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[43878] 転生魔王様の勇者譚
Name: ジン◆14344c24 ID:9115406d
Date: 2022/05/14 17:39
初投稿です。


転生した魔王の勇者譚です。



[43878] プロローグ
Name: ジン◆14344c24 ID:9115406d
Date: 2023/01/12 23:22
豪華な謁見の間に二人男女の影が交差する。

「フッハッハッハ、俺に着いてくるとは勇者もやるな」
「当然です。魔王たる貴方に勝たなければいけない」
「ハッハッハッ、勝ちを譲るつもりはないがな」

勇者の黄金の剣が、袈裟懸けに振るわれたが魔王の右手に握られた赤黒い剣によって弾かれ、魔王の左手に握られた漆黒の剣が横一文字になぎ払われた。弾かれた剣を一瞬にして身体の右側に割り込ませて、なぎ払われた一撃をガードした。

「中々やるではないか、本気でかからなかければいけんようだな…」
「今まで本気じゃなかったと言うの!」
「ああその通りだ。」
「くっ、冗談キツイわね」
「ハッハッハッ、俺の本気に何処まで着いてこれるかな?」

魔王の剣が、縦横無尽に振るわれていくのに勇者の剣は防御で手一杯に、なっていく。

「くっ、防御で手一杯ね」
「風よ、逆巻け〈風刃〉」
「風の精霊よ、なぎ払え〈エアレイド〉」

魔王の風魔法が無数の刃となり、勇者に襲い掛かるが勇者の精霊魔法によりそよ風とかす。

「ほう、今の魔法に合わせて精霊魔法を使うか」
「これくらい朝飯前よ」
「火よ、撃ち抜け〈炎弾〉」
「水の精霊よ、穿て〈アクアバレット〉」

魔王の炎魔法により、無数の炎弾となって襲い掛かる。勇者の精霊魔法が水の弾丸が、無数になって対消滅を起こす。
再び、剣の距離での打ち合いになる。美しい剣舞のような攻防は、より激しさを増していくのだった。




[43878] 勇者召還!!
Name: ジン◆14344c24 ID:e05f9eb1
Date: 2023/03/03 22:01
○月✕日
朝日を浴びて、輝く赤毛の髪を揺らし眠気を振り払えない茜色の瞳を侵入者に向けて龍崎 誠は、口を開いた。

「みぃ、また勝手に部屋に入ってきたね」
「うん?何か問題でも...」
「うん、問題しかないよ。着替え途中だったら、どうするの?」
「まー君の着替えをガツッリ覗く」
「みぃ、着替えを勝手に覗くな!着替えるから、下で待っててよ」
「は~い、待ってるから早く来てね。まー君」

微苦笑を溢すと、愛しい幼馴染みに気持ちの良い返事を返した。

「分かった。早く着替えるから待っててよ」

◆◆◆

トースト二枚にベーコン、目玉焼き、インスタントのコーンスープのオーソドックスな洋食の朝御飯が用意されていた。

「母さん、おはよう」
「おはよう、誠。美琴ちゃん、朝から誠の世話を有難う」

静谷 美琴は、腰まで届く長い黒髪を、左右に振って母さんに真っ直ぐな黒い瞳を向けた。

「まー君の世話は、私の生き甲斐だから別に苦じゃないですよ。」
「あら、そうなの。それじゃあ、これからもお願いしちゃおうかしら」
「何、勝手に二人で話を決めちゃってるの?僕は、承知した覚えはないよ!?」
「あら、駄目だったかしら?」
「駄目に決まってるでしょう!?」
「あ~あ、私は乗り気だったのに!?」
「みぃ、何乗り気になってるの」
「可愛い幼馴染みのモーニングコールだよ」
「要らないよ!」
「可愛い幼馴染みは否定しなかったわね」
「母さんも五月蝿いよ!」


◆◆◆

学校の2年3組に着いた途端に口から愚痴がこぼれ落ちた。

「あ~あ、眠い」

松風 陸人は、黒髪スポーツ刈りに切れ長の黒瞳をうたわがしげな目を誠に向けて

「眠そうだな、誠」
「おはよう、陸。徹夜明けに学校は、キツイわ」
「なんだ、徹夜明けかよ。また、オンラインゲームか」
「あ~あ、そうだよ。レベアゲが切りの良い所で終んなくてな」
「さいですか、だから1時に止めとけって言っただろうが?」
「みぃも、同じくらい遣ってたぜ」
「まー君、みぃは2時間寝ました」
「はぁ、みぃは寝たのかよ!だから、途中から反応無かったのかよ!」

藤倉 実咲は、亜麻色の肩口まで有る髪と吊り目気味の黒い瞳を呆れたように見遣った。

「誠にみぃも、どっちもどっちでしょ?」
「ミサちゃん、みぃは2時間寝ました」
「実咲、良いこと言った!」
「オンラインゲームの何がそんなに楽しいの?」
「そんなの色々楽しいさ」

ニコニコと微笑みながら、誠に近づいて来た女子生徒は

「何話してるの?」

名を彩羽間 未桜という。腰まで届く長く艶やか黒髪、垂れ気味の大きなひどく優しげな瞳。スッと通った鼻梁に小ぶりの鼻、そして薄い桜色の唇が完璧な配置で並んでいる。

「おはよう、彩羽間さん。オンラインゲームの話をしてたところ」
「おはよう、誠君。未桜って、呼んで良いのに」
「それは、おいおいね」
「未桜、あんまり無茶言わないの」
「おはよう、咲耶ちゃん。」
「おはよう、高宮さん」


高宮 咲耶は、ポニーテイルにした長い黒髪と切れ長の細い黒目の美少女だ。

「おはよう、龍崎君。未桜の言ったことは気にしないでね」
「元よりそのつもりだ」
「えーえ、何で?」
「ムゥ、まー君はみぃの物」
「みぃ、僕はお前の物でもないからな」

◆◆◆

午前の授業の終了のチャイムが鳴り響くと同時に

「エナジーチャージして、寝るか」

独り言を呟いたかと思ったら、午後のエネルギーを10秒チャージすると寝る体勢に入った。
彩羽間さんが、それを目撃して

「誠君、そんなのじゃ身体に悪いよ。私の御飯あげるからちゃんと御飯食べよ」
「彩羽間さん、気にしないで。これで、十分だから」
「未桜、優しいのは良いけど優しすぎるのも問題だよ」

そんな勘違い発言をするのは、天ケ崎 佑斗は容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能な完璧超人だ。サラサラの茶髪に優しげな瞳、180センチ超えの高身長に細身ながら引き締まった身体。誰にでも優しく、正義感も強い(思い込みが激しい)。

「佑斗君、優しすぎるのも問題だって何?優しすぎる事の何が問題なの?」
「良いかい?優しすぎるとその事に、慣れて自立できなくなるよ」
「そうだな。そうなっちまったら、お仕舞いだな」

そういって、天ケ崎に同意したのは大神 虎太朗で短く刈り上げた髪に鋭さと陽気さを合わせたような瞳、190センチ近くの身長に熊のごとき大柄な体格、見た目に反さず細かいことには気にしない脳筋タイプである。

「天ケ崎君も、大神君もああ言ってる事だし、僕の事は放って置いてよ」
「えっ、でも...」
「じゃあね、お休み...」

◆◆◆

5限目の日本史の授業を、丸々45分間寝て過ごした誠は

「ふぁあ...よく寝た」
「本当によく寝てたな」
「よし、頑張って部活に励みますか...」
「早く行こう」
「おう」

返事を返した瞬間に、教室一面に幾何学模様の魔方陣が光りながら描かれていた。

(この紋様からしたら、召喚魔法か何処に召喚されるか分からんが待ちの姿勢で良いか)

「皆さん、教室から直ぐに出てください」

世界史教諭の相川 千歳の警告が飛ぶが、それよりも早くに召喚魔法が完成していた。

◆◆◆

召喚された先は、講堂ほどの広さを持つ広間に呆然と立っていた。呼び出した方も人数の多さに多少戸惑っているようだった。

「あ~あ、これって異世界召喚って奴か」
「そうだと思うよ」

呼び出した人間も落ち着いたのか、一番服が上等そうな姫様が腰まで届く長い金色の髪を靡かせ、翡翠のような碧眼を柔らかに一瞥し桃色の唇を振るわせて一歩前に出て話し始めた。

「ようこそ、グリモワールにいらっしゃいました。勇者様がた。私の名は、セラフィーナ·グロリアースと申します」

グリモワールと聞いて、前世の世界に来たことを確信して称号に付くだろう前魔王を隠蔽魔法で隠すことに決めた。

「皆さまに、これから配るのはステータスプレートといわれ名前、種族、ジョブ、称号、スキル、レベル、ステータスを表示する事が出来ます」

名前 龍崎 誠
種族 人族(魔人)
ジョブ 拳王
称号 超越者 魔剣士 魔導王 (前魔王) 召還されし者
スキル 詠唱破棄 魔法威力上昇 同時詠唱 高速魔力回復 体力回復 気配察知 気配遮断 無手の心得 王たる器 手加減 龍眼 他言語理解
レベル 278
ステータス HP 2069 MP 2054 STR 1828
DEF 1832 VIT 2069 INT 1916 MAG 2054 AGL 1897 DEX 1915

「まー君、ステータス高くない?」
「そうか、みぃのステータスはどんな感じ?」

名前 静谷 美琴
種族 人族
ジョブ 精霊剣士
称号 超越者 勇者 精霊剣士 精霊の巫女 召還されし者
スキル 聖属性魔法威力上昇 回復魔法威力上昇 精霊魔法威力上昇 高速体力回復 魔力回復 精霊の加護 気配察知 気配遮断 精霊眼 他言語理解
レベル 289
ステータス HP 2087 MP 2046 STR 1814 DEF 1816 VIT 2087 INT 1908 MAG 2046 AGL 1888 DEX 1904

「みぃも、ステータス高いね」
「陸は、どんな感じ」

名前 松風 陸人
種族 人族
ジョブ 格闘家(グラップラー)
称号 召還されし者
スキル 他言語理解 体力回復 身体能力強化
レベル 1
ステータス HP 200 MP 150 STR 150 DEF 150 VIT 200 INT 170 MAG 150 AGL 150 DEX 150

「結構高いね」
「そうなのか?誠と美琴が高すぎて、実感がわかん」
「実咲は、どう?」

名前 藤倉 実咲
種族 人族
ジョブ 聖騎士
称号 召還されし者
スキル 他言語理解 体力回復 聖属性魔法威力上昇 回復魔法威力上昇 詠唱破棄
レベル 1
ステータス HP 180 MP 200 STR 150 DEF 150 VIT 180
INT 180 MAG 200 AGL 150 DEX 150

「実咲も、高いな」
「そうなの?いまいち分からないわ」
「ステータスプレートに、勇者の文字が浮かんだ方は手を上げて下さい」

20人近く居るクラスメイトの中から、2本の手が上がった。静谷 美琴と天ケ崎 佑斗の二人だった。

「お二人には、魔王を倒していただきたいのですが、大丈夫でしょうか?」
「あっ、はい。大丈夫です」
「魔王は、悪を成したのですか?」
「えぇ、二十年前に罪の無い無辜の民を手にかけています」
「分かりました。なら、魔王を倒します」
「待って下さい。生徒達に人殺しをさせるのですか?」
「えぇ、そうなります」
「そんなの絶対に認めません。天ケ崎君も静谷さんも考え直して下さい」
「困ってる人が居るなら、助けるのが義務じゃないですか」
「そうだな。佑斗のいう通りだな」
「佑斗がそう言うなら、手伝って上げましょうか」
「咲耶ちゃんが手伝うなら、私も手伝う」
「大神君に高宮さん、彩羽間さんまで...人殺しになるんですよ、静谷さんはやりませんよね」
「千歳ちゃん、私も殺るよ。勇者に選ばれたから」
「みぃが、殺るなら私も殺るね」
「美琴が、殺るって言うなら俺も殺る」
「みぃ、殺るなら後腐れなく殺るよ」
「藤倉さんに、松風君、龍崎君まで...人殺しに成ってまで、勇者に成りたいんですか?」
「勇者に成りたいんじゃない、勇者でありたいんです」

そうして、魔王打倒を目標に掲げて二つの勇者チームが立ち上がった。







[43878] 新しい日常
Name: ジン◆14344c24 ID:d3e642ff
Date: 2022/12/10 22:05
グロリアース王国の王城の第1野外訓練場に二人の男の姿があった。一人は、180センチ近くの鮮やかな赤毛が目立つ端整な顔立ちの16,7位の少年と、もう一方は190超えの精悍な表情の16,7位の少年だった。二人は、眼に止まらない程の速さで両手や両足を弾き合わせていた。やがて、一方が読み違いでもしたのか明らかに形勢が不利になり、一発デカイの貰ってしまった。

「だいぶステータスに慣れてきたな」
「痛てて、ステータスに慣れてきたけど誠の一撃を貰っちまったな」
「当たって当然だ。スキルの効果でMAG以外が、オール400アップしているからな」
「な!?ずりぃぞそれ」
「狡いと言われても、パッシブスキルだから手を抜けんからな」
「まあ、いいや。もう一本お願いします」
「次の一本は無しだ。みぃたちが来る」

東側の回廊から170センチ前後の美少女たちが、三人並んで姿を表した。

「誠と陸人の二人とも此方に居らしたですね」
「みぃに実咲にセラまで...三人揃ってどうした?」
「訓練が終わったから、誠と陸人を午後のティータイムに誘わないかってなってね」
「ふむ、根を詰めても良いこと無いから僕はその誘い受けるよ」
「まー君、ほんと!?陸もそれで良い?」
「あぁ~、指導役の誠が居なくなるし俺も誘いを受けるよ。でだ、何処でティーブレイクするんだ」
「サロンの予定ですが、宜しかったでしょうか?」
「良いぜ、さっそく移動しよう」

そう言って、誠と陸人が他の三人に合流しようと着いていっていた。

◆◆◆

王城の中央付近に有るサロンに辿り着くと、丸テーブルに時計回りに誠、美琴、セラ、陸人、実咲の順にテーブルに着いた。テーブルの上には、バタークッキーとチョコクッキーの2種類とまだ空のティーカップが5個並べて置かれていた。五人が席に着くと、それを待っていたかのように壁際に控えていた三人のメイド達が順番に五人のティーカップに紅茶をついで回った。それらを眺めながら、陸人が徐に口を開いた。

「う~ん、ティータイムするのは良いけどなに話す?」
「皆様の思い出話をして頂けませんか?」
「おっ、良いね。何から話そうかな」
「幼稚園の肝試しの話とかどう?」
「えっ、みぃも何でそのチョイスにしたの?」
「面白そうだから...」
「あぁ、そういえばみぃってそういう性格だった」
「誠さん、幼稚園とは何ですか?」
「幼稚園ってのは、4歳から6歳迄の子どもを預ける施設の事だよ」
「なるほど。良く分かりました」
「って、誠も幼稚園の説明しない!」
「うん?此方には無い施設だから、説明は必要だろう」
「説明は必要だけど、もっと他にも突っ込む箇所有るでしょ誠」
「うん、有るかな?」
「有るでしょ、何で疑問系なのよ」
「幼稚園で、お泊まり会があってな。その中で、肝試しがあって講堂で実咲が泣き出したんだ」
「陸、何話してるの」
実咲が恥ずかしい話をされて、顔を赤くしていた。

◆◆◆

しばらく、談笑していたら突然セラが、

「本当に四人共、仲が良いんですね」
「そうかもな。幼なじみで友達だからな」
「良いですね。私は、幼なじみも友達もいませんので」

みぃが、徐にセラを指差し次いで自分達を指さした。

「みぃ達の事を呼び捨てにしてるし、セラに関しては愛称で呼んで居るから既に友達だと思ってた」
「えっ、そうなんですか?」

その返事に対して、誠が大いに頷きながらこう返答した。

「呼び捨てにしたり、愛称で呼びあったりしたらそれはもう友達だろう」
「そうなんですか!初めて友達が出来て嬉しいです」
「そりゃ良かった」

満面の笑顔を浮かべて笑うセラを優しい笑顔を浮かべて見守る四人だった。

◆◆◆

一方、その頃職業勇者を得ていた天ケ崎 佑斗は王城の第2室内訓練所で新たなる日常になっていた訓練の最中であった。訓練の相手となっているのは、グロリアース王国最強の一角を担うレクター・フィールズ王国騎士団長その人だった。

「佑斗くん、そろそろ訓練を切り上げようか」
「……まだまだです」

レクターの言葉に対して、息が切れ切れしながら否やを返すのであった。その様子を見守っていた高宮 咲耶は呆れた様子を見せながら話し始めた。

「レクター団長は、これ以上はオーバーワークになるからここまでにしようと言ってるのよ。聞き分けなさい」
「……」
「何をそんなに焦っているのよ」
「焦ってなんか無い」
「そういうことにしとくわ」

それっきり、会話が途切れまるで何かに追い詰められ焦燥に身を焦がされた幼馴染みに言い知れぬ不安を感じながら、この新しい日常を謳歌するのであった。









[43878] 実戦訓練
Name: ジン◆14344c24 ID:b2fe2193
Date: 2023/02/20 19:48
日の光が届かない鬱蒼とした森の中に三つの影が蠢いていた。三つの影の内、一つは凄まじい勢いで吹っ飛び一本の木をへし折り止まった。止まった影をよくよく観察すると地球の豹に似た姿をしていたが、豹と異なる点は鋭く延びた二本の牙だった。そんな豹に似た魔物(サーベルタイガーLV151)に近付く二つの影は、一つは180センチ近くの燃えるような赤毛と茜色の瞳の少年と190センチ越えの短髪の黒髪黒瞳の少年だった。二人の少年は、惑星グリモワールの統一言語で話し始めた。

「うっしゃあ。また、一丁上り。コイツの討伐部位って、牙だっけ」
「うん、そうだね。レベルは、どれ位になった」
「ちょっと待ってな。今、討伐部位を切り取ってステータスカードを見るから」

そう言って、腰に差したアダマンナイト製の採取用のナイフを抜いて牙を切り落とした。切り落とした牙を肩にかけた鞄に入れ、採取用のナイフを腰に差し直した後懐に手を入れて銀色に輝く名刺サイズの板を取り出した。取り出した板に視線を落とすとレベルを読み上げた。

「LV147だな。もう暫くこの付近でレベル上げか?」
「そうだね。暫くはここら一体で、レベル上げだね」

そんな風に、言葉を交わしていると森の奥からミスリル製の完全装備の170センチ前後の快活そうな少女と落ち着いた雰囲気のこれまたミスリル製の軽装に精霊剣アルシェリオンを装備した少女がやって来た。

「まー君、陸。そっちは、どんな感じ」
「みぃに実咲か。こっちは順調だね。そっちこそ、どんな感じだ」
「ミサちゃんも順調だよ。つい先刻LV146になったよ」
「よっしゃあ、俺の方がレベル高けぇ」
「何ですって?いったいレベル幾つなの?」
「LV147だぜ」
「たったレベル一差じゃないの。それで威張る事ないでしょ」
「たった一の差でも、レベルが高い事には変わりありません」
「むぅぅ、みぃと誠には負けてるじゃん」
「みぃと誠は、別枠だろ」

そんな風に、ギャァスギャァスと危機感無く騒ぎながら近くの城塞都市インヴォルグへの道を辿っていた。

◆◆◆

夕方のインヴォルグの冒険者ギルドには、クエスト帰りや夜間のクエストに備えて空腹を満たそうとする冒険者達で犇めきあっていた。
そんな時間帯に、平服を着た両腰に造りの立派な剣を引っ提げた180センチ近くの剣士とおぼしき少年と、腰に採取用のナイフとアダマンナイト製のガントレットとアダマンナイト製の胸当て、脚甲を装備した190センチ超えの少年と、170センチ前後のミスリル製の完全装備の少女と、170センチ超えのミスリル製の軽装に両手直剣の少女の四人組が、ギルドのスウィングドアを開けて入ってきた。入ってきた四人組に視線が集中して、ヒソヒソと会話が交わされる。

「スクワッドの連中が帰ってきたぞ」
「本当だ。今回は何を討伐して来たんだろう」
「って、言うか。相変わらず美少年と美少女だな」
「おっ、鋼の蛇がちょっかい掛けるみたいだぞ」
「全員で叩きのめされるのに、100ガルド」
「魔剣士に叩きのめされるのに、200ガルド」
「聖騎士に叩きのめされるのに、250ガルド」
「グラップラーに叩きのめされるのに、300ガルド」
「精霊剣士に叩きのめされるのに、1000ガルド」
「「「はぁ!?誰だそんな高額な賭けしたのは?」」」

周りのベテラン冒険者達が、各々好き勝手に無知な冒険者達が今後どうなるかを賭けの対象にするなか賭けの対象になった四人はというといたって普通にしていた。
少しだけ時間を遡って、鋼の蛇と呼ばれた男性六人組に四人組の少年少女が囲まれていた。

「おうおう、良い装備してんじゃねぇか?何処のボンボンか知らねえが良い装備してたからって、冒険者が務まるとは思わね事だな」
「そうそう。だから、その装備と女を置いてとっとママの元に帰んな。ボクちゃんたち」
「嬢ちゃん達には、夜の冒険者のいろはを一からたっぷりねっとり教え込んで遣るからよ」
「「「ギャハハハハ」」」
「野郎、ぶっ飛ばしてやる」
「陸、私が遣る」
「おっ、どうした嬢ちゃん。今から遣って欲しいのかい?積極的で良いね」
「うるさい、ドさんぴん。とっと掛かってこい、三下ども」
「なっ、嘗めやがって。顔が良いからって、下手に出てりゃあ優しくしてやんねえからな。お前らも手ぇ貸せや」
「ハッハ、全員で可愛がった後まわしやんよ」
「泣き叫んだって、手加減してやんねえからな」
「はぁ、御託は良いからとっと掛かってこい。こっちは、疲れてんのよ」
「何だと、手加減してやんねえからな。全員掛かれ」

掛け声と共に、三人が同時に三方から襲い掛かり残り三人が後方から襲い掛かるという二段構えで1陣を抜けても、第2陣で仕留める万全の態勢だと思う作戦を実行した。一瞬で六人全員の意識を刈り取った静谷 美琴はパーティーメンバーの龍崎 誠と松風 陸人と藤倉 実咲の三人に振り返った。

「お疲れ様、みぃ」
「そんなに疲れてないよ、まー君。陸とミサちゃんは依頼の終了をしてきたら?みぃとまー君は、買取カウンターで魔物素材の買取して貰ってくるから」
「おっしゃあ、依頼完了の手続きしようぜ。実咲」
「そうね、ここからは別れた方が良いわね」
「ちょっと待って貰おうか、四人とも」
「はぁ、レイザール。疲れてるから、早く換金して宿で寝たいんですけど」
「相変わらず連れないね、そんな所も良いんだけどね」
「いい加減にして、早く要件を言って」
「すまない、要件なんて分かりきってるだろう。今からでも良いからウチのクラン〈黄金の夜明け〉に入らないかい?」
「はぁ、またそれ。私達は冒険者を生業にするつもりは無いよ」
「金ランクになる程の腕前なんだ。ここに居る間でも良いから、ウチのクランに入ってクランの強化に手を貸してくれ」
「無理だな。陸と実咲の二人の強化に手一杯で他の人物の強化まで手が回せない」
「まー君……」
「マコト君、クランリーダーと副リーダーを譲ると言ってもかい?」
「クランリーダーや副リーダーになったら、クランメンバーの強化だけに専念出来なくなるだろう」
「そこはほれ、前リーダー達が実務をこなしてメンバー強化に専念させるのさ」
「それならリーダーに据える必要性が皆無だろ。それにパーティーメンバーの強化は、スキル 王たる器で陸と実咲のステータスを僕のステータスに上書きしてレベル上げを実行してるから、二人以外レベル上げを実行できないんだよ」
「何、そうなのかい?それじゃあ仕方ないね。大人しく諦めるよ。換金の邪魔したね」
「うん、邪魔」
「みぃ……」
「ハッハッハッ、邪魔者扱いされたのは初めてだよ。じゃあ、またね」

そう言って、二十代前半の金髪碧眼のミスリル製の完全装備の男性がギルドから立ち去って行った。
その後ろ姿を見送りながら、誠と美琴、陸人と実咲は言葉を交わしつつ二手に別れた。

「みぃとまー君は買取カウンターに行ってくるから、陸とミサちゃんは依頼完了の報告に行ってきて」
「オウ!行くぞ、実咲。」
「また後でね、みぃと誠君」
「後でな、陸と実咲」

◆◆◆

買取カウンターでは、左目と右顎に刀傷がある青髪に銀色に輝く瞳の壮年男性が弾け飛びそうなギルド職員の制服を身に纏って誠と美琴の二人を待っていた。

「相変わらず仲が良いな、御二人さん」
「そうかな?それより1週間ぶりだね、リオンさん。調子はどうでしたか?」
「ぼちぼちだな。今日の素材買取は、何だ?」
「コカトリス54羽とバジリスク62匹にカトブレパス118かな」
「魔の森の深層部の魔物じゃねえか」
「みぃとまー君は、魔の森の深層部の魔物じゃないと経験値にならない」
「魔の森の深層部でないと、経験値にならないとなるとレベルは200オーバーなのか?俺が現役の時でもコカトリス1羽やバジリスク1匹で、フルメンバーのパーティーでも悪戦苦闘してたぞ」
「あははは、みぃと僕はLV250オーバーだよ」
「何だと、それじゃあ俺より強いのか」
「リオンさんのレベルは幾つなの?」
「俺のレベルはLV196だぞ。コカトリスの毒袋54個とバジリスクの毒腺62個とカトブレパスの瞳118個、締めて3000,000ガルドだ」
「ヘェ~、随分高値になったね。1個当たりの値段を教えて貰える」
「コカトリスの毒袋が1個8,000ガルド、バジリスクの毒腺が1個5,000ガルド、カトブレパスの瞳が1個20,000ガルドの査定だ。問題有るか?」
「ううん、問題無いよ。その査定額でお願いします」
「分かった。奥から金を取って来るから番号札を持って少しだけ待ってな」
「了解、番号札持って待ってます」

◆◆◆

その頃、陸人と実咲は受付カウンターで肩までの栗毛に菫色の瞳の二十歳前後の美人の受付嬢に話し掛けていた。

「シオンさん、サーベルタイガーの討伐依頼完了したから手続きお願い」
「はい、でしたら討伐部位のサーベルタイガーの牙を10本提出お願いします」
「あいよ、サーベルタイガーの牙10本だな。」

そう返事を返して、肩に掛けた鞄を漁りサーベルタイガーの牙10本を取り出してカウンターに並べた。

「はい、サーベルタイガーの牙10本確認致しました。依頼料200,000ガルドお支払しますね。番号札を持ってお待ち下さい」
「OK、飲み物飲んで待ってます」

◆◆◆

天ケ崎 佑斗と大神 虎太朗、彩羽間 美桜と高宮 咲耶、江上 禀と鈴倉 桜の六人組はグロリアース王国騎士団の精鋭十数名と、迷宮都市グランザに来ていた。迷宮都市グランザには、アトワイト洞窟、ニルヤ遺跡・グランザ迷宮の三つのダンジョンが有り、唯一未踏破じゃないアトワイト洞窟で実践訓練を行なっていた。

「はぁ!」

裂帛の掛け声と共に、グレムリンが魔素に還元されて消えた。佑斗は振り返り左右に声掛けした。

「虎太朗、咲耶。そっちは、どうだ?」
「オッス、此方は片付いたぜ」
「此方も片付いたわよ」
「良い感じだな。82層まで来たから、後18層だろう。余裕余裕」
「はぁ、そんな風に余裕かませていると痛い目見るよ」
「はん、何が来ようとも蹴散らして遣るぜ。咲耶」
「虎太朗君、油断大敵だよ」
「虎太朗っち、ただでさえ考え無しなんだから気を付けた方が良いよ」
「そうそう、禀ちゃんの言う通りだよ」
「なっ、考え無しってそんな風に思ってたのかよ。咲耶、美桜、佑斗、俺考え無しじゃないよな」
「無鉄砲よね、虎太朗って」
「あははは、ノーコメントで」
「虎太朗の良い所だろ、愚直な所って」
「オーマイガー、親友にすら考え無しだと思われてた」
「ドンマイ、虎太朗っち」
「皆、元気だな」

騒ぎながら、アトワイト洞窟の深層へと踏み入って行く勇者パーティーだった。



[43878] 拠点強襲
Name: ジン◆14344c24 ID:149ce259
Date: 2023/09/01 09:07
グロリアース王国の第一野外訓練場に、勇者パーティーの静谷 美琴、龍崎 誠、松風 陸人、藤倉 実咲、天ケ崎 佑斗、大神 虎太朗、彩羽間 美桜、高宮 咲耶がセラフィーナ・グロリアースと並んで立っていた。待機組の十数人はひとかたまりになって、勇者パーティーと相対していた。

「皆さん、実戦訓練に出ていた勇者達がかえってきました。美琴がLv327、誠がLv316、陸人がLv198、実咲がLv196、佑斗さんがLv100、虎太朗さんがLv99、美桜さんがLv96、咲耶さんがLv98になりました」

そんなセラフィーナの言葉に、周囲に居る生徒達はざわめき立っている。

「レベルって、100までじゃないんだ」
「300代と190代って、どんだけ鍛えたんだ」



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