転生しました。まあ死因とかはどうでもいい。済んだことだ。重要なのは俺の弟の名。
戸愚呂だ。どうやらここは、幽遊白書の世界らしい。俺の名は戸隠。しかし、戸愚呂って本名だったのか? 幾分引っかかるものを感じる。とにかく、俺やだよ、妖怪になるのは。それに、とにかく強くならないと潰煉とかいう妖怪に見せしめに殺されね?
しかし、霊力を鍛えるのってどうやるんだろう。
戸愚呂が育って霊力を覚えてから習うしかないか。
しかし、空手の練習はしておこう………3日で飽きた。
だーって、俺、元ニートだぜ。運動なんて無理無理無理。
俺が5歳。戸愚呂が3歳になった頃の事だった。
戸愚呂は大人しい男の子だった。これが挌闘家になるなんて信じられない。
「兄者、本を借りていっていいか」
「構わないぞ、戸愚呂。それでよく勉強して、俺を鍛えてくれ」
戸愚呂は格闘技の本を借りていく。それに、よくわからない質問を良くする。
戸愚呂はいつも本ばかり読んでいる。それは俺もおんなじだ。
両親からは頭のいい子だと喜ばれている。6歳の誕生日にパソコンを買ってやるといわれ、俺は喜んだ。
「戸隠、戸愚呂、お客さんだぞ。隣の家に引っ越してきた野渡さんだ。凄いんだぞ。とにかく来なさい」
「はーい」
俺は返事をして、戸愚呂は無言で玄関に向かう。待っていたのは、ちっちゃい女の子と優しそうな女の人だった。
「戸愚呂、この女の子、幻海ちゃんっていうんだぞ。同じ幽遊白書からつけたんだそうだ。あ、幽遊白書ってのは俺の好きな漫画な」
えっ幽遊白書からつけたの?
っつーか、そりゃ漫画の世界に入るなんて早々ないよな。なーんだ。
俺は恥ずかしい間違いに真っ赤になる。
「お、幻海ちゃんが可愛いからって真っ赤だな、戸隠!」
父さんの揶揄する声に、うー、と声を出す。
戸愚呂は、何歩か進み出て、そこで結局歩みを止めた。ぎゅっとこぶしを握り締める。
幻海と戸愚呂が見詰め合ったかと思うと、幻海は、くしゃっと顔を歪め、泣き出した。
「まあまあ、びっくりしちゃったのね」
幻海は、戸愚呂をぎゅっと抱きしめる。
お母さんが、まあまあと更に声を上げる。
「い……いきなり泣いて、すまないね。戸愚呂、少し二人で話をしたい」
幻海の、大人びたしゃべり声。ここって近い未来なのかな。
「どうですか、上がってお茶でも」
「そうですね、お邪魔します」
戸愚呂は子供部屋に幻海を連れて行く。
俺も部屋に戻って漫画を読もうと思ったが、邪魔をするなと父さんに連れて行かれた。
幽遊白書の話で盛り上がる二人の話を聞いていると、新聞が目に入った。
幕府……?
俺は新聞を引っ張りこむ。新聞には幕府がどうのこうの書いてある。
「ねー、幽遊白書っていつ頃の連載?」
「お前が生まれた後に連載終了したんだよ」
「へ……へー」
俺は青い顔だ。ここはパラレルワールドなのか。政府が幕府だなんて。俺は混乱しながらも、隅から隅まで新聞を見た。ハンター協会。なんだこれ。まさか、まさか……。
「ととと、父さん、くじら島って知ってる?」
「観光で有名な所だな。それがどうかしたか」
「父さん、パソコン買って。今すぐ買って。すぐ買って。調べたいものがあるんだ」
まだ、間違いというのがあるかもしれない。さっき、間違えたばっかりじゃないか。慎重に確認しなくては。
「なんなんだ、一体」
「うちの幻海ちゃんもパソコンが好きなのよ。そういう時代なのよ」
談笑を続ける二人に埒が明かないと、俺は新聞を引っ張り出した。
ハンター協会会長、ネテロ。NGL。ああ、駄目だ。キメラアントどうしよう。
何より、俺はハンターハンターの内容をほとんど覚えていなかった。キメラアント編いつだったかなんて覚えてないよ。あーどうしようー。
「兄者、何を悩んでいる」
俺が頭を抱えていると、幻海と戸愚呂がやってきて言った。
「いや、なんでもない。なぁ、戸愚呂。強くなりたいから鍛えて欲しいなんて言っても、無理だよな。お前は幽遊白書の戸愚呂じゃないものな。あはは……」
「構わないが。というかいつも頼んでいる事だろう」
「本当か!? いや、でも……」
「……あいつ以外の転生者って線もあるんじゃないかい? 3歳の弟にここまで鍛えて欲しいと頼むのはおかしいよ」
幻海の言葉に、戸愚呂が俺を見た。俺は子供部屋に連行される。
「ななな、なんだなんだ!?」
「いいからわかっている事をきりきり喋りな」
あーれー。
「ふうん、念能力ねぇ。白い靄が見えるのは何でかと思ってたんだよ。これはいい暇つぶしを見つけたね」
「俺は強化系だろうな」
「あたしも強化系な気がするね」
二人は楽しそうに会話する。そこに、原作であったような影は感じられなかった。二人で話し合って吹っ切れたのだろうか。その日から弟と幻海の特訓は始まった。一日でダウンした。でも許してもらえなかった。二人に言わせれば、子供のうちから鍛えすぎると育たないから加減はしているらしいけど。
俺が7歳になる頃には、戸愚呂も幻海も纏を会得していた。俺? まだですよ。天才と一緒にするんじゃねぇ。霊は見えるようになったけど。しかし、HxHの原作を覚えてない。最近、いつも内容を思い出そうと頑張ってるから夢にも見るようになってきた。キメラアントの時期わかんねー。よって、まだ戸愚呂達にも話してない。
「成長が遅いね。早く念の訓練をしすぎたかね。これじゃ特訓も出来ないよ」
「水見式は兄者が纏をできるようになるのを待っていたが……」
「すんませーん。俺は探索係って事で頼むよ。今だってパソコンで仲間探ししてるしな」
幽遊白書の生まれ変わりだと思う人集まれ、と書いたスレッドは今日も狂人じゃねーのという書き込みに溢れている。この中から本物を探すのは大変だ。
これという人にメールを出して、幻海の住所や享年を聞くのだ。偽者にはまず答えられない。
パソコンに向き直る俺を見て、戸愚呂と幻海はため息をつく。
「ま、気長に待つかね」
そうしようぜ。
で、気長に待った結果俺20歳。むりやり念に目覚めさせられました。
まあ、発は先に出来てたんだけどな。なんと、HxHのコミックを具現化できる能力ですよ。グゥレイト! ……いらねーorz いや、原作知識は仕入れられたけどさ。幻海と戸愚呂の修行にも役立ったし。いまや二人は立派なハンターである。俺? もちろん違うよ。
ちなみに念に関しては戸愚呂も幻海もorzってなってた。操作系と具現化系です。まあ強化系からは遠いわな、かなり。俺、強化系なのに具現化して涙目。コミックは正真正銘普通のコミックです。戸愚呂と幻海にも文句言われて涙目。二人とも能力どうするんだろ。
そんなわけで、1996年。クルタ族壊滅。来年の事だ。
俺はチャットでここ10年の間に見つけた奴らに話しかけた。
「で、どうするー?」
「阻止させてもらうよ。俺の力に初見で対抗できると思わないし」
「俺も今の家族が気に入っているからな。人殺しをするつもりはないから生かして返すけど」
天沼と海藤から返信が帰ってくる。ほうほう。ちなみに彼らはクルタ組みである。わかったのは、幽遊白書の人間組みが死後に何人かこちらに連れてこられて来ているという事だった。神谷達も来ていて、彼らとも連絡を取り合っている。ちなみに全員念能力者になった。霊能力との区別が大変なようである。俺も混同して毎日幻海に怒られている。ちなみに一番年上にかかわらず、念を覚えるのが一番遅かったのは俺だ。
「能力を盗まれないように気をつけてなー」
「盗めるかどうかはわからないけどね。俺たちの能力は念じゃない。条件はわかってるし、大丈夫だろう。できれば幻海師範にも来て頂きたいんだが」
「あたしは構わないよ」
海藤の言葉に、幻海が横からチャットに入り込んだ。
「俺も心配だからいく」
「俺も」
城戸、柳沢がいい、大分大所帯になったなと俺は思った。
樹が、お茶を持ってきてくれる。仙水が、HxHのキメラアント編を読みながら言った。
仙水は親に売り飛ばされそうになっている所を根性で捜しに来た樹が掻っ攫い、現在ここに住んでいる。戸愚呂と幻海と俺と樹と仙水とで、今5人住まいだ。あ。桑原は樹に送られて雪菜の所へ戻っていった。
「魔族が無理ならキメラアントになりたいな……」
「キメラアントも醜いのは人間と同じくらい醜いですから勘弁してください。魔族ってのも念能力でどうにかしたらどうですか。せっかく7人分もメモリあるんですから」
これ以上のキメラアントの強化とか、勘弁して欲しい。