地上本部 転送ポート
結局、抵抗らしい抵抗もできぬままいつの間にか用意されていた荷物ともどもここまで連れてこられた横島君。もっとも、彼に抵抗する暇などなかったが
「お待ちしていました。転送の準備は整っています」
「あ、クロサキさん。お久しぶりです」
「お久しぶりです。紅井、いえ、横島准将より伝えられていましたので。転送場所は、94管理外世界の地球の日本にある『六道女学院』の高等部校庭になります」
「はぁ?」
クロサキの言葉にぽかんとする面々。その頭の中では・・・
(そんなことしていいのだろうか?)
と考えていた。もっとも『あの』百合子の副官であるクロサキの言うことなのだから問題はないのだろうが、横島君は自分の母親の根回しのよさにGMの恐ろしさを久々に思い出していた。
なお、このクロサキは10年以上前、百合子が関わったとある管理世界で起きた紛争を解決した際に、現地の交渉役として百合子と(色々な意味で)ハイレベルな交渉を繰り広げその腕前に惚れ込んだ百合子が自身の副官として引き抜いたのである。ただ、現地政府からすれば『気付いたら』もう百合子の副官だったのだが。
「・・・・まあいいや。それじゃあ転送よろしくお願いします」
「わかりました。あ、ところで忠夫君」
「はい?」
自分を『横島一尉』ではなく『忠夫君』と呼んだのだから私的なことだろうと振り返る。そして次の一言で横島君と女性陣(-ヴィヴィオ)の顔色が変わる。
「帰ってきたらすぐ式になるだろうから、あまりガンバリ過ぎないようにと准将が言っていたよ。式場などの手配は任せておいてくれ」
その一言に固まる横島君と顔を赤らめながらもうれしそうにする女性陣。ウーノやドゥーエ、トーレそしてアインといった普段あまり感情を顔に表さない面々も顔を赤らめうつむいている。それ以外もモジモジとしたりくねくねとしている。
「ね~パパ~。なのはママたちお顔赤いよ?」
「・・・・ヴィヴィオ、家族が増えそうだぞ?」
「ふぇ?」
ヴィヴィオの質問にまったく関係ない答えを返す横島君。どうやらへんな復活の仕方をしたようだ。ヴィヴィオは首をかしげながらも横島君の肩に乗りご機嫌そうだ。
「それではそろそろ転送します」
「あ、はい」
転送ポートが起動し転送される面々。作業が終わったクロサキは
「さて・・・・早速式場などを選ばねば」
いそいそと式の準備のために動き出した。
六道女学院 理事長室
「それで~令子ちゃんに~来てもらったのよ~」
六道女学院の理事長である六道冥奈がのほほんとした声で眼前に座る美神令子に話しかける。
「あの・・・おばさま?ついに頭がどうにかなってしまったんですか?」
「あら~、令子ちゃんたらひどいわ~。おばさんは~おばかさんにはなってませんよ~。今言ったのは~本当のことなんだから~」
今冥奈が令子に語ったことは、数日前に届いた一通の手紙が原因だった。
「そういいますけどね・・・・なんですかこの『時空管理局』って?それに管理外世界とか訳わからないんですけど?」
その手紙には、『94管理外世界調査のため部隊を派遣します。彼らに協力してください。時空管理局・地上本部』と書かれていた。これだけを見ればいたずらとしか思えないのだが・・・
「でも~こんな物も~同封されていたのよ~」
そういうと銃弾のようなものを渡される。
「銃弾・・・にしては弾頭がついてない?」
二人で首をひねっていると校庭の方からとてつもない魔力を感じた。
「なに!?」
「あら~?何が起きてるのかしら~?」
急いで校庭に行くと、校庭の地面に大きな魔法陣が出現していた。
魔法陣が、一際強く光るとそこに20名ほどの男女が現れた。
令子は神通棍を構えいつでも動けるように準備する。しかし、事態は彼女の斜め上をバレルロールしながら音速で飛び去っていった。
「あ~・・・・誰かー責任者の方いませんか~!!こちらは時空管理局管理外世界調査隊で~す!!」
魔方陣から現れたメンバーのうち唯一の男(横島君)が声を上げている。え?ザフィーラも男?・・・あんなのは『わんわん』で十分です!
「えっと~私がこの学院の理事長の~六道冥奈です~。あなたはどなたかしら~?」
「あ、失礼しました。自分は時空管理局・地上本部陸士部隊所属の横島忠夫一等陸尉です。彼女たちは自分の友人で同僚です」
友人という発言にピクリと反応しわずかに不機嫌になる女性陣。ザフィーラはわれ関せずという態度をとり、ヴィータはため息をつきながら横島君に哀れみの視線を送る。
「それで~調査というのは~どういうことなんでしょうか~?」
「あ~・・・そのことなんですが・・・・」
しばらく考えた後、時空管理局のことなどをある程度説明する。そうでもしなければおそらくどうしようもないゆえに。
「つまり~時空管理局というのは~警察と~軍隊と~裁判所とが~一緒になっている組織って事でいいのかしら~?」
「まあ大体そんな感じと思ってもらえれば・・・あとは行政みたいなこともしてますが。で、調査に来たという話ですが・・・単にこの世界がどんな世界かをしばらく見るために滞在しようと思います」
「う~ん・・・・それなら~私が色々~お世話してあげるわ~」
一瞬のうちに損益を考えた冥奈はそう提案する。横島君はそれを理解しつつも断りようがないため頷く。
「それじゃあ、お願いします。えっとみんなは・・・」
「パパと一緒がいい~」
「うんうん」(横島ハーレムの皆さん)
「・・・まかせる」(ヴィータ)
ザフィーラはもはや知ったことかという態度。
「ねえ」
そんな中、今まで黙っていた令子が口を開く
「はい?えっと・・・美神さん・・・なにか?」
「あんたってさぁ、そんなに強いわけ?霊力のかけらも感じられないんだけど?」
「いや、そりゃあ霊力使いませんし・・・・なんなら一戦してみます?」
戸惑いながらもそう提案する横島君。するとニヤリと笑う令子
「へぇ~?私とやろうっての?いいわ、やってあげしょう?どうで勝つのは私だけどね。おばさま?」
「そうね~。どれくらいの力かは知っておきたいし~・・・校庭でいいかしら~」
シグナムやフェイトが戦いたそうにしているが横島君が視線でそれを抑える。
「それじゃ、決まりね」
校庭
「・・・・なんでこんなにギャラリーが・・・・」
(美神おね~さま!!)
(そんなさえない男なんか瞬殺してください~!!)
「ひどっ!?」
いつもは黄色い声援をうざったそうにしている令子も今日ばかりは上機嫌だ。それにたいして横島君のほうはというと・・・
「忠夫君~!全力全開だよ~!!」
「タダオー!いつもどおりなら大丈夫だよー!!」
「忠夫君~!負けたら承知せぇへんで~!!」
という具合に応援(?)していた。しかし、横島君にとって一番の声援は・・・
「ただおパパ~!!がんばって~!!ふれ~!ふれ~!パ~パ!!」
というヴィヴィオの声援だったりする。
「うっし!気合も入った!グローリー!セットアップ!!」
『standby ready,set up!!』
首から提げていた剣の形をしていたデバイスが起動し、バリアジャケットを展開。横島君のバリアジャケットは、白い長ズボンに緑色のインナーに青いラインがワンポイントで入っているジャケット。というどう見ても私服にしか見えないシンプルなもの。彼の右手には相棒たるデバイス『グローリー』が握られていた。グローリーの形はシグナムの愛剣『レヴァンティン』に酷似していた。違う点といえば刀身が幾らか厚くなっていることと色が違うくらいである。
その姿に一瞬あっけにとられる令子だが、すぐに動き出す。
「先手必勝ってね!」
鋭く踏み込み神通棍を振りぬく。六道女学院の生徒たちは『勝った』と思った。
しかし、横島君はわずかに下がることでそれをかわすと合わせるかのようにグローリーを振るった。それを令子は神通棍を振りぬいた勢いを生かし回避する。
「へぇ~?やるじゃない」
感心したかのように言う令子。それに対し横島君の答えは令子を一瞬で怒らせるものだった。
「いや、だって遅いですもん。避けられますって」
ピクッ
「なんですって・・・?」
「いや、ですから遅いんですって。シグナムやフェイトの攻撃に比べたら・・・」
そういいながら構えなおす横島君。そういわれた令子は・・・キレた。
「ふん!!」
先ほどの攻撃より明らかに早く重い攻撃を放つ令子。横島君はそれすらもなんでもないかのように回避し合わせるかのようにグローリーを振るう。
それをしばらく繰り返すと令子の攻撃がわずかに大降りとなった。
「グローリー!!カートリッジロード!!」
その命令と同時に三発のカートリッジがロードされる。その魔力はグローリーに淡い緑色の光をまとわせる。
「切り裂け!!風牙一閃!!」
-風牙一閃ー 横島君がシグナムの紫電一閃を基にして編み出した魔法である。それまでは、誘導弾で削り身体強化で振るったグローリーで叩き斬るしかなかった横島君の必殺技とも言える攻撃。刀身に纏わせた魔力を振りぬくことで撃ちだし、暴風とも言うべき魔力を叩き込むのである。
それに気付き回避しようとする令子。しかし、大振りになった攻撃をかわされたため体勢が崩れていて回避が間に合わない。その瞬間、風牙一閃をもろに受け吹き飛ぶ令子。校庭を沈黙が支配する。
起き上がろうとする令子だが、きれいに決まった風牙一閃により体に力が入らない。
「そこまで~。勝者、横島忠夫~」
校庭をどよめきが走る。六女の生徒たちからすれば自分たちが尊敬する美神おねーさまが、どこの馬の骨とも知れない男に負けたのだ。彼女たちからすれば信じられないことであった。
「あ~・・・大丈夫ですか?かなり綺麗に決まったみたいですけど」
「くっ・・・あんた何したの?急に力があふれてたみたいだけど?」
何とか上半身を起こしながらたずねる令子。それに対し横島君はあっさりと答えた
「カートリッジっていうなんつーか・・・・ブースターってかんじかな?溜め込んでた魔力を開放して上乗せするってところですかね?それで力を底上げして攻撃した・・・とまあ、簡単に言うとそういうことです」
「そう」
二人が会話をしている中、冥奈はというと・・・
(なんとかして~あの子達を~こっちに引き込みたいわね~。う~ん)
陰謀をたくらんでいた。
こうして、横島君たちのGS世界初日は過ぎていくのであった。
あとがき
とりあえず文才のなさを何とかせねば・・・orz
とりあえずGS初日を書きました。
横島君のバリアジャケットは、GSでの横島君の定番スタイルであるGパン、Gジャンを白くしただけで腕や襟に青いラインを入れたといった感じでしょうか。すみません、表現力が乏しくて・・・・うぅ。
次は冥子ちゃんとのマンション共同除霊の予定です。
それでは、また次回。