言ったけど、創る事は出来ても装備することは出来ないと思うぞ?」

「その当たり何とか調整が効かないか?何とか擬似的にでも能力を再現できればとか」

擬似的に・・・それならば調整は効かなくもないか?だが、かなりピーキーになりそうな。

「一度、その装着者候補の人に会ってみなくちゃ分からないな、どんな風に擬似的に再現したのかも見せてもらわないと調整できないし」

まあ、やってみなくちゃわからないがやってみる価値はありそうだ。

「おお、そうか。ありがとう」

カルラは笑って礼をした。





それから数日後、俺はパドキア共和国にいた。
もちろん、カルラたちと合流してククルーマウンテンを攻略するためだ。

・・・未だに何で自分まで参加しなきゃならんのかと頭を抱えたくなるが此処まできたらさすがに腹をくくった方がよさそうだ。

そろそろカルラが指定してきた集合時間が近づいてきた頃、イグルスとメリクがやってきた。

「あ、お久しぶりです。テオさん」

「ほんとに久しぶりですね、クロス有意義に使わせてもらってます」

うむ、お久しぶり。
でも、挨拶のほかに言うべきことあるよね?

「お前等ほかにいうべきことあるんでない?」

ちょっと青筋立てながら二人を問い詰める。
こいつ等のせいでククルーマウンテンへの特攻に付き合わなくちゃならなくなったのだから少しぐらい文句を言ってもバチはあたらないだろう。

「いや、折角見つかったんだし皆で掘りに行ったほうがたのしいじゃないですか」

「そうそう、久しぶりに一緒の仕事をやりたかったですし」

ふむ、場所がククルーマウンテンでなければなんの掘りに行くのも一緒の仕事も何の問題も無かったんだけどね。
とりあえず、冷や汗たらしながら弁解するてことは貴様等俺が断れなくなるのも見越してやがったな?

生きて帰れたらこいつ等に何か絶対に仕返しをしてやろうと心に決めた頃、最後の一人カルラがやってきた。

「少し遅刻だぞ」

「すまんすまん、他の面子をごまかすのに苦労してな」

カルラは今回わざわざヒーローズソサエティの他の幹部達には内緒にして有給まで使ってやってきたらしい。
なんでも後でばらして驚かせたいそうだ。
俺としてはヒーローズソサエティにちゃんと有給制度が存在することにまず驚いたが。

「んじゃ、逝きますか」

「お約束だが字が違うよ、テオ君」

ほっといてくれ、俺の気分はまさに『逝く』なんだから。





俺たちはククルーマウンテン行きのバスに乗り、原作でも有名な試しの門の前まで来ていた。
確かにこれは一見の価値ありだな、観光名所になるのもわかるな。

「すごい存在感の在る門だな」

「はい、ここが正門で別名黄泉の門と呼ばれ・・・」

観光バスのガイドさん(原作の人ではないっぽい)が丁寧に説明してくれるがぶっちゃけ聞いてない。

改めてみると此処以外の場所からとても入れそうに無いよな。
横を見ると遥か地平線の果てまで続く巨大な壁が見える。

まあ、空を飛んで入ればいいと言う裏技はあるが、普通に扉あけて入ればいいんだからわざわざミケとデスマッチする道を選ぶ必要は無い。

ガイドさんに此処で降りる旨を伝え、バスが次の観光地へと向かうのを見届けてから徐に扉の前にたった。

「んじゃ、開けるぞ」

覚悟を決めて扉に手を当てる。
俺は両腕に力を込めて一気に試しの門を押し開いた。





あとがき
ヨークシン編までのつなぎの話です。
それぞれのパワーアップへの道。
テオは本編復帰早々に地獄送りになるようです。
でもそれが彼のクオリティ。

次回はゾルディック相手取っての盗掘作業です。

感想、矛盾などありましたら、ご指摘を宜しくお願いします。

※9/29 漢字ミスの修正。



[8143] 第十一話
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:1e5f2ff6
Date: 2009/05/31 03:02
<side:テオ>
ギギギギギ・・・

4の門が開いていく。
まあ、素の体力+纏ならこんなものだろうか?

「お~、4が開いたか」

「そうだ、お前等も開けてみろよ」

「そうだな、いくつまで開くかな?」

「やっていいのは纏までだぞ~」

「了解」

和気藹々と試しの門の開け閉めをしていると、恐る恐るといった感じで声がかけられた。

「あの~、あなた方は何しにいらしたので?」

「「「「・・・え?」」」」






話しかけてきたのは掃除夫のゼブロさんでした。

「いやはや珍しい、と言うか初めてですな。旦那様方を狙ってきたのではなくククルーマウンテンに穴掘りに来たなどと言う方は」

どうせ敷地内に入れば執事達にはすぐにばれると思うのでぶっちゃけた。
盗掘とは言いづらいのでマイルドに穴掘りと。
どうせ中に入ったら執事達との戦闘で苦労することには変わりないだろうし、先に言っておけばひょっとしたらスルーしてもらえないかなともちょこっとだけ思った。
思うだけならタダだしね。

「いや~、それほどでも」

イグルスよ、今のセリフはほめ言葉ではないぞ。

「と言うわけで、ちょっと入らせてもらいますけどよろしいでしょうか?」

カルラがゼブロさんにそう断りを入れ、ついでに執事の方々に連絡を取ってもらった。

「え~と、どうでした?」

「一言で言うなら『一昨日きやがれ』でしょうか?」

まあ、山を掘らせてと言われてはいどうぞとはいかないか。

「うし、潜入するぞ」

「既にばれてるし潜入もクソもないんじゃ」

「言葉なんてどうでもいいんだよ」





改めて試しの門を開けてゾル家の敷地内に入り込んだ。

すぐさまミケがやってきて俺たちを観察する。

「ミケのあれ、『纏』じゃね?」

「ああ、纏だね」

「だな」

「うん」

全員が同意する。
ミケは確りと精孔が開かれて、立派に『念使いな犬』だった。

考えてみれば当たり前か。
ここにお邪魔する人間ともなれば非念能力者よりも念能力者のほうが多いに違いない。
そんなところの門番をしているのだから例え獣であっても精孔くらい開いておくのは当然の備えなのだろう。

ミケはしばらく俺たちを観察すると匂いと姿を覚えたのかどこかへ去っていった。

「・・・さて、まずは件のレアメタルの鉱脈が何処にあるか調べないとな」

俺はそう皆に告げると背負っていたリュックから俺謹製のレアメタル探知機を取り出し全員に配る。

この探知機はクロスの作成に必要なレアメタルの反応を追う様に作成されており、レーダー内に反応を捉えたらその方向や深度などを図解で説明してくれる優れものである。

「さて、まずはククルーマウンテンの麓まで行かなきゃな」





<side:ゴトー>
チン、と掃除夫のゼブロからの連絡の電話を切る。

「手前ぇら、侵入者だ。丁重にお出迎えしろ」

俺は周囲にいた部下達へと戦闘態勢に入るように指示する。

俺の内面の憤怒が表情にも出てしまっているのだろう、俺の顔を見た部下達は顔を引きつらせながら急いで戦闘準備をしに飛び出していった。

「くっくっく、わざわざこのゾルディック家に穴掘りなどとほざいて侵入するとは、随分と舐め腐った真似をしてくれる」

そう、連中は卑しくも我らが主人の私有地で穴掘りがしたいなどと抜かしているのだ。

俺はコレを宣戦布告と捉えた。

このククルーマウンテンを含む周辺の森に至るまですべて旦那様方の所有物である。
それを手前勝手な理屈で盗っていこうなどとほざくとは、例え方便であったとしても天が許そうがこの俺が許さん!!!

ぶっちゃけ、言うだけならタダだと思っての事前連絡は余計に火に油を注ぐ結果となったようだった。

まさに、『タダより高いモノは無い』である。





<side:テオ>
どうも森中が殺気立ってる気がする。
やっぱり執事の方々怒ったっぽいね。

「これなら普通に首狙ってきたって勘違いされてた方が楽だったんじゃ?」

イグルスも感じているらしい。
俺の考えていたことと同じことを口に出していた。

「さすがだな、カルラ。ゾルディックの執事達をここまで怒らせるのってそう簡単じゃないと思うぞ?」

メリクもイグルスの尻馬に乗って軽口を叩く。

「お前等俺の事ばっかイジってないで少しは周りの連中に対処しろよ」

カルラも自分にばかり駄目だしされてご立腹のようだ。

俺?

俺にこいつ等ほどの余裕はないので黙りこくって移動中。
ゾルディックの執事に囲まれてるってのに何でこいつ等こんなに余裕なんだろうか?
こいつ等との友人関係とか考え直さないともっとひどい目に遭いそうな気がする、ここよりひどい場所って早々無いと思いたいが。

「来たぞ!!」

カルラが警告する。
右前方から3人、左後方から2人。
それほど強い念能力者では無さそうだ。

「後ろの二人は俺が。皆、殺すなよ?」

「了解」

「当然」

「分かってる」

一応皆に念を押してから俺は後ろの二人を相手するために俺の念能力『紙々の世界』を発動する。
殺さすに無力化するために威力の低い『紙機雷』を30セットほど作成して全方向から狙えるようにばら撒き同時攻撃させる。

チュドドドドンっと連続した爆音が響き、こちらの狙い通りに背後から近づいていた二人は無力化したことを確認する。
前方から来ていた三人も既にカルラたちが無力化したようで近くの木に逆さに吊るされていた。

「さて行くか」

カルラの言葉に皆無言で頷く。
まだまだ油断は出来ない。
次にやってくる執事達はこいつ等よりも確実に強いヤツがやってくるだろう。

俺たちは痕跡を残さないように気を付けながらその場を後にした。





その後も何度か執事達に襲撃を受けたがその度に返り討ちにし、右へ左へと逃げ回りとりあえずは撒く事が出来たようだ。
まあ、此処が彼等の庭である以上すぐに発見されることになるであろうが。

とりあえず、今の内にレアメタルの鉱脈を調べておかなければならない。
一秒でも早くそれを見つけ出すことがこの死地から脱出するための条件なのだ。

「・・・とりあえず、この辺には反応なしか」

俺は持ち込んだ地図にマーキングし、チェックした箇所を埋めていく。

「!!」

周囲に撒いていた探査用の紙結界に反応あり。
もう居場所が割れたらしい、本当にゾル家の執事って優秀だな。
こんな連続で戦っていたらオーラがすぐに切れてしまう。

俺たちはすぐさまその場を離れることで遭遇を避けるのだった。





日が落ちる。
夜の時間に動き回るのは返って危険だということで適当にねぐらを見つけて今日は休むことにした。

「それにしてもテオさん、本当に食料探さなくて良かったんですか?」

イグルスが聞いてくる。
それにしてもコイツ、俺と話す時は微妙に丁寧語になるよな・・・

「いいんだよ、こいつを持ってきてあるからな」

それに、ゾル家の庭って其処彼処に毒草やら毒の木の実やらがゴロゴロしてるっていうじゃないか。
間違ってそんなの食べるのはごめんである。
俺はそう言って発明品をお披露目する。

「グルメテーブルかけ~」(大山のぶ代的声で)

「「「・・・」」」

あれ?反応無いな。

「さて、今からでも食料探しに行くかな」

「そうっすね、さっさと行きましょうか」

「だな」

「待てやこら」

お約束な反応を見せる3人に待ったをかける。

「コレを見てもそんな反応が出来るか?・・ラーメン!!」

俺が叫ぶと地面に敷いたテーブルかけの上にラーメンが出現する。

「「「おおお!?」」」

実はコレ、マーキングした料理店を検索して注文した料理が完成していたら問答無用で引き寄せるというチートアイテムである。
世界移動の研究の過程で手に入れた瞬間移動系の技術を使った一品である。

「でもお前等はコレを信用してないみたいだからその辺の毒草でも食ってろよ」

「「「ははぁ、無知な我々の浅慮、どうかお許しくださいテオ様ぁ~」」」

三人そろってDO☆GE☆ZA。
お前等プライドないんか。

別に土下座されたからではないが、一応全員にグルメテーブルかけは使わせましたよ。





ククルーマウンテン潜入から五日目。
そう、既に潜入から五日がたっている。
その間に撃退した執事は50人を超えている。
これだけの時間調べているのにまだレアメタルの鉱脈は発見できていない。

「カルラ、ほんとにここにレアメタルの鉱脈があるのか?」

そろそろ採掘を始めないと敵さんが本腰入れ始めると思うんだけど・・・

「お、レーダーに反応ありだ、ヒットしたぞ!!」

おお、五日目にしてようやくか!!
俺達は反応を捕らえたカルラのレーダーを頼りに移動していった。





レーダーが反応したのはククルーマウンテンの端にある洞窟だった。
考えてみれば当然だが、ククルーマウンテンにあると知られている以上一度ならずそこから発掘されたことがあるということでもある。
カルラのレーダーが捉えたのはゾル家所有の採掘場であった。
当然執事達が複数人で警備に当たっている。
それも今まで相手にしていたような下っ端ではなくそれなりの使い手といえそうなのが10名ほど。

「俺達がうろうろと迷ってる間に準備万端整えて待ち構えてたみたいね」

「正面から行くのはただのアホだろ、どっかからばれない様に横穴でも掘っていくか」

あのレベルの念能力者だとどうやっても瞬殺は無理なので正面からの攻略は諦めて穴を掘って採掘場まで繋げることにした。
あんまり近くで掘っていてもばれるので一キロほど離れた場所から掘り始める。

因みにシャベルやツルハシは俺の背負っているリュックに入れてきた。
補足しておくが、このリュックも神字アイテムである。
リュックの中の空間が外の10倍の大きさになっている便利アイテムだ。
どうせ採掘した鉱石の類を持ち帰るための何がしかは必要だったので一番容量の大きなこのリュックを持ってきたのである。
中にはこのリュックと同型のリュックが人数分用意してあり、掘れるだけ掘って持ち逃げする気満々である。

リュックから取り出したシャベルを全員に渡して穴掘り開始。
ばれたらまずいので皆『絶』をしながらの穴掘りである。
この日から食事と睡眠以外は穴掘りの日々が続いた。





<side:ゴトー>
侵入者がククルーマウンテン周辺までやってきたと報告があってから一週間、門前で宣戦布告を受けてから12日が経過していた。
一週間前から侵入者の痕跡がまったく見られなくなった。

「侵入者どもはどんな手品をつかっているのか・・・」

とりあえず連中の立場に立って考えてみる。

連中が欲しているのはククルーマウンテンから採掘されるレアメタルだ。
連中の言であるが、これまでの行動から考えても間違いなかろう。

侵入しようとしていた採掘場はそれなりの腕利きを配置しているから正面突破を図ろうとはすまい。
ならば、正規の手段以外の方法で侵入しようとするはず。

囮を用いて入り口を張っている部下を誘導するのか?
睡眠ガスでも投げ込んで全員無力化するか?

それとも・・・

バン!!

そのとき、勢いよく扉が開けられ部下の執事が司令室に飛び込んできた。

「やられました。連中、地下から侵入してきました!!」

・・・穴を掘って地下から潜入するか、だ。

「・・・侵入経路を割り出して出口を封鎖しておけ」

「了解しました」

「こうなれば全力で叩き潰すまでだ、私も出るぞ!!」





<side:テオ>
一週間かけてククルーマウンテン内の採掘場に繋がるように横穴を掘り続けた。
姿が完全に見えなくなるほど深く穴を掘った後も、絶のままひたすらに掘り続けた。
ゾルディック家の監視網にオーラで引っかかる類のものがあった場合致命的なためである。
そして、ただひたすらに掘り続け、ようやく開通に至った訳だが。

「でも、穴あけた丁度その場所に見張りがいるとかどんだけ運が悪いんだ、俺は?」

そう、丁度開通した瞬間をばっちりと見られた(と言うか、見張りの立ってたところにピンポイントで穴を開けた)ため、問答無用で戦闘開始となってしまった。
コレではわざわざ穴まで掘ってこっそり侵入しようとした意味がまるで無い。

「まあ、やっちゃったモンはしかたないと割り切るしかないさ。その辺の未精製の鉱石とかがレアメタルじゃね?ちゃっちゃとパクろうぜ」

イグルスがあっけらかんと言う。
・・・確かに時間は無いな、何人かこっちと戦わずに報告に行ったっぽいし。

「よし、とりあえず探知機で反応のあったモノは全部リュックにぶち込んどけ。選別なんか後でも出来るしな」

全員にリュックを配り俺達は援軍が来る前に盗掘作業を開始した。





全員で急いでその辺に転がっている鉱石をリュックに放り込む。
既にばれているのでさすがに掘り返してる時間は無い。

しかし、それでもそれなりの時間がたったのだが未だに後続の執事達がやってくる気配が無いのが怖いな。

レアメタル反応のあった鉱石は粗方拾い終え、三人ともリュックはパンパンだ。
これだけの量から精製すれば結構な量のレアメタルが取れるだろう。

まあ、それもここから生きて帰る事が出来たらの話なので今考えてもしょうがない話だ。

「さて、まずはどうやってこの採掘場から脱出するかだが」

入ってきた穴はもう塞がれてるだろうな。

「入り口から出てったらフクロにされるよな」

試す気も起こらん。

「反対側にまた穴でも掘っていくか?」

掘っとる間に見つかるな。

「「「「う~む」」」」

なんか、本格的に詰んでるような気がしてきた。

ちょっとアニマクラフトで偵察をしてみる。
まずは俺達が掘ってきた穴。

ネズミ型の模型を作って操作。

穴の先まで見に行ってきた。

「・・・俺達が入ってきた穴はもう駄目だ。既に執事達がスタンバってる」

ネズミ君と視界を共有して観察してみたが既に俺達が掘ってた穴の場所は割れていたらしく、結構な数の執事がそこに配備されていた。

「洞窟の入り口の方はどうよ?」

イグルスに言われ、そちらも偵察する。

「・・・こっちもすごいな、殺気立ってる執事さんたちが100人くらいいるわ。あ、ゴトーさんもいる」

ゴトーさん、執事長なんてやってるのだからゾル家の執事の中では一番強いんだろう。
正直相手にしたくない。

あれこれと悩んでいるとそれまで発言しなかったメリクが提案してきた。

「なら、こんなのはどうだろうか?」

・・・メリクから作戦が提案され、結局選択肢の無い俺達はその作戦でいくこととなった。





<side:ゴトー>
結局今回の侵入者騒ぎは私自身まで出動しなければならないほどの大事となってしまった。
このまま逃がしたとあってはゼノ様、シルバ様を始め、ゾルディック家の方々に何と言えばいいか・・・
執事長としてのプライドもある。
連中はここで一網打尽にする。

「執事長、動きがあったようです」

部下の言に採石場の洞窟を見る。

すると薄汚れたマントを羽織った四人組が洞窟から飛び出して部下達と戦闘を行なっている。

「よし、そのまま包囲しつつ決して逃がすな、別働隊を呼び戻せ!!」

俺は部下に指示を送ると自らも包囲網の一部となるために四人組の盗掘者の周りを取り囲む。

別働隊の者たちも合流し完全に奴等の周囲を覆った頃に事態が動いた。

「ライトニングファング!!!」

奴等の一人がそう叫び地面を殴りつけると地面が無数にひび割れていき、地中から空へと向かって光の柱の様なものが打ち上がり、地面ごと我々を飲み込む。

しまった。
こいつ等はこのために自分達を包囲し終わるのを待っていたのか!!

いまさら気付いても既に遅い。
包囲網ごとなぎ倒された俺達を尻目に遥か彼方へと遠ざかって行く人影が4っつ。
あわてて俺は部下達に指示を飛ばした。

「何をしている、早く奴等を追いかけろ。それでもゾルディック家の執事か貴様等!!」

部下達も奴等がすでに逃亡していることに気付き、あわてて後を追おうとしているが俺の叱咤でまだ前後不覚だった者達も立ち上がり後を追い始める。
もちろん俺も一緒に追いかける。
ここまでされて逃してなどなるものか。





<side:テオ>
「・・・行ったか?」

イグルスの声が聞こえるが答える余裕が無い。
俺は今他三体の自動型の『紙分身』を従えて逃げ続ける操作型の『紙分身』をコントロールするのに必死だ。
自動型の思考回路には操作型の後ろについて追っかけてくるようにだけインプットした。

後はばれるまで徹底的に逃げ続けるだけだ。

因みに俺は操作型のアニマクラフト発動時には自力で移動することが出来ないのでカルラに背負ってもらって移動することになる。





メリクの立てた作戦とはこういったものだった。

まず、全員で一度に姿を現すことで連中に伏兵がいることに関する警戒を頭から締め出させる。
ある程度四人で戦い、自分達の包囲がある程度整ってきたところでイグルスの『雷光電牙(ライトニングファング)』を用いて地面ごと抉ることで包囲網を破壊。
さらに同時に巻き上がる土埃を利用して自分達の紙分身と入れ替わり目視でばれない程度に引き離したまま執事達を釣る。

単純であるが俺の身代わり作成能力をあらかじめ知りでもしない限りほぼ確実に引っかかるだろう。
問題は俺の負担がむちゃくちゃでかいってことか。
どんどん離れていく紙分身のコントロール精度を保つためにガリガリオーラを削られていく。
早く脱出しなければ俺の方が先に参ってしまいそうだ。

「行ったみたいだな、んじゃ俺達も逃げるぞ」

「悪いけど、逃がす訳にはいかないんだよね」

突然呼びかけられて全員してそちらを振り向く。
そこには3人の執事服を着た俺達と同年代の少年達が立っていた。





<side:イグルス>
!?こいつ等いつの間に・・・

俺は全員釣ったはずの執事がまだ残っていたことにも驚いたが、なによりこの場にいながら気配を感じさせずにいたことに驚いていた。
こいつ等、かなり出来る。

だが、それよりも驚くことがあった。

「この感覚・・・まさか!?」

「お察しの通り、俺達はトリッパーだよ」

先ほど答えた少年が言う。

「トリッパーがゾル家の執事に!?一体どんな裏技を使えばそんなことが可能なんだ・・・」

カルラも驚いている。
そりゃそうだ。
排他的なことで有名なゾルディック家の執事ルートなんてある意味ゾル家に嫁ぐよりも難しいのではなかろうか?

「特に驚くことでもないさ、ただ単に俺達の生まれた家が元々ゾル家の執事の家系だっただけだから」

ちょっと苦笑気味に答える少年。

「そうなんだよな、おかげで既に執事としてゾル家に使えることは確定してるうえに自由に外にも出れん。折角の原作知識も使い道が無いし」

向かって右側の少年が続いて答える。
自由が無いことに不満を感じているらしい。

・・・そう言えば、原作知識といえば既に原作ブレイカーな感じだがその辺把握してるのだろうかこの三人組?
ゾル家に引きこもってるから案外何も知らなかったりしてな。

「まあ、そう言う訳でな。悪いが仕事だ、たとえトリッパーでも見逃してやる訳にはいかないんだ」

最後に左側の少年が締め、戦闘態勢に入る。

俺達も背負っていたリュックを下ろして戦闘態勢に移行し、俺とメリクはクロスを装着する。

テオは戦えない。
テオまで戦いに参加させると折角紙分身で引き離している執事部隊が戻ってきてしまう。

「おお、ゴールドクロスか」

「しかも、レオとアクエリアス・・・トリッパーしてるなぁ」

そんな羨ましそうに見られても微妙に困るが・・・

「んじゃ、次は俺達の番かな?」

徐に懐から取り出した何かを周りの岩に当てて音を鳴らす。

キィィィン・・・・・ィィィィィィィィィイイイイイイ

懐から取り出したのは音叉でその振動音は額に近づけるほど共鳴を増し音を高ぶらせる。

「まさか!?」

「ハァァァァァァ、ハァッ!!」

音叉の少年の体を紫の炎が包みそれを振り払うように弾き飛ばした後、その場に立っていたのは紫の肉体を持つ鬼の姿であった。

フィィィィィィィ・・フォォォォォォォォオオオオオオ

同じように懐から取り出した笛を吹いた右の少年は、全身に突風の様なものを纏わり突かせそれを手刀で払った後にその場には蒼い鬼の姿があった。

ジャラァァン・・・・ピシャァァァァァァァァァァァン

左腕に巻かれた腕輪に組み込まれた弦を弾き、空から落ちてきた雷に打たれその輝きの中で深緑の肉体の鬼と化した。

「音撃の鬼、ヒビキだ」

「同じく、イブキ」

「同じく、トドロキ」

それぞれに『原作』響鬼の武器、『音撃棒・烈火』、同じく威吹鬼の武器、『音撃管・烈風』、同じく轟鬼の武器、『音撃弦・烈雷』を取り出して構える。

「俺達ってさ、皆そろって仮面ライダー響鬼のファンだったワケよ」

「なるほどって言うか、お前等もしっかりトリッパーやってるじゃねぇか」

先ほどの発言に対してしっかり突っ込む俺。

「そう言えばどうしてここに残ったままだったんだ?」

返事は期待していなかったが気になったので聞いてみたら、返事が返ってきた。

「いや、何となくだよ。話を聞いてみるとどうもトリッパーっぽいとは思ってたから、自分達ならあれは囮にするなと考えただけだ」

「そうか」

そんな直感みたいなもので作戦を暴かれてたらたまらないな。

その後は互いに無言のままタイミングを計り、俺はヒビキ、メリクはイブキ、カルラはトドロキを相手にして、テオを除く3対3でぶつかりあった。





あとがき
ゾル家侵入編。
内部で好き勝手やるテオたち。
日が経つにつれて額の青筋が増えていくゴトー執事長。
そして、やっぱりここにもいたトリッパー。
トリッパーの能力はディケイド響鬼が結構面白かったので決めましたw

ゾル家の執事ランク分け表(この小説独自の仕様です)
執事見習い(基本的に念未修得)
下級執事(AOP = 1000前後)
中級執事(AOP = 2000前後)
上級執事(AOP = 3000前後)
執事長ほか、上級の役職に付く者達(AOP = 4000前後)


ところで、ぺんたはディケイド響鬼を見ててオリジナルのキャストが演じた雰囲気がしっかり出てるなぁって思ってたんですけど、よく見たら殆どみんなオリジナルキャストだった罠(笑
仮面ライダー響鬼の公式サイト見てたら同じ顔だったから吹いたわ、自分の人の顔覚えの悪さに(笑
斬鬼さんとか威吹鬼さんとか顔見て気付けや俺(笑

あ、あとぺんたはドラえもんは大山のぶ代派です(別にわさびドラを否定している訳ではないです、映画だって見てますし)。


感想、ご意見などありましたら宜しくお願いします。



[8143] 第十二話(加筆&修正)
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:1e5f2ff6
Date: 2009/06/11 17:26
<side:イグルス>
「ライトニングボルトォォォオ!!!」

先手必勝、と俺は自身と向かい合うヒビキに対して渾身のライトニングボルトを放つ。

「っはぁ!!」

だが、ヒビキは間一髪で斜め前に飛び込んで其れをかわし、音撃棒を振りかぶって叩きつけてきた。

ガキィ!!

俺はクロスの右腕部分でヒビキの一撃を受け止め、鍔迫り合いの様な状態になる。

「あんたが雷使いだってのはさっきのライトニングファングでわかってたからね、警戒していて良かったよ!!」

言いながらぐいぐいと押し込んでくるヒビキ。
まずい、力だけならヒビキの方が上らしい。

相手の力押しに対抗しようとして力を込めた瞬間に逆に力を抜かれ、体が流される。

まずい。

苦し紛れに振るった左腕をすり抜けて懐まで入ってきたヒビキが吼える。

「『音撃打・爆裂強打の型!!!』」

両の音撃棒を連続して叩き込まれ弾き飛ばされた俺はそのまま壁まで飛ばされ叩きつけられた。

「がぁ!!」

クリーンヒットしたがクロスのおかげで特に手ひどいダメージは無い。
毎度ながらありがたい装備だ。
俺はすぐさま起き上がりヒビキを睨み付ける。

「やりやがったな!!」

「・・・やっぱり硬いな、今のでその程度のダメージか・・・いくぞ!!」

ヒビキもこちらのダメージを検分しながらさらに追撃をかけて来る。

「っなめんな!!」

相手の追撃よりも早く移動。
目前まで瞬時に移動し右回し蹴りを放つ。

「!!っはぁあ!!」

瞬時に反応し音撃棒をクロスさせて受け止めるヒビキ。
そのまま勢いに乗ってその場で反転し、左手側の音撃棒だけで反撃をしてきた。

「チィ!!」

慌てて飛びのくが僅かにクロスをかすっている。

「ライトニングプラズマ!!!」

さらに追撃をかけて来たヒビキをライトニングプラズマで牽制し多少の距離を取る。

・・・コイツ、想像以上に強い。
伊達にゾルディックで執事やってないってことか。

俺は互いに距離を取って仕切りなおしとなったヒビキを睨み付けながらどう攻略するかを必死に模索していた。





<side:メリク>
「『氷結唐櫃(フリージングコフィン)』!!!」

私の叫びとともに大気中から集められた水分子によって周囲の大気が凍りつき、私の前に氷の壁が出来上がる。
その壁がイブキの放った音撃管・烈風の弾丸を受け止める。
だが、これだけでは時間稼ぎにしかならない。

「またそれか、何度やっても同じだ。それでは俺の技は防げない!!」

ヤツの言い分は正しい。
既に2回俺のフリージングコフィンをヤツの必殺技は破壊している。

ヤツは氷の壁の向こう側で再び烈風に音撃鳴・鳴風(おんげきめい・なるかぜ)を取り付け、必殺技を発動する。

「『音撃射・疾風一閃!!!』」

ププーーーーーップッ!!!

ビキビキビキ!!

氷の壁に撃ち込まれた弾丸が清めの音に反応して強烈な振動を発している。

ガシャァァァァン!!

やがて音撃の共振に耐え切れなくなった氷の壁が砕ける。

「ちっ!!」

三度目の氷の壁の破砕音を聞きながら尚も逃げ続ける。

「いつまで逃げ続けるつもりだ!!」

ヤツが吼える。

無論、勝機が出てくるまでだ。

だが、既に三度にわたるフリージングコフィンであたり一面に氷が散乱している。

・・・そろそろ仕込みは十分か。

私の念能力は『水』の操作と『水』が触れた物体の温度を強制的に剥奪するものだ。
そのため大気中の水分を操作して瞬時に大気の一部分を氷の壁にしてしまうことも出来る。

大気中の細かな水滴を氷の結晶と化し相手に叩きつけることで相手を凍りつかせるのが『極小氷晶(ダイヤモンドダスト)』だ。

そして、今の力では事前に仕込みをしていなければ使えない、もう一つの必殺技がある。

「そんなに見たいのなら見せてやる、これが、私の力だ!!!」

私の叫びとともにあたりに散らばっていた無数の氷が微細な粒と化す。
そしてそのすべてが両腕を頭上で組んだ私の手の上で一つにまとまり始める。

「アクエリアス最大の拳を受けてみろ、『極光処刑(オーロラエクスキューション)』!!!」

「っ!!」

ダイヤモンドダストとは比べ物にならない量の氷の結晶の濁流がイブキに襲い掛かり、避けようと行動を起こしたその姿ごと飲み込んだ。





<side:カルラ>
「うりゃぁ!!」

掛け声を上げながらトドロキが切りつけてくる。
俺はそれを避け、お返しとばかりにこちらの拳を叩き込む。

「エクスカリバー!!」

拳本体を叩き込まなくても神速で振られた手刀のオーラに触れただけでも十分に脅威だ。

「うぉぉぉ!?」

一目見てそれが危険であると判断したのか、トドロキは危うく腕を切り落とされそうになりながらも飛びのいてエクスカリバーを回避する。

「そう来るなら!!」

トドロキはそう言い、手にしていたギター剣を大地に突き刺し演奏を開始する。

「『音撃斬・雷電激震』!!!」

ギャンギャギャギャギャンギャギャギャギャギャギャギャギャギャアァァァァァァン!!!

ドバァァァァン!!!

「なぁ!?」

何をしているのかと考える暇も無く、掻き鳴らした音に反応して突き刺したギター剣を中心に地面が弾け飛ぶ。
それに巻き込まれて俺も空高く弾き飛ばされた。

「うぉぉぉぉ!!!」

さらにそこに弾き飛ばした地面の欠片を突き飛ばし、弾き飛ばしながらギター剣をこちらに突き刺す勢いで、叫びながら突進してくるトドロキ。

「うぉぉぉぉ!?!」

危うく突き刺さるところだった刃の先を白羽取りするように挟みこむことで何とか串刺しを免れたがトドロキの猛攻はまだまだ続く。

「『音撃斬・雷電斬震』!!!」

まずい。
両手で挟み込んだ刃を思わず放そうとするが、それよりもトドロキの演奏の方が早かった。

ギャァァァァァァアン!!

ドン!!と演奏の音波が両腕をズタズタにするのを感じながら衝撃波の直撃で弾き飛ばされる俺。
そのまま壁に叩きつけられるのを体勢を立て直して何とか足で着地、そのまま地面に降りる。

「っくそ、これはまずいな」

幸いにして指がちぎれたりした訳ではないが、それでも両腕ともに結構なダメージを受けてしまった。
これではエクスカリバーは使えないだろう。

一気に劣勢へと追い込まれ、どうするかと頭を捻らせていた俺に背後から声がかけられる。

「カルラ、伏せろ!!!」

その声がテオのモノであると気付いた瞬間には指示通りに伏せ、自身の頭上を通りすぎた何かがトドロキに直撃したのを見た。





<side:テオ>
俺はとうとう紙分身が執事達にばれたので、それ以上の維持は無駄と判断して自爆させ、こちらの戦場に意識を戻した。
ざっと戦場を見渡してみるとカルラが下手を打った瞬間らしく両腕をズタズタにされた場面だった。

あれはまずい。

既にカルラは戦闘不能になったと判断し援護に割って入ることにした。
瞬時に『模倣宝具(イミテーションファンタズム)』を発動。
カルラに伏せるように叫び、トドロキに向かって『カラドボルグ』を叩き込んだ。

それでもトドロキは反応し、ギター剣を盾にしたようだったが、直撃と同時に『ブロークンファンタズム』してやり、爆発に巻き込んでやった。
時間が無かったためオーラの量は不十分であったが、戦線離脱させるのに十分なダメージは与えられただろう。

「おい、動けるか?」

俺はカルラの容態を確かめる。

「大丈夫だ、自分で動ける。それより執事は?」

「ばれたから切り上げた。後5分くらいで戻ってくるからちゃっちゃと逃げるぞ」

もう一度戦場を見る。

ヒビキ対イグルスはほぼ互角で戦っているようだ。

イブキ対メリクはほぼ決着が付いたようである。
イブキが氷付けになって壁に張り付いている。

俺は膠着状態に陥っているヒビキ対イグルスに無理やり割って入ることにした。

瞬時に『矢』を精製する。
弓に番える『矢』は今回は『槍』である。

某運命なゲームで一躍有名になった『ゲイボルグ』である。
もっとも今回の中身、機能は神話準拠であるが。

「イグルス!!!」

俺はイグルスに声をかけてから矢を発射する。
声をかければヒビキのほうにも気付かれることになるが、一声かけておけばイグルスのほうで意地でも避けるだろうと判断してのことだ。

「『ゲイボルグ』!!!」

こちらの声を確認すると同時に地面すれすれにヘッドスライディングするように避けたイグルスとこちらの攻撃に気付いて迎撃しようとするヒビキとに分かれた。

弓から放たれたゲイボルグが真名に反応して数十の鏃へと姿を変える。
そこに至ってようやくこちらの意図に気付いたか、慌てて避けようとするが今回の攻撃は面制圧である。

チュドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドン!!!

逃げようとしたヒビキに数十の鏃が爆撃となって降り注ぎ辺り一面もろともに吹き飛ばす。

「がぁぁぁぁあ!?」

だが、さすがに無数の鏃に分解したゲイボルグの破壊力では気絶させるまでにはいかなかった様でそれなりにダメージは与えたもののすぐさま爆煙を払って飛び出してくる。

だが、その場には先にゲイボルグを回避していたイグルスが先回りしていた。

「!?」

「ライトニングボルト!!!」

ズガァァァン!!

渾身のライトニングボルトがヒビキに突き刺さり、そのままヒビキは崩れ落ちた。





「テオさん、ちょっと死に掛けたんですけどっ!!」

先ほど、ゲイボルグの余波で実はもろともに吹っ飛んでいたイグルスが文句を付けて来る。

「ゴールドクロス着けてるんだから直撃したって平気だろ、お前は。それより入り口が空いたぞ、今の内にトンズラしよう」

イグルスの文句を適当に流しながら逃走の算段を付ける。
囮で引きつけていた執事達が戻ってくるまでもう時間が無い。

俺たちは採掘場の洞窟から出ると同時に多量の紙を使って作成した巨大な鳥の背に乗り一気にククルーマウンテンから飛び去ったのだった。





<side:ゴトー>
視界の先に巨大な鳥が突如として現れる。

侵入者どもの念能力か!!

「手前等、このまま連中を逃がしたら主の方々に申し開きの仕様もないぞ、絶対に逃がすな!!!」

俺の号令と共に全員の移動速度が上がるが結局その鳥が飛び立つのに間に合わなかった。

「ちぃ、手前等はそのまま侵入者を追いかけろ、俺はこいつ等に話を聞く」

部下に指示を出しながら、その場に転がっている三人に目を向ける。
上級執事のサトー、アンドー、タナカ、それぞれの倅の執事見習いだ。

年の割には優秀だがゾルディック家の執事としては未だ自覚が足りないため執事見習いから昇格出来ないでいる。
恐らくは何らかのきっかけで俺たちが追っていった方を囮だと見抜いてこちらに残ったのだろう。

「・・・それにしても、凄まじい光景だな」

俺は洞窟内の惨状を見渡して呟く。

壁の一面が軒並み凍結され、一際大きな氷塊の中にはアンドーの倅が閉じ込められている。
コイツは早く救出しないとやばそうだ。

もう少し奥の方では何をされたのか全身こんがりと焼き上げられたタナカの倅。
こちらも結構なダメージだがまあ、命に別状は無さそうだ。

さらに、逆側の壁付近。
なにやら空爆でもされたかのような穴だらけの場所の中心にこれまたボロボロになったサトーの倅が転がっている。
コイツは比較的にダメージは浅そうだが、しばらくは目を覚ましそうにない。

まずはこいつ等の治療からか。

俺はここに残した部下達に彼等の治療を指示し、目が覚め次第に尋問を行なうことにした。





<side:テオ>
帰りどうしようかとか思ってたけど行きより楽に脱出できたな。

ゾル家の執事達がゾル家の敷地を飛び出してなお、飛び続けるこちらを見てとりあえずの追跡は諦めたらしい。

「しかし、よく生きて出られたなぁ」

思わず独り言が洩れるがゾル家内であれだけ好き勝手してよく生きて脱出できたものだと改めて思った。

「まあ、今回は運が良かったのもあるかもな。最後までゾル家の主人達が出てこなかったし」

次はこうはいかないだろうな、とカルラ。
次とか言ってるが、また誘ってくるようなら友人関係は改めようと真剣に思う。

「まあ、とにかくこれだけの量があればクロスの作成には十分ですよね?」

イグルスが確認してくる。
確かにクロス2セット分どころかさらに複数個追加で作成できるレアメタル量を期待できるだけの数の鉱石を盗ってきた。

「まあ、実際に精製してみないとどれくらいあるかはわからないけどな」

やっとこさ死地から開放されたためか気分が高揚している。
俺たちはその後も雑談をしつつ、適当なところで目立たないように紙鳥を着地させ、そこからは通常の交通機関を利用してアジトまで戻ることにした。





5月の末頃にアジトまで戻ってきた俺は早速レアメタルの精製を行っている。
思ったよりも質の良い鉱石ばかりを盗って来れたようで順調にレアメタルが精製されている。

カルラ達はクロスの作成が終わるまでアジトに残るつもりのようでゴクウやテトラと雑談したり修行したりと色々やっているようだ。



6月の初頭、クロス一着分のレアメタルの精製が終わり早速山羊座(カプリコーン)のゴールドクロスの作成に入った。
製作は順調である。
エクスカリバー使用時の負荷を考え、両腕のパーツの強度は他のパーツよりも強化されるように配慮し、また攻撃の起点となる箇所であるためオーラの精度を僅かでも上げられるように細心の注意を払った。
さらに、万が一のエクスカリバー失敗時のために失敗時に負担がクロスのほうにも流れるようにサービス。

数日後、山羊座のゴールドクロスが完成した。
既に完成した設計図が存在し、既に二度作成したことのあるものであったためそれほど手間取らずに作ることが出来た。

本日は実際にカルラに試着してもらっての機能テストである。

「んじゃ、早速よろしく」

俺の開始の合図にカルラが頷いて片手に持ったクロスボックスを掲げる。

「来い。山羊座(カプリコーン)のゴールドクロスよ!!!」

カルラの呼びかけに反応し、クロスボックスが分解し中に収められていた山羊座のゴールドクロスが飛び出す。
そして、無数のパーツに分解し一瞬でカルラの体に装着され、ここに新たなる黄金聖闘士、山羊座(カプリコーン)のカルラが誕生した。

その後、クロスを装着した状態でのオーラコントロールの確認や動きを阻害されること無く動けるか等の確認を行い、特に問題はないとの判断をし、クロス完成&新聖闘士誕生記念パーティーと銘打って馬鹿騒ぎすることとなった。





<side:???>
ようやく見つけた。

しかし、灯台下暗しってやつか。
まさか、彼がヨークシンにそのまま潜伏していたとは思わなかった。
・・・おかげで探索に無駄な時間をかけてしまったな。

一月頃の仕事でシャルナークとノブナガが仕事をしくじったと聞いた時には耳を疑ったし、後にクロロからソイツの正式な調査の依頼が来た時はもっと耳を疑ったけど。
そして、実際に標的のことを調べてみれば数年前にここヨークシンで猛威を振るった怪盗団のメンバーであるという。

「使えそうにないと判断したのなら殺せ。か・・・」

クロロの言葉を思い出す。

シャルナークとノブナガの二人を相手にして逃げ切った標的に興味を持ったのだろうか、もしかしたら後の旅団員候補として唾をつけておくつもりなのかもしれない。
まあ、どちらにしても今日の僕の襲撃を生き延びることが最低条件だが。

僕は頭を振って思考を霧散させる。
クロロの考えなどに頭をめぐらせていてもしょうがない。

僕は仕事を果たすため、標的の彼、知る人ぞ知る『ヨークシンの怪盗ルパン』こと、テオ・ペッパーのアジトへと踏み込んだ。





<side:テオ>
パーティーもお開きとなり片付けは明日に回して全員就寝となった。

俺もここ数日クロスの作成で睡眠時間を削っていたのでさっさと寝ようと思っていたのだが何故か寝付けない。

どうも首の後ろがチリチリする感覚を感じている。
少ししてこの感覚が何なのかを思い出す。

マフィア時代よりもさらに前、森の中で浮浪児をしていた頃の感覚だ。

当時、今と比べても遥かに弱かった俺は常に周りの変化に敏感に反応していた。
そうでないと次の瞬間には自分が死ぬからだ。

そこまで考えが到った瞬間に俺は自分が寝ていたベットから跳ね起きる。

その刹那の後、自分が寝ていたベットが切り裂かれ真っ二つに分かれた。

「へえ、今のを感づいたんだ」

襲撃者が関心したようにつぶやく。

俺に攻撃を加えた人物の姿は陰になっていて確認できない。
だが、それよりも何時こいつが俺の部屋まで入ってきたのかまったく分からなかった事に俺は戦慄を感じていた。

・・・何者だ、こいつ?

森で生きていた幼年期の感覚が対峙している相手が容易ならざる存在であることを伝えてくる。
あの頃の感覚を思い出さなければ今頃あのベットと同じ運命をたどっていただろう。

「誰だてめえは、何のつもりだ!!」

思わず吼えた俺の言葉に襲撃者はあっけらかんと答える。

「ん、僕は戦いに来たんだよ、君と。依頼でね」

右腕に握ったナイフをいじりながら襲撃者が答える。

・・・あのナイフでベットを切断したのか?見たところベンズ・ナイフではないようだが相当な業物のようだ。

気付かれずに枕元まで近づかれたことを警戒してこちらが行動を起こせないでいると、向こうから行動を起こしてきた。

「言っただろ、僕は君と戦いに来たと。何時までもぼうっとしてないで戦ろうよ」

言葉と共にこちらへ接近しナイフを振るう。

ナイフを振り上げこちらへと突っ込んできたその一撃を防ぐため、俺は自分と襲撃者との間に紙の盾を構築して相手の攻撃を妨害しようとした。

ゾン!!!

そんな感じだっただろうか、紙の盾をまさしく紙を切り裂くように切り払った襲撃者の一撃は、返す刀で俺の左腕をも切り落としていた。

「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!!!」

痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、イタイ、イタイ、イタイ・・・

痛覚を捻じ伏せろ。
今はそれに構っている場合じゃない。
無理矢理オーラで止血をし、慌てて襲撃者と距離をとる。

今の間にでも俺を殺るには十分だったはずだが、襲撃者は特に行動は起こさずにこちらを観察していたようだ。

「う~ん、こちらの攻撃をとりあえず防ごうとしたのはいいけど、突破された時の対応がちょっとまずいなぁ」

・・・こいつは何が目的なんだ?
さっきから、まるでこっちの行動を審査でもしているような口ぶりで・・・

それにさっきの一撃もおかしい。
紙の盾を切り裂かれたのは百歩譲って良しとしても、既に『堅』の状態だった俺の左腕を当たり前のように切り取られたのは納得がいかない。

オーラを無視して攻撃を加えることができる能力なのか?

冷静になって考え、状況を分析していると相手と目が合う。

青々とした光を放つその両眼と。

俺の脳裏に1つの可能性が浮かび上がる。
それの可能性が真実であれば自分の腕を切り落としたのも、紙の盾を無視されたのも、俺がこいつに命を握られているという感覚を感じているのにも納得がいく。

「・・・その目」

「ああ、気付いた?」

彼はやっと気付いてもらえたといわんばかりにうれしそうに答えた。

「そうだよ。僕の両目は『直死の魔眼』の再現さ」





<side:カルラ>
何かがおかしい。

俺は眠っていたベットから起き上がり周りの気配を探る。

・・・やはり変だ。

何らかの胸騒ぎを感じたのだろうか、俺はあてがわれた客室から出、胸騒ぎを感じる方向、テオの自室のほうへと向かっていた。

「む」←カルラ

「お」←イグルス

「あ」←ゴクウ

「え」←メリク

「わ」←テトラ

テオの自室へと続く道でほかの皆と鉢合わせした。
どうやら全員胸騒ぎを感じてテオの部屋へと行く途中だったようだ。

全員でテオの部屋へと向かう。

テオの部屋が見えてきたところで、部屋の中から大きなオーラが湧き上がるのを感じた。

誰ともなく、皆が全力で走る。

バン!!

「テオっ!!!」

テオの部屋のドアを蹴りあけて見たものは、まさに今、心臓にナイフを差し込まれたテオとナイフを差し込んでいる見知らぬ少年の姿だった。





<side:テオ>
危なかった。

再び突っ込んでくる気配を見せた襲撃者に先手を打って紙の壁を展開し視界をふさいでいる間に紙分身と入れ替わり、視界から外れるために空へと跳んだ。

まさに入れ替わった瞬間のタイミングで三重に展開した紙の壁が突破され俺の紙分身にナイフが突き立てられる。

ここで使った紙分身は今までの紙分身のように人型の紙の塊を作るだけではなくその上に新しい念能力『幻影の衣(ミラージュコート)』をかぶせて近距離で見ても容易には見破られないようにしたものだ。
その名も『紙技・鏡像紙分身の術』。
紙分身が逃げる時の囮にしか使用されていないことに気付き、どうせなら完全な囮役として使えるようにと外見もそっくりに擬態させた一品である。

・・・ゾル家で執事達に囮がばれた理由がある程度近づかれて冷静に観察さ、人間ではないと気付かれたためであるのでもっとしっかり作りこもうと新しい念能力まで作って開発したのだが、早速役に立った。

バン!!

「テオっ!!!」

人の部屋のドアを蹴破って入ってきたみんなの前で、鏡像紙分身がばらばらに分解し襲撃者が僅かに目を見張るのが見えた。

その一瞬の隙こそが反撃のチャンス。

「『紙技・紙爆雷の術』」

瞬時に数百枚分の紙で作り上げた紙の帯で相手を縛り上げる。

「!!」

「死ね」

一言告げるか否かのうちに巻きつけた爆雷符を起爆。

ドゴァァァァァン!!!

凄まじい爆音が鳴り響く。
かつての天空闘技場での未完成品とは違う、全爆発エネルギーを内側に集約させた完成版だ。

爆発と同時に仲間達の元まで下がる。

やがて爆発の煙がはれた時、そこには既に誰もいなかった。

「・・・起爆の瞬間に拘束していた紙帯を切られた感触があった、撤退したのか?」

全員で襲撃者の気配を探るが一向に捉えられない。

しばらくして本当に撤退したのだと確信したのと同時にそれまで緊張でごまかされていた左腕の激痛と疲労で俺はその場に崩れ落ちた。





<side:???>
僕は標的のアジトへ侵入する前にアジトを見下ろしていた丘まで戻ってきていた。

「どうだった、ヤツは?」

後ろから声がかけられる。
俺たちの組織、《タランチュラ》の仲間の一人であるマガツだ。
他の仕事で近場にいたので合流することになっていた。

「うん、思ってたよりもずっと骨があったよ」

そういいながら持ち帰った左腕をマガツに見せる。

「片腕落とされても反撃してきたし、危うく死ぬところだったよ」

そう、最後の爆発は僕でも直撃したら危険であると解かるほどのものだった。

「クロロ、依頼主に報告しに行かなきゃね」

僕達はそう言い合いながらその場を後にする。
次に会うなら九月かな?

僕は次の大きなイベントを思い浮かべながら九月までにテオ・ペッパーがどう成長するのか少し楽しみになっていた。





<side:ヒビキ>
「俺たちは主の方々のお世話をしなければならない。よってお前達三人を連中の追撃に出すことにした」

ゴトー執事長が額に青筋を立てながらこちらに告げている。

命令の内容は既に理解しているが、これは一種の様式美なのだろう。
正式な上司からの命令とするためには必要なことだ。

「いいか、ヤツらを見つけるまでは戻ってこなくてかまわん。必ず見つけ出してゾルディック家執事の誇りにかけて殺せ」

ゴトー執事長は静かに命令する。

好き勝手に自分達の守護している主の庭を荒らされたのだ。
本来なら自分で始末しに行きたいところだろう。

俺たちは静かに頷き執事館を後にした。

あれだけ外に出たいと願ったものだが、いざ出られた理由が俺たちをさんざんにコケにした連中のおかげというのが複雑だな。

「連中もトリッパーだ、九月のヨークシンに現れる可能性が高い。それまでは十数年ぶりの自由でも満喫してみるか」

俺はイブキとトドロキにも確認を取り、九月まで何をして暇をつぶすか考えながら試しの門を押し開いた。





あとがき
十二話投稿がだいぶ遅くなりました。
今回、なかなか筆が進まなかったため展開がちょっと強引になったかも知れないです。

ククルーマウンテンからの帰還。
山羊座の黄金聖闘士誕生。
アジトへの侵入者。
の三本でお送りしました。

※6/11 追加、侵入者戦終了、チーム猛士ゾル家出立まで。


感想、ご意見などありましたら宜しくお願いします。


※6/11 加筆及び修正。





[8143] 第十三話
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:1e5f2ff6
Date: 2009/06/19 07:58
<side:テオ>
俺が目を覚ましたのは襲撃から三日たった後だった。

俺が気絶したことでオーラで抑えていた左腕の傷口が一気に開き、かなり危ない状態まで言ったらしい。
慌てて止血をし、普段世話になっている闇医者の元に担ぎこんだのだという。

左腕はなぜか見つからず、仕方なくそのまま手術に踏み切ったらしい。

まあ、今は紙技で擬似的に左腕を再現しているのであまり不便はないが、そのうちちゃんと義手を作らないとまずいだろう。

それよりも左腕が見つからないというのが痛い。
十中八九、あの野郎が持ち帰ったに違いない。

「念の触媒とかにされたら最悪じゃないか・・・」

ハァ・・・

とため息が出る。

何しろ自分の五体の一部だ。
さぞかし、効果抜群の触媒になるだろう。

「何ため息なんかついてんだ」

人が鬱になっていると、ドアが開いてハオが入ってくる。

・・・ハオたちにもアジトが襲撃されて俺が重症だという連絡はすぐに知らされ、俺が昏睡状態の三日間の間に全員してこっちに戻ってきていた。

「いや、俺の左手。どうしようかと」

「?義手作るんじゃないのか?」

「そっちじゃなくてもってかれたほう」

「・・・ああ、そうか」

俺の言いたい事を察したらしく、真剣に考え込むハオ。

「とりあえず、身代わりになってくれるアイテムでも作るしか無いな」

やっぱりそれしかないか。

「とりあえず、身代わりアイテムは俺が作っとくからお前は完治することを優先しとけよ」

・・・お心遣い、痛み入ります。

その後は、一日中『絶』でいたり、患部にオーラを集中させてみたりと色々試しているうちに一週間が経ち、その頃には殆ど傷は完治していた。

退院後に渡されたハオ謹製の身代わりアイテムはお守り型だった。
左腕を触媒にした念攻撃専用で、感知した場合はその効果を身代わりの藁人形に移す効果があるらしい。

ハオ、マジサンキュー。
命に関わるので常に持ち歩くように気を付けようと思った。





とりあえず、襲撃までされたアジトにいつまでもいられないということでさっさと移動することにした。
とは言ってもよその町まで引っ越すわけではなく、単にヨークシンの町の中で新しいアジトを用意するのだが。

街中だと警察関係でちょっと厳しくなるが(何しろ未だに俺とハオの手配は解かれていない)また郊外にアジト作って襲撃されるよりかはマシである。
街中に作っても襲われる時は襲われるのだろうが。

とりあえず、金はあるのでヨークシンのビジネス街近くのビルを土地ごと買い、研究所兼自宅として使うことにした。

未整備地区の方がもっと安く手に入るがさすがに旅団のアジトになる予定の土地には手を出さない、という訳で反対側の土地を買った。
旅団とのブッキングはもう御免である。

・・・案外あの襲撃者の依頼主はシャルナーク辺りだったりして・・・

かなり嫌な予想が頭をよぎり、慌てて頭から追い出す。
こんなこと考え出したらキリが無い。

さっさと引越しを終わらせよう。





引越し自体はすぐに終わった。
いくつか大型の機械類はばらして、某ネコ型ロボットの取り寄せバック的な念アイテムで新アジトに移動させ、組み立てるだけであったし、小物は小物で自分達で持ち運んだり同じように取り寄せバック的念アイテムで引っぱってきたりしていたらすぐに引越しは完了した。

「と言う訳で、早速俺の義手を作ってみたいと思った訳だが・・・」

とりあえずどのような機能を持たせるか、だ。

ただ普通の義手とするのはいささかもったいない気もする。
せっかくなので、皆にも意見を出してもらうことにした。





「義手の機能ですか?」

一応、有限会社ストレンジャーズの社屋でもあるため、受付の内装などを整えていたテトラを捕まえて聞いてみる。

「そうですね、やはり義手、機械の腕の機能といえばロケットパンチが妥当かと」

・・・まさかテトラからロケットパンチが飛び出してくるとは思わなかったが、貴重な意見として聞いておくことにした。

「ゴクウ、お前は何かアイデアあるか?」

「ん?俺もですか?」

同じく受付の内装を整えていたゴクウにも聞いてみた。

「・・・そうですね、如意棒みたいに延び縮みするのはどうですか?こう、『伸びろ、左手!!』とか言ったらみょ~んと伸びるような、もしくはゴムゴム的な感じで」

「・・・わざわざ伸び縮みする機能を作るくらいならロケットパンチでいいんじゃね?」

「・・・それもそうですね、ならドリルとかどうです?」

ドリルか、こっちはありかもな。

「それならありかな、仕事邪魔して悪かったな」

いえいえ~、と互いに手をプラプラさせながらテトラ、ゴクウと別れる。

「次は誰に聞いてみるかな~」

とりあえず上の階に移動してみた。



新社屋の二階は通常の接待室などだ。
一応、会社としての活動もしているためたまに客が来ることも想定しておかないといけない。
まあ、来るとしても大体身内なのでそこまで気を使わなければいけないわけでもないだろうが。

二階の内装をチェックしていたのはハオだった。

「ハオ、お疲れ。どんな感じだ?」

「ん、テオか。まあ、とりあえず無難な感じにまとめてみた」

改めて見渡してみる。
・・・確かに無難だな。
普通に会議室とかそんな感じだ。

「まあ、内装はお任せだしいいや。ちょっと質問いいか?」

「お任せって・・・質問って何だ?」

「ああ、義手の機能について何だけど・・・」

俺は義手に何か機能を付けることについて意見を求めていることを話した。

「う~ん、そうだな・・・」

腕を組んで考え込んでいるハオ。

「俺が思いつくのは仕込み銃とかくらいかな?」

銃か、そういうのもありかもな。

「おう、わかった。参考にさせてもらうよ」

ハオとの会話を切り上げて、俺は三階へと向かった。



「仕込み刀だな」

三階、トレーニングルームに入るとタクヤを見つけたので相談してみたら、ノーウェイトで答えが返ってきた。

「いや、刀とかどうやって腕に仕込むんだよ」

一緒にいたハンゾーが突っ込みを入れている。

「刀を仕込むくらいは出来るぞ」

「マジでか」

マジだ、別に実際の刀を仕込まなくてもいいのだから、紙で刀を作るようにすればいいのだし。
まあ、その場合腕に仕込む理由がまったく無くなるが。
わざわざ仕込むくらいなら普通に刀型に紙型を作ればいいだけなのだし。

「まあ、一応参考にはしてみるわ。ハンゾーは何かアイデアある?」

ハンゾーにも話を振ってみた。
忍者だし、こういった裏技的なものには詳しいかもしれないし。

「俺もか、う~ん、そうだな。倉庫みたいに使えるようにするのはどうだ?腕の一部がスライドして中から好きなものが取り出せるようにしておくとか」

ハンゾーのイメージからして左手を大砲にしようとか言ってくるかと思ったら案外と真面目な案が出た。

「ほら、俺って忍だからよ。任務に出るときは必要になるかもしれない色々な物を持ち出して任務に当たってたんだがやっぱりそれなりに邪魔にはなってたんだよな」

経験則からか。
ならば貴重な意見としてしっかり受け止めなければな。

そう言えば俺もあの時あれを持ってきてれば、という事は何度かあったな。

「参考になったよ、サンキュー」

「役に立ったのなら僥倖だ」

腕を組んでうむ、と頷くハンゾー。

その後は多少雑談などした後、別れて四階へと向かった。



四階は研究開発などをメインに行う階だ。
そこにはイグルスとメリクが居て、機材のチェックや回線の接続などを手伝ってくれていた。

「う~す、お疲れ~」

「ん、お疲れ様です」

「お疲れです」

俺に気付いたイグルスとメリクが挨拶を返してくる。

この二人、ストレンジャーズの社員ではないのだが俺が襲われた現場にいたのに何もできなかったことを気にしてこうして残って手伝ってくれている。
結構うれしかったのでゾル家訪問時に心に決めた復讐はやめることにした。

まあ、どうせなら九月までここに居ようという打算もあるのかもしれないが。
どの道助かっていることに変わりはないのっでそのくらいは問題ない。

わが社はいつでも人手不足なのだ。

この二人にも皆と同じように聞いてみた。

「義手の武装ですか・・・」

二人とも考え込んでいる。

「純粋に硬くするとかでいいのでは?」

「あ、それいいですね。左腕そのものを盾にもできますし」

イグルスが思いつき、メリクがそれに追従する。

しかし、硬くする、か。

「・・・何か問題あったですか?」

考え込んで黙ってしまった俺を見て不安を感じたのかイグルスが聞いてくる。

「いや、黄金聖闘士のお前等らしい答えだったなと思っただけだよ」

ゴールドクロスの防御力が前提だからな。
こいつ等の戦い方って。

「そうですか、どうせならテオさんも黄金聖闘士になっちゃえばいいんじゃないですか?」

突然だったがイグルスに言われて考えてみた。



俺が黄金聖闘士になるとしたら・・・

1.クロスの作成、修復が可能であることから牡羊座の黄金聖闘士?

2.紙技を利用してのロイヤルデモンローズを再現して魚座の黄金聖闘士?

3.必殺技の模倣宝具(イミテーションファンタズム)の弓と矢とにかけて射手座の黄金聖闘士?



といったところだろうか?

1番はまあ、普通か。
ただ、クロス作成とかはともかくとして、牡羊座(アリエス)のムウの技の再現はかなり難しそうだな。
クリスタルウォールって何なんだ?何で再現すればいいんだ?

スターライトエクスティンクションも再現の死ぬほど難しい技だよな。
原作版だと光の柱に飲み込まれてあの世逝きだったよな。
エピG版だと技で生まれた光が飲み込んだものを消滅させるとかだったっけ。

スターダストレヴォリューション。
原作版では光の流星群を相手に叩き込む技だったな。
エピG版だと隕石を作り出して直接ぶつける・・・

無理だな。



2番は絵的にNGだな。
能力的には一番再現しやすそうだけど・・・



・・・妄想開始・・・

魔眼野郎(仮想敵)と向かい合う魚座のゴールドクロスを着込んだ俺。

「死ねぇ、テオ!!!」

ナイフ片手に襲いかかってくる魔眼野郎、だが俺は臆したりはしない。

「ふ、君の攻撃には『美』が足りないな。そんな醜い攻撃では私には届かない」

何処からとも無く、一輪の薔薇の花を取り出し魔眼野郎のナイフを受け止める。

「な、何!!」

「君のその『醜い』力では私の『美』を破壊することは出来ない。食らえ、『王魔薔薇(ロイヤルデモンローズ)』!!!」

「ぐわぁぁぁぁ!!!」

無数に咲き乱れる薔薇の花に見送られながら車田落ちをする魔眼野郎。

「ふ・・・、強いという事もまた、『美しさ』なのさ・・・」

・・・妄想終了・・・



・・・却下。
バラの花で攻撃とか、いちいち『美』に基づいて行動しなきゃいけないとか俺が羞恥で死ねる自信がある。



3番、コイツはちょっと曲者なんだよな。
原作設定だと技の設定が無いためクロスの制約が緩いのだが、その分クロスとしての強度が緩くなってしまい、ゴールドの強度まで届かないためエピG設定を使うしかない。
エピG設定だとインフィニティブレイクがあったな、小宇宙(コスモ)を無数の光の矢に見立てて攻撃を行う技だがこれ、手数多すぎて放出系でも再現無理じゃね?
さすがに光の矢とかを紙技で再現するのも無理があると思うしなぁ・・・

コイツも無理っぽい。

「と言う訳でどうやら俺が聖闘士になるのは無理そうだ」

「う~ん、そうですか。仕方ないか」

イグルスもメリクも残念そうだ。

・・・ふと思ったんだが、これ以上再現可能なゴールドセイントって残ってるのだろうか?

まあ、俺が考えてもしょうがないことだ。

俺は二人に礼を言ってから五階へと移動することにした。





五階から上は皆の住居である。

・・・社長室?二階の端っこの方にあるよ、一応。
まあ、殆ど使用しないだろうが一応、用意はしておかないと、とハオが言ってた。

五階部分は客室などで、六階部分がストレンジャーズ社員の部屋の割り当てとなっている。

ここではカルラが家具などの運び込みを手伝ってくれていた。

因みに内装などは業者さんに頼んで一足先にやってもらっていた。

「義手の機能?」

早速カルラにも聞いてみた。

「そうだな・・・、手刀でなんでも切れるようにするとか?」

お前の能力そのままじゃん。

「・・・すまん、思いつくのは大体皆に言われてる」

まあ、こういうこともあるか。

手間取らせたことを詫びた後、俺は六階の自室に行きそこで皆から聞き出したアイデアをまとめることにした。





「さて、まずはまとめてみるか」

皆から提案された機能はこうだ。

1.ロケットパンチ(伸びるパンチ)

2.ドリル

3.仕込み銃

4.仕込み刀

5.アイテム倉庫

6.硬度を上げて盾の代わりにする

まあ、伸びるパンチは手間に見合うだけの効果が期待できないので却下だが。

ぶっちゃけ、紙技を応用させれば全部再現可能であるところが笑える。

ロケットパンチはそのままだと色々と物足りないな。
少しネタを仕込もうかな。





なんだかんだで一週間が経過した。
義手の設計も基本フレームの作成が終わり、各アイデアの組み込みと動作試験を行う前の試運転をするために郊外の荒野まで出てきたところである。

義手といっても基本は紙技で作成した左手の応用だ。
左手作成時にそれを補佐する念アイテムを通すことでより効率的に左腕の操作を行い、バッテリーを組み込むことで通常形態であれば24時間常に展開していても消耗しないで左腕を維持できるようにした。
このバッテリーは左腕接続部から直接オーラを供給しており、POP(潜在オーラ量)自体がスッカラカンにならない限り切れることはない。
『絶』を使用しても左腕が維持できなくなることが無いようにしている、もちろんそれが原因で『絶』が不完全にならないように対策もした。

ちなみに、左腕を構成しているのは紙ではなく例の盗ってきたレアメタルを使用することにした。
何しろ、物理的に硬いしオーラの伝導性もいい。
武器代わりにもする予定なのだからこれくらいの強度やオーラ耐性はほしかった。

とりあえず、このくらいやっておけば基本フレームとしては十分じゃないだろうか。

基本フレームの動作確認はこれくらいにして各機能の実験に移ることにした。

左手を専用の形態へと変化させるのには別途に作った形態情報などを神字で書き込んだカード状のものを左腕肘部分に挿入するライダーマンのカセットアーム的なシステムを参考にしてみた。
カードを左肘スリッド部へと挿入することでカードに刻まれている神字を読み込み、その設計図通りに左腕の構造を組み替えることが出来る一品である。

まずはマシンガンアーム。
ハオの仕込み銃のアイデアを発展させたものだ。

左肘スリッド部にマシンガンアームのカードを挿入する。

すると、左腕が機関銃の形に変化した。

「形態変化は問題なしか」

ちなみに、このマシンガンアームで使用する弾丸は紙製の弾丸である。
紙供給部に紙を挿入して内部で瞬時に弾丸状に組み上げ、オーラの圧力と銃口内部に刻まれている神字によって加速され発射している。
俺は紙使いなので、弾丸に紙を使うのはある意味当然だが。

無論、試し撃ちもしてみた。

ガガガガガガガガガガガガガ!!!

「うむ、連射速度も中々だし威力も悪くない」

的にした大岩が瞬く間に穴だらけとなり崩れ落ちるのを確認し、想定した性能を満たしているのを確認して、次の武装の試験に移ることにした。



次に取り出したカードはテトラとゴクウが提案したロケットパンチとドリルとをあわせたアームだ。
最初は普通にロケットパンチとして開発していたのだが、ぶっちゃけ想定していたほど威力だ出ないことが判り、急遽ほかのアイデアも取り入れて作り直した。

その名も、

「ブロウクンアーム、セット!!」

宣言と共にブロウクンアームのカードを挿入する。

すると今度は左腕の肘から先の部分が二周りほど巨大化し、機械的な腕となる。

拳を握り締めると手首部分から反時計回りに回転をはじめ、腰だめに構えた一気に拳を突き出して叫ぶ。

「ブロウクンマグナァァァァァム!!!」

ドゴォン、バキバキバキバキ!!!

と高速回転したまま発射された拳は的にしていた大岩を即効でぶち抜き、その先に広がっていた森林を一直線に破壊した後、やっと上空に飛び上がり戻ってきた。

「う~ん。まだ発射後の制御が甘いな」

威力は十分なのだが。

コントロールに関しては今後の課題と言う事にして、今回作成した最後の武装の試験に移ることにした。



最後に取り出したのはブレイドアームのカードだ。
最初は仕込み刀を入れるなら普通に紙型で作ったほうが楽じゃね?と思ったのだが、アイデアがひらめいたので作ってみた。

このカードを挿入することで左腕手首部分から剣を生やすような形に変化する。

『ダイの大冒険』の敵キャラ、超魔生物ハドラーの覇者の剣展開状態をイメージしてみた。

ついでに技もリスペクトしてみた。

「『超魔爆炎覇(ちょうまばくえんは) 』!!!」

刀身に刻まれた神字により、オーラを爆発エネルギーに変換し対象に接触した瞬間に開放する。

ドガァァァァァン!!!

威力は凄まじく、的にした大岩が見事に消滅していたが至近距離での大爆発に、技を仕掛けたこっちもこんがりと全身を焼かれて大ダメージだ。

「・・・とりあえず、爆発エネルギーに指向性を持たせるように改良しなければ・・・」

あれだけの爆発で傷一つ無い刀身の強度は合格点だったが、早急に改良しなくては。



ハンゾーの提案した倉庫化は左腕ではスペースが足りなかったため断念することになった。
まあ、これに関しては取り寄せバックとかあるから問題なかろうと思う。
取り寄せバックはオーラ消費量が激しいから戦闘中は使えないが。

黄金聖闘士達の提案は、基本フレームにレアメタルを使っている時点で達成されているようなものだ。





そう言えば、もう一つやるべきことがあった。

おれ自身の現在のオーラ量の確認である。

あの魔眼野郎に左腕を切り取られたことが影響したのか、傷が完治した頃には顕在オーラが大分上昇していることを感じていた。

優先して片付けるべき事柄が終わったので確かめてみた。

・・・

AOP = 200

MAX_AOP = 5500

と出た。

これはうれしい誤算だ。
左腕を失ったことが明らかに俺の念に影響を与えている。

この調子でいけばそう遠くない内に、あの魔眼野郎に今回の礼が出来るかもしれないな。





義手を作成している傍ら、テトラにはあの魔眼野郎が何者なのかを調べてもらっていた。

「何かわかったのか?」

「はい。狩人の酒場を覗くまでも無く、地下の情報サイトで見つかりました」

テトラの表示した情報には、こう記されていた。



名前:シキ(本名でない可能性大)

念系統:不明

念能力:不明
 何らかの条件によりオーラ防御を無視したダメージを相手に与えることが出来る。
 (その際、両目が青く光っていたとの証言あり)

備考:
 流星街出身。
 ハンター暦1996年頃に発生した流星街での幻影旅団による大量殺人を生き延びた子供であると言われている。
 現在は組織《タランチュラ》に所属し、主に幻影旅団の依頼を受けて調査、暗殺などを行っていると推測される(ハンター暦2000年6月現在)
 A級賞金首である。
 
ここまではいい、A級賞金首は驚きだが、知りたかった情報はおおよそ入手できていた。
だが、此処から下が問題だった。



《タランチュラ》
主に人物調査、暗殺などを活動内容としている組織。
構成人数は不明。
幻影旅団との関係が深いと思われる状況証拠あり(タランチュラ構成員と目されている人物が旅団の活動中に目撃されることが多々あるため)
ハンター暦2000年6月現在、タランチュラ構成員は全員がA級賞金首となっている



「・・・まじか、これ」

旅団に下部組織がいたなんて原作では触れられてなかったぞ?しかも、全員が旅団と同じ脅威度の扱いを受けてるし。
原作では流星街の歴史なんてそれほど触れてなかったけれど、旅団の連中は自分の故郷で一体何をやっているんだ?

魔眼野郎の情報を洗ってもらってたのに、ソイツの所属している組織の方にびっくりさせられた。

・・・ん?1996年?

1996年という年号に妙に聞き覚えがある気がする。

「たしか、カルラさんがおっしゃってたクルタ族の一件も1996年でしたね」

「それだ!!」

俺はテトラに調査の続行を頼むと、クルタでの一件を聞くためにカルラの元へと飛んでいった。





カルラから当時のクルタ族防衛戦の話などを聞いたことで、一つの推測が立った。

1996年のクルタ族防衛戦時に参戦していたあまりに不自然に強い子供達(カルラたち防衛戦に参加したトリッパーのことだ)を見た旅団員、おそらくは団長が流星街においても自分達をかぎまわる子供を見つけて繋がりを感じたことでその子供の記憶を抜くなりしたのだろう。
そう考えると1996年頃に発生している流星街での大量殺人の被害者が全員俺たちと同年代の子供であると言う調査結果にも納得がいく。
旅団はトリッパーと言う名の未来知識保有者=自分達の念能力についてある程度把握しているものが多数存在していることに気付き、排除しようとしたのだろう。

その後は完全に皆殺しにするのではなく子飼いにして自分達に不都合な人物の暗殺などをさせている。
よく調べてみれば暗殺対象となった人物達は皆、旅団に対する何かを発表しようとした、もしくは情報を流した形跡のある人物達(ほぼ同年代の子供=トリッパーなのだろう)であった。



おそらく、ほぼ確定だろう。

手に入った情報から見て、旅団にはほぼ確実に原作知識が洩れている。

原作崩壊も此処まで来ると、笑う余裕も無くなる様だ。





<side:ハオ>
「・・・マジかそれ・・・」

さすがの俺も呆然とするしかない。

義手の開発も終わって、此処しばらくはご機嫌だったテオが沈み込んでいたので何があったのか聞いてみたところ、恐ろしい問題が浮上していた。
緊急に会議を招集し、皆にも情報を伝える。

「それは、また・・・」

カルラも顔面蒼白だ。

特に彼の所属するヒーローズソサエティは対旅団を想定して結成した組織と言ってよい。
今回の推測が事実であれば、原作知識を頼りにヨークシンで迎え撃つつもりのヒーローズソサエティの作戦は根本から瓦解することになる。

先んじて今回のことを知っていた俺やテオやテトラは最初から沈んでいるし、ゴクウ、タクヤ、イグルス、メリクも自体の深刻さを理解したのか沈んでいる。

このことを話した後、カルラはこのことをヒーローズソサエティに報告し今後の方針を決めるために帰っていった。

「俺たちもこのまま参戦しないわけにはいかないよな?」

テオが悟った様な目をしながら問う。

「おそらくな。完全に目を付けられていると考えるべきだな」

俺たち、少なくともテオは完全に団長の興味を引かれている。
このままヨークシン編が始まるのならまず間違いなく巻き込まれるだろう。
その場合、俺たちが無事でいられる確立など無きに等しい。

逃げたとしても結果は同じだろう。
一度目を付けられた以上、相手が相手だ。
何処までもしつこく追ってくるのは目に見えている。
その過程で俺たちのことも割れるだろうから結局俺たちの命もあぶない。

「修行するか」

「そうだな、それしかないな」

「ハンゾーにも俺たちの事情を話そう。そして改めて協力するかどうか決めてもらおう」

「ああ」

改めてハンゾーに俺たちの事情を話したところ、積極的に旅団との戦いまで参加はできないが最後まで付き合うとのこと。

その後は皆、ひたすらに修行を続けた。

テオは義手の機能を完全に使いこなすための特訓。

テトラは少しでも旅団の動きを掴もうと日々ネットに潜り続けている。

タクヤはひたすらにAOPアップの修行。

イグルス、メリクも此処に残り修行をしている。

旅団に関わらないと公言したハンゾーも黙々と修行を続けている。

俺も焦燥感に駆られながら修行を続ける。

・・・

・・・

・・・

修行の日々は続き、旅団の行動が読めぬままに、やがて月日は流れ、





ヨークシンドリームオークションが始まる季節がやってきた。





あとがき
やっとこさ、十三話投稿です。
日に日に書くのが難しくなっていく気がします。
何十話も書いている作者様がいかに偉大か自分で書いてみるとよく分かりますね。

次回から原作ヨークシン編の時間軸です。

既に原作崩壊中なので原作主人公組がヨークシンを訪れるフラグはボッキリと折れてますが、トリッパーの入れ知恵で来てる可能性も・・・

あと、皆さんに一つ質問です。

実は、感想で指摘されるまで現状ではヒソカが旅団に所属するのはありえないと言うことを失念しておりました。
そこで、
1.旅団の4番は空席のまま。

2.誰かトリッパーをぶち込む(タランチュラの誰かでも、まったく別のトリッパーでもどっちでも可)。

のどちらでいくのが『らしい』か意見をお願いできますでしょうか?

手間的にはトリッパー多すぎて大して変わらないので、団長の方針的に不自然にならないほうを選びたいです。

あと、ハンゾーの系統とか知ってる方いらっしゃいますでしょうか?


感想、ご意見などありましたら宜しくお願いします。



[8143] 外伝3 その頃の(原作)主人公サイド
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:1e5f2ff6
Date: 2009/09/04 00:18
<side:ゴン>
ハンター試験二次試験会場で皆そろって失格になっちゃったからどうしようかと考えてたらファルコがオレたちのところまで来て提案したんだ。

修行する気があるなら一緒にしないか?って。

あ、ファルコって言うのは一緒の船で乗り合わせて友達になった人でハンター試験会場まで一緒に来た人なんだ。
他にも何十人も一緒に来た人はいるんだけど、クラピカたちを除いたら一番話した人かもしれない。

オレもそうだけど、レオリオもクラピカも、あと、たぶんだけどキルアも今回のことで自分がどれだけ弱いのかを思い知らされたと思う。

そして、ファルコがオレたちよりもずっと強いということも。

だから、オレたちはファルコの提案に乗ることにしたんだ。





ファルコが修行場に選んだのは天空闘技場って言うところだった。

クラピカが、

「なるほど、実力で階分けされ常に近しい実力者との戦いを繰り返すことが出来る上に、勝てばかなり乏しくなった路銀の確保も出来る。修行場としてこれほど理想的な場所は早々無いな」

って言ってたけどよく解からないや。

レオリオは勝てば儲かるって聞いてすごい張り切ってる。

受付ですごい長い列が出来てて順番が来るまで3時間もかかったけど登録が終わった。
すると、どこかに行ってたファルコが腕輪みたいなものを持って戻ってきた。

「此処に来たのは修行だからな、常にハンデを付けながら戦ってもらうことにした」

そう言って、腕輪を渡してきて付けるように言われた。

「わ、何これ?急に体が重くなったよ!?」

ファルコに渡された腕輪を付けてみると急に体が重くなったんだ。

「ファルコ、これは一体?」

クラピカもレオリオも驚いてるみたい。
クラピカにもこれが何なのかわからないみたいだ。

「ソイツが何なのかについてはお前等がもう少し強くなったら教えてやるよ。今は鍛えることだけ考えてな」

ファルコはそう言って教えてくれなかった。

それからは戦いの毎日だ。

重りを付けているとはいえ、一階での戦いは簡単だった。
さすがにパンチ一発とはいかなかったけど、5,6発も殴ったら相手が気絶して50階まで行けるようになった。
クラピカ、レオリオも50階行きになった。

一階が割と簡単だったからこの階もすぐクリアできるかなと思ったけど案外苦戦した。

原因はこの重り。

オレの対戦相手の人は重りでスピードが落ちたオレと同じくらいの速さの人だったけど、重りのせいでスタミナの減りが早かったせいで競り負けちゃった。

それからの一月くらいは勝ったり負けたりを繰り返しながらジリジリと階を上げていった。
ほとんど毎日試合が組まれてたのもあって、オレたち三人は皆して150階クラスに足を踏み入れていた。

ファルコが、

「そろそろ時間かな?」

って言ってたけどどういう意味だろ?





ファルコの仲間の人が言ってたのを聞いたんだけど、下の階でキルアを見かけたんだって。

「これが歴史の修正力ってヤツか!!」

って言って盛り上がってたけど、どういう意味だろ?

一階まで行ってみると、丁度キルアが勝利したところだった。

「キルア!!」

「え?お前、ゴンか!?」

うれしくなって声をかけると向こうも気付いてこっちまで来てくれた。
なんでも、お兄さんに鍛え直してもらうために家出してた家に帰ってたらしいんだけど、家出した件でオシオキされた後ここの200階クラスでしばらく戦って来いって言われて追い出されたらしい。

「金が無いのに気付いて稼ぎながらゆっくり上がっていこうと思ったんだけど、ゴンたちが居るなら一気に上まで上がっちゃおうかなぁ」

ってキルアが言ったので今150階当たりに居ることを教えて追いついたら一緒に上がろうと約束した。

その日、キルアはもう一試合したんだけど、相手も同じくらいの子供だったから話をして友達になった。

ズシっていうらしい。

数日後、あっという間に150階まで上がってきたキルアがオレたちと合流した。
ファルコの仲間がいっぱいいて面食らってたみたいだけど、いつの間にか溶け込んだみたいだ。

その日、キルアもファルコからこの重りの腕輪を貰ってた。
動きが明らかに鈍っていて、なんとか勝って上の階に進めたけど、すごい疲れきってた。

「これ、めちゃくちゃ重いんだけど、どうなってんの?」

ってファルコに聞いてたけど、例によってファルコはまともに返事はしなかったみたいだ。

ただ、ファルコが、

「へぇ、そんなに重いのか、その腕輪は装着者が強ければ強いほど重さが増すからキルアは相当強いんだな」

って言ったらすごい上機嫌になってた。





それからしばらくして、オレ、キルア、クラピカ、レオリオ全員が190階まで上ることが出来た。
全員、今日の試合が組まれており、勝てば目出度く200階だ。

実は、ファルコから200階まで到達できたら腕輪の秘密を教えると約束されたので皆結構気合が入っている。
どんどん重量が増えているこの腕輪が不思議でならなかったんだけど、今まで教えてもらえなかったんだ。

当然のように皆、勝利してファルコの待っている200階のロビーに集まった。

「さあ、約束通りに腕輪について教えてもらおうか」

クラピカが早く教えろと催促してる。

ファルコはそれを「まあ、ちょっと待て」と言う感じにあしらってエレベータを見ながら、

「あれ、こないな?また何かミスったかな?」

って言って首を捻ってたけど、クラピカの目がすごいやばくなってきたのを見て、苦笑しながら腕輪について説明を始めた。





「なるほど、『念』か、興味深いな」

「ああ、驚いたぜ。世の中にはこんな不思議なチカラが隠されてたんだな」

「こんな便利な力を隠してたのかよ、ズッケーの!!」

「うわぁ、すごいやファルコ!!」

ファルコたちが隠してた『念』について説明してもらった後、精孔って言うのを開いてもらうことにした。
ゆっくり起こすか無理やり起こすかって言ってたけど、満場一致で無理やり起こすに決まった。
すぐに使えるようになるんなら今すぐ使えるようになりたいって言うのがオレたち4人の本音だった。
と言うわけで、200階受付で試合指定日を3ヵ月後にして登録だけ済ませると急いでファルコの後を追いかけた。

なんでも、200階クラスからは対戦相手は全員『念』使いらしい。
だからこのタイミングで教えてくれたのか~っと感心してたら、ドン!!って来て体から湯気が飛び出てきた。

「その湯気みたいなのがオーラ、生命力みたいなものだからそれを体にとどめるようにイメージしろ。出来ないと、ぶっちゃけ死ぬから」

聞いてねーぞ、ってレオリオが叫んでるけどファルコは言ってないもん、とか言ってからかってる。
レオリオっていちいち反応してくれるから、からかいがいがあるのかな?

その後、なんだかんだで皆『纏』が出来るようになり(クラピカが二時間くらいかかってた、一番時間がかかったみたい、やっぱお前等チートだってファルコに言われた)、そのままオーラ切れで気絶するまで修行に突入した。





次の日、目を覚ますと周りがすごいことになってた。

ファルコの仲間の人たちが壁とかにめり込んでる。

何事かと思って皆を起こしてファルコを探してたら、奥の方で黒髪の長髪の男の人と戦ってるのが見えた。

大声で罵ってるファルコによると、この男の人が朝方突然やってきてキルアを出せって暴れたみたい。

「あれ、アニキ?どうしてここに?」

どうやらキルアのお兄さんらしい。
仕事が一段落したので様子を見にきたら念能力者の群れの中にいるのでとりあえず皆殺しにしとこうと思ったらしい。

「まずは会話をしようぜ、アニキ・・・」

キルアがボソリと呟いたのが、やけに耳に残ったのを覚えてる。

その後も何か、ファルコたちはイルミさん(キルアのお兄さんの名前、教えてもらった)と少しお話をすると言って出て行って一週間ぐらい返ってこなかったけど、返ってきた時はかなりボロボロになってたけど、

「キルアに念を教えるのは納得してもらえたよ」

ってすごい笑顔で言ってた。

キルアも文句言ってないし問題ないよね?
あれ?何か顔色悪いな、キルア。





何ヶ月か修行を続けていると、どっかで見たことある気がする人たちが200階にやってきた。

「ハンゾーじゃないか。何で此処に!?」

ファルコが何か叫んでる。
知り合いなのかな?

向こうの人たちも名前を呼ばれたのに気付いたみたいでこっちにやってきた。

「よう、お前等確かハンター試験の時にいた奴等だよな?」

あ、そうか!!この人たちハンター試験の時に見たんだ!!

あれ?いつの間にかファルコが髪の長いはだかにマントの男の人と隅っこでボソボソなにかしゃべってる。

「オレの名はハンゾーってんだ。よろしくな」

「あ、オレはゴンっていいます」

「おれ、キルア」

「クラピカと言う。よろしく」

「レオリオだ」

「おう、よろしく。ところで、あっちのヤツはウチの師匠と知り合いなのか?」

そう言ってファルコたちを指差すハンゾー。
丁度話し合いも終わったらしく、こっちに戻ってきた。

「挨拶が遅れてすまない。俺はファルコ、よろしくな」

と挨拶して取り合えずその辺のテーブルで話をしようと言うことになった。





<side:クラピカ>
ハンゾー、ハオ、タクヤと言う3人組は、主にハンゾーの修行のために天空闘技場まで来たらしい。
全員前回のハンター試験で二次試験以降まで進んだ面子でハンゾー以外はハンター試験に合格したと言う。
その時に色々とあったらしく、ハンゾーはハオに弟子入りしてがんばっているそうだ。

「あの四次試験は一生忘れられないなぁ・・・」

やたらと遠い目をして呟いているが、ハンゾーよ、一体何があった。

その後いろいろと話をしていて知ったことがある。
私達がつけているこの腕輪がハオの仲間達(ここにいないメンバーらしい)が作ったアイテムだとか。
その辺の話で盛り上がって、気が付いたら一緒に修行をすることになっていた。

まあ、それはいい。
修行相手が増えるのは有り難いし修行用アイテムも貸してもらえる様だし。

その後、どうせだからと言うことでスカウターなるアイテムで我々の強さを測ってもらうことになった。

ゴン
AOP = 75
MAX_AOP =850

キルア
AOP = 75
MAX_AOP =900

レオリオ
AOP = 70
MAX_AOP =800

クラピカ(私)
AOP = 60
MAX_AOP =700

との事。

自分達の数字だけではよく判らないと言ったら彼等の数値も測ってくれた。

ハンゾー
AOP = 85
MAX_AOP =1100

ハオ
AOP = 170
MAX_AOP =3500

タクヤ
AOP = 100
MAX_AOP =2500

ファルコ
AOP = 120
MAX_AOP =3000

との事。

・・・数字を比較すれば互いの力量差が如実に見て取れる。
ますます精進せねばと改めて心に誓った。

スカウターで数値を計っていると、ファルコたちから緋の目の状態になれないかと聞かれたが、どういう意味だったのだろうか?

あれは生理的な物で自由に切り替えられるものではない、と言っておいたのだが、

「う~ん、残念」

と言って引っ込んでいった。
どういう意図があったのだろうか?

まさか、私の目を狙っている訳ではないと思うが、一応警戒していた方が良さそうだ。





それからの数ヶ月は実に有意義な日々であった。
何しろ身近に上位の念能力者が複数人いるのである。
彼等の戦いを見るだけでも十分に自らの糧となる。

ほら、今も、

「S・O・F黒雛ぁぁぁあ!!!」

「卍解!!逆鱗竜王丸ぅぅぅう!!!」

これが念能力者の戦いというものか。
いつ見ても思うがまるで漫画のようだ。

ゴンとキルアは、ある意味子供らしく目をキラキラさせながらスゲースゲー言っている。
さすがに私はそこまで引き込まれてはいないと思うが、これほどの力に自分の手が届くかもしれないというのは中々に心が躍る。

「勝者、ハオ!!!」

どうやら今の試合はハオの勝利のようだ。
黒雛の鬼火を連射して押し切ったのか。

タクヤが焦げて倒れている。

「チクショー、また負けたぁぁぁ」

レオリオが崩れ落ちた。
どうやらタクヤに賭けていたらしい。
賭け事に壊滅的に弱いということはこの数ヶ月で身に染みて判らされたと思っていたが、未だに自分が賭け事に弱いことを認めたくないらしい。
彼が賭けると下馬評で鉄板といわれていてもどんでん返しが起こるから筋金入りだ。

「レオリオ、そろそろ止めとかないとせっかく貯めた貯金がゼロになっちゃうよ?」

見かねたゴンが慰めている・・・いや、止めを刺しているのか?
レオリオは追加ダメージで動かなくなった。





今、我々は『発』の段階まで進んでいる。

水見式の結果、

ゴンは強化系。
キルアは変化系。
レオリオは放出系。
ハンゾーは操作系。
クラピカ(私)は具現化系。

であることが判った。
私個人としては一人で動くのに都合のよい強化系でありたかったがそこに文句を付けてもしょうがないので口にすることは無かった。

因みに、
ファルコは操作系。
ハオは放出系。
タクヤは具現化系。
らしい。

具現化系である私は何かを具現化するのに特化しているらしい。
何を具現化するのか考えておく様にと言われた。

・・・実は既に決めてある。

鎖だ。

具現化と言われて真っ先に思いついたのがこれだった。
冥府に繋いでおかなければならない奴等がこの地上には多すぎるからだろうか。
とにかく、私は鎖を具現化するための修行に打ち込むことにした。





<side:ファルコ>
こんにちわ、ファルコです。

このハンター世界に生まれ変わって早15年。
何か、俺、祟られてね?って頻繁に考えさせられるくらいに苦労に苦労を重ねて生き延びてきたかいがあり、やっとこさ原作の時間軸に突入。

さあ、オリ主でガンガン逝くぜ!!!

っと意気込んでクジラ島経由のハンター試験会場行きの船に乗り込んだところ、そこには数十人の念能力者が互いに牽制しあった念圧で一般人が隅で縮こまっていると言うカオスな現場でした。

まあ、その後なんだかんだあって皆トリッパーだと分かり(皆薄々分かっていたが確認する勇気が無かったらしい)和解した後、協定を結んで原作主人公組に不用意に近づかないことなどを約束したりした。
その後、原作にある嵐とかで受験者の選別があった後、生き残った連帯感みたいなもので原作主人公達とも話をするようになり、皆して行動したりしてハンター試験会場までたどり着いた。

二次試験でのまさかの全員脱落は予想外だったけどね。



他の面子と相談した結果、俺が話しかけて天空闘技場に誘導することとなった。

途中でキルアが合流した時は「これが世界意思か!!」と盛り上がったものだが、その後のイルミの襲撃はマジで涙目だったな。

キルアたちに見つかって一時中断になった後、人気の無い場所まで移動して改めてOHANASHIの続き。

全身全霊のOHANASHIを一週間、50対1でHANASHIAIを続けた結果なんとか納得してもらえたからよかったが。

・・・代わりにキルアの修行風景を撮影(盗撮)したビデオを毎日ゾル家に送ることになったが。

まあ、半分以上死んだけど、全滅する前にHANASHIAIが終わったのでこれが最良だったと思うことにしよう。

その後の修行は順調に進んでいた。
何ヶ月かするとなぜかハンゾーが天空闘技場にやってきて一緒に修行することになった。
聞いてみるに、どうやら師匠役をやっているトリッパーの指示でここにやってきたらしい。

特に拒む理由も無いし、ハンゾーの師匠のハオがストレンジャーズの社員であると分かったため修行道具を融通してもらうために一緒に修行することになった。

しかし、さすがにハンゾーの師匠なんかやってるだけはある。
俺もアリンコのことを思い出してからは死に物狂いで修行に明け暮れていたが、そんな俺よりも明らかに強いオーラを纏ってやがる。
しかも彼等の社長はハオよりさらに強いらしい。

何と頼もしい、こいつ等がいればアリンコなんて俺がいなくてもどうにかなるんじゃね?っと思ってたら、

「俺ら、蟻戦が始まったら基地に篭って篭城するつもりだから。蟻はヒーローズソサエティとハンター協会に丸投げの予定です」

とか言いやがった。

ちょwおwまwえwらw

詳しく話を聞いてみるとどうやら彼等は元の世界に帰るための装置を開発しているらしい。

正直に言えば、ちょっと所じゃないくらい心が揺れたが、俺は前世では既に死んだ身だ。
この世界に生まれ変わった以上、この世界で生きていくつもりだと話したら、苦笑しつつも「そうか」と言ってくれた。

まあ、ほんとにどうしようもなくなったら彼等のところに逃げ込むだろうけどな(笑

そう言って笑っているとこう返された。

「別に逃げ込んできても構わないけど、蟻にジョブチェンジする前に来いよな」



その後も修行は順調に進んでいって、『発』の修行に入った。

この頃になるとちょっと問題が出てきた。

クラピカに緋の目状態でオーラが爆発的に跳ね上がることを教えるタイミングが中々見つからない。

ひょっとしたらクルタ族の特性として緋の目でエンペラータイム発動があるのかもしれないが、そんなの今更調べられないので中々不自然じゃない教え方が見つからなかった。

まあ、今すぐ教えなきゃいけないことでもないので、本人が気付いて相談に来るまで放置しておくことにした。





6月に入った頃、ストレンジャーズの方で何かあったらしくハオたちは本拠地に戻っていった。
とりあえず貸してもらった道具はそのまま使ってて良いようで、俺たちは変わらず修行の日々である。

9月に入れば年内最大のイベントの一つである幻影旅団のヨークシン襲撃がある。

ただ、今回はヒーローズソサエティがヨークシンで旅団を潰す作戦を立てているため不用意に近づかないようにとハオたちから警告を受けた。

グリードアイランドのことを知らない以上、何が何でもヨークシンに行きたいなんて事はゴン達も言わないだろうし、たぶんそこは問題ない。

ただ、ヨークシンでの騒ぎが終わったタイミングでグリードアイランドに行けなかった場合に、ゴン達がビスケに会えないことがどれ位の影響になるかがわからない。

今更かもしれないが、原作ファンである俺としてはなるべく原作通りで行きたいので、どうにかして彼等をグリードアイランドの中に放り込みたい、そう思っていた。





でも、だからってこれは無いと思うわけだ。

「ねえねえ、ファルコ!!ジンが作ったグリードアイランドって言うゲームがあるってホント!?」

いきなりゴンが俺に聞いてきた。

「ゴラァ!!よりにもよって『今』洩らしたバカヤロウは誰だ、ちょっと前に出ろ!!!」

「す、すまんファルコ。皆でグリードアイランドについて語ってたのを聞いてたみたいで」

vsイルミ戦を生き延びた精鋭トリッパーの一人でもあるイツキがおずおずと白状した。
ほかの生き残り連中も冷や汗だらだらでこっちを見ている。

どうすんのよ、これ。

このままだとほっといても勝手に調べてオークションに参加しに行きそうな勢いだな、てか、絶対に参加しに行くよなぁ。

クラピカがいる状況で今年のヨークシンは旅団が出るので危険だから行けませんとか言えないしなぁ。

そして、相談したい時に限ってハオたちと連絡が付かない(既にハオたちはそれどこれではない騒ぎに巻き込まれているため旅団襲撃に備えて地下に潜っている)。

その後、件のソフトが定価58億もすること、現在絶版中であることなどを説明して諦めてもらおうとがんばった。
だが、やはりと言うかぜんぜん諦めておらず、むしろ9月頭からのヨークシンドリームオークションの存在を知ると、そこに出品されるかもと言う可能性に賭けて、なんと主人公組全員を説き伏せてバックレをかますと言うミラクルを見せ、俺たちを大混乱に陥れるのだった。

クラピカが書いたっぽい置き手紙を読みながら頭を抱える8月下旬のことであった。

・・・やっぱり追っかけなきゃまずいよね^^;





あとがき
大変長らくお待たせしました。
本編の執筆が一向に進まないので外伝を書いてみました。
ファルコを初めとしたイルミと戦って生き残ったくらいには強い人たちがハンター試験二次に落っこちたのは単純に運が無かったからです。
釣ってきた魚が毒持ちだったりあまりにも不味くてさすがにNG食らったり。
あと、ハンゾーは勝手に放出系にしちゃいましたけど大丈夫ですかね?(2009/09/04 操作系に変更しました)


各人の外伝3終了時のAOPなど

名前:ファルコ
AOP = 4200
POP = 126000

名前:その他のトリッパー
AOP = 3000~3500
POP = 100000~130000

名前:ゴン
AOP = 1600
POP = 18200

名前:キルア
AOP = 1650
POP = 15500

名前:クラピカ
AOP = 1550
POP = 17000

名前:レオリオ
AOP = 1450
POP = 17500


※2009/09/04 イルミのOHANASHI時の
AOP = 7500
POP = 70000


感想、ご意見などありましたら宜しくお願いします。

※2009/09/04 ハンゾーの系統を操作系に変更しました、イルミのAOP(OHANASHI時)を追加しました。



[8143] キャラ紹介&念設定(今後追加アリ)
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:1e5f2ff6
Date: 2009/06/19 07:58
登場人物たちの設定


《ストレンジャーズ》

名前:テオ・ペッパー(テオ)
念系統:操作系
  能力名:紙々の世界(ペーパーワールド)操作系 (元ネタR.O.D)
   紙を操作して自在に操る。
   また、複数の紙を組み合わせて模型を作ることが出来る。
   作成された模型はオリジナルと同じ性質を持ち、込められたオーラ量に比例して性質が強化される。
   (武器の場合はその攻撃力、防具の場合は防御力など、模型作成時のイメージによって変化する)
 
  制約と誓約:
   この能力で使用する紙には予めマーキングを施してある必要がある。
   この能力で使用する紙は10cm×10cmの正方形の紙で無ければならない。
   紙一枚の操作に10オーラ使用する、そこからさらに上乗せした分だけ紙自体の強度が上がる。
   紙々の世界に割り当てることの出来るオーラの限界量はその時点での顕在オーラ量と同量までである。

  追記:
   紙々の世界(ペーパーワールド)のバリエーション
    『紙技・紙吹雪の術』
      服の内側に隠してある紙を多量にばら撒いて目くらまし、探知型の結界、設置型トラップ等として扱う。
      テオの戦闘時の基本のスタイル。

    『紙技(カミワザ)・紙爆雷(カミバクライ)の術』
      100枚以上の紙を連結させて行う技。
      連結した紙を相手に巻きつける等して密着させた状態で念を開放、紙ごと爆破する。
      ほかに、数枚~十数枚を一塊として無数に周囲にばら撒く『紙機雷(カミキライ)』。
      同じく数枚~十数枚を一塊として地面に隠蔽して設置し、相手がその上を通過した時に爆破する
      『紙地雷(カミジライ)』がある。



  能力名:紙々の世界 模倣宝具(ペーパーワールド イミテーションファンタズム)操作系 (元ネタFate)
   タクヤとの戦いの時に、自身のペーパーワールドに決定打となる技が存在しないことを知ったことで
   新たに開発することが決定した、俗に言う『必殺技』である。
   ペーパーワールドの模型作成能力の延長として開発。
   神字を模型作成時の基礎部分に組み込むことで原作性能の再現を狙っていっる。
   元ネタの宝具のように真名を開放することで神字にオーラを通し、固有の能力を発動する。
   弓と矢の組み合わせ。

  制約と誓約:
   紙々の世界の制約を引き継ぐ。
   予め、原型とするものの再現する現象を神字で作成しておく必要がある。
   神字で作成したモノを骨子として『矢』の作成を行わなければならない。
   必ず、『弓と矢』の組み合わせであること。

  ※第四話よりの追加の制約と誓約
   模倣宝具を真名開放する際に限り、模倣宝具にオーラを追加で上乗せすることが出来る。
   真名開放を行うとき纏っていた顕在オーラ(AOP)は強制的に模倣宝具に上乗せされる。
   真名開放を途中で中断した場合、模倣宝具は溜め込んだオーラの威力で自爆する。


  能力名:紙々の世界 動物模型(ペーパーワールド アニマクラフト)操作系
   ペーパーワールドの模型作成能力の延長として開発。
   神字で作成した人工知能プログラムを組み込んだ動物型紙模型。
   人工知能作成に難航中。

  ※第四話よりの能力設定
   高度な人工知能の作成は困難と判断。
   単純な条件で行動する簡易AIの自動操縦と遠隔操作式に変更。

  制約と誓約:
   自動操縦時
    動物模型が破壊されても念使用者にはダメージが反映されない。
    動物模型は設定された命令にしたがって自動的に行動する。
    念を解除する、命令を達成する、原型が保てないほど破壊される、の条件が満たされない限り念使用者が妨害しても
    行動を続行する。
   遠隔操作時
    動物模型が破壊された時、破壊された部位のダメージが幻痛としてフィードバックされる(実際に破壊される訳ではない)。
    動物模型に設定された五感(主に視覚、聴覚など)を通して情報を共有できる。
    距離が離れるほど操作精度が低下する(イメージ通りに動かなくなる)。
    または、オーラの消費量が増大する(オーラを消費して精度を上げる)。

  追記:
   動物模型(アニマクラフト)のバリエーション
     『紙技・紙分身の術』
       術者自身を模した形に紙を組み上げ、分身体として生成する。
       基本的に他のアニマクラフトと変わらないが自分自身の分身を作るため特別に術名をつけている。
    ※十二話より使用
     『紙技・鏡像紙分身の術』
       紙分身をしょっちゅう囮として使っているため、いっそのこと姿もそっくりに擬態できるようにと幻影の衣(ミラージュコート)を紙分身の上に被せた状態。

 ※十二話より使用
  能力名:幻影の衣(ミラージュコート)操作系
   自身のオーラを纏っているものの可視光を操作して望むものを映し出す。
  制約と誓約:
   自身のオーラがかけられたモノに対してのみ使用可能。
   オーラのかけられたモノの形やイメージから連想しにくいものは映し出すことが出来ない。
   (木の棒に念をかけて鋼鉄の棒に見せることは簡単に出来るが、剣であると見せるのは多少難しく、鞭であると見せるのはさらに難しい。つまり原型からかけ離れたものを写そうとするほど困難になるが、出来ないという訳ではない)

 ※十三話より使用
  能力名:左腕の義手
   レアメタル製の義手。
   神字を刻んだカードを挿入することで様々な形態に変形する。
  制約と誓約:
   自身で念を刻んだカードを使わなければ動作しない。

  追記:
   左腕の義手の機能
   『マシンガンアーム』
    機関銃に変形した左腕で銃撃を浴びせる。
    弾丸は紙製。

   『ブロウクンアーム』
    某勇者王の得意技をジェネシック版で再現。
    発動時には『硬』状態で攻撃宣言しなければならない。

   『ブレイドアーム』
    ダイの大冒険に出てくる敵キャラ、超魔生物ハドラーの覇者の剣解放状態をイメージしたもの。
    刀身に神字が刻んであり、攻撃を受けた相手にオーラを爆発させて追加ダメージを与える。
    この形態の必殺技は『超魔爆炎覇(ちょうまばくえんは)』。
    
備考:
 主人公、通常はテオ視点をメインにしていく予定です。
 第三話時点では決定打不足を解消するために修行をしていますが基本的に彼は戦う人ではなく作る人です。 
 第一話終了時点でのテオの
 AOP = 約2500
 POP = 約99500

 第二話終了時点でのテオのAOP、POPは怪盗家業、神字の勉強などが忙しかったためほぼ変動なし

 第三話終了時点でのテオの
 AOP = 約2550
 POP = 約99510

 第四~九話終了時点でのテオの
 AOP = 約3500
 POP = 約105500

 第十~十一話終了時点でのテオの
 AOP = 約3800
 POP = 約108500

 第十二話終了時点でのテオの
 AOP = 約4000
 POP = 約110000

 第十三話終了時点でのテオの
 AOP = 約6000
 POP = 約120000


名前:ハット・オーウェン(ハオ)
念系統:放出系
  能力名:火の精霊(スピリット・オブ・ファイア)放出系 (元ネタシャーマンキング)
   大気中の酸素と自身の念を混ぜ合わせて作成したゴーレム(火の精霊自体に意思は無く、基本人型の念人形)
   内部に取り込んだ酸素を高密度化して取り出し、着火することで大爆発等を起こすことができる。
 
  制約と誓約:
   火の精霊は一度に一体までしか作れない。
   火の精霊は一度作ると自分の意思で消すことが出来ない。
   火の精霊は取り込んだ酸素を使い切ると消滅する。
   火の精霊は作成時に取り込んだ酸素以外に途中で補充することが出来ない。

  能力名:S・O・F黒雛(スピリット・オブ・ファイア クロビナ)
   一度作成したスピリット・オブ・ファイアを小型化、高密度化し鎧の様に体の回りにまとった姿。
   オーラの噴出で自在に空を飛び回り、原作を再現した高密度酸素をオーラで閉じ込めた念弾『鬼火』を持つ。
   基本的にスピリット・オブ・ファイアの変形した姿。

  制約と誓約:
   特になし。

  能力名:S・O・Fソード(スピリット・オブ・ファイア ソード)
   スピリット・オブ・ファイアを圧縮して片手剣のサイズまで小さく高密度化した姿。
   スピリット・オブ・ファイアの着火能力で刀身の内側で常に酸素を燃やして刀身を加熱しているため地面さえも
   やすやすと切り裂く切れ味を持つ。
   基本的にスピリット・オブ・ファイアの変形した姿。

  制約と誓約:
   特になし。


備考:
 マンキンのハオを肖っている人、でも外見だけ。
 長髪にして、ネイティブな人っぽい服装にしているが、性格までハオをトレースしている訳ではない。
 第三話時点では、金策以外してない様に見えていますが空いた時間でしっかり修行してます。
 第一話終了時点でのハオの
 AOP = 約1900
 POP = 約105000

 第二話終了時点でのハオのAOP、POPは怪盗家業、神字の勉強などが忙しかったためほぼ変動なし

 第三話終了時点でのハオの
 AOP = 約1980
 POP = 約105100

 第四~九話終了時点でのハオの
 AOP = 約3000
 POP = 約110000

 第十話終了時点でのハオの
 AOP = 約3500
 POP = 約115000

 第十三話終了時点でのハオの
 AOP = 約5000
 POP = 約130000


名前:ゴクウ(本名不明)
念系統:放出系
  能力名:かめはめ波(カメハメハ)放出・強化系 (元ネタドラゴンボール)
   組み合わせた手のひらで作成したオーラの塊から前方へ押し出す様にしてコア部分の念弾を放出し、放水の
   要領で加速させながら放出する。オーラの尾が途切れていない場合、後付されたオーラ分、攻撃力が増加する。
  制約と誓約:
   1.この『かめはめ波』を使う時は原作かめはめ波と同じような動作を行い、「かめはめ波」と技名を叫ばな
     ければならない。
   2.1の条件を満たさない場合、かめはめ波として成立せず、ただの念弾として放出される(オーラの消費量は
     かめはめ波を発射した場合分消費される)。

  能力名:界王拳(カイオウケン)放出・強化・操作系 (元ネタドラゴンボール)
   『錬』を行った際の顕在オーラ量を増加させる。
  制約と誓約:
   界王拳は倍率毎に顕在オーラ量が変化する(通常界王拳(2倍界王拳)で2倍、3倍界王拳で3倍の顕在オーラ、
   10倍界王拳で10倍のオーラ出力になる)。
   界王拳使用中は、『堅』、『流』等の継続的にオーラを消費する行動の維持コストが界王拳の倍率で増加する。

   界王拳の倍率が大きくなるほど肉体にかかる負荷が大きくなる。
   (これは自身が制御できる本来の出力を大きく超えてオーラを顕在化させているため、限界を超えている分だけ肉体
    の疲労が加速度的に蓄積するため)
  
  ※第四話の界王拳デメリット発覚後の追加の制約と誓約
   界王拳の習熟度によって肉体の負担を軽減することが出来る。
   (通常時の肉体の負担を100%とした時、界王拳時の肉体負担が200%、3倍界王拳の肉体負担が300%として判断。
    界王拳を累積100時間維持することで1%界王拳の負担を軽減出来る。
    一度達成した負担軽減の割合は今後行う界王拳すべてに反映される。
    肉体負担が100%まで下がった場合、それ以上下がることはない。
    肉体が鍛えられAOPが上昇するにつれ、界王拳の負担率も上昇する。)

  能力名:エネルギー弾/連続エネルギー弾 放出系 (元ネタドラゴンボール)
   手のひらから念弾を発生させ、目標に向かって飛ばす。
   連続エネルギー弾の場合、一発の威力より弾幕を必要とするため瞬時に補給でき、即座に生成できるエネルギー量で撃つことが重要。
  制約と誓約:
   特に無し

備考:
 天空闘技場にてテオたちのグループに参加、テオの弟子となる。
 界王拳アタックはいわゆる初見殺しであったが、肉体が界王拳に耐えられるほど鍛えられていなかったため、毎回入院
 する羽目になっていた。

 第四話にて実際に鍛えたほうが被害が増すことが判明。
 
 第三話終了時点でのゴクウの
 AOP = 約1000
 POP = 約90800

 第四~九話終了時点でのゴクウの
 AOP = 約2000
 POP = 約100000

 第十話終了時点でのゴクウの
 AOP = 約2500
 POP = 約105000

 第十二話終了時点でのゴクウの
 AOP = 約2800
 POP = 約108000

 第十三話終了時点でのゴクウの
 AOP = 約3800
 POP = 約118000


名前:テトラ
念系統:具現化系
  能力名:電子の海の人魚姫(リトルマーメイド)
   電脳ネットと自分とを繋ぐマン・マシーンインターフェイスを具現化する。
   電脳ネット内を擬似視覚化して感覚的に行動を起こすことが出来る。
  制約と誓約:
   能力発動中は能力者は眠った状態になる。
   能力発動中に強制的にネット接続を断たれた場合、能力を発動していた時間分何があっても目を覚まさない。
備考:
 資料探索に悲鳴を上げたテオに乞われて作成した能力。
 本人も前線に立ちたがらなかった為、補助系の念能力を開発した。

 第四~九話終了時点でのテトラの
 AOP = 約1500
 POP = 約85000

 第十話終了時点でのテトラの
 AOP = 約2000
 POP = 約90000

 第十二話終了時点でのテトラの
 AOP = 約2200
 POP = 約92000

 第十三話終了時点でのテトラの
 AOP = 約2500
 POP = 約95000


名前:タクヤ・イワサキ(厨二君)
念系統:具現化系
  能力名:斬魄刀『竜王丸』(ザンパクトウ『リュウオウマル』)具現化・変化系 (元ネタBLEACH)
   通常時は日本刀の状態。
   『噛み裂け。竜王丸』の掛け声とともに鍔の部分が竜の頭部、柄が鱗状の野太刀になる(始解)。
   さらに、『卍解』の掛け声で右腕に炎で出来た竜の頭が発生し、背中に炎の三対の羽と尻尾。
   左腕に左腕全体を覆う盾+槍をイメージしたような物が発生。
   見た目のイメージは背中が三枚羽、左腕にも武装がある炎版の大紅蓮氷輪丸
   (卍解時の刀の銘は『逆鱗竜王丸』)。
 
  制約と誓約:
   斬魄刀『竜王丸』は具現化を解除することが出来ない。
   斬魄刀『竜王丸』は一本までしか具現化出来ない。
   斬魄刀『竜王丸』は完全に破壊された場合、二度と作成することが出来ない(完全に破壊=原型を留めないくらい、半壊
   程度なら再生可能(刃が全部無くなって柄部分しかありません。まではOK))。
   破壊された斬魄刀『竜王丸』を再生するためには半径10メートル以内の密室に篭って24時間『堅』を続け、刀が再生し
   きるまで、オーラを斬魄刀『竜王丸』に流し続けることが必要。
   斬魄刀が通常時の時、『錬』を行うことで一秒間に1オーラが斬魄刀に蓄積される(これは斬魄刀から感じる念圧などには
   反映されない)。
   斬魄刀が始解状態の時、斬魄刀に蓄積されたオーラの一割が開放される、また、始解状態の時は『流』や
   『堅』等の継続的にオーラを消費する行動の念コストが二倍になる。
   斬魄刀が卍解状態の時、斬魄刀に蓄積されたオーラの三割が開放される、また、卍解状態の時は『流』や
   『堅』等の継続的にオーラを消費する行動の念コストが六倍になる。
   一度開放されたオーラは始解、卍解終了後、失われる。
   斬魄刀に蓄積できるオーラの最大量は潜在オーラの一割までである。

  能力名:熱き魂(ヒート・ザ・ソウル)変化系
   オーラを熱エネルギーに変換する。
   通常、熱エネルギーは勝手に拡散してしまうがこの能力で生成した熱エネルギーは放出するまではある程度エネルギーのベクトル
   をコントロールすることが出来る。
   (手元から離してしまえばコントロールは出来ないが手元にあるうちは熱エネルギーのベクトルを一点に集中させる、方向を揃える
    などして単純に生成した熱を開放するだけよりも効率的に熱エネルギーを運用することが出来る)
  制約と誓約
   「放出する」の定義は自身の体と繋がったオーラの流れから外に出た時と定義する。
   熱エネルギーのベクトル制御は『流』の要領で行うことが出来る。
   一度生成した熱エネルギーはオーラに戻すことが出来ない。
   
  追記:
   ヒート・ザ・ソウルの応用技
   『怒竜突破』
     剣先に集中させた熱エネルギーを纏いながら高速で敵に向かって突進、そのまま体当たりを行う突撃技。
   『怒竜斬波』
     剣の刃部分にそって熱エネルギーを展開、刃の密度まで圧縮して振りぬくと同時に開放する。
     刃の密度で飛んでいく熱エネルギーの斬撃。
   『熱虚閃』(ねつセロ、もしくはセロ・ヒータ)
     指先など、一点に集中させ、熱量を高めた状態でベクトルを攻撃方向へそのままずらし放出する。


備考:
 現時点でのオリ主筆頭トリッパー。
 テオたちに斬魄刀を破壊されて戦闘維持が困難になったため、現在斬魄刀を失っても戦闘を続行するための能力を開発中。
 実は斬魄刀の能力が強力すぎるためAOPはあまり鍛えていない。

 ※第一話にてテオたちと引き分けてから自分の力が最強ではないことを実感し、まじめに修行を続けたことで第五話時点でPOP値が
  人外の領域に突入して登場。

 第五話時点で卍解すれば合計AOP7400とトッププロハンタークラスになるため、現在事実上の最強トリッパーと思われる。

 第一話終了時点でのタクヤの
 AOP = 約1300
 POP = 約133000(実際の測定値は119700)

 斬魄刀『竜王丸』の
 MOP = 13300
 始解時
 AOP = 1330
 卍解時
 AOP = 3990

 第二~四話終了時点でのタクヤの能力値の変動は描写が無いため分かりません

 第五~九話終了時点でのタクヤの
 AOP = 約2000
 POP = 約180000(実際の測定値は162000)

 斬魄刀『竜王丸』の
 MOP = 18000
 始解時
 AOP = 1800
 卍解時
 AOP = 5400

 第十話終了時点でのタクヤの
 AOP = 約2500
 POP = 約180000(実際の測定値は162000)

 斬魄刀『竜王丸』の
 MOP = 18000
 始解時
 AOP = 1800
 卍解時
 AOP = 5400

 第十三話終了時点でのタクヤの
 AOP = 約3500
 POP = 約180000(実際の測定値は162000)

 斬魄刀『竜王丸』の
 MOP = 18000
 始解時
 AOP = 1800
 卍解時
 AOP = 5400


名前:ハンゾー
念系統:???
  能力名:???
  制約と誓約:
   ???
備考:
 原作キャラ。
 自重しなかったトリッパー達によって運命を捻じ曲げられてしまった、本来ならハンターになっていた男。
 その運命は巡り巡ってなぜかストレンジャーズへ。
 ハオの弟子。

 第十話時点でのハンゾーの
 AOP = 約1150
 POP = 約5000

 第十三話時点でのハンゾーの
 AOP = 約2300
 POP = 約23000


《ヒーローズソサエティ》

名前:ウインド
念系統:変化系
  能力名:魔銃(マガン)変化系・具現化系・強化系 (元ネタ FF:Unlimited)
   召喚獣を生み出すための魔銃と弾丸であるソイルのセット。
   複数種類存在するソイルの内、三種類の組み合わせで様々な召喚獣を生み出す。
  制約と誓約:
   ここで言う召喚獣とは三種類のソイルによって作られた簡易の念獣であると定義する。
   召喚獣は最大で30秒しか存在できない。
   ソイルの作成は能力者自身にしか出来ない。
   ソイルを作成するためには、空のソイル弾を具現化し特定の感情を強く意識しながら24時間オーラを込め続ける必要がある。
   ソイルは最大で24個までしか同時に持つことが出来ない。

※第八話から
  能力名:お約束は守ろう!(ルール・オブ・ザ・ルール)変化・操作系
   特定の状況下において、こちらの戦闘準備完了まで相手に攻撃させない、攻撃させる気を起こさせなくする。   
  制約と誓約:
   この念能力は一人に対し、一度しか発動することが出来ない。
   この念能力が発動するところを見たことがある者には効果が発動しない。
   この念能力は念能力の対象になる人間が複数いたとしても一人に対してしかかけられない。
   一度この能力を発動した場合、失敗したとしても途中でセリフを止めることは出来ない(妨害によって途切れた場合は中断可)。
   能力発動の際は「お前にふさわしいソイルは決まった!!」と宣言する必要がある。
   その後、選択した三つのソイルにそれぞれふさわしい説明と色を告げ、最後に召喚獣の名を告げる必要がある。
   

備考:
 ウインドは『ヒーローズソサエティ』に所属するエージェントの一人。
 ハンター試験には同組織の指令で同郷のトリッパーと接触し、勧誘するために参加している。
 召喚獣は短時間しか存在できない、源であるソイルの作成に時間がかかる、などの誓約によってその戦闘力に補正がかかっている。
 現在召喚した召喚獣は
『シヴァ』(第五話)
『イクシオン』(第八話)


 第五~九話終了時点でのウインドの
 AOP = 約2500
 POP = 約95000


名前:カイザ
念系統:放出系
  能力名:ライダーズギア『カイザ』(元ネタ 仮面ライダー555)
   ヒーローズソサエティにて作成されたヒーローアイテムの一つ。
   斬撃、射撃用装備のカイザブレイガン、打撃用装備のカイザショット、必殺キック用装備のカイザポインターを標準装備している。
   また、変身トリガーアイテムとしてカイザフォンがあり、これに「9→1→3→enter」と入力してベルトにセットすることで変身
   することが出来る。
  制約と誓約:
   ヒーローアイテムを使用するためにはヒーローズソサエティが発行したヒーローライセンスをセットした上でライセンスの持ち主
   が使用しないと起動しない。
   ライダーズギア『カイザ』の基本戦闘力は誰が使用しても変わらない。
   AOP = 2500
   カイザブレイガンブレイドモード
   AOP = 3000(必殺技使用時6000)
   カイザブレイガンガンモード
   AOP = 3000(最大出力で放てる弾丸の威力)
   カイザショット
   AOP = 2500(必殺技使用時5000)
   カイザポインター
   AOP = 7000(必殺技使用時)

   装着者は放出系の方が望ましいらしい。
備考:
 ライダーズギアの起動、各機能の使用には装着者の潜在オーラ(POP)が使われる。
 そのため、装着者の顕在オーラがライダーズギア『カイザ』の数値に届いていなくても無理やりAOPを補正してカイザの数値にする。


名前:ブレイド
念系統:強化系
  能力名:変身ベルト『ブレイバックル』(元ネタ 仮面ライダー剣)
   ヒーローズソサエティにて作成されたヒーローアイテムの一つ。
   斬撃特化型のシステム。
   ブレイバックルにスペードのAのラウズカードを挿入しバックルを反転させることで現れるスクリーンを通り抜けることでブレイドに変身する。
   醒剣『ブレイラウザー』を標準装備し、ラウズカードはブレイラウザーに格納されている。
   特徴として、ラウズカード複数枚を連続してラウズすることでコンボが発生し単体で使用するより強力なコンボ技が発動できる。
  制約と誓約:
   ヒーローアイテムを使用するためにはヒーローズソサエティが発行したヒーローライセンスをセットした上でライセンスの持ち主
   が使用しないと起動しない。
   ブレイドの基本戦闘力は誰が使用しても変わらない。
   AOP = 2500
   醒剣ブレイラウザー
   AOP = 3500

   一度使用したラウズカードは24時間たたないと再使用できない。
   ※ラウズアブソーバーの使用によってこのラウズカードの使用制限はリセットすることができる。

   付属アイテム『ラウズアブソーバー』によって強化変身が可能。
   ジャックフォーム
   スペード・J + スペード・Qをラウズアブソーバーにラウズすることで変身(Jフォーム時はコンボ技にスペードJのAP値が加算される)。
   AOP = 4900
   醒剣『強化型ブレイラウザー』
   AOP = 4000
   使用コンボ
   『スラッシュ』 + 『サンダー』 = 『ライトニングスラッシュ』
   AOP = 1600(ジャックフォーム補正により+2400)

   ※第八話までに使用されたラウズカード
   スペード・2 『スラッシュ』  AP400
   スペード・6 『サンダー』   AP1200
   スペード・J  『フュージョン』 AP2400
   スペード・Q  『アブソーブ』  AP2000

備考:
 ブレイバックルの起動、各機能の使用には装着者の潜在オーラ(POP)が使われる。
 そのため、装着者の顕在オーラがブレイバックルの数値に届いていなくても無理やりAOPを補正してブレイドの数値にする。
  

名前:リュウキ
念系統:強化系
  能力名:カードデッキ『龍騎』(元ネタ 仮面ライダー龍騎)
   ヒーローズソサエティにて作成されたヒーローアイテムの一つ。
   万能型のシステム。
   カードデッキとVバックルのセット。
   Vバックルを装着し、バックル部分にデッキを差し込むことで変身する。
   デッキ内には様々な効果を及ぼすカードが格納されている。
  制約と誓約:
   ヒーローアイテムを使用するためにはヒーローズソサエティが発行したヒーローライセンスをセットした上でライセンスの持ち主
   が使用しないと起動しない。
   龍騎の基本戦闘力は誰が使用しても変わらない。
   AOP = 2500
   
備考:
 カードデッキ『龍騎』の起動、各機能の使用には装着者の潜在オーラ(POP)が使われる。
 そのため、装着者の顕在オーラがカードデッキ『龍騎』の数値に届いていなくても無理やりAOPを補正して竜騎の数値にする。


名前:リュウガ
念系統:強化系
  能力名:カードデッキ『リュウガ』(元ネタ 仮面ライダー龍騎)
   ヒーローズソサエティにて作成されたヒーローアイテムの一つ。
   万能型のシステム。
   カードデッキとVバックルのセット。
   Vバックルを装着し、バックル部分にデッキを差し込むことで変身する。
   デッキ内には様々な効果を及ぼすカードが格納されている。
  制約と誓約:
   ヒーローアイテムを使用するためにはヒーローズソサエティが発行したヒーローライセンスをセットした上でライセンスの持ち主
   が使用しないと起動しない。
   リュウガの基本戦闘力は誰が使用しても変わらない。
   AOP = 2500

   一度使用したアドベントカードは24時間たたないと再使用できない。

   ※第九話時点での使用アドベントカード
   『アドベント』
    AOP = 6000
    黒い龍の念獣、ドラグブラッガーを召喚するカード。
    このカードで召喚された念獣は15秒間しか存在できない。
   『ストライクベント』
    AP 3000(メテオバレット使用時)
    ドラグブラッガーの頭部を模したナックル『ドラグクロー』を召喚する。
    背後に一時的にドラグブラッガーが召喚され、ドラグクローの動きに合わせてメテオバレットを発射する。
   『ファイナルベント』
    AP 6000
    飛び蹴りの格好で背後からドラグブラッガーの黒炎を受け、身に纏い敵に突撃する技。

備考:
 カードデッキ『リュウガ』の起動、各機能の使用には装着者の潜在オーラ(POP)が使われる。
 そのため、装着者の顕在オーラがカードデッキ『リュウガ』の数値に届いていなくても無理やりAOPを補正して竜騎の数値にする。

 ※原作ではリュウガは龍騎より全能力が1000AP高い設定となっていますが、ヒーローズソサエティが作成したカードデッキでは龍騎とリュウガは
  同じ性能として作られたという設定です。


名前:カルラ
念系統:変化系
  能力名:聖剣抜刃(エクスカリバー)変化系 (元ネタ 聖闘士聖矢EpisodeG)
   オーラを鋭く研ぎ澄ませて手刀に乗せて放つ技。
   打ち込む側のオーラが相手のオーラを上回っていたとき、オーラを切断する効果がある。
  制約と誓約:
   手刀を受け止められるなどした場合、攻撃を行なった分の運動エネルギーが反作用として攻撃を行なった腕に跳ね返る(これをオーラを用いて中和することは出来ない)。


  能力名:山羊座の黄金聖衣(カプリコーンのゴールドクロス)(元ネタ 聖闘士聖矢EpisodeG)
   様々な技術を駆使して再現した聖闘士聖衣神話(セイントクロスマイス)シリーズ。
   普段は携帯容易な手のひらサイズのクロスボックスの中に格納されている。
   所有者の意思に反応してクロスボックスから飛び出して装着される。

  制約と誓約:
   カプリコーンのゴールドクロスの所有者となる条件として原作の山羊座の黄金聖闘士シュラの技、戦い方を再現する必要がある。
   条件を満たさない場合、クロスを装着することが出来ない。
   (つまり、カプリコーンのゴールドクロスを装着している間はシュラの戦い方を大きく逸脱する戦い方は出来ない。例えば剣を使って戦うとか)
   追加機能としてエクスカリバー失敗時にかかる反動をクロス部分にも逃がせるように改良。

  追記:
   ちゃんとストレンジャーズに150億ゼニー支払って作成を依頼しました。



備考:
 ヒーローズソサエティ幹部の一人。
 エクスカリバーの使い手。
 セイント技繋がりで親しくなったイグルス、メリクからテオが黄金聖衣の製作者であることを聞きだし作成を依頼する。

 現状、最大出力で(『硬』などを用いて)行なったエクスカリバーは1万オーラ近くに上り、ほぼ何者をも切り裂く力を有しているが、反面万が一ガードされ耐え切られると右腕が消し飛ぶ位の反動が発生するためそれをガードできる装備が必要不可欠となった。
 要は日本刀と同じで切るのに失敗すると欠けたり折れたりするのと一緒である。

 第十~十二話終了時点でのカルラの
 AOP = 約6000
 POP = 約117000


《チーム猛士》

名前:ヒビキ
念系統:具現化系
  能力名:変身音叉・音角(へんしんおんさ・おんかく) 具現化系
   音叉を物に当てて音を出した後それを額に近づけて共振させ、ヒビキに変身する。

  制約と誓約:
   音角は常に具現化させておかなければならない。
   音角を破壊された場合、ヒビキへの変身能力(念能力)を失う。
   ヒビキ変身時は変身前よりAOPが2倍になる。

  能力名:鬼法術・鬼火(きほうじゅつ・おにび)変化系
   オーラを炎に変換する能力。
   変換された炎はオーラを燃料に燃える炎になる(通常の物体に燃え移っても延焼しない)。

  制約と誓約:
   大量に炎を精製することは出来ない。
   連続で炎を精製することは出来ない。

  能力名:音撃棒・烈火(おんげきぼう・れっか)具現化系
   音撃棒・烈火で対象を殴打することによりオーラを対象に浸透させより大きなダメージを狙える。
   また、音撃棒・烈火を用いて鬼火を使用することで炎の精製量を増やすことが出来る。

  制約と誓約:
   音撃棒・烈火は常に具現化させておかねばならない。
   音撃棒・烈火は破壊されても先端部分の鬼を象ったパーツが破壊されていなければ具現化が解けない。
   音撃棒・烈火は鬼を象ったパーツ部分が破壊された時完全に消滅し、二度と作成できなくなる。
   鬼を象ったパーツが無事である場合、それを手に持っていればすぐさま再生が可能。

  追記:
   『音撃棒・烈火』使用の必殺技。
   『音撃打・爆裂強打の型』
     両の撥で全力で連続して対象を殴打することで大ダメージを与える技。
     
備考:
 もちろん本名は別にあるが名乗っていないので割愛。
 第十一~十二話終了時のヒビキの
 AOP = 約3000(変身前)
 POP = 約110000

名前:イブキ
念系統:操作系
  能力名:変身鬼笛・音笛(へんしんおにぶえ・おんてき) 操作・具現化系
   イブキに変身するための笛。

  制約と誓約:
   音笛を破壊された場合イブキへの変身能力(念能力)を失う。
   イブキ変身時は変身前よりAOPが1.5倍になる。

  能力名:音撃管・烈風(おんげきかん・れっぷう)操作系
   銃型の武器で内蔵されている石の弾丸を発射して攻撃する。

  誓約と誓約:
   石の弾丸に使用できる石は黒曜石だけである。
   石の弾丸は自分で作成しなければならない。
   石の弾丸は直径一センチの球状でなければならない。

  追記:
   『音撃管・烈風』の必殺技。
   『音撃射・疾風一閃』
     あらかじめ対象に烈風によって石の弾丸を撃ち込んでおき、その後烈風に音撃鳴・鳴風を取り付けた状態で清めの音を吹くことで石の弾丸に強振動を発生させ、対象を爆砕する。
   
備考:
 もちろん本名は別にあるが名乗っていないので割愛。
 第十一~十二話終了時のイブキの
 AOP = 約3500(変身前)
 POP = 約110000

名前:トドロキ
念系統:操作系
  能力名:変身鬼弦・音錠(へんしんきげん・おんじょう)
   トドロキに変身するための腕輪。
   内蔵された小さな弦を弾くことで変身。

  制約と誓約:
   音錠を破壊された場合、トドロキへの変身能力(念能力)を失う。
   トドロキ変身時は変身前よりAOPが1.5倍になる。

  能力名:音撃弦・烈雷(おんげきげん・れつらい)操作系
   ギター型の武器、エッジが刃となっており、剣としても使用可能。

  制約と誓約:
   『音撃斬』は烈雷を使用しなければ放つことが出来ない。

  追記:
   『音撃弦・烈雷』の必殺技。
   『音撃斬・雷電激震』
     地面、壁などに突き刺した烈雷の弦を掻き鳴らすことで清めの音を発生させ、広範囲に浸透させて一気に爆発させることで範囲攻撃を行なう。
     弦を掻き鳴らす時間が長いほどより広範囲を攻撃することが出来る。

   『音撃斬・雷電斬震』
     標的に突き刺す、もしくは接触した状態で弦を鳴らすことで瞬間的な音撃攻撃を発生させる。
     雷電激震のように広範囲に効果は発生しないが接触していた対象には大きなダメージを与えることが出来る。
  
備考:
 もちろん本名は別にあるが名乗っていないので割愛。
 第十一~十二話終了時のトドロキの
 AOP = 約3500(変身前)
 POP = 約110000


《その他》

名前:リョウ
念系統:具現化系
  能力名:三種の神器(トライ・エッジ)具現化系 (元ネタ .hack//G.U)
   双剣、大剣、大鎌の三つで構成された念能力。
   とくに具現化された武器に付加能力は無い。
  制約と誓約:
   特になし。

  能力名:憑神スケィス(アバタースケィス)具現化系
   能力者自身を取り込んで全長10メートルサイズの黒い巨人に変身する能力。
   右手に大鎌を持ち、左手から高圧空気弾を発射する。
  制約と誓約:
   以下のどちらかの条件に当てはまらない限りこの能力を発動することは出来ない。
    1.相手が自身のみで対処出来ないほど強い相手である場合。
    2.スケィスと同程度以上の巨体が相手である場合。
   スケィスと能力者は痛覚などが繋がっており、スケィス状態で受けたダメージは能力者側にもダイレクトに伝わる。
   (幻痛としてなので実際に破壊された部位が肉体に反映されるわけではない)

備考:
 現在はまだ三種の神器に特殊能力は付加されていない。

 第八~九話終了時点でのリョウの
 AOP = 約2500
 POP = 約95000
 スケィス時の
 AOP = 約5000


名前:獅子座(レオ)のイグルス
念系統:操作系
  能力名:電子の支配者(エレクトロン・ルーラー)操作系
   『円』の範囲内に存在する電子を操作して自由に操ることが出来る(操るために実際に円を行なう必要はない)。
  制約と誓約:
   自身に近い場所にある電子ほど操作しやすく、円の範囲限界に近い位置にあるほど操作しにくい。
   一度に把握できる電子の数は熟練度に左右される。
   (円の範囲内に100個の電子があっても熟練度が足りなければ10個までしか操作できないなど)

  追記:
   電子の支配者(エレクトロン・ルーラー)のバリエーション
    『雷光電撃(ライトニングボルト)』
      把握した電子を操作し腕に集中させ、振りぬくと同時に発射する。
      電子の塊として飛ばすが、雷光のほうき星が延びるため雷が横に飛んでいる様に見える。
    『雷光放電(ライトニングプラズマ)』
      把握した電子を操作し腕に集中させ、振りぬくと同時に発射する。
      電子を無数の小塊に分けて散弾のように発射する。
    『雷光電牙(ライトニングファング)』
      把握した電子を操作し腕に集中させ、地面に撃ち込むと同時に発射する。
      電子を無数に分岐させ、地上に向けて放射することで奇襲攻撃をかける。

  能力名:獅子座の黄金聖衣(レオのゴールドクロス)(元ネタ 聖闘士聖矢EpisodeG)
   様々な技術を駆使して再現した聖闘士聖衣神話(セイントクロスマイス)シリーズ。
   普段は携帯容易な手のひらサイズのクロスボックスの中に格納されている。
   所有者の意思に反応してクロスボックスから飛び出して装着される。
  制約と誓約:
   レオのゴールドクロスの所有者となる条件として原作の獅子座の黄金聖闘士アイオリアの技、戦い方を再現する必要がある。
   条件を満たさない場合、クロスを装着することが出来ない。
   (つまり、レオのゴールドクロスを装着している間はアイオリアの戦い方を大きく逸脱する戦い方は出来ない。例えば剣を使って戦うとか)

  追記:
   実は、made in stranger'sで制作費150億ゼニーの大作である。

備考:
 獅子座の黄金聖闘士。
 水瓶座のメリクとともにハンター試験を受けに来たがメリクが四次試験でタクヤに敗北したためタクヤに興味をもった。

 第八~九話終了時点でのイグルスの
 AOP = 約5500
 POP = 約130000

 第十~十二話終了時点でのイグルスの
 AOP = 約6000
 POP = 約135000

 第十三話終了時点でのイグルスの
 AOP = 約7000
 POP = 約145000


名前:メリク
念系統:操作系
  能力名:水瓶座の時代(アクエリアン・エイジ)操作系
   『円』の範囲内にあるH2O分子(水)を操作して自在に操る能力(能力使用時に円を使う必要はない)。
   また、操作したH2O分子(水)の触れた物質の分子運動のエネルギーを低下させることで強制的に温度を低下させることが出来る。

  制約と誓約:
   自身に近い場所にあるH2O分子(水)ほど操作しやすく、円の範囲限界に近い位置にあるほど操作しにくい。
   一度に把握できるH2O分子(水)の数は熟練度に左右される。
   (円の範囲内に100個のH2O分子(水)があっても熟練度が足りなければ10個までしか操作できないなど)
   温度の剥奪は集中したH2O分子の数が多ければ多いほど効果が加速する。
   
  追記:
   水瓶座の時代(アクエリアン・エイジ)のバリエーション
   『極小氷晶(ダイヤモンドダスト)』
     大気中の水分子を操作して氷の結晶にし、それを標的に叩き込むことで標的を氷結させる。
   『氷結唐櫃(フリージングコフィン)』
     より遠くの大気からも水分子を操作してかき集めることで瞬時に大気中に氷の壁などを精製する。
     対象の周囲に発生させることで相手を氷の棺に閉じ込めることも出来る。
   『極光処刑(オーロラエクスキューション)』
     操作できる最大級の量の水分子を用いての攻撃。
     把握できるほぼすべての水分子を使っての攻撃となるので、事前準備なしで発動しようとすると多大な時間がかかる。
     そのため、戦闘中に使用する場合は事前の仕込が必須。
   
  能力名:水瓶座の黄金聖衣(アクエリアスのゴールドクロス)(元ネタ 聖闘士聖矢EpisodeG)
   様々な技術を駆使して再現した聖闘士聖衣神話(セイントクロスマイス)シリーズ。
   普段は携帯容易な手のひらサイズのクロスボックスの中に格納されている。
   所有者の意思に反応してクロスボックスから飛び出して装着される。
  制約と誓約:
   アクエリアスのゴールドクロスの所有者となる条件として原作の水瓶座の黄金聖闘士カミュの技、戦い方を再現する必要がある。
   条件を満たさない場合、クロスを装着することが出来ない。
   (つまり、アクエリアスのゴールドクロスを装着している間はカミュの戦い方を大きく逸脱する戦い方は出来ない。例えば剣を使って戦うとか)

備考:
 水瓶座の黄金聖闘士。
 本編初登場は第七話、正式に登場は第十話。
 テオを嵌めてククルーマウンテン逝きを促す作戦を立てたのはコイツ。

 第七話終了時点でのメリクの
 AOP = 約5000
 POP = 約120000

 第十~十二話終了時点でのメリクの
 AOP = 約5500
 POP = 約125000

 第十三話終了時点でのメリクの
 AOP = 約6500
 POP = 約135000


名前:カズヤ
念系統:操作系
  能力名:なんでもアルター化 (元ネタ スクライド)
   自身の周りにある物質にオーラを浸透させて塵のサイズまで砕いて別の形に再構成する。
   再構成された物質はオーラで保たれているためオーラの供給が止まれば塵に帰る。

  制約と制約:
   生物に対してこの能力は使用できない。
   オーラの宿る物質をこの能力で分解することは出来ない。
   常にオーラを供給し続けなければ再構成した物質を保つことは出来ない。

  追記:
   なんでもアルター化のバリエーション
    『シェルブリット』
      右腕全体を覆う鎧の様なパーツと背中に三本の羽が備わった形態。
      羽を一本消費することで羽の内部に溜め込んだオーラで爆発的な加速をしながら殴りつける攻撃をする。
      右腕に大きく偏ったオーラの配分になるため(右腕7割、その他3割)右腕以外で攻撃を受けると大変なことになる。
    『シェルブリット2ndフォーム』
      右腕全体を覆う鎧の様なパーツと背中に円形で高速回転するパーツが発生した形態。
      背中の円形のパーツが高速回転することで、中心部に圧縮されたオーラが発生し、それを開放することで推進力を発生させる。
      右腕に大きく偏ったオーラの配分になるため(右腕7割、その他3割)右腕以外で攻撃を受けると大変なことになる。

備考:
 特になし。



《タランチュラ》

名前:シキ(本名でない可能性大)
念系統:強化系
  能力名:魔眼『直死』 強化系 (元ネタ 月姫)
   オーラの構成を『視る』ことが出来、オーラ量や密度、念能力の構造上の欠点、欠陥などを『線』、『点』の形で視覚化することが出来る。
   この能力で確認した『線』、『点』を攻撃することでオーラそのものを破壊する。
   基本的に実力が拮抗している、もしくは、相手が上の場合は『凝』のオーラ量を上げなければ『線』、『点』の確認は困難。

  制約と誓約:
   この能力を発動するためには通常の『凝』使用時に能力発動を意識する必要がある。
   この能力を使用時は、通常の『凝』と併用となる。
   この能力を使用中は能力の維持コストが時間と共に上がっていく。
    ※能力使用開始から10秒間→通常の凝と同量。
     10秒後からは10秒毎にオーラ消費量が倍になる。
   この能力を解除した場合、使用していた時間分経過しなければ、この能力は再使用できない。
   能力発動中は眼の色が青色になる。
   この能力で確認している『線』、『点』に対する攻撃はオーラ量の差に関係なく有効となる。
   あくまでオーラに対してのみ『線』、『点』が確認できる(生物の体本体やオーラを纏っていない物体の『線』、『点』は見ることができない)。

備考:
 『線』に対して攻撃を行なった場合は相手が『硬』などで防御していても一方的に切断することが出来る。
 『点』に対して攻撃を行なった場合は相手が『錬』をしている状態だとしてもそれを強制的に霧散させ、一瞬とはいえ強制的に『纏』すら解かれた垂れ流し状態にすることが出来る。
 除念に近い能力?

 ヨークシン編で本格的に活動する新組織、タランチュラのメンバー。
 流星街出身のトリッパーで構成される組織で基本的に同じ流星街出身の幻影旅団の依頼などを受けて活動している。

 第十二話終了時のシキの
 AOP = 約7000
 POP = 約130000 


名前:マガツ
念系統:???
  能力名:???
  制約と誓約:???
備考:
 タランチュラのメンバーの一人。 

おまけ:

名前:ネテロ会長

AOP = 1万オーバーっぽい(テレビで見た直感から)
POP = 不明(さすがにテレビだけじゃ)

補足:
 この二次小説で描かれているネテロ会長は筆者であるぺんたの想像によるところが大きく
 原作者富樫先生の考えられているネテロ会長のステータスと必ずしも一致するとは限らない
 場合があることをまず、ここで表記させていただきます。

 ・・・AOP一万オーバーって実際どうなんでしょう?

 ネテロ会長のAOP設定時の計算方法(H×Hの研究サイト「WONDER×HUNTER」様参照)
 NGL編にてゴンのAOPはPOPの十分の一から十一分の一程度と明かされており、これは未熟であるためAOPがPOPに比べて低い
 とされているとの事。
 ネテロ会長の証言によると、現在のネテロ会長は最盛期の半分程度、モラウはネテロとほぼ同等の実力との事。
 ナックル証言により、モラウのPOPは約7万と判明(これにより、モラウのAOPは確実に7000以上であると推測される)。
 ネテロ≒モラウのため、ネテロ会長のPOPも7万前後と推測。
 しかし、ネテロ会長は全盛期はこの倍の力を持っていたと自己申告しているため、かつてのAOPも1万4000以上であったと
 推測。
 現在でも現役の武術家であるため、衰えるに任せたままとは判断しずらいため、モラウよりはAOPが上であると判断。
 
 よって、1万ぐらい?と推測。 


幻影旅団の団員達の戦闘力について

AOP = 5000~1万くらい(ウボォーギンが一万くらい、団長は7000くらい、シャル5000くらい)

の設定でやってます。

外伝その1で出てきたトリッパーたちは平均で3000前後、一番修行していたクリス君で約3500。
外伝その1で出てきたトリッパー達の現在の数値は本編登場後に掲載する予定です。


 これはおかしい、等、ありましたらご指摘お願いします。



[8143] ヨークシン編その1
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:1e5f2ff6
Date: 2009/09/04 00:21

『総員、配置に付いたか?』

ライダースーツの無線からギャレン隊長の確認の点呼が聞こえる。

『配置完了しました』

『同じく完了です』

『完了しました』

今回の作戦に抜擢されたヒーローズソサエティのメンバー達が返事をする。

「配置完了しました」

俺も返事を返す。

『原作』の通りならもうすぐこの道を幻影旅団のメンバーが通る。

3つあるヨークシンに続く街道の一つを見張る班に編入された俺は当初の計画通りに旅団を奇襲するポイントで待ち構えていた。

二ヶ月前に旅団に原作知識が洩れている可能性が示唆され、ヒーローズソサエティは大混乱に陥ってしまった。
ヒーローズソサエティの対旅団戦略は原作知識ありきのものであったのだからそこは仕方ないのかもしれないが。
その後、何とか持ち直し、徹底的に調査を行ったが旅団の足取りを掴むことはできずオークションの季節になってしまった。

『・・・ギャレン隊長、連中は本当にここを使ってくるのでしょうか?』

仲間の一人がギャレン隊長に疑問をぶつける。
当然だろう、原作知識が洩れていると言うことはこの奇襲も警戒されている可能性があると言うことでもある。

『・・・分からん。だが、旅団に原作知識が洩れていようが洩れていまいが我々の仕事に変わりは無い。総員油断せずに行け!!』

『了解!!』

隊長の励ましによって不安に駆られていた仲間達に活が入れられる。
俺も改めて気を入れ直して監視に戻ろうとした。

「・・・!?」

ライダーマスクの望遠機能によって、最大で十キロ先まで見渡すことが出来る。
その視界に少なくとも十人以上の人間の集団が映し出された。

「・・・東側ルート斥候隊より連絡、対象を発見しました」

『・・・了解した。東側ルート斥候隊はそのまま待機。至急増援を送る』

これですぐさま増援が来る、掻き集めた戦力ならば旅団にだって勝てる。
俺はこの時はそう思っていた。

「よう、上司への連絡は終わったか?」

「な!!」

まったく気付かないうちに背後に現れた人物からかけられた声に後ろを振り向く間もなく、俺の意識は永遠に刈り取られた。






「早く来ないかなぁ」

わざわざ斥候に報告させてから始末したのは単純に探し回る手間を惜しんだからだ。

シャルが状況確認のため、改めて俺達がいる東側ルートに敵を集めることを皆に説明している。
北側、西側ルートの見張り連中はここでの戦いが激しくなれば呼び出されるからわざわざ探しに行かなくても問題ないだろう。。

「ベクター、すぐに来るさ。そう急くな」

クロロからやんわりと窘められる。

確かにここまでくればヒーローズソサエティが動くまではやることが無い。

俺達は敵が捕捉されるまでその場で待ち続けた。





俺の名はベクター。

原作知識を手に入れてヒソカの入団を蹴った団長が、変わりに入団を許可した幻影旅団の4番であり、また、タランチュラのリーダーでもある。
旅団とタランチュラの関係を維持するためにも俺が4番に選ばれたのは必然だったのかもしれない。



今回のヨークシンでの襲撃は蜘蛛の側から見ても丁度よい、手間が省けたと言ってよいものであった。
何しろ殆ど行方の知れなかった、旅団員の情報を持つ者たちが大挙して集まってくれるのだ。

襲撃があると解かっているならば、後はそれに備えておくだけ。

その場合、相手側にこちらが原作知識を保有していることがばれても特に問題は無い。

トリッパー達からすれば原作において旅団が確実にやってくるとされている『此処』を除いて計画的な襲撃計画を立てられるポイントなど無い。
連中が本気で旅団と対峙する気があるのなら、2000年のヨークシンオークションは『ほぼ』最初で最後のチャンスとなる場なのである。

結局のところトリッパー達は旅団と戦う道を選んだ。

旅団は今回のヨークシンでの活動の主な目的の一つとして旅団につられてくるトリッパー達の掃除を行うことを決めていた。
数年越しの懸念材料であるトリッパー問題を片付けるチャンスをクロロが放置するはずも無いのであった。



今頃は俺達の予定通りにヒーローズソサエティの本体がこちらに向かっている頃だろうか。

どんどん来てくれて構わない。
こちらの目的はトリッパーを始末することなのだから。
連中を釣り出すためにわざわざ俺達の姿を見せてから始末したのだから。



「・・・来たみたいだ」

タランチュラの後方支援担当であり、『円』において他者の追随を許さないトキオの呟きに全員の足が止まる。

やがて巨大なオーラを感じさせる者たちが近づいてくるのが感じられた。
視認できるところまでヒーローズソサエティの連中がやってきた。

「・・・俺のことを覚えているか?クロロ・ルシルフル」

連中の戦闘に立った男がクロロに問いかけている、始末しそこなったトリッパーか?

「?すまないが、覚えが無いな」

だが、クロロの方は覚えが無いようでそっけない態度だ。

「これを見れば思い出すだろ」

男はそう言い放つと両の手を腰に持ってくる。
そこにはいつの間にか白いベルトが装着されていた。

「『変身』!!!」

言葉と共にベルト中央の風車が勢い良く回る。
その直後、男の姿はドクロの様な仮面と各所にプロテクターを付けたような強化服を纏った姿に変わっていた。

そう、仮面ライダー一号に酷似した姿に。

「その姿・・・そうか、貴様はクルタ族のときの子供の一人か」

クロロにはその姿に見覚えがあったらしい。
そう言葉を洩らし、確りと一号ライダーを見据えていた。

「俺は、『俺達』はあの時の無力な俺達とは違う、今日この場で貴様等を葬ってやるぞ、蜘蛛共!!!」

一号ライダーの怒号と共に背後に控えていた一号ライダーの仲間達がそれぞれに戦闘態勢を取る。





ポケットから取り出したカードデッキを手鏡にかざして

「変身」

と呟き、仮面ライダーゾルダの姿に変身する男。

それに続いてそばに居た三人が同じようにデッキを取り出し、各々の変身ポーズを取る。

「「「変身!!」」」

それぞれ、リュウキ、リュウガ、ナイトに変身する。



その隣に控えていた男は静かにベルトを具現化させると一枚のカードを取り出し、

「変身」

静かに呟きカードをバックル部分のスリッドに通し、『チェンジ』の電子音と共に次の瞬間には仮面ライダーカリスの姿へと変じていた。

その横に居た二人の男が同時に声を上げる。

「「変身!!」」

『『ターンアップ』』

二人は腰に装着された装置・・・『ブレイバックル』と『ギャレンバックル』を同時に起動させ、前面に展開されたスクリーンを通り抜ける。
その姿は仮面ライダーブレイド、仮面ライダーギャレンとなっていた。



男が徐に携帯を取り出す。
その携帯に9→1→3→Enterの順番で入力を行うと携帯を閉じ、一言呟く。

「変身」

そのまま腰に装着していたベルトに装着する。

『コンプリート』

ベルトから電子音が響き、黄色の光の帯、フォトンストリームが発生し男の体を駆け巡る。
やがて体全体が発光するように強く光った後、そこに男は居らず、仮面の戦士、仮面ライダーカイザが愛剣カイザブレイガンを構えて佇んでいた。

その隣に居る男も携帯を弄っている。
携帯に入力した番号は5→5→5→Enter、カイザと同じく携帯を閉じ空高く掲げこちらは叫ぶ。

「変身!!」

そのまま腕を振り下げ、ベルトに携帯を装着する。

『コンプリート』

ベルトから電子音が響き、カイザとは違う赤色のフォトンストリームが発生して男の体を駆け巡る。
やがて体全体が発光するように強く光った後、そこに男は居らず、仮面の戦士、仮面ライダーファイズとなってそこに存在していた。



「キバット!!!」

後方にいた男が叫ぶ。
すると、何処からか飛んできたコウモリの様な何かがその手に収まる。

『キバっていくぜ!!』

手に握られた何か、『キバットバットⅢ世』をもう片方の手に近づけ噛み付かせる。

『ガブッ』

それこそが彼の変身トリガーだ。

「変身!!」

手を噛ませると共に発生したベルトに叫びながらキバットバットⅢ世を装着する。
それによって彼の姿が変化し、仮面ライダーキバの姿となって現れた。



「「「「「ガオアクセス、ハッ!!!」」」」」

携帯を弄り、五人の男女が叫びながらポーズをとる。
携帯を右耳にかざしながら左腕を前方に突き出したポーズだ。

「「「「「サモン、スピリット・オブ・ジ・アース!!!」」」」」

叫びと共に五人の体がそれぞれ赤、青、黄、黒、白のスーツに包まれる。

「灼熱の獅子、ガオレット!!」

「孤高の荒鷲、ガオイエロー!!」

「怒涛の鮫、ガオブルー!!」

「鋼の猛牛、ガオブラック!!」

「麗しの白虎、ガオホワイト!!」

五色の戦士が自身の二つ名を連想させるポージングを行いながら名乗りを上げる。

「命ある所、正義の雄叫び有り!!!」

赤い戦士が右拳を握り締めながら叫ぶ。

「「「「「百獣戦隊、ガオレンジャー!!!」」」」」

最後に五人そろって戦隊名の名乗りを上げた。



ガオレンジャーのそばに居た別の五人の男女が構えをとる。

「気!」「力!」「転!」「身!」「了!」

五人がそれぞれ言葉を発する。

「「「「「オーラチェンジャー!!!」」」」」

の発声と共に右手のアイテムを胸にかざした左腕のアイテムへと合体させ、五人の姿はそれぞれ、赤、緑、青、黄色、桃色のスーツに包まれる。

赤いスーツの戦士が龍の顎を連想させる動きをとりながら叫ぶ。

「リュウレンジャー、"天火星" リョウ!!」

緑のスーツの戦士が獅子の力強さを連想させる動きをとりながら叫ぶ。

「シシレンジャー、"天幻星" ダイゴ!!」

青のスーツの戦士が天馬の躍動感を連想させる動きをとりながら叫ぶ。

「テンマレンジャー、"天重星"ショウジ!!」

黄色のスーツの戦士が酔拳を連想させる動きをとりながら叫ぶ。

「キリンレンジャー、"天時星" カズ!!」

桃色のスーツの戦士が鳥の羽ばたきを連想させる動きをとりながら叫ぶ。

「ホウオウレンジャー、"天風星" リン!!」

最後に五人そろって左腕を天にかざすポーズをとり叫ぶ。

「「「「「天に輝く五つ星、五星戦隊ダイレンジャー!!!」」」」」

今ここに、気力の戦士が降臨した。



「「「「爆竜チェンジ!!」」」」

掛け声と共に四人の男女が左手首に装着したブレスレットを起動すると4人の体が光に包まれ、赤、青、黄色、黒のスーツをまとって現れる。

「元気莫大!アバレット!!」

体ごと突き上げるように、右腕を天にかざして宣言する赤いスーツの戦士。

「本気爆発!アバレブルー!!」

右腕を前に突き出すポーズで宣言する青いスーツの戦士。

「勇気で驀進!アバレイエロー!!」

羽ばたくようなポーズから左腕を突き上げて宣言する黄色いスーツの戦士。

「無敵の竜人魂!アバレブラック!!」

右手の平に左拳をたたきつけるポーズで宣言する黒いスーツの戦士。

「「「「荒ぶるダイノガッツ!!!」」」」

胸のマークが一際まぶしく光り輝く。

「「「「爆竜戦隊アバレンジャー!!!」」」」

ダイノガッツの戦士たちがその名乗りを上げる。



黒づくめの格好をした男、ウインドが静かに戦闘態勢をとる。
その右腕には魔銃が具現化され、左手には既に三つのソイルが握られている。

「・・・」

ウインドはただ静かに魔銃にソイルを込める。



旅団を睨み付けながら男、カズが懐から核金を取り出す。

「武装錬金!!」

カズの叫びと共に核金が分解され、突撃槍の形に再構成される。

「・・・」

槍を前方に突き出した格好のまま、静かにその時を待つ。



浅黒い肌を持つ男、テッカはただ無言で構える。
その闘技は古今無双。
その名と魂を継ぐと誓ったからには誰が相手であろうと敗北は許されない。

「・・・クルダ流交殺法影技 テッカ=ラヌゥ、参る」

ただ、静かに宣言する。



獅子座(レオ)のイグルスと水瓶座(アクエリアス)のメリクは共にクロスボックスを解放する。

「来い、獅子座(レオ)のゴールドクロス!!」

「来い、水瓶座(アクエリアス)のゴールドクロス!!」

黄金の光が辺りを照らし、二人の姿が金色に輝く聖衣をまとった姿で現れる。
二人とも静かに待つ。
この場において自分達が主役ではないことを彼らは理解している。



「界王拳!!」

ゴゥッ!!とゴクウの周囲を風が舞う。
ゴクウは倍増させたオーラを制御しながら考える。

今回は最初から全力でいく。

視認してみて実際の敵との力量差と言うものがよく理解できた。
だが、ゴクウにはそれを限定的にでもひっくり返すことの出来る技がある。
ならばそれを有効活用するだけだ。

ゴクウはただ静かに戦いの開始を待った。



タクヤは静かに斬魄刀を抜き、その名を唱える。

「『噛み裂け、竜王丸』」

タクヤのオーラが解放され、斬魄刀『竜王丸』の姿形が野太刀サイズのモノへと変わる。
いつでも突撃できるように刀を構え、オーラを練り上げ号令を待つ。



「・・・『スピリット・オブ・ファイア黒雛』」

ハオは静かに技名を宣言し、その身に甲縛式オーバーソウル『黒雛』を身に纏う。
背負う蝋燭の大砲を旅団に向け、いつでも撃ち出せるように構える。
号令と共に最初の花火を撃ち込む算段だ。



「・・・」

テオは静かに構える。
その眼が睨み付けるのは自身の左腕を奪った相手、シキに向かっている。

全身各所に仕込まれた紙はいつでも取り出せる。
左腕の義手の動きも問題ない。

・・・此方の準備は万端だ、いつでもやれるぞ。

テオは静かに、ただ目の前の敵を倒すためにオーラを練り上げ続けた。





リッドは静かに敵を見る。
4年前、リッドは旅団に対して殆ど何も出来なかったに等しい。
あの場をほぼ痛み分けで終わらせたのはリッドだが、それは『ジャバウォック』の暴走によるものだ。
リッドの認識ではなすすべも無く片腕を奪われ、仲間を半殺しにされ、それでも尚何も出来なかったという日の記憶である。

だが、今はあの日とは違う。

四年前とは比較にならないほどに鍛えた自負がある。
積み重ねてきた経験が自身になる。

「俺は今度こそ、負けない!!」



イナトはかつて砕かれた自身の右腕を見る。
あの日、自分は任された役目を全うできなかった、とイナトは考えていた。
4年前の戦いでイナトは作戦の中核を担っていたと言ってよい。
だが、あっさりと作戦は潰され、何も出来ないままに叩き潰された。

今度は負けないと誓う。

そのためにこの4年間修行を続けてきた。
今こそその成果を発揮する時だ。
イナトは敵を見据え、全身にオーラを行き渡らせた。



カルラは静かに目の前の敵を見据える。
そこにはかつて手も足も出なかったウボォーギンがいる。

「・・・来い、山羊座(カプリコーン)のゴールドクロスよ」

カルラは静かにオーラを燃え滾らせながらクロスボックスを解放する。
全身に金色の聖衣が纏われる。

「今度は、負けん」

ただ静かに、必勝を誓う。



ミコトは4年前に敗れてから考えていた。
どうすれば自分は旅団と戦えるのかを。

四年前、ミコトは旅団の足止めを任されながら真っ先に墜ちるという醜態をさらした。

誰もそれを責めなかったが、ほかの誰でもないミコト自身がそれを責めた。
それ以来、ミコトは考えていた。
どのように運用すれば自身の能力を効果的に使用することが出来るのか。
最大限の効果を発揮するにはどうすればいいのか。

「その答えがこれよ!!」

銃器を模したような形のアイテムを取り出し、銃身にあるスリッドにカードを差し込み、前方へと引き出すように銃身をスライドさせる。

『カメンライド』

「変身!!」

ミコトは叫びながら空に向かって銃型のヒーローアイテム・・・ディエンドライバーの引き金を引く。

『ディエンド』

電子音声と同時にその姿がディエンドとなり、空に撃ち出したヘルメットのパーツが装着される。

「準備完了!!」



クリス・・・一号ライダーは総員戦闘態勢を取った仲間達を背後に従えて一歩前へ出る。
彼がやるべきことは唯一つ、

「往くぞォォォォオオ!!!」

「「「「「「「「オォォォォォオオ!!!」」」」」」」」

一号ライダーの号令によって、ヨークシンでの対旅団戦争の幕が切って落とされた。






「・・・なにあれ、こわい・・・」

ルーが思わず洩らしたという感じで呟いたが全面的に同意したい。

目の前には特撮映画なんかでしか見られないような光景がリアルに繰り広げられている。

つーかおまいら、すぐそばにヨークシンがあるのにそんな目立つ戦闘行為していいのか?

ヒーローズソサエティのヒーロー達は有名だからあんまり目立つと一般人がやってくるのでわ。


ゴン達を追って俺達も急ぎヨークシンまでやってきたがタッチの差で間に合わなかったようだ。
既にガチンコでバトルが始まってる。
恐らくこいつ等が鉢合わせるより先にヨークシン内に入ることが出来たのだろう。

あいつ等の性格からして見かけたら好奇心に負けて観戦してるだろうからな。

「そんなことよりこのままここにいると巻き込まれるぞ、大きく迂回して逃げよう」

「あなた達は彼らの関係者と言うわけではないのですか?」

「「「「「「「おぉう!?!?」」」」」」」

全員そろってビクッと来た。
ヒーローズソサエティVS旅団の方に気を取られて後ろをとられたことにまったく気付けなかった。

「ド、ドチラサマデ?」

「ハンター協会の者です」

良く見たら、見覚えのある顔・・・ノヴさんでした。

「もう一度お尋ねします。あなた方はヒーローズソサエティの関係者ですか?」

ノヴさんが確認を取ってくる。

「いや、一応知り合いではあるんですg」

戦いには参加しない旨は伝えてある、と続けようとしたのだがノヴさんの隣にいつの間にかいた3人の一人・・・モラウさんに遮られた。

「なんだ、援軍って訳か?」

「いえ、そうでは無くてですね・・・」

このままではなし崩し的に眼下の戦争に巻き込まれる気配を感じたので必死になって何故自分達がここにいるのかを説明した。

「・・・なるほど、大体分かりました」

「分かっていただけた様で何よりです」

「でも、結局巻き込まれることに変わりはなさそうですよ?」

「え?」

ノヴさんは黙って眼下の戦いの方を指差す。

「もう気付かれたみたいですし」

バッ!!!

と擬音が聞こえるような勢いで振り向き、指差した方向を確認する俺達。
そこには確かにこちらを見ている旅団側の男とその男の指示に従ってこっちに攻撃をしようとしている男の姿があった。

「まあ、声をかけてからずっと『錬』のままですから、そりゃあばれますよ」

ああ、無意識に『錬』をして身構えてた・・・そりゃあ、ばれる罠。

などと頭の隅で考えつつ、背後でノヴさんがのたまったのを聞いたか聞かないかの内に、俺達が隠れていた岩場はビーム砲の直撃を受けて蒸発した。






「やったか?」

後方の岩場に伏兵がいるとの事で岩場ごと問答無用に吹き飛ばした。
砲撃形態の錬金鋼を元に戻し、今もサーチを続けているだろうトキオに敵の情報を尋ねる。

「いや、避けられたみたいだ」

トキオの声に応える様に数人の人間が空から降ってくる。

避けられたか、面倒なことだ。

「結局こうなるのかよ!!」

「運命なんじゃ? 前から思ってたんだけど、ファルコからは幸薄い人の匂いがするよ?」

「その言い方酷くない!?」

ふむ、俺を前にして雑談とはいい度胸だ。

「トキオ、こいつ等は俺がやるぞ」

「了解」

俺は腰に差した自作した錬金鋼の内、青色のものを抜き出し、能力を発動するためのワードを唱える。

「『レストレーションサファイア』!!!」

柄だけが再現された剣?を見て連中の一部・・・あれはハンター協会のモラウ・ノヴ組の連中か・・・が一瞬怪訝な顔を浮かべるが直後に驚愕を浮かべる。

「!?皆、避けろぉぉお!!!」

ファルコと呼ばれていた男がこちらのセリフを聞いた途端に周りに指示を出す。

「だが、遅い」

ゾォンッ!!!

大気中にて視認出来ないほどに枝分かれした無数の鋼糸がファルコたちがいる場所に殺到した。






「足止めは私がやるわ、皆は止めを!!」

そう周りのヒーロー達に指示を出し、三枚のカードをディエンドライバーに挿入する。

『カメンライド』

『ライオトルーパー』

目標にした目の前の旅団員・・・ボノレノフへと銃口を向け、引き金を引く。
召喚されたライオトルーパー9体はそのままボノレノフへの攻撃を開始した。

「まだまだ!!」

そう叫びながら更なるカードを取り出してディエンドライバーへと挿入する。

『カメンライド』

『ライオトルーパー』

新たに召喚した9体のライオトルーパーがボノレノフの援護に回ろうとした敵・・・タランチュラのメンバーだろう・・・の進路を妨害する。

「チィィッ、邪魔だぁぁぁあ!!!」

げ、あのトリッパー、ライオトルーパーとはいえヒーローシステムの装甲を一撃で殴り壊しながら進んでるよ。
あれはヒーローシステム所有者に任せるのは不味いかも!?

そう感じた時、後ろから誰かが駆け抜ける。

「アイツの足止めは俺がやる、ボノレノフは任せた!!」






「アイツの足止めは俺がやる、ボノレノフは任せた!!」

そう叫びながらミコトのそばを駆け抜け、ライオトルーパーの囲みを今にも突破しようとしている敵トリッパーに全力の飛び蹴りを叩き込む。

「うりゃぁぁぁああ!!」

「!?、ちぃっ!!」

最後のライオトルーパーを殴り壊した瞬間にこちらに気付き、右腕で飛び蹴りを防御するトリッパー。

「!?硬い!!」

「その程度で俺の『堅』が抜けるかよ!!」

右腕を振り払われ、弾き飛ばされる。

「・・・ちっ、テメェをどうにかしなけりゃボノレノフの援軍には行けないってか」

「分かってるなら話は早い。助けに行きたけりゃ俺を倒してからにしてもらおうか」

「ハッ、秒殺してやんよっ!!!」

そう宣言された次の瞬間には圧倒的な速度で懐まで踏み込んでくる。

「!?!?」

「魔神裂光殺!!!」

巨大なオーラの乗った右拳が腹に向かって突き進んでくる。

「く!?」

辛うじて左腕を拳との間に挟む事が出来たが盾にすらならなかった。

メギャァァ!!

一瞬で粉砕された左腕ごと腹を殴りこまれ、吹き飛ばされた方向に存在した大岩に叩き込まれる。

「なんだ、本当に秒殺かよ」

意識が落ちようとした時、敵トリッパーのそんな呟きが聞こえてきて辛うじて踏み止まる。

「ぐぅぁ!?」

上に乗っかっていた岩をどかしながら立ち上がる。

「待てよ、まだ、終わってねぇぞ?」

「・・・思ったより根性あるじゃねぇか」

敵トリッパーがそう言ってくるが聞いている余裕が無い。
左腕のダメージは一撃で受けたとはとても思えないほど深刻だ。

何しろ肘から先が無い。
腕越しだったこともあってか腹部のダメージはアバラ数本と内臓にダメージといった感じのようだが、直撃していれば上下泣き別れになっていてもおかしくなかった。

・・・これは二度と貰っちゃいけないな。
次は確実に死ぬ。
・・・だが、やられた分はやり返さないとな。

とりあえず左腕の血管をオーラで止血して対処する。
俺は精神を落ち着かせ、相手の攻撃に確実に対処できるように構える。

「こないなら、こっちから行くぜ!!」

先ほどのように一瞬で飛び込んでくるが今度は対応できない事はない。

「ハァッ!!」

右の正拳突きを左足を蹴り上げることで逸らして対応する。

「!?足で、だと!!」

「これが俺の戦い方だ!!」

・・・クルダ流攻殺法『影技』、その基本である足受けの技『打我(ダガー)』。
それこそが、俺の鍛えた戦い方。
最初はお気に入りの闘技だったから始めたのだが思ったよりも気に入ってしまったためそのまま実戦に耐えうるレベルまで鍛えてしまった。

「重爪(チェンソウ)!!!」

体を沈みこませ、右腕のみで倒立し両足で回し蹴りを叩き込む。

「ぐぅ!?」

変則的なこちらの動きに対応出来ず、敵トリッパーは弾き飛ばされる。

「やるじゃねぇか、お前、名前は?」

「相手に名前を聞くときはまず自分からって習わなかったか?」

「へ、俺の名はソウマだ」

「クルダ流交殺法 影技 テッカ=ラヌゥ」

互いに名を名乗りあい、二人は再びぶつかりあった。






「・・・あっちは派手にやってるね」

「そうだな!!」

テオがよそ見しつつ呟き、少し余裕なさげに怒鳴り返す。
まあ、あっちが派手だと言いつつも、こちらも負けず劣らずの派手さである。
何しろ、黒雛の鬼火をあたり一面に撒き散らしながら牽制中である。

「くそ、まさかこんな反則的な念能力を開発できたトリッパーがいるなんて!!」

「グチってもしょうがない、俺はシキを殺るからそっちのトリッパーはちゃんとカタつけろよ!!」

「ええい、くそ!!ゴクウ行くぞ!!」

「っ応!!」

高速で回り込んできたシキをテオが左腕の義手をブレイドアームに変化させて斬り付け、そのまま押し込んで離れていく。
シキはテオに任せて目の前のトリッパーに神経を集中させた。

ザッザッ・・・

あたり一面火の海と化した荒野をまるで何事も無いかのように進み往く影が一つ。
その姿は黒のロングコートに腰までかかる銀髪。
とどめに左腕に自身の身長をも越える太刀を携えた男。

まるっきり、セフィロスである。

「俺達に任せろ!!!」

5人の戦士たちが割り込み、セフィロス(?)に相対する。

ガオレンジャー達だ。

ガオレンジャーは各々の専用武器を合体させ、最強武器を形作る。

「破邪、百獣剣・・・」

ガオレットが合体剣を構え、残りのメンバーがその背を支え、反動に備える。

「ほぅ・・・面白い」

セフィロス(?)は何を思ったか、受けて立つ構えのようだ。

「舐めるなよ・・・邪気退散!!!」

セリフと共にガオレンジャーのオーラが合体剣に集約し、莫大な破壊力となって顕現する。
そのままセフィロス(?)へと叩き込まれるが、正宗による応撃によって軌道をそらされ地面へと叩き込まれた。

「!?っちぃ!!」

「正面から打たれてまともに当たるわけなかろう」

「な!?」

破邪百獣剣を凌いだセフィロス(?)は次の瞬間にはガオレンジャーの上空に移動し反撃の用意を終えていた。

「『獄門』・・・」

一撃で大地にクレーターを作る秘儀が技後硬直で動けないガオレンジャーへと迫る。

「させるかぁ!!カメハメ波ぁぁぁぁああ!!!」

「鬼火!!!」

「!?むぅ!!」

だが、命中の寸前に横合いから叩き込まれたカメハメ波と鬼火が直撃し、セフィロス(?)は弾き飛ばされガオレンジャーは九死に一生を得る。

「すまん、助かった」

弾き飛ばされたセフィロス(?)を目で追いながらガオレンジャー達が礼を言ってくる。

「気にすんな。それよりもさっきの後何発やれる?」

「後、一回か二回だな」

「そうか、なら俺等がチャンスを作るから今のをぶち込め」

「了解」

弾き飛ばされたセフィロス(?)は衝撃で変身が解けたのか元の姿、ベクターの姿に戻っていた。
俺とゴクウは前に進み出る。

「・・・やるじゃないか、セフィロスが解除されるとは思わなかったな」

「どんな裏技使いやがった、テメェ」

「俺に勝てたら教えてやるよ」

「ふん・・・」

ベクターは先ほどと同じように左腰に下げたハードカバー本を開くと本のページが自動で捲れ始める。

「!! ゴクウ、変身し終わる前にやるぞ!!」

「了解!!」

先ほどセフィロスに変身した時と同じ現象に俺とゴクウは急ぎ攻撃を加えようとするが、

「おそいな、『なりきり英雄伝説(チートコスプレイヤー)』!!!」

一歩遅かった。

ゴクウの拳が変身完了したベクターの手の平で受け止められる。

「な!?」

「孫悟空の相手をするならこの姿が妥当だろう?」

ベクターが変身した姿はブロリーのものだった。
確りと伝説のスーパーサイヤ人の姿だ。

「ハァァァア!!!」

ゴクウの拳を握りしめたまま、ボールを投げるように投げ飛ばされる。

「さあ、第二ラウンドだ!!!」

ベクター・ブロリーが吼え、次の瞬間にはこちらに飛び掛ってきていた。






「ん?」

「ハンゾーか?」

視界の端にふと見たことのある顔が見えた気がして確かめてみたらクラピカとレオリオだった。

「って何でここにいるんだお前等!!」

いる筈の無い人間に思わず突っ込みを入れてしまう。

「何でって・・・オークションに参加しに来たのだが」

「そんなことを聞いているんじゃない、ファルコ達から聞いてないのか!?」

「落ち着け、ハンゾー。ファルコが何だというのだ?」

・・・どうやら本当に聞いていないみたいだ。
あいつ等いったい何をやってるんだ?

「今のヨークシンは危険な状態にあるんだよ・・・」

とりあえず、俺はヨークシンで起こっている事を説明することにした。
と言っても、俺が知っていることは今ここでヒーローズソサエティと犯罪組織との抗争が発生していることくらいなのだが。
いざ説明しようとしたとき、街頭テレビからニュースが流れてくるのが聞こえた。

『・・・では現在ヨークシン郊外で行われている戦闘行為はヒーローズソサエティによる大規模な窃盗団狩りであると既に発表されたわけですね』

『そうなります、現在戦闘の該当区域はヨークシン警察による立ち入り禁止措置がとられており・・・』

「・・・なんか、かなり大変なことになってるみたいだな」

「そのようだな」

レオリオとクラピカが街頭テレビを見て現状を把握したようだ。
ほかの連中(ゴンとキルア)も来ているのか聞いてみたところ、分かれて行動中との事だ。
まずそいつ等を探し出して釘を刺しとこう。

「俺もついてっていいか?現状を説明しときたいし」

「そうだな。あいつ等にも説明頼むわ」

「ああ、頼む。確かゴンとキルアは西側のフリーマーケットに行くといっていたな」

そうして俺達三人は歩き出した。






「くっくっく・・・やってる、やってる」

ハンゾー達が立ち去った直後にやってきた集団が街頭テレビを見ながら呟く。

「それにしても君達の同胞は皆強いねぇ・・・とても、そそられるよ」

男の声に背後に控えている者たちが応える。

「なんだ?今頃になって目移りか?」

「まさか。今まで待ってやっとチャンスが来たんだ、今更逃がしたりすると思うかい?」

そう言って再びテレビの戦いに目を移す。

「少し急ごうか、せっかくの祭りに参加せずじゃもったいないし、収まりがつかないよ」

男はそう言い、自身の高まる興奮を押さえ込む。

男は機が熟するまで待つことには慣れている。
だが、既に機は熟した。
後は実を食すだけだ。

彼らは祭りの開催地へと足を向け歩き始めた。





あとがき
や、やっとヨークシン編が始まった・・・
前回の更新からもほぼ一ヶ月半、13話の更新からは二ヶ月半もの間更新できず申し訳ありませんでした。

全然展開が思いつかず、十回近く書いては消してを繰り返し、何とか書き上げたもののこれでいいのだろうか?と思わずにいられないです。

突っ込み、駄目だしなどありましたらよろしくお願いします。

追伸:
ヨークシン編からキャラ多すぎて詳細なデータを書くのがきついので簡易版にして各人の名前と能力だけ記載することにします。



[8143] ヨークシン編その2
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:1e5f2ff6
Date: 2009/09/29 18:07
左腕をブレイドアームに換装し、剣を叩きつけて無理やりガードさせ、そのままの勢いでハオ、ゴクウのそばから離脱していく。

「貴様!!」

「しばらくは俺に付き合ってもらうぞ!!」

「舐めるなよ!?」

言葉と共にシキの目の色が変わる。

「く!?」

振りぬかれたナイフの一閃でブレイドアームの念構成にダメージを受けたらしく形態が義手モードに戻されてしまった。

「ちっ、ブレイドアームはしばらく使用不可か・・・」

まあ、超魔爆炎破の欠陥がまだ改善されてないのでこのまま戦うつもりも無かったので問題無い。

「次は『マシンガンアーム』だ!!」

瞬時にカードを義手に装填し、マシンガンアームで弾丸を撒き散らす。

ドババババババババババババッ!!!

「!?くっ!!」

さすがに弾幕を張るほどの攻撃をテオが用意しているとは思っていなかったらしく、一瞬行動が遅れるシキ。
吐き出される弾丸の威力も念能力者に対して効果を上げることが期待できるレベルで撃ち込んでいるため、かわすしかない。

「少し、やっかいだねっ!!」

この弾丸の雨は無視して突撃するには少々ダメージが大きくなりすぎる。
また、数が多すぎるためオーラを切り裂いて突撃することも出来ない、とシキは考える。

結果的にテオの思惑通りに避け続けることになった。

シキは避け続けていた銃撃が止み、周囲を見渡して愕然とする。

「な!?」

そこは全方位を紙爆雷によって囲まれたトラップゾーンと化した空間だった。
マシンガンアームで吐き出した紙の弾丸を再利用したトラップだ。

「これで避けられないだろ」

テオの右腕から多量の紙が吐き出され、紙で編まれた龍と化す。

「『紙技・紙式神『爆龍』』」

技名の宣言と同時に、紙の龍はシキへと飛び掛った。





「なんだぁ、今のは?」

『爆龍』を叩き込んだ爆炎が晴れて最初に聞こえたのはそんな声だった。

「んなぁ!?」

そりゃあ驚く。
シキに攻撃をしたと思ったら、相手はブロリーでした、とか心臓に悪すぎる。

「すまん、押さえ切れなかったわ」

「ぶっちゃけ無理です」

何か戯言を言いながらハオとゴクウ、後なぜかガオレンジャー達がこっちにやってくる。
俺がシキを引っぱって行った後に合流したようだ。
どうやらブロリー化したベクターを抑えきれずに劣勢になったシキのフォローを許してしまったらしい。

「しかし、ブロリーは無理ゲーだろ」

あっけらかんとハオが言うのが何かむかつくが俺だってブロリーと戦えとか言われれば逃げるので文句は言えないか。

「さてゴクウ、今こそスーパーサイヤ人に覚醒する時だぞ!!」

「いや、無理なの分かってていってるでしょ!?」

無茶振りだとは分かっているが一応聞いて見る、ひょっとしたらいつの間にか体得しているかもしれないし。
やっぱり無茶振りだったみたいだが。

「・・・ブロリーの特性と言えば何かな?」

ハオが問う。
どうもベクターの変身は変身対象の特殊能力を再現しているらしいことが戦う内に分かってきた。

「やっぱり『無限にAOPが上がり続ける』とかじゃないのかな?」

「反則すぎるだろ、まともにダメージが通らないと変身解除しないのに『無限にAOPが上がり続ける』とか」

いくらか攻撃を繰り返してある程度ダメージが通ると変身が解除されることは把握していた。

「まあ、俺の『爆龍』が直撃してダメージらしいダメージが無いとなるとその可能性は高そうだがなぁ」

『爆龍』は『紙技・紙爆雷』の進化系として開発した技である。
紙の龍を構成するパーツ一つ一つがそれぞれ紙爆雷として機能する。

この技の特性は『オーラによる攻撃は同等量のオーラによる防御でしか受けることが出来ない』と言う特性を利用したものだ。
これは逆に言えば『相手のオーラ攻撃を防御すれば防御に使用した分のオーラは消費される』と言う事である。
紙爆雷の爆発力を防御するには相応のオーラを必要とするがそれを補充する間もなく連続で攻撃を受ければどうなるか。

龍型の紙模型として一体化して機能していると見せかけて、相手との衝突の瞬間に組み合わされたパーツが敵とぶつかった箇所から次々と爆発を繰り返して相手のオーラを削り取り、最終的にオーラ防御を剥ぎ取った敵に残りの紙爆雷を叩き込んで肉体を爆破すると言う技なのである。

・・・ベクター・ブロリーに対しては前提である『オーラ防御を抜くだけの攻撃』が足りていなかったようだが。
状況証拠的に、ブロリーと言うキャラクターを考えるに上限無視で跳ね上がるAOPで無理やり防御した可能性が高いということになる。

「話し合いは終わったか?」

律儀に腕を組んで待っていたベクター・ブロリーとシキ。

「ブロリーに関しては『破邪百獣剣』や『3倍界王拳かめはめ破』とかの大技をガードせざるを得ない状況で使ってオーラ切れを狙っていくしかないか。シキに関してはさっき言ったように俺が対応する」

とりあえずの方針を決めてテオたちは戦いを再開した。





「うぉぉぉぉぉお、『サンライトスラッシャァァァァァア』!!!」

カズがその身を光に変えんばかりに発光させ、マガツへと突撃する。

「そんな大技が通用するか!!!」

だがマガツは抜き放った刀を突撃槍の腹に叩きつけ、軌道をそらすことで攻撃を回避した。
その一瞬の硬直を狙ってタクヤが飛び掛る。

「ハァァァア、『怒竜斬波ァァア』!!!」

「む!?」

飛び上がり、上空から振り下ろした熱波の刃はマガツを捕らえたかに見えたが、既に動きを取り戻していたマガツは高速移動によって回避する。

「あっちの突撃槍よりも貴様を先に始末した方が良さそうだな」

「な!?」

疾い。

疾風のごとく背後に回りこまれたタクヤは辛うじて竜王丸で攻撃を受け止めるがそのまま振り抜かれ、地面に叩きつけられる。

「っぐぅ!?」

「そらっ!!」

空中で突きでタクヤに突撃するマガツ。
タイミング的にかわせないと悟ったタクヤは突きでカウンターを合わせることで相打ちを狙う。

「俺を忘れんなよ!!」

「むっ!?」

だが、互いが激突する瞬間に割り込んだカズによって命を拾った。
再び高速で突撃してきたサンライトスラッシャーを今度はそらす余裕が無く、何とか刀で受け止め、その反動で弾き飛ばされるマガツ。

「すまん、助かった」

「いえいえ」

互いに短く言葉を交わし、されど敵への注意は怠らない。
マガツは多少はなれた場所まで弾き飛ばされたが殆どダメージを受けてはいなかった。

「・・・ちっ、少々厄介だな。使うか」

その瞬間、マガツから感じられる念圧が跳ね上がる。

「!?これは向こうも本気になったみたいだな」

「・・・そうみたいっすね」

タクヤ、カズ双方とも相手がやる気になったことを感じ、油断無く構えなおす。

「『凶き夜来たれ、悪魔王(セイタン)』」

マガツの言葉と共に彼の持つ刀が爆発的に増殖し、彼自身を覆いつくし繭の様な形になる。
そして内側から感じられる念圧がどんどん巨大になっていく。

「・・・やっぱり破面(アランカル)系の念能力者か・・・『卍解』!!!」

タクヤは恐らく自分と同じBLEACH系の念能力者だと感じていたため、このままでは歯が立たないと感じ卍解を行う。
タクヤの念圧も膨れ上がったがマガツから感じる力はそれ以上だ。

「カズさん、そっちはなにか隠しだまとかあるか?」

横で青くなっているカズに切り札は無いかとたずねる。

「・・・クラッシャーの方を使えば何とか通じるかもしれないが・・・」

カズの顕在オーラはタクヤが見たところ大体3000といったところだ。
サンライトスラッシャーを放っていた時は、それを二倍近い出力まで引き上げていた。
サンライトクラッシャーはその更に上をいくオーラを集中することが出来るらしいが事前の準備などで時間をとるらしい。
現状では頼れないということだ。

やがて繭が内側から弾け、散弾のように周囲にばら撒かれる。
その中から全身に鱗状の装甲を纏い、悪魔の翼を連想させる一対の翼を背負い、マガツが姿を現した。

「・・・さて、お待たせした。第二ラウンドといこうか」

まだまだ、戦いは始まったばかりである。





カルラ、カリスはウボォーギン、ノブナガと対峙していた。
4年前の借りを返すため、彼は戦闘の際はウボォーギンの相手をすると公言していた。

「・・・カリス、ノブナガの相手を頼む」

「承知した」

カリスもそのことは知っている。
ゆえに一騎打ちの障害になりそうなノブナガの排除を引き受ける。

「へっ、どこかで見た面だと思えば、テメェもクルタのときのガキが!!」

どうやらウボォーギンはカルラに見覚えがあったようだ。

「覚えていたようだな。ならば、俺がお前の前に立つ理由も分かるだろう?」

「あの時のクルタ族の弔いってか?いや、違うな。負けた借りを返しに来たってとこか」

「ご名答」

ウボォーギンもカルラもその本質は似ている。

『何処まで高みに上がれるか?』

自身の戦闘力を何処までも高めることに全力を燃やすウボォーギン。

ただ、一太刀の切れ味を何処までも追求するカルラ。

出会いが違ければ、案外よい友人になれたのかもしれない。

「ノブナガ、コイツの相手は俺がやるぜ!!」

「しょうがねぇな、分かったよ」

ノブナガはウボォーギンの要請に答え、カリスに向き直る。
その構図はカリスとしても願ったりだ。

互いの念圧が高まっていく。
最初に仕掛けたのはウボォーギンだった。

「オラァァァア!!!」

その巨体からは想像もできない速度で一瞬にして間合いを詰め、カルラに殴りかかるウボォーギン。
だが、カルラもその程度のことはこの4年間で経験している。
問題なく瞬時に反応し、かわすと同時に相手の腕を掴み取る。

「そら、自分の力でぶっ飛べ、『ジャンピングストォォォン』!!!」

「おおお!?」

殴りかかったはずが、逆に空高く舞い上げられたウボォーギンが一瞬混乱するが瞬時に我を取り戻し、叫ぶ。

「おもしれぇ!!!」

その眼下ではノブナガとカリスとの戦いも開始されている。



ウボォーギンが動くと同時にノブナガも動いていた。
ノブナガの本領は居合いである。
瞬時に自身の限界である4メートルの『円』を広げ、同じくウボォーギンが動くと同時に飛び込んできたカリスを迎撃する。

刀を抜き放つ。

その斬撃は円の内部に侵入したカリスをたやすく捕らえ、斬り飛ばす。

「・・・ちっ、硬ぇな」

あくまでノブナガの斬撃は円の内部の何処でも切れるというものである。
嵌れば一撃必殺であるが、純粋な攻撃力はそれほど高くも無くカリスにも致命傷とは程遠いダメージしか与えられなかった。
それでも無視して突撃できるダメージではないのではあるが。

「・・・」

斬り飛ばされたカリスは自身の状態をチェックしていた。

・・・装甲に多少の傷が出来たが特に運動に問題はない・・・か。
だが、連続で受けるには少々リスクが高いな。

一撃でこちらの突進を跳ね返すだけの力はある。
このまま無理に押し入っても的にされるだけだとカリスは判断する。

原典のカリスならばカリスアローの熱光弾を発射すればいい。
だが、あいにくとこのカリスの持つカリスアローの熱光弾はオーラを高出力のレーザー弾にして発射するものである。
高出力と言っても、元々が原典を模倣するために付け加えた能力で基本的に牽制用、ぶっちゃければ飾りのため、普通に撃っても家の壁すら破壊できなかったりする上に、十メートルも進めば勝手に消滅する。
念能力者・・・しかも旅団クラスともなれば、ちょっと線香花火の火花が飛んで熱い、といった程度にしか効かない物である。

遠距離攻撃のこと、真剣に考えようかな・・・などと心の中で思いつつ、次善策を練る。
そして、すぐさま対応策を思いつく。
要するに迎撃されても跳ね除けられる力で攻撃すれば良い。

カリスはカリスラウザーを取り外し素早くカリスアローに装着すると、3枚のラウズカードを取り出しラウズする。

『フロート』『ドリル』『トルネード』

『スピニングダンス』

電子音と共にカリスの周囲を竜巻が包み、カリスを回転させながら浮かび上がらせる。

「ハァァァア!!!」

そのまま風を纏い、高速回転しながらノブナガへと突っ込んできた。

「ちぃっ!!」

ノブナガにしてもこれでは一撃、二撃当てようにも止まらない。
そこため普段は使わない切り札を切る羽目になった。

ノブナガの円の内部の何処にでも斬撃を移動させる能力は、普段は居合い一回に付き一太刀となっている。
だがこれは一太刀につき一斬撃として行った方がイメージしやすいためで、斬撃の軌道が確りとイメージできるのであれば同時に複数の太刀筋を一度の居合いで発生させることも出来る。

「「終わりだ!!」」

カリスがノブナガの円の圏内に入ると同時にノブナガは居合い斬りを行い、十以上の軌道からの斬撃とスピニングアタックの衝撃とがぶつかり合った。







「はぁぁぁあ!!」

ギャレンが連続して射撃を行い、『デメちゃん』を振り上げて迫ってきていたシズクを牽制する。

「きゃ!?」

その正確な射撃に慌ててデメちゃんをガードに回すシズク。

「む!?」

更に追撃を叩き込もうとしたギャレンの右腕が意図せずにシズクから外される。
反射的にマスクの解析システムを使用し、右腕に無数の糸が絡み付いているのを確認。

「させないよ!!」

「くっ、マチか!!」

糸の先ではマチが右腕に絡みついた糸を引っぱって固定していた。

「余所見しちゃだめだよ」

一瞬マチに目をやった隙にギャレンを射程圏内に捕らえたシズクはデメちゃんを改めて振り下ろす。

「させるか!!」

だがそれは割って入ったブレイドのブレイラウザーによって受け止められる。

「ハァァア!!」

「ひゃ!? っと」

そのままブレイラウザーを振り抜き、シズクを弾き飛ばすとギャレンに絡まった念糸を切り落とす。

「すまん、助かった」

「いえ・・・俺はマチの方をやります」

「なら俺はシズクか」

ブレイドとギャレンはそれぞれマチ、シズクと向き合いながら会話を続ける。

「となると、イナトさんとダイレンジャー達はシャルナークの相手か」

ちらりと視線をやる先ではシャルナークとイナトさん、ダイレンジャーが戦っている。
下調べ担当で戦闘要員では無いとはいえ腐っても旅団員、やはり急ごしらえで用意した戦隊型ヒーローアイテムに前線に出たことが無い新人ヒーロー候補生のトリッパーの組み合わせでは根本的な地力が足りていないらしい。
既にキリンレンジャーが捕縛され、シャルナークの念能力『携帯する他人の運命(ブラックボイス)』で操作される操り人形とされてしまい、連携も崩されて完全な足手まといとなっていた。



ある意味これは仕方の無い問題だ。

今回投入された三つの戦隊は本来のヒーローズソサエティには存在していなかったシステムだ。
それが今回に限って急遽編成されたのは、旅団が原作知識を保有している可能性が濃厚になったからである。

ヒーローズソサエティは旅団が原作通りにヨークシンへと来る場合、原作を超える戦力で持って望むであろう事をタランチュラの存在から確信していた。
そして、元々が原作の13人を相手にする前提で整えていた戦力+協力関係にある組織外のトリッパーの戦力で望めば原作の旅団であれば十分に対処出来ると考えていた。
だが作戦数ヶ月前に突然旅団が原作知識を保有しているとの情報が舞い込み、戦力の前提が根本から崩されることになる。

戦隊型ヒーローアイテムは言うなれば簡易型のヒーローアイテムである。
装着者の敷居を低くし、更に戦隊メンバーで連携することでオーラの上乗せを行う協力技の搭載などによって個々の戦闘力の低さをカバーする発想であり、戦隊のメンバー全員で一つのシステムとして運用されるのが前提である。
そのため、今回のように誰かが一人でもかけると、強大な個に対しては決定打にかける存在になってしまうのだ。

更に言うなら中身は連携で戦うことが前提でそれ以外の訓練を受ける時間が無かった新人達である。

旅団の大幅な戦力増強に対処するために緊急で用意できる、ただし、旅団員クラス相手にでも通用するだけの力を持つ戦力の補充。
そんな都合の良いものをすぐさま用意できるわけも無く、ヒーローではなかったトリッパーから選抜して戦隊ヒーローとして訓練を積んでもらったが、彼らは総じて極最近までこの世界がハンター×ハンターの世界であることに気付いていなかった、あるいは極最近まで知らないままに過ごしており、当然念にも目覚めていなかったヒーローズソサエティのほうから探し出し、接触したトリッパー達である。
本当の戦闘を経験したことが無く、また、原作イベントに絡めるかも、などといった甘い考えが頭の片隅に残ったまま戦場まで出張ってきてしまった彼らにとって自分達の頼りの綱であった連携を崩されることは、精神の均衡を崩されることと同意であった。

「・・・う、うわぁぁぁぁああ!?!」

「い、いやだ、死にたくない!?」

「!? な、何をやっている!?」

圧倒的強者の戦場に立たされ、仲間をも奪われまともに立ち向かう術を失ったシシレンジャー、ホウオウレンジャーが突如反転し逃げ出そうとする。
それを見たイナトが思わず怒鳴りつけてしまい、敵を前にして致命的な隙をさらす。

「もらった!!」

「!? なっ、ぐぅ!!?」

その隙を見逃すことなくシャルナークは操作したキリンレンジャーに攻撃の指示を送りイナトへと攻撃を仕掛ける。
その隙を突いてシャルナークがアンテナを刺そうと回り込んで来ようとし、それを対処しようとして出来た隙にキリンレンジャーの攻撃が再び決まるという悪循環が出来ていた。

その間、リュウレンジャーとテンマレンジャーは行動を起こすことが出来なかった。
シシレンジャー、ホウオウレンジャーのように恐慌をきたして逃亡するにはタイミングを逸してしまい、またイナトに加勢しようにも訓練がまるで足りておらず割って入るタイミングが掴めない。
結局、彼らがキリンレンジャーを二人がかりで抑え、シャルナークとイナトを一対一の状態に持っていこうと思いつく前に終わりが来た。

「君達も協力してもらおうかな」

シャルナークのアンテナ刺しをかわし、その影で回り込んでいたキリンレンジャーの一撃を受けてイナトが遠くに弾き飛ばされたのを思わず目で追ってしまった直後、背後から聞こえてきた声に振り向く暇も無く、二人は首筋に痛みを感じ、すぐさま意識を失った。

キリンレンジャーに弾き飛ばされたイナトは僅かな時間で体勢を立て直し追撃に備えたが、その僅かな時間で更に戦況が悪化したことを理解した。

「・・・他の二人も操られた、と」

目の前には味方であるはずのダイレンジャー、そのうちのレッド、グリーン、ブルーに該当するヒーローが三人して立ちはだかっていた。

旅団の戦力増加に対してのヒーローズソサエティの対応は単純で「相手の戦力が増えたのならこちらの戦力も増加させればいい」というものであったが、そもそも増えた戦力が戦いの心構えも出来ていない新人ばかりでは話にもならない。
某中将曰く、『戦いは数だよ、兄貴』だそうだが、それ以前の問題で潰れるとは思わなかった。

「・・・やっぱり、無理な増員は死亡フラグだったか・・・」

悟ったように呟くイナト。
しかし、その目は三人を通り越してその後ろにいるシャルナークへと注がれている。

「・・・さて、どうしようかなぁ・・・」



「なんだ!? いきなり戦力の均衡が崩れたぞ!?」

「!? イナトさん!!」

ちょっとマチと戦っていて見てないうちにダイレンジャーの連中がシャルナーク側になってる。
混乱したが、シャルナークの念能力『ブラックボイス』で操作されているのだろうとギャレンは思い当たった。

「ちっ!!」

「許すと思うかい!?」

あのままでは拙い、と援護射撃を行おうとした時、マチが割り込み糸で無理やりに動きを拘束し邪魔をする。

「とりゃっ」

ドゴォッ!!!

「ぐぁあ!?」

さらにそこへ絶好のタイミングでブレイドを振り切ってギャレンに飛び掛ってきたシズクのデメちゃんの一撃が決まる。
弾き飛ばされ、イナト達とは逆側へと転がされる。

「ギャレン!!」

そこへブレイドも駆け寄ってきて再びにらみ合いとなる。

「助けに行きたけりゃ私達を倒してからにするんだね」

マチが挑発的にそう宣言する。
・・・ここまで来て出し惜しんでいる余裕は無いか。

「・・・出し惜しみしている余裕は無さそうだな」

ブレイドも同じ結論に達したようだ。

「足止めをお願いします。自分がイナトの援護に向かいます」

「分かった」

短く答え、互いに左腕に装着されたラウズアブソーバーから二枚のカードを引き抜き、ラウズアブソーバーに一枚目のカードをセットする。

『『アブソーブクイーン』』

更にもう一枚のカードをスリッドにラウズし、システムを起動する。

『『フュージョンジャック』』

電子音声と共に二人のライダーの前面に新たなスクリーンが展開されライダー達に吸い込まれていく。
そして、一瞬の後にそこに居たのは先ほどまでのスーツのプロテクター部分が金色となり、最大の特徴としてその背にそれぞれ翼を供えた姿となって再び顕現していた。

「「!?!」」

目の前で強化変身し、明らかにオーラの出力が跳ね上がった二人を目にしてマチ、シズクとも目の色が変わる。
迎撃の構えを見せる二人を尻目にブレイド、ギャレンは更にカードをラウズする。

『バレット』『ラピッド』『ファイア』

『バーニングショット』

三枚のラウズカードを用いたコンボにジャックフォームの力も上乗せされた『J・バーニングショット』だ。

背中の翼を開き、空に舞い上がるギャレンの銃口から多量の炎の弾丸が撃ち出される。
その、爆発的に上がったオーラはマチ、シズクをしても想定外のレベルであった。

「な!?」

「うわっ!?」

一瞬の硬直、だが戦場でのそれはそのまま命にまで直結することもある。
硬直した瞬間に叩き込まれた炎弾の嵐に飲み込まれ、爆炎の中に二人の姿が消えていく。

「いまだ、行け!!!」

「はい!!」

その隙を突き、ブレイドが翼を展開してマチ、シズクが陣取っていた場所の上空を駆け抜け、イナトの救援に向かう。

「・・・やってくれたね!!」

爆炎を払い、マチ、シズクが現れる。
全身ところどころに火傷の後が見られるがこれといって重症の箇所はない。
どうやら全開の『練』でやり過ごしたらしい。

「一応、切り札の1つではあるんだけどな」

そう呟きながらギャレンは再び銃口を二人へと向ける。

「ここからは俺がお前等の相手だ」

旅団員二人を相手に啖呵を切り、引き金を引いた。





ブレイドは空を飛びながらブレイラウザーへと二枚のカードをラウズする。

『キック』『サンダー』

『ライトニングブラスト』

ジャックフォームの力もプラスされた『J・ライトニングブラスト』だ。

「うぉりゃぁぁぁぁぁあ!!!」

そしてそのままの速度を維持しながら今にもイナトに止めを刺そうとしているシャルナーク達4人に向かって、上空から急降下しその一撃を叩き込んだ。





パクノダとコルトピは基本的に戦闘には向かない。
とは言ってもそこはやはり幻影旅団のメンバーである。
そこいらの念能力者が束になってかかってきてもどうにもならない程度の戦闘力は備えているのだが。

「うぉりゃぁあ!!」

空中に跳ね上がったアバレブラックが腕のトゲ部分を立てながらパクノダを斬りつけようと飛び掛ってくる。
だが、こんな大振りな攻撃に一々当たってやるほどこちらも甘くは無い。

「はぁっ!!」

「ぐぇ!?」

釣りだとバレバレの大振りな一撃を叩き込んできたアバレブラックの攻撃をかわしながら回し蹴りで蹴り飛ばす。
その背後からはアバレット、アバレブルー、アバレイエローが隙を狙って標準装備の武器アバレイザーを構えて狙っていた。

「「「アバレイザー!!」」」

発射された光線がパクノダを貫くかと思われたがあらかじめ読んでいたパクノダは冷静にこれを回避する。

「くそっ、パクノダやコルトピは戦闘要員じゃないから楽に終わると思ってたのに!!」

思うように進まない戦況にアバレブルーが思わず愚痴る。

「そりゃあちょっと甘く見すぎだろ」

ふと気付けばフィンクスがすぐそばまで近づいてきて右腕を振り上げていた。

「うぉりゃぁぁぁあ!!」

『廻天(リッパー・サイクロトロン)』、フィンクス必殺の念能力である。
あらかじめ回転を貯めておいたその一撃はたやすくアバレブルーの体を貫き、その身を二つに分裂させた。

「「アバレブルゥゥゥウ!!!」」

「くそっ!!」

アバレットとアバレイエローが叫び、アバレブラックが舌打ちする。
フェイタンはリッドが、コルトピとフィンクスはウインドとキバが受け持っているのではないのか?
何故こっちに来ている!?

気になりふと彼らの戦場を盗み見たアバレブラックは左手で土くれを握りしめ、それを右腕で多量に複製しウインドとキバを土砂崩れに巻き込むように押し流しているのを目撃した。

「・・・要するに舐めすぎてたってことか」

戦闘要員で無いからと相手を過小評価したのが敗因か。

「まあ、そう言うこったな」

最後にフィンクスの言葉を聞き、激しい衝撃を全身に感じながら、アバレブラックは永遠に意識を閉ざした。





コルトピの作り出した土砂の山からウインド、キバはなんとか脱出する。
だが、そこで見た光景は自分達が梃子摺っている間にアバレブルー、アバレブラックが戦死するという状況であった。

「くそっ!!」

キバが戦況を見て舌打ちする。
明らかに戦力が足りていない。
アバレンジャーなど、既に風前の灯である。

「キバっ、コルトピの足止めは俺がする。向こうの救援に行ってくれ」

キバが驚いてウインドを振り返る。
たった今二人がかりで翻弄されたばかりなのだ、当然の反応だろう。

「大丈夫、足止めする策はある。それよりも急いで!!」

「・・・分かった、死ぬなよ?」

キバはそう言い残し言われたとおりにアバレンジャーの救援へと向かう。
コルトピがそれに割って入ろうとした瞬間にウインドの声が当たりに響いた。

「貴様に相応しいソイルは決まった!!!」





走りながらキバはベルトの右脇に装着してあるフエッスルを一つ抜き取り、ベルトのバックル部分にいるキバットバットⅢ世の口へと差し込む。

『ウェイクアーーープ!!』

キバットバットⅢ世がベルトの止まり木部分から飛び立ち、フエッスルを吹き鳴らす。
笛の音が響き渡り、キバの右足の拘束鎖(カテナ)の封印が解き放たれ、必殺キック『ダークネスムーンブレイク』の発動準備が終わる。

「はぁっ!!」

キバは空高く飛び上がり反転、右足を突き出しながら標的・・・フィンクスへと向かって急降下を開始する。

「なに!?」

今まさに残りの二人の処刑を行おうとしていたフィンクスは上空から強襲してきたキバに気付くのが遅れ、その必殺技を回避することが出来なかった。
そのため、アバレンジャーに止めを刺そうと用意していた廻天(リッパー・サイクロトロン)をとっさの判断で迎撃にまわし、ダークネスムーンブレイクと激突した。

「がぁぁぁぁあああ!?」

「くぅぅう!?」

バァァァンッ!!!

互いに拮抗した力が弾かれあい、キバとフィンクスは弾き飛ばされる。

お互いに地面を転がっていたがすぐに立ち上がる。
何時までも地面に転がっていてはこの相手に何をされるかわかったものではない。
フィンクス、キバ双方共に相手が自分と戦えるレベルの戦士であることを一度の打ち合いで実感していた。

「・・・おい、何を呆けている?」

「え?」

キバが後ろで呆けて突っ立っていたアバレット、アバレイエローに声をかける。

「フィンクスは俺が抑える。お前達はパクノダの相手をしろ」

「!! わかった」

「・・・了解」

指摘されて自分の役割を思い出したアバレットは即座にパクノダへと向き直る。
アバレイエローもそれに追従した。

「・・・さて、これで思う存分あんたとやれるって訳だが」

「へっ、まともに打ち合って俺に勝てると思うなよ!!」

キバとフィンクスは戦いを再開した。





あとがき
ヨークシン編その2をお届けします。
書いていて長くなりすぎたので適当なところで一端切りました。
そのため、ヨークシン編その3は結構早めにお届けできるかと思います。

今回、レンジャー系の方々が結構扱いがひどいのですが、後のヒーローアイテムのレベルアップのためにまとまった死人がほしかったので逝ってもらいました。
別に各レンジャーがきらいだからヘタレに書いたわけじゃないですよ?

突っ込み、駄目だしなどありましたらよろしくお願いします。

※9/23 ノブナガ、シャルナークの念能力の設定について、一部独自設定があります。
※9/29 漢字ミスの修正。



[8143] ヨークシン編その3
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:1e5f2ff6
Date: 2009/09/29 18:14
リッドとフェイタンの戦いは互いに4年前の雪辱戦だ。

リッドにとってはなすすべなく倒された相手。
彼との戦いで右腕も失っている。

フェイタンにとってもリッドは無視できる相手ではない。
既に勝利を確信していたところからの逆転を許した相手であり最終的には切り札『許されざる者(ペインバッカー)』を用いても倒せなかった相手である。

どちらにとっても自らの矜持のために避けては通れない相手である。

「・・・」

「・・・」

ことここに来て語ることは無い。

フェイタンは無言のままカタナを抜き放つと姿が消えて見えるほどの高速移動でリッドの背に回りこみ、首筋を狙ってカタナを突き立てる。

ギンッ!!!

だがその一撃はリッドが具現化した『悪魔の右腕(ジャバウォック)』によって防がれていた。

リッドはフェイタンの一撃を防いだ体勢から腕を振り回し、フェイタンを弾き飛ばすとそのまま追撃を開始する。
かつてはまともに剣筋を見ることも出来なかったフェイタンの剣を確実に見て対処できることに、リッドは己の成長をかみ締める。

今の自分の力はフェイタンに通用する、と。

「おぉぉぉおおお!!!」

リッドが吼える。

すぐさま弾き飛ばしたフェイタンに肉薄し、悪魔の右腕(ジャバウォック)を叩き込む。

「グゥ!?」

直撃。
だが、『凝』によって阻まれ大きなダメージにはならない。

「調子に乗るなヨ、ガキガァァァア!!!」

「ごふっ!?」

攻撃を防がれ、無防備となったところに回し蹴り。
まともに胴体に喰らい、吹き飛ばされ、胃の中身が逆流を起こそうとするかのような嘔吐感が込み上げてくる。
が、こんなところで吐いていたら即座に殺される。

吐き気を無視し、即座に横に転がって避ける。

即座に一瞬前までリッドが転がっていた場所にフェイタンのカタナが突き刺さる。

「ささと死ぬがいいヨ!!!」

「ふざけんな、テメェが死んどけ!!!」

互いに罵り合いながら殺し合いを続行する。
決着はまだまだ先のようだ。





「まずはボノレノフを!!」

「「「応っ!!」」」

リュウキ、リュウガ、ナイトの三人がミコトの命令に答え、行動を開始する。
先に召喚した9体のライオトルーパーと共にボノレノフを包囲しそのまま殲滅に入る。
だが、やはりこのまま思う通りにはさせてもらえずに横槍が入った。

ドガシャッ!!!

外側を囲んでいたライオトルーパー3体をぶち砕いて何かが飛び込んでくる。

飛び込んできたそれはファイズとカイザであった。

「何やってんのよ、あんた達は!?」

「いや、あいつ強くて」

指差したのはこの二人が吹っ飛んできた方向。
そこにはタランチュラのトリッパーの一人、テラが佇んでいた。

「ボノレノフ、あたしもて手伝おっか?」

「必要ないな。俺だけで十分すぎる」

ボノレノフはテラにそう応えながら全身の包帯を解いていく。

「そう言わないでさ?」

テラもボノレノフの答えなど気にせずに戦闘態勢をとる。

「くっ、リュウキ達三人はボノレノフを、ファイズ、カイザはあたしとそこのトリッパーよ!!」

残りのライオトルーパー人形にもボノレノフの相手をするように命令し、ミコトはテラへと向き直る。

「テラだよ。よろしくね~」

ミコトの言葉に反応して手を振りながら自己紹介を始めるテラ。

「余裕ぶって、行くわよ!!」

ミコトの号令に、ファイズとカイザがそれぞれファイズエッジ、カイザブレイガンを構えて突撃する。
ミコトは二人が戦いやすいようにディエンドライバーで援護射撃だ。



戦場に音色が響く。

ボノレノフがその真価を発揮し、体の各所に空いた穴から奏でているのだ。

奏でた音色を戦闘力に変える『戦闘演武曲(バト=レ・カンタービレ)』。
その『序章(プロローグ)』である。

リュウキ等三人もそれぞれにアドベントカードを取り出し、己が武器を召喚する。

『『『ソードベント』』』

リュウキ、リュウガはそれぞれドラグレッター、ドラグブラッガーの尾の形を模した剣、ドラグセイバーを手に取り、ナイトはダークウイングの尾部を模したウィングランサーを構えてボノレノフへと切りかかる。

「はぁ!!」

リュウキが最初に切りかかる。
ボノレノフはその斬撃を華麗にいなしつつ、反撃の一撃を与える。
リュウガ、ナイトも続けて攻撃を仕掛けるがするりとかわされる。

ボノレノフは踊りながら戦う戦士である。

よってその戦い方は常に動き回る事を前提とし、決して立ち止まることは無い。
受け止めるのではなく、いなしながら戦うボノレノフの戦い方にとってリュウキ達の一撃に重みをおいた戦い方は数の差を差し引いても十分対処出来る範囲であった。

ギン、ガンッ!!

具現化した槍を一閃し、自身を囲むリュウキ等の武器の軌道を逸らし懐にもぐりこむ。
懐まで潜り込んだ勢いのままにその刃をナイトの装甲へと突き立てた。

「がぁ!?」

「「ナイト!?」」

だが、ボノレノフの一撃はナイトの装甲を貫けるほどの一撃ではなかったらしい。
装甲にヒビは入っていたが、貫通したと言うことも無くすぐさまナイトは立ち上がる。

「大丈夫です。貫通はしてません」

「ふん」

ボノレノフは飛び掛ってきたライオトルーパーを切り捨てながら、面白くなさそうにナイトを見る。

「うりゃ!!」

ボノレノフの余所見を隙と見てリュウキが切りかかるが当然のようにいなされ、反撃の一撃を受けて地面を転がされる。

「くそっ、チョロチョロと避けやがって」

リュウキが立ち上がりながら毒づく。

「お前等がトロイんだろ。悔しかったら捕まえてみろよ」

ボノレノフの馬鹿にしたような言い方で挑発してくるが捕まえられないのは事実だ。

「・・・くそっ」

このまま今までどおりの戦い方をしていてもジリ貧だ。
そう確信したリュウキは早々に切り札の一つを切ることに決めた。

バックルから引き出したカードは『サバイヴ-烈火-』。

カードを引き出したリュウキの回りに炎が舞い、左腕のドラグバイザーが銃型のドラグバイザーⅡ(ツヴァイ)へと進化する。
その龍の口を模したカード挿入部へとサバイヴのカードを挿入。

『サバイヴ』

の電子音声と共にリュウキはリュウキサバイヴへと進化する。
更に一枚のカードをドラグバイザーⅡに挿入。

『シュートベント』

背後にドラグレッターツヴァイが召喚され、ボノレノフへと向かってメテオバレットが叩き込まれる。

「!?」

一連の動きに警戒していたボノレノフはメテオバレットの一撃は避けるがそれによって体勢を崩し奏でていた音律を途切れさせてしまった。

「っ、くそ!!」

「追撃だ!!」

「「了解っ!!」」

リュウガ、ナイトはリュウキサバイヴの掛け声に答え、ボノレノフへと飛びかかった。



「やっぱり苦戦してるじゃない」

横目に見たボノレノフの戦況にテラはそう呟く。

「戦いの最中に余所見とはいい度胸だな!!」

その隙を突き、ファイズエッジにミッションメモリーを挿入し『エクシード チャージ』の電子音声を聞きながら叩きつけるように切り付ける。
ファイズの必殺技の一つ、『スパークルカット』だ。

「よっと」

だが、一瞬早くファイズの懐へと潜り込んだテラが素早くファイズエッジをつかむ右拳を掴み取り、テラの背後から切りつけようと飛び掛っていたカイザのカイザブレイガンへと刃を叩きつけ、エネルギーの反発で両方を弾き飛ばす。

「ぐぁっ!?」

「がぁ!!」

弾き飛ばされた二人だが、即座に体勢を立て直しテラへと目を向ける。

「しかたないなぁ、やっちゃうか」

その時、世界は入れ替わり、その場に居たミコト、ファイズ、カイザ、リュウキサバイヴ、リュウガ、ナイト、ボノレノフは枯れ果てた世界へと閉じ込められていた。

「なんだ、ここ?」

「ここは、あたしの心象世界・・・なんちゃって」

カイザが思わず洩らした言葉にテラがからかいを含んだ言葉を返す。
その声に、敵の存在を思い出し、弾かれたようにテラへと視線を移す。

「どこよ? ここは」

同じようにテラへと視線を向けていたミコトが問う。

「言ったでしょ、ここはあたしの心象世界って。まあ、正確には元ネタと再現した念空間だけどね」

テラはそう言って一呼吸置き、告げた。

「ようこそ。あたしの『固有結界・枯渇庭園』へ」

テラの念能力『固有結界・枯渇庭園』
それは発動時にテラの『円』の内部にいる者を敵味方区別無くテラが構築した念空間に転移させる能力だ。
更に、名前からも想像できるように特殊な効果がある。

「何が、ようこそだ」

ゴンッ!!

「あだっ!?」

いつの間にかテラへと近寄ってきていたボノレノフが一発拳骨を落としていた。

「何すんのさ!? せっかく助けてあげたのに!!」

「やかましい、使うなと言っているのに結局使いやがって」

何やら言い争っているので今の内に一発入れておこうかと、ミコトはライオトルーパーに指示を出すが、

「!?」

指示を出したライオトルーパーだけでなく、大きく円状に囲ませていたライオトルーパーすべてが突如崩れ落ち、土くれに戻ってしまった。

「驚いてるみたいだね」

何時の間にやら言い争いを止めたテラがそう言ってくる。

「私の枯渇庭園は内部にいる者のオーラを枯渇させる。ここで戦う以上、あなた達には勝ち目は無いよ!!」

「な!?」

慌てて自身のオーラを確かめると、確かに普段よりはオーラの消費量が上がっているようだ。

「確かに、長居するのは危険な様ね」

オーラ消費量が上がると言うのではただでさえ使用時間の短いライオトルーパーなどはもうここでは使えないだろう。

「みんな、そっちのテラを先に殺るわよ、アイツが消えればこの空間は維持できないはず!!」

こんな異空間を条件無しで具現化させ続けられるわけが無い。
能力者を倒すことで現実へと帰還できるだろうと言う考えは間違ってはいないはずだ。

「そう簡単には死んであげないよ!!」

さあ、戦いの仕切り直しだ。

「いけ!!」

ミコトの号令によって再び戦いは開始された。





「レイガン!!!」

「レストレーション・クロム!!!」

最高の、イツキにとってはこれ以上無いタイミングで撃った筈のレイガンは、しかし、素早くティータが引き抜き実体化させた錬金鋼(ダイト)の手甲で防がれる。
うまくベクトルをずらされ、レイガンはあさっての方向に飛んでいった。

「くそっ・・・っ!?」

毒づく暇も有らばこそ、ティータはすぐさま左腕の鋼糸状の錬金鋼で反撃を仕掛けようとしてくる。

「まだまだぁっ!!!」

が、このタイミングで背後からルーの追撃の声が来た。

「『ディバインバスターーーッ』!!!」

人一人飲み込めそうなサイズの砲撃が一瞬前までティータの居た辺りに着弾し、巨大な土埃を巻き上げる。
この間にイツキも大きく間合いをとっていた。

「当たったかな?」

「いや、もう避けてたな」

ルーが聞いてきたので正直に答える。
着弾前にティータに離脱されるのがイツキにははっきりと見えていた。

「そっか」

ボウッ!!!

突如、撒き上げた土煙が弾け跳ぶ。
ティータが鋼糸を高速で振るう事によって土煙を弾き飛ばしたのだ。

しまった。

と感じた時には既にティータは目の前におり、振り上げた右腕の手甲を振り下ろそうとしていた。

「させるかっ、『伸びろ、如意棒』!!!」

その時、すっかり意識の外に追いやられていたファルコの声が聞こえた。
そして、横合いから伸びてきた如意棒に弾き飛ばされてティータが吹っ飛んでいき、ギリギリで命を拾う。

「サンキュー、助かった」

「他の人たちは?」

イツキが礼を言い、ルーは出会い頭の一発で戦闘不能になった連中の様子を尋ねる。

「モラウ達4人は何とか大丈夫だ、さすがにキメラアント戦でメインを張ってた連中だ。多少のダメージはあるがどうにもならないと言うものじゃない。だけど・・・」

そこでイツキは言いづらそうに言葉を濁す。

「・・・俺達の連れは全滅、か?」

「・・・ああ」

「そんな」

最初の一撃、鋼糸での一薙ぎを見切れなかった連中は皆ことごとく輪切りにされてしまった。
ギリギリで避けたモラウ等も数箇所に糸が掠めるのは防げなかったようで何箇所か切り傷を負っていた。
立ち位置が良かったのもあるが、無傷で切り抜けたイツキとルーが一旦ティータの相手をしている間にファルコは負傷者の様子を確かめていたのである。

「一旦交代だ。ここからは俺とモラウ達がやる。少し休んでろ」

ファルコの言と共に無数の人影がティータを取り囲む。
モラウの『紫煙機兵隊(ディープパープル)』だ。

囲んだ兵隊達だったが一瞬で弾け跳ぶ。
ティータが鋼糸を振り、周囲をなぎ払ったのだ。

だが、この攻撃は鋼糸を使わせることが狙い。
鋼糸を振り払ったティータに時間差で今度はノヴ、ナックル、シュートが一斉に襲い掛かる。

「だがそんな攻撃は読めているっ!!」

言葉と共にティータのオーラが膨れ上がる。

鋼糸の一本一本が『凝』を必要としないほどにはっきりと目に見えた。

確かに鋼糸使用直後を狙ってくることは読めていたのだろう。
読まれていることはモラウ達も理解していたはずだ。
当然、鋼糸で迎撃されることも理解しての特攻のはず。
実際、それは鋼糸の攻撃力を冷徹に計算した上で耐え切れると判断した上での特攻であった。

これほどまでに突然オーラが跳ね上がるなど想定外だ。
ティータから感じるオーラ量はノヴ等三人をもってしても防ぎようのないレベルのそれであった。

地面から空へと伸び上がるように持ち上がる鋼糸を見た三人の顔にも驚愕が張り付いているのが見えた。

「三人を『外』に弾けっ!!」

ファルコがとっさに叫ぶ。

頭ではそれがどういった指示なのか理解していなかったが体は即座に命令に反応した。

「『レイガン』!!!」

「『ディバインバスターッ』!!!」

「『伸びろ、如意棒』!!!」

「「「ぐはぁっ!?!」」」←(ナックル&シュート&ノヴ)

それぞれイツキのレイガンはナックルに、ルーのディバインバスターはシュートに、ファルコの如意棒はノヴに直撃し、その体を寸でのところで鋼糸の射程外へと弾き飛ばすことに成功した。

「・・・へぇ、やるじゃん」

今のタイミングを外されるとは思っていなかったらしく、ティータはそれを実行したファルコ等の方へと興味を移した。

「!! その目・・・」

「あ、気付いた?」

「ありえない、なんで、旅団に!?」

振り向いたティータの両眼は紅い輝きを放っていた。

「簡単なことさ、俺は自分がクルタ族だと知った時にクルタを捨てたんだよ」

そう言い捨て、こちらへと向き直る。

「・・・とんでもないガキだな!?」

モラウがはき捨てるように言う。

先ほど弾いた三人も輪切りになるよりはダメージは少ないはずだがそれでも未だ戦線復帰できるほどには回復していないようだ。

彼らが戻ってくるまで少なくとも4人でコイツを相手しなければならないのか・・・

イツキは状況の絶望さ加減に、返って笑いがこみ上げてきそうになっていた。

「さて、『天剣モード』の鋼糸はちょっときついぞ? しっかり生き残れよ」

ティータはその言葉と共に再び鋼糸を振りかぶる。
その姿は無数の巨大なオーラの込められた鋼糸の輝きによって、まるで光の暴風の様に見えた。





「『俺の両手は機関銃(ダブルマシンガン)』!!!」

フランクリンの両腕から無数の念弾が降り注ぎ、辺りを蹂躙する。

「チィッ、『雷光放電(ライトニングプラズマ)』!!!」

無数に降り注ぐ念弾の嵐をイグルスが雷の弾丸の嵐で迎撃する。

「くそっ、何時までもこれじゃあ埒が明かないぞ!?」

「どうする!?」

イグルス、メリク、ゾルダの三人はフランクリンとタランチュラのトリッパー、エレルと対峙していた。
フランクリンであれば『雷光放電(ライトニングプラズマ)』『極光処刑(オーロラエクスキューション)』等で力技で押していけば案外簡単に嵌められるかと思われたが、やはり相方のトリッパーが曲者であった。

「『写輪眼』か、やっかいな」

そう、エレルの念能力は写輪眼であった。
その目の写すあらゆる動きをコピーし先読みすることで、こちらの先手を尽く封じているのだった。

「!! ゾルダ、撃ち込めぇ!!!」

既にシュートベントを発動し、巨大な大砲を構えていたゾルダだが、フランクリンの攻撃の陰に隠れて接近していたエレルが目前まで近づいていることに気付かなかった。

「!? くそっ」

慌てて砲口を向けるも動きを読んだエレルがすばやく懐まで滑り込んでくる。

「ハァッ!!!」

エレルはゾルダの顎を蹴り上げ、空中高く弾き飛ばすと自身も空へと跳び、ゾルダの背後に回りこむ。

「『獅子連弾』!!!」

原作『NARUTO』の写輪眼持ち、サスケの技をそのまま再現しゾルダに空中コンボを決める。
そのまま大地に叩き付けられたゾルダはピクリとも動かなかった。

「・・・くそっ、『極小氷晶(ダイヤモンドダスト)』!!!」

メリクがすぐさまエレルに攻撃をかけるが、やはり攻撃動作を読んでいたのかするりと避けられる。

「・・・このままだとジリ貧だな」

意図せずしてイグルスの口から言葉が漏れる。
メリクもそれに反論しない。
彼も同じ思いだからだ。
少なくとも写輪眼を攻略しなければ勝ち目は無い。

「おい、そっちのお前」

エレルがイグルスを指差して言う。

「・・・俺か?」

「ああ、お前の能力はフランクリンの邪魔みたいだからな、オレが手っ取り早く始末してやるぜ」

そう言うエレルの眼の文様が変化していることに気付く。
そして同時に気付く。

気付いたこと、それ自体が失態であることも。

「ようこそ、オレの精神世界へ」

イグルスは『万華鏡写輪眼・月読』の世界へと捕らわれていた。

「!?!? しまった!!!」

気付けばそこにはイグルスとエレルの二人しか居ない。

「・・・メリクは何処だ?」

イグルスは目の前のエレルに自分の仲間は何処かと問う。
エレルは考え込みながら答える。

「メリク? ・・・ああ、もう一人居た氷の聖闘士の人? 大丈夫、外に居るよ。この世界は基本的に一人づつしか入れないから」

エレルはそう言うとこちらに視線を戻す。
ただそれだけでいつの間にかイグルスの体は大地から突き出た巨大な十字架に貼り付けにされていた。

「!? ・・・くそっ!!」

「やっぱ、写輪眼持ちのオリ主の伝統は、ネタ知識での万華鏡写輪眼無双だと思うんだけど、どうかな?」

やられる側であるイグルスにとってはたまったものではない。
無意味だと分かっていても、必死になって首を左右に振っている。

「そんで、やっぱ一番人気はリリなののトリプルブレイカーでわないかと思うんだけど、色んな写輪眼オリ主の俺Tueeeeeee!!で必ずといっていいほどこいつを使うからオレは別なのを用意してみました~」

パチパチパチ

自分で自分に拍手しているエレル。
その背後にはいつの間にかライオン型のメカが鎮座していた。

「・・・げ」

イグルスにはその機体に見覚えがあった。

それは、最強の勇者王。
それは、勇気の究極の姿。

頭の中を例のナレーションが通り過ぎていく。

「んじゃ、そろそろ始めようか!! フュゥゥジョォォォォォンッ!!!」

叫びと共に空へと舞い上がったエレルはそのまま背後のメカライオンの口の中へとダイブ。
メカライオンはその形態を組み替え人型のメカノイド・ガイガーとなった。

さらに、

「ファイナルッ、フュゥゥジョォォォォォンッ!!!」

何処からとも無く5体の動物を模ったマシンが飛来し、ガイガーへと合体していく。

「ガオッ、ガイッ、ガァァァァァア!!!!!」

イグルスは口から魂を吐き出しそうな精神状態で目の前の破壊神を眺め叫んでいた。

「・・・ジェネシィィィック!?!?」

「ガジェットツゥゥゥゥウルッ!!!」

イグルスの魂の叫びなど一㍉も気にせずエレルはずっと俺のターンを続けていく。

「ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ・・・」

右手に攻撃、左手に防御のエネルギーを集中したガオガイガーが呪文と共にその両手を合わせていく。

「・・・はっ!? ちょっと待って、まずは話し合いを「むんっ!!!」ぅぐはぁ!?!」

ヘルアンドヘブンの体勢に入ったガオガイガーを見て我に返ったイグルスが待ったをかけるがEMトルネードの襲来により無理矢理黙殺される。

「ウィィィィイタァァァァァァア!!!!!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?!?!」

高速で突っ込んできたガオガイガーと最後の呪文の力で出力を激増させたヘルアンドヘブンの直撃を受けてイグルスの体は粉微塵に消し飛んだ。

「・・・さて、後10時間、キリキリ逝こうか」

再び暗闇へと戻った空間に一人浮かび、そう呟いた。





イナトはボロボロになり地面に横たわったまま、かつてカルラに言われたことを思い出していた。



「じゃあ、『ギャラクシアンエクスプロージョン』と『アナザーディメイション』が使えないとそもそもゴールドクロスは作ってもらえないのか」

「まあ、そうなるな」

ヒーローズソサエティの会議が終わった後、カルラはイナトを呼び止めてクロス作成に関する条件を説明していた。

「さすがにギャラクシアンエクスプロージョンやアナザーディメイションを再現するのは無理だよなぁ」

「? そうか? どちらも意外と簡単に再現できるんじゃないかと思うが? 仕組みは簡単そうだし」

カルラは再現は無理だと思っていたが、イナトにはイメージが既にあるようだ。

「マジか、じゃあ頑張ってみてくれよ。このクロス、条件が厳しいだけあってたいした物だぞ?」

そう言って取り出したクロスボックスを展開し、山羊座(カプリコーン)のゴールドクロスを装着してみせる。
そのクロスから感じられるオーラは確かに厳しい条件をクリアしてでも手に入れる価値があると思われた。

「ああ、がんばってみる」



その後、実際にイメージを形にするのには時間がかかったがとりあえず雛形と言えるものは既に出来ていた。

「だけど、どの道この状態では試しようも無いか・・・」

既にその身はボロボロで。
すぐにでも止めを刺されそうな状態だ。

だが、倒れたままで死んではやらない。

せめて僅かにでもダメージを残して仲間達に後を託そうと立ち上がる。
結果的に言えば、この行動がイナトの命を繋ぐこととなった。

立ち上がったイナトを警戒してかシャルナークは瞬間、動きを止める。

「なんだい、まだ立ち上がる力がっ!?」

「うぉりゃぁぁぁぁぁあ!!!」

キュドォォウッ!!!

空から何かがシャルナーク等の居た場所に着弾。
シャルナーク等4人を吹き飛ばす。

「うぁ!?」

思わず目を覆うイナトに見知った声がかけられる。

「何とか間に合ったな」

「・・・ブレイド?」

「おう、助けに来たぞ?」

イナトの問いにブレイドが答える。

「そっちは二人がかりで押さえてたのでは?」

「死にかけてたくせに人の心配しなさんなっての、ギャレンなら大丈夫だよ」

その言葉にはギャレンに対する信頼か、確かな自信が見える。

「そうか・・・感謝します」

「いえいえ」

話しながら戦況を確認する。

ブレイドの一撃・・・『J・ライトニングブラスト』はシャルナークではなく前衛三人を狙っての一撃だったようだ。
その中でも直撃に近かったキリンレンジャーとテンマレンジャーが地面に倒れている。
いや、既に事切れているのか。
その両手両足はありえない方向に捻じ曲がっていた。

逆に被害の浅かったリュウレンジャーとシャルナークは少しはなれたところに立ち、既に体勢を整えているようだ。

「・・・やってくれたね」

「さすがにこの状況で殺さずに済ませられるほど強くないからな、俺」

憮然とした表情でブレイドを見ながら言うシャルナークに言葉を返すブレイド。

「ブレイド、少し時間を稼いでくれないか? やってみたいことがあるんだが、少し時間がかかる」

「? 了解」

ブレイドが軽く了解と答え、ブレイラウザーを構え、翼を広げてシャルナーク等に飛び掛る。
言質は取ったのだから確り時間稼ぎしてもらおう。
この技は未完成で発動にやたら時間とオーラを必要とするが、その分威力は大変なことになっている。

イナトは精神を落ち着け、オーラを練り始めた。





あとがき
ヨークシン編その3をお届けします。
また分割、・・・長い。
その3で早めに云々言いましたが結局一週間以上かかってますね^^;

この期に及んで男女の設定すら決まってなかった人の台詞回しを男にしたり女にしたりを繰り返して書き直してたのでどこかでセリフがおかしいとかあるかもです。
ここ、変じゃね? とかありましたら教えてください。
がんばって修正します。

突っ込み、駄目だしなどありましたらよろしくお願いします。



[8143] ヨークシン編その4
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:1e5f2ff6
Date: 2009/10/19 05:49
スピニングダンスvs多重居合い斬りは痛み分けであった。
空間に発生した十を超える斬撃に回転しながら突っ込んでいったカリスは全身を刃でズタズタにされながらもスピニングダンスをノブナガにぶち込み、ある程度のダメージを与えることは出来た。
もっとも、威力、精度ともに大分落ちたものだったが。

「ぐ・・・あ、ぎぃ!!」

「!!・・・くそっ!?」

互いにただ一発の必殺技で動けなくなるほどのダメージを受けていた。
だがそこは、互いのプライドが一発ダウンなど許さない。
程なくして互いに立ち上がり、戦いを再開する。

「うぉぉぉお!!」

「ちぃっ!!」

カリスのカリスアローでノブナガに斬りかかり、ノブナガは自身の刀でいなし、反撃を入れる。
やがてカリスが競り負け、ノブナガの一撃で射程外まで弾き飛ばされた。

「へ、まだまだ負けてらんねぇよ!!」

吼えるノブナガ。

最初の多重居合い斬りが想像以上のダメージとなっていたことを自覚したカリスは早期に戦いを終わらせるために切り札を切ることにした。

「悪いが、これで終わらせてもらうぞ」

そう言って一枚のカードを取り出し、腰のカリスバックルへとラウズする。

「なに!?」

『フュージョン』

この組み合わせは本編ではありえなかった物。
ジャックフォームに相当するものがなかったカリスに他のライダーのようにジャックフォームを設定してみようと考えて作成したオリジナルだ。
ゆえに、その姿もオリジナル。

フュージョンの電子音の後、カリスバックルからハートのJ(ジャック)、狼の紋章を象ったスクリーンが発生してカリスを通り越す。
その瞬間、カリスのアーマー部が金色の強化装甲に変わり、両腕には『醒爪カリスクロー』が装備され、胸にはカテゴリーJの紋章が刻印されたカリスのジャックフォーム、ハウリングカリスの姿があった。

「ウォォォォォォォォォォォォォオオ!!!!!」

ハウリングカリスが天に向かって吼える。
咆哮をやめた次の瞬間にはその姿は掻き消えた。

「な、に!?」

気付けばノブナガの左腕に爪跡の様な裂傷が3つ。
ハウリングカリスはノブナガの反応できない速度で攻撃を仕掛けていた。

『チョップ』『トルネード』

『スピニングウェーブ』

左腕のクローに内臓されたラウザーに二枚のカードをラウズする。
風の力が右腕、そしてその先のカリスクローへと伝播していく。

次の瞬間再び駆け出したハウリングカリスは電子音でようやく背後に振り返ったノブナガの心臓を刺し貫いた。

「・・・マジかよ」

そう呟いてノブナガは崩れ落ちた。

同時に、ハートの2をラウズしていないのにカリスの変身が解け、元の男の姿へと戻る。
能力者の肉体疲労が限度を超えて強制的に戻されたのだ。

「ハァッ、ハァッ」

荒い息を吐き、崩れ落ちるカリス。
カリスは変身時に受けたダメージが変身解除時にフィードバックされるため、その体には無数の裂傷があり多量の血が流れていた。
更に両足は限度を超えた加速を実現するために筋断裂を起こしている。

これが最初からハウリングカリスで戦わなかった理由である。
はっきり言ってしまえばハウリングカリスは未完成であったのだ。

狼の力を追加された高速戦闘を可能にする代わりに一度の跳躍で肉体に大きな負荷をかける。

これを解決できなければまだまだ実践投入は先であった。

「とにかく、俺の分の仕事は、終わったぞ」

言いながら仰向けに倒れこむ。
視線の先ではカルラの戦いがクライマックスに突入しようとしていた。





「ハァァァァア!!!」

黄金色の一閃が飛ぶ。
カルラの手刀の軌跡をなぞる様に大地に亀裂が走る。

「ちぃ、あぶねぇ!?!」

言葉とは裏腹に危なげなくかわすウボォーギン。
お返しとばかりに顔面を狙ったストレートが飛んでくる。

「ぐぅ!!」

左腕でガードするが衝撃は押さえきれずに体ごと後ろへと弾かれる。
相変わらず恐ろしいほどの腕力だ。

だが、見える。

カルラはウボォーギンの動きに慣れ始めていた。
このまま戦いを続けていればいずれは致命傷の一撃を与えることが出来る。
それはカルラの確信である。

もっとも、同じく致命傷となる一撃は相手にもあるのだが。

お互いが激しく移動し合いながら攻撃を繰り返していたために土埃が舞い、一瞬ウボォーギンの姿が視界から外れた。

「!?」

だが、ウボォーギンはその一瞬を狙っていたらしい。

その瞬間、瞬時に『絶』を行って気配を断つ。

!? このやり方はクラピカを相手にしたときの戦法!!!

それは一瞬のひらめきであった。

気配はなく、また、土埃の流れにも逆らわずに迫ってきていたウボォーギンには反応できなかったが、クラピカが左側から攻撃されたという情報が頭をよぎり、直感だけで左側の防御を固めた。

「オラォ!!!」

果たして、それは正解であった。
『超破壊拳(ビッグバンインパクト)』と化した右腕が、ガードした左腕にめり込む。
地面に直径10メートルを遥かに超えるサイズのクレーターを作る拳を受けて、弾き飛ばされるカルラ。

「ぐ・・・信じられんな、拳一発でこのクロスを砕くとは」

そう言って掲げた左腕は拳を受けた箇所から蜘蛛の巣状にひび割れが発生し、腕の骨も砕けていた。

「へ、キッチリとオーラを込めてやったからな」

そう言うウボォーギンだがやったことは結構すごい。
彼は『絶』の状態から相手が反応した一瞬の間に『錬』→『硬』と言う過程を行って殴りつけてきたのだ。

さすがに世界最恐の盗賊団で一番の武闘派ということか。

再び互いに相手の間合いに飛び込み、一撃必殺の拳を交し合う。
だが、砕けて使い物にならなくなった左腕が足かせになる。

痛みなどどうにでもなるが、左手丸々重りと化したためにほんの一瞬、行動が遅れる。
ギリギリで釣り合った戦いであったため、そのほんの一瞬が命取りとなってきた。

「ぐぅ!!」

直撃はしなかったがウボォーギンの攻撃が左腕をかする。
それによって気がそれた一瞬にウボォーギンの『超破壊拳(ビッグバンインパクト)』が飛んでくる。
いい加減庇いながら戦うのが邪魔になっていた左腕をカルラは捨てることにした。

「ハァア!!」

バギャァア!!!

「何っ!?!」

砕け、はじける音。
それは、超破壊拳(ビッグバンインパクト)に合わせて叩きこまれた左腕の肘から先が押し潰され、消し飛んだ音であった。

「貰ったぁぁぁぁあ!!!!」

元々左腕を潰すつもりだったカルラの行動は速かった。
カルラの予想外の行動に一瞬固まった隙を突き、その右腕の聖剣はウボォーギンの右腕を刈り取っていた。

「な、なにぃぃぃぃぃぃいい!?!?!」

「これで、トントンだ!!!」

カルマは吼え、再びウボォーギンへと飛び掛った。





「ハァ・・・ハァ・・・」

一秒がとても長く感じる。

ナイトはボノレノフの踊りを止めるために何度目か解からない攻撃を再び繰り返していた。
このまま踊りを続けさせればまた『アレ』が来る。
ちらりと横を見れば『アレ』によって作られた巨大なクレータが見える。
リュウキ、リュウガ共にあのクレーターの下に埋まったまま出てこない。

「うぉぉぉぉおお!!」

ナイトこと、ユウはまだまだ未熟な身である。
ゆえに、リュウキやリュウガの様に『サバイヴ』のカードを支給されてはいなかった。
既にソードベントによって召喚したウィングランサーはどこかへ飛んでいってしまったため、召喚機ダークバイザーを使って切りかかっている。

「へっ、どうした? その程度かよ?」

ボノレノフの挑発に返事を返す余裕も無い、何故ならもうすぐ踊りが完成してしまうから。

「・・・終わりだ」

だが、やはりナイトは踊りが完成する前にボノレノフを捕らえることは出来なかった。
ボノレノフの舞踏が完成し、ナイトの頭上に巨大な『木星』が現れる。

『戦闘演武曲(バト=レ・カンタービレ) 『木星(ジュピター)』』。

あ、死んだ。

思わずそう思い、硬直してしまうナイト。
だが直後に何かが横からぶつかってきて『木星(ジュピター)』の範囲からはじき出された。

「ぐぅ!? ファイズ!?!」

体当たりで無理やりナイトを『木星(ジュピター)』の範囲からもろともにはじき出したのはファイズだった。

「・・・これを使うしかないか、もってくれよ!!」

そう言うと、ファイズは左腕のリストウォッチ型のアイテム、『ファイズアクセル』から『アクセルメモリー』を引き抜き、ファイズフォンのプラットフォームに挿入、『アクセルフォーム』を起動する。

「な!? 『ファイズアクセル』はまだ未完成・・・」

『スタートアップ』

次の瞬間、ナイトの目の前からファイズは消えた。



ファイズがアクセルフォームを起動したことに驚きナイトは待ったの声を上げるが、それを遮りファイズは加速を開始する。
組織に所属して日の浅いナイトと違い、それなりにヒーローとして組織の仕事も行っていて自力も付いていたファイズには分かっていた。

ここで無茶を通せなければ、自分達に生還の道は無いと。

それゆえに無謀と分かっていても最後の切り札を切らざるを得なかった。
背後で最後の力を振り絞っている者たちへと道を繋ぐためにも。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉおお!!!」

加速に入ると同時に頭に激痛が走る。
現在、ヒーローズソサエティにおいてカブト系のマスクドライダーシステムが完全に製作中止になっている理由がこれだ。
加速状態における脳への過負荷の軽減が殆ど機能していないのだ。
こんな欠陥システムをメインにしたヒーローアイテムなど開発許可が下りるわけが無い。
試作品として作成されたファイズアクセルにてこの欠陥の解決方法が見えてこなかったことにより、カブト系のマスクドライダーシステムは製作中止となったのだった。
今回、ファイズがファイズアクセルを持ち出したのは旅団との戦いと言う組織設立の目的の一つの山場であったため、決して負けられない戦いのための保険と言った意味で持ち出していた。
まさか、本当に使う羽目になるとは本人も思ってなかっただろうが。

加速状態に入ったファイズが木偶のように棒立ちになったボノレノフに走りぬき様にパンチを叩き込む。
加速状態ではオーラの大半が加速システムの維持に食われてまともな攻撃力が出せないため、なけなしのオーラと速さによってダメージを与えなければならない。
通り過ぎては引き返して殴り、また引き返しては殴りを繰り返し、現実時間で約三秒間ひたすらにボノレノフを殴り続け最後に止めを刺そうとミッションメモリーをファイズポインターに挿入して起動する。
ファイズアクセルフォーム最大の必殺技『アクセルクリムゾンスマッシュ』を放つ体勢だ。
ファイズは自身が殴り飛ばして空中に浮かんでいるボノレノフに向かって再び疾走した。



目の前からファイズが消えた後、ボノレノフが右に左にと跳ね回るように弾み、最後には空中高く飛び上がった。
その全方位から『クリムゾンスマッシュ』のポインターが取り囲むのが見えた。
だが、ポインターは最初の一発がボノレノフに突き刺さった後、続けて突き刺さること無く消滅する。

「な、なんで!?」

そう思わず叫んだナイトの横に加速が解けたファイズが落下する。

「ファ、ファイズ!!」

ナイトは思わずファイズにかけよる。

「ち、くしょ・・・う、足り・・・な、かった」

ゴフッっとファイズが咳き込み、マスクの換気フィルターから吐血した血が噴出す。
ファイズがボノレノフに止めを刺すには僅かに時間が足らなかったのだ。
止めとなるアクセルクリムゾンスマッシュは最初の一発を打ち込んだ際の脳への負荷でキャンセルされ、脳にも致命的なダメージを受けたようだった。

もはや、助からない。

だが、彼の最後のがんばりは決して無駄ではなかった。

「いや、よくがんばった」

「俺たちの分も残してくれたんだしな」

背後から二人の声が聞こえ、ナイトは思わず振り返る。

「リュウキさん、リュウガさん!!」

二人の姿はボロボロでライダースーツは装甲が凹み、リュウキにいたっては強化変身も解け、全身ボロボロの致命傷にしか見えない有様だったが確かに立ち上がりボノレノフをにらみつけていた。

「「繋いでくれたチャンスは逃さない!!!」」

『『ファイナルベント』』

二人は同時にカードをドラグバイザーに挿入し、ファイナルベントを発動する。
ボノレノフはファイズのアクセルクリムゾンスマッシュが一発とはいえ直撃したダメージでまだ動けない。
リュウキは空へと飛び上がり、リュウガはその場でキックの体勢を取りボノレノフへと突き進む。

赤と黒の炎の蹴りがボノレノフを貫き、ボノレノフが爆散するのをナイトはその目に焼き付けた。




「!? ボノレノフ!!」

テラが爆散したボノレノフを見て叫ぶ。
その隙を突いて、カイザがカイザブレイガンで斬りつけようとするが再び阻まれる。

「貴様等ぁぁぁぁぁあ!!!」

テラが叫び、テラのオーラ出力が跳ね上がる。

「・・・あ!?」

カイザが自身の胸元を見下ろして呟く。
気付けば、カイザは自身の武器、カイザブレイガンの刀身を自分自身の胸元に突き刺すように捻じ曲げられ、背中から刃を突き出しながら崩れ落ちた。

「・・・少し遊びすぎたね、おかげでボノレノフが死んじゃったよ」

淡々と呟くテラのオーラには今まであったどこか遊んでいる感じの色がなくなっていた。

「これ以上、君達と遊んでる暇はなくなったからそろそろ殺すね」

ただ居るだけで多量のオーラを消耗する為慎重にならざるを得ないミコト等とは違い、惜しげもなくオーラを練り上げ、止めを刺そうとするテラ。
だがこのとき、カイザの生死をきちんと確認しなかったことがテラの命運を分けた。

死んだと思われたカイザが再び立ち上がり、背後からテラを羽交い絞めにしたのだ。

「な!? 貴様、生きて!?」

「俺ごとやれ、ミコトぉぉお!!!」

カイザの胸からは未だカイザブレイガンが突き立っており、出血も止まらず誰が見ても致命傷であった。
そんなカイザが最後の力を振り絞り、作り出した千載一遇のチャンスを無駄にするわけにはいかない。

ミナトはすぐさま一枚のカードを取り出しディエンドライバーへと挿入する。

『ファイナルアタックライド』

銃口からカード状のエネルギー体を円状に配置したモニュメントが発生する。
このまま引き金を引けば『ディメンションシュート』は発動するが、確実に止めを刺すために銃口を相手の胸元に押し付けて引き金を引いた。

「きさっ!!」

『ディエンド』

ズドォゥン!!!

ゼロ距離から発射された『ディメンションシュート』はテラの胸に大穴を開け、背後に居たカイザの上半身をけし飛ばしながら突き抜けていった。





「『紙技・紙爆雷』!!!」

キュドドドドドドドドドドンッ!!!

爆音が鳴り響き巨大な土柱がいくつも立ち続ける中をシキが駆け抜け、テオへと肉薄する。

「はぁぁぁあ!!」

「おぉぉぉお!!」

ギィィィィンッ

「何っ!?」

テオは左腕の義手でシキの刃を受け止めていた。

これはありえない。

シキの魔眼がオーラに対してのみ働くことを考えてもそもそも攻撃のために込められたオーラ量も相当なものである。
とめられることは考えがたかった。

この答えはナイフを振りぬいた右腕にあった。

無数の紙爆雷の嵐を潜り抜けてきたため、すべての紙爆雷を回避しきったというわけにはいかず、何発かは爆発を受けていた。
その中には他の用途用にまかれたダミーの紙や戦場に撒かれて地雷化した紙もあった。
それらを瞬時に際制御し、右腕に纏わり付かせることでシキと地面を繋ぐ鎖へと変化させ、ナイフの一撃を止めたのだった。

このことでシキが固まったのは一瞬。
だが、この一瞬があればテオは次の手を打つことが出来る。

「終わりだ」

振りぬかれた右腕が腹に叩き込まれる。
そこから多量の紙が放射され、巨大な右腕を形作ってシキを殴り突き進む。

「『紙技・巨人の拳(ギガント・ナックル)』!!!」

巨大な拳に殴りつけられたまま弾き飛ばされたシキはそのまま周囲の崖へと拳ごと叩き込まれる。

「・・・がぁ・・・あ!?」

巨大な拳の紙型が解けようやく開いた視界には、弓に捻じ曲がった矢を装填して構えるテオの姿が写されていた。



『紙々の世界・模倣宝具(ペーパーワールド・イミテーションファンタズム)』によって作り出したカラドボルグをシキに叩き込み、今度こそ止めを刺したことを確認すると急激に疲労を感じるようになった。

「っ!? ・・・はぁ、はぁ・・・緊張の糸が切れた、かな」

とにかく、厄介な即死攻撃持ちは排除した。
ハオ達の援護に回ろうとハオ達の戦っている戦域を探していると丁度空から光の柱が降ってくるところが見えた。
ゴクウの『かめはめ波』だろう。
テオは光の柱へと向かって走り出した。




メギィッ

「ぐぅぅう!?」

ベクター・ブロリーの薙ぎ払った裏拳を両腕でガードしたにも拘らず、折れたかと思うほどの衝撃が走る。
ゴクウはベクター・ブロリーに例え『3倍界王拳』を使っていても、これ以上接近戦を挑むのは自殺行為だと判断し足止めをハオに任せて一旦下がる。
ハオはちらりとこちらを確認した後、スピリット・オブ・ファイアのオーラを増加させてベクター・ブロリーの気を引くために攻撃を仕掛ける。

ズドォォンッ!!!

大気が震えるその音が一個人同士で立てている殴り合いの音だとは普通は誰も考えまい。

そんなことを頭の片隅で思考しながらベクター・ブロリーの背後の空に陣取り、かめはめ波の体勢をとる。

「か~め~は~め~波ぁぁぁぁぁあ!!!!!」

『3倍界王拳かめはめ波』だ。

ハオに気を取られていたベクター・ブロリーにかめはめ波が直撃したかに見えたが、ベクター・ブロリーは球状のバリアを展開してかめはめ波を防いでいた。

「くっくっく、そら、お返しだ!!」

そうベクター・ブロリーが言い、右腕に凄まじいオーラが集中して気弾が発生する。

あれを打ち込まれたら確実に押し返される。

そう考え戦慄したゴクウに救いの声が届く。

「「「「「『破邪百獣剣』、はぁぁぁぁぁああ!!!!!」」」」」

あまりの規模の違う戦いに戦線から距離を取り、破邪百獣剣を打ち込むタイミングだけを狙っていたガオレンジャー達だ。

「ぐぅ!?」

すっかり観客状態となっていたガオレンジャーからの攻撃に、ゴクウに向けて放とうとしていた気弾を解除して破邪百獣剣を受け止めるベクター・ブロリー。

「くっくっく、中々がんばったようだがこの程度でオレを倒せると思っていたのか!?」

かめはめ波と破邪百獣剣を同時に受け止めてなお余裕を見せるベクター・ブロリーだが、ここに来てガクンと膝が揺れる。

「な、何っ!?」

「やっと限界が見えてきたか」

そんなベクター・ブロリーの前にハオが降り立ち、スピリット・オブ・ファイアをS・O・Fソードへと変えながら話し続ける。

「それだけの出力で暴れ続ければすぐにガス欠になるかと思ってたんだが、想像以上に粘りやがって・・・もう少しでこっちが先に限界を超えるところだった」

S・O・Fソードの刀身がどんどん延長していく。
それに伴い、大気中の酸素を更に取り込んで光り輝く。

「『S・O・F斬艦刀(スピリット・オブ・ファイア ザンカントウ)』!!!」

そう叫んだハオの右腕には自身の身長に匹敵するサイズとなった柄部分と優にその2倍はある刀身となったS・O・F斬艦刀が握られていた。

「ゴクウの『3倍界王拳かめはめ波』、ガオレンジャーの『破邪百獣剣』、そして俺の『S・O・F斬艦刀』を全部食らってもまだ無事でいられるかどうか試してやるよ!!!!!」

俺はそう叫び、灼熱に輝くS・O・F斬艦刀を上段に構える。

「『4倍』だぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」

「『邪気退散』!!!!!」

「『斬艦刀・炎刃斬り』!!!!!」

「う、うぉぉぉぉぉお!?!?!」

ハオの振り下ろした斬艦刀は、圧力を上げたかめはめ波と破邪百獣剣によって動きを封じられたベクター・ブロリーのバリアに叩きつけられ、その封じられた火力を解放し、巨大な火柱を上げた。



ズダンッ

と空からゴクウが落ちてくる。
限界を一歩超えた4倍界王拳かめはめ波を使った反動で体が動かせなくなったのだろう。

だが今は、ベクターの生存確認が先である。

ハオも多量のオーラの消費から来る疲労で倒れそうになっていたが、気力で踏みとどまり自身で起こした爆発が収まるのを待った。
ガオレンジャーも、体が動かないがゴクウも同じである。

やがて爆炎が落ち着きクレーターが見えてくる。
そこにはもはや誰もいなかった。

「・・・やったのか?」

背後から声をかけられ、気配を探ってテオであると判断する。

「ああ、倒せたみたいだ」

「そうか」

ここまで来てようやく納得したハオはふぅ、と一息ついて座り込む。
皆も同じように崩れ落ちた、皆全力を使い果たしたのだ。

「俺たちの分のノルマは終わりか」

「他の連中はうまくやってるかな?」

そう言ってテオは空を見上げた。





「うぉぉぉぉぉぉお!!!」

空中で瞬歩。
更に移動先からそのまま炎をまとっての『怒竜突破』。

「ふん」

ギャリリッ!!!

だが、その一撃にもマガツは反応し、カウンターを入れようとしてくる。
タクヤは何とかカウンターの一撃を刀を盾にして受け流し、再び距離を取る。

現状はこの繰り返しである。

高速戦闘が始まってからはカズにいたっては戦闘に参加することすら出来ず、ただ下で推移を見守るばかりだった。

「くそっ!!」

再び怒竜突破の構えを取るとマガツが話しかけてくる。

「・・・つまらんな」

「・・・なに?」

「つまらないと言っている。先ほどから同じ行動の繰り返しばかり、これではわざわざ斬魄刀解放まで行ったかいが無い」

「・・・言ってくれるじゃないか」

「わかってないようだから言っておくぞ。もうそれ以上の隠し玉が無いのならそろそろ殺すと言っているのだ」

そう言い放つと瞬時に目の前から消えうせる。
次の瞬間には真横に現れてその爪でタクヤを引き裂こうとかかってくる。

瞬歩・・・いや、響転(ソニード)か!!

相手の攻撃が届く前に刀を振りぬくが、再び響転され、無防備な真後ろへと移動される。
そのまま背中を蹴りつけられ、地面へと叩き落された。

「がっ!?」

「・・・どうやら、本当にタネが尽きたみたいだな」

そう言いながらゆっくりと下りてくるマガツ。
その顔面目掛けて溜め込んだ熱量を打ち込んでやった。

「『熱虚閃(ねつセロ)』!!!」

カッ

と、熱線が空を行く。
だがその先には既にマガツはいなかった。

「ほう、この期に及んでまだそんな隠し技があったか」

タクヤの背後に回りこんだマガツがそう呟き、タクヤを空高く蹴り上げる。

「ぐぅ!?」

更に追撃をかけてきたマガツの爪を辛うじて刀で受ける。

「くそっ!!!」

「さあ、もっと力を見せてみろ!!!」



「ちくしょう」

カズは強く拳を握りしめている。
その手の平からは血が滴っていた。
だがそんなものは彼が強く手を握り続けることをやめる理由にはならない。

「何で、俺には力が無いんだ」

目の前ではマガツとタクヤが殺し合いを行っている。
だが、カズではそれを目で追うこともまともに出来てはいなかった。
彼らとの間にはそれだけの実力差があった。

ふと、自分の念能力、サンライトハートを見る。

この能力の元ネタのキャラは核金を心臓代わりにして破壊されれば死ぬという設定だった。
だがしかし、自分はその設定を制約として取り込んではいない。

万が一にも破壊されることで死ぬのが怖かったからだ。

今まではそれでどうにかなってきた。
だが、今この時はそうはいかない。

今こそ覚悟を決める時だ。

「制約と誓約。心で決め、遵守する」

サンライトハートを核金に戻す。
そして、それを心臓の上に持ってくる。

「俺はこの核金を心臓とする。核金を失えば俺の命も失われる」

ゆっくりと核金が心臓へと埋没されていく。

痛みは無い。
だが、制約がされ自身のオーラとなって帰ってきたのが実感できた。

再び核金を取り出すイメージをする。
心臓部から取り出された核金の色は漆黒に染まっていた。

「武装錬金!!!」

黒い核金が展開され、サンライトハートではない、進化した槍、『サンライトハート+(プラス)』へと変化する。

黒い核金の力『エナジードレイン』が再現されたのか、周りの大気にも微小なオーラが存在していることが分かる。
意識すれば、それは槍へと集中していった。

この槍ならば空へと届く。

敵の動きが捉えられないなら、より密度を上げた『凝』で追えばいい。

やがて、力尽きたように全身をだらりとさせたタクヤの首を掴んで持ち上げるマガツの姿を捉えた。

「食らえっ!!!」

大気に溶け込んでいたオーラを回収し、輝きを増していたサンライトハート+がその切っ先を天へと向かって弾き出す。

「『サンライトクラッシャァァァァァァア』!!!!!」

伸びた槍の穂先は見事にマガツを直撃した。





「!? イグルス!!」

突然目の前で倒れるイグルスにメリクは混乱して思わず叫ぶ。

「たいしたもんだ。結局10時間じゃ精神死しなかったよ、こいつ」

自身の目を押さえながらエレルがそう言う。

「ほう、たいしたタマじゃねぇか」

その言葉を聞いてフランクリンも感嘆の声を上げる。

そうか、写輪眼を使うのなら警戒するべきだった。
月読を使ったのか!!

「・・・まあ、少なくとも今しばらくは行動できないだろ。今のうちにこいつを片しとこうぜ?」

「そうだな」

エレルとフランクリンがそう呟きこちらへと向かってくる。

やばい。

メリク一人でエレルとフランクリン両方を相手にするなど不可能だ。
どちらか片方でもきつい。
だが、やらなければ確実に死ぬ。

メリクが覚悟を決めて二人を迎え撃とうと構えたとき、突然巨大なオーラが立ち上る。

3人が慌ててそちらへと目をやるとたった今行動不能になって倒れたはずのイグルスが莫大なオーラを燃え上がらせながら立ち上がっていた。

「な!? イグルス!?」

「・・・」

思わずメリクが声をかけてしまうが反応が無い。
イグルスは未だ意識が無いままに立ち上がっていた。

イグルスが右腕を天へと向けて構え、攻撃の体勢を作る。
それは意識を失っているが故のフェイントなしでの攻撃の意思の現れであるが、本来動くはずの無いイグルスが巨大なオーラを発揮しながら動いている光景に三人はすぐさま反応できなかった。

「アァァアアアア!!!」

「チィィィイ!?!」

右腕が振りぬかれ、無数の雷光放電(ライトニングプラズマ)が放たれる。
フランクリンは俺の両手は機関銃(ダブルマシンガン)を発動し自身とエレルへと向かっていた雷の弾丸を撃墜し、反撃にでようとした時にその異変に気付いた。

「・・・? 雷光放電(ライトニングプラズマ)の光が消えずに漂っている?」

「!! まさか!? フランクリン、すぐにソイツを殺せ!!!」

エレルが対峙して初めて焦った声を上げる。
その声に深刻さを感じたフランクリンはすぐさまイグルスを殺そうと俺の両手は機関銃(ダブルマシンガン)をイグルスに撃ち込むが、

「させるかっ!!!」

二人よりも一歩早く、イグルスが行おうとしていた技に気付いたメリクがイグルスの盾となって立ちはだかり『氷結唐櫃(フリージングコフィン)』にて氷の壁を作成し防ぎきっていた。

「貴様っ!!」

エレルが叫ぶ。
こうなればリスクを覚悟でもう一度万華鏡写輪眼・月読を使おうと発動を試みるが誓約である『直接相手の目を見る』が氷の壁越しでは満たされず、不発に終わる。

「やれ、イグルス」

「応っ」

メリクの言に意識を失っていたはずのイグルスが答える。
彼は既に意識を取り戻し、全力で技を制御していた。

「ハァァァァァァァァアアアア!!!」

極限までオーラが練り上げられ、無数の雷光がその輝きを増す。
精神世界での10時間にも及ぶ様々な死の体験はイグルスの精神をギリギリのところまで削っていたが、ゆえに、生きて現実世界に生還した時イグルスの精神力はそれまでとは一段階違う次元に達するほどに強固になっていた。
そして精神死の淵から戻ってきたという認識がオーラにも影響を与え、今まで制御できず使われることの無かった『光子破裂(フォトンバースト)』に産声を上げさせる。

「やられたら、やり返す!! それが俺のジャスティスだ!!! 燃え上がれ、俺の小宇宙(コスモ)よ!! 『光子破裂(フォトンバァァァァストォォォオオ)』!!!!!」

ドンッッッ!!!

イグルスの絶叫と共に光子破裂(フォトンバースト)が発動する。
360度全面に展開していた無数の雷光が一斉にエレル、フランクリンに襲い掛かる。
無数の雷光が二人の体に叩き込まれ、体内から蹂躙し、やがて二人を中心に巨大な光の爆発が発生した。




「くっ!?」

バババンッ!!!

「きゃ!?」

ギャレンラウザーが火を吹く。
シズクは飛んできた弾丸をデメちゃんで受け、しかし衝撃を殺しきれずに後方へと弾かれる。

「はぁ!!」

ここで追撃をかけようとするのだがもう一人の敵のマチの妨害によって結局不発に終わる。

これでよい。

なぜならば、俺の役目は時間稼ぎ。
ブレイドがイナトさんの状況をどうにかするまでここでこの二人を足止めしていればいいのだ。
ブレイドに抜かれる前と後で、ギャレンとシズク、マチとのこの戦闘における達成条件は逆転していた。

シズク、マチが一刻も早くギャレンを片付けてシャルナークの援軍に。
ギャレンは一時でも長く二人をこの場に釘付けに。

既にギャレンの身は満身創痍だ。
全身彼方此方に細かい傷が走り、右肩の装甲はマチの糸によって半ばから切断されている。

胸の装甲もシズクのデメちゃんによる強打で装甲がひび割れへこんでいる。
さらにはマスクにもデメちゃんによる打撃により一部破損し素顔が除いていた。

一度変身解除してしまえば修理するまで再変身不可能なほどの損傷具合だ。

「いい加減楽になったらどうだい!?」

マチが吼え、再び攻撃を仕掛けてくる。

「そっちこそ、少し休んだらどうだ? 動きが鈍ってるぞ!!」

負けずに吼え返して反撃する。
糸をやり過ごした後、僅かに距離を取る。
そこにブレイドからの通信が入ってきた。

『ギャレン、聞こえるか?』

ブレイドのいる方をちらりと見ながら応える。

「聞こえるぞ。どうかしたか?」

『イナトからの伝言だ。そっちの二人をこっちまで運んでこれないか? だそうだ』

「・・・やれないことは無いと思うが、たぶんやったら俺はもう戦闘不能だぞ?」

『すまないが、やってくれ。イナトに何か勝算があるみたいなんだ』

「了解」

さて、やれと言われたからにはやって見せよう。

「マチ、シズク。悪いがこれで終わりだ!!!」

「「!?」」

ギャレンは三枚のラウズカードを取り出し、ラウズする。

『ドロップ』『ファイア』『ジェミニ』

『バーニングディバイト』

電子音声と共に背の翼が開き、ギャレンは空へと舞い上がる。

「うぉぉぉぉぉぉお!!!」

右足に炎を纏い、マチ、シズク目掛けてギャレンは急降下突撃していった。



ギャレンが空へ舞い上がった時、マチとシズクは互いにアイコンタクトで意思の疎通を図っていた。

即ち、ギャレンが狙いを定めたほうを囮にしてもう片方がヤツに止めを刺す、と。

だがその覚悟もギャレンの最後の切り札によって無意味なものとなった。

高速で空から急降下してくるギャレンが空中で二人に分かれる。

「「な!?」」

どちらも自分が囮役となった時のためにいつでも防御できるように備えていたため直撃することは無かったが、ガードを固めた上からのキックの直撃、直後の炎の爆発で吹き飛ばされていた。

「ぐぅ・・・」

直接ガードした両腕がボロボロだ、もう戦闘には耐えられない。

マチがそう思い撤退を考えた時、背後から巨大なオーラが噴き出すのを感じた。

「!?」

慌てて後ろを見たマチは視界一杯に広がる光の中に砕け逝く銀河を幻視しながら永遠に意識を閉ざした。



ブレイドにギャレンへと伝言を伝えてもらった。

この技ならば一網打尽にすることが出来るはず。

視界の端にギャレンが空へと飛び上がるのが見えた。

そろそろか。

「ブレイド、もういい」

「わかった」

シャルナーク達の足止めをしていたブレイドが即座にイナトの側まで引く。

それを追撃しようとシャルナーク達が動くがその直後にギャレンに蹴り飛ばされたマチとシズクが飛び込んできた。

「いまだっ!!!」

『纏』を解き、極限まで練り上げていたオーラを放射状に一気に解放する。
纏を解いたことでオーラが垂れ流し状態となり、『練』によって練り上げられていたオーラが一気に空間に噴出し、満たされる。

空間に蔓延したと言ってもそれはイナトのオーラ。
大気へと溶ける前であれば、同じイナトのオーラをぶつける事でその性質を同じ方向へと変質させる事が可能。

すなわち、無色のオーラに満ちた空間に攻撃性のオーラを叩き込むことで空間に満ちたオーラの性質を同じ攻撃性のものに変えるのだ。

イナトは最後に破裂する念弾を作り出した。
それによってオーラに満ちた空間はそのまま巨大な爆薬と化し、爆発する。
空間に満ちたオーラの輝きがたった一つの光の爆発によって連鎖して砕ける様は、まるで銀河が砕けるかの様で・・・

「『銀河爆砕(ギャラクシアンエクスプロージョン)』!!!」

これまでに経験したことの無い莫大なオーラの消耗と自身の技による反動で、技の結果を見る前にイナトはその意識を閉ざした。





『光子破裂(フォトンバースト)』の光、そして『銀河爆砕(ギャラクシアンエクスプロージョン)』の輝きはクロロとクリス・・・仮面ライダー一号が戦っている丘からも良く見えた。

「あの光は・・・」

クロロが呟く。

「どうやら、うち等の誰かが一発決めたみたいだな!!」

一号ライダーがそう言って勝ち誇る。
確かに、あのような爆発を起こす念能力を旅団の者達は持っていなかったはずだ。
普段隠している能力であのような隠し玉があったのかもしれないが、それよりも敵の能力だと考えたほうが可能性は高いだろう。

「次は貴様が光に帰る番だ!! トゥッ!!!」

セリフと共に空高く舞い上がった一号ライダーはそのまま右足を突き出した体勢で突っ込んでくる。

「ライダァァァキィィィィック!!!!!」

クロロはそれを大きく跳んでかわす。
一号ライダーの着弾した場所は巨大な土柱が上がり、人間が自力で作ったとは思えないサイズのクレーターができていた。

今のうちに他の戦況を確認するためにトキオへとへと呼びかける。

「トキオ、全員の戦況を教えてくれ」

トキオは今この場にはいないがまるでそばにいるかのように答えが返ってくる。
トキオには『円』内部にいるものと自在に通信が出来る念能力があるためこういった連絡の取り方が出来る。

「全員の? ・・・見えたと思うけど今の光はフランクリンとエレル、次の光はシャル、マチ、シズクだ。残念だけど五人とも死んだみたい」

やはりか。

ただそれだけを感じた。
予め予想していたためか、元々そう言う気概だからか、衝撃を感じることは無かった。
事務的に続きを促す。
トキオも特に気にせずに続きを話す。

「ティータは増援で現れた連中を相手にしてるよ。こっちは優勢だから問題なさそう。
 ボノレノフとテラは敵を何人か巻き込んで念空間に入ったみたい、まだ出てきてないね。
 ソウマは敵と一騎討ち中、これはソウマの方が優勢みたい。
 ウボォーギンは右腕を切り落とされたけれどまだ戦ってるね。相手も片腕みたいだし。
 ノブナガは死んじゃってる。心臓一突き、すごいな。
 コルトピは敵のトラップにかかってちょっと危険な状態かな?いい感じで戦ってたみたいだけど敵の念能力でイーブンまで戻されちゃったみたい。
 フィンクスも一騎討ち中。こっちも余裕なさそう。パクノダは二対一みたいだけどこっちはまだ平気かな?
 ベクターとシキは死んだみたい。どっちも相手に押し切られて死体すら残ってないね。
 マガツは二対一で戦ってるけど、空中と地上から攻撃されて今は互角に戦ってる感じかな。
 フェイタンは事前に言ってた通りにジャバウォックと戦ってるね・・・あ」

その時、視界の端から強烈な光と熱波があたりに広がる。

「・・・あ~、フェイタンが『太陽に灼かれて(ライジングサン)』を使ったね。あ、相打ちになったみたい」

トキオの報告では4年前よりもはるかに強力な太陽に灼かれて(ライジングサン)を使用して相手を焼き殺すことが出来たようだが、同時に最後の攻撃で心臓をぶち抜かれて相打ちとなったらしい。

「そうか、報告ご苦労」

「・・・追加でボノレノフとテラだ。念空間が解けたけど、生きて帰ってきたのは相手のトリッパーが二人だけみたいだ。」

想定以上にこちらの旗色が悪い。
このまま戦いを続けていては蜘蛛の存続そのものが危ぶまれるところまで来ているようだ。
特に、コルトピとパクノダがまだ生きているうちに撤退しておきたい。

彼等は『レア』なのだ。

「・・・引くか」

「そう簡単に逃がすか!!」

土煙を弾き飛ばし、一号ライダーが飛び出してくる。
大きく右腕を振りかぶり、叫ぶ。

「ライダァアパァァァンチッ!!!!!」

そして、その拳がクロロの顔面を捉えようとしたその時、突如右腕が止まる。
まるで背後から引っぱられているかのように徐々に引き戻されていく右腕には『伸縮自在の愛(バンジーガム)』が巻きついていた。

「悪いんだけど、クロロは僕の獲物なんだ・・・僕に黙って勝手につまみ食いなんて、許さないよ」

ことここに来て、長らく行方をくらませていた『本来の歴史での』4番、ヒソカが現れた。

「!!」

このタイミングでか、と、一号ライダーはヒソカを見て思う。

もちろんヒーローズソサエティでも彼の動きは常に追っていた。
特に旅団に原作知識が洩れているとわかってからはそれまでの比ではないほどに探し回っていたが一行に行方がつかめなかった。

それが今、ここにいる。

ヒーローズソサエティにとっては最悪の援軍であった。

「くっくっく・・・苦戦してるみたいだねぇ、クロロ」

「・・・どういうつもりだ? ヒソカ」

クロロにとってもヒソカの登場は予定外のものだったらしい。
表情は変わっていないがその態度からヒソカを警戒しているのが見て取れた。

「そんなに警戒しなくてもいいじゃないか。困ってるみたいだから助けに来てあげたんじゃないか」

語尾に音符マークがついてそうな口調でそう言うヒソカ。

「・・・報酬は俺との一対一での殺し合いと言う訳か」

「ふふふ、その通り」

取引相手の頭の回転の速さにゾクゾクと震えが走るヒソカ。

「撤退の支援をしよう。報酬は君の言ったとおりだ」

「了解した。足止めを頼む」

「お任せあれ」

クロロはヒソカとの取引を終え、本格的に撤退準備に入った。

「だから、そう簡単に逃がすか!!!」

無視される形であった一号ライダーがバンジーガムのくっついている地面ごと抉り取る勢いで右腕を振り回そうとする。

「ふふ、良いのかい? こんな所で油を売っていると、大事なお仲間がどうなっても知らないよ?」

「何!?」

そう言ってヒソカが指差した方向には力を使い果たし倒れこんでいるミコト達。
そしてそれを高台から狙っている念能力者の姿だった。

そこからは会話も無かった。

一気にバンジーガムを引き千切り、ミコトとナイトの前まで飛び込む。
既に敵は攻撃準備を終えた様だが、ようやくミコト等も気付いたようだ。
だが、動かない。
否、既に動くだけの力すら残っていなかった。
彼女等を助けるためには一号ライダーが壁になるしかなかった。

襲撃者がその力を解放する。

「「『約束された勝利の剣(エクスカリバー)』!!!!!」」

声は二つ、放たれた言葉は同じもの。
だが、降り注いできたものは光と闇の刃という真逆のものだった。

「うぉぉぉぉぉお!!!!!」

光と闇のエクスカリバーを一号ライダーは両腕で持って押さえ込む。
こんなものが直撃すれば後ろの二人だけではなく、ここで戦っている全員に被害が及ぶ。
仲間達の遺体も消し飛んでしまう。

「ク、クリス?」

ミコトが呟く。
背後の二人は動けない。

だが、やはり、二本のエクスカリバーを一人で受け止めるのは少々無理があった。

「・・・ぐ・・・うっ!!」

ジリジリと押し出されていく一号ライダー。
やがて、光と闇の刃は接触し、巨大なエネルギーの波となって弾けた。

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」

衝撃波によって一号ライダーは背後のミコト等と共に弾き飛ばされる。
その衝撃は、各地で戦っていたものたちにも伝わり、旅団側の者達はこれを合図に撤退を始める。

ヒーローズソサエティにそれを追えるほどの余裕のあるものは居なかった。





「う・・・うぅ」

ミコトは痛む体を押して立ち上がる。
エクスカリバーの爆心地に居たが、一号ライダーが盾になったことで致命傷には至っていなかった。

「クリス・・・は?」

ミコトはクリスを探していた。
最後に自分等を庇って壁になったクリスも爆発の際に弾き飛ばされたのを見ていたからだ。

「! クリス!!」

飛ばされたと思われる方向を捜し歩き、クリスと思わしき人影が倒れているのをミコトは発見し側による。

「・・・あ・・・あ・・・そんな」

発見したクリスは、両腕が肩まで消し飛び、腰から下もぐちゃぐちゃに潰された死体の様な状態であった。

「・・・泣くな、よ・・・」

そう言ってクリスは気を失った。

「・・・泣いてなんていられない」

ミコトは気を失ったクリスを抱き上げ、ヒーローズソサエティの医療班の元へと駆ける。
クリスを死なせない、と覚悟を決めたミコトからは先ほどまで枯れ果てていたと思われたオーラが僅かにせよ湧き出ていた。
それにより、文字通り命を搾り取ったオーラで間に合わせたミコトはクリスを医療班に引き渡した後、崩れ落ちて気絶した。



結果的に言えばクリスは助かった。
だが、その傷は重く失った両腕以外にもあらゆる箇所が損傷していた。

「会長を助けるためには全身を機械化するしかない」

医者の一人が言う。

「それしかないか・・・」

側にいた他の医者もそれと同じ答えを返した。

「これより、クリス会長の全身機械化手術を開始する」

クリスは、今しばらく眠りに付くことになる。





所変わって、天空闘技場。

「・・・により、ヨークシン当局は今回の郊外での大規模戦闘行為をヒーローズソサエティの敵対組織との抗争であるとの見方を・・・」

「ぶふぉっ!?!」

何気なく見ていたニュースに標的・・・ククルーマウンテンに侵入してきた連中の顔が映り、食っていたラーメンを盛大に吹いてしまった。

「ちょ!? お客さん!?!」

「あ、すいません!!」

とりあえず、ラーメン吹いて店を汚してしまったことを店長に謝った。



厚かましくもククルーマウンテンに盗掘にやってきたトリッパーどもを探しに外へ出て早数ヶ月、元々それほど熱心に探すつもりも無かった彼等3人は盗掘者の足取りを探すという建前でガイドブック片手に世界を歩き回っていた。
当然そんなことを繰り返していれば路銀も底を突くが路銀も自分等で稼げとおおせつかっていたため稼ぎ場所として天空闘技場へとやってきていた。

「しかしそうか、もう9月か」

すっかり月日が経つのを忘れてはしゃいでいた。
うっかりヨークシン編をスルーしてしまうところであった。
ここで追いつけなかった場合、最悪キメラアント編が始まってもグリードアイランドから出てこない、などといった可能性があり非常に追いかけるのが面倒になってしまうためヨークシンにて連中を捕捉するというのが3人の間での共通の認識であった。

「しかしヒーローズソサエティねぇ、本当に好き勝手やってるな。トリッパー達」

ニュースに出ていたヒーロー達、ライダーや戦隊の連中を思い浮かべてヒビキは苦笑した。
ゾルディックの関係者に生まれたりしなければ俺達もあっち側に居たんだろうな、と考えてしまったからだ。

「とにかく他の二人に連絡しとかなきゃ」

とりあえずはここを引き払ってさっさとヨークシンへ移動しないとな。





あとがき
ヨークシン編その4、やっと書き終わったです。

ってか、サイズでかいな^^;
あとがき書いてる時点で37KBとか作者的にありえん、もう一回分けられるじゃないか。

バトルのクライマックスシーンを全部最後に持っていく形のつもりで書いてみたのですが、何か不評っぽかったみたいですね。
全部の戦場をブツ切りにして書いていたのが筆が中々進まない理由だったのかな?

とりあえず、vs旅団のラスト上げました。

今回はカリスのオリジナルフォームとかいくつか新技を追加しました。

突っ込み、駄目だしなどありましたらよろしくお願いします。

※10/19 誤字修正





[8143] ヨークシン編その5
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:1e5f2ff6
Date: 2009/10/19 05:54
旅団との戦いが終わって数日が過ぎた。
自分等のノルマを達成して一休みしていた時、いきなりやってきた衝撃波で無様にも気絶してしまったテオ等は気が付いたら病院にいた。
どうやらヒーローズソサエティのレスキュー隊に救助されたらしい。
そして今日、やっと旅団戦に参加したストレンジャーズの面子で一番重症だったタクヤの退院許可が出たのだ。

「あ~、これでやっと退院か」

それほど篭っていたわけでもないのに懐かしそうな口調で言うタクヤ。

「でも、あんだけボロボロになって2~3日で退院出来るんだからこの病院もチートですよね」

「そういや、全身打撲に裂傷多数だったっけ」

「ヒーローズソサエティ関係の病院だし、深く考えちゃいけないんじゃね?」

「そですね」

さて、次はグリードアイランドだな。
ヒーローズソサエティへの義理も果たしたし、シキ等《タランチュラ》への報復も済んだ。
後の問題はヒーローズソサエティが責任もって片付けてくれるだろう。

そう言えば、ヒーローズソサエティのトップであるクリス会長が瀕死の状態までいったらしい。
うわさによると、これを期に全身機械化にして本物の『改造人間』になるようだ。

こだわりもここまでいくと天晴れとしか言いようが無い。

あと、テオ達が入院している病室になぜか天空闘技場に居るはずのファルコ達も担ぎ込まれてきた。
どうも話を聞いてみるとイージーミスでゴン達原作主人公組がヨークシン観光に来ているらしく、慌てて連れ戻しに来て巻き込まれたと言う。
さすがに驚きハンゾーに探してもらおうと連絡を入れたところ、偶然見つけてストレンジャーズ社屋で寝泊りさせているとのこと。
とりあえず、ファルコ達にも伝えて退院したら連れて行くことを約束していた。

そして今現在、ファルコがゴン等を正座させて説教中である。

まあ、内容的には説教と言うより今回自分等がどれだけ理不尽な目にあったかを涙だらだら流しながら語っているだけなのだが。
彼等の仲間は今回の騒ぎで殆ど死亡してしまったらしいので説教ぐらいはおとなしく聴くべきだろう。

何となくクラピカを見る。
特に何かをおかしな様子は見られ無い。
ヒーローズソサエティが敵対組織の情報についてはマスコミに口止めをしていたようで旅団の名前はメディアには流れていなかった。
別にクラピカ対策と言う訳ではなく、単純にヨークシンに混乱を招く情報を規制しただけなのだろうが有り難い対策だった。



実は、テオ達は気づいていないがクラピカの現状に関してはとても微妙な均衡の上に成り立っている。
ヒーローズソサエティ上層部の組織立ち上げの根幹には、クルタ族襲撃時に避難の間に合ったクルタ族の中にクラピカが居なかったことで自分達の介入により重要な原作キャラを死なせてしまったという勘違いがあった。

次に、組織として活動している以上何らかの作戦終了時にはその作戦に関する報告書が提出されるのは当たり前である。
当然、第287期ハンター試験での活動報告書も上げられており、原作主人公等のことも報告されていた。

だが、ここで報告者と被報告者の間にちょっとした考えの相違が存在していた。

報告者は報告において主任務である他トリッパーの勧誘、調査の報告を重要視しており原作主人公等に対しては細かい報告はしなかったのだ。
ぶっちゃけて言えば報告書には『原作主人公等の確認、ハンター試験失格後はキルアのみ自宅へ帰宅。他はトリッパーの誘導により天空闘技場へ移動』と言った程度にしか報告されていなかった。

これは別に報告者の怠慢でもなんでもない。

報告者の報告すべき任務はハンター試験に参加したトリッパーに関する情報であり、原作主人公等の行動に関しては原作の流れを外れたことに対して、補足として情報を付け加えたに過ぎないのだから。
それに原作主人公達=ゴン+キルア+クラピカ+レオリオ、で通ずるのは確かであり、わざわざそれぞれの名前を連ねる必要性は無かった。
ただ、被報告者=ヒーローズソサエティ上層部の認識では既にクラピカは死んでいる事になっている。
そのため、原作主人公達といわれてその中にクラピカが入っていることに気付かないまま今日まで来たのだった。

ぶっちゃけ、誰かがぽろっと話題にすればすぐさま解ける誤解なのだが。

因みにクルタ族の保護に関しては、現実問題として緋の目を狙った襲撃を受けて滅亡しかけた事実から第一級の緘口令が敷かれている。
そのため、ヒーローズソサエティ内ですら実はクルタ族が滅んでいないことを知っている者は当時直接保護した面子だけであり、それ以外のメンバーはそのことを知らず、クルタ族は滅亡したのだと認識している。
そして、そんな直接保護した面子である上層部は組織運営などの仕事や現場の人材がそろって来たこともあり、原作時間に入って以降は現場での活動はしていなかった。
今は実は一番近くにいるが、全員そろって入院中である。
なので、クラピカを生き残りのクルタ族に合わせようと言い出す者もいないのであった。




説教は最終的にはゴン、キルア、クラピカ、レオリオ全員から謝罪を受けた辺りで水に流すことになったようだ。
何時までも説教してても話が進まないし。

「説教も終わったところでグリードアイランドのことなんだが・・・」

「あ、そうだ。聞いてよテオさん!! グリードアイランドってジン・・・俺の父さんが作ったんだって!!!」

うん、知ってる。

「ところで、そのゲームが幾らするかは知ってるか?」

「・・・うん、調べた」

途端にしょんぼりするゴン。
幾ら天空闘技場で稼いできたとは言ってもあの金額には届かないだろうからな。

「あんた等があのゲームを買う気だってのは聞いてるぜ、出来たらそれに俺達も参加させてもらえないか?」

レオリオが聞いてきた。
確かに自分達で買えないのならば他の買った人にプレイさせてもらえばいい。
ゴンとキルアが原作でやった手だ。

だが、テオ達の買う分はテオ達のスロット分用意すれば基本的に全部埋まってしまうので他を頼ってもらいたい。
全財産を賭けてグリードアイランドを欲しているバッテラ氏と競うのだから、ストレンジャーズの資金では2つ以上買うのはきついだろうから勘弁してもらいたい。
と言うわけで、ここは原作通りに素直にバッテラ氏を頼ってもらうことにした。

「悪いが俺達も必要があって買うんだ。よそに回す分は用意できないな」

「えぇ~」

「最後まで聞け。グリードアイランドを集めているバッテラ氏という富豪がいるんだ。彼がオークションの後でプレイヤーを募集するだろうからそれに参加すればいい」

「おお、そっか」

どうやら納得してもらえたようだ。
その後、何やら仲良くなったらしい目利きの人に会いに行くといって街へと出て行くゴン達。
ハンゾーとファルコ達もまた何か問題を起こされてもたまらないとついていくことにしたようだ。





「テオ、ちょっといい?」

ゴン達がハンゾーとファルコ達も連れて外へ遊びに出て行った後、グリードアイランド購入のための作戦として一応バッテラ氏と直接会って話し合っておくべきかどうか考えているとテトラが声をかけてきた。

「ん、どした?」

「ちょっとグリードアイランドに関して調べていておかしな情報が出てきたのだけれど・・・」

歯切れ悪くそう言うテトラ。
ここ数ヶ月はグリードアイランドどころでは無く、生き残るために旅団の最新情報を得ることに全力を尽くしていたので、久しぶりに検索をかけた結果何か引っかかったのかもしれない。
何かあると感じたテオは即座にテトラの情報端末へと移動した。

「で、何があった?」

「これなの」

そう言ってテトラが表示したのは一枚の結婚式のニュース記事だった。

「結婚式の記事? ・・・あれ、バッテラ氏?」

その写真に写っているのは初老の男性(バッテラ氏と思われる)と若い女性の結婚式の図であった。

「あれ? バッテラ氏って植物状態の恋人を助けるためにグリードアイランドを必要としてたんだよね?」

「たぶん、私達の記憶が正しければ」

「・・・トリッパーだな」

「やっぱりそうですか」

これはひょっとして戦略を練り直すべきかもしれない。

「皆を集めて方針を練り直そう。ストレンジャーズのメンバーを集めてくれ」

「分かりました」

さて、これが吉と出るか凶と出るか。





早速集まってもらったストレンジャーズメンバーにバッテラ氏結婚の記事を見せる。

「・・・恋人さんが健常者になっているって事は誰かがグリードアイランドをクリアして『大天使の息吹』を島外に持ち出したってことだよな」

ハオが記事よ読みながらそう言う。

「十中八九、トリッパーだろうけどな」

タクヤが相槌を打ちながらそう言う。

「トリッパーだとしても一人じゃ無理ですよね。どんな連中がやったのか調べられないですか?」

ゴクウが質問して来たのでテオは分かっている範囲で答える。

「とりあえず、その連中の素性は分からない。代わりにヒーローズソサエティが把握しているトリッパーの集団に関して教えてもらってきた。
 まずは『ヒーローズソサエティ』。説明は不要だろうが一応説明するぞ。
 対旅団、対キメラアントを想定した武装集団で、通常業務はブラックリストハンター的なことをやっているらしい。

 そして俺達『ストレンジャーズ』。このハンター世界からの脱出を目的とした技術者集団だ。

 三つ目は『タランチュラ』。・・・まあ、旅団側の何でも屋かな?

 そしてここからが本番だ。
 四つ目は通称『流浪旅団』。数名のグループで傭兵みたいな感じに戦争やってる国やマフィアの抗争なんかに首を突っ込んでる集団だ。
 こないだの戦いで最後に横槍を入れたのは、ヒソカが雇って連れてきたこいつ等らしいって噂だ。

 最後に五つ目、というかこれは未確認だがキメラアント生物兵器説を指針にして各地の秘密研究所とかを洗っている組織もいくつかあるらしい」

キメラアントに関しては自然の中で異常進化した個体であるとする説に対して、どこかで人工的に開発されたとする生物兵器説がある。
生物兵器説の根拠は基本サイズが10cmであるキメラアントがたった一世代で体長2mの個体を発生させるというのが非現実的ではないかとする考えが根拠である。
また、第一級隔離指定生物であり生息域が割れている生物が、数世代をかけて進化したのだとしてもその過程を捕捉されずに原作に登場した個体まで進化したというのはいささか考えずらい、と言う主張である。

そう考えたトリッパーが団結し、この世界の機関も巻き込んで暗躍しているらしい。

「・・・そりゃまた、大変な」

「話を戻すぞ? とりあえずはヒーローズソサエティから聞き出した情報からはグリードアイランドを攻略してそうな組織は分からなかった。と言う事はだ、ヒーローズソサエティも把握してなかったトリッパーの組織が出てきた可能性があるってことだ」

これは結構重大な問題である。
ヒーローズソサエティはまだ作られて3年足らずの若い組織であるが規模はそれなりである。
更に積極的にトリッパーと交流を持つことでトリッパー間でしか理解できない類の情報もそれなりのものが集まっている。

それにいままで引っかからなかったということは、少なくとも3年前の時点でグリードアイランドに引き篭もっていたという推測も成り立つのだ。
もっとも、その場合は発売から今日まで市場に流れることの無かったグリードアイランドをどうやって手に入れたのかと言う疑問も出てくるのだが。

「とにかくだ、とりあえずは今年のオークションに7本のグリードアイランドが出品されると言う情報は変わってはいなかったのだろう? ならば、何だかんだ言ったが結局のところ俺達がやるべきことは変わらない」

ハオが資料に記載された最新のグリードアイランドの出品状況を読んで、そう答える。
確かにハオの言う通り、結局のところ俺達はグリードアイランドにいかなければならないのだからやることは変わらない。

「そうだな、気になる問題ではあるが。とにかく既にバッテラ氏が目的を果たしたと言うのなら今回のオークションに参加してくることは無いだろ。まずはグリードアイランドを手に入れることに尽力するか」

そう言えば、もう一つ聞いておかなければならない事があったな。
今の内に聞いておくか。

「ゴクウ、タクヤ」

テオはゴクウとタクヤを呼び止める。

「なんです?」

「何だ?」

「今の内に聞いておこうと思ってな。お前達がこれからどうするつもりなのかを」

ストレンジャーズは先ほど説明したように、この『ハンター×ハンターの世界』から脱出する事を目的とした組織だ。
基本的にテオ、ハオ、テトラの三人はキメラアントとの戦いに参加せずにこの世界からの脱出を望んでいる。

だが、ゴクウ、タクヤの二人は最終的にはキメラアントとの戦う事を目的としたトリッパーだ。
もちろん曲がりなりにもストレンジャーズに所属することを選択したのだからいざとなればこの世界を捨てる選択もありえるのだろう。
しかし、キメラアントを倒す選択を選んだことから分かるようにそのあり方はむしろヒーローズソサエティのほうに近い。

そろそろ期限の時が見えてきた今、改めて今後どうするかを決めてもらわなければならなかった。

「キメラアントに関しては、ヒーローズソサエティ以外の組織も災害を発生させないために動いているみたいだし、原作の時間軸よりも早く状況が動くと思う。キメラアント討伐に参加するつもりがあるのなら、グリードアイランドには入らない方がいいと思うぞ」

グリードアイランドのオークションが終わる10日くらいまでには決めておいてくれ。

テオは二人にそう伝え、オークションの準備へと戻っていった。





「とりあえず、すんなりと買えたな」

「ああ」

特に問題なくオークションにて落札したグリードアイランド入りジョイステーションを手に持ちながら帰路に着くテオとハオ。
オークションにはとりあえず二人で参加していた。

昼過ぎ頃に駅前で何やらテロ騒ぎがあったらしく、先の旅団の事もありもしかしたら中止になるかとも思ったが、予定通りにオークションは開催された。
既に参考にはならないが、この騒ぎも原作には無かったと思う。
誰かしら原作に介入しようとしたトリッパーがあまりの原作ブレイク振りに暴れたのだろうか?

結局のところ、どうなるかと若干緊張しながら挑んだ9月6日のオーディションであったが、予測どおりというかやはりバッテラ氏の姿は見えなかった。
あの後詳しく調査をしていく内に、やはりグリードアイランドクリアの賞金500億ジェニーも支払われているらしいことも分かっていたので特に驚きは無かった。
少し意外だったがバッテラ氏のクリア報酬支払いで、止める必要の無くなったグリードアイランドの情報が外に拡散して手に入れようとする者が増えるのではないかと思っていたが、グリードアイランドクリア自体も先月の事らしく特に情報が出回っている事も無く手に入れることが出来た。

因みに180億ジェニーで落札。

一つ目でこの金額ならば、もう2、3本は買えるかもしれない。
競争相手がいないのならば、予算オーバー分をヒーローズソサエティに負担してもらうという手もある。
その時はゴン達四人も俺達で連れて行けるだろう。

テオはとりあえず手元にあるグリードアイランドを見ながらそう考えていた。

ドバンッ!!

大きな音を立ててドアが開けられる。
入ってきたのはイグルスだ。

「イグルス、もう少し丁寧にドアを開けろよ。壊れるだろうが」

「あ、すいません。今度気を付けます。それよりもテオさんにお客さんが来てるんですが」

ん? 俺に客?

「やあ、久しぶり」

そう言って入ってきたのはククルーマウンテンでお世話になったトリッパー達であった。





イグルス、メリクは今後どうするかを話し合うために二人で街へと繰り出していた。

即ち、このままストレンジャーズに残って活動するか。
それとも離れて独自の活動をするか。

今、彼等二人がストレンジャーズの世話になり旅団戦にまで協力していたのは、念能力者としての高みを目指す者として旅団との戦闘は避けて通るのには惜しい経験であるということが一つ。
二つ目に、自分達がテオをククルーマウンテンでの騒動に引きずり込んだ時の迷惑料的な考えがあった。

ゆえに、それらの目的が達せられた今、今後どうするかを話し合う必要が出てきた。

今後の流れとしては、このままストレンジャーズに所属する事にすれば一緒にグリードアイランドに行くという可能性もある(人数制限的にどうなるかは分からないが)。
テオ達のグリードアイランドでの目的がGM(ゲームマスター)達への弟子入りなので特に何があると言う訳でもないだろう。
しいて言うならゴン達と同時期にログインすることで一緒に行動できる可能性が上がるということだが、これは今更彼らと同レベルの修行をしてもレベルアップには繋がらないだろうというデメリットがある。
ひょっとしたらビスケと合流できる可能性もあるがバッテラ氏が既にゲームクリアしているというテオ等の情報からすると、原作でゴン達と同時期にバッテラ氏に雇われた彼女とは会える可能性は低そうだ。

ヒーローズソサエティと合流するという手もある。
そもそもイグルス、メリクにはこの『ハンター×ハンターの世界』から脱出する気など毛頭ない。
彼らはこの、戦いが至上の世界を心から歓迎しているのだ。
彼らがこの世界からの脱出を希望する時は『聖闘士の世界』が見つかった時ぐらいだろう。
ヒーローズソサエティに合流すれば少なくともキメラアント女王狩りには参加できるだろう。

そう考えているとヒーローズソサエティ側に付くべきではないかという思いがむくむくと出てきたイグルス達である。
そんなことを考えながら歩いていると、何時の間にやらヨークシン駅の辺りまで歩いてきていたようだ。
そこで覚えのあるオーラを感知する。

「お?」

「え?」

ふと振り向けば、そこに居たのはククルーマウンテンで戦ったトリッパー三人組であったのだった。





「・・・で、そのまま駅前で戦闘を開始したのか」

アホかこいつ等は?
テオは思わず天井を見ながらそう思った。

昼間のテロ騒ぎはこいつ等が偶然鉢合わせた際の騒ぎだという。
おかげで危うくオークションが中止になるかと思ったじゃないか。

「それで、出会い頭に反射的に『雷光電撃(ライトニングボルト)』を打ち込んで、相手も同時に変身して、そこでふと冷静になって慌てて全員で逃げたと言う訳です」

旅団戦を経て自力を増したイグルスの『雷光電撃(ライトニングボルト)』はさぞはた迷惑な破壊力を発揮したことだろう。
テロ扱いされるのも分かる。

イグルスが駅前でのことを話し終えた。
不幸な事故だったと思う事にしよう、そう思ってないとやってられない。
幸いにして顔も割れてないようだし。

「あ~、納得は出来ないがとりあえず分かった。ところでここまでそっちの三人を連れてきた理由は何だ?」

アンケートすれば100人中100人ともがテオ達に非があると言われることが想像できる事をした相手である。
わざわざテオの前まで連れてきたからには理由があると考えるのは当然であった。

「それなんですが、少し落ち着く為になるべく駅前から離れた喫茶店で昼を食べながら色々話してみたんですよ。ゾルディック家のことに触れなければトリッパー同士だから話したいことは色々ありましたし」

「で、話している途中でヒーローズソサエティの目的とかの話になったらすごい食いついてきまして」

イグルスの話をメリクが引き継いだ。
異世界への脱出に食いついたって事はこの三人も現状に不満があるのか。

って当然か。

俺だって生まれた時からゾルディックに縛られる生き方はイヤだ。


「実を言うと、オレ達は侵入者4人を始末するまで帰ってこなくていいと言われてるっスよ」

ゾルディック家のトリッパー・・・トドロキが話を切り出してきた。

「だけど僕達、元々外に出たくても出れない環境だったからいっそのことこのままバックレちゃおうか、とも思ってたんです」

イブキが続きを答える。

「そしたら偶然再会したイグルスさんから、あんた・・・テオさんがハンター世界から脱出するための装置を作ってるって聞いたんで会わせてくれる様にお願いしたんだ」

最後にヒビキがしめる。
そこで三人は一斉に地面に土下座して叫んだ。

「「「お願いします! 俺達も異世界に連れてってください!!!」」」

・・・ゾルディックに缶詰だったときには感じなかった自由に生きたいという渇望が、数ヶ月外の世界で暮らす内に表に出てきたと言う訳か。
別に異世界への脱出に人数制限を付けている訳ではないので土下座までしなくてもいいのだが。
むしろこっちが迷惑をかけた側なのでかなえられるくらいの要求ならかなえるのが人の道というものか。

「別にそれは構わないが、そう言うことならシステムを完成させるための手伝いはしてもらうぞ?」

この辺は譲れない。
それに今から実用レベルの神字を覚えろというのは無茶だとは思うので、頼むのは資金調達や情報収集、もしくはレア素材の調達などになるか。

おそらく、ゴクウとタクヤはここでヒーローズソサエティに移動するだろう。
まだ返事は聞いていないが、話をしたときの感触からしておそらく間違いない。

代わりと言う訳でもないが、この三人をグリードアイランドの中に連れて行くのもいいかもな。

そんなことを考えながら、新たな仲間となったヒビキ、イブキ、トドロキへと手を伸ばす。

「ストレンジャーズへようこそ。今後とも、よろしく」





その後、グリードアイランドの落札は順調に進んでいた。

二本目のグリードアイランドは200億、3本目は両方のスロットが空いていた為か320億と値は上がったが十分に手が届く範囲である。
つくづく仕事をしておいてよかったと感じる瞬間であった。

この時点で確保したスロットはマルチタブ前提で、一本目、二本目が4スロット、三本目が8スロットで合計16スロットと十分な席を用意することが出来た。
これだけ確保できれば4スロットをゴン達に振り分けても余裕で席が余る。

現在グリードアイランド入りが決定しているのは原作主人公組のゴン、キルア、クラピカ、レオリオの4人。
トリッパーからはヒーローズソサエティ関係者が、テオ、ハオと、結局連れて行くことにしたヒビキ、イブキ、トドロキの計5人。
それからハオの弟子のハンゾーも付いてくる事になった。
合計10名である。

原作主人公組のトリッパーの生き残りであるファルコ、イツキ、ルーはグリードアイランドについてはバッテラ氏を当てにしていたらしく慌てて泣きついて来たが、だからと言ってさすがにこれ以上席を用意してやるわけにはいかない。
いざと言う時の援軍を呼ぶ席を用意しておくことを考えれば彼らに残りの席を譲るのは難しかったので丁重にお断りさせていただいた。

その辺りでゴン達が少しゴネたが、実際彼らがグリードアイランドに入るかどうかはテオ達には関係の無いことなので関わらずに静観していた。
まあ、彼らならどうにかして自力でグリードアイランドの中に入る方法を探し出す。
そう思う事にして放置することにした。

「6人分余ってればいざと言う時でも大丈夫かな?」

不測の事態の為に空けておく席も6人分あれば十分だろう。

「残りのグリードアイランド4本はヒーローズソサエティの方で買うってさ」

ヒーローズソサエティでもグリードアイランドは色々使い道があるのだろう。
新入りの訓練とかには最適だろうし。

安く買える内はこちらに優先的に回してもらった。
資金力が違うしこっちの事情のほうが切羽詰っているのは確かだ。

「そう言えば」

「ん? なんだ?」

ふと気になったことがありファルコにたずねてみる。

「ゴンってジンが用意した指輪とメモカがあるよね? あれってどうしたの?」

聞く限りではハンター試験後にくじら島には帰っていないらしいので持ってないはずだが。

「あ~、あれか。うち等としては誰かが取りに行っても良いかなとも思ったんだけど、見ず知らずの人間が取りに来て渡してくれるわけが無いし、諦めた」

苦笑しながらファルコはそう言った。
ついでに、

「あってもなくてもあんまり変わらなそうだったし、あいつ等ハンター試験に受かるまで里帰りする気なさそうだしな~」

との事。
まあ、あのイベントあってもなくてもゴン達は変わらないからな。
ミトさんが放置になるだけだ。





「んじゃ、そろそろ行こうか」

グリードアイランドを設置しておくための部屋の用意も終わり、いよいよグリードアイランド内へと旅立つ時が来た。

「「はいはい!! 俺等先に入っていい!?」」

「ゴン! キルア! お前等少しは遠慮しろよな!! 人の使わせてもらうんだぞ!?」

「レオリオの言うとおりだぞ、ゴン、キルア。礼節を重んじることは人と接する上でとても大切なことだ」

真っ先にゴンとキルアが名乗りを上げて、それをレオリオとクラピカが諌める。

「いや、構わないよ。ただ勝手にどこかに行かないで、皆が揃うまで待ってるなら先に行ってもいいよ」

とテオが言う事で、まずはゴン。
次にキルア、クラピカ、レオリオの順でログインしてもらうことになった。

で、その次はテオの番である。

「んじゃ、行ってくるわ」

「行ってらっしゃい」

「首尾よく行くといいな」

ゴクウとタクヤはそう言ってテオを送り出す。

・・・結局のところ、ゴクウとタクヤはここに居残りキメラアントに備えて再修業に入ることを選んだ。
はっきり言って、純粋にオーラ量を増やす修行や、体を鍛えると言う観点だけで見れば重力ルームでの修行の方がグリードアイランドより遥かに上だったりするのだ。
彼らは元々そのために鍛えていたのだからしょうがないがやはり少し寂しいものである。

タクヤは今までのまま顕在オーラを増やすための修行を続けるようだ。
更に先日破面(アランカル)タイプのトリッパーにボコボコにやられたのがよほど悔しかったらしく、新たな念能力の開発も始めたらしい。

ゴクウは界王拳のメリットとデメリットを考え、これ以上顕在オーラが増加しないように制約をかけて倍率を増やす修行に入るようだ。

テオは「行ってきます」と返し、ジョイステーションへと『発』を行い、グリードアイランドの世界へと旅立っていった。





飛ばされた場所は原作で見たあのスタート地点の小屋の中で間違いないようだ。
だが、原作では女性のGMの人(さすがに名前は覚えてなかった)がいた筈だが一枚のスクリーンがあるだけで不在のようだった。

「NPCじゃないんだし、いない時もあるか」

その時はよく考えずにそう結論をつけてスクリーンに書かれたログイン時の案内の様なものを流し読みする。
大体原作で言っていた事がそのまま載っているようだ。

とりあえずは早速ブックとゲインを試してみようと小屋の外へと降りていったところで、

「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!」

「うわっ、あぶな!!」

「ゴン、気を付けろ!!」

「レオリオが踏まれたっ!?」

「ぎゃぁぁぁ!?!」

赤い体躯のティラノサウルス見たいな恐竜とゴン達が戦っている場面を目撃した。

「何で!?」





あとがき
ヨークシン編その5をお届けします。
実は3日前の時点で9割型完成してたのですが、諸事情により完成が遅れることになりました。
人生こんなものですよね^^;

あ、クラピカがクルタ族が生き残ってることに気付かない理由とかをネタ風味で載せてみました。

今回のお話はvs旅団から一気にグリードアイランドログインまでです。
そして何気にテオ君が原作主人公と合流。

グリードアイランドログイン時点でのゴン達のステータス。
名前:ゴン
AOP = 1650
POP = 19200

名前:キルア
AOP = 1680
POP = 16300

名前:クラピカ
AOP = 1570
POP = 17800

名前:レオリオ
AOP = 1500
POP = 18200

こんな感じで。

感想、ご意見などありましたら宜しくお願いします。



[8143] キャラ紹介&念設定(ヨークシン編)
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:1e5f2ff6
Date: 2010/03/22 04:52
《ヒーローズソサエティ側》
《ヒーローズソサエティ幹部》
名前:クリス
念系統:具現化系
能力名:正義の味方(カメンライダー)
 特殊な条件下でカメンライダー一号に変身可能な変身ベルト『タイフーン』を具現化する。
 純粋な攻撃力強化よりも防御力や索敵能力などの補助的な強化がメイン。
 あくまで戦闘強化服なので、ビジュアルはTHE FIRST版の一号ライダー準拠。
AOP = 6500
POP = 128000

名前:リッド
念系統:具現化系
能力名:悪魔の右腕(ジャバウォック)
 右腕に漫画『ARMS』のジャバウォックの右腕を模したものを被せて具現化させたもの。
 爪で引き裂いたもののオーラを分解する能力がある(ARMS殺しの再現)。
 フェイタンに右腕を切り飛ばされたこと、リッドが力を欲していたこと等、いくつかの偶然が重なって能力が進化、暴走。
 原作のように右手に擬態する形でジャバウォックが具現化し、また、自意識を持つようになった。
 この右腕は『絶』の状態でも消えることがない。
 戦闘で感情が高まるとジャバウォックの活動が活発化して、押さえ切れなくなると暴走して完全体ジャバウォック化して
 暴れまわる。
 ※ジャバウォック化は現在でも完全制御できていない。
AOP = 6000
POP = 120000

名前:ミコト
念系統:操作系
能力名:粘土人形の造形師(クレイドールマイスター)
 粘土に自分の血とオーラを練りこんで粘土人形を作成する。
 作成した粘土人形の造詣、血の量とオーラの量、製作時間などで性能が変化する。
 一度作成した粘土人形は完成時点で固定化されて簡単に壊れないようになる。
 粘土人形を操作することでサイズが10倍になる。
 粘土人形は一度使うと土くれに戻る。

能力名:ディエンドライバー
 自身で作成した粘土人形にオーラバッテリーを積んだものにヒーローアイテムを装着させ短時間だけ活動できる兵隊とする。
 それらを召喚するためのシステム。
 召喚対象のデータが記載されたカードをディエンドライバーに挿入することで対象を召喚する。

 ※カード詳細
  『カメンライド』
    カードに記されたライダーを召喚するカード。召喚されるライダーの中身は粘土人形。
  『レンジャーライド』
    カードに記された戦隊を召喚するカード。召喚される戦隊の中身は粘土人形。
  『ファイナルアタックライド』
    必殺技カード。無数のカード状のエネルギー体で対象まで道を敷き、その内部にオーラの砲撃を乗せて発射する。
    直撃による破壊力よりも貫通力を重視している。

AOP = 5000
POP = 100000

名前:イナト
念系統:操作系
能力名:幻朧魔皇拳(ブレインハッカー)
 対象の頭に直接触れることで相手を強制的に操作する。
 複雑な命令を与えることはできないが、その分強制力が強くなっている。
 傾向として、『○○を殺せ』などの命令だと相手の精神力しだいで操作を跳ね返す場合がある。
 この場合、『~をした人間を殺せ』などの直接対象を指定しない場合のほうが操作しやすい。
 ※ゴールドクロスは無し。
能力名:オーラ放出
 『纏』を完全に放棄し、オーラを360度全方位に拡散放出する。放出されたオーラは一定の時間は放出された空間に留まる。
 
 ※バリエーション
  『銀河爆砕(ギャラクシアン・エクスプロージョン)』
    拡散させたオーラに火種となるオーラを叩き込むことで連鎖反応で周囲のオーラごと爆発させて巨大な破壊力を発生させる。
    基本的に外向きに爆発力を発生させるため能力者は大きなダメージを受けないようにしているが、爆発の中心部に居ることは確かなので相応のダメージは発生する。

AOP = 4500
POP = 95000
 

名前:カルラ
念系統:変化系
能力名:聖剣抜刃(エクスカリバー)
 オーラを鋭く研ぎ澄ませて手刀に乗せて放つ技。
 打ち込む側のオーラが相手のオーラを上回っていたとき、オーラを切断する効果がある。

能力名:ジャンピングストーン
 相手の『流』を見抜き、攻撃に対して即座にカウンターをあわせてダメージを倍化させる。
 もしくは力を受け流して相手の意図しない方向へと吹き飛ばす。
AOP = 7000
POP = 120000


《ヒーローズソサエティ一般構成員》
名前:ウインド
念系統:変化系
念能力:魔銃(マガン)
AOP = 4000
POP = 105000

名前:カイザ
念系統:放出系
念能力:ライダーズギア『カイザ』
AOP = 2500
POP = 85000

名前:ブレイド
念系統:強化系
能力名:変身ベルト『ブレイバックル』
AOP = 2500
POP = 105000

名前:リュウキ
念系統:強化系
能力名:カードデッキ『龍騎』
AOP = 2500
POP = 80000

名前:リュウガ
念系統:強化系
能力名:カードデッキ『リュウガ』
AOP = 2500
POP = 80000


《新規追加》
名前:ナイト(ユウ)
念系統:変化系
能力名:カードデッキ『ナイト』
AOP = 2500
POP = 75000

名前:ゾルダ
念系統:放出系
能力名:カードデッキ『ゾルダ』
AOP = 2500
POP = 78000

名前:ギャレン
念系統:放出系
念能力:変身ベルト『ギャレンバックル』
 詳細はブレイドと同じ。
AOP = 2500
POP = 100000

名前:カリス
念系統:具現化系
念能力:『カリスバックル』
 カリスバックルを具現化する。同時に具現化したラウズカード13枚のうち、Aのカードを使ってカリスの姿に変身する。
 変身した姿の状態でカリスアローを具現化することが出来る。

 ※カリスに変身している最中にJ(ジャック)のカードをラウズすることでジャックフォームに強化変身する。(オリジナル設定)
  基本的にカリスの各装甲部分が金色になる、両腕に『醒爪カリスクロー』が装備される。
  脚力が強化され、高速の直線移動が出来る。
  ジャックフォーム時の呼称はハウリングカリス。
  このフォーム時はカリスアローを具現化できない。

念能力:『醒弓カリスアロー』
 剣にもなり、弓にもなる武器。弓として使う場合はカリスバックルを取り外してカリスアローに取り付ける必要がある。
 弓を引く動作を行うことでオーラを高出力のレーザー光に変換して発射する。
 カリスアローに取り付けたカリスバックルにラウズすることでラウズカードを使用することが出来る。

念能力:『醒爪カリスクロー』(オリジナル設定)
 三つの爪が付いた手甲型の装備。左腕のカリスクローにはラウザーシステムが内蔵されている。

AOP = 4500
POP = 105000

名前:キバ
念系統:具現化系
念能力:念獣『キバットバットⅢ世』
 キバットバットⅢ世を具現化する。具現化したキバットバットⅢ世は自立思考で行動する念獣になる。
 キバットバットⅢ世は能力者のオーラを溜め込むことが出来る。
 能力者の変身時に腕を噛むことで内部に蓄積されていたオーラを使用してキバに変身する。
 ガルル、ドッカ、バッシャーフォームはそれぞれ待機のトリッパーと契約してオーラ供給を受けることで変身可能。
AOP = 5000(キバ変身時)各フォーム変身時に+1000
POP = 110000

名前:カズ
念系統:具現化系
能力名:武装錬金・サンライトハート
 通常時は核金形態で具現化されており、具現化を解除できない。破壊されるとこの念能力を使用できなくなる。
 布部分にオーラを溜め込む機能があり、そこに顕在オーラ分のオーラを溜め込むことが出来る。そのオーラを併用することで瞬間的に顕在オーラ量以上の出力を出すことが出来る。
能力名:ヴィクター化
 発動条件:
  能力者が自身の心臓と核金を融合させ、自身の生存条件に『核金が破壊された場合、死亡する』を追加すること。
 能力内容:
  サンライトハートが『サンライトハート+(プラス)』に変化する。
  リスクの高い制約をつけることでAOPが大きく増加する。
  感覚が鋭くなり大気中に溶け込んだオーラを知覚できる。また、知覚したオーラを槍へと集中させることが出来る。この時知覚出来るオーラは大気中に溶け込んだオーラの一部であり、自分以外の能力者からオーラを略奪することは出来ない。

能力名:武装錬金・サンライトハート+(プラス)
 心臓と一体化させ、制約を追加することでより強化されたサンライトハート。
 サイズが一回り小さくなってエネルギー内蔵型となり、溜め込んだエネルギーを解放することで遠距離の敵にも刃を届かせることが出来る。 
AOP = 3000(ヴィクター化後、5000)
POP = 90000

名前:テッカ=ラヌゥ
念系統:強化系
能力名:武技言語
 強化系念能力を用いたクルダ流の再現を戦闘スタイルとしているため念能力はこれとなった。
 『我は無敵なり 我が影技にかなう者無し 我が一撃は無敵なり』の詠唱で顕在オーラ量が激増する(武技言語使用時のテンションで増幅量は変化する)。
 武技言語によってその後に放つ技の宣言が決まる。上の場合は影技使用を宣言しているためルールを破った場合は武技言語状態が解かれる。
 表技を使用するときは影技を表技、一撃でなく連続攻撃の場合は一撃を連撃などと言い換える必要がある。
AOP = 6000
POP = 100000

名前:五星戦隊ダイレンジャー(リュウレンジャー、シシレンジャー、テンマレンジャー、キリンレンジャー、ホウオウレンジャー)
念系統:具現化系で統一
能力名:ダイレンジャー変身システム『オーラギャザー&オーラスプレッダー』
 ダイレンジャーに変身するための変身アイテム。『気力転身!オーラチェンジャー』の掛け声と共に右手のオーラギャザーを胸にかざした左手のオーラスプレッダーと合体させ、変身する。
能力名:スターソード
 左腰にさしている長剣。気力により超振動する刃は、分厚い鉄鋼製の楯も貫く。ダイバスターの銃身となる。
能力名:スターカッター
 右腰にさしている短剣。ダイバスターの銃座となる。
能力名:ダイバスター
 スターソードとスターカッターを合体させた銃。
AOP = 2500
POP = 平均100000

名前:爆竜戦隊アバレンジャー(アバレット、アバレブルー、アバレイエロー)
念系統:具現化系で統一
能力名:アバレンジャー変身システム『ダイノブレス』
 左手首に装備する変身ブレス。「爆竜チェンジ!」の発声でダイノブレスのボタンを押すとアバレンジャーに変身する。
能力名:アバレイザー
 刃を折りたたんだ状態でガンモード、展開した状態でソードモードとなる武器。
OP = 2500
POP = 平均100000

名前:百獣戦隊ガオレンジャー(ガオレット、ガオイエロー、ガオブルー、ガオブラック、ガオホワイト)
念系統:操作系で統一
能力名:ガオレンジャー変身システム『ジーフォン』
能力名:獣皇剣
 短剣状の武器、オーラを光線状にして刀身から発射出来る。
AOP = 2500
POP = 平均100000

《ヒーローズソサエティ側外部参加勢力》
名前:テオ・ペッパー(テオ)
念系統:操作系
能力名:紙々の世界(ペーパーワールド)

 ※紙々の世界(ペーパーワールド)バリエーション
  紙技・紙式神『爆龍』
   東洋の龍の形をした紙模型。実はパーツ一つ一つが『紙技・紙爆雷』で出来ている。
   敵に叩きつけた際、連続した紙爆雷の突破力でオーラ防御を抜いて本体にダメージを与える一点突破型の使い方。

  紙技・巨人の拳(ギガント・ナックル)
   殴りつけた拳から紙を放出して巨大な拳状に形成してそのまま殴り飛ばす。イメージ的にはゴムゴムの巨人の銃(ギガント・ピストル)である。
   制御が簡単ですぐさま発動できる割りに相手に与えるダメージも大きい。
AOP = 約6000
POP = 約120000

名前:ハット・オーウェン(ハオ)
念系統:放出系
能力名:火の精霊(スピリット・オブ・ファイア)
 ※火の精霊(スピリット・オブ・ファイア)のバリエーション
  『S・O・F黒雛』
  『S・O・Fソード』
  『S・O・F斬艦刀』
    S・O・Fソードの刀身を更に延長して内部により多量の酸素を取り込んだ形態。当然モデルはゼンガー・ゾンボルト。
    基本的に一撃必殺用の形態のため、燃費は最悪であり放っておいても数分で火力が尽きる。
    叩き斬る際に接触箇所から刀身内部の酸素を一気に燃焼して爆発を起こす。
AOP = 約5000
POP = 約130000

名前:ゴクウ(本名不明)
念系統:放出系
能力名:かめはめ波(カメハメハ)
能力名:界王拳(2~3倍)
 4倍界王拳も使用可能、ただし使用後に戦線離脱する。
AOP = 約3800
POP = 約118000

名前:テトラ
念系統:具現化系
能力名:電子の海の人魚姫(リトルマーメイド)
AOP = 約2500
POP = 約95000

名前:タクヤ・イワサキ(厨二君)
念系統:具現化系
能力名:斬魄刀『竜王丸』(ザンパクトウ『リュウオウマル』)
AOP = 約3500
POP = 約180000(実際の測定値は162000)

名前:獅子座(レオ)のイグルス
念系統:操作系
能力名:電子の支配者(エレクトロン・ルーラー)
AOP = 7000
POP = 145000

名前:水瓶座(アクエリアス)のメリク
念系統:操作系
能力名:水瓶座の時代(アクエリアン・エイジ)
AOP = 6500
POP = 135000

名前:ファルコ
念系統:操作系
能力名:如意棒(ニョイボウ)
 基本サイズが長さ2メートルほどの六角棍。『伸びろ、如意棒!!』の掛け声でサイズが変化する。
 能力発動前は長さ2cm程度の大きさの棒である。
 単純に長さが変化するのではなく、全体的にサイズそのものが変化する。
 イメージとしてはDBの方の如意棒ではなく、GS美神の方の齊天大聖(せいてんたいせい)が持っていた方がモデル。
 その辺に落ちている棒等でも使用することは出来るが精度は落ちる。
AOP = 4200
POP = 126000

名前:イツキ
念系統:放出系
能力名:フィンの一撃(ガント)
 指先を対象に向けることで指先から念弾を発射する。連続発射出来る。一発の念弾に500オーラ以上のオーラを込めることはできない。

能力名:弾数制限(リミテッドブリット・レイガン)
 『硬』を用いて念弾を放つ場合、一日5発までの制限をつけることで威力を本来の『硬』よりも遥かに強くする(さらに、『硬』がどこまで小さい一点で行えるかで変動)。
AOP = 3200
POP = 110000

名前:ルー
念系統:放出系
能力名:念式魔方陣(スペルサーキット)
 アルファベットと魔方陣の組み合わせで発動するリリなの系の魔法っぽいものを目指して開発された能力。
 基本は魔方陣という基盤の上でアルファベットによってどのような現象を起こすのかの記述を行い、効果を発動する。
 神字ほどの汎用性は無いが代わりに神字の様に刻む対象を必要としない、能力者の作成した念能力はあくまで念式魔方陣であるためそれを用いて作成されたプログラムは能力者のメモリを圧迫しない(プログラム起動時に間借りする、そのためあまりに大規模なプログラムは組めても発動できない)などのメリットもある。
 基本的に記述できることは放出系の範囲を出ないことばかりであるが、そもそも砲撃魔法を再現したかったルーにとってはその辺は特に問題は無いようだ。

能力名:冥王の魔導杖(レイジングハート)
 サポート用のシステムであり、ストレンジャーズが一時期開発していた神字型簡易AIを搭載したビー玉サイズのコアが持ち主のオーラ等の号令に反応してコア内部に格納していた杖のパーツを表側に実体化させて纏った姿。
 もちろん外見は名前の通りである。
 主な用途としては、使用するたびにプログラムを一々記述しなくても良いように、使用者(ルー)が作成したプログラムをメモリ内に保管しており、使用の際に高速での記述をサポートする。
 もちろん、カートリッジシステム付き。
AOP = 3000
POP = 108000


《幻影旅団サイト》
《幻影旅団》
団長:
クロロ・ルシルフル
念能力:盗賊の極意(スキルハンター)
AOP = 8000
POP = 75000

団員:
ノブナガ(1番)
念能力:不明(このSSでは斬撃を円の範囲内に転移させる能力(の予定))
 イメージできる本数の斬撃を同時に発生させることが出来る。(独自設定です)
AOP = 7300
POP = 80000

シズク(8番)
念能力:デメちゃん
AOP = 5500
POP = 55000

ウボォーギン(11番)
念能力:超破壊拳(ビッグバンインパクト)
AOP = 12500
POP = 130000

フランクリン
念能力:俺の両手は機関銃(ダブルマシンガン)
AOP = 8000
POP = 85000

シャルナーク
念能力:携帯する他人の運命(ブラックヴォイス)
 複数のアンテナを用いることで複数人を同時に操作可能。(独自設定です)
AOP = 5500
POP = 68000

フェイタン
念能力:許されざる者(ペインバッカー)
念能力:太陽に灼かれて(ライジングサン)
AOP = 7500
POP = 70000

フィンクス
念能力:廻天(リッパー・サイクロトロン)
AOP = 8500
POP = 90000

マチ
念能力:念糸(ネンシ)
AOP = 5000
POP = 55000

パクノダ
念能力:記憶を読み取る能力
念能力:記憶弾(メモリーボム)
AOP = 5000
POP = 50000

コルトピ
念能力:神の左手悪魔の右手(ギャラリーフェイク)
AOP = 6000
POP = 65000

ボノレノフ
念能力:戦闘演武曲(バト=レ・カンタービレ)
AOP = 5500
POP = 60000


《タランチュラ》
名前:ベクター(旅団4番)特質系
能力名:終わり無き妄想物語(ネバーエンディングストーリー)
 大型のハードカバー本、中身は白紙で物語を書き込むことが出来る。
 書き込んだ物語の登場人物になりきる『なりきり英雄伝説(チートコスプレイヤー)』と連動した能力。
制約と誓約:
 この能力は一月に一冊分の物語を作成しないと維持することが出来ない。
 一月を越えて一冊分の物語がかけなかった場合は能力が使用できなくなる。
 新たに物語を書き上げることが出来た時、能力が再び使用できるようになる。
 三ヶ月かかっても一冊分の物語がかけなかった場合はこの能力は失効し、二度と念能力が使えなくなる。

能力名:なりきり英雄伝説(チートコスプレイヤー)
 『終わり無き妄想物語(ネバーエンディングストーリー)』で作成した物語の登場人物になりきることが出来る。
制約と誓約:
 この能力は『終わり無き妄想物語(ネバーエンディングストーリー)』の誓約に準ずることとする。
 なりきるキャラクターの再現度は登場作品の知名度(終わり無き妄想物語内における知名度)、キャラクター設定の能力値に左右される。
 キャラクター設定が最強キャラであるほど再現が困難になる。

 ※なりきり英雄伝説(チートコスプレイヤー)のバリエーション
  名称:セフィロス
  特性:超感覚による空間認識及び正宗による戦闘術
  名称:ブロリー
  特性:AOP上限無視

AOP = 6500
POP = 170000

名前:ティータ
念系統:操作系
能力名:虹色錬金鋼(レインボー・ダイト)
 掛け声によって様々な形態に変形する錬金鋼を操作する。
 「レストレーション○○」の掛け声で形態が変化する。
 「レストレーション・ルビー」で杖状の形態になる。オーラを変化させて光、熱、電気、氷などに変化させて使用する形態、天剣モード以外では効果が激減する。
 「レストレーション・アイアン」で両刃の長剣の形態になる。
 「レストレーション・クロム」で手甲の形態になる。オーラを込めるほど強度が増す。
 「レストレーション・サファイア」で刀身の無い柄のみの状態となり、刀身は無数の鋼糸に分かれた形態になる。刀身が無数に分かれるため一本一本の強度はそれほど高くない。
 「レストレーション・プラチナ」で弓状の形態になり、圧縮したオーラを矢の形にして発射する。

能力名:天剣モード(緋の目発動状態)
 AOPの最大量が跳ね上がる(緋の目でどの程度オーラが上がるのかがよく分からないのでボカして書いてます)。また、性能特化により各形態での機能が100%の変換で使用できる。
AOP = 7500
POP = 120000

シキ 強化系
能力名:魔眼『直死』
 オーラの構成を『視る』ことが出来、オーラ量や密度、念能力の構造上の欠点、欠陥などを『線』、『点』の形で視覚化することが出来る。
 この能力で確認した『線』、『点』を攻撃することでオーラそのものを破壊する。
 基本的に実力が拮抗している、もしくは、相手が上の場合は『凝』のオーラ量を上げなければ『線』、『点』の確認は困難。
制約と誓約:
 この能力を発動するためには通常の『凝』使用時に能力発動を意識する必要がある。
 この能力を使用時は、通常の『凝』と併用となる。
 この能力を使用中は能力の維持コストが時間と共に上がっていく。
  ※能力使用開始から10秒間→通常の凝と同量。
   10秒後からは10秒毎にオーラ消費量が倍になる。
 この能力を解除した場合、使用していた時間分経過しなければ、この能力は再使用できない。
 能力発動中は眼の色が青色になる。
 この能力で確認している『線』、『点』に対する攻撃はオーラ量の差に関係なく有効となる。
 あくまでオーラに対してのみ『線』、『点』が確認できる(生物の体本体やオーラを纏っていない物体の『線』、『点』は見ることができない)。
AOP = 7500
POP = 130000

マガツ 操作系
能力名:斬魄刀『悪魔王(セイタン)』
 刀の形をしたカルシウムの塊(元はマガツの骨から培養)。
制約と誓約:
 
能力名:帰刃・刀剣解放(レスレクシオン)
 刀の形に制限していた悪魔王(セイタン)の姿を能力者の全身を纏う形まで増殖させた者。
 全力のAOP分のオーラを鎧で纏う形になるため事実上AOP二倍状態になる。
 解号は『凶き夜来たれ、悪魔王(セイタン)』
AOP = 7500
POP = 130000

テラ 具現化系
能力名:固有結界・枯渇庭園
 範囲内に居た者達を強制的に念空間へと転移させる(自分も転移する)。
 念空間は半径50メートルの円状の空間。
 念空間内ではあらゆる行動において通常の数倍の速度でオーラが消費される(例として10倍の時、10の力を練るのに100のオーラが必要で、差分の90は念空間に吸収される)。 
 オーラの消費倍率は能力者を中心にして離れているほど大きくなる(能力者の半径1メートルの空間で通常通りの消耗、以下、1メートル離れるごとに倍の消耗となる(念空間の一番外側まで行くと通常の50倍の消耗となる))。
 両目が真紅に染まる。
制約と誓約:
 一度発動した場合、その時点での円の範囲内に居た生物はすべて能力の適用範囲内になる。
 能力発動後、念空間から脱出するには以下の条件の内、どれか一つを達成しなければならない。
 1.能力者を打倒する。
  この能力の使用者(つまりテラ)を殺害する、または気絶させるなどして意識を失わせること。
 2.『枯渇庭園・滞在許可証』の破壊。
  自分、仲間の保有する滞在許可証のどれか一つでも破壊された場合、この能力は維持できなくなり生死に関わらず全員が現実に帰還される。
 3.念空間の外縁部まで移動することで現実世界に帰還することが出来る。
  実は現実空間では能力発動時に作成した『円』の大きさ分の半球状の結界が存在しており外から侵入することはできないが中からは出ることが可能。
 能力発動後、念空間を維持するのは能力者のオーラ+飲み込まれた念使いのオーラである。
 念空間を維持するためには1分毎に最低10000オーラの消費が必要。
 必要最低オーラ(10000)に満たない場合は能力者から不足分が剥奪される。
 念空間に放出されていた余剰オーラは1分毎に吸収、リセットされ次回のカウントに持ち越すことは出来ない。

能力名:枯渇庭園・滞在許可証
 この札を所有している人物は固有結界・枯渇庭園内においてオーラ消費などが通常通りになる。
 枯渇庭園内においては実体化に制限なし。
 枯渇庭園展開時に仲間と認識している相手の手元に自動的に具現化される。
 この札は複数枚作成可能。内一枚は能力者自身が保有。
 結構大きい。10cm×20cmくらいの長方形で『滞在許可』と筆で書かれている。
制約と誓約:
 この能力は枯渇庭園使用時のみ使用可能。
AOP = 6000
POP = 120000

ソウマ 強化系
能力名:圧縮オーラ
 高密度でオーラを纏うことで相対的に大出力のオーラと変わらない状況を作り出す。
 オーラが『硬』等で一転に集中することで破壊力が爆発的に増す(オーラの性質が増す)ことをオーラの密度によるものと定義。
 『錬』によって発生した多量のオーラを強力な『纏』で縛ることで通常の数倍のオーラ密度の『堅』を行うことが出来る。
 これによって瞬間的な攻防力が1万オーラ相当のレベルまで跳ね上がっている。
制約と誓約:
 通常の『錬』と比べてオーラ密度の倍率分だけ維持コストの倍率が上がる(五倍の密度なら五倍の速度でオーラを消費する)。
能力名:暗黒魔闘術
 圧縮オーラを用いた戦闘術。
 『???』圧縮オーラを更に両手に集中させ、敵の胴体部に向けて連続で叩き込む。
 『???』圧縮オーラを片手に集中させ、頭上から振り落とし、一刀両断にする。
 『魔神裂光殺』圧縮オーラを片手に集中させ、閃光の速度で相手に叩き込み、同時に全パワーを解放、確実に相手を葬る。
AOP = 4500
POP = 105000

トキオ 放出系
能力名:千里を視る者(クレヤボヤンス)
 円に特化した能力。最大で半径10キロの『円』を展開し、円内部の状況を直接見ているような感覚で知覚することが出来る。
制約と誓約:
 この能力を発動中、能力者はその場から動くことは出来ない。動いた場合、この能力は解除される(自身の意思で動いたわけでは無い場合でも適用)。
 円の外延部に近くなるほど視るのが困難になるがオーラを水増しすることで精度を上げられる。
 
能力名:山彦の声(エコーヴォイス)
 千里を視る者(クレヤボヤンス)内にいる存在に対してオーラを媒介にして横に居るような感覚で話しかけ、会話を行うことが出来る。
AOP = 6000
POP = 125000
 
エレル 操作系
能力名:写輪眼
 能力発動中は目が原作『写輪眼』同様の紋様になる。
 オーラの流れや構成を視ることが出来、同じ流れを再現することで相手の技をコピーすることが出来る(念能力をコピーすることは出来ない)。
 オーラの流れや構成を本来の『凝』等で把握できるレベルをはるかに超えて把握できるため、相手の動きを先読みしての行動が可能。
制約と誓約:
 一度コピーした技術は『写輪眼』を発動しなければ使用できない。
 コピーした技術が能力者の念系統と相性の悪い能力の場合はオリジナルに比べて劣る。
 コピーした技術が能力者の能力を超えていた場合は再現できるレベルの範囲でしか再現できない。

能力名:万華鏡写輪眼『月読』(特質系)
 原作イタチと同じ目の模様になる。
 精神操作系の能力。
 視線を合わせた相手の精神を捕捉して自身の精神世界に接続して幽閉する。
 精神世界で幾ら時間が経過しても現実世界での経過時間は一瞬である。
 精神世界内では、ほぼ能力者の想像のままに世界を組み替えることが出来る(大抵の事象を再現でき、基本的に能力対象者はこれに抵抗することが出来ない)。
制約と誓約:
 能力使用時に使用したオーラ分の時間は何があっても現実世界に戻ることは出来ない。
 能力を使用する際は相手と目を合わせなければならない(複数人に一度に使用することは出来ない)。
 能力の発動には、全力の『錬』を行った状態で『凝』を行い、練り上げたオーラをすべて使用して発動する。
 オーラの支払いは前払いで、相手を精神世界に取り込む時点で1時間分、更に1時間たつごとに追加の1000オーラを支払わないと精神世界が維持できない。
 一度の使用は基本24時間以上のインターバルを置いて行うこと。連続で使用した場合はその回数やインターバルの時間等で視神経に負荷がかかる。過度の酷使は失明の恐れもあり。
AOP = 6500
POP = 115000


《ヒソカ組》
名前:ヒソカ
念系統:変化系
能力名:バンジーガム、ドッキリステクチャー
 原作通り。
AOP = 8000
POP = 85000

名前:ミカド
念系統:放出系
能力名:聖剣エクスカリバー
 剣の作成時に自身の血、毛髪、爪などの肉体の一部を混ぜることでオーラの通りを良くしたもの。
 見た目はFateのエクスカリバーと同じ。
能力名:約束された勝利の剣(エクスカリバー)
 剣から斬撃の軌道に乗る形でオーラを放出し対象を叩き斬る。
 全AOPを乗せての一撃。
 光の斬撃を放射する。
AOP = 6500
POP = 140000

名前:テルミッド
念系統:放出系
能力名:魔剣エクスカリバー
 剣の作成時に自身の血、毛髪、爪などの肉体の一部を混ぜることでオーラの通りを良くしたもの。
 見た目はFateのエクスカリバー(黒化)と同じ。
能力名:約束された勝利の剣(エクスカリバー)
 剣から斬撃の軌道に乗る形でオーラを放出し対象を叩き斬る。
 全AOPを乗せての一撃。
 闇色の斬撃を放射する。
AOP = 7000
POP = 140000



【最終的な敵味方の生存死亡表】
《旅団:生存》
クロロ、ウボォーギン(右腕欠損)、フィンクス、パクノダ、コルトピ
《旅団:死亡》
ノブナガ、シズク、フランクリン、シャルナーク、フェイタン、マチ、ボノレノフ

《タランチュラ:生存》
ティータ、マガツ、ソウマ、トキオ
《タランチュラ:死亡》
ベクター、シキ、テラ、エレル

《ヒーローズソサエティ:生存》
クリス(全身機械化)、ミコト、イナト、カルラ(左腕欠損)、ウインド、ブレイド、ナイト、ギャレン、カリス、キバ、カズ、テッカ(左腕欠損)、爆竜戦隊アバレンジャー(アバレット、アバレイエロー)、百獣戦隊ガオレンジャー
《ヒーローズソサエティ:死亡》
リッド、カイザ、リュウキ、リュウガ、ゾルダ、五星戦隊ダイレンジャー(全員)、爆竜戦隊アバレンジャー(アバレブルー、アバレブラック)

《ストレンジャーズ+ゴンの付き添い:生存》
テオ、ハオ、ゴクウ、タクヤ、テトラ、イグルス、メリク、ファルコ、イツキ、ルー
《ストレンジャーズ+ゴンの付き添い:死亡》
ファルコの仲間達



[8143] グリードアイランド編その1
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:1e5f2ff6
Date: 2009/10/31 05:11
ズダンッ、ズダンッ!!!

赤い恐竜がレオリオを下敷きにしたままスタンピングを始めたのを見て我に返ったテオは、とりあえず目の前のモンスターをどうにかすることにした。
左腕にカードを差込み、変形させる。

「まだコイツを実践で試したことは無かったからな・・・『ブロウクンアーム』!!!」

左腕の義手が瞬時に組み変わり、一回り巨大な拳とって高速回転を始める。

「お前等、道を空けろ!!! 『ブロウクンマグナァァム』!!!!」

叫びと同時に放たれた左拳はこちらの声に慌てて飛びのいたゴン達の間をすり抜けて赤い恐竜に着弾した。

「GYAOOO!?!」

ゴン達から見て格上である赤い恐竜であったが、今のテオからすれば純粋な出力だけで見ても遥か各下である。

ドバンッ!!!

と音を立ててブロウクンマグナムは赤い恐竜の体に直撃し、地面に叩きつけた後テオの左腕へと戻ってきた。

「大丈夫だったか? お前等」

ぱっと見て特に怪我をしている様でもないが一応聞いておく、あ、レオリオはちゃんと見ないと不味いかも。

「うん。大丈夫・・・テオさんって強いんだね」

「・・・やるね、あんた」

「・・・我々があれだけ苦戦した生物を一撃とは・・・」

「・・・とりあえず、たすけ・・・」

まあな、と軽く答えて地面に埋まっていたレオリオを掘り出す。
素人見だが、とりあえずあちこち怪我はあるが致命傷の様なものは一つもない。
しっかりと『練』で攻防力を上げて耐えていたようだ。

「(サボらずにちゃんと修行を続けている証拠だな)」

テオは、口には出さずにそう賞賛した。

「それにしてもコイツはいったいなんだ?」

そう言い、目の前のモンスターへと視線を移す。
間違いなく、原作にはこんなモンスターは出ていなかった。
それ以前の問題として、プレイヤーに襲われるのならともかくとして顕在オーラが明らかに現状のゴン達よりも上な、確実に2000以上はあるモンスターがグリードアイランドの入り口をうろついているなどあまりに異常だ、無理ゲーすぎる。
そう思っていると目の前のモンスターがボンッ!!っと音を立てて消え、その場に一枚のカードが残った。

「ああ、カード化したのか」

とりあえず名前だけでも確認しておこうとカードを拾い、再び驚くことになる。

「・・・なんで、ティラノモンの名前が!?」

其処には、先ほど倒した赤い恐竜・・・ティラノモンの名前が書かれていた。
ティラノモンとはデジタルモンスターというゲームなどに出てくるデジモンと呼ばれるデジタル生命体の一体の名称である。
当然、本来のグリードアイランドに存在するわけが無く、テオに警戒を促すに十分な物であった。

「(トリッパーか!? ・・・いや、ならば既に何らかのアクションがあるはず・・・どういうことだ?)」

そこまで考えてティラノモンがカード化したことに思い至る。
プレイヤーの差し金ならばこれはありえないことだった。

「(とりあえず仕舞っておくか)」

カード化が解除される前にバインダーを開き、フリーポケットにティラノモンのカードを入れておく。
そしてまた、思考へと戻っていった。





「テオ、何時まで唸ってる気だ? もう皆集合してるぞ」

しばらくうんうんと唸りながら考え込んでいると、其処に声をかけてきたのはハオだった。
見れば、既にハオの他にもハンゾー、ヒビキ、イブキ、トドロキの四人も降りてきており全員が揃っていてこちらの様子を伺っていた。
ティラノモンについて考え込んでいたためいつの間にか皆が集まっていることに気が付かなかったのだ。


「あ、悪い。ちょっと気になることがあってな」

「ゴン達が襲われたことについてか?」

既に聞いているようだ。
説明が省けて助かる。

「ああ、ゴン達を襲ったのはデジモンの可能性が高い」

「・・・は?」

さすがのハオも呆けてしまったようだ。

「いやな、カード化されたら名前がティラノモンだったんだよ・・・今出すから。『ブッk』」

ブック。

と言おうとした瞬間、上空から凄まじいプレッシャーが降り注ぐ。

「「!?!?!」」

瞬時にその場から飛びのき空を見上げると、其処には先ほどまでいなかった新たな人影がこちらを見下ろしていた。
全員がプレッシャーの発生源を見るために上空を見上げ、固まっていた。

ゴン達4人は先ほどと比べてすら比較にならない圧倒的なオーラを目にして。

トリッパー達は空に浮かぶその存在の姿を目にすることで。

「・・・オ、オメガモン、だと?」

ハオがそう声を洩らす。
グレイモンを象った左腕、ガルルモンを象った右腕、そして純白のボディとマントを持つ究極体デジモン。
ロイヤルナイツに所属していることからも分かるとおり、デジモンの中でも最強に近い部類の存在。
それが目の前にいた。

「・・・ふむ、ティラノモンの反応が消えたから気になってきてみれば・・・やはり人間か」

そう呟き、ゆっくりと降りてくる。
その間、俺たちは行動できない。
このメンバーの中でもっとも強いテオですら遥か格下というべき顕在オーラの差。
皆、金縛りに遭ったように動けなかった。

「ティラノモンめ、イグドラシルより賜った任務を果たせぬまま逝ったか」

「・・・任務?」

先の戦いでこれ以上の顕在オーラの持ち主(ベクター・ブロリー)と交戦しているテオとハオが言葉に反応して聞き返す。

「そうだ。人間達の世界とこの島を繋ぐこの小屋の破壊が奴の任務だった」

思わず聞き返した事だったが、意外にもオメガモンはそれに答えていた。

「まあ良い。私が引き継げはよいだけのこと」

そう言い、おもむろに右腕をログイン小屋へと向けた。

「!? 皆、伏せろ!!!」

それが何を意味するのか理解したテオが力の限り叫ぶ。

「!?」

それによってわずかばかりに金縛りが解けたのか、動き始めた皆だがそれより先にオメガモンの一撃が発動する。

「『ガルルキャノン』!!!」

右腕の砲口から光の放流が解き放たれ、ログイン小屋を一瞬で飲み込み大地に射線上の遥か先まで伸びる砲撃跡を刻んでいた。

「なっ!?」

それを見たゴン達が絶句する。

「・・・イグドラシルは人間達からのこれ以上の干渉を排除する決定を下した」

振り返ったオメガモンはグレイソードを展開しながらテオ等の下へと歩き近づく。

「これはイグドラシルの決定事項である!!」

そう叫ぶと同時にグレイソードを振りかぶり、斬り付けて来た。

「うぉお!?」

一瞬前までテオのいた場所にグレイソードが叩きつけられ、その力に地面が大きく切り裂かれた。

「くそっ、皆自力で逃げろ!! フォローする余裕は無い!!!」

逃れた上空からそう叫び、同時に振り下ろした拳が無数の紙を纏って巨人の拳となる。

「『紙技・巨人の拳(ギガント・ナックル)』!!!」

「『グレイソード』!!!」

だが、渾身の一撃は横薙ぎに払われたグレイソードの一撃で散らされる。
この時点でテオは未だに誰一人逃げてはいないことに気付いた。

「バカヤロウ!! 何をぼうっとして・・・」

「他所に気を向ける余裕があるのか?」

ギンッ!!!

「がっ!?!」

一瞬、外野に意識が向いた隙にグレイソードで薙ぎ払われ、弾き飛ばされるテオ。
追撃のガルルキャノンをテオへと向けた瞬間、背後からハオが奇襲をかけた。

「『鬼火』!!!」

「むぅ!?」

キュドドドンッ!!!

瞬時に『S・O・F黒雛(スピリット・オブ・ファイア クロビナ)』を展開し、鬼火を連続で打ち込むハオ。
着弾した鬼火がオメガモンを紅蓮の炎で包み込む。

「ハンゾー、ゴン達を連れて早く離脱しろ!! 死にたいのか!!!」

ハオに一括され、金縛り状態だったハンゾー達が動き出す。

「わ、わかった!! おい、お前等。急いで逃げるぞ!!」

「で、でも置いていくなんて・・・」

「俺たちがいること自体が邪魔になっているんだよ、分かれ!!」

ゴンが僅かに反論するが、即座にハンゾーに切り返されて黙る。

「ハンゾーの言うとおりだ。ここにいては我々は邪魔だ!!」

クラピカが焦りを感じさせる口調で追従する。
ゴンも自身のレベルが遥かに足りていないことは理解しているためそれ以上反論せずに黙り込む。

「おい、急げよ!!」

既に走り出していたレオリオが振り向いてそう叫ぶ。
それが切欠となったのか、ゴン達は全員で離脱を始めた。

「逃がすと思うか?」

鬼火の炎をグレイソードの一振りで弾き飛ばしたオメガモンは、逃げるゴン達へとガルルキャノンの照準を向ける。

「まずは俺をどうにかして見ろ!!!」

だが、発射直前に銃口の目の前に展開された『スピリット・オブ・ファイア』が『マグマアッパー』によって銃口を殴り上げ、ガルルキャノンの光は空へと吸い込まれていった。

「貴様、邪魔立てをするか!!!」

「さっきからそう言ってるだろうが!!!」

激昂したオメガモンがグレイソードを一閃する。
それを右腕を盾にして受け止めようとしたスピリット・オブ・ファイアだが、数瞬の抵抗の後に胴体ごと切り払われてしまった。

「!? スピリット・オブ・ファイアを易々と!!」

オメガモンとの想像以上の地力の差に冷や汗が出てくるハオ。
ベクター・ブロリーとの戦いで出力だけならオメガモン以上の戦いを経験してはいるが、所詮ドーピングに近い方法での戦い方であり、膨れ上がったパワーに頼った力技に過ぎなかった。
事実上の自分の力としてそのレベルの力を振るうオメガモンの攻撃はベクター・ブロリーのそれとは一線を画していた。

そして、スピリット・オブ・ファイアを破壊されて無防備になったハオへとグレイソードが振りかぶられる。

「くそっ!!」

スピリット・オブ・ファイアの再構成が間に合わず、潰されかける瞬間に横から救いの手が伸びる。

「せいやっ!!!」

ドドンッ!!!

変身を完了したヒビキが『音撃打・爆裂強打の型』でオメガモンの左腕を横から強打して押し出すことで、グレイソードの軌跡をずらしたのだ。
軌道のずれたグレイソードがハオの真横の地面に激突し、衝撃でハオは弾き飛ばされる。

「ぐぅ!?」

「大丈夫ですか!?」

ヒビキと同じく変身完了したイブキとトドロキが地面を転がるハオを助け起こす。

「ああ、大丈夫だ。だが、お前等も逃げなくてよかったのか?」

周りを見る余裕が無かったため、ヒビキ達が残っていたことに気付かなかったハオがたずねる。

「何言ってるんですか、あなた達が死んでしまったら俺たちの決死の行動も無駄になっちゃうんですから残るに決まってるでしょ」

とヒビキが言い、トドロキと共にそのままオメガモンとの戦いに突入する。
ヒビキはああ言ったが、契約したのはつい先日のことである。
こんな想定外の敵が出てきたら普通は逃げる。

「(こんな危険地帯に残ってまで手助けしてくれる辺り思ったよりも良い人なのかも知れない)」

とハオは思った。

「ははっ、そうだな。ところでテオの奴はどうなったんだ?」

彼らが逃げずにいたのなら吹っ飛んでいったテオのほうもどうにかしたはずである。
疑問にはその場に残って音撃管を撃ち続けていたイブキが答えた。

「テオさんの方も無事です。全力の『模倣宝具(イミテーションファンタズム)』を撃ち込む為にタイミングを探ってます」

そう言い、イブキが視線を向けた先には先のガルルキャノンで掘り返された塹壕に隠れて狙いを付けるテオがいた。





「はぁぁぁぁぁ・・・」

ヒビキは気合を溜め、それに呼応して音撃棒の尖端の鬼石が赤く発光を始める。
すぐにそこから炎が昇り立ち、炎の剣を形成する。

「ハァアッ!!!」

気合一閃、オメガモンの左足に振り下ろした炎剣は多少焦げ目が付いた程度にしか効かなかった。

「私に剣で挑むか!!」

オメガモンが吼え、グレイソードを一閃する。

「おっと!!」

慌てて空中へとジャンプして一閃をかわし、

「せいやっ」

ドンッ!!!

オメガモンに音撃打の一撃を当てた衝撃で距離を取る。

「しかし、これも効かないとなるとどうしたものか・・・」

いっその事、ヒビキ紅に変身するか? と考えるが、まだ早いと自重する。
紅はオーラ出力を更に引き上げた形態であるが、同時に使用に制限時間の付く諸刃の剣でもある。
簡単に使ってしまえるものではなかった。

「結局はテオさんの一発待ちか」

ちらりと横目にテオを確認すれば、弓に矢を番えてタイミングを計っていた。
すると丁度いいタイミングでトドロキもグレイソードに弾き飛ばされ、オメガモンが完全にフリーとなる。

次の瞬間、大気をかき回し、雷を振りまきながら突き進んだ『カラドボルグ』が爆音を立ててオメガモンに直撃する。

「やったか!?」

「フラグ立てんn」

最後まで言い切る前に派手に上がった爆炎を突き破ってオメガモンが現れる。
その姿には先ほどまでとは違い、ダメージの後が見て取れた。

「どうやら俺たちの攻撃がまったく効かないって訳でもなさそうだな。いっちょがんばりますか!!」

ヒビキは両手に構えた音撃棒をクルリと一回転させて気合を入れ直した。





「むぅ・・・」

今、オメガモンの死角から放たれた一撃は、オメガモンに少なくないダメージを与えていた。
それによって、オメガモンは目の前の人間達を過小評価していたことに気付かされた。

「私を相手にこれだけの損害を与えられる相手だ、此方も相応の態度で望まなければなるまい!!」

オメガモンは空高くに昇っていく。

「私は私にダメージを与えた汝等を全力で当たるに値する障害であると判断した!! 我が最大の一撃を持って貴様等を排除する!!!」

大きく口を開いた右腕のガルルモンを象った砲口から、それまでのガルルキャノンとは桁違いのオーラが収束していく。

「『ガルルキャノン』!!!!!」

放たれた砲撃は眼下を光の放流で埋め尽くした。





「私は私にダメージを与えた汝等を全力で当たるに値する障害であると判断した!! 我が最大の一撃を持って貴様等を排除する!!!」

空へと昇ったオメガモンがそう宣言し、その巨大な圧力が右腕の砲へと収束していく。
アレはだめだ。
受け止めることを考えていいレベルではない。

「全員散れぇぇぇぇぇえ!!!!!」

叫ぶと共にテオ自身もオメガモンに背を向けて全速力で走り出した。
他の面子がちゃんと逃げ出したかどうか確かめる余裕も無い。

そして全力で走り出して幾らも経たない内に背後で巨大なエネルギーが着弾するのを感じて、そのままテオは衝撃に飲み込まれた。





「ハッ、ハッ」

ゴンは全力で走りながらも背後が気になって仕方がなかった。
ちらちら、と後ろを振り返りながら走る。

「ゴン、今は後ろを気にするな。全力で走ることだけ考えてろ」

それを見たハンゾーがゴンを注意する。

「だって、ハンゾーの師匠達でしょ、気にならないの!?」

たまらず、ゴンはそう叫ぶが、すぐさま自分が何を言ったのか理解して謝る。

「・・・ゴメン。ハンゾーのほうが気になってるはずなのに・・・」

「・・・気にすんな。俺の師匠連中はちょっとやそっとでくたばるような柔な連中じゃ・・・」

次の瞬間、背後で巨大な光の爆発が起こり、大地が揺れる。

「うわ!?」

たまらず、ゴン達はスピードを落とし、背後を振り返ってしまった。

「・・・何アレ・・・」

ゴンの目には自分等が逃げてきたところできのこ雲が発生している光景が映し出されていた。
あれのなかで人が生きていられるなど、とても信じられない。

「・・・・・・」

他の面子もその光景をボゥっとしながら眺めていた。

「!?」

しばらく呆然とその光景を見続け、しばらくしてゴン達は我に返った。

「!! こんな所で立ち止まってる場合じゃない、急ぐぞ!!」

「あ、ああ」

ハンゾーが皆を急かし、再び走り始める。
皆の心の中には、今、一刻も早くあの場所から遠ざかりたいという思いが芽生えていた。
だが、同時にこの場で逃げなければならない自身の弱さへの怒りもまた、渦巻いていた。





「・・・ふむ。消し飛んだか、それとも逃げおおせたか」

オメガモンは眼下に出来た巨大なクレーターを見ながらそう呟いた。
そこにはグリードアイランドにログインする際に訪れるはずのログイン小屋があったのだが、その痕跡など欠片もなかった。

「どちらでも良いか。生きているのならば、どこかで相見えることもあろう」

使命を果たしたオメガモンはそのまま空を飛び、イグドラシルの元へと帰っていく。
後に残ったものは巨大なクレーターのみであった。





ファルコ達はグリードアイランドに入るためにヒーローズソサエティに交渉してみたが、案の定失敗してしまった。

「あ~、分かっちゃいたけどやっぱりがっくりくるなぁ」

「仕方ないよ。他の方法を探そう?」

がっくりと崩れ落ちたファルコをルーが励ましている。

「しかし、こうなってくると後はバッテラ氏を訪ねてみるくらいしか出来ないぞ?」

後、実行できそうな手段としてバッテラ氏訪問をイツキは上げてみる。

「よし、ダメもとで行ってみようか」

他に実行できそうな手段も無いことだし、と、ファルコ達はバッテラ氏を訪ねてみることにした。





「申し訳ありませんが、お客様。 アポイントメントはお取りになりましたでしょうか?」

「「「ですよね~☆」」」

と言う訳で、とりあえずヨークシンにあったバッテラ氏の会社の一つを訪ねてみたところ、門前払いを食らいました。

「つーか、当たり前だったな」

「うむ、当然の結果だ」

「そうだね」

とりあえず近場のカフェで食事をしながらうなだれている三人。
気が焦っていたとは言え、所詮は有象無象に過ぎない自分達がいきなり訪ねて行って財界屈指のセレブと面会できると思いこんでいた事に気づかされて凹んでいた。

「君達、少々よろしいですかな?」

そんな彼等に近寄り、話しかける初老の男性が一人。
その男性は先ほど門前払いを受けたバッテラ氏の執事の一人だと名乗った。





「じゃあ、バッテラ氏にグリードアイランドの情報を渡したのはあんたの主人なのか」

「はい、そうなります。何処から仕入れてきた情報なのかは終ぞ、教えていただけませんでしたが」

執事の人にヨークシンにあるバッテラ邸へと連れてこられたファルコ達は、そこで彼の主人の話を教えられた。
内容を聞くに確実にトリッパーだろう。

「主から仰せつかっております。グリードアイランド関連でバッテラを訪ねてきた『自分と同年代の子供』がいた場合は主の下へ連れてくるようにと」

つまりは、このバッテラ氏の親族に生まれたトリッパーはこうやって訪ねてきたトリッパーを仲間に引き入れてきたのだろう。
普段はグリードアイランドに篭りきりだそうだからこういう手段で勧誘していたのか。
バッテラのネーミングで寝ていてもトリッパーがよってくるので案外いい手段かもしれない。

「分かりました。それで、グリードアイランドは何処に置いてあるので?」

「此方でございます」

執事の人はバッテラ邸の奥へとファルコ等を案内した。



「・・・つーか、こんな近くにあったんだな」

「先日不要となったグリードアイランドも回収しまして、此方へと移動させましたので、それにこの屋敷の防備も見た目以上に頑強に出来ております」

「(そう言えばバッテラ氏は目的を達成してグリードアイランドはもう不要になったんだよな)」

とファルコは考えながら目の前の光景を見ていた。

今、ファルコの目の前には数十個のグリードアイランドが置かれている。
その内の幾つかは未だに起動し続けているが、半分ほどの電源は落ちていた。

「んじゃ、早速お借りします」

近場にあったグリードアイランドに手をかざして『練』を行う。

「・・・あれ?」

起動しない。

「おかしいな? ハオ達なんかはちゃんと飛んでたのに」

「他ので試してみたけど、あたしもダメだった」

ルーも試したらしく失敗を報告してきた。

「どうなってる?」

同じく試したらしいイツキも不満顔だ。
一体なんだと言うのだろう、こっちは一刻も早くゴン達を追いかけたいというのに!!

「こうなったら船で行こうぜ、レイザー出てきてもグリードアイランドが動かなかったから船で来たって言ってやる!!」

いささか以上に短絡的な行動に出るファルコ達だが、ここでこの選択を行った結果、グリードアイランドの騒動に巻き込まれることが決定したのだった。





数日後、海の上より見えてきたグリードアイランド島。

「(ここが原作で旅団が上陸した場所か~、まあ、この世界では関係ないけど、何か、感慨深いものがあるな)」

等と考えながらファルコ達は島へと上陸した。

「「「・・・・・・」」」

しばらく待ってみるが一向にレイザーが現れる様子が無い。

「う~ん、このまま不法入島しちゃっていいのかな?」

ルーもさすがに困惑して考え込んでいる。

「しかし、何時までも待っている訳にもいかないし、入ってしまわないか?」

イツキが提案してきた。

「・・・入っちゃおっか」

と言う訳で、彼らは島へと入ることとなった。





「・・・くそっ、やってくれたな・・・」

ガルルキャノンの爆風によって吹き飛ばされたテオであったが、何とか生きていた。
全力で爆心地から遠ざかっていた事、ガルルキャノンが範囲破壊を優先した結果、実際に想定したよりもダメージが少なかった事などがあり生き延びる事ができた。
爆風に飛ばされたことを利用して、そのまま逃走に映ったことでオメガモンの索敵範囲から脱出したのだった。

「他の奴等、生きてるかな?」

あの状況で自分以外に気を配る余裕が無かったのは事実だが、だからと言ってしょうがない、と納得できる物ではない。
確認できなかったのはやはり悔やまれた。

「!? ぐっ、痛ぁ~・・・」

何とか生き延びたとは言え、体のダメージはかなり深刻だった。

「しばらくは、傷を治す事に専念しないとな・・・すべてはそれからか」

仲間達も各々の力で生き延びているだろう事を信じて。

「(オメガモン・・・次にあった時には、この借りは必ず返す!!)」

痛む体を引きずって、テオは歩き出した。





その少年は敗北者であった。
仲間を奪われ、奪われた仲間を取り戻そうとして残った仲間をも失い、ただ一人生き延びてしまった。

それでも少年は諦めなかった。

仲間をすべて失ったことが、かえって奪われた仲間を取り戻すことに固執させる要因になったのか。
失った仲間達の遺品である『デジヴァイス』を抱え込み、尚も仲間を取り戻す機会を探しながら逃げ回っていた。

「!?」

何かの気配を感じたか、『絶』を行い身を隠す少年。
少しして、遥か空の彼方から飛んできた『存在』が少年の上の空を飛び超えていく。

「・・・アルト!!」

少年は、すぐに空を往く『存在』がかつての仲間の成れの果てであることに気付いた。
仲間を追いかけ続ける少年にこれを追わない理由など無い。

「『スピリット・エヴォリューション』!!」

『D-スキャナ』を左手に発生させた『コード』へとスライドさせ、進化を発動する。
その身にデジモンの姿と力を宿し、次の瞬間少年は『アグニモン』へと姿を変貌させていた。

「・・・方角は灯台の方か」

一言呟き、アグニモンは空を往く存在・・・デュークモンを追って移動を開始した。





あとがき
グリードアイランド編その1をお届けします。
グリードアイランド編は全編オリジナルとなります。
グリードアイランド島は現在、先行クリアしたトリッパー達のやらかした様々な影響で色々と大変な事になっています。
次話にて何故こうなったのか、の説明を入れたいと思います。

ファルコ等がグリードアイランドにログインする辺りがかなり強引になってしまいました。
当初はG・Iクリア組のトリッパーが既に一人脱出していてファルコ等に救援を求める→島へ、で行こうと思っていたのですが、そうなると、島の中がやばい事になっているのにストレンジャーズやヒーローズソサエティに連絡を取らないのは不自然になると思ったので、少々強引ですがこのような形にしました。
ゴクウとタクヤはアリ編にて修行後の状態で登場させたいと思ったので、外への救援はなしの方向で行くことにしました。


感想、ご意見などありましたら宜しくお願いします。



[8143] グリードアイランド編その2
Name: ぺんた◆8f022c7e ID:71067292
Date: 2010/03/10 21:52
島に上陸して十数分後。
ファルコ達は近場を探索後、取り合えず灯台の街『ソウフラビ』に行ってみようと意見をまとめ荷物を取りに上陸した浜辺へと戻ってきて目にしたものは、海上を炎で照らし黒煙を上げる自分等が乗ってきた船の姿であった。

「えぇ~!?!」

「ちょ!? レンタル船が!!」

「何で!?」

三人揃って目の前の光景に取り乱していると声がかかる。

「ん? お前達があの船に乗っていた人間か。すまないが、お前達の船は破壊させてもらったぞ」

「破壊させてもらったじゃねぇ!! ・・・あの、どちら様で?」

かけられた声に振り向きながら文句を言っていたファルコであったが、相手の姿を目にして勢いが削がれ、丁寧語で話しかけてしまった。
ファルコの目の前の人物は全身を白い鎧で固め、赤いマントを翻しながら空に浮かんでいたのだった。

「我が名はデュークモン。我が君、イグドラシルの命によりこのグリードアイランドへの侵入者を成敗しに参った」

「デュークモンってデジモンの名前じゃねぇか!! 何時からグリードアイランドはデジタルワールドと繋がったんだよ!?!」

デュークモンの返答に思わず突っ込み返してしまうファルコだが、イツキはその言葉の中に聞き逃せない一言が入っていることを聞き逃さなかった。
このデジモンはなぜか知らないがレイザーの変わりに島への侵入者の対策をしている、と言う事実である。

「・・・つまり、あんたは俺達を捕まえに来たって事でおk?」

イツキは少し躊躇しながらデュークモンに訊ねる。

「・・・少し違うな。我は侵入者・・・お前達を処分するために来たのだ」

言葉と共に、デュークモンから感じられる圧力が膨れ上がっていく。

「な、なんだこれ・・・」

「最近、こんなのばっかしだな」

「煤けてないで戦う準備しなさいよ!!」

ファルコとイツキはこれは無いだろ・・・と言う感じで真っ白になり現実逃避しかけていたが、ルーの叱咤によって何とか意識を取り戻した。

「我が君、イグドラシルはお前達の削除を決定した。抗いたくば、汝等の力我に示してみよ!!!」

デュークモンはそう宣言し、右腕に聖槍ローラン、左腕に聖盾イージスを具現化させると槍をファルコ等に向け、

「『ロイヤルセイバー』!!!」

槍の先から光の刃先を伸ばして攻撃を仕掛けてきた。





「ちぃ!?」

ファルコは瞬時に如意棒を巨大化し、その尖端に乗っかる形で空へと退避して『ロイヤルセイバー』をかわす。
ルーも即座に『冥王の魔導杖(レイジングハート)』を起動し、飛行魔法によって空へと逃げる。
イツキは空中に逃げる技を持っていないためとっさに『ロイヤルセイバー』の軌道上から飛びのくことで攻撃を避けた。
デュークモンは空へと飛び上がった二人ではなく地上を逃げているイツキに狙いを定め、延ばしたロイヤルセイバーを横薙ぎに振り払おうとするが、ファルコとルーがそのタイミングを狙って攻撃を仕掛ける。

「今!! 『ディバインッバスタァァッ』!!!」

ドンッ!!!

と大気をはじき出す音と共に杖の先端に展開された魔方陣から桜色のオーラ砲が発射される。

「むっ!?」

デュークモンは横薙ぎに払おうとしたロイヤルセイバーを止め、左腕の聖盾イージスを掲げて『ディバインバスター』を防ぐ。
その間にイツキは『ロイヤルセイバー』の危険域から脱出することに成功した。

「まだまだっ!!!」

ルーより更に高く飛び上がったファルコが縮めた如意棒を再度巨大化させて強烈な突きを叩きつけようとする。

「この程度!!!」

だが、デュークモンは如意棒の衝突の瞬間に盾を斜めに構え、外側へと弾き、軌道を逸らさせた。
さらに『ロイヤルセイバー』を振り上げ様に両断しようと迫る。

「レイガン!!!」

「むっ!!」

だがその『ロイヤルセイバー』は、視界の端に飛び込んできたイツキの『弾数制限(リミテッドブリット・レイガン)』を迎撃するために軌道を変え、振るわれた。
その隙に、ファルコ、ルー共に危険域からは飛びのいていた。

「このままじゃジリ貧だぞ、どうする?」

「まだ向こうもそれほど本気を出している様にも見えないのに、あたし達もう一杯一杯なんだけど・・・」

ファルコとルーがデュークモンと睨み合いながら相談し合うが、そもそも地力が違いすぎる相手なのでまともな対抗手段が出てこない。
そして、それは二人から離れた位置にいるイツキにしても同じであった。

「どうした? そちらから来ないのであれば我のほうから往くぞ?」

デュークモンがそう宣言し、聖槍ローランを振り上げたその時、その声は響いた。

「『サラマンダーブレイク』!!!」

その時、突如発生した炎の竜巻がデュークモンを飲み込んだ。





「・・・・・・」

デュークモンは誰もいなくなった浜辺を見ながら先ほどの戦いを回想していた。

デュークモンを突如襲った炎の竜巻は、つい先日イグドラシルへと突撃をかけて来た人間達の一人が変身したデジモンの技だ。
あの時の戦いで殆どの襲撃者は死亡していたが、生き残りがいたということなのだろう。

デュークモンは考える。
なぜ、イグドラシルはこうも執拗に人間の排除を求めるのか。
元を正せば我々デジモンはもとより、イグドラシル自身も人が作り出したものであるのに、と。

デュークモンが抱いていた僅かな迷いがあっさりと侵入者に止めを刺すことを躊躇い、試すように戦いを引き延ばすことになっていた。
その結果、不意を突かれて炎の竜巻に取り込まれるという失態を演じることになったが、これとてデュークモンの力を持ってすればすぐに破ることは容易であった。
それをせず、彼らに逃げるためのチャンスを与えたことがイグドラシルの意思にそっているとは思わない。
だが、デュークモンは人間と言うだけで排除しようと言う意思を持つことは出来なかったのだ。
この辺、オメガモンや、マグナモンであれば多少疑問に思う事があっても決定的なところまで来なければ従うだろう。

この時デュークモンがイグドラシルの命にそむく行動に出ることが出来たのは彼が人間『アルト・カートゥン』であった頃に使用していたデジヴァイスが『D-アーク』であったことが関係していた。
究極体の発現に、テイマー自身をコアに取り込んで進化する『D-アーク』の機能が、イグドラシルに取り込まれた後も『人』の意識の影響をデュークモンに与えていたのである。

それがノイズのようにデュークモンの思考に影響を与え、このような行動を取らせたのだった。
何も語らず、その場を後にするデュークモン。
それを自身の本体が安置された『リーメイロ』からイグドラシルも眺めていた。





「・・・ここまで逃げれば大丈夫か?」

灯台側の浜辺からかなり離れた場所まで走り続け、追撃が来ないことを確認して背負った3人を降ろす。
デュークモンに全力の『サラマンダーブレイク』を叩き込んで視界を塞ぎ、その隙に3人の侵入者を掻っ攫って逃げたのだが、どうやら逃げ切れたようだ。
・・・彼我の実力差を考えると『逃がしてもらった』というべきなのかもしれないが。

「・・・とりあえず、助けてもらったことは礼を言うよ。だが聞かせてくれ、『君』は何だ?」

ここまで運ぶ間一言も口を聞かなかった3人組だが、一応安全になったと判断したのか気になっていたことを目の前のデジモン・・・アグニモンに質問していた。

「ああ、あの辺をうろついていたんならやっぱり島外からの侵入者だよな、お前等」

そう言ってアグニモンは進化を解く。
デジコードに包まれ、人間の姿へと戻っていった。

「オレはフラットだ。ようこそ、グリードアイランドへ」

フラットは3人に対してそう言葉を返した。





取り合えず、近くの町まで歩きながら質問に答えるというフラットに同意してファルコ達3人はフラットと共に歩き出した。

フラットはまず自分の出自を教える所から始めた。
自分がバッテラ一族に生まれたトリッパー、カソード・バッテラにスカウトされて念を覚え、グリードアイランドにログインしたこと。
同じようにスカウトされたトリッパー達はほかにも何人かいて、全部で20人くらいの組織だったこと。
その組織では念能力の研究開発を重視していて、初期に集まったメンバーの5人が協力して作り上げた念能力『DWSS(デジタルワールドサーバーシステム)』によってデジモンをパートナーとする念能力が開発されていたこと。
メンバー全員がその能力に組み込まれて『電子獣の繰り手(デジモンテイマー)』となっていたこと。
今から一ヶ月ほど前にやっとこさクリアまでこぎつけたこと。
それによって、原作では間に合わなかったバッテラ氏の恋人の治療が間に合ったこと。
褒賞として500億を手に入れ、それとカソードの個人資産を合わせて今までグリードアイランド内でしか起動できなかった『DWSS』をグリードアイランド外でも稼動できるように機材の大幅な増設と管理用A・I『イグドラシル』の開発を本格化したこと。
そしてつい先日、完成したイグドラシルを起動した途端、DWSSの基礎を担っていた初期メンバーの5人がイグドラシルに取り込まれロイヤルナイツと化したこと。
イグドラシルの破壊のため残りのメンバーで特攻をかけたが、ロイヤルナイツと化した5人に反撃されフラット以外のメンバーは全滅してしまったこと。

「呪文(スペル)カードも使用できなくされて、島外に出る港も機能停止されちゃったしな」

既にグリードアイランドのゲームシステム自体が機能していないことも説明する。
フラットは9月に入る前までに起こった出来事を一通り語った。

「それはまた、とんでもない時に来てしまったみたいだな・・・」

「最近、運が悪過ぎない?マジで」

「ああ、帰りたくなってきた。飛行魔法で飛んで帰れないかな?」

「「一人で逃げる気か、貴様は」」

既にわざわざ密入国までしてグリードアイランドにやってきたことを後悔しているファルコ、イツキ、ルーである。
そこでわざわざグリードアイランドまでやってきた理由を思い出し、ゴン達について聞いてみた。

「そう言えば、既に9月も半ばだから分かってると思うけど、何日か前にゴン達がログインしたんだが、何か知らないか?」

「何日か前?・・・ああ、ログイン小屋がオメガモンにぶっ飛ばされた時かな? あの時ゴン達がログインしてたのか」

ファルコ達にはしゃれにならない情報をさらっとしゃべったフラット。
当然、寝耳に水なファルコ達は驚いて何があったかを追求してきた。

「ちょ、ログイン小屋なくなったの!? だから普通にログインできなかったのか・・・ってそれよりもゴン達はどうなった!?」

「いや、オレも状況からオメガモンがやったんだろうとあたりを付けただけだから・・・それに、遭遇してたらたぶん生きてないと思うが・・・」

フラットの認識ではオメガモンの力は例えキメラアント編のゴン達が束になっても勝てないだろ、というレベルである。
フラットは先のデュークモンと同格の存在であるオメガモンと遭遇したのなら生きてはいないだろうと判断していた。

「・・・いや、ゴン達はハオ達と一緒にログインしたんだ。あいつ等が一緒にいて早々負けるはずが・・・」

ファルコが洩らしたその言葉にフラットが反応する。

「・・・お前らのほかに事前に誰か仲間がログインしてるのか?」

「ん? ああ、ヨークシンでグリードアイランドを3本買って、ゴン達と一緒にログインしたのが6人いる。そのうちの2人は旅団クラスを撃退出来る位には強いぞ」

「・・・それだけ強い奴が護衛に付いていたのなら、オメガモンの襲撃を乗り切った可能性はあるな」

「!? 本当か!!」

「ああ、取り合えずそいつ等の行方を捜してみるか。イグドラシルを打倒するためには強い戦力が必要だし」

フラットはそう言い、ファルコ達に向き直ると改めて頼みだした。

「オレは仲間達を取り戻すためにイグドラシルを破壊したい。そのためには強い仲間が必要だ。お前たちも力を貸してはくれないか?」

「え゛、いや、しかし・・・」

突然ロイヤルナイツ戦に参加させられそうになり思わず言葉に詰まるファルコ等一同。
デュークモンとまがりなりにも戦えていた3人をフラットは高く評価していた。

「・・・今すぐ返事をしなくていい。だが、ゴン達とその護衛を見つけ出したときくらいまでには返事をくれないか?」

「・・・わかった、それまでに結論を出しておくよ」

「よし、とりあえずはマサドラへ行ってみようか。 生きているなら向かっている筈だ」

フラットがそう纏め、こうして彼等4人のとりあえずの目的は決定した。





―――現在より数日前―――

ドドドドドドド・・・

街から望む丘の上から地響きが聞こえる。

「な、なんだ!?」

懸賞の街『アントキバ』にて今日も仕事に励んでいたモタリケであったが、突如響いてきた地響きに慌てて街の外の丘を見上げる。
見上げた丘からは無数の怪物たち(デジモン)が列を成して現れ、アントキバの街へと突撃していった。

「う、うわぁぁぁあ!?」

デジモンたちの突撃に、モタリケの悲鳴は飲み込まれていった。





ゴン達がアントキバへとたどり着いた時、まさにそこはデジモンの襲撃を受けて蹂躙されている真っ最中であった。

「な!?」

クラピカがその光景に絶句している。

「!? クラピカあぶないっ!!」

「なに!?」

「ガァァァァア!!!」

棒立ちとなり隙を見せていたクラピカへと四足の青い毛並みのデジモンが体当たりを仕掛けてくる。
そのデジモンは成熟期デジモンのガルルモンであったが彼らに知る由も無かった。

「ちっ!!」

舌打ちと共にクラピカが振るった左腕の袖口から銀色の鎖が飛び出す。
尖端に丸いリングが取り付けられたその鎖は瞬時にクラピカの周りを守護するように旋回し始め、体当たりを仕掛けたガルルモンを弾き返した。

『守護する円輪の鎖(サークルチェーン)』。

緋の目の特性に気付いておらず、また、ゴン達及び多くのトリッパー達と共に修行したクラピカは原作にあったような限度を超えた念能力の設定を行おうとはしなかった。
ただ、思いついたイメージである『鎖』をどのように形にするのかを念の先生であるファルコやその仲間達に相談しに行ったのが、行ってしまったのが踏み外した道の最初の一歩である。
相談を受けたファルコ達はイメージを固めるための資料としてトリッパー達が元世界から丸パクリして此方で作った漫画や小説を提供した。
クラピカがその中から己の武装のイメージとして選択したのは『聖闘士聖矢』であったことはもはやかたるまでもないことだろう。

「ハァァァァァァァァア!!!」

気合一閃。
振りぬいた右腕から今度は尖端が三角の鏃のようになった鎖が飛び出し、弾き飛ばされたガルルモンの右前足を貫通する。
『追尾する鏃の鎖(スクェアチェーン)』の標的をロックオンする効果と尖端の鏃に『凝』をした貫通力で貫いたのだ。

「ギャアォォォォォオォォォォォォォォォォオ!?!」

「『じゃんっ、けんっ、グーッ』!!!」

右前足を貫かれた激痛から暴れだそうとしたガルルモンを、飛び上がり上空から頭部を狙って強襲したゴンの一撃が地に叩きつける。
頭部から地面に叩きつけられ意識が昏倒しかけたガルルモンにさらにキルアが駆け寄る。
駆け抜けた次の瞬間にはガルルモンの首が吹き飛び空を舞う。
その右手の指先は鋭く変形し、更に帯電して「パチチチチッ」と異音を鳴らしていた。

「まだくるぞっ!!」

レオリオの指差した方向からはガルルモンの咆哮に呼ばれたか更に数体のデジモンが現れていた。

「っ!!」

ハンゾーが姿を見せたデジモンに向かって一枚の手裏剣を投げる。
見る間に二枚、四枚、・・・と分裂して数を増やしていき、百を超える数の手裏剣が飛びかかってきたデジモン達に殺到した。
ハンゾーの念を応用した『手裏剣影分身の術』である。

「今の内に突っ切るぞっ!!!」

突き刺さった手裏剣に怯んでいる隙にハンゾーは走り出す。
その進む先は動乱真っ最中のアントキバの街中。
背後からは何処から沸いているのか、次々とデジモンが姿を見せており、アントキバへと逃げ込むしか道が残されていなかったのだ。
ならば、このまま突っ切って抜けてしまおうということである。
選択の余地無く、皆街中へと駆け出して行った。





「『グー』ッ!!!」

家をぶち抜きながら前方に現れたデジモンを出会い頭のジャンケングーで殴り倒しそのまま走り抜ける。
ゴンは焦っていた。

「さっきから数が物凄いよ!! これじゃ、街を抜けるまでもたないっ!!!」

今、アントキバには1000体近いデジモンがなだれ込んで来ている。
数十メートルも走れば新たなデジモンが顔を出してくる、一瞬でも立ち止まればそのまま追いかけてきてるデジモンの数の暴力に飲まれるという状況にさすがの彼らも焦りを隠せなかった。

「ギャオォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!」

「っ、まずい、追いつかれる!?」

今のデジモンを相手した分の時間のロスでとうとう後ろのデジモン達が追いついてきた。

くそっ、やるしかないか!!!

5人が決死の覚悟を決めた時、空から『何か』が落ちてきた。

「『超ッ念威ィドォリルッ』!!!!!」

『何か』ではない、人だ。
空から降ってきた何者かはそのまま先頭のデジモンの頭に激突し、そのまま貫き地面に着地した。

「な、何だあんたはっ!?」

ハンゾーが突然割り込んできた人物に叫ぶが、

「下がっていろ!! こいつ等は俺達がやるっ、師匠!!!」

相手は取り合わず、右腕のドリルを振り回して敵を牽制する。
そこに更にもう一人空から降ってきた人物がデジモンの頭部を蹴り砕きながら着地する。
2メートルを遥かに超える長身、日の光で逆光となり、色まで判別できないがシルエットから判別できる明らかに少女用と思われるドレスを無理やり着込んだ怪人がそこにはいた。

「此処は俺達が相手をする、あんた等は他所で好きにやりなっ!!!」

そう言い捨て、怪人がドリルの男を引き連れてデジモンの集団に突撃していくのをゴン達はポカンとしながら見送っていた。





怪人とドリルの男が現れてからアントキバのデジモン達は急激にその数を減らしていった。
我に返ったゴン達もデジモンの討伐を行っていたが、狩った数は比較にならないだろう。
日が暮れ、更に朝日が昇る頃、気付けば生き残ったデジモン達もアントキバから撤退しゴン達はこの遭遇戦を生き延びていた。

完全な廃墟とかしたアントキバで瓦礫に腰かけ、ゴン達は半ば放心状態で座っていた。
取り合えず、レオリオは自身の念『インスタントポーション』で作成した飲み薬を配って全員の傷をある程度治すと話を切り出した。

「落ち着いたところで相談なんだがよ、これからどうする?」

取り合えず目的地としていた街がいきなり壊滅してしまい、彼らは身動きが取れなくなってしまっていた。

「お、生きてたか。お前ら」

そこにさっきのドリルの男が声をかけて来た。
たいした怪我もしていない。
先ほどの怪人は一緒ではないようだった。

「あ、お兄さん。さっきは助けてくれてありがと~!!」

ゴンが礼を言うのを皮切りに皆それぞれで礼を言う。

「ん? お前、ゴン?」

「え? 何でオレの名前知ってるの?」

「あ゛・・・それはアレだ、そう、ハンター試験の時に会ってるんだよ。覚えてない?」

「あれ、そうだっけ? ゴメン。覚えてないや」

「いやいや、名前呼ばれてるのを聞いて覚えてただけだから」

「リック、どうだった?」

会話をしているとそこに12、3歳くらいの女の子が会話に割って入ってきた。

「ん、生き残りで見つけたのはここにいる5人だけだよ。そっちはいた?」

「見つからなかったわ。アントキバの生き残りはここに居る5人だけみたいね」

今回の騒ぎで生き残ったのはここに居る者達だけであった。

「なあ、さっき師匠って呼んでた奴はどうなったんだ? やられちまったのか?」

「ん? ああ、初見じゃ分からないか。師匠ならk『ズドムッ』げふぅっ!?!」

ドリルの男ことリックが何かを口にしようとした瞬間、異様に重たい音が響きリックは悶絶しながら地に崩れ落ちる。

「ちょ、おま、大丈夫か!?」

レオリオが崩れ落ちたリックに思わず声をかけるが隣に立っていた少女は特に気にせず自己紹介を始めていた。

「あたしの名前はビスケット=クルーガー、プロハンター。ビスケって呼んでくださいな。因みにこっちの倒れているのはリック=タトプロゥ、弟弟子です。師匠は忙しい方なので既に街を離れましたわ」

「ぐ、・・・まあ、ビスケがそう言うんならそういう事でいいんじゃないかな?」

わき腹を押さえながら苦しそうにそう洩らすリックである。
中々いい音が響いたのだが特に問題なく立ち上がっていた、タフである。
このままでは話が進まないと感じたのか話題を変えてきた。

「俺達はマサドラから辺り一体を監視していたんだがあのデジモンとか言うモンスターが物凄い数でアントキバ方面に移動しているのを察知して偵察に来てたんだけどね、街自体が蹂躙されてるのを見てこりゃだめだ、と戻ろうとした所に頑張って抵抗してるお前らを見つけて思わず割って入ったって訳」

「マサドラ?」

「俺達が拠点にしてる街だよ。今はそれなりの人数が集まってデジモン共が襲撃してきても撃退できる様に要塞都市みたいに改造中だけどな」

それを聞いたクラピカが口を開く。

「先程も助けていただいて恐縮なのだが、どうか我々もマサドラへと案内してもらえないだろうか? 我々もあなた方ほどではないが多少は戦う心得はあるつもりだ」

「それは助かります。戦える戦力が増えるのは大歓迎ですから。では、何時までもここにいる訳にも行きませんしマサドラへ戻りながら話しませんか?」

ビスケの提案で一同はマサドラへと向かって歩き始める。
しばらくしてゴンが口を開く。

「・・・ねぇ、ビスケさん、リックさん。オレ達がグリードアイランドに入ってきた時の小屋の辺りがどうなったか何か知らない? 友達が戦ってたんだ」

「ログイン小屋ですか? そう言えば丸々吹き飛んだらしいと報告が来てましたね。残念ですがそれ以上は・・・」

ビスケは伏せ目がちにそう答える。
ゴン達もテオやハオ達の消息が掴めず、気が沈んでいた。
だが、意を決してゴンは顔を上げ、覚悟の言葉を紡ぐ。

「ビスケさん、リックさん。二人の師匠をオレにも紹介してくれないかな? オレ、もっと強くならなきゃいけない」

その瞳には不退転の決意が宿っていた。










あとがき
大変長らくお待たせしました^^;
4ヶ月ぶりくらいの新作うpです。
お待たせして申し訳ありません・・・え、待ってない? 筆不精ですいません^^;

今回、ゴン達に固有の『発』を披露してもらいましたが、何人か可笑しなことになっております。
それが当然だといわんばかりに漫画から技をパクってくる面子と半年以上一緒に居たので、その辺が微妙に麻痺しているのだと思ってください。

今回の新キャラ、リックは幼少の頃にビスケと縁があったトリッパーです。
今年のハンター試験まで受験を頑なに拒んだり、旅団の動向に異様に気を使っていたり、アリについて調べまわったりと怪しい行動をとりまくったためビスケに尋問されてトリッパーの事と原作のことをゲロりました。
既にG・I島の中に居るのは原作より早い時期にG・Iの事を知ったのでバッテラ氏との接触が前倒しになったため。
リックが擬態の時と本性の時とでビスケの呼び名を使い分けているのはイメージが合わなすぎて呼びかけづらいため、意図的に呼び分けています。


感想、ご意見などありましたら宜しくお願いします。



[8143] グリードアイランド編その3
Name: ぺんた◆5a2c8300 ID:71067292
Date: 2010/03/22 13:23
オメガモンの『ガルルキャノン』が炸裂した時、ハオに出来たことは周囲にいたヒビキ、イブキ、トドロキをスピリット・オブ・ファイアで庇い共に脱出することだけであった。

三人を拾い、全力でオメガモンから遠ざかるように逃げようとした時、視界の端に同じようにオメガモンから全力で遠ざかって行くテオの背中が見えたが、次の瞬間炸裂したガルルキャノンの閃光と爆風によって自身等も吹き飛ばされ意識を失い、気が付いた時テオの姿は何処にも見当たらなかった。

「まあ、お前等三人を助けた俺がこの通り生きているんだから、テオもきっと生きてるだろ。旅団に追いかけられて逃げ切った事もあるんだからきっと平気さ」

そう言うとハオはあっさりとテオのことは棚上げして今後の方針について考え始めた。
ヒビキ達三人もさすがにあっさりしすぎだとは思ったが、自分達を助けてはぐれた事とテオは自分達の中でもっとも強い事、自分等のダメージもあんな死にそうな目にあったにしては特に致命傷も無くピンピンしている事、ハオ自身がテオの生存自体は微塵も疑っていない事を感じたのでそれでいいのか? と思いつつも、「まあいいか」と放置することにした。

実際にはそれなりに怪我をした息も絶え絶えなテオであるがそんなことは知らぬが仏である。

「じゃあとりあえずは先に逃がしたゴン君達を追いかける方が優先ってことですね?」

「そうだな、だが俺たちもダメージ無しって訳じゃないから数日は休んで体力を回復させないと動くに動けないかな」

ヒビキ達三人を庇いつつ逃げたハオのダメージは肉体的にも消費したオーラの疲労的にも他の面子よりも数段ひどい。
庇われたヒビキ達も破壊規模に比べれば被害が軽いというだけで全身余すところなくボロボロであることに変わりは無かった。

「・・・ゴン達が向かったのはアントキの方で合ってるよな?」

「ああ、方角的には合ってると思うよ」

「皆~、寝床出来たっスよ~」

イブキが方針を確認してくるのに合わせてハオが答え、念のためにゴン達の逃げた方向を確認。
ヒビキが答えたところでトドロキが作成していた寝床が完成し、一息つく事となった。





数日後、疲労もしっかり抜けてダメージも回復した事を確認して早速アントキバへと移動を始める四人。
昼過ぎ頃に到着したアントキバは瓦礫の山と化していた。

「・・・あれぇ~?」

「極最近に破壊されたっぽいですね」

目の前の光景に額に指を当てながら難しい顔をして考え込むふりをして現実逃避しているハオに、イブキが現実と言う名のボディーブローを叩き込む。

「あれか!? 休んでないで追いかけるべきだったのか!?」

今度は頭を抑えて天を仰ぐポーズをとるハオ、しかしそこに第三者(トドロキ)のツッコミが入った。

「ちょっと二人とも、遊んでないでゴン君達探すっスよ!」

「「はい、すいませんでした」」

二人は素直に謝り、街へと足を踏み入れるのだった。





「取り合えず、ゴン達の死体はなかったな」

取り合えずゴン達の死体っぽいものは無かったことに安堵しているハオ達四人である。
さすがに原作主人公をこんなイレギュラーな事態で死なせてしまってはちょっとどころではなく寝覚めが悪すぎる。
まあ、グリードアイランドのシステムが生きていたなら死体はストレンジャーズの事務所に転送された可能性もあるが、現状今すぐに「島外」に戻れない以上確かめ様がなかった。
システム側になったはずのイグドラシル勢力がログイン小屋を壊すなどの積極的なシステム破壊を行っていた事から、『死体の外部転送も機能していない=ゴン達は死んでいない』であることを期待するしかなかった。

「ここで死んでないとするなら、他の生き残りと一緒にマサドラにでも行ったんですかね?」

そこらへんの瓦礫を拾い、眺めながらヒビキが呟く。

「どうでしょうね。ハオさん達が鍛えたことで原作の今の時期よりもずっと強くなってますけど、グリードアイランドもおかしくなってますしアントキバまでたどり着けなかった可能性も考えると・・・」

元のグリードアイランドであれば問題無いが今のグリードアイランドでは、とイブキが返答する。

「此処(アントキバ)まで辿り着けなかった可能性まで含めて考えてたらどうにも動けなくなる。今は生きている前提でマサドラまで逃げたと考えて行動するしかない」

とりあえずこのままマサドラまで行ってみるという方針でハオはまとめた。

「ん? 何か飛んでくるっス!」

黙々と瓦礫の撤去を行っていたトドロキが、ふと何かに気付き空を見上げ叫んだ。

「「「ッ!?」」」

それに反応した三人が空を見上げた時、『それ』は既に自分達の目前まで迫っていたこと、そしてその『存在』に戦慄していた。

「今度はデュークモンかよ・・・」

ハオの呟く声が虚しく廃墟に吸い込まれた。




「・・・・・・」

デュークモンは目の前の人間達を見下ろしながら沈黙していた。
目の前の人間達にはイグドラシルから送られたデータに該当があった。

先日のグリードアイランドの入り口であるログイン小屋の破壊任務を担当したオメガモンの配下を下した人間達。
しかも、その後のオメガモンの襲撃でも生死を確認できなかった者達だ。

この街を襲撃したデジモン達の反応が消えたことの調査がデュークモンに与えられた使命である。
最初は元々この街にもいたプレイヤーの反撃によって双方痛み分けの形で決着がついたのだと思われたが、その後最新情報によりアントキバから生還したプレイヤーがいるらしいことを掴み、一つの街を潰した数のデジモンを討伐できるプレイヤーを特定し討伐することがデュークモンの使命であった。

が、すでにアントキバ陥落から数日が経過した状況で、なおアントキバに留まり続けている可能性は低いと判断し生きているならマサドラへと向かった可能性が最も高いと判断して素通りしようとしたのだが、誰かが活動しているのが目に留まった。

状況を見るに彼らがアントキバのデジモン達を撃退したとは考え辛かったが、よく確認してみればオメガモンから通知のあった逃がした侵入者達である。
どの道ブラックリストに載っている以上見つけ次第排除する対象であることに変わりは無いと思い至り『聖槍ローラン』『聖盾イージス』を実体化させた。





「くそっ、アイツやる気満々じゃねぇか・・・」

ハオは毒づきながら身構える。
ヒビキ等も変身アイテムを握り、すぐさま変身出来る様に構えた。

「我が名はデュークモン。人間達よ、生き延びたくば我が槍を振り切ってみせよ!」

デュークモンはそう言い放つと右腕の槍を空へと掲げ、

「『ロイヤルセイバー』!」

光の刀身を伸ばして振り下ろしてきた。

「ちぃっ!」

ハオは振り下ろされた光の槍を掻い潜ってデュークモンへと突撃する。
槍を避けた瞬間に『S・O・F黒雛』を身に纏ったのはオメガモン戦において巨人形態のスピリット・オブ・ファイアが一撃で破壊されたことからの教訓だ。
より密度の高いオーラを身に纏うこの形態ならば、一撃で破壊されることは無いだろうという心算である。
デジモンのランク的に明らかにオメガモンと同格なロイヤルナイツデジモンを相手に油断する余裕は、ハオには無かった。

「オォォォォォオオ!」

叫び声を上げながら近距離からの『鬼火』を撃ち込む。
だが、デュークモンは超反応というべき速度で左腕の盾を回り込ませ、鬼火を弾いた。

「チィッ、硬い盾だっ!」

「当然だ、我が聖盾イージスは何人たりとも打ち破れぬ無敵の盾と知れっ!」

叫びと共にデュークモンは聖槍ローランを横薙ぎに振るい、ハオを迎撃する。

「うぉ!?」

瞬間、オーラを解放して空高くへと飛び上がることで聖槍ローランの一撃を回避する。
咄嗟の機動にオーラが減少し、数瞬動きが鈍ったタイミングで聖槍ローランの突きが向かってくるが、

「俺を忘れんなよ!」

変身完了したヒビキが叩き込んだ『音撃打・爆裂強打の型』が聖槍ローランの軌道を捻じ曲げ、ハオは串刺しを免れる。

「助かった!」


ハオはヒビキに礼を叫びながら、すかさず鬼火を連射し距離を取る。
鬼火の爆炎にまぎれて撃ち込まれた石の玉がデュークモンに張り付く。

「僕のことも忘れないで欲しいなっ、『音撃射・疾風一閃』!」

セリフと共に吹き鳴らした『音撃管・烈風』の音に反応して石の玉が爆発した。

「むっ!?」

突然の至近距離での爆発に驚いたデュークモンはそれに紛れて足元まで飛び込んできたトドロキに気付くのが一瞬遅れた。

「これでも食らえっス!」

トドロキの『音撃斬・雷電激震』。
瞬間、地面が弾け飛び、デュークモンは足を取られて隙を作る。

「なにっ!?」

そこに、

「うぉぉぉぉぉぉおっ!」

赤色の大剣、『S・O・F斬艦刀』を振りかぶったハオが飛び込んできた。

「斬艦刀ォ、炎刃斬りッ!!」

叫びと共に振り下ろされた一撃は、デュークモンを飲み込んで巨大な火柱へと化けた。





「(この野郎、あのタイミングで防ぎやがった)」

ハオは短期決戦で押し切るつもりで炎刃斬りを放った。
だが、炎刃斬りが直撃する瞬間、デュークモンはまたしても超反応により聖盾イージスを割り込ませていた。
S・O・F斬艦刀の火力でも聖盾イージスを突破できていないのは火柱から透けて見える影が健在であることからも理解させられる。

数瞬の後、火柱が急激に膨れ上がり弾けるように消滅する。
デュークモンが聖盾イージスの力を全方位に向けて解放し、邪魔な火柱を払ったのだ。
そして、聖盾イージスに更なるオーラが集中し、

「今度はこちらの番だな。『ファイナルエリシオン』ッ!!」

白色の極光となって解き放たれた。

「(避けきれないっ)」

今のタイミングでダメージが通らなかったのはハオの計算違い。
すぐさま反撃を返してきたデュークモンの一撃を回避できないと判断したハオは、瞬時に『黒雛』を展開し全オーラを防御に回して耐えることを選択する。

極光は、そんなハオを飲み込みアントキバの瓦礫を消し飛ばしながら彼方へと消えていく。

「ハオさんっ!?」

「くそっ!」

トドロキが悲鳴を上げ、ヒビキ怒声を上げながらデュークモンへと突っ込んでいく。
出し惜しみしている余裕など既に無い。
ヒビキの体を真紅の炎が包み込み、ヒビキを『ヒビキ 紅(クレナイ)』へと再変身させる。

「ハァァァァァア・・・ハァッ!!」

そのまま走りデュークモンの懐に飛び込み、音撃棒を叩きつける。
ただの打撃であるはずのその一撃は防御した聖盾イージスにそれまでとは比較にならない衝撃を与えデュークモンの巨体を後方へと押しめた。
『音撃打・灼熱真紅の型(しゃくねつしんくのかた)』による一撃だ。

「むぅ!?」

その意外な一撃の重さにデュークモンはヒビキを排除すべき障害と認め、ヒビキへと向き直る。
トドロキがヒビキと向かい合う位置に陣取り構える。

「イブキ、ハオを探せっ、コイツは俺達で抑える!」

「分かりましたっ」

イブキは瞬時に指示に従い、ハオが吹き飛ばされた方向へと走っていく。
ヒビキが切り札を切った以上、一刻も早くハオに戦線復帰してもらわなければならない。
背後の激突音を聞き流しながら、イブキはハオを探してファイナルエリシオンの発射跡に飛び込んだ。





「我が切り札、ファイナルエリシオンが直撃したのだ。先程の人間は生きてはおるまい」

デュークモンは背を向けて走り去るイブキを横目に見ながらそう呟く。
だがヒビキは不敵に笑うと切り返した。

「人間嘗めんな、データ野郎っ!」

言葉と共に音撃棒を振り下ろす。

「ハァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!」

ドンッドドンッドドドンッドドドンッ!

成熟期程度なら一撃で破壊できるだろう打撃が連続して打ち込まれる。

「笑止!」

だが、音撃打の型を用いても破れなかったデュークモンの防御を抜くには至らず、逆に距離を取らざるを得ない様に聖槍ローランを横に払ってくる。

メギィッ

鈍い音が辺りに響いた。

「なにっ!?」

ヒビキは避ける選択肢を放棄し、自身の体で受け止めたのだ。
大ダメージ必至の一撃をヒビキは避けず、逆にその体で受け止める事でデュークモンの動きを封じる行動に出た。

「今だ、トドロキっ!」

自身にはまだ仲間がいることを忘れてはいなかったから。

ヒビキの声が発せられるか否かの内にトドロキは行動を起こしていた。
『音撃弦・烈雷』の刃の尖端に『硬』を行ってデュークモンの背後から突き刺す。

「な、背後だとっ!?!」

戦闘中、一度も自身の防御を通る攻撃を行わなかった為、些か軽く見ていたトドロキからのまさかの一撃。
僅かにデュークモンの鎧を抜いたその千載一遇のチャンスを逃さず、トドロキは一撃を見舞う。

「『音撃斬・雷電斬震』ッ!!」

ギャンギャギャギャンギャギャンギャギャギャギャンッ!

掻き鳴らされた烈雷から発せられた渾身の音撃から放たれた衝撃波は動きを抑えていたヒビキ諸共デュークモンを吹き飛ばし、辺り一面を土埃で覆い尽くした。





ボロボロであったが何とか生きていたハオを拾って戻ってみると、既に戦いはクライマックスを過ぎようとしていた。
イブキは左肩にハオを引っ掛け、右手で『音撃管・烈風』を構えて土埃を見据える。
やがて土埃ははれ、烈雷を構えたトドロキ、片膝を地についているデュークモン、うつ伏せに地面に倒れこんでいるヒビキの姿が見えてきた。

「驚いたな、本当に生きているとは」

デュークモンがイブキとハオを見つめながらそう呟く。

「・・・言っただろ? あんま人間嘗めんなって」

倒れていたヒビキがデュークモンの呟きに返事を返す。
鬼の姿もボロボロで変身も今にも解けてしまいそうになっているがその姿は誇らしげであった。

「・・・く、くくく、くはははははははっ!!」

デュークモンが突然高笑いを上げる。
その突然の奇行に全員が行動を起こせずにいると発作が治まったデュークモンは喋りだす。

「くっくく、いや、すまん。こんなに痛快な気分を味わったのは初めてなモノでな。許せ。
 ・・・我が君、イグドラシルは人間の排除に頑なであったが、なるほど、僅かな手勢で我とここまで張り合うポテンシャルを持つのが人間であると言うなら我が君の懸念も理解できる」

その言葉を聴き、ハオ達は立ち上がり皆戦闘続行の意思を見せるが待ったをかけたのはデュークモンであった。

「まぁ待て。もうお前達と戦おうとは思っておらぬ。
 確かに我は人間を・・・お前達を過少評価していたようだ。我に片膝つかせるほどの力を魅せたお前達を滅ぼす意思は既に我には無い」

「・・・どういうつもりだ? お前、ロイヤルナイツだろ? イグドラシルの指令は絶対なんじゃないのか?」

デュークモンの態度の急変についていけず、ハオは思わず訪ねてしまう。
特に考えずぽろっと出てしまった言葉であったが、それに追従する様に詰問する言葉がデュークモンにかけられた。

「そこは私も聞きたいな、デュークモン。貴様はイグドラシルより賜った使命を放棄するつもりか?」

「「「「!?」」」」

ハオ達四人は慌てて声が聞こえてきた空を見上げる。
そこには腕を組み、こちらを見下ろすオメガモンの姿があった。





「・・・我が盟友オメガモン、何故お前が此処にいる?」

「質問しているのは私なのだが・・・イグドラシルからお前を監視するように指示されたのだ。
 数日前にも島外からの侵入者を意図的に見逃したな? イグドラシルはご存知だったぞ」

「!!」

「・・・まあいい、お前の沙汰は後だ。まずはそこの人間達を始末しなければな」

そう言い、オメガモンはグレイソードの切っ先をハオ達へと向け行動を起こそうとするが、

「待て、オメガモン」

その視線の先にデュークモンが割り込み進路を妨害した。

「・・・どういうつもりだデュークモン。まさか本気でイグドラシルを裏切るつもりか?」

「・・・私はこの人間達が生きるに値する存在だと感じた。
 ・・・この気持ちを裏切るまいとするならば、イグドラシルを裏切ることになるのやも知れん」

デュークモンは引かない。
だが、デュークモン自身にイグドラシルから離反するつもりが無くとも、この行為そのものがイグドラシルの意向を無視したものであることも事実。

「残念だ、我が友デュークモン。・・・貴様をイグドラシルへの反逆の咎により消去する」

オメガモンは静かにデュークモンへと宣告した。

「・・・お前達は往け」

背後に庇う形となっていたハオ達へと呟き、デュークモンは空へと舞い上がる。
オメガモンと共に空へと昇っていく二体を見上げながらイブキが零した。

「・・・で、どうします?」

まだまだ余力を残していたとは言え、ハオ達四人を相手にしてデュークモンの受けたダメージは相応のものだ。
その辺の有象無象であればともかく、同格のロイヤルナイツと戦うには致命的なハンデであった。

「・・・今の俺達は消耗しきってる。そもそもあそこまで昇る余力も無い。
 それに・・・どういった心算かは知らないが、デュークモンが俺達を逃がすためにオメガモンと戦おうとしていることは、事実だ。
 参戦する余力が無い以上、ここにいることに何の意味も無い」

「んじゃ、とっとと逃げないと不味いんじゃない?」

「そうっスね」

ハオ達は全力でその場から逃走を始めた。
目指すはマサドラ。
このまま彼らは脇目も振らずにマサドラまで走り続けた。





「・・・我が盟友オメガモン、最後に一つ頼みがある」

空へと昇りながらデュークモンはオメガモンへと語りかける。

「・・・何だ?」

「彼等にも今一度、機会を与えてはくれぬか?」

「それは出来ん。貴様を消去した後は奴等の番だ。 ・・・もはや、これ以上の言葉は無用っ!」

「・・・そうか、残念だ」

地上の人影が認識できなくなるほどに高く舞い上がったデュークモン、オメガモンは会話を止めて向かい合う。

「オォォォオッ!」

「ハァァァアッ!」

オメガモンがグレイソードを振りかぶり、一瞬で間合いを詰め振り下ろす。
デュークモンは聖盾イージスによってそれを受け止めるが、戦いのダメージから回復していない状態ではオメガモンのパワーを抑えきれずに押し込まれる。

「くっ」

パワーで対抗できないことを瞬時に悟ったデュークモンは体ごと位置をずらしグレイソードを聖盾イージスの表面を滑らせる様にしてやり過ごす。
直後、隙の出来たオメガモンに聖槍ローランの突きを叩き込む。

「ハァァアッ!」

「むっ」

連続して叩き込まれる突きに、今度はオメガモンが後退する番だ。
後退しながらも連続突きを冷静に観察し、タイミングの合った一撃をグレイソードで迎撃、弾く。

槍の連撃が止んだ瞬間、すかさず『ガルルキャノン』を構え、発射する。

だが、デュークモンも素早く盾を前面に構え、防御の体勢を取る。
ガルルキャノンの閃光に押され、デュークモンはジリジリと押し込まれていく。
が、閃光が治まった時デュークモンは未だ健在であった。

「今度はこちらの番だな。『ファイナルエリシオン』ッ!!」

聖盾イージスが一際強く輝き、盾からすべてを飲み込む極光が解き放たれる。
その輝きはハオに対して使用したときよりも強い。

「ちぃっ!」

オメガモンとてそれを受ければ大ダメージは必至。
全力で回避し、射線から逃れる。

「オォォォォオッ!」

更にグレイソードを抜き放ち接近戦を挑む。

「くっ!」

万全の状態であれば互角に力比べも出来ようが、今の消耗したデュークモンではオメガモンとの力比べに持ち込まれるのは不味い。
が、ファイナルエリシオン発射直後の硬直で動けないデュークモンは聖槍ローランでグレイソードを受け止めるしか選択しはなかった。

「ぐ、ぐぎっ」

「オ、オオッ」

ジリジリとグレイソードに押され聖槍ローランが下がっていくが、突如力が抜けたかのように槍が押し込まれデュークモンの右肩へとグレイソードが食い込んだ。

「「!?」」

デュークモン、オメガモン共に驚きの表情を見せるが斬られたデュークモンよりも斬ったオメガモンの方が次の行動を起こす。
それは戦うための生命体と言えるデジタルモンスターの本能のようなものであったのか。

「『オールデリート』!!」

グレイソードが一際強く輝き、その光に押されてデュークモンの体が引き千切られた。





「ぐ、ぐぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!?」

『オールデリート』。
『デジタルモンスター』オメガモンのそれは、斬り付けた対象のあらゆるデータを削除する必殺の一撃である。

その効果は念によって生み出されたこのオメガモンの一撃にも再現されている。
オールデリートとは刀身に込めたオーラによって対称に切り込み、剣撃を受けた対象に刀身から解放したオーラによって内側から破壊し再生不能なダメージを与える対念獣用の必殺技である。
そして、その破壊力は直撃すれば同じロイヤルナイツ級デジモンですら致命傷を避けられないものであった。

だが、

「(直前の脱力感・・・、イグドラシルが、意図、的に・・・)」

砕けた体が地に向かって落ちていくのを感じ、デュークモンは最後の最後で己の身に起きた異変へと考えを馳せながら意識を閉ざした。





「・・・・・・」

オメガモンはデュークモンを斬った体勢のまま動けずにいた。

確かにオメガモンはデュークモンを消去すると言い、本人も前言を撤回する気は毛頭なかった。
だが、それを実際に実行した時のこの後味の悪さのなんということか。

更に横槍を入れられての決着であったことも大きい。

基本的にグリードアイランドのデジモン達はDWSS(デジタルワールドサーバーシステム)によるバックアップによってその存在を確立している。
デジモンを存在させるシステムがDWSSに依存している以上、野良デジモンであろうがロイヤルナイツであろうがそれは変わらない。
イグドラシルが管理AIであることを考慮しても、デジモンの存在基盤からデュークモンを完全に切り離すことは出来ない。
だが、一瞬だけその繋がりを弱めることは出来た。
最後の鍔迫り合いの際、デュークモンが決して避けられないタイミングでイグドラシルはデュークモンに供給しているDWSS(デジタルワールドサーバーシステム)からのバックアップを一瞬だけカットしたのだった。

「・・・・・・っ!!」

オメガモンはこみ上げる怒りを押さえつける。
最後の横槍はオメガモンの騎士としての誇りを侮辱するものであった。

何故、イグドラシルは戦いの邪魔をした?
何故、最後まで自分に任せてくれなかった?
イグドラシルは自分がデュークモンに勝てないと判断したのか?

様々な感情があふれそうになるのを押さえ込みながら、オメガモンはデュークモンが落ちていった辺りを眺め、ふと、先程戦いの前にデュークモンが言っていたことが頭に思い浮かぶ。

「(『彼等にも今一度、機会を与えてはくれぬか?』・・・か)」

しばしその場に留まっていたオメガモンは再び動き出す。
イグドラシルの元へ帰還するため、リーメイロへと。

オメガモンが立ち去った空には静寂だけが残っていた。





あとがき
グリードアイランド編その3をお届けします。
今回はハオ視点でのお話です。
ある程度書いたところでプロットに矛盾が出てしまったので修正してたらそれだけで一週間以上使ってしまいました。
まあ、全部言い訳ですね^^;


感想、ご意見などありましたら宜しくお願いします。

※3/22 13:13 ウィッシュ様、指摘のグリードアイランドでの死体の扱いに関する考察を追加しました。



[8143] グリードアイランド編その4
Name: ぺんた◆8f022c7e ID:1cda142a
Date: 2010/04/19 00:27
「ギャオォォォォォォォォォォォンッ!!」

「ハッ!」

ブレイドモードの左腕を一閃。

「ギャンッ!?」

その一撃で目の前のデジモンを斬り裂き、戦闘不能に追い込む。

「うむ、何とか復調したかな」

オメガモンとのログイン小屋での一戦から二週間、テオはやっとの事で自由に動けるまでに回復したのだった。










二週間、それがテオが復調するまでにかかった時間である。

当然、今からゴン達を追いかけようにも居場所が分からない。
まさか未だにアントキバ辺りにいる筈も無いだろうし、ひょっとしたらマサドラ辺りにでもいるのかもしれないが二週間もあればハオ達の方が先に見つけて合流しているだろう。

テオは体を癒している間にそんなことを考え、ゴン達のことはたぶん生きてるだろうハオ達にまかせることにした。
生存確認も出来ていないハオ達に丸投げする辺り、テオの我が道の往きっぷりも相当なものである。

どういった流れでグリードアイランドがトリッパーに乗っ取られているのかは知らないが、GM達も指をくわえて見ている訳でも無いだろう。
取り合えずGMに接触することが状況を知る為には最善だとテオは判断した。
そういう訳でテオは自身の目的でもあるGM達を探してグリードアイランドを徘徊しているのであるが、自由に島外に出られないとなると紙の補給が困難な為、左腕の習熟も兼ねて紙技を封印して戦っていた。

グリードアイランドにログインした際には取り寄せバックを持ち込んでいたのだがオメガモンとの戦いの中で破損させてしまっていた。
修理するより一から作った方が早いレベルの壊れ方である。
そして、テオ達は拠点を用意したら本社から必要な機材及びアイテムを取り寄せしようと考えていた為、他のアイテムを持ち込んではいなかった。
まさか入った途端にあんな目に遭うとは思っていなかったのだが、しょっぱなから痛恨であった。

取り合えずの目的は島の沿岸にある『ソウフラビ』に居ると思われるGMの一人、レイザーである。

ばったりと出くわした不幸なデジモンをブロウクンアーム、ブレイドアームを駆使して(マシンガンアームは盛大に紙を使用するので自重)練習台にすること十日あまり、沿岸部をぐるりと回ってやっとこさソウフラビっぽい灯台の見える街を発見した。










ソウフラビは街と言うよりは廃墟であった。
懸賞の街アントキバと同様に、この街もデジモンの襲撃にあったのだ。

「(だが、デジモンに蹂躙されたにしては原型の残った建物も多い)」

不思議に思いつつ周りの廃墟を観察していたテオであるが、深くは考えずに目的であるレイザーに会うために灯台下の体育館へと向かう。
踏み込んだ体育館は、ある程度予想していたことだが内部も荒れており、無人であった。

「う~ん、此処にいないとなるとリーメイロかなぁ?」

とは言ったものの、街が壊滅していては地図を買うことも出来ない。
ソウフラビのように海岸線に沿って歩いていれば着く事が分かっているのとは違い、リーメイロの正確な方向すらわからないのではお手上げだった。

「(さて、どうしようか)」

と考えているとテオの感覚が誰かが自分を観察している視線を感じとった。
街に入った頃から感じていた視線であるが、先にレイザーの有無を確かめたかった為無視していた視線だ。

「(そう言えば、生き残ったとして、この廃墟と化した街に住み続けるものなのかな?)・・・・・・まあ、闇雲に探すよりは聞いてみる方がいいか」

テオはそう呟くと、視線を感じる方向へと目を向ける。
ばれた事を悟ったのだろう監視者が慌てて逃げる気配を感じるが、

「・・・・・・そんな急いで逃げるなよ、少し話を聞きたいだけだから」

瞬歩を使い、瞬時に監視者の前面へと回りこんでみせた。

「な、いつの間にっ!?」

「(ん、こいつは?)」

監視者が知覚できない速度で回り込んだテオだが、監視者の顔を見るとなにか引っかかるものを感じた。

「(あぁ、そうか。コイツはレイザーの部下の海賊役の一人だ)」

程なくしてそれを思い出したテオだが、その間僅かとは言え黙りこくっていた為に相手に無用の警戒を与えてしまった。

「っ、くそ!」

「あ、おいっ」

慌てて飛び退いた海賊A(名前が分からん、原作で相撲担当だった奴に飛び蹴りした奴?)に声をかけたが、次の瞬間には自分が複数の人間に囲まれていることに気付いた。
即座に『円』を展開。
半径20メートル程の空間に5人を確認。
間違いない、彼等は皆レイザー配下の海賊達だ。
円を解除し相手の出方を伺っていると、テオを囲んでいる海賊の中の一人が問いかけてくる。

「貴様、真っ先に灯台へ向かったという事はあそこの意味を知っていたな?」

「・・・・・・ああ、俺はあそこにレイザーが居る事を知っていて訪ねてきた。
 だがすでにどこかへ移動した後だったみたいだな。
 悪いが、レイザーがどこに行ったのか教えてくれないか?」

とりあえず、ダメ元で聞いてみるテオ。
しかしながら、やはりというか、返答はNOであった。

「教えるわけが無いだろう。悪いがお引取り願おうか」

海賊Aの言葉で周りの海賊達も臨戦態勢に入った様だ。
要するに、居座るつもりなら殺すことも辞さないって事か。

「(仕方ない。此処は一度、出直すか?)」

とりあえずこの海賊達をボコるのは後々を考えれば自重するべきだ。
テオはここは一旦引いておくべきだと判断した。

「ああ、分かった。残念だけど、一旦引かせてもr《ピリリリリッ》」

海賊達に一旦別れを告げようとしたタイミングで海賊Aの携帯が着信音を鳴らす。
すぐさま海賊Aはそれを取り、電話先の相手の話を聞くと全員を指示して何処かへと去っていってしまった。

突然解放されてポカン、と一瞬呆けてしまうテオである。
しかし、すぐさま気を取り直すと海賊達を追いかけて走り始めた。
不審者(テオのことである)の尋問を切り上げて急に全員して動いたということは何かしら看過出来ない事態が起きたと言うことだ。
どこにいるかも分からないほかのGMやリーメイロを探すよりは海賊達に引っ付いてレイザーの情報に関して譲歩を引き出せるネタを探す方がマシだろう、とテオは判断した。










海賊達は街の反対側まで走り抜けると、その場に居た数人と合流した。
レイザー以外の海賊達が勢ぞろいした。

海賊達が合流してすぐに、視界の先から砂埃が立ち始める。
やがて、それは視認出来るほどに大きくなるとデジモンの群れであることが確認できた。

「なるほど、彼らがデジモンを撃退しているからソウフラビは街の原型を残しているのか」

もうすぐデジモンと海賊達がぶつかろうとしている所を更に離れた建築物の屋上に陣取って見物しているテオ。
苦戦している様なら参戦するかね、と楽観視していたが、ふと視線を戦場より遥か先へと向ける。
そこからは隠そうとする気のまるで無い圧倒的なプレッシャーが吹き付けてくるのを感じる。
先日のオメガモンのように。

「だが、この荒々しさはオメガモンとは違うな・・・・・・別のロイヤルナイツかぁ」

相手としては不足は無いが、ちょっと無理ゲーすぎるんじゃないかな、と思わないでもないテオであった。










海賊達の一人、ボボボは目の前のデジモンを殴りながら愚痴を零していた。

「くそっ、これで三度目の襲撃じゃねぇかっ、レイザーの野郎はまだ戻らねぇのかよっ!」

ボボボの言うとおり、リーメイロをデジモンに乗っ取られてから今日までに三度襲撃を受けていた。
リーメイロが乗っ取られた後にやってきた最初の襲撃を乗り切った日、レイザーから「連絡あるまでソウフラビを死守しろ」などと言う命令を受けていなければとっくに何処かに逃げている。
絶対服従条件でGMに雇われている以上、レイザーの命令に逆らってソウフラビから脱出したら制裁で殺されることが分かりきっているため必死に戦ってきたが、いい加減彼らも限界であった。

「へっ、いっその事このままバックレちまうってのはどうだ?」

近くにいた海賊が、目の前のデジモンを叩きのめしながらボボボの愚痴に乗って軽口を叩く。

「馬鹿言ってねぇでさっさと仕事しろっ!」

それを聞いていた別の海賊が目の前のデジモンを殴り倒しながら怒鳴る。
その辺の野良モンスターを核にして発生したデジモン程度なら、彼等レイザー配下の海賊達でも何とか対応できていた。
だが、それもここまで。
ボボボ等3人が戦っている場所に大きな影がかかる。

「『ブレス・オブ・ワイバァァァァァアン』ッ!」

雄叫びの様な声が響き、空を見上げたところで巨大な何かに押し潰された。










視界の端に巨大なドラゴンの影が躍る。

「な、何だ!?」

海賊達が叫ぶ声を聞き流しながら、テオはその巨大なドラゴンの影がその場に居た海賊を周りのデジモン達と街の一角をもろとも巻き込んで消し飛ばしたのを目撃した。
直後に襲ってきた衝撃波に耐えながら、まさにオメガモンのガルルキャノンに勝るとも劣らない一撃を放ったそのデジモンをテオは視界に捕らえていた。

「くそっ、デュナスモンかっ!」

相手の姿を確認したテオは、やはりロイヤルナイツデジモンであったことに悪態を付くもすぐさま近くにいた海賊に声をかける。

「おい、海賊っ!」

「!? な、貴様っ、ついて来たのか!?」

「そんなことはどうでもいい、取引だ。
 お前達が逃げ切るまでアレの相手をしてやるからレイザーの居場所を教えろ」

「き、貴様は阿呆か? あんな化け物の足止めを一人で出来ると思っているのか!?」

「足止めだけならな。早く答えてくれないか、そろそろ奴が動き出しそうだ」

視線を送るとブレス・オブ・ワイバーンの爆炎の中から人影が歩いているのが見えた。
翼の影が見えるその存在は間違いなくデュナスモンだ。
それを見た海賊は顔色を変えてテオの取引に応じることにした。

「わ、わかった。条件を飲む」

「取引成立だな、ちゃんと取り立てに行くから逃げ切れよ」

テオはそう言うと後は脇目も振らずにデュナスモンの元へと飛び出していった。










「さて、後はどうやって生き延びるかだが」

実際のところ、テオにデュナスモンをどうにかする算段など無い。
だが、この状況でレイザーの居場所を知っていそうな海賊達を逃がすには自分が囮になるしかなかった。
少なくともテオはそう思ったからわざわざ囮を買って出たのだ。

「ほう、さっきの奴等よりは歯ごたえのありそうなのが来たな」

デュナスモンが目の前に降り立ったテオを一目見てそう呟く。

「そりゃどうも。歯ごたえがあり過ぎて折れても知らんよ?」

適当に挑発を返しながら考える。
目的はデュナスモンの足止めだ、どうにかして時間を稼げばいい。
オメガモンのときにロイヤルナイツデジモンとの力の差は理解させられている。
素早く左腕のブレイドアームを起動させる。

「ふん、口の減らん奴だ。ならば実際に試してやろうかっ!」

「くっ」

デュナスモンはその巨体に似合わぬ素早い動きでテオへと詰め寄り、振り上げた右腕を叩きつけるように振り下ろす。
それにブレイドアームの刃を叩きつけるようにして無理矢理軌道を逸らし同時に剣撃の反動で右に抜けるように動こうとするが、デュナスモンの左腕が薙ぎ払う様に振るわれ咄嗟に右腕を合わせる様に出して防御せざるをえなくなる。
更に、防御に出した右腕を掴み取られ身動きを取れなくされてしまった。

「はっはっはっ、そんなものか、人間!」

「ッ、勝ち誇るにはちょっと早いぞ!」

テオの言葉と同時に右腕が膨れ上がる。
常に体の表面に展開している紙の装甲を解放して右腕を巨大化させてデュナスモンの拘束を無理矢理外す。

「吹っ飛べ!」

右腕の拘束を外した勢いのままに『紙技・巨人の拳(ギガントナックル)』を発動して殴りつける。

「ぐぉっ!?」

予想外の攻撃だったのか、まともに食らったデュナスモンはそのまま殴り飛ばされ建物の廃墟に突っ込み、衝撃で建物を完全に崩壊させた。
テオは殴りつけた体勢を立て直す暇も惜しみ、すぐさまその場から移動する。
直後、寸前までテオのいた場所へとデュナスモンの突っ込んだ瓦礫の山からビーム砲が飛んできた。

デュナスモンの技の一つ、『ドラゴンズロア』だ。
掌に集中されたオーラをビーム砲として撃ち出す技である。

瓦礫を弾き飛ばしつつ連射してくる『ドラゴンズロア』を必死にかわしながらテオは逃げる。
一発でも当たってしまえば確実に足を止めさせられる、そうなれば死ぬまで連射され続けるだろう。
無論、そんな終わり方などまっぴらなテオは、『ドラゴンズロア』の連射をやめさせるために紙の温存などしている場合ではないと覚悟を決めた。

「『紙技・鏡像紙分身の術』!」

廃墟の建物の影に回りこみ、デュナスモンの視界から外れたと同時に紙技を発動。
言葉と共にテオの服の隙間から多量の紙があふれ出て、刹那の間に三体の人型へと組み合わされる。

「行けっ!」

本体の号令でそれぞれ別々の方向へと散る分身達。
最初に飛び出した一体目の紙分身に即座に標準を合わせたデュナスモンだが、次の瞬間逆方向に回り込んでいた二体目の紙分身が伸ばした紙の触手が腕に巻き付き攻撃を妨害した。

「何っ!?」

予想していない方向からの攻撃にデュナスモンは慌ててそちらを振り返るがそこには先程標準を合わせていた筈の敵の姿。
瞬時に自分がはめられたことを悟ったデュナスモンは、自分を拘束しているほうの敵を引きずり込もうとするが、

「まだまだっ!」

「ちぃっ!?」

引っ張られた紙分身はそのままデュナスモンに殴られる直前に念を解き、紙吹雪となってデュナスモンの周囲を舞う。
攻撃を行い一瞬動きが硬直した瞬間に、一体目と三体目の紙分身が瞬歩でデュナスモンの背後へと回り込む。
そして瞬時にデュナスモンに組み付くと閃光と化して周囲の紙吹雪ごと自爆してのけた。

「・・・・・・名付けて『紙技・ウルトラダイナマイトの術』って、あんまり効いてないみたいだな」

「多少は焦げたがな。この程度の爆発でこの俺に致命傷を与えられるとでも思っていたのか? 」

廃墟の建物の上に瞬歩して姿を現したテオが技名を呟いていると、当たり前のように爆煙の中からデュナスモンが現れる。
その全身は至近距離での爆発を受けて多少のダメージは受けたようだったが、本人の言うとおり致命傷には程遠いようだ。
自身の全AOP(健在オーラ)分の威力の自爆攻撃を受けても特に目立ったダメージが通っていないのを確認すると、右腕の裾から多量の紙を取り出し空中で龍の形に組み上げる。
テオの切り札の一枚、『紙技・紙式神【爆龍】』だ。
指向性爆薬を連続で叩き込むのに等しいこの念技は、相手のオーラ防御を紙爆雷で削り穴を開ける。
この念技は圧倒的格上と戦う時こそ真価を発揮する。
更に左腕のブレイドアームへと、残りのオーラを集中させる。

「これならどうだ? 『爆龍』と『超魔爆炎覇』のコンボだっ!」

言葉と同時に右腕を振り落とす。
天に舞う紙の龍がデュナスモンに向けて突撃をかける。

「しゃらくさいわっ!」

デュナスモンもただ黙って見ている訳ではない。
全身のオーラの輝きが増し、デュナスモンを巨大なドラゴンの影が覆う。

「『ブレス・オブ・ワイバァァァンッ』!」

叫びと共に空へと飛び上がるドラゴンの影はそのまま『爆龍』と衝突し、しかしその爆発の全てを受け止めてなお健在であった。
莫大なオーラを纏った体当たり。
その圧倒的なオーラ量に一点突破を図った『爆龍』の方が耐えられなかったのだ。

「んなっ!?」

切り札の一つが破られたことも脅威ではあるが、それ以上にたった今ソレを破ったエネルギーの塊が自分に向けて降って来るのを見てテオは恐慌に駆られる。
あんなものが直撃したらテオのレベルでは骨も残らない。

「ちぃっ!」

しかし、『爆龍』からの追撃のモーションに入っていたテオには『ブレス・オブ・ワイバーン』を回避する方法がなく、辛うじて攻撃準備に入っていた『超魔爆炎覇』を迎撃に回すのが精一杯だった。

「オォォォォォォォォォォォォォオッ!!」

『ガァァァァァァァァァァァァァアッ!!』

雄叫びを上げてぶつかり合うテオとデュナスモン。
ソウフラビの街の一角が激しい光に包まれる。

天秤はすぐに傾いた。
『ブレス・オブ・ワイバーン』のドラゴン型のオーラとぶつかり合った『超魔爆炎覇』は数瞬の拮抗の後、ブレイドアームの刀身からジリジリと削れ消えていく。

「(あ、やっぱ無茶だった。これは死んだかな?)」

削れていく刀身を見ながらテオはそんな感想が心に浮かぶ。
少しずつ迫ってくる死の時間の中、テオは迫りくるドラゴンの影を払う方法を一向に見つける事が出来なかった。









あとがき
グリードアイランド編その4をお届けします。
今回から、一人はぐれたテオの話です。

テオルートで出現したロイヤルナイツはデュナスモン。
ちょっと粗暴なキャラとして書いてみました。



感想、ご意見などありましたら宜しくお願いします。

※2010/4/19 修正



[8143] グリードアイランド編その5
Name: ぺんた◆8f022c7e ID:1cda142a
Date: 2010/04/19 00:36
「ぐ、ぎっぎぎ!」

テオの『超魔爆炎覇』は、僅かな拮抗の後『ブレス・オブ・ワイバーン』の圧倒的オーラに飲み込まれ刀身ごと噛み砕かれ消えていく。
『ブレイドアーム』の刀身が半ば以上崩壊した状況で尚、デュナスモンの『ブレス・オブ・ワイバーン』の勢いは衰えを知らない。
更に刀身が削れていくかと思われたとき、『ブレス・オブ・ワイバーン』の圧力に耐え切れなくなったのか、刀身ごと左腕が弾かれた。

「チィッ!?」

更に、弾かれた衝撃によるものか想定外の大威力を受け続けた弊害か、『ブレス・オブ・ワイバーン』の圧力に弾かれた『ブレイドアーム』はその基盤である左腕の義手ごともぎ取れ、彼方へと吹き飛んでいく。

「ッ!」

もぎ取れ、後方へと弾き飛ばされていった左腕の義手を気にする暇も無く、自身に迫ってくる巨大なドラゴンの影をにらみ付けるテオ。

「ぁぁぁぁぁぁぁぁああっ!!」

死を目前にして急激に加速された精神が、人生最高の速度で念技を発動させる。
右腕から音を置き去りにする速度で放たれた『紙技・巨人の拳(ギガントナックル)』はしかし、眼前の巨大なドラゴンの顎に飲み込まれ無常にも燃え、朽ちて逝く。

「ッ! く、そ・・・・・・」

もはや打つ手無く、目の前でその巨大な顎を開けた姿を悔しそうに見つめるテオ。
そのテオの最後の抵抗の様に伸ばされた右腕ごと、巨大な光輝くドラゴンが全てを飲み込み、爆ぜた。










そこは、僅か数時間前まではまがりなりにも街の形を保った土地であった。
今はただ、いくつもの巨大なクレーターがそこかしこに散見し、まるで隕石が雨あられと降り注いだかのような有様であった。
その、嘗ては『海辺の街 ソウフラビ』と呼ばれた土地は、たった一体の存在によって平地へと均されてしまった。

「・・・・・・ちっ」

それを成した存在であるロイヤルナイツが一体、デュナスモンは街の掃討を果たしても心穏やかではなかった。

イグドラシルより彼に与えられた本来の任務は、実際のところはソウフラビの壊滅ではなくそこで抵抗を続ける人間達の掃討である。
本来であればどうということの無い任務はテオの横槍によって標的達が逃げる時間を稼ぐことで失敗に終わっていた。

街中を虱潰しに探したが結局それらしい影を見つけることは叶わなかった。

テオがデュナスモンの足止めを行っていた数十分の間に既に街から撤退を完了していたのだ。
少なくともテオは海賊達を逃がすという自身の目的だけは果たすことが出来たということだった。

デュナスモンの眼前には、熱で熔け、歪み、刀身も半ばから折れたテオの義手が地面に転がっていた。

デュナスモンはそれを見ても特に感慨も沸かない。
無謀にもロイヤルナイツたる己に挑み、破れた敗残者であるとの認識しかない。
そして、自身の任務を失敗させた小賢しい輩。

「・・・・・ふんっ」

その義手の成れの果てを蹴り飛ばし、デュナスモンはイグドラシルの元、リーメイロへと帰還していった。










「・・・・・・ん?」

マサドラの端、鍛錬の場として使用している空き地にて日に日に力を増してくるゴン達4人を相手に組み手をしていたハオであるが、何かしかをふと感じて思わず空の彼方を見つめていた。

「隙ありっ!」

そんな大きな隙を見逃す道理も無く、レオリオが殴りかかるが、

「いや、叫んじゃダメだろ」

「ぐげぇっ」

瞬時に編まれた『スピリット・オブ・ファイア』がレオリオの頭上へとゲンコツを落として地面に叩きつけられる。
だが、レオリオごと地面にたたきつけた『スピリット・オブ・ファイア』の腕の影から鎖が飛び出してくる。
クラピカの『追尾する鏃の鎖(スクェアチェーン)』だ。

「むっ」

鎖を認識すると同時に背後へと飛び、鎖をかわす。
だがそれはクラピカの誘いだったようだ。

飛び退き、『追尾する鏃の鎖(スクェアチェーン)』を振り切ったのもつかの間、背後から巨大な圧力を感じる。
振り向くまでも無く分かる。
背後にはハオより更に高く飛び上がったキルアが右手に生み出した雷の塊を振りかぶり、今まさに振り下ろさんとしていた。

キルアの新技『落雷(ナルカミ)』である。

「『スピリット・オブ・ファイア』ッ!!」

ハオの叫びと共にキルアとハオの間に『スピリット・オブ・ファイア』が割り込んでくる。
直後に炸裂した『落雷(ナルカミ)』だが、『スピリット・オブ・ファイア』に阻まれハオには届かない。
だが、キルアの顔には作戦失敗の焦りはなかった。

「やれっ、ゴン!」

「っ!?」

その言葉に未だ一人迎撃していない人物がいたことを思い出すハオだが、その行動はこの状況では致命的に手遅れであった。
ガシッっと効果音が聞こえそうなほどにしっかりと背中から組み付かれる。
キルアの迎撃に意識を割きすぎて見失っていたゴンが背後に回りこんでいたのだ。

「『最初はグーッ』!」

冷や汗が出てくるようなオーラの高まりを背中に感じ慌ててハオは負けを認める。

「待った、参ったからっ! 俺の負けだからっ!!」

さすがにくっつかれた状態で『ジャンケングー』をされたらたまらない。
模擬戦で戦線離脱する羽目になどなりたくないハオはさっさと降参することにした。

「やった~、勝ったぁ!!」

イェーイ、と手を叩き合って喜んでいるゴンとキルアを見ながらハオは思う。
この僅か一ヶ月弱の間、ビスケの指導を受けたことで4人ともに軒並み成長していた。
覚悟完了したゴンとキルアの成長率はキメラアント編を読んで知ってはいたが、実際に目の当たりにすると薄ら寒いものすら感じる成長速度だ。

既に4人とも急激に力を付けて来ている。
オーラ量も急激に増加し、グリードアイランドにログインする前とは既に別人のようであった。


「あら? ホントに負けちゃったの?」

同じく空き地でゴン達の兄弟子に当たるリックとハンゾーのコンビを相手に模擬戦をしていたビスケが話しかけてきた。
適度にボコられたらしく、リックは地に崩れ落ちて気絶していた。
ハンゾーは近くの木の枝にぶら下がって伸びていた。

まあ、いつも通りの光景だ。

「ええ、さすがにもう4対1は無理ですね」

「まだ、一ヶ月と経っていないのにたいした子達だわさ」

「やっぱり覚悟が違うんでしょうね~」

ログイン時にまったく役に立ず、その場から一刻も早く逃げる以外に足手纏いにならない方法がなかった事がよほど腹に据えかねたらしい。

「あんたはまだまだ『格闘術』が未熟みたいだわいね、見てあげるからかかってきなさい」

ビスケはそう言いながら構えをとる。

「お願いします」

ハオも構えをとりビスケへと詰め寄る。

実際のところ、ビスケの子供姿の時のオーラ量はハオの3分の1近い。
それでもかなり本気で殴りかかっても尚、余裕で捌かれるのだから『流』の練度も『格闘術』の習熟度も桁が違うことが伺える。

「(伊達に57年も生きてはいないって事だよな)」

などと失礼なことを考えていると次の瞬間には強烈なアッパーが決まりハオは空を舞っていた。
そのまま顔面から地面へとダイブする。
一度途中で『スピリット・オブ・ファイア』で空に浮いて逃れてから、わざわざ脳が揺れるように殴ってくるので着地までに『スピリット・オブ・ファイア』を出す余裕がない。

「何か失礼なことを考えたでしょ、女のカンを舐めんじゃないわよ」

「……す、すいません」

目下のところ、ハオの目標はこのアッパーを見切ることだったりする。





実際、こうしてゴン達のついでに修行を見てもらえることはハオには嬉しい誤算があった。

バッテラ氏の目的達成によってヨークシンのオークション後に行われるはずの選考会などは軒並み無くなってしまったため、世界トップクラスの念能力者ブリーダーでもあるビスケとの出会いなどは全て消滅してしまうかとも思われたが、ビスケにくっついていたトリッパーの働きで原作時点よりも早くグリードアイランドにログインすることになっていたことは僥倖だった。

はっきり言って、これまでは邪道とも言える方法で念を鍛えてきたハオ達である。
原作で登場した、正道で指導してくれる人物のトップクラスであるビスケに出会えた事はゴン達だけでなくハオにとってもかけがえの無い糧となっていた。

何しろ今までビスケに指導してもらっていたリックが健在オーラもハオより大分低くネタ念能力の使い手であるにもかかわらず、模擬戦でハオを押さえ込むだけの力を見せ付けていたのである。
高速且つ、ハオに比べて『流』が遥かに流麗でオーラの動きが読めない上に、ドリルを作る自身の念能力を完全に使いこなして戦略に組み込んでいるリックに最後まで主導権を取れないまま押さえ込まれてしまった。

ハオが自身の鍛錬の偏りと正式な師匠の必要性を自覚させるには十分であった。

これがテオであれば、念能力の関係上紙の操作性能を向上させるために『流』の鍛錬も最優先で行っている為、また話が違っていたのであろうが。
とにかくそんな感じになし崩し的にゴン達と一緒に面倒を見てもらっている形になっていた。

マサドラに逃げ込んでそろそろ一ヶ月に為ろうかという頃。
長年の相棒が二度目の終わりを迎えたことを未だ彼は知らない。










「……」

カーン、カーンと鋼を打つ音色が響く。
男三人寄り集まって、何かを創っている。

「ハッ」

気合一閃、打ち下ろした金槌にはオーラが宿っており、創っていた何か……刀の様なモノが出来つつあるが……に吸い込まれ、宿っていく。

創るはただ一振りの宝刀。

二ただ究極の一振りを鍛え上げる。
今はただ、それだけに全身全霊を込めて金槌を振り下ろす。

幾日、何万回と金槌を振り下ろし、オーラを『念』を込め続けたか。
手のマメはつぶれ、指の皮は剥げ、それでも尚、愚直に金槌を振り下ろし続ける。

やがて三人が動きを止め、創り続けていた刀を掲げる。
曇り一つ無い刀身の、だが、飾り付け一つ無い粗末な小ぶりな刀であった。
銘には『響鬼』とあった。

「……よし、完成だ」

刀を掲げていた男、ヒビキがその刀を見てそう呟く。

「これで、俺達も同じステージに立てるな」

「ええ、これで僕達も戦える」

「そうッスね」

何も出来なかったに等しい入島以来のロイヤルナイツ達との戦い。
今度は一矢報いてやると気合を込め、魂を込め、作り上げた刀を三人で見上げる。

そして心に誓う。
今度は俺達が攻める番だ、と。










森の中を走る4つの影。
その顔には緊張の色が見え、しきりに背後を気にしながら森を駆け抜けていた。

「っ、来たぞっ!」

影の一人……ファルコが背後を振り返って叫ぶ。
他の三人に緊張が走った瞬間、背後の森の木々が弾け飛びデジモンが群れを成して飛び出してきた。

「ああ、もう追いついてきた!?」

イツキが飛び出してきたデジモンの群れを見て悲鳴を上げる。

「くっ、『ディバインバスターッ』!」

ルーが振り向き様に起動させた『冥王の魔導杖(レイジングハート)』を振るって砲撃を放つ。
だが、振り向き様の集中も満足に行えていないその一撃は、先頭にいた何体かのデジモンを巻き込んで動きを止めることには成功するが、致命傷を与えるまでにはいたっていない。
だが、動きを止めた事で後続のデジモンが突っ込んでくるのを避けきれずに踏みつけられて後方へと流れていってしまった。

「……まあ、結果オーライってことで」

ルーは結果が良かったからとり合えずいいやと流した。

「そんなことよりあいつ等どうすんだよ!?」

ファルコはそんなルーを放置して隣を走っているフラットを急かす。

二週間以上ちまちまとデジモンの群生地を避けながら移動してやっとの事でマサドラ目前まで来たのだが、そこに来て出くわしたデジモンの群れを迂回することをそろそろ限界が来ていたファルコ達が渋り、ショートカットを要求した所為でデジモンの群れにぶち当たり追いかけられているのだが、そんな事は棚に上げて解決策を要求してた。


「このまままっすぐ走れ、崖があるからそのまま飛び降りろっ!」

「崖っ!?」

「ちゃんと拾ってやるから、跳べっ!」

「!?」

話している側から森が切れ、急斜面の崖が姿を見せる。
思った以上に深く、そこが見えないことにファルコ達が気付いたのは全力で崖に向かってジャンプした後だった。

「うぉお!? 『伸びろ、如意……』」

「落ち着け、拾ってやるって言っただろ?」

フラットがそう呟くのが聞こえ、次いでその力を解放するコマンドが聞こえた。

「『スピリットエヴォリューション』! ぁぁぁぁぁぁぁぁああっ!!」

デジコードの形を取ったオーラがフラットの体を卵状に包み込む。
その内側ではデータ状で保存されていたヴリトラモンのデータがフラットの全身に張り付き、その形を顕現させる。
デジコードが弾け、炎の魔竜が咆哮をもって名乗りを上げた。

「『ヴリトラモン』ッ!!」

顕現したヴリトラモンはそのまま自由落下を始めていたファルコとイツキをつかまえて空へと飛び上がる。
因みにルーは自力で空を飛んでいた。

後続から突っ込んできたデジモン達が崖に気づかずにダイブしていくのを空の上から眺める。

「ふぅ……ほら、あそこがマサドラだ。もうひと頑張りだぞ」

「おお!……ん、あれなんだ?」

マサドラが直ぐそこにみえた事でテンションが上がってきたファルコ達であるが、視界の先のマサドラとの道の途中の荒野地帯に何かが光ったのを見つけた。

「あそこで何か光ったぞ。フラット、何か分かるか?」

「いや、さすがに分からないな? ……あんまり進化したままだとイグドラシルに感づかれるかもしれないし、降りるついでに確かめてみよう」

ヴリトラモンはそう言うとファルコとイツキを両手に持ったまま荒野地帯へと降りていく。

「ねぇ、大丈夫なの?」

荒野へと着陸し、進化を解いたフラットにルーが心配そうに聞いてくる。
島に入ったときから災難続きなので警戒していようだ。

「まあ、大丈夫だと思うよ。特に不吉なオーラを感じるわけでも無いし」

このときはそう言ったフラットだったが、そこで見たものは自身が想像していたものとはまったく違うものであった。。

「え……お、おい、アレって……」

光って見えた崖を影から覗き見たファルコがその先にあるものを見て我が目を疑い他の面子にも確認を求める。

「ん? 何が見えた……マジかよ」

「え……うそっ!?」

「っ、アルトッ!」

最後に覗き込んだフラットがその姿を見て叫び、その影に走りよる。
それは、右肩から斜めに切り裂かれ右腕と下半身を失ったデュークモンの姿であった。
ファルコが発見した光はデュークモンの体から少しずつ立ち上る身体が崩壊していく光であった。

「おいっ、アルトッ、しっかりしろ!」

駆け寄ったフラットがデュークモンへと声をかける。
それに反応したか、それまで暗く光を閉ざしていたデュークモンの眼に光が灯り、眼が開かれる。

「う……その声、フラット?」

「!? アルトっ、俺がわかるのかっ!?」

眼を開けたデュークモンはフラットの声を聞いて誰であるかを言い当てた。
それを見たフラットはデュークモン=アルトが記憶を取り戻したのかと思わず問いただす。

「うん……致命傷の……一撃を、受けたこと、と……死期が近づいて、あたしの『死念』、が増幅された、から……デュークモンの、人格データ、が……クラッシュ、したみたい、ね……」

デュークモンはフラットに問われたこと、途切れ途切れにだが自身の現状を話していた。

「元々……一部、影響を、与えて、た、から……再乗っ取り、できた、みたい」

もっとも、こんな形(ナリ)なんだけどね―――と続けるデュークモン。
その体は眼を覚ました時から加速度的に体の分解が進んでいた。

「フラット、あたしは……もう、ダメ、みたい。……そんな、泣きそう、な、顔を……しないでよ……」

デュークモンに言われて初めてフラットは自分が今にも泣きそうな顔をしていることに気づく。
自覚した途端にフラットの目から涙が零れるが、そんなことには構わずにフラットはデュークモン=アルトに話しかけ続けた。

フラットにとってアルト・カートゥンは、『念』における師匠であり、神字プログラミングにおける師匠でもあり、そして、最も気の合う仲の良い友達で……実は密かに好きな女の子だった。

イグドラシルに捕らえられた仲間を助けたいと言う思いは本物であるが、彼女を助けたいと言う想いが強くあったのも確かだ。
それが今、目の前で消えようとしているのを目の当たりにしてフラットは心に穴が開いていく様な感覚を味わっていた。

「ああ……でも、消、滅する、前に……キミに、会えた、のは……幸運、だった、かな?」

アルトはデュークモンの主導権を奪ってから存在の消滅が避けられぬと理解すると可能な限り自身のシステムを停止させて休眠に入った。
タイムオーバーまでの時間で、もしかしたらあるかもしれない誰かが自分を発見するという幸運があれば、その人に自身の力の全てを託そうと考えて。

「これを……受け、取って。デューク、モンと、しての……あたし、の、全ての……データが、詰まった、デジコア」

そう言ってデュークモンが差し出した左腕には輝くデジコードが球状に纏まった物体……デジモンのデジコア、アルト・カートゥンの人格を除いた『念』の塊だ。
最初はそれを受け取ることを拒否しようとしたフラットだが、受け取ろうが受け取るまいが近いうちにデュークモンは消滅する。
それは、神字を学んだフラット自身から見てももはや手の施しようが無い状態で……

「あり、が、と……」

結局それを受け取ったフラットに、一言感謝を述べて、デジコアを放出したデュークモンの体は急速に分解し、光へと帰って逝った。

「……」

ファルコ達はフラットにかける言葉が見つからない。
ただ、静かに待ち続けた。

やがて、フラットは受け取ったデジコアを自身のデジバイスの中へと格納し、ファルコ達を振り返って言った。

「……マサドラはもう直ぐそこだ、ちゃっちゃといこうぜ」

「……ああ、往くか」

「そうだな、往こうか」

「うんっ、往きましょっ」

四人は歩き出す。
マサドラへと向かって。










グリードアイランド島最南端にある小さな離島、そこは普段は隔されているある施設があった。
即ち、グリードアイランドの『サブ制御施設』。
グリードアイランドに緊急事態が発生した時用にGM達が用意しておいた施設である。
用意したGM達も、まさか本当に使う機会が訪れるとは思っていなかったが。

「リスト殿、何か御用で?」

その施設の一室で、GMの一人であるリストとリストに呼び出された着物を着た少女が話をしていた。

「うん、そろそろシステムの再起動の目処が付いたから、生き残りのプレイヤー達とコンタクトをとりたいと思って」

「では、我と同様に他のプレイヤーの協力者を探すのが依頼か?」

「ええ、実は有力なプレイヤーの殆どはマサドラに集まっているみたいなんだ。だから、依頼はマサドラへ行ってプレイヤー達と接触を持ってもらうことになるのかな、目処が付いたといってもまだ僕らが目を離せる訳じゃないからね」

「なるほど、了解した。では早速参るとしようか」

少女は身を翻すとマサドラへと向かう準備をする為に退室しようとする。

「あ、ちょっと待って。これを持って行ってくれないかな?」

そう呼び止められ、少女に渡されたのは数枚のカード。

「これは?」

「GM専用の『会議』のカード。ちょっと改造してゲストユーザーも使えるようにしてあるから」

「そうか、これを渡せばよいのだな」

「よろしく頼むね、十六夜(イザヨイ)さん」

「うむ、任された」

そう言って少女……十六夜は今度こそ部屋から出て行った。

「さて、これで状況は一歩前進かな……」

リストはようやく動き始めた状況に、奪われたリーメイロがある方向をじっと睨んでいた。
反撃作戦は始まったばかりである。










あとがき
グリードアイランド編その5をお届けします。
今回の話は閑話?に当たるのでしょうか?
テオがデュナスモンと戦った頃のみなのお話です。

既にGMサイドに雇われていた新キャラが新たに登場。


感想、ご意見などありましたら宜しくお願いします。



[8143] キャラ紹介&念設定(グリードアイランド編)
Name: ぺんた◆8f022c7e ID:1e5f2ff6
Date: 2010/04/19 00:31
《キャラクター解説》
《イグドラシル勢力:ロイヤルナイツ》
名前:オメガモン(人間名:???)
種族:聖騎士型デジモン
テイマー:-
戦闘力:
AOP = 25000
必殺技:
『ガルルキャノン』
  右腕の砲口から発射する念砲。威力は調節できる。
『グレイソード』
  左腕から発生する剣。一撃一撃が必殺技の威力。
『オールデリート』
  グレイソードにオーラを集中させ、斬り付けると同時に解放し斬り付けた対象そのものを消し飛ばす。
捕捉:
右腕のガルルキャノンで遠距離、左腕のグレイソードで近距離をこなせる万能型。
イグドラシルの指令で動く、イグドラシルを守るために存在するロイヤルナイツの一体。
かつてはトリッパーのパートナーデジモンであったが、イグドラシル起動時にDWSSの主要管理者の一人であるパートナー諸共イグドラシルに取り込まれ、システムの一部兼ロイヤルナイツとなった。
戦闘力が突出しているのはイグドラシルが地脈と繋がっているため、イグドラシルの影響下にあるロイヤルナイツはその後押しを受けられるから。

名前:デュークモン(人間名:アルト・カートゥン)
種族:聖騎士型デジモン
テイマー:-
戦闘力:
AOP = 24000
必殺技:
『ロイヤルセイバー』
  右腕の聖槍ローランから光の刃を伸ばして攻撃する。
『ファイナル・エリシオン』
  左腕の聖盾イージスからオーラの砲撃を放つ。
捕捉:
右腕の聖槍ローラン、左腕の聖盾イージスをもって戦う。
イグドラシルの指令で動く、イグドラシルを守るために存在するロイヤルナイツの一体。
かつてはトリッパーのパートナーデジモンであったが、イグドラシル起動時にDWSSの主要管理者の一人であるパートナー諸共イグドラシルに取り込まれ、システムの一部兼ロイヤルナイツとなった。
戦闘力が突出しているのはイグドラシルが地脈と繋がっているため、イグドラシルの影響下にあるロイヤルナイツはその後押しを受けられるから。

名前:デュナスモン(人間名:???)
種族:聖騎士型デジモン
テイマー:-
戦闘力:
AOP = 23000
必殺技:
『ドラゴンズロア』
  両腕の手の平から発射するエネルギー光線。
  接近戦時に攻撃と同時に発射して追加ダメージを与えることもある。
『ブレス・オブ・ワイバーン』
  全身にオーラのドラゴンを纏い敵に体当たりを行う。
  纏ったオーラのドラゴンはそれなりの大きさになるため多数を巻き込む面攻撃となる。
捕捉:
基本的に素手で戦う。
イグドラシルの指令で動く、イグドラシルを守るために存在するロイヤルナイツの一体。
かつてはトリッパーのパートナーデジモンであったが、イグドラシル起動時にDWSSの主要管理者の一人であるパートナー諸共イグドラシルに取り込まれ、システムの一部兼ロイヤルナイツとなった。
戦闘力が突出しているのはイグドラシルが地脈と繋がっているため、イグドラシルの影響下にあるロイヤルナイツはその後押しを受けられるから。


《G・Iクリア組》
名前:フラット
念系統:共有型
念能力:『電子獣の繰り手(デジモンテイマー)』
 デジヴァイスとパートナーデジモンで構成される能力だが、フラットのデジヴァイス『D-スキャナ』は特殊であり
 テイマー自身をデジコアの代わりに見立ててデジコード(スピリット=神字データ)を装着することでデジモン化する。
戦闘力:
アグニモン時(ヒューマンスピリット)
AOP = 4000

ヴリトラモン時(ビーストスピリット)
AOP = ????

アルダモン時の(ヒューマン+ビーストスピリット)
AOP = ?????
捕捉:
 イグドラシルの暴走時に主要管理者がロイヤルナイツとして取り込まれてしまった後に残りの仲間を率いてイグドラシル
 を破壊して仲間を救出しようと計画したが、肝心の救出対象=ロイヤルナイツに襲撃され自身を残して仲間は全滅
 してしまった。現在はそれでも仲間を救い出そうと奔走中。


《G・I残留組》
名前:リック=タトプロゥ
念系統:強化系
念能力:『超念導螺旋力(オーラスパイラル)』(強化系+放出系+変化系)
 放出系の力で作り出したドリル型のオーラの塊を強化系の力で強度を強化し、変化系の力で螺旋回転させた物。
戦闘力:
AOP = 約4500
POP = 約100000

名前:ビスケット=クルーガー
念系統:変化系
念能力:桃色吐息
戦闘力:
AOP = 約2500(擬態時)→ 約7500(本来の姿)
POP = 約80000


《島外からの来訪者組》
名前:テオ
念系統:操作系
念能力:『紙々の世界(ペーパーワールド)』
戦闘力:
AOP = 約7000
POP = 約120000
捕捉:
旅団戦を通して限界までオーラを絞る際にオーラの引き出し方のコツを掴み、顕在オーラの出力が上昇した。

名前:ハオ
念系統:放出系
念能力:『火の精霊(スピリット・オブ・ファイア)』
戦闘力:
AOP = 約6500
POP = 約118000
捕捉:
旅団戦を通して限界までオーラを絞る際にオーラの引き出し方のコツを掴み、顕在オーラの出力が上昇した。
テオよりも顕在オーラの上昇率が良いのはベクター・ブロリーを相手するためにより過酷な状況下にあったため。

名前:ヒビキ
念系統:具現化系
念能力:『変身音叉・音角(へんしんおんさ・おんかく)』
 ヒビキ変身時、顕在オーラが2倍になる。
念能力:『多段変身・響鬼紅(ただんへんしん・ひびきくれない)』
 一時的に顕在オーラが3倍になる、使用可能時間は5分間。
戦闘力:
AOP = 約3000
POP = 約115000
捕捉:

名前:イブキ
念系統:操作系
念能力:『変身鬼笛・音笛(へんしんおにぶえ・おんてき)』
 イブキ変身時、顕在オーラが1.5倍になる。
戦闘力:
AOP = 約3500
POP = 約115000
捕捉:

名前:トドロキ
念系統:操作系
念能力:『変身鬼弦・音錠(へんしんきげん・おんじょう)』
 トドロキ変身時、顕在オーラが1.5倍になる。
戦闘力:
AOP = 約3500
POP = 約115000
捕捉:

名前:ゴン
念系統:強化系
念能力:『ジャジャン拳』
戦闘力:
AOP = 1650  → 2980
POP = 19200 → 35000
    (第1話)   (第5話)
捕捉:

名前:キルア
念系統:変化系
念能力:『オーラを電気に変換する能力』
 ※『バリエーション』
  「千鳥(チドリ)」
  右手を肉体変化させ、オーラを変換させた電気を帯電させた状態で攻撃する。
  「落雷(ナルカミ)」
  上空へと飛び、帯電させた自身から対象に向かって電撃を落とす。
戦闘力:
AOP = 1680  → 2850
POP = 16300 → 36000
    (第1話)   (第5話)
捕捉:

名前:クラピカ
念系統:具現化系
念能力:『守護する円輪の鎖(サークルチェーン)』
    能力者を防御する左腕の鎖。防御にのみ使用可能でこの鎖で攻撃を意識しても発動しない。
念能力:『追尾する鏃の鎖(スクェアチェーン)』
    能力者の意思で自在に動く右腕の鎖。攻撃にのみ使用可能でこの鎖で防御を意識しても発動しない。
戦闘力:
AOP = 1570  → 2770
POP = 17800 → 40000
    (第1話)   (第5話)
捕捉:

名前:レオリオ
念系統:放出系
念能力:『お手軽錬金術(インスタントポーション)』
蒸留水にオーラを込めることで外傷を治療する薬品を作成することが出来る。
    効果は擦り傷、切り傷までで一定以上の傷には効果はない。
戦闘力:
AOP = 1500  → 2650
POP = 18200 → 42000
    (第1話)   (第5話)
捕捉:

名前:ハンゾー
念系統:操作系
念能力:『虚像転写(フェイクシルエット)』
    念をかけた物体を位置をずらして具現化させる(複数個可)。
    込めたオーラ量と増やした数で具現化可能時間は変化する(基本的に短時間、長時間の具現化を想定していない能力)。
 ※『バリエーション』
  「手裏剣影分身の術」
  投げた手裏剣を無数に分裂させて面攻撃する技。
  敵や地面に刺さっても本物以外はすぐに消える。
戦闘力:
AOP = 2200  → 
POP = 23000 → 
    (第1話)   (第5話)
捕捉:

名前:十六夜(イザヨイ)
念系統:???
念能力:???
戦闘力:???
捕捉:
GM側で動いているプレイヤー、ゴン達よりも後の時期にグリードアイランド島へと入島したらしい?


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