先週より各次元世界で公開の始まった『Cradle-Ara EpisodeⅠ Jail Scaglietti』。
その総監督に突撃インタビューを行いました!
今年度興行成績一位(暫定)の秘密&
この映画に監督が込めたテーマとは?
本誌が徹底解剖しちゃいます!
――インタビュアー(以後略):本日はお忙しい中、取材に応じていただきありがとうございます。そして、公開から一週間で今年度興行成績1位とはおめでとうございます。
監督(以後略)「ありがとうございます。自分でも信じられないんですけどね(笑)今は各地の舞台挨拶などで飛び回っていて、着ていく服の洗濯も追いつかない状況しかみえません。あ、こんな格好でごめんね(笑)」
注:監督は取材を受けた際、作業用らしき黒のジャージでした。
――監督が今作を作ろうと思ったきっかけはなんだったんですか?
「きっかけは、ひいおばあちゃん・・・シャリオ・フィニーノの三十回忌でしたね。
三十回忌ということもあって、結構大勢の人が集まってたのですが、その場の流れで『リリカルなのは』シリーズ(*1)の鑑賞会をする流れになったんです。」
(*1:管理外世界に生まれた少女【高町なのは】の、魔法との出会い、友達との出会いを描いたお話。子供向け番組として新暦の時代制作された。
主人公のモデルは高町なのはその人で、これは彼女の幼少期の実話が元となっている。
A`sはその続編にあたる)
――確か、フィニーノ女史は無印とA`sの監修を務めておりましたよね。
「実はその数日前、遺品の中からその続編と思われるものが発見されたんです。
一つは映像作品、もう二つは漫画原稿の形でありました。おそらく、ひいおばあちゃんが自作したものだと思われます。」
――ええ?!本当ですか?
「はい。それでお客様と一緒に鑑賞したのですが、鑑賞し終えたときどうにも複雑な気持ちをいだいてしまいまして・・・・・・。」
――というと?
「その映像作品、StrikerS(以後StS)と仮題されていたのですが、JS事変を題材としたものなんです。
ただ現実とは違い、StSは事変をなぞらえながらも奇跡的にほとんど犠牲も出ずにハッピーエンドとなる『If』を描いたものでした。
きっとひいおばあちゃんは、皆が幸せになれることを夢見て製作したのだと思います。」
――そちらは公開されないんですか?
「ええ勿論そういう声もありましたが、これを果たしてリリカルなのはシリーズの続編として世に送り出していいのかとふと思ってしまったのです。
知ってのとおり、リリカルなのはの無印とA`sは実話を元にした作品です。
ですが、StSはいわゆる仮想戦記にあたり、単純に続編として出してしまえば子ども達に対して誤解を与えてしまうのではないだろうか?そんな危惧を感じたのです。」
――気にしすぎじゃないですかね?(笑)
「あーまあそうかもしれませんね(苦笑)
ただ、今の子ども達にJS事変について包み隠さず伝えなければいけないのも事実なんですよ。
確かにあれは悲惨な事件です。
けど、その時代をそれぞれの思いで生き抜き、または散っていった人たちがいるから今の時代があるんだとボクはひいおばあちゃんから伝えられました。そのとおりだと思います。
StSを公開するにしても、そういった背景を知ってから観賞して欲しいと思い、今作を作ろうと決意しました。」
――百年以上も前の出来事なので、色々と苦労されたのではないですか?
「ええ、何せ当時の関係者はその殆どが他界されています。
第一部の登場人物の中で今もお元気な方と言えば聖王陛下・・・。
あとは、行方不明となっている八神はやてさんぐらいでしょうか?ご無事で居て欲しいのですよね。
まあそんなわけで、JS事変を伝えるには本当にギリギリのタイミングだったわけです。これより後になると更に風化が進みますし、今までの作品は情勢が不安定なせいで資料が充分に揃いませんでした。平和な今だからこそ、製作する意味があるんです。」
――聖王陛下の名前が出ましたが、監修に名を記されてありましたね。
「はい。正直、聖王陛下がいなければこの映画は完成しませんでした。
なんせ、当時の生き証人ですからね。
細部まで詳細に証言していただきました。
あの方には感謝の念が絶えません。」
――それで、アリエッティ元ミッドチルダ首相も協力されてるとか・・・。
こう言ってはなんですが大丈夫だったのでしょうか・・・?
「スポンサーも同じ心配をされていました(苦笑)
私は祖母の縁でお二人に子どもの頃からお世話になっているのですが、元々お二人は仲良しなんですよ。
確かに聖王紛争では袂を別つしかなかったお二人ですが、幼少期よりまるで御姉弟のように過ごされたと聞いております。
これ以上言うとネタバレになるので控えますが、第三部『Golden Grau』はお二人から拝聴した非公開エピソードをふんだんに使ったものとなる予定です。どうぞお楽しみに。」
――その前に第二部ですね(笑)
「そうでした(笑)」
――さて、映画の中で気になったところをお聞きします。
ズバリ!オーリス・ゲイズ女史はドゥーエだったのでしょうか?!
「あーどうなんでしょうねぇ?
元々、ゲイズ女史が晩年出版した自伝に書かれていたことがアイディアの元なんですよ。
調べたところ確かに、JS事変前後で人が変わったように見受けられるのですが、それも時勢や当時唯一の肉親を失ったことを考えればおかしいことでは無いと思います。
彼女自身も自分が別人で、それも何故か戦闘機人なのではないか?と自伝の中で言っているので、遺族の了解を得て、盛り込みました。」
――では監督は信じてないと。
「可能性の一つとしてはあってもいいと思います。
スカリエッティならばあるいはそんな別人に成りすます能力も作り出せたかもしれません。
ですが、その後何十年もなりすますことはどう考えても不可能でしょう。常識的に考えて。
ただ、そんな可能性を考えることが歴史を学ぶ醍醐味だとも思います。」
――ルーテシアの最後に関してはかなりショックな描かれ方でしたが、やはりそういう意味なんでしょうか?
「ああ、あれはですね。
そういう目撃情報が残されていたことと、実際に身寄りも後ろ盾も無い少女が生きて行く為には裏社会ぐらいしか無いと思います。
ただ、娼婦として生活していたかについては私もよくわかりません。職業差別と言う訳ではありませんが、ルーテシアなら荒事関連(用心棒や傭兵など)でも十分生計を立てられるでしょうから。そこらへん誤解を与えるような描き方をしてしまいましたねえ。
一つ確かなことは、スカリエッティから彼女に託された『遺言』は長い旅を経てジェイル・アリエッティ元首相に辿り着いたということです。
この『遺言』によって、次元世界は危機を脱するわけですが、そこらへんは第二部で。」
――シグナムとアギトが使っていた技ですが。
「『天地一閃』ですね(笑)
あんな技があったらいいなぁと思いまして。」
――それだけですか?
「それだけです(笑)」
――それではラストバトルについてです。
おそらくこの映画一番の見せ場で、私も思わず手に汗握って見入ってしまいました。
「ありがとうございます。」
――あの彼女達の相容れない主張。
それは劇中にも言われてきたとおり彼女達の人生そのものですが、元となったモデルは存在しますか?
「あれはですね、皆自分の中に持っているとモノだと思って書きました。
その中でも、支配されたいとか支配されたくないと言う感情は中々表には出てきにくいものです。それこそ、彼女達みたいに、生命全てでぶつかり合わないと自覚できない感情なんじゃないでしょうかね?」
――最後のクアットロの言葉。あれはどういう意味なんでしょう?
「劇中のクアットロは本当は誰かに支配し尽されたかったんですよ。
そしてやっと主人に相応しい人を見つけた。
けれど、そのなのはは人が人を支配するなんてことをどんな形であっても許せない人間でした。
彼女の主張もまた、社会生活の中で足かせになりかねないんですよ。
クアットロにとっての勝利とは、なのはにその主張を撤回させることだったのでしょう。
ただ、そうやって妥協したなのはにクアットロは価値を見出せないでしょう。クアットロにとってなのはは『折れない』ことが魅力的なわけで、そんな彼女を『折る』ことを目標を立ててしまった時点で、クアットロの勝ちはありませんでした。」
――クアットロと言えば、あまりに非人道過ぎるという意見がありますが。
「レリック爆弾の件ですね。
あれは、私が考えるに姉妹達を『機械』の枠に押し込めようとしたのでしょう。
クアットロの考える戦闘機人の幸せとは、何も考えず『機械』であり続けることだと予測しています。
クアットロがセインやウェンディを苦手とし、セッテや双子に愛情を注いだというのもここらへんが原因ではないでしょうか?
もっともクアットロ自身が自らの『機械化』には失敗しておりますし、ノーヴェやウーノの証言から決してクアットロは姉妹達を嫌ってたわけではないと思います。おそらく、セインやウェンディは手の掛かるドラ娘的な感覚だったのでは無いでしょうか?
クアットロにとって残念なことは、決起までに彼女達の矯正を終えられず、また情勢から非情の判断を下さなければならない事態に陥ったことでしょう。
もっとも、彼女に殺された機人やそれに巻き込まれた人々も相応の主張があると思いますが、ここでは割愛させていただきます。これはあくまで私個人のクアットロ観ですね。」
――よく解りました。
そろそろ時間ですので、最後に読者の方へ向けて一言お願いできますか?
「ああもうそんな時間?
えーと・・・・・・、
EpisodeⅡ『The END of Administrative Bureau』は先日クランクアップいたしました。ただ今、総力で編集作業中です。
EpisodeⅢ『Golden Grau』の撮影も始まり順調に遅延中(笑)
この作品を見て、壮大な時代の流れを一片でも感じとっていただけたら幸いです。
それでは皆さん、映画館でお会いしましょう!」
――今日はありがとうございました。
「こちらこそー」