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[9440] 【ネタ】転生者、ネギま世界へ(現実?→とらハ3→ネギま)
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2011/07/21 03:29
お疲れ様です、シノオカです。

色々書きたいけれどネタが出なかったり、書いてみたら続きが書き辛い代物だったりとそのままチラシの山の中に埋もれてしまうものを書いているのですが……今回はちょいちょいと書いてコツコツ積み上げることを目標に分量少なめ、会話文多め、てきとーなノリの三拍子でこそこそ……じゃない、コツコツいこうかと思います。

なおこのSSは以下の成分を含んでいる可能性があります。

・オリ主(ある意味)最強
・オリ主(人外)ハーレム
・キャラ崩壊
・文書の体を為していない駄文
・致命的な誤字
・基本的に2KB前後の分量
<2009/06/11 update>
・“夕刊の四コマ”の様なスナック感覚で読めるSS
<2009/06/24 update>
・現実に居たら引くぐらいの個性
・卑猥な表現、あるいXXX板半歩手前ぐらいのエッチなお話

上記の成分にアレルギーがある方は服用は控えた方が良いそうですよ?
あとこのSSはR25指定が入ります。ネタの古さ的な意味でも。



【更新履歴】
2009/06/08 投稿 プロローグ
2009/06/09 投稿 第一話
2009/06/10 投稿 第二話
2009/06/10 投稿 第三話
2009/06/10 投稿 第四話
2009/06/10 修正 全話 行間調整
2009/06/11 投稿 第五話
2009/06/12 修正 第五話 行間調整
2009/06/12 投稿 第六話
2009/06/13 投稿 第七話
2009/06/14 修正 第七話 なでなで修正
2009/06/14 投稿 第八話
2009/06/14 投稿 第九話
2009/06/14 投稿 第十話
2009/06/15 投稿 第十一話
2009/06/16 投稿 第十二話
2009/06/18 投稿 第十三話
2009/06/18 投稿 第十四話
2009/06/19 投稿 第十五話
2009/06/20 投稿 第十六話
2009/06/21 投稿 第十七話
2009/06/22 投稿 第十八話
2009/06/23 投稿 第十九話
2009/06/24 投稿 第二十話
2009/06/25 投稿 第二十一話
2009/06/26 投稿 第二十二話
2009/06/27 投稿 第二十三話
2009/06/28 投稿 第二十四話
2009/06/29 投稿 第二十五話
2009/06/30 投稿 第二十六話
2009/07/01 投稿 第二十七話
2009/07/02 投稿 第二十八話
2009/07/03 投稿 第二十九話
2009/07/05 投稿 第三十話
2009/07/07 投稿 第三十一話
2009/07/08 投稿 七夕話
2009/07/15 投稿 第三十二話
2009/07/21 投稿 第三十三話
2010/07/21 投稿 第三十四話
2011/07/21 投稿 第三十五話



[9440] プロローグ
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/10 23:42
俺が昔オリ主だったころ、世界はとらハだった。





さして詳しくもないとらハに生まれ落ちたら御神本家の生まれで、士郎の弟的存在に。ちなみに歳はKYOYAのいっこ上だった。
幼少よりキッチリと叩き込まれた御神正統の小太刀二刀術は5歳で皆伝とかいうチートにも程がある天性の才能を持つ転生者とか、有り得んだろ。バランス考えろ。

爆弾テロを辛くも生き延び、正体隠して苦学生。鍛練にバイトに鍛練に学生生活に鍛練に鍛練の日々。
大学に入ってしばらくした頃、KYOYAと再会。なし崩し的に義姉と甥と姪の絡む事件に巻き込まれ、甥たちを庇って高層ビルから紐無しバンジーwith爆弾。

あー、こりゃ死んだなーとか、どうせ転生するならリリカル世界がよかったんだけどなーとか、微妙にフラグ立ちかけてた人たちを泣かせちゃうかなーとか。
どうでもいいことばかり考えていたら爆弾が爆発した。
こんなに優しく、愛情込めてハグしてるのに、俺の想いは伝わらなかったわけね、なーんて苦笑する。
折角だから一緒に三途のリバーを渡る連れが欲しかったんだけどな、なんて独りごちたら、

《伝わりました、あなたの想い――》

声が聞こえた。俺の腕の中から。

《私自身の爆発は無くせない。あなたがこの世界から永遠に消え去るのも覆せない。だから――》

不意に、視界から色が抜け落ちる。それだけに留まらず、世界から色も、音も、あらゆる動きすらもが消失する。
停滞したその世界の中、腕の中の爆発し始めた瞬間で静止した爆弾からの声は続く。

《私の爆発のエネルギーを対価に、あなたを位相の異なる、重なりの世界へ送ります――》

おいおい、それってまさか……。

《さようなら、私を愛してくれた人。ありがとう、私が愛を覚えた人――》

ぼ……

「ボマ子ー!!」

《……ネーミングセンスだけが壊滅的に残念です》





俺が元オリ主になった時、世界はネギまだった。

あれ? やっぱこれ、オリ主じゃねぇの?







そうかも知れん、そうでないかも知れん。



[9440] 第一話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/10 23:43
俺が昔転生オリ主だったころ、世界はとらハだった。

俺が来訪オリ主になった時、世界はネギまだった。





目を醒ますと、畳の部屋の布団の中。
あれ? 爆弾ハグダイブは夢落ちかしら?
でもこんな部屋に見覚えないぞ?
っと、ふすまの向こうに人の気配。……純粋な人の気配じゃないけど。
自分の状態を確認……夢の中の決戦装備じゃん。綱糸と飛針はまんまあるな。結局未使用だったから用意した数がそのまま残ってる。
いやほら、真剣な目の甥と姪見てたら後ろから見守るしかなかろ? いざとなったら手を貸したろうけど、大事に至らなかったしさ。
って、いっちゃん大切な俺の小太刀はどこに……?
布団から出て見回すがとんと見付からない。

「むぅ……気に入りの差料だったのだが……」

呟きが聞こえたのか、ふすまの外の気配が動く。

「き、気が付かれましたか!?」

ふすまを開けて部屋に飛び込んできたのはデコっ娘の幼女。右のみ前髪を垂らしている。

「まーにー。ところでここはどこ? あと俺の差料知らない?」

「ここは関西呪じゅ……こ、近衛詠春様のお屋敷です。小太刀は念のため預からせていただいております」

「……最初に何かいいかけなかった?」

「い、いえ、何も……」

「たしか関西ナントカとか……って、関西っ!?」

「きゃっ!?」

思わず大声出しちったよ……あー、びくっと肩震わせてら。怖がらせちまったかね?

「あー……念のために聞くけど、ここはどこら辺にあるん? 都道府県的な意味で」

「え、えと……京都府ですが?」

怪訝そうながらも答えてくれるとは、なんたる良い子。お礼とご褒美に頭を撫でてやろう。

「わわわっ!?」

「ありがとな。何が起きたか知らないけど、随分とまぁ遠くに来たもんだわ」

夢遊病にしても大移動過ぎる。こりゃ、目を醒ましてからこっち夢落ちにしようと頑張ってるアレを現実と認めないといかんのかもね。
あ、そうして考えても遠くに来たもんだわって感想に間違いはないかな。まったく、笑えない冗談みたいだ。事実は小説よりなんとやら、だな。

「あ、あの……え、詠春様が目を醒ましたら話がしたいとのことでしたので……」

おずおずと言い出す幼女。実に愛らしいではないかいな。

「ま、そーだよね。下手すると住居不法侵入とかいわれてもおかしくない状況だし」

それに小太刀も取られてちゃね。気に食わないけど行くしかないんだ。
おもむろに、予備動作も無しに立ち上がってみる。
気が重い時には口を突いて出る、自らを鼓舞する魔法の呪文は二十歳の意地で口に出さない。
ってか幼女の前でいっちゃって、おじさんとかいわれたら立ち直れないしね。

「案内、よろしくー」

「はいっ! お任せくださいっ!!」

元気のいい子は大好きです。







魔法の呪文、どっこいしょ。最近、無意識に良く使う。



[9440] 第二話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/10 23:43
通された応接間で待つことしばし。

「お待たせしました」

「……時代劇?」

「小太刀を携行していた君にいわれるとは意外だね」

「ごもっとも、ごもっとも」





「ではまず、互いに名乗るべきかな?」

質素な平安貴族コスを着たメガネのおっさんレイヤーが柔和な笑みで宣う。
向こうの先制か。ならこっちはカウンターで、

「お名前ならば先ほど案内してくれた子に聞いています、近衛買春殿」

「…………刹那君?」

「ぴぃっ!?」

俺の前に、ONI爆☆誕。
笑顔のままでこの殺気、怒らせると怖いタイプだな。

「ちちちちち違います、長! 私はちゃんと詠春様と!」

あー、幼女改め刹那嬢、涙目だな。
ってかこのにおい……軽くチビってないか?
あとおっさん、いくらか人を殺してるなー。殺気の質が、本物じゃん。

「詠春、そうだそうだ、近衛詠春殿だ。申し訳ない、間違って憶えていたらしい」

その一言にメガネのおっさんの表情は笑っていない笑顔から元の柔和な笑みに。
切り替え早いね。案外腹芸得意なタイプ?
……いや、素直なだけだな、これ。

「こほん……では改めて、私の名前は近衛詠春、神鳴流剣士であり……関西のとある組合(ギルド)の会長をしています。君の名前を教えてくれますか?」

ふむ、こんな若造に対しても礼儀を忘れない、か。それに何やら、表立って名乗るのは難しい組織のまとめ役、か。
初対面の相手にカードを見せ過ぎだろ……ま、この人なりの誠意、なのかも知れないな。
信用してみてもいい相手と観た。どのみち、俺の予想が正しければ、この世界で名を隠すことに、意味など無いだろうし、な。

「永全不動八門一派、御神真刀流小太刀二刀術皆伝、御神亜久馬」

そーいや、宗家のテロ以来、名乗るの初めてかも知れないな。御神的な意味で。







設定上の兄が御神静馬なので最後に馬と付く名前にしてみた。高町さん家の末っ子的な意味で。
佐清でも良かったのでは、とも思う。斧・琴・菊的な意味で。



[9440] 第三話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/10 23:44
「長、えいぜんふどうはちもんいっぱとは何なのですか?」

「かつて聞いたことが有るような無いような……うーん…………?」

ですよねー。
うん、全国の剣術流派や達人級武芸者に詳しい俺が神鳴流や詠春さんを知らなかったように、彼らもまた永全不動の八門が一派を、御神真刀流小太刀二刀術を、御神の名を知らないのは道理だ。本格的に異世界かなこりゃ……。

「御神流は10年以上前に宗家ごと吹き飛んでますからね、知らなくてもおかしくはないですよ」

「宗家、ごと……?」

「吹き飛んだ、だって?」

「近代以降、御神流は要人警護とかを生業にしてたんですよ。怨みつらみで宗家に一族が集まっていた時に爆弾でね」

重火器で武装した集団相手に単身勝利できる御神の剣士であったとしても不意を突いての面攻撃じゃ一部の実力者逃げ延びられれば御の字ってこと。
位置取りが幸運だった従兄さんやKYOYA、ちょっと買い物に出ていた義姉さんとみWiki……それと事前に不穏な気配を感じて外の様子を見がてら義姉さんたちを迎えに出ていた俺。
あの時ほどうろ覚えの知識を恨んだことはない。
もし俺がとらハをやってたら、と。
もし俺が色々な媒体を漁って知識を得ていたら、と。
すべてifの話だけど、さ。

「……その、済まなかったね。辛いことを思い出させてしまって」

我がことのように沈痛な貌の詠春さんに、泣き出しそうな刹那嬢。
部屋の空気が重い……。

「過ぎたことだし、気にしてもしゃーないっしょ。あー、刹那嬢もこんな昔話で泣かないのー」

内心を知られたら「おまえがいうな」といわれそうな台詞を口にし、努めて笑顔を作る。
ついでに身を乗り出して刹那嬢の頭をわしゃわしゃ撫でる。
なんつーか、俺刹那嬢を撫で過ぎ。ナデポスキルあったら幼女にフラグ立っちゃいますよ? 無いから良いようなものの……自重しろ、俺。

「……そういえば、君は何故屋敷の裏林に?」

「その前に……海鳴市って知ってます?」

「海鳴市? いや、聞いたことがありませんが……」

「んー……ちょっと日本地図借りられます?」





「無いな……やっぱありゃ夢落ちじゃなかったかー……」

結論からいえば海鳴市は無かった。歴史的な意味で。
地図には海鳴市になる以前に合併した町の名を冠した市が有るだけ。
つまりは、

「こちら側には海鳴市はできなかった……ボマ子がいった通り、ここは位相の異なる重なった別の世界、か」

「亜久馬君……?」

「説明しましょ、俺が何故ここに居るのか……まー、信じる信じないはあなた方次第ですけどね」

居住まいを正し、俺は口を開く。
願わくは、黄色い救急車を呼ばれないことを。







せっちゃんにフラグを立てていいのやら。いや、立てるんだけどね。ボマ子? 真打は後から登場するものですよ。



[9440] 第四話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/10 23:44
爆弾に好かれて並行世界(パラレルワールド)に飛ばされてきました。
にわかには信じ難い話。だが彼の目は嘘偽りの無い色を浮かべている。
交わした言葉は少ないが、彼は信用できる人物に思える。
しかし、

「何故君はそこまで落ち着いて居られるのですか? もう戻れないかも知れないというのに……」

「んー……まー、俺はあの世界で死ぬ運命であり、そしてあの世界としての俺は死んだんだろうからなー。あの世界に未練は有るけど、運命をねじ曲げるのは不可能だろうしなー」

「人は自分の意志で道を切り拓けるものであり、運命にすら抗える……そう、私は思います」

「運命ってのはさ、基本的にファジーなんだと。だから一人の人間については結構アバウトで、そもそもどう生きるかとか、いつ死ぬかなんていちいち決まっちゃいないらしい。大まかな世界の予定帳、それが人がアガスティアの葉やらアカシックレコードやら呼ぶものであり、運命と称されるものなんだとさ」

彼の目はどこか諦観を感じさせる。
私は無性に悲しくなる。
アレは彼の様な若者がすべき目ではない。
老い去らばえ、先が見えてしまった老人を思わせるその目に、私は言い様のない不安を覚える。
彼はもしかして、諦めを付けてしまったのではないか、と。
戻ることでは無く、生きることそのものを……。
何故彼はあんな目を……今の話に、そこまでの諦めを強いるものが何かあっただろうか?

「目覚めたてとはいえ、運命なんて口にしたんだぜ? 九十九神が、さ」

言われ、ハッとした。
人の生き死になどには関わりの無い、運命という名の世界の予定帳。
神の一柱が彼の死を称した、運命という言葉。
ならば彼の死は、

「あの世界の運行上、必要不可避なイベント……それが俺の死だったってだけの話さ。もう、わかるだろ?」

「世界は……君が居た世界は君の帰還を……」

「あぁ、認めないだろうなー」

あっけらかんという彼の目を、私は直視できない。
世界が……彼を生み出し、育んだ世界そのものが、彼を拒絶した…………。
なるほど、彼の諦観はそこから来ているのですね……無理も無い。
どうすれば良いのでしょう、どうすれば彼を救うことが……?

「取り敢えず、俺の差料を返してくれ。あ、警護とかの仕事にツテなりコネなり無い?」

……あれ?

「あの世界に戻れないなら、この世界で生きないとね。流派も次代に継承させたいし……まずは社会的な基盤作りからだから大変そうだけど……取り敢えずはご飯のためにも働かないとねー」

…………思っていたよりも彼は強い心を持っていたようです。私、人を見る目には自信が有ったのですか……。







おまけ

「ところで運命についてのお話なのですが、何故伝聞調なのですか?」

「聞いた話だからねー」

「聞いた?」

「あー、うん……神様に?」

(前世で俺の死因作った立川のあの二人組みが本物ならねー)







詠春さん、空回る。あと立川の二人組みのアパートの表札は「聖」だったとか。



[9440] 第五話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/12 01:17
長と御神亜久馬殿……長が客人としてもてなしているので亜久馬様とお呼びすべきでしょうか……の難しい話も終わったようです。
今は今後どうするかという話に移ったようです。
難しい話は良くわからなかったのですが、亜久馬様はもう帰る場所が無いということのようです。
事情は違いますが、帰るべき場所が無いという経験はわたしにも有ります。
話を聞く内に亜久馬様と自分自身を重ねてしまい、涙が溢れそうになった時の亜久馬様の掌の暖かさは生涯忘れられません。
気付けば、脇に控えていたはずのわたしは寄り添うように亜久馬様のお隣で正座していました……不思議です、移動した記憶が無いのですが……?

「小太刀をお返しするのはいいのですが……銃刀法違反になってしまうのでは?」

「それ以前の問題で戸籍も無いことに気付いた。衣食住以前の問題だなー」

「……その辺りは何とかしてみましょう御神亜久馬名義で戸籍を作るぐらいならこちらでも不可能ではありませんしね」

長、さりげなく権力振りかざしてませんか?

「あー、そうか、この世界なら御神の名を隠す必要は無いんだな」

「すると、以前は御神の名を隠して暮らしていたのですか?」

「裏では知られた名前だったから、仕事以外では白井って名字使ってたんだわ。まー、御神流を伝承していくにしても、御神の名は隠し名にした方がいいかな。身内狙われると厄介だし」

白井亜久馬様ですか……その名前も素敵です。
もし結婚したら御神刹那と白井刹那、どちらが良いのでしょう……って、何を考えているんですか、わたしはっ!?

「むぅ、何やら刹那嬢がわたわたしているのだが」

「……いつものことですので気にしないで下さい。それよりも」

急に長が真剣な表情に変わりました。それに長から漏れ出してきたこれは……剣気?

「あなたの実力のほど、見せていただけますか? 仕事を紹介するにしても、どの程度の実力か知らなければなりませんので」

「相手は詠春さんでいいの? ちなみに詠春さん自体は世界レベルで考えてどれぐらい?」

「かつては上位だったのですが……もう若くもないですからね」

「……なるほど、そいつは重畳。この世界で御神の剣がどの程度通用するかもわかるというものだなー」

って、亜久馬様、その発言は……!

「……私も舐められたものですね」

あぁっ!? 長からかなり本気の殺気が!?
亜久馬様の隣に居るわたしにもそれは容赦無く浴びせられ……、

「刹那嬢、またか?」

「す、済みません刹那君……」

亜久馬様は軽く鼻を鳴らして苦笑し、長は雑巾片手に畳を清める作業に……し、死にたいです…………。







せっちゃんのスキルは妄想とおもらしになってきた。あと京都弁は良くわからないので喋らないんじゃないかな。あぁ、白井の読みは「しらい」では無く「しろい」ですよ? SLB的な意味で。



[9440] 第六話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/12 01:23
◯御神亜久馬-近衛詠春●
決まり手:神速、及び御神流裏奥義

では試合の様子をダイジェストでどうぞ。



「ぬぉっ!? 何この威力、化け物!?」

「“気”はご存知有りませんか?」

「知らん知らん、知りたくも無い!」



「なるほど、気ってのは便利だなー……」

「なっ!? 先ほどまでとは違う……この短時間で気を扱えるようになったというのですかっ!」

「あー、アレだ、見てて上手い使い方は覚えた」

「先ほどの言葉を返します……あなたも十分に化け物ですよっ!」

「それほどでも~~♪」

「褒めてませんよっ!?」



「ならこれはどうですか?」

「おぉ、速っ! 何今の……熱核ホバー移動?」

「ぐほっ、げほっ!? しょ、初見で“縮地法”にカウンターを?」

「いや、まっすぐ突っ込んでくるだけってただの的でしょ。それじゃー、今度はこちらからー」

「消えた? まさか一見で縮地法を?」

「縮地とやらとは一味違うぞー?」

「な、ぐ、がっ!? 見えない? 縮地を連続で!?」

「だから縮地とは違うってヴァっ!」



「くっ……って、嫌な音が……し、しまった、腰がっ!?」

「隙有りーっ!」

「ちょ、まっ!?」

「御神流奥義・裏之百八、キャメルクラーッチ!!」

「イダダダダダダッ!?」





「つまりは縮地とやらは真っ直ぐ吹っ飛んで移動、俺はそれと同等の速さで自在に動けた、ってーわけ」

ずずーっと茶を啜りつつ刹那嬢に解説したる。
縮地? 速かったよ?
速かったけど、神速使わんでも動き見切れたし、カウンター食らわせられたから脅威では無かったねー。
何となくで気の扱いはわかったけど、これは以前から無意識に使ってたからみたいだわ。
結局わかったことは、

「詠春さん、鍛え直しましょう。いくらなんでも鈍り過ぎです」

「め、面目無い……」

俺が茶を啜る横でへばってる詠春さん。これでかつては上位って嘘だろといいたい。
良くて上の下、今は中の中か、下手すると中の下。
現役退いたからって、ちと鈍り過ぎだねー。あと湿布のにおいが目に染みる。

「縮地と亜久馬様の動きは違うものだとはわかりましたが……お、長が負けるなど……」

「武器も違うしね。太刀と小太刀二刀術じゃ間合いも手数も違う、懐に入り込んで連撃すれば太刀も自由に振るえないでしょ?」

本当は相手の動きの拍子を盗み、防御を隙間を突く御神流の貫とゆー技術の効果ですけど。

「それに御神流は屋内ってか室内の戦闘のプロだし。小太刀を使うのも閉所での取り回しや携帯性、隠匿性とかが理由なんだとか」

道場とはいえ壁や天井が使えるって良いよね。

「あー、あとはそうだね、刹那嬢も応援してくれたし」

二回も殺気で漏らされたからか、刹那嬢は詠春さんではなく俺の応援をしてくれた。
嬉しかったので気による強化併用で神速使いまくってみた。反省はしていない。

「そ、そんな……わ、わたしは……」

真っ赤になって、でも幸せそうな刹那嬢……何故?
そしてそんな刹那嬢を見てほほう、と納得顔の詠春さん……だから何故?

「……亜久馬君の実力はわかりました。戸籍や刀剣所持許可の申請、それに仕事に関して、任せていただけますか?」

「是非も無し」

「名は亜久馬のままに作りますが、姓はこちらで決めます。こういう時のために組合や神鳴流で使う名字が有りますので」

「かたじけない」

「仕事が決まるまでは神鳴流の食客扱いで、たまに組合の関連で護衛をお願いしようかと思います」

「動きを見るぐらいなら……請われても御神の剣は教えませんよー?」

神鳴流は教えられないけど、御神流も教えられない。二足のわらじは履かせたくないしねー。じゃ、俺って何だろ。穀潰し? うーん、汚名返上しようとすると手の内さらしちゃうのかー……ジレンマだねー。





ちなみに後日、この時の言葉を軽く後悔した。ってか詠春さん、今度本気で死合いましょうか。新月の晩にでも。







気による効果で神速持続時間とかが鬼です。神経を始めとした肉体的な強化は神速の連続長時間使用を可能に! でもちょっとやそっとじゃ使わない。疲れるからねー。







以下、ざっくりまとめた感想レス(No.1~18)

>ボマ子に反応した皆様

ボマ子の人気に全俺が嫉妬(笑)
正直ここまで反応が有るとは思ってもいなかったわけで……みんなくすっと笑ってくれるかしら、ぐらいの軽いジャブだったので。
当初の予定より繰り上げて再登場させようかしら? いや、むしろ最期まで出さないとか……ボマ子は安い女じゃないですからね☆


>竜様

その内、亜久馬の設定とか、立てたフラグの一覧を作る予定ですので、前の世界のフラグも載っけちゃいましょうかね。
まぁ、基本人外とのフラグばっかりなんですが。


>短過ぎると思われた皆様

ちょっとしたことの合間合間にちまちま携帯で書いちょりますんで、携帯画面でざっと見直しできる量として2KB前後が精一杯でして……。
あと、2KB前後だと余り気負わずにさくさく書いていけるんです。
スナック感覚に書けて、スナック感覚に読める、“夕刊の四コマ”的なものを目指していますので……容量制限が復活しない限りは大体こんな量で進んでいくと思います、ご容赦いただきたい。
あ、“夕刊の四コマ”よりも“『おはよう!こどもショー』内特撮コーナードラマ”のイメージが近いかも。
放送時間は一回五分で一週間六回あるいは三日三回を一話としてカウントするスタイル。ゴッドマン的な。


>せっちゃんせったんつるぺったんが好きな皆様(ぇ)

せっちゃんが好きです。でも弄りがいのあるエヴァ様はもっと好きです(待て)
まぁ、この段階だとまだせっちゃんは一桁と二桁の境辺りなので、膀胱からのラインが緩くても仕方無いよね!


>たまぁ様

月詠……両手に小太刀verでにとーれんげきざんがんけーん(徹付加)とかやったらたぶん大変なことになるので……それはそれで面白いかも?(ヲィ)

>通りすがり六世様

えぇ、パンチとロンゲです(笑)
ちなみに死の原因はパンチの弟君。大掃除中に部屋から一度出そうとして手違いから宙を舞い、亜久馬の前世のこめかみに直撃しました。


>毛玉様

何だかんだで亜久馬は“なのはちゃん”より“なのちゃん”が好きです。でもポンコツ執務官はもっと好きです。あほの子なところとかが。
そんなリリなの好きから名乗った白井亜久馬という名前ですが、亜久馬は火力よりも手数重視なので名前負けしてたりします。哀れ。





最後に、感想レス遅れて申し訳ございません!
次回から、なるべく溜めないように気を付けていきたいと思います。



[9440] 第七話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/14 12:27
「ふ、ふつつかものではありますが、よろしくお願い致します!」

「刹那嬢、それは何か違う気がする」





原因は詠春さんの用意した戸籍。

「戸籍、できましたよ」

「早いですね、一日しか経っていませんよ?」

「これでも関係各所に顔が利きますので。取り敢えず、これから色々と大変かと思いますが、頑張って下さいね“桜咲”亜久馬君」

「桜咲、それが俺の新しい姓ですか」

「えぇ、それと君にこれから家族となる人を紹介しましょう。入ってきなさい、“桜咲”刹那君」

からり、とふすまが開いて刹那嬢が入ってくる。





回想を終え、ちらりと詠春さんを見る。

「一応聞きますが、俺と刹那嬢の続柄は?」

「兄と妹です」

「だとさ、刹那嬢」

「わ、わたしとしては夫婦でも良かったのですが……」

……良くわかって無いんだろうなー、まだ10歳ぐらいだろうし。

「と、とにかく……これからよろしくお願い致します、亜久馬様」

三つ指ついて頭を下げる刹那嬢。だがなー……。

「取り敢えず、俺は今日から刹那嬢の兄となるわけだが……兄を呼ぶのに亜久馬様は無い気がする」

「で、では……兄上様……」

「まだ堅いねー」

「に、兄様……」

「様ってのは取れない?」

「そ、それは、その……」

あわあわし始めたかー……しゃーないねー。

「わかった、兄様で良いよ、刹那嬢」

そういって刹那嬢の頭を撫でる……あれ? 不満そうだなー?

「兄様」

「なんだ、刹那嬢」

「……お言葉を返す様ですが、兄様は妹を刹那嬢と呼ぶのですか?」

「むぅ……」

一本取られた。
隣で吹き出す詠春さんにはピンポイントで殺気をプレゼント。真面目な話中なので笑いは要りませんよ、と。

「済まなかったな、刹那嬢……いや、刹那。許してはもらえないか?」

「もっと、撫でていただけるなら……」

なでなで、なでなで……

気持ちよさそうに刹那が目を細めている。

なでなで、なでなで、なでなで……

物足りないのか、もっと撫でて欲しいのか、俺の掌に刹那が頭をぐぃっと押し付けてくる。

なでなで、なでなで、なでなで、なでなで……

刹那の頭に垂れ耳が見える気がするなー……あと有るはずの無い尻尾をぶんぶんと振っている様に見える気が。

なでなで、なでなで、なでなで、なでなで、なでなで……

いかん、物凄く和む……あー、そういえば妹分は結構な数が居たけれど、義理とはいえ妹ってのは初めてだな。

なでなで、なでなで、なでなで、なでなで、なでなで、なでなで……

……あー、可愛いねー……なるほど、KYOYAのアレな病気もわからなくも無いなー。

なでなで、なでなで、なでなで、なでなで、なでなで、なでなで、なでなで……

「ん……くぅ……」

眠ってしまった、のか……? そっと手を離そうとすると、眉根を寄せて抗議してくる……撫で続けろ、と?

なでなで、なでなで、なでなで、なでなで、なでなで、なでなで、なでなで、なでなで……

まー、刹那の安眠のため、と納得しておこう。それに実に撫で心地の良い頭だしなー。

なでなで、なでなで、なでなで、なでなで、なでなで、なでなで、なでなで、なでなで、なでなで……





気付けば日が暮れていた。仕方無いじゃん! 刹那の髪触り心地良いし、幸せそうに微笑んで目を閉じてるし、止めるに止められなかったんだから!!







兄は妹が可愛いようです。妹は兄が大好きなようです。







以下、ざっくりまとめた感想レス(No.19~25)

>沙様

いえいえ、アレこそ大陸の超人拳法と御神流を融合させた御神流裏奥義ですよ?(笑)
あとさりげなく奥義の歩法と呼ばれる神速で亜久馬無双でした。ちくちくちくちく相手の防御の隙を突きつつこまめにダメージを入れ、攻撃はすべて回避。いやらしい戦い方をする亜久馬を今後ともどうぞよろしく。


>通りすがり六世様、竜様、pu様

管理職の立場で維持できるほど、若さは安くは無いのですよ。油断すると腰に来るんです……。
という訳で、うちの詠春さんは「ギックリ持ち」になりました(笑)


>東方の使者様

縮地法(瞬動)の理屈や原作でのネギvsタカミチ戦を見て、このSSでは「発動時に使用した気(魔力)の量及び噴出方向により、移動距離及び移動方向が決定される。発動後の移動距離及び移動方向は不可能」という設定で書いています。
まぁ、間合いを詰めたり、移動力を攻撃力に上乗せしたりという点だと多分縮地法が優れているでしょうけど……至近距離に詰めてからなら神速からは逃げられないでしょうね。縮地法発動直前に“徹”でこピンで潰したりとかで。
屋内戦闘であること、移動術の違い、あとは実力を確認するという名目も有って詠春さんは奥義使用をセーブしていたこと。
あと神鳴流の技の多くが「大き目のものを相手にするのに優れ」ている気がするので、このSSでは「神鳴流は対魔の剣、御神流は対人の剣として研鑽を積んできた流派」という設定で行こうと思います。
ちなみにガチンコじゃエヴァ様には敵いませんよ。でも亜久馬はギャグパートなら無敵なのでギャグ空間に引きずり込めば何とかなるかも……(笑)


>毛玉様
その場合は「何故か無限に出てくる飛針」でやると思います。
でも……台詞いっているうちに全部相手に刺さってしまいそうだな。
時は動いている!


>蝶々様

こうなりました(笑)
ちなみに御神・不破の血筋に備わる特性は「身内に駄々甘い」なので……もう誰もせっちゃんをいじめないでしょう。命懸けになりますし(ヲィ)



[9440] 第八話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/14 12:29
夕食をいただいたあと、兄様とわたしは長のお屋敷から少し離れた小屋に移りました。
小屋といっても炊事場もお風呂もトイレも付いた立派な家です。今日からここで兄様と二人で暮らすことになったのです。そう、こここそが桜咲家になるのです!

「兄様、お風呂なのですが……」

「先に入っていいよー?」

「……い、一緒に入りませんか? せ、折角家族となったのですし!」

い……いってしまいました……う~~、か、顔が熱いです……。

「むぅ……」

な、悩んでいる!? や、やはりこの年になって男女での入浴は不味かったのでしょうか?

「あ、あの、兄様……やはり一人で……」

「まー、刹那は小柄だし、問題無いかな」

「ほへ?」

どうやら兄様の悩みは浴室の広さだったみたいです……お、女として意識されていないのは正直悲しいのですが、そのお陰で一緒にお風呂には入れそうです!

「背中、流してくれるかー?」

「は、はひっ!」

「……?」

勢い込んで返事をしようとして噛んでしまいました……兄様も怪訝な顔です。

「ね、熱でも有るのか? 先ほどから何やらぼうっとしているし、顔も赤い。言動も落ち着きが無いな……風呂は止めておいた方が良いかも知れ」

「大丈夫です!!」

「……わ、わかった、わかったからそんなこの世の終わりの様な顔をするな。あと先ほどから時折変わる獲物を狙う獣の様な目は止めてくれ」

わ、わたしそんな目を……?
いやいや、きっと兄様の勘違いです。
わたしはただ兄様と仲良くなりたいだけなのですから。
兄様と仲良くなるための方法を助言して下さった鶴子先輩、見ていて下さい。わたし、必ず兄様と仲の良い家族になって見せます!



脱衣場で二人一緒に服を脱ぎます。
こういう時に恥ずかしがったり隠したりすると壁を作ってしまうそうですので、あえてわたしは全開でいきます。パパッと脱いで、身体に布は着けません。

「兄様、先に入ってお湯を出しておきます!」

とはいえ恥ずかしいものは恥ずかしいので、先に浴室に逃げ……入ることにします。

「そうか……ところで刹那」

「? 何でしょうか?」

「右手と右足が同時に前に出たり、関節が曲がらなかったりとか、あからさまに動きがぎこちない。家族で風呂に入るだけだ、も少しリラックスな?」

笑われてしまいました……。



「さて、まずは刹那の頭を洗おうか……と、シャンプーしかないな。リンスはどこだ?」

「兄様、別にわたしはシャンプーだけでも……」

「折角の長く綺麗な髪だ、傷めてはもったいなかろ?」

き、きれいだなんて……に、兄様、わたしたちは兄妹なのですよ!? い、いえ兄様は優しいですし格好良いですし、兄様にならわたしは別に……。

「…………取り敢えず刹那、湯船に入らずにのぼせるのはどうかと思うなー」

は、鼻血が出てしまいました……穴が有ったら入りたいです。







せつな の もうそうりょく が あがった。
あと次の話は15禁ぐらいなので、中学生以下は回れ右だ!







以下、ざっくりまとめた感想レス(No.26~32)

>ムー民様

仕様です。
少なくとも、本編の時間軸に至るまでは3KBの壁を破れないと思います。


>ねこ様

なでなでと書いている内に妄想は浮かんだのですが、むしろあのなでなでを見てみんな妄想浮かばないかなー、と思ったので試してみました。
取り敢えずちょこっと修正、妄想の一部に差替えておきました!


>クルシス様

いやいや、おそらくその時点で亜久馬にとってエヴァ様は“妹のクラスメイト”ですから。本気で手は出せませんよ……刹那に怪我をさせない限りは(笑)
ガチでやる事態になったら……まぁ化け物どもの戦いになるんでしょうね。ただ勝ち負けというのはどうなるやら?
亜久馬は「負けない戦い」をするタイプだったりしますから。


>蝶々様

亜久馬は世間体を気にするタイプだったりするので、十も年の離れた相手は忌避しそうです。なし崩しに既成事実となったら逃げないでしょうけど……むしろ将来的に妹に恋人とか出来たら、その相手はどうなるやら。


>良様

なりそう? いいえ、すでに……(笑)


>東方の使者様

試合が終わるまでなら特に何もいわないと思いますよ? 戦いの最中の揺さぶりぐらいは戦場では良く有ることですから。
まぁ、終わったあとなら刹那に見えない位置でエヴァ様にうめぼしぐらいはするでしょうけど(笑)


>竜様

んー……背中で語るかも知れませんね、生き様というやつを。
あ、もしもネギと刹那の仮契約とか有ったら、理不尽な厳しさが発揮されるんですが(笑)



[9440] 第九話(※15禁?)
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/14 12:31
リンスは無かったけどリンプーが有ったからそれでいくことになったぜ!





「ほら、刹那。目、閉じとけよー?」

お湯で髪を軽く流し、手にたっぷり目のリンプーを取る。旋毛の辺りから徐々に範囲を広げながら泡立てていく。

「に、兄様……や、入って……ひゃぅっ!?」

「だから目を閉じろと」

普段半分だけ垂らしている前髪も今は全部下ろしている。まずはそこを揉むように洗う。

「イタッ、イタイ、やっ、兄様、堪忍ですっ!」

「声だけ聞かれたら思い切り誤解されるんで勘弁していただきたい」

現実逃避したくなる声を半ば無視して、下ろされているサイドテールも良く揉み洗い。
それから頭皮のマッサージ。

「はぅ……い、イタク無くなってきました……むしろ気持ちイイです……」

「わざとか刹那、わざとなんだな!?」

最後は熱めのお湯で泡を洗い流す。
……何やら精神的にどっと疲れた。まだ頭を洗っただけなんだけどなー。
ため息吐きつつ用意していた手拭いで刹那の髪を上げる。

「に、兄様、次はわたしが……」

「いや、このまま刹那をまるっと洗おうと思う」

「はひっ!?」

ちなみに拒否権は無い。もー、こーなったら作業と割り切るのみ!
手拭いを湿らせ、石鹸を泡立てる。
本当なら刹那のつるつるの肌のためにも液体のボディソープが良いんだがなー。
「無い物ねだりは意味が無いなー」

まずは首筋から。肌を傷付けない様に軽く触れ、微かに擦りつつ泡を馴染ませる。

「ひゃうっ!? に、兄様っ!?」

「もーちょい声抑えようなー?」

肩から腕、掌や指の叉まで丹念に、しかし力を入れ過ぎない様に慎重を期する。
関節周りは汗も溜まりやすいのでより丁寧にね。

「は、はぅぅ~~、に、兄様ぁ……」

「甘い声を出さないでくれ、頼むから」

両腕を洗い終えたら次は背中。背筋に沿って手拭いを上下させ、ゆっくりとその範囲を左右に広げていく。
ん? 肩甲骨の辺りに違和感が……凝っているのか、幼いのに大変だな。ここもマッサージの要領で揉み解しておこう。

「あぁっ、兄様、そこは……そこは余り……あぅぅ~~……」

(そこは、翼の……)

真っ赤になりながらも目を細めて気持ち良さそうにしている。

「やっぱり凝ってたんだなー」

再度首筋を滑らせ、鎖骨から胸の辺りに手拭いを運ぶ。
この年頃だとまだまだ胸というには膨らみはささやかで、手応えも硬い。まー、膨らみ始めたら一緒には入れんが。

「あっ、あぁっ、に、兄様ぁ……ひゃうぅっっ!?」

声を上げられていて妙に落ち着かんなー。
仕方無い、胸は適当に切り上げて脇やお腹に移りましょ。

「あんま声を上げないよーに」

「や、無理、無理です兄様ぁ……はひゃっ!? お、おへそはダメですぅっ!!」

注文の多い妹だねー。

「ほれ、立った立った」

「ふぇっ……何でですかぁ……?」

ぼうっとした様子ながら、ふらふらと立ち上がる刹那。いやほら、座ってたらお尻も足も洗い難いし。

「軽く足開いといてねー?」

まずは前、おしっこの時の部分だし、粘膜部分も有るので掌で泡立て直し、慎重に洗っていく。

「あっ、や、そこは自分でっきゃぅっ!!」

んでもって女の子の部分も優しく、でも隠れてる汚れも有るのでしっかりと洗う。

「や、兄様、恥ずかしいですっ、兄様ぁっ!!」

聞こえません。俺は凝り性なのです。
それにこういう部分は清潔にしていないといけないのだし。
みWikiやなのちゃんも通った道だ、妹なら堪えろ、刹那。
当然ながら排便に使う箇所も丁寧に、皺の一つ一つを開いてよっく洗う。

「ふっ……くっ……ひゅぅっ…………!!」

一瞬指先が潜り込んだが、概ね綺麗になったな。
次は再度手拭いで太股から足首までゆっくり洗っていく。
特に関節周りは腕の時と同様、丁寧にしっかりとねー。

「ふゆぅぅぅ……ひうぅぅ……」

踵は角質を落とすために少し強め、最後に指の叉も余さず洗って、と。

「ひゃっ、はっ、きゅっ、ふひゃっ、みゅっ、ひンっ!!」

「はい、終わりー」

やっぱり〆は熱めのお湯でしょ。

「ふ、ぁぁぁ…………」

終わったはいいけど、何だかぼうっとしてるなー。
ま、冷えてもいけないし、湯船に入っていてもらうかなー。

「刹那、ほらしっかり、湯船に入ってー」

「はひ、にーさま……」





あ、刹那に背中流してもらうのすっかり忘れてた……まー、次の機会かなー?







しまった、ブラコン(目覚めかけ)ロリ刹那が可愛くて文量増えちゃった。あとこれは……ただ仲良く兄妹がお風呂に入ってるだけだからXXX板に行かないでも大丈夫だよね?



[9440] 第十話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/14 12:32
あのあと仲良く一緒に湯船に浸かったのだが、それ以降刹那は一緒に風呂に入ろうとはいってこない。
嫌われた訳では無い様なので、多分徹底的に洗われるのが嫌なんじゃないかねー?
風呂嫌い、では無い様だし、たまーに声をかけてみるかなー。





そんなある日、詠春さんからのお呼び出し。

「お仕事で?」

「あぁ……明後日は新月なのだが、その日の晩に私が会長を務める組合(ギルド)の建屋の警護を依頼したい」

「了解。建屋の構造、担当範囲、あとは周辺地図と連絡機器を頼む」

「えっと……組合について聞かないのですか?」

「仕事に必要では無い情報は依頼人から開示されない限り聞かない方が長生きできると思うんだけど?」

「ま、まぁ……今回予想される襲撃者にも関わるので説明します」

「……悪い、聞いてほしかったのか」

いい年したおっさんがよよよと泣きながら寂しそうな笑みを浮かべるの正直キモい。

「気を使わせてしまって済みません……」

「こちらこそ済まない、まーお茶でも」

「いただきます」

ずずーっ

「で、組合の話でしたっけ?」

「あぁ、一つ聞くが、君の生まれた世界にはその……超常現象、というものは有ったのかな?」

「超常現象……って何だろうな。世界が違えば常を超えたことってのも違う気がするんだけど。まー、フィクションの世界にしかいないと思われがちなもので、実在を少数しか知らないものというと……幽霊、退魔師、妖怪、吸血鬼、人造人間、超能力者、あと魔法少女かな」

最後のは見られなかったけど。

「そこまで……有ったのですか」

あれー? もしかしてあの世界ってそれ系多かったのかなー。

「この世界にもいくつか存在します。幽霊も妖怪も吸血鬼も人造人間も、そして魔法使いも……」

「なるほど……そしてそれらは、秘匿されている、とか?」

冗談めかしていってみるけど、詠春さんには通じなかったみたいだ。

「正解です。私が長を務めるのは東洋魔法使いの一派、陰陽師の組織。その名を関西呪術協会といいます」

「あー、そりゃー重い話だ。ヘビー過ぎる。一介の警備担当に秘匿された存在を教えるとか、巻き込む気満々だねー?」

聞いちゃった以上、こりゃ抜けられないだろうね。詠春さんも人が悪い。

「ちなみに関西呪術協会所属の陰陽師が任務の際に警護につくのが神鳴流剣士です。あと刹那君は神鳴流を学んでいますよ」

本当に人が悪いでやんの。最初からしっかり仕組んでいやがった。

「そして襲撃者は……一部の西洋魔法使いです」

「仲悪いんですねー。人類皆兄弟、喧嘩はダメですよー?」

「お互いに、過去の遺恨が有りまして……近年は落ち着いてきていますので、そろそろ完全な和解のために歩み寄りたいのですが……」

「お互いの一部が暴走してしまって中々にタイミング良くいかない、と?」

「はい……面目無い限りです」

ままならないねー。







せっちゃんは変な声を出してしまったのが恥ずかしいだけで、兄様のことは大好きです。兄妹愛的な意味で。でももうお嫁にいけないので兄様に貰ってもらおうと思っていたりします。



[9440] 第十一話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/15 02:37
「さて、肝心の警護の担当ですが」

にこりと笑う詠春さん。ちょっと嫌な予感がするんだけどなー。

「御神流は屋内戦闘に真価を発揮するとのことですので、幹部会議が開かれる広間をお願いします」

わーお。思い切り顔が売れそうだね、良い意味か悪い意味かは言及しないけど。

「ってか、内部まで賊は来るんですかー? ぶっちゃけなるべくなら楽してお金をもらいたいので来て欲しくは無いんですけど」

「まず来ませんよ。ですから保険であり、最後の砦でもある役柄です」

期待していますよ、とか微笑みながらいわないでいただきたい。
めちゃくちゃ気が重い……俺の出番有りそうだしなー。
俺って運が良いからね。もちろん、見せ場的な意味で。

「俺としては出番が無い方が望ましいんだけどなー……多分叶わぬ願いなんだろうなー……」

「それは私だとて同じ気持ちです……幹部会議は現役の戦闘者が皆無ですからね」

うわ、責任重ッ!





その夜、桜咲家にて二人きりの晩御飯。

「美味しいです、兄様」

「だねー」

ざく切りのネギと賽の目状の豆腐の味噌汁を啜りながら刹那の表情を伺う。ネギのほっこり甘い味が何ともいえない。何だっけこれ、根深汁とかいったっけ?
あー、にしても緊張するなー。お仕事の話。刹那が心配しないと良いんだけど……もしかしたら死ぬことだって有り得るんだし、やっぱちゃんと説明しておかないといけないよね。いやでも、また泣かれたりしたらどーすれば良いのやら……。
まー、悩んでいてもしゃーないね。当たって砕けろってやつだ。まー、砕けちゃ不味いんだろーけど。

「あー、刹那、そこに座れ」

「? わたしは座っております」

しまった、最初から間違えた。

「……今日はおまえにいうべきことがある」

「!? ま、まさか……!!」

おー、思い至ったのか? あるいは気付いていたのか?
もしかして俺の決意に気付いていて、話が出るのを今か今かと待ち望んでいたとか?
流石は我が妹、話の早い子はお兄さん大好きですよ。

「むぅ……察していたとなれば話も早い」

「い、いつなのですか、兄様!」

「明後日、新月の夜だ」

「で、では……」

「あー、俺のこの世界での初仕事。必ず成功させてみせる……折角の京都なんだから外食とかしてみたいしねー」

「……初、仕事…………?」

あれ? とかいって首を傾げている刹那。
……あれ? 気付いてたんじゃないの、か……?

「何の話だと思ってたんだー、刹那?」

「い、今一度、兄様と風呂に入る日、かと……」

あー、刹那ったら真っ赤だ。可愛いなー、もー!
ってかそんなに警戒されていたのか、お風呂。お兄さんショックですよ。

「それはまた今度。兎に角、夜はお仕事に出るから……まー、頑張って一人で寝といて?」

「んなっ!? に、兄様、わたしは一人でもちゃんと寝られます!」

いや、家族となった日からずっと、人の布団に潜り込んできてたら説得力無いよ?
あと起きて、朝の支度でもしようかと布団を出る俺を察してガッチリ掴むのはやめて下さい。
お陰で朝の支度が遅れてしまうじゃないかー。

「し、信じて下さい兄様ぁっ!」

「うん、わかったわかった」

「全然信じて無いですよね……あっ、頭撫でても誤魔化されませんよ…………」

幸せそうに目を細めてはにかんでるし、誤魔化されてるよーに感じる……いうとまたむくれそうなので黙っておくけど。

(う~~、気持ち良い。これ、反則です……あぁ、兄様の活躍、見てみたいなぁ……お、長に明日頼んでみましょうか…………)







次回、初めてのお仕事。略してはじごと。双子の幼姉妹が出るとかは有りませんけど(古い)







以下、ざっくりまとめた感想レス(No.33~36)

>竜様

亜久馬は兄妹のスキンシップ、あるいは作業として頑張りました。
そもそも十も年の離れた妹に欲情しませんよ、兄ですから。
刹那はそんなこと、欠片もわかっていないのである意味ネギとの仮契約フラグのピンチかも知れませんけど(笑)
組合と書いてギルドと読ませていたのはその段階までは関西呪術協会の名を伏せていたので。
単なる組合ではないですよー、という詠春さんが主張していたという意味合いでギルドと読ませていたのですよ。


>東方の使者様

兄ですから。みwikiをお風呂に入れていたのは御神宗家健在のころです。なのちゃんをお風呂に入れていたのは修行馬鹿がみwikiと山篭りしているのを知らずに高町家に遊びに行った折です。
KYOYAがその事実を知ってちょっととち狂った時は顎への優しい打撃で意識を刈り取ってあげたらしいですよ。


>灰原聖志様

このSSのせっちゃんは黒髪黒目です。ってか時期的にはこのちゃんとすでに出会ってますし。
このちゃんは初等部から麻帆良には行っていたと思うので、この時点では出てきません。
んでせっちゃんは中等部からの転入だったはずなので、その間の出来事としています。
あとこのちゃんは初等部入学後中等部でのせっちゃん転入まで再会していないっぽいこと、中等部最後の春休みにも帰省している気配が無いこと、以上二点より初等部入学以降一度も帰省していないんじゃないかな、と推測。
詠春さんが少しでも危険から遠ざけたかったとか、もろもろの理由で。
そうそう、せっちゃんの容姿の話でしたね。
学園祭編の染めたりカラコン入れてたりってエヴァ様の鎌かけへの反応から、十中八九その通りなんでしょうけれど、髪の毛や瞳の色に関しては何色か不明なんですよねー。捏造もいいけど、直後に本編で出てくるとやっちゃった感が強いので悩みどころ。
取り敢えず兄様に嫌われたくないのでせっちゃんは一所懸命に翼に関して隠します。でも兄様には兄属性が有り、兄属性の特殊スキル「兄は何でも知っている」の効果が発動すると実はお見通しだったってことになったりするかも知れません(笑)


>通りすがり六世様

困ったことに頭のてっぺんから足の先まで、文字通り兄様のお手付きです。
詠春さんは中年ながらもさりげない当SSの萌要素です。反論は許されません(笑)



[9440] 第十二話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/16 06:02
「何故、ここに居るのかなー……刹那ー?」

「お、長からわたしも参加する様にと……」

ちなみにこちらからお願いする前にいわれました……だから怒るなら長に向けて怒って下さい。
もう、漏らしたく無いのです!!





兄様のお話によるとここ、関西呪術協会本山は強力な結界と数十人の陰陽師や神鳴流剣士からなる警備担当部隊による鉄壁の守りが有るので、会議が開かれる広間まで賊が現れることはまず無いそうです。
あと、もしここまで平然とやって来る手練れなら、どう考えても兄様やわたしでは太刀打ちできないだろう、とも仰られていました。多分謙遜だと思います。

「まー、来ても嫌がらせがせいぜいで、外でドンパチして終わりだろ。西洋魔法使いの連中もそうやって東西の悪感情を煽れば目的達成だ、自分から死地には飛び込まんて」

とはいえ長をお守りする気概は見せねばなりません!
わたしは長の右手後方、兄様は左手後方にて直立不動で待機します。



会議は長いです。18時に始まったのですが、もう20時を回っています……。



21時を回りました……本当に何も起こらないみたいで、そとも静かです……。



22じをまわりました…………なんだかふらふらします…………きもちいいです……………………。





23じ……………………。





24…………………………………………。





ゴッ!!

「きゃぅっ!?」

あ、頭が痛いです! ま、まさか敵の奇襲ですかっ!?

「おはよー、刹那ー?」

に、兄様が笑顔でわたしに話しかけてきます……握り拳と額に浮かんだ青筋が怖いです!!
って、もしかしてわたし、寝てしまっていたのでしょうか!? に、兄様の前でとんでもない失敗をしてしまいました…………。

「まぁまぁ、亜久馬君。いくら鍛えていても刹那君はまだ小学生なのだし」

お、長も苦笑いです……会議の参加者の方々は微笑ましいものを見る目……桜咲刹那、一生の不覚です!!

「いや、詠春殿……外に不穏な気配が有ります。恐らくは招かれざるお客様でしょう」

その言葉に長もわたしも、参加者の皆様も首を傾げてしまいます。
だって外は余りにも静かなのですし……。

「草木も眠る丑三つ時とは良くいったものですね。虫の音さえ聞こえないのですから、ね?」

兄様の言葉に全員ハッとします。いくらなんでも静か過ぎるのです。

「……来る」

兄様の言葉が終わるか終わらぬかというタイミングで外に無数の気配が生まれ……、

『きしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!』

複数の咆哮が夜の静けさを吹き飛ばしました。
一拍の間を置いて、呪符の炸裂する音が、神鳴流の技が繰り出される音が辺りに響きます。

「お、長、大変です!」

広間に若い陰陽師の方が駆け込んできます。

「何事です!」

膝立ちになって誰何する長に陰陽師の方が駆け寄り、耳元に口を寄せます。
何か想定外の事態なのでしょうか?

「はっ、外の騒ぎに紛れ賊が内部に侵入した形跡ぎゃぁっ!?」

報告の途中、突然に悲鳴が! まさかすでにここまで賊が!?
慌てて悲鳴の元を見ると、報告していた陰陽師の方の右手を捻って組伏せている……兄様?

「報告に攻撃用呪符と長への殺気って関西呪術協会じゃデフォなんですか?」

良く見れば足元に数枚の起爆符が落ちています。
しかも散りかけですが、魔力が込められた気配が!?

「ぐ……ち、くしょ……がぁぁぁぁっ!?」

悔しそうに呻く陰陽師の方の捻られた腕から、乾いた枝が折れるような音がして、陰陽師の方が悲鳴を上げる様が、わたしにはまるで遠い世界の光景に見えました。
……余りの生々しい音と、兄様の冷たい殺気に、その……な、何でも無いですっ! 忘れて下さい!! って兄様、鼻をひくひくさせて苦笑いしないで~~っ!?
うぅ……もう嫌です……。







穏健派の組織のトップには過激派の叛乱が良く似合う。そして若手の蜂起は組織の変革の契機となる。







以下、ざっくりまとめた感想レス(No.37~39)

>通りすがり六世様

いらん運は主人公の宿命!(笑)
入浴シーンリクエスト!? はてさて、せっちゃんがいくつの時が良いのやら~~?、


>ハゲネ様

略された箇所に何か重大なキーが隠されている気がするぐらいにシーンが飛んでますよ!?
ちなみに頭の悪い電波は地下の方が受信状態は良いです。ネットから切り離されていると妄想に専念できますからねぇ。


>良様

くそぅ、入浴シーンリクエストがさらに……皆さんはやはりせっちゃん丸洗いを希望しているのでしょうか?



[9440] 第十三話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/18 00:07
あの襲撃の夜が明けた今なお、身内に敵が潜んでいたことが何よりも私の心に重くのし掛かっている。
あの時、亜久馬君が対処していなければ会議の参加者全員が吹き飛んでいたはずなのだから。





「おはようございます、詠春さん。良く眠れ……無かった様ですねー?」

相も変わらずの飄々とした態度で亜久馬君が桜咲家の周りの落ち葉を掃いている。

「流石に襲撃者が身内、しかも直接幹部抹殺を目指してきてはね……」

「ご愁傷さまで。あー、あのあと、襲撃犯の方と平和的に“OHANASHI”しましてね。どうやら今回の一件、若手の過激な思想の連中の暴走で片付きそうですよー」

今、お話しのイントネーションがおかしかったような……あと亜久馬君、君はいつ寝てるんだい?

「長を始めとしたハト派の幹部たち、それに表立って異を唱えないタカ派の幹部たち……それらが同じ穴の狢と見えたらしい。まとめて吹き飛ばして自分たちが主権を握り、西洋魔法使いに戦争を仕掛ける……ってな筋書きだったそーで」

若いもんの手綱の握り、甘かったんじゃないですかー? と亜久馬君。
反論の余地は有りませんね……。

「とはいえ、これは利用しない手は無い訳で」

はい?

「ハト派の皆さんは元より、タカ派の皆さんだって自分たちの組織の弱体化なんて望まないでしょ?」

「それはそうだろうね。西洋魔法使い憎し、関東魔法協会を滅ぼしたい、あるいは優位に立ちたい、それがタカ派の中にある強い想いだ。しかし関東魔法協会が一筋縄にはいかないということは実際に争った人間ならわかっていることだ。組織には組織を、それも相手より質、量ともに優れていなければ勝率は低い……そう考えるだけの冷静さは有るはずだよ、少なくともタカ派のトップの人たちにはね」

「まさに。それに関東魔法協会に勝利したあとの関西呪術協会がボロボロの状態なら漁夫の利を狙う勢力の台頭だって有るでしょーし」

つまり、組織の意思を一本化して掌握したいのはハト派もタカ派も一緒で、内輪揉めや若手の暴走で力を削がれちゃ堪らないってこと。そういう亜久馬君の人の悪い笑みに、やっと彼のいった現状を利用するという言葉の意味を悟る。

「なるほど……今ならタカ派とハト派の垣根を越えて協力に持っていける」

「タカ派でも参謀格なら、利害の一致での協力体制を築けると思いません? まずは組織内の意思をまとめ上げることこそ肝要、そのあとの行動をどうするかで争う時期じゃないって説いて、ね。まー、こちらに有利な状況に持っていけるかどうかは詠春さんたちの交渉次第だけど?」

「……君は怖いね」

「これぐらいならずる賢いか意地が悪い人間ならすぐに思い付きますよー。まー、詠春さんは組織のトップにしては清廉潔白に過ぎるからねー」

優秀で忠臣な参謀見付けなよ、と笑いながらいわれてしまう。君がそうなってくれるのならありがたいのですが……。

「ぽっと出の食客兼護衛役風情がそんな位置についたら古参の人の立場無いっしょ。敵作りたいのー? 冗談はいいから生え抜き育てなさい」

ごもっともで……。







亜久馬は謀略キャラじゃないですよ。ただ相手が嫌がる攻撃とそうじゃ無い攻撃がわかるだけ。相手が望むものを提供する、相手が望まないことを行わない、どちらも交渉のタネになると本能レベルで理解しているという……あ、考えてみると相当たちが悪いや、天然策士の御神の剣士とか、怖過ぎる。







以下、ざっくりまとめた感想レス(No.40~46)

>野鳥様

にゅ、入浴シーンはほっこりするところでもっこりするところじゃないです!
書いている人間はほのぼののつもりです。今後もえちぃことにはなりませんよ? 少なくとも妹には欲情しねぇさ!
育ったらわからないけどなー(ヲィ)


>レッドマン様

買春さんはギックリのせいで数日間、文字通り身動きが取れなかったのですよ(笑)
それに、この時期は原作本編より過去な訳で、原作本編よりもさらに若いこのかパパンじゃ手綱が取れんでも仕方無いですよ。


>竜様

御神の剣士の前に立ったがうぬの不運よ! って感じです。今回で無ければ成功したかも知れないのに、哀れ過ぎる。
詠春さんは頑張っていますよ! でもサムライマスター詠春は生真面目タイプな人なので腹芸には向かんとです。
亜久馬に弄られてはっちゃけると良いと思うのだが、真面目メガネが詠春さんのキャラなので変わらんとです。
みwikiかなのちゃんか、悩むのぅ、悩むのぅ。でも二人とも、せっちゃんより小さいころのことだから案外普通のほのぼのになるかもね★


>Citrine様

ストック分だとお兄さんはエヴァ様“で”遊んでいます。せっちゃんでも遊ばんとなぁ……。


>q-true様

お漏らし刹那+XXX板=チュカチョーロ? 無理無理無理、せっちゃん泣いちゃうよ!?


>通りすがり六世様

刹那はもう中学三年生、漏らしませんよ? ちゃんと成人用紙オムt(ry
……む、むぅ、となると……麻帆良へ行く直前のタイミングかな? が、外伝とかで本当にさらっとなら!
いや、ほら、その年になるとせっちゃんが暴走しちゃいそうだし、慎重にことを進めるべきだと思うんだ!!


>コンテナ様

斬新なものを書いたつもりも書ける自信も無いです…… orz
良くある話を筆の向くまま気の向くまま綴ってるのですよ。
あとペドじゃないですよ? 小さな子は温かい目で見守るのがジャスティスだとおにーさんは思います。
……そもそもおにーさんからするとティーンエージャーはもうことごとくロリだしね。
え? 小学生せっちゃんと風呂に入った件? あれぐらいのころなら親兄弟と風呂に入るぐらい良くあることだって。
まぁ、この感想レスも読んでないかなー、ゴミ作品とまでいったんだしチェックもしないかー、あははー……。



[9440] 第十四話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/18 00:12
「上手くいったみたいだねー?」

「良くいうよ……交渉のネタから交渉の場まで、何から何までフォローしていたくせに」

「おやおや? 流石は詠春さん、伊達に組織の頭を張ってないねー……怖い怖い」

どうやら兄様がまた何かしていた様です。

「それにしても兄様は良くあの陰陽師が長を狙っているって気付きましたね」

わたしはまったく気付けませんでした……己れの不甲斐無さに気落ちしてしまいます……。

「あー、アレ? 不自然に右手が袖の中だったし、目が妙に血走ってたし、何より妙な気負いを感じたからねー」

「それだけで、ですか……?」

一つ一つは小さな違和感にもならないと思うのですが……。

「左手はしっかり袖から出てたから右手は故意に隠してるんだな、ってわかった。血走った目にしても急な襲撃のせいにしちゃ詠春さんを見る目がキツ過ぎた。気負いは襲撃を迎え撃つ覚悟かと思ったけど、どうにも悲壮感とか覚悟が詠春さんに近付くほど強くなるから……まー、総合で見て警戒してたんだわ」

警戒していただけ……いえ、まるで気付かなかったわたしからすればその警戒こそ尊敬に値するのですが……。

「で、決め手は隠している右手の辺りに気とは違う何か……魔力だったんだけど、それが集う気配と、報告しようと耳に口を寄せたアイツの口元が引き攣る様に釣り上がったから、かなー」

あれ? えっと……、

「それから動いたのですか……?」

「まー、ことを起こそうとする直前ってのは一番警戒が弱まるからね」

あと、雰囲気が最後に一言告げてからスイッチを押す自爆テロの人に似ていたから、数瞬の余裕が見て取れたねー。そんな兄様の言葉がどこか遠く感じます。

「ま、間に合わなかったらどうするつもりだったんですかー!!」

「部屋に入られた時点でもう手遅れだよー? アイツが使おうとしていた呪符、あの部屋ぐらいなら消し飛ぶ威力だったんだし。アイツが確実に詠春さんを殺すため、なるべく近付こうとして来てくれなかったら、あそこに居た全員が気付かぬままにあの世行きだったんだ。怖いねー」

って、わたし初耳ですよ、それ! どんな威力の自爆テロなんですか!!
も、もし爆発していたら、あるいは壁越しでも、入室直後でも、関係無くみんな死んで……長も、兄様も、わたしも…………?
あ、何だかクラッと来ました……あれ? 地面が、近い…………。





どうやらあまりの衝撃的な事実に軽く失神していたみたいです。うっすらと目を開いたら庭先が見えました。
あと兄様のにおいがして、そっと視線を巡らすと兄様のズボンが頭の下に見えます。当然ながら中身入りです。
どうやら兄様に膝枕されている様ですね……もうしばらく気絶している振りは続行です。
あぁ……兄様のにおい…………このちゃん、ウチ今幸せや…………。







せっちゃんが何故だか危ない方向に進化しました。ちなみに亜久馬は気絶している振りには気付いていたけど刹那の好きにさせていたりします。何だかんだで妹に甘過ぎる……。あと、やっとこ似非京都弁が出ました。もう二度と出ないと思う。



[9440] 第十五話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/19 02:21
目が、醒めた。
薄暗い部屋の天井、調度品、傍らで寝ている者、そしてにおい……何もかもが夢の中とは違い、そのためかもはや日常となったはずの風景がどこか色褪せて感じられます。

「にーさまのにおいがしない…………」

ぼうっと窓の外を眺める。
ここはあの懐かしく、何物にも代え難い桜咲家ではないのです。そう、ここは……、

「ん……もう起きたのか、刹那」

「えぇ……できればもう少し、夢の中にいたかったのですが」

麻帆良学園女子中等部寮の一室。ともに暮らすのは兄様では無く同級生の龍宮真名。
私は今、この学園でこのかお嬢様を陰ながら護衛する日々を送っています。
……兄様から、離れて。





あぁ……兄様分が足りない……このかお嬢様分だけでは足りません……私はいつからこんなにも貪欲になったのでしょう?
朝の2-Aの教室でこのかお嬢様をさりげなく見守りながら、知らず知らずの内にため息を漏らしてしまいます。
盆暮れ正月には帰省が叶うとはいえ、長から任されたこのかお嬢様の護衛をおろそかにはできません。
毎日の電話(ただし一日一時間まで)と時折届く兄様からの手紙、便箋から微かに漂う兄様のにおいがこの二年間の私の支えでした。
そういえば届いたばかりの兄様からの手紙を、読みもせずに一心不乱ににおいを嗅いでいた姿を見て、龍宮が一週間ほど目を合わせてくれなかったことが有ったのですが、アレはいったい何故だったのでしょう……?

「聞いたか、刹那」

不意に龍宮が話し掛けてきた。龍宮が教室で話し掛けてくるなんて珍しいですね。

「何をですか?」

「今日からうちに新しい担任が来るらしい」

「……高畑先生も忙しいですからね」

2-Aの担任、高畑先生は関東魔法協会に所属していて、魔法関係のお仕事で頻繁に出張が入るのです。学園長が魔法関係のお仕事に専念させるため、担任から外したとしても不思議は有りません。

「それと、新担任のサポートのために副担任も付くそうだ」

……まぁ、このクラスはベテラン教師でも一人でまとめるのは一苦労でしょうし。
騒がしい教室を見回し、ふぅっとため息を吐いた時、

「!? どうした、刹那……そんなに目を爛々とさせて」

龍宮が何か恐ろしいものを見る目で私を凝視している様ですが、それどころでは無いので無視します!

「にーさまの……においがする…………」

龍宮が後退るのを気にする余裕も有りません。廊下からたしかに漂ってくるこれは、間違い無く兄様のにおいです。それも生のにおいです!

「……真名、刹那から物凄い気迫を感じるのだが…………」

「刹那の病気だ……いいかエヴァンジェリン、絶対に刹那の視界を遮るな…………死ぬぞ?」

兄様のにおい……。

「ば、バカな……私が、このエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルが動くことができないだと……せ、背筋が寒い、目眩もだ…………ッ!」

「マスター、しっかりして下さい!」

にーさま、あいにきてくれたのですね……。

「ぐ……っ、真名殿、これはいったい……」

「刹那、スゴい気アル……動けないアル…………」

アァ、ニーサマガ教室ノ扉ノ前ニ…………。

がらがらっ

「失礼しま……」

ニーサマジャ、無イ…………?







刹那が病んでしまいました。刹那ファンの人、今さらだけどごめんなさい……。







以下、ざっくりまとめた感想レス(No.47~53)

>ライラ様、hasan様

一話辺り2KBぐらい、視点の移動は無しでやっていくと、「あー、このシーンは○○の視点で書きたいなー」とか出てくるわけで。
いや、いい訳ですけどね? これぐらいだと推敲での見落としが少ないので。ほぼ日で書き連ねれば全体として長くなると思うのですがどうでしょう?


>~~~様

おかしいですねー、文字化けみたいでずーっとwが続いて見えますよ?(笑)


>通りすがり六世様

みょーなプレッシャーを感じます(笑) まぁ、せっちゃん小学生最後のおにーちゃんといっしょinお風呂はその内外伝として出します。板はチラ裏のままですよ? えぇ、エロくは無いですから!
今回の護衛ですが、あくまでも内部(というか会議が行われている広間)に入ってきた相手の担当なので。外部なら神鳴流や陰陽師が大技ぶっ放しているので出番無いですし。
あとは会議前から不穏な空気を察していても組織内のことは管轄外と放置した可能性も有りますね。現行犯の方が楽だったというだけかも知れませんが。まぁ、亜久馬は「望んでもいないのに見せ場が発生して動く羽目になる」という自分の体質を理解しているので、どうせ見せ場発生だろうとたかをくくっていた可能性も有りますけど。


>星天様

お漏らしが許されるのは小学生までなのでちょっと詰め込みました(ヲィ)
というか原作本編突入後のせっちゃんをお漏らしさせるのは無理です。私が斬られてしまいます。
今回から原作本編時間軸突入ですので、お漏らしネタはもう当分は出てきません。モルですこと夕映ぐらいしか。


>木乃香お嬢様

修学旅行編までお待ちください(笑)


>シトリン(携帯版)様

そろそろエヴァ様を弄るターンです。というか余りにも弄り易くて困ります、エヴァ様。エヴァ様で遊ぶのは楽しいです、マジで。
このちゃんやせっちゃんとの絡みは修学旅行編まで控えめになりそうです。



[9440] 第十六話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/20 19:51
刹那殿が凝視していた扉から入ってきたのは小学生ぐらいの男の子でござった。
それを見て刹那殿は正気に戻られたのか、黒目と白目の反転も治まり、拙者らにのし掛かっていた重圧も霧散したのでござる。

「……寿命縮むかと思たアル」

「同感でござる……」

「……茶々丸、もう大丈夫だ」

「あの病気さえ無ければ寮の部屋も過ごし易いのだが……」

思わず拙者、エヴァンジェリン殿、古菲殿に茶々丸殿で真名殿の肩を慰めるように叩いてしまったのも仕方の無い話でござろう。
何せ毎年春休みやゴールデンウィークのころの刹那殿は追い詰められた雰囲気になり、果ては暴走するのが常でござるからなぁ。いや、一昨年のアレはもはや伝説でござるよ。
拙者らの繋がりも思い返せばアレが原因かも知れないでござるからして、まっこと縁は異なもの乙なものでござる。
ちなみに少年が仕掛けられた罠で大変なことになっているのでござるが……拙者には何も見えないでござるよ? クラス委員長のあやか殿が鼻息荒く駆けつけたのも見ない振りでござる。

「たしかににおいが……教室の外にまだいる?」

クンクンと鼻を鳴らして教室の外をじっと見る刹那殿。まるで犬みたいでござる。犬耳や尻尾が見えているのは拙者がおかしい訳では無いと思うのでござるが……。
気になり探れば、教室の外にはたしかに人の気配が。これはしずな先生でござるな。
拙者らも刹那殿に釣られる様に教室の入り口に注目していると、

「……新担任の歓迎にしちゃー手荒いねー。大丈夫か、ネギ先生?」

一人の男性が入室してきたでござる。
……教室の外には変わらずしずな先生の気配が有るでござるな……はて、あの御仁はいったいどこから現れたでござるか?

「真名殿……?」

「幻覚の類いでは無いさ、楓。私にも見えてはいる」

「不思議アル。目の前に居るのに、居ないアル……」

「大した気殺だな……だがあの格好は何の冗談だ?」

エヴァンジェリン殿の呆れた声には拙者も同意するしかごさらぬ。何しろ教室に入ってきた男性は……カーキ色のトレンチコートと金属製の仮面を身に付け、一メートル以上の長さの金属定規を二振り背負っていたのでござるから。

「あ、あの……あなたはいったい……」

あやか殿が気丈にも声をかけているでござる。突然に入ってきたあからさまな不審者と相対するその気概、この長瀬楓をして美事としか言い様が無いでござる。惜しむらくは、粉まみれで涙目の少年を抱き締めて鼻血をだらだら流していることでござるが、拙者のスルースキルはこの程度なら見ない振りが可能でござる。このクラスになってからというものこのスキルは磨かれ続けているでござるからな~~♪

「俺は本日よりこの2-Aの副担任を拝命したる者、人呼んで……」

不審者改めて副担任殿は一旦言葉を切り、溜めを作って……、

「サムライ先生、ダブルッエェェェックスゥ!」

両腕を胸の前で交差させて叫ばれたでござる。
……なるほど、たしかに背中の金属定規の差し方も仮面の形状もアルファベットのXの形でござるなぁ…………あははははは~~……。

「そして教卓側で倒れているのが新たな担任のネギ・スプリングフィールド先生だ。一同、新担任の御前である、頭が高い……控えおろーぅっ!!」

ノリに負けたのか、気付いたらクラス全員が床で平伏してござった……サムライ先生ダブルエックス殿、恐るべしでござる!







楓の一人称で書いている時に声を掛けられ、「何でござ……何ですか?」といってしまったのはここだけの秘密でござるよ?







以下、ざっくりまとめた感想レス(No.54~62)

>通りすがり六世様

立派なド変態に育ってしまった刹那ですが、正直犯罪者予備群に突入するのはとめたいところです。


>pu様

兄(?)参上。イメージ的にはアレです、外道ハンターXです。


>プチ魔王様

甘いな、ここはまだまだ入り口手前さ(ヲィ)


>ライラ様

ジレンマなんですよね、文量を増やそうとすると確実に投稿頻度が下がってしまうし、短いと物足りなさが付いて回るでしょうから。
ってか徐々に忙しくなってきて今までの文量ですら書くのが大変になってきてたりするんですけどね。
書き溜めてある分に関しては余り増量は出来ませんが、ちょっと文量を増やしたものを書いておこうかとは思うのですがね。


>竜様

ネギ君は死なないよ、死ねないよ、(原作の)主人公だからね!
何だかんだでこのちゃんとせっちゃんは原作の関係のままです。むしろせっちゃんの視線は兄様とこのちゃんで二等分されている可能性があるので心配です。このちゃんせっちゃんは仲が良くないとダメだと思うのですよ。
ヴァンパイア・ガンナー・NINJA・カンフーガールは対ブラコンサムライのエキスパートです。苦労してるんですよ。


>Citrine様

半歩手前で済んでいるとしたら踏み越えてしまったときにどうなるかとても怖いです(笑)
あと名前は間違えたくないのでコピってます。綴り違いは結構アレですので。


>ヨッスゥイ~様

ネギ先生の死亡フラグはまだ立ちませんってヴァっ! あぁ、もしもネギ先生から兄様のにおいがしたら命が無いかもしれません。BL的な意味で。
あとレス返しですけど、「後書き“等”」に含まれるかな、と。本文無しにレス返しのみなら不味いと思いますけど、あくまでも後書きみたいなもので……大丈夫だと思いたいです(汗)


>良様

愛は無敵ですから(笑)
しかし強くなればなるほど一般人との間には壁ができてしまうのです……まぁ、身近に居たら私だって引きますよ、アレは(笑)


>水鏡様

次々々回ぐらいが亜久馬視点の回ですので、そのときに答えは出ます。それまでは答えは内緒ということで。



[9440] 第十七話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/21 00:19
サムライ先生ダブルエックス……まさか私やあの自称“常識人”長谷川千雨にまで土下座をさせるとは……やつには得体の知れん何かが有る様だな……。
授業が終わり次第、私は茶々丸を呼びつけ、命じる。

「……茶々丸、予定変更だ。観察対象にあの鉄面教師を追加しろ。優先度はやつの息子よりも上だ」

「かしこまりました」

「あの坊やと違って鉄面教師は間違い無く上級の戦闘者だ、気付かれる可能性は高い。監視機器を使え、直接見るな。いいな?」

「はい、マスター」

……何と無くだが、監視カメラ越しにこちらを察知しそうな予感がする。
いや、まさか、な……。





茶々丸に指示し終えてしばらくすると、真名が私と楓を手招きしてきた。
用が有るならそっちから来い! と思いもしたが、恐らくは私が先ほどから悩んでいることについて、だろう。今は少しでも情報が欲しい……楓ならばあるいはやつの正体がわかっているかも知れんしな。

「どう思う、二人とも」

「ふむ……サムライ先生のことでござるな?」

「……得体が知れん、な。あそこまで見事な気殺、身のこなし……あるいは楓、おまえと同類かも知れんな」

「何のことでござるかな~~?」

「エヴァンジェリンのいう通り、楓の様な忍者かも知れないな」

「……拙者は忍者ではござらぬよ?」

「「とぼけるのは良いからおまえの見立てをいえ」」

「酷いでござるよ、二人とも……」

泣き真似をするな、とっとといわんか楓!

「……拙者が見るに、サムライ先生ダブルエックス殿は忍びではござらんよ」

観念したのか意見を述べる楓。

「相手に拍子を盗ませぬ動き、気配の断ち方、たしかに忍びに近いものを感じたでござるが……しかし決定的な差が有ったでござる」

決定的な差? 真名を見るが、どうやらやつもわからない様だ。忍者にしかわからない何かが有り、それが違ったのだろうか?

「あの御仁、欠片も忍んでいなかったでござる!」

「さて、次の授業は何だったかな?」

「古文だ、エヴァンジェリン」

「済まんな、真名」

「二人とも酷いでござるっ!!」

バカは無視だ。

「あ、あともう一つ理由がござる!」

欠片も期待はしていないが、一応真名とともに聞いてやることにする。

「ダブルエックス殿はサムライ先生、すなわち忍びでは無く侍に相違ござらぬ!」

「どうだ真名、たまには遊びに来んか? 茶々丸の料理は絶品だぞ?」

「それは良いな、今週末は大丈夫かい?」

「歓迎しよう」

「だから酷いでござるよ、二人ともっ!!」

五月蝿い黙れバカブルー。
相手が自称しているだけのものを判断材料にするな。
忍者なら裏の裏ぐらい読まんか!





「というわけで今日から古文の教科担当となった、サムライ先生、ダブルッエェェェックスゥ!! だ」

まさか一日に二度も両腕をクロスしながら叫ばれるとはな……頭が痛くなってきた。
……背中の金属定規に騙された。数学系と判断して気を抜いていた隙を突かれるとは……この学園でのぬるま湯に浸かるがごとき生活により緊張感を失っていたのではないか?

「もう、油断はせんぞ……サムライ先生DX…………っ!」







エヴァンジェリン必殺、責任転嫁。あと楓がちょっとGSのシロっぽくなってしまったのは反省。







以下、ざっくりまとめた感想レス(No.63~65)

>翁扇様

こちらでも立川に居る可能性は否定できません……まぁ二人は休暇中ですし、飛騨の大鬼神リョウメンスクナノカミの元ネタと思われる両面宿儺は仁徳天皇の御世に武振熊命により討ち取られているわけで、朝廷の勅命により討伐されたのなら日本神道系に分類されると思われるので二人はわざわざ出張らないでしょうね(両面宿儺は『日本書紀』初出なので日本神道系分類と判断としました)。来るとしたら日本神道系の大御所? ……とすると天皇陛下!? 恐れ多くて出来るかーっ!(笑)
あぁ、でも鬼という概念なら仏教系にも通じるから聖ブッダさんが出てくる道理は有るのか……いやいやいや、やっぱ出てきちゃダメー! ネギ先生が悟りを開こうとしたらどうするのっ(笑)


>竜様

刹那の行く末が物凄く不安です。大丈夫か、せっちゃん!? その内に兄のにおいのするものを鼻に押し付けてにおい嗅ぎつつセルフバーニングしそうで怖いよ!!
取り敢えず……フラグといえるかどうかはわかりませんが、今回の話でエヴァ様がちょっと気になってしまった様ですよ?


>木乃香お嬢様(笑)

ちっちっちっ、このちゃんには春休みに大きなイベントがあるじゃないですか! あと修学旅行編は間違い無くチャンスですよ!?(笑)



[9440] 第十八話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/22 02:18
新しく担任と副担任としてネギ先生とサムライ先生という方がやって来ました……というかアレは兄様です、仮面を見た瞬間に何故か急に自信が無くなりましたが……あのにおいは間違い無く兄様です! 兄様のはずなのです!!
っと、頭が熱くなっている内に気付けば放課後になっていました。クラスの皆さんはただ今歓迎会の準備の真っ最中です。
ハッ! もしあのサムライ先生が兄様なら……気を付けねばなりません。兄様の格好良さにクラスの誰かが惹かれてしまったら一大事です! 私が兄様をお守りしなければ!!

「たぎっているところ悪いな」

え、ええっ、エヴァンジェリンさん? べべべべ別にたぎってはいないのですよっ!?

「これからジジイのところへ副担任の正体を確認しにいく。キサマもくるか?」

「いきます!!」

あ、ついうっかり大声を出してしまいました……エヴァンジェリンさんが驚いた顔をしてます。

「そ、そうか……茶々丸、おまえは歓迎会の準備を手伝っていろ。いくぞ、刹那」





ドカァッ

「という訳で、キリキリ吐け、ジジイ」

「エヴァンジェリン、机は足を乗っけるものではないと思うんじゃがのぅ。あとパンツ見えとるぞぃ」

慌てて机から足を下ろすエヴァンジェリンさん。女の恥じらいは捨てていなかったみたいです。

「さて、悪いんじゃがサムライ先生DX先生の素性は明かせん。これは関東魔法協会にとっても機密に当たるんでのぉ」

「何だとキサマっ!」

サムライ先生は正しくは“サムライ先生DX”先生だったんですね……それは兎も角、

「学園長、サムライ先生DX先生は……私の兄なのですか?」

「……さぁてのぅ?」

「……そういえばあの時ブツブツ呟いていた様な気がするが……兄、か」

「誤魔化さないで下さい学園長!」

「お、落ち着け刹那、そもそも何故兄だと言い切れる? おまえの兄はあの仮面を常に身に着けているわけでは無かろう?」

学園長に詰め寄る私を制しながらエヴァンジェリンさんが聞いてきますが、そんなのわかるに決まっているじゃないですか!

「サムライ先生DX先生からは兄の……兄様の生のにおいがしました! それが何よりの証です!!」

あ、あれ? 何で学園長もエヴァンジェリンさんも、生暖かい目で私を見るんですか!? さりげなく距離を取るんですか!?

「刹那君……においとかいっちゃー、正直アレじゃよ。狗族や人狼なら兎も角、烏族じゃろ、君は」

「刹那……悪の魔法使いである私でも、流石に近親相姦はどうかと思うぞ?」

えぇっ!? わ、私もしかしなくてもとんでもない誤解を受けてますか!?

「ち、違います! そもそも私と兄様は義理の兄妹です、血は繋がっていませんからっ!」

「…………エヴァンジェリン、もし万が一刹那君が暴走した場合はすぐにわしに電話をくれんかのぅ。即時、制圧のための人員を送れる様に準備をしておくでの」

「任せろ。真名たちにもその旨を伝えておくか?」

「頼むぞぃ……」

「ひ、酷いです……私のどこが暴走しそうに見えるんですかっ!!」

「「頭のてっぺんから足の先まで全部が全部だ」じゃな」

……お年寄り連合は息がぴったりみたいです。わ、私はっ! 純粋に兄様を愛しているだけなんですよ!?

「まー何にせよ、俺の正体は秘密だ。知りたくば時を待て、刹那……嬢」

っ!?

「なっ!?」

後ろから、声!? 慌てて飛び退り、振り返って構える。そこに居たのは、

「に、兄様っ!」

先ほどまでは私たち三人しか居なかったはずなのに、いったいどこから!? エヴァンジェリンさんも、それに学園長も驚いている気配が伝わってきます……。

「兄様? 俺は兄様という名前ではない! 俺はサムライ先生、ダブゥルッエェェェッックスゥッ!! だ」

そういわれるとそういう気がしてくる……不思議です、この人は絶対に兄様のはずなのに……はずなのに、この人の前に立つとまるでこの人はサムライ先生DX先生で有り、兄様では無いような気がしてきます。

「とにかく、今は俺の正体は明かせ無い。君の兄かそうで無いかすら、明かすことは不可能なんだ。わかったな、刹那……嬢」

優しく言い聞かせる様にそう告げたサムライ先生DX先生は、私の頭をそっと撫でてくれました……先ほど兄様では無いような気がしたはずの先生、それなのに今また先生が兄様であるかのように感じている私が居ます。わからない……わからナイ…………ワカラナイ……アナタハ誰……?

「サムライ先生、ダブゥルッエェェェッックスゥッ!!」

名乗りは良いのでもっと撫でて下さい。







エヴァ様でも同級生から犯罪者が出るのは嫌みたいです。







以下、ざっくりまとめた感想レス(No.66~77)

>少年様

テンプレですが、この方法が本編を追っかける際に一番絡ませ易いんですよね。
当初は何故か遠くから見ていたりピンチになると高所で高笑いをしながら現れたりする人を考えていたのですが、どー考えても変質者なのでテンプレにしました(その場合修学旅行の新幹線横を腕組みして併走するとかやる予定でした)。
タキシード仮面も一歩間違えるとストーカーですからねぇ。


>木乃香嬢(笑)

「お、落ち着け! く、ここは……御神真刀流小太刀二刀術奥義・裏之八十八、刹那バリヤー!!」
「に、兄様!? ちょ、このちゃんやめてぇな!?」


>モリヤーマッ!様

キャスト表だと初登場直後は????と書いてあります。いったい彼は何者なんでしょうか?(笑)


>ヒヒイロカネ様

あー、もうすっかり中学の教科区分とか忘れてました(汗)
まぁ、このまま彼は古文担当で行きます、インパクト十分ですし。もし突っ込まれた場合は「まぁ、麻帆良だし」で通そうかと(ヲィ)


>翁扇様

来てたら大変なことになりますからね。リョウメンスクナノカミが土下座ですよ、土下座(笑)
夜回り先生in京都とか、洒落になりません。
ちうのHPにはいえっささんは来てないかも知れません。でもUDさんは行っているかも知れません。
あと悟り開いちゃうと闇の魔法フラグは無くなりますが代わりに精霊に愛されフラグが立つ可能性が!


>レッドマン様

エヴァ様は油断していようがしていまいがどの道サムライ先生DX最大の被害者予定(ヲィ)
ちなみにちゃんと(登場人物に向けて)正体を明かす回は相当先です。それまでは彼は謎の副担任のままなのです!
だからみんなもしーっだよ、しーっ!


>鷹打量多様

せっちゃんは壊れていませんよ? 本人にとっては至って普通の状態ですから。アレですね、酔っ払いが自分のことを酔っ払ってないと言うのと同じです(あれ?)


>波洵様

最近のせっちゃんは頻繁に目の黒と白が反転します。神鳴流剣士って怖いね☆
むしろこうなった刹那を前にするとみんな常識寄りになるという噂も……。
このSSは余り期待せずに見るとまぁまぁ笑えると思います。というわけで今後ともなるべく期待せずにどうぞ!


>通りすがり六世様

最近書き溜め分の方でサムライ先生DXが大いに暴れていて困っています。どうしよう……かなり怒られそうな行動してる。


>良様

放課後でしたけど、余り引っ張れずに申し訳無い限り……。
あとうちの刹那はわんこ刹那です。にーさまにーさまいって尻尾パタパタ振ってます。わんこなので鼻も利くんです。凄いですね。
エヴァ様、狂わんこ刹那、謎の副担任(笑)のヤマも落ちも意味も無い話、楽しんでください(ヲィ)


>Citrine様

まさか正体を隠すやつが素直に名乗っているとは思わないですからねぇ。当分は侍と信じてすらもらえないでしょう。
いつかは楓の評価も上がればいいなー……上がればいいな(繰り返すな)


>竜様

その気になれば半径数キロぐらいの“円”ができます。念的な意味で。
主人公? いいえ、ケフィアです……。えー、サムライ先生DXはあくまでもサムライ先生DXですよ?
そう、“あくま”でも。



[9440] 第十九話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/23 00:42
……そーか、ここはあの“ネギま”の世界だったのかー。





今さら気付いたよ。この世界に来た直後に刹那に出会っていたんだから気付けよ、俺。

「まー、原作見たこと無いしなー」

俺の“ネギま”知識は薄いからなー。まー、でも問題無いだろ、ちゃんと同人誌で確認したから。

「キーワードに逃げるなよ、俺……」

俺の中での“ネギま”は中学生に見えないおにゃのことたちとショタっ子がくんずほぐれつでニャンニャンする漫画、ってだけだからなー。
友人宅に泊まった時に、いつまで経っても起きないソイツを待つ間見ていたのがセレクション・ソイツのネギま同人誌(成年向けオンリー)だった訳で。
結局俺は原作を見る前に死んだのでキャラはわかってもストーリーがわからない。同人誌学習の弊害だな。
しかし刹那……我が妹は詠春さんの娘の近衛木乃香嬢と幼馴染みで、哺乳類としては非生産的な行為に耽る娘だったはずだが……あと獣耳付いてた気がするな。服装はメイド服が基本っぽかったのも憶えている。無論、同人誌で確認した情報だ。
そういう意味ではあの刹那嬢と我が妹の刹那は似て非なる存在だな。獣耳はきっと同人作家の趣味だったんだろーけどな。
などと現在は現実逃避中だ。詠春さんからいわれてここに到着したのが昨夜遅く。当分の間の任務を詠春さんの親父さんから聞きはしたが、明らかに見たことがある容姿の連中が居る教室に、これまた見たことがある容姿の少年先生と入る羽目になった辺りからどーも古い記憶が蘇ってきやがった。
まさか連続して“原作付き”の世界を回ることになるとはなー。これもオリ主の宿命というやつか……なーんて、格好付けてもどーしよーもないわな。

「……俺のせいで“原作”では丸く収まったことが上手くいかなくなってたらどーしましょ?」

それとも居たのかな。原作にも、俺が…………無いだろうなー。
と、視界の端で何か動いたな。

「む……? アレはたしか2-Aの宮崎のどか嬢? あの量で前は見えているのか……?」

大量の本を持って危なっかしい足取りで階段を降りようとするのどか嬢……って、落ちたーっ!?
そしてネギ先生、杖振りかざしてのどか嬢を浮遊させてからすばやく受け止めに入った!
俺? あー、流石にここからは無理だ。こっちは女子中等部校舎の屋上だし、むこうは校舎からちょっと離れたお外の階段だし。流石にここから飛んだら誰かに見られるだろー?
だからここはネギ先生にお任せした訳だ。それにしても、なぁ……?

「……助けるのは良い、助けるのは良いんだ、ネギ先生……だけどねー」

ソッコーで魔法バレしちゃってるよ……アレはたしか2-Aの神楽坂明日菜嬢だな。ネギ先生の授業中に消しゴムの欠片使って授業妨害に励んでいたので憶えている。
確か彼女、成績悪かったよなー。まー、授業中のあの態度じゃ仕方無いかも知れないなー。

「おぉ、林の中に生徒と二人で消えてきますか。青春ですなー」

まー、記憶でも消すんだろーけど……念のため学園長には魔法バレを報告しときますかねー。
しっかし初日からバレるって、ネギ先生ってば隠す気無いのかなー?

「そこら辺どー思うのかねー、超鈴音嬢?」

「気付いてたカ、流石はサムライ先生DXネ」

「気配隠して無いんだ、流石も何も無いでしょ?」

(一応隠してたんだけどネ……む、何だか悔しいヨ?)

おやおや、何やら不機嫌そーだね。笑ってはいるけど、何か面白く無かった、とか? 俺の発言が原因……?
何となく申し訳無い気持ちがこみ上げてくるな……いや、俺が勝手に罪悪感抱いてるだけなんだけどね?

「なななな何するネ!?」

気付いたら宥めるためにと鈴音嬢の頭を撫でてました。鈴音嬢の顔が……顔だけで済んで無いな、耳まで真っ赤だ。なじぇ?
ってか遠くから「ハッ! 今、兄様が誰かとフラグを立てかけた気配が!?」とかゆー声が聞こえた。フラグって言葉どこで知ったんだ、刹那。





どーやら鈴音嬢は俺を呼びに来たらしい。ほほー、歓迎会とな?

「しかし二人も呼びに来るとは……」

「私はただ単に通りかかったら超のやつにに捕まって連れてこられただけだぞ? 好き好んでそんなものに参加するか!」

「エヴァンジェリンは素直じゃないだけネ。本当は先生を歓迎したいけどはしゃいだら子供ぽいて思われるから冷たい振りしてるヨ」

「背伸びしたい年頃というやつだな。わかるわかる」

むしろツンデレですね、わかりますの方が良かったかな? 確か名前はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル嬢だったかな。先ほどの学園長室でも見かけた顔だ。あの場は早々に離れたが、早々に再会する羽目となったものだ。

「なっ!? だ、誰がこんなやつのことを歓迎するものか! というか何だ、背伸びしたい年頃って! このっ、私をそんな微笑ましいものを見る目で見つめるんじゃない!!」

顔を真っ赤にして腕を振り回すエヴァンジェリン嬢。駄々っ子パンチをする中学生、これで確か……吸血鬼だっけ? 長いこと生きていても肉体に精神が引き摺られてるのか、ちょっと幼い感じがするなー。

「キサマー! このっ、手を頭から退けんかーっ!!」

おー、うっかり片手でエヴァンジェリン嬢の頭を撫でていた。しかもそれのせいでリーチの短いエヴァンジェリン嬢の攻撃は俺に届いていないし……あー、馬鹿にしている訳じゃないんだが、実に微笑ましいぞエヴァンジェリン嬢。

「な、何を笑っている!」

「あー、いや……可愛いと思ってな」

「な、なぁっ!?」

驚いて動きが止まったエヴァンジェリン嬢の頭を撫で続ける。うーむ、実の細やかでさらさらした髪の毛だな。触っている指が心地よさを返してくる。
あと反応が実に面白い! これは……からかい甲斐が有りそうだ。

「く……と、とっとと来い! 歓迎会が始まってしまうぞ!!」

「ふむ、よろしく頼む」

手を差し出したら思いっきり叩かれそうになったので優しく掴んで握手したのだが……鈴音嬢は何故唸っていたのだろう?







未来から来た火星人、掌の暖かさに永住も良いかナ、とか考える。目的を忘れるな、頑張れ超鈴音! エヴァ様に「亜久馬の玩具」フラグが立ちました。Not性的な意味で。







以下、ざっくりまとめた感想レス(No.78~84)

>プチ魔王様

少なくとも伝説級、下手すると神話級の“兄キック・パワー”です。


>七転び八寝る様

むしろレス返しが多過ぎるという罠(苦笑)


>tomato様

いらっしゃいませ、ひどいSSのコーナーへようこそ(笑) このSSは思い付きで色々なテイストが入るたちの悪さを誇っております(ヲィ)
なるべく息切れしない様に、それと少しずつ量を増やしていきたいなぁ、と思っております。ふと思い出した際に読みに来ていただければ幸いかと。


>ハゲネ様

名前はサムライXから、でもXの字型の仮面はガンダムから。混ぜたら不思議、一つになった……って感じですね。
短くても面白い話はできると思います。というか面白さって言うのは一瞬で駆け抜けるものだから長い話で面白くするのは逆に難しいかと。
ただ本当に凄い人は細かな面白さを散りばめながらクライマックスへの盛り上がりを作れるんですよね。羨ますぃ……。
あ、晶ルートってのは何となくわかりました、一本取れたら的な会話で。でもその展開はむしろ古菲みたいなまっすぐバトラーにはまる気がします。うちの刹那はちょっと曲がっちゃったので(ヲィ)
あととらハはかなり壊れたエロゲなので……普通のエロゲかと思ったら第一作からいきなり学校で吸血鬼が暴れたりしますしねー。なので基準にすると大変危険です、気を付けましょう(笑)


>通りすがり六世様

あくまでもひみつです(笑) ほら、たとえキャストにシャアの名前で書かれても劇中ではクワトロさんなんですよ!(待て)


>Citrine様

おそらくは
「兄様」の言葉は絶対⇒サムライ先生DX先生は兄様⇒サムライ先生DX先生は兄様では無いと本人が否定⇒サムライ先生DX先生は兄様では無い?⇒ならばサムライ先生DX先生のいうことは嘘かも知れない⇒ということはやはりサムライ先生DX先生は兄様なのでは?⇒でも兄様の言葉は絶対で……
と、ループすると思います(笑)


>q-true様

シルエットはまんまガンダムDXでしょうね。闇夜とかで逆光で見たくないなぁ(笑)
え? エヴァ様ですか? ……どうやれば落ちるんでしょうね、あの人……まぁフラグは立ててますけど(ヲィ)



[9440] 第二十話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/24 00:08
「歓迎会……ねー?」

「サムライ先生DX先生、遠い目は止めませんか?」

でもねー、高畑先生……。

「俺には歓迎会というよりも歓迎会にかこつけて騒ぎたいだけにしか見えないんですよねー。あと高畑先生、担任じゃ無くなったからといっても教職なんですから止めるべきだったと思いますよ」

中学生の飲酒は。

「ぼくが来た時にはすでにできあがってネギ先生を押し倒している雪広君が居たよ……」

「す、すでに犯罪者が出ていたか……」

高畑先生の話に肩を落とすエヴァンジェリン嬢。まー、クラスメイトから犯罪者は出したくないよねー、わかるわかる。
明日菜嬢は高畑先生の膝を枕にすでに寝入っている。そして俺の両側は、

「先生、これは私の出資してる超包子の今度の新作ネ。是非感想を聞かせて欲しいヨ」

「むっ……鉄面教師、これを食べろ! “私の”茶々丸が作ったスコーンだ」

呼びに来た二人がしっかり陣取っているわけで。やや離れた位置にいる刹那が物凄く羨ましそうな目でこちらを見ている。そんなに食べたいのか? 超包子とやらの料理も、絡繰茶々丸嬢の料理も、相当な味に違いないな……。
だがこれを食べる前に問い質さんといかんことが有る訳で。

「で、誰が持ち込んだのよ? この銘酒“人生のオマケ”は」

「…………」

挙手したザジ・レイニーデイ嬢、正直なのは良いけどやらかしてくれたことがことだけに差し向かいで説教。SEKKYOUじゃ無いよ?

「あー、取り敢えず法は守ってくれ、ザジ嬢。法を破るならせめて人目の無いところでするとか、バレないよーにしなさい」

「…………」

コクリ、と頷いたので説教は終わり。聞き分けが良かったので頭を撫でていたら背中に突き刺さる視線……何故睨む、刹那。
ってかあれか、バレてるのか? それで正体を教えなかったのを怒って……いやいや、この“サムライ先生ダブルエックスの仮面”は装着者の正体を秘匿できる遺産アイテム“満月の仮面”の相当品。例え言動が普段と一切変わらずとも身に付けている者自らが正体を明かさない限りはその正体は不明となるはずだ。サンライズの仮面キャラ的な意味で。

チラリ

まだ見てる……ってか視線の鋭さが増してるよ!!
このアイテム役に立ってないぞー!?

「視線が痛い……」

「ならばザジ・レイニーデイの頭を撫でるのを止めんか、鉄面教師」

「へ、部屋が冷えてるネ……先生、ザジから手を離した方が良いヨ?」

(あ…………残念)

エヴァンジェリン嬢たちのアドバイスに従ってザジ嬢の頭から手を離すと不思議なほどにあっさりと視線の険が消える。
なるほど、正体がバレたのでは無く、正体不明の新任教師がクラスメイトの頭を撫でていたのが気に入らなかったのかー。ザジ嬢は嬉しそうにしていたんだがなー……いや、無表情で良くわからなかったんだが、何となくそんな気がな? 手を離した時も一瞬視線が手を追っていたし。
しかし刹那のあの厳しい視線……手紙や電話では一度も話題に上らなかったが、刹那はザジ嬢と親しいのかも知れんな。故に突然現れた不審者が親友に気安く触るのが許せなかった……とまー、そんなとこだろ。

「感謝する、エヴァンジェリン嬢、鈴音嬢。まさかザジ嬢の頭を撫でただけで刹那……嬢があそこまで剣呑な雰囲気になるとは思ってもみなかったよ」

感謝の意を込めて二人の頭を撫でていたらまたも刹那から強い視線が飛んできた。

「しまった、エヴァンジェリン嬢も鈴音嬢も、刹那……嬢と親しかったのか!」

「お、おまえはもっと色々なことに気付け、鉄面教師!」

「……刹那、きと苦労するネ」

チラチラと刹那を見ながら冷や汗を垂らすエヴァンジェリン嬢に何故か哀れみを含んだ視線を刹那に送る鈴音嬢。
…………まさか俺はロリコン教師として刹那に警戒されているのかっ!?

「「違うわ!」ネ!」





酒とすえたにおいが支配する教室。
あのあと何だかんだで大半が潰れたので歓迎会はお開きとなり、まだなんとか無事なものたちを連れて高畑先生は去って行った。
ネギ先生を背負って女子寮に向かう高畑先生は何というか……見た目も相まって教師というよりかは保護者チックだったなー。明日菜嬢? 大河内アキラ嬢が背負っていたぞ。大した力だ、磨けば光りそうな原石だったな……。
で、現在エヴァンジェリン嬢と茶々丸嬢とともに教室の清掃中だったりする。

「ってか、アレだ。二人は先に帰っても良かったんだぞ?」

「いや……こんな惨状のままの教室で明日の授業を受けるのは正直ゾッとしないからな……それに私も茶々丸も寮住まいでは無いから門限も無い。気にするな」

「先生お一人より私たちも手伝った方が効率も良いはずです」

……良い子たちだなー。何だか涙出そうだよ。

「それとキサマには聞きたいことが有るからな。手伝いはむしろついでだ」

「授業に関する質問かー?」

「違う。キサマは……“関係者”だな?」

「質問じゃ無く確認か。まー、その通りだけど」

わざわざ残ってまで聞くことじゃ無いでしょ、それ。口振りから見るにエヴァンジェリン嬢の中で結論が出てるんだし。

「質問はこれからだ、鉄面教師。キサマ……私の敵か?」

エヴァンジェリン嬢の雰囲気が剣呑なものに変わる。さりげなく茶々丸嬢もエヴァンジェリン嬢を守れる位置に動いているな。
しかしまー、何つーわかりきったこと聞くかねー?

「教師だよ。君のクラスの、副担任」

「くさっ!? くさいぞキサマっ!!」

「マスター、ファ●リーズです」

茶々丸嬢、この空気にはそれじゃー効かんぞ。まー、すえたにおいにゃ効くかも知れんが。







ちょっと格好良く決めようとして決まっていない。それがサムライ先生DXクオリティ。ちなみに彼は転生者ですが、GMが許可したので“超古代兵器”アイテムを“遺産”アイテムとして扱っています。わかる人だけわかれば良いって説明ですな。







以下、ざっくりまとめた感想レス(No.85~93)

>うほw様

実はちょっとずつですが容量が増えてきてたりします。ただ携帯電話のメール機能で書いている関係で、最大でも10KBの壁は破らないと思います。


>良様

溜め込んだエネルギーが大きければ大きいほど、解放の瞬間の威力は増すそうですよ。地震や噴火の話ですけど。ちなみに超りんは“未来人”で“火星(生まれの地球)人”なので人外判定に引っかかりました。さぁて、どこまで食い込むか……。むしろ帰さないとかも有りなのか?


>dain様

はっはっはっ、亜久馬は別にロリコンじゃないですよ? ただ(一方的に)立つフラグのほとんどがロリなだけです。これもある意味“囲炉裏”の会。ロリに囲まれる的な意味で。


>通りすがり六世様

索敵能力が高く、不意討ち無効属性を持ってたりします。たぶんエフェクトでいえば“天からの眼”とか持ってるはず。あと先手必勝型なので“戦いの予感”も有るかも。ダブクロ的な意味で。
刹那は……多分30話前後で大変なことになります。収拾付かなくなって削除しない限りは……。


>竜様

みんな超りんの気殺にやられていた件(笑) 戦闘? 気配も音も無く後ろに立って首を刈れば問題ナッシング!(ヲィ)
大丈夫、同人誌で確認したから押さえるべき点は押さえている……はず。あー、でも純粋な二次創作やネタ作品じゃなくエロ同人だから……参考程度の知識は有るってことで。


>毛玉様

言い逃れなんてしませんよ? だって勢いで押し切るから!(ヲィ) 刹那の出ていた同人誌はどうやら学園祭編か魔法界編を元にしていたようです。そして木乃香とニャンニャンしてたそうです(笑)


>野鳥様

卑猥て……照れるわぁ(ヲィ) まぁ、純粋な刹那ファンに刺されても文句はいえないぐらいにぶっ壊れてしまいましたからねぇ……でもまだ正気は保ってるのでセーフかな?
HENTAIについてはこのSSの成分表に追加をして対処しますね。流石に当初の想定から大きく外れてしまったからそろそろ調整が必要だ……。


>木乃香お嬢様(笑)

あのにおいはそうだと思うのですが、先生は自らのことを“サムライ先生DX”と断言されましたし……え? 空気が重くなったんですか? 私は何も感じませんでしたけど……お嬢様の気のせいではないですか?


>Citrine様

思考の迷路に入ってしまって刹那もおめめグルグルですよ。ちなみに彼の手からはアルファ波の発生を促す物質が出ていること以外、いまだ不明だそうです(笑)



[9440] 第二十一話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/25 01:47
「遅くはなったが……何とか今日の内に片付けも終わったなー」

「疲れた……茶々丸、私は歩きたくないぞ……」

「ではマスター、失礼しま」

「良し、手伝ってもらった礼に俺が運ぶとしよう」

なっ、ちょっと待てっ!

「要らぬ気遣いだって速っ!?」

いいいいつの間に私を肩車したんだ、キサマっ!!
動きの“入り”も“技を”じゃない、“抜き”もまるでわからなかったぞ!?

「これは俺なりの礼だ、エヴァンジェリン嬢。受け取ってはもらえないか?」

「う……っく、し、仕方無い、今回は受け取ってやる!」

こ、今回だけだからな? 特別だぞ?

「マスター……嬉しそうです」

五月蝿いぞ茶々丸!





「到着したぞ、エヴァンジェリン嬢」

う……も、もうか……。
仕方無い、降りるか……。しかし肩車か……なかなか良いものだったな……うむ、やつがやりたいならたまには乗ってやらなくもないぞ。

「鉄面教師、入れ。茶ぐらい出してやろう。茶々丸、準備しろ」

「むぅ、かたじけない」

「少し待て、私も着替えてくる」





「……むぅ、これはなかなか……結構なお点前で」

こいつ、美味そうに飲むな……ふふっ、何やら気分が良い。最高にハイってやつだ!
ちなみにわざわざ和服に着替えてやったのは茶の湯の席としての私なりのけじめなだけで、やつに対してのサービスとかでは無いぞ?

「ふっ、光栄に思え。この私自らいれた茶を飲んだ客はおまえが初めてなのだからな」

人を家に招く……今回は招き入れる、か? とにかくそこまですること自体が稀だしな。
ちなみに茶々丸には席を外させ、風呂の準備をさせている。流石に今日は疲れた……これが終わったらとっとと寝んと明日に障る。

「そういえばエヴァンジェリン嬢は茶道部だったなー……いや、まさかここまで本格的な茶をもらえるとは思ってもみなかった。嬉しい不意討ちというやつだなー」

不意討ちだと? それはこちらも同じ気持ちだよ。一見すれば不作法、だが押さえるポイントは押さえた所作。
それに茶器の銘をズバリ言い当て、何故それを用いたかまで見抜くとは……こちらの意図を見抜く目、侮れんな。警戒レベルをもう少し上げておくか。

「しかし茶道の経験が有ったとは意外だったな……」

「今は亡き祖母がな。下手の横好きに昔は良く付き合わされたものだ」

「門前の小僧習わぬ経を読む、というやつか? それにしては知識も観察眼もなかなかなものだったが……」

「付き合わされた時に勉強してな。祖母を良い気分にさせられなければ小遣いが減り、上手く祖母の意を汲めれば小遣いが増える仕組みだったんだ。必死に知識を詰め込み、洞察力を研いたものだ」

ちなみに付き合うのを拒否した時は小遣いが無くなったぞ、と肩を竦めていってくる。その様子があまりにも滑稽で、私は思わず笑ってしまう。

「ほう、エヴァンジェリン嬢はまた随分と可憐に笑うのだな。まさに花開く様に、という笑顔じゃないか」

「なっ!?」

やられたっ!! これこそ不意討ちだろう……くっ、顔が熱い……えぇい、見るなバカ者!

「の、飲み終わったならとっとと帰れ! ここは女生徒の家で今は深夜だぞ、この淫行教師がっ!!」

「ほほぅ……その淫行教師と狭い部屋に男と女で二人きり。いささか軽率では無いかね? エヴァンジェリン嬢」

「茶化すなバカ者!!」

「茶化さないで現状を鑑みると……やはり身の危険ぐらい覚えた方が良いのではないか?」

急にやつの目に剣呑な光が宿り、私は腕を掴まれる。
ハッとしてその手を振り払おうとした私は気付けば畳に仰向けに転がされていた。

「なっ――!?」

やつは私を押さえ込む様にのし掛かってきて……、

「ダメじゃ無いか、ひょいひょい家に上げちまっちゃー……俺は幼女だって食っちまう男なんだぜ?」

「ぁ……」

魔力を封じられたこの身では大の男に力で抗うことは叶わない。押さえ込まれた今、逃げ出すことは不可能。その事実に私の身体が震える。

「ゃ、待てっ!」

がむしゃらに暴れるが絶妙な重心移動だけで容易く押さえられてしまう。
むしろ暴れたせいで着物が乱れ、息も上がってしまった。これではまるでアレでナニな状況では無いか!

「エヴァンジェリン嬢……」

やつの顔が降ってくる……思わずギュッと目をつぶった私の鼻先にやつの吐息がかかり、

「と、まー……こーゆーことも有り得ないとはいえないでしょ?」

「――んなぁっ!?」

か……からかわれたーっ!?





部屋に気不味い空気が漂っている。原因はやつだ。全部やつが悪い! あと茶々丸も二割ぐらい悪い!!
あのあと、乱れた着物を整えているところに茶々丸がやって来た。
私がやつから距離をとっていること、私が着物を整えていることの二点から茶々丸のバカが、

「マスター……大人の階段を昇られたのですね」

とかいったあとから部屋の空気が生暖かくなって、それからこっち、この気不味さだ。……おのれ、淫行教師め。

「だいたいいつまで居座る気だ、淫行鉄面教師」

「拗ねるなエヴァンジェリン嬢、からかったのは悪かった」

全然悪びれていない顔でいうな! あと悪いと思っているならちゃんと謝れ!

「……取り敢えず帰れ、キサマの顔など見ていたくも無い!」

「?」

ちょっと待て、何故そこで不思議そうな顔をする?

「マスター?」

茶々丸まで、何故疑問形で呼び掛けてくるのだ?

「あれー? 茶々丸嬢?」

「マスター……まさか、聞いていないのですか?」

は?

「俺は今日からここに住むことになっているんだが?」

なっ――

「学園長からはマスターにも直々に説明するとのことでしたが?」

にぃっ!?

「その様子だと……」

「聞いていないのですね……」

呆然とする私はその時、高笑いするジジイの幻覚を見た気がした。







エヴァ様はそっち系の耐性が無い気がして書いた。書いたことは後悔も反省もしていないが、エヴァ様の魅力を出せなかったことには悔いが残っている。あとサムライ先生DX、おまえはエヴァ様で遊び過ぎだ、も少し自重しろ。







以下、ざっくりまとめた感想レス(No.94~101)

>dain様

望むと望まぬとも発動することと撫で癖があったりすること、あとは無自覚であること……それがこのスキルを修得する条件です(笑)


>木乃香嬢

「無垢な寝顔だねー……で、何で睨んでいるんだ刹那」
「別に兄様を睨んではおりません!」


>良様

ザジは現段階では謎のキャラだし、原作で明らかになるとしたら今のペースだと数年後……つまりは十分に捏造設定で突っ走れるということなんだよ!(キバヤシ)
困ったことにサムライ先生DXの気配察知・危機察知能力はカンストなんだ。そして君子は危うきに近付かないらしい(ヲィ)


>日向旭様、モブキャラ様、もるげん様

正解! “満月の仮面”はメビウスのサプリ「ラース=フェリア」でレリックユーザー用アイテム“超古代兵器”の追加データとして紹介されています。効果は文中で軽く触れた通りです。


>通りすがり六世様

ある日突然にチラ裏から消えたらまずはXXXを探すと良いと思います(ヲィ)
最後の会話の辺りでぎっぷるを出そうとして押し留めた自分を褒めてあげたい(笑)


>Citrine様

最初はエヴァ様たちの突っ込みは無しで、モニタの前で皆さんに突っ込んでもらおうと思っていたのはここだけの秘密です(笑)
双子ロリは単純に兄属性に引っかかるかも知れませんけど、人外フラグが立たないのでそこまでは……そもそも双子のロリなんて、それなんて「はじるs(ry



[9440] 第二十二話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/26 02:31
サムライ先生DX先生の朝は早いです。





04:00
まだ空は白み始めたばかりですが、先生はすでに準備万端で軽く柔軟体操を行っています。燕脂色に白の二本線が入ったジャージ、首から下げたホイッスル。伝統的な体育教師の装いです。鉄面も相まってCAPC●Mのゲームに出てきそうな雰囲気です。当然ながらキャラクターデザインは島本和彦先生ですね。
ついでにその隣でマスターも柔軟体操をやらされています。

「何故私がこんなことをしなければならんのだ!」

「学園長が、エヴァンジェリン嬢は身体が弱いから少し鍛えてやってくれ、といっていたからねー」

「くっ……ジジイめ、余計なことを……」

「さ、柔軟も終わったことだし、走り込みといこうか。初日だし軽めに20kmぐらい山道を走るぞ」

「どこが軽いんだ! どう考えても山道ハーフマラソンは軽く無いだろうが!!」

「?」

「不思議そうな顔をするなー!」





「ぜ、はぁ……ぜぇ…………」

「情け無いな、エヴァンジェリン嬢。初日からこれでは先が思いやられる」

「う……る、さ…………な、ぜ、おまっ、ぃき、だ…………」

五月蝿い、何故おまえは息が切れていないんだ……といいたい様ですね。私も同感です。
途中からはマスターを背負っていたのに……。それに両手両足の袖口や裾から時々姿を覗かせる重りにしか見えない何かも気になります。思い切って聞いてみましょう。

「ふむ、目の付け所がシャープだな、茶々丸嬢。これは日常生活を送る際の鍛練用の重りだ。まー、鍛練が行えない状態での筋力維持が目的だからそれほど重くもないんだが。ちなみにリスト、レッグ、ベストの三点セットになっていてお値段据え置きの6,820円。今なら同じものがもうワンセット付いてくるぞ」

通販でもしているのでしょうか?
ちなみに先生がシャワーを浴びている間にマスターが重量を確認しようとしましたが、両手でもリストバンド一つを持ち上げることも叶いませんでした。
私も試しに持とうとしましたが……、

「ちゃ、茶々丸、もう止めろ! 金属が焼けるにおいがしているぞっ!?」

今日の放課後、急遽ハカセたちのメンテナンスを受ける羽目に陥りました。右肘の関節が動きません……。





06:30
先生はスーツの上にトレンチコートとスカーフを付け、金属定規を背負って学校に向かわれました。
ここからはネットワーク越しに監視カメラを利用して観察を行います。接続、開始です。
先生の現在地を検索………………検索完了。サムライ先生DX先生、現在地、麻帆良学園女子校エリア中等部校舎職員室……?
エラーでしょうか? 先生が出発してからまだ一分も経過していないのですが……校舎内監視カメラに接続……接続完了。映像出力……いらっしゃいます。
職員室には確かに先生の姿が。不可解です。転移魔法を使用したのでしょうか?
先生の出発時刻の少し前から映像を確認してみます。
先生が家を出ます……ここまでは玄関からお見送りしたので問題有りません。映像の中の私が扉を閉めました。ここから先生は……見失ってしまいました。再生速度をスローにしてもう一度……速い……スロー映像でも姿がぶれたことを確認できる程度ですね。これでは監視カメラの性能上、移動経路の特定すら困難でしょう。
仕方有りません、このことは懸案事項に記録。先生の観察を続けましょう。
麻帆良学園都市内の監視カメラの多くは集音マイク標準装備ですので誰かと会話をしていた場合、内容の把握は可能です。直接観察せずとも十分に先生のデータを集めることができます。

『あー、茶々丸嬢。視線が気になるんだけどなー?』

監視カメラに向かって先生が話しかけてきました……信じられません、監視カメラ越しの視線に気付いたというのですか? しかも私だと断言しています。いったいどうして……気になります。

『覗きはダメだよー? 知りたいことが有るなら直で聞いてきなさいな、答えられる範囲で答えるから。とゆーわけでストーカーじみた行為はもー止めときなさい』

……下手に刺激してはマスターの不利益に繋がる可能性が有ります。今回はここまでですね……。





10:20
現在、サムライ先生DX先生による古文の授業中です。
……マスターが舟を漕いでいます。昨晩は遅くまで眠れなかった様ですし、今朝は過度な運動をしていたのですから、ある意味当然の結果でしょう。

ビスッ

「あいたーっ!?」

マスターが奇声を発して仰け反りました……いったい何が?

「エヴァンジェリン嬢、夜更かしか? いかんぞー、学生は早寝早起きが基本で正道だぞー?」

先生がチョークを弄びながらマスターに注意しています。痛みに声も無くのたうち回るマスターの周囲には白い欠片が散らばっています。謎は解けました。

「あなたを、犯人です」

「茶々丸嬢、授業中は私語とネタ台詞は厳禁だ」

外してしまいました……。





12:40
昼休みです。サムライ先生DX先生はネギ先生と昼食をとっている様です。
マイク音量を上げます。視線は気付かれてしまいますので、目視や監視カメラはNGです。しかし聞き耳ならば気付かれる可能性は低いはずです。

『あ、これ知ってます! ラーメンっていうんですよね? 一回食べたことが有ります!』

『ほー、ネギ先生は英国出身で日本には今回初めて来たと聞いていたのだが……向こうにもラーメン屋が有ったのか?』

『あ、お店で食べたんじゃ無いんですけど……』

『ほほーう? 何やら有ったのか? ……だがしかしこれはラーメンにしてラーメンに非ず! この料理の名は“二郎”というのだー!!』

『ジロー、ですか……?』

『うむ、このラーメン二郎麻帆良店は三田の総帥の下で修行した麻帆良学園卒業生が昨年末に開いたばかりの店だが、すでに営業時間の一時間前には行列が出来上がるほどの人気店だ。っと、話している内にできた様だぞ』

『こ、これは……す、凄い麺と脂ですね……』

『西洋文化圏ではマナー違反ともいわれるが、東洋の麺類は勢い良く音を立てて啜り込むのがポイントだ。さー、冷める前に食べてしまおう』

ずぞぞーっ

『い、いただきます……』

ずずず……

『! お、美味しいですっ!!』

『そうだろう、そうだろう……あー、染み渡るなー。この味、この香り、この重量……まさに“二郎”だ。何もかもみな懐かしい……』

『でもサムライ先生DX先生ってぼくと同じぐらいのタイミングで麻帆良学園に来たんですよね……どうしてそんなにお店の情報に詳しいんですか?』

『んー? あー、昨日町で会ったぽっちゃり系の人が熱く語ってきてねー』

食べ物のことを熱く語るぽっちゃり系……弐集院先生ですね、わかります。
“二郎”という料理に関しては確かに美味しそうですが、インターネットで確認する限り健康には悪そうです……。

「茶々丸、やつらは何を食べているのだ?」

「マスターは食べない方がよろしいものです」

「な、何故だ茶々丸! やつら、あんなに美味そうに食べているではないか!!」

わがままはいけませんよ、マスター。それとも……にんにく入れますか?





16:10
放課後です。これからメンテナンスですが、その間も先生の観察です。ネットワークを介し、かつ鏡などの反射物を利用すれば気付かれはしないはずです。

「覚悟していてください先生。今夜、あなたを丸裸」

「いやー、色々と創意工夫して試すのは構わんのだがなー……」

……先生、気配を消して背後に立つのは止めて下さい。
そもそも何故センサー類で一切検知できないのですか?

「それは秘密だ、茶々丸嬢。それよりも今は見られたり聞かれたりは困るな。ネギ先生がやらかしてくれたので、ちょっと……どころでは無く忙しい。できれば今度にしてくれ」

「やらかした……?」

疑問の声を投げかけたのですが、サムライ先生DX先生の姿はすでに有りません。
いったい何が有ったのでしょうか? 気になります……あ、メンテナンスの時間ですね。
仕方有りません、今晩先生に聞いてみましょう。答えられる範囲で答えてくれるはずですから。







チョーク投げにはコツが有って、上手く投げると“徹”が乗ります。魔法障壁? ギャグパートなら障壁無効ですから全力状態のエヴァ様でもギャグに持ち込めば一撃ですよ。







以下、ざっくりまとめた感想レス(No.102~109)

>三号様

「ネギま!」を読み返すたびにザジのキャラが掴めなくなるのは何故なんでしょうかねー。
何とかそれっぽい子にできる様、努力してはみますが……可愛い要素がごっそり抜け落ちてしまったらごめんなさい(ヲィ)


>通りすがり六世様

IF……インタフェースの略ですね!? うーん……エヴァ様のIFは原作を三千世界の彼方にふっ飛ばしてしまいそうだからなぁ。
あー、どのぐらいまでのことはOKですかねぇ?(笑)


>良様

このチャンネルの続きを視聴する為にはペイカードが必要です(笑)
エヴァ様宅で寝泊りし続けると変なフラグが立って、刹那が「兄様の身体からアノ女ノニオイガスル……」とか言い出しそうで怖いです(待て)


>竜様

大人っぽい面も子供っぽい面も併せ持っていて良いと思いますよ。色々な顔を持つのが人間ですし、どの道弄られからの脱却は不可能ですから(ヲィ)


>ミクニ様

むしろ仮面をつけている状態が“サムライ先生DXという存在の顔”です。仮面を取ったら誰だかわかりません(笑)
刹那のヤバさは私も想定外です。何でアンナンに進化したのかなぁ……。亜久馬が魔法を……練習用の杖を持って“火よ灯れ”とか言わせてみたいですねぇ。大失敗しか想像できませんが。


>イグナシオ様

何故メビウスかというと、NW2でクラスにサムライが追加されているからです。御神の剣士は忍者っぽいですが、サムライも入れたかったんですよ。


>Citrine様

ドSな人は実はドMだったりする可能性も有りますよ。普段は人を攻める側なのに、それをされる側に堕とされる屈辱感や倒錯感にはまる人も居るとか。これを“くやしいッ、でも感じちゃう”理論というそうです。丸々嘘ですが(ヲィ)
あと亜久馬は結構勝手に動いたり喋ったりするので結構大変です。むしろ勝手に喋った台詞へのほかのキャラの反応とかで会話ができていたりします。


>木乃香お嬢様

「あぁ……このちゃん、可愛いです……」
「鼻血を拭け、刹那。しかし刹那は猫派か……俺はどちらかというと犬派なのだが」
「兄様、やはり私と兄様は相思相愛だったのですねっ!!」
「何故そうなる!?」



[9440] 第二十三話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/27 02:00
「やれやれ……ネギ先生もなーにやってるんだかねー?」

とはいえ表立ってどーこーはしないけど。俺の仕事はネギ先生の教員生活のサポート。年若く人生経験が足りないネギ先生を導くことこそが使命。
それともう一つ……、

「わーっ! 大きな図書室ですねー、本がいっぱい、こりゃ凄いや」

「は、はい」

現在、女子中等部図書室。ネギ先生を絶賛監視中である。
ってかネギ先生や、惚れ薬作るわ、服用するわ、女生徒と密室で二人きりになるわ……君は学校で何を習ったんだね? 女性の落とし方とか?
ほら見たことか、のどか嬢にものの見事に惚れ薬の効果が出てしまったではないか。

「ネギせんせー」

「あす……アスナさーん!」

そこでほかの女生徒の名を呼ぶか、ネギ先生は女性への気遣いが壊滅的だな。
将来、恋人とかできたら大変だろーなー……もちろん恋人の方が。
むぅ……? 明日菜嬢の気配が近付いてくるな……っと、ネギ先生、いくらなんでも女性に押し倒されて唇奪われそうになるとか、かなり情け無いぞ?
仕方無い、手を貸すか……何より惚れ薬の効果でファーストキス喪失とか、不幸だろーし。お互いに、ねー?

「というわけで、おやすみ、のどか嬢」

のどか嬢の頭に手を乗せて、優しく、しかし高速で揺する。軽い脳震盪を起こさせた訳だ。

「ぁゎゎ……ダメです、宮崎さ……ん?」

「ネギ先生……着任二日目で生徒に手を出すとか、どーかと思いますよー?」

「さ、サムライ先生DX先生!?」

「はい、どーも。何やら騒動が起きた様で……何やらかしたんですかー?」

おおよその事情はわかっているけど、俺は関係者として紹介されていないのでそのものズバリの回答はアウト。さー、どー答えるのかなーぁっ!?

「こーのネギ坊主……何をやっとるかーっ!!」

――御神真刀流小太刀二刀術、奥義之壱――

「わーっ」

――虎切(ver.金属定規)――

ズパンッ

「へっ?」

「わゎっ!?」

「……明日菜嬢、扉は蹴破るものでは無いと思うぞー?」

無論金属定規で真っ二つにするものでも無いが、そこはそれ、緊急措置で有る。じゃ無いと俺やネギ先生は兎も角、のどか嬢の顔面が潰れたトマトに成り果ててしまうところだったのだし。むしろ石榴か? 肉の味というし。

「あ……ご、ごめんなさい……」

「以後、気を付けること……取り敢えず罰として、気絶したのどか嬢を送り届けるよーに。ネギ先生も、ちゃーんとフォローをしとこうねー?」

「は、はい……」

「ご、ご迷惑おかけしました……」

ネギ先生、明日菜嬢、そして明日菜嬢に背負われたのどか嬢を送り出す。さて、問題はこの真っ二つになった扉と、もう一つ。

「誰かに見られたか……上手く気配を殺していたが……どこかで感じた気配だったな。然して親しくも無い、だが接点は有る相手……」

2-Aの生徒、か? いや、今はこんなことを考えている場合じゃ無い。今すべきことは……器物破損の経緯を学園長に報告する、そうだそれこそが最優先だ。

「明日菜嬢は苦学生のよーだし、ぶった切った俺とそもそもの騒動の発端であるネギ先生で折半できるよーに話持ってかないとねー……」





「……以上です。取り敢えず修理費は俺とネギ先生を減給してそこから捻出しましょーかねー」

「君は生徒を守ろうとしただけじゃし、ネギ先生も生徒とのスキンシップが行き過ぎただけじゃろ。今回のことは魔法先生たちで何とか処理をしておくわぃ」

……良いのかそれで。まー、俺を庇ってのことじゃ無いだろーけど。
ネギ先生のやらかしたことは魔法薬の作成、魔法薬の一般人への譲渡未遂、魔法薬の使用、ってとこだ。向こうの法には明るく無いからよーわからんけど、一般人に魔法薬を渡すのは明らかにアレだろ。
生命の危機だから霊薬を渡しますとかなら兎も角、惚れ薬だからなー。
明日菜嬢が使う予定だったよーだけど、一目見た異性が虜になるとか、ヤバ過ぎるだろ。
ことが発覚すれば俺よりむしろネギ先生の“立派な魔法使い(マギステル・マギ)”への道が危ないからね。きっとそっち関連で庇われたんでしょ。俺はついでで庇われたんだろーな。

「ふむ……おとがめ無しをネギ先生に感謝しよーかと思ったけど、良く考えたらそもそもの騒動の原因がネギ先生だった罠」

「さりげなく痛いところを突くのぅ」

「下手したら木乃香嬢を始めとした2-A女子がネギ先生の遺伝子受け入れかねなかった大事件ですからねー」

「もしこのかとことに及んどったらなし崩し的に近衛ネギの誕生だったのぅ。断るならもがねばならんかったところじゃわぃ」

怖いこというなー、学園長。主に人生の墓場的な意味で。あとオトコノコ終了的な意味で。
まー、一部生徒は気や魔力で効力を跳ね退けてたけど。でも使い方がわかってなかった木乃香嬢はかなり魅了されていたしなー。
そういえば明日菜嬢には一切効力を発揮していなかったけど、ありゃーいったい何なんだ?

「そこんとこどーよ?」

「明日菜君はアレじゃ、その……ば、バカじゃからのぉ」

「バカは風邪ひかない理論ですかー?」

「むしろバカは風邪に気付かないのかも知れん。気付かず、普段通りに行動するからこそ、周囲には風邪をひかん様に見えるのかも知れん……それと同じことが、今回起きたのかも知れんなぁ」

それはつまり、恋を恋と認識できなかった、ってことか?

「いくらなんでも、あの歳でそれは無いんじゃ……だって中二ですよ? 初恋ぐらい経験してる歳でしょーが」

「明日菜君は確かに恋はしとるよ、父代わりで有り、兄代わりで有った高畑先生に、な」

わぁお。
学園長のいいたいことがわかる気がする。

「女性は自分の父に似た人物に恋をし易いっちゅー説を知っとるかね?」

「えーっと……人間は人格形成時に多く触れ合った“自分を庇護し、安心させてくれる異性”を無意識下で求める、ってとんでも理論のことで?」

「うむ、そして似ている部分の分類としては、身体のパーツが似ていることを指す身体的相似、性格や発想などの内面が似ていることを指す精神的相似、日常の仕草や何らかの行動の癖が似ていることを指す行動的相似などが有る。ちなみに魔法世界だとこの三つのほかに根源的相似っちゅーのも有って、魂の波長が似ていたりする場合を指すのじゃ」

「へー」

「淡白な反応じゃのぅ」

「だってそれ嘘でしょ?」

「むぅ……何故嘘じゃと思うんじゃ?」

「学園長って嘘吐く時に右の頬が引くつくんですよ」

「ふぉっ!?」

「まー、嘘なんですけどね」

でも触って確かめるんじゃ嘘吐いてたっていってるよーなもんですよ学園長。

「こりゃ……一本取られたのぅ」

ぺちっと額を打って笑う学園長。
んー、こりゃ当分黙っておくかなー。嘘吐いた時に引くつくのは左眉だってことは。

「取り敢えず……明日菜嬢は父性への憧れの延長を恋と認識し、ネギ先生への恋を認識し得なかった、と?」

「ま、おそらくはのぅ」

左眉引くついてますよー、学園長。
ちょいと気にかけておくかね。





エヴァンジェリン嬢の家に帰ると、茶々丸嬢一人だった。

「はて、エヴァンジェリン嬢は?」

「マスターは今日は寮に泊まるそうです。“問題児”への対応について、真名さん、楓さんと検討会を開くとのことです」

問題児? はて……2-Aにそんな子が居たかね?
……歓迎会に酒を持ち込んだザジ嬢か? あるいは惚れ薬を使おうとした明日菜嬢? ネギ先生を押し倒していた雪広あやか嬢も怪しい……って、そもそも頻繁に明日菜嬢を裸にしたり惚れ薬を作ったりと一番の問題児はネギ先生か!?
あー、何はともあれ、だ。

「夜も運動するといっておいたんだけどねー?」

「…………」

茶々丸嬢がさりげなく目を逸らしたのを見るに、俺との鍛練からの逃亡の意味も有りそうだ……ほっほー? 良い度胸だな、エヴァンジェリン嬢。覚悟しとけよー?





その時寮の風呂場でネギ先生を中心とした騒動を眺めながら湯船でのんびりしていたエヴァンジェリン嬢が小さく悲鳴を上げたとか上げなかったとか。







何だかんだでサムライ先生DX先生は茶々丸さんの表情を読めたりします。あと今回感じた気配は……その内忘れずに回収したいと思います。







以下、ざっくりまとめた感想レス(No.110~116)

>通りすがり六世様

あるもの……あー、木工用ボンドですね、わかります。
身体能力は、ほら……亜久馬はネギま世界で気を習得しているし、それから何年も過ごしてますからねー。


>琥兵様

ぶぶぶぶ豚の餌ちゃうわっ(笑) 二郎は凄いんだぞ、スープを飲み干したら徴兵だって免れるんだぞっ!(ヲィ)


>ディオ様

がふっ!? ちょ、ま、それはアレです、きっときっかけなんです、きっとこの後……特に理由無く好かれるんです。それじゃダメじゃん!(春風亭昇太?)


>Citrine様

取り敢えず全国区で有名かつ「ねーわw」といわれそうなもので最初に思い付いたのが二郎だったというしょーも無さ。ポイントはにんにくが入っていることです。エヴァ様を騙して食わせたいです(鬼)
あとネギ先生は二郎にはまらないことを祈ってるよ!


>木乃香嬢

「木乃香嬢がその格好をすると何故か猫耳モードという単語が出てくるなー……あと人から突っ込まれて気付いたんだがいつの間にか感想じゃ無くなっているぞ? いや、気付かなかったなー」
「結構ノリノリで考えてませんでしたっけ、兄様」
「さて、何のことかな? 取り敢えず木乃香嬢、ネタ振りだけだと問題が有りそうなので感想もついでに付けてくれると大変有り難いのだが」
「兄様、“感想掲示板”ですので、メインは感想ですよ? ついでは不味いかと思います」
そーゆー訳で、感想を付けといてください、よろしくっ!


>竜様

済みません、本来私がいわねばならないことだったのですが……ついネタに乗ってしまいました(土下座)
衝撃を“徹す”のが御神でいう“徹”ですからね。運動エネルギー、接触面の状態、対象の姿勢とかもろもろの要因が重なれば有り得なくは無いかと。
ぶっちゃけると、ギャグパートだから起きてもいいんじゃないかなと思って書いたってのが“徹”が乗った理由ですが(ヲィ)
そうですねー、現在の亜久馬の使っている重りを一つでも着けたら付けたら蛇の道を行く前の悟空が身動き取れません。もちろん嘘ですが。


>BackS様

ナチュラルに、VIATORってのは知らないのですが……日本語サイトでぐぐったら一番最初に出てくるやつのことでしょうか?
見たことは無いのですが……オススメですかね?(どきどき)
ちなみにサムライ先生DXの行動の端々に滲み出るアレな感じは私の友人が人を弄る時のそれをオブラートで五重ぐらい包んでみたやつです。えぇ、もっと酷いのが居るんです、身近に……。



[9440] 第二十四話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/28 00:56
一晩経ってから、昨日の図書室でのことが余りにも不自然だということに気付いた。
いくら金属製でも定規であの大きな扉を斬ったサムライ先生は異常だってことに。
もしかしたら、サムライ先生も魔法使いなのかも知れない。きっとそうだ、考えてみたら魔法使いの修行中であるぼくをサポートしてくれるサムライ先生が一般人な訳が無いじゃないか!
学校に行ったら聞いてみなくっちゃ……あ、でももし魔法使いじゃなかったら? 一般人だったらぼくは魔法使いのことを漏らしてしまった罪でオコジョに…………。

「……よし、それと無く聞いてみよう!」





「あ、あのっ、サムライ先生!! 教えて欲しいことが有るのですが……」

「今すぐじゃ無いと不味い話?」

「あ、いえ、そういうわけじゃ……」

「なら、またあとでねー」

朝一は忙しーのー、って頭撫でられてしまいました……完全に子供扱いです……。





「んで、さっきの手紙のご用事なーに?」

昼休み、唐突に声をかけられて振り向くとサムライ先生が腕組みして立っていた。とりあえず場所を移さないと。人気の無い場所……そうだ、屋上なら人も少ないし、認識阻害の魔法をこっそり使えば!
屋上に移動して、サムライ先生には気付かれない様に気を付けて魔法を行使。
さぁ、質問開始です!

「あ、あの……」

(何やら杖弄くってぶつぶついってたねー……何だろ、魔法関係のお話かね?)

「き、昨日のアレ、何だったんですか?」

「アレ?」

「その、飛んできた扉を真っ二つにしたのは……どうやったのかなーって」

「あー、アレ? 定規で斬っただけだよー」

「で、でも、ただの金属定規であんなにきれいに斬るなんて、普通じゃないですよ!?」

(なるほどねー……まー普通は無理だもんねー……さーて、どー誤魔化したもんか)

「ふっふっふっ、バ~~レ~~た~~か~~」

や、やっぱり……サムライ先生は魔法使い……っ!

「ネギ先生のサポートをする副担任とは仮の姿、俺は、俺の正体は……」

「まほ」

「実は侍だったのだーっ!!」

へ?

「侍とは刀の扱いに秀でた日本固有の剣士スタイルっ! 俺ぐらいの達人になると例え金属定規だろーと万物を斬り裂けるよーになるのだよ!!」

そ、そーだったんですか! そんな凄い人が居るなんて、知りませんでした!!

「す、凄いです! ジャパニーズ・ソードマスター、サムライは知っていましたけど、そんなに凄い人たちだなんて知りませんでした!!」

魔法に頼らずあんなことができるなんて……きっと厳しい修行を乗り越えたに違い有りません! 尊敬です!!

「はっはっはっはっ、聞きたいことは以上かなー?」

「あ、はいっ、ありがとうございました!」

認識阻害の魔法は解除。もう必要無いしね。
それにしても危ないところだったなぁ、もう少しでうっかり魔法使いって単語を出しちゃうところだった。オコジョにはなりたくないものね。

「あー、そうだ。俺からも聞きたいことが有ったんだった」

? 何だろう、ちょっと嫌な予感が……。

「ネギ先生は昨晩うちの生徒たちと一緒に入浴したとか……」

なっ!?

「何でそれをっ!?」

「先ほど、エヴァンジェリン嬢に聞いてな。で、どーだった、お姉さん方のナイスバディは。いっちょ前に興奮したかー?」

「え……あぅ……」

そ、そんなこと聞かれても……。

「おー、おー、赤くなっちゃって……どーだ、誰が一番綺麗だった? 一人一人思い出してみ?」

いわれて、思わず昨晩のことが頭の中に……あと、夕方の図書室のことも……。

「あ、あぅ……」

「身体を隅々まで洗ってくれたらしい神楽坂明日菜嬢か? それともキス未遂の宮崎のどか嬢か? ひょっとしてクラス一番のナイスバディの」

「み、宮崎さんっ!?」

あ、頭の中を占めていた宮崎さんの名前に思わず反応しちゃってから、しまったって思ったけどもう遅かった。

「ほっほー、なるほど、やはり宮崎のどか嬢か。ネギ先生はなかなかに人を見る目が有る。スタイル的には未成熟では有るが今後の成長も期待できるしねー……アレか、のどか嬢に惚れたかね、ネギ先生?」

「ちっ、違います、そんな……だ、第一ぼくは教師で、宮崎さんは生徒なんですよ? 惚れるとか、そんな……そんな…………」

「いやいや、教師と生徒という以前にネギ先生は男でのどか嬢は女だ。そこに恋愛感情が芽生えたとて不思議は無いと思うがねー? 二人ともまだ若いのだし、そこで自ら踏み止まるのも面白く無……惜しいことだと思うよ、俺は」

「で、でも! 教師と生徒がそうなるのはいけないことなんだって……」

必死に否定する。認めたらそのまま宮崎さんとけ、結婚を前提としたお付き合いに発展してしまう……むしろされてしまいそうで……宮崎が嫌な訳じゃ無くて、教師と生徒がそういうことになるのはいけないってお姉ちゃんが……でもぼくと宮崎さんは教師と生徒の前に男と女な訳で……??

「ふむ……なー、ネギ先生? ちょいとこの五円玉を目でしっかり追いかけながら俺の話を聞いちゃくれないか?」

唐突にサムライ先生が糸を付けた五円玉を取り出して、ぼくの目の前で左右に振り始める。

「さてさてネギ先生、教師というものは生徒を幸せにすべきだと俺は思うんだ。ネギ先生はどう思うね?」

「は、はい……ぼくもそう思います……」

「そう、教師が生徒を不幸にすることなんて有ってはいけない、そこに疑問は差し挟んじゃいかん。わかるなー?」

「は、はい、教師は生徒を幸せにしないと……」

「ところで宮崎のどか嬢はネギ先生が好きだ。どうにもネギ先生に助けられた時から好意を抱いていている様だよ。昨日の図書室のことといい、今日のネギ先生を見る目といい、その想いは好意を抱くって段階から、明らかな好きになっているようなんだが。のどか嬢、ネギ先生と恋人同士になれたらきっと幸せだろーな?」

「は、はい……宮崎さんとぼくが恋人同士になったら宮崎さんは幸せで……?」

あ、れ……?

「生徒の幸せは教師の幸せだ……ネギ先生と宮崎のどか嬢が恋人同士になったら宮崎のどか嬢は幸せで、宮崎のどか嬢が幸せならネギ先生も幸せだよな?」

「は……い……宮崎さんが幸せなら、ぼくも、幸せです…………?」

おか、しい……。

「二人も幸せになるんだ、こんなに素晴らしいことは無い、さーネギ先生、ネギ・スプリングフィールド、君の素直な気持ちをいうんだ、君は宮崎のどか嬢が好きか? 嫌いか? 幸せになって欲しいと思うか? それとも悲しんでも構わないと思うか?」

「は、い……ぼくは宮崎さんが好き、です……幸せに、なって、欲しいで、す…………」

なんだろう……あたまがぼうっとする……。

「なら、君は宮崎のどか嬢を姓で、宮崎で呼ぶのを止めた方が良いな……好きな相手なんだろう? 名で、のどかという彼女の名で呼んであげたら、彼女も嬉しいだろーね……違うかな? のどか嬢は君が好きで、君はのどか嬢が好きなんだろう? 好き合うものが名で呼び合うのは極自然なことで、そして心に暖かなものを満たしてくれる。姓で呼ぶより名前で呼ばないと。ネギ君はのどか嬢が好きで幸せになって欲しいんだろう? どうだろう、名前で呼んでは。宮崎ではなく、のどかと呼んでは」

「はい……宮崎さんは、のどかさんです……」

でも、なんだか、しあわせなきもち……きもちいい……。

「さー、これから数字を数える。十から順に、数字は減っていく。数字が零となった時、君は今の会話を忘れる。だが気持ちは失われない。その気持ちは永遠だ。数えるぞ? 十、九、八……忘れるな、君が認めた、君自身の想いを、七、六、五……君が宮崎のどかへの想いを嘘だと思うのなら今のこの気持ちは忘れてしまうだろう、四、三、二……決断しろ、君の宮崎のどかへの想いは俺によって引き出された偽りなのか、君自身が認めようとしていなかった真なのかを! 一……零っ!!」

あれ……ぼくはいったい……? えっと、たしかサムライ先生と昨日のことで……図書室のこと、で……?

「ほれほれ、ネギ先生、誰が一番綺麗だったんだー? 俺にだけ教えなさい」

誰がきれいって……あ、お風呂での話だっけ? あぅ……、サムライ先生が変なこと聞くから混乱してたんだ……。

「アレか、いつも同じ部屋で寝泊まりしている神楽坂明日菜嬢か? 昨日、図書室でキスしよーとした宮崎のどか嬢か? あるいは」

「ちっ、違いますっ! のどかさんとはそんなんじゃっ!?」

あれ……? ぼく、いつからのどかさんをのどかさんって……?

「む、その反応……まさかの本命はのどか嬢かー?」

「ななななななにをいってるんですかっ!!」

のどかさんの顔が浮かぶ……顔が熱い……なんで!?
本命って……そりゃのどかさんは好きだけど……好きっ!? な、何考えてるんだ、ぼく! のどかさんはぼくの生徒、ぼくは先生……いやでも、ぼくが男でのどかさんは女で、ぼくはのどかさんが好きなのは変わらない訳で……!?

「おー、百面相だなー、ネギ先生」

「ど、どうしよう! サムライ先生、ぼく……ぼく、生徒が、のどかさんが好きになっちゃったみたい!」

お姉ちゃん事件です! ぼく先生なのに生徒が好きになっちゃいました!!







ネギ、洗脳されるの巻。軽い暗示をかけやがりましたよ、この亜久馬! いや、本当の“好き”じゃなければ消える様なものですが。ちなみに何故亜久馬がネギと本屋ちゃんをくっ付け様としたかは次回辺りで。







以下、ざっくりまとめた感想レス(No.117~122)

>竜様

なんと急接近。魔法関係者ではなく、たちの悪い同僚として。フォローとかアドバイスとかってレベルじゃねーぞ!
明日菜は実に可哀想ですよねー。ってか学園長は生徒に対してなんて暴言を……。
エヴァ様は……流石に鉄壁を誇るでしょうから、手を上手く使えないかつ茶々丸さん不在じゃないとそのシチュは無いでしょうねぇ。
刹那……(手元のストック分を見て)……そうですね、酷いことになりそうです(汗)


>通りすがり六世様

突然の事態にネギ先生は動転していたようです。明日菜? ほら、あの子は、アレだから……(ヲィ)
むしろ粥とかでも良い気がしてきた……あー、美味い粥を食いたいのぅ。


>木乃香様

うん、ぶっちゃけ疲れてるんだ。起きたら「すべらない話」が始まっててびびったよ。
取り敢えず……木乃香編はもーちょい先なんだ、とだけいっとくぜ!


>白虎隊様

ぐはっ!? こ、こっからがよりぶっ壊れるところです……(汗)
ち、ちなみにアウトだったのはどこら辺からでしょうか……? もしこれを見ていたら教えていただきたく……。


>野鳥様

自重してます。むしろ溜めてます(ヲィ)
ちなみに語呂的にはアウトですが、私には「クレオパトラ・ダンディ」みたいな綺麗かつ珍妙な単語は作れませんので(悔)


>Citrine様

二本背負っている時点でばれているかなーっと思ってたんですが……あぁ、そうか。仮面やらシルエット的にガンダムDXリスペクトやらが上手い具合に隠れ蓑になっていたようですな。やったね、自分!(笑)



[9440] 第二十五話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/29 00:28
ネギ先生に軽い暗示をかけて本音を引き摺り出してみるテスト。
いやー、上手くいったもんだなー……かつて同人誌で確認した通り、ネギまのメインヒロインはのどか嬢だったかー。
いや、昔々の転生前、友人宅でネギまって作品に触れた話は以前出したな?
アレが俺の唯一のネギま知識の拠り所、すなわち「ネギまの同人誌(成年向けオンリー)」なんだが、数有る同人誌のカップリングで純愛系カポーって少数だったんだよ。
具体的にいうと綾瀬夕映嬢、神楽坂明日菜嬢、宮崎のどか嬢の三傑だったんだよ。ちなみにその他のカップリングって基本的にネギ先生が押し倒されてヤられる内容だった。実在の人物として知った今だと、まー、有り得るかな、と思ってしまう。
ネギ先生、本気で美少年だからねー……今後雪広あやか嬢には気を付けてあげよう。
扨置き。
その純愛系三傑のストーリーには「親友を差し置いてネギ先生と結ばれることに罪悪感とともに選ばれた幸福感を抱く夕映嬢」や「ネギ先生と結ばれて幸せを感じるも、自分と同じ人を好きになってしまった親友のために三人の夜を提案するのどか嬢」ってのが有った訳で。
思い返してみると基本骨子は「ネギ先生にのどか嬢が好きだと告白」ってのと「のどか嬢を応援していたはずが気付けばネギ先生が好きになっていた夕映嬢」ってのが結構共通していた訳で。
俺の分析によるとネギまって話のメインヒロインはのどか嬢に間違い無い。
夕映嬢はストーリーを盛り上げるために作者により用意された対抗馬、作者という概念を考慮しなければなかなか二人がくっ付かないので心動かされただけ、では無いだろうか。
あ、純愛系三傑の最後の一つ? 高畑先生と明日菜嬢の純愛でしたが何か?
え、ネギアス? 高畑先生に振られて手近な異性として明日菜嬢が靡いたパターンなら有りましたが何か?
まー、何だ……この時期からネギ先生が気になる異性としてメインヒロインたるのどか嬢を意識していれば、夕映嬢が気の迷いを起こす前に二人は公認カップルになれるはず。親友同士で同じ人を好きになったら下手したら友情破綻だしねー。
あーそうだ、明日菜嬢の方も何とか中を取り持ったらんとなー……高畑先生は石仏のごとき枯れ様なのでいろいろ食事に混ぜたり、明日菜嬢似の女の子が出ているグラビア雑誌を持たせたり、あとは枕の中に明日菜嬢の写真でも仕込むか?
取り敢えず今晩辺りから仕込みを始めよう。

「とはいえその前に補習タイムな訳で」

「誰にいってるですか、サムライ先生」

「んー、見えないお友達?」

「「「「「「「「え゛!?」」」」」」」」

固まる居残り組、あと付き添い二人に……ネギ先生もか。あとネギ先生と付き添いの片割れ、チラチラお互いを見たり、頬染め無いの。今は居残り“授業”中だよー?

「しっかしまー……綾瀬夕映嬢、君がなんでまた居残り組に?」

軽く会話してみたけど本気で頭良いじゃないの。何で居残り組なんだか?
ちなみに居残り組は綾瀬夕映嬢、神楽坂明日菜嬢、古菲嬢、佐々木まき絵嬢、長瀬楓嬢。付き添いは早乙女ハルナ嬢、宮崎のどか嬢。

「……勉強、キライなんです」

「まー、学校の授業って、社会出てから役に立つのって少ないしね」

何せこちとら、社会に出てからこっち切った張ったしかしてなかったからねー。参考になら無い? 俺もそー思うわ。
とはいえ、やってもらわんと。社会に出てから役立つ知識を学ぶための下地にもなったりするし。
勉強とかって単語が嫌いなのかも……言い方とゆーか、考え方変えてみるか。

「まー、アレだ。成績ってのは好きなことをするための免罪符だと思っとけ。成績が良いなら、多少のやんちゃに目を瞑る教師も結構居るもんだぞー?」

「多少のやんちゃも……」

(……図書館島の地下深くに潜ったり、とかですか?)

「やるです!」

あれ? 何だかちょっとやる気になったみたいだなー? 理由は良くわからんけどやる気になったなら大歓迎だ。

「皆さん、何としても成績を上げてバカレンジャーを脱出するです! むしろトップを目指すですよ!!」

「おぉ、夕映が燃えてるアル!」

「って、拙者らもトップを目指すでござるか!?」

「当然です! すべては地下四か……いえ、私たち自身のためです!!」

「うわー、夕映……本気だね」

「え、えっと……私も頑張らないとダメ?」

こりゃ止められんなー。あとこの場に居る以上頑張るのは確定だぞ明日菜嬢。
ともあれ、補習開始だなー。





「で、明日菜嬢はまだ帰れんのか」

「……もういいわよ、私バカなんだし」

ネギ先生と明日菜嬢、そして俺。教室に残っているのはこれだけだ。
10点満点の小テスト、夕映嬢は開始早々に一発満点合格でその本気を見せ付け教室をあとにした。とゆーか普段から見せ付けて欲しいものである。
何度か受け直して菲嬢、まき絵嬢、楓嬢も何とか合格。ただし彼女らには俺から宿題をプレゼント。点数ギリギリだったし。明日の朝のホームルームで回収するといっておいたけど、ちゃんとやって来るかなー?
で、残るは明日菜嬢なのだが……なかなかに終わらない。何か根本的に間違えてるのか? 教え方的な意味で。

「が、頑張って下さい、アスナさん!」

ネギ先生、アンタ人を追い込む天才か? 頑張ってもできない時に頑張れっていわれると自分を否定された気持ちになるんだけどなー……。

「ネギ先生、もうこんな時間だよー?」

壁の時計を指差す。時刻は17時を少し回ってる。
俺を見て、時計を見て、肩を落とす明日菜嬢。ほっほー?

「神楽坂明日菜嬢、宿題。提出と確認テストは明日の放課後だ。ってか、こんなに遅くまで済まんなー」

ほいっとプリントを渡す。一年から今までに授業で習った英単語の主要なものの一覧。

「書いてある英単語の正しい意味を辞書で調べること。あと一単語につき英単語と意味をセットで10回書き取りすること」

短期で詰め込む必要は無いからね。取り敢えず自分に合った勉強の仕方を見付けよっか?
初回は俺が良くやる繰り返しで脳に刻み込む作戦。反復学習だから中~長期的勉強方法だが、意外と短期間でもこれはこれで記憶に残る。その状態を維持するのに時間がかかるってのが中~長期的勉強方法の所以だが、一時的に憶えられた気になれるってのは意欲に繋がるんじゃないかと思って薦めてみた訳だ。

「ちなみに明日の放課後は古文の居残り授業が有るからねー?」

そんな絶望に染まった顔をしない。
しっかし、春先とはいえもう外は薄暗い時刻。少し心配だな。

「ネギ先生、明日菜嬢を送ってあげてねー。同じ部屋なんでしょ? 今日はそのまま帰っていーから」

「そんな! サムライ先生、まだいろいろ片付けが有るんですよ? ぼくだけ帰るなんて……」

「もー、外は暗くなってるんだよー? そんな中を女性一人で帰すのはどーなのよ、英国紳士見習い補佐代理」

俺は寮じゃないし、やることが有るから送れない。だからおまえが明日菜嬢を守れ、と言い聞かせて二人を送り出す。
それから一人で教室を片付けて、古文用の居残り小テストと宿題を作成。
気付けば19時……高畑先生もそろそろ帰宅か。
ミッション、スタート……なーんちゃって。





こっそり高畑先生の先回り、部屋に潜み帰宅を待つ。
おー、いけませんなー、コンビニ弁当買って帰ってきましたか。いったん食卓に弁当を置いて、風呂釜に火を入れたりなんだりしている隙にこっそりと容器に小さな穴を開け、弁当のおかずにとてもバリバリになるお薬を混ぜ込む。お、戻ってきたな。隠れておこう。
高畑先生が食事を食べ終え、風呂に入ったのを見計らって枕内に数枚の明日菜嬢ブロマイドを仕込む。

「ふぅ、疲れたなぁ……もう若くはないのかなぁ」

ふふふ、安心しなさい高畑先生! 先ほど仕込んだお薬はもう少し……そーだねぇ、高畑先生が寝入ったころには効いてくるよ。その時はもー、カッチカチやぞ?
お、寝入ったな? しばらくすると寝息に混じって時折明日菜嬢の名前が出てきたり……よし、初日はこんなもんかな。さー、引き上げだ。





いやはや、善行を積むのもたまにはいーもんだねー。心が洗われるよーだよ。
昨日の補習での二人を思い出すだけでご飯三杯はいけるね。ネギ先生はのどか嬢を気にしたり、顔を合わせては赤くなったりしている。ちなみにのどか嬢も同じ様子、むしろネギ先生の態度に「もしかしてネギせんせーもわたしのこと……」とか呟いてぽーっとなってたねー。しめしめ、これでこの二人はその内にくっ付くな。
石仏デスメガネ先生のほーはどうだろ?
職員室を見回すと……む、何やら疲れの見える顔……。

「うぅ……ぼくは何て夢を……いくら最近処理していないからって、明日菜君の夢で……」

効果は有った様子。ふむ……、

「この淫行教師が!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

ドンガラガッシャーン

ベタに椅子をひっくり返してこけたか。修行が足りんなー。

「な、な、なんでっ!」

「とまー、エヴァンジェリン嬢に罵られたので、ちょっと仕返しをしたい。エヴァンジェリン嬢の苦手なものを知りたいのだが」

「きょ、教師の台詞じゃないよ、DX先生……」

「さっきの高畑先生の台詞もねー?」

「ぐはぁっ!?」

おー、高畑先生撃沈だ。
復活には時間かかるなー、これは。







サムライ先生DXはたちの悪い親切の押し売り業。しかも無自覚。このSSはネギのどと高アス、そして人外ハーレムを目指しています。あ、あと刹漏れもその内もう一回ぐらいは。







以下、ざっくりまとめた感想レス(No.123~130)

>青天様

ある意味で血戦存在、むしろ血鮮存在? みwiki・なのちゃんまるっと洗っちゃいましょう編の前に謎のサムライ先生DXの正体判明編を書かないと……(笑)


>良様

某所の言葉を借りるなら、手段として悪事を働くのが善人、目的として悪事を働くのは悪人、ふと気が付くといつの間にか悪事を働いているのが極悪人らしいです。ネギ君はむしろ極悪人?
せっちゃんは現在かなり溜め込んでます。えぇ、流血は避けられないレベルかも?


>通りすがり六世様

どちらかというと引き出した方かなーっと。あるいは「こういう考え方も有るけど、君はどーなのよ?」って聞いた感じですね。


>ハゲネ様

このままで行くと、原作は明日菜が上手い具合に隣に立っちゃいそうなんですよねぇ……誰が一番最初に、純粋な行為を抱いたと思ってんねん、と。
なのでこのSSではネギのどで進みます。側室はいるかも知れないけど、正妻はのどか嬢です。


>野鳥様

いえいえ、トリガーを引いちゃうのはもちろんあの人です。そして悲惨な目に遭うのは……(ニヤリ)
エロ入浴シーンは……当分は自重ですわ。


>栄様

難しいですよねぇ、匙加減。まぁ、色々試行錯誤して進めます。その結果飛び出るものがどうなるかが怖いんですけどねぇ。


>木乃香様

またのお越しを心よりお待ち申し上げます。


>Citrine様

ある意味で仕掛が上手くいった感じで嬉しいですねぇ(うひひ)
あ、せっちゃんはここ数日、何とか押さえ込もうと数人が説得に当たっています。まぁ、蓋をしているだけなのでいずれは溢れ出すでしょうが(笑)



[9440] 第二十六話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/06/30 02:07
我輩は猫である。名前はオオヤ。クールさが売りの三毛猫だ。そういえば三毛猫の雄は高値で取引されるらしい。取引される我輩には関係無い話なのだがな。
我輩の兄弟たちは実に文化的でゲームショップを経営しているのだが、我輩は猫の本分たる食う・寝る・遊ぶを全うするに忙しいため兄弟たちとはあまり関わってはおらん。
我輩の兄弟たちよ、息災であるか?
兄、ナガシマよ、相変わらずバカをやっておるのか?
弟の一、タブチよ、ナガシマのせいでキレ芸に磨きがかかっておらぬか?
弟の二、クロマティよ、おまえだけは更正していてくれ、頼むから。
我輩はここ、麻帆良といふ土地で静かに逝く。だがたまには我輩を思い出して欲しい。
むぅ……もはや目が見えぬ……光が、我輩には眩しすぎる…………。





「という夢を見たのだが今日の運勢はいかほどか、エヴァンジェリン嬢」

「病院に行け」

あと学校で私に近付くな、刹那が黒と白を反転させた目でこっちを見てくるんだ! 怖いんだぞアレは!!

「そもそも何故私が下らん遊びに付き合わねばならんのだ!」

今私は聖ウルスラ女子高ドッヂボール部……まぁ、端的にいえば麻帆良学園女子高等部ドッヂ部対麻帆良学園女子中等部2-Aのドッヂボール対決の場に居る。しかもコート内に、だ。
体育の時間、屋上でのバレーボールをフケて保健室に行こうとしている私を捕まえ、ここまで引っ張ってきた元凶は……コートの外で審判気取り。先ほどからコートを脱出しようとする私と、さりげなく邪魔をするコイツとの間で熾烈な戦いが繰り広げられている。傍目には談笑している様に映るらしいからたちが悪い……こちらの動き、いや動こうとする気配に対して的確に邪魔をしてきているからな。こちらは会話しながら隙を探るだけで動けやしない。
面倒だ……もう良い、適当に当たってやって、とっとと外野に……。

「安心しろ、最後まで残れるなら特に何のペナルティも無いからなー」

ちょ、おまっ!?

「の、残れなかったらどうなるというのだっ!?」

「重りと距離が増えるだけだが?」

な……ば、バカをいうなっ! 今でさえキツいんだぞ!? これ以上負荷が増えたら冗談抜きに死んでしまうっ!!
不死なんだから平気だとかいうなよ? ぶっ倒れてなお復活、またオーバーワークで倒れるとか、どんな無限地獄だ!!

「ちなみに最後まで残れば特典も有る」

どうせ、ペナルティが無いとかいうだけだろうがっ! もうキサマの性格ぐらいはわかっておるわっ!!

「最後まで残れたなら、浦安の某夢の国に連れていってやろう」

「何だとっ!?」

って、しまった、反応したら弄られると十分身に染みたはずだろう私!
どうせ嘘に決まって……。

「男に二言は無い。まー、最後まで残れたらの話だがなー?」

「いったな? キサマその言葉を忘れるなよ!!」

良い気分だ、最高にハイってやつだぞ! 高校生何するものぞ、どこからでもかかって来るが良い!!





「お、恐るべしトライアングルアタック……」

「残念だったねー?」

終盤、やつらめ急に攻め手を変えてきた。たかが球技、そうたかをくくっていた私の一瞬の心の隙、絶妙な角度とタイミングで投げ付けられたボール、そして……。

「服の一部もヒットになっちゃうんだねー、思った以上に厄介だった訳だ」

……こんなことなら制服から着替えておくのだった。後悔先に立たず、というやつだ……もう少し、もう少しで話に聞くだけだった浦安の例の遊園地に行けるところだったというのに…………。

「惜しかったな、エヴァンジェリン嬢。だが頑張っていたのは認めるし、むしろ積極的に攻めて勝利に貢献したのは大きい。そこでだ、浦安ネズミーランドは無理として別の遊園地には連れて行こうかと思う」

「ほっ、本当かっ!?」

「というわけで次の三つから選ぶと良い。一番、シャンリォピーヒョロランド。二番、横浜夢の国。三番、チルドレンランド……」

「二番はとっくに潰れているし、三番はそもそも世間一般の遊園地のイメージから遠過ぎるわ! 一番しか選択肢が無いではないか!!」

「……一番で良いのか?」

「あぁ、浦安ネズミーランドに比べればグレードは落ちるが、遊園地だしな!」

「そーか、じゃーシャンリォピーヒョロランドに決定だな……四番の浦安ネズミーオーシャンを選ぶかと思ってたんだが、意外だったなー」

んなっ!?

「ま、待て、今なんといった!?」

「はっはっはっ、さー今日の授業はこれで終わりだろ? 帰りのホームルームが終わったらちゃっちゃと家に帰って汗を流せよー。あと今晩の鍛練から重りは増えるから。それじゃーにー♪」

「は、謀ったな! 待てキサマ、にげっ、逃げるな~~っ!!」

やつめ、絶対に、絶対に許さんぞ!!





やっぱり許す。やつは良いやつだった!
夜、帰ってきた(という表現に違和感が無くなってきた……)やつに問答無用で飛びかかったのだが、あっさり抱き止められ、頭を撫で回された……。それだけでも何故か怒りが霧散していたのだが、そのあとにやつが取り出したのは……、

「こ、ここっ、これは……」

「浦安ネズミーランド、一日フリー旅券だが?」

手渡されたそれはどこか神々しさまで感じられるほど眩しくて、私は直視できない。闇に墜ちた私には、このチケットは眩し過ぎる……!

「マスター、嬉しそうですね」

「チケットは一応、エヴァンジェリン嬢、茶々丸嬢、俺の分は有るんだが……さて、一番の問題をどうするか、だな」

「問題、ですか? ……あっ」

何の問題が有るというのだ、鉄面教師。あ、淫行は取ってやる。特別だぞ?
ん? 茶々丸、何故固まっているんだ?

「一番の問題は……どうやってエヴァンジェリン嬢を連れ出すか、だ」

なん、だと……?
頭が、気持ちが、心が冷える……。そうだ、何故忘れていた? 私はこの麻帆良に封じられた身。この地から離れることの叶わない私がどうして浦安ネズミーランドに行けるというのだ……そうだ、ここを離れられぬが故に外への憧れは強まり、焦がれていたのではないか。
は、はは……手の中のチケットが色褪せて見える。そうだな、私は夢を見ていたのだ。それが醒めただけだ。今までと何が違う? 何も変わらない……変わらない、はずだ。だのに、何故だ、何故……こんなにも悲しい? 目頭が熱くなる。視界がぼやける。ダメ、だ……堪え、切れな

「エヴァンジェリン嬢は極度の引き篭りで、何だかんだで麻帆良から出たがらないそうだからなー。無理矢理にでも向こうに連れて行かねばならんとは、骨が折れそうだわなー」

はぁっ!?

「ちょ、まっ! 何だそれはっ!!」

「?」

「不思議そうな顔をするなっ!!」

まるで私が変なことをいったみたいなリアクション! えぇい、腹の立つ!!

「学園長がいっていたぞ? エヴァンジェリン嬢は15年間、麻帆良から出たことがない、とな。エヴァンジェリンは現在中学二年生、15年となると生まれてこの方麻帆良から出ていない、つまりは筋金入りの引き篭りということだろ? 世間一般では」

「誰が好き好んでこんなところに引き篭るか! 私はこの地に封じられておるのだ、それさえ無ければ浦安ネズミーランドにだって行けるんだぞ! 何も知らないくせに勝手なことを抜かすな、このバカ者!!」

「封じられている……? そんなもの、解いてしまえば良いじゃないの」

「何だ、そのパンが無ければケーキを食べれば良いみたいな言い方は! できるならとうにやっておるわっ! バカ魔力にものをいわせた無理矢理な術式で解析すらできんのだ!!」

「ほー」

「反応薄いよなっ!?」

コイツ……ことの意味がわかっておらんのか?

「いやいやいや、安心しろ、十分に把握しているから」

「人の考えを読むなーっ!!」

「エヴァンジェリン嬢は考えが顔に出やすいからなー」

おまえは本気でこちらの思考を読んでいそうで怖いんだ……おまえからは理不尽なものしか感じないからな。

「理不尽って……人の思考なんて読める訳が無いだろう? エヴァンジェリン嬢は心配性だなー」

ならなんで理不尽という言葉がわかるんだ……しかし、術を解く方法、か……そうだ、やつの息子! やつの息子の血液を摂取すれば、あるいは……ふははははは! 何だ、簡単な話ではないか!!
幸いやつはいまだ見習いの身、出し抜く手などいくらでもある……そうとなれば色々と準備せねばな。くくく、いいぞ、いいぞいいぞ! 楽しみにしているが良い、ネギ・スプリングフィールド! このエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルがキサマの血を貰い受けるぞ!!

「はーっはっはっはっ!」

「余りいじめるなよ、エヴァンジェリン嬢」

だからキサマは人の考えを読んだ様な発言は控えんかっ!







このSSは当然ながらフィクションです。実在の遊園地・遊戯施設とは異なります、ご了承下さい。ネズミ屋さん、怖い怖い。







以下、ざっくりまとめた感想レス(No.131~137)

>powerL様

まったくです。国語は最低条件、数学は基礎でも良いから……できれば英語はしっかりやっておくと色々と困らないものです。
特に英語は……動詞中心にでも覚えておくと意外と役立つんですよね……あぁ、もう少し頑張るんだったなぁ、過去の私よ……。


>q-true様

その発想は無かったわ! あー、でも結局はタカミチに振られてほかになびくルートになりそうだしそれは……。まぁ、自動車並みの速度で突っ走る時点で人外といえば人外なんですが(笑)
DXDVですか? むしろサムライ先生ダブルディバイダーエックス、略してDXで!


>シン様

でも中学生にもなってお漏らしとか、むしろ死にたいんじゃないかなと思ったりなんかしちゃったりなんかしたりして(広川太一郎風)


>ハゲネ様

うんうん、ネギ先生は一度吊ると良いよ。ちゃんと見てやれよ、アーニャ(幼馴染・照れ隠しにツンケン・実は世話焼き)とかのどか(純粋に慕っている・初めて好きになった異性がネギ先生・尽くすタイプ)とか、ほかに目を向けてる場合じゃないだろ、と。最初の時点でもう私なら一発OKですよ! 特にのどか! のどかは好きなキャラなので……マジでネギ先生と幸せになって欲しい……原作では泣きを見そうな気もするからせめてこのSSでは幸せにッッ!
原作を投げていながらネギまネタのSSを読んでくれて感想まで下さるハゲネ様には頭が下がります……。


>通りすがり六世様

のどかはネギてんてーと純愛かつ幸せになるのが宇宙の法則だと思うんだ! あとエヴァ様は弄られるのが世界の基本だと思うんだ!
せつ漏れは実に出し難い! いや、自分とかが中学生当時、人前で漏らしていたら、と考えると……多分もう生きていないと思うよ。あぁ、どうやって漏らさせよう!(ヲィ)


>竜様

ネギ先生は何というか……本当の男女の好きを向けていながら声を大にしていえない娘たちをもっと見てあげて欲しいね。
タカミチにとって妹にしか思えなくても、妹から女を感じることぐらい有ると思うよ。あと血が繋がっていないんだったら兄と妹でも合体して良いって刹那が力説してるんだ(笑)
そもそもとらハ3だって堂々とみwikiルートが有るんだし、義兄妹ってのは止めるては無いと思う。どうだろう?


>Citrine様

数人がかりでOHANASHIしているのかも知れません。大変だなぁ、OHANASHIしている連中(笑)
ってかタカミチはどこまで耐えられるのか……サムライ先生DXの秘薬は持続力抜群らしいし(ヲィ)



[9440] 第二十七話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/07/01 01:21
「あれ? エヴァンジェリンさん、何だか機嫌が良いですね」

「あぁ、刹那。最高にハイってやつだ……昨晩から運動量と重りが増えたが、それを補って余り有ることが有ってな……興奮の余り昨夜は寝られず、今朝の運動を経てなお気分は高揚したままだ!」

今朝のエヴァンジェリンさんはボロボロで、でも表情はとても幸せそうです。
茶々丸さんが「マスターの長年の夢が叶います」といっていましたが、いったいエヴァンジェリンさんの長年の夢って何なのでしょう?
あ、兄様……じゃ無い、サムライ先生DX先生がやって来ますね。確かに兄様のにおいなんですけど、ご本人が違うという以上、違うのでしょう。もし同一人物でも、兄様が私にも秘密にしなければならない重要な任務に就いている可能性が有ります。私が騒いでもし任務に支障をきたしたら一大事です。嫌われてしまうかも知れません……いえ、それぐらいで人を嫌うほど兄様は狭量ではありませんけど。
それでも叱られてしまうかも知れません。そういえば昔、道場でみんなの前で尻叩きの刑を受けたことも有りました……小学六年生にもなってみんなの前でおしりの直叩きは顔から火が出そうな恥ずかしさでした。
もし今あの時と同じ様な目に遭ったら…………。

「どうした刹那、小刻みに震えているが」

「な、何でも有りません!」

龍宮の訝しげな視線が痛いです。
とにかくっ、例え兄様だとしても兄様から名乗るまでは静観です。兄様に叱られたく有りませんし、気付いていながら黙していれば兄様からご褒美が有るかも知れないのですから!

「連日連夜落ち着く様にいってくれた龍宮やエヴァンジェリンさんに感謝ですね……」

二人が見張っていて、逸る心に突き動かされた私を必死に止めてくれたこと、桜咲刹那は一生忘れません!
……落ち着けた今思い返すと、私はかなり危ない状態だったのだとわかる……本当に、あの二人に心の底から感謝したいです。





落ち着いて授業を受けられる様になって数日が経ちました。
現在、夜。寮の自室で私は頭を抱えて呻く羽目に……。

「あぅぅぅ~~……」

兄様、ピンチです。もし今度の学年末試験で成績が悪かった場合、小学生からやり直しになるかも知れないそうです!
このかお嬢様の護衛や日々の鍛練、そして兄様との電話や兄様のことを想って幸せに浸ることに時間を割いている私の成績は余り良く無いのです……一部教科では実はバカレンジャーと僅差だったりします。
もし小学生からやり直しになったらこのかお嬢様の護衛任務が果たせなくなってしまいます!

「ついでに兄とやらへも顔向けできんだろうな」

「ひ、必死に目を逸らしていたのに! エヴァンジェリンさんの意地悪ーっ!!」

いつの間にか部屋に遊びに来ていたエヴァンジェリンさんが見たくなかった現実を突き付けて来ました。
そういうこという人……キライです。

「急に私を寮に呼ぶから何事かと思えば……」

「私は面白いものが見られるといっただけだ。勝手に期待を膨らませたのはエヴァンジェリンだろう?」

「刹那が日頃の行いのせいで四苦八苦しているだけではないか……まぁ、ここ数日の我らの心労を考えれば確かに胸のすく光景だがな」

人が困っている姿を肴にワインを飲んでるエヴァンジェリンさんも、そのエヴァンジェリンさんを呼んでルームメートの窮状を見せる龍宮も、酷過ぎます!

「くっくっくっ、私は悪の魔法使いだからな。人の苦しむ様は何よりの好物なんだよ」

「今まで任務だ鍛練だと学生の本分たる勉強を蔑ろにしていたツケだろう? 自業自得、この機会にきっちり精算することだ」

「そもそも一番の苦手科目が担任の担当教科というのもアレだな刹那……嬢。ネギ先生が草葉の陰で泣いているぞ? まだ死んではいないけど」

あぅ………………あれ?

「声が一つ多…………にっ、ににっに、にーさまぁっ!? じゃなかった、サムライ先生DX先生!!」

「ど、どこから湧いて出た、キサマっ!」

「先生……ここは女子寮だよ?」

女子寮の一室で腕組みしているトレンチコートの男の人。し、シュールです……。

「エヴァンジェリン嬢、俺は虫か何かか? 真名嬢……まー、副担任として陰ながらネギ先生をサポートするためだ、細かいことは目を瞑れ」

そこで言葉を切って私をじっと見てくるサムライ先生DX先生。ただ見つめられているだけなのに、気圧されてしまう……改めて対峙するとわかる。先生は、強い。精神の強さが、遥かな高みに有る様にすら感じる。

「さーて刹那嬢、懺悔は済んだか? 神様へのお祈りは? 尿意堪えてガタガタ震える準備はOK?」

に、尿意って何ですか!? って先生、その手に有るのは、まさか……。

「では教えてやろう、本当の詰め込み教育というものをなー!」

大量のプリントが舞い上がり、一斉に私を目掛けて飛んでくる。
あぁ、知っています、聞いたことが有ります、思い込みかも知れませんが。

「君が、確認テストに合格するまで、詰め込むのを止めないっ!!」

サムライ先生からは、逃げられない――!





「まー、ましにはなったかなー?」

あ……ぅ……。

「お、おい、刹那……刹那?」

たつみやが、なにか、いっている……。

「……頭から出ていた煙がいつの間にか白から黒に変わっているな。色々と詰め込み過ぎたんじゃないか? 鉄面教師」

えばんじぇりんさん、なんで、そんなに、しんぱいそうなの……?

「まだ煙を出す余裕が有るということだ、問題無い」

にーさま、ようしゃ、ないです……。

「十分後にもう一度確認テストだ。90点以下はまたやり直しとする……楽に死ねると思うな、刹那嬢」

いっそ、ころして、ください……。





ハッ!?

「あ、あれ? ここは……?」

気が付けば布団の中。じゃ今のは……夢?

「起きたか刹那。うなされていたが、大丈夫か?」

「龍宮……怖い夢を見たよ。夢の中では学年末試験で成績が悪かったものは小学生からやり直しになるという噂が流れ、嘆いている私にサムライ先生DX先生が無理矢理な詰め込み教育を施すんだ。徹底的に知識を詰め込まれ確認テスト、90点以上取れなければまた知識の詰め直しで、今度はまた違う問題構成の確認テスト……そうして確認テストに合格するまで延々と詰め込み教育と確認テストを繰り返されるんだ……」

怖かった。龍宮もエヴァンジェリンさんも最初は面白そうに眺めていたのに、途中からは哀れみと心配がない交ぜな表情に変わっていたっけ。
考えてみれば小学生からやり直しだなんてそもそも有り得ないのに、夢の中では本気で心配して泣きながら勉強していたな。
あぁ、途中からは涙も涸れ果てていた様な気がする。
本当に、夢で良かった……。

「刹那……その、いい難いのだが……」

「?」

「学年末試験まで、毎日来るそうだ、サムライ先生……」

「…………え?」

な、何をいって……アレは夢、夢のはず……。

「刹那……現実を見ろ」

龍宮が指差した先には、私の机……無数のプリントが作った山が有り、私が流した涙の跡もしっかり残っている。

「そうか、まだ私は夢の中に……あは、はは、あは……」

「大変だ……刹那が壊れた! 衛生兵、衛生兵ーっ!!」

……現実なんてキライです。







せっちゃんはバカじゃ無いです。でもこのSSのせっちゃんは「兄様≧このかお嬢様>任務>鍛練>長>勉強」という脳内優先順位判定により日々の勉強を蔑ろにする傾向が有ります。そのため地獄の詰め込み教育の被害者に……。







以下、ざっくりまとめた感想レス(No.138~141)

>通りすがり六世様

え、エッチなのはいけないと思います!(汗) 夢の国のキャストをいじめるのもダメですよー(汗汗)
あ、あとうちのエヴァはハイテクは良くわからないロリババアなのでアナログゲームぐらいしかできませんよ。


>Citrine様

うーん……まぁ、あっさり何とかしちゃいそうなのが彼のクオリティ(笑)
実際にどうなるのか、どうするのか、一応考えては有ります……まだまだ先なんですけどね!


>竜様

最初のネタはアレです、気の迷いで書きました(ヲィ) わかる人にはわかるけどわからない人には一切わからない狭過ぎるストライクゾーン、ファミ猫ブロスネタ。何で書いたんだか、今を持ってもわかりません……。
ってか封印状態で筋力鍛えたら封印解けた状態だとうかつに人を殴れないんじゃ……ネギ先生、逃げてー!(笑)


>野鳥様

朝、部屋で一人しょんぼりしつつ洗濯機を動かすタカミチに何故か萌える……末期だね、私。
更新はストックが切れると途端に遅くなります。今だけです、今だけ。
ネズミーランドは原作のエヴァ編を経てから考えます。ヒッキーを麻帆良から出す方法を(笑)



[9440] 第二十八話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/07/02 00:05
エヴァンジェリン嬢とともに女子寮をあとにしてしばし。

「はて……?」

「どうした、急に立ち止まって」

「何やらおかしい……」

「……何がだ? 妙な気配はせんが」

俺の頭のすぐ上から返してくるエヴァンジェリン嬢。違和感はそこに有る。

「何故俺はエヴァンジェリン嬢を肩車しているのだろうな?」

「さ、さあな? いつもの気紛れでは無いか? それよりとっとと帰るぞ、だいぶ遅くなってしまったからな」

確かになー……おや? 図書館島の辺りに人の気配が二つ。向こうは仕事上がりか?

「大変だなー、図書館島の職員も。こんな時刻まで仕事とは……」

「は? 何をいっているんだ?」

「いや、図書館島の辺りに人の気配を感じてな。こんな時刻まで蔵書整理とは頭が下がる思いだな、と。実際には下げないけどな」

ん?

「どーしたエヴァンジェリン嬢、怪訝そうな顔をして」

「……図書館島にはこんな時刻まで残っている酔狂な職員はおらん。そもそも業務は貸出や返却の受付ぐらいのはずだ。まぁ、警備員かも知れんな。あそこには貴重な資料も収められていると聞くしな」

「ふむ……だが警備員の見回りにしては動きが無いな……貴重な資料、か。エヴァンジェリン嬢、少し寄り道するぞ」

「……酔狂なやつだな」

だって気にかかるでしょ? なら確かめないとねー。





ある程度近付いて、気付く。

「やはり警備員では無かったか」

「どういうことだ?」

「これはうちのクラスの早乙女ハルナ嬢と宮崎のどか嬢だな」

「あぁ、連中か。確か図書館探検部だったな。夜の図書館島に忍び込もうとしていたのだろう」

「夜間の立ち入りは禁止じゃないの? あと寮を夜中に抜け出すとか、非行の始まりっしょ」

「一言注意すれば今日のところは引き上げるだろう。連中はバカじゃ無い、目を付けられては今後に響くことぐらいはわかるはずだ」

なるほど、今日のところは、ね。





「ど、どーしよー! ハルナ、夕映たちが~~!!」

「どうしようたって……どうしよう!?」

良い具合に混乱しとるなー。何かヤラカシタかね?

「何をしている、キサマら」

「深夜の無断外出は感心しないなー」

「えっ? エヴァちゃん!?」

「それにサムライせんせーも!?」

こちらに気付いて固まる二人。見付かったら不味いことはわかってるみたいね。

「「何で肩車!?」」

そこか。

「取り敢えず、こんな時刻にこんな場所で何してるのかなー?」

「あ……あの、その……」

「いやー、これには深い訳が……」

「送ってあげるから寮に戻ろうなー? 一応明日、ネギ先生からありがたーいお説教をしてもらうから覚悟しておくよーに!」

俺? 柄じゃないからねー。それにこういうのは担任の仕事、補佐官たる副担任の出る幕じゃないさ。

「あぁっ! た、大変なんです、ネギせんせーたちとの連絡がつかなくなっちゃったんです!!」

はい?

「学年末試験対策で“頭の良くなる本”を取りに行ったネギ先生たちに何かが有ったみたいで……」

何やってるんだ、ネギ先生……アンタ教育実習生の立場でしょーが。

「……バカだな」

「エヴァンジェリン嬢、できることならそれは本人の目の前で、聞こえるくらいのボリュームで頼む」

俺、一応ネギ先生のサポートだけどさ、同時にこっそり評価担当なんだよねー。
はっきりいってこれは不味いだろ……学園内施設とはいえ、夜中に忍び込むとか……。
……って、ちょい待ち。今さっきののどか嬢とハルナ嬢、何ていってた?

『ネギせんせーたちとの連絡がつかなくなっちゃったんです!!』

『“頭の良くなる本”を取りに行ったネギ先生たちに何かが有ったみたいで……』

……えーっと、もう一回。

『ネギせんせーたちとの連絡が……』

『ネギ先生たちに何かが……』

うわー、いってるよ……。間違い無くいってる。

『ネギせんせーたちとの……』

『ネギ先生たちに……』

はい、アウトーっ!!
間違い無い、間違い無いよっ! あのバカ、Thatバカ、誰かを巻き込んでるよっ! 減点20だ! ネギコン、0点! ってか誰よ、誰巻き込んだんだのよ?

「ど、どうした? 何やら小刻みに震えてるぞ……?」

「のどか嬢、ハルナ嬢……聞きたいことが有る」

聞きたく無い、どーせ聞いても俺の頭が痛くなるだけだ……だが聞かねばならない。俺は今、教師だからだ。そして査定担当だからだ。あー、もー……人の評価とか苦手なんだけどなー。悪いところも良く見てあげたくなるからねー……ったく、何してるんだかネギ先生はー……。

「“ネギ先生たち”の“たち”って、だーれ?」

頭に浮かぶの本命は、先ほどのどか嬢がパニクりながら名前を出していた図書館探検部の夕映嬢、というかのどか嬢やハルナ嬢が図書館島に居るのに夕映嬢が居ないなど不自然だ。ほぼ三人一セットといえるのは普段の行動から確認して有る。
夕映嬢の本命は不動だな、あとは対抗馬にネギ先生と同棲している明日菜嬢、穴馬で友達思いだが同時に面白いことが大好きな木乃香嬢……いったい誰がネギを焚き付けたんだか。
だが事実は小説より奇なり。彼女らの答えは、

「えっと……夕映、明日菜さん、くーふぇさん、楓さん、まき絵さん」

「それに木乃香もね」

おーのー。
思わず口を突いて出た言葉はやる気無く、例えるならモモンガの様だった。コンバット越前的な意味で。

「…………エヴァンジェリン嬢」

「何だ?」

「二人を寮まで頼む。途中で変質者とかに出くわした場合は重りは外しても構わない」

「わかった……おまえはどうするんだ?」

何故微妙に心配そうな顔なんだエヴァンジェリン嬢。アレか、今の俺は相当見るに堪えんのか? 精神的なショックが大きいんだ、ってか本気で勘弁してくれ……まさかネギ先生が生徒を巻き添えにする様な人間だったなんて……くっ、人を見る目には自信があったんだがなー……。

「責任者とほう・れん・そうしてくるわ……」

「……そうか。しかしこの時刻、年寄りはとっくに寝ているんじゃないか?」

「俺もそー思うけどねー……こーゆーのは早め早めでいかないと。ネギ先生はまだちっこいし、生徒が巻き込まれてるとあっちゃねー」

あー、どっと疲れる。帰ったら思う存分エヴァンジェリン嬢で遊ぼう。重りを一気に倍にするとか。

「っ!? な、何だ? 今、寒気が……」

「あー、まだ冷える時期だし、夜だしね。帰ったら熱い湯をいただくことをお奨めするなり」

そんじゃーね、と手をヒラヒラさせ、駆け出す。一歩目からトップスピード、そのまま目指すは学園長の気配のする方……あれ? こっちって女子中等部の方じゃね?





「この時刻までお仕事ですか?」

「む? おぉ、サムライ先生DX先生。どうしたんじゃこんな夜更けに」

俺もとっとと帰って寝たかったよ。

「ちょっとまー、急いで報告すべきことができまして」

「ふむ? まぁ掛けなさい」

応接スペースで向かい合う。どーせならついでに茶も欲しいところなんだけど、そこは火急の用件、「ぜえたくはてきよ」と昔偉い人がいっていたので思うだけにしておきましょ。

「あー、ネギ先生がまたやらかしたんですが、聞きます?」

「あぁ、ひょっとして図書館島の“頭の良くなる本”のことかのぅ?」

あれ? もう知っていた? 図書館島のセキュリティに引っ掛かったかね?
あー、違うな、この楽しそーな顔は……。

「……学園長、一枚噛んでません?」

「むしろ一から十までわしの仕込みじゃよ」

ふぉっふぉっふぉっ、とか笑って胸張っている。ちょっと殺したい。あ、いけないいけない、短気は損気、落ち付こうよ、俺。

「お孫さんを始めとした生徒数名も巻き込まれてるんですがねー?」

「なぁに、明日菜ちゃんたちがついてるなら大丈夫じゃよ」

出していない明日菜嬢の名を口にする辺り、「わし最初から見てました」っていっているのに等しい。むー、落ち付かせた怒気が頭をもたげる。

「……ガセネタで子供たちを踊らせて楽しいですか?」

いかんなー、ちょいと俺頭に来てるわ。この老人の頭部の長さを一般人と同じにしてあげたくてしょうが無い。敬老精神? それは悪党には適用されないんだ。

「ふぉっ!? ちょ、サムライ先生DX先生、何かわし背筋寒くなってきたんじゃが?」

「風邪ですね。安静にしていた方が良いと思います」

むしろ永遠に安静にしてやろーか、ご老人。

「か、勘違いしてはいかんぞぃ! これはネギ先生の成長を促すためのものでじゃな!!」

危険を察知してでかい声で説明を始める辺り、話せば俺も納得する様な理由があるってことか?

「わかった、聞きますよー」

だからツバを飛ばさないで。おじーちゃん、お口くさい。







九死に一生の学園長。あとシルシルミシルを見ていたらびっくりドンキーに行きたくてしょうがない。あ、これじゃ完全に私信だ。







以下、ざっくりまとめた感想レス(No.142~148)

>通りすがり六世様

エヴァ様はいじめっ子ですから。まぁいじめられても輝く、「弄りも弄られもできる」稀有な才能の持ち主なんですが……。
長は勉強よりは一応上にしました。まぁ下手すると≧かも知れないけど(ヲィ)


>ひゅうが様

可愛いですか? アザーッス!(笑)
そろそろ更新が隔日とか、週一に落ち込みそうです……。


>LG2112/9/3様

兄様に傾倒した分、より勉強は蔑ろに! というわけでこのSSの刹那は実はクラス内順位としてはザジより下だったりします。


>Citrine様

兄は気にしていません。でも妹は流石に気にしたっぽいです。いや、男でもその年だと恥ずかしいよなぁ、考えてみれば。
あとごほーびは是非とも唇に、とか考えていそうな刹那……怖ろしい子!(笑) ってか絶対にゴーレムを問答無用で叩き斬っていた方が楽でしょ、刹那なら。斬岩剣!
有名なネタは小ネタとして散りばめてあるので気付くとにやりとできるかも?


>野鳥様

当分は外出お預けです。エヴァ様は据え膳を食えません。でも旅券は一年間有効なのでまだ焦りは無い様ですよ?


>うんちん様

せっちゃんがのび太の場合、ドラえもんは誰でしょうかね? このちゃんはしずかちゃん役ですし、サムライ先生は先生役ですし……あれ?


>モリヤーマッ!様

むしろ無表情で「勉強ハ楽シイデスヨ、サア一緒ニ勉強シマショウ」とかいう様になってしまうかも……泣いたり笑ったりできなくなってもさらに詰め込みますからねぇ、サムライ先生。



[9440] 第二十九話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/07/03 02:34
「……わかってもらえたかのぅ?」

「成績悪い連中と泊まり込み合宿させるために図書館島に誘い込んだ、と。ほかに方法無かったんですか? ってか一般人にゴーレム見せるとか、魔法の秘匿はどこへ?」

突っ込みどころ多過ぎだ……。

「まぁ、古菲嬢と長瀬楓嬢は我が愚妹が何やら仕出かした際に関わって“こちら側”を知ってるらしいから仕方無いとして……」

「ふぉっ? 例の騒ぎを知っとったのかね?」

「刹那が何故か暴走した際、学園長からの要請で鎮圧せんとするも失敗し、菲嬢と楓嬢及び同様に学園長から依頼を受けていた龍宮真名嬢の協力を取り付けて何とか押さえ込んだ“桜咲の乱”の話をエヴァンジェリン嬢が教えてくれたんでね。昨年の春休みのことだとか?」

その事件以降エヴァンジェリン嬢たちは真名嬢のとりなしも有って刹那を含めた五人でそれなりに仲良くなったらしい。五人の姓の頭文字を取って、「くさったなま」とか呼ばれているらしい。
発言力の順番なら「またなくさ」だと。こっちは不吉な響きだな。
刹那を止めるために徒党を組んだのが発祥だけ有って、菲嬢、真名嬢、楓嬢、エヴァンジェリン嬢の四人は特に篤く厚く熱い友情で結ばれているらしい。
話は面白かったが……エヴァンジェリン嬢の絡み酒はいただけなかったな。

「近衛木乃香嬢には生まれのせいでいつかはバレる可能性が有るし、そこは神楽坂明日菜嬢も同じ様に何かしら有る様子だからまー、俺は気にせんのだが……」

むしろそこは学園長とかが気にした方が良い気もする。詠春さんは魔法と関わり無く育って欲しいみたいだし、学園長だって孫をわざわざ危険にさらしたいとは思って無いだろう。
そこんとこどーよ、と目で訴えてみると学園長狼狽。何故?

「ま、まさか……はは、ネギ先生は確かにうっかりが多いとはいえ、あれだけの人数が居れば流石に魔法を使おうとはせんじゃろ。それにネギ先生は現在、自ら魔法を封じとるしのぅ」

「魔法を封じている……? 何でまたそんなことを……」

「うむ、どうやらおのが身一つで生徒たちと向き合おうという決意の様じゃよ。自らに学年末試験終了の日まで魔力封印の術を施しよった。いやはや、頼もしい限りじゃのぅ」

「そうまでしないと貫けない決意ならドブにでも捨てれば良いのにねー」

「ちょ、サムライ先生DX先生!?」

自ら使用しない様に心に決めれば良いのに。そうすれば生徒に危険が迫っても使えない状態のままとか無いのにね。
流石は子供、思い込んだら一直線か。微笑ましいけど迂闊だねー。ちょっと目を離すとすぐこれだ、本当に心配になるよ、ならざるを得ないよ、ネギ先生……。

「あー……ってか生徒たちと身一つで向き合おうとしておいて“頭の良くなる本”に頼るのはいくら何でも軸がぶれてやしませんか? 人として」

「手厳しいのぅ……まぁネギ先生はまだ若いから、これからじゃよ、これから」

今回のことで潰れなければですけどねー。
訂正、今回のことで学園長に潰されなければですけどねー。

「で?」

「で、とは?」

「俺の仕事はどうするんです? ネギ先生のサポートと査定ってか評価とかは? あ、それ以前にこの泊まり込み合宿っていつまでやるんです?」

流石に泊まり込みをずーっと見てる訳にもいかんよな。そもそも明日の昼間は授業が有る訳で、担任不在で副担任も監視に行っちゃ不味いわな。合宿組にかまけてほかの生徒を蔑ろにはできないしね。
かといってネギ先生の様子を見ないってのも仕事の放棄な訳で……。

「泊まり込み合宿の期間は試験前日までじゃ……その間はネギ先生の代わりに2-Aを頼むぞぃ、サムライ先生DX先生。できればネギ先生の担当する英語もよろしくのぅ」

「うっわ、重っ……まー、引き受けますよ。その代わり余りネギ先生をいじめないで下さいね?」

心配だな……あー、そーだ。

「あと、女生徒が居るんですから、常時監視とかしないよーに」

「ななな何を!? わしゃそんなことはせんぞぃ!!」

チラリと見て左眉を確認。やれやれ、お盛んなことで……。





あーさー。

「ちとネタが古いな」

何にせよ今日、明日と試験直前の大事な期間を任されているわけで。
いやまー、明日は日曜だから授業は無いし、今日一日を頑張るだけで良いんだけど。

「ま、何にせよ気合いを入れねばならんな」

「キサマ……何でそれに私を巻き込むんだ!」

「?」

「不思議そうな顔をするなーっ!!」

朝からテンション凄いなエヴァンジェリン嬢、吸血鬼って嘘だろ。

「誰のせいだ!」

「主にネギ先生?」

「殺す、絶対殺す……」

この間、女子供は殺さないのがポリシーとかいってなかったっけ? まー酒の席の発言だったが。

「キサマのことだ鉄面教師!」

「おかしいな、何故ここまで嫌われたのやら。こんなにも愛を持って接しているというのに」

「どこに愛が有るというのだ、この、拷問の、どこにっ!」

そんな一音ごとに切らなくても。たかが合計100kg程度の重りで。
それに、

「先ほどから飛び跳ねているじゃないか」

「く……何だかんだで慣れた自分が恨めしい……」

「拷問とかいっても説得力皆無だからなー」

本当にエヴァンジェリン嬢の順応力には驚嘆するよ。あ、またあとでこっそり重量増やしておこう。どこまで重くしたら気付くかねー?

「さー、今日も走るぞー」

「……違う、私の思い浮かべていた学生生活とは違う……」

「エヴァンジェリン嬢? 走るぞー? おー、はどうしたー?」

「……こんなのが、こんなのが学生生活だなんて認めん、認めんぞ!」

「走るぞー」

パララララララララッ

「イダダダダッ!? な、なな、何だその銃はーっ!?」

「エアガンだが? さー、走らんと撃つぞー」

ちなみに弾は銀でコーティングしたBB弾。エアガンとセットで真名嬢に譲ってもらった一品だ。

「き、教育委員会に訴えてやる!」

それ初日のジョギング中にもいってたよねー。でも結局は訴え出ない辺り、エヴァンジェリン嬢も何だかんだでこの鍛錬が楽しいのだろうな。あー、反論は認めないのできりきり走れ。
で、結局42.195kmほど走ってから朝食とした。
それにしてもエヴァンジェリン嬢、走る距離をどんどん増やしてるのに平気で付いてくるねー。
こりゃ、もうちょい増やしても気付かないかな?





さてと朝のホームルームだが……。

「取り敢えず着席して欲しいなー、雪広あやか嬢。クラス委員長でしょ?」

「その前にお伺いしたいことがあります。ネギ先生が行方不明になってしまったと聞いたのですが。ついでにこのかさんやバカレンジ……明日菜さんたちも」

何故それを……ってかクラスのほぼ全員が心配そうな表情だな。一番沈痛な表情の二人、のどか嬢にハルナ嬢を見て、あーなるほど、と一人納得。

「ネギ先生たちは現在学年末試験対策で合宿させられている。試験当日には間に合うと思うので心配せずに待ちなさいな」

「ですが!」

「それよりも今は残されたメンバーの成績底上げのためにクラス一致団結して復習に励みなさい。特に下から数えた方が早い刹那……嬢、ザジ嬢、茶々丸嬢、エヴァンジェリン嬢はみんなでサポート忘れずにー」

『はーい!』

《ちょっと待て、私は手を抜いているだけで本気を出せば学年トップぐらいは行くぞ? 何年もここで学生をしているんだ、教師の癖や出題傾向ぐらい把握しているぞ》

みんなが元気良く返事を返してくる中、思念での会話を送ってくるエヴァンジェリン嬢。いっていることはわかるけど実際に成績がクラスの下位に居るんだから仕方無いだろー?
まー、何だ、そこまでいうならちょっとは頑張ってもらおうか。

「み、皆さん!? 凄く良い返事なんですけど……ネギ先生のことは心配じゃないんですの?」

「でも合宿だって先生もいってるじゃん。心配性だねー、いいんちょは」

「まったくもって心配ナッシング。気にし過ぎだぞあやか嬢」

「ね、ネギ先生はまだまだ子供なんですのよ、サムライ先生!」

「子供だからといって侮るものじゃないよ。ネギ先生はガッツが有るからへーきへーき」

「か、軽過ぎですわ! あぁ、ネギ先生……心配ですわ」

過保護だな。ネギ先生は年下だけど君らの“先生”なんだけどねー? しょーがない、ちょいとニトロ……じゃない、発破をかけましょか。

「それじゃー朝のホームルームはここまで。なお三時限目の英語は俺が担当するからなー。ま、何だ、ネギ先生がバカレンジャー連中と合宿している間に君らが呆けていて全体の点数が下がったら意味が無い。ここは一つ、君らにゃ心配御無用ってことをネギ先生に見せたりなさい。というわけでクラスをまとめ上げて留守を守るネギ先生の“女房”役のあやか嬢、あとは頼むぞ?」

「お任せ下さいですわーッ!!」

立ち直り早いねぇ、あやか嬢。ま、クラスのまとめ役としては頼りになるんだけど……恍惚とした表情で悩ましげに腰を揺らす辺り、君の将来に不安しか感じないのが残念極まり無い。
最後に騒がしくしない様にあやか嬢にお願いして教室を出る。ちなみに俺の心は先ほどからエヴァンジェリン嬢と繋がったままだ。
ここはクラスの平均点を上げるために、ちょいとやる気になってもらおうかしらねー?

《そーそー、さっきの続きなんだが、エヴァンジェリン嬢がその気になれば学年トップどころか全教科満点もできるって意味?》

《む……ま、まぁできなくもない、な……》

《何だ、断言できんのか……魔法の世界じゃ敵無しと恐れられていても、中学生の試験には勝てんとは、な?》

エヴァンジェリン嬢を煽る際には念話にちょっぴり笑いを堪えるニュアンスを混ぜると効果的です。

《ばっ、バカにするなッ! 良いだろう、今回の学年末試験、私は全教科満点を取って見せる!!》

《無理はしなくて良いんだぞ、エヴァンジェリン嬢。見栄を張りたい気持ちはわかるが、それだけで全教科満点取れるほど世の中は甘く無いからなー》

心配する気配と微笑ましいものを見る目が有るとより強い印象を相手に与えます。今は有視界外だけど。

《見くびるな! あんな試験、例え目を瞑っていても全教科満点など容易いわっ!!》

《そこまで言い切らない方が……全教科満点取れなかったら恥ず》

《くどいっ!》

こちらの念話を途中で遮る辺り、かなり熱くなってるなー。
まー、ここまで煽れば本気で試験受けるかな?

《まだ疑っているな? よし、もし私が全教科満点を取れなければキサマの命令を一つだけ聞いてやる! 鼻でスパゲッティを食べろといわれれば食べてやる! 逆立ちで学園都市内一周しろというならしてやる! だが私が全教科満点を取ったならキサマを一日好きにさせてもらうぞ、覚悟しておけっ!!》

……煽り過ぎたか? 一方的に賭けを持ちかけられた挙句念話を打ち切られたわ。
にしても一日好きに、ねー……よし、古文のテストに少し仕掛けを施そう。廊下を歩きながら、俺はそう決意した。割と真面目に。







サムライ先生DX先生がエヴァ様と賭けをすることになったそうです。でも試験を作る側に居るサムライ先生……逃げろエヴァ様、勝ち目は無いぞ!?







以下、ざっくりまとめた感想レス(No.149~152)

>ミクニ様

“閃”は極度の集中が必要で疲れるから余り使いたくない、と亜久馬氏のコメントです(笑)
ちなみにとらハ世界に居たころ、肉体年齢的に“完成された御神の剣士”に至った時点では歴代最強と呼ばれてもおかしくない実力でした。でもその時点で義姉は身近に居らず、比較できなかったので亜久馬にはその自覚は有りません。あと皆伝に至ったころは成長途上だったので、技は兎も角として力はかなり見劣りしていました。
亜久馬の中では兄や士郎さん、義姉は永遠に届かない背中だったりするのです。
あとエヴァ様の弟子入り試験対策で亜久馬に弟子入りしようとしたら、多分張っ倒されます。道を究めるなら余所見をするな、と。子供相手にマジで怒ると思います。大人気無い……。


>通りすがり六世様

動物でいうなら猫というより兎ですね、わかります。猫耳よりもウサ耳の方が似合いそうですしね(ヲィ)


>野鳥様

きっと髭が邪魔で頻繁に歯を磨けないんだと思います。
年間フリーパスって、うっかりすると行くタイミングを完全に見失うんですよね。まだ日が有るから大丈夫、とか考えちゃって。


>Citrine様

サムライ先生に気付かれない内にライドオンしたエヴァ様には敬意を抱かずには居れません。



[9440] 第三十話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/07/05 13:40
兄様……いえ、サムライ先生DX先生に名指しされてしまった私たちは放課後あやかさん主導の下、クラス成績上位者による補習を受けることになってしまいました。
超さんがザジさん、葉加瀬さんが茶々丸さん、あやかさんが私を受け持っています。
エヴァンジェリンさんですか? 帰りのホームルームが終わったら姿を消していました……ずるいです。

「まぁ、エヴァンジェリンは問題無いネ。普段は手を抜いてるだけヨ」

「それに先生から発破かけられてたみたいですからね。じゃ、私と茶々丸は大学部の方で勉強しますので」

「皆さん、頑張って下さい。では失礼いたします」

あ、そうか、茶々丸さんは新しいデータを入力すれば良いんだっけ……ちょっと羨ましいです。

「じゃ、始めるヨ」

「頑張りますわよ、二人とも。すべてはネギ先生の頑張りに応えるためですわ!」

「わかりました……」

「…………」

こくり

……そう、ネギ先生とこのかお嬢様も頑張っているのですから。





「ザジはまぁ予想通りネ……それよりも」

「えぇ、刹那さんは、正直驚きましたわ……」

いえ、私自身も驚いているのですが……。

「やればできる子だたカ、ちょと難しく作た問題だたのにネ」

「まったく、エヴァンジェリンさんといい、刹那さんといい、どうして今まで手を抜いていたのですか?」

超さんもあやかさんも何か勘違いしている気がします……問題を見たらすらすら答えが出るなんて生まれて初めてなんですよ?
でもいったい何故……あっ!

「そういえば昨晩、先生から詰め込み教育を受けました……多分、そのお陰だと思います」

「う、羨ましいですわ! ネギ先生に個人授業をしていただくなんてっ!!」

「刹那も手が早いネ、いつの間にそんなにネギ坊主と親しくなたカ?」

「あ、いえ、ネギ先生では無くサムライ先生DX先生です」

「あら、そうでしたの……って、どうしたんですか超さん? それにザジさんも」

「…………何でもないヨ」

(刹那、恐ろしい子! ネ。サムライ先生の個人授業……ちょと羨ましいヨ)

「…………」

(ずるい……)

な、何だか超さんもザジさんもちょっと嫌な感じがします……何でしょう、この気配は。
ハッ、まさか二人とも兄様……じゃ無い、サムライ先生DX先生に好意を!?
いけません、もしサムライ先生DX先生が兄様なら、これはライバル登場です!
……今は未だ静観ですが、もしサムライ先生DX先生が兄様なら……その時はこの二人を…………!

(!? す、凄いプレッシャーネ!)

(刹那……本気…………っ!!)

「ど、どうしたのですか皆さん!?」

あやかさんが後退っていますが、超さんもザジさんも退きません。むしろ一歩、踏み出して来ました。

「おー、やっとるなー……勉強にしては鬼気迫る気迫、略して鬼迫だが」

「「「!?」」」

瞬時に殺気を収めて声の方に振り向けば、そこに居たのはサムライ先生DX先生!

「どうだ、勉強は進んでいるかー?」

「はい! 昨晩の勉強の成果も出ています!!」

間髪入れずに答えます。出遅れましたね、二人とも。この勝負、私の勝ちです!

「そうか。まー、今晩もはみ出るほど詰め込むから、覚悟しておけよ?」

「っ! サムライ先生、後学のためにその勉強方法、見学しても良いカ?」

っ、しまった! やりますね、超さん……私とサムライ先生DX先生の二人きりの時間に割り込みをかけようとは! 流石は“麻帆良の最強頭脳”、侮れません。

「構わんぞ、もっとも鈴音嬢には退屈な勉強風景だとは思うがなー」

「そんなこと無いネ! それに私が居れば手伝えることも有ると思うヨ?」

「ふむ……ならばよろしく頼むぞ。ん? どーしたザジ嬢、手を挙げたりして」

「まさか……ザジさんも参加したいんですの?」

こくり

なっ……く、ザジさんは成績からすれば私と同じ個人授業を受ける側……せめてザジさんの参加は阻止しなければ――。

「素晴らしいですわ! ザジさんがここまで勉強に意欲を持つなんて!! 先生、私からもお願い致します、ザジさんにも特別授業を受けさせて下さい!」

「ふむ……良かろう」

あやかさんーっ!? よ、余計なことをっ!!

「ただし、俺の詰め込み教育は生半なものでは無いぞ。それでも良いか? 昨晩も刹那……嬢は余りの情報過多に最後は意識を失くしていたほどだぞ?」

そ、そうです、サムライ先生DX先生式詰め込み教育は脳がショートしても構わず詰め込んで来るんです!
さぁザジさん、退くのです、時には退く勇気も大切でって何を即座に頷いてますか!?

「ふむ、気に入った……では二人も今宵21時に夕食を済ませて刹那……嬢の部屋に来るように。ああ、あとザジ嬢、意識が飛んだらそのまま朝を向かえる訳だから、できれば入浴を済ませておくことをオススメしよう」

くっ、何ということでしょう……あの様子ではすでにザジさんは兄様の魅力に気付いて……いえ、まだ兄様と決まったわけじゃ……アレはサムライ先生DX先生、アレはサムライ先生DX先生……良し、落ち着きました!
ふふふ、ザジさん……サムライ先生DX先生式詰め込み教育、甘くは無いですよ? 恨むなら軽率な自分自身を恨んで下さいね?





や、はり……あまく、なか……った、です…………。

「刹那、ザジ、傷は浅いヨ、しかりするネ!」

ゆ、ゆすらないでくださ……。

「先生、刹那は私が何とかしておくよ。悪いけどザジを運んでやってくれないか?」

た、つみ……だ、め……ざじさ、はにーさまをねらっ……。

「仕方無いかー。では真名嬢、刹那……嬢を頼むぞー? 鈴音嬢、ザジ嬢の部屋まで案内してくれ」

「……わ、わかたネ。こちヨ」

(く、ザジ、上手くやたものネ!)

あぁ……だめです、ざ、じさん……よこだきなん、て……お、ひめさ、だっこなん……。

「…………」

ニヤリ

(計画通り……)





ハッ!?

「おはよう刹那、二日続けての拷も……勉強はどうだった?」

「た、龍宮……先生は? 超さんとザジ……さんは?」

「もう帰ったよ。三時間は前かな?」

くっ、一生の不覚! 意識が朦朧とする中で見たザジさんの口元は僅かに歪んでいました……アレは間違い無くしてやったりな笑い。気絶した振りをして先生に抱き上げてもらうのを狙っていたに違い有りません!
許せない、先生に、兄様に、お姫様抱っこだなんて! 私がいったいどれだけ我慢していると思うんですか!! 私だって兄様に頭を撫でてもらったり抱っこしてもらったり一緒にお風呂に入ったりしたいんですよ!? それを我慢しているのに、何故ぽっと出のあなたが兄様に抱っこしてもらって……ユルセナイ――。
あぁ、この湧き出る暗い感情……総身に力がみなぎります…………ザジ・レイニーデイ、あなたは私を怒らせました。もはや往くことも退くことも叶わぬと知りなさい……。

「まぁ明日もあの拷も……勉強が有るんだろう? 今日はもう休んで……刹那? 夕凪を持ってどこに行くんだい?」

「止めないで下さい龍宮、私はあの女……いえ、あのメスを斬らねばならないんです!」

「!?」

龍宮が慌てて部屋の壁に設置されたボタンを押す……無駄ですよ龍宮、忘れたんですか?
ブザーが鳴り響くと同時にメンバー全員が常時着用を義務付けられているブレスレット型通信機にエマージェンシーコールが送られる……でも今それを受けられるのは龍宮、そしてエヴァンジェリンさんの二人だけ。
あなたたち二人だけで私を、今の私を止めることは不可能です!

「S警報発令! エヴァンジェリン、刹那が、刹那がふっ!?」

まずは、一人。
私の邪魔をするものは、例え誰であろうと……。

「斬り捨て、御免」

さぁ、狩りの始まりです――。







去年の春に続き、羅刹那、ここに再臨。ヤっちまったぜ☆ あとザジが黒くなった。これは完璧に想定外だ……。そういえば各話にサブタイトルとか付けてみようかと思うけど、付けること自体どうなんだろう?







以下、ざっくりまとめた感想レス(No.153~157)

>通りすがり六世様

サムライ先生は耳からピーナッツを食って見せろというつもりの様です。鬼畜ですね。


>竜様

サムライ先生DXがサムライ先生フリーダムになると、色とりどりのチョークを複数同時投擲できます(ヲィ)
というか勢いでいっちゃったエヴァ様ですけど、何をやらせたかったんでしょう。一日肩車とか?


>プチ魔王様

すでに見た目通りの筋力は脱したエヴァ様。本人が気付かない内に鍛錬はエスカレートして、最終的に「封印されていても強い」とかになってたらどうしましょう。
怪力幼女萌えの人とか居るんだろうか?(笑)


>野鳥様

う……その場合、下手するとそれだけで完全にエヴァフラグONですね……。
ちなみにタカミチは海外のお仕事です。枕が変わって眠れないとか不味いかな、と枕を持って行ってます。明日菜の写真入りのやつを。


>Citrine様

それはアレですか、「3-A えば」とか胸に入っている体操着と濃紺ブルマを装着させろということで?(ヲィ)
ちなみに現在のエヴァ様は封印状態でもネギ先生に負けないと思います。魔法薬とかを媒介にした魔法で目くらましして一気に間を詰めれば後は掴んで投げるだけでしょう。



[9440] 第三十一話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/07/07 01:36
「真名、真名! 応えろ、真名ぁっ!」

必死に通信機に呼びかける。だが反応は、無い。

「くっ、やられたかっ!!」

不味い、不味い不味い不味いっ!!
対“S”特殊部隊「Sフォース」はそれぞれの役割に特化したチーム……中・遠距離支援担当の龍宮真名、陽動・撹乱担当の長瀬楓、近距離・接近戦担当の古菲、そして作戦立案・指揮担当の私……封印さえ無ければさらなる活躍が可能だが、今の私には長年蓄えた知識と経験によるサポートしかできん。それでも良いと思っていた。
やつらは物理戦闘に限ればこの学園でも有数の使い手だ。年若い故の経験の少なさは有るが、それは相手も同じ。ならば私の頭脳を加えたこちらに部が有る、そう信じていた。だが……!

「ダメだ! 今この時に動けるものが居らん……まさか、まさかこのタイミングでやつが、“S”が暴走するとわっ!!」

近接戦闘の切り札で有り、“S”を幾度も鎮めてきた古菲。卓越した技術による撹乱で“S”の攻撃を味方に向けさせ無かった長瀬楓。二人は今、学年末試験対策の合宿中。常時着用しているはずの通信機でも連絡が取れないところを見るにこちらの騒動には気付いてもいないだろう。
緊急事態を告げるアラートを発報した龍宮真名。通信機で呼び掛け続けているが、反応が無い。すでに“S”の手にかかっているのはほぼ確定だ。おそらくは“S”が始動した場に居合わせたのだろう。

「むしろとっさの判断で警報を鳴らしたその勇気こそ讃えよう……だが、済まん、真名! 今の私には打つ手が無いっ!」

いつだってこうだ……肝心な時に私は、私はっ!!
力になれない、それはわかっていた。真名がやられ、古菲も楓も連絡の付かん地の奥底。今の私は多少小賢しいだけの、子供に過ぎない。
だからこそ、エマージェンシーコールが鳴ってすぐ、有事に備えて引いてあったジジイとのホットラインを使い応援を要請した……だが、

「ジジイの私兵や今の麻帆良に居る魔法先生たちで果たしてどれほどの時間を稼げるか……」

こんな時にタカミチを始めとした経験豊富な武闘派の魔法先生は留守……現存する最大戦力たるジジイとて実戦を離れて久しい。今の“S”相手にそれは致命的だ。

『このかお嬢様護衛部隊、通信途絶……マーカー消滅しました! 全滅です!!』

『魔法先生部隊第五班班長の東久留米だ、第一から第四までの班がやられた! これより現場の指揮は私が預かぐほぁっ!?』

『こちら魔法生徒有志部隊、撤退を! 撤退の許可を!! 助けて、嫌だ! 死にたくな――ブツッ』

ログハウス内作戦室に響く悲痛な通信……だが私には何もできない……ただ、ただこの通信を聞き、胸を痛めることしかできない。
あぁ、私は……私は無力だ…………。

「マスター、私も行きます。これ以上ただ見ていることはできません」

突然の声に振り返るとそこには戦闘用のオプション装備を身に付けた茶々丸――

「ま、待て茶々丸! 行くなっ、私を……私を一人にするなっ、行ってはいかん!!」

ダメだ、無理だ、勝ち目は無い。今の“S”はかつてとは違う……例え完全な戦闘モードの茶々丸でも――フルアーマー茶々丸でも一分と持たない! 茶々丸は私の従者だ、みすみす死なせるなど――

「泣かないで下さい、マスター……」

「嫌だ、茶々丸! もう……もう一人は嫌だ……私を一人にするなっ! これは命令だ、おまえは私の従者だ、いうことを聞けっ!!」

恥も外聞も無く茶々丸に抱き付き、この場に留めようと踏ん張る。だがフルアーマー化した茶々丸のエネルギーゲインは通常時の五倍を誇る。魔力を封印されている今の私では引き留めることは叶わない。

「大丈夫です、マスター。私は死にません……ガイノイドは例え行動不能となっても壊れた箇所を修理すれば何度でも蘇ります」

「だがメインメモリとやらが、おまえの記憶を司る箇所が破損すれば……それはおまえの死だ! 行くな、茶々丸……行かないで…………」

「もしメインメモリが破損した場合は、バックアップを元に……新しい私が生まれます。もしもの時は、マスター……新しい私を、私の妹をよろしくお願いします」

抱き付く私を茶々丸はそっと、しかし抗えぬ力で引き離す。涙で霞む視界の中、茶々丸の背面に装備された鋼鉄の翼が開く。

「マスター……逝ってきます」

普段と変わらぬはずのその声に、私は決意が込められているのを確かに感じた。

「マスター、私はマスターの従者となって幸せでした……さようなら」

ちゃ……、

「茶々丸~~っ!!」

何が“闇の福音”だ、何が“人形使い”だ、何が“不死の魔法使い”だ、何が“悪しき音信”だ、何が“禍音の使徒”だ、何が“童姿の闇の魔王”だっ!
従者一人守れず、何がっ! いくつもの二つ名が、私を責め立てる。何故立ち上がらないと、何故立ち向かわないと、何故立ちふさがらないと!
だが、だが今の私ではそれは叶わない。今の私が刹那相手にどれほど持つというのだ……あぁ、何が、何がエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだ……。

「もう……もう私には何も……本当に何も無くなってしまった……は、はは……はははははっ! そう、何も、何もかも無い! 無価値だ、無意味だ、虚ろそのものだ!! エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルよ、おまえにはもう何も無い!! 力も、名も、城も、従者も! すべては消えた、もはやおまえが在り続けることすら意味が無い!!」

そうだ……まだ無様に生き延びている憐れな吸血鬼、それが私だ。吸血鬼? 真祖? だから何だ、だからどうした! 今の私は従者一人を助けに行くことすら叶わぬ、幼児に過ぎないではないか……。

「どうした、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル」

声に、振り向けば……、

「何をしているんだ、従者が、大切な家族が、茶々丸嬢が戦っているのだろう?」

誰だろう……見たことも無い男だ……確かに聞いたことの有る声なのに、それが記憶と結び付かない……。
あぁ、何故おまえはそこまで強い目をしていられるんだ……私には、今の私には、誰とも知れぬおまえの目に映る資格すら無い……。
今の私にはおまえの万分の一ほどの強さも無い。かつての私なら、あるいはこの様な時にも奮い立ったのかも知れない。いかな困難であろうとも立ち向かったのかも知れない。かつての私は魔力の有無、不死性の有無など歯牙にもかけなかったろう。困難に出くわせばそれを打ち破っていたはずだ。
だが、今の私は無力さを痛感してしまっている。刹那の、“S”の恐ろしさを身をもって知ってしまっている。今のアイツと戦えば、魔力を封印されている私はなすすべも無く斬り刻まれ……“死”ぬだろう。それがわかってしまい、そして踏み出すのをためらった瞬間……エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは死んだのだ。
今の私は、ただの無力な童に過ぎない……踏み出せなかったあの時から……。あるいは相手が“S”でなければ、まだ立ち向かえたかも知れない……だが今相手にするのは“S”であり、私はそれに恐怖してしまった……そうだ、私は……、

「……ダメだ、私には何も、何も無い……従者一人救えん、ダメ主だ……」

「エヴァンジェリン嬢、君には……君にはまだ、命が有るじゃないか!」

いのち……命だと? そんなものが有るからどうだというのだ? 命が有ろうと、私には茶々丸を救う力は無い……従者を見殺しにしたことを悔いて生きろというのか、無力な己を呪いながら生きろというのか!

「エヴァンジェリン嬢、命は最後の武器だ。君はまだ生きている、君はまだ戦える、君は無力では無い! 今、君には助けたいものがいる、救いたいものがいる。振り絞るんだ、勇気を! 燃え上がらせるんだ、命を! 立ち向かうんだ、大切なものを守るために!!」

……大切なものを、守る…………。
言葉が、見ず知らずの男の言葉が、胸に染み入ってくる。だが嫌悪は無い。むしろ心地好さすら感じる……胸が熱い…………力が、湧いてくるっ!?
男の手が霞み、銀閃が私の身体を撫ぜる。私の身体を戒めていた(物理的な)重りが、断ち切られた……。
これを外したことがアイツにバレればとやかくいわれそうでは有るが、今は緊急事態! むしろ今、鍵を持ってこないアイツが悪い! そうだ、そうに違いない!!

「誰だか知らんが、その、感謝するぞ! 私は守る、大切なものを守りに行く!」

茶々丸の向かった先を見据え、飛び出す前に、私の耳を心地好い声が打つ。

「……またな」

「あぁ、また会おう! 私の名はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。おまえの名……は?」

振り返ると、すでにそこに人影は無かった。夢か、幻か、今はわからない……だが私の胸には暖かなものが満ちている。心には熱いものが溢れている。

「待っていろ茶々丸……今助けに行くぞ!」







夢落ちじゃない、だと……!? あと何だ、この話。このSSはどこに向かおうとしているんだッ!?







以下、ざっくりまとめた感想レス(No.158~162)

>鰻まだー様

鰻は漬物を肴に冷酒を舐めながら待つのが良いと池波先生はいっていたとか(王様の仕立て屋より抜粋)
ザジは可愛いです……でも「魔法先生ネギま!」だとほとんど性格がわからない……のでこうなりました(ヲィ)


>Citrine様

原作のイベント知らないですからねぇ、彼は。なので学園長から頼まれたし、鍛えとくのが正解だと思ってる可能性は有ります。まぁ途中から重りや距離をどんどん増やしてみるという遊びに傾倒してしまっていますが(ヲィ)
ザジは今後もさり気無くベストポジションに居座りそうな気がする……腹黒ザジって有りなんですかねぇ?


>麒麟様

オーバーマスク! それ良いですねぇ。あ、オーバーボディっていうのも手か。


>プチ魔王様

はるか地下深く、携帯の電波が繋がらないその先で寝ている古菲と楓、二人は間に合うのか!? むしろエヴァ様が一人で解決かも知れない(ヲィ)
エヴァ様はそこまではいけません、何故なら彼女は“悪の魔法使い”なのですから!


>野鳥様

黒いザジは好きですか?(笑)
タカミチの調教は順調なのでむしろそんなことを嘆かないかも知れません……。



[9440] 七夕なので帰宅から一時間で書いてみた話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/07/08 00:32
※帰宅してから日付変更までにどれだけ書けるか実験SS。なのでほとんど会話文なんだぜ!







今日は七月七日、すなわち七夕。ここ麻帆良においても盛大な七夕祭りが開かれている。

「いや、まさか七月七日に合わせて世界樹が巨大な笹というか竹というか、そんなものに変わるとは。不思議なことも有るものだなー。麻帆良は毎年こんな面白い七夕を過ごしていたのか」

「いや、私も15年間ここに居るが……こんなことは今年が初めてだ」

二人そろって巨大な竹っぽい何かを見上げる。んー、首痛い。

「もしかしたら22年に一度の世界樹の魔力の高まりが何かしら関連しておるかも知れんのぅ。今年は近年の異常気象のせいか一年それが早まった訳じゃし、何が起きても不思議はないわぃ」

「そういうものか」

「そういうものじゃ」

「いや、それで納得するのはどうかと思うぞ、キサマら……」

「ところでエヴァンジェリン嬢、笹の葉に願いごとを書いた短冊を吊るすと願いが叶うという話を知っているか?」

「馬鹿にするな。これでも15年間女子中学生をしていたんだ。日本の伝統や文化にはそれなりに触れている。だが、まぁ……そうだな、短冊に願いを書いて吊るすというのは一種の決意表明のようなものだろう。衆目にさらされる場に願いごとを記したものを吊るせば、嫌でもそれに向けて努力せざるを得んとか、そんなところだろう」

「ま、そういう考え方も有るな……だがエヴァンジェリン嬢、アレは世界樹が変じたものだぞ?」

「……私は少し用事を思い出した。悪いがこれで失礼するぞ」

エヴァンジェリン嬢、風になるの巻だなー……さてさて、隠れて聞き耳を立てていた連中も動き出したことだし、

「では学園長、面白いものでも見に行きましょうか」

「それ、いいのぅ」



Case.1 エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル



「ふむ、短冊、墨汁、それに筆……願いが、叶う、か…………」

一人でニヤニヤ笑っているエヴァンジェリン嬢。嫁入り前の娘が涎なぞ垂らして、はしたない。

「ところでエヴァンジェリンは何を願うのかのぅ?」

「んー、気になるな……お、書き始めたみたいだな」

「よ、よし……できた! 完璧だ!!」

書いた文字は……“絶対に仮契約(パクティオー)する”?

「誰とでしょ?」

「案外おまえさんじゃないかいのぅ?」

「まっさかー」

にしても気合を入れて書いた単語が“仮契約”とか。

「エヴァンジェリン嬢も思春期の女の子らしいところがちゃんと有ったんだな。おじさん安心したよ」

「あの年で思春期とか……青春ってのは終わらんものなんじゃなぁ」

さ、次だ、次。





Case.2 宮崎のどか



「願いが叶う……ネギせんせー……」

む、のどか嬢か。あの様子だともしや願いごとはまたもネギ先生との接吻とかか?

「いやいや、のどかちゃんは学園祭の時のアレでわかっとるはずじゃ。人の思いを捻じ曲げるなど許されることではない、とな」

確かに。ネギ先生のあの時の暴走、一番心を痛めたのはお願いしたのどか嬢自身だったしなー。

「反省して次に生かせる……簡単だが、難しいことですねー」

「まったくじゃ……ネギ君も良い子を見付けたもんじゃて」

「お、書き始めた……なになに、“ネギせんせーが怪我をしませんように”だと?」

「心優しいのぅ……それもなるべく人の意思に干渉しないように書いたんじゃろうなぁ」

この距離でも温かい心を感じ取れるのは流石のどか嬢……お、ネギ先生が来たな。こりゃ退散しておいた方が良さそうだな。

「馬に蹴られたくないからのぅ」

そーれ、次だー。





Case.3 神楽坂明日菜



「ね、願いが……」

明日菜嬢、短冊は握り潰して粉にするものじゃなく願いごとを書くものだと思うのだが。

「明日菜ちゃんは相変わらずの力こそパワーじゃなぁ」

「でも、あんなものになんて頼らなくても……」

「おや、明日菜君じゃないか」

「たっ、高畑先生っ!?」

現れたなデスメガネ先生。

「明日菜君、今は二人きりだよ?」

「あ……はい…………タカミチ、さん」

うわー、うわー、同じ男教師と女子生徒だってのに、ネギ先生とのどか嬢のような見てて胸が温まるものが無いよこの二人。

「むしろ妙な生々しさを感じるのぅ」

「来年の明日菜嬢の誕生日辺り、俺はきっと割り切れない数の万札を包んで進呈することになるだろう。賭けても良い」

「賭けが成立せんぞぃ?」

濃い目のピンク空間作り始めたので退避!





Case.4 桜咲刹那



「に、兄様……兄様と、これで!」

妙に嬉しそうだな、刹那……願いごとは何を……。

「なん、じゃと……?」

「“兄様と結婚”……そのためにはな、刹那。まずは法改正から頑張ってくれ、としかいえん」

「ってか、アレじゃのー……正直いって、わし引いちゃいそうじゃ」

んー、俺も流石に刹那の将来が心配だ。あんなんでちゃんと嫁に行けるか……笑顔で送り出すのが夢なんだがなー。

「ん? もう一枚書き始めたぞぃ」

「今度は何でしょうねー」

ってか二枚吊るす気か? 知らなかったな、刹那は意外と欲が強いのか……普段禁欲的な生活しているからか?
少しは同年代の友人ともっと広く付き合って欲しいんだがな、俺としては。

「こ、これも……う……ど、どちらかしかダメなのでしょうか?」

なんて書いたんだ? 学園長は見えた様だが、俺の位置からだと微妙に見えん……。

「率直に聞いて良いかいのぅ?」

「何なりと」

「中学三年生の妹から“兄様とお風呂”なんて願いごとをされた感想は?」

「そろそろ兄離れをして欲しい今日この頃です」

さて、ほかを回るか……。現実? 取り敢えず見ない方向で。





Case.5 ザジ・レイニーデイ&超鈴音



「さて、なんてお願いするか、それが問題ネ」

「…………」

「ザジは決またカ……私も決めたネ」

二人がさらさらと筆を走らせて出てきた文字は……。

「これネ! 先生とのデート、これしかないヨ!!」

ピラッ

「…………」

「ザジはなんて書いたネ…………」

「ありゃ、なんて書いてあるんじゃろぅなぁ?」

俺も角度的に良く見えない……気になるがザジ嬢は勘が良いからな、気付かれん為にもこれ以上は踏み込めんか。

(…………り、“略奪愛”!? ザジ、怖ろしい子ネ!!)







落ちはやっぱりザジだった罠。ってか7/7の内にアップできなかったので実験は大失敗。書き上げるまでに予定時間を三十分超過の一時間弱かかったけど……後日消そう。



[9440] 第三十二話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/07/15 03:24
マスターの元から飛び出して一分も経たぬ内に女子中等部寮が見えてきました。
すでに一部は崩れ、火の手も上がっています。
廊下の一角に生命反応、パターン照合……間違い有りませんね。

「目標“S”、確認。攻撃、開始します」

上空から降下しながら攻撃の準備を行います。
昔から戦いは上を取ったものが勝つといわれています。今の刹那さん、“S”は強敵です。少しでも勝率を上げるために、このまま仕掛けます。

「サザンクロス・リッパー」

背部に装備した飛行ユニット・茶々丸スクランダーから十字手裏剣型の武器、サザンクロス・リッパーを打ち出します。
サザンクロス・リッパーは次々に窓ガラスを破って刹那さんに殺到しますが、刹那さんの野太刀を持つ手が霞むとそのすべてが半ばから断ち割られてしまいました。ですが……。

「計画通りです」

断ち割られたサザンクロス・リッパーが一瞬の間をおいて爆発します。
女子寮の廊下を紅蓮の炎が舐めて行きます。サザンクロス・リッパーは手裏剣爆弾。その身で受け止めるのも紙一重でかわすのも大差有りません。
爆発による衝撃波と熱の逃げ場が窓と廊下の奥にしかない状態での一斉起爆により、奇しくも回避不可能な広域殲滅攻撃になってしまいましたが、これなら流石の刹那さんといえどダメージは免れ無いはずです。

「茶々丸さん、今度はあなたが邪魔をしにきましたか」

ゾクリ

底冷えのする声。機械であり恐怖を感じることなど無いはずの私をすくませる声はまだ炎が燃え盛る廊下から聞こえてきます。
炎の中からゆっくりと姿を現した刹那さんはその衣服にすら焦げ跡一つ有りません。良く見れば刹那さんは全身をうっすらと生体エネルギー、気の膜で覆っています。

「神鳴流奥義、斬鉄剣――」

呟きとともに刹那さんの姿がぶれ、

「っ!」

茶々丸スクランダーの右翼が断ち斬られまていました。バランスが崩れ、私は地面に落とされてしまいます。

「これでは……」

空戦は絶望的、いえ地上に落下した衝撃で陸戦にも支障が……。

「終わりです」

いつの間に背後に!?
とっさにホバーで移動しながら右腕部の増加装甲から刃を出し、肘から先を打ち出します。

「アイアン・ニッパー」

「斬鉄剣――」

綺麗に真っ二つにされる右腕。ホバーで後退しながら左肩から武器を射出し左手で掴み取ります。

「茶々丸トマホーク」

今の刹那さんは冷静に思考し立ち塞がるものを斬る戦闘機械。私には近接格闘技能や神鳴流のデータが入力されていますが、それ故にわかってしまいます。
私では刹那さんに勝てない、と。

「神鳴流奥義、斬魔剣――」

「茶々丸トマホーク・ブーメラン」

刹那さんの斬撃に合わせる形で茶々丸トマホークを投擲し、間髪入れずにそのすぐあとをホバーを駆使して追いかけます。
茶々丸トマホークの強度では刹那さんの一撃を耐えきることは不可能ですが、剣速が一瞬でも鈍れば……っ、

「なっ!?」

「捕まえ、ました」

奥の手……まさに奥の手で刹那さんの右腕を捕まえます。

「くっ!」

「無駄です。茶々丸アームはダイヤモンドを圧壊できます。人間の力では抜け出せません」

スカートに隠されていた左腿の増加装甲から伸びた万力状の隠し腕、茶々丸アームがしっかりと刹那さんの右腕を掴み、締め上げます。
アドレナリンの過剰分泌により痛みを感じていないようですから容赦無く力を込めて押さえつけます。
これで刹那さんの利き腕とともに剣技を封じました。
あとは右腿の増加装甲から円錐形の先端を持つ茶々丸ドリルを繰り出し刹那さんを……刹那さんを?
茶々丸ドリルはその形状、性質のため手加減ができません。もしショック死してしまえば治癒魔法など意味が有りません。
……なるべく慎重にダメージを与えて、気絶に留めなければいけないようです。

「刹那さん、痛かったら痛いといって下さい」

覚悟を決めて茶々丸ドリルを伸ばそうとした瞬間、

「斬鉄剣――」

左手だけで放たれた神鳴流奥義により、私の身体が逆袈裟に斬り裂かれました。
マスター、申し訳有りませ…………――。





ダメージによるノイズからメインメモリを保護するための一時的なシステムダウンから目覚めれば、私を庇うように立つ超さんと、刹那さんに対峙するマスターの姿が有りました。

「マスター!」

「っ! 茶々丸、動けるカ!?」

「問題・有りません・超さん」

訂正します、音声出力系に異常が有る様です。

「問題有るわっ、このバカ者っ!」

マスター、泣かないで下さい……しかし何故マスターがここに?

「超、茶々丸を頼む……刹那、ここからは私が相手だ!」

「マスター!?」

「無理しちゃダメネ! 今のエヴァンジェリンは普通の子供と変わらないの忘れたカ?」

マスターの魔力は封じられたままです、刹那さんの力にも速度にも対応できません。

「見ていろ茶々丸、おまえの主は例え魔力を封じられていようと……最強だっ!」

「マスター!!」

マスターはゆっくりと、伸し歩く様に刹那さんとの間合いを詰めていきます。刹那さんはマスターから感じる威圧感に押され、じりじりと後退っています。
徐々に下がる刹那さん、無造作に近付くマスター。やがて二人の距離は一間ほどまで縮められました。

「くっ、神鳴流奥義、斬岩剣――」

繰り出される刹那さんの技、マスターは自ら刹那さんの懐へと飛び込むことで対応しました……とっさのことで誰もがマスターを一瞬見失い、

「っ!」

刹那さんが大きく吹き飛びます。いえ、今のは刹那さんが自ら跳んだのでしょうか? マスターは軽く刹那さんの左手首を握り、捻った様にしか見えませんでしたが……。

「……腕が」

信じられ無いものを見る目で刹那さんは触れられた手首を見ています。そこは紫色に腫れ、本来の関節では有り得ない方向を向いています。

「あの一瞬で手首を外したカ……」

超さんが驚いているのがわかります。私も同じです。
魔力を封じられたマスターは外見相応の身体能力しか有りません。軽く掴んだだけでアレだけの結果を出すことは例えマスターの技量を持ってしても容易では無いはずです。

「ふむ……身体が軽い、な。久々にウェイトを外したが、まるで身体が」

「斬岩剣――」

「羽毛にでもなったかの様だ」

刹那さんの斬撃をゆるりとかわすマスター。ウェイト……先生につけられたアレを外したことでこの様な動きが可能となったのでしょうか?
右腕だけでは不利と悟ったのか、刹那さんは瞬動でマスターから距離を取り、

「しぃっ!!」

思い切り左腕を振るって無理矢理に関節を伸ばし、皮膚の収縮力を利用して関節をはめ直します。

「ちっ、流石に反則だろう、それは」

マスターが構えます。腰を落とし、緩く開いた両手は前に。
あの構えはまさか……っ!

「“沈黙”の構えネ……エヴァンジェリンも本気ヨ!」

セガールアクションですね、わかります。







エヴァ様は亀仙流の修行を経て大塚明夫ボイスになりました。でも最強と言い切っちゃったらアウトな気がするのは何故でしょう?







以下、ざっくりまとめた感想レス(No.163~175)

>プチ魔王様

大層なことをいっている割には早々に姿を消す謎の男(笑)
あと、ぶっちゃけていうと魔力封印状態なので決め手に欠けるエヴァ様は次回大苦戦の予定(ヲィ)


>雫様

あぁっ! ひかないで、ひ~~か~~な~~い~~で~~~~(汗々)


>通りすがり六世様

はっはっはっ、立っちゃったら折れないからフラグっていうんですよ(謎)
何というか、バトル編はギャグが挟み難いですね。反動でバトル編明けは大変なことを書いてそうで怖いです……。
あと七夕ネタは当日仕事中に「あー、そういえば今日って七夕じゃん。何か一本でっち上げて更新したいなぁ」と思い付いたので帰ってから必死こいて書いたものです。七夕当日中に更新できなかったのは痛恨極みでしたが、楽しんでいただけたなら幸いです。


>竜様

え? 謎の男? あぁ、応援しつつ全力で麻帆良の外れに駆けて行くのを見たぜ?(ヲィ)


>沙様

実は私、伏線を立てておいてすっかり忘れたり回収のタイミングを外したりするタイプですの。回収方法はソードマスター・ヤマト式を好みますのよ?(ヲィ)


>イラテ様

御神の後継者を育てるとしたら、おそらく一子相伝形式で行くと思います。少なくとも親から子へという形式からは逸脱しないと思うので、エヴァ様は過酷なトレーニング(あるいは暇つぶしの遊び)止まりだと思いますよ。


>雄介様

正解者に拍手! ヨクデキマシタ!!


>野鳥様

真面目な話を書く、というギャグです。むしろここら辺だけ異色過ぎる罠。
そこまで元気じゃないですよ。むしろ落ち着いた大人の雰囲気で……想像してみて下さい、ホテルの洗面所でタカミチがくわえタバコで下着を洗っている姿を……結構えぐい想像になる前にやめときましょうか(汗)
消すの勿体無いですか? ……ひょっとしたらしれっと改訂版に差替わるかも知れませんが、その時は静かに見守ってあげて下さい(何)


>Citrine様

うんうん、他人を煽ってないでおまえが行け、おまえが、と書きながら思っていました(笑)


>q-true様

こうなる可能性も有るよ、的な妄想です。実際にどうなるかは今後の展開次第としておきましょう。
思い付くまま、キャラが勝手に動くに任せて書いているとこういう時に回答に困りますねぇ。


>ミクニ様

ってか、まぁ……淫行教師街道まっしぐらなタカミチの明日はどっちなんでしょう(笑)
あれ? 選択肢に普通のキャラなんて用意したっけかな?(ヲィ)



[9440] 第三十三話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2009/07/21 03:15
暴走した刹那がこんなに厄介だとは思わなかたヨ。

「ぐ、ぁ……っ」

魔力の封じられているエヴァンジェリンでもアレだけの技量が有るならもしかしたらと考えた数分前の私を消し去りたい気分ネ。

「マスター! 逃げて・下さい!!」

それは無理ネ、茶々丸。エヴァンジェリンは痛みに満足に動けないヨ。
両肩から先は斬り落とされてるし、魔力が封じられているから即時再生も不可ネ。あぁ、両脚も付け根から斬り飛ばされたネ……何してるカ、近衛近右衛門! 魔力の封印だけなら解くことだってできるはずヨ? 何故しないネ……エヴァンジェリンを見殺しにするつもりカ!?

「ひぎぃっ!? あ……あ、ああ……ああああああっっ!!」

エヴァンジェリンっ!





「とかいうことになてたかも知れないネ」

「……嫌な妄想をするな、超鈴音」

「達磨女なエヴァンジェリンもちょと見てみたかたネ。やぱ助けない方が良かたかナ?」

「助けてもらったのは感謝しているからもうそのネタから離れんかっ! 状況が好転した訳じゃ無いのだぞ!?」

わかてるネ、エヴァンジェリンは両手が使えないし、私も刹那をどうこうできる訳無いからネ。
斬魔剣による遠距離斬撃と瞬動による斬岩剣のほぼ同時二連撃、エヴァンジェリンが右腕を失くすだけで済んだのはただの幸運ヨ。
茶々丸の左腕パーツを使て牽制したからエヴァンジェリンの左腕は皮一枚で繋がているネ。
まぁ、お陰で私も刹那に狙われる羽目になたからエヴァンジェリンが運が良かたいうよりも私が運が悪かただけかも知れないけどネ。

「……神鳴流奥義、極大雷鳴剣――」

あ、これは死んだカ。
そう思た時、私とエヴァンジェリンにいきなり横ベクトルの力が加えられたヨ。

「何とか間に合ったでござるな」

「…………遅かったじゃないか、楓。お陰で私はこんな様だ」

「こういう時は素直にありがとういうネ」

楓が私たちを抱えていつものとぼけた顔してたヨ。エヴァンジェリンはどこか不満そうだたけど、それでも笑たね。
それにしても何でここに来れたカ?

「拙者らが寝ているところに知らせが来たのでござるよ。見たことも無い男性でござったが、上の状況を聞くに一刻の猶予も無しと見て急ぎ戻った次第にござる」

「見たことも無い男性、だと? まさか……」

「不思議とどこかで出会っているような、されど見覚えの無い人物でござった」

「間違い無い……私を克己させた…………」

話を聞くと……多分あの人ネ、間違い無いヨ…………直接関わてこないで、裏でコソコソ動いてたカ。何やてるヨ、先生……あなたが出てくれば一発で刹那も鎮まるはずヨ?

「取り敢えず刹那が暴れているとあれば拙者らの出番でござるからな。二人でこっそり抜け出してきたのでござるよ」

「なるほどな……すると坊やたちはいまだに地の底か?」

「にんっ♪」

得意げに頷く楓。にんにんなら忍者らしいけどにんだとベンジャミンみたいネ。

「そうか、なら急ぎ戻らねばなるまい……だが楓、気を付けろ。茶々丸も私もぼろぼろの状況を見ればわかるだろうが、今宵の刹那は手強いぞ?」

「確かに……古菲も苦戦してるでござるな~~」

刹那からの追撃が無いと思たら、古と刹那が打ち合てたね。刹那は野太刀、古は無手……て、

「な、何考えてるカ! 古!!」

「大丈夫アルよ、超。懐入たらこちの勝ちアル!」

そういう台詞は相手の攻撃をいなしたり、懐に入たりしてからいうネ! 真正面から戦い挑んだり、刃を拳で迎撃するのは何か違うヨ!!

「超は細かいこと気にし過ぎアルな~~、とと」

こちを向いてヘラヘラ笑う暇が有るなら集中するネ、古! 見ててヒヤヒヤするヨ……。

「やれやれ……やっといつもの雰囲気か――ッ…………真名、ソレイタイ、シミル……」

「泣くこと無いだろ、エヴァンジェリン。腕が一本消し飛んで、もう一本が千切れかけているだけじゃないか。真祖の吸血鬼が、情け無い」

「ぐ、ぅ……き、傷なんて大抵すぐに治っていたから痛みは慣れとらんのだ! わかったら丁寧にやれ、真名!!」

「はいはい、お姫様」

いつの間に……て、私が古の行動に突っ込んでる間にだけど、真名が来てエヴァンジェリンの手当て始めてたネ。
自分だて頭に包帯巻いてるのに……あ、服の下包帯だらけネ。どう考えても即入院の状態ヨ。

「さて、コマンダー、今回の作戦を聞こうか?」

「いつも通りだ。楓は“S”の目標となり引き付けて移動を制限」

「お任せあれ」

「真名は射撃で“S”の技の出を潰せ」

「サー、イエッサー」

「古菲……タイミングはこちらから出す、楓を囮にしつつ“S”から離れるな!」

「相変わらず無茶いうアルなー」

「気を付けろ、今宵の“S”はいつもよりも危険だぞ? ……状況開始っ!」

「「「応っ!!」アル」でござる」

エヴァンジェリンを司令塔とした戦闘集団。一つの意思で動く無敵のレギオン。確かにそれぞれと一対一で勝つ存在はこの学園にいくらでも存在するヨ? けどこの群体と戦て勝つことのできる存在は……存在しないヨ。

「忍っ!」

楓が分身、それも実体を伴う影分身を併用して刹那を取り囲んだネ。一瞬だけど狙いを絞るために刹那の足が止またネ。

「これで、一手」

ニヤリとエヴァンジェリンが笑たヨ……悪い笑みネ。
「斬魔け」

「隙だらけだよ」

ビスッ

真名の銃が楓の分身たちの隙間から刹那の手元を跳ね上げる様に撃ち抜いたネ。本当に技の出を潰す辺り、真名も恐ろしいネ。
普通技の出を感じてからそれを邪魔する様に狙撃するなんて不可能ネ。

「ともに暮らしているんだ、おまえの呼吸は予測できるさ」

さらといてるけど無茶苦茶ヨ……ちょと刹那が可哀想になたネ。

「斬岩」

「甘い」

ビスッ

「斬て」

ビスッ

「斬」

ビスッ

「ざ」

ビスッ

……刹那が可哀想になてきたネ。刹那が楓の分身連携攻撃に振り回されては真名の狙撃で反撃を許されない状況に追い込まれてるヨ。
暴走したままなのにあぅあぅいて涙目になてる刹那……いじめられてると光るものが有る気がするのがすごく心配ヨ。

「頃合いだな……」

エヴァンジェリンが口元歪めてるヨ。こういうところ見てるとエヴァンジェリンが自称する“悪の魔法使い”も自称に聞こえなくなてくるのが不思議ネ。

「………………今だ、古菲っ!」

「行くね、必殺――」

楓の分身が視界をふさいで、真名が狙撃で気を逸らしてるネ。刹那は集中を切らしてるから防ぎ様が無いヨ。

「獅子の手っ!!」

「なぐっ!?」

「せっちゃんっ!?」

古の剛拳が刹那の脇腹に吸い込まれる様に決またネ。て、今の声は?
私が振り返た先に居たのは、

「木乃香? それにネギ坊主たちも……」

アイヤー、抜け出した二人に気付いて追てきてたカ。それにしても間が悪いネ。よりにもよてけりつくとこに居合わせるとカ、でき過ぎヨ……。

「せっちゃんに何するんや、それもこんなに大勢で!」

刹那無双だたとはいい難いネ。

「け、喧嘩は止めてください!」

「むしろこれっていじめ?」

喧嘩は売られた方でいじめられてたのはむしろ私たちといても信じてくれそうに無い雰囲気ネ。

「何が有ったですか?」

あ、夕映だけは冷静で話通じそうネ。

「取り敢えず、アレ見るネ」

指差した女子寮を見て、刹那を見て、また女子寮を見る夕映……疲れ果てたため息、わかてくれたカ、流石は夕映!

「皆さん落ち着いて下さい」

「落ち着いてられへんわ、せっちゃんがいじめられとったんやえ?」

「長期休み・連休手前恒例の“桜咲の乱”です……今回はかなりの被害の様ですが」

「へ?」

きょとんとして、夕映が見ている方向に視線を向ける木乃香たち……あ、やと気付いた様ネ。

「ちょ、何よアレーっ!」

「り、寮が……壊れとる……」

「嘘! どーするのよ、これじゃ寝るとか絶対無理だよ!?」

「あの……“桜咲の乱”って何ですか?」

明日菜も木乃香もまき絵も大騒ぎネ……おぉ、そういえばネギ坊主は赴任したばかりでいつものアレを知らなかたカ。

「ネギ先生、うちのクラスの桜咲刹那は長い休みと休みの間に発作に襲われることが有るですよ」

「ほ、発作ですか!? もしかして何か重い病気を?」

「有る意味不治の病アルな」

「確かに……刹那のアレは病気に違いない」

夕映の説明に驚くネギ坊主……あと古も真名も何気に容赦無い言い方ネ。

「刹那殿の患っておられる病の名は……恋患いでござるかな?」

「……重度のブラコンだろ? 休みが近くなるほどに早く会いたいという気持ちが高まって……暴走する。あぁ、考えてみれば実にはた迷惑なビョーキだ!」

一応フォローする楓の言葉尻を捕らえてむしろ台無しにするエヴァンジェリン。右腕はまだ痛いらしいネ、かなりご立腹ヨ。

「エヴァちゃん、いくら何でも言い過ぎやえ? せっちゃんかて悪気が有った訳や無いんやし……」

「……千切れかけた。ここの医療技術をもってしても数日はかかる重傷だぞ」

黙て包帯だらけの左腕を見せてるネ。流石に右腕が無いのを見せたら後々不味いて判断する冷静さは残てたみたいで安心したヨ。
あ、右腕は真名が持てきた外套を羽織て隠してるネ。流石は真名、フォローはバッチリヨ。

「うわ……エヴァちゃん、これ大丈夫?」

「大丈夫に見えるならおまえの目を疑うぞ、神楽坂明日菜。ちなみに茶々丸はかなりの重傷だ……正直いって、私も茶々丸もまともに試験を受けられる状態では無い。残念だったな、ネギ先生」

「そ、そんな……」

ネギ坊主が意気消沈してるネ……無理無いヨ、二人が全教科0点ならネギ坊主は課題失敗で本国に強制送還。せかくの頑張りも無駄になたのだかラ。

「いや、流石にこんな有り様では月曜の学年末試験は延期じゃよ」

おぉ、出たネ妖怪。

「が、学園長!」

「うむ……さ、取り敢えずはここから離れるぞぃ。怪我人は病院に運ばねばならんし、この辺りはまだ危険じゃからのぅ」

確かに……エヴァンジェリンや茶々丸は急いで本格的な処置をした方が良いし、寮もいつ壁が剥がれ落ちるかもわから無いネ。あ、取り敢えず……

「良かたネ、バカレンジャー。まだまだ勉強できるみたいヨ?」

何でそんなに疲れた顔するのカわから無いヨ。







あのやろう、逃げやがった。そんな気配がバリバリです。取り敢えず試験は順延となった模様です。助かったねぇ、ネギ先生?(笑)







以下、ざっくりまとめた感想レス(No.176~181)

>通りすがり六世様

語られることすら無くあっという間に腕が落ちてました(笑)
その内いわせたいなぁ、「私か?私はただの幼女だ」とかを。自分じゃいわないですか、そうですか。


>希亜様

短いのは仕様です、偉い人にはそれがわからんのです!
長く書くとしたらチャージに一月ぐらいかかりそうなので勘弁していただきたい……(汗)


>野鳥様

今回もまさかの不在! サムライ先生DX先生の復活は次回です。
今回の“S”だと通用しないでしょうね。でももし兄様が結婚します、お相手は宗家の方です、という展開だと……もはや誰も止められないでしょう(笑) そういえば宗家の技とか使えるってことは詠春さんって青山詠春だったのかしら?
あとタカミチは紳士ですよ? たとえ変態だとしても変体という名の紳士です(ヲィ)


>シトリン(携帯版)様

最初に謝っときます、名前はコピペなので携帯版とか付いたままです、済みません(笑)
お兄さんは今、非常に重要なことをしています。えぇ、次回辺りにわかりますが、非常に重要なことです。


>q-true様

仮面付けていったら「おまえが止めろよ」的なことをいわれかねないので外してるんじゃないですかね。そうすれば謎の人、ですし。
ある意味逆タキシード仮面ですね、兄様。
後々、仮面を外したら突込みが有る可能性を完全に忘れている辺り、迂闊ですが。


>良様

エヴァ様頑張りました、画面的には血みどろです。
取り敢えずはこれにて暴走羅刹那無双屍山血河シリアス編は閉幕です。次回からはやっとギャグを出せます。



[9440] 第三十四話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:afa6e996
Date: 2010/07/21 03:38
「何とか落ち着いた様じゃのぅ」

「その様で」

学園長が深々とため息を吐く。まあ安堵したのは俺も同じだが。
現在俺と学園長は物陰からアイツらの様子を伺っている。
いざとなったらじゃんけんで負けたどちらかが鎮圧に入る予定だったのだが、出番は無かった訳だ。
いや、出番無くて良かった。先ほどまでの刹那を相手にするのは流石に厳しいものが有ったしなー。

「しっかし何でまた刹那はあんな暴走を……」

「それ、本気でいっとるのかの?」

「?」

「……流石に刹那君が可哀想になるのぅ」

はて、学園長は何をいっているのやら?
扨置き、

「もう安全だろうから離れても良いぞザジ嬢」

「…………」

ぎぅっ

「なつかれとるのぅ」

「首が重い……」

何故だか狙われていたザジ嬢を助けて肩車したは良いが、刹那から逃げ切ったあとも離れてくれないのは流石に計算外。
細身で軽いとはいえ人一人乗せ続けていると血の巡りが悪くなる訳で。こりゃー肩凝りになるかも知れないね。

「取り敢えず刹那君に付いてってあげたらどうじゃね?」

「大事無いと思いますよ? 結構優しく寝かし付けてくれたみたいだし。それよりも大変なのはエヴァンジェリン嬢と茶々丸嬢でしょ」

エヴァンジェリン嬢は両腕大怪我だし、茶々丸嬢なんか大破してるし。

「取り敢えず二人を大学部に運ぶの手伝いますんで、学園長はネギ先生たちへの事情説明や半壊……は通り越してる寮の方をよろしくお願いします」

「あれ? 何かわしって結構大変じゃない?」

「気のせいでしょ。じゃ、俺は台車とか探して来るんでこれで」

「ちょ、サムライ先せ……っていないしっ!?」

取り敢えず説明とかは丸投げにして俺はその場を離れる。に、逃げる訳じゃ無いんだからねっ!





台車を見付けて戻ってみたら学園長の説明が終わったとこでした。具体的に言うと前回のラストの辺り……って、何を言ってるんだろう、俺は。
あと何故か辺りに埃が積もってるな……まるで一年以上放っておかれた部屋の様だな。
扨置き、

「おー、ナイスタイミング、俺」

「サムライ先生……随分遅いご登場ネ」

「うむ、壊れていない台車がなかなか見付からなくてなー」

「そういう意味では無いわ、キサマ今までどこで何をしていた!」

鈴音嬢もエヴァンジェリン嬢も何故だかご立腹のご様子。仕方無い、ここは人柱を立てるか。

「物陰から一部始終を学園長と覗き見してました」

「ちょ、サムライ先生っ!?」

おじーちゃんに口出しされない様にさらに続けて、

「俺としては止めたかったのだが学園長が結構お楽しみのご様子で動くに動けなかったのだ。いや、済まなかったな」

なでなで

「そういうことなら仕方無いヨ……雇い主には逆らえ無いものネ」

「つまり悪いのはむしろ学園長か……」

「なっ!? わ、わしはそんな」

「学園長、迷わず成仏して下さい」

先に謝って矛先を学園長に向けさせ、俺は一歩下がる。ついでに刹那の状態を確認するが大事は無い様子。
腹に打ち込んだ一撃が横隔膜を持ち上げて呼吸を奪い、できた一瞬の隙で顎を打って脳を揺らした様だな。
外傷ほとんど無しで骨折も無し。内臓のダメージは検査せねばわからんが、これも顔色や呼吸から見ればほぼノーダメージだろう。

「いやはやなんとも見事な手並み、古菲嬢はなかなかの功夫を積んでいると見える」

「……刹那とは一対一じゃ無かたアル。私もまだまだアルよ」

何やら不満というか悔しそうな菲嬢。刹那を一対一で止めたかったのか?
しかしなー……先ほどまでの刹那は並みでは無かったからなー。木乃香嬢のことで駄々をこねた詠春さんと同等のプレッシャーは有ったし、正直戦いたく無いな、俺は。
その刹那とやり合って見事に止めたんだからそこは誇って良いと思うぞ? という訳でフォローぐらいはしておこう。

「こうまで優しく眠らせておいてよくいう。刹那……嬢とて容易く意識を刈り取らせてくれるほどにお人好しでは無いだろう?」

「それは……そうアルけど」

「ならば胸を張れ、菲嬢。連携や作戦も見事だったが、刹那……嬢の意識を刈り取ったのは、間違い無く君の技量によるものだよ」

「サムライ先生……ありがとアル、ちょとだけ、気が楽になたアルよ」

「それは重畳」

さて、茶々丸嬢だが……エヴァンジェリン嬢と鈴音嬢は学園長を口撃してるからな。下手に触らずまずは状態確認といこうか。

「茶々丸嬢、具合はどうだ?」

「ソフトウェアは・音声出力ソフトウェア・以外・問題・有りません・ハードウェアは・全パーツの・交換対応が・必要です」

「想像以上の惨状だな。復旧にはどれぐらいかかりそうなんだ?」

「超さん・ハカセが・かかりきりで・およそ・72時間・かかります・ただし・この予測時間は・すべての・パーツの・予備が・存在し・交換する・だけの・時間です・パーツの・手配・調整は・考慮して・いません」

わーお、そりゃまた大変だ。

「マスターの・回復も・同程度の・時間を・必要と・します・ただし・マスターは・立場上・入院・できません・自宅療養と・なります」

まー、そりゃー仕方が無いわな。消滅した腕が再生とか、有り得ない現象は一般人には見せられ無いだろうし。
それにしても魔力が封じられてるのに腕の再生とかできるんかね?

《そこんとこどーなの?》

《再生能力か? 魔法薬を飲んで魔力を底上げすれば即時再生は無理でも数日かければ腕一本ぐらいは何とかなるはずだ……》

なるほど、茶々丸嬢のいっていた時間はそれを服用するのが前提か。

《ならばその間、身の回りの世話ぐらいは見てやらんことも無いぞ》

《不要だ。キサマに借りを作ると色々と面倒な気がするし、何より私には茶々丸が》

《居ないだろ。茶々丸嬢は当分メンテだぞ?》

《む……し、仕方無い、キサマに私の身の回りの面倒を見させてやる、光栄に思え!》

《何というツンデレ》

《誰がだ! そもそもどこにデレが有るんだ、どこにっ!!》

《未来に?》

《有るかーっ!》

流石はエヴァンジェリン嬢、打てば響くとはまさにこのことだな。

「まー、安心して養生しろ茶々丸嬢。エヴァンジェリン嬢の身の回りの世話は俺が見ておくから」

「よろしく・お願い・します・先生」

こちらは素直でよろしい。む? 近付いて来るこの気配は、

「学園長への説教は終わったのか、鈴音嬢」

「このかが必殺の『おじーちゃんのあほー、ばかー、だいきらいやー』のコンボを決めたヨ。今は灰になてるネ」

冥福を祈ろう、学園長。あなたの死は無駄にはしない。

「ところで茶々丸嬢を台車に載せたいのだが動かしても大丈夫か?」

「落とさない様に気を付けて欲しいネ。今の状態での落下はシステムを壊しかねないヨ」

「心得た。ザジ嬢に葉加瀬聡美嬢を呼びに行ってもらっているから、向こうは準備を始めているはずだ」

真摯に「ザジ嬢にしか頼めんのだが」とお願いしたら割りとあっさり離れてくれたザジ嬢。彼女もまた素直な良い子であったなー。

「さき悲鳴混じりの電話が有たのはそういう訳カ……あぁ、これで三日は徹夜確定ネ、気が重いヨ」

「だがほかには任せられん仕事だろ? 頑張れ、鈴音嬢」

なでなで

「ン…………元気充電完了ネ! 今の私なら神だて殺せるヨ!!」

「殺さんで良いから直してやってくれ、鈴音嬢」

ちょっとどころじゃなく先行き不安だぞ?





さて、茶々丸嬢を鈴音嬢と聡美嬢に任せ、現在はエヴァンジェリン嬢を肩車して帰宅中である。

「早く直ると良いなー」

「まったくだ。キサマと二人きりなど、ぞっとせんな…………そうか、二人きり、か……」

「何やら表情が弛んでいるが……取り敢えず買い物をして帰るぞ」

「買い物? 何を買うのだ?」

「食材だ。あと入り用なものをいくつか、な」

「まさかキサマが食事を作るというのかっ!?」

「ほかに誰が居るというのだ」

「……一つ聞くが、腕の方は信用して良いのか?」

愚問だな。

「安心しろ、エヴァンジェリン嬢」

「そうか……良かった。私も料理は苦手だし、何より右腕がこれでは」

「まだ一人も死者は出ておらん」

「茶々丸ーっ! へるぷみーっ!!」

「冗談だ。これでも料理は得意な方だ」

「……ほ、本当だろうな?」

まー、比較対象は御神宗家の人間だが。
それにしてもエヴァンジェリン嬢が涙目になるとか……殺人的料理の経験(トラウマ)でも有るのか?

「茶々丸が初めて作った時、アイツにはまだレシピも調理技能も入っていなくてな……」

……詳しく聞くと本気で泣きそうなのでこの話題は止めにすることとしよう。

「あー、エヴァンジェリン嬢は苦手な食材は有るか?」

「ニンニクとネギは絶滅すべきだと思う」

「即答か」

「まぁ、ネギは生で無ければ使っていても構わんが、ニンニクはダメだ。アレは舌が死ぬからな」

「真相となると通常の吸血鬼の弱点は克服していると聞くんだが」

「嫌いなものは嫌いだ。悪いか?」

個人的な嗜好の話らしい。弱点では無い、大嫌いなだけだ、といったところか。

「では餃子でも作るか」

「思いっきり入ってるじゃないか!」

「本番中国では入れないらしいぞ? 付け合わせで一緒に食べることはあるらしいがな」

ネタ元は美味○んぼなので信憑性は薄いが。

「そうなのか? それなら構わんが……」

ちなみに日本風のやつしか作れないし作る積もりも無いが、それはいわぬが花だろうな。





スーパーにて食材をかごに放り込む。ニンニクは見えない様にこっそりと。その上に被せるように色々と食材を積んで偽装完了。

「待て、なんだコレは」

「ふむ、目敏いなエヴァンジェリン嬢」

「今日は餃子だといっていたのに何で徳用ワンタンの皮なんだ?」

「こちらの方が蒸し焼きにした際、モッチリとするのでな」

「ならこっちの食材は? サラダでも作る気か?」

「あー、それはだな」

一拍置いて重々しく告げる。

「次回を待て!!」

「メタな発言をするなーっ!」







理想郷よ、私は帰ってきたーっ!
というわけで一年振りのご無沙汰です。このまま年一更新とかは無いと思えたり思えなかったりなので続きを読みたい人は神に祈ると心に平穏が訪れると思う。更新が訪れるかはわからないけれど。



[9440] 第三十五話
Name: シノオカ◆683d23cf ID:b8c79370
Date: 2011/07/21 03:28
そんなこんなでやっとこ帰宅。取り敢えず要冷蔵は早々に冷蔵庫へ。

「む……済まん、降ろしてくれんか?」

肩車したままだったエヴァンジェリン嬢が何やらモゾモゾと腰を揺らしながらいって来る。

「どうかしたのか、エヴァンジェリン嬢」

「い、良いからとっとと降ろさんか!」

「だが断る。このサムライ先生DXの」

「早くせんかーっ!!」

ポカポカと頭を叩かれたので仕方無くネタは中断してエヴァンジェリン嬢を降ろす。
途端に急ぎ足でエヴァンジェリン嬢が向かった先を見て納得し、一声かける。

「手伝おうか?」

「要らんわっ!!」

手、使えないだろうに……。取り敢えず雑巾ぐらいは用意しておくか?





「しばらくは介添えしてやるからいい加減陰を背負うのを止めにせんか、エヴァンジェリン嬢」

あの後、どことはいわんが床掃除をしたり、エヴァンジェリン嬢の下半身を洗ったり、洗濯機を回したりと忙しかったので現在時刻は20時を回った辺り。夕食にはやや遅い時刻になってしまったな。
ちなみに何があったのかはエヴァンジェリン嬢の名誉のために伏せさせていただく。
読者のみんなも何があったのか考えたりしちゃ駄目だぞ。おにーさんとの約束だ。

「安心しろ、茶々丸嬢以外にはいわんから」

「茶々丸にも秘密でお願いします……」

本気で落ち込んでいるみたいだな、普段の微笑ましい尊大さがなりを潜めているし。

「あー……失敗は誰にでも有るものだ。過ぎたことを悔いてばかりでは前には進めんぞ?」

「この歳になってする失敗じゃない……」

「外見的にはまだ大丈夫だと思うぞ?」

「それで慰めているつもりかっ!?」

そのつもりなんだがなー。
正直、今のエヴァンジェリン嬢で遊ぶのは気が退けるしな。
それに外見年齢ならかなりギリギリかも知れんが、実年齢ならむしろ――。

「どーした、エヴァンジェリン嬢」

「貴様、今物凄く失礼なことを考えていなかったか?」

「はて、何の事かなエヴァンジェリン嬢。疲れているのか? それとも呆けが来たのかね?」

「いーや、絶対に考えていた! あと呆けとはなんだ、呆けとは!!」

「木瓜、バラ科の落葉低木。樹高約2メートル。開花時季は3月から4月、葉より先に開花する」

「そのボケではないわー! 貴様アレか、私を虚仮にしているんだな、そうだろう!!」

「苔、コケ植物や地衣類・シダ類・種子植物のごく小形のものの総称。湿地・岩石・樹木等に生える」

「うがーっ!!」

「せめて人語で返してくれないか? 惚けにくいのでな」

「くぅぅっ、この腕さえ動けば今すぐにくびり殺してやるものを……」

「殺されてはかなわんな、それでは生きていられんではないか。まー、なんだ。エヴァンジェリン嬢の様に愛らしい外見では被害妄想の誇大妄想は似合わんよ」

取り敢えず頭を撫でて誤魔化しておこう。む、子供扱いは気に入らなかったのか? 顔を真っ赤にして……御冠だな。
まー、エヴァンジェリン嬢の見た目に被害妄想の誇大妄想が似合わんのは事実だ。アレはやはりピクニックフェイスの糞デブや豚肉スフレや痴豚に限る。
扨置き、

「そろそろ食事としようではないか」

「あ……ぅ、む、そうだな……」

撫でていた手を退け、食卓の準備に取りかかる。
台所にあった中でも一等大きなフライパンを十分に熱し、胡麻油をさっとひいて神速モードで餃子を並べる。芳ばしい香りが鼻に届くと同時にお湯を差して再び神速モードで蓋をする。
蒸し焼きが終わるまでの間にご飯とスープの準備。おお、流石は最新の電子ジャーだな。ご飯が立ってるじゃまいか。
言っておくが、ジャマイカ米じゃないぞ。魚沼産コシヒカリだ。なんと言うか、エヴァンジェリン嬢の金の使い方はおかしい気がする。どれだけ贅沢にできているんだ、真祖の吸血鬼。
スープは時間がなかったのであ○印の炒飯の素を湯で溶いたもの。醤油を一滴落としてすり胡麻をパラリ、と。
む、音からするに餃子は出来上がったな。蓋を開けて大皿に移す。ふむ、こんがりきつね色だな。
と、言う訳で、

「「いただきます」」

熱々のうちにいただきましょう、そうしましょう。
ちなみにエヴァンジェリン嬢はまだ手が使えないので俺が食べさせなければならない。差し向かいでは面倒なので膝の上に乗せようとしたら暴れられた。
冷めたら味が落ちるからと無理矢理説得しなんとか大人しくしてもらった。
さて、まずは味見もかねて俺の分を……。

「まずは私からだな、もらうぞ」

取ったら盗られた。いや、エヴァンジェリン嬢、それは、

「ぶはっ!?」

「む、エヴァンジェリン嬢。レディにあるまじき声をあげながら噴き出すのはどうかと」

エヴァンジェリン嬢のヒロイン度が12下がった、と心中にて呟く。

「貴様! 本場ではニンニクは入れないんじゃなかったのか!?」

「うむ、本場では入れないな」

ネタ元のせいで信憑性は低いが。ネタ元? 前話参照でよろしく。

「ならば何故入っているんだ!」

「?」

「不思議そうな顔をするなっ!!」

「俺はニンニク好きだから、作るとしたら基本日本式だぞ?」

「聞いとらんぞっ!」

「あー、言い忘れてた。メンゴメンゴ」

若干棒読み気味に言ったらえらく睨まれた。

「くぅぅっ……美味いのに、美味いのにニンニクが主張してくる……っ!」

「大変だなー」

「誰のせいだっ!!」

「俺の料理の腕のせいか?」

これで不味かったり凡庸な味だったりすればエヴァンジェリン嬢も迷わずに食べないって選択肢をとったんだろうが、な。
苦手食材使いつつ美味いと思わせる自分の技量が恐ろしい。

「ちなみにここら辺はニンニク使っていないぞ」

まー、苦手と言っていたからなー。単なる食わず嫌いで食べたらいける可能性もあったが、念の為にニンニクを使っていないものも用意しておいたんだ。
ニンニクを使っていない餃子を取って口許に運ぶと、恐る恐る口を開くエヴァンジェリン嬢。何故か目をギュッと瞑っている。むー、こうして見ると意外とエヴァンジェリン嬢も小動物的な愛らしさを発しているな。

「むぐ、んぐ…………こ、これはっ!?」

「うむ、ツナチーズ餃子だ」

単純にニンニク抜き餃子を作るのも面白くないので、ツナ缶と刻みタマネギと塩コショウを和えた餡に賽の目にしたチーズを混ぜて包んでみたんだが、どうやら成功した模様。
気に入ったのかパクパク食べる様は何とも微笑ましい。ご飯を食べさせろとか、次はスープだとか色々と注文をつけられて俺が食べる暇がないが、自分が作ったものを実に美味そうに食べる様子を見ているとそんな些末事は気にならんものだなー。
ん?

「ふむ、エヴァンジェリン嬢」

「んぐっ…………何だ?」

「お弁当付いてるぞ」

ひょいパク

「~~~~!?」

子供っぽいところを指摘されたからか、エヴァンジェリン嬢が真っ赤になる。
ふむ、実に平和な夕食だ。







感想掲示板を見たらこんな作品でも更新時期を思い出してチェックしている人がいらっしゃるようで……ありがとうございます。短くて済みません。


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