――トウガ! もう朝よっ。ほら早く起きなさいってばっ!
――上手くいったんだ、やるじゃない。おめでとっ、トウガ。
――これ貰っていいの!? ……あ、ありがと……。
…………ごめんなさい…………、『さようなら』
――――――――
「……なんか嫌な夢見た気がする……」
もう陽が高い昼過ぎに目を覚ましたトウガは、頭をポリポリと掻きながら小さく呟いた。二度寝するかなぁと、ぼんやりしながら掛けられた毛布を引っ張り、眩しい光を遮ろうとしたが――
「なんだこれ」
自分の寝床である宿の安い部屋に添え付けの毛布は、粗雑な作りであまり寝心地が良いものではない。だがそれとは段違いに肌触りの良い毛布が、彼の意識を揺り起こした。
上半身を起こし、自分に被さっている毛布をしげしげと眺めつつ周りを見渡し、そうしてようやく自分が普段と違う所で寝ていた事に気付く。
下も布団やベッドではなくソファーで横になっていたようだが、それがまったく気にならないフカフカ具合である。
昨晩はどのようにして眠りについたのか思い出そうとしている丁度その時、(直接の)原因がドアを開け現れた。
「おお、起きておったか。昨晩は随分と疲れたじゃろうが、よう眠れたかや?」
最近の寝床である安宿の一室とは比べ物にならないというのが、トウガの感想だ。うなずいた彼にユナは「うむうむ、それはなにより」と微笑んで返す。
そして部屋に入ってきた彼女は窓を開け喚起をすると、そのままトウガの毛布を剥ぎ取り畳んで隅に置く。髪を後ろで括り、エプロンをつけてテキパキと動くその様は、まるで新妻のようでもあった。
「ぬぅう、すげぇ良い肌触りだった……。『買いたい贅沢品リスト』入りだな、あれは」
「快眠を妨げてしまったならすまぬが、昼食が出来ておるゆえにな。……そんなに気に入ったなら、ここで寝泊りしてくれても妾は……」
段々と尻すぼみになるユナの台詞。窓際で大あくびをしながら思い切り背伸びをするトウガが、それを聞き逃したのは良かったのか悪かったのか。
顔を赤くしてスリッパでパタパタと音を立てながら、彼女は部屋を出た。一方トウガは人の家であまりグータラは出来んなぁと動き出し、ふと「風呂……は図々しいし、そもそもあるのか? でも、せめて洗面台は借りんと臭いか」と思ったのだが――
「言い忘れておった。風呂を沸かしておる最中じゃ、飯の後で使うがええ」
――ひょこっとユナがまだ幾分赤いままの顔を出し、彼の考えを見透かしたかのような事を言った。
「ぁ……ぁあ、わかったよ。ありがと」
とりあえず飯の前に顔だけ洗いたいと告げたトウガは、ユナに連れられ洗面所で顔を洗い、タオルも側で待っていた彼女に直接渡してもらった。
そして濡れた短い髪をガシガシと拭きながら、食卓につく。
何だか彼女が、妙に甲斐甲斐しく世話を焼いてくれることを感じないではなかったが、元々ユナはしっかりと自活した女性である。それゆえ彼は、「出来る女」の朝はこんな感じなのかな?と、まだいくらか鈍い頭のまま考えていた。
「飲み物はミルクと紅茶、どちらが良いかの?」
「ぅぁー……紅茶頼む」
熱々のソーセージにスクランブルエッグ、クロワッサンを連想させるパンとその脇にはバター、サラダの盛り合わせにポタージュスープ、そしてスライスされたレモン等各種果物。並べられた食事は湯気をたたえ量もたっぷり。トウガの食欲は大いにそそられた。
「叔母上を呼んでくる。先に食べても構わんぞ」
腹の減りは十分だが、ユナ達もまだ食べていないようなのでとりあえず待つ事にする。一応薄く切られたレモンを紅茶に入れ、それで喉を潤すことだけはしておくようだ。
「トウガ君も起きたみたいね。十分睡眠は取れたかしら」
背もたれに寄り掛かり、なんとなく優雅な午後を演出する気分で半分目を閉じ紅茶を啜っていると、さして時間の経たないうちにユナとレシャンがやって来た。
「ソファーでもぐっすり眠ってたみたいだからそのままにしておいたけど、寝違えてたりしてない?」
「いや、むしろいつもよりよく眠れたぐらいですよ。宿の堅いベッドとじゃあ比較になりゃしない。――どうやってソファーに横になったかは、さっぱり覚えてませんけども」
「それはねぇ、ユナちゃんが――」
「っお、おびゃぅ……ゴホン、叔母上!」
くすくすと笑うレシャンに、ユナは詰まりながらも声を荒げる。トウガはそれにどうしたとツッコミを入れるべきかを考えたが、とりあえずは放置することに。
「まぁそれは大した問題じゃないわね。それよりもトウガ君、今日のうちの昼食はどうかしら?」
「そりゃもう美味そうで、見ただけで腹が鳴りそうっすね。普段倹約気味の食生活ですし」
「それはよかったわ。じゃあこれ以上待たせちゃ悪いし、食べるとしましょうか」
和やかに始まる食事風景。
朝は(金銭的な理由で)十秒チャージ、昼は値段の割りにはイマイチな携帯食、晩のみそれなりの食事というのが最近の食事事情だったので、昼時からの彩り豊かなタダ飯を喜んで食べるトウガ。
いつも叔母がいるときは分担し、効率よく料理するのが当たり前。しかし今回はおばを休ませ「妾だけに任せよ」と眼前の品全てを作り、それを貪る男の様子を赤ら顔で窺うユナ。
そしてそんな二人を好ましく思いながらも、優雅に食事を摂るレシャン。
三者三様だが、それは皆に憂いの無い心地良い団欒の場であった。
「そういえばトウガ君。せっかく整った装備、昨日の闘いでかなりボロボロになっちゃったようだけど……修復の資金とか大丈夫?」
「しゅ、うふ……く? ……えぇーとぉ……今回の依頼料は期待しちゃってもよろしいんでしょう……か?」
食事の中、ふと聞かれたことにトウガの口が半開きになる。愛想笑いにもなっていない微妙な半笑いは、お世辞にも冴えた表情とは言えなかったが――
(そういう顔もするのか。うむ、男とて愛嬌の一つもなくばな)
頭が茹で掛けの少女の目は見事に曇っていた。
「ちゃんとした交渉は無かったけど、『報酬は十分に用意する』ってこっちが言ったことなんだから、トウガ君は強気に要求しても良い立場なのよ?」
「ほおぅ、なるほど」
「今回は頼んだ方も遂行した方も事情があったわけだけど、普通あり得ない状況よね、これって。依頼前にそういったことはちゃんと決めておかないと危ないわよー。仕事をした後にゴタゴタが起こるのは、疲れるなんてものじゃないからねぇ」
「……学ばせてもらいます」
「フフ、とは言え私は今回の事にケチをつける気なんか微塵も無いわ。で、肝心の報酬の方なんだけど……現金で40000ダラー、さらにオマケもつけるってところでどうかしら」
「40000っ!?」
この剣と魔法(トウガは拳と筋肉)の世界、通貨はダラーだが具体的に数字で表された時、どの程度の価値を持つのかというと――
トウガが感じたうえでの比較話だと大体1ダラー=日本円で10円といったところであろうか。紙幣は無く1ダラー銅貨、10ダラー銀貨、100ダラー金貨が使われている。
ちなみに銀貨と金貨は見た目はともかく、実際は銀や金のみで作られているわけではない。それらの硬貨は銅貨を基準にそれぞれその10倍の価値を持つ銀、100倍の価値を持つ金のみ含み、他は安価な別の金属で出来ているのだ。
国が興り、国が滅ぶ。それが身近にある世界では、ただの紙になりかねない紙幣などよりも、鉱物的価値(さらには魔法的価値)など一定の普遍性を保てる硬貨が強いという証明とも言えそうである。
なおギルドや両替商など金勘定が必須なところでは、銀貨や金貨に繊細な『アナライズ・メタルス(金属分析)』の魔法を使い偽硬貨を暴き、トラブルを回避するようにしているとのこと。
さらに付け加えるなら、そんな大きな金銭が動くところでしっかりとした保管庫があるならいいが、旅に出る人が結構な金を持ち歩く場合、硬貨ではなく相応の砂金の粒等に変えるのが便利だという(両替の手間賃を考えなければ)。
トウガのようなルーキーがギルドで受ける依頼の報酬は、大体500~3000といったあたり。そして彼の一日の食費&宿代は約500ダラー。文字通り桁違いの報酬である。
「不満が無さそうな反応で安心したわぁ」
「トウガよ、そなたのした事を思えばこれでも安いと妾は感じておるのだ。なんならもっと融通――」
「ユナちゃんスト~ップ。これから私達にも即金が必要になるって言ったでしょ? 気持ちも分かるけど、優先順位は間違えちゃダメよ」
レシャンのお小言がユナを止める。それに少々不満があるのか、彼女はぷ~っと膨らんで抗議の意思表示だ。
「2人で出した折衷案をいきなり変更しないように。ちゃんとオマケの方もトウガ君向けにチョイスしたでしょう? ああトウガ君、ちょっと待ってて」
そう言うと彼女は部屋を出た。だがすぐに戻ってきたので、どうやら目当ての物はもう用意していたようである。
レシャンが手にしていたのは大きなチェスの駒のような短杖……だろうか? 別にそこまで造形が似ているようなものではなかったが、特徴として下の部分が平べったくなっており、立たせたまま置けるのでチェスを連想させるのだ。
「これは……有名な彫刻家の置物とか? いやしかしそんな物を――」
「贈るわけがなかろうが。これはな、野外で便利な『エリア(領域)』という魔法が使える魔法具なのじゃよ」
「……説明頼む」
「うむ。お主は前に、虫が苦手と言っておったじゃろ? この魔法はのぅ、触媒を中心に術者の望まぬごく小さな生物を排除、さらにそれを乗り越えてくる存在にもある程度『近づきたくない』と思わせる効果があるんじゃ。範囲は半径にして大人2人分程度で、さして広くないがな」
トウガは現在ギルドの安宿で寝起きしている。清潔さと所持金の兼ね合いで最低ランクより一つ上の部屋を選んではいるが、現代日本の多くの住居に比べれば明らかにボロと言っていいものだ。
このユナとレシャンの住居のように手入れが行き届いた家ではほぼ気にならないが、「住めれば良い」程度の部屋では虫やら何やらが居そうで気が散ってしょうがない。共同トイレなども清掃が十分とは言い難いのが事実である。
それを以前の雑談の中で、トウガが2人に愚痴ったのを覚えていたのだろう。
「マジか、そりゃあいい! 実にイイ!」
大きめの虫が出ただけでスプレー片手に騒ぐような繊細?な神経の持ち主には、とても強力な援軍になるに違いない。
生活水準の向上を目指す彼としては、とてもありがたい一品だった。
「そっ、そうかっ! ……うむ、気に入ってくれたなら何よりじゃ」
「一回で使い切りの消耗品バージョンもあるんだけどね。使っても精神力が減らないのはいいけど、一つ700ダラーぐらいするし排除効果しかないのよ。まぁ多少余裕のある人が、2,3週間に一回寝室で使うぐらいかしら?」
なるほどバルサンか、と身も蓋も無い感想を持つトウガ。用途的には似たようなもんではあるが……。
それと同時に彼は、ふと疑問に思ったことを口にする。
「にしても魔法の道具がオマケって……、これ店で売るならいくらぐらいするんですか?」
使い切りではない魔法が使えるアイテムというのは、その内容を問わず「えらく値が張る」というのがトウガのイメージだ。それをオマケと言われれば、実際の売買価格が気になるのも仕方がないだろう。
「修得難度はそれなり、野宿で毒虫の排除とか利便性はわりと高い魔法だし80000ダラーの値は付くわよ。ん~オマケって言い方はちょっと軽かったかもね」
とんでもねー。折衷案の末のオマケで、その値段が付くんですか。最初にユナが提示した額はどんなもんだったのか……。
食事も終わり食後のまったりタイムを過ごしていると、レシャンが席を立つ。
「いつもより遅いけど、そろそろお店の方を開けるわ。トウガ君はゆっくりしていってね~」
軽く手を振り彼女は部屋を出た。それを見送りながらトウガは、この世界に来てからめったに口にすることのなかった、テーブルの中央に置かれた高級お菓子を手にする。
「ぁ、そういやさぁ、ユナた「ァッ、アテンザ!」ちぁ……」
トウガが思い付いた事を聞こうとすると、急にユナがそれに被せる様に裏返り気味の声を出す。わずかに下を見て目線を合わせようとはしない彼女の顔を窺うと、これまた何故か赤ら顔。
「トウガよっ。た、頼みがある! 妾はもう十年も、人との親しい付き合い方というものをした事が無いっ。じゃから、その、リハッ、ビリッ、のたっっ、めにっっっ――――二人きりのときは、アテンザの名で呼んでくれぬか……?」
裏声気味のままユナは言葉を続け、その調子はドンドンヒートアップしていった。しかもそれに合わせ段々早口になり、終わりの部分だけ急にボソボソとしぼり出すように喋るので聞き取りづらい事このうえない。
そもそも早口のところとラストの文意がちゃんと繋がっておらず、微妙に意味不明である。
彼女の勢いに押されつつも、なんとかその意を汲み取ったトウガは目を丸くしながら、カクンと首を下げ応えた。
「……はい」
「ッッ!!! ――感謝する。ぁ、話をさえぎってすまなんだ。では……改めて聞いてくれ」
「……ぇー、ユn……アテンザ達は今後もこの街に居るのか? それともどっか違う所にでも行く?」
早速呼び方を間違えかけたトウガだが、ユナの目がギラリと光った気がして慌てて言い直す。
彼がこんな事を聞いたのは、彼女達の行動に合わせて自分の今後も決める気でいるからだ。別の街や長旅にも興味はあるし、東地区だけとは限らない以前の「トウガ」の知り合いの目を、いつまでも気にするのも気分が悪い。
ユナのこれまでの在り方を考えれば、住む街を変える事は十分考えられる。自身はコレといってここにこだわる理由もないし、それならこの可愛い少女について行ってみようと思っているのだ。
「その事については叔母上とも軽く話した。カースが解けた以上、放っておけばまた何か仕掛けられるやもしれぬし、そもそもこのまま住み続けたいとも思わぬ。なので店も閉めて、違う街に家財道具含めて引っ越すつもりじゃ」
「そうか。それならさ、俺も「場所は海に近いところがええのぅ。妾も知識でしか知らぬゆえ興味は大きい。漁業が盛んで、海産物も豊富ならばなお良しじゃ」
「ぁ、ぁあ。それで俺「引越し先でも店は開くつもりじゃが、最近ここも手狭に感じられるようになってのぅ。もっと大きいところに住みたいが、まぁ仮に予定よりも大き過ぎる家になったとしたら、一人ぐらい下宿で住まわせるのもありじゃな」
「ぁの、だから「そこでじゃトウガ、連日ですまぬがお主に依頼がある。馬車を使った旅になるじゃろし、その護衛という仕事じゃ。昨日のやつほど報酬は出せぬが三食昼寝付き。先程の食事が気に入ったなら、妾がいくらでも作ろうぞっ。そうじゃ、忘れておった。確か妾のみ、み、み、水着が見たいと言っとったのっ。妾もまだ着たことがないが、そなたの頼みなら仕方ないっ。見繕っておこうっ!」
「ぇぇと「きっとよい旅になるぞっ。ん、着いた後での身の振り方や住むところが心配か? なら安心せい。それも報酬としてこちらが面倒を見ようではないかっ! トウガよ、冒険者なら見聞を広めるために色々な所に行く事も必要じゃぞ。ならばこの依頼は、きっとその意味でもお主の糧となるはずっ。さぁ、言うのじゃっ、その依頼引き受けたとっ! 言えっ、迷うなっ、躊躇うなっ、頼むからっ、お願いっっ……一緒に行くってっっ!!」
「……は、はい。引き受け、ます」
ユナは喋るうちにまた熱くなっていった。しかも今度はそれが長く、途中でトウガが口をはさもうとするのを妨げるように続き、仕舞いにはテーブルに身を乗り出す形にまでなっている。しかし、前のは緊張して彼女自身思いがけず調子が上がっていったのだが、今回はある程度意図的にこうした理由があった。
恐怖したのだ、彼に「NO」と言われる事、彼と離れてしまう事に。
自分は『枷』を外してくれたトウガに報いるためにも、また囚われるわけにはいかない。だがそれゆえこの街を離れる自分達家族とは違い、理由の無いトウガがそれについて来るはずがない。
容姿には自信がある、そうなるような出自だ。話も合う、これは昨日の闘いの前からそうだった。今後は食事の場などを増やせば、それもより深いものになるに違いない。
そんな自分と彼の今の関係を一言で述べると何か? ……ただの「友人」である。このままじゃダメだ。もっと親密になりたい。具体的には、男女の「キャッキャウフフ」が言える仲に!
ユナは考えた。十分な頭脳と、全然足りない男に好かれるための知識を総動員して考えた。トウガと共にあり、さらに関係を進展させる方法を。その結果が――これである。
まずはとにかくアピール。料理や金銭面など、家庭的、献身的な部分問わず「それはどうなのよ」と思う程にアピールをして、トウガを旅の馬車に乗せるのだ。それさえできれば最低3,4日は同じ狭い馬車で過ごす事になるし、新たな土地では海水浴などイベントをこなす事も望める。
増える二人だけの時間、予期せず触れ合う指先、乱れた服装……にょほ、ほほ、ほふふふふ。
叔母の存在はどうしたとか悪い意味で尽くす女になり過ぎではとか、様々なツッコミが飛んできそうだが多少フォローを入れるなら、それは自身に対するコンプレックスゆえの過剰さがあった。
トウガは確かに並び立てる存在ではあるが、それでも自分の異形ぶりが「普通」の女に比べマイナス点なのは否定できないと、ユナは心のどこかで今でも考えている。だから、多少みっともなくてもまずは押すしかない、とも。
まぁこれらの事を計画した時、馬車で何故か同じ毛布に包まろうとする妄想までこなした少女のハートの前では、そんなものは屁のツッパリ程度の要素に過ぎないのかもしれないが……。
一方のトウガというこの男、彼は別に鈍感なわけではない。なのでユナの一連の言動から「自分に好意を持ってくれてる?」と思ったりもしたのだが、とても確信には至っていなかった。
そもそもこれまで彼は、身近に可愛い娘がいればその仕草一つ一つに「自分に気があるのではっ!」などと「よくある哀しい男子学生」な反応をし、その度に小さな失恋?を味わってきた『漢』である。まぁそれは恋愛に不自由する彼の友人達の多くも通った道、トウガが特別なのではない。
そして今回、今まで見てきた中でも最上級の娘が投げる剛速球に、人生初のヒットを成功させたのだが肝心の跳ね返したボールを見失ってしまっていた。
ポールに当たった? バウンドしてスタンドイン? 盛大なファール? それともピッチャー返しでやっぱりアウト? 投手のユナの反応で多少は類推したいところだが、生憎トウガは恋愛という種目のルールをよく分かっていなかった。本当は超特大の場外ホームランなのだが。
結局のところ、ユナの反応が大き過ぎてトウガが考えうる「好意の表れ」を逸脱してしまい、それが彼女の想いをよく分からないものにしていたのである。
ちなみに――――部屋のドアの前で見事なorzな格好をとる人物が一人、実は聞き耳をたて姪の空回りっぷりを嘆くレシャンがいた。
「……ユナちゃん、そうじゃない、そうじゃないでしょ~~~~……」
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HDがクラッシュ……、バックアップ取ってなかったから書いてた部分も消えて泣きたくなり、遅筆なのもありやっとこさ四ヶ月ぶりの更新です。まさに「ジャガーノート」H「EA」Dクラッシュで轢かれた気分ですね。
まったりパートですが、甘いかどうかイマイチ分かりませんw(ヤンデレ分も大して無いなぁ) なんだか悪い男に引っ掛かりそうな娘になっていくユナが心配です。まぁその男はアホみたいな強靭さが求められますが。
昨今のライトノベル等の主人公は鈍感系、つまり「顔が赤いぞ、熱でもあるのか?」や「俺が好き? そんなことあるはず無いって」が標準装備な気がしますが、むしろ男子学生は『ちょっと可愛ければ相手問わず、休み時間に名前を呼ばれただけなのに見当違いな敏感さで「脈ありっ!!」、そして勝手に自滅』が基本でしょうw
「最近の主人公に物申す」は他にもあるのですが、それは次回以降に……