"Unlimited Real Battle Force" Mission NO.XX Level"Real" ミッションブリーフィング: 迫り来るホムンクルス達の襲撃を掻い潜り、地下魔術教会内からの脱出が最優先。 仲間と共に、地下に存在するターミナルを目指せ。 使用可能武装: M1911ガバメント ……なんて、頭の中でそんな事を考えてみる。 俺は正直言って、アルトリウスのように銃弾を弾き飛ばすような真似なんかできないし、甲斐のおっさんのような精密射撃が出来るわけでもない。 おまけに、このゲームはコンティニューがきかない。今俺の中で鼓動しているこの心臓ワンコインが終わったら、ジ・エンドなのだ。 こんなことなら化け物キャラも出てくるオムニバスミッションも戦っておけばよかった、などと考えるのは余計か。 今、この場で俺ができることは、せいぜいがゲームの中で培った死なない方法を実践するくらいな物である。 曰く、銃を撃つときは物陰から半身を覗かせて撃つべし。 曰く、四方八方あらゆる場所に気を配るべし。 曰く、武器の残弾は常にMAXにしておくべし。 ……ホムンクルスに対して役立つ以前の話だな、こりゃ。 後はせいぜいシングルミッションの中にあった酷似した状況を参考にするくらいだろう。 曰く、広い場所にはどこかに罠が仕掛けられている。―――無い。 曰く、いつどこからスナイパーが撃って来るか判らない。―――敵の武器は黒鍵とかいう投擲武器だ。 曰く、敵は予想もしない場所からやって来る。―――正解。 そいつは天井をぶち抜いてやってきた。ハリウッドのヒーローじゃあるまいし、4メートル近くある高さの天井をぶち抜くなんてありえないと思った。 しかし現実問題として奴らはそれを実行し、実際に目の前に飛び降りてきた。惚れ惚れするような鮮やかさだ。 だが単調な行動を取る奴らの事、天井を割れば降りてくるという思考を察するのは簡単だ。 物は上から下へ堕ちる。何者も"万有引力"には逆らえない。 だからゲームの定石では落下する標的に対し、ポイントすべきは空中ではなく着地する地面の方。 リアルさを追求したのだから、それは"リアル"にも当てはまる。 そして、ゲームではないのだから、着地の衝撃でコンマ1秒でも隙があれば狙える。 爆破された天井の場所。落下する石ころから落下地点を予測。落下と同時に銃を構える。 マガジンはキッチリ填まっている。セーフティは解除した。薬室に弾丸は装填されている。 照星と照門の3点の先に敵を視認。リコイル緩和のために若干肘を曲げる。左手はマガジンを押さえるように添える。 トリガーに指をかけ、 ―――これって、殺人に当たるのかねぇ…… 覚悟と共に、トリガーを引いた。 /// /// 落下してきたホムンクルスは。着地と同時に目の前で腰を抜かしたヴィクトールに狙いを定めていた。「うわぁぁぁぁ!!」 振り上げられる黒鍵。私の位置からは遠い。ガウェインも甲斐も反応が遅れて銃を向けるのが遅い。「―――クッ!」 それでも、サポートに入ろうとタイルを蹴って飛び出そうと、 パァン! 乾いた銃の音がした。次の瞬間、ホムンクルスがもんどりうって倒れた。ものの見事に後頭部から打ち抜かれて。「……なっ!?」「上だ!まだ来るぞ!!」「……ランス?」 上を振り仰ぐ。確かに、まだ数体が降りてこようとしている。「みんな、下がれ!!」 甲斐が、声を張り上げる。 次の行動は早かった。まるで予定していたかのように、ボルツは子供二人を抱えて噴水へと走り、私は腰を抜かしたヴィクトールを引きずり起こして噴水へと走った。 銃の炸裂音が響き、火薬の匂いが一気に広がる。 ボルツと入れ替わりにヴィクトールを噴水の影に放り出す。そして振り返ると、銃撃の音に剣戟の音が混じっていた。 甲斐とガウェインが迎撃し切れなかったホムンクルスと接近戦になっている。「クッ……!」 突き出される黒鍵。甲斐はそれを銃身と新たに抜いたナイフでいなし、後ろへ飛ぶ。それを追撃したホムンクルスは飛び込んだボルツの一撃を喰らい絶命する。だが、すぐ後からもう一体が飛び込んだ。「こっちだ、ボケ!」「クソッ、どうして!?」 ランスがヘンリーの首根っこを掴んで下がってくる。さすがに乱戦は回避したかったのか。そして、どうやらヘンリーの方は銃の調子がおかしいらしい。「セーフティは外したのに……!」「弾装填したのか、お前!」 そんな光景を横目に、私はガウェインの方へ走る。ボルツと甲斐の方は善戦している。 ガウェインは隠し持っていたトンファーを左手に、黒鍵を回避していた。接近戦の心得があるのか、トンファーの扱いに無駄が無い。 そしていなした直後の一瞬の隙を逃さず、トンファーを突きこむ。 ドンッ!! と、トンファーから尋常じゃない炸裂音がした。同時に、ホムンクルスの左わき腹が吹き飛んでいた。 グラリ、とホムンクルスがバランスを崩した。ソコを逃さず、突き上げるように2撃目。顎下から突き上げられたトンファーはいかなる魔術か、接触した部分から炸裂し、頭部を諸共吹き飛ばした。 その鮮やかな戦いぶりを見ていると、瞬間、首筋に寒いものを感じた。「ちっ!」 本能のまま前に飛ぶ。直後、今まで居た場所にザクッと黒鍵が突きたてられた。 振り向き、逆手に持っていた黒鍵を順手に持ち変える。 突き刺した剣を引き抜き、ホムンクルスは刺突の構えで飛び込んでくる。 やはり攻撃があまりに単調だ。左手の黒鍵で3本を押しのけそのまま懐へ入る。同時に腹に向かって左膝を突きこみ、たたらを踏んだところで肩口から斬り込む。 バキンと黒鍵が肋骨を切断できずに折れた。絶命したホムンクルスを蹴り飛ばし、こぼれた黒鍵を補充として拝借する。「嬢ちゃん!子供を連れて奥へ行け!!……面の扉だ!」 甲斐がボルツの支援をしながら怒鳴る。……面。正面?入ってきた扉の左側。 戦場から離脱し、噴水の前で待っている子供達の方へ。と、ヴィクトールが扉の方へ走り出した。「セイバー、援護する! おら、間違っても味方に当てんじゃねぇぞ!」「判ってるよ!!」 わめく子供達を抱えて、指示された扉へ走る。ヴィクトールが行き着いていた。「クソ、死ねよ、この!!」「無駄弾撃つな!!3点バースト付いてんだろそれ!」 頼もしい援護を背後に扉へ向かう。ヴィクトールが扉へと入り、「ヴィクトール、待ってください!!」 見た目に重い扉をヴィクトールは閉じようとしていた。「ヴィクトール!!」「なっ、オッサン……!」 走りこむ目の前で重い音を立て扉は閉じられ、直後閂が閉じられる音がした。