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[9289] 【NARUTO】○ネジってみた○【性格改変】【ネタ】
Name: 鈴科◆785aa133 ID:6798082a
Date: 2009/09/30 18:30
「ネジ………お前を宗家に生んでやりたかったな………」

「父上………出来れば日向一族以外でお願いします!!」

日向宗家を憎んでいた………が、ある時、日向一族の事を考えて解った事がある。

それは、分家は宗家に縛られるが、宗家もまた日向に縛られている。

白眼の秘密を守るため、宗家も分家も鳥籠の鳥。

『日向に生まれた人間に自由は無い』これは俺が齢十一の時に考えた結論だった。







        ○ネジってみた○  1話







「中忍試験ですか?」

「リーやテンテンは参加すると言っている、後はお前だけだ、ネジ」

「ん~俺はやめときます面倒だし、それに日向だから」

「宗家の事は気にするなと言ったはずだ」

「宗家は関係ないですよ。中忍になると、日向一族に収めるお金が一割から二割になるんですよ」

「お前の才能は理解している。お前ほどの才能が分家に甘んじるのは、つらい事だろう」

「先生、話聴いてませんね」

「だが、お前の努力は俺が保障する。だから中忍試験に出ろ………ネジ」

「はぁ~………分かりましたよ。参加すればいいんでしょ」

「それでこそ、ネジだ(キラーン)」

「暑苦しい」




日向一族に生まれた事に、軽く人生のやるせなさを感じてから二年、斜に構えた態度を止めてからも二年。

やる気は無くなったが、父の言葉を信じるなら日向の才に恵まれているらしいので、鍛錬だけは欠かさなかった二年間。

中忍試験に参加する事になって五時間、雨で中忍試験が中止になればいいのにと思って一時間、ネジは眠りについた。






「ネジ、テンテン、中忍試験がんばりましょう!!」

「そうね、はりっきっていきましょう」

「………面倒だから帰りたいんだけど、いいかな」

リーとテンテンに無理矢理参加させられた中忍試験当日。






試験会場には、ヒナタ様の姿があった(おや、参加するのかな、宗家からはなんの連絡もなかったけど?)

ヒナタ様と同期の、犬塚、油女、山中、奈良、秋道、うちは、その他二名の姿もあった。

(ヒナタ様の同期は全員参加か、里で名の知れた一族の子息だから不思議ではないが、時期早々な気もする。まあ所詮は他人事だけどね)

「森乃イビキだ、これより中忍選抜試験を開始する。言っておくが俺がルールだ」






なぜか中忍選抜試験なのに、筆記試験が開始された………はっきり言って一問も解けない、まあ解く気もないけどね。

リーやテンテンには悪いが中忍には興味がない、まあ考えているふりだけしてよう。

ふと他の一族を見たせいか、父の言葉を思い出した『…お前を宗家に生んでやりたかったな…』

(………もし生まれ変るなら、どの一族がいいかな、油女一族………蟲は嫌だな蟲は。

 犬塚一族………悪くは無いが、犬の世話が正直言って面倒だな。山中一族………多人数相手に戦うのは、むいてないしな山中は。

 奈良一族………この一族も多人数相手に戦うのは、むいてない。うちは一族………今ここに生まれ変ったら日向以上に自由がない。

 残るは秋道一族か………多人数相手でも問題なし、秋道一族は基本的に穏かな人間が多いし、秘伝の料理もあるらしい。

 いいな秋道一族、生まれ変るなら秋道一族で決まりだな。『父上、できるなら秋

「よし、残ったお前ら合格だ」

………いつの間にやら試験に合格したらしい………一問も解いてないのに、いいのかこれで………



[9289] ○ネジってみた○  2
Name: 鈴科◆785aa133 ID:953dce44
Date: 2009/09/30 18:30
「ネジ………お前を日向一族以外に生んでやりたかったな」

「できれば、秋道一族でお願いします。………所で父上が生まれ変るなら、どこがいいいですか」

「生まれ変るならか?そうだな………もし生まれ変れるなら、私はカイになりたい」

「カイ?そんな一族聞いた事がありませんよ、ひょっとして貝ですか」

「もし、カイになったなら、セイラさんに『軟弱物』と罵られながら、平手打ちをされたい…」

父がなんか壊れたっぽい、セイラ?誰ですそれ。

「ホワイトベースに戻らず、ミハルとイチャイチャしたい………私はそんなカイになりたい」

「父上、まったく意味が解りません」

「フッ………坊やだからさ」

「……………………………まあ齢十三の子供なのは事実ですけどね」

夢の中の父は、かなり残念な人になっていた………これも日向に生まれた者の運命か。







         ○ネジってみた○  2話    







「リー、しっかりネジを見張ってるように、一瞬でも眼をそらしちゃ駄目よ」

「任せてください、テンテン………ネジ、申し訳ありませんが」

「気にしなくていいよ、リー、これも日向に生まれた者の運命だからね」

こうなる事は分かっていた、中忍選抜第二試験の内容を聞いたときから





五時間前に、みたらしアンコ特別上忍が提示した試験内容は、死の森での巻物争奪戦であった。

尚、第二試験に参加するには、死んでも文句ないよ書類に記名を求められた。

たかだか中忍になる為に、命を懸ける理由が解らないが、まあ日向分家の生与奪権は宗家にあるので、記名する事に抵抗は無かった。

もっとも、他の参加者は、命の尊さをよく考えたほうがいいよ、そうすれば参加者が減って試験が楽になるから。

そんな俺の優しい願いも虚しく、誰も棄権しない………………今から棄権しようかな。

「ネジ、この天の巻物は誰が持っておく、やっぱりネジが持つの」

「(気を逃がしてしまったか)………いや、テンテンが持ってればいいよ」

「そうですね、僕やネジは近接戦闘が主体ですから、奪われる可能性があります。テンテンが適任でしょう」

「そういう事なら、別にいいけど」

みたらし特別上忍は、巻物を試験中に開くと失格だと言っていた。そしてテンテンは武器を自分の巻物に入れている。

この二つから導き出される答えは一つ………テンテンが間違って、天の巻物を開けたら良いな、むしろ開けて下さい。

まあ、可能性は低いが、そんな僅かな可能性に賭けたい、そんな年頃日向ネジ齢十三。



「いよいよスタートしましたね、これからどうしましょう」

「試験は五日間って言ってたから、水と食料を確保しましょう」

「それが良いね。お腹が減るとやる気でないから」

「ネジはお腹減って無くても、やる気無いでしょうが!!」

「テンテン、落ち着いてください。ネジ、白眼でこのあたりの様子を調べて下さい」

俺は白眼での調査結果を二人に報告し、俺達は行動に移す………日向に生まれた者の、運命を思い知らされるまで後三時間。



















そして運命の三時間後………………………………………………………………………テンテンがお花を摘みに行きました。



[9289] ○ネジってみた○  3
Name: 鈴科◆785aa133 ID:d14e35c0
Date: 2009/09/30 18:32
「………ネジ、強くなったな」

「ハァハァハァハァ………父上、ありがとうございました」

夢の中で父に組み手を挑んだが、まるで相手にならなかった。得るべきものが多い充実した時。

「正直、もう少しやれると思ったのですが、俺もマダマダですね」

「なに、父はこちらに来てから修行三昧だからな。ネジが強くなった以上に、父が強くなっただけさ」

「では、これからも、超えられぬ壁として御指導お願いします」

「フム、まかしておくがいい。今の私なら、ヒアシにだって勝てるだろう」

「………ヒアシ様には、宗家の口伝奥義がありますが、大丈夫ですか」

「………………………宗家の馬鹿野郎~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

父が泣きながら遠くに消えて行った………

「俺が回天や口伝奥義を使えるの黙ってよ。面倒な事になりそうだし」







        ○ネジってみた○  3話







「一時間後、なにがあってもここに集合って事で」

二日目。取りあえず情報を集める事になった、白眼に頼りきりだと中忍試験に参加した意味が無いとの、二人の意見。

「OK、リー、無茶はしないようにね」

「大丈夫ですよ、テンテン、まかせてください」

「それから、ネジ、さぼっちゃだめよ」

「………………………努力しよう」

「はぁ、まあいいわ。それじゃ一時間後に会いましょう」シュバッ

「では、僕も行きます」シュバッ

「よいしょっと………白眼………二人とも流石だな、もう肉眼では見えない距離だ………
 んっ、テンテンがジト目で、こちらを見ている、見抜かれていたか………まあ戻って来る気は無いようだから、無視しよ」

さすがにココで昼寝をする気にもならないし、白眼で監視だけしようっと。日向が戦場で不意打ちで死ぬのは、末代までの恥だからね。










「………ネ……ネジ………ネジおきろ~~~~~~~~~!!」

「ん~どうした、テンテン、大声出して。ふあ~~~~まだ眠いのだけど」

「ハァ、よくこんな場所で寝てられるわね。そんな事より、リーがまだ戻って来てないのよ」

「少しくらい時間の誤差はあるだろ。もう少し待ってみれば」

「集合時間を三十分も過ぎてるわ、いくらリーが、しっかりしてるからって心配よ」

「三十分?その間、俺を起こさなかったのか?」

「ハァ~、アンタ、まだ気付いてないの自分の状況」

周りを見ると、俺の近くに無数のクナイや手裏剣が、地面や樹に突き刺ささっていた。

「………暇を持て余していたなら起こせばいいのに。話相手くらいにはなるぞ」

「ハァ~~、その状況を見て平然としてるなんて、感心するわ………何度当ててやろうと思った事か」

「しかし、テンテン、ありがとうな」

「なにがよ………って人の忍具をパクルな~~~~~~~~」

「いや、日向は柔拳の誇りからか、忍具をあまり使わないから、忍具購入の領収書が落ちにくいんだよ」

「ハァ~~~もういいわ。それより、リーを探しにいくわよ」

「いってらっしゃい≪ヒュン≫………テンテン、忍具を貰えるのは良いんだけど。喉に向けて投げ付けるのは、どうだろうか」

「ハァ~~~~いいから探しに行くわよ。次は起爆札付クナイ投げるわよ」

「やれやれ、リーも困った奴だね、まったく」

「リーもアンタだけには、言われたく無いと思うわ」

テンテンと話している最中に、リーが帰ってきたので、探す手間が省けてよかった。

「すみません、遅れました」

「無事でよかったけど、どうしたの、リーらしくも無い」

「それがその………急にお腹の調子が悪くなってしまって」



















つまり、リーは雉を撃ってたわけだ…………………………………テンテンが三十分間、俺を起こさなかった事を心の中で感謝した。



[9289] 【ネタ】日向ヒザシのオーラロードニッポン【ネタ】
Name: 鈴科◆785aa133 ID:1a0ba480
Date: 2009/09/30 18:33
テーテテ、テレッテ、テッテレッテ、テレッテ、テレッテ、テレッテ。



「さあ今回から始まりました、日向ヒザシのオーラロードニッポン。司会進行の日向ヒザシです」

「父上、いきなりどうしたのですか、気でも狂いましたか」

「そして助手の日向ネジ、私の息子です。ほら、ネジも挨拶しなさい」

「挨拶って誰に?意味が解りません」

「この番組は、バイストンウェルよりお届けします」







【ネタ】○日向ヒザシのオーラロードニッポン○【ネタ】







「さて、ネジの説得ができたので早速、最初の感想から」

「まあ、とりあえず父上のやりたいようにやればいいんじゃないですか」

「感想掲示板Name    さんからの感想
 
 『ネジがすごい事になってるなぁw。
  でもそんなネジも好きです。
  斜に構えた態度をやめたそうだけど、ある意味違う角度に傾いたようなw。
  続きが読みたくなる作品です。』2009/Jun/02
 
 記念すべき感想第一号ありがとう。
 
 なお感想を読まれた方と、感想を書いてくれた方には、白眼ステッカーを自作する権利が贈られる」

「白眼ステッカー?自作する権利?なんですそれは」

「白眼ステッカーの作り方は、まず捨ててもいいステッカーを用意する。
 
 それに白色の丸を二つ描いたら、白眼ステッカーの出来上がり、簡単だな。
 
 自作する権利は、まあ本当にステッカーを送れるわけがないので………」

「…つまり、本当のラジオ番組のような雰囲気にしたいだけなんですね」

「そう言う事、あくまで雰囲気で楽しんでもらえたら、ありがたい」

「ところで父上、感想の名前が空白ですが、どういうことですか」

「一応、感想を書いてくれた方への、配慮の気持ちだったりする」

「空白がですか、まあ感想をくれた方の、名前の文字数と同じ空白数ですが」

「後に、あの時は感想書いたけど、やっぱり感想を消したいと思った時に、ココに名前が残ってると、ややこしいだろ」

「それはどちらかと言うと、作者の手間を省く為では。ところで感想をこんな場所に出して問題ないのですか?」

「投稿掲示板利用上の注意事項には、感想掲示板の感想を作品に利用するのは禁止とされていないので、大丈夫だと思いたい」

「つまり【ネタ】ですから、いつでも削除の覚悟はあると言う訳ですね」

「うん、そう言う事。さて気分を変えてっと、作品タイトル【ネジってみた】が評判よかったようだ」

「感想にも書かれてありますが、性格が捻れたネジの意味であってます。自分で言ってもなんですが」

「さて続いての感想

 感想掲示板Name    さんからの感想
 『カイってそのカイかwww
  っていうか何で知ってんだwww』2009/Jun/04

 【ネジってみた】の日向ヒザシは、何でもアリ。作者の知ってる事は私も知っているのだ」

「つまり、これからも好き勝手やるつもりですか、父上」

「もちろん。まあネタ的に、ネジが宗家の口伝奥義を使える事などは知らない事になってるがな、ココは別空間なので問題なし」

「正直二話の冒頭のネタは、かなりのチャレンジでしたね、まったくNARUTOと関係なかったので」

「ところで、ネジ………テンテンちゃんを覗いたのか?」

「覗く訳ないでしょうが。勘違いされてる方もいる様だけど、覗いてませんよ、まったく」

「まあ、これは日向に生まれたら必ず誤解される事だからな~、気にするな」

「ハァ~気にしても仕方ない事なのは、解ってますけどね」

「感想掲示板Name   さんからの感想
 『夢の中でヒザシと修行か~。ヒザシまで性格がゆるくなってるw
  ねじれたネジの影響は周囲にまで及ぶんですね。ヒナタとかも性格変わってるのでしょうか?』2009/Jun/09
  
 ヒナタ!!……………………………………………………………………………………………………」

「父上、どうしました放送事故になりますよ」

「宗家の娘の事か~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

「………柔拳」

「グハッ」バタ

「え~、父上が急に倒れられたので、今回はこれにて終了させて頂きます。

 それと、ヒナタ様の性格は原作と同じと思って下さい、夢の中の父は、あくまで夢の中の父です。

 世界には日向ヒザシが三人はいると思って下さい。………それでは、皆さんごきげんよう」

「…………………………………………………………………………………ネジ………強くなっガッハ…………………」










                 ~おまけ~

                  
                   の
                 

                ○ネジってみた○





「今日から、お前達の担当上忍になる、マイト・ガイだ。よろしくな!!(キラーン)」

「よろしくお願いしますガイ先生!!僕はロック・リーです」

「あたしはテンテン、よろしくガイ先生」

「日向ネジ、下忍です。マイト上忍よろしくお願いします」

「ネジ、俺の事は、ガイでいいぞ」

「特に仲間意識を持つ気は無いので、マイト上忍と呼びたいのですが」

「(ガシッ)俺の事はガイでいいぞ!!(キラーン)」

「………わかりました、ガイ先生………だから離れて下さい、暑苦しいから」

「ネジ、僕の事は、リーでお願いします」

「………………わかったから、にじり寄るな………………で、お団子頭は、なんて呼べばいい」

「………………………テンテンでいいわ」

「………ちなみに名字は」

「あたしが知りたい」

「………よろしくなテンテン」                       ガイ班結成時のお話でした。



[9289] ○ネジってみた○  4
Name: 鈴科◆785aa133 ID:1a0ba480
Date: 2009/09/30 18:34
父が決闘(デュエル)をするらしい、デュエルってなんだ?

「へっ、おっさんみたいなのが、ワイのダイナソーデッキに勝てると思うてんのか」

「なめるなよ小僧、私のギャンブルデッキの恐ろしさを、思い知るがいい」

対戦相手は、赤いニット帽の少年だ、そして二人は示し合わせたかの様に

        「決闘(デュエル)」

「先攻は私がもらう、ドロー………フッ、手札より魔法カード発動」
           ・
           ・
           ・
           ・
           ・ 
           ・
           ・ 
父が負けた………父とギャンブルデッキの相性は最悪だった

運の無さは生まれた時から最悪なのに、ギャンブルデッキで決闘するから、ダイナソーにも負けるんだ。んっ、ダイナソーって誰だ?

がんばれ父上、そのうちダイナソーには勝てるさ。社長には無理だろうけど………社長って誰だ?







        ○ネジってみた○  4話







「じゃあ、二人が集めた情報を元に今後の作戦を決めよう」

俺が場を取り仕切る形を取ったのが、なぜか不満そうな二人。

「さぼってた、ネジに言われたくないわね。まあ、ネジだから仕方ないか」

「遅れた僕が言えた義理ではありませんが、ネジは修行以外の事に関して、不真面目すぎます」

「俺としては、帰らなかった事を褒めてもらっても、良いくらいなんだけどね」

「ハァ~、リー、あきらめなさい。ネジはもう手遅れなんだから」

リーとテンテンは盛大な溜め息をつき、状況を報告してくれた。

「テンテンは収穫なしで、リーは二組発見したと」

「あたしは、かなり慎重に行動してたからね。もうちょっと大胆に行動しとけばよかったかも」

「無理して怪我でもしたら意味ないから、かなり慎重でも問題ないよ。それで、リーの発見した二組ってのは、どこの里?」

「二組とも木の葉です。一組は、秋道、奈良、山中。もう一組は………サクラさん達です」

「さくらさん?誰それ?」

「へっ………あっ、うちはサスケ君達の班です」

「確か、うちはの班には、金髪とピンク髪がいたから、どっちかの名前か」

「名前から想像すれば、わかるでしょ。ピンク髪は、春野サクラ。金髪は、うずまきナルト」

テンテンが二人の名前を教えてくれた、まあ憶える気は無いので、どうでもいいけどね。

「名前なんてどうでもいいけど。それにしても、リーはピンク髪の事を言うのためらってたよね、なんで」

「それはね、リーは春野サクラに恋してるからよ………フフフ」

「テンテン、笑うなんて失礼じゃないですか!!僕が恋をしたらいけませんか!!」

「怒らないでよ、ただ青春してるな~って思っただけだから。フフフ」

リーとテンテンのやり取りは、しばらく続いた、と言うより続きそうだったので、寝た。










「………ネ………ネジ…………ネジ起きろ~~~~~~~~~~!!」

目を覚ますと、俺は知らない人間の背中を左足で踏み押さえ、そいつの右腕を俺の左手で捻り上げていた。

「………この状況はいったい?………テンテン、リー、緊縛プレイでもやってるのか?」

目の前には簀巻きにされたリーとテンテンがいて、二人にクナイを突き付けている、顔面包帯男と黒髪の女。

「だから言ったでしょう、寝ているネジに近づいたら、問答無用で押さえ込まれるって。クナイや手裏剣だって、投げ返すのよ」

テンテンがなぜか、俺の寝癖を説明口調で話している。まあ説明する必要はあるけどね。

「どうやら本当に寝ていたようですね、信じられませんが。まあとりあえず、その足をどけて、ザクから離れてもらいましょうか」

「分かったら、とっとどきやガダダダダダ」

足元で騒ぐ物体の腕を捻って『うるさいから黙ってて、これ以上騒ぐと折るよ』と言ったら静かになった。

「リーでもテンテンでも、どちらでもいいから、この状況を説明してくれないかな」

リーとテンテンは、なにかに疲れた表情で俺を見て、包帯男と黒髪女は珍しい動物を見る様な表情で、俺を見ている。

「では代表して、僕がネジに説明します」

リーが意を決した様に話し出す………………………………………………………………………そんな事があったのか、なるほど。

「つまり、口喧嘩に夢中になったせいで、コイツらの接近に気付かずに、押さえ込まれ簀巻きにされたと………マヌケだね~」

「アンタにだけは言われたくないわよ、ネジ!!」

「これで分かってもらえましたか、さあ、ザクから離れてもらいましょうか」

「分かったら、とっとどきやガッハ」

「足でも柔拳って言うのかな、まあ、どうでもいいか技の呼び名なんて」

足元で騒ぐ物体に、足で柔拳を叩き込んでみたら思ったより上手くできた。とりあえず、静かになった物体を包帯男の前に投げる。

「ザク!!どうやら、お仲間の生命を救う気は無いようですね」

包帯男はリーにクナイで軽く傷を付け、俺を睨み付ける。しかし、この包帯男はなにを勘違いしてるのやら。

「そもそも助ける理由がないだろう。まったく、なにを考えているのやら」

「ハァ~~~ネジ、アンタって存在は………」

「ネジ、僕は自分の不甲斐なさを悔いなければいけないのは分かっています。ですが………」

「最低だな、コイツ」

「だが、忍らしいといえば忍らしい」

んっ、なにか勘違いされた、どうやら言葉足らずだね。

「俺が助ける理由では無く、お前ら二人が、リーとテンテンを、助ける義理が無いって事だよ」

たとえ俺が、リーとテンテンの為に犠牲になっても、コイツらがわざわざ二人を解放する理由が無いからね。

「我々が信用できませんか………って、そもそも解放するなんて言ってませんし、普通は信用しませんね」

包帯男は自分の言葉に自分で納得している。黒髪女も神妙な顔つきで頷いている、そして。

「仲間を助ける為なら、木の葉の忍は自分の生命を顧みないって聞いたけど、アンタは違うようだね」

黒髪女は残忍な笑顔で、クナイをテンテンに近づけた。まあ近づけただけで本当に刺す気は無いらしい、今のところは。

「仲間だから助ける気はあるよ、一寸の虫の魂くらいは」

「えっと………少なっ、一瞬考えちゃったけど少なすぎるわよ、ネジ」

「一寸の虫の魂は五分だから、………1.5cmしか助ける気が無いとは………侮れない男だ」

「木の葉に対する評価を改めた方がよさそうですね」

「待って下さい。ネジで木の葉の評価しないで下さい、アレは特殊なんですから」

テンテン、黒髪女、包帯男、リー、俺の発言に衝撃を受けたのか、隙だらけだった。当然この気を逃す理由も無いので。

「とりあえず、王手でいいよね」

瞬身の術で近づき、包帯男の頭に右手、黒髪女の頭に左手をのせた。

リーとテンテンの簀巻きが並んで置かれていて、その上にコイツらが座っていたから、出来る事だった。

「いつの間にとか言わないでね、隙だらけだったのだから。それから柔拳ってのは、体の内部を破壊する技なんだよ」

「………なにが言いたいのです」

「目の前に転がっているソレより、酷い物体になりたくなかったら、静かにしろって事」

「………どうも信じられませんね。先程のやり取りではありませんが、我々を生かす理由が無いのに、なぜ技を叩き込まないのか」

「あ~簡単だよそんな事、わざわざこんな試験で、生命のやり取りをする必要がないからだよ」

そういって俺は包帯男と黒髪女から手を離した。まあこの距離なら、相手が行動する前に殺せるけどね。

「ザクをあんなにした、アンタが言える事か」

「心配なら見に行けばいいよ、たぶん生きてるから。初めてやった技だから、今ひとつ自信はないけど」

包帯男と黒髪女が、俺の表情をうかがっている………包帯男がなにか諦めたように。

「キン、この場は退くぞ。まったく、ザクの遊びに付き合ったら酷い目にあったものだ。なにが肩ならしだ」

「分かった………ザクは一応生きているよ、ドス」

「俺が運ぼう………今回の手打ちとして、巻物をお納めください、地の巻物です………それでは失礼」

そう言って、二人と一体は姿を消した………別に巻物は要らなかったんだけどね、リーとテンテンは喜んでいるけど。














その後無事、塔に辿り着き第二試験を突破。

第二試験終了まで時間があるので、一旦家に帰ると言ったら、テンテンとリーだけでなく、上忍達や火影様まで参加して簀巻きにされた。

どうやら、サボると思われたようだ………………………………………………………………………………………………………サボるけどね。



[9289] ○ネジってみた○  5
Name: 鈴科◆785aa133 ID:1a0ba480
Date: 2009/09/30 18:35
「異議あり!異議あり!異議あり!異議あり!」

父が先程から、二つ折りできる手のひらサイズのゲーム機に『異議あり!』と叫び続けている。

「父上、先程からいったい、なにを叫んでいるのですか?」

「異議あり!異議あり!異議あり!異議あり!」

「………父上………柔拳を打ち込んでいいなら『異議あり!』と、三回叫んでください」

「異議あり!異議あり!異議あり!イギャハッ」





「ネジ、いきなり柔拳を叩き込むのは、どうかと思うぞ」

殺す気で打ち込んだのに、父は三分ほどで復活した、流石は夢の中だ。

「そんな事より父上、先程から、なにを叫び続けていたのですか?」

「そんな事って………まあいいか。叫んでいたのは、ゲームをしていたからさ」

「ゲームをするのに、叫ぶ必要があるのですか?」

「音声入力があるゲーム、その名も『白眼裁判』だ」

「『白眼裁判』………どんなゲームなんです、ソレ」

「主人公は日向分家の一人になり、宗家の無理難題な命令を、ひたすら『異議あり!』と、断り続けるゲームだ」

「裁判関係ないですよね………おもしろいですか、ソレ」

「………ほんの少し」







          ○ネジってみた○  5話






簀巻きにされた後、駄々をこねまくったら、塔の中にある施設を、ある程度自由に使っていいといわれた。

せっかくなので倉庫に行き、忍具や忍具製作の材料を貰い、独自の忍具を製作してみる、材料費がタダってのがいいね。

寝食を忘れたり、リーやテンテンと軽めの鍛錬をしたり、結構充実した日々か続いていた。

「ネジ、そろそろ集合時間です、行きましょう」

「ん~もう時間か、台車はどこだ~………あった。じゃあ、リー、後はよろしく」

俺は台車に寝転がり、リーに会場まで、台車で連れて行ってもらう事にする。連日の徹夜で眠たいからね。

「駄目に決まってるじゃないですか、火影様もいるんですよ」

「帰らなかった、褒美って事で良いと思うよ。火影様もわかって…くれ………」




















「…………………………冷たい」

目が覚めると、なぜか俺は簀巻きにされていて、その上なぜか、ずぶ濡れだった………なぜ?

「ようやく起きましたか、日向ネジ君」

顔色の悪い人がバケツを持ちながら、俺に話しかけてきた………月光特別上忍っていったけ、たしか。

「まだ寝たりませんけどね………で、どういう状況なんですか、コレは」

俺の周りをなぜか、上忍や特別上忍が取り囲んでいる、上忍達の目には疲れと驚きがあった。

「本当に寝ていたの、ガイ、とてもじゃないけど信じられないわ」

「紅、ネジの寝癖の悪さは半端じゃないのさ。それに、もし起きていたなら、回天をこんな所で使ったりはしない」

「………ガイ先生、回天使ったんですか、俺」

「水をぶっかけて起こそうとしたら、回天で防いでいたな。苦労したぞ簀巻きにするのは」

………………落ち込む、ガイ先生達に口止めしてまで隠していたのに………………寝よ。

「おい寝るなよ《バシャー》まったく大した奴だね、この状況で寝ようとするとは」

大した奴だと思うなら、水をかけないでもらいたいです、猿飛上忍。

「え~、ネジ君も起きたので、これでようやく第三試験の予選が始められます」

月光特別上忍が訳の分からない事を言い出した………予選ってなに…………………………面倒な事になりそうだな………よし。

「却下だ!!ネジ、それは却下だ!!」

「ガイ先生、俺はまだ何も言ってませんが」

「ネジ、お前は沢山の人に迷惑をかけたんだ!!お前を起こすのに上忍達を働かせ、他の下忍は一回戦が終らなければ戦えない」

「それは俺を起こさず、失格にしていたら、誰も困らなかったと思いますが」

「だから、お前が予選を棄権するなんてのは却下だ!!!!!!!!!!!!!」

「………暑苦しい、それで予選ってなんです?」

「残ったメンバーが、一対一で戦うんだよ。まあ一人棄権したから、残った二十人でね」

はたけ上忍が簀巻きを解きながら説明してくれた………棄権………起きてたら出来たかな………………無理だろうな。

「そうですか、ありがとうございます」ガシッ

「そう言いながら、どこに行くのかな、ネジ君」

「パンツも濡れているので、家に着替えに帰ろうかと思っているだけですよ、はたけ上忍」

「フゥ、そう言わずに戦ってやってよ。うちのサスケも、君と戦うの楽しみにしてるみたいだからさ」

うちのサスケ………ああ、うちはか、一瞬うちのって家名があるのかと思った。

俺から少し離れた場所に、うちはがいた。腕を組み、睨み付けるかのように、俺を見ている。

「ようやく、お目覚めのようだな日向。………うちはと日向、どちらが優れているか勝負だ!!」

どちらが優れているかなんて、どうでもいいけどね、そんな事。

上忍達が俺から離れ、観戦場所に戻っていったのを確認し、月光ハヤテ特別上忍は声を上げる。

「これより、第三試験の予選、第一回戦を開始します。日向ネジ対うちはサスケ………試合開始」


















世界が捻れたような気がした、本来起こりえる未来は姿をけし、ありえない未来が起こる世界の誕生、そんな予感がする。

                    








                      世界がネジれた事で。



[9289] ○ネジってみた○  6
Name: 鈴科◆785aa133 ID:1a0ba480
Date: 2009/09/30 18:36
「これより、第三試験の予選第一回戦を開始します。日向ネジ対うちはサスケ………試合開始」

「タイム、ちょっと聞きたい事があるのですが、いいですよね」

試合開始直後のタイムに、非難の眼差しが俺に集まるが気にしない、とても大事な事を聞くからね。

「………なんですネジ君。くだらない質問ならクナイを投げ付けられても文句はいえませんよ」

「簡単な質問ですよ。勝つ為には、どんな手段を用いても良いんですか?」

月光審判は、自分では判断を下しかねたのか、火影様に判断を委ねた。

「かまわんよ、それでこそ中忍試験を開催する意味がある」

………勝つ為に手段を選ばない事が、なぜ中忍試験を開催する意味になるのか分からないが、ともかく了承は得られた。

「ありがとうございます。これで心置きなく塔を爆破できます」

瞬間、俺の周りを上忍達が取り囲み、会場はどよめき立つ。







        ○ネジってみた○  6話







「冗談も言えない世の中は嫌ですよね、ホント………ガッフ」

「ネジ、言って良い冗談と悪い冗談があるぞ!!」

ガイ先生に頭頂部を拳固で殴られた。痛すぎるので、火影様に文句を言う事にする。

「火影様のせいで殴られました、慰謝料下さガッフ」

マタナグラレタ、イタイ、イタスギる、ナキたくなるよ本当。

「まあ世の中、何事も限度を弁えるようにな………あと………スマン」

上忍達が再び観戦場所に戻っていき、俺の頭の痛みも少しはましになってきた。うちはが哀れな生き物を見る目で俺を見ている。

「大丈夫かお前、俺と戦う前にボロボロの様だが」

そういえば、眠りながら上忍達と戦ったらしいから、疲れているのは当たり前か。無傷で簀巻きにされたのは流石上忍といえる。

「先程までの威勢はどうした、うちは。手段を選ばない俺に勝てる人間が、いても、いなくても、気にしない俺に勝てる気か」

「………俺のイメージしていた日向とはかなり違うが、コレが日向か」

「サスケ君!!ソレを日向だとは思わないでほしいの、ソレはかなり特殊だから」

へぇ~ヒナタ様でも大声出す事があるのか、妙に感心した。それにしても最近、アレ、コレ、ソレ、呼ばわりされる事が多いな~。

「とりあえずいくぞ、ヒュウ…………………ネジ!!」

うちはが俺を日向と呼ぶのをやめたようだ、ヒナタ様の願いに答えたのか、別の理由があるのかは分からないが。

はっきりいって、うちはの攻撃は微妙だった………こんなものかな、うちはってのは………なんか体の調子が悪そうではあるが。

「どうした逃げてばかりか、ヒュ………ネジ」

「なんか体の調子が悪そうだな、うちは」

「それはお互い様だろうが………ネジ。少しは真面目に戦え!!」

「生憎だが、俺は真面目に戦う気は無い!!手荷物より巻物を発動、巻物の効果により秘密玉(特大)を召喚」

俺は一旦、うちはから離れて巻物に封印していた忍具を呼びだし、うちはに向かって秘密玉(特大)を押し転がした。

「なんのつもりだ………まさか爆弾か!!」

「心配しなくても只の煙幕だよ………ちょっと特殊だけどね」

会場の中心辺りで、秘密玉(特大)が『バフン』と音を立て弾けた、辺り一面を茶色の煙が覆いつくす。

「煙幕だと………何だこの匂いは!!」

「せっかくの煙幕なので、これ以降喋りませんが、逃げる事は無いので心配しないで下さい、ガイ先生」

俺はガイ先生に宣言して、ある物を巻物から出した。

「これ、なんの匂い?なにか知ってるような匂いだけど」

「か~なんだってばよ、この匂い、どっかで嗅いだ事あるってばよ」

「こっ、この匂いは、ソースの焼ける匂いだ~~~~~~~~~」

最初に気付いたのは秋道だった。まあ普通は、煙幕からソース焼きそばの匂いがするとは思わないだろうから、迷うんだろうね。

会場はかなりざわついている。白眼で観察すると腹を押さえている人間が多い、どうやらこの匂いが食欲を刺激しているようだ。

「なんのつもりだネジ、答えろ!!」

(だから喋らないって言っただろ《コー》喋ったら仕込がばれるんだよ《ホー》まったく)

なにも答えない俺に苛立ちはあるだろうが、煙幕の中、俺が攻撃してくるのを警戒しているようだ。

俺はわざと音を立てたり、うちはの警戒心をひたすら煽って、煙幕が晴れるまでの時間、うちはが煙幕から逃げない様に仕向けた。








五分後。煙幕が晴れて、痺れて動けなくなった、うちはと、ガスマスクを付けた俺を見比べて、煙幕の外に居た月光審判は呆れ顔で。

「勝者、日向ネジ」

煙幕に痺れ薬を混ぜていただけの話である。ソース焼きそばの匂いは、危機感を削ぐ為の擬装。

観戦場所まで、煙幕自体は届いていなかったので、二次被害は無いようである。焼きそばの匂いで空腹感を煽ったのは、特に問題なし。

うちはは医務室に運ばれ、俺はガイ先生達がいる観戦場所に向かった。ココ以外の場所に行こうとすると、簀巻きだろうからね。

ガイ先生が両手を広げて出迎えてくれた、抱き付かれそうになったので避ける。暑苦しい先生だな、まったく。

「お前は戻ってくると信じていたぞ、ネジ!!」

『先生、暑苦しいから抱き付こうとしないで下さい《コーホー》後、上忍の方々は、なんで残念がっているんですか《コーホー》』

「ネジ、取り敢えずマスクを外せ、声が聞き取り難いぞ。後アスマ達が残念がっているのは、お前で賭けをしたからじゃないぞ」

どうやら俺で賭けをしていたらしい、ガイ先生だけ俺が戻る事に賭けたらしい………というより賭けさせられたのだろうな。

なにやら、火影様も残念がっている様に見えるのは気のせいだろうか、などと考え事をしていたら、二回戦が発表された。

「第二回戦は日向ヒナタ対赤胴ヨロイ」

ヒナタ様が戦うらしい、対戦相手は木の葉の人間、なら接近戦は避けるだろうか、対戦相手の黒目はどんな忍だろう。

試合が始まり、両者は接近戦で勝負するようだ。ヒナタ様の攻撃を黒目が防ぎ、黒目の攻撃をヒナタ様が防ぐ、一進一退の攻防。

俺は黒目の攻撃に違和感を感じた、手のチャクラではない、なぜか必用にヒナタ様を掴もうとする、その姿に違和感がある。

「………あ~分かった、変質者に見えるんだ、無理矢理少女に触ろうとする」

「ネジ、いきなりなにを言っているんです、変質者って」

リーが俺に声をかけてきた、どうやら声が出ていたようだ。

会場すべての人間が俺を見ている。もちろん、ヒナタ様も黒目も、仕方ないので俺は感じた事を話す事にした。

「あの黒目が、ヒナタ様を必用以上に掴もうとする姿が、少女を無理矢理触ろうとする変質者に見えたんだ」

会場の空気が凍りついた…………悪い事したかな、えっと、名前は確か赤胴ヨロイか、悪気は無かったんだけどね、赤胴さん、ゴメン。

女性陣からは、汚物を見る様な目で見られ、男性陣からは、ああはなりたくないという目で見られた、赤胴さんが叫んだ。

「誰が変質者だ!!俺の技はチャクラ吸引術だ!!掴んで始めて意味のある術なんだよ!!それ以外に他意なんかあるか!!」

赤胴さんの必死な説明に、会場の人間の視線が緩和されかけた瞬間。

「………でも、結局ヒナタを触るんだってばよ」

金髪が余計な事を言った。

「イ~~~~~~~~~~~ヤ~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

ヒナタ様が渾身の力を込めた柔拳を、赤胴さんに撃ち込んだ………吐血して倒れる赤胴さん、生きてると思いたい。

「大丈夫、大丈夫だから。落ち着いてヒナタ」

なおも赤胴さんに攻撃しようとするヒナタ様を、夕日上忍が止める。

「勝者日向ヒナタ………医療班急いで治療を」

赤胴さんが担架で運ばれていく、取り敢えず生きている様なので安心した、あれで死なれたら寝覚めが悪すぎる。

「………火影様、このまま俺がここにいたら、また問題を起こしそうなので出て行きましょうか」

先程の試合、俺の発言が無ければヒナタ様と赤胴さんの、どちらが勝っていたかは分からないのだから、正直責任を感じている。

「お主の発言が勝敗を決めたかもしれん。だが、言葉一つで心を乱した者が未熟とも言える」

火影様が優しく俺に語るが、その言葉は会場すべての人間に向けたものだった。

「ほんの少しの心の乱れが生死を分ける、戦いとは無情なもの。ゆめゆめ忘れぬようにな」

「お心遣い感謝します、火影様」

「すごい、ネジが人並みの常識を持っているかの様にに見えるわよ、リー」

「テンテン、僕達は奇跡を目の当たりにしているようです」

なにやら、テンテンとリーが言っているが気にしない、今は火影様の言葉を胸に刻もう。たとえ明日には忘却の彼方で在ろうとも。






















後日談になるが、赤胴さんが木の葉を抜けたらしい。やっぱり俺のせいだろうか、責任を感じる………顔は思い出せないけど元気でね。



[9289] ○ネジってみた○  7
Name: 鈴科◆785aa133 ID:ffa706a6
Date: 2009/09/30 18:36
「第三回戦テンテン対テマリ」

あたしの対戦相手は砂の忍、情報が無いのは相手も同じ、張り切っていきますか。

ガイ先生とリーは素直に応援してくれるがネジは『死なない程度に頑張ればいいよ』だった、応援くらいやる気だせ、まったく。

「それでは第三回戦、試合開始」

あたしは開始の合図と同時に距離をとり、巻物を三本空中に放り投げ、さまざまな忍具を召喚し術を唱える。

「忍法操具の術」

砂の忍が笑ったような気がした。







        ○ネジってみた○  7話







「テンテンは綺麗過ぎるのが問題だな」

「なっ、なななななななななにっ言ってんのよ!!いきなりなに言い出すのよ!!」

ネッ、ネジがいきなりあたしに告白した!!ってこれって告白、相手はネジだ、間違いの可能性が高い、冷静になれあたし。

「きっ、綺麗過ぎるって、なにが過ぎるのかな………ネジ」

「テンテンの投擲動作は綺麗過ぎるから、何処に投げるつもりか分かりやすいんだよね、問題だよそれは」

ハイッ違った!!あたしのトキメキを返せっていうか、ネジなんかにトキメクなあたし。

あたしとネジは二人で投擲練習をしていた。ガイ先生とリーは、夕日に向かって走りに行った、明日の朝までには帰るだろう。

ネジがあたしの練習を見ていて、いきなりさっきの台詞を言ったものだから、思わず焦ってしまったのだ、他意はない他意は。

「投擲動作が綺麗なのが問題って言っても、じゃあ、わざと崩して投げるわけ」

「言い方が悪かったね、テンテンの戦い方には虚実が無いんだよ、虚が無く実だけ、それだと格下相手にも苦労する事になるよ」

「………でも、飛び道具で虚なんてやりようあるの、下手な小細工より、物量で攻めた方が簡単確実だと思うけど」

「下手な説明より、実際に経験した方がいいよね」

そう言って、ネジは三個のボールでお手玉を始めた。

「今からこのボールを投げるから、テンテンは避けるようにね」

ネジの意図は分からないけど、ただボールを当てれるのは癪なので、ネジの動作から視線を逸らさず観察する。

一分…二分……三分経過したが、ネジは一向に投げる気配が無い、だがここで集中を切らしてはいけない………が。

「ん~、やっぱりこれだと説明しにくいかな~、別のやり方で説明しよう」

ネジはあっさりお手玉をやめボールを落とす。

「まったく、なにがやりたいのよ、ボールも落としちゃ《ポス》って………えっ」

あたしのお腹にボールが当たっていた、痛みは無いが………

「これが虚だよ、相手の視線をほんの少しずらすだけで、当てられない攻撃も当てる事ができるようになる」

「………まあネジの言いたい事は、なんとなく分かったけど、あまり気分のいいものではないわね」

「やるやらないはテンテンの自由だよ、ただ実だけで勝てるのは実だけで戦う格下の相手だけ」

その日から、あたしの戦い方には大きな変化があった。ガイ先生は褒めてくれたし、リーも手伝ってくれた。

あたしは強くなったと自負する。でも、これからも修行は怠らない。

実を生かす為の虚、虚を生かす為の実、道を極めるには、まだまだ強くならなければいけないのだから。





「カマイタチの術!!」

砂の忍の声に我に返った、白昼夢を見ていたらしい。砂の忍が、巨大扇子を今にも振り抜きそうだった、間に合うかあたしの術は。

風が凶器となって、あたしと召喚した武具に襲いかかる。

「グッア、なっ、なに」

砂の忍………もうテマリでいいか。テマリは背後から刀に貫かれた足を見て驚愕している。

「あなたは鎖帷子を着ているから足を攻撃したわけ、首を貫かれるよりかはいいでしょう」

「いったい、いつのまに………操具の術っての唱えてたはずだ」

「操具の術なんて無いから、あたしが唱えたのは瞬身の術。あたしが放り投げた巻物に視線を移したのが、あなたの敗因」

テマリがあたしから視線を逸らし扇子で攻撃する瞬間に、あたしの瞬身の術が発動し、テマリの背後に回りこみ刀で刺した、それだけ。

刀に貫かれたままのテマリは降参しそうに無かったが、刀をほんの少し捻ると、絶叫後降参してくれた。

「その刀、後で返してね、安い物ではないから」

その場で刀を抜くと血が吹き出るので、医療班に刀の返品を約束してもらって、ガイ先生達のいる観戦場所までもどる。

ガイ先生とリーは暑苦しく出迎えてくれたが、ネジがいない………ふと思い立ち、会場に向かって声をかける。

「ネジ、あたしの忍具を盗っちゃだめよ」

「盗むつもりはあっても、盗まないよ」

ネジはそう言って、あたしに忍具を収納した巻物を三本返してくれた。

「珍しいわね、あっさり返すなんて」

「テンテンのおかげで儲けたからね、テンテンの取り分だと思えばいいよ」

あたしで賭けをしたのか、アスマ上忍が頭を抱えている、見ると火影様も頭を抱えている、あんたら、親子でなにやってんのよ。



第四回戦はリー対うずまきナルト。

ナルトが多重影分身を使えるのには驚いたが、リーとは身体能力が違いすぎた………がナルトは異常に撃たれ強かった。

このままでは埒が明かないと思ったであろう、リーは顎打ちでナルトに脳震盪を起こさせ。

倒れたナルトに、クナイを突き刺そうとしたところを審判に止められ勝利した。(審判は明らかに勝敗が決した場合、試合を止める)

出会ったばかりのリーなら、愚直なまでにナルトを攻撃して、撲殺していたかも知れない。

リーもあたし同様、戦い方が変わり強くなった。癪に障るがネジの影響だろう、ネジは人に影響を与える人間、反面教師とも言う。


第五回戦は山中イノ対春野サクラ。

途中までは、いい勝負だったが、イノが心転身の術でサクラに乗り移り勝利した。


第六回戦は犬塚キバ対我愛羅。

キバが棄権した為、我愛羅の不戦勝。得体の知れない相手なので、棄権も納得である………ネジなら勝てるだろうか、興味がある。


第七回戦は奈良シカマル対キン・ツチ。

シカマルが影真似の術で勝利、あたしとリーを簀巻きにした奴なので、もう少し頑張って欲しかった。


第八回戦は秋道チョウジ対剣ミスミ。

剣が軟体動物の如く、チョウジに絡み付き締め上げたが、秋道秘伝の倍化の術で剣の手足の関節が外れて敗退。

関節が外れただけで良かったと思う、下手すれば手足が千切れ飛ぶ事もあっただろう、ともかく剣には相性の悪い相手だった。


第九回戦は油女シノ対ザク・アブミ。

なぜか腕が折れているザクをシノが追い詰め勝利、はっきり言って油女一族だけは戦いたくないわね。


第十回戦はカンクロウ対ドス・キヌタ。

ドスが接近戦で一気に勝負を決めたかと思ったら、攻撃したのが傀儡だったのだ。

気付いた時にはドスは傀儡に捕らえられ、全身の骨を折られ敗退。

本物のカンクロウは、傀儡に背負われていた荷物のふりをしていたらしい、試合まで三時間以上も我慢していたのは、素直に感心する。







勝者九名が火影様の前に整列している………ネジは観戦場所で寝ているが『ネジだから』で済まされ放置されている。

本題。火影様曰く、本選は一ヵ月後。本選までに修行して強くなり、立派な見世物になれとの事、ここまで露骨には言ってはないけど。

対戦の組み合わせも行われた、対戦組み合わせは以下の通り。


一回戦 日向ネジ   対 我愛羅

二回戦 油女シノ   対 カンクロウ

三回戦 奈良シカマル 対 ロック・リー

四回戦 テンテン   対 山中イノ

五回戦 一回戦勝者  対 日向ヒナタ

六回戦 秋道チョウジ 対 二回戦勝者

七回戦 五回戦勝者  対 三回戦勝者

八回戦 四回戦勝者  対 六回戦勝者

決勝戦 七回戦勝者  対 八回戦勝者


寝ているネジは問答無用で一回戦に登録させられ。ネジに興味を持った、我愛羅がネジとの対戦を希望。

他にネジとの対戦希望者が無かった為、本来ならありえない事だが、我愛羅の希望が認められ、ネジは我愛羅と戦う破目になった。

あたしの対戦相手は山中イノ。はっきり言って、今なら楽勝だろうが、一ヶ月でどう化けるかわからないから油断は禁物。

それより問題なのはシノ、是非ともカンクロウとチョウジには頑張ってほしい。蟲はきついのよね蟲は。

ちなみに、対戦組み合わせはネジの逃亡を防ぐ為、ネジには本選まで誰と戦うか分からないと、嘘を教える事になった。

本選の説明が終わり、ネジの対応もきまったので、解散する事になった。

また、死の森を抜けなくてはいけない、まあ上忍達が一緒なので、危険は無いだろうけど。






………その後、特に危険もなく、無事死の森を抜ける事が出来た。

死の森を抜けた後、医療班と患者は、病院へ直行するようだ。(塔には最低限の設備しかないので)

火影様より、本選を期待するとの言葉の後、今度こそ本当に解散。

一ヶ月どう過ごすかは、明日話す事にして、ガイ先生とリーに別れを告げた。

あ~、帰ったらお風呂に入ろう。塔にはお風呂が無かったから、タオルで体を拭く事しかできなかったのよね~、サッパリしたい。

ネジ?ネジは第二試験の試験官である、みたらしアンコ特別上忍が責任を持って、死の森から出すとの事。

はじめは渋っていたが、火影様となにかやり取りしたとたん、上機嫌でネジの世話を引き受けていた。



次の日、ネジに聞いたら、アンコさんが食べた大量の団子の代金を奢らされたらしい。(持ち合わせが無かったので給料から天引き)

これに懲りて、少しは真人間になればいいのに…………………………………………………………………………………無理だろうけど。



[9289] ○ネジってみた○  8
Name: 鈴科◆785aa133 ID:5f83ae7e
Date: 2009/09/30 18:37
前日に、みたらし特別上忍に教えられた場所に行くと、ガイ先生達はすでに居た。

挨拶を済ませ、本選出場する者は本選終了まで任務は免除されるので、一ヶ月をどう過ごすかの話になる。

「俺達が戦う可能性もあるから、個々で修行した方が良いですよね」

「そうだな、お前達は仲間だが、好敵手でもある。互いが切磋琢磨し、鍛え上げるのは良い事だ」

一ヶ月間、俺達は別れて修行する事になった。ガイ先生は一人に付きっ切りで、修行を手伝ってくれるとの事。リーが望むと思ったが。

「一度僕は、ガイ先生から離れて修行する必要があると思うんです」

こんな事を言い出したので、俺とテンテンの焦りは尋常では無かった。ガイ先生と二人きりで修行………考えるまでも無く暑苦しい。

テンテンと目配せして一計を案じた。

「リーが辞退するなら、俺がガイ先生と修行しようかな。今の俺を雑魚扱い出来るまで、強くなれる自信があるよ。ガイ先生となら」

「それなら、あたしがガイ先生と修行するわ。上忍達相手に一騎当千出来るくらい、強くなれる自信があるわ。ガイ先生となら」

「そっ、そんなに強くなれますかね、ガイ先生と修行したら………一度断ったのに自分勝手ですが、僕もガイ先生と修行したい」

「どうぞどうぞ」







        ○ネジってみた○  8話







ガイ先生をリーに押し付ける事に成功した、俺とテンテン。

その後、テンテンと別れ、小さな池のある演習場にやってきた。

俺は池の水面に寝転がりながら、本選までの一ヶ月間、どう過ごすか考えていた。ちなみに、水面で寝転がっているのも修行だけどね。

水面で寝るには、チャクラを全身から放出させなければいけないので、簡単そうに見えて高等技術だったりする。

これが出来るのは、おそらく木の葉でも日向宗家当主経験者と俺だけ、まあ宗家の人間がこんな真似しないだろうけどね。

初めの頃は五分と持たなかったが、今では四時間ほど睡眠をとる事も出来るようになった。これは、寝ている時も無意識にチャクラをコントロール出来ている証拠。

五分から四時間と時間が格段に増えたのは、チャクラ量が増えたのではなく、チャクラコントロールが格段に上手くなった結果である。

ちなみに俺の寝癖の悪さは、この修行以降かららしい、ガイ先生達の証言なので間違いないだろう。

俺の寝癖は、ガイ先生の仮説によると、寝ている時に全身から微量のチャクラを放出して簡易結界を展開。

そして、その結界に侵入されると体が勝手に対応するとの事。当然記憶は無いが便利な体になったと感心する。

『水面睡眠』この修行の良いところは、寝ながら出来る事と、起きた時には疲労困憊状態なので、寝すぎて寝れない状態にならない事。

本選までの一ヶ月は気合を入れて、ガイ先生から貰った重りを着けて、水面に寝転がる事にしたが流石に眠れない。重すぎるしコレ。





二時間後、俺は疲労困憊で池から上がると、なぜかみたらし特別上忍がいた………気付かなかったな、余裕無かったし。

「また、団子を奢らされるのですか、みたらし特別上忍」

「いや~、どれだけ奢らせるつもりだって、火影様に怒られちゃてね。代わりと言っちゃなんだけど、修行を手伝ってあげるわ」

「………それじゃあ、組み手をお願いしていいですか」

「以外ね~、てっきり断られると思ったけど………組み手はOKだけど大丈夫なの、疲れているからって優しくしないわよ、あたしは」

「問題ないですよ。万全の体調で無ければ戦えない存在なんて、意味ないでしょう。疲れているから見逃してくれる敵はいないし」

重りを外し構える、みたらし特別上忍の目が獰猛さを帯び、嬉しそうに笑う。

「アンタ、予選の時とまるで別人ね………ガイに聞いたとおり、修行だけは真面目ってのは本当のなのね」

白眼を使う力も残っていないが問題ない、疲れているからこそ出来る戦い方もある。

「それじゃあいくわよ、日向の坊や」

みたらし特別上忍は一瞬で距離を詰め、俺の腹に膝蹴りを入れようとした、みえみえの囮攻撃だったが、両手で受けるしかできない。

碌に踏ん張る事も出来ずに体勢を崩した俺に、膝蹴りに使った足を軸足にしての回し蹴りが迫り…俺の頭は砕かれた。







「あ~、生きてるってすばらしいかもね」

気絶から目覚めた、俺の第一声にみたらし特別上忍に『頭大丈夫』と、どちらの意味で聞いたのだろうと思う質問をされた。

「大丈夫ですよ、外傷は無いですしね」

「それもおかしいわね、殺す気で蹴ったのに………止めを刺しとくべきだったかしら」

「組み手で止めを刺さなくていいですよ、みたらし特別上忍。それと外傷が無いのは回天の応用です」

「回天の応用って回天なんか使ってないじゃない、アンタ」

「蹴りがあたる瞬間、あたる場所だけチャクラを放出したんですよ。衝撃を完全に殺す事が出来なかったので、気絶しましたけどね」

「すごいとは思うけど、衝撃を防げなきゃ役に立たないじゃない」

「クナイや手裏剣なら十分防げますよ。それに一番の目的だった、無意識でのチャクラ防御が達成できそうですしね」

俺はみたらし特別上忍に、今回の修行目的を説明する。

『一つ 本選をサボる方法を考える

 二つ 回天より優れた防御方法の開発

 三つ チャクラコントロールの更なる向上』

「以上が俺の修行目的です、二つ目と三つ目は達成できそうですね………一つ目に関しては、じっくり考える事にします」

「アンタってやっぱり変わってるわね、普通なら強くなった自分を評価して貰いたいと思うでしょうに」

「俺は修行して強くなる事は好きだけど、その強さをひけらかす趣味は無いのですよ、みたらし特別上忍」

「変な奴、でも気に入ったわ。あたしの事はアンコさんて呼びなさい、アンタの事はネジって呼ぶから」

「嫌なので遠慮します、みたらし特別上忍」

「………………あたしの命令に逆らうのは、この口か~!!」

みたらし特別上忍が襲いかかってきた、体は先程より動くが、全然相手にならずにのされてしまった。







二度目の気絶から目を覚ますと、みたらし特別上忍の姿は無かった。気絶した時間を考えると昼食時は過ぎているだろう。

腹が減っては修行に身が入らないので、遅い昼飯を食いに行くことにする。その前に顔を洗おうとして池の水面に顔を写したら。

『アンコさんと呼べ!!』と顔に書かれていた………ガイ先生とは別の方向で暑苦しい人だ………アンコさんと呼ぶ事にした。














その後、アンコさんと修行したり、猿飛上忍改め、アスマさんと修行したり、夕日上忍改め、紅さんと修行する事になった。

なんでも、アンコさんが二人に『日向ネジで遊ばない』と声をかけたらしい。

『自らの下忍達の世話はいいのですか』と聞いたところ、それぞれの家で修行しているとの事。

日向宗家と秘伝忍術持ちの一族達………確かに上忍とはいえ、出る幕はないだろうな。

修行はありがたいが、名前で呼ぶのを強要するのは、どうだろうか。

火影様にパワハラだと訴えようかと思ったが『わしの事はヒルゼン様と呼べ!!』と、言われても困るのでやめにした。

修行はかなり有意義だった。紅さんがお弁当を作ってきてくれたり、アスマさんが昼飯を奢ってくれたり、アンコさんが団子くれたり。

こんな日が毎日続けば良いなと思ったりする………いいよね、昼飯代が浮くのは………まあ、それだけじゃ無いけどね勿論。













「おはようございます、アスマさん、紅さん、いつもより早いですね」

「………ネジ、今日がなんの日か当然知ってるよな」

アスマさんが呆れ顔で聞いてきた、紅さんも呆れているようだ。二人が呆れるような事をした憶えはないのだが。

そういえば、アンコさんがいない………アスマさんと紅さんが二人だけ早く来たわけ………そして、そこから導き出せる答えは。

「もしかして今日はアンコさんの誕生日なのですか?プレゼントはまだ買ってませんが、団子でいいですよね」

「なんで今日がアンコの誕生日なのよ、今日は中忍試験本選でしょう。修行なんてしている場合じゃないでしょう」

「そういえば、中忍試験ってまだ終ってなかったんですね。修行が面白かったんで、すっかり忘れてました」

俺の素直な言葉に二人は『忘れてたから逃げなかったのか』とか『迎えに来て正解だったわ』と、俺の襟首を掴みながら言っていた。









俺はアスマさんに小脇に抱えられた状態で中忍試験会場に入った。自分で歩くと言ったのに『逃げるから』と一蹴された。

そして、三つある選手控え室の前で降ろされ『逃げるなよ』と念を押され、アスマさんと紅さんは控え室の一つに入っていった。

白眼で三つの部屋を確認する。アスマさん達が入った部屋には、二人の受け持ちのヒナタ様と他の下忍たちが居た。

次の部屋には、相変わらず暑苦しい、ガイ先生とリー。それとマントを羽織っているテンテン………なにがあった、テンテン。

最後の部屋には、砂の上忍と隈取と赤毛がいる。赤毛は床を見つめ囁いている、上忍と隈取は、それを見ないようにしている様だ。

三つの部屋を確認した俺は迷うことなく、一つの扉を開け部屋に入った。

「おじゃましま~す」

「なっ、なんでお前が入ってくる!!」

「控え室だから」

俺が部屋に入ってきた事に驚いている、砂の上忍と隈取、赤毛は床にブツブツ言っている。

三人を尻目に俺は部屋の一角にある長椅子に寝転がり、寝ようとすると砂の上忍が慌てた声で止めてくる。

「寝るな!!お前これから試合があるってのに、寝ようとするな!!」

「………俺が試合に出なくても誰も困らないと思うよ、むしろ不戦勝になるのだから幸せだよね」

「お前は中忍になりたいんじゃないのか、ってかなんで俺達砂の控え室で寝ようとするんだ」

「元々こんな試験に興味ないよ。それに砂なら、俺の睡眠を邪魔しないと思ったのに、なんで邪魔するかな」

誤算だね、まったく。なんで砂が俺の睡眠を邪魔しようとするのだろうか、上忍が喧しく眠れない。

今まで我関せずだった赤毛がようやく、俺の存在に気付いたようだ………なにやら俺を見て笑っている。

「なぜ、お前がここにいる………そうか、俺に殺されに来たのか、なら………」

赤毛が物騒な事を言いながら、近づいてくる、それを砂の上忍が慌てて止める。

「待て、我愛羅!!慌てなくても試合はもうすぐだ、その時殺せばいい」

「試合に出る気は無いけどね」

「お前は黙ってろ!!我愛羅、落ち着け、深呼吸しろ深呼吸」

「………………外の空気を吸ってくる………お前は必ず殺す」

赤毛は頭を抑えながら、控え室から姿を消した。砂の上忍と隈取は盛大な溜め息を付き安堵していた、さて寝よ。

「だから寝るなと言ってるだろうが!!俺達がここでお前を殺さないとでも思っているのか!!」

「先生こそ落ち着くじゃん、深呼吸、深呼吸。ところで、お前日向の分家じゃん」

「そうだけど、それがどうかするのかな」

「分家のお前が試合に出ないと、宗家が我愛羅にぶっ殺されるじゃん。分家が宗家を見殺しにする訳にはいかないじゃん」

そう言って、隈取は本選対戦表と書かれた紙を俺に見せた、それには第一回戦に俺と赤毛、そしてその勝者がヒナタ様と対戦する。

「我愛羅は女だからって、手加減しないじゃん。元の姿がわからないくらい、グチャグチャにされるだろうぜ」

もし俺が試合を棄権すれば、ヒナタ様は日向の代表として、試合を棄権できない、すれば日向の家名に泥を塗る事になるしね。

赤毛はヒナタ様が勝てる相手ではないと思う、棄権もできず、試合にも勝てずに殺される。俺が棄権すればヒナタ様の命運は一つ。

「仕方がないね………隈取、悪いけど弁当買ってきてくれないかな~、出来れば奢りで」

「隈取って俺の事かよ、ってか何で俺が、お前の弁当買ってくる必要があるんだよ!!しかも奢りで!!」

「カンクロウ、買ってこい。この小僧の気の変わらん内にな」

「………買ってきたら、我愛羅と試合するんだろうな!!」

「奢ってくれるなら、試合してもいいよ」

「クソッ、なんで俺がこんな奴の為に………」

隈取は文句を言いながらも、弁当を買いに行った。部屋に残った上忍と話す事も無いので、横になろうとすると『寝るな』と怒られた。










隈取が買って来てくれた弁当はのり弁だった、竹輪の天ぷらが美味しいよね。

弁当を食べている最中に赤毛が帰ってきて、俺を睨む様にしながら隈取に『俺の分は…』と聞いていた。

隈取が『買ってない』と答えると、赤毛は隈取に視線を移し『俺の分は…』と再度聞いた、暗に買って来いと言っている訳だ。

隈取は涙目になりながら、弁当を買いにいった………帰ってきたらお茶を頼もう、赤毛も賛同するだろうから、入れてくれるよね。



[9289] 【ネタ】第二回日向ヒザシのオーラロードニッポン【ネタ】
Name: 鈴科◆785aa133 ID:5f83ae7e
Date: 2009/09/30 18:37
テーテテ、テレッテ、テッテレッテ、テレッテ、テレッテ、テレッテ。



「さあ、今回も始まりました、日向ヒザシのオーラロードニッポン。司会進行の日向ヒザシです」

「助手のテンテンです。今回、ネジの変わりにやってきました。」

「テンテンちゃん、よろしく。私の事は『おじ様』と、呼んでほしい」

「………おじ様………これで良いですか(ネジが大人になったら、こんな風になるのかしら)」

「感無量!!」

「え~っと、おじ様は固まっているので、僭越ながらあたしが………この番組は、バイストンウェルよりお届けします」







【ネタ】第二回日向ヒザシのオーラロードニッポン【ネタ】







「おじ様が元に戻ったので、張り切っていきましょう」

「正気に戻す為にクナイで刺すのは、やり過ぎだと思うよ、テンテンちゃん」

「感想掲示板Name   さんからの感想。

 『一寸って3センチじゃ?ナルトの世界観的にセンチの単位は合わないと思うけど。
  と言ってみる。
 
  面白かった。ネジが名前の通りねじれててw

  (一寸=3.03030303センチメートル ぐーぐる計算機)』2009/Jun/13

 感想ありがとう。件の部分は、以下の様に変えてみました。

 【変更前】
 「1.5cmしか助ける気が無いとは………侮れない男だ」
 【変更後】
 「一寸の虫の魂は五分だから、………1.5cmしか助ける気が無いとは………侮れない男だ」
 
 それと       さん、補足説明ありがとう」

「無視も良くないよ、テンテンちゃん。………無言でクナイを構えるのはやめて下さい。ごめんなさい、真面目にやります」



「感想掲示板Name   さんからの感想。

 『句読点の位置がなんかおかしい所為か読み難い。
  読む時、と言うか喋らせる時に息継ぎ入る所で打ってます?』2009/Jun/17

 感想ありがとう。一応、修正してみました。読みやすくなっていれば良いのですが、前より読み辛くなっていたら、ごめんなさい」

「修正して読み辛くなるって、そんな事あるのか、本当に」

「修正すればするほど、分からなくなってきたそうですよ、おじ様………それと『この文章も正解か分かりません』との事」

「つまりは『ある程度は我慢して下さい』と、逃げを打っている訳だな」

「作者の本音を暴露したので、次の感想」



「感想掲示板Name   さんからの感想。
 
 『睡眠薬常備した方がいいんじゃない?
  上忍が複数でかからないと止められないって…どんだけ強いのよ睡眠中』2009/Jun/20

 感想ありがとう。それと、上忍達の名誉の為に言うが、ネジを無傷で起こす為に苦労しただけ。そして、上忍達も無傷だったりする」

「あたしは現場で見ていたけど『取り押さえる⇔回天』の、くり返しだったわね」

「それと最新8話で、後付設定が追加されているので読んでほしい。ネジの寝癖は、あくまで防御用なのだ」



「感想掲示板Name   さんからの感想。

 『……アレ?痺れ薬入りのソースの香り煙幕、ナルトや秋道やら全滅じゃね?』2009/Jun/20

 感想ありがとう。描写不足なので、以下の一文を追加しました

 【追加分】本文には≪≫はありません
 ≪観戦場所まで、煙幕自体は届いていなかったので、二次被害は無いようである。焼きそばの匂いで空腹感を煽ったのは、特に問題なし。≫

  煙幕が拡がらずに停滞するのかと聞かれたら『そういう物だと思って下さい』だ、そうです。それと  さん、補足説明ありがとう」



「特に意識していなかったのに反響があったのが、中忍試験のカカシ班全滅」

「初期構想では原作と同じ、対戦組み合わせだったけど、あるネタを思いついたので大幅変更。おかげで、あたしが勝つ事になった訳」

「感想掲示板Name   さんからの感想。
 
 『カカシ班全滅もだけどテンテンがテマリ相手に白星だと…!?
  まるでヤムチャがべジータに勝った瞬間を見ているような現実感の無さが…(ゴゴゴゴ』2009/Jun/25

 まさか、テンテンちゃん、   さんも刺したりしてないよね。ヤム○ャ呼ばわりされて、怒ってないよね」

「まさか、ヤ○チャさんに譬えられるなんて、光栄ですよ。あたしとは比べられないくらいに、出番がある方なんですよ」

「そうか、よかった………ところで、なんで巻物から忍具を出しているのかな」

「それに、一回刺したら終る方より、何度刺しても平気な『おじ様』が、的になってくれるのだから。フフフフ」

「テンテンちゃん、落ち着いギニャ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」








「あ~、すっきりした。え~、おじ様が動かなくなったので、今回のオーラロードニッポンは終了です。

 感想はすべてニマニマしながら、作者は読んでいるので、よかったら書いてくださいね。

 『本来ならコレは、7話と8話の間に入れるのが正しいのですが、下のオマケも都合で8話の後になりました』

 作者の言葉でした。それでは、またどこかで、テンテンでした」


















                 ~おまけ~
 
                

                   の





                 ○ネジってみた○




修行の帰りに日向一族の銭湯により、さっぱりした俺は家に入ろうとした時に違和感を感じた………が気にせず扉を開けた。

「遅い帰りだな、御主人。食事は出来ているから、食べるがいい」

………………メイド服を着た、ガイ先生が何故か俺の家にいる………………なぜ?

「ガイ先生、なにをしているのですか、しかもその格好は?」

「これは妙な事を言う、御主人だ。メイドがメイド服を着るのは当然の事」

「………ガイ先生はメイドなんですか………よりにもよって、俺の家の」

「おはようから、お休みまで、主人の暮らしを快適サポート。それがこの俺マイト・ガイ」

「………俺にはメイドを雇うだけの甲斐性は無いので、他あたって下さい」

「金の切れ目が縁の切れ目、御主人、短い間だったが楽しかったぞ、さらばだ!!」

スカートをなびかせ走り去る、ガイ先生の姿は恐ろしかった。



「そんな夢を見ました」

「食事中に気色悪い話しをするな!!ネジ」

俺は修行の合間の昼飯休憩中に、昨日見た夢の話しをしたら、三人とも苦虫を噛み砕いたような顔をしていた。

「この夢の話しは今日中に三人位に話さないと、また夢に出てきそうなんで話してみました」

「都市伝説かよ。しかし、恐ろしい夢もあるもんだ………そうだ、紅、この夢を幻術にしたらどうだ、効果抜群だろう」

「冗談にもならないわよ、アスマ。だけど、ネジはよく平気だったわね、あたしなら想像するだけでも耐えられないわ」

「俺もどうして耐えられたか分かりませんけどね。だからこそ三人位に話さないと、また見そうで不安だったんですよ」

「今日中に三人か………ネジ、悪いけど今日は帰るわ、それじゃ」

「アンコ!!まったく本気にしたのかしら………悪いけど私も帰るわ、また明日ね」

「ネジ、悪いが俺も帰らしてもらう、じゃあな」

アンコさん達は次々に帰っていった………………これは中忍試験本選準備期間の、ある一日のお話。





その後、木の葉では『メイド姿のマイト・ガイ』が都市伝説として語り継がれているとか、いないとか。



[9289] ○ネジってみた○  9
Name: 鈴科◆785aa133 ID:33e0c7f1
Date: 2009/09/30 18:38
「覚悟は出来ているな」

赤毛の砂が俺を包み込む………一切抵抗せずに赤毛を見る。

「我愛羅、そろそろ時間じゃん」

赤毛は俺に背を向け歩き出す、そして砂は俺を空中に持ち上げ、赤毛の支持を待っているようだった。

「お前、本当にそれでいいのか、今ならまだやり直せるじゃん」

「問題ないよ、これは、俺が望んだ事だからね」

隈取は信じられない感じだったが、考えるまでもない事だった、日向の分家は宗家の為に生き、宗家の為に死ぬのだから。

「砂漠………」

赤毛の声は最後まで聞こえなかった。








          ○ネジってみた○  9話







「赤毛に質問なんだけど、さっき、砂漠の後になんて言ったの?」

俺は浮かぶ砂の上に寝転がりながら聞いた、赤毛の声が小さく聞こえなかったのだ………その前に状況を説明しとこうかな。

隈取の入れてくれたお茶で食後の休憩をしていたら、砂の上忍が試合開始時間が近いので『観戦場所に行く』と、言い、出て行った。

『俺達もそろそろ』と隈取が言ったので『どうせなら運んでくれないかな』と、言ったら、隈取は怒ったが、赤毛は冷静だった。

『それなら、俺の砂で運んでやる』と、赤毛は言ってくれたので好意に甘えたわけだ、隈取は必死に止めたけどね。

話しを戻して、俺は、赤毛に先程の質問をもう一度した、赤毛は呟くように答えた『砂漠…運送』と、赤ら顔で。

隈取は、赤毛を、かなり奇異な表情で見ていたが、俺を見て意地悪い顔になり。

「我愛羅の砂は今まで何人もの血を吸ったじゃん、よく平気でいられるな」

砂が一瞬揺れたような気がしたが、気のせいだろうか。俺は砂の匂いを嗅ぐ………別に血の匂いはしなかった。

「血を吸ってるわりには臭くないね、天日干しでも、しているのかな」

赤毛はなにも答えない、隈取は奇妙な生き物を見る目で俺を見ていたが、なにも言わず前を向いて歩き、以後、こちらを見なかった。

俺は浮かぶ砂に寝転がりながら、試合会場に姿を出した。リーとテンテン。ヒナタ様と秘伝一族達は、すでにいた。

皆がこちらを見て、驚きの表情を浮かべている。赤毛の砂が力を無くした………難なく着地したけどね。

「ありがとう、赤毛。隈取も弁当ありがとう」

赤毛と隈取は何も言わずに、俺から距離をとった………離れ際に見せた二人の顔は忍のものだった。

「ネジ、いったい何処にいたのよ!!先生達、心配してたわよ。しかもなんで、砂の忍と一緒に来るのよ」

テンテンとリーに詰め寄られ、質問責めされたので、答えようとしたら『お前ら、無駄話はそれ位にしておけ』と、不知火特別上忍に注意された。

「しっかり顔見せしておけ。お前らが主役なんだからな」

会場は高い壁に覆われていて、その上に観客席があり、そこには数多くの観客がいた。………こんな試合を見たいなんて、物好きな人間が多いね。






火影様が開会の挨拶をして、中忍選抜第三試験が開始される。俺と赤毛と不知火特別上忍以外は、選手専用の観戦場所に行く。

俺と赤毛は十メートル程離れて向かい合い、試合開始待つ。

「これより第一回戦、日向ネジ対我愛羅の試合を開始します。………試合開始」

俺は不知火特別上忍改め、不知火審判の声と同時に、白眼を展開し様子見をする。赤毛の力は未知数なので、無闇に突っ込むのは得策じゃないしね。

白眼で周りを見ると、赤毛のチャクラで一面を覆われていた。正確には、赤毛のチャクラを含んだ砂が一面に展開していた。隈取曰く『何人もの血を吸った砂』

赤毛が手を突き出し『砂時雨』の、声と同時に数百にも及ぶ砂の鏃が、俺に襲い掛かる。回天で防ぐも、赤毛はすでに第二射の準備が出来ていた。

俺と赤毛のチャクラ総量は絶対的に違うので、このままではジリ貧だろうね。そういう訳で、一気に距離を詰めて攻撃しようと第二射を避けていたら。

『流砂爆流』赤毛の声に呼応して、砂の大波が俺を飲み込もうとしていた。

まともに受けたら命が無いので壁に向かって走り、壁を駆け上がり難を逃れる。が、休む暇も無く砂の鏃が俺に襲い掛かる。





………少し前から、俺はひたすら壁を走っている。赤毛に近付こうとすれば『流砂爆流』に襲われ、離れていれば『砂時雨』に襲われる。

しかも、クナイを投げれば『砂の盾』で防がれるので、お手上げ状態なんだよね。

試合会場は一面砂で覆いつくされている。これ程のチャクラを使っていても、赤毛のチャクラは尽きる事は無さそうなんだよね。

俺は壁を走りながら、巻物から巻物を四本、召喚する。これは使いたくなかったけど………しかたないね、まったく。

回天で砂の鏃を避け、四本の巻物を空へ投げる。

「四本の巻物から、秘密玉(特大)を、八つ召喚」

俺の声に呼応して、空中に秘密玉(特大)が召喚された、それと同時に簡易結界を展開する。どこからか『あっ、あれは、焼きそば煙幕』と、声がきこえた。

赤毛は召喚されたそれを、興味なさそうに見ている。その隙に巻物から出した防護服を着ようとした時に、空中の秘密玉(特大)が割れ、中から紫色の粘液物質が落ちる。

ボタ。ボチャ。べチャ。様々な音を立てソレは落ち、試合会場を紫色の粘液物質が覆い尽くした。

砂で紫色の粘液物質を防いだ、赤毛。一面紫に染まった試合会場。どよめく観客達。それを無視して防護服を着込む俺。そして激臭………次の瞬間、会場は絶叫に包まれた。

「ぐおおおお~~~~~~~~~~~~~!!」

赤毛は吼えながら、砂で紫色の粘液物資を振り払うが、上手くいかない。

観客達は、我先にと逃げ出している。観客達の避難を上忍達が助けている、不知火審判も避難誘導に参加したようだ。

火影様と風影は、自分達の周りにだけに結界を張っていた。

それらの様子を俺は、防護服を着て簡易結界の中から観察していた。

赤毛は、程なくして倒れた。死んではいない、気絶しただけ。

この紫色の粘液物質の正体は『死ぬほど臭い紫色の粘液物質』って、だけの代物。まあ、生命の危機を感じて、我先に逃げ出すのは仕方の無い事だろうね。

『火影様、俺の勝ちで問題ないですよね《コーホー》』

避難する観客達を横目に、俺は火影様に近付き確認する、が、『ネジ!!コレは、なんだ!!』と、質問返しされてしまった。

『心配ありませんよ、毒じゃないですから《コー》死ぬほど臭いですが、生命に関わりませんよ《ホー》ただ、人格に影響を及ばすかも知れませんけどね《コー》』

「………お前の勝ちで良いから、とにかくコレをどうにか………なんじゃ、このチャクラは!!」

気絶している赤毛から、膨大なチャクラが溢れ出ている。どういう事だ、とても人のチャクラとは思えない禍々しさを感じる。

試合会場に広がった砂が、赤毛に集まり形を成していき、試合会場を埋め尽くす程の大きいナニカになった。

≪≪グザ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~≫≫

ソレは吼え、程なくして崩れた………理由は分からないが、赤毛から溢れ出ていたチャクラは、今はもう感じない。

「今のはなんじゃ………ネジ、なにをした!!」

『俺はなにもしてませんよ《コー》驚いたのは、俺の方なんですから《ホー》』

「まあいい。ネジ、一刻も早く、この臭いの元をどうにかしろ!!」

『巻物で回収出来ますが、時間が掛かりますよ《コー》粘度が高いので、地面に染み込む事は無いですが《ホー》』

先程のナニカの所為で、砂と交じり合った紫色の粘液物質が試合会場を覆いつくしている。砂も一緒に回収しなければならないので、考えるだけで回収は大変。

「被害を拡大させない為には、会場全体を結界で覆うしかないか。風影殿、すまんが手伝ってくださらんか」

「仕方がないわね、まったく」

「………風影殿、今なんと」

「へっ、あ~。喜んで協力しますよ、火影殿」

「………頼みますぞ、風影殿」










その後、火影様と風影が、会場すべてを結界で包み激臭を木の葉の里に蔓延するのを防ぎ、特殊回収班を急遽編成して紫色の粘液物質を回収させた。

まあ俺は、ひたすら紫色の粘液物質の回収をさせられたけどね。途中で赤毛も回収して結界の外にいる、隈取に渡したら、赤毛に染み付いた臭いで昏倒しかけていた。

会場に染み付いた激臭が簡単に消える事は無いので、中忍選抜試験は無期延期となった。

もっとも、会場が使えても、試合を見せるべき大名と豪族達が木の葉の里から逃げ出したので、試合をする意味がないとも言う。










大名と豪族達は今回の事に、かなり機嫌を悪くして、今後は木の葉に任務を依頼しないと通達してきたそうだ。

火の国との関係は変わらないようだが(木の葉が自棄になって、盗賊紛いにならない為に最低限の資金援助)木の葉は経済的に大打撃を追う事になったのは事実である。

その状況を作った俺は、里の人間に怨まれる羽目になり、訳の分からない、通り名を付けられる事になった。

                              















                              
                              その通り名は。
                      












                        『木の葉崩しの日向ネジ(経済的な意味で)』                        



[9289] 【大蛇丸の思惑】
Name: 鈴科◆785aa133 ID:33e0c7f1
Date: 2009/09/30 18:38
【大蛇丸の思惑】



日向ネジを初めて見たのは、アンコが中忍第二試験の説明をしている時。感想は路傍の石。取るに足らない日向の分家でしか無かった。

二度目は死の森の塔で、台車に寝ながら運び込まれた姿。猿飛先生は注意する事も無く、中忍試験の意味を下忍達に話していた。

火影を蔑ろにする行為なのに、なぜ誰も起こそうとしない、なぜ誰も怒らない。私は疑問の答えが知りたくて思わず質問してしまった、目立つつもりはなかったのに。

「失礼ですが、火影殿。この無礼な小僧は、いったいなんなのですか、木の葉ではコレが推奨される行為なのですか」

「コレは特殊な存在でしてな、断じてコレは木の葉の標準ではありませんぞ」

今一つ要領を得ないが、しつこく聞く事も出来ないのであきらめる事にする。………気になるわね、日向ネジ君。私は君の事を知りたくなった。



予選が行われる事になり、第一回戦は、今一番ほしい体のサスケ君と、今一番知りたいネジ君の対決。フフフ、どちらを応援すればいいのやら。

未だに寝ている、ネジ君にバケツの水を掛けて起こそうとする、ガイ。その時、信じられない事が起こった、日向宗家口伝奥義『回天』で、水を防いだのだ。

………その場にいる全ての人間が度肝を抜かれていた、分家が『回天』をした事に。しかも、それを眠りながらした事に。フフフ、確かに特殊だわ、猿飛先生。

その後の、サスケ君とネジ君の対戦も実に興味深いものだったわ。『ソースの匂い煙幕(痺れ薬入り)』普通じゃないわね、ネジ君。

サスケ君が敗退した事に、失望も興味も無かった。今の私は、ネジ君に夢中だからね。こんなに楽しいと思ったのは久しぶり。







予選が全て終わり、本選の説明。ネジ君は当然のように寝ていて、当然のように誰も起こそうとはしない。

砂の人柱力が、ネジ君と戦いたいと本選第一回戦を希望し、猿飛先生により希望を叶えられる。

そうだ、木の葉崩し開始を、我愛羅がネジ君を殺した後にしよう。フフフ、ネジ君が我愛羅に勝てたら木の葉崩しは中止。木の葉の未来は君に掛かっているのよ、ネジ君。

まあ、万に一つも、ネジ君が、我愛羅に勝てる可能性は無いんだけどね。それとも、ネジ君なら可能かしらね、フフフ。















「中忍選抜第三試験まで、あと五日。楽しみね」

風影と護衛二人の死体を前に、私は上機嫌だった。そんな私を怪訝そうに見ている、カブト。

「なにがそんなに楽しみなんです。お目当てのサスケ君は長期任務で、木の葉には居ないのに」

サスケ君は木の葉には居ない。カカシの班は、木の葉から遠く離れた山村に、農作の手伝い任務を受けたらしいと、密偵から連絡があった。

猿飛先生か、カカシの猿知恵だろう、少しでも私の興味を木の葉から逸らす為の。もっとも、今のサスケ君には手を出さないと知った上での話だろうけど。

「今はサスケ君より、ネジ君よ。彼が砂の人柱力に勝てるかどうか、フフフ。あなたも楽しみでしょう、カブト」

「勝てるわけ無いでしょう。哀れな日向の分家が、哀れな砂の人柱力に殺される。それだけですよ」

「そう、普通ならね。でも、ネジ君は普通じゃ無い、特殊なのよ。特別でも特権でも無い、特殊」

「もしかして、サスケ君より次の器候補に、ネジ君が相応しいと」

「それは違うわ、サスケ君は器に相応しい子、ネジ君は見ていて楽しい子。ネジ君は、あくまで観賞するものよ」

「奇人なのは分かりますよ、塔で台車に寝ながら現れた時は驚きましたからね。それと、人柱力に勝てると思うのは話が違うでしょう」

「今日はやけにしつこいわね。予選の後、正体も、ばれていないのに里抜けさせた事を、まだ怒っているの」

「別に怒っていませんよ、君麻呂の事もありましたからね。ただ、まるで木の葉崩しが未然に防がれるのを望んでいるような発言だったので」

「勘違いしているわよ、カブト。砂には里の存亡をかけた戦いでも、私にっては余興に過ぎない。それだけの話よ」

風影の死体を見る。里の存亡の為、命を懸けて戦うはずだった男。計画成功の為に私を信じた事で不意を衝かれ、実力を発揮出来ぬまま殺された男。

「さて、木の葉に向けて出発しましょうか。遅刻して、ネジ君の死に様を見逃したくないからね」

「フゥ、大蛇丸様は悪趣味ですね。それはそうと、風影達の死体はどうします」

「そのままにしておきなさい。砂の連中が計画前に死体を発見したらしたで、面白いでしょう」

「本当に悪趣味ですね」

「フフフ、褒め言葉と思っておくわ」















中忍選抜第三試験当日。私は風影として、猿飛先生に挨拶をし、先生の隣で試合を観戦する事になった。

試合会場を見ると、すでに七名の姿があった。居ないのは、砂の二人とネジ君。………逃げたのかしら、可能性は十分あるわね。

そんな事を考えていると、ネジ君が姿を現した、砂の人柱力が操る砂に乗って。今から殺し合いをする相手なのに良くやるわね、まったく。

全員そろったので、猿飛先生が中忍選抜第三試験の開始を宣言する。

第一回戦の、ネジ君と我愛羅の試合が始まる。木の葉崩し開始まで楽しませてね、ネジ君。






試合は我愛羅が一方的に、ネジ君を攻めていた。

ネジ君でも、砂の人柱力には手も足も出ない、少し期待しすぎたようね。

ネジ君を見るのも飽きたわね、さっさと殺されないかしら。そうすれば木の葉崩しを始められるのに。

私の願いが通じたのか、ネジ君は立ち止まり、巻物から秘密玉(特大)を八個召喚する。確か『ソース煙幕』だったわね。

終りね。そんな物で倒せる相手かどうかも分からない、間抜けなネジ君、さようなら。………そう思ったのは軽率だったわね。

ネジ君が召喚した紫色のナニカは、圧倒的な激臭を会場に撒き散らした。

猿飛先生が瞬時に私達の周りに結界を展開してくれたから、それほど激臭を嗅がずにすんだわ。一瞬でも強烈だったけどね。

「なにを考えておる、ネジ!!まさか、毒ではあるまいな!!」

猿飛先生が珍しく怒っている。ここまで怒る先生は、はじめてかもね。

会場は逃げ惑う観客と、それを避難誘導する木の葉の忍、試合会場の中心で気絶している、我愛羅。そして暢気に、こちらに歩いて来る、ネジ君。



猿飛先生と、ネジ君が話している間に、気絶している我愛羅に異変が起こる。砂が我愛羅に集まり形を成し、禍々しいチャクラを撒き散らしている。

いよいよ、守鶴の登場ね。さあ、ネジ君、第二回戦よ、楽しんでちょうだい。

≪≪グザ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~≫≫

………………なにが起こったの、守鶴が吼えたと思ったら、まさか崩れるなんて。

………まさか、激臭に耐えられずに、人柱力の中に引っ込んだとでもいうの。人より臭いに敏感な獣だから耐えられなかったとでもいうの。

馬鹿馬鹿しいにも程がある。こんなふざけた方法で、守鶴を撃退できるなんて、誰が考える、誰が納得できる。………狂っているとしか言えないわね。

……………………でも、これで木の葉崩しは中止。まさか本当に人柱力に勝つとはね。………おめでとう、ネジ君、貴方は木の葉を救ったのよ、知る由も無いだろうけどね。

そんな事を考えていると、猿飛先生に突然、声を掛けられた。

「被害を拡大させない為には、会場全体を結界で覆うしかないか。風影殿、すまんが手伝ってくださらんか」

「仕方がないわね、まったく」

「………風影殿、今なんと」

「へっ、あ~。喜んで協力しますよ、火影殿」

「………頼みますぞ、風影殿」

一瞬、素で話してしまった。ひょっとしたら、先生は、なにか感じたかも知れないけど、結界で会場を覆う事を優先したようだ。










「助かりましたぞ、風影殿。これで木の葉に激臭が蔓延するのを防ぐ事ができます」

「なに、この程度の事で良ければ、幾らでも力になりますよ………火影殿」

「………これからも、木の葉と良き関係で居てもらいたい」

そう言って、猿飛先生は手を差し出してきた。

「先の事を話した所で詮方ありませんが………」

先生の手を握りながら、私は、風影の顔で笑った。

「それもそうですな。だが、木の葉はいつでも貴方を歓迎する。それだけは忘れんでもらいたい」

私の手を力強く握りながら、猿飛先生も笑った。













私は音隠れの里に帰るために、木の葉の里から遠く離れた森の中に居た。

「まさか本当に勝つとは驚きましたね………………大蛇丸様」

「なにか言った、カブト。それとも、私の顔になにか付いているのかしら」

「いえ、なんでもありません」

カブトが怪訝そうな顔で私を見ているけど、気にする必要は無いわね。

猿飛先生は、おそらく私の正体に気付いていた。それなのに仕掛けてこなかったのは、里への被害を恐れての事か、ただ甘いだけか。

………また会う事があれば、その時に聞けばいいか。それまで精々、余生を楽しんでちょうだい、猿飛先生。



[9289] ○ネジってみた○  10
Name: 鈴科◆785aa133 ID:919c4093
Date: 2009/09/30 18:39
父が最近、オンラインゲームに、はまっている。そして、そのオンラインゲームで、親友と呼べる人ができたらしい。

日向に生まれた人間は、友情や愛情より、日向を優先する。

生前の父に、親友がいたかは知らない。が、だからこそゲーム内とはいえ、親友と呼べる存在が出来た事は、素直に喜ばしい事だと思う。

父に、親友の氏名を聞くと『氏名は分からんよ、個人情報を聞くのは禁止されているしな、常識だぞ』と言い、変わりにキャラクター名を教えてくれた。

親友のキャラクター名は『ISAIH』らしい、そして父のキャラクター名は『ISAZIH』との事。………ヒアシとヒザシ………偶然だろうか。

さらに話を聞くと、ゲーム内の友達に、二人の仲の良さと、キャラクター名が似ている事もあって、H兄弟と呼ばれていると話してくれた。

そんな二人でギルドを作ったとの事。ギルド名は、H兄弟の二人なので、Hに漢数字の二を組み合わせた『日』の文字を、ギルド名に入れることにしたらしい。

そして、二人同時に『日』の付く文字を提示したら、二人とも『日向一族』と、提示したとの事。………ここまで偶然が続くだろうか。

めでたくギルド名は『日向一族』に決まったらしい。なお、ゲーム内の『日向一族』は、ほんわかギルドと言っている。随時、体験加入を受け付けているとの事。

『ISAIH』が、宗家とは断言できない。だが、父はオンラインゲームを満喫している。今も『ISAIH』と、雑談を楽しんでいる。

………父が楽しんでいるのなら『ISAIH』が、宗家でも、宗家じゃなくても、どうでもいいよね。子として、父の喜びは祝福しても問題ないしね。







        ○ネジってみた○  10話







中忍選抜試験から三週間程たった、ある日の午後。俺は一人の男を引きずりながら、町を歩いていた。

周りの俺を見る目が、かなり冷たい気がする。俺を指差しながら話している女達がいる。

離れていて聞こえにくいが、『日向崩しの、木の葉ネジ(KY的な意味で)』と、言っているように聞こえた、意味がまったく分からないけどね。

まあ、気にしても仕方が無いので歩いていると、アンコさんが目の前に突然現れて、男を引きずっている理由を聞かれた。

「修行をしていたら、いきなり襲い掛かってきたので、返り討ちにしました。警務部隊にでも引き渡そうかと思って、引きずっています」

「いきなり襲い掛かってきたって………ネジ、火影様に会い行きなさい。そして、この事を話しなさい、わかったわね」

「コレはどうしましょう」

「その男の事は、あたしが引き受けるから、早く行きなさい」

アンコさんは焦ったような表情で俺を急かしたので、男を預け、火影様に会いに行く事にする。

歩いていると、アンコさんに『走れ』と、怒鳴られた。なにを焦っているのだろう、謎だ。








火影様に会いに来て二十分、突然の訪問にも関わらず、火影様に会う事が出来た。挨拶もそこそこに、本題に入る。

「襲われたと聞いたが、それは本当か」

「はい、修行をしていたら、突然、襲い掛かられました。顔見知りではありませんが、木の葉の額当ては、していましたね」

「………ネジ、今の木の葉の現状を知っておるか」

『知らない』と、答えると、火影様は疲れた表情を浮かべながら、説明してくれた。

中忍選抜試験を観戦に来ていた、大名達は、俺の『死ぬほど臭い紫色の粘液物質』で、かなり機嫌を悪くして、今後は木の葉に任務を依頼しないと通達してきたそうだ。

まあ、最低限の資金援助は受けられるらしいが、木の葉は経済的に大打撃を追う事になったのも事実らしい。

そして、その状況を作った俺は里の人間に怨まれているとの事。中には、俺の首を大名に差し出すべきだと、進言する人間も出ているらしい。

今回の襲撃が、俺を殺そうとしたものか、ただの憂さ晴らしかは、調べるまでは分からないとの事。それらを聞いた、俺の素直な感想は。

「あ~、火影様が疲れているのは、大名達の機嫌を取るために、事務仕事に追われているからですね。人の上に立つのも大変ですね、本当に」

「他人事か!!………まったく。ネジ、今お前の置かれた状況は最悪と言っても過言ではない。大蛇丸と共謀しているとの声もある」

「………え~っと、火影様、オロチマルとキョウボウしている。キョウボウって、狂暴、共謀、凶暴、強暴、漢字を教えてく下さい、そうでないと意味が分かりません」

「これは、特別上忍以上の者が知っていた事だが。大蛇丸の作った里、音隠れの忍が、中忍選抜試験本選の時に、木の葉の里を殲滅しようと画策しているとの情報があった」

「木の葉を殲滅ですか、そんな事をして誰が得をするのやら」

「大蛇丸は損得で動くような男ではない。おそらくは只の道楽だろうな、そういう男じゃ」

火影様は昔を思い出しているかのような表情だった。と言うより、知り合いっぽいね、オロチマルって人と。わざわざ聞かないけど。

「で、俺がオロチマルって人と共謀して、木の葉殲滅を実行したと言う訳ですか。………わざわざ木の葉を殲滅するほど、木の葉に興味ないですよ、俺は」

「それはそれで、どうかと思うが。まあ、お主がそんな面倒事を、わざわざ進んでするとは思わんが、里の経済状態を最悪にしたのは、お主なのは事実だからのう」

「つまり、俺に、なんらかの罰を与えなければ、里の人達の疑惑の目が俺から離れる事は無いと」

「現に襲われるという、最悪の事態に発展した今となっては、お主の存在が里の存続に関わる問題にまで発展しかねん」

今の木の葉の経済状態にした、俺の首を大名に差し出せば、恩赦を施してもらえると思っている人達がいる。と同時に、オロチマルと共謀したと疑っている人達でもある。

一方で、里の仲間を安易に切り捨てるのは賛同できないと、考えている人達もいる。と同時に、オロチマルとは共謀していないだろうと信じている人達でもある。

俺の首を大名に差し出せば、今の経済状態を打破できるかも知れないが、仲間を守るべきだと主張した人達に角が立つ。

その一方で、今の木の葉の経済状態で里の人達の心情を考えれば、俺に何らかの処分を下す必要がある。

結果的に、俺の存在が里の人達を対立させる事態になっている訳だ。そして、最悪の考えをすれば、木の葉の住人達が二分して争うかもしれない。

「俺の処罰しだいで、木の葉の住人同士が争うかも知れない。里としては住人の意思を統一したいが、住人が多いと意思をまとめるのも簡単ではない。大変ですね火影様も」

「他人事か!!日を追う事に、立場が悪くなるのはお主なのじゃぞ、まったく。今更じゃが塔の予選で、お主を失格にしておけば、こんな面倒事にならなかったのう」

「そうですね、失格にしておけば、誰も不幸にならなかったでしょうに。火影様の失策ですね」

「あっ、殺したい………って、殺意を湧かすな、まったく。………ネジ、とりあえず牢獄に入っておけ。そうでもせんと事態が悪化するだけだからのう」

「別にいいですけど………あっ、牢獄に入っている間は任務をしなくてもいいんですよね。疲れを気にせず、修行し放題ですね」

「まったく、牢獄に入る意味を分かっておるのか。………大名の機嫌を取るように努力はするが、最悪、お主の首を差し出さねばならん、それは分かっておるな」

「日向の分家は物心がつく頃には、日向の為に死ぬ事を義務付けられますからね。宗家に日向の為に死ねと言われたら、死ぬのが当然ですから、問題ありませんよ」

「………………お主の父の件もあるから強く言えんが、日向の分家だからといって、自らの生命を軽視するのはやめておけ。火影として里の者は守る、もちろん、お主もな」

「そうですか。それじゃあ、俺は牢獄で修行したり惰眠をむさぼりながら、気楽に待っていますから、過労死しない程度に頑張ってくださいね」

「………………………死ね」
















「………眠れない」

中忍選抜試験が無期延期になってから、二ヶ月程過ぎていた。

「やっぱり、天井にチャクラで張り付いた状態で寝るのは無理だね」

俺は牢獄の天井をゴロゴロしながら、結論に達した。

『水面睡眠』は、体が水に沈み、水に濡れる事でチャクラを無意識に放出できたが、『天井睡眠』の場合は、水に変わる物が無いのだ。

牢獄に入れられて一ヶ月近く。日がな一日、任務も無く、修行に没頭できるのは良いけど、独房なので修行するには狭すぎるんだよね。

それで考えたのが『天井睡眠』なのだが、上手くいかなかった。まあ、天井でゴロゴロするだけでも修行にはなるが、眠りながら出来ないのは辛い。

この牢獄には俺しか入っていないので、常駐している看守は一人なのだが、話し相手にはなってくれない。まあ、話す事も無いから、問題は無いけどね。

そんな感じなので、天井をゴロゴロしながら、別の修行方法を考えていると、独房の扉が音を立てて開いた。

扉を開けたのは見慣れた看守だったが、すぐ脇に避ける。そして見慣れない人物が姿を現し、天井の俺を見つめ、言葉を発する。

「はじめまして………と、言うべきかしら、日向ネジ君。私の名は、大蛇丸。突然だけど、私と一緒に来ない、もっと強くなれるわよ」

そう言いながら、俺を見るその眼は、一切の拒絶を許さない様に見えた。まあ、そんな事より、聞かなければいけない事がある。

「申し訳ありませんが、もう一度、氏名を教えてもらえませんか」

俺は天井から離れ、床に立ちながら聞いた。

「あら、聞こえなかったのかしら。フフ、まあ良いわ、私の名は大蛇丸。それと返事を聞かせてもらえるかしら」

オロチマルと名乗った人は、微量の殺気を放ちながら教えてくれた。圧倒的に実力差のある相手なので、とりあえず、さん付けで呼ぶ事にする。

「そうですね、いきなり一緒に来ないと言われても、状況がまったく理解できないので、詳しく教えてもらえませんか、オロさん」

「………………今、なんて言ったのかしら、よく聞こえなかったわ。私の名前は教えたはずなのに、変よね」

オロさんは、先程より殺気を強めながら、俺に聞いてきた。

「はっ、ひょっとして、オロさんじゃなく、オロチマさんですか」

次の瞬間、オロチマさんの殺気は、人を殺せそうな勢いを帯びる。まあ、その殺気は俺に向けられているが、日向の分家には無意味なんだけどね。

「へぇ~、こんなにすごい殺気を放てるなんて、すごい人なんですね、オロチマさんは」

殺気を放ち俺を見る、オロチマさん。扉を脇で、殺気の余波に怯える看守。手持ち無沙汰な俺。さほど時間は経たずに、オロチマさんが言葉を発する。

「私の殺気に、まったく怯えないなんて、大したものね。それとも鈍感なだけかしら」

「日向の分家は、物心が付いた頃には、日向の為に死ぬ事を義務付けられますから、一々死の恐怖に怯える事は無いのですよ、オロチマさん」

「日向の人間は何人も知ってはいるけどね、普通に怯えてたわよ。何人もの日向の人間を殺した、私が言うのだから、間違いないわね」

「そうなんですか。所で、オロチマさん、白眼の情報を聞き出したりしましたか、殺した日向の分家から」

「生憎、無理だったわね。生きたまま捕らえて、解剖しようとしたけど、自害して終わり………そんなこと聞いてどうするつもりなのかしら、もしかして復讐する」

オロチマさんの殺気は消えていたが、挑発するような眼で、俺を見ている。

「白眼の秘密が守られているなら、復讐なんて興味ないですよ、俺は。………でも、オロチマさんが白眼の秘密を知ったとしたら、問答無用で襲い掛かりますけどね」

「フフフ、面白いわね、ネジ君。それと、名前に付いては諦めるから、せめて『オロさん』で、お願いするわ」

「んっ、そうですか、わかりました。それから、オロさん先程の話ですけど」

「それはもういいわ、どうせ無駄でしょうからね。私は帰るとするわ、それじゃ、また会いましょう」

そう言って、オロさんは姿を消した。残った看守は、戸惑いの表情を浮かべながら俺を見ている。

「別にわざわざ、この事を話す気は無いので、扉を閉めてもらって良いですよ」

俺がそう言うと、安堵の表情を浮かべ『すまない、助かる』と、言って扉を閉めた。




その後、普段と変わりなく修行をして、程よく疲れた頃、新たな修行方法を考えながら眠りに付いた、そんな一日だった。



[9289] ○ネジってみた○  11
Name: 鈴科◆785aa133 ID:59769312
Date: 2009/09/30 18:47
中忍選抜試験が無期延期になってから、四ヶ月ほど過ぎ、俺は町の宿屋で目を覚ました。

火影様の命令で『ツナデ』って人を探すため木の葉を出た。何でも火の国の大名が『ツナデ』って人に、頼みたいことがあるらしい。

『ツナデ』を探し出し、大名の下に連れて行けば、木の葉への依頼を再開してくれるとのこと。

大名にとっても木の葉に依頼できない状況は辛いので、一刻も早く関係を修復したいのが本音だが、国の威信を保つためには簡単に修復できないらしい。

本来なら里を挙げて『ツナデ』探索するべきなのだが、すでに安い料金での長期任務を大量に受けている為に人手が足りない。里の警備も必要だしね。

もちろん探索しているのは俺だけじゃない。と言うより、まったく見つけられないので、俺にまで探索命令がきたって訳。

ちなみに一人で探索しているので、宿代や食事代は自費なんだよね、里の経済状況が最悪なので経費扱いにもならない。………せつないね。







        ○ネジってみた○ 11話









この町に六日ほど滞在しているので、そろそろ他の町に移動しようかと、考えながら歩いていると声を掛けられた。

「あら、ネジ君じゃない。こんな所で会うなんて奇遇ね」

「んっ、………あ~、お久しぶりぶりですね、オ『小僧!!離れろ!!』バチッ『おわっ、なっ、なんだ』

オロさんに挨拶をしようとしたら、突然現れた人に突き飛ばされそうになったが、自動チャクラ防御で防いだ。

俺のチャクラで軽い怪我をした、白髪の人。状況がまったく理解できない俺。白髪の人を興味なさげに見るオロさん。そしてオロさんの発言。

「あいかわらず間抜けなのは変わらないわね、自来也。………私に、なにか用かしら」

「それは、こっちの台詞だのォ。日向の小僧になんの用がある」

二人は殺気を放ちながら睨み合っている。強い人って結構いるものだな、と感心して見物していたが、ふと疑問が浮かんだので、オロさんに聞くことにした。

「オロさん質問なのですが、こちらの方と知り合いなのですか」

「自来也とは、そうね………腐れ縁って奴かしら。私は、なんの興味もないんだけどね、付きまとわれて迷惑しているのよ」

「………大蛇丸………お前」

ジライヤと呼ばれた人が、驚愕の表情を浮かべながら、オロさんを見ている。………が、次の瞬間。

「ブッ、ハハハハハハハハハ、オッ、オロさんじゃと~。ブッハハハハ、あの大蛇丸が、オロさんって、ヒィヒヒヒ、ハッ、ハラよじれる。ギャハハハハ」

腹を抱えながら大笑いする、ジライヤって人。殺気を含んだ目で俺を見る、オロさん。何がそんなに可笑しいのか分からない俺。そしてオロさんの発言。

「ネジ、その男の氏名は自来也よ。ジ・ラ・イ・ヤ。分かるわね」

オロさんが、俺に何を言わせたいか分かったので、オロさんが望みに応える。まあ、別に応える必要はないのだけど、少し涙目だしね。

「ジラさんにも質問しますけど、ジラさんと、オロさんは友達なのですか」

「誰が、こんな奴と友達なもの………ジラさんって………」

「ククッ、フハハハハハ、里の狂気と恐れられた男が、ジラさん!!ククク、ア~ハハハ」

オロさんが、我が意を得た如く高笑いをした。一方で、ジラさんは苦虫を噛み潰したような顔をしている。




高笑いを続けていた、オロさんが落ち着きを取り戻したので、食事をしながら話をすればいいと提案した。もちろん、俺に食事を奢るついでに、と付け足す。

「あのな~日向の小僧、コイツは木の葉の敵なんだぞ。退治する事はあっても、一緒に飯を食うなんてのは、ありえんのォ」

「二人の力量を考えたら、町を五周してから、あそこに見える食堂に先に着いた方が勝ち、それで負けたほうが食事代を出す。うん、問題ありませんね」

ジラさんの言葉を気に留めず、条件を提示した。

「無駄よ、ネジ君。今更この男と食事なんて、ありえないわね。………………それに勝負したところで、私が勝つのだから時間の無駄だしね」

「それは聞き捨てならんのォ。わしが、お前より弱かったのは、お前の尻が青かった頃までだが」

二人は再び、殺気を放ちながら睨み合っている。俺は町の一角を指差し。

「あの場所を基点に五周とします。それと、町が壊れたら食事が出来なくなるので、術の使用は禁止です。それでは………開始」

俺の開始の合図と同時に、二人は駆けて行った………速いね。まあ、いくら速くても時間が掛かるだろうから、先に食堂で食事をとる事しよう。










オロさんとジラさんは、ほぼ同時に食堂の引き戸を開け、近くに居る店員に問いただす。

「わっ、わしの方が先じゃのォ、ハァハァ。そうだろう、そこの店員」

「わたぁ、私の方が先に着いたに決まってるでしょ、ハァハァ。そう答えないと殺すわよ」

二人の迫力に怯える店員。埒が明かないので店内の俺を探す二人。食堂の向かいにある団子屋で団子を食べる俺。そして俺を発見する二人。………うん、凄い殺気だね。

「こんな所で何をやっておるのか、聞かせてもらいたいもんじゃのォ。確かお前が指定したのは、あの飯屋だったはずだが」

「ネジ君、調子に乗りすぎていない。まさかとは思うけど、私が貴方を殺さないとでも思っているのかしら」

二人は俺の前まで来て、盛大な殺気を俺に向けながら問いただしてきたので、素直に答える。

「よくよく考えたら、宿を出る前に食事を済ませていたので、余り空腹じゃないんですよね。でも、甘いものは別腹ってことで団子を食べてます」

「………お前………本当に日向か。ここまで好き勝手に生きておる日向なんて、わしは知らんぞ」

「フゥ、これ程の殺気にも怯えないなんて、殺す気もなくなるわね、まったく。………………んっ」

オロさんは、長椅子に座っている俺の横に座り、ジラさんに勝利宣言した。

「今回の勝負も私の勝ちね、自来也」

「なっ、なにを言っている、今回の勝負は飯屋がゴールじゃろうが。日向の小僧が、団子屋に居る時点で勝負は無効じゃろうが!!」

そう言って、俺を睨むジラさん。

「奢ってくれるなら、誰が勝者でも構いませんよ………でもまあ、今回はオロさんの方が、機転に長けてたってだけの話ですね」

「様は、いくら勝負を無効にした所で、私がお前より優秀なのは証明されたっけ訳さ」

「くっ………奢ればいいんじゃろうが、奢れば!!………その代わり、今回の勝負の事は忘れろ!!いいな!!」

「別に、憶えておくような事でもないので、問題ないですよ」

「………いや、わしが奢った事は憶えておけよ、まったく」





俺を挟んで二人は座り、団子を食べながら、二人の過去の思い出話に俺は耳を傾けていた。

オロさんが自慢話をすると、ジラさんが茶々を入れる。ジラさんが自慢話をすると、オロさんが茶々を入れる。そんな感じで話が続いていた。

団子も奢ってもらえるし、強い二人の武勇伝も聞けたので、とても有意義な時間を過ごせたと思う。





「ネジ君、今日は楽しかったわ。また機会があればいいわね。………………それと自来也………団子………」シュッバ

「まったく、礼も言わずに帰るとはのォ。まあ、大蛇丸らしいっちゃ大蛇丸らしいわな。………ネジ、楽しかったぞ。また一緒に団子を食おうのォ」

「はい、また奢って下さい。それと貴重な話を聞けて、とても楽しかったですよ」

「ハハハ、そうかそうか。今度はもっと凄い話を用意しとくんで、楽しみに待っとけよ」

そう言って、ジラさんは歩いて行った。俺はその背中に、一礼をしてその場を離れた。しばらくして、遠くの方からジラさんの叫び声が聞こえた。

『って、なんでわしは大蛇丸と仲良く団子なんぞ喰ったんだ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~』



[9289] ○ネジってみた○  12
Name: 鈴科◆785aa133 ID:59769312
Date: 2009/11/14 10:15
中忍選抜試験が無期延期になってから三ヵ月、安価だが長期住み込み任務(農作手伝い)を大量に引き受けた結果、当面の危機は脱したと言えた。

火の国の大名との関係も改善の兆しが見えているが、国には国の尊厳を守る必要がある為に、簡単には依頼を再開する事が出来ない状況にある。

そんな折、大名から手紙が届く。

『家臣が奇病に罹り職務に支障が出ている。並みの医者では治療が出来ないので、木の葉随一の綱手に治療を頼みたい。完治すれば先の件は水に流し、依頼を再開する』

虚言内容ではあるが火の国からすれば、これで問題は解決すると思っていた。

……が、現在木の葉には綱手は居ない。長期任務の名目で、付き人を一人連れて里を出ているが、束縛を嫌い連絡が付かない状況にあった。

綱手が里を出た理由を知っている三代目火影だったので、無理に連絡を取らず放置状態を容認した結果、余計な手間を掛ける破目になる。

綱手捜索班を編成し捜索させること半月、手がかりすら掴めない状態であった。

悩んだ火影は一人の少年を思い出すと同時に、その少年に掛けられた嫌疑が、真実か虚偽かを確かめる方法を思いつき、少年を執務室に連行させる。

手枷足枷を嵌められた状態で、火影の執務室に連行された少年の名は日向ネジ。

火影とは牢獄に投獄する前に会って以来の再会だが、ネジの顔色は悪く今にも倒れそうであった。







        ○ネジってみた○  12話







「どう見た、自来也」

執務室に日向の小僧の姿はなく、今は二人しか居ない。

「そうだのォ……アレは悪さする様なタイプには見えんな」

三代目と日向の小僧のやり取りを、影から見ていた、わしに三代目が質問した。

「顔色が悪かった原因が、足枷を嵌めた状態では歩き難いってんで、狩られた獣みたいに棒に両手両足を吊るされ運ばれたから酔った。そんな馬鹿げた理由じゃからのォ」

後に、棒の両端を持っていた看守二人に話を聞くと、アレを提案したのは日向の小僧自身らしい。

「まあ、少しでも心配した先生は滑稽だったのォ」

「まさか、そんな下らん理由とは思わんじゃろう普通は……自来也、ネジの事は任せる」

「一応確認しとくが、万一にも日向の小僧が大蛇丸の部下で、木の葉に害を為す存在なら……殺すぞ」

「……大蛇丸とは一切関係ないのに、木の葉に害を為す存在なら、どうするつもりじゃ」

「へっ……まさか、そんな返しが来るとは考えてなかったのォ。……木の葉崩しの日向ネジ(経済的な意味で)か」

「はっきり言って、アレの行動は全く読めん。くれぐれもアレが妙な行動を起こしたからといって、性急な行動はせんようにな」

「心配せんでも、悪に染まっておらん小僧を、殺す趣味は持ち合わせておらんのォ」

まあ、悪に染まっておるなら、問答無用で殺すかもしれんがな。

「さて、日向の小僧は里を出た頃じゃろうから行くとするか。では先生、またのォ」

三代目に別れを告げ執務室を出る。

























「って、なんでわしは大蛇丸と仲良く団子なんぞ喰ったんだ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

ネジの監視を始めてから九日目、わしは町の一画で叫んでいた。叫んだのは、自分の行動が全く理解できなかったから。そしてソレは大蛇丸も同じだろう。

……いや、大蛇丸は本当に、わしと同じ感覚なのだろうか。わしと大蛇丸が出会えば殺し合いになる、少なくともわしは、そう思っておった。

大蛇丸自身、わしの存在が邪魔なはず。それならなぜ、あの場で殺し合いにならなかったのか。

…………あっ、わしがオロさんで笑ったからか。まあ、その後に大蛇丸に笑われたがのォ。自然に笑みがこぼれる自分自身に違和感があるが、悪い気はしない。

その後の勝負でも、ネジの提示した条件を律儀に守りながら、町の周りを走っていた。まあ、口喧嘩をしながらではあったが、直接攻撃することは無かった。

そしてネジを挟んで、団子を喰いながら過去の自慢話か…………大蛇丸が里抜けする前より、話したかもしれんな。

……もし再び大蛇丸がネジの前に現れたとき、今日の様な奇跡は起こるのだろうか……いや、奇跡では無いな。

『人と人は分かり合える』…………違うな。

『人は興味のある事を優先する、睡眠時間を削って趣味に時間を費やすのは人の性、決して逆らう事は出来ない』……コレも違うな。ってか意味が分からん。

まあ、考えても仕方ないのォ。ほんの些細なきっかけさえ有れば、再び大蛇丸と飯を喰うこともあるだろう。まあ、そのきっかけはネジだろうな。















わしが町の一画で叫んでから、十日程過ぎたある日の夕暮れ時、珍しくネジが食事を奢ると言い出した。

「こう何度も奢ってもらってばかりでは、申し訳ないですからね」

ネジに奢った回数は八回。勝敗は、四勝三敗一分け……まあ、大蛇丸に聞けば四勝四敗と答えるだろうが、気にするな。

店を探しながら町を歩いていると、懐かしい知人に遭遇した。綱手である、付き人のシズネも一緒に通りを歩いていた。

「おう、綱手久しぶりだのォ。シズネも元気そうでなにより」

ネジ達から離れ、綱手達に近付き声を掛けた。二人は突然の再会に驚いた様子ではあったが、シズネが綱手の代わりに返事をする。

「自来也様、なぜここに……大蛇丸!!」

シズネが、わしの後方に居る大蛇丸を見て身構える。

「まてまて、そう身構えなくとも危険は無い。……今はだが」

シズネが困惑の表情で、わしを見る。説明せねばならないが、どう説明したものか。

「自来也、まさかとは思うが大蛇丸と組んで、あたし連れ戻しにきたのかい」

そういえばネジは、綱手捜索任務の最中だったのォ。未だに構えを解かないシズネにも、説明せねばならない。

「大蛇丸の横に日向の人間が居るだろ、アレが木の葉崩しの日向ネジだ。噂くらい聞いた事があるだろう」

綱手とシズネの視線が、ネジに集まる。シズネの構えに危険性を感じなくなったことに、少し安堵する。

「詳しい説明をすると、かなり面倒なんで端折って言えば、アレは大蛇丸のお気に入りでのォ。アレの所為で、今から三人で飯を喰いに行くところだ」

「……まったく状況が理解できませんよ、自来也様」

「まあ、アレと話せば話が早いか。おいネジ、捜索対象の綱手が居るぞ、こっちに来い」

ネジだけ呼んだつもりが、大蛇丸まで一緒に来たので、シズネが緊張の面持ちを見せる。大蛇丸は、そんなシズネを気にするそぶりも無く、綱手に声を掛ける。

「ひさしぶりね綱手。相変わらず無駄に若作りしているわね」

「フンッ、大きなお世話だ。それより、なぜ自来也といる、その日向のガキがお気に入りらしいが、白眼の秘密でも探ろうってのかい」

「ネジ君に比べれば、白眼の秘密なんて路傍の石。それと自来也と一緒にいるのは、ネジ君が食事を奢ってくれるからよ」

大蛇丸の言葉に、怪訝な表情を浮かべる綱手とシズネ。まあ、そらそうだろうのォ、大蛇丸を知っている者からすれば信じらんことだ。

そんな中、ネジは綱手を見つめ言葉を発する。

「火影様より帰還命令が出ていますので、直ちに帰還して下さい」

「嫌だね、断る。生憎、木の葉がどうなろうと、あたしの知った事じゃないんでね」

「そうですか、それなら仕方ないですね、それでは失礼します」

そう言うと、ネジはあっさり踵を返し歩いて行こうとするので、慌てて呼び止める。コイツは自動チャクラ防御があるので、掴んで止めることが出来ないのは面倒だのォ。

「待たんかネジ、今のでは幾らなんでも適当すぎるだろう」

「そう言われても、正直この金髪が木の葉に帰ろうと帰らなかろうが、俺には興味の無い事ですから。まあ、里には報告しますけどね」

あまりの発言に頭を抱えそうになったが、不機嫌そうな綱手の声が聞こえた。

「金髪ってのは、あたしのことか日向のガキ!! あんまり舐めたこと言ってると、痛い目を見る事になるよ!!」

どうやら金髪呼ばわりされた事が、気に触れたらしいが、相変わらず短気だのォ。一方ネジは、綱手の言葉を聞かずに歩いて行く。うん、自由すぎだオマエ。

当然の事だが、そんなネジを綱手が許すわけが無かった。

「待て、日向のガキ!! あたしに喧嘩を売って逃げる気かい」

気にせず綱手から離れるネジ。さらに怒りを募らせる綱手。その綱手を見て慌てふためくシズネ。それらの様子を楽しそうに眺める大蛇丸。混沌だのォ。

「日向を名乗る者が逃げる気か!! 待てと言っているだろう、木の葉崩しの日向ネジ!!」

ネジの歩みが止まり、振り返る。そして、ほんの少し不機嫌そうな顔のネジが。

「その妙な通り名で呼ばれるのは、好きじゃないから、止めてくれるかな金髪」

「あたしの事を金髪って言うのを止めたら、考えてやるよ。木の葉崩しの日向ネジ」

「……まあ、どうでも良いか呼び名なんて。好きに呼べば良いよ金髪」

「……このガキ!! ふざけやがって」

今にも襲い掛かりそうになった綱手を、慌てて止める。

「待て綱手、アレをまともに相手にするな!! アレは大蛇丸と同じで、奇人変人の類だ。まともに相手にするだけ時間の無駄だ」

「酷い言われようね。幾ら私でも、ネジ君と同類扱いされると傷つくわね」

「いや、流石に奇人変人度で言えば、お前の方が上だと思うぞ」

「しかも、覗きが趣味の変人に言われるなんて屈辱よね」

「…………お前らの漫才に興味なんか無い。いいから、そこを退け自来也」

「ネジ君に襲い掛かるのは、止めておいた方が賢明だと思うわよ。今のお前では、ネジ君に勝てないからね」

綱手を止められそうに無いので、ネジに謝らせようとする前に、大蛇丸が挑発する様に言った。綱手の視線が大蛇丸に向く。

「老いたな大蛇丸。このあたしが日向のガキに、負ける訳が無いだろう。日向の秘密なんてのは幾らでも知っているんだ、このガキが回天を使える事も知っている」

「……日向の秘密を知っているって、本当ですか。出来れば答えてくれないかな、金髪」

どこかに違和感はあった。だがネジの声は、いつもと同じに思えたし、表情にも変化は無く、いつもと同じだった。

「お前の手の内をあたしが知っていて、焦ったかガキ。今さら謝って、許してもらえるなんて思ってないだろうね」

「冗談の類では無いのですね。……仕方ないね」

そう言って、ネジは綱手に近付いてくる。謝りに来たであろうと思った綱手は、遮るように立っていたわしに目で横に退くように指示してきた。

綱手の正面に立ったネジは、綱手を見据えながら言葉を発する。

「なんとお詫びをすれば、許して貰えるかは分かりませんが、先に謝っておきます。ごめんなさい」

「フンッ、許さないと言ったはずだが。……だが、あたしも鬼じゃない、土下座するなら許してやるよ」

「そんな事で許してもらえるのですか、それはありがたいですね」

ネジが珍しく気を利かせたようだ。綱手も少しは冷静になったようだし、これで木の葉に帰ってくれると良いんだが、そこまで甘くは無いか。

んっ、『先に謝っておきます』……どういう事だ、さっきの事と言い間違えたのか。違和感が増す。

違和感を拭うため、改めてネジと綱手を見る。次の瞬間ネジは、綱手の胸に手を当てていた。考える余裕もなくネジを蹴り飛ばす。

「何をする、ネジ!!」

「自来也様、綱手様が胸を触られたからといって、幾らなんでもやり過ぎです」

「誰が、そんな事で怒るか!! 綱手をよく見ろシズネ!!」

わしの言葉で、綱手の異常に気付いたようだ。慌てて駆け寄り綱手を支える。その様子をわしは見る事は出来ない、ネジから視線を外すわけにはいかん。

「カハッ」

血を吐く綱手、ネジが柔拳を使ったのだ、胸を触った時に殺すつもりで。

自動チャクラ防御で、直接的ダメージは無いネジが構えもせず立っている。そして不満げな顔で言葉を発する。

「ジラさん、出来るなら邪魔しないでもらえます」

「貴様!! よくも綱手様を!!」

「待ちなさいシズネ。それにネジ君もね」

おそらく、ネジに襲い掛かろうとしたシズネを、大蛇丸が止めたのであろう。今の状況でネジから視線を外すわけにはいかなかった。

「オロさんも邪魔をするのですか。二人を掻い潜って、金髪を殺せそうに無いですから、正直、困りますね」

「困る必要は無いわよ。この女は日向の秘密なんて、知らないのだから」

「でも金髪は、日向の秘密を知っていると言ってましたよ。日向の人間として、白眼の秘密を知った人間は殺さないといけないのですが」

ネジも日向の人間、白眼の秘密を守るためには無茶をすると思ってたが、ここまでやるとは。しかし助かったのォ、大蛇丸がネジに就かなかった事に感謝した。

大蛇丸がこの気にわしに襲い掛かってきたなら、綱手はネジに殺されるだろう。シズネではネジを止めきる事は出来ないだろうから。

五メートル程離れた場所で白眼も発動させず、日向独特の構えも取らずに立っているネジは、見ている分には危険は無そうそうに見える。

「……ネジ、もし綱手を殺すってってんなら、わしは全力で阻止する。お前を殺す事になってものォ」

「好きにすれば良いと思いますよ、誰しも譲れないものはありますからね。それから金髪、白眼の秘密を知らないって本当なの、答えてくれないかな」

わしの殺気を込めた言葉を、簡単に流すネジ。自分の命を顧みず、綱手を殺す事だけに集中したネジを止める事は至難の業。

ネジが返答待ちの状況では襲いかからんと思うので、ようやく綱手達に視線を向けることが出来た。

膝を付き震える綱手。その綱手を支えるシズネ。その様子を楽しそうに眺める大蛇丸。

今の状況を打開するには、綱手の言葉一つで解決するだろうが。柔拳の傷に、自ら吐いた血で震えている綱手には『知らない』の、言葉一つ言えない状況だった。

「綱手、ネジ君の質問に答えてあげたら。お前の返答しだいで、お前かネジ君が確実に死ぬのだから、血が怖いなんて理由で、震えてる場合じゃないだろう」

大蛇丸の言葉を聴いても綱手の震えは止まらない。シズネは綱手を支えながら大蛇丸を睨みつけるが、平然と視線を受ける大蛇丸。そして、わしの横で綱手を見るネジ。

「瞬身の術で移動しただけですよ。それにしても……話す事も出来なさそうですね、金髪。……仕方ないですね」

驚くよりも先にわしに話しかけてきたネジは、綱手の様子を見ていたかと思うと、踵を返し歩いて行こうとするので慌てて呼び止める。

「待てネジ、どこへ行くつもりだ」

まあ、想像は付くが一応聞いておく。

「金髪が話せそうになるまで時間が掛かりそうですから、食事をしてきます。……確か食事を奢る約束をしていましたね、お二方はどうします」

想像を裏切らない奴だと感心する。まあ、シズネはネジを睨み殺さんばかりの勢いで睨んでおるが、襲い掛かりはしなさそうであった。

んっ、綱手の体の震えが止まっている。そればかりかチャクラが、膨れ上がっていた、そして顔を上げネジを睨みつける。

「……ガキ。あたしを、こんな目に遭わせておきながら、飯を喰いに行くだと……」

先程までネジを睨みつけていたシズネが、慌てて綱手を止めようとする。

「綱手様、落ち着いてください。今そのお体で無茶をするのはよくありません」

綱手は必死に止めようとするシズネを、横に退かす。ネジと綱手の距離は九メートルほどで相対している。そして、わしはネジと綱手の中間辺りにいる、微妙な距離だ。

「金髪、話すことが出来るなら、質問に答えてくれるかな。白眼の秘密を知っているのか、知らないのか」

チッ、不味い事になった。もし綱手が知っていると言えば、ネジは確実に綱手に襲い掛かる。

しかも、怒りに我を失った綱手は知らなくとも、知っていると答えそうな雰囲気であった。

……綱手が話すより前に綱手を止めるしかない。ネジは死ぬまで絶対止まらんだろう、綱手なら後で酒でも奢って納得させれば良い。だから今は綱手を止める。

「待ちなさい自来也。こんな面白い見世物を途中で止めようなんて、無粋が過ぎるわよ」

なっ……最悪の状況で大蛇丸が仕掛けてきた。綱手を取り押さえようとした瞬間、わしの喉下に刀を突きつけてきて牽制してきたのだ。

「どういうつもりだ大蛇丸!! 今、綱手を止めなければ確実に、どちらかが死ぬんだぞ。お前はネジを殺したいのか!!」

喉もとの刀を無視して、大蛇丸に叫ぶ。大蛇丸に邪魔をされながら、綱手を止める事など出来はしない。結果、大蛇丸を説得するしかない。

「あんなに血を恐れていた綱手が、怒りに我を忘れて恐怖を克服。クックック、面白いわね」

言われてみればそうだ。綱手はネジを睨みつけながら、手の甲で血を拭っていた。

シズネは、そんな綱手を複雑な表情で眺めていた。綱手を止めるべきか悩んでいるのであろう、そしてネジを殺すべきかどうかを。

「恐怖を克服した綱手を褒めるべきか、恐怖を忘れるほどの怒りを感じさせたネジ君を褒めるべきか。……悩むわね」

「悩んでいる暇なんてあるか。今、綱手を止めなけれ『無駄よ』……、なに」

綱手は一言も喋らず、息を整えながらネジを睨んでいる。ネジはその様子を、退屈そうに眺めている。少しは時間の余裕があるように思えた。

「今、綱手を止めた所で、その場限りの事で問題を先送りにするだけ。……お前が後日、綱手を説得できるとは到底、思えないわね」

「じゃあ、このまま黙って見物してろってのか」

「それしかないでしょうね。……まあ綱手の返答しだいだけど、もしもの時は木の葉の為に、ネジ君をお前が殺せば良いじゃない」

「……わしが、ネジを殺すだと……、それで良いのかお前は、お気に入りなのだろうネジは」

言葉に棘を含ませるが、大蛇丸には通じなかった。

「ネジ君が、お前に勝てるか興味があるのよ。まあ殺されたら、それまでの存在だけだったて話だしね」

最悪の状況だった。大蛇丸は止める気が無い。シズネは迷っている。ネジは返答しだいで綱手を殺す。わしは動くに動けない。……綱手を信じるしかない状況。

綱手を見る、呼吸は整っていたが、ネジを見る目に衰えは無く怒りに満ちている。

「白眼の秘密を知っているかだったな。……そんなもん知るか~~!! 日向なんて糞一族に、これっぽっちの興味もあるものか~~!!」

「そうですか、知りませんか。それでは失礼します。……あっ、一応謝っておきましょう」

綱手は吼えて、ネジに襲い掛かった。一方ネジは、綱手の言葉に納得したかと思うと突然、土下座をしたのだ。

結果……一瞬で距離を詰め殴りかかった綱手は、土下座をしたネジに反応しきれずに、ネジに躓き顔面を地面に強打して気絶した。







「私は綱手様を治療しなければならないので、失礼します自来也様」

気を失っている綱手を背負い、額に青筋を浮かべたシズネが、棘のある言葉でわしに話しかけた。……今回の件は、わしに落ち度は無いと思うのだがのォ。

「それから木の葉崩し。今日の事は里に報告させてもらいます」

「好きにすればいいよ、黒髪」

シズネは今にも襲い掛かりそうな顔でネジを睨みつけるが、ネジは全く気にもしていない。

そして最後に大蛇丸に視線を向けたが、なにも言わずにシズネは踵を返し歩いていった。

「……暗くなってきましたが、食事に行きましょうか。お二方は、なにか希望がありますか」

「別になんでも良いわよ」

「そうですか、ジラさんはなにか希望がありますか」

わしは二人を見る。捜索対象を殺しかけて平然としているネジと、そのネジとわしの戦いを見たいと言って邪魔をした大蛇丸。……この二人は殺した方が世界の為だろうか。

「ネジ、大名との関係修復の切り札である、綱手を殺そうとした事に弁明はあるか」

「ありませんよ。俺は日向の責務を果たしただけですからね」

「今回の件が報告されれば、里が今度こそ、お前の死で事態を収拾する可能性がある。それでも弁明が無いと言うのか」

「同じ質問には、同じ答えしか返せませんよ。……それよりジラさんに希望が無ければ、あそこの店で食事をしようかと思うのですが」

聞くだけ無駄たったのォ。正直、今回の件を先生が、どう判断を下すかは分からん。大木を守るために、剪定を断行しなければならない時もある。

ネジを見る。後悔や悩んでいる様子は無く平然としている。……悩んでいるのが馬鹿らしくなってきた。……よし、今日の事は忘れよう。酒を飲んで忘れよう。

「希望ならある。屋台で、おでんを肴に飲みたいのォ」

「未成年なので酒は飲めませんが、おでんは良いですね。白眼……ありました。こっちです、行きましょう」

先の戦いでは使わなかった白眼で、屋台を見つけ歩いて行くネジ。ネジの後に付いて、大蛇丸と並んで歩き、大蛇丸に小声で話しかける。

「ネジの酔ったところを見てみたいとは思わんか。お前が協力すれば、飲ます事が出来ると思うがどうする」

「……それは止めておいた方が賢明ね。ネジ君の寝癖、知っているでしょう。もしネジ君が酒乱だったら、寝癖の比じゃないでしょうね」

「……やはり未成年が飲酒をするべきではないな」

その後、ネジを挟んで大蛇丸と久方ぶりに酒を酌み交わし、楽しいひと時を過ごした。



[9289] 【砂の事情】
Name: 鈴科◆785aa133 ID:59769312
Date: 2009/11/30 20:08
【砂の事情】

中忍選抜試験無期延期より二ヶ月。砂隠れの里は複雑な問題を抱え、長老や上忍が連日、討議していた。

里の運営に関してではない。先の中忍選抜試験で、自国に隠れ里を持つ重要性を理解した、風の国の大名が資金援助再開と任務依頼の独占を約束したのである。

問題は風影の死であった。中忍選抜試験中止後すぐに木の葉を発ったはずが、我愛羅の入院で十日程、木の葉で足止めを食らったバキ達が帰還しても帰還しなかったのだ。

捜索班が編成されてから三日後、最悪の形で風影は発見される。そして、その死因や死亡日時が問題であった。

死因は刀傷による失血死。死亡時期は中忍選抜第三試験よりも数日前と判断された。当然、護衛の二人も同じ死亡時期であった。

死亡時期から見て、風影殺害の犯人は大蛇丸で間違いは無かった。もし大蛇丸以外なら、中忍選抜第三試験に風影に化けて観戦に来るはずが無いからである。

里としては当然、風影の復讐の為、大蛇丸討伐を掲げたいところではあったが、大蛇丸と共謀して木の葉襲撃を企てていた事を、風の国の大名に知られたくは無かった。

移り気な大名が、この事を知れば、せっかく再開された資金援助や任務依頼を、再び白紙撤回する可能性があるからだ。

だが、討議に参加している者のなかには、『長の仇を討たずに何が忍だ』と、息巻く者もいる。そして、その意見に賛同するのは、比較的若い忍たちである。

一方で、『長は里の発展を望んでいた。自らの死が原因で、里を困窮に貶める事を望んでおられない』と、諭すのは長老達であった。









長い討議の結果、風影の死は、中忍選抜試験無期延期後、砂隠れに帰還した数日後に急死した事にした。その際、長老の一人が提案を出す。

「確か、我愛羅の対戦相手は日向一族の日向ネジといったな。そして、日向ネジが使った、謎の臭いで守鶴で撃退したと」

バキと上忍達(木の葉襲撃に備え、試合会場で観戦していた)が頷いた。それを見て、嬉しそうに言葉を続ける。

「なら、その臭いが原因で急死した事にしよう。そして、それを理由にして、日向ネジの身柄を渡すように木の葉に要求する。どうだ、わしの案は」

場がざわめく。

日向ネジが、我愛羅に勝った事で、木の葉襲撃が無くなり、砂隠れの忍は死傷者を出さなかった。

日向ネジが、我愛羅に勝った方法が、風の国の大名の、自国に隠れ里を持つ重要性を認識する事に結びつく。

公にする事は出来ないが、日向ネジが砂隠れの里を救ったと言っても過言ではない。

そういった意味で、砂隠れにとって日向ネジの存在は大きい。

義理や情で語れば、長老の言葉は考えられないものであった。……だが、日向の白眼を得る機会。その好機を逃すには、あまりにも惜しかった。

風影を殺した、大蛇丸は元木の葉。日向を得る事で、大蛇丸の件の意趣返しにもなる、と考える者までいた。

バキは討議に参加してはいたが、今まで言葉を発する事は無かった。風影に化けた、大蛇丸を見抜けなかった負い目もあるので沈黙をしていた、……が。

「恐れながら申し上げます。日向ネジは、日向の分家。身柄を要求したところで、得られるのは、白眼の力が消失した死体だと思われます」

バキは、日向の分家の呪印を説明する。呪印は分家を縛る檻。死んだ分家は日向で無くなり、ただの人として死ぬ。分家は日向であり続けることは出来ない。

バキの説明に、場は静まる。そこには哀れみや同情、もしくは恐れや憤り、複雑な感情が渦巻いていた。

日向ネジの身柄の要求を提案した、長老は言葉を無くしていた。バキは安堵する。バキには理由があり、日向ネジを殺したくはなかったのだ。

……安心したのも束の間。別の長老が言葉を発する。

「別に力が無くなったところで問題あるまい、日向ネジは守鶴を撃退したのであろう。なら、その力を木の葉から奪う事は、我らにとって有益なことだろう」

砂隠れと木の葉隠れが、未来永劫争わないとは限らない。なら、その力を削ぐ機会を無駄にするべきではない。そう、長老は言う。

再び場がざわめく。

バキは内心の焦りを面には出さず、考える。日向ネジを砂隠れが殺してはならない、それだけは絶対だった。そんな事をすれば、砂隠れは大いなる災いを呼ぶ羽目になる。

だがバキは、その災いのことは伏せておきたかった。なぜならその災いとは、我愛羅のことだから。……覚悟を決めるしかないか、とバキは思う。

「……最近、我愛羅の様子を見て、どう思われます」

バキの場違いな発言に、視線がバキに集まる。その視線を受けて言葉を続ける、我愛羅を思えば伏せておきたい事を。

「私が、我愛羅を受け持つ事になってから初めてでしょう、あれほど穏かな表情を浮かべるようになったのは」

「……なにが言いたい、バキ。我愛羅の話など、今はしておらんだろう」

「簡単な話です。日向ネジを殺せば、以前の我愛羅に戻ります。……いや、もっと酷い状態になるでしょう」

「なっ……」

場のざわめきは一段と大きくなり、バキは説明を求められる。

「我愛羅は試合後、臭いが体に染み付き六日程入院しました。臭いを取るために、薬液に浸かり眠り続けました。その時に、守鶴と話をしたと」

「守鶴と会話を……」

「我愛羅曰く『こんな臭い世界に興味は無い。だが、このまま、お前に死なれたんでは困る。だから力だけは貸してやる』と、言ったそうです」

「つまり、日向ネジの臭いが原因で、守鶴が我愛羅の奥底に引っ込んだとでも言うのか。そして、その義理で日向ネジを殺せば、元に戻ると……」

バキは我愛羅の言った言葉を思い出す。『人と面と向かって食事をしたのは、久しぶりだった』

「我愛羅にとって、日向ネジは初めての友達なのでしょう。……まあ、日向ネジが、どう思ってるかは知りませんが」

『俺の砂を全く恐れなかった。……途中、カンクロウが余計な事を言ったが、気にした様子は無かった』

「我愛羅の、日向ネジへの依存度はかなりのものです。もし、その日向ネジを殺したのが我ら砂隠れなら、……我愛羅は砂隠れにとって、大いなる災いになるでしょう」

『あいつだけが、俺を化け物扱いしなかった。あいつだけが、俺を奇異な目で見なかった』

我愛羅の今後の人生を考えれば、話すべきでは無かったかもしれない。だが、今の我愛羅を思えば、話すべきだとバキは思う。

場は混乱している。日向ネジの身柄の問題など、どうでもよくなっていた。

我愛羅の存在が砂隠れにとって危険なら、排除すべきと発言するものまで出てきた。だが、それらの発言はバキの考察範囲内だった。……バキは鬼札を切る。

「我愛羅の力は、里に災いをもたらす可能性があります。……ですが、その力を上手く利用すれば、里に繁栄をもたらす事でしょう」

バキは場を見る。視線はバキに集まっている、それを確認し言葉を続ける。

「我愛羅が里を裏切れないようにすればいい。……我愛羅を風影に祭り上げましょう」

場が静まり返る。バキの発言が、あまりにも突拍子も無いものだから、場に居る誰もが理解できなかったのだ。バキは止めとばかりに言葉を続けた。

「はっきり言って、我愛羅は砂隠れに恨みや憤りはあっても、恩や愛着はありません。最悪の考えをすれば、砂を抜け、日向ネジの居る木の葉隠れに身を寄せるでしょう」

バキ自身、我愛羅がそこまでするとは思ってはいない。だが、可能性としては零では無いとも思っている。

「……風影は、いずれは立てねばならん。それに我愛羅を推す、お前の考えも分かった。……だが、臭いに負けた者が里を守れるのか。同じ手を使われたら、どうする」

「守鶴が臭いに負けたのは、運が悪かったからです。……結果的には、それが砂隠れにとっては幸運だったわけですが」

守鶴は、砂を纏い形を成して、始めて本当の姿になる。そしてバキは試験時、ギリギリまで試合会場に留まっていて、それを見ていた。

「あの時、我愛羅に集まった砂の色は紫色でした。つまり、守鶴は臭いの素そのものを身に纏った訳です。だからこそ守鶴は、即座に我愛羅の中に逃げるしかなかった」

「つまり、守鶴が負けたのは、臭いの素を身に纏ったからだと言うのか」

「はい。身に纏った為に、吹き飛ばす事も出来ず、その場から離れる事も出来なかった。もう二度と、我愛羅はあんな負け方をしないでしょう」

……その後、討議は続き結論に達して終了した。一つは風影の死の偽装。もう一つは、次の風影選出。















バキは今後の行動を伝えるために、テマリ、カンクロウ、我愛羅を自分の家に呼び寄せた。

「討議は今日で終了した。細かい調整などは、まだあるが、それは俺が関わる事ではない。よって明日からは再び、四人一組で任務に当たる事になる」

「……討議の結果がどうなったか、教えてもらえないのか。里の事情は分かるけど、……一応、父親だったんだし」

テマリが姉弟を代表して聞いてくる、風影のことを。バキは一瞬ためらったが、真実を話すことにした。公表することと、隠すべきことを。



「……今、言った事が真実だ。砂隠れは風影様の死を偽装する、それが里の安寧の為だ。……お前たちにも、敵討ちは我慢してもらう」

姉弟は複雑な表情を浮かべていた、怒りとも悲しみとも取れない複雑な表情であった。

「……まあ、仕方ないじゃん。親父は風影だったわけだし、里の安寧の為なら、喜んでるだろうぜ」

カンクロウが無理に笑顔を作り、テマリ、我愛羅を諭す。テマリは複雑な表情のまま、我愛羅に表情は無かった。

「不思議なものだな。……俺を化け物にした、あの男を憎んでいたはずなのに、……何故か、悲しいと思う」

バキ、テマリ、カンクロウが我愛羅を見る、以前の我愛羅なら考えられない発言だった。

その後しばらくは、誰も言葉を発せず、沈黙状態が続き、風影の死を惜しんでいるようだった。

「……先生、今日はありがとう、家に帰るよ。明日から、また任務よろしく」

テマリが、そう言いながら席を立つ。それに続きカンクロウ、我愛羅も席を立つ。

「ああ、寝坊して遅れるなよ。……って、忘れていた!! お前ら座れ、大事な話を忘れていた」

バキの突然の絶叫に驚く姉弟。そしてバキは語る、日向ネジのことを、次の風影に我愛羅を推したことを。

「……なんで、日向ネジって奴を守るために、我愛羅が出てくるんだ」

予選で敗退し、試験当日は砂隠れに居たテマリにとって、日向ネジと我愛羅の係わり合いを知らない。

我愛羅が変わったのはテマリも分かる。だがテマリからすれば、日向ネジは、台車に寝ながら予選会場に現れた奇人にすぎない。

木の葉襲撃は計画中止後に知らされたので、我愛羅が負けたから計画中止になったとは知らない。だからこそ、日向ネジと我愛羅の結びつきが想像できなかったのだ。

「まあ、我愛羅からすれば、日向ネジは白馬に乗った王子様って感じじゃん。もっともアレは白馬に台車を付けて、そこに寝ながら移動するような奴だけどな」

「……なに言ってんだ、カンクロウ。頭がおかしくなったか」

「我愛羅が守鶴の力だけを貰える状態になったてのは話したよな」

「ああ、守鶴が我愛羅の奥底に引っ込んだってのは聞いた。だから今では、安眠できるのは知っている」

我愛羅は、すぐに守鶴の言葉を信じた訳ではなかった。だが入院んしている間、一度たりとも守鶴が我愛羅を脅かすことは無く、安静にしていられたのだ。

「……あいつだけが、俺を化け物扱いしなかった。そして、俺を化け物から救い出してくれた」

我愛羅の言葉に棘を感じて、怒らせてしまった、そう思い慌ててテマリは我愛羅を見る。だが、我愛羅の視線はテマリではなく、バキに向いていた。

「もし、里があいつを殺したなら、俺は自分を制御できる自信が無い。……だから先生、あいつを救ってくれて……ありがとう」

テマリに言葉は無く、驚きの表情を浮かべている。カンクロウはテマリの様子をニヤニヤ笑いながら眺めている。そしてバキは、我愛羅の言葉を受け。

「日向ネジを救うためとはいえ、お前を危険に晒す真似をしたのは事実だ。それでも俺に感謝するのか」

「幼少の頃から、恐れ、忌み嫌われている俺からすれば、そんなものは些細なことだ」

「それも過去のことじゃん。我愛羅、お前は変わったんだから、他人の評価なんて、幾らでも変える事が出来るじゃん」

「……手伝ってくれるか、カンクロウ」

「ああ、任せとけって。俺たちは兄弟なんだからな」

「フッ、いきなり兄貴面も、どうかと思うぞ」

「ハハハ、それもそうか」

二人のやり取りを見て、テマリは複雑な気分だった。自分は今でも、どこかで我愛羅を恐れているのに、カンクロウは恐れを感じていない。

自分とカンクロウの違いはなんなのか、姉でありながら弟に恐れを抱いている、自分はなんなのか。

「焦るなテマリ」

バキがテマリの肩に手を置き、諭す。

「少しずつ変わっていけばいい。お前たちは、これから長い人生を生きるんだ、だから焦るな」

「……先生。……そうだね、私はあいつ等の姉なんだからね」

テマリは、そう言い、カンクロウ達の会話に割り込んだ。……まあ、テマリの表情は硬かったが、笑顔ではあった。

「焦るなと言ったのに、困った奴だ」

そう言いながらも、テマリ達を見るバキは、楽しそうであった。



これは、砂隠れに新しい風影が誕生する前の、ある一日の話。



[9289] ○ネジってみた○  13
Name: 鈴科◆785aa133 ID:59769312
Date: 2010/03/10 20:16
「日向ネジと結婚させろ。それが火の国に行く条件だ」

執務室に入ってから、沈黙を守っていた綱手の第一声は、その場に居る者すべてを驚愕させた。……まあ、一人だけは例外だが。

「え~~~~~~~!! ほっ、本気なんですか綱手様!!」

シズネの声が執務室に響く、綱手の突拍子の無い発言に驚いたからだ。

三代目火影猿飛ヒルゼン。ご意見番の二人、水戸門ホムラ、うたたねコハル。自来也。そして木の葉に入る際に顔を変えている大蛇丸。この五人は絶句していた。

「もちろん本気だ。先生、この条件を飲んでもらえないなら、火の国に行き気は無いからね」

「それでは火影様、任務報告も終りましたので、失礼します」

この場の状況を、全く意に介さないネジは、執務室から出て行こうとしていた。そのネジを見て、ヒルゼンは慌てて叫ぶ。

「待たんかネジ!! こっ、これはお前の問題じゃろ!! 一体全体、なにがどうなれば、こんな事態になるんじゃ!! 説明せんか!! 説明を!!」

「そう言われましても、俺にも説明できませんから、金髪に直接聞いてください」

そう言って、ネジは綱手を見る。ネジにつられるように綱手に視線が集まる。

「女が男に惚れるのに、理由なんて要らないだろう。……っで、どうする。お前の返事しだいで、木の葉の命運が決まる訳だが」

綱手は挑発するかの様に、ネジに問いかける。執務室に居る、綱手とネジ以外の六人は混乱し固まっていた。

「別段、金髪に興味はないけど、どうしても俺と結婚したければ、宗家に言えばいいよ。宗家が結婚しろと言えば、結婚するから」

綱手の問いかけに答えたネジは、固まっているヒルゼンに視線を向ける。

「婚姻の件に関しましては、宗家の意向に従いますので、話し合いは宗家としてください。それでは火影様、改めて失礼します」

ネジはヒルゼンの返答を待つことなく、扉から出て行った。

……まるで時が止まったかのような沈黙。

静寂の訪れた執務室で、混乱しているシズネは綱手を見る、綱手は笑みを浮かべていた。







        ○ネジってみた○ 13







「あっ、綱手様、おはようございます。と言っても、もうお昼ですけどね」

木の葉崩しが綱手様に攻撃した翌日。治療は前夜に終っていたので、下手に前夜の出来事を思い出させないように、明るく挨拶をする。

「……シズネ。……日向ネジはどこにいる」

「綱手様、あんな子供のことなんて忘れて、美味しいものでも食べに行きましょうよ」

「気持ちはありがたいが、今の気分じゃ、とても美味い飯は喰えそうにないね」

当然ながら、綱手様は昨夜のことを忘れていなかった。あの木の葉崩しは得体が知れないので、関わってほしくはないのだけど、綱手様の性格からすれば無理か。

「おそらく昨夜は、この町で宿を取ったと思いますが、朝には木の葉に発った可能性があります」

今の時間は昼時、少しでも綱手様が諦める様に言葉を選ぶが、効果はなかった。

綱手様は、すぐさま宿を出て、木の葉への道を急ぐ。……木の葉崩しが、まだ町に居ることを願った。このまま木の葉まで戻る事になれば、誰も不幸にならずにすむのに。



そんな願いも虚しく、木の葉までの道中の茶屋で、休憩している木の葉崩しを見つける。綱手様は木の葉崩しの前に立つと、息を整えながら睨みつけている。

「昨日の続きをしようか、木の葉崩し!!」

綱手様の殺気を平然と受けながら、木の葉崩しは答える。

「続きってなにかな。土下座すれば許してくれると言ったから、土下座したのに」

木の葉崩しは、昨夜の綱手様の発言を憶えていた。もっとも、許すと言ったのは木の葉崩しが、綱手様を金髪呼ばわりした事に対してなのだが。

「……なら、あたしが組み手の相手になってやるよ。修業が好きなんだろう」

綱手様からすれば、昨夜は、あまりにも目まぐるしい出来事が続いたので、記憶が混乱しているのだろう。

まあ、綱手様がいきなり、木の葉崩しに襲い掛からないだけでも良かった。木の葉崩しが上手く断ってくれれば、綱手様の身に危険は及ばないのだが。

「金髪と組み手をしても、俺に得るものは無さそうだから遠慮するよ」

にべもない返事で、綱手様の申し出を断る木の葉崩し。……期待するだけ無駄でした。

綱手様は額に青筋を立てながらも、木の葉崩しを挑発するように話しかける。

「あたしに負けるのが怖いか、まあ、それもそうだろうな。お前みたいな尻の青いガキが、あたしに勝てるわけがないからな」

「そうだね、怖い怖い。だから俺に突っ掛かるのを、止めてくれたら助かるよ」

怖いと言いながらも、平然としている木の葉崩しに、綱手様は殴りかかるのを我慢している。……私は、ハッとする。

木の葉崩しを、その気にさせる言葉はある。だが、その言葉はあまりにも危険だった、組み手では済まない、殺し合いになってしまう、阻止しなければいけない。

「日向ネジ君。綱手様は、自来也様や大蛇丸と共に、三忍と称された方です。それを組み手もせずに、得るものが無いとは早計ではありませんか」

「……それもそうだね、少し考えれば分かる事だったよ、得られるものはある。……だけど、それには条件が一つあるけど、飲んでくれるかな」

木の葉崩しの言葉に、不満顔の綱手様ではあるが、私に条件を聞けと目で合図を送ってくる。

「飲む飲まないは、条件によります。……それで、条件とは」

「ここの代金を払ってくれたら、それでいいよ」

「……分かりました、支払いは私が持ちましょう」

おそらく木の葉崩しが、得られるものはあると言ったのは、このことだろう。綱手様も理解しているようで、怒りに震えている。



場所を移し、綱手様と木の葉崩しが五メートルほどの距離で相対している。

「おい、ガキ。遺言があるなら聞くが、どうする」

「ただの組み手なのに、遺言なんてないよ」

「なに、不幸な事故が起こるかも知れないだろう。……あくまで、万一に備えてだ」

あくまで、脅しだと思う。まさか、本当に殺す気は無いだろう。……確かめる勇気は無いけど。

木の葉崩しは、綱手様の言葉を聞いて考え始めた。……そして、木の葉崩しの口から出た言葉は意外なものだった。

「それなら、火影様に任務は失敗しましたと、伝えてくれるかな」

「……馬鹿にしているのか。あたしが先生に、その遺言を伝えた時点で、お前の任務は成功した事になるだろうが」

確かに、綱手様が火影様に会った時点で、綱手様を木の葉に連れ戻すことが出来ている。……そこまで考えての事だろうか。

「別に、金髪が直接伝える必要なんて無いよ。適当な誰かに頼んでもいいし。伝えたく無いなら、無理する必要は無いよ」

冗談とも取れるし、本音とも取れる木の葉崩しの言葉。綱手様は、馬鹿にされたと思ったらしい。

「……ふざけやがって!! くたばれ、木の葉崩し!!」

怒声を発した綱手様は、一気に距離を詰め殴りかかるも、木の葉崩しに紙一重で避けられ、胸に掌底を当てられる。

そして木の葉崩しは、すぐさま綱手様と距離を取る。綱手様は掌底を当てられた胸を確かめながら、木の葉崩しを睨みつける。

「どういうつもりだ、ガキ。柔拳を使わず、あたしに勝てるつもりか」

「たかが組み手で柔拳は使わないよ、日向の人間は」

木の葉崩しが柔拳を使わないのには安堵したが、綱手様の怒りは益々膨れ上がり、攻撃が粗雑になってしまった。



綱手様の力を込めた攻撃を木の葉崩しが避け、掌底を綱手様の胸に打ち込み素早く距離を取る、そしてまた綱手様が距離を詰め攻撃する。……これを何度も繰り返している。

「綱手の動きが悪いのォ。まあ、体が鈍っているようだし、こんなものかのォ」

「それでも少しずつではあるけど、動きが良くなっていくのは、流石と言うべきかしらね」

いつの間にか、自来也様と大蛇丸が居た。……気にするだけ無駄なので、綱手様に視線を向ける。

「しかし、うらやましいのォ。あんなに堂堂と綱手の胸に触れるのは」

「フッ、ただの組み手をそんな風に見るなんて、浅ましいわね」

……今更だけど、かなり不思議な光景だと思う、この二人が並んで立っているのは。

……この二人が、今ここで仲良さげに会話をしているのは、木の葉崩しが居るからだろうか。二人の会話は続いている、……変な方向に。

「それに胸なんて、ただの脂肪の塊でしょう」

「分かっとらんのォ。女の胸には夢や希望が詰まってるのだぞ」

「……その言葉が正しいなら、シズネには夢も希望も大して無さそうね」

「なっ、大きなお世話です!!」

大蛇丸の言葉に自来也様も、私の胸に視線を向けたので、胸元を隠しながら怒鳴る。……まったく、女の価値は胸だけじゃありません。

「でも……、綱手の胸がもう少し小さければ、ネジ君の柔拳で殺されて歴史が変わってたわね。……そう考えると、夢や希望が詰まってるって話も、嘘じゃないわね」

大蛇丸の言葉通り、綱手様の大きな胸が柔拳を心臓まで届かせなかったのだ。もちろん自来也様が木の葉崩しを蹴り飛ばした事も、綱手様の命を救ったのは間違いない。

しかし木の葉崩しは昨夜、綱手様を殺しかけたのに、今はそんな素振りすら見せない。綱手様の言葉に、虚偽の有無すら気にしている様子は無い。

改めて組み手の様子を見る。相変わらずの攻防を繰り返してはいるが、綱手様の動きが明らかに遅く、疲労が簡単に見て取れた。木の葉崩しは綱手様から距離を取り。

「金髪、日も暮れてきたから、組み手は終わりにするよ。そろそろ宿を探すか、野宿の準備をしないとね」

綱手様は肩で息をしている。一方、木の葉崩しは平然と立っていた。綱手様は、木の葉崩しを睨みつけたが、流石に今日は無理と悟ったらしく、提案を受け入れた。

その後、一時間ほど移動して小さな町に着き、自来也様が事前に取ってくれていた宿に泊まることになった。綱手様は余程疲れたのか、宿に着くなり眠りに付いた。

自来也様に礼を言い、綱手様と同室で休む。

ちなみに三人は、それぞれ個室らしい。まあ、大蛇丸と自来也様は別室なのは理解できるが、木の葉崩しまで個室なのは意外だった。

綱手様の寝顔を見て、明日も大変だろうけど頑張ろう、と思い眠りに付く。



夜、宿の一室で眠っていると、大きな物音がして目を覚ます。何事かと思い、隣で寝ている綱手様に話しかけようとするが、……居ない。

大きな物音は未だに止まない。一抹の不安を感じて、音のする方に駆け出し、すぐに到着する。そして、宿の部屋の一室では綱手様と木の葉崩しが戦っていた。

「おう、遅かったのォ、シズネ」

「自来也様、これはいったい」

私より先に来ていた、自来也様と大蛇丸は横目で私を確認すると、再び視線を綱手様と木の葉崩しに戻した。

「なに、綱手がネジ君の夜這いに失敗しただけよ」

「なっ、なんですか夜這いって!! 綱手様がそんな事するわけ無いでしょう」

「まあ、綱手がネジの寝込みを襲ったのは事実だが、夜這いでは無いのォ」

自来也様の言葉を信じるなら、おそらく綱手様は、よほど組み手で歯が立たなかった事に、立腹していたのだろう。……だから夜襲したわけか。

改めて二人を見る、綱手様の動きは、組み手の時より良くなっている。一方、木の葉崩しは……これが話しに聞いていた寝癖。

綱手様が殴りかかり、木の葉崩しが攻撃を避ける。そして木の葉崩しが綱手様の手を取ろうとするが、綱手様は避けて、また殴りかかる。これを繰り返している。

しかし本当に眠りながら戦っているなんて、目の当たりにしても信じられない。……んっ、違和感を感じた。

木の葉崩しの寝癖が異常すぎて、当たり前の事を見落としていた。自来也様なら理由を知っていると思い、話しかけようとしたとき。

「あっ、あんたら、こんな夜中に、なにしてるんだ!!」

宿の主人が、鉈を片手に怒鳴り込んできた。まあ、ここまで騒がしい状況であれば、当然の反応かもしれない。言い訳を考えようとした時、大蛇丸が動いた。

「心配しなくても、もうすぐ静かになるわよ。それに修繕費は、そこの白髪が払うから、おとなしく下がっていなさい。……逆らうようなら、分かるわね」

宿の主人の肩に手をまわしながら、殺気を向け脅していた。自来也様は口を挟もうと考えたようだが、宿の主人が這いながら逃げる様を見て、あきらめたようだ。

「自来也様、木の葉崩しの寝癖は聞いて知っていますが、なぜ、あれだけ動いているのに目を覚まさないのですか」

私は、自来也様が大蛇丸に、文句を言う前に疑問を投げかけた。

「んっ、そういえばそうだのォ。まあ、考えるだけ無駄だろう、なにせネジだから」

「そんな瑣末事を気にする前に、綱手の心配をした方が良いわよ」

大蛇丸の言葉に、慌てて綱手様を見る。先程とは違い、木の葉崩しが掌底で攻め、綱手様が必死にそれを避けている。

慌てて綱手様を助けに行こうとする直前、自来也様の言葉が飛ぶ。

「綱手!! 一旦ネジから距離を取れ!!」

自来也様の言葉で、綱手様は木の葉崩しから距離を取る。木の葉崩しは綱手様を追うことも無く、その場で立ったまま寝ていたが、しばらくすると床に就いた。

「ハァハァ、クソ!! 寝ているガキさえ殴れないほど、鈍っている自分に腹が立つ」

綱手様は肩で息をしながら、木の葉崩しを一瞥した後、部屋に戻って行った。怪我が無くて良かったが、掛ける言葉が見付からなかった。

「綱手が、このまま諦めるとは考えられないわね。ネジ君に一撃を入れるのが先か、木の葉に着くのが先か……楽しみね」

「楽しみにするのはかまわんが、木の葉まで来る気か。いくら先生でも、お前を許すとは思えないがのォ」

「心配しなくても、いつでも歓迎すると言ってくれたわよ、猿飛先生は。……まあ、その時は風影の姿だったけどね」

二人の会話は背に部屋に戻る。……部屋では綱手様が布団の上に座り、考え事をしているようだった。声を掛けようか迷う前に、話しかけられる。

「シズネ。どうしたら、あのガキに一泡吹かせられる」

綱手様が私に相談すること自体まれだが、相談内容が綱手様らしくなかった。少し感じた違和感を、綱手様はすぐに払拭する。

「口惜しいが、今のあたしでは勝てない。まあ、昔の動きを取り戻せば勝てるだろうが、それには最低でも二ヶ月は掛かる」

綱手様は気が短いので、二ヶ月も怒りを抑えられないから、手っ取り早く木の葉崩しを懲らしめる方法を考える訳ですね。

私が妙案を提示すれば、綱手様が木の葉崩しに襲い掛かることも、回避することが出来る。

「……ん~、そうですね。……綱手様が木の葉崩しと一緒に、里に帰るというのは、どうでしょうか」

怪訝な表情を浮かべる綱手様に説明をする。

「つまりですね、木の葉崩しと一緒に里に帰ることで、木の葉崩しは任務に成功したと思う訳です。そして喜び勇んで任務成功したと報告したら、綱手様が自らの意思で帰ってきたと言えば、赤っ恥をかくことになります」

正直、木の葉崩しの性格は把握していないので、言った通りになる可能性は低いが、少なくとも綱手様の身の安全を考えると、妥当な案だと思う。

「……そうだね、とりあえずは、その案で行こう。もし他の案が出来たら、教えてくれ」

綱手様が納得してくれたので、喜んで『はい、分かりました』と答え、眠りに就いた。



次の日、私達は木の葉への道を走っていた、十メートル程先を木の葉崩しが走っているからだ。木の葉崩しと一緒に里に帰らなければ、私の案は意味を成さないからだ。

木の葉崩しの走りの速さ自体、たいした速さではないので苦労はないが、こちらを一瞥すらしない木の葉崩しが、任務を成功したと報告するとは考えにくい。

「この様子だと、シズネの案は成功しそうにないね。……まあ、あたしはあたしで考えた事があるから、それで木の葉崩しを困らせてやる」

安堵と同時に、綱手様の案が気になり聞いてみたが、答えてはくれなかった。

「なに、心配しなくても、日向宗家に命じさせて、木の葉崩しを殺せと言うわけじゃない」

流石の私も、そこまでの事は考えていなかったので、思わず笑みの引きつった私を見て、綱手様は嬉しそうに笑っていた。



日が暮れる前に木の葉に着くことが出来た。里の門の前には自来也様と見慣れぬ男が居た、……おそらく変装した大蛇丸だろう。

「綱手、先生達が執務室で待っている。疲れていると思うが、今すぐ来てくれるかのォ」

「それは別にいいが、……木の葉崩し。お前も一緒に来い、任務の報告があるだろう」

「そうだね、口頭で伝えた方が任務報告は楽だね」

帰って早々、火影様に会う為に五人で執務室へと向かう。……大蛇丸を、このまま火影様の下まで連れて行くことに、不安を感じ自来也様に小声で問いただす。

「心配ないだろう。今のアイツの興味はネジだからのォ。わざわざ他にチョッカイを、出すとは考えにくいのォ」

自来也様も小声で答えた直後、『あいかわらず平和ボケした里ね。フフフ、壊したくなるわね』と、小声で物騒なことを言ったので、慌てて大蛇丸を見る。

大蛇丸は意地悪い顔で笑みを浮かべていた。おそらく自来也様の言葉を聞いた上で、私達に聞こえる声で喋ったのだ。……冗談のつもりらしい。……笑えないが。



執務室には、三代目とご意見番の二人が居た。三代目は、綱手様の姿を確認すると破顔して、『よく帰って来てくれた』と喜んだが、綱手様は一言も発しなかった。

次に、変装した大蛇丸が三人に本来の姿を見せたが、自来也様から事前に報告を受けていたと思われ、多少、色めき立った三人だが、すぐに落ち着き。

「自来也から報告は受けておる。……今ここで、お前を捕らえようとは思わん。……今はな」

「そうね、そうしてくれると助かるわ。……どうせやりあうなら、里全体を使った方が楽しいでしょうしね」

執務室の空気が張り詰める。そんな中、緊迫感の増した空気を意に介さず、木の葉崩しが三代目に話し掛ける。

「火影様、ツナデ捜索任務は失敗に終りました。……それと、一旦家に帰らせて下さいね。久しぶりに水面睡眠もやりたいですから、牢に戻るのはその後にさせて下さい」

「何を言っておるネジ。お前が綱手を連れてきたのであろう」

三代目が綱手様を見ながら、木の葉崩しに問いただすが、返答は素っ気のないものだった。

「俺が木の葉に帰るよう言った時は断られたので、今ここに金髪が居るのは金髪の意思でしょうから、俺の関与することではありません」

「……それでは、お前と大蛇丸の関与を疑う者への、疑いを晴らす事は出来んぞ」

「別にネジ君は、私の部下でも仲間でも無いわね」

コハル様の言葉に、また変装した大蛇丸が答える。

「お前の言葉を信じろと言うのか」

「ネジは大蛇丸に仕えていない、それはわしが保障する」

ホムラ様の言葉には、自来也様が答えた。

「……とりあえず今は、火の国の大名に綱手を会わせることを優先すべきだ。ネジの処遇に関しては、今は後回しじゃ」

三代目は、ホムラ様とコハル様に言い聞かせる様に言い、綱手様に話し掛ける。

「お主も里の現状くらい知っておるだろう。……大名に会いに行ってくれるか」

三代目の言葉を聞いた綱手様は、気にする素振りも無く紙の束で顔を扇いでいた。……ちなみに紙の束には、借用証書と書かれていたりする。三代目は頭を抱え。

「はぁ。大名に会いに行く条件は、それの肩代わりか。……それとも、別の条件でもあるのか」

綱手様は三代目の言葉を聞くと、我が意を得たとばかりに笑い、三代目に条件を提示する。

「日向ネジと結婚させろ。それが火の国に行く条件だ」

「え~~~~~~~!! ほっ、本気なんですか綱手様!!」

とりあえず叫んだが、混乱して、その後の記憶が少し無い。







「ったく、いつまでも惚けてないで、あたしの話を聞けよ」

綱手様の声で意識が戻った。……なにかとんでもない事を聞いた気がするが、気のせいだと思いたい。執務室に居る五人の視線が、綱手様に集まる。

「……冗談を真に受けられたら、こっちが恥ずかしいだろう」

「……どういうことじゃ、綱手」

「日向ネジを困らせてやろうと思ってね。あたしと結婚させられると聞けば、慌てふためくかと思ったが。……まさか受け入れるとはね」

「話が見えん。……なぜ、お主がネジを困らせる必要がある」

コハル様とホムラ様は知らされていない様だ、綱手様が木の葉崩しに殺されかけたことを。……三代目も困惑の表情を浮かべている、自来也様から報告されていないらしい。

「あのガキが気に入らない、それだけさ」

「……詳しい理由は聞かん方が、よさそうじゃな。……それと、冗談だと言うなら、この話を進めなくても、いいのだな」

三代目は察したのか、木の葉崩しの行動への追求は避けたようだ。

「ああ、構わないよ。なにか別の方法を、考えることにするよ」

「残念ね、せっかく日向と千手の混血の子が見られるかと思ったのに」

「正気か、大蛇丸。本当にネジと綱手を結婚させる気か」

綱手様の発言に、大蛇丸が木の葉崩しとの婚姻を促し、自来也様が大蛇丸の言葉に食いついた。

「考えるだけでも面白いじゃない、ネジ君と綱手の子供。……まあもっとも、結婚したとしても、干上がっている綱手が、ネジ君の子供を産める訳が無いわね」

「……なにか言ったか、大蛇丸!!」

「耳まで遠くなったのかしら。怖いわね、老いは」

なぜか大蛇丸は、綱手様と木の葉崩しを結婚させたがっているようだ。あからさまな挑発だが、綱手様は怒りを抑えようとはしなかった。……そして。

「猿飛先生。あたしが火の国に行っている間に、日向宗家に話を付けておいてくれ。帰ってきた、その日に祝言を挙げられるようにな」

「待て綱手、落ち着け、深呼吸しろ深呼吸。大蛇丸、どういうつもりじゃ!! いったい、なにを目論んでおる」

「先生こそ落ち着いたほうが良いわよ。それにこの婚姻は、木の葉にとっては、悪い話しではないわよ」

慌てふためいた三代目が、大蛇丸に詰め寄ったが、大蛇丸の『木の葉にとっては、悪い話しではない』に反応し、その言葉の意味を大蛇丸に問う。

「簡単な話よ、ネジ君はとても興味深い存在。そして、そのネジ君と綱手の子供が、もし生まれたら、その子供の成長を見守る為に、木の葉を襲う事はなくなるわね」

大蛇丸の言葉に、三代目、ホムラ様、コハル様が反応するが、自来也様の反応は少し違った。

「……ネジの子供が見たいなら、もっと若い女子の方が良いと思うがのォ」

自来也様は、綱手様と木の葉崩しの婚姻に反対の様で、大蛇丸に代案を出したが、それは綱手様に決意を促すだけであった。

「……お前も、あたしが子供を産めないと思っているのか、自来也。……フンッ、こうなりゃ意地でも、木の葉崩しの子供を産んでやる!!」

かくして、綱手様は木の葉崩しと結婚する事になった。

日向宗家に伺いを立てる必要があるが、今の木の葉の現状を招いたのが、木の葉崩し自身なので反対できないだろう。



なお余談ではあるが、綱手様と木の葉崩しの婚姻の話を聞いた一部の里の人間が、木の葉崩しに新たな通り名を付けた。

その通り名は『熟女キラーの日向ネジ』。

……もっとも、この通り名が広まったのは、綱手様が火の国に行っていた一月程度のことで。

木の葉に帰ってきた綱手様が、発言者を半殺しにした結果、二度とこの通り名が木の葉で囁かれる事は無かった。



[9289] ○ネジってみた○とりあえず終らせてみた ※前書きあります
Name: 鈴科◆785aa133 ID:59769312
Date: 2010/05/31 23:13
※前書き※

最初に『○ネジってみた○とりあえず終らせてみた』を、書いた一番の理由は作者が遅筆だからです。
14以降の話も書く気はありますが、いかんせん書くのが遅いので、待っていてくれる方に申し訳ないのと、他の作品も書いてみたい。
そんな理由で今回の『○ネジってみた○とりあえず終らせてみた』を、掲載する事にしました。

それと今回の最終話は、ネジと綱手を結婚させるネタを考えた時から、考えていた最終話です。ですが、途中を素っ飛ばして掲載するため、かなり内容をぼかしています。
なので、この先何年でも待つと言う方にでも、御覧いただけるものだと思います。ちなみに○○と○○以外のキャラは出ません。

以上で前書きを終ります。内容はかなり短いですが、20行ほどの空白後、とりあえず最終話です。



















        ○ネジってみた○とりあえず終らせてみた




木の葉には、歴代火影の顔が刻まれている火影岩がある。

そして火影岩の前には、今日の為に特別に設置された高台があり、その壇上には一人の少年が立っていた。

少年は火影岩を背に、様々な人達の視線を受けている、知っている顔もあれば、知らない顔もあった。

広場に集まった人の数は分からないが、この数多の人が少年の言葉を待っているのは理解していた。少年は広場を見渡し、一呼吸置いて宣言する。

「この度、木の葉隠れの影、火影に就任しました日向ヒザシです。若輩ではありますが、火影の名に恥じぬよう尽力します」

そう言って少年、日向ヒザシは頭を下げた。次の瞬間、新しい火影の誕生を祝福する歓声が広場に響き渡った。

ヒザシは歓声を受けながら、誰にも聞こえない声で『父上にも見てもらいたかったな』と呟いた。





「立派だったぞ、ヒザシ」

就任宣言を終えて、執務室に戻ってきたヒザシを母である綱手が出迎え抱きしめた。

「はっ、母上、止めてください、いい歳なんですから」

照れたヒザシは、そう言い綱手から離れようとしたが、離れられなかった。むしろ抱きしめる力が徐々に強まっている。

「おいガキ!! 今、あたしを年寄り扱いしたのか!! 相応の覚悟はあるんだろうな!!」

自らの骨が軋む音が聞こえそうな程の力で抱きしめられたヒザシは、自分の失言を理解した。

「ちっ、違います!! 十五歳になる男が母親に抱きしめられたら、恥ずかしいって意味での、いい歳です!! 決して母上のことでは、ありません!!」

綱手は見た目こそ若いが、実年齢はかなりのものであった。それ故、綱手の年齢を聞いたり揶揄すると、息子であっても命が危ない。

「そうか、それなら良いんだ。それに母親が、子供を抱きしめるのに、子供の年齢なんて関係ないだろ、照れるな」

「ハハハ、それもそうですね」

綱手から解放された、ヒザシは引きつった笑みを浮かべながら同意した。火影就任当日に無駄死にしない為にヒザシは、話題を変えることにする。

「無駄だと分かっていますが、今日の俺の晴れ姿を、父上にも見てもらいたかったですね」

どこか寂しげな表情を浮かべたヒザシに、綱手は笑うのを我慢しながら。

「仕方ないだろう、お前の父は日向ネジなんだから」

「それは分かっていますが。息子の晴れ舞台である、火影就任式に参加しない理由が、『昼寝の時間だから』ですよ」

とうとう我慢しきれず綱手は笑ったが、ヒザシは笑う綱手を見て、ふくれっ面になる。

さすがに悪いと思ったのか、綱手はヒザシの肩を押してやることにした。

「なら見せに行けばいいだろう」

「えっ。……でっ、でも父上は、まだ寝ていると思いますし。それに仕事もあるので……」

ヒザシはネジを尊敬している、だからこそ火影になった自分を見てほしかったのだ。

だが、改めて自分から火影の装束を身に纏った姿を見せに行くのは、気恥ずかしさがある。

綱手は、そんな事情は承知していたので、ほんの少しの勇気が出るように、愛しい息子を送り出すために告げる。

「火影の仕事は大変だが、今日くらいなら、あたしが変わってやる。……だから、報告してこい、ネジに。お前の父に」

「……はい!! ありがとうございます母上」

ヒザシは綱手に礼を言うと同時に姿を消した。その様子を見て、綱手は嬉しそうに呟いた。

「まだまだ子供だな」











その後の、ネジとヒザシのやり取りは想像にお任せするとして、『○ネジってみた○とりあえず終らせてみた』終了です。


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