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[9906] ひぐらしのなく頃に剣~騙神殺し編~【とらいあんぐるハート3×ひぐらしのなく頃に】
Name: 剣の舞姫◆9c21d489 ID:6b6ecf66
Date: 2009/06/28 23:37
この作品は作者が僅かな暇つぶしに作った作品です。そのため、続けるかどうかは感想を読んで決めます。好評なら続けますし、批評なら削除するか、余裕のある時に改定してみようと思います。

なお、作者は永遠を担う風の御神をメインに書いているので、続けるとしたら更新ペースは亀のように遅いです。


注意書き

・作者お得意のご都合主義があるので、そういうのは嫌いだという方はご注意ください。
・ひぐらしの世界に恭也みたいな戦闘民族が介入するのは勘弁という方は引き返してください(でもできれば見て欲しいと思う作者の願い)
・これは決して練習用の作品ではありません、好評なら本当に完結まで頑張るので感想は必ず書いて欲しいです。



[9906] プロローグ
Name: 剣の舞姫◆9c21d489 ID:6b6ecf66
Date: 2009/07/11 18:18
ひぐらしのなく頃に剣
~騙神殺し編~

プロローグ



 時は平成15年6月、海鳴市に住む高町恭也が大学3年になった夏。恭也はゼミの課題で日本の歴史、特に過去に起こった災害などのレポートを作ることとなった。
 最初は阪神淡路大震災について書く心算でいたのだが、なのはに教わりながら見ていたインターネットの『日本の災害』というページにあった言葉が気になった。
『雛見沢大災害』
 その名前は聞き覚えがあった。今から20年前、昭和58年の6月××県鹿骨市にある雛見沢という村を突如襲った大災害の名前だ。
 興味を覚えた恭也は雛見沢大災害のページを開いて見た。内容は恭也が知っている事は勿論、災害の内容や被害者の数、それと雛見沢村についての事が書かれていた。

「毒性の強い火山性ガスが一晩で村を覆い、村人は全員死亡または行方不明で、死者・行方不明者の数は2000人にも及ぶ・・・」

 確かに大災害と呼ぶに相応しい出来事だが、恭也は何か腑に落ちなかった。書いてある自衛隊の対応は的確だが、その対応の早さが異常だった。素人なら気付かなかっただろうが、見る人間が見ればその異常性が理解できるし、何より怪しいのが村の調査を当時の政府が禁じていた事だ。

「・・・・・・ん? 隠しページ、か?」

 何となくマウスを動かしていた恭也が何も無いところでアイコンが矢印から指に変わったのを見て隠しページの存在に気付いた。

「っ!?」

 隠しページを開いてみると、警察のパスワードが必要と出たので、以前リスティが教えてくれたパスワードを入力してクリックすると、真っ黒なページに一枚の写真が載っていた。小学5年生位の少女が惨殺されている写真だった。その横には更に驚愕する事が書かれている。

「彼女の名は古手梨花、雛見沢御三家の一つ、古手家の最後の一人で、雛見沢大災害の後に古手神社の境内にて他殺体で発見された。死因は腹部を切られ大量失血した事による出血性ショック死、死亡推定時刻は大災害直前の夕方から深夜前の間で、雛見沢大災害の後で発見された唯一の他殺体・・・か」

 明らかに警察か警察関係者が書いたのであろう内容だった。何故このようなページが隠されていたのかは解らないが、これで恭也の選択は決まった。雛見沢について調べること、それを即座に実行した恭也は先ず雛見沢についてのホームページを片っ端から検索、印刷を開始した。

「災害直後から雛見沢は閉鎖されていたが、最近になってその閉鎖も終わり・・・一般人も自由に行き来できるようになったが、訪れる者は殆ど居ない」

 それからもう一つ、大災害の日に雛見沢唯一の診療所医である入江京介という人物が死亡している。死因は睡眠薬を大量に飲んだ事による中毒死で、状況から自殺と断定。遺体が発見されたその日の内に捜査は打ち切られた。その捜査打ち切りの際にも政府が何かしら介入したらしく、入江医師の死には何か秘密が隠されているのではないかと思われている。

「・・・雛見沢か。善は急げだ、行ってみるか」

 早速恭也は旅の準備を始めた。完全武装一式を整え、携帯電話と財布、通帳、カードも鞄に詰め込んで、レポート用紙やカメラも忘れずに鞄に入れていつでも出発できるようにする。後は母や家族に雛見沢に行く事を話すだけだ。

「かーさん、話がある」

 丁度休憩で家に戻ってきていた母・桃子に雛見沢へ行く事を伝えた。レポートの事は勿論、少し気になる事もあるからと言ったらOKをくれた

「でも、雛見沢ねぇ・・・たしかあたしが学生の頃に大災害で村人全員死んで閉鎖されたって聞いたけど」
「最近閉鎖解除になったらしい」
「そう、気をつけなさいよ」
「ああ」

 部屋に戻った恭也は最初に見たページを印刷した紙を見た。そこには雛見沢の地図が書かれているので、忘れず持っていかなければならない。



 三日後、恭也は黒いスーツに身を包んで旅行鞄を手に海鳴を旅立った。夕べの内に家族には急遽雛見沢へ行く事は伝えてあるし、電車のチケットは昨日の内に購入してある。

「じゃあ恭也、気をつけて行ってらっしゃい。レポート確りやるのよ?」
「気をつけてね恭ちゃん、お土産期待してるから」
「いってらっしゃい! おにーちゃん」
「おししょ~、お土産楽しみにしてます~」
「オレも楽しみしてます師匠!」

 家族(イギリスに居るフィアッセ以外)の見送りを受けて恭也は海鳴駅に向かった。これから電車での移動が始まる。ただ、恭也の頭には3日前に見た画像に写っていた古手梨花の顔が浮かんでいた。なぜあの少女は殺されたのか、雛見沢大災害は本当に災害なのか、恭也の疑問の答えは雛見沢にあるのだろうか。

「全ては、着いてから・・・だな」

 電車に乗って予約しておいた席に座った恭也が目を落とした資料、そこには行方不明者の名前が書いてあった。雛見沢大災害行方不明者リストの中でも殺された古手梨花と雛見沢分校での同級生の人物。前原圭一、竜宮礼奈、園崎魅音、園崎詩音、北条沙都子、この五人が行方不明となっている。それも当時古手梨花と最も仲の良かったこの五人がだ。

「確実に何か裏があるのだろうな・・・俺の予想だとこの五人も・・・いや、行方不明者全員が古手梨花を殺した人物に殺されているのだろう・・・古手梨花と違って死体が出てこないのは、他殺体が大量に見つかれば不味いから、特にこの五人は古手梨花の友人。もしかしたら大災害も実は古手梨花を殺した人物が起こしたのかもな」

 それと、雛見沢で毎年行われていた祭り、綿流し祭りの情報と大災害の年の4年前、つまり昭和54年まで雛見沢の住人が行っていた雛見沢ダム建造計画の反対運動、所謂ダム戦争とその年に起きたダムの現場監督のバラバラ殺人事件、次の年からも毎年綿流しの夜に起きる連続怪死事件の資料にも目を通す。
 そもそもの始まりは昭和50年頃、雛見沢にダムを建設する計画を政府が上げたことが始まりだった。勿論そのダムが作られれば雛見沢はダム湖の底に水没してしまうため、村民は猛反対して政府と戦った。
 当時の建設大臣、犬飼大臣の孫が誘拐される等の事件が起こり、結局昭和54年にダム建造計画は無期限凍結されることとなったのだが、その年の綿流しの夜にダム建設の現場監督が作業員五名に殺され、遺体をバラバラに切断されたという事件が発生。犯人の内四人は逮捕されたのだが、一人は平成に入った今でも捕まっていない。なお、この事件が切欠でダム建造計画無期限凍結からダム計画廃止になったのは言うまでも無い。
 翌年の昭和55年6月の綿流しの日、今度はダム戦争時にダム賛成派だった北条夫妻・・・北条沙都子の両親が旅行先の公園で崖から下の濁流に転落。夫は死亡、妻は遺体が見つかっていない。
 その次の年の昭和56年、やはり6月の綿流しの日に古手神社の神主(古手梨花の父)が謎の病死、妻(古手梨花の母)は鬼ヶ淵沼に入水自殺したのだが、遺体は見つかっていない。
 大災害前年の昭和57年6月の綿流しの夜、雛見沢在住の主婦が撲殺体で見つかった。被害者の名前は北条玉枝、北条沙都子の義叔母であり、北条夫妻の死後、北条沙都子を引き取った人物。
 北条玉枝が殺された数日後には北条沙都子の兄、北条悟史が名古屋での目撃情報を最後に行方不明となった。因みに北条玉枝を殺害した犯人は逮捕されているのだが、拘留中に死亡した。重度の麻薬中毒だったらしい。
 そして大災害の起こった昭和58年6月の綿流しの夜、フリーカメラマンの富竹ジロウが喉を掻き毟って血管を傷つけた事による出血性ショック死している所を巡回中の警官が発見、更に入江診療所の看護士だった鷹野三四が岐阜の山中にて焼死体で発見された。気になるのは鷹野三四の死亡推定時刻は綿流しの前日となっているのに綿流しの日、会場で鷹野三四の目撃情報が多数、実際に会話した者までいるという事実だ。
 この一連の事件を雛見沢連続怪死事件、またの名をオヤシロ様の祟りと言う。

「一番怪しいのは岐阜の山中で焼死体で発見されたという鷹野三四だな・・・目撃情報と死亡推定時刻が合わない時点で焼死体は偽装の可能性がある」

 もしそうなら鷹野三四は何故自分が死んだと偽ったのか、そもそも偽りの遺体はどうやって用意したのか、どうやって身元鑑定でその遺体が鷹野三四だと判定させたのか、何より自分の予想が当たっていたのなら鷹野三四は何者なのか。20年経った今では真相を暴くのは難しいのかもしれない。

「なんにしても・・・雛見沢に着いてからだな」

 電車の窓の流れる光景は何時の間にか街から田舎へと変わっていた。


 鹿骨市興宮駅で降りた恭也は予約しておいたホテルに荷物を預けると、何があっても良い様に完全武装を整えて直ぐに雛見沢村跡地へ向かった。バスを利用して跡地近くまで来ると後は歩きでの移動になる。村の入り口には前までバリケードがあったらしいが、今はそれも無くなって入り口が開放されている。
 村に入ると真っ先に目指したのが古手梨花の遺体が発見された現場である古手神社だ。賽銭箱の裏で殺されているのが発見されたらしく、20年経った今でも血の染みが残っていた。

「ここで古手梨花が殺されたのか・・・」

 血の染みを見れば解る。此処で幼い命がどれだけ無残に奪われたのか、それを思うと犯人に対して怒りが沸いてくる。
 何時までも此処に居るわけにもいかないので、神社内を見て回る事にした。特に見ておきたかったのはオヤシロ様の御神体を保管しているという祭具殿だ。鍵は20年の歳月で壊れているので中には簡単に入れた。
 祭具殿の中は流石の恭也でも少し引いてしまった。中央にある巨大な御神体の周りに所狭しと並べらられた拷問道具、古文書の山。拷問道具は既に錆付いていたりして使えるか怪しい上に、古文書は殆ど風化していて読めそうにない。

「ん?」

 視界の片隅で何かが光ったのが見えた。そこを調べてみるとビー球サイズの水晶玉が落ちていた。手に取って見ると水晶の筈なのに向こう側が透き通って見えない。

「これは?」
『だ、誰なのです!?』

 声が聞こえた。辺りを見渡してみるが誰も居ないし、気配を探ってみても祭具殿の周りに人の気配は無い。・・・いや、だが何かが居るのは解る。人ではない何かの気配を感じた、それもすぐ傍でだ。

『ぼ、ボクの声が聞こえるのですか?』
「ああ、聞こえている。それで君は何者だ? 何処に居る」
『あぅあぅ、さっきから後ろにいるのです~』

 後ろを見てみると何も無い。違う、視線を下げるとそこには巫女服を着た半透明の少女が居た。しかも頭部の両サイドには角が生えている。

「君は?」
『あぅ、ボクは羽入と言いますです。この雛見沢ではオヤシロ様と呼ばれていましたのです』

 オヤシロ様と言えばこの村でずっと信仰されていた神の事、それがこの少女だと言うのだろうか? 何処と無く頼り無さそうな表情で恭也を見上げるその姿は普通の少女と変わらない。勿論半透明な時点で普通ではないのだが。

「俺は高町恭也、一つ聞きたいのだが・・・君はずっとこの村に居たのか?」
『そうなのです。ボクはこの村で大昔に死んでからずっとこの村を見守っていたのです』
「なら、20年前・・・昭和58年に起きた雛見沢大災害の事も知っているのか?」

 目に見えて羽入の表情が曇っていくのが判った。段々と泣きそうな顔になって目尻には涙が溜まっていく。

『・・・ぅぅ、グスッ・・・・・・知ってますです。ボクは梨花が死ぬのは何度も見てきましたのです。でも! 村人が全員死んでいくのなんて初めて見ましたのです!!』

“何度も”と言うのはどういう事なのか、それを訊ねると泣きながらも羽入は答えてくれた。
 そもそも羽入の姿はオヤシロ様の生まれ変わりと呼ばれていた古手梨花にしか見えず。羽入は彼女が生まれてからずっと傍に居たらしい。それから古手梨花は昭和58年6月をもう100年以上繰り返していると言うのだ。その繰り返してきた全ての世界で古手梨花は殺されるか、その前に自殺してきた。殺されることが殆どだったらしいが。
 全ての発端は雛見沢連続怪死事件の真相、原因たる病気が始まり。雛見沢症候群という寄生虫による病気、その症状の一つである疑心暗鬼とその結果で誰かを殺め、その事によるストレスから病状は進み、最後には自分の喉掻き毟って死んでしまうという奇病。それが原因で怪死事件の一年目と二年目、四年目が起こり、雛見沢症候群研究の為に手段を選ばなくなった鷹野三四が三年目を起した。
 ちなみに一、二、四年目と同じ理由で各世界の前原圭一や竜宮礼奈、園崎詩音は殺人を犯して、その過程で古手梨花は殺されるか、自殺、もしくは彼等が死んでから殺されてきたとの事。
 また、雛見沢症候群は村人全員が掛かっており、古手梨花はその女王感染者。つまり彼女が死ねば村人は48時間以内に末期の症状を発症してしまうため、“東京”と呼ばれる恐らく政府の組織が古手梨花が死亡したら直ぐに村人を毒ガスで皆殺してする事になっている。これが雛見沢大災害の真相だった。

『ちなみに五年目の被害者の鷹野三四が大災害の実行犯、指揮者なのです。死んだと思っていたら生きていたのです』
「なるほど、俺の予想が当たったな」

 鷹野三四ともう一人の五年目の被害者こと富竹ジロウも“東京”の一員らしい。他にも鷹野三四には手駒として“山狗”という自衛隊の特殊部隊が存在していたらしく、この世界で古手梨花を殺したのは鷹野三四だが、他の世界では大抵“山狗”と思われる者が殺していたとのことだ。

『・・・そういえば今気付いたのですが、恭也は何でボクの姿が見えるのです?』
「・・・・・・今更だな、正直わからん・・・もしかしたらこの水晶のお陰かもな」

 手に持っていた水晶を見せると羽入は飛び上がって驚愕して見せた。どうやらこの水晶はかなり重要な物らしいが・・・

『こ、コレはカムノミコトノリっ!? こ、コレを持っていたからボクの姿が見えたのですか・・・』
「この水晶に何かあるのか?」
『この水晶・・・カムノミコトノリはカケラ、つまりこの世界を含む様々な世界は無数のカケラになっているのですが、そのカケラと繋がりを秘めている。要するにボクの力の結晶みたいなものなのです』

 神の力の結晶に触れているから恭也でも羽入の姿が見ることができて、尚且つ話もできる。そういう事だ。

「便利な物だ・・・所で、雛見沢症候群を研究する機関はこの村に在ったか聞きたいのだが」
『在りましたのです。入江診療所がやっていたのです』
「案内、頼めるか?」
『任せるのです!』

 カムノミコトノリを懐に仕舞った恭也は祭具殿を出て羽入の後を着いて行く。暫く歩くと荒れ果てた診療所が見えてきた。どうやらアレが入江診療所らしい。中に入ってみるとそこは何の変哲も無い診療所の待合室、特に怪しい所は無いが、此処は大災害の黒幕たる鷹野三四が勤めていて、更には雛見沢症候群の研究をしていた機関でもあるのだ。

「・・・・・・」
『恭也、どうしたのですか?』

 羽入の問いかける声が聞こえたが、今は無視して全神経を研ぎ澄ます。御神不破流には暗殺の都合上建物の内部構造を把握するための技がある。それを使用した恭也の脳裏には診療所の内部構造が浮かび上がっていく

「・・・・・・ん?」

 だが、そこで何か妙な点に気付いた。足元・・・いや、その更に下が空洞になっているのだ。

「地下室・・・か? だがこの広さ・・・・・・」

 恭也の脳裏に浮かんだ構造には地下室と思しき空洞が存在した。それもかなりの広さなのだ・・・この診療所と同等かそれ以上に。

「羽入、この診療所に広い地下室が在る事は知っていたか?」
『? 知らないのです。あるのですか?』
「ああ、今調べたら在った。それもかなりの広さだ」

 どうやって調べたのか理解できない羽入は不審に思っていたが、突然歩き出した恭也に慌てて付いて行くと階段を見つけ、下りてみると大きな扉が目に入った。

『本当にあったのです・・・どうして恭也はわかったのです?』
「俺が修める武術の技の一つに建物の構造を図るというものがある。それで調べたらこの診療所の地下に広い空洞がある事に気付いたんだ」

 彼は本当に人間なのだろうか・・・? 羽入がそう思ってしまうのは仕方ない事だ。それはさて置き、扉をどうやって開けるかだ。向こう側に人の気配は無い事から無人だというのは分かっているので恭也は背負いにして差している小太刀二刀を抜くとクロスして構える

『か、刀!? あうあうあう!!? な、何でそんな物を!?!?!?』

 騒いでいる羽入を完全無視して奥義の肆・雷徹を使って扉を破壊する。唖然としている羽入だったが、小太刀を仕舞ってさっさと歩き出す恭也に置いて行かれないように恭也に追い付く

『恭也は何で刀なんて持っているのですか?』
「言っただろう? 武術を修めているって・・・俺は御神流という剣術を修めているんだ」
『み、御神流!!? 知ってるのです! ボクが生きていた時代でもかなり有名でした。凄腕揃いの剣術集団が居たって。それが御神流、守る事に関しては特に最強と呼ばれていたのです!』

 まさか羽入が知っているとは思わなかった恭也だったが、今は生き残りは3人しか居ないとだけ言っておいて未だに興奮している羽入を尻目に各部屋を見ていく。
 最初にあった部屋はどうやら通信施設らしく、当時の大型通信機があった(長い年月で壊れているため使えないが)。
 だが、幾つ目かの部屋で恭也の表情が険しくなった。手術室のような部屋だが、確実に違う。余りにも濃すぎる血の匂いがしたのだ。

「さて、一番奥のこの扉の向こうには・・・何があるのやら」

 再び雷徹で扉を破壊した恭也は羽入と共に中に入る。そして集中治療室のような強固な硝子の向こうのベッドの上を見た瞬間恭也は本日最大の険しい表情になり、羽入は手で目を隠してしまった

「まさか、こんな所で雛見沢の住人を見つけるとは・・・」

 ドアがあったので開けて中に入るとベッドまで近付く。羽入もビクビクしながら恭也の後ろに付いて来た。ベッドの上にあったのは首と四肢を固定された白骨死体があった。頭骸骨には金髪の髪の人間だったのか髪の毛が残っており、ベッドのネームプレートに名前が書いてあった。恐らくこの白骨体の名前だろう。

「北条・・・悟史? まさか!」
『あう・・・本当にこの骨、悟史・・・なの、ですか?』

 辺りを見ると心電図計と点滴、それから何故か大きなクマのぬいぐるみが置いてあった。北条悟史は確か名古屋での目撃情報を最後に行方不明になっていた筈だ、それが此処に彼の白骨体があるという事は

「誘拐されて此処に幽閉されていた・・・いや、もしかしたら点滴の針が腕の骨付近に落ちているのを見るに治療を受けていたのか、しかも極秘に」
『あうあう? なら名古屋での目撃情報というのは何なのですか?』
「恐らく虚偽の情報だ・・・雛見沢の外で目撃情報があれば雛見沢に北条悟史が居るなんて誰も思わない」

 そして恭也の中で推理が一つに繋がった。血の匂いが濃いくらいに充満した手術室らしき部屋の存在と北条悟史の発見で確信を得たのだ。

「恐らく、一年目のダム工事現場監督バラバラ殺人の犯人の内、見つかっていない主犯格はこの地下室に誘拐された。そして雛見沢症候群の研究の為に解剖でもされたのだろう」
『か、解剖!? あうあうあうあう!!?』

 二年目は本当に妻の遺体が見つからなかったのだろう。濁流ということはそれだけ遠くに流されたということだ。

「三年目、古手梨花の母親も入水自殺ではなく此処へ連れて来られたのだろうな・・・やはりその後解剖された」
『あう・・・』

 四年目は言うまでも無い。更に驚いたのは羽入が言うには北条玉枝を殺したのは本当は悟史だということだ。彼はその時には既に雛見沢症候群のL4になっていたとのこと。だが、それで完全に繋がった。

「ところでこの診療所の所長・・・入江京介は自殺したんだったな? 睡眠薬で」
『はいなのです。でも今思えば入江も自殺ではなく殺されたのだと思うのです』

 そう考えると富竹ジロウも殺された可能性が高い。雛見沢症候群を抑える薬が存在したと羽入は言った。なら逆に抑えるのではなく症状を促進させる薬が作られていても可笑しく無い。

「羽入・・・悲しい事を思い出させるかもしれないが聞かせてくれ。前原圭一、竜宮礼奈、園崎魅音、園崎詩音、北条沙都子は行方不明扱いになっているが、本当はどうなった?」
『・・・殺されたのです。皆、鷹野に殺されたのです。梨花を逃がす為に皆犠牲になってしまったのです。そして結局その犠牲も空しく梨花は殺されてしまった・・・』

 これで完全に全ての謎は明確になった。事件の黒幕は雛見沢症候群の研究の為にそれを利用していた鷹野三四、彼女は“東京”の一員で、雛見沢症候群の研究を行い、細菌兵器にでも転用しようとしていたのだろう。そして彼女は目的の邪魔になる存在を容赦無く殺す外道。

「しかし、全て解った所で鷹野三四が今も生きているのか不明、証人も居ない今では如何する事も出来ないのだがな」
『・・・できますのです』
「何?」

 羽入が真剣な表情で恭也を見てる、その目には何かの決意と希望が宿っていた。

『ボクの力を使ってカムノミコトノリを持つ恭也を昭和58年の、梨花が向かった次の雛見沢へ連れて行くのです。そうすれば、恭也は梨花達と共に鷹野と戦えるのです』
「・・・できるのか?」
『はい、ただし・・・かなりの力技になってしまうので今後梨花が新しい雛見沢へ行く事は出来なくなる・・・梨花は死んだらもうそれでおしまい』

 責任は大きい、本人の居ない所で無許可にそんな事をして良いものかと思うが

『恭也が・・・御神の剣士たる恭也が居てくれれば勝てる気がするのです。無論、ボクも一緒に戦うのです・・・もう傍観者でいる事はやめて勇気を出して戦うのです! だから、次の雛見沢で最後にするのです!』

 強い決意だった。此処で彼女の決意を無駄にする気など恭也には毛頭無い、しかし・・・。

『もちろん、全てが終わったら恭也はこの世界に帰してあげるのです。それだけの力は残しておくのです』

 なら迷う必要は無い。恭也は八景を抜いて羽入の前に跪いた。

「御神不破流継承・・・不破恭也の名と不破が伝承刀・八景に誓って、古手梨花とその仲間達を守り、勝利に導く事を誓う」

 跪いて誓いの言葉を口にする恭也に羽入は笑みを浮かべると恭也の胸、カムノミコトノリが入っている所に手を添えた。すると恭也と羽入の周囲が光に包まれ、何時の間にか無数のカケラが漂う闇に変わった。

『さあ・・・・・・最後の雛見沢に行きましょう。覚悟は良いですか? 恭也』
『ああ、いつでもいい』

 100年の魔女の長い旅が、一人のイレギュラーの登場でどんな結末を迎えるのか、それはまだ、誰にも分からない。しかし、一つ言えるのは、そのイレギュラーは最強にして最高のイレギュラーだという事だけだった。



あとがき

永遠を担う風の御神書かないで何やってんだ俺…orz

 学祭終わったのでさあ投稿しようと思ってPC開いたら完成している作品がこれしか無かった駄作者です。
 風の御神はもう直ぐ投稿しますのでお待ちください。今はこの作品ですが、ひぐらし好きの人間が見たら「何だこれぇ!!」と言って怒りそうな予感でガクガクブルブルです。
続けるかは感想見て決めるので、余り期待はしない方が傷は浅いかも…。


学際で金使いすぎた…財布に野口さん一人しかいない……orz



[9906] 第一話
Name: 剣の舞姫◆9c21d489 ID:6b6ecf66
Date: 2009/07/11 18:15
ひぐらしのなく頃に剣
~騙神殺し編~

第一話





 昭和58年6月の雛見沢、前の世界で学んだことは運命は簡単に打ち破る事ができると言う事。そして、手に入れた最強にして最高の駒は今・・・・・・。

「それで、羽入? 説明してくれるんでしょうね?」

百年の魔女こと古手梨花に羽入と共に睨まれていた。
 昭和58年6月の雛見沢に来た恭也は羽入と共に一人で居る梨花の所に向かった。他の人間が居る状況で余所者の恭也と実体化した羽入の姿を見せる訳にはいかないからだ。
 最初に羽入が梨花の下へ行き、幾つかの言葉を交わして恭也を呼び、梨花に恭也を紹介する手筈だったのだが、羽入が恭也というイレギュラーを世界を渡る力を犠牲にしてまで連れてきた事に不満な模様。かなり鋭い眼光で羽入と恭也を睨んでいた。

「あうあうあう・・・勝手な事してごめんなさいです。でも、恭也は20年経ったのにも関わらず雛見沢の事件の真相に自力で辿り着いた人間で、しかも裏世界最強と謳われる御神流の使い手なのです。ボクも勇気を出して戦う決意をしましたのです。きっと鷹野にも勝てるのですよ!」
「・・・本当に勝てる? 鷹野の野望を打ち砕く最高のイレギュラーに彼が本当になりえるの?」
「ボクはそう信じてます」

 梨花は暫し何かを考えていたが、やがて決意の瞳で恭也を見上げた

「本当に・・・私を昭和58年6月の死の螺旋から救ってくれるの?」
「ああ、必ず君を、君とその仲間達を守り抜く・・・護る事において我が御神流は最強だ。この小太刀二刀に掛けても守り抜くと誓おう」

 誓いの言葉を述べた恭也を見て梨花も何かを感じたのか素直にその言葉を受け取り、恭也の手に己の手をそっと添えた。
 取り合えず最初にやる事は恭也と羽入の住む所だ。羽入だけなら梨花と北条沙都子が住む小屋でも良いのだが、恭也も居るとなると話は違う。

「ホテルでは興宮だから守るには不都合だ・・・できれば雛見沢村内で居を構えたいが」
「あう、ボクは恭也が一緒でも構わないのです」
「・・・そうね、私の親戚ということにして一緒に暮らせば違和感無いわ。元々家に保護者が居ない私と沙都子だし、恭也が私と沙都子と羽入の保護者代わりになってくれると助かるわ」

 結局それしか無かった。とにかく住家は確保したのだ、元の世界に置いて来た荷物の代わりになる着替え等を買うのは明日にして梨花の住む小屋に向かった。
 小屋に着いた恭也と梨花と羽入は沙都子が帰っているのを確認して中に入ると、先ず梨花が沙都子に自分の親戚が暫くの間遊びに来たと伝え、恭也と羽入を紹介した

「暫くの間だが、よろしく。高町恭也だ」
「あうあう、よろしくなのです。ボクは古手羽入なのです」
「よろしくお願いしますわ。私は北条沙都子、梨花の親友ですの」

 以外にも沙都子は多少驚いたものの、直ぐに恭也と羽入を受け入れた。梨花の親戚という事で納得しているのだろう。羽入に関しては・・・警戒する気にもなれない。
 その日の夕飯は恭也と羽入の歓迎という事で少し豪勢になった。四人とはいえ、それなりに盛り上がって楽しい食事になったのは言うまでも無い。ただ、梨花が用意した激辛キムチの盛り合わせを見た瞬間に羽入が涙目で恭也の後ろに隠れたのを見て梨花が黒い笑みを浮かべていたのは、見なかった事にしたい(ついでに梨花が持っていた懲罰用と書かれたキムチの入れ物も)。

「・・・・・・ふっ!」

 深夜になって沙都子も梨花も羽入も寝静まった頃、恭也は一人神社の森の中で鍛錬をしていた。相手が居ないので仮想敵を相手にしたものだ。当然周囲に“山狗”の気配が無いのを確認した上で行っている。

「・・・奥義の陸」

―――薙旋―――

 仮想敵恭也が知る中でも実際に戦った事がある最強にして完成された御神の剣士である御神美沙斗だ。先ほどから素早い斬撃の嵐を受け流しながら隙を探してそこに攻撃しようとするが素早くかわされる。美沙斗の斬撃をかわすのに精一杯になっていた恭也はついに美沙斗が距離をとるのを許すという愚行を行ってしまった。神速で繰り出される美沙斗が最も得意とする奥義、射抜が迫るのを見た恭也も神速に入って納刀した小太刀を構えて薙旋を放つ。

「・・・負け、か」

 結果は派生された斬撃が恭也の薙旋を完全に弾いて首を落とされた。完全に恭也の完敗だった。

「凄いわね」
「・・・梨花と羽入か」

 先ほどから気配は感じていたが、話しかけてきたので後ろを向く。案の定そこでは梨花と羽入が寝巻き姿で恭也を見ていた。

「それが御神流? 武術はよく解らないけど、凄いというのは解ったわ・・・・・・動きが殆ど肉眼で確認できなかったし」
「あうあうあう、凄いのです凄いのです! 流石は御神流なのです! あう!」

 賛辞を受けながら恭也は小太刀を鞘に収めて使用した飛針や鋼糸、小刀を回収する。完全武装で来たとは言えど、無駄に消費する訳にいかないのが暗器だ。

「・・・もう今夜の鍛錬は終わりだ。夜も遅い、帰ろうか」
「そうね、明日は分校に羽入を転校させないといけないし」
「あう! 早く帰って寝ましょうなのです!」

 恭也の左右に梨花と羽入が並んで歩き出す。今日一日で梨花も随分恭也に打ち解けたみたいで、沙都子の前で見せた無邪気な笑顔を恭也に向けていた。

「にぱ~☆ 明日は早いので、早く帰ってお布団に直行なのです!」

 無邪気な笑顔、本当はこの笑顔こそが梨花の本当の笑顔の筈なのだ。だからこそ守らなければならない。もう、この娘に何か諦めたような冷笑をさせてはいけない。この世界に来る時に見せられた無数のカケラに映っていたあの冷笑を、二度と浮かべさせない。この星空の下、恭也は改めて誓った。


 翌朝、梨花と羽入と沙都子は制服を着て学校に向かった。この村の学校は恭也も資料で見たから知っているが、雛見沢分校という小さな学校で、教師は担任と校長の二人、生徒は小学校低学年から中学校3年生まで合わせて30人程しか居ない。
 三人とも学校に行ったのでやる事の無い恭也は興宮へ行って買い物をする事にした。着替えが無いので今日もスーツのままなのだ。
 梨花から渡されたお金でジーパンとロングシャツを数枚、ジャケットを購入、ついでに頼まれていた夕飯の買い物は後回しにしてエンジェルモートというファミレスで昼食にして一休みするとスーパーに向かって夕飯の買い物を済ませる。

「さて・・・戻るか」

 サッと周囲に意識を向けて見るが今の所妙な視線や気配は無し、尾行の気配も無いので警戒しつつも気持ち急ぎ足で雛見沢に戻った。
 雛見沢に戻ると夕方になり丁度梨花や羽入達の姿も見えた。周りに友人の姿がある事から下校中なのだろう。

「あの顔は、確か」

 資料で見た行方不明者リストの顔写真を思い出す。間違いなく梨花、沙都子、羽入の周りに居るのは前原圭一、竜宮礼奈、園崎魅音、園崎詩音なのだろう。まさか生きた彼等に会うとは少し複雑な気分だった(圭一がメイド服を着ているのはスルーした)。

「羽入、梨花、沙都子、今帰りか?」
「みー! 恭也なのです!」
「あう~! 恭也なのです」
「恭也さんも今お帰りですのね?」

 駆け寄ってきて腕にぶら下がる梨花と羽入を持ち上げながら沙都子に目を向けると少し羨ましそうな顔をしていた。一方の圭一達は見慣れない人物の登場に随分と驚いている。

「みー、圭一達に紹介するのです。彼は羽入と同じ僕の親戚で高町恭也と言いますです」
「よろしく、高町恭也だ。今までイギリスに居たんだが、梨花の両親が二年前に死んだと最近聞いてね、急遽日本に戻ってきたんだ」

 昨夜、梨花と羽入と三人で話し合って決めた恭也の身の上、日本に居たという事にしては何故梨花の両親が死んだ2年前に来なかったのかという事になるので、海外に居て連絡を貰うのが遅れたという事にした。その海外に関しては恭也にとって馴染み深いイギリス、語学留学していた事にしてでっち上げたのだ。

「俺は前原圭一、分校の中学二年です。よろしく!」
「えっと、竜宮レナです。レナって呼んでほしいな。ほしいな」
「あたしは園崎魅音、一応このメンバーのリーダーかな」
「妹の園崎詩音です」

 自己紹介を終えて一行は梨花の家に行くと言うので丁度帰る所だった恭也も一緒に行く事になった。梨花と羽入を下ろして買い物袋を持ち直すとさり気無く梨花の横に並んで歩き出す。

「なぁなぁ恭也さん、イギリスの事教えてくれますか?」
「はぅ~レナもレナも! 外国のお話聞きたいな。聞きたいな」

 この時代、特に雛見沢の様な田舎に住んでいると外国に住んでいたというのは珍しいのか圭一とレナがイギリスの事を聞いてきた。魅音と詩音も聞きたそうにしているので、クリステラソングスクールに行った時の事を話す事にした。

「ああ、そうだな・・・そもそもイギリスにはとーさんの友達が居てな、クリステラソングスクールという歌手の卵を養成する学校は知っているか? 世紀の歌姫ことティオレ・クリステラが校長をしている」
「? レナはちょっと・・・」
「わたくしもですわ・・・」
「おじさんは知ってるよ、確かイギリス議員アルバート・クリステラの奥さんだよね?」

 圭一もレナも沙都子も知らないという顔をする中、魅音が知っているらしく、恭也もよく知る人物の名を挙げてきた

「お姉、知ってるんですか?」
「うん、園崎家って何気に海外とも繋がりがあるからその関係でね・・・ってもしかして!」
「そうだ、とーさん友達というのがティオレさんとアルバートさんだ」

 海外の大物と親交のある親というのも珍しいもので、圭一とレナが目を輝かせている。

「話が反れたな・・・まぁ、それで留学する事になった時その話をとーさんから聞いたアルバートさんとティオレさんが俺のホームステイ先をクリステラ家にしてくれたんだ」
「すっごぉい! 国を超えた友情いいねいいねぇ」
「うわ、レナが何故かお持ち帰りモードに・・・」

 トリップしているレナを放置した一行、恭也も如何したものかと考えたが、梨花の「いつもの事なのです」という言葉に納得した事にして一緒に放置することにした。

「しかし、イギリスは余り食事が美味くない・・・出されれば食べるが、やはり料理は日本の物が一番だな」
「あ、やっぱりですか? イギリスの料理って美味しくないって聞いてましたけど本当だったんですねぇ」
「うわ、そりゃ食いたくねー」

 雑談をしているとあっと言う間に梨花と沙都子、それから羽入と恭也の家にもなっている物置小屋が見えてきた。

「沙都子、すまないが両手が塞がっている。先に行って鍵を開けてもらっていいか?」
「よろしくってですわよ」

 たたたた・・・っと走って行く沙都子を眺めながら恭也はホンの一瞬だが鋭い視線を感じた

「っ!」

 視線だけ動かして周囲を見渡し、気配を察知する範囲を広げてみるものの、怪しい影も気配も存在していない。既に移動したのか、それとも恭也の気のせいなのか、・・・だが一つ判るのは梨花と合流してからずっと梨花の護衛という事になっている山狗らしき気配は多数感知している。今はまだ泳がせているが、もしかしたらその山狗が恭也が何者なのか確かめようと先ほどの視線を向けた可能性がある。

「・・・・・・」
「あう? 恭也、どうしたのですか?」

 恭也の様子がおかしい事に気付いたのか羽入が小声で尋ねてきた。だが今は心配を掛けるべきでは無いと判断して夜に話すと伝え、圭一たちと共に家の中に入った。



「何者かしら・・・彼」

 診療所の更衣室で鷹野三四は部下の山狗からの報告にあった恭也について考えていた。昨日から梨花の家に住み着いた人物がいると聞いて興味を持ったのだ。

「山狗の話では20代前半の男性、身のこなしから何かしらの武道を修めている可能性有り、イギリスからの帰国者で古手梨花の親戚と自称している・・・ね」

 不確定要素だが、鷹野は恭也を見縊っていた。鷹野の下には自衛隊の特殊部隊“山狗”が居る。どんな人物が居ようと目的達成の障害になるとは思っていないのだ。

「フン、たとえ誰が居ようと、私の計画の邪魔になるのなら容赦しない! 築かれる屍が一つ増えようと、私は私の目的を達成するのみ! ・・・フフフフ、あははははははっははははははははははははははは!!!!!」

 彼女は知らなかった。彼女が侮っている人物こそ、彼女にとって最大の障害にして最強の敵になるという事を、まだ・・・知らなかった。






あとがき
結構な好評があったので更新しました。
次の更新は未定ですが、楽しみにしてください。



[9906] 第二話
Name: 剣の舞姫◆9c21d489 ID:6b6ecf66
Date: 2009/09/04 16:08
ひぐらしのなく頃に剣
~騙神殺し編~


第二話







 朝、恭也は誰よりも早く起きて剣の鍛錬に出る。気配を消して追跡できないようにしてから隠密行動を取って鍛錬に使う事にした鍛錬場に行き、1~2時間くらい剣を振ってから家に戻り、風呂に備え付けてある簡易シャワーを浴びると既に起きて朝食の用意をしている沙都子に出くわした。

「おはよう」
「あら、おはようございますですわ。今日もお早いですのね」

 梨花と羽入はまだ寝ているようだが、そろそろ時間的に起きないといけない時間だ。何より二人が起きないと布団を片づけてテーブルを出せない。

「梨花、羽入・・・そろそろ起きろ」

 肩を揺するも起きる気配は無い。仕方ないとばかりに二人の鼻を抓んで暫くじっとしてみると見事に飛び起きた。

「はぁっ・・・はぁ、恭也・・・アンタもう少しマシな起こし方できないの!?」
「あぅぅぅぅ~、息苦しかったのですぅ~」

 文句を言ってくる梨花だが、起きない方が悪いと言って二人に布団の片付けを言いつけるとキッチンで沙都子の手伝いを始めた。とは言っても、もう殆ど終わっているので食器を用意して盛り付けをするだけ、盛り付けたものから梨花が用意したテーブルに持っていく。

「・・・羽入、ちゃんと目を覚ましているか?」
「あうあう~、まだ眠いのです」

 まだ寝ぼけ眼の羽入を抱き上げて洗面所に連れて行くと冷水で顔を洗わせる。流石に水の冷たさで覚醒したらしく、確りした口調で恭也におはようと言った。

「ほら、もう朝食だ」
「はいなのです。朝ごはんは一日の活力なのですよ」

 テーブルに四人が揃っていただきますと言って今日も一日が始まる。だが、今日は一番大変は日になる予定なのは、沙都子が知る由も無かった。


 昼間、学校を休んだ梨花と羽入は恭也と共に神社の境内に呼び出したこの村の診療所医こと入江京介と、フリーカメラマンの富竹ジロウに会うことになっていた。

「確か入江京介は雛身沢症候群の研究をしている入江機関の所長、富竹ジロウはその入江機関と“東京”との連絡をしている諜報員・・・だったな?」
「ええ、そしてきっと私達の味方になってくれる」
「あう☆ 富竹と入江が味方なら心強いのです」

 恭也が自信の知っている情報を梨花と羽入に確認している内に約束の時間になったらしく、入江京介と富竹ジロウが境内にやってくるのが見えた。二人ともこれから話される内容を知らずに困惑した表情で階段を上ってきている。

「やあ梨花ちゃん、久しぶりだねぇ・・・おや? そちらの二人は」
「見かけない顔ですね」

 初対面の恭也と羽入の姿を見て富竹も入江も少し訝しげな顔をした。特に要警護人物である梨花の傍の見知らぬ人物が居る事に警戒しているのだろう。

「紹介するのです。この二人は僕の親戚で古手羽入と高町恭也なのです。二人はずっと海外に住んでいて最近雛身沢に来たのです」
「あうあう・・・羽入なのです。よろしくなのです」
「高町恭也です。最近までイギリスに語学留学していたのですが、梨花の両親が亡くなったと言う事を最近になって聞き及んだので急遽帰国してきたんです」

 自己紹介を終えて次に切り出すのは恭也だ。こういった交渉のようなものは経験の多い恭也がやった方が良い。

「前置きはこれ位にしましょう・・・。今日あなた方を此処に呼んだ理由は一つ、あなた方が所属する“東京”と鷹野三四の事についてです」

 返って来たのは驚愕の顔だった。まさかそんな話が出るとは思いもしなかったのだろうが、今はそんな事を気に掛けるつもりは無い。

「単刀直入に言わせて貰います。鷹野三四はここに居る梨花を殺すつもりでいる」

 衝撃の発言だったのだろう、二人とも驚きで言葉を失っている。そもそも何故恭也が鷹野の事を知っているのか・・・、いや、それは梨花に聞いたのだということは簡単に想像できる。しかし、何故鷹野が梨花を殺すなどという言葉が出るのか、それが解らなかった。

「鷹野が僕を殺そうとしているのは確かなのです。でも本当に確信するには先ず入江に聞きたい事があります」
「な、何ですか?」
「・・・鷹野が私を殺して何か得する事は・・・・・・いえ、もし私が死んだらどうなるのか教えて」

 その問いに答える事に躊躇いがあった。鷹野が梨花を殺そうとするなど信じられないし、梨花がもし死んだらの話は出来れば梨花に聞かせたくなかった。

「答えて欲しい・・・これは重要な事なんです」
「・・・・・・解りました。しかし、これは最重要機密です。ですので出来れば内密に」
「入江所長!」

 富竹が異論を挟もうとしたが梨花の眼光にその先を口にすることが出来なかった。
 入江から語られた事実、梨花が何らかの理由で死亡した場合に適用される緊急マニュアルの存在。
 雛身沢症候群の女王感染者である梨花が死亡した場合、48時間以内に村人は雛身沢症候群の末期症状に陥って近隣の町に悪影響を与えてしまう。それを未然に回避するための緊急手段として“東京”が用意した緊急マニュアルが“緊急マニュアル34号”と言うもの。内容は梨花が死んだ場合、直ぐに自衛隊の特殊部隊が雛身沢を封鎖して村の住民を一箇所に集め、毒ガスか何かを使用して始末するというものだ。
 聞かされた内容は恭也がこの世界に来る前に調べた内容をより鮮明に回答してくれるものだった。そして、その緊急マニュアルは絶対に回避しなければならない。

「鷹野の目的は、その緊急マニュアルを発動させる事・・・か?」
「・・・そうね。でも何故? それが解らないの」
「ですから! 鷹野さんがそんな事をする筈がありません! 彼女は雛身沢症候群の研究に並外れた熱意を持っているのですよ!?」

 だが、恭也が梨花に聞いた限りによると雛身沢症候群の研究は後3年で打ち切られる事になっていた筈だ。ならば聞いた限りの鷹野の性格を考慮するなら

「どうせ打ち切られる研究なら、盛大にテーブルを引っ繰り返してやろうと考えると彼女なら考えれられませんか?」

 入江も富竹も口を噤んだ。反論できなかったのだろう、彼女の性格をよく知っているが為に。しかし、それでも彼女がそんな事する筈が無いと信じたいのか何か反論を考えている。

「彼女の話はちゃんと聞いた方がよろしいですよぅ?」

 階段の方から声が聞こえた。見てみると体格の良い老刑事と思しき人物が此方に向かって歩いている。その少し後ろにはまだ20代であろう若い青年、しかしその筋肉の付き方は無駄が無い。よほど鍛えていると見える。

「大石さん・・・」
「梨花、彼等は?」
「・・・・・・」

 返事が無い。どうも大石と呼ばれた男の後ろに居る青年を見ているらしい。しかもその表情は驚愕に彩られている。

「赤坂・・・」
「やあ梨花ちゃん、久しぶり・・・もう東京に帰れなんて、言わないだろ?」

 結局羽入が教えてくれた。大石と呼ばれた男は興宮署の刑事で、梨花が赤坂と呼んだ青年は東京の警視庁公安の人間とのことだ。

「アルファベットプロジェクト?」
「そうです。私たち公安の第7室が追っていた巨額の裏金ルートです・・・もう既に捜査中止になりましたが。その裏金ルートの資料の中にこの雛身沢の入江機関という名もありました・・・同時に入江診療所とも」

 赤坂が来た理由はそれだ。つい最近まで追っていたヤマの中に雛身沢が有り、それで嘗て雛身沢に来た時の事を思い出し、同時に妻の命を救ったという梨花の事も思い出して今度は自分が梨花を助ける為に来たのだ。

「裏金か・・・富竹さん、失礼ですが・・・“東京”に派閥争いが起こる事はありますか?」
「派閥? ・・・如何だろうね、僕も余り詳しくはないけど、可能性は0じゃない」

 全員が恭也に注目している、何を言いたいのか予想できたのだろう。

「もし、“東京”の中に派閥があり、例えば派閥をAとBに分けますが・・・緊急マニュアルを発動すれば派閥Aが責任を取らされることになる。それを狙って派閥Bが研究中止で落ち込んでいた鷹野三四に接触して、研究を中止させた派閥Aを緊急マニュアルを起こして陥れる事を吹き込んだら・・・彼女なら如何出ると思います?」
「・・・雛身沢症候群の研究に並外れた熱意を持つ彼女なら、自身の研究を邪魔した者共に一泡吹かせてやれるチャンスに飛びつく・・・同時にどうせ中止になる研究なら盛大に引っ繰り返してやる事も可能、か・・・・・・有り得ないとは、言えませんね」

 鷹野の性格をよく知る入江だからこそ、これ以上否定が出来なかった。鷹野なら有りえると思ってしまったのだ。

「鷹野の背後を調べる事は?」
「それなら僕が出来る。一応、“東京”との連絡役だから、いざとなれば僕の権限で山狗を制圧できる番犬部隊を呼ぶことも可能だ」
「番犬・・・? 待て、番犬・・・“東京”・・・アルファベットプロジェクト・・・・・・」

 番犬という言葉で何かが引っかかったのか恭也が何かを考え込んだ。突然考え込んだ恭也に疑問を持ったのか入江と富竹が首を傾げてしまい、何かあるのだろうかと不安になるが・・・。

「まさか“東京”の正式名称は“Tokyo under grand”ですか?」
「「っ!?」」

 二人の反応で確信した。この組織は恭也も聞き覚えが有り、龍(ロン)と同じくらいの因縁が有る。
 美沙斗が調べて判ったことだが、御神と不破家を滅ぼした爆弾テロは龍(ロン)だけでなく“Tokyo under grand”も関わっていたのだ。
 それだけではない。嘗て父と美由希と共に逃げていた時にも何度か“東京”の番犬と戦った覚えがあるし、そもそも、“東京”からの依頼だけは御神も不破も受け付けないほど険悪な関係だった。

「き、君は・・・一体何者なんだ? “東京”の正式名称を知る一般人など存在しない」

 それはそうだ、知っているとしたらそれは同じ裏世界の住人だけだ。それ以外は“東京”の存在すら知らない筈。

「改めて自己紹介します・・・俺の名は不破恭也。永全不動八門が一門、御神流・裏、御神不破流の者です」

 不破、その名に驚愕したのは予想通り富竹、入江、赤坂、大石の4人だった。富竹と入江は“東京”の人間だから知っている筈だし、赤坂も大石も警察という職業柄、御神を知っていても可笑しくは無い。
 特にこの時代はまだ御神が存在している時代だからこそ、裏世界最強の御神と不破の認知度は高い。

「あ、あの御神!? なぜ御神の、それも御神の裏にして分家の中でも唯一宗家を持つ事の許された不破家の人間が此処に!?」

 流石は諜報員と言うだけあり、富竹は不破の事を良く知っていた。恐らく御神について詳しく調べた事があったのだろうと予測できるが、今はそれは重要な事ではない。
 
「その事については余り詳しくお答えする事はできません。一つだけ言えるとしたら、俺は梨花を護る為にこの雛身沢にいるという事だけです」

 最強の御神、その裏の不破が梨花を護っている。つまり梨花は現在この世で最も安全地帯に居るということだ。それを理解した富竹は恭也と戦う事になるかもしれない山狗に心底同情してしまったのだが、それは彼自身が墓まで持っていく秘密にする事となった。

 少し話しが逸れた所で一度戻す。
 鷹野の背後関係を調べる事が可能と言った富竹は現在泊まっているビジネスホテルとは別のホテルに隠れて“東京”の郭公という本部と思われる所に連絡を取って鷹野の背後関係、アルファベットプロジェクトに関わったと思われる人物と金の流れ先、ついでに鷹野の背後が判ればその人物についてを洗いざらい調べる事になる。
 赤坂、大石、恭也は梨花防衛対策、入江は鷹野の動きを見張る事となり、此処で最大の難点となるのは梨花を護るには現在住んでいる資材置き場では不都合なので何処かに移動しなければならないのだが、何処に行くかが問題となった。
 雛身沢を出るのは不味いが、雛身沢で梨花を護るのに都合が良く、もし戦闘になった場合に恭也が全力を出せる場所、若しくは全力を出せる場所に直ぐ移動可能な所が在るかどうか・・・。

「一つだけ知ってるわ」
「本当か?」
「ええ、魅音の実家・・・園崎本家ならその条件に完全に当て嵌まっているわね」

 だが、事情も知らない人間の所に突然匿って欲しいと言って入るのは無理がある。そう言ったのだが、梨花から返って来た返答は驚愕するには充分の物だった。

「だから話すわ・・・魅音や圭一達に、真実を」

 魔性の女と言うに相応しい黒い笑顔を浮かべた梨花に、赤坂と恭也は顔を見合わせてその表情を引きつらせるのだった。








あとがき

久しぶりにひぐらしを更新です。…因みにまだスランプ脱出が出来ませんorz

今回は祭囃し編とほぼ同じ展開になりましたが、今後は祭囃しと澪尽くしを織り交ぜた展開になる…ように書いていきたいのですが、できるかなぁ?


なのはの方はもう少しで完成すると思いますが、未だにスランプが続くので完成まで後どれだけ掛かるかは未定です。


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