今回は「焦らし」です。エロはありません。
7月22日(火)
大和による梅子の調教(大和の言うところによると二人の幸せのための意識改革)は順調に進んでいた。
(次は何を教えようかな。お口でのご奉仕も結構上手くなったし、そろそろ後ろのほうを開発してもいいかな~♪)
「~~♪~~♪♪~~」
「大和、最近上機嫌だね。」
鼻歌混じりにヤドンとカリンにイカの切り身をあげている大和の背中に、京が背中に胸を押し付けつつもたれ掛かる。今更大和も驚かない。
「梅先生のおかげ?」
やはり京には気付かれていた。
「うん。」
「……はっきり言うなぁ。」
「そういうところはぼかさないでおこうと思ってる。」
「私じゃだめなの?」
少し考え込んで、はっきりと告げた。
「正直、このままずっと続いていれば、俺の天秤が京に傾くことがあったかも。でもその前に俺の中で大きな変化が起きちゃったんだよね。」
「そっか。タイミングかぁ。ちなみに大和にどんな化学反応が起こったの?」
「…触媒はアルコール。」
「大和を活性錯体にするにはエタノールが必要だったのか。私も早く一服盛っておけばよかったなぁ。」
ため息をつきつつ不穏な発言をする京。
「一杯じゃなくて一服かよ。」
「いや待てちょっと考えよう。今からでも遅くはないかも。」
考え込む京。具体的な寝取り作戦を考え始める前に大和は釘を刺す。
「ないから。ていうか、それに酒が入ってたの梅子先生のほうだし。今更だよ。
俺を異性と見るのはもう、な?これまで通りお友達で。」
「それは私の自由と言いたいけど…考えてみるよ。」
そう言って大人しく部屋を出て行ったが、
(そんなわけないけどなッ!!待てば海路の日和あり、鳴くまで待とうホトトギス!)
京は諦める気など毛頭なかった。
(…とか絶対考えているだろうな。まあ、暫くはしょうがないか。)
大和はそれを骨身に沁みて理解していた。
(さてと。明日の準備をしなくては。)
作成中の書類、筆記用具、手帳、名刺入れ、財布、化粧品…
「はっ!?」
自分の手がいつの間にか無意識に替えの下着の上下ひとそろい(黒い、レースをあしらったもの)を、「明日の準備」の中に極めて自然な動作で加えようとしていたのに気付いて、梅子は驚愕の声を上げた。
「いっ、いやいや。ちょっと待て!明日もどこに寄ろうというのだ私は!」
自分は大和が好きだ。
もう、それは認めよう。だがしかし、これは少々まずい…というかいけないだろう!?一体私は何を期待しているのだ!?猿ではあるまいし!
事あるごとに性交渉という爛れた付き合い方には問題があるのではないか?教師と生徒の交際―この時点で既にいろいろとまずいが、もうそれはいい(梅子意識改革30%完了)。
そう、自分は経験豊富な年長者(しかし恋愛経験はゼロということは梅子の頭から抜け落ちている)なのだ。若人たる大和を導いていかねばならない立場にある。将来有望な若者を堕落させて良いわけがない!わ、私の将来にも密接に関わるかもしれないことでもあるし!
よし、こんどこそガツンと言ってやらねば!
お前の年では、恋に夢中になってしまうのも無理からぬことだろう。身体を求めるのもわかる。だが、お前にとっては今の時期、己を高めることこそが大事なんだ。肉欲に捕われて人生を誤るようなことがあってはならない。わかるな?
と、うむ、よし、こうだな!
大和、お前は私が決して堕落させない。私がお前を立派な人物にしてやるからな!
7月23日(水)
…私は駄目な女だ。
いや、でも、アレは大和だって悪い。
そういう流れに行かせないために換えの下着を持っていかなかったのに、何故「じゃあ、今度着るための下着を今から二人で買いに行こうよ」とかいう流れになるのだ。
何故、その下着売り場で、男女が一つの試着室に入って、小一時間試着室を占領していても誰も文句を言ってこないのだ。(当然大和の知り合いの店)音や匂いが外に漏れていなかった筈がないのに。
殊の外興奮した…って、そうではない。
そしてなんだ大和が買わせたこの下着は。まっ、まるで下着の用を成していないではないか。このブラ、ハーフカップですらないぞ。それになんだこのパンティの穴は。こんなものを着て、何をさせる気なんだ…。
どきどき。
ま、まあ、下着に罪はない。大和がこういうのが好きだというなら、たまに、本当にたまにならこんなのを着てサービスしてあげないことも…
そうではない!!肉欲に流されるな小島梅子!このままでは二人とも駄目人間街道まっしぐらだ!お前の愛する直江大和を更正させて真人間に戻せるのはお前だけなんだぞ!
考えろ、考えるんだ…自然な流れで大和からのセックスのお誘いを断る方法は…
既に確固たる意思で頑として跳ね除けるという選択肢が頭から消え、確実にヘッポコ駄目女への道を歩んでいる梅子だった。
7月24日(木)
週3のペースでホテルを利用していてはホテル代だって馬鹿にならないだろう、そう言った私が馬鹿だった。
「お邪魔しまーす。へー、ここが梅子の部屋か。きちんと片付いてるじゃない。」
「や、大和、そんなにじろじろ見るな。見られて恥ずかしい部屋のつもりはないが、どうも落ち着かない。…テレビでも観ながら待っていろ。」
やかんを火にかけ、お湯が沸くまでキッチンに立ちながら梅子は考えていた。お湯を沸かすだけなら別にそこで待つ必要もないのだが。
…どうしたものだろうか。
今日は安全じゃない日だと言えば、
…笑顔でコンドームを一箱出してきそうだ。あいつなら、その手の逃げ場を封じる準備くらい絶対にしている。
生理だと言えば、
新しいプレイの境地を切り開こうとしてくるに決まっている。
毅然として拒絶する、ただそれだけのことがどうしても出来ない。
なぜあのような男に夢中になってしまったのだ。今日は、私はどんなことをされてしまうのだ。ああ…
ああ、お湯が沸いてしまった。もうお茶を淹れなければならない。またこうして、お茶と煎餅と一緒に私を美味しくいただかれてしまうのか…
一時間後。
「それでさー、その動物園の雌のゴリラからガクトが熱烈に求愛されて、みんな爆笑だったんだよ。ガクトが「ゴリラにもててもうれしくねー!」とか涙目になって、」
「………」
「梅子?聞いてる?」
「え…?あ、うん、そうそう、マジ超ゴリラだな!HAHAHA!」
待て。なぜ普通に煎餅をかじりながら談笑しているのだ。
ここはそういう流れではないのではないのか?「それより俺は梅子が食べたいな!!」とか言って、ガバっと、その、ごにょごにょがあったりしないのか?
こう、生徒が学校に持ってきていたから没収したいかがわしいビデオの裏に書いてあった煽り文句のように、「十代のはちきれんばかりのリビドーが熟れた女教師にべっとりと叩きつけられる!」な展開ではないのか?
「何がべっとりなの?」
「え、あ、い、今私は何か口走っていたか?」
「いや、なにかよくわからないことを…あ、もうこんな時間か。そろそろ帰ろうかな。」
えっ?
「ま、まだ早くないか?」
「でも、そろそろ帰らないと晩飯食いっぱぐれちゃうし。」
梅子は焦って、なんとか大和を引きとめようとする。
「だ、だったら、うちで食べていかないか?今から何か作るから。」
「あ、そう?じゃあ、お言葉に甘えて、梅子の手料理をご馳走になっちゃおうかな♪」
「じゃあ、今からそこのスーパーへ行って来る。だから、ここで待っていろよ?私が帰るまでちゃんとここにいるんだぞ?」
本当は二人で晩御飯のお買い物♪をしてみたくもある。しかし自分の家の近所でそれはさすがに見つかったら言い訳できない。
大急ぎで梅子は買い物に出かけていった。バタンと梅子がドアを閉めた瞬間、
大和は邪悪な笑みを浮かべる。
「計画通り。」ニヤリ。
「ふふふ。梅子がこの3日間弁当を持参していないのはリサーチ済み。一人暮らしの弁当は8割がた昨日の残り物…すなわち、梅子が3日以上忙しくて料理する暇がなかったのは当然。ならば冷蔵庫も突然の料理に耐えられる備蓄がないのも当然。将軍の読みどおりだったな。
ま、ここのところ、のべつまくなしに俺がセックスに持ち込んでたから時間がなかったのは当たり前なんだけどね。」
限られた時間を有効活用するべく家捜しをする大和。
「ほう。これはバナナの皮。しかも結構な量。…練習したな、梅子。くっくっく。
そういう知識の出所はどこかな~っと。お、やっぱり、女性週刊誌。…ほうほう、これは。梅子は生真面目だなぁ(笑)。わざわざこんな記事に蛍光ペンなんか引いちゃって。
よし、これは使える。メモメモ…」
「今帰ったぞ!」
息を切らせて梅子が帰還する。大和は探索を終えてそ知らぬ顔でテレビを観ていた。
「あ、お帰りー。」
「お帰り」というその単語に、思わず頬が緩むのを梅子は必死に堪えた。しかしバレバレ。嬉々として調理に取り掛かる様子もしっかり見られていた。
「あ、これ美味しい。」
「うむ、それは、二子玉丼といって、知り合いのカリスマ主夫から教わったものなのだが―」
「川神院でも、これに似たものを食べたことがあるような…」
しばし歓談しつつ料理に舌鼓を打つ。幸せな時間が流れた。
「ご馳走様。美味しかったよ。さてと、それじゃあそろそろ夜も遅いし、俺今日はもう帰るよ。」
「え?も、もう少し居てもいいのではないか?」
さっきからことごとく肩透かしをくらって、梅子は焦る。
「明日も学校があるじゃない。」
「そ、それはそうだが――」
まだ肝心のコトを終えていないではないかなどと、はしたないことを梅子のほうからおねだりすることはまだできない。
「じゃあね。また明日。」
「あ…。」
行ってしまった。
今日は木曜。大和はいつも金曜日は集会のほうへ行ってしまう。かわいいそして若い女の子が4人もいる集会に。
自分の恋心を自覚した梅子にとって、自分が大和よりかなり…それこそ10歳以上も年が上だということはかなりのコンプレックスなのである。はっきりいって大和を他の若い女に会わせたくないくらい。
「そ、そんな…」
また金・土・日と大和との逢瀬ができないことに悶々としていた。ほんの2日前まで大和が迫ってきたらどうしようか、とか大和に堕落の道を歩ませてはならないなどと考えていたのと同一人物の思考とはとても思えない。
「や、大和…私は、どうすればいいのだ…。」
帰り道、大和は考えていた。
「うーん、ちょっと今日は梅子がかわいそうだったかな?でもここは心を鬼にしてちゃんと梅子を躾けなきゃ。自分から素直に俺のことを求めるようになってもらわないと。
くっくっく、でもそれも間もなくだな。今日の買い物の袋、しっかりと避妊具を自分で買ってきてたのが見えてたし。潤んだ眼でちらちらこっち見てたのがバレバレで、もーかわいいったらないっての。俺のほうも辛かったぜ。愛してるよー梅子。
おっとそうだ、将軍に結果報告しておかねば。」
携帯を取り出し、どこかへかけると、数コールで相手が出た。
「あ、もしもし、大和です…ええ、やはり将軍の仰るとおりでした。将軍の洞察どおりに事が進みまして。
俺はまだ早いと思っていたんですけどね。まだ将軍の域に達するまで先は長いようです。今後とも、ご教授下さい。では。」
電話を切る。相手は、父のほかに大和が心から尊敬し、教えを乞うている数少ない人物だった。
「さすがは恥将…じゃない、知将ヘンゲル将軍…あの人のレベルに達するには、まだまだ長いようだ…。」
やっとデレ梅子まで持ち込みました。ここからデレのターン!
大和が尊敬する将軍とか梅子の知り合いのカリスマ主夫は当然あの方々です。大和がヘンゲル将軍と出会ったのは川神院で、です。恥と知と智と痴に生きる者同士、惹かれあい通じ合うものがあったのでしょう。
登場の予定はありませんがこうして名前はちょくちょく出ます。