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No.10422の一覧
[0] 【完結】せせなぎっ!! (ネギま・憑依・性別反転)【エピローグ追加】[カゲロウ](2013/04/30 20:59)
[1] 第01話:神蔵堂ナギの日常【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:53)
[2] 第02話:なさけないオレと嘆きの出逢い【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:54)
[3] 第03話:ある意味では血のバレンタイン【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:54)
[4] 第04話:図書館島潜課(としょかんじませんか)?【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:54)
[5] 第05話:バカレンジャーと秘密の合宿【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:55)
[6] 第06話:アルジャーノンで花束を【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:55)
[7] 第07話:スウィートなホワイトデー【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:55)
[8] 第08話:ある晴れた日の出来事【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:56)
[9] 第09話:麻帆良学園を回ってみた【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:56)
[10] 第10話:木乃香のお見合い と あやかの思い出【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:56)
[11] 第11話:月下の狂宴(カルネヴァーレ)【改訂版】[カゲロウ](2012/06/10 20:50)
[12] 第12話:オレの記憶を消さないで【改訂版】[カゲロウ](2012/06/10 20:50)
[13] 第13話:予想外の仮契約(パクティオー)【改訂版】[カゲロウ](2012/06/10 20:51)
[14] 第14話:ちょっと本気になってみた【改訂版】[カゲロウ](2012/08/26 21:49)
[15] 第15話:ロリコンとバンパイア【改訂版】[カゲロウ](2012/08/26 21:50)
[16] 第16話:人の夢とは儚いものだと思う【改訂版】[カゲロウ](2012/09/17 22:51)
[17] 第17話:かなり本気になってみた【改訂版】[カゲロウ](2012/10/28 20:05)
[18] 第18話:オレ達の行方、ナミダの青空【改訂版】[カゲロウ](2012/09/30 20:10)
[19] 第19話:備えあれば憂い無し【改訂版】[カゲロウ](2012/09/30 20:11)
[20] 第20話:神蔵堂ナギの誕生日【改訂版】[カゲロウ](2012/09/30 20:11)
[21] 第21話:修学旅行、始めました【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:08)
[22] 第22話:修学旅行を楽しんでみた【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:08)
[23] 第23話:お約束の展開【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:57)
[24] 第24話:束の間の戯れ【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:09)
[25] 第25話:予定調和と想定外の出来事【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:57)
[26] 第26話:クロス・ファイト【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:10)
[27] 第27話:関西呪術協会へようこそ【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:58)
[28] 外伝その1:ダミーの逆襲【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:59)
[29] 第28話:逃れられぬ運命【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:59)
[30] 第29話:決着の果て【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 21:00)
[31] 第30話:家に帰るまでが修学旅行【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 21:01)
[32] 第31話:なけないキミと誰がための決意【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:10)
[33] 第32話:それぞれの進むべき道【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:10)
[34] 第33話:変わり行く日常【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:11)
[35] 第34話:招かざる客人の持て成し方【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:12)
[36] 第35話:目指すべき道は【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:12)
[37] 第36話:失われた時を求めて【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:54)
[38] 外伝その2:ハヤテのために!!【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:55)
[39] 第37話:恐らくはこれを日常と呼ぶのだろう【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 22:02)
[40] 第38話:ドキドキ☆デート【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:58)
[41] 第39話:麻帆良祭を回ってみた(前編)【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:57)
[42] 第40話:麻帆良祭を回ってみた(後編)【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:57)
[43] 第41話:夏休み、始まってます【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:04)
[44] 第42話:ウェールズにて【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:05)
[45] 第43話:始まりの地、オスティア【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:05)
[46] 第44話:本番前の下準備は大切だと思う【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:06)
[47] 第45話:ラスト・リゾート【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:06)
[48] 第46話:アセナ・ウェスペル・テオタナトス・エンテオフュシア【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:20)
[49] 第47話:一時の休息【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:21)
[50] 第48話:メガロメセンブリアは燃えているか?【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:21)
[51] 外伝その3:魔法少女ネギま!? 【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:22)
[52] 第49話:研究学園都市 麻帆良【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:22)
[53] 第50話:風は未来に吹く【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:23)
[54] エピローグ:終わりよければ すべてよし[カゲロウ](2013/05/05 23:22)
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[10422] 第26話:クロス・ファイト【改訂版】
Name: カゲロウ◆73a2db64 ID:552b4601 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/03/16 22:10
第26話:クロス・ファイト



Part.00:イントロダクション


 引き続き、4月24日(木)、修学旅行三日目。

 原作と違って、小太郎(と思われる人物)はネギではない人物(ナギ)をターゲットにし、
 シネマ村ではなく本山へ至る千本鳥居の階段にて、刹那と月詠の死闘が始まろうとしていた。

 ……さて、結果は どう変わるのだろうか?



************************************************************



Part.01:魔法は使えないけど、できれば欲しいな


(……ふむ。どうやら、『向こう』は『向こう』で大変そうだね)

 ナギの想定通り、白ゴス剣士――月詠は刹那の方に向かったようだ。恐らくは「女のコと斬り合いたい」と言う性質は原作のままなのだろう。
 御蔭で刹那をナギ達から遠ざけて配置したこと や鶴子への『ちょっとした依頼』が無駄にならなかったのは、不幸中の幸いかも知れない。
 まぁ、ベストは襲撃そのものが起きないことだったのだが、小太郎(?)と共にナギを襲撃しなかっただけマシだ。いや、それだけで充分だ。

 ところで、何故にナギが刹那達の様子を把握しているのか と言うと、ちょっとした説明が必要となる。

 種としては単純なもので、ネギに作らせて置いた「『遠見』ができる鏡型の魔法具(名称は そのまま『遠見の鏡』)」を使っているだけだ。
 また、小太郎(?)と対峙している筈のナギが刹那達を見る余裕があるのは、用を足したい と言って一時的に対峙状態から脱せたからだ。
 当然ながら、小太郎(?)はナギの動向をチェックしてるので、さすがに逃げ出すことはできない。いくら何でも そこまで甘くはない。
 だが、こうして背を向けられている御蔭で(用を足している振りをして)刹那達の様子が見られたので、それだけでも充分に有り難い。

(もちろん、言うまでもないだろうけど……動向チェックの前に『念話』でネギには連絡は取ったよ?)

 だが、ネギからは「すみません。タカミチが様子を見たいそうなので、しばらくは助けに行けません」と言う切ない返事しかもらえなかった。
 ナギとしては「でも、タカミチを振り切って直ぐに駆け付けます!!」とか言う頼もしい言葉を期待していたので、少しショックである。
 まぁ、恐らくは「どうしても必要なことなんだ」とか「危険になったら直ぐに助けに行くから」とか説得されたのだろうから、仕方がない。

(って言うか、タカミチさんや? アンタはオレの保護者なんだから、もっとオレを保護してくれてもいんじゃないかい?)

 何らかの思惑があるのはわかっているが、それでも被保護者としては自身の安全を第一として行動して欲しいものである。
 いや、ここで少々の危険を冒すことで将来的な安全に繋がるのかも知れないが、何の説明もないのは どうかと思うのだ。
 恐らくは近右衛門が画策していることだろうから口止めされているのだとしても、ヒントくらいはくれてもいい気がする。

(あっ、どうでもいいけど……『遠見の鏡』について「ゼロ魔かよ?」ってツッコミはいらないよ?)

 何故なら、これはパクリではなくてインスパイアされただけだからだ。鏡型の『遠見』ができる魔法具を全般的に そう言うのだから仕方がない。
 まぁ、ネギが作ったものなので、ネギに命名させてもよかったのだが……案が『見えるんです』だったので、一般的な名称のままで妥協して置いたのだ。
 ちなみに、ネギには「遠方の様子がわかるようになる魔法具を作ってくれないか」と言っただけで、ナギは形状までは指定していないので悪しからず。
 また、ナギの『遠見の鏡』は手鏡サイズなので、ゼロ魔のように壁掛けサイズではないし、携帯に便利なのだ。それに、魔法が使えなくても使用できるし。

(――ああ、そうさ!! とっくに気付いているだろうけど、オレは魔法が使えないのさ!!)

 実は、魔法に関わらざるを得ない状況になった時(つまり、魔法に関わることを決意した16話辺り)、
 ナギは「ヒィッツの様に『指パッチンでカマイタチ』を使いたい!!」と言う予てからの密かな野望を叶えるため、
 コッソリとエヴァに頼み込んで(土下座までした)、どうにか魔法を教えてもらおうとしていたのである。

 だが、エヴァの返答は「貴様は天才的に魔法との相性が悪い」と言う にべもないもので、ナギは魔法を断念せざるを得なかったのだ。

(もちろん、野望が断たれたオレはショックだった。それくらいの御褒美はあってもいいんじゃないか と期待していただけにショックだった。
 まぁ、だから魔法具をいろいろ作ってもらったんだけどさ。魔法具は魔法が使えなくても使えるし、魔法と同じ効果が得られる物もあるしね。
 そう言う意味じゃ、ネギのアーティファクトは実に有り難かったなぁ。ローコストで魔法具が手に入る御蔭で、コストを気にせず使えるからね)

「……なぁ、兄ちゃん? そろそろ始めてええか?」

 小太郎(まだ確定した訳ではないが、いい加減に面倒なので もう確定でいいだろう)がナギに、遠慮がちに話し掛けて来る。
 しかし、ナギが用を足しているにしては長過ぎる時間 後ろを向き続けているのに その反応が話し掛けるだけとは、なんと紳士なのだろう。
 普通だったら不審な行動を取る敵対者など問答無用で攻撃するもの。それなのに小太郎は話し掛けるだけなのだから、実に紳士だ。
 ナギの意思を軽く無視してバトろうとしたことは大きな減点だったが、戦いに対して正々堂々としていることは好感が持てる部分だ。

「いや、『こっち』が面白そうなことになってるんで、ちょっと待ってくれないかな?」

 ナギは小太郎に向き直りつつ、手にしていた『遠見の鏡』を(『ポケット』から取り出した)『三次元映写機』に接続する。
 この『三次元映写機』は(これまた そのままな名称だが)その名称の通り、二次元の映像を三次元化する機能を持っており、
 ナギの『遠見の鏡』と接続することで『遠見の鏡』の映像(つまり、刹那達の様子)を立体として周囲に展開できるのである。

 余談となるが、この『三次元映写機』、クルト(オスティアの総督)が29巻辺りで使っていた舞台装置と同じ系統の品である。

 本来は かなり価が張る代物(エヴァ曰く「庭付きの一戸建てが買える程」)なのだが、ネギが作ったのでコストは ほぼタダだ。
 コストのことを考えると、本当にネギのアーティファクトはチートである。魔法具屋を開けば、儲かることは確実だろう。
 最初は「まぁ、使えるかな?」程度のものだったが、ネギが『開発力』と言うチートを開花させたので、現在では充分にチートだ。

「――ッ!! 兄ちゃん、魔法が使えたんやな?」

 小太郎が警戒を強めるが、ナギとしては「いや、魔法じゃないから。メッチャ目の前で魔法具を使ったじゃん」と言う気分である。
 恐らく、あからさまに魔法具を使ったことで、逆に「魔法具を使ったように見せ掛けて魔法を使った」とか思われたのだろう。
 また、先程も述べた様に こう言った魔法具は高額なものが多いので「貧乏臭いナギは魔法を使った方が説得力がある」と言う側面もある。

(って言うか、お前「騙されるとこだったぜ」って感じでニヤって笑ってるけど、自ら騙される方向に進んでるからな?)

 勝手に誤解してくれたのは『嬉しい誤算』だが、誤解の中身が嬉しくないので ここは訂正して置くべきだろう。
 と言うか、どう考えても「魔法を使える」と思わせるメリットよりも魔法を警戒されるデメリットの方が強い。
 ナギとしては、交渉の際は過大評価されることはプラスとなるが、実戦の際は過小評価された方がプラスになるのだ。

「いや、これは『魔法によるもの』ではなく『魔法具によるもの』さ。って言うか、オレは魔法が使えない体質らしいぜ?」

 体質云々はエヴァの言なので、正しいのだろう。何でも、魔法は精霊を使役する技術なのだが、ナギは その精霊に嫌われている らしい。
 しかも、その割には、魔力は「容量だけなら小娘以上のものを秘めているな」とか言われたので、宝の持ち腐れも いいところなのである。
 ナギが「魔法が使えないのに魔力は豊富とか、オレは どんだけ無駄なところで無駄な才能を発揮してんだろ?」とか嘆いたのは言うまでもない。
 気に病んでいても魔法を使えないことは変わらないので今となっては開き直っているが、できるだけ魔法に関しては触れて欲しくないようだ。

「……なるほど。『魔法』は使えへんけど、『魔法具』は使いこなすっちゅーことやな?」

 しかし、小太郎は どうしてもナギを過大評価したいようで、ニヤリと笑いながらナギへの警戒レベルを更に引き上げる。
 恐らくはナギを「魔法具使い(某ゼロ魔で言うところのミョズニトニルン的な存在)」と勘違いしてしまったのだろう。
 ナギは魔法が使えないから魔法具を使っているだけなので、別に魔法具を使いこなしている訳ではないのだが……
 こうなってしまっては いくら否定したところで小太郎は「別に謙遜はええで」とか言って誤解し続けるだけだろう。

「まぁ、それはともかくとして……ちょっと観戦しないか? けっこう見物だぞ?」

 誤解を解くことを あきらめたナギは、話題と意識を『映像』の方に移す。もちろん、助けが来てくれるまでの時間稼ぎだ。
 だが、実際に見物なのは本当だ。ナギには剣のことなど よくわからないが、それでも高度な攻防をしていることくらいはわかる。
 刹那は無骨な野太刀を巧みに扱って洗練された動きで舞い、月詠は太刀と短刀の二刀を流れるように振るって舞う。
 まさに『武の剣舞』と言うべき華麗な攻防だ。戦いであることを忘れてしまう程――思わず見入ってしまう程のレベルだ。

「……まぁ、ええやろ。確かに なかなか見られるレベルやないしな」

 どうやら、小太郎から見てもレベルが高いのだろう。小太郎は逡巡した後、興味深そうに観戦モードに移行する。
 素人であるナギにとっては高度でも、玄人である小太郎にとっては低度 と言う可能性もあったので、これで一安心だ。
 しかし、それはそれで一つの疑問が生じる。それは、そのレベルの攻防が見えている(素人である筈の)ナギの目だ。

 まぁ、そう言った疑問を感じても、ナギは「やっぱり、那岐のボディはハイスペックだなぁ」と納得して問題の棚上げをするのだが。



************************************************************



Part.02:舞い踊る剣


「え~~い♪」

 月詠が気の抜ける掛け声とともに だが恐ろしい速度で右手に握る太刀を刹那に振るう。
 それを刹那は野太刀で難なく防ぐが、月詠は防がれることを予想していたのだろう。
 左手に握る短刀で間髪入れずに斬り掛かる。初撃を防いだばかりの刹那にはキツいタイミングだ。

 だが、刹那も相手の特性――二刀による手数の多さを把握しているのだろう。

 刹那は二撃目を防ぐのではなく、太刀を受け止めていた野太刀に力を込めて押しやることを選んだ。
 そう、月詠の体勢を崩したのだ。まぁ、実際には僅かにグラつかせた程度でしかないが。
 だが それでも、短刀のリーチは短いため僅かなズレでも充分だった。つまり、刹那に刃は届かなかった。

 言い換えるならば「攻撃を躱した」のではなく「攻撃を届かなくした」のだ。

 二刀は手数が多くなる反面、一撃一撃が軽くなるのは必然だ。隔絶した膂力差がない限り、一刀の一撃の方が重いに決まっている。
 刹那は体格に優れている訳ではないが、月詠も体格に優れている訳ではないので、刹那の一撃の方が重いのは自明の理だろう。
 まぁ、神鳴流剣士には『気』による補正があるので体格など余り関係無いかも知れないが、『気』を含めても大した膂力差がなかったのだろう。
 その意味では、相手の「手数の多さ」に対抗するために「一撃の重さ」を選んだ刹那の判断は正しかった と言えるだろう。
 同じ流派の剣士とは言え、戦闘スタイルは違う。ならば、同じ土俵で勝負する必要などない。自分に有利な土俵で戦うのが戦の常道だ。

「ふふふふ……ええ判断ですなー♪」

 月詠は攻撃が防がれたのに、実に楽しそうに笑う。いや、正確には哂っている と言うべきか。
 その目は喜びに細まっているように見えるが、それと同時に、悦びに歪んでいるようにも見える。
 頬を上気させて刃を舐め上げる その姿は、僅かな艶っぽさと それ以上の薄ら寒さを感じさせる。
 きっと、戦闘による興奮が性的な興奮へと掏り替わりながらも両者が混在しているのだろう。
 大方「今のを防ぐなんて、なかなかやりますなぁ」とか言う常人離れした思考で興奮しているに違いない。

「ちょっと、本気になってしまいそうですわー♪」

 そして、眼を黒化させる月詠。そう、白目部分が黒に染まり、黒目部分が赤黒く輝いたのだ。
 漫画やアニメなどでは よく使われる表現だが……実際に見ると気持ちが悪いし、何よりも恐怖を感じさせる。
 同じ人間を見ている筈なのに、まったく違う生物を見ているようで、その眼に見られただけで気が狂いそうだ。
 そんな『モノ』と直に対峙している刹那が感じているプレッシャーは如何程のものなのだろうか?
 刹那の額を伝う冷や汗は見間違えではないだろう。つまり、相当なプレッシャーを感じているに違いない。

「では、征きますえ?」

 そう言葉にした直後、月詠の姿が消える。恐らくは『入り』が完璧な『瞬動』なのだろう。
 月詠は、一瞬後には刹那の間近に迫っており、その二つの凶刃が刹那を襲っていた。
 そんな急襲に対し(見えていたのか、勘だったのかは定かではないが)刹那は辛くも防ぐ。

「ええですなー、センパイ♪ 実にええですわー♪」

 防がれたのにもかかわらず、より嬉しそうに笑みを浮かべる月詠。頬は更に桜色に染まり、唾液の分泌量も増えている。
 だが、眼が黒化してるので そこに艶っぽさはまったく感じられない。むしろ、身の毛が弥立つような悪寒しか感じられない。
 状況が状況でなければ――助けを待つための時間稼ぎが目的でなければ、ナギは躊躇することなく『映像』を切っていただろう。
 つまり、『画面越し』ですら見ていたくないくらい月詠は禍々しいのだ(もちろん、状況的に眼を瞑れる状況でもない)。

(……これは、『計画』を変えた方がいいんじゃないか?)

 ナギは現実を直視しないために そんなことを考えながら、ぼんやりとした意識で戦闘を眺める。
 刹那は雨霰のように降り注ぐ剣撃を、ある時は弾き、ある時は避け、ある時は受け止めていた。
 きっと、先程のように力で状況を打破する余裕などないのだろう。防御に徹することで現状を維持していた。

「にとーれんげき、ざんがんけーん」

 そんなジリ貧の状況に勝機を見たのか、月詠は大技を出して『決め』に掛かる。
 刹那は片方を受け止めて、片方を避けようとするが……残念ながら、避け切れなかったようだ。
 何と、刹那の髪が――刹那の特長とも言えるサイドポニテが 少しばかり斬れてしまったのだ。

(クッ!! あの白ゴスめ!! よくも、せっちゃんを――って、落ち着け、オレ!!)

 一瞬だけナギは激昂し掛けるが、慌てて冷静さを取り戻そうと頭を振る。落ち着いて考えてみれば、刹那の受けた被害は大したことではない。
 髪が切れただけだし、その髪にしても少し不恰好になっただけで髪型そのものは維持できている。せいぜいサイドポニテの量が減ったぐらいだ。
 まぁ、女性にとって髪は大切なものだし、ナギとしても刹那のサイドポニテは「弄りやすい」と気に入っていたので、それなりに大したことだが。

(でも、今のが顔に当たっていたらと思うと、居ても立っても居られないなぁ)

 下手に横槍を入れようものなら逆に刹那の足を引っ張ってしまうことになることなどナギとてわかっている。
 それに、致命傷となるような攻撃は鶴子が事前に防いでくれるだろうとは思っている。そう、信じている。
 だが、それでも「見ていられない」「見るだけでは嫌だ」「どうにかして助けたい」と思ってしまうのだ。

(って言うか、そもそもの問題として、こうして実際に戦っている姿を見ていると女のコが戦うこと自体が間違っているとしか思えないなぁ)

 古い考え方かも知れない とはナギも自覚している。だが、それでも「戦いは男の仕事だ」と痛感している自分を否定できない。
 いや、正確には「女のコが傷付け合うのを見ているだけしかできない現状」を許せない、と言うべきかも知れない。
 議論などの精神的な闘争なら まだしも、物理的な闘争(しかも命が懸かっている)を許容することなどナギにはできないのだ。

(もちろん、せっちゃん は せっちゃん の意思で戦っているのはわかっているよ? でも、見ていられないんだ)

 仮に、刹那に「女のコなんだから戦わないで」などと言おうものなら、
 これまでの刹那の覚悟や想いを踏みにじることになる とはわかっている。
 わかっているが、それでも刹那が傷付くのを黙って見ていられないのだ。

(せっちゃんが傷付くのを黙って見ているくらいなら、オレが傷付いた方が万倍マシだ……)

 普段のナギならば「せっちゃん の意思なんだから干渉すべきではないよね」と冷淡に傍観者を気取ることだろう。
 だが、今のナギは違った。まるで何かに取り憑かれたかのように、ナギの心は刹那のことで占められていた。
 恐らくは、那岐の記憶が影響しているのだろう。特に、昨夜には刹那の悲壮な決意を見たのだから影響は甚大な筈だ。
 多少 釈然としないものは残るが、とにかく、今のナギには これ以上の時間稼ぎ(観戦)など無理なのは明白だ。

 それ故に、ナギは時間稼ぎをやめる覚悟を決めたのだった。



************************************************************



Part.03:素晴らしき神蔵堂


「……悪い。やっぱり、観戦はやめよう」

 ナギは そう告げると、『遠見の鏡』と『三次元映写機』を回収し、ポケット内の『影』を経由させて『蔵』に収納する。
 もちろん、こんな芸当ができるのは、エヴァにもらった『ケルベロス・チェーン』にて『影の転移魔法』を使用したからだ。
 ポケットの中と言う『影』と『蔵(近場に借りた真っ暗なトランクルーム)』を繋いでいるだけ と言う単純なトリックだが、
 これはポケットに仕舞った振りをして物を出し入れできるので、非常に便利なのだ(まぁ、ポケットサイズの物に限られるが)。
 また、緊急時には足元の『影』から『蔵』に逃げ込む と言う選択肢もあるので、ナギは『最後の手段』も有していることになる。

「どうしてや? 今からがええとこやんか?」

 自分から観戦を提案したのにもかかわらず急に観戦の中止を訴えたナギを責めるように小太郎が不満気に言う。
 ナギだって気持ちは一緒だ。可能ならば もう少し見ていたい。だが、もう見ていられる気分ではないのだ。

「すまないね、女のコが戦うのを見るのが忍びなくなったんだよ」

 ナギは下手な言い訳などせず、ストレートに理由を明かす。ナギらしくないが、誤魔化す気にならなかったのだ。
 だが、正々堂々としている小太郎ならば納得してくれるだろう。むしろ、誤魔化すよりも説得が容易い気さえする。
 とは言え、そもそもナギに小太郎を納得させる義務などないので、小太郎が納得しなくても実際は構わないのだが。

「ん……まぁ、そうやな。よくよく考えれば、その通りやな」

 まぁ、納得してもらえるに越したことはない。御蔭で妙な禍根を残さずに戦闘に移れるのだから。
 ナギは戦士ではないが、それでも 戦うからには気持ちよく戦いたいし、そのための努力はするのだ。

「さんきゅ。お前、けっこうイイヤツだな。ちょっと見直したぜ?」
「……褒めても何も出えへんで? もちろん、見逃すのも無しやで?」
「ああ、わかっているさ。ただ単に言って置きたかっただけだよ」

 もちろん、ナギは煽てて見逃してもらおう などと考えていない。そこまで往生際が悪くない。

 ただ、小太郎が予想以上に御人好しだから、小太郎の要望に応えよう と思うだけだ。
 つまり、ネギを召喚して戦わせるのではなく、ナギが直接 小太郎と戦うことにしたのだ。
 一応、ナギも直接 戦えない訳ではない と言うことだ(まぁ、伏せて置きたい手段だったが)。

 それ故に、ナギは『ポケット』から二つの腕輪を取り出し、左右の腕に それぞれを嵌める。

 それらは「こんなこともあろうか」とネギに作らせて置いた『ナギ専用の護身用魔法具』である(19話Part.06参照)。
 その一対の腕輪の名は『ストーム・ブリンガー』。某エルリック氏の魔剣と同じ名前なのは、エヴァの趣味である。
 ちなみに、命名の経緯は「私に師事したからこそ作れたのだから、私が名付けてもよかろう?」とか言うものだった。
 まぁ、ネギのネーミングセンスよりはマシな気がするので(厨二臭いとは思うが)ナギは不承不承 受け入れた らしい。

(って言うか、大事なのは効果だよ。なんと、これは『指パッチンでカマイタチ』が行える素敵アイテムなのさ!!)

 正確には、所有者(ナギ)の特定行為(この場合は指パッチン)を『発動キー』として『風刃』を発動する ようだ。
 また、強度は低いが魔法障壁(『風楯』)も常時展開しているので、小太郎の攻撃を喰らっても致命傷で済んでくれるだろう。
 ちなみに、『風刃』と言うのは「風の刃を射出する風系の魔法」であり、某ゼロ魔の『エア・カッター』のような魔法だ。
 そう、「魔法がダメなら魔法具を使えばいいじゃないか!!」とか言う発想の転換で、ネギに作ってもらったのである。

(つまり、これでオレはヒィッツカラルド様に一歩近付けた と言う訳さ。もう、『素晴らしき』の二つ名を名乗ってもいいくらいに)

 テンションが妙なことになったナギは「今後は『素晴らしき神蔵堂』とか名乗ろうかな?」とか思ったとか思わなかったとか。
 と言うか、神蔵堂と言う苗字を好んではいないのに「ヒィッツ様と『カ』と『ラ』と『ド』が被ってるから むしろOK」とか言う始末だ。
 挙句には「もうヒゲグラになんか負けないもんね。だって、ヤツは『ヒ』と『ラ』しか共通点がないもん」とか口走るレベルだし。

「ってことで、『素晴らしき神蔵堂』、征くぜ?」
「……なら、『狗神の小太郎』、受けて立つで?」

 戦闘の『準備』を整えたナギは構えると同時に宣戦布告をし、それに対し小太郎がニヤリと楽しそうに笑って応じる。
 ちなみに、ナギが名乗ったのはヒィッツへの憧憬のためなので、他意(小太郎の名前を誘導する等)はまったくなかった。
 まぁ、これで「暫定的に小太郎だった存在」が「正式に小太郎と判明した」のだから、これはこれでよかったのだが。

(いや、今は そんなことはどうでもいいな。今は目の前のことに集中しないと、ね)

 気を引き締め直したナギは、右手を小太郎に掲げ、中指を親指の付け根に打ち付けて「パチンッ!!」と言う小気味のいい音を生み出す。
 すると、掲げられた右手の先から『風刃』が射出され、小太郎の足元の鬼蜘蛛(?)を真っ二つにした。まさに『指パッチンでカマイタチ』だ。
 いや、正確にはカマイタチと言うよりは真空波と言うべきなのだが、ナギとしては『指パッチンでカマイタチ』の方が響きが好き らしい。

「……に、兄ちゃん、魔法が使えへんって言うてへんかったか?」

 小太郎の額から冷や汗がタラリと垂れる。恐らく、予想以上の攻撃力に「直撃していたら……」とか戦慄しているのだろう。
 喩えるならば、某クリリソの格上キラー技である『気円斬』をナメた菜っ葉みたいな気分であろう(非常に失礼な喩えだが)。
 と言うか、冷蔵庫戦での不意打ちの時に乱射して置けば、尻尾だけでなく胴体とか首とかも斬れて倒せたのではないだろうか?
 まぁ、あの時点で冷蔵庫様を倒しちゃうと「今までのスーパー野菜人への前振りは何だったんだ?」と言う話になってしまうが。
 いや、関係ないことは わかっているのだが……どうしても龍球世代なナギは ついつい龍球についてアツくなってしまうのだ。

(いや、そうじゃないな。本題に戻ると、そもそも最初から当てる気はないから小太郎の取り越し苦労でしかないんだよねぇ)

 ナギの目的はデモンステレーション――こちらの攻撃は当たると危険なので避けろよ と言うアピールでしかない。
 何故なら、ナギに小太郎を斬るつもりはないからだ。殴る程度はできるだろうが、さすがに子供を斬るのは躊躇われるのだ。
 故に、ナギには最初から当てる気はなかったし、これからも当てる気はない。そう、あくまでも本命の囮に使うつもりなのだ。

「魔法は使えないって さっきも言ったろ? これも『魔法具によるもの』さ」

 一定の効果しか望めない とは言え、魔法具は非常に便利だ。魔法の練習しなくても魔法と同じことができてしまうのだから。
 高い効果(一流レベル)を得るには魔法を使うしかないが、そうでもない限り簡単に使える魔法具を使う方が効率的だろう。
 まぁ、その分 魔法具は高く付く(基本 消耗品)ので、費用対効果を考えると経済的に余裕がなければ破産し兼ねない訳だが。
 そう言う意味では、ローコストで魔法具を作れてしまうネギは実にチートなのだろう。むしろ、チート過ぎたかも知れない。

「……まぁ、どっちでもええわ。要は『戦える』っちゅーことやな?」

(ふぅ、やれやれ。困ったヤツだぜ。オレはカマイタチが撃てるだけだよ? ……その程度で『戦える』訳がないじゃないか?
 そりゃ確かに、カマイタチの威力は凶悪だけどさ、所詮 攻撃など「当たらなければどうということはない!!」訳だからね。
 この段階の小太郎が どれだけ強いのか は不明だけど、オレの手の向きから射線を読むくらいの芸当は簡単にできるよね?
 まぁ、フェイントを混ぜたり読まれるよりも早く撃てたりできれば当てられるんだろうけど、残念ながらオレにそんなスキルないし。
 つまり、現段階のオレに勝ち目は無い と言うことだね、うん。某スパロボの『必中』な精神コマンドが欲しいくらいだよ)

 だがしかし、勝ち目がないからと言って『素晴らしき神蔵堂』を名乗った手前、戦わない訳にはいかない。それがナギの矜持なのだ。

 仮に戦わずして逃げようものなら、ナギは二度と『素晴らしき』の二つ名を名乗ることはできないだろう。
 それは二つ名を拝借したヒィッツへの敬愛によるものなので、誰が許したとしてもナギ自身が許せないのだ。
 ちなみに、小物っぽいところや外道なところは むしろヒィッツに似ている気がするので、治す気はないらしい。

 言わば、ナギはナギのまま『ナギの遣り方』で小太郎と戦おう と考えているのである。



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Part.04:決着と言うよりも結局


  パチンッ!!  パチンッ!!  パチンッ!!

 ヒィッツのように指パッチンをしまくって縦横無尽にカマイタチを乱れ射つナギ。言わば、カマイタチの弾幕だ。
 思わず「うむ、実に素晴らしい。鳥居とか石畳とか、何でもかんでも真っ二つだぜ」とか軽くハイになったくらいだ。
 むしろ「これなら某レッドマスク様のクナイも切れそうで、死亡フラグを回避できそうだ」とか調子に乗るレベルだ。

(いや、まぁ、そんなことはオレの思い込みでしかないんだってことは自覚しているけどね?)

 言うまでも無いだろうが、小太郎はナギの攻撃など危なげなく避けている。
 まぁ、衣服はところどころ切れているが、身体には まったく当たっていない。
 しかも、避けるだけでなく、段々と距離を詰めているのだから脱帽するしかない。

「もろたでっ!!」

 彼我の距離が7mくらいになったところで、小太郎の姿が一瞬だけ消えたかと思うと次の瞬間にはナギの目前に現れていた。
 恐らく、これが『瞬動』なのだろう。前以て知識がなければ「消えた……だと?」とか軽くテンパれるくらい唐突だ。
 当然ながら そんなことを冷静に分析している場合ではないのだが、世界がスローモーションになっているので仕方がない。

  バキィイ!!

 つまりは所謂『走馬灯』だったのだろうが、ナギが その事実を認識する前に小太郎の拳がナギの顔面に突き刺さっていたので どうしようもない。
 と言うか、今のナギは顔面の痛みで それどころではない。常時展開されている『風楯』で威力は緩和されている筈なのに、どうしようもなく痛い。
 思わず「障壁 薄いぞ!! 何やってんの!!」とか言いたくなる気分だ。むしろ、小太郎の「どうや? 障壁 抜いたったで?」的なドヤ顔がイラッと来る。
 まぁ、遠距離攻撃マンセーな相手にクリーンヒットを打てたのだから勝ち誇りたい気持ちもわからないでもないのだが、苛立たしさは抑えられない。

(……だけど、残念ながら、それは悪手と言うものだよ?)

 ナギはニヤリと不敵に笑う。何故なら、接近されるのは想定内の事態であり、想定内の事態にナギが対策を施していない訳がないからだ。
 つまり、ナギは「ナギの傍に接近すると発動するトラップ」を『ストーム・ブリンガー』を装着した時に『準備』して置いたのである。
 まぁ、トラップとは言っても、足元に『帰って来たばっくん』を自動発動モード(特定条件で自動起動する仕様)で置いておいただけだが。

(そもそも、戦い慣れている小太郎を相手にバカ正直に正面から『帰って来たばっくん』を投げても避けられるのは目に見えていたからね)

 もちろん、それはカマイタチを併用したとしても変わらないだろう。と言うか、小太郎が警戒している限りは避けられる筈だ。
 だからこそ、ナギは攻撃を態と喰らうことで攻撃後の僅かな隙を狙う と言う非常にリスクの高い方法を選択せざるを得なかったのだが。
 言わば「隙が無いのなら、隙を作り出せばいいじゃん」と言う某セクシーコマンドー的な発想である(微妙に違う気がしないでもないが)。

(ところで、カマイタチで攻撃したのは鬼蜘蛛を倒すためだったのもあるけど、小太郎に遠距離攻撃を意識させるのが主目的だったりするんだよねぇ)

 実はと言うと、小太郎に『狗神』を使った遠距離攻撃を使われていたらナギのトラップは意味をなさなかっただろう。
 だからこそ、ナギはカマイタチをデモンストレーションで見せることで小太郎に「接近すれば勝ち」と思い込ませたのだ。
 結果、接近して攻撃した後は勝った気になり、小太郎はドヤ顔をして警戒を解いてしまった。そう、ナギの狙い通りに。
 攻撃後も警戒していたり、攻撃したら離れるヒット・アンド・アウェイ戦法で来られてもアウトだったのにもかかわらず。

「くっ!! な、なんやコレ!!」

 小太郎は『帰って来たばっくん』から逃れようとジタバタ足掻く。その姿は、リードから逃れようとするワンちゃん そのものだ。
 少し可愛いらしいが、その行為は無駄でしかない。その拘束力は常人の力では抜け出せない仕様――って、あれ? 『常人』の力では?
 それは つまり、常人ではないならば抜け出せる と言うことで、もしかしたら『気』とか使える人間なら抜け出せるのではないだろうか?

「ま、まだや!! まだ終わらへんで!!」

 ナギの気のせいでないのならば、小太郎の筋肉が やたら膨らんでいる気がするのだが……やはり、これはナギの気のせいだろうか?
 と言うか、そうこうしているうちに服もビリビリと破けているし、髪の毛や体毛なども伸びてモッサモッサになっている気がする。
 もしかしなくても、これは小太郎の『奥の手』である『獣化』と言うものだろうか? つまり、このままでは拘束が解けるに違いない。

(ならば、しょうがいないな。ここは もう一つ『切札』を切るとするか……)

 覚悟を決めたナギは『ポケット』から『睡仙香』を取り出すと、蓋を開けて原液を手に取り それを小太郎の口周辺に浴びせる。
 実はと言うと、『睡仙香』は香りを嗅ぐだけで眠気を誘発するのだが、原液を直接摂取した場合でも睡眠導入効果があるのだ。
 いや、むしろ、香りを嗅ぐよりも原液を摂取した方が効果が著しく高いので、ある意味では こちらの方が本来の用途かも知れない。

  ドサッ

 そんなこんなで、あっさりと眠りに落ちる小太郎。さすがはエヴァをして「くれぐれも犯罪には使うなよ?」と言わしめた魔法具である。
 正直な話、これまでナギは『睡仙香』を一般人である班メンバーにしか使ったことが無かったので、威力がイマイチわからなかったらしい。
 そのため「狗族補正とかで効かなかったら どうしよう」とか不安だったのだが、蓋を開けて見ると問題なく効いたので一安心である。

(まぁ、それはともかくとして……心配しているだろうから、ネギ達に連絡しなきゃいけないね)

 ナギは休憩所へ戻るために小太郎を抱え上げる。手間だが、いろいろな意味で不味いので、このまま置いて行く と言う選択肢は取れない。
 どうでもいいが、何だか妙に柔らかい体をしている気はするが……やはり戦闘民族とは言っても まだ子供なのでムキムキではないのだろう。
 ちなみに、抱え上げた拍子にボロボロの衣服がめくれた結果、そこから見えてしまった小太郎のボディに違和感がある件は どうすべきだろう?

(って言うか、どうして胸が膨らんでいるんでしょうか? もしかして、オレの目の錯覚でしょうか?)

 だがしかし、確かに膨らんでいる。(紳士的な意味で)触って確かめたので、ナギの目の錯覚ではない。僅かだけど、ちゃんと膨らんでいる。
 まぁ、膨らんでいる とは言っても、大して膨らんではいないが。むしろ、平らに近い と言うべきなので、膨らんではいないかも知れない。
 思わず「どっちだよ?」とツッコミたくなるが、どうやら「あきらかに少年のソレではなく幼女のソレなんだよ」らしい。実に意味不明だ。

(もしかして、小太郎もTSしてて『犬耳幼女』にジョブチェンジしてたりする、とか?)

 まぁ、ネギのライバル(?)のフェイトがTSしているのだから、ネギのライバル(の筈)の小太郎もTSしていても不思議なことではないだろう。
 それに、男装なオレっ娘も有りだと思うので、そこまでおかしいことではない。むしろ、犬耳男装幼女と言うジャンルも追加されたと考えるべきだ。
 そんなジャンルが追加されても大勢に影響はないのだが、その筋の紳士には垂涎なことかも知れない。少なくとも、ナギは少し興奮したのだから。

「つまり、これで、ココネ・ネギ・エヴァ・フェイト・小太郎の5人の美幼女が揃った と言うことで、まさに美幼女戦隊だね、うん」

 大多数の方は「いや、美幼女戦隊って何だよ?」と お思いになるだろうが、深い意味はないのでスルーして置くべきだろう。
 多分、ナギ自身も意味など考えずに口走っただけだからだ。恐らくは、混乱の余りに妙なことを口走っただけだ。その筈だ。
 ま、まぁ、それはともかくとして……そんな風に混乱しながらナギは半脱ぎ状態の犬耳男装幼女なオレっ娘を抱えていたのだが……

「な、何をしちゃってるんですかぁああ!!」

 何故か、そんなネギの絶叫と共に訪れた「ドガァアア!!」と表現すべき後頭部への衝撃によってナギの意識は途絶えた。
 ちなみに、ナギは後に この時の感想を「あれ? せっかく頑張ったのに、こんな終わり方なの?」と涙ながらに語ったらしい。
 ネギ(乙女)としては当然の反応なのかも知れないが、ナギとしては余りにも努力が報われないので 泣いてもいいと思う。

 まぁ、努力が報われないことなど人生には割と起こることなので、ナギは「まぁ、しょうがないか」と半ば あきらめているが。



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Part.05:戦うことに意義がある


 ……うん、どうやら勝負自体は那岐君の勝ちだったようだね。

 実は、那岐君の戦闘の一部始終をネギ君の魔法で見ていたのさ。
 と言うことで、ちょっと時間を遡って振り返ってみようと思う。

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 那岐君が憚りながらハバカリに行って数分、何者かが那岐君に接触した気配を感じた。

 ネギ君は「直ぐに助けに行かないと!!」と焦っていたけど、ボクは静観することにした。
 いや、正確にはボクも直ぐに助けに行きたかったけど、静観せざるを得なかったんだ。
 と言うのも、実際に那岐君が活躍している姿を西側に見せる必要があったからなんだよね。

 そもそも、那岐君は この前のエヴァ戦で「封印状態とは言え『闇の福音』を下すサポートをした」ことになっている。

 そして、その活躍は誇張を添付されながら魔法界に広まっている(って言うか、学園長が広めてるんだけど)。
 でも、あまりにも誇張されているため「あくまでも噂に過ぎない」と言う感じで信憑性が薄まっているんだよね。
 まぁ、さすがに「ネギ君が『闇の福音』を抑えられたのは那岐君がいたから」と言うのは誇張し過ぎだ と思う。
 だから、反東派の襲撃者を那岐君だけで撃退してもらうことで那岐君の実力を見てもらおう、と言うことになったのさ。
 って言うか、そう言う意図でもない限り、那岐君の護衛を放棄するに等しい真似をボクがする訳ないじゃないか?

 と言う訳で、ボクは戦闘の様子を見るために、ネギ君に「『遠見』はできるかい?」と訊ねたんだ。

 残念ながら、ボクは魔法が使えない体質なので、当然ながら『遠見』も使えない。しかも、運悪く遠見系の魔道具も持っていない。
 でも、魔法が使えないのなら使える人の手を借りればいいだけだ。だから、ボクはネギ君に頼ることにしたのさ。
 一応、気配で だいたいの様子はわかるけどね? それでも映像で見た方が詳細がわかるから、できるだけ映像を見たいんだよね。

「と、『遠見』ですか? で、できますよ?」

 おぉ、できるのか。魔法学校では教えてないから、きっと自己学習で覚えたんだろうなぁ。
 ところで、ネギ君が妙に焦っているように見えるのは、ボク気のせいなのかなぁ?
 まぁ、気のせいだろうね。きっと、那岐君が気になって過敏になっているだけだろうね、うん。

 ネギ君が『遠見』を後ろ暗いことに使っているから焦っている……なんてことは ないに違いない。

「じゃあ、『視覚共有』はできるかな?」
「……つまり、様子を見たいんですね?」
「うん、遺憾ながら そうせざるを得ないのさ」

 しかし、ネギ君は聡いねぇ。座学も優秀って聞いていたけど、情報分析もできるとはねぇ。

 あれだけの会話で「『遠見』と『視覚共有』で那岐君の様子を見たい」と把握しちゃうんなんて凄いよ。
 ボクが子供の頃なんて師匠達の背を追い掛けるだけで精一杯で、言われたことしかできなかった気がするよ。
 その点ネギ君は自分で考えて――いや、やめて置こう。今は こんなことを考えている場合じゃない。

 今 大事なのは那岐君の様子だ。せっかくネギ君が『繋げて』くれたんだから、ちゃんと見ないといけない。

 …………うん、どうやら、那岐君は舌戦に持ち込んでいるようだね。
 共有しているのは視覚だけなので音声が無いからイマイチ確証は無いけど。
 それでも、相手の学ラン君を那岐君のペースに引き込んだのは確かみたいだ。

 このまま うまいこと丸め込んでくれれば『戦闘能力』は見せられなくても『交渉能力』は見せられそうだね。

 とか思っていたら、那岐君は何故か後ろを向いて手鏡を出し、それを覗き込み始めた。
 ……何だろう? 戦闘前の身嗜みチェックかな? でも、何で背を見せるなんて真似を?
 うん? あの台座は何だろう? 手鏡を設置したけど――って、立体映像が現れたっ!!

 あ、あれって『遠見』系のアイテムと『映写』系のアイテムだったんだ……

 う~~ん、どうやって入手したんだろう? ……妥当なところだと、エヴァからかな?
 エヴァって何だかんだで面倒見がいいし、那岐君のことを気に掛けているっぽいから濃厚だね。
 でも、どっちも かなり高価なアイテムだから、いくらエヴァでも軽々しくは貸さないよね?
 じゃあ、何らかの『代償』で借りたのかな? 不当な『契約』を結ばされてなければいいけど……

 まぁ、那岐君は したたかだし、エヴァは甘過ぎるくらいだから、大した内容の『契約』ではないだろうから、心配ないか。

 と言うか、今は戦況の方が重要だね。……見たところ、刹那君達の観戦をするように誘導したようだね。
 恐らく、ボク達が駆け付けるまでの時間稼ぎをしているんだろうなぁ(ネギ君とは『念話』できる筈だし)。
 もしくは、刹那君達の戦闘が終わるまで時間を持たせて、鶴子さんが来るのを待っているのかも知れないね。

 う~~ん、どちらにしろ、ある程度の交渉能力は見せられた訳だから ここは駆け付けるべきなのかなぁ?

 時間稼ぎをしている と言うことは、那岐君には戦闘の意思がない(もしくは、できるだけ戦闘は避けたい)訳だよね?
 と言うか、そもそも相手の気が変わって戦闘に移ったら、ネギ君の魔力供給を受けていない那岐君はキツいんじゃない?
 でも、エヴァ戦では明らかにならなかったアーティファクトがある筈だから、しばらくは魔力供給がなくてもイケるかな?

 しかし、そんなボクの悩みなど嘲笑うかのように、那岐君は魔法具を片付けてしまう。

 って言うか、本当に どうしたんだろう? さっきまでの観戦は時間稼ぎが目的じゃなかったのかな?
 それとも、しばらくはボク達に駆け付ける気が無いことがネギ君から『念話』で伝えられたのかな?
 もしくは相手の学ラン君に観戦する気がなくなったから、観戦と言う時間稼ぎを あきらめたのかな?

 とかとか悩んでいると、那岐君は真剣な表情になる。

 その表情は『男の顔』と言うべきもので、状況も忘れて「こんな顔もできるんだなぁ」と思わず感心してしまった。
 何て言えばいいのか、那岐君ってば いつの間にか成長しちゃってるんだって感じたよ。寂しいやら嬉しいやら、だね。
 言わば、巣立つ若鳥を見守る親鳥の心境ってヤツかな? まだ手元に居て欲しいけど、旅立つ後押しもしたい気分さ。

 って、そんな場合じゃないね。どうやら那岐君は腕輪を身に付けたみたいだ。

 つまり、あの腕輪がアーティファクト、と言うことなのかな?
 てっきり、破魔系の武器だと思っていたから、少し意外だなぁ。
 でも、戦う気みたいだから戦闘用ね。つまり、腕輪型の武器かな?

 そんな分析していると、那岐君が指を弾くような奇妙な動作をした――と同時に、学ラン君の下にいた鬼蜘蛛が真っ二つになった。

 ……え? 何あれ? どんな攻撃したの? まったく見えなかったんだけど?
 ま、まぁ、見えなかったのは『そう言う特性』を持っている と言うことなんだろうね。
 つまり、「高速で攻撃した」のではなく「透明の攻撃をした」と考えるべきだろう。
 だから、今の攻撃は「指を弾く動作をトリガーに『風刃』辺りを飛ばした」に違いない。

 いや、詳細は後で本人に聞けばいいんだから、今は分析よりも戦闘の様子を見る方が大事だね。

 そんな訳で那岐君の攻防を見ていたんだけど……那岐君は次々と攻撃を連射しているよだ。
 でも、そんな単調な攻撃だと早々に見切られてしまうよ――って言うか、見切られてるっ!!
 ヤ、ヤバい。どんどん間合いが詰められているよ。このままじゃ、いつかは接近されて――

  バキィイ!!

 ――危惧した通り、接近されて攻撃されてしまった。って、暢気に考えている場合じゃない!! このままでは、那岐君がボッコボコにされてしまう!!
 西側に那岐君が敗れた姿を見せるのも不味いんだけど、それ以上に――って言うか、何よりも那岐君が傷付くことが不味い!! むしろ、ダメだっ!!
 だって、那岐君はボクが守る と『あの時』師匠に誓ったんだから!! だから、どんな事情があろうとも那岐君が傷付くのをボクは看過できない!!

 そう思った時には『遠見』と『視覚共有』が解かれていた。

 恐らく――いや、十中八九、ネギ君が魔法を解いて、移動を開始したのだろう。気付けば、ネギ君の姿は消えていた。
 もちろん、ネギ君が どこに向かったのか なんてことは考えるまでもない。那岐君のところ以外にないだろう。
 様子を見ている間、ネギ君は ずっと那岐君を心配していたのだから(むしろ、よく耐えた と褒めたいくらいだ)。

 でも、ボクよりも早く動き出すなんて、ね。少しばかりネギ君を過小評価していたみたいだね。

 っと、それはともかく、早く追い掛けよう。あの学ラン君、割と強いから今のネギ君では手に余る可能性が高いからね。
 まぁ、出来レースとは言えエヴァと『いい勝負』をした訳だから、戦闘方面にも才能があるのはわかってるんだけどね?
 それでも、接近戦には慣れていないだろうから分が悪いだろう。負けるだけでなく致命傷を負うようなことがあったら大変だ。

 だから、ボクも慌てて追い駆けたんだけど……ネギ君に追い付いたボクが見たのは、意外な――いや、意外 過ぎる光景だった。

 それは「ネギ君の蹴りが炸裂するとともに崩れ落ちた那岐君」と言うもので、想定の範囲を大きく越えた光景だった。
 しかも、ネギ君の飛び蹴りで倒された那岐君の傍には、例の学ラン君も倒れていたんだから、意味がわからない。
 学ラン君は那岐君が倒したのかな? それとも、駆け付けたネギ君が学ラン君を倒し、勢い余って那岐君も倒したのかな?

 ボクは「一仕事 終えた後の いい笑顔」としか表現できない笑みを浮かべているネギ君を見ながら思考に耽るのだった。

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 ……うん、まぁ、最後の方は見てなかったので、何が どうなって『ああ言う結果』になったのかサッパリわからないんだけど、経緯はこんな感じさ。

 でも、ネギ君が倒したのは那岐君であることは間違いないので、学ラン君を倒したのは那岐君だ と言うことは間違いないと思うんだ。
 落ち着いて考えて見たら、さすがにネギ君が学ラン君もろとも那岐君を倒した訳はないと思うんだ。あれはあきらかに那岐君を狙っていたもんね。
 多分、学ラン君が女の子で肌が露になっていたから、那岐君に見せたくない乙女心が発露して那岐君を沈黙させたんじゃないかな と思う。
 ちなみに、映像を見た段階で学ラン君が女の子だとボクはわかっていたよ? でも、ボクは男女とも『君付け』で呼ぶから、学ラン君だったんだよねぇ。

「ふふっ、ナギさんってば、幸せそうな顔して寝てますね♪ きっと、寝心地がいいんでしょうねぇ♪」

 ボクが取り止めも無いこと考えていたら、気絶した那岐君を膝枕したネギ君が幸せに満ち溢れた笑顔で妙なことを口走ったのが聞こえた。
 って言うか、ネギ君? キミは もうちょっと現実を直視した方がいいんじゃないかい? はっきり言って、キミのフィルターは厚過ぎるよ?
 だって、那岐君は どう見ても「白目を見開いて苦悶の表情を浮かべている」ようにしか見えないからね? 全然 幸せそうじゃないよ?

 しかも、寝心地がいいって……下は石畳だから、寝心地は最悪なんじゃないかな?

 いや、まぁ、頭部はネギ君の膝枕で幾分かはマシだろうけどさ。それでも、ネギ君の膝(と言うか太股)だから、それも……ねぇ?
 やっぱり、ネギ君みたいな子供に膝枕されても効果は薄いでしょ。膝枕は成熟した女性がやってこそ破壊力があると思わないかい?
 たとえば しずな先生とか、ね。あ、でも、しずな先生の場合は膝枕よりも胸枕の方がいい――って、ボクは何を考えているんだろう?

 い、今の問題は そこじゃないよね? ネギ君が那岐君へ躊躇無く『魔力キック』を叩き込んだ方が重要な筈だよね?

 ちなみに、『魔力キック』と言うのは、ぶっちゃけると「魔力を込めただけのキック」なんだけどね。
 いや、そのまんまな呼称だけど、さっきのは「魔力キックは破壊力!!」ってレベルだったからね。
 むしろ、『デビルキックもどき』とか呼んだ方がいいんじゃない? 岩を砕く威力や悪魔的な酷さ的に考えて。

 ……しかし、どうやらボク達はネギ君を誤解していたようだね。こんなにアグレッシブだった とは思わなかったよ。

 これだけ積極的なら、ボク達が余計なことをしなくても、那岐君をパートナーにできただろうねぇ。
 まぁ、今となっては遅いんだけど。だって、既にボク達の画策で那岐君はパートナーになっている訳だし。
 それに、ボク達が何もしなかったら那岐君をパートナーにできていなかった可能性もゼロじゃない、ね。

 まぁ、ここで あれこれ考えていても仕方が無いから、思考に逃避してないで この場を撤収しようかな?

 あ、でも、那岐君をは まだ気絶したままだね。う~~ん、どうしよう? やっぱり、無難に背負おうかな?
 別に本山を訪問する時間が指定されている訳ではないから、那岐君が起きるまで待っていてもいいんだけどね?
 でも、西側は西側で様子を見ていた筈だから 待たせることになるだろう。つまり、運ぶのがベストだね。

 だから、これは仕方が無いんだよ? 仕方無いから那岐君を背負うんだよ? 決して、ボクが「昔を思い出すなぁ」とか感慨を抱くためじゃないよ?

 微妙にツンデレっぽくなって軽く気持ち悪いけど……ともく、今は 那岐君が気絶した『表向きの理由』を作る方が大事だよね?
 ついつい忘れそうになっていたけど、那岐君は大使だからね。立場的に意味もなく気絶したまま本山に行くのは いろいろと不味いもんね。
 当然ながら西側も事情(ネギ君が原因)を把握しているだろうけど、さすがに「痴話喧嘩で伸びました」とは公式見解にはできないよねぇ。

 ……やっぱり、ここは無難に「刺客相手に相打ちしました」と言うことにして置こうかな?



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Part.06:とりあえず、及第点


(……どうやら『向こう』は終わったようやな)

 目の前の戦いを見ながら別の戦場に気を配っていた鶴子は、ナギ達の戦闘が終わったのを感じていた。
 気配を感じていただけなので(見えていた訳ではないため)戦闘の様子まではわからなかったが、
 両者の気配がなくなったことと戦闘の気配がしなくなったことから戦闘が終わったことを判断でき、
 また、タカミチとネギの気配が接近していたことからナギは気を失ったが無事なのだろうと判断できる。

(ほな、こちらも『終わらせ』ましょか)

 こちらの戦闘での見るべき部分は既に見終わっていた。ただ、キリのいいところまでやらせよう と思って放置していただけだ。
 だが、ナギ達の戦闘が終わったので、最早そんな悠長なことは言っていられない。いつまでも『じゃれ合い』を見ている場合ではないのだ。
 そのため、鶴子は「二人とも、そこまでや」と厳かに告げ、一瞬のうちに「抜刀し、技を放ち、納刀する」と言う一連の動作を行う。

  ドサッ……

 鶴子が動作を終えて一拍もしない内に、技を放とうとした姿勢のまま地面に崩れ落ちる月詠。
 そう、神鳴流同士の戦闘であり、鶴子は その立会人だったが、鶴子が斬り伏せたのは月詠だけだった。
 何故なら、鶴子は立会人である前に長側の陣営であり、これは決闘ではなく襲撃に過ぎないからだ。

「し、師範代……?」

 突然の鶴子による介入に不思議そうな顔を浮かべる刹那。言外に「何故、このタイミングで横槍を入れたのです?」と問うている。
 致命的な状況だったのならば横槍を入れるのも わからないでもない。だが、先程は どう見ても致命的とは言えない状況だった。
 ジリ貧と言うか劣勢に立たされていたことは確かだったが、それでも このタイミングで止めに入られた理由が刹那にはわからなかったのだ。

「……決まっとるやろ? もう見るに耐えないからや。あと、『元』師範代やって言うとるやろ?」

 刹那の疑問を どこまで汲み取ったのか は定かではないが、鶴子はバッサリと疑問を切り捨てる。
 まぁ、本当は見ている場合ではなくなったから なのだが、それを正直に言う鶴子ではない。
 理由すらも、ここぞとばかりに刹那の欠点を指摘するのに利用する。そう言った汚さを鶴子は有していた。

 鶴子にしてみれば、刹那の剣には決定的な欠陥――神鳴流に囚われ過ぎている部分があった。

 もちろん、別に神鳴流を否定する訳ではない。だが、刹那が求めている『人を守る剣』と神鳴流がそぐわないのは確かだ。
 と言うのも、神鳴流は退魔の剣――妖魔を打ち倒すための剣であるため、人と戦うことは余り考慮に入れられていないからだ。
 刹那が『妖魔から人を守る』のならば問題ないのだが、刹那は『人からも人を守る』可能性があるため、問題になるのだ。

 決して、刹那が弱い訳ではない。むしろ、年齢を考えれば刹那は破格と言っていい実力を持っているだろう。

 だが、『人を守る』には実力云々ではなく「人を斬る術に長けていない」と言う致命的な欠点があるのが現状である。
 隔絶した技量があるのなら、その欠点も『どうとでもなる』のだが、現在の刹那では まだ その域に達していない。
 そのことが月詠との立合で浮き彫りになった。いや、正確には、浮き彫りにするために鶴子は二人を立ち合わせたのだ。

「わかっとるやろうけど……このままやったら、いつか守るべき者すら失うことになるえ?」

 だから、鶴子は刹那に忠告する。守りたいのなら人を斬る剣を身に付けろ と容赦なく現在の刹那を否定する。
 言うまでもないだろうが、鶴子が長側だから「木乃香のためになる」と考えて忠告しているだけではない。
 妹が見出した剣であり、妹を思い起こさせる真っ直ぐな剣を持っているからこそ、刹那に忠告しているのである。
 鶴子は義理だけで態々 回りくどいこと(木乃香を使ったり月詠と立ち合わせたり)をするような人間ではない。

「もし、ウチがおらずに御嬢様だけやったら……どうなっとったか、わかるやろ?」

 そもそも、刹那は木乃香を気にするあまり致命的な隙を生んでいた。敵を目前にしていながら、隙を作ってしまったのだ。
 仮に鶴子がいなかったとしたら、いや、鶴子が一流の使い手でなかったなら、隙を見せた段階で刹那は『終わっていた』。
 そして、刹那が『終わっていた』と言うことは、護衛のいなくなった木乃香は無防備となって間違いなく『終わっていた』だろう。

 つまり、木乃香を気にするあまり それが原因となって木乃香を失っていたのだから、本末転倒もいいところだろう。

 また、刹那だけでは守り切れなかったのにもかかわらず(まぁ、そもそも木乃香を連れて来た鶴子に問題があったのだが)、
 刹那は『鶴子』が付いているのに木乃香を心配したことで鶴子を信用していないことも浮き彫りにしてしまったのだ。
 それらのことを悟らされた刹那は、当然ながら反論などできず、ただ己の不甲斐なさを悔いることしかできなかった。

「守るためには、犬死は許されないんやよ」

 本来なら負けないのが好ましいが、神ならぬ人の身では負けないことを確約できる訳ではない。
 そのため、鶴子は「負けても守れない訳ではない」と暗に示し、『負けること』だけは許容する。
 そして、同時に「死ぬなら守る手段として死ね」とも潜ませ、『守ること』を第一とさせる。

「……これで、今回の『授業』は終いや」

 鶴子は そう締め括ると、猫を持つかのように月詠の首を掴んで林の中に消えて行く。
 後に残されたのは、自分の無力を突き付けられた刹那と未だに気絶している木乃香だけだ。
 それは もう危険が無い と言うことなのか? それとも、刹那を信頼してのことなのか?

 前者と悟っている刹那は、お世辞にも機敏とは言えない動作で、木乃香を抱えて本山へ向かうのだった。

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「……お疲れ様です」

 白ゴス少女――月詠を抱えた鶴子に被保護者の少年を背負ったタカミチが労いの言葉を掛ける。
 タカミチは事態を把握していないが、鶴子が刹那のために動いていたと判断しているのである。
 ちなみに、タカミチの頬が少し緩んでいるのは、気にしてはいけない。敢えてスルーしよう。

「まぁ、身内の不始末は自分達で始末せんと『背中の彼』に叱られてまいますからなぁ」

 鶴子は苦笑しながらも楽しそうにタカミチの背で眠る少年――ナギに目を向ける。
 ナギは こうして寝ている分には どこにでもいる普通の少年にしか見えない。
 しかし、そんな少年の発した言葉で鶴子が動く気になったのも確かなことである。

「そうですか。でも、刹那君は大丈夫ですよ。もし折れそうになっても那岐君が支えますから」

 タカミチは苦笑しながらも『那岐』を過大評価している(としか思えない)言葉を吐く。
 恐らくは鶴子の視線を「刹那はウチが支えます」と言うような意味で捉えたのだろう。
 まぁ、ナギが起きていれば刹那を支えると表明しただろうから、そこまで間違ってはいないが。

「……そうどすなぁ」

 妹が見出した剣は どのような輝きを見せるのか? その鍵を握るのは、タカミチに背負われている少年なのかも知れない。
 何となく そう感じた鶴子は、タカミチの勘違いを理解しつつも特に反論することなくタカミチの言葉に相槌を打つ。
 まぁ、タカミチの勘違いを訂正するのが面倒だった と言う本音がない訳でもないので、実に大人な対応と言えるだろう。

「ところで、『こっち』の刺客は どうしはったんどす?」

 鶴子は(少々 態とらしいが)軽く周囲を見て状況を再確認した後、気絶した月詠を掲げて見せてタカミチに問い掛ける。
 まぁ、話題を変えたいのもあるのだが、タカミチがナギを背負っているため小太郎はネギが連れて来るのが妥当だと思われるのに、
 何故かネギは手ぶら で不機嫌そうなオーラを発しているだけなので、小太郎の姿が無いことに疑問を持ったのだろう。

 既に回復して逃げた と言うのだろうか? だが、そんな気配などなかったので、それは無いだろう。

「ああ、学ランの彼――あ、いえ、彼女は放置して来ました」
「……はい? 放置、どすか? それは どう言うこと どす?」
「何と言うか、ネギ君が『触りたくもない』って言うもので……」
「もちろん、『それなりの処置』はして来たんでっしゃろ?」
「ええ。ネギ君が『亀甲縛り』で縛ってましたので、ノー問題です」
「…………高畑さん、あんさん教師やろ? 問題ない訳ないやろ?」
「青山さん、世の中には逆らえない状況と言うものがあるんですよ?」

 タカミチの意外な答えに驚愕しつつもタカミチを責める鶴子であったが、タカミチの『何かを悟った』ような薄笑いに追求の矛先を収める。

 小太郎の処遇に対して言いたいことや気になることはあるが、だからと言って虎穴に入ってまで言いたい訳ではない。
 まぁ、鶴子は虎穴に入る程度など気にしないのだが、どうやら今回は歴戦の猛者としての勘が関わることを止めたようだ。
 鶴子の中で「君子危うきに近寄らず」とか「触らぬ神に祟りなし」とか言う言葉の重要性が地位を上げた瞬間である。

「……ほな、『用事』ができたんで、先に失礼させてもらいますわ」

 一拍置いて気分を変えた鶴子は、何事も無かったような態度で一方的に別れを告げると本山に背を向ける。
 当然ながら、小太郎を回収しに行ったのだが、「女性は怖い」と言う真理をネギに刻み込まれたタカミチは、
 そんな鶴子を「ああ、きっと白ゴス剣士に制裁を加えるんだろうなぁ」と解釈して軽く恐怖するのだった。

「あ、彼に伝言をお願いしますな? 『これから先は襲撃が無い筈やから、予定通り ここで失礼させてもらいます』と」

 そんなタカミチの心情を察知したのかは不明だが、鶴子は直ぐに振り返ると、
 とても楽しそうな笑顔――具体的に言うと獲物を前にした狩人の笑顔を見せ、
 タカミチが背負うナギへと伝言を残して、今度こそ森の中へと消えて行くのだった。

 しばらくガクブルしていたタカミチだったが、「あれ? そう言えば、木乃香君は どうしたんだろう?」と気が付く。

 しかし 直ぐに「まぁ、きっと刹那君と一緒にいるんだろうね。もしくは、詠春さんが保護しているよね」と納得すると、
 ネギが小太郎に行おうとした制裁や鶴子が月詠に行うであろう制裁に思いを馳せないようにするため(現実逃避のため)に、
 背中に感じる被保護者の重みに意識を向け「フッ、いつの間にか随分と大きくなったなぁ」とかニヒルに決めるのだった。

 ちなみに、言うまでもないだろうが、ネギは愛しの少年を運ぶ役をタカミチに奪われたので やさぐれているらしい。



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Part.07:すべては陽動に過ぎない


「千草さん……予定通り、助けに来ました」

 ボクは水を使った『ゲート』を開いて千草さんの元まで やって来た。
 ちなみに、人が転移できる大きさの『ゲート』を開くには大量の水が必要なため、
 ボクが転移した先は大量の水がある場所――つまり、シャワー室だった。

「しししし新入りぃいいい!! なんちゅーところから顔を出してんねん!!」

 シャワーを浴びたままのポーズで固まっていた千草さんが文句を言う。
 え~~と、具体的に言うと千草さんの足元――股間の下方かな?
 いや、別に、ボクだって好きで『ここ』にした訳じゃないよ?
 千草さんの傍で一番水が多い場所が千草さんの足元だっただけだよ?

「……それはいいですから、サッサと転移しますよ」

 って言うか、いい加減に『新入り』って呼ぶのはやめて欲しいんだけどなぁ。
 ボク、フェイト・アーウェルンクスって名前、けっこう気に入ってるんだよねぇ。
 だから、千草さんが「せめて服を着せいや!!」とか言ってるけど無視して置こう。

 …………そんな訳で、喚く千草さんを『ゲート』に引っ張り込んで無事に脱出に成功したって訳さ。

 と言うのも、今までは『監視』が厳しいうえに『転移妨害の結界』も張られていたから連れ出せなかったんだけど、
 小太郎君と月詠さんが うまく敵の目を引き付けてくれたので警戒が緩み、『ゲート』を開く隙ができたって訳さ。
 まぁ、『結界』を無理矢理に破ってもよかったんだけど……本番(本山襲撃)の前に手の内を晒すのは悪手だからね。

 なので、二人には悪いとは思うけど、事が済めば助けてあげられるだろうから それまで我慢してもらおうと思う。

 助けるまで虐待されないか少し不安だけど、西のモラルは そこまで酷くないだろう。捕虜として丁重に扱う筈だ。
 ま、まぁ、そもそも、身内に噛み付くんだから、失敗した時のために「それなりの覚悟」を持っているに違いないよ。
 って言うか、大事なのはリョウメンスクナノカミの復活と『彼等』が どの程度の脅威となるか を測ることだよね。

 ……そう、ボクの本当の目的は『彼等』の能力を測ることだ。

 前回 障害として立ち塞がった『紅き翼』のメンバーにして関西呪術協会の長、近衛 詠春。
 また、『紅き翼』に参加していた経歴を持つ、AA+級エージェント、タカミチ・T・高畑。
 そして、あの『サウザンド・マスター』の娘である、ネギ・スプリングフィールド。
 それと、月詠さんを一瞬で屠った『クイーン・オブ・ソード』、青山 鶴子も気になるね。
 もちろん、真祖の吸血鬼である『闇の福音』、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルも。

 まぁ、『闇の福音』は魔力が封印状態にあるようだし、特に動きは見せていないから、大丈夫かな?

 でも、油断は禁物だ。「そう見せ掛けているだけ」と言う可能性もある。注意はして置こう。
 何事も注意して置いて悪いことはない。むしろ、常に最悪のケースを想定して置くべきだろう。
 特に、『彼』のような「こちらの裏を突いて来るタイプの人間」がいることだし、ね。

 …………まったく、『彼』には驚かされたよ。まさか、小太郎君を ああも翻弄するとはね。

 まぁ、小太郎君は乗りやすい性格をしているから、うまく丸め込まれたんだろうけど。
 それでも、小太郎君は(あの年齢にしては、だけど)随分と腕も立つし修羅場も潜っている。
 だから、小太郎君の性格を考慮しても、『彼』が注意すべき存在であることは間違いない。

 ネギ君のバートナーなので最初は注目していたけど、特に動きが無かったから いつの間にか眼中になかったよ。

 って、もしかしたら、「パートナーになっただけの一般人」と思わせるために、敢えて動かなかったのかな?
 そう言えば、親書のトラップもネギ君が考えた と言うよりも『彼』が考えた と見る方がシックリ来るね。
 どうやら、今まで騙されていた――と言うより、過小評価していたよ。これからは「警戒に値する」と評価しよう。

 確か『神蔵堂ナギ』とか言ったっけ? 最初は名前負けしていると思っていたけど、そうでもないようだね。

 まぁ、現段階では大きく見積もっても大した障害ではないけど、今後どうなるか は未知数だね。
 このまま「少々 厄介」程度に留まるのか? それとも、更に「厄介な存在」に進化するのか?
 麻帆良の近衛氏に孫娘――御姫様の婚約者として認められたことを考えると後者の可能性が高いね。

 フフフ、キミはネギ君よりも ずっと興味深いよ。神蔵堂君……


 


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オマケ:すべては計画通り


(……ふむ。どうやら、無事に本山に入ったようだな)

 観光に興じながらもナギ達の動向を『遠見』で逐一チェックしていたエヴァは、
 何だかんだがありながらも無事に一行が本山に着いたことを確認したため、
 それまでナギを自動追跡するように常時展開していた『遠見』を解除する。

 実はと言うと、最悪の場合エヴァは『転移』してナギ達の護衛をするつもりでいたのだ。

 まぁ、タカミチや鶴子だけでなくチャチャゼロもいるので その可能性はゼロに等しかったが。
 それでも、油断してはならない。油断は隙を生み、隙を突かれれば一瞬で情勢は覆るからだ。
 故に、ナギの戦闘能力が皆無であることを熟知しているエヴァは特にナギの動向を注意していたのだ。
 だが、それも取り越し苦労に終わったようだ。いや、むしろ、一定の戦果を上げることができただろう。
 少々ヒヤッとさせられたが、相手を巧みに誘導して見事に罠に嵌めたのだから、誇っていい戦果だ。

(『こっち』の方も『予定』通りに進んでいるし……まったく大したヤツだよ)

 エヴァは千草がフェイトによって救出されたところも『遠見』で確認しており、
 この事態を予見したうえで『策』を弄しているナギに対して素直に評価を上げる。
 そう、ナギは自分達が襲撃されることも、その間に千草が奪還されることも読んでいたのだ。

 まぁ、原作の知識と千草の情報があったからなのだが、それでも予見していたことは変わらない。
 それに、ナギはエヴァに『とある頼み事』もしており、それが より評価を上げているのだ。

 と言うのも、実は、エヴァは単に京都観光を楽しんでいたのではない(いや、楽しんでいたのは変わらないが)。
 敢えて普通の女子中学生のように京都観光に興じることで、相手のエヴァへの警戒心を減じさせていたのだ。
 まぁ、完全に払拭できた訳ではないが、警戒レベルは下がっているので『それなりの効果』はあったと言えるだろう。
 ちなみに、普通の女子中学生のような楽しみ方ではなかったし、代わりにナギが警戒されたけど、そこはスルーだ。

(さて、後は連中が『罠』に掛かるのを待つだけだな……)

 ナギの施した『策』が成功した時のことを考えると自然に頬が緩む。
 エヴァには獲物を弄ぶような趣味はないが、罠にハメる快感は人並みに感じる。

 そのため、哀れな獲物が『罠』に掛かるのを今や遅しと待つのであった。


 


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後書き


 ここまでお読みくださってありがとうございます、カゲロウです。
 以前から「改訂した方がいい」と言う意見が多数あったので、改訂してみました。
 また、改訂に伴ってサブタイトルを「一難去って、また一難」から変更しました。


 今回は「ちょっとバトルを頑張ってみたけど、結局は いつも通りだった」の巻でした。

 まぁ、スピード感のあるバトルはボクには無理ですね。どうしても、グダってしまいます。
 それでも、11話のエヴァ戦よりはマシだった と思います。って言うか、思って置きます。
 だけど、この作品ではバトルはオマケなので、そこまで力を入れる必要はないんですけどね?

 ところで、小太郎の二つ名がストレート過ぎる件ですが……それは気にしちゃダメです。

 ぶっちゃけ、アレしか思い付かなかったんです。『素晴らしき』の二つ名を出せただけで充分な気がしちゃったんです。
 って言うか、女の子なのに『小太郎』って名前の方が問題な気がしますが、『風魔 小太郎』のイメージです。
 犬上家を継いだ時に『小太郎』の名前を襲名したので、幼名としての『女の子の名前』もありますが『小太郎』なんです。

 ……ええ、補足説明的な設定を後書きで書くなって話ですよね?

 あ、二つ名で思い出したんですけど、鶴子さんの二つ名もアレはアレで酷いですよね。微妙過ぎますよね。
 最初は某アームズの「笑う牝豹(ラフィング・パンサー)」をストレートにパクろうと思ったんですけど、
 それでは余りにもアレかなって思ったので「クイーン・オブ・ハート」に肖ってみた結果がアレです。

 後悔はしていますけど、反省はしていません。って言うか、ボクのネーミングセンスはどうしようもないです。


 では、また次回でお会いしましょう。
 感想・ご意見・誤字脱字等のご指摘、お待ちしております。


 


                                                  初出:2010/6/13(以後 修正・改訂)


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