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[9377] 自宅が…だった!【ネタ・習作・リリカル成分高】
Name: aaaa◆5cd5d53b ID:b712c8c1
Date: 2009/06/06 22:06
────────────────Warning!────────────────

ここは俺の核実験場。
一目見て「あっ ダメだこれ」と思ったらブラウザの戻るでも押してちょうだい!
俺射能に汚染されても知りませんぜ。
それでもOKという奇特な方は、以下の注意点を読んだ上でブラウザの戻るを押してね!

1.主人公は最強
2.なんでもあり
3.リンディさんよりもプレシアさん派


────────────────Warning!────────────────







初めての方は初めまして。
そうじゃない方はおっす!ひっさしぶり!!
馴れ馴れしいなと思った方はすみません。

悲しい事故で消してしまった分を小加筆小修正を加えて再投稿です。
カタツムリよりもなお遅いスピードで更新するのでよろしくおねがしま



[9377] 第1話 自宅が…だった!(前編)
Name: aaaa◆5cd5d53b ID:b712c8c1
Date: 2009/06/06 22:09
「世界はそんな筈じゃなかった事ばっかりだよ…!!」

唇をかみ締めてハラオウン君がそう呟いた。

テスタロッサさんは、実はテスタロッサさんのお子さんではなくて、
昔死んでしまったテスタロッサさんのお子さん(アリシアちゃんというらしい)の
身体から作った人造魔導師だったらしい。
でもやっぱりテスタロッサさんはアリシアちゃんでは無くて、
テスタロッサさんだったので、テスタロッサさんのお母さんは耐え切れなかった。
そこで、何だか知らないけれどなんちゃらとか言う大昔にあった遺跡的なところの技術を使って、
物理的にアリシアちゃんを生き返らそうとしていたのだ。

そのなんちゃらは、気持ちの悪い景色の空間(虚数空間?とかハラオウンくんのお母さんは言ってた。)
の狭間に漂ってるらしく、そこに行くにはすごくエネルギーが必要だと。
そこでテスタロッサさんのお母さん…長いからお母さんでいいな。
お母さんはテスタロッサさんをあの手この手でだまくらかして、
燃料のジュエルシードっていうのを運んでいる輸送船を襲うように仕向けた。
でも輸送船ごとフッ飛ばしちゃうドジっ子だったので、僕たちのすむ海鳴市に降ってきた、
というのが今までの大まかなあらすじである!

それで、燃料のジュエルシード…燃料石でいいか。
燃料石は、エネルギーがすごいから持った人の願いを叶えちゃうんだって。
(どんなエネルギーなんだろか?)
すわ一大事!ってことで、発掘者のスクライアくんが回収しようと思ったけど、
エネルギーがすごかったんで逆に負けちゃって、
人型を維持できないほどボコボコにされちゃったスクライアくんは、
本体であるフェレット形態「ちがう!逆だ!僕は人間が通常モードだ!!」で死んだふりをしてたところを、
高町さんに捕食「ちっ!ちがうよ!!」保護される。

それで、スクライアくんの持っていたデバイスのR・H
『Stand bye,Ready.(訳:ふざけるな!声が小さい!タマを落としたのですか?!!)』
ヒィッ!
れ、レイジングハートマン先任軍曹と共に、
燃料石集めを開始されたのであります!!
そして僕は、なんだかよくわからないけど綺麗な石…    


これを拾ったのが…運の尽きだったわけだけども…




燃料石『ジュエルシード』を拾った夜、満月をバックに空から降りてきた、
ピンクの羽を足につけた高町さん
(たぶん形から言ってあれは悪魔の羽根に違いな… !
目、怖ッ!な、なんで睨むんだ高町さん……)
………高町さんとそのペットのスクライアくん「ち、違うよ!クロノもなんで頷くんだ!!」と出会ったんだ…。

なんだかんだで高町さんはテスタロッサさんと燃料石争奪戦を繰り広げてたんだけど、
あんまり時間が遅くてイライラしてたお母さんにテスタロッサさんはお仕置きを受けて、見放されてしまった。

目のハイライトが消え失せて、どうみても夜道で大きなお友達にいたづ
「それ以上いったら噛み千切るよ!!」
す、すみませんアルフさん調子に乗ってました。

…意気消沈しちゃったテスタロッサさんに、高町様はこう仰られたんだ…。

「本日をもって貴様ら(フェイトちゃんとバルディッシュ)は”ウジ虫(お人形)”を卒業する。

本日から貴様ら(フェイトちゃんとバルディッシュ)は海兵隊(私の友達)である。

兄弟(親友)のきずなに結ばれる。

貴様ら(フェイトちゃんとバルディッシュ)のくたばるその日まで。

どこにいようと海兵隊員(私とレイジングハート)は貴様ら(フェイトちゃんとバルディッシュ)の兄弟(親友)だ。

多くはベトナム(ミッドチルダ)へ向かう。

ある者は二度と戻らない。

だが肝に銘じておけ。

海兵(友達)は死ぬ(別れる)、死ぬ(別れる)為に我々は存在する。

だが海兵隊(友情)は永遠である。

つまり------貴様ら(フェイトちゃんとバルディッシュ)も永遠である!」

…と。

この応援「そんな事言ってないの!脚色しすぎなの!!」により、目覚めたテスタロッサさんは、
目にハイライトを灯し、高町さんと一緒にお母さんの待つ時の庭園へと転移していったんだ。


僕?

僕は最終決戦の場面を、画面越しにみていた。
僕は魔力を持つカタマリ…リンカーコア?というらしい、
それを全く持ってないため、後方にて待機を命じられた。

当然だ。画面を見る限り当たったら明らかに死ぬだろうって感じの
ビーム的なものが飛び交っていた。
ビーム…いや、あれはビームバズーカだ。
あんなもの当たったらきっと僕は欠片も残らないで消滅するだろう。
僕は巻き込まれた一般人なんだ。

それよりも、この戦場を写している大きな薄型のTVが欲しい。
これでゲームをやったら、さぞかし素晴らしかろう…。

テスタロッサさんがお母さんと対峙して何かを言っていた。
正直ここら辺の会話は僕は薄型TVのことを考えていたから聞いていなかった。

そんなこんなでお母さんはアリシアちゃんと共に気持ち悪い空間に落ちていく。
崩壊する庭園を、画面から流れている光景を、僕はお茶を飲みながらながめていた。(リミエッタさんが出してくれた。)






唯一気になるのが、テスタロッサさんのお母さんとその子供…アリシアちゃんが落ちていった、
なんだか直視すると気持ち悪くなるような空間…  その奥に、一瞬だけ映った何か…    










……まさかね。













第一話「遥かなる旅路 さらば友(先任軍曹殿)よ!











と、言うわけで僕は無事に家に帰ることができるようになったのだ。
何故か僕まで協力者として巻き込まれたのは納得いかないが、
高町さんに納得いくまでお話されるのは真っ平だった。

さあ、これで明日から平穏な毎日を過ごせる。
植物のように平穏な日々を送るのだ。
しゃべるフェレットも犬もおなかいっぱいだ!

「どこに向けてしゃべっているのかはわからないけど、お疲れ様ルカ君。」

あ、ありがとうございますハラオウンくんのお母さん、お砂糖もミルクも結構ですのでお構いなく!
い、いえ。大丈夫です。僕はこのままで結構です…いえ、背伸びとかではなくて…
僕はストレートで飲むのが好きなんです、いえ、何杯?とかの配慮はありがたいのですが、大丈夫です。
はい、わかります。子供は確かに甘いものは好きですし、僕もピーマンとか苦いのはダメですが…。
こ、これはそれとは話がちがいますので!
いえ、何で一杯?二杯?では無くて10杯単位で量を聞くのですか?
い、いえ、これはタダの興味本位で、僕は入れたいとは思っておりません!はい。お構いなく!!
い、いや、で、ですから、ちょ、や、やめ、ア────────ッ!





……………………………………………………………………………………………………………………





どんな時でも別れが来る。


テスタロッサさんと高町さんが抱き合って泣いている。
飼い犬のアルフさんもおいおいと涙を流していた。
リアルでおいおい声を上げてないている人(犬?)を見たのは初めてだったので、
なんだかちょっぴり得した気分。

しっかし、人間型で犬の耳を生やしていると、なんだか妙な気分になってくる。

いつだったか、平賀の兄ちゃんに連れて行ってもらった街でこういう人達と、
それに群がる人達をたくさん見た。
平賀の兄ちゃんも、「モエーモエー」言いながら走り寄って行くので、
僕はそれを放っぽって、なるべく他人に見えるように遠くで缶入りのおでんを食べていたら、
兄ちゃんは突然出現した鏡にぶつかった後、行方不明になってしまったのだった。
ファンタジーやメルヘンじゃあるまいし、鏡の中に世界なんて無いのに。と考えていたら、
数ヶ月帰ってこなかったことを思い出した。

まぁ、しばらくしたら迎えにいったけどね。



─と、高町さんたちに呼ばれているみたいだ。

「よっこいしょういち」と掛け声と共にたちあがる。
「ジジくさい奴だねアンタは」とアルフさんに笑われた。
ダジャレには全く触れられなかったのは、知らないのか、ただ無視してるだけなのか…
おそらく前者なので、苦笑いをしながら二人のもとへ歩いていく。

目を赤く腫らした二人を見ると、頭のリボンがお互いのモノに変わってた。
交換したのか、と思ってると頭の中で高町さんの声がする。
『ルカくんも、なにかあげないとピンクの光でぶっとばすの。』
要約するとこんな事を言われた。怖い。


あ、紹介が遅れたけれども『ルカ』というのは僕の名前だ。
名前を聞いての通りガイジンさんです。
でも日本語はしゃべれるよ!
勿論父さんと母さんも外国人です。
仕事の都合でしょっちゅう家にいないけどね。
でも日本語はしゃべれるよ!


しかしどうしようか… こんな展開は予想していたけど、僕なにも持ってきてないぞ…。
焦りながらポケットに手をいれてまさぐる。
高町さんが僕が何を渡すのか妙に期待を込めた目で見つめてくる。
やめてくれよ、照れるじゃないか。そしてそんなに見つめていても
僕は何も持ってきていないんだけど… 


お!




……むぅ…渡せるような物はあったんだけど… 
これは渡して良いのだろうか…。
躊躇しながら高町さんに苦笑い。
それを見た高町さんもニコッと笑いながら

「ルカくんも、フェイトちゃんにあげたいものがあるんだって!」

って!何!なんて強引なんだ。無理やりポケットから手を引き抜かれた。

「……これは……?」

…そのご質問はもっともですテスタロッサさん。
僕のてのひらに乗っかっていたのは、ビー玉とメンコだ。

高町さんの目が濁ってきた…
クリスマスの日に靴下の中に新品の靴下が入ってるのを見た子供みたいな
目をしている……






そ、そうだ!思いついた!!


「こ、これ… 高町さんのレイジングハートと、テスタロッサさんのバルディッシュを模したおもちゃなんだ…



あげるよ。僕の宝物。」


嘘です。ただの三角形の黄色いメンコと赤いビー玉です。
あっ 泣き出しちゃった… やばいやばいやばい… 横目でちらちらと高町さんをうかがう。

「よかったね、フェイトちゃん!」

高町さんの目の濁りは、油ヨゴレにジョイをつけたぐらいの勢いで澄み渡っていった。
おお、どうやら期待に沿えたようだ。

よかった、口先の魔術師の異名をとる圭一兄ちゃんに感謝する。
僕は貴方のお陰で、一人の女の子の期待を裏切らずにすみました。
今度、お土産に翠屋のシュークリームを持っていきます。皆で食べてください。
羽生さんにもよろしくお伝え下さい…。

僕に出来る精一杯の感謝をささげていると、いつの間にかお別れの時が来たみたいだ。

「…ありがとう… ルカ…くん」

去り際に僕にお礼を言ってくれたテスタロッサさん。
良し、どうやらこれがゴミだったことはばれなかったみたいだ。
テスタロッサさんの目尻にまた涙がたまっている。
これはきっと嬉し涙だ。断じてゴミをもらって哀しい涙ではない筈。
後者ならば、高町さんにばれないうちに早く転送してくれ!!




魔法陣の上にのるテスタロッサさんにアルフさん、ハラオウンくんの三人。お疲れ様でした。

最後の最後まで僕は気が休まらなかった。
でもこれで全部解決…かな。
さあて、僕も家に帰ろうかな。





─────────────────────────────────────────






なんだか、自宅に帰るのも久しぶりだ。
玄関の鍵が掛かってるということは、きっと父さんも母さんもまだ帰ってきてないんだろうな。
鍵を開けて玄関にはいる。
家の中はしぃんとした空気が流れていた。
…静かだ…、まぁこの雰囲気はもう慣れっこだけどね。でもやっぱりちょっと淋しい時もある。

そういえばスクライアくんはしばらく高町さんちで飼われる事にしたみたいだ。
うーむ、あそこの家は賑やかだし、スクライアくんもきっと可愛がってもらえるだろうな。
ペット的な意味で。

ドーでもいい事を考えていたらお腹が空いたので、
冷蔵庫から卵を、米びつからお米をとりだし、器に入れてから電子レンジに入れた。

調理が終わるまでの間に、僕はたまっていた新聞のTV欄を見る。

─『18:54 特集!集中勃発する謎の地震、ジュセリーノが予言する驚愕の真実とは!!?』─

嘘くせー なーんか 嘘くせー。
ジュエルシードの被害を何のせいにして予言するのかは興味をそそられるが、
地震の関係者だった僕としてはにんともかんとも。

電子レンジがチーンと音を立てて、調理終了をお知らせしてくれた。
蓋を開けて、半熟とろとろのオムライスを取り出す。
上にかかったケチャップで、ハートが描かれていた。

あら、母さん一度戻ってきてたのか。

………うん、今日も美味しいな。









─どおおおおおおおおおおおおおおおおん─












と、オムライスを味わう暇も無く、突然裏庭の方から轟音と共に大きな揺れが襲ってきた。
おかしいな… 地震の原因は高町さんたちが頑張って取り払ったと思ったんだけど…。

何だ何だと、厚い遮光カーテンに閉ざされたベランダの横、勝手口の扉に向かい、
ドアノブに手をかざし覗き窓に目を当てる。

『指紋認証クリア 掌形認証クリア 網膜認証クリア 虹彩認証クリア 血管認証クリア
 DNA認証100%一致。音声をどうぞ』
「開けゴマ」
『声紋認証クリア。オールクリア。ごきげんようルカ様』

「なあ、このヤリトリいちいちやる必要あるの?」
『まぁ、お父上とお母上のお言いつけでもありますし、何より丁度いい目覚ましですし。私の。』

過保護な両親だなもう。それとAIが眠るんじゃない。


鍵の開いた勝手口からサンダルを履いて裏庭にでる。

目に優しくない色の空間と、ところどころにある、大きな庭石。
庭石の一部からは、なんだかよくわからないけどちぎれたケーブルがたくさん出ている。
きっと庭用散水機の一部なんだろう。

他にも、すごく大きな銃のように見えないことも無いものを持った、
ボディーの赤、青、黄色のコントラストの眩しい、左手の部分と頭部の無い白い石像。
髭の生えた石像や、デカイ肩パッドと足と盾を持ったゴツい顔した石像、
その他たくさんの石像が埋まっている。

こんなちょっとした遺跡みたいな庭をどうにかしようとしたのか、
母さんがガーデニングに凝っていた時があった。

しかし、途中でめんどくさくなったのかそこいらにじょうろとスコップがほっぽりっぱなしであり、
なんだかガーデニングを始める前よりもごちゃごちゃとしてしまったのだ。


でも、庭弄りよりも何よりも、
空の色をどうにかしないと育つものも育たないとおもうんだけどなぁ………



と、空を見上げると遠くで土煙があがっている。

ああ、また何か落ちてきたのかな?
さっきの地震の原因か。
対空設備をすり抜けるっていうことはきっと何かの生き物かもしれないな。

土煙の元へ、のんびり歩き出す。

ぬらぬらと歩いていくと、徐々に土煙が晴れてきた。
そこにはとても大きなクレーターが!

もうちょっとずれていたら、地面を削って落下物は下の空間におっこちていただろう。
こりゃ父さん怒るぞきっと。
ただでさえ庭の土地がちょっとずつ削れてるのに、こんなに減らしちゃって。
「土代もバカにならない」ってこの間ぼやいていたな。
工事現場からちょっぱってくればいいのに。といったら、大人の事情があるんだと。

そんなことはさておいて、そーっとクレーターの中を覗き込み、闖入者を確認する。
そしてそこには、
















テスタロッサさんのお母さんと、その子供アリシアちゃんが居た。


















「…ここが…  アル…ザー…のね…」




そして何事かを呟いて倒れてしまった。気を失ったのかもしれない。









…どうしよう…















最終話 「自宅がアルハザードだった。」









END













あとがき

小修正を加えて再投稿。
修整1:誤字の類。(むしろ増えてたりしたら勘弁な!)
修整2:なのはさんの性格。(魔王自重モード)
修整3:主に俺の脳内



[9377] 第2話 自宅が…だった!(後編)
Name: aaaa◆5cd5d53b ID:b712c8c1
Date: 2009/06/06 22:10
最愛の娘を失ったときから、彼女は狂気に囚われていた。
科学という名の悪魔に魂を売り払い得た代償は、娘の姿をした別物。

娘は魔法が使えない。娘は左利き。娘は快活な性格。

列挙すれば限の無い、些細な違いが彼女は認められなかった。
故に娘の形をした物に対して、苛烈に当たる。
最愛の娘を真似た物に対して、苛立ちを覚えながら。

結局、娘の形をした物は娘ではない。



硝子の檻越しに眠る娘は、その母を見てどう思うか。

最早知る由も無く。




結局、彼女は娘と共に闇の底へ堕ちていった。

そこに希望があると信じて。















報告書No.SSC866E8795:通称P.T事件についての回顧録。


















「んっ お前何書いてんだ?」
「ああ… 俺が近い将来提督になった時に出版する回顧録用の原稿。」
「寝言は寝てから言ってね!」
「俺が提督になったらお前真っ先に前線に送るわ。」














在アースラ武装局員。
夢を見るだけならタダだ。











第二話 無題












裏庭に出来たクレーターから、テスタロッサさん一家(覗くテスタロッサさん)を
見つけた僕は、途方に暮れていた。
どうしよう、彼女達とこのクレーター………

そうだ、こんなときにアルが居るんじゃないか!

おーい!ア『ここに。』ぎゃあああ!突然出てくるんじゃない!!
真横に登場するのならばまだ良いが、
まさか僕の腹からにょきりと生えるように出現するとは思わなかった。

『ちょいとしたサプライズですよサプライズ。』

なんて心臓に悪い登場の仕方をしやがるんだこいつ。

『でも楽しかったでしょ?』

全然楽しくねえよ!!
SAN値が下がった気がするぞっ…

『それよりも、この御二方をどうにかするのでは?』


む、そうだった。
アル、この二人とりあえず父さんと母さんの布団に寝かせてあげて。

『どちらをお父上の方に寝かせますか?』

ん… アリシアちゃんに加齢臭は辛かろう。
ここは年長さんに耐えていただこう。

「テスタロッサさんのお母さんの方で。」
『御意。』

ふよふよと浮かびながらテスタロッサさんのお母さんたちに近づくアル。
半透明だからやっぱり幽霊みたいに見えるな。
もっと昔夜中に寝ぼけて徘徊してるアルをみてちびったのを思い出した。
…いまいましいヤツめッ!
アルはそのまま俵みたいに二人を担いで一緒に消えた。

とりあえず、アースラの画面越しに見たテスタロッサさんのお母さんは血を吐いてたので、
きっと身体の具合が悪いんだろうとあたりをつけたため、布団へと寝かせる事にした。
なんか筒にぷかぷか浮いてたアリシアちゃんも同様と思ったので、同じく布団へ。

アースラでハラオウンくんのお母さんとかが何か説明してたみたいだが、
左から右へ聞き流していたので多分そうに違いない。
要は、体の調子が悪い。そういうことだ!

僕はそう解釈したので、布団に寝かせたのだ。
おっと、人間の回復力を侮ってはいけないぜ。
昔父さんが大怪我をして帰ってきたときも、一晩寝てたらピンピンしてたからね。
その時の父さんは、右手が炭に、左手が氷付けに、首が皮一枚で繋がっているような状況だった。
そういえばお腹に大きな穴が開いていた。足も片方千切れてたし。

もう一度言うけれど、人間の回復力ってのはすごいんだ。
医学用語で言うところの「超回復」ってやつだね!




それよりも問題なのは、僕の眼前に広がる大きなクレーターだ、どうしようか。
…父さんに怒られるのは僕じゃないけど、とりあえず見た目だけ整えておこう。
恐らく母さんが乗り捨てたであろう、コックピットの入り口があきっぱの庭園整備機械に乗り込む。
あ、コックピットから母さんの匂いがする。

『実母に欲情ですか。変態ですね。』

こんどはモニターの前で逆さまにでてきやがったか!
ええい思考を読み取るんじゃない。
そもそもそんな感情もってなかっただろう!!

『ジョークですよジョーク。
御二方は御言いつけ通りお布団に寝かせておきました。
ババアの方はお父上の臭いで多少うなされていますが、なんら問題有りません。』

そ、そうか、ありがとう。

『すべてはルカ様の為に。』
  
うそつけ。

『てへり☆』

そういい残して再びアルは消えた。
……たまにこのAIがウザい。

んなことよりも、作業作業っと。
母さんトンボはドコにしまってたっけな。
    :
    :
    :
    :
    :
    :
    :
結局その日は、クレーターを元に戻す作業で一日がつぶれてしまった。
穴の周りに飛び散った土砂を持ってきて均したのだけれど、
やっぱりというか、結構な量の土砂も庭の外に落っこちていったらしく、
そこの部分だけ円形に低くなってしまった。

…バレないかな?バレないよね?

ここまでできた自分をほめてあげたい、と思いながらその日の僕は床に付いた。
















~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~











窓の外から聴こえるスズメの囀りで目を覚ました。
カーテンを開ければ、清々しい程の青空が広がっている。
昨日の庭弄りの疲労も、ぐっすり眠ったお陰で元気そのものだ!

とことこと軽快な音を立てて階段を下り、
リビングのTVの電源を入れて、チャンネルをザップ!

「所さんの目がt………ヤッターマン……だ…と……?」

いつも見ていた番組が変わっていた。
あまりのショックに思わず放心してしまい、ついつい遠くへ行きたいまで見てしまった。
旅に出たくなった。

憮然としているとお腹の減る音が聞こえ、その時に初めて我を取り戻した僕は、
とりあえず朝ご飯の準備に取り掛かる。
といっても、冷蔵庫から卵と紅ジャケを取り出し、米と味噌、ワカメと豆腐を
電子レンジに入れるだけなんだけどね。

チーン!

あっというまに目玉焼きに焼きジャケ、お味噌汁の典型的な日本食の完成だ。
うん、文明の利器というやつは便利だなあ。
この鼻をくすぐる味噌の香り…日本に生まれてよかった!!!

『ルカ様別に日本人じゃないですよ。』

我ながら会心の出来の食事に満足していると、どこからともなくアルがふわっと現れた。
おはようアル。

『おはようございますルカ様。』

それと食に国境は関係ないからね。

『さいで。』

うむ。
さあごっはんごっはん♪
ハムッ ハフハフ、ハフッ!!

『きめえワラタ』

アルがチャチャを入れてくる。うるせえ!
モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず自由で、
なんというか救われてなきゃあダメなんだ、
独り静かで豊かで…

『い い か ら』

すみませんでした。
何か知らないが怒られたので、謝罪をしつつそのままの勢いでご飯を掻き込んだ。
アルはご飯を食べない。




こいつはトースト派なので、パンに目玉焼きを乗っけて、コーヒーの香りを楽しんでいた。
ん?
こいつAI…だよ…な…?

『こまけぇこたァいいんですよ』

さいで。

朝ご飯を食べ終わったら、庭…裏庭じゃなくて、玄関にある方ね。
庭に出て、新聞を取ってくる。ついでに牛乳も回収っと。

あれ?
いつもとっている新聞の他に、見たことの無い新聞が刺さっている。
…恐怖新聞かッ!?あそこ野球のチケットも洗剤もつけないからイメージ悪いぞっ!
恐る恐る開いてみると… なんだ文々。新聞じゃないか。
心配して損した。
それにしても珍しいな、幻想郷の新聞がこっちに来るなんて…
逆幻想入り…現代入り?
よく見ると、メモ書きが挟まっているのに気付く。

「ルカへ。なかなか顔を合わせられないでゴメンナサイね。
ご飯はちゃんと食べてますか?学校はちゃんと行ってますか?
それはそうと、この間新聞に掲載されたので、その時の記事を送ります。
寂しいときはこの新聞の私でもみて心を癒してね♥ 愛する母より」

へぇ~ 母さん載ってるんだどれどれ……
メモ書にはあまり突っ込まない事にして、新聞を手にとって見てみる。

………紙面を見て僕は直に新聞を折り畳んだ。
たしかに、一面トップ記事で、大きな顔写真いりで載ってるけど……

『明けない夜に終止符!!迷いの竹林で起きた謎の爆発と関係が!?』

…何やってるんだよ母さん……。
『容疑者A氏』って……目線……ずれてるし…。
なんだか妙な気持ちにさせられながら、リビングに戻っていった。

『おふぁ?ふぉーふぁふぁれふぁふぃたふふぁふぁま(おや、どうかされましたルカ様?』

ん、ああちょっと新聞が、ね…。
それよりも口にものを入れながらしゃべるんじゃあないよ。
それと一応僕お前の主だぞ。
だが、なんだかそこまで怒る気にはならなかった。
さっきの新聞のせいで朝からドッと疲れちゃったなァ… 
折角だし、もう一眠りしちゃおうかな…

とか考えている時、客間の方から耳慣れない声が聞こえてくる。

「…ここが… アルハザード…?」

後ろで衾が開く音が聞こえた。
どうやら先に起きたのはテスタロッサさんのお母さんのようだ。

「あ、おはようございます。」
『夕べはおたのしみでしたね。砲撃的な意味で。』

うるさいぞアル。

「…あなたたちは… その子、管理局の艦に乗ってたわね…。」 
「巻き込まれただけの一般人です。」
「嘘おっしゃい!!!」

途端になにやら杖っぽいのをどっからか取り出し、僕に向けて──雷を飛ばしてきたッ!!!
ぎゃあああ!か、雷じゃ!雷様じゃ!!
たたたたすけてアルえもーん!!!!

『だが断る!
気持ちいいですねこれ。岸辺先生もいい言葉を知っていらっしゃる。』

いいいからはははは早く!!
縄だ縄!!
テスタロッサさんのお母さんを縛につけてはやくーーーーッ!!!!!

バチバチと僕に電撃を浴びせるテスタロッサさんのお母さんだったが、
僕の頭がアフロになる前に、部屋中のありとあらゆるところから鎖が飛び出し、
テスタロッサさんのお母さんをぐるぐる巻きにして拘束した!

「ばっ バインドッ?!」

GJだアル!そのまま椅子に縛り付けてしまえッ!!

「ま、魔力が… 押さえつけられるッ…!!」

そしてそのまま、力なく手から杖を離すテスタロッサさんのお母さん。
電撃も収まったか。
      :
      :
      :
      :
      :
      :
      :
      :
      :
      :
      :
      :
そのまま椅子に鎖でがんじがらめにしたまま、アルに説明を促す。


「とりあえず、ココがどこか説明してあげてよアル。」
『それでは、僭越ながら~  

ゴホン。

ようこそ「~快適な休暇と娯楽を貴方に~」全次元型総合娯楽施設ALHAZARDへ。
私、当施設の管理運営をサポートさせていただいております、
中央集積・愉快型万能萌AI「アルハザード」と申します。
気軽にアル様、もしくはアルさんとおよびください。アルたんは却下です。

そしてこちらが、当施設の第458,813,224代目のオーナー。
“ルカ・トゥリッリ”様です。』

全然気軽な呼称じゃないぞアル。
しかし知らなかったな。
ずっとアルアル呼んでいたんだけど、コイツ
『アルハザード』なんて立派な名前もってやがったのか。
つーかここの場所とおんなじ名前だったんだな。

『そうですよ。判ったらもっと敬いなさい。』

それと敬うのとは関係が一切無いがな。

「ど、どういう事なの…?ここが、私の求めたアルハザードとでも言うの?!」

椅子に縛られたままガタガタと激しく暴れ、
なにやら混乱していらっしゃるご様子のテスタロッサさんのお母さん。

「ああ、貴方の世界では、虚数空間に存在する失われた地とか言われているんでしたっけね。
まぁ、所詮はおとぎ話って事ですよ。
そもそも失われたも何も、最初からココに存在していましたし。」

「そんな…… アルハザードが…… ただの、保養所だったなんて……」

目から光が消えて、がっくりと項垂れるテスタロッサさんのお母さん。
お、おいアル、鬱はいっちゃたぞ!なんとかしろ。

『ただの保養地だなんて失敬な。
私は、あらゆる次元時空の技術を持って作られた、一級保養施設ですよ!
古ではヴァルハラ、アヴァロン、ヘヴン、ニルヴァーナと呼ばれた
それこそ由緒正しきリゾート施設です。
温泉スパリゾートから各国のグルメを取り揃え、
図書室では、無限に転生しても読みつくせないほどのあらゆる書物が閲覧可能!
ブルーレイからHD-DVDはもとより、ベータデッキまで完備!
施設内には他にもカラオケ、マッサージ、ダーツにビリヤード。
お子様の為にも託児所は当然、
大人様の為にも世界の酒を取り揃えたバーカウンターもございます!
たまには育児を忘れて、奥さんと二人でソーマで乾杯…
そんなロマンチックなひと時はいかがでしょうか?
さらには完全個室!あ、もちろん家族連れやカップルのお客様用の
複数人部屋もご用意させていただきました!
そこらにあるスーパー銭湯や安い食べ放題の店じゃあちょっとね…
なんて言っている貴方ッ!!
そう、そこで何故か鎖で拘束されている特殊な趣味をお持ちの貴方ッ!!
貴方の想像とは一味も二味もちがう、至極のリゾートを、是々非々に体感していただきたいッ!』

なんかホテルか旅館の宣伝みたいになっているぞ。
ほらみろ、テスタロッサさんのお母さんぽかーんとしてるじゃないか。

『だが私は謝らない。』

さよか。
ちらっとテスタロッサさんの方を見ると

「…もういいわ。すべてがどうでも。
…こんなものがアルハザードでもいいわ。

最早…私の目的が果されない事がわかった…」

ありゃりゃ、鬱を通り越して捨て鉢になってるし。
世界はこんなはずじゃないことばっかりだな。

「……それで、私をどうするつもり…?」

さらに突然どうすると言われても…お出口は玄関ですけど?

「……私を管理局に引き渡さないのかしら…?私は重罪人…。
アリシアも、アリシアを元に生み出したフェイトも、私にはもう居ない。
私に構ったところで、意味は無いわ。
それどころか、犯罪者の隠匿で貴方も罪に問われるわよ。」

ん、そうなのかアル?

『ワッハハハ。まさか。
虚数空間移動の技術すら持たない管理局程度のコンコンチキが、
私を補足できるはずがあるとでも?』

まぁ、そうだろうなあ。
アースラぐらいの船だったら、たぶん母さん生身で墜とせちゃうぞきっと。

「……何回か魔法を使ったのに身体が軽いわね…。
それより貴方、ここのオーナーとか言われていたけど…
ここに一人だけなのかしら?」
『私も居ますよ。』
「いえ、父さんと母さんがいますよ。
いまはどっかの仕事に飛んでってますけど。」
「…そう… 私も… アリシアと…
もう少し遊んであげればよかったわ…。
もっと、アリシアに注意をしておけば…
あんなことに…。ううううううううううううううう」

ああっ鬱モード再発か!!
どっどうすればいい?助けてアル。

『とりあえずご自身のご家族のご紹介でもされて
お茶を濁してみては?』

な、なるほど流石は中央集積AIだ!

『えっへへへへ・・・まあね!』

「チッ……

えーっと、改めて自己紹介をしますと、
僕の名前はルカ。ルカ・トゥリッリって言います。
私立聖祥大学付属小学校3年生です。
父さんはエドワード、母さんはアンジェラっていって、3人家族です。」
『私は…?』
「…………4人家族です。」

そこまで言って、なにやらテスタロッサさんのお母さんの表情に変化が出た。

「………エドワード・トゥリッリですって…?
“孤独の撃墜王”エディ・ザ・ヘッド!?あ、あなたの母親の旧姓は?」
「アンジェラ・ゴソーだけど?」
「…“魔王(アークエネミー)”アンジェラ…」

今の父さんからは想像できないなんかスッゲーカッコいい二つ名と、
今の母さんからは想像できないなんかスッゲー物騒な二つ名を聞かされた。

「知ってるのテスタロッサさんのお母さん?」
「…ええ。ミッドチルダ… いえ、管理局の管理下世界で、
知らない人間はいないんじゃあないかしら…。
それよりその言い方、長ったらしいから辞めなさい。」
「んーじゃあプレシアおばさ「感電したいのかしら」……」

縛られた状態でどうやったのかは判らないけれども、
何時の間にやら手には先ほどの杖が握られていた。
杖…つーかデバイスだ。高町さんのレイジングハートさんとかバルディッシュとかと一緒。
あれ、なんで僕レイジングハートさんにだけ敬称をつけているんだ…?
そのプレシアさんの持ってるデバイスの先っぽから、紫の電気がバチバチ言っていた。

『ババアでいいんじゃないですか?』

アルのばかやろお!
瞬間的にプレシアさんを拘束していた鎖が全て弾け飛んで、極大の大きさの紫電が
僕とアルを飲み込むむむむむむバチバチバチバチバチ

『残念!私の耐電圧は108億Vまであるぞ!』

ああああらかた電気をほほほほ放出し終えたプレシアさんははははは、
つつつつつ疲れた顔をししししして、でででででデバイスを消したたたたたた。

というか、どうやら魔力が切れた見たいで中空に浮いていたばらばらの鎖は
再び絡みつくようにプレシアさんを拘束していった。

『ちっ 贋作野郎の作った鎖じゃ所詮贋作ですね。
今度でBETAが居る所に派遣してやりますか。』

アルは何事かをぶつくさ言っているが、こいつなんで僕に障壁を貼らなかったんだ…。

「ハァ ハァ…なんて忌々しいAIなのかしら… ハァ ハァ…」

髪が乱れ息も絶え絶えに捨て台詞を吐くプレシアさん。
それについては全く同感ですとしか言わざるを得ないだろう。

「まったく… 製作者の顔が見てムグッ」

危ないッ!慌てて僕はプレシアさんの口を塞ぐ。それ以上はいけない!

「ムッムガムガムガッ(なっ 何をするの!!)」
「アルは、自分の製作者を誇りに思ってるんです!!
アルから延々と製作者の自慢話、その生い立ちから終世までを、
映像音源資料として脳にダイレクトに送ってきますよ!!
腹が立つ事にエンドロールにはNGシーン集とかありますし。」

「ムッ ムゥーム(そ、それはひどい)」

一度うっかり聞いてしまった人がアルから解放されたのは、32時間後でした。
あれほど口がタコになるぐらい注意したのに……。
気絶すら許されずに脳直で話を聞かされる青崎のお姉ちゃんの横で、
ゼルレッチの爺ちゃんが死ぬほど笑ってたのを思い出した。


「んっ ゴホン。それよりも、私の身体… 治ってるみたいなんだけど…」

おっ どうやら話題の転換は上手く言ったようだ。しめしめ。
電撃を浴びた甲斐があったぜ。
ああ、一晩ぐっすり眠ってましたからね。お陰でピンピンでしょ?

「ええ、こんなに肌のツヤがいいのは3十ン年振り…  って、違うわ!!
問題はソコじゃない!!私が言いたいのは、私に巣食っていた病魔…。
ミッドチルダの中央病院ですら匙を投げたほどの重病が、こんなにあっさりと
治っている事なのよ!!」

だから、一晩ぐっすり寝たら治ったんですよ。
ほら、証拠を見てください。

「アル、昨日から今日にかけての客間の映像を出して。」
『御意。オプションで私のナレーションとか、キャプションをつけましょうか?』
「それはいい。」
『えー。御意に。』

がっかりしながらアルは、僕たちの目の前に立体映像を流す。
ただ寝てるだけの映像につけるキャプションとかあるのだろうか?

『そこが腕の見せ所ですよ』

うるせえ。

次々と再生されていく映像を、食い入る様に見つめるプレシアさん。
そもそも事実なんだし、何がおかしいんだろうか?

ふと時計を見れば、いつのまにやら11時50分。
そろそろお昼か…。
朝からどたばた続きで時間がたつのがヤケに早いな。さて何を食べようか…。
この間エミヤ兄ちゃんが作ったご飯はおいしかったな。
ギル兄ちゃんに教えてもらった中華はアホみたいに辛かったけど。
んー……… 中華しよう。でも麻婆じゃなくて小龍包が食べたい。



おっと、どうやら映像再生が終わったようだ。
どうでしょ、プレシアさん…  ん?プレシアさん?
な、なんかすっげー驚いてる顔してる…  

も、もしもーし?

「わ… 私の隣… あ、アリシアが…  ね、寝てるわ…」

震えながら、停止した立体映像を指差すプレシアさん。
そりゃそうですよ。一緒に連れてきたんですから。

「い、息を   し て る」

ええ、息が止まっちゃう病気なんでしょう?
でも一晩ぐっすり寝たんで大丈夫ですよ。
人間の免疫力は、強いんですよ。

「       ア      り      シ       A       」

そろそろ起きてくるんじゃないですか?
お昼だしお腹もすいてきたと思うし。

と、再び客間の衾が空く音がした。起きてきたな腹ペコさんめ。

『“客間”と“衾”で韻を踏んだんですね。わかります。
リトルヒップホッパーマジパネェっすね!』

うるせえ。
おお…テスタロッサさんに瓜二つだ…。
小さい頃のテスタロッサさんは知らないけれど、きっとそう。

「お腹すいた… あ、おはよう母さん。  ……このお兄ちゃんだーれ?」

寝ぼけ眼をこすりながら、真っ裸で出てきたアリシアちゃん。
そういえば裸だったな。

「おはようアリシアちゃん。僕の名前はルぎゃああああああああ!!」

後ろの方で、何か金属製のものが弾けとんだ音が聞こえたかと思ったら、
高速で接近してくる紫の影に僕は吹っ飛ばされた。

『ルカ くん ふっとばされたー!』

ぎゃあああああああああああああああ!!

僕の身体はベランダの窓をぶち破り、庭を大きくえぐると、そのまま庭の外に放り出された。
戻りたくても戻れなかったので…
僕は考えるのを、やめ

というのは嘘だが、プレシアクレーター(プレシアさんたちの落下地点をそう名づけた。
ちなみに銘を彫った大理石の碑を建てておいた。)
まで吹っ飛ばされた。

体中が痛い。
足を引き摺りながら家に戻る。

「ああAAAAAAアリシアああああああああああ!!!!!!!
おーいおいおい!おーいおいおい1!!」
「んーそんなにきつく抱きしめると痛いよ母さーん」

なんだかドラマチックな展開になってた。
でも、四十ン歳の人がおーいおいおいって泣くのはどうなぎゃあああああああ!!!

アリシアちゃんに抱きつきながら涙を流すプレシアさんは、
僕に指を向けて紫電を打ってきた。

器用な人なんだな…実生活は不器用だったのに…。
上手い事を考えながら、僕の意識は暗転していった。









『別に全然上手くないですよルカ様』






















最終話 「自宅がアルハザードだった 後編」








END













後書き


ツッこみは厳禁
正直本筋は以前書いたのとあんまり変わんないよ



[9377] 第3話 自宅が…だったから!(修整)
Name: aaaa◆5cd5d53b ID:b712c8c1
Date: 2009/06/09 02:03
スズメの朝チュンで爽やかに目を覚ます。

ん~!

今日もいい天気だ!
なぜ服が所々焦げているのかはわからないけれど。


さて、先週まではなんだかんだで学校に行けなかったり
(ジュエルシード事件に巻き込まれた件)したけれども、
今日から普通に登校だぜ!
しばらく友達に会えなかったりしたからちょっと興奮気味だ!

『ふぁあ 随分とお早いお目覚めですね…』

ちょうどアルも起き出して来たみたいだ。
アルおはよう。

『おはようございますルカ様』

さっきのアルの言葉に、ちらりと時計を見たら朝5時半だった。
うおっ。一時間半も早く起きてるじゃないか。
それなのにお目目ぱっちりだし、
そんなに僕はグッスリ寝ていたのか。

『そりゃもう雷に打たれて感電死したかの様にグッスリと』

うっ!?
「雷」という単語に何かとても嫌なモノを思い出させるが、まったく記憶に無い。
なんだ?思い出せ…という気持ちと、忘れろ…という気持ちが湧き上がってくる。

昨日何があったんだ…?

もわもわと昨日の記憶を掘り起こしながら、階段を下りてリビングの衾をあけた。








そこには、











幼女の前で正座させられている熟女がいた。













第三話 無題











「アル…これはいったいどういう事になっているんだ???」

続けられる幼女と熟女のタイガー道場。
朝からこの意味不明な空間は正直キッツイ。
初心者がうっかり全マシマシコール切っちゃったくらい。

『プレシアの所業をアリシアちゃんにばらしたらこうなりました。てへり☆』

なん……だと……?

『アリシアちゃんから延々とお説教受けてますよ。具体的に言うと昨日の昼から。
(ルカ様が気絶した後からですけどね)』

それは… 気の毒に…。

まぁいいや。自分のしたことを反省して下さい。
そしてその壁を乗り越えた先に栄光があるのですよ、プレシアさん。
そんなことよりも朝飯じゃ朝飯じゃ。

台所の蛇口を捻って、いつもの通り牛乳を飲む。
冷蔵庫からハムと卵を取り出し、レンジにトーストと一緒に入れる。
プレシアさんたちは外国人だから、和食よりはこちらの方がいいだろう、
という配慮からだ。
細かな気配りのできる男、ルカ・トゥリッリ。将来はモテモテのイケメンだぜ!

『うるせえ』

あっ アル…貴様…ッ!




チーン




おっとと、ウダウダしている間にハムエッグトーストの出来上がり。
ウルトラ上手に焼けましたってね。
お皿に三つ乗っけて、リビングへと持っていく。

あ、プレシアさんまだお説教受けてら。
アル、オレンジジュース3つ持ってきてね。

『御意。』





………………………………………………………………………………………………………






「というわけなのです!フェイトは私の妹なのです!
 そういうこと考えるお母さんはキライです!!!
 私はちょっと眠いのでお布団にいきますけど、
 お母さんはそのままもうちょっと反省しなさい!!


 …しばらくしたら一緒に寝てください」

あ、おはようアリシアちゃん。
むしゃりむしゃりとトーストを齧りながら、ようやっと終了した
スーパーお説教タイムをぼーっと眺めていた。

「あ、おはようございますルぎゃああああああああ!!お兄ちゃん!!」

ブホァッ オレンジジュース噴いた。
あっ アリシアちゃんその名前は一体…?

「昨日自己紹介でいってましたよ?
 僕の名前はルぎゃああああああああ!!って。」

ち、ちがうんだアリシアちゃん、あれは、途中で吹っ飛ばされた
悲鳴であって、僕の名前じゃないんだ!
その名前で固定される事に危機感を覚えた僕だったが

「ふぁあああ… ちょっと眠ります… 

 おやすみなさいルぎゃああああああああ!!お兄ちゃん…むにゃむにゃ」

その願いは届く事無く、彼女の意識は深遠へと沈んでいった…。
僕の…   僕の名前は… ルカです…。


『まあまあ元気出してください。
 起きたらちゃんと訂正すればいいじゃないですかルぎゃああああああああ!!様。
 ゲラゲラゲラゲラゲラ』

指差しながら笑いやがったなこのやろう。
くそっ 覚えてやがれ!

むにゃむにゃと布団へ戻って行ったアリシアちゃん。
ところでプレシアさんはと言うと。

…あーあープレシアさんの周り涙で湿ってら。
もしもーしプレシアさーん?ご飯ですよ…

「…zzzzzzzzzzzzzzzzzz」

スゲエな、正座して眠ってるよ。涙流しながら。
人間のメカニズムってのは驚異的だ。

「zzzzzzごめんなさいzzzzzzフェイトzzzzzzz」

感動していいのかコレは?
とりあえず毛布を掛けておこう。
トースト余っちゃったな…。
アル食べる?

『頂きます。』

前から思ってたんだけど
お前AIなのになんで食事できるの?

『ルカ様、車はガソリンがないと走らないのですよ。』


……?
ま、いいや。
そろそろ学校に行く時間だし、帰ってくる頃には二人とも起きてるだろ。
じゃ、留守番よろしくね。

『御意』

いってきまーす。








~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~







久しぶりに学校に行くと、なんか周囲の目が生温く感じるね。
こう、なんか形容しがたい気持ちが湧き出てくる。
僕ですらこうだったんだから、しょっちゅう休んでた高町さんなんか
もっと凄いんじゃあないだろうか。


「…というわけで、私は改心… 
 …いえ、目が覚めたわ…。」

僕が帰ってきたら、丁度プレシアさんも起き出したらしく、
自分の行為がいかに愚かだったかをぽつぽつと玄関先で語りだしたのだけれども、
既に玄関に立たされて二時間が経過している。

さっきの生温い云々は、二時間のスーパー懺悔タイム中に考えていた事だ。

延々と玄関先で懺悔(昨日の腹いせか?)を受けていると、
お腹すいたー とアリシアちゃんも起きてきた。

ナイスタイミングだぜアリシアちゃん!

「そ、そろそろ夕食にしましょうよ!」
「……そうね。行きましょうアリシア」

フゥ… 懺悔するのはいいけれど僕に言ったってしょうがない気がするんだけどなあ。
それよりも、二時間棒立ちで膝が笑い始めた。
おじいちゃんみたいにガクガクしながら僕もお腹がすいたのでリビングへ、
のたのたプルプルと歩き出した。し、痺れる!

余談だけど今日の夕食は僕が昨日食べられなかった中華にした。
賑やかな食卓は、これも随分と久しぶりだ。
父さんも母さんも、いつもどっかしらに飛んでいるから、
なかなか家族全員がそろわないんだよね。

「もぐもぐむしゃ! むしゃもぐもぐもぐむしゃむしゃ!!」

アリシアちゃんいいから食べるかしゃべるかどっちかにしようね。

それはそうとして、とにかく、玄関先で言っていた通りプレシアさんは目が覚めたらしい。
今後どうするんですか?と尋ねたら、

「今更どんな顔をしてあの子に… フェイトに会えばいいのかしら…
 こんな… こんな酷い親に…」

確かに。
しかもあの空間、虚数空間って落ちたら二度と
戻れないって事をハラオウン君のお母さんが言っていたな。
アルが中空に足を組みながら、ノートPCっぽいのをカチャカチャやっている。
その演出必要なのか?

『無論です。』

そうか。

『えーっと、“プレシア・テスタロッサ
 遺失遺産(ロストロギア)の違法使用による次元災害未遂事件主謀者にして、
 現在保護観察処分中のフェイト・テスタロッサの実母。
 自身の所有する移動庭園「時の庭園」にて
 ロストロギア「ジュエルシード」を違法使用。
 崩壊した庭園と共に虚数空間へ落下し死亡。”
 あらららら、王大人死亡確認されちゃってますね。』

その死亡確認だと多分生きてるよ。
でも、やっぱり死亡認定されちゃってるか。

「……私はもう死者。なのね。
 フフフフフ… 死者が… 生者である娘にあっては
 いけないわね… フフフフフフフフフ…」
「もぐむぐごくん。……元気出して……お母さん…。」

あーあーあーあー
まーた鬱再発だよ。どうしようか…。
圭一にいちゃん、僕に、僕に力を貸してくれ…ッッ!!!







                                  ウッディ





~~~ッ!!
キタッ!ひらめいたッ!平目板!!

プレシアさんの前に向き直ると、僕は机に腕をたたき付ける!
大きな音と共に、ビクリとしながらプレシアさんは僕を見た。
腕に感じるひりひりとした痛みを見せないように、僕は言い放つ!

「プレシアさん。あなたは書類上はたしかに死者になってしまった。
 でも、だからといってあなたはそこで足を止めていていいんですか…?」

「……………どういうことかしら………?」

良しっ 乗ってきたぞ!

「あなたが足を止めている時でも、テスタロッサさん…フェイトさんは歩き続けている。
 確かにあなたはフェイトさんに会えないでしょう。今の足を止めたままでは。
 書類上は死んだかもしれない。
 でも、あなたは!今!確かに生きている!!
 アリシアちゃんと!ともに歩く事が出来る!!!
 今はフェイトさんに会えないでしょう。
 しかし、いつか必ず逢える日が来る。

 あなたは、今、生きているからです!!
 
 いつか遠くない未来に、足を進めていたフェイトさんと、会えるのですか?

 …今の貴方は、足を止めてしまった愚鈍でしかない!!!

 それでいいのですか!? いや、よくない!!!

 貴方に出来る事…それは、歩く事です。
 今は、今はただ、歩き続ける事… それが

 フェイトさんに会える、ただ一つ、唯一の道なんです!!!!!!!11111」
 

我ながら超展開の熱弁だったがどうだ…?
目を閉じて俯くプレシアさん。
しばらく間が空き、彼女は目を見開いた。
その瞳には

「フフフ… そうね… そう。
 あの子が歩いているのに、私だけ、ここで立ち止まるわけにはいかないわね…。
 いつかあの子に笑って会いに行くためにも… 私は歩き続けるわ…ッ!」
「私も!妹に会うために!お母さんと一緒に歩くよ!!」
「いいのアリシア…?私の歩く道は荊…薄氷よりも過酷よ…?」
「お母さんといっしょなら… お母さんと一緒なら、どこへでも歩いていく!!」
「ああああありいいいいいいしいいいいああああああああ!!!!!!!」
「おかあああああああさああああああああん!!!!!」

生気に満ち溢れた、何かを成し遂げようとする決意の光が灯っていた。
少なくともアースラの画面越しに見えたどろどろとした目よりは数倍マシになったね。

なんとか勢いで丸め込めたか。

感極まって泣きながら抱き合い、ぐるぐる回転する親子。
感動的なシーンだ。
なにやら花びらが舞うイメージが脳内に浮かび上がる。

『サービスですよ。』

でも食卓に上ってやらないで下さい。






…………………………………………………………………………………………………………






アリシアちゃんは、プレシアさんと感極まってぐるぐると食卓で抱き合いながら廻った後、
疲れたのかぐったりとしてしまったので、また僕の母さんの布団に寝かせておいた。
自動的に父さんの布団をまたプレシアさんが使うわけだが…合掌、と言っておこう。


さて、時間は既に夜中の11時を周っているわけだけども、僕とアルは今、
プレシアさんを連れて自宅を案内している。

きっかけはいたって単純。
アリシアちゃんを布団に運ぶ際、なにやら熱心に父さんと母さんの布団を調べていたと思ったら、
急にポカーンとしだしたのだ。

どうしたんですか?と聞いたら、
考えられない位高度な魔法技術と科学技術を併用して、このどうしようもない煎餅布団が構成され

ている、
と興奮気味に話してくれた。

父さんの布団を手に持ってハァハァ言ってたのはそういう理由だったのだ。
家庭崩壊の危機かと思って警戒レベルを引き上げたのは無駄に終わったか。

そういうわけで、世間で流れてる噂はどうであれここがアルハザードには違いない、
と納得したのか、今度は自宅の案内を頼まれた。
なんでも、失われた秘術の眠る地として太古から詠われてきた
伝説の地『アルハザード』は、元研究者だったプレシアさんにとっても大変興味深く、
研究者魂が疼くんだそうだ。

見せても困るもんでもないし、ようがす。案内しましょ。

2階にある僕の部屋の隣にある扉を開けると、長い長い廊下があり、
その廊下を抜けた先には『無限図書室』と達筆に書かれた檜の看板が下がっている扉がある。
まずはここを紹介する事にしよう。

「えっとですね、ここが無限図書室です。」
「へぇ… 中に入っても?」
「別に大丈夫ですよ。」

扉を開けると、円筒状の部屋にでる。
扉から円筒の中心部に向けてまっすぐ幅の狭い道があり、
その中央は少し広くなっていてそこには小さな端末とモニターが置いてある。
円筒の上下は、どこまで続いているのか判らないくらいで、底と上のほうは暗くて見えない。

「あら、管理局の無限書庫と同じような造りね…。で、どの程度の蔵書があるのかしら?」
「全部です。」

プレシアさんが困った顔をしてしまった。
この人アースラの画面から見ていた頃とは違ってこんな顔も出来るのか。
まああの時は改心する前だったからなあ。

「全部って… ん…そうね、例えばどんな本が所蔵されているのかしら?」
「全部です。」
『ここから先は私が説明いたしましょう。』

アルが出てきた。そうだよな、実質お前が管理してるんだからお前が説明すればよかったんだな。

『ここにある蔵書は、さきほどルカ様が仰られたとおり、世の全ての書物媒体があります。
 メジャーな物を挙げれば、夜天、晴天、曇天、寒天の各魔導書の原本やアル・アジフ、
 エイボンの書、ルルイエ異本、レメゲトン、バビロンの鍵とかの発禁図書。
 勿論地球外の書物にも対応しており、身近なところから挙げると、
 ミッド式魔法教科書やミッド式マナー講座、ミッド式ユーモアベルカ会話辞典、
 ベルカなら、ベルカ聖王列伝やベルカ48手、ベルカ式教科書からベルカ式小話全集、
 ベルカ式同人誌「オレと聖王~ドキッ☆放課後の野試合は血と百合が咲く~」と。
 ここの図書室に無いものはありません。』

なんだかよくわからない物ばっかり挙げられてもピンと来ないな…。
と、プレシアさんの様子を伺うと、目が血走っていてヤバかった。

「…嘘でしょ…?」

信じられないご様子。まあでもアルは嘘つかな…いや、つく。

「本当なのかアル?」
『当たり前ですよ。何のためにあの検索端末があると思っているんですか。
 こんな莫大な蔵書、イタチの一族連中が総出で掛かっても、
 モノが多すぎて一生何も見つからないですよ。』

へぇ、やたらと本が多いなと思ったけど、それだけ収蔵してれば当然だな。
そりゃ検索端末も必要だわ。
それにしても、実はスゴイヤツだったんだなお前。

『まあね!』
「……管理局にも同じようなシステムの“無限書庫”があるけど、
 それを遥かに上回ってるわね…。 なんだか頭が痛いわ。」
『“無限書庫”ごときと比べられては困りますね。
 あれは、もとはこの“無限図書室”の一部だったんですよ。
 過去の事故で一部空間が捩れてしまいましてね。
 本施設の一部が元時空管理局にギられてしまいました。 

 それだけならいいんですが、連中私の一部を勝手に使って
 勝手に無限書庫なんて名前つけてんです。
 さすがに勝手に使われるのは困りますし、貴重な書物についてはココではなく
 別の書庫に保管はしてますけど、それでも使用料を取る権利はあるはずでしょう?

 あいつらに無断使用お断り、って手紙を匿名で何回か出したのにシカトですよシカト!
 あったまきたんで、一部の本は見つからないように細工してありますからね。
 端末もぶっ壊してやりました。』

そーなのかー。

『そうなのです。
 例えば上巻と下巻を読んでいて、なんだか上と下で急に内容が飛んでいるなぁ…
 と思ったら実は中巻があった、みたいな地味な嫌がらせから、
 開いた本の奥にお菓子のカスが残っていたり、ページが妙にガビガビだったり、
 辞書のイヤらしい単語にマーカー引いたりしてます。』
 
えらい地味な嫌がらせですね。

『あ、でもルカ様の指示があれば書庫ごと管理局を
 吹っ飛ばせるぐらいの爆弾も仕掛けてますよ。』

「「や め て」」









…………………………………………………………………………………………………………











続いて案内したのは、さっきの廊下を戻って僕の部屋の目の前にあるピンクの扉の前。

「これが、この世の出口です。」

殴られた。

「大人をからかわないで頂戴。フェイトに会うまでは死なないわよ私。」
『言い方が悪いんですよ。ルカ様は愚脳ですから。』

くそうアルめ。僕は間違った事は言っていないぞ。
なんだ愚脳って。ぐのう。響きはいいな。
僕の心に書き留めておこう。

「それでここはなんなのかしらアル?」

ああっ 僕にきくのを諦めやがったな!!

『アル様、もしくはアルさんと呼びなさい馴れ馴れしい小娘が。』

あっ左目が怒って右目が笑ってる。複雑な顔していらっしゃるプレシアさん。
きっと小娘のところがネックだったんだろうな。
アルにしてみりゃだれでも小僧で小娘だろうに。

「それで、ここは、なんなのかしら? ア ル さ ん?」
『ここはですね、全次元時空系列超越問答無用転送装置です。
 アルハザードの言語では「ドゥ・コディモーダ」といいます。
 今の言葉に訳すとするならば…「異界繋げる幽世の門」。

 その名の通り、この家の玄関以外からこの地に入る唯一のゲートとなっています。
 そして、その名の示す通り、どこの次元世界、時間へと道を
 問答無用につなぐ事の出来るテレポーターですね。』

「…どこの時間… てあなた今言ったわよね?」
『アルさん、です。
 ええ、現在過去未来どこへとでもお好きなように。』
「なら… ならば… 過去へ戻って… アリシアを…
 ヒュードラの事故から救い出す事もできるの……?」
『うーん… それは… なんというか…』
「答えなさい!!!!」

プレシアさんが、マジになっていた。
プレシアさんがアリシアちゃんを失ったのは、事故が原因だそうだ。
その事故が起こる当日に戻れば、アリシアちゃんを助けられる…そう考えたらしい。
だけど………

『…「時間の流れ」というのは過去から未来へと、さながら上流から下流へと流れる
 河のようになっています。
 そしてこの河は、際限なく無限に支流のある河です。
 所謂並行世界、というのがこの無限の支流に当たりますね。

 私たちがいるここアルハザードは、
 支流の一つから上がり、河を傍から眺めることのできる川岸に位置します。
 川岸ならば、どこの位置にも飛び込むことは可能ですので。

 しかし、いくら上流へ飛び込んだとしても、貴女がいる世界は貴女が岸へ上った河なのです。
 過去の本流へ上り、そこでアリシアちゃんを助けたとしても、そこに新たな支流が出来るだけ。
 貴女が戻る場所は、アリシアちゃんを救えなかった現在の下流だけです。』

それだけの説明だったが、プレシアさんは理解が出来たのだろう。
……声をあげずにただ涙を流していた。

僕とアルは、何も言わずただそれを見ていた。





『私にだって…出来ない事ぐらい…ある』

何時の間にか椅子に腰掛けていたアルは、
どっから出したのか机に手を打ち付けると、後ろを向いてそうぼそりと呟いた。



…僕たちはただ、魔法技術と科学技術に溺れているだけで、
物事の本質を何も見ていなかったのかもしれない。

それは、この世界すべての人に言えることだ…。
だから、僕たちは前を見て歩いていくんだろう。
過ぎた日々を振り返るのは、たまにでいいんだ。
後ろを見ながら歩くと、何かにぶつかってしまう。
何かの拍子に、歩けなくなってしまう。







だから、ただひたすらに、前を向いて…歩きつづけなくちゃあいけないんだ…。





『あきらめない!!それが私たちにできる唯一の闘い方なんです!! 』

そうだとも。
足が二本ついてるのならば、何処までも歩く事が出来るんだ僕たちは!

僕たちの戦いはこれからだ!!



















「ルぎゃああああああああ!!お兄ちゃんなんかいい事言ってるみたいで悪いんだけど、
 けっこうそれむちゃくちゃだよ。

 それとアルたん、キバヤシの台詞だよねそれ」

どうやら僕らが廊下であんまりうるさかったんで起きちゃったみたいだ。
適確なツッコミをありがとうアリシアちゃん。

それと僕の名前はルカって言うんだ。覚えておいてね。



















最終話「ぷれ☆しあ ~同居人はヒトヅマコブツキっ?~」






END







あとがき

過去に戻れたらどうしますか?


俺は小学生の時に戻って、
うんこのついたブリーフは隠すと見つかったときに酷い目にあうから止めろと助言をしたいね。



修整済み有難う愛してる



[9377] 第4話 自宅が…だったけど!
Name: aaaa◆5cd5d53b ID:b712c8c1
Date: 2009/06/13 03:33
晴れ渡る空は血のように赤かった。
空に浮かぶ巨大な歯車は、ギギ、と耳障りな音を立てている。
その下には、赤く荒れ果てた大地が、果てなく広がっていた。

その世界の中心に立っているのは二人の男。
一人は赤毛、一人は白髪。
白髪の方は、赤毛の男より頭一つ分くらい背が高く、
その体には空を切り取ったかのような、赤い外套を纏っていた。

彼らが佇むのは小高い丘。
その周りには、無数の剣が墓標のように、
地の果てまで突き立てられている。

風すら吹かぬ孤独の丘で、
男たちは互いに向き合ったまま睨み会う。

天上の歯車の、乾いた音だけがあたりに響く───


しかし、単音の静寂は不意に聞こえる少年の声に遮られた。

突如として、少年が現れた。
何もない空間から、光と共に忽然と姿を表した。

「あ、いたいた衛宮のにいちゃ…ありゃ、なんで二人いるの?」

少年は、何事もないように訪ねた。
それに驚き先に声を発したのは白髪の男。

「小僧…何故それを…」

白髪の男の目が、鷹の目の様にように鋭く尖る。
同時に、墓標のように刺さっていた剣の全てが一斉に浮かび上がった。
白髪の男の脳裏に浮かぶのは疑問。
この場所に干渉してきた少年の正体。

─だが、危険なモノには違いない─

浮かび上がる全ての剣が、少年に剣先を向ける。

「何故って…にいちゃん前自分から言ってたじゃない」

絶体絶命とも言える状況の中でも、少年は飄々と答えた。
白髪の男を制するように、少年の前に赤毛の男が飛び出してくる。

「おちつけアーチャー!少年、君と俺は初対面のはずだけど…」

赤毛の男が、優しく少年に語りかける。

「ん?おっかしいな。フーリン兄ちゃんと二人でうちの露天風呂覗いてたら、
メデューサ姉ちゃんとかにボコボコにされてたよね。」

男二人は、顔に驚愕の表情を浮かべた。
話を聞く限りでは、恐らくランサーとライダーの事だろう…
しかし、彼らにはまったく覚えが無い。
と、いうか露天風呂にも行った覚えが一切ない。

不意に声が聞こえる。



『ルカ様』

不意に現れた彼女もまた、他者の存在し得ぬこの地に入り込んできた異端の一人。

「あ、アル。なんか変なところに出てきちゃったよ。」
『あれっ 座標……    間違ってますね。
 
 どうやらこいつらの心象世界に出てきちゃったみたいです。
 なんとまあ華の無い殺風景としたところですな。』

男たちは、理解できないのか、ただ呆然と突っ立っている。
それを聞いた少年は、何か得心したように手を叩いた。

「すげえな、とうとう世界の壁を飛び越えてココロの壁まで飛び越えたのか。
 じゃあこれどうしようか。エミヤ兄ちゃんが欲しいって言ってたから、持ってきたんだけど。」
『いいんじゃないですか?エミヤは衛宮ですし。変わりませんよ。』
「そうか。じゃエミヤ兄ちゃん。はいこれ。」

話に着いていけない男たちを他所に、少年は二人に近づくとなにやらブツブツと呟く。
そして掌を天に掲げると、そこから溢れんばかりの閃光が荒野の世界に放たれた。

「うわっ!!?」「クッ!!」

不意に辺りを照らす閃光に、男たちは少年から離れるように距離をとる。
只ならぬ状況のなか、二人の意見は一致した。

二人の手には、黒と白の短剣が、寸分互いもなく握られている。

光が収まると、天からは光の粒子が降り注いだ。
あたかも荒野に降り注ぐ雪のようなそれは、徐々に何かを形づくる。


それには、透明な筒に、無数の黄色い管のような物で蓋がしてあった。

「これは──ッ?!」

赤い服の男が、双剣を構えたままで驚く。


それには、透明な筒と同じ大きさの車輪が一対ついていた。


「う、そだろ…?」

赤茶けた髪の男が、双剣を地面に落として呟く。


それには、細めの蛇腹の管が取り付けてあった。












剣の丘に降臨せしは、ダイソンサイクロン掃除機。










男たちは呆気にとられ、同時に同じ言葉を呟いた。
─不条理に会ったときにいつも呟く口癖を。
─久しく忘れていた、口癖を。


「「なんでさ」」



と。










「兄ちゃん、うちの掃除機の見てすごい欲しがってたじゃない。
 母さんにそれ言ったら、そろそろ新しいのが欲しかったからあげてもいいってさ。
 だから届けに来たんだよ。

 じゃ、僕の用事はこれで終わりだから帰るね。アル、準備。」
『御意に。』

少年は男たちに手を降りながら、答える。

「大事に使ってねー。ド・コディモーダ展開。」

そしてそのまま、少年は
光の粒子となり、消え去った。




赤い荒野に残ったのは、糸が切れたかのようにガチャガチャと降ってきた剣軍、
バカ面を下げた男二人、そして、荒野の丘の上の一番目立つところに鎮座された、
ダイソンサイクロン掃除機だけだった。











この日から、衛宮士郎の剣の丘に、掃除機が一台置かれることになる。












彼らはまだ知らない。知り得ない。









この掃除機が冬木に溢れだした呪い、穢れし聖杯の泥を、悉く吸い出すのを。















ダイソンサイクロン掃除機は、変わらぬ吸引力を湛えながら、只静かに丘に佇んでいた。

















第4話  無題












ピンクの扉を閉め、自宅へ帰宅する。
母さんに言われてた事をすっかり忘れていたので、
エミヤ兄ちゃんに掃除機を渡してきたのだ。
どっかの世界の兄ちゃんだったらしいけど、
まあどちらにしろエミヤ兄ちゃんだし特に問題はなかろう。

『背が低い方、あの掃除機が原因できっと封印指定されますよ。面白い。』

あんなもんドコにでも売ってるのに。少々お高いけれど。
さて、今日は何を食べようか。

軽やかに階段を下りていく僕とアル(こっちは宙に浮いてる)。
居間には、アリシアちゃんがほっぺを膨らませながら足をぶらぶらさせて椅子にすわってた。
どうやらおむずかりのようだ。

どうしたのアリシアちゃんなにやらお怒りのようで。

「…お母さんが図書室からでてこないの。いくじほうき…」

目のハイライトが消えているぞ。
世の中こんな筈じゃない事ばっかりだわ。

昨日、図書室の使用権限を与えたら、喜び勇んでプレシアさんは篭りだした。
どうやら研究者魂に火が付いたらしく、アルハザードを隅々まで調べ上げてやるんだと。

『らめぇー!そこまでみちゃらめなのおおおおおおん!!』

となりでなにやらビクビクとしているアル。きめえ。


つーわけで、遊んでくれなくなったアリシアちゃんはゴキゲンが斜めと。
イケナイねプレシアさん。それでは昔とおんなじですよ。
僕は居間から出ると、図書室に向けて歩き出した。

家主としては、目の前の育児放棄を見過ごすわけにはいかんのさ。









………………………………………………………………………………………………………………









そして僕は図書室の扉を勢い良く蹴破った!!


嘘です。ゆっくり開けました。

「おおっと!知識欲を満足させるのはそこまでだ!!」








しかして返ってきた反応は、僕の声のエコーだけ。
……ありゃ?反応がないぞ?


検索端末の横に、どっかからか運び出したであろう机に突っ伏すプレシアさんを見つけた。



何してんだろうか。
そーっとそーっとプレシアさんの前まで近づく。
寝てやがる。
愛娘放置して鼻提灯か。

気持ちよさそうにグースカかましてるプレシアさんの周りには本がたくさん浮いていた。
片付けるのが大変そうだ。

『いえ、あんなもん一瞬で終わりますが。』

そうなのか、スゲエ。
つーかナチュラルに人の考えを読むな。
ところで、何の本を読んでいるんだ?

…「アルハザード・インストールガイド」「アルハザードご使用の前に…」
「アルハザード・カスタマーマニュアル」…

おいおい、乗っ取るつもりなのかプレシアさん。

『ハハハハハ。大丈夫ですよルカ様。彼女程度の愚脳では、
 ハッキングは愚かシステムのシの字も解析できませんて。』

なんて口の悪いAIなんだろうか。
PCの取説みたいなのがお前のマニュアルなのには突っ込んではいけないのか?

えっと、他には…

……「育児Q&A」「ママとこどもの質問箱」「ベルカ式育児術」「子供に嫌われないために」……




ホロリ。
僕の目尻から、一滴の涙が落ちた。
あんた…もういちど…母親になろうとしているんやね…

母のたゆまぬ努力と失った時間を取り戻す努力に感極まった僕は、
起こさないようにそっと毛布を掛けてあげる。
そんな気配りの出来る男、ルカ・トゥリッリ。
将来は『熟女嗜好』思考に割り込んでくるんじゃないアル!!

思わず叫んでしまったが、それに反応して起きる気配は無い。
夜通し読んでいたんだな。
音を立てないように出口に向かい、静かに扉を閉める僕。
目の前には不安な顔をしたアリシアちゃんがいた。

「…お母さん。どうだった・・・?」

心配要らないよアリシアちゃん。
君のお母さんは研究バカ…いや、バカ研究だけど、
それと同じくらい親バカだからね。
いまぐっすり中だから、向こうで遊ぼうか。











………………………………………………………………………………………………………………













「ぅゎ ょぅι゛ょ っょぃ 」
「いえあー! わーお! はいぱーぼっ!」
「ぉぅ… ぁぁぁぁ…」

ょぅι゛ょヵクヶ"-っょぃ

ぼっこぼこにされました。
4歳差というアドバンテージを感じさせないぐらい完膚なきまでに叩きのめされた。
なんという…屈辱!
とかやっていたら時間は午後7時。

「んじゃそろそろやめよーか。」
「ええー。もっとあそぼーよ!」

おっとリルガー(Little Girl)。ゲームは一日一時間だぜ。
僕はのんびりと立ち上がり、向かう先はお風呂。

「んじゃお風呂入ってくるからね~」

後ろ手にひらひらさせながら、エレベーターに向かう。
向かう先は、屋上。
ちなみにエレベーターは1階トイレの横に設置してあるんだぜ。



さて、「男」「女」「その他」と書かれたのれんをくぐり、
脱衣所のカゴに脱いだ服を入れる。
引き戸を開けるとそこに拡がるのは、
大パノラマな露天風呂だ。
東京ドーム3杯ぶん位の広さのある露天風呂は、
端っこのほうが湯煙で見えないぐらい広いのだ。

『しかも、初夏には菖蒲湯、冬の柚子湯といった、四季折々の
お風呂は勿論の事、あっちこっちで引っ張ってきた各天然温泉が
楽しめるスパリゾート!草津から娘溺泉まで、果ては
(マジで)不老の湯から(前世まで)若返りの湯etcetc...
数多の名湯秘湯を取り揃えてます。』

この物騒なお風呂は僕んちの自慢の一つだ。
ここから見上げる空は、裏庭のおどろおどろしい空ではなく、
キラキラ輝く星を映すちゃんとした夜空になっている。

ってかアル、何時の間にこっちきやがったんだ。

『若い男子の肉体を堪能しにきました』

うるせえ。









………………………………………………………………………………………………………









かぽーん(風呂の音)


「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙…」

つま先からゆっくりと湯船に浸かる。
ふぉぉぉぉお…風呂はいいねえ。
リリンの文化の極みだよって前に渚兄ちゃんが言ってたけども、まったくその通りだァ…

『ええ、まったくです』

ホログラムの癖に風呂に入れる!不思議!
ま、今に始まった事ではないのでとくに驚きはない。
それよりもアル、お前ちゃんと風呂場別れてるんだから、
「その他」湯に行けよー!

『あんなもん脱衣所だけ分かれてて結局混浴じゃないですか。
おやおや、それともアレですか?照れていらっしゃる?
いいわよボクぅ?お姉さんがヤ・サ・シ・ク体キレイキレイしてア・ゲ・ル』

…うぜェ…。

アルのウザさに辟易していると、入り口の扉が開く音が聞こえた。
ん?誰か入ってきウ泡わわあがあwががががあば!!!

「リゾート施設を謳うだけ在るわね。こんな大きいお風呂、ミッドチルダでも中々ないわよ。」
「わーい!お空が見えるよー!」

なん…だと…!?

「あら、ルカじゃない。こんな良い所が在るんなら先に教えなさい。」

プレシアさんにアリシアちゃん…だと…!?

プレシアさんが、バスタオルを巻きつけたままこっちに向かってくる。
はちきれんばかりのバスタオルは、窮屈そうな印象を受ける。
母さんみたいなバランスだ…

結構いい歳なぎゃああああああああああああああああああ!!!

クッ ニコニコしながら局所的にこちらに電撃を浴びせてくるとは…

『ほほう。ババアとは思っていましたが、なかなかのパイオツをお持ちですね。』

アルやめて

「フッ AI風情が生身の肉体に勝てるとでもお思い?」
『ククックッククク… しかし寄る年波には勝てない、といったところでしょうか』

プレシアさんやめて

「ルカおにいちゃんそっぽむいてどうしちゃったの?」』


アリシアちゃんやめて タオルまいて

僕は… 僕は…











僕の意識は そのまま 暗転していった。















「あら、若返りの湯なんてあるのね」
『ええ、前世まで若返りますよ』
「…そこまでは要らないわ。」
『薄めりゃいいんですよ。脳を使いなさい脳を。』
「なるほど。口は悪いけど中々適確な指示を出すAIね」
『当然です。』
「どれどれ…















                         これは!!」











………………………………………………………………………………………………………












はっ!

目が覚めたら全裸で岸に上げられていた。
アリシアちゃんが団扇で扇いでる。
い、いやああああああああああああああ!!!

「あっ おかーさーん。ルカおにいちゃんおきたよー!!
 でも目のハイライトがないよー!!」
「あら、ノボせちゃったのかしらルカ」

み、見られたのか。見られたのだな。
全裸で大の字でノビていたら、見られたんだろうな………。
世界は… 世界はこんな筈じゃない事…ばっかりだ…。

世に希望はないとばかりに虚ろな瞳を、
奥から出てきたプレシアさんに向け………





!?



だッ 誰だ貴様!!!!!


「誰って…プレシアよ。プレシア・テスタロッサ。」

…嘘だッ!!

僕の知っている、僕の知っているプレシアさんは、
そんなに肌がきれいじゃないし結構顔にも小じwぎゃああああああああああああああ!!!!!











極大の紫電に僕は飲み込まれた。















僕は死んだ。












スイーツ(笑)







グフッ
















「ハァハァハァ…失礼なガキねまったく。
 …それにしても…まさかココまでの効能を持つとは…


 アルハザード恐るべしね。」
『恐悦至極。』













第四話 温泉湯煙感電殺人事件 湯煙の中幼女が見たものとは?








END
















後書きに添えて…



特に修正はない


















おまけ


いかにして衛宮士郎が封印指定に至ったのか。その断片。


「でさぁ、あの『掃除屋』、どうするべ?」
「そもそも掃除機に神秘もクソもねーだろ」
「でも、あの『泥』、全部吸ったっつってたぜ?」
「…先遣部隊がさ、魔術色々ぶっぱしたって話したっけ?」
「聞いてないな」
「それ初耳」
「何それ興味深いんだが」
「話すべき死にたくないなら早く話すべき」
「あの『掃除屋』、俺らの追手悉く退けてんじゃん。
 その中の生き残りがさ、スゲー手間掛けて大魔術張ったところに誘い出して、
 四方八方から魔術ぶっ放したんだよ。」
「ほぅそれで?」
「……全部吸われたってよ。」
「(゚д゚)」
「(゚д゚)」
「(゚д゚)」
「(゚д゚)」
「こっちみんな。…一番最近の目撃情報だと…ほら、アイツ。
 科学と魔術の融合だーとか抜かしてたバカいたじゃん、名前覚えてないけど。」
「ああいたねーそんなの!名前覚えてないけど。死んだべたしか自爆事故で」
「うん。魔術を応用した核融合だかであたり一面巻き込んで消し飛んだやつね。
 名前覚えていないけど。」
「あぁ…あれはなぁ…隠蔽がすげー大変だったって、神秘秘匿隠蔽課の同期が和民で愚痴ってたな」
「核ミサイルの誤射ってことになってるんだよな。汚染のせいで向こう800年近く住めねえンだろ?
 で、それがどうかしたか。」
「あの爆心地で見かけたんだってよ『掃除屋』を。」
「自殺志願か?」
「わざわざそんなところ行くなんて馬鹿なの?死ぬの?」
「裏世界でひっそり幕を閉じるつもりか」
「…………例の掃除機で、掃除してたんだってよ。」
「…ハァ?」
「でよ、何人か暇なヤツに調査行かせたんだよ」
「ほうなかなか解っている様だな」
「…放射能全部消えてたってさ。」
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
「吸ったのか?」
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
「吸ったんだろうな…」
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
「正直掃除機としては異常だろ。」
「神秘としても異常だけどな。」
「……俺んちの掃除機この間壊れたから女房に買って来いって言われたの思い出した」
「…俺んちのももはやチリすら吸わないぐらい使い込んだから、
 ここらで吸引力ばつ牛ンなのが欲しかったところだ。」
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
「……封印する?」
「……指定しちゃおうか?」
「…指定しちゃおう」
「どちかと言うと大賛成だな」
「じゃあー満場一致で封印指定と言うことで!」
「異議なし」
「俺も無し」
「右に同じ」
「意義が無いのは確定的に明らか」
「「「「「「それじゃ決議も終わったし、かんぱーい!」」」」」




イギリス、ロンドンは大英博物館近く、モンテローザ系列の居酒屋にて行われた魔術協会会議録。



[9377] 第5話 自宅が…だったし!
Name: aaaa◆5cd5d53b ID:b712c8c1
Date: 2009/06/13 03:30
「母さんと父さんは?」
『お母上はハワードコネクションの総帥と会議に出られてますね。肉体言語で。
 お父上は、砂漠で長い耳のお姉ちゃんたちとキャッキャウフフしながら砂風呂にはいってますよ。』
「父さんは…また母さんにシバかれるぞ」
『ご心配なく。既にお母上にライブで中継繋いでいます。』
「父さんオワタ。」











第5話 無題









前にも言ったと思うけど、僕の父さんも母さんも、仕事仕事でなかなか家に帰ってこない。
ひとり『私を無視するとはいい度胸ですねルカ様。』…2人だけの生活も、もう慣れた。

玄関を開けても、誰もいない何ていうことは当たり前だった。でも、今は…


「ただいまー」

玄関口の廊下の奥から、小さな足音がパタパタと聞こえてくる。

「おかえりルカお兄ちゃん!!」

その後ろからは、際どい服装の上からエプロンをつけた、

「あらおかえりなさい。ちゃんと手を洗ってきなさい。机におやつがおいてあるわ。」

母の顔を取り戻した、プレシアさん。







実は今日から2学期なんですよ奥さん。











…………………………………………………………………………………………………………………








「しかしこのレンジは便利ね。材料を放り込むだけで勝手に料理が出てくるなんて。」
「お母さん料理はリニスに任せっきりだったからね。」
『料理すらできないとは、まさにダメマザーの鑑ですね。』
「うるさいわよクソAI」

食卓は、今日も賑やかだ。

『いい年してあのキワドイ服はないでしょう。プゲラ』
「ねぇルカ、この腐れAIなんとかならないのかしら。管理者権限で」

できたらとっくにしてます。

ホログラムと人間が睨みあうなか、それを遮るようなアリシアちゃんが発言した。
食卓に勢い良く手を突き、そして高らかに宣言する。

「わたしも学校行きたい!」

アリシアちゃんがとんでもないことを言い出した。
ふむ、同い年くらいの友達がいないと教育に悪いとか言ってたっけな。

「ミッドの学校は無理よね。
 なんかの拍子にばれたら管理局の連中の貴重な実験体にされるでしょうし。
 死者蘇生の秘術なんて格好のカモにされるわ。」
「うーん。散のおに…姉ちゃんの所は空気がよくないしなぁ」
『ルカ様アリシアちゃんに零式防衛術でも教えたいんですか?
 そもそも学校じゃないでしょアレは。』
「アリシアは、学校にいって何をしたいの?」
「フェイトみたいに魔法が使いたいのー!!」

うーん。ならなおさらこっちの学校は無理だなぁ。

『リンカーコア云々で魔法を語るようなレベルじゃあ無理ですね』

魔法を教えていて、なおかつリンカーコアに頼らないような世界、
それでいて、僕たちの事が管理局に見つからない所…

うーん。

…秘匿…

…魔法…

…学校…

…学園…

…伝説の木の下…

…長頭…


!!


「あった!」
『ありますね。該当箇所が一つ』


「あ、あるの?」










~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~











「んじゃ、よろしくね近衛じいちゃん。」
「うむ。任されよう」


ぱっと見妖怪に見えるような頭を持ったじいちゃんに、お礼を言う。
僕たちは今、麻帆良学園の学園長室にいた。
デカイ学園長の机の前に、アリシアちゃんたちが並んでたっている。
僕は近衛じいちゃんとアリシアちゃんの中間地点ぐらいのところの壁際に、
足をぶらぶらさせながら座っていた。

「エドワード君には学園の事でいろいろ借りがあるからの。
 このくらいお安いご用じゃよ。」

父さんは昔、この学園で働いていたらしく、
なんでもこの学園の結界を最初に張ったのも父さんの仕事らしい。
しかし張った当初はあんまりに強力すぎて魔法使いはおろか、一般人も入れなかったって逸話があり、
父さん自身笑いながら教えてくれたことがある。

でも張られた方はたまったもんじゃなく、学園長先生他いろんな魔法使いの人たちが
三年がかりでやっとこさ結界を弱めたっていってた。
その後、電力を利用した結界とあわせて、もうちょっと融通が利く結界にしたらしい。

父さん結局邪魔しただけじゃないか?
はた迷惑な親父だ。

それでも父さんの仕事は、
そんなものがどうでも良くなるぐらいの功績を一杯残したらしいけど、
恥ずかしいのか父さんにそれを聞いても、はぐらかすばっかりで教えてくれなかった。

「さて、アリシア・テスタロッサちゃん、今日から君は麻帆良学園幼等部じゃ!
 魔法についても一人魔法先生をつけて、マンツーマンでみっちり教えよう。」

しかしスゲぇ待遇だ。マジで父さん何をやらかしたんだ。
アリシアちゃんが喜色満面の笑顔でお礼を言う。








「ありがとうぬらりひょん!」









瞬間、空気が凍った。
アルが腹を抱えて笑ってやがる。お前か教えたのは。

「あ、アリシア、だめでしょ!ご、ごめんなさいコノエさん。」

慌てて頭を下げるプレシアさん。
近衛じいちゃんはフォフォフォと、バルタン星人みたいな笑い方をして髭をなでている。
でも僕は見つけてしまった。
プレシアさんとアリシアちゃんの方、顔の前面からでは見つからないが、
後頭部、様は僕の方だと見える側面には凄いデカイ井桁が出来てるのを。

「なに、どうせまたそこらに浮かんどる筈の腐れAIの仕業じゃろ」

お見事、そのとおりです。

近衛じいちゃんはアルのことを知っている此方で唯一の人だ。
他の人には、アルのことを電子の精霊として紹介している。
たまに僕がここの学園をアルとうろうろしても、事情の知っている人たちには
「おお、あの人は電子の精霊の加護を得た子ではないか!」等と
ちょっと珍しい物を見るような目で見てくる。

そんな高尚なもんじゃないよじいちゃん。

「それと、プレシア殿には、この学園で教師をやってもらうがそれでよろしいかな?」

そしてもう一つのビッグニュース。
なんとプレシアさんは臨時教師として麻帆良学園で働くことになったのだ。
曰く、ミッドの次元世界じゃあり得ない異世界(麻帆良学園ね)の魔法技術に、
えらく研究者魂が惹かれたらしい。
それに、アリシアちゃんとももっと一緒にいてあげたい、とも言っていた。
恐らく後者が本音だろう。


『ツンデレですね。』
「ツンデレだな。」

ともかく、熟女ニートリリカルプレシアは、魔法先生プレシあ!に進化したのだ!

「ご存知の通り、わし等は教職者の裏に「魔法使い」という秘密の肩書きがある。
 そして、この魔法は一般の人々には固く秘密にされておるのじゃよ。
 もしそれを破り、一般人の目に魔法が発見されたときには……」

プレシアさんとアリシアちゃんは、真剣な面持ちで話を聞いている。
そんなたいした話じゃないですよお二方。

「魔法でオコジョになってもらう。」

あ、ほーらズッコけてる。
見事なコケようだわ。

でもなんでオコジョなんだろうね。









~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~










その後プレシアさんは一般の教師の他に、魔法先生としての仕事の説明を受けた。
この麻帆良学園は、所謂聖地的な位置にあって、この場所を狙う不届きモノが
たまに結界を乗り越えてやってくる。

魔法先生は、それを撃退するのが仕事だ。

まぁ、狙ってるのは場所だけではないんだけどもそれは割愛。
それに、プレシアさんはあっちじゃあ大魔導師とか名乗ってたし、
アリシアちゃんのいる学校の事となれば修羅の形相で侵入者を撃退してくれる事でしょう。

『じじい、策士ですね。さすがじじい汚い。』
「うるさいわい腐れAIめ。明日から来れるかの?」

「はーい!!」
「よろしくおねがいしますね、コノエ学園長。」

それじゃ、僕たちは一旦帰りましょっか。
お腹が空いたしね。

「それじゃあ、君達の住居の手配もあるのでこの辺での。」
「ばいばい!あたまのながいがくえんちょうせんせー!」
「こっ こらアリシア!!(この腐れAIどうにかして頂戴、娘の教育に悪影響だわ)」
「じゃーね近衛じいちゃーん(慣れてください。としか言えません)」
『それでは失礼しますぬらりひょん』

「最後まで失礼なヤツじゃのこの腐れAIは。

 では明日な、アリシアちゃんにプレシア先生。
 それとルカ君。お見合いのいい返事期待しておるぞい」


……次は数ヶ月空けてこようと思った。
うーん、スプリングフィールド君も授業中だっていうし、会えなかったな。
次来た時でいいか。

「ド・コディモーダ」展開っと。
      :
      :
      :
      :
      :
      :
      :
      :
      :
      :
      :
      :
      :
      :
      :
      :
      :
その後、アリシアちゃんとプレシアさんは麻帆良学園領内(寮ではないよ)に住む事になった。
理由としては、学校の行きかえりにド・コディモーダを使えないからだ。
麻帆良学園に張ってる結界は、この世界でも有数のガンコな結界らしいので、
ホイホイと結界を抜けて登校されたら、バレた時にどうしようも無い、というのがある。
僕やアルの場合ならば結界を通過した際の反応なんて幾らでも消去できるけど、
アリシアちゃんやプレシアさんたちだけで結界を抜けた場合だと、
どうしてもアルの補佐がないと結界通過反応が消せない。
基本的にアルは自宅待機(母さんや父さんに呼ばれることもあるけど)の僕のお目付け役だしね。
それに、アリシアちゃんに友達が出来た時、自分の家に遊びに誘えないってのも大きい。
そこら辺僕はちゃんと考えてたので、麻帆良に住む事をプレシアさんに提言したのだ。

僕自身、友達の家に遊びに行っても、友達は連れてきちゃダメって母さんや父さんに言われていた。

要するに、アルハザードとは求め辿り着いた果てにあるガンダーラのような物で、
ぽこじゃかぽこじゃかと人が入ってきたりすると、希少価値が無くなる、という訳だ。

ま、そんな訳でうちン家は知る人ぞ知る雑誌に載らない名店よりも更に見つけにくいホテルみたいなもんなのだ。

最近来た人も、ちょくちょくやってくるゼルレッチ爺ちゃんや八雲さん、
一目こっちを見て頭を抱えてから滅多に来なくなった青崎の姉ちゃん、
それと偶然やってこれた(まぁそれでもかなりの努力を払ったと思う)プレシアさんファミリーぐらいだけだし。

家の離れに住んでいる英霊の人たちは施設の利用者と言うよりは住み込みの警備員だしなぁ。

まあでも土日はプレシアさんたちもこっちに戻ってきたりするけどね。












………………………………………………………………………………………………………

















「…相変わらず、転移の前兆すら見せずに消えるの、彼らは。」

喧騒が収まった学園長室に、老人の呟きが響く。
しかしその静寂も、すぐに扉を蹴り開ける音で破られた。

「おいじじい暇だから囲碁の相手を…て、なんだこの魔力残滓は?
 どんなバカ魔力の持ち主だとココまで魔力が散布するんだ?」

厚顔不遜な態度で、一人の少女が中に入って来る。

「ああ、新しい生徒と魔法先生じゃよ。」
「新しい魔法先生──このバカ魔力の持ち主か。
 まったく、あの小僧といい……真面目に教師を目指してるヤツが泣くぞ。




 …しかし、どんだけの化物を雇ったんだ?」











「娘思いの、良い人じゃよ。」








(……とりあえずアリシアちゃんにつける魔法先生はネギ先生でええじゃろ、年も近いしのう。
 まあ、魔法を人に教えた事はないじゃろうし、これも一つの経験じゃな。)






「ところでエヴァンジェリンよ、ネギ君のことなんじゃがな、
 実は今度学園のメンテナンスと言うことで、停でn.............................












第5話 魔法先生プレシあ!









END















後書きによせて…





前は20話こしたらリリカル板にでも移動しようかと思ってたんだけど
A's編終わった後で考えてた紅霧異変編とか聖杯戦争編とか死狂編とか使い魔編をもし書いた場合、
やはりリリカル板から撤退しなければならないんだろうかと思ったりなんかしちゃったりして。
そこまで続くか判らないけど。
そうだね、皮算用だね。





[9377] 自宅が…だった!外伝 魔法先生プレシあ! 第1幕
Name: aaaa◆5cd5d53b ID:b712c8c1
Date: 2009/06/14 21:53
『謎の外国人美人教師あらわる!?』

「まるで一枚の絵画を見てるようだった。」

そう答えるのは取材班のひとり、朝倉和美女史の談である。
紫黒色の髪の美女についての情報を得た我々まほら新聞取材班は、事の真偽を確かめるべく
同じく我が校で教鞭をとる、N・S氏に突撃取材を敢行した!

「あ、明日から教師としてこの学校で働くことになったんですよ」

─どのような印象を受けましたか?

「そ、そうですね、優しいお母さん、ていうかんじです、お子さんも可愛らしい子で」

─お子さんもいらっしゃるのですか?

「あの、も、もうこれ以上は…」

─お子さんもいらっしゃるのですか?

「あいた、い、いたいです。お子さんは、幼等部に入学されるみたいです」

─キュンキュンきちゃいましたか?

「なっ 何を言わせようとしてるんですか朝倉さん!あいたっ」

─キュンキュンきちゃいましたか?

「や、やめ、マイクを口にガンガンあてるのは、やめ、いた、いたいです。
 あ、アスナさん助けて」

「くぅぅおぉぉぉらぁぁぁぁぁなにネギいじめてんのあぁぁぁさぁぁぁぁくぅぅぅらぁぁぁぁ!」






─取材班のテープは言論統制により破壊されてしまったが、
今後も新たな情報が発見され次第報道を続けるので、待て続報!

-文責:朝倉和美-










麻帆良のパパラッチの仕入れた特ダネは、その日の内に号外として学園中に発布された!
翌日の臨時朝礼の出席率は、100%であったという。当然か。

さて、臨時朝礼が行われ、教員たちが連絡事項等を告げる中で生徒達の視線は
学園長席に釘付けであった。
別に学園長の長い頭に注目が集まっているわけではない。
慣れたものだからだ。

問題は、その横に座る見慣れぬ妙齢の女性─。

「では、本日よりこの学園の教員として教壇に立つことになった、新しい先生を紹介しようかの。」

頭と同じぐらい長い学園長のお話が終わると、俄かに学生達が色めきだつ。
学園長の紹介に促されたその女性は、ゆっくりと壇上に上がっていった。
膝丈のスカートから伸びる足は、流石外国人と思わせるほどに細く長く、美しい。
ジャケットは、豊満な胸を収めるのに既存の物ではいささか窮屈すぎるのか、はちきれんばかりだ。

「はじめましてみなさん。今日から、この学園の教壇に立つことになりました、
 プレシア・テスタロッサといいます。
 不馴れな点もあると思いますが、どうぞよろしくおねがいしますね。」

そう言って彼女…プレシア・テスタロッサは笑いかける。

彼女の物腰に、容姿に、数多の男子生徒は歓喜の声を挙げ、
数多の女子は大人の雰囲気に、羨望のため息をはいていた

そして彼女のその笑顔は、アースラのクルーが見ていたら我が目を疑うほど、
真っ直ぐでやさしい、



母の笑顔だった。












自宅が…だった!外伝 魔法先生プレシあ! 第1幕






プレシアはネギ先生と歩いていた。
普通なら、「労働基準法はどォしたァアアアアアア!!!」だの
「ショタ先生ハァハァ」だのといった意見が飛び出すところだが、
プレシア・テスタロッサのいたところは就職年齢の著しく低いミッドチルダだ。
魔力の高さがモノをいう世界、少年兵?なにそれおいしいの的な次元世界を
生きていたプレシアにとって、なんら不思議な事は無いのである。
ネギもネギで、いつもなら「労働基準法ってなんだふざけやがってクソックソッ!!」だのを
初対面の人間に言われている事もあり、「また説明しなきゃならないのかな…」なんて
思うくらいうんざりするほど繰り返したやり取りも無く、スムーズにプレシアと話が出来たので、
かなりホッとしていた。

「人に何かを教えるって言うのは、中々難しい事よ。その年で教師が出来るなんて立派よネギ先生」
「い、いやぁ、それほどでもないですよ…」
「フフ、何か判らない事があったら、遠慮なく聞くから覚悟してね?先輩。」

アルフが見たらショックで死んでしまうような会話が繰り広げられる。
そして、その光景を見ていた者たちはこぞって
「コブつき未亡人と少年の危険な恋…   ある!」だの
「少年先生と新任お色気ムンムン女教師のイ・ケ・ナ・イ教育実習…   ある!」だの
「俺×ネギ先生… ある!」といった
不穏な動きを見せていた。

そんな動きはさておいて、プレシアがネギと共に歩いているのには理由がある。
学園長が、アリシアにつけると宣言していた魔法先生が、ネギ少年その人だったからだ。
ミッド式魔法の才能が無いアリシアも、魔法系統のまったく違う麻帆良(コチラ)の魔法ならば、
もしかしたら使えるのではないか…
それに、アリシアも同年代の友達が欲しいとも言ってたし、一石二鳥である。
いや、次元航路すら確立されてない、確立される可能性もZEROに近いこの世界。
加えて未知の魔法系統ときたら、研究肌のプレシアが食いつかないわけが無い。
むしろ一石三鳥なのである。

「(それで、アリシアの調子はどうなのかしら、ネギ先生?)」
「(うわっ! びっくりした、プレシア先生、契約もしてないのにテレパティアが使えるんですか?

!)」
「(それとはちょっと違うわね…“念話”っていって、私の世界では一般的な技術ね。)」
「(へぇ~、すごいんですねー!)」
「(ま、それについては今度ゆっくりと教えてあげるわネギ先生。
 それでアリシアの方はどうなのかしら?)」
「(うーん… それは実際に見てもらったほうがいいと思いますので、ちょっと来てもらえますか?

)」

ニコニコと笑いながら廊下を歩いていく二人。
玄関から外に出て、広大な森にむかってしばらく歩くと、
切り株にアリシア、そしてイタチがいた。

「イタチじゃねえ!オレっちはオコジョだ!!」
「あら、こんなところにもスクライアの一族はいるのね。」
「スクライアだかスクライドだか何だかしらねーが、オレっちは
 由緒正しいオコジョ妖精だ!そこいらの盗掘フェレットとは一つも二つも格が違うんでい!
 あれ?オレっち何を言っているんだ?」

それは誰にもわからない。









───────────────────────────────────












「…というわけなんですよ…。やっぱり、麻帆良(コチラ)の魔法も、使えないみたいですね…。」
「…そう、ありがとうネギ先生。」

気落ちしている2人、いや、離れたところでも下を向きながらイタ「オコジョ!」オコジョと
遊んでいる少女も合わせると3人。

友達が欲しいというアリシアのためにコチラのやってきたのはいいものの、
あわよくばコチラなら魔法が覚えられるんじゃないか─といった二人の淡い思いは、
ネギ先生の奮闘虚しく、無情にも打ち砕かれてしまったのだ。

「いいもんねー… 魔法が使えなくてもカモくんがいるモンねー…」

ハイライトの消えた目でカモミールと遊ぶアリシア、その回りの空気は黒く濁っていた。
このままでは股を裂く遊びを思い付きかねないその表情に、カモミールは悪寒を抱く。

「(兄貴ー!な、なにか魔法以外に出来そうなことを!!このままじゃオレっちは!!)」
「(そ、そんなこと言われても!!!)
 あ、でも、さっき中国武術研究会の古菲さんが、アリシアちゃんの動きを見て、
 あ、動きって言うのは、古菲さんはその研究会の部長さんでして、
 ちょうど部活動の修練中にアリシアちゃんがやってきてですね、
 見せてー!て言われてまして、見せてるうちにやって見たい!
 って言われまして、それでちょっと教えていたら、ちょっと型を教わったりしてたんですが、
 そ、そしたらですね、古菲さんがですね、アリシアちゃんの動きをみて、
“彼奴め…天稟がありおるネ”って言ってましたし、
 も、もしかしたら魔法よりも、ぶっ武術の方が、向いてるんじゃないかなーって、
 あ、あは、アハハハハハ…」

超テンパッていた。

「…そう…アリシア、あなたはどうしたいのかしら?」

哀しげな瞳でアリシアを見つめるプレシア。
哀しげな瞳でネギをみるカモミール。
哀しげな瞳で、カモの股を裂きながらアリシアは言う。

「私は…  “ぶじゅつ”もおもしろそうだけど… やっぱりフェイトみたいに
 魔法がつかいたい…。」

小さな少女の、大きな慟哭。
地に落ちる少女の大粒の涙は、ひたすらに地面を濡らす。














『だったら契約でもすりゃいいじゃないですか。雁首そろえてバカばっかですか。』
「おいーっす。ひっさしぶりースプリングフィールド君。」

闖入者登場。次元を切り裂き突然にゅるんとやって来たアルとルカ。

「契約ってしたら魔力の供給ができるんでしょ?だったら魔法使えるんじゃないの?」

三人よっても文殊の知恵が出ない時、
まったくの第三者が光明を与えてくれる場合がある。














「「その手があったか!!」」












あっていいのか?






母×娘とか不味いだろう常識的に考えて。










END









次回予告!!

母と娘、禁断の「魔法使いの従者」の「契約」とは…!?
百合の花咲き乱れる森の奥、
そこに渦巻く数多の欲望。
果たして、アリシアは魔法を使えるようになるのだろうか!?

そこに現れた第三の来訪者…!

「…毎度毎度の事なんだが…今度はどこなんだルカ君?」

赤い鉢巻とグローブ、白い胴衣を着たこの逞しい男は一体…?!

「無理言ってすみません、この子…アリシアちゃんにご指導賜りたく。」

戦いの遺伝子が、新たな力の存在を察知する!

「むっ!」
「どうしました部長」
「…強者のニオイがするネ…  森の奥ネ!!!」

魔力の無い少女の得た、新たな力とは…?!

「これが… わたしのアーティファクト…?」










次回「魔法先生プレシあ!? 殺意の波動に目覚めたアリシア」








「「「「ドライブイグニッション!!」」」」















嘘です。


全部嘘です。





[9377] 自宅が…だった!外伝 魔法先生プレシあ! 第2幕
Name: aaaa◆5cd5d53b ID:b712c8c1
Date: 2009/06/14 21:55


麻帆良の校舎から離れた森の奥、少し開けたその場所は
認識阻害の結界によって守られた誰にも見えない秘密の場所。
何が起きても分からない。何が起きたか分からない。
誰にも何も分からない。
秘密の場所。


「…本当に私でいいのかしら?初めては、好きな人のためにとっておく物なのよ…?」


「ううん… お母さんだから… お母さんが大好きだから… いいよ…?」


「アリシア…」


「お母さん…」



薄灰髪の女性が膝をつく。
なぜならば、このままでは少女に届かないから。
膝をついた体勢のまま伸ばした女性の手が、優しく少女の髪を撫ぜる。
つっかかることなくさらりと梳ける少女の金髪は、たわわにみのる稲穂のように美しく日を浴びて輝く。
しばらく髪をなでてから、その手は少女の頬に当てられる。
心なしか、少女の瞳は潤いを帯び、頬はほんのりと薄紅に染まる。
しばらくして、決心をしたのか少女の瞳が閉じられた。
少女のぷくりとした唇と、女性の妖艶な唇がゆっくりと近づき───


重ねられた。


一瞬が永遠にも感じられるような時間、
離れた二人の唇からは、日の光を反射する淫靡な糸が一筋張られていた。











自宅が…だった!外伝 魔法先生プレシあ! 第2幕










真っ昼間から百合の花咲き乱れる展開に、カモミールは興奮しながら
フリーのカメラマンも真っ青な勢いでガツンガツン写真を撮っていた。
その隣では、目を手で覆うも指の隙間からしっかり見てるネギが顔を赤くしている。
御年9才の少年である。こんな教育に非常に悪い物を見たら、
「まっ ママー! お、おちんちんがやきもきするよおおおおお!!」
「あらあら、どうしちゃったのかしら…!
(嗚呼… 私たちを置いて逝ってしまった夫よりも…大きいわ…)
 大丈夫よ、心配しないで。これは悪い毒なの、でも今すぐママが吸いだしてあげるわ…」
となりかねない。

しかし、彼は少年でありショタであると同時に一教員であった!!
その矜持が、プライドが、使命が彼を踏みとどまらせたのだ。

まっこと、ネギ先生は教師の鑑よのう!!

「…これで、仮契約(パクティオー)が済みましたよ。」
「ごちそうさまでした。大変素晴らしい物を拝ましていただきましたぜ。」

そう二人は言うが、プレシアとアリシアにその違いがよくわからない。

「こんな簡単に済んでしまうものなのね。どうかしらアリシア?」
「んー よくわかんない。」

魔力を持った事の無いアリシアに、魔力湧いてるゥ?なんて聞いても無駄なのである。
そこで登場するのが我等がネギ先生であった。

「それでは、もう一度基本をやってみましょう。はい、杖を持ってくださいねー」
「うん… ぷらくて・びぎ・なる!火よ灯れ!!」

子供用の杖(さきっぽに星が付いてる可愛いやつ)から、今度はちゃんと火が灯る。










今のはメラゾーマではない、メラだ級のヤツが。









轟々と燃え盛る杖の先をみて、アリシアは喜んだ。

「やったー!!お母さん魔法使えたよー!!わーい!!!」

喜んではしゃぎまわるアリシアを、プレシアは

「よかったわねアリシア」

と目元に涙をうかべ、拍手をしていた。親バカはここに極まった。

「ほらカモくーん!魔法つかえたよー!ほらほらー!!」

燃え盛る業火を放ちながらオコジョを追い回すょぅz…少女。
それをおろおろしながら追いかけるショt…少年。
尻尾に火をつけながら逃げ回るフェレtt…オコジョ妖精。
それを微笑ましげに見守るバb…妖艶な女性。


ここは地獄であった。












───────────────────────────────










1時限目  ミッド式魔法実践
 
「そう、上手よアリシア。そのままそのまま…」
「うーんうーん…」

アリシアの回りには、フォトンランサーが三つ待機していた。
その手には、プレシアのデバイスが握られている。

想定通り、契約によって魔力の供給が可能になったので、ミッド式の魔法も使えるようになった
アリシアに、えらい良い表情で魔法を教えるプレシア。
それを、興味津々といった表情で見ているネギとカモミール。
魔法といったら、始動キーを引き金として周囲の魔力を取り込み
杖なりの魔法発動体を通して実行するタイプしか知らないため、
次元世界のリンカーコアを介し、デバイスによって魔法を
発動するタイプは見たこともないし聞いた事も無かったので無理も無い。


「そうね、それじゃああの木に向かって打って見ましょうか。」
「うん! フォトンランサー ふぁいあー!」

声高に響く発射の号令と共に、一本の大木に向かって放たれるフォトンランサーは、
標的の木を四つに分断した後も止まらず、何本か更に後ろに生えていた木をぶち抜いていった。
ぶち抜かれた木は、プレシアの電気変換資質の影響を受けたのか
ごうごう燃え上がっていた。

「や、ヤバイぜ兄貴!!!」
「か、火事が!しょ、消防車です!!水!水ーーーー!!」

燃え盛る森を背景にして、プレシアはアリシアを抱きしめてグルグル廻っていた。

「すごいわアリシア!始めてなのによくできたわね!!」
「えへへー!!」

火の粉は廻る二人に連れ添う様に空へ舞い上がり、
燃え上がる木々は二人を祝福する篝火のように煌々と空を照らしていた。


後ろでは必死に消火活動をしている少年と小動物が居たが。













「「魔法大☆成☆功!!(母子すごくいい笑顔でカメラ目線)」」














2時限目  麻帆良式魔法(暫定呼称)座学&実践


「…というわけで、アリシアちゃんに判りやすく言うと、
風の精霊は雷とも仲良しなので、雷が得意なアリシアちゃんも
もしかしたら風属性の魔法が使えるかもしれない、ということなんですよー。」

「ふーん。」

現役の先生は伊達ではなく、5歳時に実にわかりやすい魔法の授業を行っていた。
でも教えられている当の本人は上の空だった。
理論はどうでもいい、問題は魔法が使えるかどうかだ!
と言わんばかりに生返事を繰り返していた。
経験浅いネギ先生には実に物分りのいい生徒だ、とちょっと感動していたが。
と、ここでネギがおもむろに杖を取り出す。

「それでは、実際にやって見ましょうか!」
「うん!!!!」

すごくいい返事だった。

杖を構えながらアリシアに説明を続けるネギ。
純粋に攻撃の魔法だとさっきのこともありちょっと怖かったネギは、
捕縛効果のある魔法の射手・戒めの風矢を教える事にした。

「それでは、僕がいまからやってみますね。
“風の精霊17人。縛鎖となりて敵を捕まえろ。”」

詠唱を続けるネギから、どこからともなく風が流れてくる。
キラキラした目でそれをアリシアは見ていた。
ちょっと離れたところでそれを見守るプレシアと、
焦げた尻尾に涙目でオロナインを塗っているカモミール。

「“魔法の射手・戒めの風矢”!」

そして放たれた17本の風の矢は、近くの木に当たり、
梢をざわざわと揺らす。

「それじゃ、やってみてくださいね。」

アリシアから離れ、フォトンランサーで切り倒された木の切り株に
腰掛けてちょっと一服するネギ先生。
けっこうしゃべり通しだったために喉が渇いている。
(アリシアの生返事を勉強熱心と思ってしまった)
手に持ったちっちゃな水筒には紅茶が入っているのだ。

一方アリシアはふと考える。
今ネギ先生が呼び出したのは17人の風の精霊らしい。
それで17本の矢が飛び出した。
…風の精霊って何人いるんだろー?と。

「………よし!

風のせいれい“1万人”!」

ブフォッ

ネギは毒霧の如く紅茶を噴出した。
魔法を使える、とは言ってもその原動力はプレシアの魔力である。
よそから借りたガソリンでエンジンを回しているようなもので、
よそのガソリンが空になればやっぱり魔法は使えないのである。
そして魔力とは術者の精神力、つまり心のガソリンだ。
精神力が空になると、限界を向かえ気絶してしまう。
噴出した紅茶をハンカチで拭きつつプレシアを心配するネギだったが。

「うん、さすがは私の娘ね。」

まったくピンピンしてた。
げに恐ろしきはプレシアのリンカーコアである。
大魔導師を自称するだけあり、さすがに格が違ったのだ。

そして、彼女の視線を追う先にあった、空を覆いつくさんばかりの魔法の矢に唖然とするネギ。

「“ばくさとなりてカモくんを捕まえろー!
 魔法のしゃしゅ! いましめの風矢ー!!”」

塗っていたオロナインをカモミールは思わず落とした。
次の瞬間には、一万の矢がカモミールめがけて殺到していたからだ。
脳裏を過ぎるのは、箪笥からブラジャーを盗み取る自分、
引き出しからパンティーを掠め取る自分、ネギと初めてあった時の自分…
世に言う走馬灯だった。

「兄貴… 兄貴と会えて… オレっち、本当に楽しかったぜ…」

「かっ カモくぅぅ──────ん!!!!!!」




どすどすどすどすどすどすどす














「「魔法大☆成☆功!!(母子すごくいい笑顔でカメラ目線)」」



















3時限目  体育



「あしゅらフラッシュムーブ!
めっさーつ!ごうフォトンランサー!」

「ぎゃーす」
「かっ カモくーん!!」







「「魔法大☆成☆功!!(母子すごくいい笑顔でカメラ目線)」」








4時限…

「サンダg…

「ぎゃーs…
「かっ カモ…

「「魔法大…






5…

「マハジオry

「ギャry
「カッry

「「魔ry





……
::::
::::



....
:
:






















下校 








「…という事があったのよこれでアリシアも魔法が使えるようになったわフフルカ君のお陰でもあるわねわざわざアリシアのために学校まで手配してくれたんだものお礼を言わせて頂戴あっでも身体はダメよ身も心も既に亡き夫に捧げているからねウフフフフそれにしてもアリシアのデバイスをどうしようかしらバルディッシュと同型の方がいいかしらねそれともちがうタイプのものがいいかしらウフフフバリアジャケットのデザインも悩みどころよねあえてフェイトと同じで色を白にそろえてふたりはテスタロッサ姉妹なんていうのも素敵だと思わないウフフあらルカ君きいているのかしらウフフ」




アリシアちゃんとアルは既に寝ています。
時刻は金曜日深夜2:43です。
土日に何時も返ってくるけど、今日に限っては妙に早く返ってきたと思ったらごらんの有様です。
いい加減僕も眠いです。
さっきっからずっとこんなかんじです









かんべんしてください







「いるのまったくそれでねデバイスはやっぱりバルディッシュとおそろいにしようかとおもうのだけどどう思うかしらああでもやっぱり同じのってのは能が無いわよねわかるわそれじゃあどんなものがいいかしらねそうねやっぱりアリシアの希望を聞くのが一番ねそれじゃあデバイスについては保留という事で次はバリアジャケットねフェイトと色違いのバリアジャケットなんか色が映えて素敵だと思うのだけれどルカ君はどうおもうかしらちょっとルカ君聞いているのまったくそれでねバリアジャケットはやっぱりフェイトとおそろいにしようかと思うのだけどどうおもうそうねやっぱりアリシアの希望を聞くのが一番よねそれじゃあ麻帆良式の魔法の始動キーなんだけどこれはやっぱりアリシ」





目… 目が…



目がぁぁ……
















かゆ          


               うま













END






後書きに添えて




俺×プレシア



[9377] 第6話 自宅が…だったが!
Name: aaaa◆5cd5d53b ID:b712c8c1
Date: 2009/06/14 21:57
夕方、暮れなずむ町並みに小さな影が四つ伸びる。

「みんなかっこよかったねアリサちゃん!」

少し顔を上気させながら興奮した様子で、紫のウェーブのかかったロングヘアーを揺らす少女に、
アリサとよばれた少女は答える。

「なのはのお父さんの教え方がうまいのね、あれは」

これまた金髪ロングヘアーをした少女は、腕を組んで頷くように首を縦に降っていた。

「にゃははは。そんなことないの。元々みんな上手かったの。」

なのは、と呼ばれた少女は顔を赤くしながら照れている。

「アンタも男の子だったら、サッカーでもして外に出なさいよね。」

アリサにそう言われるも、三人の後ろを歩く少年の表情は変わらない。

「僕はインドア派なんだよ。」
「そんなこと言ってるから、体育のマラソンでもドベなのよ!」

アリサは立ち止まると体を後ろに向け少年に指さした。
しかし少年は動じない。

「マラソンは今後の僕の人生に存在しなくても全く困らない!」

グっとコブシ握り、誇らしげに高らかと宣言する少年に紫髪の少女─すずかは苦笑いを浮かべる。

「お姉ちゃんも、恭也さんみたいに運動できる人が好きっていってたよ?」
「あんた年上好きだものね。いいの?忍さんに嫌われちゃって?」

アリサは意地悪そうな笑みを浮かべるが、それでもやはり少年は動じない。

「人の恋路を邪魔するやつは、馬に蹴られて死んじゃいます。僕はそこまで野暮じゃあない。」

腕を広げて肩をすくめる、やられたほうはなんかムカつく
態度を取る少年に、いよいよアリサの堪忍袋がぶちきれた。

「あーもう!あー言えばこう言う屁理屈おばけめ!
あんた一回恭也さんとこで修行でもしてきなさい!!」

そして、茶色いツインテールの少女、高町なのははゆっくりと口を開けた。









「それがいいの。お兄ちゃんに話は通しておくから、ルカ君、週末を楽しみにしてるといいの。」











ここに来て初めて少年に動揺が走った。
瞳孔は開き、手足は小刻みに震えている。
背には、冷たい汗がだらだらと流れていた。
少年は、いきなりなのはに向かって飛びかかり…






その直前で膝を降りながら落下し平伏する。










「それだけは勘弁してください!!」

見事なジャンピング土下座だった。
少年は、目から止めどなく涙を流している。
自己保身に走る少年の、酷く無様な光景だった。










第六話 無題













僕の誠意のお陰で、週末の確定的な死は避けることができた。
嗚呼、世界は斯くも残酷で美しい。

『さっきの土下座は傑作でしたね。映像資料として図書室に保存しました。』

ランドセルの隙間から滑り出すようにアルが姿を表す。
その登場の仕方は心臓に悪いから辞めてくれ。
そして未来にあの映像を残すのは辞めてくれ。
なおかつここで姿を表すのは辞めてくれ。

『ご心配なく。私の姿は今ルカ様にしか視覚できないようフィールドを展開しています。
見てくださいあのおばちゃん。生暖かい目でルカ様を見ていますよ。』

ぎゃあ

そこいらに住んでいるであろう買い物帰りのおばちゃんが、気の毒な目で僕を見ていた。

僕は死んだ。
スイーツ(笑)

『三度目はもうつまらないですよ』

うるせえ。

小さな声で口論しながら玄関の扉を開けて、居間に入る。
そこではアリシアちゃんとプレシアさんが何やらテレビを見ていた。
珍しいな。
アリシアちゃんはともかく、プレシアさんはテレビを滅多に見ないのに、
食い入るように見つめている。
なにやらボソボソ呟いているようだ。
気になって後ろに回ってみると、
高町さんから借りたテスタロッサさんのビデオメールが写っていた。

「ああ…フェイトかわいいわフェイト…。
 フェイトフェイトフェイトフェイトフェイトフェイトフェイトフェイトフェイト…」

…これはひどい

「『ダメだこいつ…早く何とかしないと…』」

珍しくアルと意見が一致した。

「ねえルカお兄ちゃん。私たちもフェイトにビデオメール送りたい!」

なんて無理難題を押し付けるんだこのお子さまは!
アル、例の映像を。

『御意に』

テスタロッサさんのビデオメールが突然中断され、
そこに映し出されたのはアースラが捉えていた最終決戦のシーン。

テスタロッサさんに辛辣な言葉を吐きかけながら、アリシアちゃんと虚数空間へ落ちていく姿だ。
どっから入手したんだって?それはアルに聞いてくれ。

「やああああああああめてええええええええええええええ!!!!」

罪悪感と羞恥心で頭を抱えながらゴロゴロと悶え転がるプレシアさん。
スカートなのにそんな動きはやめて。




…あっ


紫なんだ…





いかんいかん!煩悩よ退散せよ!!!!

『こんな悲しいシーンでも、BGMと演出でご覧の通り。』

マンボNo.5の軽快なリズムにノって、
画面では落ちる瞬間のプレシアさんたちが早送り巻き戻しを繰り返している。
それを見てアリシアちゃんゲラゲラ笑ってる。





なんだこのカオス空間は。









………………………………………………………………………………………………………………






要するにだ。
僕が借りたビデオメールを見て、どうしてもテスタロッサさんに会いに行きたい、と。
でも、今ノコノコとテスタロッサさんに会いにいったら、ショック死しちゃうぞきっと。

「せっかくあえてもそれはいやー!」

でもいつまでもここにおいておく訳にもいかないし、
近い将来会えるから、それまで我慢してね。

『具体的に言うとA'sのクライマックス辺りですね。』

…?

…たまにこのAIの言っていることがよくわからない。

そんなこんなで今日も夕食…といいたいところだが、冷蔵庫を開いて愕然とする。
まさか何もないとは想定外だ。

「見事に空ね。買いに行きましょうか?」

お心遣いはありがたいのですがここには管理局の皆様がいますのでご自重ください。

「ねぇ、食べ物を入れないと料理出てこないのそのレンジ?」

いや… それは……

『アルハザードの技術を嘗めてもらっちゃ困りますね。
 土やガラスや劣化ウラン弾からでも、霜降のステーキを生産できますよ。


極端な話、ウ●コつっこんで食べた物に戻すことも可能です。』

そう、物体であるなら、このレンジは材料を厭わない。だけど…

「ソンナモノでできたご飯、食べたい?」
「「絶対イヤ」ね。」

ですよねー。
というわけで、買い物に行く。
    ・
    ・
    ・
    ・
    ・
    ・
    ・
    ・
「いってらっしゃいルカ。気を付けなさいね。」
『ついでに今週のモーニングも頼みます。』

行ってきますプレシアさん。
ただしアルハザード、てめーはダメだ。

てな事で唯一動ける僕が買い物に行く事になった。
目的地は「スーパーベジータ」。

母さんも行きつけの、新鮮な産直野菜が自慢のスーパーマーケットだ。

ククククク…この時間は安売りの時間帯だ。
たっぷり買い漁ってやるぜククククク。
黒い笑いを浮かべながらホイホイと野菜とかを籠に放り込んでいると、
向こうから同じく暗黒微笑を浮かべた車イスの子が怒濤の勢いで野菜を籠に放り込んでいた。

ほぅ…あれは…ククククク…
僕は笑みを浮かべたままそっと後ろに回り込むと、バレないように車イスの子に近づく。

「ククククク…これはこれは…あなたもこちらに来ていたとは…八神さん」

八神と呼ばれた車イスの女の子は、前を向いたまま呟く。

「!!

フフフフフ…してやられたわルカ君。
まさか私に気づかれずに背後を取るなんて…」

二人は出会ってしまった。ならば、することはただひとつ。

暗黒衝憫愚(ショッピング)のはじまりだ!


「ほォ…でかくなったな小僧。」そう言って僕はさんまをカートに入れる。
「へぇ…すこしはやるようになったやないの」八神さんはエリンギをカートにいれた。
「ククク…よくぞここまで成長したな…褒めてやろう」大根をカートに。
「フフフフフ… まだまだやね…フフフフフ」長ネギをカートに。
「ククククク…」「フフフフフ…」

「「フゥーハハハァー!!!」」


説明しよう!
暗黒衝憫愚(ショッピング)とは!!
なんだか悪役な台詞を言いながら買い物をすることなのだ!!

この少女、といっても僕と同じ年齢だけど。
この女の子は八神はやてさんと言う。

出会いのきっかけは至極恥しいものだった。

よく母さんのお使いや、夕飯の買出しに行くときにやってた、
普通に買い物をするのもつまらないので脊髄反射で考え付いた
先の暗黒衝憫愚を行っていたら、前から進んできた車イスの子にそれを見られるという
大失態を侵してしまったのだ。
不審なモノ、というかかわいそうな人を見る目で見られてしまった僕は、
誤解を解くべく言い訳をすると、彼女はブフッと噴出した。
なにやら僕の焦りが笑いのツボに嵌ったらしく、ひとしきり笑われたのだった。

それから妙にウマのあった僕たちは、
スーパーで出会うたびにこの遊びをやって買い物をする要になったのだ。





「オレの店では静かに買い物をしやがれカカロットォォォォォォオオオオ!!!!」
「「ごめんなさい。」」





最後は店主のM字ハゲこと辺字太さん(47)に怒られる、という一連の流れまでがお約束で。













~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~










「…買いすぎました。」
「やね。」

抱えるのがギリギリなくらい買い込んでしまった。
前は2人分ぐらいのもっと少ない食材だったんだけれども、
今僕んちには2人の扶養家族が居るからしょうがない。
しかし、八神さんも六月くらいから妙に食材を買い込んでるな。
そのことを聞くと、それぐらいの時期から親戚の人たちが泊まりに来てるらしい。
良かったね、賑やかになって。と言ったら
恥しいのか大根でドつかれたな。

それにしても、いいかげん荷物が重い。

「わたしたちは… どこかで、狂ってしまったのかもしれへんな…(買う量を)」
「もっと…もっと早く気付くべきだったんだ…」
「…気付いた時には…もう引き返せなかったんよ…私たちは…」
「世界は… 世界はこんなはずじゃないこと…ばっかりだ…。」
「んじゃ、押してってくれなールカ君。」

突然話を切り替えた八神さん。
僕だけ置いてきぼりはやめてくれ!

荷物を抱え、車イスの八神さんを家まで押して歩く。
日が落ちるのも早い11月末。なんだか今年は雪が多そうだ。
寒いから早く帰りましょ。

八神さんちまで車イスを押してったあと、お別れをする。

「ほなな、ルカ君。また今度や」
「さいなら八神さん」

さっさと帰らんと腹ペコどもが泣き出しちゃうぜ。
アルとアリシアちゃんね。










…なんでAIが腹減るんだ?












第6話 そして物語は進みだす。







END







後書きに寄せて…







昨日交通事故にあって愛車のバイクが全損しました。
高速で追突されるとかどんだけー
体中痛いです



[9377] 第7話 自宅が…だっただと!
Name: aaaa◆5cd5d53b ID:b712c8c1
Date: 2009/06/18 01:04

海鳴市 12月2日 AM0:34


人通りも少ない裏道の、雑居ビルの裏に
ひっそりとその屋台はあった。
闇夜をぼんやり照らす赤提灯は、不思議と暖かさを感じる。
提灯に書かれた文字は「おでん」。
もっと早い時間帯ならば、オフィス街のサラリーマンたちで賑わっていたこの屋台も、
日をまたいでからはポツリポツリと人影が少なくなっていった。
今、この時間帯まで残っているのは男が二人。

二人とも日本では見かけない顔立ちと髪の色をしている。
同じ職場なのだろうか、二人して黒っぽい制服を着用していた。
慣れない手つきで箸を使い、おぼつかない手で具を掴む。

「ああ…この“ガンモ”とか言うのも旨いなあ…」
「この黄色いヤツ…“カラシ”ってのにつけて食うと格別だわ…」
「この地酒も辛口でイい…」
「“イエローチェリー”っていうのか…洒落た名前だな」
「こんど艦にこっそり持ち込もうぜ」
「そりゃあいい。名案だ」

男たち二人は、何故か涙を流しながらおでんを貪っていた。
そんな彼らを、屋台のオヤジはうつらうつらしながら見守っている。

彼らは、時空管理局武装局員であった。
本来管理外の次元世界である彼らがココに居るのには理由がある。

「それもこれも…艦長が悪い!!」
「まったくだ…!!畜生あの艦の食いモンなんで砂糖が入ってるんだよ!!」
「自販機のコーヒーなんて全部マックスコーヒーだぞ!!ありえねえだろ!!!!」
「俺たちは… こういう… こういうモンを求めていたんだ…!!」
「そりゃあの砂糖地獄から逃げられるんなら、違法転移の一つもするさ!!!!」

たいした理由じゃなかった。
彼らの勤めている艦では「何故か」食物に全て砂糖が入っているのだ。
辛党の仲間達は一人、また一人と砂糖という名の悪魔に魅入られ、
その身を闇へと堕としていった。
彼らの所属する地下団体「アースラ辛党の集い」は、
既にこの男2人にまでメンバーを減らしていたのだった。
彼らの無念さは、筆舌にしがたい。
その深い恨みつらみは、彼らを凶行に奔らせた。

それがこの無断外出だった。

「畜生!!砂糖まみれの艦長め!!シュガー未亡人め!!大好きだ!!」
「ババア結婚してくれ!!!」

男たちの狂乱は、明け方まで続いた。
屋台のオヤジからもう看板といわれ叩き出された後、
コンビニでワンカップを買って公園で呑み直していたのだ。
ブランコに腰掛けながら、
パックの焼き鳥をつまみにワンカップを呷る彼らの後ろ姿は切なく、哀しい。

そこに、ひとつの人影が落ちた。

男たちは瞬時に身構えデバイスを展開する。
腐っても武装職員、次元世界の守護者たる者たちは、
酒を飲んでも飲まれないのである。

各々のデバイスを向けた彼らの前に立つのは、赤いドレスを纏った少女。
しかしその腕には、身の丈よりも長いハンマーが握られており、
ちぐはぐな印象を男たちに与える。
そしてその顔は、鋭い。

しばらく睨みあった後、男たちがまず口火を切った。

「…こんな時間にデバイスとは…
 少女よ、貴様何者おおおおおえええええええええええええええ」

口火は切られなかった。呑みすぎで吐いた。

「クッ… “辛人類”の二つ名を持つハバニーを倒すとはな…
 お嬢ちゃん、こッから先は甘いお菓子は無しだ…本気で行くぜ。
 “辛味紳士”ジェロキア…参るもろもろもろもろもろもろ」

こいつも吐いた。
そしてそのまま自分の吐瀉物に顔から突っ込んで気を失う。
正に地獄絵図だ。

悪臭漂う地獄に立つ赤いドレスの少女は眉間を押さえつつ、
手にもった書物を二人にかざす。
すると、倒れ伏した二人の男の身体から、
輝く光の球が飛び出した。

この光球こそ、魔導師が魔導師たる所以。
魔法の原動力、魔力の源泉、リンカーコアである。
二人の男から抜き出されたリンカーコアは、そのまま少女のかざす書物へと吸収される。
書物の白紙のページはリンカーコアを吸収すると、そのページに文字を浮かび上がらせた。

「…たったの3ページかよ…
 ……こんなんじゃ全然足りない…ッ」

悔しそうな表情を浮かべる少女は、
そのまま飛び上がると、軌跡を残しながら
朝雲を切る様に夜明けの空へと消えていった。







───時は遡り───





12月1日 AM6:44 海鳴市 桜台


早朝の人気の無い公園で、栗毛ツインテールの少女が一人立っていた。
少女は目を閉じ片手を挙げ、それはまるで生涯に一片の悔いの無いような、
威風と荘厳さを纏っていた。

そして、少女の目の前には、空き缶が宙に浮いている。

空中に放られた空き缶は、まるで釘で固定されたかのように地面に落ちることは無い。
時折空き缶の回りから発生する金属の唸り声。

よく聞いてみれば、それは音は空中の空き缶から発せられていた。
空き缶は、少しずつ少しずつ極小の凹みが表面に浮かび、
徐々にその衝撃で体積を小さくしていく。

これは、少女が毎朝やっているトレーニングの一つだった。
極小にまでサイズを押さえたディバインシューターが、超速度で周囲を旋回し空き缶を穿つ。
そのあまりの速度に、彼女の桃色の魔力光は視認すらできず、
一般人から見れば中空に浮いた空き缶が徐々に小さくなっているところで驚愕するだろう。

彼女のデバイス、最も信頼の置ける相棒は、その傍らでその光景をじっと眺めている。
小さな赤い宝石のようなデバイスコアに、数字が表示され空き缶に当たった回数をカウントしていた。

しかし、そのカウントのスピードは、ジンバブエのインフレ率のように早い。
目まぐるしく桁を増やしていくカウンターは、すでに8桁。

『I am the born of my sord.(マスター。時間です。)』

レイジングハートがその主、高町なのはに向かいそう告げる。

「わかったの。」

その言葉を聞くとなのはは天を向けたその手を宙に浮く空き缶に向けた。

「ラスト──」

手のひらから放出される魔力は、鋭い光を放出しながら空き缶を包み込み、欠片も残さず消失した。

「どうだった?レイジングハート。」
『Steel is my body, and fire is my blood.
 (45点ですね。まだまだ魔力の練りが甘い。)』
「相変わらず手厳しいの、レイジングハートは。」

苦笑しながら少女は、額を伝った一筋の汗をその手でぬぐった。

『I have created over a thousand blades.
 (先代の私のマスターは、今ので軽く3億は当ててます。)』
「う… すごいの…。…でも先代のマスターって、ユーノ君の事?」
『Unknown to Death.
(彼は私を遺跡から掘り出した発掘者です。
 遺跡で眠る前に私を握っていた人物が、先代のマスターです。)』
「へぇ~… ねえレイジングハート。その人のお話きかせて?」
『Nor known to Life.
(勿論です。…先代のマスター…彼女は、マスターと同じ色をした髪の持ち主でした。
 白いバリアジャケットの美しい方でした。)』
「うんうん、それで?」
『Have withstood pain to create many weapons.
(類稀な魔力を持った彼女は… 周りからもとても尊敬されていました。』
「そーなんだ…。」
『Yet, those hands will never hold anything.
(懐かしいですね… 風の剣を打ち砕き、死の槍を圧し折り、魂の試練を抜き破り、
 天馬の翼を?ぎ、百中の矢を退け、飛燕を墜とし、王の宝物を灰燼に帰したあの頃が…)』

レイジングハートは、どこか遠くを見ながら、去りし過去に思いを寄せていた。ん?見ていた?

「…わたしも…先代のマスターみたいに… なれるかな?」
『So as I pray "unlimited blade works.
(勿論です。あなたも、先代と同じくらいの魔力を持っているのです。
 出来ない事はありません。)』

それを聞いたなのはの目に、闘志の炎が宿り始める。

「そうだね… そうだよね、うん!頑張ろうレイジングハート!これからもよろしくね!!」

少女の首から下げられた赤い宝石は、頷くように淡い光で答えを返す。
そしてなのはは、足取りも軽く公園から立ち去っていった。




















『…………
(…本当に、懐かしい…。
 クラス「セイタン」…フフフ、あの頃は「キャスター」と偽っていましたね…。
 それにしても… 本当に世界という物は面白い…。
 まさか、こんな奇跡が起こるなんて…ね。フフフフフ…)』


赤い宝玉は、怪しく光る。


















第7話  あれ主人公でてきてねーぞ?



END













おまけ

突然!キャラクター紹介!!

キャラクターFILE No.1 
ハバニー

本名 ハバニーロ・カプシカ
通称“辛人類”ハバニー

次元航行艦アースラの武装局員であると同時に、
アースラ艦長の甘い暴力に対抗するために立ち上げた地下組織「アースラ辛党の集い」の
右腕的存在。
希少技能「辛力」を持つ唯一の人物。
辛力とは、辛いものを服用する事により一時的に自身の能力を
爆発的に底上げする事のできる能力。
今回の場合、公園で呑んでいたのが甘口のワンカップであったため、
その本来の力を発揮する事無く地に膝を付ける結果になってしまった。




キャラクターFILE No.2
ジェロキア

本名 ジェロキア・ブータ
通称“辛味紳士”ジェロ

次元航行艦アースラの武装局員であると同時に、
アースラ艦長の甘い暴力に対抗するために
立ち上げた地下組織「アースラ辛党の集い」の総帥。
ハバニーロとは同期である。
魔力変換資質「辛味」により、彼の魔法は当たると辛からくて辛つらい。



キャラクターFILE No.3
赤い少女

赤いドレスを纏い、柄の長いハンマーを持つ謎の少女。
なにやらリンカーコアを集めているような口ぶりだが…?














後書きに寄せて




誰得紹介
知ってる英文がこれしかなかった。それとスラング
次はアメリカンに載ろうと思う俺は懲りない。



[9377] 自宅が…だった!外伝 自宅の本館にある警備員室が…だった外伝
Name: aaaa◆5cd5d53b ID:b712c8c1
Date: 2009/06/18 01:17
そこには、人が住めば誰しもが感じられる、生活感というものが極めて希薄な空間であった。
狭いながらも小さなキッチンがあり、
そこに並ぶのは使い込まれた大小様々な包丁。
同じく数多の調理器具を納めた棚があり、そのどれもが、年期を感じさせるほどに使い込まれ、
恐ろしく綺麗に輝いていた。
部屋の規模にしては、キッチンの大きさにしては分不相応と言うほか無い調理器具、
それらがわずかに生活感を出している。
タンスもあるし冷蔵庫もある。
しかし、それ以外は何もない。

生活に最低限の物しか置いていなかった。
この部屋を見る限りでは、家主がどんな人物なのかが不透明であった。

故に、生活感が希薄…と表現した。








そう、ここはユニットバスつき六畳一間の和室である。







生活感の希薄な空間で、どう見ても家主の持ち主と思えないTVに向かって男が二人、
手を忙しなく動かしている。
時折体をビクリと跳ね上げながら一心不乱に画面を見ていた。

一人は、体にぴったりフィットするような、黒いボディースーツを着ていた。
それよりも男を特徴付けていたのは、赤銅のような肌と白髪、そして猛禽類を思わせるような鋭い目。

「ちょ!それはないだろ!」

男と肩を並べるのは少年。
金髪碧眼を称えた齢14に届くか届かないか、といった少年だった。
そして特に鋭い目を持つ訳でもなく、妖艶な容姿を持つ訳でもなく、10人が10人平凡と言うであろう並みの容姿だった。

「何で緑甲羅をガンガン当てられるんだよ!」
「ははは、我が身は千万の剣で出来ている。このような甲羅当てるのなぞ造作もない。」
「ちくしょうそれは関係ないだろ!
 あっ!!きたねぇ!回路使ってやがんな!!」
「ははは、気づいたところでもう遅い、ほら、今度は三連赤甲羅だぞだ。」

キィーっとひたすら声高い奇声を発する少年に、嘲笑をしながら男は続ける。

「これは私からの置き土産だ、

 ―――停止解凍、全投影連続層写………!!!(うしろに向けて発射)」
「アッー!」






ひときわ騒がしくなった、ちいさな間取りの小さな部屋の玄関には、
恐ろしく汚い字で「しゅごしゃんち」と書かれていた。










自宅がアルハザードだった外伝

自宅の庭の離れが座だった外伝

「えみやんち」








「ソードバレルフルオープンだ、じゃねえよ手加減しろよ大人気ない。」
「ははは、大人は総じて汚い。現実は、世界とはなによりも無慈悲なんだルカ。


 ──心が磨耗しきる程に、な。」

そう言いながら、ルカと呼ばれた少年の頭を撫でる男の目は、
先程までとはうってかわり優しい光をおびていた。

「それはエミヤ兄ちゃんがへっぽこ三流腐れ魔術使い兼せいぎのみかた(笑)だからだろ?」

載せられた手をうっとおしそうに払い除けながら少年は畳み掛ける。

「遠坂の姉ちゃんも間桐の姉ちゃんも、ドリル姉ちゃんもアインツベルンさんもみーんな
 泣かして、あげくたどり着いた先がこの薄汚い六畳一間だろ?」

ルカはさらに畳み掛ける。

「皆を守るせいぎのみかたがみんなをやっつけてったら、本末転倒じゃあないか。」

白髪の男は、胸を押さえながらのたうち回っていた。

「身内すら悲しませる人間が、本当に、皆を幸せにできると思ってんの?」

白髪の男は、こいつ大丈夫か?と思うぐらい激しく痙攣していた。

「『少年、君の願いは叶』ったの?」

白髪の精神は死んだ。スイーツ

「まぁさっきの大人げない行動は、僕の至言でチャラにしてあげるよ。反省しなよ?
 ……それより呼び出しかかってるけど、いいの?」

死に体で横たわる白髪の男─かつてエミヤシロウと呼ばれていた男は、
自らの抉られた古傷を労りながら、ゆっくりと体を起こす。

「体は剣だが心はガラス細工なんだ。その精神攻撃はやめてくれ」

エミヤが暗い表情で、チカチカ点滅する和室には異様ともいえるサイレンを見た。
ため息混じりに一言。

「ああ、ほっといても平気だ。私が行かなきゃ誰か別のヤツが派遣されるだけだからな。」

疲れたように吐き捨てると、いつのまにか取り出した黒い中華刀の背で、明滅を繰り返すパトランプを軽く叩いた。

「まったく、死に際にとっさに契約したとはいえ、こうもコキ使われるとは思わなかったぞ。」

彼─エミヤは『世界』と契約した。
それは、自らの死後を売り渡し、人類が滅亡に顰した時に現れる『世界』の守護者として。
かつて人々を救うため、正義の味方を目指してがむしゃらに突き進んだ男にたいしての、余りにも残酷な所業だった。

「あげく呼び出しのランプまでつけるとは、『世界』もとことん私を使い潰すつもりらしい。」

皮肉げに笑うエミヤ。

「あ、それつけたの僕。」
「通りで破壊できんと思ったわ。」
「たまに文句がくるんだもんしょうがないじゃないか。
 『雇った守護者が職務怠慢で困ってます』って」
「だからといって呼び出しサイレンはないだろう。」
「サイレンだけじゃないよ」
「なんだと」
『ぴんぽんぱんぽーんお客様の御呼びだしです。冬木市よりお越しの、エミヤシロウ様、
 珍妙な服をコートとか抜かしてる正義の味方(笑)様、世界様がお呼びです。
 ロビーまでお越しください。ぴんぽんぱんぽーん』

パトランプの下部に取り付けてあった、教室でよくあるタイプのスピーカーから館内放送が流れる。
エミヤのコメカミに青筋が浮かんだ。

「あ、これはアルがつけたからね、今の放送も。あしからず。」

ルカの飄々とした態度をよそに、それを聞いたエミヤは途端に何かを諦めた表情になっていった。

「あいつか、忌々しいヤツめ。仕方ない働くとするか。ルカ、暫く外す。」
「いってら。あんま世界さんを困らせないでよ。愚痴を聞くのが僕なんだから。」
「ああ、善処するよ。そこそこにな。」

渋々といった面持ちで、タンスを空け、中に吊ってあった赤い外套を羽織るエミヤ。
たんすの中には同じような赤い外套が何着も並んでいて、
引き出しには同じように黒いボディースーツが丁寧に折りたたんでおいてあった。
勿論アイロンもちゃんとかかっている。

この姿が、彼の基本的な仕事着であった。

「あ、戸棚のケーキ、」

着替えている最中に、ルカの声がかかった。
実はこの男、守護者という血腥い職業についてはいるが、趣味として料理をたしなむ。
そのレベルは最早趣味とは思えない位に昇華されているといっても過言ではない。
何を思ったのかこの度はホールケーキを作ってしまったが、生憎食べさせられるような人間も
この汚いほったて小屋にはだれも来ず、かといってアルハザード本館にある
英霊の座(という名前の警備員詰め所)に行くには妙に高いセキュリティの壁を
乗り越えなくてはならない。(入場証の発行が必要)
守護者は英霊より待遇が悪かったのだ。
その上こき使われるとか派遣よりも待遇が悪い。
それはさておいて、せっかく造った物、いつまでも置いておいていいものでもない。
第一生ものだ。

「ん?痛むと不味いからな、食べていいぞ」
「美味しいね。」

見ればすでに口をもごもごと動かして、何時の間に出したのか、ケーキナイフで切り分けていた。
手の早いヤツめ…!そう思いながら玄関のドアノブに手を伸ばした瞬間、



体を急激に引っ張られた。
何事か、と思い振り返ると、部屋の中心に突如としてブラックホールの様なものが出現し、
強力にエミヤを吸い込もうとしていたのだ。

「な、この強引な召喚、サーヴァント召喚かっ!?」

闇の中心は、なおも引き込もうと吸引を強めていく。

その時エミヤに電流走る!

このまま扉を抜け出て、守護者として犬のようにただひたすら人類の脅威
(ほとんどの場合、その脅威とは彼が守らんとした人類だったが)を処理するよりは、
聖杯戦争に参加したほうがまだいい。
短い時間にそう判断したエミヤは、吸われぬように足に力を込めながら、黒い点へと近づいていく。

「ふっ 人類の抹殺よりは、遥かにマシ…か。」

皮肉げにそう呟きながら、黒い点へと手を翳すエミヤ。
願わくば、私が道を違えた時… かつての甘い幻想を、走らせぬために…

「……ェミヤ兄ちゃーん。僕吸われちったー!どうすればいいー!?」

穴の彼方で、ルカがぐるぐると吸われていた。

「なっ!」

足に込めてた力がぬけ、スポーンと情け内音と共にエミヤもまた闇の奥底へと吸われて行った。











~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~








『いいからさっさと呼べ。不参加ならさっさと連絡しろ。』
といった内容の、オブラートも糞も無い目的だけを簡潔に述べた兄弟子の留守電メッセージを聞き、

遠坂凛は考える。

呼び出したいサーヴァントはセイバーだが、生憎それを呼び出す触媒たる物は何も無かった。
それこそ今すぐマッハで呼んでマッハで契約してマッハで兄弟子に参加を表明するなぞ造作も無い。
だがしかし。
だがしかしである。
この街の霊地を管轄する遠坂、有象無象の英霊では困のだ。
サーヴァントは通常、そのサーヴァントに縁のある物に呼び寄せられる。
それこそ強力なヤツを呼び出したければ、そのサーヴァントのつかってた剣だの鎧だの、
骨だの紋章だの、いずれにせよ値打ち物が必要になる。
簡単に言ってしまえば、マグロを釣りたいのなら松方弘樹を呼んで来い、といったところか。

…いやこれはちょっと違うわね…。

いつの間にやら思考が逸れていたらしい。
いいわ。ウジウジと考えていても仕方が無い。
地下室で見つけたペンダントも呼び代としては使えないし、
これ以上伸ばしてイヤミを言われるのもお断りだ。

ぶっつけ本番。私の波長が最も合う、深夜2時にミッションスタート。

ならば、それまでに私は出来る事をするだけ。
今の私に出来る事。それは部屋中の時計の針を正しい時間に戻す事。
今日に限って家の時計と言う時計が一時間ズレていたのだ。

期限的にも今夜を逃すと、もう後がない。
全ての不安を塗り潰すように、遠坂凛は時計のネジをキリキリとあわせる。
先ずは腕時計。電話を肩と耳で挟み、時報を聞きながら正確な時刻にあわせる。
基準が設定できれば、あとはそれに従い他の時計を合わせるだけだ。
きりきり、こつこつ、きりきり、こつこつ、きりきり、
静かな館には、足音と時計を合わせる音だけが静かに響いていた。

屋敷の時計を全て正確な時間に合わせ終えた。
あと私に出来る事、それは─────────










遠坂凛は、自室へ戻るとベッドに飛び込んだ。

そう、彼女が今出来る事は英気を養う事だった。
ものの十分もせずに彼女はスゥスゥと寝息を立てはじめた。














目覚ましを掛けずに。






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~








「しまったああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


がばっ とベッドの毛布を跳ね上げ、遠坂凛は走る。
時刻は深夜1:55。彼女の波長のピークは2:00丁度。
涙目になりながら彼女は地下室へと駆け出していた。

彼女の遺伝的な呪い、ここ一番で大失敗をやらかすという恐ろしい呪縛が、
例の如くサーヴァント召喚の儀式で発動したのだ。

家の時計を全て正確に合わせた時点で安堵したための油断。
歯噛みしながら彼女は自らの地下室へとドタドタ流れ込む。

残り時間は4分。

貯蓄していた宝石の半数を溶かして魔法陣を速攻で描く。
魔術とは非常にデリケートなものなのだ。僅かな油断が最悪の事態を引き起こしかねない。
すでに引き起こしているが。

正確に、ゆっくり、それでいて猛スピード。
矛盾を孕んだ思考を展開しながら、凛は魔法陣を書き上げる。

「─素に銀と鉄。礎に石と契約の対抗。祖には我が大師シュバインオーグ。
 振り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ─」

口から出る呪文は凄い早口だった。
腕時計をチラリと見る。時刻は1時57分35秒。残り2分25秒。
いざと言うときのために練習した早口言葉が役に立ったわね。さあ始まるわ。

気合入れていくわよ遠坂凛!


「─────────Anfang」

ココロのスイッチをオンに切り替える。
ええいまどろっこしいわ。
周囲の魔力を取り込み、カラダを刺激する。

それは痛みであり熱であり、茨で出来た神経であり融解した鉛の血液であり。

それはそれでいい。問題は時間。
あれからさほど時間は経っていないはず。
恐らく現時刻は1時58分10秒くらいだろう。
────イケるッ!

左手の魔術刻印が蠢く。蠢くように痛みを伝える。
ええい黙っていなさい。後で幾らでも痛いとか吠えてあげるからッ!
今は私に黙って従いなさい。今はスピードが命なのよ!!

私の心意気に答えたのか、魔術刻印が私の神経を侵し始めた─。
痛みによる忘我。

ただの一瞬の忘我だった。けれどもそれは私のタイムカウントを吹っ飛ばすのにはちょうどいい。
チラリと時計に目を走らせる──1時59分54秒ッ?!

一分半も気を失っていたのッ!?

違う そんな事を考えている場合じゃない

 急げ  すでに『繋がって』いる 早く

急げ 時間が無い  早く

思考に時間を割くな 急げ 

早く




「───────────告げる」



急げ!急げ!急げ!急げ!急げ!急げ!急げ!急げ!急げ!急げ!急げ!

「告げる。」

早く!早く!早く!早く!早く!早く!早く!早く!早く!早く!早く!

「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。」

目を閉じる    

   既に時計は見えない 
    
     どうでもいい
       
            急げ

「誓いを此処に。
 我は常世総ての善と成る者、
 我は常世総ての悪を敷く者、
 汝三大の言霊を纏う七天、
 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ────────ッッ!!!!」


キタァ──────────ッ!!!

私の体内カウントでジャスト2時ッ!
釣り上げたわッ!この手応え!
私のココロの松方弘樹が釣り上げたのは300kg級の超大物ッ!
愛してるわ弘樹ッ!!

っと。

落ち着きなさい凛。
その弘樹は私の想像の産物よ。

今は光が収まるのを待って、釣り上げた獲物を見ましょう。
フフ、弥が上にも期待が高まるわ。
マグロ、ご期待下さいッてね!


 
閉じた瞼の裏側でも感じた光が、収まっていくのが判る。

こんにちはサーヴァントマグロ。さようなら弘樹マツカタ

優雅に、エレガントに、召喚したサーヴァントに今までのどたばたを悟られないように、
ゆっくりと瞼を開ける。


そこには──────────












                ────何もいませんでした。



えっ?

私のマグロは?

私の300kgオーバーの獲物はどこ?

あれだけ私必死だったのになんで?

どうして居間から爆発音がするの?

私んち空爆の対象にでもなったの?

なんで?なんで?なんで?なんで?なんで───────?

お願い───教えてよ──────────






───────────弘樹ィ───────







膝から崩れ落ちる遠坂凛。
その腕の時計は、召喚の衝撃が影響を与えたのか、奇しくもサーヴァント召喚が成った時刻で止まっていた。




『2時00分01秒』と───────────────








~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~












所変わって、場所も変わり果てた遠坂家のリビング。
天井をぶち抜き参上した二人は、部屋の惨状を目の当たりにしながら、
マスターである遠坂凛の詰問を受けていた…。


「で、あんたたち、クラスは?」
「アー「チャーです」だ。」

しばらく間が開いた後、眉間に寄った皺を揉みながら、凛は質問を繰り返した。

「…ごめんなさい、もう一度言ってもらえる?」
「だから、アー「チャーです。」といってるだろう?」
「…真名と宝具は?」

埒が明かないと思ったのか、凛は次の質問へと移行する。
なにやらこめかみがぴくぴくと蠢いていた。

そんな凛のココロを露知らず。
呼ばれた2人はこそこそと会話を始める。

(む、どうするルカ、凛に私の真名を伝えるのは非常に不味いぞ!)
(じゃ、僕だけ言うよ宝具は…アレでいいじゃない。こないだあげたヤツ。)
(おおそうだな、それがいい!きっと凛のヤツも度胆を抜かれるに違いない)

おずおずと話始めるルカ。

「真名…ていうか、本名はルカ・トゥリッリ。年齢は14。」

それを聞くと、眉間に拠った皺は更に深い渓谷を額に築き上げる。

「ルカ…ルカ…聞いたことないわね、そんな英霊…」
(ま、こっちの人間じゃあないからね…)

「で、こっちの赤いのも、きっと本名言っても知らないから、
クラス名のアーチャーって呼んであげて。僕はルカでいいよ。
“チャー”なんて呼ばれるのは屈辱の極みだし。」

「ハァ…… セイバーも呼べなかった挙句。
 呼び出したのは全然知らない英霊で、これまた二人とか…
 たったの一秒がここまで運命を左右するとは……」
「まさにfateだね。ま、二人呼ばれるなんて事態がすでに
 イレギュラーなのだし、そういうもんと割りきってもらえればいいよ。」
「くっ アンタみたいなガキに言われなくても判ってるわっ。


 それよりもッ!あんた達どれぐらい強いのよッ?!
 強さがわからないと今後の作戦もたてらんないわ!」

半ばヤケクソになりながら、瓦礫に片足を乗っけてエミヤとルカを指差す凛。

「はしたないぞマスター。」

エミヤがそう言うが、意に介さず詰問を続ける。

「どのぐらい強いのかって、聞いてんのよ!」

ぜぇぜェと息を荒げる凛。
彼女を他所に、腕を組みながら考えるエミヤとルカ。

「エ…アーチャーは超強いよ。」

まったく参考にならない答えを出したのはルカ。

「そうだな…私は君の呼び出したサーヴァントだ。
 それが最強でないはずが無い。」

びしりと断言するエミヤ。
成る程、名も知らないが英霊に昇華するだけの事はある。
肌にびりびりと感じるような魔力。桁外れだ。
間違いなく人間以上。人間以上の力を持った化物だろう。
…その横の一緒に召喚された子は人間にしか見えないが。

「普通の魔術師ならば、サーヴァント召喚の時にゴッソリと魔力を持っていかれてその場で
 気絶するだろう。だが今の君は実にパワフルだ。
 それに、この魔力量──君は間違いなく一流の魔術師だ。
 一流の魔術師によって呼ばれた私が、最強でない筈が無いだろう?」

得意げに、ニヤニヤとして凛を見るエミヤ。
うわっこいつとか言うような目でエミヤを見るルカだった。

目を瞑って、それを聞いていた凛はと言うと。

ちょっと照れていた。
何せ魔術とは隠された技術。
魔術が上手くて褒めてくれるのはそれを教える師匠くらいなものだ。
大方の魔術師なんかは、他人が上手くやってるのをみて
キィとハンカチをかみ締めて悔しがるか、あんなものよりも俺の方がスゲエとなる。
つまりは他人の不幸で飯が上手い業界。

魔術が上手くて褒められるなんて事は無いのだ。

「そ、そう、それならいいのよ。私が呼び出したんだもの、最強なのは当然ねッ。
 そ、それじゃアンタたちに最初の仕事を与えるわッ!」

照れ隠しに、そっぽを向きながらエミヤたちに最初の司令が下された。

「フッ 好戦的だな君は。それで敵は─」

とか言ってる内に投げつけられたのは箒とちりとり。

「とりあえず居間の掃除。頼んだわね。」

照れ隠しに英霊をこき使うには、ちょっとどうかと思うこの命令。
並みの英霊ならば憤慨し、断固拒否しそうなものではあるが。


呼び出したのが一流の魔術師なら、


呼び出されたのも、一流の英霊である───────────。



 




「了解したマスター。ちょうどいい機会だ。
 君の呼び出したサーヴァントが、どのぐらいの力を持っているのかその目で確かめるといい。」

荒れ果てたリビングには、エミヤによって収束された魔力が渦巻く。
初めてサーヴァントの持つ宝具を目の当たりにする凛は、英霊という存在に改めて畏怖を抱いた。
イレギュラーとは言え、さすがに英霊。恐ろしいほどの魔力を収束する。
エミヤの魔力に当てられたのか、額に薄っすらと汗が浮かぶ。
それに例え無銘の英霊であろうと宝具ならば、なにかしら存在を掴む手がかりにはなるだろう。
剣であれ槍であれ。アーチャーなのだから弓矢だとは思うが。
あれでも掃除に役に立つような宝具ってなによ?
考える凛を他所に、エミヤの持つ、唯一のオリジナル。
黄色い形をした宝具は、その姿をゆっくりと現した。







「“吸引変わらぬ唯一ダイソン”それが、我が宝具の名だ。」







得意げに高らかに言い放つエミヤであったが、その前に凛の堪忍袋の緒が切れる。


「掃除機なんかで戦争に勝てると思ってんのか!!」
「ば、馬鹿なことを。これはフィルター交換もいらず、いつまでも吸引力が変わらないんだぞ!」
「アンタは弓兵じゃないわ!掃除夫よ掃除夫!!」
「うっ」

心は硝子で出来ている─凛の放ったその一言は、エミヤシロウの精神を穿ち殺すには充分すぎるほどの威力をもっていた…









でも瓦礫は全部吸って部屋は元通り。
ちょっと欲しいな、と凛は思った。











END

…………………………………………………………………………………………………………………















「まいったねここ。衛宮兄ちゃんも遠坂姉ちゃんも、僕のこと知らないみたいだ。」
「む、世界の修正と言うヤツか?」
「いや、これは召喚がイレギュラーだったから、
 イレギュラーな平行世界に召喚されたって考えたほうがいいかも。
 だって、修正以前に『世界』が僕には干渉できないでしょ。」
「むぅ、後はサーヴァントがルカを知っているかどうか、か。」
「僕たち二人が呼ばれた時点で、すでにイレギュラーなんだ。
 知らなくても可笑しくないし、そもそもエミヤ兄ちゃんの体験した聖杯戦争の時と、
 何から何までが変わっててもおかしくない。
 召喚されたサーヴァントも、見ず知らずの人の可能性もあるよ。」





イレギュラーを孕みながら、第五次聖杯戦争はその幕を上げる。




「よう、ルカ坊じゃねえか。こんなとこで何してやがる。」
「クー「おおっと、真名をばらすのはやめてくれ。ランサーってよびな。」

(よかった、英霊は知ってるみたいだ。)
(…そうみたいだな。アッチが私を知らないということは、
 ルカの家の記憶は消されているらしい。)

「今日はあのクソヤロウアルハザードはいないのか?」

「実は──」
「クククク!そりゃあいいぜ。丁度いい。きなルカ坊、一槍稽古つけてやるぜ!」




「…なんで敵と知り合いなのよアイツ。なんなのあの子」
「……、そ、そういうスキルを持っているんだろう。」







僅かな歪みが







「や、ぺ…セイバーねえちゃん。」
「ルカ、こんなところで何をっ!既に敵陣ですよ!
 いつ敵のサーヴァントが狙っているか判りません!」
「い、いや、今回は旅行とかじゃなくて、サーヴァントなんだ僕たち。」
「ああそうでしたか、ならばいい機会です。一手指導いたしましょう。
 さぁかかってきなさい!」
「いやそれはいいでs「勝利の暁には、あなたの家の電子レンジという不思議箱をいただきますからね!」


(ちょっと!僕ン家の記憶あるじゃないか!!)
(あるぇー?)






バタフライ効果を






「■■■■■■■■■■■■■■■■■■ー!!!」
「へー、ヘラクレスさんがバーサーカーだったんだ。」
「■■■■■■■■■■■■■■ー!」
「うん、確かにそうかもね。」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ー!」
「いやいやいや、それはないでしょ!」
「(■)」
「(笑)」








「ば、バーサーカーと話が出来るの…?」













生み出す事に気付かず










「ら、ライダーでいいのかな?」
「ルカではありませんか。こんなところにいたら危ないですよ。」
「や、今回はサーヴァントなんだ僕。」
「そうでしたか。ところで、自転車の補助輪は外れましたか?」
「……………まだです。」
「…もう14にもなるというのに騎乗すら御せぬとは嘆かわしい…。
 仕方ないですね、幸いここは学校です。
 自転車なら沢山ありますし…マスターワカメ。手頃なのをチョッパってきてください。」






「慎二…」
「間桐君…」
「な、なんだよ!そんな目で僕を見るな!!」










歪みは成長していく









「ルカではないか、久しいな。このような雑種と一緒に何をやっているのだ?」
「相変わらず目に悪い色だねギルにいちゃん。
 何をしてるも何も、今回のサーヴァントなんだ。アーチャーだよ。」
「ほォう… ならば我は先代として、後進の指導をしなければならぬな!
 ハハハハハ!さあルカ、帝王学を我が直々に教授してやろう!」
「えー そういうのはいいよちょ、なに?なんなの?体すっげー動かしずらいんだけど!」
「天の鎖でも完全に動きを止められないのはやはり、といったところだな。
 そのまま我が宝物庫で帝王が何足るかを学んでこい!!」
「アッー!」










誰一人として欠けることがなく、ルカだけが妙に割りを食っていると思われた今回の聖杯戦争。

しかし、そのイレギュラーは最後のサーヴァントとして登場した。











現れたのは






「な、なんだこのバカみたいな魔力量はっ!」








雪のように白いドレスを纏った









「受けちゃだめだ!避けろアーチャー…!」
「か、花弁が一秒も持たないだと…」









栗色の髪を、片一方でまとめた









「最後のサーヴァントですか。たしか残るはキャスターのみのはず…。」
「違う…彼女はキャスターじゃない…」













赤い宝石をあしらった杖











「ちっ なんて数の魔力弾だッ─。
 加護のお陰か…たしかにありゃキャスターを名乗るにゃあ役不足だぜ」
「……間違いない…ちょっと年齢が上だけど、あの杖…間違いない…」











かつての面影をわずかに残した











「なんで…なんでここにいるんだ────────」











歪んだ理想レイジングハート セットアップ。」
『.......5Et uq.........』









「私を……知っているの?」













八神はやては闇の書ごと凍結処分を受けた。
フェイト・テスタロッサは、広域指定次元犯罪者を追跡中に行方不明となる。
倒れぬ心は幾度もの絶望に屈してもけして諦めることはなかった。
抱いた願いがただ歪んだ理想となっても。





「何が…何が悪かったのかわからないの…なら、
 もう一度…もう一度、1からやりなおすの…

 邪魔をするのなら…



 殺す」






『ルカ様聞こえますか?!』
「あっアル?!」
『いま、この世界専用の通信回線に割り込んでます!
 よく聞いてください!最後のサーヴァントは、キャスターではありません!』
「みりゃわかるよッ!」




「じゃまなの筋肉ダルマ。爆ぜて死ぬの。」
『....ÅccョL 5h00〒ョr......』
「■■■■■■■■■■■■■■■─────────ッ!!!!」


「嘘…バーサーカーが…死んじゃった…」
「ッ!?十二の試練ゴッドハンドはどうしたイリヤ!!」
「一発なのに…あんな小さな一発なのに…十二回…殺し尽くされちゃった…」
「ッ!また来るぞよけな嬢ちゃんッ!!」





『クラスは…魔王セイタン
「セイタン?!」
「セイタンなんて聞いたこと無いわよ!!」
『ルカ様がこの世界に召喚された、最大のイレギュラー要素です!!』










「それで、彼女は高町さんで間違いないのかッ?」
『彼女は、別世界の高町なのはです。考えうる限り最悪の道を辿った…!』
「なんでまた英霊なんかになったんだ?!」
『アンタとおなじですよアーチャー。
 彼女もまた、正義を求め、がむしゃらに進み─守護者になった歪んだ。』










『それよりも、ここからが重要です!彼女は、私たちが存在しない世界のイレギュラー!




 彼女は、───ルカ様を殺害できる』




『総ての矛盾を許容する、アルハザード。
 その管理者たるルカ様の存在で、全ての矛盾を孕みながら世界は成り立っています!
 矛盾を孕みながらも、世界を保っているのです!!


 ルカ様が死ねば、全ての矛盾に齟齬が生じ──全てが消え去ります。』


『英霊ナノハ=タカマチの味なまね封時結界のお陰で、
 私がそちらにいくまでに20分かかります。
 サーヴァント諸君、ついでマスター諸君。
 あんたらに求められているのは、ルカ様の肉の壁になることです。

 20分!20分魔王の攻撃から、ルカ様を生かしてください!!お願いします!!!』





「……あの高慢ちきが『お願いします』とは… これは、どうやら本格的に危険なようですね。」
「相手は、マスター不在でも自分の魔力でこの場に顕現できるほどの大魔力持ち…」
「たった一人のガキをサーヴァント6人と魔術師6人で守りきるとはな。

 ククククク……ワクワクしてくるぜ。」









「フン、贋作者。──複製品の貯蔵は充分か?」
「…よせ慢心王。」






















後書きによせて


ま、全部嘘なんだけどね。
交通事故が招いた一瞬の蜃気楼だと思って。
とくに推敲してないし。
続かないよ



[9377] 第8話 自宅が…だったのに!
Name: aaaa◆5cd5d53b ID:b712c8c1
Date: 2009/06/23 21:34
「母さんは?」
『バーンシュタイン社長と懇親会に出席されています。
 肉体言語で。』
「父さんは?」
『レボリューションな乳のお姉ちゃんと遊んでますよ。何やってんですかねあの男は。』
「それは僕が聞きたい。」
『あっ』
「どうしたの?」
『お母上が直接乗り込んでボコりに行きました。
 生身で次元移動する人なんて私初めて見ましたよ。
 …ルカ様のお母上は何者なんでしょうか?』






「………ただの優しい母さんさ!」









第8話  無題










テスタロッサさん海鳴に来たる!

今朝学校で高町さんに教えてもらったホヤホヤの情報なんだけども、
これをプレシアさんに教えたのは大きな間違いだった。

僕は今プレシアさんを押さえつけている。

「ええい!離しなさい!!私はフェイトに会いに行くのよ!!111」
「お…押さえてください…!!プレシアさん今自分がどういう状況かわかってるでしょ!!」
「時空管理局ごときが私の母力を止められるとでもお思い?
 さあ、どきなさい!」
「ちょ!」
「今すぐフェイトを抱きしめてグルグル廻るわ!!どきなさい小童!!」
「あ、アルー!!笑ってないで!転移!!転移!!!!」
『ゲラゲラゲラゲラ了解』
「あっ 何をっ! ふぇ、 フェイトォォォォォォォォォォォォォォ........」

地面に突如出現した穴にボッシュートされていくプレシアさん。
よし!強制転移確認!!アル、次元封鎖だ!!

『アイサー』

キュポーンとマヌケな音と共に、地面に開いた穴は閉じていった。
…フゥウウウ…これで良し。
アルついでに近衛じーちゃんとこに電話繋いで。

じー…ころころころ じー…ころころころ
じー…ころころころ じー…ころころころ がちゃ

『どうぞ』
「あ、もしもしじーちゃん?僕僕、僕だけどさ、
 ちょっとプレシアさん預かってもらえる?
 うん、色々あって次元封鎖したから、しばらくはそっちで、うん。
 よろしくねー! お見合いはしないよー!」 

がちゃん

よし、これで憂いは無くなった。
まったく、いくら我が子が可愛くても、自分の立場を鑑みてくれヨ…。

『親バカもといバカ親の鑑でしたね。』

…なんだかどっと疲れてしまったよ…

『おや、ルカ様どちらへ?』

ジャンプ買ってくる。

『スピリッツもお願いします。』

お前…










──────────────────────────────────────────











夜8時に近いから、通りには人通りが少なかった。
…つうか誰もいない。
車も走ってなければ、鳥も空を飛んでない。
さすがに誰も居ないのはおかしいだろ常識的に考えて!!
ふと空を見上げれば、そこには夜空ではなくてなんか妙な色の膜に包まれていた。
すごく嫌な予感がする。あの膜は前にも…

……ああ、思い出した。
はじめてテスタロッサさんに会ったときもあんなの張られていたな…

あそこから僕は一般人の道を踏み外したんだろうなァ…。

とりあえず、膜から抜け出すべく歩く。ひたすら歩く。
この膜は不思議な事に膜の中にいる人間を隠してしまう。
流石に誰も居ない店から盗むほど僕はワルじゃない。


歩く、歩く、歩く…


ちくしょうドコまでこの膜はったんだ!!
境目が見えやしないぞ!!

道端の縁石に座って、汗をぬぐっていると、
背中の皮をべろっと剥がされたかのようなイヤな衝撃を受けた。
今度は冷や汗が止まらない。

ふと空を見上げれば─








桃色の極光が空を貫いていました。









──────────────────────────────────────────







高町なのはが、その異変に気付いたのは、机に向かっている時だった。
しかし彼女はそれに気付いていてもとくに動じる様子は無く、机に向かって明日の宿題を続けていた。
傍らの宝石、レイジングハートが2、3度点滅し、彼女に警告を促す。

『master.(マスター。)』
「…わかってる、レイジングハート。」
『couse off hick on but I set quints
(周辺に封時結界を展開、高速でこちらに接近する物体があります。迎撃を?)』
「…また別の魔導師が来たのかな…。行ってみよう。」
『rock eye(了解)』

足元に桃色の羽根が展開され、窓の鍵を開けるとそこから羽ばたくように飛び出した。
その軌道上には、桃色の魔力光が飛行機雲のように残される。

「…でももうジュエルシードは無いし…、なんの目的で来たのかな?」
『Butch call loss
(いずれにせよ、誰に断って海鳴で結界を張っているのか思い知らせる必要があります。)』

妙に好戦的な自らのデバイスを携えながら、首をかしげて少女は飛ぶ。
辺りのビルより、少しだけ背の高いビルの屋上に着地するなのは。

その瞬間、空の彼方からなのはをめがけ赤い魔力弾が飛んできた。
咄嗟の事になのは自身は反応が出来なかったが、
レイジングハートがそれを補うように魔力弾に向け桃色の魔法陣を展開する。
強烈な光と共に魔法陣にかち合う魔法弾は、その魔力を散らし徐々小さくなっていった。

「だッ 誰!?」
『matter kill mass eater.(敵第二派来ます。プロテクションを。)』

レイジングハートがそう言い放つと、なのはは慌てて魔法陣を張る。
その魔法陣は、赤いドレスを纏った少女の振るったハンマーをギリギリで食い止めた。

赤いドレスの少女は目を見開く。
放った魔法弾と逆方向からの二段構えの攻撃を、容易く捌いたなのはに、
その胸中は驚愕で彩られ、動きが止まった。

その一瞬の硬直の間。それは決定的な隙。

「どうやら…問答無用みたいなの…!」
『jack key gun hats do (眠れる虎を起こしてしまいましたね… 馬鹿な奴です。)』

瞬時にして思考が切り替わる。
心臓の鼓動が、血を沸き立たせる。
早鐘の様に回転を続けるエンジンは、ニトロをぶち込まれたかのように狂った勢いで廻り始めた。
ギアががちりと噛み合う。
瞳孔は、獰猛な猫科の野獣のように鋭く尖り、





高町…否、不破の一族に流れる戦闘民族の血が、目覚める。





流れるような動作で、魔法弾を防いでいた片手を少女の腹に添えたなのはは、
歯を剥き出して哂った。

─笑うという行為は本来攻撃的なものであり獣が牙をむく行為が原点である─





間髪いれずに掌から零距離で放出された桃色の魔力は、
赤いドレスの少女を飲み込むと、そのまま空へ向かって放射された。
ボロボロになった赤いドレスの少女は、爆煙を纏いながらその勢いのままオフィス街へと堕ちてゆく。
ひび割れだらけになったビルの屋上をゆっくりと横切り、
ビルの淵に足をかけるなのはは、ただその光景を見下ろす。

「…喧嘩を売るときは、相手を見てから吹っかけるといいの。」

その呟きは、ビル風に飲まれる様に消えていった。













─────────────────────────────────────────















さっきから嫌な予感がプンプンする。
桃色の光を見てから背筋にツララを突っ込まれたように寒い。
ビルの屋上から桃色の爆煙が立ち上っている。

高町さんはあそこにいるんだな。

そんな事を考えていると、上空から落下音が聞こえてきた。
なんだ?
首を傾げながら空を見上げると。

お、親方ー!少女が空から僕めがけて降ってぎゃあああああああああああ!!!!

降ってきた少女に激突した。

「ハァハァハァハァ…くそっ なんて魔力だ… ちくしょう…はやてから貰った服なのに…」

恐らく高町さんのバカ魔力に呑まれたんだろうなぁ…。
なんだか重要なキーワードが飛び出したと思うんだけど、それよりも早くどいて欲しい。

…そろそろ、どいてほしいんだけどいいかな?

「あの高さから落ちたのにやけにダメージが少ないと思ったら、
 こんなところにクッションがあったからか…


 !!


 一般人がなんで結界内にいるんだ?!」

クッション扱いですか。
赤い少女が驚愕してる。こっちの方が驚きたいやい。

「おいお前!こんなところにいたら、何時アイツに巻き込まれるかわかんねーぞ!!
 あの建物ン中に隠れてろ!!」

勢いよくビルの中に蹴飛ばされた。
乱暴な中に優しさがある。こんなに優しくされたのは随分とひさしぶりだ…。
いかん涙が出てきた。
溢れる涙を拭いながら僕はビルに逃げ込む。
少女よ… 無事に、無事に逃げてくれ…。
高町さんは… 目覚めてしまった高町さんは、敵には容赦ないぞ…!!   

赤い少女が、再び空に飛び上がっていった。
人のいない雑居ビルから彼女を応援する。

がんばれっ がんばれ…ッ!!!









─────────────────────────────────────────










桃色の煙が収まった頃、赤いドレスの少女は再びなのはと対峙する。

「さっきの一撃で生きてるとは、なかなかやるの。」

少女は自らの得物を構えてなのはを睨み付ける。
たまに反応があった恐ろしいまでの魔力反応、おそらくこの桃色の魔力を持つ少女だろう。
これだけの魔力、収集できれば闇の書を完成させる事ができる。
だが─はたしてそれができるのだろうか。

あれほどの魔力を巧妙に隠し通すほどの精緻さ。
魔法陣すら展開しない、ただの魔力放出だけであの威力を叩き出す、攻撃力。
戦いでしか蓄積され得る事の無い経験。

その全てが上回っている。
このように分の悪い戦いはいつぶりだっただろうか…。
少女の背に、冷たい汗が流れる。
しかし、引くわけにはいかない。引いてはいけない。
全ては主が為に…そして、守護騎士ヴォルケンリッターの一人、
鉄槌の騎士がプライドの為に。

「アタシは… ヴォルケンリッターが一人、鉄槌の騎士ヴィータ…。
 アタシは…アタシは、引くわけにはいかねーんだ…!
 グラーフアイゼン…カートリッジ、ロードォォォォ!!」
「EXPLOSION(エクスプロジオン)」

少女─ヴィータの叫び声と共に、手に持ったデバイス、
グラーフアイゼンと呼ばれたハンマーが呼応し、それと同時にハンマーの上部が何度と無くノッキングされる。
そして銃弾の装填とも言えるような音と共に、赤い魔力が爆発的にハンマーから放出され──

「RAKETENFORM(ラケーテンフォルム)」

ハンマーは、片面に推進器が、片方には錘がついた、柄の付いたロケットのような形をとる。



ヴィータの魔力の急上昇を感じたなのはは── 動かない。
その表情に浮かぶのは、自らを脅威とも思わない、凍りつくほど優しい笑み。

気に入らない─ 
そのキレイな顔をフっ飛ばしてやる─

守護騎士としてのプライドを著しく傷つけられたと思ったヴィータは、
ハンマーの推進器を点火し、遠心力をつけるように回転を始める。
しかしこれは、決定的な隙。

だが、それでもなのはは攻撃をしない…

バリアジャケットすら、デバイスすら展開せず、
ただ顔歪めてそれを見ていた。

「いつまでその顔が出来るのか…ッ
 試して見やがれッ…!!
 
 ラケーテン…」

回転の勢いのままなのはに突っ込むヴィータ。
笑いながら手をかざすなのは。

「ハンマぁああああああああ嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼ッッッッ!!!!!」

グラーフアイゼンの一撃が、なのはの張る防御結界とかち合い、

「ッ!?」

桃色の結界を、ガラスが割れるように破壊した。
その勢いでなのははビルの一つまで吹っ飛ばされ、
衝突箇所からは土煙を上げてる。

「ハァ、ハア、ハァ、ハァ…」

ヴィータは息も荒く、なのはの後を追う。
これで…どうだ。
手持ちのカートリッジの大半を消費して放った、大威力の特攻形態ラケーテンフォルムの
最大の一撃、ラケーテンハンマー。
手応えは確かにあった。並みの魔導師なら3回殺しきれるくらいの大魔力装填。
殺してしまってはリンカーコアは収集できないが…
手加減できるほどの甘い相手ではなかった。むしろ数段格上の相手である。
この位の攻撃では、死んではいないだろうが、行動不能には陥らせたはずだ。
それを確かめるようにヴィータは、なのはの突っ込んだビルへと飛んでいく。









そこにいたのは、









白を基調とした、所々にアクセントのように青色の入ったバリアジャケットを纏った、










無傷の高町なのはであった。










「……これほどとは思わなかったの… ラケーテンハンマー…
 遠心力にロケットの加速を加えた恐るべきデバイスなの…
 そのうえよくわからない機工で上昇した魔力もプラスされているのだから、手に負えないの…。」

淡々と語るなのはにヴィータは再び、残り少ないカートリッジを装填する。
またも爆発的に上昇する赤い魔力。
しかし、それを見てもなのははピクリとも眉を動かさずに話し続ける。

「……素手では勝てないの。」

首から下げられた赤い宝石をなのはは掴む。

「……私も使わせてもらうの…」

宝石を掴んだ手の指の間から、莫大な量の桃色の魔力があふれ出す。

「愛用の…







 インテリジェンスデバイスを…!!」


桃色の魔力がなのはの身体を覆う。
その勢いは暴風となり、あたりに漂っていた土ぼこりを
全て吹き飛ばした。
万物を吹き飛ばさんとするその風に、ヴィータは足を踏みしめ耐える。
ヴィータの視力を奪っていた桃色の魔力光が徐々に収まると、
そこには、


「…これが私のデバイス…」

桃色と金色で構成され、その上部には大きな赤いデバイスコアが付けられた杖─

「その名も"レイジングハート"なの!!!」


大鎌を携えた黒衣の死神──ヴィータの目に、一瞬ありえない幻想が重なった。
相手は、桃色の杖を持った白衣の少女…なのに、その相反するイメージが払拭できない。
背に、冷たい汗が再び流れる。

それは先ほどよりも──なのはがバリアジャケットを纏う前よりも冷たい。

そして、見の毛がよだつほどの、薄ら寒さすら覚える恐怖───










───夜は、まだ明けない───
















第8話 ……で、主人公ってなんだ?食えるのか?









END















後書きに寄せて



主な変更点:常時魔王モードから戦闘民族スイッチへ変更

外伝の人気にびっくりしたけど
あれは俺が事故にあったときに見た蜃気楼のような物だから
多分第2話は次に俺が事故にあったときに更新されるよ
具体的に言うと2年後



[9377] 外伝 るかのなつやすみ 紅霧地獄編
Name: aaaa◆5cd5d53b ID:b712c8c1
Date: 2009/06/23 21:38
「まさか貴方がこっちに越してきてるとは思わなかったわ、レミレミ。」
「アンジィこそ、いつのまに外に嫁いだのかしら。
 私はここで骨を埋めるわー、なんて行ってたのにね。」
「ウフフ、女はね、男と出会う事によって変わるのよ、貴方もいずれ判るわ。」
「そうかしら?」
「そうよ。

 …それで、今日わざわざ呼び出したのは何の用なの?
 昔話に花を咲かせにってわけじゃあ、なさそうだけど?」
「それがねアンジィ、実は…」
「……成る程、門番の子が寝込んじゃって、変わりにだれか居ないかと。」
「そうなのよ。誰か変わりに紹介してくれないかしら?
 ここでは、私知り合いがまだいなくってね……困ったわ。」
「…そうねぇ………

 居ない事も無いけど、何か条件はあるかしら?」
「弾幕が張れればいいわ。門番以外の仕事は期待していないから。」
「じゃあ、アイツにしましょう。息子に連れてきてもらうわ。」
「…貴女息子いたの…?」
「ウフフ、目に入れても痛くないわ。あげないわよ?」
「…遠慮しておくわ。」









自宅が…だった! 幕間

るかのなつやすみ ~紅霧地獄編~







事の起こりは、僕んちのポストに入っていた一通の手紙だった。
僕に宛てたこの手紙の差出人は、『アンジェラ・トゥリッリ』。
母さんだ。
そして、その手紙にはこう書いてあったのだ。
『ルカへ 元気にしているかしら?母さんは今昔馴染みの豪邸でリゾートしているわ。
 たしか貴方夏休みに入ったわよね、せっかくだからこちらへ遊びにいらっしゃいな~』
要約するとこんな感じだ。
こっちでは夏真っ盛りだけど、プレシアさんとアリシアちゃんのいる麻帆良はまだ
4月末ぐらいなので、とりあえず遊びに行って来る、という書置きだけ残しておけば大丈夫だろう。
アルは今、父さんからお呼びがかかっているから、今回は2人旅(まあ直に着くけど)になる。
せっかくだし、母さんの所で夏休みを満喫しようと思う。
水着とかは必要かな…?
ま、他に必要な物があればその場で取り寄せればいいか!

とりあえず入用になりそうなものをリュックに背負い、
僕は指定された場所へ向けて、ピンクの扉を開けたのだ…。















そして開けた先には、鬱蒼、というのに相応しい森が広がっていた。








はずだったんだけど。

なにこれ、真っ暗。場所指定間違ったのかな?
足元に草の感覚があるから外ってことは解るけれども、なんでこんなに暗いんだ?
暗いなんてもんじゃなく、真っ黒。
目を閉じているのか開けているのかも判らないくらいの真っ暗闇。
しかたないと、一歩進むのも困難なこの闇を抜けるべく、
ゆっくり地面を確かめるように進もうとしたら、誰かにがっしりと頭を掴まれた。

ちょ、痛い!
何か凄いバカ力で頭を挟んでくる!

「だ、誰だっ…て痛い痛い痛い!」

問答無用とばかりに圧迫してくる何か。
圧迫祭りか!こんなところで今夜は圧迫祭りなのか!?
割れる割れる割れる!!!
ピンクの可愛いの出てきちゃうのお゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙!!!

これいじょうは や ばい ぞ

ギリギリ締め付けてくる誰かの手を、とっさにつかむ。
この悪い手めッ!!

…あれ、なんか小さいな。

しかし一瞬の油断が命取り。
次に僕の耳に届いた声は、

「いただきまーす。」
「!?」

食物に対する祈りと感謝を捧げる声だったからだ。


がぶり





「ぎゃああああああああああああああああああああ!」
「まっまずいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃ!」










しばらくおまちください…しばらくおまちください…しばらくおまちください…しばらくおまちく


  おそれいりますが
  しばらくそのままで
  待て ばか
               



                             …妖怪嘔吐中
                             …少年止血中
ちください…しばらくおまちください…しばらくおまちください…しばらくおまちください…しば












「うぇうぇうぇうぇ…」

涙目になりながら、水筒で口をすすぐ金髪の女の子を見てると、
被害者は僕なのになんか凄く申し訳ない気がしてきた。
ああ…水筒のお茶がマッハで減少していく…

「うええ…こんなに不味い人間がいるなんて知らなかった…」
「ご、ごめんなさい…」

謝ってしまった。
大理不尽に遭遇したのは僕なのに。

「あんなに甘苦辛不味い人間をかじったのは初めてよーうぇぇ」
「す、すいません。」

かじられたのは僕なのになんでこんなに申し訳ない気持ちになるんだろうか。

「不味くてごめんなさい。」
「ほんとだよもうっ!あー まだ口の中が変な感じ…」
「…申し訳ない」
「突然出てきたと思ったらこんなに不味いなんて…もう出てこないでよねっ」
「反省してます…」

ひたすら平謝りする僕。
…やっぱり僕が悪いのかもしれない…。

「じゃあ、わたしはもう行くけど、次はもっと気をつけてよね!」
「はい…ご迷惑をおかけしました」

黒っぽい服を着た、赤いリボンが特徴的な金髪少女は、ぷりぷりと怒りながら森の彼方へと飛んでい

った。

「…みんなに気をつける様に言ってあげなきゃ…」

と、聞き捨てなら無いことを呟きながら。




………飛んで行った!!?


…すげえなこの世界。
僕ですら道具がないと飛べないのに、どうみても僕と同じぐらいの女の子が
手を広げながら飛んでった。
魔導師かなんかなんだろうか…。

結局、僕の頭を掴んでいたのは今の子で、齧ったのも今の子だった。
何故真っ暗闇になっていたのかは良く判らないが、きっとそういう能力なんだろう。

おもむろにリュックから取り出したるは、“るるぶ幻想郷 幻想郷縁起増刊”。

ペラペラとページを捲り…あった。

『宵闇妖怪ルーミア
 くらやみを つくりだすようかい やみにとらわれた
 にんげんをたべるので とつぜん やみにつつまれたら
 そこはかのじょの しょくたくだ』

いきなり危険度クライマックスじゃねえか。
BADENDフラグを回避…

噛まれた時点で回避できてないな。








~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

余談ではあるが、宵闇の妖怪ルーミアの中では人間とは食料でしかない。
ただ、それが食べて良い人間か悪い人間の二種類しかなかった(博霊の巫女は悪い方)。
しかしこの日、彼女の中に、「食べても不味い人間」という新たなカテゴリーが誕生した。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~







さて、空飛ぶ金髪の女の子と別れて、ガイドマップ片手に森を突き進む僕。

「ねぇ、なんでさっき止めてくれなかったのさ」

歩きながら、虚空に向けて話しかける。
通常ならば僕以外誰も居ない森の中、答えは返ってくるはずもないが、
しかし僕のかけた声は、静かな梢に吸収されることはなかった。

「いやなに、あの程度ならば私がどうこうせずとも、なんとかできたのだろう?ルカ。」

いや、そうだけどさあ。
めちゃくちゃかじられたんだけど…。
血、出たんだけど。

「だから、私がこっそり手当てをしてただろう?」

そうなる前に女の子の方止めるでしょ…常識的に考えてさあ…。

「私の存在は、ギリギリまで隠匿すべし、との言伝だっただろう。
 ならば、あの場で私が姿を表すのは都合が悪い。
 別に、君の齧られる様を見たいために出てこなかったわけではないぞククク」

ちくしょう、こいつ絶対楽しんでやがったな!
覚えてろよ…世界さんに頼んでもっと過酷な職場に派遣してやるからな…。

「それよりルカ、あれが目的地なんじゃあないのか?」

彼の指差す先には、血のように赤く染まった、大きな館があった。
マジでかい。
デカイわりには窓の数が少ない… いやそうでもないな。
特徴的なのは大きさ以外に上げるとすれば時計塔かな。

「赤いね。」
「紅いな。」

などとくだらないヤリトリをしながら、
背中のリュックから再びるるぶを取り出しペラペラと捲る…あった。

あれが『紅魔館』…こーまかんか。
なるほど、なんか物々しい雰囲気といい、赤さといい、まさにコーマカン!って感じだ。

でかい屋敷を囲むようにこれまたデカイ塀とデカイ外門が立っている赤レンガの館。
外からの侵入者を拒むような威圧感を持ってるけど、
僕はどっちかというと中の物を外に出さないような造りに見えた。気のせいだろうか。

そして外からの侵入者を拒むような威圧感を持った外門は、あっさりと開くのであった。

「なんのためにこんな仰々しい扉を作ったのかわかんないぞこれじゃあ。」

軽く押せばすすっと開くこの扉。軋む音も無くよく整備されているみたいだ。

「ふむ、大きさの割りにはよく手入れをされている。大事に使われているな。」

ああ、貴方そういえばそういうものの整備ばっか頼まれていたらしたんでしたね。
Noと言えない典型的な日本人だね。

「うるさいぞルカ。それより中に入ってみろ、中々面白い。」

へいへいっ と足を踏み入れる。
門はこれまたすぃーっと音も無くしまった。全自動か?!

「面白いのはそこじゃあない。庭を見てみろ。」

…は?

何この広さ。
そとから見たときよりも、明らかに広くなっている。
つーか、外の門と館の入り口の門何メートルはなれてんだよあれ。
…歩かなきゃいけないのか?歩かなきゃいけないのか僕?

「歩け若人。」

いや、しかしこの距離は… 
だ、誰か居ませんかー?
大声を出して家人を訪ねるが
…中に誰もいませんか。そうですか…。

とぼとぼと歩き始める。
夜空にはでかく紅い月と、星の光とがきらめいて、
庭は真夜中(僕の腕時計だと12:30だね)だというのに、ほんのりと明るく見えた。

幻想的…とでも言えばいいのかもしれない。
虫の声ぐらいしか聞こえないし。
つーか考えてみればこの時間帯に家に伺うのって結構失礼なんじゃ…

「でも、ルカの母からは時間指定込だったではないか。」

そうなんだよなぁ…。うーむ。謎だ。

歩いても歩いてもなかなか近づかない館を見据えながら、時たま花壇や植木を見る。
こんなでかい庭なのに、よく手入れされているな。
というか、きっと使用人とかすごいいっぱい居るんだろうに、何故に不法侵入を許すかね。
いやまぁ、不法ではないんだけど。
お出迎えに出てきてもいいんじゃないか誰か。

結局外の門から館の扉に付くまでに、だいたい30分くらいかかった。
それにしても、入り口の門よりは小さいが、館の扉もけっこうでかい。
外の門が僕5人分ぐらいだとすると、こっちの扉は3人くらいか。
つくりは荘厳にして厳粛。意匠の凝らされた扉だけども…重そうだ。物理的な意味で。

インターホンとかないの?
これぼく押して開けなくちゃダメなの?ムリゲーでしょこれ

ちょっとー!もしもしー!

とりあえず声を上げて中の人を呼ぼうとするが、うんともすんとも答えは返らず。
コンコンとドアノッカーをたたいたり、扉のノブに手を掛けて開けようとするが。

んっっぎぎぎぎぎぎぎ…!!

微塵も動かない。
開くか!!鍵掛かってるのか?
ちょっと!手伝ってよ!!

「吹き飛ばしてもいいのか?」

それはダメ絶対!!
ええい役たたずめっ

んぎぎぎぎぎぎぎぎ………

巨大な門と格闘していると、

「申し訳ありませんが、本日はもう閉館の時間となっております…お引き取りいただけますか?」

急に声を掛けられた。
びっくりした僕が振り向いた先には、銀髪のメイドさんが立っていた。

何時の間に後ろにいたんだ?





……………………………………………………………………………………………………………





少女は窓から侵入者を見つめる。
侵入者とおぼしき人物は、扉を叩く動作のままで静止していた。
呼吸すら、瞬きすらない。
完全に侵入者は『静止』していたのだ。

そっと窓を開け、少年の横に音も無く着地する。
動くものの無い時間の死んだ空間で、少女はガーターベルトに挟んだナイフを取り出した。

半泣きで扉を叩くモーションで静止した少年を見ながら少女は考える。
見た限りではどう転んでも只の平凡な少年にしか見えない。
金髪蒼眼は里の人間にしては珍しいが、それでも完全にいない、とは言い切れない。
実際自分も銀髪だ。
では妖怪の類では、と考えられるが、その可能性はないだろう。
なぜなら少年からは妖怪や妖精の持つ独特の気配がなかったからだ。

この様子ならば、別に私自身が対応する必要はなさそうね。
ほっておけばいずれ帰るでしょう。

結局取り出したはいいものの、所在無くなったナイフを腿に仕舞い、
少し延びをしながら自身の職場に戻ろうとした。
今夜は満月、お嬢様もきっとお喜びになるわ。


そこまで考えて少女は気付いた。

古来より満月は魔性を帯び、それに充てられた妖怪は破壊衝動が高まる。
加えて夜は妖怪どもの跋扈する時間。人里に済むものならば誰もが知ってる常識。
彼は、何の力も持たない彼は、まったくの無傷のまま、満月の森を抜け、ここまでたどり着いた。


そこまで考え付いてからの行動は速かった。

そして時は動き出す。

少女はナイフを素早く持ち直し、少年の首筋に当て問いかける。

「申し訳ありませんが、本日はもう閉館の時間となっております…お引き取りいただけますか?」








…………………………………………………………………………………………………………………







気がついたら、首にナイフを当てられていた。
ちょ…なにこのメイドさん超怖いんですけど!
いつのまにこっちに来たんだ?

(…わかる?)
(いや… 気がついたら、後ろに立たれていた。
 2階の窓に居たときには気配も感じていたが…
 移動の気配は何も感じなかった。
 本当に忽然と、現れた… 気を付けろルカ。)

「(答えないとヤバそうだ…)いや、あの、母さんに呼ばれてできたんですが。」

何だかスゲー不審な目で見られている。

(ルカ、気を付けろ。)

「そう、偉いわね。でも、こんな真夜中に、子供が一人で出歩いて、
 『紅魔館』まで来た…とでもいうのかしら?」
「…」
「…答えなさい」

ちょちょちょ、刺さってる刺さってる!ナイフ先っぽささってるよ!!

「…どこの誰の差し金かしら…答えてくれるかしら、僕?
 ただでさえ忙しいというのに、門番が森でキノコを食べて倒れてからはもっと忙しいのよ。」
「い、いやだからお使いです。なんか母さんがスカーレットさんにッ!?」
「お嬢様の名前を気安く呼ぶんじゃないわ」

いたいたいた!!食い込んでるよナイフッ!!
ちょっとちょっと!!
たっ たすけてっ





「やれやれ────



 ───そこまでにしてもらおうか。
 一応私は彼の保護者なのでね。」





出てくるのが遅いよエミヤ兄ちゃーん!









END









あとがき

クッ 事故で負傷した左足が疼くッ…!
静まれッ…まだお前の出番じゃあないッ…ッ!!


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