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No.10422の一覧
[0] 【完結】せせなぎっ!! (ネギま・憑依・性別反転)【エピローグ追加】[カゲロウ](2013/04/30 20:59)
[1] 第01話:神蔵堂ナギの日常【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:53)
[2] 第02話:なさけないオレと嘆きの出逢い【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:54)
[3] 第03話:ある意味では血のバレンタイン【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:54)
[4] 第04話:図書館島潜課(としょかんじませんか)?【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:54)
[5] 第05話:バカレンジャーと秘密の合宿【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:55)
[6] 第06話:アルジャーノンで花束を【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:55)
[7] 第07話:スウィートなホワイトデー【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:55)
[8] 第08話:ある晴れた日の出来事【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:56)
[9] 第09話:麻帆良学園を回ってみた【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:56)
[10] 第10話:木乃香のお見合い と あやかの思い出【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:56)
[11] 第11話:月下の狂宴(カルネヴァーレ)【改訂版】[カゲロウ](2012/06/10 20:50)
[12] 第12話:オレの記憶を消さないで【改訂版】[カゲロウ](2012/06/10 20:50)
[13] 第13話:予想外の仮契約(パクティオー)【改訂版】[カゲロウ](2012/06/10 20:51)
[14] 第14話:ちょっと本気になってみた【改訂版】[カゲロウ](2012/08/26 21:49)
[15] 第15話:ロリコンとバンパイア【改訂版】[カゲロウ](2012/08/26 21:50)
[16] 第16話:人の夢とは儚いものだと思う【改訂版】[カゲロウ](2012/09/17 22:51)
[17] 第17話:かなり本気になってみた【改訂版】[カゲロウ](2012/10/28 20:05)
[18] 第18話:オレ達の行方、ナミダの青空【改訂版】[カゲロウ](2012/09/30 20:10)
[19] 第19話:備えあれば憂い無し【改訂版】[カゲロウ](2012/09/30 20:11)
[20] 第20話:神蔵堂ナギの誕生日【改訂版】[カゲロウ](2012/09/30 20:11)
[21] 第21話:修学旅行、始めました【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:08)
[22] 第22話:修学旅行を楽しんでみた【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:08)
[23] 第23話:お約束の展開【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:57)
[24] 第24話:束の間の戯れ【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:09)
[25] 第25話:予定調和と想定外の出来事【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:57)
[26] 第26話:クロス・ファイト【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:10)
[27] 第27話:関西呪術協会へようこそ【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:58)
[28] 外伝その1:ダミーの逆襲【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:59)
[29] 第28話:逃れられぬ運命【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:59)
[30] 第29話:決着の果て【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 21:00)
[31] 第30話:家に帰るまでが修学旅行【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 21:01)
[32] 第31話:なけないキミと誰がための決意【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:10)
[33] 第32話:それぞれの進むべき道【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:10)
[34] 第33話:変わり行く日常【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:11)
[35] 第34話:招かざる客人の持て成し方【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:12)
[36] 第35話:目指すべき道は【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:12)
[37] 第36話:失われた時を求めて【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:54)
[38] 外伝その2:ハヤテのために!!【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:55)
[39] 第37話:恐らくはこれを日常と呼ぶのだろう【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 22:02)
[40] 第38話:ドキドキ☆デート【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:58)
[41] 第39話:麻帆良祭を回ってみた(前編)【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:57)
[42] 第40話:麻帆良祭を回ってみた(後編)【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:57)
[43] 第41話:夏休み、始まってます【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:04)
[44] 第42話:ウェールズにて【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:05)
[45] 第43話:始まりの地、オスティア【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:05)
[46] 第44話:本番前の下準備は大切だと思う【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:06)
[47] 第45話:ラスト・リゾート【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:06)
[48] 第46話:アセナ・ウェスペル・テオタナトス・エンテオフュシア【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:20)
[49] 第47話:一時の休息【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:21)
[50] 第48話:メガロメセンブリアは燃えているか?【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:21)
[51] 外伝その3:魔法少女ネギま!? 【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:22)
[52] 第49話:研究学園都市 麻帆良【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:22)
[53] 第50話:風は未来に吹く【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:23)
[54] エピローグ:終わりよければ すべてよし[カゲロウ](2013/05/05 23:22)
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[10422] 第02話:なさけないオレと嘆きの出逢い【改訂版】
Name: カゲロウ◆73a2db64 ID:552b4601 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/04/30 20:54
第02話:なさけないオレと嘆きの出逢い



Part.00:イントロダクション


 引き続き、2月7日(金)。

 下校途中、でっかい荷物を背負った幼女に道を尋ねられたナギは、
 荷物を持ってやりながら女子中等部校舎近くまで先導することにした。

 それが逃れられぬ運命へ自ら進んでいることだ と言うことを知る由もなく……



************************************************************



Part.01:予期せぬ邂逅


「あ、言い忘れていたんだけど……悪いけど、校舎までは案内できないんだよね」

 しばらく歩いたところで、思い出したようにナギが口にする。ちなみに、それまでの間は特に会話もなく、無言で歩いていた。
 相手が大人なら社交辞令的な会話をするナギだが、相手が幼女なので会話をあきらめ、無言でいることにしたのである。
 下手に話し掛けて困らせるのも乙と言えば乙なのだが、からかい過ぎるのも悪いので自重したらしい(今更な感はあるが)。

「あぅ?」

 幼女はナギの言葉の意味がわからなかったのか、軽く小首を傾げる。しかも、人差し指を頬に添えて、だ。
 ナギが「オレ、もうロリコンでいいや」と思った瞬間である。いや、漸く自覚しただけと言えば それまでだが。
 どうでもいいが、幼女の この仕草は、実は彼女の『姉』から教わった『コミュニケーションの秘訣』らしい。
 困った時は こうして置けば円滑なコミュニケーションができる、と言われたようだ。まぁ、確かに効果は覿面だ。
 だが、これはロリコンを呼び寄せる諸刃の剣でもあるので、使い所は選んだ方がいいだろう。実にどうでもいいが。

「い、いや、別に男子禁制って訳でもないんだけど……女子校舎まで行くと肩身が狭いんだよ」

 ナギは内心の動揺を抑えつつ、事情を説明する。あきらかに抑えられていないが、そこは敢えてスルーするのが優しさだ。
 ナギの言う通り、麻帆良学園は男子部と女子部に分かれてはいるが、別に男女間の交流は禁止されている訳ではない。
 そのため、男子が女子中等部に行ったからと言って問答無用で摘み出される訳ではないのだが……それは制度上の話だ。
 ナギが幼女を伴って女子中等部に行けば「何あのロリコン?」と言う目で見られ、ナギは精神にダメージを負うだろう。
 ドMならば「女子中学生に汚物として扱われるなんて……最高 過ぎる!!」と興奮できるだろうが、ナギはドMではないのだ。

「……そうなんですかぁ」

 幼女はナギの説明に納得したのか、軽く頷く。残念ながら、その表情が少し寂しそうだったことにナギは気付かなかったが。
 先程も少し触れたが、幼女はナギと父親を重ねている部分があるため、少々――いや、かなりナギに好意的なのである。
 幼女の中でナギは「少し強引なところもあるけど、いい人」と言う評価であり、その強引さも照れ隠しだと見抜いているのだ。

 勘違いをしやすいうえ思い込みが激しいところのある幼女だが、その分 正鵠を射た時の破壊力は凄まじいのである。

「ごめんね。一応、女子中等部が見える位置までは同行するから、もう迷わないと思うよ」
「ありがとうございます。近くまで迎えの人が来てくれることになっていますので そこまでで大丈夫です」
「へぇ、そうなんだ。それじゃあ、その迎えの人と合流できるところまで案内するよ」

 最近は物騒なので、女子中等部が見える位置でも少々不安はあったのだが……迎えが来るのなら それで安心だ。

 ナギが「その迎えは何をやっているんだ?」とか「普通、駅まで迎えに来るよね?」とか思うのは仕方がないことだろう。
 と言うか、常識的に考えると今回ばかりはナギが正しい。普通なら、女子中等部まで来させるのではなく駅まで迎えに行く。
 まぁ、迎えの人間は「女子中等部までタクシーを使って来るのだろう」と考えたのかも知れないが……それでも雑な対応だ。

 そんなこんなで、方針(と言う程 大げさなものではないが)の固まった二人は、女子中等部に向けて歩みを進める。

 その道中は、やはり特に会話はない。だが、ナギも幼女も特に気不味いと感じている様子はない。
 繰り返しになるが、幼女はナギが照れているだけだと判断しているので、むしろ和んでいるくらいだ。
 幼女曰く「本当は優しいんだけど、照れ臭くて それを上手に表現できないんですね?」らしい。

 まぁ、他人の言動を どう解釈しようと その人間の自由だ。ただ、ナギはそんな評価をされていることなど一切 想定していないだろうが。

 ……………………………………
 ………………………………………………
 …………………………………………………………

「ええと……例の迎えの人って言うのは、あのメガネのオッサンでいいの?」

 女子中等部の校舎が見える位置まで来た時、ナギの目は『とある人影』を捕らえた。
 それは、白いスーツと言う教職としては有り得ない格好をしたメガネの男性。
 そう、かの有名な「デスメガネ」こと「タカミチ・T・高畑(たかはた)」だ。

「あ、はい。そうです」

 ナギの「違っていてくれると嬉しいなぁ」と言う淡い期待を、幼女は(知ってか知らずか)バッサリと断ち切る。
 ナギが思わず「そりゃ、忙しくて駅までは迎えに来れませんよね? わかります」と思ったのは悪くないだろう。
 と言うか、問題はそこではない。軽く現実逃避したかっただけで、ナギも重要な部分にはキチンと気付いている。
 そう、タカミチが迎えに来る子供なんて、原作の主人公であるネギ・スプリングフィールドぐらいしかいないことを。

 かなり今更だが、幼女の年齢は10歳くらいに見えるし、顔も言われてみれば「ネギが女の子になったら こんな感じ」である。

(って、待て!! ネギは男だぞ? 少年だぞ? ショタ好きな いいんちょの大好物だぞ?
 でも、このコは幼女――つまり女性だ。少年であるネギである訳がないじゃないか?
 それに、ネギのトレードマークとも言える杖がないんだから、このコはネギの筈がない。
 確か あの杖はオヤジさんがくれた大切な杖だったからネギが それを持っていない訳がない)

 だから、きっと このコはネギじゃない!! ナギは一生懸命『この幼女がネギである可能性』を否定する。

 偶々タカミチと知り合いだから、偶々タカミチに迎えに来てもらっただけに違いない。
 ネギだからタカミチが迎えに来た と言うネギ関連に巻き込まれるフラグな訳がないのだ。
 そう、このコはネギじゃない「誰か」なんだ。ナギは そう思い込もうとしたのである。

 だが、現実は非情だ。そんな淡い期待など簡単に打ち砕かれる。

「タカミチ~~、久し振り~~~」
「やぁ、ネギ君、よく来たねぇ」

 そう、こんな風に。非常にアッサリと幼女はネギだと認定されたのだった。

 当然ながらナギが「タカミチィイイ!! 速攻でバラすなぁああ!!」と内心で叫んだのは言うまでもないだろう。
 セオリーならば、ここは引っ張るところだろう。そして、ナギが淡い期待を膨らませたところで落とすパターンだ。
 まぁ、ナギとしては、速攻で判明した方が精神的なダメージが少なかったので助かったと言えば助かったのだが。

 ところで、ネギがトレードマークとも言える例の杖を所持していないのには、それなりの理由がある。

 あんな あからさまに「魔法使いの杖」としか言えない物を所持していたら「私は魔法使いです」と公言しているようなものだ。
 いくら『認識阻害』を使ったとしても魔法バレする。それを防ぐために、他の荷物(服とか日用品とか)と一緒に空輸したのだ。
 原作のネギよりも『ここ』のネギの方が一般常識がある と言うよりも、女の子なのでファッションに気を遣っているのである。
 言い換えると「えー、マジ、杖? キッモーイ!! 杖が許されるのは小学生までだよね~~」と言った感じなのである。
 いや、実際は こんなことは言っていないが、マギステル・マギよりも魔法少女に憧れる年頃なのが『ここ』のネギなのである。
 もちろん、例の杖に代わる魔法発動体として、原作で木乃香などが使っていた「練習用の折りたたみ式の杖」を携行していたが。

(……いや、落ち着けオレ。まさかネギが女のコだったとは思ってなくて動揺しまくりだが、とにかく落ち着くんだ)

 確かに『ここ』は「ネギま と似て非なる世界」なので、原作との相違はあって然るべきである。
 現にナギと言う異物がいる訳だから、原作と齟齬が発生するなんてことは想定の範囲内とも言える。
 だが、だからと言って主人公(ネギ)の性別が入れ替わっているなんて、さすがに想定外も過ぎる。

(い、いや、まだだ!! まだネギが完全に女のコと確定した訳じゃない!!)

 もしかしたら、このネギが「女装しているだけ」と言うオチもある。その可能性は否定できないに違いない。
 また、その事実がいいんちょに露見し「みんなには黙って置きますから♪」とか何とかで部屋にお持ち帰りされ、
 そして「XXX版ではなければ語れないような世界」に突入する……と言ったパターンだって有り得るだろう。

(って、あれ? そうなれば、いいんちょもオレも幸せになれるんじゃないだろうか?)

 まぁ、ネギは不幸かも知れないが、ネギだって ある意味では幸せなのではないだろうか?
 何故なら、いいんちょは趣味こそアレだが、かなり上玉な逆玉だからだ。実に羨ましい。
 ナギとしては「趣味さえアレでなければ、オレの方が付き合いたいくらいだ」と思っているし。

(――と言う訳で、ネギが女装少年だったら丸く収まりそうな展開が待っているな、うん)

 だがしかし、仮にネギが女装少年であったとしても、根本的な問題が解決していないことは変わらない。
 そう、ネギと言う原作主人公にして危険フラグ量産者に出会ってしまった と言う問題は解決していないのだ。
 しかも、運が悪いことにナギの名前はネギの父親と同じ『ナギ』だ。そこから興味を抱かれる可能性すらある。
 もし興味を持たれて纏わり付かれようものなら、一直線で危険溢れる原作介入ルートに突入することだろう。
 それだけは何としても避けねばならない。でなければ、ネギクラスの女子を避けた意味がなくなってしまう。

(そりゃあ、原作には「胸ワクワク」な展開はあるよ? ……それは認める。でも「危険がドッサリ」なのも否定できない事実だよね?)

 原作ではメインキャラは全員 無事だった。だが『ここ』は原作ではない。原作通りに進むとは限らない。
 むしろ、ナギと言う異物の影響で原作が崩壊し、どうしようもないバッドエンドになる可能性もある。
 と言うか、原作のメンバーは無事だけどナギは無事ではない と言う可能性だってある。安心はできないのだ。

(まぁ、そんな訳で、オレの名前がバレる前にトットと逃げるかな?)

 幸い、ナギは まだ名前は告げていない。よって、名前が割れる前に離脱をすれば どうにかなるかも知れない。
 まだナギは「道の案内をした」だけだ。このまま別れれば、ナギのことなどネギは5分後には忘れてくれるだろう。
 少なくとも、ナギはそう判断した(ネギがナギに好意的な感情を持っていることに まだ気付いていないのだ)。

 ……そう、既に逃げられない状況に陥っていることにナギは気付いていないのだった。



************************************************************



Part.02:運命の糸は絡まっていく


「やぁ、キミがネギ君を連れて来てくれたのかい? いやぁ、助かったよ、ありがとう」

 この場から離脱することを決意したナギは「さて、どうやって離脱するか」と悩んでいたのだが、そこにタカミチが脳天気に話し掛けて来た。
 八つ当たりでしかないが「お前のせいで悩んでるんだよ!!」とキレたナギは、にべもなく「いえ、当然のことをしたまでです」と告げるだけだ。
 そうやって皮肉を言うことで、当然の事(駅までの迎え)をしていないタカミチを遠回しに責めたのだ。それだけ、ナギは苛立っていたのである。

「ハッハッハッハッハ……いやぁ、手厳しいね。本来なら空港まで迎えに行くべきだったんだけど、忙しくってね」

 どうやら、タカミチも己の落ち度を理解しているらしい。苦笑しながら、反省点を述べて来る。
 ナギとしては「それがわかってるなら迎えに行ってやれよ!!」と思うが、ここは我慢だ。
 先程は苛立ちの あまり皮肉を言ってしまったが、よく考えるとタカミチと会話してるのも不味い。
 何故ならネギが「タカミチと仲がいいんですか?」とか喰い付いて来る可能性があるからだ。

 だがしかし、ナギには僅かだが義侠心があった。どうしても言って置かねばならないことがあったのだ。

「そうですか。確かに先生は お忙しい方ですから、迎えに行くのは難しかったのでしょうね。
 ですが、それならば、代理の方に迎えに行ってもらうべきっだったのではないでしょうか?
 最近は物騒ですから、こんな可愛い子が一人で無防備に歩いていたら、最悪 拉致られますよ?」

 そう、自分が迎えに行けないのなら、代理を立てて行かせればいいのだ。それを怠ったタカミチは どう考えてもアウトだ。

 確かに、見習いとは言えネギは魔法使いであるため、大抵の危険は一人でも(魔法の力で)対処できるだろう。
 だが、魔法は絶対ではない。たとえば、いきなり気絶させられるだけで、魔法が使えても意味がなくなるだろう。
 それに、相手も魔法使いだった場合、ネギのアドバンテージは一気になくなるだろう。とても危険だったのだ。
 恐らくは陰ながら護衛されていたのだろうが……それでもネギの扱いがゾンザイな気がしてならなかったのである。

 まぁ、だからと言って、ナギに「頼まれればオレが迎えに行ったのに」なんて気持ちは これっぽっちもないのだが。

 ナギは生粋のヘタレなので、某明日案の様に「だって、放って置けないでしょ!!」と言った理由でネギをサポートする訳がない。
 そのため、本来ならナギが口を挟む権利などないのだが……まぁ、それはそれ これはこれ だ。見て見ぬ振りはすべきではない。
 目の前に問題があり、しかも当事者がそれに気付いていないように見えるのだから、指摘くらいはしてもいいのではないだろうか?

「……そうだね、キミの言う通りだ。これからはもっと安全を考慮するよ」

 タカミチがどれだけナギの気持ちを汲み取ったのかは定かではない。だが、タカミチは神妙そうにナギの言葉を受け止めた。
 表情を取り繕っただけでの社交辞令である可能性もあるが……それでも、ナギの気持ちが届いたことは間違いない。
 何故なら、タカミチの言葉には何らかの強い想いが込められていたのだから。少なくとも、ナギはそう感じたのだから。

「いえ、わかっていただければいいんです。生意気なことを言ってしまって すみませんでした」

 だから、ナギは素直に頭を下げる。ナギは器の大きい人間とは言えないが、それでも礼には礼で返すタイプなのだ。
 そして、頭を下げてから「あれ? オレ何やってんだろ?」と ふと思い出す様な、とても流されやすい人間でもある。
 そう、ウッカリ忘れていたが、ナギはタカミチと会話をしている場合ではない。この場から離脱せねばならないのだ。
 何かタカミチが話したそうな空気だったし、言いたいことがあったので ついつい話していたが、そんな場合ではない。
 いや、会話を続けたのはナギ自身なのだが……それは忘れて置こう。大事なのは、これからだ。過去じゃない、未来だ。

 幸いなことに、これまでの会話でナギの名前は出ていない。今ならば まだ間に合う筈だ。

 ちょうどいいことにタカミチとの会話も一通り終わっている。ここで離脱しても不自然ではないだろう。
 言い換えるならば、今こそが最初にして最大のチャンスなのだ。今を逃せば次はないかも知れない。
 それ故に、ナギは「では、オレはここら辺で失礼させていただきます」と口を開こうとしたのだが……

「では、オ「そう言えば那岐君、最近はどうしてたんだい?」orz」

 狙っていたんじゃないかと疑いたくなるようなベストなタイミングでタカミチが口を開いたのだった。
 この時のナギの心情は「タカミチィイイ!!」と言うタカミチへの怨嗟で溢れていたのは言うまでもない。
 だが、いつまでもショックに打ちひしがれている場合ではない。何故なら、ネギにロックオンされたからだ。

(……あぁ、何かネギが『ナギ』って単語に反応しているんですけどぉおお!? ものっそいキラキラした目でオレを見ているんですけどぉおお!!)

 実はと言うと、タカミチはナギの保護者である。公式記録も そうであるし、今の会話からも それなりに親しいのは明白だ。
 だからこそ、ナギはタカミチに一言 言いたい。それは「何でお前はオレを追い詰めようとするんだぁああ!!」と言うことだ。
 ネギが『ナギ』と言う名前を聞いたら異常な興味を示すだろうことは事情を知る者には、わかりきっていることの筈だ。
 それなのに、ネギの前でナギの名前を呼んだのだから、ナギが「これって新手のイジメ?」と思ってしまうのは無理もない。

(い、いや、クールになれ、クールになるんだ!! 前原け――じゃなくて、神蔵堂ナギ!!)

 ネギに名前を知られたのは痛いが、それでも まだ挽回のチャンスはある。まだ終わった訳ではない。
 むしろ、今の内に離脱すれば、ネギに名前を知られただけで被害が抑えられる。そう、まだ大丈夫だ。
 まだ「名前を知っているだけの人」にしか過ぎないため、まだまだ魔法関係から逃れられる筈だ。
 悲観するのはまだ早い。悲観して何もしないのは悪手だ。今は僅かな可能性に賭けて進むべきだろう。

 冷静になったナギは今後の方針を立て直すと、最後に残った希望に縋って行動を開始する。

「……いえ、特に問題はありません。順風満帆に過ごしています」
「そうかい? 何か問題があったら、いつでも相談に乗るよ?」
「お気遣い、ありがとうございます。その時はお願いしますね?」

 そんな訳で、ナギはタカミチから振られた話題を無難に返し、話を無難に終わらせる。

 後は「では、オレはここら辺で失礼させていただきます」と先程 言えなかったセリフを言うだけだ。
 まぁ、当然ながら、そうは問屋が卸してくれないのがナギの運命(と言う名のフラグ体質)なのだが……



************************************************************



Part.03:タカミチの内心


 ネギ君の魔力を感じたので迎えに来てみると、ネギ君の傍には よく見知った少年がいた。
 彼の名前は神蔵堂 那岐。ナギと同じ名前を持つ、もう一人の『ナギ』であり、ボクの被保護者だ。
 まさか、那岐君がネギ君と出会ってしまうとは……まったく、縁と言うものは怖ろしいものだね。

 でも、だからと言って静観する訳にもいかない。まだ、二人が出逢うには早過ぎるから……

 って言うと、何だかラブな匂いがするよね? でも、全然そんなんじゃないから。と言うか、そんな訳がないから。
 ただ単に、ここで二人が出逢ってしまうのは想定外の出来事なんで、どう対応したらいいか困っているんだよね。
 それに、まさか こんな形で那岐君と半年振りに会うことも想定していなかったからさ、心の準備ができてないし。

 う~~ん、どうやって話し掛けよう?

 この半年、仕事が忙しくて那岐君と まともに話してなかったから、
 話題が無いって言うか、むしろ、話題があり過ぎて困るんだよねぇ。
 でも、ここにはネギ君がいるから、内輪ネタを話すのもアレだし……

 あっ、まずは、ネギ君を連れて来てくれた御礼を会話の糸口にすればいいかな?

 そうすれば、ネギ君も話題に入っているからネギ君を蔑ろにしないで済むし、
 御礼を言われて悪い気はしないだろうから那岐君を盛り上げられるだろうし、
 それに、御礼の後は済し崩し的に馴れ合えば、昔みたいに話せるよね。

 ……うん、完璧じゃないか!!

 だから、ネギ君との会話を適当に打ち切って那岐君に話し掛けてみたんだけど……
 那岐君には「いえ、当然のことをしたまでですので礼には及びません」って感じで、
 にべもなくって言うか、まるで赤の他人と接するかの様な他人行儀で返されてしまった。

 はぁ……いくら久し振りとは言え、ちょっとばかり他人行儀が過ぎるんじゃないかな?

 一応、ボクって保護者なんだから、もうちょっと こう、フレンドリーな態度でもいいんじゃないかい?
 これが思春期特有の反抗期ってヤツなのかな? って、そう言えば、那岐君も もう14歳なんだよね……
 言わば「那岐君は思春期」ってところだから、こう言う態度も仕方が無いと言えば仕方が無いのかな?

 やれやれ……世の中のお父さん方は皆こんな何とも言えない寂しさを感じてるのかなぁ?

 って、ここでショボくれていても仕方がないよね?
 ――よし!! ここは気さくに笑い掛けてみよう!!
 やっぱり、笑顔はコミュニケーションの最上手段だからね!!

 ……しかし、どうやら笑い飛ばして雰囲気を変えようとしたのは失策だったようだ。

 那岐君は「笑って誤魔化そうとしている」と受け取ったようで、態度が更に冷ややかになった。
 い、いや、確かに苦笑も雑じっていたけどさ……これでもボクなりに反省はしているんだよ?
 ボクだって仕事がなければ空港まで迎えに行ったさ。でも、行けなかったんだから仕方がないじゃないか。

 とか思っていたら、代理を立てるべきだって叱られてしまった……

 ま、まぁ、そりゃそうだよね。ボクが行けないなら、瀬流彦君にでも代わりに行ってもらえばよかったね。
 でも、ボクにだって言い分はある。そりゃ、ネギ君が普通の子供なら那岐君の言う通り危険だったと思う。
 だけど、ネギ君は魔法学校を出たばかりの見習いとは言え、その才能を開花させつつある魔法使いだ。
 相手が余程の実力者でもない限り、そうそう危険なことにはならない。だから、割と安全なんだよ?
 つまり、ボクが何も考えていない訳ではない――んだけど、那岐君は何も事情を知らないんだよねぇ。

 う~~ん、そう言う意味では、ボクの先程の態度は無神経だったから、那岐君の怒りも尤もと言えば尤もだね……

 やっぱり、魔法関係のことを知っているのと知らないのでは、どうしても認識に齟齬が生まれてしまうねぇ。
 那岐君に魔法関係のことをバラせれば楽なんだけど……せめて中学を卒業するまでは教えない方がいいよね。
 って、そうじゃないな。今は那岐君の指摘に応えよう。事情があるとは言えボクが悪いのは確かなんだから。

 だから、ボクは素直に非を認めたんだけど……そうしたら、那岐君は素直に謝罪して来た。

 きっと、ボクの「事情があるけど事情が話せない」って気持ちを感じ取ってくれたんだろうね。
 しかし、これまでが冷たかった分こうして素直な態度を取られると妙に嬉しく感じるもんだね。
 ついつい調子に乗って近況でも聞きたくなっちゃうな。って言うか、せっかくだから聞いちゃおう。

 そんな訳で、近況を聞いてみたんだけど……間が悪いことに、那岐君のセリフと被ってしまった。

 何を言い掛けたのか気になるけど、那岐君が複雑そうな表情で答えたのを見ると ちょっと聞きづらいなぁ。
 と言うか、別に大した用件でもないのに遮った形になっちゃったから、一方的にボクが悪かったなぁ。

 ……ふぅ、これで また評価が落ちてしまったかも知れないね――って、今は反省している場合じゃないや。

 これ以上、那岐君からの評価を下げないようにしないと保護者としての面目が立たないからね。
 だから、これ以上ヘタを踏む前にネギ君を学園長のところに案内しちゃおう。うん、それがいい。
 何か今日はタイミングが悪いと言うか、会話をすればする程スレ違っていく気がするんだよねぇ。

 …………那岐君へのフォローはまた後で行えばいいよね?



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Part.04:こうして運命は固まった


 正直に言おう。タカミチとの会話が終わった と判断していたナギは油断していた。
 この場には自分とタカミチ以外にも役者がいた と言うことを忘れていたのである。

 つまり、ナギが「では、オレはここら辺で失礼させていただきます」と言って颯爽と立ち去ろうとした時に、

「あ、あの、ナギさん!! ボク、ネギ・スプリングフィールドって言います!!
 来週から麻帆良学園の女子中等部の2年生に編入する予定です!!
 まだまだ日本には不慣れですので、これからもよろしくお願いします!!」

 と第三の人物――つまり、ネギが颯爽と舞台に踊り出たのである。

 その狙ったとしか思えない絶妙なタイミングに、思わずポカンとしてしまったナギは悪くないだろう。
 だから「そう、よろしくね……」と何も考えずに反射で受け答えしてしまったとしても、きっと悪くない。
 フラグを より固めたしまった感はあるが、悪くないに違いない。そうして置くのが優しさだろう。

(って、ちょっと待って? 今、さり気なくネギが重要なキーワードを言わなかった?)

 ナギの聞き間違いでなければ、ネギは「赴任する」と言ったのではなく「編入する」と言ったのである。
 編入すると言うことは生徒として麻帆良に来た と言うことで、ネギは先生ではない と言うことだ。
 別に原作にこだわる訳ではないが、ちょっと気になる部分だ。どうせだから、確認して置くべきだろう。

 そう、ナギは既にネギと関わらない と言う選択肢をあきらめたのである。

「確認していいかな? 今、女子中等部の2年に編入するって言ったの?」
「え? ええ、そう言いましたけど、それがどうしかましたか?」
「そっか……いや、大した意味はないよ。ただ確認したかっただけだから」

 やはり、ナギの聞き間違いではなかったようで、ネギは生徒として麻帆良に来たらしい。

 恐らく、これが「ネギが女であることによる修正」だろう。想定内とは言えないが「まぁ、こう言うこともあるか」程度の差異だ。
 普通ならば「ネギが先生じゃないだと?!」と喰い付くかも知れないが、ナギは普通ではない。むしろ、腑に落ちているくらいだ。
 と言うのも、ナギの考えでは、原作のネギの修行(日本で教師をやること)はネギを麻帆良に行かせる建前に過ぎないからだ。

 そう、ネギの本来の修行とは「麻帆良でエヴァと接触させ、エヴァに師事することだ」とナギは考えているのである。

 何故なら、教師をやらせることだけが目的ならば問題児ばかりの2年A組の担任をさせるのは無茶・無謀も過ぎるからだ。
 そう言う意味では、原作でネギが教師になったのは「ネギが男の子だったから」に違いない。男子なので教師にするしかなかったのだ。
 いや、いくら子供とは言え、男子を女子校に通わせるのは さすがに無理があるだろう。それならば、教師にするしかない筈だ。
 もちろん、子供を教師にすることも充分に無理があるとはナギも思う。だが、それでも、男子が女子校に通うよりはマシだと思うのだ。

 以上のような理由で、ナギはアッサリとネギが生徒として麻帆良に来たことを受け入れた。

 ちなみに、先程ネギを「女装少年ではないか?」と疑った件はスッパリと忘れることにしたらしい。
 自分でも無理があると思っていたようで、現実逃避として考えたことだと素直に認めているのである。
 まぁ、少しは「こんなに可愛い子が女の子な訳ないじゃないか!!」と言う思いが無い訳ではないが、
 それだと自分がショタも行ける真性の変態であることになるので、ネギを女の子として認定したようだ。

 ……どうでもいいが、相手の性別を確かめるために『パンパン』を敢行した某龍球の主人公ってもしかしたら偉大なのかも知れない。

 仮にナギがネギに『パンパン』をしようものなら、ネギの性別に関係なくタイーホされるだろう。
 いくらナギでも、性犯罪者と言う汚名を受けて臭い飯を食うなんて生活は耐えられない。
 あれは彼だから許されたのだろう。と言うか、足でも『パンパン』したとかマジ凄いと思う。

 いや、まぁ、果てしなく どうでもいいので、そろそろ本題に戻ろう。

「んで、ついでに確認したいんだけど……年は幾つなの?」
「え? ボクですか? 今度の3月で10歳になりますけど?」
「へぇ。って言うことは『飛び級』で中学生になるのかな?」
「ええ、そうですね。日本では珍しいケースらしいですね」
「まぁ、麻帆良は特殊だからね、そう言ったこともあるさ」

 ナギは気を取り直して、ネギの年齢やら立場を確認して置く。念のため と言うヤツだ。

 とは言っても、ナギはネギの年齢を正確に覚えていなかったので、実は確認した意味がないのだが。
 まぁ、一応は「10歳くらいだった気がする」と言う認識だったので、完全に意味がない訳ではないが。
 それに、これは前振りみたいなものなので大した意味がなくても問題ない。大事なのは ここからだ。

「ところで、前は どんな学校に通ってたんだい?」

 ナギが本当に確かめたかったことは、ネギが魔法使いか否か である。そのために、前の学校を訊いたのだ。
 そう、年齢の話題を出したのは、年齢の話題から飛び級の話題を出して学校の話題に繋げるためだったのである。
 とは言っても、当然ながら、ネギが素直に「メルディアナ魔法学校です」などと答えるとはナギも考えていない。
 ナギは「以前の学校についてネギがどう説明するか」で、ネギが魔法学校に通っていたか否かを判断するつもりだ。
 まぁ、必ずしも「魔法学校に通っていない = 魔法使いではない」と言う訳でもないが、それでも判断基準にはなる。

 ところで、既にネギと関わっている現状で、ネギが魔法使いか否か わかっても何の意味があるのだろうか?

 まぁ、ネギが魔法使いでない可能性が増えると精神的に楽になるのは わかる。わかるが、それは無駄な抵抗だろう。
 と言うか、どう考えてもネギが魔法使いではない訳がないので(ネギは魔法使いなので)、無駄な抵抗でしかない。
 無駄な抵抗はするべきではない。抵抗するなら有意義にすべきだ(ナギには無理だろうが、ネギに嫌われる努力とか)。

「え? え~~と、イギリスのウェールズってところにある田舎の学校です」

 そして、ナギの抱く希望は敢え無く潰えるのは、最早 言うまでもないだろう。と言うか、既に一種のテンプレだ。
 ちなみに、誰から見てもネギが言い淀んだのは明らかであり、言い淀むと言うことは普通の学校ではないのだろう。
 もちろん、ネギの「前の学校」が魔法学校ではなく、別の意味で「普通ではない」と言う可能性もゼロではない。
 だが、ナギは「その可能性はないだろうねぇ」と あきらめた。漸くネギが魔法使いであることを認めたのである。

「そうなんだ……遠路遥々よく来たね。慣れない地かも知れないけど、これから頑張ってね?」

 だが、ナギはトコトンあきらめが悪かった。ネギが魔法使いであることは認めたが、関わることを許容した訳ではなかったのだ。
 それ故にナギは爽やかに微笑みながらネギの頭を撫でつつ「陰ながら見守ってるぜ」と言わんばかりのセリフで会話を打ち切る。
 自分でも もう手遅れな気はしているが、それでも「まだちょっと会話しただけの関係だから、まだ大丈夫さ」と自分に言い聞かせ、
 ナギは三度目の正直を信じて「では、オレはここら辺で失礼させていただきます」と告げて、颯爽と その場を離脱したのだった。

 既にネギと切っても切れない縁(と言う名のフラグ)が築かれたことなど、敢えて気付かない振りをして……



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Part.05:ネギ・スプリングフィールドは乙女である


 タカミチに会えたことで「やっと目的地に着いたんだ」って思ったため、ホッとしました。

 ですが、その反面、これで この男の人と別れてしまうんだって思うと、何だかとても寂しかったです。
 お父さんに似ているって思ったから、また お父さんとお別れするみたいでイヤだったんでしょうか?
 ……よくわかりません。でも、この胸がキュッってしまる感じは、寂しいってことなんだと思います。

 って感じで、よくわからない自分の感情を分析していると『可愛いコ』と言う素晴らしい言葉が聞こえて来ました。

 前後の文脈はよくわかりませんが、間違いなくボクを指して「可愛い」って言ってくれたんですよね?
 こ、これってボクの聞き間違いじゃないですよね? ちゃんと「可愛い」って言ってくれてましたよね?
 ボク、魔法や成績で褒められることは多いですが、容姿で褒められたのはネカネお姉ちゃん以外では初めてです。

 ……えへっ♪ 嬉しいなぁ♪

 あ!! そ、その、ち、違うんですよ? ヘンな勘違いしないでくださいね?
 実は、ボク、男の人に可愛いって褒められたのって初めてに近いんです。
 そんな訳で、その、とっても嬉しかった と言うか、そんな感じなんです。

 と ボクが独りで悶えていると、二人の会話は進んで行き……なんと、男の人が「ナギ」と言う名前だと判明したんです。

 もう、ビックリです。お父さんに似ているって思ったら、名前まで同じだなんて……
 何だか、運命を感じちゃいました――って、ち、違いますよ? そ、そう言うアレじゃないですからね?
 何て言うか、その、ほら、お父さん探しのための『験担ぎ』って言う感じで……
 その、修行が幸先よくスタートできたなって言う喜びですから、勘違いしちゃダメですよ?

 って、さっきからボクは誰に言い訳しているんでしょうか? うぅ……ボクってパニックになるとダメだなぁ。

 って、自己嫌悪に陥っている場合じゃありません!! 気が付いたら、いつの間にか二人の話が終わってます!!
 よ、よし!! これも何かの縁ですから、思い切ってナギさん(って呼んじゃおう)に話し掛けてみましょう!!
 そう思い切ったボクは、自己紹介をしてみました。だって、考えて見ると、まだボクは名乗ってませんでしたらね。
 もしかしたら、失礼なコだと思われていたかも知れません。でも、ナギさんは優しいから大丈夫だと信じてます。

 ……しかし、ナギさんから返って来たのは素っ気無い返事でした。

 実を言うと「ナギさんも自己紹介してくれるかも?」って期待していたんで、ちょっとガッカリでした。
 でも、きっと、これは「照れ隠し」ってヤツですよね? ……大丈夫です、ボクはわかっています。
 だって「日本の男性は基本的にシャイ」って、ネカネお姉ちゃんが言ってましたから、間違いありません。
 それに、照れ臭くて素直になれない人をツンドラ――じゃなくて、ツンデレって言うんですよね?
 そのツンデレが日本で流行っているってこともネカネお姉ちゃんに教えてもらいましたから知ってますよ。

 って感じで、ナギさんの態度の理由を推察していると、ナギさんがいろいろ訊ねて来ました。

 自己紹介をしてくれないのは ちょっと不満ですけど、質問してくれるってことはボクに興味があるってことですよね?
 ……えへへ♪ 嬉しいなぁ♪ きっと、自己紹介してくれないのも、照れているからなんでしょうね♪
 大丈夫です、ボクはわかってます。だから、照れ屋さんなナギさんが訊いてくれたことには何でも答えちゃいます。

 ですが、さすがにメルディアナ魔法学校にいたことを そのまま答えることはできません。

 魔法は秘密ですからね、さすがに魔法学校って そのままは言えません。
 ですから、魔法学校と言うことをボカした表現をしてみたんですけど、
 何だか、ナギさんに嘘を吐いている様で、ちょっと心苦しいです……

 それなのに、ナギさんはボクなんかを優しく激励してくれました。

 本当のことを言っていないボクに、微笑みながら頭を撫でてくれたんです。
 それは「あの雪の日」の「お父さん」のようで……とても、とても優しかったです。
 ですから、本当のことが言えないのが、とてもツラいです。心の底から。

 ですが、魔法のことは一般の人には秘密ですから本当のことは言えません。

 意識的であろうと無意識であろうと、魔法を一般の人にバラしてしまったら、
 ボクはイギリスに強制送還されたうえにオコジョにされちゃいます。
 もしそうなったら、もう二度とナギさんには会えませんから、そんなのダメです。

 って、ち、違いますよ? これは、そう言うアレじゃないですよ?

 あ、あくまでも、ボクはナギさんとお父さんを重ねて見ているだけなんですからね?
 ナギさんと仲良くなれれば、お父さんとも仲良くなれるかもって思っているだけですからね?
 だから、ナギさんに対して『特別な感情』がある訳じゃないので、勘違いしちゃダメですよ?

 って、またもやボクは誰に言い訳をしているんでしょうか?

 はぁ、もっと落ち着かなきゃダメですね。日本風に言うと「クールになれ」ってヤツですね。
 あ、これもネカネお姉ちゃんから教わった『日本の格言』の一つでして、お姉ちゃんも大好きな言葉です。
 だって、お姉ちゃんってば、よく「クールになれ、クールになるんだ!!」って言ってましたからね。

 日本って奥が深いですよねぇ。

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 …………………………………………………………

「ねぇ、タカミチ……ナギさんのこと、知っているの?」

 ナギさんが去った後、これから お世話になる学園長先生に挨拶をするため、ボク達は学園長室へ向かいました。
 本音を言うと、もっとナギさんとお話したかったですが……迷惑を掛けちゃいけませんから ここは我慢です。
 で、学園長室に向かう途中、ボクはずっと気になっていたことを思い切ってタカミチに訊いてみたんです。

「まぁ、ね。一応、これでも彼の保護者だからね」

 結果は肯定でした。って言うか、保護者って言うことは ボクとネカネお姉ちゃんみたいな関係なのでしょうか?
 と言うことは、タカミチはナギさんのことを詳しく知っていると言うことで、これは情報収集のチャンスですね。
 情報を制する者は世界を制する らしいですからね。ナギさん本人に訊けなかった分、タカミチに教えてもらいましょう。

 ……個人情報保護法? ぼくこどもだからなんのことだかわかりません。

「じゃあ、ナギさんのこと、教えてくれる?」
「別に いいけど……ネギ君、もしかして……?」
「ち、違うよ!! ちょっとした好奇心だよ!?」
「……じゃあ、そう言うことにして置くよ」

 あきらかにタカミチは勘違いしている気はしますが……まぁ、気にしちゃ負けですね。

 って言うか、別に勘違いでもないような気がしないでもないですからね。
 いえ、自分でもどっちなんだか よくわからなくなって来ましたけど……
 まぁ、とにかく、勘違いされても気にせずに情報収集に努めましょう。

 え? 学園長先生への挨拶ですか? まぁ、大事の前の小事ですよ。気にしたら負けです。少しくらい待たせても罰は当たりませんって。


 


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オマケ:今日のぬらりひょん ―その1―


「――と言う訳で、那岐君とネギ君は偶然にも出会ってしまい、その結果ネギ君は那岐君に随分と喰い付いていました」

 学園長室に案内されたネギが「大変な課題かも知れんが、頑張るんじゃぞい」と言う訓辞を学園長から受け、
 これから中学卒業までルームメイトとなる「近衛 木乃香(このえ このか)」に案内されて女子寮へ向かった後、
 タカミチは先程 起きてしまったナギとネギの邂逅についての顛末を報告し、最後に下世話な情報も付け加える。

 と言うか、タカミチは ここから更なる御節介を焼こうとしていた(悪意はないのだろうが、余計な御世話である)。

「これは私見なのですが……那岐君に魔法関係の事情を説明する時期を早めるべきかと思います。
 既にネギ君は那岐君を気にしています。きっと、遅かれ早かれ魔法がバレることでしょう。
 ならば、先手を打って こちらから説明し、ネギ君のパートナーになってもらうべきだと考えます」

 それを聞いた ぬらりひょんっぽい頭(後頭部が異様に長い)をした学園長の「近衛 近右衛門(このえ このえもん)」は、

「まぁ、タカミチ君の言うことも尤もじゃな。ネギ君も いつかはパートナーが必要となることじゃろう。
 そして、その候補として、ネギ君が気に入ったと言う那岐君を挙げるのも……まぁ、わからんでもない。
 じゃが、それは まだ時期尚早じゃないかのう? まだ魔法がバレるとは決まった訳じゃなかろう?」

 と、尤もらしいことをタカミチに言っているが、その胸中では「もっと面白い遣り方がある筈じゃ」と考えているのが見え見えだった。

「しかし、これからネギ君に課せられる予定の課題にはパートナーが必要不可欠ではないでしょうか?
 本国から指示されている課題の内容は、あきらかにパートナーがいることを前提としてますよね?
 それに、ネギ君は初心で奥手そうなので早めにパートナーを見つけてあげるべきだと思いませんか?」

 タカミチは近右衛門の考えていることを理解した上で、尤もらしく余計な御世話を焼く。

 と言うか、尊敬する英雄の娘を何処の馬の骨とも知れない男の毒牙に掛けたくないので、
 多少なりとも知っている と言うか、被保護者である かの少年にネギを任せたいのだ。
 本人達の意思を軽く無視しているが、気にしてはいけない(ネギの意思は尊重してるし)。

「まぁ、タカミチ君の言うことも尤もなんじゃが、イマイチ面白味に欠ける と言うか――いやっ!! 凄く『いいこと』を思い付いたぞい!!」

 如何に事を面白くするか考えていた近右衛門は、タカミチの言葉に適当に返事しながら「とある名案」を思い付く。
 ちなみに、言うまでも無いだろうが……その名案とは近右衛門にとっては『名案』だが、ナギにとっては『迷案』である。
 まぁ、ネギにとっては「名案か迷案か」明暗が別れるところが、近右衛門の優しさであると同時に厭らしさなのだが。

 言うならば、ナギの運命(と言うか、フラグ)は、近右衛門の悪ノリ(に見せ掛けた悪巧み)に左右されるのだった。


 


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後書き


 ここまでお読みくださってありがとうございます、カゲロウです。
 以前から「改訂した方がいい」と言う意見が多数あったので、今回(2012年2月)大幅に改訂してみました。


 今回は「主人公がネギの馴れ初め を書きつつ、タカミチも登場させてみた」の巻でした。

 ところで「でっかい荷物を背負った幼女」がネギなのはバレバレでしたけど、
 ネギが先生ではなく生徒ってことまでは、バレバレではなかったと思いたいです。

 それと、ボクがうまく書けたか自信がないので捕捉しますが、ネギが抱いている主人公への想いですけど……

 本人は「父親への憧れと混同しているに違いない」と思い込もうとしていますが、恋愛感情に入り掛けています。
 そして、それに対して主人公の方は「ネギが自分に興味を持っている」と言う認識はありますが、
 それは「ネギの父親と混同した憧れによるもの」として認識していますので、恋愛感情などは想定していません。

 今後、そのスレ違いが悲劇を生むのか、喜劇を生むのか、それとも何も生まないのか? 判断は読者様に委ねます。

 あ、そう言えば、原作とは大分違うタカミチですけど、意外と受け入れられているようで よかったです。
 ボク自身、ダンディーさの代わりにオチャメを搭載したタカミチの方が親しめるので、これからも この方向で行きます。
 でも、偶にダンディーさが欲しくなって いつものタカミチが別人に思えるくらいにダンディーになる時もありますが。

 あと、ネカネなんですけど……腐女子と言う訳ではありません。ですが、かなり精神がオタ文化に侵食されてます。

 主人公と絡んだら どうなるのか気になるでしょうが、直接登場するのは大分先です。
 しばらくは、ネギの回想として「妙な方向にネギを教育した軌跡」が浮かび上がる程度です。


 ……では、また次回でお会いしましょう。
 あ、感想・ご意見・誤字脱字等のご指摘、お待ちしております。


 


                                                  初出:2009/07/20(以後 修正・改訂)


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