エピローグ:終わりよければ すべてよし
Part.00:イントロダクション
2013年某月某日。
移住が終了した火星(新しい魔法世界)は、移民の受け入れを実験的に開始した。
もちろん、移民用の土地の分だけ魔法世界の領土は縮小されたことになったが、
特に問題は起きなかった(正確には、魔法世界各国から文句はあったが黙らせた)。
だが、今は そんな時勢とは全然 関係のない、些細な(だが当事者には重要な)出来事に目を向けよう。
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Part.01:あれからの出来事
いきなりだが、瀬流彦とネカネが結婚して子供が生まれたことを報告して置こう。
男同士で如何様に子供を作ったのか疑問に思われるだろうが、そこは魔科学(魔法と科学の融合進化の俗称)で『どうにか』したので問題ない。
具体的に言うと、人工的に「二人の遺伝情報を組み合わせて形成した受精卵」を作り出し、人工子宮で生まれるまで育てたのである。
ちなみに、子供は娘で名前はファルネーゼと言う。何でも、瀬流彦とネカネから命名を任されたアセナが独断と偏見で名付けたらしい。
あっ、ついで と言っては何だが、タカミチと しずなの間にも子供が生まれたことも報告して置こう。
最初は なかなか子供ができなかったらしいが、途中から子宝に恵まれて長男・長女・次男と順調に生まれている。
新婚の頃は くたびれていたタカミチだったが、瀬流彦夫婦(?)に触発されたのか かなり頑張ったらしい。
ちなみに、命名は しずな と しずなの両親がしたらしい。何故ならタカミチのネーミングセンスに不安があったからだ。
そして、意外なことに、ナギとアリカの間にも子供が生まれたことも報告して置く。ちなみに、元気な男の子だ。
ウェールズに移住して1年もしないうちに生まれたので、再会直後から夫婦生活が復活した と言うことだろう。
きっと、ネギからの扱いが よくなかったから「新しい子供が欲しい」とか思った訳ではない筈だ。そうに違いない。
ところで、弟の名前は「ナギJr.にしよう」と言う案がナギから出たが、アリカが猛反対してアギに落ち着いたらしい。
どうでもいいが、相変わらずウェールズの村人は野生的で「ヒャッハー!!」とか叫んでいるらしいので、アギの将来が心配である。
「と言うか、先程から子供が生まれた話ばかりではないでしょうか?」
「でも、大人達には大した変化がないんだから仕方ないんじゃない?」
「しかし、お兄様はウェスペルタティア王国を再建なさいましたよね?」
「そんなの、新しい命が生まれたことに比べたら大したことじゃないさ」
「何故か いいこと言って誤魔化そうとしている様にしか見えませんが?」
「そ、それは気のせいと言うものだよ? だから気にしちゃいけないよ?」
相変わらず仲のいい兄妹である。いや、実の兄妹ではないのだが……もう、実の兄妹にしか見えないくらいだ。
ところで、二人の会話にあったように、結局アセナは旧オスティアに当たる場所にウェスペルタティア王国を再建した。
と言うのも、地球からの移民を受け入れるにあたって、火星をアセナが管理した方が いろいろと都合が良かったからだ。
オスティアを返上してもらった形になるので元老院は あまり いいを顔しなかったが、見返りは与えたので問題ないだろう。
また、それにともなってクルトも麻帆良を離れ、ウェスペルタティアの宰相として腕を揮っている。
そのため、麻帆良の長のポストが空いたのだが……何故か そこには瀬流彦が収まっていた。
アセナとクルトの置き土産――と言うよりは、他に信頼できて使える人材がいなかったからである。
理由は どうあれ、長に任じられた瀬流彦は重圧に胃を抱える毎日を過ごしているようだが。
具体的に言うと、最愛の妻(?)と娘がいなければ、ストレスで倒れても不思議ではない程の重圧らしい。
それを聞いたアセナのコメントが「いい胃薬を知っているので、お中元と お歳暮に贈りますね?」だった辺り、実に『らしい』だろう。
と言うか、神多羅木が「責任者とか面倒だから断る」とか断らなければ神多羅木が就いていたので、神多羅木にも責はあるだろう。
まぁ、神多羅木の言葉を大義名分にしたうえで「二人目を作るには今の給料じゃ大変ですよねぇ」とか脅したアセナに最も責があるのだが。
だが、瀬流彦は それなりに充実した毎日を生きているので、特に問題はないだろう。
「いや、オレは悪くないからね? ネカネさんも『もっと給料が欲しい』って言ってたし……」
「お兄様、誰に言い訳してるんですか? いえ、『自分自身に』なのは わかっていますけどね?」
「わかっているなら訊ねなくてもいいじゃない? それとも、敢えて訊ねて心を抉ったのかな?」
「一応 訊ねただけで、別に お兄様の心を抉りたかった訳ではありませんよ? 他意はありません」
「へー、そーなんだー(棒読み)。あ、そう言えば、フカヒレ達の研究が成功したんだって?」
「いきなり話題が変わりましたね。ちなみに、答えはイエスで、OYGシステムと言うらしいです」
「へー、本当に完成させたんだぁ。いやぁ、凄い情熱だよねぇ。で、OYGシステムって何の略?」
「レポートに依りますと『(O)オレの(Y)嫁が(G)現実になったシステム』の略だそうです」
「何て頭の悪い略なんだ……いや、わかりやすいから これはこれで有りだ とは思うんだけどね?」
そう、他に大きな変化と言えば、フカヒレ達の研究していた「二次元の嫁をモニターから引き出す技術」が完成したことだろう。
これで、よりダメ人間――いや、二次元へ愛を昇華させられる剛の者が増えることだろう。
と言うか、現実に嫁がいるアセナも「ヤベェ、世紀の大発明じゃないか」とか思う始末だ。
女性と あまり縁がない(かなり控え目な表現)フカヒレ達はドップリと のめり込むに違いない。
まぁ、そんなこんなで、地球と火星は今日も平和なのであった。
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「ところで、余所様の家庭に口を出してばかりでなく、お兄様も いい加減に御世継を作られては如何でしょうか?」
しかし、平和な感じにアセナ達の会話が終わる訳がない。と言うか、茶々緒が それを許す訳がない。
そのため、茶々緒はアセナが『できれば触れて欲しくなかった話題』に嬉々として切り込んでいく。
「あ~~、いや~~、その……ね? 政治的に まだ子供を作る訳にはいかないでしょ?」
「あれだけ女性を囲って置いて子供の一人も出来ないとは……と、皆が心配してますよ?」
「まぁ、国民から『王様って種無しなの?』って扱いをされているのは知っているけどさ」
「一応は『ヤリ過ぎで薄くなっているからだろう』と言う公式見解にしてはありますが」
「へー、そーなのかー――って、ちょっと待とうか? それが公式見解ってマジな訳?」
「もちろん、ネット内での勝手な公式見解ですよ。王室からの正式な発表ではありません」
「それならいいや。正式発表は不味いけど、ネットでの情報なら どうとでもなるからね」
二人の会話から おわかりの通り、アセナはハーレムを作っているが子供は作っていない。いや、そう言った行為はしているが、子供は出来ていないのだ。
「と言うか、政治的な問題を気にするなら、帝国との関係を良好にするためにテオドラ様との間に子供を作るべきではないですか?」
「いや、その理論で言ったら、メガロやアリアドネーや西との関係のためにネギやエミリィや木乃香とも子供を作らなきゃでしょ?」
「そうですね。むしろ、ハーレムメンバー全員を同時期に孕ませてしまえば『丸く』収まるのではないでしょうか? いろいろな意味で」
「いや、『うまいこと言いました』的な顔をされても困るんだけど? あまり うまくないし、そもそも それだと丸くは収まらないし」
「確かに、生まれる順番を間違えると面倒なことになりますからね。ある程度 時期をズラして、出産のタイミングを調整すべきですね」
「そうだよねぇ。養育のことではなくて出産そのものを気にして子供を作れないとか普通に泣きたくなるんだけど? いや、マジで」
本来なら本能的なものである筈の生殖を理詰めで行わなければならないのがアセナの立場だ。少しは同情してもいいかも知れない。
「それはともかく、そろそろ会場入りの時間ではありませんか?」
「あっ、そうだね。じゃあ、そろそろ『転移』しよっかな?」
「…………さすがに五度目となれば、緊張もしませんか?」
「いや、そんなことないよ? これでも緊張してるんだよ?」
アセナの嘆きが軽く流された形だが、アセナは特に気にしていないようなので問題ないのだろう。ちなみに、何が五度目なのか は語るまでもないだろう。
「しかし、どう見ても緊張しているようには見えませんよ?」
「まぁ、そう見せているだけさ。実は緊張でガチガチだよ?」
「……ああ、そうですね。よく見ると脈拍が激しいですね」
「冷静に分析しないでぇええ!! 特に股間はダメェエエ!!」
「安心してください。今は熱源を見ているだけですから」
「だから安心できないのはオレだけかな? かなぁああ?!」
「ですが、初夜を迎える意味でも入念なチェックは必要です」
「いや、必要ないから。と言うか、諸々の意味で元気だから」
微妙に下ネタになって来ているので話は区切るが……そう、今日はアセナの(五度目の)結婚式なのである。
諸々の都合で、アセナの結婚には順番が出来た。それが そのまま序列になる訳ではないが、政治が絡む以上 順番は無視できない。
まず、最初に結婚した相手はテオドラだった。態々 説明するまでもなく、帝国の皇女と言う立場上 最初にするしかなかったのだ。
では、二番目に結婚した相手だが……何とネギだった。メガロメセンブリアの影響力もあるが、ネギのヤンデレ化を恐れたのもある。
そして、三番目は木乃香だ。最初の婚約者なのに三番目になったのは、後ろ盾となる組織の規模を考えると仕方がないとしか言えない。
むしろ、四番目のエミリィより早かっただけマシだ。アリアドネーが いい顔をしなかったが、新参者であるため控えてもらったのだ。
まぁ、ここまで語れば、五番目である今日の式の相手は おわかりだろう。そう、あやかだ。
「ともかく、最後の晴れ舞台なのですから、緊張して失敗なさらないでくださいね?」
「まぁ、そうだね。でも、『最後の晴れ舞台』って表現は不吉だから やめてくれない?」
「ですが、さすがの お兄様でも もう結婚はなさらないでしょう? 常識的に考えて」
「いや、確かに その意味じゃ最後の結婚式なんだけどね? でも、表現が微妙なんだけど?」
「逆に訊きますが……今後これ以上の『晴れ舞台』が存在する と、お考えなのですか?」
「まぁ、そうなんだけど。でも、何故かこれでオレの人生が終わるように聞こえるんだけど?」
「お兄様? 細かいことを気にしていると……禿るだけでなく、式に遅れますよ?」
「あっ!! そう言えば そうだった!! こんなところで遊んでる時間なんてないじゃん!!」
いくら『転移』で移動時間をゼロにできるとは言え、遅刻したらアウトだ。グダグダと遊んでいる場合ではない。アセナは慌てて『転移』する。
それ故に、アセナは茶々緒の言葉を聞き逃してしまった。まぁ、そうは言っても、それほど大切なことではない。
何故なら、それは「何度も式を挙げている筈なのに、今日の お兄様は格別に幸せそうですね」と言う呟きだったからだ。
きっと、アセナが この言葉を聞ていれば照れもせずに「それは相手が あやか だからさ」とか応えたことだろう。
だから、それほど大切なことではない。その呟きに潜んだ茶々緒の寂しげな様子も、アセナなら いつか気付いて解消するだろうから。
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Part.02:愛しさと切なさと心強さと
「って言うか、茶々緒さんのターンが長過ぎませんか!?」
ところ変わって式場の参列者控室にて。いきなりメタな発言をして周囲に波紋を広げたのは、ネギである。
19歳になって少しは落ち着いて来たのだが、まだまだ幼さが残っている。もう少し落ち着いてもらいたいものだ。
「いや、キミはイキナリ何を言ってるんだい? 遂に頭が沸いたのかい?」
「相変わらず この銀髪は口が減らないねぇ。もう少し、空気を読んだら どう?」
「いや、この状況でイキナリ叫び出したキミにだけは言われたくないよ?」
「この状況だからだよ!! ここで叫んで置かなきゃ そのままスルーされるんだよ?!」
「いや、別にスルーされてもいいだろう? そんなに目立ちたいのかい?」
「別に目立たなくてもいいけど、ナギさんの目には止まりたいじゃないか?」
「いや、まぁ、それには同感だけど……まだ神蔵堂君は来てないから無意味だよ?」
「それでも、この機会を逃すと二度と発言の機会がない気がするんだよ!!」
ネギが暴走し、フェイトが宥めつつも煽る。実に相変わらずな二人だ。
ところで、フェイトはネギを参考にして肉体を成長させているので、フェイトも外見上は18歳くらいである。
それだけ聞くと仲がいいようにも思えるが、合わせているのは「フェアを保つため」らしいので実に『らしい』。
この先も二人はライバルのような関係を続けていくことだろう。願わくは周囲の被害も考えて欲しいものだ。
そして、言うまでもなく、フェイトもアセナの愛人の一人である。
「確かに そう言った可能性もあるだろうけど、『立つ鳥 跡を濁さず』と言うだろう?」
「でも、メインヒロインとしては このままフェードアウトするのは有り得ないだろう?」
「え? メインヒロイン? 誰が? ……まさか、キミのことを言っているのかい?」
「もちろん、そうだよ。むしろ、ボク以外の誰がメインヒロインだって言うのさ?」
「え? そんなの雪広あやか に決まっているじゃないか? いい加減、現実を見なよ?」
「フフフフフ……それは誰もが思っているけど言っちゃいけない禁句の一つだよ?」
ところで、ネギ繋がりとしてアーニャなのだが……アーニャはアセナに文句を言いつつもネギ及びアセナとネギの傍を離れない。
と言うか、ネギを交えた複数プレイには嬉々として参加しているので、昔よりはアセナの評価は低くないのだろう。
まぁ、ネギへの愛でアセナへの嫌悪を我慢しているだけかも知れないが。それでも、毛嫌いはしていないようである。
むしろ、ハーレムの一員になっている としか言えない現状に甘んじている辺り、心憎からず想っているに違いない。
ちなみに、何のプレイか は聞いてはいけない。二人でネギを攻めたり、二人でアセナを攻めたり、二人から攻められたりする感じ としか言えない。
「べ、別に、あの変態のことなんか好きでも何でもないわよ!! いや、マジで!! ツンデレとかじゃなくて!!」
「つまり、好きな訳ではないけど嫌いな訳でもないんでしょ? それなら、それでボクは構わないよ?」
「うっさいわよ!! アンタがアイツの毒牙に掛かっているからアタシまで毒牙に掛かっちゃったんじゃない!!」
「でも、アーニャはアーニャの意思で ここにいるんだよね? ボクだけが理由じゃなく、アーニャの意思として」
「う、うっさい!! アタシのことは放っとけ!! って言うか、アンタは大人しくフェイトとバトってなさい!!」
「いや、大人しくバトるって矛盾してない? まぁ、小声で怒鳴る みたいに、微妙に意味はわかるけどさ」
「ええい、揚げ足を取るな!! と言うか、微妙に意味がわかるならスルーして置きなさい!! それが優しさよ!!」
さて、いつまでもネギ達ばかりを見ていても仕方がないので、他のコ達も見てみよう。
「う~~ん、ネギちゃんが妙なことを口走るのは いつものことだけどー、発言して置くことには賛成だねー」
「まぁ、そうですね。脇役と言えども、脇役なりに意地と言うものがありますからね。出番は欲しいです」
「そうだよねー。でもね、夕映ー。脇役って言うキーワードは和泉さんのだから、盗っちゃダメだよー」
「あっ、そうでしたね。ですが、それは原作の話であって、この物語では関係ないのではないですか?」
「そう言えば、そうだねー。でも、原作とか この物語とか、メタ過ぎるから自重した方がいいよー?」
「それもそうですね。メタはナギさんや超さんの専売特許ですからね。私達は自重して置くべきですね」
さて、だいたい おわかりだろうが、のどか も夕映も愛人となって落ち着いている。
24歳なのに、いまだに中学生の頃と口調が変わっていない件については触れないで欲しい。
ここでは、物語の犠牲(キャラを わかりやすくするため)になった としか言えない。
まぁ、綺麗に表現すると、いつまでも少女の気持ちを忘れていないのだろう、きっと。
どうでもいいが、「ネギちゃんが不思議なことを口走るのは いつも」と言うのは地味に酷い気がするが気のせいだろう。
「そうそう。私達には私達の役割があるんだから、他人の役割を奪っちゃいけないよー。常識的に考えてー」
「そうだとは思うのですが……そう言った言い回しは、それこそ のどかの役割ではないのではないですか?」
「まぁ、そうだねー。でも、久し振りだからキャラが安定していないだけだよー。多分、きっと、恐らくは」
「…………そうですね。物凄い違和感を覚えますが、久し振りだからハッチャケているだけですね、きっと」
「そうだよー。って言うか、そうに違いないよー。私のスタンドと言う名の守護霊様も そう仰ってるよー」
「そ、そうですか。どうでもいいですが、そう言った言い回しも のどかの役割ではない気がしますです」
「それはアレだよー。ナギさんをストーキング――観察しているうちに、ナギさんっぽくなっちゃたんだよー」
「まぁ、納得して置きます。ちなみに、ストーキングや観察と聞いて妙に安心した私は もうダメな気がします」
常識的に考えると おかしい筈なのに、何故か それがスタンダードに感じてしまう段階で もうダメだろう。そんな訳で、次のコ達に行ってみよう。
「ところで『36話でスーパーヒロインタイムがあった私は勝ち組』とか言ったらメタなんでしょうか?」
「せやな、それはメタやな。ちゅうか、そんなこともあったんやなぁ。そっちの方が驚きやわ」
「まぁ、私の見せ場は京都と そこしかありませんでしたからね。私も幼馴染の筈なんですけどねぇ」
「それを言うたら、ウチは ちょこちょこ出番はあったけど、あんまりパッとせえへんかったえ?」
「それでも結婚できただけマシですよ。私なんか済し崩し的にハーレム入りしてたんですよ?」
「あ~~、そう言えば、せっちゃんがハーレム入りするシーンはあらへんかったなぁ、不思議と」
べ、別に忘れていた訳じゃないんだからね!! ただ、他のコと似たような感じ(納得せざるを得なかった)だったから飛ばしただけなんだからね!!
まぁ、説明は遅れたが、会話の通りだ。済し崩し的に刹那も愛人として囲われているのが現状だ。
もちろん、刹那に不満は無い。いや、あると言えば あるのだろうが、そこまで不満ではない。
アセナとも木乃香とも離れずに暮らしているし、二人の間で板挟みになるようなことも無いからだ。
ちなみに、刹那は困っている時が一番 可愛いので不満のない状態の刹那は割愛された……と言う事実は一切ない。断じて。
「……何故か言い様のない憤りを感じるのですが? と言うか、世の中には外道が多過ぎませんか?」
「せやなぁ。でも、類は友を呼ぶ言うから、なぎやんの影響や と思て置くと納得できへん?」
「そうですね、そう思えば納得できそうな気がします。まぁ、微妙に言い掛かりな気もしますが」
「せやけど、だいたいは なぎやんのせいやん。特にハーレムエンドは なぎやんの身から出た錆やし」
「まぁ、それを受け入れた私達にも責はありますが……根本的には那岐さんのせいだとは思いますね」
妻としての地位を得た木乃香だが「ウチの扱いが思ったよりも悪いんやけど?」と不満らしい。まぁ、あきらめてもらうしかないだろう。
「しかし、あれでもアセナは御主等に感謝しておるのじゃぞ? まぁ、そうは見えんじゃろうがな」
「そうなんか? どう見てもウチを怒らせないように気を遣っているだけにしか見えんけどなぁ」
「まぁ、御主を怒らせぬようにしているのも確かじゃが……アヤカとのことで非常に感謝しておるよ」
「いいんちょ とのこと、か……まぁ、その件に関してなら、感謝されてても おかしくはないなぁ」
「と言うか、妾も感謝しておるぞ? 御主の心配りの御蔭で、アセナは笑っていられるのじゃからな」
不満そうな木乃香をフォローするテオドラ。どうやら、テオドラは木乃香の暗躍(もちろん、いい意味だ)を知っているらしい。
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「ありがとう、このちゃん」
時は遡って2004年の某月某日。卒業式を控えたアセナは木乃香を世界樹広場に呼び出した。
そして、開口一番に礼を述べたのである。さすがの木乃香も「え? 何のことなん?」と疑問顔だ。
「あやか とのことさ。いろいろと動いてくれたでしょ? だから、ありがとう」
「別に礼には及ばんえ? なぎやん には いいんちょが必要やと思っただけやから」
「それでも、ありがとう。木乃香の御蔭で とても助かった。本当に ありがとう」
アセナは純粋に感謝しているのだろう。話を聞いた当初(49話)こそ混乱していたが、冷静になれば感謝せざるを得ないのだ。
だが、木乃香としては苦肉の策だった。木乃香は本来なら自分だけでアセナを支えたかったが、それができなかったのだ。
いや、実際にアセナを支えようとした訳ではないので、正確に言うと それができないと思い知っていた と言うべきだろう。
木乃香は人の機微に聡い。アセナが あやかと離別してから、アセナが自暴自棄気味になっていることに気付いていた。
アセナが「あやか を失ったのだから、自分の命を失っても怖くない」と言う無意識に思っていることを見抜いていたのだ。
それ故に、木乃香は あやかを引き込むしかなかった。自分ではアセナの『重し』にしかならない と敗北を受け入れたのである。
(ウチはウチの できることを やっただけや。いや、正確には それしかできへんかっただけや)
だが、それでも、本当にしたいこと――壊れそうなアセナを復活させることはできた。
他力本願なところはあったが、それでも木乃香が目的を達成したことは変わらない。
あのまま放置していればアセナは いつか壊れただろう。だから、木乃香は誇るべきなのだ。
(せやから、これからもウチはウチの遣り方で なぎやんを支えていくで? たとえ なぎやんの気苦労が増えたとしても、な)
アセナは抜け目がないように見えて実際は抜けまくりである。誰かが その抜けている部分を補わなくてはならない。
そして、木乃香は そんなアセナの妻なのだ。他の妻や愛人もいるが、木乃香は率先してアセナのフォローをするだろう。
だからこそ、木乃香は これからもアセナを『アセナの望む形とは限らない方法』で支えていくことを誓うのだった。
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「……それを言うなら、ウチもテオドラはん に感謝しとるえ? ハーレムを許してくれたんやからな」
過去を思い出した木乃香は、少しの無力感と大きな覚悟を思い出した後あることに気付き、苦笑を浮かべる。
そう、よくよく考えてみれば、テオドラがハーレムを認可しなければ すべてが水泡に帰していたのである。
「そうか? 妾の場合はアセナを手に入れるためにハーレムを許容せざるを得なかっただけじゃぞ?」
「それはウチもやよ。ウチも なぎやんを心から笑わすには いいんちょの手を借りるしかなかったんや」
「なるほどのぅ。それなら、お互い様じゃな。お互い、一人ではアセナを幸せにできぬが故に、な」
「そうやな。自分にできないから他人を頼る。それは悔しいことやけど、何もしないよりは遥かにマシや」
まぁ、結局は互いにフォローし合う形となったが(どうやら、二人は それなりに良好な関係らしい)。
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Part.03:何処までも続く愛の詩
「亜子!! ここで『最初の頃は私達にも出番はあったんだ!!』ってアピールしないと忘れられちゃうよ!?」
湿っぽくなった空気を壊すかのように裕奈が無駄に元気を振り撒く。
女性と言うべき年齢(24歳)なのに相変わらずの元気っぷりだ。
「いや、それやと事実上の敗北宣言ちゃう? 最初は よかったっちゅうことは、今はダメなんやろ?」
「ちがぁう!! 途中がダメだったけど、最後の方は巻き返したんだよ!! 多分、きっと、恐らくは!!」
「いや、それは語るに落ちとる状態やで? あきらかに『結局いいんちょに持ってかれた』て思とるやろ?」
まぁ、亜子の図星な言葉に「うぐっ!!」と苦しんでいるが、元気でカバーするに違いない。
「でも、二人は まだマシじゃないかな? 私達、終盤は名前が出て来ただけで全然セリフなかったんだよ?」
「そうだよ。私も まき絵も、学園祭以降は名前が出ただけで、その場にすら登場できなかったんだよ?」
「しかも、私なんか新体操部からフィギュア部に設定変更したのに、まったく活かされなかったんだよ?」
「そうだね。何度か⑨ネタに利用されただけで本筋そのものには まったく影響を与えてない設定だったね」
まき絵もアキラもメタな発言をしているが、気にしてはいけない。何故なら、これは本編ではなくエピローグだからだ。
まぁ、微妙に理由になっていない気がしないでもないが、敢えて気にせずに話を続けよう。
それぞれのセリフではわからないかも知れないが、運動部四人組も愛人になったのである。
出番云々も不満らしいが、四人一纏めで『相手』されてしまうことが多いのも不満らしい。
いや、別の意味では充分に満足させられているらしいので、アセナの体力がチート臭いことをシミジミと感じる今日この頃だ。
「やれやれ、これだから小娘達は困るな。もう少し『侘び寂び』を弁えた大人になったら どうだ? この私のような」
「そうですね、マスター。マスターが言うとイマイチ説得力はありませんが、仰っていることは間違いありません」
「うるさいわ、このボケ従者が!! 私は もう立派な大人だわ!! と言うか、恍惚とした表情で録画に勤しむな!!」
「申し訳ありませんが、その命令は拒否させていただきます。何故なら、これこそが私の生きる道だからです (キリッ 」
「いや、(キリッ じゃないわ!! と言うか、他人にヤられると妙にイラッとするな……まぁ、今後は控えることにしよう」
ちなみに、エヴァの言っていること(大人云々)は嘘ではない。何と、エヴァの『真祖の吸血鬼』としての呪いが解けたのである。
50話では流れ上 説明できなかったが……実はと言うと、卒業式の日にエヴァはアセナに気持ちを伝えており、
エヴァの気持ちを受け入れたアセナは「どうせなら一緒に年を取りたい」と『真祖化』を解いたのである。
まぁ、多少 無茶したため、しばらく完全魔法無効化能力が使えなくなった時期もあったが、それも過去の話だ。
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「私にとって『ナギ』と言う単語は『ナギ・スプリングフィールド』を指す言葉だった」
卒業式の後、アセナはエヴァに誘われ『別荘』の『南国』にて、ディナーを摂っていた。
そこは夜の海を見下ろせる落ち着いた場で、原作15巻の137時間目と同じロケーションである。
ちなみに、エヴァの姿は大人バージョンにシックなナイトドレスを着こなしていたりする。
「だから、お前のことは『ナギ』とは呼ばず、フルネーム――神蔵堂ナギと呼んでいた訳だ」
エヴァは見た目 相応の――つまり、いつもの『お子様』らしさを感じさせない、憂いを帯びた雰囲気で語る。
語られている内容も非常にシリアスなので、極めて真剣に語っているのだろう。知らず、アセナも気を引き締める。
「だが、今となっては『ナギ』は お前だ。お前しか指さん。ナギ・スプリングフィールドではない」
「うん? つまり、これからはオレのことは『ナギ』と呼んでくれるってことなの?」
「いいや違う。そうじゃない。私は お前を一人の男として意識している、と言っているのだ」
気を引き締めたところでアセナはアセナなので的外れな見解を示したが……エヴァは それを想定していたようで、怒ることなく言葉を続ける。
「え? それって、オレを『一人前』として認めてくれたってこと?」
「まぁ、そうだな。もう お前は一人前だよ。私は そう思っている」
「そっか。エヴァには守られてばっかりだったから、それは素直に嬉しいな」
「だが、それだけではないぞ? と言うか、お前わかっているだろう?」
割と直球なエヴァの言葉を別の方向に解釈するアセナに、段々と焦れて来るエヴァ。いつものようにキレていないのは、シリアスモードだからだろう。
「……いや、だって、エヴァはナギさんに惚れているって思ってたからさぁ」
「まぁ、それは否定せん。確かに、私はアイツに惚れて『いた』からな」
「もう過去になっていたとしても、オレには そのイメージが強いんだよ」
アセナは困ったような表情を浮かべて「だから、オレに惚れているって言われてもピンと来ないんだよねぇ」と鈍感を通り越した言葉で締め括る。
いつもなら「男なら細かいことを気にするな」と一喝するエヴァだが、シリアスモードなので「なら、言葉にしてやる」と別の切り口で攻める。
「私――エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルは、お前――アセナ・ウェスペル・テオタナシア・エンテオフュシアを愛している」
その言葉はストレートそのもの。これまでに放って来た直球寄りの言葉とは一線を画すストーレトさだ。
ここまで言われてしまったら、さすがのアセナでもピンと来ざるを得ないだろう。と言うか、来ない訳がない。
むしろ、これでピンと来ないような「人の心を理解できないような人非人」は馬に蹴られて死ぬべきである。
「……ありがとう、エヴァ」
どうやら、アセナは馬に蹴られなくて済んだようだ。エヴァの気持ちを真っ向から受け止めた。
そして、少し考えた後「答えの前に、ちょっと昔の話をさせて欲しいんだ」と前置きして語り始める。
「オレは『黄昏の御子』の頃、数多の生命を吸うことで その寿命を長らえて来た。オレに その認識はないけど、事実は事実だ。
で、100年は生かされていた らしいけど……正直、オレとしては『生きていた』と言う実感は薄い。生かされていただけだ。
だから、確実に『生きている』と言えるのは、十数年前にナギさん――ナギ・スプリングフィールドに解放されてからだね。
まぁ、ガトウさんの死を契機に『記憶』を消されたことで神蔵堂 那岐になったけど、人として生きたのは十数年程度ってことさ」
正確には、憑依前の人生も含めると40年程度なのだが、エヴァの600年には遠く及ばないことは変わらないので問題ないだろう。
「そんな訳で、600年を生きたエヴァのことを『わかる』なんて口が裂けても言えない。
だけど、エヴァのことをわかりたい とは思っている。それは胸を張って言える。
オレの寿命は不明だけど、少なくとも生きている間はエヴァに歩み寄り続けたい」
前置きは長くなったが、エヴァと共に生きたい と言うのがアセナの答えだ。
ちなみに、100年 生きて10代後半の外見なので、あと5倍(つまり、500年)くらい生きられるかも知れないし、
生命を吸わなければ常人と変わらない寿命(つまり、せいぜい80年くらいしか生きられない)のかも知れない。
どの道、このままではエヴァより先にアセナは死ぬ――エヴァを一人で残していくことになってしまうだろう。
そう、『このままでは』だ。
「そんな訳で……オレと共に歩み、共に老い、共に死んでくれないかな?」
「ああ、もちろんだ。お前と共に生き、お前と共に死ぬことを誓ってやる」
「……ありがとう。でも、間違えているよ。『共に老い』が抜けてる」
「いや、私には共に老いることはできんから、敢えて抜いたのだが?」
「でも、共に老いることができないのは『真祖の吸血鬼』だからでしょう?」
「ああ、そうだ。死ぬことはできるだろうが、老いることはできんよ」
エヴァは不死身に近いだけで不死身ではない。つまり、(方法は限られているだろうが)死のうと思えば死ねる筈だ。
それ故に、エヴァは『共に生き、共に死ぬ』と誓ったのだが……どうやら、アセナは それでは不満だったようだ。
「――いいや、できるよ。いや、正確には『できるようにする』んだけどね」
「ん? 何を言っているのだ? まさか、真祖化を解呪する とでも言う気か?」
「その まさかさ。真祖だから不老長寿ならば、真祖でなくなればいいでしょ?」
「……それは無理だ。この600年、私が何もせずに生きていたと思うのか?」
確かにアセナの言う通りなのだが、その程度のことエヴァも思い付いている。思い付いていたが、無理だったのだ。
過去の苦い経験を思い出しているのだろう、エヴァは自嘲気味に「解呪は何度も試みて失敗したさ」と力なく呟く。
「そうだろうね。そして、エヴァが挑戦し続けて無理なら、オレの完全魔法無効化能力を使っても無理だろうね」
「ああ、そうだ。京都で桜咲 刹那の異形化を解いたようだが、真祖化は『あの程度』とは比較にならんさ」
「確かに そうだね。でも、エヴァを真祖化したのは造物主で、造物主なら解呪の方法もわかる……としたら?」
原作でも語られているが、造物主は精神体と言う『不滅の存在』だ。だが、宿る肉体は滅びてしまうため『交換』が必要だった。
もしも宿る肉体が不死身ならば、その交換が不要となるだろう。そう、造物主は不死身の肉体を求めてエヴァの真祖化を試みたのだ。
「――ッ!! そう言えば、お前の中でヤツ――私が最も憎んで止まない諸悪の根源が眠っているのだったな」
「そう言うことさ。だから、もう一度 訊くよ? オレと共に歩み、共に老い、共に死んでくれないかな?」
「……ああ、もちろんだ。お前と共に歩み、共に老い、共に死ぬ と誓おう。決して、お前を一人にはせん」
エヴァの「お前を一人にはせん」と言う言葉の裏には「私を一人にするな」と言う気持ちが隠れているのだろう。
それを「寂しがり屋」の一言で片付けてはいけない。長い時を一人で生きねばならなかったエヴァの切実な願いなのだから。
エヴァよりは短いが、アセナも『黄昏の御子』として孤独に過ごしていたため孤独を恐れる気持ちは痛いほど理解できる。
理解できるからこそアセナは その奥に「だから、一緒に いて欲しい」と言う気持ちも見えてくる。何故なら、アセナも同じだからだ。
「…………そうだね、エヴァ。これからも、末永く よろしくね?」
まぁ、ここで終わると綺麗に纏まるのだが……そうは問屋が卸さない。と言うか、どうしても ここでは終われない。
何故なら、アセナが「真祖化の解呪方法」を知っていたことの説明をしていないからだ。そこは語らねばならない。
と言うのも、実は『別荘』を訪れる直前に、未来から「真祖化の解呪方法」の情報が送られて来ていた のである。
先程までは「何で こんな情報が来たんだろ?」と首を傾げていたアセナだったが、エヴァの告白で すべては解決した。
と言う訳で、随分と準備がいい様に見えたかも知れないが、アセナは予め準備していたのではない。単にズルをしただけだったのだ。
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ところで、危うく説明を忘れるところだったが、当然のことながらエヴァも愛人の一人である。
エヴァは随分とヒロイン過ぎる位置にいるが、エヴァは未だに悪名が高いので妻にはしなかったのだ。
いや、別に権力でゴリ押しすればできないことはないのだが……そんなことで軋轢を作るのは愚策だ。
まぁ、それでも、エヴァが妻と言う地位を望むならアセナは軋轢など気にせずゴリ押ししただろうが。
ただ単に、エヴァは「いや、お前の傍にいられれば愛人で構わん」と豪語したので愛人と言う位置なのである。
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「え~~と、この流れだと私も何か しゃべった方がいいスよね? でも、何を話せばいいんスかねぇ?」
「何も話すことが無いナラ、近況報告でもすればいいんじゃないカナ? ちなみに私は16歳になったヨ」
「うんうん、ココネは相変わらず可愛いっスねぇ。ナギの毒牙に掛かっていることが未だに許せないスよ」
「でも、ミソラとも一緒だから、私は幸せダヨ? 一時は、ミソラが置いてかれそうで心配だったんダヨ?」
「いや、まぁ、友達と言う微温湯は居心地よかったっスけど、友達のままで終わるのはイヤだったスからねぇ」
結論から言うと、美空もアセナに想いを告げて愛人の一人になった。ちなみに、高校卒業時と言う一番 遅い時期だった。
そこに至るまでも至った後も紆余曲折があったのだが……語る程のことではないので、割愛させていただく。
と言うか、かなり恥ずかしい思い出なので、美空から「忘れて欲しいっス!!」と言う懇願があったのである。
美空が随分と乙女チックに告白する様は見応えのある物だったが、人の恋路を見世物にするのは悪趣味だろう。
そして、手を出しても問題ない(社会的には問題あるがアセナ的には問題ない)年齢に成長したのでココネも愛人になっている。
「おかしいですわね? いつの間にか、中学生以下でなければOKだ と思っている自分がいましたわ」
「まぁ、センパイには何を言っても無駄ですからね。それに、文字通り、ここの法律はセンパイですし」
「そうでしたわね。ウェスペルタティア王国の法では、13歳以上なら合法的に関係を持てるんでしたわね」
「両者の合意と保護者の許可が必要ですけどね(まぁ、ココネちゃんの保護者はセンパイですけど)」
「そのうえ、経済的に責任を取れるならば重婚も愛人を囲うのも自由、と言う法までありましたわね」
そう、ここは日本ではないので何も問題はないのだ。問題だらけな気がするが、きっと気のせいに違いない。
ところで、高音も愛衣も そんなことを言いつつも愛人としての生活を満喫しているのは言うまでもない。
学園祭での経験で何かに目覚めたのか、偶にアセナに執事服を着させて奉仕させているくらいに満喫している。
それに応じるアセナもアセナだが、それを求める二人も二人だろう。いや、まぁ、幸せは人それぞれだが。
と言うか、人の『そう言った部分』は他人が どうこう言うべきことではないだろう。むしろ、言いたくない。
「ところで、ウチは ここにいても ええんかな? ウチ、愛人でも何でもないんやけど?」
「ええんとちゃいますかー? と言うか、まだ愛人になっとらんかったんですかー?」
「しゃ、しゃーないやん。兄ちゃんはウチのことなんか何とも思ってへんのやから」
「そうどすかー? ウチの見たところ、あの方は来る者は拒まんタイプやと思いますえ?」
「せ、せやけど、ウチは そー言うことようわからんし、胸も尻も無くて女らしゅうないし」
「顔がええですから、大丈夫ですってー。なんなら、ウチも一緒にいってあげますえー?」
微妙にわかりづらいかも知れないが、関係は浅いのだが何故か関係者として小春も月詠も呼ばれいていたらしい。
不穏な会話から察せられる通り、現段階『では』小春も月詠も愛人になっていない。
だが、二人ともその気はあるみたいなので、二人が愛人になるのも そう遠くないだろう。
月詠の読んだ通り、アセナは来る者は拒まないため、押せば簡単に落ちる筈なのだから。
ところで、45話で話題になった月詠と刹那をガチバトルさせる件だが……実は密かに履行されており、刹那の辛勝で終わったらしい。
まぁ、今となっては どうでもいいことだ。今は、バトルのことよりも これからの式の方が大切だろう。
それぞれのどうでもいい会話を描写しているうちに時間は随分と流れており、もう間もなく式が始まる。
その証拠に参列者控室から会場に移動するように誘導係が現れた。恐らく、会場の準備が整ったのだろう。
ギリギリで会場入りしたアセナも準備を終えたのだろうし、花嫁たる あやかも純白のウェディングドレスに身を包んだのだろう。
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Part.05:こんなにも青い空の下で
式は あやかの希望でチャペル形式で行われ、近しい者しか呼ばない慎ましい規模のものとなった。
実を言うと、これまでの結婚式は慎ましいとは お世辞にも言えない規模のものだった。
テオドラとの式は帝国とウェスペルタティアの両国を挙げてのセレモニーとなってしまい、
ネギとの式はメガロメセンブリアが、エミリィとの式はアリアドネーが盛り上げてくれた。
木乃香との式は比較的 大人しかったが、それでも西の関係者や日本の重鎮達だらけだった。
その意味では、あやかとの式は一番 政治から離れており、プライベートらしい式と言えるだろう。
まぁ、だからと言って、他の妻や愛人達を式に呼ぶのはどうかと思うが……
アセナは政治関係以外の交友関係が極めて少ない(10人に満たない)し、
女性陣から「呼べ」と言う お達しがあったので呼ばざるを得なかったのだ。
それぞれが どう言った心境で参列したのかは……語るのも野暮と言うものだろう。
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そして、式は滞りなく進行し、遂に宣誓の段となった。
「……汝――アセナ・エンテオフュシアは、この女――雪広あやか を妻とし、
良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、
共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、妻を想い、
妻のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」
「はい、誓います」
アセナは真剣な面持ちで神父の問い掛けに淀みなく答え、その愛を誓う。
また、アセナ同様に あやかも神父の問い掛けに答えて その愛を誓う。
その光景は、いつかの情景の焼き直しのように見えて、まったく違うもの。
そう、神蔵堂ナギが三千院ハヤテと婚姻を結んだ光景に似ているが、まったく違うのだ。
アセナは もう神蔵堂ナギではない。神蔵堂ナギでもあるが、アセナでもあるのだ。
だから、神蔵堂ナギのような失敗は犯さない。大切なものを失ったりしない。
幸せに浸ることはあっても油断はしない。油断して失うことなど有り得ない。
「行こう、あやか……二人で――と言うか、みんなで だけど」
最後の最後まで締まらないアセナだが、締まらないからこそアセナだとも言える。
だから、あやかは苦笑を浮かべながらも その瞳はどこまでも幸せそうだった。
もちろん、そんな あやかを見詰めるアセナも幸せそうなのは言うまでもないだろう。
そう、あやかが幸せを感じる限り、アセナは幸せに生きることだろう。前世のように途中で幸せを失うことなどなく……
THE END
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後書き
ここまでお読みくださってありがとうございます、カゲロウです。
改訂作業に時間を掛けてしまって随分と遅くなりましたが、エピローグ投下です。
今回は「エピローグなのでヒロイン達を総出演させてみたら、ほとんどのキャラが崩壊してしまった」の巻でした。
ちなみに、エミリィとベアトリクスが出てきてませんが、キャラを出し切れそうに無かったので断念したのです。
決して忘れた訳ではありませんし、途中で思い出したけど「今更 挟むのも微妙かな」とか思った訳でもありません。
いえ、他にも いろいろとツッコミどころはあるとは思いますが、とりあえず これで完結と言うことにしてください。
と言うか、今回は まるまるオマケみたいなものなので、ハッピーエンドでよかったねって感じで流していただけると助かります。
では、機会があれば また何処かで お会いしましょう。
感想・ご意見・誤字脱字等のご指摘、お待ちしております。
初出:2013/4/30(以後修正)