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No.10422の一覧
[0] 【完結】せせなぎっ!! (ネギま・憑依・性別反転)【エピローグ追加】[カゲロウ](2013/04/30 20:59)
[1] 第01話:神蔵堂ナギの日常【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:53)
[2] 第02話:なさけないオレと嘆きの出逢い【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:54)
[3] 第03話:ある意味では血のバレンタイン【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:54)
[4] 第04話:図書館島潜課(としょかんじませんか)?【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:54)
[5] 第05話:バカレンジャーと秘密の合宿【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:55)
[6] 第06話:アルジャーノンで花束を【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:55)
[7] 第07話:スウィートなホワイトデー【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:55)
[8] 第08話:ある晴れた日の出来事【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:56)
[9] 第09話:麻帆良学園を回ってみた【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:56)
[10] 第10話:木乃香のお見合い と あやかの思い出【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:56)
[11] 第11話:月下の狂宴(カルネヴァーレ)【改訂版】[カゲロウ](2012/06/10 20:50)
[12] 第12話:オレの記憶を消さないで【改訂版】[カゲロウ](2012/06/10 20:50)
[13] 第13話:予想外の仮契約(パクティオー)【改訂版】[カゲロウ](2012/06/10 20:51)
[14] 第14話:ちょっと本気になってみた【改訂版】[カゲロウ](2012/08/26 21:49)
[15] 第15話:ロリコンとバンパイア【改訂版】[カゲロウ](2012/08/26 21:50)
[16] 第16話:人の夢とは儚いものだと思う【改訂版】[カゲロウ](2012/09/17 22:51)
[17] 第17話:かなり本気になってみた【改訂版】[カゲロウ](2012/10/28 20:05)
[18] 第18話:オレ達の行方、ナミダの青空【改訂版】[カゲロウ](2012/09/30 20:10)
[19] 第19話:備えあれば憂い無し【改訂版】[カゲロウ](2012/09/30 20:11)
[20] 第20話:神蔵堂ナギの誕生日【改訂版】[カゲロウ](2012/09/30 20:11)
[21] 第21話:修学旅行、始めました【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:08)
[22] 第22話:修学旅行を楽しんでみた【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:08)
[23] 第23話:お約束の展開【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:57)
[24] 第24話:束の間の戯れ【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:09)
[25] 第25話:予定調和と想定外の出来事【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:57)
[26] 第26話:クロス・ファイト【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:10)
[27] 第27話:関西呪術協会へようこそ【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:58)
[28] 外伝その1:ダミーの逆襲【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:59)
[29] 第28話:逃れられぬ運命【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:59)
[30] 第29話:決着の果て【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 21:00)
[31] 第30話:家に帰るまでが修学旅行【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 21:01)
[32] 第31話:なけないキミと誰がための決意【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:10)
[33] 第32話:それぞれの進むべき道【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:10)
[34] 第33話:変わり行く日常【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:11)
[35] 第34話:招かざる客人の持て成し方【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:12)
[36] 第35話:目指すべき道は【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:12)
[37] 第36話:失われた時を求めて【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:54)
[38] 外伝その2:ハヤテのために!!【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:55)
[39] 第37話:恐らくはこれを日常と呼ぶのだろう【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 22:02)
[40] 第38話:ドキドキ☆デート【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:58)
[41] 第39話:麻帆良祭を回ってみた(前編)【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:57)
[42] 第40話:麻帆良祭を回ってみた(後編)【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:57)
[43] 第41話:夏休み、始まってます【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:04)
[44] 第42話:ウェールズにて【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:05)
[45] 第43話:始まりの地、オスティア【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:05)
[46] 第44話:本番前の下準備は大切だと思う【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:06)
[47] 第45話:ラスト・リゾート【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:06)
[48] 第46話:アセナ・ウェスペル・テオタナトス・エンテオフュシア【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:20)
[49] 第47話:一時の休息【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:21)
[50] 第48話:メガロメセンブリアは燃えているか?【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:21)
[51] 外伝その3:魔法少女ネギま!? 【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:22)
[52] 第49話:研究学園都市 麻帆良【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:22)
[53] 第50話:風は未来に吹く【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:23)
[54] エピローグ:終わりよければ すべてよし[カゲロウ](2013/05/05 23:22)
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[10422] 第14話:ちょっと本気になってみた【改訂版】
Name: カゲロウ◆73a2db64 ID:552b4601 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/08/26 21:49
第14話:ちょっと本気になってみた



Part.00:イントロダクション


 今日は4月13日(日)。

 ナギがネギと仮契約を結んでから何だかんだで4日が経った。
 その間にいろいろと起きたが、細かいことは本編で語ろうと思う。

 とりあえず言えることは、グダグダなゴタゴタがあった と言うことである。



************************************************************



Part.01:これまでの経緯


 少し時は遡って4月10日(木)。原作ならば、ネギがのどかとパクティオーをミスる辺りだろう。
 だが、『ここ』では そんなことは起こり得ない。何故なら、既にナギとしていた――と言うか、ネギだからだ。

(……しかし、改めて考えてみると欝になるなぁ)

 状況的に仕方がなかったとは言え、まさかパクってしまうとは……想定外もいいところだ。
 今回の件は積極的に解決するつもりでいたナギだが、パクるつもりはなかったのである。
 まぁ、ナギにそのつもりがなくても、ネギと縁を切らない限り時間の問題だっただろうが。

(原作みたいにネギが男だったら迷わず放置できるんだけど……『ここ』のネギは女のコだからなぁ)

 危険なことは嫌だから、魔法に関わりたくない。それがナギの基本スタンスであることは変わらない。
 ただ単に「安全でいたい」と言う気持ちよりも「ネギを放って置けない」と言う気持ちの方が強いだけだ。
 以前は安全を優先するつもりでたのだが、ネギと関わっているうちに いつの間にか逆転していたのである。

(だから、魔法に巻き込まれたことにもパクってしまったことにも文句は言わないさ。だけど――)

 今更 文句を言っても何も変わらない。そんなことはナギもわかっている。だが、それでも文句を言いたいのである。
 現状が「これはヒドい」と言いたくなるため、文句を言っても仕方がないとわかっていても文句を言いたくて仕方がないのだ。
 何故なら、淫獣(カモ)が、ナギの部屋に忍び込んで「ハァハァ……お兄様ぁ」とか言って一人遊びに興じているからだ。

(…………はぁ。この淫獣、どうすればいいんだろう?)

 13話のPart.04でネギから追求されているのを助けたことで勘違いしてしまったのかも知れない。
 そして、その勘違いからナギへの恐怖心が薄れて、施した洗脳が解けてしまったのだろう。
 だとしたら、再び洗脳が必要だ。オコジョにセクハラされて喜ぶ趣味はナギにはないのだから。

 今度は簡単には解けないように、念入りに調きょ――教育すべきだ。

「ってことで、再教育を受ける覚悟はあるんだよね?」
「アヒィ!? お、お兄様!! ど、どうして ここに?!」
「いや、どうしてって言われても……ここオレの部屋だし」
「そ、それでは、いつからいらっしゃったのデスか?」

 ナギに声を掛けられて漸くナギに気付いたのだろう。カモは飛び上がって驚いていた。

「実はと言うと、5分くらい前から『目の錯覚かな?』って自問自答していたんだけどね?
 でも、残念ながら、目の錯覚ではなかったようだね。って言うか、紛れもない現実だねぇ。
 いやはや、再び『教育』をしないといけないなんて……まったく以って残念だよ、うん」

 ナギは唇の端を吊り上げながら、ぜんぜん残念じゃなさそうな雰囲気を隠しもせずに「残念だなぁ」と頭を振る。

「あ、あの、お兄様……こ、これは誤解で、私は無実デスよ?」
「そうか。まぁ、大丈夫さ。そこら辺はオレもわかっているからね」
「さすが お兄様デス!! 私のことをわかっていただけてるんデスね!!」
「つまり、カモが悪いんじゃなくて、カモの性欲が悪いんだよね?」
「そ、そうデス!! 私の本能がお兄様を求めて止まないのデス!!」

 ナギは脅えるカモに微笑むと、その長細い体躯をガシッと鷲掴んだ。

 どうでもいいが、種族の壁を超えようとする本能とは何なのだろう?
 性欲は本能に根差す欲望なので、本能と言えば本能だと言えるが……
 種族の壁を超えて発揮される性欲は、あきらかに本能レベルを超えている。

「そっか。それじゃあ、その本能を忘れられるような『クスリ』をネギに作ってもらおうね?」

 確かに、ネギのアーティファクトなら、獣の性欲を無理矢理抑える薬剤くらい作れるだろう。
 まぁ、仮に作れなくてもプラシーボ(偽薬)効果で『そう思い込ませれば』いいので、問題ない。
 もしくは、茶々丸の製作者であるハカセ(葉加瀬 聡美:はかせ さとみ)に頼むのもいいだろう。

「ちょ、ちょっと お待ちください!! 私はまだメスとして終わりたくないデスぅうう!!」

 カモの心の底からの絶叫に、ナギは「カモにとってのネギって……」と軽く悲しくなった らしい。
 まぁ、ナギも暴走中のネギは恐いと感じているので、似たような扱いと言えば そうなのだが。
 それに、カモがネギに恐怖を感じている と言うことは、それだけ脅しが有効であることの証左だ。

 多少寂しいものは感じるが、カモの性欲を抑制する観点においては恐怖心はむしろ好都合である。

「だったら、少しは自重しようね? 今回は警告にとどめるけど、次はないからね?」
「お、お兄様……!! ありがとうございます!! 私、一生お兄様に付いていきますデス!!」
「いや、付いて来なくていいから。って言うか、抱きついて来るんじゃなぁああい!!」

 カモは「今後は自重する」と心に刻んだ筈なので、再教育は無事に済んだ と言うことでいいだろう。

(あれ? やり方、間違えちゃった? 脅した筈なのに、何で懐かれてるんだろう? まったく以て意味がわからないや。
 でも、だからと言って「これは脅しなんだからね!! べ、別にアンタに同情してるんじゃないんだからね!!」とは言えないなぁ。
 って言うか、そんなこと言ったら「ウホッ!! ナイスツンデレ!!」って感じでカモの『何か』に火を付けそうだよねぇ)

 結果的に よりカモに懐かれたナギは「どうして こうなった?」と頭を抱えるのだった。

 ちなみに、その後は「カモちゃんがいないんですけど、そちらに伺ってませんか?」と言う連絡がネギからあったので、
 ナギは物凄く爽やかな笑顔で「ウチに来てるんで、窓から投げ捨てて置くから適当に回収してくれ」と伝えたらしい。
 カモがナギのベッドで一人遊びに興じていたことを告げなかったのがナギの優しさである。多分、きっと、恐らくは。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 さて、少し時は進んで4月11日(金)。原作ならば、ネギが明日菜と共に茶々丸を襲撃する辺りだろう。
 とは言え、やはり『ここ』では そんなことは起こり得ない。何故なら、ナギはネギに『調査』を命じたからだ。

 まぁ、経緯を追って話そう。

 昨晩、ネギから「学園長先生から『今回の課題は、この前の戦闘で終了したことになった』って連絡がありました」と言う連絡があったのだが、
 ナギは「課題としては終わっても、エヴァが呪いを解くためにネギの血を求めているのだとしたら問題は片付いていない」と判断しているので、
 ネギに「襲撃者達の動機が『課題だったから』だけじゃない可能性もあるので、襲撃の動機が他にないか調べてくれないか?」と頼んだのである。

 つまり、襲撃理由が明確になってなかったため課題が終わっても安全は確定していなかったので、ネギにエヴァと茶々丸を調べさせたのだ。

「ある時は子供の風船を取ってあげ、おばあちゃんを背負って歩道橋を渡り、
 またある時は流されている仔猫を助け、捨て猫達に餌を上げつつ可愛がる。
 と言った感じで、茶々丸さんは とてもいい人であることが判明しました」

 そんなこんなで、ネギは茶々丸を尾行した結果を報告してくれてた訳だが……ハッキリ言って散々だった。

 まぁ、相手を知ることは大事ではある。その観点で見れば、無駄だったとは言えなくもないだろう。
 だがしかし、ナギが求めている情報は襲撃理由だ。相手の為人(ひととなり)など問題にしていない。
 仮に襲撃理由を分析するために為人の情報を利用するのだとしても「いい人でした」では情報不足だ。

「そうか。それで? その尾行で肝心な襲撃理由については何かわかったのか?」

 しかも、それは茶々丸の情報だ。言うまでもなく、従者である茶々丸は下位者だ。
 言い換えると、上からの命令で動く存在であるため、重要度は主であるエヴァより低くなる。
 エヴァの命令一つで(茶々丸の為人とは無関係で)茶々丸は行動することになるからだ。

「え? え~~と、それだけです」

 ナギの言葉でネギは己の不手際に気付いたのだろう、罰が悪そうに答える。
 まぁ、エヴァを探れ と明言していなかったナギのミスなので、仕方がない。
 エヴァを探って欲しかったのがナギの本音だが、指示したナギのミスだ。

「そうか……それだけなのか…………」

 だからこそ「その程度のことでオレの部屋に押し掛けたのか」と思っても、ナギは表に出せない。
 たとえ、このことでナギが「部屋に幼女を連れ込んだ鬼畜野郎」と謗られても文句が言えないのだ。
 甘んじて受け入れるしかないナギにできることは、黙って『orz』のポーズを取ることくらいだ。

 まぁ、そもそも文句を言える立場であっても文句を聞いてもらえない可能性が非常に高いが。

「で、ですが、尾行調査だけでは限度があると感じましたので、人に聞くことにしました。
 そんな訳で、課題を設定した諸悪の根源である学園長先生に話を聞いて来たんです。
 幸いなことに学園長先生には『貸し』がありましたので『快く』答えてくれましたよ」

 何らかの思惑があったのか? それとも本当に思い出したのか? とにかく、ネギは慌てて別の情報を追加する。

(茶々丸の調査は残念だったけど、あの学園長から情報を引き出すとは……ネギもなかなかやるじゃないか。
 それに「自分の力だけでできることには限界がある」と言うことがわかっているのも評価すべきところだね。
 やっぱり、人間 一人でできることなんて高が知れているからね。助力を願える状況なら願うべきだよ、うん)

 ところで、近右衛門への『貸し』や『快く』と言う部分が気になるだろうが……精神衛生上スルーして置くべきである。

「で、どんな話が聞けたの?」
「えっとですね……(以下略)」

 長くなるので、ネギの話を要約すると、
  エヴァはネギの父に呪いを掛けられて麻帆良に封じられており、その逆恨みから課題としてネギとバトることを快諾した
 と言うことを近右衛門から聞き出せたらしい。

 これだけなら「よく聞き出せたな」と言うくらいだが、ネギの恐ろしいところは『裏』を読んでいるところだ。

 つまり「エヴァは逆恨みに見せ掛けて承諾したが、真の目的は解呪のためにネギの血を採取することであり、
 近右衛門はエヴァの真意を理解したうえでネギの修行に利用するためにエヴァを嗾けた」と読んでいたのだ。

 ちなみに、解呪をするのにネギの血が必要だとわかったのは、術者か近親者の血を媒介にするのが解呪の基本らしいからだ。

 ところで、父親に関係することなのにクレバーな態度でいられるネギは「コイツ誰?」と言う気もしなくもないが、
 ナギを守るボディガードが冷静でいてくれることは、ナギにとってはプラスであるので「まぁ、いいか」と納得したらしい。
 いや、父親への歪な愛情がナギにシフトしているとしか思えないが、考えると欝になるのでスルーすることにしたようだ。

「え~~と、つまり、課題としては終わったけど、個人的な事情なので問題そのものは終わっていない訳だな?」
「はい、そうなりますね。解呪をするか解呪をあきらめてくれるかしないと、問題そのものは解決しないでしょうね」
「やっぱり、課題が終われば解決って訳じゃなかったか。いやはや、学園長も意地が悪いことをしてくれるよ」

 意地が悪いことに、最初から調査させるつもりで課題の終了を告げて来たのだろう。そうとしか思えない。

 そもそも、課題だとバラしたのはネギが問い詰めたからだろうが、課題の終了を告げたことはネギが問い詰めたからではない。
 つまり、何らかの思惑があって課題の終了を告げた と見るべきであり、ナギは その思惑を「調査させること」だと予想したのだ。
 与えられた情報を鵜呑みにすることは非常に危険であるため、それを実体験で教えたかったのだろう。ナギには そうとしか思えない。

 まぁ、本来なら油断したところをエヴァに襲わせて「課題以外の襲撃だから当方は一切関知しない」とか言うつもりだったのだろうが。

「さて、学園長のことは置いておくとしても、これからどうするんだ? 解呪するの? それとも、あきらめさせるの?」
「本来なら血を渡して、その見返りとして不可侵条約を結ばせるのが安全な方法だとは思うんですけど……」
「そうだね。安全だとは思うけど、学園長が解呪について触れなかったことを考えると、解呪するのは不味そうだね」

 ネギの提案がナギにとってはベストな方法ではあるが……エヴァを解呪するのは魔法関係者を敵に回しそうだ。

(あれ? そう言えば、原作はどうやって解決したんだっけ? 解呪してないんだから、あきらめさせたんだよな?
 どうも「停電の時に再戦して、一度は敗れ掛けたけど、明日菜と共に辛勝した」ってイメージしかないなぁ。
 まぁ、原作に捉われ過ぎていたら現実を見失うし、原作とは状況が変わっているから、気にするだけ無駄だけど)

 解呪が無理なので、あきらめさせるしかないのだが……あきらめさせるのは非常に大変そうだ。

「ちょっと待てよ? 学園長からは『解呪するな』とは言われていないんだよね?」
「え? ええ、言われてませんね。確か、呪いを掛けられたことしか言われてません」
「そっか。つまり、学園長は『解呪については禁止も推奨もしていない』と言う訳だね」

 それならば『言い訳』はいくらでもできる と言うことになる。

「そんなこんなで、オレに一つ提案があるんだけど……乗ってみない?」
「提案ですか? ナギさんがお考えになったことなら、ボクは何でもOKですよ」
「そ、そうか、ありがと。んで、オレの提案って言うのは……(以下略)」

 気分が重くなるのでネギの重いセリフは軽くスルーしたナギは「とある提案」を行った。

 その提案とは、ネギが近右衛門から「解呪するな」とは言われていないことを逆手に取って、
 クラスメートが呪いで苦しんでいるのを見ていられなかったネギが善意で解呪した と言うことにし、
 解呪したことで問題が起きたら解呪について注意しなかった近右衛門の責任にする つもりである。

(まぁ、かなり小悪党的で狡い考え方だけど、オレにもネギにもリスクの無い素晴らしい方法じゃないかな?)

 具体的な方法としては、エヴァに「ネギの血を提供するから、こちらに手出ししないでね」と言った交渉をする予定だ。
 原作では来週の月曜日にエヴァが弱っていたので、その日に決行するつもりだ(どこまで原作が通用するか不明だが)。
 相手が弱っている時にするので『交渉』と言うかは定かではないが、成功率を上げるためなので気にしてはいけない。

 ちなみに、13話のPart.07で思い付いた と言っていた策は解呪なので その策を補強した形になるらしい。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 そんな訳で再び時は少し進んで4月12日(土)。原作ならば、ネギがニンジャとキャッキャウフフしている辺りだろう。
 だが、『ここ』では そんなことは起こり得ない。何故なら、ネギはナギの部屋に泊まる気マンマンだからだ。

「って言うか、帰ろうよ」

 ナギは楽しそうに寝具をクリエイションしているネギに対し適格にツッコんだ。
 ネギが泊まろうとも何も起きないだろうが、周囲はそう思ってくれないからだ。
 具体的に言うと「あの鬼畜、遂に『事』に及びやがったぜ」と言う感じである。

 ちなみに、何でナギの部屋にネギがいるのかと言うと……アーティファクトの実験をしていたからだ。

 ここで「あれ? エヴァとは交渉するんだよね? ならアーティファクトの出番はないんじゃない?」と お思いになるかも知れない。
 だが、エヴァとの交渉が決裂する可能性はゼロではないので、万が一のために『備え』をして置く必要があったのである。
 もちろん、ナギは交渉を成功させるつもりではいる。だが、それでも100%成功するとは断言できない。備えあれば憂いなし だ。

 で、ネギのアーティファクトに話は戻すが、これは以前にも説明した通り「魔法具を生成できる能力」を持っていることはわかっていた。

 だが、どの程度の魔法具が作れるのか? と言うことは、本人の能力に依る と言う説明しか載っていなかったため不明だったのである。
 そのため、いろいろと試した訳だが……その結果、現段階のネギでは「市販されているものと変わらない程度しか作れない」ことがわかった。
 それだけでも充分に便利なのだが、ナギとしては「それ何処の未来道具?」と言うチートアイテムを期待していたので ちょっとガッカリだった。
 まぁ、原作のネギ君の才能は『開発力』らしいので、『ここ』のネギの才能も『開発力』だと期待して才能が開花するのを待つつもりらしいが。

「え~~!? 何でですかぁ?!」

 ネギはナギの真っ当なツッコミを予想すらしていなかったのだろう。
 心の底から不思議に思っている と言わんばかりの顔で訊ねて来る。
 ナギとしては「やっぱり泊まる気でいたのか……」と言うところだが。

「いや、『何で』って言われても……逆に聞くが、何で泊まるんだ? 泊まる意味などないだろ?」

 なので、ナギはキッパリと「何でもクソもあるか!! トットと帰れ!!」と言うことをオブラートに包んで言ってみた。
 若干オブラートに包み過ぎている気がしないでもないが、ネギをキレさせたくないヘタレなので仕方が無いのだ。
 と言うか、エヴァ戦以降のネギにビビリ過ぎだと思う。だがしかし、怖いもんは怖いんだからしょうがない らしい。

「いえ、意味ならあります!! お姉ちゃんが言ってました、『既成事実は早いもの勝ちよ』って」

(まずツッコミたいんだけど……お前の姉ちゃん、何を考えてるんだ? 普通、幼女にそんなこと吹き込まねーですから。
 って言うか「姉ちゃんが言ってた」ってフレーズで、某ラヴェの銀髪の十剣使いを思い出してしまうのはオレだけかな?
 いや、そうじゃなくて、一番の問題はネギが既成事実の意味を理解し既成事実を成そうとしているところだね、うん)

 ナギの思考が暴走している気がするが、それだけネギの答えが余りにも想定外だった と言うことである。

 ちなみに、今のナギは茶々丸がくれた宝物によって「ロリはむしろ好物だ」と言うレベルに達しているらしく、
 ヘタをするとネギの誘惑に負けて「何処に出しても恥ずかしい変態」になってしまい兼ねないのだ。
 そう、さっき「ネギが泊まっても何も起きない」と言っていたが、実はそんな自信など これっぽっちもないのである。

 僅かに残った理性と変態紳士としてのプライドが「何も起きないに違いない」と言う強がりをさせているのである。

「いや、既にパートナーと言う『楔』は打ち込まれているだろう? これ以上、何を望むと言うのさ?」
「でも、お姉ちゃんにナギさんのことを報告したら『まずは既成事実を作っちゃいなさい』ってアドバイスされたんです」
「だから、お前の姉ちゃん何を考えて――じゃなくて、確認して置くけど、既成事実の意味をわかってるの?」
「いえ、よくわかりませんけど、コノカさんに聞いたら『一緒に寝ること』だって教えていただけたので……」

 ナギが「木乃香ぁああ、お前もかぁああ!?」とブルータスに裏切られたカエサルのような心の絶叫を上げたのは言うまでもないだろう。

「いいかい、ネギ? そう言ったことは、18歳未満はやっちゃいけないのが日本の法律なんだよ?」
「確か、児ポ法でしたっけ? 最近は規制が厳しいそうですから、いろいろと大変なんですよね」
「何と言うメタ発言。って言うか、もしかしなくても、すべてわかったうえで言ってるでしょ?」
「はい? わかっている? 一体、何のことですか? ナギさんが何を仰りたいのかわかりませんよ?」
「……それならそれでいいや。とりあえず、児ポ法がわかるなら、既成事実はダメだってわかるでしょ?」
「ん~~、意味はよくわかりませんが、ナギさんにご迷惑は掛けたくありませんから、あきらめます」

 ナギの説得が効いたのか、不承不承と言った感じではあるものの あきらめて帰宅準備をするネギ。

 そんなネギにナギはホッと胸を撫で下ろしながら「素直なコは好きだぞぉ?」と言わんばかりにネギの頭をグリグリと撫でる。
 ある意味でネギは当然の判断をしただけなのだが、今後のために あきらめたことを褒めて置かなければいけないからだ。
 仮にここで褒めて置かないと「あの時 褒めてもらえなかった」とか

 まぁ、ネギはコッソリと「計 画 通 り」と言わんばかりに笑っていたので、最初からこれが狙いだったのかも知れないが。



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Part.02:シャークとフカヒレ


 そんなこんなで時間軸は今に戻る。つまり、4月13日(日)だ。

「喰らえぇええ!! 羅貫光殺砲!!」
「甘いっ!! ツルカメ波ぁああ!!」

 突然のことに「ナニイッテンノ?」と思ったかも知れないが、安心して欲しい。これはゲームだ。
 いきなり厨二全開な展開になってナギが「オレTueeeee!!」なバトルをしている訳ではない。

 ところで、現在地は麻帆良市内にあるゲームセンターで、対戦相手は偶然 会ったクラスメイトである。
 また、どうでもいいかも知れないが、やっているゲームは『マギステル・ボール』と言うゲームだ。
 某龍球とネギまがミックスされたような作品で、Z戦士の代わりに肉体派の魔法使いが出て来るらしい。

『勝てば官軍!! 勝者が正義!!』

 機械音声がちょっとアレなセリフで高らかにナギの勝利を称える。
 ちなみに、敗者には『この負け犬が!!』と表示されるステキ設定である。
 ここら辺がネぎまだよなぁ と思うナギは何かが間違っているだろう。

「くっそ~~。神蔵堂、お前ちょっと強過ぎだ。もっと手加減しろ、手加減」

 対戦相手のクラスメイト――3話にも出て来た鮫島が席を立ち上がって文句を言う。
 その声と漂うヘタレ臭から「フカヒレ」を連想してしまうのがナギだ(特に『鮫』島だし)。
 ちなみに、フカヒレで意味が通じない人は『好きよっ』の逆綴りをググればいいと思う。

「別にもっと手加減してもいいけど……そんなんで勝って嬉しいの?」

 このゲームは強さの設定ができ、ナギは最弱レベルでプレイし鮫島は最強レベルでプレイしている状態だ。
 それなのにもかかわらず、ほぼ無傷でナギが勝ててしまう程にナギと鮫島の実力には差があるのだった。
 まぁ、鮫島がヘタなのも要因だが、単純にナギがうまい と言う要因もある(ナギは格ゲーが得意なのである)。

「ああ、嬉しいね。どんな経緯でも勝利は勝利だもん」

 普通ならあきらめるのに、あきらめずに挑んで来るのは凄いと思う。
 だが、言っていることは情けないので、実にフカヒレらしいだろう。
 まぁ、だからこそ、ナギは妙な親近感を覚えるのかも知れないが。

「わかったよ……次は『ヤシロペー』を使うから、そっちは好きなの選びなよ」

 ちなみに、ヤシロペーとは「死角から相手を斬り付けること」と「体力を回復させること」しかできないサブキャラだ。
 本来はタッグ戦の時にヘルバーとして使うサポートキャラで、タイマンで使われることは想定されていないキャラである。
 何だか某龍球のヤジ□ベーを髣髴とさせられるが、そこは敢えてツッコんではいけない。それが暗黙の了解と言うものだ。

「え? マジで? じゃあ、遠慮なく『ペジータ』使っちゃうよ? ヤシロペーなんて一発だよ? いいの? 勝っちゃうよ?」

 自分で勝たせてくれって言ったのだから勝てばいいじゃないか? とは思うが、敢えてナギはツッコまない。
 ちなみに、ペジータとは主人公のライバルキャラのことで、某ベジ○タ様を髣髴とさせられるキャラである。
 当然ながらヤシロペーとはスベック的に天と地ほどの差があり、間違いなくヤシロペーに勝ち目はないだろう。

 だがしかし、『勝てば官軍!! 勝者が正義!!』と言うコールが掛かったのは――つまり、勝ったのはナギだった。

 と言うのも、実はヤシロペーの「死角から斬り付ける」は、ペジータだけは一撃殺の使用なのである。
 攻撃を一撃でも受ければこっちも即KOされていただろうが、攻撃される前に攻撃したので勝ったのだ。
 言わば、某悪魔が泣いちゃうゲームの三作目にある『HEAVEN OR HELLモード』みたいなものだったのである。

「…………うそーん」

 フカヒレ(既に決定)は目の前で起きた事実が信じられなかったのか、軽く放心している。
 と言うか、ヤシロペーとペジータの相関性を知っていてペジータを選んだんじゃないのだろうか?
 まさか、本気で「ヤシロペーをペジータでフルボッコにしよう」とか考えた訳ではない筈だ。

「ちょ、ちょっと、何でヤシロペーの一撃で死ぬ訳? おかしくね、超おかしくね?」

 どうやら、知らなかったようである。無知は罪ではないが、哀れなことなのかも知れない。
 周囲にできていたギャラリーも「え? 態とじゃなかったの?」と言う反応をしている。
 態とアツい戦いをするためにペジータを選んだのだ とフカヒレ以外が誤解していたようだ。

 余りにも残念な空気にナギは「しょうがないから、説明してやるか」と説明を始める。

「え~~と、何て言うか、原作でヤシロペーがペジータのシッポを斬って無力化したことあったじゃん?
 アレ、ゲームにも活かされている設定で、ヤシロペーの攻撃はペジータだけを一撃で倒せるんだよね。
 だから、今回の戦闘は『先に攻撃を当てた方が勝つ』と言う、実にアツいルールだったんだよ?」

 ナギはフカヒレにどっかで聞いたことのある話をする。ギャラリーもウンウン頷いているので、常識的なことなのだろう。

「くっ!! なんて巧妙な罠なんだ!! こうなったら、脱衣マージャンで勝負だ!!」
「遂に勝負の方法を変えて来たっ?! って言うか、何故に脱衣マージャンなんだ!?」
「そんなの、ただのマージャンだと萌え(燃え)ないからに決まってるだろぉおお!?」
「いや、確かに そうかも知れないけど、それは大声で叫ぶことじゃないよね?」
「まぁ、それはともかく……そう言えば、脱衣マージャンって対戦できたっけ?」
「え? 知らないのに勝負するとか言ってたの? って言うか、多分できないと思う」

 やっぱ、コイツはフカヒレだなぁ とシミジミと思ったナギだった。

 ところで、現状の説明が かなり遅れたが……何故にナギがフカヒレとゲーセンで遊んでいたのかと言うと、余り深くない訳があるのである。
 と言うのも、今日もネギに纏わり付かれたら精神衛生上よろしくないと判断したナギが朝一で家を出て街をフラついた末にゲーセンに入ったら、
 見覚えのあるヘタレ(フカヒレ)がガラの悪いニイちゃん達に絡まれているのを発見したので助けたら「御礼にゲームを奢るぜ」と言うことになり、
 何故か格ゲーの対戦をすることになったので容赦なくフルボッコにしたらフカヒレの闘争心に火が付いてしまい、最終的には ああ なったのである。

 まぁ、要約すると「ネギに絡まれたくなかったから町に出て、フカヒレが絡まれていたので助けたら逆に絡まれた」と言う感じだ。

 改めて考えてみると、何故 助けたあげたのに面倒臭いことになっているのだろうか? ナギの疑問は尽きない。
 と言うか、恩を仇で返された気分でタップリである。まぁ、連勝し続けたのでワンコインでゲームを楽しめたが。

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「しかし、神蔵堂ってゲームうまかったんだなぁ」

 諸々の事情(主にフカヒレの懐とゲームの仕様)で、脱衣マージャンで勝負するのは保留となり、
 時間も時間なので「そろそろ昼飯でも食おうぜ?」と言う流れになり、現在は その移動中である。

 ちなみに、フカヒレの懐事情的にナギが奢る羽目になりそうなのは最早 言うまでもないだろう。

「そうかな? (フカヒレよりはうまいけど)そこまで うまくはないんじゃない?」
「いや、オレを圧倒したんだから うまいよ。オレ、ゲームには自信あったんだぜ?」
「……そうなんだ。それじゃあ、そうなんだろうね(まぁ、そう言うことにして置こう)」

 自信があるにしては下手だったなぁ とは思うが、敢えて言わないのがナギの優しさである。

「って言うか、神蔵堂ってゲームとかやんないタイプの人間だと思ってたから普通に驚いたよ」
「へ~~、オレって そんな風に思われていたんだ。けっこうゲーム好きなんだけどなぁ」
「あ、いや、別に悪い意味で言った訳じゃなくて……何て言うか、マジメそうって意味だぜ?」

 ナギとしては「まぁ、那岐はゲーム好きってタイブじゃなかったけど」と思っただけで、他意はなかった。

 だが、フカヒレはナギが傷付いたと受け取ったのだろう。フカヒレは必死に、だが微妙なフォローをしてくる。
 ナギは気遣われるのが苦手だが、不器用なのに気遣おうとしている今のフカヒレは妙に微笑ましく感じられた。
 きっと、それは「オレにも こんな中学生な頃があったんだよなぁ」と言う感慨に近いものなのだろう。

「いや、別に気にしてないから、無理に気遣わなくていいよ」

 だからかはわからないが、ナギは陰鬱としていた気分が吹っ切れて とても穏やかな気分になる。
 格ゲーに付き合わされたり奢る羽目になりそうなのは少々イヤだったが こんな気分になれたので、
 フカヒレには感謝していると言うか、今日は割といい日かも知れない とかナギは思ったらしい。

 だがしかし、そんな気分も直ぐに吹き飛ぶことになるのは最早 言うまでもないことだろう。ナギのキャラ的に考えて。

 つまり、値段を考えて無難に某Mでスマイルが無料なハンバーガーチェーンに入店したら、
 何と そこには のどか と夕映がいたのである。しかも、四人掛けの席に二人で座って、だ。
 そのうえ、のどかとバッチリと目が合ってしまったため気付かない振りはできない流れだ。

「こんにちはー、ナギさーん」
「こ、こんにちはです……」

 ナギにはわかる。フカヒレが心の中で「このコ達、誰? つーか、流れ的に相席でしょ?」と叫んでいるのが痛い程にわかる。
 まぁ、見た目だけなら文句なしに美少女とカテゴリーできる二人なので、健全な男子中学生としては当然の反応だろう。それは認める。
 だがしかし、二人が危険フラグを内包していることを知っているナギとしては、できるだけ二人と関わりたくないのが本心なのだ。
 もちろん、ネギクラスのコだから危険だ などと言うつもりは(今となっては)ナギにはない。ネギをパートナーにした段階で今更だ。
 つまり、今回はナギの直感が告げているのだ。この二人と深く関わってしまったらネギ以上に危険なことになり兼ねない、と。

「や、やぁ。二人とも。奇遇だね?」

 だから、ナギは「如何にして この状況をうまいこと切り抜けるか?」を考えながら、無難に返答する。
 できることなら「じゃあ、そう言うことで」とか言って遁走したい……が、流れ的に それはできない。
 そのため、うまく逃げられるような流れに持っていかなければならないのだ。実に過酷なミッションだ。

「ええ、奇遇ですねー。ナギさんもお昼御飯ですかー?」

 ここでフカヒレが「そうなんですよ!! だから御一緒しませんか、お嬢さん!! ハァハァ」とか口走らないように、
 フカヒレをコッソリと手で制しつつ「とりあえず、ここはオレに任せてくれ」とアイコンタクトで伝えて置く。
 何故なら、フカヒレに余計なことをされたらナギがフォローせざるを得ないからだ。これも直感が告げているのだ。

「うん、まぁ、そうなるかな」

 態々 言うまでもないだろうが、曖昧に返事をしたのには大した意味がない。単に まだ考えが纏まっていないので適当に返しただけだ。
 ただ、ここで「二人もランチなの?」とか言ったら「そうなんですよー、一緒にどうですかー?」とか言われそうなので、それは避けたが。
 ちなみに、その予想も直感が告げているらしい。どころで、直感と言う言葉が便利過ぎて多用してしまいそうなので そろそろ自重しようと思う。

「……ところで、そちらの方は?」

 のどかは今気付いたかのようにフカヒレに視線を送って、ナギに紹介を求めて来る。ナギより与し易いと見たのだろう(正解だ)。
 当然ながら、ナギは「ここで素直にフカヒレを紹介したら、フカヒレが会話に参加する流れになってしまう」ので渋い反応だが。
 何故なら、相席する気満々なフカヒレに口を開かせたら相席することになってしまうからだ。それだけは避けたいのがナギの本音だ。
 だが、だからと言って フカヒレを紹介しない訳にはいかない。それ故に、フカヒレを紹介したうえで黙らせるくらいしか道がない。

「え~~と、コイツは「神蔵堂君の『親友』の鮫島 新一(さめしま しんいち)です。今後ともヨロシク願いします」まぁ、こんなヤツだよ」

 言うまでもないだろうが、せっかく方針が固まったと言うのにフカヒレに口を挟ませてしまったので、最早 黙らせることも不可能である。
 ナギのショックは甚大であることも言うまでもないだろう。と言うか、二人は いつから親友になったのだろう? 実に摩訶不思議だ。
 それに、呼称もおかしい。『神蔵堂君』って何だろう? さっきまでは普通に『神蔵堂』だったので、余計に違和感を覚える響きである。

「どうか、気軽に『シャーク』と呼んでください」
「いや、どっちかって言うと『フカヒレ』でしょ?」

 フカヒレのセリフにナギがツッコんでしまったのは、単なる条件反射だ。深く考えた訳ではない。むしろ、何も考えていない。
 と言うのも、実はさっきも「麻帆良の『シャーク』と呼ばれる このオレがぁああ!!」とかフカヒレが叫んだのを聞いたナギは、
 ついつい「いや、鮫島の場合は『シャーク』と言うよりも、むしろ『フカヒレ』じゃない?」とツッコんでしまったのである。

 当然ながら、フカヒレはその出来事を覚えていたのだろう。「フッ、計 画 通 り !!」と言わんばかりの邪な笑みを浮かべる。

 そして、フカヒレは表情を爽やかな笑みに変えながら「おいおい、ひどいなぁ兄弟」と言わんばかりにナギの肩を叩いて来る。
 そう、フカヒレはナギにツッコませることで仲の良さをアピールしたのだ。のどか達に先の親友発言が真実であると見せるために。
 言うまでもなく、そんなフカヒレの狙いにナギが気付かない訳がないのだが、既にツッコんでしまったので後の祭りでしかない。

「そうなんですかー。よろしくお願いしますねー、フカヒレさん」
「えっと……その、よ、よろしくです。フ、フカヒレさん」

 まぁ、美少女な二人に『フカヒレ』として認識されてしまったのでフカヒレは ちょっと涙目をしているが。
 いくら仲の良さをアピールするためとは言え『フカヒレ』をネタにするのは諸刃の剣だったようだ。
 ナギとしてはシャークでもフカヒレでも大差ないとは思うが、フカヒレとしては何かが違うのだろう。

「ちなみに、この二人は宮崎のどかと綾瀬 夕映って言うんだけど……せっかくなので『本屋ちゃん』と『ゆえ吉』って渾名を覚えてやってくれ」

 そんなフカヒレに同情したのだろうか? ナギは ついつい二人を(変な渾名付きで)フカヒレに紹介してしまった。
 フカヒレがショックを受けている隙に「男同士で話したいことがあるから」とか言って離脱できたのだが……
 何故か離脱を図るよりもフカヒレをフォローすることを優先してしまったのである。ナギ自身でも驚愕の反応だ。

(う~~ん、勝手に口が動いたと言うか何と言うか……とにかく、悪手以外の何物でもなかったなぁ)

 ナギは この時の軽率な言動を後になって非常に後悔する(後悔は先に立たないので、後悔は後にしかできないが)。
 何故なら、変な渾名に連帯感のようなものが芽生えたせいか、フカヒレは不死鳥の如く復活してしまったからだ。
 しかも「じゃあ、自己紹介も済んだことだし みんなでランチしようぜ!!」とか(予想通りに)暴走してしまったからだ。

 ナギが「やっちまったぜ……」とorzなポーズを心の中で取っていたのは言うまでもないだろう。



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Part.03:目的のためならば犠牲を厭わない主義


「ところで、ナギさんにお聞きしたかったことがあるんですけど、いいですかー?」

 端的に状況を説明すると、ナギの予感とは裏腹にランチは恙無く終わり、今は四人で帰っているところである。
 何かフカヒレが随分と空回りしていたような気はするが、ナギに精神的な疲労は無いので恙無かったに違いない。
 ちなみに、四人で帰っているのは、フカヒレのアツい要望で二人を女子寮の近くまで送っていくことになったからだ。
 直感に従うならばフカヒレの想いなど無視すべきなのだが……想いがアツ過ぎてナギは無視できなかったらしい。

「まぁ、内容に拠るかな? ちなみに、どんな内容なのかな?」

 さて、語尾が間延びした独特な話し方で既にお分かりだろうが、ナギに話し掛けて来たのは のどかである。
 ちなみに、のどかは一見いつも通り のんびりしているように見えるが、何処か いつもと違う空気を纏っている。
 その微妙な空気の違いに気付いたナギは「何を訊いて来るんだ?」と僅かに警戒しながら のどかに訊ね返す。

「えっとー、ネギちゃんのペットのオコジョさんって、何でナギさんとおしゃべりできるんですかー?」

 だがしかし、のどかから返って来た言葉はナギの想定を超えており、ナギの警戒を無意味なものにした。結果、ナギは軽くテンパった。
 具体的には「こ、こう言う時は、素数を数えて落ち着くんだ」とか「1,2,3,5――って1は素数じゃねぇ!!」とか言う感じだ。
 自身にツッコミを入れられるくらいに落ち着いている と言うよりも、自身にツッコまざるを得ないくらいに落ち着いていないのだ。

「のどかがなにをいっているのかさっぱりいみがわからないなぁ」

 そんなナギがまともな反応をできる訳がない(声は平坦となり、漢字変換すらできなかった)。これでは「語るに落ちる」もいいところだ。
 ちなみに、歩いているうちに「ナギと のどか、フカヒレと夕映」と言う組み分けになっており、のどかの言葉を聞いていたのはナギだけだ。
 余人に聞かれなかったのは不幸中の幸いと言うか何と言うか……ナギは偶然だと思っていたが明らかに のどかが意図的に二人きりになったのだろう。

「その動揺具合から見ると、あれは腹話術って訳じゃないんですねー」

 のどかの苦笑交じりの言葉に「オゥ、ジーザス!! その手があったじゃん!! 気付けよ、オレ!!」とナギは己の言動を深く後悔した。
 と言うか、どう考えても あの反応は悪手だったとしか言えないだろう。バレバレだった以上に白々しく誤魔化そうとしたのが不味い。
 同じ誤魔化すにしても もうちょっとうまく誤魔化すべきである。いくらテンパっていたからと言って あの反応は有り得ないだろう。

 だが、ナギは この程度のことではあきらめない。むしろ「この逆境を利用してやる!!」くらい考えている。実にしぶとい男なのである。

「あ~~、いや、実を言うと そうなんだよ。密かに腹話術を練習するのにネギのペットを貸してもらってたんだよねぇ。
 んで、それは隠し芸だから秘密にして置きたくってさ、だからさっきは白々しく誤魔化そうとしたって訳なんだ。
 でも、腹話術だって見抜かれてしまったからには素直に認めざるを得ないし、口止めもしたかったから正直に話したのさ」

 ちょっと――いや、かなり苦しいが、有り得ない話ではない。少しくらいなら有り得そうな話だ。

「えー、でもー、ネギちゃんとも おしゃべりしているところも見ちゃったんですよねー?
 つまり、ネギちゃんもナギさんと同じ様に腹話術を練習しているってことなんですかー?
 それとも、腹話術って言うのは単なるナギさんの『口から出任せ』だったんですかー?」

 だがしかし、のどかには通じなかった。むしろ、綺麗に嵌められた感じだ。

 ナギが心の中で「オゥ、ジーザス!! 利用するどころか掌の上で弄ばれただけじゃん!!」と嘆いたのは言うまでもないだろう。
 そして、ナギは嘆くと同時に のどかの評価を「ポヤポヤしているコ」から「恐ろしいコ」に改めたのも言うまでもないだろう。
 ちなみに、こっそりと「フカヒレの想いなんて無視して離脱すべきだった」と後悔したらしいが、後の祭りなので割愛する。

(って言うか、これってかなりヤバくない? まさかのオコジョエンド? あっ、でも、オレはオコジョ刑じゃないのかな?)

 魔法をバラしてしまった『魔法使いへのペナルティ』はオコジョ刑である。そう、あくまでも対象は魔法使いだ。
 だが、対象として明言されていない――つまり、魔法使いではないからと言って、何もペナルティがない訳ではないだろう。
 と言うか、相応のペナルティが課せられる筈である。いや、むしろ、魔法使いよりもペナルティが高い可能性すらある。

「何て言うか、何て言うべきか……とりあえず、それって誰にも話してない?」

 オコジョ刑になるのか? それとも それ以上の罰が課せられるのか? それは定かではないが、対処しなければいけないのは確かだ。
 とは言え、ナギには記憶消去なんて芸当はできないので、ナギにできる対処など高が知れている――せいぜい状況確認くらいだ。
 故にナギは「のどか以外に知っている人物がいるか」を確認したのである(もし いる場合は、その者も対処せねばならないだろう)。

「もちろん話してませんよー。だって、おかしなコだって思われちゃいますからー」

 まぁ、妥当な意見だろう。普通は そんなことを言われたら「ナニイッテンノ?」としか思わない。
 その意味では、先程の対応は「は? ナニイッテンノ?」と冷静に返すのが正解だったのだろう。
 カモとの会話を見られたことも不味かったが、対応も不味かった。対応次第では挽回できたかも知れない。

「そっか。それじゃあ、これからも誰にも話さないって約束してくれるなら……のどかにだけ真実を話すよ」

 慎重に対応しようと心を改めたナギは、下手な誤魔化しなどせずに正面から対応することにした。
 何故なら、ここまで来て誤魔化そうものなら痛くない訳でもない腹を探られそうだからだ。
 人の性として「隠されれば知りたくなる」ため、敢えて隠さずに秘密を教える道を選択したのだ。

「わ、わかりましたー。誰にも話しませんー」

 当然ながら、誤魔化すことはやめたが小細工はやめていない(その辺りが実にナギらしいだろう)。
 実はと言うと「のどかにだけ真実を話すよ」の部分は、のどかの耳元でコッソリ囁いていたのだ。
 その効果は抜群だったようで、のどかは顔中を真っ赤に染めながらコクコクと頻りに頷いていた。

「じゃあ、ちょっとオレの部屋に来てくれるかな? 誰にも聞かれたくない話なんで、誰にも邪魔されたくないんだよ」

 のどかの反応が予想以上に良かったため、調子に乗ったナギは『含みのある表現』を使って のどかを誘い出した。
 まぁ、含みがあると言うか、取り方によっては「これから攻略するから」と言っているようにしか聞こえない表現だが。
 もちろん、ナギには『そんなつもり』など これっぽちもない。ちょっと『いい雰囲気』を演出したかっただけなのだ。

「は、はいー。わ、わかりましたー。ゆえに怪しまれないためにも一度部屋に帰ってから伺いますー」

 相変わらず残念なナギだが、そんな事情を知らない のどかの期待は鰻上りだ。本当に『知らぬが仏』である。
 ちなみに、さすがのナギでも「あれ? もしかして、のどかってば変な誤解してる?」と気付いたらしいが、
 気付いても残念なことは変わらないため「まぁ、直ぐに誤解だってわかるから いいか」とか納得したようだ。

 と言うか「それじゃあ、今度はネギを説得してオレの部屋に連れて来ないといけないなぁ」と意識を切り替える始末だった。



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Part.04:宮崎のどかの思惑


 せっかくですので、ここで『ちょっとした裏事情』をお話しして置こうと思います。

 そもそも、ナギさんが外出していること自体は、黒服さん達からの報告(の不正共有)と自前の監視カメラから把握していました。
 ですから、ナギさんの行動を予測したり麻帆良市街に設置された防犯カメラを『利用』したりして、ナギさんの追跡を行っていたのです。

 そして、ゲームセンターにて一緒に遊んでいた男性と昼食に行く話をしているのを聞き、慌てて ゆえを呼びました。

 ナギさん お一人でしたら私一人の方が何かと都合がよかったので、それまでは私一人で『様子を窺っていた』んですけど、
 残念ながら『オマケ』がついていますので、ゆえを巻き込んでナギさんと二人だけで お話できる状況を作りたかったんです。
 と言うのも、水曜と木曜には「妙なオコジョさん」が現れましたし、金曜と土曜にはネギちゃんが入り浸っていたからです。
 これらの事実は、別に焦るようなことではありません。ですが、絡繰さんの例もありますので『情報収集』で満足してはいけません。
 つまり、これらの事実を利用してナギさんと親密な関係になるべきなのです。やはり、そろそろ既成事実が欲しい段階ですね。

 まぁ、そう言う訳で、ナギさん達の会話を聞きながら「どこで昼食を取るのか」を推測し、ゆえと共に先回りしていた訳です。

 あ、ちなみに、私はゆえを無理矢理 巻き込んだとは、これっぽっちも思っていませんよ?
 ナギさんとお食事したいから協力してーって言ったら、快く協力してくれましたからね。
 ……ふふ、あれで自分の気持ちを隠してるつもりなんですから、ゆえって可愛いなぁって思います。

 私はそこまで独占欲が強くないつもりですので、ゆえとなら共有してもいいかなぁとは思ってるんですけどねー?

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 さて、そんなこんなで、うまいことナギさんと二人きりになって お話ができました。結果は、予想以上に うまくいきました。ビックリです。

 実を言うと、私は「オコジョさん」のことを超さん作った「オコジョ型ロボット」だと踏んでいたんですけどね。
 ナギさんの反応を見る限りでは、どうやら「ナギさんが秘密にしたい何らかの事情」に関わっているみたいなんですよ。
 しかも、ネギちゃんのペットでもあることも踏まえると、ネギちゃんとナギさんの関係にも関わっていそうですね。

 しかし、ナギさんってば白々しく誤魔化そうとするんですもん。さすがの私もちょっとイラっと来て、ついつい意地悪しちゃいましたよ。

 でも、意地悪したら、ナギさんが私を警戒し始めたので、これからは自重しようと思います。
 まぁ、ナギさんを責めるのに快感が得られなかったと言えばウソになりますけどね?
 でもでも、どちらか言うと、私って「イジメるよりもイジメられたいタイプ」なんですよね。

 ――って、話が脱線しちゃいましたね。

 えっと、とにかく、ナギさんは私を警戒してましたけど、同時に何かを決意したようでした。
 それで、私の耳元に口をソッと寄せて「のどかにだけ話すよ」って囁いてくれたんです。
 これは言うまでもないことでしょうが、その時の私の全身には感動が突き抜けましたね。

 何て言うか「私、耳も性感帯だったんですねー」って新たな発見に驚いた感じでしたよ。

 って、違いますね。自分でも簡単過ぎるとは思いますけど、ナギさんの「私にだけ」ってフレーズにヤラレちゃったんです。
 ウソでも そんなこと言われちゃったら「ナギさんの秘密をネタに『お願い』しよう」なんて考えは吹き飛んじゃいますよー。
 やっぱり、ナギさんの秘密を利用して得られる利益よりも、秘密を共有することによって得られる特別感の方が大事ですからね。

 それに、ナギさんの部屋にご招待された訳ですから、これは万々歳な結果です。

 だって、当初の予定では、情報を利用して楔を打ち込めればいいかなぁって程度でしたので、
 ナギさんの方から既成事実を作れそうな展開に誘っていただけるとは思っていませんでしたもん。
 まぁ、ナギさんのことですから「話だけ」で終わる可能性が非常に高いですけどね。
 ですが、そんなこと気にしません。私は、このチャンスを逃す程 甘くはありません。
 ですから、そう言った事態に及んでもいいようにシッカリと準備をして赴く予定です。

 と、とりあえず、シャワーを浴びて着替えてから行こうと思います。



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Part.05:決意と誓いと想い


 と言う訳で、舞台はナギの部屋に移り、のどかへの『説明』が始まった。

 ちなみに、のどかは先程の言葉通り、一度 夕映と一緒に帰宅してからナギの部屋に尋ねて来た。
 どうでもいいが、のどかの服装がボーイッシュなものに変わっていたのは男子寮だから気を遣ったのだろう。
 最近ナギが「男装少女の出て来るアレなゲーム」を気に入っていることとは何も関係がない筈である。

「つまり、ネギちゃんは『魔法使い』で、カモちゃんはその『使い魔』だから、カモちゃんは お話ができる……と言うことですか?」

 ここまでの説明は省かせてもらったが、大雑把に言えば その通りの説明だった。つまり、ナギは正直に真実を説明したのだ。
 もちろん、口頭で説明しただけではない。魔法に信憑性を持たせるためにデモンストレーションも含めて説明を行った。
 随分と親切に教えている様に思われるかも知れないが、信じてもらわないとナギが困るだけだ。のどか を気遣った訳ではない。

 余談だが、のどかの口調が普段と違うことにナギは気付いているが「きっとシリアスだからだろう」で納得したらしい。

「まぁ、俄かには信じ難いだろうけど……さっきネギが実演してくれた通り、魔法は実在している。
 んで、魔法が一般には『実在していない』とされているのは、魔法が秘匿されているからなんだ。
 そして、魔法が秘匿されている理由は、その危険性を考えれば言わなくてもわかってくれるよね?」

 ここまで言えば最早 言うまでも無いだろうが、ナギがのどかに魔法を説明したのは魔法の危険性を教えるためだ。

 魔法と言うと夢のある言葉に聞こえるが、実際は危険な代物でしかない。興味本位で近付けば、取り返しがつかないことになるだろう。
 何故なら、魔法使いとは杖(魔法発動体)さえあればダイナマイト以上の火力が一個人で出せてしまうからだ。その脅威は凄まじい。
 特にネギがいい例だろう。ネギは無害そうな幼女にしか見えないが、実際は森一つを吹き飛ばすくらいの芸当が簡単にできるのだから。

 ちなみに、ナギとしては「ネギは魔法を抜きにしても無害じゃないけどね。主に社会的にオレを追い詰める意味で」らしいが、非常にどうでもいい。

「はい、仰りたいことはわかります。言い方は少し悪いかも知れませんが、『重火器が服着て歩いている』ようなものですもんね」
「その通りだね、魔法はファンタジーなイメージがあるけど実際は危険な代物だよ。だから、下手に首を突っ込まない方がいい」
「ですが、私は『知ってしまった』んですよね? ですから、今更『無関係な人間に戻る』のは無理があるんじゃないでしょうか?」

 確かに、普通に考えたら今更 無関係に戻るのは難しいだろう。その考えは間違ってはいない。
 だがしかし、ナギが態々「関わるな」と言葉にした意味を考えれば自ずと答えは導き出せるだろう。

「……それとも、今からでも『知らないことにできる』と言う意味ですか?」

 そう、知ってしまった以上 無関係には『戻れない』が、無関係に『する』ことはできるのだ。
 その方法がどんなものであれ、今からでも のどかは魔法を知らない一般人にすればいいのだから。
 のどかは そこまで思い至っているのだろう。ナギの返答を待つ のどかの表情は神妙そのものだ。

「ああ、その通りさ。魔法について説明したのは、その危険性を理解したうえで魔法について『忘れてもらいたい』からだったんだ」

 それ故に、ナギは敢えて「秘密にして欲しい」とも「記憶を消させて欲しい」とも取れる、曖昧な表現を取った。
 のどかに『記憶消去』の魔法があることを教えた訳ではないが、その存在を想定くらいはしている筈だ。
 よって、のどか がナギの言葉を どの様に受け止めるのかは定かではない。定かではないが、選ぶのは前者だろう。

「…………わかりました。魔法に関することすべてを『忘れることにします』」

 しばらくの沈黙の後、のどかが答えたのは(ナギの想定通り)前者――秘密にすることだった。
 形としては のどかに選ばせた形だが、見方によってはナギが決断から逃れた とも見える。
 いや、実際その通りだ。前者を選ぶだろう とは考えていたが、後者の選択肢も与えたのは確かだ。

「ありがとな……」

 その感謝は、決断を代わってもらったことに対するものなのか? それとも、魔法を忘れると約束してくれたことに対するものなのか?
 それはナギにもわからない。わからないが、のどかが「魔法に関することを秘密にする」と言う形の『協力者』になったのは確かだ。
 魔法秘匿のためには秘密にしてもらうだけでは生温いかも知れない。だが、記憶を消すだけが秘匿ではない とナギは考えているのだ。

「で、悪いんだけど……ちょっと これを嵌めてから、忘れることを誓ってくれないかな?」

 そう言いながら、ナギがポケットから取り出して のどかに渡したのは指輪である。当然、普通の指輪ではない。ネギに作ってもらった魔法具である。
 その効果は「指輪を嵌めた者が定めたルールを遵守させる」と言うもので、これを嵌めて成された『誓約』は これを嵌めて撤回しない限り破れない。
 ちなみに、使い方は非常に簡単で、使用者(嵌めた者)が誓う内容を述べた後に『誓う』や『遵守する』と言った宣言をするだけで『誓約』が成立する。
 自ら誓約をしなければならない性質上、会話を誘導するなりして他者の言動を束縛することはできないが、己の言動を律するには持って来いの品だ。
 まぁ、語りたくないことを秘密にできるので犯罪にも利用できるため、某青狸の未来道具と一緒で『使い方次第で犯罪を助長する』と言う側面もあるが。
 これは余談となるが、開発した時ネギは『誓うわ』と言う名前を付けようとしていたが、余りにヒドかったのでナギが『誓約の指輪』と名付けたらしい。

「もちろん、のどかを信頼していない訳じゃない。ただ、ウッカリってこともあるから、その予防策だよ」

 ナギは一連の説明を そう締め括る。言うまでもないだろうが……実際には、ナギは のどかのことを信頼してなどいない。
 だが、それは のどかもわかっている筈だ。ナギのセリフは単なるリップサービスと言う名の社交辞令だ と言うことを。
 ところで、誓約内容は のどかに決めてもらうことになっているのだが、当然ながら のどかを信頼しているから などではない。
 ナギが誓約内容を決めてしまうと、間接的にだが言動を縛ったことになってしまうから(先の選択と同様に)それを避けたのだ。

「わかりました……」

 のどかは深く頷いて納得を示した後、しばらくの間 沈思黙考する。
 恐らく誓約内容を――正確には、その言い回しを吟味しているのだろう。
 文学少女である のどかは、言葉の難しさを理解している筈だからだ。

「……では、『魔法に関係することを第三者に漏らしません』、そう誓います」

 考えが纏まったのか、のどかは力強く宣誓をする。その内容は、文学少女である と言う のどかの評価を違えないものだろう。
 何と言っても、言葉の選び方がうまい。実に吟味されている。もしも「誰にも漏らさない」だったら、ナギやネギにも話せない。
 それに「ナギ達以外に漏らさない」だったら関係者が増えた時に困る(「何を以って『第三者』とするのか?」はのどか次第だ)。

「じゃあ、これはオレが預かって置くから、誓約内容を変えたい時は言ってくれ」

 ナギはのどか から『誓約の指輪』を受け取ると、仕舞ってあった時と同じ様にポケットに仕舞う。
 何故なら『誓約の指輪』を のどかの手元に置いておくのは余り好ましい状況ではないからだ。
 誓約内容を恣意的に書き換えられるのもあるが、魔法具から魔法がバレたら笑えないのである。

「ええ。わかりました」

 ナギは記憶を消されたくないため、他人の記憶を消すことを忌避している。言わば、ナギのエゴで のどかを協力するように誘導したのだ。
 だが、それでもナギは「済し崩し的にパートナーにして魔法に巻き込んだり、問答無用で記憶を消すよりはマシだった」と思っている。
 何故なら、のどかが納得したうえでナギ達が不利にならない形で決着が付いた――言わば「ウィン・ウィンの関係」で話が纏まったからだ。

 問題があるとしたら『記憶消去』をしていないことに魔法使い側から文句を言われる可能性くらいだろう(そこら辺は納得させればいいので問題ない)。

 ただ、のどかと別れた後にネギから「カモちゃんが突然変異でしゃべれるって説明すればよかったんじゃないですか?」と不思議そうに言われ、
 思わず「その手があったじゃねぇかぁああ!! 気付け、オレェエエ!!」とか心の中で絶叫したので、根本的なところに問題があったかも知れないが。
 と言うか「オコジョがしゃべれる = 魔法の証明」とか考えて勝手に魔法バレしたと思ったナギは もう戻れないところに来ているのかも知れない。

(某夢の国では二足歩行するネズミさんが歌って踊るんだから、オコジョがしゃべっても「世界って不思議だね」で納得させられたなぁ)

 まぁ、あきらかに話題が同列ではない気がするが、両方ともファンタジーと言えばファンタジーなので、ナギの中では同列なのだろう。
 どう考えても、夢のあるファンタジーと血に塗れたファンタジーを同列に考えてはいけない気がするが、そこは気にしても仕方がない。
 と言うか、現実逃避をしても事実は変わらないので、最悪の結果(パクティオーや記憶消去)にならなかったことを素直に喜ぶべきだろう。

 ……そこまで前向きにはなれないナギがネギを帰宅させた後サメザメと泣いたのは言うまでもないだろう。


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―― のどか の場合 ――


 喜び勇んでナギさんの部屋にお邪魔した私を待っていたのは(残念なことに)ネギちゃんでした。

 ………………はい? 何でネギちゃんがいるのかなぁ?
 状況が理解できない私は、説明を求めてナギさんを見つめました。

「だって、ネギのペットの話題だろ? だったら、ネギも当事者じゃん。って言うか、ナギの一存では話せない内容だからネギが必要なんだよ」

 しかし、ナギさんの言葉は、浮かれていた私を容赦なく叩きのめしてくれました。
 いえ、余りにも事がうまく運ぶので変だなぁとは思っていたんですけどね?
 まさか こんな落とし穴があったとは想定していませんでした(ショックは甚大です)。

「ってことで、ネギ。のどかに魔法を見せてやってくれ」

 はい? 「ってことで」って一体どう言うことでしょうか?
 って、そうじゃないですね。『魔法』ってどう言うことでしょうか?
 ショックの余り私の耳が幻聴を聞いてしまったんでしょうか?

「……わかりました、ナギさん」

 え? わかりましたって……ネギちゃん、何をする気なの?
 そんな御伽噺の魔女が持っているような杖なんか掲げて……
 あ、コスプレだね? パルに言ったら喜びそうだなぁ(現実逃避中)。

「ラス・テル マ・スキル マギステル、『火よ灯れ』」

 って、えぇええ?! ネギちゃんの杖の先から火が出ました!?
 マジックですか!? 手品ですか!? それともトリックですか!?
 も、もしかしてハカセさんの作った新種の火炎放射器ですか?!

「ラス・テル マ・スキル マギステル。ものみな焼き尽くす浄化の炎、破壊の主にして再生の徴よ、我が手に宿りて敵を喰らえ、『紅き焔』」

 って、えぇえええ?!! 今度は爆発しちゃいましたよ!?
 何故だか置いてあった案山子が軽く吹き飛びましたよ!?
 何ですか、あれ!? あれって本当に魔法だったんですか??!

「……これが魔法だ。今のは初歩と中級だったが、ネギが本気でやればこの部屋くらい消し炭にできる」

 あ、あれで本気じゃないんですかー。ダイナマイト要らずですねー。
 って、そう言う問題じゃないですねー。魔法ってあったんですねー。
 てっきり『魔法』って言う隠語の『超技術』だと思ってましたよー。

「ってことで、魔法が実在するものとして話を進めると……ネギは『魔法使い』で、このオコジョはネギの『使い魔』ってヤツなんだよ」

 え~~と、つまり、オコジョさんは魔法的な生物だからしゃべれるってことですか?
 何だか、それでもしゃべれる理由にはなっていない気がしますけど、何となく納得できます。
 魔法って何でも有りって感じがしますからね、オコジョさんがしゃべるのも有りだと思います。

「まぁ、俄かには信じ難いだろうけど(中略)その危険性を考えれば言わなくてもわかってくれるよね?」

 そうですね。あれだけ危険なものが公になったらバイオレンスでデンジャラスですね。
 どんな原理で魔法が使えるのかはサッパリわかりませんけど、危険なのはわかります。
 むしろ、魔法は「個人が持つには強力過ぎる力だ」と言うことがわかりましたよ。

 ……しかし、当のネギちゃんには自覚がほとんどないので、実に困ったものですね。

 だから、ネギちゃんの方を見て「重火器が服着て歩いている」と言う表現を使ったんですけど。
 残念ながら、ネギちゃんには私の皮肉は通じませんでした(自覚のない危険人物は怖いですねー)。
 もしかしたら通じたうえでスルーしているのかも知れませんけど……それはないと思いたいです。

「その通りだね、魔法はファンタジーなイメージがあるけど実際は危険な代物だよ。だから、下手に首を突っ込まない方がいい」

 でも、ナギさんにはシッカリと伝わったみたいで、ナギさんは苦笑をしながら魔法に関わる危険性を改めて指摘しました。
 と言うか、つまりは私に「興味本位で近付くと死んじゃうから気を付けろ」って警告してるんですよね?
 って、あれ? でも、こう言うのって「知ってしまった段階」で危険に巻き込まれるのが相場なんじゃないですか?

 そんな訳で「もう手遅れなんじゃないですか?」って確認してみたんです。

 でも、ナギさんは「まぁ、普通ならそうだけど、だったら話さないから」と言う反応だったので、
 まだ手遅れではないことが――つまり、まだ『知らないことにできる』と言うことが予想できました。
 ただ、自分で言って置いて何ですが、『知らないことにできる』って どう言うことでしょうか?
 私に教えたことをナギさんが黙っているから秘密にしてくれればOK と言うことでしょうか?
 それとも、魔法らしく記憶を改竄するようなことができるからそれを使えばOK と言うことでしょうか?

「ああ、その通りさ。魔法について説明したのは、その危険性を理解したうえで魔法について『忘れてもらいたい』からだったんだ」

 できればどちらかを特定して欲しかったんですけど、ナギさんの答えは「どちらとも取れる表現」でした。
 ……これは、「明言を避けた」と言うよりも、「私に解釈の余地を残してくれた」と見るべきでしょうね。
 って思ったんですけど、どっちもできるってことみたいです。本当、魔法って便利で危険なものですねー。

 まぁ、でも、ナギさんにだったら記憶を弄られても別に構いませんけどね?

 しかし、さっきのデモンストレーションを見ると、実行者はネギちゃんっぽいからイヤですね。
 って、あれ? じゃあ、ナギさんって魔法使いじゃないってことなんでしょうか?
 なら、どう言った関係で魔法と関わっているんでしょうか? オコジョさんみたいな使い魔なんでしょうか?

 って、今はそんな場合じゃないですね。どちからを選ばないといけないですね。

 とは言っても、既に答えなんて出てるんですけどね?
 だって、ネギちゃんに記憶を弄られるのは避けたいですから。
 そんな訳で「秘密にする」と言う意味で返答して置きました。

「ありがとな……」

 そうしたら、何故だかナギさんに御礼を言われました。理解は不能ですが、照れ臭そうな姿が萌えだったのでオールOKです。
 で、その後、いきなり指輪を渡されたので、ちょっとドキドキしてたんですが……残念ながら、魔法の道具らしいです。
 何でも、誓いを遵守させるためのアイテムらしく、結婚式の時に使うと離婚とか有り得なさそうで便利そうですよね。
 ちなみに、嵌めた状態で誓いを撤回できるそうですけど、永遠の愛を誓わせた後に指輪交換をすれば万事解決ですからね。

 って、話がズレてますね。今の大事なことは「のどかを信頼してない訳じゃない」と言う言葉ですよ。

 恐らくは円滑な関係を築くためのリップサービスなんでしょうけど……やっぱり、言われると嬉しいものですね。
 だって、裏を返すと「信頼している」と言うことですからね。ナギさんからの信頼を裏切る訳にはいきませんって。
 それに、ナギさんの仰る通り、ウッカリ口を滑らせてしまう可能性もありますから、誓うことに異論はありません。

 ただし、誓う内容は ちょっと吟味した方がよさそうですね。

 ナギさんやネギちゃんにも明かせないような内容にしてしまうと、
 せっかく秘密を共有できるような関係になれたのに 意味がなくなります。
 ですので、無難に『第三者』に漏らさないって内容にしました。
 とは言え『第三者以外の人』ってどこまで含まれるんでしょうか?
 ナギさんにとっての味方の魔法関係者も含めていいんでしょうか?

 まぁ、今の内容で問題が起きたら内容を変えればいいんですけど。

 それはともかく、私の行動を縛るもの を ナギさんが所有している って、何だかいいですねー。
 間接的に束縛されていると言うか、暗黙の了解で「のどかはオレのもの」って感じがしますよねー。
 それに、二人だけの秘密を共有するって言うシチュエーションにもテンションが上がりますねー。

 え? ネギちゃんも含まれている? ネギちゃんはほとんど空気でしたので、気にしませんよー?

 最近、ナギさんと妙に仲が良くて危険視してましたけど、理由はわかりましたしー。
 むしろ、私も『魔法を秘密にすると言う絆』を手に入れたんで、ドローですよー。
 それと、茶々丸さん共にとロストしたことの理由(魔法関係で拉致された)も聞けましたので、
 既成事実は得られませんでしたけど、他のライバルと差をつけられたってことで万事OKです。

 ついでに、ナギさんの部屋の中に監視カメラと盗聴器を設置できたので、言うこと無しですねー。


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―― ネギの場合 ――


 ナギさんから『念話』による連絡を受けた時はビックリしました。

 だって「ミヤザキさんに魔法がバレたので、魔法をキチンと説明したい」と言う お話だったんですもん。
 いえ、バレたことも驚きだったんですけど、ナギさんがアフターフォローに積極的だったんでビックリだったんです。
 あ、でも、よくよく考えてみると、ナギさんはボクの対応のマズさを見ているからって可能性もありますね。
 きっと、あんな風に記憶を消されたらイヤだろうなぁ と言った理由で積極的に対応しようとしているんですよね。

 ……はぁ、自分の考え無しな行動が恥ずかし過ぎます。

 こう言う時は「認めたくないものだな……自分自身の若さ故の過ちと言うものを」とでも言えばいいんでしょうか?
 それとも「あんなのただの黒歴史です。偉い人にはそれがわからんのです」とか逆ギレ気味に開き直ればいいんでしょうか?
 いえ、違いますよね? 過去を悔いても現在は何も変わりませんから、未来を明るくするために現在を重視すべきですよね。
 それに、せっかくナギさんから『頼んでいただけた』んですから、全力で応えないといけません。失敗は許されません。
 と言うか、ここで失敗したら またナギさんからの評価が下がっちゃうので、それだけは避けねばなりません。だから、頑張ります。

 え~~と、まずは「言葉を遵守させるアイテム」が必要なんでしたよね……

 確か『鵬法璽(エンノモス・アエトスフラーギス)』って言う封印級の魔法具に似たようなものがありましたね。
 さすがに今のボクじゃ どう頑張っても封印級の物は作れませんけど、発動条件を厳しくすれば似たような物はできます。
 恐らく、対象を『使用者本人』にして『誓約』と言う形を用いれば『言葉を遵守させる』ことは可能でしょうからね。
 本来なら、対象を指定できたり、ちゃんとした誓約の形になっていなくても発動できるのが望ましいんでしょうけど……
 きっと、ナギさんなら巧く運用できるでしょうから それで問題はない筈です(実際、問題なかったようで褒めてくれました)。

 後は、ミヤザキさんの前で魔法を唱えただけでボクの役目は終了しました。

 もちろん、ボクのせいでナギさんを巻き込んだんですから、どんな理由があろうとも すべての責はボクが負うべきだ とは思います。
 ですから、ミヤザキさんに魔法バレした経緯が どんなものであったとしても、ミヤザキさんと交渉べきなのはボクだった筈です。
 それなのにもかかわらず、ミヤザキさんに事情を説明してミヤザキさんを説得したのはナギさんでした。ボクはいただけでした。
 ナギさんは「気にするな」と言ってくれましたけど、気になります。だって、ボクがしたことは魔法具を作って魔法を使っただけですから。

 そりゃあ『魔法使い』は魔法が使えるからこそ魔法使いですよ?

 ですが、魔法が使えるだけで『魔法使い』と名乗るのは何かが違うと――おこがましいと思います。
 正直な話、魔法が使える『だけ』で他のことが何もできないのであれば、何の役にも立ちません。
 そもそも『魔法使い』と言う言葉には「知恵あるもの」としてのニュアンスが含まれています。
 ですから、魔法を使える『だけ』が能の魔法使いなんて『魔法使い』なんて呼んじゃいけないんです。

 以上のような訳で、これからは魔法だけじゃなく他の面でもナギさんのお役に立てるような『魔法使い』になりたいと決意を新たにしました。

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 …………………………………………………………

「あの~~、そう言えば どうしてミヤザキさんに魔法をバラしたんですか?」

 そう言った決意をしたので、ミヤザキさんが帰った後にボクはナギさんに尋ねてみたんです。
 ナギさんのお役に立つためにはナギさんの考え方を理解して置く必要がありますからね。
 勝手に「ナギさんのためになる」と思い込んでナギさんの迷惑になるなんて最悪でしょう?

「え? だって、中途半端にバレるよりは正確な情報を与えた方がいいでしょ?」

 確かにそうですね、中途半端はいけません。
 何事もやるなら徹底的にヤルべきですよね。
 あ、でも、ちょっとだけ疑問が残りますね?

「じゃあ、どうしてカモちゃんが突然変異でしゃべれるだけって誤魔化さなかったんですか?」

 魔法が見られたんじゃなくて、カモちゃんがしゃべるのを見られただけなんですよね?
 それなら誤魔化すだけでよかったんじゃないかなって思ったんで、訊いてみました。
 それに、ナギさんって誤魔化すの好きじゃないですか? だから、余計に疑問だったんです。

「……人間って隠されれば暴きたくなるだろ? だから、ヘタに誤魔化さずに敢えてバラすことで『協力』を仰いだのさ」

 なるほどー。そう言うことだったんですかー。さすがはナギさんですね。
 ボクは「秘匿 = 隠蔽」で考えていますけど、ナギさんは別の考えなんですね。
 確かに、敢えて情報を開示することも秘匿に繋がりますよね(勉強になりました)。

 どうやら、ボクは「まずは魔法を隠す」と言う考え方をしちゃうようですね。今後は気を付けるべきですね。

 しかし、何かナギさんが「ネズミが歌って踊る」とか「世界って不思議」とか言ってるのが聞こえるんですが……
 まぁ、きっと、ボクには想像も付かないような思慮遠謀に富んだことを考えていらっしゃるんでしょうね。
 ですので、ボクはナギさんの思考を邪魔しないように黙ってナギさんの考える姿を視k――鑑賞することにします。

 あ、ナギさんの部屋で魔法を使った件で説明し忘れていたことがあったんですけど……

 実はと言うと、魔法を使う前に、予め部屋の中に『防音結界』と『対物理障壁』と『対魔法障壁』を張ってありました。
 また、デモンストレーション用に用意して置いた『カカシせんせい1号』の周囲には『断熱結界』も張ってありましたので、
 ナギさんの部屋で中級の火炎魔法を使ってもナギさんの部屋は無傷でしたし、苦情も来ませんでした(抜かり無しです)。


 


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オマケ:とある日の茶々丸の日記


 本日、学園長先生の仄めかした情報により、マスターの魔力を封じている『学園結界』が今度の停電で解かれることがわかりました。

 先の襲撃が課題だったことがネギさんに悟られたので課題そのものは流れましたが、
 課題と言う口実がなくなろうとマスターが解呪をあきらめる訳がありません。
 当然ながら「魔力が解放される可能性」を示唆されたらマスターは飛び付くことでしょう。

 つまり、マスターが魔力を得る方法は変わりましたがシナリオの大筋は変わっていない、と言うことです。

 よって、学園長先生は何らかの思惑があって、マスターとネギさんを戦わせたいのだと見るべきでしょう。
 と言うか、そう言った裏がない限り、マスターに魔力が解放されることを仄めかす訳がありません。
 何せ、あのクソジジ――いえ、失礼しました、あの古狸は一筋縄ではいかない厄介な相手ですからね。

 まぁ、本来でしたら、そんな思惑などに乗って上げる義理も義務もないのですが……

 マスターが「ジジイに乗せられようと構わん!!」とヤル気になっていますので、思惑に乗るしくないですね。
 あ、いえ、マスターの意思は絶対ですからね、何があろうともマスターの意思は尊重しますよ?
 ですが、短絡的に力で物事を解決しようとするのは ちょっと不味いのではないか、と思うだけですよ。
 可能ならば、ネギさんに事情を説明して血を提供していただく と言うのがベストな解決方法でしょうね。
 ですが、マスターのことですから「小娘に頼むことなどできるか!!」と仰るのは目に見えてはいますけど。

 ……残念ながら、私の用意していた策(神蔵堂さんの篭絡)は まだ効果が完璧ではありませんので使えません。

 ですから、緊急に代案を用意して「マスターにとって最良の結果」を導き出さねばなりません。
 ですが、ヤル気になったマスターの望みを叶えると、ネギさんとバトることになるのが問題です。
 マスターは「強いものが正義」と言わんばかりの方ですので、直ぐに実力行使に出ようとするのですよ。

 まぁ、とりあえずのところは、心労の御返しも含めて あのタヌキには『報い』を受けていただきましょう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 後日、関東魔法協会からエヴァへ課題の報酬(500万円)が振り込まれたのだが それを指示した筈の近右衛門に身に覚えが無い、と言う珍事態が起きた。

 ちなみに、周囲の反応は「遂にボケたか……」だった辺り、近右衛門の人望が窺えることだろう。
 また、近右衛門のミスと言うことにされ、近右衛門がポケットマネーで補填することになったのだが、
 魔法先生の誰からもフォローされるようなことがなかったのは近右衛門の人望の成せる業に違いない。


 


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後書き


 ここまでお読みくださってありがとうございます、カゲロウです。
 以前から「改訂した方がいい」と言う意見が多数あったので、改訂してみました。


 今回は「のどかを動かしてみたのはいいけど、あんなになってしまった」の巻でした。

 原作のようにパクろうとして失敗するって感じでもいいかなぁとは思いましたけど、あんな感じになっちゃいました。
 ところで、ヤミ気味な のどか が「魔法を秘密にする代わりに既成事実を……」とか言い出さなかった理由ですけど、
 本人が語っているように「束縛されている」とか「二人だけの秘密」とかって言う乙女補正で妄想しているからです。
 それに、アプローチ方法が捻じ曲がってしまっただけで、その想い自体は純粋と言えば純粋なものですからね。

 それと、主人公ですけど……「いつか刺されますよねぇ」としか言えませんよね。

 ハーレムエンドは失敗するとバッドエンドにしかならないと言う典型です。
 って、あれ? そう言えば、ハーレムエンドを目指していたんでしたっけ。
 あまりにもハーレムエンドから遠のいてしまったので忘れるところでした……

 き、きっと、最終的にはハーレムエンドになりますよ。


 ……では、また次回でお会いしましょう。
 感想・ご意見・誤字脱字等のご指摘、お待ちしております。


 


                                                  初出:2009/10/09(以後 修正・改訂)


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