長い、長い旅路だった。
フィガロ城を発ってからどれ程の日数が経っただろうか。ほんの数日だったような気もするし、とても長かったかも知れない。
日にちの感覚すら薄れるほどに、俺にとって辛い日々だった。
後になって聞いた話だと、レオ将軍は俺のことを殊のほか気に入ってくれていたらしく、ケフカさんへの同行任務の後には今の帝国進軍では一番安全だろうと言われているサウスフィガロの包囲任務へ付けてくれるつもりだったらしい。
でもそれも、フィガロ城の焼き討ちでお怒りを買ってしまったため、取り止めにされてしまった。
「で、ドマ城攻略ですか」
「……お前はケフカの部下だ。あいつの任務に同行するのは当然だろう」
仰るとおりでございます。
たとえそれが生還率4割と予想される激戦区であろうと、上司のケフカさんが向かう任務である以上、俺も配置されるのは至極当然のことだ。
じゃあ何故ケフカさんからでなくレオ将軍から任務のお達しを受けているのかと言えば。
「とは言え、今のケフカには直属の部下はお前しかいないからな。今回は例外的におれの軍に配置されることになった」
ということらしい。
今の帝国軍は色々とマズイ事になっているから、どれをとっても苦肉の策、といった状況だ。
セリス将軍が。
あのセリス将軍が、裏切ったらしいという噂が流れてるんだよ。
おかげでケフカさんのご機嫌はうなぎ登り。反してレオ将軍は心労のためかため息を吐いていることが多いらしい。
これ、同僚情報。
意外と言うべきか、何と言うか。
フィガロ城でやってきたことに嫌悪感を示しているのは、俺の知る限りではレオ将軍と一部のその配下たちだけで、ほとんどの連中は何とも思っていないらしい。
中には、とうとうレオ将軍にまで嫌われちまって可哀想に、と同情してくれている奴までいる。
要するに、ケフカさんの取る行動としては珍しくも無かったということな訳だが。
むしろ、実質的にフィガロには大きな被害を出せなかったという事実は、今回の俺への軍内評価をさほど下げずにいてくれた。
いつもよりは外道じゃないってな。
俺の本心としても、それは変わらない。
何と言っても、ケフカさんの部下としてもう何年も軍人をしてきたのだ。
敵将の寝首を掻くような任務だって少なくなかったし。
たかだか火をつける程度のことには慣れているとも言っていい。
俺の気を重くさせたのは、レオ将軍に嫌われてしまったという事実と、そのせいで帰りの道中に一切の私語が許されなかったということ。
分かるか? ケフカさんのワガママっぷりに耐え続けた上に愚痴の一つも許されないあの精神的苦痛が。
とまあ、そんなことがあったせいで、今の任務通達もキツい。
俺、前線の配置がいいっス。
ケフカさんのワガママに振り回される必要無いし、とりあえず戦って来いっていう単純な任務だから。
適当にやってりゃ死ぬことは無いだろう。これでも軍人歴は長い。
なんて思っていたが。
「だが、お前の任務自体は通常と変わらん。作戦部隊に入り、以後はケフカの指示に従うように」
俺の希望が叶うことは無かった。
「了解であります……」
要するに、
『俺の目の届かないところになんて配置してやらねえぞ。ケフカもろともきっちり監視してやるから覚悟しやがれ』
と、そういうことだ。
俺の休暇は当分先のことらしい。
「あのー、ケフカさま? そのビン、何ですか?」
ドマ城近郊、帝国キャンプ。
帝国軍の進軍はここまで概ね順調だった。
ケフカさんはうるさくならないように魔導アーマーに乗せてやっての道中、驚くべきことに事件はなし。
レオ将軍は尚も監視の目を緩めることは無いが、ケフカさんの異常なゴキゲンっぷりを警戒するどころか安心してしまっているフシがある。
根本的に、あの人は身内に甘い。
身内どころか敵にも甘い。
そんな性格だから、あの環を付けられるまでケフカさんのことを大好きでいられたんだと思う。
その甘さは、今でも変わることは無い。
「ふん。レオの野郎、ドマの物資補給路は絶たないなんて言いやがった」
「そうですね。言ってましたね」
それがケフカさんにはどうも受け入れ難いらしい。
「それとそのビンと何の関係が?」
卑怯なニオイがぷんぷんするね。
俺、ドマにはちょっといい思い出があるから、あんまり酷いことはしたくないんですけど。
「ムダに戦を長引かせてなんになります! これさえあればあんなチンケな城の1つや2つイチコロだ!」
毒だってよ。
えげつねえな、全く。
「それ、宣戦布告の直前にすることじゃねえですって。俺、またレオ将軍に怒られるの嫌ですからね」
反論した俺に、ケフカさんはキイキイと怒鳴り散らしている。
よおーしそうだ。叫べ! 喚け!
そしてレオ将軍にバレてしまえ!!
俺の身を挺した行動が実を結んだ。
レオ将軍がケフカさんの異常に気がついたのだ。
「何をしている!」
ビン取り上げた。
中身確認。ってうわ、何だこのニオイ。相当ヤバそうなんだけど。
あ、頭が、くらくらと……。
って、なんだとう!?
「いったーい!! 僕ちんを殴るなんて、お前何様なんだよ!」
「馬鹿者が! こんな危険なものを使ったら我が軍にまで被害が出るだろうが! 第一、こんな卑怯な真似は断じて許可できん」
妙な毒のせいでクラクラしていた意識は一気に覚めた。
まさか、まさかこの目でレオ将軍がケフカさんを殴るのを見る日が来るなんて!
俺、今まで生きてて良かった!
慌てて周りを見渡してみると、そこには俺と同じくその様子を発見して感動しきりな兵達が。
やったな! 素晴らしいものを見たよな!
これでこそ誇り高き帝国軍人! 尊敬すべき将軍様ってもんだ。
そんなこんなで、俺たちは図らずもケフカさんの陰謀を阻止することに成功した。
レオ将軍率いる帝国軍は、明日の朝にもドマへ宣戦布告を行うことになるらしい。
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久しぶりの投稿です。
皆さん、コメントありがとうございます!
>狂人の部下は狂人でした
しかも自覚がありません
というオチですか
そうですね、書いてたらそんなことになっちゃいました。
あまりに批判が増えたりしたら改善します。今のところはこのままで。
銃については好意的なコメントありがとうございました。お言葉に甘えて設定はこのままでいこうと思います。
それでは、また1言コメントなどお待ちしています。