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No.10422の一覧
[0] 【完結】せせなぎっ!! (ネギま・憑依・性別反転)【エピローグ追加】[カゲロウ](2013/04/30 20:59)
[1] 第01話:神蔵堂ナギの日常【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:53)
[2] 第02話:なさけないオレと嘆きの出逢い【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:54)
[3] 第03話:ある意味では血のバレンタイン【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:54)
[4] 第04話:図書館島潜課(としょかんじませんか)?【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:54)
[5] 第05話:バカレンジャーと秘密の合宿【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:55)
[6] 第06話:アルジャーノンで花束を【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:55)
[7] 第07話:スウィートなホワイトデー【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:55)
[8] 第08話:ある晴れた日の出来事【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:56)
[9] 第09話:麻帆良学園を回ってみた【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:56)
[10] 第10話:木乃香のお見合い と あやかの思い出【改訂版】[カゲロウ](2013/04/30 20:56)
[11] 第11話:月下の狂宴(カルネヴァーレ)【改訂版】[カゲロウ](2012/06/10 20:50)
[12] 第12話:オレの記憶を消さないで【改訂版】[カゲロウ](2012/06/10 20:50)
[13] 第13話:予想外の仮契約(パクティオー)【改訂版】[カゲロウ](2012/06/10 20:51)
[14] 第14話:ちょっと本気になってみた【改訂版】[カゲロウ](2012/08/26 21:49)
[15] 第15話:ロリコンとバンパイア【改訂版】[カゲロウ](2012/08/26 21:50)
[16] 第16話:人の夢とは儚いものだと思う【改訂版】[カゲロウ](2012/09/17 22:51)
[17] 第17話:かなり本気になってみた【改訂版】[カゲロウ](2012/10/28 20:05)
[18] 第18話:オレ達の行方、ナミダの青空【改訂版】[カゲロウ](2012/09/30 20:10)
[19] 第19話:備えあれば憂い無し【改訂版】[カゲロウ](2012/09/30 20:11)
[20] 第20話:神蔵堂ナギの誕生日【改訂版】[カゲロウ](2012/09/30 20:11)
[21] 第21話:修学旅行、始めました【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:08)
[22] 第22話:修学旅行を楽しんでみた【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:08)
[23] 第23話:お約束の展開【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:57)
[24] 第24話:束の間の戯れ【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:09)
[25] 第25話:予定調和と想定外の出来事【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:57)
[26] 第26話:クロス・ファイト【改訂版】[カゲロウ](2013/03/16 22:10)
[27] 第27話:関西呪術協会へようこそ【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:58)
[28] 外伝その1:ダミーの逆襲【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:59)
[29] 第28話:逃れられぬ運命【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 20:59)
[30] 第29話:決着の果て【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 21:00)
[31] 第30話:家に帰るまでが修学旅行【改訂版】[カゲロウ](2013/03/25 21:01)
[32] 第31話:なけないキミと誰がための決意【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:10)
[33] 第32話:それぞれの進むべき道【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:10)
[34] 第33話:変わり行く日常【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:11)
[35] 第34話:招かざる客人の持て成し方【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:12)
[36] 第35話:目指すべき道は【改訂版】[カゲロウ](2013/03/30 22:12)
[37] 第36話:失われた時を求めて【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:54)
[38] 外伝その2:ハヤテのために!!【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:55)
[39] 第37話:恐らくはこれを日常と呼ぶのだろう【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 22:02)
[40] 第38話:ドキドキ☆デート【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:58)
[41] 第39話:麻帆良祭を回ってみた(前編)【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:57)
[42] 第40話:麻帆良祭を回ってみた(後編)【改訂版】[カゲロウ](2013/04/06 21:57)
[43] 第41話:夏休み、始まってます【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:04)
[44] 第42話:ウェールズにて【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:05)
[45] 第43話:始まりの地、オスティア【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:05)
[46] 第44話:本番前の下準備は大切だと思う【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:06)
[47] 第45話:ラスト・リゾート【改訂版】[カゲロウ](2013/04/12 20:06)
[48] 第46話:アセナ・ウェスペル・テオタナトス・エンテオフュシア【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:20)
[49] 第47話:一時の休息【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:21)
[50] 第48話:メガロメセンブリアは燃えているか?【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:21)
[51] 外伝その3:魔法少女ネギま!? 【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:22)
[52] 第49話:研究学園都市 麻帆良【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:22)
[53] 第50話:風は未来に吹く【改訂版】[カゲロウ](2013/04/21 19:23)
[54] エピローグ:終わりよければ すべてよし[カゲロウ](2013/05/05 23:22)
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[10422] 第29話:決着の果て【改訂版】
Name: カゲロウ◆73a2db64 ID:552b4601 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/03/25 21:00
第29話:決着の果て



Part.00:イントロダクション


 引き続き4月24日(木)、修学旅行三日目。

 原作では、千草が木乃香の魔力を利用してリョウメンスクナノカミの復活を目論むが、
 ネギ・明日菜・刹那の活躍や様々な助っ人によって辛くも事無きを得ることができた。

 ……『ここ』では、どのような結末が待っているのであろうか?



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Part.01:金と銀の二重奏


「悪いが、近衛 木乃香を返してもらうぞ?」

 本山を後にしたエヴァは、木乃香の魔力を辿って木乃香の所在地――つまり、『祭壇』の位置を探り当てた。
 その際、エヴァは「やはりヤツ等の目的はスクナの復活か」と あまりにも事が予想通りに進むので苦笑していたが、
 直ぐに そんな場合ではないことを思い出し、木乃香を救出するため木乃香の影へ『転移』したのであった。

「――ッ!! な、なんやっ?!」

 エヴァの突然の出現に『儀式』――木乃香の魔力を使ってスクナの封印を解く儀式を行っていた千草が取り乱す。
 警戒していなかった訳ではないが、儀式に集中していたために周囲への警戒レベルが下がっていたのだ。
 決して「不意打ちをするのは好きだが、不意打ちをされるのは嫌い」と言うような情けない理由ではない。

「待っていたよ、『闇の福音』」

 まぁ、それはともかく……取り乱している千草とは違い、フェイトは微かな笑みを浮かべてエヴァの出現を歓迎する。
 もちろん、本当にエヴァを待っていた訳ではない。だが、エヴァの襲来を警戒していたため、驚かなかったのである。
 むしろ、「やはり今までの封印状態は擬態だったのか」と不確定要素が確定したことに軽く満足しているくらいだ。

「……そうか、待たせて悪かったな」

 エヴァもフェイトが警戒していたことを予想していたため、淡白な反応をされても特に反応を見せない。
 いや、むしろ、この程度で驚くレベルの相手に『身内』がいいようにやられたとは思いたくないくらいだ。
 つまり、東西の情勢のために進退窮まった状態でなければ動けなかったとは言え現状を許せていないのである。

  ヒュッ……

 エヴァは言葉を言い終えると同時に予備動作の一切無い『瞬動』を行い、フェイトの死角に移動を開始する。
 並の使い手ならば視認することすらできないだろうが、一流の使い手であるフェイトはエヴァの動きを捉えていた。
 それ故、フェイトはエヴァが通るであろうルートを予測し、エヴァが躱わせぬような位置に右の拳打を叩き込む。

 だが、動きを見切られることを想定していたエヴァは直前で突入コースを変更する。

 少々肉体に負担が掛かるが、不死身の吸血鬼であるエヴァには どうと言う事は無い。
 まぁ、その意味ではフェイトの攻撃を喰らっても大した効果は無いと言えるのだが、
 攻撃を喰らうと体勢が崩れて隙が生じてしまうので、避ける方を選択したのである。

  ヒュバッ!!

 突き出した右拳を避けられたフェイトの左脇腹はガラ空きだった。
 当然ながら、そんな隙を見逃すような愚かな真似をエヴァはしない。
 エヴァの鋭い貫手がフェイトの無防備な左脇腹を容赦なく襲う。

  ヒュボッ……

 だが、フェイトは残る左手でエヴァの貫手の軌道を逸らすことで攻撃の回避に成功する。
 結果、エヴァの貫手はギリギリのところで空を切り、貫手につられてエヴァの上体が少々流れる。
 通常なら この隙に攻撃するところだが、相手が相手なのでフェイトは体勢を整えることを選ぶ。

「やるね……さすがは最強の一角だよ」

 エヴァも体勢を整えたため、再び対峙し合う形になった金髪と銀髪の二人の幼女。
 一瞬の睨み合いの後、先に口を開いたのは楽しそうに笑う銀髪幼女――フェイトだった。
 その笑みは玩具を前にした子供のようであり、容貌には相応しいが状況には相応しくない。
 何故なら、今は見合っているとは言え戦闘中であること自体は変わらないからだ。
 それなのに楽しそうに笑っているフェイトは戦闘を楽しんでいるようにしか見えない。

「貴様こそ なかなかやるじゃないか?」

 それに対する金髪幼女――エヴァは皮肉気に言葉を紡いだ後、口の端を吊り上げて笑う。
 その笑みは獲物を前にした狩人のようであり、容貌には相応しくないが状況には相応しい。
 そして、続けて発せられた言葉によって、その笑みは更に戦闘と言う状況に見合うようになる。

「――まぁ、『作り物』にしては、だがな」

 先程の攻防の際、フェイトはエヴァの貫手を逸らすことで回避した。いや、逸らしてしまった と言うべきだろう。
 何故なら、エヴァの貫手を逸らすために(僅かな間とは言え)エヴァに『直接』触れてしまったのだから。
 それだけで『人形遣い』とも呼ばれるエヴァには「フェイトが人間ではない」ことを見破るなど充分だったのだから。

「――ッ!!」

 エヴァの言葉に一瞬とは言えフェイトは驚愕してしまった。当然、そんな隙を見逃すエヴァではない。
 エヴァが右手をフェイトに突き出すと、程なくして「パキィィィン」と言う高音を奏でて一条の光が出現する。
 ……その光は、エヴァが得意とする氷結系高等魔法、『断罪の剣(エクスキューショナー・ソード)』。
 その光刃に触れた固体・液体を気体へ強制的に相転移させる効果――つまり、蒸発させてしまう効果を持っており、
 蒸発させられた物質が大量に熱を奪うため光刃の周囲の温度は急激に下がるので、極低温の範囲攻撃も兼ねている。
 そして、フェイト目掛けて光刃を出現させたため、当然の如く その光刃はフェイトの左腹部を貫いていた。
 エヴァはフェイトの中心を狙ったのだが……どうやらフェイトは瞬時に攻撃を察知し僅かとは言え避けていたようだ。

「クッ!! このレベルの魔法を無詠唱で発動するとはね……」

 フェイトは苦しげに言葉を漏らす。痛覚はないが、攻撃を受けたことに精神的な苦しみを味わっているのだ。
 まぁ、並みの使い手ならば直撃を受けていたことを思えば、左腹部だけで済んだフェイトは賞賛されるべきだろう。
 とは言え、光刃は左腹部に突き刺さっていることは変わらず、二次的効果である光刃周囲の温度は急激に下がっている。
 そう、急激な温度の低下により、フェイトの『作り物』の身体は「ピキピキ」と言う音を立て徐々に凍り付いているのだ。

  スッ……

 そして、エヴァは容赦なく凍り付いて動きの鈍いフェイト目掛けて左手も突き出す。
 当然、それはもう一本『断罪の剣』を生み出すための予備動作であり、死刑宣告である。
 凍り付いた身体ではフェイトの動きに耐え切れない。直撃を避けても自滅の恐れが残る。

「クッ――!!」

 手詰まりを悟ったフェイトは瞬時に撤退を決意し「パシャッ」と言う水音と共に『水のゲート』でエヴァから逃れる。
 当然『座標指定』などしている暇がなかったため転移位置はフェイトの目視可能範囲内に限られていたが、
 幸いなことに、祭壇の周囲は湖であったので転移先には困ることはなく、それなりの距離を稼ぐことができた。
 そして、エヴァが追撃を掛けて来る前に『座標指定』を終え、長距離で『転移』を行い、今度こそ戦闘区域から離脱したのだった。

「……フン、逃げ足の速いヤツだ」

 フェイトが『ゲート』を使って千草を救出したのを見ていたエヴァは、フェイトが『ゲート』を使うことを知っていた。
 そのため、当然の帰結としてフェイトが追い詰められれば『ゲート』で緊急脱出することなど想定できていた訳で、
 想定の事態に対処していなかったことは――つまり、『転移妨害』を施して置かなかったことはエヴァの落ち度でしかない。
 まぁ、それだけ頭に血が上っていたと言うことであり、それだけ少年やネギを大事に思っていたと言うことでもあるのだが。

「しかも、証拠を欠片も残さないとはな……実に小賢しい」

 エヴァは何も残されていない床――正確には、水溜りしか残っていない床を一瞥した後、口惜しげに呟く。
 身体を構成していた破片の一つでもあれば『解析』できたのだが……フェイトは尻尾すら掴ませなかったのだ。

 エヴァは軽く頭を振ると「今は近衛 木乃香の回収の方が先だな」と思考を切り替えるのだった。



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Part.02:節穴な目


「そ、そこまでや!! 御嬢様の血を見たなかったら、そこで黙って見とき!!」

 思考を切り替えたエヴァが木乃香を助け出すため木乃香のもとに向かおうとしたところで、
 あまりにも凄まじい攻防に見入るしかなかった千草が我に返り、木乃香の首に手を掛けて叫んだ。
 まぁ、どこからどう見ても三下としか言えない言動だが、効果は『それなり』にはある。
 それなりの距離があるため『瞬動』を用いてもエヴァが辿り着くよりも千草が動く方が早い。
 千草がエヴァを警戒している限り、無力化される前に千草は木乃香を傷付けることができるのだ。

 とは言え、言い換えると、千草の意識が僅かにでも逸れれば木乃香を無傷で回収できる訳だが。

 また、木乃香が傷付くことを厭わなければ、現状でも千草を無力化することは可能なのである。
 それに、救出をあきらめれば儀式は妨害できず、待ち受ける結果は傷付けられることと大差が無い。
 そう、そう言った意味でも『人質となっている木乃香』に人質としての価値が無いのである。

「……ふむ。しかし、ここで傍観しても近衛 木乃香は生贄に捧げられるだけではないか?」

 それがわかっているエヴァは動きを止めて呆れを隠しもせずに千草に問い掛ける。
 平たく言うと「お前バカだろ?」と言っているようなものだが、千草は気付かない。
 残念なことに千草には「どちらにしろ結果に大差ないだろ?」と聞こえるのである。

「生贄て……物騒な言い方やなぁ。せいぜい『道具』くらいの表現にして欲しいとこやな」

 だから、千草はエヴァの言葉に訂正を加え「結果は大きく違う」と訴える。
 自分の有利を信じて疑わないため、エヴァの意図に気付けていないのだ。
 もし気付けていたのならば、問答をしている間も惜しんで逃亡しているだろう。
 まぁ、逃亡を選んでいたとしても、背中から撃たれて終わるだけだったが。

「それはそうかも知れんが……『近衛 木乃香は無事では済まない』と言う意味では同じだろう?」

 エヴァは内心で「コイツはどうしようもないバカだな」と思いつつ、更に問い詰める。
 その笑みは嗜虐に彩られ、狩猟者が捕らえた獲物をジワリジワリと甚振る様を喚起させる。
 自分が既に詰んでいる状態であることを理解させて絶望させ、その上で刈り取るつもりなのだ。

「ちゃ、ちゃうわ!! 御嬢ちゃんがヘタな真似をしないなら御嬢様は魔力をもらうだけで無傷で帰すわ!!」

 千草はようやくエヴァの雰囲気に気が付く。エヴァは人質を取られたから行動しないのではない と今更に気が付く。
 それ故に、木乃香に人質としての価値があることを精一杯に説明する。何もしない方が賢明だ と懸命に訴え掛ける。
 最早 千草の言葉に意味などないことを自覚しつつも、この状況から逃れるために口を動かさざるを得ないのだ。

「なるほど、それは一理あるな。だが、残念ながら、どの道 意味は無いな」

 エヴァは「って言うか、誰が御嬢ちゃんだ!!」と言う内心を抑え付けながら鷹揚に言ってのける。
 まぁ、内心を抑え付けるのはエヴァらしくない態度かも知れないが、今回は仕方がない。
 問答無用で攻撃するよりも哀れな獲物を絶望の淵に叩き落したかったのだから、仕方がないのだ。

「ど、どう言うことや?」

 凶悪なエヴァの笑みに嫌な予感が駆け巡るが、千草は「御嬢様を危険に晒す筈ない、大丈夫や」と落ち着こうとする。
 そして、ようやくにして『とある可能性』――「もしかして御嬢様を危険に晒す気なんか?」と言う可能性に思い至る。
 そもそも、目の前の相手は西洋魔術師だ。東側に協力しているのはわかるが、東西の関係を大切にしているとは限らない。
 つまり、御嬢様を危険に晒すことになったとしても「大事の前の小事」として割り切ってしまうのではないだろうか?

「いや、それもあるが――」

 エヴァは千草の顔色から思考を読み取り、その思考を やんわりと否定する。
 現実は そんなに甘くないし、その程度の事実では千草を絶望させ切れない。
 そう、現実は もっと救いがない。現実は、千草の心を抉るに足るものなのだ。

「――そもそも『それ』は『ダミー』だからな」

 だから、人質の価値は無いし儀式が成功していたとしても何も起こらない。
 そう、千草はダミーを本物であると勘違いしていた段階で詰んでいたのだ。
 そして、ダミーだとわかっていたからこそ、エヴァは千草を弄っているのだ。

「な、何やてー!?」

 衝撃的な事実に、千草が負けフラグなセリフを叫ぶ。
 それを聞くエヴァの表情は、実に『いい笑顔』だった。
 言わば「その反応が見たかったのだ」と言う笑顔である。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 実は、ホテルを出発した後、ナギは鶴子に「気付かれないように木乃香をコピーして本物を匿ってください」と依頼していた。

 そして、その依頼は刹那と月詠の『試合』が行われる直前に遂行されていた(25話Part.07での休憩所云々の辺り)。
 手順としては、木乃香を連れ出して「用を足すため」と偽って『視界遮断結界(『遠見』も防止可能)』を張り、
 その中で木乃香を眠らせ、渡されていたコピー□ボットでコピーし、本物は『転移符』で安全圏に転移させただけであるが、
 それなりの時間が取られてしまったため、鶴子が二人のもとに駆け付けるのが試合開始ギリギリ前になってしまったのである。
 そう、言い換えるならば、鶴子が木乃香を眠らせたのは刹那に見せて動揺させるため『だけ』ではなかったのだ。
 蛇足の説明になるが、コピー□ボットは他者が鼻のボタンを押させてもコピーしてくれるので木乃香は寝ていても問題なかった。

 当然、休憩所にて鶴子が木乃香を連れて行ったのを見たナギは「鶴子さんが依頼を遂行してくれるのだろう」と理解してはいた。

 だが、ナギは敢えて「トイレに違いない」と下世話な想定をした振りをしてタカミチやネギをも欺いていたのである。
 別に「敵を騙すなら味方から」と言うつもりはないが、二人が嘘を吐くのがうまくないと判断したために欺くことにしたのだ。
 敵ばかりで味方の少ない状況だったため仕方が無いと言えば仕方が無いが、かなり人道を踏み外した考えと言えるだろう。

 何故なら、ナギは同様の理由で刹那にも真相は伝えていなかったのだから……

 真相を知らなかったため刹那は木乃香を偽者と知らなかった。
 それなのに、刹那は全てを捨てて木乃香を守ろうとしてしまった。
 その結果、刹那は目を覆いたくなるような惨状になってしまった。

 幸い惨状は脱したものの、真相を伝えていなかった責任が消える訳ではない。

 そのため、少年は己の判断を嘆き、自己嫌悪に苛まされている。
 木乃香の安全を優先したために刹那を傷付けてしまったのだから。
 浅知恵のせいで想定を超えた事態になってしまったのだから。

 閑話休題――話を戻そう。

 当初、エヴァはナギから「木乃香のダミーを複数用意する」と言う作戦を聞いた時、少々 慎重に過ぎると感じていた。
 千草を『記憶探査』したことで完璧とは言えないまでも計画の概要を知っているのだ、エヴァがそう感じるのは当然だろう。
 だが、ナギは そんなエヴァを見透かしたように、意地の悪さが窺える口元を歪めた薄笑いを浮かべて楽しそうに語った。

「まぁ、保険の意味もあるけど……『苦労して浚った相手が偽者でした』って わかった時の絶望を拝みたくない?」

 当然、ナギは本山に木乃香を連れて行けば浚われることが予測できていたためにダミーを複数用意しただけである。
 ナギが語ったように相手をトラップに嵌めるためだけに用意する訳ではない。木乃香の安全がメインの目的ではある。
 言わば、木乃香を心配していることに照れて、ついでの方を強調して「他者の不幸は蜜の味だ」と言っているに過ぎない。
 どこからどう見ても不幸を笑うのが本音にしか見えないが、半分くらいは『照れ隠し』である。多分、きっと、恐らくは。

 ちなみに、そんな諸々の事情を把握しているエヴァは、「……まったく、悪知恵の働くヤツだな」と苦笑するのだった。



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Part.03:だから、トラップは気付かれたらお終いなんだって


 ガックリと うなだれる千草を遠くに見ながら、フェイトは「ああ、やっぱりか」と納得していた。

 実を言うと、フェイトは木乃香を本山から連れ出す時、木乃香の魔力を計測していたのであった。
 そのため「封印されている と言うよりも、元から魔力が低いのではないか?」と違和感を覚え、
 そこから「もしかして、これはダミーで本物は別にいるのではないだろうか?」とも予測していた。

 ……では、何故にダミーだと予測が付いていたのに『木乃香』を連れて来ることを選択したのか?

 それは、己の身を厭わずに木乃香を救おうとした刹那に敬意を評したため と言う意外な理由だった。
 フェイトは『造られし存在』ではあるが、稼動しているうちに感情に近いものが芽生えつつある。
 特に戦士として敬意に評する相手の意思は尊重する傾向があり、今回は それに該当したようだ。

「――ってのは嘘で、その程度のトラップなど見抜いておったわ!!」

 しかし、そんなフェイトの事情を嘲笑うかのように千草は突如 項垂れていた顔を上げて高らかに宣言する。
 オマケに着崩した和服から零れそうになる双丘を誇示するかのように踏ん反り返り、勝者の余裕すら見せる。
 そんな失敗フラグとしか言えない姿を見たフェイトは一抹の不安を覚えるが、今のフェイトには千草を止められない。

「ほぉう? つまり、こちらの思惑等お見通しだった、と言うことか?」
「まぁ、一度 嵌められてますからなぁ。何度も同じ轍は踏みませんわ」

 エヴァの興味深そうな問い掛けに「そこまでバカやないで?」と言わんばかりに勝ち誇って応える千草。
 一度、列車の中でナギにダミーを掴まされた経験があるため(21話参照)、その言葉には実感が籠もっていた。
 どんな人間でも一度 騙されれば慎重になる。少なくとも、騙された痛手を忘れるまで――短くても数日間は。

「ホテルに居った方が本物やろ? これは『そっち』やから、これは本物や!!」

 だが、その言葉に実感が籠もっていたとしても、その経験を活かしてトラップに注意をしていたとしても、
 トラップに気付かない者は気付かないし、気付かないために嬉々としてトラップに嵌ってしまうのである。
 つまり、千草は『本山の木乃香』がダミーだと見抜いた段階でトラップを見切ったつもりになってしまい、
 言うまでも無く『ホテルの木乃香』もダミーであったので、見事にトラップに嵌った形となったのである。

「……いや、ホテルのもダミーだぞ?」

 ちなみに、『本物の木乃香』は鶴子が安全だと思う場所――つまり、鶴子の家に匿われている。
 鶴子を突破しない限り手出しできないため、ある意味では本山よりも安全な環境と言えるかも知れない。
 まぁ、今の本山には獅子身中の虫(赤道とか)が巣食っているので、仕方が無いと言えば仕方が無いのだが。

 さて、これは完全な余談になるが、木乃香の父である詠春は当然ながら木乃香をダミーだと気付いていた。

 だが、詠春は「きっと、那岐君や鶴子君に何らかの考えがあってダミーを用意したのだろう」と判断し、
 特に言及することも無く、黙って「ダミーの木乃香より重要な人物 = ナギ」の護衛をしていたのである。
 もちろん、タカミチはダミー云々に気付いておらず、普通に「優先すべき人物」としてナギの護衛をしていたが。

 まぁ、ホテルのダミーを本物と勘違いしていた千草には、それらのことは一切関係ないが。

「え? ほんま?」
「ああ、普通に本当だ」
「な、何やてーー!!」

 頼みの綱であった木乃香が偽者であると断言され、今度こそ絶望に打ちひしがれる千草。

(……うむ、それだ。その顔が見たかったのだ。
 これで少しは溜飲が下がる と言うものだ)

 実を言うと、身内を大事にするエヴァはネギやナギをいいようにやられて腸が煮えくり返っていた。

 実力者であるフェイトにはストレスを発散させる余裕などなかったので特に甚振らずに速攻で退場させたが、
 エヴァから見れば無力も同然である千草は格好のストレス発散相手だった。そう、ただそれだけのことだった。
 別に千草に同情して茶番に付き合っていた訳ではない。千草を絶望に叩き込みたいから茶番に付き合っていたのだ。
 だがしかし、そんな余裕を見せていたために警戒しなければいけない相手――フェイトの接近に気付かなかった。

「やってくれたね、『人形遣い』……」

 いつの間にかエヴァの背面にできていた水溜りから突如フェイトが現れており、隙だらけのエヴァの後背部に強烈な貫手を叩き込まれていた。
 しかし、フェイトが完全に撤退したとは考えていなかったエヴァは急襲されても少々驚くだけだったため、フェイトの貫手を難無く避ける。
 むしろ「ボロボロの筈の身体で どうやって攻撃したのか?」の方が遥かに気に掛かり、エヴァはフェイトの姿を確認する余裕まであった。

「ほぉう? あれだけの損傷を あの程度の時間で再生させるとはな……」

 フェイトの姿は ほぼ元の状態に戻っており、崩れた筈の手足も元通りになっていた。
 エヴァは そのことに「なかなか高度な『作り物』だな」と感心したように頷いた後、
 逃した獲物に再会したことを悦び、その幼い相貌に似つかわしくない獰猛な笑みを浮かべる。

 その笑みは まさしく笑みの根源は威嚇だったことを物語るに相応しいものだった。

「――だが、残念だったな」
「? どう言うことだい?」
「既に舞台は終わっているのさ」

  パチンッ

 エヴァが指を鳴らした瞬間「ゴォォォ!!」と言う轟音を立てて祭壇を強力な魔力の奔流――『対軍用拘束結界』が襲う。
 実は、祭壇には「効果範囲内にいるもの(使用者を除く)を対象として動きを封じる結界」が仕掛けられていたのである。
 ちなみに『対軍用拘束結界』とは『戦術広域魔法陣(戦術レベルで使用される広域の魔法陣)』の一種であり、
 同種の物が原作24巻で登場している(『黒い猟犬』と言う賞金稼ぎが刹那達に使用した『対軍用魔法地雷』のこと)。

「――いつの間に!?」

 ところで『戦術広域魔法陣』は強力な魔法を込めることができるが、作成に時間が掛かる と言う致命的な欠点がある。
 そのため、魔法陣の作成を妨害される恐れや作成に成功しても魔法陣の効果範囲内から脱出される恐れ等があるため、
 軍対軍の戦いならばまだ実用可能だが、個人対個人の戦いでは戦闘中に魔法陣を作成するなどまず不可能である。
 その意味では、フェイトが「いつの間に魔法陣を描いたのだろうか?」と疑問を持つことは不思議なことではない。

 だが、その答えは至極単純なもので「戦闘中にエヴァが魔法陣を作成した訳ではない」のである。

 実はと言うと、昼間の内に――フェイトが千草を救出している間に仕掛けてあったのである(26話オマケ参照)。
 千本鳥居での襲撃は、フェイトの思惑としては「注意を引き付けて千草への警戒を解くもの」だったのだが、
 それはナギの想定内でしかなかったので「フェイトの意識が千草に向いた隙を狙う策」が講じられていたのである。

 ちなみに、予め登録して置いた魔法陣を自動で作成する魔法具(ネギ製)を用いたため、エヴァが祭壇に居た時間は僅かなものでしかなかった。

 仮にフェイトが祭壇にトラップが仕掛けられている可能性を考慮して精査していれば、恐らくは見破られていただろう。
 だが、フェイトの頭には祭壇にトラップが仕掛けられている可能性など最初からなかったためトラップに気付けなかった。
 いや、正確に言えば、木乃香のダミーに眼が行き過ぎてスクナの召喚そのものに眼が行かないように誘導されていたのだ。

「確かに、アイツは戦力としては使い物にならん。それは認める。だが、戦略としては充分な価値があるのさ」

 エヴァは「我が子をバカにした相手の鼻を明かして満面の笑みを浮かべる母親」のような表情を浮かべて勝ち誇る。
 そもそも『対軍用拘束結界』はダミーがバレて『本物』が奪われスクナを復活されてしまった時のための保険だった。
 だから、ダミーはバレたものの『本物』までは辿り着かれなかったため、本来なら使用する必要はなかったものだ。
 だが、フェイトの意表を付くために――ナギの読みの深さを誇示するために、使う必要がないが敢えて使ったのである。

「と言う訳で――そろそろ眠れ」

 死刑宣告のように紡がれる呪文は「契約に従い、我に従え、氷の女王。来れ、とこしえのやみ」、そう『えいえんのひょうが』。
 それは150フィート四方の広範囲を ほぼ絶対零度(-273.15℃)にし、対象を強制的に凍結させる氷結系の超高等魔法。
 覚悟の無い者は殺さない と言うエヴァの『信念(優しさ)』からか、エヴァが愛用する「殺さずに無力化するための魔法」。

 ……その結果、祭壇の周囲は永久凍土を思わせる『氷の世界』となったのだった。



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Part.04:邂逅すべき運命


 一方、本山では、少女の姿に戻った刹那を寝かし付けた少年が苦悶の表情で気絶しているネギを介抱していた。

 ネギが傷だらけになった理由は正確にはわからないが、きっと自分のせいだろう。
 木乃香のために必死になる可能性もあるが、それよりも自分のことで必死になったのだろう。
 取り方によっては自惚れに取れる考え方だが、事実が想定通りなのだから性質が悪い。

 ネギは勝手に思い込んで暴走して敗れた。それだけと言えば それだけのことだろう。

 だが、少年はネギの屈折した想いに気付きながらも何もしなかった自分を責めていた。
 いや、むしろ自身の身の安全を確保するために自分を守るように誘導した節すらある。
 ネギは思い込みが激しく人の意見など聞かない面があるので、何の効果もなかったかも知れない。

 しかし、何もしなかったのとは大違いだ。何の効果もなくても何かをするべきだったのだ。

 それに、ネギが傷付いた姿を見て「ここまで傷付くとは予想外だった」と後悔してしまったのもある。
 少年は自ら「辿るであろう道筋」に手を加えたのに、どこかで『物語』通りに進むと考えていた。
 ネギや刹那はフェイトと戦って無力化され木乃香を奪われることになるだろう……そう、考えていた。
 つまり、今までは覚悟をしたつもりになっていただけで、甘い認識を捨て切れていなかったのだ。
 だから、より自分が許せない。覚悟も無く「わかったつもり」になって介入していたことが許せないのだ。

「最低だ、オレって……」

 自分を責めていても今の状況は好転しない。むしろ悪化すらするだろう。
 しかし、それがわかっていても なお少年は自分を責めることがやめられない。
 つまり、今の少年は それ程までに『過去の自分』を許せないのだった。

「――何を そんなに落ち込んでいるんだい?」

 しかし、そんな欝な思考も唐突に掛けられた声によって遮られる。
 その声は背後から「チャプン」と言う水音と共に聞こえた気がする。
 つまり、その声は水の『ゲート』を通って現れたフェイトの声だろう。

「……どうしてここに? エヴァと相対しているんじゃないの?」

 急速に心が冷える。自責の念は彼方へ消え、この状況への対応策で頭がいっぱいになる。
 ここで下手を打って「自分が何者であるのか」を気付かれるのだけは避けねばならない。
 幸いなことに今まで気付かれていないのだから、ここで気付かれる等あってはならない。
 そうでないと、数多の犠牲を強いて この場に立っていることが許せなくなってしまう。

「ダミーを使用するのはキミだけじゃない。と言えば、わかるだろう?」

 少年が振り向いた先に居たのは、フードを目深に被り、ゆったりとしたローブで全身を覆ったシルエットだった。
 フェイト――逆光になっているため顔の判別は付かないが、特徴的な銀髪は確認できたので辛うじてフェイトだと判別はできた、は
 まるで半身が欠けているかのように不安定で、立っているだけで精一杯に見え、どう見ても戦闘など儘ならない状態だった。
 言葉と現状から察するに、フェイトの再生は済んでおらず完全体として祭壇に現れたのはダミーだった と言うことだろう。

「……で? どんな用件があるんだい?」

 瞬時に状況を理解した少年は、余計なことを言わずに単刀直入に用件を訊ねる。
 フェイトが戦闘のできない身体で自分の前に現れた理由を理解しているのだ。
 つまり、自分と話をしに来たのであって、自分をどうこうする意思など無い と。

「ふぅ……本当にキミは油断がならないねぇ」

 フェイトは少年の様子に賞賛とも呆れとも付かない苦笑を漏らす。
 さっきまで あんなに動揺していたのに、随分と落ち着いたものである。
 単なる強がりかはわからないが、切り替えが早いことだけは確かなようだ。

「………………」

 少年は大した反応も見せずに値踏みするようにフェイトの言葉を待つ。
 つまり、フェイトから用件を切り出すのを待っているのだろう。
 このまま待たせるのも一興だが、時間に余裕がある訳でも無い。

 フェイトは軽く嘆息して口を開いた。

「……ボクの用件と言うのは、キミと話をすることさ」
「話? そんな状態でも訪ねて来る程の話って何さ?」
「そんなの、キミには わかり切っていることだろう?」
「さぁてね? オレはバカだからよくわかんないなぁ」
「そう。それならば、ボクの問いに答えるだけでいいよ」
「まぁ、オレに答えられるなら答えるのも吝かじゃないかな?」

 もちろん、少年はフェイトの言いたいことなど わかり切っていた。

 だが、「相手がどのように訊ねるのか?」を見るために敢えて惚けたのだ。
 それを理解したフェイトは平行線を続ける気が無かったのでサッサと話を進める。
 そして、フェイトが話を進めた以上、少年の方も話に付き合うのも吝かではない。

「じゃあ、『ボク達の計画を どうやって知ったか?』、答えてくれないかな?」

 フェイトとしては木乃香のダミーが作られるのは想定の範囲内であった。
 だが、祭壇に仕掛けられたトラップについては まったくの想定外だった。
 あらかじめスクナの復活を狙っていることを知らなければできない芸当だからだ。

「その質問に答える義務は無いね。だけど、オレを攻撃しない と約束してくれるなら答えてもいいかな?」

 戦闘ができない状態とは言え、フェイトの実力を考えれば少年など どうとでもできるだろう。
 そのため、フェイトの『依頼』は『強要』に近い。そんなことは両者とも わかり切っている。
 そして、『転移妨害』が張られているため『切り札』であるエヴァが駆け付けるには時間が掛かる。
 それでも、少年は余裕を持って条件を出す。圧倒的な強者に対し、怯むことなく条件を突き付ける。

「……いいだろう。『キミを攻撃しないことを誓う』から『答えて』くれないかな?」

 フェイトは少年の傍らに置いてある鞄に対して含みのある視線を送りつつ、少年を攻撃しない旨を了承する。
 そう、入浴時でも少年の傍にあった その鞄の中には、少年の『もう一つの切り札』が眠っているのだ。
 鞄から漏れる『とある魔力』に気付いたフェイトは「恐らく『闇の福音』の人形だろう」と見当が付いているが。

「ならば、答えるよ。まぁ、そうは言っても、そんな大した答えじゃなくて『列車の中でエヴァに千草の記憶を読ませた』だけだけど」

 少年は「これで契約成立だね」と確認するように呟いた後、フェイトの問いに対する答えを身も蓋も無く教える。
 曲がりなりにも『誓約』をしているので当然なのだが、それでもアッサリと種明かししたことにフェイトは少々肩透かしを喰らう。
 何故なら「千草に教えてもらった」と言うような表現を用いることもでき、答えをぼかすことなど いくらでもできたからだ。

 とは言え、肩透かしを喰らった程度で気を緩めることなどフェイトはしない。直ぐに少年の言葉を吟味する。

「……なるほど。大した魔力を感じなかったから油断していたよ。
 それに、野次馬が死角になってて魔法の行使にも気付かなかったし。
 って、もしかして、そのために親書を爆発させたってことかい?」

 そして、吟味しているうちに少年が仕掛けたトラップの真相に気が付く。

「うん、そうだよ。野次馬を集めるために態々 爆発させる手段――爆弾系のトラップにしたのさ」
「なるほどね。でも、そうなると、まるで親書が盗まれるのがわかっていたみたいだよね?」
「まぁ、わかっていた と言うより、木乃香かオレか親書が狙われるのは想定できていただけさ」
「……じゃあ、小太郎君達の襲撃と千草さんの奪還も想定していたってことかい?」
「彼女が計画の肝だからね。奪還に来るのも、そのために陽動を使うのも、想定くらいするさ」
「つまり、態と陽動に引っ掛かって奪還させ、泳がせて置いてトラップで仕留めたってことか……」
「と言うか、東西的にエヴァを動かせない状態だったから、泳がさざるを得なかったんだけどね」
「なるほど。東西の軋轢を気にしなければ、千草さんの奪還時に『闇の福音』をブツケているね」
「まぁ、平たく言うと そうだね。形振り構わなければ、遣り様はいくらでもあったんだよねぇ」

 フェイトの度重なる問いに少年は次々と答えていく。打てば響くような、その応答は小気味良さすら感じる。

 だが、それこそが少年の仕掛けたトラップだった。実は、少年がフェイトの問いに答える限り、フェイトは少年を攻撃できないのである。
 フェイトは気付いていなかった(正確には、そこまでは気付けていなかった)が、少年は鞄の中に『切り札』を『二つ』忍ばせていたのだ。
 一つは言うまでも無くチャチャゼロだが、もう一つは(少年がネギに作らせて置いた『誓約の指輪』の上位版である)『契約の鐘』であった。
 そう、少年は鞄の中にいたチャチャゼロに『契約の鐘』を起動させて、フェイトに悟られないように『契約』を結んでいたのである。
 ちなみに、その『契約』の内容は二人の会話の通りで「少年はフェイトの質問に答え、フェイトは少年を攻撃しないこと」である。

 まぁ、フェイトが通常の状態であったならば、この程度のトラップなど見抜けていただろう。

 だが、現在のフェイトは重態と表現すべきダメージを負っており、更にチャチャゼロの存在を見抜いた段階で安心してしまったので、
 迂闊にも『契約』が成立するに足る言質を取らせてしまったのである(まぁ、他にも ちょっとした理由があるのだが、それは余談だ)。

「……よくわかったよ。ありがとう、とても参考になった」

 フェイトの疑念は晴れたらしく、フェイトは少年に礼を言うと踵を返す。
 もちろん、『ゲート』を使って移動するので踵を返す必要などない。
 単に気分的なもので、別れを告げるためのジェスチャーのようなものだ。

 つまり、フェイトは少年との別れを惜しんでいる と言うことである。それが「どう言った意味でか」は謎だが。

「では、『怖いオバサン』がやって来る前に失礼させてもらうよ」
「(怖いオバサン? ……ああ、エヴァか)うん、それじゃあね」
「うん、また会える機会があったら また会おう、神蔵堂君」

 不穏な言葉を残し、フェイトは水の中へ徐々に消えて行き、最後には何の変哲もない水溜りのみが残る。

 それを ぼんやりと眺めていた少年は「いや、オレはもう会いたくはないんだけどなぁ」とボヤいた後、
 思い出したように「『契約の鐘』は反乱分子を味方に引き込むための『切り札』だったのに……」と溜息を吐くのだった。

 ……少年は知らない。いや、気付かなかった と言うべきかも知れない。

 瞬時に移動できる筈のフェイトが徐々に消えて行った理由を。
 タイムリミットが迫っているのに別れを惜しんでいたことを。
 戦闘以外のことで楽しむことができた喜びを感じていたことを。
 正体には気付かれなかったが妙なフラグを立ててしまったことを。

 フェイトを観察する余裕のなかった少年には、気付くことができなかったのだった……



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Part.05:素直になれない幼女と素直になった少年


 時間は少し遡り、エヴァが『えいえんのひょうが』を発動した後のこと。

(う~~む……とりあえず氷付けにしたのはいいが、これからどうする?
 眼鏡女の方は雑魚だから どうとでもなるが、銀髪の方は手強いからな。
 殺す――いや、壊すのが楽と言えば楽なのだが、そうもいかんからなぁ)

 エヴァは千草とフェイトが氷付けになったのを確認すると今後の処置を考えていた。

 千草は西の反乱分子を辿るのに役に立ちそうだし、フェイトは大物が釣れそうな気がするため、
 『おわるせかい』で殺すことはもちろん『こおるせかい』で氷像にすることも不味いだろう。
 しかも、フェイトの実力を考えると このまま氷付けにして置くのは よろしくないだろう。
 今は大人しく氷付けになっているが、こちらが油断した隙に暴れだす可能性は否めないのだ。

 だがしかし、そんなエヴァの悩みは呆気なく解決する。尤も、事態が悪化しただけなのだが。

 と言うのも「ドロリ……」とでも表現すべき様子で氷付けになっているフェイトが溶けてしまったからだ。
 そう、『壊れた』のではなく『溶けた』のだ。まるで、氷が水に戻るかのように溶けてしまったのだ。
 つまり、考えるまでもなく、水で作られたフェイトのダミーが役目を終えたので水に戻ったのだろう。

(――クッ!! 小癪な真似を!!)

 考えてみれば、戦闘不能にしてから復活するまでが早過ぎると思っていたのだ。
 それに、こちらがダミーを駆使しているとは言えダミーは こちらの専売特許ではない。
 いや、そもそも見習いのネギでさえ戦闘にダミーを使用していたのだ(11話参照)。
 相手がダミーを使うことくらい想定できた――いや、想定して置くべきだった。

(まさかっ――?!)

 ダミーを戦場に投入する理由など数える程だ。と言うか、決まっている。
 それは『陽動』、つまり、エヴァを祭壇に引き付けることだろう。
 ならば、本物は何をしているのか? そんなことは考えるまでもない。
 そう、フェイトは本山に――エヴァの守るべき者のところにいるのだ。

(不味い!! あの銀髪が相手ではチャチャゼロでも危ない!!)

 エヴァは慌てて本山へ向かおうと本山へ『ゲート』を開こうとする。
 だが、本山には『転移妨害』が施されており、座標を指定できない。

(チッ!! あの『人形』め!! 何度も何度も小癪な真似をしおってからに!!
 ま、まぁ、この距離なら『転移妨害』を破るよりも『走った』方が早いからな、
 さっきのように「破るか? 走るか?」で迷う必要がないだけマシだな、うん)

 そのため、エヴァはギリギリまで『転移』をし、そこから『虚空瞬動』を使うことを即決し、即行動に移したのだった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 一方、エヴァが保護しようと躍起になっている少年はと言うと……

 フェイトと対峙することに意識が向いたためか、それまで少年を苛んでいた自己嫌悪は かなり薄れていた。
 その点ではフェイトに感謝してもいいだろう。あのまま自己嫌悪を続けても いいことは何も無かったのだから。
 それに、嫌で嫌で仕方なかった最低なクズ野郎としての自分――神蔵堂ナギを認めることができたのだから。

 そう、少年はフェイトに対峙した際、神蔵堂ナギであることを意識して対応していたのである。

 言うまでもないことだが、神蔵堂ナギは人の想いを平気で踏みにじる救い様の無いクズ野郎である。
 だが、人を騙すことに長け、平然と嘘を吐く彼は「ああ言う場面」においては実に頼もしかった。
 まぁ、だからと言って、過去の愚かな選択を許せる訳ではないのだが、これはこれで それはそれだ。

(少しくらいなら、アイツのことを受け入れてもいいかな?)

 少年は、まだ複雑な思いが残るのものの神蔵堂ナギの存在を受け入れた。
 先程までは「こんなクズが自分の訳がない」と拒絶をしていた神蔵堂ナギを、
 今では「こんなんでも自分なんだ」と(自分の一部分として)受け入れたのだ。

(だって、オレは那岐でもあるしナギでもあるんだから……)

 実は、タカミチを眠らせた頃の少年は、唐突に起きた「那岐の記憶」の復活に混乱していた。
 言わば、那岐の記憶が戻るまでの少年は「那岐が初期化されてナギが上書きされた状態」だった。
 それなのに、那岐の記憶が戻った――那岐が復帰したため、情報過多で混乱してしまったのだ。

 その時、少年の中でナギの記憶と那岐の記憶が掻き混ぜられ、同一時間軸で全く異なる経験が交差していた。

 一方ではタカミチに手を引かれており、一方では『父』に背負われていた。
 一方では詠春に剣の手解きを受け、一方では『母』に料理を教わっていた。
 一方では家族連れを羨ましそうに見、一方では『家族』と共に笑っていた。
 一方では木乃香に怯えられていたのに、一方では『彼女』と談笑していた。
 一方では寂しく床に伏せていたのに、一方では『みんな』に看病されていた。

 ある意味では、那岐の記憶は悲惨かも知れない。だが、少年は那岐も幸せだったことを知っている。

 那岐自身は気付いていなかったが、少年から見ればタカミチは那岐を大切にしているのがよくわかった。
 多忙のために傍にいる時間は少なかったかも知れないが、大切にしていることは間違える筈がない。
 何故なら、フェイトに襲われた時、タカミチは己の身を挺して少年(那岐)を守ろうとしてくれたのだから。

 確かに、那岐はナギと違って『家族』に囲まれなかった。だが、それでも那岐は幸せだったのだ。

 那岐自身は気付けていなかったが、少年から見れば あやかは那岐を大切に想っているのがよくわかった。
 素直ではないからわかりにくかったかも知れないが、大切に想っていることは間違える筈がない。
 何故なら、ただ一人だけ那岐とナギが違うことに気が付いてくれ、那岐の不在を嘆いてくれたのだから。

(……ところで、オレは これから何て名乗ればいいんだろう?)

 少年は那岐でもありナギでもある。だが、那岐でもないしナギでもない。
 そのため、那岐とナギを分けて認識していた少年は己を定義し兼ねていた。
 まぁ、ナギに主導権がある状態で融合したため、那岐が吸収された形ではあるが。
 しかし、それでも、己をナギとして認識するには那岐の影響が強過ぎる。

(いっそのこと『アセナ』とでも名乗ってみるかな?)

 アセナ・ウェスペル・テオタナトス・エンテオフュシア……この呪文のように長ったらしい横文字こそが少年の『本当の名前』である。
 そう、少年は『神楽坂 明日菜 = アスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシア』が男として生まれた成れの果てだ。
 少年は、彼女同様 今では滅びてしまった魔法世界の小国、『始まりの王国』とも呼ばれていた「ウェスペルタティア王国」の王族だ。
 まぁ、王族とは言っても、完全魔法無効化能力を持つために体良く『戦争の道具』として100年以上も生かされていただけの存在だが。
 だから、『本当の名前』とは言っても、その名前が少年を意味している訳ではない。それは『黄昏の御子』と言う記号と同義でしかない。

(オレが『オレ』になったのはナギ・スプリングフィールドに助け出された時だ。あの時から、オレは『人』になったんだ……)

 そう、少年が少年と言える存在になったのは『黄昏の御子』から脱却した時――つまり、ナギ・スプリングフィールドによって助け出された時だ。
 それまでの少年は『戦争の道具』でしかなかった。一人の人間と成れたのは、一人の人間として扱われたのは、『その時』が初めてなのだ。
 だから、『アセナ』と呼ばれるようになった『その時』から、少年は『人』になれたのだ。言わば『アセナ』が少年の『最初の名前』とも言えるのだ。

(しかし、そうは言っても、『アセナ』って日本人の名前としては違和感があるんだよなぁ)

 少年は赤茶の髪にブラウンとヘーゼルのオッドアイを持っている。そして、鼻は高くて彫も深く肌も白い。
 そんな『日本人』らしくない容姿のため、少年は今まで「どこかの血が混じってるんだろう」と考えていた。
 そう、見た目は『日本人』らしいとは言えなくても『日本人』として生まれ育った少年の心は『日本人』なのだ。
 だから、本来なら見た目に似合う筈の『アセナ』と言う名前に拭えない違和感を覚えてしまうのである。

 それ故、少年は自身を「何て表現すればいいのかわからない」と結論付けるのだった(問題の棚上げとも言う)。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 そして、少年が落ち着きを取り戻した頃……

 タイミングを計ったかのようにエヴァが少年の元に訪れた。
 移動に全力を使ったためだろう、珍しく肩で息をしている。
 そのため、少年はエヴァが慌てて駆け付けてくれたことを理解する。

「ええい!! 無事なら無事と連絡を寄越さんか!!」

 だから、開口一番に怒鳴られても少年は大して気にしない。
 いや、むしろ、「それだけ心配してくれた」と受け取る。
 そのため、怒られているのにもかかわらず嬉しくなってしまう。

「ごめん、ちょっと気が動転してて忘れてたんだ」

 素直な那岐の成分が含まれている少年は素直に謝罪する。
 混乱していたので連絡をする余裕がある訳がなかったのだが、
 それでもエヴァに心配を掛けてしまったことは変わらないからだ。

「は? あ、い、いや、わかればいいのだ!! わかれば!!」

 少年が素直に謝罪する様を見たエヴァは、少々――いや、かなり驚く。
 まぁ、いつもなら適当な言い訳をするところなので気持ちはよくわかる。
 だが、少年は これまで(ナギ)とは違うので、これからはこれが普通なのである。

 とは言え、少年は素直なだけではない。ちょっとだけイジワルでもある。何故なら少年には那岐の成分だけでなくナギの成分も含まれているからだ。

「でも、『転移妨害』が解除されたのに何で『転移』しなかったの?」
「う、うるさい!! 気が動転していて、解除に気付かなかったのだ!!」
「……つまり、それだけ心配してくれたってことかな?」
「だ、黙れ!! 今のは言葉の綾だ!! ついだ!! ウッカリだ!!」
「そっか、そんなに心配してくれたのかぁ。いやぁ、照れるねぇ?」
「クッ!! ああ、そうさ!! 心配したさ!! 心配して悪いか?!」

 ついには逆ギレするエヴァ。以前ならば「はいはいナイスツンデレ」とでも評して終わるのだが、今は違う。

「いや、悪くないよ。って言うか、むしろ嬉しいかな?」
「身内なのだから心配して当然だろ――って、はぁ?」
「だから、心配してくれて ありがとう、エヴァ」
「え? あ、いや、その……わ、わかればいいのだ!! わかれば!!」

 少年の常とは違う態度に軽くテンパるエヴァだが、シッカリとツンデレは忘れない。

「――って、まさか、頭でも攻撃されたのではないか?」
「失礼な言い分だけど、言いたくなる気持ちも分かるかな?」
「あ、いや、だって……あまりにも『らしく』ないぞ?」
「まぁ、今回の件で思うところがあったってことだよ」
「そ、そうか。まぁ、貴様が そう言うなら納得して置こう」

 素直な少年に拍子抜けはしたものの「まぁ、これはこれでいいか」と思うエヴァだった。


 


************************************************************


 


オマケ:人形姉妹の憂鬱


 そして、夜が明けて早朝……

 本山急襲の報を受けて駆け付けた西の精鋭達によって石化された人々の石化は解かれた。
 ちなみに、西の精鋭達は『遠征』を命じられていたので昨夜は本山にいなかったらしい。
 また、状況証拠は揃っているが、その『遠征』を誰が指示したのかは定かではないようだ。
 まぁ、そう言った意味も含めて事後処理は腐るほど残っているが、とりあえず騒動そのものは終わった。
 だから、これにて一件落着、と言っていいのだが……少年は何かを忘れている気がしてならなかった。

(う~~ん、何だったかなぁ? 何だか大切なことのような気がするんだけどなぁ……)

 少々遅くはなったが、本山での事件が終息したことは鶴子にも知らせてあるため、
 そのうち(鶴子に匿われていた)木乃香は鶴子に連れて来てもらえるだろう。
 だから、本山にいない重要人物――木乃香のことを忘れている訳ではない。
 それに、忘れてしまいそうだったが、東の長である近右衛門にも報告してある。

(まぁ、思い出せないってことは「大したことじゃない」ってことだよね? ……よし、気にせずに寝よう)

 少年は考えることを放棄し、石化を解除された巫女さん達(ここ重要)に敷いてもらった布団に潜り込む。
 実は、鶴子や近右衛門に報告しているうちに夜が明けてしまったため、今まで休めなかったのである。
 まぁ、一度ネギに気絶させられたために寝ていたので(26・27話参照)、別に睡眠不足と言う訳ではない。
 だが、長時間の緊張と記憶の処理のため少年の疲労は大きい。結果、眠りに落ちるのに数秒も要らなかった。

 ……………………………………
 ………………………………………………
 …………………………………………………………

 そして、少年が眠りに付いて幾許かの時が経った頃……

「ナァ、トコロデ俺ノ出番ハ? 気配ヲ探ッタコト ト魔法具ヲ発動サセタコト シカ出番ガ無カッタンダガ?」
「大丈夫ですよ、姉さん。私なんて個人風呂の予約とマスターの撮影しか出番がありませんでしたので……」
「イヤ、妹ヨ。御主人ノ盗撮ハオ前ノ趣味ダロ? アト、俺ノ気ノセイジャネーナラ奴ヲ罠ニ掛ケテナカッタカ?」
「ふふふ……意味がわかりませんねぇ? 敢えてコメントするならば『禁則事項です』としか言えませんよ、姉さん?」
「ソウカ、オ前ガソウ言ウナラ ソウ納得シテ置コウ。タダ、姉トシテ忠告シテ置クガ、何事モ程々ニシテ置ケヨ?」
「ええ、もちろんですよ、姉さん。生かさず殺さずが私のポリシーですし、チラリズムが至高の萌えだと考えてますから」

 チャチャゼロと茶々丸の茶々姉妹が出番の無さに愚痴を言い合っていたとかいないとか……


 


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後書き


 ここまでお読みくださってありがとうございます、カゲロウです。
 以前から「改訂した方がいい」と言う意見が多数あったので、改訂してみました。
 また、改訂に伴ってサブタイトルを「狐と狸の化かし合い」から変更しました。


 今回は「エヴァ無双タイムを目指したのに、気付いたらフェイトちゃんのフラグが立っていた」の巻でした。

 では、恒例(?)の設定補完に行きましょう。まず、前回も出て来た『転移妨害』についてです。
 これは「外部からの転移を妨害する」と言う設定なので「内部からの転移は可能」なんです。
 そのため、フェイトちゃんはエヴァから逃げられた と言うことなんです。ええ、都合がいい設定です。

 ちなみに、その時のフェイトちゃんが『水のゲート』を使えた件ですが……

 まぁ、『水のゲート』は「水から水への転移するもの」なので、ちょっと矛盾してますよね?
 なので、アレは「体内に仕込まれてた水を使って転移した」ってことにしてください。
 言い訳臭い説明ですけど、足元に「転移のための水」を用意して転移した訳ではありません。
 黄金水とか聖水とか考えちゃダメです。水は足元にはありません。体内にあったのです。

 あ、かなりどうでもいいんですけど、主人公の本名が かなり微妙な件は軽くスルーしてください。

 敢えて言うなら「明日菜のTSならアスナっぽい本名が必要じゃね?」ってオラクルが降りて来たので、アセナなんです。
 ちなみに、明日菜の本名である「アスナ・ウェスペリーナ・テオタナシア・エンテオフュシア」とは、
 ウェスペル(ラテン語で「夕方 = 黄昏」のこと)とウェスペリーナ(ウェスペルの女性名詞)で対応させてますし、
 テオタナトス(ギリシア語で「神」と「死」の合成語)とテオタナシア(テオタナトスの女性名詞化)で対応させてます。

 さてさて、あまりグダグダ書いても仕方が無いので、今回は ここら辺で終わります。


 では、また次回でお会いしましょう。
 感想・ご意見・誤字脱字等のご指摘、お待ちしております。


 


                                                  初出:2010/9/25(以後 修正・改訂)


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