今日の勤務がやっと空けた。俺は隊舎を出ると伸び一つ。
クラナガンらしく陽気はポカポカ。気を抜くとウトウト立ったまま寝てしまいそうだ。
なので俺は肩を鳴らしながら隊舎の裏手に回る。そこにはよく手入れされた芝生が広がっている。
芝生に腰を下ろすとゴロリと寝ころぶ。制服が汚れるが、まあ良いだろう。取りあえず俺は気にしない。
潮の香りと波の音が眠りに誘う。誘う、誘zu、zzzzz
「……あの~」
目の奥で光がチカチカ瞬く。だけでなく躊躇いがちな声もする。というかすぐ隣に人の気配。
ぶっちゃけ無視しようかと思ったが、そんなまね流石に大人げない。
俺は瞼を開くと視線を上げた。
そこには……、金色をしたウサギさんがいました。
……嘘だよ。
そこにいたのは我が部隊の中心人物の一人、フェイト・T・ハラオウン執務官だ。
彼女はキョトンと不思議なモノを見る目で俺を見下ろしてる。
「おはようございます、ハラオウン執務官殿」
「あっ、おはようございます。えーーと?」
あたふたとしながら、それでもおはようの挨拶を返してくれるハラオウン執務官。なんか仕草が可愛い。これって萌え?
取りあえず何か言いたげなハラオウン執務官の疑問に気付くと、俺は苦笑を隠しながら立ち上がった。勤務時間外だが付き合いますか。俺って大人ぁ。
背筋を伸ばし右手をピシっと伸ばして敬礼。俺は海の人間ではないので脇はあえて締めない。
「機動六課、バックヤード分隊所属クリス・イェーガー三等空尉です。よろしくお願いします、ハラオウン執務官殿」
執務官じゃなくて隊長だろ、という突っ込みはなし。彼女は俺の部隊の隊長ではないのだ。これはこだわり。
「あ、はい。ライトニング分隊隊長、フェイト・T・ハラオウンです」
と執務官殿は返すと
「バックヤードの方だったんですね。えーと、同じ部隊の仲間なんですから執務官とかでなく、フェイトと呼んでください」
とニッコリと微笑んだ。
……うわーー、なんか凄く綺麗、というか可愛く笑う人だ。癒される。
外回りが多いのとシフトが遭わないので、彼女を隊舎で見かけることは滅多にない。
遠目で見ると表情の乏しい美人さんなので、うちの隊長と同じでクールビュティーな人かと思っていたが……なんか可愛い人だ。
この人これで優秀な執務官というんだから……。まああの笑顔を見せられたらあること無いこと話してしまうかもしらんな。ふむ、実は恐ろしい娘?
などとポヨヨンとしたことを考えていると
「えーと、で、なんでこんな時間にお昼寝を?」
とか聞かれた。
ふむ、サボリと思われたか? この質問は減点1。
「俺、昨日夜勤だったんですよ」
教官にしごかれている嬢ちゃん達は基本昼勤。それを補うために俺達の誰かは夜に隊舎に詰めている。所謂夜勤だ。
あ、とばかり執務官殿、いやフェイトさんは口を丸くした。可愛いからOK。さっきの減点はチャラにしてあげましょう。
「で、勤務空けに外出たらポカポカ陽気でしょ。思わず眠たくなって」
半分本当で半分嘘だ。勤務空けで一杯引っ掛けに行きたかったのだが、流石に朝からやってる美味い飲み屋はない。店が開くまでの時間潰しだ。
緊急招集が掛かったら? 最近はクスリ一錠で酔いを醒ましてくれる。嫌な時代になったモノだね、うん。
「あああ、じゃあお昼寝の邪魔しちゃいましたね」
「いや、いいですよ、時間だし」
ポケットにしまってあるデバイスからPiPiと目覚まし音が流れる。このタイミングで行くと昼のサービスでビールが安い。
俺がこれでと挨拶すると、フェイトさんもご苦労様と挨拶してくれた。
そのまま何となく隊舎に向かうフェイトさんを見ていると、あ、転けた。
フェイトさんは顔を真っ赤にしてこっちを睨むと、そのまま走り去っていった。歩くと転けるのに走ると平気なのか、流石執務官殿。
……今日はなんか朝から良い物見た。
だからもうしばらく頑張れそうかな。
この糞ったれな、この職場で。
俺はクリス・イェーガー。時空管理局・古代遺物管理部・機動六課・バックヤード分隊。通称交代部隊の一部隊員だ。
Side Fate
見かけない人がお昼寝してるんで声かけちゃった、そうか交換部隊の人か。
そう言えば交換部隊のことは全部シグナムに任せちゃってるから、ほとんど知らないや。
よく考えればあの人たちが頑張ってくれるから、エリオ達が教導に集中できるんだよね。
こんどなのはと一緒に差し入れでもしようかな。
PS:
機動六課には交代部隊というものがあるらしい。
また、公式設定では六課にはバックヤード分隊というのがあるそうだ。フレームに入ってないのでなにをやっているのか、誰がいるのか解らないが。
ということでバックヤード分隊=交代部隊ということにしてみた。
彼等が何者で、何をやっているのか定かではないので、取りあえず想像して補った。こんなものでどうでしょうか?
主人公サイドに近い人物でも、自分の立ち位置を肯定している者ばかりではないと言うことで。