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No.10626の一覧
[0] 【一発ネタ】 凡人終末端  リリカルなのはStS  ティアナ憑依 TS注意【やっつけ仕事】[痴話詐欺離散](2009/08/10 23:04)
[1] タイトルとか募集中[痴話詐欺離散](2009/07/29 01:18)
[2] 皆の心が広いなと感心することしきりw ※おまけ追加しました07/30[痴話詐欺離散](2009/07/30 17:56)
[3] お食事時を避けてください[痴話詐欺離散](2009/07/31 23:40)
[4] 頑張りすぎは身体に毒と自分に言い訳 ※08/04 おまけ追加しました[痴話詐欺離散](2009/08/04 22:53)
[5] 今回はそのうち書き直すかもしれません。ジ○スラックコワイ(ガタガタ[痴話詐欺離散](2009/08/10 02:19)
[6] 休日はBADEND多発警報が出ています。お出かけの際は十分ご注意ください[痴話詐欺離散](2009/08/10 23:07)
[7] 自分の文章力の低さに絶望する日々[痴話詐欺離散](2009/08/19 15:45)
[8] END8 拡張ぱわーうpキット 前編 也。[痴話詐欺離散](2009/08/24 16:47)
[9] END8 拡張ぱわーうpキット 中編 也。[痴話詐欺離散](2009/09/10 01:24)
[10] END8 拡張ぱわーうpキット 後編 未完也。[痴話詐欺離散](2009/10/07 07:48)
[11] END8 拡張ぱわーうpキット 修正パッチ[痴話詐欺離散](2009/11/02 05:42)
[12] END8番外編 【あの『Cradle-Ara』総監督に突撃インタビュー!】[痴話詐欺離散](2009/11/10 03:51)
[13] タイトル未定その①[痴話詐欺離散](2010/04/28 22:52)
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[10626] タイトル未定その①
Name: 痴話詐欺離散◆3cc6d3fb ID:31053af0 前を表示する
Date: 2010/04/28 22:52


「おばあさん、大丈夫ですか?」

駅の構内から出て、最初に目にしたのは杖をつきながらよろよろと歩く年配のご婦人の姿だった。
人通りが多い表通りを時折通行人にひっかかりながら歩いている。その遅い歩みに、人々は邪魔だと目で語りながら誰も手を貸そうとはしなかった。

普段の私なら声を掛けただろうか?
ふとそんなことを思う。
制服を着ていたならいざ知らず、今は私服での職務中である。本当なら連絡を入れていた隊舎へ真っ直ぐ向かわなければ行けない。
きっと母さんならどんな時でも助けちゃうんだろうな。
けれど、私は考えてしまう。
世の中には困ってる人はいくらでもいる。そんな人達を目に付いた端から助けていては、まともな生活を送ることはできない。
だから、そういう時は見なかったフリをしてる。邪険な視線は向けないが、誰もそこに居ないように振舞うんだ。
ある意味それは、邪魔者扱いする人々よりひどい行為なのではないかと考える。
だけど、他にどうすればいいのか。今はまだ答えが出ていない。

そんな私が手を差し伸べたのは、ひとえに憤りからだったから。
何に?と問われても困るけど、おぼつかない足取りで進み、ぶつかった人々に必要以上に頭を下げ、相手は舌打ちしながら過ぎ去っていく。
そんな光景を私は許すことは出来なかったんだ。



「・・・誰、ですか?」

手を取って支えたところで、婦人から思ったよりも若い声が返ってきた。
ぱっと見たところ普通のおばあちゃんだったけど、実はそうでもないのかな?

「あの、見ていたところ足が不自由な様子。
 余計なお世話かもしれませんが、もしよろしければお手を引かせていただきますか?」

意識して笑顔を浮かべる。
母さんは笑顔はコミュニケーションの第一歩と言っており、私もこれには賛成している。
急に現れた私に警戒心を与えるなという方が難しいのだ。
まあやり方は詐欺をお仕事にしてる人達と一緒だけど、やったほうがいいと思っている。
だけど、おばあちゃんの反応はちょっと予想外だった。


「こんな老いぼれに手を差し伸べてくれるなど申し訳ないことです。」

先ほどまで通行人にしていたように、おばあちゃんは今度は私にペコペコと頭を下げ始めた。
ああもう、こんな姿を見たくないから声を掛けたのにっ!
そこまで考えたところで違和感に気付いた。
私はおばあちゃんの脇から手を取っているのに、おばあちゃんは正面の誰もいない空間に対して頭を下げているのだ。

「ですが、どうか放って置いてください。もう帰るところですので・・・。」

「あ・・・・・・」


点字ブロックに沿いながら歩き出すおばあちゃん。
だけどその先にはガタイのいいお兄さんがいて・・・

「キャッ?!」

思いの外可愛らしい悲鳴をあげて尻餅をついた姿を見て、お兄さんは忌々しげな視線を向ける。

「チッ、前見て歩きやがれ糞ババア!」

「すいません・・・すいません・・・」

確かに不注意はおばあちゃんの方にあった。
けれど、今の物言いはあんまりではないか!
ましてやこのおばあちゃんは・・・。

「ちょっと、あなた!」

「あっ?なんだよアンタ?」

立ち去ろうとするお兄さんを呼び止める。
思わず怒声だった為、何事かと周囲の目が私達に集中した。
だけど、お兄さんはどうして呼び止めたのか、そしてどうして私が怒ってるのか本気で理解していないようで、疑問符を頭上に表示している。

「おばあちゃんに謝って!」

ようやく合点がいったのか、めんどくさげな溜息をついた。
更に私のボルテージは上がっていく。

「知るかよ、ババアが勝手にぶつかってきたんだろうが!
 関係ない奴がしゃしゃり出て来るな!」

もう話は終わったとばかりに立ち去ろうとする男の腕を掴む。
あ、だめだ、我慢難しいよ?

「あの・・・私のことはいいですから・・・。」

おばあちゃんはすっかり萎縮して、なんとか私を宥めようとしているけど、もう私を止める材料にはならなくなっていた。

「ほら、ババアもそう言ってるしもういいだろうが!」

力づくで手を離そうとする男の腕を握り締める。

「よくない!
 元はと言えば、お兄さんがいけないんだよ!」

「ああっ?
 なんで悪いのは俺なんだよ!いいかげんにしねぇと、管理局に突き出すぞ!」

絶対に納得がいかんと言わんと、私だけでなくおばあちゃんにまで声を荒らげるお兄さんに堪忍袋の緒が切れた。
内ポケットから支給制の手帳を取り出し目の前につきつける。

「その管理局が私なんだよ!」

「なっ?!」

「・・・・・・っ」

・・・・・・あはははは、驚いてる驚いてる。
もうどーにでもなーれ。
私服行動中とかそんな事実、一切忘れています。思い出したくなんかありません。

「ほ、本当に局員かどうかも怪しいもんだ。
 それにだなっ、管理局だろうと横暴は許されないんだぞ!」

一瞬怯んだ物の、すぐさま鼻息荒く反論してくるお兄さん。
制服だったらもっと説得力あったのに。と、思ったがサイズが合わないあの制服じゃ逆効果かもしれない。
喜び勇んで着てみたら母さん達に笑われてしまった過去が甦る。私も、スタンダードな陸士部隊の方がよかったなぁ・・・。
・・・・・・。
あーもうっ!そうじゃなくて!
過去の汚点を脳裏から振り払う。
どうして私がここまで言ってるかまだわかんないのっ?!


「おばあちゃんはねっ、目が見えないの!
 点字ブロックの上に立っていられると、ぶつかって当然だよ!」


ああ、最低だ・・・・・・私。








「・・・局員、さんだったんですね・・・・・・。」

「・・・はい。あ、でも、今日は休暇で、たまたま手帳を所持していただけなんです・・・」

自分でもよく判らない言い訳をしていく。

あれから、結局なんだかんだでうやむやになってしまった。
お兄さんは「だったら盲導犬でも連れていろ。悪かったよ!けど、俺のせいだけじゃないからな・・・」と謝罪なんだか文句なんだか言い訳なんだかよく判らない言葉を吐きながらその場を後にした。
追いかけようとしたものの、おばあちゃんに止められてしまう。
見ると、周囲には人だかりが出来ており、こんな場所に一人残していくのは酷かなと思えた。

私がしたことはおばあちゃんをさらし者にしただけだった。
おばあちゃん自身に頼まれていないのに勝手に私が暴走してしまったのだ。
それでもおばあちゃんは私に何度も何度もお礼を言って、そのことで私の内心は沈み込んで行ってしまう。


その後、おばあちゃんの手を引いて現場を後にし、現在はバスの発着場まで来ている。
途中、嫌がるそぶりは見せたものの押し切ることに成功した。
時刻表を確認した所、おばあちゃんの乗るバスはギリギリ出てしまっていた。
きっとさっきの事が無ければ間に合っていたんだろうなと思う。・・・はぁ。
一瞬、改めておばあちゃんに謝罪しようかとも思ったが思いとどまる。
先ほどの件から察するに、私が謝るせいでおばあちゃんを萎縮させてしまうだろうから。
そして、なんとなくそのままにしておけなくて、おばあちゃんと一緒に次のバスを待っているしだいだ。
・・・静寂が続く。


「・・・・・・。」

「v、・・・・・・局員さん。ごめんなさい。私のせいで・・・。」


無言もNGなの?!
このおばあちゃん、想像以上にめんどくさいよ?!
特に話題も無く沈黙が続いちゃっただけで、謝られてしまった。
何か、話題はと考えながら腕時計にちらりと目をやる。待ち合わせの時刻はとっくにすぎている。
相手方には謝罪の連絡をこっそりしているけど、あとで何かしらの埋め合わせをしておかないと・・・。


そこまで考えてようやく話題のとっかかりを見出した。

「あのね、おばあさん。実は私、人探しにここへ来たんです。
 もし、よろしければ協力してくださいませんか?」

「・・・・・・はい、私にできる事なら・・・。」

よかった。
これで少しは心を軽くして欲しいんだけど、難しいかな?

「そんなことないですよ。えっとですね・・・」



その名前は私達にとって忘れられない名前。
愛憎が複雑に入り混じって未だになんと形容すれば解らない感情。
故に私達は彼女を探し続ける・・・。











『ティアナ=ランスター』と言う名前に心当たりはありますか?











スバルは自室への扉を開いた。
現在の時刻は21時前。当然、日は落ちきっているのだが灯りをつけることなくソロソロとベッドへ向かう。
廊下から漏れる光を頼りに、二段ベッドの下へたどり着いたところでそこに膨らみがあることが確認できた。
スバルは自ら予測が正しかったことを知り、ゆっくりと塊に被せられていた毛布をめくるのだった。




「アイナさん、やっぱりここでしたよ。」

極力声の大きさを絞って廊下に伝えた。
アイナさんは胸を撫で下ろした様子で、私と同じように薄明かりの中下段ベッドを覗き込む。

「あらあら、よく眠っていますね・・・。」

そこに居るのは身体を丸めて眠る少女。
私達はその無垢な寝顔に思わず顔を綻ばせてしまった。
子どもの無防備な表情を見ると、自然と護ってあげたくなってしまう。
多分生き物としての本能なんだろうな。
けど、何時までも和んでばかりも居られない。

「起こすのは可哀想だからこのまま運んじゃいましょうか。
 アイナさんはうさちゃんお願いできますか?」

ヴィヴィオの傍らに鎮座していた彼女の相棒を拾い上げるのを確認しながら、腕を身体の下へと差し入れる。
うわ、軽いなぁ。
思ったより重力が仕事をしてないことに驚きながら、起こしてしまわないように腕の中へとかき上げる。だけど、その途中で急に抵抗が加わった。
見ると、ヴィヴィオの小さな両の掌はシーツをギュッと握りしめている。
困ったな、このまま運べないこともないけど、その分揺れて起こしちゃうかもしれない。かといって無理に引っ張のも起きてしまう原因になりそうだ。
しばしの間どうしようかと考えていると、アイナさんが状況を察し優しく手を開かせようとしてくれた。
だけど、余程強く握り締められているのか一向にシーツを放す気配はない。
本当、どうしよう・・・?

「・・・・・・んんっ。」

二人して悩んでるうちにヴィヴィオはむずがってしまった。
あわわ、起きちゃったかな?
一瞬、起き抜けに泣き出してしまうことも危惧したけど、それならまだ良かったかもしれない。
少なくとも考え込んでしまうことは無かったのだから。


「・・・・・・ティアナ・・・さん・・・。」

その呟きは胸に深く刺さった。






あの日から二ヶ月と少しが経った。
だけど、ティアナはまだ帰って来ない。

ヘリに砲撃された瞬間、ヴィヴィオとヴァイス陸曹と共に脱出したのは確認されているけど、現場跡にはヴァイス陸曹しか残っていなかった。
おそらく敵の戦闘機人に追われたんだと思う。実際にヴァイス陸曹がそれらしき存在を目撃していたから確かだ。
すぐさま捜索任務に移行したものの、展開されていたAMFにより満足に動けなかったことも事実。
そして約五時間後。ようやくAMFの影響が小さくなったときに発見できたのは、廃ビルの一室のロッカーの中で泣き続けるヴィヴィオと名乗る少女と、救難信号を送り続けていたクロスミラージュだけだった。

ティアナはどこに行ったのか?それは未だに解らない。
クロスミラージュに記録されたデータでは、赤髪の戦闘機人に執拗に追い回されたことが判明している。
ヴィヴィオを狙っていることをティアナは察した。そして、ヴィヴィオを抱えたままではいずれ捕まってしまうだろう事は明白。だから、ヴィヴィオを隠して自分が囮となってヴィヴィオから引き離そうとした。
なのはさんたちはこれが最有力と考え、皆もそれには同じくだった。
だけど、ティアナがどうして今日まで見つかっていないのか・・・・・・あまり考えたくは無いけど、もう生きてはいないとしてもどうしてその死が隠されたのかは未だに判明していない。

その日から私達も周囲を全力で捜索したけど、そのビルの周囲2kmにティアナとものと思しき血痕が転々と残されていたことと、複数の戦闘現場らしき地点ぐらいしか解らなかった。
そして機動六課による捜索行動の期日は締め切られ、私はそれに食い下がって独房入りとなったりもした。
今はお父さん達が全力で行方を捜そうとしているからそれを信じて待つだけだ。納得なんか出来っこないけど、なのはさんに『ティアナが護ったヴィヴィオを放り出すの?』と言われてしまい、反論できなかった。

きっと、捜査官経験の無い私が加わっても足手まといになるだけだ。私は何も出来ない自分に言い訳したかっただけなんだ。
なら私は、スバル=ナカジマにしか出来ないことをしよう。
ティアナが帰ってきたときに笑われないように。
少しでも成長したところを見せれるように。
そう思えるようになったのは、ここ一月のことだ。







「あの、アイナさん。私のポケットに手を入れてもらえます?」

落ち込んでばかりも居られないよね。
よしっ、と気合を入れなおし、まずはヴィヴィオをちゃんと護れるようになろうと思う。
この腕の中で眠る女の子を泣かせないことが今夜の目標。

「あ、そっちじゃないです。はい、スカートの右側の・・・・・・うわわわ、奥っ、それは奥過ぎますよぉ!」

両腕でヴィヴィオを抱えたままだったので思わぬ刺激に身体が揺れる。
他人にポケットまさぐられるのがこんなにくすぐったいものとは思わなかった。


「・・・ん、んしょ。・・・出ましたけど、コレは一体・・・・・・?」

「それをヴィヴィオの手に握らせてください。」

半信半疑と言った表情のアイナさん。
けれど掌に触れたあとあっさりとシーツを放し、代わりにソレを握ったヴィヴィオにはさすがに驚いたみたいだ。
・・・ヴィヴィオもティアナの帰りを待っているんだね。
だから、クロスミラージュ。
ヴィヴィオの傍にいてあげてね。

一度、ヴィヴィオの掌の中でオレンジ色の光を点滅する。



「それじゃあ行きましょうか。なのは隊長達が待ってますし。」

そうして歩き出そうとしたときだった。
突如隊舎内に鳴り響く警報。


『西部にガジェットドローン出現。状況は一級警戒態勢に移行。各員は所定の配置に着き速やかに指示を待て。
 繰り返す・・・』


「ヴィヴィオをお願いします!」

アイナさんにヴィヴィオを渡して走る。
ガジェットが出てきたってことは、戦闘機人達が動いてる可能性も高い。
なら、ティアナの情報も手に入るかもしれない!
私は緊張と同じぐらいの期待を胸に隊舎の階段を飛び降りる。






この後、私の願いは叶えられる事となる。
それ以上の絶望と共に。




   ◆



「と、父さん落ち着いて!」

受話器のスピーカーから聞こえてくる怒号にも似た大声に、私は先ほどから感じてる頭痛を強く感じ、眉をしかめた。
一旦耳から離し、相手にようやく言葉として意味がある程の落ち着きが戻るのを待ってから、会話を再開する。

「・・・うん、スバルは大丈夫。命に別状は無いって。
 今は眠ってるから、今夜は入院して明日の朝精密検査を受ける事になってる。
 私も今夜は付き添うつもりだから・・・。
 うん・・・。
 うん・・・・・・。
 ・・・だから、・・・今父さんが来ても何もできる事はないんだよ?」



スバルと共に夜間出動し、戦闘機人との戦闘で意識を失い病院にかつぎこんだのが二時間前。
私はスバル達とは別行動してたため戦闘の詳細は解らないが、急を要する容態ではないととりあえず胸を撫で下ろしたのがつい先ほどのことだ。



『けどよぉ・・・。』


スピーカーから漏れ出る愛すべき父の言葉は酷く頼りない。
幼き日からその背中をとても大きく感じていたのだけれども、今は電話の向こう側で項垂れている丸まった姿しか想像できなかった。

一瞬、母さんを喪った時の父の姿が浮かぶ。
あのときの私とスバルはただ泣くだけだったが、父は涙一つ流さずに、粛々と葬儀を執り行っていた。
能面のような無表情。
思えばあの日から父の頭には白い穂が生え始め、物事に動じるようなことが無くなった。
きっとそれは私達が居たから。
たった一人で私達を護っていかなくちゃならなくなったから、それに見合うだけの振る舞いをしようと父さんも必死だったんだ。
父のそんな態度は、思春期の少女に若干の距離を感じさせ、私にいつまでも子どものままでいられない事を教えてくれた。

・・・・・・いつの日か父も居なくなる。それは避けられない運命。
なら、スバルを護るために強くならなければ・・・・・・。

・・・・・・と。
子どもじみた感情だとは判ってるけど当事は本気だった。
それは同時に、

ふざけて
一緒に悪巧みして
母さんに見つかって
頭を掻きながら言い訳して
私達の分まで怒られてくれた

初めて出会った異性への想いは、母の戒名と共に墓碑に封印された。
なんてことの無い通過儀礼。
事実、今この時まですっかり忘れてしまっていた。
それほどまでに、父さんは完璧に『父親』をこなしていたのだから。


・・・・・・なのに。

「・・・プッ」

『・・・ギンガ?』

電話口でもはっきりと解るしょげように、思わず噴出してしまったのを誤魔化しながら早口でまくし立てていく。

「あ、ごめん。
 あー、・・・ゴホン。
 とにかく明日になればスバルも目が覚めるし、多分大丈夫だとは思うけどもし精密検査の結果で入院が伸びるようなら、改めて準備が必要なの。
 父さんが慌てたっていいことなんか一つも無いし、今夜はぐっすり寝て明日・・・ともう今日ね、の朝一に来て頂戴。
 ここ数日徹夜続きで寝て無いんでしょ。
 目の下にクマ作ってたら逆にスバルに心配されちゃうよ?」

『お、おう・・・スマン。』

あれほどまでに頑なに纏われていた【父親】の仮面はボロボロと崩れ落ち、代わりに今剥きだしとなってるのは【父さん】の素顔。
だらしないけど、お世辞にもかっこいいとは言えないけど・・・・・・私達をしっかりと愛してくれた人を私は実感した。

「それからね、日が出ても正面玄関は開いてないから、裏口の守衛さんに・・・」

母さんには勝てなかったけど、私達は三人で【親子】になれたってことかな。
そんなことを注意事項を伝えながら考えていた。



『・・・・・・ああ、それとな。』

病院のロビーの静けさにそろそろ病室に戻ろうかと言う頃合、先ほどまで仕事の連絡事項を告げていた父さんが、声を潜めるように呟いた。

『こいつは、言おうかどうか迷ったんだが・・・・・・』

かなり歯切れ悪い物言い。
それは現状でも迷っている最中であることを示している。
なんだろう?
父さんがこういう言い方するなんて珍しいな。

「何?・・・・・・言いにくいことなら無理に言わなくても・・・・・・」

『いや、・・・・・頭の片隅にでも留めておいてくれ。
 こんな情報、役に立たないに越したことはないからな・・・・・・。』

今頃、思い悩んだ過程が眉間に刻まれているのだろう。
そして父の前置きから、胡散臭くそしてきな臭い話であることが察せられた。

『こいつは資材課の連中から聞いた話だ。
 そいつは今、公開陳述会の設置のために走り回ってるんだが、地上本部の地下倉庫に由来不明の貨物が毎日少しずつ増えて行ってるらしい。
 気になって送り先を調べると存在しない番地でな・・・。』

「・・・・・・そういうことならウチにもあるんじゃ・・・?
 別にロストロギア関連じゃないんでしょ?」

そう、これだけならよくある話。
地上本部の人材不足はこういった面に現れているのは局員にとって周知の事実だ。
施設の倉庫を漁っていたら、奥からインテリジェントデバイスが飛び出してきたなんて眉唾な話も存在する。

『まあそうだがな・・・。
 あとは、本部内で海の悪口をここ数日全く聞くことがなくなったり、三日前に急遽予定に無かった対テロリストシミュレーションが組み込まれたりって話だ。
 細かいのになるともっとあるが、おかげで本部の奴ら妙にピリピリしてやがる。』

上司がしきりに有給を薦めてくる。食堂のおかずが一品増えた。レジアス中将がトイレ掃除を?!etcetc
一つ一つは些細なことだけど、父さんはそこに引っかかってるのかな。
けど、もしそれらに繋がりがあるとしたら・・・。

「解ったよ。私の方でも気付いたことがあったら連絡するね。」

『ああ、それと危ないと思ったら真っ先に逃げろよ。』

「・・・・・・三佐、私も陸士なんですよ?」

敢えての敬語。

『・・・・・・無理は、しないでくれ。お前も、スバルもな。』


そこにどれだけの想いが込められているのか。
解っているからこそ、『父さんも』という言葉を続けられなかった。



   ◆




『グッ!・・・・・その身体、戦闘機人?!』

『うっせーよ。あたしはお前にぶち殺しに来たんだ。ぺちゃくちゃ喚くな!』

薄暗い会議室、その壁の一つに掲げられた大きなモニターによって室内は照らされている。
室内にいるのは五人。いずれも機動六課の隊長格であった。
いずれも硬い表情のまま無言でモニターを凝視している。

映像の中の登場人物は主に二人。
一人は皆がよく知るスバル・ナカジマ二等陸士。
そしてスバルと機動戦を繰り広げているスバルによく似た赤髪の少女。
時折、画面奥をエリオやキャロ、他の戦闘機人らしき少女が横切るものの、この映像の主役は完全にこの二人だった。



空色と金色のベルトが交差し、薄明かりの中火花が飛び散り、そのたびに轟音が響く。
素人目には互角に見えるかも知れない。
だが観察している隊長陣には両者の差をはっきりと理解できていた。
それはひとえに戦闘経験だ。
両者の身体スペックが同等の場合、勝負を決するのはその運用に因る。
例え同じ動作を行ったとしても、スバルは経験より二手三手先を無意識で感じ取り、意識を次の動作へと動かしている。
対して、相手の戦闘機人は目の前の事態にしか反応が出来ていないため、行動がワンテンポ遅れてしまう。さらにこれを補おうとし、限界を超えたパワーとスピードが要求され、その負荷は身体へ蓄積されていった。
結果、一見互角に見えていた戦況はしだいにスバルへと傾いていく。一手の遅れを取り戻すための負担が、その次の一手を防げなくなり、やがて戦闘機人の少女は目に見えて動きが鈍り始めていった。


『くそっ、認めねえぞコンナノッ!』

少女は自分でも判っているのか、一旦インファイトから身を退き弾幕を張りながら距離を取ろうとする。
だが、スバルが許すはずがない。
当然のごとくリボルバーナックルが右肩にめり込み、少女は壁際まで転がっていった。

『投降してください!
 あなたには聞かなきゃいけないことがあります。』

立ち上がろうとついた片手の手の甲の上に乗せられるマッハキャリバー。
加えて視線を上げた先の目の前には回転を続けるリボルバーナックル。
完全な【詰み】であった。


『てめぇ、本気出してなかったな・・・』

呻く様な呟きに、スバルは一方的な質問を行う。

『答えて下さい。
 アノ日、廃棄都市であなたが出会った局員は・・・・・・ティアナはどこへ行ったのかを・・・』

『・・・・・・。』

戦闘機人の少女は、その真っ直ぐな視線に耐えられないように逸らし、しばしの沈黙が場を支配した。




ここで映像は一旦停止される。
皆の視線はリモコンを手に取ったヴィータに集中する。

「ここまではよかった。
 多少身内びいきなところもあるが、フロントアタッカーとして必要最低限なことはこなしてる。
 まあ最後は減点だがな・・・。」

溜息交じりな評価に周囲は同意する。

「そうだね。
 犯人確保を最優先しなかったのはセオリーには反してるけど、戦闘機人モードを意思の力で抑え込んでたことも考えるとよく我慢したと思う。
 ねぇ、なのは?」

「・・・・・・。ヴィータ副隊長、続きをお願いします。」

「お、おう・・・。」

同意を求める同僚に、高町なのはは無言で答えた。



高町なのはの態度はティアナ=ランスターが行方不明となってからも変わらなかった。
時に厳しく時に優しく。人々はその態度に最初は心強く感じていた。
だが、一人で居るとき、または人と一緒に居るときも無言が続く時間が少し増えた。
そしてそんな時間、なのははひどく禍々しい目をしている。
部下達はほとんど目にすることはないが、ここにいる隊長陣はどうしても目にする機会が多くなり、それでも指摘することが出来ずにいた。
先ほどフェイトが話を振ったのも、なのはがそんな目をしているのをなんとかして止めたかったからだ。だがそれは功を奏さない。
なのは本人は薄闇で判らないだろうと考えていたが、声音まで偽ることは出来なかった。




「あー・・・・・・問題はこの後だ。」

ヴィータは意識して動揺を抑えながら映像を再開させる。



『誰が教えるかよ、このマヌケ、がぁあああああッ!』

映像の中の戦闘機人の少女は圧倒的な不利な状況でも逃走しようと試みるが、マッハキャリバーに右手を踏み潰された痛みに、言葉の途中で悶絶する。

『やっぱり知ってるんですね。
 抵抗は無意味です。仲間にも速やかに投降を促してください。』

淡々と定型文を告げるスバル。
スピーカーからはスバルの声が鮮明に聞こえ、先ほどまでの他の戦闘もほぼ終了していることを示していた。
本来ならこれで任務は完了している。
だが、実際にはそうでないことをモニターの前の五人は知っている。

・・・・・・ソレハ コマルナ・・・・・・

男とも女とも取れない電子音声。
突如背中側から聞こえてきた声にスバルは慌てて振り向き、次の瞬間トラックに跳ね飛ばされたかのように壁に轟音とともにめり込んだ。




「「「なっ?!」」」

ガタッと思わず席から腰を上げる音が会議室に響く。
ヴィータは苦虫を噛み潰すように言葉を紡ぐ。

「・・・この時だ。コイツが何も無い空間から現れたのは・・・っ」



ソレはヒュルヒュルと風鳴りの音とともにゆっくりと土煙の中から現れる。
背はそんなに高くない。だけど、全身を覆うようなもっさりとしたローブに身を包み、その顔は男なのか女なのか・・・いや、人間なのかどうかすら窺い知れない。

ローブは壁に埋め込まれたスバルを一瞥すると、戦闘機人の少女に近づいていく。

『・・・誰が助けてくれって頼んだよ!
 ・・・・・・。
 ・・・解ったよ、クソッ!』

少女は一度は激昂したものの、地面を殴り発散したのか大人しく立ち上がる。


『スバルさん!』

エリオのローブの人物に対する背中からの強襲。
だが、ストラーダが命中しようとする次の瞬間、エリオは先ほどのスバルと同様に、真横からのベクトルが加わり吹っ飛んでいく。


「・・・エリオッ」

「実際、この後やりあったんだがコイツの攻撃はやっかいだ。
 見えねーせいで、どんな武器なのか魔法なのか判別しにくい。一見したところ腕を振るのが攻撃の起点になってるみてーだが、それにもフェイント入れてきやがる。
 ちょっとばかし、ひよっこどもにはつれーだろーな。」

映像の方では、ヴィータの詳言通りヴィータとローブの人物との戦闘に移っていく。
だが、見えない攻撃に責めあぐねるヴィータは中々距離を詰めれないようだった。

その後、そのまま時間が過ぎ、戦闘機人の援軍が仲間達とそのローブの人物を回収したところで映像は途切れた。


映像が終了したことで会議室に明かりが灯される。
だが、面々の表情は暗いものとなっていた。

「『謎の敵』に『謎の攻撃』か・・・。漫画じゃあるまいし・・・。」

「戦闘機人とは違ったのか?」

「ああ、あたしも一人この前に相手してたけど、戦闘機人の攻撃は協力な分素直だ。だから読みやすい。
 だけど、こいつは一言で言うとイヤらしい。
 あたしに対しても、ぶちのめすってよりも仲間が来るまでの時間稼ぎって感じだったしな。」

「今後、その人にスバル達は勝てそう?」

「・・・・・・正直厳しい。
 あいつらは三人とも根が真っ正直だからな。」

「外道な手使われたら、心理面から崩れるか。」

「場面場面で、エリオやスバルを盾にするように移動してたしなー・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

皆が皆、脳裏に浮かんだ言葉を飲み込む。
それは言ってはならない言葉。
ティアナは未だ見つかっていないのだから。




「じゃ、じゃあ、今後こいつが現れたら副隊長以上が優先的に対処するってことでえーな?
 シャーリーに映像の分析頼んどくから、各自こいつの、特にこの見えない攻撃の特性について頭に叩き込んでおくこと。
 そしたら、解散!」

皆がはやての言葉に頷き席を立とうとしたところ、はやての胸元からコール音が鳴る。

「ちょっ、ごめんな。ちょい待って・・・。
 グリフィス君、どうしたん?」

相手は彼女の副官だった。
モニターに映し出された彼は、そこに他の隊長陣がいることも確認する。

『よかった、隊長たちもまだそちらにいらしたのですね。
 とにかくTVを付けてください!どのチャンネルでも構いません。無いならラジオでも・・・!』

彼が慌てるということはよっぽどのことなのだろう。
察したフェイト、今まさに退室しようとしていた会議室のモニターを再度灯し、放送局に切り替える。

「一体何が?
 事件ならTVより先に通報が来るはずやし・・・」

「お、映ったぞ。
 ・・・・・・誰だ?」


モニターに映ったのは二十台と思しき女性。
物静かな印象でスーツ姿を晒している。


『プロパガンダです!
 ジェイル=スカリエッティの!
 次元世界の主要な放送を電波ジャックしているんです!!』



   ◆



『次元世界にお住みの市民の皆さん、こんばんわ。
 私はウーノ=スカリエッティと申します。
 最初に皆様の生活に無断でお邪魔したことを謝罪いたします。
 ですが、どうしても皆様に伝えなければならないことがありこのような手段を取らせていただきました。

 皆さんは戦闘機人という存在をご存知でしょうか?
 旧暦の時代より研究されてきた人型の戦闘兵器のことです。
 ですが人の手で生命を造り、人の手でその生命を弄びあげくに捨ててしまうことなど、とても許されることではありません。

 何故こんなことを言うのかというと、私自身・・・そして私を製作した科学者ジェイル=スカリエッティもまた、忌まわしき戦闘機人であり人造生命体であるからです。
 きっと今、皆様「誰が?」とお思いになったと思います。
 私達の製造を指示した人物、それは企業や犯罪組織ではありません。
 最初は信じられないかもしれませんが最後までお聞きください。

 戦闘機人を作り出した存在、すなわち管理局最高機関の評議会、及び最高評議会を告発するために私は今皆様の目の前にいるのです!

 彼らは違法科学者を捕らえる一方、その科学者達の懐柔し、長年に渡って違法な研究を続けてきました。
 そして今もまた、たくさんの人に造られし生命が、評議会や最高評議会、違法な科学者の勝手な都合でその生命を散らしていってるのです。

 

 私達もまた、彼らの指示の元、多くの犯罪行為に手を染めました。
 けれど、私達にも意思があり、人間として生きたいと切に願っております。
 どうか皆さん、私達に罪を償う機会をお与えくださるようお願い申し上げます。



 そして、管理局地上本部の方々へ。
 二日後の正午、地上本部タワー正面にジェイル=スカリエッティ以下全戦闘機人は投降し、保護を求めます。
 ただし、過去私達のような存在が闇から闇へと葬りさられたように、最高評議会の干渉があることをとても危惧しています。
 つきましては二日後の正午までに、地上本部タワーより地上本部メンバー以外の可能な限り立ち入り禁止を求めます。
 私達の安全が確保されたことを確認ししだい、最高評議会らの容疑を証明する証拠を提出いたします。


【犯した罪は裁かれる】

太古より普遍の真理として語られるこの言葉が偽りでないことを私達は祈っております。
 それでは皆様、よき夜を・・・・・・』





あとがき

リハビリがてら思い付きネタを投降してみます
時系列的には、前回と同じくヴィヴィオとの第一次接触からの分岐となります

(つД`)トリップ忘れた


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