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[8241] 本の話【異世界召喚】
Name: ちびお◆39e725b5 ID:6a8e88ef
Date: 2009/04/25 20:30
はじめましてSS執筆経験のないド素人です
書き方がおかしい、文章になっていない部分も見受けられると思いますが温かく見守ってやってください


















俺は鈴木 秀治
酒があればどこでだって生きていける
そう自負して生きてきた二十代だ


俺はある日、異世界へと召喚された
意味が分からない、ありえない
科学で解決しない問題は多いが、流石に異世界はないだろう
しかも手違いだった
悲しいことに、手違いだった

俺を召喚した奴は、書物を召喚するはずだった
しかし俺が召喚されてしまった
彼女は俺を恐れた 彼女にとって俺は”本”なのだ
彼女は人型の本として俺を認識した


”本”が”人”の姿をしている――


俺は化け物として扱われ、とある屋敷で生活させられることになった
彼女は認めたくなかったのだ
自分が召喚に失敗したことを、化け物を召喚してしまったことを


だから彼女は俺を、俺という存在を隠蔽した
ヒステリックに何か喚きながら、俺を屈強な男たちに屋敷へと運ばせた
異常な事態が発生しすぎて俺も混乱していた


しかしそこは俺、頑張った 


大人しく生活することと引き換えに酒を要求し、静かに暮らし始めた
元の世界に戻してもらう、そんなことは考えなかった
正直未練なんてない
両親も既に亡く兄弟も友人もいない、
人付き合いが悪すぎて親戚との仲も壊滅的だったこの俺に、未練なんてなかった


ひきこもり生活万歳、俺は浴びるように酒を飲んだ
テレビもネットもなく、暇で暇で仕方がなかったが・・・
彼女から届けられる酒を次々に飲み干し、引きこもり生活を満喫するのだった


それから何ヶ月、いや何年経ったことか
いつも酒を運んでくるメイドから珍しく手紙を渡され驚愕した
彼女が亡くなった
・・・まだ30代後半だったのに、早すぎるだろう
手紙を読み進めると、困ったことになっていた


この手紙を寄越したのは彼女の息子たち
どうも息子達は、俺を彼女の愛人だと思い込んでいるらしい
屋敷から出て行くよう、書かれていた

俺の事情を知るメイドは、元の世界に帰ることはできないと言った
召喚した人間が死んでしまっては、元に戻ることは出来ない
酷く同情した様子でメイドは呟いた
息子達に事情を説明し、この屋敷で保護してもらえるよう手配する
そういってメイドは帰っていった



その夜、俺は酒と装身具を持てるだけ持って屋敷を出た
屋敷の麓にある町で装身具を売り払って路銀を作り、隣町へ乗り合い馬車で旅立った




[8241] 本の話 敵
Name: ちびお◆39e725b5 ID:437c4c4c
Date: 2009/04/25 21:04



夜逃げ同然で屋敷から逃げ出した俺は隣町へ到着した
隣町は港町で、威勢のよい漁師たちの掛け声が響き渡っていた

昼過ぎ頃に不動産屋へ行き、ボロいアパートの一室を借りた
住む準備は着々と進んでいる

仕事は十分ある
俺が暮らしていける給料も、酒を買える金もある

この町の領主とは知り合いだ
夜中突然訪れた俺を一晩泊めてくれたのも彼だ
何故かずっと屋敷に住んでもいいといわれたが・・・断っておいた。何か怖い。

実は屋敷にいるときに彼と出会っており、仕事をもらっていたのだ
仕事といってもドレスのデザインだ
元の世界の、ゴスロリをラクガキしているところを見られたのだ
そういえば何で領主はあの屋敷にいたんだろうか
俺の知ったことではないが。

領主はゴスロリを気に入り、俺が描いた服を作らせて販売しているらしい
欲は出さずに売り上げの5%をもらうことにしていた
金をもらっても、今まで使う場面なかったからな
しかし溜まっていた金も馬車代金に足りず、渋々装身具を売り払うこととなった

ちなみに領主も俺が”本”だと思っている
デザイン関係の本と思っているみたいだな
火気水気厳禁で風呂にも暖炉にも近づかせてもらえないのは辛い


まぁそんなこんなで仕事はあるし、今まで使うこともなかった金で暫くは食いつなげるだろう
息子達に言われたとおり屋敷からは出たし、文句は言われないはずだ


俺は、息子達の言い分も分からないでもない
得体の知れない男を人知れず屋敷で住まわせ、大量の酒や服を贈っていたのだ
事情を聞かされていなければ、愛人を囲っていると思っても仕方がない
彼女は屋敷に来ると2,3日は帰らなかったし、愛人疑惑は濃くなる
この手の勘違いをするのは、多分、長男のアドルフ・ジュニアだろう
彼女の話ではコイバナの好きな被害妄想の激しいオトメ・・・男らしいから、深読みしたんだろう

そういや彼女の夫の名はアドルフなんだろうか
長男にジュニアってついてるしきっとアドルフなんだろうな、うん
他にもアクの強い息子達がいるらしいが、この手紙をだしたのはジュニアで間違いないだろう


・・・そういえば領主は彼女の従兄弟だったな
今のところ俺の事情を知っているのは領主と、メイドのジェシーぐらいか


領主から色々助言をもらっている
曰く、次男に気をつけろ、とのことだ
彼女の次男と言えば・・・近衛隊に所属していたんだったな
ジュニアは色々ヤバイが臆病者なので直接手は出してこない
というよりも屋敷を出たならそれで良い、そう考える奴らしい

次男はヤバイジュニアよりヤバイヤバすぎる
こっちの世界にはSなんて言葉はまだないが、きっと次男が語源となるだろう
そう思ってしまうほどのサディスティック男
やれ戦場で死体を○○しただの、捕虜を拷問にかけて昇天させただの、女スパイを未成年には言えないことをして殺しただの・・・
本当にヤバイと彼女からも聞いている

領主からも新しい情報を聞いた
隣国との戦争が終わって暇らしく、新しい獲物を探しているとのこと
ちなみに獲物とは、虐めようが拷問しようが殺されようが何をしても罪に問われない人間のことです
今までの情報だと捕虜とかスパイとか奴隷とか戸籍のない奴のことだな
スパイとか戸籍がない奴とか、この国の法律で裁けないもんな
むしろそういう奴らは犯罪者だったりするので殺すのを・・・推奨されているらしい

本気でヤバイ
次男もヤバイが国も世界もヤバイ

しかもこのままだと俺が獲物になりそうな勢いです
この国の戸籍ないし、完全にフラグ立ってるよな







[8241] 本の話 ヒゲ☆マジック
Name: ちびお◆39e725b5 ID:2130df91
Date: 2009/04/26 17:27



彼女の息子達、特に次男からの追っ手が恐ろしい
しかし怯えて過ごすだけでは何も始まらない
とりあえずアパート借りたんだし生活用品を揃えることにした

「お金なら貸しますよー」

「・・・何で返せば良いんだ?」

「エr・・・未成年には見せられない衣装の図案でお願いします」

領主・・・アンタって奴は・・・
後ろに控えているメイドたちがすごい反応したぞ
顔が真っ赤になったり真っ青になったり、顔が可愛いからきゅんきゅん来る
他にも言いたいことはあるが、無言で俺達は固く拳を握り合った
そう、盟友として・・・
貴族や本(仮)なんて人種の壁を超えた友情を確認しあうために



アンタのエロ衣装にかける情熱には・・・完敗だ



と言うわけで金を借りました
馬車代と家賃で結構使ったから正直ありがたい
酒だけは確保しておいたが、そのせいで金がヤバイ
一週間は大丈夫だろうが、生活用品がまったく揃ってないからな
全く、引越しには金がかかるな・・・

この世界の貨幣は大陸中で統一されている
理由は知らん
いや、彼女が話していたはずだが・・・
二日酔いの迎え酒で意識が飛びかけてたから忘れた

金貨1枚=銀貨50枚=銅貨500枚
単純に計算するとこんな感じだった
しかしここの貨幣は面白味の欠片もない
金貨なんかこの世界の文字で”金”って刻み込まれているだけだ
日本の貨幣が懐かしい
俺が特に好きだったのは五円玉だ
あの米の絵が(麦か?)いいな
焼酎を連想させるからな



領主から借りた金貨5枚をポケットに突っ込んでおく
まずは最低限必要なものを買いに行かないとな
ベッドや箪笥、テーブルは備え付けられていた
食器・・・特にグラス類、あとは代えの服と・・・変装用の小道具か
少しでも特徴を減らせば追っ手も混乱するだろう
その前に追っ手がいるかどうかもわからないが
念には念を・・・だな

ちょうどいい所に雑貨屋がある
モノクルを銅貨20枚買い、あとは無精ひげを剃っておけば良いだろう
トイレを貸してもらってヒゲを剃る




・・・あれ、ヒゲ剃ったら老けた・・・?




意気消沈しながらトイレを出ると、店のおばちゃんに吹かれて爆笑された
そこまでは別に構わなかったが、おばちゃんが笑いすぎて顎が外れてしまった
ごめんなおばちゃん・・・(´・ω・`)
モノクルをつけてヒゲを剃った今の俺は、とてもじゃないが20代とは思えない
あれだ、どうみても高校生役は無理な○V男優みたいな雰囲気が出ている
モノクルのお陰で知的さが上がったのが救いかな・・・

一気に疲れが出てきたが食器だけでも買いに行くため歩き出す
ひきこもりたい
そう呟きながら――







◇◇◇






一体どちらへ向かわれたのでしょうか・・・
信用の置ける使用人達を連れて一度お屋敷に戻りますと、”本”はどこかへ消えていました


頼る伝手もなく、金銭もない”本”
ヒトの形をしているといっても、本なのですから色々と不安で仕方がありません


唯一”本”と面識のある港町シルプの領主さまの元へ向かわれたのでは?
そう思いつきシルプへやって参りましたが、領主さまは知らないと仰るだけで・・・


亡きご主人様が召喚なされた”本”
ご主人様、ジェシーは必ずや”本”を屋敷に戻して見せます!!



・・・お酒を餌にしたら誘き出せるでしょうか・・・



あのお酒好きの”本”のこと、あっさり引っかかってくれそうです
でもそんな訳ないですよね・・・って

ドンッッ

「きゃっ!?」

後ろから来た方とぶつかってしまいました
慌てて謝罪しようと振り向くと―――


なんだかとても胡散臭い殿方が・・・


黒い髪をオールバックに整えモノクルをつけた清潔感のある方
でもなんだか見た目とギャップの激しい目付き
足早に立ち去っていかれ、ぶつかったことに気付いていなかったようです

・・・”本”も黒い髪をしていましたが・・・
流石に違いますね
無精ヒゲもありませんでしたし、ボサボサの格好からは大違いです
特に年齢も違います
”本”はもっと若々しい顔でした





それに・・・



お酒を持ってないから絶対に違います





・・・あぁどこへ行っちゃったんでしょう・・・



[8241] 本の話 本=人?
Name: ちびお◆39e725b5 ID:ee287a3e
Date: 2009/05/14 17:15


「領主さま!どうして”本”の居場所を教えてくださらないのですか!?」

応接間の机を叩き身を乗り出す女性
”彼女”のメイド、たしかジェシーと言っただろうか、私に袋に入った金貨を押し付けてくる

「教えないのではない。
 知らないのだよ、私はね・・・」

ワイングラス片手に呆れながら応えてみるが・・・
意味はないようだ

「貴方さま以外に!
 頼る伝手があるわけないでしょう!あのモノに!」
 
「だから先ほどから何度も言っているだろう?
 私は知らないのだよ
 それに、彼が私を頼るわけがない
 ・・・メイドたち、お客様がお帰りだ」

後ろに控えていた使用人たちにジェシーを連れて行かせる
ジェシーが何事か叫び続けているが、聞く気はない

「ッ領主さま!!」

一際高く叫ばれた呼びかけに耳が痛くなる
・・・匿う、そういう行動がこうも面倒なものだとは知らなかった

「・・・よろしいんで?」

「所詮姉君の犬、芸術を理解できぬ者とは話したくないのだ」

部屋の隅に待たせ続けていた男が声をかける
本来なら彼との話は終わっているはずだったのに・・・
ジェシーがあんなに早く我が館にやってくるとは計算外だった

「・・・それじゃぁご依頼の確認を」

「うむ
 ”本”・・・シュウの監視及びジェシー達のもとへ行かせないことだ」

「ソレなんですがね、ほら、学のないあっしらに本の意味を教えて頂けませんかね
 気になるよなソル?」

「・・・」

今の今まで男の陰に隠れていたのだろう
後ろから小柄な少女が現れた
白い髪のなかなか美しい少女だ
・・・ゴスロリ着せたいなぁ・・・

「いやぁ申し訳ありません領主様、コイツ無口なもんで・・・」

「構わない、それで”本”の意味だが
 姉君、私の従姉なのだがね、彼女は人体に関する書物を召喚するはずだったのだ」

「あれま、従姉さまは召喚士で?」

「・・・いや、彼女の父つまり私の叔父が召喚士でね
 姉君は見よう見まねで召喚しただけなのだよ
 ・・・彼女は、天才・・・だったからね
 そして、彼がよばれた」

そう、”彼女”は天才だった
私がどんなに努力しても使いこなせなかった召喚術を・・・
見様見真似で使って見せた
・・・いつもいつも、私には出来得ないことを、やってみせる人だ

「んーそれって事故なんでは?
 本が人間になる訳ないですぜ、いくら天才だからって・・・
 いきなり召喚できるわけないし、失敗か事故だったんじゃ?」

そう、普通はそう考えるだろう
私もそう思った
誰もがそう思ったことだろう

「それだがね、叔父上が確認したところ、召喚は成功しているのだよ
 召喚する時にはね、魔力の流れによって紋様が陣に刻み込まれる
 召喚する物によって紋様は変化するが、姉君の召喚陣には本の紋様があった」

「ということは、どう見ても人間にしか見えねぇあの御人は・・・
 その、召喚士から見ると本、ということで?」

「そうだ
 召喚士が、召喚の知識を持つ者つまり貴族にとって・・・彼は”本”だ
 召喚が成功しなければ、紋様は刻まれない
 ・・・彼は人に見えても、人であっても”本”なのだよ」

彼がヒトであったとしても
召喚士を目指した者として、彼を”ヒト”として認めることは出来ない
そして貴族は皆、彼を”本”と認識する
貴族に関わる者たちも、彼を”ヒト”と認めない
召喚が事故、失敗であったという証拠がない限り・・・


「これ以上聞くのはやめておきます
 頭が混乱してきやがった、なぁソル?」

「・・・」

少女が窓を開け放ち出て行く
さっそく仕事とは、熱心なことだ

「あー・・・じゃぁあっしも仕事に入りますわ
 依頼はキチンとこなしますんで!」

足早に立ち去ろうとする男
だがその前に少女が開け放った窓を閉めてドアから静かに出て行った











「・・・彼は”ヒト”か”本”か・・・
 ジェシーはそんな疑問も持たないのだろうな」














あとがき

か、感想ありがとうございます!
やっぱり説明不足でみなさま混乱されてますよね”本”のこと;
しばらくは秀治の日常生活+召喚術の説明を書いていくつもりです

・・・・あ、セリフばっかりで分かり辛いな今回も・・・



[8241] 本の話 阿迦奢
Name: ちびお◆39e725b5 ID:536652ab
Date: 2009/05/03 19:22




こんにちわ全国のロリスキー達
俺の目の前にはロリがいますよゴスが似合いそうなロリ、略してゴスロリですねわかります。


なんだかひょろ長いおまけがついてるが・・・
ロリの前では霞んで見えるぜ
真面目に霞んでます、モノクルのせいで。


「・・・あんたら、何か用か?」

「・・・」

「いや、あの・・・あっしらは、なぁ?どうしたよソル・・・」


ロリのおまけが何事か呟いている
ロリの名前がソルだと認識しました
中々いい名前じゃないか

きゅんきゅん来る

「・・・っ」


あ、ナイフ出された
流石に餓えた野獣の目は駄目なんだな


「ソル、お前さん一体どうしたんだ・・・?」


おまけがソルちゃんのナイフを仕舞う
顔に脂汗がべったりと流れ出ている
これで女なら保護者役萌えーとでも言ってるな



ボーっとそんなことを考えながら二人を見ていると、ソルちゃんが笛を取りだした


・・・手作り感溢れる竹笛だ
小さな桜色の唇がそっと竹笛に触れる








 
「♪」










小さな、いや、低い音色微かに空気を振動させる
次の瞬間、市場にいたはずの俺は真っ黒な空間にいた


どこかで見た・・・そんな言葉で済ませたかった
だが俺はこの空間を見たことがある


そう、俺が召喚される前にいた場所だった
ソルの空ろな目が俺ではない何かを見ていた


「久しぶりと言うべきかしら・・・阿迦奢?」


「アカシャ・・・?悪いが俺は秀治だ
 誰かと間違えてるんじゃないのか」


さっきまでとは様子が違う
どこかで見た反応・・・あぁそうか、イタコだ
中学の修学旅行で見た、あのイタコの雰囲気にそっくりだ
浮世離れしたあの雰囲気に似ている


「あぁ別に貴方に言っている訳じゃないわ・・
 貴方の後ろにいる、アレに言ったのよ」


そういわれて後ろを振り向く
しかし後方には黒い空間が続くばかりで何もいない


「私は管理人、召喚の陣へ続く扉を管理するモノ
 実体のない私は貴方と接触することはできないから、この子に体を借りたの」


扉の、管理人?
とりあえず彼女はソルちゃんではないということか


「実はね、貴方に言わなければならないのよ
 ・・・召喚術が行使されると、私はすぐに目的のモノを扉に導くの
 そうして扉をちゃんと潜って行ったか確認のため、紋様を残しているの
 ちゃんと召喚術が行使されない限り出番はないのだけれど・・・」



「何が言いたい?」



召喚術について教えてくれるのは助かる・・・のか?

妖精さんが頑張ってるんだなーとしか考えていなかった
女性が頑張っていたのか
なんか複雑


「”彼女”が召喚したかったモノ、すぐに理解できたわ
 扉の近くまで誘導したとき、貴方が扉の前を横切ろうとしたの・・・」


・・・あれ


俺召喚される前にいた場所って、トイレなんですけど・・・



「驚いたわ、あのタイミングで扉の前に来るなんて・・・
 そのせいで阿迦奢は貴方に取り込まれてしまったし・・・
 偶然が重なりすぎて頭が痛いわ」


あのときトイレに本なんてあったか?
うーん個室の中におき忘れの本でもあったか・・・
よく分からんな



「しかも貴方、チャネラーの素質があったし・・・
 阿迦奢に呑まれず逆に取り込むだなんて
 人間じゃないわ化け物ね」


某掲示板には行ってませんとか色々ツッコミ所がある


しかし


・・・とりあえず酒飲みてぇ・・・










あとがき

すぐさま話が先読みされそうな予感。
あとちびおはロリコンじゃないよホントだよ



[8241] 本の話 チャネリング
Name: ちびお◆39e725b5 ID:84e8d421
Date: 2009/05/14 17:16



「その、チャネラーって言うのは何なんだ?」

「チャネラーというのはチャネリング、
 特別な能力によって情報を交信するヒトのことを言うわ
 大抵は”瞑想状態”でチャネリングをするの
 瞑想または無意識、貴方がどんな状態だったか知らないけれど・・・

 あなたはチャネリングをして、阿迦奢を取り込んだ、いえ、憑霊させた」

「チャネリング・・・瞑想・・・憑霊?
 なんだシャーマニズムの話か? 
 前にイタコのばあさんから聞いたことがある」

「そう、貴方の言う”イタコ”
 チャネラーの仲間みたいなものね」

チャネラー、チャネリング、イタコ、憑霊・・・
いわゆるシャーマニズム、オカルティズムと呼ばれている
俺にそういった霊的な力があったと言うことなのだろうか
霊感なんてものはない、そう思っていたんだが・・・

阿迦奢っていうのもオカルト用語なのだろうか
それとも全く別物か?

「”彼女”の結界内にいたから今まで接触できなかったけれど・・・
 ようやく貴方が外へ出てくれたから、会うことが出来たわ
 でも・・・遅かった」

「遅い、だと?」

「もう、あなたは帰れない
 阿迦奢と分離することも、阿迦奢を元に戻すこともできない
 全部、全部・・・ッ」

空気が変わった
美しい白髪が振り乱される
先ほどまでは友好的だったというのに、顔が険しい
首筋の産毛が逆立つ感覚―
これが、敵意、殺気という奴なのだろうか
ビリビリと全身を包み込む不安感

・・・これは、ヤバイ・・・

「全部、全部アンタのせいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」

向けられるナイフ
憤怒の形相で叫ぶ幼女
喉を狙ってきている
 
本当に、ヤバくないかコレ・・・

ザシュッ

「いってぇええええっ!!!」

喉を狙われたがなんとか避ける
しかし左肩を斬られた
管理人が取り付いているのが幼女でよかった
管理人の力に体が追いついていないらしく、その行動は酷くアンバランスだ

「うわマジでやべぇよばじゃぁ!」

ヒュンッ

ナイフが顔に向かって飛んできた
この変な空間で二人きり
助けは求められない
どうする?どうやって切り抜ける?
何か方法はないのか



「アタシの完璧な仕事にぃぃ傷をつけるなんてぇえええええええええ!!」


鬼だ
まさしく鬼の形相とはこのことだ
領主、俺がもし無事に生き延びてそっちに戻れたとしても・・・
もう、ロリ話は・・・出来ないと思う
ソレだけが心残りです・・・




イヤジャヨォマダキエタクナイ




「あら?」「え?」




コンナコワイトコロニハイタクナイィ
カエルカエルआकाशगर्भハココカラデルカエル
カエル!!



誰もいないはずの空間
どこからともなく響き渡る低い声が動きを止めた
黒い空間が徐々に白く染まる
そのうちに扉のようなものが現れた
鍵、古い鍵だ
取っ手を回すことによって鍵が開くタイプのものだ
だが数が多すぎる
何百、いや何千ともある鍵
しかし、耳元から早く鍵を開けて扉を開け、そう囁かれる

管理人は動きを止めている
逃げるなら今しかない

だけど開くための鍵はどれだ? (ミギシタカラサンバンメ)
右下から三番・・・駄目だ、錆付いているみたいで動かない (ダメナラソコカラウエニナナバンメ)
上に七番め・・・コレは動く!

カエロウカエロウハヤクカエロウ

そうだな、早く帰ろうな
早く帰って酒が飲みたいな、早く帰ろう

カエルカエルआकाशगर्भハ秀治トカエル
ツカレタツカレタカエロウカエロウ
”彼女”ノセカイヘ
 

















白い道を走り続ける
後ろから黒い空間が見える
どれだけ走っても距離が縮まることはない
白から青色に変わった道、違う扉が見えた
この扉には鍵はない
扉に手をかけ開け放つ
暖かな暖炉が灯された広い部屋にでた







「・・・出れた!」








「何故本棚から出てくるんだいシュウ」






ふと横を見れば領主がいた
どうやら俺は、領主のドデカイ本棚から身を乗り出しているようだ
テーブルにワインが奇妙なこぼされ方をしていた
まるで噴出したような・・・



「酒よこせぇぇ!」



領主が持っていたワイン瓶を引っ手繰る
が、マズい
良いのは香りだけで、味は駄目だった
領主にちゃんと返しておく




「あー吃驚した
 生きて帰れて良かったぜ」




「吃驚したのはこちらのセリフだよ・・・」






それから暫く何事もなく、俺は生活することとなる
何故かあの黒い空間でのことも、管理人のことも、謎の声のことも
全てに疑問を抱くことなく、忘れ去ってしまっていた



[8241] 本の話 余談
Name: ちびお◆39e725b5 ID:a9f138e5
Date: 2009/05/06 19:18



監視対象が消えちまった!
一体何がどうなってそうなったかはわからねぇ
監視対象だけじゃない
相棒まで一緒に消えちまった



依頼失敗→信用度が下がる→依頼がもらえない→給料がねぇ
とりあえずここまでシミュレートした



一体全体どうしちまったんだか・・・
いつもは大人しい嬢ちゃんが、積極的に仕事に取り組んだっていうことだけでもおかしかったのによ
一瞬召喚でもされたのか、そう考えもしたが・・・
不安でしょうがねぇ



きっとあのモノクル男と一緒なんだろう
うちの嬢ちゃんをいやらしい目で見つめて・・・
普段殺人依頼は受け付けていないがよ
あいつを殺す依頼だったら喜んで受けてやるぜ



「・・・アオイ」



「!  
 ソル、お前さん無事だったか!?一体どこへ行ってたんだ?!
 いやお前さんらに何がおこったんだ!?」


ソル!ソル!!うちの嬢ちゃんが戻ってきてやがる!
なんだか酷く疲れた様子だけどよ・・・
まさかあの男・・・ッ



「・・・こわい」



「あの男に何かされたのか!?」





「ちがう・・・もっとこわいのが私を・・・
 私のからだを・・・」





・・・KA☆RA☆DAだと?






「ソル・・・ちょっとその怖い奴、教えてくれるかい」




闇討ちしてくるから





「だめ、アオイじゃだめ・・・
 私、のられちゃう・・・
 こわい、こわいよアオイ・・・」



「大丈夫だソル!お前さんは俺が守るかんな!」



のられるだと・・・?
ソルの可愛さに目が眩んだ奴がいたんだな・・・
絶対に殺してやる・・・


ソルがこんな目にあったのも、この依頼を受けたせい――あのモノクル男のせいだ!
・・・ちくしょういつか殺してやるぜ・・・





(どうしよう・・・こわいよ・・・
 また、またアレに、管理人にのっとられちゃったら・・・)














「シュウのバカバカバカ!大馬鹿者ぉ!
 なぜ、何故だ!なぜ幼女トークをしてくれないですかぁ!!」

「いや、なんか知らんが急に怖気が・・・
 幼女って単語だけでも背筋が凍る」

「シュウしか話に乗ってくれないのにぃ!!
 うわぁぁぁぁっバカバカバカ!
 もう秘蔵のワイン飲ませてあげませんからね!」

「ワインよりビール派だからな・・・あんまり堪えねぇわ」

「シュウのバカぁ!」





貴様は駄々っ子か領主










唐突にキャラ紹介その1


鈴木 秀治   酒大好きコスチューム萌え男
        20代後半、色々不運、よ○つべ派
        ロリからオヤジ、小動物から深海魚まで幅広く語れる
        人外説浮上中
        現在見た目が不審人物っぽい

”彼女”    子供がいるとは思えない人
        秀治の不運の原因かもしれない
        名前が出てこないのは考えていないかrげふんごふん

領主      見た目は美形な設定がある見た目は
        外道、ロリむしろペド、ゴスロリ好き
        今のところ秀治しか友達がいない

ソル&アオイ  領主に雇われている 
        白髪の美少女(美幼女)とひょろ長くて妙に馴れ馴れしい男
        ソルはまだ舌足らず
        アオイはおまけ

管理人     逆恨みクイーン
        想定外の事態に弱い弱すぎてすぐキレる
        実体がないので本当に女かどうか不明



とりあえずこれだけ



[8241] 本の話 仕事
Name: ちびお◆39e725b5 ID:a9f138e5
Date: 2009/05/14 17:16


何故かロリトークが出来なくなって三日たった
拗ねに拗ねた領主の機嫌をとるのも面倒になって、メイドさんたちに丸投げしてみた
良かったな領主、メイドさんハーレムだぞー



本棚に何故か現れてしまったあの日、俺は生活雑貨を買いに行っていたはずなんだが・・・
何がどうなったのやら
買い物も終了せずにあんな場所へいくなんて
メイドさんたちの”やっぱり本だったか”視線が痛い
軽い仕返しにフレンチメイド服を何着か作って贈っておいた
領主にセクハラされてろ



さて、買い物はもう十分
あとは酒を飲むか仕事をするか飲酒するかだな
スケッチブック(まぁ現代のあの紙はない。羊皮紙ってやつだな)にいくつか描いてある
しかし頭の中でイメージしていても、実際作ってみたら落ち込んでしまう服はいっぱいある
また布地や糸、型紙なんかも一通り試して実際に作って見なければならない


・・・別に領主のところの仕立て屋に頼んでもいいんだが・・・
やるからには自分でやりたいんだよ
上手くいったら大量生産は仕立て屋に頼む気でいる

そうこう考えているうちに10個ぐらいデザインは出来た
仕立て屋や町の女の子に布地やらの意見を聞いてみるか












雑貨屋サンディカの女店員の証言



シュウ?あぁ、あのモノクルをつけた人ね
たまにお話しするわ
いつもお酒みたいな香水をつけてるのよね、好きよ私


服に使う糸や布地とか流行の服について聞いてくるの
領主様のデザイナーだって聞いたわ

恋人にはなりたいけど、結婚はしたくないわね
彼って何かに対する情熱がずれているんだもの
でも、ご飯つくってあげなくちゃって思うのよ
不思議な人ね


もし彼と結婚したならリーナ・フォンになるのかしら
シュウ・フォンじゃないの?彼のフルネーム
領主様の使用人たちが”フォン”って呼ぶからてっきり・・・


え?シュウの評判?
変な人だけどそこそこ人気はあるわよ
女子供に優しいだけじゃなくて、人の嫌がることをしてくれるもの
まだまだ余所者として見られているけど、町の人間として認められるのも近いと思うわよ









「しっかし領主さまも妙な依頼を追加してくれるぜ・・・
 何が悲しくてあの男の好感度調査をしなくちゃなんねぇんだ・・・」

「・・・アオイ、あのおようふく、ほしい」

「あ?・・・駄目だ白いじゃねぇか
 お前さんはすぐに汚すから駄目だ」

「・・・よごさないよ・・・」

「うそつけ 
 この間赤キャベツのスープを頭から被ったくせによ
 白い服は絶対だめだからな!」

「・・・」


諦めたか・・・
許せよソル、お前さんは本当に服を汚すからな
仕方ねえんだ


そういえばあの領主、こんな調査まで依頼してきて・・・
領主とあの男が友人っていうのも嘘じゃないらしいな

あれか、初めてのお友達が出来て有頂天ってとこか

”私のお友達はすごいんだぞー評判いいんだぞー”

って自慢したいのかね

ここの領主の友好関係のなさは皇帝も涙したらしいし・・・
・・・初めての友達って・・・すごいんだな・・・



[8241] 本の話 和み
Name: ちびお◆39e725b5 ID:e4be5309
Date: 2009/05/10 09:52





突如として服飾界に現れた新人デザイナーシュウ
国最大の港町シルプの領主の援助を受けている
その斬新で華麗な衣装は、うら若き乙女たちの間で大人気
領主にシュウとの面会を求める声は少なくない
しかし、デザイナーシュウは未だ公の場に出てこない謎の人物である



「こーんな噂がたってるわよシュウ
 本当に貴方ってすごいのね」

「領主のバックアップのお陰だろ
 あとは仕立て屋の腕だな」

この雑貨屋サンディカの常連となった俺と親しくしてくれる女性
彼女はリーナ
かなりあっさりとした性格で、俺と普通に話してくれる唯一の存在だ


考えても見てくれ
今まで俺が出会ってきた奴らとリーナを比べたら・・・
俺はようやく人間扱いされた!



今まであった人物からは大体こんな扱いを・・・



”彼女”→化け物め!
ジェシー→”本”の癖に!
領主→”本”なんだから水も火も駄目だよね?酒も駄目だよね?
メイドたち→”本”なのにヒト・・・

麗しのリーナ→お酒臭いけど一応友人





何この差!
何この差!大事なことだから二回言うよ!




なんで女性不信にならなかったのか不思議で仕方がない
あぁぁやっぱりリーナは良い
”本”なんていうことも知らないし、ちゃんと人間扱いしてくれる
なんてパラダイス

リーナは俺にとって唯一の和みであり癒しだ
この子に褒められるとかなり照れる
ヤバイ俺今頃恋しちゃってるの?うわぁ



でも、俺本当に人間扱いされてなかったんだよな
領主でさえ”本”って思ってる
酒はなんとか飲ませてもらえるようになったが・・・
”彼女”もジェシーも、最初は酒を飲ませてくれなかった
アレはつらかったな
殴られたり刺されたりとかされたけど、酒が飲めないことのほうが辛かった



・・・・・”彼女”も辛かったのは分かってる
正直言ってジェシーより分かってる
ジェシーには笑顔しか見せてなかったけれど・・・
”彼女”は俺にはどす黒い感情を見せてきた
天才、そんな言葉に惑わされて苦しんでいた



俺は”彼女”を恨めない
絆されたのかも知れないが、俺は恨めない



・・・”彼女”の息子達も、俺は恨めないなぁ
だってジュニアは母親を守ろうとしているだけだ
”愛人”なんて存在、現代でもあんなに騒がれるというのに
こっちはスキャンダル所の話じゃない


死者を鞭打つような真似、ジュニアは嫌だったんだろう
陰口から母親を守る



中々いい親子なんだあいつらは



屋敷から出るのに異論はなかった
俺はもう、この町で生きていくつもリだから、二度と屋敷には戻らない
この町で生きていく、いや、この世界で生きていく
酒があれば俺はどこででも生きていくさ







・・・嫁さん欲しいと思わないことも、ない・・・








「そういえば知ってるシュウ?
 近衛隊のジェラルド子爵、貴方に会いたがってるそうよ!
 領主様と交渉してるらしいわ
 領主様と親戚だから直談判してるみたいね」



( ´゚ω゚`):;*.':;ブッ




「ごえげほっ!!」


「シュウ?!大丈夫!?」



ちょっと待ってちょっと待って!

思いっきりソーダ(もどき)吹いた!鼻痛い!


近衛隊の・・・ジェラルド!?
”彼女”の次男じゃねぇか!















まだまだ良く分からない話ですが、お付き合いくださりありがとうございます

って読み飛ばしてて今まで反応してませんでしたが・・・


ひゃぁ  フラグば・れ・て・る☆


あえてどのフラグかは言わないでおく(`・ω・´)キリッ


>>ちょっと待てwww酒飲むか仕事するか飲酒するかって結局二択じゃねーかww
・・・酒に命賭けてもいいぐらいの男ですから

>>とりあえずメイドは貰って行きますね。
とりあえず阻止(*・∀・) メイドは皆の嫁!

皆様の感想、いつも励みになっております




[8241] 本の話 酒
Name: ちびお◆39e725b5 ID:3a6c7a43
Date: 2009/05/14 17:16



「領主テメェェェ!!次男来てないだろうな!?」

バン!

ノックもせずに、領主の自室のドアを開け放つ
暢気にワイン片手に本を読む領主が、驚いたような目をしていた

「あ、いらっしゃーい
 次男? 
 も う 帰 っ た よ 」

帰ったの?
急いでこの屋敷に駆け込んだせいで息が荒い
昼間から酒を飲みすぎたせいだろうか
かなり体が火照っている

「ゼェゼェ・・・なんか、言われた・・・?」

「君に婚約者のドレスを作って欲しい、そう言っていたよ」

あれ、普通の理由だ
俺の所在がバレているとかじゃなかったのか
焦って損したな
というより今日来ていたのか次男
鉢合わせしないで良かった

「・・・まぁ、君のこと分かってるみたいだったけど」

・・・は?

「なんだかジェシーと接触してるみたいでね
 会話の節々に”本”を意識していたよ」

「なにそれこわい」

ジェシー、お前は本当に厄介な女だな
あの子をどうにかしない限り・・・俺はヤバイのか

「でも、君の安全は保障された・・・と思いたいね
 ・・・婚約者殿が君のファンらしい」

ほほう、俺のファンですか
それはそれは・・・だが婚約者がファンだからって理由で・・・

もしや・・・

「・・・あのさ、次男って婚約者には甘い?」













「ゲ・ロ・ア・マ☆」













この男よりムカつく人間はいないだろう
―シュウの日記より―





「・・・とりあえず、だ
 俺は今のところは殺されたりしないんだな?」

「多分ね
 今のうちに婚約者殿のご機嫌とりしていたらどうだい
 守ってもらえると思うがね」

ご機嫌取り、か
しかしそのためにはこの町を離れなければいけない
その婚約者のところへ足を運ばなければ、服は作れないだろう
貴族が平民の居場所へ行く、あまり推奨されることじゃない
大抵の俺に会いたいという貴族は手紙を寄越す

次男はわざわざこの町へ来ることで、婚約者にアピールしたんじゃないのか
婚約者のためなら平民に会いに行ってもいい
マンガにでも出てきそうなアピールだが―
割と効果ありそうだな


・・・俺はこの町から離れたくない
俺はこの町が好きだし、ここから離れると領主の保護も受けられん
だが、婚約者のご機嫌取りをしておけば、比較的安全に過ごせるだろう


悩みすぎてパンクしそうなほどの頭
ふらふらになりながらも領主に別れを告げ、帰路に着く


俺はどうするべきだろう
この町にいたい、しかしジェシーの手からも逃げたい

婚約者を経由して次男を説得してみようか
味方に引き込めれば心強い・・・はずだ

頭を抱えるとはこのことか
考えれば考えるほど、まとまった考えができない





「・・・ひっく・・・」





前に女の子がいた
大きな目に涙をためて、しゃくりあげている
どこかで見たような気がする・・・


最近幼女関連の話題を避けていたせいか酷く焦ってしまう
そういえばどうして俺は、幼女の話題を避けていたんだ?



「・・・どうしたよお嬢ちゃん」




なるべく怯えさせないよう優しく声をかける
俺の存在に気付いたのか、幼女は俺を見上げた




「・・・うぇ・・・
 ・・・アカシャ・・・っ!?」




・・・アカシャ?    ―――आकाशगर्भ―――




待てよ、これもどこかで聞いた事のある言葉だ
誰かが、誰かが俺のことをそう呼んで?




ちがう、俺の後ろに阿迦奢が―――आकाशगर्भ―――




「・・・おぼえて、ないの?」


「どうやら、そうらしい
 教えてくれ、アカシャって何なんだ?」


「アカシャは、貴方に、のみこまれたって・・・
 おさけ、貴方のちにく、になった」


酒、血肉、飲み込まれた
何か、そんなことがあったような・・・


――ちくしょうなんで俺が見回りなんか――
――酒飲めねぇし・・・――
――お、トイレに酒落ちてる・・・って一杯分もねえな――
――あとで拾得物入れに置かなきゃな――


そういえばあの時、俺・・・


――なんだこの黒い空間――
――・・・どこへ行っても風景変わらねぇ・・・のど渇いた・・・――


もしかして、もしかしてアカシャって


――・・・何もないよりマシかね、この酒飲むか――





アカシャって阿迦奢ってआकाशगर्भって、あの酒か!?







[8241] 本の話 真実
Name: ちびお◆39e725b5 ID:c1dbb3b1
Date: 2009/07/05 19:33

なんてこった
何気なく飲んだ酒が、召喚される原因かも知れないとは・・・

「・・・だいじょ、ぶ?」

幼女が心配そうに俺の顔を覗き込む
むぅ・・・
可愛い、本当に可愛いんだが、最近の俺にはあまりきゅんきゅん来ない

「・・・? 
 ・・・・・・あ、あのね、アカシャ、はなしたいって・・・」

「え?」

不思議っ娘だと思っていたが、本気で不思議属性だったのか
急に俺の背後に視線を寄越した幼女は恐る恐る切り出した

「かわる、アカシャが話するって・・・」

幼女の雰囲気が変わる
ふわふわのマシュマロのような雰囲気から、寺のような雰囲気に
・・・ごめん、寺ってなんだろうな・・・
でも、寺独特のあの雰囲気があるんだ
神々しいというかなんというか
そんな幼女が、いや、アカシャか
奴は俺の見上げたまま少し微笑んだ






「秀治おひさー」






( ゚д゚)

・・・(゚Д゚)?



「そんな顔だめだよー
 すまいるぅすまいるぅ、ニンゲンは笑顔がいちばんじゃー」



なんだろうコイツ
今までの神々しいまでの不思議な雰囲気はどこへ消えやがった



「せっかくあの女の結界から出たから、お話しするよ!
 秀治に何が起きてるのかー」



なんだろうコイツ
無性に殴りた・・・いや、駄目だ見た目幼女だし想像だけでも殴れない



「・・・怖いこと考えとるの
 とりあえず、आकाशगर्भの正体を明かそうぞ!」


「あー・・・うん、何かもうついていけないから存分に語ってくれ」


「うむうむ
 आकाशगर्भの正体!それは!
 厨二病患者が好んで使用するあの概念・・・アカシックレコードだったのだ!」



・・・えーと、ナ、ナンダッテーΩ

アカシックレコードとは、宇宙や人類の過去から未来までの歴史全てが、データバンク的に記されているという一種の記録をさす概念

うぃきぺでぃあ先生がそう言ってたな



「Akashic(アカシック)とはアーカーシャのこと
 Akasha(アーカーシャ、アカシャ)とはサンスクリットで「虚空」「空間」を意味する
 そして!
 आकाशगर्भは虚空蔵菩薩、梵名アーカーシャ・ガルバのことである
 ニンゲンはアカシックレコードを擬人化した菩薩と考えているらしいのー
 まぁだいたいあっとる」



わぁオカルティック
え、俺そんなけったいな奴を飲んじゃってたの?




「・・・आकाशगर्भもまさか飲まれるとは思ってなかった・・・」





・・・すいません・・・





「でも、なんで酒に・・・」


「आकाशगर्भな、近代オカルティズムでエーテルと同一視されておる
 秀治、お主RPG好きだろう
 ゲーム中にエーテルってどんなものが多い?」


「・・・鉱石だったり、ポーションみたいな回復薬・・・」



回復薬は基本的に液体多いよな
・・・ん?液体?



「ニンゲンの前に出現するときは、ニンゲンの概念に影響されやすい
 エーテル=液体と思ってるせいで、आकाशगर्भは液体で出現しておるのだ
 酒瓶なら万一にも飲まれたりせなんだろう、そう思ったのじゃが・・・」



そうそう落ちてる酒を飲んだりする奴はいませんよね
でもここに飲んじゃう奴がいたんですよねスイマセン
視線が痛いです
 


「蓋を開けてもらわねばआकाशगर्भは外に出られんし、
 開いたと思ったら飲まれるし、挙句にआकाशगर्भは秀治に取り込まれてしもうた
 秀治はチャネリングできるほどの集中力を持っておる
 ええい、ろくでもないニンゲンほど変な力を持ちよって・・・っ」


「ろくでもない人間で悪かったなぁ?」


幼女の頭を思いっきり押さえつける
かなり痛そうだ・・・って


「俺まで痛い!?」


「当たり前だ!秀治!お主はआकाशगर्भと一心同体、いやお前こそがआकाशगर्भの本体!
 寄り代の体といえどもआकाशगर्भであることは違いない
 आकाशगर्भの痛みは秀治の痛み!」


そんなのアリかよ?!


「ついでに言うなら秀治の記憶もआकाशगर्भの記憶!
 秀治の体もआकाशगर्भの体!
 離れたくてもその方法を書いておいたページが消えたせいでなんともならん!」


「・・・は?」


「最初はあの女の結界のせいで離れられなかった!
 取り込まれたままだった!
 ようやく結界の外に出れたと思ったら、秀治はページを消去しよった!」






「ページ?俺が消去したぁ?」







「しゅ、秀治が、秀治が悪いんじゃ!
 ヒゲを剃るから!!」





( ´゚д゚)´゚д゚)´゚д゚)´゚д゚)´゚д゚)

俺の心象風景
――シュウの日記より――

















[8241] 本の話 やっぱり敵
Name: ちびお◆39e725b5 ID:b776497b
Date: 2009/05/22 10:18
「いいか?
 チャネラーが凹だとすると、आकाशगर्भは凸
 ただのチャネラーなら凸凹が合体しても□にはなれん
 必ず隙間が生じるために完全な□にはなれないのだ」


「・・・俺がただのチャネラーじゃなかった、そういうことか?」


「変なチャネラーじゃよお主は・・・
 今我らの状態はこう、”回”のようになっておる
 外側の□が秀治、内側の□がआकाशगर्भ
 その気になれば秀治はアカシックレコードをフル活用できるぞ」


そんな特典も髭剃ったせいで意味がないよな
迂闊に散発も出来ないのか


「・・・あの女も早とちりして、寿命を縮めよって・・・」

「・・・なに?」

「あの女は病を抱えていた
 治癒すべくアカシックレコードを求めた
 全ての情報をもつ、そういう”本”を召喚したからな」


・・・そうか、”彼女”は病気だったのか
あんなに元気だったのに・・・
俺に馬乗りになって殴りかかったり刺したりするほど元気だったのに


目を閉じれば目蓋の裏側に思い出される”彼女”の姿
俺に”酒瓶とってこい(命名”彼女”)”遊びをする”彼女”(報酬は旨い酒)
俺に向かって鞭を振りかざす”彼女”
特徴的な高笑いをあげながら馬で爆走していた”彼女”


どれもこれも、懐かしい思い出だ
今となっては全てが恋しいものだ


「・・・正直、一体化したआकाशगर्भでも秀治のことが理解できん」



俺なんか変なこと考えてたか?



「お主と話すのは疲れる・・・
 あの女が情報を引き出せなかったのも無理はないのー」


お主面倒臭い


親にもよく言われたよ!


「ぺ○ちゃん顔で言うな!・・・こほんっ
 今回आकाशगर्भがお主と接触した理由は三つある
 アカシックレコードのことを伝えること
 お主が変な存在だということを教えること
 最後にお主の体の変調を教えることだ」


・・・?

体の変調ってआकाशगर्भを取り込んだことじゃないのか?


「阿呆
 普通のチャネラーがआकाशगर्भを取り込んでみろい
 情報量に耐え切れず発狂した挙句脳死状態じゃわ」


なんで俺生きてるの(´・ω・)?


「・・・酒じゃよ
 ニンゲンの脳の可能性を、酒の力で引き出したのじゃよお主は・・・」


・・・なんですと?


「ニンゲンの脳は、普段は半分も機能しておらん
 ・・・秀治、お主は酒を飲むことで脳の一部を破壊し、別の機能を引き出した
 その力がお主のチャネリング能力、情報処理力じゃ
 奇跡の体現者じゃなー」


わお
俺って意外と凄かった?


「別の機能を引き出せていなかったら死んでおったな
 酒のせいで」


酒で死ねるのなら本望ですが何か


「・・・
 こう、あれじゃ、飲めば飲むほど情報処理能力あっぷ、みたいな感じでな・・・
 酒を飲むの、止めるなよ?」


スルーとは悲しいな
しかし、飲酒を止めるだなんて・・・
飲まないと脳死するのか?


「お主だけ死ぬならともかく、आकाशगर्भも・・・
 アカシックレコードという概念自体も消失するからの
 飲め、膀胱破裂してでも飲め、飲まないと・・・
 あのリーナとかいう小娘に、お前の黒歴史の一部始終を話す」


ああああああああああああああああああ!!!
やめてやめて!飲むから!むしろ飲まないとやってられないから!
黒歴史だけは・・・っ黒歴史だけはやめてぇぇぇ!


「三日飲まなかったら発狂フラグたったと思えよ
 一週間で脳死じゃ!分かったな!?」


イエッサー!!


「あ、言おうと思って忘れておった
 お主、あの女の次男に気をつけろ」


へ?


「殺されはしないが、婚約者の服を作らせるために
 両足切断して一生椅子の上で生活させるつもりじゃぞ」


待った
ちょっと待った
え?婚約者のために?やりすぎじゃないかそれ


「暮らさせる部屋の準備やら、服飾材料の手配とかを記した手紙を業者に送っていた
 手紙内容全部言ってやろうかのー?
 えぐいぞーひどいぞー?」


お、俺の被害妄想じゃなくて本気でヤバかったんだ・・・っ
まさか暇だから俺を殺すなんてことないよねーって思ってたけど・・・
婚約者のために俺飼い殺しになっちまう・・・っ
次男やべぇ次男怖ぇぇぇぇ















5/22誤字発見

鮭の力って何なんだろうね酒の力だよね
もう酔った勢いで書くもんじゃないね小説



 



[8241] 本の話 幼女
Name: ちびお◆39e725b5 ID:7149f61d
Date: 2009/05/29 08:22



前回までのあらすじ

異世界に召喚された俺はデザイナーとして、知人の領主の元へ身を寄せる
俺を召喚した”彼女”のメイドには黙って家出した
メイドは俺を探していることだろう、しかし、俺には戻れない理由があった

召喚された館に戻る
それは”彼女”の息子達によって何をされるか分からない
もしかすると殺されるかも、という可能性があるためだった

領主の元へ身を寄せて数日、俺に異変が現れた
アカシックレコード、俺はこいつと同一化してしまった・・・らしい



ううむ、今までのことを軽くまとめてみたがよく分からん
とりあえず俺は酒を飲まないと生きていけない体になった
なんという幸福アハヘ(゚∀゚*)人(*゚∀゚)ノアハ


「・・・アカシャ・・・おかしくなった?・・・」


おお?
आकाशगर्भの雰囲気が掻き消えて、幼女に戻ったようだ
奴が憑依できていたってことは・・・
この子はイタコというかシャーマンの素質があるんだろうな


「嬢ちゃん、俺はシュウ
 アカシャはやめてくれ、な?」


「・・・うん、シュウ?
 お願いきいてくれる?」


幼女からおねだりだと!?


「おようふく、汚しちゃったの・・・
 せんたく、てつだって・・・?」


今まで幼女の顔しか見ていなかったが・・・
確かに服が汚れている
いや、汚れているどころの話ではない
淡いピンクのシャツ全体が真っ赤な色に染まっている
・・・ジュースでも溢したのか


「アオイにね、汚さないって言ったんだけど・・・
 ・・・トマトジュース、溢した・・・」


「あー・・・これだけ染まっていたら洗っても取れないな
 ・・・これ、最近買ったのか?」


「え、うん
 三日前に、買ってくれたのアオイ
 汚さないならきていいって・・・」


・・・ここまで汚れていたら洗っても無意味
こうなると同じものを買うしかない、か
汚れた服のまま、アオイって奴のところへ帰すのも可哀相だ
こんな目立たない路地で泣いていたのも、汚れた服が恥ずかしかったのだろう
・・・いや、買ってもらった服を汚したのが悔しいのか
俺にもそういう頃があったなぁ


「これ、どこで買った?」

「一番港の市場・・・」


一番港の市場の服屋と言えば一軒しかないな
あそこはほとんど生鮮食品しか扱ってない市場だし
ちょうど店長とは知り合いだ
同じものを探してもらおう


「おいで嬢ちゃん
 ・・・アオイってやつには秘密にしたいんだろう?
 新しい同じ服、買ってやるよ」


上着を脱いで幼女に着せてやる
汚れた服はなんとか隠れた


「・・・良いの?」


「子供はうんと甘やかされるもんだ
 その代わり、今度は汚すなよ?」


「・・・うんっ」



幼女がふわり、と笑った
あぁこれだから子供は良い
泣いてるところも可愛らしいが、一番は笑顔だ
幼女と手が繋げなかったので、迷子防止のため肩車することに
頭を掴んで支えているせいかオールバックを崩されそうになる
幼女可愛いなぁ





・・・あれ
俺、誘拐犯みたいじゃないか?







[8241] 本の話 アオイ
Name: ちびお◆39e725b5 ID:2f4322b8
Date: 2009/05/29 20:16



ソルが帰ってこねぇ
三日ほど前に買ってやったピンクのシャツを着たまま帰ってこねぇ

前にも何度かあった
新品の服を着せて外出させると必ず汚して、泣いたまま帰ってこない
泣きつかれて眠ってしまったときもあったし、
路地裏で隠れていたときもあった

いつもいつも、あれほど汚すなと言い聞かせたのに・・・

今回もきっと汚してしまったのだろう
そう考えて迎えにいく
今日はあのモノクル男の監視は休みだ
領主のメイドたちが監視している

ソルの行きそうな場所を探していると、誰かに服を引っ張られた

「ちょっと、アンタ
 白い髪のちっちゃい子の保護者だろ?」


「あ、そうですそうです
 あの、うちの・・・妹が何か・・・?」

確かこの女はリーナ、三番港区の雑貨屋の従業員だったな
あのモノクル男と仲が良かったはずだ
前の好感度調査でも協力してくれた女だな


「何でか知らないけれど、シュウと一緒に一番港区に向かってたわよ
 シュウのことだから大丈夫だと思うけど
 探してるんだったら行ってあげたら?」


なんというグッドタイミング!
ありがとうリーナ姐さん、恩にきるぜ!
あの・・・あのモノクル男と一緒にいるだなんて・・・
待ってろ嬢ちゃん、俺が今すぐ助けに行くからな・・・ッ


「ありがとよ姐さん!
 今すぐ行くぜ!」











俺は今一番港区にある服屋に来ている
幼女は泣き止み俺と手を繋いでいる

従業員にオーナーを呼んでもらうよう頼み、少し待つ
最近流行の服を見ているがどうも俺の感性には合わない
一応庶民向けの店なので、素材がどうしても安っぽいものしかないのだ

領主が持ってくる高級素材のおかげで目の肥えた俺には、少し・・・合わん

椅子を用意されて座る
何故か幼女が俺の膝に乗ってきた
え、なんで

「・・・なぁ」


「・・・?
 あ、ごめん・・・癖で」


「いや、そのままでいいよ」


幼女は膝に座ったことをなんとも思っていなかったらしい
癖、か
なんでそんな癖がつくんだろうねー


「アオイ、わたしの・・・ほ、ほごしゃ?と座るときはこうするの
 アオイは足が長くてね、腕も指も長いんだよ」


何故だろう「お前足短けぇんだよm9(^Д^)」って言われてる気分だ
幼女の保護者の名前はアオイさんか
性別を聞いてみると男だと教えてくれた
・・・そうか、男か


「アオイのお名前ね、植物のことなんだって
 昔の王様みたいにえらかった家の紋章にね、使われてたんだよって
 アオイがそう言ってた」


アオイで・・・紋章?


「お日様と向こうって意味がある字と組み合わせるとー
 ヒマワリっていうお花になるんだって!
 キレイなお名前だよね」


・・・向日葵・・・葵、紋章って徳川の三つ葉葵のことか・・・?
この世界に漢字はなかったはずだ
俺と同じように召喚されてきた人なのかね
もしくはその子供とかか


「これはこれはシュウさん
 お久しぶりでございます」


オーナーがやってきた
頼んでおいたあのピンクのシャツも一緒に持ってきてくれている


「どうもレカントさん、急にすみません」


「構いませんよ、こちらの服でよろしかったですかな?
 あぁ汚れた服はこちらで処分致しましょう」


レカントさんは今年50歳になるナイスミドルだ
試作用の服の素材を売ってくれたり色々便宜を図ってくれる
だが黒い
彼の腹はブラックホールに違いない


「あぁそうそう 
 シュウさん、明後日までに5着分デザインしておいてくださいね」

期限すぎたら素材売りませんからね



あぁ・・・本当に怖い人だよ・・・
今日は徹夜だな



「・・・シュウ、ありがとう」

「あぁ着替え終わったんだな
 ・・・これで、アオイさんのところに帰れるな?」

「うん
 ・・・今度、お礼するね・・・!」


門限を過ぎていると走りだす幼女
店から出て行き、窓からはもう見えなくなった
若い子ってすごい行動力だな


「じゃぁレカントさん、明後日また来ます
 今日は無理を言って申し訳ありません」

「他ならぬシュウさんの頼みですから
 それに何点か在庫がありましたし・・・
 ・・・それにしても、シュウさんはあの子供ことをご存知で?」


穏やかな笑みだが目が笑っていない
怖い怖いよレカントさん


「あの子、アオイという暗殺者と組んでいる何でも屋なんですが・・・
 彼女に関わったら最後、アオイという男に殺される
 そんな噂があるんですよ」















殺されないよう、お気をつけて


























「ソルー!!!だ、大丈夫か?!
 あのモノクル男に変なことされてねぇか!?」

「・・・なんで(一緒に居たことを)知ってるの?・・・」


「!
(知ってるの・・・ってことは、あの男!ソルに手を出したんだな!?
 決めた・・・子爵からの依頼、俺は受けるぜ・・・)
 ・・・お前が生きていてよかった・・・」


「・・・?
 (アオイどうしたんだろう)」




[8241] 本の話 迫り来る恐怖
Name: ちびお◆39e725b5 ID:279d8eaf
Date: 2009/06/07 19:35

最近困ったことが多い
次男から何をされるか、これも悩みのひとつだ
しかし俺が気に病んでいるのはそれだけではない


俺が人外な存在になっているということ
擬人化版アカシックレコード、そんなよく分からない存在になっている
この体のことを知るため、俺の中にあるआकाशगर्भに接触してみるものの・・・
イマイチ分からない
आकाशगर्भにそう駄々をこねて、教えてもらおうとするが失敗
だが少しだけ前進した


なんと、アカシックレコードの使い方を教えてもらったのだ!

調べたいことを強く念じれば、ぽぽんてっみたいな感じの音で情報が頭に入る
失敗したときの音は、くりゃれっという感じの音だった


「意味わからん」


「आकाशगर्भにあたるなー」


結論から言うと、俺は”本”ではないのだろう
”検索システム”であり”目録”である
・・・”彼女”が召喚したかった”本”とは・・・違う


ネットでキーワード検索してたら、関係ないものが出てくる、それがこの俺だ!
でも実は探しているものに関係あったというオチつき


なんという不思議生物


あと、分かったこと

髭を剃ったせいで俺とआकाशगर्भが分離する方法は消えてしまった
じゃぁ髪が伸びたら?爪が伸びたり、切ったりしたらどうなる?

それはもう、簡単な話だ

髪が伸びたらその分、情報を記したページが増える
だが切り落としたり体から離れてしまう部分のものは、消えてしまう
髪の毛や産毛のひとつにも、多大な情報が刻み込まれている
ちなみに老廃物は、アカシックレコードが間違えて記録したものを自発的に消去したものだ

なんかね、加工すれば老廃物やらその他諸々で本作れちゃうらしいよ?
管理人とかいう奴がその技法持ってるそうだ


「ところで管理人って?」


「・・・秀治が憶えてなくても、レコードが憶えておる
 あとで検索しておけぃ」


まぁそういう余談はさておき、俺がこれから気をつけなければいけないことは・・・


・酒を絶やさない

・何が消えるか解らないから、散髪などはなるべくしない

・”技法”を持っている奴を信用してはいけない



「気付いたら完全な”本”にされてました☆

 みたいな状況になる危険性があるので、管理人とか気をつけるんじゃ」


「管理人・・・っ恐ろしい子・・・っ」



記憶にないが管理人ってあの幼女と一緒に居たんだろうなー
なんとなくそんな感じがする
・・・一気に恐怖が芽生えてきた
俺、管理人になにかされたんだろうか


「シュウ・・・さっきから何を1人でボソボソと・・・」


そういえば俺、レカントさんと一緒に服を渡しに来てたな
二人からドン引きされている
そんなに怪しかったのか


「怪しいと言うより、気味が悪いとしか言いようがありませんね」


「今の君は、本当に気持ち悪かった」


「泣くぞ、俺泣くぞ
 そろそろ泣いていいはずだろ?」


俺の周りの男達はなんでこうも冷たいんだ

(・・・類は友を呼ぶって、知っておるか・・・?)

आकाशगर्भはお黙り

「またブツブツと・・・ 
 領主さま、聞きたいことがございます」


「シュウの素性なら教えられないぞ?」


レカントさんになら教えてもいい気がする
こういうの面白がって隠してくれそうだし


「いえ、男の過去になんぞ興味ありません
 何でも屋に依頼しましたね?」


お?いきなり何だ?


「もしも、という可能性があります
 暗殺者アオイ、彼の噂、気付いていませんね?」


何だ領主、お前幼女に何か依頼してんの?


「・・・暗殺者?奴らは何でも屋であろう?」


「・・・いいえ
 彼は、何でも屋ソルと組んでいるだけ
 暗殺者という本業は、今もなお続けております
 ジェラルド子爵はアオイに依頼しましたよ」


デザイナーシュウの両足を切断し、子爵の館に連れていく


「それが、彼の依頼内容です」


「え・・・え・・・ええっ
 シュウが、シュウが死んじゃうよぉ!?」


みるみるうちに領主が青ざめていく
青を通り越して土気色に近い
なんて器用なんだ領主


「殺されはしません、殺されはしません
 大事ですから二回言っておきますね」


・・・レカントさん、染めると面白そうだなぁ・・・

(・・・秀治、現実逃避はやめておけぃ)



それから領主とレカントさん二人で語り合っていた
ジュニアがどーたら、国王になんとかかんとか、いっそ幽閉するかとか聞こえてきたけどね
聞こえない、聞きたくない訳ですよ


ん?二人が語ってたとき俺どうしてたかって?


俺は領主のベッドでメイドさんたちに遊んでもらいました
やらしい遊びじゃないよ!
迫り来る両足切断の恐怖から、慰めてもらってただけだからね!
頭ナデナデしてもらっただけだよ!


アオイとかいう奴と組んでる幼女はどうするんだろうな




[8241] 本の話 婚約者=?
Name: ちびお◆39e725b5 ID:5800b341
Date: 2009/07/05 19:32


ようやく出来た私の友人シュウ
人生初の友であり、同志でもある
そんな彼は今、窮地に立たされようとしていた


我が従姉の次男、ジェラルド子爵
彼の行動は国内外から批判されていたが、それでも親族
出来得る限り庇ってきた


しかし、最近のジェラルドの行動は目に余る
このままではジェラルドだけでなく、ジュニアたちまでもが批判されかねない
・・・姉君も嘆かれることだろう


一介のデザイナーを手に入れるがために
たったそれだけのために下級貴族から領地を奪い取り、
商人から不当な手段で生糸や絹を買い叩く


このままではジェラルドがどうなってしまうか解らない
ジェラルドだけでなく、我々貴族もどうなることか


すさまじい力を持ち始めた最近の商人たちを、敵に回してはならない
許して欲しいジェラルド、貴族という制度が潰されぬためにも・・・
お前に犠牲になってもらう


「・・・レカント、船を用意しておくれ
 私は王の元へ向かうとしよう」


まずは王の許可を
そしてジュニアのもとへ行かなければならない


「今ご用意できる船でしたら、2日で王都に到着いたします
 よろしいでしょうか」


港町の領主だからと言って、勝手に船は用意できない
船の用意をできるのは商人ギルドの上層部のみ
2日という早さで到着できる船を用意すると言うことは、
商人たちもジェラルドを警戒しているらしいな


「あぁそれで頼む
 ・・・あと、何でも屋に依頼の中止を報せるように
 アオイという男、けっしてシュウに近づけるな
 近づくんじゃないぞシュウ!」


ベッドでメイドたちと戯れていたはずのシュウ
話しかけたら彼は消えていた


「・・・レカント、シュウはいつのまに・・・」


「わ、私にもわかりません
 ・・・部下に探させます」


「う、うむ」






なんでこのタイミングでお前はいなくなるのだシュウ・・・
















(良かったのか?
 お前の安全に関わる話だったのに
 で、どこに行くつもりじゃ?)


「ん、船着き場
 領主はあの調子だったら多分、王都にいくだろうし一緒に乗り込む
 ・・・それでジェシーに会いにいく」


(何故そこであの女が出てくるのだ)


「管理人って言う奴?検索してたらさ
 ジェシーが引っかかったんだ
 次男とジェシーと管理人、こいつらグルみたいだ」


















「ジェラルド若様、お茶が入りました」


「お茶、シアン好きだったね
 ジェシー、クッキーも持ってこい」


ろうそくだけの明るさが支配する部屋
隅々まで意匠を凝らし、派手ではあるが嫌味には見えない内装
ティーセットを用意するジェシーを見もせずに、青年は宙を見つめている
何もいないはずの空間
しかし、彼ら二人には見えていた
半透明な女が揺らいでいるのを


「クッキーはもう良いわジェラルド
 私は今、胸が一杯だから」


ここにもし、秀治がいたのならば、ソルがいたのならば
聞き覚えのある声に恐れを抱いたことだろう

半透明な女の声、それは管理人の声だった
ソルの体を乗っ取り、逆恨みで秀治を傷つけようとしたあの管理人である


「あの化け物が、もうすぐここへ来ると考えるだけで・・・
 嬉しさで胸が一杯なのよ」


「君が嬉しいとボクも嬉しいよ
 あの暗殺者が依頼を受けたから、一週間もしないうちに運ばれてくると思うね」


「楽しみだわ
 早くあの化け物を”本”にしてあげなくちゃ
 自然のバランスが崩れてしまうもの・・・」


独特な雰囲気が場を飲み込む
薄笑いを浮かべながら管理人とジェラルドは見つめあう
楽しみで仕方がない、そんな風に笑いあっていた


二人に茶や菓子を補充しながらジェシーは目をぎらつかせていた
想いはひとつ
”本”秀治のことだけだ


(ほら見なさいな
 やっぱり”本”は”本”だったじゃありませんか
 ”本”なのに嘘をついて、ヒトを騙ってご主人様を苦しめて・・・
 行方を眩ませるだなんて!許せません!
 しかし、ジェラルド若様と婚約者シアン様のお力で、ようやく ”本”を見つけられました・・・
 ご主人様の遺言のとおり、結界の中に安置することが出来ます
 あのお屋敷にはもう住めませんが――
 別のお屋敷でずっといてもらいますからね”本”)


ジェシーの目が妖しく輝いていた









[8241] 本の話 自己満足
Name: ちびお◆39e725b5 ID:c8e6703a
Date: 2009/07/05 19:32



さっきから背筋に冷や汗が流れて止まらない
悪寒も止まらないし、首筋の産毛がぞくぞくする
いやな予感が止まらない

あれから迷わず船着場に来た俺だが・・・
レカントさんの部下に見つかって領主の前に引っ張り出されました
いや、勝手な行動して申し訳なかった
本当にそう思ってるんだよ
何回もそう言い訳してみるものの・・・領主には通じてもレカントさんには通じない

「レカントさんに通じーないよー♪」

「シュウ、酒でふやけたのか・・・紙」

「・・・領主、そろそろ俺がニンゲンだって信じてくれても良いじゃない・・・」

聞こえていないフリをしてそっぽ向いた領主
コノヤロウ

「・・・シュウさん、自分がいかに危険な状況に置かれているか・・・
 理解してますよね?」

・・・

実はあんまり理解できてません
考えても見てくれ
一般人として普通の生活を送ってきた人間が、あなた狙われてますよと言われてどうするだろう
そんなこと言われても・・・俺は気にもとめないな
危機感が足りなくて結構だ

二人ががんばって俺を助けてくれようとしているのは解ってる
俺を助けることで、二人になんらかの利益があるのは理解してる
でもな、この件は俺が直接出向かなきゃ駄目だと思う
管理人が関わってるんだ
俺が行くべきだろう

(これがニンゲンの自己満足とやらか?)

आकाशगर्भが笑っている
確かにその通りだ
これは俺の自己満足のすぎない
・・・だからって二人を無下に扱ったりしないぞ


「レカントさん、王都へ連れてって下さい」

「まずは人の問いに答えなさい
 ・・・危機感がないのか図太いだけなのか・・・
 貴方がたとえ殺されても、私見捨てますからね
 それだけは覚悟しておいてください」

呆れた顔で頷いてくれたレカントさん
なんとか船に乗せてもらえるらしい
密航せずにすんで良かった
・・・なんか領主が隅でへこんでる

「・・・何故シュウは私に頼まないのだ・・・」

「いや、お前に乗船許可もらっても意味ないし
 レカントさんが許可出さないと俺乗れないし」

「・・・シュウのばか・・・」

「あなた方は本当に・・・
 さ、船にお乗りください
 私は同行しませんが、別の者が同行いたします」

・・・別の奴?














◇◇◇














「・・あら・・・
 あの化け物、自分でこちらへ向かってきているわ」

「まぁ本当ですかシアン様?」

シアン様は本当にすごいお方
どれだけ遠くにいようとも全てを見通せるだなんて・・・
すばらしいお力ですわ

「えぇ、この速度だと・・・船に乗っているみたいね
 ・・・ジェシー、お出迎えの準備をしておいて」

「畏まりました 
 暗殺者アオイについてはどういたしましょう?」

暗殺者アオイには両足切断したのちこの屋敷に連行するように、と依頼しましたが・・・
”本”がこちらへ向かってきているなら依頼の中止を・・・

「彼は足を切断してもらう役目があるから・・・
 このままで構わないわ
 ジェラルドにさせるわけにもいかないしね」




そうですよね!
何もジェラルド若様がなさることではありません
暗殺者風情に任せて置けばいいのです、私ったらなんて馬鹿なことを考えていたのでしょう
ジェラルド若様はアドルフ若様に叱られて落ち込んでいらっしゃるのに・・・
本当に私は気の利かないメイドです、ご主人様に何度も怒られているというのに
シアン様はやはりすごいお方です






「ジェラルド!お前は一体何を考えているのだ!?」

「うるさいよアドルフ兄上!
 ボクが何をしようとボクの勝手じゃないか!」

「お前の勝手な振る舞いで我が一族は白い目で見られているのだぞ!?
 これ以上お前の我が侭は許さん!
 これから一年お前は謹慎だ!もし何かことを起こせば一生幽閉だからな!」

「・・っ!?何故です兄上!?」

「お前が今まで好き勝手行動してきたツケだ・・・
 国王も承認している
 大人しくしているんだぞ




 ・・・母上の遺産整理も出来ていないと言うのに・・・」



カツカツ、大理石の廊下に心地よい足音を響き渡らせて、彼は去っていった
小声でこぼされた愚痴を聞き、ジェラルドは兄の背中を睨みつける



「・・・ボクはボクのためだけにやってるんじゃないのに・・・
 母上の遺産を教えてくれる”本”を探しているだけなのに・・・
 シアンは分かってくれたのに、どうして兄上は分かってくれないの」



はやく”本”を手に入れなくては

そう呟いてジェラルドも立ち去った



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