<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.10626の一覧
[0] 【一発ネタ】 凡人終末端  リリカルなのはStS  ティアナ憑依 TS注意【やっつけ仕事】[痴話詐欺離散](2009/08/10 23:04)
[1] タイトルとか募集中[痴話詐欺離散](2009/07/29 01:18)
[2] 皆の心が広いなと感心することしきりw ※おまけ追加しました07/30[痴話詐欺離散](2009/07/30 17:56)
[3] お食事時を避けてください[痴話詐欺離散](2009/07/31 23:40)
[4] 頑張りすぎは身体に毒と自分に言い訳 ※08/04 おまけ追加しました[痴話詐欺離散](2009/08/04 22:53)
[5] 今回はそのうち書き直すかもしれません。ジ○スラックコワイ(ガタガタ[痴話詐欺離散](2009/08/10 02:19)
[6] 休日はBADEND多発警報が出ています。お出かけの際は十分ご注意ください[痴話詐欺離散](2009/08/10 23:07)
[7] 自分の文章力の低さに絶望する日々[痴話詐欺離散](2009/08/19 15:45)
[8] END8 拡張ぱわーうpキット 前編 也。[痴話詐欺離散](2009/08/24 16:47)
[9] END8 拡張ぱわーうpキット 中編 也。[痴話詐欺離散](2009/09/10 01:24)
[10] END8 拡張ぱわーうpキット 後編 未完也。[痴話詐欺離散](2009/10/07 07:48)
[11] END8 拡張ぱわーうpキット 修正パッチ[痴話詐欺離散](2009/11/02 05:42)
[12] END8番外編 【あの『Cradle-Ara』総監督に突撃インタビュー!】[痴話詐欺離散](2009/11/10 03:51)
[13] タイトル未定その①[痴話詐欺離散](2010/04/28 22:52)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[10626] END8 拡張ぱわーうpキット 中編 也。
Name: 痴話詐欺離散◆a0b861c5 ID:2607750c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/09/10 01:24
――ゼスト 廃棄区画




「いつ・・・ま、で・・・・・・そう・・・している・・・つもりだ・・・・・・っ」

・・・ペチン。


それは弱弱しい拳だった。
胸を我が槍に貫かれた状態で動けただけでも僥倖なのだろう。
避ける必要も無い最期のあがき。

だが想いが詰まっていた。
自らを見失っていた俺の目を覚ますには十分なほどの。



「ゼスト・・・俺はっ・・・・・・俺は・・・・・・」

崩れ落ちようとするレジアスの身体を抱きとめる。

ああ・・・・・・もうこの死は覆らない。
俺がこの手で殺したのだ。

心臓を完全に刺し貫かれたレジアスはあと数秒で息を止めるだろう。
俺にはただ伸ばされたレジアスの手を取ることしか出来なかった。

「俺は・・・お前のようになりたかった・・・・・・強く・・・正しく・・・・・・。」

そんなことはない。
俺は迷ってばかりだ。
そしていつも・・・間に合わない。
今このときのように・・・。

「本当に強いのはお前だ・・・っ」

このときになって痛感する。
魔導師としての強さでもなく、局員としての強さでもない。
危険を承知で踏み込むことの出来る強さ。
人としての強さがお前の強さだ。

「・・・・・・馬鹿・・・者・・・が・・・・・・。」

薄く笑ったかと思うとレジアスの腕から力が抜けていった。

「・・・・・・レジアス。」

最期に何を思ったのだお前は?
どうして笑って逝けたのだ・・・。
臆病者の俺にはとうとう解らなかった。






「・・・・・・だ、旦那。」

「・・・ゼスト。」


槍を抜きレジアスの亡骸を横たえたところで、ルーテシアとアギトから声が発せられた。
おそらく半信半疑なのだろう。
現に俺は少女とレジアスを目の前で殺し、先ほどまでガリューと騎士の少年と追い詰めていたのだから。
ガリューと少年は常に臨戦態勢を解く気配を見せずに、こちらを警戒し続けている。
そして少年の目に宿るは涙と憎しみだ。

「旦那、旦那なんだよな?」

探るような声。
それに頷くとアギトの表情は目に見えて明るくなる。


「旦那ぁ~~~~!」

「来るな!!」

こちらへ来ようとするアギトを一喝する。

「どっ、どうしてだよ?!」

「先ほど槍に触れたときに解った。
 俺の洗脳は一時的に克服しているに過ぎん。
 時が来ればまた活性化する。」

そして再び自分を取り戻すことはないだろう。


「・・・ゼスト・・・。」

ルーテシアは聡いな。
おそらく俺が考えてることを理解したのだろう。
ルーテシアを助け出すという役目はもう意味を為さない。
そして、スカリエッティを止めるまでに意識が持ちはしないだろう。
俺は存在するだけで被害を出す可能性が高い。


「・・・アギト、俺を討ってくれ。」

「なんで、なんでだよ!?
 何か他に方法があるかもしれないだろう!」

「・・・・・・もう、俺の為すべきことは・・・・・・一つだけだ。」

無手の構えを取る。
クアットロの言によると俺の身体はもうぼろぼろで手を加えると崩れ落ちるほどだと言う。
おそらく洗脳は槍を通して行われたのだろう。



「駄目です!
 あなたは死なせません。生きて罪を償ってもらいます!」

騎士の少年であった。
目を腫らし、それでもまっすぐこちらを見据えている。

「・・・少年。俺が憎くは無いか?
 仲間を殺した俺を、自らの手で討ちたくは無いか?」

「っ?!」

「・・・・・・仲間の恨みをその腕で晴らせ。
 お前にはその権利がある。」

少年は最初戸惑っていたようだが、少女の亡骸に視線をやりふっきれた表情を浮かべる。

「・・・・・・それでもっ!
 キャロはそんなことは望んでいない!
 きっとあなたに罪を償ってもらって、生きて欲しいって思うはずです。
 あなたはルーやアギトにとって大切な人だからっ!」


まっすぐな瞳をしている。
おそらくいい騎士になるだろう。

「・・・少年、覚えておけ。
 騎士とは自らの正義と自らの弱さに戦い続ける者のことだ。」

俺は自らの弱さに負けた。
友を信じられずに、己を信じられずに、理由をつけて諦めていた。
そして未だ未練にまみれた亡霊だ。

そうなってくれるな。


「アギトっ!」

「判ったよ旦那っ、ユニゾン・イン!」

戸惑う少年にアギトがユニゾンする。
白と赤のバリアジャケットが黒と紫に反転していき、髪も赤から象牙色へと変化する。

「アギト?!」

『・・・旦那は、旦那はもう長くもたねぇんだ。きっと裁判は成り立たない・・・。
 だから、・・・・・・せめて、騎士として誇りある最期をあげたいんだ。
 ・・・・・・頼むよ。』

言葉の途中に鼻を啜りあげる音が漏れてくる。
・・・すまん、アギト。

「ガリュー、あなたも。」

ガリューはその言葉に頷き武装を再び展開する。
ルーテシア、ガリュー。
お前達にも世話をかけてしまったな。

問答が幾度か続いたが少年もしぶしぶ納得し、こちらへ槍を構える。

「いいのか?」

「・・・判りません。あなたをここで倒してもいいのか・・・。
 だからこれから悩み続けます。
 答えなんか出ないかもしれませんけど、それでも自分が選んだ選択ですから。」


・・・・・・そうか。
俺やレジアスは、結論を急ぎすぎたからなのかもしれないな。
一度の出来事で自分と他者を縛り、それ以上考えることをしなかった。
イエスかノーかでしか相手を計れなかったのだ。


まさか、ここに至って気付けるとは思えなかった。
ならばもはや思い残すことは無いっ!









    夢を描いて未来を見つめたはずが
    いつの間にか随分と道を違えてしまった
    本当に守りたいものを守る
    ただそれだけのことの何と難しいことか

    いい空だな
    俺やレジアスが守りたかった世界
    間違えてもやりなおせばいい
    お前達は間違えることを恐れないで進んでくれ



【レジアス・ゲイズ中将 レリックウェポン・ゼストの攻撃により死亡】
【騎士ゼスト・グランガイツ 自らの危険性を認識しエリオらに討たれる】



    ◆



――ノーヴェ 廃棄区画 高架上


澄み渡るほどの青空。
あごの下を風が吹き抜けていく。
後頭部には暖かな段差。
そして視界の上部を占める豊かな胸部装甲。

目が覚めたとき、あたしはⅩⅢ番目に膝枕されていた。
視界横にめぐらすとハチマキがいる。
あたしと同じようにⅩⅢ番の膝をマクラに穏やかな表情で眠っていた。
身体はもう指一本動かない。
あたしはようやくこの状況を悟った。




ああ、あたしは負けたのか。
チンク姉の仇を取らないといけなかったのに。
そのためにⅩⅢ番目も引っ張り出して二対一で挑んだのに。
チンク姉の痛さを味あわせるために、ⅩⅢ番目のデータから得た振動破砕を左腕に組み込んだと言うのに・・・・・・。

それでも負けた。



目頭が熱くなってくる。
どうして、どうしてなんだ?!
チンク姉の葬儀で絶対に仇を取るって誓った。
あたしの命をかけてこいつを殺さなきゃいけなかったのに、こいつは生きてあたしも生かされ続けている。


・・・ごめんなさい。
・・・ごめんなさい、チンク姉・・・。

涙腺が決壊する。
必死で涙があふれ出さないように目をつぶるのに、頬を伝う熱い水滴は量を増していく。
泣くってことは負けを認めるってことだから、絶対に負けたくなんかなかったのに・・・。
涙は止まらず呼吸も不規則にえづき始めていく。
結局口をへの字にしても止まらずに、あたしはせめて泣き叫ぶに至るのを必死にこらえることしか出来なかった。

それから十数秒が流れただろうか。
ふわりと目蓋の上に暖かな掌が載せられた。丁度、涙を隠すようにだ。
・・・・・・ⅩⅢ番?
不思議と穏やかな、暖かで何もかもさらけ出してしまいそうな気持ちになる。
今まで覚えのない感情に戸惑っていると、幼子に語りかけるようにゆっくりと言葉が発せられた


「・・・・・・あのねスバル、この子が言ってたの。」

な、何を・・・?

「ちゃんと判りたいって。
 あなたがお姉さんのことを、どれぐらい大切に思っていたのかを。
 ちゃんと自分の犯してしまったことと向き合いたいって言ってたの・・・。」

なっ?!
「そ、そんなことをしても、しても・・・チンク姉は帰ってこないっ!
 今更善人ぶるなっ!」

「・・・・・・。そうかもね。」

目蓋を手で隠されたまま、ゆっくりと頭を撫でられる。
忌々しいことにチンク姉のことを思い出してしまった。

「・・・この子の友達も、この間の事故で死んでるの。
 ずっと悩んでた。本当はその友達を助けられたんじゃないかって・・・。」

どこかで聞いて覚えがある。
こいつらの中で一人犠牲者が出たって・・・・。
だ、だけど、だからってチンク姉が死んで言い訳がない!
あたしの大切な存在をこいつらが殺したってことには変わりがないんだ!


「・・・・・・だから、いっしょに考えようって。
 どうすればよかったのか。どうすれば大切な人を失わずにすんだのか・・・。
 きっと何か方法があったはずだからって・・・。」

慈しみに溢れた言葉。
そんなこと今更判ったところで何になるというのか。
頭ではそう結論付けているのに、心の方が大きく揺れる。

「・・・チンク姉って言うんだ。
 チンク姉が死んじゃったからあたし・・・・・・」

気付けば懺悔する様にしゃべりだしていた。
泣きながら・・・・・・えずきながら・・・・・・。

「いいよ、思ってること、溜め込んでたモノを全部しゃべって。」




あたしは救助隊が来るまでⅩⅢ番目、いやギンガ・ナカジマにチンク姉との思い出を語り続けた。
ギンガは時々相槌を打ちながら聞き続けた。
その度にあたしは、チンク姉を好きだったことともう二度と会えないことを再確認して泣いてしまう。
そんなあたしの頭をただギンガは撫で続けてくれた。



絶対に判り合える事なんて無いと思っていた。
だから戦って奪うしかないんだと思っていた。
なのにこうしてギンガはチンク姉のことを判ろうとしてくれている。
ハチマキも同じなんだろうか?

あたしはハチマキ、スバルに勝ってどうしたかったのかもう判らなくなってしまっていた。
ただ、殺すだけじゃきっと足りない。
謝らせたかった?――口だけの謝罪なんかいらつくだけだ。
あたしは一体何のために戦ったんだ?

もやもやとした想い。
いらつく。そして不安定になる。
そして気付いた。
こいつも仲間を失ったときは同じ気持ちだったんじゃないかと。




こいつが目を覚ましたときに最初に尋ねる事ができた。
決してチンク姉のことを許すつもりはないけど、こいつは多分あたしよりも一つ先のものを見たんだ。

どこまでも続く青空の下、あたしはもう一度チンク姉を思い出し泣いた。



【スバル・ナカジマ二等陸士 JS事件から半年後、戦闘の後遺症により他界する】
【ギンガ・ナカジマ陸曹 スバル・ナカジマ二等陸士に保護される】
【ナンバーズⅨ ノーヴェ スバル・ナカジマ二等陸士に保護される】



    ◆




――ルキノ アースラ操舵室



『次元航行部隊の到着まであと179分。
 巨大船の軌道ポイント到着まで、・・・・・・26分。』

シャーリーさんからの通信は機動六課の面々に絶望を届けた。
既に幾人も戦死者も出し、親友のアルトの反応もロストしている。生存は絶望的だろう。
つい先ほど会話してた人間に、もう会えない。
それでも身近に迫る死への恐怖を必死にやり過ごしながらここまで来ていたんだ。

約二時間半。

その事実は私達の心を折るには過剰すぎた。
足元がぐらつく感覚。
一体、何故今まで頑張ってきたのだろうか?
多分、皆同じ気持ちだった。


長い長い沈黙の後に、私の下に秘匿回線が届いた。
・・・・・・グリフィスさん?

そのとき私は正直回線を開くのが億劫になっていた。
もう何をしても間に合わない。
二時間半もあれば、あの巨大船は地上に主砲を発射し悠々と降伏勧告まで行うことが出来る。
ミッド政府がどのような結論を下すかはわからないが、一つだけ判ることがある。

私達管理局が負けたということだ。
大勢の犠牲を出しながらも、大切なモノを護れなかった・・・・・・。


「・・・ルキノです。どうしましたか?」

『ルキノ、部隊長との協議によりある決定が為されました。
 落ち着いて聞いてください。
 我々はこれより×××××によって×××××を××××し××××しますっ』


だから、グリフィスさんから伝えられた事を最初は理解できなかった。
ありえない。
常識外の一手。


「無理です!」

即座にそう返した。

『・・・・・・・・・。
 もうそれしか方法はありません。』

事も無げにグリフィスさんは言う。
何故だろう?普段のグリフィスさんなら絶対にそんな案など納得しないのに。


『・・・・・・いいですか、ルキノ。
 ミッドチルダ100億の人間を護ることが出来るのは僕らだけなんです。
 それだけじゃない、ここであの巨大船が軌道ポイントに到達してしまえば次元世界全体の平和に関わる事態になるんだ。』

そうかもしれない。そうかもしれないけど・・・・・・っ。
納得できない私に対しグリフィスさんは、いつものように冷静に言葉を紡いでいく。
こんな時にまでなんでそこまで冷静に振舞えるんだろう?
そう思うと苛付きが募っていく。
度重なる戦場のストレスと絶望、間髪入れずの無茶な要求を味わい、思わず声を荒らげてしまった。





「だからって、無茶すぎます!
 アースラで突貫し、敵主砲を物理的に破壊するだなんてっ!!!!!」

『これは決定事項だ!ルキノ・リリエ二等陸士ッ!!!!』





普段聞くことのないグリフィスさんの大声に心臓が飛び出しそうになる。
それでもやはり納得は出来ない。


あの巨大船の装甲はアースラのそれを遥かに上回る。
質量的にも構造的にも劣るこのアースラでは主砲にダメージを与えることは出来ない。
加えて、あのガジェット群をどうやって突破するかも課題だ。
アースラは退役が決定しているので、既にアルカンシェルは使えない。
このままではただ、アースラを犠牲にするだけだと必死に説得した。

グリフィスさんも考え込み、撤回してくれるかと思ったとき回線に割り込みがかかった。



『ならば、その道は我々が築こうっ!』


この声は・・・シグナム副隊長?!
正面モニターにはアースラ前面でこちらに背を向けたシグナムさんが表示される。
けれど、普段のともリィン曹長とユニゾンしたときとも違う、艶やかな紫色の騎士甲冑に四本の炎の翼。


「シグナム、副隊長・・・・・・そのお姿は・・・・・・?!」


『心強い増援が来てくれた。
 グリフィスッ!』

『はい。』

『我々がアースラの衝角(ラム)となって突入口を造る。
 最大船速で遅れるなっ!』

『わかりました。・・・・・・どうか頼みます。御武運を』


敬礼をするグリフィスさん。
それに頷いたシグナム副隊長は、見たこともないほどの炎の大剣を顕現し視界内に移るガジェットを消滅させる。


『行くぞ、アースラッ!!』


加速していくシグナム副隊長。
私は思わず操舵席の手すりに手を這わす。

子供の頃の憧れだった。
初めてこの艦に配属されたときは夢のようだった。
そして数日前からこの席に座っている。

蘇る思い出の数々。
けれど、そこにいたのは私とアースラだけじゃなかった。
親友、同僚、上司、後輩・・・。
様々な人たちとの思い出が詰まっている。
今この時も、その人たちは命がけで戦ってるんだ。

幼い日々。
私は女の子なのに次元航行艦に憧れた変な娘だった。
きっかけはニュースで見たとっても綺麗な管理局の女性艦長。
勿論メカメカしい艦のかっこよさにもあったけれど、あんな綺麗な人が私達を護ってるんだと驚いて夢中になって調べていくうちに、いつのまにか私もあんな風になりたいと思っていた。

そう、この艦は誰かを護るための船だ。
ここで動かずに博物館に飾られることをこの艦は望んじゃいない。

コンソールに手を置く。

最後の仕事、一緒に頑張ろうね。




聖女の名を冠する船は最後の航海を開始する。
船首には炎の精霊を灯火に、背には港たる母なる大地。
地上の護り手達はそれを見上げ次々と左手を目線に掲げていく。
そこにあるのは老兵に対する純粋な感謝と哀悼であった。

歴戦の老婆は朽ち果て行く姥捨て山から華々しき戦場に今一度蘇る。
自らの死に場所はここだと言わんばかりに・・・・・・




   ◆



――なのは  ゆりかご 玉座の間



ヴィヴィオは立ち上がる。自分の力で。
対して私はレイジングハートを支えに立ち続けるのがやっとだった。

「・・・なのはママ?」

かけよるヴィヴィオの頭を撫でる。
あまりゆっくりもしていられない、上昇が減速したといってもまだ艦隊の到着時間には大きな時間差が存在した。
これをなんとしても埋めないと、ミッド全てが人質に取られてしまう。


「・・・いい?ヴィヴィオ。
 この道をまっすぐ進めば絶対に誰かが助けに来てくれる。
 一人で行けるよね?」

ブラスタービットの基点をヴィヴィオに変更する。
道案内と護衛ならこの子達だけでも大丈夫だろう。

「なのはママも一緒じゃないとダメっ!」

スカートの端をヴィヴィオに掴まれてしまった。
不安げな表情。
ヴィヴィオが目覚めて始めて出会ったときと同じだ。
悟られてはいけない。
私は彼女の頭を撫でて意識的に笑顔を作る。

「ごめんね。
 なのはママはもうちょっとだけお仕事をすませないといけないの。
 すぐに追い付くからね♪」

「・・・・・・でも。」

「大丈夫。ヴィヴィオは強い子だもん。
 ティアナママと同じだね。」

私は何か言いかけようとするヴィヴィオを笑顔で切り捨てた。
それは私が小さな頃からずっと言われ続けてきた言葉。
こう言えば、『いい子』は絶対に逆らえない。

・・・・・・ずるいなぁ、大人って。
親の立場に立ってつくづく実感する。
・・・・・・ごめんね。



見えなくなるまでヴィヴィオの背を見送ったところで、支えにしていたレイジングハートの柄が地面を滑った。
踏みとどまることも出来ずに、前のめりに倒れてしまう。
よくヴィヴィオが見えなくなるまで持った。思わずそう自画自賛してしまう。

自分の身体が限界を超えていたことはよく判っていた。
ブラスターシステムの完全開放。
あの事故以来、歪に繕われた私のリンカーコアでは制御しきれないことは明白だった。

あはは、フェイトちゃんにあんなに釘を刺されてたのになぁ。
きっとすんごい怒られちゃうんだろうね。
フェイトちゃんだけじゃない、はやてちゃんやヴィータちゃんにシャマル先生。もしかしたら、教え子達にも怒られてしまうかもしれない。
教官が教え子に怒られるなんて駄目だよね。
頭を抱える事態のはずなのに、思わず笑いがこみ上げてくる。

・・・早く、怒られたいの。




腕を突っ張らせて、うつ伏せから仰向けに転がる。
ちょっと呼吸が楽になったかな?
少し身体を休めたら、あの戦闘機人を逮捕してゆりかごの上昇を完全に止める方法を引き出さないと。
ヴィヴィオは助け出せたけど、それで帰る地上が無くなってたら意味は無い。



ヴィヴィオとの戦いの最中、何度も意識を失いそうになるたびに浮かんできた教え子の姿。
強くて不器用な心の持ち主。
教え子の中でも一番出来が悪くて、だからこそ私の教えられること全てを伝授して最高の弟子になるはずだった。

ヴィヴィオの何度も何度も涙ながらに訴えていた「ママを返して」という言葉が胸に突き刺さる。
目をそむけていたことを自覚するしかなかった。
ティアナを殺したのは自分だと。
けど、だからこそここでヴィヴィオを失うわけにはいかない。
そのティアナが命を賭して護ったヴィヴィオをここで失っては、ティアナが無駄死にと称されてしまう。
それだけは絶対に許されない。


犯した過ちは消えることはない。
生き続ける限り背負い続ける。
罪の重さと戦い続けるしかない。
だから、ティアナ・・・私を許さないで。
最後まで諦めずに、生き抜いて見せるから・・・・・・それまで・・・・・・っ!


私は虚空に浮かぶティアナの幻影を眺めながら、しばしの眠りに落ちた。





あとがき

遅れてごめん。さらに後編じゃなくてごめん。
今、最終調整中です。書きたいシーンがありすぎるのですが、全部書いてると本編越えそうな感じにorz


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.11713004112244