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[3997] 【ネタ】冒険の書【半オリジナル/ドラクエ世界観】
Name: あるふぁ◆57098d03 ID:c3869249
Date: 2010/05/24 11:23
——朝起きると、見知らぬ本が枕元にあった。

すまん、何を言ってるか分からんかもしれんがこれが事実なんだ。
寝ぼけてるわけでもない。
昨日寝る前の記憶がないわけでもない。
普通に寝たはず。

そもそも俺はそんなに本が好きなわけでもない。
家にこもって本を読むくらいなら外に出て遊んでいた方がマシだ。
だからこんな重厚な、みるからに難しそうな本など持っているはずがない。

表紙には「冒険の書」と書いてある。
一応、中身を見てみる。

「なんだこりゃ…」

完全な白紙。
ページ数にして1000を超えるだろうそれの中身は全て白紙であった。
そこで彼は思い出す。

そういえば先日、城から布告があったな。
確かなんかの本に100万Gの懸賞がかけられたんだった。
それって…もしかしてこれじゃね?
もしそうなら一気に金持ちじゃん!

寝起きの冴えない頭が一気に覚醒する。

とにかくまずは確認だ!
俺はベッドから下り、両親の待つ居間へと向かう為、階段を駆け下りていった。










ーー冒険の書ーー
   第零頁
  「勇者」
ーーーーーーーー










いや〜散々だった!
いきなり親父には「どこから盗んできたっ!」て殴られるしお袋には泣かれるし。
どれだけ俺って信用ねぇんだよ。
とりあえず事情を説明したけど、ありゃまだ納得してねぇな。

でもやっぱり懸賞のかけられた本はこれっぽいし、とりあえず城に行く事になった。
おいこら親父、自首しにいく人間を見送るような目で見るんじゃねぇ。
俺は潔白だ!
なんかこの分だと、城でも同じ扱い受けるんじゃ…

最悪投獄されるのでは?という恐怖がよぎる。
だが、俺はまだぎりぎり未成年。
ちゃんと話せば大丈夫だと思うし、もし冤罪なすりつけられても軽い罰で済むだろう。
何より、一般庶民家庭育ちの俺には、100万Gは眩し過ぎる。
賭けに出るには充分な報酬だと思ったんだ。

——今から思えば、そんな浅ましい気持ちが全ての始まりだったんだよなぁ。





















王城について、衛兵に用件を伝えると、学者のような人が現れて本を持っていった。
待ち合い室で待つように言われ、出されたお茶をまったり飲んでいると、数人の衛兵が現れた。
彼ら曰く、

「王がお待ちです」

へ?そんな重大なこと??
もしかしてやっぱり、あの本、本物だったんじゃ!?
100万Gゲットなのか!?

逸る気持ちを抑えつつ、衛兵についていく。






通された部屋は、どうやら本当に謁見の間だ。
俺みたいな庶民がここに入れるのは、年に1度の城内開放の時くらいだ。
その時はもちろん王や妃がいたりはしない。
単なる施設見学のようなものだから。

でも、今日は違う。

これでもかというくらい立派な椅子には王様が座っているし、となりにはお妃もいる。
王様の隣には大臣が立っているし、そこまで続く赤い絨毯の脇には、親衛隊がずらっと並んでいる。

気圧されながらも前に進み、跪く。
そして王様の言葉を待つ。
俺みたいな庶民が、王様に話しかける事など許されないからだ。

「面をあげよ」

言われて、顔を上げる。
もちろん王様の視線に合わすような無礼はしない。
王様の胸あたりに視線を移す。

「名前を名乗りなさい」
「ロト家のアルスと申します」

王様はやっぱりすごいオーラがあるけど、なんか口調が優しい。
この口調でいきなり

「泥棒め、ひっとらえろ!」

なんて展開はないだろう。
ひとまず安心だ。

「ロトよ。そなたの持ってきた冒険の書。本物の可能性がある」

やっぱり!100万Gが現実になってきたぞ。

「それを調べる為に、一つ試して欲しいことがあるのじゃ」
「はい。」

なんだろう?
そもそもそれは俺がやることなのか?

そう思っていると、先程本を持っていった学者が歩いてくる。
そして、本と筆を渡される。
ん?どういうこと?

「その本の最初の頁に、こう書きなさい。『三の月、一の日 これから勇者の試練を受ける』と」
「わかりました。」

なんだかよく分からないが、言われた通りに書く。
あまり字はきれいな方ではないので、そこまで注目されると少し恥ずかしい。
普段、教会で勉強する時とは比べ物にならないほど丁寧に筆を走らせる。

「書けました。」
「——よし。ロトのアルスよ。100万Gは間違いなく渡そう」
「あ…ありがとうございます!本物だったんですね!?」

これはなんて幸運!
夢じゃないかと頬をつねりたくなる。
王様の手前、そんなことはしないけど。

「いや…本物かどうかはこれから分かる事。だが、例え偽者であったとしても…ロト家には確かに支払う。許せよ…」
「…え?」

どういう事だろうか。
だが、俺はそれ以上思考を続けることが出来なかった。


——いつの間にか俺の背後にいた衛兵に、首を、はねられていたのだから。





















——頭を苛む鈍痛、曖昧な自我、薄れる記憶。
今まで体験した事のないような悪寒を感じて、俺は倒れそうになる身体を押しとどめた。

視界が真っ暗だ。
あれ、いつの間に目を瞑っていたのだろう。
王様の前なのに無礼をしてしまっている。

すぐに目を開ける。

「…どうした?もう一度言おう。その本の最初の頁に、こう書きなさい。『三の月、一の日 これから勇者の試練を受ける』と」

あ、そうだったそうだった。
なんでぼーっとしていたんだろう。
すぐに書かないと。100万Gのチャンスなんだから!

そして本の1頁目に目を移す。
だがそこで俺は驚愕した。
朝見たとき、確かに本は全て白紙だったはず。

なのに1頁目に先程の王様の言葉の通り、
『三の月、一の日 これから勇者の試練を受ける』
と書いてあったのだから。

先程本を預かった時に誰かが書いたのだろうか?
よく分からないが…王様に聞いてみよう。

「あの…僕が書く前に、既にそう書かれているのですが」
「なんと!!」

そう言うと、王様が大仰に驚く。
周りの大臣達もざわめく。
どういうことなのだろう。

「…確かに、この書は本物じゃ」
「本当ですか!?」

100万Gだ!!

「うむ。100万G、確かに払おう。…ところで、その書に書かれている文字、その筆跡に心当たりはないかね?」
「筆跡、ですか…?」

言われてよく見てみる。
確かに見慣れた筆跡だ。
というか俺の筆跡にすごく似ている。
普段よりも丁寧に書いた感じだ。

「あ…僕の筆跡に似ていますが…で、でも!僕は間違いなく書いていません!!」

隠れて書いた、と思われているのだろうか。
本物を確かめる作業で不正を働いた、と思われてはたまらない。
100万Gがパーになる可能性がある。
俺は必死に否定した。
そんな俺に、王様は落ち着いて言う。

「それは分かっておる。そうではないんじゃ、勇者ロトよ」

え、勇者…?









この世界には、人類の絶対的な敵対者である魔王が存在する。
莫大な魔力を持ち、高い知能を駆使し、多くの魔物を従える、強大な存在だ。
その魔王と比べれば、人間の力はあまりに小さい。
にも関わらず、これまで何度となく、人類は魔王を退けてきた。
ある時は剣でその首を刎ね、ある時は魔法で焼き付くし、ある時は秘術で封印をした。
そのようなことを可能にしているのは何か。

人類を守る絶対の守護神。
それが勇者。

誰が始まりの勇者なのか。
どのようにして勇者は生まれたのか。
そういったことは一切分かっていない。

人類を愛する神によって作られた。
魔王を驚異と見た精霊によって作られた。
太古の人間自身が作り上げた。

色々な説があるが、そのどれもに証拠がなく、勇者の起源は全く判明していない。
分かっているのは、人類の危機に勇者が現れること。
そして勇者となるものの条件。

それが、冒険の書の所持である。



「つまり、僕が勇者、だということですか…?」
「そうじゃ。その書の裏表紙を見てみると良い。」

言われて、頁をめくる。
そこには、朝見た時には書かれていなかった文字があった。






一、勇者はこの冒険の書により、「セーブ」と「ロード」を行うことができる
一、「セーブ」はその時点での世界の状況を記録・保存する。
一、「ロード」は記録した時点に世界の状況を巻き戻す。
一、一度「セーブ」するとそれ以前の記録から「ロード」することはできない。
一、勇者が死亡すると自動的に「ロード」が発動する
一、勇者は自らの意思によってその資格を放棄することができる。




「これは…どういうことでしょうか…?」

混乱したまま王様に尋ねる。
すると王様は語りだした。

勇者のことを。





これまで、歴史の中には幾人かの勇者がいた。
彼らはそのいずれもが、強大な力を持った魔王を打ち倒すことに成功している。
しかし、それは、莫大な勇者本人の死によってもたらされているのだ。
簡単なことだ。失敗すれば「ロード」、死亡しても「ロード」その繰り返し。
莫大な試行を経て、目標は達成される。
「ロード」すれば人々の記憶も巻き戻る。そのため、失敗の記録は残らず、魔王を打ち倒したという輝かしい結果のみが残る。

しかしここには、一つの問題がある。
「ロード」を行うと、周囲の人々はもちろん、勇者本人の記憶も「セーブ」した時点に巻き戻ってしまうのだ。
勇者に残るのは、「ロード」が行われたという実感のみ。
自分がどのような失敗をしたのか、どのようにして死亡したのかが分からない。

そのため、勇者には言い伝えられている一つの手段がある。
それが「冒険の書」への旅の記録であった。

勇者達は、セーブを行う前に必ずそこまでの旅の記録を書に書く。
そして、これからの予定もそこに書き記す。
こうしておくと、もしロードを行っても、それが何度目のロードなのか、またどのような行動をして失敗をしてしまったのかということが分かる。
ロードした際には、書を見て、追記し、セーブする。そして予定していた行動を少し変えて行動する。
これを繰り返すことで、望む結果を得る。
それが勇者である。



「勇者の試練とは、わしの目の前で『セーブ』させた後、その者を殺す。もしその者が勇者であり、冒険の書が本物であるならば自動的に書に記録した時点に『ロード』されるはず、というものじゃ。この後そちの後ろにいる衛兵に首をはねさせるつもりじゃった」
「!!」

言われて振り返る。
帯剣した衛兵が背後で待機していた。
全く気付かなかった…

「つまりそちは、『セーブ』した後、その衛兵に首をはねられ、この時点に『ロード』したということじゃ。セーブした後の記憶はそちにも、わしらにも残らないため実感はないじゃろうが」


つまりは、俺は、勇者、だということなのか…?





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとがき

以前「勇者システム」という名前で投降したものを改訂。
しばらく連載してみます。



[3997] 一頁目 「旅立ち」
Name: あるふぁ◆57098d03 ID:ad17056c
Date: 2010/05/28 18:36
とりあえずあの後俺は勇者と認められ、旅立つことになった。
まさかの急展開。

だが俺は普通の人間だ。
将来兵士になろうと思って身体を鍛えたりなどしているはずがない。
…ということで王様と相談して、しばらくはこの街周辺で経験を積んでから旅立つ事になった。
そのうちに冒険の書の使い方も慣れてくるだろう、ということ。

あ、100万Gはもらえたよ!
100万Gは勇者として旅立つ手当みたいなもんだが、この小さな国で大金を使っても整えられる装備などたかが知れている。
だからこの金は俺自身というよりは家族のためのものらしい。
ぶっちゃけていえば、

「この金やるからそのかわりお前の家の息子を勇者として差し出せ」

という感じだ。
無茶苦茶だな。

まぁ俺も勇者扱いされて悪い気はしない。
しかも、いくら死んでもやり直しがきくなら、必要以上に怖がる必要もないし。
若干軽い気持ちで引き受けた。
お金に目が眩んだわけじゃないんだからね!

とりあえず衛兵と一緒に家に向かう。
帰宅した俺を見た親父は、付き従う衛兵を見て当然のごとく勘違いした。
…だから俺は盗んでねぇって言ってるだろ。










ーー冒険の書ーー
   一頁目
  「旅立ち」
ーーーーーーーー










あの後は衛兵が事情を説明してくれた。
親父は最初は信じてくれなかったけど、最後には
「さすがは俺の自慢の息子だ」
的なことを言って納得した。
おい、さっきまで泥棒扱いしてたのはどこのどいつだよ。
お袋はまた泣いてた。
でも俺は見たんだ。
100万Gをみた瞬間、お袋の涙が止まるのを。
…俺の扱いひどくね?

まぁ、いろいろ相談した結果、とりあえずお金は家に置いておく事になった。
どのみちしばらくは家で寝泊まりするし、大金を持ち歩くなんて物騒な真似は避けたい。

近所の店で装備を整えてから、試しに街の外に出る事にした。
街の外はモンスターが跋扈している。
これまで一人で外に出た事なんてなかったから、少し緊張する。
おっと、とりあえず外に出る前に「セーブ」しておこうか。

『3月1日、これから街の外に出る』

よし。
それじゃあいざ出発!


街の外を散策していると、モンスターが飛び出してきた。
スライムだ!
愛くるしい顔をしているが、こいつも立派なモンスター。
モンスターの中ではもっとも弱いと言われているが、それでも度々幼い子供が殺されたりしている。
初心者勇者の俺には油断できない相手だ。

…と思っていたんだが。
さきほど買った銅の剣で数回斬りつけると、スライムを倒すことが出来た。
体当たりを1回食らっただけ、痛みは少しあるがどうってことはない。
あれ?案外簡単に行けるんじゃね?

そう思い、調子に乗ったのがまずかった。
スライムを次々と倒して、悠々と散策していると。
スライムの大群に囲まれた。

一匹一匹の脅威は低くても、これだけ集られるとたまらない。
結果。
俺はフルボッコにされる。

痛い…頭がくらくらしてきた。
ボキッと嫌な音がする。

「がっ…」

くそ…肋骨が折れた…のか?
痛みはもちろん、息苦しさもある。
喉にこみ上げてきたものを吐くと、それは血だった。
肺に肋骨が刺さったのだろうか?
とにかく痛い。痛い痛い痛い痛い痛い!!!

そして俺が最後に見たのは。
嗤いながら俺の顔面に体当たりをしてくるスライムの姿だった。





















「…あれ?」

目眩のようなものを感じて、俺は少しふらついた。
どこかで味わったような感覚。
そう、これは…『ロード』の感覚だ。

慌てて冒険の書を見る。
そこには

『3月1日、これから街の外に出る』

と書いてあった。
つまり俺は…街の外で死んだのか?
どうして死んだのだろう。
この装備なら、俺でもスライム如きには負けないだろう、と道具屋の店主も認めてくれたんだが。
スライム以外の強いモンスターにでも出会ってしまったんだろうか?
くそ
何もわからねぇ!

とりあえずもう一回出てみよう。
おっと、『セーブ』しておかないとな。
さっきよりももう少し詳しく書いておこう。

『3月1日、これから街の外に出る。スライムを倒す事が目標。スラム以外のモンスターが出てきたら絶対逃げる』





















「…あれ?」
また死んだのか?
俺は自室で呆然としていた。

俺はスライムに勝てないくらい弱いという事なのだろうか?
それとも途中で何かアクシデントがあったのか?
くそ!全然わからねぇ!!
ならとりあえずスライムに勝てるかどうかだけ確かめよう。

『3月1日、これから街の外に出る。スライムを1匹倒す事が目標。スライム一匹倒したらセーブしに戻る。スライム以外のモンスターが出てきたら絶対逃げる。』






よし!
スライムを倒した。
なんだよ、スライムには楽勝じゃねぇか。
ならこの後強いモンスターとかが出てきて死んだって事かな?

とりあえずすぐに家に戻ってセーブしよう。

『3月1日、スライムを1匹倒して帰宅。これからもう一度出発。次はスライムを2匹倒したら帰宅する予定。』

よし、出発だ!






…そんなことを繰り返していると既に夕方になっていた。
レベルが上がって2になった。
かなりスライムを倒すのが楽になってきた。
よし、今日は次で最後にしよう。
夜は強いモンスターが出やすいし。


『3月1日、今日最後の散策。スライム5匹くらい倒したら帰宅』




















「あれ、また死んだ…のか?」

この街周辺にいったいどんな脅威があるって言うんだ。
もう今日は外に出るのやめようかな。
でも何回も死んでるみたいだから気になるんだよな。

そうだ!城の兵士の人に着いてきてもらおう。
それくらいなら手伝ってくれるよね?


事情を話すと、王様は快く兵士を貸してくれた。
腕利きの兵士らしい彼と一緒に街の外を出た。
そしてしばらくすると、スライムの大群に囲まれていた。

あ、つまり俺はこいつらに殺されたのか。
確かにこれだけの数に囲まれれば逃げる事も出来ない。
俺のレベルではこいつら全部を倒す前にやられてしまうだろう。

今回は兵士の人がいるので楽勝だ。
スライムの群れを撃退して街に戻る。
兵士の人にお礼を言って別れ、帰宅する。



なんとなくこの冒険の書の使い方がわかってきた。
あらゆる可能性を想像して対応策を考えてあらかじめ書き残しておかないといけないわけだ。
なんか勇者なのに、武よりも知が要求されるなぁ。
教会の勉強よりよほど難しい。

それにしても…
今回は、まだいい。
兵士の人の力を借りる事で突破できたのだから。

だが、例えば…セーブした直後に強盗が入ってきて殺されたとしたら…
セーブした時点に戻っても何も出来ないんじゃね?
そうしたら俺は延々と殺されるハメになるんじゃ…
その可能性を思い浮かべてぞっとする。
セーブとロードの間に捕われ…永遠と死ぬ事を繰り返すのか?
そんな詰んだ状態になったら最悪だ。

とりあえず、セーブする時はもっと慎重にしよう。
周囲の安全を確実に確認してからセーブするようにしないと…



勇者になって初日。
想像以上の前途の多難さに、俺は頭を抱えた。








[3997] 二頁目 「盗賊団」
Name: あるふぁ◆57098d03 ID:ad17056c
Date: 2010/05/28 18:42
勇者になってから10日ほど。
あれから2レベルくらい上がって、スライムが一撃で倒せるようになった。
そうなるとスライムの群れに囲まれてもピンチに陥る事はないし、ドラキーとか別のモンスターが出てきても対処できるようになってきた。
1日目はあれだけセーブとロードを繰り返したけど、それ以来はロードしなくて済んでいる。
セーブは一応毎日寝る前にしているけどね。
こうなるとセーブもただの日記みたいなもんだ。

そんなある日。
俺は王様に呼び出された。

「どうだ、もうそろそろ戦闘には慣れてきたか?」
「はい、この周辺のモンスターに遅れをとる事はありません」
「ではそろそろ旅立つ頃合いだろう。この国は幸い、魔王軍の攻勢は甘いが、魔王城のある東の地へ近い国ほど、甚大な被害が出ている。皆勇者の存在を待っている事だろう。東の国への行程で腕を上げながら魔王城へと向かうが良い。」
「わかりました」
「旅立つにつれ、信頼のおける仲間も出来てくるだろう。…あと、これが私の最後の助力じゃ。…ポーン、前に」

すると一人の兵士が出てくる。
あ、この前一緒にスライム退治してくれた衛兵さんじゃないか。

「信頼できる者に、お主の度に同行させようと思っていたのだが、この者が立候補してな。若いが、親衛隊の者で信頼がおける。この者を魔王討伐の旅に連れて行くが良い。」
「勇者様、ポーンと申します。よろしくお願いします。」
「いえ、こちらこそ!」

年長者に敬語を使われるのには慣れないなぁ。
でも、勇者が頼りないと思われるのも問題だし、これから慣れていかないと。

「それでは勇者アルスよ、この世界を頼んだぞ」
「…御意」












ーー冒険の書ーー
   二頁目
  「盗賊団」
ーーーーーーーー












そして俺は、生まれ育ったこの国から旅立つ事になった。
親父は無言で俺の肩を叩き、お袋は泣きながら俺を抱きしめた。
いつでも帰って来て良い、その言葉に涙しそうになったけど。
俺は笑って両親と別れた。

まだ二人パーティーでそう荷物はないし、隣の国は陸続きなので徒歩で旅立つ。
何度かの戦闘や野宿をこなしていくうちに、ポーンさんとも親交が深まる。
前に助けてもらった時もそう思ったけど、この人めっちゃ良い人だなぁ。
頼りになるお兄さん、といったところか。
戦闘に関してもまだ俺より全然強い。
街を離れて森に入ると、これまでより強いモンスターも出てきたけど、ポーンさんは余裕をもって対処してくれる。
俺に剣の手ほどきもしてくれ、師匠と呼びたくなるほどだ。

そして旅立って一週間後。
俺たちは隣の国の都に到着した。
まずは王様に面会して、しばらくはこの国に滞在する事を告げる。
冒険の書を見せるとすぐに勇者と認め、宴まで開いて歓迎してくれた。
夜通し美味い酒と飯を振る舞ってもらい、これも勇者の役得かと思っていたが、やはりただより高いものはない。

大臣に、一つの頼まれ事を受けたのだった。
それは盗賊団の退治。
最近のこの国の脅威は、モンスターよりも同じ人間、盗賊達であるという事だ。
盗賊団のアジトは南の洞窟にあると判明している。
だが、その洞窟の構造が問題で、坑道が狭く軍隊を派遣する事ができないということだった。
洞窟の入り口を包囲したところでいくつも抜け道があるらしく、夜襲を受けたり包囲しながら他の街を襲われたりしているのだという。
そのため、少数精鋭でパーティーを組んで討伐しようとしたところで、俺たちが来た。
実に都合が良いタイミングだと思われたのだろう。
宴の恩もあるため断りにくい。
そもそも勇者がこういった頼みを断ると印象が悪い。
俺はまだまだ弱いし、色んな人の協力が必要になるだろうから、評判を落とすのはまずい。
ポーンさんとも相談して、俺たちは盗賊討伐を引き受ける事にした。

もちろん、二人だけでは流石に難しいので、協力者を捜す事にした。
が、どうやらこの国の兵士は質が低いらしい。
まぁ盗賊団を自分たちでどうにもできないのだから予想できてたけど。

その代わりに傭兵業が盛んらしく、そちらの方があてになる。
大臣にも傭兵を雇う事を薦められた。
もちろん雇用資金も国持ち、ということで俺たちは傭兵を捜す事にした。
傭兵の集る酒場を教えてもらい、そこへ向かう。

酒場のマスターに事情を探し、腕利きの傭兵を紹介してもらう。
勇者のパーティーとなれば名が売れる、そうと思っているのか立候補する傭兵はたくさんいた。
その中から俺とポーンさんで面接をしていって、最終的に二人の傭兵を雇うことになった。

一人目は、戦士のソルさん。
筋骨隆々、いかにも頼りになりそうな大男である。
年齢はポーンさんより少し上。
戦士としては最盛期の年齢だ。
気さくな性格もあって、俺とポーンさんの意見が一致して雇う事になった。
「よろしくな、ガハハ」といかにも外見通りの豪快な笑い方で加わってくれた。

そしてもう一人は僧侶のホリーさん。
こちらは近距離戦闘を主体としたこのパーティーには、補助を任せられる僧侶が絶対必要、とポーンさんが薦めてくれた。
歳はかなり年配で、その辺りが俺にはちょっと心配だったが、若い連中ばかりのこのパーティーでは、その経験と知識も大きな力になってくれそうだった。
「ホリーじいさんと呼んでくれ」そう言われたとき、既に祖父母が亡くなっている俺にはなんとなくおじいちゃんが出来たみたいでちょっと嬉しい。

そして4人で打ち合わせをしようと宿に向かう途中に、可愛い女の子に声をかけられた。
「勇者様を捜していた」
「ぜひ私を仲間にして欲しい」
「魔王を倒すためにこれまで修行して来た」
その熱意と、このパーティーにはいない魔法使いだったということもあって採用。
…男所帯で、可愛い女の子の存在が嬉しかった、という理由もあったけど。

結局、勇者の俺、兵士のポーンさん、傭兵戦士のソルさん、僧侶のホリーじいさん、魔法使いのマジック。
この5人で盗賊団のアジトに向かう事になったんだ。




「さて、これから盗賊団のアジトに向かうわけだけど。何か策はある?」

そう俺が言うと、まずはホリーじいさんに皆の視線が集る。

「ふむ。盗賊団のリーダーはシータという元傭兵じゃ。これが中々人望があっての。荒くれ者達をうまくまとめておる。こやつを捕らえられれば後は大した脅威にもなるまい。」
「おう、俺も奴を知っているが、戦士としての力量もかなりのもんだからな。あいつさえなんとかすれば良いだろうな」

ソルさんがそう続ける。
シータ、かぁ。
でもそれならなんでこれまで捕らえられなかったんだろ。

「なかなか表に出てこないって事もあるし、かなり腕が立つからな。国の兵士や普通の傭兵じゃとてもかなわないんだよ」
「そんなに戦士として腕が立つなら、魔法で遠くから攻撃すればいいんじゃない?」

マジックが言う。
それに対し、ホーリーじいさんが首を振る。

「奴らのアジトは洞窟じゃからの。あまり威力のある魔法を使ってしまうと崩落の危険もある。…かといって、弱い威力の魔法では牽制程度にしかならんからのお」
「う〜ん、そうなると難しいわね。」

そこでポーンさんが発言する。

「…となると、結局は接近戦で打倒するしかないと。」
「うむ。…まぁいくら洞窟が狭いと言っても、5人で戦闘するくらいはできるじゃろう。わしとお嬢ちゃんで補助しながら、お主ら3人がかりでシータを倒す、というまぁ普通の作戦じゃな」

これだけ戦い方が限定される場所なら正攻法以外はあるまい、とホーリーじいさんが言う。

「まぁとにかく俺たちで倒せばいいわけだろ?任せとけって!」

自信満々にソルさんが言う。
本当に頼もしい。
…というかここまで俺が一言も発してねぇ、いいのかこれで。

「それでは今日はもう遅いですし、明日の7時にこの宿集合ということで、いかがでしょうか、勇者様」
「う、うん。それでいこう」

その後、解散となり、この街に家のあるソルさんとホーリーじいさんは帰っていった。
マジックは宿屋暮らしということなので、一緒の宿に泊まる事になった。
…もちろん部屋は別だけどさ。

それでも寝る時間までは、ポーンさんと3人で親交を深める。
俺が冒険の書のことをマジックに説明しながら書き込んでいると、「流石は勇者様、凄い力ですね」と言われちょっと嬉しい。
ぶっちゃけこのパーティーの中で一番戦闘力が低いのは俺だからな、やれることはこれくらいだろう。

まぁ、このパーティーならこの記録をロードする事にはならないだろうけど。







…そう気楽に構えていた俺が間違っていたということは、その後数十回にも及ぶロードによって否定される事になるのだけど。







[3997] 三頁目 「最初の壁」
Name: あるふぁ◆bd038eca ID:67abdcc9
Date: 2010/07/16 03:13
三の月、二十日、朝
これから盗賊団のアジトへ向かう。
目標は首魁のシータの撃破

三の月、二十日、朝
これから盗賊団のアジトへ向かう。(2回目)
とりあえず様子見、アジトで一度戦闘した後、帰還する。

三の月、二十日、夜
アジトから帰還。
特に待ち伏せなどの様子はなかった。
戦闘した盗賊のレベルも、このパーティーなら問題ないくらいの強さだった。
ただ、罠も散見されたので、そこには注意したい。

三の月、二十一日、朝
再び盗賊団のアジトへ。(3回目)
罠に気をつけながら進む。
半日ほどで首魁が見つからなければ帰還する。

三の月、二十一日、朝
盗賊団のアジトへ。(4回目)
首魁と戦闘になってやられたか、罠にやられたか。
どちらにしろ半日経つまでには死んでいると思われる。
首魁を見つけた瞬間に帰還する。

三の月、二十一日、朝
盗賊団のアジトへ。(5回目)
帰還できなかったことから、おそらく首魁の下にたどり着くまでに死んでいると思われる。
罠の危険性が高いので、罠対策としてトレジャーハンターのマネさんを雇ってから向かう。

三の月、二十一日、朝
盗賊団のアジトへ。(6回目)
前回死んでいるので、罠ではないのかもしれない。
とりあえずマネさんは役に立たなかったようなので、今回は雇わずに行く。
どのタイミングで死んでいるか判断するためにも、今回は6時間で帰還する。

三の月、二十一日、夜
アジトより帰還。
6時間の探索では特に問題なし。
盗賊は20人ほど討伐、致命的な罠もなし。
かなり深部まで進めた。
やはり首魁との戦闘で死んでいるんだろうか?
全員の装備を見直し、現時点で最高のものを整えよう。
薬草などのアイテムも買い込んでから向かうつもり。

三の月、二十二日、朝
盗賊団のアジトへ(7回目)
ソルさんやホリーじいさんに聞いても、シータはやり手とはいえこのパーティーが全滅するような相手ではないと言う。
なら最深部には何があるのだろう?
今回はそれが確認でき次第帰還する。









「うわ、もう20回目かよ」

冒険の書に書き連ねられた文を見て思わず呻く。
楽勝だと思ってたんだけど、ここまで梃子摺るとは。
とりあえず20回の挑戦からわかったことは、とにかくかなりの深部で命を落としているということだ。
装備を整えようが、薬草を大量に持ち込もうが駄目なようだから、やっぱり罠か何かあるのかな?
でもマネさんって人連れて行っても駄目だったみたいだし。

うーん、やっぱり小刻みにセーブするしか手はないんじゃないかなぁ?
でもポーンさんは反対なんでしょ?
え?それで選択肢が狭まって詰んだらどうするんですかって?
うん、それが恐いよね。
でも今の時点でも既に詰んでるようなものじゃん。
打てる手はほとんどすべて売ってるように思えるよ?
え?まだ考えられることがあるって?
そっか、さすがポーンさん!
頼りになるなぁ。
俺はもう何も思いつかないよ。
…なんか、言いにくそうにしてるね。
何?
え??

「裏切り者がいるかもしれない、だって?」






ーー冒険の書ーー
   三頁目
 「最初の壁」
ーーーーーーーー







でもさあ!あれだけしっかり面接したし、裏切り者がいるなんて考えられないよ!
怪しげな人は全部ポーンさんが却下したじゃん。
え?一人、ポーンさんが怪しいと思った人物がパーティーにいるって?
…マジックちゃんのこと?
パーティーに加わるタイミングも良すぎた、か…
でもさ、あんな可愛い子が、まさか裏切りなんて!
容姿は関係ないって?
まぁその通りだけど…

じゃあポーンさんはどうしたら良いと思う?
マジックちゃん外してアジトへ向かってみる?
それは駄目?なんで??
あ、そっか。
マジックちゃんは冒険の書のことも知ってるもんね。
パーティーから外しても違うタイミングで仕掛けてくるかもしれないもんね。
あぁ、失敗したなぁ、人前でセーブするのはやめるようにしないと。

でも、ポーンさん、それならどうしたら良い?
え、アジトまで連れて行って、裏切った瞬間に殺すって?
大丈夫なの?裏切られたときには絶体絶命のピンチなんじゃ…
備えておけば大丈夫?
そうだね、マジックちゃんはそんなにレベル高くないもんなぁ。
でも俺だとかなわなそうだし、ソルさんやホリーじいさんに話すわけにもいかないから、ポーンさんにその役目お願いできる?

…うん、ありがとう。
でも、俺はまだマジックちゃんが裏切り者だとは思えないんだ。
もし今回失敗したら、他の人が裏切ってる可能性もあるってことにしても良い?
うん、今回失敗したら。
でも、誰にしろ、せっかくできた仲間を疑うって、つらいなぁ。


『三の月、二十三日、朝
 盗賊団のアジトへ(20回目)
 マジックちゃんに裏切りの疑い。
 彼女の動向に注意しながら先へ向かう。』






















アジトへ入る。
毎日ここに侵入しているから、当然日に日に警戒されているのを感じる。
罠も増えているし、盗賊が集団で行動していることが多くなった。
でもそれでもピンチにはならない。
罠も大したものはないし、盗賊もレベルが低いからいくら群れていてもこのパーティーの相手にならない。
大勢が戦闘することができない、という地形のせいもあるけど。

順調に進んでいく。
かなり深いところまで来た。
ここまでは昨日も来れてるから、ここから先は俺の記憶にはない。
この先でいつも死んでいるんだ。
注意しないとな。
…マジックちゃんに。



そして最深部と思われる場所。
そこには数名の盗賊がいた。
その中に一人雰囲気の違う男がいる。
ソルさんがシータ!と名を呼ぶ。
どうやらあの男が首魁のようだ。

…ここまで、マジックちゃんはまったく裏切りの素振りを見せていない。
まぁ、これはポーンさんの予想通りだ。
皆の意識が完全に敵に注がれる、首魁との戦闘で裏切るのでは、ということだった。
まぁ確かに、俺たち前衛三人がシータを相手しているときに後ろから魔法をとなえられたら、そりゃ成す術がないよな。
今回は戦闘中もポーンさんが前衛と後衛の中間に立って背後に気を配ってくれるそうだから大丈夫だろう。
とにかく今は、前の首魁だ。

「お前が盗賊団の首魁のシータか?」
「そうだ。よくも仲間たちを殺してくれたな。…それにしても、こんなガキだとは…」
「ガキで悪かったな!でもそのガキに倒されるのはお前らなんだからな!…行くぞ、みんな!」
「「「「おう!!」」」」

俺とソルさんで斬りかかる。
シータは俺の剣を避け、ソルさんの剣を受ける。
…あっさりかわされるな、やっぱり俺よりは相当レベルが上みたいだ。
でもソルさんとの鍔迫り合いには押されている。
ソルさんの力のほうが上みたいだ。
…と、ソルさんの剣がはじかれた!
力では上回っていても、技量はソルさんよりも上、か。
俺じゃ敵わないな。
でも、ポーンさんとホリーじいさんの援護があれば倒せる相手だろう。
俺は周りの雑魚を倒すとするか。
…後ろに注意しながら。





戦闘が始まってから数分がたった。
俺は二人の盗賊を倒した。
雑魚はあと一人。
…マジックちゃんは、ちゃんと援護してくれている。
裏切る素振りはない。
本当に、彼女が裏切り者なのだろうか?
違うんじゃないか。
ただこれまでは運悪くこの戦闘に負けてただけなんじゃ?
例えば俺が雑魚相手に徹さずに無謀にもシータに挑んだりしてたとか。

最後の雑魚をなんとか倒したところで、シータは形勢が不利だと思ったのだろう。
ソルさんを蹴り飛ばすと、急に走り出す。
逃げようとしているのだろうが、そっちにはポーンさんがいる!
ポーンさんが今度はシータと鍔迫り合い。
シータは俺のことは眼中にないのだろう、完全に背を向けている。
この機会を逃がしたら駄目だ!
俺はシータに背後から斬りかかる。
もらった!!




あれ?
俺はなんで倒れているのだろう。
勇者様!って必死にポーンさんが叫んでる。
うぅ、背中が焼け付くように熱い。
これは…背中を、袈裟斬りに、されたのか?
…でも、雑魚はみんな倒したはず。
マジックちゃんも、俺の、視線の先に、いる。
じゃあ背後には誰が?

くく…と笑い声が聞こえる。
ざまぁねぇな、勇者様、って、その声は、ソルさん…?
クソ、ソルさんが、裏切り者だったのか!

俺の目の前で、二人がかりでポーンさんが攻められ、斬られる。
ホリーじいさんも、マジックちゃんも。
暗くなっていく視界の中、血だまりに倒れるマジックちゃんの姿が映る。

ごめんな、マジックちゃん、疑ったりして。
やっぱり、君は、裏切り者なんかじゃあ、なかった。

…裏切り者は、ソル。

てめぇだけは、絶対に、許さねぇ…!

ここで俺が死んで、ロードされれば、この記憶は消える。
真実に気づくまでに、あと何回もの試行が必要かもしれない…!
それでも…それでも!この報いは!必ず受けさせてやる!!

憶えていやがれ…!









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