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[9964] とある六課武装隊員の日々(なのは オリ主)【番外編追加】
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2010/02/18 23:16
前書き

 別サイトでGSクロスのSSを書いていた者です。
 なんかリリカルな感じでなのはを書きたくなってこちらにやってきました。

 コンセプトとして
 ①stsベースのオリ主ものである
 ②オリ主はsts本筋には出来る限りタッチしない
 ③オリ主の視線でstsを眺めていく
 ④公式だろうと納得出来ない設定は"修正"
です。
 一人称小説は初めてなので拙い処もあるでしょうが、まあひとつ、ヨロシクということで

履歴

 2009/06/30 一話二話同時投稿
 2009/08/09 七話投稿
 2009/08/11 とらハ板に移行
 2009/09/01 完結
 2010/02/18 番外編追加



[9964] 一話
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2009/06/30 23:48
 今日の勤務がやっと空けた。俺は隊舎を出ると伸び一つ。
 クラナガンらしく陽気はポカポカ。気を抜くとウトウト立ったまま寝てしまいそうだ。
 なので俺は肩を鳴らしながら隊舎の裏手に回る。そこにはよく手入れされた芝生が広がっている。
 芝生に腰を下ろすとゴロリと寝ころぶ。制服が汚れるが、まあ良いだろう。取りあえず俺は気にしない。
 潮の香りと波の音が眠りに誘う。誘う、誘zu、zzzzz

「……あの~」
 目の奥で光がチカチカ瞬く。だけでなく躊躇いがちな声もする。というかすぐ隣に人の気配。
 ぶっちゃけ無視しようかと思ったが、そんなまね流石に大人げない。
 俺は瞼を開くと視線を上げた。

 そこには……、金色をしたウサギさんがいました。

 ……嘘だよ。
 そこにいたのは我が部隊の中心人物の一人、フェイト・T・ハラオウン執務官だ。
 彼女はキョトンと不思議なモノを見る目で俺を見下ろしてる。
「おはようございます、ハラオウン執務官殿」
「あっ、おはようございます。えーーと?」
 あたふたとしながら、それでもおはようの挨拶を返してくれるハラオウン執務官。なんか仕草が可愛い。これって萌え?

 取りあえず何か言いたげなハラオウン執務官の疑問に気付くと、俺は苦笑を隠しながら立ち上がった。勤務時間外だが付き合いますか。俺って大人ぁ。
 背筋を伸ばし右手をピシっと伸ばして敬礼。俺は海の人間ではないので脇はあえて締めない。
「機動六課、バックヤード分隊所属クリス・イェーガー三等空尉です。よろしくお願いします、ハラオウン執務官殿」
 執務官じゃなくて隊長だろ、という突っ込みはなし。彼女は俺の部隊の隊長ではないのだ。これはこだわり。

「あ、はい。ライトニング分隊隊長、フェイト・T・ハラオウンです」
と執務官殿は返すと
「バックヤードの方だったんですね。えーと、同じ部隊の仲間なんですから執務官とかでなく、フェイトと呼んでください」
とニッコリと微笑んだ。

 ……うわーー、なんか凄く綺麗、というか可愛く笑う人だ。癒される。
 外回りが多いのとシフトが遭わないので、彼女を隊舎で見かけることは滅多にない。
 遠目で見ると表情の乏しい美人さんなので、うちの隊長と同じでクールビュティーな人かと思っていたが……なんか可愛い人だ。
 この人これで優秀な執務官というんだから……。まああの笑顔を見せられたらあること無いこと話してしまうかもしらんな。ふむ、実は恐ろしい娘?

 などとポヨヨンとしたことを考えていると
「えーと、で、なんでこんな時間にお昼寝を?」
とか聞かれた。
 ふむ、サボリと思われたか? この質問は減点1。
「俺、昨日夜勤だったんですよ」
 教官にしごかれている嬢ちゃん達は基本昼勤。それを補うために俺達の誰かは夜に隊舎に詰めている。所謂夜勤だ。
 あ、とばかり執務官殿、いやフェイトさんは口を丸くした。可愛いからOK。さっきの減点はチャラにしてあげましょう。
「で、勤務空けに外出たらポカポカ陽気でしょ。思わず眠たくなって」
 半分本当で半分嘘だ。勤務空けで一杯引っ掛けに行きたかったのだが、流石に朝からやってる美味い飲み屋はない。店が開くまでの時間潰しだ。
 緊急招集が掛かったら? 最近はクスリ一錠で酔いを醒ましてくれる。嫌な時代になったモノだね、うん。

「あああ、じゃあお昼寝の邪魔しちゃいましたね」
「いや、いいですよ、時間だし」
 ポケットにしまってあるデバイスからPiPiと目覚まし音が流れる。このタイミングで行くと昼のサービスでビールが安い。
 俺がこれでと挨拶すると、フェイトさんもご苦労様と挨拶してくれた。
 そのまま何となく隊舎に向かうフェイトさんを見ていると、あ、転けた。
 フェイトさんは顔を真っ赤にしてこっちを睨むと、そのまま走り去っていった。歩くと転けるのに走ると平気なのか、流石執務官殿。

 ……今日はなんか朝から良い物見た。
 だからもうしばらく頑張れそうかな。
 この糞ったれな、この職場で。

 俺はクリス・イェーガー。時空管理局・古代遺物管理部・機動六課・バックヤード分隊。通称交代部隊の一部隊員だ。



Side Fate

 見かけない人がお昼寝してるんで声かけちゃった、そうか交換部隊の人か。
 そう言えば交換部隊のことは全部シグナムに任せちゃってるから、ほとんど知らないや。
 よく考えればあの人たちが頑張ってくれるから、エリオ達が教導に集中できるんだよね。
 こんどなのはと一緒に差し入れでもしようかな。




PS:
 機動六課には交代部隊というものがあるらしい。
 また、公式設定では六課にはバックヤード分隊というのがあるそうだ。フレームに入ってないのでなにをやっているのか、誰がいるのか解らないが。
 ということでバックヤード分隊=交代部隊ということにしてみた。
 彼等が何者で、何をやっているのか定かではないので、取りあえず想像して補った。こんなものでどうでしょうか?
 主人公サイドに近い人物でも、自分の立ち位置を肯定している者ばかりではないと言うことで。



[9964] 二話
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2009/06/30 23:58

 機動六課は嫌われ者だ。

 例えば機動六課はチート部隊である。
 エース級魔導師5人という強力な戦力を保持している。
 地上部隊にとっては地上にこれだけの戦力が来るというのは本来望ましい。
 しかしその戦力が1部隊に集中し、更にリミッターで魔力を制限される。他の部隊から見ると、折角の戦力をドブに捨てているようなものである。
 また古代遺物? ロストロギア事件限定といえミッドチルダのどのエリアでも出撃できる。
 逆にそこを管轄として持つ部隊にとっては、自分達の庭先を土足で踏みにじっていく連中である。いい顔出来るわけがない。
 しかし地上で活動する以上、六課にとって地上部隊の協力を得ることは必要事項である。
 そのため彼等に好意を持って貰うための活動が必要となる。
 だから俺達が苦労する。
 俺達とは正規の前線部隊ではない。交代部隊である。

「お前達、準備はいいか」
 そんな声で俺の意識は現実に帰ってきた。
 キリっとした表情で俺達に呼びかけるのはおっぱ…ではなくバックヤード分隊のシグナム隊長だ。ライトニング分隊の副隊長兼バックヤード分隊の隊長という、なにか突っ込みたくなるポジションにいる人だが、ボケてくれないので突っ込みにくい人でもある。

 そんな事を考えていていた数秒間、しかし誰も隊長のお言葉に返事を返してあげてない。
「イエス、マム」
 仕方がないので俺が代表としてして返事をする。
 ……確かに三等空尉の俺がバックヤードの次席なんだが、俺より先任もいるというのに。隊長ごくろうさん。
 というか労ってやったんだから怖い顔で睨むなよ。

 さて、機動六課が嫌われ者なのはこんな処にも出てくる。
 六課の場合、本来の前衛部隊が当面教導メインなのや、ローテーションの関係で強力な交換部隊が必要不可欠だ。
 しかし六課は建前上陸の所属なので海は部隊を寄越さない。人手不足の陸や空も出せない。
 なので妥協策だ。部隊丸ごとではなくあちこちからそこそこ実力はあるが、部隊員として使いにくいメンバを出しお茶を濁す。
 そんなやり方で集められたのが俺達だ。
 決して弱くはない。ランクでいうと全員A以上だ。普通なら欲しがる部隊は幾らでもある。
 ただし俺達は協調性がなかったり、サボリ癖があったり、性格が悪かったり、KYだったり、足が臭かったりとそれぞれ問題のある不良局員どもだ。
 俺か? 少なくとも足は臭くないぞ。
 まあこんな俺達でも六課にいるのは実際短期間、人事異動の合間を縫ってのレンタルというのが正しい認識だ。

 さて、隊長殿の攻撃開始の合図とともに砲撃手がカートリッジロード。
 ガチャン、ガチャンと6発ロード、たしかコレが奴のデバイスの限界。
 その3m近い魔法の杖を眼下の廃ビルに向ける。

 ここは六課自慢の仮想演習場ではない。
 クラナガンを遙かに離れた地方都市、そのスラム、じゃなくて廃棄区画だ。しかしミッドって何処行っても廃棄区画多いな。俺が子供の頃より増えてるんじゃないか?
 さて、今日は203部隊?、いや208部隊だっけ、の依頼を受けての鉄火場だ。
 戦力不足の彼等の替わりにテロリストの殲滅、もとい逮捕だ。
 彼等からの情報によると目の前のビルの一角が彼等の拠点に成っているとのこと。なので

  ドッカッッッッッッッッッーーーーーァン!!

 砲撃手の拡散気味の魔力光がビルに叩き付けられた。非殺傷で貫通性の高い砲撃がテロリストどもを襲う。
 同時に支援系の奴が結界展開、逃げられないようにする。

 砲撃を喰らった直後、廃ビルから魔導師たちが飛び出してきた。
 俺達の相手はこの空飛ぶ連中。208は地上を分担。要するに空戦魔導師は貴重なのだ。

 俺は両手のデバイスを前に構える。シュート!
 右、左と交互に連射、弧を描くように誘導し先頭の相手を狙う。
 ただのチンピラ魔導師ならあっさり落ちるところだが、回避したり魔法で相殺したり当たってくれない。一応戦闘訓練は受けているようだ。
 だが俺の売りは手数の多さ。射撃のタイミングと魔力弾の誘導で4方向から同時攻撃。ヒット!
 すかさず回転を上げ連射、よし撃墜1。

 その間に後続の奴が俺の脇を抜けようと突っ込んできた。
 俺の後ろには小回りの利かない陸戦型の砲撃手と支援系。なので

 【quick move】

 高速移動の魔法を発動。やっこさんの眼前に移動し道を塞ぐ。
「てめぇ!」
 怒鳴り声とともに振ってきた魔法剣を右のデバイスで受ける。で、がら空きになった胴体に向け左のデバイスを向け発射。
 あれ? BJが解けた。で、落ちてく。
 ……うん、ちゃんと非殺生だ。彼はきっと生きていることだろう。

 それはそれとて頭の中はちゃんとマルチタスク。他の敵のことも忘れちゃいない。
 一瞬俺を睨んで、しかし後方に突破しようとした女にむけバインド。
 ……確かに俺達にチームワークはない。しかし、経験なら豊富だ。
 だからどんなときにどんなことをやればいいのかは解っている。俺はそれをやるし、部隊の他の面子もそれをやると知っている。不良局員でも子供じゃないのさ。
 だから、この場合はバインドでいい。何故なら

  ドッキューーーーーン!!

 後方の砲撃手がその女を吹き飛ばした。ち、……BJは脱げてない、か。
 これで過半数、それも強そうな戦力は落ちた。

 残りは俺の射撃とか、バックの砲撃とか、前衛のぶん殴りであっさり制圧。
 と、気付くと最後の一人がなにやらシグナム隊長に向かって青年の主張をしている。
 いわく『腐りきった社会』とか『我々の正義』とか。
 ……まともな社会人なら世の中が腐りきっているなんて百も承知なんだ。シグナム隊長は彼に向けなにやら話しかけているが、彼女も勿論そんなに寝言付き合うのには閉口しているに決まっている。なので

 俺は砲撃手とアイコンタクト。俺は左、奴は右。
 それぞれ獲物を掲げると、せーのでシュート。
 左胸と右腰に同時に着弾すると、奴は真っ直ぐもと来たビルへと帰っていった。
 よし、戦闘終了。

「お前達ぃ!!」
 一瞬呆気にとられたシグナム隊長は、次の瞬間振り返って賞賛の声を上げてくれようとしたらしい。何故か顔が凄く怖かったけど。
 しかし顔を見合わせサムズアップしている俺達五人を見ると、何故か黙り込んでしまった。
 そうか、隊長も一緒に勝利を分かち合いたかったのか。あと一秒待つべきだったな。



Side Signum

 今回の任務も成功。
 3倍の数の相手を2分で圧勝。負傷者なし。
 なのに何故だろう、この敗北感は……
 この連中は騎士の、いや正々堂々とした戦いが何故解らないのだ。

 いや考え方を変えるんだ。この不良局員どもの性根をやつらが六課にいる間にたたき直してやるんだ。
 それがベルカの騎士、剣の騎士シグナムに与えられた使命なのだ。



PS:
 主人公サイドから見ると、彼等に協力してくれない地上部隊は悪いというイメージがします。
 逆に地上の部隊からすると、『おまいら、なにうちのシマ荒らしてんの』になります。
 交換部隊がなにやっているのか不明なため、こんな風に両者の間だを取り持つため努力していることにしました。
 はやてはなにやら『理想の部隊』とか言ってましたが、そんな横紙破りな部隊があれば嫌われ者間違いなしでしょうね。



[9964] 三話
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2009/08/16 19:20
「あぁ~~~~~っと」
 俺は欠伸を殺しながら宿舎から出た。昨日の酒が残ってんな~
 俺達交換部隊にチームワークなどない。しかしあえて無視し合うほど子供でもない。
 なのでみんなで飲んだりもするのだ、特に出撃があったり大勝利だったりする日は。

「んんんんん~」
 午後も早いので日が妙に高い。太陽サンサンな六課基地内なんて久しぶり、俺達は夜の住人だからな。
 なのでフラフラと無駄に昼の世界をうろついてみたりする。無駄な行動。うん、やっぱり酒が残ってるな。
 普段来ない方に来ると金網にしがみついたウサギさん、もといフェイトさん発見。
 確かあそこは訓練場だっけ。そう言えば俺達使ったこと無いな~、何でだろ?

「どうしたんですかフェイトさん」
「……」
「?」
「……」
 なにやら彼女は訓練所の奥をジッと見ている。その視線を追うと教導を受けている女の子達と子供達。
 お、高町教導官ニッコリ砲撃。おお、凄い、避けた。避けたところで誘導弾。交わし損なって、あ、転けた。怪我はないようだ。流石に上手いな、生かすも殺すも自由自在。

 あれ、よく見れば子供達の一挙手一投足にハラハラなフェイトさん。
 そう言えばデバイス屋のシャーリーが言ってたけど、あのお子様たちはフェイトさんの被保護者だっけ。ふむふむ、新米ママが子供達を影から見守る図か。年回りとか突っ込む部分が多い気もするが、微笑ましいからスルーしとくか。

「ふう……、え、クリス?」
 訓練も一息つくとフェイトさんもひとつ溜息、で俺の存在に気付いてくれた。
「こんにちは、フェイトさん」
「ああ、こんにちはクリス。えっと、今日は模擬戦ですか?」
 ……をい。
 なにが、どう繋がって、どうなると、そう言う台詞が出てくるんですか。ここはどっかの戦闘民族の巣ですか?
 俺が慌てて否定すると、フェイトさんは変なこと言ったのかしら小首を傾げて見せてくれた。
 うん、その仕草は可愛いよ。でもベースに成っている思考がどっか常識と違いそうだよ。若くして執務官に成るようなお方は我々下々の者と思考形態がちがうんかい?

「そうやね、模擬戦。それもいいんやないか?」
 いきなりニョロっとばかり左、フェイトさんの反対側から声を掛けられた。
 あわててそちらを見ると誰もいない。というのはお約束。視線を少し下に下げるとこちらをニコニコと見上げている女の子、ではない。
「おっと、八神部隊長殿」
 あわてて右手を挙げ敬礼。なんだかんだ言って佐官というはやっぱり偉いのだ。
 実を言うと直接声を交わすのは着任の挨拶以来だ。本当に俺達交換部隊、正規の指揮系統から外れてるな。
「いやいや、この部隊でそんな堅苦しいのはなしや、気安くはやてと呼んでな」

 む、なんかノリがよい感じ、乗ってみようか。怒らせて、目を付けられてもそれを理由に早めに足抜け出来るかも。なので
「……了解。はやて」
「おお、やるや! 躊躇わずはやてと呼び捨て、そこに痺れる憧れる!」
「フッ、俺に惚れるなよ、ベイビー♪」
「フン、うちかて選ぶ権利はあるんや!」
 見つめ合う俺達と、オタオタして俺達を見比べるフェイトさん。
「「やるな」」
 ということで二人してハイタッチ。よっしゃOK。

「でなぁ、クリスさん」
「なんですか、はやて部隊長」
 一発ネタなら兎も角、上官を呼び捨てにするのはNGだ。この辺が落としどころだろう。
「あんたら交換部隊の人、訓練とか全然出てきやへん。体鈍らせたら困るし、ここは一発模擬戦でもしたりせん?」
 ……体鈍らせるって、あんた。俺達昨日実戦よ。テロリスト集団ぶっ潰してきたんだよ。
「まあ正直、うちもあんたらの実力見たいってわけやけどな」
 ああ、それが本音か。了解。シグナム隊長介してじゃないと俺達の戦闘データ伝わらないからな。しかし
「あ~~、まあ今は勤務時間外なんで、シフトが会えばということで」
 めんどい、疲れる、誰がそんなこと勤務時間外にやるもんか。
「いや~~、うちにもタイミングというものがあるんや。是非、今!」
「いやいや、俺らオンオフははっきりとというお達しが上の方から」
 俺達交換部隊は半分非正規なため、六課の魔導師の保有基準外となっている。そのため非常時以外の時間外勤務については極力パスできるようになっている。これは上の方からお達しで、ぶっちゃけ六課への嫌がらせである。
「う~~ん、う~~ん。おお、じゃあ模擬戦勝ったらご褒美あげたる♪」
 ん、ご褒美?
 なんとなくその響きに興味がでた。
「な、な、なんと! クリスさんが勝ったらうちの部隊の好きな子とのデート権プレゼントや!」
 ……、おい、なんか凄く公私混同でないか、それでいいのか部隊長?
「グリフィス君でもヴァイスはんでもヴィータでもリィンでも、好きな子指名してもオッケーやで」
 ……、ああ、何だそのチョイスは? この子狸隊長は俺のこと何だと思ってくれていらっしゃるんでしょうね。
「ねぇ、ちょっとはやて」
 ここで、盛り上がるはやて部隊長を止めてくださるフェイトさん。やはり貴女は六課の女神です。
「リィンは不味いよ。まだ子供だし、デートとかもっと大人になってからじゃないと」

 ……そっちかい! 
 俺も妖精さんには興味ないよ。好みから言うと、もっとこう……。あれ?
「はやて部隊長、こっちから指名権はあり?」
「いいよ、誰や?」
「フェイトさん♪」
 おぉぉ、とえぇぇの答えが返ってきた。どっちがどっちかは明白だろう。
「クリスさん、あんた勇者やったんやな」
「ふふふ、折角なら目標は高く持たないと」
「お、えっと、クリス」
 なんか驚いてる顔のフェイトさんにウィンク一つ。驚いてる顔が困った顔に。うん、やっぱり可愛い人だ。模擬戦好きらしいけど。

「ふむふむふむふむ、そっかフェイトちゃんか!」
 はやて部隊長はなんか嬉しそうだ。俺、なんか地雷踏んだ?
「フェイトちゃんみたいや高額商品ゲットするなら、相手も半端ないとな。だからな、相手はこれや♪」

 彼女の視線を追っていくと……何処か怒ったような、それでいて嬉しそうなうちの隊長が立っていました。

「あの、シグナム……」
「ふ、まかせろ。フェイト・テスタロッサ・ハラオウン。この剣にかけお前のことは私が護る」
 あんたはフェイトさんの父親か? 父親だというならその胸の凶器を外してこい。

 いつの間にか、というか気が付いたら俺達は訓練場の中で対峙していた。
 二人とも空戦魔導師なので共に10mほど空に浮く。なので回りの様子がよく分かる。分かるが
 外を見るとはやて部隊長を始め、高町教導官に嬢ちゃん坊ちゃん。おい、なんでうちの部隊の連中まで揃ってるんだ。にやにやしながらポップコーンに、おいそれビールか?

「さて、行くぞクリス」
 部隊内飲酒を無視し、なんかやる気満々の我が隊長。しかたない、始めますか。
 俺は、我がデバイスを起動した。
「フォーマルハウト、セットアップ」
 【set up】
 機械音声と共にデバイスが展開、BJが装着される。
 俺のBJはロングコートにズボン、ショートブーツ。変な装飾はないシンプルなもの。珍しいのはデバイスの方か。
 基本的なシルエットは剣である。ただしナイフにしては長いし、剣と呼ぶには短い。剣のうちのマイナーな分類、コダチとかいうものに似ていると言われたことがあり、俺はその名称を採用している。
 ただし手元をみると剣とは似つわない。六連発のシリンダーと銃口。その形状は銃だ。
 質量兵器が禁止されているミッドでは知るものは少ないが、リボルバーと呼ばれる拳銃、その形状そのままを持っている。その拳銃の銃身下部からブレードが伸び、コダチを形成している。
 シリンダーにセットされているのは勿論弾丸ではなくカートリッジ。無難に6つ。
 剣であり、銃である。銃剣。それが左右一対。右の黒と左の銀。
 コダチ二刀流であり、二丁拳銃。それが俺のデバイス、フォーマルハウトだ。
「よし、展開したな」
 シグナム隊長は猛禽の様な、餓狼のような、要するに戦闘大好きな笑みと共に俺に斬りかかってきた。

 さて、六課隊長陣五人。この内、俺が勝てる可能性があるのは実はシグナム隊長ただ一人だったりする。
 高町教官の砲撃、はやて部隊長の大規模範囲攻撃、ヴィータ三尉の破壊力、フェイトさんのスピード。どれも俺が対処出来る範疇を越えている。俺が対応出来るのはシグナム隊長の斬撃だけだ。
 いや、決してシグナム隊長が弱いと言っているわけではない。総合バランスにおいて隊長は雲の騎士団の将に相応しい能力を持っている。ただし将故にバランス重視側で偏った能力がない、それ故に対処できる、そういうことだ。
 ガンガンと迫ってくる隊長の剣を俺は二刀を持っていなしていく。俺のフォーマルハウトは短く、それ故に取り回しに長ける。なので剣戟戦において守勢に回った場合、俺の守りは堅い。なので
 幾ら巧みといえど、大型の両手剣を使う隊長のスピードなら着いていけないことはない。
 しかし……重い。
 このスピードでこの重さかよ、ほんとこの人バケモノだ。
 それでもスピードでは俺の方が勝っている。隊長の剣戟の隙をついて俺は射撃。一発二発。
 無理で撃った魔法弾だが、隊長の防御を抜き命中。流石に倒れはしないがダメージは与えられる。

 これが俺が言った相性の理由だ。
 俺の戦闘パターンとして、まず相手の攻撃をコダチで止める。その隙、硬直時に銃でダメージを与える。
 所謂後の後の戦闘スタイルだ。で、隊長陣達との戦闘でこれが使えるのは実際シグナム隊長だけだったりする。
 高町教官やはやて部隊長、さらにヴィータ三尉の攻撃は俺のコダチでは止め切れない。防御動作と同期してプロテクションが自動展開されるが、彼女達の全力全壊を相手にして保つ自信はほとんどない。
 受けて止めて射撃、という手ではフェイトさんのスピードについていけない。
 バランス型故に特化していないシグナム隊長のみに有効なパターンなのだ。
 でだ、相手の攻撃を何度も受けているとそのパターンも読めてくる。ここで反撃に出たいがジッと我慢。手数が多い反面、一撃が軽い俺は今のペースが狂うと逆に危ない。

「やるな」
 シグナム隊長はそういうと俺と距離をとった。やば、パターンが替わる。
 ではこれはと言うと、隊長の剣が分解した。剣が解れ、鞭の様に襲ってくる。
 正式名は知らないが分隊の誰かが蛇腹剣とか言っていたからそれで良いだろう。俺を半包囲するように蛇腹剣が俺を取り囲む。
 蛇の様に襲ってくる剣を俺は両手のデバイスでいなした。
 ……あの、本気ですか?
 これって接近戦が出来ない場合の中距離用の代用攻撃だよね。形状変換でサイズはでかくて威力はありそうだけど、逆に重くなってるし攻撃のモーションが見え見えなんですけど。
 接近戦で隊長とガチが出来る俺に取っては、逆に有利な状態なんですけど。
 うん、隙が多いから前より多く撃ち込める。で、隊……、シグナムにダメが溜まっていく。
 ……シグナムもそれに気付いたようだ。さて。

 ドゥーン、ドゥーン。
 俺は左右一発ずつカートリッジロード。
「そろそろ、決めますか?」
 無論、挑発だ。相手をこっちの流れに乗せるのは対人戦の基本といえる。なので

 ガーン、ガーン
 シグナムもカートリッジロード。
「良いだろう」
 蛇腹剣をもとの長剣に戻し、構える。

   ベルカの騎士は”一対一でベルカの騎士に敗北はない”などと豪語する。
   彼等は真面目で真っ直ぐだ。

 俺はフォーマルハウトの演算能力を最大解放、今まで、そして今日の戦闘データからタイミングを計算させる。

   故にパターンが読みやすい。なので、こと初戦において

 「…紫電」
 シグナムが構えた。あれは彼女の決め技だ。

 「一閃!!!」
 シグナムが飛び出した。真っ直ぐ俺に向かってくる。そのタイミングをフォーマルハウトが演算する。
 今だ!!
 相棒の指示と共に相棒が用意していた魔法を起動。

 【quick move】

 高速移動で俺はシグナムの斬撃から離脱。水平移動ではない。後方にバックでもない。
 頭を起点に全身を後に回転、下半身が上に跳ね上がる。慣性に取られ上に移動した俺の真下、髪の毛を掠るようにシグナムの剣が通過していく。途中で減速、体を捻って後ろを向く。

 そこには大技を外され硬直状態にあったシグナムの無防備な背中があった。

   俺は一対一でベルカの騎士に負けたことはない。

   ……うん、勿論あれだよ。負けたことがないのは勝ち目のない勝負は受けないからだよ。



side Nanoha

 あ、直撃。シグナムさんが意識無くして落ち…… あ、お姫様だっこ。
 ……はやてちゃんキュピキュピした瞳で二人を見るのは止めようね、なんか黒いよ。

 でもすごいやクリスさん。リミッタ付きとはいえ、シグナムさんに勝っちゃうなんて。
 格下でもやりようによっては強い人に勝てる。見学してもらったみんなにもいい刺激になっんじゃないかな。
 でもまあクリスさんの場合は ……あれ変だ、このファイル魔導師ランクAになってる?
 なんで?


PS:
 なのはさん、いろいろ良い事言ってます。
 だけど、クリスの近接銃撃に刺激を受けて、ティアナが例の撃墜事件の戦法を思いついたとしたらどうなんですかね。
 なお、クリスはこのあともう一度シグナムと模擬戦します。
 で、遠距離ハヤブサ攻撃であっさり撃墜。やはり大事なのは相性ですね。

PS2
 なのはって『空のエース』ですよね。空って陸か海か微妙ですね。
 コミック版によるとなのはって『本局』地上部隊所属なんですね。要するに海の地上部隊。海軍陸戦隊?
 シグナムは陸の航空隊っぽく、クリスもそこの所属としています。
 つまり、空って海と陸の混成部隊何ですかね? 微妙



[9964] 四話
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2009/07/14 21:01

「お、そろそろスタートか?」
 今日の俺達交換部隊は昼間っからミーティングルームで待機状態だ。
 交換部隊には夜間勤務の他に、非常時用の待機シフトがある。前衛組が出動した時など、隊舎を空にしないように後詰めとして緊急呼び出しされるのだ。
 今回は六課設立して初めての緊急招集。
 要するに前衛組、スターズとライトニングが初出動となったということだ。
 まあ本部を空にするわけに行かないのは解るが迷惑な話だ。
 ここにいるのは俺達バックヤードのうち四人。シフトだったのが二人、食堂に居たところ確保されたのが一人。いつものように芝生で昼寝をしていたをたたき起こされたのが俺である。
 シフト外なので当然拒否したのだが、ロウラン准尉にドンビキするほど頭を下げられ仕方なく待機についた。あとでシフトの調整をさせねば。

 なおシグナム隊長も不在。
 シャーリーとかロウラン准尉に聞いたところ、シフト明け直後に聖王教会に行ったとか。なんかとんでもなく落ち込んだ様子に、見かねてヴィータ三尉も付き合ったとのこと。おかげで今日の出撃は副隊長不在。
 なんか辛いことでもあったのか? 夜には帰ってくるそうだから夜勤組に話を聞いといて貰おう。

 あらかじめ現場に放ったサーチャーからのデータをロングアーチで解析、その結果がこっちにも流れている。
 待機中することもない? なので新人陣の活躍を見学中という次第だ。気分は芝居見学、もしくは父兄参観?
 うーーん、ビールとポップコーン希望。

 まずヘリから高町教導官が飛び出す。空中でバリア・ジャケット展開、相変わらず綺麗だ。
 彼女は一旦新人達から離れ空戦型のガジェット、だっけ?を駆逐開始。まあ妥当な戦術だ。陸戦の新人に空からの攻撃があっては不味い。
 どこから飛んで来たのか知らないがフェイトさんも合流。空戦型を落とし始める。
 をを、敵がゴミの様だ

 その隙を付いて、新人どもも列車に飛び降りる。同じように空中でBJ展開。
 ……こいつら漢だ、女ばっかりだけど。
 今日配布されたばかりの、使用経験のないデバイスとBJを展開しやがった。
 俺なら初の実戦、多少不具合があっても使い慣れた道具を使うよ。出来たてのデバイスなんてどんな不具合があるか解らないし、習熟もしてない。
 デバイスをヴァージョンアップしたら、半日は動作確認と習熟を行う俺って実はチキン?

 それはそれとてこの新人さん達、個人用デバイスを作ってもらって無償配布だそうだ。
 ……、確か個人用のデバイスって自前で無かったっけ。一般隊員用の汎用デバイスで不満なら自分でなんとかしろってことで。
 俺? フォーマルハウト創る時にローン組みましたがなにか? 
 まあデバイスローンは管理局がやっていて事実上ゼロ金利、局員なら補助金も出るからかなり安く手に入りますけど。
 ……それでも二年ローンでした。その間ご飯が寂しかったです。

 グチは置いておいて、お子様組のBJは、うん可愛い。しいて言えば少し厚めか。防御重視?
 なんか過保護なママさんがデザインしたような……て、フェイトさんか、納得。
 武器は槍と手袋。手袋は兎も角、あの坊や、あの槍ぶん回せるのか?

 次はお嬢ちゃんたち。
 ツインテールちゃんはミニスカ・ノースリーブ、結構軽装。
 丈の短いスカートは激しく動くとパンツが見えそうだが、別に問題はない。
 BJという意味ではパンツの方が本来のBJだ。上のスカートは追加装甲的な意味が強い。

 ところでBJはある程度、術者によって変更が可能だ。俺の知り合いの某女魔導師はその日の気分でBJの一部を変えていた。フリルとかレースとかシマシマとか。
『今日はイチゴさんだよ、かわいっしょ♪』とピラリとめくられた時は思わず引いた、思いっきり引いた。あいつ、未だに色んな意味で元気だろうか?

 でだ。
「う~ん」
「……ちょっと」
「あら、可愛いじゃない」
 問題は最後の一人、青っぽいショート。
 タンクトップにベスト、下はショートパンツ。で、ヘソ出し。
 子供らしく闊達で、女の子らしく可愛らしい。なのだが色々不味いだろ、戦闘的に。

 ヘソ出しはいい、BJはフィールド系防御だ。素肌を出していても問題ない。
 問題はタンクトップの方、短すぎるだろ。
 何が言いたいというか心臓を覆えと。丈が短すぎて肋骨、心臓の上がカバー出来てないぞ。
 あの辺は心臓のほかにリンカーコアもある、魔導師として護らなければならない重要部位だ。BJがフィールド系とはいえ、布?、があった方が防御力は高いのは確かだ。そこがむき出しはいただけない。

「実は内部装甲とかあったりして」
 前衛のガチメンバー、フロントアタッカーとかの一部には、防御力アップのため肋骨を人造のモノと交換している者がいる。法的にはグレイゾーンだが、生存率が上がるは確実なためそうする奴の考えは解らないでもない。
 まあ、まだ成長期の女の子が改造とかは正直考えたくないな。

 さあ、これで戦闘開始って……あれ?
 隊長陣二人とも対空戦闘継続?

 ……隊長って隊の指揮をとるから隊長でないの? 
 空を押さえるだけなら一人でいいのでは? それを隊員無視して二人でシューティング? 
 で、ロングアーチというか司令部はそれについて一言も無し。
 新人オンリーで前線で実戦、上位陣はそれを納得か。
 ……なんかきな臭いな。
 皆で顔を見合わせると一斉に顔をしかめる。こっちをモニタしているロングアーチには届いたかな?

 で、ツインテールが撃って戦闘開始。ショートが突撃。なんか異様に速い。
 ローラーでダッシュ、ウィンウィン鳴る右のナックルでガジェットを粉砕。
 勢い余って屋根ぶち抜いて……だから初見のデバイス使うなよ。まあ本人嬉しそうだからいいか。
 しかしツインテールと分断されてたの気付いて無いんだろうな、やっぱり。
「シューティング・アーツね」
 うちの格闘屋がショートの戦闘法を知っていた。魔法と格闘の複合戦闘だとか。しかしあのウィィィィィン!!ってやつ、どうやって仕込んだんだろう。なのちゃん運動神経切れてるのに。

 そんなタイミングではやて部隊長ロングアーチに帰還。三尉な俺的には少し安心。

 おっ、ちびっ子が新型とエンカウント。触手にビームか。殴って、効かなくて、あっ、堕ちた。
 で、ピンクが追いかけて、……何だあれドラゴン?
 で、ブレス吐いて。えと、ドラゴンブレスって非殺生あるんだけっけ?管理局的に問題はないのか?
 最終的には、おお、坊主勝った。ユー、ウィン!

 あ、はやて部隊長、後始末地元部隊に押しつける気マンマンだ。あ~~、また六課の評判下がるぞ。

 で、結論。
「まあ、強いね」
「微妙」
「保留」
「同上」

 単純なガチンコなら問題ない。B級成り立てとは思えない強さだ。
 しかし前線に出せるかというと疑問符が付く。此処の能力は兎も角チームとしての連携がとれていない。具体的には後衛が前衛の突出に付いていけてない。
 お子様組はなんか遠慮があるのか赤毛がピンクにあわせている。
 問題はショートとツインテールだ。確かあの娘達は災害救助部隊だったはず。災害救助の連携と戦闘の連携は似て非なるモノだ。そこを上手く矯正してやらないとかえって危ない。
 武装隊への教導がメインの高町教導官は、もしかしてその辺分かってない?
 未完成の連携と高い個人能力、実戦で彼等をサポートしないで放置した隊長。
 考えられるのは今の内に経験値を上げるため?

 ……なんかやっぱりきな臭いぞ。機動六課。



side Hayate

 ふう、勝てたわ。流石なのはちゃんの教え子達、良い具合に育っとるな。ま、それは置いておいて。
 ミーティングルームに繋いでおいた通信機からの情報もカットする。流石ベテランさんたちや、いろいろ辛辣や。
 というかへんなとこで鋭すぎるやろ。スバルの内部装甲って思わず情報リークを疑ってしもうたわ。
 しかし惜しい。あの人たち単純戦力としてだけでなく思考や処世術も含めうちにいて欲しい人たちばかりや。うーーん、雑草の強さ、というと怒られるやろうか?
 全員が無理やら、最悪クリスさんだけでもキープしておきたい。
 尉官、空戦、捜査、指揮。流石正規な教育受けた士官さんや。うちら促成栽培組とは地力が違うわ。
 フェイトちゃんと組ませ捜査させても良いし、ギンガが来たら組ませてもいい、もろスターズの上位ユニット誕生や。
 むむむ、なんかいい手は…… お、そうやデートや♪
 クリスさん、フェイトちゃんお気に入りみたいやから、フェイトちゃんからリクルート掛けてももらお。
 うん、取りあえずデートのセッティングや。

PS1
 取りあえず今回主張したいのはパンツ。
 なのはssてばスカートの下のパンツがどうこうというのが増えてきた気がする。まあネタなら良いんだけど、実際変身シーンを見てみなさい。本来の下着が格納?されてBJのウェアとして装着されてるでしょ。わかりやすいのが5話のフェイトとかティアナか。スバルは参考にならない、ノーパンからいきなりショートパンツだからね。

PS2
 コミック版見るとこの時期『コンビネーションとチームワーク中心』とか言ってるけど、5話みるとチームプレイが出来てるようにはとても見えません。実際スバルとティアナは独立して動いています。
 なので今回のクリス達の評価になりました。

PS3
 不良局員を自称しているクリスだけど、『事件解決の為には手段を選ばない』という過激タイプでも、立場を利して小銭を稼いでいるわけでもありません。
 クリスのイメージは熱意をなくした元エリート。やれば出来るけど、言われなければ何もやらないものぐささんです。なので今回のはやてのような台詞が出てきます。

 なお、クリスのプロフィールはこんな感じです。
  普通学校卒業(小・中学校相当・義務教育)
  魔法学校卒業(高等学校相当・中等教育)
  空士訓練校卒業 (入局)
  航空隊配属
  士官学校卒業(航空隊からの推薦で入学)
  航空隊復帰
  ……ドロップアウト

 ミッドの標準的な教育制度や局の昇格制度はよく分からないのですが、こんな処でどうでしょうか?



[9964] 五話
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2009/07/21 23:03

 さて、今日はフェイトさんとデートの日だ。
 るんるん気分で六課に来たらシャーリーに服を渡された。今日のデートはこれを着るようにとのことだ。
 着替えてみると黒っぽい硬質なイメージ。ついでにサングラスも渡された。これってMIB?
 MIB?知らないけどさ。
 で肝心のフェイトさんはいうと、ドレスでも私服でもない管理局の制服姿?
 ここで登場した子狸隊長に本日の行動予定表を渡された。
 ふむふむ、某医療機器メーカーが違法目的の人工臓器製造に関わっていないかの調査、か。微妙に色気に欠けるというか……

「なんでデートで捜査しないといけないんだ!!」
 怒鳴ってみました。うん、俺は悪くないよね。
 俺の怒りを予見していたようにはやて部隊長は俺の首をひっ掴んで部屋の隅に連れて行く。はやて部隊長ちっこいから首に手を回されると色々くっつくな。うん、色々小さい、どことか言わないが。うん、俺も気にしない。

「フェイトちゃんの捜査、上手いってないんよ」
 そんなことをボソボソと耳打ちされる。
 執務官的な調査法、サーチャーによる盗撮やハッキングはここミッドチルダでは違法。補佐官と一緒に出向のため、普段の捜査で使っている武装隊の人もいない。そうなるとフェイトさん一人での外回りとなってしまう。
 管理局内で名高い『閃光』も、余所の人から見ると20前の小娘。そんな人が一人で行って捜査しますといっても、はいはいそうですかお茶を濁らせて終わりだ。礼状がある訳でなくあくまで任意なので、対応が悪いらしい。
 そんなかんやで捜査が進まず落ち込み気味とのこと。

「そこでクリスさんの出番や」
 と言う訳らしい。
 むっつり難しい顔でフェイトさんの後ろからプレッシャーを掛けて、捜査に協力する様に働きかけて欲しいらしい。……どうせ俺は雰囲気きついよ、押し出し強いよ。
 それでも何故俺がかと聞くと、分かってる癖にと返された。
 六課で捜査のスキルを持っているのは特別捜査官の部隊長とフェイトさんにロウラン准尉、それに俺だけだ。
 高町教導官は士官とはいえ速成教育で不要な技能講習は受けていない筈。聖王教会からの派遣の色合いの強いシグナム隊長とヴィータ三尉も持っていない。
 ロウラン准尉は正規の士官教育を受けているが、彼が居ないとロングアーチが回らない。……仕事しろよ、ロングアーチトップ。
 なので士官研修の一環として捜査教育をうけた俺の出番とのこと。……研修うけて、先輩と捜査したことあるけど、もう2年も前のことだぞ、ほとんどペーパーだよ。

「まあ、シフトの件はシグナムと相談しとくから、フェイトちゃんのことよろしゅうな」
 そう言われると色々断りにくい。フェイトさんにいい顔したいし。
 なお、何故ロストロギア対策部隊の六課が生体パーツを調べるのか気になって聞いてみた。うん、ニッコリ嬉しそうに笑って子細に説明しようとするはやて部隊長を見て、聞くのを止めました。
 世の中知らなければよい事って結構あるよね。知ってしまって足抜け出来ないなんて嫌だよ、俺。

 さて個々で問題、フェイトさんは執務官。執務官の仕事とは何か?
 犯罪捜査? それは部隊長みたいな捜査官の仕事。
 違法行為が行われていないかの査察? それは査察官の仕事。
 なら執務官の仕事とは何か? 士官研修中の資料をもとに俺が認識しているのはこう、
『辺境、および管理外世界に置いて、武力行使をも含めた司法行動を許可された者、
なお経験不足また若輩者においてはその行動を保証する責任者の同行を必要とする』
だ。
 要するにだ、中央から離れた法的秩序が弱い世界において、軍隊と警察と判事と裁判官を兼ねて管理局的な法を守らせろ、そんなとんでもない役職だ。それを実現するために強力な権力が与えられている。
 しかしそんな執務官も中央、例えば中央中の中央、ミッドチルダなどではその権限は極端なまでに押さえられる。
 実際ここクラナガン近郊では、執務官のフェイトさんより地上の正規士官の俺の方が捜査権限は高いのだ。
 なので執務官が中央で部隊に所属する場合、その知識を生かして法務関係のスタッフ職につく場合が多い。

 そんな執務官であるフェイトさんが、ミッドで捜査が行えるのには理由がある。
 フェイトさんははやて部隊長の部下だ。で、部隊長は特別捜査官。特別捜査官は部下の捜査官を指揮し事件解決の監督にあたる。
 そう、はやて部隊長の直属部下として、捜査官の権限を委譲されているからこそフェイトさんは地上で活動できるのだ。建前上捜査しているのは八神特別捜査官であり、フェイトさんはその部下として動いている。そういうカラクリだ。
 そんな裏技、堂々と使うから六課は以下同文。
 やばいな、こんな捜査に付き合うとあとで色々面倒そうだ。
 ……取りあえず今回は偽名で通そう。フェイトさん、稲妻の相棒だから、うん『オムザック』。なんかしらんがそう決めた。デバイスは……プロトンサンダーとでも呼ぼう。……MIBといいなんか変な電波が入る日だな。

 さて今回の捜査だけど問題のメーカーに直接行って調べる、なんてことは勿論しない。どっかのスパイ映画ではないのだ。今回の調査は対象メーカーと取引のある複数の企業に行き、その取引内容を調べるという地味なモノだ。
 複数の取引先から情報をひかくしたかくてきにみるとうかびあがってくるずめんがある、おっと棒読みになってしまった。
 取りあえず調査企業に行き、身分証を見せ、端末から取引情報をデバイスに読みとる。勿論問題メーカーを特定しにくいように競合他社っぽいのも調べておく。
 デバイス便利だ、デバイス。シャーリーにチューンアップして貰って……損したのか実は?

 情報を貰うメーカーは一社ではなく何社もある。その辺を回っていると、もう遅い。クラナガンから離れた衛星都市だし、ここで調べる他のメーカーもあるので今日はここでお泊まり。
 六課の経費だというので高そうなホテルに宿をとる……。フェイトさんの経済概念どうなってんだ?
 ホテルのレストランで食事して、部屋に戻ってから今日分かったことの話し合い。勿論食事中に仕事の話はしない。情報漏洩、セキュリティ規約に反するのだ。

 明日の方針を決めるとバーで軽くお楽しみ。
 酔わせるつもりが酔わされた?
 いつの間にかフェイトさんや部隊長のこと、妙に詳しいのに気付かれてしまった。広報などは乗ってるはずのない昔の話とか。
 気付かれ、白状させられ、驚かれ、呆れられ、慰められた。取りあえず口外しないことお願い、約束して貰った。これが小狸部隊長に知られると色々不味い。足抜けが難しくなってしまう。


 多角的に見ると見えてくる図面、ね。最後の調査対象、某貿易商社のデータを眺めても結局俺はなにもつかめない。
 なにかコソコソってやっている雰囲気ではないのだ。やってるとしたら大がかりに……
 大がかり?
 俺は昨日調べた研究所のデータを引き出した。研究所といっても特殊部品の製造・外販も行っている。特殊なものだから製造ロットは少なく、取引も少ない。たが記録をみると3ロット分、特急料金を払ってまで納入させられている。

 ……やばい。
 生体パーツは免疫問題があるから同一部品が大量に必要になることはない、らしい。昨晩念のためデバイスに調べさせていた豆知識ではそうなっていたはず。
 そんな捌けの悪いモノを大量に? サイボーグ量産? いや同一免疫系だ、クローン?
 なんか昔聞いた悪い噂を思い出した。コレに関わって全滅した部隊が幾つもあったとか。
 小狸隊長、なに調べてるんだ? 俺はそんなものに関わりたくないぞ。
 取り合えずチェックしたデータをフェイトさんに渡して俺は手を引こう、引こう、引かせたい、な。彼女も手を引かせたいな、無理だろうな……
 さて、どうしようか?




 ところでフェイトさん黒か、少し意外。



side Elio

 フェイトさんはしばらく捜査で外出、だから僕たちはスバルさんたちと一緒になのはさんと訓練。
 ドラマとかだと捜査する人はコンビを組んでというのが多いけど、フェイトさんは大抵一人。生意気なようだけど少し心配。
 でも今回はコンビで捜査だそうです。相手の人は交換部隊の人、あの模擬戦でシグナムさんに勝った人。強い人なので少し安心かな?
 でもその話をなのはさんにすると変な顔をされた。何でだろう?
 確かに僕も気になるところはある。
 交換部隊の人は、フェイトさんやなのはさんより年上の人ばっかり、シグナムさん……とかの話はやめよう。
 キャロは大人の余裕があって格好いい、とか言うけど、あれって大人の余裕なんだろうか。なんかただだらしないというか……。いや止めよう。
 べ、別に焼き餅やいてるわけじゃないからね!


PS1
 取りあえず執務官の考察。元次元犯罪者で10代前半のフェイトがとれる資格なら、万能な権限はなく限定要因があると考えられます。要するに"海"の遠くで暴れる分には構わないが、ミッドチルダとか大事な処じゃ大人しくしていろ、と。
 アニメ版・コミック版共に執務官というのはクロノとフェイトしか出てきてないし、その共通事項からこんなモノかと想像しました。どんなモノでしょうか? なお本文中の同行する責任者とは、クロノの場合リンディさん、フェイトの場合クロノとかになります。
 ところでメタルヒーローで『宇宙刑事』というのがありましたよね。あれってSF大会とかで聞いた認識では、日本語訳が間違えているのだと。シェリフと訳するが正しいらしい。捜査権とか裁判権とか持っていてナニかに近い。
 要するに『宇宙刑事フェイト』な訳で。だからお色気があってもいいのです。そう言えば森永奈○美さんは何処に行ったのだろう?

PS2
 戦闘機人量産計画は存在したはず。そのためにレジアス中将がスカさんと組んだのだから。(先発組ナンバーズが試作品で後発組が量産試作機なのか?)
 戦闘機人にせよガジェットでも所謂プラントはアセンブリ、組み立てを行うだけなところと考えられます。細かいパーツまで全て作っているわけではないし、出来るはずがないと。(メーカーの人間なら分かる筈)
 フェイトさんが捜査してるならこの辺を追って、と言うのが今回の話です。
 ま、実際この時期戦闘機人追ってるのはちと早い気もするんですが、そこは話の都合ということで。

PS3
 天の魔王様、雷のキツネさん(金髪兎でも可)、月の小狸、火のニート、水のうっかり。
(デバイスが山っぽい)山のゴスロリ、(地面から鎖を出す)地の犬。
 そしてやっぱり風の凡人。
 冥砲計画なのライマー。ちと苦しいが全員集合。
 なんとなく並べてみた、大意はない。



[9964] 六話
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2009/08/16 19:24
「なあ、グリフィス君……」
「なんです、クリスさん?」
「なんで俺、此処にいるんだろう?」
 俺が今居るのは普段のバックヤード待機室ではない。ロングアーチ、というか六課司令室。更に言うなら俺が座っているのは八神はやて部隊長閣下の席だ。
「……お仕事だからですよ」
「俺の担当業務じゃないんだが」
「仕方ないでしょ、はやて部隊長とフェイト隊長に頼まれたんですから」
 俺達のやりとりを聞き、クスクス笑いながらルキノちゃんがお茶を配ってくれた。しかし、
「その台詞、今日五回目ですね。イェーガー部隊長代理♪」
「部隊長代理、言うな!」
 怒鳴ってしまった俺は悪くないよね、きっと。

 俺達がこんな漫才をしてるのには勿論理由がある。
 六課隊長陣は全て士官だ。執務官なフェイトさんも一等空尉という階級を持っている。執務官というのは役職であり階級ではないのだ。
 この五人は士官であるが、逆に機動六課には彼女たちしか士官がいない。

 その隊長陣が全員隊舎を離れてしまうとどうなるか?
 ロングアーチのNo2であるグリフィス君は准尉、士官見習でしかない。つまり機動六課から正式な士官がいなくなってしまうのだ。
 実際、実務上は問題ない、ロングアーチスタッフは十分優秀だ。業務を満足にこなしていける。しかしなにかあった場合責任をとるべき士官がいないのは、部隊として非常に体面が悪いわけだ。
 そこで迷惑を掛けられるのが、三等空尉という階級を持つ俺だ。
 隊に残ったメンバの中で最上位者ということで、俺がロングアーチに引っ張り込まれる。
 緊急出動な場合は仕方ないとしても、全員で外出ってありか?

「しかしこの状況、想定してなかったのか?」
「クラナガン周辺だと部隊長のデバイスとロングアーチのシステムはリンク可能です。日中はなのはさんが教導で詰めています。だから上位者がいなくなってしまうのは正直想定外で」
 しかし今回のお出かけ先はクラナガンを遙かに離れた保養地、なんとかホテル。
 ロストロギアの競売があるとかで六課に警備依頼が来た。出動回数が少ない割に予算を喰っている六課は断り切れなかったと。

「でも今回は日帰りです。前回の出張よりマシでしょ」
「前回? ああどっかの管理外世界へのお出かけか」
「ええ、第97管理外世界。はやて部隊長やなのはさんの出身世界です」
「だからと言って、部隊長以下前線メンバ全員で行く必要があったのか?」
 せめてシグナム隊長残せ、交換部隊的に。
 なんか里帰り気分で、ルンルン鼻歌歌いながら出かけやがった。残った者、特に俺がどれだけ面倒掛けられたか。勤務明けに宿直までやらされたぜ。
 まあそんなことがあったんで、ロングアーチメンバとは名前で呼び合う仲になったがね。何となく不本意だが。

 しかし管理外世界か……ふむ。
「ロウラン准尉、時空管理局における管理外世界の定義を簡潔に述べよ」
「はっ、イェーガー三等空尉。
 一定の文明が存在し、かつ時空制御技術並びに魔法文明の存在しない世界。
 または知的生命が存在せず、資源的に開発するメリットの薄い世界です」
「……正解だ。といってもこの辺は『陸』の俺より『海』のお前さんの方が詳しいよな」
「そうですね。僕は本局の方で士官教育受けたので」
「しかし第97ね、もしかして部隊長や教導官みたいなのがゴロゴロ居るのか?」
「それこそまさかですね。そんな世界があったらとっくに管理世界に組み込んでますよ」
 確かに。優秀な魔導師は有効な資源だ。管理局が目を付けないはずがない。
「で、グリフィス君も行ったことがあるのか?」
「ええ、母の親友のリンディ統括官が住んでるんです。その関係で何度か」
「統括官ねぇ、お前さんの母親も『海』の提督だっけ?」
「はい、運用部ですけど」

 いつも思うが何でここにグリフィス君が居るんだろう。
 同じ時空管理局とはいえ、航空艦で移動する『海』と、固定基地を持つ『陸』では色々な点で運用ルールが違う。
 海で働くことが決まっているグリフィス君の場合、『陸』のルールで教育する必要はない。というか寧ろ邪魔だ。
 優秀な人材であることは否定しない。俺も色々世話になっている。しかし何というか中途半端なのだ。
 部隊長補佐はいい。しかしロングアーチNo2としては役者不足だ。
 航空艦として閉じた部隊な『海』ならいい。しかし『陸』は彼方此方と地続きだ。色々なことを折衝する必要がある。この場合必要なのは下手な優秀さよりもタフさ、押し出しの強さだ。准尉という中途半端な階級もネック。
 しかしここに居るのは中途半端なグリフィス君……。ひょっとしてちょうど良い人材集められなかったのか?実にありそうな話で恐ろしい。

 そんなことを考えていると緊急警報。
 ホテルなんとかに向けガジェット大量進行中。
 ロングアーチメンバは一斉に自分の端末に飛びついた。うむ良い仕事してるな。
 指示はグリフィス君が出し、一々報告してくれる。なので俺はすることがないが一つ口出し。

「転送はどうなってる?」
「ガジェットドローンがAMFを放出しています。このため儀式魔法、転送ゲートも安定係数を割っています。転送出来ません」
 よしシャーリー、ちゃんと調べてたね。
 で、これがAMF関係でやっかいなとこだ。転送魔法はAMFと相性が非常に悪い。
 目的の場所に出られないだけなら良い。体の上半身と下半身が別の処にはじき出されても、まあいい。繋げれば良いだけだ。
 安定度が低いと壁の中に出たり、出現場所の変なモノ、ハエとかバラとか結果的に合成されてしまうケースがある。俺も実際に見た訳じゃなく資料でだけど。
 転送は無理でヘリは現地。これで俺達交換部隊が出動と言うことはないな。
 後はのんびり見物していれば良い筈なんだが…………

 …………
 …………
「えーと、クリスさん。なんで机に突っ伏してるんですか?」
 シャーリーさんよ、貴女が非常識な人だと知っては居ましたが、やはり非常識なんですね。
 不思議な顔でこっちを見てるグリフィス君もルキノちゃんも同類なんですね。
 俺は席にのめり込むのを止めてスクリーンを見上げた。正しくは戦場のサーチャーから送られるデータをだ。

 前線を護るのはヴォルケンリッターの3人? シグナム隊長、ヴィータ二尉、あと犬。圧倒的な攻撃力でガジェットを削っている。特に犬、強いぞ犬。
 新人4人はホテル前で防衛ラインを構築。前線の3人が撃ち漏らした敵を迎撃する体制だ。力量を考えると無難な体制だ。
 で別のウィンドに写るのはホテル内で談笑する隊長3人。全体指揮を執っているのは我が部隊自慢の美人医務官シャマル先生。
 大事なことだからもう一度言おう。隊長陣を差し置いて指揮を取っているのは、交戦権のないお医者さん。
 あのーー、隊長達の誰か一人、前線指揮に入ろうって発想ないんですか?
 せめて曹長な妖精さんでも許す。

「グリフィス君、指揮系統とか命令系統って言葉、知ってる?」
「えっ、勿論知ってますけど」
 そうか、それ知っててこの状況不思議に思わないのか? もしかして俺が変なのか?
 なので俺は交換部隊の回戦で待機中の同僚に念話。
(おい。この状況でお前ら前線いたら、シャマル先生の指示に従うか?)
(((絶対、嫌だ! )))
 力強く同意の返事が返ってきた。うん俺の感覚間違ってないよね。

 やっぱり六課メインスタッフって『海』の人間だ。『陸』の常識ぶっ千切ってるんじゃないよ。
 なんか真面目に不良局員名乗る自信がなくなるんだ。だからお前らとっとと海に帰れ!

 まあ、取りあえずお仕事はしよう、給料分は働かないと俺の矜持に響く。
「グリフィス君」
「はい、クリスさん」
「地元部隊に送るデータは概略で。それとサーチャーからの生データは絶対に送らないように。あと記録からシャマル先生の事は削除しておけ」
 この陣形、地元部隊とか『陸』の上に送ると絶対揉める。誰かが問題視する。揉めるのは良いけど仕事が増えるのは嫌だ。穏便にいこう。
 なんで俺がこんな気配りしなきゃならないんだ。早く来い、移動日。
 変な顔をしながらもグリフィス君が情報レベルを変えたのを確認。あとは戦闘終了を待つのみ。

 ん、ちびっ子とシャーリーが騒ぎ出した? 召喚魔法?
 なんかガジェットの動きが良くなった。有人操作?うえー、どんなリソースがあったらあんな数制御できんだ?

 あれ、召喚師?
 お、やっぱホテル前にガジェットが転送。通常の転送と逆に召喚魔法はAMFと相性が良いらしい。多少の分布なら問題なく転送できる、らしい。原理は知らないが面倒だ。
 新人どもがガジェットと戦闘開始。ヴィータ二尉が戻るまでの防衛戦か。なら何とかなるか?
 ん?、AMFが強化されてないか? ツインテール、んとランスターの魔力弾が通ってない。
 お嬢ちゃん達なにかやるのか? ショートがガジェット引きつけて、後ろからランスターが撃つ。
 て、ロードしすぎ。無茶だ、その数制御出来ないぞ。

 結局、撃った。
 最初の誘導弾制御はほめてあげましょう。制御仕切ったんだから。
 でもリソース使い切ったな。通常魔力弾外した。不味い、ショート直撃コース。
 ヴィータ二尉間に合った、迎撃。

「ふう」
 知らない間に握りしめていた手を広げる。あれ、非殺生でなかっただろ、対物戦だから。
 人、それも子供が死んだり怪我したりするのは嫌だな。
 ヴィータ二尉がランスター怒鳴りつけて、ガジェットと戦闘開始。
 数が減ったからこっちは大丈夫か。
 シグナム隊長達も平気そう。増援がなければそろそろ終わりか。
 地元部隊に戦闘終了を連絡。調査と後かたづけを頼んで終了。
 調査部隊ははやて部隊長が手配すると? 流石は特別捜査官。


「でも失敗しちゃったけど、さっきティアナさん凄かったですね。一度にあんな誘導弾。えと、クリスさんも出来たりするんですか」
 ティアナ? 誰? ……ああランスターか。
 ルキノちゃん、お前の中じゃ空戦Aは陸戦Bの下か? 勿論出来るぞ。
 ランスターの使った魔法、クロスファイヤー?。多分アクセル・シューターの系統かと。
「複数の誘導弾を使っての牽制は基本だよ。六課だと高町教導官やヴィータ二尉が得意なはずだ」
「そうなんですか?」
「砲撃なんかの大規模攻撃は隙を作る必要があるからな。誘導弾で全周囲攻撃、足を止めたらバインド、バインドを外そうとする間にチャージして砲撃、だ」
 だからランスターの選択はミスだ。誘導弾は牽制かザコ掃討が主な使い方だ。誘導弾を強化して主力に使うことは確かにあるが奇手の類、やる場合本当に必要があっての話だ。
 さっきみたいな場合、一度に全機撃墜を狙う必要はない。射撃でも砲撃でも一体ずつ確実に仕留めるのが基本だ。だから、

「なんかバランスが悪いな」
 電車の時も思ったが地力を強化している割に、その運用法がいい加減だ。上手く使えないから強くなった気がしなくて、焦りが出る。焦って、余裕がないから無茶をする。
 複数誘導弾制御にしても、カートリッジを使った威力の底上げについても、基本は良いんだが応用がなってない。

 ……ま、この辺は高町教導官の考えることだ。俺の知ったことではない。俺にはもっと切実に考えなきゃならない問題がある。
 ソレは勿論、この何処までも『海』な部隊から評価を落とさずおさらばすることだ!



side Griffith

 状況終了。なにかトラブルもあったようだけどガジェットを追い払うことが出来た。
 なんだかんだ言って僕はまだ経験不足だ。後方でのサポートしか出来ないけど上手くできているか、不安がある。
 今回クリスさんが居てくれて助かった。
 地元の部隊と揉めたとき、なんだかんだいって最終的な交渉はやってくれた。
 後で怒られたんだけど『陸』には『陸』のルールがあって、僕はそれを無視してたらしい。
 実際僕は本局『海』の出だから『陸』のローカルルールは分からない。母さん、はやてさんの部隊だからと言って僕をここに入れたけど、海と陸の違い、分かってるのか?

 シフトの問題で副隊長達先に帰還で、スターズとライトニングは隊長とヘリで遅れて帰還か。部隊長は引き継ぎで今日は帰ってこれないらしい。ご苦労様です。
 ん、副隊長が帰ってくるからとクリスさん定時で帰る気マンマン?
 えーーと、地元部隊との連絡事項、事務関係の引き継ぎがまだあるんですけど。
 副隊長達、戦闘の時は頼りになるんですけど。うん、戦闘時だけは頼りになるんでけど、事務関係が頼りないというか、出来ないと言うか、やってくれないっていうか……

 ルキノ、シャーリー。なんとかクリスさんの機嫌とってください!!


PS1
 クリスはなのはオリ主でありながら、第97管理外世界に縁もゆかりも興味もありません。
 ミッドの人間なら普通無いよね。

PS2
 2009/8/16 削除

PS3
 無印・A’sでは普通に使っていた転送魔法。StSでは六課サイドは全く使っていない。
 規則的に使えないのか、技術的に使えないのか? 飛行魔法も基本禁止だけど許可が出れば可能なので、技術面にしてみました。(許可制なら5話で使わないのおかしい、フェイトは転送使えたはず)
 具体的にはAMFと相性が悪い、ということで。

PS4
 次がティアナ撃墜編。
 伏線暴露編です。次回、批判意見が少ない場合とらは板に移行しようと思います。
 お返事よろしく。
 勿論今回の分もレスよろしく、レスの有り無しがやる気の有り無しです。



[9964] 七話
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2009/08/11 21:40
 夕方、定時ギリギリに六課に出勤。なんか部隊の空気が悪い?
 今日は定期模擬戦があったはず、誰か怪我でもしたのか? 高町教導官ならそんなヘマはしないと思うが。
 ロングアーチかフェイトさん……フェイトにでも聞いてみるか。
 フェイトには名前だけで呼ぶよう、この前頼まれた。階級は上だけど俺の方が年上で友達だからだそうだ。アイツのことは呼び捨てだったため、なんとなく嬉しい。所詮代償行為だがな。
 で、バックヤード待機室に着くと端末を開く。ロングアーチに誰が残っているか調べると、あれ全員残ってる?
 ロングアーチ全員残る必要があるのか。そっちで何とか出来るならいいけど、こっちにとばっちりが来るのは困るぞ。

 と、そんなタイミングでスクランブル。
 ロングアーチに繋ぐとルキノちゃんが出た。
「出撃?」
「はいクリスさん、じゃなくてクリス副隊長」
「副隊長、言うな!」
 後ろで同僚がニヤニヤしやがる。お前らは部下じゃなくて同僚だ、だから怒鳴りつけないでやる。
「それは置いといて」
「置くな!」
「イェーガー空尉、出撃です。今回空戦なのでバックヤードは空戦可能な魔導師のみ出撃。残りはバックアップとして六課に残ってください」
「了解」
 最初からそれだけ言えばよいのだよ。最近なれなれしいぞルキノちゃん、俺は六課となれ合う気はないのだよ。まあ、俺もリリエ陸士をちゃん付けで呼んでるけどさ。

 今夜のシフトは4人、俺と格闘屋が空戦。ならこの女がFA、俺がCGでツーマンセルだ。
 と言うわけで屋上でヘリに乗り、残りのメンバを待つ。

 と、なんか外が騒がしい。
 覗くと前線陣がフルメンバ。なんかフィアナ?、ティアナ?、取りあえずランスターの様子が変だ。
 教導官がなんか言うとランスターが泣いて取りすがる。いやに感情的だ。……もしかして痴情の乱れ?
 それをシグナム隊長が殴って、あ、ランスター、ダウン。
「「なに、この状況?」」
 俺と相方の台詞がダブる。
 なのちゃん昔からそういう噂あったけど、フェイトだけじゃなくて隊長やランスター妹とも関係?
 うわーうわーうわー、凄いモノをみちゃった。後でみんなにも教えて……は止めよう。武士の情けだ。


 現場に向かうヘリの中は嫌な空気だ。みんな押し黙っている。
 と、その中、高町さんが動いた。暗い顔で恐る恐るこっちに歩いてくると、俺の隣に腰を下ろす。
 えーと、何故貴女が此処にいらっしゃりやがる?
 何とかしてくれと、残る隊長陣に顔を向けると……
 なんですかその何とかしろと言う視線は?
 フェイト、じゃなくてフェイトさん、何で視線逸らすんですか? 兎さんをジッと見ていると、彼女はこっちを見て手を合わせて拝んできた。えと、喋ったんですか、口止めしましたよね、私。
 見るとウチの格闘屋まで俺を咎める視線向けてきやがる。そうかい、お前は空気を読めるいい女だよ。

 さてどうするか。
 痴情の縺れというか、色恋沙汰は苦手だ。だからあの時アイツに一方的に振られるという醜態を……
 まあ、俺の過去はどうでも良いとして。
「えっと高町教導官」
 俺の言葉に彼女はピクリと震え、悲しい瞳で俺を見上げてきた。これがあの天下の高町なのはかよ。
 教導官の悲しみが深くなった気配に皆の視線が厳しくなる。あのフェイトさん、今回貴女に怒られるのは心外なんですが。
「状況が分からないから俺から言えることは少ないんですけど、なのはさんはランスターとちゃんと話し合ったんですか?」
 状況が状況だ。なのはさんと呼ぼう。俺も空気読まないと。なんかなのはさんは不満そうだけど。
「お話、ちゃんとしたよ。でもティアナは……」
「だから言ったでしょ、話し合いって」
 お話、自分の意見を一方的に言えば良い訳じゃない。大事なのは、お話じゃなくて話し合い。
 自分の意見を言い、相手の意見を聞く。一方的でなく双方向。
 それで分かり合えるとは限らないが、重ねる言葉は無駄じゃないはずだ。

「なのはさんは出来る娘だから、自分が知ってること、分かっていることはみんなも分かってると思ってるんじゃないかな。でもね、口に出してちゃんと言わないと伝わらないこと、伝えなきゃならないこと、きっとあるよね」
 ちゃんと口に出して振ってあげないとランスター、きっと吹っ切れない。それは辛いからね。

 なのはさんはしばらく無言でうつむくと、笑顔でこっちを見上げてきた。
「うん、たしかにクリスさんの言う通りかも。ちゃんと教えてあげないと納得出来ないことあるよね。帰ったらティアナとお話……、じゃなくてお話し合い、してみるよ」
「うん、ソレで良いと思うよ」

 ヘリ内の空気が一気に晴れた。シグナム隊長とヴィータ二尉の視線が優しい。フェイトさん涙ぐむのは止めてください。こら相方ニヤニヤ笑うな。


 その後ヘリが現場に着くと、……なのは無双でした。
 ディバインバスター連発に噂のスターライトブレイカーまで見ました。今回出動した俺達、いらない子でした。
 戦わないのにやけに疲れました。
 ふう。


 帰還後、待機任務。
 さてお話し合いはどうなっている事やら。下手撃ったら隊舎が吹っ飛ぶかもしれない。痴情のもつれで”なのはvsシグナムvsティアナ”なんて……、そんなのに巻き込まれて死んだら天国に居る家族に申し訳が立たない。
 父よ母よ妹よ、俺を護ってください。

 なんて事が気になって、結構ストレス。勤務が明けると食堂でご飯。
 昨晩は精神的になんか疲れた。飲みに行くにも腹に何か入れてからにしたい。
 ここのメニューは基本ミッドなんだけど妙なものもある。炊いたライスを主食に食べるって何処の風習? 最近馴れたけど最初は臭いが気になって仕方なかった。フェイトや隊長と食事すると、彼女達大抵アレなんだよね。人の好みには口出さないけど。

 食事が終わったタイミングで誰かが俺の前に座った。席を立とうとすると睨まれて、渋々座ると俺の前にお茶を置かれる。
 誰って? このタイミング、勿論高町教導官だよ。
 中途半端な笑顔に、怒ってますよとばかり額がピクついているのは勿論気のせいだ。

「で、ランスターとの件、どうなったんですか?」
 溜息一つして尋ねると、彼女の雰囲気が一変に良くなった。
「うん、クリスさんの言うとおりだったよ」
 ランスターは悩んでいたそうだ。強すぎる周りに、うまくやれない自分。
 凡人の自分が此処にいて良いのか? ちゃんと強くなれているのか?
 強くなれる自分を証明したいから、勝たなきゃならない。
「今回はいつもの教導と違うって忘れてたよ。長い間、落ち着いて指導していくんだから、無理に技術を詰め込むんじゃなくてその使い方、なによりもみんなの心を育てて行かなきゃ。ありがとう、それを思い出させてくれたのはクリスさんだよ。……あれ、なに、私変なこと言った?」
「い、いや、何でもないよ」
 あ、そう。教導の件で揉めてたのね。恋のトライアングルでハートじゃないのね。修羅場でないのね、ああ、よかった。

「うん、良かったね。じゃ、そういうことで」
「あ、ちょっと待って」
 お話し合い終わり、と言うことで立ち去ろうとした俺を教導官が引き留めた。えと、なのはさん。俺が止まらなかったらバインド使おうとしませんでしたか? 俺はどこかの犯罪者ですか? にゃははと笑って誤魔化さないでください。

「でね、クリスさんにはティアナの面倒見て貰いたいんだ」
「はあ?」
 えーーと、何処をどうしてどうすればそんな話が出てくるんだ?
「取りあえず、これを見て」
 なのはさんのデバイスから俺のフォーマルハウトにデータが送られてきた。それを開くと、
「クロス・ミラージュ?」
「うん、ティアナのデバイスだよ。で、このダガーモード」
「ダガーモードって、これって?」
 銃から魔法刃が伸びる? 見たことある形状だな。
 気になるので術式を調べてみる。えーと、なんでフォーマルハウト用に俺が組んだ術式が当然のように乗ってるのでしょう。モーションパターンも気になるな。なんか鏡を見ているようだよ。

「えーとね、実はクロス・ミラージュってクリスさんのデバイスを参考にシャーリーが作ったデバイスなんだよ」
「パクリ?」
「いえ、リスペクトと言ってあげて」
 どっちでも同じだ、あの眼鏡。なんか気前よくフォーマルハウト強化してくれたと思ったらこんな裏かい!!
「まま、クリスさん落ち着いて」
「落ち着いてられますか。考えてみなさい、なのはさんも自分のデータが流用されたらいい気はしないでしょ?」
「え?、別に平気だけど……」
 ……ああそういうことか。合点がいって少し落ち着いた。この人教導隊の人だなんだ。自分のデータは流用前提になってんだ。

「データ流用は置いておいて、何ですかこのモードは」
 ランスター妹の適正は中距離射撃。幻影で相手を混乱させての攻撃。ついでに指揮適正もあるから、幻影と一緒に部下を動かし支援させれば二度美味しい。
 指揮官もクロスレンジ戦闘がないとは言わないが、まず基本を固めてからだ。地力を固めてから応用としてクロス戦闘を覚えるなら兎も角、この時点ではまだ早い。

「流石、ティアナのことよく見てるね」
 ……流石、ね。そういうことか。調べたのか。
「世話になった先輩の妹だからね、気にして悪い?」
「ごめんなさい」
 意味が分かったのか、教導官は謝ってきた。公式書類を調べると分かることだが、それでもコソコソ調べられるのは腹が立つ。
 ランスターの兄は、航空隊入り立ての頃、俺達の面倒をよく見てくれた。特に同じ双銃使いの俺はそれなりに可愛がって貰った気がする。実戦でのコツとか、幻術がどういうモノでどうやったら騙されないかとか。
 ランスターさんが死んで、上の方が好き勝手なこと言ったのを抗議したけど、入局したての俺達の意見が通るはずもなく……。
 葬儀にも出たけど、雑用してただけでランスター妹と話した訳ではない。
 大体もう何年も前の話だ。

「でもね、ティアナは執務官志望なんだ」
 単独行動の多い執務官ならクロスレンジの戦闘も必須だ。覚える必要がある、が、
 ……執務官かい、そういえばランスターさんもそんな事言ってたな。ミッドの治安を護りたかった俺としては、安易に花形部門を目指してるなと反発したが。
 そうか妹も執務官、つまり海を目指すか。流石六課、『陸』の『海』。

「でね、クリスさん」
「お断りします」
「先輩の妹、だよね」
「もっと適任者がいるでしょ」
「じゃあ、スターズ分隊長としての命令!」
「俺はバックヤードです」
「一尉から三尉への命令!」
「階級盾にすると揉めますよ」
「じゃあねえ……」
 高町なのは教導官殿はここでニコリと笑った。
「恩師からのお願い」
 ……
「……自分で恩師って言っちゃいますか、なのちゃん先生」
「うん、それそれ、その言い方。やっぱり懐かしいな♪」
「つーか、やっぱし俺のこと覚えてたんですね」
「私は、自分の生徒の事忘れたこと無いよ、特にクリスさん達は特別だから」
 なのちゃん先生は幸せそうにニパっと笑った。その顔が2年前、俺が彼女に教導を受けていたときの笑顔に重なる。


 今でこそ鬼教官、魔王先生と名高い高町なのは嬢だが、最初っからそうだった訳ではない。
 最初は先輩のサポート、次はサポートを受けての教導。
 俺達が彼女の教導を受けたのは、彼女が最初に一人で教導を受けもった時だ。
 どこか見よう見まえで、危なかしく、でも一生懸命教えようとする年下の女の子。そんな彼女に教わりつつ、でも頑張る女の子を応援しつつ、俺達は一月の間教導を受けた。
 そんな彼女に俺達がつけたあだ名が『なのちゃん先生』
 オフシャルではなのなの頑張るなのちゃんに教導を受け、プライベートではミッドやクラナガンを知らない『妹』を借り出して遊びまわる。あのころはそんな楽しい日々だった。
 今思うと、普通教導隊に指導を受けるのは二流から一流に上がろうとするそんなレベルの者。つまり普通なら勘違いした者や尖った者、そんなのが多い。
 でもあの時の俺達の中にはそんな者は居なく、年下の教官を許容し、共に頑張ろうとしていた。つまりあれは生徒としての俺達の教導であると共に、新米教官のなのちゃんへのトレーニングでもあったと言うことだ。
 正直楽しい想い出だ。だからこそ頑張ってる『妹分』に今のやる気の失せた自分は見せたくない。接点の無いまま『陸』に帰りたかったのが本心だ。

「でも酷いよクリスさん。私はずっとクリスさんとお話したかったのに」
「なのちゃん流の『お話』に付き合いたくなかったんですよ」
「あ、酷い、ちゃんと…………お話し合い、するよ」
「今の空白が凄く怖いんですけど」
「うう、クリスさん、意地悪」
「はいはい、結構」
「その言い方、なんかずるい」
「なのちゃん、大人はずるいんですよ」
「……ずるい」
「はいはい」
「……嘘つき」
「ん?」
「空戦A」
「ああ、それ?」
「クリスさん、教導終わったら空戦AA取るって言ったのに」
「えーーと、あの後色々あったんですよ」
 キャリアアップの為には、魔導師レベル上げるより階級を士官に上げる方が良いと気付いたんですよ。そのあと出世に興味無くなっただけですよ。

 さて、どうする。
 なのちゃんの台詞を言を左右に交わしながら、俺は自問した。
 家族や友が居る『陸』を護りたくて管理局に入った俺に取って、『海』で胡散臭い六課は相容れるモノではない。だから必要以上馴れ合う気はない。
 とは言っても、『海』の人間だからと言ってプライベートで付き合わないという訳でもない。そんなことを言ったら俺の端末のアドレスは1/3近く消えてしまう。
 なら『海』な知り合いがあと一人増えても許容内か。
 第一、俺が六課に居るのもあと少し。それも考えると、大人らしく玉虫色な答えが落としどころか? なので、


「……勤務時間」
「なに?」
「俺は時間外は働かない、残業もしない」
「うん、うん」
「勤務時間内なら付き合ってもいい」
「うん!、嬉しいよ」
 どうせ交換部隊なんて待機時間を暇つぶしているだけだ。なら新人相手で暇つぶしでもいいだろう。
 ランスターさんにはそれなりに時間を割いて鍛えて貰ったのだから。だから、
「先輩から貰ったモノを、その妹に返すだけだ。別になのちゃんの為じゃないよ」

「お前、実はツンデレだったのか」
 第三の声に振り向くと……シグナム隊長? あんた、いつからここにいやがりました? 今の聞いてたんですか? ツンデレってナニ?
「お前ほどの実力者、遊ばせておくには惜しい。ランスターの教導、頼んだぞ」
「じゃあ、シフトの都合を付けてくれ」
「それはそれとして」
「シグナムさんもありがとう。じゃあクリスさん、行こうか」
「ん?」
「取りあえず、ティアナと顔合わせしないとね」
「俺、今シフト外です」
「大丈夫、教導じゃなくて顔合わせだけだから」
「安心しろクリス、ちゃんと残業つけといてやる」
 シグナム隊長に左腕を、なのちゃんに右手を取られ俺はツインテールの元に連行されていきました。

 ……シフト調整で昼型になるかなってちょい期待した俺です。我が弟子は自主レンと称して俺の夜勤に併せて顔を出してくれます。なのちゃんもそれにあわせ教練を手加減してくれます。相棒のショートも顔出すようになりました。

 何処で何を間違えたんでしょうか?



side Subaru

 最近ティアに師匠が増えた。
 交換部隊の副隊長のクリスさん。副隊長と呼ぶと怒るからあたしとティアは先輩って呼んでる。
 クリスさんがいうにはティアのお兄さんが先輩だったということがわかって、その妹のティアの面倒を見ることにしたって。
 ティアが使う銃型デバイスは使ってる人が少なくて、前にコツとか分からないって言ってた。ティアのお兄さんの使い方とか、クリスさんの使い方とか聞いて、ティアはなんか急に強くなった気がする。
 先輩、最初はなんか取っつきにくい人だと思ったんだけど、あたしの志望が陸の災害救助だと話したらなんか急に優しくなった。
 で、一回無理言って模擬戦頼んだんだけど、ボロ負け。
 ……手数が早すぎるよ。ミドルからクロスまで全部の距離でドンドン攻撃が来る。突っ込もうとするとシールド削られて斬られる。離れても銃撃でアウト。
 なのはさんが言うには表向き魔導師ランク空戦Aなんだけど実力は空戦AAクラス、陸戦でもAはあるってこと。流石シグナム副隊長に勝っちゃう人だよ。
 とりあえず魔力弾にシールドブレイク入れるの止めてください。張ったシールド、パリンパリン割れるんです。 シールドなしで受けると本気で痛いんです。
 ティアも嬉々としてクロス・ミラージュに習った術式入れないで。変な目でこっち見ないで。
 ティアとの模擬戦、これ以上負けが混むのは嫌。



PS1
 この話ではなのはの時間軸を修正しています。
 彼女のプロフィールはこうなっています。

 中学以前 中学生兼、時空管理局嘱託魔導師
 15歳  中学卒業後時空管理局正式入局 武装隊配属
 16歳  撃墜→リハビリ、リハビリ後半に平行して短期士官研修→武装隊復帰
 17歳  武装隊から戦技教導隊へ移動(クリスと出会ったのはこの年)
 18歳  戦技教導隊
 19歳  戦技教導隊から機動六課出向
(なのはは3月生まれだからこうなる、15歳時は1月間中学生、11ヶ月間局員)

 理由しては幾つか
・フェイト、はやてと違ってなのはには管理局に早期入局する義務はない。就業年齢が早いのと、学校に通いながら仕事に就くのは意味が違う。嘱託というシステムがあるならなおさら。
・中三くらいでアリサ、すずかと同級生な表現がある。
 半年もリハビリやっていたのなら留年するためあり得ない。
 スイーツな今は知らないが、作者の小学生時代、怪我か病気で出席日数が足りなくて留年した年上の同級生がいた。
・自宅をベースにしているのなら、なのはの疲労に御神の剣士、特に怪我の怖さを知っている士郎は気付くはず。

 正式に入局し、住居をミッドに移して健康管理を気にする人が居なくなり、仕事が面白くて疲労を気にせず無理をした結果、撃墜。という方がストーリ的に自然だと思うだけです。
(撃墜以降、なのはの様子を見るためフェイトが同居?)

PS2
 感想くれた人、ごめん。
 和解編? ということで六課から距離を取るのではなく近づいてしまいました。
 クリスとなのはの間は色々伏線引っ張っていたので修正出来ませんでした。
 プライベートはともかく、オフィシャルでは六課と距離を置くのはコレまで道理ですので許してください。
 特に批判的なレスがないなら予定通りとらは板に移行します

PS3
 この話、本来後二話で終わる予定でした。
 だけどクリスとティアナの師弟関係が気に入ったため後一話追加されます。
 これ以降急に強くなっていくティアナの裏話とかになります。

PS4
 Force読みました。
 主人公? の少年の持っているデバイスがフォーマルハウトのイメージそのまんま。あれが二丁拳銃ならモロ。
 失敗したな……




[9964] 八話
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2009/08/16 19:54

 いつものバックヤード待機室、普段居るのは俺達交換部隊なんだけど今日は珍しいお客さん。
 机の一つを占領し、グダッっと落ち込んでいるのは前線部隊スターズとライトニングの隊長さん。

「あの~~、なのちゃん、フェイト?」
「う~~、私やっぱり隊長失格だ」
「エリオ、キャロ……、ごめん」
 なんかカオスだ。

 新人4人は本日お休み。クラナガン市街に遊びに行ってる。
 休みの4人に替わって詰めている俺達のとこになのちゃんとフェイトが挨拶に来たことだ。こういう気遣いは隊長らしくて大変結構。
 で、話を聞いて俺達は呆れた。

 当日、それもアップが終わってさあ本番、というところで本日お休み宣言。
 ……をい。
 せめて昨日の晩教えてやれよ。遊びに行くって、計画を立てるのも楽しみだよ。いきなり休みになっても、気分を切り替えて出掛けるの難しいよ。
 まあ新人どもはちゃんと出掛けていったらしいが、いや若い。

 大体今日の休みって、今日どころか三・四日前に決まっていた。あの子達が休みをとるならあちこち調整、具体的には4人が抜けた穴に入る、俺達交換部隊のシフト調整がいる。だから俺達の処にこの話は入っていた。
 ティアナとスバルが一昨日の晩来た時、なにも言ってないのを変だなと思ったが本人達知らなかったのか。


 まあそれはスターズ・ライトニングの問題だ。
 しかし俺達交換部隊としては別のとこに文句言いたい。
「大体、四人一緒に休みとらせる必要あっのか?」
「だって~」
「みんな一緒の方が楽しいでしょ」

 それは4人で遊びに行く時の話だ。現に新人どもは2・2で分かれて出掛けている。
 4人一緒に居なくなると、俺達も4人昼間隊舎に詰める必要が出る。シフト管理、昼勤夜勤のバランスが崩れて、結果睡眠時間がズレて変に疲れるのだ。
 普段なのちゃんが教導しているとはいえ、ここ数日はフェイトに隊舎に詰め。なら今日はフェイトがライトニングを訓練してスターズはなのちゃん含めて全員休み。明日はライトニング全員休みという発想は無いのだろうか?
「あう~~、クリスさん、みなさん。ごめんなさい」
「あ~~、そうしたらあたしもエリオ達とお出かけできたんだ~」

 なんかますます落ち込んだな、おい。
 そういう情けないところ、部下には見せるなって前に言ったよね。信頼度が落ちるから。

「でもバックヤードは正式な六課じゃないから」
「借り物部隊だって普段から言ってるし」
「……あ、そう」
 普段から反抗的な俺達がいつも言ってることだ。そういわれると返しにくい。


 PiPi
 俺の机で端末が鳴く。出るといつものルキノちゃん。
『イェーガー空尉、出撃です』
 なんか口調がいつもと違う。なんか迷ってる?
「なんだ、ガジェットか?」
『いえ、ガジェットじゃなくてクリスさん達は警備任務です』
 なんでもレリック付き幼女を新人達が地下から発掘して、それを本部に運ぶんだと。あいつら休みになにやってんだ?
『で、ですねクリスさん。なのはさん達何処にいるか知りませんか? 部屋に通信いれても出ないんですが……』
 ああ、ルキノちゃん魔導師じゃないから念話使えないんだね。
 俺は視線を上げると、その先にいるのはばつの悪そうな顔した隊長さん達。無言で端末をクルリと回し、スクリーンを彼女達に向ける。
「や、やあ」
「し、出撃……だよね」


 ヘリで出たのは俺達交換部隊四人と隊長二人、お医者さんと妖精さん。
 副隊長二人はお出かけで不在……、今日は部隊員がいなくて戦力不足と分かってる筈、だよね。もういいや、俺達交換部隊が苦労すればいいのね。というか俺達の指揮、誰が取るんだろう?


 現地に着く前に俺達は下に降りる。目的はヘリの帰還ルートの確保。なら現地まで行く必要はない。現地の様子はサーチャーが教えてくれる。
 私服の新人達に隊長達。中心に居るのは幼女。服はボロボロ、?もしかして履いてない?
 ……実は途中待機で正解だったかもしれない。俺の後ろでハアハア危ない息。
 バックヤード6、俺達は色々問題ある不良局員だ。個人の嗜好は尊重しよう。
 しかしそんな俺達でもは、地上を護る管理局の一員としてお前を消滅させる必要を感じるのは間違っていないのか?

 始末書の枚数とかを考えていると、はやて部隊長から指示。
『なのは隊長とフェイト隊長はヘリの護衛。新人4人はレリックの捜索や』
『『『『了解』』』』
『『……了解』』
 声が遅れたのは二人の女性。新人置いていくのを躊躇うとは、隊長としての自覚が出来てきたようで感心。

 しかしこの場面、打てる手は限られる。
 在るかもしれないという可能性でしかない地下探査は、実際優先度が低い。
 最重要なのはヘリで運ぶレリックと幼女。 
 空戦とはいえ、俺達では速度的にヘリの直衛は無理。向いているのは防御の厚いなのは隊長。
 しかし地下水路の様な狭い空間では、速度が売りのフェイト隊長は向いていない。
 六課で戦略判断が出来るのは部隊長のみ。俺で戦術レベル。隊長二人は感情的になるきらいがあると自覚させたためか、口を出さない。

 なので俺が仕方なく通信に割り込む。
「こちらバックヤード2。バックヤードはどうします。新人と一緒に降りますか?」
『『……』』
 通信越しに安堵の気配。しかし、
『いや、バックヤードは現状待機や』
「了解、ところで判断の根拠をお聞かせ願えますか?」
 Yes、Butは組織に属する人間として会話の基本だ。
『なんか、嫌な予感がするんや』
 この場合の予感とは現状を演積的に判断した、数値で出しにくい可能性だ。……女の勘、などと言ったら切り捨てるつもりだったが、残念な事に今回は俺も同感。なんか首筋がチリチリする。
『今言うたとおりバックヤードは地上からヘリのサポート、安全圏に入ったら地下通路突入。新人達のサポートに回ってや』
「……了解」
『なのはちゃんもフェイトちゃんもクリスさんも、新人達を信じるんや』
『はい』
『うん』
「はっ」
『特になのはちゃんとクリスさん。師匠が信じんと弟子は伸びないで』
『うん、そうだね』
「はっ、彼等を信じています」
『そか、流石クリス先輩。仕込みはばっちりか?』
「はっ、高町教導官は優秀ですから」
『そうやね、流石なのちゃん先生や』
「です」
『やな』
「……」
『……くっ』
「はっ、ははははははっ」
『くくくくくくくくくっ』

『……こちらスターズ4、突入開始します!』
『スターズ3、同じく』
『ライトニング4』『ライトニング3』『『突入します』』
 なんか俺達の会話に居たたまれないように新人どもが突入。なんだろうこんなさわやかなかいわなのに。

「ふふふふふふっ」
『くくくくくくっ』
 もう一度嗤い合って二人して回線の優先度を下げる。
 爽やか? 嘘だよ、なんか陰険な会話で肩が凝る。最近はやて部隊長と話すると裏の読みあいになってなんか疲れる。

 ん、お前達なんで生暖かい目でこっち見てる。
「なんというかクリスって」
「いい先生?」
「実は面倒見いい?」
「ツンデレ?」
「誰がだぁ!!!」
 特に最後のツンデレ! 最近俺の人物像が狂ってる気がする。何故だ?

「ま、冗談はさておき」
 ん、冗談だよな。うん。
「仕込みはどうだ?」
 ああ、ばっちりだ。データ出してくれたお前達にも感謝。


 あれは、なのちゃんと和解? してから一週間くらいたった頃の話だ。

 なのちゃんとは当然普通に話すようになった。フェイトも壁が低くなったのか、前より話しかけてくることが多い。
 弟子?のティアナとお付きのスバルとも話すようになった。スバルは『陸』志願らしい。感心感心。
 但し距離のある連中もいる。ヴィータ二尉とかヴォルケンな方達がそうだ。俺がはやて部隊長を警戒しているのが気に入らないらしい。だってあの人って『陸』の顔して知らない間に『海』に混じっている気がしてならない。

 それは置いておこう。あの日偶々なのちゃん、フェイトの二人と一緒にご飯になった。
 まあこっちは夜勤明けの夕食相当、向こうは朝食相当の軽食だ。しかしなのちゃん、ライスに腐った豆乗せるの止めようよ、ファン引くよ。フェイトもそっちが良かったかなって目で見るの止めようよ。

 ……好きなメニューは人それぞれだし、それも置いておこう。
「なのちゃん、フェイト。ちょっと聞きたいんだけど……良い?」
 それより俺は二人に、前から気になっていた事を聞いてみた。
「「なに?」」
「二人って、六課に来る前線指揮経験はあるの?」
「私は教導隊に入る前、一人で突っ込んでく事ばっかりだったんだ。でも教導入ってからみんなと一緒に集団戦できるようになったよ」
 なのちゃん、それって質問の意図とは違うよ。胸を張らないように。
「わたしは武装隊の人と仕事すること多いけど、指揮はそっちの隊長に任せてるから」
 潔く答えるフェイトさん。

 ……なるほど、大体分かった。
 このお二方、機動六課フォワード分隊長達は今までまともな指揮経験がないのね。
 あ~~~~~、積極的に新人の指揮しないはずだ。

 しかし考えてみれば当たり前。
 執務官のフェイトは補佐官とのチームで独自行動するのが多い。必要な応じ武装隊や地元部隊と連携するだろうが、それでも自分が指揮するより大目標のみ与えて、細かい指揮は各部隊に任せた方が効率が良い。

 エース・オブ・エースなどと呼ばれるなのちゃんは、普通に指揮官やってそうな気がするが、それは間違えだ。
 エースと指揮官はイコールである必要がない。特になのちゃんのような大魔力の持ち主は、指揮にリソースを喰わせるより力任せにぶつける方が戦力として有効だ。
 また所属部隊が教導隊というのも理由に上げられる。教導隊は平時のエースがその能力を有効利用するための部隊だ。
 つまり指揮すべき一般武装隊員はいない。所属隊員は皆エースでそれなりの階級を持っている。その中ではエースのなのちゃんも経験的にも年齢的にも、指揮される側の人間になる、のだろう。

 で、指揮経験の無い尉官を分隊長か。
 六課の裏になにか在るのは気付いているが、更に意味をかぶせた人がいる、ということか?
「六課の後見人っぽい人にスタッフ、というか人事関係の人っている?」
「フェイトちゃん、それって……」
「うん、それならレティ提督かな? 母さんの親友で、グリフィス君のお母さんだよ」

 ……当たりだ。
 なのちゃんは現在一尉、昇進すれば三佐になる。
 佐官ともなれば最前線で戦うより一歩引いたところでの指揮がメインになる。つまり指揮能力が必須ということだ。このまま教導隊にいれば指揮経験を積むことが難しく、昇進の機会が無くなる。
 フェイトも同様だ。今は執務官だが昇進して提督になるには指揮能力、それも中隊指揮以上は欲しい。
 彼女達には出世欲はなくても、周りの人間が道を開いておこうと考えても不思議はない。

 その為の分隊長なのだろうが、……この分隊、指揮出来るのか?
 ライトニングはまだマシだ。シグナムがフロントアタッカー、子供達がガードウィングとフルバック。フェイトもGWだが中距離、長距離ともに在るのでセンターガードの真似も出来る。まずバランスのとれた構成だ。

 問題なのがスターズ。
 なのちゃん、センターガード。ヴィータ二尉、フロントアタッカー。ティアナ、センターガード。スバル、フロントアタッカー。
 センターガード二人にフロントアタッカー二人、それも陸戦と空戦に一人ずつ。
 どー考えても分隊ではなく、ツーマンセルのチームが二つだ。だれがなにを考えてこんな分隊編成した?
 ツーマンセルの片側が空で戦って、フェイトとシグナムは別行動が多い。となると、新人四人のチームが残らないか?

 子供が怪我するのは見たくないし、慕ってくれる後輩は正直かわいい。
 なので彼等四人が戦えるように、というか生還率を上げるために俺はある点の強化を図った。
 それは司令塔の強化、つまりティアナの戦術指揮技能のアップだ。

 なのちゃんにも話し、二人で俺や交換部隊メンバの戦闘データをもとに指揮技能を叩き込んだ。この辺は執務官希望のティアナの指向にあうので、文句言わず付いてきた。となりで聞いてたスバルが煙り吹いてたけど、いいのか、このショート陸士学校主席卒業だろ?
 教導方針の変更は当然部隊長にも行っている筈。それ知ってて突っ込ませたと信じたい。はやて部隊長個人は信じないが。

 なお教導時、なのちゃんの戦闘データは役に立たなかった。……あんな馬鹿魔力前提、どうしろっていうんだ。


 さてヘリが上空をパス、新人達を追って地下へと思ったところ緊急通信。ガジェット襲来。
 海上から一杯。地下にも出現。
 空は隊長二人が押さえるらしい。俺達は?

『バックヤードは地上で遊撃との指示が入ってます、指揮はイェーガー三尉』
 地下のレリック狙って地上にもガジェットが現れてる。基本近隣の地上部隊が受け持つがそれでも穴が出来る。また中層のガジェットは陸戦主体の地上部隊より空戦も出来る俺達の方が優位。
 なのは分かるが……
『地下水路には別途援軍が向かいました』
「援軍? 誰だ?」
『108部隊のギンガ・ナカジマ陸曹です。108のエースで陸戦Aの魔導師です』
 知らない名前だが……ナカジマ?
(先輩、ギンガさんはスバルのお姉さんです)
 管制回線とは別にティアナから念話がきた。
(強いのか?)
(はい、かなり強いです)
(そうか、じゃ、行ってこい)
(はい!)

 念話を切って周りを見ると、みんなのニヤニヤした笑い顔。
「……どうかしたか?」
「「「別にぃ」」」
 今の念話、個人回線だよな。ティアナとの通信用につくった訓練用回線だよな。取りあえずマルチタスクの一部でチャンネルは開けておく。
 では、ここからはお仕事。

「リリエ陸士、地上部隊とガジェットの展開情報を自分のデバイスに」
『はい、送りました』
「リアルタイムじゃなくてもいいから、ガジェット侵攻が激しい位置の連絡をくれ」
『了解。……現在の状況からバックヤードはこの地点に向かってください』
 ちと離れているか。
「了解。バックヤード、状況を開始する」
『ご武運を』
 俺は部下、ではなく同僚に振り返る。

「聞いての通りだ。地上部隊と連携してガジェットを駆逐する」
 経験豊富な俺達にとって、これはいちいち口に出して言う必要はない。しかしわざわざ口にし、確認するのも組織として動く人間にとって決して無駄な行為ではない。
 フォーメーションは俺がCG、格闘屋がFA、砲撃屋がFB、……ベドがGW。
「空戦能力がないFBは自分とGWが抱えていく。FAは先行、自分達が追いつくまで牽制。可能なら
撃破してもいいが、無理は厳禁だ」
「「「了解」」」
 みなプロの顔だ。
 ……いいな落ち着く。六課でまともにこの顔出来るのこいつら位だよ。なんか泣きたいかも。


 途中、空がまぶしいなと思ったら限定解除した部隊長の大規模範囲攻撃だったり。
 怪獣?が出て暴れ回ったり。
 街を吹き飛ばしそうな砲撃をなのちゃんが受け止めたり。
 ヴィータ二尉が公共施設盛大に破壊したり。
 シグナム隊長が状況終了してから来たり。

 ……ミッドチルダの『陸』の常識って何処に行ったんでしょう。非常識にもほどが在るでしょ。
 唯一嬉しかったのは、ティアナの咄嗟の判断かな。あとで褒めてあげよう。



side Calo

 最近ティアナさんが綺麗になった。
 前から綺麗だったから、こういうのは変かな? 
 でも綺麗になっただけじゃなくて、強くなった。
 この前の地下通路の時、ティアナさんはあたし達やギンガさんを上手に指揮してくれた。
 昔の模擬戦の時にあった違和感? ためらい?がなくなってみんな自由に動けた。
 あたしも強くなりたい。
 強くなれたらあの女の子、わたしと同じ召喚師の子。あの子ともお話、じゃなくてお話し合い出来るかな?
 フリード、ヴォルテール、エリオ君。みんなで一緒に強くなろう。



PS1
 今回はなのはのダメダメさとティアナの強化案の回です。

 思い起こしてみたのですが、六課隊長陣四人、実は一度もまともに新人の指揮を執っていません。
 レールウェイはツヴァイ。ホテルはシャマル。休日からはずっとティアナ。ヴィータは一緒の事もあるけど基本乱入。をい、待て。
 と言うことで指揮を執らない、執ろうとしない理由を考えました。こんなモノでどうでしょうか?
 矛盾、少ないよね。

 後半のなのは佐官計画は外伝コミックのなのはvsシグナム、戦技披露会が元です。アレが六課解散何年後かは分かりませんが、シグナムが一尉に昇格していますが、なのはは一尉のまま。佐官になれない理由として指揮経験の無さとしました。
 実際六課で指揮してないからね。
 あと注目は知らない間に本局に異動しているはやてさん。今回クリスがやけにはやてを警戒してますが、これはこの抜け目無さ、節奏の無さから来ています。

PS2
 なのは達のイメージは地球で言えば戦闘機パイロット。これなら尉官でも指揮官でなく単体ユニットとして動けます。
 クリス達は普通の陸軍的イメージ。クリスは指揮官経験もあります
 はやてはこの中間。個人戦闘もするし、捜査や戦闘指揮もする。

 ところでなのは達はミッドで有名人らしいけど、どの程度の有名人なのか?
 地球の感覚で言えば『なんとか戦争で活躍したエースパイロットのなんとかさん』だと思います。その筋の人には有名でしょうが、一般の人にはどうか? ホテルで警護されてたセレブな方々は彼女達の顔を知っていたのかどうか……
 『英雄のいない世界は不幸だ、だが英雄が必要な世界はもっと不幸だ』とか言います。なのは達が英雄として祭り上げられているのなら、次元世界ってひょっとして不幸?

PS3
 原作のフレーム中、ガジェットが出ていたのは海上と地下。
 でも地下に出ているなら地上でも出ている筈だ、ということでクリス達は地上で戦わせました。

PS4
 この回、次回の本部襲撃のなかで過去の1エピソードとしてあげるだけのつもりでした。(5行ほどで)
 なんか書くと長くなった。今まで最長?
 クリスがツンデレだから悪いのか? 普通に後輩想いの良い先輩というポジションになってしまった。
 まあそこはプロット通り、一種のフラグなんだけどね。



[9964] 九話
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2009/09/02 00:17
 俺の背後にあるのは時空管理局地上本部。
 地上を護る司法の塔。『陸』の平和の象徴。
 ……要するに箱モノだ。

 そして俺の目の前にあるモノ。ガジェット。
 ガジェットが一杯。沢山。数え切れないくらい。

 機動六課から俺はめでたく『陸』に戻った。正しくは公開陳述会警護部隊、要するに地上本部を護る臨時部隊に移動になったのだ。
 確かに『陸』に戻りたかった俺だが、それが本当に正い選択だったのか、ふと疑問に思う。
 特にこんな風に死亡フラグを立てられたのならな。


 こうなる前、あの頃は色々あったのだ。そう色々、例えば。

「ヴィヴィオ?」
 誰?……ああレリック付き幼女か。
「うん、ヴィヴィオ身元不明なんだ。だからしばらく六課で預かることになった」
「でね、その間私とフェイトちゃんがママ代わり」

 前半は取りあえず納得。
 身元不明?。こっちにもレポートは回ってきてる。デザインヒューマンで人造魔導師。身元が分かる方が不思議じゃないか?
 本部にも本局にも保護児童の擁護施設はある。そこに送らないで六課で保護。
 あの子はおそらくガジェット事件の関係者。被害者?関係者?取りあえず証人、悪く言えば証拠だ。
 六課で確保しておく意味はある。
 表だって出てないけど、おそらく言い出しっぺは子狸隊長。流石抜け目ない。

 で、後半はいただけない。
 ママなんて呼ばせると情が移る。すぐに別れなきゃならない日が来る。その時辛いのはなのちゃん達だけではない。ヴィヴィオもそうだ。
 可哀想、なんて思考停止な言葉に踊らされて、変に優しくして傷つくのはお互い様だ。
 ここはビジネスライクに徹底した方がいい。

 そういうと二人は変な顔でこっちを見た。
「らしくないよ」
「うん、らしくない」
 ? 俺はいつもクールでシビアでビジネスライクだよ。
「だってクリスさん、なんだかんだ言って優しいし」
「うん、そう。こういうのなんて言ったっけ」
「えとね、はやてちゃんが言うにはツンデレ?」
「ツンデレ、言うな!」
 ……あの子狸、いつか絞めてやる。


「あの、イェーガー三等空尉でしょうか?」
 夜勤中、ゴロゴロ端末を弄くる俺に声を掛けてくる女の子。誰?
 取りあえず本人だと名乗ると、彼女はビシッっと敬礼を返してきた。
「陸士108部隊から出向してきたギンガ・ナカジマ陸曹です。引き継ぎの挨拶に参りました」
 ……ああ、俺達が六課を離れた後、誰かが替わりに来るって聞いてた。それがこの娘か。しかしナカジマ?
「はっ。妹、スバル・ナカジマの面倒を見て貰っているとお聞きしています。どうもありがとうございます」
 取りあえず、堅いよ。年も階級も俺の方が上だけど、もっとフランクに行こう。
 なので空いてる席に座らせ、土産の菓子でお茶。

「……という感じた。スバルもティアナも結構良くやってる」
「はい、分かりました」
 実の妹と事実上の妹分、二人が部隊で上手くやれてることを聞くと、ギンガちゃんは安心したように微笑んだ。うん美人さんの笑顔はみんなのスタミナ源だよ。聞くとはなしに聞いていた周りの連中の空気も明るい。
「でもイェー……」
「クリスでいい」
「はい。クリスさんってスバルが言ってた通りの人ですね」
「……あいつ、俺のことをなんて?」
「えっと、一見取っつきにくいけど……えっと」
 ……あの犬っ娘、ナニを吹き込んだ?取りあえずギンガちゃんを問いつめると、
「実はツンデレ?」

 ふう。俺も一応高町なのは一門の端くれだ。だからこの台詞を使う権利は在るよね?
「ギンガちゃん、少し頭冷やそうか」

 お話は冗談として、本人の希望となのちゃんの勧めで結局模擬戦はした。勝ったよ、勿論。
 向こうは初見、俺は散々スバルの面倒を見ている。スバルを二回り強くした感じだけど、手の内が分かっているならやりようは幾らでもある。


「でな、私としてはクリスさんには六課に残って欲しいんや」
 いい加減期間ギリギリなところで、はやて部隊長からプロポーズ。だが断る。
「うん、分かっとる。そん時はクリスさんにはバックヤードの隊長についてもらうつもりや」
 ……好条件のつもりなんだろうか? というかその場合シグナムの立場は? 無職? ニート? ああ、あの人本来ライトニングの副隊長だっけ、すっかり忘れてた。

「これでもあかんか。うん、私も女や。六課に残ってくれたら六課全体の副部隊長の座をプレゼントや。んと三尉じゃちとバランス悪いから、二等陸尉の地位もつけちゃる」
 あああああ、どんな裏技使ったら三等空尉を二等陸尉へ昇格させられるんですか?
 俺はそんなグレーな処が嫌いで、六課から足抜けしたいんだい。


 そんなことを思い返している俺に、隙ありとばかり突っ込んでくるガジェット。だから俺は命令一つ。
「J4、シールド!」
 ガジェットの突進をJ4、フルバックの張ったシールドが阻む。その隙に、
「J2、回り込め!、J3、スタンバイ!」
 俺の命令に部下達が動き出す。
 部隊に配属された時に付けられた部下達だ。流石に新兵という訳ではないが魔導師ランクはCとD。
 交換部隊の連中や、ティアナやスバルにはとても及ばない。
 しかし付けられた以上使ってみせるよ。
 ちなみにJはイェーガーのJ。俺のコードネームはJ1だ。捻りがないこと極まりない。

 左から回り込んだJ2、センターウィングにガジェットが注意を移した。だから、
「解除、突っ込め!」
 J4がシールド解除。それに合わせJ3センターガードが突進。ガジェットにデバイスから伸びた魔力刃を叩き付ける。
 しかしパワーが足りない。AMFに削られた魔力刃はガジェットを落とすには少し足りない。だがこっちはチームだ。
 膠着状態にあるJ3をJ2が援護。魔力弾がガジェットに突き刺さる。俺の仕込みの坑AMF弾だ。
 もう少しで落ちそうなところに、別のガジェットが突っ込んでくる。しかたない。
 俺は左右に展開してある魔力スフィアから誘導弾を発射。

 機動六課は管理局で一番ガジェット戦闘が豊富だった。その戦闘の解析データは俺の処にも落ちてきている。
 この誘導弾、復層式魔力弾には誘導魔法以外に、複数の坑AMF術式を仕込んである。さらにその相互作用も期待できるから、あまり威力を落とさずに攻撃出来るのだ。
 なので、3発目でガジェット撃破。その頃には部下どもも相手を落としている。
 ちぃ、魔力使っちったけどチャージは? と思ったところ、フォーマルハウトから頼もしいお言葉。

 【complete】

 よし、チャージ完了。
 俺は右手で抱えたフォーマルハウトを構え直した。術者である俺の背丈を超えるデバイス、正に魔砲。
 俺達銃撃型魔導師の多くは、体質的に一度に大魔力を使うことが出来ない。つまり一度に大威力が必要な砲撃や打撃には向いていない。

 だが一度に大魔力を展開するのではなく、逐次的に段階的に術式を展開することでこの弱点を覆した。
 これがフォーマルハウトの砲撃形体、モード・オムザック。
「行くぜ」
 砲撃準備。
 フォーマルハウトの砲身が展開、4つのフレームがその中央に魔力バレルを構成する。
 展開するバレルが砲身を取り巻いている環状魔法陣に接触すると、9つの魔法陣の内5つがバレル内に吸収され魔砲本体になる。残りは加速、誘導用の術式だ。
 ……我ながら派手だ。シャーリーの奴、ギミック懲りすぎ。

 【load cartridge】

 3発ロード、これで威力を上乗せする。
 これで準備完了、だから、

「J2、J3、全力後退!」
 前にいる部下を下がらせる。ついで念話で周辺部隊に全域通達。
「こちらイェーガー分隊、でかいのいくぞ!」
「「「「おおっ!!」」」」

 納得のお返事。なので俺はぶっ放す。
 術式は決まっている。高町なのは一門の決まり手。

「ディバイン!!」【buster】

 今回の砲撃は最大威力よりも攻撃時間が長くとれるように調整している。単純砲撃ではなく斉射だ。
 砲撃を維持したままその方向を変えていく。爆縮をも期待した円弧の動き。取りあえず二周。

 今の砲撃で堕ちたのは10機ほど、しかしその数倍もの数のガジェットに傷を負わせた。そこに近隣部隊からの攻撃が届く。
 俺も負けては居られない。
 フォーマルハウトを基本形体、銃撃モードに戻す。そしてカートリッジロード。発射。
 カートリッジ一発の魔力を魔法弾4発にぶち込む。フォーマルハウトのカートリッジは左右6発ずつ。
 砲撃に3発、非常用の予備に左右一発ずつ残すと使えるのは8つ、だから32発。
 俺は背後のJ4に認識阻害の術を掛けさせると銃撃開始。これだけ弾に圧をかますとほぼ無傷の敵も落とせる。

 で、弾が切れかけると、
「全力後退!」
 J4に指示を出すと俺は残りの弾をくれてやりながら後退。切れると一気に後ろに下がる。
 と左右の部隊の隊長が俺の退避コースに移動。なるほど。
 防衛網の後ろに下がる瞬間、両手を上げ二人とハイタッチ。
 俺の部隊が抜けた穴に入る両部隊。

 俺達は防衛網の後ろで休憩だ。
 なんか前線を維持しろとか通信が入るが無視。俺はこんなところで落ちたくない。
 ガジェットはアレで意外と賢い。強敵認定されると落とすためにワラワラやって来る。クールダウンが必要だ。あっちにも俺のデバイスにも。

 フォーマルハウトがシリンダーを開く。ついでにバレルも一部展開。冷却の為、水蒸気を模して熱を吐き出す。
 俺のフォーマルハウトはレイジングハートやバルデッシュの様な超高性能ではない。六課でかなり弄って貰ったが所詮個人の給料で買えるデバイス、限界がある。
 一回砲撃したら休ませる必要があるのだ。

 さてデバイス冷却中に戦況確認。初手の悪さが酷すぎて流れをこっちに持ってこれない。
 というかもっと戦力が欲しい。
 と、そろそろか?


 今日の警備には機動六課も来ている。
 現に昨日の晩、俺の処にティアナが顔を出てきた。
 その時ティアナが愚痴っていたが、内部で警備するなのちゃん達のデバイスはティアナ達が預かるそうだ。
 折角の戦力なのになんでこんな事するんでしょうか? など聞いてきたので俺が説明しておいた。ちょうど暇だったからね。

 実は管理局上層部には非魔導師が結構多い。

 大魔力を持つ魔導師は最初こそ出世は早いが、止まるのも早い。力に振り回され、指揮・管理能力という上に上がる為のスキルがおろそかになり易いのだ。これはなのちゃんを見ていれば良く分かる。
 確かにその両方を兼ね備えた者もいるが少数だ。その内の一人が八神二佐。SSなんてランクを持ち更に指揮・管理が出来るあの娘は、本当にロストロギア並の貴重な存在だ。

 そんな魔導士達の影で、魔力はなくてもコツコツ指揮・管理といった部隊運営や、作戦立案等をしている者がいる。
 最終的に上に行くのはそんな人たちが多いのだ。
 例えば地上本部の事実上のボス、レジアス中将は参謀畑の出身だ。

 公開陳述会というのはそんな上の非魔導師が多く集まる会議だ。そして意見がぶつかる場でもある。
 で、理性だけでなく、感情がぶつかったりもする。そんな時、対立する両者の下に相手を叩き付せられる魔導師が居たらどうなるか。
 現に昔、陳述会で乱闘騒ぎがあったらしい。怒号が飛び交い魔砲も飛び交う。
 そんな反省もあり公開陳述会では魔法禁止になったそうだ。

 ……本当か嘘かは俺も知らない。飲み会で上司や局の悪口を言ってた時偶々出た話題だ。微妙に信憑性が在るのが恐ろしいが。


 さて、襲撃を受けて、ティアナ達がなのちゃん達と合流して……
 そろそろ上がって来る時間か?

 と、視界の隅に金色の魔法光。あれはフェイト? 彼女に続いて白いドラゴンも空に上がる。
 ナイスタイミング、これで楽になるな。
 フェイトとドラゴンはガジェットの群れに突っ込み、突破。そしてそのまま真っ直ぐどっかに飛んでいく……

 ……あれ? 行っちゃった? 
 えーーと、これってまさか敵前逃亡?
 フェイトの性格から言ってまさかと思うけど、チビども連れてたし、どーだろ。

 と言うより問題は今の戦局だ。
 フェイトさん無駄に有名だから、今の戦線離脱が武装隊員に与える影響はでかい。
 要するに志気が下がる。

 不味い。デバイスの冷却待ってられない。
 取りあえず前に出よう。多少無理しても部隊の動揺押さえないと。


 いゃぁ、負けた、負けた♪
 俺はボロボロになった地上本部を見あげた。しかしボロボロ。

 周囲に人目が無いのを確認すると、壊れた自販機に蹴り一発。
 三発目でゴトリと吐き出した。
 良し、無糖。直ったらお金を持って買いに来るとしよう。
 缶を開け一口飲むが冷えてない。ちっ、マズ。

 しかし全く見事な負け戦だ。地上本部倒壊、なんてことは無かったが、本部の中の管理システムなんかは全壊。バックアップも潰してくれたらしい。
 おかげで今、事務部門は紙ベースで仕事をしてるみたいだ。
 更に武装隊の人的被害もでかい。死人こそほとんど出てないらしいが負傷者多数、おかげで命令系統がズタボロだ。

 と言ってもあのスカルエッチィ?……スカでいいか、何がしたかったんだろう。
 本部を事実上制圧したのは良いんだけど、占拠しないであっさり逃走。確かに管理システムを壊されたのは痛いけど修理出来ない訳じゃない。今頃必死に復旧作業中だろう。
 一週間も在れば元通りになると思う。
 上も同じ手なんども喰うほど馬鹿じゃない。次はない。

 まさか何かの時間稼ぎって訳でもないだろうし。
 まあ、そんな事を考えるのは俺の仕事じゃない。お利口な参謀どもがなんか思いつくだろう。

 それよりもこれから俺がどうするかだ。

 俺の今の所属は公開陳述会警護部隊というインスタント部隊だ。やはり六課に関わったんでどうでも良い部隊に回されたようだ。
 臨時部隊なんで命令系統はいい加減、サポートスタッフも居ない。まともな情報もこない。
 上司、上位上司ともに落ちて入院中。死んではいないけど指揮できる訳じゃない。
 残りのメンバで指揮系統を纏めるべきなんだろうが、つき合い浅いんで横関係がよく分からない。お互い役目を押しつけようと牽制している。

 俺? 勿論そんなのごめんだ。
 フェイトさんの敵前逃亡は兎も角、高町教導官が空に上がって来なかったから六課は色々言われてるんだ。なんだかんだ言ってチート部隊、お偉いさん兎も角、戦力として現場の期待は高かったからね。
 で元六課の俺は色々睨まれてるんだ。只でさえ立場が面倒なんだよ。これ以上のことはごめんなんだ。

 なので部下を病院に放り込んで俺は一人。巻き込みたくないし。
 実際あいつらを振り回しすぎた。傷は大したこと無いんだが、リンカーコアへの負荷がでかく、しばらく休ませなきゃ危ない。
『隊長のためならこの位の傷なんて』などと隊長冥利に尽きることも言って貰ったが、俺はそういう柄じゃない。

 原隊復帰も考えたが、六課の前の部隊は解体ズミ。六課にはちょっと連絡し辛い。
 管理システム、というか人事が復活して所属部隊が決まるまで自主休暇とでも洒落込むか。

 さて帰ろうかと立ち上がる直前、なんか来た。念話?
 誰だ? と、このチャンネルは……



Side Teana

 ギンガさんとヴィヴィオが攫われて、基地も壊された。
 スバルは大怪我して、ヴィータ副隊長も落ちた。
 機動六課はボロボロだ。
 でもあたし達はギンガさんとヴィヴィオを助けなきゃ。
 その為には力がいる。誰か助けてくれる人は?

 訓練校のみんな? ダメ、レベルが足りない。
 前の職場の人? あの人達はレスキューだ、本格戦闘は無理。
 とすると後は一人しかいない。

 あの人が『海』の影響を受けてる六課を嫌っているのは、あたしも知っている。
 でも今のあたしが頼れるのはあの人だけ。
 お願い、先輩。力を貸してください。


PS1
 六課フォワードが本部襲撃時にとれたオプションは3つ。
①ガジェット掃討
②ギンガ捜索
③隊舎救援
 結局選択したのは②③。
 事態を把握している者から見ると③は仕方ないことかもしれないけど、普通の隊員は六課襲撃なんて知らないため『敵前逃亡』にしか見えないかと。有名人らしいフェイトと、只でさえ目立つドラゴンが『逃げる』ところを見られたらどうなるか? 
 事情が知れたら収まるかもしれないけど、六課は色々やっかみが在るからなんか噂が残りそう。

PS2
 この話、本来この回で終わりでした。
 というかクリスが六課に残った場合、隊舎で戦闘機人と戦闘になります。クリス達は初見で戦闘機人に勝てるほど強くありません。というかスカさん六課戦力把握してるから、クリスが居たら六課襲撃の機人数が増えるかも。
 でズタボロにされて入院、病院のTVでゆりかごが飛んでいくのを観戦、というラストシーンでした。
 ……幾らこの作品のコンセプトが『sts本筋には出来る限りタッチしない』でもこれは無いでしょ?
 クリスを六課から足抜けさせたのはこの死亡フラグ?回避の為です。

PS3
 ティアナのストーカー、じゃなくて謎の男ヴァイス。
 前夜本部でヘリの番、当日昼六課隊舎。変でないかい? 当日移動組に備え前夜は六課隊舎、帰還に備えて当日昼は地上本部にいるべきだと思うんだけど。

PS4
 Stsの謎の一つ、魔力制限の掛けられている六課になぜランクAのギンガが来れたか?
 答え:クリスを含む数人が交換部隊から外れたため。ということでどうでしょうか?



[9964] 最終回
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2009/09/02 00:15

 面倒な式典をこっそり抜け出した。で、俺は隊舎を出ると伸び一つ。
 クラナガンらしく陽気はポカポカ。気を抜くとウトウト立ったまま寝てしまいそうだ。
 なので俺は肩を鳴らしながら隊舎の裏手に回る。そこにはよく手入れされた芝生が広がっている。
 芝生に腰を下ろすとゴロリと寝ころぶ。礼服が汚れるが、まあ良いだろう。取りあえず俺は気にしない。
 潮の香りと波の音が眠りに誘う。誘う、誘zu、zzzzz


 夢か現か幻か。あの事件の事を思い出す。JS事件後半戦、ゆりかご編。


 ティアナの懇願を受けて、俺は渋々アースラに乗り込んだ。
 俺は本来居ない人間だ。だから人知れず忍び込みたかったのだが、管理局の船は流石に管理が甘くない。
 普通に「お帰り」って言うみんなを誤魔化し、弟子の処へ。
 で、ティアナは……酷かった。
 表面的には元気そうなのだが、芯の方がぐらついてる。しかし六課って本当にメンタルケア出来る人間居ないのね。デバイスケアは出来るのに。

 だから人目に付かないところに引っ張っていって、とりあえずぶん殴った。
 殴って、抱きしめて、胸の中で泣かせた。泣いて、泣いて、涙を出し切った時、其処にいたのは俺が知るティアナ・ランスターという管理局の武装隊員だ。
 立ち直ったのが嬉しくて、思わず涙を唇で拭ってやったりした。ティアナはアタフタしていたが、別に俺は悪くないよね。


 で、その後俺に何が出来たかというと、大したことはしていない。
 最大魔力放出量の少ない俺は、AMF濃度が高いところじゃほとんどなにも出来ない。というか飛べるかすら怪しい。なのでスカのアジトとかゆりかごとか、そんな処最初から行く気がない。大体そんな処、大魔力が出せるAAAとかSな方々以外行くべきじゃないのさ。
 だから俺は俺の出来るところでお手伝い。

 キュュュュュュュュン!という感じでウィングロードが延びる。
 スバルはギンガちゃんと一対一か。あのバリバリ!とかドッカーーン!!とかギュルルルルルルン!!!って擬音が似合う姉妹喧嘩に割り込むのは嫌だな。スバルにはギンガちゃん用の作戦を教えておいたから良いだろう。……忘れてるみたいだけど。
 というか何故にギンガちゃんドリル? ドリルは漢のロマンだよ。


 なので俺はこっち、ティアナが突っ込んだビルにこっそり入り込む。
 頭の後ろでピョコピョコ揺れるツインテールがなんか新鮮。ついでに戦場で履くミニスカも新鮮。ノースリーブも以下省略。

 ……別に本当にこんな格好している訳ではない。幻術だ。
 俺が幻術を使える訳ではない。ティアナが掛けて俺、というかフォーマルハウトが維持している。ティアナのクロス・ミラージュと俺のフォーマルハウトは兄弟機だ、リンクしやすい。更に幻術の維持に使っているのは元祖ランスター先輩の残した術式。むかし先輩に遊び半分で貰ったモノを、昔のデバイスのバックアップから引っ張り出してきたモノだ。

 幻術使いのティアナの援護をするにはティアナの格好をしてるのが一番だ。敵を混乱させやすい。ついでに言うと俺が此処に顔を出しているのも不味い。
 『陸』の航空隊の俺は対ゆりかご戦に参加してなきゃ不味いのだ。

 なもんでこんな感じで弟子の援護、始めようか。


 ティアナ、戦闘機人3体確保。スバルはギンガちゃんを止めた。あとはストーカー、……もといヴァイスに任せた。
 で、俺はゆりかごの近くへ転移。AMFが怖いからサポート付きだよ。

 近くに寄ると……、でかい。管理局の船がゴミの様?
 まあ、いいか。お仕事お仕事。
 俺はフォーマルハウトを長銃形体、シューティングモードにするとガジェットを削り始める。乱戦なんでオムザックは使わないよ。

 ん、八神二佐発見。妖精さんが飛んでいく。
 ?なんで八神二佐がナチュラルに指揮執ってるんだ?
 六課部隊長で特別捜査官な八神二佐だけど現場指揮権あるのか? みんなも何で従ってんだ? 見たところ『陸』と『海』の混成部隊みたいだけど。

 と、八神二佐こっち見た。
「防衛ライン現状維持、誰か指揮交代!」
(クリスさん、引き継ぎよろしく!)

 ……おい、なんだそれ?
 言い返す暇もなく八神二佐はゆりかごへ飛んでいく。
 と、フォーマルハウトにデータリンクが来た。何じゃこりゃ、重すぎ。
 デバイスをコダチモードに戻し、とりあえずリソース確保。使っていない術式を圧縮し、航空指揮用のプログラムを解凍、展開する。
 展開するんだが処理しきれん。これ処理してた八神二佐、どれだけバケモノだ。とそんな俺に通信。
「こちらアースラ、ロングアーチ。バックヤード2、これから管制支援に入ります」
 む、負荷が減った。これなら行けるか?

 で、俺は周囲を見渡す。残されたみんな、武装隊員には戸惑い。
 外堀と内堀を埋められたって事か。
 くっそそそそそぉぉ!、あの小狸。だから俺は仕方なく、
「こちら地上本部航空隊、クリス・イェーガー空尉。上位指揮者到着まで一旦管制指揮を預かる。現状は確かに厳しい。しかしミッドと全次元世界の治安を護るため、今この瞬間、諸君らの力を貸してくれ!」
 武装隊員達は一旦戸惑い、そして、
「「「「おおっ!!!」」」」
という雄叫び。なんだ、ノリが良いな?
 と、見た顔が3つ飛んでくる。おお、うちの部下共か。指揮で動けない俺の替わりに直衛として確保。

 ま、一介の空尉にここの指揮は役者不足。すぐ誰か替わりが来るだろう。それまでの我慢だ。


 ……うん、最後まで指揮したよ。誰も替わってくれなかったよ。
 戦略でも戦術でもない、只の現場判断。だけど逆に仕事多くてね。

 ついでに言うと、戦場の真ん中に輸送ヘリが突っ込んで来たんだ。ガジェット飛ぶ中、ゆりかごまでの安全ルート確保しろとは面白い冗談を言うねヴァイス君。と、その後ろでペコペコ頭を下げる我が弟子二人よ。
 展開中の部隊、フォーメーション変えるのどれくらい大変だと思う。

 ……何とかしたよ。バイクで空飛ぶのも管制指揮したし。なのちゃん達心配なのは俺も一緒だよ。
 あいつらがなのちゃん達連れて飛び出した時、安心して泣きかけたのは内緒の話だ。

 全ては夢、終わったことだ。で、


「……あの~」
 目の奥で光がチカチカ瞬く。だけでなく躊躇いがちな声もする。というかすぐ隣に多くの人の気配。
 ぶっちゃけ無視しようかと思ったが、そんなまね流石に大人げない。
 俺は瞼を開くと視線を上げた。

 そこには……、金色をしたウサギさんとオレンジ色のネコさんがいました。

 ……嘘だよ。

 そこにいたのは機動六課前線メンバ。全員ではないな、ちっこい三人が居ない。妖精さんは居る、八神二佐の肩の上だ。

「おはよう、みんな」
「あっ、おはようございます。えーーと?」
 あたふたとしながら、それでもおはようの挨拶を返してくれるフェイト。相変わらず仕草が可愛いな。
「おはようじゃないですよ、先輩。解散式途中で抜け出しちゃって」
 怒ったように言うのは我が弟子ティアナ。だって俺って参列客よ、モブだよ。挨拶する訳じゃないし訓辞を受ける側でもないしね。
「そうじゃないよクリスさん。ティアナは自分が卒業するところクリスさんに見て欲しかったんだよ」
 そういうものか、なのちゃん? しかし卒業? こういうのも卒業っていうのか?

 会話の流れから分かるように、今日は機動六課の解散式。実験部隊として一年稼働した六課が解散する日だ。
 もっとも手続きなど事務仕事が残っているので、隊長陣はもうしばらくお仕事らしいが。なので、

「今なんか忙しくてね。事務仕事とかなんか二人分やってる感じで」
「う……、すまんクリス」
 申し訳なさそうに頭を下げるのはシグナム。
「後かたづけ終わらせてとっとと来いよ、俺じゃ処理できない書類も在るんだからな」

 俺の今の階級は二等空尉、所属は地上本部首都航空防衛隊中隊長。
 要するにシグナムと同じポジションだ。
 俺と違い古巣に戻るシグナムには、出向中に溜まった書類がいっぱいある。彼女の処に配属される部下の面倒も必要だ。元六課の人間で同じ小隊だからって何故かその一部が俺の処にも回ってくる。俺はシグナムのところの副隊長でも副官でも無いんだがな。

 なんか力関係が逆転した俺とシグナムを見てなのちゃん達は笑ってる。で笑いながら、
「でね、私たちこれから訓練場で二次会なんだけど、クリスさんも来られないかな」
 ふむ、二次会ね。俺は端末に目を落とした。不味い、寝過ごすところだった。
「悪い、このあと会議が入ってる。次があったら誘ってくれ」
「会議か、なら仕方ないね」
 不満そうな弟子の頭をポンと撫で、俺達は歩き出した。
 俺は隊舎を出るため、六課一行は訓練場へ途中まで一緒に歩く。

「でもやっぱり先輩、凄いですね。いきなり航空隊の中隊長なんて」
 うん、人ごとなら確かに凄い。でも自分に降りかかったのなら災難だよ。
 大体、小隊長すっ飛ばして分隊長から中隊長ってありか?どんな懲罰人事だよ。覚えること多くて大変なんだ。
 こんな無茶を押し通しそうなのは……

「そうやな、クリスさん。航空隊でも結構頑張ってるみたいやし」
「まだ慣れないことも多いですが、先輩達の力を借りてなんとかやれています」
「そか、六課の元上官として私も鼻が高いや」

 この子狸か。ニヤニヤ嗤いを浮かべやがって。『陸』の隅っこでのんびり過ごそうと思ってたのに、いきなりの前線部隊配置。
 なんか俺に恨みが……在るんだろうな、やっぱり。

 しかしそんな無茶を通す上の方も上の方か。
 俺のポジションも複雑だ。
 JS事件を解決に導いた奇跡の部隊、機動六課。上の指揮官クラスは兎も角、下の一般隊員の間ではカリスマだ。
 ゆりかご事件で前線指揮なんて目立つことやった所為か、下の方の連中は俺のことを六課のシークレットメンバなどと噂しているらしい。
 ところが上の方から見ると、『海』の影響を受けず『陸』の気風を守った見あげた奴、などと表面上扱われているらしい。
 ま、実際政治の世界だよ。六課の『海』の部分に成果を全部持って行かれないよう、『陸』の俺の功績を強調してのバランスゲーム。

 本来なら俺の立場はコウモリさんだ。『海』と『陸』とで中途半端、どちらにもハブられて閑職でのんびり暮らせるはずなのに。
 首都防衛隊って『陸』の花形だよ。目立つんだよ。さぼれないじゃないか。ついでに言うと俺の副官は新人時代にしごかれた鬼軍曹。頭が上がらないし勝手できない。

 まあ、それでも、だ。
 隊長陣のような熱く真っ直ぐな、情熱的な言葉はいらない。生まれ育ったミッドチルダを護ろうとして、あの馬鹿な祭りを乗り越える力になれた。そして今此処にいる。それが俺の真実だ。
「私は私のやるべき事をやる。ただ、それだけですよ、はやて部隊長」
「……そうか。そうやな、クリス隊長」
 俺達は視線を合わせ、笑いあう。こんな日にいがみ合うこともないしね。


「?先輩、はやて部隊長と話す時は、自分のこと私って言うんですね」
「クリスはそういうところ、ちゃんとしてるぞ。上官に対する態度はきちんとしている」
 当たり前だろシグナム。友達じゃなくて上官なんだから。スバル、お前もちゃんとしろよ。

「そういえば先輩。目上の人の場合は兎も角、なんで普段自分のこと俺って言うんですか?」
 ティアナ、そんな不思議そうな顔で俺を見るな。別に普通だろ?

「「「「「「「変ですよーーーーーーっ!!」」」」」」」
 全員声をそろえやがった。へこむぞ。で、それを受けてなのちゃんが締め。
「だってクリスさん、女の人なんですから」



PS1
 最後の台詞、これが言いたかった。
 要するに○の境界、俯瞰○景、両○式です。
 みんなクリスを男と思ってたかもしれませんが、男と断定出来るような表現は一切してないつもりです。逆に女と推定出来るヒントはあちこちに置いてあります。
 例えば3話でのはやてとの会話、デート候補がなぜあの四人なのか、フェイトを指定したら盛り上がったのか。
 普段の会話でもわかるのが、なのはが"さん"付けで呼ぶ点。クロノを"君"で呼ぶなのはがクリスを"さん"で呼ぶ。これは実は目立ちすぎて分からないかな?
 フェイトはクリスを呼び捨てだけどこれはヒントにならない。フェイトは呼び捨てがデフォルト。SSでは良くクロノの事を『兄さん』とか呼ばせてるけど、本編ではクロノと呼び捨てだよ、確か。

PS2
 Stsの謎の一つ、はやては何故指揮を放り出してゆりかごに突っ込めたのか?
 答え:知り合いに押しつけたから。
 実際融通の利く人間が指揮してないと、輸送ヘリでゆりかご近づくの無理じゃないかな。バイクで飛び出すなんてもっと無理。

PS3
 脱げとか露出狂とか言われているフェイトの真・ソニックだけど、肌のさらし具合はアギトとユニゾンシグナムとそんな変わらない気がする。というかエロさでは絶対ナンバーズの方が強いと思うんだが。
(シグシグが空気、という意見は取りあえず無視)

PS4
 エピローグのヴィヴィオの学校訪問にこっそりユーノが紛れ込んでる。ホテルでなのはが会った時どう見てもユーノを意識してたよね。
 SSではなのははユーノ意識してないがデフォだけど、原作見直してみるとかなり意識してると思う。で、ユーノパパ?

PS5
 残るお題は3つ。書くかどうかは結構未定だけど
 ①裏設定とか
 ②IFルート、実はやっぱりクリスは男だったヴァージョン
 ③別サイトのGSクロスのオリキャラ、ウルザとクリスの競演
 希望があるならコメよろしく。特に希望があった場合のみ③は書くと思う。ある意味ふざけすぎだしね。



[9964] 裏設定のようなもの
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2009/09/14 21:53
 本編読むのには関係ない裏設定なモノを並べてみました。
 まあ想像というか、妄想というか、一つお好きに。

1.人物裏設定

・オリ主
 クリス・イェーガー
 時空管理局地上本部航空部隊所属、三等空尉
 21歳 女性

 女性としては長身で、スレンダー体型。
 腰は細いが胸とかはない、この辺は五話でのはやての絡み通り『はやては色々小さいけど、俺も(そうだが)気にしない』である。
 金髪、目の色は決めてない。


 イメージは一言で言うとクールビューティ、硬質で人を寄せ付けない印象がある。
 強いて似たキャラを上げるならSRWのヴィレッタ隊長か?


 コメでほとんどの人に騙されたと言われたが『女の人』である。
 狙いとしてSSにありげなプチハーレムを作り、読者の反発を買ったところで実は女でした、というオチを狙っていた。
 しかし主要登場人物と距離を置く、という方針が思ったより上手く行ってハーレムはダメ、変な期待をさせて別の意味で反感を買った? ごめんなさい。


 魔導師ランクは書類上空戦A、だけど実力的にはAA。
 六課卒業時にスパティアはA以上行っていそうなためこれ以上の実力、かつ交換部隊とはいえ六課に居られるようこういう設定とした。なのはは3話でランクがAなのを不思議がっていたが、AAだと来られなかったことに気付いていない。
 能力的に伸びしろがなく、この上のランクAAAとかは絶望的。ただし指揮能力が高い為、指揮官として上に行く事になる。
 外伝コミックのなのはvsシグナムの戦技披露会時、シグナムは一等空尉になってるけどクリスが三等空佐で上官ということはありそう?


 六課に六人しかいない士官の上、コールサインはバックヤード2。本人否定してるけど誰がどう見てもバックヤード副隊長である。
 というかバックヤード隊員からするとクリスが自分達の隊長で、兼任のシグナムはお客さんだったりする。
 本人が副隊長を否定するのは、六課配属時に責任ポストには就けないから、と人事に騙されたからである。


 本人気付いていないが実はプチ有名人。
 これは六課交換部隊としてあっちこっちに顔を売り、本部襲撃時では主力の一人として活躍したため。
 管制指揮を執った時エールが上がったのはこのため。


 性格的には友人や仲間には面倒見が良い姉御肌だが、それ以外には微妙に冷淡。
 例えば、六課内ではフェイトには優しいがその非保護者であるエリオ、キャロは眼中にない。
 部下にとっては良い上官で、美人さんであることも拍車をかけ、だから『隊長のためならこの位の傷なんて』台詞が出る。
 ティアナが救援要求した時、相手がティアナだから応じた。ティアナ、スバル、フェイト以外が最初に連絡してきた場合、クリスは動かなかった。なのはの場合は微妙で交渉次第。
 誰彼構わず優しくなく、優しくする相手を選ぶ。


 やる気をなくした元エリート。その理由としてはこんな感じ。
 ミッドチルダの平和と家族、仲間を護るため管理局に入局。着実に成果を上げ、オフシャルでは士官昇格の推薦、プライベートでは恋人も出来て順風満帆。
 しかし士官研修中に家族が事故で死亡。悲しみを忘れるため勉強にのめり込んだら、放置気味になった恋人が浮気して結局別れる。三尉昇進後管理局の同期の親友が負傷により退局。
 みんなを護る為に管理局に入ったのに、ふと気付くと護るべき者が居なくなっていた。で、ドロッポ。
 一種の焼け付き症候群?

 そんなオリ主が頑張る年下の女の子達に励まされて、当初の意欲を取り戻していく。この話、そんなベタな裏テーマが在ったりした。

 在ったりしたのだが、Stsの主要メンバの入局動機を考えると……。
 なのは、魔法依存とか空を飛びたい。フェイト、贖罪と家業? はやて、贖罪。エリオ&キャロ、フェイトへの恩返し。ティアナ、兄を馬鹿にした連中を見返す。スバル、なのはの様に人を助けられるようになりたい。
 ……どこが『頑張る天使』なのか、スバル以外ろくな理由じゃない。本当にこいつら主人公組なのか……

 そんな事でクリスの復活具合も微妙な処になってしまいました。


2.デバイス
 フォーマルハウト
 クリスの個人持ちデバイス。もともと双銃形体だけだったのがシャーリーの手により形状変換機能を持つようになった。
 名称の元は某魔を断つ剣の銃の片割れ(の居る星)。リボルバーとオートマチックの二銃ということも考えたがキャンセル。

 基本形体 コダチ・モード。銃と剣の両方の性質を持つ。
      高い汎用性を持ち、ミドルからクロスまで全てのレンジで対応可能。
      コダチという名称をクリスに教えたのはなのは。実家がアレだから。
 長銃形体、シューティングモード。コダチ・モードより強力な銃撃が可能。
      ミッドからロングレンジ対応
 砲撃形体、モード・オムザック。強力だがその分、長いタメが必要。一対一での使用はまず無理。
      ディバイン・バスターは撃てるがプロトン・サンダーは多分撃てない、と思う。
      つまりクリスはなのはには勝てないと言うことで。


3.対人関係

・なのは
 三話でなのちゃん先生の設定を思いついたのがある意味この話の始まり。流石元祖主人公。
 実はクリスが男の場合、元カノにしようという冥王も恐れぬ方針もあった。
 クリス→なのは
  友達、友愛、プチ先生、できのよい妹分
 なのは→クリス
  友達、親愛、信用、ミッドでのお姉さん

・フェイト
 最初に登場した原作キャラ。クリスが男だった場合フェイトがヒロインになる予定だった。しかし下に上げた関係を考えてみれば、実は不適切か。
 クリス→フェイト
  友達、親愛、妹。
  不謹慎なことを承知で金髪、赤目、天然なフェイトを死んだ妹に重ねている。
 フェイト→クリス
  友達、親愛、信頼、姉。
  出自から潜在的に姉を求めそうなフェイトからすると、金髪で姉御肌はクリスは姉的存在にピッタリ。
 填ってはいるが、微妙に歪んだ姉妹関係?

・はやて
 対立ばかり目立つが、逆に相手を一番理解しているのかも?
 クリス→はやて
  上官、小狸、能力的には信頼。隙を見せたら何されるか分からない。
 はやて→クリス
  部下、信用、六課に是非欲しい人材、もっと言うこと聞いて欲しい。

・ティアナ
 ティアナとカップリング要求が出たのは作者的に意外。コメが来るまでまるで思いつかなかった。
 前にNTで書いていたGSクロス『精霊使いと道化師と』で横島と綾乃のカップリングを要求されて驚いたことがある。そういえば横島・クリスが21歳、綾乃・ティアナが16歳と同じか。
 改めて読み直すと、うーーん。このカップル、アリか?
 なおティーダとクリスが付き合っていたというベタなオチはなし。本編である通りクリスはティーダの事をランスター先輩としか読んでいない。在る程度仲が良かったが、名前で呼び合うほど仲良くない、ということで。
 クリス→ティアナ
  弟子で友人、親愛。執務官志望なのは個人的には残念だけど、がんばれ。
 ティアナ→クリス
  師匠で友人、敬愛、信頼、羨望。
  同じ戦闘スタイルで何でも出来るように見えるクリスは、ティアナに取って理想の自分。

・スバル
 ティアナのお供でちゃっかりクリスの弟子に収まった。実はちゃっかり者?
クリス→スバル
 弟子二号、友愛。地上志願なのは感心、がんばれ。
スバル→クリス
 師匠で友人、友愛。格好いいお姉さん。

・エリオ、キャロ
 実は接点がない。クリスは彼等の名前さえ覚えていない。本編中名前どころか名字すら呼んでないよ。
 クリス→エリキャロ
  フェイトの非保護者、以上。
 エリキャロ→クリス
  大人の人、恰好良い。でも何処かだらしないかも?

・シグナム
 クリスに取って一番接点があるべき原作キャラ。しかし三話以降空気。
 クリス→シグナム
  上司、実は信用。事務仕事をこっちに回すんじゃない。
 シグナム→クリス
  同僚、実は信頼。主はやての言うように六課に残って欲しい。

・ヴィータ
 実戦で新人4人と一緒に戦ったことがあるのはヴィータだけ。
 あとStsとA’sでは性格がかなり違っている。短気さや激昂癖がなくなり大人っぽくなってる。SSではA’sの性格がデフォだが。
 ……今更ながら、ヴィータって三尉だったのね。クリスと同格なのね、気付かなかった。本編じゃ二尉と書いていた……ははは。
 クリス→ヴィータ
  同僚、はやての言うこと聞けと五月蠅いちびっ子。
 ヴィータ→はやて
  同僚、素直にはやてのいうこと聞きやがれ。

・バックヤード隊員
 六課発足時にはシグナム入れて8人体制、新人が使えるようになったのでクリス達が抜け規模縮小。
 六課隊舎襲撃時に全員負傷、はこぶね編では活躍出来ず。病院のTVでクリスのこと応援してました。
 ギンガも正式にはここに所属。
 クリス→バックヤード
  同僚、信用、副隊長と呼ぶんじゃねぇ。
 バックヤード→クリス
  副隊長、信用、プチ信頼。事実上の隊長、でも面白いので副隊長と呼ぼう。

・ヴィヴィオ
 基本的に夜行性のクリスとお子様らしく早寝のヴィヴィオは接点がない
 クリス→ヴィヴィオ
  直接見たことがない。
 ヴィヴィオ→クリス
  顔も名前も知らない

・スカリエッティとナンバーズ
 コンセプト通り本編には関わらなかったため、接点なし。
 クリス→スカS
  犯罪者、誰か自分の関わらない遠くで逮捕して欲しい。
 スカS→クリス
  誰、それ?


4.作品について
 初の一人称小説。結構書きやすいのでおどろいた。
 PVが結構回って、受け入れられたらしく嬉しい。

 本来、六課のアラ探し作品では無かったのに、なんか変な方に作品が行ってしまった。これもみんなシャマル先生が悪い。
 三次小説にならない様に原作見てチェック入れてから書いてたんだけど、なんか六課本当に問題多いね。

 また、コンセプトの
 ②オリ主はsts本筋には出来る限りタッチしない
は達成出来たと思う。

 ただし残念なのはノリ。二話のノリで突っ走るつもりだったんだけど、なんかオリ主が失速してしまった。
 オリ主の突っ込みより、六課への突っ込み所があまりにも多かったと言うことか。はぐれ者の筈のバックヤードが常識人の集団になってしまったし。

 この先、番外的に二話あるように書いたけど、ちとペンディング。
 ティアナ・ヒロインの在庫ネタが無かったので考えるのと、無印で一作書きたいな、と思っているため。


 ……そういうわけで、
 魔法少女リリカル☆アリシア、よろしくなのさっ!!




[9964] 番外編 男なクリスとアタシ、なのさッ!
Name: Iota◆c2eb47a0 ID:8f59dea1
Date: 2010/02/18 23:10

 始めに
  この話は本編とは繋がらない番外編です。
  クリスは男です。
  シニカルなシアが出てきます。
  そんな話でも読んで見たい方、どうぞ。



☆Side Teana★

 今日は朝からメンバー集めての全体朝礼。なんでも機動六課に新しいメンバーが入ってくるそうだ。
 この時期にこの六課に来るんだから、きっと凄い人に違いない。
 昔のあたしならきっとコンプレックスでびくびくして、それを知られないようにツンとしていたろう。
 でも今のあたしは違う。兄さんと先輩に鍛えられたランスターの弾丸は全てを撃ち抜く。あたしはそれで十分だ。
 それに凄い人が来るというのはチャンスだ。その人の持っている技術、思い、力、学べるモノは学び、盗めるモノは盗む。そうすればあたしはもっと強くなれる。
 力と心、強くなってあたしはもっと先に行きます。

 と、考えているうちに来たみたいだ。八神部隊長と、その後ろに女の人?
 サングラスに金髪。なんか格好いい人だ。サングラスを取ると赤い瞳。
 ああ、なんだフェイト隊長だ。確かに六課に来るならフェイト隊長位強くて、優秀な人が……あれ?


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!」
 と、突然の叫び声。声の主は誰かとみるとフェイト隊長。
 あれ? 確かにフェイト隊長はこっちに。とするとアレは誰。
 あたしやスバル、みんなというか半分くらいの目が壇上の人とフェイト隊長を行ったり来たり。そう言えば髪がセミロング、フェイト隊長より短い?
 そんな視線の中で、フェイト隊長は壇上の女性を指さすと、
「ね、ね、ね、ねっ、姉さん!?」
 姉さん? あれ、フェイト隊長、お兄さんが居たのは知ってるけどお姉さんも居たの?

「フェイトちゃん、あのな……って」
「こら、フェイト!」 フェイト隊長になにか言おうとした八神部隊長を遮り、女の人が怒ってみせた。
「今はオフィシャルな時間だぞ、そういうのは後にする!」
「ん……、はい」
 シュンと肩を落としてフェイト隊長は着席。辺りは静かになる。

「さて、どっきりは在ったみたいやけど、自己紹介いってみようか」
「はい、八神部隊長」
 フェイト姉はマイクを取る。
「この度、機動六課に配属になった、アリシア・T・グレアム査察官です」


☆Side Alicia★


「この度、機動六課に配属になった、アリシア・T・グレアム査察官です。
 六課には査察官として来ましたが、副部隊長も兼任で務めることになります。
 なお、見たことのある顔が多いんで知ってる人もいるとは思いますが、プライベートではそこの天然執務官の姉もやっています」

 とりあえず自己紹介。掴みはこんなものか?
 ……なんだけど、なんだこの部隊? 知ってる顔がゾロゾロいる。噂には聞いていたけど凄い身内部隊だ。まあアタシが言えた義理では無いんだけどね。
 シュンとしたフェイトと慰めているなのは。ビックリ顔のエリキャロ。……グリフィス、その諦め顔は何? 後でゆっくりお姉ちゃんとお話しようね。
 ヴォルケンズはどうで良いが……シャマルの顔色が悪いな、なんか在ったのかな? クス♪
 で、あのショートがマリーが言ってた娘で、となりのツインテールがシャーリーから報告が在った娘か。
 なんか色々楽しそうな部隊じゃない?。挨拶をはやく終わらせるて遊ぶか。

「査察官として捜査、調査業務を行いますが、職務の一環として六課の内部査察も行います。私自身、身内みたいなものですが、逆に身内だから手を抜けないと思ってください。ですのでミスとかボケとかドンドンして、私の成績アップに貢献してください」


☆Side Fate★


 ……天然執務官って、姉さん酷いよ。
 朝礼解散したけど落ち込んだ所為で出遅れた。えーと姉さんは?
 いた、エリオとキャロと。ダッシュして二人が姉さんに飛びついて、キャッチ。姉さんの腕の中で二人が笑ってる。
 ううう、なんかジェラシー。エリオもキャロもあんな風にわたしに甘えてくれないのに。
 そんなわたしに気付くと姉さんはチョンチョンと指招き。
 三人に近づくと引き寄せられて、ギュ。
 わたしと姉さんで二人をサンドイッチ♪
「ちょちょっと、フェイトさん、シアさん……」
「む、胸が……苦しい」
 エリオもキャロは暴れるけど嫌がってはない感じ。なんかこれ、うん、良いかも♪ 仲良し家族って感じ。

「やっ、フェイト。直接会うのは久しぶり、なのさッ」
 うん、そうだね。六課結成前は色々忙しかったから、直接会うのは半年ぶりくらい?メールとか通信は良くしてたから気付かなかったけど、ほんとうに久しぶりだ。
「うん、姉さん。また一緒に働けるの、嬉しいよ」
「アタシもさッ」

 と、姉さんはわたしを引き寄せて、わたしの唇に……、♪
 だからわたしもお返し。姉さんを引っぱって、でも恥ずかしいから右の頬に唇を寄せて……、♪
 あ、ルージュが付いちゃった。

「こらーっ!!、そこの百合百合シスターズ! ストロベリーでパニクッて、聖王様が見てるちゅうのは後にせい! 隊長陣はすぐに会議やと言ったろう!!」
 うっ、はやて酷いよ。わたし達別に百合じゃないよ。仲良し姉妹なだけだよ。
 それにわたしは……置いておいて、姉さんには男の恋人も居るんだよ。こう言うのって何だっけ? えーと、両刀?
 口に出して言ったら姉さんとはやてに叩かれた。酷いよ、二人とも。


☆Side Teana★


 ……えーと、アリシアお姉様とフェイトお姉様の凄いシーンを見せられて、硬直中のティアナ・ランスターです。
 えーと、良いな、……じゃなくてあたしも負けられなくて……?
「うん、ティア。あたし達も負けてられないね!」
 うん、勿論……、じゃなくてなんであんたが頑張るのよ。というか何よその目、なんか怖いわよ。
 お二人がお色直し、じゃなくて隊長陣が会議室に移動すると、

「何でだよ! 何でよりにもよってアイツが来るんだよ!」
 ドンとデスクを叩いて叫んだのは……ヴィータ副隊長?
「止めろヴィータ、主はやても納得された事だ。ここで我々が何か言うことは許されん」
「じゃあ、シグナム。お前は納得してるのかよ! アイツの所為ではやてとアインは……」
「……あれは、元はと言うと我々の罪だ。グレアムは我々の罪を我々に向き合わせたに過ぎん」

 なんかハードな話ね。あたし達はちょっと余所に……、ってスバル。空気読んで。
「えーと、シグナム副隊長にヴィータ副隊長。あのグレアム査察官って人について、なにか知ってるんですか?」
「ん、スバルか?」
 ヴィータ副隊長はエキサイトしていたことに気づき、罰が悪そうに目を逸らした。
「ああ、グレアムか。本人が言っていたように、ヤツはテスタロッサの姉だ」
 ……テスタロッサ? 誰?
「えーと、テスタロッサってもしかして、フェイト隊長の事ですか?」
「ああ?」
 なにを言っているのかと分からないという感じのシグナム副隊長。それに気付いたのがヴィータ副隊長だ。
「あー、お前ら、フェイトのフルネーム言えるか?」
「ん? フェイト・ハラオウンですよね」
 この馬鹿スバル。
「フェイト・T・ハラオウン執務官……。あれ?、もしかしてこのTって?」
「そうだ。フェイト・テスタロッサ・ハラオウン。これがフェイトのフルネーム。でだ、アリシアのフルネームがアリシア・テスタロッサ・グレアム。あいつらは元々テスタロッサ家の人間で、それぞれグレアム家とハラオウン家に養女に入ったんだ」

 へえ、人に歴史ありか。それでお二人はファーストネームが違うのか。
「というか、ランスターは執務官志望だっな?」
「あ、はい!」
「では、テスタロッサ・シスターズの名を聞いたことはないのか?」
「えっ、確かそれって?」
 査察官と執務官の凄腕コンビで、色んな事件を解決してるとか。って、まさか?
「ああ、テスタロッサとグレアムのチーム。それがテスタロッサ・シスターズだ」
 えーーーーっ、それって局の有名人じゃない! 不味い、知らなかった、反省。


 そんなあたしの気も知らず、我が相棒。
「えーと、フェイトさんのお姉さんって事は、あのグレアム査察官も強いんですか?」
 スバル、そのワキワキした目するの止めようね。あの人査察官よ。多分佐官よ。下手すると八神部隊長より偉いのよ。

「強いぞ」
 シグナム副隊長はあっさり言い切った。
「な! そんな事無いぞ! だってアタシはあの時……」
「あれはシャマルが割り込んだからだ。それがなければ今頃……」
「ふん!」
 そっぽを向くヴィータ副隊長。なんか本当に悔しそうだ。て、ことは?
「昔の話だ。我々ヴォルケンリッターはある事が切っ掛けで、彼女達と戦うことになった」
 へえ、ヴォルケンリッターって八神部隊長の個人戦力の四人のことよね、確か。あれリィン曹長はどうなるの?

「その時、我々は当時のグレアムに……四タテ? という敗北に陥った」
 四タテ? それって?
「1体4で負けたんですか!?」
「そりゃねえぞ!」
 そうですよね、幾らなんでも。
「1対1を4回。全て負けた……だけだ」
 シグナム副隊長、泣きそうな顔で頑張るのは止めてください。でも、
「えーと、当時の?」
「10歳相当のグレアムにだ」
「……」

 あたしはスバルと顔を見合わせた。正直信じられない話だ。シグナム副隊長やヴィータ副隊長はニアSクラス。 管理局の魔導師の中でもかなり強いほう。それを10歳で。
 というかさっきの自己紹介では、グレアム査察官は自分のこと魔導師ランク総合AAって言ってましたよね。

「ああ、やつはわざと昇格してないんだ」
「えーと、なんだっけ。執務官とか査察官なんて難しい職にある者は、なにがあるか分からないから馬鹿正直に自分のランク申告するもんじゃないとか」
「……言っていたな。それを聞いた主はやてやテスタロッサが落ち込んでいた」
 えーと、ランクの偽装、っていうか、わざと上げてないって。それって、先輩と同じ?

「奴の強さ、信じられないのなら、こう付け加えておこう」
 なんですか?
「グレアムは高町の魔法戦闘の師だ」

 ……えーとなのは隊長の先生? そりゃなのは隊長だって先生は居る筈だけだ。えーと、フェイト隊長のお姉さんってことは年上だけど、そう上な筈はなくて?
 えーーーっ、それはないんじゃ!!

「ま~、信じるか信じないかはいいんだけどよ。……でもなぁ、アリシアが来たってことは」
「ああ、シャマルか。……確かに心配だ」
「だな」

 なに? まだなにか在るんですか?
「取りあえず言っておく。しばらく怪我はするな」
 えーと、好き好んで怪我はしませんが。
「シャマルはな、あーーーーっ、アリシアとは色々あったんだ。でな」
「しばらく医務室は開店休業と思っておけ」
 思っておけって、えーと
 …………


☆Side Elio★


「でもエリオ君、やっぱり嬉しいよね。シアさんが来てくれて」
「うん、やっぱりシアさんも家族だから」

 僕たちの保護者はフェイトさんだけど、シアさんは僕たちのもう一人のお姉さんだ。フェイトさんが忙しい時など、代わりに僕たちの面倒をみてくれた。

 というか、フェイトさんは優しいというか、甘いというか、引っ付きたがるというか、距離感がどうも……、僕のことを出会った頃の子供のままと思っている感じがする。
 でもシアさんはちゃんと僕を男の子として見てくれて、必要以上に触れようとしない。……シアさん、シア姉さん、そういう距離感、フェイトさんにもちゃんと教えてください。少なくても一緒にお風呂に入ろうとするは止めさせてください。本当、お願い……。

 そんなこととか話していると医務室到着。訓練場の常備薬が切れてたから、貰いに来たんだ。
 で、ノック……、返事なし?
 僕とキャロは顔を見合わせた。シャマル先生居ないのかな?

「えーと、シャマル先生」
「お邪魔します」
 ドアを開けて入ると、
  ドタバタ!、ドタバタ!!

「「ん?」」
 僕とキャロは再び顔を見合わせた。なんだろ?

「えーと、シャマル先生?」
 シャマル先生はデスクの影から、こっちに怯えたように視線を送ってくる。えーーと、えーーと、どうしたらいいんだろう?
「シャマル先生、大丈夫ですよ。落ち着いてください」
 と優しい声を掛けるキャロ。今のシャマル先生、怯えた小動物っぽいからかな?

「えーと、大丈夫? 本当? 本当にアリシア様じゃないのよね?」
 アリシア『様』?
 三度目、僕達は顔を見合わせて、
「えーと、シアさんは今、会議中の筈ですけど」
「ほんと?、本当ね?」
 と、まだ落ち着かないシャマル先生。

 同じやりとりを三回繰り返して、シャマル先生はやっと落ち着いてくれた。


 薬を出し貰って、ついでにお茶も貰って。シャマル先生も落ち着いたみたいなんで僕はつい、
「えーと、シャマル先生。シアさんと昔、なにかあったんですか?」
 シャマル先生はカップを落とし掛け、それをフリードが器用にキャッチして……。
 で、固まったシャマル先生は、
「えーとね、アリシア様、じゃなくて、シアちゃん様がね……」涙がこうドバッって出て、
「あああああん! もう!、もう!!、腕を切られたり、指を折られたり、凍り付けにさせられるのはもう嫌なのよ~~~~~っ!!」
 と声の限りに叫び声。
 えーと、シアさんやフェイトさんは、シグナムさん達とは昔なじみだって聞いてる。でも実際、シャマル先生達となにがあったんだろ?


☆Side Teana★


 午前中の訓練が終わってわたしとスバルはランチタイム。
 エリオとキャロはフェイト隊長に呼ばれたとのことで別行動。
 しかし、なんだったんだろうアレ?

「ねぇ、ティア。さっきのなのはさん、なんか変じゃなかった?」
「確かに」
 なんか訓練中のなのは隊長の様子がおかしかった。それこそスバルが気付くくらい。落ち込んだというか、傷ついたーって感じ。
 部隊長室で隊長レベルの話し合いがあったみたいだけど、その所為かな?
 議題はグレアム査察官についてらしいけど。

「え~と、ご一緒していいかな?」
 と、そんなあたしたちに掛かる声。振り向くとフェイト隊長……、ではなくてグレアム査察官。
 えーと、あたし達みたいな下っ端になんのご用でしょうか?
 そんな考えが顔に出てたのか、グレアム査察官はアハハと笑った。
「勿論、査察官として問題児に事情聴取……」
「う!」
「えーと……」
「じゃなくて」あたし達の反応が面白かったのか、グレアム査察官はクスクス笑ってる。
「前線メンバで直接知らないのはアナタ達だけだからね、ちょっと話をしておきたかったんだ」

 迷惑? と聞かれて拒否できるほどあたし達の面の皮は厚くない。
 ありがと、と言ってグレアム査察官はスバルの隣へ。で、自分のことは副長と呼ぶようにとのこと。副部隊長だからだそうだ。
 で、食事しながら色々お話。

 グレアム副長の喋り方は直球でフランクだ。どこか態とらしいなのは隊長や、微妙に固いフェイト隊長とは違う。しいて言うと八神部隊長に似てるのかな?
 なもので話やすく、あたしはそれに気を取り直す。
 折角グレアム副長と直接話せるんだから、色んな事を質問してみようと思ったのだ。


 で、色んな事を聞き出そうとしたが……ダメだった。
 聞き上手というか、話術が上手いというか、あたしの質問はいつの間にかはぐらかされ、こっちが言おうとも思ってなかったことをドンドン喋らされる。
 スバルは訓練校に入る前とか、なのは隊長に助けられた話を力説。あたしもいつの間にか入局動機を喋らされていた。

 最近、執務官関係でフェイト隊長と話す様になったんだけど、姉妹といってもグレアム副長はフェイト隊長とは色々違う。フェイト隊長はあまり喋らない人で、こういう話術とかは苦手そう。
 フェイト隊長には悪いけど、あの人が聞き込みとか 詰問とか、尋問している姿は想像できない。部隊指揮もして貰ったことないし、もしかして個人戦闘能力だけの人かと疑ってしまう。
 なので執務官の勉強は、グレアム副長に付いた方がいいのかとも考えてしまう。この人、執務官経験あるそうだし。

 などと失礼な事を考えていると、
「あ、先輩♪」
 スバルが立ち上がった。視線を追うと金髪の、オトコの人。あれ、先輩? 今日は珍しい時間に居ますね。
 先輩、クリス・イェーガー三等空尉はあたし『達』に気付き、そして足を止めた。


☆Side Chris★


「あ、先輩♪」
 と声を掛けられた。視線を向けるとそこに居たのは俺の弟子二人組、ティアナとスバル。ともう一人、金髪の女性。フェイトか?
 なんか珍しい。ここの隊長陣は隊長陣でベッタリくっついて、休み時間を部下達と過ごしたりしない。まして外回りの多いフェイトは、この二人とはプライベートで話したことも無いんじゃないか?
 なので三人の方に向かって、俺は足を止めた。フェイトじゃない、……まさかアレって?
「はあい、クリス。お久しぶり♪」
 金髪女は俺に向かってウィンク。まさか……、シア、か?

 シアは自分の向かい、ティアナの隣に指招き。……拒否、出来ないんだろうな、やっぱり。
「おはよう、ティアナ、スバル。で、シア、久しぶりだな」
「ん、1年半ぶり、かな?」
「そんなもんだな。…………で……、なんでシアが六課にいるんだ? フェイトの顔でも見に来たのか?」
「ふふん。回覧、回ってないの?」

 回覧? そう言えば士官用のメッセージが在ったような? 確か六課管理職に新しく入るヤツがいるとか。て、まさかシアが? 幾ら何でも無茶苦茶だろ。
 無粋なんでオフィシャルな事は聞いてないが、コイツは確か中央本部所属の査察官、所謂エリートさんだ。ここの子狸隊長もエリートだが、シアは更にその上をいく、筈だ。そのシアが今、此処に来るなんて……。

「んーーとね、機動六課にテ、コ、イ、レ♪」
 ……てこ入れ、…………あ、あああああっ、な~~~~~~~~~~るほどっ!!


 機動六課って予算喰ってる割に、全然成果出してないからな。出動すればレールウェイ壊し、警備すれば出し抜かれ、この前の市街戦では敵のサイボーグ? を全員取り逃がしている。
 で、上が慌ててこいつを送り込んできたった訳か。納得。
 シアの本来の立ち位置はおそらく子狸より上、後見人に近い。更に中央本部所属。なので魔力制限は受けてないだろう。更に噂では、管理に捜査に指揮に戦闘にと、何でもできる完璧超人。穴だらけの六課の欠点を埋めるのにピッタリだ。
 俺的に六課最大の問題、指揮系統もこれでOK? 今まで一回も部隊指揮を行わなかった、なのちゃん達から引き継ぎかな?

「じゃあ、ティアナも少しは楽になるのかな?」
「そうでもないのさッ。フォワード指揮はなのは達にやらせろって言うのがレティの方針だし。アタシはどっちかっていうと、交換部隊の指揮かな?」
「はぁ? じぁあ、俺がシアの部下になるのかぁ? ううう、……、まあ、俺はそろそろ『陸』に帰るから、関係ないか、な?」
 などというと、ティアナとスバルは悲しそうな顔。だが、俺には俺のこだわりがある。が、
「フフフッ」とニヤニヤ笑うシア。
「そーはいかないのさッ、クリスを脅すネタなんて幾らだって持ってるしぃ」
「うっ」
 なんか嫌な予感がする。


 と二人で陰険な会話をしていると、
「えーと、副長、先輩」
「「なに?」」
「お二人ってお知り合いなんですか?」
「ああ」
「ま~ね」
 シアと視線を見交わす。
「なのちゃん経由で知り合ったんだよ」
 と言うと二人の顔に納得の色。

 教導仲間でなのちゃん連れてミッドを回っていた頃、いつの間にか加わっていたのがシアだ。
 ヒマだからなのはに付いてきた、なんて言ってたけど、アレは妹分心配して、連れ回してる俺達を調べに来てたんだろうな。

 で、話して、気があって、二人で会うようになって。そんな関係だ。
「よ~するにだ……」シアは意地の悪い顔で笑う。アレは不味い。止めようとしたが、
「元カノだい♪」
 ……手遅れだった。……隣の気配が何故か暗くなった。


「えーーーっ! 元カノって、恋人さん?」
 スバル、声でかい。シアと付き合って……、別れたのは俺の黒歴史だ。
「まー、半年くらい付き合ってね」
「はい、それで?」
「まあ、色々あったわけよ」
 あったよ、色々。俺も男な訳だし……。押し倒された、でなくて、押し倒した、でもなく。押し倒させられた、が正しいか?
 ……で、一方的に振られた、っと。

「すみません。申し訳ありませんが、用が在るのでお先失礼します」
 立ち上がったのはティアナ。なんか表情がないな。ふむ?
「えっ、ちょっとティア?」
「まあ、良いから良いから」
 と、追おうとしたスバルをシアが止める。


☆Side Subaru★


「えっ、ちょっとティア?」
「まあ、良いから良いから」
 食堂を出て行くティアを追おうとすると副長に止められた。何でだろ? で、わたしを座らせるとグレアム
副長は先輩に、えーと、流し目?

「良い娘、捕まえたじゃない。相変わらず……良い趣味ね」
「それって、暗に自分がいい女だって言ってないか?」
「ふふん、そのとおりじゃない?」
「……否定は、しないよ」

 なんかアダルトな会話です。口を挟めません。

「まあ、良い男になれない俺はこれで……」
 と、先輩がトレーを持って立ち上がろうとすると、
「アタシが片付けとくわよ」
「いいのか?」
「いい女はね、何時だって可愛い娘の恋の味方なのさッ」
「すまん」

 というと先輩は手を振って出て行きました。なのであたしは副長と二人です。
 ん、改めて二人っきりになるとなんか緊張するな。この人、迫力あるから。
「さてと、ナカジマちゃん……」
「えーと、スバルでいいです」
「じゃあ、スバル。アンタとは前から、個人的に話してみたかったんだ」
「あたしと?」
「そっ、マリーに聞いてね」
 マリーって、マリエル・アテンザさん? わたし達の面倒見てくれてる人?
「ふふふっ、こういう事」
 グレアム副長はあたしの耳に左手をあてると……、あれこの音って?


 シアさんと色々話してたから、午後の訓練遅れそうになった。だけどギリギリセーフ。
 でもティアがちょっぴり遅刻でなのはさんに怒られた。
 もしかしてティア、さっきみたいに機嫌が悪いのかなって思ったんだけど、なんか上機嫌。なのはさんにもハイハイ元気に謝って訓練開始。
 上機嫌なのは良いとして、なんかティアの顔色がツヤツヤしてる気がする。あれからなにが在ったんだろう?



PS1
 なんか一発ネタのつもりだったのにヤケに長くなってしまった。長くてもネタですよ、ネタ。
 この先、繋がりませんよ。


PS2
 この話『アリシア』に入れようか『とある六課』に入れようか悩んだんですが、結局『とある六課』の番外編にしました。
 『シニカル★アリシアStS』をやるなら、最初からシアが六課に入ったほうがらしい、ということ。他にも色々矛盾が出そう。
 今のプロットではA'sのアリシアも黒いけど、StSのアリシアはとんでもなく黒くなりそうなんで。こんなまともな娘じゃありません。具体的にはリンディとクアット○を足して割らないといったレベル。

 なのでこの話は直接シアA'sから続きません。続かないかな?
 A's編のネタを色々予告しているようですが、さてA'sでシアとヴォルケンズとの関係はどうなるか?
 百合百合シスターズは実現するのか? ああいうのが作者が書きたかった二人の関係……、では無い、よね?


PS3
『シニカル★アリシアStS』を書くとして、原作と最も遊離しそうなのはエリオとキャロの扱い。
 機動六課に入らない公算大。

エリオの場合
 シアの存在と時の庭園のデータからFの精度が向上→『エリオ』の出来に家族が満足する可能性大。で、クーリングオフが発生せず。
 となると、
①『エリオ』の存在に管理局が気付かずモンディアル家で幸せに
 →Good End
②管理局の手で家族と無理矢理引き離される。当事者のフェイトはエリオに恨まれる
 →Bad End
③管理局に『エリオ』の存在が気付かれるが、フェイトの温情でモンディアル家に残れる。フェイトと管理局に感謝して後に管理局入り。だけど普通に陸士学校から始めるのでStSには間に合わない。
 →True End

キャロの場合
 そもそも事件性もないのに、キャロの処遇を決める時に『海』のフェイトが居るの自体不自然。
 可能性としてキャロ保護時、偶々近くにいたフェイトが法務担当者として呼ばれた、くらい?
 テスタロッサ・シスターズとして原作と活動範囲が違うフェイトは、キャロ保護時に近くにいなくて、結果キャロは人間爆弾?に。


PS4
 『とある六課』で言及しなかった隊長陣とフォワードの距離、ちと出してみました。
 シグナムとティアナの接点はヘリポートで殴った時くらい?
 なのでシグナムがフェイトをテスタロッサと呼ぶ理由を、スバティアは知らなかった、ということで。


PS5
 A'sコミックを読んで気が付いたんですが、はやてって本局地上部隊の所属。だから陸のエースなんですね。
 …………A'sの頃は地上本部の設定が無く『海』と『陸』の違いがなかったから良いんですが、StSで違いが出来たんならその辺考慮しろよ、原作。
 管理外世界派遣・常駐の地上部隊なら納得するけど、ミッドチルダにそんなモノあったら可笑しいだろ。
 本局海上警備部も十分可笑しいけど、アレはJS事件で『陸』の勢力が衰えたからと思ってたのに……

 作者のSSではそう言うのは、
 『④公式だろうと納得出来ない設定は"修正"』
 で、はやては『陸』の人間です。(レジアスとは別の派閥)

 作者なりの管理局に関する設定は『アリシア』で順次書いてく予定。



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