???
おや?
ここはどこだ?
僕はもういい歳になったから自分から施設に入って結構気楽な老後を…
あれ? この感じは…
体が10歳頃に若返っているとか、まったく意味がわからんのだが?
これはつまり、ループは終わって無かったってこと?
違うか、目の前にジュエルシードないし…
あれ? 若いフェイトさん?
なんか魔力が違うし、感じにくい?
…アリシアさんでしたか。
じゃあ、あっちで光っているすっごい魔力はプレシアさんのヒュウドラが暴走しているのかな?
よくわからないけど、結界張っておきますか。
どこかの平行世界でプレシアさんはジュエルシードに願ってしまったのかな?
例えば、アリシアさんが死ぬ夢を見て、「アリシアを助けて!」と叫ぶような、そんな感じで。
そして、その願いを叶えるべくジュエルシードは僕を送り込んだ。 そう考えると納得できない事も無い…
じゃあ、平行世界のどこかにはループしているプレシアさんもいるんだろうな…
「集まれ」と念じるだけでジュエルシード全てを呼び寄せるユーノやフェイトさんとかも…
僕はジュエルシードに囚われたのかもしれない。
もしかしたら、僕と同じ『憑依でループ』だった人達も…
プレシアさんだけでも「ヒュウドラに関わらなければ」とか「アリシアを生き返らせて」とかいろいろありそうだし
もしかしたら『ヒュウドラに関わらないように説得できるユーノ』とか『アリシアを生き返らせる方法を考えついたユーノ』とか居るかもしれないし?
…僕には無理だけど。
しかし、原作開始まで後26年… レイジングハートもいないし、戸籍もない…
え? 戸籍作ってくれるの? 娘を助けてくれたお礼? プレシアさんって話がわかる人だね。
ユーノ・テスタロッサ… アリシアさんの義兄?
それじゃ、これからよろしく。
しかし、原作開始時ユーノ36歳、stsで46歳とか… どんな悪夢だよ? よ? ょ? ぉ?
「ユーノ・テスタロッサ…ねぇ」
悪夢で目が覚めた僕は、洗面台の鏡を見ながらそう呟いた。
それをレイジングハートは聞いていた。
・・・
時空管理局本局 食堂
ネックレスやイヤリングなどの装飾品の形、待機モードでデバイスを身に着ける。
デバイスは魔法を補助してくれる相棒、常に持ち歩く事はなんら不思議な事ではない。
しかし、机の上に通常モードのデバイスを置いて食事をする局員が増えた事に彼女は危機感を覚えていた。
事務用のストレージが通常モードで動いているのは、仕事をしているのだといい訳が出来るだろう。
マルチタスクに慣れた者なら、食べながらでも仕事ができるということは、管理局で働くものなら掃除のパートでも知っていることだ。
医療班などのブーストにも目を瞑ろう。 患者の様子がわかるように常に起動しているべきものである。
緊急時に手間をかけないために待機モードと通常モードで形状が変わらない物のほうが多いと聞いたこともある。
しかしインテリジェントとアームド、お前達は駄目だ。
ここは食堂!
私達の戦場にして聖地!
ここに在るべきは包丁や鍋! 皿やスプーン!
調理器具と食器こそがこの場にふさわしい武器である!
そんな場所に、杖を置くな! 剣を置くな! 斧を置くな! 銃を置くな!!
「仕舞いには上司に言いつけるぞ…」
そんな彼女の荒れた心を癒してくれるのがこの事態を引き起こした原因なのだから世の中というのは不思議である。
そんなある日
ざわ… ざわ…
ざわ… ざわ…
話し声はしていてもそれなりに静かだった食堂がざわつく。
「いつもと様子がちがうね?」
「チーフ!」
「食堂で走るな!」
「すいません! でも、あ、あれを!」
息切れか叱られたからか、震えた部下の指先が彼女達のアイドル、その本来の姿に向いていた。
「おや、久しぶりに見たね…」
「こんにちわ」
「ああ、こんにちわ。 今日はお偉いさんにでも呼ばれたのかい?」
前にも何度かそう言った理由がある時に、その姿で食事に来た事があった事を思い出しながら彼女は尋ねた。
「いえ、違います。 僕もあの姿の方が楽なんですけどね…」
「まさか、上から『無限書庫外での変身魔法禁止』っていう通達でも来たのかい?」
食堂のチーフである彼女の耳には、年に一度くらいこの青年のあの姿のことが問題となり、その度に彼の功績と変身するメリットを理由に、黙認になるという情報が入ってきていた。
「上から… いえ、上からではなく身内からです。」
「…八神一家やハラオウン一家かい?」
かわいらしい姿で局内を歩く彼のことを、あの人達が『今更』どうこう言うとは思えないのだが
《いいえ、私です。》
「…レイジングハート?」
ユーノ・スクライアの相棒の名前は彼女達の間で知らない者はいない。
チャットや掲示板でレイジングハートになりたいと言うものは腐るほどいるのだ。
《マスターももう良い歳なので、いつまでもあの姿では相手が見付かりませんから…》
「ちょっ! そんな理由でやめさせたの!? 僕には人間の尊厳がどうこうって言っていたのに!」
仲良く喧嘩する主従を見ながら、会員番号1159は仲間達にメールを送った。
090823/初投稿