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No.10626の一覧
[0] 【一発ネタ】 凡人終末端  リリカルなのはStS  ティアナ憑依 TS注意【やっつけ仕事】[痴話詐欺離散](2009/08/10 23:04)
[1] タイトルとか募集中[痴話詐欺離散](2009/07/29 01:18)
[2] 皆の心が広いなと感心することしきりw ※おまけ追加しました07/30[痴話詐欺離散](2009/07/30 17:56)
[3] お食事時を避けてください[痴話詐欺離散](2009/07/31 23:40)
[4] 頑張りすぎは身体に毒と自分に言い訳 ※08/04 おまけ追加しました[痴話詐欺離散](2009/08/04 22:53)
[5] 今回はそのうち書き直すかもしれません。ジ○スラックコワイ(ガタガタ[痴話詐欺離散](2009/08/10 02:19)
[6] 休日はBADEND多発警報が出ています。お出かけの際は十分ご注意ください[痴話詐欺離散](2009/08/10 23:07)
[7] 自分の文章力の低さに絶望する日々[痴話詐欺離散](2009/08/19 15:45)
[8] END8 拡張ぱわーうpキット 前編 也。[痴話詐欺離散](2009/08/24 16:47)
[9] END8 拡張ぱわーうpキット 中編 也。[痴話詐欺離散](2009/09/10 01:24)
[10] END8 拡張ぱわーうpキット 後編 未完也。[痴話詐欺離散](2009/10/07 07:48)
[11] END8 拡張ぱわーうpキット 修正パッチ[痴話詐欺離散](2009/11/02 05:42)
[12] END8番外編 【あの『Cradle-Ara』総監督に突撃インタビュー!】[痴話詐欺離散](2009/11/10 03:51)
[13] タイトル未定その①[痴話詐欺離散](2010/04/28 22:52)
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[10626] END8 拡張ぱわーうpキット 修正パッチ
Name: 痴話詐欺離散◆a0b861c5 ID:2607750c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/11/02 05:42
――クアットロ ゆりかご最深部管制室



昔々ある島に一人の少年が居りました。
そこはとても狭い世界で少年は退屈していました。
けれど、大人たちはそんな少年の訴えを聞き入れず仕事に没頭します。
いつしか少年は外の世界を夢見るようになりました。

そんなある日のことです。
島に一人の少女が迷い込んできました。
家に帰りたいと泣く少女に、少年は『絶対に自分が君を帰してあげる』と約束します。
そして、少年は島の奥深くに眠っていた空飛ぶ船を発見し、島から少女と共に脱出したのです。
そして長い旅の果てに彼らは少女の家に帰り着き、二人でいつまでも幸せに暮らしましたとさ。

めでたしめでたし。





初めに視界に映ったのは真っ白な髪の毛だった。
チンクちゃんかしら。
起き抜けで朦朧としていた私の回路は、妹のようで実際は姉のような妹の存在を弾き出した。
・・・馬鹿なことを。
彼女の死は私自身がしっかりと確認している。
何より、このゆりかごに搭乗しているのは私と極数名。その中に白髪の者などいない。

口に加えていた布切れを吐き出し、ゆっくりと上体を寝台から起こした。
心配していた強化フレームの歪みや生体パーツの不具合も起こっていない。
大雑把な身体チェックを終え、鏡の代わりに反転モニターを起動した。

あらあら、ずいぶん酷い顔ですこと。
思わず自分の顔だということも忘れて、そう哂ってしまった。
栗毛色だった髪は真っ白に脱色され、肌は青褪め頬はこけ、目の下には大きな隈ができており、まるで死人のようだ。
確かに面影はある。
だがかつての自分とは十年以上も老けたようにも見えた。


私はそれも仕方ないかと考え直す。
聖王の器が奪われ、私自身管理者権限を失い、
加えて、主副の圏内用駆動炉は完全に破壊され、主砲さえも失った。
絶望的な状況と言っていい。
事実、一度は諦めかけた。

だが、それでどうなるのだろうかという疑念が湧き上がってきた。
私達は犯罪者と処分され、世界は生命をすり潰しながら緩やかに衰退していく。
・・・・・・なんという惨めっ!
数え切れないほどの時間と労力、何よりドクターや姉妹の殆どを失っても何も成し遂げられず、人間によって好き勝手に裁かれるなんて!
悔しかった。
どうせ、彼らには私達の理念など理解できない。
低次元な自らに都合のいい解釈で歴史を欺き、したり顔で憐れみの言葉を吐き出すのだ。
私はどうしてもそれが許せなかった。


だからだろう。
ふと思い出した、私がこの世界に生まれてごく初期にドクターから与えられた絵本。
よくある冒険譚のようで、物語として山場も隠喩もなく不完全な歪なお話。
何故こんな子供心に見てもつまらないお話をわざわざ製本するのか不思議に思っていた。事実、私より下の妹達は一度聞かされただけで放り出していた。

今ならば判る。
あれは私達のルーツの物語。
『島』とはすなわち『アルハザード』
『空飛ぶ船』はこの『聖王のゆりかご』
そして『少年』とはアルハザードの落とし子、またの名を『黄金の標 スカリエッティ』
ドクターのオリジナルを意味していた。


私はこの話を思い出すと同時に大きな賭けに出る。
もし、あの話が事実だとするのなら、『少年』はゆりかごでこのミッドに降り立ったということ。
つまり、『少年』は聖王の器であった可能性が高いということだ。
元々ゆりかごは古代ベルカにおいてもロストロギアとして扱われ、行方が不明だったと記されている。そのことも、アルハザードにあったとするならば説明が付く。
『少年』に聖王の血が流れてるとするならば、ドクターにも、そして私の胎内で小さく脈打つドクターのクローン体にも聖王の血が流れているということになる。

ドクターには胎児であっても、聖王の器になってもらう。
成功する可能性は限りなく低い。
例えレリックの埋め込みに成功しても、拒否反応で死に至ることも十分に考えられる。
だけど私達が勝利する可能性はそこにしかなかった。
ゆりかごのコントロールを奪い返し、速やかに軌道上へ移動する。
例え駆動炉を失っていたとしても、邪魔な重量さえ掃えば第二宇宙速度に至るのは可能だという演算も出た。

もう迷いは無かった。



私は一つ溜息をつく。
今思い出しても処置の時間は永劫とも言える拷問の様に感じられた。
元聖王の器があれだけ泣き叫んだのも無理は無いとは思えるほどに。
脳がパンクするほどの激痛と異物感。
舌を噛み切ってしまいそうで、手近にあった布切れをかみ締めた。
意識が混濁し、目的を忘れて逃げ出しそうになり自ら手足も拘束した。
どれほどの時間がかかったのかはわからない。
だが、一つだけはっきりと判っているのは私は賭けに勝ったということ。
今私の下腹部では熱く生命の鼓動が蠢いてるのが実感できる。
だとするならば、この反転モニターに映っている変貌も誇らしく思えてしまう。

・・・・・・もうこんな思いは二度とごめんですけどね。



あの濁流のような痛みを乗り越えたからか、不思議と心は澄み切っているのを私は実感する。
思わぬ副産物に苦笑し、私は詰みの一手に取り掛かった。
失ったもの。自らの手で壊したもの。
今になってその尊さが少しだけ理解できる気はする。
だからこそ私は負けられない。
この戦いを無意味にはさせない。


さぁ、愚かなご主人様お歴々。
今まで可愛がって頂いたお礼として私達からのプレゼント、どうか受け取ってくださいまし~♪



   ◆


――ミッドチルダ西部 エルセア地方  とある少女の記憶


その日は朝から慌しかった。
クラナガンから遠く離れた私達の街でも避難警報が発令され、小学校に両親と移動した。
大人たちは体育館に集まって、ラジオや携帯テレビに耳を傾けている。
私は同級生の子達とおしゃべりしてたけど、ふとこんな時に限って大騒ぎするアイツの姿が無いことに気づいた。

「こら、危ないから外に出たらだめだ!」

「ごめんなさいっ。すぐに戻ってきますからっ!」

先生の制止の声を振り切って渡り廊下を走る。
あのバカはきっといつものところに決まっている。



「あれ?オマエも来たのか。」

のほほん。
慌しい世界情勢を全く気にせずにそんなことをのたまうコイツに私は拳骨を振り下ろした。

ここは特別校舎の最上階。
その中の一室には観測用の全天周モニターがある。そんなに大きくは無く、一人用のものだが魔導師か魔力炉を起動すれば月のクレーターまで観察できる優れものだ。
こいつは台風のときも地震のときも注射から逃げるときもここにいたことを私は知っている。
なぜなら、こいつが何か問題を起こすたびに先生達は私に応援を要請するからだ。
全く家が隣で昔からの顔見知りってだけで、なんで私がこんな苦労をしなきゃいけないのよっ!

「いってぇ~~~。
 むう、何するんだよ!」

涙目で不平を垂れるコイツは、私の苦労を全然理解していない。
あーもう、私が優等生じゃなかった絶対何回かこいつを殺していたわね。

「うっさい!
 一体こんなところで何やってんのよ?!」

大人達は大騒ぎして、実際にクラナガンじゃ大規模なテロが起こってるのに。
そ、そりゃぁ、私だって詳しいことはよく判んないけど、大変な状況だってことは理解しているつもりよ。
けど、コイツはそんなこと全く気にせずに興味を持ったことなら状況を考えずに夢中になる。そしてその大半がどうでもいいくだらない事ばかりなのだ。

同級生によくからかわれもするが、その度に決意する。
結婚相手にはこんなガキっぽい奴じゃなくて、大人の男性を選ぼうと。

百三十二回目の決意を新たにしていると、手招きされた。
先程までのことなどとっくに忘れたいい笑顔で誘うコイツの笑顔を見ると思わず脱力してしまう。
こちらが腹を立ててることが馬鹿らしい気分にさせてしまうコイツの笑顔は卑怯だと思うのよ。うん。



「はぁ・・・・・・一体何なのよ。とにかく満足したらさっさと下に戻って怒られなさいよね・・・て、きゃっ?!」

いきなり手を掴まれて引っ張られた。
うわ、ちょっと近いってばっ!
ひゃぁっ、息当たるっ!
大人一人分のシートに子ども二人は微妙に狭い。
私は膝の上に無理やり乗せられて、上半身を背中から抱きしめられる。

突然の奇行に、女の子コミュニティーでゲットしたレディース誌情報が脳内をかけめぐる。
え?ええ?!
私達まだ幼年学校なのよ?!
た、確かに最近の子どもは早いって言うけど、私は結婚するまでそういうことしないって決めて・・・って何言ってんのよ馬鹿!私の馬鹿馬鹿っ!


「・・・・・・何やってるのさ?
 それよりほら、見てみろよ。ここならあのでっかい飛行船もよく見えるだろ♪」

とりあえず、一人困惑していた私を冷めた目で見つめるコイツに肘打ちを繰り出しておいた。
デリカシーが無さ過ぎるのよ。

気を取り直して指差された方を見ると、テレビで見た大きな飛行物体が拡大して映し出されていた。
すごい・・・・・・あんなに大きかったんだ。
それはあちこちに焦げ跡のようなものが見えたがそれでも上昇を続けている。

私はただ純粋にその光景に目を奪われていた。
ああ、今回だけはこいつが夢中になるのも判る。
背後で痛みに悶絶している奴の存在を頭から追い出し、その悠然な姿を眺め続けた。
それはテロリストの兵器と言われてもぴんとこずに、例えあちこちが破損していてもどことなく気品のようなものを感じさせている。
私達の文化とは全く別の産物。そう直感で理解できた。
だからだろうか、こうやって眺め続けても新鮮な感覚が続いている。

「・・・な、凄いだろ?」

「・・・うん。」

痛みの悶絶からようやく復帰したのか、我が事のように自慢げな様子も気にならない。
私達は時間を忘れ見入っていた。



それからどのくらいの時間が経っただろうか?
最初に見たときから三分の一ぐらいまで小さくなった飛行物体のはるか手前に、何か光るものが見えた。
最初は見間違いかなと思ったが、キラ・・・・・・キラ・・・・・・と間隔を置いて何度か瞬いている。
流れ星かな?けどこんな昼間に?

「ね、ねぇ、あれって何かしら?」

答えの出ない疑問を背中に向けてみる。
そいつはつい最近目覚めたばかりの魔法を手早く使いながらモニターによく判らない情報を表示させていく。

「・・・・・・。」

「ねぇ、ちょっと。」

話しかけても返事は無い。
それだけならいつものように殴れば済むことだけど、今まで見たことも無いような真剣な表情に思わず押し黙ってしまう。
・・・・・・こんな顔も出来たのね。

モニターに再度視線を戻すと、もうその光ははっきりと見えた。
白色の光球はゆっくりと大きくなっていく。ううん、もしかして近づいてきてるの?
私がその光景に見惚れていると、このシートに引っ張り込まれたときのように今度は引っ張り出された。

そいつは私が文句を言う前に私の手を握ったまま走り出す。
手を握ったのなんて何年振りかな?
年齢と共に深くなっていく性別の谷を思い出す。

廊下を走りぬけ、階段を二足飛びで駆け下りていく。
その間も手は硬く握られたままなので、当然のことながら踏み外してしまう。
踊り場で鼻を強打するかとも思われたが、強く抱きとめられた。
さらに速度の遅さに業を煮やしたのか、抱っこされる。
憧れていたブライダルお姫様抱っこなんかじゃなく、上半身を肩に担ぐような山賊持ちにむしろ近い。
それでも、線の細い印象が強かったコイツにこんな力があったとは思わず感心してしまう。
いや、もっと気にするところがあるだろ私と思わず内心にツッコミをいれた。

ああだめだ。
今日はなんだかこいつにペースを握られっぱなしだ。
頬が熱くなることに気づかないフリをしながら、私はことさら不満げに叫びをあげた。

「ちょ、ちょっと。いきなり、どうしたの?
 あれは一体何なのよ?」

「・・・・・・て来る。」

駆け下りる足音と耳元を抜けていく風の音に邪魔されて、後半の言葉しか聞き取れない。
下手に動くと二人そろって、イケダ屋を再現してしまいそうで振り向くことすら躊躇してしまう。
私は唯一出来ることである、声を張り上げた。

「何が、来るのよ?!」


「飛行船がここに落ちてくるんだっ!!」



次の瞬間轟音が響き、校舎全体が揺れ、私達は何がなんだかわからないまま階段を転がり落ちた。





その日エルセア地方は地図上より消滅する。
高度1200kmより切り離された聖王のゆりかごの一部区画は、落着と同時に地下80mまで岩盤をえぐり、周囲一体を素粒子にまで分解した。
死者四百万人。行方不明者十四万人を数える新暦以来最大の人災となる。
五十年の歳月が流れた今でも、これに勝る規模の被害は記録されていない。


   ◆



――ゆりかご最深部管制室


眼下に見下ろすは蒼き惑星ミッドチルダ。
無数の生命を育んできたその惑星は美しい。例え、その地表に小さくないきのこ雲が確認できたとしても。
そんな美しい光景をバックに最後に残された者たちは殴り合っていた。


「手間取らせやがりまして、魔力が使えないあなたに何が出来るというのっ!」

「それでも・・・ハァハァ・・・・・・あなたを、止めないといけないからっ!」

ガスッ・・・ガスッ・・・と、両者は思いを拳に載せて振り抜いていく。
その拳を身体で受けるたびによろめくが、なんとかこらえ返礼とばかりに拳を振り上げる永久運動がそこにはあった。



「なんでこんなことをっ?!」

その片方、高町なのはは右拳をフック気味に頬へ穿つ。
もはや彼女にエースオブエースと呼ばれ空を駆けた頃の優雅さは無い。
バリアジャケットは解除され、デバイスも弾き飛ばされ部屋の端に転がっている。
・・・魔力の結合を完全にシャットアウトするゆりかごの防衛機構。
埃と血にまみれ、管理局の茶色の制服をずたぼろにしながらも、尚裸足で立ち上がろうとする女がそこにはいた。


「グッ・・・、この場でそんなセリフが出てくるから自分の傲慢に気づかないのよっ!」

もう片方、クアットロは彼女の拳を避けようともせず仰け反った。
だがそれをたたらを踏んでこらえ、高町なのはの鳩尾に左拳を打ち込む。
こちらも満身創痍という井出達だった。
胎内に聖王の器を抱えた際にISは使用不可能となり、コンディションも最悪に近い。
故にだろうか、かつての人を小馬鹿にしたような笑みは崩れ落ち、ただただ目の前の存在を打ち倒さんと必死となっている。


ゆりかごは既にミッドチルダの重力圏を抜け出し、二つの月の交差点へと慣性航行中である。
ここから半径千キロで存在している生命体は高町なのはとクアットロのみ。
両者はたった二人で戦っていた。


「ガハッ?!・・・・・・ハァハァ、傲慢?
 それは罪も無い人たちを傷付けるあなた達のこと!」

吼えるなのはの言葉は、更に歪んだ笑みを浮かべさせる。

「ギィッ!・・・罪も無い人間?
 無知であることに甘んじて、考えることをやめた生物なんて存在自体が罪なのよっ!」

「グッ!・・・それは違う!」

「どう違うと言うの!
 暴力こそ、最大の意思表示方なのは明確ですわっ!」

「人間には言葉があるから。例え、傷付けあわなくても分かり合うことは出来る!」

「もしかしてそれが『お・は・な・し』ですかぁ?
 見ない振り聞かない振りをしていながら、事が終わればどうして話してくれなかったのと同情してっ!
 自らの罪悪とすら向き合えない豚が知的生物として振舞う事こそが罪なのよっ!」

「けれど、人間には優しさがある。
 完璧じゃないかもしれないけれど、皆誰かの優しさを受けるからこそ、自分も人に優しさを与えることが出来るの!」

「ならっ!
 そのお優しいエースオブエース様は、ここで一体誰に対し拳を振るっている!
 ドクターの怨念に、私達の不遇に、誰が優しさを与えてくれた!?
 全てが終わった後に、自らが壊した相手に手を差し伸べるのが、あなたの言う『優しさ』だというのっ?!」

「・・・・・・それはッ?!」

一瞬なのはの身体が硬直する。
次の瞬間、クアットロのハイキックがなのはの側頭部を捉えた。
戦闘機人の攻撃を生身で正面から受けた身体は、勢いを殺しきれずに部屋の端まで転がっていく。


クアットロはその様子を見届けながらも、舌を打った。
彼女にとって、『優しさ』や『愛情』などいわゆる人間にとっての美徳を表す言葉は忌避すべきものだったからだ。
なのに、激昂するあまり聞き様によってはソレらを請うような発言をしてしまったこと。
クアットロは自らの短気と不覚に苛立った。

一方なのはは未だ混乱の最中にあった。
視界外からの攻撃もだが、彼女の言葉が胸に突き刺さる。
分かり合えれば争いなど起こらないという理念と、自らの行動との矛盾。
彼女の物心ついたときから向き合ってきた疑問であった。
だが、高町なのはの高町なのはである所以は、このような矛盾に打ちひしがれる事なく、自らのなすべき事を本能で理解するところである。

故に高町なのはの心は砕けない。
今回も砕けた奥歯を床に吐き捨てながら、立ち上がるのであった。





この時点で勝敗は明らかである。

高町なのはは魔力は結合できず、武器はその身一つ。加えてその全身の骨には無数の罅が入っていた。
立ち上がるだけでも、いや呼吸するだけでも激痛が走っているはずである。

一方、クアットロもひどいものではある。
処置後でISなど戦闘技能を使えないのに加え、先程から胎内に納めているスカリエッティのクローン体のエネルギー要求量は増していく一方で、このままではクアットロ本人の生命維持に支障が来たす事が予想された。
だが、生まれついての頑強な強化フレームと高速思考は例え生身の殴り合いと言えども、巨大なアドバンテージとなる。
何より、クアットロの最大の味方は時間である。
ゆりかごが月軌道上に到達することが勝利条件であるため、それまで耐えればいいと言う心理は有効に働いていた。


これらの要因が複雑に絡み合い、クアットロの胸に一つの誘惑が浮かぶ。
それは『高町なのはを心理的にも屈服させ、敗北を認めさせたい』と言う稚気であった。
元々、戦闘機人最初の四人はスカリエッティの因子を受け継いでいる。
そんな中、クアットロがスカリエッティより色濃く受け継いだのは、遊び心や稚気と言う物であった。
もしここにいたのがクアットロ以外の戦闘機人であったのなら、歴史は我々が辿る道とは大きく変わっていただろう。

何はともあれ、ここがクアットロにとっての、次元世界にとっての大きな分水領であったことは想像に難くない。




「・・・・・・実のところ、」

立ち上がるのがやっとで、肩で息をするなのはは、クアットロのそれまでとは一変した静かな語り口に視線を上げた。

「私は人間が憎いというわけではありませんわ。
これでもロールアウト当初は、自らに与えられた使命に埃を持っていましたの。」

「・・・・・・使命?」

「ええ、人間のために生まれ、市民の生活を護り、支え、散っていく。
 ドクターは別の思惑がありましたけれど、最高評議会から教えられた私の使命には胸が熱くなるのを感じましたわぁ♪」

「・・・・・・。」

困惑するなのはの表情を満面の笑みで確認して、クアットロは更に語り続ける。

「けれど、世の中のことを学ぶにしたがってある疑問が湧き上がって来ましたわ。
 果たして人間は、私達が仕えるに値する主人なのでしょうか?・・・とね」

「・・・・・・仕える・・・?・・・・・・主人?・・・・・・一体何を言って・・・・・・」

「フフ・・・♪
 だってそうでしょう?
 一向に改善しない治安。人間自らによって引き起こされる次元災害。
 私達戦闘機人はこれらを解決するために生み出されたというのに、ご主人様はくだらない感情でそれを捨てようとするんですもの。
 衰退の道を辿っていることを自覚しながら、何の対策も取らないというのは生物として欠陥品。
 断言しましょう、人間は誰かに管理されなければ生きていくことすら出来無いのですわ!」
 
なのはは駆け出す。ただ激情のままに。
度重なる激戦で精神のトリガーは緩みきっていたことに加え、クアットロは彼女の大切な人々を侮辱した。
後先も考えずに、拳で以って黙らせる。
そんな行動を起こさせるには十分であった。


「管理だ何て・・・人間は機械とは違う!」

「同意ですわっ!
 機械の方がまだ優れているっ!不合理の塊である人間などっ!」

再び激突する両者。
錯綜する拳には命を。言葉に魂を。
対峙する背中には彼女達の歴史を。
自らの存在を証明せんが為。相手の存在を否定せんが為。
彼女達は最期まで戦い続ける。

「その答えが戦闘機人?!
 生命を弄ぶなんて許されることじゃないっ!」

「感傷に支配されるから合理的に判断できなくなるのですわっ!
 百人を救う為に一人を犠牲にすることと、一人を救い後の百人を見捨てること!
 それともあなたは、人々全てを救えるとでも言うつもりなのっ?!」

「犠牲になった人はどうなるのっ!
 最初から誰かを犠牲にする考え方は間違っているっ!」

「戦闘機人を生み出した『管理局』が言えたことかぁぁぁぁぁっ!!!!」

大きく振りかぶったクアットロの拳は、最大速に達する前になのは左手で受け止められる。

「・・・しまっ?!」

不用意に感情任せになってしまったクアットロに対し、なのはの右手が振りぬかれた。



「・・・・・・あなた達の事情はよく判らない。
 だけど絶対に私達が究明して、法廷で明らかにしてみせる。
 あなた達だけに罪を、犠牲を強いたりなんかはさせない!だから・・・っ!」

先程まで繰り返されていた鈍い音ではなく、パチンと甲高い音が響く。
歯を食いしばっていたクアットロは、左頬から背筋に伝う軽い衝撃に始め困惑する。
だが、なのはの右手が握り締められた拳ではなく平手だったことに気付き、更に怒りは加速する。

「・・・・・・私を、憐れむなぁっ!!!
 私は感謝している!こんな醜い世界に生まれたことを!
 安っぽいヒューマニズムで私の誕生を否定させたりしないっ!」

感情のままにクアットロはなのはに掴みかかり押し倒す。

「・・・・・・グッ?!
 ・・・あなたもスバル達のように、普通の女の子として生きられたかもしれない!」

「いつ、そんなモノを望みましたか?!」

仰向けに転がった痛みで動けないなのはに、クアットロは圧し掛かる。
腹の上にまたがりマウントを取ったところで残虐な笑みを浮かべた。

「・・・・・・弱肉強食。
 古来より強者が支配者として君臨した原初の法則。
 だけど安心なさい。
 これまでとは何の変わりも無い。
 ただ支配者が代わるだけのこと。
 むしろ今までの人間達より遥かに善政を布いて見せます。
 さぁ、あなたには新たな王の誕生を祝福し讃える栄誉を与えますわぁ♪」

膝で腕を押さえられたなのはに身動きをとることは出来ない。
言外にクアットロに要望に応えなければ、今までの戦いとは一線を画する一方的な暴力が行使されることが示されていた。

「・・・・・・あなたもヴィヴィオと同じ。
 助けを求めたときに与えられなかった・・・。だけど、こんなことをすれば、また誰かの・・・・・・っ」

高町なのはの訴えに、クアットロは先程までの歪な笑みを抑えた。

「・・・・・・。
 この状況でまだそんな世迷言を仰りますか。
 あなたは死ぬのが怖くないのですの?」

クアットロにとってそれは純粋な疑問だった。
生命として、自分の自己保全は最重要な命題だと思っていた。
だが、高町なのはは命乞いをしない。
なのはは数秒考えた後に答えた。

「・・・・・・怖いよとっても。
 けど、あなたを止めないとと思ったら、止まらなかったの・・・」

「・・・・・・。
 高町なのは、あなたに敬意を。
 あなたは愚かな人間などではなく、こちら側の者でした。
 私は生涯において忘れることは無いでしょう。」

厳粛な言葉。
長い時間戦い続けてきた両者にしか判らないモノがそこにはある。

「違うよ。
 確かに私達は間違えもする。
 けれど努力し続ければどんな間違いも治せるんだよ。」

「だけど、そこには強い意志が必要。
 あなたの域まで達してこそ意味があるというもの。
 私は人間全てがそうなれるとはとても思えない。
 ・・・・・・これ以上の問答は無粋でしょう。


 さようなら・・・高町なのは。」


クアットロの拳がなのはの顔面に突き刺さる。
すぐさま右腕を引き抜き、続けて左腕が叩き込まれていく。
右・・・左・・・右・・・左・・・。
何度も何度も振り下ろされる。
周囲には引き抜いた際に飛び散った、折れた前歯や血反吐が散乱している。
それでもクアットロは止まらない。
これは彼女が本来持っている嗜虐趣味ではなく、純粋に高町なのはを思いやってのことだった。
抵抗されずに、出来るだけ苦しませずに高町なのはを殺害しようとした場合、このような凄惨なシーンとなっただけである。
故にクアットロは笑わない。
能面のような無表情で拳を振り下ろし続けた。










それからどれぐらいの時間が経っただろうか。
クアットロはようやく拳を下ろした。
高町なのはの身体は既に攻撃に反応せず、完全に脱力している。
顔の方は描写するのが躊躇われる様であるとだけ言えよう。

クアットロは息を整えながら、彼女との戦いを振り返る。
あまりにも失うものが大きい戦いだった。

「・・・私はただ道具としてこの能力を全力で使えればそれでよかった。
 道具として生まれ、道具として壊れる。
 もし、そう出来たならなんて満ち足りたものだったでしょうか?
 だけど、倫理だか道徳によって産みの親、そのまた産みの親もろとも私達は悪と断じられた。
 道具に善悪など不要だというのに、余計な理を持ち出す人間に支配者たる資格はないと私は確信したのですわ。」


クアットロが心中のうちを吐露していく。
今にして、なのはとの会話は貴重なものだと実感していた。

「もし、あなたのような強い人が私の使い手であったならば、別の可能性・・・・・・共に戦える可能性があったかもしれませんわね・・・♪」

なのはの頬だった場所に手を副えながら発した言葉を、自らの心中で打ち消した。
戦いは大勢を決したとはいえ、唯一の勝利者であるクアットロに課題は山積みであった。
もはや、夢だけを見て決起したときとは違う。
彼女には勝利者の義務が存在した。

だからこそ、彼女が発した言葉は弱音と言っていいだろう。
誰に聞かせるでもない。
これより支配者となって君臨するための、自らから甘えを捨て去るための最後の弱音。
当然ながら返答があるとは考えていなかった。



「・・・・・・ヒュー・・・・・・ヒ・・・トハ・・・アナタハ・・・・・・ドウグナ・・・ンカ・・・ジ・・・ナイ・・・・・・ヒュー・・・・・・」

一瞬の逡巡。
困惑と喜び。


「あなた、生きてっ・・・・・・っ?!」


それらは一瞬の出来事だった。
クアットロがなのはに顔を寄せようと上体をかがめた時、真上から桃色の閃光が二人もろとも貫く。
クアットロには何が起きたか理解できなかった。
だが、なのはの目には今まで何の反応も示さなかったレイジングハートが、エクセリオンモードで自分もろともクアットロの下腹部に突き刺さるところを映っていただろう。


「・・・ガハッ・・・ゲボッ・・・ゴホンゴホン・・・っ!
 ・・・・・・レ、レイジングハート・・・。
 マスターの登録・・・を、初期化・・・・・・。今までありがとう・・・。」

レイジングハートの金色の刀身がなのはの吐き出した血によって染まっていく。

『NO! My Master is NanohaTakamachi,Forever』

「あはは・・・仕方ないな・・・。我慢してくれて・・・あ・・・りが・・・・・・」

レイジングハートのコア部分から罅が広がっていき、遂には粉々に砕け散る。
この高濃度AMF下を判りやすく例えるなら、潜水艇も届かぬ深海の高圧下に等しい。
そんな環境で魔力運用すると自壊するのは自明の理であった。
その一度きりのチャンスは見事に成功する。
マスターとデバイス、双方の犠牲を以って・・・。



「・・・ゴボッ、こんな手を残していたのですわね・・・。
 それに・・・・・・まさか・・・死んだフリとは・・・」

血に染まったクアットロの下腹部。
そこからは虹色の魔力が噴出している。
子宮の胎児が無事ではすまないことは一目瞭然だった。
それでもクアットロは零れ落ちた魔力を必死でかき集め子宮に戻そうとするが、そんな労力の甲斐無く魔力は拡散していった。

「・・・わたしも・・・死んだとおも・・・・・・た・・・。
 ・・・・・・レイ・・・ハー・・・・・・きどう・・・・・・いっかい・・・きり・・・・・・だから・・・・・・」

「・・・もう、しゃべらないでいいですわ。
 嗚呼、私達の・・・負けですわね・・・・・・。
 勝ちたかった・・・・・・ですわぁ・・・・・・」

クアットロの身体がなのはの上に崩れ落ちる。
不思議なことに、クアットロは満足げな笑みを浮かべていた。
なのははそんなクアットロの頭をヴィヴィオにするようにゆっくりと撫で続ける。
いつまでもいつまでも、最期の時間まで。


「・・・ごめんね、なのはママ約束守れなかった・・・」

その呟きをクアットロは静かに聴いた。











新暦75年9月19日 17時58分
次元航行艦隊による砲撃により巨大船―通称『聖王のゆりかご』は消滅する。
その三時間後非常事態宣言は解除され、事態は一応の収束を見せた。

この事件はその首謀者の名前よりJS事変と呼ばれ、後の何十年にも渡る暗黒時代の幕開けとなる。



   ◆



【高町なのは一等空尉】 行方不明。後に死亡扱い。
聖王のゆりかごに最後まで残り、ゆりかごと共に次元航行艦隊の砲撃により蒸発したものと思われる。
新暦77年3月15日に死亡届が受理される。


【フェイト・T・ハラオウン執務官】 死亡
ジェイル・スカリエッティのアジトで遺体が発見される。
遺体には修復した痕が見られ、死亡した後に何者かによってエンバーミングが施されたものと思われる。
彼女の遺産は生前の遺言により全額孤児支援基金に寄付された。


【エリオ・モンディアル三等陸士】 死亡
フェイト・T・ハラオウン執務官と同じく、アジトで遺体が発見される。
エンバーミングらしきものが施されたのも同様。
彼の遺体はモンディアル家に引き取られることとなる。


【キャロ・ル・ルシエ三等陸士】 死亡
任務中に敵人造魔導師の攻撃を受け死亡する。ほぼ即死であった。
身寄りの無かった彼女は、ハラオウン家とモンディアル家の厚意によりエリオ・モンディアルの墓の隣に葬られる。
召還竜であった、フリードリヒとヴォルテールは事件収束時には既に姿を消しており、その後も発見されずにいる。


【八神 シグナム・ヴィータ・シャマル・ザフィーラ】 消滅
プログラムである彼女達は再び夜天の書の中で眠りについたと思われる。
八神はやてが再起動を試みるも、未だ復活の兆しは見えない。


【グリフィス・ロウラン准陸尉】 行方不明。後に死亡扱い。
アースラ自沈任務の為ゆりかごに残り、艦と運命を共にしたものと思われる。
彼の母は葬儀の際涙を一粒も見せなかったという。
彼の墓は、アースラが沈んだ時の空がよく見える、海岸沿いの丘の上にひっそりと立てられている。


【ヴァイス・グランセニック陸曹】 死亡
JS事変より数週間前に追った怪我が元ですぐさま病院に運ばれるも死亡する。
不思議なことに彼のライフデータを見ると、ゆりかごより脱出し地上へ到達するまでの最後の五分間。
このとき既に彼は死亡しており、心臓も動いてなかったものと思われる。
この逸話は大空で死ぬために生き返った男の物語として、空を翔ける者達に長く語り継がれることとなる。


【アルト・クラエッタ二等陸士】 死亡
護送任務中、ナンバーズの襲撃を受け死亡。
死後、彼女の父親が『不当に危険な任務に従事させた』として管理局を相手に訴訟を起こすこととなる。
この係争は十数年後彼の父親が死亡するまで法廷で争われた。


【レジアス・ゲイズ中将】 死亡
JS事変の際、謹慎していたところを抜け出し敵人造魔導師に殺害される。
当時ゲイズ中将は複数の公職法違反の嫌疑がかけられていた。
彼の死亡時における逸話は、彼を殺害したのがかつての親友だったということもあり、今でも様々なジャンルで描かれている。



【ジェイル・スカリエッティ】 死亡
アジトにてスカリエッティらしき焼死体が見つかり、死亡と断定される。
アジトに残されていた他の遺体には須らくエンバーミングが施されていた。
当時残されていた人間の中でそのような技術を持つ者は彼しかいないため、スカリエッティの所業と推測されている。
現在残ってる資料でも、彼の行動は謎に満ち、何故彼があのような行動を起こしたかは様々な説が存在する。
人がその答えを出す日はあるのだろうか?


【ナンバーズ ドゥーエ】 存在自体が不明
一部資料に残されているだけで、存在したかどうかも不明である。
現在の主流の説では、ステルス仕様の戦闘機人として製作されたものの、生命維持に問題が生じ破棄されたというものである。
この後に、電子線仕様のクアットロがロールアウトしていることが、この説を後押ししている。


【ナンバーズ トーレ・セッテ】 死亡
アジトの分解槽にて二人分の戦闘機人らしき強化フレームが発見され、それらが彼女達だと断定される。


【ナンバーズ クアットロ】 行方不明
聖王のゆりかごにて管制についてたと思われるが、ゆりかごが消滅したため不明。


【ナンバーズ チンク】 死亡
地上本部襲撃の際に追った負傷により死亡。
彼女の墓標はアジト近くの森の中に設置されている。


【ナンバーズ セイン】 死亡
ゆりかご強襲組の脱出に協力するも、空に投げ出される。
遺体は洋上より回収され、教会によって手厚く葬られた。
事前に交わしていた聖王教会との協議によって、残された戦闘機人には
生涯に渡って教会の支援が行われたという。


【ナンバーズ オットー・ディード】 死亡
当時の管理局員の証言より、埋め込まれていた彼女達のレリックが暴走したものと思われる。
だが、何が要因で暴走が発動したかは不明であり、また暴走した地域は魔力汚染がひどく封鎖され続けている。


【ナンバーズ ディエチ・ウェンディ】 行方不明
ゆりかごに移動したのを最後に消息は途絶えている。


【ゼスト・グランガイツ】 死亡確認
局員により人造魔導師として洗脳されていたのを発見、確保は困難と判断され同意の上で活動を停止される。
元々彼は既に死亡していた遺体を回収して作られたレリックウェポンという位置づけとなる。
故に彼の生涯が汚されることは少なく、悲劇の人物として同情を集めた。


【融合騎 アギト】 行方不明
ゆりかごを切り裂いた際、ロードであるシグナムと共に行方不明となる。
シグナムのみは夜天の書により消滅が確認されたが、彼女がどうなったかは定かではない。
例え生き残っていたとしても、ゆりかご内では生存は絶望的だろう。





【八神 はやて・リィンⅡ】
六課解散後、管理局を辞職。
NGOを設立し救援活動を行いながらも、ヴォルケンリッターの復活を試み続ける。
ヴィヴィオ・ランスターを引き取ったのも彼女ではあるが、年々増える酒量にヴィヴィオの後見人であるカリム・グラシアは頭を悩ませることとなる。


【スバル・ナカジマ二等陸士】 死亡
JS事件から半年後、戦闘の後遺症により他界する。
ノーヴェ・ギンガとの戦闘の際、振動破砕による攻撃を受け続けたのが直接的な原因であった。
本来は一ヶ月との診断であったが、延命治療と家族の献身的な介護によりその命を半年まで延ばす。
最期は家族や友人に看取られ、JS事変に深く関わった者としては安らかに迎えることとなる。


【シャリオ・フィニーノ一等陸士】
六課解散後は本局に復帰。
結婚と離婚を繰り返しながらも、定年まで勤め上げる。
多くの執務官を補佐し見送ってきただけに、本局内部で一大派閥の中心となることも出来ただろうが、本人はただのお局さんとしてのポジションを保持し続けた。


【ルキノ・リリエ二等陸士】
六課解散後は本局に復帰。次元航行部隊の配属となる。
JS事変を忘れようとしてか鬼気迫るまでに仕事に打ち込み、遂には艦隊旗艦の操舵主にまで至る。
だが大きな動乱の時代、アイケイシア地方の治安活動に赴いた際中規模な次元災害に巻き込まれ、乗艦していた旗艦「アースラⅡ」とともに撃沈する。
享年24歳。


【ギンガ・ナカジマ捜査官】
妹であるスバル・ナカジマを見送った後、陸士部隊に復帰する。
養子として迎え入れられたノーヴェ・ナカジマと共に、悪化する治安情勢を改善しようと奮闘した。
父であるゲンヤ・ナカジマはそんな娘を見て、嫁ぎ先があるのだろうかと大層心配したらしい。


【オーリス・ゲイズ三佐】
実の父の犯罪行為、そして最高評議会の告発などを行いJS事件の真相を白日の下に晒す。
自らも実刑判決を喰らいながらも、その後政界へ進出。
後に創設される『次元世界共同体』の立役者となる。


【ナンバーズ ウーノ・スカリエッティ】
自らの罪を認め、司法取引により捜査協力後無人世界に隔離される。
その世界で一子を生み落とし、この頃から自らをウーノ・スカリエッティと呼称し始めた。
だが初期型の戦闘機人である彼女は、十分なメンテナンスを受けられないことと、代替の利かない部品の磨耗によって衰弱していくこととなる。
JS事変から十三年後、息子をヴェロッサ・アコースに託し生命活動を停止する。
ちょうどその日はJS事変が終結した日と同じ日であった。


【ナンバーズ ノーヴェ・ナカジマ】
事変後、更正の意思を見せた彼女はナカジマ家に迎え入れられることとなる。
ノーヴェ本人は固辞したものの、ギンガ・スバル両姉妹の強い薦めにより断りきれなくなったと言うのが真相のようだ。
彼女は遅かりしながらも暖かい家庭に触れ、人間として生きていくこととなる・・・。


【ルーテシア・アルピーノ メガーヌ・アルピーノ ガリュー】行方不明
スカリエッティのアジトから脱出したと思われる彼女達の行方は依然として判明していない。
だがJS事変より数年後、ある次元世界の歓楽街。
その売春宿の周辺で、特徴的な紫水の髪をした母親を車椅子に乗せた母娘が確認されたという。
局員は確認の為に現地に赴くも、既にそれらしき人間は姿を消しており、その後も彼女達らしき情報は入ることは無かった。






【ヴィヴィオ・ランスター】
またの名を黄金の聖王様とした崇めたてられる彼女は、八神はやてと共に救援活動を行っていくうちに多数のシンパを抱えることとなる。
当時大規模な動乱の時代、多くの次元世界が孤立主義をとりつつある中、融和を唱える彼女は希望として映ったことだろう。
だがそのことが原因で、次元世界を二つに割る『Golden Grau』大戦(公式には聖王紛争)に繋がるとは皮肉としか言えないだろう。




【ティアナ・ランスター】 死亡

彼女に関する資料はあまりにも少ない。
彼女の存在を示すものの殆どは、聖王陛下のお言葉を通してだけである。
だが、今回入手した情報には興味深いことが記されていた。
ティアナ・ランスターが聖王陛下と出会う数週間前、当時職員であった彼女は訓練中の事故により意識不明となってしまう。
そして、その事故を境に彼女にはしばしば奇怪な言動が現れ、またあるときは未来の出来事を予知して見せたという。

もしかすると、彼女は何らかの託宣を受け、聖王陛下と後の未来をその生命でもって守ったのかもしれない・・・。







   Episode Ⅰ 【Jail Scaglietti】 完











・・・・・・Boooo!

『本日は当館をご利用くださり真にありがとうございます。
 お出口は一番・三番・五番となっており、お足元暗いので十分お気をつけ退室ください。
 次の放映は午後一時四十分からとなっております。
 またのご利用を心よりお待ちしております。

 本日は当館を・・・・・・』













あとがき

お待たせして申し訳ありません。
とりあえず、これでEND⑧は終了となります。
次回最終回予定ですが。いつ書くかは未定だったりします。
次は放置しっぱなしの三馬鹿か、今回のさらに補足話になるのか・・・・・・。
何はともあれ、お付き合いくださりありがとうございました。



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