それは、冥子の除霊を手伝って数日後のことだった。
六女 理事長室
「この間は~この子のせいでごめんなさいね~」
「お母様~おこっちゃいやなの~」
そんなぼややんとした親子を「なんだかな~」と見る横島君。
「それで~そのお詫びも兼ねて~温泉旅行なんてのを~用意してみました~」
「・・・まだ除霊一回手伝っただけですよ?」
「その一回目の成功記念も~兼ねてるのよ~。どうかしら~?」
横島君が理事長の顔から事情を読みとろうとするが、そのニコニコとした表情からは精々「断っても断らなくてもろくなことがなさそう」としかわからなかった。
もっとも、横島君は母親であるGMの交渉術や話術をある程度叩き込まれていたために理事長の「読ませない」笑顔からですら読むことができていたのだが・・・
ついでにいうと、自分の周囲にいる面々のなかのヴェロッサ、スカリエッティなどの日常会話すら口先三寸丸めこみ合戦になるメンツと付き合っているからというしょーもない原因もあるのだが・・・。
「・・・まあ、いいか。わかりました。それで行先は?」
「えっと~人骨温泉っていうところよ~」
こうして人骨温泉への旅行が決まったのだ。
人骨温泉へ向け移動するバスの中
「タダオ~、温泉ってどんなとこなの?」
「あれ?セインたちは行ったことないっけ?」
「ないッスよ~。だからも~楽しみで楽しみで・・・」
「あ、あたしは別に・・・・」
「ノーヴェ・・・・あなたはやはりツンデレなのですね」
「姉さん・・・それは禁句だと・・・」
横島君の周りで楽しげにおしゃべりするナンバーズ。セインとウェンディが両側から抱きついている。ウーノ、ドゥーエ、ノーヴェはそのすぐ隣の席にいる。
さらに、右肩にリイン、左肩にアギト、頭の上にはフリードがそれぞれ陣取っている。フリードは気持ちよさそうに寝息を立てている。
「まあ、簡単にいえばおっきなお風呂って解釈でいいと思うぞ」
「ふ~ん」
そんな会話をしつつ前のほうを見るとなのはたちはヴィヴィオやエリオ、キャロの世話をしており、シグナムは時代劇小説を読みふけりシャマルはその横で料理雑誌を読み料理の勉強中。スバル、ギンガ、ティアナ、ヴィータはトランプでワイワイ騒いでいる。その隣ではオーリスがノートパソコンとにらめっこ。アルフはフェイトのそばでビーフジャーキーをアリシアと一緒に食べ、アリサとすずかは何やら内緒話の真っ最中。アインは座席でぐっすり眠っている。
「・・・なんか後ろから見覚えのあるコブラが・・・・」
「あれ、美神だろ。・・・・ってことはその後ろ走ってる男はバイト君か」
隣をものすごい速度で走り抜けていくコブラとそれを追うバイト君
しかし、車に勝てるはずもなく横島君たちを乗せたバスにも置いていかれていた。
それからしばらくして
「へぇ~ここが人骨温泉かぁ」
「結構いいとこやね」
「ティア~、楽しみだね~」
「ちょっ!スバルどこ触って・・・あん!」
「フリードおいで~」
「クキュ~」
横島君やザフィーラが荷物を運びこみなのはが手続きをしている間、自由気ままに過ごす面々。
「あ、あんたたち!?なんでここにいるの!?」
横島君たちを見て驚く令子。それに応対するはやて
「どうも~。美神さんも来てはったんですね~。わたしたちは六道理事長に温泉旅行プレゼントされたんです」
「おばさまが?」
「ええ、この間忠夫君が六道さんのお仕事手伝ってそのお礼らしいです」
「そう・・・」
なにか考え込む令子。そこでふと何か思い出し顔を上げる。
「そういえばあんたたちの魔法って霊に効果あるの?」
「ええ。忠夫君が言うには威力の弱い魔力弾でほとんど片付くそうです」
それを聞くと令子の眉がピクリと動く。頭の中ではすでにどうやって横島君たちを引き抜くか算段を始めていた。もっとも、すぐに『あの』理事長のところから引き抜くのは無理だと気付きどうやって借りるかと思考が切り替わっていった。
「み、み、み、美神さ~ん!!」
「あら、佐藤君。早かったじゃない」
「お、お、お、お、女の子の幽霊に殺されそうになりました!!」
佐藤君に発言に首をかしげる面々。その心の中は・・・
(幽霊の女の子って右手に掴んでるその子のこと?)
佐藤君、あまりにも動転したため幽霊の少女をつかみ一緒に来ていたのだ。
「・・・・彼、霊能力者の素質あり?」
「ふぇ~ん!!はなしてください~」
巫女服を着た少女の幽霊がジタバタと暴れているがみんなの関心は佐藤君に集中しているため気付いてもらうにはもう少しかかりそうだ。
数分後
「で、出るっていう幽霊はこの子?」
「うんにゃ、うちに出るのはもっとむさくるしい男の幽霊だ。こんなめんこい子なら客寄せになるだ」
ヴィヴィオやエリオたちと遊んでいる幽霊少女を見ながら話す令子と支配人。
「あ~と・・・・君の名前は」
「はぇ?あ、申し遅れました。私キヌっていいます。300年前火山の噴火を鎮めるために人柱になったんですけど、山の神様にもなれず300年間ずっとこうして幽霊をしてたんです。才能ないんでしょうか?」
「才能・・・・って関係あるのか?それって」
横島君の問いに首をかしげる面々。
「ただおパパ~、温泉行こう~」
「ん?そうだな、行こうか」
ちびっこズを連れていく横島君。なお、部屋を出る際ウェンディが「お風呂プレイなんてどうッスか?」と発言したが直後に他のナンバーズに拉致されていった。
それを見送った後、今夜の横島君の相手をだれがするのかの確認などを行うなのはたちと除霊対象の幽霊が出て車でどうするか考える令子。
しかし、5分もしないうちに温泉のほうから戻ってきた横島君の発言により事態は動く。
「温泉にむさい男の幽霊がいたんですけど・・・」
「それが除霊対象よ!」
「自分はワンダーフォーゲル部ッス!山に登っている最中に遭難してしんでしまったッス!非常に寒いっす!」
「ワンダーフォーゲル、あんた山の神になんなさい!」
その令子の発言にキョトンとする周囲。
「・・・・なんか、あんまりにも急に話が・・・」
「気にしちゃいけないんだろうけど・・・う~ん」
「あたしゃしらね」
アリサとすずかはあまりにも急に話が進んだためため息をつきながら令子を見る。ヴィータはそれを見ながらお菓子をバクつく。
「ティア~、一緒にお風呂いこ~」
「馬鹿スバル、あんたは少しは状況を・・・って、またどこを触って・・・コラ~!!やめなさいって・・・・ちょ!そこだめ!」
「もう・・・スバルったら」
「お茶をどうぞ」
「あ、オーリスさん。ありがとうございます」
周囲が好き勝手にやっている中事態は進み・・・
「雪崩の音が聞こえるっすよ~」
ルンルン状態のワンダーフォーゲルが山に向かっていった。
「美神さんありがとうございます。これで成仏できます。横島さんも・・・」
「ああ、またいつかな・・・・ん?それもなんか変な話か」
天に上っていくおキヌちゃんを見送る。空に消えていくおキヌちゃん
「あの~・・・成仏ってどうするんでしょうか?」
そう言いながら戻ってきたおキヌちゃん。横島君と令子はその場で派手にずっこける。よく見ると周囲の面々も脱力していた。
「しょうがないわね~。おキヌちゃん、うちの事務所で働かない?奮発して日給30円で雇ってあげるわ」
「いっしょーけんめーがんばります!」
横島君はそれを聞きながら
(絶対だまされてるよ・・・おキヌちゃん)
と心の中でつぶやいた。
こうして、ボケボケな幽霊少女が美神除霊事務所に加わった。
「よろしくお願いしますね。みなさん」
そういいながら頭を下げるおキヌちゃん。なのはたちも歓迎しているようだ。
同時に令子に対する横島君たちの評価はかなり下方修正された。
その夜、ウェンディとノーヴェの鳴き声が横島君が泊っている部屋から漏れていたのは別のお話。
あとがき
短いうえになんか変な文章になっている・・・・orz。
どうも、バイトや墓参りなどで更新が遅れて申し訳ありません。
おキヌちゃん登場のお話です。原作でも印象は強いお話なんですが、りりかる横島君だとちっとばかし絡ませにくいと書いてて気づきました。まあ、できるだけがんばってみますが・・・・。
次は・・・・どの話書こうかな。横島君の六女講師就任の話かな。
それでは次もがんばります。