「Hello? this is Naoe speaking.」
元伝説の暴走族の女総長、現専業主婦の母の英語が受話器から聞こえてくる。
「あ、母さん?大和だけど。父さんと話したいんだ、今話せる?」
「ああ、なんだい大和じゃないか。元気にしてるかい?お前のほうから電話してくるなんて、珍しいねえ。ちょっと待ってな、今お父さんに代わるから…」
受話器越しに両親の電話向こうでの仲むつまじいやり取りが聞こえる。
ご主人様、お電話でございます。あの子からですわ。
ふむ、ならばそこで待っていなさい。そのままでね…
ああ、そんな…早く、早くお戻り下さい…
ふふ、全く我慢の効かない雌犬だ…
相変わらず両親とも元気なようだ、良かった。
「ねえ父さん。」
「なんだ?大和。」
「父さんは母さんよりも喧嘩は弱いんだよね。」
「うむ。直接的な戦闘を含む身体能力なら、私は決して母さんに敵わないな。治安が悪い地域で荒事に巻き込まれたときには、いつも母さんのチェーン束縛技がものを言うのが常だな。いつも私はその後ろに隠れている。それがどうかしたのか?」
臆面もなく女の尻の陰に隠れると豪語する大和の父。父も母もその息子も、そのあり方をまるで恥じていない。
「そんな強い母さんを、どうやってそんなにベタ惚れにさせたの?」
「ああ、お前も女性を愛するような年頃になったのか…。子供の成長とは本当に早いな。それぞれにやり方はあるだろうが、父さんの場合、まずは良好な関係を構築するために邪魔なものを取り払ったな。相手のプライドとか立場とか頼れる仲間とか。」
「へえ。」
「そして母さんを物理的にも精神的にも丸裸にしたあと、どちらが上でどちらが下かを教え込んだ。まず苦痛を、そしてその何倍もの快楽を…それから…」
父の語る母との馴れ初めに話の花が咲く。いつまでも話していたい気分だったが、何やらお預けを食わされているらしい母のことを思いやって、ほどほどのところで話を切り上げて電話を切った。
「愛し合う関係を長続きさせるのって、難しいんだな。」
愛は押し付けるものだが一方的な従属ではないとか、不安定でも安定でもいけないとか、父の話を聞いて大和は考えた。
上辺だけの付き合いが多く、その他は風間ファミリー以外のコミュニティを今まで持たずまた必要としていなかった自分が、ある意味でファミリー以上の関係を結ぼうという相手が初めて現れたわけだ。
「気合を入れて頑張らなきゃな。待っててね、梅子!幸せにしてあげるから!」
その結果、無理やり相手に及ぼす変化については頓着しない。それが直江の男たちのはた迷惑な愛である。
7月13日(月)
その日、小島梅子は仕事帰りに買い物を済ませると、いそいそと家路を急いでいた。
マニキュアを買ってしまった。
いや、今までマニキュアを塗ったことがないわけではない。ただ、化粧目的でそれを付けることがなかっただけだ。弓道をたしなむ者として、爪を割ることがあっては不都合なため、透明の保護用のマニキュアを付けていたのだ。
しかし、化粧のためにこれを付ける日が来るとは夢にも思っていなかった。
いや別に、特定の誰かに容姿を褒めてもらいたくてするわけではない。これは、嗜みなのだ。女性としての嗜み。それ以外の意味など…
「あ…。」
気付いた。自分のドングリのような短い爪に。
自分の受け持ちの生徒である小笠原などは綺麗に爪を伸ばし、色鮮やかに化粧を施している。高校生の節度として思うところがなくはないがそれは置いておいて、
実用一点張りの人生を自分とともに送ってきた我が指の短い爪を見る。
「馬鹿馬鹿しい。私がこんなことをして何になるというのだ。」
そう独り言を言って、テスト問題作成に戻った。
7月14日(火)
次の日。何だかんだで梅子は少しメイクに気合を入れていた。しかし、
(誰も私のことになどふれないか。当然だな。私がマニキュアをしたからといって、世界が変わるわけでもない。)
何を期待していたのだか、ため息をついていると、
「おや?小島先生。今日は…今日も、お化粧が決まってらっしゃいますね。」
同僚の宇佐美巨人にそう声をかけられた。ああ、一応見るところを見てくれたのだな、と感心し、少し嬉しかったが、それだけだった。続く毎度のお誘いも断って、朝のホームルームのために教室へと移動する。
いつもの通り毎朝の行事をこなす。島津岳人や福本育郎にいつも通り鞭による指導を与えつつも、ちらちらととある生徒―直江大和に目を向けてみるが、何の反応も見られない。
(だ、だから何だというのだ。別に私は何もショックを受けてなどいない。ああそうだとも!)
マニキュアの付いた紅い爪の色も鮮やかな手を、ぎゅっと握り締めつつ教室を出て、かつかつと靴音を立てつつ職員室へと向かうのだった。
「なんか、今朝の梅先生、不機嫌じゃなかった?」
「そうだろうか?小島先生はいつもあのようではなかったか?」
ワン子がクリスに話しかけるが、要領を得なかった。
「お子ちゃまたちにはわからない。」
(あれは、女の目…中一から自分のオンナを自覚した私にはわかる…)
放課後。直江大和が職員室に来たとき、小島梅子の胸は音を立てて鳴った。少なくとも主観的には。
「直江、何の用だ?」
「ああ、ちょっと放課後、進路の相談に乗って欲しいんですけど。」
(なんだ、そんなことか…い、いや、そうではない!それが私の本分だろう!何を考えている!)
「わかった。先に指導室へ行っていろ。」
ふぅっ…
「小島先生。お疲れですか?」
同僚の女教師が声をかけてくる。
「いえ。大丈夫ですが。」
「よかった。このごろよくため息をつかれていらっしゃるものですから。なにか思い悩んでいらっしゃるようにも見えましたし…」
自分は、最近そんなにも内心の葛藤を表に出していただろうか。このようなことではいけない。もっと、内心はどうあれ毅然としていなくては。頼りなげな態度では生徒達も不安になるだろう。特に自分のクラスには問題児も多いことであるし、弱みなど見せられない。
そう、生徒に自分の弱いところなど…弱いところも恥ずかしいところも全てさらけ出すなんて、そんな…
「先生?小島先生?」
はっ!
「やはり、お疲れなんじゃないですか?もう帰られては?
よろしければ、大和くんの指導、代わりに私が行っても…」
ぴくっ。
女教師のその呼び方を梅子は聞きとがめた。
やまと、くん?
「いえ。これも担任としての務めですので。」
「すいません。差し出がましいことを言ってしまったようで。まああの子ならスムーズに行くでしょうし。うちのクラスの子も大和くんくらいそつがなければいいんですけどね。」
担任の私が苗字で呼んでいるのに、大和くん…
「いえ、結構です。やはりここは担任として私が自ら行かなくては。」
梅子から放たれるプレッシャーに女教師は引いた。
「そ、そうですか?すいません。新任が生意気言って…。」
「お気になさらず。では。」
かつかつとヒールを鳴らしながら、梅子は反省していた。
ああ、大人げないことをしてしまった。いかんいかん、これは小島梅子のあり方ではない。よし、指導室に着いたら、あいつにバシっと言ってやらねば。
変なことになる展開を期待して私を呼びつけたのではないだろうな、恥を知れ!俗物が!と。うむ、よし、これだ。
「ん、んんっ。直江、進路について相談があるとのことだが。」
「梅子はいつ見ても美人だけど、今日はいつもよりも美貌に磨きがかかっているね。綺麗だよ、梅子。」
どきん!! …ぽわわ~ん……
化粧が~と言わないのは妙齢の女性に対して「化粧してキレイ」と褒めるのは「化粧しないともう見れたものじゃない」という発言にも取れるからだろう。あの先生も言っていた通り、全くもってソツがない。
そんなとこにも魅力を感じているあたり、梅子はもうすっかり大和に嵌り始めていた。
「そ、そうか。だが今はそんなことは関係ない。お前の進路についての相談を、」
「そんなことについて言って欲しくて来たくせに。」
「な、何を言っている。私は、」
「ここは進路指導室。使用中の札がかかっている限り、誰も入ってこないよね。プライバシー保護の観点からも、ウチの学校のこの手の部屋は、完全防音。」
「だから何だと、…あっ…むちゅ…ふん…む…」
「梅子。俺梅子のことが欲しい。」
「こ、この俗物が。こんな所で…」
梅子は、「こんな所」と言った。つまり場所以外について異議を申し立てなかったことになる。自分との関係を受け入れつつある梅子に大和は内心ほくそ笑む。
「な?いいだろ?ね?ね?」
耳元で囁きながら胸を揉み尻を撫でる手を止めない。
「ほら、梅子。俺梅子と愛しあいたくてもうこんなになってるんだ。」
ズボンの上から、熱を帯びて怒張している男根をその手に触らせる。
(あ…熱い…それにもうこんなに固くなって…少しびくんびくんとしてる…)
「梅子…これ、梅子の手で愛して。」
「なっ!」
身を離そうとする梅子を抱き寄せ、大和はジッパーを下ろして勃起を取り出した。
「そ、そんなものをここで出すな!早くしまえ! ひゃ! あ……」
その手に握らされたものの感触に一瞬我を忘れる。
(こ、これがあの時私の中に入ったモノ…直接触ると、燃えるように熱い…こんなものを入れられてしまったら、私どうなるの…)
思わず、擦り上げるように手を動かしてしまった。その瞬間、
「うっ。」
と、大和が声を上げ、腰を少し振るわせたのを見たとき、梅子の中にぞくりと湧き上がるものがあった。思わずそのまましゅ、しゅ、と連続して擦る。
(ああ、あんなに気持ち良さそうな顔をして。ふふ、そうか。こうされるのがいいのか。)
「な、直江。いいのか?こ、これが、いいんだな?」
「あ、ああ、うん、そう。も少し続けて…。」
梅子の顔の真横で、大和がはぁはぁと荒い息をつく。
(直江が、興奮している。いつもさんざん私を苛める直江が。)
なんとなく精神的優位に立った梅子は、さらに大和を激しく責める。抱きしめられるような体勢から、いつの間にか大和の股間の前に顔を持ってきて跪くような構図になっていた。
目の前にある陰茎の亀頭がぶわっと大きくなってくる。それが意味するところを理解して、梅子自信の息遣いも荒くなり、陰茎を擦るスピードも増していく。
「はぁ、はぁ、う、梅子、もう、」
「あ、ああ、もう、出るのか?射精するんだな?私の目の前で、これが。」
初体験のときからずっと、大和にリードされっぱなしだった梅子である。年長者として内心面白くなかったことも確かにあった。それに遥かに勝る被虐的な快楽と愉悦を与えられていたのも事実だが、それはそれである。
しかるに、今の状況はどうみても自分が主導権を文字通り握っている、と彼女は考える。このまま大和を果てさせるも、手を止めて、大和の口から手淫の続行を懇願させるも、極端に言えばこの勃起した陰茎を握り締めて大和を痛みにのた打ち回らせることすら梅子の気分次第だ。初めて自分が大和というオスの上位に立った快感に、梅子は打ち震える。
もっともこれは梅子の主観の話で、実際には大和が子犬をたなごころで遊ばせる如く自由に纏わりつかせているに過ぎない。犬を躾けるには時に主導権を相手に渡す形でのスキンシップが必要だと父に教えられたことを実践しているのだ。大和の心の目には自分の股間の前にしゃがみこんでいる梅子の尻に、千切れんばかりに振られている尻尾が見えていた。
「うん、うん、もう、俺、イクから―」
「ああ、見せて、お前がイクところを私に見せてくれ!」
梅子は必死に大和を愛撫する。と、亀頭が今まで以上に膨張して、そのまま勢い良く梅子の顔に向かって精を噴き上げた。
「あ、ああ…すごい、熱い…」
それに、なんて匂いだ、指導室中に一気にこの香りが立ち込めたようだ。これが射精―
うっとりと、まだ少しづつぴゅっ、ぴゅっとしゃくりあげながら吐精するペニスを優しく撫でながら梅子は大和を絶頂に導いた快感に酔っていた。
(ああ、やっぱり梅子はかわいいなぁ。愛してるよ。あ、顔にあんなに精液が。雌犬が逆にマーキングされちゃったみたい。あはは、化粧が台無し。いや、これが雌犬流の化粧なのかな?マニキュアした指に白い精液が絡みついてるのもエロいなぁ。)
「はぁ、はぁ、や、大和…」
思わず男根に頬擦りをしそうになったところで、梅子ははっと気付く。
(わ、私は何をしているのだ!神聖なる学び舎の中で受け持ちの生徒と、こ、こんな淫らな行為を!しかも私のほうから一方的に!)
かーっと頬が熱くなる。
「ん、んんっ。ど、どうだ?直江。満足したか?では改めて進路を、」
なんとかして空気を変えようと話を振るが、はたから見てもわかるぐらいてんぱっている。
「顔中べたべた。」
「!!」
臨界点を突破したらしく、ついに停止する。
「ほら拭いてあげるから、動かないで。」
洗顔ペーパーを取り出し、拭き取る。梅子は真っ赤な顔のままそれに身を任せていた。
「うーん、今日はいっぱいいっぱいみたいだし、ここまでにしておこうか?」
コクコクと頷く。
「じゃ、また明日…ちゅ。」
ばたん、と音を立てて指導室が閉まっても、梅子は立ちつくしていた。
「小島先生?指導室から戻ってきてから、変ですよ?」
「え、ええ。私は、おかしくなってしまったのかもしれません…。」
「先生…やっぱり、疲れてらっしゃるんですよ。今度、一緒に飲みにでも行きましょうね。」
梅子は上の空で頷いていた。
続いてしまった。ハーレムルートより梅子一本ルートの希望が多かったので、試しに梅子先生一筋の続き。
こんな感じで、大和が梅先生をピンク色の牢獄に閉じ込めて行く話しにしてみようかな、と思います。