昨夜の自分の行動が未だに信じられない。
自分は昨日まで、誰に恥じることない教師生活を送ってきていたはずだ。無遅刻無欠勤、どの生徒に対しても毅然としてあたり、ある程度畏怖されつつ頼られてもいたはず。部活動顧問としても熱心に指導し、その結果弓道部が出した結果に幾ばくか貢献していた自負がある。
そう、自分は立派な、とは自称できないが、真面目な教師だったはずなのだ。
だった、というのは…今、目の前にいる一人の生徒、直江大和と自分の間に結ばれた関係が教師と生徒の模範的な、常識的なものの範疇から大きく外れてしまっているからである。
具体的に言うと、つまり…下世話な言い方をすれば肉体関係だ。
昨夜、気のない見合い話を持ってきた母に、話を無かった事にしていただくべく、架空の恋人をでっちあげてそれをダシに断ろうとしたのだが…
先に先方から断られてしまったことを母に告げられたのであった。
理由を尋ねると、「28歳?ありえねー」と先方がのたまったとのこと。
親戚の世話好き婆さんが先方に見せようとした写真を開くまでもなくそう言ったそうである。あれか。28歳というのは既に女性ですらないということか。容姿や経歴をみる必要もなく年齢で拒否される、という、その域に達しているというのか。
私はあまり自分の容姿に頓着している性質ではない。華美な服装は好まないし、装飾品も身に着けない。だが、そんな私でも、「そんなに、捨てたものではない容色をしているのではないだろうか?」といううぬぼれが無くはなかったのだ。
それが、他のなにも省みられることなく、「28」という数字のみの元に斬って捨てられたのである。
私とて女である。その女としての自信を喪失しかねない事態に遭って、平静を保つため多少のアルコールの力を必要としてもしょうがないと言えよう。
そして程よく酩酊したところに、役目を果たす必要もなくなったくだんの恋人役こと直江大和が自分のことを「美しい」「女性としてこれからである」と褒めちぎってくれたとしたら、その言葉にすがりつきたくなったとしても責められないはずである。
そして酔いの力とその場の勢いを借りてラブホテルの一室へと二人で入っていったとしても…
良くはない。決して良くはない。聖職者の端くれとして許されることではない。
しかし、この上なく甘美な体験だったことは決して否定できない。あれはとても素晴らしかった。「女にされる」ことがこんなにも愉悦を伴うことだとは知らなかったのだ。何度も何度も若い情熱を叩きつけられ、注がれ、染め上げられてしまった。
百聞は一見に如かず。教職について以降、異性関係で問題を起こした生徒を何人も見てきた。そういった彼女や彼らの若すぎた故の過ちを自分は諌めてきたが、今なら分かる気がする。こんな素敵なことを我慢しろというのは拷問なのだ。
だが、それゆえにその行為に溺れることがあってはならない。それはあくまで生殖行為であり、社会的な立場と経済基盤がしっかりとしてから行うべきことなのだ。そのことをまず誰よりも聖職者たる自分が声高に訴えねばならない。
「分かってくれるか?直江。」
「うん。ご高説もっとも。ラブホテルまでホイホイついてきてから言ったんじゃなければ説得力あったけど。」
(はっ!?なんということだ!)
気付けば既にここは敵陣深く。己が力を発揮できる地形ではない。見事に誘い込まれてしまった。これが噂に聞く孔明の罠―――
「わけわからないこと言っていないで、こっちに戻ってきてよ、梅子。
今朝言ったでしょ?後でちゃあんと躾けてあげるからって。」
「あっ…」
いきなり直江の顔が眼前に迫っていた。腰の後ろに手を回すように抱かれ、片手は自分の多少大きさと張りに自信のある胸に添えられている。
「直江。だ、駄目だ。やはりこういうことは。あっ!」
胸を揉み上げられ、服の上からピンポイントで乳首の位置を探り当てられる。
「大和、って呼ぶように昨日言ったよね?」
「そ、そんなのは駄目だ直江。私は教師で、」
「大和。」
そう呼ぶように耳元で囁いて要求しつつ、耳たぶに唇を這わせた。
「あ…」
おかしい。自分はなぜ抵抗出来ないのだろう。いつの間にベッドの上に身体を横たえていたのだろう。なぜ直江が服を脱がすのになすがままになっているのだろう。
「全部脱がすよ、梅子。」「ん…」
そう言われて、普通に腰を浮かせて大和がパンティを抜き取るのに協力していた。
大和の手が露わにされた梅子の両の乳房を掴み、好き勝手に荒々しく揉む。まだ充分にこなれているとは言いがたい遅咲きの身体は遠慮のないその愛撫に少し痛みを感じていた。
しかし朝に「躾け」を施すと宣言されてから悶々と身体の奥に灯りっぱなしだったものと、教え子に自らの身体を蹂躙される背徳感が彼女の身体に痛みに倍する快楽をもたらしていた。
(!)
じわりと自分の中から染み出し、股間を濡らすものを感じる。
それを気取られないようにもじもじと内股を擦り合わせていたが、この悪魔のような少年には隠せなかったようだ。お見通しとばかりににやぁっと微笑みかけられる。
(こいつ、昨夜は自分も初めてだと言ってはいなかったか?なんで、こうもねちっこい。いや、これが普通なのか?)
余りにも経験値の低い彼女にはわからない。
まして目の前の少年の父親が、近隣の暴走族を束ねる女傑に一目ぼれし、陰謀を用いて無理矢理モノにして、完全調教して奴隷妻として現在も円満な家庭を維持しているようなとんでもない人間だなど、大和がそんな環境で育ち、その父親の血を色濃く受け継いでいるなどは知る由もなかった。
「あ、そ、そこは…あん…んふ、ふぅうん、」
17…もとい諸事情により18歳以上になったばかりの歳の少年のセックスなど、愛撫もそこそこにいきなり無理やり突っ込んでカウント3-2-1でフィニッシュが関の山だろう。などという青臭い通例は直江大和には当てはまらない。今も梅子の股に顔を突っ込み、蛞蝓のように舌を蠢かせ女の悦楽を引き出させ嬲っている。が、決して激しい動きは加えず、肉の真珠に触れようとはしない。
「昨日の今日だからね。舌先に膜の名残がぴろぴろと当たるよ、梅子。」
「あ、ああっ、ふ、あ…や、やまと…」
昨日まで男を知らなかった、一回り以上年上の女性から、あさましいおねだりの言葉を引き出したいのだ。
「お、お願い…もっと…」
その言葉を聞くと、大和は女の尻を抱え上げ、逆さまになった梅子の秘所に奥深くまで舌を捻じ込み、わざと大きく音を立てる。
「ひゃ、あ、ふぅ、あ、ああ、あはぁあああ!」
じゅる、ずち、しゅぶ、ずじゅるるる!
持ち上げられた両脚がふるふると震えながら虚空を掻く。両手が血の気が引き白くなるほどベッドのシーツを固く握り締める。
「は、はふ、んぅううう、はああああ、あぁあああああん!」
身体は全身すでに淫汗まみれになり、両脚を爪先まで真っ直ぐにピンと張り詰めさせたかと思うと、最後に一際大きい声を上げて梅子は絶頂に達した。
「ふふ。もうイッちゃったね。可愛いよ。先生。」
カーっと梅子の顔が紅くなる。自分を恥らわせるためにわざわざ先生という呼称を使うとは、この少年はどこまでイヤらしいのか。
「じゃあ、梅子。そろそろ、俺も我慢ができないんだ。」
「ま、待て…その、そのままでは、駄目だ。ひ、避妊をきちんと…」
「うん、わかった。避妊をきちんとすれば、していいんだね。」
言うが早いか、するっとコンドームを着けてしまう。梅子が息を整える暇もない。
「はあ、はあ、あっ、待って、や、やっぱり駄目…ふああああっ!」
昨夜、未開の地だったそこに強引に押し入り、その形を教え込んだモノが再び入ってきた。その雄の存在感が蹂躙する生殖器官を通じ雌の本能に大人しく従えと強制する。
が、すぐさま自分のオンナを貪りはじめるだろうと思われた大和は、自分の中を満たしたままじっと動こうとしない。
わかっている。そこまで言わせたいのだ。
「や、大和…動いてくれ。」
というと大和は胸に手を伸ばし、乳首を抓んで刺激を与えてくる。そして腰を微動だにさせようとしない。
「腰を…動かしてくれ。」
そう言ったら、腰を横に振ってきた。左右の肉襞に刺激を与えてくるが、焦らされている梅子の求める激しい快楽をもたらしてはくれない。半端な快感はさらなる渇望を生み出すばかりである。
「お、お願いだ!わ、私の…思い切り、突いてくれ!犯して!」
直接的な単語を引き出すことは叶わなかったが、それで満足したか、あるいは大和のほうこそもうたまらなくなったか、激しい掘削運動を開始した。
ぐっしゅ、ずっちゅ、ずっちゅ、じゅぷ…
はぁはぁという苦しげな甘い息遣いといやらしい水音が部屋を満たす。
「ああん、も、もっと、もっとだぁ!大和、大和…私のそこ、もっと突いてぇ、思い切り抉ってぇ!」
両脚で大和の腰を抱え込み、引き寄せる。
「あぁん!い、いい!気持ちいいの!はぁ、大和、やまとぉ!」
「ああ、梅子。俺も、俺も…最高だよ、梅子の中。」
梅子は、極薄のスキン越しに大和の分身がさらに充実度を増していくのをしっかりと感じていた。昨夜何度も同じ経過を自分の中で経験し、もうその一連の流れで自分の快感が高められていくスイッチが出来てしまっていると気付く。
「はぁ、はぁ、はぁ、んぅ、あああ、」
(嗚呼…もう、自分はこれ無しで生きていけない身体にされてしまったのかも…)
「ああ、もう、俺もいきそうだよ。」
「は、う、ああ、い、いいぞ、いつでも、あ、私、私ももう、あ、あああ、ああああああああ!」
どく!どく、とくん…とゴムの向こう側で大和のペニスが必死に精を放っているのがわかる。それを感じながら梅子もイッた。
「あ、ああ、んあああ…」
自分の胸の上に倒れこんでくる大和を抱きしめながら、梅子はたしかに充足感を感じていたが、物足りなさも感じていた。
(やはり、コンドームを着けていたからか…次は、直に大和そのものを感じたい…そして昨日のように中を精液で一杯に満たされたい…)
「はっ、私は何を!」
「どうしたの?梅子。」
「い、いや、なんでもない。疲れたろう、少し休め。その後でまた…って違う!」
梅子の内心の葛藤が手に取るように分かる大和は、ニヤニヤとそれを眺めていた。
結局その日、その後もさんざん大和に抱かれたあとで梅子はまた説得を再開したが、大和にとっては5回戦開始前の小休止としてのピロートークでしかなかった。
その晩。小島梅子は頭を抱えていた。
「だ、駄目だ駄目だ…このままでははまってしまう。生徒たちを導き育てていかねばならない私が…よりによって生徒相手に…
でも、本当に素敵だった…」
またうっとりとしつつ「ほうっ…」と桃色吐息をついてしまう梅子だった。その頃…
「あー、下北沢君?うんうん、下北沢くんの言ったとおりだったよ。教師って、タガが外れるとすごいんだな。
あ、下北沢君直伝テクニック、マジやばかったよ。うん、本当役に立った。感謝してるよ。
…うっわ、マジで!?そんなのが…ごめん、ちょっとメモメモ…へー、あー…あ、ごめんそれもっと詳しく!」
大和は順調に鬼畜な友人の手ほどきでエロ魔神としてのレベルを上げつつあった。
その二日後。
「だからさ~、やっぱ肌の露出面積は劣るとはいえ、ラインがくっきり出るレオタードのほうがエロいと思うんだよ。あ、レオパードとレオタードって似てね?豹柄とかのレオタードいいかも。」
「いや、やっぱりこれからの季節柄水着における生肌の破壊力は侮れないものがあるだろ。」
「ふん。しかしお前たちは肝心なことを忘れている。それは所詮それらが3次元にすぎんということ。2次元謹製の未来・異世界ステキ素材による衣装こそがパーフェクツであることは当然の摂理。これ以外の結論は許すことはできない。」
相も変わらず岳人、ヨンパチ、スグルの三人はリビドーの主張を熱く語っている。
「まーたキモいトークしてる。猿は猿山で群れて欲しいんですけどー。」
「うるせースイーツ。よーし、この!この!…どうだ、俺の頭の中じゃもうお前は調教済みお漏らし奴隷だぜ?」
そして千歌がそこに冷たい視線を向け、ヨンパチが空しいにも程がある復讐をするところまでいつも通りの日常風景が繰り広げられている。
「ふっ…何を着ているかなど瑣末な問題だろう。重要なのは中身が幼女であることに決まっているだろうが。」
梅子は廊下まで聞こえてくるその会話を聞きながらこめかみをひくつかせていた。
(全く…その情熱の1割でも己を高める方向へ生かすことが出来ないのか。何故かS組の井上まで参加しているようだな。)
「お前たち!いつまでくだらない話をしている!ホームルームを始めるぞ。」
「うおっと、退散、退散。」
「それでは井上ちゃん、早くクラスに戻ってくださいなのです。」
「イエスマム!井上準、また明日を生きる力を貴女から貰い、只今帰らせていただきます!」
「さっさと行け!」ピシィ!
「あ痛!すんません!」
梅子は教壇の位置まで移動すると、鞭をこんどは床で鳴らす。
「お前たちはそういうくだらないことを話し合うより先に、進路について互いに相談しろ!なんだこの進路希望の内容は!女体カメラマンだ、私の夫だ、などと!島津、福本、…直江!お前たちは後で希望調査票を再度出すように!」
「ほぇ?他二人はわかるけど、なんで大和まで?」
「ワン子、それは決まってる。大和が進路希望先を私のヒモと書いたから。いやん。」
京がうっとりと目を閉じて両頬を手で挟む。
その京のとろけた表情が一瞬鋭くなる。
(!!これは、嫉妬の視線!しかも大和を狙うもの!永年この視線を使い続けた私にはわかる!誰、誰が私に嫉妬したの?)
京は直ちに己の潜在的宿敵をサーチする。
「それはないだろう、京。しかし、気になるな?大和、一体何と書いたのだ?」
が、クリスが振った大和に関する話題にすぐさま気を取られる。
「ヒヨコの雌雄判別をする仕事。」
「何だそれは!真面目に書け!」
無論、大和がこんなふざけたことを書くのは、あとで指導にかこつけて梅子との時間を作るための布石である。
(大和のやることはときに理解不能。
でもそんなところも素敵♪)
結局大和ならばなんでもいい京だった。
キーンコーンカーンコーン
放課後になり、生徒達はみな部活に帰宅にと思い思いの場所へ散って行く。
金曜なので大和たちメンバーはいつもの通り廃ビルへ。
「ねー。そういえばクリは進路どうするの?」
「私は、大学まで卒業後、軍に入ろうと思っている。マルさんとともに父上の補佐だな。」
「へぇー。あ、じゃあ、あたしと近いのかな?あたしもお姉様の補佐に付きたいし。お姉様のお役に立つの!」
そう言うワン子の後ろから百代が抱きしめてくる。
「んー、ワン子はかわいいなあ。ハグする。ワン子分を吸収させろー。」
そのまま全身を撫で回し、かいぐりかいぐりしてくんかくんかされる。
「あははー。」
「ついでにまゆっち分も摂取しちゃうぞー。ハグハグー。」
「あああ大変です松風!私スナック感覚で襲われてます!」
「落ち着くんだまゆっちー。すぐにメインターゲットに矛先が向くさ。貝のごとく嵐の過ぎ去るのを待つんだー。」
だが百代はメインターゲットこと大和にロックオンすると、はっと何事かに気付きそのまま動きを止める。腕の中に収められたままの由紀江は硬直しっぱなしである。
「そうだ弟よ。おととい言っていた痴話喧嘩はどうなったんだ。姉の言いつけどおりきっちりこじれて別れてきたんだろうな?」
「!!?!?世界を揺るがしかねない大異変!そのときカメラは何を捉えた!?」
興味無さ気にそれまで読書に勤しんでいた京がいきなり食いついてきた。
「一体どういうこと!?私聞いてないよ!ここにある要素じゃ賄いきれないものがあったの?まさかロリなの?駄目だよ、大和を冥府魔道に堕とさせはしない!」
「いや、なーんか年上らしいぞ。」
「そんな、もっとアダルト方面を強化する必要があったの?傾向と対策を練り直す必要がっ!」
「何だと、大和に急にそんな話が!?キャップはまだしも、大和にまで置いていかれるとは。このナイスガイの俺様にもまだ彼女がいないっていうのによぉ!」
「いや、京がいた時点で既に僕らとは大きく開けられてたよ、ガクト。でもほんと、どうしたの?大和。」
ガクトとモロも食いついてきた。
「ちょっと、姉さん。こんなところで言わなくても…」
「未来の妻として詳細な説明を要求するッ!」
「そうだー。お前は私のなんだぞ。余所の女になんかくれてやらん。早く姉の胸に還って来―いーよー。別れろ別れろー。」
その後ご飯をもって乱入してきたキャップのいつものとっぴな言動でその場を誤魔化すことに成功したが、大和は密かにこの展開に頬を緩めていた。
(やば。マジで俺今、モテ期に入った?ひょっとしたら、姉さんもいけるのかもしれない!京も…ここまで来たら、いっていいんじゃね?)
明らかに調子をこき始めていた。
まじこいが面白かった…そして一番気に入ってしまった梅先生シナリオがあまりにも短すぎた。それだけで書いてしまった。
ネタが湧いたら続くかもしれない。辰子も好き。
書いていて思ったけど、梅子という名前は本当にエロ向きじゃありませんな。