海鳴にて
「しっかし、いったい誰なんやろな?」
「?」
「ほら、ユーノ君が」
「あ!ユーノが『病院を抜け出してまで顔を見たかった人』?」
翠屋に向かって歩く2人の話題は『季節のスイーツ』から『謎の人物』に移る。
「ユーノ君とは結構付き合い長いけど、そういう話を聞いたんは初めてだったしな?」
「私も同じ、ユーノに好きな人がいるなんて今まで気付かなかったよ。」
魔力切れで倒れたのは仕方ないが、その後、事件の事後処理どころか病院の退院手続きもせずに海鳴に行ったユーノを2人は責めた。
「どうしても顔を見たい人がいたんだよ」
その際、ユーノが照れくさそうにこう言ったのだ。 相手は誰だと何度も聞いたが、ユーノは黙秘を貫いた。
「やっぱり、エイミィさんかな~?」
「え? エイミィ!? 駄目だよ、エイミィはクロノのっ!」
「奥さんやな~、まさかユーノ君の好みが人妻だったとは…」
「そんな…(ユーノが人妻好き? でも、そうだとすると、これまでそんな話がでなかったのも…)」
妄想するフェイト
『だめよ、ユーノ君、私にはクロノが…』
『わかっています。 でも、それでも僕はあなたのことが!』
『そ、それに、子供までいるのよ? ね、私のことなんて忘れt』
『エイミィさん!』
『ああ!』
がばぁっ、とエイミィを抱きしめるユーノ、そして2人は…
「エイミィさんでなければ、リンディさんやな」
「か、義母さん!?」
「年齢がわからん美人さんやしな? それに独身や」
「そ、そんな…(ユーノが義母さんを? あ、でも、あの義母さんのお茶を笑って飲んでいたような…)」
フェイトの妄想が止まらない
『ユーノ君、今お茶入れますからね?』
『ありがとうございます、リンディさん…でも、僕はお茶よりもあなたが欲しい』
『ユ、ユーノ君?』
『あなたが欲しいんだ、リンディさん… いや、リンディ!』
『ユーノ君… わかったわ、こんなおばさんでよければ…』
『リンディ!』
がばぁっ、と義母さんを抱きしめるユーノ、そして2人は…
「ま、ユーノ君は子供好きだから、カレルとリエラに会いにいったんやろな、お菓子持って」
「あ! そ、そうだよね、エリオやキャロ、ヴィヴィオともすごく仲がいいし」
「でも、病院抜け出してまで会いに行くやろか? いくら子供好きでも、おかしない?」
「え! そ、そうだね、確かにおかしいよ… エイミィも突然訪ねてきたみたいなこと言っていたし…」
「『子供』が『好き』なんやろか?」
「え? … … …! ええええ!!! そ、そそそそそそそれって」
「いやいや、私はユーノ君のこと信じとるで? 信じとるけど… なぁ?」
「そ、んな(ユーノが子供を? それじゃ、エリオやキャロの頭を撫でたり、ヴィヴィオを抱っこしたりしたのは…)」
フェイト、大妄そ…
「ぷっ はははは、フェイトちゃん、おもろいわ! 何考えてるか全部わかる!」
「え、あ! はやて、私をからかったんだね!!」
「フェイトちゃんの百面相が、面白いのが悪いんやー」
「なんだってー!」
逃げるはやてと追うフェイト、世界は平和だった。
・・・
翠屋
カランコロン♪
「「こんにちわー」」
「いらっしゃいませー」
看板娘のなのはがレジに立っていた。
「ひさしぶりやね、なのはちゃん」
「ひさしぶりだね、なのはさん」
「ほんと、ひさしぶりだね、はやてちゃん、フェイトちゃん」
ちょっとした挨拶と世間話を終え、ケーキを選ぶはやてとフェイト、そこに、
「あ、あのね、2人とも?」
「ん?なんや?」
「なに?」
『もじもじ』という言葉がぴったりな雰囲気でなのはが…
「ゆ、ユーノさんってどんな人か、お、教えてくれないかな?」
「「へ?」」
突然の質問に、それも、先ほど話題にしていたユーノのことを聞いてくるなのはに驚く2人
「べ、別にええけど…」
「なんでユーノ?」
なのはに訊ねる2人
「あ、あのね、この前ユーノさんが1人で店に来てね、その…」
「店に来て?」
「どしたん?」
「あ、『あなたの顔を見に来たんですよ。』って…」
平和だった世界に爆弾は落とされた。
090728/初投稿
090815/誤字脱字など修正
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