ガストラ帝国首都ベクタ。
今日もとても平和な一日だった。
「おい、そこで何でオレに絡むんだ!」
俺は短い休暇の最後となるこの日を、旧交を温めるという有意義な時間で締めくくることに決めたのだ。
「オレの休暇は今日だけなんだぞ。何が悲しくてお前なんかと酒を飲まなきゃならないんだよ!」
いいじゃねえかよ。仲良くやろうぜ。
「冗談じゃない。ケフカの犬となんか誰が仲良くできるってんだ」
「うるせえんだよ、てめえ人間言っていい事と悪いことがあるってわからねえのか? せっかく全軍の再編成があるって聞いて、喜び勇んで移動願いを出したってのに結局ケフカさんの軍に配属された俺の絶望は分かるだろ? なあ、分かるよな?」
かつて悲しみを分け合ったビッグスとウェッジはもういない。
いつの間にか同期のヤツらはどんどん死んでいて、まだ軍内に残っているのは俺たち2人になってしまった。
「俺だって、本当は分かってたのさー。今更ケフカさんから離れて平穏に暮らすには、ちょっとばかし余計なことを知りすぎてるってこともさ」
それは他でもない、ティナのことだ。
今でも定期的に伝書鳥を飛ばしているであろう彼女について、その報告の内容を知らされることはない。
だが、帝国にとってそれを知る下っ端が未だに生きているという事実が都合の悪いことであるらしいことは、俺にも予想がついていた。
「でもよー。せめてレオ将軍の軍に入りたかったんだよ、俺は。今のあの人、欠点も無くなって素晴らしいだろう?」
「それは、そうだな。さすがにドマ城攻略のキャンプでケフカを殴ってるのを見たときには驚いたよ」
だよな。あの環の力はさすがに偉大だ。
ケフカさんにしてみれば、結局うるさく見張られているという意味では期待外れだったかもしれないが、あの人の取った行動の中で唯一、世のため人のためになることだったと今でも思う。
それにしても、嫌だ嫌だ。
次のケフカさんの任務はナルシェで発見された幻獣の確保なんだとさ。
できることなら行きたくない。
俺まで消息不明なんて、冗談じゃねえぞ。
とは言え、俺の個人的な感情なんて何の役にも立たないことは分かっている。
任務の伝達を受け、向かう先は上司の執務室だ。
日程やら諸々の確認をしてケフカさんのゴキゲンを伺うのは今や、俺だけの役割になってしまった。
「――概要は以上ですね。それと、非常に言いづらいんですが、今回もレオ将軍との共同任務だそうです」
いよいよ、帝国もリターナーの殲滅に本腰を入れるということなんだろう。
「リターナーの撃退に関してはレオ将軍の部隊が担当するそうですので、ケフカさまは直接幻獣の確保をするようにとことでした」
「なるほど。とうとうあの力が俺サマのものに」
レオ将軍の名前に反応し、不機嫌になりかけたケフカさんだったが、幻獣を手に入れるというところを喜ぶことに決めたらしい。
以前とは違い、レオ将軍からの接触がかなり減っていることもあって、それほど不快ではないと判断したのかもしれない。
「でも、変なんですよ。レオ将軍はもともとベクタの守護の予定だったらしいんですが、今朝になって急に変更になったとか」
前回のドマ攻略なら分かるんだ。
あの国は元々、反帝国の勢力としてはかなり高い戦闘力を有していることで警戒されていた。
結果的にケフカさんが1人で殲滅してきたとは言え、あれは偶然の産物と言うべきだろう。
あの時あそこにいたのがレオ将軍だけであれば帝国軍の被害は多数に登っていたはずだし、普段のケフカさんはやる気がないから、更に多くの兵が犠牲になっていたと思う。
基本的にケフカさんはギリギリまで遊び続けるし、部下だってこの人の為に命を懸けて戦えって言われても士気が上がるはずもなし。
だからこそ、レオ将軍の統率力とケフカさんの戦闘力を合わせてぶつける必要があったわけだ。
だが今回はどう考えても、ここまで本気で叩き潰すほどの相手だとは思えない。
って、俺が考えることじゃなかったな。
余計なことに首を突っ込んだら長生きできないって事は分かってるはずなのに、深入りしすぎてしまった。
「とにかく、今回の作戦指揮官はケフカさまになりました。細部については一任するそうですので、伝達事項があればお伝え下さい」
「じゃあお前でいい。レオにくっついてリターナーに混ざってるセリスと小娘を拾って来い」
は?
ちょっと待て。何か重大なこと言われた気がするんだが、気のせいだろうか。
「ティナと、セリス将軍、ですか?」
セリス将軍って、サウスフィガロの包囲中に裏切ったんじゃなかったのか?
呆けていた俺を面倒くさそうに睨みながらケフカさんが言ったことを総合すると、こうだ。
ティナの報告は、ベクタに届けられた後でセリス将軍やレオ将軍にも伝えられていたらしい。
それにはリターナーの本部に潜入したことに加えて、単独でサウスフィガロへ向かうメンバーがいることが記されていたんだとか。
そこで、女好きで守りたがりだというその男を誑し込み、セリス将軍もリターナー側に潜入する作戦が立てられた。
どんな方法を使ったのかは分からないが、それは成功したようだ。
2人旅になるから以後の報告は出来ないという文面どおりその後の連絡は無いものの、ナルシェでティナに合流することは間違いないだろうとのこと。
「甘ちゃん集団だということが分かりましたからね。ここらで帝国の力を見せ付けておけば当分逆らうことも無いでしょう」
喋っているうちに段々機嫌が良くなってきたケフカさんは、そう締めくくった。
俺、やっぱりとんでもないこと聞かされちまった。
「何てこと言ってくれちゃったんですか! それどう考えても機密事項でしょう!?」
「分かってるなら大声出すな。とにかく、あの幻獣を手に入れるにはティナがいた方が好都合だから、しくじるなよ」
どんどん深みに嵌っていくな、俺。
なあ、ビッグスとウェッジよ。そろそろ友がもう1人、お前達のところへ行くかもしれねえや。
俺の絶望をよそに、作戦決行の日は近づいていく。
ナルシェへの出発は、もう明日に迫っていた。
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13話投稿です。
こんなことになった言い訳は理由を聞かれてからする。
前回もコメントありがとうございました!
とても励みになっています!
とりあえず、カイエンは死んでません。