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[8642] 恋姫無双~店主徐晃伝~ <転生オリ主>
Name: 三年G組将軍先生◆b1f32675 ID:382977c2
Date: 2009/05/10 15:35
初めまして。ここのSSに触発され、初めてではありますが書いてみました。
宜しくお願いします

尚、転生→オリジナルな主人公です。
  初めてSSを書くので駄文です。
  一人称で書いています。書いている本人はそのつもりです。 
  √は魏。
  
よかろう読んでやる。という方はそのまま下の本編へどうぞ。
それ以外の方は、回れ右でお願いします。
では、どうぞ。










「へい!お待ち、皮十本ともも十本。」

どうも初めまして。徐晃です。
え?武将が何で焼き鳥焼いてるかって?
話すと長いんですけどね、要約すると転生したんですよ、俺。
元々は只の学生だったんですけど。
事故にあって死んだら、徐晃になっていた訳ですよ。

「はい、そちらさん。もも十本、お待ち!」

最初の頃は、武将もいいかなー、とか思っていましたけど。
死にたく無いじゃないですか、やっぱり。
で、いろいろ考えた挙句に屋台を出しています。
ああ、焦げちゃう。

「へい、追加分お待ち!」

まあ、そんな訳です。
今日も今日とて忙しいです。
焼き鳥という文化が無いらしく大賑わいですよ。
最後のお客が勘定を済ませたので、カウンターを拭きます。
やはり飲食業は清潔感がないといけませんからね。

「徐晃、また来たぞ」

暖簾をくぐって姿を見せたのは、うちの常連さんの一人。
夏侯惇さんです。
綺麗な人ですよ。言うなればボン・キュッ・ボンですよ。
え?元譲さんは男だろって?
知りませんよ、んな事は。
だって目の前の夏侯惇さんはどう見ても女ですから。

「いらっしゃい。元譲さん。今日はどうしますか?」
「そうだな、適当に見繕ってくれ。あと、他の客も連れてきたぞ。感謝しろよ?華琳様、こちらです」

姿を見せたのは少女。どう見ても少女です。
でも、元譲さんは様付けしましたね。
てー事は?

「春蘭、屋台なの?美味しいといっていた店は?」
「はい、ここの焼き鳥は絶品です。秋蘭もそう思うだろ?」

さらに奥から顔を出したのは、妹の夏侯淵さん。
これまた美人さんです。この人も良く来てくれます。

「徐晃、遅くに済まんな」
「いえいえ、お客様あっての商売ですよ。妙才さん」

俺の屋台は小さい。三人がゆったり座ればそれこそ満席に近い。

「元譲さんはタレ焼ですか?妙才さんは塩で?」
「ああ、そうしてくれ。華琳様は如何しますか?」

キョロキョロと見渡す華琳さん。恐らく真名なので呼んじゃいけません。

「採譜は無いのかしら?」
「無いですよ、綺麗なお嬢さん」
「じゃあ、一番美味しいものを頼むわ」
「はいよ。少々お待ちを」

そう言って仕込みの串を取り出し、ガンガン焼きます。
とにかく元譲さんは良く食います。無茶苦茶食います。
この前はありったけの仕込みを食べられました。
あれにはビックリです。

「今日は盗賊退治か何かですか?」
「分かるか?」
「血の匂いがしますよ」

そうか?と服をくんくん嗅ぐ元譲さん。
この人は面白いです。
ネタの宝庫ですね。
団扇でガンガン炭火をいこして行きます。

「へい、お待ち」

良く来てくれる二人の感想は美味いとの事。
問題はこのお嬢さん。
恐らくは曹操さんでしょうか。
良いとこの出の人でしょうから、舌は肥えているはず。
ちょっと、ドキドキしますね。

「この塩は何かしら?」
「当ててみませんか?」
「何かしら?食べた事が無いわ・・・塩なのに甘い。香りも良い。・・・こちらのタレも・・・初めてだわ・・・甘辛い?醤油だけじゃない。とても丸い・・・とでも言うのかしら?」

一口二口、口にして目を閉じる。
今までの記憶を呼び起こしているのでしょう。きっと。

「食べた事無いでしょう?まあ答えは秘密って事でお願いします」
「そう・・・店主がそう言うなら仕方ないわね」
「すみませんね。そうそう、元譲さん。今日は珍しいものありますよ。行っときますか?」
「おうおう、いくらでも出してくれ。お前が出すのは何でも美味い」

ニコニコしながら次々に串を食べていきます。
ペースが速いです。
追いつきませんよ。

「はいよ、お待ち。こちらの柚子を軽く絞ってどうぞ」
「ふむ。私はタレ焼きが好きなんだがな?まあ、お前が言うのだ、食ってやろう」

出された串に軽く柚子を絞って一口で食べる。

「なんだ、これは?コリコリしてて硬いけど軟らかい?けど美味いな、これは」
「見たことないわね。私にも貰えるかしら?秋蘭は」
「頂きます。徐晃、頼めるか?」
「あんまり取れないものですからね。限りはありますけど、大丈夫ですよ」

先ほど出したものと同じものを出す。
食した二人は首を傾げる。
他にも珍しいものを何点か出す。
正体は秘密です。こういった物を食べる文化が無いんでしょうね。
やはりと言うか、何と言うか、元譲さんはモリモリ食べます。
見ているだけで気持ちいいです。
なんだかんだで食材切れまで食べましたよ。この人達は。
といっても約一名がハンパ無い訳ですがね。

「食った食った。やはり徐晃の屋台は美味い」
「ありがとう御座います。妙才さんもいつもありがとうございます・・・で、如何でしたか?綺麗なお嬢さん」

やはり初めての人の意見は大事にしたい。

「どれも良かったわ。とても屋台の料理とは思えない位ね。酒に関しては美味いとはいえないけど料理との相性が良い物ばかりを揃えていたし」

姉妹揃って驚く。
あんまり褒めない人なのかな?何と無くそんな感じの顔つきだし。

「特にあのコリコリしていた物がよかったわ」
「お口あって何よりですよ。それにいい稼ぎになりました。しばらく休業ですし」
「なんだと!」

立ち上がり声を荒げる元譲さん。

「ええ。塩も切れ掛かっていますし。仕入れに行かないといけませんから」
「やはりここでは手に入らない物なのね」
「屋台の店主も大変なんですよ。世の中物騒ですし」
「何を言っているのだ、お前は。武も立つだろうに。何度も誘っているではないか」

英雄にそう言われるとうれしいですね。
照れちゃいます。

「いやいや、皆さんには敵いませんよ」
「ふーん。まあいいわ。今日はご馳走様。秋蘭?」
「畏まりました。ここに置いていくぞ徐晃」
「はいどうも。ありがとう御座います。またどうぞ」
「私は、曹孟徳よ。孟徳と呼びなさい。徐晃」
「はい、孟徳さんですね。かしこまりました」

帰っていく三人さんを見送ってから片付けです。
置いていった袋の中身を確認・・・・・・

「なんじゃこりゃ!!!」

思わず、松田○作が出てきましたよ。
なんつー金額払うんだ!
流石に悪いぞ。でも返すのも泥を塗るみたいで悪いし。
次来た時に奢るとしますかね。




仕入れの旅から帰ってきました。
二ヶ月振りでしょうか?陳留が何と無く懐かしいです。
検問に並んで自分の番が来たと思ったら、暫くここで待てと兵隊さんに言われました。
俺、何かしたっけ?
待つこと四半刻程。
姿を見せたのは、孟徳さんと妙才さんでした。
前に会った時は刺史さんでしたが、今では太守さんらしいです。
出世したんですね。
で、着いて来いとの事です。
着いた先には一件のお店?工事中ではありますが。

「???」
「見て分からない?貴方の店よ」

うそーん。

「えーと、何故?」
「私は屋台で食事をするのはあまり好きじゃないの」
「孟徳さんの趣向はわかりましたけど・・・」

首をかしげていると、妙才さんが補足してくれました。

「華琳様はお前の料理を大変お気に召したのだ。その褒美だと思えば良い」

褒美で店一件って。
どんな金銭感覚だよ?

「まだ箱しか出来ていないがな。中身はお前が決めれば良い」
「決めればって、流石に貰えませんよ。店なんて」

と、断りますが。
普通有得ないでしょう。

「徐晃。私の顔に泥を塗る気かしら?」

こちらを見る孟徳さん。
笑ってるけど、笑ってねー。
その目は絶対笑ってねー。

「・・・・・・よろこんで頂きます」
「結構」

完成したら呼びなさい。とだけ告げて帰っていきました。

「どーするよ。これ」





あとがきです。

初めて書きましたが、難しいですね。
もっと精進していきたいと思います。
至らぬ点が多いとは思いますが、今後とも宜しくお願いします。

  



[8642] 恋姫無双~店主徐晃伝~ <転生オリ主> その2
Name: 三年G組将軍先生◆b1f32675 ID:382977c2
Date: 2009/06/02 16:32
どうも、屋台の店主から一件の店持ちにクラスチェンジした徐晃です。
外枠はほぼ完成していましたが、無理を言って少し弄らせてもらいました。
だって煙が篭るでしょう。これじゃあ。
何せ費用は出してくれるとの事なので。
大型の換気扇も作ってもらいました。手動ですけどね。原理は分かっているのであとは丸投げしました。

「うーん、こんなもんですかね」

客間は基本的にカウンター以外認めません。
やっぱり、顔を見ながらが良いですからね。
奥の厨房はここで鳥やらを捌けるように広いスペースを取って、裏手には井戸も完備してあります。

「やっぱり冷蔵庫が欲しいんだけどなー」

在る訳無いですよねー。
基本土壁ですし、厚めに作って貰いましたし、風通しも良い作りになっているので問題は無いのですが・・・

「無いものは仕方ないか。これで完成としましょう」

業者さんに細かいお願いし、俺は二階へと上がります。
二階が自室です。
どんな部屋にしようかな?

「そういえば、完成したら呼べって言われてたっけ?」



そんなこんなで完成です。
今日はレセプション当日。
といっても伝わらないので言いませんが。

「今日はようこそおいで下さいました。腕を振るわせていただきます」

招待客は孟徳さんたちご一行様。
俺はユニフォームに身を包んでいます。
新調しちゃいました。
所謂ハッピです。ジャパニーズハッピです。
焼き鳥屋さんと言えば、ハッピな感じがしませんか?
顔ぶれが以前に比べて増えていますね。
許褚ちゃんという少女と、荀彧ちゃんが初顔ですね。
自己紹介をしたら、やたらときつい反応の荀彧ちゃん。
しかし、ここは我慢の一手です。
サービス業の基本はスマイルですし。
許褚ちゃんは良い子なんですがねー。
にしてもここの出資者は無茶苦茶ですね、はい。

「桂花。徐晃の料理が不味かったら、首を刎ねてもいいわよ?まずは食べてみなさいな」

なんて言うもんですから。
無茶苦茶です。
大事な事なので二回言いました。
まあ、味に自信はありますが。
こんな男が、とか。所詮男の作るものなんて、とか言ってやがりますよ。
反対側では、お口取りで出したおつまみで、早速宴会です。
元譲さん、ペース速すぎ。

「まずは盛り合わせでどうぞ」

うわー。睨んで来ますよ、この猫耳。
とにかく食えっての。
孟徳さんに言われ、渋々といった感じで一口目。

「・・・おいしい」

ポツリと漏らした一言を、聞き漏らさずに小さくガッツポーズ。
目が点になっているお嬢ちゃんをほったらかしにしてドンドン行きます。
この焼き台にも慣れないといけませんし。

「徐晃、変わったところを出して貰えるかしら?」

やっぱり来たよ。ニヤニヤしてますね、孟徳さん。
しっかーし!
準備万端ですよ。

「そう来ると思って用意しましたよ」

次々と焼いている中、焼き台の端に鍋を乗せます。

「温まったら出せますんで、ちょっと待って下さいね」
「徐晃ー、焼き鳥が足りんぞー!」
「はいはい、ちょっと待って下さい・・・はいよ」

出したと思えば、

「酒ー!」
「はいはい」

何ですか、このハイペースは。
と、思ったら。
横の許褚ちゃんがヤバイです。
何がって?
元譲さんより食ってますよ。この子。
マジパネェ。

「はいどうぞ、孟徳さん」

鍋の中身を盛りなおして提供。
柚子の皮を摩り下ろした物を掛けて出来上がり。

「何かしら・・・真ん中に筋が通っている?いえ骨かしら?」
「華琳様!お止め下さい!このような見たことも無い物を召し上がるなんて!それにこんな男が作るものです。不味いに決まってます。見た目も気持ち悪いですし」
「あら、桂花。その割には結構な量を食べてるじゃない?」

そう言って串入れを見てニヤリとします。
どう見てもSな人ですね。分かります。
ん?ちょっと篭ってきたかな?換気扇を回しましょう。
おおー、すげー、煙が裏に流れていく。すっげー。

「これは、その・・・出されたものですので仕方なく・・・」
「ふふふ、可愛いわね。徐晃、桂花にも何か珍しいものを」
「はいよ!」

どんどん焼きますよー。

「妙才さんはどうします?えらく静かですが」
「私はお任せで頼む。ゆっくり目でいい」

向こう側の元譲さんをじっと見てますね、この人は。
目つきが何と無くいやらしいと言うかネットリと言うか。
シスコンなんですかね?
ガンガン行きますよ。

「はいどうぞ。これは柚子を軽く絞ってお召し上がり下さい」
「こちらは横の刻んだ葉山葵とご一緒にどうぞ。辛いですから気をつけて下さいね」
「許褚ちゃんには・・・はい。このままどうぞ」
「妙才さん。こちらのお酒と合いますよ」
「コラー!元譲ー!脱ごうとするなー!」

一部はドンチャン騒ぎです。
こちらとしては一人で獅子奮迅ですよ。
換気扇がしんどいです。コレは打開策を考えなくては。
皆さん楽しそうで何よりですけどね。
結局お金出す訳ですか。孟徳さんは。
今日は奢りだって言ってあるのに。
しかも、金額ハンパネェ。
ちなみに明日の食材もありません。
食い尽くされました。
いきなり休業ですか。



徐晃の焼き鳥屋さんがオープンして、はや一週間ほどでしょうか。
連日大賑わいですよ。なかなか大変です。
雑誌にも載りましたよ。
あ、ちなみ『徐晃の焼き鳥屋さん』が店名です。
まんまですみません。
看板の屋号を書いてくれたのは孟徳さんです。
達筆すぎて読めません。
そんな事はどうでもいいですね。
三人組の女の子のお客さんが来ました。

「ここなのー。阿蘇阿蘇に載ってたお店ー」

なかなかのカワイコちゃん達です。
焼き鳥を焼きながらも、話し声が耳に届きます。
カウンターですし。

「でなぁ、ウチゆーたってん」
「沙和もコレ欲しーのー、追加でお願いするのー」
「もっと辛いのとか出来ますか?」

いやいやいやいや。一人おかしいだろ?
関西弁じゃね?
多分、アレですか。
気にしたら負けって奴?
良く分かりませんが。
にしても、この子達も食うわ飲むわ。
まあ、許褚ちゃんには負けますけど。
話しかけてみたところ、近くの村から竹かごを売りに来たらしいです。
折角なので俺も一つ買いました。
なんでもこの関西弁の女の子は、カラクリを作るのが得意なそうです。
全自動竹カゴ編み機なる物を作ったらしいです。
壊れたらしいけど。
で、冷蔵庫的な物と自動の換気扇を作れないかとお願いしたところ。

「少し時間くれへんか、店長。全く思いつかんわ。でもウチに任しとき、絶対作ってみせたるさかい!」

心強いですねー。
出来るかどうかは判りませんが、やってみようとしてくれる事に感謝です。
彼女の名前は李典さんです。
辛いもの好きな子が楽進さん。
なのー、な子が于禁さんでした。
もはや驚きませんよ。女の子でも。
例え絶影が子猫でも驚きません。
いや。驚きますね、きっと。

「構想が出来たら連絡するさかいな、暫く待っとってー」
「ご馳走様でした」
「美味しかったのー、また来まーす」
「ありがとう御座います。またお越し下さい」

下げる頭に、過ぎるは謝罪。
普通のお客様御免なさい。
また食材無くなりました。



どうも最近はきな臭い感じになってきました。
お客さんの会話を聞いたり、行商のおじさんの話を聞いたりしてますとね。
黄色い布を被った盗賊がかなりの数居るみたいです。
確か黄巾の乱でしたっけ?もう二十年以上も前の記憶なんて良く覚えていません。
孟徳さんの軍隊も出ずっぱりですね。遠征にも出かけたりしてますし。
今日は旅のお客さんが来店されました。閉店間際の事でした。
ちょこちょこ頼んでからの一言。

「店主よ。メンマは無いか?」

ねーよ。

「すみません、うちは焼き鳥専門でして、生憎取り扱ってはいないんですよ」
「ふむ、やはりか。しかし、この焼き鳥の塩は見事だ」
「ありがとう御座います」
「さぞやメンマを漬ければ美味いだろう。さらに<中略>とは思わんか?」
「はぁ」

あまりの長さに、適当な相槌を打つしか思いつきませんでした。
この人の口からはメンマメンマと、メンマ教でしょうか?
聞いた事ないけど。

「店主よ。ここに私が持っているメンマがある」
「?」
「美味く調理は出来ぬか?」

アノ目はお願いじゃないですね。挑戦してきましたね。
いいでしょう。受けてやろうじゃないですか。

「そうですね。コレは調理済みですから・・・三日待ってくれませんか?」
「構わんよ。急ぐ旅路ではないからな」
「では、三日後にまたお越し下さい」

で、三日後。本当に来ました。
俺の考えた結果、いかにシンプルな味わいでかつ、メンマ独特の風味を残すかが問題な訳でして。
黙って一口。
目を閉じ味わってくれています。
孟徳さんに出す時と同じ位緊張します。

「店主よ」

箸を置きました。
目はまだ閉じたまま。

「見事だ!この塩加減、歯ざわりの残し方もまた見事。軽く炙った事により香りも良い。まさに<中略>だな。すばらしいメンマだ」

だからなげーよ!
まあ、気に入って貰えたなら満足ですが。

「ふむ、河北へと向かう途中で良い土産が出来た。感謝する」
「いえいえ、旅のご無事を願っています」
「ありがとう。我が名は趙雲。字は子龍。真名は星。真名は見事なメンマの礼だ。受け取ってくれ」

マジデスカ?
まさかメンマ星人になっているとは。
まさに、小説より奇なり。とか言うんでしたっけ?
それよりもいいのか?こんな事で真名を預けて?

「では、また会おう」
「ありがとう御座います。またお越し下さい」

出て行こうとする星さんでしたが、ふと立ち止まり振り返りました。

「時に店主よ」
「なんでしょう?」
「メンマ専門店を興す気は無いか」

ねーよ。




あとがきです。

駄文にお付き合いいただきありがとう御座います。
少しでも面白いと思っていただければ幸いです。
では、また次回にお会いしましょう。



[8642] 恋姫無双~店主徐晃伝~ <転生オリ主>その3
Name: 三年G組将軍先生◆b1f32675 ID:382977c2
Date: 2009/05/12 16:33
「ここも食べられるのかしら?舌でしょうこれ?」
「ええ。タンですね。美味しいですよ」

どうも、こんにちは。徐晃です。
今日は牛を解体しています。
隣には孟徳さんがいます。街の視察の途中で出会い、話をしたら解体は珍しいみたいで付いてきました。
暇なんですかね?あなた太守さんでしょう?
にしても牛の解体は骨が折れます、何せでかい。
食べられる部位も多いのは良い事ですけどね。

「基本的に食べられない所の方が少ないですよ。皮なんかも丈夫ですから加工すれば何かに使えるんじゃないですか?」
「見た目によらず、博学なのね」

この人はたまに失礼です。まあ慣れましたが。
冷蔵庫が無いから、保管出来る日数が少ないのが問題なんですよね。
すぐ痛んでしまいます。内臓系は特に痛みが速い。

「骨も取っておくのかしら?」
「ええ、鶏ガラってあるでしょう?牛や豚からも良い出汁が取れますよ」

大きな肉の塊を笹で包んでおいていきます。
暫くは鳥じゃなくて牛を売ることにしましょう。
きっと売れるでしょう。美味しいから。

「徐晃」
「何ですか?」
「全部でどれ位の量があるのかしら?」
「そうですねー。雌の子牛ですから。うちの売上規模でしたら・・・丸二日分位ですかね?」
「・・・そう」

なんでしょうか?微妙に嫌な間でしたが。

「あげませんよ?」
「誰もそんな事を言っていないわ」

ギロリと睨まれました。
何だ違うのか。

「でも、今日はお仕事じゃないんですか?忙しいでしょう?」
「息抜きも必要な仕事のうちよ」

さいですか。

「でも見事なものね。あっという間じゃない」
「血抜きに時間がかかるだけです。解体するのは慣れてしまえば直に出来ますよ」
「色々な職人がこの街には居るけど、どれも勉強になるわ」
「見て回っているんですか?」
「当然じゃない。どの職業にも技術がある。その技術は思わぬ所で役立ったりするものよ」

太守さんは大変ですねー。言う事が違う。
こんな小っこいのに。
言いませんよ、禁句ですから。

「何かしら?」
「いえいえ、太守さんは大変だなと」
「そうでもないわ。取り纏めるだけならね。私の場合はそれじゃあ満足出来ないの。それこそ無能な人間と変わりないじゃない」

危ないですね、心でも読めるんでしょうか?
こんなもんでしょうかね。肉に関しては少し寝かしてからでないと美味しくないから、臓物だけは早めに売ってしまいましょうか。
あとは細かい筋取りを終わらせれば完成ですね。

「あとは食べやすい様に細かい仕込みをいれれば完成ですね」
「このまま調理はしないの?」
「駄目ですよ。例えばですね。さっきのタンですけど・・・」

包丁でスライスします。

「ほら、ここの油分。これは要りません。不味い訳じゃないですけどね。ここの芯の部分が美味しいんですよ。だからこうやって・・・切り落とします。で、食べやすい大きさにして串打ちすれば・・・出来上がりです」
「なるほどね・・・他の部位もそうなのかしら?」
「そうですよ。ここまでやる必要は無いのかも知れませんけどね。でもどうせなら美味しく食べて欲しいじゃないですか」
「まさに職人ね」
「光栄です」

それからも何点かの仕込みを見学してから、また来るわ、と言って孟徳さんは帰っていきました。
その後も仕込みを延々続けます。
さてそろそろ開店です。
で、どうやって臓物を売っていこうか考えていると・・・

「いらっしゃいませ!って、孟徳さん」
「また来たわよ。徐晃」

また来るわって、こういう事ですか。
やってきたのは団体様。
以前に比べてさらに人数が増えてます。
前に来てくれた、楽進さん達もご一緒です。
ご厄介になってるみたいですね。
やっぱり?って感じですけどね。
何でも、歓迎会をするそうです。
で、店をどうしようかと考えていたら、俺に出会ったそうです。
最初からそう言えばいいのに。
でも、この人達は正直しんどい。
一人で営業するのはしんどいです。
だって・・・

「徐晃!酒ー!」
「はいよ!」
「兄ちゃん、焼き鳥足りないよー!」
「はい、お待ち!」
「徐晃、昼間のタン?だったかしら。あれを焼いて頂戴」
「はいよ!」
「店長~、酒足りんで~」
「はいはい!」
「あのー、辛いのありませんか?」
「ありますよ。ちょっと待って下さいね」
「店長~、沙和も焼き鳥~」
「はいはい」
「ちょっと、春蘭!それ私の焼き鳥でしょう!」
「あーもう、喧嘩しない。はいどうぞ」
「徐晃、酒ー!」
「このままどうぞ!」

てな具合が延々続いて・・・
真っ白に燃え尽きました。
もう無理・・・
あの人達は無茶苦茶だ。
飲むは食うわ五月蝿いわ。
いい稼ぎにはなりますけどね。
人を雇うのも考えないといけないですね。
と考えながら、一息。
疲れた。

「徐晃。生きてるか?」
「妙才さん?忘れ物ですか?」
「いや、疲れただろうと思ってな。少し差し入れだ」

と言って果物を持ってきてくれました。
これはありがたい。正直、疲れて飯は要らんと思ってたんですよね。

「ありがとう御座います。助かります」
「例には及ばんさ。今日は良くしてもらったからな」
「いえいえ、お客様あっての商売ですよ」

立ち上がろうとすると、手で制されました。

「座っていろ。剥いてやる」
「悪いですよ。そんなの」
「座っていろ」

そう言って、裏手に入っていきました。

「今日はありがとう。華琳様も姉者も楽しんでおられた」
「そういって貰えるとうれしいです」

桃を一口。うめー。
売ってる物より美味いです。
お城の人は良い物食ってますね。

「徐晃よ」
「なんですか?」
「城で働かないか?」

勧誘ですか?

「すみませんが、ちょっと・・・」
「武官としてではない。料理人として来ないか?」

料理人ねぇ。
悪くは無いんですけどね、でも。

「お気持ちだけ頂いておきます」
「訳を聞けるか?」

大層な話じゃないですけどね。

「そうですね。俺元々屋台を出していたでしょう?色んな人が飯食って飲んで笑って・・・それを見るのが好きなんですよ。城で料理を作るのが嫌って訳じゃないですけど、やっぱり、色んな人と交流出来るのが魅力ですから」
「そうか、お前の料理は華琳様のお気に入りの一つだからな。そう思って話を振ってみただけだ。他意はない」
「まあ偉そうな事を言うつもりはないですけど、帝であろうが子供であろうが俺の料理の前では同じお客さんな訳ですよ。まあ全てが同じ扱いって訳には行かないですけどね」
「そうか。ところで城に姉者が帰って来ていないんだが知らないか?」
「ああ。元譲さんなら上で寝てますよ」

苦笑する妙才さん。

「すまんな。迷惑をかける」
「いいですよ。部屋は余ってますし。布団もありますから」

うーん。改めてみると妙才さんは美人さんですねー。
前から分かってはいましたが、こうじっくり見ることも無かったですからね。

「どうした?」
「いえ、妙才さんは美人さんだなーと」
「おだてても何も出んぞ?果物はもう出したしな」
「そういう訳じゃないですよ。ただ、何と無くです。そうだ、少し呑みませんか?あんまり呑んでいなかったでしょう?」
「姉者の世話があるからな・・・じゃあよばれるとしようか」

つまみに黄韮の塩漬けを出しました。好評です。
いやー、美人さんとの酒は美味いですね。
しばらく呑んでいると、上から物音がします。
元譲さんが起きてきたのでしょう。トイレかな?
と思ったら・・・
転げ落ちてきました。

「姉者!しっかりしろ!」
「きゅ~」
「姉者ぁぁぁぁぁ!」

物凄い速さで駆け寄り、ガクンガクン揺さぶります。
首取れるぞ。やりすぎでしょ。

「姉者!私を置いて逝くな!姉者!」

いや、死んでないし。
実は酔ってるでしょ、妙才さん?

「今、医者に連れて行くぞ!」

と背負って扉をぶち抜いていきました。

「・・・扉の修理費は請求してもいいんでしょうか?」




あとがきです。

駄文にお付き合いありがとう御座います。
感想も頂き感謝です。
あと一話二話分位のストックはありますが、急遽出張辞令が出ましたので、ちょっとお休みを頂きます。
出張中にネタでも考えておきます。
仕事しろって突っ込みは無しの方向で一つ・・・
では、失礼します。



[8642] 恋姫無双~店主徐晃伝~ <転生オリ主>その4
Name: 三年G組将軍先生◆b1f32675 ID:382977c2
Date: 2009/05/14 15:21
「いらっしゃいませ。どうぞ」

開店すぐの来店でした。
キョロキョロ見渡す、お客さん。
女の人です。女の子といった方が正しいかな。

「恋殿~、お待ちください~」
「ちんきゅ・・・ここにする」

遅れてきたのは、これまた女の子。
最近女性のお客さんが多い気がします。
どこかの街で占い師に、女がどうとか言われてましたね、確か。
孟徳さん達にも御贔屓にしてもらってますし、
そろそろ徐晃タイムでしょうか!人生初のモテ期到来!

「いらっしゃいませ。何にしましょう?」
「???」

首をかしげる、阿呆毛の女の子。
初顔ですね。なら、

「恋殿~、あまり時間はありませんぞ~」
「ごはんのほうが・・・だいじ」
「っは!なるほど、腹が減っては戦は出来ぬと申します!流石は武人の鑑でございます~」

・・・多分、違うよ?
だってさっきから、盛大にお腹の虫が大合唱ですから。

「おいしいもの・・・いっぱい」
「一杯ですね・・・無理なら声掛けて下さいね。止めますから」
「だいじょうぶ・・・」

その瞬間、俺は確かに見た。
あの子の目が鋭く光るのを。
そして感じる!
こやつ、許褚ちゃん並の食い手!

「じゃんじゃん行きますよ!」

いざ、尋常に勝負!!!

「もきゅもきゅもきゅもきゅ」
「ち・・・流石にやる!しかし、まだ!」

ストックの串が次々に屠られる。
だがまだ、想定の範囲内だ。
許褚ちゃんだって、この位はやってくれる。

「もきゅもきゅ」
「・・・なるほどね」

俺は見逃さなかった。
そのハムスターほっぺが、貴様の武器か!

「恋殿~、そのような食べ方は、如何な物かと思いますぞ~」

えーい、外野五月蠅い!
これでどうだ!牛出汁ベースのスープ、黄韮乗せ!
灰汁取りに、時間を掛けまくった渾身の出来!
この濁りのない美しいスープ。味付けは岩塩のみのシンプルなもの。そこへ韮と胡麻が、主張し過ぎ無い程度のアクセント添える!
こう熱くては、一気など出来まい!
一気が出来なくては、自慢のハムスターほっぺも使えまいて!
最後には冷めたスープに絶望するがいい!
温かい方が旨かった、と涙を流すが良い!

「ごきゅごきゅごきゅ」
「!!!」

この熱さを一気だと!この少女は化け物か!
待て、落ち着け。まだ慌てるような時間じゃない。
一本取り返すとしよう。

「次はこちらをどうぞ」

これならどうだ、見た目はちょっとアレな臓物煮込み!
生姜を効かせた臭みの無い仕上がり。若干の濃目の甘辛味が、ご飯に良く合う。
自信作だ!
前は孟徳さんにひっくり返されたが、その時のままだと思うなよ。
今でも、あの顔面の熱さは忘れない。あれは熱かった。
山羊の乳にじっくり一晩香草と共に浸し、臭み抜きをした逸品だ。
見た目がアレなので、少しは時間が稼げるはず。
この隙に、串の補充を!

「???」
「いけません、恋殿。この様な珍妙なもの!天下の飛将軍が食されては!」

クックック・・・ハーッハッハッハ!!!
そうだ。迷え!悩め!そして食べずに後悔するがいい!
この旨さを知らずに出て行く事をなぁ!!!

「いいにおい・・・もきゅもきゅもきゅ」
「「なんですとー!!!」」

ハモった。
しかし、そんな事はどうでも良い!
俺には時間がないんだ!

「もきゅもきゅもきゅ」

く、ここまで押されるとは!
これでは陳留一の焼き鳥屋としてもプライドが!!!
こうなっては下手な奇策は裏目に出るだけ、ならば見せて・・・否!
焼いてやろうじゃないか!
炭幅拡張!!!
この三尺焼き台の実力をフルに出してやろうではないか!
真っ向勝負!

「もきゅもきゅもきゅ」

くそ、あのハムスターほっぺの威力が高い。
癒されてしまうではないか!
俺の反復横跳びの威力が落ちる。

「・・・つぎ」

ついに遅れ始めたか。
残るストックは・・・皮、ももが二十本程度。
つくねが十本か・・・
豚系ならばまだいける・・・
恐らく彼女にとっては、赤子の手を捻るようなものだろう。
そんなもんじゃねえな。
人が蟻を踏み潰すが如く、ってところか。
しかしな、
蟻を舐めるなー!!!

「・・・ちょっと・・・はやくなった?」

舐めるなよ!俺がいつも相手にしているのは誰だと思っている。
あの孟徳さん達だぞ!あの!
俺はまだ・・・
戦える!

「この俺を本気にさせた!認めましょう!だが、しかし!」

焼きながら、たれを塗りながら、返しながら、さらに!
追加串打ち連打ー!!!
見せてやろう!
これぞ奥義!八手拳!!!

「・・・いいはやさ・・・ちょうどいい」

ちょうどいい?くそが、舐められたものだ・・・
しかし、このままでは開店してすぐ閉店だ。
どうせ、残弾は無いに等しい。閉店は決定・・・
だがな、負けっぱなしは癪に障るんだよぉぉ!ハムスター!!!
職人の魂、その身に受けろ!!!
裏の封印されている、扉の前で深呼吸。
封印を・・・剥がす!

「最終兵器解禁!!!孟徳さんが出したら殺すと言っていた、霜降りの部位!」

熟成具合は完璧、これならいける。
しかし、このままでも美術品の領域だ。
いやいや、飾ってどうする!ここは戦場!
これだけでもかなりの量だ。
全部使い切らなければ、どうということは無い。多分。
しかも、刺したっぷり。
流石に食い続けの、その腹ではしんどかろう!!!

「もきゅもきゅもきゅもきゅ」
「全弾持ってけーーー!!!」

勝者は・・・

「・・・つつんでほしい・・・もってかえる」
「・・・もう・・・ありません」

お持ち帰りをご所望でした。
まさか、お持ち帰りまでとは・・・

「もうない?ちょっとざんねん・・・でも、おいしかった。またくる」
「恋殿~、急ぎますぞ~」
「・・・ちんきゅ・・・ねむい」

もう、来ないでください。

「・・・まともな営業が・・・したいです」

ちょっと泣いたのは秘密だ。
孟徳さんが次に来店された時に、キレられました。
だって無いんだもん。霜降り。
それはもう、悪鬼羅刹の如くでした。
何故だ!俺のモテ期はどこへ行った!
占い師め。騙しやがったな!

「お主、まだ女難の相が出ておるのぉ~。消えんの~」

・・・女難でしたか。



あとがきです。

お疲れ様です。お付き合い頂きありがとう御座います。
いやはや、出張最高。
いい人ばっかりでした。
仕事が何時もより進みまくりです。
今日は半日になったので、このまま観光へ行ってきます。
では、また後日お会いしましょう。



[8642] 恋姫無双~店主徐晃伝~ <転生オリ主>その5
Name: 三年G組将軍先生◆b1f32675 ID:382977c2
Date: 2009/05/15 12:13
どうも、こんにちは。徐晃です。
なお、本日は副音声でもお楽しみいただけます。

「はりゃく、おしゃけちゅぎなひゃいよっ!」
(早く、お酒注ぎなさいよっ!)

あー、面倒な人です。
今日は荒れてます。荀彧ちゃんです。
珍しくお一人です。と言いますか初?
いきなり来て、貸切にしろって。どえらい金額を先払いです。
お金持ちさんです。

「ひょっと!きいてりゅの!」
(ちょっと!聞いてるの!)

大分飲んでます。いえ、飲まれてますね。どう見ても。

「はいはい、聞いてますよ」
「ひゃいはいっかい!」
(はいは一回!)

こんな荀彧ちゃんは初めて見ました。
何でも、孟徳さん達が黄巾党をやっつけたらしいです。凄いですね。
噂では二十万とか三十万とか居るって話でしたし。どうやったんだろ?
で、昨日朝廷から官位を貰ったみたいなんですよ。孟徳さん。
でも、朝廷のお役人にあーだこーだ文句を言われたみたいなんです。
偉そうな話ですね。代わりにやっつけて貰ったのに。
まあ、今の朝廷なんて、そんなもんなんでしょうね。なんの力も無いくせに。

「にゃんで、しゅーらんとしゅんらんだけにゃのよ!きいてりゅの!」
(なんで、秋蘭と春蘭だけなのよ!聞いてるの!)
「聞いてますよ。荀彧さんが一番優秀で可愛いいです。はい、どうぞ」
「・・・ありゃ、おときょのくしぇにわかってうりゃにゃい」
(あら、男のくせに分かってるじゃない)

この手のお客さんの扱いも慣れたものです。
主に元譲さんですけど。

「まあ、わらひがいちはんほうめいでうちゅくひいのはきゃりんはまもこりきゃいいららいるとはほもうへろ・・・らんれわらひじゃ、にゃいのよー!おきゃわり」
(まあ、私が一番聡明で美しいのは華琳様もご理解頂いているとは思うけど、なんで私じゃないのよ!おかわり)

目が完全に据わってます。ドンと机に枡を叩き付けました。
うーん、軍師格の人は荀彧ちゃんしか居ないと思っていたけど、冷遇されているとも思えないんですが・・・
アレですか、放置プレイですか?

「どうぞ。荀彧さんがいるから、孟徳さん達も安心して戦出来るんじゃないですかね。今回はたまたまですよ、たまたま。」

こういうお客さんは、褒める、立てる、肯定する。この三原則に限ります。

「わきゃれはいいのりょ・・・あんらものみなはい、おこってあれる」
(分かれば良いのよ・・・あんたも飲みなさい、奢ってあげる)

上機嫌になってくれたっぽいです。

「遠慮なく頂きます」

そう言って自分の枡に注いで呑もうとすると、思いっきり机を叩かれました。

「きょきょ!きょっひにしゅわりなはい!」
(ここ!こっちに座りなさい!)

と、自分の隣の席を叩きます。
だんだん、面倒臭くなってきました。
あなた男嫌いでしょ?

「はいはい」
「ひゃいはいっきゃい!なんろひっはらわきゃりゅの!これらからおときょは」
(はいは一回!何度言ったら分かるの!これだから男は)

諦めて、横に座ります。

「わらひがいるはら、あのにょうひんもにゃんぞくにららかへるんにゃにゃい!」
(私がいるから、あの脳筋も満足に戦えるんじゃない)
「そうですよ。荀彧さんのお蔭ですよ、本当にそう思います」
「れも、あにょにょうひんは、にゃにかにちゅけてわらしときゃりんしゃまとのにゃかをじゃみゃしゅりゅのよ!あにょ<中略>めー、おきゃわり」
(でも、あの脳筋は、何かにつけて私と華琳様との仲を邪魔するのよ!あの<中略>めー、おかわり)

よくもまー、そんだけ罵詈雑言が出てくる事です。流石の荀文若ですね。
才能の無駄使いですけど。
何と無く、元譲さんと犬猿っぽいのは想像できますね。
あ、脳筋が元譲さんの事だってわかったのは内緒でお願いします。
まだ死にたくありませんから。
ん?急に黙りましたね。どうしたんでしょうか?

「・・・なんれ」
(・・・なんで)
「はい?」
「なんれ、わらひがきょんなおろことおしゃけをのみゃにゃくひゃいけにゃいのりょー!きゃりんひゃまー」
(何で、私がこんな男とお酒を呑まなくちゃいけないのよー、華琳様ー)

呑んで、酔って、絡んで、なじって、泣いて・・・無茶苦茶だ。
しかも、こんな男って。あんまりだ。

「明日はきっと良い事ありますよ?ね?」
「・・・おろこににゃゆしゃめられらー!きゃりんしゃまー!」
(・・・男に慰められたー!華琳様ー!)

散々泣いてすっきりしたのか、寝てますよ。この人。
ストレスでも溜まっていたんでしょうか?
まあ、戦ばっかりで仕事も多いでしょうし。
一人で裏方の仕事を回していたら、疲れもするでしょう。
このままじゃあ、風邪引いちゃいますから、二階に連れて行くとしますかね。
そのままお姫様だっこで二階に連れて行き、布団で寝かしてあげました。
寝顔は本当に可愛いんですけどね。この人は。

「おはようございます」

次の日の朝、仕込みをしていたら荀彧ちゃんが起きてきました。
二日酔いでしょうか、こめかみを押さえています。
表情にも覇気がありません。
まあ、大分呑んでいましたからね。

「私・・・ああ。そのまま・・・寝ちゃったのね・・・っ痛」
「まずはお水どうぞ。すっきりしますよ。そしたら顔でも洗ってきて下さい。お粥の仕度も出来ていますから。良い鳥が入ったので、ささみ粥です」

足取りがちょっとおぼつか無い感じですが、大丈夫ですかね?
無言のまま顔を洗い、お粥を食べてます。

「食べ終わったら、これ飲んでくださいね。ちょっと苦いけど、効きますよ」

鬱金の粉末を紙に包んで出しておきます。

「あ、食器もそのままで良いので。俺はまだ仕込みがあるので裏にいますが、勝手に帰ってもらっていいですよ」
「そうさせてもらうわ」
「じゃあ、俺はこれで」

仕込みを終えて戻った時には、荀彧ちゃんの姿はありませんでした。
が、食器は水場に移してくれてありました。
水に浸けておいてくれてます。
机の上に残っていたのは、薬の包み紙と小銭が少々。
お金?一回戻ってきたんでしょうか?
紙に何か書いてありますね。
どれどれ・・・
達筆すぎて読めませんでした。



あとがきです。

今回もお付き合い頂きありがとう御座います。
大変読みにくい文面ですが、あえてのチョイスです。
にしても、徐晃君に各キャラがどうやって真名を預けるかが思いつかないです。
逆転の発想で預けないのもありかな?
ではまた後日お会いしましょう。




[8642] 恋姫無双~店主徐晃伝~ <転生オリ主>その6
Name: 三年G組将軍先生◆b1f32675 ID:382977c2
Date: 2009/05/16 14:02
「甘味が食べたいわ」

事の始まりはたった一言でした。
焼き鳥屋だっつーの。
あの、くるくるロリ娘め。
いつかヒイヒイ鳴かせちゃる。
な訳でして。徐晃です。こんにちは。

「果物・・・無理。加工方法がさっぱり思いつかん」

元々、甘い物なんて殆ど食べないし。興味ないし。
しかも、孟徳さんが勝手に期限を決めちゃうから、ほんと困ってます。
店、やってる場合じゃないんですよ。
美味しかったら、休んでいた分の儲けを払うって条件ですので、お気に召さない場合は大損です。

「お二人さん、何か無いですかねー」

今店を閉めてはいますが、カウンターの向こうには二人座ってます。

「うーん、ウチには思いつかんなー」
「沙和が知っているものは、華琳様も知っているものばかりだと思うの~」

李典さん達です。先ほど、何か無いものかと色々買っていますと、ばったり会いまして。
話してみたところ、試食したいとの事でした。
こういう時は女の子に頼るのが良いですからね。

「そうやな~、ウチ等は売ってるもんしか食べんさかい」
「そうなの~、多分華琳様はお茶菓子一つにもうるさいと思うの~」
「ですよねー」

と、買ってきた菓子類を見ながらため息を吐く。

「で、店長。それ食べへんのやったら、分けて頂戴んか?」
「沙和も~」

二人の目を見て、やっと気付いた。
こいつ等手伝う気ねー。食うだけだ。
ちくしょう。

「良いですよ。捨てるだけですし」
「何や、店長。甘いもんアカンのか?」
「勿体無いの~」

良いと言う前から、手を出してきた二人。
好きにしてくれって感じです。

「やっぱり、パフェか何かが妥当な所かな~」

待ってましたと、言わんばかりに平らげていく二人。
人の話は聞けよ。
いや、聞いても分からんか。パフェねーし。

「クリーム・・・作り方がわからん」

牛乳が主成分だろうけど・・・何かを混ぜれば出来るのか?
うーん。
こんな事なら、甘い物もっと食っとけば良かった。

「なら餡子・・・か?」

待て待て、容易な答えは身を滅ぼす。リアルに滅びる。
絶対に失敗する。
まだ三日あるんだ。考えろ、俺。

「甘味が食べたいわ・・・か」
「店長も大変やな~、華琳様も無茶言わはる」
「そうなの~。焼き鳥屋さんで甘味なんてある訳ないの~」
「そうですよ。今度言っといて下さいよ」
「無理や」
「無理なの~」

ですよねー。

「ん?」

今、何か引っ掛ったぞ。何だ?

「どないしたん店長?」
「さっき、何て言いました?」

二人して、うーんと唸る。

「無理?」
「・・・違う」
「華琳様無茶言う?」
「・・・違う」

何だ、どこに違和感を感じたんだ?

「沙和は何て言ったん?」
「え~・・・焼き鳥屋さんに甘味なんてって」
「・・・それだ」

そうだ、それだ!
なの~ナイスアシスト!

「何言うてんの店長。んな物ある訳ないやんか」
「そうなの~、ここは焼き鳥屋さんなの~、鳥の甘味なんてある訳ないの~」

違う、そう言う意味じゃない。
思い出せ。
孟徳さんは食事の後に言ったんだ。
多分あの人は、単に美味い甘味が欲しいんじゃ無い。
〆に欲しいんだ。
他の料理屋ではあったりするしな。
俺の店はどちらかと言えば、こってり系。
その後に甘い物が欲しいんだ。口直しだ。
だから、甘すぎてはいけない。
餡子なんて出したら、美味くても殺される。
ならば、一つしかない。
さっぱり系!

「買ってきたものは・・・駄目だ。餡子とかばっかりだ。参考にならん。やはりアレを使おう。ちょっと出ますんで留守番してて下さい」

と、財布を握り締めて猛ダッシュ。
おっと、買い物籠を忘れてはいけないな。
目指すは八百屋。

「おっちゃん、一番良い柚子頂戴。入るだけ」

目的を果たし、店へとまたも猛ダッシュ。
ん?あれは?

「楽進さん」
「あ、店長さん」
「見回りですか?」
「そうですよ。そうだ!真桜いや、李典達知りませんか?」
「ああ、店に居ますよ」
「見つからないと思ったら、あいつら。すみません。すぐに連れて帰ります」
「ん?もしかしてサボり?」
「そうですよ。目を離した隙に逃げられました」

仕事しろよ。
でも俺にも責任はあるか。

「すみません。俺がですね<中略>という訳なんですよ。ホントすみません」

一緒に店へと行く最中に説明する。
しかし、

「華琳様絡みですか・・・まあ、そういう事にしておきます。今回は」

納得してくれてないのか?

「あいつ等は真面目に仕事をしませんから、この前も<中略>な訳です」

多すぎる。罪状が多すぎる。擁護の余地が無い。

「帰りましたよ」
「真桜!沙和!探したぞ!」
「「げぇ、楽進!!!」」

横○かよ!懐かしい。
お二人は楽進さんに連行されていきました。
うむ、君達の犠牲は無駄にしないぞ。

「さてさて、色々やってみますかね」

方針が決まれば、後はやるだけ作るだけ。
分からないんですから、とにかく色々やってみないと。

で、期日前日。

「駄目だ・・・わからん」

完成していません。
作っては食べ、作っては食べ・・・
甘い物は苦手ですけど、さっぱり系なので助かってます。
しかし・・・飽きた。もう嫌だ。
かと言って、適当なのを出せば首が飛ぶ。
それはもっと嫌だ。

「兄ちゃん。まだ休みなの?」
「そう、まだ休みだよ」
「お菓子まだ出来てないの?・・・これは?お菓子じゃないの?」

許褚ちゃんです。良く顔を出してくれる、常連さんです。

「それは出せない奴・・・あー、どうしようかな。マジで」
「ふーん。これ食べて良い?」
「好きにしていいよ。ただ、感想は聞かせてね」
「うん、いいよ!」

美味しそうに食べてくれてます。
孟徳さんの所の人ではこの子位ですよ、無茶苦茶しないのは。食べるだけですからね。
妙才さんも常識人なんですけど、たまーにネジが外れる時がありますから。

「どうかな?」
「どれも美味しいよ。あんまり甘くないんだね。食べ易いや」
「そういう風に作ってるからね」

予想通りの感想。やっぱり?ってところです。
まあ、この子は何でも美味いしか言いませんから。

「兄ちゃんも大変だね~」
「本当に大変だ、孟徳さんに言っといてくれる?」
「無理だよ~」

ですよねー。

「焼き鳥屋さんなんだからさ~、串に差したら?」
「団子みたいに?」
「そう」

お団子ねぇ~。
一口サイズは魅力的だな。ボクっ子、ナイスアシスト!
でも、団子は駄目だな。食感が硬い。
なら柔らかく作るか?いっそ餅米を使ってみて?
でも、腹一杯の所に餅米は如何かと思うな。
もっと、こう・・・食べ易い一口サイズで、珍しくて、さっぱり。
みたいな感じに仕上げたい。
多分、珍しいを強調しないといけない気がする。
なんだかんだで、モツ煮まで食ってたからな。孟徳さん。

「もち・・・餅ねぇ・・・」
「お餅にするの?つくの?」
「いや、冷たい方が良い。食後につるんと・・・つるん?」
「つるん?」
「白玉!!!」

キタコレ!!!
でもどうやって作るんだ?白玉粉なんて売ってない。見たことない。
考えろ、考えろ、考えろ・・・

「味は・・・餅に近かったはず。てことは餅米だろう。でも餅よりつるんとしているのは何でだ?考えろ、思いつけ・・・」
「???」

思い出せ・・・白玉粉・・・白玉粉・・・
なんか、小さい四角の塊になってたっけ?なんで塊なんだ・・・

「挽けばいいんだ!んで固める・・・いや粉は固まらない」

違う?でも大筋は合っているはず。
水気だ。水気があれば固まるはず。
粉は水分がないから固まらないんだ、きっと!
とにかく時間が無い。始めないと。

「ちょっとお遣い頼んでいいか?」
「いいよー、何?」
「餅米を買ってきて。コレに入るだけ。一番良い奴で」
「わかったよ。急いでいるんだよね?」
「そう」
「任しといて!ボク良いお米屋さん知っているから」

良し。材料は待っていれば良い。
あとはやってみればいい。

「兄ちゃん。水しか出てこないよ?」
「何故だーーーー!!!」

浸した餅米を挽いてみた。
石臼の中に残ったのが白玉粉だと思ったが違う。ただのカスだ。
あとはこの液。これをどうにかすればいいのかな?
どうすればいいんだ?マジで分からん。
日も暮れかけてきたし。時間が迫っている。
延期とか言おうものなら、首が飛ぶ。出来ませんでした、と言おうものなら首が飛ぶ。
うん、ここの太守は無茶苦茶だ。

「うん。液の味は白玉に近い気がする。カスは・・・カスだなこりゃ」

良く覚えていないので、何と無くだけど。

「これをどうやって粉にするかだ」
「ねぇ兄ちゃん。お腹空いたー。何か作ってよー」
「そうだね、食べたいものあるかい?簡単な物でいいかな?」
「焼き鳥が食べたーい」

まあ、焼き鳥屋ですから。肉はありますよ。営業していなくても。
痛んでいるのは捨てますがね。

「いつもと一緒でタレ?」
「う~ん。今日は塩!」
「お、珍しい。じゃあ、ちょっと待ってて。今焼くから」

炭をいこして、串打ちして・・・
塩を振って・・・塩?
そうだ!これだ!塩だ!

「クックック。灯台元暗しだな・・・許褚ちゃん、君は最高だ!」
「???」
「まさか、答えがここにあるなんて」
「どうしたの?」
「今日は好きなだけ食べていいよ。俺のおごりだ。いや孟徳さんになるのかな?」
「えー、ほんとに!兄ちゃんありがとう!」
「お礼は俺が言いたいよ。いやー、助かった。死なずにすんだ」
「???」
「さて、やり方はわかった。まずは飯だ。じゃんじゃん焼くぞ」
「やったー!!!」

いやー、この子は本当に美味しそうに食べてくれます。
めっちゃニコニコしてますよ。癒されますね。

「ねえ、兄ちゃん。ボクの事は季衣って呼んでよ。兄ちゃんにはそう呼んで欲しいな」
「真名でしょ、それ?」
「うん。兄ちゃんはいつも美味しい焼き鳥を焼いてくれるし、今日なんかはご馳走までしてくれたし、お菓子美味しかったし」
「分かったよ。これからも宜しくな、季衣ちゃん」
「季衣って呼んでよ。なんかこそばゆいよ」
「分かった。でもお客さんの時は呼び捨てにしないぞ?」
「うん!」

本当に良い笑顔の子です。
多分、良い親御さんに育てて貰ったんでしょうね。
それに引き換え・・・いや、何も言いません。忘れて下さい。

「さて、食べ終わったら、片付けて。さっきの続きだ。季衣は帰ってもいいよ」
「えー、ボクもお菓子食べたい」

まだ食べるのね。いやはや天晴れ。
さあ、始めましょうかね。
ぜってー、ぎゃふんと言わせちゃる!

「さて、何を出してくれるのかしら?徐晃」

で、当日刻限。徹夜で眠いです。
お一人でのご来店ですね。といってもまだ休みですが。
誰かと来ると思ってたんだけどな?

「いらっしゃいませ。まずは食事していって下さい。うちは焼き鳥屋ですから」
「へぇ・・・じゃあ、お任せでお願い」

今の目は、やるじゃない、の時の目と見た。
予想通りだな。

「畏まりました。少々お待ちを」

今日のお勧めを順に出していく。
前菜、汁物、メインの焼き物を焼いていく・・・

「そろそろ甘味をお願いしようかしら?」
「畏まりました」

裏手にスタンバっている小鉢を持ってくる。
絶対度肝抜ける自信がある。
やべー、興奮してきた。

「どうぞ。白玉です」
「しらたま?これは何かしら・・・団子?掛かっているのは、柚子の皮を擦った粉ね」

小さい串を添えて出しました。
使ってね、って事です。
それで刺して・・・今入りました。
さあ、来い!

「餅?いえ違うわ。こんなにつるんとした食感な訳が無い。喉越しが抜群に良い。それに甘い。それに餅には無い甘さ。砂糖でも使っているのかしら?」

この人は、なかなか美味しいって言わないんですよね。
きっと根性が髪の毛みたいなんですよ。
言ったら死にますから、言いませんけど。
食べ終わるまで待ちます。
ぶつぶつ言いながら食べてます。

「徐晃?」
「何でしょうか?材料は教えませんよ」
「教えろって言っても、貴方何も教えないじゃない。だから、それはいいのよ。何故甘味を出せって言ったのに、食事をさせたのかしら?」
「それは孟徳さんの方が、良く分かっていらっしゃるはずでは?」

ニヤリとしてやります。分かってるんだぞ?とアピールです。
手前の考えなんてお見通しよ!てやんでい!

「そうね・・・見事よ。こちらの意図を良く読んだわ。出された物も良かった。後で城にいらっしゃいな。休んでいた分の金額を払いましょう。あと別で褒美もいくつか考えましょう」
「ありがとう御座います」
「私はこれで失礼するわ。今日はご馳走様」
「はい、またお越し下さい」

席を立つ孟徳さんに頭を下げました。
頭を上げると、振り返る孟徳さんと目が合いました。
何か企んでいる時の目ですね。アレは。
猛烈に嫌な予感がします。

「そうそう。褒美の件だけど・・・良い事を思いついたわ」

笑えないギャグですか?
そのニヤーは止めて下さい。心臓に悪いから。

「私の事は以後、華琳と呼ぶように。貴方に拒否権はないわ。そのつもりで」

・・・マジデスカ?



あとがきです。

お付き合い頂きありがとう御座います。
あと二回ほどで連合へとお話を動かしたいと思います。
では皆様。またお会いしましょう。
失礼します。



[8642] 恋姫無双~店主徐晃伝~ <転生オリ主>その7
Name: 三年G組将軍先生◆b1f32675 ID:382977c2
Date: 2009/05/17 14:23
どうも、こんにちは。徐晃です。
本日は久々に屋台を出しています。
何でって?

「塩焼そばお待ち!」

焼そば屋さんです。
いやー、コレも売れますね。
麺はラーメンか餡かけという固定概念をぶち壊したアイディアの勝利ですね。
餡かけ焼そばはあるんですよ。あの貝やらが入っている奴。
でもですよ?あれって、焼そばじゃ無くね?
て、ことで始めました。
ちなみに李典さん作。屋台君改、だそうです。

「お待たせしました。どうぞ」

焼き鳥の時ほどの売上には及びませんけど、一人で食っていく分には十二分の収入ですよ、これは。
お店の方はどうなったって?
やってますよ?今も。
一人バイトを雇いました。典韋ちゃんって言う女の子です。真名は流琉って言います。
季衣の友達らしいです。でも今は盗賊の討伐に出て行ってるんですよ。その直後に、この街に来たみたいなんです。入れ違いですね。
確か、楽進さんと季衣の二人だった気がしますね。
で、探している途中で俺と流琉が会って、あーだこーだありまして・・・雇いました。
多分、季衣と一緒に働くでしょうから、帰ってくるまでの繋ぎですけどね。
でも勿体無いな。目茶苦茶腕が立つんですよ。あ、料理のですよ?
買い付けから営業まで何でもやりますよ、あの子。
残って欲しいのは山々ですけどね。季衣の友達ですから仕方ないですよね。
行くと言うでしょうから、笑顔で見送ってあげましょう。年長者の余裕を見せないとね。
にしても、季衣の手紙の中身が凄かったです。
連絡先とか一切無くて、一緒に働きたいな、楽しみにしてる。だってさ。
流石、華琳さんの所の阿呆っ子ツートップです。
もう片割れは元譲さんです。うん、間違いない。

「徐晃。貴方ここで何をしているのかしら?」
「華琳さん、いらっしゃいませ。どうぞ」
「どうぞ。じゃないわよ。全く」

でも、座るんですね。

「何やっているのかしら?」
「商売ですよ?すぐ焼きますからね。待っていて下さい」
「構わないわよ・・・じゃなくて!」
「食べないんですか?美味しいですよ?」
「食べるわよ!」

うるさい人ですねー。癇癪持ちでしょうか?

「何を作っているのかしら?」
「焼そばですよ」
「やきそば?・・・聞かない名ね。麺類なのはわかるけど」
「ちょっと跳ねますから、下がってて下さいね」

炒めた具材に麺を合わせ、酒を振り掛けます。
うん、良い音。
で、蓋をしてと・・・

「炒め物?いえ蒸し料理になるのかしら?」
「すぐに上がりますよ」

しばらく待って・・・
蓋を外して、特性の塩ダレを混ぜ合わせる。
うん、香りが堪らん。
仕上げに韮と刻みネギを炒め合わせて・・・ネギ油を少々かければ・・・

「お待たせしました。焼そばです」

コテで華琳さんの前まで移動させます。
うん、コテ便利。

「ふーん・・・香りは良いわね」

ふーふーしてます。うん、可愛い。
で、一口。

「あら、結構いけるわね」
「ありがとう御座います」

だから美味いって言えよ。

「でも、貴方の料理は大概見た目がアレなのよね。何とかならないのかしら?」
「見た目ですか。あんまり考えてないもので。検討はして見ますよ?」
「食事を取る上で、大事な要素の一つよ。勉強なさい」

はふはふ食べてくれてます。
うん、可愛い。

「餡かけはあるけど、こう炒め合わせるのは見ないわね。ラーメンの汁が無い状態に近いのかしら?」
「そんなところです」

にしても、華琳さんは黙っていれば美少女ですねー。癒されます。

「ご馳走様、なかなか良かったわ」
「はい、またお願いします」

と屋台を出て行きます。
が、

「って、違うわよ!」
「忘れ物ですか?」
「そうじゃなくて!」
「ああ、御代ですか。ツケでいいですよ?」
「払うわよ!」

懐をごそごそしてますね。
財布を捜しているのでしょうか。
取り出した小銭を叩き付けられました。
カルシウム不足ですかね。小魚食べた方がいいと思いますよ?

「はい、確かに。で、何か御用ですか?」
「あ・な・た・ねぇ・・・」

おお、背後に羅刹像が見える!
コレがスタンド!

「用がなければ探さないわよ!」
「ぐぇ」

皿を思いっきり投げつけられました。
いてぇ。

「で、なんの用ですか?わざわざ本人が出向くなんて」

城の一室に連行されていきました。
街の人の目が、白かった気がします。
何もしてないのにな、俺。

「これは何かしら?」

一枚の紙を机に叩きつけます。
ああ、これですか。

「これですか?兵隊さんの借り出し許可ですけど?軍部の許可も取りましたし。問題はないと思ったんですけど?」
「大有りよ!」

カリカリし過ぎだと思うのですが。
可愛い顔が台無しじゃないですか。
あ、でも怒った顔も可愛らしいかも。

「あなたね。一介の店主が持つ農地の大きさじゃないでしょう!千町って、何考えてるの!しかも村ごと買収って、あなた正気?」
「えー。だって広いほうが色々作れるじゃないですか?飼育も出来ますし。人を雇うのが面倒なので村と畑全部買い付けました。お金はありますよ?」
「あなたね・・・こんな広大な土地、一介の庶人が持っては、それこそ官吏の目に留まるじゃない」
「華琳さんの所でしょ。あの場所?ならいいんじゃないですか?」
「・・・はぁ、呆れた」

ため息を吐いて、椅子に座りなおしました。
変な事でしょうかね?

「あのね。こんな広大な土地を一個人が持っていてはいけないのよ。それこそ私でも持っていないわ」
「はぁ」
「土地というのはね、国が管理していかなくてはいけないの。この大きさになるとね」
「で?」
「この大きさを持てば、下手を打ったら朝廷関係にも目を付けられるわよ、あなた」
「漢なんてそのうち滅ぶでしょ?いいんじゃないですか?」
「不穏当な発言は控えなさい。一応私は漢の臣よ」

あんたも大概でしょうに。
二度目のため息。幸せが逃げますよ?

「管理はどうする気かしら?」
「だから兵隊さんを借りようかと。村の人だけでは足りないので」
「戦がある場合は?」
「全部の兵隊さんを持っていく訳じゃないでしょう。新人の基礎訓練中の人とか残るでしょ」
「訓練があるじゃない」
「基礎訓練は畑仕事で十分。農具に重石でも付けとけば十分でしょう。それか、重しを着込ませて生活させれば問題はないですし」
「誰がそれらを決めるのかしら?」
「華琳さん」
「そう」

目を閉じて話を聞いてます。何かを考えているのでしょうか?

「・・・だったら」
「だったら?」
「私を通しなさい!」
「ぐぇ」

傍の置物を投げつけられました。
石は止めて、痛いから。

「まあ、いいわ。あなた資金はどうしたの。流石にこんな額は稼いでないでしょう?」
「ありますよ。この前貰った褒美の美術品とかを売ったら、どえらい金になりましたし。邪魔だったし」
「売った!?邪魔!?」
「はい。いけませんか?」
「あんたねぇ・・・まさか!あの青紅の剣も売ったの!?」
「ああ、あれですか?使ってますよ。良い切れ味ですし」

貰った褒美で、要らない物は全部売りましたよ。ほとんど全部ですけど。恐ろしい額になりました。
で、金の管理が面倒なので使おうかと考えて、この計画です。
うん。すばらしい計画。

「切れ味?まさか貴方!」
「ええ、包丁代わりに使ってますよ」

これが良く切れる切れる。使う人間を選ぶ包丁です。
流琉では使い切れません。

「まさか、こんな事になるなんて・・・予想外だわ・・・宝の持ち腐れだわ」
「飾られる宝剣なんて意味ないじゃないですか」
「・・・そうね、あなたの言う通りだわ」

頭を抱えて嘆いています。
流石に不味かったかな?
華琳さんは、一旦座りなおして咳払いを一つ。

「まあいいわ。良くは無いけど・・・今回の件は私が依頼した事にしてあげるわ。目を瞑ってあげる。感謝しなさい」
「???」
「あなた、役人に追い回されたいの?」

華琳さん達に追い回される俺。
うん、嫌過ぎる。

「ありがとう御座います」
「結構」

で、こちらを見る華琳さん。
嗚呼、その目は止めて。何か企んでるでしょ。
嫌な予感しかしない。

「ひとつ頼み事があるのだけれど?」
「ナンデスカ?」
「料理の腕を振るって欲しいのよ」

何だ、それならOKっすよ!
珍しい。そんな簡単な事なら協力しちゃいますよ。

「良いですよ。」
「いいのね?」
「二言はありません」
「結構。追って連絡するわ。今日は帰りなさい。あとで典韋を城に寄越しなさいな。今日にも季衣達が帰ってくるわ。今日は季衣への褒美も兼ねて、私が料理を作るのだから。典韋も一緒に食べさせましょう。あの子もきっと喜んでくれるでしょう」

ん?

「華琳さん、料理出来たんですね」
「何よ?」

いや、そりゃねぇ・・・
まあ、言いませんけど。

「いえ、何も無いですよ。ではこれで失礼します。また連絡下さい」
「あと、春蘭にも黙っておいてあげるわ。大方、楽に話を通せるとでも思ったのでしょうけど?」
「・・・ソンナコト、ナイデスヨ?」
「敵を攻める時には、一番弱いところから攻める。嫌いじゃないわ」

ばれてるー。
流石の曹孟徳です。

「では失礼します」

そう言って部屋を出ました。
うーん、で畑の件はどうなるのかな?良く分かりませんでした。
やってくれるのか?くれないのか?
そもそもなんで駄目なんだ?
まあ、華琳さんの事ですから、うまくやってくれるでしょう。
さてさて。今日の事、琉琉に伝えないといけないな。
喜ぶだろうな~。
いやはや足取りも軽いです。

「ただいま。帰ったよー」
「あ、兄様。お帰りなさい」

裏から入ると、焼き場に立っている流琉が見えました。
うん、その服だとお尻のラインが綺麗に浮かんでいます。

「眼福眼福。でだ、今日帰ってくるらしいぞ?季衣が。だから後で城に来いってさ。華琳さんが言ってた。ご飯を一緒に食べようって」
「帰ってくるんですか・・・そっか」

うん。良い笑顔です。
やっぱり、女の子は笑ってないといけません。

「あとは俺がやっておくから、行って来ていいぞ。あがりだ」
「分かりました。じゃあ、先にあがります」

前掛けを外して、パタパタと二階へ上がって行きました。

「じゃあ、兄様。行ってきます」
「おう。いってらっしゃい」

良い笑顔だ。俺も負けてられないな。
さてさて、焼き鳥じゃんじゃん焼きますよ。




「ふむふむ。今日も今日とていい稼ぎです。ありがとう御座います」

営業後、掃除をして一人。キムチをつまみ一杯やりながら帳簿付けです。
そんな事してたかって?してませんよ。だってメンドイじゃないですか。
やらないと、流琉がうるさいんですよ。ほんと。
流琉曰く、

「兄様?お店の経営の基本は帳簿付けです。腕も大事ですけど、こっちも大事なんですよ。どこのお店でもやってましたよ?」

だってさ。
面倒臭い事、この上ないです。
やらなくても儲かってるのに。
他所は他所って言ったら、えらく説教されました。正座です。
やらないと怒られるし。渋々といった所です。
まあ、それも今日までですけどね・・・あれ?もうやらなくてもいいじゃん。

「おいおい、まじかよ。ったく。もう寝よう」

と思っていたら、流琉が帰ってきました。

「お帰り。流琉」
「ただいま帰りましたー」

いい笑顔ですね。良かった良かった。
お兄さんは嬉しいです。

「ん?城に住まないのか?ああ、荷物もあるか」
「???」
「は?一緒に働くんだろう、季衣と?」
「働きませんよ?お断りしました」
「はぁ?」

何故に?

「華琳様からも仕官のお話は頂きましたが、戦場に出るのはやっぱり・・・ちょっと。それに、ここのお仕事もとっても楽しいし勉強になりますから。それに季衣にも会えるし」
「おいおい、友達だろうが」
「一緒にお城で働かなくても、友達ですよ」
「いや、何時も一緒の方がいいだろ?」
「そんな事言ったら、きりが無いですよ」
「そりゃ・・・ん?ちょっと待て・・・流琉、お前・・・華琳って言った?」
「はい。真名を交換させていただきましたよ?それが何か?」
「ええええええ!!!」

働かないよりも、こっちにビックリ。
あのくるくるは何を考えているのやら。
まさか!

「流琉!まさかあのくるくるに捧げたのか!散らされたのか!」
「???・・・・・・に、兄様!!!」

一拍の後、真っ赤になって非難の声を上げる流琉。
違うのか?でも、なんで?

「えーとですね。華琳様のお料理は美味しかったんですけど。季衣も美味しいって言ってましたし。でも、季衣が好きな味付けじゃ無かったんです」
「流琉?まさか・・・」
「はい、言いましたよ。だって季衣へのご褒美って聞きましたから」

なんとチャレンジャーな。
怖いもの知らずにも程があるぞ。おい。

「で、なら一緒に作りましょうって・・・それで一緒にお料理しました。そこで真名を」
「一緒に料理!!!・・・流琉。恐ろしい子・・・」

想像出来ん。一緒に台所に立っている絵が。全く浮かばん。
しかも、否定されて尚、真名の交換って・・・
明日は槍でも降るか?これは?

「褒めていただけましたよ?私より上手だって。私より季衣の事を良く分かっているって」

いやはや・・・世の中は分からん。マジで。

「そんな感じです。遊びに来ても良いって、言っていただけました」
「・・・そっか、流琉が決めたのなら好きにすればいいよ」
「・・・兄様?私を追い出したいんですか?」
「いや、決してそういう訳では無いぞ?」

うわ、ジト目。これは小言が来るぞ。

「それに、兄様一人ではここの経営、丼勘定ですし」

ギクッ!

「普段着る服の洗濯はしませんし」

ギクギクッ!!

「若くて胸の大きな女の人には、たくさんおまけするし」

ギクギクギクッ!!!

「一番許せないのは朝ごはんをしっかり食べない所です」
「えー、食べてるじゃん」
「玉子掛けご飯?でしたっけ?あんなのは料理屋が食べる物じゃありません!行儀が悪いです。下品だし。私が作りますって言っているのに」

あー、馬鹿にしたな。この野郎。
庶民の味方だろ?玉子掛けご飯は。

「流琉。言いたい事は分かった。でもな・・・男には譲れないものもあるんだぜ」
「格好良く言っているつもりですか?口の端にキムチの汁がついてますよ?」

なんですとー!

「フフ・・・ですから私が面倒を見てあげます。二十日ほどの付き合いでしたが、兄様のだらしなさは良く理解しているつもりです」
「はい、ありがとうございます。助かります」

腕は立つし、気は利くし、華もある。
助かるのは助かりますからね。でもいいのかな~、君は武将になる人でしょ?
あ、俺も徐晃でした。忘れてた。

「営業中はしっかりしていて格好良いんですから、普段もしっかりして下さいね」
「はーい。じゃあ、明日からも宜しくって事で。今日はもう寝るわ」
「兄様?その前に今日の帳簿付けて下さいね?」

こいつは手厳しい。良く見ていらっしゃる。

「はいはい」
「あー!兄様。また勝手に店のお酒飲んで!駄目って言ったじゃないですか!」
「えー、いいだろ?俺の店だし」
「駄目ですよ。放っておくと、いくらでも飲むでしょう。この前なんかは二日酔いで休んだじゃないですか!」
「えー」
「前にも言いましたよね?私があれほど口を酸っぱくして言っているのに。いいですか、お酒というのは――――

そんなこんなで、しこたま説教されました。
うん。流琉はいい子。本当にいい子だ。
まあ、心強い味方が加わった訳ですし。こうやって怒られるのも良いですよね。きっと。
家族が居ない分、なんかこう・・・うん、やっぱり良いですね。





あとがきです。

ついにやってしまった。
流琉のキャラが若干変な事に。
こう一人称では、相手の心情が書ききれません。
区切りが付いたら、各キャラSIDEをあげて行きたいと思います。
それで話が、自然な形に収まるよう努力します。
では、また次回にお会いしましょう。
お付き合いありがとう御座いました。



[8642] 恋姫無双~店主徐晃伝~ <転生オリ主>その8
Name: 三年G組将軍先生◆b1f32675 ID:382977c2
Date: 2009/05/18 15:00
「徐晃殿!楽進隊撤退を確認。ご指示を!」

ってー事は、次はどこが来る!

「李典隊の状況はどうか!」
「継続中です!」

えーい、押されているじゃないか。

「中央だ、次はそこへ誘導しろ!急げ、直に夏侯惇隊が来るぞ!」
「了解しました!」

熱い。辺りは火炎地獄。燃え尽きてしまいそうだ。
しかし、ここでの撤退は許されない。
撤退は死に繋がる。
味方が戻るまでの辛抱だ。
まさかこんな状況の指揮を取る羽目になるなんてな。
つくづく人生って奴は面白い。

「前線より夏侯の旗印を確認!夏侯惇隊です!」

何、早すぎる。予定より遥かに早いじゃないか!
くそ、どうなっているんだ?
落ち着け。指揮を預かる者が取り乱してはいけない。
末端まで動揺が広がってしまう。
落ち着け・・・落ち着け・・・よし、俺はまだやれる。

「夏侯惇隊はひとまず捨て置く。まずは当面の問題を処理していこう」
「了解!」
「支援部隊到着!」
「よし、まだいける。押し返すぞ!皆!
『了解!』」

その後も次々と変わる戦況に対し、矢継ぎ早に指示を出す。
全てが終わったのは、夕方を回ってからだった。
始まりは確か、昼前だったはず・・・

「・・・燃え尽きた・・・燃え尽きちまったよ・・・」

その場でがっくり項垂れてしまった。
全ての始まりは・・・なんだっけ?




「嫌で御座る!戦いたく無いで御座る!」

グルグル巻きに縄で縛られ、連行される俺。
それを馬で引きずって行く、華琳さん。
何でも、洛陽で専横を振るっている董卓さんってのがいるらしいです。
それを皆でやっつけるために、連合を組んだそうな。
いじめですよ、いじめ。
董卓さんも可哀想に。
今はその連合の陣への参加の為に進軍中です。

「そろそろ諦めろ、徐晃。往生際が悪いぞ?」

馬上の人の元譲さん。
ニヤニヤしながら見下ろしてきます。
何かムカツク。

「横暴だ!人権侵害だ!」
「あんた本当に駄目男ね。覚悟を決めなさいよ。だらしない」

この猫娘め。今度蛙の姿焼きを、無理やり食わしてやるぞ。
・・・駄目ですね。
泣かれそうだ。それは出来ん。

「俺、戦場なんて嫌ですよ?逃げますからね?」
「だからこうして縛っているのだろう?」
「戦場でもこのまま!?」
「逃げるならな」
「的にしかならんでしょ!?」
「華琳様への矢を防げるのだ。光栄に思え」
「嫌じゃー!」

なんて事を言うのだこの阿呆毛は。無茶苦茶だ。
君主共々無茶苦茶だ。

「華琳さん・・・いい加減縄ほどいて下さいよ」
「駄目よ」

こちらを見る気配すら感じない。
酷い扱いだ。

「さっき解いたら、貴方逃げ出したじゃない」
「そうだぞ。捕まえるほうの身にもなれ」
「こちとら焼き鳥屋でい!戦場なんかには興味は無いんでい!」

足には自信がありましたが、馬には敵う筈もありませんでした。
追いかけてくる元譲さんの嬉しそうな目は、狂喜のものです。
夢に出そうです。
思い出しただけでも・・・おお、怖っ。

「春蘭」
「っは!」
「黙らせなさい」
「畏まりました」

ええー、猿轡ですかー!!!
もう何を言っても、モゴモゴしか言えません。
くそう・・・こうなったら・・・

「ふぉふぉんふぉんふぉふぉふぉふぉん」
(華琳さんのペチャパイ)

ええ、言ってやりましたとも!
怒れまい!何を言っているのか分かるまい!
恨むのなら、その無いチチを恨むが良い!

「春蘭」
「っは!」
「殴りなさい」
「畏まりました」

なんですとー!!!
何故だ!何故分かる!
思いっきり殴られました。
痛てぇ。




「華琳様。前方に連合の陣が見えます。到着です」

やってきたのは先頭を行く妙才さん。
来た!常識人!
助けてくれ!

「私達が一番最後でしょう。このまま軍議に参加するわ」
「畏まりました」
「春蘭、秋蘭。共をなさい」
「「っは」」

おーい、俺の事忘れてませんかー?
皆さーん。

「桂花は陣張りの指揮を取りなさい。場所は麗羽の所の将が出張ってくるでしょう。それに従いなさい」
「畏まりました」
「では、行くとしましょう」
「「「御意」」」

御意じゃねーよ!
俺!俺!
目一杯フゴフゴ言っていると、気付いて貰えました。
嗚呼、涙が出そう。何か嬉しい。

「静かだから忘れていたわ」

絶対嘘だ。分かってたでしょ?

「外してやりなさい」
「畏まりました」
「ぷはっ・・・華琳さん、やり過ぎでしょ?」
「そんな事はどうでもいいのよ。で、さっき何て言ったのかしら?」

うわー、覚えてやがる。それによくねーし。
こんちくしょうめ。
ああ、縄の跡付いてるし。
何かの後ですか?これは?

「済んだ事じゃないですか」
「済んでいないわ。だって中身が分からないのですもの」
「殴ったじゃないですか!」
「何と無くよ」

ひでぇ。

「言っても怒らないですか?」
「ええ、怒らないわ」

コレは逃げられんぞ?囲まれているしな。
進退ここに窮まる。
馬から降り、正面に立つ華琳さんを前に深呼吸。

「華琳さんのぺちゃぱ――おお、危ない危ない」

振り降ろされる大鎌を真剣白羽取り。
危ない危ない。この人殺す気だったぞ、今。
それにどっから出した。その獲物。

「怒らないはずでは?人の上に立つものとして、言葉に偽りを混ぜるのはどうかと?」
「あら、怒ってないわよ?ただ何と無く殺したいだけ」
「その割にはえらい熱の篭り様ですね」
「気のせいじゃないかしら?今日は割と涼しいわよ」

お互いの視線ががっちり絡み合います。
と、思ったら、

「曹操さん。こちらでしたか」
「顔良か。久しいな」

とあっさり、俺スルー。
何か扱い悪いな~。
まあいいですけど。慣れましたし。
で、俺はどうすればいいのでしょうか?

「徐晃、あなた輜重隊に参加して、兵の食事を担当しなさい」
「は?」
「何?前線に出たいの?」

そんな滅相も無い。
ブンブカ首を横に振ります。

「華琳様?徐晃を戦働きさせるのでは?」

と、元譲さん。

「だれもそんな事は言ってないわ」
「はい?」
「徐晃。先ほど言ったように、貴方連絡があるまで輜重隊に参加して、兵の食事を手伝いなさい」

おいおい。

「それならそうと、最初から言ってくださいよ」
「貴方には驚かされてばかりだから。やられっぱなしは癪に障るじゃない?」

だってさ。
何か釈然としません。



て訳でした。余りの疲れに忘れてしまうところでしたよ。
輜重隊ってのも大変ですね。
米と汁物と漬物。たったコレだけしかないのに、無茶苦茶疲れました。

「おお、こんな所におったか。徐晃」
「何ですか?元譲さん」
「華琳様がお呼びだ。付いて来い」

嫌な予感しかしません。
まあ、付いて行かなくても、連れて行かれる訳ですから、行きますよ?
何か周りの天幕より大きい所へ連れられました。
やっぱり大将さんは違う訳ですね。

「華琳様、連れてまいりました」
「入っていらっしゃい」
「失礼します」
「失礼します」

うーん。何か中身は質素なんですね。他の天幕との違いが余り無いような気がします。

「どうかしたのかしら徐晃、天幕が珍しいのかしら?」
「いえ、質素だなと」
「野外で使用するものに、金を一々掛けていられないわ。まあ、掛けなさい」

と、進められた椅子に腰掛けます。
何の用ですかね。

「徐晃。このべーこん?とやらはなかなか良い出来ね」
「ああ、それですか。保存用に加工してますから味は落ちますけどね。店で出す予定のものはもっと美味いですよ」
「あと、こちらのじゃーきー?とやらは硬いけど旨みが濃厚でなかなかいいわ」
「そうですか?出来は、まぁ悪くは無いですけど。もうちょっと弄りたいですね」

そういえば、そんな物も作りましたね。
依頼されたんですよ。何か保存食で美味いものを作れって。
この国に燻製はあるにはあるんですけど。
これが不味いの何のって。
行軍用の保存方法としてしか存在しないみたいでした。
一般的に、燻製=不味い。見たいな図式が出来てるんですよ。勿体無い。
今日出したベーコンは燻しが短いです。もっと長持ちさせる事も出来ますが、味がちょっと。
その点ジャーキーは良く出来てます。納得はしてませんが。
まあ、お気に召したのであれば幸いですね。

「今回は場所が近かったのもありますし、この味に落ち着いただけですよ。遠征とかになると無理でしょうけど。もっと燻さないといけませんし」
「燻製でここまでね。これほどの物作れる事が分かっただけでも十分よ」

褒めてる・・・よね?多分?
でも、そんな事で呼ばないでしょう。この人は。

「で、御用はなんですか?」
「察しがいいのね。嫌いじゃないわ。これからが本題よ。貴方を連れてきた意味」

輜重隊の手伝いではなかったでしょうか?

「明日、関を攻める」
「帰ります」

と立ち上がり、回れ右をした瞬間。
後の元譲さんに回れ右をさせられました。
オーマイ、ガッ!

「話は最後まで聞きなさい。貴方は私の隣にいればいい。危険な事は一切無いわ。でしょう春蘭?」
「お任せ下さい」
「明日の先陣は劉備が切る事になったわ。寡兵だけどね」
「寡兵?少ない兵隊さんで関を攻めるんですか?」
「功を焦ったか、自信があるかのどちらかね。で、貴方の出番はその後よ」

何をさせる気でしょう。
分かりません。

「劉備が負ければそれはそこでお終い。もし勝てば・・・」
「勝てば?」
「劉備に料理を振舞いなさい」
「・・・ああ、お祝いですか?」
「貴方馬鹿じゃないの?そんな事をしても意味が無いじゃない。人と成りを見たいのよ。劉備とその家臣の。何故、先陣を受け持ったのか。どこからその自信が出てきたのか?貴方の料理は、まあ悪くないわ。話も弾むでしょうし、酒も出しましょう。聞き出しなさい」

つまり何か?スパイ?
あと人を馬鹿って言うな。
まあ、話を聞く位でしたらやりますけど。そんなにうまくいきますかね?

「美味く話を聞き出しなさい。出来れば褒美を出しましょう」
「えー、そんな間者みたいな真似したくないですよ」
「あら?あなた言ったわよね?いいですよ、二言は無い。ってね」

ここでそれを持ってきますか?
あなたはどれだけ先を見てるいんでしょうね。
結構前でしょうに、その話。
嫌になります。
・・・乗り気はしませんが・・・約束ですし・・・

「そこで、ある人物に探りを入れて欲しい。内容は何でもいいわ。こちらが本命ね」
「誰ですか?それは」

劉備さんだから・・・関羽?孔明?
そもそも孔明はいるのか?
何か赤壁の前位じゃなかったっけ?仕官したのは。

「北郷一刀よ」
「北郷一刀?」

うーん・・・そんな武将いたっけな?

「巷では結構有名なのよ『天の御遣い』ってね」
「ああ、あの。所詮占いでしょう?そんなの信じていたんですか?華琳さんにしては珍しい」
「占いはどうでもいいのよ。少しだけ共闘した事があるのよ。なかなかに食えない男だわ。見たことも無い服を着ているの、一目見れば直に分かるわ」

聞いたことはありますが、所詮占い。
それを劉備さんが、名を売るために使っているだけでは?
華琳さんもらしくないですね。
にしても北郷一刀ねぇ・・・日本人っぽい名前です。
日本人だったりして?
まあ、どうでもいいですけど。

「分かりました。でもこれで約束はお終いでいいですよね?」
「結構よ」
「劉備さんが負ける事を祈っています」
「不穏当な発言ね。まあいいけど。なら貴方は明日に控えて寝ておきなさい」
「そうさせてもらいます」

天幕を出てため息を一つ。
面倒臭い仕事になってしまいました。
雨でも降って戦を中止にしてくれませんかね。
・・・嗚呼、なる訳ないか。



あとがきです。

ついに我らが一刀君登場!
でもあんまり絡みませんw
では次回にまたお会いしましょう。
ありがとう御座いました。




[8642] 恋姫無双~店主徐晃伝~ <転生オリ主>その8.5
Name: 三年G組将軍先生◆b1f32675 ID:382977c2
Date: 2009/05/19 12:50
あいつが出て行ってからは華琳様と二人きりだ。
ここは安全とは言え、他の諸侯の目もある。
何かが起こってからでは遅い。私が華琳様をお守りせねば。

「春蘭、何か話して頂戴。酒を飲むにも華が無いわ」
「どのようなものがよろしいでしょうか?」
「そうね・・・」

あいつが作ったじゃーきー?と言うものを齧りながら、愛すべき主君が小首を捻る。

「こいつの話でいいわ」

と言って、じゃーきー?をひらひらさせた。
あいつの話か。
では初めて会った時の話を聞いていただこう。




盗賊に襲われている村がある、との報告を聞いて飛んできたが、遅かったか。
ここで盗賊を討伐し、華琳様の功績を少しでも挙げていかなくてはと思っていたのだがな。
まだ駆け出しの役人、だが今のままで終わる方ではない。
焼け落ちる村の中で一人。獣の様な目をした男が、周りの肉塊を眺めていた。

「貴様、生き残りか!」
「んだよ、官軍様か?」
「そうだ、陳留の!!!っく!」

突然だった。
あの距離を一瞬で詰めたと思えば、切りつけられていた。
うむ。私でなければ死んでいたな。
流石は私だ。

「貴様、何をする!」
「あぁ?手前らがチンタラしてやがるから、皆殺されちまったじゃねーか!」

武芸の欠片も見当たらない連撃。
技が無いな。
受けるだけなら、それほど難しくはないだろう。
しかし、重い。
私とほぼ互角。いや、技量なら私に分がある。
が、純粋な力勝負ならあちらに分があるだろう。

「盗賊共はどうした!」
「俺が殺した!」

会話を続ける気はないか。
連撃を浴びるのも疲れるしな。
終わらせるか?
しかし、勿体ない。
十合ほど受けているが、これほどの武、中々居るものではない。
うむ。敵の技量も測れる。
流石は私だ。

「こちとら生きる事に精一杯なんだよ!取るだけ取りやがって。手前等はイナゴか、ゴラァ!そんなお上なんてな、無くて良いんだよ!」
「何、貴様!我が主、華琳様を、曹孟徳を愚弄するか!」

こちらの一撃を体術でかわすか。
なかなかに面白い。

「女みてぇな名前だな!くそが!カマ野郎か?あぁ!」
「何を言うか!華琳様はお美しい女性だ!発展途上だがな!」

一騎打ちの最中でも、きちんと華琳様の事を把握出来ている。
うむ。冷静だな。
流石は私だ。

「女!おいおいマジかよ?・・・あんた、名は?」

距離を取って名を聞いてきた。
まずは名乗らんか。無礼者め。
まあ、こんな獣みたいな男に教養を求める方が間違いだな。
うむ。度量が広い。
流石は私だ。

「まずは自身の名を名乗らんか!が、まあいい。我が名は夏候惇。夏候元譲。曹孟徳が一番の臣にして、最強の武!」

ん?何やら驚いているな?
ほほう。さては私の名に慄いているな。
うむ。有名になったものだ。
流石は私だ。

「本当か?」
「本当だ」
「本当に本当か?」
「本当に本当だ」
「本当に本当に本「しつこいぞ!」

つい怒鳴ってしまった。
しかし華琳様にでも、怒るべき所では怒らなくてはいけないからな。
うむ。臣としても一流。
流石は私だ。

「くっくっく・・・ハーッハッハッハ」
「どうした?気でも狂ったか?」

頭には当たっていなかったはずだが?
男から発せられていた殺気は、もはや霧散している。
やり合う気はない様だ。

「いやいや、すまない。悪い事をした。なかなかに変な世界だとは思っていたが、十八年ほど経ってこれか。ハッハッハ。聞いただけだから信じてはいなかったんだがな」
「だから何がおかしい?」
「ククク・・・いやあんたらには関係ないよ。いやあるか?」
「???」
「まあいいか。なら俺は俺である必要は無いといった処か」
「俺?貴様の名か?意味がわからんぞ?」

俺は俺?俺が名前か?
変な名前の男だ。

「ここに来た盗賊はあんたらが始末したことにしといてくれよ。それでその欠けちまった獲物は手打ちにしといてくれ」
「!!!」

気付かなかった。確かに欠けている。
この七星餓狼を欠けさせるとは。
同じ箇所を狙い続けていた?そんなはずは無いか。

「変な男だが、面白い男だ」
「そうかい?あんた弟か妹に妙才さんってのはいるか?」
「自慢の妹だが、知っているのか?」
「名前だけね。いやはや妹ね・・・」
「貴様、華琳様にお仕えする気はないか?私が取り持つぞ?」

少し考える素振りを見せる。
華琳様にお仕え出来るのだ。光栄な事だろう。考えるまでもない。

「お断りだ。役人は嫌いだからな。この間、ぶっ飛ばした位だし」
「報告にあったのは貴様か!その件はもういい。華琳様はそこらの役人とは違うぞ。まだ駆け出しで役人になられたばかりだが、いつかはこの国を、いや、この大陸を統べるお方だ」
「曹孟徳なら出来るかもな。でもお断りだ。俺は徐晃としてではなく、俺として生きる」
「???」

本当に意味がわからん。
徐晃というのが、きっとこいつの名前だろう。
やはり俺ではなかったか。
あやうく、騙される所であった。
うむ。敵の策も看破出来る。
流石は私だ。

「ここの処理は任せてもいいか?皆を弔ってやってくれよ」
「貴様はやらんのか?身内もいるだろう?」
「ダチしか居ねぇよ。それに盗賊共の死体があると、無性に誰かを殺したくなる。それに土葬は良くわからん」

確かに友の仇が傍に居れば、気が立つのはわからんでもない。
まあ、私が責任を持って弔おうではないか。
うむ。情け深い。
流石は私だ。

「縁があったらまた会うだろう。じゃあな」
「うむ。さらばだ」



で、次にあったのが・・・

「いらっしゃい!・・・あ、元譲さんじゃないですか!」
「貴様は?・・・徐晃か!」

なぜか、屋台の店主をやっていた。
何がお前をそうさせた?
あの獣のようなギラついた瞳はどこへ捨てた?
しかしまあ、細かい事はいいだろう。
思うところがあるのだろうからな。
二年振り位の再会だろうか。
話に華を咲かせ、かなり呑んだ。
旨い鳥料理を出す男だ。酒とも合う。
今度は秋蘭も連れて来るとしよう。
顔見知りでもあった訳だし、気分も良かった。
だから、多めに出してやった。
うむ。気前が良い。
流石は私だ。




「と言った感じです。確か」
「・・・二年・・・ね」
「どうかしましたか?華琳様?」
「流石だわ」

何故かため息を吐かれてしまった。




あとがきです。

今回の視点は春蘭さんです。
少し、過去のお話を入れてみました。
次はちゃんとお話を進めて行きたいと思いますよ?
お付き合いありがとう御座いました。



[8642] 恋姫無双~店主徐晃伝~ <転生オリ主>その9
Name: 三年G組将軍先生◆b1f32675 ID:382977c2
Date: 2009/05/23 17:14
「本日腕を振るわせていただく徐晃と申します。宜しくお願いいたします」

こんばんは。徐晃です。
えー、昨日の約束が現実の物となってしまいました。
目の前のお客さんは、劉備さんと関羽さんと諸葛亮ちゃん。それと・・・
北郷一刀君。
人選は華琳さんが決めました。
何でも、一騎打ちで敵将を討ち取った関羽さん。で、その為の策謀を練ったであろう諸葛亮ちゃん。後はそれらを率いる、劉備さんと北郷君。
色々聞き出す事が多いです。荀彧ちゃんから指示書を渡されたくらいですし。
戦闘開始から一騎打ち、関制圧。流れと状況を全部覚えろって言われました。
面倒な事です。
それらを覚えて話を振っていけって言われました。
ご丁寧に覚えているかの試験までやらされました。
三回の再試験でした。全く困りますよね。

「ありがとう御座います。徐晃さん」

と、劉備さん。うん可愛い人ですね。
で、関羽さんは綺麗さん。諸葛亮ちゃんは小動物系。
北郷君は割りと男前君です。
しかし・・・

「今日の料理の内容はお任せでやらせていただきますので、何か不都合があればお申し付け下さい」
「はい」

動くたびに揺れる揺れる。
何がって?
そりゃ、男の浪漫がですよ。

「では、まずはこちらからどうぞ。今日捌いた軍鶏のササミです。新鮮ですので半生で仕上げさせていただきました。お腹を壊す心配はありませんのでご心配無く。山葵醤油でどうぞ。辛いので付けすぎ注意でお願いします」

これに一番の反応を示したのが北郷君。

「うわ、山葵醤油って・・・しかも溜まり醤油じゃないか、これ!」

あー、やっぱり・・・この人は日本人だよ。
多分、何かの拍子で流れてきたんでしょうね。
俺と境遇が似ています。
あと着ている服。ポリエステルでしょ、それ。

「うわ、おいしい。ね、愛紗ちゃん」
「はい、この山葵醤油との相性もすばらしい」
「だよねだよね」

掴みはまずまずかな?
うわー、諸葛亮ちゃんの食べ方可愛いー。これは和むー。

「お次はこちらを。同じ軍鶏のササミと山菜の胡麻和えです。こちらはこのままどうぞ」

これにも北郷君は大喜び。

「あー日本人で良かった。でも・・・なんで?徐晃さんは徐晃さんですよね?」
「ご主人様?どうしたの?」
「いやね、これ俺のいた世界の料理に似ているんだ」
「「「えー!!!」」」

うーん、展開が不味い。
似ているのではなく、まんまパクリですよ。
ただ食材が違うだけです。
でも、やっぱり日本人ですか。

「天の世界って奴ですか?あいにく俺はこの国の生まれ、育ちですよ。これらは考えて作ったものです。天の世界の料理に似ているとは光栄ですね。売れる理由が分かりました」

ポーカーフェイスは崩さない。
こちとら職人でい。悟られるほど下手な演技は打たないよ?

「そっか、そうだよな。徐晃さんな訳だし・・・偶然か・・・でも美味しいな」
「はい、とても美味しいですね」

と、こちらは諸葛亮ちゃん。もの凄く可愛いです。小動物的なところが堪らん。

「では、次はこちらをどうぞ」

そう言って、暖めていた汁物を出す。

「こちらは、軍鶏の骨を煮出したものです。薄味に仕上げてありますので、物足りない場合はこちらの特製ラー油を入れてお召し上がり下さい」
「うわー、綺麗です」
「本当に。透き通っていて綺麗」

うん。女性陣には受けが良い。俺ナイスチョイス。
さて、そろそろ焼きに入りますかね。

「準備の方どうですか?」

と、後の女性に声を掛ける。
綺麗な金髪をポニーテールで纏め、眼鏡を掛けている女性が首を縦に振ります。
ちなみに華琳さんです。
何でも、

「直接聞きたいじゃない。どうせ暗いし、眼鏡でも掛けて髪型を変えれば、簡単には分からないわよ」

だってさ。
にしてもコレが似合う似合う。
可愛いですねー。
さて・・・そろそろ本気で行きますかね?
ここからが店長さんの本領発揮ですよ。

「では焼かせて頂きますので、何かあれば遠慮なくお申し付け下さい」




片付けを終え、華琳さんの天幕へ移動しました。
さてさて、華琳さんのご機嫌はどうですかね?

「で、どうでしたか?」
「そうね、良くやったといった所かしら?」

ポニーテールのままの華琳さん。
うん、新鮮。
あ、眼鏡外さないで。勿体無い。

「それにしても・・・貴方は本当に会話の持って行き方が自然ね。才能の無駄遣いよ」
「褒めていませんよ?それ」

酒を出し、料理を出す。あとは話を自然な流れで持っていくだけ。
談笑は邪魔しない。切欠作りだけに徹する。
まあ、毎日お客さんの相手をしていれば身に付きます。

「色々分かった事も多い。十分に得るものがあったわ」
「それは何より」
「で、徐晃?」

目つきが変わる。
やっぱりですか?
これは一芝居打って置かないといけませんね。

「貴方は何者なのかしら?」
「俺は俺ですよ。タダの焼き鳥屋です」
「北郷の驚きよう・・・あれは本当に驚いているように感じたわね」
「懐かしいって奴ですか?所詮は料理。似たようなものは何処にでもあるでしょうから」
「貴方『天』について、何か知っているんじゃないの?」
「いいえ。知りませんよ」

『天』は知りません。1800年ほど未来の事は知っていますが。
必殺の『嘘は吐いていない、ただ本当の事を言っていないだけ』戦法。

「その目・・・嘘は吐いていないわね」
「当たり前ですよ」

さてさて、どこまで引っ張ってくる気ですかね。
面倒臭いので程々で勘弁して欲しいです。

「それに・・・まあ、いいわ。追求はこれくらいにしてあげる」

あら?以外とあっさり。
うーん、ばれる訳はないと思いますが、なにせ相手は曹孟徳ですからね。
何が起こっても不思議じゃありません。
ありえない事はありえない、って奴ですよ。

「今日の策、やはり劉備ではなく諸葛亮が練った物だったわね」
「ああ、意趣返しって奴ですか?やられっぱなしは良い気がしませんしね」
「そうね。そこで、一騎当千の関羽をぶつけ、将の首を取る。兵数が少ないのだから、これが最善で効果的に名を上げる方法ね」

椅子に座り、酒を飲む華琳さん。
俺もご相伴に預かります。

「それにしても」
「?」
「やはり関羽は欲しいわね。武も然る事ながら、あの美しさには価値がある」

出たよ、人材マニア。病気の域ですね。

「うーん。難しいんじゃないですか?ご主人様にベッタリ見たいな感じでしたし。多分惚れてますね」
「分かるの?」
「まあ、人を見る目は確かなつもりですよ。言うなれば皆、北郷君に惚れてる感じでしたね」

そう。それが問題だ。
何がご主人様だ!
ボインボインを毎日とっかえひっかえですか!
ああ、羨ましいですとも!それが何か!
いかんいかん。落ち着け俺。

「ふーん。なら関羽を手に入れるには、北郷をどうにかしないといけないわね」
「それも難しいんじゃないですか?」
「何故かしら?」
「えらく惚れているみたいでしたし。ああいう人は思い人がどうにかなったら、後を追いそうですしね。話し振りからして、華琳さんは北郷君要らないのでしょう?」
「なるほど。そう言う見方もあるわね。武人である前に女ですものね」

流石話が早い。楽で良いです。
きっとアレですね。華琳さんは武将としてしか人を見ていないんですかね?
そうじゃないと思うんですけどね。俺は。

「そういう感じですよ。きっと」
「そう・・・貴方の眼から見て、劉備はどう映ったかしら?」

うーん、可愛い感じの人ですかね?
そんな事を言えば殴られますね、きっと。

「そうですね・・・話を聞く限りではですけど・・・夢想家ですかね。やりたい事は大きい、けどやっている事は小さい。まあ、世の中の全ての人間が笑って暮らせる日なんて来ないですよ。将とかの皆さんはその思いに感銘を受けて、付いて行っている感じじゃないですか?」

そう、とだけ呟く華琳さん。

「なら、北郷は?」
「これまた難しいですね。聞いた話では最初にあったのが劉備さん達って事でしたし・・・『天の御使い』の名前を使っての・・・そう、神輿ですね。別に彼から独自の何かを聞き出せた訳じゃ無いですから。なんとも言えませんけど。でも悪い人には見えませんね」
「神輿の役割をしているだけって所かしら?」
「巻き込まれた?って感じですけどね。別の世界から来たような話し振りでしたから。最初に拾ったのが華琳さんだったら、また話も変わってきたのでは?どこまで本当かは知りませんが」
「そんな自主性の無い男、いらないわ」
「そういう所なんじゃないですかね『天』って所は」

その後もあーだこーだ言い持ってその日は終わりました。
なんだか疲れた。隠しながら話をするのは難しいです。
あと、乳見すぎって殴られました。気付かれていないと思ってたのにな。
でもって、次の日。

「何故にまた出張焼き鳥屋?」
「貴方ね、華琳様のお話聞いてなかったの?」

目の前にはご立腹の荀彧ちゃん。
次は孫策さんに料理を出せって話です。
虎牢関に行くまで、まだ日取りがあるらしいです。
でも何故に孫策さん?

「聞いていましたよ?でも良く分からなかった訳です」
「貴方馬鹿じゃないの?その脳味噌に何入っているのよ!何も入っていないんでしょ!」

なんじゃそりゃ。詰まってるって。

「孫策が華雄を挑発しておびき出したって昨日教えたでしょ!」
「だから?」
「あー、何よこいつ。まるで春蘭じゃない!」

うわ、それは嫌だ。

「もう少し分かりやすく説明していただけると、嬉しいんですけど」
「・・・いい?戦功を上げたのは劉備達、切欠を作ったのは孫策達。これも立派な戦功よ。で、劉備達を歓待しておいて、孫策達を歓待しない訳には行かないでしょ。華琳様の度量が狭いなんて風評が流れたら、あなた一体どう責任とるつもりよ!」

責任って・・・俺には無いでしょう。それは。
まあ、いいですけど。
どうせ、戦が終わるまで帰れないし。
勝手に帰ったら、何されるか分からないですからね。
ついでに都の洛陽って所にも興味があります。
観光くらいはしてもいいでしょう。
でも、火を付けて逃げるんでしたっけ?董卓さん。
何かそんな記憶が・・・あるような、ないような・・・

「責任云々は知りませんが、荀彧さんの説明はとても分かりやすかったです。流石王佐の才。聡明で美しく、軍師として優秀。華琳さんもきっと喜んでますよ。いい部下を持ったって」
「ふん、当然よ!それにあんたみたいな男に褒められても、ちっとも嬉しくないわ!」

ちょっとは謙遜したらどうですかね?
酔ってる時は可愛いのに。

「いい?くれぐれも華琳様の顔に泥を塗るような真似はするんじゃないわよ?」
「大丈夫ですよ」
「今日、華琳様はご一緒じゃないのだから、特に気をつけなさい?」
「分かってますよ」

そう言って立ち去りますが、何度も振り返って念を押すのは止めませんか。
何か駄目男みたいじゃないですか。
まあ、歓待するだけでいい、みたいな話ですので楽です。
どーんと、お任せ下さい!




「徐晃と申します。本日腕を振るわせていただきます、よろしくお願いします」
「そんなに硬くならないでいいわよ~、お酒の席なんだし」

うん、良いおっぱい!
今日のお客さんは孫策さんと周喩さん。
昨日の劉備さんよりもおっぱいです。
良く分かりませんね。
でも、良いおっぱいです。

「まずはお酒を貰おうかしらね。曹操の所なのだから、きっと良い物があるでしょう?」
「ええありますよ。ではどうぞ。周喩さんもどうぞ」

酒を注いで出します。合わせてその酒に合う付き出しも出します。
華琳さんの所のお酒はきついのが多いんですよ。
料理を合わせるのが難しいです。

「あら、おいしいわね。料理とも良く合うじゃない。ね、冥琳?」
「そうだな」
「ありがとう御座います」

その後も、お酒メインで進みます。
いやはや、ペースが速い。
少しでも目を離すと、孫策さんのペースに合わせるのが難しいくらいです。
ニコニコしながらお酒を呑んでますね。
隣の周喩さんも静かではありますが、ご機嫌は良いみたいです。
お二人とも、初めてお相手しますが、良い表情です。
昨日より人数が少ないのは助かりました。孫策さんの相手は難しいですからね。
もっと来ると思っていたんですけどね。結果オーライです。

「あ~、お酒も料理も美味しい。良い席だわ」
「本当にそうだな・・・ん?雪蓮?」
「ちっ・・・面倒なのが来たわね」

表情が曇ります。
何でしょうね、誰か来ますよ?
華琳さんの陣ですから、勝手に入ってくるのは無理なのでは?
偉いさんでしょうか?

「七乃~。こっちじゃ。こっちから蜂蜜の匂いがするぞ?」
「あ~ん、お嬢様~。待って下さいよ~」

誰でしょうね、見た事ない人ですね。
女の子ですね。どう見ても。

「孫策ではないか?ここで何をしているかえ?」
「何って、曹操からお呼ばれしたのよ」
「妾に黙ってかえ?」
「招待を受けただけだから。他意はないわ」
「まあ、知っておったがの。邪魔しに来たのじゃ」

うーん、険悪ですねー。
嫌いな人なんでしょう。
でも文句を言えない・・・上司?ですかね。
でも孫策さんは呉の太守さんでは?
今はまだ違うのかな?そういう世の中の流れは良く分かりません。

「まあそれはもうよい、時に店主よ」
「はい、何でしょうか。綺麗なお嬢さん?」
「おお、綺麗とな。妾も罪作りじゃの~」
「流石ですぅ~、お嬢様。初対面の人に綺麗って言われる。どう聞いても上辺だけの言葉。でもそこに気が付かないお嬢様、流石ですぅ~」
「うはははは。七乃、もっと褒めてたも」

ナンデスカ?このカオス?
まあ、気を取り直しましょう。
何か言ってましたし。

「で、何か御用でしょうか?」
「うむ、こちらから蜂蜜の匂いがしたのじゃが?」
「分かりますか?凄いですね。こちらです」

マジか?凄いぞ、それは。
そう言って壺から鶏肉の塊を引き上げる。

「こちらですね。鶏肉の塩漬けを蜂蜜漬けにした物です」
「その蜂蜜はどこ産かえ?」
「舐めてみますか?」
「うむ」

そう言って蜂蜜を一舐め。

「これは・・・河北の方で取れるものじゃな?」
「何と!御明察です」
「うはははは。妾は気分がよいぞ?もっと褒めてたも」
「食されますか?」
「うむ・・・しかし、天幕で食事をしたいの。外では嫌じゃ」
「じゃあ、包みますね。少し待っていて下さい」

そう言って、軽くスライス。
笹で包んで・・・っと。

「では、どうぞ。切って置きましたから焼いて召し上がって下さい。冷めても美味しいですよ」
「七乃」
「はいですぅ~」
「では、戻るとするかえ?戻ってこれと蜂蜜水じゃ。うはははは」
「体よく厄介払いされた事に気付かないお嬢様。素敵ですぅ~」

カオスが帰っていきましたよ。
うん、凄い。
あの侍女?さんの毒が凄い。

「ったく、いい気分で呑んでいたのに・・・にしてもあのお子ちゃまにあんな特技があるなんてね。いくら蜂蜜好きでも産地なんて」
「確かにな。舌が肥えているのだろう」
「さっきのですか?違いますよ?蜂蜜の産地なんて知りませんし。当たっているのかもしれませんけどね。それに、ああ言えば満足するでしょうから、そう言っただけです。匂いに関しては驚きましたけど」

二人の目が点になる。
驚いているんでしょうか?

「ハハハハ、良いわ。貴方良いわよ!」
「ああ全く持ってその通りだ」

何でしょうね。どこがツボなんでしょうか?
二人してゲラゲラ笑ってますよ。

「あー可笑しい。で、貴方何故あんな事言ったのかしら?」
「お二人の歓待をさせていただいていますので、とっととご退場してもらっただけですが?」
「初顔でしょ?あの子も私達も」
「大体の察しは付きますよ。お嫌いなんでしょう、さっきの子?」

一気に曇りましたからね、表情が。
美人さんなのに勿体無いじゃないですか。

「あの子はね袁術って言って、この連合じゃあ二番目に大きな勢力の長よ。いいのかしら?曹操に知れても」
「まあ、俺には関係ない事ですし。目の前のお客さんのほうが大事です。あの感じの子は立てておけば害は無さそうですので。嘘も方便って所です」
「関係ない・・・ね。あなた徐晃と言ったかしら?」
「はい」
「もう少し先の話だけど。貴方、呉へ来ない?」
「雪蓮!?」

勧誘ですか。
周喩さんがえらく驚いていますね。
勧誘する事が珍しいのでしょうか?
いや、怒っている?・・・のかな、これは。

「お気持ちだけ頂いておきます。これでも陳留で店を出していますので」
「・・・そう、残念。でもまあいいわ。あー、気分が良い。もっとお酒もらえるかしら?」
「畏まりました。周喩さんはいかがしますか?」
「私は控え目で良い。こいつの世話があるからな」
「はい」

正直、ここまで呑むとは思ってません。
なにせ預かってきた甕が一つ空です。
いやはや、やりますな。

「ん~、冥~琳~。帰るわよ~」
「分かっている、ほら捕まれ」

肩を貸す周喩さん。
なんか元譲さんと妙才さんみたいです。
足取りが危ないですね。
陣の出口までは見送りましょう。

「う~ん、ちょっと呑みすぎたかしらね~」
「当たり前だ、程ほどにして貰わないと困るぞ」
「結構呑みましたからね」

陣の出口付近まで来て、孫策さん達は立ち止まりました。

「今日はありがとう~。良い席だったわ」
「うむ。非常に良かった」
「光栄です」
「知っているとは思うけど、私は孫策。字は伯布・・・真名は雪蓮。今日は楽しかったわ。気が変わったら呉にいらっしゃい」
「雪蓮、お前!?」
「いいじゃない。この子はいい子よ。感だけどね」
「普通、真名まで預けるか?」
「今日は久しぶりに笑ったわ。その礼よ」

真名ってのは大事な物なのでしょうが、価値観は人それぞれですね。
まあ、ありがたく頂いておきましょう。

「ありがとう御座います。何かの際には立ち寄らせていただきます」
「ええ、待っているわ。じゃあね~」

俺はフラフラの雪蓮さんと周喩さんを見えなくなるまで見送りました。
にしても、あれが小覇王ですか?
ただの酔っ払いじゃん。



あとがきです。

駄文にお付き合い頂きありがとう御座います。
北郷君は登場しますが、今は空気ですw
あと二回程で連合は終了しそうです。
その後は第二部的な流れになります。
ではまたお会いしましょう。
ありがとう御座いました。



[8642] 恋姫無双~店主徐晃伝~ <転生オリ主>その10
Name: 三年G組将軍先生◆b1f32675 ID:382977c2
Date: 2009/05/23 17:10
「おい、お茶」
「はいはい」

どうも、こんにちは。徐晃です。
今はですね、元譲さんが怪我をしたのでお世話をしています。
といっても、小間使いみたいなもんです。
え?あの阿呆が怪我なんてって?
とうとう片目がなくなりました。洛陽前での戦闘中に、敵将の張遼さんと一騎打ちを乱戦の中していたみたいなんですよ。
で、その際に敵兵さんからの弓を受けたみたいです。
ぶっちゃけ、阿呆です。そんな中で一騎打ちって。何が飛んでくるか分からない場所は危ないです。もっと安全な場所でやればいいのに。
え?虎牢関はって?
あっさり通過しましたよ?訳は知りませんが。
そんな事より、この阿呆毛の世話が面倒くさい。
さっき、

「徐晃、腹が減った」
「何が食べたいですか?」
「何でも良い」

とか言ったくせに、

「肉まん買って来ましたよ」
「肉まん・・・気分では無い」

とか言うんですよ。ありえん。何でも良いって言ったじゃん。
で、その瞬間に気付きました。
多分、何でも良いって言うのは、

「徐晃、腹が減った(私の口と気分に合う旨い物なら)何でも良い」

という事だったんですね~。いや~、一つ元譲さんの事を良く知れましたよ。
・・・役に立たない知識です。
それもこれも全部、華琳さんのせいです。
ちょっと前までワンワン泣いていた癖に。
あの時はちょっと可愛かった。年相応な感じって奴ですね。

「付き合ってあげなさい。貴方暇でしょ?」

だってよ。あんまりだ。
これでも、流琉へのお土産を買いに行くとか、観光するとか、色々やることあるのに。
一般的には暇って言うのですけどね。

「これでどうですか?」

準備をして持っていきます。
今は炊き出しをやっているので、ちょっと火を借りました。

「おお、いい匂いだ。やれば出来るではないか」

何かムカツク。

「炊き出しで出している米と汁物。あとおかずを二品。これは俺が作りましたよ。簡単なものですけどね」

青菜と玉子の炒め物。それとハンバーグのベーコン巻き。
きっとこの人は肉がないと文句を言いますので、ちょっと残っていた肉類を片っ端から叩いて混ぜ合わせ、ハンバーグっぽくしてみました。玉ねぎは無いので長ネギで。パン粉は無いので無し。ベーコンはこの前食べたそうにしていたので付けてみました。
ソースはおろし醤油であっさりと。大葉の刻みと良く合います。
あんまり凝った物は作れませんが、この程度であれば何も難しくはありません。

「おお、旨そうではないか。流石だな」
「おだてても何も出ませんよ。まあ食ったら安静にでもしていればいいんじゃないですか?怪我だって癒えていないでしょう?」
「うむ。華琳様からも天幕より出るなと仰せつかったしな」

ニコニコしながら食べてくれます。食っている時はまったく無害なんですけどね。

「じゃあ、俺は出てますんで。食器は誰かに運ばせて下さい」
「貴様、私の世話をするのではないのか?」
「飯だけで十分でしょ。暇だから何かしろ、とか言われたら嫌ですし」
「何と!貴様、人の心が読めるのか!」

言うつもりかよ。

「とにかく、後は衛生兵さんとでも遊んでいて下さい」
「ふむ。まあ飯が旨いから見逃してやろう」

なんつー、上から目線だ。

「じゃあ、俺はこれで」
「うむ。くれぐれも華琳様のお邪魔はするなよ?」

しねーよ。
お客さんとして以外はあんまり係わり合いを持ちたくないです。
あの人は無茶苦茶言いますからね。いい刺激になるのは確かですけど。
あ、お客さんとして無茶苦茶言う人でした。
戦闘後の洛陽を見物します。
ふむふむ。戦闘の跡といってもあまり被害は無いようですね。
楽進さんが暴れた方が、被害が大きいかな?これは。
建て直しの資材を運んでいたり、炊き出しをしている部隊があったり・・・
あー、あそこの一角は酷いですね。完全に崩れている。
一回全部どけた方が良さそうですね。
やはり城門に近い辺りの被害は、こう見てみれば結構出ていますね。
だから戦争は嫌なんですよね~。

「徐晃殿」
「ん?あっ、星さん!」

突然声を掛けてきたのは、以前来店して貰った事がある、趙雲さん。
あの時は・・・メンマでした。
旨いメンマの礼に真名を預かりました。

「久しぶりだな。店は繁盛しているか?」
「ええ、してますよ。まずまずですね」
「そうか、流石は私の見込んだ店主だ。我が主からその名を聞いたときには驚いたものだ」

メンマは売ってないですよ?まあ、黙っておきましょう。

「時に・・・」

メンマか!

「人手は足りているか?」

???

「ええ・・・今の段階では。ただ、色々やりたいことがあるんですねよ。だから足りていないと言えば足りていないです」
「ほう」

なんでしょうかね?この人も華琳さんと同類の気がしますし。
なにか厄介事ですかね。

「付いて来てくれるか?話はそれからだ」
「ええ、いいですよ。暇ですし」
「こちらだ」

後に付いて行きます。その間にもメンマの話を延々聞かされました。
本当にメンマスキーなんですね。この人は。
行く先はなんか人気の無い所ですねー。
このまま、ザクッ!殺されそうな感じがしないでもないですが。そういう事はないでしょうし・・・
かといって、貴方の事が好きだったの!的な展開もないでしょうし・・・
むしろ、メンマが好きなの!はありそうですけどね。知ってるけど。

「どこまで行くんですか?」
「もうすぐ・・・あそこだ」

と少し開けた場所には、劉備さん諸葛亮ちゃんと北郷君。
と知らない女の子が二人。
うーん、なんでしょう。
にしても、女の子が着ているものは豪華っぽいですね。貴族さんでしょうか。

「主よ。やはり私としては賛同いたしかねます。で、こちらの徐晃殿では?幸い、人手は欲しいとの事。人柄についても信用出来るかと」
「私も星さんの意見に賛成です。我々の平原は袁紹さんの南皮と近く、何かあってからの対処ではもう手遅れになると思います。間違いなく飲まれてしまいます。他に道がある訳ですから、ここはそちらを進むべきかと」
「どうするの?ご主人様」
「皆の意見は分かった。二人もそれでいいだろうか?」

おーい、置いてけぼりですよー。

「徐晃さん。お願いがあるんです」
「何ですか?無茶苦茶なものでない限りは聞きますよ」
「実は、この二人を預かってもらいたいんです」

ほほう。この可愛いお二人をね。
悪くないですね。けど、

「俺は問題ないですけど。この子達の意見は?というか何者?」
「それは・・・」
「徐晃殿。貴殿を見込んでのお願いだ。素性は聞かないで欲しい」

ふーむ。思いっきり厄介ごとな匂いですね。
少し、話を聞いてみますかね?

「お嬢さん。少しお話しませんか?」
「あ、あんた誰よ!」
「俺は徐晃。陳留で焼き鳥屋をやっている。そんなに警戒しないで欲しいな。別に君たちをどうこうしようとは思ってないし」
「陳留!曹操の所じゃない!」
「そうだよ。華琳さん、ああ、曹操さんにはご贔屓にしてもらっているよ」
「真名!曹操は女好きの男嫌いで有名。あんた何者なの?」
「うーん、何者と言われても、焼き鳥屋としか言いようが無いけど。あと曹操さんは男嫌いじゃなくて、女の方が好きなだけだよ、あれは。周りにいい男がいなかっただけじゃないかな?」
「曹操と親しい男?」
「親しい訳じゃないとは思うけどね。ただのお客さんだし。それ以上でもそれ以下でも無いと思うけどね」

やたらと華琳さんを嫌うねぇ、この子は。凄い目してましたし。
貴族っぽい子と眼鏡の友達。素性は聞かない。劉備さん達が保護するには問題がある。で、華琳さんが嫌い?・・・ふむ。
戦の関係者か何かかな?
匂いますね。

「まあ、それは置いておこう。君たちは実家に帰らないのかな」
「帰れないのよ」
「何で?」
「何でもよ!」

なかなかに骨が折れる。
気難しい子ですね。
でもって、実家にも帰れない・・・ね。
やはり関係者でしょう。
何かこうしていると、犯人を追い詰める探偵みたいですね。
でも、素性は聞かないで欲しいって言われましたし。
うーむ。これ以上は無理かな?

「まあ、いいや。で、ウチに来るかい?どうする。好きにすれば良い」
「どうする月?」
「私は・・・やっぱり、きちんと話さないといけないよ、詠ちゃん?・・・徐晃さん」
「駄目よ月っ!」
「何かな?お嬢さん」
「私は董卓と言います。この連合の狙いは私です。私はどうなってもいいんです。ですから詠ちゃんは、賈詡だけは助けて下さい。お願いします!」
「月っ!それは駄目よ!董卓は私よ!殺すなら私にしなさい!」

泣かせますねー。でも詠ちゃんとやら、バレバレ過ぎます。
ふむ、一肌脱ぎますか。

「誰も殺すって言ってないよ。董卓ちゃんだったね。本当に専横を振るっていたのかな?誰か別の人間がいるのかな?」
「張譲よ。あいつが全部仕組んだのよ」

この洛陽。本当に専横に苦しんでいたとは正直思えない。
連合相手に商売する連中が居るくらいだしね。
同じ商売人として頭が下がります。

「証拠はあるかい?」
「ないわ。あの宦官がそんなヘマを打つとも思えないわね」
「なら直接聞くしかないか。それなら」
「ちょ、ちょっとあんた!何考えてるのよ!」
「色々ね~。命の保障の確約は出来ないけど・・・五分五分かな。どうせ死ぬつもりなら、お兄さんに賭けてみないかい?」

当てはある。
本人たちが死ぬ気であるなら何とかなるかもね、仮に死んでも、良いと言っている訳ですし。

「どうする?」
「私は詠ちゃんが無事なら、何でもします!」
「それは大丈夫だろうと思うよ。死ぬなら君一人だ」
「駄目よ!」

五分五分と言ったけど、実は十中八九いけると踏んでます。
それにここまで良い子達です。多少の無茶は俺がしてみせましょう。

「まあ、お兄さんに任せなさい。と、いう訳で北郷君。この子達は俺が預かるよ」
「すみません。でも、大丈夫なんですか?」
「主よ。私の人を見る目は確かです。この趙子龍。真名を預けた男は親類以外で、主と徐晃殿のみ。信じて貰いたい」

おお、なんか信用されてる!

「でも星ちゃん。メンマが美味しかったって・・・」
「桃香様、見くびらないで頂きたい。この趙子龍、メンマが旨かった程度で真名は預けません。そこまで安くない。私はこの徐晃殿の誠実さに真名をお預けした。焼き鳥屋で、いかに酒の席とは言え、メンマを作れと言われて作る焼き鳥屋がいましょうや。彼は私に答えてくれた。だからです。まあ、確かに旨かったのは事実ですが」

そこまで深くは考えていませんでした、とは言えない。絶対に言えない。

「うん。星がそこまで言うなら、徐晃さんにお任せしよう。俺達では正直難しいのが現実だろう」
「じゃあ行くとしますかね。二人とも付いておいで?」
「ちょっと、どこ行くのよ?」

さてさて帰りましょう。

「華琳さんの所」
「何考えてるのよ!あんた私達を売る気!」
「売るのは張譲の首かな?だって首謀者は張譲なんだろ?だったら正直に言えば華琳さんは君たちを殺しはしないはずだよ」
「そんな根拠はどこにあるのよ!」
「あるよ。華琳さんは董卓の首が欲しくてここに来たわけじゃないし。もう目的は達成しているはずだしね。上手くやってくれるさ」

確か、諸侯の実力がどうこうって言ってた。
多分、そのはず。あとは交渉の仕方次第。
・・・だと思う。
でも、気紛れだからなー。気紛れで首が飛ぶとかありえるし・・・

「まあ、なんとかなるでしょ」
「ちょっと月もなんとか言ってよ!」
「でも、徐晃さんは何とかしようとしてくれてるし。それに黙っていてもいずれはバレると思うよ?」
「ああ、もう。なんでこう人を疑わないのよ。まあ、それが月の良い所だけど」

うん。二人とも良い子だ。
可愛いしね。
と、そうこうする間に帰ってきましたよ。
二人には俺の天幕にいてもらって・・・
さてさて、本番いってみましょう。

「華琳さん。今いいですか?」
「あら、徐晃?春蘭はどうしたのかしら?」
「ああ、天幕の中で大人しくしてますよ。飯は旨そうに食ってましたし」
「そう。貴方が作ったの?」
「そうですよ。余り物でしたけど、まずまずです。新しい物の実験ですけどね」
「そう。なら完成したら私にも作ってもらおうかしら?」
「いいですよ。で、話があるんですが」
「ここではいけないのかしら?」
「出来れば天幕で、人払いを」
「そう」

まずはここが最初の一歩。

「いいわ。先に行って待っていなさい。直に行くわ」
「ありがとう御座います」

余り大きな声で出来る話じゃないですからね。
移動して待つことしばし、

「で、話とは何かしら?」
「董卓についてです」
「貴方からそんな話が出てくるなんてね。明日は槍でも降るのかしら?」

ほっとけ。

「まあ、冗談は置いといて。張譲って知ってますよね」
「当然よ。それが何か」
「大体察しは付いてるでしょうに。今回の首謀者は張譲です。脅せば吐くでしょう。で、董卓の身柄を保証して欲しいわけです」
「張譲に全てを押し付ける気かしら?」
「まあ、そんな所ですね。華琳さんなら張譲に会う事も出来るでしょう?」
「今は隠れているわ。報告が上がってこない。いないものはどうしようも無いわ」
「おびき出せばいいでしょう。董卓は死んだ事にして。そしたら戻ってくるでしょう。朝廷関係者ですから。玉無しの長なんでしょう?」
「なるほどね。でも首謀者と実際の実行者の二人の首を上げればより名があがるわね」
「首謀者だけでも十分でしょう。宦官が消えれば、そのままなし崩しに都入りする事も出来る。朝廷を好きに使えば、統一も近くなるでしょう。あとはあれなんてどうです?多分、本拠地に残っている騎兵なんかを貰ってみては?ほらいい事尽くしじゃないですか?」

華琳さんなら話が通ると思ったんだけどな。難しいかな?
いや、試されてるのかもしれない。

「貴方は本当に交渉が下手ね。筋は悪くないのに。しっかり勉強すれば外交官にもなれるのではないかしら?」
「すみませんね。客商売だけで手一杯ですよ」
「ここまで筋を読み、私に交渉してくるだけでもなかなかのものよ。目の付け所は間違っていないわ」
「まあ、人を見る目はあるつもりです。袁紹さん達では難しそうですから」
「まあ、いいわ。気に入らない所がいくつかあるけど乗ってあげましょう。珍しい人間からの依頼だしね」
「ありがとう御座います」

おお、何か上手く行ったっぽいぞ。

「董卓を知っているのは?」
「劉備さんの所で何人かと、俺だけです」
「なら劉備を抑えなくてはね」
「それは大丈夫かと。北郷君から依頼されてのことですし」

腕を組み考える、華琳さん。
絵になりますねぇ。

「それに華琳さんの所に将として居るわけではないので、問題は無いでしょう。知らぬ存ぜぬで通せばいい事ですし。いざとなったら、適当に勅でも出して劉備さんを攻めればいいのでは?こちらとしては、董卓は無実で実権は張譲にあった、としてくれればいいだけですから。俺としては黙っていますが、万が一があっては困りますから」
「貴方無茶苦茶言うわね。でも嫌いじゃないわ」

ニヤリと笑う。
いつもながら、おっそろしい笑い方ですね。

「問題は張譲をどうやっておびき出すかね」
「そう言うときの文若ちゃんでしょう」
「桂花ね・・・悪くない人選ね」

しか、いねー。一択ですから。

「隠れて暮らすのは無理じゃあないでしょうけど、やっぱり可哀想ですし。朝廷はどうでもいいですし」
「貴方ねえ」

何故にため息?

「不穏当な発言は控えなさいって言っているでしょ?」
「ああ、すみません。気にしてませんでした」
「まあ、いいわ。まずは董卓に会うとしましょう」
「俺の天幕にいますよ」
「連れてきなさい」
「はいはい」

自分で行けばいいのに。
その後は華琳さんと三者面談をしていました。
俺は一応居ましたけど。半分寝ていました。

「徐晃、起きなさい」
「・・・ほぇ?」

ああ、終わったのね。
どうするんでしょうかね。

「貴方が責任を持ってこの子達の世話をなさい」
「最初からそのつもりですから、大丈夫ですよ」
「結構。あとは私に任せなさい」
「それもそのつもりです」

またも、ため息をつく華琳さん。

「貴方ね、少しは自分で何とかしたら?張譲の首を取ってきて、これで董卓を助けてやってくれ!とか言えないのかしら?」
「そんな事するくらいなら武官として、華琳さんの所にいますよ」
「他力本願も極めれば凄いのね」
「いやー、照れちゃいます」
「褒めてないわよ!」

ですよねー。

「月、詠?この男は間抜けだけどなかなか食えない男よ。ほとぼりが冷めて愛想が尽きたら私のところに来てもいいわ」
「褒めてないですよ?」
「褒めてないもの」

やっぱり?

「曹操、本当にボク達をどうにかしないの?」
「くどい。この曹孟徳に二言は無い!」
「曹操さん。ありがとうございます。ほら詠ちゃんも」
「あ、ありがとうございます」

ぺこりと二人は頭を下げる。
うん。可愛い。

「礼なら徐晃になさい。私は利があるから動くだけ。この男の筋書きというのは気に入らないけどね。涼州騎兵三千騎を組み込めるのは非常に大きいわ。これが一番大きいかもね」

めっちゃ強いんでしたっけ?確か。

「徐晃。二人をどうする気かしら?」
「え?店で働いて貰いますよ。流琉も同じくらいの年の友達が増えれば喜ぶでしょ?嫌なら別の方法を考えますけどね」
「ほら言った通りでしょ?この男は全く欲が無いわ。ここまで来ると清清しいくらいよ」

うーん、変な事ですかね。つーか何を話した?

「徐晃さん。ありがとう御座います」
「いいよ別に。俺は何もしてないし。華琳さんに任せておけば問題ないよ。きっと上手くやってくれるさ」

まあ、二人が無事なら何でもいいですよね。
最悪、俺が張譲の首を、とも思ってましたけど。
でも平和的に終わって万々歳です。

「さてさて、俺達は陳留に帰りますかね。もういいでしょう、華琳さん」
「駄目よ。炊き出しの手伝いをしてからになさい」

えー。

「何よ、その目は。これで借りは無しにしてあげると言っているのよ」
「一言も言ってないし」
「察しなさいよ」
「それは無理」

と言っていると、

「ちょっと、あんた。曹操になんて口をきくのよ。少しは考えなさいよ」

詠ちゃんから非難されてしまいました。
君も、さんなり様なりつけたらどうかね?

「えー。でも今はお客さんでもないし。」
「太守でしょ」
「まあ、色々良くはしてもらってるけど。その分は出してるつもりだし」
「良いのよ詠。この男はね、誰であろうと扱いがそこまで変わらないわ。帝であっても例外ではないらしいわよ」
「「!!!」」

目が点の二人。確かにこの時代の人からすれば変なんでしょうね。

「俺の料理の前では帝も子供も同じお客さんだよ。差別しちゃいけない。扱い全てが同じではないけどね」
「でも!」
「人は同じ人だよ。それが分からない連中がいるから戦争が起こる。ですよね華琳さん?」

チラリと見やる。

「あら、皮肉の一つも言えるのね。まあ、この男の言う事は変だけど、芯が通っているわ。
相手が誰であろうと、それを変えない。そこは評価している。変だけどね」

二回言いましたね?この野郎。
まあ、いいけど。

「ほんじゃあまあ、働いて来ますかね」
「そうなさい。貴方の指揮は中々に評判が良かったわよ。そう報告が上がってきているわ」

じゃあ、新しい従業員の為にも、お兄さんは頑張りますかね!



あとがきです。

おかしい・・・気が付いたら二人が徐晃の元に居た。
何故か!
好きだからさ。
という訳で、ちょこっと展開を弄りました。
ではまたお会いしましょう。
駄文にお付き合い頂き、ありがとう御座います。



[8642] 恋姫無双~店主徐晃伝~ <転生オリ主>その11 ちょいグロ表現あり
Name: 三年G組将軍先生◆b1f32675 ID:382977c2
Date: 2009/05/25 17:27
こんばんわ。流琉です。
兄様が帰ってきてからは、お店の売上も順調です。
でも、帰ってきての第一声が、

「流琉ー、この二人に仕事を教えてあげてー」

でしたから、驚きました。まずはただいま、でしょう?普通。
兄様にも困ったものです。
連れてきた二人は月さんと詠さんと言います。元々、お客商売していた訳ではないので、ちょっと時間は掛かりましたが、もう給仕の仕事はバッチリです。二人が来てくれたお蔭で机の座席を増やす事が出来ました。
月さんは仕込みのお手伝いもしてくれますし、買い付けの際は詠さんが値段の交渉をしてくれます。
年も近かったので直に仲良くなれましたよ。
この前は季衣とも真名の交換をしていましたし、私もとっても嬉しいです。
今日は、また兄様がフラ~っと屋台を引いて出かけています。
営業してくれる人数が増えたからと言って、新しい事をしているみたいです。
何にも相談してくれないのは寂しいですけど、私達が思いつかないような料理をいつの間にか考えて屋台で売っています。
そこは素直に凄いなーと感心します。でも、やっぱり寂しいです。
ただ、新しいものを思いついたからといって、いきなり商品を変えるのはどうかと思います。
今日、月さんと詠さんはお城に行っています。
華琳様の所に知り合いの人がいるらしいです。
夕食を一緒にとらないか、と誘われたらしいので早めにあがって貰いました。
その後も私は一人で営業しています。でも、もうじき閉店ですね。
お客さんはあと一人です。
でも、このお客さんの着ている物は不思議です。キラキラ光っているようにも見えます。
なんでも、兄様の知り合いらしいです。で、帰ってくるのを待っているようです。
もうじき兄様は帰ってくるはず。いつも同じような時間に帰ってきますから。

「君、その歌は?」

ああ、思わず鼻歌が出ちゃいました。恥ずかしいです。

「すみません。お客さんの前で・・・」
「いや、構わないよ。それよりその歌は?」
「兄様が教えてくれたんです。兄様も良く歌っていますよ」
「・・・そう・・・やっぱり」

何か変な事を言ったでしょうか?
驚いたような顔をしていたと思うのですが・・・

「たっだいま~」
「あ、兄様。お帰りなさい。お客さんですよ?」

裏から姿を見せた兄様。お客さんの顔を見て一瞬、表情が曇りました。
何時もと感じが違う事には直に気が付きました。
だって、兄様はお客さんの前で、あんな表情は絶対しません。

「北郷君」
「お久しぶりです。徐晃さん。二人は元気にしてますか?」

でも直に何時もの兄様に戻っていました。

「ええ、元気ですよ。今日は何の用件ですか?」
「俺達は、徐州に移る事になったんです。二人の様子を見に来たのが元々ですけどね。別件が出来ました。単刀直入に言います。ウチへ来て下さい」

急でした。いきなりそんな事を言われるなんて。
でも、兄様は首を横に振りました。

「あいにく、店をやっているもので。他の人を当たって下さい」
「他の人では駄目なんです。と言うか居ません。俺と貴方しか」

意味が分かりませんでした。どういう事なのでしょう。

「『天の御使い』さんからのご指名は嬉しいですけどね。お引取り下さい」
「そうじゃない事を貴方は知っているはずでは?」
「検討がつきませんね」
「・・・あくまで徐晃として生きるつもりですか?違う道もあるでしょう?」

兄様は答えませんでした。この人が何を言っているのか分かりません。
でも、兄様は理解しているようでした。表情を見れば分かります。

「北郷君が何を言いたいのか分からない」
「俺は劉備の理想を叶えてやりたい。それだけです。」
「皆が笑って暮らせる世の中・・・でしたっけ?」
「俺と貴方が居れば出来ると思っています。今はまだ弱小ですけど、そのうちにきっとデカクなります」
「その為に今の生活を捨てろと?」
「世の中の皆が笑って暮らせる日を迎える為です」
「俺には俺の人生がある。何者にも邪魔はさせない」

兄様の眼はとても厳しいものでした。いつもニコニコ笑っている兄様の眼ではありません。
初めて見ました。

「俺が何故この世界に来たのかは分かりません。劉備達に会った理由も分かりません。でも、彼女達の理想を現実のものに出来る筈なんです。貴方さえ力を貸してくれたら」
「すみませんが、お引取り下さい」

兄様と北郷さんは黙ったままでした。

「面白そうな話じゃない?」
「華琳様!?」

全然気が付きませんでした。
声を掛けられた時には、すでにお店の中に入っていらっしゃった後でした。

「うわ、最悪・・・」
「曹操さん」
「北郷、これ以上は無駄よ。口説き落とせなかったのだから、素直に身を引きなさい」
「・・・俺は・・・諦めませんよ」

そう言って北郷さんは出て行きました。
残ったのは私と兄様と華琳様だけ。

「説明はしてもらえるのかしら?」

華琳様は椅子に腰掛け、兄様に話しかけました。
兄様は黙ったままでした。

「話してくれるのかしら?店の看板は下げてあげたわよ?」
「どこから聞いてました?」
「最初からじゃないかしら?」
「・・・ったく。いい性格してますよ。華琳さんも呑みますか?」
「頂こうかしら」
「流琉、一番きつい奴を・・・あと、もう寝なさい」
「いちゃ・・・駄目ですか?」

除け者なんて嫌です。
兄様は一気にお酒を煽ります。きついお酒なのに。

「・・・好きにすればいいよ。前々からですか?」
「何と無くね。切欠は春蘭の話を聞いてからかしら。いや、それ以前からかもね」

兄様はもう一杯呑んでから、大きく息を吐きました。

「結論から言って・・・俺には未来の記憶と知識がある。そしてこの時代の知識もある」
「証明するものは?」
「なんにも無いですよ。でも間違いない。俺は今から1800年程未来で生まれ、22歳で死んだ。気が付いたら徐晃としてこの地に生を受けた」
「にわかには信じられないわね」
「俺もそうです。未だに記憶は偽りで、夢か何かかと思うこともあります。もしかしたら、目が覚めれば元の世界にいるんじゃないかともね」

信じられませんでした。そんなありえない。

「・・・胡蝶の夢ね」
「かもしれませんね。でもそんな事はどうでもいいんですよ。俺が何者でも。ただ生きて行くだけなら困りません」
「貴方の知る徐晃とは何者なの?」
「曹操に仕える武将。五将軍とかいうんでしたっけね。その中の一人、有名人です」
「何故武将として生きなかったの?知っていたなら出来たでしょう」

その後もお酒を呑みながら、兄様はポツポツと続けました。
生まれる前の事、生まれてからは天下を目指していた事、家族が盗賊に殺された事、その後、旅に出た事・・・
その中で、

「汝南は酷かった。草一本すら生えていない。いや、それを食って人が生きていた」
「話には聞いているわ。酷い場所だってね」
「そこで一人の女の子に会った。空腹の末に腕を齧ってたよ。自分の腕をな。俺は持っていた飯をやった。最初は噛み付かれたけど、嬉しそうに食ってたっけ。でも・・・」

まさか・・・

「次の日に、その子は殺されて他人の飯になってたな・・・あれは無ぇよ・・・そこで絶望した。多分、俺が武将になって名を馳せても、何も変わらねぇって。俺は何も出来ねぇって・・・流石に泣いたっけな。こいつ一人救えねぇのに、その先の人間を救える訳ねぇって」

そんな所がまだあったなんて知りませんでした。昔に比べて豊かになって、そういうのはなくなったと思っていました。

「それからかな?料理を作って目の前のお客に笑って貰おうかなって思ったのは。俺にはそれくらいしか出来ないって思ったのは・・・あーやべ、ちょっと酔ったな。ったく、胸糞悪りぃ話だ」
「でも変えられたかもしれないじゃない」
「確かに、状況は変えられたかもな・・・でもそれは意味を持たない事を俺は知っている。歴史が進んでも、飢えに苦しみ死んでいく人間はいるんだよ。『天の世界』って奴はそんなに良い所じゃないんだ。どこの世界も一緒だよ。俺が知っている世界とは違うから、出来たかも知れねぇけどな・・・ただ、先を知っちまっているだけにな」

多分、兄様は自分自身に絶望したのかも知れません。
何も出来ない、やっても無駄・・・心が折れてしまったのかも知れません。
人が歩む道を知っているが為に。
だから武将としての生き方を捨てたのではないでしょうか?

「世の中そんな奴がいるってのに、戦争なんてしても意味が無いんだよ。人が減って世の中が上手く回らなくなるだけだ。だからと言って反対な訳じゃ無い。理想がいくつもあるんだから、ぶつかるのは自然な事だ。そんな時代だしな。だが、やりたきゃ勝手にやりやがれってんだ」
「だから頑なに拒否するのね。意味が無いと知っているから」
「それもある。まあ、死にたくないのもあるけどな。俺は俺で生きていく、徐晃としてでは無く、俺としてな」

華琳様がため息を吐きました。ちょっと酔っ払っていらっしゃるのか、顔が赤いです。

「貴方ともっと早くに出会っていればね。良い部下を拾えたのに。残念だわ」
「あの頃の俺なら、俺があんたを使っているさ」

二人してニヤッと笑います。何か通じるものがあるのでしょうか?

「まあいいわ。貴方はこれからも戦に出る気は無いのね?」
「一人なら逃げてたよ。面倒だし。でも、もう家族がいる。こいつらを守る為以外に戦う気はないがね」
「・・・兄様」

ポンと頭に手を乗せられました。
家族・・・兄様は私達を・・・
そっか・・・兄様には・・・

「私が相手でも戦う気かしら?」
「当たり前だ。孤立無援大いに結構。誰であっても容赦はしねぇ」
「良い返事ね。そういう所は嫌いじゃないわ」
「だったら、好きって言いやがれ」

ここまで言う兄様は初めて見ました。酔っているのもあるかも知れません。でも華琳様もご気分を害していないようです。
不思議な二人です。

「フフフ、おかしな男ね。前々から思ってはいたけど」
「変って言うな」
「言ってないわ」
「ああそうかい」

華琳様とここまで言い合える人は他には居ないと思います。
本当に、不思議な人です。

「元譲と会ったのもその頃か?いや、もうちょっと後か。そこで初めて見たんだ。俺の知っている歴史とは違う歴史って奴を。まあ、聞いたりはしていたし、何と無くは分かっていたけどな。徐晃を捨て切る踏ん切りはついてなかった。でもあの時決めた。ダチの変わり果てた姿を見ながらな・・・乱世なんて糞喰らえってな」
「聞いているわ。一騎打ちをやらかしたってね」
「まあね。ま、そんな所か。俺の事は」

二人で大分お酒を呑んでいます。甕が一つ空になりましたから。
本当は怒らないといけないのですが、今日は大目にみてあげます。

「そろそろ帰るとしましょうか。徐晃、真桜から見て欲しいものがあると伝言を頼まれているわ」
「なんだ?華琳さん。使いっ走りかよ。らしくねーな」
「そうじゃないわ。ついでよ」

出て行く途中で華琳様が振り返りました。

「貴方・・・昔の名は?」
「あん?知ってどうするよ?」
「良いじゃない」
「・・・藤崎・・・藤崎真一だ」

藤崎真一・・・これが兄様の昔の名前・・・

「そう・・・なら貴方の真名は真一よ。親から貰った物なのでしょう?だったら大事になさい。また来るわ、真一」

そう言って出て行かれました。

「・・・ったく・・・何だってんだ。あーもう寝るぞ。呑みすぎた」
「はい。そうしましょう。明日からまたお仕事ですし」
「・・・何泣いてんだ?」
「泣いてません!」

兄様はちょっと泣いていました。顔は笑っていましたけど、ちょっとだけ涙を流していました。
きっと嬉しかったのかな?
私も何故か泣いてました。
その日は私が無理を言って、一緒に寝てもらいました。
だって決めた事があったから。

「兄様!おはよう御座います。今日もいい天気ですよ!」

笑顔でおはようを一番最初に言おうって。
だって、大切な家族ですから!




あとがきです。

これで第一部完です。もうすこし綺麗に纏めたかったってのはありますが。
文才が足りませんでした。
何点か別キャラサイドの小話を挟んで第二部を始めたいと思います。
駄文にお付き合い頂き、ありがとう御座いました



[8642] 恋姫無双~店主徐晃伝~ <転生オリ主>その?一本目
Name: 三年G組将軍先生◆b1f32675 ID:382977c2
Date: 2009/05/25 23:15
「これで仕官も叶ったし・・・後は任地へ向かうだけね」
「そうですね~。でも向かう前にご飯にしましょう」

隣の稟ちゃんは鼻息荒いです。
曹操様の所で働くのが夢でしたからね~、仕方ないとは思いますが。
ああ、自己紹介が遅れましたね。
私は・・・

「寝るな!」
「おお!」

風は程昱と言います。この前までは立と名乗っていましたが、少し前に良い夢を見ましたので改名しました。
で、隣の眼鏡を掛けているのが、稟ちゃん。郭嘉と言います。
この度、めでたく曹操様の所に仕官が決まりました。
その前までは、旅をしていたのですよ。
将来、仕える君主を探す旅です。

「稟ちゃん。私はあそこでご飯が食べたいです」
「『徐晃の焼き鳥屋さん』ね。鳥料理かしら。いいわよ」

実はですね。今日、夢を見たのですよ。
日輪を支える風の口に鶏さんが入ってくる夢でした。で、その鶏さんを食べると虹が掛かったんですよ。
きっと鶏さんを食べると良い事がある気がします。
暖簾をくぐって入ると、

「風は背が足りなくて、くぐってはいないけどな」
「これ、ホーケイ野郎は黙っていなさい」

紹介が遅れました。風の頭の上に鎮座するのはホーケイです。
風の良き悪友です。

「いらっしゃいませ、どうぞ」
「風、座りましょう」
「ですね~」

お兄さんと妹さんらしき人が営業していました。
二人でやっているのですかね。
中々の繁盛っぷりですね。

「いらっしゃいませ。何にしましょうか?」

風達はお兄さんの前の席に座りました。
そこしか空いてませんでしたし。

「風達は初めてこのお店に来たのですよ、お兄さん。お勧めは何ですか?」

男前とは言い難いですが、笑顔の良く似合うお兄さんです。

「そうですね~、今日は鶏で良いのが入ってますから、その辺りかな?流琉~、これ三番さんで、こっちが一番さん」
「はーい」

こちらを見ながら会話していますが、手は止まっていません。
職人さんですね~。

「店主殿。ではその鶏をお任せでお願い出来ますか?」
「はいよ。塩焼きで良いかな?綺麗なお嬢さん方」
「後は何かあるのですか?」
「ええ、自家製のタレ焼きですよ。こってりはタレで。あっさりは塩で。って所かな。はい、そちらさん、豚ハラミ五本お待ち」
「では塩焼でお願いします。風は?」
「風も同じもので」
「はいよ。少々お待ちを」

手際が良いです。手元を見ながらも、色々な所を見ていますね。
お店全体を見ているのでしょう。

「お嬢さん達はどちらから?」
「風達はですね~、色々な所を旅して回っていたのですよ」
「旅ですか。良いですよね・・・はい、そちらさん。盛り合わせ、お待ち」
「今しがた曹操様の所に仕官してきた所です」
「へー、華琳さ―曹操さんの所ですか」

流石にびっくりしました。まさか曹操様の真名を知っている男の人がいるなんて。
風は初めて知りましたよ。
稟ちゃんも目が点です。
いえ、違いますね・・・仕方のない子です。
トントンしましょうね~。

「ほら稟ちゃん。鼻血が出てますよ?上向いて下さい」
「ありがとう」

怪訝そうなお兄さん。まあ、普通はそうでしょうね。
稟ちゃんにも困ったものですね。少し前は曹操様と言うだけでも垂れていたのに、真名なんて呼んだ日には鼻血の海が出来てしまいます。危ない危ない。
ご迷惑にもなりますから、これ以上この単語は出されないようにしましょう。

「はい、どうぞ。もも串です。柚子を軽く絞っても美味しいですよ。あとこちらはササミの梅紫蘇焼きです。こちらはそのままどうぞ。あと飲み物はお茶どうぞ」
「風達はお茶なんて頼んでませんよ?」
「そうですよ」
「ああ、これはお酒を頼まない人には出していますから。気にしないで下さい。自家製ですから安いですし。その土地に慣れてないと生水はお腹壊しますからね。まあ、一杯だけですけど・・・はい!ありがとう御座います。またどうぞ。流琉、直片付けてね」
「はい兄様」

まさか、無料でお茶を出すお店があるなんて、驚きです。
確かに、香りは余り良くないです。

「あ、美味しい」
「そうね。とても美味しいわ」

出されたものはとても美味しいです。
びっくりしました。

「ありがとう御座います。えーと、そちらのお嬢さんは良く鼻血が出るのかな?・・・いらっしゃいませ、どうぞ」
「いらっしゃいませー」

また、満席になってしまいましたね。
繁盛しています。
それにしても、このお兄さんは、良く人の会話を聞いていますね。

「そうなんですよ。風もこれには困ってます」
「言わないで風」
「じゃあ、良い物ありますよ」

出された梅紫蘇焼き、とても美味しいです。
やはり夢のお告げは当たっていましたね。

「ありがとう御座います。またどうぞー」
「いらっしゃいませ。直に片付けますねー」
「あ、おやっさん。呑み過ぎは駄目っておばさんから言われてるから今日は一杯だけですよ」

うーん、お客さんの数と座席の数が合っていませんね~。
これだと直に一杯になってしまいます。

「お待たせしました。どうぞ」
「何ですかこれ?稟ちゃん分かりますか」
「私も分からないわ」
「肝臓です。血の塊みたいな物ですよ。出るんだったら補充しないといけませんよ」
「なんと!」

これにもびっくりです。
まあ、風には必要ないですけどね。
珍しい物も扱っているのでしょうかね。
そういうのを食べなくは無いですけど、お店で商品として出しているのは余り見かけません。

「肝臓は新鮮だったら生でも行けますよ。俺としてはそちらをお勧めしたいですけどね。中々生を食べる人は居ませんから」
「どちらの方が体に良いのですか?」

おお、稟ちゃんが食いついています。
中々、見られない光景です。

「お兄さん。もも焼きでこの梅紫蘇、出来ますか?」
「はい、大丈夫ですよ。お待ち下さい。で、生と焼きでしたっけ。俺も良くは知りませんが、生の方が体には良さそうですね」
「では、次は生で!是非!」
「はい、お待ち下さい」

風はこの梅紫蘇焼きが気に入っちゃいました。
しかし、稟ちゃんも大胆ですね。生で食べるとは。
執念を感じます。

「はい、こちらです。こちらのごま油に塩を混ぜたものでお召し上がり下さい」

チョット興味がありますね。
ドキドキ。

「・・・美味しい。これ美味しいわ!」
「ありがとう御座います」
「稟ちゃん・・・本当ですか?」
「ええ、風も是非食べた方がいいわよ。血の為に」

風には要らないと思うのですけどね~。
でも、稟ちゃんが美味しいと言うのですから、一切れだけ・・・
プルプルしてて・・・珍妙です。

「・・・美味しい」
「言った通りでしょ!」

さも自分で敵の首を取ったように・・・出してくれたのはお兄さんですよ。稟ちゃん。
その後も稟ちゃんは肝臓を一心不乱に食べています。
ほら、お兄さんも驚いてますよ?
風はですね、色々美味しいものを頂きましたよ。
タレでも少し頂きましたが、これも美味しかったです。

「ふう、美味しかったです。ご馳走様でした。血の補給も出来ました」
「喜んで貰って何よりですよ。御代はどうしましょうか?華琳さんの所の人ですから、まとめて給金から頂きましょうか?皆さんそうしてますよ。お名前だけ頂きますけど?」

皆さんツケですか。いやはや。でもお願いしましょうかね~。

「じゃあ、そうして下さい。出銭はゲンが悪いですからね~」
「はい、畏まりました。お隣さんもそれでいいですか?」

チラリと見やると・・・
ああ、手遅れです。さっきは大丈夫だったのに。
血が増えたからでしょうか。
そんなに早くは無いと、風は思うのですけど?
嗚呼、病は気からとも言いますし。その逆もまた然りですね。

「か・・・か・・・ぶふーーーー」

あーあ、やっちゃいましたか・・・
何時もより多いですよ、稟ちゃん。虹はやり過ぎです。
今日は多い日ですか?
ほら、お兄さんも妹さんもびっくりしてますよ。
風としては手助けしてあげたい所ですが・・・
まあ、このお兄さんは良い人みたいですし、お任せしましょう。
だって・・・眠くなってきましたので・・・

「ぐぅ・・・」



あとがきです。

調子に乗って一日二本。
余り時間を掛けてないので薄い薄いw
まあ、こんな感じのが続くと思って下さい。
にしても、前回の話との温度差がありすぎw
ではまたお会いしましょう。
お付き合い頂きありがとう御座いました。



[8642] 恋姫無双~店主徐晃伝~ <転生オリ主>その?二本目
Name: 三年G組将軍先生◆b1f32675 ID:382977c2
Date: 2009/05/26 22:11
こんにちは。
名前は賈詡。字は文和。これでもれっきとした軍師よ。
・・・元だけどね。
色々あって、今は・・・

「兄様!仕込みは終わりましたか!」
「いやまだ。肉の漬けダレを考えてる最中で」
「そんな事は良いから早く!終わりませんよ!お客さん来ちゃいますよ!」
「詠ちゃ~ん。串打ち手伝って~。へぅ~、終わらないよ~」

何故か焼き鳥屋にいるのよね。本当に才能の無駄遣いよ。
でも、月はここに来て本当に良く笑うようになった。
最初はここでの生活に戸惑っていたけど、慣れたみたい。
やっぱり太守としての責任は・・・もういいわね、止めましょう。終わった事だしね。
今は仕込みの手伝いをしなきゃ!
の、前に・・・

「こら!馬鹿兄!さっさと仕事しろ!」
「痛っ!こら詠。これも立派な、って痛い、止めなさい」

出汁取り用に残してある骨を、思いっきり投げてやったわ。
ふん。仕事しないからよ!
ボク達ばかりに仕事をさせるから。自業自得よ。
でも、頭に当たったのはやりすぎたわね。

「詠ちゃん、駄目だよ。お兄様に乱暴しちゃ」
「いいのよ、少しくらいは。良い薬よ」

月はこの馬鹿兄の事をお兄様と呼ぶ。流琉が兄様と呼んでいるからだそうよ。
ボクは呼ばないけどね。
だって・・・この馬鹿兄はだらしなさ過ぎる。
この前も、

「流琉~、俺の服どこ~」
「キャー!兄様、服着てください!引き出し一番上です!」
「半裸でうろつくな!馬鹿兄!」
「ぐへっ!」

だし。
さらに、

「月~、詠~。俺の財布知らないか~」
「へ、へぅ~、お兄様。とりあえず目を閉じて下さい~」
「しゅ、淑女の着替えを覗くな!馬鹿兄!」
「ぐはっ!」

とか、他にも挙げればきりがないわ。まだここに来てそんなに日が経っていないのにも関わらずだから、恐れ入るわね。
自分の物も管理出来ないのが兄だなんて、月と流琉が未だに信じられない。
でも・・・ここの料理は評価してる。
最初に来た日、四人で食べた鶏料理は本当に美味しかった。
月は泣いていたっけ。そういえば、私もつられたっけ。
あの馬鹿兄と流琉は嬉しそうにそれを見ていた。
馬鹿兄の手が頭を撫でた感触はまだ覚えてる。
ちょっとだけ、嬉しかった。
ちょ、ちょっとだけだからね!

「月、大分上手くなったな。早くもなったし」
「そ、そんな事は」
「いやいや、中々良いぞ。詠は・・・うん、前より上手くなっているぞ」

何よ、その間。
あんまり得意じゃないのよね。こういう作業。料理なんかは殆どした事ないし。
でも、それは月もそのはず。
でも私より上手。

「さてさて、ほんじゃあまあ、ちょっと本気でやりますかね」

と袖を捲って、包丁という名の剣を抜く。
良く見なくても分かる。あれはかなりの業物よ。
どこから拾ってきたんだか。

「お兄様、やっぱり凄い」
「うん。でも才能の無駄遣いよ」
「そうだよね、詠ちゃんもそう思うよね~」
「ち、違うわよ。才能の無駄遣いよ、アレは」

本当にそう思う。何しろボク達が見ても凄いと思う。
腕が増えたように見えるくらい速いのだから。

「ほらほら、二人とも手がお留守だぞ~」
「ごめんなさい、お兄様」
「うるさいわね。これくらいの仕込みすぐ終わらせてやるんだから」

月と流琉が頑張っているんだもの。ボクも頑張らなくっちゃ。
黙々と仕込みをしているうちに、最初のお客さんがやってきた。
ここからは、給仕として月と二人で頑張らないと。
あの馬鹿兄は当然焼き場。流琉は細かい所の補助。
で、給仕がボク達。
磐石の布陣ね。
さあ、今日も稼ぐわよ!




「はい、お疲れさん。先に寝ても良いぞ~」
「お掃除手伝います、お兄様」
「そうですよ兄様」
「そうね。ボクの方は帳簿付け終わったし。あとは掃除だけよ」

いつもそう。営業が終わったら、先に寝ろって言うわ。毎日毎日。
絶対言う。
最初は馬鹿兄に掃除なんてって思ってたけど。
これが綺麗に掃除されていた。
あれには月と二人で驚いた。
だって、あの馬鹿兄よ?信じられない。
流琉が言うには、

「兄様は仕事以外が駄目なだけで、仕事に関してはしっかりしてますよ」

だって。
なんで何時も出来ないのよ?って流琉に聞いたら、

「面倒くさいんだって」

って、笑ってた。
この店は本当に笑顔で溢れてる。
営業中は普段とは全然違う顔をする馬鹿兄。ニコニコしながらお客さんと話をするけど、実は真剣。他の所も良く見てる。視野がとても広い。
月はたまに、それをぽ~っと眺めてる。
まあ、分からないでもないわ。
だって、結構格好いいし。
す、少しよ!少しだけなんだから!
でも、字が汚いのは直して欲しいわね。
以前の帳簿は汚すぎて読めなかった。
もちろん、全部付け直したけどね。

「お前等、疲れてるだろう?」
「そんなの兄様も一緒ですよ」
「そうです」

まだ、あんまり長い時間過ごしてないけど、分かる。
それが優しさだって。それが思いやりだって。
他の事でもそう、それを自然と言ってくる。
私達を保護してくれた事でも分かるけど、こいつは本当に優しい。
裏が無いって言うのが、しっくり来るかも。
何故かは分からないけどね。
でも、そういうのは嫌いじゃない。
今までが殺伐とした所で・・・って、終わりよ、終わり。

「邪魔するで~」

その声は霞!

「邪魔するんやったら、帰ってや~」
「ほな、さいなら~」

え?

「って違うやろ!兄さん、ええ感じやないか」

なにそれ?

「えーっと、どちらさんですか?」
「うちは張遼。月の元におった将や」
「霞!」
「霞さん!」

嗚呼、生きていてくれた。噂は聞いていたけどやっぱり顔を見ると・・・

「二人とも元気やったか?ああ、月っち泣くな。賈詡っちも」

何時までも泣いてばかりじゃいけないわね。
何の用かしら。会いに来てくれた?

「今日はな二人の顔を見に来たんもある。でもな・・・」

そういって馬鹿兄の前まで行った。

「この度は董卓と賈詡、両名を救って頂き感謝の言葉もありません」

そう言って、頭を下げた。
そうか。助けてくれたのは曹操かもしれないけど、こいつもそうだもんね。
筋を通しに来たのね。霞らしい。

「いえいえ、俺は何にもしてませんよ。頭を上げてください。張遼さん」
「本来なら真名を預けたいんやけどな、生憎うちは武人や。やっぱ武で認めん事にはな。すまんけど、堪忍して」
「それもいいですよ。そうだ、張遼さん、折角の再会です。呑みますか?」

その言葉を聞いて、あたしは絶句した。
霞に酒なんて・・・出しちゃ駄目よ!危険過ぎる!

「ええのん?うち酒好きやねん」
「いいですよ。皆も付き合えよ。一杯くらい大丈夫だろ?」

・・・そうね。折角だし。
流琉も月も嬉しそうだしね。
で、

「うひゃひゃひゃひゃひゃ」
「ぶははははは」

なにこいつら。
もう会話になってないじゃない。
呑みすぎよ。もう甕が空じゃない。
月は一口目で沈んじゃったし。
流琉は月を二階に運んで、そのまま戻ってこない。
そういうボクもちょっときてる。

「ちょうろうはん、もういっぱいろうれふ」
「んふふふ、しあれえ~よゆうたや~ん」

いやいや、武人でどうこう言ってたでしょ。霞?
まあ、いいわ。二人とも楽しそうだしね。
それより、あんた達そんなに弱かったっけ?

「ボクは先に寝るわ。ほどほどにしなさいよ。あんた達」
「ほいー」
「うい~」

ああ、絶対聞いてないわね。
自信があるわ。無くて良い自信だけど。
二階に上がったら、流琉と月が二人で寝ていた。
何か疲れたわね。今日は良く寝れそう。
にしても・・・

「うひひひひ」
「ふひひひひ」

会話しなさいよ。




次の日の朝、起きたら声は聞こえなかった。
まあ、当然と言えば当然よね。
下に降りたら・・・綺麗になってた。
酔っても仕事はするのね・・・
でも・・・また!

「おはよう、詠ちゃん。どうしたの?」
「おはよう御座います。どうしたんです?」
「二人ともおはよう」

二人が起きて来た。起こしちゃったかな?
すると、ボクの怒りの元凶がむっくりと起き上がった。

「ん~・・・おはよう・・・」

だ・か・ら!

「服を着て寝ろ!!!」
「ぐは!」

真っ赤な二人を他所に、傍にあった竹筒を投げてやった。
何でいつもいつも・・・まっ、いっか。
良い天気になりそうだし、今日も稼ぐわよっ!




あとがきです。

うーん、どうも月と詠のコンビは掴みにくいです。
好きなんですけどね?
やっぱり原作の流れと違うキャラは難しいです。
駄文にお付き合い下さり、ありがとう御座いました。



[8642] 恋姫無双~店主徐晃伝~ <転生オリ主>その?三本目
Name: 三年G組将軍先生◆b1f32675 ID:382977c2
Date: 2009/05/27 12:41
「李典さん。お邪魔しますよ」
「おお、店長やん、どないしたん?」

こんにちは、徐晃です。
今日はお城の李典さんを尋ねてきました。
部屋にも居ず、調練場にも居ず・・・華琳さんに聞いた所、工房に入り浸っているそうです。
それにしてもこの工房、ものすごく生活臭がします。
それもかなり私用な匂いがしますね。
いいのか、これで?

「どうですか?依頼した物の状況は?」
「ああ、大分進んどるで。ちょっと見る?」
「ええ、是非」

そう、李典さんにはアレコレ色々な物をお願いしています。
全部調理器具ですけどね。
これがまた、色々あるにはあるけど使い難い物ばかりで・・・慣れるまで頑張るのも面倒じゃないですか?だから、もっと良い奴をお願いしています。

「コレなんかはほぼ完成やね」
「おお、凄い」

腸詰め用の器具ですね。この世界の物はまだハンドルが付いていないので作ってもらいました。ハンドルをグリグリ回せば肉が出てくる仕組みなんでしょう。
ところてん用みたいな奴しかないですからね~。
懸念していた螺旋の小型化は完成したようですね。
あいもかわらず、この世界は変ですよね~。ネジが日本に伝わったのは、確か・・・種子島と一緒だから・・・中国でももっと後だと思うんですけどね。
まあ、細かい話は置いておきましょう。

「あとはこの出口の大きさを調整出来るようにすれば完成や」
「流石です。助かります」
「いやいや、ええんよ。店長には色々、案を貰うてるしな。後、これも完成間近やね」

おお、挽肉製造マシーンじゃないか!
これで叩かなくても大丈夫。労力が軽減されます。
結構しんどいんですよね。あれは。

「いやいや、恐れ入りますね。からくり夏侯惇で良いんでしたっけ?」
「そやそや、頼むで。あれと店長の案さえあればウチはまだ十年戦える」

からくり夏侯惇。もう絶版で出回っていない物ですから、探すのに苦労しました。
持ちつ持たれつって奴ですよ。
別途でお金は払ってますよ。もちろん。

「とりあえず目処が立ってるのんは、まだこんだけやけどね。例のブツはもう少し待って頂戴。華琳様から予算も出たよってな。これから本格的に始まるわ」
「十分ですよ。で、今日持って帰れますか?」

その瞬間、李典さんの表情が変わりました。

「あかん!まだ完成はしてへん。こんな状態で使われたらウチの名前に傷が付くやないか!」
「そ、そうですか?十分使えそうですけど?」

虎の尻尾でも踏んだのでしょうか?
あと、顔が近いです。

「あかんもんはあかん!もっとこう、以前のもんとは違うのが一目で分かるような意匠にせなあかん!」

意匠?見た目って事でしょうか?
なら、ハンドルが付いているだけで十分だと思うのですが?

「こう、武具なら強そうな感じ!とか、道具なら便利そうな感じとか!一目で分かるようにせな!」
「それは性能には意味が無いのでは?」
「うん。無いよ」

うそーん。

「あ、何や、その目は!ええか、からくりっちゅうもんはな――――

何故か正座で延々からくりについて説明されました。
なんか理不尽だ。




解放されるまで長かったです。
その上、意匠が完成するまで持って帰らない誓約書まで書かされました。
でも、文句は言えませんでした。
だって、話が長いんだもん。
ではでは、帰りましょう。なんか疲れたし。

「そこー、ぺちゃくちゃ喋るんじゃないのー!その口に<自主規制>なのー!」

えー、うそーん。
何故に海兵隊式の調練?某軍曹さんでもいるのでしょうか?
でも、あの声と喋り方は・・・

「于禁さんじゃないですか」
「あー、店長なのー。こらー、そこーチンタラするんじゃない!なのー!」

広場ではえらく可愛い鬼軍曹が、木刀片手に兵をシゴいていました。
ギャップ萌えでしょうか?

「下品ですよ。流石に」
「そうでもないのー、この調練方法は由緒ある方法なのー。さっさと走れーなの!あんまり遅いと<自主規制>なのー!」
「で、由緒あるとは?」
「フッフッフ・・・これなのー!魔尾将軍の海兵隊式罵り調練手帳~!」

うわー、嘘臭せー。

「これは光武帝の頃の将軍、魔尾と言う人の部隊、海兵隊でやっていた調練方法なの~、だから効果は抜群なの~。むっ!この、ふにゃちん共!貴様等、<自主規制>の<自主規制>に<自主規制>を<自主規制>なの~!分かったか~なの~!」
『サーイエッサー!』

えー、そんな所まで。

「ソウナンデスカ?」
「そうなの~。あ、店長、信じてないの~」

そんな顔をしていたかな?
まあ、胡散臭さに鼻は曲がりそうですけど。

「なら、店長も参加すればいの~。ほら早く早く」
「え、嘘?いや、俺は」

チョット待って下さいよ。

「つべこべ言うな~なの~!さっさとその<自主規制>を<自主規制>なの~!」
「はいー!」
「返事はサーイエッサーなの~!」
「サーイエッサー!」

なんでこんな目に合うんだ?意味が分からん。

「こらー、チンタラ走るな~なの~!<自主規制>の<自主規制>を<自主規制>なの~!」
「さ、サーイエッサー!」

そんなこんなで延々、走る羽目になりました。
もう嫌だ。




「はあ、もう嫌だ。とっとと帰ろう」

解放されたのは日が暮れてから。
なんだかんだで、一番走っていたっけな。
俺を他所に次々と倒れてく兵隊さん達。
それを見下ろしながら罵詈雑言を投げつける、キュートな鬼軍曹。
シュールすぎる。
まあ、根性だけは付きそうですね。
参加するのは嫌だけど。二度と御免です。
もう誰とも絡まんぞ!おれは決めた!今、決めた!
ん?あれは?

「楽進さん。見回りですか?」
「あ、店長さん」

来た、常識人。この人なら関わっても何も起こるまい。
安全牌ですよ。

「こんな遅くまで大変ですね」
「そうでもないですよ。今日は私と部下だけですから。街は平和ですし問題はありません」
「お仕事お疲れ様です」

手に持っているのは籠に入った小ぶりの肉まん。おお、美味そう。
そういえば飯食ってないな。

「お腹空いているんですか?虫が鳴ってますよ」
「今日はお城に用事で行っていたもので・・・なんだかんだで飯食ってませんでした」
「良かったらどうぞ」
「ありがとう御座います。お腹減ってたんですよね~」

と渡される肉まん。まだ、温かい。
いや、この人の気持ちが暖かい。
今日は酷い一日だったからな。心に染みる。
ここはご好意を頂きましょう。
では・・・

「くぁwせdrftgyふじこlp!!!」

何だ!この辛さは!尋常じゃない。
いや、そんな事はどうでもいい!
水!水!

「ちょっと辛かったですか?飲み物は・・・これしかないですけど。どうぞ」
「・・・!!!」

思わずその場でぶっ倒れてしまった。
ほんのり甘い蜂蜜水。
スイカに塩を振ると甘くなる原理の反対か!これは!
しばらく悶絶してしまいました。
これは・・・つらい。
涙が出ちゃう。




その場から復活するのに時間がかかってしまいました。
上手く喋れなかったので、楽進さんには後日、お礼をしましょう。
結果はどうであれ、好意で頂いたものですからね。

「ただいま~。今日は散々だ」
「お帰りなさい。兄様」

えーっと。何でしょうか?
仁王立ちの流琉が居ますよ?
目は笑ってないよね。それ。
俺、何かしたっけ?

「えーっと・・・何かしたっけ?」
「何もしてませんよ。な・に・も!」

ならいいじゃん。

「兄様、仕入れは?」
「・・・・・・しまったー!!!」

直に終わると思って、その足で仕入れに行く予定だったー!!!

「今日の食材は昼で無くなったのでほとんどありません!臨時休業になったじゃないですか!お金も持って行ったから殆ど無いし!」
「すみません。すみません。すみません」

ついつい忘れていた。

「しかも、こんな遅くに帰ってきて!いいですか?そもそも兄様は<中略>・・・

えー、本日二度目の正座でした。
散々だ。
改名しようかな?きっと画数が悪いんだ。




あとがきです。

勢いだけの作品は非常に薄い。
こういう勢いだけの作品ももっと凝ったものが出来ればいいんですが。
実力が足りません。今後も頑張ります。
駄文にお付き合い頂き、ありがとう御座いました。



[8642] 恋姫無双~店主徐晃伝~ <転生オリ主>その?四本目
Name: 三年G組将軍先生◆b1f32675 ID:382977c2
Date: 2009/05/28 00:30
「で、話とは?」

今日は珍しい人間が城に来ているわ。
名前は徐晃。字は公明。
街で焼き鳥屋をやっている男よ。
まあ、来るだけならそうでもないのだけれど。私に用があるのは珍しい。
え?お前は誰だ、だって?
誰に口を聞いているのかしらね?
そんなに死にたいの?だったら・・・

「ええ、ちょっと色々ありまして・・・付き合って欲しい訳ですよ。見てもらいたい物もありますし。あと、その大鎌しまって下さい。危ないから」

見てもらいたい物ねぇ・・・
今日は急ぎの案件も無いし。ちょっとした興味もある。
こいつが秘密にしている物は、中々面白い物が多いしね。

「いいわよ。春蘭、秋蘭。共をなさい」
「「御意」」
「で、いつ出るのかしら?」
「いつでも。早い方が好ましいですね」
「じゃあ、直に出るとしましょう。城門前で待っていなさい」
「はい。分かりました」

そう言って、あいつは出て行った。
フフ、何が出てくるのかしらね?

「華琳様、あの男に付いていかれるのですか?」
「そうよ、桂花?問題はないでしょう」
「しかし、あんな奴のいう事聞かなくても宜しいじゃないですか?わざわざ華琳様が出向かれるなんて!」

あんな奴ねぇ~。
除け者にされて拗ねているわね。

「桂花?あなた、春蘭の次に多いでしょう?」
「な、なにが・・・でしょうか?」

可愛いわね。焦っているわ。
何も知らないと思っているのかしら?

「徐晃の店にツケで呑んでいるのでしょう?給金からのツケは私達の中で二番目よ」
「そ、そんな!私は何時も現金で!っは!」
「フフフ、あいつは確かに男だけど、中々見所はあるわ。そう毛嫌いしないの。いえ、嫌ってはいないでしょう桂花も」

この子は知られたくないのか、いつも現金らしいわ。
徐晃からそう聞いた。あの時は笑ったわ。
しかも割と通っているらしいわね。

「か、華琳様!私もお連れ頂けませんか?」

素直にそういえばいいのに。

「桂花、貴方まで出てしまっては、誰がこの城で政務をこなすの?貴方しか居ないじゃない」
「そ、それは」
「フフフ。利口に待っていれば、今晩可愛がってあげるわ」
「か、華琳様~」

本当にこの子は可愛いわね。
最初から一緒に行きたいと言えば、考えてあげたのにね。
さて、準備をするとしましょうか。




「で、どこに連れて行く気かしら?」
「そうだぞ、徐晃。目的地くらいは教えんか」

春蘭も尤もだけど。実は心当たりはあるのよね。
この方角にこの男・・・なら一つしかないわ。
器用に馬の背で寝転ぶ男をチラリと見る。

「まあ、秘密です。良い所、とだけ言っておきましょうか」

春蘭を見ながら、ニヤッと笑う。
この男は本当に春蘭をからかうのが好きね。
そこは私と似ているのかしら?

「むむう。華琳様からも何か言ってやって下さい」
「春蘭、落ち着きなさい。良い所って言っているのだから、気に入らなければ斬っていいわよ?」
「うわ、最悪」
「姉者。徐晃が良い所と言うのだ。きっとそうであろう。それに、こやつが期待を裏切った試しは無いぞ?」
「むう。秋蘭まで・・・いいか、徐晃?気に入らなかったら斬り捨てるぞ?」
「ハハハ、そいつは御免ですよ」

カラカラと笑う。私達の言葉を気にもしていないわね。
本当に失礼な男だわ。でも、悪い気はしない。
時と場合。雰囲気を読み切る力が異常なくらいあるものね。勿体無い。

「あんまり力を入れても仕方無いですよ。別に戦をしに行く訳じゃあないんですから。気楽に、気楽に」

そのまま、馬に揺られて暫く。
徐晃が起き上がり、馬から降りた。
・・・目的地なのかしら?でも違うはず。

「さて、ここいらで飯にしませんか。ちょっと早いけど」

なるほどね。

「いいわよ。準備はどうするのかしら?」
「ああ、火をおこすだけですから。元譲さんと妙才さんは薪拾ってきて貰えませんか?」
「私の将を小間使いにするとはね」
「働かざるもの、食うべからず。役立つ物は、親でも使え。ってね」

なかなか言うじゃない。

「二人とも手伝ってやりなさい」
「御意。ほら姉者、行くぞ。不貞腐れるな」
「しかしだな~。ああ、秋蘭置いていくな。一人で勝手に行くと迷うぞ」

それは貴方でしょ。

「で、私は?」
「華琳さんは何を言ってもやらないでしょ?だから何もしなくていいです」

失礼な奴ね。

「何を出してくれるのかしら?」
「う~ん、何て言いますかね?実験作?ですよ。まあ、味は保障します。完成ではないですけど」
「この私に完成品以外を出すとはね」
「まあ、いいじゃないですか。忌憚の無い意見が聞けるのはお店にとって有益ですから」

私を踏み台にするとはね。いい根性しているわ。
普通の人間なら、ここは私の為に完璧な物を用意するのでしょうけど。
こいつだけは違う。まずは店の事、お客の事。
私達役人なんて、二の次三の次程度にしか思っていないものね。
いや、店に行けば、同じお客としてしか見ていないわ。
まあ、気に入らなかったら、いつぞや見たいにぶっ掛けてやりましょう。
鼻歌を歌いながら、持ってきている太い薪を組んでいく。
馬に積んである、荷物の中から竹筒と薄い鉄の板?が出てきたわね・・・
何を出す気かしら?

「徐晃、何なの。教えなさいよ」
「えー。びっくりさせた方が、お互い楽しいじゃないですか」

一理ある・・・だけど。
こいつだけ知っているのは、何かムカツクのよね。

「・・・暇ね・・・折角の川原だし・・・」

靴と靴下を脱ぎ、そのまま水へと入っていく。
ひんやりしていて気持ちいいわね。
こういうのも悪くない。
・・・ん?

「何よ?」
「いえ。可愛いなと」
「おだてるのが下手ね。もっと他に言いようがあるでしょうに」
「率直な感想ですから」

別にこいつに何を言われても感じないけど、こう何も言われないのは癪ね。
まあ、いいけど。いつもの事だしね。
暫くすると、二人が両手一杯に薪を拾ってきた。
春蘭、それじゃあ前が見えないでしょう?
全く、秋蘭も言えばいいのに・・・ああ。わざとね?

「さてさて・・・始めますかね」

そう言って、剣を抜き、石に打ちつけ火花を散らす。
それを綿に移し、火をおこす。器用なものね。

「おい、徐晃!それは青紅の剣では無いか!」
「そうですけど?」
「そうですけど?では無い!そのような使い方をする武人がいるか!」

春蘭、今のは全然似てないわよ。

「俺、武人じゃないですよ?」
「春蘭、別に構わないわ。あげた物だしね。どう使おうと本人の勝手よ」
「しかし!」
「もう遅いわよ。だって包丁代わりにされているもの」
「な、なんと・・・」

流石に二人とも目が点ね。
まあ、私も例外では無かったけど。
流石に包丁にされているとは思ってもいなかったわね。
やっぱり、あげたのは間違いだったかしら?

「華琳さんが良いって言っている訳ですから、いいじゃないですか」
「良くは無いけどね。どう使おうが勝手なだけ」
「一緒ですよ」

その後も、春蘭が徐晃にあーだ、こーだ言っている。
私は諦めたわ。こいつには何を言っても無駄だしね。
常識が通用しないのだもの。いえ、見ている物が違う、が正しいかしら?
本来なら斬って捨てても良いのだけれどね。

「ご飯も良い感じに炊けて来ましたね~、鉄板も・・・良い感じ。あとはこっちの煮物を温めて~」

鉄の板は何かを焼くのかしら?
更に待つこと暫し。

「もういいかな~、ご飯は・・・うん、良い感じですね。はい、どうぞ。熱いから気を付けて下さいね」

大分、剣の扱いに慣れているわね。竹を容易く扱うなんて。
春蘭ではこうはいかないわ。
あの子は力任せに叩き割る感じだし。

「じゃあ、本日の主品の登場です」

竹から出されたのは、汁に漬けてある肉ね。
多分、牛、豚、鶏、その他には内臓系も漬かっている。それらを均一の大きさに合わせてあるのね。なるほど、これなら焼き上がりがほぼ一緒になるわ。
それらを、油を伸ばした鉄板の上に乗せる。
良い香りね。

「うん。完璧かも。流石俺。煮物は・・・おお良い感じ、これまた流石俺」

何言ってるのだか。春蘭と一緒ね。

「ああ、もう食べてて良いですよ?煮物と御浸しはいけますから。肉は出来たら言いますし」
「貴方は?」
「肉だけで良いです。両方、大体分かってますから」
「では、頂きましょう」
「「はい」」

御浸しとか言ったかしら。茄子を揚げた物を冷まして浸したのね。
見ない手法・・・味も良い。悪くないわ。糸の様な生姜が憎いわね。
こちらの煮物は根菜と鶏ね。
色は茶色で悪いけど、味は・・・
食べた事が無い。何の出汁かしら?
肉系では無いわね。なら魚?
先ほどの茄子といい、何なのかしら?
味も良く染みている。ほんのり甘く仕上げてある。
でも、もっと見た目を良くしないと駄目ね。
・・・って、考えるのが馬鹿馬鹿しくなってきたわ。
だって、目の前の春蘭が美味そうにバクバク食べているのですもの。
秋蘭は、小首を傾げているわね。
秋蘭にも思い当たるものは無いのね。
ふむ。

「さてさて、焼き上がりです。どうぞ」

竹に移して出された肉類。
香りは・・・良いわね。下ろした生姜と大蒜が良い感じじゃない。
問題は味ね・・・甘辛く仕上げたのね。辛みは分かる。でもこの甘みは何?
蜂蜜を使ったのかしら?砂糖ではないわ。でもそれだけじゃない。
もっと複雑。
思い当たる節がない。いえ知っているはずだけど・・・味が複雑で出てこない。
味は悪くないわね。でもそれ以上に・・・

「徐晃、今日の肉は柔らかいな。良い部位か?」
「いえ、安い奴ですよ。昨日の残りです」
「安い残り物?嘘おっしゃい、こんなに噛み切れるはずが無いわ」
「華琳様の仰る通りだと思うぞ、徐晃」

何よ、ニヤニヤして。腹が立つわね。
どうせ、秘密なんでしょう。

「まあ、答えは・・・秘密です。売り物の予定ですから」
「私達しかいないじゃない」

たまには教えなさいよ。

「コレと同じもの食べたくないですか?」
「そりゃあ食べたいに決まっているじゃないか」

春蘭、それは素直過ぎよ。それじゃあ、あいつの手のひらの上で踊るしかないわ。
まあ、それが春蘭の良い所でもあるけどね。

「だからですよ。また食べたくなったら店に来てください」

ほらね。
こういう場合はもっと駆け引きをしなくてはいけないわ。
でも、こう言われてはもう手遅れね。
あの子は近いうちにお仕置きしておきましょう。
食事は野外でだけど、中々良いわね。
天気も良いし、良い気分転換にもなる。
深く考えずに、頂きましょう。




「で、どうでした?」

片付けを終わらせ、馬で移動を再開する。
そういえば、感想を聞かせろって言っていたわね。

「そうね・・・やはり見た目はどうしようも無いわね。酷いものだわ」
「でしょうね」
「味に関しては、まずまずね」
「なら、十分です。華琳さんのまずまずは美味いって事でしょうし」

何よ、それ。私が捻くれてるみたいじゃない。

「元譲さんと妙才さんは美味そうに食ってましたからね。華琳さんはいつも気難しそうに食ってますから、いまいち掴めないんですよね~・・・さて、見えてきましたね」

指差す先は・・・やっぱりね。

「何だ徐晃。ただの村ではないか?」
「そうですよ、村です。まあ、着いてからのお楽しみって奴ですよ」

到着し、徒歩にて移動する。
こいつは畑で働く者に声を掛けて回る。
なかなか慕われているじゃない。無理に村ごと買い付けを行なったから、煙たがられるかとも思っていたけど、余計なお世話だったわね。

「で、見て欲しい物はあれです」
「徐晃、臭うわよ」
「そりゃそうですよ。だって肥料を作ってますから」

肥料ね・・・この匂いも頷けるわ。

「おーい、波才さーん!」
「あ、大将!これは遠い所をわざわざすみません」
「徐晃、何者なの?」
「紹介しますね。この村での肥料作りの長をやって貰ってます、波才さんです。ちなみに元黄巾の人ですよ」
「「何っ!」」

なるほど、こうやって運営していくつもりね。悪くないわ。

「昔は悪さもしていましたが、今では足を洗ってこうして頑張ってくれてます。ちなみに季衣の紹介でもあります」

戦で職や土地を失った者に斡旋しているのね。
やるじゃない。

「へい。大将達に救っていただいた恩を返すつもりで精一杯働いています」
「徐晃、信用出来るのか?」
「何言ってるんですか?出来るに決まってます。それに信用しないと信用してくれませんよ?」
「なんと!」

なるほどね。人心掌握術も悪くない。衣食住、さらに職を提供し、こちらから絶対の信頼を寄せる。
これで落ちない人間は、本当の屑ね。
いや、こいつにそんな思いは無さそうね。

「それはいいでしょう。で、見せたいものは」
「波才さん、どこですか?」
「御案内します。あちらです」

連れられていった先は・・・

「草しかないではないか」

そう、草しか生えていなかった。けど・・・これは。

「そうです。これらの草は肥料を変えて、効果を測定しているものです」
「波才さん。あの一角かな?」
「そうですね。あの一角の肥料が一番良い出来だと結果が出ていますので。あとはあの肥料で作った農作物の収穫次第です。収穫は後十日程度だと思います」
「うん、良い感じですね。ああ、仕事に戻って下さい。後は俺が」
「すみません、大将。お願いします」

なるほど。一番効果の高い肥料を分析しているのね。
だから、成長具合が均一じゃ無いのね。
フフフ・・・段々読めてきたわよ。

「徐晃。完成した肥料をどうする気かしら?」
「完成した物をですね。華琳さんが一手に買い付けて欲しいわけですよ。で、それを各村に無料で配って下さい」
「独占する気ね」
「まあ、そんな所です。華琳さん達は無料で配る事で皆に良い印象を受けますし、税収も増えれば良い感じでしょ?俺も儲かるし」

考えたわね・・・でも。いや、それも気付いているかしら?

「私の管轄はこれからもどんどん増えていくわよ?足りなくなるわ」
「肥料の製造は人手と設備を整えれば問題無いです。ただ・・・」
「材料ね」
「そうなんですよ。で、各村から使用している肥料の元をかっぱらって来て下さい。交換が正しいかな?」
「問題はそれらを移送する手段ね。難しいわよ」
「それは兵隊さんを使えませんか?訓練とかの成果の悪い隊に罰みたいな感じで。これはいい罰になりませんか。だって材料は糞尿が主ですし、嫌でしょう?」

面白い事を思いつくわね。
少し春蘭の軍部との折衝が必要かしら?

「いいでしょう。金額などの細かい所は私達が決めるわ」
「ありがとう御座います」

フフフ、中々面白いものが手に入りそうね。

「しかし、徐晃。最近のイナゴは米以外にも手を出してくる。成果が上がればその分だけ被害も出ないか?」

秋蘭は良い所に目を付けるわね。さて、どうする?

「ああ、それなら。付いて来てください」

澱みが無い・・・想定済みか。
連れて行かれた先には一件の小屋。

「程遠志さん。お邪魔しますよ?」
「大将!来てたんですか!」
「紹介します。程遠志さんです。ここでイナゴ対策用の網を作ってもらっています。その長です。ちなみに波才さんと同じく黄巾の出です」

また、黄巾!
確かに、黄巾と言っても元は農民。こういった仕事への適応も高いか。

「で、順調ですか?」
「はい。穂が実るまでには完成させますよ。意地でも」
「まあ、実際にどう使うかは、田んぼへ行って見てもらいましょうかね。じゃあ、お仕事頑張って下さい」
「へい。ありがとう御座います」

中々に統率が取れているじゃない。悪くないわね。

「徐晃。他にも黄巾の出の者はいるのかしら?」
「そうですね、結構いますよ。帰る場所も無くなって、食うに困っている人ってのは多いですからね・・・あそこです」

連れて行かれた先は、田の回りに棒を立てており、そこへ先ほどの網を掛け、田を覆う。
網を大きく作り、地に杭で止める訳ね。
この大きさの網目なら、イナゴは殆ど入れないのかしら。
いえ、少しでも効果が出れば十分ね。アレの被害は大きすぎる。
でも、日差しの入りが悪いわね。

「徐晃、これでは作物に影響が出ないか?日の当たりが悪そうだ」
「四六時中、掛けているわけではないですよ。今は掛けたまま作物を作っての実験です。どの程度の差異が出るかを見ないとわかりませんから」

分からないから試す。良い心がけね。
日々研鑽。これは私達にも通ずるわね。

「まあ、今の所はこんな感じですかね。で、ですね」

さて、次は何を言ってくるのかしらね?

「この村の田畑全ては同じ大きさ形に区切り直してあるんですよ。網の製造を一定にする為ですが」

なるほどね・・・コレも読めたわよ。

「で、貴方はどうしたいのかしら?」
「えっとですね。華琳さんのところで、新しい田畑を作る際にはこの形と大きさにして欲しいのですよ。で、網を買ってください。まあ、これに関してはどの程度効果が出るかまだ分かりませんが」
「網は分かるけど、何故田畑の形と大きさも合わせるのかしら?その方が網の製造も楽なのはわかるけど」
「まあ、それもありますけど。それ以上に、その方が分かりやすくないですか?田畑の数さえ分かれば、大体の税収が把握出来るでしょ?」
「「なんと!」」

着眼点が違うわね。悪くない。今までの状態だとバラバラだものね。
管理がかなりやり易いわ。

「そんな所ですかね。見てもらいたいものは。で、どうですか?」

ふむ。正直今ある田畑は難しいわね。どれだけの金額が掛かるか検討も付かないわ。
でも新たに開墾する分に関しては問題なさそうね。

「いいでしょう。網に関しては結果待ちでいいかしら?」
「当然です。効果が無ければ意味無いですし」
「田畑の件に関しては前向きに検討しましょう」
「ありがとう御座います」

面白い。実に面白い。
野にこんな男が埋もれているとはね。
これだから、世の中は面白い。

「他にはないの?」
「まあ、あるにはありますけど。まだまだ試験段階にも至っていないものばかりですね。あとは純粋に作物を作っているだけですから」
「逐一、私の所に報告を入れなさい。気に入れば税の優遇なども考えるわ」
「そいつはありがとう御座います。今日はコレで終わりです。俺は風呂入ってから帰りますので、先に帰ってもらっていいですよ」
「「風呂!」」

村で風呂?こいつは何を考えているのかしら。

「徐晃、村に風呂があるのか?」
「ええ、ありますよ。大きくは無いですけど。だって、肥料を作ってもらってますから。仕事した日は毎日入ってもらわないと、汚いじゃないですか」
「「「毎日!!!」」」
「そうですけど?」

毎日風呂に入るだなんて、聞いたことがないわ。
城の物とは規模が違うとは思うけど、金額が掛かりすぎるでしょうに。
何を考えているのかしら。
いや、汚いって言っていたわね。
なるほど・・・そういう事ね。

「別に長湯をする為に入る訳じゃないので問題は無いです。肥料も買ってもらえるみたいですから、それだけでこの村は独立経営出来ますよ。黒字ですね、黒字。今まではうちの売上を回したりもしてましたけどね」

これが一つの完成形なのかしら。いや、もっと色々変えれば更に良くなるはず。
介入しようかしら?・・・いえ、無粋ね。
それにまだその時ではない。

「今日は良い物を見させて貰ったわ。あとで褒美を出しましょう」
「それは別にいいですよ。俺は何もしていませんし。案を出すだけです。村の皆に丸投げですからね」
「そう言わず受け取って置きなさい。近々店に届けさせるわ。では、私達は帰るとしましょうか。春蘭、秋蘭行くわよ」
「「御意」」

馬に跨り、城への道へと戻る。
今日は思わぬ収穫があったわね。

「華琳様、如何されました?ご機嫌が良いみたいですが?」
「春蘭、あの村を見ての感想は?」
「そうですね。元とは言え、黄巾の者を使うのは正気の沙汰とは思えません」
「そう、秋蘭は?」
「着眼する所が違う・・・と言った所です」

なるほどね。二人はそう見るか。
確かにそれもある。でも・・・

「フフフ・・・本当に世の中は面白い」
「???」

あの男が何を見ているのかは分からない。でも、私に見えた物がある・・・
徐晃。貴方は好きにおやりなさい。
当然だけど、私も好きにやりましょう。

「面白くなってきたわ。二人とも明日から忙しくなるわよ」

世の英雄諸侯よ、この曹孟徳は覇道のその先を垣間見た。
だったら、私はそれを掴むまで。
だが今はまだ乱世。
ならばまず、それを共に謳歌しようではないか!




あとがきです。

その?系は一旦終了です。
また後日第二部をスタートさせたいと思います。
今後も我らが情けない兄様をよろしくお願いします。
お付き合い頂き、ありがとう御座いました。



[8642] 恋姫無双~店主徐晃伝~ <転生オリ主>その12
Name: 三年G組将軍先生◆b1f32675 ID:382977c2
Date: 2009/05/30 00:04
どうも、こんにちは徐晃です。
お店の方も順調で、色々新しい試みも考えています。
まあ、内緒ですけど。
流琉達にも今の所秘密にしています。
村の方も順調です。色々考えているので資金はどれだけあっても足りませんね。
頑張って稼がないといけません。
最近はですね、戦も野良黄巾とかの討伐とか、そういうのがメインになっているみたいです。
大きな戦も無く、平和と言えば平和です。
俺達の住む陳留ですが、華琳さん達はお引越しをしました。洛陽に住むんだそうです。
残っていた玉無しもフルボッコにしたので、朝廷も弄りたい放題みたいです。
まあ、どこまでやったかは知りませんが。
あの引越し前夜の大宴会だけは酷かった。
涙無しには語れませんね。ええ、そりゃあもう。
曹孟徳の曹孟徳による曹孟徳の為の酒池肉林!みたいな感じでした。
強制的に三人を上に上げたくらいですから。
猫耳が嬉しそうに犠牲になってました。
うん。見せなくて良かった。他の皆さんのスルー技能の高さにも驚きましたけどね。
もしかしたら、お城では頻繁なのかもしれませんね。
おかげさまで、お店は普通のお客さんばかりで平和です。忙しいのは忙しいですけどね。
たまに、季衣や元譲さんが来てくれます。
あと、月と詠の二人は、まだ実家に帰ることが出来ません。可哀想です。
まあ、張譲が捕まって斬首になり、事の詳細が諸侯に流されたみたいなので、今後どうこうって事は無くなったと見て良いでしょう。
良かった良かった。お兄さんは嬉しいです。
ちなみに華琳さん曰く、

「もう狙われたりはしないと思うけど、涼州へ帰るのはまだ止めておきなさい」

だってさ。
なんでも、華琳さんの勢力外らしいのですよ。あの辺は今や、馬一門を筆頭とする連合の勢力下みたいです。
二人が戻って力を得れば、意思とは関係なく要らぬ混乱が生まれるだろうって言ってました。
力を持たなくても一緒だろう、ですって。
二人には悪いけど、暫くはこのままって形です。
残念ですが俺にはどうしようも無いのです。

「いらっしゃいませー」

流琉の声ですね。
お客さんです。営業しなくては。
あんまりボケボケしていると詠になにを言われるか分かりませんからね。頑張りましょう!



そんなこんなで営業終了。うん、今日も平和だったな。
まあ、少し物足りなくも感じます。
あの人たちはなんだかんだで、良い売上にもなりますし、良い刺激にもなりますからね。ハンパなくしんどいですけど。

「兄様~、火の始末終わりましたよ~」
「帳簿終わったわよ」
「お兄様、掃除も終わりました~」

うんうん。皆頑張ってくれてます。俺は嬉しい。
でも、そろそろ動かないといけないんですよね。計画に支障が出てしまいますから。
ここらで、重大発表しときますかね?

「はい、お疲れさん。皆、ちょっといいか?」
「何ですか?兄様?」

椅子に座る、俺の周りに集まってくる、可愛い妹達。
嗚呼、暫く合えないと思うと・・・涙が・・・出ませんけどね。
今生の別れではないので。直帰ってくる予定ですし。

「明日から、ちょっと出かけてくる」
「?」
「兄様、何時もの事じゃないですか」
「そうね。何時もの事じゃない」
「まあ、そう言われると、身も蓋も無いと言いますか。ちなみに一月位になると思う」
『・・・えーーーー!!!』

おお、ハモッた。チームワークもばっちりですね。
これなら安心です。

「な、なんですか!いきなりどうしたんですか!兄様!」
「詠ちゃ~ん、お兄様が、お兄様が~」
「月、泣かないの、ね?こら馬鹿兄!なんて事してくれるのよ!」
「まあ、落ち着け、落ち着け。月も泣かない」

ああ、もう。可愛いな~、こいつらは。
うん。どこにも嫁に出さんぞ!

「兄様、冗談ですよね?」
「いんや、本当。真面目な話」

まあ前々から決めてた事だしね。
情けない話、黙っていたのは切り出せなかったのもあります。
ここまで遅らせたものそれが原因。
自惚れかもしれないけど、泣かせるかな~って。心配するかな~って。

「そう・・・ですか」

しょげる三人。うーん、でもな~。こればっかりは、行かないと進まないし。

「心配すんな。危険な事は一個もない。安心しろって。早く終われば直に帰ってくるさ」
「直っていつよ!」
「・・・わからん」
「詠ちゃ~ん」
「ほら月、泣き止んで、ね?馬鹿兄のせいだからねっ!」
「理由は・・・また内緒ですか?」
「内緒」

言っても良いんだけどね~、やっぱり驚かせたいじゃないですか。

「へぅ~。また内緒ですか、お兄様?・・・詠ちゃ~ん」
「月・・そ、そんなに・な、泣かな・・月~」

おいおい、貰い泣きですか。

「月さん、詠さん。もう兄様には何を言っても無駄ですよ。きっと意思は変わりません。それに直に帰ってくるって言ってますし」
「流琉ちゃんは寂しくないの?」

目じりを拭う月。あ~、もう可愛い。

「そ、それは私も寂しいですけど・・・でも兄様、冗談は言いますけど、嘘は吐きませんから。待っていようかなって」
「そうだよね。泣いてばっかりじゃ駄目だよね」
「そ、そうね。月の言う通りだわ。べ、別に寂しくないし!」

おお、流石流琉。

「すまんな。朝一番で出るから今日はもう寝よう」
「はい。兄様」

まあ、その場はそれで落ち着いたんですが・・・

「何故にこうなる?」

気が付けば、俺の狭い部屋に四人で寝る羽目に。
嬉しそうに寝てやがりますよ。
本当に可愛い妹達です。
ええ、本当に。




「兄様?財布は持ちましたか?手拭いは?」

小学生か何かですか?
朝起きたら三人の姿は無く、早くも下に降りてました。
お弁当だって。泣かせますよ。
お兄ちゃんは幸せです。

「お兄様、お弁当に水筒は?」

持ったって。

「ああ、全部持ってるよ」
「いい?旅先で他人に迷惑かけちゃ駄目よ!絶対だからね!」
「大丈夫だって」
「兄様、知らない人に付いて行っちゃ駄目ですからね。あと胸の大きな人にもですよ?いいですね?」

そんなに心配か?
まあ、愛されてると思っておきましょう。

「全部大丈夫だ。ほんじゃあ行ってくる。留守を頼・・・ん?」

気付けば流琉が袖を掴んでいました。
・・・ったく、仕方無い妹達です。

「兄様・・・」
「お兄様・・・」
「お、お兄ちゃん・・・」
「じゃあ、行ってくる」
『行ってらっしゃい!』

まあ、これも愛される兄の務めでしょう。
え?何をしたって?
そりゃあ、秘密です。




さてさて、やってきました。都の洛陽!
ここが目的地です。
さてさて・・・以前より店が増えたかな?
あの時は戦争後だったしな。人通りもあんまり無かったし。
うん。人が無駄に多い。
流石都ですね。
で、俺の目的地はっと・・・ありました。
一件の大きな工事中の建物。
そうです!洛陽店です!
しかもですよ・・・ん?

「李典さん!」
「おお、店長。来てたんかいな」

何時もの格好は格好ですけど・・・その工事中と書かれたヘルメット的な兜はどうかと思いますよ?
まあ、雰囲気は出ますけど。

「どうですか?状況は?」
「ああ、納期予定まで予定通りに動いとる。順調そのものやね」

それは助かります。
ではでは、中を見学しますかね。

「で、あれはどうなりました?」
「フッフッフ、この李典様の辞書に不可能の文字はないんやで?まずは裏行こか?あ、これ被ってや」

渡されるヘルメット的な兜。
うーん、なんだかなー。
ま、いっか。

「おおおおおお!!!」

裏の広大な敷地にそびえ立つ、巨大な風車!
キタコレ!
かなりの敷地面積を要しますが、この一角、実は宦官のダレソレさんの土地だったわけです。で、買いました。
死んでくれてありがとうって感じです。かなり安売りでしたよ。

「まだ、回してへんけど、いつでも回るで。この一角は風がよう抜けとるよって。洛陽の風は強いからな。良い感じに仕上がったわ。店長の案のおかげやね」
「いやいや、俺は言うだけしかしてないですよ。李典さんの実力あってこそですよ」
「以前見せた事あるけど、この風力で井戸の汲み上げを行い、さらに換気扇やったけな?アレも回すで!」
「おお、流石・・・でも、風の無い日はどうするんですか?」

まさか・・・ね?

「まあ、手動やね」

やっぱり。でも、これは回らんぞ?
俺と流琉の二人掛かりでも無理っぽいな。

「心配せんでもええ、それようの装置も作ったさかいな、心配無用や。陳留の店より楽やで?」

流石の李典印。安心できます。

「ほな、中行こか?」

ワクテカ物ですね。俺の図面通りだとすると・・・

「おおおおおお!!!」

水道が入ってる!
ああ、神が降りてるよ。コレは。

「この水道やったっけか。ここを捻れば水が出るようになっとる。使わん分は井戸へと戻る。で使った分は、そのまま地下を通って、あの外の濾過装置を抜けて水路へ流れるさかいな。まあ、其処にゴミが溜まったら詰まるよって、マメに掃除したって。虫が湧いたりしたら大変やさかいな」

もう、掃除くらい幾らでもしちゃいますよ!

「で、あの箱が並んでるのが、言うてた冷蔵庫?やね。まだ、からくりを入れてへんから動いてへんけどな。風車からの動力で風を作る、ここでそれを一気に冷やす。それを箱全体に流すんや。夏場でも大分冷えるはずや。ただ、からくりの中に硝石を使った物を組み込むんやけどな、それの調子をまめに見に来なアカンねん。だから最低でも十日に一度、水道と同時に軽くバラさなあかんわ。こればっかりはどうしようもない。あと何かあっても、素人が触るんは止めてや?故障の元や。ウチ等専門の技師に言うて」

ええ、良いですよ、良いですよ。幾等でもやって下さい。
その日は定休日にすれば何の問題も無いですしね。
にしても最初、冷蔵庫の目処が立った、と聞いた時には驚きましたね。
何でも、硝石を使って何かを開発していたらしいんですよ。で、その途中で何故か冷える事に気付いたらしいです。軍事機密らしいので詳しくは知りませんが。
やはり、発展は軍事技術から生まれるものが多いのですかね?
悲しい現実です。
まあ、それはいいでしょう。

「月々の費用はどれくらいですかね?」
「う~ん、概算やからな。細かい所を詰めたんをまた見てもらうわ。でも補助金だけでもいけると思うで?」

まあ、月々のランニングコストなんて、何とかなるでしょう。
ちなみに、これら製造の費用は殆ど華琳さん持ちです。しかも暫くは月々の補助金付き。
メンテナンスとかもあるから、場所は洛陽一択でしたけどね。
軍事利用とか量産へ向けての試験運用品だからだそうです。
だから専門の技師さんも付いて、細かくデータを取るみたいな事を言ってましたね。
だからこのお店は、完全な実験店舗です。
それを俺が使う、みたいな感じになっています。
あまり軍事とかへの貢献はしたくないのですが、冷蔵庫欲しさに負けてしまいました。

「まあ、後は・・・こっちが客間やね。言われた通りの設計や。最大収容四十名。炭焼き台三尺に鉄板焼き用大鉄板完備。これで焼き場はかなり暑くなるさかいな気ぃ付けて。まあ、ここの扉は裏の冷蔵庫と繋がっとるさかい、開けっ放しにすれば冷も取れるわ。客間の換気扇も外からの風力で回すで~。煙対策は試験済み、ウチが太鼓判押したる」

おおおおおお!!!

「か、完璧・・・」

感激のあまりに言葉が出ないぞ。これは。
記憶の中にある、居酒屋にかなり近くなってきた。
後の細かい所は箱が出来てから詰めるとして・・・いやはや、素晴らしい。
客間から見えるカウンター越しの焼き場。しかも、仕込み品は取り出しやすいように裏との連結冷蔵庫。
厨房内での調理可能スペース。火力はかまどが全部で二基。
さらにオーブン風の物を作れるような窯も外付けで、天気さえ良ければ使用可能。大型燻製器も完備しました。これも外付けですけど。
厨房のいたる所には水道蛇口完備。受ける場所には網を張ってゴミ受け用に!
さらには・・・ああ、挙げればきりがない。
素晴らしい。素晴らしすぎる。
やばい、泣きそう。

「二階は自宅になるように設計してある。部屋数は好きに弄れるようにしてあるで。可動式の板入れてあるさかい。まあ、こんなもんや。ん?店長どないしたん?」
「いや、嬉しすぎて涙が」
「大げさやなぁ~。それとウチの事は真桜って呼んで。こないに良い仕事したんは初めてや。それのお礼やと思ってんか」
「はい、お預かりします。真桜さん」
「ハハ、大の男が情けないで」
「いやいや・・・お恥ずかしい」

嬉しいだけじゃない。多分、懐かしいんだ。
多分。
あー、切り替えよう。
俺は大丈夫、俺は大丈夫、俺は大丈夫・・・
よし、もう平気。

「今日はありがとう御座います。ここまでの物が仕上がっているとは、正直思ってませんでした」
「ええんよ。その分完成したら、しこたま呑ませて貰うわ」
「ええ、是非」

その場はそれで終わりました。
あー、やべ。まだ、興奮してるぞ。
宣伝もしないと駄目だし。仕入れの渡りも付けないといけないし。これはやる事が多い。
早く切り上げて帰らないといけないし。明日から猛烈に忙しいぞ!



それからは予想通り猛烈な忙しさでした。
いやー、大変でした。
広告も阿蘇阿蘇に載せてもらう事にしました。しかも表紙の裏、一面見開きです。
問題の仕入れに関しては、自分の村からの直送です。二日後には届く予定になってます。
足りない分は買い付けますけどね。
注文方法はですね、そろそろ・・・着ましたね。
鷹のクロちゃんです。可愛いでしょ?
この鋭くも愛らしい瞳がチャームポイントです。
このクロちゃんを使って、直接やり取りします。訓練当初は時間通りには来ませんでしたけど、慣れてきたのか最近では完璧です。よしよし。
い、痛い。突っつくなって。
あれです。伝書鳩ならぬ、伝書鷹です。
だから、痛い。突くなって。
やはり、村ごと買い付けたのは正解でしたね。こういう技能のある人がいたりしますしね。黒字運営中ですし、規模も拡大していますよ。まだ、鶏と豚と山羊しか飼育してませんが、そのうち牛も飼う予定です。
二十日ほど経ちましたが、準備は大分進みました。
お店の機材も順調に稼動するみたいでしたし。この前の立会いで、冷蔵庫が動いていたのには感動しました。
暫くは試験運転で回しっぱなしにするらしいです。
火も入れてみましたが、焼き場は猛烈に暑いです。これは中々しんどいっぽいですね。
クーラー欲しい・・・無理ですよね、流石に。
まあ、体力には自信があるので大丈夫でしょう。
オープン予定は来月半ばです!
そろそろ帰って、皆と引越ししましょうかね。




帰ってきました、愛しの陳留。
早く三人に会いたいです。

「ただいま~。今帰ったよ~」
「兄様!」
「お兄様!」

二人が駆け寄って来ましたよ。嬉しいですね。
ん?詠はどこだ?ああ居た。
どうしたのでしょうかね?モジモジしてます。

「お帰りなさい、兄様」
「お帰りなさい、お兄様。ほら、詠ちゃんも」
「お・・・お」

お?・・・ああ。

「おしっこか?」
「違うわよ!この馬鹿兄!」

真っ赤になって。
冗談ですよ、冗談。

「ほら、詠さん」
「詠ちゃん。頑張って」
「おかえりなさい・・・お兄ちゃん・・・」

ああもう!可愛過ぎるぞ、詠!
月も流琉も可愛いです。
見境いが無ければ、そのままルパ~ンダ~イブですよ。

「おう、皆ただいま!さて、いきなりですが重大発表です!」

三人の視線が集まります。

「近日中に・・・」
『近日中に?』
「このお店は・・・」
『このお店は?』

じゃん!

「閉店します!」
『・・・えー!!!』

出かける前より息ぴったり。凄いな。

「な、何でですか!兄様!」
「ちょ、ちょ、る、る」

止めなさい、肩をガックンガックン揺らすのは。流琉は力が強いんだから。
首が取れる。肩がもげる。俺死んじゃう。

「説明して下さい!」
「ちょっと、流琉ちゃ~ん、やりすぎだよ~。へぅ~、詠ちゃ~ん。流琉ちゃん止めて~」
「ふん、良い薬よ」

いや、するから。それ止めて。目が、目が。
あ、止まった。でも頭・・・クラクラ・・・

「あ~、クラクラする。実は洛陽に新店を出す。だから洛陽に引越しだ」
『えーーー!!!』

いや、息合い過ぎだろ?
本当に、何があった?

「じゃあ、兄様が今まで色々やってきたのは・・・このため?」
「おう!」
「お兄様がお出かけしたりしてたのも・・・このためですか?」
「おう!」
「今回の件も?」
「その通り!ウハハハハ、驚いたか!」

皆、目が点ですね。黙っていた甲斐があるってもんです。

「だから引越し作業だ。今日は営業するけどな。明日からはお休みだ」
「ちょっと、お店はどうするのよ!」
「ああ、それなら。屋台を貸して練習してもらっている人がいるから、その人に任せる。張曼成さんと馬元義さんって言う人にお任せする」

この人達も誠実で良い人です。最初は料理なんてした事がないって言っていましたけどね。焼き鳥なんて、鳥が捌けて、タレを作れりゃ誰にでも出来ますからね。
まあ、俺が最初に手を出したのもそれが理由ですけど。
レシピは俺の頭の中に入ってますから。あとはそれを教えるだけ。
今では、鶏と豚に関しては十二分にいけます。牛に関してはゆっくりでいいですから。
ぶっちゃけ、出来なくても問題は無い訳ですし。

「取り敢えずはだな、今日の営業だ。俺も久々に頑張るぞ!」
「そうですね。お客さんに喜んで貰いましょう」
「私も頑張ります。流琉ちゃんみたいには出来ないけど。お兄様がいない間、焼き場に入ったりもしたんですよ?」
「そうよ、月も上手なんだから」
「そうか、月頑張ったな。で、詠は?」

沈黙。

「聞かないでよ」

プイッと横を向く。
あーもう。可愛過ぎるぞ、詠!

「まずは飯だ、飯。何かないか?」
「はい。すぐ準備しますよ。ね、二人とも」

流琉達が元気良く奥へと走っていきました。
あ、屋号考えないとな・・・何にすっかな~?
焼き鳥屋じゃねーし・・・ま、後でいいや。
今は可愛い妹達が作る飯が最優先ですよね!




あとがきです。

始まりました第二部。
何故に二部か?そう居酒屋にクラスチェンジです!
という訳です。ばれてましたか?
今後ともよろしくお願いします。
駄文にお付き合い頂き、ありがとう御座いました。



[8642] 恋姫無双~店主徐晃伝~ <転生オリ主>その13
Name: 三年G組将軍先生◆b1f32675 ID:382977c2
Date: 2009/05/31 20:08
こんにちは、徐晃です。
無事に引越しは完了しました。
その時の流琉達は凄かったですよ。
もうね、目が点。
これしか言い様がありませんね。
説明するたびに、目を丸くして三人合わせてコクコク頷く。
超可愛かったです。
部屋も一人一部屋用意出来ました。
家財道具とかも増やさないといけませんね。まあ、おいおいで良いでしょう。
問題は、今店に機材しかない事です。
調理道具とか食器はゼロです。
個人の物以外、何も持ってきませんでした。陳留に置いてきましたからね。
それらは流琉達が買いに行くそうです。
俺が行くって言ったんですが、

「駄目です。兄様だと、黒色か茶色しか買って来ませんから」

だってさ。
別にいいじゃん、色付き高いし。
まあ、詠が財布を握っているので大丈夫でしょう。
欲しいリストは渡しましたからね。予算内で済ませるでしょう。
問題はメニューです。
大きい街の人とかは文字に慣れているみたいなので、問題はさほどありません。ただ、効率を考えないといけません。
基本的に今は四人で営業するつもりですからね。
まあ、給仕だけで募集を掛けてもいいのですが、最初は四人でやってみようと思います。
無理なら増やしましょう。
一応、考えてはありますよ。注文方法はね。
コレです。
各テーブルには引き出しが付いています。アレです、ジャン卓みたいなものだと思って下さい。
そういえば麻雀みないな?無いのかな?今の体なら燕返しも・・・まあ、置いておきましょう。
そこに色分けされた札が入っています。
で、横の壁には色付けした大きいメニューをぶら下げます。
札の色を合致させるんですよ。
そう、お客さんが欲しい商品の札を渡す形です。
これをこちらで管理していきます。
まあ、これも問題点が出れば改善しましょう。
ぶら下げるメニューは日毎で変わります。まだまだ、食材の安定供給には至っていません。
仕方なしです。

「後はメニューだけ・・・なんだけどね~」

これも問題です。
串物に関して単品は五本セット売りにして、別途で五本の盛り合わせ。
鉄板焼きも焼きそばだけじゃなく、ネギ焼きとかも始めます。
キャベツが無いのでお好み焼きが出来ないのが残念です。
白菜でやってみましたが、美味しくなかったです。ソースもありませんけどね。
あと他にも色々考えてます。
その他には煮物を小鉢で冷やして出します。盛ってあれば出すだけですから楽です。
まあ、焼き場に関しては別に問題は無いんですよ。
本当は揚げ物もやりたいのですが、どうしても俺と流琉は焼き場をメインで動くはずですからね。人を増やさないと無理っぽいです。
だから、一時お預けです。
メニューは考えてありますから、いつでも始める事は出来ますからね。
人を入れれば直に動けますからね。落ち着いてからにしましょう。
みんなが帰ってきたら、新メニューを作ってみたいと思います。
仕込みは終わっているので、あとは鉄板に火を入れるだけです。

「兄様、買って来ましたよ」
「ただいま~」
「へぅ~、重たかったよ~」

流琉。荷物持ちすぎ。

「お帰り。荷物は厨房に運んで。飯は新商品を作ってみるから感想聞かせて」
「はい、分かりました」
「新商品だって~、楽しみだね~」
「そうね、月」

鉄板に火を入れて・・・仕込み品を・・・うーん、冷蔵庫にそのままですと若干乾くか。
濡れ布巾と蓋が要りますね。追加で買い足しましょう。

「座って待ってて。直に出来るから」
「はーい」

仕込み品は餃子。見た目だけですけど・・・中身は秘密です。
鉄板に油を引いて~、仕込みを乗せて~。
おお、良い音。
焼けたら、ひっくり返して、水を差して蓋をするだけ~。

「流琉ちゃんも聞いてないの?」
「兄様が秘密だって」
「本当に好きね、秘密にするのが」

カウンター越しに焼き場をじっと見てますね。
興味津々っぽいです。

「出来上がりかな?・・・うん、良い感じ。ほら食べていいぞ、そのままでな。中身はかなり熱いからな、火傷に気をつけろよ?」
「餃子ですか?」
「そうだよね」
「どう見てもね」

甘いな!まだまだ甘い!

『いただきます』

と揃って、一口。
どうだ!

「熱っ!でも・・・何これ?わわっ、伸びる~」
「美味しい。これ美味しい。ね、詠ちゃん、流琉ちゃん」
「うん。美味しい!ボクこれ好き!」

ハフハフ食べていますね。半分に割ると、そこには細~い糸とお餅が姿を現します。
そう、チーズです。
餃子の皮の中に薄切りの餅と山羊の乳で作ったチーズを仕込みました。
完全女性狙いです。
きっと売れるでしょう。

「兄様!これは凄いです。絶対売れますよ!」
「そうです、お兄様」
「うん。これはいけるわ」

よしよし。中々良い感じですね。

「よしよし、それじゃあ、次の商品」

次は~、コレはあんまり乾燥してませんね。冷蔵庫でも大丈夫っぽいですね。
まあこれも一応、蓋してしまう事にしましょう。

「腸詰めですか?兄様・・・でも色が」
「そう。でもただの腸詰めと侮る無かれ」

これは結構考えたんですよね~。
ただの肉じゃあ、面白くないですからね。
ソーセージってのはあるにはあるんですよ。腸詰めって奴です。
でも、そのままだと面白くないでしょ?
だから・・・

「ほれ、焼けた。食べていいぞ。これもそのままな」
「白い腸詰め・・・何だろう?・・・あ、魚だ!魚の腸詰め!」
「え、流琉ちゃん。これお魚なの?」
「嘘?魚?」

白身の魚をすった物です。
ただ、それだけだと淡白すぎるので、色々と調味してありますけどね。
食感を柔らかくする為に長芋も合わせました。
これの配合に時間が掛かりましたね。入れすぎると膨れて破裂しちゃいますから。
最初ははんぺんみたいに四角くしようかとも思っていましたけど、こっちの方が面白いでしょ?
所謂、はんぺん風魚肉ソーセージですね。
食材に牛蒡と人参を足して揚げれば、さつま揚げみたいな奴にも早変わりです。

「兄様、これも美味しいです!魚を使うなんて思ってもいませんでした!」
「そうだよね、流琉ちゃん。これも美味しいです」
「魚の嫌いな子でも食べられるわね。美味しいし」

でしょでしょ?良い感じですね~。考えた甲斐があるってものです。
さてさて、そろそろ本命出しますかね。

「最後はこいつだ」
「何ですか?ひき肉の塊?」

完・全・版ハンバーグ!!!
パン粉の問題は解決しました。
肉まんに使われる皮を焼いただけですけどね。十分でした。
それを削って山羊乳に浸した物を使いました。
これで食感もグッドになるはず。
肉は残り物でいけるので安上がりです。
今日は残り物じゃなく、牛と豚の合挽きです。
でも玉ねぎは欲しいですね~。どっかに無いかな?

「ひっくり返して~、蓋をしてっと」
「兄様、他にも考えているものあるのですか?」
「色々な。揚げ物もやりたいんだけどね。四人じゃ厳しいからな。食材を効率良く使って、無駄を無くして食材の回転を上げる。そうすりゃ、良い物出せるだろ?人を増やしたら揚げ物やるぞ?」
「へ~、馬鹿兄にしては考えてるじゃない」
「お兄様、今のへ~、は感心している時のへ~、ですよ」
「おお、詠も認めてくれたか。そいつは嬉しいな」
「ち、違うわよ!そんな事ないんだから!」
「もう、詠さんったら」

こういうの良いな~。なんか和む。
おっと焦げるか?・・・どうかな~っと・・・真ん中に・・・汁は透明。焼けたな。
タレはやはりおろし醤油に大葉!これ以外は認めません!
ポン酢が欲しいですね。
まあ、トマトがあればかわってきますが。

「ほい、出来上がり。ハンバーグだ」
「はんばーぐ?」
「聞いたこと無いわね」
「うん」

チラっと流琉が視線を投げてきます。
まあ、そういう事です。

「どうだ?」
『美味しい!』

やはりハンバーグは王道ですからね。
折角の鉄板ですから色々やりたい事もありますし。
その後も色々出してみましたが、全部好評。
流石、俺。
この時代で再現するのは骨が折れますけど、この笑顔が見られるなら、お兄ちゃんは頑張りますよ!
出来るメニューが多いので、仕入れの具合で変えて行きましょう。




次の日、詠に叩き起こされました。
その際に変態だのなんだのと罵倒されましたが、置いておきましょう。

「何だ・・・こんな早くに」
「恋が生きてたのよ!」
「???」

事の詳細はですね。
呂布さんが生きていて、今陳留の守備隊と交戦中らしいです。
行商の話を聞いたみたいです。
月と詠の元仲間ですね。
で、

「で、どうしたいんだ?」
「助けるに決まってるじゃない!」
「どうやって?」
「今、それを考えてるの!」

助けるねぇ・・・無理じゃね?
陳留は華琳さんの管轄だし、それに手を出した訳ですし。
あの人、首チョンパ好きだからね~。
イラっと来ただけで、どこからか大鎌を出してくる人ですよ。
無理でしょう、流石に。
まあ、二人の仲間と言うよりは、友達に近いみたいな話ですから、助けてやりたいのは山々ですけどね。

「助けたいなら、華琳さんにお願いすれば?」
「今は無理なはずよ。青州で起こった黄巾の対応で出払っているわ。恋は南から進軍中。曹操はもっと北にいる。黄巾の数は何十万って話よ」

そういえばそうでしたね。
ふむ。同時侵攻?いや、呂布さんが合わせたのかな?
なら上手い手ですね。
流石に華琳さんの軍勢でも何十万の敵と戦いながら、天下無双に将兵をぶつけるのは難しいでしょうし。

「だから、私達が何とかするしかないの。このままだと恋は負ける」

ふむ、軍師賈詡が言うのですから、きっとそうなのでしょう。
それはそうと、華琳さんは負けないのでしょうかね?
あの人の事だから数の不利は問題にしないでしょうけど。

「で、どうする?手はあるのか?」
「考えはある。まずは馬がいる。最低二頭。あと曹操の兵の鎧が一着。要るのはこれだけね」
「それだけ?兵隊さんは?要らないのか?」
「兵なんて要らないわ。問題は曹操の兵が着ている鎧よ」

それだったら簡単じゃん。
きっと戦争する訳じゃなく止めたい訳でしょう。
だから兵隊さんは要らないって事ですかね。
なら、

「簡単だぞ。俺が貰って来てやる」
「出来るの?」
「ああ。借りれば良い、理由は適当に言って。最悪盗めば良いだけだし」
「お願い・・・恋を助けたいの」
「任しとけって。妹は兄ちゃんに甘えろ。そういうもんだ」

詠の頭をグシグシ撫でてやります。
戦争しろって言われれば、いくら詠でも断りますがね。
戦争を止めたいなら、手伝いましょう。

「そういえば月は?」
「もう準備は進めている。きっとお兄様は力になってくれるだろうって言ってね。流琉もそう言ってたわ」
「なるほどな。それじゃあ、サクサク行きますか。時間無いんだろ?」
「うん。馬は流琉が買いに行ってくれてる。鎧を何としても確保して」

まあ、何とかなるでしょう。

「任せとけ。外で待ち合わせだ。行ってくる」
「お願い・・・お兄ちゃん」

任せなさい!



「で、どうする気だ?」

流琉を店に残して、街道をひた走る。
月と詠がこんなに馬が上手だとは思っていませんでしたね。
やはり馬国育ちだからでしょうか。

「手は考えた。十中八九上手く行くわ」
「残りは?」
「このまま戦闘続行ね。守備隊は倒せても、曹操の本隊には絶対負ける」
「だから、時間が無いんです」

華琳さんが黄巾に目処を付けて、戻るまでに勝負を決めないといけない訳か。
大丈夫なんですかね?
まあ、心強い賈文和が居る訳ですし、何とかするでしょう。

「まあ、それはいいが。何で平服じゃ無い訳、二人とも?」
「平服だと兵が分からないじゃない。この服なら大丈夫よ。新参の兵以外なら分かるはず。多分兵を雇うお金なんて無いだろうけどね」

そう、二人が着ているのは以前着ていた、豪華な服。
太守と軍師をやっていた頃の物ですね。
で、俺は鎧・・・
どうする気でしょう。

「俺は何をすればいいんだ?」
「簡単よ。ボクが作った偽文書を届けてくれれば良いだけ。守備隊の北側から回りこんで。伝令の振りをしながら近づいて」

それだけ?マジで?
こんな紙切れ一枚届けるだけ?

「それだけ?」
「そうよ。守備隊は苦戦中。文書には明日朝に援軍到着と書いたわ。本当は判も押せれば確実だったんだけど、良く知らないし。時間も無かったしね。で、篭城するようにとの指示書よ。間違いなく掛かる。だって、押されているんだもの。一騎当千の恋とは戦いたくないでしょ?」

おお!凄い!
これは虚報とか言うのか?
しかし、本当に成功すれば凄いな。たった三人で何千人いや、万って将兵を手玉に取る訳ですし。
軍師ってすげぇ。

「流石だな」
「詠ちゃん凄い」
「当然よ。一気に戦場まで行くわよ!」

そんなこんなで、幾日後。
戦闘が視認出来る距離です。

「月、詠。俺居ないからな。矢とかには気を付けろ。絶対だ」
「はい。お兄様もご無事で」
「任せなさい。俺強いし。怪我なんてしないさ」
「じゃあ、お願い。時期を合わせてこちらも動くわ。音々さえ論破出来ればこちらの勝ちよ。まあ、負けないけどね」
「おう、行ってくる」

馬の腹を景気良く蹴っ飛ばし、戦場を大きく迂回。
指示通り北へと回り込む。
それじゃあ、詠のお手並みを拝見しましょうか。

「伝令ー!伝令ー!」

恐れ入りました。こうも完璧に読みきるとは思ってませんでした。
隊長さんと思しき人は、安堵の表情でしたね。
華琳さんが知ったら怒るだろうなぁ。
俺知らね。
後退していく、守備隊を呂布陣営は追いませんでした。
凄いですね。詠は。
既に話をつけてあるみたいですね。
料理出来なくても、賈詡は賈詡なんですね。
で、俺も帰る振りをしてから、呂布陣営を目指します。
到着するとすんなり通してくれました。
流石の月と詠。
こうもバッチリ準備してくれているとは。案内までされちゃいましたよ。
で、真紅の呂旗の元では・・・

「・・・あ・・・てんちょ」
「あー!!!ハムスター!!!」

そう、其処に居たのはいつぞやのハムスター娘でした。
なんと・・・あの子が呂布。
いやはや、世間は狭い。本当にそう思いますね。

「こら!馬鹿兄!何で知り合いって黙ってたのよ!」
「こら、詠。止めなさい。石は痛い」
「へぅ~、詠ちゃん、駄目だよ~」

落ちていた石を投げつけられました。
だって、知らなかったし。仕方ないじゃん。
そう言われれば、飛将軍とか何とか言ってたような、言って無かったような。
あの時は必死でしたからね。
話を聞くと陳留攻めは、陳宮さんの策だけではないとの事。
もちろん、華琳さんが北へ向かっているのを見越してではあるってさ。
軍の兵糧も尽きかけてるから、丁度良かったらしいです。
でも、それ以上に呂布さんの希望なんだって。狙いが陳留なのは。
俺の店が陳留にあるからだそうです。
俺の料理が食べたかったから、だそうな。
いや~、うれしいですね~。感心は出来ませんけど。

「兵は解体するわ。まずは追撃が怖いから南西に転進。戻りたい人は地元へ戻れば良いし、働きたければ村で開墾ね」
「月、そうなの?解体って?」
「はい。昨日話したと思いますけど、恋さんは優しい人です。戦は好きでやっている訳じゃないんです。恋さんの戦う理由は自分を慕う兵隊さんの為。自分を頼ってくれる仲間の為なんです。戦をしなくてもやっていけるなら恋さんに軍を率いる理由はありません。だからの解体です」

そうらしいです。昨日話を聞きました。
とっても優しい子だそうです。
ただ、戦しか知らない。食べて行く方法をそれ以外知らない。
やり切れませんね。
とりあえず、移動しながら詠から話を聞きます。
兵隊さんは一時村で預かる事になりました。
総勢四千人・・・流石に無理。賄えません。
現状では、ですがね。
一応、当てはあるんですよ。
ただ、この事業は完全な運です。どこにも保障は無いです。
兵隊さんには理解して貰わないといけません。最悪地元へ帰ってもらう事になるかもしれませんからね。
もし、この事業が上手くいけば、村の資産はガッポガッポです。
左団扇どころの話じゃないですね。
さてさて、上手く行きますかね?

「ところで、陳宮さんとやらは?」
「ちんきゅーきーーーっく!!!」
「ぶべ!」

何処からか跳んで来た蹴りで大地と接吻。
後頭部は痛いぞ?

「最初から居るのです!振られないから黙っていただけですぞ!」
「・・・ねね・・・だめ」
「し、しかしですぞ。こいつは音々が小さいからといって馬鹿にしていたに違いありませんぞ」
「・・・だめ」
「う、う~」
「俺は大丈夫ですよ。呂布さん」
「・・・れん」
「はい?」
「・・・まな、てんちょにあずける・・・れん、てんちょのせわになる」

なるほど。真名を預けるね。
それもありがたい事ですけど、この小っこい子が陳宮さんね。
えらく打点の高い蹴りを持っていますね。強者です。
鍛えれば世界を狙える逸材と見ましたよ。

「分かりました。恋さん」
「・・・れんでいい」
「分かったよ。恋」
「ん・・・ねねも」
「音々もですか!?」
「ねねもせわになる・・・だから」
「わ、わかりました。姓は陳、名は宮。字は公台。真名は音々音。恋殿の軍師ですぞ」
「宜しくな。音々音ちゃん」
「音々で良いのです。恋殿と同じがいいのです」
「分かった。よろしく、音々」
「よろしくしてやるのです」

ふむ。中々面白い子達ですね。
月と詠も嬉しそうですし。良かった良かった。
問題は解決していませんけどね。
暫くの食料は何とか工面出来ますけど・・・
一息ついたら、兵隊さんと話をして見ましょう。
四千人か・・・多いな。
話をするだけで、日が暮れそうだ。
事業が上手く行けばいいんですけどね~、どうなる事やら。
あとは華琳さんへの言い訳も考えておかないと。
勝手にやったから絶対怒られる。
下手すりゃ、首が飛ぶ危険もありますよ。
黙っていてもバレそうですし、それはもっとヤバイ。
でもそんな先の事より、絶対にやらなければいけない事が一つあります。
ハムスターとのリベンジマッチです!!!
次は絶対負けん!!!



あとがきです。

後半薄くなりましたが、とりあえずUPです。
もっと恋と音々とのやり取りを弄りたいですが、考えても浮かばないので。
何か思いついたら弄ります。
では、また次回お会いしましょう。
お付き合い頂き、ありがとう御座いました。




[8642] 恋姫無双~店主徐晃伝~ <転生オリ主>その14
Name: 三年G組将軍先生◆b1f32675 ID:382977c2
Date: 2009/06/01 13:12
どうも、こんにちは。徐晃です。
先日、恋と音々を村に迎える事になりました。
ちなみに兵隊さんは話をした結果、約半分の二千人程がそのまま残りたいとの事。
帰る場所が無い人達です。
どう考えても現状の収入では賄えません。出来ても千人がやっとでしょう。
ですから、ある事業の着工を早める事にしました。そちらに皆さんを割り振ります。
石炭掘りです。
この前お城に用事で行ったときに、書庫を訪ねたんです。偶然見つけた本によると、何でも春秋時代から利用はされていたみたいなんですよ。
でも今では採掘量も減って、一部の鉄工技師さんの元に届く程度らしいです。
真桜さんに聞くと、

「ああ。産出量が少ないらしいで?」

ここで、俺はキュピーンと来ましたね。
ちょっとしか取らないなら、まだまだ埋っている筈!
という訳でして、石炭狙います。
ただ、危ない事が一杯なんですよね。
一番は、掘る訳ですから崩落事故が怖いです。
そもそもどれだけ眠っているかも分かりません。
近代ではかなり長い間燃料資源の最先端だったはずです。
だから一杯あるような気がします。ええ、気がするだけです。
で真実はぼかしながら、その辺も含め色々説明しました。
皆さん俺に賭けてくれました。
正直、嬉しかったです。やはり対話は大事です。
指導係り兼現場監督は村のご老人。若い頃は石炭を掘っていたらしいです。
で、石炭掘りの指揮官は高順さんというおっちゃんです。
かなり皆さんに慕われている人です。
細かい事は報告して貰いますが、基本的に高順さんに一任です。
上手く行けば、ガッポリ儲かるでしょう。
恋と音々はですね、食材運搬隊を率いて貰います。
兵隊さん何人かと一緒にです。
これも懸案事項の一つだったんですよね。助かりました。
まずやられないでしょう。だってあの呂布ですよ?呂布。
知っていたら、絶対手を出しません。まあ、華琳さんの勢力圏では大分盗賊も減ってますけどね。居るには居ますから。
その他にも色々な事を進めてますよ。
こんな事ばっかりやっているから村の貯蓄があんまり増えないんですよね~。
詠が店と村の財布を握っていますからね。流琉と二人の時より厳しいです。
中々秘密で進められません。しつこいんですよ。
まあそれは置いておきましょう。
今日はですね・・・恐怖の呼び出しです。
華琳さんから先日の一件を説明するようにとの呼び出しです。
一応、軽くは説明してあるんですよ。文面で。
だって、会いたくない。いや、死にたくないでしょ?
遺書でも書いておいた方が良いですかね?
絶対怒ってますよ。
だって、陳留の守備隊を騙した訳ですしね。
あー、行きたくねぇ・・・
でも行かない訳にもいきませんしね。
足取りは超重いです。
急に掃除がしたくなってきました。



そんなこんなで城に到着。
華琳さんは椅子にふんぞり返って俺の話を聞いています。
あー嫌だ。帰りたい。この場から逃げたい。
でもそんな事をしようものなら、どこからか元譲さんが現れ、嬉々として追いかけてくるでしょう。
あの人との鬼ごっこは勘弁です。

「以上かしら?」
「はい」

チラっと顔を見ますが、いつも通りですね。
読めん。全く読めん。
あー、空気が重い。雰囲気が悪すぎる。

「徐晃?」
「は、はひ!」

噛んじゃった。痛ひ。

「見事だったわ。褒美を取らせましょう」
「・・・はい?」

イマナントオッシャイマシタカ?

「良くやったと言っているのよ」
「怒ってないんですか?」
「ええ」
「・・・本当ですか?」
「くどいわよ」

おおおおお!!!
神がいた!ここに神が!このクルクル娘は神だったのか!

「良い策だったわ。手際も見事としか良い様が無い。月と詠がいて相手が呂布。全て揃って初めて成る策だけどね」

おお!月と詠が褒められてる!
すげぇ!!!
奇跡だろ!華琳さんはあんまり褒めないからね。いやはや、珍しいものを見たぞ。

「でも俺は何もしてませんから。月と詠にあげて下さいよ。喜ぶでしょうし」
「・・・貴方ねぇ。はぁ、もういいわ。説明するのも面倒ね」

何か馬鹿にされてます?もしかして。

「いや~、怒られると思ってましたからね。良かった良かった」
「そう?見事な策よ。確かに私の兵を謀ったのはアレだけどね。結果として、こちらの兵の損害は軽微。街に至っては被害無し。面倒な呂布は表舞台から消えた。差し引いても十分評価するに値するわよ」

おおお!!!
マジで褒めてるよ。
お兄ちゃんは良い妹を持って幸せです。
やっぱり華琳さんも恋とはやりたくないんですね。
いや。面倒って事は、ちょっと違うのか?どうなんだろ?

「まあそれはいいわ。で、残る兵をどうする気かしら?」
「今は兵隊さんじゃないですよ。石炭を見つけたいですね」
「ああ、アレね。でも産出量は減っているわよ?」

そうらしいですね。でも。

「産出量が減っているんじゃ無くて、取る人が少なくなっているからだと思う訳ですよ。俺の記憶では、かなり長い間燃料資源の頂点に君臨していたはずです。だから眠ってますよ、きっと。本当かどうかは分かりませんが。現状じゃ二千人も養えませんから、一気に進めて貰いますよ。今のままだと赤字ですからね」
「・・・半年だけよ」
「は?」
「半年だけ補助してあげるわ。その代わり私が一手に買い取るわ」

おおお!!!
国から補助出た!
これまたすげぇ!
でも・・・

「いいんですか?取れないかも知れませんよ?」
「だから半年よ。明日取れればそこで補助を打ち切って、買い取りに移行。半年間は猶予をあげるわ」
「ありがとう御座います。皆喜びますよ」
「貴方も喜びなさいよ。責任者でしょ?」

はい?そりゃあ、嬉しいですけど。でもですよ、

「俺は掘りませんから、別にそこまでは。補助を出して貰うのは村の採掘係りの皆さんですから。あと俺は責任者じゃないですよ。ただ、案を出してやってもらっている立場です。一応収支の兼ね合いも合って経理みたいな真似はしてますけど。これも最近は詠か月がしてくれてます」
「・・・そうね、そういう奴だったわね。まあいいわ。・・・いい?呂布の手綱だけはしっかり握っておきなさい」
「大丈夫ですよ。恋はいい子ですから」

またも馬鹿にされてるのか?
まあ、いいや。皆喜ぶでしょう。
にしても手綱って。恋はいい子ですよ?何も知らないだけですから。
今日の事は皆に報告してあげないといけませんね。

「呂布の真名ね・・・まあいいわ。もう帰っていいわよ。褒美は後日店に届けさせるわ」
「はい。では失礼します」

ではでは帰りましょう。

「ちょっと待ちなさい」

呼び止められました。

「何ですか?」
「店はいつ開けるの?」
「あと十日で開けますよ」
「前日に呼びなさい。客をしてあげるわ」
「助かります。ではこれで」

扉を閉めて・・・と。
ウッヒャホーイ!!!
俺生きてるー!
良かった良かった。足取りも軽いです。
皆に報告しないとね~。

「ただいま~。月~詠~、華琳さんがお前達凄いって褒めてたよ」
「お咎めなしですか?お兄様?」
「おう、良くやったって。褒めてた」
「へぅ~、良かったです」

泣くなっての。

「流琉も月も心配してたんだから!」
「そうかそうか、三人ともそんなに・・・兄ちゃんは嬉しいぞ」
「ボ、ボクは違うわよ!この馬鹿兄!」

皆可愛いですね~。
さてさて、この辺にしておいてっと。
店の準備をしていかないといけませんね。
村の皆には音々が来た時に伝えて貰う事にしましょう。

「流琉ー、見て欲しい物があるんだけどー」
「はーい、ちょっと待ってくださいねー。直行きまーす」

さてさて、オープンまで後ちょっと。
頑張りましょう!



オープン四日前から、華琳さんの所の兵隊さんにお客さん役で入ってもらっています。
夕暮れから日毎で百名。客席二回転半。実際の営業もそんな感じでしょう。
やはり焼き場は熱い。灼熱ですよ。
でも大丈夫そうです。
注文方法も中々いい感じに出来あがってます。
月が褒めてくれました。
注文取りが楽だって言ってました。
詠も便利だって言ってましたよ。
流琉は冷蔵庫での保存に毎日感動しています。

「凄いですよ、兄様。痛んでませんよ!凄い!」

だってさ。
そりゃあ、そうでしょうね。
そういう物だし。冷蔵庫って。
でも皆嬉しそうに仕事してくれてます。
それが嬉しいです。
色々と頑張った甲斐があります。
今日はオープン前日。
華琳さん達の貸切営業です。
さてさて、久しぶりですよ。この人達を相手にするのは。
なんてったって、全員集合ですからね。
さあ、勝負!

「お任せで結構よ。貴方に任せるわ」
「畏まりました」

お任せね・・・この響きも懐かしいです。
張り切っていきましょう!

「流琉ー、焼き場補助。串見てて!」
「はい、兄様」

だったり。

「月、霞さんにお酒。もう空だよ。お客さんを良く見て。空の枡はお金にならないぞ」
「はい」

てなもんだったり。

「詠、これ季衣ちゃん。盛り合わせ三人前。こっちは楽進さん、激辛串」
「はい!」

なかなかいい感じですね。
ガンガン行きますよ!

「元譲さん妙才さん、こちらネギ焼きです。こちらのコテでどうぞ。鉄板熱いですからね、気をつけて下さい。華琳さんはこちらのチーズ餃子をどうぞ。中身はかなり熱いですから、火傷に気をつけて下さい」

皆さん良い顔してくれてます。
やり甲斐があるってもんです。
あれやこれやガンガン行きます。
でも・・・
荀彧ちゃんの調子が悪いみたいですね。
お酒に弱い子じゃないんですけど、もう酔ってます。変な酔い方してますね。
疲れているんでしょうか?

「華琳さん、ちょっと・・・」
「ああ桂花ね。少し疲れてるのよ。あの子最近忙しいし」
「もう止めときますか?無理は良くないと思いますけど」
「そうね。桂花?桂花?」

寝てますね。
華琳さん命の子が、声を掛けられても起きないとはね。
余程疲れているんでしょう。恐らく、久しく呑んでないと見ました。

「仕方の無い子ね。徐晃、寝かせてきて貰えるかしら?部屋余っているのでしょう?」
「分かりました。少し外しますね」

お姫様だっこで二階の客間へ・・・ん?
流琉がこっちを睨んでる?いや・・・これは。
な~るほど・・・仕方無い妹です。
戻ってきてからは普通でしたけどね。
忙しいし。
それからも、焼き続けです。
まあ、人数は少ない分楽ですが、変わった所を出さないと文句言われますからね。
新商品とかその予定とかのオンパレードです。



「徐晃、悪くなかったわよ。あと流琉?桂花をお願いね。じゃあまた来るわ」
「はい、お待ちしております。今日はありがとう御座いました」
「はい。またお願いします」

皆さん帰っていきました。
元譲さんはやはり妙才さんに肩を借りていますね。
見送ってから、一息。
疲れました。
さて、俺も片付けしましょう。もう一頑張りです。

「はい、片付けお終い。月、詠。今日はお疲れ。四日間やってみてどうだ?」
「大丈夫よ、この注文管理はいいわ。楽ね」
「その分動かないといけないよ?詠ちゃん」
「大丈夫よ、流琉も補助してくれるし」
「はい、任せてください!」

うんうん。お兄ちゃんは嬉しいです。

「流琉もお疲れさん。どうだ?いけそうか?全体的に動く事になるけど」
「大丈夫です。兄様がちゃんと指示してくれますから。私はそれに合わせるだけです」
「そうね、この店だと指示がちゃんと機能しないと駄目ね。混乱するわ」
「おう、任せろ!さて、明日も早い。もう寝るか」
「へぅ~。明日からちゃんと出来るかな~」
「大丈夫よ、月。頑張ろう。流琉も」
「うん」
「そうです。皆で頑張りましょう」

さて、最後にもう一仕事ですね。

「流琉?」
「はい?何で、きゃあ!に、兄様?」
「何だ?して欲しかったんじゃないのか?」
「ちょ、ちょっと、何してんのよ!」

違うのでしょうか?てっきりして欲しいものだと思ったんですが。
お姫様だっこ。

「そんな・・・は、恥ずかしい・・・ですよ・・・」

可愛い奴です。
真っ赤になって。

「ほれ、二階行くぞ?二人もして欲しかったら、下で待ってな」

二人も真っ赤になって。
本当に可愛い妹です。

「へ、へぅ~。ど、どうしよ~、詠ちゃ~ん」
「ぼ、ボクはいらないわよ!」

階段を上がりながら流琉を見ますが、キュっと縮こまって目を閉じています。

「流琉、明日から頑張ろうな。頼りにしてる」
「・・・は、はい・・・」
「じゃあ、お休み」
「お休みなさいっ!」

そんなに恥ずかしがらなくても良いと思うんですけど。
部屋の中に逃げられました。
うーん、乙女心は難しいです。
月も真っ赤になりながら、運ばれましたよ。
一緒ですね、流琉と。
詠はですね・・・

「・・・やっぱヤダ!放せ!この馬鹿兄!」
「痛っ、こら詠暴れるな。落ちるって」

思いっきり暴れる詠に手を焼きながらも、何とか無事に二階へ。
あー。今のが今日で一番しんどかったかも。
さてさて、俺も寝ますかね。




「・・・んー・・・仕事しよ・・・」

朝はしんどいですね。
眠い・・・

「・・・んー?」

誰でしょう?部屋を出たら誰かと鉢合わせ?
んー?誰だ?
目ぼけた眼では良く分かりません。

「キャー!何て格好してるのよ!!!」

ああ・・・荀彧ちゃん泊めたっけ?そういや。
忘れてた。

「ん~、おはよう御座いまふぅ」
「どうしまし・・・キャー!兄様!服着てください!」

ああ・・・忘れてた。
そういや・・・脱いだっけ?

「ちょっと、何やって・・・何してんの!この馬鹿兄!」
「ぐべ!」

痛たた・・・何か投げられました。
でも、目は覚めたかも。
ん?
荀彧ちゃんが目の前に?やけに近いですね。

「な、な、な、な、な」
「な?」
「半裸で近づかないでよ!妊娠するじゃない!この変っ態!!!」
「ぐべらっ!・・・痛てぇ・・・わわっ!が!ぼ!げ!だ!ご!ぷぎゃ!」

ぶん殴られてフラフラ後退、で階段から落ちました。
最悪だ。
今日からオープンなのに・・・最悪だ。
くすん。



あとがきです。

これはもうテラチートwとしか言い様が無いです。
でも彼個人は焼き鳥屋w
ではまた次回お会いしましょう。
駄文にお付き合い下さり、ありがとう御座いました。



[8642] 恋姫無双~店主徐晃伝~ <転生オリ主>その15
Name: 三年G組将軍先生◆b1f32675 ID:382977c2
Date: 2009/06/02 16:22
どうもこんにちは。徐晃です。
ここ洛陽、と言いますか中原ですね。中原は平和です。
華琳さんの統治も上手くいっているみたいです。税も他の人の所より安いので、移民してくる人が多いみたいです。
なんでも許昌って街が箱はでかいけど中身がしょぼいんだって。そこに人を集めて繁栄させるみたいな事をしているらしいですよ。
記憶では都になっていたような気もします。
まあ、それは置いておきましょう。
黄河を越えた河北では、戦争が起きている最中です。
袁紹さんが本格的に河北統一に乗り出したようです。
行商の人の話では、相手との兵力差は何倍もあるそうです。
連合を組んでいた際に話を聞いたりしましたが、袁紹さんは大陸一の阿呆の子らしいです。連合の時の作戦が、凄かったとか凄くなかったとか、元譲さんが言っていました。元譲さんがです。
荀彧ちゃんは作戦と言う言葉を冒涜してるとか何とかって言ってました。
俺に当たられても困る訳でしたが。
きっとイナゴの人は負けるでしょうね。数の暴力には勝てません。
まあ、俺はのんびり仕事をさせてもらいましょう。今日はオープン三日目。頑張りましょう。

「流琉?今日の仕込み分終わった?」
「はい。兄様は?」
「大分前に終わった。俺仕事速いし」

厨房に顔を出し流琉の分を確認。
うん。流石流琉。バッチリです。

「お兄様、昼の営業の片付け終わりましたよ」
「おう、ご苦労さん。詠は?」
「今壁掛けの品書きを掛けてます。それで終わりです」
「じゃあ、飯にすっかな。今日も新しいのやるぞ」
「またですか、兄様?」

うむ。またです。
食べたいものを作れる。飲食業の醍醐味はそこでしょう。
しかも、うちの可愛い妹の驚く顔を見られる。
良い事ばっかりです。

「流琉?ネギ刻んで、細かくね。月は大根おろして。詠には机の準備させといて」
「はい、分かりました」
「じゃあ、詠ちゃんに言ってきますね」

さて、今日のご飯はですね、昨日のうちから準備していたものです。まあ、簡単な物ですけどね。
用意するのは魚の出汁節と昆布からとった併せ出汁です。それに醤油と砂糖で濃い目に味付け。それを軽く煮詰めます。
この出汁節が曲者なんですよ。だって無いんです。大陸に。
なんでも出汁は、トリガラか豚、トンコツですね。他には海老とか帆立とか干した奴の戻し汁ばっかり。なんで鰹節がねーのよ!って屋台を引く前は憤っていましたね。
アレが無いと良い感じに仕上がらないんです。
最初は、徐州に行って漁をしている村でお願いして出汁節を作る所からでしたね。
でも作り方なんて知らねーし。最初の物はただの燻製でしたね。あれは不味かった。でも良い思い出です。あとは昆布も無かったしね。今ではそれらを運んでもらってます。
でも、未だに鰹を発見したとの知らせは聞きません。居ないのかも知れませんね。
え?金はどうしたって?そんなもんは山行けば熊なり虎なり鹿なり取れば良いんですよ。
結構な稼ぎになりますよ。中には人喰い虎なんてのもいましたね。あの激闘はなかなか熱かったです。
こう見えても、俺結構強いんですよ。自分でも忘れがちですけどね。
まあ、置いておきましょう。
にしても、こんな美味しいものを知らない大陸の人は可哀想です。

「お湯を沸かして~」
「兄様?今日は・・・ラーメンですか?」
「違うぞ、流琉。冷蔵庫の一番冷える所に水が冷やしてあるから水場に持って行ってくれるか?」
「はい、分かりました」

そう、冷やしラーメンです。今日は暖かいですからね。
ちょっと、ざる蕎麦が食べたくなったんですよ。
それでです。

「麺を洗って~・・・大皿に盛って出来上がり。うん、簡単。流琉?終わった?」
「はい。これはラーメンを冷やした物ですか?」
「その通り。運んでくれるか?俺はタレを仕上げるから」
「はい、兄様」

月がおろしてくれた大根と流琉が切ってくれたネギでアクセント。
うん。タレもバッチグーですね。
ちょい濃い目がいい感じです。
俺は葉山葵を刻んだものも入れることにしましょう。
さて、薬味も盛って。タレを小分けにして・・・
完成です!

「ほーい、出来たぞ~。ざるラーメンだ」
『ざるラーメン?』

まあ、ざる蕎麦知らないから、こんな物知らなくてもおかしくないですね。

「このタレにこうやって浸けて食べるんだ。こっちの薬味は好みで使ってくれ」
「へ~」
「初めて見るわね。こんなの」
「ラーメンは温かい汁と一緒に食べる物だと思ってました。兄様」

では、皆揃って。

『いただきます』

タレにおろしとネギたっぷりと、山葵を少々・・・
半分くらい麺を漬けて~。
一気に啜る!
うん!美味い!
ん?どうしたんでしょうか?皆がこっちを見てますね。

「ん?どした?」
「兄様、汚いです」
「流琉ちゃん、そんな言いすぎだよ~」
「いいのよ月。下品よ、その食べ方」

なにーーー!!!
ざる蕎麦は音を立てるのがマナーでしょうが!
コレは譲らんぞ!

「これはなこうやって・・・ズズッ!・・・と音を立てて食べる物なのだ」
「兄様?音は控えた方が良いですよ?品が無いです。あとは食べるか喋るかどっちかにして下さいね」
「流琉ちゃ~ん」
「いいのよ月。まあ、馬鹿兄に品格を求めるのも無理ね。放って置いて食べましょ?」

てやんでい!江戸っ子ってのはなあ、蕎麦は啜って食うもんよ!
あ、関東生まれじゃないや、俺。
くそー、みんなで静かに食ってやがる。
何で分からん!それは蕎麦に対する冒涜だ!

「あ、でも美味しいわね。これ」
「そうだね、詠ちゃん」
「うん。違った食べ方も良いですね」

美味いだろ?だから啜れ!啜りつけ!音を立てろ!
ああ、もう違うって!そうじゃない!
いいもん。俺だけでも啜って食うもん。
そんなこんなの涙無しには語れない、遅めの昼食でした。




「あー、今日も疲れた。駄目ね。結構しんどいわ」
「へぅ~、そうだね。詠ちゃん。もうクタクタだよ~」
「お疲れ様です。二人ともお茶飲みますか?」

オープンしてから九日です。
明日はメンテナンスの為お休みです。
どこが、百人程度なんですかね。連日百五十以上は入ってますよ?予想の150%以上です。
もしかしたらと思って、仕込みはがっつりやっておいたので何とかなってますけど。
そりゃあ、二人はしんどいでしょう。流琉も殆ど給仕に回って貰ってます。
俺は大丈夫なんですけどね。だって、反復横跳びのギネス持ちですよ。
ギネス無いけど。
給仕は歩いてナンボですからね。やはり人を雇いますか。
これ以上の負担を掛けるわけには行きません。
給仕だけなら、それなりに可愛くて若ければ誰でも大丈夫でしょう。
仕込みも人を入れてやりますかね。
あとは厨房にも人を入れて、揚げ物にも挑戦していきますか。
まあ、それは後でも良いでしょう。
では、お疲れの三人にマッサージでもしてやりますかね。

「月、靴と靴下脱いで。按摩しちゃるぞ?」
「え?お兄様、そんな事も出来るんですか?」
「本で読んだ。何もしないよりはいいだろう。なんだったら全身でも良いぞ?針とかじゃないから素人でも問題は無いはずだ」
「へ、へぅ~・・・そ、それは・・・ちょっと・・・」
「こら、馬鹿兄!月に何て事するのよ!」

してないって。まだ何も。
別にやましい事は無い訳ですが。

「いらんか?」
「じ、じゃあ・・・足だけ・・・」

恐る恐る俺の膝の上に乗せられる、白く綺麗なあんよ。
小っちゃい足ですね~。
さてさて・・・

「痛かったら言えよ?大丈夫だとは思うけど」
「・・・は、はい・・・」

そんなに恥ずかしがらなくても良いと思いますが?

「ひぅん!」
「痛いか?」
「いえ、そうじゃないです」
「ああ。二人もして欲しかったら待ってろ。終わったらやってやるぞ?先に寝てても良いし。明日休みだしな、別に起きててもいいぞ?」
「・・・ふぁ!ひうっ!・・・ふぅ・・・ひあ!」

変わった声を出しますね~。

「ではでは、そろそろ」
「え!お兄様?・・・ふあ、そ、それ・・・」
「痛いか?」
「・・・き、気持ち・・・良いです・・・」
「そうか。そりゃ、良かった。あんまり力入れるなって」
「・・・で、でもっ・・・は、入っちゃう・・んですぅ~」

そんな調子を両足続けました。
クタ~っとへたれてる月。
気持ちいいって言ってたし、成功したのでしょう。

「で、どうする?やって欲しいか?」

二人は真っ赤になりながらもコクンと頷きました。
そんなに恥ずかしがらなくても良いのではないですかね、お二人さん?
まあ、良いでしょう。

「に、兄様。痛いっ、です」
「すまんすまん・・・じゃあ、これは?」
「・・・ふわぁん!・・・き、きもち・・・良いです・・・」
「よしよし」
「・・・だ、だめっ!・・・んっ・・・」
「駄目って?気持ちいいんだろ?」
「・・・は、はい・・・で、でも~・・・ひゃん・・・」

ふむ。難しいですね。
まあ、喜んでくれていると思うので頑張りましょう。

「・・・兄様・・・それ良いです・・・そこ・・・」
「ふむふむ。なるほど。ここか」
「・・・はい・・・気持ちいいです~」

良し、流琉終了。二人とも大分掴めましたよ。定期的にやってあげましょう。
ふにゃ~とへたれてますね。この子も。
さて、最後は詠ですね。

「痛いのは嫌だから・・・ね」
「任せろって」

流琉はこの辺が良いって言ってたから~。

「・・・ひゃん・・・くすぐったい・・・け、ど・・・き、気持ち・・・良い」
「くすぐった気持ち良いか。難しいなそれ」
「・・・だ、だって・・・ん・・・仕方・・・ない・・・じゃな、い・・・」

この辺はどうですかね?

「い、痛っ!」
「ああ、ごめんごめん」
「ううん・・・痛いけど・・・気持ち良い・・・」
「痛気持ち良いか、それまた難しいな」
「・・・あ、そこ・・・ふぅん・・・はぅ・・・」

気持ち良さそうでお兄ちゃんは嬉しいです。
足は終わりましたが、詠は帳簿付けもして貰ってますからね。
肩も揉んでやりましょう。

「詠、肩もしちゃるぞ?」
「え?じゃあ。お願い・・・しようかな」
「ほいほい」

手を洗って~。
後に回って~。

「お客さん、こってますね~」
「・・・何それ?・・・でも、気持ち良い・・・こっちの方が好きかな・・・ボク」
「そうかそうか。もうちょっと強い方が良いか?」
「ううん。このままお願い。優しいのが好き」

ゆっくりと揉んでやります。
くた~っとなってきましたね。
気持ち良いんでしょう。

「詠ちゃん、いいな~」
「兄様。私も・・・して欲しい・・・です」
「待ってな。終わったらな」



三人に肩揉みをしてから、一杯。
あんまり呑むと怒られますからね。ほどほどに。
つまみは試作の味噌です。米麹を使ってみました。そのままでもいけますけど、今日のはひき肉を炒めた物に大蒜をぶち込んで炒め合わせてみました。肉味噌ですね。
お酒のお供にグッドです。

「ふむ・・・人をがっつり増やせばメニューも増やせるか・・・どうしよっかな~?」

ちなみに三人はもう寝ています。
俺は色々やる事がありますからね。今日は味噌の味見です。
といっても呑むだけですけどね。
人数はどうしようかな?厨房内に二人、給仕を四人。焼き場は俺と流琉で十分だし。
あー、厨房内に人を入れるんだったら、外と中との繋ぎ役が必要か。
うーん。それは詠にしよう。軍師だしな。
月は絶対給仕からは外さない。だって可愛いし。いや、それだと詠も流琉も可愛いし。
いや、それは関係ない。月の接客は良い感じだしな。なんか和む。
という事は・・・五人、休みを回したりしないといけないから、あと一人ずつで七人か。
それでいっか。また駄目なら考えよ。

「にしても俺天才かもな?味噌まで作っちゃったぞ?」
「それはないんじゃない?」

入り口が開いて姿を現したのは華琳さん。
こんな遅くに何用ですかね?

「どうしたんですか、こんな時間に?何時もなら閉まってますよ」
「春蘭がね。明かりが灯っていたって言っていたから。あの子さっき帰ってきたのよ」
「こんな遅くにですか?で、何用ですか?あ、呑みます?」
「一杯だけ頂こうかしら?それは何?」
「味噌って奴ですよ。記憶を元に作りました。それに手を入れてつまみにしてます。どうぞ」

箸で一摘み。

「あら、肴に良さそうな感じね」
「でしょ、良い感じです」
「徐晃?」
「あげませんよ?」
「それはいいわよ。いつも駄目って言うじゃない。そうじゃないわ。今日来たのは」

ふむ。面倒事は御免ですよ?

「もうすぐ、麗羽を攻める。いや、攻めて来るわね」

誰だっけな・・・あ、袁紹さんだ。確か。
嫌な予感がするのぅ。
ん?待てよ。時間的におかしくないか?

「袁紹さんですよね?」
「そうよ。で貴方に頼みたい事。いえ、教えて欲しい物があるのよ」
「ちょっと待ってください。十日前まで袁紹さんは他と戦争してたんじゃないですか?」
「そうよ、公孫賛とね。終わってその勢いで南下してきたのよ」

頭おかしくね?

「統治の問題とか、城の補修とか、色々あるんじゃないですか?戦の後って」
「普通ならね。普通じゃないのよ、麗羽は」

なんだそれは?そんなんで良いのか?河北の民よ。
反乱しちまえ!一揆だ一揆!

「で、いいかしら?」
「ああ、すみません。何ですか?面倒事以外なら聞きますよ?」
「前に食べた煮物・・・根菜ね。アレを作りたいのよ」

はて?話が分からん。
何故に煮物?

「意味が分かりませんよ」
「麗羽はねどうしようも無い馬鹿だけど、その兵力は私の所より多いわ。まあ、負けるとは思ってないけどね、それは置いておきましょう。私が戦前の兵にしてやれるのは激を飛ばすだけ。それ以外には無いの。今回は苦戦する事が見えている。だからかしらね。いつもの糧食とは違う物を出してやりたいのよ。少しでも励みになればと思ってね」

多分激戦になる、と補足する華琳さん。
確かに、戦の時の飯は酷いからな~。
アレ食って頑張れって言われても、俺ならちょっと困る。
こんなんで頑張れるかー!ってね。
たかが飯。されど飯か。
いや、三大欲求の一つだからな。重要か。
食えればそれだけで満足な人もいる世の中ですからね。
美味しい物食ったら頑張れるか。

「まあ良いですよ。ただし作り方だけです。戦場には行きませんからね」
「結構よ」
「ちょっと待ってて下さい。筆と紙取って来ますから」

立ち上がった瞬間に待ったを掛けられました。

「作り方くらい覚えられるわ」
「華琳さんが作るんですか?」
「そんな訳無いじゃない。何万って兵の分よ。指示するだけよ」
「分かりました。根菜と鶏が材料です。野菜は何でもいいです。切った物の大きさは揃えて下さい。味の通りがばらばらになりますから。次は出汁ですが、魚の出汁節と昆布を使いますけど、無いでしょ?だからトリガラにして下さい。で、出汁で野菜と鳥を煮て下さい」
「味付けは?」
「砂糖と醤油です。あとはお酒が入るといい感じですね。寒い所でなら生姜もいい感じになりますよ。で、出汁が湧いたら砂糖を入れて煮て下さい。野菜に甘みが入ってから醤油を入れて下さい。大事なのは味付けしたら一旦冷ます事です」
「冷ますの?」
「その方が良く染みますから。あとは食べる前に温めれば完成です。冷えてても美味しいですから、そのままでもいいですね。調味料の加減は好きにして下さい。俺も雰囲気で作ってますから」

冷めてても美味しいですからね。持って行くには良いでしょう。
でも何万人分も作るとなると大分金が掛かるぞ。
それくらい大変なのかな?今回の戦は?

「冷めてても良い訳ね。ちょうど良いわ」
「ですね。持って行けますから。濃い目に味付けすれば暫く持ちますよ」
「違うわよ。あの冷蔵庫?だったかしら。あれも持っていくのよ。食材運搬の試験よ。馬車に繋げたのよ、真桜がね。丁度良い機会だしね」

何と!保冷車!
こいつ等何作ってんだよ!
村にも一台くれ!

「なるほど・・・だから料理を聞きに来た訳ですか?」
「それもあるわ。あの煮物は作り方が単純そうだったから。大量に作るにはちょうど良さそうだったしね」

そう言って立ち上がりました。
ああ、お酒が空になってますね。
もう帰るのでしょう。

「じゃあ、私は帰るわ。貴方、稟って分かるかしら?郭嘉と言う子だけれど」
「稟さんですか、知ってますよ。鼻血の子ですよね」
「真名を預かったの?」

以前来店してくれた人です。
一悶着あってから、帰る際にです。



「今日は済みませんでした。でも肝臓は非常に効果がある事が分かりました。ありがとう御座います」
「いいですよ。またのご来店お待ちしています」
「はい、必ず!私の名前は郭嘉。字は奉孝。真名は稟と申します。是非、徐晃殿には私の真名を!是非!」




って事がありましたね。やたらと血の気の多い人でした。違う意味で。
郭嘉の早死にの原因は鼻血の出し過ぎかと最初は思いましたよ。だって虹だし。
で、その稟さんが何でしょう。

「色々あって、私の直属で働く事になってね。戦が終わったら風と一緒に行くって息巻いていたわ。何かあったの?」
「風ちゃんも一緒なんですか?」
「貴方、風まで?何したの?」
「何もしてませんよ?夢がどうこうって言ってましたね。あの時」

あの子も変わった子でしたね~。
友達を見捨てて寝るとはね。いやはや。




「今日は夢のお告げ通りでした~。ありがとう御座います~」
「また来て下さい。お待ちしてます」
「風は程昱と言います。真名は風。お兄さんにお預けしますね~」
「良いんですか?」
「ええ。風は夢のお告げを大事にしますので。それに、お兄さんは良い人ですし。それでは~」




だったっけ?確か?

「まあいいわ。それじゃ帰るわ」
「はい、次はお客さんで来て下さい」
「そうさせてもらうわ」
「そういや何で華琳さんが来たんですか?使いの人でも良いでしょう?」
「貴方の流儀に合わせただけよ。私が出したいと思ったのだから私が行く。貴方の考え方はこんな感じでしょう?それに他の人間なら煙に撒いて帰らせるでしょ?貴方は」

ほほう、珍しい。人の流儀に合わせるとは。しかも良く分かってらっしゃる。
いや、筋を通したいだけかな?
どうなんだろ?
ま、いっか。

「良いと思いますよ、その方が。自分のケツは自分で拭かないといけませんしね」
「汚い例えね。じゃあ、お休み」
「はい、また来て下さい」

どの辺りで戦になるのかな?攻めてくるって言ってたし。
陳留大丈夫かな?
恋達にも知らせるだけは知らせておくか。
何かあったら危ないしな。
ま、とりあえず寝るか。
明日は何しようかな~。
また何か新しいの作って、三人をビックリさせてやりますかね?
ではでは、お休みなさい。



あとがきです。

官渡の戦いが始まります。
と言っても参加せずw
という事は、主要メンバーが居ませんね。なら次のお客さんは・・・ニヤリw
では、また次回お会いしましょう。
駄文にお付き合い頂き、ありがとう御座いました。



[8642] 恋姫無双~店主徐晃伝~ <転生オリ主>その16
Name: 三年G組将軍先生◆b1f32675 ID:382977c2
Date: 2009/06/04 21:42
どうも、こんにちは。徐晃です。
今俺は村に来ています。
お店の方は皆に任せまてます。
最近は流琉も焼き場に居ますので、俺は夜の営業以外、要らない子になりつつあります。
仕込みとか昼の営業はバイトさんを雇ってますからね。
その分、新商品の開発やら何やらに時間が取れるのは喜ばしい事です。
色々作りたい物もありますからね。
でも焼き場に立つ方が楽しいです。
さて、それは置いておきましょう。

「採掘も順調ですね」
「そうですね、この方法なら穴を掘って入らなくても良いので、崩落の危険も余り無いので助かります」

この顔を覆面で覆っている人、高順さんです。採掘の指揮官さんです。
石炭を掘ってもらっていますが、やはり危ないので考えました。
人が横穴に入って作業するのが危ない訳ですから、入らなきゃ良いじゃん。という考えです。
縦に掘る事にしました。でも人が入るのは危ないので、人じゃないもので行ないます。
超特大螺旋状掘削機です。
手動なのが珠に傷ですが、危ないよりマシでしょう。
幸い、軍人さん上がりばかりですから、体力には自信のある人ばかりですし。
これは真桜さんに作ってもらいました。と言っても設計だけで、あとは業者さんです。
小型化するのは技術が要るけど、大型化するのはお金だけで出来るんだそうです。
あれです。ボーリングとか言うのでしたっけ?
温泉掘る奴。あんな感じです。
で、掘りまくって落ち着いてから、人が入って拾い上げるみたいな感じです。
効率は余り良くないですが、何度も言いますけど危ないよりマシです。

「採掘量も上がってますし。買値も良いし。黒字ですね、このまま行けば」
「はい、頑張ります。あとお願いがありまして・・・」
「何ですか?」
「『数え役満☆姉妹』ってご存知ですか?」

なんだそりゃ?

「ごめんなさい、知りません」
「色々な所で歌っている芸人さんなんですけど、近く陳留で公演があるんですよ」

歌手なのかな?
名前からして胡散臭いけど。

「皆で行きたいなと思っていまして・・・」
「良いですよ。なら先に入場券を買い付けましょう。任せてください」
「ありがとう御座います。なんでも曹操様の軍が取り仕切っているとかいう話ですので。流石に私達では全員分を買い付けるなんて出来ないと思うんです。よろしくお願いします」

ふむ、『数え役満☆姉妹』ね。
なんだ、麻雀あるんだ。
久々に打ちたいな。結構打てるんですよ。
昔はフリーなんかにも行ってましたし。
ああ、関係ないですね。
まずは、その入場券を買い付けましょう。二千ちょっとあれば良いでしょう。
福利厚生もしっかりしておかないといけませんしね。
しかし、華琳さんの所が仕切っているのか・・・あがりをピン跳ねしてるのかな?
どうなんだろ?
ま、お城に行ってみましょう。



で、紹介された一軒の小屋。
ふむ、ボロイ。
本当に歌手の事務所か?
まあ、いっか。

「すみませーん。御免下さーい」

と中に入れば一人の少女。眼鏡ちゃん。
そろばん弾いてますね。
経理の子でしょうか?

「何の御用でしょうか?」
「ここ『数え役満☆姉妹』さんの事務所ですか?」
「そうですよ」

本当なんだ。
では交渉するとしましょうか?

「えーとですね。今度陳留の近くで公演するって聞いたんですけど」
「そうですよ」
「で、入場券を先に買い付けたいと思いまして・・・」
「そういうのはやってないんです。すみません」

ふむ。淡々と喋る子ですね。
攻略が難しそうですね。

「ちなみに二千人だとおいくらですか?」
「二千人!?」

どの程度の人気があって、どれ位の客入りか分からないんですよね。
ちなみにチケットの価格も知りません。
分からないなら聞きましょう。

「えっと、それ本当ですか?」
「ええ、本当ですよ、二千人」

女の子がそろばんをぱちぱちやって見せました。
ふむ・・・あら、意外とお安いですね。
十分出せますよ。でも予定より安いのは良い事ですが。
どうせだったら・・・

「これで・・・貸切り公演出来ませんか?」

と、そろばんの珠を弾いてやります。
折角の慰安ですからね。奮発しましょう。

「こ、こんなに!」
「ええ。どうですか?出来ませんか?」

眼鏡の子はちょっと驚いているようですね。
資本を持っている人間を舐めて貰っては困ります。

「話の概要はですね。あ、申し遅れました。俺、徐晃って言います」
「もしかして『居酒屋徐晃』の店長!」

ん?有名なのか俺?

「あの洛陽の?徐晃さんですか?」
「ええ、そうですよ。ご存知とは話が早い。俺、村を一つ持っているんですが」
「村!?」

ああ、そういえば変なんだっけ?
華琳さんも言ってたっけ?

「そうです、そこの人の慰安で舞台をやって欲しいなと思って来た訳です」
「個人でこの額を・・・ありえない」

俺の個人資産ではないんですけどね。まあ使い道は、俺か詠が決めてますからね。
そういう意味では個人資産なのかも知れません。

「お話は分かりました。その依頼お受けします・・・ただ」
「ただ?」
「えっと、私人和と言います。『数え役満☆姉妹』の末っ子です」

なんと、この子も歌手。
いやはや・・・確かに可愛いかも。
ん?人和?
どこかで・・・聞いた事が・・・あるような?

「ただいま~」
「お帰りなさい天和姉さん」

元気良く現れたのは、おっぱいちゃん。
天和?・・・これもどこかで・・・
あ!黄巾!
確か波才さんが「天和ちゃん命」とか言ってた!
そっかだから華琳さんが・・・そういう事ね。
なら、黄巾上がりの皆さんには内緒にしといて貰わないといけないかな?
ちょっと、聞いてみますかね?

「失礼ですけど、張角さんですよね?」

二人の顔に緊張が走る。しかし、それも一瞬で戻ったか。
やはり・・・

「私は天和って名前ですよ~」
「いえ別に、どうこうしようって訳じゃないので。ただ、貴方達の素性を知っている人間が近くに居るので」

少し説明した方が早いかな?
と思いますので、掻い摘んで説明しました。

「・・・なるほど、話は分かりました。今回の依頼、先ほどの額でお受けします」
「ありがとう御座います」

俺は長女に話をしていたと思ったら、末っ子に話をしていた。
すり変えとか幻覚なんて、そんなチャチなもんじゃねぇ。
もっと恐ろしい・・・

「えー。お姉ちゃん、難しい話良く分かんな~い。人和ちゃん、お願~い」

怠惰の片鱗を味わったようだ。
頭がおかしくなりそうだ。
という訳です。
流石に驚きですね。
天和・・・恐ろしい子・・・

「舞台の規模はどうしますか?多分皆で作ってくれますよ?」
「良いのですか?」
「まあ、細かい打ち合わせは、後日村に行って高順という人を訪ねてください。その人が責任者です。で、何か言いかけてましたよね?」

そう。そうなんですよね。ただって言ってました。
何か問題があるんでしょうか?

「特に何って訳じゃないんですけど・・・二人の姉が良いと言えばという話だったんです。でも天和姉さんはあんなですし。ちい姉さんは帰ってこないし」

なるほど、三人姉妹ですからね。
皆の意見で決める訳か。

「え~と、徐晃さんでしたよね~」
「何でしょうか、天和さん」
「私、甘い物が食べたいな~。食べれれば舞台頑張るよ~」

どっかで聞いた台詞ですね・・・あ、華琳さんだ。
ふむ見た目は・・・ぽややんおっぱい。
ただの甘い物好きと見た!
なら、そう難しい事は無いか。
今二案あるんですけどね・・・どっちにしようかな?
ただ単に甘い物ならあっちか・・・ふむ。
良いでしょう。
得意じゃ無いですけどね。研究してます。
まだまだ勉強中ではありますが。

「良いですよ。ならそうですね・・・明後日お店に来て貰えますか?昼間は営業してますから・・・その後で」
「良いの?本当に?」
「ええ、結構ですよ。それで頑張って貰えるなら。三人でお越しください。お待ちしています」
「わ~い。『居酒屋徐晃』超人気で中々入れないんだよね~。噂の人気店の店長が作る甘い物、楽しみだな~」

このおっぱいちゃん、黒いな?
今、何気にハードル上げたぞ?
しかし!
この世界に無いものを作り出す!
それがこの徐公明の実力!
思い知るが良い、おっぱいよ!



「さてさて、どんな塩梅かな?」

今日はあの三姉妹との約束の日です。
これも結構試行錯誤したんですねよ。
最初は焦げるだけだったし。
固まらないし・・・散々でしたね。
二品とも完成形が見えていますからね。その他も絶賛進行中ですし、人手が増えたら本格的にメニュー増量です。

「うん。いい感じ。味も・・・こんなんだった筈。多分」

この記憶を元に作る作業が難しいんですよね。
正直形は分かっていても作れない物も沢山あります。
だから、俺しか出来ないから進みも遅い。
たまに神が光臨してすぐ出来る時もありますが、稀ですし。
地道にコツコツ研究の毎日です。

「兄様、来られましたよ」
「ほい了解。流琉?仕込みの監督宜しくね。終わったら俺も手伝うし」
「はい兄様。任せてください」

本当に助かります。今出しているメニューだけならば流琉達だけで十分間に合います。
最近雇った人も順調に仕事覚えてくれてますし。
といっても、簡単な事しかして貰ってません。情報の流出を最小限に抑えないといけませんしね。
さて、こいつは女性に受けると思いますけどね~。どうなる事やら。

「ようこそ、いらっしゃいました」
「店長~。来たよ~」

この前見なかった子も居ますね。ちい姉さんとやらでしょう。
この子達三人が黄巾の首謀者とは・・・世の中分からない物です。
ふむ、三人とも可愛いし。
おっぱい、ちっぱい、ちっぱい。
ふむ。バランス悪いな。
いや、関係ないし。

「阿蘇阿蘇に載ってたお店だよね、人和?」
「そうよ、ちい姉さん。低価格で美味くて、早い。給仕も可愛い子が居る。女性男性問わずの大人気店よ。見た事も無い商品もあるとかいう噂ね」

ほほう、そんな噂が・・・阿蘇阿蘇いつ取材に来た?
俺知らんぞ?さては詠辺りか?

「まあ、それは置いておいて下さい。こちらをご準備させていただきました。キャラメルと言う物です」
『きゃらめる?』

そう、キャラメル。あの生キャラメルと呼ばれるものです。
材料は凄くシンプル。
要するに混ぜて固めれば出来上がりです。
牛乳を入れて柔らかく仕上げました。
きっと、それが生キャラメルの秘密でしょう。
甘みは、蜂蜜と砂糖。
砂糖は高いですが、蜂蜜はそうでもありません。
いや、一般的には高いですけどね。
最近は養蜂にも手を出しましたからね。市場の半額程度で仕入れしてます。
もっと規模を増やせれば、更に金額は落ちるでしょう。
村の作物の受粉にも役立ちますし、一石二鳥です。
ただ、蜂は怖いけど。何もしなければ害は無いって言ってましたし。大丈夫なんでしょう。

「甘~い・・・けど、無くなったよ?なんで?」
「うん。ちいも噛んでないよ?」

そう、其処が生キャラメル最大の特徴。
あと、ここの冷蔵庫はそんなに温度が下がりきらないので、これも良い感じに働いているとみました。

「美味しい、これ」
「そうだね~。でも無くなるのは残念かな~」
「うん。残念だけど、美味し~。ちい、こんな美味しいの初めて~」

満足してくれたかな?
良い顔してくれてます。
その後も、もりもり食べてくれてます。
女の子は甘い物食べてる時、本当に良い顔します。
美味そうに食べてくれるのは、料理人にとって何よりですね。

「ねえねえ、店長?」
「何ですか?天和さん?」

おお、揺れる揺れる。

「これ、また作って欲しいな~」

ふむ。

「じきに商品になってますから。買って下さいね」
「え~」

ぷくー、っと膨れるおっぱいちゃん。
立ち上がり・・・ん?

「ね~。作って欲しいな~」

わお!腕が谷間に!
しかも上目使いのウルウル瞳。
久しい感触です。
二十年振りくらいですか。
ああ、懐かしい。
そういえば、長い事ご無沙汰ですね。まあ、気にしてないけど。

「駄目ですよ?俺はそう言う色仕掛けには強いので。篭絡されませんよ?」
「む~。じゃあ、舞台見に来て?絶対虜にしちゃうんだから」
「ええ、舞台は是非見に行きます」
「絶対だよ~。約束だからね~」

と、帰って行きました。
ふむ。舞台の細かい打ち合わせもあるし、高順さんにも伝えないといけないな。
明日も忙しそうだ・・・ん?
何やら殺気が・・・うおう!
流琉と詠!
さては見てたな?ちょっと不味いなコレは?

「どした?」
「兄様の・・・兄様の馬鹿ーーーー!!!」
「げべら!!!」

流琉?まな板は止めなさい・・・重いから。
全く、こんなんでヤキモチ焼くなよな。
でも、痛てぇ。



あとがきです。

チョット仕事の都合で遅れてしまいました。
本当はこの後、コンサートの様子もありましたが、カットです。
では、次回もよろしくお願いします。
駄文にお付き合い頂き、ありがとう御座いました。



[8642] 恋姫無双~店主徐晃伝~ <転生オリ主>その17
Name: 三年G組将軍先生◆b1f32675 ID:382977c2
Date: 2009/06/04 23:54
「今日は休みですよ?」
「ええ、知っているわ」
「なら、何故に?」
「新しい物出しなさい。完成している物もあるでしょう」
「んな無茶苦茶な」

こんにちは、徐晃です。
いきなりですが、今日は定休日です。
機材のメンテナンスです。
もう一度言います。定休日です。
流琉達は城の季衣の所へ三人で遊びに行ってます。

「いいじゃない。流琉達から聞いたのよ。暇してるってね」
「ったく、何か食べたい物ありますか?」

暇って。流琉よ、兄様は悲しいぞ?
今日のお客さんは、軍師三人と君主さん。
まさか休みの日に襲来するとは思ってませんでしたけどね。

「そうね・・何か食べたい物はあるかしら?」
「私は華琳様と同じものが良いです」
「風はですね~・・・ぐう」
「「寝るな!」」

おお、稟さんとハモった。

「おお、風とした事が。考えるのが面倒なのでついつい」
「風は、何がいいのかしら?」
「そうですね~、お兄さんにお任せします」
「私は肝臓さえあれば!」

お任せね・・・ふむ。どうしよっかな~?
何が良いかな~。
ん?この流れはおかしくないか?
でも、今さら追い返すのもアレですしね。
諦めましょう。

「揚げ物でも良いですか?」
「あら珍しいわね」
「晩飯にやる予定の物ですよ。量は十二分にありますからね」

今日はアレを晩飯でやる予定でしたからね。
朝から準備してあります。
もし、足りなくなれば買えば良いだけの話ですし、仕込みに時間がかかる料理でもないし。

「結構よ」
「じゃあ、炭台の前でお願いします」

この炭台も便利ですよ、薪に変えれば三尺の巨大コンロに早変わりですから。
使いこなせませんけどね。
あんまり火力は出せませんけど。

「それじゃあ、待ってて下さい。仕込みしますから」
「ちょっと貴方!華琳様をお待たせする気!」

仕込みしないと食べられないよ?

「別にいいわよ?なんなら、ここで会議の続きをして待ってましょう」
「か、華琳様?それは幾等なんでも」
「桂花の言う通りです」
「別に良いのではないですか~?お兄さんしか居ませんし~」
「風!貴方何言っているの!?」

会議ね。他所でやって欲しいですね。正直な話。
でもどうせ言っても聞かないし。
放っておいて裏行こ。
野菜は仕込みしてあるので、後は肉と魚ですね。
あとはコレの塩梅次第ですが・・・うむ。大分近い気がします。
サクサク行きましょう。
こんなもんはすぐですし。

「何をしているのかしら?」
「おおう、華琳さん!?会議は?」

びっくりしました。急に後から声を掛けないで欲しいですね。

「これは何?」
「昼飯ですよ。あっちで待ってて下さいよ」
「桂花と稟が五月蝿くてね、やめたわ。待っていても暇だから見に来たのよ」

まあここで会議とか正直止めて欲しいし。
つか、するか?普通?

「今日は軍師さんだけなんですか?他の皆さんは?」
「季衣とあの子達だけよ、戻ってきたのは。他の子は河北に居残り。やる事はたくさんあるしね」

やはり、一月程度で戻ってきた方が凄いのでしょう。

「でも勝てて良かったですね」
「当然よ。勝つべくして勝つ。その為の策であり、将なのよ。戦は数だけでは決まらないわ。それに戦はね、勝てないのならしてはいけないのよ」

ふーん。
あ、孫子で読んだ事があるような・・・ないような。

「でも、何で帰ってきたんですか?やる事あるんでしょ?」
「あのね、私が一々居なくてはいけないのだったら。それこそ、私が千人は最低でも必要よ」

・・・嫌過ぎる。こんな我侭娘千人とか。

「何よ?」
「いえ、何も」

任せてきたのか。
多分妙才さんに。
他の人は・・・向いてないな。多分。

「徐晃、これは何?えらく荒いけど。何かを砕いたのかしら?」
「だから、待ってて下さいって言ってるじゃないですか。教えませんよ」
「本当にケチね」

ほっとけ。
そんなやり取りを暫く続けながら仕込みを続けます。
ほんとに何も手伝いませんね、この人は。
なんか色んな所開けては閉めてを繰り返してます。

「まあ、こんな物かな・・・あとは粉作って~。ああ、そこに居るなら薪を運んで下さいよ」
「嫌よ」

はえー。断るのマジはえー。
でも予想通りというか、変わらんと言うか。
ちゃっちゃと運びますかね。
火を入れて・・・油を温めて。この隙に例のブツを小分けしてっと。

「珍しいわね。貴方が揚げ物なんてね」
「まあ、試験的な意味合いもありますけどね」

さて・・・油は・・・いい感じ。良し!始めましょう!
やべ、美味そう・・・それに懐かしいし。でもソースが欲しいな~。
でも良く分からんし。果物とか使うんだっけ、確か?
でも無理だな。全く製造方法が浮かんで来ない。
流石に浮かば無いのは無理だ。

「揚がりますよ。このタレに漬けて食べて下さい。稟さんには別途で肝臓用意しましたから。肝臓はそのまま食べて下さい」
「徐晃殿!ありがとうございます!」
「はい、どうぞ」

稟さんは大げさですね。まあ喜んでくれてるみたいだから良いけど。
皿に盛って・・・ん、これは何だ?ん~、分からん。ま、いっか。

「このタレに付けるのね・・・あら、いけるわね」
「これは・・・お魚ですね~」
「私は卵よ?・・・こっちは長芋」
「私のは「稟は肝臓でしょ」

ツッコミはやっ!

「徐晃。これは串揚げ、とでも呼べばいいのかしら?」
「そうですね。タレはポン酢です」
「柑橘を使ったのね」
「そうです。ちょっと違う気もしますが、大体こんな感じで。十分でしょう」
「美味しいですね~。揚げ物でこってりかと思いきや、このぽんずでさっぱり。やはり食事はお兄さんにお任せするのが良いですね~」
「気に入った、風ちゃん?」
「ええ、とても。このさっぱりぽんずが良いですね~。他の物でも合いそうです」

この子はさっぱり系が好きみたいですからね、このポン酢は気に入るでしょう。記憶の中の物より大分きつい気はしますがね。
まずまずかな?
でも、まだまだポン酢の改良をしないといけないとは思います。
パン粉は肉まんの皮を流用しました。バターを入れてパンにしても良いんですけどね。でも揚げるし、変わらないでしょう。きっと。

「稟さんのはどうかな?結構イケると思ったんだけど」
「ええ、美味しいです。中の肝臓は柔らかく、甘辛い味付け。しかし、外の衣はさくさくしていて。素晴らしいかと」

べた褒めですね。いや、この人はレバーなら何でも褒める気がします。
さて、問題は猫耳です。

「荀彧さんはどうですか?」
「・・・悪くないけど、嫌いなものが当たったら嫌ね。だって外からだと分からないもの」
「まあ、今日は適当ですからね。注文式にすれば大丈夫でしょう」
「・・・長芋」
「はい?」
「長芋揚げてって言ってるの!」

最初からそう言えば良いのに。

「風は玉子が良いです。あとお魚」
「私は肉を出して貰おうかしら」
「じゃあ私は「肝臓でしょ?」

はやっ!
まあ、良いでしょう。
仕事みたいになっちゃいましたね。結局は。
まあ、嬉しそうに食べてくれてるから良しとしますかね。
でもって、俺の分は~。

「徐晃?それは何かしら?」
「ん?俺の飯ですよ」
「大きいですね~」

トンカツです。
しかし、ソースが無いので俺は考えました。
豚を半分に切って、そこへ梅と大葉の刻みを仕込む。
これはナイスでしょう。
おろしポン酢は準備済み。我ながら素晴らしいですね。
ただちょっと、大き過ぎでしたね。
グラムで言えば三百近くあるんじゃないかな?
流石にでか過ぎたかな?
揚がるかな?

「揚げ物はかなりの量作れますよ。案は山のようにありますからね」
「なら店を出しなさいよ」
「それもそうなんですけどね~。でも俺は自分でやりたい人ですからね」
「上に立つ人間にはなれないわよ?」
「そんな気はないですよ」

裏返してっと・・・おお、マジでけぇ。

「お兄さんは華琳様と仲良しですね~」
「ん?俺?悪くは無いと思っているよ。でも良いかと言われるとちょっとね~」
「貴方、華琳様に何て口を聞くのよ!」

だって、この人我侭過ぎるし。

「どちらかと言うと悪友かしら?こいつは私の驚く顔を見て楽しむ。私はこいつを困らせて楽しむ。そんな関係かしら?」
「俺に聞かないで下さいよ」

まあ、事実っぽいですけど。
そんな感じかな?
おっと、そんなどうでも良い事より、俺のとんかつとんかつ。
どうですかね・・・揚がってるかな?
このままだと焦げるから、後は余熱で火を入れましょうかね。

「他のも揚がってるかな?どうぞ。風ちゃんはこれも」
「何ですか?」
「ササミの梅挟み揚げ。好きでしょ?このまま食べて」
「覚えていたのですか?」
「そうだね。良く来てくれるお客さん、特徴のあるお客さん。どっちも顔と名前と好物は大体覚えてるよ。仕事柄ね」

嫌でも覚えます。連日大賑わいでも、カウンターのお客さんの顔は覚えるし、良く来てくれる人も覚えますしね。

「お兄さんは、このまま文官さんでもいけそうですね~」
「その気は無いよ。料理人だからね」
「お兄さんの人生です。風がとやかく言う気はありませんよ~・・・おお、これも美味しいですね~」
「そりゃ良かった」

俺のとんかつは大丈夫かな?
・・・おお!素晴らしい!
火は通ってる。いい感じ。
しかし、この世界に来てこんな物を作る日が来るなんてね~。
ガキの頃は思ってもいませんでしたね。
お味の方は・・・美味い!
豚が美味しいのかな?それとも紫蘇梅がいけてるのか?
いや、これは両方良い感じっぽい。
やばいな。揚げ物専門店・・・金のなる木にしか思えない。

「徐晃、それ寄越しなさい」
「えー、華琳さんのあるでしょ?そこに」
「いいじゃない。そんなに大きいのだから」
「他人の芝生は良く映りますけど・・・一切れだけですよ?」

この人は我侭ですね~。この子の親はどんなだったんですかね?顔が見たいです。
一番端をくれてやる。

「あ!何勝手に取ってるんですか!」
「貴方一番端を寄越そうとしたでしょ?そんなの嫌よ。この一番大きな真ん中が良いわ」

なんて奴だ。
美味そうだったのに。ああ、俺のとんかつさんが・・・真ん中のいい感じが・・・消えてゆく。

「あら、これも美味しいわね。豚と梅、良く合うわね。他に出来ないの?」

分かってはいるけど・・・分かってはいるけど。
横暴だ!

「はいはい。ちょっと待ってて下さい。作りますから」
「貴方ね!華琳様に何て口聞くのよ!さっきも言ったでしょ!」
「いいのよ、桂花。だって、作るのですもの」

くっそー。流れが無い。
華琳さんに追い風の展開。
いや、場の雰囲気自体が掌握されているのか?
全部計算してなのか、これは?
しゃーないか。
豚だから・・・チーズを挟んで。
ポン酢とは合わないから塩は若干多めで。
胡椒欲しいな。
どこにあるんだっけ?インドだっけか?
無理だな、遠すぎる。
いや、シルクロードで・・・無理無理。そんな気無い。
なら、海で・・・無理無理。俺泳げないし。いや、この体は泳げるかも?でも嫌だな。
なら誰かを使って・・・流石に危険過ぎるな。

「それにしてもお兄さんは料理が上手ですね~」
「仕事にしてるくらいだからね。上手じゃないとお金にならないさ」
「気も利きますし、職も上手くいってる。料理が上手で優しいし・・・ふむふむ」
「褒めても何も出ないよ?」
「いえいえ、そういう意味では無いのですよ~」

華琳さんの所の側近は皆、癖が強いですね~。変わり者とも言いますけどね。
まあ、そういう人の方が何かの才はありそうですけど。
その後も結局アレコレ出しました。
いや、出さざる空気になっていたと言った方が正しいですね。
で、最後に、

「何か甘味は無いの?」

またかよ!
つーか、帰れよ!

「まだ居座る気ですか?あるにはありますけど・・・今日の晩飯の後にと、思っていたんですけど?」
「まだ日は高いわよ。また作れば良いじゃない」

分かりました、分かりましたよ!
どうせ、食べるまで帰らないんでしょ?
無いって言ったら作れって言うのでしょ?

「また作り直しだよ・・・ったく。それより出来てるかな?・・・出来てるっぽい?一応冷えてはいるし」

今日はメンテナンスと言っても機材は動いています。
冷蔵庫のからくりは部品を交換してもらっただけですし。
水道も一部交換して、持って帰りましたからね。
多分、持ち帰ってから本格的に調査するんでしょう。
耐久調査とか色々あるんでしょうね。きっと。

「はい、どうぞ。それだけしかないですからね」
「これは・・・黄色い杏仁?」
「そのようですね~。プルプルしていて可愛いです」
「横に添えてある、白い物も見たことないわね」
「はい、私も初めて見ます」

これ作るのは結構難しいのにな~。
手間が掛かるし。
でも、試行錯誤を繰り返していた時とは違い、最近はレシピを書き留めたからな。
同じものは作れるでしょう。失敗した時のレシピも書いてるから万全です。

「見ていても味は分からないわね。いただきましょう」

皆、揃って小さいレンゲでパクリ。

『!!!』

まあ、これが嫌いな女の子は居ないでしょう。
あんまり甘すぎないように調整はしていますが。
だって、食べにくいでしょ?甘ったるいと。

「徐晃?」
「教えませんよ」
「早いわね・・・これの名前は?」
「プリンです」
『ぷりん?』

今日は休みで流琉達も居ないので作ってみました。驚かせようと思いまして。
生クリームも添えました。
バターといい、生クリームといい。分離に時間が掛かるのが難点ですね。
保冷車を村で保有できれば、製造して運搬出来ますが。なにせ、この冷蔵庫いくらかかるか分かりません。というか、真桜さんが居ないと作れません。
今日の夕飯のデザートにと思って作ったんですけどね。
まさかこの人達に出す事になるとは・・・

「ちょっと!」
「なんですか、荀彧さん」

何でこの人はそんなにカリカリしますかね~。
可愛いのに、勿体無い。

「これいくらで出すの!」
「うーん、ウチの店は甘味の品書きを入れてませんしね~。今の所予定ないです」
「出しなさいよ!」
「えー」

そんなに気に入ったんですかね。

「桂花?気に入ったの?」
「え、いや、その・・・品書きに甘味が在った方が女性に喜ばれるかと思いまして・・・」
「貴方の店じゃないのに?」
「それは・・・その」

うわー。いじめだ、いじめ。
可哀想に。でも嬉しそうだ。
あれですね。
Mの人ですからね。問題なしでしょう。

「お兄さん?前もって言っておけば用意してくれますか~?」

ふむ、予約という奴か?

「出来るよ、多分だけど。食材が揃わないと作れないけど」
「十分です~。ね、稟ちゃん」
「私は甘味より肝臓があれば良いわ。それで生きていける」

稟さんはそうでしょうね。
女の子でレバーを一心不乱に食べるのはこの子くらいでしょう。
しかも生レバ。
なかなかにシュールな絵です。
ふと視界に入った華琳さんの顔。
ああ、それ止めて。そのニヤァは止めて。
ろくな事がない。

「こうしましょう。この店の定休日には、ここで甘味を食べる。なかなか良い案ね」
「華琳様、素晴らしい案です」

おーい、クルクルちょっと待て。

「阿呆ですか?」
「何よ?」
「いや。休みですから」
「私達は休みじゃないわよ?」

知らねーよ。
しかもその当然、みたいな顔は止めれ。

「別に相手をしなくてもいいわよ。勝手にやるから。冷蔵庫にでも入れておきなさい。居なくても結構よ」

なにそれ?ここは貴方の家じゃないですよ?
相手しなくていいのはありがたいですが。

「いいじゃない。それくらい出しなさいよ」
「出来なくはないですけど・・・城で勝手にやって下さいよ」
「なら、運んでくれるのかしら?」
「・・・・・・人を寄越してくれれば良いですよ。作りますよ、作ればいいんでしょ!」

あー、今日は負けっぱなしだ。
くそー、全部元譲さんがいないからだ。絶対そうだ。
あの人は考え無しで突っ込んで来てくれるからな、手玉に取りやすい。
余計な仕事が増えてしまった。

「風はここに来ますよ~、前もって言っておきます」
「そうしてくれると助かるよ」

この子は何を考えているかは分からないけど、良い子ですね。
無茶しないし。
稟さんもレバー出しとけば無害だし。

「風?大分気に入ったみたいね」
「そうですね~。手を出される前に、と言った所ですかね~」

うん?どういう意味だ?

「あら、そうなの?確かに悪くはないと思うけどね。でも野心が無さ過ぎるわ」
「それも一つの生き方かと思います~」
「なるほどね」

何の事ですかね?主語が抜けすぎて話が掴めない・・・
表情にも出てないし・・・
読めん。この二人の会話は読めん。
良く考えれば、一番分かりにくい客なのかも知れないぞ?この二人は。
まあいいや。
関係無いし。
とりあえず、片付けしよ。
さっさと終わらして、買い物行かないと。
またプリン作らないといけませんからね。
可愛い妹の為に!
もう一度言いますが、妹の為です!




「ただいま帰りました~」
「お帰り。ん?二人は?」
「小物を買って帰るって言ってましたよ。でも先に出ましたから、すぐ帰ってきますよ」

うんうん。年頃の女の子してます。お兄ちゃんは嬉しいです。

「兄様?洗濯物洗いましたか?」

・・・あ!

「・・・・・・忘れてた」

完全に忘れてた。
やばい!布団も干せって言われてたっけ?

「お布団は?」
「すみません」
「兄様?出かける前に言いましたよね?」
「・・・はい」

あー、華琳さん達が来る前までは覚えてたのに。くっそー。

「兄様、私達が居なかったらどうする気ですか?陳留の頃はお布団の裏、かび生えてましたよね?」
「はい、すみません」
「それにこの前は、部屋でお酒こぼして。床が腐っちゃいますよ?」
「はい、すみません」

また、正座か・・・トホホ。

「いいですか?生活と言うのはですね―――

嗚呼、俺何してんだろ?
本当にこの店の主なのでしょうか?

「ただいま~」
「ただいま帰りました~」

帰ってきてしまいました。もうちょっとゆっくりしてくれば良いのに。
コレで詠と流琉のコンボ確定です。
出玉の代わりに涙が止まりません。
終わった。ええ、終わりました。



あとがきです。

実はこっちが本命でしたw
その16は元々その?で使う予定だったんですよ。
でも折角なので三姉妹を投入しました。それだけです。
話は出来ていましたので一日二本投入です。
では、次回お会いしましょう。
お付き合い頂き、ありがとう御座いました。



[8642] 恋姫無双~店主徐晃伝~ <転生オリ主>その18
Name: 三年G組将軍先生◆b1f32675 ID:a7302184
Date: 2009/06/06 12:23
どうも、こんばんは。徐晃です。
只今絶賛営業中です。
とは言え、大分閑散としてきました。
後片付けも順調ですし、洗い物も殆どないし。裏では月と詠が明日の昼用の仕込みをしているでしょう。
ただ、焼き場はフル稼働中です。
今、季衣が来ています。
鉄板は流琉が見ています。
この子は本当に良く食べますね。明日の仕込みは多くなりそうです。

「季衣ちゃん。タレ焼きどうぞ」
「ありがと、兄ちゃん。ねぇ流琉~?長芋の塩焼きまだ~」
「もう焼けるわよ。ちょっと待って」

もうね。延々食べてる感じです。
恋には劣りますが、元譲さんを遥かに凌ぎます。

「明日か明後日にはこっちを立つからね~、一杯食べとかなきゃ」
「でも何故に北?」
「ん~、分かんない。ボクは華琳様の傍に付いていくだけだからね~」

そう北なんです。この子は北に行くって言ってました。
大方平定したって聞いたんですけどね。
何故でしょうね?
反阿呆が統治しているより、華琳さんが統治していた方が住みやすいと思いますけど。
今度、詠にでも聞いてみましょう。

「季衣ちゃん、どうぞ。まだ食べる?」
「ん~。どうしようかな~?じゃあ、あと盛り合わせ三人前とねぎ焼き一枚とべーこん!大っきいままが良いな~」

そんなに入るのね。
それだけ食っても太らないのは凄いですね。
この前、猫耳ちゃんが太らない甘味を作れって言ってたけど。気にしてるのかな?
細いと思いますけどね。あの子は。
女の子は大変ですね。

「季衣、あんまり無茶しないでよ?」
「まだ余裕だよ?」
「違うわよ!もう!戦の話!」
「大丈夫だよ。ボク直接戦うのって殆どないんだよ?いつも華琳様の傍だからね」
「兄様も何とか言って下さい」

ふむ。しかし・・・戦ですからね~。
季衣はどうか分かりませんが、皆死ぬ覚悟はあると思いますし。
いや、季衣もそれはあるはずでしょう。

「ふむ。危なくないように頑張れ。怪我しないように頑張れ」
「え~。それじゃあ良くわかんないよ?」
「うん、俺も」
「何だ。兄ちゃんもか~」
「兄様?もう!」

心配なのはわかりますけどね。戦に出るわけだから。
でも今回は北に行くって言ってるから、戦はないんじゃないでしょうか?
つーか、マジで何しに行くんだろう?
ま、いっか。どうでも。
今はそんな事よりも、この大食漢を満足させましょう。



季衣達が出立したその日の夜。
営業していて気になる話が耳に届きました。
お客さんの会話をちょっと聞き耳立てた所。
なんでも、袁術ちゃんが徐州へ進行する際に孫策こと雪蓮さんが裏切ってそのまま領土を分捕ったって話しです。
クーデターって奴ですかね。
あの子も阿呆っぽい子でしたからね。
多分、今まで飼い殺しにしてきた、虎の娘の手綱を緩めてしまったのでしょう。
なんてったって、虎の娘ですからね。
小覇王ですから。
でも、いい人そうでしたね。雪蓮さんは。
お酒を楽しそうに呑む人に悪い人は居ません。
悪い人はそれっぽくしか呑みませんからね。
それにしてもまた、戦ですか。嫌な世の中です。

「詠。この洛陽は安心かな?」
「まず大丈夫よ。北の袁紹は滅んだ。東の劉備も攻めてくる気配を見せない。問題は西の涼州連合だけよ。でも、ここまで来るのに、関を抜け長安を抜けってしないと駄目だから難しいわ」
「なら、安心か」
「そうね。劉備ももう駄目だし」
「何で?攻めて来ないんだろ?」

眼鏡のブリッジをクイッと上げる詠。
おお、何か格好良いぞ。

「曹操が北を平定したでしょ?」
「らしいね」
「で、その主力は帰って来ていない」
「元譲さん達は居残りって言ってた」
「なら、その兵力をどうする?帰って来る気配が無いのよ?」
「おお!南に下るのか!」
「そうね。それしか考えられないわ」
「でも、理由がないだろ?」

ため息を一つ。
分からないんだから、しゃーねーじゃん。

「北郷っているでしょ?」
「いるな」
「何て呼ばれているか知ってる?」
「『天の御遣い』だろ」

それ位は知っていますよ。結構巷で有名でしたからね。

「『天』って何を意味するかわかる?」
「帝だろ?」
「そう。帝は二人も要らないわ。本当かどうかは分からないけど、劉備は帝の血筋らしいじゃない。その劉備がもう一つの『天』を抱いている。これだけで理由は十分ね」

そんな事だけで戦するのか?この世界は本当に大変ですね。

「じゃあ、劉備さんが大きな勢力になる前に『天の御遣い』ってのは居ません。ってしてたら良かったって事?」
「そうね。最初は義勇軍程度だったのでしょ?その頃なら問題は無いけどね。知名度も上げやすいしね。官位を得る前にその名を捨てるべきだったわね。ボクならそうするかも。それか・・・いや、これはないわね」
「ふーん。大変だな。領主をやるのも」
「今の状況は劉備からすれば言われは無いけどね。漢からすれば問題ね。自分の力がなくなって、他の『天』が民衆に支持されてる。しかも劉備は漢の血筋だし。劉備自身の人気もあるしね」
「詠は賢いな~」
「褒めても待ったは無しよ」

っく。

「・・・ありません」
「またボクの勝ちね。この賈分和に囲碁で勝てる訳ないでしょう。かなり強いんだからね」

くっそー。囲碁は俺も打てるんです。こっちで覚えました。
先番有利の概念がないから、先番でやれば勝てるかな~、と思ったんですけどね。
五目か六目位有利なんでしょ?確か?
こうして詠と囲碁を打つのは楽しいです。
月には勝ちました、流琉は打てません。
でもって詠には勝てません。
もう十回近くはやってますけど一回もです。やはりやるなら強い相手が良いです。
でも、最近は手加減してくれてるみたいです。
前よりも接戦になってます。
優しい子ですね。
そんなのはいらん!って言ったら多分ボコボコに負けるでしょう。
だから言いません。あと拗ねるし詠は。最悪もう打たないとか言い出すでしょうしね。

「で、でも最初の頃より打ててるわよ?」
「本当か?」
「う、うん」

おお、詠が褒めてくれた。嬉しいですね~。

「よーし、また今度な。次は勝つぞ!」
「無理だと思うけどね。相手くらいはしてあげる。でもせめて帳簿付けを止めさせる事くらいはしてよね」

くっそー。あのフフンと鼻を鳴らすのが可愛すぎる。
確かに帳簿付けしながらだしな・・・勝つのは無理かな~。

「・・・今回は何して欲しい?」
「じゃ、じゃあ肩揉んで」
「いつもそれだな」
「う、うっさい!馬鹿兄は揉めばいいの!」

勝った方が負けた方に一個お願い出来る券をかけてやってます。
やはり何かあったほうが良いでしょ?
俺が勝ったら何させようかね?

「寝巻きに着替えたらしてやるよ。降りておいで」
「う、うん」

パタパタと二階へ向かう詠。
うーん。今日は何処が敗因だろう?
うんうん唸っていると、詠が降りてきました。
寝巻き姿も可愛いですね。

「先生、今日の敗因は何処ですかね?」
「そうね。中盤の左辺が酷かったわね」

酷かったって。
でもちゃんと聞かないといけません。

「え・・・っと。こうだったかな?ここで黒が・・・こう。でボクがここ。これをこっちに打っていれば・・・結果はこうかな?ほら黒有利」

ほほう。勉強になります。
なるほどなるほど。

「もうちょっと、内側がいい」
「ほいほい。他は?」
「と言うか、全体的にもうちょっと先を読めば良いだけ。それでもっと良くなるわ。あ~気持ちいい」

もっと先を読めってか?結構頑張ってるのにな、これでも。
その後も延々肩を揉み続け、結局流琉と月にも肩揉みしました。
さてさて、明日も頑張ってお仕事しましょうかね。




えー、えらい事が起こってます。
華琳さんです。
行商の人から聞きましたが、何十万という大軍で南下中らしいです。
北海を無血開城で降し、そのまま南下しているそうです。
最初聞いた時はびっくりしました。
あくまで噂の範疇ですが。
何十万って。どんだけー。
今、洛陽にこの話が来ている訳ですから、もしかしたら劉備さんはもう負けたかも知れませんね。
でも劉備さんは蜀に行くはずではなかったでしょうか?
徐州から益州はもの凄く遠いです。端から端みたいな感じですね。
知ってる歴史と違う訳ですから、劉備さんはこのまま終わるのかも知れませんね。
・・・でも。
それを北郷君が許すのでしょうか?
あの子は理想に燃えてましたからね~。
きっと英雄の熱に当てられたのでしょう。
俺も同じ境遇なら、同じ事をしていたかも知れません。
だって劉備ですよ?英雄ですよ?しかも負ける方の英雄。
何も知らない所に放り出され、目の前に過去の英雄。
・・・違いない。
あとおっぱい。うん、これ重要。
ま、いっか。どうでも。
俺関係ないし。今は営業中だし。仕事仕事。

「いらっしゃいませー」
「あ、霞!」

ん?
霞さん?何で?

「ちょっと!徐晃!聞いたってーやー!」

早っ!

「どうしました?はい、お酒どうぞ。なんで一人で居るんです?華琳さん達と一緒でしょう?」
「あ、おおきに。聞いて~や~。うち北方の異民族討伐やってん。はずれやはずれ」

ふむ。終わって本拠洛陽に帰還ですかね。

「うちかて、徐州行きたかってんで?でもな、うちの虎豹騎を烏桓にぶつけるて華琳が聞かへんかったんや~。あ~、関羽とやりおうたかったのに~」

ふむふむ。
虎豹騎隊、元は月の所の騎兵隊さんです。

「まあ強い連中やったよ?ええ戦やった。最後はうちらに従属するゆうてたし。でも、でも~」
「職務は上手く行った訳でしょ?なら良いじゃないですか」
「そやねんけどな。おかわり」

早いなー。
殆ど一気じゃん。

「はい、どうぞ。どうします?何か焼きますか?」
「うーん。任せるわ。適当に出して」
「はい、畏まりました」
「多分、うちは虎豹騎からはずれて烏桓騎兵やで?また一からや~」
「それだけ、霞さんの事を買っているんでしょ?華琳さんが」
「そうかな~」
「そうですよ。霞さんは個人の武もそうですけど、兵隊さんを指揮する方が得意なんでしょ?」

チッチッチと霞さん。

「両方や」

さいでっか。

「本隊に合流しても良かったんやけどな。どうせもう終わっとるさかい、こっち帰って来てん。華琳等が帰ってくるまでサボったろ思うてな」
「じゃあ、暫く通って下さいよ」
「勿論や、最初からそのつもりやで?月も詠も流琉もおるしな」

ん?いつの間に真名を交換した?お兄ちゃんは聞いてませんよ?
ま、いっか。女の子は秘密が多いですからね。
よし、焼き上がり。霞さんはネックがお好きです。しかも良く動いている後ろの所。
でも、取れる量が少ないんですよね。こうして営業終わり近くまで残っているのは稀ですよ。

「どうぞ。首の部位です。お好きでしょ?」
「これこれ。これの塩焼きが堪らんのや~。うん、美味い。酒ともおおとる」
「ありがとう御座います」

あとはつくねをタレ焼きにしてっと。
これも好きなんですよね。うちのつくねは軟骨入りです。こりこりしてて美味しいですからね。
多分、歯触りがコリコリしてるのが好きなんでしょうね。ズリもお好きですし。

「なあ、徐晃?」
「はい?」
「関羽はどないなってしもたやろな~」

ここに来る度に毎回聞かされます。
惚れたそうです。
どーーーーーしても一騎打ちがしたいらしいです。

「華琳さん次第じゃないですか?でも俺の予想では来ないと思いますよ?」
「そうなん?」
「まあ、当てにはなりませんけど。はい、つくね焼きです、お酒も注ぎますか?」
「ほな貰おか。熱っ、美味っ。く~、堪らんな~」

おっさんですかね?
綺麗なのに。

「そういえば恋に会いましたか?」
「いんや、おおてない」
「そうですか。明日の朝にはここへ来ますよ?」
「ほんま?なあ徐晃。今日ここに泊めてーや。うち恋に会いたい」
「ええ、良いですよ。恋も喜びます」

と言った瞬間。

「なら今日は死ぬまで呑むでー、どんどん行こかー!」

えー。嘘ーん。

「程々にしないと朝起きれませんよ?」
「月に起こして貰うもーん。詠でもええし、流琉でも構わんもーん」

子供か、お前は!
自分で起きろよ!
・・・すみません。俺も自力で起きる事が少ないです。
ごめんなさい。

「どんどん注いでや~」

物凄く上機嫌ですね。
やはり嬉しいんでしょう。
こっちも嬉しくなりますね。
さて、どんどん焼いて、どんどん注ぎますよ!
大物ですからね、稼ぎましょう!
営業が終わったら俺も付き合うとしましょう。
怒られない程度に。




あとがきです。

二話分を短縮してみました。
次回でお漏らし少女が出るのかな?
まあ、絡まないけどw
ではまた次回お会いしましょう。
お付き合いいただき、ありがとうございました。




[8642] 恋姫無双~店主徐晃伝~ <転生オリ主>その19
Name: 三年G組将軍先生◆b1f32675 ID:382977c2
Date: 2009/06/07 11:29
どうも、こんにちは。徐晃です。
現在とある計画を立案中です。
何かと申しますと・・・『串揚げ徐晃南皮店』です。
もうね、屋号のセンスの無さに泣きそうです。
でも、思いつかないんです。
最初は徐州から攻めようかなと思ったのですが、北の方が人口多いんですよね。
で海も近いし、良い食材がたくさん手に入りそうです。
ん?何故に居酒屋じゃないかって?
それはですね、商品を絞り職人でなくても出来る環境を作る。さらに、食材回転を上げ鮮度の良い物を提供する。で、仕入れを増やす事によってコストを下げる!
美味い、安い、早い。をモットーにやりたいと思っています。
で、洛陽を本店として、色んな商品を開発しレシピを作り各店に配る。
なんと素晴らしい案でしょう。
これならここに居ても色んな商品を作る理由が出来ます。
あんまり関係無い事してると、詠がうるさいんですよね。
ただ、この壮大な計画には一つだけクリアしなくてはいけない項目があります。
最重要と言っても過言ではありません。
冷蔵庫です。
この問題をクリアしない限りは前へ進む事が出来ないでしょう。
それが終われば箱の問題とかその他も進んでいくでしょう。
で、今は華琳さんを攻略すべく策を練っています。いえ、お菓子を作っています。
そう、ご機嫌取りです。
暫く俺は店を皆に任せて、修行中でした。
と言っても、情報収集とお菓子の研究を行なっていたんです。
まずは華琳さんの好物を探る。
最初に俺の取った行動は鴨を狩りに行きました。
こいつを探すのも苦労しましたが、努力の甲斐あって、何羽か確保。
この鴨の生レバーを稟さんへの献上物とし、密約を交わしました。

「おお、徐晃殿!この肝臓はいつものよりも素晴らしいです!」
「ありがとう御座います。で、先ほどの・・・」
「それくらいお任せ下さい。探りを入れてみましょう」
「ありがとう御座います!」

てな感じですね。
さらに。
保険として風ちゃんにも密約を持ちかけました。
風ちゃんはさっぱりした物が好きで、食事よりもお菓子の方が好きみたいでしたので、これまた一つ考えました。

「お兄さん、これはなんですか?」
「これは葛餅だよ。練り合わせる時に柑橘を混ぜたから、さっぱりしてていい感じだと思うんだけど?」
「ええ、とても美味しいです。風、気に入っちゃいました」
「それは良かった・・・で、さっきの件だけど」
「成功報酬、また葛餅でお願いしますね~」

てな具合です。買収しまくりです。
本当は三軍師全員と密約を交わしたかったのですが、華琳様命の人ですから、難しいと読んで外しました。
まあ、あの郭奉孝と程仲徳が力を貸してくれるのなら問題ないでしょう。
文若ちゃんだと、何かボロが出そうな気もしますしね。
うん。
で先日、風ちゃん達からの報告書が届いたんですよ!
もうね、ウヒョヒョーでしたよ。
これで勝ったと思いましたが・・・

『美味しいもの    稟』
『その日の気分    風』

ふざけるな!なんだこれは!ガキの使いか!
まだ稟さんのは分かる。いや、分からんけど。千歩譲ろう!
何だ風ちゃんのは?天気予報か!良純呼んで来い!良純!
もうね、誰も頼りません。あれを読んだ時には愕然としました。
俺の苦労を返せ!
そんなこんなで策は失敗でした。
所詮素人ですよ。ええ!それが何か!
分からないので、超必死に考えました。
あの人の大体の好みは分かっているつもりです。
大体ですが。割と付き合い長いですしね。
珍しくて、美味しくて、甘すぎない。この三点なんです。
ただ、嫌いな食材とかは一切分かりません。
どれだけ美味く作ってあっても、入っていたら食べもしないでしょう。
誰かにあげるならまだ可愛いですが、最悪捨てますよ?あの人。

食べた事が無い美味しそうなお菓子
↓「あら美味しそうね。徐晃中々じゃない?」
嫌いなものが入ってる
↓「こ・れ・は・何かしら?」
食べた事がない物を他の人間が最初に食べるのはムカツク
↓「・・・・・・」ポイッ
だから捨てて作り直しをさせる
↓「作り直しなさい」
一回目が失敗だから評価はそこそこ止まり
 「最初からこれを作りなさいよ。まだまだね」

うん。間違いない。こうなる。
絶対こうなる。
最初は忍び込んでやろうかとも思ったんですが、死にたくないし却下。
それとなく聞き出してやろうかとも思いましたが、稟さん、風ちゃんがこの体たらくですから、難しいと踏んで却下。
季衣は知らないだろうし、霞さんも同じく。
三人娘も同様でしょう。
最後の砦は、夏侯姉妹。なんですが・・・。
あの二人も猫耳同様、華琳様命!でしょうし・・・
分かりません。だから運任せです。
でも、考えます。超必死!
女の子ですから、果物は嫌いじゃないと思うんですよね。
で、甘すぎないように作れば良い訳ですから、まあ、これは簡単ですね。
あとは珍しい物・・・珍しい・・・この時代に無い物
って事でパイにしました。
でもパイという単語は出したくないので、焼き菓子という名前で。
地雷は撤去しておく方が安全ですしね。
それにしても、パイって難しいんですよね。
何回か焼いてみましたが、サクッと行かない。いや、サクッとはしてますよ。
でも、果物とカスタードを入れようかと思いまして。だからもっとサクッと作りたいな~、て感じの現状です。
最初は塊が焼きあがりましたね。うん、あれは酷かった。
多分混ぜ方がおかしいんです。あれは。パンみたいでしたから。
だからこねるのを程々で止めて、畳むだけにしてみました。
これだと結構良い仕上がりです。
でも問題は水分のあるものを入れて焼く訳ですから、どうやってパイ生地をサクッと焼くかです。
作っては見ましたが、フニャというかベチャでした。
何で?って感じです。
検討もつきません。だから実験しまくりです。
おかげで、お小遣いがもうありません。
多分あと本番一回を除けば一回分くらいしかありません。
どうすっけーなー?

「流琉~?どうすれば良いと思う?」
「分かりませんよ、知りませんもん」
「じゃなくて・・・中身は瑞々しいけど、底や周りがサクサクする作り方」

後はヒントが出てくれば作れます。きっとね。
あ~白玉の時みたいには行きませんね~。
神が降りない。

「でも、これも十分美味しいですよ?」
「そうですよ、お兄様?」
「うん。美味しいわよ?これ以上は贅沢じゃない?」

今は三人ともお菓子タイムです。
折角なので食べて貰ってます。俺はあんまり要りませんし。

「窯の温度を上げて焼いてみたらどうですか?」
「それは焦げた」

試しました。一応。
でも、窯の火加減は恐ろしく難しいです。付きっきりですよ。
ちょっと低めの温度で焼かないと駄目なんですよ。これは。火加減が難しいです。

「中身の水分を減らすのはどうですか?お兄様?」
「それも試した。パサパサしてて美味しくない」

カスタードの水分を減らして焼いてみましたが、これも駄目。カスタードはしっとりしてないと美味しくなかったです。

「発想を逆転させるのよ。こういう場合は」
「というと?」
「それは考えてよ」

おーい、名軍師~。それは酷くないか~。
でも逆転の発想か・・・成歩堂君ですね。
懐かしい。
しかし・・・どうすればいいんだ?

「あー・・・分かんねー」
「でもこれで納得しないのは、ある意味凄いわ」
「そうだよね詠ちゃん。こんなに美味しいのに」
「そうですよ」

まあ、味には自信があります。大分、デザートの研究も進んでいますからね。
この程度で満足しては、華琳さんの了承は取れない気がするんですよね~。
ここは何としても勝ち取らねばいけませんし。
その為の努力は惜しみません。
でも、お小遣いは惜しみたい。

「あー、どっかに案落ちてないかな~」
「そんな訳ないじゃない」

ですよねー。

「やっぱり、パイ生地が無理なのかな~」
「どうしても中に水気が入る訳ですから、底の部分もさくさくにするのは無理なんじゃないですか?」
「そこを何とか」
「何とかって、兄様」

無理なんですかね~。
多分、こんな感じだったと思うんですけど?何か違うのかな?
う~ん。
行き詰ったかな?今日はもう止めましょう。
多分無理。また今度。

「今日は店手伝うよ。気分転換しないと」
「本当ですか?兄様?」
「うん。最近は任せてばっかだったしな。お菓子の研究飽きたし」

営業しましょう、営業。
さて、仕込みの追加でもやりますか!




「久々の営業は楽しいな。やっぱ」
「兄様は給仕でも凄いですね」

今日は久々でしたから、張り切っちゃいました。
元々はバイトさんが焼き場に一人入る事になってましたから、俺は給仕。
給仕をしながら、焼き場のフォローに入ったり、片付けしたりと獅子奮迅。
楽しいですね。やっぱ。
給仕も楽しいかも。
いつもはカウンター前のお客さんだけですから。今日は殆ど全客周りましたね。
でも、焼き場の方が楽しいかな。多分。
今日はいつもより多く、お客さんを入れれました。
満席になってからが一番良く働けたかな?
片付けと掃除も終わり、今日は月が帳簿を付けています。
詠と月は字が凄く綺麗なんですよね~。
やっぱり育ちの違いですかね。
でも、流琉も綺麗だよな?
俺だけか?汚いの?

「月、一段落したらお茶にしましょ?お菓子の残りもあるし」
「そうだね、詠ちゃん」
「いいですね。ちょっとくらいなら大丈夫でしょうし」

ふむふむ。女の子ですね~。
お兄ちゃんは嬉しいです。
しかし、昼間の残りって。冷めてて美味しくないと思うけど、そんな事ないのかな?
温かいのしか食べてないから分からんな。

「冷めてたら美味しくないだろ?」
「そんな事ないですよ、お兄様。だ、だって・・・お兄様が作ったお菓子ですから・・・」

ふむ。冷めてもいけるのか。

「一口おくれ」
「いいですよ、兄様。どうぞ」

冷蔵庫で冷やしてたのか。
ふむ。どらどら。
うん悪くないね、冷えてても。でもこれはパイ生地だと合わないな。
やっぱり焼きたてのサクサクの方が美味い。これはこれでって感じですね。
それにこれなら、タルトとかいう奴じゃねえの?
・・・ん?

「そうだよ!タルトにすれば良いんだ!」

ヤバイ!俺、天・才!
どうやって作るんだ?つーかタルトってなんだっけ?
甘くってイチゴが乗ってて。いや、イチゴ関係ない。

「に、兄様?」

ちょっと黙ってろ。
生地はサックリだった気がする。んで甘い。
とにかく食材買いに行かないと。ああ、もうやってないし。
明日か。朝一番で動くぞ。
後は後は・・・今何が出来る?・・・あった!

「お小遣い、前借りさせて下さい」

土下座だ!




あの土下座から幾日。とうとう完成しました。
果実たっぷりカスタードクリームタルト!
このタルト冷まして食べます。当然ですが。
最初は切り分けるとカスタードが流出して、まな板がカスタードまみれでした。
それも良い思い出です。余り固まらないんですね。カスタードって。
その後も、なんかかんかで問題続出。大変でした。
しかし!この、前借一ヶ月分のお小遣い大半を掛けて完成させたタルト!
余りの出来栄えに、意味も無く流琉を胴上げしました。一人胴上げです。
そのあと殴られたのも良い思い出になる事でしょう。
で、それを持ってお城へ直行です。
今朝完成しましたので、出来立てです。
今はお昼ご飯時でしょうから、華琳さんも手が空いているでしょう。
空いてなかったら、空けさせましょう。
無理ですね。

「華琳さーん?ここですかー?」

食堂・・・居ない。ん?元譲さん発見!

「おお、徐晃ではないか」
「元譲さん。この前のお弁当どうでしたか?」
「おお、あれか!中々美味かったぞ。で、今日はどうした?」

この前、出かけるから飯を持って行きたいって言ってましたので、お弁当を作ってあげました。喜んでくれて何よりですね。
お弁当ビジネス・・・考えておこう。

「華琳さんに用事です」
「ふむ・・・華琳様は自室で食事を取られている。最近は軍師の誰かと一緒だな」

ほほう。仕事が多いのかな?
邪魔しちゃ悪いか?

「詳しくは知らんが、忙しいという訳ではないから大丈夫だと思うぞ?」
「そうですか、どうもありがとう御座います」
「お邪魔はするなよ?」
「分かってますよ、では」

ふむふむ。仕事が詰まってる訳ではないのか。
何かあるのかな?
とりあえず、近衛の人に話を付けましょう。
で、待つこと暫し。
入室許可が下りました。

「入りますよー」

中には猫耳とクルクルのお二人。食事も終わってまったり、といった感じでしょうか。

「何か用かしら?」
「ええ、まあ。華琳さん、お菓子食べませんか?」
「・・・何が目的かしら?」

ふむ。ばればれですね。
では直球勝負です。

「実はですね。冷蔵庫を作って欲しいんですよ。ここ以外の所でも」
「・・・そう、やっぱり貴方ね?稟と風を使って探りを入れさせたのは?」

ばればれー。全部ばれてるー。

「いやー、ばれましたか?」
「おおよそね。貴方くらいしか居ないもの」

恐れ入りますね。
聞く所によると・・・




「今日は焼き菓子ですか、華琳様」
「ええ。稟もお茶にする?」
「ありがとう御座います。お好きなのですか?焼き菓子?」
「美味しいものなら何でも好きよ?もちろん・・・貴方の体も・・・」
「か、華琳様・・・ここは、そ、外で・・・」

以下省略。
どうせオチは鼻血でしょ?
稟さんは体張って頑張ってくれましたか。
で、風ちゃんは・・・




「華琳様~」
「ん?何、風?」
「お菓子は何がお好きですか~?」
「・・・気分次第かしら?これと言っては無いわね」

えー。そりゃねーよ。
風ちゃん、あんまりだ。
直球すぎる。いや、山なりじゃん。
ホームランでしょ、それは。
俺の人選ミスか、もしかして?

「詳しく話しなさい。聞いてあげるわよ?」
「か、華琳様。あれは軍事機密です。おいそれとは!」

ふむ?軍事機密なのか?冷蔵庫って?
でも、この時代ではありえないから、そうなのかも知れないな。
猫耳は止めるけども、華琳さんの目は・・・話せ、か。

「えっとですね。新店を出そうかな~、と思ってまして。南皮に」
「南皮ね・・・海産物でも扱う気かしら?」
「色々です。串揚げ専門店を考えてます」
「自分でやれないから出さないのでは無かったの?」

そういや、そう言ったっけ?

「洛陽で出すのは試験的な一部です。俺が作り方を出して、店に流す。で、店がお客さんに出す。これだと洛陽でも色々作る事は出来ます。理由になりますから」
「理由?詠ね」
「そうなんですよ。あんまり仕事と関係ない事してると怒られるんです」
「はあ?貴方本当に店主やってるの?何それ、怒られるって?馬鹿じゃないの?」

五月蝿いよ、猫耳。
こっちにも色々事情ってもんがあるんだよ。

「なるほどね・・・で、冷蔵庫か・・・良いわよ。協力してあげても」
「か、華琳様!?」

なんですとー!
何故にこんなあっさり?何か裏があるな?
つか、風ちゃんと稟さんを使った俺の立場はどうなる?

「桂花?少し席を外して頂戴。呼ぶまで入って来ないように」
「か、華琳様!いけません!このような男と二人きりなど!」
「桂花?」
「・・・か、畏まりました」

ん?何の話だろ?二人っきりが良いなんて。
愛の告白はありえんしな。
あったら指差して笑ってやる。

「いい!華琳様に何かあってご覧なさい!この城から生きて出られるなど思わない事ね!」

何もしないって。
しかし、三下のテンプレじゃないか、それ?

「分かってますよ」
「いい?絶対よ!」

出て行く前にも睨まれました。
困った子ですね。

「で、何の話ですか?」

華琳さんは立ち上がり、机の中から何かを取り出しました。

「見てもらいたい物があるの。これよ」

黒い塊?・・・なんじゃこりゃ?

「これは?」
「火薬よ」

ふむ。

「少し説明しましょうか。座りなさい」

薦められる椅子に掛けます。
火薬ね~。詳しくないぞ?そんなもん。

「この前、徐州を攻略したのは知っているでしょ?」
「はい」
「といっても殆ど戦闘はしていないのよ」

なるほど。やはり逃げたか。
でもチャレンジャーですね~。
益州は遠いぞ?北郷君よ。

「既に逃げてましたか?」
「誰から聞いたの?いえ、知っていたのね?」

まあ、知っていたと言うか、何と言うか。

「まあ、そんな感じですよ。で」
「北海を抜けて、劉備の領内に入ってからよ。地面に罠が埋めてあってね。真桜が解明してくれたけど。竹の中に火薬が仕込んであってね。体重を掛けると爆発する仕掛けになっていたのよ。死者は無し。負傷者だけ出たわ。そのおかげで進軍速度が遅くなってね。本城に着いた時にはもぬけの殻。追いついた時には、荊州を抜けていたわ。最後の橋で追いついたけどね」

ふーん。で?

「で、何ですか?」
「この火薬、見た事が無いのよ。それに火薬の小型化は難しいの。徐州の劉備があれだけ大量の火薬を保持出来るとも思えない。この火薬に心当たりは無いかしら?正直お手上げなのよ」

北郷君かな?この前まで学生さんだったみたいだし、理系なのかな?
どうなんだろ?
火薬ね。安い火薬・・・あれかな?

「多分ですけど、北郷君でしょうね」
「『天』いや、未来の知識ね」
「恐らくは。多分これは黒色火薬だと思います。作り方とかは分かりません」
「分からないのね」
「いや、知っていても教えませんよ?まんま武器じゃないですか」
「冷蔵庫と引き換えよ」
「んな阿呆な。じゃあ、冷蔵庫作ってくれないんですか?」
「最初から作るなんて一言も言ってないじゃない」

うわー、汚ねー。

「冗談よ。教えてくれれば無料で作ってあげたけどね」
「本当に分かりません。料理だって二十年以上も前の記憶を掘り起こして作業してますから」

そうなんですよね~。なんとか覚えているものを書き留めてはありますが。
名前だけとか、どんな味とか、こんな見た目とか。その程度ですけどね。
おかげで小遣いが無くなる無くなる。おっと逸れましたね。
黒色火薬の名前は知ってます。
作り方とかは考えた事もないですね。
軍事に関わる気は無いですし。
でも、間接的に協力はしてる形ですけどね。仕方無しです。分かってはいます。
ん?そうか、だから猫耳を外に出したのか。
華琳さん優しいっす。涙出そうっす。

「火薬に関しては結構。もういいわ。次は・・・菓子ね」

おお、忘れてた。
そういや、そうだった。

「美味しかったら作ってくれませんか?」
「そうね。自信があるの?」
「それは当然。前のプリンより素晴らしい出来かと」
「へぇ~。面白そうね、それ。良いでしょう。気に入れば作ることは許可しましょう」
「ありがとう御座います」
「気に入らなければ・・・ぷりんの作り方でも教えて貰いましょうか」

勝った!
小遣いほぼ二か月分の力を思い知れ!

「結構大きいですよ?皆で食べますか?」
「そうね。その方が良いでしょう。中庭に行って待っていなさい。直に向かうわ」
「分かりました」

勝手知ったる何とやら。
お城はいつの間にか詳しくなりました。
ここを抜ければ中庭に・・・風ちゃん?
木陰でお昼寝中の風ちゃんを発見。
折角のお菓子ですからね。見つけたのですから起こしてあげましょう。

「おーい、風ちゃん?風ちゃん?」

返事が無い、ただの屍のようだ。
では無いですけど・・・
人を起こす時は、濡れ布巾を顔に掛けると一発なんですが。
今無いし。
ふむ。鼻摘んでみますか?
どうかな?
起きる気配が無い、ただの屍のようだ。
でも無く。
困りましたね。どうしようかな?でも・・・
・・・放っておきますか。
と立ち上がって中庭に向かうと声を掛けられました。

「む~。お兄さんは薄情者です」
「起きてたんだろ?寝息が規則正しすぎるよ」
「そこは気付かない振りを」
「あのね・・・ま、いっか。風ちゃんもおいでよ。お菓子持ってきたからさ」
「風はお菓子で釣られませんよ?」

と言いつつ付いてくる風ちゃん。
それに君は葛餅で買収されたでしょ?

「寝ている女の子をだっこで、とは考えなかったのですか?」
「ふむ。それね。今日は手荷物があるからね。無かったらしてたと思うよ?」
「そうですか~」

うーん。未だに良く分からん。
結構店に来てくれてるし、話もするんだけどな。
つかみどころが無い子ですね。
でも、そこが魅力的でもあります。
あと、可愛いし。
中庭のお茶専用テーブルの準備をしてっと。
ああ、割とこういう事やらされます。
用事があって来たら、お茶淹れろって。
この時代のお茶は面倒なので好きじゃありませんが、淹れれます。
月が教えてくれました。
待つこと暫し、現れたのは、三軍師と君主様と姉妹二人の計六人。
うん。割りやすくていいですね。五人とか難しいですから。

「徐晃?今日は何を振舞ってくれるのかしら?」
「ではでは、じゃじゃーん」
『おおーー』

お、歓声付き。
でも、クルクルは興味を示さない。嫌いな物でも入っているのか?
違うな?あの顔は・・・割と気に入っていると見た。

「徐晃?見た目もこだわったのね」
「まあ、それなりに。おかげで小遣い殆ど無いですよ」

では切り分けるとしましょう。

「どうぞ」
「では頂きましょう」
『はい』

どうかな?
美味しいとは思うけど。
皆揃ってパクリ。

『・・・美味しい・・・』

揃ってポツリと漏らす。
ふむ。好感触。問題は・・・

「徐晃?」
「はい」
「これは何と言う菓子なの?」
「タルトです」
「樽と?徐晃、見た目とは違い珍妙な名前だな?」

それはお前の頭だ。

「姉者。美味いのだから良いではないか」
「うむ。そうだな秋蘭。徐晃、なかなか良く出来ているぞ」
「結構自信作ですからね」

いつもながら、この阿呆毛はどこかムカツク。でも面白いから良い。

「周りの生地もさくっとしていて、中の物はこの前のぷりんでしょうか?でも味が違うような気が」
「稟さん、前に食べたのは普通のプリンです。これに使ったのはカスタード入りプリンって感じかな。舌触りも良いでしょう?」
「ええ、素晴らしいです」

ここに一番金が掛かってます。
この配合バランス!切っても流れ出ない!しかも滑らか!
もうね、毎日やってると気がおかしくなりそうでしたね。三食カスタードプリン付きとかね。

「風はですね~。乗っている果物が良いと思いますね~。かすたーど?が甘いけど、この果物の酸味で丁度良い感じになりますね~」

そう、そこです!
よく気が付いてくれた!
俺は嬉しい。

「これはカスタードと果物の調和に狙いを付けた物だからね。甘いカスタードだけでも良いかも知れないけど、ちょっと酸味のある果物と併せた方が、味がぼけないでしょ?」
「ええ、甘いけどすっきりしていて~。いくらでも食べれちゃいますね~」

ああ、分かってくれた。俺は嬉しい。
味云々より、こういった理解をしてくれる方が嬉しいです。
味は三人の妹が、お墨付きをくれてますからね。

「徐晃?」
「はい」

ドキドキします。緊張ですね。

「菓子専門店の予定は?」
「うーん。やはり食事優先ですね。趣向品は後です。でも計画段階ではありますが、ありますよ」
「洛陽で出しなさい。それが条件よ」

それって冷蔵庫の許可が出たって事?

「冷蔵庫・・・作ってあげましょう。その代わり、費用は持ちなさい」
「ん~、値段次第なんですよね。実は」
「ならこうしましょう。貴方の村の石炭堀り、私が買いましょう。そのものをね。報告書によれば脈になっているそうじゃない。貴方縦にしか掘らないから産出量が少ないのよ。私が買い取って横に掘るわ」
「でも、横穴は危ないですよ?」
「戦に出るよりよっぽど安全よ。それにそんなものは考えれば良いだけ。で、どうなの?」

ここで返事をしないと次は無さそうだな。
高順さん達の仕事は、南皮店を出すのであれば、また一つ村を買うか?
そこで、漁をやってもらおう。他にも色々あるしな。
資本も手に入るし。危険な仕事は華琳さんが何とかしてくれるし。
多分危なくないようにやるんでしょう。どうするかは知らないけど。

「分かりました。それで結構です」
「結構。久しぶりに当たりを引いたわ。貴方の料理で当たりを引いたと感じたのは、初めてあった時以来ね」
「他は不味いみたいな言い方ですね」
「褒めれば調子に乗るでしょう?仕事中以外は。それにこう言っているのだから、認めてはいるのよ」

ならそう言えって。
素直じゃないね、この子は。

「細かい事はまた後日って事で。俺はこれで失礼します」

ん?猫耳の感想聞いてないや。

「そういや忘れてた。荀彧さんはどうですか?」

一同の視線が猫耳に集まる。
ん?気が付かなかったけど、何かブツブツ言ってますね。
と、突然。

「貴方何て物作ってるの!太るじゃない!そんなに太らせたいの!」
「?・・・じゃあ、食べなきゃいいでしょ?」
「出来る訳ないでしょ!あっ、分かったわ!わざとでしょ!そういう策なんでしょ!キィィーーー!!!」

ジタバタしてます。
うーん。美味しかったって事でいいんですよね?
自信ないな、こう言われると。

「美味しいらしいですよ~。お兄さん」
「だよね?」

なんだかなー。
美味しいなら美味しいって言えば良いのに。
華琳さんも荀彧ちゃんも素直じゃないですねー。
人生損しますよね。
そう思いませんか?
と思った昼下がりでした。



あとがきです。

長いけど削れなかったです。
気が付けばお漏らし少女は出てこずw
ま、いっかw
ではまた次回をよろしくお願いします。




[8642] 恋姫無双~店主徐晃伝~ <転生オリ主>その20
Name: 三年G組将軍先生◆b1f32675 ID:382977c2
Date: 2009/06/10 18:40
えー、先日大金持ちになりました徐晃です。
一生遊んで暮らせます。
でもそんなのはつまらないので却下です。
とりあえずは、動かないと始まらないので北へ向かっています。一人旅では無く、詠が同行してくれています。
月と流琉は寂しそうでしたが、お留守番です。店を休みにするのも違うと思う訳なんですよね。
二人に悪いのでお土産でも買って帰りましょう。
ペナントとか木刀とか・・・無いなそれは。お菓子でも・・・それも駄目だ。可愛い小物とかにしましょう。
で、今は・・・

「詠、手離すなよ!」
「それは馬鹿兄の方でしょ!」

船に揺られています。黄河を船で移動中です。
ちなみに泳げません。ええ、カナヅチと言う奴です。
ただ、この体で泳いだ事は無いので泳げるかも知れませんが、怖いので嫌です。

「ちょっと!は、恥ずかしいじゃない!いい加減離してよ!」
「いや、俺の恐怖の緩和が優先だ」
「知らないわよ!」

だって怖いんだもん。
こら、暴れるな!俺はまだ死にたくない!

「詠~。何でもするから手を離さないでくれよ~。頼むよ~」
「・・・し、知らない!」

と、言いながらも、手は振りほどかないでくれる詠。
あー、人の情けが身に染みます。
なんだかんだ言ってもこの子は優しいですね。
お兄ちゃんは嬉しいです。
その後も、揺れる船に慄きながらも何とか無事に到着。
一回大きく揺れ、詠に抱きついてしまいましたが、殴られるだけで済みました。
良かった良かった。
向かうのは、この船着場から北、南皮です。
でも城下は後回しです。
まずは村の皆を移住させる所を探さないといけません。
出来れば、既に漁を盛んに行なっている村。で平野が多い土地。
全部買います。資本主義万歳です。
ただ、無理に買い付けしても、元々住んでいる人達に迷惑になりますからね。
ちゃんと説明してからです。仕事を変えてもらったりしないといけませんから。
ちゃんと華琳さんに全部報告するって約束もしたので、物をぶつけられる心配もありません。
でも、前回と違い詠が居る訳ですから、問題ないでしょう。

「ねえ?」
「ん?」
「この馬、汗血馬でしょ?こんな良い馬どうしたの?」
「ああ、華琳さんから買った」

そう、二人が乗っている二頭は汗血馬と言って、かなり高価な代物です。
軍用らしいけど、買取りました。
以前に華琳さんと少し賭けをしましてね。それに勝ったので売って貰いました。
かなり値は張りましたが、普通の馬よりも馬力があって、馬車にも最適ですね。
華琳さんに言ったら殴られましたけど、いいじゃん別に。ねえ?

「本当に無駄遣いが多いわよ?ボク達がお金を管理してなかったら路頭に迷ってるんじゃない?」
「最悪、屋台でその日暮らしをしてるさ」
「はぁ・・・才能の無駄遣いって知ってる?」

流琉達がしっかりしてくれていますからね。俺はそんな事に頭を悩ませる必要は無いかな~、とか思っています。
正直面倒なんですよね。黒字ならそれでいいじゃん、って思いませんか?
赤字になる前に手を付ければいいかな~、なんて。
別に、大金持ちに成りたい!とかもないですしね~。
こんな腑抜けの兄ちゃんだと、そのうち愛想つかされそうですね。




「実家に帰るわ」
「ま、待ってくれ!お前が居ないと俺はどうやって朝起きればいいんだ!」
「ふん!ボクが知る訳ないでしょ!」

困るな。これは。
今回の支店計画も別に儲けようとか思ってないし。まあ、儲かる方が良いってのはありますけどね。色々出来る幅が広がるし。
でも、今回は洛陽で好きな事をする為の一歩ですから。
やっぱり駄目駄目なのでしょうか?
もっとこう、ギラついた獣のような生き方をした方がいいのかな?




「に、兄様!止めて下さい!」
「羊は狼に食べられるものなのだー!」
「あーれー」

みたいな?何か違うな。
つか、妹に欲情する阿呆はいるのか?
いや、決して魅力が無いわけではないですよ。むしろ魅力的な妹達だと自慢したいくらいです。ええ、魅力的です。大事なので二回言いました。
そのうち彼氏の一人でも連れてくるでしょう。なんせ皆可愛いから。
連れてくる男が余程の変態でなければ、笑って嫁に出してやりたいですからね。




「お兄様、今までありがとう御座いました」
「・・・月」
「お兄様・・・私、あの人と一緒に頑張ります」
「ああ。あいつなら大丈夫だろう。笑顔を忘れずにな」
「はい!お兄様!」

うん。やっぱり、これが・・・これが・・・いちばん・・・

「・・・ゆえーーーーーーーー!!!」
「ちょ、ちょっとどうしたのよ!急に泣き出したりして!」
「・・・いや、感極まって」

いかんいかん。俺は何をしているんだ?
いや、でも今脳内で映像化された、『月ウエディングドレスバージョン』は良かった。
落ち着け・・・落ち着け・・・落ち着け・・・
よし、月は俺の嫁!
ん?何か違うな?
ま、いっか。
その後、白い目で見てくる詠を軽く交わしながら、目的を果たすため北上を続けました。
到着後は結局、詠が全て仕切ってくれました。
俺はなんかおまけみたいでしたね。金魚の糞です。
漁を主な収入源をしている村で話をつけ、そのまま開墾出来そうな場所を視察。

「良い環境ね。土も悪くない。問題は潮風だっけ?」
「やってみないと分からないけどね。でもそこまで近い訳じゃないから大丈夫だと思うけど?」
「なら、問題は無いわ。ここで決まりね」

もうね。決断が早いとしか言い様が無いです。
村の人との交渉も、利がある事を判り易く説明している所なんかは格好良かったです。
予定より早く終わってしまいましたので、釣りでもしようと海まで着ました。
中国大陸は何が釣れるんですかね?日本海側と繋がってるから・・・ま、いっか。
何でも釣りたては美味しいですからね。
村で釣り竿を作り、餌っぽい虫を付けて垂らすだけ。別に暇潰しなので釣れなくても問題無しです。
それをかれこれ二刻程。うん暇人です。
ちなみに雑魚ばっかり。
大物は釣れないのでしょうかね?
うーん、雑魚しか釣れない。
飯に刺身でもと思ったのですがね。無理か。

「まだ釣りしてたの?何?小さいのばっかりじゃない」
「んー。で、どうした?用事か?」
「村の人がご飯一緒にどうって」

歓迎会的なものでも開いてくれるのかな?
大物も釣れなかったし、ゴチになりましょう。
ついでにこの雑魚、揚げ物にでもして一杯やる事にしますかね。




さて帰ってまいりました。愛しの洛陽。
半月程でしたね。
南皮は本当に人が多かったですね。都と変わらなかったです。
基本的に作りは同じにするので、土地だけ探しました。
でも直に目処は立ちましたよ。
袁紹さんの配下だった人の私有地です。
ここを安く買い叩きました。
値段交渉は詠がやったんですけどね。
もうね、本当に金魚の糞ですよ。
何もしてないし。
帰りの船も手を握って貰ってたし。
情けないお兄ちゃんですいませんって感じですよ。
ちなみに、働いてくれる人も探しました。
田豊さんと高覧さんと沮授さんの三人です。
元々は皆さん袁紹さんの所に居たらしいのですが、袁紹さんがあんまり使ってくれなかったそうな。で、途中で見限ったんだそうです。
田豊さんと南皮の酒家で知り合って、意気投合。後のお二人は紹介です。
皆さん良い人ですよ。頭も良いし。何で袁紹さんはこの人達の言う事聞かなかったんですかね。
ちゃんと部下の意見に耳を傾けるのも上司の仕事だと思います。
それは置いといて。
暫くは洛陽と陳留の二店舗で研修という名の修行です。
最初は陳留で肉の扱い方と接客を学んでもらいます。
陳留のお店を任せているお二人もかなり上手ですからね。
あの人達も指導する事で、見えてくる物もあるでしょう。
で、それが終われば洛陽で冷蔵庫とか揚げ物に欠かせないパン粉の作り方とか、その他諸々やっていく予定です。
南皮の箱が出来るまでの三ヶ月間で一気に進めますよ。
やる気は十二分なので、直に仕事は覚えて貰えると思います。
で、俺はと言いますと、事の詳細を華琳さんに報告する為にお城へゴーです。
怒られる心配は無いので、足取りも軽いです。
で、到着し部屋で待つ事暫し、

「では報告を聞きましょうか」

待たせて御免とか無いんですかね?
まあ、いいけど。
で、詳しく説明していきました。
来る前に詠からカンペを貰ってきたのでスムーズです。
でも、途中で面倒になりましたので、華琳さんに読んでもらう事にしました。

「詳細は分かったわ。基本的にはこちらと同じね。駐在する技師の指示が最優先で」
「大丈夫です。細かい事はおいおい覚えて貰う予定です」
「結構。採用した人間は信用出来るのでしょうね?一応機密事項なのよ?」
「大丈夫ですよ。あんなもの見て作れる人はそうそう居ませんよ」
「だと思うけどね。他国への情報流出だけはしっかりなさい」
「はい、分かってます」

そうなんですよね。口うるさく言われてますし。
冷蔵庫が機密事項とか未だに笑える。
俺の中ではあるのが当然になっちゃてますしね。

「あ、南皮が落ち着いたら、徐州も考えてるんですけど?」
「・・・急ぎすぎじゃないの?」
「いや、お金早く使わないと。管理するの怖いし」

そうなんですよね。国庫に預ける形を取っていますが、管理はこちらになってます。
国が銀行みたいな感じですね。金利0の。

「私達が預かっているのだから大丈夫でしょう?」
「それはそうですが・・・あ、徐州ってまだ通行許可出てない所あるんですか?」

先日の地雷の一件以来、撤去確認箇所以外の通行が制限されています。
まあ、仕方ないですね。

「終わっていると言えば終わっているのよね」

ん?らしくないな。歯切れが悪い。

「何かあったんですか?」
「そうね・・・話しても良いでしょう」

何でしょうか?

「徐州の本城にね。地図があったのよ」

もしかして・・・

「罠が埋めてある場所のね。信憑性は・・・疑わしいものだけど。もし、地図の罠の数が正しいとするなら、撤去は済んでいる、というか全部掛かってから本城に着いたわ」
「地図ねぇ・・・」

ワザとなら・・・本物でしょう。

「俺は信じても良いと思いますよ?」
「何故かしら?」

眉がピクンと反応する。

「うーんとですね。多分華琳さんも気付いてはいると思いますけど、あの罠の危険性ですね」
「続けなさい」
「分かってると思いますが、一般の人にも被害が出ますから」
「そうね。それには気付いていたわ。だから早急に通行を制限した」
「ですよね。で、残しておいても劉備さん達に良い事一個も無いでしょ?民間人が罠を踏んだら悪者になっちゃいますからね」
「それは劉備が埋めたと民に喧伝していればね」
「しないんですか?一つの策でしょう?」
「桂花と稟はむしろ撤去しないで、劉備の風評を操作するべきと進言してきたけどね。まあ、それも一つの策。でもそれは弱者の取る策。私は覇王。民の安全を優先する。この大陸でもはやこの魏に対抗出来るのは限られている。今、私達は寄せ手なのよ。策を弄する必要は無いわ」

ふむ。正々堂々って事なのかな?
なんとも潔い。

「まあそれは置いておきましょう。次に劉備さん・・・いや、恐らくは知らないでしょうね。多分、北郷君かな?もしかしたら諸葛亮ちゃんかも知れないけど。これを使ったのは。えーっと、なんだっけな・・・雛とか言うのがいるかも?」
「何その名前は?」
「忘れましたけど・・・なんか雛っぽい名前だった気が・・・あ、違う鳳統だ。鳳雛?のどっちか。その人も凄いらしいですよ。諸葛亮ちゃん並とかそうでないとか」
「知らないわね。まあいいわ。でも、劉備には知らせずか・・・ありえるわね」
「『天の御遣い』ですから、一般人に影響があるのは嫌だと思うんですよね。良い事無いし。それだったら、華琳さんに撤去して貰うのが一番楽でしょ?」

俺ならそうする。

「だから地図は本物かなって思います」
「なるほど。制限は無用かもね」
「だと思いますよ?でも本当の所は分かりません、良いんですか?」
「本物の可能性もあったからね。もし万が一、私の可愛い民が犠牲になれば、それ相応の代償を払って貰うだけの事よ」

怖い顔してますね。本気でしょう。

「一つ・・・気になる事があるのよね」
「何ですか?」
「何故、私を狙わなかったのかしら?」
「これ不確定要素が強すぎですよ?誰が踏むか分からないし」

当たり前でしょう?

「そんな事は分かっているわよ。私が言いたいのは、ここまでのものが作れるのに関わらず、私を狙わなかったのかよ」

意味が分からん。

「誰が踏んでも作動するなら、逆もまた然り。私なら足止めに使って、逃げる。かつ、本城前に高い火力それこそ一帯を吹き飛ばすくらいの物を用意するわ。しかも、誰が踏んでも作動しないように」
「作動しないなら意味ないでしょ?」
「そう誰が踏んでも。でも、普通より重いものが乗れば動くように作る。牙門旗を持った人間が踏めば動くようにね。本城への入場に際しては、大将は牙門旗と共に入場するものよ。私ならそこを狙う」

えげつない。それは流石にえげつない。
勝って意気揚々の所をズドン!
それは酷い。

「この罠は真桜も褒めていたわ。これが作れるなら、それくらいに改良出来るでしょう」
「火薬が無かったんじゃないですか?」
「足止めを減らせば済む事よ。一回掛かればそれこそ慎重に成らざるを得ない。半分で十分ね」

そっか。何十万も居れば誰か掛かるか。数が少なくても、相手が多いのだから。
ふむ、覇王すげえな。
頭良い。

「こうした理由が無いのよね。まあ、私を殺せば、地の果てまで追うか、撤退するかのどちらかでしょうし。それを嫌ったのかも知れないけど。でも、我を忘れた兵なんてどうとでもなるわ」

怒り狂う元譲さん・・・嫌過ぎる。
絶対殺される。

「それを望んでないのでは?」
「そうなのよ。それしか理由が無いのよね。逃げるくらいなのだから。でも、力を付けるにはかなりの時間が要るわよ?私と同等まで力を得るにはね」

いや、違う。
多分だけど。
北郷君は未来を知っている。
だから、それは望まなかったのでは無い。
もっと効果的に、華琳さんを倒す気だ。
赤壁。狙いはそれか。

「理由は分かりますよ?」
「分かるの?」
「ええまあ。でもここからは俺の知ってる歴史の話しですから。聞きますか?」

この人、なりはこんなだけど。紛れも無く魏の覇王。曹孟徳。誇り高き王。
こういうのは嫌いなはず。

「いえ結構よ。それだけで分かった事もある」
「はい?何も言ってないですよ?」
「十分すぎるわ。聞きたい?」

うわ、その顔止めろ。ムカツク。
でも・・・

「教えて下さい」

負けました。
そのニヤァはムカツク!くっそー。

「良いわよ。北郷の頭の中では、今回の五十万と私の首を見逃しても問題は無かった。次の機会、しかも、もっと確実で危険性の無い機会があるって事。おそらくそこで勝負を仕掛けてくるわね」

マジで!なんで分かるの?
俺何も言ってないよ?

「貴方の話し振り、今回の北郷の策。で、貴方と北郷は未来を知っている。これだけあれば十分結果を導けるわ」

すげえ、覇王かっけぇ。

「ああ、答えなくていいわよ。面白くないし。あ、でもこれで勝ったら貴方のおかげになるわね。それは嫌ね。負けようかしら?」

なにそれ?

「何ですかそれは?」
「冗談よ。貴方のおかげで勝つ方がましよ。負けるよりね。フフフ・・・面白くなってきたわ。多分この策を仕掛けてきたのは諸葛亮でしょう。この展開を読みきってね」

その比べ方、酷くない?

「俺のおかげね・・・まあ、別に良いですけどね。何でも」
「あら?私が死ぬかも知れないというのに、あっさりね」
「そういう意味じゃあ・・・いえ、何でもないです。個人的には華琳さんに勝って欲しいですよ?でも、戦に直接絡むのは嫌ですね」
「安心なさい。負ける事が分かっていれば、勝つ事は容易よ。幸か不幸か・・・いえ、無粋ね」

何て言う気だったのかな?ま、いっか。
でも華琳さんが負けるなんて、考えた事なかったな。
でも、曹孟徳だもんな。やっぱり赤壁は・・・

「貴方は何も変わらないわね。まあ、いいわ。今日はもう戻っていいわよ。設備の件はこちらで動くから。完成すれば知らせましょう」
「ありがとう御座います。ああそうだ、荀彧さんに明後日店に来てくれって伝えて置いて下さい。良い物が手に入りましたので」
「桂花に?何かしら?私の分は無いの?」

貴方も欲しいのか?
うーん、ま、いっか。

「欲しければどうぞ来て下さい。物は秘密です」
「また秘密ね・・・まあいいわ。伝えておきましょう」
「では、失礼します」

そっか、赤壁か・・・華琳さん勝てるのかな?
関羽さんへの恩も無いと思うけどな~。
水上戦で勝てる訳ないと思うけど・・・
どうなんだろ?
華琳さんには勝って欲しい・・・でも、手は貸せない。
俺は、どうすれば良いんだ?
いや、深く考えるのは止そう。戦争に関わるのは駄目だ。
俺には資格が無い。
俺は料理人、それ以外の何者でも無い。
まずは、帰って例のブツを完成させよう。
でも・・・

「俺のおかげ・・・か」




「何を出してくれるのかしらね?」
「華琳様を小間使いみたいにして!本当に何考えてるのかしら!」
「まあ、いいじゃないですか。良い物出しますから。こちらです」
「徐晃?これは何かしら?」
「ところてんです」
「「ところてん?」」

色々見て回っている際に海辺で天草を発見。
前に猫耳が太らないものを寄越せって言っていたので、買って来ました。
水で戻して茹でるんですが、普通のところてんになるので、多少アレンジ。
普通に作って、ダイスカット。果物を同じ大きさに揃えて、砂糖水に全部ぶち込む。
お菓子よりもヘルシーで冷やしてあるのでグッド。

「徐晃?何故、桂花になの?」
「前に太らないお菓子を作れって言われてましたからね。折角だからと思いまして。買って来ました」
「へ~、桂花、太ったの?」
「い、いえ!決して、そのような・・・」
「貴方は細いのだから問題ないでしょ?でも・・・ぶくぶくに太ったら・・・分かっているわね?」
「も、勿論です!」

大変ですね~、女の子は。
でもこの子は太っているようには見えませんけどね?
隠れ肥満とか言う奴でしょうか?

「とにかく食べて下さいよ」
「そうね、頂きましょう」
「は、はい」

どうかな?まだ試作段階だからね。


「徐晃、これは果物と砂糖を甘みに使ったのね。でもこの半透明な物は味が無いのね」
「そうですね。その半透明な物がところてんです。それ単体ではどれだけ食ってもほとんど太りません。それだけだと味が無いので甘みを果物と砂糖水で補いました」
「そう。悪くないけど・・・何か違う気がするわね」

流石、良く気付く。

「そうですね。もともとは甘味に使うものでは無いので、今後も色々工夫していきますよ」
「なら次に期待しましょう」
「そうして下さい。まだ実験中ですから」
「それは楽しみね、桂花。・・・桂花?」

どうしたのでしょうか?
不味かったのかな?
味は果物だから、美味しいと思うけど?

「・・・どれくらい食べても平気なの?」
「うーん。果汁が入ってるって言っても、一杯にはそれほど入ってないし。砂糖水もがぶ飲みしなければ大丈夫だから・・・良く分からないけど、無茶食いさえしなければ大丈夫じゃないですか?」
「・・・そう」

そう言われれば、そうだよな。
どれだけ食ってもって訳には行かないし。
砂糖や蜂蜜たっぷりなデザートよりはマシでしょうけど。
でもところてんだから、お腹一杯食っても糞が良く出るから大丈夫かな?

「・・・桂花よ」
「はい?」
「真名を呼んでも良いって言ってるの!」

そんなカリカリしながら言われても・・・ねぇ?

「今日は貴重な物を見れたわね。まさか桂花が男に真名を・・・明日は馬でも振りそうね」

なんじゃそりゃ?
しかし、この子が・・・俺に?
冗談か何かでしょう?
でも、真名を持ち出すのは余程の事ですし。特にこの子の場合は。

「畏まりました。お預かりします」
「べ、別にこれが、美味しかった訳じゃないんだからね!」

ナイスツンデレ!

「じゃあ、何故真名を預けたのかしら?」

だから、事を荒立てるな!
平穏に終わろうとしないのは何故だ!
Sだからさ。

「い、いえ・・・そ、それは・・・」
「それは?何かしら?」

その顔は駄目だ。やっぱり碌な事が無い。
言葉に詰まっている桂花さんが逃げ出した。
おお、早い。

「徐晃!これで勝ったと思わない事ね!覚えておきなさい!」

と言い残して走り去りました。
遠くから、「これは戦術的撤退よー!」と聞こえます。
何と言うテンプレ。

「あの子は本当に素直じゃないわね。あれだと子が残せないじゃない」

貴方もでしょ?

「良いじゃないですか。可愛いからそのうち男の一人くらい出来ますよ」
「そうだと良いけどね・・・徐晃?」
「はい?」
「もう一皿出して頂戴」

貴方も気に入ったのね。
流琉達にはあげた後だし、ま、いっか。

「太りにくいだけで、果汁を使っていますからね。糖分はありますから。でもお腹の調子が良くなるから大丈夫かも知れませんね」
「そうなの?」
「ええ、便秘に効果があったと記憶しています。通りが良くなれば肌も綺麗になるとかならないとか」

どれくらい、とかは分からないけどね。
食物繊維だから調子は良くなるはず。
多分だけど。

「そう、健康にも良いのね。春蘭が飛びつきそうね」
「元譲さんですか?太ってないでしょ?糞も良く出そうだし」

うん。そんなイメージ。
快食、快眠、快便なイメージです。

「汚いわよ?今は風と二人で出かけているのよ。帰ってきたら教えてあげましょう。あの子も体重を気にしているみたいだったしね。とりあえず、次を出して頂戴」
「華琳さんは気に入った訳じゃないでしょ?・・・ああ、べん「黙りなさい!」
「げべら!」

皿をぶつけられました。
何か酷くないですか?
真っ赤になって可愛いですね。この人も。
にしても、痛てぇ。



修正後のあとがきです。

ご感想で、余りにも執着が無いとのご指摘頂き、ちょっと修正。
修正前のままだと、次回が超展開になりすぎるので、緩和剤の意味を込めての修正です。
いくらかは、見やすくなったかと思います。
でも戦いませんよ?
では、次回もよろしくお願いします




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