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No.10422の一覧
[0] 【完結】せせなぎっ!! (ネギま・憑依・性別反転)【エピローグ追加】[カゲロウ](2013/04/30 20:59)
[1] 第01話:神蔵堂ナギの日常【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:53)
[2] 第02話:なさけないオレと嘆きの出逢い【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:54)
[3] 第03話:ある意味では血のバレンタイン【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:54)
[4] 第04話:図書館島潜課(としょかんじませんか)?【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:54)
[5] 第05話:バカレンジャーと秘密の合宿【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:55)
[6] 第06話:アルジャーノンで花束を【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:55)
[7] 第07話:スウィートなホワイトデー【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:55)
[8] 第08話:ある晴れた日の出来事【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:56)
[9] 第09話:麻帆良学園を回ってみた【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:56)
[10] 第10話:木乃香のお見合い と あやかの思い出【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:56)
[11] 第11話:月下の狂宴(カルネヴァーレ)【改訂版】[カゲロウ](2012/06/10 20:50)
[12] 第12話:オレの記憶を消さないで【改訂版】[カゲロウ](2012/06/10 20:50)
[13] 第13話:予想外の仮契約(パクティオー)【改訂版】[カゲロウ](2012/06/10 20:51)
[14] 第14話:ちょっと本気になってみた【改訂版】[カゲロウ](2012/08/26 21:49)
[15] 第15話:ロリコンとバンパイア【改訂版】[カゲロウ](2012/08/26 21:50)
[16] 第16話:人の夢とは儚いものだと思う【改訂版】[カゲロウ](2012/09/17 22:51)
[17] 第17話:かなり本気になってみた【改訂版】[カゲロウ](2012/10/28 20:05)
[18] 第18話:オレ達の行方、ナミダの青空【改訂版】[カゲロウ](2012/09/30 20:10)
[19] 第19話:備えあれば憂い無し【改訂版】[カゲロウ](2012/09/30 20:11)
[20] 第20話:神蔵堂ナギの誕生日【改訂版】[カゲロウ](2012/09/30 20:11)
[21] 第21話:修学旅行、始めました【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:08)
[22] 第22話:修学旅行を楽しんでみた【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:08)
[23] 第23話:お約束の展開【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:57)
[24] 第24話:束の間の戯れ【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:09)
[25] 第25話:予定調和と想定外の出来事【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:57)
[26] 第26話:クロス・ファイト【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:10)
[27] 第27話:関西呪術協会へようこそ【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:58)
[28] 外伝その1:ダミーの逆襲【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:59)
[29] 第28話:逃れられぬ運命【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:59)
[30] 第29話:決着の果て【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 21:00)
[31] 第30話:家に帰るまでが修学旅行【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 21:01)
[32] 第31話:なけないキミと誰がための決意【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:10)
[33] 第32話:それぞれの進むべき道【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:10)
[34] 第33話:変わり行く日常【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:11)
[35] 第34話:招かざる客人の持て成し方【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:12)
[36] 第35話:目指すべき道は【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:12)
[37] 第36話:失われた時を求めて【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:54)
[38] 外伝その2:ハヤテのために!!【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:55)
[39] 第37話:恐らくはこれを日常と呼ぶのだろう【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 22:02)
[40] 第38話:ドキドキ☆デート【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:58)
[41] 第39話:麻帆良祭を回ってみた(前編)【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:57)
[42] 第40話:麻帆良祭を回ってみた(後編)【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:57)
[43] 第41話:夏休み、始まってます【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:04)
[44] 第42話:ウェールズにて【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:05)
[45] 第43話:始まりの地、オスティア【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:05)
[46] 第44話:本番前の下準備は大切だと思う【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:06)
[47] 第45話:ラスト・リゾート【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:06)
[48] 第46話:アセナ・ウェスペル・テオタナトス・エンテオフュシア【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:20)
[49] 第47話:一時の休息【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:21)
[50] 第48話:メガロメセンブリアは燃えているか?【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:21)
[51] 外伝その3:魔法少女ネギま!? 【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:22)
[52] 第49話:研究学園都市 麻帆良【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:22)
[53] 第50話:風は未来に吹く【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:23)
[54] エピローグ:終わりよければ すべてよし[カゲロウ](2013/05/05 23:22)
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[10422] 第13話:予想外の仮契約(パクティオー)【改訂版】
Name: カゲロウ◆73a2db64 ID:552b4601 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/06/10 20:51
第13話:予想外の仮契約(パクティオー)



Part.00:イントロダクション


 今日は4月9日(水)。

 始業式の翌日であり、ナギがあやかに拉致された翌日。
 そして、ナギがエヴァ戦に巻き込まれた翌日でもある。

 この頃からナギは逃れられぬ運命に飲み込まれるのであった……



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Part.01:こんな夢を見た


「……ねぇ、ぼくの父さんと母さんって どんな人だったの?」

 幼い声が響く。どこかで聞いたことがあるようでないような、そんな声。
 そして、目の前には どこかで見たことがあるような気がする青年がいる。
 誰だっけ? 身近な存在だった気がするんだけど、何故か思い出せない。

「どうしたんだい? 急にそんなことを聞いて……」

 きっと、予想だにしていなかった質問だったのだろう。
 目の前の青年は不思議そうな顔をして尋ね返して来る。
 いや、正確に言えば、少し焦りが混じっている気がする。

 ……『ぼく』の両親に関して、何か後ろ暗いことでもあるのだろうか?

「このまえ会ったコが、妹が死んだからって泣いてたんだ。
 でも、ぼくは父さんと母さんが死んだのに泣いてない。
 それは、ぼくが二人のことを知らないからだと思うんだ」

 だが、『ぼく』は青年の焦燥に気付かない。そのまま説明を始める。

 その抑揚は少ないが、そこには「自分への猜疑心」が見え隠れしている。
 きっと、そのコと自分を比べて自分が薄情だと感じているのだろう。

「それは違うよ。ガt――お父さんが死んだ時、君はたくさん泣いたよ?」

 青年は穏やかに微笑みながら、言い聞かせるように告げる。
 そこに込められているのは、憐憫か、悲哀か、それとも悔恨か……
 青年の言う『お父さん』と青年には何かしらの因縁がありそうだ。

「……でも、ぼくはそんなこと覚えてないよ?」

 だがしかし、『ぼく』は青年の答えに納得していないようだ。
 青年を気遣う余裕などないのか、青年の様子に気付いていないのか、
 相変わらず抑揚は少ないものの青年の様子を気にせずに尋ね返す。

「それは悲し過ぎたからだよ。悲し過ぎたから……忘れたんだよ」

 そうかも知れない。人の心は弱いから、堪え切れないことは忘れようとする。
 記憶喪失とまではいかないまでも、生きていくうちに忘れるよにうにできている。
 だから、きっと青年も忘れようとしているのだろう。何故か、オレは そう感じた。

「ふぅん、そうなんだ……」

 さて、『ぼく』はどこまで理解したのだろうか?
 どうも、わかったようなわからないような返答だ。

 だが、一応は納得したようで、青年への追求をやめたようだった。

 ……………………………………
 ………………………………………………
 …………………………………………………………

「――って、何じゃこりゃぁああ?!」

 ナギは、どっかのジーパン刑事が己の腹部を見た時のような絶叫を上げて目を覚ました。
 誰かに聞かれていたら変人扱いされていただろうから、一人部屋で本当によかったと思う。
 声が大き過ぎて隣部屋に聞こえていた気がしないでもないが、気にしてはいけないだろう。

(って言うか、何でオレが あんな夢を見たんだろう? 意味がわからない)

 あの夢は どう考えても「子供の頃の那岐」と「若い頃のタカミチ」だった。つまり、那岐の記憶を夢見たことになる。
 だが、それは非常におかしいことだ。ナギには那岐の記憶がない筈(1話参照)なので、夢見る訳がないからだ。
 もしかして、今までは思い出せなかっただけで、実は那岐の記憶は残っていたのだろうか? その可能性はゼロではない。

(ゼロじゃないけど……何で今更 思い出すんだろう? しかも、最近のことじゃなくて昔のことを)

 昨日は色々とショックな出来事が多かったため、その影響で記憶が刺激された可能性はある。
 だが、それでも、子供の頃のことを思い出すのは妙だ。思い出すとしたら、最近のことの筈だ。
 根拠はないが そう考えたナギは「あれはオレが作り上げた 勝手な妄想だったのでは?」と疑う。

 正解は何であるのか、今のナギにはわからない。



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Part.02:神蔵堂ナギの憂鬱


 夢見が悪かったせいか、昨夜の件がまだ尾を引いているのか、ナギは一日をブルーな気分のまま授業を過ごした。

 具体的に言うと、普段なら授業を聞いた振りして遣り過ごすところを今日は振りすらしなかった感じだ。
 しかも、授業態度が原因かは定かではないが、神多羅木に呼び出しを受けてもスルーして帰宅した程だ。
 いつもなら大人しく出頭し後で近右衛門に怪情報をタレコむのだが、今日は出頭すらしなかったのだ。

 きっと後で厄介なことになるだろうが、それがわかっていても無視した程にナギはブルーだったのである。

 と言うか、叶うことなら何もかもすべて(主にネギや魔法関連)を投げ捨てて逃げ出したい気分だ。
 こうなる可能性はゼロではなかったのに「どうにかなるだろ」と楽観視していたので非常に今更ではあるが、
 実際に問題が起きるまで問題を放置してしまう のがナギと言えばナギなので、仕方がないのかも知れない。

 でも、もう楽観視はしていられない。既に魔法にドップリ関わってしまったのだ。ここでどうにかしないと泥沼になり兼ねない。

(考えるまでもなく、このままエヴァ戦に関わってしまうと 流れで今後の魔法関係のトラブルにも巻き込まれるだろうね。
 って言うか、こうなることが予想できていたからこそエヴァ戦に関わる気などなかったのに……強制参加だったからなぁ。
 このまま魔法に関わらざるを得なくなったら、あのロリババアには『それなりの賠償』をしてもらわないと気が済まないな)

 ネギと友好を深めてしまった自身が一番の原因であることに自覚はあるが、それでも怒りのぶつけどころが欲しいようだ。

(しかし、魔法って本当に危険なものだったなぁ。いや、ネギと会う前から危険だと判断してはいたけどさ、想定以上に危険だったんだよ。
 まぁ、正確に言うと『ここ』が想定以上に危険だったんだな。赤松ワールドだから何だかんだで安全だって高を括ってた自分が恥ずかしいや。
 そもそも、オレ自身が『ここ』は『ネギま とは似て非なる場所』だって思ってたんだから、安全だって判断するのはアホの極みたよなぁ)

 昨夜の戦闘で、ネギがデコイを使っていなければエヴァの攻撃は直撃していただろう。そして、直撃していたら、ネギは死んでいたかも知れない。

(昨日は全裸に剥かれたショックとか想定外の幕引きの御蔭で忘れていたけど……それでも、死は隣にあったんだ。
 だから、もう「きっと大丈夫」とか言って安心してはいられない。つまり、今直ぐにでも状況を変えなければいけない。
 具体的には、もう二度と戦闘に巻き込まれないようにしなければ――巻き込まれる前に解決しなければならない筈だ)

 ヤラれる前にヤる。つまりは先制攻撃的自衛権だ。少々過激だが、何も武力だけが解決手段ではないので正しい考え方とも言える。

(正直に言うと逃げたいけど、ここで逃げても回り込まれるのは目に見えている。
 と言うか、逃げるつもりなら何としてでもネギに記憶を消してもらっていたさ。
 あの時、オレは覚悟をした。結果的に茶々丸に台無しにされたけど、覚悟したんだ)

 だからこそ、ナギは進むことを選択する。逃げられないなら進むしかないし、立ち止まっているのは性に合わないのだ。

 ……………………………………
 ………………………………………………
 …………………………………………………………

 そんなこんなで、ナギは『今後の対策』を練りながら帰宅したのだが……その道中で聞き捨てならない会話が聞こえて来た。

 それは、寮生達の会話で、何でも「ウチに下着ドロが出たんだってよ」とか「え~~マジ? 下着ドロ!? キッモーイ!!」とか、
 あまつさえ「下着ドロが許されるのは、女子に対してだけだよね~~」とか と言う非常に頭の痛くなる会話だったらしい。
 ここで「お前達の方がキモいよ。いや、むしろ、気持ちが悪いよ」と思ったナギは悪くないだろう。そのネタは男子禁制の筈だ。

(って言うか、男子寮に来る下着ドロって、一体 何が目的なんだ? アレかな? 『変態と言う名の紳士』ならぬ『変態と言う名の淑女』なのかな?)

 普通に痴女って呼ぶべきかも知れないが、ナギ曰く「痴女って少し淫靡な響きだから自粛した」らしい。
 何かが決定的に間違っている気がしないでもないが、ナギなので仕方がない。常人とは気にする部分が違うのだ。
 と言うか、変態紳士としては変態淑女と言う表現の方がシックリ来るのだろう。同類に対する情けのような感じだ。

 と まぁ、いつしかシリアスから程遠い思考にシフトしながら部屋に戻ったナギだが、部屋のドアを開けた瞬間 凍り付いた。

 何故なら、白くて長細いナマモノ(恐らくカモ)が、ナギのベッドの上で男物の下着をクンカクンカしており、
 しかも「ハァハァ……若いオスの味と匂いは堪りませんデスゥ」とかブツブツ言っているのを見てしまったからだ。
 変態仲間であるナギですら「身の毛も弥立つと言うか、悪・即・斬と言うか、細胞レベルで抹消したくなった」らしい。

 つまり、オコジョがしゃべっていることに驚くよりも、その言動にツッコんでしまうレベルだったのだ。

(って言うか、あの淫獣、何をやっていやがる?! いや、ナニをやっているんだろうけど そう言うことじゃなくて!!
 これはアレか? ネギが女のコになっているように、カモもメスになっているって言うパターンなのか?
 悪いけど、誰もそんなこと望んじゃいねぇよ!! 擬人化するなら まだしも、メスの淫獣などキモイだけだわ!!)

「はふぅ、実に こってりとしていt「って言うことで、天誅ぅうう!!」きゅぇええ?!」

 余りにもキモ過ぎて問答無用でライダーキックをお見舞いしたナギは間違っていないだろう。
 動物愛護団体がうるさいかも知れないが、アレは動物ではなくて淫獣なのでOKに違いない。
 まぁ、正確には淫獣ではなくてオコジョ妖精だが、それでも害獣であることはことは変わらない。

「い、いきなり、何をするデスか?! 至福の時を邪魔しな「とりあえず、黙ろうか?」……きゅぅ」

 騒がれると面倒なことになる と判断したナギは、速やかにカモの首をキュッと絞めてオトす。
 少しだけ「直接 手で触れるの何となくイヤだなぁ」とか思ったらしいが、背に腹は代えられない。
 放置して騒がれ、その騒ぎを聞き付けて誰かが来たら、状況証拠的にナギが下着ドロの犯人になるからだ。
 何故なら、ナギのベッドには白いケダモノがナニかに使用した男物の下着が散乱しているからだ。

 ロリベド鬼畜野郎だけで充分なのに、そのうえ男の下着でハァハァする男とか思われたら……いくらナギでも立ち直れないに違いない。



************************************************************



Part.03:責任者は責任を取るためにいる


「……つまり、今回の事件は学園長先生の差し金だった と言うことですか?」

 ボクは近右衛門先生にエヴァンジェリンさんのことを密告――じゃなくて報告しに来たんですけど、
 昨日の襲撃事件は「学園長先生がボクの修行のために用意したものだった」と白状されたんです。
 そもそも、管理領域内で魔法戦闘が行われたのに何も対応していなかったので不審に思っていたんですけど、
 まさか、ボクに『実戦』を経験させるために あの人を嗾けただなんて……想定の範囲外ってヤツですよ。
 せいぜい「ちょうど あの人がトラブルを起こしたのでボクに解決させようとした」程度だと思ってましたよ。

「いや、まぁ、そう言われるとワシが悪い様にしか聞こえないんじゃが?」

 学園長先生が「ネギ君のためにやったことなんじゃぞ?」とでも言いた気に弁解します。
 ですが、そんな理由など理由になってません。ボクのためと言いつつも、御自分のためでしょう?
 ボクがそれくらいを見抜けていないと思ったのでしょうか? ボクはそこまで甘くないですよ?

「何を仰ってるんですか? 一般人であるナギさんを巻き込むのを良しとした段階で学園長先生は悪いですよ?」

 ボクには「『本国』から どんな指示があったのか」まではわかりません。想定しかできません。
 ですが、ナギさんを巻き込まないようにする方法があったことくらいはわかってます。
 つまり、学園長先生は、その方法を取らずにナギさんを巻き込むことを選んだのです。

 当然、それだけでも充分に「情状酌量の余地なし」ですよ。少なくともボクにとっては。

「じゃ、じゃが……修行が終わった後、一般人を盾に取るような輩と戦うような事態があり得るじゃろう?
 今回はその時のための予行演習と言うか、今のうちにそう言った輩と戦うのに慣れる必要があると言うか、
 むしろ、この程度の事態で手間取っているようでは『マギステル・マギ』になどなれんと言うか……」

 学園長先生がシドロモドロに何か言っていますけど、聞き耳を持つ気はありませんね。

 まぁ、そうは言っても、学園長先生の意図もわからない訳ではないんですけどね。
 だって、魔法使いは すべからく『マギステル・マギ』を目指してますからね。
 それをチラつかせればボクが黙ると思ったのでしょう(実に愚かなことですけど)。

 だって、既にボクは『マギステル・マギ(偉大な魔法使い様)』などどうでもいいんですから。

「確かに、そのような場合もあるでしょうし、そのための備えは必要でしょう。
 その点では学園長先生の仰る通りだと思いますし、反論する気はありません。
 ですが、そのために実際に一般人を巻き込むのはどうかと思うんですが?
 たとえば、ボクの知らない魔法関係者を一般人と偽ればよかったのではないですか?
 そうすれば、演習にもなりましたし、実際には一般人を巻き込まずに済みましたよ?」

 とは言いつつも、ナギさんを巻き込んだのが許せないだけなんですけどね。

 ちなみに、麻帆良は『世界樹』を擁する『聖地』の一つですから、魔法使いの拠点となっているのは自明の理です。
 ですが、ボクが『紹介された魔法使い』は、タカミチと学園長先生だけで、他の魔法使いは一切紹介されていません。
 つまり、「ボクの知らない魔法使い(及び魔法関係者)が、麻帆良にはたくさんいるもの」と考えて然るべきなんです。

「あ~~、確かにそうなんじゃが……知り合いの方がリアリティがあるじゃろ?」

 まぁ、確かにリアルでしたね。リアル過ぎて我を失うくらいにリアルでしたよ。
 ですが、だからと言って、それが理由になるとでも思ってるんですか?
 もし本気で言っているのだとしたら……ボクは貴方を見限るしかありません。

「……わかりました。つまり、『御自分にはまったく非がない』と仰りたいのですね?」

 とは言っても、この人は いくら責めても意味がないでしょう。
 だって、自分は悪くないと思ってるんですから、馬耳東風です。
 ですから、ここは別の切り口で攻めてみようと思った訳です。

「い、いや、何もそこまでは言っとらんじゃろ? 『全面的には非がない』と言いたいんじゃよ」

 そうですか? 残念ながら、ボクには そんな風には聞こえませんでしたけど?
 まぁ、きっと、ボクが日本語に不慣れだから『齟齬』が生まれたんでしょうねぇ。
 ですから、これからボクの言うことにも『齟齬』があっても、不思議はありませんよね?

「そうですか……では、今後はボク以外に迷惑が掛かるような課題は控えてくださいね?」

 って言うか、ナギさんを危険な目に遭わせるようなことはしないでくださいね?
 いくら「課題のため」とは言え、それが免罪符になるとは思ってもらっては困ります。
 と言うか、その程度のことで免罪符になるのならば、この世に犯罪はなくなりますよ。

「そ、そうじゃの……今後は気を付けようかのう」

 ふふっ、『了承』しましたね? これで言質は取りましたよ?
 約定を違えるのは『死』を意味しますから、ご注意くださいね?
 魔法使いの成した『契約』は口頭であっても重いんですからね?

「それでは、話を元に――昨夜の襲撃の真相について戻しましょうか?
 昨夜の襲撃は課題であったため、襲撃犯は課題のために行動しただけである。
 つまり、彼女への罰則等は課せられない……と言うことよろしいですね?」

 そう、犯人に『然るべき処置』を与えようと思ったのですが、課題だったので仕方がない と片付けられてしまったんです。

「うむ、そうじゃ。そもそも、魔法使いに危険は付き物じゃろう?
 と言うことは、当然ながら魔法使いとしての修行も危険が付き物じゃ。
 それを考えると、怪我一つしとらんのじゃから罰するまではいかんじゃろ?
 まぁ、一般人を巻き込むと言う不手際があったのはミスじゃがのぅ」

 確かに『身代わり君』を使っていなかったら大怪我で済まなかったかも知れないですが、結果的には服がダメになっただけですね。

 あ、服がダメになったことで思い出しましたけど……ネカネお姉ちゃんからもらったマントもダメになったんでしたっけ。
 魔法的な効果は無い普通のマントですけど、魔法具をたくさん収納できて お気に入りだったんで、普通にショックです。
 ……こう言うものの被害って損害賠償とかって形で請求できるんでしょうか? 当然ながら、泣き寝入りなんてイヤですよ?
 まぁ、学園長先生の指示の下で行われた修行だと言ってるんですから、少なくとも学園長先生が補償すべき範囲内ですよね?
 それに、他にも賠償金を払っていただかないといけない事柄があるのに気付きましたので、それも含めて請求して置きましょう。

「……わかりました。彼女への罰則は『課題なので』問いません」

 きっと、ボクが納得したと思ってホッとしたのでしょうね。
 学園長先生は胸を撫で下ろすようなジェスチャーをしました。
 その仕草にちょっとイラッと来たのは ここだけの秘密ですよ?

「――ですが、昨日の襲撃で受けた損害は『課題なので』補償していただきます」

 きっと、ボクの言葉は想定の範囲外のことだったんでしょうね。
 近右衛門先生は「はびょーん」って感じの愉快な顔をしています。
 その表情にちょっとだけ溜飲が下がったのは ここだけの秘密ですよ?

 だって、損害賠償を請求するのに手を緩める気は一切ありませんから。

「ボクの制服、サイズの都合で特注品なんで高いんですよね。
 それに、着けていた下着類も何気に値が張ったものでしたし。
 あ、あと、あのマントは従姉からのプレゼントでしたので、
 諸々の精神的被害も加算しますと……50万が妥当でしょうか?」

「ゴジュッ!? い、いくら何でも高過ぎるんじゃないかの?!」

 まぁ、物品だけなら高過ぎるでしょうね。
 物品だけなら、せいぜいが10万円です。
 ですが、『乙女の柔肌』は高いんですよ?

「学園長先生……戦闘の様子を『遠見』で見ていらしたんですよね?」

 つまり、このエロジジイ――じゃなくて、学園長先生様はボクの全裸を見たと言うことです。
 さすがに『責任』を取ってもらうのは御免被りますので、お金で責任を取ってもらおうと思います。
 まぁ、所詮この世は金とまでは言いませんが、地獄の沙汰も金次第くらいは実感してますからねぇ。

「い、いや、あれは監督責任と言うか何と言うか……」

「そうですか……監督責任ならば、仕方が無いことですね。
 ですが、そう言った弁解は『本国』の法廷でお願いしますね?
 関東魔法協会の長とは言え『遠見』による覗き行為は重罪です」

 特にボクは『英雄の娘』として重要に扱われてますからね。地位は剥奪されてオコジョ刑は確定でしょう。

「ちょ、ちょっと待つんじゃ!!
 アレは事故じゃったんじゃ!!
 故意に見た訳じゃないんじゃ!!」

 いえ、事故とか故意とかは問題じゃないんです。

「先程、学園長先生が仰った通り、あの戦闘は学園長先生の『指示』によって行われたんですよね?
 と言うことは、その『指示』の中に『武装解除を使用せよ』と言う『指示』もあった可能性がありますよね?
 もしくは、覗いていたのですから『武装解除の使用不可』を厳命すべきでしたね? 監督責任が問われますよ?」

「……ワシ、もしかしてミスった?」

 そうですね。悪意のある解釈をすれば「態と命じずに『暗黙の命令』をした」と言う解釈もできてしまいますからねぇ。
 それに、学園長先生が あの人――エヴァンジェリンさんを罰していれば、ボクは賠償のことまで気が回らなかったですからね。
 そう意味でも、学園長先生 は「ミスった」としか言えませんね(問題は起きてからの対応の方が重要だと言うことを実感します)。

「あ、もちろんポンドですので、金策に頑張ってくださいね?」

 1ポンド140円で計算すると……7000万円ですか。
 まぁ、アメリカの訴訟に比べたら可愛いものです。
 それだけで地位も名声も傷付かないんですからね?

「…………ワシに拒否権はないのね?」

 打ちひしがれた学園長先生に対し、ボクは無言で『最高の笑顔』を作って学園長室を後にしました。
 きっと、それだけで「拒否権なんてある訳ないじゃないですか?」と受け取ってくれるでしょう。
 その時の「ギィィィ……バタン」と言う扉の閉まる無機質な音が妙に心に響いたような気がします。

(貴方の敗因は、たった一つです。『貴方は、ボクを怒らせた』)

 何故か無性に 決め台詞を言いたくなったので、心の中でコッソリ言って置きます。
 ボクのキャラには似合わないですけど、シチュエーション的に言いたかったんです。
 まぁ、ボクを怒らせなければこうなりませんでしたから、間違ってはいないでしょう。

 ……………………………………
 ………………………………………………
 …………………………………………………………

 あ、そう言えば、学園長室から出たら、タカミチから「キミの使い魔を名乗るオコジョ妖精が来ているよ」と言う連絡がありました。
 きっとカモちゃんのことだと思いましたので「多分、ボクの知り合いだと思うので通してください」とタカミチに伝えたところ、
 歯切れ悪く「いや、それがね、キミのパートナー候補に挨拶しに行くとか言って男子寮の方に行っちゃったんだ」と返って来ました。

 ……カモちゃんって ちょっと常軌を逸しているところがありますので、ナギさん(既に確定)に粗相そしていないか心配です。



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Part.04:幼女とオコジョ


「……はぁ、どうしたもんかなぁ?」

 カモ(だと思われるオコジョ)を簀巻きにして吊るしている内に どうにか落ち着いたナギは、
 とりあえず下着を大浴場の脱衣所に放置して証拠を隠滅し、部屋に戻って今後の対策を練ることにした。

(まぁ、考えるまでも無くネギに渡すべきなんだろうが……コレをネギに任せていいものかどうか悩みどころだね。
 こんな「お子様の情操教育に よろしくない淫獣」をネギに渡したらどうなるか? 考えただけで恐ろしい。
 既に若干アレな感じがするのだから、これ以上 進化しようものなら本当に『どうしようもない』ことになるだろう)

 敢えて具体的に言うならば『変態と言う名の幼女』が出来上がることだろう。

(そんな事態は何としても避けねばならないね。世のため人のため、そして何よりもオレのために。
 だって、もしそんな事態になったら……オレの身が肉体的にも社会的にも危険になる気がするからね。
 って言うか、何故か一瞬の天国を味わった後 永劫の地獄を突き落とされる気がしてならないなぁ)

 つまり、カモ(だと思う)を このままネギに渡す訳にはいかないのだ。

 だが、どうすれば この淫獣を落ち着かせることができるのだろうか? ナギには良案が思い付かない。
 対処をせずに渡したくないのに対処の仕方がわからない と言う、実に困った事態ものなのである。
 オスだったならば去勢でもすれば ちょっとは落ち着くのだろうが……生憎とカモはメスだった。

 ちなみに、何故メスだ と知っているのかと言うと、かなりイヤだったがシッカリと確認したから らしい。

 女性版去勢(例のアレを切り落とす)をして感じなくすればいいのだろうか?
 それとも、洗脳でもして品行方正な淑女にでも仕立て上げればいいのだろうか?
 もしくは、脅迫してエロスを抑制するのもいいかも知れない。答えはわからない。

(ん~~、少なくとも原作では、カモはネギに必要な存在なんだよなぁ)

 目先の欲望に駆られてトラブルを起こすこともあるが、ネギにとっては助言者であり『仮契約』に必要な存在だったのは確かだ。
 ナギにネギを助ける気は然程ないが、かと言って邪魔する気もないので、カモとネギを引き合わせない と言う選択肢はない。
 一瞬、このまま「何も知らなかった」ことにして秘密裏に処分してしまうことも考えたナギだが、さすがに却下したようだ。

(しかし、今になって明日菜の偉大さがわかるよ。だって、ナマモノとは言え自分の下着でハァハァした存在と同じ空間で過ごせるんだもん)

 話が違う方向に進んでいるが、それだけ対策が思い浮かばないのである。
 言い換えるならば、先程 思い付いた案を駆使するしかない と言うことだ。
 さすがに虚勢は遣り過ぎなので、まずは洗脳を試みて それが駄目なら脅迫だろう。

 何だかナギの思考が危ない方向に進んでいる気がするが、度重なるストレスのせいだと言うことにして置こう。

 ……………………………………
 ………………………………………………
 …………………………………………………………

「カモちゃんっ!!」「ネギ姉様ーー!!」

 ところ変わって、ネギ(と木乃香)の部屋にて。そこには、感動の再会を繰り広げる一人と一匹の姿があった。
 何やら、カモが「日本は怖いとこデシたよぅ」とか「大人しく牢獄にいればよかったデスよぅ」とか、
 あまつさえ「これからは心を入れ替えてマジメに生きますよぅ」とか言っている気はするが、気にしたら負けだろう。

(どうでもいいけど、カモの『ネギ姉様』とか『デス』とかって言う口調が微妙に可愛いことにギャップを感じるのはオレだけかなぁ?)

 可愛いは正義であるが、原作のイメージがあるナギには違和感が残るようだ。いずれ慣れるだろうが、ナギとしては慣れたくないのが本音だろう。
 ところで、話は変わるが、あの後の経緯の説明をして置こう。実は、ナギがカモへの『説得』をしていると「変なオコジョが伺ってませんか?」と
 ネギからピンポイントな連絡が入ったため、ナギは「渡りに船」と言わんばかりに『説得』を終わらせてネギの部屋に届けに来たのである。

 ちなみに、ネギに取りに来てもらわずにナギが届けに来たのは それなりに理由がある(女子寮に来たかったからではない)。

 その理由とは とても単純で、ナギの部屋にネギを来させたら、他人視点では「ナギが幼女を部屋に連れ込んだ」ことになるからだ。
 大事の前ならば人の目など気にしないナギだが、大事でもなかれば人の目が気にならない訳ではないのである。つまり、ヘタレなのだ。
 余談だが、木乃香は近右衛門に呼ばれているそうなので、タイミングが良いと言うか、タイミングが良過ぎて何らかの意図を感じるぐらいだ。

「ところで、カモちゃん……ちょっと訊きたいことがあるんだけど、訊いてもいいかなぁ?」

 一頻り涙の抱擁を堪能して落ち着いたのか、突如ネギは空気を換えてカモを鷲掴みにして尋ねる。
 ちなみに、ネギは確認の形を取ってはいるものの、その表情と雰囲気からカモに拒否権はないだろう。
 と言うか、この状況で拒否できたら、今日からカモは勇者を名乗ってもいい。魔王様だった怖くない筈だ。

「な、なんデショウか? ワタクシに答えられることでしたら、何でもお答えいたしますデス」

「……どうして、カモちゃんはナギさんの部屋にお邪魔していたのかな?
 それに、男子寮で下着ドロが現れたって聞いたんだけど、心当たりあるかな?
 ついでに、何でカモちゃんは簀巻きにされていたのかな? 教えてくれるよね?」

 当然ながら、カモは勇者ではなかった。ガクブルしながら、ネギの機嫌を損ねないように必死に答えている。

 と言うか、ネギの笑顔が怖い。むしろ、笑顔だからこそ怖い。
 これなら、ストレートに憤怒を表現してもらった方がマシだ。
 優しい口調もすべてを見透かしたような論法も非常に怖い。

「え、え~~と、それはデスね……」

 カモは「答えを間違ったら縊り殺される!!」と言うことを本能で理解しているのだろう。非常に必死だ。
 今の状況で「挨拶に行ったのに性欲に負けて発情した挙句 一人遊びしてました」とは言えないだろう。
 ところで、これまでの遣り取りだけで、ネギとカモの絶対的な力関係が充分にわかったのは収穫だろう。
 これだけ上下関係がキッチリと叩き込まれているのなら、ネギがカモに唆されることはない筈だからだ。
 むしろ、ネギが『よからぬこと』をカモに命じそうなので、そちらの危険性を考慮した方がいいかも知れない。

 どう考えても、カモに洗脳を施す必要なかった。と言うか、カモが踏んだり蹴ったり過ぎて同情したくなる。

「あ~~、そのコはオレに挨拶しに来ただけで、特に他意はなかったらしいよ?
 ネギを調べた結果、オレがネギのパートナーに相応しいとか何とか言ってたかな?
 んで、下着ドロに関してだが……魔が差したらしくて、ついやっちゃったらしい。
 でも、オレがキッチリ叱って置いたし、本人も反省しているから、安心してくれ」

 かなり綺麗な表現をしているが、事実を多少 脚色しただけだ。そこまで大きな嘘は吐いていない。

 ところで、ナギのベッドの上で一人遊びをしていたことを言わないのは、ナギの優しさ だ。
 そして、カモに施した洗脳や脅迫を『説教』と言い張るのも、ナギへの優しさ である。
 まぁ、どう考えても自己正当化でしかないのだが、ナギは気にしていない。それがナギなのだ。

「そ、そうなんですかぁ」

 ネギは納得したのか、妙に照れながらカモを解放した。きっとパートナー云々で機嫌がよくなったのだろう。
 ただ「カモちゃん、余計なこと言ってないよね?」とか視線で確認していたことは不思議と不思議だが。
 まぁ、恐らくは、カモの所有している「好感度がわかる程度の能力」のことを危惧しての反応だろう。
 パートナー云々と好意が結びついているとか そう言ったラブコメ的な部分がバレたとか思ってるいるに違いない。
 ナギとしては既にバレバレなので今更と言えば今更だが、ネギは気にしているようだ。乙女心は健在なようだ。

 ちなみに、ネギから解放されたカモは「お兄様、ありがとうデス」と目で語っていたらしい。

 そんなカモが少しだけ「やべ、ちょっと可愛いかも?」と思ったナギは、ある意味でさすがだろう。
 まぁ、オコジョの見た目は可愛いので、カモが変態行為さえしなければギリギリOKだと信じて置こう。
 そう自分に言い聞かせている段階で充分にダメ過ぎる気はするが、ここは敢えて気にしないで置くべきだ。



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Part.05:パートナーと言う名の鎖


「と言う訳で、お兄様。ネギ姉様のパートナー(従者)にはなっていただけませんデスか?」

 いきなりの発言に「いや、どう言う訳だよ?」と思うかも知れない。
 だが、ナギも気が付いたら いつの間にかパートナーの話題になっていたのだ。
 まぁ、嫌な流れではあるが、想定していなかった訳ではないので驚きはしない。
 むしろ、昨夜の件を考えると、ここでパートナーを頼まれるのは必然に近い。

「あ~~、悪い。それ無理」

 だから、ナギは断固たる決意を持ってアッサリと拒否する。
 乗りかかった船とは言うが、降りられる時は降りるべきだ。
 むしろ、沈みそうな船からは一刻も早く降りるべきだろう。

「え~~!! 何でですかぁ!?」

 素っ頓狂な声を上げてナギの拒絶に反応したのは、話を持ち掛けたカモではなく隣にいたネギだった。
 何でネギが反応したのかは疑問だが、そこは気にしたら面倒なことになるのでスルーして置こう。
 ナギをパートナーにしたかったんだろうとは予想できるが、予想できるので敢えてスルーしよう。

「いや、何でって言われても……今回の騒動が終わったらオレは記憶を消してもらって魔法とは無関係になるんだろ?」

 パートナーになれば記憶を消さなくて済むので問題ない とか言う超理論はやめて欲しい。
 本末転倒と言うか、そもそもナギは無関係であり今回は巻き込まれただけなのだ。
 つまり、今回の件にケリが着いたら記憶を消されて関係者じゃなくなる筈なのである。

「むぅ~~~、確かにそうですけどー」

 しかし、ネギはあきらかに納得してないようで、唇を尖らせながら拗ねる。
 その仕草がちょっとだけ可愛いと思ったナギだが、今はそれどころではない。
 と言うか、ネギの仕草は偶に計算っぽいので、木乃香の仕込みなのだろう。

 まぁ、天然でやっている部分も確かにあるので、判断に迷うところだが。

「でも、パートナーになっていただくと いろいろな特典が手に入るんですよ?
 たとえば『召喚』ができますので、昨日みたいに拉致されても直ぐに救出できますよ?
 それに『念話』って言うテレパシーみたいなものも使えるので とても便利ですよ?
 あと、場合によっては『アーティファクト』って言う便利アイテムも手に入るんですよ?」

 まるで どこかの新聞勧誘のようにお得要素を並べるネギ。当然ながら「じゃあ、3ヶ月だけ」と言う流れにはならないが。

「まぁ、落ち着いて。パートナー関係を結ぶことの利便性はわかったから。
 でもさ、無関係になるオレをパートナーにしても仕方が無いんじゃない?
 それとも、今回の騒動のためだけにパートナーになれって話なのかな?
 もし そうだとしたら……パートナーと言うものは随分と軽いんだね?」

 原作では大半が場当たり的だったから軽いのかも知れないが、そこは棚に上げるのがナギのクオリティだ。

「ち、違います!! 『仮』とは言え、パートナーは軽いものじゃありません!!
 パートナーとは神聖なものであり、言わば『夫婦』のようなものなんです!!
 ですから、ボクはナギさんだからこそパートナーになって欲しいんです!!」

 ナギは「『仮』ですからそんなに重くないですよ」と言った反応を予想していたので、力いっぱい否定されたことに軽く驚く。

「そうか。じゃあ、なおさら無理じゃない? この騒動の後も魔法に関わるつもりなんてオレには無いんだから」
「じゃ、じゃあ、何で魔法に関わりたくないんですか? それさえ解消できたら問題ないってことですよね?」
「いや、何でって言われても……あんな超常決戦を見てるんだから、普通は危なくて関わりたいとは思わないだろ?」

 当然ながら、ツッコんだらそこで試合終了となる夫婦云々については軽やかにスルーするのがナギだ。

 それ故に、ネギの爆弾発言を聞かなかったことにして拒否だけをしたのだが……ネギは超解釈を披露してくれた。
 つまり「魔法に関わりたくないからパートナーが嫌だ → なら、魔法にかかわりたくなくなればOK」と言う発想である。
 ネギの超理論に慣れつつあるナギだったが、さすがに その発想はなかった。まぁ、発想になかっただけで論破はされないが。

 と言うか、基本姿勢として「魔法は危険で、危険は嫌だから関わりたくない」のだから、その理由を訊ねられても痛くも痒くもない。

「……なるほど、よくわかりました。確かに危険ですものね。ナギさんの仰ることは尤もですね。
 ですから、ナギさんにパートナーになってもらうのではなくて逆にボクがパートナーになります。
 そうすれば危険ではありませんで万事解決ですよね? なので、ボクをパートナーにしてください!!」

 しかし、ネギが返した言葉はナギの予想を遥かに超えていた。遥かに超えすぎていて唖然としてしまう程だ。

 さすがに「危険だからナギはパートナーになりたくない」と言うことから「立場が逆なら危険じゃない」と言う発想にはならない。
 確かに「パートナーになる = 盾役になる」と考えるのなら、逆の立場になれば危険は減るかも知れないが……それだと本末転倒だ。
 ネギは盾役が必要なのでパートナーを求めていた筈なのに、何故か自分が盾役になってでもナギとパートナーになりたがっている。

 いや、ネギの気持ちを考えればわからない訳でもないのだが……それでも、その発想は突飛過ぎる。

(と言うか、そもそもオレは今回の騒動が終わったら魔法とは縁を切ることになってるんじゃないかな?
 魔法バトルの危険性の前に、オレをパートナー候補として扱っている時点でおかしいって気付こう?
 これからも魔法に関わっていく と言う意味では、パートナーになるのもパートナーになられるのも一緒でしょ?)

 ナギの断わり方が悪かったのかも知れないが、それでもネギの妄執の凄まじさが見て取れる事例だろう。

「……確かに、危険なバトルが嫌だから と言う理由でパートナーになるのを拒否ったね。それは確かだ。
 でもさ、それは『パートナーとしてバトるのが嫌』なのではなく『バトルそのものが嫌』なんだよ。
 魔法とバトルが直結している訳ではないけど、それでも魔法とバトルが密接に関係しているのは事実でしょ?
 つまり、魔法そのものが嫌とも言える訳で、その意味でオレは魔法に関わりたくないってことなんだけど?」

「その点なら大丈夫です!! ナギさんはボクが守りますから、バトルの点は安心してください!!」

「まぁ、守ってもらえるのは嬉しいし、守ってもらう立場だから反論すべきじゃないとは思う。だけど、敢えて言わせてくれ。
 たとえオレがバトルをしなくて済むようにネギが尽力してくれたとしても、今回のように突然 襲われることだってあるよね?
 向こうはこっちの都合など配慮してくれないし、弱点を突くのが兵法の基礎とも言えるからね。オレの安全性は保障されないさ」

「……ええ。結局はナギさんを危険に晒す可能性はありますね。ですが、大丈夫です。だって、今回のような危険は『今後 起こり得ません』から」

 ネギは随分と強気だが……だからこそ、ナギは「その根拠が何処にあるのか?」とても不安になる。
 何故なら、原作では京都でも悪魔襲来でも魔法世界でもネギのパートナー達は危険だったからだ。
 原作と同じ様にはならないとわかっているが、ネギに「これから危険は無い」と言われても微妙なのだ。

「今後 起こり得ない、ね。それじゃあ、それを信じる根拠はあるのかな?」

「……根拠ならあります。本来は明かすべきではないと思っていましたが、信じていただくためには話すべきでしょう。
 と言うのも、今回の騒動を画策したのは学園長先生であり、画策された理由がボクの修行のためだった からです。
 ちなみに、このことはボクもさっき知ったばかりです。しかも、学園長先生を問い詰めることで漸く引き出せました」

 引き出したのは賠償金のような気がするが、事実関係を知らないナギは「頑張っで情報収集したんだなぁ」と感心するだけだ。知らぬが仏である。

「で、その時に、今後は『ボク以外に迷惑が掛かるような課題は課さない』ように言質を取って来ましたし、
 そもそも、ボクが結ぼうとしていたパートナー契約は『ボクが麻帆良にいる間だけ』のものの予定でしたから、
 ボクがナギさんのパートナーになったとしても、今回のような危険な事態は『今後起こり得ない』んですよ」

 ネギは理路整然と言い終えると「これが根拠じゃ弱いですか?」と上目遣いで問い掛ける。

 つまり「仮契約期間はネギの修行期間だけであり、今後は危険な修行はないから安全である」と言いたいのだろう。
 確かに、近右衛門の監督範囲内にある課題に限っては安全が保障されているので、その意味では充分な根拠だ。
 だが、それは言い換えると、近右衛門の監督範囲を超えた課題に関しては安全が保障されていない と言うことだ。

(しかも、課題以外の危険については言及されてないよね? 学園長のことだから「課題じゃないから契約違反じゃない」とか言いそうなんだけど?)

 言質を取ったこと自体は評価すべきことだが、ナギにしてみれば詰めが甘い。どうせなら もっと踏み込んで欲しかったところだ。
 だが、脳筋な方面に進んでいないことがわかったので、それだけで充分と言えば充分だ。と言うか、最初から多くを求めてはいけない。
 まずはナギにとって好ましい方向に成長してくれたことを褒めるべきだ。褒めたうえで「ベターな結果」を示唆して、導いていけばいい。

「なるほどね。つまり、学園長の課す課題の安全性は保障させたんだ。まぁ、あの学園長を相手にしたんだから、健闘賞だね」

 ナギは穏やかに微笑みながらネギの頭を優しく撫でる。「よくやった」と言うのが偉そうに感じたので、態度で褒めたのだ。
 まぁ、ナギに頭を撫でられることを望んでいるネギとしては、これはこれで嬉しい褒められ方なので大した問題はないが。
 もちろん、褒めるだけでなく詰めが甘いことを指摘するのも忘れない。微妙な言い回しだが、ネギならばナギの意図に気付くだろう。

「……少し、詰めが甘かったですね。ですが、大丈夫です!! ナギさんが危険に晒されたとしても命と引き換えにしてもナギさんを守りますから!!」

 どうやらネギは正しくナギの意図を察したようで、褒められたことを喜びつつも浮かれ過ぎずに気を引き締める。
 ここまでなら手放しで評価すべきところだが、気を引き締めただけでなく余計な決意を表明してしまったので大変だ。
 と言うか、どう考えてもネギのセリフは重過ぎる。その意気込みは嬉しいが、命を懸けられるのは少々困ってしまう。
 それに、いつの間にかパートナーの危険性に話題が移っていたが、そもそもの話題はナギが魔法と関わりたくないことだ。
 ネギの勢いに押されていたが、初心を忘れてはいけない。パートナー云々の前に、魔法に関わらないのが一番 安全なのだ。

「まぁ、ネギの気持ちは嬉しいんだけど「と言うか、ナギさんにはボクの全裸を見た『責任』を取って欲しいんですけど?」……ぎゃふん」

 だからこそ、ナギは「気持ちは嬉しいけど、魔法に関わらないのが一番いいと思うんだ」とか言おうとしたのだが、
 狙ったとしか思えないタイミングで発せられたネギの一言で、ナギの言い訳は軽やかにインターセプトされたのだった。
 余りのショックに「ぎゃふん」と言ってしまったナギの気持ちもわからないでもない。同情くらいはしてもいいだろう。

 ただ、同情したからと言ってナギが救われる訳がないのは言うまでもないだろう。

(しかし、まさか ここで そのネタを引っ張り出して来るとは……ネギ、恐ろしいコ!! とか本気で思っちゃうねぇ。
 って言うか、ヤバくない? 記憶を消してもらって有耶無耶にしようと思っていたのにネギにそんな気が全然ないじゃん。
 むしろ、ネギはここでケリを着ける気だね。パートナー関係を結ぶって言う『落とし所』に持って行く気 満々だよ。
 言い換えるならば、パートナー関係を結ぶ以外の『落とし所』を見付けたうえで説得できれば、どうにかなるってことだね)

 軽く現実逃避しつつもナギは現状を正確に分析し、打開策を講じる。

 冷静になって考えてみれば、パートナーと言う表現になっているが要は『魔法使いの従者』のことなので、
 ナギが魔法使いではない以上 魔法使いであるネギをナギが従者にするのは本末転倒としか言えないことだ。
 ネギはナギとパートナー関係を結ぶことに意味を見出しているが、原義から考えると無意味としか言えないのだ。
 そこまで考えたナギは、少しくらいの飴(デートくらいならいいだろう)も交えて正論で説得することにした。

「でもさ、パートナーって『魔法使いの従者』なんだろ? なら、魔法使いじゃないオレがネギをパートナーにするのは無理があるんじゃないかな?」

「? ああ、そう言えば、そう言った定義でしたね。ですが、それは特に問題になりませんから、安心してください。
 と言うのも、そもそも『パートナー契約』に必要なのは『魔力』や『気』であり、それらは誰でも持っているからです。
 ですから、魔法使いじゃないナギさんであっても、魔法使いであるボクをパートナーとすることは可能なんですよ。
 まぁ、魔法使いじゃないマスターの場合パートナーに『魔力供給』ができない と言うデメリットはありますけどね」

 だがしかし、ネギには正論が通じなかった。可能不可能の話ではなく意味無意味の話なのだが、ネギには届かなかったのだ。

(……どうやら、ネギの説得はあきらめるべきだね。パートナー関係を結ぶ以外の『落とし所』を受け付けてくれそうにないや。
 だから ここは発想の転換をすべきだ。つまり、ネギの全裸を見た件を『パートナー関係を結ぶだけ』で帳消しにできた と考えればいい。
 実は『結婚と言う鎖で人生を縛られる可能性』も思い付いてから、何が何でも記憶を消してもらって有耶無耶にしたかったんだよね。
 つまり、魔法関係に関わることにはなったけど、最悪の状況ではないんだ。もちろん、嫌だけど最悪ではない。不幸中の幸いって奴さ)

 何だか無理矢理 自分を納得させている気がするが、人生あきらめが肝心である。

 もちろん、簡単にあきらめてはいけない場面も、多々あるだろうが……早めにあきらめた方がいい場面も多々あるのだ。
 そして、今回は あきらめた方がいい部類だろう。ここで無駄な抵抗をしようものなら、ネギの攻め手は苛烈になる筈だ。
 何故なら、事故とは言えナギがネギの全裸を見てしまったことは事実であり、ネギはそれを利用できる(脅迫に使える)のだから。

「……OK、わかったよ。それじゃあ、オレを守るためにパートナーになってもらうことにするよ」

 ナギは万感の思いを込めて、ネギとパートナー関係を結ぶことを――『仮契約』をすることを承諾した。
 その胸中に去来するものは余人には計り知れない。解脱したような笑みがすべてを物語っている気がするだけだ。

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 …………………………………………………………

 ところで『仮契約』の経緯は、ナギの尊厳のために詳細は語らない。詳細は語らないが、事実だけは記して置こう。

 ナギの承諾を受けたネギはカモちゃん、お願い」と端的にカモに号令を下し、契約の魔法陣を描かせた。
 そして、その中央にて陣から立ち上る光を背景に二人は『契約の口付け』を交わし、仮契約を無事に成功させた。
 ちなみに「唇がプルップルで ちょっと気持ちよかった」らしい。もちろん、どちらの感想かは敢えて語らない。

 どうでもいいが、何気に『こっち』でのファーストキスだったので、ナギのショックは非常に大きかったようだ。

 最後になったが、二人の相性がよかったのか ナギの魔力か気が膨大だったのか は定かではないが、この仮契約でアーティファクトが生まれた。
 当然ながら、ネギが従者なのでネギのアーティファクトだ。そして、それは原作で登場した『千の絆』とは別の物であった。
 その名は『ゲンソウホウテン』。本型のアーティファクトで「記された設計図通りの魔法具を具現化する」と言う能力を持つものだった。

 ……失ったものは大きいが、得られたものも大きかった。ナギは そう思うことにしたのだった。


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―― ネギの場合 ――


 カモちゃんが打ち合わせもせずにイキナリ「パートナーになってください」と言い出した時は、ちょっと焦りました。

 ボクとしてはタイミングを計りたかったので、カモちゃんには後で「勝手なことしちゃダメだよ?」って教えなきゃですね。
 まぁ、結果はだいたい思惑の通りになりましたので、今回は特別に『教えるだけ』で許してあげますけどね?

 ……そうです、ボクは「結婚を前提とした お付き合いで『責任』を取ってもらう」のはダメだって気付いたんです。

 ですから、方向転換をして「パートナーになっていただく形で『責任』を取ってもらう」ことにしたんです。
 ナギさんなら「結婚する形で『責任』を取ってください」って言えば、渋々ながらも結婚してくれることでしょう。
 ですが、それは『何か』が違うと思うんです。ナギさんを縛るような方法で結ばれても意味がないって思ったんです。
 ボクはナギさんと結ばれることを望んでいますが、だからと言ってナギさんの意思を無視する気はありません。

 そのため、結婚していただくのではなく「パートナーという形で傍にいていただく」ことにしたのです。

 だって、パートナーになっていただければ、必然的に一緒にいられる時間が増えますからね。
 そうすれば、他の女性よりもアドバンテージが得られますし、ボクの魅力に気付いてもらえるかも知れません。
 ちょっと夢を見過ぎだとは思いますけど、無理矢理 結婚するよりは『いい結果』になると思ったんです。

 ところが、事態はボクの想定の範囲外へと行ってしまいました。

 本来ならナ『責任』の件を利用してナギさんが断れないような状況を作ってから打診する予定だったんですけど……
 カモちゃんが功を焦ったために、ナギさんが「記憶を消されて無関係になる」と言う方向に行ってしまったんです。
 そのため、かなり焦ってしまい、自分でもとんでもないこと(夫婦云々)を口走ってしまったと反省しています。
 ナギさんが流してくれたのでよかったですけど、ヘタをしたらボクの気持ちがバレてしまったかも知れません。
 それに、結婚と変わらないと言う点で、伝家の宝刀である『責任』が持ち出しにくくなってしまいましたしね。

 ですが、自分の失言の御蔭で盲点に気付けました。夫婦のようなものなら、どちらがパートナーでも問題ないって。

 それに、ボクにとって大事なのは「ナギさんにパートナーになっていただくこと」ではなく「ナギさんの傍にいること」です。
 そもそも、ナギさんの傍にいるための手段として、ナギさんにパートナーになっていただこうとしていただけですからね。
 つまり、ナギさんにパートナーになっていただくことが目的ではなかったんです(いつの間にか手段が目的に変わっていたんです)。

 まぁ、そんな訳で、「ボクがパートナーになればいいのでは?」と言う方向で話を進めることにしたんです。

 で、その結果、紆余曲折はありましたが、最終的には伝家の宝刀を抜くことで見事に目的が達成できた訳です。
 発想の転換の勝利と言うか、一つのアプローチ方法だけに捕らわれていては「まだまだだね」ってことですね。
 若干、ナギさんの意見を封殺してしまった感もありましたけど、結果的に納得していただけたので問題ないでしょう。
 だって、アーティファクトも強力そうですし、何よりも遂にナギさんとのキスできましたから、もう万々歳です。
 それに、カモちゃんに録画を命じて置きましたので『ちょっとしたお願い』くらいなら、これをネタに聞いてもらえそうですし。

 ………少々の予定変更はありましたが、結果的にボクの望んだ方向に行けそうです。



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Part.06:汚れちまった悲しみに


 汚れちまった悲しみに 今日も後悔が降り積もる
 汚れちまった悲しみに 今日も涙がチョチョ切れる

 ……うん、一部改変しているから著作権はOKだよな?

 あ、原典が知りたい人は「汚れちまった悲しみに」でググればいいと思う。
 中也の詩の中で一番好きな詩なのだが、こんなネタに使うとは思わなかったよ。
 って言うか、微妙にメタ発言かな? いや、自重しようとは思っているんだけどね?
 どうやら、オレと言う人間は自重って言葉をどっかに置いて来たみたいなんだよ。

「つーか、さっきからブツブツと何を言ってんスか?」

 いや、オレの嘆きをわかりやすく表現していただけさ。
 汚れちゃったんだなぁって切実に伝わって来るだろ?
 そしたら、こんな哀れなオレに同情したくなっちゃうだろ?

「いや、ナギは元々汚れているっスから、今更『汚れた』って言われても……反応に困るっスね」

 クッ!! これだから、心の汚れた大人はダメなんだ!!
 心の清らかな子供じゃないとオレの純粋さはわからないさ!!
 ってことで、ココネ。美空のバカに言ってやってくれ。
 オレの心はビュアで、筋斗雲に乗れちゃうくらいにキレイだって。

「え~~ト、アタシもナギが汚れているのはモトモトだと思うヨ?」

 うっそぉおおん!! オレ、ココネにまで汚れているって思われてたの!?
 マジで!? 本当にマジで!? 超ショックなんですけど!? ナギ、もう立ち直れない!!
 あ、でも、ココネに蔑まれた目で見られていたと思うと、それはそれで――

「……大丈夫。そんなナギがスキだかラ。だから、ナギは汚れていてもいいんだヨ?」

 コ、ココネ~~!! お兄ちゃんは感動した!! モーレツに感動したぁああ!!
 何だか、危なくアブない方向に思考(って言うか嗜好)が進むところだったけど!!
 どうにかココネの愛の御蔭でオレはギリギリのラインでとどまれることができたよ!!

「って、美空が心の中で言ってタ「ちょッ!? ナニイッテンノ、ココネェエエ!!」」

 ……いや、そこで焦るなよ、美空。それでは本当に美空が言っていたように聞こえるじゃないか?
 今のはココネなりの照れ隠しってヤツだろ? オレへのアツイ想いを美空に転嫁したんだろ?
 フフフ、オレにはすべてお見通しさ。って言うか、ココネのことでわからなことは何も無いさ。

「うわっ!! この勘違い男、キモチワルッ!! キモ過ぎてキモチワルッ!!」
「……生きていくうえで自信は大切だと思うケド、過剰はダメだと思ウ」

 フッ!! 何か聞こえる気はするけど、オレには聞こえないね!!
 だって、今のオレはとっても幸福な気分に浸っているんだから。
 イヤな現実から逃避して束の間の幸せを噛み締めているんだから。

 あ、ところで、現状の説明って必要? 必要ないとは思うけど、一応して置くか……

 実を言うと、ネギとパクったオレは心の傷がシャレにならないレベルに達していたんで癒しを求めて教会に来たのですよ。
 だって、美空とジャれるとストレス解消にはなりますし、何よりもココネの『愛らしさ』がオレの荒んだ心を救いますからね。
 愛は地球を救う とか言うけど、むしろ愛は人を救うのだよ!! って言うか、ココネの愛がオレを救ってくれるのだよ!!

 ……すんません、自分で言っててキモチワルイと思います。つまり、それ程に心がヤヴァい状態になっていたって思ってください。

「まぁ、そう言う訳で、もっとオレに愛をくれないか?」
「ナニイッテンノ? 普通にキモチワルイんスけど?」
「クッ!! 相変わらず失敬だな。だから、美空はダメなんだ」

 これだから、坊やは困るのだよ(意味不明)。

「……ココネはこんな哀れなオレに優しくしてくれるよな?」
「うン? 何かイヤなことでもあったノ?」
「うんうん、やっぱりココネは可愛いなぁ」

 美空とはダンチだね。だから、頭をグリグリと撫でてやろう。

「実はさぁ――って言っても、諸々の事情で深くは話せないんだけど……
 とにかく、オレは悪くないのに死亡フラグが立った気がするんだよね?
 しかも、短期間の間に乱立しちゃってさぁ、いつ死ぬかガタブルっスよ」

 いいんちょ にしろエヴァにしろパクティオーにしろ、この二日で死亡フラグが立ち過ぎてるよ。

「……ナギはもっと世界を見回した方がいいと思うヨ?」
「それと、余裕があれば人の気持ちも察っするべきっスね」
「え? つまり、それってオレが空気読めていないってこと?」
「まぁ、平たく言うと、そう言うことになるっスね」
「ついでに言うと、重度のニブチンさんでもあると思うヨ」

 う~~ん、言われてみればそうかも?

「……もしかして、今まで自覚なかったんスか」
「さすがナギだネ。むしろ、さすが過ぎるヨ……」
「ア~~ハッハッハッハ!! ……泣いていい?」
「別にいいっスけど、目の前だとウザいんで懺悔室でお願いするっス」
「今は神父さんもシャークティもいないカラ、貸し切り状態だヨ?」

 ……うん、ちょっと泣いて来ます。

 あ、泣いている間は決して覗かないでくださいね?
 鶴になって飛び立っちゃうかも知れませんから。
 そうしたら、恩返しが中途半端になっちゃいますから。

 ちなみに、二人からは「ツマンネーヨ」って反応しか返って来ませんでした(ある意味で当然)。

 って言うか、癒されに来たのに心にダメージを負った気がするのは何故でしょうか?
 まぁ、ココネは相変わらず可愛いですから、それだけで充分に癒されたんですけどね。
 でも、何か微妙に機嫌がよくなかったような気がするので、ちょっと残念なんですよ。

 ……もしかして、木乃香との噂に妬いてくれたのかな?

 と思って置くと、オレの心は幸せに満ち足りるので勘違いして置こうと思います。
 冷静な部分では「いや、それはねぇだろ」とは思いますが、勘違いして置きたいんです。

 オレの得意スキルは『勘違い』ですからね(かなり自棄)。



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Part.07:誠意と言う名の思惑


(オゥ、ジーザス……)

 懺悔室で一頻り泣いた後、紳士を自称するナギは美空達が教会での仕事を終えるのを待って二人を女子寮の近くまで送った。
 ポイントを稼いで機嫌を取ろう とか思った訳ではないし、もう少しだけココネを愛でたい とか思った訳ではない らしい。
 それはともかく、二人を送った後は夕食の買い出しをして帰宅した訳だが……何故か男子寮の手前で茶々丸が待機していたのだ。

(もしかして、またもや拉致されるのかな? さすがに昨日の今日で来るとは思ってなかったから『対策』が間に合ってないなぁ)

 一応だが、ナギは「今回の騒動を終わらせるための策」を考え付いていた。だが、まだ準備が整っていないため、現段階では解決しようがない。
 勝手な思い込みで、エヴァ達は直ぐには動かないだろう と――つまり、時間的に余裕があるだろう と高を括っていたナギのミスだ。
 まぁ、厳密に言えば、準備などせずとも『対策』は実行可能なのだが……やはり準備をしてからの方が都合がいいので、準備は必要なのだ。

「確か、絡繰さんだっだっけ? 今夜も拉致るために待ち伏せしてたのかな?」

 軽く現状を嘆いた後、気分を切り換えたナギは(言葉の端端に昨夜のことを覚えていることを示しながら)砕けた口調で茶々丸に話し掛ける。
 ここで、せっかく一般人だと思わせたのに(つまり、記憶を消されている筈なのに)記憶が残っていると示唆したことに疑問を覚えるかも知れない。
 だが、答えは簡単だ。再び接触されている段階で無関係で終わらせることは不可能なので、記憶を消された振りをする意味が然程なかったからだ。
 むしろ、ナギの実行しようとしている『対策』のためには記憶があった方が都合がいいので、ナギは記憶が残っていることをアピールしたのだである。
 ちなみに、ナギは穏やかに話しているが、ポケットに突っ込んだ左手でパクティオーカードを握っており、いつでもネギを『召喚』できる状態だ。

「……いいえ。本日は謝罪に参りました」

 茶々丸は正確にナギの意図を察したようで、ナギが「昨夜のことを覚えている」ことがわかったのだろう。
 少々複雑そうな表情をした後(ロボットなのに実に芸が細かい)、茶々丸は謝罪と共に深々と頭を下げた。

「謝罪? ……ああ、確か昨日『改めて謝罪する』とかって言ってたっけ」
「ええ。昨夜は状況が状況でしたのでキチンと謝罪できませんでしたから」
「そっか。でも、来てもらって悪いけど、君に謝ってもらう筋合いはないよ」

 まさか本当に謝罪に来るとは思っていなかったので再び拉致されると警戒していたナギだが、茶々丸の様子から警戒を緩める。

 まぁ、謝罪は建前で こちらを油断させるのが目的かも知れないので、完全に警戒を解く訳ではないが。
 ナギは人間を信じていないので(茶々丸は人間ではないが)、常に裏があると想定して動いているのだ。
 非常に寂しい生き方だが、ナギは油断したら足を掬われることを『身に染みて』わかっているのである。

「だって、君は命令に従っただけだろう? つまり、責任は命令した側にあるから、君に謝られる筋合いはないさ」

 これはナギの本音だ。ナギは本心から「茶々丸に非がない」と思っている。
 撃った兵士よりも撃たせた司令官の方が罪は重い と言う考えを支持しているからだ。

「……ですが、私が貴方の意思を無視して お連れした事実は変えようがありません。
 命令に従っただけとは言え、それでも私に何の非がない訳ではありませんでしょう?
 それに、本来なら貴方が『関係者』であるかどうかを調べなくてはなりませんでした。
 それを怠ったが故に貴方を巻き込んでしまったのですから、その点でも非があります」

「まぁ、確かにそうなんだけど……でも、それって命じた側が確認をさせなかったからじゃないのかな?」

「いいえ。マスターが命じなかったとしても、確認を怠った私の責任となります。
 何故なら、マスターの命令を補完して動くのが従者のあるべき姿ですからね。
 ですから、『裏』を取らずに行動をしてしまった私にこそ非があるのですよ」

 茶々丸は「命じられたことだけを行うのでは『お人形』と変わりません」と付け加えて締め括る。

 この時、ナギは ここまで自立思考する茶々丸のAIに驚嘆すると共に、素直に茶々丸の人格を認めた。
 これまでは「どうせロボットで、プログラムで動いているに過ぎない」と言う一種の蔑視あった。
 しかし、プログラムの一言では片付けられない茶々丸の『人間らしさ』を見て、そんなものは霧散した。

 そう、この時からナギは茶々丸を『人間っぽいロボット』ではなく『一人の人間』として扱うようになったのだ。

「そんな訳で、お詫びとして これをお受け取りください」
「それは態々ご丁寧に――って、ディスク? DVDか何かか?」
「ええ、DVDでして、中身は『マスターのお宝映像集』です」

 茶々丸が差し出したものはノーレーベルのディスクだった。つまり、自作の品なのだろう。

「ん? 今、中身を何と仰いましたか? 何だか聞き捨てなら無いフレーズだったんですけど?」
「ですから、『マスターのお宝映像集』です。ちなみに、観賞用・保存用・布教用の三点セットですよ?」
「た、確かに三枚あるね。いやはや、マニアには嬉しい心配りだねぇ。これで気にせずに使えるねぇ」

 もちろん、ナギは衝撃の事実におかしくなっているだけだ。おかしくなって本音が漏れてしまっているだけなのだ。

(って言うか、ここで言う『お宝』は『アレな方面』での『お宝』ってことだよね? むしろ、そうに違いないよね?
 これで『まったく役に立たない』ものだったら、オレは修羅になるよ? 期待値が高かった分、ショックも甚大だからね。
 ところで、オレが言っている意味がわからない人は華麗にスルーすればいいと思う。まぁ、みんなわかってるだろうけど)

「更に、特別に抱き枕カバーをお付けします。もちろん、観賞用・保存用・使用用の三点セットです」

(な、何てことだっ!! リバーシブルになってて、下着姿とゴスロリ姿を両方 楽しめてしまうなんて……素晴らし過ぎる!!
 って言うか、『布教用』ではなく『使用用』って辺りがグッジョブ過ぎるぅぅうう!! あ、何に使うかはヒミツね。
 しかし、この お得セット凄いなぁ。さすがは茶々丸だよ、うん。まぁ、何がどう『さすが』なのかは よくわかんないけど)

 何度も言うが、ナギの本音である。精神をヤられたから こうなったのではなく、元々こうなのだ。

 普段は危険要素から離れるためにクールを保っている(アレでも本人は保っているつもりなのだ)が、
 そのなけなしのクールさも失えば、後に残るのは「変態と言う名の紳士」と言うナマモノでしかない。
 まぁ、変態と言う名の紳士 と言うか、変態そのものでしかない気がするが、これが素のナギなのだ。

「と、とりあえず、誠意溢れるお詫びの品に『ありがとう』と言って置くけど……何故に こんなチョイスだった訳?」

 もちろん、ナギには御褒美としか言えないものだったが……お宝映像集にしろ抱き枕カバーにしろ人を選ぶ品物だろう。
 それに、その内容がエヴァと言うロリ方面に食指の動く紳士 向けのものだったので、なおさら人を選ぶに違いない。
 更に言うと、贈り主が茶々丸なのもハードルを上げている。これらを女のコから贈られて素直に受け取れる勇者は少ない。

「簡単に言いますと、神蔵堂さんのことを『調べた』からですね」

 茶々丸は今日の天気の話でもしているかのようにシレッと とんでもないことを述べる。
 その『調べた』はあきらかに不法なものだろう。主にプライバシーを侵害する方面で。
 と言うか、ナギなら これらを喜ぶと判断したことになるので、ナギの性癖は暴かれたのだろう。

 まぁ、別に隠していた訳ではないので暴かれても大した問題ではないが……それでも多少は思うことがあるようだ。

「なるほどねぇ。ちなみに、オレって どんな人物だと評価されたのか 訊いてもいい?」
「敢えて言葉にするとしたら『口にすることさえ憚られる』と言ったところでしょうか?」
「いや、それ何て四番目の使い魔さ? いや、あれは『記すことさえ憚られる』か」
「まぁ、そうですね。言葉としては似てますけど、ベクトルは完膚なきまでに別物ですね」
「そうだよな――じゃなくて、話を戻すと、オレってロリペド野郎って判断されたのかな?」
「平たく言うと そうなりますね。付け加えると、その上に『鬼畜』と言う枕詞が付きますね」
「で、でも、オレはロリコンじゃないよ? 単に幼女も愛でられるだけの紳士だよ?」
「これは私が言うべきことではないのでしょうけど……それは、よりダメな気がします」

 まぁ、そうだろう。ナギ自身も そう思っている。だが、だからと言って、弁解しない訳にもいかないのである。

「そ、それでも!! 守りたい世間体が あるんだぁああ!!」
「ですが……言葉だけでも、勢いだけでも、ダメなのです」
「でも、何も変わらないからって何もしなければ もっと何も変わらない」
「……貴方の願いに――イキたいと言う望みに これは不要ですか?」

 凄ぇ、きっと理解されないだろうと思ったネタを返して来た!! それが、ナギの率直な感想だった。

 まぁ、後半は若干 苦しい気はするが、それでも充分に及第点だろう。
 と言うか、何となく感じていたことだが、これでハッキリした。
 茶々丸はナギの同類だ。美空とは違う方向の、オタク的な意味での同類だ。

「いえ、必要です。ですから、ありがたく受け取らせいただきます」

 それ故に、ナギは素直に受け取る。と言うか、ナギには受け取る以外の選択肢などない。
 今までの流れは何だったのか 疑問に思われるかも知れないが、一種の儀式だと思えばいい。

「それでは、今宵は ごゆるりとお楽しみください。きっと、ご満足いただけると確信しております。
 あ、ちなみに、私のオススメは極秘フォルダ内にある、マスターがマスター的なことをしているシーンです。
 パスワードが掛けられていますけど、Passは『0721』です。もちろん、数字の意味は聞かないでください」

 つまり、それはマスター○○ションと言うことだろう。そして、数字はオナ○ーと言うことだろう。

「どう見ても幼女にしか見えないマスターが○ナっている姿は、可愛らしくも実に艶やかです。
 ロリを病気だと考える哀れな方でも簡単にオチるシロモノだと豪語できる自慢の作品ですね。
 あ、余談ではありますが、マスターが『最中』にどんな妄想をなさっていたのかは知りませんが、
 偶然の一致で『ナギ……』と呟きながらなさっていたので ちょっとしたドリーム気分も味わえますよ?」

 ハッキリ言った!! 今、伏字にしなきゃいけないようなことをハッキリ言ったよ、このコ!!

 と言うか、その呟きはナギはナギでも、サウザンド・マスターのことだろう。ナギ違いだ。
 だが、内容はともかく言葉の響き自体は同じなので、ナギにはサプライズ的な御褒美だろう。

「あ~~、でも、そんな映像を『鬼畜ロリペド野郎』なんかに見せてもいいのかな?」
「構いません。私の感じたあの感動、貴方なら理解していただけると信じています」
「へぇ、そうなんだ。そう言うことなら、遠慮せずに ありがたく受け取って置くよ」

 つまり、自分の趣味を布教したいのだろう。ナギとしては痛い程よくわかる心理であった。

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 そんなこんなで茶々丸からの『誠意』を受け取ったナギは意気揚々と部屋に戻った。

 そして、起動したパソコンにDVDをセットして「さぁ、夢の世界へ旅立とう」とした時、ナギは あることに気が付いた。
 それは「エヴァがネギと戦った理由とナギを人質にした理由について確認して置けばよかった」と言うことだ。
 ネギの近右衛門から聞き出してエヴァが課題として襲撃したのはわかっているが、課題だけが理由とは確定していないからだ。

 原作を参考にするなら「『登校地獄』の解呪のためにネギの血を欲していた」と言う理由が導き出せるが、それはあくまでも参考でしかない。

 もしかしたら、エヴァは解呪をするつもりがないかも知れないし、更には『登校地獄』にも掛かっていないかも知れない。
 まだ確定した情報はないのだから、あらゆる可能性を視野に入れて進むべきだ。何故なら、ナギの考えた『対策』は幅が狭いからだ。
 それこそ原作通りにエヴァが『登校地獄』を解呪したいと望んでいなかったら まったく意味がなくなるくらいに、幅が狭いのだ。

(だから、エヴァがネギやオレを狙う理由を確認して置きたかったんだけど……最早 後の祭りだね)

 覆水盆に返らず。過ぎ去ってしまったことは、今更どう頑張ろうとも覆しようがない。
 ならば、今は過去に嘆くよりも未来を よりよくするために努力するべきだろう。
 そのため、ナギは とりあえず『お宝』で「ヒャッホゥ!!」することにしたのだった。


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―― 茶々丸の場合 ――


 神蔵堂さんに接触した結果、いろいろと得るものがありました。まず、神蔵堂さんが「私を覚えている」と言うことですね。

 これは、昨夜の件の記憶消去は起きなかった と見るべきで、ネギさんは「問答無用で記憶消去をする愚は犯さない」と言うことでしょう。
 と言うのも、課題だと言うことがバレたとは言え、まだ事件は終わっていませんので現段階で神蔵堂さんの記憶を消すのは愚の骨頂ですからね。
 どう考えても事件は終わっていないので、再び神蔵堂さんが巻き込まれる可能性がありますから、記憶を消すのは事が終わった後でしょう?
 ネギさんがそれを理解していると言うことがわかっただけでも謝罪に来た甲斐はありましたね(対象の傾向を知ることは重要なことですから)。
 まぁ、個人的には、私の柔肌(機械仕掛けの身体なので実際は硬い人工皮膚ですが、単なる比喩表現です)を見た記憶があるのはイヤですが。
 しかし、それも事が済めば忘却されることでしょうから、この場合は気にしないで置くことにするべきでしょう。臥薪嘗胆と言うものです。

 それと、神蔵堂さんに纏わる噂(主に鬼畜ロリペド野郎)は本当だった と言うことも重要なことですね。御蔭で予定通りに事が運べましたよ。

 まぁ、仮に神蔵堂さんが幼女の素晴らしさがわからない哀れな人間だったとしても、それはそれで問題ありませんでしたけど。
 だって、私の厳選した『マスターのお宝映像集』と『マスターの抱き枕カバー』の破壊力は どんな人間でも魔道に落としますからね。
 ただ、神蔵堂さんの趣味嗜好にシンパシーを感じてしまい、少々罪悪感を感じてしまったのが惜しむべきところですね。
 と言うのも、実は、映像には『サブリミナル効果』が仕込んであり、カバーには「思考力を低下させる薬剤」が仕込んであるのです。
 法律で禁じられている薬剤ですが、『サブリミナル効果』との相乗効果は絶大ですので断腸の想いで使用させていただきました。
 ……これで、一ヶ月もしないうちに神蔵堂さんは「気付いた時にはマスターの忠実な『協力者』になっている」ことでしょう。
 具体的に言うと「幼女こそ嗜好の存在!! 特に金髪幼女は最早 神でしかない!!」と言う感じの『孤高の戦士』となるでしょうね。

 あ、もちろん、神蔵堂さんを『協力者』にすること自体が目的……なんかではありません。私の本当の目的はネギさんです。

 昨日の件で、ネギさんが神蔵堂さんに傾倒していることはよくわかりましたので、それを利用させていただきます。
 つまり「神蔵堂さんに『協力者』になっていただければ、ネギさんも協力してくれるでしょう」と言う安易な発想ですね。
 まぁ、敢えてキレイな言葉で言い換えるとしたら「将を射んと欲すれば、まず馬を射よ」と言う感じの故事成句ですね。
 正直なところ、男性にマスターの艶姿を提供するのは業腹ものなのですが……背に腹は代えられませんので ここは我慢です。
 ネギさんを直に篭絡するのは困難ですし、神蔵堂さんを篭絡する手も他には思い付きませんでしたので仕方が無いのです。

 まぁ、何はともあれ、これで「労せずにネギさんの血が手に入る」ので、良しとして置きましょう。

 マスターは今回の課題中に戦闘のドサクサに紛れてコッソリと血を採集しようとしていたようですけど。
 課題もどうなるかわからないのが現状ですから従者としては最悪の事態を想定して動いて置くべきでしょう。
 仮に、マスターの思惑がうまくいったとしても『協力者』が増えるだけですので何一つ問題はありません。

 ……とりあえずは、神蔵堂さんがオチてくれるのを気長に待ちましょう。


 


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オマケ:未来少女の呟き


 麻帆良学園内にある、とある研究室にて……

 茶々丸に張り付けてあるスパイロボ(学園祭前に世界樹広場で使っていたもの)から、
 茶々丸とナギの会話の一部始終を覗いてた『少女』は、その結果に薄っすらと笑う。

「フフ……まさカこの様な形で茶々丸と『御先祖』が接触するとはネ。
 実に想定外の展開だたガ、これはこれで面白くなりそうダネェ?
 少し『シナリオ』とは異なるノデ、『嬉しい誤算』と言て置こうカ……」

 少女は、茶々丸が施そうとした『サブリミナル効果』を確認しながら笑う。

「フムフム……茶々丸も私の想定を超える成長をしているネェ。
 まぁ、『金髪幼女は神!!』もある意味では真実だとは思うガ、
 御先祖には『赤髪幼女はオレの嫁!!』になってもらう必要があるネ」

 少女はナギのパソコンにアクセスすると「そのパソコンで再生する場合のみ、別の『サブリミナル効果』を与える」プログラムを送る。

「ふぅ、バタフライ効果など大袈裟過ぎると思てたガ……
 随分と『歴史』とは掛け離れた流れになて来てるネ。
 このままでハ『シナリオ』が完遂するカ、少し不安だヨ」

 少女は古びた書物を弄りながら、自嘲的に笑う。

 この少女は、自分が介入することで歴史を改竄するために過去に来た。
 だが、その改竄結果が自分の手を離れていることに焦りを覚えているのだ。
 同時に その身勝手さを理解しているため、少女は己を嘲ったのだろう。

 だが、それでも、少女は己を曲げることはしない。それが少女の生き方だからだ。

「……まったく、人間とは反吐が出る程に傲慢な存在だよネ。
 しかも、傲慢であるが故に進むことができるのが厄介だヨ。
 いや、正確にハ傲慢を抱えなければ進めないのかも知れないネェ」

 少女――超 鈴音(ちゃお りんしぇん)は、暗い研究室で自嘲と自重の狭間をたゆたうのであった。


 


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後書き


 ここまでお読みくださってありがとうございます、カゲロウです。
 以前から「改訂した方がいい」と言う意見が多数あったので、改訂してみました。


 今回は「パクティオーの話の筈が、何故か茶々丸がステキ過ぎて困った」の巻でした。

 さて、カモのキャラですけど……自分でも変わり過ぎだなぁとは思っています。
 元のカモの口調でメスだとシックリ来なかったので、苦肉の策でまったく別物にしてみたんです。
 ちなみに、「お兄様」等の呼称は、ゼロ使の風韻竜からインスパイアさせていただきました。
 でも、「ネギ姉様」に関しては「おねにいさま」を思い出してしまうのが、ボクと言う人間です。

 それと、ネギとのパクティオーですが、最初からネギを従者にする予定でいました。

 原作では魔法陣のうえでキスすれば契約できてたので、相手が非魔法使いでも契約は可能でしょう。多分。
 ちなみに、パクティオーさせること自体が目的でしたので、ネギのアーティファクトに関しては かなり適当です。
 ただ、まだ誰ともパクってないのに「原作通りに従者のアーティファクトを使えるのはおかしい」と思ったので、
 いっそのこと「『ぼくのかんがえたさいきょうのまほうどうぐ』を作り出せる」感じでいいかなぁと思ったんです。

 最後に「あれ? のどか と あやか が動いてないじゃん」と言うツッコミは「次回以降でお願いします」と言うことにしてください。


 ……では、また次回でお会いしましょう。
 感想・ご意見・誤字脱字等のご指摘、お待ちしております。


 


                                                  初出:2009/10/02(以後 修正・改訂)


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