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No.11129の一覧
[0] 【チラ裏から移転】本屋の店員(現実→HxH)[ミケ](2010/04/10 20:39)
[1] 2話[ミケ](2009/08/19 19:53)
[2] 3話[ミケ](2009/08/20 20:19)
[3] 4話[ミケ](2009/08/21 12:40)
[4] 5話[ミケ](2009/08/21 12:37)
[5] 6話[ミケ](2009/08/21 19:42)
[6] 最終話[ミケ](2009/08/23 20:19)
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[11129] 【チラ裏から移転】本屋の店員(現実→HxH)
Name: ミケ◆8e2b4481 ID:c633422a 次を表示する
Date: 2010/04/10 20:39
 彼女は病に侵されていた。
 最後の瞬間、彼女には自らの終わりがわかった。

「ハンターハンター、最後まで読みたかったな…」

 最後に、ふとそう思った。
 そして彼女は気がつくと、虚無の海に漂っていた。
 何も聞こえず、何も見えない。体も、頭も満足に動かない。

(死ってこんなだったのか……)

 何もないこの場所で、永遠に彷徨うのだろうかと、彼女は恐れた。
 暴れようにも体に力が入らない。
 彼女に出切る事は、ひたすら楽しかった事を思い出すだけだった。
 それもしばらくしたら尽きて、今度は何も考えないようにする。
 瞑想を続けるうち、彼女は彼女なりの悟りを開いていた。
 それからどれくらい立っただろう。彼女に、微弱な音が聞こえるようになっていた。
 彼女はそれに耳をすませた。
 よくわからない言語。これは神の国の言葉だろうか?
 その音を子守唄としながら、彼女は眠り、あるいは瞑想をした。
 そして、その日が訪れた。
 いきなり明るい場所に放り出され、パーンとお尻をはたかれる。
 彼女は激しく泣き叫んだ。そのショックで息をしだす。
 彼女は、転生をしていた。



(退屈だなぁ……)

 やはり彼女には、瞑想する以外に退屈しのぎの方法はない。
 赤ちゃんの内は、動けるはずもなく、言葉もわからなかった。
 母親も自分の事を放置気味である。
 泣けば相手をしてくれるのだが、必要のない時に泣くのは面倒くさかった。
彼女が知っている事は、自分の名前がニーナだという事くらいだった。
 そうして瞑想を続けるうちに、ある日ふと、うっすらとした蒸気のようなものが自らと母の周囲に見えた。
 力がどんどん抜けてゆく。

(これって、オーラが見える体質になったのかな。でも何で力が抜けるんだろ。もしかして…念!?まさかね)

それでもニーナは、ハンターハンターのファンだった事もあり、一応念を操る術の一つである纏を試してみる。

(蒸気が体の回りを巡るように……)

一時間ほどそうしていると、果たして、蒸気は彼女の思うとおりに周囲に留まった。

(やった…でも疲れた…眠い……)

ニーナは、深い眠りに落ちていった。
  


 ニーナが起きた時、母も父も泣いていた。
 どうやら心配させてしまったらしい。その日以来、母が常についているようになった。
 ニーナも親を心配させた事を反省し、積極的に笑いかけたりして、親を喜ばせようとする。
 一才になり、絵本を読んでもらえるようになってから、俄然ニーナは勉強意欲を覚えた。
 本が読みたい。ニーナは必死に言葉を勉強する。
 本を取りに行く為に体を積極的に動かし、はいはいや立つことも覚えた。
遅れていると心配していた両親は、とても喜んでくれた。

「絵本だけじゃつまらない……」

 ニーナの次のターゲットはパソコンだった。
 既に単語は理解できるようになっている。
 パソコンで調べて、ザパン市やヨークシンシティを見つける。

「ここって本当にハンター世界なんだ。体、鍛えなきゃいけないのかな…。嫌だなぁ…キメラアントさえどうにかなれば普通の生活が出来るかな」

その過程で日本語を見つけ、日本語の世界共通語講座で勉強する。
 ニーナはハンター語をようやく読めるようになった。

「もう、ニーナったら!お外で遊びましょう?」

 母に言われ、ニーナはいやいやと外出した。
 仕方が無いので、黙々と石割で遊ぶ。

「もう、ニーナって本当に変わった子ね。なんだか気味が悪いわ」

「ごめんなさい、お母さん。せめて勉強は頑張るから捨てないで」

「捨てるわけないじゃないの、可愛いニーナ」

 母に抱き上げてもらい、ニーナは母に縋りついた。
 ニーナは自分の奇妙さを重々承知していた。それでも漫画や小説を捨てる事は出来なかった。
 それどころか、ニーナは枕元に本を置いて寝るのが常だった。
 そんなある日、それは起きた。

「ラッキー!凄い夢!」

 二次元の漫画の中に入った夢を見たのだ。
 目の前で幽遊白書の幽助が、乗用車の上から自分の死体を眺めて考え込んでいる。
 幽助の考えている事が、聞こえてくる。
 どうやら、自分の姿は周囲には見えないらしい。
 ぼたんが幽助になにやら説明をしている。
 二次元の中では距離感が取りにくいという欠点はあったが、十分にニーナはそれを堪能した。
 同じ事が何度も続き、ニーナは考えた。
 これは念能力かもしれない。
 試しに、制約を心に誓ってみる。
 一つ、ブックバンドを使って夢を見たい本を枕の下に入れて眠る事。
 一つ、同じブックバンドも本も1回しか使えない。
 一つ、使う人と私の両方が読んだ本しか使えない。
 一つ、そのブックバンドは一度に三つまでしか作れない。
 一つ、ブックバンドは一ヶ月で効力を失う。
 一つ、おはようと呼びかけられると起きねばならない。
 一つ、夢の中で傷を負うとその傷に応じた期間に絶状態になる。死ねば一年絶になる。
 一つ、ブックバンドはその時指定した本の夢しか見せられない。
 さすがに趣味に命は掛けられないから、量で勝負だ。制約をつけて、ブックバンドに念を込める。
 ニーナはそれに、ドリームブックバンドと名づけた。
 母には朝、必ずおはようと言ってもらうことを頼み、ニーナは毎日夢の世界を堪能した。
 …ニーナが大人になった時、古書店の店員になるのは当然の成り行きだった。
 ニーナは、もう一つ念能力を手に入れていた。
 それは、今いる町に念能力者がいたら感知する能力だ。
 これは地図とダウジングで比較的容易にイメージが出来た。
 これも制約をつける。
 一つ、纏か錬、発をしている能力者しか感知できない。
 一つ、今いる町でしか感知できない。
 一つ、位置は感知できない。
 一つ、人数は感知できない。
 一つ、自分より弱いものは感知できない。
 一つ、このペンダントでしか出来ない。
 一つ、一日に一度しか出来ない。
 一つ、使用後一時間は絶状態になる。
 ニーナは他の念能力者を知らない為、実際に試す事は出来なかったが、制約を決めただけでも満足した。
 こうして、ニーナの本屋としての生活は始まった。


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