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No.10422の一覧
[0] 【完結】せせなぎっ!! (ネギま・憑依・性別反転)【エピローグ追加】[カゲロウ](2013/04/30 20:59)
[1] 第01話:神蔵堂ナギの日常【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:53)
[2] 第02話:なさけないオレと嘆きの出逢い【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:54)
[3] 第03話:ある意味では血のバレンタイン【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:54)
[4] 第04話:図書館島潜課(としょかんじませんか)?【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:54)
[5] 第05話:バカレンジャーと秘密の合宿【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:55)
[6] 第06話:アルジャーノンで花束を【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:55)
[7] 第07話:スウィートなホワイトデー【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:55)
[8] 第08話:ある晴れた日の出来事【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:56)
[9] 第09話:麻帆良学園を回ってみた【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:56)
[10] 第10話:木乃香のお見合い と あやかの思い出【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:56)
[11] 第11話:月下の狂宴(カルネヴァーレ)【改訂版】[カゲロウ](2012/06/10 20:50)
[12] 第12話:オレの記憶を消さないで【改訂版】[カゲロウ](2012/06/10 20:50)
[13] 第13話:予想外の仮契約(パクティオー)【改訂版】[カゲロウ](2012/06/10 20:51)
[14] 第14話:ちょっと本気になってみた【改訂版】[カゲロウ](2012/08/26 21:49)
[15] 第15話:ロリコンとバンパイア【改訂版】[カゲロウ](2012/08/26 21:50)
[16] 第16話:人の夢とは儚いものだと思う【改訂版】[カゲロウ](2012/09/17 22:51)
[17] 第17話:かなり本気になってみた【改訂版】[カゲロウ](2012/10/28 20:05)
[18] 第18話:オレ達の行方、ナミダの青空【改訂版】[カゲロウ](2012/09/30 20:10)
[19] 第19話:備えあれば憂い無し【改訂版】[カゲロウ](2012/09/30 20:11)
[20] 第20話:神蔵堂ナギの誕生日【改訂版】[カゲロウ](2012/09/30 20:11)
[21] 第21話:修学旅行、始めました【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:08)
[22] 第22話:修学旅行を楽しんでみた【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:08)
[23] 第23話:お約束の展開【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:57)
[24] 第24話:束の間の戯れ【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:09)
[25] 第25話:予定調和と想定外の出来事【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:57)
[26] 第26話:クロス・ファイト【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:10)
[27] 第27話:関西呪術協会へようこそ【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:58)
[28] 外伝その1:ダミーの逆襲【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:59)
[29] 第28話:逃れられぬ運命【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:59)
[30] 第29話:決着の果て【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 21:00)
[31] 第30話:家に帰るまでが修学旅行【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 21:01)
[32] 第31話:なけないキミと誰がための決意【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:10)
[33] 第32話:それぞれの進むべき道【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:10)
[34] 第33話:変わり行く日常【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:11)
[35] 第34話:招かざる客人の持て成し方【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:12)
[36] 第35話:目指すべき道は【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:12)
[37] 第36話:失われた時を求めて【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:54)
[38] 外伝その2:ハヤテのために!!【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:55)
[39] 第37話:恐らくはこれを日常と呼ぶのだろう【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 22:02)
[40] 第38話:ドキドキ☆デート【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:58)
[41] 第39話:麻帆良祭を回ってみた(前編)【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:57)
[42] 第40話:麻帆良祭を回ってみた(後編)【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:57)
[43] 第41話:夏休み、始まってます【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:04)
[44] 第42話:ウェールズにて【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:05)
[45] 第43話:始まりの地、オスティア【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:05)
[46] 第44話:本番前の下準備は大切だと思う【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:06)
[47] 第45話:ラスト・リゾート【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:06)
[48] 第46話:アセナ・ウェスペル・テオタナトス・エンテオフュシア【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:20)
[49] 第47話:一時の休息【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:21)
[50] 第48話:メガロメセンブリアは燃えているか?【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:21)
[51] 外伝その3:魔法少女ネギま!? 【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:22)
[52] 第49話:研究学園都市 麻帆良【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:22)
[53] 第50話:風は未来に吹く【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:23)
[54] エピローグ:終わりよければ すべてよし[カゲロウ](2013/05/05 23:22)
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[10422] 第03話:ある意味では血のバレンタイン【改訂版】
Name: カゲロウ◆73a2db64 ID:552b4601 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/04/30 20:54
第03話:ある意味では血のバレンタイン



Part.00:イントロダクション


 今日は2月14日(金)。

 ナギとネギが出遭ってしまってから一週間の時が過ぎていた。
 その間にナギとネギの間に どのようなことが起きたのか?
 それは重要なことだが、それよりも今日の日付の方が重要である。

 そう、2月14日は「バレンタインデー」と言う重要イベントなのであった。



************************************************************



Part.01:噂のロリコン野郎


 この一週間でナギの生活は変わった。

 まず、放課後になると毎日毎日ネギがナギに纏わり付いて来るようになったのである。
 待ち伏せしているとしか思えないタイミングで、毎日 必ず帰り道が一緒になるのだ。
 しかも、嬉しそうに(ナギには どうでもいい)話を聞かせて来るので とても大変だ。

  たとえば、クラスは2年A組になったとか……
  たとえば、ルームメイトのコノカさんは優しいだとか……
  たとえば、ナルタキさん達にシンパシーを感じるとか……
  たとえば、イインチョさんが妙に優しくて困るとか……
  たとえば、エヴァンジェリンさんの目付きが怖いとか……

 これはアレだろうか? 夕食時に行われる娘と父の会話だろうか? むしろ、ネギは父親との会話に飢えている娘なのだろうか?
 いや、まぁ、その通りなのだが。ファザコン気味なネギがナギと父親を重ねているのはナギですらわかっていることだ。
 ナギとてネギの気持ちが理解できない訳ではない。幼い頃から「親の愛」に飢えていたことには、何故か妙に共感できるのだ。

 だがしかし、もう少し自重して欲しいのがナギの偽ざる本音だ。

 何故なら、ネギの御蔭で二つ目の変化が起きてしまった――つまり、ナギとクラスメイトとの関係が変わってしまったからである。
 これまでは、ナギとクラスメイトの間には一定の距離が保たれていた。だが、最近は妙に親しみを込められるようになったのだ。
 いや、それだけ聞くと いい変化に思えるかも知れないが……ナギは彼等の「おお、同志よ!!」と言った生暖かい視線が気になるのである。
 正直、かなり不快らしい。思わず「これは目を潰してもいいって言う意思表示かな?」と言いたくなるくらいに不快な視線のようだ。

(――いや、わかっている。わかってはいるんだ)

 ナギの望みではなかったが、世の中は儘ならぬことばかりだ。文句を言っても始まらない。
 だが、そうは言っても、やはり納得できないことでもある。本意ではないから特にだ。
 そう、クラスメイト達はナギを「ロリコン」として認識しているのだ(実に正しい認識だが)。

(まぁ、それなりに自覚はあったんだけどさ……それでも、その理由が気に入らないんだよねぇ)

 ナギは己がロリコンだと自覚しつつある。最近までは少ししか自覚していなかったが、前回でハッキリと自覚した。
 だが、それでも、ネギに纏わり付かれることでロリコン認定をされたことには納得できない気持ちが残るのである。
 何故なら、ナギは好き好んでネギに纏わり付かれている訳ではない(むしろ迷惑に思っているくらいだ)からだ。

(いや、今の問題はそこじゃないね。今の問題は、今日が『バレンタインデー』だってことだよ)

 何故なら、バレンタインデーと言えば普通はチョコを貰ったりする甘い一日なのだが、ナギの場合は死亡フラグが立つからだ。
 ナギには見える。ネギにチョコを貰ってしまったら、何だかんだで好感度が上がって結果的に死亡フラグが立ってしまう未来が……
 そのため、ナギは今「バレンタインイベントを回避するために今日は学校をサボるべきなんじゃないか?」と本気で迷っている。

(……でも、学校をサボったらサボったで、何か とてつもなくヤバいことが起こりそうな予感がするなぁ)

 何故か「お見舞いに来ちゃいました☆」とか何とか言って『赤い悪魔(ネギのこと)』が現れそうな気がする。
 しかも、それを他の寮生達に見られてしまい「ロリコンって言うかペド野郎じゃん」と評されそうな気すらする。
 普通なら「ナニイッテンノ?」とツッコみたくなるナギの想定だが、強ち間違っていない気がするから怖い。

 やはり、ここは大人しく学校に行くべきだろう。何て言うか、学生は学生の本分を全うすべきだし。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「うぃ~~す、神蔵堂」

 葛藤の末に断腸の思いで登校したナギに対しクラスメイトが挨拶して来た。
 気怠げな感じが溢れんばかりに漂って来るが、その目が如実に語っている。
 言うならば「オレは怠いけど、お前は怠くないよな?」と言う嫉妬だ。

 ちなみに、このクラスメイトは「鮫島 新一(さめしま しんいち)」と言うヘタレだ。

「いやぁ、今日はいい天気だな~~。絶好のバレンタイン日和ってヤツじゃね?」
「しかし、神蔵堂は羨ましいよなぁ。確実に一個はチョコをゲットできるんだから」
「あのロリっ娘からな♪ んで、ついでにあのロリっ娘もゲットしちゃうんだろ?」

 鮫島は隣にいたクラスメイト(宮元 茂:みやもと しげる)と見事な連携を見せる。

 そんな二人へのナギのコメントは「って言うか、バレンタイン日和って何?」と言う、至極 真っ当なツッコミだった。
 まぁ、敢えて解釈するとしたら、バレンタインらしい天候と言うことなのだろう。だが、それだと雪ではないだろうか?
 いや、勝手なイメージだが、どうも今日みたいな快晴はバレンタインらしくないと思うのはナギだけではない筈だ。

(……とりあえず、コイツ等には教育的指導ってものが必要だな、うん)

 何が可笑しいのか意味不明だが、フヒヒと品のない笑い声を上げる二人を見たナギの感想は間違っていないだろう。
 まぁ、普段のナギなら無視するだけに止めるのだが、生憎とネギ関連で苛立っていたので今日は少しだけ粗暴なのだ。
 そんな訳で、ナギはとても爽やかな笑み(でも目が笑ってない)を浮かべて二人を教室の隅へと引っ張って行く。

 ちなみに、これから何が行われるのかは御想像にお任せする。

 ……………………………………
 ………………………………………………
 …………………………………………………………

(ふぅ、いい汗 掻いたぜ。具体的に言うと、スポーツをしてリフレッシュしたような気分だね)

 どうでもいいが、鮫島と宮元にはトラウマが刻まれたらしく、その後しばらくはナギを見るだけでガタガタ震えるようになったらしい。
 自業自得と言ってしまえば その通りなのだが、少々哀れだ。と言うか、どう考えてもナギの遣り過ぎだと思う。もう少し自重すべきだ。
 何故なら、一連の光景を見ていたクラスメイト達がそれ以降ナギをロリコンネタで からかう様な命知らずな真似をすることがなくなったからだ。
 いや、クラスメイトへの牽制も狙ったのなら間違ってはいないのだが……再びクラスメイトとの間に溝ができたので、やはり遣り過ぎだろう。

(しかし、おかしいなぁ。オレ、間違っていない筈なのに……何で神多羅木に呼び出しを喰らったんだろう?)

 何故か罰として神多羅木の書類整理を手伝わされたらしい。納得できないナギは、非常に不満だったようだ。
 そのため、近右衛門に「神多羅木先生が生徒をコキ使ってまーす」と言った内容のタレコミをしたらしい。
 これで復讐は完了した――のではなく、これで神多羅木の理不尽な体罰(ナギ視点)は無くなるに違いない。

 ちなみに、しばらくして またもやナギが神多羅木に呼び出しを喰らったのは、最早 語るまでもないだろう。



************************************************************



Part.02:運命の放課後


 そんなこんながありながらも授業を無事に終えたナギは、男子中等部の校舎を出て麻帆良学園中央駅に向かう。

 ちなみに、そのルートはナギの帰宅ルートであり、ネギが待ち伏せしている(としか思えない)ルートである。
 ここで、あれ程フラグを嫌がっているクセに何で態々そのルートを通っているのか ナギに疑問を持つことだろう。
 確かに、フラグのことを考えたらネギからバレンタインチョコを受け取るのは何としても避けるべきことだろう。
 だがしかし、確実に貰えるチョコがあるなら そこにどんな危険があっても行くしかないのだ。それが男の性なのだ。

(そう、これは致し方ないことなんだ。これは最早 避けられぬ、運命と書いてディスティニーと言うヤツなんだ)

 そもそも、麻帆良学園は男女が別々の校舎になっているので普通の共学校よりもチョコを貰えるチャンスが著しく低い。
 そのため、結果的にチョコ一つの価値が通常よりも高くなっており、チョコの有無が男の価値に雲泥の差を付けてしまうのだ。
 たとえ その贈り主が幼女であったとしても、チョコゼロ(敗者)とチョコ獲得者(勝者)では覆せない差が生まれるのである。

(あぁ、何て甘くも恐ろしいトラップなんだろうか!!)

 ナギとしては「こんな恐ろしいイベントを作りやがって!!」と日本の菓子産業に文句を言いたい所存だ。
 何故なら、男と言うのはプライドの塊だからだ。男はプライドが無くては生きていけない弱い生き物なのだ。
 言わば「高かがチョコ、されどチョコ」なのである。いや、菓子産業に文句を言っていても意味がないが。

 とにかく、以上の様な訳で、チョコが貰えるなら危険があっても行くしかないのがナギなのである。

 ナギは自身も認めるヘタレだ。だが、ヘタレはヘタレでも、男としての矜持を捨てた訳ではない。
 むしろ、プライドのためならば危険を冒すことも厭わない……そんなバカヤロウでもある。
 どう考えてもフラグを作りに行っている様にしか見えないが、それでも突き進むのがナギなのだ。

「ナギさ~~ん!!」

 そんなバカヤロウ(ナギ)を呼ぶ声がした。それは、バカヤロウ(ナギ)が待ちに待った呼び声だ。
 そう、カモがネギを背負って来た――いや、正確に言うと、ネギがチョコを持って来たのである。
 声が少しだけ いつもとは違う様に聞こえるが、きっと緊張していたから そう聞こえるだけだろう。

(って、あれぇ? 亜子?)

 ナギが期待タップリに振り向いた先に居たのは、予想外の人物――「和泉 亜子(いずみ あこ)」だった。
 亜子は以前(第1話)にも名前だけは出ていた、サッカー部の田中が無謀にも狙っている例のコである。
 ちなみに、原作とは容姿が少々異なり、栗色のショートヘアーと赤みがかった茶色の目が特徴的なコである。
 何故かナギに対して敬語で話す癖があるが、それは出会った時の印象が そうさせているのだろう。きっと。

 ところで、ナギが亜子と出会った経緯については、語ると長くなるので今回は割愛させていただく。

「亜子? どうしたの、一体? そんなに息を切らせてるってことは……何か急用でもあって急いでいたってこと?」
「いや『どうした』て……今日はバレンタインやないですか? チョコ渡す以外の用事なんてフツーありまへんよ」
「え? マジで? チョコくれんの? 亜子が? オレに? え? マジで? いや、ありがとう。いや、マジで」

 想定外の事態に軽くテンパるナギ。「マジで」を連発し過ぎて少々ウザいくらいにテンパっている。

 そんなナギの様子を可笑しそうに見ながら、可愛くラッピングされた直方体を手渡す亜子。
 それを受け取ったナギは、受け取りながらも「何でチョコくれたんだろ?」と内心 頭を抱える。
 もちろん、義理だろう。しかし、それでもチョコを貰える程は親しくない筈だ。意味がわからない。

「でも、どうしてチョコをくれたの? 正直、想定外 過ぎてテンパってるんだけど?」

 意味がわからないので、素直に理由を訊ねるナギ。わからないことを訊けるのは美徳だが、この場合はどうだろう?
 チョコを貰える程には親しくしないと考えているのなら、相手からの反応など期待できないのがわかるだろうに……
 義理だった場合は義理と言いづらいだろうし、本命だった場合は それはそれで何とも言えない空気になるだろう。

「…………ウチのチョコ、迷惑ですか?」

 現に、亜子はナギの質問に答えづらそうにしている。と言うか、別の切り返しで答えている。
 しかも(狙っているのか天然なのかは定かではないが)軽く上目遣いをオプションで付けて、だ。
 まぁ、どう考えても義理じゃない反応なのだが……生憎とナギはアレなので、それに気付かない。
 むしろ「やるね、亜子。いつの間に そんな高等スキルを身に付けたんだ!?」とか考えてる始末だ。

「いや、別に迷惑じゃないよ。むしろ、嬉しいさ。だから、何でオレなんかにくれるのか わからなかったんだけど?」

 どうやら、今度は持ち上げてから訊いてみることにしたようだ。ナギはナギなりに少しは考えたようである。
 だが、どう考えてもフラグを立てているようにしか見えないので、所詮は浅知恵としか言えないだろう。
 ちなみに、本人はまったくの無自覚である。むしろ、意識的に立てようとすると崩れるのがナギのクオリティだ。

「――ッ!! そんなん自分で考えてください!!」

 当然のことながら、亜子は吐き捨てるように言うと、その場でターンしてダッシュで離脱して行った。
 その鮮やかなターン & ダッシュはオリンピックを狙える と確信できるくらいだったらしい。
 と言うか、未だに「何であんなに顔を真っ赤にしていたんだろ?」とか考えるナギは どうしようもない。

(だって、あれだとテレているように見えるじゃん? 亜子がオレにテレる要素など皆無でしょ?)

 仮定が間違っていないのに何故か間違った結論に達する辺りが実にナギらしいと言えるだろう。
 更に言うなら「それとも、無自覚で怒らせちゃったのかな?」とか考えるのも実にナギらしい。
 自分に身の覚えがないことでも何故か相手が怒ることが多いので、そう言う発想になるようだ。
 まぁ、傍から言わせてもらえば「あれだけやらかして何で自覚してねぇんだよ?」とツッコミたいが。

(怒らせちゃったのなら……謝罪 代わりにホワイトデーで奮発して置けばいいかな?)

 何が悪いのかわかっていないのに謝っても意味がないことくらい、ナギとてわかっている。
 だから、謝罪代わりにプレゼントで誤魔化そうとしているのだろうが……それは明らかにフラグだろう。
 もちろん、本人に自覚は まったく無い。むしろ、自覚がないからこそ より性質が悪いのである。

(まぁ、とりあえず、期せずして亜子からチョコを貰えたので、これでオレはネギに頼る必要がなくなった、と言う訳だね)

 亜子とのことは考えても仕方がない。そう結論付けたナギは、これからの方針を考える。
 そう、これでチョコゼロは回避できたので、もうネギのチョコに期待する必要はない。
 つまり、ネギと遭遇する必要がなくなった訳で、むしろネギと遭遇するのは避けるべきだ。

(ってことで、ネギとエンカウントしちゃう前に、このルートから外れて別の帰り道で帰宅しよう!!)

 ナギがそう結論付けて脇道に入ろうとしたところで「ナギさ~~ん♪」と呼び掛けられたのは言うまでもないだろう。
 まぁ、今度こそネギだと思われるので、タイミングの悪さ(ある意味ではタイミングの良さ)に泣いてもいいだろう。
 お約束は守る と言うか、期待を裏切らないのがナギなのである。もちろん、本人が望んだ方向ではないのは言うまでもない。



************************************************************



Part.03:神蔵堂ナギの交友関係


「って、美空?」

 ナギが振り向くと、そこには茶髪をショートカットにした、邪な笑顔の似合う少女「春日 美空(かすが みそら)」が居た。
 ちなみに、その隣には赤眼で長い黒髪をした、無表情が似合う褐色肌の幼女「ココネ・ファティマ・ロザ」も居たりする。
 まぁ、つまりシスターペアである。いや、現在はそれぞれの制服を着ているので、シスター服は着ていないが(実に残念だ)。

「いっやぁ~~、モテモテですなぁ? ナ・ギ・さ・ん♪」

 美空がニヤけたツラをして訳のわからないことを言って来る。恐らく、ナギと亜子の遣り取り見て、妙な誤解をしたのだろう。
 そう判断したナギは、美空のテンションを下げるために思いっ切り冷ややかに「はぁ? モテる? 誰が?」と反応したのだが……

「……いや、アンタが」

 テンションを下げること自体は成功したが、残念ながら それだけでなく「ダメだコイツ」と言う目で見られる結果に終わった。
 もちろん、事態を理解していないナギが「今、オレをバカだと思ったっしょ? でも、バカは そっちなんだよ?」とか、
 あまつさえ「だって、亜子だよ? 亜子がオレにデレる訳がないじゃないか?」とか考えてしまうのは言うまでもないだろう。

 と言うか、ナギは義理チョコすら期待していなかったので事態を理解できる訳がないのだ。実に残念なことに。

「はぁ、バカも休み休み言えっての。世の中、義理と人情なんだよ?」
「うわっ!! マジで言ってんスか? アンタ、マジで残念っスね!!」
「ハァ? ナニイッテンノ? 亜子に迷惑だから妙な勘違いはダメだよ?」

 ナギとしては「オレと妙な勘違いをされた亜子に悪い」となるらしい。ある意味では そっちのが酷いと思う。

「まぁ、それはともかくとして……その手にあるのって、バレンタインのチョコってことでいいの?」
「もちろん、言うまでもなく義理っスからね? 勘違いしちゃダメっスよ、モテモテのナギさん?」
「いや、美空から本命を貰ったら反応に困るから。それに、さっきから『ナギさん』ってキモいから」

 所在なさ気にヒラヒラさせていた直方体をナギが指摘すると、美空は軽口を叩きながら渡す。もちろん、ナギは軽口を叩きながら受け取る。

 実は、美空は内心で受け取ってもらえたことにホッとしていたのだが……残念ながら、ナギには伝わっていない。
 むしろ、ナギは「いつもは『ナギ』って呼んでるのに、何で今日は『ナギさん』って呼ぶんだろ?」と疑問でいっぱいだ。
 それが亜子への対抗心からなのは傍から見ると明白なのだが、残念ながら(と言うか、ナギが残念なので)気付かない。

 ちなみに、二人の会話から おわかりだろうが、ナギと美空は悪友と言っていいレベルの関係なのである。

「うわっ!! ヒドッ!! って言うか、和泉は『ナギさん』って呼んでるんだからいいじゃん!!」
「亜子はカワイイから許す。でも、美空はナマイキだから許さない。これって正論でしょ?」
「え~~!? 何スかソレ!? ソレはオーボーだよ!! オーボー!! ナギのオーボーヤロー!!」

 ちなみに、ナギは照れ隠しをしている訳ではない。素である。

 繰り返しになるが、ナギは「いや、何でそこで亜子が引き合いに出て来るのさ?」とか思っちゃう残念さなのである。
 もともと好意に鈍かったのだが、そこに「好意を持たれる訳がない」と言う思い込みが加わって磐石になったのだ。
 嫌な方向性の磐石だが、揺るがない精神と言う意味では磐石だろう。それが悪い意味で揺るがないので救いが無いだけだ。

 それはともかく、今はナギの残念さよりも美空の隣でチョコを差し出しているココネの方が大事だろう。

 実を言うと、ココネは美空がチョコをヒラヒラさせている時から無言でチョコを差し出していたのである。
 それなのにナギが美空ばかりを相手していたため、少々――いや、かなり不貞腐れていたのだった。
 だが、ナギは後悔していない。何故なら、頬を「ぷくー」と膨らませて不満を表しているのが可愛いからだ。

(ヤバい!! これはヤバい!! 可愛過ぎてマジでヤバい!!)

 むしろ、お前の頭がヤバいだろう とツッコミたくなるレベルでヤバいを連呼するナギ(もちろん内心で)。
 だが、その気持ちはわからないでもない。それくらいにココネの可愛さは天元突破しているのだ。
 その可愛さは、ココネさえ味方をしてくれるなら世界中に喧嘩を売っても構わないレベルの可愛さだ。

「ありがとね、ココネ」

 幸せな気持ちで満たされるナギだが、いつまでもココネを放置して置く訳にはいかない。
 確かに頬を膨らませている様は可愛いが、やはりココネの表情で一番 可愛いのは笑顔だ。
 そのため、ナギはココネに礼を言いながら その頭を撫でる(ちなみに、ナデポ狙いではない)。

「えヘヘ……」

 ココネが嬉しそうに笑う。それは、チョコを受け取って貰った喜びと頭を撫でられる心地よさからだろう。
 もちろん、その笑顔は天使と言っても差支えがない。心に無限の栄養をくれる、素晴らしい笑顔だ。
 しかも、その頭はナギに「相変わらず、極上の絹 以上の肌触りだねぇ」と言わしめる程の撫で心地らしい。

「って、アタシは無視かよぉ?!」

 何か「スギャァン!!」と言う効果音が似合うリアクションを美空がしているが、気にしなくてもいいだろう。
 いや、こんなノリのいいリアクションをしてくれるのは美空くらいなので、非常に貴重な存在なのだが……
 そんなことは口が裂けてもナギは言わないので(何故なら、美空が調子に乗るから)気にしなくてもいい筈だ。

 だが、さすがに放置は不味いので、ナギはリアクションを軽くスルーして別の話題を振る。

「ところで、美空のことだから中身に何か仕掛けてるんだよね?」
「エ? チ、チガウヨ? ナニイッテンノ? ソンナワケナイジャン」
「はぁ……ホワイトデーは楽しみにして置いてね(仕返し的な意味で)」
「うっわ~~、それって愛の告白っスか~~? 困っちゃうっスねぇ?」
「それならば、オレの愛は痛みを伴うんだぜ? とか言って置こう」
「じゃあ、その痛みに耐えるのがアタシの愛っス、とか言って置くっス」

 恐らくタバスコやワサビやらを仕込んでいるのだろう。だが、逆にそれで安心してしまうナギは末期かも知れない。

「じゃあ、ココネ。後でコイツの弱点とか教えて」
「……うン、いいヨ(コクン)」
「ちょっ、ココネー!? まさかの裏切りっスか?!」
「うんうん、ココネはいいコだな~~」
「えヘヘ~~(ニヤリ)」

 ナギは空気を読める『いいコ』なココネの頭を更にグリグリと撫でてやる。

 ちなみに、嬉しそうに してやったり的な笑みをしているココネだが……
 きっと美空をイジメられたことに対する満足感からのものだろう。
 何故なら、ココネは美空が好きなクセに偶に美空をイジメるからだ。

 本人が自覚しているかは かなり微妙だが、ココネは なかなかのSっ娘なのである。



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Part.04:二度あることは三度ある


「ナギさん!!」

 さすがに「今度こそネギかな?」とナギが振り返ったら、今度は聖ウルスラ女子高等学校の制服を着た「高音(たかね)・D・グッドマン」だった。
 高音はサラサラの金髪が特徴的な美人で、黙っていれば文句は無いのだが……喋ると残念――じゃなくて、頭が堅いのが露呈する女子高生だ。
 どうでもいいことだが、ナギは「JK」と見た時、普段は「常考」を連想するが、アダルトな迷惑メールだと「女子高生」を連想するタイプである。

「……あれ? 何か用ですか?」

 精神年齢を考えるとナギの方が年上なのだが、身体的にはナギの方が年下となるので、
 ナギは高音を呼ぶ時は「高音さん」と呼んでいるし、話す時も敬語を使って話している。
 最初は慣れなかったが、慣れてしまえば どうと言うことはないらしい。慣れとは恐ろしい。

「こ、これを渡して置きますわ」

 高音は何か言いた気だったが、簡潔な言葉で可愛くラッピングされたチョコを差し出すに止める。
 恐らく「義理ですから勘違いしないでくださいね」とか「普段の御礼のようなものですわ」とか、
 もしくは「どうせ貰えないだろうから恵んで差し上げますわ」とか言うつもりだったのだろう。
 少なくとも、ナギはそう判断している。実際は違うと思うが、ナギがそう判断しているので仕方ない。

「あ~~、ありがとうございます」

 そう判断しながらも、ナギは礼を言って受け取って置く。受け取らないと不機嫌になりそうだからだ。
 何故か「義理」と書いて「本命」と読ませそうな気配が漂ってるように見えるが、きっと気のせいだろう。
 何度も言うがナギは残念なので、惜しい想定はするが出す結論が残念なのだ。本当に、残念なことに。

「あの、センパイ。私からのも受け取っていただけますか? いつもお世話になっている御礼です」

 高音の用件が終わったと見たのか、高音の脇に居た「佐倉 愛衣(さくら めい)」も可愛くラッピングされたチョコを渡す。
 ちなみに、愛衣は茶色い髪をツインテールにした大人し目な感じの後輩で、ナギを「センパイ」と呼ぶ癖がある。
 何でセンパイと呼ばれるようになったかは、出会った経緯と共に後々語るので ここでの説明は割愛させていただく。

「うん、ありがとう……」

 ナギに愛衣を世話をした記憶は一切無いが、それなりに迷惑を被っているのでツッコまずに有り難く受け取ったらしい。
 ちなみに、迷惑と言うのは(何を勘違いしたのかナギは知りたくもないが)高音がやたらとナギに絡んで来る件である。
 きっと「私の『妹』に手を出すんじゃないわよ!!」と言う『お姉さま』的な思考だろう。ナギはそう判断している。

(一応は弁護して置くけど……オレ、愛衣だけでなく今までチョコを貰った誰にも手を出してないからね?)

 そもそも、ナギは原作キャラと必要以上に仲良くなろうとはしていない。むしろ、他人のままでいたい とか考えているくらいだ。
 愛衣とのことだって、愛衣と知り合った当初は原作キャラだと気付かなかったので普通に仲良く先輩・後輩関係を築いていたのだが、
 高音とも知り合った段階で「あれ? この二人って『脱げ女コンビ』じゃない?」と気付き、それからは距離を置くようになった始末だ。
 気付くのが遅いうえに距離の置き方が中途半端なので結果的にフラグは立っているのだが……当然ながら、本人は気付いていない。

「で、では、バイトがありますので、これで失礼します……」

 愛衣は用件(チョコ渡し)を終えるとサクッと その場を去った。ついでに高音も「私も忙しいので失礼しますわ」と消えて行った。
 それらを受けたナギが「何でオレにチョコを渡す女のコは みんなヒット & アウェイなんだろう?」と本気で頭を抱えるのは言うまでもない。
 しかも「そんなにオレの傍に居たくないの? むしろ、オレの傍はイタイってことなの?」と結論を出すのも、言うまでもないだろう。

(しかし、予想以上にチョコを貰えたなぁ。こりゃ、ホワイトデーが怖いなぁ)

 ナギは男の矜持的な意味で『倍返し以上(できれば三倍)』を心掛けているため、ホワイトデーは恐怖以外の何物でもなくなった。
 いや、贈り物に値段を付けるのは如何なものかとは思うので、厳密に三倍返しができる訳ではないのだが……まぁ、要は心意気だ。
 一律で3000円くらいの物を返せば角は立たまい。だが、それでも現時点で5人から貰っているので、1万5千円は必要になる計算だ。
 チョコを貰えるのは嬉しいのだが、返すことを考えると少しションボリして来る。何故なら、このままでは資金不足になるからだ。

(はぁ。面倒臭いけど、仕方が無いからバイトでもするかなぁ……)

 返す額を下げれば済む話なのだが、それはナギの男としての矜持が許さないらしい。残念な男だが、譲れない部分は持っているのだ。
 だが、バイトのために求人情報誌を求めて本屋へ向かい、その途中で「ナギさーん」と呼ばれたのは、最早 皮肉としか言えないだろう。
 と言うか、ネギを回避しようとしていたことをスッカリ忘れて寄り道(本屋に行く)してしまうナギのフラグ建築能力に脱帽すべきだろう。

 自棄になったナギが「今頃になって思い出しても遅いって話だよね☆」と自虐に走ったのは無理もない話である。



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Part.05:素朴な疑問


 結論から言うと、先程の呼び掛けは「宮崎(みやざき)のどか」と、その親友である「綾瀬 夕映(あやせ ゆえ)」だった。

 もちろん、呼び掛けられた理由は今までの女のコ達と同じで、バレンタインのチョコ(もちろん義理とナギは判断)を渡すためだ。
 いや「本屋に向かっていたから、本屋ちゃんが現れたんだな?」と言うツッコみたいのもわかるが、そこは抑えて欲しい。
 既にツッコんだから、そのツッコミは もう充分だ。何度もツッコむ様なネタではない。少なくともナギはそう思っている。

(って言うかさ、あのコ達って こんなに積極的だったっけ?)

 ナギの頭を占めているのは疑問――のどか と夕映が(たとえ義理であったとしても)男にチョコを渡す、と言うことへの疑問だ。
 特に、のどかは極度の恥ずかしがり屋で男性恐怖症の気があったため、ナギとしては「チョコをくれるなんて有り得ない」のである。
 まぁ、それなりに心当たりはある。原作の様に本を運んでる時にバランス崩して落下しそうになったのを助けた と言う心当たりが。
 だが、その程度のことでフラグが立つ程 世の中は甘くない――つまり チョコが貰える訳がない。ナギはそう考えているのである。

(いや、もしかしたら、助けた後にマニアックな本を探してもらったり、マニアックな本の話題で盛り上がったりしたせいかも?)

 例の如く最初の頃は のどかを原作キャラと認識していなかったため、普通に仲良くなってしまったことはある。それは認める。
 だが、原作キャラだと認識してからは、それなりに距離を置いたつもりだ(まぁ、せいぜいが遭遇を避けた程度だが)。
 いや、何度か無視しようとナギも努力はしたのだが、それでも一生懸命に話し掛けて来るのを無視するなんてできなかったのだ。

(それにしたって、男が苦手っぽい のどか からチョコを貰える程に仲良くなったつもりはないんだけどなぁ)

 それは夕映も同じだ。夕映とは のどかを介して知り合い、哲学的な話題で盛り上がる程度の関係にはなった。
 クラスメイト達とは話せないようなネタでも応じてくれるから、ついつい話すのが楽しかったのは認める。
 だが、それでも夕映は原作キャラだと気付くのが早かったので、のどか以上に距離を置いたつもりなのだ。

(う~~ん、どこで どう間違えたんだろう?)

 もしかしたら、いつの間にか のどか & 夕映フラグが立っていたのかも知れない。ナギにしては珍しく的を得た発想である。
 しかし、残念なことに「あ、でも、オレってネギ君(原作のネギのこと)と全然キャラ違うよね?」と直ぐに発想を潰してしまうが。
 まぁ、確かに、ナギとネギ君は違う。ナギはネギ君と違って、全然 頑張ってないし、ひたむきさとか純真さとか とは無縁だ。

(でもね? 負け犬には負け犬としての生き方ってものがあるんだよ? って、そうじゃないね)

 ネギ君との比較で軽く落ち込んだナギだが、今はそんな場合じゃない。疑問の解消の方が重要なので、慌てて意識を切り替える。
 ナギとネギ君では比べるだけ両者に失礼な訳だから、フラグに関しては考えるべきではないだろう。そうナギは判断したのだ。
 そのため、フラグとは別の側面でチョコを貰える可能性を考えることにしたナギは、ふと「なんだ、簡単じゃないか」と答えを得る。

 それは「二人にとってオレは数少ない男友達だからチョコを渡しただけで、特別な意味などないに違いない」と言う、実に残念な答えだった。

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 …………………………………………………………

 そんなこんなで、のどか・夕映の問題を自己完結したところで、またまたナギは呼び掛けられた。

 今度ナギを呼び掛けたのは、裕奈・アキラ・まき絵の三人組で、当然ながらチョコを渡すためだった。
 この三人の説明だが……まぁ、この三人に亜子を含めて運動部四人組と説明した方が わかりやすいだろう。
 いや、亜子を説明する時にも四人組として紹介したかったのだが、他の三人が登場していなかったのだ。

 では、個別に見ていこう。裕奈は「明石 裕奈(あかし ゆうな)」と言う元気過ぎるコである。

 ちなみに、裕奈は最近やたらと乳が発達して来ているようで、一部から「即席ホルスタイン」と呼ばれているらしい。
 実に揉み応えがありそうな乳だが、いくらナギでも そんなセクハラ行為はできないので、見るだけで我慢しているようだ。
 ただ、偶に「何か視線が犯罪臭いんだけど?」と言われるので見るだけでもセクハラになっている気がしないでもないが。

 次にアキラだが、アキラは「大河内(おおこうち)アキラ」と言う、大人しくて優しいコだ。

 だが、そのパワーは侮れない。原作18巻で武道四天王から一目置かれるシーンがあったくらいだ。
 それと、長い黒髪をポニーテールにしているのが印象的で、うぶひなの素子に似ているコでもある。
 ちなみに、水泳部に所属しており、部活中は競泳用の水着を着ているのかと思うと少しドキドキだ。

 最後に まき絵だが、まき絵は「佐々木まき絵(ささき まきえ)」と言う、ちょっと おバカなコだ。

 原作と違って新体操部ではなくフィギュアスケート部に所属している。まぁ、おバカなところは変わらないが。
 もちろん、貶している訳ではない。愛すべき おバカさんとして、親しみを込めて おバカと表現しているだけだ。
 ちなみに、ナギ曰く「まき絵くらい おバカな方がオレとしては好ましい気がしないでもないなぁ」とか何とか。

 ……さて、そんな三人だが、ナギにチョコを渡す際「亜子からチョコを受け取ったかどうか」を確認していたらしい。

 実に友達想いで、下手をすると「ある意味でバレバレじゃねーか」と言いたくなるくらいの御節介なコ達である。
 だが、やはり、ナギには通じなかった。ナギは「友達想いである」と受け止めただけで、バレなかったのである。
 そう「きっと、亜子が義理でもチョコを渡すのにテンパっちゃう様なコだから心配したんだろう」と解釈したのだ。
 むしろ、バラす勢いで確認したのに敢え無くスルーされた三人に同情してもいいかも知れない。いや、本当に。

(しかし、何だかんだで もう10個かぁ。いやぁ、久々に二桁の快挙だねぇ)

 チョコの数を確認したナギは「今年はゼロかも知れない」と懸念していたのが嘘のような快挙に喜んでいた。
 まぁ、冷静になって考えてみると、その内の70%は(ナギが危険視している)ネギクラスのコからだが。
 と言うか、ココネや高音や愛衣も魔法関係者なので、ある意味で危険率100%である。実にナギらしい結果だ。

(……あっれー? おかしいなぁ?)

 ナギとしては、可能な限りネギクラスのコとか魔法関連のコとかとは仲良くならないようにしていた。
 たとえ最初は気付かずに仲良くなったとしても、途中で気付いたら それとなく距離を置いていた。
 それなのに、何故かチョコをくれたのが その両者のみだった。どれだけ裏目に出ているのだろうか?

(おっかしいなぁ? 何で こんなことになってるんだろ?)

 ナギはナギなりに、今日チョコをくれた全員とは(危険フラグを伴う相手だと気付いてからは)極力関わらないようにしていた。
 まぁ、挨拶とか軽い会話はしていたが……それでも社交辞令に止めて置いたので「ただの知り合い」を保ったつもりなのだ。
 もちろん、好感度が上がるようなことはしたつもりもない。それなのに、何故にチョコを貰えたのか? ナギの疑問は尽きない。

「あの……ナギさん!!」

 ナギが答えの出ない問いに頭を抱えていると、唐突に呼び掛けられた。
 何だか とても聞き覚えのある声だが、きっと今度もネギではないだろう。
 そう思ってナギが振り返ると……なんと、そこにはネギが居たのだった。

 ナギが思わず「てへ♪ 今度こそ やっちゃったぜ♪」と、大分 自暴自棄になったのは言うまでもない。



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Part.06:ネギによるナギの観察録


 バレンタインデー。それは、ちょっとだけ特別な一日……

 まぁ、バレンタインそのものは知っていたのですが、それはあくまでもイギリスでの風習のことでした。
 ですから、日本での風習(女性から意中の男性へチョコを贈る)については最近 知ったばかりなんです。
 両国の文化の違いに驚きましたが、それよりも いいことを知った喜びの方が大きかったですね。
 それで、日本での風習を教えてくれたのはルームメイトであるコノカさんなんですけど……
 なんとコノカさんは『手作りチョコ』の作り方も教えてくれたうえ一緒に作ってくれたんです。

 そう言う訳で、今日は この『手作りチョコ』をナギさんに贈ろうと思います。

 あ、もちろん『本命』ではなくて『義理』ですからね? 勘違いしちゃダメですよ?
 ナギさんには普段お世話になっていますからね、渡さないのも不義理と言うものです。
 ですから、特別な意味などありません――って、ボクは誰に言い訳をしているんでしょうか?

 ま、まぁ、そんなことは置いておくとして……ボクは目的を達成するために今日も「ナギさんの帰り道」に来ました。

 ここは、偶然を装ってナギさんに会うために使用していたボクの秘密の場所です。
 ナギさんが必ず通る場所なので、今日も偶然会ったことにしてチョコを渡す予定です。
 ……完璧な計画ですよね? もう、完璧過ぎて自分が怖いくらいですよ。

 って、あれ? ナギさん、誰かと話してる?

 えっと……あの人は、クラスメイトのイズミさん、だったかな?
 お二人ってお知り合いだったんですねー。知りませんでしたよー。
 って、そう言えば、ボクってナギさんのこと、よく知らないかも?
 いつもボクの話ばっかりしていて、ナギさんの話って聞いてないかも?

 …………ショックでした。

 ボクは独り善がりだったんです。ナギさんにボクのことを知って欲しいって気持ちだけが先行していました。
 ナギさんにはナギさんの都合があるので、ナギさんのことを知らずにナギさんに近づくなんて失礼だったんです。
 って、そう言うアレじゃありませんよ? お友達としてってことですからね? 勘違いしちゃダメですよ?

 と言うことで、もうちょっと お二人を観察――じゃなくて、様子を窺うことにしましょう。

 って、あれ? あれれ? イズミさん、ナギさんにチョコを渡してる?
 もしかして……お二人は恋人だったりするんでしょうか!?
 ど、どうしましょう? 今まで まったく想定してませんでした!!

 確かに、ナギさん程の男性、他の女性が放って置く筈がありません。

 それなのに、ボクは何を調子に乗っていたんでしょうか?
 いつかナギさんがボクを振り向いてくれるなんて……
 そんな夢みたいなこと考えていたなんて、バカみたいです。
 いえ、振り向いてくれる と言うのは、そう言うアレじゃなくてですね?

 って、あれれ? イズミさん、ちょっと怒って帰っちゃいましたよ?

 どうしたんでしょうか? もしかして、ケンカでもしたんでしょうか?
 じゃあ、今がチャンスかも――って、人の不幸を喜ぶなんて!!
 ……ボクは最低です。人の不幸を喜ぶなんて、許されないことです。

 で、でも、今がナギさんにチョコを渡すチャンスであることは変わりませんよね?

 って、違いますよ? 傷心のナギさんに優しくしてポイント稼ごうとか そんなんじゃないですよ?
 チョコを渡すタイミングになった と言う意味でのチャンスのことですから、勘違いしちゃダメですよ?
 ほら、ボクは義理で渡すんですから、ナギさんが誰かと お付き合いしていても問題はない訳ですし……
 それに何よりも、他の方と一緒の時に渡すのは、ちょっと恥ずかしいですから、ね? ええ、それだけです。

 だから、今がチャンスなんです!! ……そう、思ったんですが、ナギさんに声を掛けようとしたところで先を越されてしまいました。

 えっと、さっきの人って、確かクラスメイトのカスガさんだったと思うんですけど……
 隣にいた人は誰でしょうか? カスガさんの妹さんでしょうか? あ、でも似ていませんでしたね?
 もしかしたら、ご近所さんかなんかで、お二人は仲良しさんなだけかも知れませんね。

 って、問題はそこではありませんね? ええ、わかっています。

 大切なのは、ナギさんはカスガさんよりも隣の人を重視していたってことです。
 しかも、隣の人は、見たところボクと同じくらいだったってことも重要なことです。
 そうです!! つまりナギさんのストライクゾーンにはボクも含まれているってことです!!
 あ、身長とか年齢とかって意味ですよ? 決して、胸囲ではありませんからね?
 だって、ボクには まだ将来がありますから!! いつかは「しずな先生」にだって追い付けます!!

 って、そうじゃないですよね? また話が脱線してました……

 え~~と……とりあえず、ナギさんは小さくてもOKってことがわかったんですよね?
 って、あれ? 話が胸に戻ってますね? 元々は、ナギさんの好みの話題でしたのに……
 あ、でも、冷静になって考えてみると、別にボクはナギさんに好かれなくてもいいと思うんですよ。
 大事なのはナギさんの傍にいることですので、ナギさんの傍にいられれば他のことは どうでもいいんです。
 だから、ナギさんの好みを そこまで気にする必要はないとも思うんです。少し寂しいですけど。

 って、あれ? でも、それってナギさんの都合を考えていないってことになりますね?

 よくよく考えると、ボクの勝手な都合をナギさんに押し付けるのは間違っている気がします。
 いえ、むしろ、ナギさんの都合を考慮したうえでボクの望みを叶えるべきなのではないでしょうか?
 って、違いますからね? 別に恋愛的な意味で言っているのではありませんからね?
 敢えて言うなら、ナギさんを『お兄さん』のように思っているだけですからね? 勘違いはダメですよ?

 って、あれれ? でも、それはそれで何かが違うような気もしますねぇ。

 ま、まぁ、深く考えちゃいけませんよね?
 考えるのではなくて、感じるべきですよね?
 よし!! もう少しだけ様子を窺いましょう!!

 って、思ったんですけど……あぅぅな状況です。

 今度は全く知らない人達から貰ってました。しかもウルスラの生徒さんまでいました。
 ……ナギさんって、交友関係が広過ぎです。あ、いえ、別に交友関係が広くてもいいんですよ?
 だって、冷静になって考えてみると、ボクも その中の一部でしかない訳ですからね。

 ですが、ボクだけを見て欲しい と思うのは、ボクのワガママなんでしょうか?

 って、ボクは何を言っちゃっているんでしょうか? 自分でもビックリです。
 だって、今のって ものすっごく「恋する乙女」なセリフじゃないですか!!
 ボクは魔法使いの修行で手一杯ですから、恋なんてしている暇はありません。

 そもそも、ボクがナギさんに持っている感情は、あくまでも「お父さんの代償心理」なんです。

 ですから、持ったとしても それは「家族に対する愛情」の筈ですから、恋愛感情の筈がないんです。
 それに、ボクには恋なんて まだ早いってネカネお姉ちゃんもアーニャも言ってましたから……
 だから、恋なんかじゃありませんからね? そう信じていただけるとボクは信じています。

 で、では、そう言うことで、ナギさんの様子を もうちょっとだけ窺おうと思います。

 ちなみに、今度はミヤザキさんとアヤセさんが渡してました。
 しかし、ミヤザキさんは男性恐怖症って聞いていましたし、
 アヤセさんは男性にチョコを渡すタイプじゃないと思っていたので、
 お二人がナギさんにチョコを渡したのは とても意外でしたねぇ。

 ……ナギさんは特別ってことでしょうか?

 でも、ナギさんが特別なのはボクも一緒です!! その点では他の誰にも負けるつもりはありません!!
 って、ボクは何を張り合っているんでしょうか? 最早 自分でも自分が何をしたいのか意味不明です……
 きっと、これは「もうチョコを渡しちゃえばいいんじゃない?」って言う誰かからの啓示なんでしょう。

 ですので、アカシさんとオオコウチさんとササキさんがいたような気がしましたけど、今は気にしません。

 って言うか、最早今のボクには気にしている余裕なんてないんです。
 今のボクの頭にあるのは「ナギさんにチョコを渡す」ことだけです。
 今日はそれで充分です。いえ、それだけできれば充分過ぎるんです。
 だって、今日はたくさんのナギさんが見られましたからね、充分過ぎです。

 御蔭で「ボクが知っているナギさんは、ナギさんを構成する『すべ』ての内からすれば一部に過ぎない」って気付けましたから。

 つまりは、ボクはまだまだナギさんを知らないってことですから。
 そして、だからこそ、これから知っていけばいいんですから……ね?

 ってことで、そろそろ突撃します!!



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Part.07:運命は覆らない


「……やぁ、ネギ」

 ナギは震えそうになる声を必死に抑えて、クールを装ってネギに答える。
 最早 言うまでも無だろうが、ナギは内心でパニック状態に陥っている。
 そのため、一見クールに見えるが実際はカオスなんてものではない。

(さて、どうする? どうやって この絶望的な状況を切り抜ける?)

 ここでネギのチョコを受け取ると、ホワイトデーの時に返さなくてはならないだろう。ナギの矜持的な意味で。
 そして、恐らくはホワイトデーの時にフラグ直結のイベントが発生するに違いない。無論、それは避けるべきだ。
 では、それを避けるためには どうしたらいいのか? 答えは簡単だ。ここでチョコを受け取らなければいい。
 だがしかし、チョコを受け取らないにしても、チョコをさりげなく断るなんて芸当がナギにできるだろうか?
 ナギは割と口が達者なのだが、根本的に残念なので大事な部分で失敗する。そして、ナギの望まない結果になるのだ。
 それ故に、チョコを渡される前に この場から離脱をするのがナギでも実現可能な対策だろう。多分、きっと、恐らくは。

 そんな感じでナギが現状を打破しようと高速で思索に耽っていると、ネギは可愛くラッピングされたチョコをナギに差し出して来る。

 しかも「あの……チョコ、受け取ってください!!」とストレート過ぎる言葉も添えたので、最早 受け取るしかない流れだ。
 いや、さすがにナギもこれは想定外だった。名前を呼び合っただけで渡されるとは、いくら何でも思わなかったのだ。
 ナギの出方を窺ったりしたり渡すのに照れたりしたりして、もう少し何らかのクッションがある と思っていたのである。

(……はぁ、仕方が無い。こうなった以上、もう受け取るしかないね)

 どう考えても、受け取る以外の選択肢は無い。いや、心を鬼にすれば「ごめん、受け取れない」とか言えるが、いくらナギでも それは無理だ。
 それに、よく考えてみれば、ネギと出遭ってから何だかんだで一週間が経つが、今のところネギが魔法関係を匂わせるようなことは一切なかった。
 そう、あれだけナギが脅えていた「ネギと関わる → 魔法と関わる → 死亡フラグが立つ」と言う図式がナギの被害妄想かも知れないのだ。
 ならば、ネギが一生懸命に渡そうとしているのだから受け取るしかないだろう(繰り返しになるが、差し出された段階で その選択肢しかないが)。

「…………ありがとね」

 なので、ナギは礼を言いいながら、ネギの頭を撫でてやる。もちろん、優しげに微笑むことで「褒めている」意思表示も忘れない。
 と言うのも、実はと言うとネギは頭を撫でられた経験が あんまり無いようで、ナギが頭を撫でると非常に喜ぶのである。
 それがわかってからナギは、褒めたりする時は必ずネギの頭を撫でてやることにしている。僅か一週間だが、それなりのことはあったのだ。
 まぁ、ナギに撫でられるから喜んでいる と言う側面が強いのだが……ナギはそれに気付いていないので、純粋な気持ちで撫でているが。

(一応 言って置くけど……決してナデポやニコポを狙っている訳じゃないからね? って言うか、その程度でポする女のコなんていないからね?)

 態々わかりきっていることを敢えて言うのは、心に後ろ暗いところ(自覚)があるからだろうか?
 どうもナギが何かを語ると「語るに落ちている」気がしてしまうため、ついつい邪推してしまう。
 だが、ここは敢えて気にせず、ナギを信じて置こう。ナギは残念な人間だが、悪い人間ではないのだ。

 ……………………………………
 ………………………………………………
 …………………………………………………………

 さて、そんなこんなでナギのバレンタインデーは喜んでいいのか困っていいのか微妙な結果に終わったのだった。


 


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オマケ:差出人不明のチョコレート


 ナギが自宅に戻ると、差出人不明の荷物が届いていた。

 それを不審に感じたナギは「開ければわかるだろ」と判断し、開けてみることにした。
 死亡フラグを気にしているクセに爆発物とかの可能性を考えないのがナギなのだ。
 まぁ、荷物の中身は(ご想像通り)チョコレートだったので、危険物ではなかったが。
 とは言え、荷物にはチョコしか入ってなかったので、結局 差出人は判明しなかった。

「う~~~ん、誰からだろう?」

 自慢ではないが、ナギには まったく心当たりが無い。悲しいくらいに。
 ただでさえ今日貰ったコ達からも貰えると考えていなかったのだ(ネギ除く)。
 他に貰える当てなど、これっぽっちも思い付く訳がないだろう。

 ……だから、思い浮かんだのは『那岐』のことだった。

 今日貰ったコ達はナギへ贈ったことがわかっている。ナギがナギとして活動した半年の間に知り合ったコ達だからだ。
 だが、ナギがナギになる前――つまり那岐だった頃に知り合った相手はナギにはわからない。わかりようがない。
 もしかしたら、那岐ならば相手のことがわかったのかも知れない。無記名でも相手が判るような存在が那岐にもいたのかも知れない。

 そう考えたナギは、差出人不明の相手へ何とも表現できない想いを抱く。

 那岐に贈られたのならば那岐が相手へ応えるべきであり、ナギでは相手へ応えることはできない。
 それでも何かを伝えるとしたならば「ナギは存在するが、那岐は存在しない」と伝えることしかできない。
 だが、それは伝えるべきことなのだろうか? それとも、伝えない方がいいことなのだろうか?

 ナギは那岐の交友関係が希薄であったために、これまで「命題」に突き当たってはいなかった。

 「自分は神蔵堂 那岐であるが、『那岐』とは別人の『ナギ』であり、言わば『那岐の偽者』に過ぎない」と言う前提の下、
 「那岐を望む者に那岐の死を伝えるべきなのか? それとも、那岐の振りをして那岐の死を隠すべきなのか?」と言う命題に。

「……まぁ、なるようになるでしょ」

 ナギはその問題を棚に上げ――ではなくて、心の奥に抱えて進むことを決意した。
 考えても仕方がないことは考えない。そして、後で後悔する。それがナギの生き方なのだ。

「それに、差出人不明ってことはストーカーって可能性もあるかも知れないもんね?
 もし そんなんだったら何も答えてやる必要はないから考えるだけ無駄だって、うん。
 ってことで、明日は明日の風が吹くから、問題は起きてから対処することにしよう」

 ……どうでもいいが、ナギが口を開くとシリアスな雰囲気が一気に霧散してしまうのは何故だろう?


 


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後書き


 ここまでお読みくださってありがとうございます、カゲロウです。
 以前から「改訂した方がいい」と言う意見が多数あったので、今回(2012年3月)大幅に改訂してみました。


 さて、今回は「バレンタインと言う原作では触れられていないイベントをやってみた」の巻でした。

 あれ? 前回の伏線(近右衛門の悪巧み)は? と お思いになったかも知れませんが、それは次回となります。
 主人公自身が「何だ、ネギと関わっても安全じゃないか」とか油断した時にフラグが立ち塞がります。
 では、何故にバレンタインなのか? と言いますと、作品中の時間的に丁度よかった と言うのもありますが、
 主人公が無自覚に立てていたフラグがどれだけあったのか を早めに出して置こうと思ったからなんです。

 で、主人公が貰ったチョコですけど……実際は本命もいくつかあります。

 ですが、主人公は全部を義理だと思っています(ネギからの思慕も父親との錯誤だと思ってますし)。
 そう言った勘違いが主人公の美点だと思います。だって、無自覚なフラグ建築士ですからね。
 と言うか、フラグを嫌がっているので、そう言ったことに敏感だと物語が成り立たないんですが。


 ……では、また次回でお会いしましょう。
 感想・ご意見・誤字脱字等のご指摘、お待ちしております。


 


                                                  初出:2009/07/25(以後 修正・改訂)


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