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No.10422の一覧
[0] 【完結】せせなぎっ!! (ネギま・憑依・性別反転)【エピローグ追加】[カゲロウ](2013/04/30 20:59)
[1] 第01話:神蔵堂ナギの日常【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:53)
[2] 第02話:なさけないオレと嘆きの出逢い【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:54)
[3] 第03話:ある意味では血のバレンタイン【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:54)
[4] 第04話:図書館島潜課(としょかんじませんか)?【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:54)
[5] 第05話:バカレンジャーと秘密の合宿【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:55)
[6] 第06話:アルジャーノンで花束を【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:55)
[7] 第07話:スウィートなホワイトデー【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:55)
[8] 第08話:ある晴れた日の出来事【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:56)
[9] 第09話:麻帆良学園を回ってみた【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:56)
[10] 第10話:木乃香のお見合い と あやかの思い出【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:56)
[11] 第11話:月下の狂宴(カルネヴァーレ)【改訂版】[カゲロウ](2012/06/10 20:50)
[12] 第12話:オレの記憶を消さないで【改訂版】[カゲロウ](2012/06/10 20:50)
[13] 第13話:予想外の仮契約(パクティオー)【改訂版】[カゲロウ](2012/06/10 20:51)
[14] 第14話:ちょっと本気になってみた【改訂版】[カゲロウ](2012/08/26 21:49)
[15] 第15話:ロリコンとバンパイア【改訂版】[カゲロウ](2012/08/26 21:50)
[16] 第16話:人の夢とは儚いものだと思う【改訂版】[カゲロウ](2012/09/17 22:51)
[17] 第17話:かなり本気になってみた【改訂版】[カゲロウ](2012/10/28 20:05)
[18] 第18話:オレ達の行方、ナミダの青空【改訂版】[カゲロウ](2012/09/30 20:10)
[19] 第19話:備えあれば憂い無し【改訂版】[カゲロウ](2012/09/30 20:11)
[20] 第20話:神蔵堂ナギの誕生日【改訂版】[カゲロウ](2012/09/30 20:11)
[21] 第21話:修学旅行、始めました【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:08)
[22] 第22話:修学旅行を楽しんでみた【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:08)
[23] 第23話:お約束の展開【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:57)
[24] 第24話:束の間の戯れ【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:09)
[25] 第25話:予定調和と想定外の出来事【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:57)
[26] 第26話:クロス・ファイト【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:10)
[27] 第27話:関西呪術協会へようこそ【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:58)
[28] 外伝その1:ダミーの逆襲【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:59)
[29] 第28話:逃れられぬ運命【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:59)
[30] 第29話:決着の果て【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 21:00)
[31] 第30話:家に帰るまでが修学旅行【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 21:01)
[32] 第31話:なけないキミと誰がための決意【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:10)
[33] 第32話:それぞれの進むべき道【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:10)
[34] 第33話:変わり行く日常【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:11)
[35] 第34話:招かざる客人の持て成し方【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:12)
[36] 第35話:目指すべき道は【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:12)
[37] 第36話:失われた時を求めて【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:54)
[38] 外伝その2:ハヤテのために!!【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:55)
[39] 第37話:恐らくはこれを日常と呼ぶのだろう【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 22:02)
[40] 第38話:ドキドキ☆デート【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:58)
[41] 第39話:麻帆良祭を回ってみた(前編)【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:57)
[42] 第40話:麻帆良祭を回ってみた(後編)【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:57)
[43] 第41話:夏休み、始まってます【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:04)
[44] 第42話:ウェールズにて【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:05)
[45] 第43話:始まりの地、オスティア【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:05)
[46] 第44話:本番前の下準備は大切だと思う【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:06)
[47] 第45話:ラスト・リゾート【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:06)
[48] 第46話:アセナ・ウェスペル・テオタナトス・エンテオフュシア【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:20)
[49] 第47話:一時の休息【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:21)
[50] 第48話:メガロメセンブリアは燃えているか?【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:21)
[51] 外伝その3:魔法少女ネギま!? 【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:22)
[52] 第49話:研究学園都市 麻帆良【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:22)
[53] 第50話:風は未来に吹く【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:23)
[54] エピローグ:終わりよければ すべてよし[カゲロウ](2013/05/05 23:22)
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[10422] 第20話:神蔵堂ナギの誕生日【改訂版】
Name: カゲロウ◆73a2db64 ID:552b4601 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/09/30 20:11
第20話:神蔵堂ナギの誕生日



Part.00:イントロダクション


 今日は4月21日(月)。

 流れとしては修学旅行編に突入すべきかも知れないが、
 生憎と今日はナギの誕生日であったので今回はその話をしようと思う。



************************************************************



Part.01:妙な夢を見た


「ようこそ……お初にお目に掛かる。私はフィレモン、意識と無意識の狭間に住まう者」

 いや、意識と無意識の狭間とか言われても反応に困るんだけど?
 と言うか、フィレモンって名前、どっかで聞いたことあるなぁ。
 しかも、怪しさ爆発の仮面もどっかで見たことあるんだよなぁ。

「……さて、君の名前は?」

 うん? オレの名前? そんなの決まっているだろう? オレは神蔵堂ナギだよ。
 それ以上でも それ以下でもない。むしろ、神蔵堂ナギ以外の何者でもないさ。
 と言うか、オレの疑問についての反応は? もしかしてスルーされたんですか?

「…………本当かね?」

 え? ナニイッテンノ? と言うか、やっぱオレの質問はスルーですか?
 って、そうじゃなくて、オレの名前が厨二臭いからって聞き直さないでくださいよ。
 名乗る度に言い様のない妙な気まずさを感じるオレの身になって欲しいですね。

「そうではなく、本当に君は『神蔵堂ナギ』なのかね?」

 いや、だから、そう言ったじゃないですか?
 と言うか、オレの話など聞き耳持たずですか?
 まぁ、慣れてるから別に何とも思いませんけどね。

「いや、違うな」

 いや、何がですか? もしかして聞き耳を持ってるんですか?
 と言うか、聞き耳を持っているなら、オレの話を聞きましょう?
 慣れてるからと言って別にツラくない訳ではないんですよ?

「いや、そうじゃない。君の名前の方だよ」

 ん? つまり、オレの名前が違うってことなんですか?
 ……そりゃ、正しくは『神蔵堂 那岐』ですけど。
 でも、今となっては それは『オレ』じゃないんですよ。

「確かにその通りだが、そうではない。君は『本当の名前』を持っている筈ではないかね、神蔵堂ナギ君?」

 本当の、名前? いや、まぁ、確かに『オレ』は婿入りした筈だから、嫁の苗字になっている気がしないでもないですけど。
 でも、それについては詳細を思い出せないと言うか、もしかしたら それはオレの妄想の産物かも知れないんですよねぇ。
 と言うか、そもそもの問題として、オレの名前が変わろうともオレがオレであることに変わりはないと思うんですけど?

「ふむ、それもそうだな。よかろう、とりあえずは合格だ、神蔵堂ナギ君」

 そうですか、合格ですか。
 不合格よりはいいですけど……
 一体、何が合格なんですか?

「『力』を得る資格だよ」

 え? 『力』? まさか、的な『力』を得て「オレTUEEE!!」な展開になるんですか?
 まぁ、「オレTUEEE!!」には憧れるところもありますけど、厨二的な『力』はちょっと……
 名前の時点で既に厨二臭いんですから、更に厨二臭くなるのは遠慮 願いたいんですけど?

「いいや、心に潜む『もう一人の自分』を呼び出す『力』さ……」

 いや、それって充分に厨二的ですから。
 隠された自分とか、解放するとか、邪気眼とか。
 香ばし過ぎて涙が出て来ちゃいそうですよ?

「…………では、また会おう。神蔵堂ナギ君」

 いや、だから、オレの話を聞いてください と何度も言っているでしょう?
 何で勝手にハケようてしてるんですか? と言うか、この蝶は何なんですか?
 って、あれ? やっと思い出したんだけど……これってもしかしてペルソナ?

 ……………………………………
 ………………………………………………
 …………………………………………………………

 さて、以上の様な夢をナギは見た訳だが、あの夢は一体 何だったのだろうか?

 まぁ、最初からお分かりだったろうが、ナギも最初から夢オチだったのはわかっていた。わかったうえでフィレモンと対峙していたのだ。
 何故なら、これまでの経験からナギの見る夢には何らかの意味があるような気がしたからだ。きっと、あの夢にも何らかの意味があったのだろう。
 フィレモンさんとか仮面とか蝶とかは意味不明で、誕生日に妙な夢を見たことで微妙な気分になってはいるが、何らかの意味があったに違いない。

 そんなこんなで、ナギが出した結論は「もう一人の自分 = 那岐 であり、『力』云々は那岐の記憶が甦るフラグなのではないか?」だったらしい。

 それが正しいのか間違っているのかは定かではないが、ナギがそう結論付けたのならナギにとってはそれが答えなのだろう。
 少なくとも、これまでにナギが見て来た妙な夢は那岐の記憶の筈なのだから、今回の夢も那岐と無関係であるとは思えない。
 まぁ、共通点は妙な夢であることでしかないため、実際は別物で那岐とは無関係かも知れないが、それは神のみぞ知ることだ。



************************************************************



Part.02:サプライズ・パーティ


 本当にサプライズだった。

 いや、いきなりで「ナニイッテンノ?」とか思うだろうが、本当にサプライズだったので仕方がない。
 何故なら、あの神多羅木からも誕生日を祝われたのだから仕方がない。むしろ、ナギが驚かない訳がない。
 具体的に言うと「祝った振りをして実は祝ってない と言うオチですね?」と妙な納得をしたくらいだ。

 ナギが穿ち過ぎな気がしないでもないが、とりあえず、経緯を軽く話そう。

 数学の授業終了後――つまり、神多羅木の授業の終了後、ナギは神多羅木から「神蔵堂、昼休みに指導室に来い」と呼び出しを受けた。
 今までの傾向から「また小言とか仕事の押し付けとかだろうなぁ」と判断したナギのテンションは一気に低くなるのは当然だろう。
 そして、低いテンションのまま指導員室に向かったナギだったが……ナギを待ち受けていたのは、何と祝福の言葉とクラッカーだった。

 そう、瀬流彦と刀子と弐集院と神多羅木によるサプライズパーティだったのである。いや、本当に。

「え? あれ? え~~と……何なんですか、これ?」
「いや、だって、今日はキミの誕生日だろう?」
「確かにそうですけど、まさか祝っていただけるとは……」

 事態を把握できていないナギは素で訊ね、瀬流彦は「何で当たり前のこと訊くんだい?」とばかりに返す。

 確かに、常識的に考えればナギを祝うための催しなのだろうが、ナギにはイマイチ信じられない。
 何故なら、この場には神多羅木もいたからだ(常識的に考えて、神多羅木がナギを祝う筈がない)。
 そのため、ナギは「アンタがオレを祝うとか有り得なくね?」的な視線で神多羅木を見たのだが……

「いや、オレは祝う気などなかったのだがな。瀬流彦がどうしても と、うるさかったんだ」

 何と、神多羅木は「せ、瀬流彦が言い出したからなんだからね!!」と言わんばかりにソッポを向いてくれやがった。
 ぶっちゃけ、髭面のオッサン(しかもグラサンで強面)がツンデレチックな反応をしても気持ち悪いだけである。
 それを理解したうえで――つまり、ナギに精神的ダメージを与えるために こんな反応をしたのだろう。さすが神多羅木である。

 もしかしたら、普通に照れ臭かっただけかも知れないが……真実は神のみぞ知る と言うことにして置くべきだろう。

「まぁ、ちょっと遅れちゃったけど、関係者入りしたことの歓迎会も兼ねて、ね」
「それと、明日からの修学旅行は大変ですからね、その慰安も兼ねてますね」
「いやぁ、関係者になったばかりで京都に行かされるとか、本当 大変だよねぇ」
「しかも、特使まで任されたんですから、その苦労は推して知るべし ですね」

 弐集院と刀子が微妙なフォローを入れるが、どう見ても生贄を見るような目をしているので説得力は皆無である。

「いや、学園長の犠牲になったことに同情――もとい、学園長に期待されていることに羨望だよ?」
「そうですよ? 今 思うと、あの激務のために離婚せざるを得なかった気がするくらいですよ?」
「僕もストレスで過食に走っちゃったから こんな体型になっちゃった気がしないでもないなぁ」
「弐集院先生は家庭を維持できたのですからマシですよ。私なんか3年ももたずに破局したんですよ?」

 段々とマイナスオーラを纏い始める二人に、ナギは「触らぬ神に祟りなし」とスルーを決め込む。

「まぁ、あきらめろ、神蔵堂。人生、何事も あきらめが肝心だ と言うことだ。一応、オレは陰ながら応援してやるから」
「つまり、それは見守るだけで何もする気はないんですね? その気持ちは よくわかりますけど、酷くないですか?」
「いや、常識的に考えて、オレがお前のために労力を割く訳がないだろ? まぁ、嫌がらせなら喜んで労力を割くがな」
「そりゃそうでしょうけど、それでも社交辞令くらいは言って置くべきではないですか? 社会通念上と言うか良識的に」

 だが、スルーしたナギに「お前も同類になるんだぞ?」と言わんばかりに神多羅木が絡んで来る。

「いや、お前が相手だと言質を取られる可能性があるからな、社交辞令であろうとも下手なことは言わないのが賢明だろ?」
「ハッハッハッハッハ!! さすがに社交辞令を敢えて本気で受け取って利用したりなんかしませんよ。多分、きっと、恐らくは」
「つまり、利用するつもりだった と言うことだな? オレが言うのもアレだが、もうちょっと人情に配慮した方がいいぞ?」
「まぁまぁ、今日はめでたい席なんですから そこら辺にしましょうよ。ってことで、はい、神蔵堂君。みんなからのプレゼントだよ」

 ヒートアップしていく二人に これまで傍観に徹していた瀬流彦が仲裁に入る。さすがに不味いと思ったのだろう。

 ちなみに、渡されたプレゼントの内容は「栄養ドリンク1パック」だったのだが……これは一体どう言う意味なのだろうか?
 恐らくは「これから栄養ドリンクが必需品になる生活が待っているぞ」と言う忠告なのだろうが、ナギは違うと信じたいのである。
 もしかしたら、これまでの慰労の品かも知れないし、木乃香の『婚約者として』頑張れ と言う親父臭い激励かも知れない と。

「……ありがとうございます。有効活用させていただきます」

 ナギは「まぁ、十中八九 忠告なんだろうなぁ」と思いつつも、爽やかな笑顔を浮かべて礼を述べる。
 もちろん、爽やかだと思っているのは本人だけで、傍から見ると諦観しか感じられない笑顔であるが。
 だからこそ、誰も何も言わない。気付かない振りをして生暖かく見守るのが彼等の優しさなのである。

 そんな訳で、彼等は気分を変えるために適当な雑談を始めるのであった(ナギはナ、神多羅木は神、瀬流彦は瀬、弐集院は弐、刀子は刀で表記)。

瀬:ところで、話は変わるけど……ナギ君は どうして関係者になったんだい?
ナ:あれ? オレがネギのパートナーになったって伝達されたんですよね?
瀬:まぁ、そうなんだけどさ。でも、それは原因であって理由じゃないだろ?
ナ:つまり、『どうしてネギのパートナーになったのか?』ってことですか?
瀬:うん、そう言うことだけど、別に話したくないなら話さなくていいよ?
ナ:いえ、確かに話したくない話ですけど、自業自得なので別に構いませんよ。
神:……まぁ、大方、ネギ君にセクハラまがいのことをして詰まれたんだろ?
ナ:はい、脇から介入して来てヒドいお言葉、本当にありがとうございます。
神:だが、あながち間違っていないだろう? お前の性質的に考えて。
ナ:で、ですが、アレはオレの意思ではなく、エヴァのせいだったんですよ?
神:つまり、セクハラまがいの行為をやらかしたこと自体は認めるんだな?
ナ:だって、あのロリババア、服を脱がせるエロ魔法を使ったんですよ?! 不可抗力ですよ!!
神:ああ、武装解除か……
瀬:そ、それはヒドいね……
弐:うん、同情するよ……
神:だが、あれには『暗黙の了解』があるからな、残念ながら不可抗力とは言えんな。
ナ:え? 暗黙の了解、ですか? ちなみに、それは具体的にどんな内容なんです?
瀬:まず『男は男にしか使っちゃいけないけど、女性や子供は誰にでも使ってもいい』だね。
ナ:多少 理不尽を感じますが、仕方がないですね。と言うか、ロリババアは無罪な訳ですね?
神:そうだ。ちなみに『男は喰らわないように避けるか、喰らったら速攻で隠す』と言うのもある。
弐:そして、これが一番大切なんだけど、『女性や子供が剥かれた場合は速攻で目を瞑る』もあるね。
ナ:なるほど。つまり、それらの措置を行わなかったオレに過失がある と言う寸法な訳ですね?
神:まぁ、そうなるな。だが、それを知らない一般人にそれを強いるのは過酷だとは思うがな。
瀬:でも、いつの時代も男は耐えるしかない と言うか、黙って泣き寝入りするしかないんだよ……
弐:痴漢の冤罪と一緒で「それでもボクはやっていない」と泣きながら罪を受け入れるしかないねぇ。
神:まぁ、一般人なら記憶消去って手もあるがな――って、何で記憶消去を選ばなかったんだ?
ナ:そりゃあオレも選べるなら選びたかったですよ。でも、選べなかったんですよ、信条的に。
神:……そうか。まぁ、運が悪かったってことで納得して置け。
ナ:ええ、あきらめと言う名の納得はしましたよ。まぁ、正確には、せざるを得なかったんですが。
神:そうか、ならば何も言うことはない。ところで、さっきから黙っている葛葉も気を付けような?
刀:いえ、あの、確かに私は加害者側ですけど……私は武装解除が使えませんので、大丈夫ですよ?
神:まぁ、そうだが……確か、似たようなことを式神でできた気がするんだが、それはオレの勘違いか?
刀:か、勘違いではありませんけど、それでも、武装解除のように服までは剥かないようにしてますから。
瀬:あれ? でも、「武器を隠してる可能性を考えたら全裸に剥くのが一番だ」って仰ってませんでしたっけ?
刀:瀬流彦君!! それはそれ、これはこれですよ!! と言うか、空気を読んで黙って置くのが大人ですよ!!
弐:葛葉さん……使いどころを誤ると彼のような被害者が生まれますので、本当に気を付けてくださいね?
ナ:そうですよ。オレは何も悪くない筈なのに、何故か最終的にはオレが悪いことになっちゃうんですから。
刀:……大丈夫です。私は常にクールであることを心掛けていますので、そんな悲しいミスはしません。
ナ:オレが言うのもアレですけど、そう言うことを言う人に限ってテンパると見境がなくなるんですよねぇ。
刀:神蔵堂君? せっかく綺麗に話が纏まりそうだったのに……余り口が過ぎると『チョン切り』ますよ?
ナ:何をですか!? と言うか、刀に手を掛けないでください!! 余計なことを口走ったのは謝りますから!!
神:…………その場合は女子中等部へ編入、か。
ナ:いえ、常識的に考えて、ここは助けるところではないでしょうか? と言うか、見捨てないでください!!
神:フン、御免こうむる。と言うか、『口は災いの元』と言うだろう? いい加減、少しは学習しろ。
ナ:いやぁ、これでも学習能力は高いと自負しているんですけどねぇ。何故か反省が活かされないんですよねぇ。
神:つまり、お前の性根そのものが腐っているから、学習してもダメなままなのだろうな。哀れなことに。
ナ:はい、相変わらずのヒド過ぎる評価、本当にありがとうございます。もう、そうとしか言えません。

 何度も言うが、ナギと神多羅木の仲は悪くない。ただ、互いに譲れないものがあるだけなのだ。

 ところで、今更と言えば非常に今更なことだが、いい加減に神多羅木以外の魔法先生も紹介して置こうと思う。
 いや、別に話題を変えたい訳ではない。ただ、前話から名前が出ているのに紹介していないことが気になるだけだ。
 微妙に信憑性は低いかも知れないが、信じていただかないと話が進まないので、ここは敢えて信じていただきたい。

 と言うことで、まずは瀬流彦から紹介しよう。

 瀬流彦を簡単に表現すると「某狂戦士な漫画に出て来るヴァンディミオン家の付き人にソックリな感じの人」となる。
 普段は目を瞑っている様にしか見えないレベルの細目だが、オリジナル同様にヤル気モードの時は瞳孔が開くのだろう。
 一見『御人好し』にしか見えないが、実際は腹黒に違いない。先程のKYは絶対に態とだろう。そうナギは確信している。
 で、エヴァ情報によると、瀬流彦は風の魔法を得意としているらしく、特に風系の防御魔法では麻帆良で随一の腕前らしい。

 他に重要な情報としては……ネギクラスの副担任だ と言うことだろう(ちなみに、担任はタカミチのままだ)。

 どうでもいいかも知れないが、原作ではネギクラスの副担任は源しずな(タカミチとイイ感じな眼鏡美人)だったが、
 ここでは、しずな は女子中等部三年の学年副主任に昇進しており、副担任は瀬流彦が抜擢された形になっている。
 きっと、タカミチが担任のままであることも含めて、ネギが生徒として麻帆良に来たこととが関係しているのだろう。

 さて、次は刀子を紹介しよう。

 刀子は、葛葉 刀子(くずのは とうこ)と言うフルネームであり、先生からは苗字で呼ばれることが多く生徒からは名前で呼ばれることが多い。
 神鳴流の使い手なので厳密には魔法先生ではないが、魔法関係の先生と言う意味では魔法先生なのだろう。ちなみに、剣の腕は かなりのものらしい。
 原作にもあったように、麻帆良に来てから刹那は「指導していただいている」らしい(刹那情報)ので、現時点では刀子の方が刹那より強いのだろう。

 そして、今更と言えば今更で、後付け設定にしか見えないが……実は、刀子はナギのクラスの副担任だったりする。

 まぁ、神多羅木と組んで仕事することが多いらしい(原作からの類推)から、納得と言えば納得なことだろう。
 ちなみに、言うまでもないだろうが、男子生徒達は「刀子先生の方が担任が良かった」とか よくボヤいているが、
 魔法関係の事情を知っているナギとしては「キレると見境がなくなる刀子先生よりは、神多羅木の方がマシ」らしい。
 で、刀子の情報で他に重要なことは……黒ストッキングを愛用していて、バツイチである と言うことくらいだろう。

 と言う訳で、最後の紹介は弐集院だ。

 弐集院は、伊○院に似た ふくよかなナイスガイである。その一言に尽きる。むしろ、それ以外の説明が浮かばない。
 まぁ、それは過言なので、他の説明もすると……実は、男子中等部三年の学年副主任をしている(しずな と似た立場だ)。
 つまり、修学旅行中は主に男子生徒の『お守り』が仕事となるので、思わず合掌したくなるのはナギだけではない筈だ。
 ただでさえ面倒な仕事なのに、魔法関係の意味でも守らなければならないので、その苦労は『推して知るべし』であろう。
 まぁ、神多羅木や刀子も交代制で手伝う予定(ナギ達の護衛もあるので交代制になった)だが、『焼け石に水』もいいところだ。

 そんな弐集院だが、パソコンを得意としており中等部三年のパソコンの授業も担当している。

 その授業中に披露してくれたパソコンスキルは「最早『神』と言わざるを得ないレベル」だったらしい。
 まぁ、それには電子精霊と言うチートもあったのだろうが、知識だけでも充分にエキスパートのようだ。
 これは余談となるが、以前に話題にした「まほらば(麻帆良のSNS)」の管理人もしているらしい(本人談)。

 で、他に重要な情報として……妻子持ち と言うか、メチャクチャ可愛い娘がいる と言うことだろう。

 い、いや、別にナギが娘を狙っているとか そんなんではない。さすがのナギでも、そこまで落ちてはいない。
 まぁ、写真を見せられて自慢された時は「ヤベッ!! この幼女、可愛過ぎ!!」とか思ったことは認めるらしいが。
 それでも、ナギは そこまで見境がない訳ではない。最低限のマナーは持っている。きっと、そうに違いない。

 と、とにかく、途中からグダグダして来たが、敢えて綺麗に纏めると「先生達に祝ってもらえてナギは嬉しそうだった」と言う感じだろう。



************************************************************



Part.03:細かいことは気にしない


 ナギは驚愕した。想定外の出来事に思わず言葉を失ってしまう程に驚いた。何故なら、刹那が誕生日のプレゼントを渡して来たからだ。

 そんな訳で、事の経緯を軽く説明しよう。時は放課後、場所は男子中等部と図書館島の中間地点くらい。
 授業を終えたナギは目的地である図書館島に向かっていた。その道中に突然 呼び止められたのである。
 相手が刹那なので てっきり魔法関係の話だと思っていたナギだったが、その予想は いい意味で裏切られた。

「那岐さん!! 誕生日おめでとうございます!!」

 そんな言葉と共に渡された包み。誰が どう見ても誕生日プレゼントだろう。
 むしろ、これで魔法関係の物(近右衛門からの届け物とか)だったら泣いてもいい。

「ありがとう、せっちゃん。まさか、誕生日を覚えていてくれたとは……」
「私が那岐さんの誕生日を忘れる訳がないじゃないですか?」
「そっか(オレは せっちゃんの誕生日 知らないけど)。それは嬉しいな」
「まぁ、そうは言っても、プレゼントをするのは今年が初めてですけどね」
「……本当に ありがとう。大切にするよ(やばい、萌え死にしそう)」

 やはり、せっちゃんは可愛い。特にオズオズとプレゼントを渡された時なんか最高だった。……それが、ナギの率直な感想である。

 もちろん、そんな可愛い刹那のために、内心(誕生日 知らない)を悟らせるような真似はしない。
 この時ほどポーカーフェイスが得意でよかった と思ったことはない。そう、ナギは思ったらしい。
 どちらかと言うとSでゲスなナギだが、可愛いコの笑顔を曇らせるような外道ではないのである。

 ところで、刹那からのプレゼントの内容だが……護身用の短刀と言う、何とも物騒な物だった。

 まぁ、別に色気のある物を期待していた訳ではないのだが、それでも少しガッカリしたのが本音だ。
 いや、恐らく刹那は「これから京都で危険だから」と言う感じで、ナギの身を案じたが故の物だろう。
 ナギとて それくらいわかっている。わかっているが、それでも少しガッカリしてしまったのである。

(せっちゃんは女のコなんだから、もうちょっと女のコらしく してくれてもいいと思うんだけどなぁ)

 もちろん、プレゼントが嬉しくない訳ではない。むしろ、非常に嬉しい。
 プレゼントで大事なのは気持ちだ。内容云々で文句など言ってはいけない。
 ただ「プレゼントに刃物を選ぶ女子中学生って どうよ?」と思うだけだ。

 …………うん、まぁ、とりあえず、諸々の問題は棚上げしてナギは図書館島に向かうことにした らしい。

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 そんな訳で、ナギは図書館島に訪れた。

 まぁ、正確に言うと「悪いけど、放課後 図書館島に来てくれへん?」と呼び出されたのだが。
 そして、その口調で呼び出した人物は既におわかりだろう。むしろ、わからない訳がない筈だ。
 そう、微妙に間違っている臭い京都弁を使いこなすナギの婚約者――つまり、木乃香である。

「なぎやーん、誕生日おめでとなー」

 ちなみに、ナギの婚約者と表現したように対外的には そうなってはいるが……実際のところは、振りをしているだけに過ぎない。
 その証拠に「婚約者として修学旅行中は行動を一緒にする必要がある」とかナギが告げた時は、嫌な顔をしなかったが いい顔もしなかった。
 それに、ついで告げた「せっちゃんも一緒に行動することになった」と言う方には狂喜乱舞していたのを隠し切れていなかったくらいだし。

「これ、プレゼントやよー」

 さて、話を戻そう。軽い感じで木乃香は誕生日プレゼントをくれた訳だが……実は、その中身は非常にアツかった。
 何故なら、ガンプラだったからである。しかも、マスターグレードのシャアザクだったので、ナギは狂喜乱舞した。
 もう「所詮オレなんて お飾りの婚約者さ」とか卑下していた自分がバカらしくなったくらいに嬉しかった らしい。

(いやぁ、木乃香ってオレの趣味を ここまで理解してくれてたんだなぁ)

 とか、感無量だった。まぁ、那岐の趣味を理解しているのか、ナギの趣味を理解しているのか は不明だが。
 偶々ナギと那岐の趣味が合っていたのか? それとも、僅かな付き合いからナギの趣味を理解してくれたのか?
 未だに那岐の趣味や嗜好を理解できていない(する気がない?)ナギにとっては、非常に困難な問いである。

 まぁ、そんなナギの疑問など今は意味がないが。何故なら、今は疑問に頭を抱えるよりも木乃香に感謝を表明するべきだからだ。

「ありがとう、木乃香。本当に嬉しいよ。
 大切に作って、大切に塗って、大切に飾るよ。
 むしろ、ケータイで撮って待受にするよ」

 ナギは組み立てるだけでなく塗装までこなす軽度のモデラーだったので、非常に微妙な表現で喜びを表したのだった。

 うん、まぁ、木乃香がナギの言葉をすべて理解し、あまつさえ「出来たら見せてなー」とか言っていた件はスルーして置こう。
 ……こうやって問題は棚上げされて行くのだろうが、それがナギのクオリティなので仕方がない。仕方がないったら仕方がない。
 棚上げされた問題が後にトラブルを起こすまで棚上げされたことすら忘却される と言うオマケ付きだけど、仕方がない筈だ。

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 さて、図書館島と言うことで説明の必要もないだろうが……

 ナギが図書館島に来たのは、木乃香に呼び出されただけではない。のどかと夕映に会うためにも来たのである。
 当然ながら、木乃香と克ち合わないように約束の時間や場所には気を付けたが、それでも さすがとしか言えない所業だ。
 形だけとは言え婚約者と会った直後に他の女性とのアポイントを取ってあるのだから、さすがとしか言えないだろう。

 まぁ、そんな訳で、ナギは二人からもプレゼントをもらったのだが……正直、二人とも『重い』ものだったから困ったらしい。

 二人ともプレゼントの内容は本だったので、ある意味では とても『らしい』と言えるし、一見 問題ないように見える。そう、一見は。
 だが、のどかは物理的に重くて(無人島に持って行きたい本ベスト10)、夕映は内容的に重かった(実存主義についての哲学書)のだ。
 両方とも読み応えがありそうなので本好きなナギとしては嬉しいプレゼントなのだが、大量の本を抱えて学園を回るのは正直キツい。

 と言うか、これでは「階段を踏み外すイベントのフラグ」ではないか? そんな訳がないとも言えないのがナギのクオリティだろう。

「あのー、ナギさーん? 遠い目をして どーしたんですかー?」
「……もしかして、プレゼントが お気に召しませんでしたか?」
「あ、いや、違くて、運ぶのが大変そうだなぁって思っただけさ」
「そうですかー。そう言うことでしたら、運ぶのを お手伝いしますー」
「そ、そうですね。他の方からのプレゼントもあるようですし」
「いや、いいよ。一度 部屋に戻ればいいだけの話だからね」
「ですからー、部屋まで持っていくのを お手伝いしますー」
「そ、そうですね。贈った側の責任として そうすべきですね」
「いや、いいよ。これでも男だから余裕だよ(危険な予感がするし)」
「……そうですかー、それなら仕方ないですねー(チッ)」
「の、のどか? ――あ、いえ、何でもありません。わかりましたです」

 のどかの舌打ちが聞こえた気がするが、きっとそれは気のせいだろう。そうに違いない。

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 そんなこんなで、紆余曲折はあったもののナギは無事に図書館島を後にしたのだった。

 ところで、仮に のどかの口車に乗って――もとい、好意に甘えていたら、ナギはどうなったのだろうか?
 今度は「あの野郎、遂に女のコを二人も連れ込みやがった」とか噂される気がするのは、ナギだけじゃない筈だ。
 と言うか、のどかの狙いは それだろう。本を運ぶのを手伝って好感度アップ、などと乙女チックな訳がない。

 だが、ここは敢えて「そんな訳がないジャマイカ」と気にしない方が、ナギには幸せなのかも知れない。



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Part.04:気にしたら負けだと思う


 回るところが多いので、サクサクと行こう。

 そんな訳で、身も蓋も無く話を進めると、ナギが次に訪れたのは麻帆良教会である。
 当然、そこにいるのはココネと美空のシスターコンビであることは言うまでもないだろう。
 まぁ、不在である可能性はゼロではないが、約束があるので今回は その可能性はゼロだ。

 では、二人は どんなプレゼントを渡したのかと言うと……

 ココネは愛情がタップリ込められたと思われる「手作りの ぬいぐるみ」であり、
 美空はイヤガラセを疑いたくなる「美空オススメの乙女ゲームソフト」だった。
 ちなみに、そのソフトは美空がプレイ済みであることは言うまでもないだろう。

 いや、まぁ、有り難いことは有り難いのだが……さすがに これはヒドいだろう。だが、事実なので仕方がない。

 それに、美空はナギとは『友人関係』を貫くつもりなので、色気のある物を贈ることができないのだ。だから、仕方がない。
 むしろ、ソフトは「ナギには未プレイなもの」だったので、ある意味で中古と同じ様なものだろう。だから、きっと問題ない。
 ただし、美空がプレイした結果「これツマンネ。こんなんイラネ」とか言うことでナギに渡したのなら、最早 問題しか残らないが。

 ま、まぁ、美空のことは置いておこう。重要なのはココネだ。むしろ、ココネしか重要ではない気がする。

 いや、大切なことなので二回言ったが、本当に重要なのはココネだろう。何故なら、ココネのプレゼント(ぬいぐるみ)は小さなウサギだったからだ。
 ここでホワイトデーのこと(ナギがココネに『大きなウサギのぬいぐるみ』をあげた)を思い出していただきたい。勘のいい方ならピンと来ただろう。
 そう、二つは親子にしか見えないのだ。ココネがそれを想定して作ってくれた とか妄想したナギが喜びの余り卒倒し掛けたのは言うまでもないだろう。

 もちろん、ここで卒倒しようものなら美空に何されるかわからないから何とか踏み止まったらしいが。

(だって、美空なら『額に肉』なんて生易しいことはせずに、顔に『お経』とか書くからね。
 そして、耳の部分だけ書き忘れて『これなんて耳無し芳一?』とかツッコませるに違いないね。
 んでもって、満面の笑みを浮かべて『予想通りのツッコミ乙っス☆』とか言うに違いないさ)

 まぁ、我慢した理由はアレだが、我慢は大切だろう。ここで卒倒したら ただの変態でしかない。いや、もう既に充分 変態だが。

「いや、それは被害妄想も過ぎるんじゃないスか?」
「そうだヨ。ミソラはそこまで『は』しないと思うヨ?」
「え? でも、オレが寝たらイタズラはするよね?」
「まぁ、しない訳がないっスね。常識的に考えて」
「うん、そうだネ。ミソラなら絶対に何かしらするネ」
「……とりあえず、美空の前では寝るのは控えようと思う」

 ナギは そんなどうでもいいことを誓って麻帆良教会を後にしたのだった。

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 麻帆良教会を後にしたナギが向かったのは『赤の広場』である。つまり、待ち合わせの相手は愛衣と高音だ。

 二人からの誕生日プレゼントは、少々――いや、かなりナギを驚かせた。
 別に刹那の様に「もらえるとは思ってなかった」とか言う類の驚きではない。
 ナギが驚いたのは、その内容が「ナギを驚かせるに充分な物だった」からだ。

 ここで引っ張ってもいいことはないので、サッサと種明かしと行こう。

 高音のプレゼントは『女心が理解できる50の秘訣』と言う本と『相手に不快感を与えない会話法』と言う本だった。
 しかも「ホ、ホワイトデーの時は少しもらい過ぎましたので、そのお返しですわ!!」とか言うツンデレも添えて、だ。
 また、愛衣の方は「これから大変でしょうから、私が愛用していた教材を参考にしてください」とか言いながら、
 初心者向けの魔道書である『ゼロからわかる ― 超基本的な魔法理論と その応用 ―』をプレゼントしてくれた。

 まぁ、これだけなら、高音は本当にホワイトデーのお返しだし愛衣はイヤガラセとも気遣いとも取れるので、別に驚く程のことではない。

 そう、プレゼントは本だけでなく、本の後に「あと、これは二人からですわ」と本命の香水を渡されたのである。
 その香水がブランド物で それなりに高級だったことや、ナギの好みに合致する香りだったことも驚きだったが、
 何よりも驚きだったのは、「それほどでもない物を渡した後に それなりの物を渡す手法」がナギと同じだったことだ。

 ナギとしてはプレゼントを選ぶのに難航して苦肉の策でやった方法だったのだが……予想以上に効果的だったことを身を以って理解したのである。

 つまり、それなりに効果はあると思っていたが、やられてみて「予想よりも効果的だ」と驚いた訳だ。
 ナギは驚きと共に喜びを感じ、一種の感動を覚えた。具体的には、高音と愛衣が妙に可愛く見えたくらいだ。
 いや、愛衣のことはいつも可愛がっているので、いつも以上に可愛く見えた が正しい表現だろう。

 まぁ、高音についてはノーコメントにして置いて、ナギは次の目的地に意識を切り替えるのだった。

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 そろそろ疲れた来たが、まだナギの予定は終わっていない。ナギには まだ やるべきことが残っている。

 むしろ、ナギが やらずに誰がやると言うのだろうか(反語)? とか、勢い余って言っちゃうくらいだ。
 若干 意味がわからないが、とにかく、予定は残すところ あと2件なので、最後まで突っ走ろう。
 少しだけ突っ走り過ぎている気がしないでもないが、敢えて気にしない。と言うか、気にしたら負けだ。

 と言うことで、ナギがやって来たのは女子中等部の校門前である。

 まぁ、場所的には男子中等部から直で来た方がよかったのだが、時間的に『赤の広場』の後になったのである。
 ちなみに、下校ラッシュはとっくに終わっているので、人影はほとんどない。御蔭で周囲の視線を気にする必要はない。
 その点では、この時間に待ち合わせを希望した相手に感謝すべきだろう(まぁ、場所を変えればいいだけの話なのだが)。

「おっ、ナギっち。やっと来たね」

 ナギへの呼び掛けで既にお分かりだろうが、ナギを呼び出したのは元気な女子中学生、裕奈である。
 いや、正確に言うと、裕奈達とすべきところだろう(裕奈以外にも、亜子・まき絵・アキラもいるので)。
 と言うか、乙女の事情的に亜子が一人のケースは有り得るが、裕奈が一人のケースは有り得ないだろう。

 裕奈は にこやかな笑み(に見えるが実は邪な笑み)を浮かべながら、一抱え程ある包みをナギに手渡す。

「ほい、誕生日おめでとさん。これ、私達『三人』からね」
「ありがとう。と言うか、三人って? 四人じゃないの?」
「うん、これは私・まき絵・アキラの三人からの分だもん」

 じゃあ、亜子は どうしたのだろう? そう疑問に思ったナギが亜子を見ると、亜子はオズオズと包みを差し出していた。

「わ、私のは別になってるんです。う、受け取ってください」
「そうなんだ。(よくわかんないけど)ありがとね」
「い、いえ、ナギさんには いつも御世話になってますから

 何で別になっているのかは極めて謎だが、ナギは とりあえず礼を言って受け取って置く(もちろん、裕奈・まき絵・アキラにも礼は言ったが)。

 そんな訳で、気になるプレゼントの中身だが……何と、裕奈達からの分は「亜子の抱き枕カバー」だった。
 いや、亜子が所有していた訳でもないし使用していた訳でもない。何故か、亜子がプリントされていたのである。
 現実の知り合いの抱き枕カバーをもらっても普通は困る代物だ。中身を知ったナギが絶句したのは言うまでもない。

(そりゃあ、茶々丸からエヴァの抱き枕カバーをもらって喜んだ過去はあるけどさ)

 だが、あれはエヴァとは ほとんど面識がなかった時だったから、素直に喜べたし使えたのであって、
 知り合いになった今となっては、同じ物をもらっても「これは何のイヤガラセだよ?」とか思うだろう。
 抱き枕カバーは、アイドルとか萌えキャラとかの『直接的に関係ないコ』だからこそ使えるのであって、
 どう考えても『直接的に関係のあるコ』の抱き枕カバーは使えない。オカズにするのと似た感覚である。
 いや、中には「友達をオカズにするとか余裕」とか言う剛毅な方もいるだろうが、ナギにはできないのだ。

「フッフッフッ、ナギっちにはピッタリなプレゼントっしょ?」

 ドヤ顔で訊ねて来る裕奈に、ナギが殺意を抱いたは言うまでもないだろう。と言うか、発案者であろう裕奈にはオシオキが必要だろう。
 もちろん、そのオシオキとは、この場で行うのが憚れるような『セクシャルなオシオキ』である。むしろ、完全なセクハラである。
 春休みの時(9話)の『貸し』も含めてタップリネッチリとセクハラしたい所存らしい。まぁ、ナギはヘタレなので思うだけだろうが。

「? ゆーな、一体 何を贈ったん?」
「にゃっはっはっは……秘密にゃ!!」

 まぁ、亜子は知らない方がいいだろう。と言うか、知るべきではないだろう。裕奈達の友情的に考えて。
 思春期男子に抱き枕カバーを与える と言うことは、つまり『そう言うこと』だからだ。友情に皹が入り兼ねない。
 案外、相手がナギなので亜子は許容しそうだが……とにかく、できるだけ亜子に知られない方がいいだろう。

 どうでもいいことだが、裕奈の「にゃ」と言う語尾にナギは若干イラッと来たらしい。

 ところで、説明が遅れたが……亜子からのプレゼントは、洗練されたデザインの防水仕様な腕時計だった。
 実は、以前ナギが愛用していた腕時計はアルジャーノンでのバイト中(水仕事)に壊してしまったので、
 ナギとして密かに欲していたらしく、非常に嬉しかったらしい(しかも、デザインもナギの好みに合っていた)。

 そのため、ナギは「亜子の誕生日には それなりのものをプレゼントしよう」とか誓ったのだった。



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Part.05:祝福のパーティ

 舞台は変わって、ナギは最後の目的地であるエヴァ宅に来ていた。

「ナギさん、誕生日おめでとうございます」
「フン、誕生日くらいは祝福してやるそ、神蔵堂ナギ」
「とても おめでたいことですね、神蔵堂さん」

 最早 説明するまでもないだろうが、ナギはネギ・エヴァ・茶々丸から祝われていた。

 まぁ、茶々丸は祝っているのか は極めて微妙だが、祝っていることにして置こう。
 いくら茶々丸がナギを目の敵にしている とは言っても、目出度い席くらい抑えるむだろう。
 ナギを貶めるために空気を悪くすれば自分の評価を下げることくらい理解している筈だ。

「なるほどぉ。態々 時間指定で呼び出したのはパーティの準備をするためだったのかぁ」

 ナギの言葉通り、部屋(リビング)は飾り付けがなされており、まさにパーティの様相を呈していた。
 精神年齢は20歳を超えている筈なナギとしては、今更こんな風に祝われて気恥ずかしいだけなのだが、
 それでも祝われて悪い気はしない と言うか、むしろ嬉しいので、照れ隠しに得心したような振りをする。

「ちなみに、飾り付けをしたのはマスターです」
「なっ!? 茶々丸!! 余計なことは言うんじゃない!!」

 この会話だけで、茶々丸が不機嫌な理由をナギが理解したのは言うまでもないだろう。
 恐らくはエヴァが楽しそうに飾り付けをしていたのが悔しいのだ。実にわかりやすい。
 ちなみに、別に『楽しそう』とまでは言っていない。ナギがそう確信しているだけだ。

「ちなみに、料理はボクと茶々丸さんが作ったんですよー」
「へぇ、そうなんだ。(少し不安だけど)それは楽しみだね」

 国際的に見て英国人の味覚は信頼できないらしいが、ナギはネギを信じることにしたようだ。
 まぁ、毎日 木乃香の料理を食べているので それなりに舌が肥えただろう、と言う理由だが。
 ちなみに気になる結果だが、普通に及第点を出せるくらいの味だった、と だけ言って置こう。

「ま、まぁ、とにかく!! サッサと始めるぞ!!」

 エヴァが飾り付けの件を誤魔化す様にパーティの開始を宣言し、「茶々丸、例の物を出せ」と茶々丸にワインを持って来させる。
 まぁ、エヴァは外見的には幼女にしか見えないが、実際は600歳なのでエヴァがワインを飲んだとしても厳密には問題ではない。
 問題ではないのだが……どうも、絵的に幼女がワインを飲むのは不味い気がするため、ナギはついつい意味ありげに見てしまう。

 ……それを 物欲しげな目として理解したのか、エヴァは「フン、心配せずとも貴様にも飲ませてやる」と頷いた。

 そして、茶々丸に目配せをしてナギのグラスにもワインを注がせたため、ナギは期せずして御相伴に預かれることとなった。
 いや、そのこと自体は大した問題ではない。問題なのは、一人だけワインがもらえなかったネギが疎外感を覚えたことだった。
 当然ながら、ネギは「ボクには無いんですか?」と目で訴え、身内に甘いエヴァが その視線に耐えられる訳がなかった。

 そう、済し崩し的にネギにもワインが振舞われることになったため、酒精に彩られた幼女達がカオスな空間を作ってしまったのである。

「神蔵堂ナギ……貴様、私の酒が飲めんのか?」
「いや、飲んでるから。だから、泣くなって」
「泣いてない!! 涙ぐんでいるだけだ!!」
「いや、人はそれを泣いていると言うんだが?」
「うるちゃい!! つべこべ言わずに飲め!!」
「いや、うるちゃいって……あざと過ぎない?」

 エヴァは泣き上戸で絡み酒だったので、ナギにグダグダと管を巻き続けた。

「ナギさーん!! ボク、ナギさんが大好きなんですーー!!」
「うん、知ってるから。だから、そんなに引っ付かないで?」
「そんな?! 知ってて焦らしてたなんて……ステキ過ぎですー!!」
「うん、実に不思議な精神構造だね。意味がわからないよ?」
「えっへへ~~♪ そんなに褒めないでくださいよぉ」
「うん、褒めてないから……まぁ、貶してもないけどさ」

 ネギは抱き上戸と言いたくなるくらいナギに引っ付き、血迷った妄言を垂れ流し続けた。

「うふふふ、お兄様がいっぱいですー♪」
「いや、カモは どんな幻覚を見てるのさ?」
「うわっふぅ♪ パ~ラダイスです~~♪」
「うん、カラアゲあげるから静かにしててね?」

 最近すっかり存在を忘れていたカモは、妙な幻覚を見続けていた。

『ケケケ、コンナニ楽シソウナ御主人ハ久シ振リニ見タゼ』
「まぁ、その意味では、神蔵堂さんに感謝せざるを得ませんね」
『ヘッ、オマエモ ナカナカ素直ジャネーナ。難儀ナコトダゼ』
「……何を仰ってるんです? 私は欲望に忠実なつもりですが?」
『ケッケッケ……マァ、ソウ言ウコトニ シテ置イテ ヤルゼ』

 そして、素面だけどナギを助ける気の無いチャチャ姉妹は傍観し続けた。

 と言うか、茶々丸はナギを敵視しているから傍観しても仕方がない と言えば仕方がないが、
 チャチャゼロはナギの護衛の筈なので、傍観せずに助けてもいいのではないだろうか?
 まぁ、そうは思っても、言うだけ無駄だと理解しているナギは思うだけに止めたらしいが。

 そんなこんなで、このカオスな空間は幼女達が暴れ疲れて眠るまで続き、ナギの精神的&肉体的な疲労はステキな感じに仕上がったのだった。

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 ところで、それぞれの誕生日プレゼントの紹介をして置こう。

 と言うのも、ネギ達に酔いが回る前にネギ・エヴァ・茶々丸から誕生日プレゼントを受け取っていたのである。
 酔いが回ってからでは とてもではないが渡せるような余力がなかっただろう(カオス過ぎた)から、
 若干、ナギがプレゼントを催促した形になったが、結果を考えるとファインプレーだった としか言えない。

 と言うことで、まずはネギのプレゼントから紹介しよう。

 ネギのプレゼントは簡単に言うとネギ謹製の魔法具だったのだが……何と、修学旅行のために作ってもらった物ではなかった。
 しかも、それは「鼻の部分が赤いボタンになっている節くれだった木人形(つまり、某コピー□ボットのようなもの)」だった。
 以前に雑談として「コピー□ボットとか作れない?」と話したことを覚えていたようで、一生懸命 再現してくれたらしい。

 ちなみに、名称は『身代わり君Ⅱ』と言い、その独特なネーミングセンスから お分かりだろうが、ネギが命名者である。

 まぁ、効果の説明は必要ないだろうが……これは、鼻のボタンを押すだけでボタンを押した人間のコピーが作れる便利アイテムである。
 恐らく、相当 頑張ったのだろう。そう思ったナギは、ネギの頭をグリグリと撫でながら「本当にありがとう」と感謝を表わした。
 そしたらネギは とても幸せそうな表情で「えへへ~♪」とかニヤついていたので、ナギは若干 引きながらも信賞必罰を実感していた。

 では、次はエヴァのプレゼントを見てみよう。

 実は、エヴァのプレゼントも魔法具だった。まぁ、エヴァのはネギのと違って手製ではなかったが。
 とは言え、手製だからと言って効果が高いと言う訳ではない。むしろ、専門家が作ったものなので逆である。
 そんな訳で、エヴァのプレゼントは非常に有用なものだった。何と、影を使った『ゲート』を使えるのだ。
 代償として使用者(ナギ)の魔力やら体力やらが吸収される仕様だが、緊急脱出には持って来いの代物だ。
 ちなみに、名前は『ケルベロス・チェーン(命名者はエヴァらしい)』と言う実に香ばしい名前だとか。

 その形状はネックチェーンのようなアクセサリーだったので、ナギは常に身に付けて万が一に備えて置く予定らしい。

 どうでもいいが、そのことを礼と共に述べたら、エヴァが妙に勝ち誇り、ネギが妙に悔しそうにしていたのは……何故だろうか?
 恐らくエヴァは(ぼっちが長かったことによる弊害で大人気なくも)プレゼントを喜ばれたことが やたらと嬉しいのだろう。
 そしてネギは、エヴァのプレゼントの方がナギを喜ばせたような気がしたので単純に悔しいのだろう。きっと、そうに違いない。

 まぁ、深く気にしたら負けだと思うので、茶々丸のプレゼントに話題を逸らそう。

 茶々丸は「これは『秘蔵のコレクション』です、どうぞ」とか言いながらDVDをくれたので、恐らくは『お宝』なのだろう。
 ナギは「いやぁ、今夜は眠れないかも知れないなぁ」とかニヤニヤしていたらしいが……後に中身を確認して愕然とした。
 何故なら、それに録画されていた映像は『ネコちゃん達の日常シーン』だったからだ(ナギのショックは甚大である)。
 いや、ネコちゃん達は可愛いし、見ていて とても癒されることは確かなのだが、どうやらナギの期待は違ったらしい。
 まぁ、そうは言っても、そのことに文句を言える訳ではないので、その日のナギはネコちゃんを見て癒されたらしいが。

 そんなこんなで、グダグダしたパーティだったが、ちゃんと祝ってもられたのは久々な気がするナギは素直に喜んだ と言う噂である。



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Part.06:だから、受け取れない


 以上のような経緯を経たためか、ナギが帰宅したのは12時を大幅に過ぎた時間だった。

 非常に今更な話だが、ナギとしては明日からの修学旅行に備えて今日は早めに寝るつもりだったらしい。
 それなのに こんな時間までフラフラしていたのは何故なのだろうか? ……ナギの疑問は尽きない。
 あきらかにワインのせいだと思われるが、ワイン自体に罪はない筈なので、ナギの疑問は尽きないのだ。

(う~~ん、オレも『別荘』で休んでから帰ってくればよかったなぁ)

 エヴァもネギも酔いがヒド過ぎて、朝まで寝かせても まともに活動できるか怪しかったため、
 ナギは独断で二人を『別荘』に放り込んで来た(当然、世話役として茶々丸も派遣したが)。
 ネギと同じ空間で寝ることを危惧してナギは帰宅した訳だが、睡眠時間的に失策だったかも知れない。

 まぁ、これも今更だ。今更 悔やんだところで詮無きことなので、サッサと話題を変えよう。

 実はと言うと、ナギの部屋に荷物が届いていたことを確認したのである。
 差出人は不明だが、これまでの事情を考えると十中八九あやか だろう。
 と言うか、バレンタインの時の差出人不明も あやか だったに違いない。

(もしかしたら、ホワイトデーに何も返してないことも怒りの原因だったのかなぁ)

 当時は差出人がわからなかったので返そうにも返せなかったが、今は誰だか判明している。
 つまり、時期は遅れてしまったが、返そうと思えば返せるのだ。だが、ナギは それを善しとしない。
 何故なら、あやかはナギではなく那岐に贈ったからだ。ナギが返すのは何かが間違っているだろう。

 そして、それは今回のプレゼントにも言えることだ。

 どう考えても、あやかはナギにプレゼントしたのではない。あきらかに那岐に当てたプレゼントだろう。
 あんなこと(17話参照)があったにもかかわらずプレゼントしてくれたことに少々の疑問は残るが、
 ナギを那岐として認識していなくても、一応はナギも那岐であると認定してくれているのかも知れない。

 段々 意味が分からなくなってきたが、とにかく、ナギ宛でないのならナギは受け取れない。

 ナギに向けられたものなら、それが善意だろうが悪意だろうが好意だろうが敵意だろうが、ナギは遠慮なく受け取る。
 だが、那岐に向けられたものは受け取らない。いや、受け取れない。善意も悪意も好意も敵意も、悉くをスルーするだろう。
 ナギやナギの周辺に害を及ぼすような場合は対処するが、大した影響がないものは放置する。それが、ナギの基本方針だ。

 ……だから、あやか からのプレゼントは『そのまま』にして置くことにナギは決めた。

 単に問題を棚上げしたとも言えるが、現状のナギにはそれしかできないのも事実だ。
 いつか冷凍庫に保管してるチョコレートと一緒に那岐が受け取ってくれる日を待つしかない。
 まぁ、ナギが那岐の分も受け取れるようになる日が来るかも知れないが、現状は変わらない。

(あそこまで真っ直ぐに向けてくれる想いを踏みにじるなんてことはしたくないもんねぇ)

 ナギは歪んているため、歪んだ想いを向けられてもナギは何も感じない。
 ネギの「歪んだコンプレックスの代償である好意」は、向けられるだけ虚しい。
 のどかの「ナギを管理したいだけとしか思えない好意」も似たようなものだ。
 ナギが歪んでいるせいなのかも知れないが、それらはナギの心に響かない。

 だが、真っ直ぐな想いは どうしようもなくナギの心を打つ。

 真っ直ぐに向けられた善意や好意は、何とも言えない喜びと同時に妙な不安をナギに与える。
 真っ直ぐに向けられた悪意や敵意は、笑って遣り過ごすことはできるが、実は かなり傷付いている。
 言わば、ナギは影で這い蹲る惨めな存在なので、光に恋い焦がれて身も心も焦がされるのだろう。
 それ故に、あやか から向けられる真っ直ぐな好意も敵意も、ナギを容赦なく焦がしてしまうのだ。

 だから、ナギは あやかの『那岐への想い』だけは踏みにじれない。ただただ、現状を維持するだけしかできない。


 


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オマケ:今日もタカミチ


 ナギが部屋で苦悩を抱えている頃、学園長室には例の如く歓談に耽る近右衛門とタカミチの姿があった。

 ここで「いや、仕事しなくていいのかよ?」とツッコミたくなるかも知れないが、
 彼らには言うだけ無駄でしかないので、生暖かい目で見守って置くのが吉である。

「そう言えば、今日は那岐君の誕生日だった気がするのぅ」
「ええ、そうですね。記念すべき15歳の誕生日ですね」
「む? 余裕じゃのぅ? プレゼントはもう渡したのかの?」
「ええ、とっくに。那岐君は とても喜んでくれましたよ?」

 近右衛門はタカミチの反応から事情を推察し、タカミチはその推察をアッサリと肯定する。
 実に駆け引き甲斐の無いタカミチだが、それくらい浮かれている――もとい、気分がいいのだ。

「……ちなみに、何を贈ったのか訊いてもいいかの?」

 タカミチの上機嫌さが気になった近右衛門は訊き難そうに訊ねる。
 まぁ、当然ながら演技であり、実際には楽勝とか思っているが。
 もちろん、そんな本音を悟らせないのが近右衛門のクオリティだ。
 そして、そんな本音を悟ろうとしないのがタカミチのクオリティだ。

「図書券ですよ」
「図書券……?」

 タカミチはドヤ顔で答えたが……近右衛門には予想外だったのか、近右衛門は ついつい鸚鵡返しをしてしまう。
 深慮遠謀に富んだ老獪な近右衛門とて人間であるため、そう言った反応をしてしまうのは当然かも知れない。
 だが、上機嫌のタカミチを相手に「説明を促すような反応」をしてしまうのは悪手と言わざるを得ないだろう。

 何故なら……

「いえね、那岐君に何が欲しいか訊いたら『先生は多忙ですから図書券で充分ですよ』と答えてくれましたね。
 もちろん、いくら多忙の身なボクとは言え、那岐君のプレゼントを選ぶ時間くらいは取れたんですけどね?
 でも、そこまで気を遣われちゃ図書券をプレゼントするしかないじゃないですか? まぁ、ボクとしては(以下略)」

 何故なら「那岐君に気遣ってもらった」のが嬉しくて堪らないタカミチは、その自慢をしたくて仕方なかったからである。

 まぁ、本当に多忙なら「こんなところで駄弁っている場合ではないだろ、常考」とかツッコみたいが、
 最近 冷たく感じていた『那岐君』が気遣ってくれた とか勘違いしているタカミチには軽くスルーされるだろう。
 ちなみに、タカミチはネギクラスの担任であること とネギの隠れ指導員としての立場のため それなりに多忙だが、
 その多忙を理由に原作の様な「出張地獄」を回避しているため、実際は そこまで多忙ではない気がしないでもない。

「…………それはよかったのぅ」

 タカミチの自慢話は「だから3万円分くらいプレゼントしちゃいましたよ」と言う言葉で締め括られたのだが、
 それまでに延々と同じような内容が語られたため「やっと終わったわい」と言うのが近右衛門び本音である。
 また、「きっと、那岐君はタカミチ君のセンスに期待してなかったんじゃないかのぅ」と言う本音もあったが、
 それらを言っても余り意味がないことがわかっていたので、近右衛門は相槌を打つだけに止め、コメントは控えたらしい。

「ところで、学園長は何を贈ったんですか? と言うか、贈りましたよね?」
「ああ、大丈夫じゃ。ちゃんと『麻帆良チケット』を贈ったから、安心せい」

 一頻り話して満足したのか、タカミチは近右衛門に話を向けて来る。後半に少し力が籠ってしまったのは御愛嬌だろう。
 ちなみに、近右衛門が贈った と言う『麻帆良チケット』とは、1日分の欠席(遅刻早退は1/3欠席扱い)を無効化できる代物で、
 学生ならば咽から手を出る程に欲しがるものである(ちなみに『まほらば』のオークションでは1万円前後で取引されている)。

「ほほぅ……もしや、それは那岐君の要望ですか?」

 近右衛門が贈ったプレゼントの価値を知っているタカミチは、近右衛門が随分と奮発したことを理解している。
 そのため、表面上は にこやかに問い掛けてはいるが、その内心は穏やかではない。むしろ、荒れている。
 具体的には「まさか学園長も那岐君から気遣われたのでは?」とか勘違いの優越感が脅かされることを危惧している。

「まぁ、そうと言えば そうなのじゃが……今回の件での報酬も含まれておるんじゃよ」

 そんな事情を見抜けない近右衛門ではない。近右衛門は やんわりとタカミチの勘違いを否定する。
 もちろん、そもそもの勘違い(那岐君に気遣われた)の方は否定せず そのまま放置しているが。
 何故なら、面白いから――ではなく、言わぬが花だからだ。幸せな勘違いは正す必要はないのである。

(しかし、那岐君を勘違いし過ぎなのは問題かも知れんのぅ。あの子は、ちょっとばかり腹黒過ぎじゃ)

 ナギの言動を好意的に解釈するのは目を瞑るが、余りにも好意的に解釈し過ぎる場合は苦言を呈さざるを得ない。
 何故なら、ナギが近右衛門にしたのは「麻帆良チケットの要望」などではなく「脅迫に近い強請」だったからだ。
 今は まだ可愛げがあり強請なので大した問題ではないが、将来的には とんでもないことになるのは簡単に想像が付く。

 近右衛門はナギとの『交渉』を思い出しながら苦笑し、「だからこそ楽しみなんじゃがな」と黒い笑みを混ぜる。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「学園長、一体どう言うことでしょうか?」

 時間は遡って、4月18日(金)の夕方(つまり、19話 Part.01の後)のことだ。
 突然 学園長室に訪ねて来たナギが開口一番に告げたセリフが上のものだった。
 ちなみに、ナギの表情は笑顔だが、どう見ても貼り付けたような笑顔だったらしい。

「ふむ? それは一体 何の事かの?」

 当然ながら、近右衛門はナギが憤っていることも その理由もわかっている。
 わかっているが、ナギと『会話』をするために敢えて惚けているのである。
 相手がわかっているからと言って話が順調に進む訳ではないことを教えるためだ。

 そして、そんな近右衛門の『思惑』が理解できるため、ナギは苛立ちながらも『会話』をするしかないのである。

「決まっているでしょう? オレへの伝達がキチンとなされていない件ですよ。オレの情報を流された件はともかくエヴァの件はヒドくないですか?」
「確かに那岐君には いろいろと伝えてないことがあるのぅ。じゃが、あの程度の情報を自力で得られんようでは『西』に利用されるだけじゃぞ?」
「仰りたいことは わかります。情報の扱いを学ばせたいのでしょう? ですが、ホームなのにアウェイ並なのは少し遣り過ぎではありませんか?」
「那岐君の言う通り、自陣と敵陣では事情が異なるのは確かじゃな。じゃが、そもそもの問題として、ここが自陣じゃと いつ決まったのかのぅ?」
「…………あ~~、確かに決まってませんでしたね。そう言う意味では、学園長先生は味方だ と勝手に判断していた こちらの落ち度になりますね」
「そうじゃろう? 人間は思い込んでしまうと自分でも思い込んでいることに気付かん生物じゃからのぅ。思い込まんように注意が必要じゃぞ?」
「仰る通りですね。信じる気持ちは尊いですが、妄信はいけませんよね。そして、疑うのは大切ですけど、疑心暗鬼に取り憑かれるのも危険ですよね」
「その通りじゃ。何事も『過ぎたるは猶 及ばざるが如し』じゃよ。中庸とまでいかんでも、何事も『程々』にバランスを保つのが肝要なんじゃよ」

 近右衛門が単にイヤガラセで連絡を怠ったのではないことくらい、ナギとて理解していた。

 敵が情報を開示してくれる訳がないため、『西』の上層部と渡り合うのに情報収集の練習をさせていたのだろう。
 当然、情報の扱いなど短期で身に付くものではないので、修学旅行のためではなく その先を見越してのことだが。
 まぁ、修学旅行前に「情報収集は大切なものだ」と教えるくらいのつもりはあっただろうが、本命は『将来』だ。
 遠くない将来、ナギは木乃香を娶って『西』のトップに立つことを期待されている。それ故の『愛の鞭』なのだ。

「……御忠告、痛み入ります。今後は『程々』に信じたり疑ったりすることにしますよ」

 ナギの情報収集能力は、関係者になったばかりであることを考えると及第点以上だが、敵は そんな考慮をしてくれない。
 だからこそ、近右衛門は敵の立場を演じてナギに教えたのだ。少しでも早く能力を高めなければ味方すらいなくなる と。
 それを理解したためナギは深々と頭を下げて礼を言う。礼を言葉にはしていないが、その態度で礼を言ったのだ。

「では、今回の修学旅行で『西』に良い様に踊らされないためにも、エヴァを加えた新しい護衛プランを話し合いたいのですが……よろしいですか?」

 ナギは確認の形を取ってはいるが、半ば強制であることは言うまでもなだろう。
 当然ながら、近右衛門にその申し出を断る理由は無い。むしろ、望むところだ。
 そのため、近右衛門は「うむ、別に構わんぞい」と鷹揚に頷いた……のだが、

「あっ、ですが、その前に『ちょっとした雑談』がしたいんですけど、いいですよね?」

 近右衛門は鷹揚に頷いて話を進めたかったのだが、言い出したナギの方から即座に水を差されてしまう。
 当然、近右衛門の内心は面白くはないが、情報収集の件でナギに多少の負い目を感じていたため頷くしかない。

「む? まぁ、『ちょっとした雑談』程度なら構わんが…… 一体、何の話かの?」
「恐らく御存知だとは思いますが……オレ、来週の月曜日が誕生日なんですよね?」
「ああ、確か そうじゃったのぅ。じゃが、それが一体どうしたと言うのかのぅ?」
「自分から言うのも厚かましいとは思いますが、オレ麻帆良チケットが欲しいんですよねぇ」
「…………じゃから、それが一体どうしたと言うかのぅ? 因果関係がサッパリじゃぞ?」
「平たく言うと、誕生日のプレゼントとして麻帆良チケットをいただきたいんですよね?」
「じゃから、君に麻帆良チケットを贈らねばならん理由がわからん と言っておるんじゃが?」
「つまり、学園長先生は昨日の餌云々の話(18話 Part.03)を木乃香に聞かせたい、と?」
「む? 言っている意味がよくわからんのじゃが……君は何を言っておるのかの?」
「実を言いますと、オレのケータイって録音機能があるタイプなんですよねぇ」
「ほほぉう? 当然ながら、データのバックアップはしてあるのじゃろう?」
「ええ、当然です。ちなみに、直ぐにでも木乃香に聞かせられるように手配済みですから」
「フォッフォッフォッフォッフォ……麻帆良チケットは10枚くらいでええかのぅ?」
「ハッハッハッハッハ……ケチ臭いことは言わずに100枚程 用意していただけませんか?」
「フォッフォッフォッフォッフォ。それは ちと欲張り過ぎなんじゃなかろうかのぅ?」
「何を仰ってるんですか? 度重なる仕打ちを これでチャラにする と言ってるんですよ?」
「……じゃが、そもそも『木乃香に聞かせても構わん』とワシが言ったら どうする気じゃ?」
「そうですねぇ……仮定の話ですが、しずな先生へのセクハラ行為の証拠を高畑先生に――」
「――よぉし!! 京都行きへの餞別、と言うことで ここはドーンと奮発してしまおうかのぅ!!」
「さすが学園長先生ですね!! オレにはできないことを平然とやってのけてくれますね!!」

 そこから始まった雑談は ほとんど脅迫でしかなかったが、近右衛門は「予想以上に腹黒いのう」とナギのの評価を上方修正したらしい。

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「そうですか……」

 そんな事情を露程も知らないタカミチは、安堵した空気を隠すことなく相槌を打つ。
 知らぬが仏とは言うが、無知は罪とも言う。この場合が どちらなのか は誰にもわからない。
 わかっているのは、既に賽は投げられたため流れは誰にも変えられないことだけだ。

 だからこそ、今は祈ろう。修学旅行の果てに勝利の女神がナギに微笑むことを……


 


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後書き


 ここまでお読みくださってありがとうございます、カゲロウです。
 以前から「改訂した方がいい」と言う意見が多数あったので、改訂してみました。


 今回は「修学旅行前の息抜きの筈が最終的にはシリアスになっていた」の巻でした。

 イントロダクションでも書きましたが……本来なら修学旅行に突入するべきだったかも知れませんが、
 原作にも「明日菜の誕生日ネタ」がありましたし、12話の亜子のセリフで伏線を張ってしまったので、
 今回は敢えて主人公の誕生日の話にしてみました(若干、失敗した感はありますが気にしたら負けです)。

 ところで、話は変わりますが、弐集院先生の娘さんは原作にも存在してます。単行本の16巻でチョロっと出てます。

 あと、麻帆良チケットの元ネタは『ドラゴンチケット』です。わからない方は軽くスルーしてください。
 ちなみに、わかる方は「つよ○すネタ多いな」とお思いになるかも知れませんが、スルーしてください。
 余り認識していませんでしたが、どうやらボクは つ○きす が好きみたいです。非常に どうでもいいですが。


 ……では、また次回でお会いしましょう。
 感想・ご意見・誤字脱字等のご指摘、お待ちしております。


 


                                                  初出:2009/12/31(以後 修正・改訂)


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